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特表2023-524481コロイド量子ドット発光体及び検出器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】コロイド量子ドット発光体及び検出器
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/30 20060101AFI20230605BHJP
   H01S 5/20 20060101ALI20230605BHJP
   H01L 33/04 20100101ALI20230605BHJP
【FI】
H01S5/30
H01S5/20 610
H01L33/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566275
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021061426
(87)【国際公開番号】W WO2021219856
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】20172462.2
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500454769
【氏名又は名称】ウニフェルジテイト・ヘント
【氏名又は名称原語表記】Universiteit Gent
(71)【出願人】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】エルシンゲル,ルカス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンス,ゼーヘル
(72)【発明者】
【氏名】ファン トゥールハウト,ドリース
【テーマコード(参考)】
5F173
5F241
【Fターム(参考)】
5F173AB03
5F173AB13
5F173AB44
5F173AB49
5F173AF32
5F173AF52
5F173AF54
5F173AH40
5F173AK22
5F241CA46
5F241CB11
(57)【要約】
集積光電子デバイス(100、200、300)は、少なくとも1つの光学モードで、2つの短手方向に屈折率閉じ込めを行い、かつ、長手方向に沿って誘導を行うための受動導波路(31)を支持する、基板(30)を備える。デバイスは、第1の導電型の電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層(11)と、第1の導電型とは反対の第2の導電型の電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層(12)と、溶液処理可能な半導体ナノ結晶の微粒子膜を備えた活性層(20)と、を更に含む。活性層は、ダイオード接合部を形成するために、電荷輸送層に対して配置される。活性層、並びに、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層は、それぞれが、長手方向に垂直な断面で、導波路の少なくとも一部分と重なるように、基板上に更に形成される。活性層は、導波路にエバネッセント結合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積光電子デバイス(100、200、300)であって、
長手方向に沿って光を導き、かつ、少なくとも1つの導波光学モードで、各短手方向に前記導かれた光を屈折率閉じ込めするように構成された受動導波路(31)を支持する、基板(30)、
第1の導電型の電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層(11)、
前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の、電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層(12)、
溶液処理可能な半導体ナノ結晶の微粒子膜を備える活性層(20)であって、前記活性層は、ダイオード接合部を形成するために、前記電荷輸送層に対して配置される、活性層、を備え、
前記活性層、並びに、前記第1の電荷輸送層及び前記第2の電荷輸送層は、前記基板上に形成され、それぞれは、前記長手方向に垂直な断面で、前記導波路の少なくとも一部分で重なり、かつ、前記活性層は、前記導波路に光学的にエバネッセント結合されている、集積光電子デバイス。
【請求項2】
前記活性層微粒子膜の個々の粒子が密に充填され、それによって、前記活性層微粒子膜の隣接粒子間の平均粒子間距離が5ナノメートル未満である、請求項1に記載の集積光電子デバイス。
【請求項3】
前記第1の電荷輸送層、前記活性層、及び前記第2の電荷輸送層を通る電流経路が、前記導波路内には延在しない、請求項1又は2に記載の集積光電子デバイス。
【請求項4】
前記第2の電荷輸送層(12)が、前記導波路(31)と直接物理的に接触している、請求項1~3のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項5】
前記導波路が、前記活性層とは独立して、前記少なくとも1つの導波光学モードで、光を屈折率閉じ込めし、かつ、導くように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項6】
前記活性層の電気的に接触した部分が、前記断面において、前記導波路と重なっている、請求項1~5のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項7】
前記第1の電荷輸送層(11)が有機半導電性正孔輸送層であり、前記第2の電荷輸送層(12)が無機半導電性電子輸送層である、請求項1~6のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項8】
前記第1の電荷輸送層(11)及び前記第2の電荷輸送層(12)、前記活性層(20)、並びに前記導波路(31)が、前記断面において垂直に積層されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項9】
前記第2の電荷輸送層(12)が、前記活性層(20)と前記導波路(31)との間に設けられた半導電性電子輸送層である、請求項8に記載の集積光電子デバイス。
【請求項10】
前記第2の電荷輸送層(12)が前記導波路(31)の輪郭に適合し、それによって、前記導波路にコンフォーマルコーティングを提供する、請求項1~9のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項11】
前記コンフォーマルコーティングされた導波路の両側に設けられ、前記導波路のコーティングされた上面と同じ高さである、クラッド材料(32)を更に含む、請求項10に記載の集積光電子デバイス。
【請求項12】
前記第1の電荷輸送層(11)及び前記第2の電荷輸送層(12)が同一平面上にあり、前記断面において、前記導波路の異なる部分と重なるように配置され、前記第1の電荷輸送層及び前記第2の電荷輸送層の隣接縁がギャップ(21)によって分離され、前記活性層(20)が、前記第1の電荷輸送層及び前記第2の電荷輸送層の少なくとも一部の上、かつ前記ギャップ(21)内に延在している、請求項1~7いずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項13】
前記導波路が前記基板の表面から立ち上がり、スロットによって分離された2つの導波路レールを備えるスロット付き導波路として構成され、前記第1の電荷輸送層及び前記第2の電荷輸送層が前記スロット内に延在している、請求項12に記載の集積光電子デバイス。
【請求項14】
前記活性層微粒子膜の粒子が、コロイド量子ドット、ナノ結晶ペロブスカイト系材料、バルク状半導体ナノ結晶、ナノ板状体からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の集積光電子デバイス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の集積光電子デバイスを備える集積発光ダイオードであって、前記ダイオードは、前記ダイオード接合部の両端に順バイアス状態を誘導するために、前記第1の電荷輸送層(11)と電気的に接触する第1の電極(40)と、前記第2の電荷輸送層(12)と電気的に接触する第2の電極(50)と、を更に備え、前記活性層が、前記順バイアス状態下で前記それぞれの電荷輸送層によって前記活性層に注入された、反対導電型の電荷キャリアの再結合時に、光を生成するように適合されている、集積発光ダイオード。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の集積光電子デバイスを備える集積レーザダイオードであって、前記レーザダイオードは、
前記ダイオード接合部の両端に順バイアス状態を誘導するために、前記第1の電荷輸送層(11)と電気的に接触する第1の電極(40)、及び前記第2の電荷輸送層(12)と電気的に接触する第2の電極(50)であって、前記活性層が、前記順バイアス状態下で前記それぞれの電荷輸送層によって前記活性層に注入された、反対導電型の電荷キャリアの再結合時に、光を生成するように適合されている、第1の電極(40)及び第2の電極(50)、
前記導波路に光学的に結合され、それによって、光学空洞を形成する、光学フィードバック手段、を更に備える、集積レーザダイオード。
【請求項17】
前記光学フィードバック手段が、前記活性層と重なる、前記導波路のそれぞれの部分に配置された一対の分布ブラッグ反射器、又は、前記導波路の反対側の端部に配置された一対の反射器を含み、前記一対の反射器のうちの少なくとも1つが、ブラッグ回折格子、導波路ループミラー、導波路ファセットコーティング、導波路リング共振器からなる群のうちの1つを備える、請求項16に記載の集積レーザダイオード。
【請求項18】
前記ダイオードが、前記基板(30)に平行な平面内で、水平に発光するか、又は、前記基板(30)に対して一定の角度で、前記活性層、並びに、前記第1の電荷輸送層及び前記第2の電荷輸送層に覆われていない、前記基板の不活性領域内で発光するように配置されている、請求項15~17のいずれか一項に記載の集積ダイオード。
【請求項19】
集積光電子デバイス(100、200、300)の活性層における、導波光学モードの電荷電流注入及び屈折率閉じ込めを分離するための方法であって、前記集積光電子デバイスは、第1の導電型の電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層(11)と、前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層(12)と、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む活性層(20)と、を含み、前記活性層は、ダイオード接合部を形成するために、前記電荷輸送層に対して配置され、前記方法は、
前記活性層に光学的に結合されるとともに、長手方向に沿って光を導き、かつ、少なくとも1つの導波光学モードで、各短手方向に前記導かれた光を屈折率閉じ込めするように構成された受動導波路(31)を支持する、基板(30)を提供することと、
