(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】洞房結節様ペースメーカー細胞のためのマーカーとしてのCD34の使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20230605BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230605BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20230605BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230605BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20230605BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230605BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230605BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20230605BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230605BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/686 Z
C12N5/077
C12N5/10
A61K35/34
A61P9/00
G01N33/53 Y
C12Q1/06
G01N33/48 M
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566355
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2021053646
(87)【国際公開番号】W WO2021220248
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】プロッツェ,ステファニー アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ゴードン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロービラー,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】リム,アモス チュン-ヒン エイドリアン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2G045CB01
2G045FA37
2G045FB01
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA18
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4B063QR32
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4B065CA44
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB47
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
(57)【要約】
本発明は、細胞の集団内の洞房結節様ペースメーカー細胞(SANLPC)を検出するための、およびSANLPCが高度に濃縮された細胞調製物を作製するための、細胞表面マーカーとしてのCD34の使用に関する。また本明細書で提供されるのは、心臓細胞療法のためにSANLPCが濃縮された細胞調製物を使用する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞集団において洞房結節様ペースメーカー心筋細胞(SANLPC)の存在を検出する方法であって、前記細胞集団中で1種または複数の心筋細胞マーカーおよびCD34を発現する細胞を検出することを含み、前記検出された細胞が、SANLPCである、方法。
【請求項2】
前記1種または複数の心筋細胞マーカーが、cTNT、SIRPA、TBX3、TBX18、SHOX2、およびHCN4から選択され、場合により前記SANLPCが、CD90
-、NKX2-5
-、および/またはCD31
-であることにより特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SANLPCによるCD34の発現が、CD34タンパク質またはCD34 mRNAの存在により検出され、場合により前記CD34タンパク質が、抗CD34抗体もしくはその抗原結合断片により検出されるか、または前記CD34 mRNAが、RT-PCRにより検出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞集団が、場合により心臓組織から、場合によりヒト心臓組織から得られた、または多能性幹細胞、多分化能幹細胞、もしくは前駆細胞、もしくは分化された体細胞に由来する、心筋細胞集団であり、
前記多能性幹細胞が、胚性幹細胞もしくは人工多能性幹細胞であり、
前記多分化能幹細胞もしくは前駆細胞が、造血細胞であり、または
前記分化された体細胞が、線維芽細胞である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞集団中のSIRPA
+CD34
+および場合によりCD90
-および/またはCD31
-である細胞の数を決定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
洞房結節様ペースメーカー心筋細胞(SANLPC)について濃縮された心筋細胞集団を作製する方法であって、
(a)ヒト心筋細胞の出発集団を提供すること;
(b)CD34に特異的に結合する薬剤と前記ヒト心筋細胞を接触させること;および
(c)前記薬剤により結合されない細胞から前記薬剤により結合された細胞を単離し、それによりSANLPCについて濃縮されたCD34
+心筋細胞集団を得ること、
を含む、方法。
【請求項7】
前記薬剤が、抗CD34抗体またはその抗原結合断片である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記単離ステップが、蛍光活性化セルソーティングまたは磁気活性化セルソーティングにより実施される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記SANLPCが、CD34
+であることならびにさらにcTNT
+、SIRPA
+、CD90
-、NKX2-5
-、TBX3
+、TBX18
+、SHOX2
+、HCN4
+、および/またはCD31
-であることにより特徴づけられる、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ヒト心筋細胞の前記出発集団が、ヒト多能性幹細胞(hPSC)を培養することにより得られ、場合により前記hPSCが、ヒト胚性幹細胞(ESC)またはヒト人工多能性幹細胞(iPSC)である、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ヒト心筋細胞の前記出発集団が、インビトロで多分化能ヒト細胞または分化されたヒト細胞に由来し、場合により
前記多分化能ヒト細胞が、造血幹細胞もしくは前駆細胞であり、または
前記分化されたヒト細胞が、線維芽細胞もしくは白血球である、
請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ヒト心筋細胞の前記出発集団が、
(a)胚様体を作製するために、BMP成分、場合によりBMP4を含み、場合によりさらにRho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤を含む胚様体培地中でhPSCをインキュベートすること;
(b)心臓血管中胚葉細胞を作製するために、
BMP成分、場合によりBMP4と、
アクチビン成分、場合によりアクチビンAと、
場合によりFGF成分、場合によりbFGF、
を含む中胚葉誘導培地中で前記胚様体をインキュベートすること、
