(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】リチウム塩の選択抽出のための含酸素金属化合物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C22B 26/12 20060101AFI20230605BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20230605BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20230605BHJP
B01J 20/08 20060101ALI20230605BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230605BHJP
C22B 3/24 20060101ALI20230605BHJP
C22B 3/02 20060101ALI20230605BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20230605BHJP
C22B 3/14 20060101ALI20230605BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C22B26/12
B01D15/00 101B
B01J20/06 A
B01J20/06 B
B01J20/08 A
B01J20/08 C
B01J20/34 G
C22B3/24
C22B3/02
C22B3/04
C22B3/14
C22B3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566128
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 US2021028860
(87)【国際公開番号】W WO2021222024
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522422218
【氏名又は名称】1エス1 エナジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】1S1 ENERGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100228120
【氏名又は名称】市川 蓮太朗
(72)【発明者】
【氏名】スカンタ バッタチャリャ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ソベク
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
4K001
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017BA12
4D017CA05
4D017CB01
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4G066AA12B
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4G066CA45
4G066DA07
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4G066GA37
4K001AA34
4K001BA19
4K001BA24
4K001CA05
4K001DB02
4K001DB04
4K001DB09
4K001DB35
4K001DB37
(57)【要約】
リチウム塩を含有する移動相が、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によりリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含有する固定相を通って流れ、含酸素金属化合物が、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩を捕捉する。溶離剤が、移動相を通って流れ、含酸素金属化合物により捕捉されたリチウム塩を溶離剤中に放出させる。該溶離剤は、リチウム塩と含酸素金属化合物の間のルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含有する。溶離剤が固定相を通って流れた後に、放出されたリチウム塩を含有する溶離剤を収集する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含む固定相を通して、リチウム塩を含む移動相を流し、前記含酸素金属化合物が、前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって前記リチウム塩を捕捉することと、
前記固定相を通して溶離剤を流し、前記含酸素金属化合物により捕捉された前記リチウム塩を前記溶離剤中に放出させることであって、該溶離剤が、前記リチウム塩と前記含酸素金属化合物の間の前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含むことと、
前記溶離剤が前記固定相を通って流れた後に、前記放出されたリチウム塩を含有する前記溶離剤を収集することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記含酸素金属化合物がルイス塩基を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記含酸素金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記含酸素ビスマス化合物が、酸化ビスマス(III)(Bi
2O
3)、酸化ビスマス(IV)(Bi
2O
4)、酸化ビスマス(V)(Bi
2O
5)、水酸化ビスマス(Bi(OH)
3)、炭酸ビスマス(C
3Bi
2O
9)、次炭酸ビスマス((BiO)
2CO
3)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記含酸素アンチモン化合物が、酸化アンチモン(III)(Sb
2O
3)、酸化アンチモン(IV)(Sb
2O
4)、酸化アンチモン(V)(Sb
2O
5)、水酸化アンチモン(Sb(OH)
3)、炭酸アンチモン(C
3O
9Sb
