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特表2023-524450静水圧旋回動作作動、監視、および制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】静水圧旋回動作作動、監視、および制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230605BHJP
【FI】
E02F9/22 J
E02F9/22 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565973
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021025847
(87)【国際公開番号】W WO2021221861
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】16/860,585
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー、ラスティン グレン
(72)【発明者】
【氏名】ナッカーズ、アダム マーティン
(72)【発明者】
【氏名】フォッサム、ジョシュア アーロン
(72)【発明者】
【氏名】リューメリン、クリストファー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン、コリー リー
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB05
2D003BA02
2D003BA07
2D003BB04
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003FA02
(57)【要約】

土木移動機械(10)用の旋回動作制御システムは、土木移動機械(10)の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータ(682、684)に流体連結された静水圧旋回ポンプ(686)と、ポンプ(686)により出力される圧力を制御するために、静水圧旋回ポンプ(686)に供給される流体の圧力を制御するように構成された圧力制御装置(664)と、制御装置(700)と、を含む、閉ループ油圧回路を含み得る。制御装置(700)は、センサおよび作業員入力から受信された信号を監視および処理することであって、センサから受信された信号は、機械の位置および姿勢、ならびに機械(10)の旋回機構によって移動される旋回構成要素およびペイロードの慣性質量を示す、監視および処理すること、および、機械(10)が作動している傾斜量または旋回構成要素およびペイロードの慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、静水圧旋回ポンプ(686)による所望のポンプ変位に対するオフセット量または静水圧旋回ポンプ(686)からのポンプ出力圧力に対するオフセット量のうちの少なくとも一つを制御することを行うように構成され得る。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木機械(10)用の旋回動作制御システム(700)であって、
前記土木機械(10)の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータ(682、684)に流体連結された静水圧旋回ポンプ(686)を含む閉ループ油圧回路と、
前記ポンプにより出力される圧力を制御するために、前記静水圧旋回ポンプ(686)に供給される流体の圧力を制御するように構成された圧力制御装置(664)と、
制御装置(700)であって、
センサおよび作業員入力から受信された信号を監視および処理することであって、前記センサから受信された前記信号は、機械の位置および姿勢、ならびに前記機械の前記旋回機構によって移動される旋回構成要素およびペイロードの慣性質量を示す、監視および処理すること、および
前記機械が作動している傾斜量、または前記旋回構成要素およびペイロードの前記慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記静水圧旋回ポンプ(686)による所望のポンプ変位に対するオフセット量または前記静水圧旋回ポンプ(686)からの出力圧力に対するオフセット量のうちの少なくとも一つを制御すること、を行うように構成された制御装置(700)と、を含む、旋回動作制御システム(700)。
【請求項2】
前記制御装置は、前記機械(10)のブームに動作可能に接続された一つ以上の油圧シリンダのヘッドエンド圧力を示すセンサ生成信号を含む、前記旋回構成要素および前記ペイロードの前記慣性質量を示す信号を監視および処理するように構成され、前記ヘッドエンド圧力は、前記機械のロール角、傾斜、または位置配向のうちの少なくとも一つの関数である、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項3】
前記制御装置は、前記機械(10)のブレーキシステムを漸進的に係合解除する一方、前記静水圧旋回ポンプ(686)による所望のポンプ変位に対する前記オフセット量または前記静水圧旋回ポンプ(686)からのポンプ出力圧力に対する前記オフセット量のうちの少なくとも一つを同時に制御するようにさらに構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項4】
前記制御装置は、前記機械(10)が作動している傾斜量または前記旋回構成要素およびペイロードの前記慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記静水圧旋回ポンプ(686)による所望のポンプ変位に対する前記オフセット量を制御するように構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項5】
前記制御装置は、前記機械(10)が作動している傾斜量または前記旋回構成要素およびペイロードの前記慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記静水圧旋回ポンプ(686)からのポンプ出力圧力に対する前記オフセット量を制御するように構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項6】
前記制御装置は、
機械作業員が、前記旋回構成要素を、傾斜を増加する方向に移動するように前記機械に指令している間に、前記旋回構成要素および前記ペイロードを旋回させ、前記旋回構成要素の動作を一定速度に維持するために、前記機械(10)がより大きい量の油圧流体流れを必要とする場合、前記ポンプ変位が増加するように、前記静水圧旋回ポンプ(686)により、所望のポンプ変位に対する前記オフセット量を指令する、または
機械作業員が、前記旋回構成要素を、傾斜を減少する方向に移動するように前記機械に指令している間に、前記旋回構成要素および前記ペイロードを旋回させ、前記旋回構成要素の動作を一定速度に維持するために、前記機械がより少ない量の油圧流体流れを必要とする場合、前記ポンプ変位が減少するように、前記静水圧旋回ポンプ(686)により、所望のポンプ変位に対する前記オフセット量を指令する、のうちの少なくとも一つを行うように構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項7】
前記制御装置は、前記旋回構成要素および前記ペイロードの前記検出された慣性質量が比較的大きい場合、前記静水圧旋回ポンプ(686)によるポンプ変位を、比較的大きいポンプ変位に自動的に増加させるように構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項8】
前記制御装置は、前記旋回構成要素および前記ペイロードの前記慣性質量の大きさ、前記機械のロールレート、ヨーレート、およびピッチレートの一つ以上を含む素因に基づいて、前記静水圧旋回ポンプ(686)による所望のポンプ変位に対する前記オフセット量を決定するように構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項9】
前記制御装置は、前記所望の静水圧旋回ポンプの出力圧力または力指令、前記機械(10)が作動している前記傾斜量および前記機械の姿勢の関数である、傾斜制御ポンプの出力圧力または力指令、水平な表面上のブレーキ制御部、前記機械が作動している前記傾斜量および前記機械の姿勢の関数である、ブレーキ傾斜制御部への作業員入力を含む一つ以上の素因の関数として、前記静水圧旋回ポンプ(686)からの出力圧力に対する前記オフセット量を制御するように構成される、請求項1に記載の旋回動作制御システム(700)。
【請求項10】
旋回動作制御システム(700)を含む土木機械(10)であって、前記旋回動作制御システムは、
前記土木機械(10)の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータ(682、684)に流体連結された静水圧旋回ポンプ(686)を含む閉ループ油圧回路と、
前記ポンプにより出力される圧力を制御するために、前記静水圧旋回ポンプ(686)に供給される流体の圧力を制御するように構成された圧力制御装置(664)と、
制御装置であって、
センサおよび作業員入力から受信された信号を監視および処理することであって、前記センサから受信された前記信号は、機械の位置および姿勢、ならびに前記機械の前記旋回機構によって移動される旋回構成要素およびペイロードの慣性質量を示す、監視および処理すること、および
