(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】分散型ファイバ感知装置のための集積コヒーレント受信器
(51)【国際特許分類】
H04B 10/61 20130101AFI20230605BHJP
G02F 2/00 20060101ALI20230605BHJP
H04B 10/071 20130101ALI20230605BHJP
【FI】
H04B10/61
G02F2/00
H04B10/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566273
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 IB2021053551
(87)【国際公開番号】W WO2021220203
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521040466
【氏名又は名称】ファイバー センス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨッフェ、ギデオン
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA28
2K102BA40
2K102BB04
2K102BC01
2K102BC10
2K102BD09
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2K102DB04
2K102DC08
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2K102EB04
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2K102EB22
5K102AA43
5K102AH14
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5K102LA53
5K102MH03
5K102MH15
5K102MH21
5K102PH11
5K102PH22
5K102PH37
5K102PH41
5K102PH42
5K102PH50
5K102RB01
(57)【要約】
分散型ファイバ感知システムは、集積コヒーレント受信器を使用することができる。集積コヒーレント受信器は、様々な光学構成要素を含む平面光波回路を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型ファイバ感知システムのためのコヒーレント受信器であって、前記分散型ファイバ感知システムでは連続波レーザーがサーキュレータによってコヒーレント受信器に提供される後方散乱光を用いてファイバを下る伝搬のための光を生成し、前記コヒーレント受信器が、
被試験ファイバからの後方散乱光信号を第1の偏光入力信号および第2の偏光入力信号に分割するための第1の偏光ビームスプリッタと、
局部発振器(LO)信号を第1のLO信号および第2のLO信号に分割するためのビームスプリッタであって、PLC上にあるビームスプリッタと、
前記第1の偏光入力信号と前記第1のLO信号とを混合して第1の対の混合信号を生成するための第1のミキサであって、前記PLC上にある第1のミキサと、
前記第2の偏光入力信号と前記第2のLO信号とを混合して第2の対の混合信号を生成するための第2のミキサであって、前記PLC上にある第2のミキサと、
前記第1の対の混合信号の光を第1の電気信号に変換するための第1の対の平衡フォトダイオードと、
前記第2の対の混合信号の光を第2の電気信号に変換するための第2の対の平衡フォトダイオードとを含む、
コヒーレント受信器。
【請求項2】
前記第1の対の平衡フォトダイオードおよび前記第2の対の平衡フォトダイオードは、前記PLCに取り付けられる、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項3】
前記第1の偏光ビームスプリッタが前記PLC上にある、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項4】
前記第1の偏光ビームスプリッタは、前記PLCの外部にある、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項5】
前記第1のミキサからの前記第1の対の信号を均等化するための、第1の対の可変光学減衰器(VOA)であって、前記第1の対のVOAは前記PLC上にあり、前記第1の対のVOAは前記第1のミキサと、前記第1のミキサからの前記第1の対の信号の光路上における前記第1の対の平衡フォトダイオードとの間にある、第1の対の可変光学減衰器(VOA)と、
前記第2のミキサからの前記第2の対の信号を均等化するための、第2の対のVOAであって、前記第2の対のVOAは前記PLC上にあり、
前記第2の対のVOAは前記第2のミキサと、前記第2のミキサからの前記第2の対の信号の光路上における前記第2の対の平衡フォトダイオードとの間にある、第2の対のVOAと、
をさらに備える、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項6】
前記第1の対のVOAおよび前記第2の対のVOAの各VOAは、少なくとも1つの位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計を備える、請求項5に記載のコヒーレント受信器。