2)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項4の方法。
【請求項7】
前記含酸素アルミニウム化合物が、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、炭酸アルミニウム(Al
2(CO
3)
3)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項4の方法。
【請求項8】
前記含酸素ガリウム化合物が、酸化ガリウム(III)(Ga
2O
3)、水酸化ガリウム(Ga(OH)
3)、炭酸ガリウム(III)(Ga
2(CO
3)
3)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項4の方法。
【請求項9】
前記リチウム塩が、リチウムハロゲン塩又は硫酸リチウム(Li
2SO
4)を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記移動相が、液体中に溶解又は懸濁させた材料サンプルを含み、該材料サンプルが前記リチウム塩を含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記材料サンプルが、リチウム含有鉱石から得られた粉末を含む、請求項10の方法。
【請求項12】
前記材料サンプルが、リチウム含有塩水を含む、請求項10の方法。
【請求項13】
前記溶離剤が水性である、請求項1の方法。
【請求項14】
前記溶離剤が非金属である、請求項1の方法。
【請求項15】
前記溶離剤が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項16】
前記溶離剤が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF
3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項17】
前記固定相を洗浄して、前記リチウム塩以外の前記含酸素金属化合物により捕捉された物質を放出させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項18】
収集した前記溶離剤を前記移動相として使用して、前記移動相を流すステップと、前記溶離剤を流すステップと、前記溶離剤を収集するステップと、を繰り返すことをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項19】
移動相に溶解又は懸濁させた材料サンプルからリチウム塩を抽出するシステムであって、
ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含有し、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩を捕捉するように構成された固定相を含む、システム。
【請求項20】
前記含酸素金属化合物がルイス塩基を含む、請求項19のシステム。
【請求項21】
前記含酸素金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、又はそれらの組み合わせを含む、請求項19のシステム。
【請求項22】
前記含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項19のシステム。
【請求項23】
前記含酸素ビスマス化合物が、酸化ビスマス(III)(Bi
2O
3)、酸化ビスマス(IV)(Bi
2O
4)、酸化ビスマス(V)(Bi
2O
5)、水酸化ビスマス(Bi(OH)
3)、炭酸ビスマス(C
3Bi
2O
9)、次炭酸ビスマス((BiO)
2CO
3)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項22のシステム。
【請求項24】
前記含酸素アンチモン化合物が、酸化アンチモン(III)(Sb
2O
3)、酸化アンチモン(IV)(Sb
2O
4)、酸化アンチモン(V)(Sb
2O
5)、水酸化アンチモン(Sb(OH)
3)、炭酸アンチモン(C
3O
9Sb
2)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項22のシステム。
【請求項25】
前記含酸素アルミニウム化合物が、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、炭酸アルミニウム(Al
2(CO
3)
3)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項22のシステム。
【請求項26】
前記含酸素ガリウム化合物が、酸化ガリウム(III)(Ga
2O
3)、水酸化ガリウム(Ga(OH)
3)、炭酸ガリウム(III)(Ga
2(CO
3)
3)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項22のシステム。
【請求項27】
前記材料サンプルが、リチウム含有鉱石から得られた粉末を含む、請求項19のシステム。
【請求項28】
前記材料サンプルが、リチウム含有塩水を含む、請求項19のシステム。
【請求項29】
前記リチウム塩が、リチウムハロゲン塩又は硫酸リチウム(Li
2SO
4)を含む、請求項19のシステム。
【請求項30】
前記含酸素金属化合物により捕捉された前記リチウム塩を、溶離剤中に放出させるための溶離剤をさらに含み、
該溶離剤が、前記リチウム塩と前記含酸素金属化合物の間のルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含む、請求項19のシステム。
【請求項31】
前記溶離剤が水性である、請求項30のシステム。
【請求項32】
前記溶離剤が非金属である、請求項30のシステム。
【請求項33】
前記溶離剤が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、請求項30のシステム。
【請求項34】
前記溶離剤が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF
3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項30のシステム。
【請求項35】
前記固定相を含む分離容器と、
前記分離容器に連結され、前記材料サンプルを含有する前記移動相を含む移動相源と、