前記長手方向に垂直な断面で、前記導波路の少なくとも一部分が重なるように、前記活性層、並びに、前記第1の電荷輸送層及び前記第2の電荷輸送層のそれぞれを、前記基板上に配置することと、を含む、方法。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の集積光電子デバイスの製造方法であって、前記方法は、
基板(30)に受動導波路(31)を提供するステップであって、前記導波路は、長手方向に沿って光を導き、かつ、少なくとも1つの導波光学モードで、各短手方向に前記導かれた光を屈折率閉じ込めするように構成される、提供するステップと、
積層を形成するステップであって、
第2の導電型の電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層(12)と、
半導体ナノ結晶の微粒子膜を備える活性層(20)であって、前記半導体ナノ結晶が溶液中から堆積される、活性層(20)と、
前記第2の導電型とは反対の第1の導電型の、電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層(11)と、を前記基板(30)上に、この順序で前記基板(30)上に順次堆積させることによって、形成するステップと、を含み、
前記堆積された活性層(20)、並びに、前記堆積された第1の電荷輸送層(11)及び前記堆積された第2の電荷輸送層(12)の各々は、前記長手方向に垂直な断面で、前記導波路の少なくとも一部分に重なり、前記活性層(20)は、ダイオード接合部を形成するために、前記電荷輸送層(11、12)に対して配置され、前記活性層(20)は、前記導波路(31)に光学的にエバネッセント結合されている、方法。
【請求項21】
前記堆積された第1の電荷輸送層(11)が有機層であり、前記堆積された第2の電荷輸送層(12)が無機層である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の電荷輸送層(11)を堆積させることが、真空熱蒸着又は有機気相蒸着を含み、及び/又は、前記第2の電荷輸送層(12)を堆積させることが、熱制御された原子層蒸着を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の電荷輸送層(12)を堆積させることが、60℃~300℃の基板温度での原子層蒸着を使用して、多結晶酸化亜鉛(ZnO)のナノメートル層を堆積させることと、任意選択的に約400℃でアニーリングすることと、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記活性層(20)の前記半導体ナノ結晶を溶液中から堆積させることが、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ラングミュア-ブロジェット若しくはラングミュア-シェーファー堆積、又はインクジェット印刷などの湿式処理技術を、出発材料として予め形成された、半導体ナノ結晶の分散体に対して実行することを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
オーバーコーティングされた導波路を得るために、前記第2の電荷輸送層(12)が前記導波路(31)上に直接堆積され、前記方法が、
前記オーバーコーティングされた導波路(31)の両側に、クラッド材料(32)を堆積させ、それによって、前記第2の電荷輸送層(12)が不動態化されることと、
前記堆積されたクラッド材料の上面が、前記オーバーコーティングされた導波路の上面と面一になるように、前記堆積されたクラッド材料(32)を平坦化することと、を更に含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の電荷輸送層(11)を第1の金属電極(40)と接触させることと、
前記第2の電荷輸送層(12)を第2の金属電極(50)と接触させることと、
任意選択的に、前記集積光電子デバイスを封止することと、を更に含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイス及び光検出デバイスの分野に関し、具体的には、コロイド量子ドットなどの溶液処理可能な半導体材料に基づいた、フォトニック集積回路用の発光体及び光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
それらの簡略化された安価な製造のため、コロイド量子ドット(QD)などの溶液処理可能な活性材料に基づいた光電子デバイスは、今日一般的に使用され、エピタキシャルに成長した対応物に取って代わる可能性を有する。利得材料としてコロイド量子ドット層を使用する、電気的にポンピングされたレーザダイオードの実現可能性は、長らく疑問視されてきたが、近年の研究努力が、低減されたオージェ再結合速度を提示し、したがって、念願の量子ドット(QD)レーザダイオードの実現のための有望な候補となる、特別に設計されたコロイドQDの開発につながっている。
【0003】
Lim,J.,et al.“Optical gain in colloidal quantum dots achieved with direct-current electrical pumping”,Nature Mater.17,42-49(2018)が、化学合成された半導体QDが、溶液処理可能なレーザダイオードを使用可能にすることができることを提案する。p-i-nアーキテクチャを有する電気発光デバイスでは、連続的に等級化されたQDを使用して、直流電気ポンピングにより、反転分布及び光学的利得を達成した。薄い活性QD層は、電子輸送層と正孔輸送層との間に挟まれており、特殊な形状の誘電体LiFスペーサは、テーパ正孔注入層の製造用テンプレートとして提供されていた。QD放出層との狭い(幅70~100μm)接触領域は、そのような電流集束アーキテクチャで得られる。最大約18Acm-2の電流密度は、QD又は注入層のいずれも損傷することなく測定されていた。
【0004】
このアプローチにとっての欠点は、電気的にポンピングされたレージングに十分な光学空洞が欠如していることである。更に、正孔注入層の接触部を、小さな接触域に合わせて成形するために、追加のスペーサが必要である。
【0005】
Roh,J.et al.“Optically pumped colloidal-quantum-dot lasing in LED-like devices with an integrated optical cavity”,Nat.Commun.11,271(2020)では、このように特別に設計されたQDが、p-i-n構造上に追加のp型接触電極が設けられている場合は発光ダイオード(LED)として動作し、又は、p型接触電極が除去されている場合は光学的にポンピングされたレーザとして動作するという、二重機能性を有する多層p-i-n構造を実装するために使用される。彼らは、多層スタックの底部低屈折率ITO(L-ITO)カソードに分布帰還型の共振器が直接組み込まれている、光学空洞を提案する。光学モードは、活性層を備えた極薄量子ドットによって弱く閉じ込められる。
【0006】
このアプローチの欠点は、QD媒体内の導波モードの弱い光閉じ込めを得るために、デバイス全体にわたる屈折率プロファイルの慎重なエンジニアリングが必要となることである。電気的にポンピングされたレージングに必須である非常に薄い活性層において、十分に安定したモード誘導を保証するために、ITO及びシリカの非標準混合物が必要である。これらのデバイスで実証される最大電流密度は、0.2Acm-2に制限されており、電気的注入によるレージング閾値を達成するには小さすぎる。
【0007】
したがって、効率的な光電子デバイス、具体的には、溶液処理可能な活性材料から作製されるレーザダイオードが、依然として必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、溶液処理可能な半導体ナノ結晶材料を含む活性層の高注入電流密度を支持し、低損失の光学モード誘導も支持する、効率的な光電子デバイス構造を提供することである。
【0009】
本発明の実施形態の更なる目的は、溶液処理可能な半導体ナノ結晶材料を含む活性層の厚さ、具体的には、DCバイアス電流下で反転可能な薄膜活性層の厚さとは無関係な、堅牢で信頼性の高いやり方で光学モードを誘導しかつ、閉じ込める、光電子デバイス構造を提供する、ことである。
【0010】
上記目的は、本発明による方法及びデバイスによって達成される。
【0011】
本発明は、集積光電子デバイスであって、基板と、第1の導電型の電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層と、第1の導電型とは反対の第2の導電型の、電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層と、溶液処理可能な半導体ナノ結晶の微粒子薄膜、例えば、コロイド量子ドットの微粒子膜(単層、二重層、多層)を備える活性層と、を備える、集積光電子デバイスに関する。基板は、デバイスの長手方向(光軸)に沿って光を導き、導かれた光を、デバイスの各短手方向に、少なくとも1つの光学モードに屈折率閉じ込めするための受動導波路を支持している。活性層は、ダイオード接合部を形成するために、該電荷輸送層に対して配置される。活性層、並びに、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層は基板上に形成され、それぞれは、該導波路における少なくとも1つの光学モードの伝播方向に垂直な断面で、導波路の少なくとも一部分に重なる。活性層は、導波路に光学的に結合される。導波路は、典型的には、非平面導波路、例えば、非スラブであり、その導波路で入手可能な、短手方向の屈折率閉じ込めが二次元であり、導波路の光軸が曲がることを可能にする、すなわち、導波路の長手方向が、導波路を支持している基板に対して変化し得ることを意味する。いずれにしても、導波路の2つの短手方向は、典型的にはサブミクロンの長さスケールを特徴とする、導波路の2つのより小さな寸法に対応し、一方、導波路の長手方向は、導波路の光軸に対応し、導波路の2つの短手方向の寸法よりもずっと大きい距離にわたって延在する。つまり、導波路は、電荷輸送層及び活性層に平行な第1の短手方向、及び電荷輸送層及び活性層に垂直な第2の短手方向で、少なくとも1つの光学モードの屈折率閉じ込めを実現する。このとき、第1の短手方向及び第2の短手方向の両方が、長手方向に垂直である。
【0012】
低いバンドギャップ材料が、活性領域内の光学モード閉じ込めを可能にするための、より高い屈折率を有し、かつ、バンドギャップ及び屈折率が、組成を変更することによって定期的に調整される、レーザダイオードのような従来のIII/V半導体デバイスとは対照的に、溶液処理された半導体ナノ結晶材料に基づいた活性層は、これらの確立された設計原理と適合性がない。その主な理由は、一般的に入手可能な様々な有機電荷輸送層及び無機電荷輸送層のために、活性層に注入される利用可能な電流密度が制限され、したがって、十分なモード閉じ込めを可能にする、溶液処理された半導体ナノ結晶材料に基づいた、厚い活性層を反転させることができないことである。本発明は、導波路によって光学モードに屈折率閉じ込めを行い、モードを活性層と重ねることにより、これらの問題に対する解決策を提供する。
【0013】