【請求項7】
前記位相シフタは、熱位相シフタを含む、請求項6に記載のコヒーレント受信器。
【請求項8】
各マッハツェンダ干渉計の各アームが位相シフタを含む、請求項7に記載のコヒーレント受信器。
【請求項9】
各マッハツェンダ干渉計の1つのアームのみが位相シフタを含む、請求項7に記載のコヒーレント受信器。
【請求項10】
各マッハツェンダ干渉計は第1のアームおよび第2のアームを含み、前記第1のアームおよび前記第2のアームは、等しくない長さである、請求項9に記載のコヒーレント受信器。
【請求項11】
前記第1のミキサおよび前記第2のミキサは、前記マッハツェンダ干渉計の一部である、請求項6に記載のコヒーレント受信器。
【請求項12】
前記第1のミキサおよび前記第2のミキサが3dBカプラを備える、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項13】
前記スプリッタへの提示のために、前記局部発振器(LO)信号の振幅を減衰させるための第1の光減衰器をさらに備え、前記第1の光減衰器は、前記平面光波回路(PLC)上にある、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項14】
前記第1の光減衰器が可変光減衰器を備える、請求項13に記載のコヒーレント受信器。
【請求項15】
前記第1の光減衰器が固定光減衰器を備える、請求項13に記載のコヒーレント受信器。
【請求項16】
前記ビームスプリッタは、偏光ビームスプリッタである、請求項1に記載のコヒーレント受信器。
【請求項17】
分散型ファイバセンシングを実行する方法であって、
連続波レーザーから光を発生すること、
前記連続波レーザーからの光を用いて光パルスを形成すること、
被試験ファイバへ前記光パルスを供給すること、
前記被試験ファイバからの後方散乱光を受信すること、
コヒーレント受信器への信号入力として後方散乱光を提供すること、及び、
前記コヒーレント受信器への局部発振器入力として連続波レーザーからの光を提供すること、
を含み、
前記コヒーレント受信器が
第1の偏光状態および第2の偏光状態で前記信号入力および前記局部発振器入力に対して別々に動作するための光信号経路を有する平面光波回路(PLC)を含み、
前記動作には前記第1の偏光状態で前記信号入力および前記局部発振器信号を混合することと、前記第2の偏光状態で前記信号入力および前記局部発振器信号を混合することと、混合された信号を均等化することとを含む、
方法。
【請求項18】
前記コヒーレント受信器への前記信号入力は、前記PLCの外部の偏光ビームスプリッタを通過した前記後方散乱光である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コヒーレント受信器への前記信号入力と、前記コヒーレント受信器への前記局部発振器入力とは、同じ偏光状態にある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記混合された信号を均等化する前記動作は、位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計を使用して実行される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、分散型ファイバ感知に関し、より詳細には、分散型音響感知(DAS)システムのための集積型光受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
光分散ファイバセンシング(DFS)システムはファイバ故障の位置を特定するため、または温度、歪み、または振動を測定するために、数十年間使用されてきた。DFSシステムは、ファイバ自体がセンサのアレイを形成するという点で、ディスクリートセンサを使用するシステムとは区別される。このシステムは、ガラス不均一性(レイリー)、音波(ブリルアン)または光フォノン(ラマン)に起因し得る、ファイバ内の光散乱に依存する。典型的なシステムでは、光パルスがファイバの一端から発射され、反射された後方散乱が発射端で受信される。飛行時間測定値がファイバ内のどこで特定の散乱事象が発生したかを決定するために使用され、受信信号の分析は測定値を評価するために使用される。
【0003】
レイリー後方散乱の検出は、分散型音響感知(DAS)として知られることが多い分散型振動感知(DVS)に一般に使用される。光ファイバに沿った点における歪みの変化は、光路長の変化、したがって後方散乱光の位相の変化を引き起こす。
【0004】
ヘテロダインコヒーレント受信器を有する典型的な位相感応DASシステムの概略図を