前記分離容器に連結され、前記溶離剤を含む溶離剤源と、
前記分離容器に連結され、前記溶離剤が前記固定相を通って流れた後に、放出された前記リチウム塩を含有する前記溶離剤を収集する収集容器と、をさらに備える、請求項30のシステム。
【請求項36】
前記分離容器に連結され、前記含酸素金属化合物から前記リチウム塩以外の物質を洗浄するための洗浄流体を含む洗浄剤源をさらに備える、請求項35のシステム。
【請求項37】
前記リチウム塩及び前記リチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含む含酸素金属/リチウム塩錯体を形成することと、
前記含酸素金属/リチウム塩錯体から前記リチウム塩を放出させることと、を含む、材料サンプルからリチウム塩を抽出する方法。
【請求項38】
前記含酸素金属/リチウム塩錯体を形成することが、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって、前記含酸素金属化合物と前記リチウム塩とを結合させることを含む、請求項37の方法。
【請求項39】
前記含酸素金属化合物と前記リチウム塩とを結合させることが、前記含酸素金属化合物を含む固定相を通して、前記材料サンプルを含有する移動相を流し、前記含酸素金属化合物が、前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって、前記材料サンプル中の前記リチウム塩を捕捉することを含む、請求項38の方法。
【請求項40】
前記含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項37の方法。
【請求項41】
前記含酸素金属/リチウム塩錯体から前記リチウム塩を放出させることが、水相又は気相のルイス塩基又はルイス酸により、前記リチウム塩と前記含酸素金属化合物の間の前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害することを含む、請求項38の方法。
【請求項42】
前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害することが、前記含酸素金属化合物/リチウム塩錯体を通して、前記ルイス塩基又は前記ルイス酸を含む溶離剤を流し、前記含酸素金属化合物/リチウム塩錯体から前記リチウム塩を前記溶離剤中に放出させることを含む、請求項41の方法。
【請求項43】
前記ルイス塩基が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、請求項41の方法。
【請求項44】
前記ルイス酸が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF
3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項41の方法。
【請求項45】
前記材料サンプルが、リチウム含有塩水、又はリチウム含有鉱石から得られた粉末のうち少なくとも一方を含む、請求項37の方法。
【請求項46】
前記含酸素金属/リチウム塩錯体から放出された前記リチウム塩を収集することをさらに含む、請求項37の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本発明は、2020年4月28日に出願された米国仮特許出願63/016,666号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、塩水及び天然鉱石を粉砕した石中に存在するリチウム塩を、選択的、かつ、効率的に抽出するための固定相材料に関する。
【0003】
より具体的には、この開示は、抽出システムと共に、含酸素金属組成を有する低コストの固定相材料、並びに塩水及び天然鉱石を粉砕した石中に存在する多量及び微量のミネラル成分及び化合物からリチウム塩を分離するために使用され得るシステムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
リチウムは、リチウム電池としてのエネルギー貯蔵、及び重要な有機化合物の合成のためのシリル、アルキル及びアリール-リチウム試薬などの多くの他の技術での主用途を有する。リチウムイオンはエネルギー密度が大きいため、リチウムイオン電池及びリチウムを含む有望な次世代電池は、他の用途もあるが、家電、バッテリー電気自動車、及び大規模なエネルギー貯蔵施設におけるエネルギー貯蔵の技術選択肢である。
【0005】
リチウムは、塩化リチウムが豊富な塩水、及びリシア輝石、葉長石、及びレピドライトなどのリチウム含有鉱石から抽出される。塩水及び鉱石からのリチウムの現在の抽出方法は、手がかかり、非効率である。例えば、塩水からのリチウムの抽出は、天候に左右され、天候状況によっては15~18ヶ月かかり得る非常に遅いプロセスで、1トンの炭酸リチウム当たり50万リットル以上の水を蒸発させる必要がある。
【発明の概要】
【0006】
以下の説明で、本明細書で説明する装置、組成物及び/又は方法の1つ以上の態様の簡略化した概要を示すことにより、そのような態様の基本的な理解をもたらす。この概要は、全ての予定される態様の詳細な要旨ではなく、また、全ての態様の主要な又は重要な要素を特定するものでもないし、いくらかの又は全ての態様の範囲を詳しく説明するものでもないことを意図している。この唯一の目的は、以下で示される、より詳細な説明の導入として簡略化した形式で、本明細書において説明する装置、組成物及び/又は方法の1つ以上の態様のいくらかの概念を示すことである。
【0007】
本明細書で説明することは、少量であってもリチウム塩を含む塩水、粉砕した石及び他の粘土、並びに液体源からのリチウム塩の抽出システム、及びリチウム塩の抽出方法である。
【0008】
リチウム抽出システムは、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、及び/又は任意のそれらの組み合わせを包含する含酸素金属化合物を含む固定相に依存する。含酸素金属化合物、すなわち硬いルイス塩基は、ルイス酸-塩基相互作用によって、リチウム塩、すなわち硬いルイス酸との親和性を有する。
【0009】
加えて、リチウム抽出システムは、目的とするリチウム塩を含む材料サンプルを運ぶ移動相を用いる。移動相は、水性であってもよく、移動相中に懸濁させた又は希釈された材料サンプルを有する。
【0010】