本発明の実施形態では、活性層微粒子膜の隣接粒子間の平均粒子間距離は、10nm未満、例えば、5nm以下であってもよく、活性層微粒子膜内の(例えば、ぎっしり充填された)粒子の密集アセンブリをもたらす。活性層微粒子膜は、典型的には不連続であり、すなわち、半導体ナノ結晶粒子が埋め込まれた、連続相ホスト材料を含まない。好ましくは、活性層微粒子膜におけるナノ粒子表面密度は、1.0*1011cm-2よりも大きく、例えば、1.0*1012cm-2よりも大きく、例えば、5.0*1012cm-2以上である。
【0014】
本発明の実施形態では、光電子デバイスは、発光デバイス(例えば、レーザダイオード、LED、又は半導体光増幅器)、光検出デバイス(例えば、光検出器)、又は光変調デバイス(例えば、電気光学変調器)として動作するように構成され得る。
【0015】
本発明の実施形態では、光電子デバイスは、フォトニック集積回路(PIC)として提供されてもよい。それらは、したがって、小型デバイスであり、大量生産可能であり、ウェーハスケールであり、低コストであるという利点がある。溶液処理された半導体ナノ結晶材料は、多種多様な受動導波路プラットフォームと適合性がある。従来のIII/V半導体活性デバイスとは対照的に、活性層の溶液処理された材料は、高価で複雑なエピタキシャル成長環境に依存せず、より低い温度で得ることができる。
【0016】
本発明の実施形態では、活性層の溶液処理可能な半導体ナノ結晶材料は、コロイド量子ドット、ナノ結晶ペロブスカイト系材料、バルク状半導体結晶、及びナノ板状体の群のうちの1つ以上を含む。コロイド量子ドットのような半導体ナノ結晶材料は、大きな材料利得及び波長同調性にとって魅力的である。
【0017】
本発明の実施形態では、第1の電荷輸送層、活性層、及び第2の電荷輸送層を通る電流経路は、導波路内には延在しない場合がある。これは、自由キャリア誘導吸収モーダル損失を低減することができるという利点を有する。
【0018】
本発明の実施形態では、導波路に閉じ込められた少なくとも1つの導波光学モードと活性層との間のモードの重なりによって、活性層は、導波路に光学的にエバネッセント結合され得る。活性層内の少なくとも1つの導波モードの閉じ込め係数は、導波路の幾何形状及び材料、並びに活性層距離の関数で設計することができる。これは、光電子デバイスの飽和出力を制御することができるという利点を有する。
【0019】
本発明の実施形態では、導波路は、活性層とは独立して、該少なくとも1つの導波光学モードを閉じ込め、かつ、導くように構成されている。少なくとも1つの光学モードの閉じ込めは、導波路によって管理される、屈折率閉じ込めである。したがって、導波路に対する、活性層の厚さ変動及び/又は距離変動は、デバイスにおける、光閉じ込め及び導波の損失をもたらさない。光導波路は、概して、非平面導波路、例えば、リブ導波路又はリッジ導波路である。更に、単一の導波モードのみをサポートする光導波路、又は、少数の導波光学モード(例えば、3つ以下の導波光学モード)のみをサポートする光導波路が好ましい。
【0020】
本発明の実施形態では、活性層の接触部が、該断面において、導波路と重なり得る。このことは、電気的閉じ込め及び電荷キャリア再結合が、少なくとも1つの導波光学モードのピーク強度の場所に極めて近接して起こり得、これによりデバイスの内部量子効率が向上するため、更なる利点である。
【0021】
本発明の実施形態では、第1の電荷輸送層は有機半導電性正孔輸送層であってもよく、第2の電荷輸送層は無機半導電性電子輸送層であってもよい。第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層、活性層、並びに導波路は、該断面において垂直に積層され得る。これは、第2の電荷輸送層が、ダイオード接合部の底部接触としても機能することができるという利点を有する。したがって、キャリア誘導モーダル損失の低減を可能にする、更なる底部接触層(カソード)は必要とされない。更に、接着層又は接合層などの追加層は、導波路と活性層との間の垂直積層には必要とされない。これは、そのような実施形態による光電子デバイスを使用して、レーザダイオードにおけるレーザ閾値電流密度を低減する、モーダル損失を低減することができるという利点、及び/又は、活性層との、改善されたモーダル重なりが得られるという利点を有する。
【0022】
本発明の実施形態では、第2の電荷輸送層は、活性層と導波路との間に設けられた半導電性電子輸送層であってもよい。半導電性電子輸送層は、良好な電子移動度、良好な伝導性、及び低減された光学損失のために、最適化され得る。これは、導波路の近くで生じる、少なくとも1つの導波モードのモーダル損失が、更に低減されるという利点を有する。これは、上部接触電極が、導波路、及びそこに導かれた光学モードからより遠くに位置するように、より厚い第1の電荷輸送層を提供することにより、更に改善することができる。
【0023】
本発明の実施形態では、第2の電荷輸送層は導波路の輪郭に適合し得、導波路は、基板の表面から立ち上がる。これは、電荷キャリアの再結合又は生成が、導波路、及び少なくとも1つの導波光学モードのピーク強度に極めて近接して起こるという利点を有する。その結果、デバイスの内部量子効率を増加させることができる。更に、そのような実施形態では、良好な電流集束は活性層において得られ、より大きな電流密度を、活性層から注入又は抽出することを可能にし、更に、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む薄膜活性層の、DC電流バイアスによる反転を可能にする。
【0024】
本発明の実施形態では、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層の隣接縁がギャップによって分離され、活性層が、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層の少なくとも一部に広がり、ギャップ内に延在するように、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層が同一平面上にあり得、該断面において、導波路の異なる部分と重なるように配置され得る。導波路は、ギャップが、スロット付き導波路の2つの導波路レールの間に延在するように、スロット付き導波路であってもよい。そのような実施形態の利点は、活性層との、増加したモーダル重なりを得ることができ、少なくとも1つの導波光学モードに関連付けられた電界が、ギャップ内で比較的均一であることである。
【0025】
別の態様では、本発明は、先の態様の実施形態による集積光電子デバイスを含む、集積発光デバイス、具体的には、集積発光ダイオード(LED)、又は集積レーザダイオード(LD)に関する。本態様の実施形態では、光導波路は、集積発光デバイスの発光層積層、例えば、活性層及び電荷輸送層を含む、LED又はLDの発光層積層に、エバネッセント結合されている。この発光層積層は、典型的には、導波路担持基板に対して垂直に、すなわち、平面(例えば、基板層)を含む導波路と同一平面上にある発光層積層の、導波路及び層の上面に垂直に配向される。
【0026】
更なる態様では、本発明は、第1の態様の実施形態による、集積光電子デバイスを含む、集積光検出器(PD)にも関し得る。光検出器は、ダイオード接合部の両端に逆バイアス状態を誘導するために、第1の電荷輸送層と電気的に接触する第1の電極と、第2の電荷輸送層と電気的に接触する第2の電極と、を更に備え、活性層は、逆バイアス状態下で、反対の導電性電荷の電荷キャリアを生成するように適合されており、ダイオード接合部は、生成された電荷キャリアを、該逆バイアス状態下で、対応する電荷輸送層に分離及び回収するように適合されている。本態様の実施形態では、光導波路は、活性層及び電荷輸送層を含む、集積PDの吸光層積層にエバネッセント結合されている。この吸光層積層は、典型的には、導波路担持基板に対して垂直に、すなわち、平面(例えば、基板層)を含む導波路と同一平面上にある発光層積層の、導波路及び層の上面に垂直に配向される。
【0027】
更なる態様では、本発明は、集積光電子デバイスの活性層における、導波光学モードの電荷電流注入及び屈折率閉じ込めを分離するための方法に関する。集積光電子デバイスは、第1の導電型の電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層と、第1の導電型とは反対の第2の導電型の、電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層と、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を備える活性層と、を備える。活性層は、ダイオード接合部を形成するために、該電荷輸送層に対して配置される。この方法は、活性層に光学的に結合されるとともに、少なくとも1つの光学モードで、光を屈折率閉じ込めし、導くための受動導波路を支持する、基板を提供するステップを含む。屈折率閉じ込めは、細長い導波路本体の2つの短手方向、例えば、導波路の幅及び高さ方向で得られ、一方、少なくとも1つの光学モードで閉じ込められた光は、好ましい、導波路の延設方向に対応する、長手方向に誘導される。本方法は導波路に沿って伝播する、閉じ込められた光の長手方向に垂直な断面で、導波路の少なくとも一部分が重なるように、活性層、並びに、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層のそれぞれを、基板上に配置するステップを、更に含む。
【0028】
このような分離方法の利点は、低損失の受動導波路を、導波路における、信頼性の高い導光を損なうことなく、高い材料利得、及び薄膜活性層と組み合わせることができることである。更に、これにより、損失の多い接触層とのモード重なり、又は、損失の多い接触層へのモード漏れを減らすのに役立つ、より柔軟な設計手法が提供される。これは、屈折率閉じ込め及び電荷キャリア注入の組み合わせが、デバイス積層の単一の活性層で実現される、溶液処理可能な半導体ナノ材料に基づいた、従来技術のレージングデバイスとは対照的である。このような従来技術のデバイスでは、活性層の厚さに相反する要件が存在する。一方では、反転分布及びレージングを可能にする速度で、効率的な電荷キャリア注入を得るために、比較的薄い活性層が必要である。他方では、導波光学モードの、より良い屈折率閉じ込め及びモーダル利得特性を考慮すると、比較的厚い活性層が好ましい。例えば、光は、包囲層、特に高い光学損失を有する金属接触層及び電荷輸送層の中に大きく漏出することなく、より確実に導かれ、それによって、レージング閾値は、純電気的なポンピングによっても得ることができないほど、著しく増加する。
【0029】
本発明の最後の態様は、第1の態様に関する実施形態のいずれか1つによる、集積光電子デバイスの製造方法に関する。本方法は、受動導波路を基板に提供することと、該基板上に、以下の順序で順次堆積させることによって、積層を形成することと、を含む。
(i)第2の導電型の電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層、
(ii)半導体ナノ結晶の微粒子膜を備える活性層であって、半導体ナノ結晶が溶液中から堆積される、活性層、及び
(iii)第2の導電型とは反対の第1の導電型の、電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層。
【0030】
本発明の方法によれば、導波路は、長手方向に沿って光を導き、かつ、少なくとも1つの導波光学モードで、各短手方向に導かれた光を屈折率閉じ込めするように構成される。更に、堆積された活性層、並びに、堆積された第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層の各々は、長手方向(すなわち、導波路における光の伝播方向)に垂直な断面で、導波路の少なくとも一部分に重なる。活性層は、ダイオード接合部を形成するために、2つの電荷輸送層に対して配置され、活性層は、導波路に光学的にエバネッセント結合されている。