前記機械が作動している傾斜量、または前記旋回構成要素およびペイロードの前記慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、前記静水圧旋回ポンプ(686)による所望のポンプ変位に対するオフセット量または前記静水圧旋回ポンプからのポンプ出力圧力に対するオフセット量のうちの少なくとも一つを制御すること、を行うように構成された制御装置と、を含む、土木機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、機械の旋回機構を静止状態に維持するための旋回動作作動および制御システムに関し、より詳しくは、旋回機構を静止状態に選択的に維持するために、閉ループ油圧回路内に、流体をモータに供給する静水圧ポンプを含む、機械の旋回動作作動および制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ブルドーザー、モーターグレーダー、ホイールローダー、ホイールトラクタースクレーパー、および他の種類の重機などの機械は、様々な作業を行うために使用される。機械を効果的に制御するには、情報をほぼリアルタイムで機械制御または作業員に提供する計算を実施するための、センサによる正確で応答性の高い読み取りが必要である。自律的および半自律的に制御される機械は、様々な機械システムから受信された情報に依存することで、人間による入力がほとんどまたは全くない状態で操作可能である。例えば、機械移動入力、地形入力、および/または機械操作入力に基づいて、プログラムされた作業を遠隔的におよび/または自動的に完了するように、機械制御可能である。作業実行中に、異なる機械システムおよびセンサの各々から適切なフィードバックを受信することによって、作業完了時の精度および安全性の確保に役立つよう、機械操作を継続的に調整することができる。ただし、これを行うためには、異なる機械システムおよびセンサが提供する情報が、正確で信頼性がなければならない。機械が移動する際の位置、速度、および距離、ならびに機械の異なる部品または構成要素の位置、動作、および配向は、その精度が機械およびその操作の制御に重要であり得るパラメータである。ブーム、スティック、および器具または作業ツールなどの旋回構成要素を含む採掘機などの機械では、開ループ旋回システムが提供され、構成要素の旋回動作を、採掘位置または積込み位置から放出位置まで、または放出位置から採掘位置または積込み位置まで戻すように制御可能である。機械が傾斜上に位置する場合、例えば、ブーム、スティック、および器具などの構成要素は、構成要素に対する重力の影響の結果として、作業員が指令する位置からドリフト運転し得る。このドリフト運転の問題に対する従来の解決策には、低漏れの油圧制御弁を使用して、旋回構成要素を油圧でロックし、機械が傾斜上にある場合、該構成要素がドリフト運転するのを防止する試みが含まれ得る。
【0003】
従来の機械は、典型的に、ナビゲーションまたは位置決めシステムを利用して、機械の位置、速度、ピッチレート、ヨーレート、およびロールレートなどの様々な操作パラメータを決定する。機械の位置および配向は、機械の「姿勢」と称される。機械の「状態」は、機械の姿勢、ならびに機械の様々なリンク、関節、工具、油圧装置、および電力システムを特徴付けるパラメータなど、機械の運動学および動力学をモデル化するために使用可能な様々な追加の操作パラメータを含む。一部の従来型の機械は、グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)データ、距離測定インジケータ(DMI)またはオドメーター測定データ、慣性測定装置(IMU)データなどの一つ以上の組み合わせを利用して、これらのパラメータを決定する。一部の機械は、RADARセンサ、SONARセンサ、LIDARセンサ、IRおよび非IRカメラ、およびその他の類似のセンサを利用して、異なる種類の地形に沿って安全かつ効率的に機械を誘導するよう補助する。従来型の機械は、これらの異なる種類のデータを融合して、陸上車両の位置を決定しようと試みた。
【0004】
機械の位置を決定するために利用され得る例示的なシステムは、2008年2月7日公開のLevinsonらの米国特許出願公開第2008/0033645号(「第645号公開公報」)に開示されている。第645号公開公報のシステムは、全地球測位システム(GPS)などのセンサからの位置情報データ、ならびにLIDAR(光検出および測距)装置からのシーンデータを利用して、機械の位置を決定する。具体的には、データは、地形の高解像度マップを作成するために使用され、機械の位置は、マップ上で限定して特定される。
【0005】
第645号公開公報のシステムが、機械の全体的な位置を決定するのに有用であり得るものの、該システムは、推測中(すなわち、GPS信号が利用できない期間中)、機械の位置または機械の構成要素に対する正確な推定値を提供しない場合がある。さらに、第645号公開公報のシステムはGPS信号の精度をチェックしないため、マルチパス誤差、位置ジャンプなどによりGPS信号が信頼できない、または誤っている場合、第645号公開公報のシステムは正確な位置情報を提供しない場合がある。最後に、第645号公開公報のシステムは、機械が傾斜上で作動している場合に、機械の旋回構成要素の位置を監視および制御可能に維持する手段を提供しない。
【0006】
本開示のシステムおよび方法は、機械および機械の構成要素の位置の正確な決定を提供するだけでなく、機械が傾斜上で作動している場合に機械の足回りに対する機械の旋回構成要素の位置を維持するために、閉ループシステムにおいて、流体を油圧モータに供給する専用の静水圧ポンプの使用を含む。本開示の様々な例示的な実施形態に係る、土木機械のための旋回動作制御システムは、土木機械の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータに流体連結された静水圧旋回ポンプを含む、閉ループ旋回動作制御システムを含み得る。
【発明の概要】
【0007】
一つの態様では、本開示は、土木機械用の閉ループ旋回動作制御システムを対象とする。旋回動作制御システムは、土木機械の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータに流体連結された静水圧旋回ポンプを含む閉ループ油圧回路と、ポンプにより出力される圧力を制御するために、静水圧旋回ポンプに供給される流体の圧力を制御するように構成された圧力制御装置と、を含み得る。旋回動作制御システムは、センサおよび作業員入力から受信された信号を監視および処理するように構成された制御装置を含み得る。センサから受信された信号は、機械の位置および姿勢、ならびに機械の旋回機構によって移動される旋回構成要素およびペイロードの慣性質量を示し得る。制御装置はまた、機械が作動している傾斜量または旋回構成要素およびペイロードの慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、静水圧旋回ポンプによる所望のポンプ変位に対するオフセット量または静水圧旋回ポンプからのポンプ出力圧力に対するオフセット量のうちの少なくとも一つを制御するように構成されてもよい。
【0008】
別の態様では、本開示は、閉ループ旋回動作制御システムを含む土木機械を対象とする。旋回動作制御システムは、土木機械の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータに流体連結された静水圧旋回ポンプを含む閉ループ油圧回路と、ポンプにより出力される圧力を制御するために、静水圧旋回ポンプに供給される流体の圧力を制御するように構成された圧力制御装置と、を含み得る。旋回動作制御システムは、センサおよび作業員入力から受信された信号を監視および処理するように構成された制御装置を含み得る。センサから受信された信号は、機械の位置および姿勢、ならびに機械の旋回機構によって移動される旋回構成要素およびペイロードの慣性質量を示し得る。制御装置はまた、機械が作動している傾斜量または旋回構成要素およびペイロードの慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、静水圧旋回ポンプによる所望のポンプ変位に対するオフセット量または静水圧旋回ポンプからのポンプ出力圧力に対するオフセット量のうちの少なくとも一つを制御するように構成されてもよい。
【0009】
さらに別の態様では、本開示は、機械の位置および姿勢、ならびに機械の旋回機構によって移動されるように構成された旋回構成要素およびペイロードの慣性質量を示す信号を生成するように構成された複数のセンサと、閉ループ旋回動作制御システムと、を含む、土木機械を対象とする。旋回動作制御システムは、土木機械の旋回機構を制御するように構成された少なくとも一つの油圧旋回モータに流体連結された静水圧旋回ポンプを含む閉ループ油圧回路と、ポンプにより圧力出力を制御するために、静水圧旋回ポンプに供給される流体の圧力を制御するように構成された圧力制御装置と、を具備し得る。旋回動作制御システムは、センサおよび作業員入力から受信された信号を監視および処理するように構成された制御装置を含み得る。制御装置はまた、機械が作動している傾斜量または旋回構成要素およびペイロードの慣性質量のうちの少なくとも一つに基づいて、静水圧旋回ポンプによる所望のポンプ変位に対するオフセット量または静水圧旋回ポンプからのポンプ出力圧力に対するオフセット量のうちの少なくとも一つを制御するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係る、機械のリアルタイム状態を決定するためのシステムおよび方法を使用して操作され得る、例示的な開示される機械の絵図である。