さらに、リチウム抽出システムは、固定相において含酸素金属化合物からリチウム塩を放出させることができる溶離剤を用いる。溶離剤は、捕捉されたリチウム塩と固定相中の含酸素金属化合物の間のルイス酸-塩基相互作用を阻害する水相又は気相の硬いルイス塩基又はルイス酸であってもよい。
【0011】
加えて、本明細書で説明することは、
ルイス酸-塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含み、もたらす固定相を準備することと、
リチウム塩を含有する溶解した材料サンプルを有する移動相を、固定相を通して流すことであって、前記含酸素金属化合物が、ルイス酸-塩基相互作用によって、移動相に溶解した材料サンプルからリチウム塩を捕捉することと、
固定相内の含酸素金属化合物からリチウム塩を放出させるための溶離剤を流すことであって、該溶離剤がターゲットのリチウム塩と含酸素金属化合物の間のルイス酸-塩基相互作用を阻害する、水相又は気相の硬いルイス塩基又はルイス酸であり、ターゲットのリチウム塩を溶離剤中に放出させることと、
固定相の通過後に、ターゲットリチウム塩を有する溶離剤を収集することと、を含む、リチウム塩を抽出するためのリチウム抽出方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書で説明する概念をより理解できるように、添付の図面を参照し、様々な実施形態をほんの一例として説明する。添付の図面は、様々な実施形態を示しており、明細書の一部である。示される実施形態は、単なる例であり、本開示の範囲を限定しない。図面の全体にわたり、同一の又は類似の参照数字は、同一の又は類似の要素を示す。さらに、図で示される1以上の要素は、認識及び議論を容易にするために、拡大又はサイズ変更していることがあるため、図は必ずしもスケールに合わせて描かれているわけではない。
【
図1】例となる実施形態における、リチウム塩の抽出方法を表すフローチャートを示す。
【
図2】リチウム塩を捕捉する親和性のメカニズムを説明する例となる化学スキームを示す。
【
図3】リチウム塩を放出する親和性の阻害メカニズムを説明する他の例となる化学スキームを示す。
【
図4】材料サンプルからリチウム塩を抽出するための、例となるリチウム塩の抽出システムを示す。
【発明を実施するために形態】
【0013】
この開示は、塩水又はリチウム含有鉱石からの粉砕した石から、リチウムイオンを選択的、かつ、効率的に抽出するための、酸素と結合した金属化合物を説明する。リチウムは、リチウム電池としてのエネルギー貯蔵、及び重要な有機化合物の合成のためのシリル、アルキル、及びアリール-リチウム試薬などの多くの他の技術での主用途を有する。本明細書で説明する酸化金属化合物は、地球上に豊富であり、無毒であり得る。
【0014】
本明細書で使用される「固相抽出」(SPE)という用語は、抽出の対象とされる化合物の物理的及び/又は化学的性質に基づく、液体混合物に溶解した化合物の選択抽出のための技術を含む。
【0015】
本明細書で使用される「移動相」という用語は、ターゲット分子を有するサンプルを含有する液体又は液体混合物を含む。
【0016】
本明細書で使用される「固定相」という用語は、移動相を通過させるときにターゲット分子を保持する、目的とする化学的又は物理的性質を有する固相材料を含む。
【0017】
本明細書で使用される「溶離剤」という用語は、固定相で捕捉されたターゲット化合物を収集するために固定相の洗浄で使用される液体、液体混合物、又は気体を含む。
【0018】
本明細書で使用される「含酸素ビスマス化合物」という用語は、ビスマス-酸素結合を含有する化合物を含む。含酸素金属化合物の例としては、限定されるものではないが、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、酸化ビスマス(IV)(Bi2O4)、酸化ビスマス(V)(Bi2O5)、水酸化ビスマス(Bi(OH)3)、炭酸ビスマス(C3Bi2O9)、次炭酸ビスマス((BiO)2CO3)、及び/又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。ビスムタイト、すなわち天然鉱物は、次炭酸ビスマスを含む。
【0019】
本明細書で使用される「含酸素アンチモン化合物」という用語は、アンチモン-酸素結合を含有する化合物を含む。含酸素アンチモン化合物の例としては、限定されるものではないが、酸化アンチモン(III)(Sb2O3)、酸化アンチモン(IV)(Sb2O4)、酸化アンチモン(V)(Sb2O5)、水酸化アンチモン(Sb(OH)3)、炭酸アンチモン(C3O9Sb2)、及び/又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される「含酸素アルミニウム化合物」という用語は、アルミニウム-酸素結合を含有する化合物を含む。含酸素アルミニウム化合物の例としては、限定されるものではないが、酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、炭酸アルミニウム(Al2(CO3)3)、及び/又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される「含酸素ガリウム化合物」という用語は、ガリウム-酸素結合を含有する化合物を含む。含酸素ガリウム化合物の例としては、限定されるものではないが、酸化ガリウム(III)(Ga2O3)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)、炭酸ガリウム(III)(Ga2(CO3)3)、及び/又は任意のそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される「リチウム塩」という用語は、リチウムを含有する任意の塩を含む。リチウム塩の例としては、限定されるものではないが、リチウムハロゲン塩、及び硫酸リチウム(Li2SO4)が挙げられる。リチウムハロゲン塩は、ハロゲン原子を含む。リチウムハロゲン塩の例としては、限定されるものではないが、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、及びアスタチン化リチウム(LiAt)が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される「ルイス酸」という用語は、電子対を受け取ることができる空軌道を含有する化学種である。リチウム塩は、硬いルイス酸の例である。