【0031】
好ましい実施形態によれば、堆積された第1の電荷輸送層は有機層であり、堆積された第2の電荷輸送層は無機層である。第1の電荷輸送層を堆積させることが、真空熱蒸着又は有機気相蒸着を含み得るとともに、第2の電荷輸送層を堆積させることは、反応性プラズマ(プラズマ支援ALD)による支援の有無に関わらず、熱制御された原子層蒸着(ALD)を含み得る。特に好ましい実施形態では、第2の電荷輸送層を堆積させることは、60℃~300℃の基板温度での原子層蒸着を使用して、多結晶酸化亜鉛(ZnO)のナノメートル層を堆積させ、任意選択的に、約400℃での後続のアニーリングステップを含む。窒素又は水素雰囲気中で、アニーリングを実施してもよい。プラズマ支援原子層蒸着プロセス、又はラジカル支援原子層蒸着プロセスは、とりわけ、低減された温度処理、(例えば、前駆体及びその反応性の選択に関する)より高いプロセス柔軟性、短縮されたパージ時間、前駆体リガンドの除去、改善された膜特性、及び、堆積サイクル当たりの増大された膜成長という、追加の利点とともに使用することができる。
【0032】
好ましい実施形態によれば、活性層の半導体ナノ結晶を溶液中から堆積させることは、予め形成された半導体ナノ結晶、例えば、予め合成されたコロイドコアシェル量子ドットの分散体に対し、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ラングミュア-ブロジェット又はラングミュア-シェーファー堆積、又はインクジェット印刷などの湿式処理技術を行うことを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の電荷輸送層は、オーバーコーティングされた導波路を得るために、導波路上に直接堆積され得る。更に、本方法は、オーバーコーティングされた導波路の両側に、クラッド材料を堆積させ、それによって、第2の電荷輸送層が不動態化されることと、堆積されたクラッド材料の上面が、オーバーコーティングされた導波路の上面と面一になるように、堆積されたクラッド材料を平坦化することと、を含み得る。その上、第1の電荷輸送層を第1の金属電極と接触させるステップ、第2の電荷輸送層を第2の金属電極と接触させるステップ、及び、集積光電子デバイスを封止するステップのうちの1つ以上が実施され得る。
【0034】
本発明の実施形態は、活性層微粒子膜の半導体ナノ結晶を溶液から得ることができるという利点を有し、これは、エピタキシャル成長法、例えば、分子線エピタキシと比較して、より汎用性が高く、安価である。例えば、半導体ナノ結晶の溶液処理は、非晶質表面に対してだけでなく、凹凸表面又はパターン化表面に対しても、単層堆積又は多層堆積を可能にする。更に、従来のエピタキシャル成長法と比較して、より高密度の微粒子膜を得ることができ、ホスト材料を必要としない。
【0035】
本発明の実施形態は、2枚のウェーハ間、又はウェーハとダイとの間の、追加の中間層結合ステップを必要としない、集積光電子デバイスをより容易に製造することができるという利点も有する。その結果、導波路寸法(特に高さ)に対し、比較的厚い中間接合層、例えば、接着層を回避することができ、それによって、導波路光学モードと活性層との間の、モード重なり及びエバネッセント結合効率が改善される。導電性中間接合層の場合、中間接合層を取り除くことにより、電流経路に沿ったより低い直列抵抗がもたらされ、活性層への注入時に、達成可能な電荷キャリアの電流密度が増加する。
【0036】
接合は自己整合ではなく、通常、広い設計裕度を必要とするため、接合を行わない集積光電子デバイス製造は、配列、及びデバイス全体のコンパクト性の観点からも好ましい。パターン化メサの結合はまた、多くの場合、より大きな全体的なデバイスにつながり、チップ上のコンパクトな光電子デバイスの高密度な集積化を妨げる。更に、接合されるメサのエピタキシャル成長材料は、典型的には、本発明の溶液処理された半導体ナノ結晶と比較して、より高いコストを伴う。
【0037】
本発明の特定の態様及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴は、必要に応じて、独立請求項からの特徴、及び他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよく、単に特許請求の範囲に明示的に記載されるものではない。
【0038】
本発明、及び先行技術に対して達成された利点を要約するために、本発明の特定の目的及び利点が上述されている。もちろん、全てのそのような目的又は利点が、必ずしも本発明の任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、本明細書に教示又は示唆され得る、他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書に教示されるような、1つの利点又は利点群を達成又は最適化するやり方で、本発明が具現化され得ることを、当業者は認識するであろう。
【0039】
本発明の上記の態様及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、例として、添付の図面を参照して更に説明される。
【0041】
図1】垂直ダイオード接合部と、基板と面一のストリップ導波路と、を備える、本発明の第1の実施形態による、集積光電子デバイスの断面図である。
図2】水平ダイオード接合部と、スロット付き導波路と、を備える、本発明の第2の実施形態による、集積光電子デバイスの断面図である。
図3】水平ダイオード接合部と、ストリップ導波路と、を備える、本発明の第3の実施形態による、集積光電子デバイスの断面図である。
図4】垂直ダイオード接合部と、基板から立ち上がるリッジ導波路と、を備える、本発明の第4の実施形態による、集積光電子デバイスの断面図である。
図5図4に示された実施形態の斜視図である。
図6】本発明の実施形態による、集積光電子デバイスにおいて使用され得る、光学フィードバック手段の例を図示する。
図7】本発明の実施形態による、集積光電子デバイスにおいて使用され得る、光学フィードバック手段の例を図示する。
図8】本発明の実施形態による、集積光電子デバイスにおいて使用され得る、光学フィードバック手段の例を図示する。
図9】本発明の実施形態による、集積光電子デバイスにおいて使用され得る、光学フィードバック手段の例を図示する。
図10】本発明の実施形態による、集積光電子デバイスにおいて使用され得る、光学フィードバック手段の例を図示する。
図11】本発明の実施形態による、集積光電子デバイスにおいて使用され得る、光学フィードバック手段の例を図示する。
図12図4の実施形態による、集積光電子デバイスの断面における、基本導波モードの空間モードプロファイルを示す。
図13】活性層を除去することにより図12から得られた、基本導波モードの空間モードプロファイルを示す。
【0042】
図面は、概略のみであり、非限定的である。図面では、要素のいくつかのサイズは誇張され得、例示目的のために、オンスケールで描画されないことがある。寸法及び相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に必ずしも対応しない。
【0043】
特許請求の範囲内の任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0044】
異なる図面では、同じ参照符号は、同じ又は類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、特定の実施形態に関して、及び特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0046】
本説明及び特許請求の範囲における第1の、第2の、及び同様の用語は、類似の要素を区別するために使用されるものであって、時間的、空間的、順位的、又は任意の他のやり方のいずれかで順序を説明するために、必ずしも使用されるわけではない。このように使用される用語が適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態が、本明細書に記載又は図示される以外の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0047】
更に、本説明及び特許請求の範囲における上部、下部、前部、後部、下で、上で、などの方向用語は、説明される図面の向きを参照して説明目的で使用され、必ずしも相対位置を説明するために使用されるわけではない。本発明の実施形態の構成要素は、いくつかの異なる向きに位置決めされ得るため、方向用語は、例示の目的のためにのみ使用され、別段の指示がない限り、決して限定することを意図しない。したがって、このように使用される用語が適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態が、本明細書に記載又は図示される以外の向きで動作可能であることを理解されたい。
【0048】
特許請求の範囲内で使用される「備える/含む(comprising)」という用語は、その後列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを除外しないことに留意されたい。したがって、それは、言及されるような記載された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するものと解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ又は構成要素、又はそれらのグループの存在又は追加を除外するものではない。したがって、「手段A及び手段Bを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及び構成要素Bのみからなるデバイスに限定されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスの単に関連する構成要素が、A及びBであることを意味する。
【0049】
本明細書全体を通した「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態では(in one embodiment)」又は「実施形態では(in an embodiment)」という語句の出現は、全てが同一の実施形態を必ずしも指すわけではないが、同一の実施形態を指してもよい。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0050】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を合理化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を補助する目的で、単一の実施形態、図面、又はその説明にグループ化されることがあることを理解されたい。しかしながら、本開示方法は、特許請求される発明が、各特許請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とする、という意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が示すように、本発明の態様は、前述の開示された単一の実施形態の全ての特徴よりも少ないところにある。したがって、詳細な説明に続く特許請求項は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として単独で存在する。