を含む工程により得られる、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ヒト心筋細胞の前記出発集団が、
(a)心臓血管前駆細胞を作製するために、Wnt阻害剤、場合によりIWP2を含む心臓誘導培地中で中胚葉細胞をインキュベートすることであって、場合により前記中胚葉細胞が、心臓血管中胚葉細胞である、インキュベートすること;
(b)前記Wnt阻害剤の非存在下で前記心臓血管前駆細胞を培養すること;および
(c)場合によりSIRPA
+CD90
-により特徴づけられるステップ(b)からの細胞を単離し、それにより心筋細胞の前記出発集団を得ること、
により得られる、請求項6~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記心臓誘導培地が、
BMP成分、場合によりBMP4と、
レチノイン酸と、
アクチビン/結節阻害薬、場合によりSB-431542と、
FGF阻害剤、場合によりPD173074またはSU5402、および/またはVEGF、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ヒト心筋細胞の前記出発集団が、ヒト心臓から得られる、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項6~15のいずれか1項に記載の方法により得られたSANLPCが濃縮された心筋細胞集団。
【請求項17】
請求項16に記載の心筋細胞集団と医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
細胞成分および担体成分からなる医薬組成物であって、前記細胞成分が、前記細胞の80%より多くがSANLPCである細胞集団であり、かつ前記担体成分が、医薬的に許容できる担体を含む、医薬組成物。
【請求項19】
前記SANLPCが、cTNT
+、SIRPA
+、CD90
-、CD31
-、NKX2-5
-、TBX3
+、TBX18
+、SHOX2
+、HCN4
+、および/またはCD34
+により特徴づけられる、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
心臓ペースメーカーを必要とする患者を処置する方法であって、前記患者に請求項16に記載の心筋細胞集団または請求項17~19のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含み、場合により前記心筋細胞が、自家または同種他家である、方法。
【請求項21】
心臓ペースメーカーを必要とする患者を処置することにおける使用のための請求項16に記載の心筋細胞集団または請求項17~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
心臓ペースメーカーを必要とする患者を処置するための医薬品の製造のための請求項16に記載の心筋細胞集団または請求項17~19のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項23】
前記患者が、徐脈、不整脈、心不全、心筋梗塞、同期不全、心房細動、左もしくは右脚ブロック、洞不全症候群、または先天性AVブロックを有する、請求項20に記載の方法、請求項21に記載の使用のための心筋細胞集団もしくは医薬組成物、または請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月1日出願の米国特許仮出願第63/018,824号の優先権を主張するものである。前述の優先権主張出願の内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトの心拍は、2種のペースメーカー組織:洞房結節(SAN)および房室結節(AVN)、により調節される電気パルスにより惹起される。SANは、右心房後壁内に位置し、心拍を開始する一次ペースメーカーとして働く。AVNは、右心房の底部に位置し、心房から心室にシグナルを送る電気的接続を確立する。SANおよびAVNの機能は、加齢、先天性疾患、または心臓手術により影響を受け、疲労~失神にわたる症状を伴う緩徐で不規則な心拍(徐脈性不整脈)を生じる可能性がある。徐脈性不整脈のために現在利用可能な最良の処置は、心拍の電気的活性化を引き継ぐ電子ペースメーカー(EPM)の植込みである(Epstein et al., Heart Rhythm (2008) 5:e1-62)。
【0003】
解剖学的にSANは、SAN頭部、SAN尾部、および移行ゾーンに分別され得る(Chandler et al., Circulation (2009) 119:1562-75; Goodyer et al., Circ Res. (2019) 125:379-97; Wiese et al., Circ Res. (2009) 104:388-97)。SAN頭部は、そこから心拍が開始される、コアペースメーカー細胞を含有する。これらの細胞は、TBX18+NKX2-5-ペースメーカー細胞に発達する静脈洞中のTBX18+前駆体に由来する。NKX2-5発現の欠如は、心臓における全ての他の心筋細胞から、SAN頭部ペースメーカー細胞を識別し、SAN頭部ペースメーカー細胞は、この心臓転写因子を発現することが見出されている(Christoffels and Moorman, Circ Arrhythm Electrophysiol. (2009) 2:195-207; Sizarov et al., Circ Arrhythm Electrophysiol. (2011) 4:532-42)。SAN尾部は発達上、同じTBX18+前駆体から発生するが、尾部細胞は、NKX2-5を上方制御し、TBX18を下方制御する(Wiese、前掲書)。移行ゾーンは、SANと心房作業心筋の間に位置し、ペースメーカー/心房心筋の混合表現型を有する細胞で構成される。
【0004】
およそ21,000のカナダ人が、毎年EPMを受ける。その数は、人口の加齢に伴い徐々に増加する。EPM処置は、相対的に高い合併症率(約16%)と関連し、そのほとんどが胸部外傷、リード合併症、および感染により引き起こされる(Cantillon et al., JACC Clin Electrophysiol. (2017) 3:1296-1305; Kirkfeldt et al., Eur Heart J. (2014) 35:1186-94; Udo et al., Heart Rhythm (2012) 9:728-35)。EPM処置のさらなる欠点は、自律神経応答性の欠如および心臓の不適切な電気的興奮であり、それらは、リモデリングおよび究極的に心不全をもたらし得る(Sanderson and Yu, Eur Heart J. (2012) 33:816-8; Vatankulu et al., Am J Cardiol. (2009) 103:1280-4)。EPMは5~10年ごとの外科的バッテリー交換、および体の成長に適合する能力を欠くEPMリードの定期的な外科的再装着を必要とするため、小児期および思春期患者の合併症リスクはより高い。
【0005】
これらの短所は、SAN部位に直接移植され、無傷のままの心臓伝導システムの成分と一体化し、かつ自律神経系の制御下で機能できる生物学的ペースメーカーを開発するための切実な理由である。加えて、生物学的ペースメーカーは、小児期患者の心臓の成長に適合する可能性がより高い。しかし、生物学的ペースメーカーの開発の進展は、真正のヒトペースメーカー細胞の欠如により妨げられてきた。過去の試験は、ヒト多能性幹細胞(hPSC)から分化された心筋細胞の混合集団が、ブタおよびモルモットの心臓に移植された場合に生物学的ペースメーカーとして機能し得ることを示すが、インプラントの半分のみがペーシング活性を示した(Kehat et al., Nat Biotechnol. (2004) 22:1282-9; Xue et al., Circulation (2005) 111:11-20)。この低い成功率は、移植された細胞集団の異種性によるのかもしれない。
【0006】