【0024】
本明細書で使用される「ルイス塩基」という用語は、結合に関与せず、ルイス塩基-ルイス酸対を形成するルイス酸に供与可能な電子対を含有する化学種である。酸化ビスマスなどの含酸素金属化合物は、硬いルイス塩基の例である。
【0025】
本明細書で使用される「硬いルイス塩基」という用語は、1つ以上の陰性の、強く溶媒和した、分極しにくい原子を含有する化合物である。これらの陰性原子は、小さなイオン半径を有し、相当する化合物は、少なくとも1つの高エネルギーのHOMO軌道を有する。
【0026】
本明細書で使用される「含酸素金属化合物」という用語は、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、及び含酸素ガリウム化合物から選択される酸素と結合した金属、及び/又は任意のそれらの組み合わせを含む。
【0027】
図1を参照すると、
図1では、例となる実施形態におけるリチウム塩の抽出方法100を表すフローチャートが示されている。リチウム塩の抽出方法100における第1ステップ102は、材料サンプル110内のリチウム塩108と親和性のある含酸素金属化合物106を含む固定相104を準備することを含む。
【0028】
好ましくは、固定相104では、含酸素金属化合物106が大きな表面積をもたらす。固定相104は、固体又は多孔質であってもよく、全体が含酸素金属化合物106で構成されていてもよく、或いは固定相104は、含酸素金属化合物106を担持する又は含酸素金属化合物106と混合された他の材料を含んでいてもよい。固定相104は、異なるメッシュサイズ(例えばメッシュ番号4から500)の粉末として、マイクロスフィア(例えば1mmから数ミリメートルのサイズの範囲)として、多孔質膜として、又は固体表面として設けられてもよい。基本的には、特定の実施に適応し得るように、任意の形状因子を固定相104に使用できる。
【0029】
含酸素金属化合物106は、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、又は含酸素ガリウム化合物から選択してもよいし、或いはそれらの組み合わせであってもよい。含酸素金属化合物106の例としては、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、水酸化ビスマス、水酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化ガリウム、炭酸ビスマス、炭酸アンチモン、炭酸アルミニウム、及び炭酸ガリウムが挙げられる。
【0030】
リチウム塩108は、任意のリチウム塩であってもよい。リチウム塩108の例としては、限定されるものではないが、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、及び硫酸リチウム(Li2SO4)が挙げられる。
【0031】
材料サンプル110は、リチウム塩108を含む海水、粉砕した硬い石、粘土、又は塩水であってもよい。材料サンプル110は、大陸塩水、油井塩水、地熱水、粘土、及び海水(リチウムは、海水中に約0.17mg/Lの低濃度で存在する)に由来してもよい。地殻に生じる塩水は、大陸塩水/地表塩水と呼ばれる。豊富な大陸塩水資源を有する国は、チリ、アルゼンチン、ボリビア、及び中国が挙げられる。
【0032】
塩水は、約170~330g/Lの溶解無機塩を含み得る。塩水は、大きな塩湖の表面から又は奥底から直接入手できる。塩水は、大量の塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、マグネシウム及び/又は様々なホウ酸塩の存在下で、塩化リチウム(LiCl)及び/又は硫酸リチウム(Li2SO4)の形態のリチウムを含み得る。
【0033】
リチウムが豊富な硬岩鉱石の例としては、限定されるものではないが、レピドライト(KLi1.5Al1.5[Si3O10][F,OH]2)、リシア輝石(LiO2Al2O34SiO2)、葉長石(LiO2Al2O38SiO2)、及びアンブリゴナイト(LiAl[PO4][OH,F])が挙げられる。硬岩鉱石の加工は、ナトリウムによりリチウムを置き換える、アルファからベータへのリチウム相の転換を含む。この最終プロセスによって生じる精鉱は、細かい粉末に製粉され、サンプル110になり得る。
【0034】
リチウム塩の抽出方法100における第2ステップ112は、リチウム塩108を含有する材料サンプル110を有する移動相114を、固定相104を通して流すことを含む。移動相114は、溶解した又は懸濁させた材料サンプル110を有する液体、好ましくは水である。移動相114が固定相104を通って流れるときに、リチウム塩108は、固定相104中の含酸素金属化合物106により、親和-捕捉される。固定相104を通って流れた後に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び他の成分、並びにリチウム塩108ではない不純物は、移動相114に残る。
【0035】
(液体(例えば水)又は気体の)任意の洗浄剤(洗浄液)116を、リチウム塩の抽出方法100の第3ステップ118で供給してもよい。洗浄剤116の目的は、リチウム塩108以外の物質を固定相104から除去することである。
【0036】
リチウム塩の抽出方法100の第4ステップ120は、固定相104を通して溶離剤122を流すことを含む。溶離剤122は、含酸素金属化合物106とリチウム塩108の間のルイス酸-塩基相互作用を阻害する、水相又は気相の非金属ルイス塩基又はルイス酸を含み、リチウム塩108を溶離剤122中に放出させる。溶離剤122の例としては、限定されるものではないが、(気体又は水溶液の)アンモニア、トリエチレンアミンなどの有機アミン塩基、又は二酸化炭素などのルイス酸、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)や塩酸(HCl)などの揮発性の有機酸及び無機酸、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
リチウム塩の抽出方法100の最終ステップ124は、容器128の内部での、リチウム塩108を有する溶離剤122の収集を含む。溶離剤122は、画分で収集してもよい。精製したリチウム塩を、同一の方法を使用してさらに精製し、その後、リチウムイオン電池の製造のために望ましい最終生成物である炭酸リチウム又は水酸化リチウムに変換してもよい。
【0038】