図2図2は、図1の機械の状態を決定するための、例示的な開示されるセンサ融合システムの概略図である。
図3図3は、図1の例示的な開示される機械の操作および姿勢の制御に使用されるリアルタイム情報を提供するための、図2のセンサ融合システムからの出力の例示的な適用の概略図である。
図4図4は、図1の例示的な開示される機械の選択された操作中に促進された油圧出力を提供するための、図2のセンサ融合システムからの出力の例示的な適用の概略図である。
図5図5は、図2のセンサ融合システムの例示的な実装の概略図である。
図6図6は、本開示の例示的な実施形態に係る、閉ループ静水圧システムの概略図である。
図7図7は、図6の閉ループ静水圧システムと併せて使用される、旋回動作作動および制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、機械本体14、ブーム17、スティック18、およびバケット(または他のツール)19など、機械10の構成要素または部分上の異なる位置に適用される複数の慣性測定装置(IMU)24、25、26、および27を含む機械10を示す。本開示の様々な例示的な実施形態に係る機械状態制御システムでは、機械10の異なる構成要素および/または部分に取り付けられたIMUは、ピッチおよびロールセンサ32、シリンダ位置センサ34、および回転位置センサ36などの従来型センサの置き換えとなる、またはそれらを補完し得る。各IMUは、一つ以上の加速度計、一つ以上のジャイロスコープ、および場合によっては、地球の磁極に対する方向を示す信号を提供するための磁気計を含んでもよい。各IMUの加速度計およびジャイロスコープは、基準本体フレームに対するIMUの、ひいてはIMUが取り付けられる機械構成要素の位置および配向を識別するために使用可能な信号を提供する。IMUは、位置検出シリンダおよび回転位置センサなどの従来型センサの代わりに、より低コストでより信頼性の高い代替手段を提供し得、また機械のまたは機械構成要素の分解を必要とせず、機械の異なる外側部分にIMUを単に溶接することによって、既存の機械に容易に後付け可能である。制御信号を機械の様々なシステムおよびサブシステムに送信するように構成された機械電子制御モジュール(ECM)は、後付けされたIMUから信号を受信するように再プログラムされ、構成されてもよく、信号は処理され、ECMによって使用されるリアルタイム入力に変換されて、入力に基づいて制御信号を変更する。
【0012】
様々な非IMUセンサ230(図2を参照)は、特定の機械の用途および構成に応じて、追加または取外しされてもよい。非IMUセンサは、視覚システムの一部として含まれる様々な知覚センサ、ならびに上部構造位置/速度センサ22、レーザーにより測定される位置を示す信号を提供するように構成されたレーザーキャッチャーセンサ28、シリンダ位置センサ34、油圧システムセンサ、電気システムセンサ、ブレーキシステムセンサ、燃料システムセンサ、および機械のシステムおよびサブシステムの状態を監視し、操作を制御する際に使用するための、ECMへのリアルタイム入力を提供する他のセンサなどの、位置および/または速度センサを含み得る。
【0013】
本開示に係る様々な例示的な実施形態では、旋回動作作動および制御システム700は、図1に示した採掘機などの機械10の足回りに対して、ブーム17、スティック18および作業ツール19などの旋回構成要素を含む旋回機構の位置を監視し、応答的に制御可能に維持し得る。図1の機械(採掘機)10などの旋回構成要素を有する機械が、傾斜地または不整地形で作動している場合、ブーム17、スティック18、およびツール19などの旋回構成要素は、機械作業員によって指令された速度および/または位置から離れてドリフト運転し得る。
【0014】
図6および図7に示すように、本開示の様々な例示的な実施形態に係る旋回動作作動および制御システム700は、ブーム17、スティック18および機械10の足回りまたは車体に対するツール19の旋回動作を制御するために、独立した専用の静水圧旋回ポンプ686を、機械10の回転フレームおよび機械本体14に動作可能に接続された一つ以上の油圧モータ682、684に流体接続する閉水圧ループ660と併せて作動し得る。閉水圧ループ660はまた、静水圧旋回ポンプ686に関連付けられたポンプ調節器に供給される、減圧されたパイロット供給圧力672を生成するために、供給圧力オーバーライド弁664などの圧力制御装置を通して流体接続されたパイロット供給圧力662の供給源を含んでもよい。追加的または代替的に、閉静水圧ループ660は、総システム圧力に基づいて、ポンプ変位を調整する閉ループ制御の形態の圧力制御装置を含み得る。静水圧ループ圧力センサ692、694は、静水圧旋回ポンプ686の対向側面上に結果として生じる油圧流体圧力を示す信号を生成するように構成され得る。
【0015】
油圧ブレーキまたは駐車ブレーキなどの別個の独立ブレーキシステムも、旋回機構に動作可能に連結されて、旋回機構の静止状態への維持、またはそうでなければ、旋回機構の非指令回転または移動の防止の一助となる。制御信号を機械の様々なシステムおよびサブシステムに送信するように構成されたECM、または完全に別個の専用旋回制御装置は、制御ロジック経由で、機械10上に位置するIMUおよび様々な非IMUセンサからの信号を受信および処理するように構成されてもよく、ロール、角度、傾斜、および機械10の位置および配向を示すその他の情報と、機械10の足回りまたは車体に対する旋回構成要素の相対的な位置および配向を決定する。制御装置はまた、ブーム17、スティック18、およびツール19などの前方リンク装置の予想される慣性を示す信号を、ペイロードの有無に関わらず、受信および処理するように構成されてもよい。予想される慣性を示すこれらの信号は、例えば、機械10のロール角、傾斜、および位置配向の関数と協調して、それに基づいて、および/またはその関数として、ブームヘッドエンド圧力を示すセンサ生成信号を含み得る。
【0016】
採掘機10上のブーム17、スティック18、およびツール19などの旋回機構の回転または移動が機械作業員により指令される場合、旋回動作作動および制御システム700は、ブレーキシステムの解除を同時に、制御可能に、応答的に、かつ漸進的に作動しながら、旋回機構と係合および作動するように構成されてもよい。ブレーキシステムの制御と併せての旋回機構の制御は、特に、機械10が傾斜面または不整面で作動している場合に、意図されないおよび/または指令されていない加速、旋回、または移動を防止するために、前述の位置および慣性情報に基づいてもよい。
【0017】
様々な代替的な構成では、機械10は、鉱業、建設、農業、運輸、発電、または当技術分野で既知の他の任意の産業など、業界に関連する何らかの種類の操作を行うように構成され得る。例えば、機械10は、運搬トラック、ブルドーザー、ローダー、バックホー、採掘機、モーターグレーダー、車輪型トラクタスクレーパーまたは他の任意の土木機械などの土木機械であり得る。機械10は、一般的に、上部構造を形成する機械本体14が取り付けられる回転フレームを支持する、車体上(トラックアセンブリの間)に取り付けられるトラックアセンブリまたはその他の牽引装置12(すなわち、地面係合装置)を含み得る。回転フレームおよび機械本体14は、運転台内に取り付けられた作業員ステーションまたは運転室、統合型ディスプレイ15、作業員制御部16(運転台内に取り付けられた統合型ジョイスティックなど)、および牽引装置12を駆動して機械10を走行する一つ以上のエンジンおよびドライブトレインを支持し得る。ブーム17は、機械本体14の近位端に枢動可能に取り付けられ、一つ以上の流体作動シリンダ(例えば、油圧または空気シリンダ)、電気モータ、または他の電気機械構成要素によって機械本体dsに対して関節接続されてもよい。スティック18は、ブーム17の遠位端に枢動可能に取り付けられ、一つ以上の流体作動シリンダ、電気モータ、または他の電気機械構成要素によってブームに対して関節接続されてもよい。バケットなどのツール19は、一つ以上の流体作動シリンダ、電気モータ、またはその他の電気機械部品によって、スティック18に対して任意に関節接続されるスティック18の遠位端に取り付けられ、様々な作業を行うための地面係合ツールまたはその他の取り付け具が提供されてもよい。
【0018】
図2は、本開示に係る旋回動作および作動制御システム700への入力と併せて、かつこれを提供するために使用され得る、センサ融合システムの例示的な実施形態のブロック図である。センサ融合システムは、機械10の様々な動作態様を制御するように構成された機械状態制御システム50に、正確なリアルタイム出力を提供するように構成され得る。機械状態制御システム50は、機械ECMの一体部分と関連付けられてもよく、または機械ECMの一体部分として構成されてもよい。機械状態制御システム50はまた、機械10の旋回機構の旋回動作を制御するために使用される、図7に示した旋回動作および作動制御システム700を含んでもよい。代替的な構成は、完全に別個の制御システムとして、旋回動作および作動制御システム700を含み得る。センサ融合システムは、複数のIMU210および追加の非IMUセンサ230からの信号、ならびにジョイスティックまたは他の入力装置もしくは作業員制御部16の作業員の動作によって生成される信号など、様々な作業員指令を示す信号を受信するように構成され得る。「センサ融合」とは、得られた情報が、供給源が個別に使用された場合に可能であろうよりも不確実性を低く有するように、感覚データまたは異種の供給源に由来するデータの組み合わせである。センサ融合システムはまた、センサ融合システムが次元設計情報データベース250から関連付けられている、特定の機械の寸法設計に関する情報を受信するように構成されてもよい。特定の機械に対する設計情報データベース250から受信された特定の寸法設計情報は、センサ融合システムと関連付けられ、機械10の運動学および動力学を、運動学ライブラリモジュール260と併せて、および/または物理学ベースの式およびアルゴリズムを使用して、運動学および動力学の実証的導出を通して導出するように構成されたプロセッサ241によって使用され得る。様々なセンサおよびプロセッサは、有線および/または無線のネットワークの任意の組み合わせを含む、任意の好適なアーキテクチャを介して互いに接続され得る。さらに、このようなネットワークは、任意のローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、および/またはインターネットに統合されてもよい。