したがって、罹患した心臓のペースメーカー活性を回復させる有効な細胞療法の開発が、依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本開示は、細胞集団中で1種または複数の心筋細胞マーカーおよびCD34を発現する細胞を検出することを含む、細胞集団において洞房結節様ペースメーカー心筋細胞(SANLPC)の存在を検出する方法を提供し、検出される細胞は、SANLPCである。1種または複数の心筋細胞マーカーは、例えば、cTNT、SIRPA、TBX3、TBX18、SHOX2、およびHCN4から選択されてよい。幾つかの実施形態において、SANLPCは、CD90-、NKX2-5-、および/またはCD31-であることを特徴とする。SANLPCによるCD34の発現は、例えばCD34タンパク質(例えば、抗CD34抗体またはその抗原結合断片により検出される)またはCD34 mRNA(例えば、RT PCRにより検出される)の存在により、検出されてよい。心筋細胞マーカーの発現はまた、タンパク質レベルまたはRNA転写産物レベルで検出されてよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
幾つかの実施形態において、細胞集団は、心臓組織(例えば、ヒト心臓組織)から得られる、またはPSC(例えば、ESCまたはiPSC)、多分化能幹細胞もしくは前駆細胞(例えば、造血幹細胞または前駆細胞、中胚葉細胞、心臓血管(心臓)前駆細胞)、または例えば、必要ならばリプログラミングおよびインビトロでの分化を通して分化された体細胞(例えば、線維芽細胞または白血球)に由来する、心筋細胞集団(例えば、ヒト心筋細胞集団)である。
【0009】
方法はさらに、細胞集団中のSIRPA+CD34+および場合によりCD90-である細胞の数を決定することを含んでよい。
【0010】
別の態様において、本開示は、SANLPCが濃縮された心筋細胞集団を作製する方法を提供する。この方法は、(a)ヒト心筋細胞の出発集団を提供すること;(b)ヒト心筋細胞をCD34に特異的に結合する薬剤(例えば、抗CD34抗体またはその抗原結合断片)と接触させること;および(c)薬剤により結合されていない細胞から薬剤により結合された細胞を単離すること、それによりSANLPCが濃縮されたCD34+心筋細胞集団を得ること、を含む。単離ステップは、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)により実施されてよい。
【0011】
SANLPCは、例えば、cTNT+、SIRPA+、CD90-、NKX2-5-、TBX3+、TBX18+、SHOX2+、HCN4+、および/またはCD31-であることを特徴としてよい。幾つかの実施形態において、SANLPCは、SIRPA+CD90-CD31-CD34+であることを特徴としてよい。
【0012】
幾つかの実施形態において、ヒト心筋細胞の出発集団は、ヒト胚性幹細胞(ESC)もしくはヒト人工多能性幹細胞(iPSC)などのヒト多能性幹細胞(hPSC)を培養することにより得られる、またはヒト心臓(例えば、供与された心臓)から単離される。他の実施形態において、ヒト心筋細胞の出発集団は、多分化能ヒト細胞(例えば、造血幹細胞または前駆細胞)または分化されたヒト細胞(線維芽細胞または白血球)に由来する。
【0013】
特有の実施形態において、ヒト心筋細胞の出発集団は、(a)BMP成分、場合によりBMP4を含み、場合によりさらにRho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤を含む胚様体培地中でhPSCをインキュベートして胚様体を作製すること;(b)BMP成分(例えば、BMP4)、アクチビン成分(例えば、アクチビンA)、および場合によりFGF成分(例えば、bFGF)を含む中胚葉誘導培地中で胚様体をインキュベートして心臓血管中胚葉細胞を作製すること、を含む工程により得られる。
【0014】
特有の実施形態において、ヒト心筋細胞の出発集団は、(a)Wnt阻害剤(例えば、IWP2)を含む心臓誘導培地中で中胚葉細胞(例えば、心臓血管中胚葉細胞)をインキュベートして、心臓前駆細胞を作製すること;(b)Wnt阻害剤の非存在下で心臓前駆細胞を培養すること;および(c)SIRPA+CD90-を特徴とするステップ(b)からの細胞を場合により単離し、それにより心筋細胞の出発集団を得ること、により得られる。特定の実施形態において、心臓誘導培地はさらに、BMP成分(例えば、BMP4)、レチノイン酸(RA)、アクチビン/結節阻害薬(例えば、SB-431542)、FGF阻害剤(例えば、PD173074またはSU5402)、および/またはVEGFを含む。
【0015】
別の態様において、本開示は、本明細書に記載される方法により得られたSANLPC濃縮心筋細胞集団、およびSANLPC濃縮心筋細胞集団と医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0016】
別の態様において、本開示は、細胞成分および担体成分からなる医薬組成物を提供し、細胞成分は、細胞の80%より多くがSANLPCである細胞集団であり、担体成分は、医薬的に許容できる担体を含む。SANLPCは、例えばcTNT+、SIRPA+、CD90-、CD31-、NKX2-5-、TBX3+、TBX18+、SHOX2+、HCN4+、および/またはCD34+により特徴づけられてよい。例えばSANLPCは、SIRPA+CD90-CD34+および場合によりCD31-であることにより特徴づけられる。
【0017】
さらに別の態様において、本開示は、患者に本発明のSANLPCが濃縮された心筋細胞集団または医薬組成物を投与することを含む、心臓ペースメーカーを必要とする患者を処置する方法を提供し、場合により心筋細胞は、自家または同種他家である。患者は、例えば徐脈、不整脈、心不全、心筋梗塞、同期不全、心房細動、左もしくは右脚ブロック、洞不全症候群、または先天性房室ブロックを有してよい。また提供されるのは、これらの処置方法における使用のためのSANLPCが濃縮された心筋細胞集団および医薬組成物、ならびに心臓ペースメーカーを必要とする患者を処置するための医薬品の製造のためのSANLPCが濃縮された心筋細胞集団の使用である。
【0018】
本発明の他の特色、目的、および利点は、以下の詳細な記載において明白である。しかし詳細な記載は、本発明の実施形態および態様を示すが、例示として与えられるに過ぎず、限定ではないことが理解されなければならない。本発明の範囲内の様々な変更および修正は、詳細な記載から当業者に明白となろう。
【0019】
本発明または出願の書類は、着色された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、必要になれば、そして必要となる料金が支払われれば、米国特許商標庁により提供されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、SANLPCを部分的に濃縮するための陰性選択方策を示す。この図は、分化20日目のNKX2-5
+CD90
-SIRPA
+心筋細胞、およびNKX2-5
-CD90
-SIRPA
+ SANLPCの代表的なフローサイトメトリー分析を示す。ソートされた集団の明視野/GFPチャネルオーバーレイ画像が、右のパネルに示される。スケールバー 200μm。Protze et al., Nat Biotechnol. (2017) 35:56-68も参照されたい。
【
図2A】
図2A~Eは、非遺伝子修飾hPSC株からのSANLPCの作製および単離を示す。
図2Aは、3日目の心臓血管中胚葉からのSANLPCの明細に及ぼすFGFシグナル伝達の影響をテストするために用いられた実験プロトコルのスキームを示す。BMP:BMP4。ACTA:アクチビンA。SB:SB-431542。RA:レチノイン酸。
【
図2B】
図2A~Eは、非遺伝子修飾hPSC株からのSANLPCの作製および単離を示す。
図2Bは、BMP4(2.5ng/ml)、SB(5.4μM)およびRA(0.25μM)シグナル伝達(3~6日目)のバックグランドで4~6日目に20ng/ml bFGF、追加的なFGFなし(内因性)、または低分子FGF阻害剤(FGFi)PD173074(480nM)のいずれかで特定された中胚葉から作製された20日目集団中のNKX2-5
+cTNT
+細胞およびNKX2-5
-cTNT
+ SANLPCの割合のフローサイトメトリー分析を示す。棒グラフは、これらの条件で作製されたNKX2-5
+cTNT
+およびNKX2-5
-cTNT
+細胞の平均割合を示す。t検定:内在性(E)FGFレベルでのNKX2-5
-cTNT
+細胞に対して
**P<0.01;内在性(E)FGFレベルでのNKX2-5
+cTNT
+細胞に対し##P<0.01(n=5)。
【
図2C】