図1に示す。光源レーザーとして機能し、典型的には1550nm付近の電気通信帯域で動作する連続波(CW)レーザー111からの光は、例えばスプリッタ113によって2つの経路に分割される。第1の経路は光アイソレータ117を通過し、音響光学変調器(AOM)119によって、典型的には10~100nsの長さの光パルスに形成される。AOMはまた、光の光周波数を、典型的には80~300MHzだけシフトさせる。パルスは、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)121によって増幅され、光サーキュレータ123を介して被試験ファイバ125に発射される。試験中のファイバからの後方散乱光は、サーキュレータによってコヒーレント受信器の信号入力に向けられる。CWレーザーからの第2の経路115は、コヒーレント受信器への局部発振器(LO)入力を形成する。第2の経路の光は、光アイソレータ151および可変光減衰器153を通過する。後方散乱光信号の偏光は被試験ファイバの長さが数十kmであり、したがって、偏光ダイバーシティが受信器において一般に必要とされるので、透過光の偏光とは十分に異なり得る。信号およびLO光は、それぞれ偏光ビームスプリッタ129および155によって2つの偏光の経路に分割され、3dB光カプラ131a,bで混合される。カプラの出力は可変光減衰器133a~dを通過し、平衡光検出器135a、bに取り込まれる。光検出器の電気出力は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)137a、bによって増幅され、アナログ-デジタル変換器(ADC)139a、bによってデジタル信号に変換され、デジタル信号プロセッサ(DSP)141によって分析される。信号およびLOの光周波数は、AOM周波数によって異なる。対象となる振動周波数は0~数十kHzの範囲であり、したがって、信号の全位相情報を電気的に測定することができる。
【0005】
DASシステムは、典型的には入力および出力のためのコネクタ化された光ファイバを有するパッケージ化されたバルク光コンポーネントを使用して、19インチラック計器に組み込まれる。そのようなシステムは例えば、少数のユニットを必要とし、高いユニットコストを許容することができる、地震事象およびオイルパイプラインおよび境界への侵入または侵入を監視するために配備されてきた。
【0006】
光通信トランシーバのいくつかの製造業者は、集積コヒーレントレシーバ(ICR)を供給する。合意された一般的な実装の概略図を
図2に示す。
図2の受信器はイントラダインまたはホモダインであり、局部発振器は、名目上、信号と同じ波長にある。デュアル偏光は、2つの偏光上で送信される別個のデータを用いて、意図的に使用される。イントラダイン受信器の全位相情報を抽出するために、90度ハイブリッドミキサ233、235が各偏光に使用され、チャネルごとに4つのフォトダイオード237が必要とされ、受信器は4つのADC241を必要とする。
【0007】
これらの統合受信器はCMOS互換シリコン上に完全に統合されたものから、シリコン上のハイブリッドアセンブリまで、様々なプラットフォームで利用可能である。
【0008】
これらの光通信受信器の特性のいくつかは理想的ではない。DFSシステム、特にDASは光通信システムと比較して非常に低い周波数で、広いダイナミックレンジを示し、比較的狭い周波数帯域をカバーする非常に小さな信号で動作する。したがって、以下の設計上の選択肢は異なり得る:
i)光損失はDASにとって主要な関心事であり、完全に集積化されたシリコンベースのICRは、一般に十分に良好ではない;
ii)TIAは、広帯域動作ではなく、サブGHz周波数における低雑音のために最適化されるべきである;
iii)受信されたDAS信号のダイナミックレンジが広いので、ADCは、好ましくは高分解能および低雑音を有する。これらの構成要素は高価であるため、イントラダイン受信器において4つのADCおよび関連する信号処理を必要とすることは明らかな欠点である。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの実施形態は、DASシステムおよび/またはいくつかの実施形態における他の感知システムのための統合ヘテロダインコヒーレント光受信器を提供する。イントラダインテレコム集積受信器に対する1つの潜在的な利点は、信号処理の低減に関連して、4つではなく2つの高価なADCが使用されることである。いくつかの実施形態は例えば、電流注入による自由キャリア吸収に依存するデバイスと比較してノイズを低減するために、シリコンプラットフォームにおける可変光減衰器(VOA)としてマッハツェンダ(Mach-Zehnder)干渉計の熱光学チューニングを利用する。いくつかの実施形態では、マッハツェンダ干渉計が設計された不均衡を含み、その結果、1つの熱位相シフタのみが使用されるか、または必要とされ、電気接続の数および最大電力消費の両方を低減することができる。これは、様々な実施形態における位相シフタの他の形態にも当てはまる。いくつかの実施形態では、被試験ファイバからの信号の偏光分割が2つの異なる信号のためのPLC上の別個の光信号入力を用いて、外部光コンポーネントによって実行される。いくつかの実施形態では、PLC上の導波路に結合された外部偏光スプリッタおよび局部発振器からの光信号が同じ偏光状態にある。
【0010】