【0019】
IMU210は、機械本体14、ブーム17、スティック18、および作業ツール(例えば、バケット)19の異なる部分を含む、複数の異なる位置および配向で機械に適用され得る。IMUは、機械の部分のそれぞれに沿った複数の位置および配向で後付けされてもよく、特定の機械の用途および構成に応じて、追加および取外しされてもよい。各IMUから受信された未加工データは、以下でより詳細に説明するように、カルマンフィルタを介して処理されてもよい。一部の実装では、各IMUセンサに対するカルマンフィルタは、IMUの一部として含まれてもよく、他の実装では、カルマンフィルタは、別個のセンサ融合システムの一部として提供される別個のセンサ融合モジュールの一部であってもよい。
【0020】
角速度による各IMUの検出方向のジャイロスコープは、各IMUの検出の加速度計が、重力に対する方向に変化する間に変化する。ジャイロスコープの測定値は、変化のみを検出し、基準の固定フレームがないため、経時的に変動する傾向がある。加速度計データを追加することで、ジャイロスコープデータのバイアスを最小化し、より正確に推定して、伝搬誤差を低減し、配向読み取りを改善可能である。加速度計は、システムが固定基準点に近いとき、静的計算においてより正確なデータを提供し得る一方、システムがすでに稼働する場合、ジャイロスコープは、方向検出により優れている。機械の異なる部分および/または構成要素のそれぞれに関連するIMUの加速度計およびジャイロスコープから受信された動作の直線加速度および角運動率を示す信号は、機械の別個の構成要素のそれぞれの出力角度、速度、および加速度をより正確に予測するために、カルマンフィルタによって組み合わされてもよい。
【0021】
別個の機械構成要素上に取り付けられた各IMUに関連付けられたカルマンフィルタは、測定値を入力し、実際の測定値に割り当てられる重量と比較して、推定または予測値に割り当てられる重量を最適化するように平均係数を変化させることによって、将来の値の推定値を見い出し、それによって、該推定値は、機械の各構成要素の出力関節角度、速度、および加速度に対する真の値の最良推定値に収束する。平均化係数は、時として共分散と呼ばれる、予測される不確かさの尺度で重み付けされ、予測値と測定値の間の値を選択する。カルマンフィルタは、再帰および反復処理においてフィードバック制御の形態を使用して機械の状態を推定し、各反復には、時間更新または「予測」段階、および測定または「補正段階」が含まれる。カルマンフィルタによって実施される各反復の間、測定値の推定値の誤差および測定値の実際の測定の誤差を比較することによって、ゲインまたは重み付けが決定される。カルマンゲインは、推定値の誤差と、推定値の誤差と実際の測定の誤差の合計との比に等しい。次に、測定値に対する現在の推定値は、前の推定値および新しい測定値から計算される。次に、測定値の推定値の新しい誤差が決定され、次の反復で適用されるゲインを決定する際に使用するためにフィードバックされる。カルマンフィルタによって提供される結合または融合された情報は、リンク装置の構成および機械の異なる部分または構成要素上に設置されたIMUの数に応じて、ピッチレート、ヨーレート、ロールレート、ブーム角、スティック角、およびその他の角度に関する正確でリアルタイムの情報を提供し得る。
【0022】
図2の例示的な実施形態に示すように、本開示に係るセンサ融合システムのカルマンフィルタは、各構成要素のピッチレート、ヨーレート、およびロールレートなどの、IMUによって提供されるジャイロスコープ情報のバイアスを推定するように構成され得る。各構成要素上の点の直線位置および角位置が、IMUからの動作の直線加速度および角速度を2回積分することによって計算されるため、計算された情報は、経時的に変動し、測定値の小さな誤差が積分によって拡大されるにつれて、実際の位置からの逸脱が広がり得る。したがって、カルマンフィルタのジャイロスコープの付勢態様は、IMUによって提供される情報から計算された関節角度の精度を増加させる。機械の個々の部分または構成要素の各々の出力関節角度は、機械に対する二つ以上の構成要素が、互いに対して略固定された配向に留まっている間、該二つ以上の構成要素の移動を構成するために、機械レベルで互いに融合されてもよい。例えば、図1に示した機械10のブーム17上のIMUセンサ25とスティック18上のIMUセンサ26の両方は、ブーム17が上方移動する場合、グローバル基準フレームに対する出力関節角度の変化を示し得るが、ブーム17とスティック18との間の実際の角度は、変化しなかった可能性がある。ブーム17およびスティック18の各々の出力関節角度を機械レベルで融合させることで、機械基準フレームおよびグローバル基準フレームに対する別個の機械構成要素上の異なる点の実際の位置が、リアルタイムで決定され得るように、この情報が提供される。機械基準フレームおよびグローバル基準フレームに対する別個の機械構成要素上の異なる点の実際のリアルタイム位置を正確に決定することでまた、図7に示す旋回動作および制御システム700への正確でタイムリーな情報の入力が可能になり、このため、機械10が傾斜面または不整面上で作動している場合、旋回構成要素に対する重力の影響から生じる可能性のある、旋回構成要素の任意のドリフト運転を非常に正確に制御および軽減することが可能になる。
【0023】
図2の例示的な実施形態でさらに示すように、カルマンフィルタ240によって機械レベルで融合された出力関節角は、運動学ライブラリモジュール260によって受信され得る。運動学ライブラリモジュール260は、カルマンフィルタ240から出力関節角度を受信し、寸法設計情報データベース250から機械10に特有の寸法設計情報を受信し、機械上の各構成要素または関心地点におけるフレーム回転および位置について解決するように構成され得る。フレームは、機械上の任意の特定の点について解決するために、IMUから導出された情報に適用されるオフセットを有し得、更新された位置情報のすべては、機械状態制御システム50および旋回動作および制御システム700に提供されてもよく、これは、機械ECMと関連付けられてもよく、または機械ECMの一部としてプログラムされてもよい。
【0024】
操作中に円弧を通過して回転または旋回する機械の部分にIMUが取り付けられ得る採掘機または他の機械の場合、機械のそれらの部分に取り付けられるIMUの各々に関連付けられた3次元位置情報も、旋回補正モジュール220にフィードバックされ得る。旋回補償モジュール220は、中心加速度を補償することによって、機械の回転または旋回部分に取り付けられたIMUによって提供される加速度情報を補正するように構成され得る。IMU210から受信された加速度情報のこの補正は、情報がカルマンフィルタ240に提供される前に行われてもよい。
【0025】
追加の非IMUセンサ230は、機械10の性能に関連するパラメータ値または機械パラメータを示す信号を生成することができる任意の装置を含み得る。例えば、非IMUセンサ230は、グローバルおよび機械基準フレームにおけるブームおよび/またはスティック旋回速度、ブームおよび/またはスティック位置、および作業ツール角度を示す信号を生成するように構成されたセンサを含み得る。ペイロードセンサはまた、機械10のペイロードを示す信号を提供するように含まれ、そのように構成され得る。スリップ検出装置は、機械100のスリップを示す信号を提供するように含まれ、そのように構成され得る。追加的な非IMUセンサは、機械10が作動している地面の傾斜、外気温、牽引装置12がホイールである場合のタイヤ圧力、様々な流体作動制御装置内の油圧または空気圧力、電気制御装置に供給される電圧、電流、および/または電力などを示す信号を提供可能な装置を含み得る。
【0026】