移動相114及び洗浄剤116を、さらなる抽出プロセスにおいて、移動相液体として再利用してもよい。同様に、精製したリチウム塩を有する溶離剤122中の水を、閉鎖システムにおいて蒸発させ、洗浄剤116としてのさらなる使用のための蒸留水として凝縮してもよい。
【0039】
ここで、
図2を参照すると、
図2には、リチウム塩108を捕捉する親和性メカニズムを説明する化学スキーム例200が示されている。含酸素金属化合物106(
図2においては、Zで与えられる)は、硬いルイス塩基であり、リチウム塩108(
図2においては、Li
+X
-で与えられ、硫酸リチウムの場合には、Li
2
2+X
2-で与えられる)は、硬いルイス酸である。
図2における記号「X
-」(又はX
2-)は、ハロゲンアニオン204(又は硫酸アニオン)を表す。含酸素金属化合物106及びリチウム塩108は、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって結合し、含酸素金属/リチウム塩錯体206(
図2においては、[Z→Li]
+X
-で与えられる)を形成する。
【0040】
ここで、
図3を参照すると、
図3には、リチウム塩108を放出する親和性阻害メカニズムを説明する化学スキーム例300が示されている。含酸素金属/リチウム塩錯体206は、溶離剤122中の硬いルイス塩基302又はルイス酸304により阻害され、固定相104内で、含酸素金属化合物106から溶離剤122中に、リチウム塩108を放出する。上述したように、ルイス塩基302の例としては、液体状又は気体状のアンモニアが挙げられ、ルイス酸304の例としては、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸及び塩酸などの揮発性の有機酸及び無機酸、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
ここで、
図4を参照すると、
図4には、材料サンプル110からリチウム塩108を抽出するための、例となるリチウム塩の抽出システム400が示されている。リチウム塩の抽出システム400は、固定相104を含む分離容器402(例えばカラム)を具備する。加えて、分離容器402は、分離容器注入口404及び分離容器排出口406を具備する。分離容器注入口404における第1の選択バルブ408は、移動相114を有する第1の液体流、洗浄剤116を有する第2の液体流412、又は溶離剤122を有する第3の液体流414から選択し得る。同様に、分離容器排出口406における第2の選択バルブ416は、移動相114用の第1の収集容器420、洗浄剤116用の第2の収集容器422、又は溶離剤122用の第3の収集容器424(例えば容器128)に、分離容器排出口の液体流418を方向付け得る。それゆえ、第1の選択バルブ408及び第2の選択バルブ416を作動させ、塩の抽出方法100に必要な一連のステップをもたらすことにより、リチウム塩の抽出システム400を、
図1で示されるリチウム塩の抽出方法100を実行するために使用できる。代わりに、分離容器402は、異なる注入流のための異なる注入口を具備してもよい。さらに、分離容器402は、異なる排出流のための異なる排出口を具備してもよい。
【0042】
本明細書で説明する方法は、連続プロセス又はバッチプロセスで実行してもよい。さらに、本明細書で説明する方法は、本明細書で説明するシステム及び装置(例えば、
図4)に限定されるものではなく、任意の他の適切なシステム及び装置で実行してもよい。
【0043】
本開示の利点及び特徴を、以下の記述により更に説明することができる。
【0044】
1.ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含む固定相を通して、リチウム塩を含む移動相を流し、含酸素金属化合物が、ルイス酸-ルイス塩基相互作用により、リチウム塩を捕捉することと、固定相を通して溶離剤を流し、含酸素金属化合物に捕捉されたリチウム塩を溶離剤中に放出させることであって、該溶離剤が、リチウム塩と含酸素金属化合物の間のルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含むことと、溶離剤が固定相を通って流れた後に、放出されたリチウム塩を含む溶離剤を収集することと、を含む、方法。
【0045】
2.含酸素金属化合物がルイス塩基を含む、記述1の方法。
【0046】
3.含酸素金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、又はそれらの組み合わせを含む、記述1の方法。
【0047】
4.含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、記述1の方法。
【0048】
5.含酸素ビスマス化合物が、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、酸化ビスマス(IV)(Bi2O4)、酸化ビスマス(V)(Bi2O5)、水酸化ビスマス(Bi(OH)3)、炭酸ビスマス(C3Bi2O9)、次炭酸ビスマス((BiO)2CO3)、又はそれらの組み合わせを含む、記述4の方法。
【0049】
6.含酸素アンチモン化合物が、酸化アンチモン(III)(Sb2O3)、酸化アンチモン(IV)(Sb2O4)、酸化アンチモン(V)(Sb2O5)、水酸化アンチモン(Sb(OH)3)、炭酸アンチモン(C3O9Sb2)、又はそれらの組み合わせを含む、記述4の方法。
【0050】
7.含酸素アルミニウム化合物が、酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、炭酸アルミニウム(Al2(CO3)3)、又はそれらの組み合わせを含む、記述4の方法。
【0051】
8.含酸素ガリウム化合物が、酸化ガリウム(III)(Ga2O3)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)、炭酸ガリウム(III)(Ga2(CO3)3)、又はそれらの組み合わせを含む、記述4の方法。
【0052】
9.リチウム塩が、リチウムハロゲン塩又は硫酸リチウム(Li2SO4)を含む、記述1の方法。
【0053】
10.移動相が、液体中に溶解又は懸濁させた材料サンプルを含み、該材料サンプルがリチウム塩を含む、記述1の方法。
【0054】
11.材料サンプルが、リチウム含有鉱石から得られた粉末を含む、記述10の方法。
【0055】