図2A~Eは、非遺伝子修飾hPSC株からのSANLPCの作製および単離を示す。
図2Cは、NKX2-5gfp/wトランスジェニックレポーターと独立してSANLPCを濃縮するために分化20日目のFGFi処置集団からのSIRPA
+CD90
-細胞の単離を示す1対のフローサイトメトリーグラフ(左のパネル)、およびSIRPA
+CD90
-集団を単離した後のNKX2-5:GFP
-cTNT
+ SANLPCの割合のフローサイトメトリー分析(右のパネル)である。
【
図2D】
図2A~Eは、非遺伝子修飾hPSC株からのSANLPCの作製および単離を示す。
図2Dおよび2Eは、HES2 hPSC株からのSANLPCの作製を示す。
図2Dは、BMP4(2.5ng/ml)、SB(5.4μM)およびRA(0.25μM)シグナル伝達(3~6日目)のバックグランドで3~6日目に480nM FGFiで特定された中胚葉から作製された20日目HES2-hPSC由来集団中のNKX2-5
+cTNT
+細胞およびNKX2-5
-cTNT
+ SANLPCの割合のフローサイトメトリー分析を示す。棒グラフは、これらの条件で作製されたNKX2-5+cTNT+およびNKX2-5-cTNT+細胞の平均割合を示す(n=5)。
図2Eは、SANLPCが濃縮されたSIRPA
+CD90
-集団を単離するために用いられたセルソーティング方策(左のパネル)およびSANLPCの付加を確認するSIRPA
+CD90
-集団中のNKX2-5
-cTNT
+細胞の割合のフローサイトメトリー分析を示す。Protze(前掲書)も参照されたい。
【
図2E】
図2A~Eは、非遺伝子修飾hPSC株からのSANLPCの作製および単離を示す。
図2Dおよび2Eは、HES2 hPSC株からのSANLPCの作製を示す。
図2Dは、BMP4(2.5ng/ml)、SB(5.4μM)およびRA(0.25μM)シグナル伝達(3~6日目)のバックグランドで3~6日目に480nM FGFiで特定された中胚葉から作製された20日目HES2-hPSC由来集団中のNKX2-5
+cTNT
+細胞およびNKX2-5
-cTNT
+ SANLPCの割合のフローサイトメトリー分析を示す。棒グラフは、これらの条件で作製されたNKX2-5+cTNT+およびNKX2-5-cTNT+細胞の平均割合を示す(n=5)。
図2Eは、SANLPCが濃縮されたSIRPA
+CD90
-集団を単離するために用いられたセルソーティング方策(左のパネル)およびSANLPCの付加を確認するSIRPA
+CD90
-集団中のNKX2-5
-cTNT
+細胞の割合のフローサイトメトリー分析を示す。Protze(前掲書)も参照されたい。
【
図3A】
図3A~Cは、hPSC由来SANLPC培養物の単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)の結果を示すグラフである。
図3Aは、SANLPC分化の20日目に同定された11の細胞クラスターを示す。
図3Bは、示された遺伝子TNNT2、NKX2-5、TBX3、TBX18、SCN5A、およびNPPAの転写産物カウントを示すt分布型確率的近傍埋め込み法(tSNE)プロットのパネルである。
図3Cは、CD34の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。CM:心筋細胞。
【
図3B】
図3A~Cは、hPSC由来SANLPC培養物の単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)の結果を示すグラフである。
図3Aは、SANLPC分化の20日目に同定された11の細胞クラスターを示す。
図3Bは、示された遺伝子TNNT2、NKX2-5、TBX3、TBX18、SCN5A、およびNPPAの転写産物カウントを示すt分布型確率的近傍埋め込み法(tSNE)プロットのパネルである。
図3Cは、CD34の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。CM:心筋細胞。
【
図3C】
図3A~Cは、hPSC由来SANLPC培養物の単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)の結果を示すグラフである。
図3Aは、SANLPC分化の20日目に同定された11の細胞クラスターを示す。
図3Bは、示された遺伝子TNNT2、NKX2-5、TBX3、TBX18、SCN5A、およびNPPAの転写産物カウントを示すt分布型確率的近傍埋め込み法(tSNE)プロットのパネルである。
図3Cは、CD34の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。CM:心筋細胞。
【
図4A】
図4A~Fは、CD34がSANLPCにより特異的に発現されることを示すグラフである。
図4Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Bは、
図4Aに示されたNKX2-5
-およびNKX2-5
+心筋細胞中のCD34の発現を要約する棒グラフである(n=5)。
図4Cは、20日目SANLPC分化培養物中に存在する全細胞(左)中、および同じ培養物のSIRPA
+CD90
-でゲートされた心筋細胞(右)中のCD34
+CD31
+細胞の割合の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Dおよび4Eは、20日目ALCM(
図4D)およびVLCM(
図4E)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Fは、
図4A、4Dおよび4Eに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し、
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図4B】
図4A~Fは、CD34がSANLPCにより特異的に発現されることを示すグラフである。
図4Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Bは、
図4Aに示されたNKX2-5
-およびNKX2-5
+心筋細胞中のCD34の発現を要約する棒グラフである(n=5)。
図4Cは、20日目SANLPC分化培養物中に存在する全細胞(左)中、および同じ培養物のSIRPA
+CD90
-でゲートされた心筋細胞(右)中のCD34
+CD31
+細胞の割合の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Dおよび4Eは、20日目ALCM(
図4D)およびVLCM(
図4E)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Fは、
図4A、4Dおよび4Eに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し、
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図4C】
図4A~Fは、CD34がSANLPCにより特異的に発現されることを示すグラフである。
図4Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Bは、
図4Aに示されたNKX2-5
-およびNKX2-5
+心筋細胞中のCD34の発現を要約する棒グラフである(n=5)。
図4Cは、20日目SANLPC分化培養物中に存在する全細胞(左)中、および同じ培養物のSIRPA
+CD90
-でゲートされた心筋細胞(右)中のCD34
+CD31
+細胞の割合の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Dおよび4Eは、20日目ALCM(
図4D)およびVLCM(
図4E)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Fは、
図4A、4Dおよび4Eに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し、
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図4D】
図4A~Fは、CD34がSANLPCにより特異的に発現されることを示すグラフである。