非IMUセンサ230は、機械の位置および/またはグローバルフレームまたはローカル基準のフレームに対する機械の様々な構成要素の位置を示す信号を提供可能な一つ以上の位置決め装置を含み得る。例えば、位置決め装置は、機械10に関連付けられた位置情報を受信または決定するグローバルな衛星システム装置(例えば、GPSまたはGNSS装置)を含有し得、機械の位置の独立した測定を提供し得る。位置決め装置および他の任意の非IMUセンサ230は、受信または判定された位置情報、または様々な機械動作パラメータに関連する他の情報を示す信号を、リアルタイム機械動作特性を表示するための作業員運転室の統合型ディスプレイ15などの一つ以上のインターフェース装置に伝送するように構成され得る。IMU210および非IMUセンサ230からの信号は、カルマンフィルタ240を含むように構成された制御装置に向けられてもよく、カルマンフィルタ240は、ストレージ243およびメモリ245に関連付けられた一つ以上のプロセッサ241によって実装用に構成されてもよい。制御装置の一つ以上のプロセッサ241は、センサ融合モジュール242で実行されるセンサ融合を含む、カルマンフィルタリングプロセスを実施するように構成され得る。カルマンフィルタ240はまた、IMUに関連付けられた一つ以上のジャイロスコープによって提供される測定値の経時的な任意のドリフト運転を補償するために、ジャイロスコープバイアス推定モジュール244でジャイロスコープバイアス推定を行うように構成されてもよい。一部の例示的な実施形態では、位置決め装置は、機械10の位置を示す位置信号としてGPS信号を受信し、さらなる処理のためにプロセッサ241に受信された位置信号を提供し得る。さらに、位置決め装置はまた、位置信号に関連付けられた不確かさの測定値を提供し得る。しかしながら、本開示の例示的な実施形態が、所望の場合、機械10の位置の他の指標を利用するように修正され得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【0027】
非IMUセンサ230はまた、機械10の近傍の環境を記述するシーンデータを提供可能な任意の装置を含み得る、一つ以上の知覚センサを含んでもよい。知覚センサは、機械10の周囲360度に位置する物体を検出および測距する装置を例示してもよい。例えば、知覚センサは、LIDAR装置、RADAR(無線検出および測距)装置、SONAR(音声ナビゲーションおよび測距)装置、カメラ装置、または当技術分野で既知の別の装置によって例示され得る。一つの実施例では、知覚センサは、検出ビームを放射するエミッタ、およびその検出ビームの反射を受信する関連受信機を含み得る。反射ビームの特徴に基づいて、機械10上の知覚センサの実際の検出位置から、検出された物理的対象の部分までの距離および方向が決定され得る。複数の方向のビームを利用することによって、知覚センサは、機械10の周囲の画像を生成することができる。例えば、知覚センサが、複数のレーザービームを使用してLIDAR装置または別の装置によって例示される場合、機械のスティック18上に取り付けられたレーザーキャッチャーセンサ28などの知覚センサは、機械10の近傍の環境を記述するシーンデータとして、雲状の点を生成し得る。一部の実施形態では、シーンデータが機械10の前面(180度以下)に限定され得ることに留意されたい。他の実施形態では、知覚センサは、機械10の周囲360度に位置する物体のシーンデータを生成し得る。
【0028】
IMU210は、機械10の、またはより具体的には、機械本体14、ブーム17、スティック18、およびバケットまたは他のツール19などのIMUが取り付けられる機械の構成要素または部分の角速度および加速度を提供する装置を含み得る。例えば、IMU210は、自由度が6(6DOF)のIMUを含んでもよい。6DOFのIMUセンサは、3軸加速度計、3軸角速度ジャイロスコープ、および場合によっては、2軸傾斜計からなる。IMU210の各々は、IMUを機械の部分または構成要素に溶接することによって既存の機械に後付けされてもよく、機械のその特定の部分または構成要素のリアルタイムな位置、配向、および動作に関する正確な情報が望まれる。機械の電子制御モジュール(ECM)または他の機械制御装置は、信号をIMUから受信し、IMUから受信された入力に少なくとも部分的に基づいて、様々な機械制御部を実装するようにプログラムされ得る。本開示の一部の例示的な実施では、IMUから受信された信号に応答してECMによって実装される制御部は、一つ以上の流体作動シリンダへの加圧油圧または空気流体の供給を調節する一つ以上の弁の開閉を制御するように構成される、一つ以上の電気または電気油圧の電磁弁の作動を含み得る。IMUに関連付けられた3軸角速度ジャイロスコープは、機械100の、またはIMUセンサが取り付けられる機械の特定部分のピッチレート、ヨーレート、およびロールレートを示す信号を提供するように構成され得る。3軸加速度計は、機械10の、またはIMUセンサが取り付けられる機械の部分の直線加速度を示す信号を、x、y、およびz方向に提供するように構成され得る。
【0029】
カルマンフィルタモジュール240は、単一装置に一緒に含まれ、および/または別々に提供される、プロセッサ241、ストレージ243、およびメモリ245のうちの一つ以上と関連付けられてもよい。プロセッサ241は、Intel(商標)によって製造されるPentium(商標)またはXeon(商標)ファミリーのマイクロプロセッサ、AMD(商標)によって製造されるTurion(商標)ファミリーのマイクロプロセッサ、Sun Microsystemsによって製造される任意の様々なプロセッサ、または他の任意の種類のプロセッサなどの、一つ以上の公知の処理装置を含み得る。メモリ245は、開示された実施形態に関連する特定の機能を実施するために、カルマンフィルタ240によって使用される情報を記憶するように構成された一つ以上の記憶装置を含み得る。ストレージ243は、揮発性または不揮発性、磁気、半導体、テープ、光学、取り外し可能、取り外し不能、または他の種類の記憶装置またはコンピュータ可読媒体または装置を含み得る。ストレージ243は、以下でより詳細に論じるように、一つ以上のセンサから受信された処理データに関連する情報などのプログラムおよび/またはその他の情報を記憶し得る。
【0030】
一つの実施形態では、メモリ245は、プロセッサ241によって実行される場合、開示された実施形態と一致する様々な手順、操作、またはプロセスを実行する、ストレージ243または他の場所からロードされた一つ以上の位置推定プログラムまたはサブプログラムを含み得る。例えば、メモリ245は、カルマンフィルタ240が、とりわけ、オドメーター、位置決め装置、知覚センサ、IMU210の任意の一つ以上、および非IMUセンサ230の任意の一つ以上からデータを収集し、図5に関して論じた実施形態などの開示された実施形態に従ってデータを処理し、処理されたデータに基づいて、リアルタイムで、機械10および該機械の様々な部分および構成要素の位置を推定することが可能である、一つ以上のプログラムを含み得る。
【0031】
特定の例示的な実施形態では、位置推定プログラムにより、プロセッサ241のカルマンフィルタ240は、受信された信号を処理可能で、機械10の異なる部分または構成要素のリアルタイムな位置および配向を推定する。カルマンフィルタは、時系列で取得された測定値などの、経時的に観察される正確な測定値を決定するために使用され得る方法を実施する。カルマンフィルタの一般的な作動には、伝搬または「予測」段階、および測定または「更新」段階の2段階が含まれる。予測段階では、時系列の前のタイムステップからの値推定を使用して、事前値推定値を生成する。更新段階では、予測段階で計算された事前推定値を、事前推定値(例えば、分散または不確かさ)の精度の推定値および現在の測定値と組み合わせて、精密化された事後推定値を生成する。カルマンフィルタは、ノイズの多い出力に基づいて、システムの状態をリアルタイムで最適に推定できる、多重入力の多重出力デジタルフィルタである。これらの状態は、システム挙動を時間の関数(位置、速度、電圧レベルなど)として完全に記述するために必要なすべての変数である。複数のノイズの多い出力は、多次元信号プラスノイズとして考慮することができ、システム状態は、変数の各々の真の値を示す所望な未知の信号である。カルマンフィルタ240は、機械10の異なる部分および構成要素に取り付けられた複数のIMU210からの信号として受信された測定値などのノイズの多い測定値をフィルタリングして、所望の信号を推定するように構成され得る。IMUおよび非IMUセンサによって提供される信号からカルマンフィルタによって導出された推定値は、信号の平均二乗推定誤差を最小化するという意味で、統計的に最適である。ノイズの多い測定値に対する状態の不確かさの推定値は、共分散行列として決定されてもよく、共分散行列の各対角項は、スカラーランダム変数の分散または不確かさである。ゲインスケジュールモジュール222は、各連続する予測状態の推定値を、連続する実際の測定値と組み合わせて、更新された「最良」推定値を得る際に使用される重み(またはゲイン)を計算するように構成され得る。カルマンフィルタ240が、IMU210および非IMUセンサ230から経時的に複数の測定値を受信するため、カルマンフィルタの再帰アルゴリズムは、複数の測定値の各々を経時的に順次処理し、各新しい測定値に対して反復的に繰り返し、前のサイクルから記憶された値のみを使用する(それによって、メモリを節約し、計算時間を短縮する)。
【0032】
一つの例示的な実施形態では、メモリ245は、プロセッサ241によって実行される場合、開示された実施形態と一致する様々な手順、操作、またはプロセスを実行する、ストレージ243または他の場所からロードされた一つ以上の姿勢推定プログラムまたはサブプログラムを含み得る。例えば、メモリ245は、カルマンフィルタ240が、とりわけ、上述の装置からデータを収集し、図5に関して論じた実施形態などの開示された実施形態に従ってデータを処理し、処理されたデータに基づいて、機械10の状態を決定可能である、一つ以上のプログラムを含み得る。
【0033】
特定の実施形態では、メモリ245は、カルマンフィルタ240(より詳しくは、プロセッサ241)を構成して、機械10の状態を推定するために、カルマンフィルタを使用する方法を実施するプログラム可能な指令を格納してもよい。特定の例示的な実施形態では、カルマンフィルタは、その計算において以下の式を利用するように構成され得る。伝搬または「予測」段階については、カルマンフィルタは、以下の一般式を利用するように構成され得る。
【数1】