【0051】
更に、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる、いくつかではあるが他ではない特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者によって理解されるように、本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。
【0052】
本明細書に提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることが理解される。他の例では、周知の方法、構造、及び技術は、この説明の理解を曖昧にしないために、詳細には示されていない。
【0053】
定義
溶液処理された材料に言及する場合、当技術分野の一部を形成している任意の堆積技術によって、湿式化学環境、例えば、溶液から得られた材料を意味する。既知の、溶液からの堆積技術には、スピンコーティング、蒸着、遠心分離、ゾルゲル法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、スプレーコーティング、及び沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。溶液処理可能な材料が非晶質固体界面に堆積することができることは、エピタキシャル成長材料に対する明らかな利点である。
【0054】
ナノ結晶材料に言及する場合、立体寸法が全て100nm以下の粒子から材料が構成されていることを意味する。具体的には、量子ドットは、典型的には、各空間方向において20nm以下の粒子を指す。より一般的には、量子ドットは、少なくとも1つの導電型の電荷キャリア向けの3つの空間次元の全てにおいて量子閉じ込め効果を示す、ナノメートルサイズの結晶を指す。
【0055】
本発明の文脈において、所与の断面で、導波路の一部と層が重なっている、又は重なっていると言われる場合、その層に垂直な方向の、その層の投影面は、同じ方向に沿った、導波路のその一部の投影面を含み、その部分はまた、断面平面を含む。
【0056】
第1の態様では、本発明は、集積光電子デバイスに関する。本発明の実施形態によれば、光電子デバイス構造は、主に発光デバイス(例えば、半導体レーザダイオード(LD)又は半導体発光ダイオード(LED))、光増幅デバイス(例えば、半導体光増幅器(SOA))、光検出デバイス(例えば、光ダイオード又は波長分解光検出器)、又は光変調デバイス(例えば、電界吸収効果(例えば、量子閉じ込めシュタルク効果)又は電界屈折効果(例えば、ポッケルス効果)に基づいた電気光学変調器)として機能するように適合することができる。本発明の実施形態による光電子デバイスは、ウェーハスケールフォトニック集積回路として製造可能な集積デバイスである。したがって、本発明の実施形態の利点は、発光、レージング、光増幅、及び光検出を含む、様々な機能を有する、低コストの、大量生産可能でコンパクトな光電子デバイスを提供することである。実施形態による集積光電子デバイスは、より汎用性の高い回路、例えば、変調器に結合されたレージングデバイス、又は前置増幅段を含む光ダイオードを提供するために、同じ集積フォトニックチップ上で組み合わせることができる。
【0057】
図1は、第1の実施形態による集積光電子デバイスの断面図である。光電子デバイス100は基板30を備え、導波路の上面が、基板の上面と同じ高さになるように、基板の中に光導波路31が形成されている。導波路は、少なくとも1つの光学モードを、断面に垂直な方向に誘導するように構成されている。垂直層スタックは、スタックの上部から下部の順に、第1の電極40を形成する接触層と、第1の電荷輸送層11と、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む活性層20と、第2の電荷輸送層12と、を含む、基板の領域を含む導波路の上に形成される。第2の電荷輸送層12及び基板30は、少なくとも導波路31が基板30内に形成される場所、すなわち、第2の電荷輸送層が導波路の上面と物理的に接触する場所に、連続して配置される。第2の電極50は、第2の電荷輸送層12に電気的に接触している、一対の電極として提供される。
【0058】
垂直層スタックは、p-i-nダイオードの構造を有し、p-i-nダイオードに従って動作する。その結果、集積光電子デバイス100は、光電子デバイスによって構成されるダイオード構造の選択されたバイアス状態に応じて、発光デバイス(例えば、レーザダイオード)、又は光検出デバイスとして選択的に動作し得る。ダイオード構造に順バイアスをかけると発光をもたらし、一方、ダイオード構造に逆バイアス又はゼロバイアスをかけると吸光をもたらす。より具体的には、活性層20は、順バイアス状態下で、電荷輸送層11、12のそれぞれにポンピングされ、それぞれにより輸送される多数電荷キャリアが、活性層に効率的に注入され、その中で再結合し、それによって光を生成するように、第1の電荷輸送層11と第2の電荷輸送層12との間に配置される。それとは対照的に、光は、逆バイアス状態又はゼロバイアス状態下で、活性層20内で吸収され、それによって電子正孔対を生成し、電子正孔対は次いで、第1の電荷輸送層11及び第2の電荷輸送層12の多数キャリアに分けられる。当業者は、活性層20、及び2つの電荷輸送層11、12の層厚、及び特定の材料選択が、光電子デバイスの意図された使用に大きく依存し、例えば、発光デバイス若しくは光増幅デバイス(LD、LED、SOA)、光検出器、又は光変調器を実現するために、材料を選択し、デバイス機能に従って層厚を最適化することは、熟練した職人の日常的な作業の中にある、ということを理解するであろう。
【0059】
導波路の存在により、垂直層スタックへの真っ直ぐな裏面接触が形成される可能性が排除されるため、横方向にオフセットされた電極対50による、垂直層スタックの側面接触が好ましい。これは、全ての電気接点が同じデバイス側に設けられ、更に、第2の電極50が、垂直積層のダイオード構造の近くに形成され得、それにより抵抗加熱損失を低減するという利点を有する。本実施形態では、垂直層スタックに向かう横方向の電荷輸送も、第2の電荷輸送層12によって達成される。したがって、垂直層スタックの底面に電気的に接触するための、追加の接触層は必要とされない。高電流密度は、本実施形態による光電子デバイスを備えた半導体レーザダイオードにおいて、反転分布及びレージングに到達するための前提条件である、垂直層スタックの横方向の範囲を制限することにより、活性層で得ることができる。更に、一対の導電性電極50を横方向にオフセットすることにより、導波路31内の自由キャリア誘導光学損失の寄与も低減する。垂直層スタックは、図1の導波路31に対して中央に配置されるように示されているが、導波路に対して非対称に位置決めされてもよい。したがって、光電子デバイス100は、製造段階でのずれ、例えば、リソグラフィ中のずれに対して堅牢である。平坦な上部電極層を形成する第1の電極40の代替として、第1の電極40は、例えば、2つの平行な共面ストライプ電極の形状にパターン化されてもよい。追加のパターン化ステップにも関わらず、このような電極構成は、導波路における導波光学モードに対する、金属誘導伝播損失が更に低減されるという利点を有する。
【0060】
ここで図2を参照すると、本発明の第2の実施形態による集積光電子デバイス200の断面図が描かれている。この実施形態において、導波路は、ギャップ21によって分離された、2つの導波路レール31a、31bから構成される、スロット付き導波路として配置される。第1の電荷輸送層1 1は、導波路の一方の側面のみ、例えば、第1の導波路レール3 1 aが位置する場所で基板表面上に連続的に形成され、第2の電荷輸送層1 2は、導波路の他方の側面のみ、例えば、第2の導波路レール3 1 bが位置する場所で基板表面上に連続的に形成される。第1の電荷輸送層11及び第2の電荷輸送層12の両方は、しかしながら、互いに接触することなく、2つの導波路レール31a、31bの各々の、ギャップに面する側壁が、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層のそれぞれによって覆われるように、ギャップ21に延在する。電荷輸送層によって充填されていない、残りのギャップ部分は、活性層20を含む。第1の電極40及び第2の電極50は、導波路から離れて設けられ、それぞれ第1の電荷輸送層11及び第2の電荷輸送層12に電気的に接触している。図2に図示するように、活性層20は、ギャップ21に含まれるギャップ充填部と、ギャップ21に含まれない拡張部と、を有し得る。まとめると、活性層20の拡張部及びギャップ充填部は、断面図において、T字形の外観を有する。本実施形態の利点は、活性層が、スロット付き導波路の間のギャップに延在する、ギャップ充填部を有することであり、これにより、活性層とのモード重なりが拡大する。更に、スロット付き導波路によって支持された基本モードの電界は、例えば、リッジ導波路の上方で強く減少するエバネッセントテールと比較して、ギャップ領域において比較的均一である。拡張部は、2つの電荷輸送層11、12を、例えば、導波路31a~bの横方向の寸法に対応する、横方向の範囲に重ねてもよい。大きくなりすぎた拡張部の厚さ(例えば、高さ)は、制御することができる。これは、活性層の接触部が、ギャップの外側にも存在し得るという利点を有し、それによって、単位利得又は単位吸収係数は、ギャップ内の活性層の幅が同時に増加せず、すなわち、ギャップ領域内のダイオード構造によって支持される電流密度を著しく変化させることなく、適度に増加される。更に、本実施形態では、2つの電荷輸送層11、12、及び、その間に挟まれた活性層20は、水平p-i-nダイオード接合部、例えば、基板に垂直に配向された接合面を有するダイオード接合部を形成し、積層が垂直積層構成に限定されないことを示す。濃縮された電荷キャリア再結合のための、良好な電気的閉じ込めは、光電子デバイスの長手方向の範囲に対して浅くなり得る、ギャップによって自動的に達成される。したがって、活性層の狭いギャップ充填部における高電流密度は、本実施形態による光電子デバイスを備えた半導体レーザダイオードにおいて、反転分布及びレージングに到達するための前提条件として取得可能である。
【0061】
図3は、図2の第2の実施形態と同様であるが、導波路31がストリップ導波路として提供される、本発明の第3の実施形態による集積光電子デバイス300の断面図である。その結果、ギャップ21は、導波路の構造自体による自然なやり方で提供されない。本実施形態では、ギャップ21は、それぞれが導波路31の一方の側面のみの基板表面上に連続して形成される、第1の電荷輸送層11と第2の電荷輸送層12との間に延在する分離空間(例えば、細長い開口部、スリット)として画定される。ギャップ21は、ギャップ21の各側面上の第1の電荷輸送層11及び第2の電荷輸送層12の一部分の上、例えば、導波路31を覆う第1の電荷輸送層11及び第2の電荷輸送層12の一部分の上、に延在する活性層20によって充填される。したがって、活性層20は、ギャップ21に含まれるギャップ充填部と、ギャップ21に含まれない拡張部と、を有し得る。まとめると、活性層20の拡張部及びギャップ充填部は、断面図において、T字形の外観を有する。好ましくは、ギャップ21は、導波路31からの光を、活性層20内に対称的に結合するか、又はその逆に、例えば、活性層20から導波路31内に結合するように、導波路31に対して中央に配置される。