図4Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Bは、
図4Aに示されたNKX2-5
-およびNKX2-5
+心筋細胞中のCD34の発現を要約する棒グラフである(n=5)。
図4Cは、20日目SANLPC分化培養物中に存在する全細胞(左)中、および同じ培養物のSIRPA
+CD90
-でゲートされた心筋細胞(右)中のCD34
+CD31
+細胞の割合の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Dおよび4Eは、20日目ALCM(
図4D)およびVLCM(
図4E)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Fは、
図4A、4Dおよび4Eに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し、
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図4E】
図4A~Fは、CD34がSANLPCにより特異的に発現されることを示すグラフである。
図4Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Bは、
図4Aに示されたNKX2-5
-およびNKX2-5
+心筋細胞中のCD34の発現を要約する棒グラフである(n=5)。
図4Cは、20日目SANLPC分化培養物中に存在する全細胞(左)中、および同じ培養物のSIRPA
+CD90
-でゲートされた心筋細胞(右)中のCD34
+CD31
+細胞の割合の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Dおよび4Eは、20日目ALCM(
図4D)およびVLCM(
図4E)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Fは、
図4A、4Dおよび4Eに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し、
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図4F】
図4A~Fは、CD34がSANLPCにより特異的に発現されることを示すグラフである。
図4Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Bは、
図4Aに示されたNKX2-5
-およびNKX2-5
+心筋細胞中のCD34の発現を要約する棒グラフである(n=5)。
図4Cは、20日目SANLPC分化培養物中に存在する全細胞(左)中、および同じ培養物のSIRPA
+CD90
-でゲートされた心筋細胞(右)中のCD34
+CD31
+細胞の割合の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Dおよび4Eは、20日目ALCM(
図4D)およびVLCM(
図4E)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図4Fは、
図4A、4Dおよび4Eに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し、
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図5A】
図5A~Bは、CD34
+心筋細胞が分化の10日目という早期に検出され得ることを示す。
図5Aは、SANLPC分化過程の間の4日目~20日目のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中でのCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図5Bは、分化の経過中のCD34
+心筋細胞の割合を要約するバイオリンプロット(blot)を示す(n=6)。
【
図5B】
図5A~Bは、CD34
+心筋細胞が分化の10日目という早期に検出され得ることを示す。
図5Aは、SANLPC分化過程の間の4日目~20日目のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中でのCD34およびNKX2-5発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図5Bは、分化の経過中のCD34
+心筋細胞の割合を要約するバイオリンプロット(blot)を示す(n=6)。
【
図6A】
図6A~Cは、CD34
+細胞についてのFACSソーティングがSANLPCを濃縮することを示す。
図6Aは、20日目SANLPC分化培養物中のSIRPA
+CD90
+CD34
+およびSIRPA
+CD90
-CD34
-集団の単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。試料は、CD34およびNKX2-5の発現についてFACSの直後のフローサイトメトリーにより分析された。
図6Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のSIRPA
+CD90
-筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。
*P<0.05、
**P<0.01。
図6Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=5)中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(SCN5A、NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=5)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図6B】
図6A~Cは、CD34
+細胞についてのFACSソーティングがSANLPCを濃縮することを示す。
図6Aは、20日目SANLPC分化培養物中のSIRPA
+CD90
+CD34
+およびSIRPA
+CD90
-CD34
-集団の単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。試料は、CD34およびNKX2-5の発現についてFACSの直後のフローサイトメトリーにより分析された。
図6Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のSIRPA
+CD90
-筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。
*P<0.05、
**P<0.01。
図6Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=5)中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(SCN5A、NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=5)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図6C】
図6A~Cは、CD34
+細胞についてのFACSソーティングがSANLPCを濃縮することを示す。
図6Aは、20日目SANLPC分化培養物中のSIRPA
+CD90
+CD34
+およびSIRPA
+CD90
-CD34
-集団の単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。試料は、CD34およびNKX2-5の発現についてFACSの直後のフローサイトメトリーにより分析された。
図6Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のSIRPA
+CD90
-筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。
*P<0.05、
**P<0.01。
図6Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=5)中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(SCN5A、NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=5)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図7A】