いくつかの実施形態は分散型ファイバ感知システムのためのコヒーレント受信器を提供し、ここで、連続波レーザーはサーキュレータによってコヒーレント受信器に提供される後方散乱光を用いて、ファイバを下る伝搬のための光を生成し、コヒーレント受信器は、被試験ファイバからの後方散乱光信号を第1の偏光入力信号および第2の偏光入力信号に分割するための第1の偏光ビームスプリッタと、局部発振器(LO)信号の振幅を制御するための第1の可変光減衰器であって、第1の可変光減衰器が平面光波回路(PLC)上にある第1の可変光減衰器と、制御振幅局部発振器信号を第1の偏光LO信号および第2の偏光LO信号に分割するための第2の偏光ビームスプリッタであって、第2の偏光ビームスプリッタがPLC上にある第2の偏光ビームスプリッタと、第1の偏光入力信号および第1の偏光LO信号を混合するための第1のミキサであって、第1のミキサがPLC上にある第1のミキサと、第2の偏光入力信号および第2の偏光LO信号を混合するための第2のミキサであって(VOA)は第1のミキサからの信号を均等化(equalizing)するためのものであり、第1の対のVOAはPLC上にあり、第2の対のVOAは第2のミキサからの信号を均等化するためのものであり、第2の対のVOAはPLC上にあり、第1の対のVOAからの光を第1の電気信号に変換するための第1の対の平衡フォトダイオードと、第2の対のVOAからの光を第2の電気信号に変換するための第2の対の平衡フォトダイオードとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、平衡フォトダイオードの第1の対および平衡フォトダイオードの第2の対がPLCに取り付けられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の偏光ビームスプリッタはPLC上にある。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の偏光ビームスプリッタはPLCの外部にある。
【0014】
いくつかの実施形態では、VOAの第1の対およびVOAの第2の対のそれぞれのVOAが少なくとも1つの位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計を備える。いくつかのそのような実施形態では、位相シフタが熱位相シフタを備える。いくつかのそのような実施形態では、各マッハツェンダ干渉計の各アームが位相シフタを含む。いくつかのそのような実施形態では、各マッハツェンダ干渉計の1つのアームのみが位相シフタを含む。いくつかのそのような実施形態では各マッハツェンダ干渉計が第1のアームおよび第2のアームを含み、第1のアームおよび第2のアームは等しくない長さである。いくつかのそのような実施形態では、第1のミキサおよび第2のミキサがマッハツェンダ干渉計の一部である。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1のミキサおよび第2のミキサが3dBカプラを備える。
【0016】
いくつかの実施形態は連続波レーザーからの光を生成することと、連続波レーザーからの光を使用して光パルスを形成することと、光パルスを被試験ファイバに提供することと、後方散乱光を被試験ファイバから受信することと、後方散乱光を信号入力としてコヒーレントレシーバに提供することと、連続波レーザーからの光を局部発振器入力としてコヒーレントレシーバに提供することと、コヒーレントレシーバは信号入力と局部発振器入力とに別個に動作するための光信号経路を有する平面光波回路(PLC)を含み、動作は信号入力と局部発振器信号とを第1の偏光状態で混合することと、信号入力と局部発振器信号とを第2の偏光状態で混合することと、混合された信号を均等化することとを含む、分散ファイバセンシングを実行する方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、コヒーレント受信器に入力される信号がPLCの外部の偏光ビームスプリッタを通過した後方散乱光である。いくつかのそのような実施形態では、コヒーレント受信器への信号入力およびコヒーレント受信器への局部発振器入力が同じ偏光状態にある。
【0018】
いくつかの実施形態では、混合信号を均等化する動作が位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計を使用して実行される。いくつかのそのような実施形態では、位相シフタは熱位相シフタである。いくつかのそのような実施形態では、マッハツェンダ干渉計が不等長のアームを備える。
【0019】
いくつかの実施形態は分散型ファイバ感知システムのためのコヒーレント受信器を提供し、ここで、連続波レーザーはサーキュレータによって前記コヒーレント受信器に提供される後方散乱光を用いて、ファイバを下る伝搬のための光を生成し、前記コヒーレント受信器は、被試験ファイバからの後方散乱光信号を第1の偏光入力信号および第2の偏光入力信号に分割するための第1の偏光ビームスプリッタと、局部発振器(LO)信号を第1のLO信号および第2のLO信号に分割するためのビームスプリッタと、PLC上にある第1の 混合された第2の対の光を第2の電気信号に変換する。
【0020】
いくつかの実施形態では、平衡フォトダイオードの第1の対および平衡フォトダイオードの第2の対がPLCに取り付けられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の偏光ビームスプリッタはPLC上にある。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の偏光ビームスプリッタはPLCの外部にある。
【0023】