【0062】
図4は、本発明の第4の実施形態による集積光電子デバイス400の断面図を示す。導波路が基板表面から突出するように、導波路31が基板30の表面上に形成される点で、図1の第1の実施形態とは異なる。したがって、導波路の上面は、基板の表面と同じ高さではない。導波路31の輪郭に適合して、第2の電荷輸送層12は、ほぼ一定の層厚で、導波路31の上面及び側面を覆い、例えば、第2の電荷輸送層12は、基板表面から立ち上がる導波路31をコンフォーマルコーティングしている。クラッド材料32は、導波路31の両側に、導波路のコーティングされた上面と同じ高さで設けられてもよいクラッド材料32は、基板から立ち上がりコーティングされた導波路の上部に設けられた、垂直層スタックに対して、追加の支持部材として機能し得る。本実施形態の更なる利点は、クラッド層32が、第2の電荷輸送層12の不動態化層として機能することである。開口部が、第2の電極50が第2の電荷輸送層12に電気的に接触している、クラッド層32に設けられてもよく、又は、第2の電極50と第2の電荷輸送層12との間の電気的接触を達成するために、クラッド32は限られた横方向の範囲であってもよい。本実施形態は、第2の電荷輸送層12による活性層20の接触部が、導波路31の横方向のサイズ(幅)に制限されるため、活性層20における良好な電流集束及び高電流密度を達成するのに特に適している。更なる利点は、導波路31が、活性層の電流注入及び再結合領域に隣接して位置し、それによって、活性層内で生成又は吸収された光の、導波路への又は導波路からの結合を、それぞれ効率的に行うことができることである。平坦な上部電極層を形成する第1の電極40の代替として、第1の電極40は、例えば、2つの平行な共面ストライプ電極の形状にパターン化されてもよい。追加のパターン化ステップにも関わらず、このような電極構成は、導波路における導波光学モードに対する、金属誘導伝播損失が更に低減されるという利点を有する。
【0063】
図5は、図4の集積光電子デバイス400の斜視図である。導波路31は直線導波路として提供されるが、異なる形状、及び/又は、長手方向(例えば、導波路内の光伝播方向)で変化する形状も有し得る。例えば、導波路は湾曲してもよく、S字形でもよく、又は、導波路に沿った光伝播の方向に別様に屈曲してもよい。電極40、50は、全て垂直層スタックに沿った電流送達又は取り出しを可能にするために、長手方向に延在し得る。
【0064】
図12は、図4及び図5の実施形態における、導波路31の基本導波横方向電気(TE)モードの光強度分布(モードプロファイル)を示す。これは、活性層のみが省略された図13に示すように、同一の導波路、及びほぼ同一の垂直層スタックの、光学モードプロファイルと比較される。この比較から、活性層がない場合の導波路に関連付けられた光学モードプロファイルは、活性層が含まれる場合、実質的に変わらないということになる。つまり、導波路、及びそれに関連付けられた光学モードの一般的な形状及び光学的特性、例えば、1/e空間範囲及び閉じ込め係数は、活性層の存在によって著しく影響されない。図13における、基本導波モードと活性層との重なりは、ある程度のエバネッセント波結合を可能にし、例えば、モード重なり比は、有効モード面積の0.1%~10%の範囲であり得る。
【0065】
基板は、絶縁性基板又は半絶縁性基板であってもよく、例えば、バルクシリコンと、フォトニック集積回路の形成及び機能性のための材料層、例えば、窒化シリコン層(可視光及び赤外光)又はシリコン層(赤外光)との間に、埋め込み酸化物を含むシリコン基板であってもよい。
【0066】
第1の電荷輸送層11は正孔輸送層であり得、好ましくは、有機正孔輸送層として実装されるが、無機正孔輸送層も使用され得る。第1の電荷輸送層の典型的な材料は、半導電性OLED材料、例えば、大きなHUMO-LUMOエネルギーギャップを有する有機分子半導体、例えば、N,N′-Di(1-ナフチル)-N,N′-ジフェニル-(1,1′-ビフェニル)-4,4′-ジアミン(NPD)、テトラフェニルアフタセン(ルブレン)、又は、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)などのカルバゾール誘導体などの、トリフェニルアミンを、含み得る。更に、第1の電荷輸送層は、輸送層、例えば、正孔輸送層、及び注入層(例えば、正孔注入層)、及び/又は、バンド配列若しくは電荷生成のための層を含む、多層であってもよい。多層の第1の電荷輸送層はまた、少なくとも1つの電子遮断層を含んでもよい。第1の電荷輸送層11の層厚は、数十ナノメートルから数百ナノメートル、例えば、2μmまで変化し得る。第1の電荷輸送層の非限定的な例は、電荷生成層(例えば、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HATCN)の層)、正孔輸送層(例えば、NPDの層)、及び正孔注入層(例えば、TCTAの層)からなる、3層の電荷輸送層を含む。
【0067】
第2の電荷輸送層12は、電子輸送層であってもよい。これは、有機半導体材料又は無機半導体材料の薄層、例えば、多結晶酸化亜鉛の薄層、又は酸化亜鉛ナノ結晶の薄層として提供されてもよい。しかしながら、導電性ポリマー又は電子不足分子半導体も使用され得る。本発明のいくつかの実施形態において、第1の電荷輸送層11が光導波路31の近くに配置される場合、この層は、良好な電荷キャリア移動度(例えば、低い抵抗)と低い光減衰とを組み合わせた、半導体材料から形成されることが好ましい。これは、レーザ閾値電流及び消費電力を低下させるという利点を有する。本発明の実施形態は、正孔に関する第1の電荷輸送層、及び電子に関する第2の電荷輸送層に限定されない。例えば、第1の電荷輸送層は電子輸送層であってもよく、第2の電荷輸送層は正孔輸送層であってもよい。
【0068】
前述の実施形態では、第2の電荷輸送層は、少なくとも連続して、導波路が基板内に形成されている場合、基板に対して連続して配置されている、すなわち、第2の電荷輸送層は、導波路の上面と物理的に接触していると説明されてきたが、これは本発明の限定的な特徴ではない。代替的な実施形態では、導波路と比較して低い屈折率を有する低屈折率中間層は、導波路と第2の電荷輸送層との間に介在してもよく、したがって、直接的な物理的接触を回避する。中間層は、例えば、デバイス製造中に、第2の電荷輸送層の均質な成長を開始するためのシード層を有することが有益である実施形態において、使用され得る。好ましくは、このような中間層は、活性層と良好なモード重なりを保持するように薄く保たれる。更に、本発明の実施形態では、導波路は、活性層を含む活性デバイス領域を超えて、長手方向に延在し得る。これは、非常に粗い重ね合わせ精度で、有機正孔輸送層11及びp金属接触電極40のシャドーマスク蒸着を可能にするため、利点であり得る。
【0069】
活性層20を含む半導体ナノ材料は、ダイオード接合部、例えば、基板30に平行に横たわる平面p-i-n接合部を形成するために、第1の電荷輸送層11と第2の電荷輸送層12との間に配置される。このダイオード接合部が正にバイアスされる(例えば、順バイアス状態)とき、輸送された多数キャリア、例えば、正孔及び電子は、各側面から活性層20に注入され、その後再結合し、それによって電気発光を生成する。ダイオード接合部が負にバイアスされる(例えば、逆バイアス状態)、又はバイアスされていない(例えば、ゼロバイアス状態)場合、活性層20由来の、例えば、光吸収及び電子正孔対生成を介した多数キャリアは、ダイオード接合部の両端に存在する内蔵電界の影響下で、それぞれの電荷輸送層に分離される。半導体ナノ結晶材料は、コロイド量子ドット、ナノ板状体、ナノロッド、ナノフレーク、又はハロゲン化セシウム鉛ペロブスカイトナノ結晶などのペロブスカイト構造材料を含んでもよく、 単層、二層又は多層薄膜に充填され得る。コロイドQDは、例えば、Bisschop,S.,et al.“The impact of Core/Shell Sizes on the Optical Gain Characteristics of CdSe/CdS Quantum Dots”,ACS Nano 12(9),9011-9021(2018)に記載されるように、材料利得及び利得閾値の関数で設計された、コア直径及びシェル直径を有するコアシェル型であってもよい。本発明の実施形態で使用することができる別の種類のコロイドQDは、Lim et al.の参照文献に記載されるように、連続的に等級化されたコアシェルQDである。コロイドQDのような半導体ナノ結晶材料は、最大50%に達する充填率、QDシェル上の有機リガンドが、少なくとも部分的に除去されている場合は、それよりも高い充填率で、薄膜活性層に充填されてもよい。コロイドQDのような半導体ナノ結晶材料で充填されていない薄膜活性層の間隙は、典型的には、有機リガンド及び空気を含む。しかしながら、特定の実施形態では、コロイドQDはまた、無機マトリックス又はポリマーマトリックスに埋め込まれてもよい。溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む活性層の光学的特性は、それらのサブ波長不均質性を説明する、効果的な媒体アプローチによって十分に説明されている。結果的に、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む活性層の有効屈折率は、集積導波路に使用された高密度のバルク材料(例えば、窒化シリコン)と比較して相対的に低く、それが、そのような薄膜活性層における堅牢な屈折率閉じ込めが、困難な課題である理由でもある。それとは対照的に、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む、より厚い活性層は、一般的に、DCバイアス電流によって反転することはできず、電気的にポンピングされた利得媒体として使用することはできない。
【0070】
更なる態様では、本発明は、前述の態様の実施形態による集積光電子デバイスを備える、又は、それに基づいた集積発光デバイスに関する。発光デバイスは、発光ダイオード(LED)であってもよい。レーザダイオードとは対照的に、LEDは、インコヒーレントで、かつスペクトル的に広い光束を放出する。LEDの出力スペクトルは、活性層の半導体ナノ結晶材料の電気発光スペクトルによって決定される。自発的に放出された光子の一部は、光電子デバイスの導波路、例えば、より良い光子収集効率のためのマルチモード導波路に結合される。LEDとして使用するため、良好な輝度レベルを達成するために、導波路からの高い光抽出効率が望ましい。これは、導波路の両端面に反射防止コーティングを更に提供することによって、又は、導波路の一方の端部に高反射素子(例えば、広帯域ミラー又は反射コーティング)、及び導波路の他方の端部に反射防止コーティングを提供することによって達成されてもよい。発光デバイスはまた、活性層の自発的な発光が導波路に結合され、その後、デバイスから放出される前に、活性層によって増幅される場合、スーパールミネッセント発光ダイオード(SLED)であってもよい。更に、特定の実施形態による集積光電子デバイスに基づいた発光デバイスは、白色LEDとして構成されてもよい。この目的のために、上述された光電子デバイスの実施形態に従ってそれぞれ配置され、溶液処理された異なる半導体ナノ結晶材料(例えば、異なる波長で放出する異なる直径のQD)を含む、活性層をそれぞれ含む、複数の活性デバイス領域が、同じ受動導波路に沿って設けられ、かつ結合されてもよい。