図7A~Cは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがSANLPCを濃縮することを示す。
図7Aは、20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。注:MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびペースメーカー含量を評定するためのCD34およびNKX2-5の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図7Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=5)中のSIRPA
+CD90
-筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
**P<0.01。
図7Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=4)中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=4)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図7B】
図7A~Cは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがSANLPCを濃縮することを示す。
図7Aは、20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。注:MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびペースメーカー含量を評定するためのCD34およびNKX2-5の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図7Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=5)中のSIRPA
+CD90
-筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
**P<0.01。
図7Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=4)中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=4)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図7C】
図7A~Cは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがSANLPCを濃縮することを示す。
図7Aは、20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。注:MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびペースメーカー含量を評定するためのCD34およびNKX2-5の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図7Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=5)中のSIRPA
+CD90
-筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
**P<0.01。
図7Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞(n=4)中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=4)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図8A】
図8A~Dは、CD34がHES2 hPSC株から作製されたSANLPCにより特異的に発現されることを示す。
図8Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを運搬しないため、GFPチャネルは、空である。
図8BおよびCは、20日目ALCM(
図8B)およびVLCM(
図8C)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図8Dは、
図8A~Cに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=4)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図8B】
図8A~Dは、CD34がHES2 hPSC株から作製されたSANLPCにより特異的に発現されることを示す。
図8Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを運搬しないため、GFPチャネルは、空である。
図8BおよびCは、20日目ALCM(
図8B)およびVLCM(
図8C)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図8Dは、
図8A~Cに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=4)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図8C】
図8A~Dは、CD34がHES2 hPSC株から作製されたSANLPCにより特異的に発現されることを示す。
図8Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを運搬しないため、GFPチャネルは、空である。
図8BおよびCは、20日目ALCM(
図8B)およびVLCM(
図8C)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図8Dは、
図8A~Cに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=4)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図8D】
図8A~Dは、CD34がHES2 hPSC株から作製されたSANLPCにより特異的に発現されることを示す。
図8Aは、20日目SANLPC分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを運搬しないため、GFPチャネルは、空である。
図8BおよびCは、20日目ALCM(
図8B)およびVLCM(
図8C)分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞中のCD34発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
図8Dは、
図8A~Cに示されたSANLPC、ALCMおよびVLCM分化培養物のSIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のCD34
+細胞の割合を要約する棒グラフである(n=4)。エラーバーは、SEMを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
**P<0.01。ALCM:心房様心筋細胞。VLCM:心室様心筋細胞。
【
図9A】
図9A~Dは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがHES2 hPSC株のSANLPCを濃縮することを示す。
図9Aは、HES2 hPSC株からの20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびソーティング効率を評定するためのCD34の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図9Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを発現しないため、試料は、ソートの直後に固定され、筋細胞マーカーcTNTおよびNKX2-5への細胞内染色が、ペースメーカー含量を評定するために実施された。