【0034】
測定または「更新」段階については、カルマンフィルタは、以下の一般式を利用するように構成され得る。
【数2】
【0035】
上記の式で、
【数3】
は、直前の時間ステップからの状態変数の値
【数4】
に基づいて計算される、特定の状態変数(例えば、ピッチレート、ヨーレート、ロールレート、位置、速度など)の事前状態推定値であり得る。F、G、およびHは、適切な状態遷移行列であり得る。測定または「更新」段階では、カルマンフィルタ240は、式(3)を利用してカルマンゲインKを計算し得、式中、Pは、誤差共分散行列、Rは、異なる状態変数に関連付けられた分散を設定する行列である。例えば、R行列の値は、所定の状態変数の測定に関連する不確かさを特定し得る。測定段階では、カルマンフィルタ240はまた、状態変数の独立した測定を取得し、独立した測定をykとして設定し得る。「予測」段階、測定yk、およびカルマンゲインKゲインスケジュールモジュール222から適用)から事前推定値
【数5】
を利用すると、カルマンフィルタ240は、式(4)を利用して、事後状態推定値
【数6】
を計算し得る。
【0036】
図5は、カルマンフィルタ500の例示的な構成を示す。カルマンフィルタ500の予測段階501では、カルマンフィルタ500は、一つ以上のIMUからの一つ以上の入力(IMUセンサの加速度計からの直線加速度値、およびIMUセンサのジャイロスコープ520からの運動角速度値など)、および牽引装置速度センサ530を利用して、特定の状態変数(例えば、ピッチレート、ヨーレート、ロールレート、位置、速度など)の事前状態推定値を計算する。予測段階501では、カルマンフィルタ500は、式(1)および(2)を実行し得る。例えば、予測段階で、カルマンフィルタ500は、直前の時間ステップからの状態変数の値
【数7】
および一つ以上のIMU210および/または牽引装置速度センサ530からの入力を使用して、一つ以上の状態変数の
【数8】
(事前状態推定値)を計算し得る。一部の例示的な実装では、
【数9】
は、更新段階502から、直前の時間ステップの出力値として取得され得る。
【0037】
予測段階501の後、カルマンフィルタ500は、例えば、式(4)を利用して、事後状態推定値
【数10】
を計算するために、更新段階502を実施してもよい。例えば、カルマンフィルタ500は、予測段階501、測定yk、およびカルマンゲインKからの事前推定値
【数11】
を使用して、事後状態推定値
【数12】
を計算し得る。図5に示すように、カルマンフィルタ500は、更新段階502では、IMUの傾斜計522からの加速値、および衛星に視認される機械用のGPS装置540などの一つ以上の位置決め装置からの位置信号も入力として受信し得る。
【0038】
カルマンフィルタは、位置決め装置から、およびIMUの傾斜計から受信された入力を、式(4)での測定値ykとして設定し得る。さらに、機械10が、操作中に円弧を通過して回転または旋回する部分または構成要素を含む採掘機または他の機械である例示的な実施形態では、カルマンフィルタは、旋回取消モジュール220で予め処理された機械の回転または旋回部分(例えば、ブーム17およびスティック18)上に位置するIMUから加速度値を受信して、旋回動作中に発生する求心加速度を補正し得る。図2の例示的な実施形態に示すように、IMU210の値に対する求心加速度の補正は、加速度データが式(4)で利用される前に、IMU210からの未加工の加速度データに対して行われてもよい。
【0039】
また、上述したように、図5の例示的な実施形態におけるカルマンフィルタ500は、更新段階で式(3)および(5)を実行するように構成されてもよい。上記事項を使用して、カルマンフィルタは、出力503として事後状態推定値
【数13】
を生成するように構成され得る。限定されるものではないが、事後状態推定
【数14】
は、機械の状態を含んでもよく、速度、位置、加速度、配向などのパラメータを含んでもよい。
【0040】
カルマンフィルタは、いくつかの異なる間接およびノイズの多い測定値からのデータを組み合わせて、直接は測定できない変数を推定しようとするのに非常に有用である。例えば、IMUのジャイロスコープは、角速度を積分することによって方向を測定するため、ジャイロスコープからの出力信号は、経時的に変動し得る。IMUの傾斜計および方向進行の特徴(コンパス)は、異なるノイズを伴うが、変動しない配向の測定を提供し得る。図2の例示的な実施形態では、カルマンフィルタは、ゲインスケジュールモジュール222から回収された重みを使用して、二つの情報源を適切に重み付けして、情報源の各々からすべてのデータを最大限に活用するように構成され得る。
【0041】
カルマンフィルタ240を使用して、機械10の状態を決定する際に、フィルタはまた、機械10の他の作動パラメータを考慮するように構成さ得る。例えば、機械10が採掘機である場合、カルマンフィルタは、機械10が、採掘し、放出し、採掘位置と放出位置との間で旋回し、新しい場所へ運転するなどかどうかを考慮するように構成され得る。機械10が上記作動状態のうちの一つ以上にある場合、カルマンフィルタの特定のパラメータは、特定の入力パラメータにおける精度または信頼度を反映するように変更され得る。例えば、機械10が一つの位置から別の位置へ運転している場合、カルマンフィルタは、ゲインスケジュールモジュール222からの低い重み付け(ゲイン)を、IMU傾斜計からの入力に適用するように構成され得る。IMUからの傾斜計入力に適用される重みを低減するために、カルマンフィルタは、式(3)の傾斜計入力に関連付けられた分散値「R」を増加させるように構成され得る。同様に、機械10が採掘する場合、カルマンフィルタは、傾斜計入力の精度においてより高い信頼度を反映させるために、傾斜計入力に適用される重みを増加させるように構成され得る。例えば、精度においてより高い信頼性を示すために、カルマンフィルタは、ゲインスケジュールモジュール222からのより高い重み付け(ゲイン)を、IMU傾斜計からの入力に適用し、傾斜計入力に関連付けられた「R」値を減少させるように構成され得る。
【0042】
図6および図7を再び参照すると、旋回動作作動および制御システム700と併せて閉静水圧ループ660により、静水圧旋回ポンプ686の指令された変位および、静水圧旋回ポンプ686に関連付けられた旋回ポンプ電子減圧弁(ePRV)664によって制御される指令された出力圧力の正確な制御が可能になる。得られた旋回ポンプの指令された変位およびePRVからの旋回ポンプの指令された出力圧力は、機械10のブーム17、スティック18、および作業ツール19を含む、旋回機構の任意のドリフト運転を軽減するために制御されてもよく、これは、機械10が傾斜地面または不整地面で作動している場合に重力効果によって引き起こされ得る。
【0043】
図7の図を参照すると、旋回動作作動および制御システム700の一つの例示的な実装において、制御システムは、旋回ポンプ変位傾斜制御部、旋回ポンプePRV傾斜制御部、旋回ポンプ変位ブレーキ傾斜制御部、および旋回ポンプePRVブレーキ傾斜制御部を決定および実装するように構成され得る。旋回動作作動および制御システム700は、静水圧ポンプ686への作業員入力722を含む素因の関数である所望の静水圧ポンプ変位に対するオフセットを指令することによる旋回ポンプ変位傾斜制御部、機械10が作動している傾斜量および機械の姿勢の関数である傾斜制御部724、ブレーキ制御部726、ブレーキ傾斜制御部727、特定の機械の所望のエンジントルク限界および/または特性、機械の使用年数、望ましい摩耗特性、および消費者が決定したその他の入力の関数であり得る所望のトルク制限728を決定および実装するように構成されてもよい。ツール19によって搬送されるペイロード、および旋回構成要素およびペイロードの慣性質量は、旋回動作作動および制御システム700への入力であり得る。
【0044】
一つの例示的な実施では、旋回動作作動および制御システム700は、機械(図1の採掘機10など)が、ツール19によって搬送される旋回構成要素およびペイロードを旋回し、機械作業員が、機械にブーム17、スティック18、およびツール19を、傾斜を増加する方向に移動するように指令している間に、旋回構成要素の動作を一定速度に保つために、より大きな流体流れを必要とする場合、ポンプ変位を増加させることを意図した、静水圧ポンプ686の所望のポンプ変位におけるオフセットを指令するように構成され得る。ポンプ変位を増大するためのこの指令されたオフセットは、機械が傾斜面上に位置付けられたときに実施されてもよく、採掘は、傾斜面上の重力方向のより低い点において行われ、ブーム17、スティック18、ツール19、および搬送されたペイロードは、重力方向により低い点から高い点まで旋回するように指令される。制御システム700はまた、旋回構成要素および/またはペイロードの検出された慣性質量が比較的大きい場合、比較的大きなポンプ変位に対してポンプ変位を自動的に増加させるように構成され得る。機械10が平坦な地面で作動している場合、旋回動作作動および制御システム700は、旋回機構のドリフトを引き起こす傾向にある重力効果がないため、静水圧ポンプ686の変位出力を一定レベルに維持するように構成され得る。
【0045】