12.材料サンプルが、リチウム含有塩水を含む、記述10の方法。
【0056】
13.溶離剤が水性である、記述1の方法。
【0057】
14.溶離剤が非金属である、記述1の方法。
【0058】
15.溶離剤が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、記述1の方法。
【0059】
16.溶離剤が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、記述1の方法。
【0060】
17.固定相を洗浄して、リチウム塩以外の含酸素金属化合物により捕捉された物質を放出させることをさらに含む、記述1の方法。
【0061】
18.収集した溶離剤を移動相として使用して、移動相を流すステップと、溶離剤を流すステップと、溶離剤を収集するステップと、を繰り返すことをさらに含む、記述1の方法。
【0062】
19.移動相に溶解又は懸濁させた材料サンプルからリチウム塩を抽出するシステムであって、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含み、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって、リチウム塩を捕捉するように構成される固定相を含む、システム。
【0063】
20.含酸素金属化合物がルイス塩基を含む、記述19のシステム。
【0064】
21.含酸素金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、又はそれらの組み合わせを含む、記述19のシステム。
【0065】
22.含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、記述19のシステム。
【0066】
23.含酸素ビスマス化合物が、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)、酸化ビスマス(IV)(Bi2O4)、酸化ビスマス(V)(Bi2O5)、水酸化ビスマス(Bi(OH)3)、炭酸ビスマス(C3Bi2O9)、次炭酸ビスマス((BiO)2CO3)、又はそれらの組み合わせを含む、記述22のシステム。
【0067】
24.含酸素アンチモン化合物が、酸化アンチモン(III)(Sb2O3)、酸化アンチモン(IV)(Sb2O4)、酸化アンチモン(V)(Sb2O5)、水酸化アンチモン(Sb(OH)3)、炭酸アンチモン(C3O9Sb2)、又はそれらの組み合わせを含む、記述22のシステム。
【0068】
25.含酸素アルミニウム化合物が、酸化アルミニウム(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、炭酸アルミニウム(Al2(CO3)3)、又はそれらの組み合わせを含む、記述22のシステム。
【0069】
26.含酸素ガリウム化合物が、酸化ガリウム(III)(Ga2O3)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)、炭酸ガリウム(III)(Ga2(CO3)3)、又はそれらの組み合わせを含む、記述22のシステム。
【0070】
27.材料サンプルが、リチウム含有鉱石から得られた粉末を含む、記述19のシステム。
【0071】
28.材料サンプルが、リチウム含有塩水を含む、記述19のシステム。
【0072】
29.リチウム塩が、リチウムハロゲン塩又は硫酸リチウム(Li2SO4)を含む、記述19のシステム。
【0073】
30.含酸素金属化合物により捕捉されたリチウム塩を溶離剤中に放出させるための溶離剤をさらに含み、該溶離剤がリチウム塩と含酸素金属化合物の間のルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含む、記述19のシステム。
【0074】
31.溶離剤が水性である、記述30のシステム。
【0075】
32.溶離剤が非金属である、記述30のシステム。
【0076】
33.溶離剤が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、記述30のシステム。
【0077】
34.溶離剤が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、記述30のシステム。
【0078】
35.固定相を含む分離容器と、分離容器に連結され、材料サンプルを含有する移動相を含む移動相源と、分離容器に連結され、溶離剤を含む溶離剤源と、分離容器に連結され、溶離剤が固定相を通って流れた後に、放出されたリチウム塩を含有する溶離剤を収集する収集容器と、をさらに備える、記述30のシステム。
【0079】
36.分離容器に連結され、含酸素金属化合物からリチウム塩以外の物質を洗浄するための洗浄流体を含む洗浄剤源をさらに備える、記述35のシステム。
【0080】
37.リチウム塩及びリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含む含酸素金属/リチウム塩錯体を形成することと、含酸素金属/リチウム塩錯体からリチウム塩を放出させることと、を含む、材料サンプルからリチウム塩の抽出方法。
【0081】
38.含酸素金属/リチウム塩錯体を形成することが、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって含酸素金属化合物とリチウム塩を結合させることを含む、記述37の方法。
【0082】
39.含酸素金属化合物とリチウム塩を結合させることが、含酸素金属化合物を含む固定相を通して、材料サンプルを含有する移動相を流し、前記含酸素金属化合物が、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって、材料サンプル中のリチウム塩を捕捉することを含む、記述38の方法。
【0083】
40.含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、記述37の方法。
【0084】
41.含酸素金属/リチウム塩錯体からリチウム塩を放出させることが、水相又は気相のルイス塩基又はルイス酸により、リチウム塩と含酸素金属化合物の間のルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害することを含む、記述38の方法。
【0085】