いくつかの実施形態は第1のミキサからの第1の対の信号を均等化するための第1の対の可変光減衰器(VOA)と、第1のミキサからの第1の対の信号の光路において第1のミキサと第1の対の平衡フォトダイオードとの間にある第1の対のVOAと、第2のミキサからの第2の対の信号を均等化するための第2の対のVOAとをさらに備え、第2の対のVOAはPLC上にあり、第2の対のVOAは、第2のミキサからの第2の対の信号の光路において第2のミキサと第2の対の平衡フォトダイオードとの間にある。いくつかの実施形態では、VOAの第1の対およびVOAの第2の対のそれぞれのVOAが少なくとも1つの位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計を備える。いくつかのそのような実施形態では、位相シフタが熱位相シフタを備える。いくつかのそのような実施形態では、各マッハツェンダ干渉計の各アームが位相シフタを含む。いくつかのそのような実施形態では、各マッハツェンダ干渉計の1つのアームのみが位相シフタを含む。いくつかのそのような実施形態では各マッハツェンダ干渉計が第1のアームおよび第2のアームを含み、第1のアームおよび第2のアームは等しくない長さである。いくつかのそのような実施形態では、第1のミキサおよび第2のミキサがマッハツェンダ干渉計の一部である。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のミキサおよび第2のミキサが3dBカプラを備える。
【0025】
いくつかの実施形態はスプリッタへの提示のために局部発振器(LO)信号の振幅を減衰させるための第1の光減衰器をさらに備え、第1の光減衰器は平面光波回路(PLC)上にある。いくつかのそのような実施形態では、第1の光減衰器が可変光減衰器を備える。いくつかのそのような実施形態では、第1の光減衰器が固定光減衰器を備える。
【0026】
いくつかの実施形態では、ビームスプリッタは偏光ビームスプリッタである。
【0027】
本発明のこれらおよび他の態様は本開示を検討することにより、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ヘテロダインコヒーレント受信器を有する典型的な位相感応DASシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、光通信集積コヒーレント受信器の合意された一般的な実装の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の態様による、分散ファイバ感知システムのための例示的な統合コヒーレント受信器の半概略図である。
【
図4】
図4は、熱光学位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計に基づく可変光減衰器の半概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の態様による、代替混合段を有するさらなる例示的な統合コヒーレント受信器の半概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の態様による、外部偏光スプリッタを有する集積コヒーレント受信器の半概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、いくつかの実施形態において、DFSシステム、DASシステムのための統合ヘテロダイン光受信器を論じる。いくつかの実施形態では、光受信器が分散型ファイバ感知システムに現在組み込まれている光受信器と同じまたは同様の機能を提供する。例示的な光受信器の概略図を
図3に示す。一般的な機能は、概して、
図1に関して説明したものと同じである。
【0030】
いくつかの実施形態では光学システムが平面光波回路(PLC)プラットフォーム上に構築され、これはシリコン、シリコン、窒化シリコン、およびリン化インジウムを含むいくつかの異なる材料で製造することができる。この回路は、3dBカプラや偏光ビームスプリッタなどの機能素子と、相互接続としての光導波路とを含む。
【0031】
試験中のファイバからの後方散乱光から形成される入力源信号は、偏光ビームスプリッタ(PBS)311aによって2つの偏光経路に分割され、2つの3dBカプラ315a、bに導かれる。いくつかの実施形態ではPBSがPBS/回転子であってもよく、PBS/回転子は偏光のうちの少なくとも1つの回転も実行する。偏光の回転は同じ偏光を有する偏光経路上の光信号、例えば、PLCによって画定される平面内の電界を有するTE偏光をもたらし得る。
【0032】
いくつかの実施形態では(例えば、
図1に関して説明したように)光源レーザーからタップされた局部発振器(LO)信号はまず、可変光減衰器(VOA)313によって振幅が制御され、次いで、3dBカプラによって偏光された光源信号と混合するために、PBS 311bによって2つの偏光経路に分割される。いくつかの実施形態ではVOAは任意であり、いくつかの実施形態では例えば、LO信号がそこから引き出され得る、
図1のスプリッタ113の品質に応じて、省略され得る。いくつかの実施形態では例えば、PBS/回転子が入力ソース信号のために使用される実施形態ではPBS 311bが代わりに、光スプリッタであってもよい。いくつかの実施形態ではLO信号が同様の量の光が2つの偏光状態に結合されるように受信器に結合される偏光維持ファイバ(PMF)を使用して受信器にもたらされ、例えば、いくつかの実施形態ではPLCの平面に対して45度のPMF偏光軸を有する。いくつかの実装形態では、EDFAまたは半導体光増幅器(SOA)のいずれかである光増幅器がVOAの代わりに、またはVOAに加えて、LO経路に挿入される。
【0033】