同様に、旋回動作作動および制御システム700は、機械(図1の採掘機10など)が、ツール19によって搬送される旋回構成要素およびペイロードを旋回し、機械の作業員がブーム17、スティック18、およびツール19を、傾斜を減少する方向に移動するように機械に指令する間に、旋回構成要素の動作を一定速度に維持するために、より少ない量の流体流れを必要とする場合に、ポンプ変位を減少させることを意図した、静水圧ポンプ686の所望のポンプ変位におけるオフセットを指令するように構成され得る。さらに、制御システム700は、中心上で、作業員によって実施される旋回指令から生じるポンプ変位と反対の方向に、ポンプ変位のオフセットを指令するように構成され得る。これらの指令されたオフセットは、機械が傾斜上に位置決めされ、傾斜上の重力方向の高い点において採掘が行われ、ブーム17、スティック18、ツール19、および搬送されたペイロードが重力方向の高い点から低い点まで旋回される場合に実施され得る。制御システム700はまた、旋回構成要素および/またはペイロードの検出された慣性質量が比較的大きい場合と比較して、旋回構成要素および/またはペイロードの検出された慣性質量が比較的小さい場合、ポンプ変位を比較的小さいポンプ変位に自動的に減少させるように構成され得る。一部の実装では、制御システム700は、移動される慣性質量が、比較的大きな傾斜によって引き起こされる重力効果に対抗するのに十分な量だけ比較的小さい場合、機械10が作動している傾斜の増加があっても、ポンプ変位を比較的小さいポンプ変位に自動的に減少させるように構成され得る。制御システム700は、静水圧ポンプ変位量および油圧モータ682、684に提供される結果として生じる旋回流が、より大きな傾斜上でより小さい慣性質量を移動させるために、より小さな傾斜上でより大きい慣性質量を移動するために等価であり得ると判定するように構成され得る。
【0046】
旋回動作作動および制御システム700は、旋回構成要素および搬送ペイロードの慣性質量の大きさ、ならびに機械10のロールレート、ヨーレート、およびピッチレートに限定されるものではないが、これらを含み得る素因に基づいて、所望の静水圧ポンプ変位に対するオフセットの量を決定するように構成され得る。例えば、機械10によって旋回される慣性質量が増加するにつれて、所望の静水圧ポンプ変位に対するオフセットの量も比例的に増加させ得、機械10によって旋回される慣性質量を減少させるにつれて、所望の静水圧ポンプ変位に対するオフセットの量も比例的に減少し得る。同様に、機械10のロール、ヨー、および/またはピッチなどの素因が増加するにつれて、所望の静水圧ポンプ変位に対するオフセットの量も比例的に増加し得る。同じ素因が減少するにつれて、所望の静水圧ポンプ変位に対するオフセットの量は減少され得る。一部の例示的な実装では、追加の素因は、例えば、0から1に設定される、事前位置スケールを含んでもよく、該スケールは、機械10が傾斜上で作動している場合に、旋回係合およびブレーキ解除の効果を平滑にするように設計されたポンプ変位に対する追加の補償をする。
【0047】
図7にも示されるように、旋回動作作動および制御システム700は、旋回ポンプ電子減圧弁(ePRV)制御740などの圧力制御装置により構成され得る。旋回ポンプePRV制御740は、旋回ポンプ出力圧力に対するオフセットを決定し、実施するように構成され得る。旋回ポンプePRV制御740、またはシステム圧力に基づいてポンプ変位を調整する別の閉ループ制御は、所望の静水圧ポンプ出力圧力または力指令742、機械10が作動している傾斜量および機械の姿勢の関数である傾斜制御ポンプ出力圧力または力指令744、ブレーキ制御部746、ブレーキ傾斜制御部747への作業員入力を含む素因の関数である、所望の静水圧ポンプ出力圧力または力指令、およびデルタ圧力748への力への所望の力指令に対するオフセットを指令することを含む、ePRV指令または別の圧力指令の制御を行うように構成され得る。静水圧ポンプ686による旋回制御圧力出力は、閉ループ660内の油圧モータ682、684に供給され得、静水圧ループ圧力センサ692、694は、フィードバックを提供して、旋回ポンプePRV制御740が、旋回制御圧力745を決定し、閉ループ制御749内で旋回ポンプePRVを調整可能にする。
【0048】
ブレーキ傾斜制御部727に含まれる旋回ポンプ変位ブレーキ傾斜制御部は、現在のポンプ変位をオフセットする、または旋回運動を減速するために必要な量だけ旋回回転と反対方向にポンプに指令することによって、制動を達成する制動論理を含み得る。制動オフセットの量は、機械10が作動している傾斜が増加するにつれて、または旋回構成要素およびペイロードの慣性質量の量が増加するにつれて増加し得る。制動オフセットの量は、機械10が動作する傾斜が減少するにつれて、または旋回構成要素およびペイロードの慣性質量の量が減少するにつれて減少し得る。いくつかの実装では、ブレーキ傾斜制御部727は、傾斜の重力効果がより低い慣性質量によってオフセットされるため、傾斜が増大するにつれても慣性質量が減少するにつれて、ポンプ変位のオフセット量を減少するように構成され得る。旋回ポンプePRVブレーキ傾斜制御部747はまた、機械10を制動する場合、パイロットePRVに最大値を指令することによって実施され得る。
【0049】
図3および図4は、本開示に係るカルマンフィルタを有するセンサ融合システムからの出力を利用する、機械状態制御システムの例示的な実装を示す。図3および図4の詳細な説明は、次の項で提供される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
開示された機械状態制御システム50および旋回動作および制御システム700は、旋回構成要素の指令位置から離れてのドリフトへの重力の影響を軽減するために、システムの挙動を時間の関数(各機械構成要素の位置、速度、直線加速度、および角運動率)として完全に記述するために必要な変数の正確なリアルタイム検出から、および旋回機構の正確な補正および制御から利点を得る任意の機械または機械システムに適用し得る。機械の異なる部分または構成要素に後付け可能に取り付けられた複数のIMUおよび非IMUセンサと併せて開示されるセンサ融合システムは、複数の機械構成要素のそれぞれに取り付けられた各IMUに関連付けられたカルマンフィルタを利用することによって、異なる機械構成要素のすべての位置および配向の改善された推定を提供し得る。
【0051】
開示されたセンサ融合システムの一部の例示的実装では、カルマンフィルタ240は、機械のパラメータ、オドメーター信号、および機械の様々な部分および構成要素に取り付けられたIMUから受信されたIMU入力を利用して、機械の状態を伝播または「予測」することができる。例えば、カルマンフィルタ240は、グローバルおよび機械基準フレームに対する機械構成要素の、ならびにグローバル基準フレームに対する機械自体の各々の位置、前方速度、角速度、関節角度、および角度配向(姿勢)の状態を予測し得る。各IMUから受信された動作の加速度および角速度を示す信号に加えて、異なる機械構成要素に取り付けられた各IMUに関連付けられたカルマンフィルタの各々は、オドメーター、近接センサ、および他の知覚センサなどの様々な異なる非IMUセンサから、操作中の機械の構成要素によって移動された距離、または機械の構成要素と潜在的な障害物との間の距離を示す信号を受信し得る。カルマンフィルタはまた、受信された倍率を牽引装置の回転数に乗じることによって、機械10自体が移動する距離を計算し得る。カルマンフィルタはまた、機械の特定の部分または構成要素に取り付けられたIMUセンサからの線形加速度を示す信号を積分することによって、機械10の速度または該機械の部分または構成要素の速度を計算し得る。カルマンフィルタは、予測速度を生成するために、IMUからの信号を使用して、結果として生じる速度を重み付けして、機械の、または一つ以上のIMUが取り付けられる機械の部分もしくは構成要素の速度を計算し得る。一部の実装では、機械自体が移動する距離は、機械の滑りを構成するように調整され得る。各カルマンフィルタはまた、一つ以上のIMUから、機械のまたは機械の部分の運動角速度(ロールレート、ヨーレート、およびピッチレート)を示す信号を受信し得る。運動角速度を積分することによって、カルマンフィルタ240は、各機械構成要素のまたは機械自体の姿勢または角度配向(ロール、ヘッディング、およびピッチ)を決定し得る。
【0052】
カルマンフィルタは、機械基準フレームに対する、およびグローバル基準フレームに対する、機械10の位置、または機械の部分もしくは構成要素の位置を伝播または「予測」するために、伝播状態のうちの一つ以上を利用し得る。例えば、運動角速度および予測される速度を利用することによって、カルマンフィルタは、機械のまたは機械の構成要素の位置を予測し得る。上述したように、カルマンフィルタはまた、カルマンフィルタの誤差共分散行列によって指定されるように、不確実性と等しく設定され得る、予測位置に対する不確実性を計算し得る。機械上の様々な位置は、IMUから独立して決定され得る。独立した位置測定値を決定した後、カルマンフィルタは、各位置について更新された位置推定値を決定するために、予測位置情報と独立した位置測定値とを融合するように構成され得る。カルマンフィルタ測定更新式を利用して、更新された位置推定値を決定し得る。機械10に対する更新された位置推定値を決定した後、カルマンフィルタ240はまた、IMUの各々のバイアスを決定し得る。上述したように、カルマンフィルタによって行われ得るバイアスパラメータ推定の例は、測定された角速度の積分後のジャイロスコープで決定された角位置のバイアスの推定である。
【0053】