図9Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のcTNT
+筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
*P<0.05。
図9Dは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=3)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図9B】
図9A~Dは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがHES2 hPSC株のSANLPCを濃縮することを示す。
図9Aは、HES2 hPSC株からの20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびソーティング効率を評定するためのCD34の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図9Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを発現しないため、試料は、ソートの直後に固定され、筋細胞マーカーcTNTおよびNKX2-5への細胞内染色が、ペースメーカー含量を評定するために実施された。
図9Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のcTNT
+筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
*P<0.05。
図9Dは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=3)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図9C】
図9A~Dは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがHES2 hPSC株のSANLPCを濃縮することを示す。
図9Aは、HES2 hPSC株からの20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびソーティング効率を評定するためのCD34の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図9Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを発現しないため、試料は、ソートの直後に固定され、筋細胞マーカーcTNTおよびNKX2-5への細胞内染色が、ペースメーカー含量を評定するために実施された。
図9Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のcTNT
+筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
*P<0.05。
図9Dは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=3)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図9D】
図9A~Dは、CD34
+細胞についてのMACSソーティングがHES2 hPSC株のSANLPCを濃縮することを示す。
図9Aは、HES2 hPSC株からの20日目SANLPC分化培養物中のCD34
+およびCD34
-集団のMACSに基づく単離のために用いられたセルソーティング方策を示す。MACSソーティングは、SIRPA
+CD90
-筋細胞についての選択を含まない。試料は、筋細胞量を評定するためのSIRPAおよびCD90、およびソーティング効率を評定するためのCD34の発現についてMACSの直後にフローサイトメトリーにより分析された。
図9Bは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。HES2 hPSC株はNKX2-5:GFPレポーターを発現しないため、試料は、ソートの直後に固定され、筋細胞マーカーcTNTおよびNKX2-5への細胞内染色が、ペースメーカー含量を評定するために実施された。
図9Cは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中のcTNT
+筋細胞集団内のNKX2-5
-およびNKX2-5
+細胞の割合を示す(n=5)。エラーバーは、SEMを表す。t検定:
*P<0.05。
図9Dは、ソート前、CD34
+、およびCD34
-でソートされた細胞中の心筋細胞(TNNT2、NKX2-5)、SAN(TBX3、SHOX2、HCN4)、作業心筋細胞および移行ゾーンの心筋細胞(NPPA)についての示されたマーカーのRT-qPCR分析を示す(n=3)。値は、ハウスキーピング遺伝子TBPに相対的な発現レベルを表す。一元配置分散分析に続いてボンフェローニ事後検定。示された試料に対し
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図10A】ヒトSAN組織の単一核RNAシーケンシング(snRNA-seq)結果を示す。
図10Aは、ヒト胎児SAN組織(妊娠20週目)のsnRNA-seqにより同定された18の細胞クラスターを示すtSNEプロットである。10Bは、示された遺伝子(TNNT2、NKX2-5、TBX3、TBX18、SCN5A、およびNPPA)の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。
図10Cは、CD34の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。青色の矢印は、SANクラスター内のCD34発現細胞を示す。
【
図10B】ヒトSAN組織の単一核RNAシーケンシング(snRNA-seq)結果を示す。
図10Aは、ヒト胎児SAN組織(妊娠20週目)のsnRNA-seqにより同定された18の細胞クラスターを示すtSNEプロットである。10Bは、示された遺伝子(TNNT2、NKX2-5、TBX3、TBX18、SCN5A、およびNPPA)の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。
図10Cは、CD34の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。青色の矢印は、SANクラスター内のCD34発現細胞を示す。
【
図10C】ヒトSAN組織の単一核RNAシーケンシング(snRNA-seq)結果を示す。
図10Aは、ヒト胎児SAN組織(妊娠20週目)のsnRNA-seqにより同定された18の細胞クラスターを示すtSNEプロットである。10Bは、示された遺伝子(TNNT2、NKX2-5、TBX3、TBX18、SCN5A、およびNPPA)の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。
図10Cは、CD34の転写産物カウントを示すtSNEプロットである。青色の矢印は、SANクラスター内のCD34発現細胞を示す。
【
図11A】ヒトSANのペースメーカー心筋細胞中に特異的なCD34の発現を示す。
図11Aは、CD34およびTBX3について免疫染色されたヒト胎児SAN組織の断面を示す。スケールバー100μm。
図11Bは、CD34、NKX2-5およびcTNTについて免疫染色されたヒト胎児SAN組織の断面を示す。上段、スケールバー100μm。下段、黄色で囲まれたエリアの高倍率差し込み図、スケールバー50μm。白色の点線は、TBX3
+ NKX2-5
-SANの輪郭を描く。DAPIが、細胞核を視覚化するために用いられた。
【
図11B】ヒトSANのペースメーカー心筋細胞中に特異的なCD34の発現を示す。
図11Aは、CD34およびTBX3について免疫染色されたヒト胎児SAN組織の断面を示す。スケールバー100μm。
図11Bは、CD34、NKX2-5およびcTNTについて免疫染色されたヒト胎児SAN組織の断面を示す。上段、スケールバー100μm。下段、黄色で囲まれたエリアの高倍率差し込み図、スケールバー50μm。白色の点線は、TBX3