【0071】
集積発光デバイスはまた、半導体レーザダイオードであってもよい。レージングが可能であるために、本発明の実施形態による光電子デバイスは、利得媒体として活性層を含む、高品質の光学空洞を形成するために、活性層に対して配置されている、光学フィードバック手段、例えば、反射器を更に備える。光学フィードバック手段は、誘導放出によって生成され、繰り返し増幅される空洞内光のために、多くの空洞ラウンドトリップを確保し、最終的に、レーザダイオードによって出力される高スペクトル強度を有する、高コヒーレンスな放射をもたらす。その最も単純な形態では、光学フィードバック手段は、導波路端面を切断することによって実現され得る。切断された導波路によって形成された、光学空洞の達成可能な品質は限定されているが、これはいくつかの用途では十分であり得る。他の様々な光学フィードバック手段が、図6図11を参照して更に説明される、高品質の光学空洞を構想するために使用され得る。典型的には、光学フィードバック手段は、光学空洞の一方の側にある高反射性の第1の部材と、他方の側、すなわち、光が空洞から出て結合される側にある、わずかに低反射性の第2の部材と、を備える。これらの図の目的は、様々な光学フィードバック手段、及びそれらに起因した関連する光学空洞を図示することである。したがって、光電子デバイスの全ての要素がこれらの図に表されるわけではなく、レーザダイオード(LD)の利得媒体として機能する活性層20、光学空洞の一部としての導波路31、及び、空洞を高品質の光学空洞に、例えば、良好なフィネス(F>>1)、及び/又は良好なQ値(Q因子)(例えば、Q>>1、例えば、Q>1000)の光学空洞に変えるために、導波路に光学的に結合されたフィードバック手段だけが表される。LDの出力波長及び/又は空間モードプロファイルを調整、選択及び安定化するために、位相シフト器、例えば、ヒーター、空間モードフィルタ及び/又は変換器が、導波路31に沿って提供され得る。モードロックされたレーザダイオードのためのモード同期を可能にするために、可飽和吸収体は、導波路31に沿って提供されてもよい。この可飽和吸収体は、光電子デバイスの活性層と同じである、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含んでもよいが、それに限定されない。
【0072】
図6では、半導体LD600は、LDの光学空洞として機能し、かつまた、活性層20に対して光学フィードバックを提供する、リング状導波路31、例えば、マイクロリング共振器導波路を備える。結合部601、例えば、方向性結合器は、光学空洞からの光を、LDの出力導波路602に結合するために、リング状導波路31に沿って設けられる。出力導波路602は、残留反射が光学空洞に再び入るのを防ぐために、出力導波路の端面に反射防止コーティングを設けることができる。
【0073】
図7は、図6に示される実施形態の変形例であり、LD700は、円形ではない、例えば、リング共振器導波路として実装されていない、したがって、それ自体によって光学フィードバックを提供することができない、湾曲した導波路31を含む。本実施形態では、追加のリング共振器702、例えば、マイクロリング共振器が提供される。第1の結合部701aを介して、導波路31の第1の端部から光を受け取り、第2の結合部701bを介して、導波路31の第2の端部に光をフィードバックすることによって、光学フィードバック機能を果たす。追加のリング共振器702は、光学空洞に組み込まれた波長フィルタとして使用され得るという利点、例えば、複数の長手方向の空洞モードからレージングするための波長を選択するための、波長選択デバイスとして使用され得る、という利点を有する。
【0074】
図8は、分布帰還型レーザ(DFB)として構成されたLD800を示す。分布反射器、例えば、一対のブラッグ反射器801a~bは、LD800の利得領域の内部に、又は利得領域に隣接して、例えば、活性層20の内部に、又は活性層20に近接して配置される。分布反射器は、回折導波路格子又はクラッド層コルゲーション、変調ドーピング濃度などとして実装されてもよい。一対のブラッグ反射器801a、801bは、位相シフト部、例えば、π/2又は1/4ブラッグ波長シフト部を含み得る。分布反射器は、波長選択フィルタとして機能し、レージング用の所定波長の光学フィードバックを最大化するが、他の波長での光学フィードバック、例えば、競合する長手方向の空洞モードを抑制する。それとは対照的に、図9のLD900は、分布反射器、例えば、一対のブラッグ反射器901a~bが、LD900の利得領域の外側、例えば、活性層20の外側に配置される、分布ブラッグ反射器レーザ(DBR)として構成される。その結果、DBR構成は、電流密度又は電流利得の変化の影響を受けない。
【0075】
図10は、導波路31が、一方の側では導波路ループミラー1003によって終端され、他方の側では、マイクロリング共振器1002、マイクロリング共振器1002への2つのアクセス導波路、及び結合素子1001を含む反射器配置によって終端される、LD1000を示す。2つのアクセス導波路は、それぞれの結合部を介してマイクロリング共振器1002に結合され、結合素子1001の2つの出力分岐、例えば、1-2方向性結合器、又はマルチモード干渉計に対応する。
【0076】
図11に示されたLD1100は、光学空洞としてのリング状導波路31を備える。図6のLD600と比較して、本LD1100の活性層20は、導波路31を完全に重なっている。出力導波路602は、例えば、結合部601によって、光学空洞導波路31にエバネッセント結合され、光学空洞に再び入る外部フィードバックを抑制するための、反射防止手段が設けられていてもよい。あるいは、出力導波路602は、リング状空洞にフィードバックを提供する、外部空洞として使用され得る。この場合、出力導波路602は、独自の反射器を備えてもよい。
【0077】
本発明の実施形態による集積光電子デバイスにおいて、複数の利得部は導波路31に沿って配置され得、各利得部は、本発明の実施形態について上述されるような断面を有する。複数の利得部の各々の活性層における、溶液処理された半導体ナノ結晶材料は、各々に対応する電気発光スペクトルが、他の利得部のものと部分的に重なるように、選択されてもよい。これは、発光デバイス、例えば、レーザダイオードの調整可能な動作波長を拡張するのに有用であってもよく、又は、同じ光学空洞内で、独立した利得変調若しくは吸収変調を達成するために使用されてもよい。
【0078】
発光ダイオード構成又はレーザダイオード構成は、レージング閾値未満で電気的にバイアスされた場合、それぞれ進行波SOA又はファブリペローSOAとしても使用され得る。導波路は、例えば、導波路面上に設けられた反射防止コーティングに加えて、複数の反射の影響を更に低減するために、切断面に対して傾斜され得る。
【0079】
別の態様では、本発明は集積光検出器に関する。光検出器は、第1の態様の実施形態に関連する集積光電子デバイスのうちのいずれかを備えるか、又は使用する。光電子デバイスの個々の層の厚さ及び材料選択は、好ましくは、逆バイアス状態下での、目標とされた吸収波長領域及び検出器応答性向けに最適化される。各部分が、本発明の実施形態による、逆バイアスされた光電子デバイスを備える、多部分化された光検出器を有することが可能である。個々の部分は、例えば、各部分の活性層における、量子ドットの直径又は組成物を適合させることによって、様々な波長又は波長域の光を吸収するように設計されてもよい。この種の多部分光検出器は、分光学的用途で使用されてもよい。
【0080】
先行の実施形態による集積光電子デバイスを、発光デバイスとして動作させるために、電極40、50は、ダイオード接合部の両端に順バイアスを印加する電源に接続される。その結果、反対電荷極性の多数キャリアは、それぞれの電荷輸送層11、12を介して活性層20に注入され、半導体ナノ結晶材料、例えば、溶液処理された量子ドットで再結合し、それによって光を生成する。電源は、活性層20に注入された電流密度を制御する、したがって、デバイスの出力光強度を制御するための、定電流源であってもよい。電流変調手段は、例えば、半導体レーザダイオードにおける利得変調を得るために、光電子デバイスの動作中に、電流振幅変調を提供することができる。光電子デバイスは、デバイス性能の熱ドリフトをたびたび伴う、デバイスにおける大幅な温度上昇を回避するために、例えば、ヒートシンクなどの放熱構造体の上に取り付けられてもよい。例えば、制御ユニット及び熱電冷却ユニットを備えた温度コントローラは、デバイスが使用されているときに、安定した温度状態を確保するために提供されてもよい。
【0081】
先行の実施形態による集積光電子デバイスを、光検出デバイスとして動作させるために、電極40、50は、ダイオード接合部の両端に逆バイアスを印加する電源に接続される。その結果、反対電荷極性の多数キャリアは、それらが光生成電子正孔対として生じ、その後、光電流の形でデバイスの電極40、50から抽出される活性層20から、それぞれの電荷輸送層11、12によって収集される。次いで、光電流は、例えば、増幅及び/又は量子化された、電気ドメインで処理されてもよい。
【0082】
本発明の実施形態による集積光電子デバイスは、当該技術分野において既知の技術に従って、例えばデバイスキャリア上に光電子デバイスを取り付け、かつ、密封され、外部からアクセス可能なパッケージ内、例えばピンコネクタを備えたバタフライパッケージ内でワイヤボンディングして、更にパッケージ化され得る。
【実施例
【0083】
例示的な集積光電子デバイスは、図4に関連する実施形態に示される断面を有する。例えば、高さ300nm、幅1000nmの窒化シリコンストリップ導波路31は、インシュレータ・オン・シリコン基板30から立ち上がり、PIC用の標準的なSOI技術を使用して製造されてもよい。窒化シリコン系誘電体導波路は、典型的には、非常に低い、例えば、わずか1dB/mの光伝播損失を有し、可視スペクトル及び赤外線スペクトル内の光を透過させる。本実施例では、導波路31は、マルチモード導波路として構成されており、活性層への結合効率及び過剰損失のバランスがとれている、基本的なTEモードに加えて、更に高次のTEモードを誘導するが、本発明の他の実施形態は、特にレーザダイオードを埋め込むことを目的とする実施形態では、単一モードの導波路を備えてもよいが、より広いマルチモードの導波路は、高出力レーザダイオードにおいて、増加した出力電力を送達するためにも有益であり得る。第2の電荷層12は、連続半導電性酸化亜鉛の薄層に対応し、無機電子輸送層である。この天然のn型酸化亜鉛の薄層は、例えば、10nmの厚さで、導波路31の上に設けられ、その輪郭をコンフォーマルに覆っている。一対のTi/Au/Ti(20nm/100nm/20nm)金属n接点が酸化亜鉛層上に形成され、第2の電極50を構成する。酸化ケイ素は、オーバーコーティングされた導波路に対する側部クラッド材料32として使用されてきた。側部クラッド材料32の上面は、オーバーコーティングされた導波路の上面、例えば、活性層20の均一な堆積のための平面界面を提供する、導波路31を覆う第2の電荷輸送層12の上面と面一である。本実施例では、活性層20は、溶液処理されたランダムに配向された量子ドット、例えば、球状コロイドCdSe/CdSコアシェル量子ドット、又は等方性双極子配向を有する非球状ナノ結晶の、(例えば、2~3層に対応する)20nm厚の膜からなる。コア直径及びシェル直径の適切な値は、例えば、最大2800cm-1の高い固有材料利得、及び、例えば、