42.ルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害することが、含酸素金属化合物/リチウム塩錯体を通して、ルイス塩基又はルイス酸を含む溶離剤を流し、含酸素金属化合物/リチウム塩錯体からリチウム塩を溶離剤中に放出させることを含む、記述41の方法。
【0086】
43.ルイス塩基が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、記述41の方法。
【0087】
44.ルイス酸が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、記述41の方法。
【0088】
45.材料サンプルが、リチウム含有塩水、又はリチウム含有鉱石から得られた粉末のうち少なくとも一方を含む、記述37の方法。
【0089】
46.含酸素金属/リチウム塩錯体から放出されたリチウム塩を収集することをさらに含む、記述37の方法。
【0090】
前述の記載においては、様々な例となる実施形態を、添付の図を参照して説明した。しかしながら、続く特許請求の範囲から逸脱しないで、様々な改良物及び変化物を、それらから作製でき、さらなる実施形態を実行できることが明らかであるだろう。例えば、本明細書で説明した一実施形態のある特徴を、本明細書で説明した他の実施形態の特徴と組み合わせてもよく、又は置き換えてもよい。本記述及び図面は、状況に応じて、限定する趣旨ではなく、理解を助ける趣旨であるとみなされたい。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含む固定相を通して、リチウム塩を含む移動相を流し、前記含酸素金属化合物が、前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用によって前記リチウム塩を捕捉することと、
前記固定相を通して溶離剤を流し、前記含酸素金属化合物により捕捉された前記リチウム塩を前記溶離剤中に放出させることであって、該溶離剤が、前記リチウム塩と前記含酸素金属化合物の間の前記ルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含むことと、
前記溶離剤が前記固定相を通って流れた後に、前記放出されたリチウム塩を含有する前記溶離剤を収集することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記含酸素金属化合物がルイス塩基を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記含酸素金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記リチウム塩が、リチウムハロゲン塩又は硫酸リチウム(Li
2SO
4)を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記移動相が、液体中に溶解又は懸濁させた材料サンプルを含み、該材料サンプルが前記リチウム塩を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記溶離剤が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記溶離剤が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF
3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記固定相を洗浄して、前記リチウム塩以外の前記含酸素金属化合物により捕捉された物質を放出させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項10】
収集した前記溶離剤を前記移動相として使用して、前記移動相を流すステップと、前記溶離剤を流すステップと、前記溶離剤を収集するステップと、を繰り返すことをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項11】
移動相に溶解又は懸濁させた材料サンプルからリチウム塩を抽出するシステムであって、
ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩と親和性のある含酸素金属化合物を含有し、ルイス酸-ルイス塩基相互作用によってリチウム塩を捕捉するように構成された固定相を含む、システム。
【請求項12】
前記含酸素金属化合物がルイス塩基を含む、請求項
11のシステム。
【請求項13】
前記含酸素金属化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、又はそれらの組み合わせを含む、請求項
11のシステム。
【請求項14】
前記含酸素金属化合物が、含酸素ビスマス化合物、含酸素アンチモン化合物、含酸素アルミニウム化合物、含酸素ガリウム化合物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項
11のシステム。
【請求項15】
前記リチウム塩が、リチウムハロゲン塩又は硫酸リチウム(Li
2SO
4)を含む、請求項
11のシステム。
【請求項16】
前記含酸素金属化合物により捕捉された前記リチウム塩を、溶離剤中に放出させるための溶離剤をさらに含み、
該溶離剤が、前記リチウム塩と前記含酸素金属化合物の間のルイス酸-ルイス塩基相互作用を阻害するルイス塩基又はルイス酸を含む、請求項
11のシステム。
【請求項17】
前記溶離剤が、アンモニア、有機アミン塩基、又はそれらの組み合わせを含む、請求項
16のシステム。
【請求項18】
前記溶離剤が、二酸化炭素、トリフルオロ酢酸(CF
3COOH)、塩酸(HCl)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項
16のシステム。
【請求項19】
前記固定相を含む分離容器と、
前記分離容器に連結され、前記材料サンプルを含有する前記移動相を含む移動相源と、
前記分離容器に連結され、前記溶離剤を含む溶離剤源と、
前記分離容器に連結され、前記溶離剤が前記固定相を通って流れた後に、放出された前記リチウム塩を含有する前記溶離剤を収集する収集容器と、をさらに備える、請求項
16のシステム。
【請求項20】
前記分離容器に連結され、前記含酸素金属化合物から前記リチウム塩以外の物質を洗浄するための洗浄流体を含む洗浄剤源をさらに備える、請求項
19のシステム。
【国際調査報告】