ミキサとして使用される2つの3dBカプラの出力は、平衡構成でフォトダイオード319a、bに取り出される。VOA317は局部発振器単独の自己混合に起因する出力電流の成分を最小化するために、各経路上の2つの光検出器上の信号を均等化するために使用され、3dBカプラにおける等しい分割からのわずかな偏差を補償する。この手順、すなわちVOA317の使用は、平衡受信器のための標準である。いくつかの実施形態では、たとえば、LO信号の自己混合による出力電流の成分が十分に重要でない場合、VOAは省略され得る。フォトダイオードの電気出力は、いくつかの実施形態では別個のチップであるTIA321a、bに送られる。
【0034】
いくつかのプラットフォーム、例えば、シリコンおよびリン化インジウムでは、すべての構成要素をモノリシックに統合することができる。他の実施形態では例えば、シリコンおよび窒化シリコンでは構成要素の一部、特にフォトダイオードは一般に、別々に作製される。これらの構成要素はPLCに組み込まれた適切な光結合機能を用いてPLCに直接取り付けられることがあり、または、自由空間またはレンズを介して結合された光を用いてPLCの近くに取り付けることができる。
【0035】
VOA機能性は、様々な実施形態において様々な方法で達成することができる。
【0036】
シリコンでは、VOAが典型的には光路内にp-nダイオード接合を含む導波路である。ダイオードの順方向バイアスは接合部への電子および正孔の注入を引き起こし、自由キャリア吸収による光損失を増加させる。逆バイアスは電子および正孔を接合から除去し、吸収損失を減少させる。
【0037】
窒化ケイ素またはシリカなどの受動プラットフォームでは、VOAが典型的には分岐のうちの少なくとも1つに熱光学位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計として製造される。熱光学位相シフタを有するマッハツェンダ干渉計の半概略図を
図4に示す。
図4において、3dBカプラ411は入力光信号を第1のアームおよび第2のアームに分割し、第2の3dBカプラ415はアームの端部を結合し、2つの出力を提供する。
図4の第1のアームである1つのアーム内の一体型電気ヒータ413は、熱光学効果を介して可変位相シフトを提供する。可変位相シフトは、各出力に結合する光の割合を変化させる。一方の出力のみが望まれる場合、他方の出力は、逆反射を回避するように終端される。便宜上、いくつかの実施形態では、ヒータを干渉計の両アームに設けることができる。このようにして、所望の同調を達成するために、より小さい位相シフトを必要とするアームを選択することによって、必要とされる熱出力を最小化することができる。
【0038】
例えば、マッハツェンダ干渉計を有する実施形態において、1つの位相シフタのみを組み込むことが望ましい場合、いくつかの実施形態において、3dBカプラの一方または両方の分割比は50:50以外のものであるように設計することができ、またはいくつかの実施形態において、干渉計アームはわずかに不均等な光学長で作製することができる。このように、1つのアームが可能な製造ばらつきにもかかわらず、所望の光損失範囲を達成するために、小さい正の位相シフトを必要とし、次いで、そのアームのみが位相シフタを必要とすることが、デザインによって決定され得る。このようにして、PLCへの電気接続の数は、最大電力要件を最小化すると同時に低減され得る。
【0039】
シリコンにおいてさえ、DAS受信器において電流注入装置ではなく熱VOA装置を使用することが好ましい場合がある。電流注入は本質的にノイズの多いプロセスであり、減衰は、受信信号を劣化させる望ましくない位相雑音を伴う。逆バイアス動作モードは順方向バイアスよりも効率が低いが、より少ないノイズを生成するという利点を与える。
【0040】
いくつかの実施形態では、電気的または熱的チューニングの代替が導波路材料の物理的長さおよび屈折率の変化の組み合わせを通して光学的位相シフトを提供することができる電気機械的チューニング要素、例えば圧電要素を使用することである。
【0041】
受信器の例示的な代替混合段階を
図5に示す。
図5では、入力信号およびLO信号が
図3に関して説明したように、3dBカプラに供給される。例えば、試験中のファイバからの後方散乱光から形成される入力信号は、偏光ビームスプリッタ(PBS)511aによって2つの偏光経路に分割され、2つの3dBカプラ515a、bに導かれ得る。同様に、LOは、まず、可変光減衰器(VOA)513によって振幅が制御され、次いで、PBS 511bによって2つの偏光経路に分割され、3dBカプラによって偏光源信号と混合されてもよい。しかしながら、3dBカプラは、3dBカプラ515a、b、可変位相シフタ517、および第2の3dBカプラ519a、bからなるマッハツェンダ干渉計の一部である。混合および平衡機能はマッハツェンダ干渉計に統合され、可変位相シフタ517は各マッハツェンダ干渉計のアームのうちの少なくとも1つにある。前述のように、この位相シフタは、熱的、電気的、または電気機械的要素を使用して、位相を調整することができる。このデザインは、別個のVOAの使用と比較して、多くの利点を有し得る。
i.特にマッハツェンダ干渉計がVOAとして使用される場合、よりコンパクトである。
ii.この構成は自己混合生成物、LO*LOおよびsignal*信号の両方のバランスを同時に達成し、これは、一般に、別個のVOAを使用しては不可能である。
iii.バランスは、減衰ではなく位相シフトを使用して達成され、したがって、出力段を通る光損失は最小限に抑えられる。
iv.