の、活性層での正味誘導放出のための合理的に低い注入電流密度閾値の両方を得るためには、それぞれ3.5nm及び7.5nmであり得る。最終的に、第1の電荷輸送層11は、300nm厚のアルミニウムp-接触が第1の電極40として形成される、600nm厚の有機正孔輸送層として実装されていた。より具体的には、第1の電荷輸送層11は、70nmのTCTA(正孔注入層)、500nmのNPD(正孔輸送層)、及び30nmのHTA-CN(正孔向けバンド配列層)からなる。
【0084】
有限要素シミュレーション及び有限差分時間領域シミュレーションは、良好なLED特性を達成することを目的として、導波路の幾何形状(例えば、幅及び高さ)、及び垂直層スタックの個々の層厚を最適化するために実施されてきた。本シミュレーションは、電気発光スペクトルのピーク波長であると仮定された650nmの波長に対して実施した。このようなシミュレーションは、エリプソメトリ測定から得られた、電荷輸送層11、12及び窒化シリコン導波路31の屈折率に基づいている。第1の電極40の存在下の基本導波モード(及び全ての高次モード)によって経験される金属誘導伝播損失は、第1の電荷輸送層の層厚の関数で、指数関数的に高速に減衰することが見出された。例えば、4dB/cmの金属誘導伝播損失は、500nm厚の第1の電荷輸送層に対するシミュレーションによって見出され、カットバック測定によっても実証されていたが、一方、本実施例の600nm厚の第1の電荷輸送層に対しては、2dB/cmの金属誘導伝播損失が推定されている。酸化亜鉛層の複素屈折率の虚数部は、カットバック測定によって、k=2.5*10-4として決定されている。導波路に閉じ込められた導波光学モードのエバネッセントテールと、損失の多い酸化亜鉛層との不可避の重なりにより、更なる伝播損失が生じる。窒化シリコン導波路の寸法は、シミュレーション結果の一部であり、一方での全体の伝播損失と、他方での、活性層20の量子ドットの導波路31への良好な自発的な双極子発光結合効率との間のトレードオフを構成する。シミュレーション結果に基づいて、前者を12dB/cm、後者を、活性層との約3.6%のモード重なりに対して0.5%~1.0%(導波路幅にわたって積分)として推定した。伝播を克服するために必要な材料利得は、約880cm-1であり、利得を最適化したコアシェル量子ドットの実現可能性の範囲内にある。更に、最適化のために結合効率のみを考慮した場合、単一モードの導波路の最適な導波路高さは、100nm~150nmの範囲にあることが見出されている。
【0085】
以下では、本実施例の集積光電子デバイスの製造方法を簡潔に説明する。厚さ1.0μmの熱酸化物層を有する裸のシリコン試料から始まり、厚さ300nmの窒化シリコン層が、プラズマ化学蒸着によって堆積される。導波路は、電子ビームリソグラフィを使用してシリコン窒化物層をパターン化し、反応性イオンエッチングを行うことによって画定される。あるいは、既成の導波路を有するフォトニック集積回路、例えば、絶縁体(例えば、シリコン基板上の酸化シリコン絶縁層)上に工場でパターン化したシリコン窒化物を提供することができる。
【0086】
次に、10nmの薄い酸化亜鉛(ZnO)(多結晶、連続)層を、導波路をコンフォーマルに被覆する原子層蒸着(ALD)を介して、堆積させる。ZnOの堆積は、約5*10-6mbarの基圧及び60℃~300℃の温度、好ましくは約150℃で行われ、反応性プラズマ(例えば、酸リッチプラズマ及び/又はオゾンリッチプラズマ)によって支援され得る。前駆体(例えば、亜鉛に対するジエチル亜鉛)及び反応物質(例えば、蒸留水蒸気)のガス流圧は、ニードル弁を使用して5*10-3mbarに調節されている。第2の電荷輸送層、例えば、ZnO層のための代替の堆積技術は、ゾルゲル蒸着プロセス又はスパッタ蒸着を含む。また、ZnOナノ結晶の薄層は、代替として、例えば、スピンコーティングを使って堆積してもよい。その後、不動態化、及び15nm厚の酸化アルミニウムを含むエッチング停止層を、(例えば、前駆体としてトリメチルアルミニウムを使用し、反応物として蒸留水蒸気を使用する)ALDによって適用した後、任意選択のアニーリングステップ、例えば、N雰囲及びH雰囲気中の最大温度400℃でのアニールを行う。その結果、良好な性能を有する酸化亜鉛層が、抵抗及び光学損失の観点、例えば、(1.2±0.1)kΩ/sqのシート抵抗、及び約10dB/cmの自由キャリア吸収損失の観点から得られる。希釈KOHを使用して、第2の電極の金属接点(例えば、20nmのTi/100nmのAu/20nmのTi)の形成を可能にするように、導波路の両側で不動態化層を局所的に除去する。このステップのために光リソグラフィ及びリフトオフプロセスを実行してもよい。更なるステップでは、デバイスを超える酸化亜鉛層が、希釈HCl中のウェットエッチングを使って除去され、続いて、酸化ケイ素層の化学蒸着が行われる。この酸化ケイ素層は、導波路が位置し、かつ垂直層スタックの次の層が形成される領域内の酸化亜鉛層を露出させるために、(例えば、電子ビームリソグラフィ、反応性イオンエッチング、及びエッチング停止層を除去するためのKOHウェットエッチングを介して)再び開放される。その結果として、20nm厚の活性層は、トルエンからスピンコーティングされたCdSe/CdS量子ドット(例えば、オレエートキャップされた)の層のリフトオフを使用することによって、酸化亜鉛層の露出部分上に堆積される。シャドーマスク蒸着ステップでは、第1の電荷輸送層を構成する3つの有機層(TCTA、NPD、HAT-CN)が、試料ホルダの継続的な回転の下で得られる。真空熱蒸着の代替として、不活性キャリアガスによる有機気相蒸着を使用して、有機電荷輸送層を堆積させてもよい。最終的に、300nm厚のアルミニウム層が、気相から堆積して、第1の電極を形成する。
【0087】
長さ2mmの活性デバイス領域、及び長さ約1cmの導波路をそれぞれ備える、複数のプロトタイプ集積光電子デバイスが、上述のやり方で製造され、試験されている。47Acm-2の電流密度は、最高光出力電力が観測された第1のデバイスの両端で、100Vの順バイアス電圧で測定されている。第1のデバイスと同じチップで製造された第2のデバイスでは、120Vの順バイアス電圧で100Acm-2の高い電流密度が得られ、更に高い電圧はデバイスの故障を引き起こした。製造された光電子機器による観測可能な光出力のための測定されたオン電圧は、約3Vである。ただし、これらの測定は、試験中に使用された光学式電力計のノイズフロアによって制限され、約2Vの順方向バイアス電圧での真の電気的オンが予想される。取得した電気発光スペクトルの発光ピークは、642nmに位置する。第1の試験デバイスの基本導波モードでは、約2.0nWのスペクトル的に統合された光出力電力が得られ、47Acm-2の電流密度で電気的にポンピングされる。これは、1.5Wcm-2の光出力密度に対応する。より高次のモードは、マルチモードの導波路31に、それのいずれかの端部で直接接続されるように、マルチモード導波路31と同時に、(例えば、幅450nm、及び各々長さ0.4mmの)2つの単一モードの導波路部分を画定することによって、効率的に濾別することができる。測定されたデバイス出力電力に基づいて、最大内部量子効率は約11%と推定されている。
【0088】
更なるプロトタイプ光電子デバイス(長さ0.5mm)は、上述のやり方で製造され、その光検出性能に関して試験されている。プロトタイプはLED使用用に開発されているが、これらは逆バイアス状態下で光検出器として動作する。例示的な光電子デバイスの光検出器の特性評価のために、外部LED(λ=635nm)の光は、導波路31に結合されている。逆バイアス電圧-7Vでは、1.5μA/cmの暗電流が測定され、測定データから、約6%の準最適な量子効率が抽出されている。検出器の量子効率は、バンド配列及びデバイス処理を最適化することによって更に向上させることができる。
【0089】
更なる態様では、本発明は、集積光電子デバイス、例えば、集積発光デバイス又は光検出デバイスにおける、光学的に閉じ込められた導波モードから、活性層幅を切り離す方法に関する。集積光電子デバイスは基板を備え、第1の導電型の電荷キャリアを輸送するための第1の電荷輸送層、第1の導電型とは反対の第2の導電型の、電荷キャリアを輸送するための第2の電荷輸送層、及び、溶液処理された半導体ナノ結晶材料を含む活性層を、基板上に形成する。活性層は、順バイアス状態下、又は、ゼロバイアス状態若しくは逆バイアス状態下で動作可能なダイオード接合部が形成されるように、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層に対して配置される。順バイアス状態下では、活性層は、それぞれの電荷輸送層によって活性層に注入された、反対導電型の電荷キャリアの再結合時に、光を生成するように構成される。ゼロバイアス状態又は逆バイアス状態下では、活性層は、ダイオード接合部に入射する光の吸収時に、反対導電型の電荷キャリアを生成するように構成され、ダイオード構造は、生成された電荷キャリアを、それらの導電型に従って、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層に分離するように更に構成される。第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層は、典型的には、n型半導体層又はp型半導体層として提供される。分離方法は、光電子デバイスの長手方向に垂直な断面、例えば、導波路内の光の伝播方向において、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層、並びに活性層の各々が、導波路の一部と重なるように、基板上に受動導波路を提供することを含む。その結果、導波路は、活性層とは別に提供される。導波路は、少なくとも1つの光導波路モードを閉じ込め、及び誘導するように構成され、閉じ込めは、断面の方向に対応する。更に、活性層に対する導波路の位置は、それらの間の光の相互エバネッセント結合に適合される。活性層と導波路との間のエバネッセント結合は、例えば、導波路によって支持される少なくとも1つの導波光学モードが活性層内に延在し、かつ、活性層と部分的に重なる場合に生じる。導波路は、基板表面から基板内に延在してもよく、又は基板表面から立ち上がってもよい。導波路は、断面において、単一のモード又は複数のモードを支持し得る。本方法は、第1の電荷輸送層及び第2の電荷輸送層、並びに、導波路を通過しない活性層によって形成された、ダイオード接合部に、かつダイオード接合部を通して、電流経路を提供するステップを更に含み得る。これは、導波路がダイオード接合部の一部を形成しないように、ダイオード接合部に対して導波路を配置することによって得ることができる。
【0090】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されてきたが、そのような図示及び説明は、図示又は例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。前述の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明する。しかしながら、上記がテキストにどのように詳細に現れても、本発明は多くの方法で実施され得ることが理解される。本発明は、開示された実施形態に限定されない。
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【国際調査報告】