本開示の実施に係る機械状態制御システムの一つの例示的な適用では、機械のおよび機械の部分または構成要素の位置および配向(姿勢)に関する、正確で、更新されたリアルタイム情報は、生産性および信頼性を向上させる機械のおよび機械の構成要素の最適な位置決めおよび操作を達成する、機械制御部を実装するために、情報交換インターフェース350にフィードバックを提供し得る。一部の実装では、フィードバックは、改善された機械の足場および安定性、ひいては改善された生産性をもたらす制御部を実装する方法について、作業員を指導することによって作業員を支援し得る。他の実装では、情報交換インターフェース350で受信された情報は、機械姿勢の変化および機械構成要素の相対的な位置および配向の変化をもたらすための、様々な機械システムおよびサブシステムに提供される自律的または半自律的な制御指令信号の生成をもたらし得る。一つの例示的実装では、図3に示すように、採掘機のブームおよびスティックの機械リンク装置の位置および速度、機械ピッチレートおよびロールレート、および旋回角に関する機械センサからのセンサフィードバックは、作業現場における障害物またはその他の特徴の位置を示す視覚システムおよび知覚センサ320によって提供される信号、および様々な作業員制御部324から受信された信号と融合され得る。融合されたデータは、採掘作業中に機械の最適な位置決めをもたらすために、様々な電磁弁アクチュエータ、スロットル制御部、流体シリンダ作動装置、電気制御部、および動作制御装置の操作を変更する制御指令信号の生成を実施するために、情報交換インターフェース350に提供され得る。情報交換インターフェース350は、一部の実装では、正確でリアルタイムな更新情報を、人間のオペレータに提供し得るだけでなく、様々な機械システムおよび機械サブシステムを自動または半自動で操作するための制御指令信号を処理するために情報を使用する、自律的または半自律的な制御システムとの情報インターフェースとして作用し得る。
【0054】
採掘機による採掘において、機械状態制御システム50は、機械の車体が、採掘中の最良の安定性のために前方リンク装置に向けられた採掘機の軌道用のアイドラーホイールと採掘リンク装置が平行であるべきであることを、採掘機の運動学および動力学に関する履歴および/または経験的データから決定し得る。機械ピッチおよびロールに関する情報交換インターフェース350へのフィードバックも提供することができ、これにより、採掘機の軌道が前方を向いている場合、アイドラーホイールの下の足場が悪ければ、情報交換インターフェースが、機械の姿勢の変化を引き起こして、足場を改善し、機械がピッチングおよびローリングすることを防止する制御指令信号の生成をもたらし得、さらに、機械を操作して地面に完全に接触させ、採掘力に対抗する。バケットまたは他のツールの角度、および採掘作業中の任意の特定の時点でのスティックおよびブームの特定の配向によって達成される作用力はまた、採掘機の採掘効率に影響を与えることができる。本開示に係る機械状態制御システムは、採掘中のリンク装置の位置のリアルタイム効率に関する、継続的に更新されたフィードバック情報を情報交換インターフェースに提供し得る。フィードバック情報は、バケットのより良好な積込み、バケットのより迅速な積込み、および/または機械動力のより良い使用をもたらすリンク装置の改善された運動学を達成することによって、機械の効率を改善し、また機械の寿命を改善するために、採掘中のバケットの角度またはスティックの位置を変化し得る。機械状態制御システムから情報交換インターフェースに提供される情報はまた、機械の姿勢を変化させて、リンク装置に対して90度で配向された車体で採掘することを回避する制御指令信号を変化させてもよく、これは、安定性または採掘には最適ではない。機械制御部が、情報交換インターフェース350で提供された情報に応答して、機械の車体が、前方リンク装置に向けられた採掘機の軌道用のアイドラーホイールに採掘リンク装置が平行になるように制御部を実装する場合、その結果として、機械を地上から持ち上げる際のエネルギーは無駄にならず、生産率は、結果として生じるサイクル時間の短縮と共に向上し、最終的な駆動構成要素への負荷を低減し、機械の寿命を延ばし、ダウンタイムを短縮する。
【0055】
本開示に係る機械状態制御システムの別の例示的な適用では、図4に示すように、センサ融合システムは、リンク装置の位置、流体圧力、エンジン速度、機械および機械構成要素の位置および配向(ピッチレート、ヨーレート、およびロールレートを含む)を測定するIMUおよび非IMU機械センサからの入力、物体の存在および位置を示す信号を提供する知覚センサを含む視覚システム320からの入力、および油圧システムセンサ430からの入力を有する、作業員制御部324から受信された作業員指令入力を受信、結合、および処理し得る。一部の実装では、油圧システムセンサからの信号入力は、流体作動シリンダに対するより高い圧力が、失速を避けるために必要とされる状態を示し得る。機械、構成要素、および構造への不必要な応力を避けるために、機械状態制御システム50は、油圧ポンプ450の過給圧を自動的に調整し、可能であれば、機械に損傷を生じさせたり、不安定性を生じさせたりすることなく、一つ以上のリリーフ弁425のリリーフ圧力設定点において制御されたランプを指令するように構成され得る。本開示の様々な実施形態に係るセンサ融合システムからの融合センサ出力により、機械状態制御システムは、持ち上げまたは採掘作業中の機械の停止、または停止寸前の時間を決定可能である。次いで、機械状態制御システムは、作業員指令と組み合わせて、融合されたセンサフィードバック情報に基づいて、リリーフ弁425のリリーフ圧力設定の促進のタイミングと程度を決定し得る。
【0056】
一つの例示的な実装では、採掘機は、重荷重を持ち上げる、または採掘作業を実施し得、ブーム作動シリンダは、その最大圧力下にあり、ポンプ出力圧力は、バケットおよびスティックがまだ移動している間、ブーム作動シリンダの圧力と等しく、ブームは停止中である。機械状態制御システムは、機械のピッチレート、およびロールレートを示すデータを含む、センサ融合システムから受信される、正確でリアルタイムの融合センサデータから、機械が不安定および/または過ストレス状態であるかどうかを決定することができる。機械状態制御システムは、ブーム作動シリンダのリリーフ圧力が、許容応力レベルを超えることなく、かつ機械の安定性を維持しながら、ブームを再び移動させるために、制御されたランプにおいて増加可能であると決定し得る。
【0057】
本開示に係る機械状態制御システムの追加の例示的な実装では、機械状態制御システムは、機械上の様々な流体作動シリンダに加圧流体を提供するポンプの最大出力圧力を調整するために、指令を出力し得る。図4に示すように、機械状態制御システム50は、作業員入力、測定されたリンク装置の位置、流体圧力、エンジン速度、機械ピッチレートおよびロールレート、ならびに物体の存在および位置などのシーンデータを含む、センサ融合システムから融合センサデータを受信する。機械状態制御システムは、実施されている作業内容を決定し、異なる作業のために確立される高圧遮断器を通して、システム内で電子的に許容される最大圧力を調整し得る。これにより、システムは、機械の様々な構成要素および構造に対する過剰な応力を防止し、また、作業員入力から受信されたポンプの流れ、変化する旋回モータの変位、または最優先弁指令を遅くすることによって、構成要素の過剰トルクまたは構成要素の物体への高速スラミングを防止することができる。ブームおよびスティックを、採掘位置とダンプ位置との間で移動させるための関連する専用油圧旋回回路を含み得る、掘削機のブームおよびスティックなどの機械の構成要素については、旋回回路内の油圧または旋回モータ変位は、機械状態制御システムから受信されたリアルタイム出力指令に従って電子的に制限され得る。一部の実装では、機械上の旋回回路または他の油圧回路内に提供される一つ以上のポンプは、ゼロ変位またはほぼゼロ変位の作業構成に適合し得る。機械状態制御システム50は、行われている作業内容を決定し、特定の状況において、一つ以上のポンプ変位をゼロまたはほぼゼロの変位に調整し得る。一つ以上のポンプ変位は、システムの漏れのみが補償されるほど十分低い値に調整され得、非常に低い変位モードで一つまたは複数のポンプによって供給される流体作動シリンダによるリンク装置の移動は、リンク装置または他の機械構成要素に過重な負荷を生じさせない。半自律モードでの作業員入力から受信された最優先弁指令またはその他の制御指令に加えて、またはその代替として、機械状態制御システム50は、情報交換インターフェース350に関連付けられた一つ以上のディスプレイを通して、またはジョイスティック、運転席、運転席のフロントガラス上に投影されたヘッドアップディスプレイ(HUD)のハプティックフィードバックを通して、または作業員を指導し、将来の操作制御指令を改善するために実装された音声やその他の刺激物を通して、作業員に直接フィードバックを提供し得る。
【0058】
上述したように、機械状態制御システム50は、閉静水圧ループ660と関連付けられ得る、旋回動作および制御システム700を含み得る。閉静水圧ループ660は、機械10の足回りまたは車体に対するブーム17、スティック18、およびツール19の旋回動作を制御するために、独立した専用の静水圧旋回ポンプ686を、機械10の回転フレームおよび機械本体14に動作可能に接続された一つ以上の油圧モータ682、684に流体接続し得る。
【0059】
機械のリアルタイム状態を決定するための本開示の方法およびシステムに対して、様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。その他の実施形態および実装は、本明細書および開示された機械状態制御システムの実施を考慮することで、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、以下の請求項およびその均等物によって示される真の範囲を有する、単なる例示とみなされることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】