図5は、干渉計の両アームに位相シフタを組み込んだ場合を示している。いくつかの実施形態では、1つのアームのみにチューナブル位相シフタを有することで十分である。多くの場合、例えば、最適な信号バランスを達成するために、一方のアームでは小さな位相シフトが実行されるが、一方向の位相シフトしか利用できないので、他方のアームではより大きなシフトが実行される。例えば、ヒータは一般に、屈折率の正の変化、したがって正の位相シフトのみを引き起こすことができる。位相シフトは一般に、製造時に生じるわずかな不均衡を補正するために使用されるので、どのアームが正の位相シフトを必要とするかを予測することは困難であり、したがって、両方のアームに位相シフタを組み込むことが好都合である。
v.上記iv.で説明したように、1つの位相シフタのみを組み込むことが望ましい場合、3dBカプラの一方または両方の分割比は50:50以外のものであるように設計することができ、または干渉計アームは、わずかに不均等な光学長で作製することができる。このように、いくつかの実施形態では両方のアームに位相シフタを設けることができるが、1つのアームが可能な製造ばらつきにもかかわらず、正の位相シフトを必要とし、次いで、そのアームのみが位相シフタを有することをデザインによって決定することができる。このようにして、PLCへの電気接続の数は、最大電力要件を最小化すると同時に低減され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、一体型受信器PLCの外部にある別個の光学構成要素を使用して偏光分割機能を実行することが好ましい。このようにして、偏光分割及び光損失に関してより良好な性能を得ることができる場合がある。そのような構成の一例が
図6に示されており、これは、外部偏光スプリッタ609を有する集積コヒーレント受信器の半概略図である。しかしながら、
図3の一般的な受信器レイアウトは、外部PBS609によって分割され、PLCに入力される入力信号と共に使用される。PLC上では、分割入力信号が2つの3dBカプラ315a、bに向けられる。LO信号はPLCに入力され、いくつかの実施形態では、任意選択の可変光減衰器(VOA)313によって振幅が制御され、次いで、3dBカプラによって偏光源信号と混合するために、スプリッタ611によって2つの経路に分割される。
図3の実施形態のように、ミキサとして使用される2つの3dBカプラの出力は、いくつかの実施形態では任意選択であるVOA317を用いて、各経路上の2つの光検出器上の信号を均等化する平衡構成でフォトダイオード319a、bに取り込まれる。フォトダイオードの電気出力は、TIA321a、bに送られる。いくつかの実施形態では、
図5に関して説明した代替的なレイアウトを代わりに使用することができ、代替的な混合段階が実施される。
【0043】
外部偏光スプリッタは信号を2つの偏光状態に分離し、これらの偏光状態は、PLC上の別個の入力導波路に結合される。LO信号は、1つの単一導波路上に結合される。2つの信号入力およびLOが、各入力上の偏光保持光ファイバを使用して、同じ偏光状態でPLC上に結合されるように構成することが最も便利である。このようにして、LO信号は、偏光回転を必要とすることなく、2つのチャネル間で分割され得る。また、LO信号は偏光保持光ファイバによって搬送され、被試験ファイバからの信号によって経験される程度まで信号劣化を経験しないので、多くの実施形態では、外部PBSまたは内部PBSの使用とは対照的に、内部ビームスプリッタの使用で十分である。しかしながら、いくつかの実施形態では、外部PBSまたは内部(PLCに)PBSを使用することができる。
【0044】
本発明は様々な実施形態に関して議論されてきたが、本発明は本開示によって支持される新規かつ非自明の特許請求の範囲を含むことを認識されたい。
【国際調査報告】