+ NKX2-5
-SANの輪郭を描く。DAPIが、細胞核を視覚化するために用いられた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な記載
本開示は、SAN様ペースメーカー心筋細胞または細胞(SANLPC)を検出するために、およびSANLPCが高度に濃縮された心筋細胞集団を作製するために、CD34を細胞表面マーカーとして使用する方法を提供する。幾つかの実施形態において、細胞集団中の心筋細胞の50%より多く(例えば、55%より多く、60%より多く、65%より多く、70%より多く、75%より多く、80%より多く、85%より多く、90%より多く、95%より多く、または99%より多く)は、SANLPCである。本明細書で用いられる用語SANLPCは、心臓組織(例えば、ヒト心臓組織)から得られた(例えば、単離された)洞房結節ペースメーカー心筋細胞(SANLPC)、ならびに天然由来のSANLPCの電気生理学的機能を有しかつ、例えばさらに以下に記載される通り、組織培養物から作製された細胞を包含する。
【0022】
SANLPCの濃縮された集団は、それを必要とする患者(例えば、徐脈、不整脈、心不全、左もしくは右脚ブロック、心房細動、心筋梗塞、または洞不全症候群および先天性AVブロックなどの先天性心疾患の特定の型を有する患者)における心腔の正常なペースメーカー活性および同時収縮を回復するために再生医療において有効であると予想される。本発明の濃縮された細胞集団は、例えば罹患した心臓の、左心室に、または直接SAN、AVN、ヒス束(房室束)に、または左および右脚部位に、植込むことができ、ペースメーカー細胞は、患者の自然な心臓伝導システムの無傷の成分と一体化し、自律神経系の制御下で機能する。これらの植込まれた細胞は、電子ペースメーカー植込み装置の必要性に取って代わり、そのような装置の重大な欠点を克服する。
【0023】
本発明のSANLPC濃縮細胞集団の有用性は、生物学的ペースメーカーとしての使用に留まらない。濃縮SANLPCへのアクセスは、ヒトのSAN生理学のインビトロ試験だけでなく、洞不全症候群などのSANに影響を及ぼす先天性疾患の患者特有の疾患モデリングにも有用である。これらの疾患モデリング試験は、潜在的薬物ターゲットの同定および新規な薬物処置の開発を可能にするであろう。加えて、hPSC由来SANLPCはまた、安全性薬理学的スクリーニングにおいてペースメーカー細胞に及ぼす新規薬物の潜在的に危険なオフターゲット効果を評定するために用いられ得る。
【0024】
I.インビトロでの洞房結節様ペースメーカー細胞の作製
SANペースメーカー細胞は、心筋細胞の1つの型である。心筋細胞は、シグナンル調節タンパク質α(SIRPA)および1種または複数の心筋トロポニン(例えば、心筋トロポニンIまたは心筋トロポニンT(「cTNT」))の発現により特徴づけられる細胞である。心筋細胞はまた、CD90陰性である。発達上、心筋細胞前駆細胞は、心臓中胚葉細胞(心臓血管中胚葉または中胚葉細胞としても知られる)に由来し、cTNT陽性およびNK2ホメオボックス5(NKX2-5)陽性であることにより特徴づけられる。前駆細胞は、NKX2-5+である、心房心筋細胞および心室心筋細胞、またはNKX2-5-である、ペースメーカー細胞に分化する。さらなる実施形態において、心臓ペースメーカー細胞はさらに、TBX3+TBX18+SHOX2+HCN4+NKX2-5-により特徴づけられる。
【0025】
SAN細胞中の自発的活動電位生成は、HNC4およびHCN1イオンチャネルによりコードされる、いわゆるファニー電流(IF)により誘導される(Goodyer、前掲書)。この電流は、活動電位発火閾値に達するまで、拡張期緩徐脱分極を起こす。心室心筋細胞および心房心筋細胞(心室作業心筋細胞および心房作業心筋細胞とも呼ばれる)は、活動電位の自発的脱分極を呈さず、成熟状態では典型的には自発的活動性でない。ペースメーカー細胞および作業心筋細胞はさらに、それらの活動電位の最大立ち上がり速度において異なり、それは、心臓ナトリウムイオンチャネル(SCN5A)の低い発現レベルによりペースメーカー細胞ではかなり緩徐である(Goodyer,前掲書; Liu et al., Adv Drug Deliv Rev. (2016) 96:253-73)。加えて、ペースメーカー細胞は、作業心筋細胞に比較してより短い活動電位持続時間を有する。
【0026】
種々の細胞型が、SANLPCなどの心筋細胞のインビトロ(エクスビボを含む)作製のために細胞供給源として用いられてよい。供給源細胞は、例えばヒト多能性幹細胞(PSC)であってよい。本明細書で用いられる用語「多能性の」または「多能性」は、自己複製しかつ3種の生殖層:内肺葉、中胚葉、または外肺葉のいずれかの細胞に分化する細胞の能力を指す。「多能性幹細胞」または「PSC」は、例えば、胚性幹細胞、体細胞核移植により誘導されるPSC、および人工PSC(iPSC)を含む。本明細書で用いられる用語「胚性幹細胞」、「ES細胞」、または「ESC」は、早期胚から得られる多能性幹細胞を指し;幾つかの実施形態において、この用語は、過去に樹立されたES細胞株から得られたES細胞を指し、近年のヒト胚の破壊により得られた幹細胞を含まない。
【0027】
SANLPCなどの心筋細胞を作製するための細胞の簡便な一供給源は、iPSCである。iPSCは、1つまたは複数のリプログラミング因子を細胞に導入すること、または細胞と接触させることにより、成体体細胞または部分分化細胞または最終分化細胞(例えば、線維芽細胞、造血系列の細胞、筋細胞、神経細胞、表皮細胞、または同様のもの)などの、非多能性細胞から人工的に作製された多能性幹細胞の1つの型である。iPSCを生成する方法は、当該技術分野で知られており、例えば、非限定的に、SOX2(遺伝子ID:6657)、KLF4(遺伝子ID:9314)、c-MYC(遺伝子ID:4609、NANOG(遺伝子ID:79923)、および/またはLIN28/LIN28A(遺伝子ID:79727))と組み合わせた、1種または複数の遺伝子(例えば、POU5F1/OCT4(遺伝子ID:5460)の発現を誘導することを含む。リプログラミング因子は、様々な手段(例えば、ウイルス、非ウイルス、RNA、DNA、またはタンパク質送達)により送達されてよく、あるいは、内因性遺伝子が、例えばCRISPRおよび他の遺伝子編集ツールを用いることにより、活性化されて、非多能性細胞をPSCにリプログラミングしてもよい。
【0028】
ESCおよびiPSCを含む、PSCを単離および維持する方法は、当該技術分野で周知である。例えばThomson et al., Science (1998) 282(5391):1145-7; Hovatta et al., Human Reprod.(2003) 18(7):1404-09; Ludwig et al., Nat Methods (2006) 3:637-46; Kennedy et al., Blood (2007) 109:2679-87; Chen et al., Nat Methods (2011) 8:424-9;およびWang et al., Stem Cell Res.(2013) 11(3):1103-16を参照されたい。
【0029】
様々な系列の細胞へのPSCの分化を誘導するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、数多くの方法が、例えばKattman et al., Cell Stem Cell (2011) 8(2):228-40; Burridge et al., Nat Protocols (2014) 11(8):855-60; Burridge et al., PLoS ONE (2011) 6:e18293; Lian et al., PNAS. (2012) 109:e1848-57; Ma et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol. (2011) 301(5):H2006-H2017; WO2016/131137号;WO2018/098597号;および米国特許第9,453,201号に示される通り、PSCを心筋細胞に分化するために存在する。
【0030】
ヒト中胚葉細胞および心臓前駆細胞などの多分化能細胞もまた、用いられてよい。本明細書で用いられる「多分化能」細胞は、分化により1種より多くの細胞型を生じることができる細胞を指す。多分化能細胞は、多能性細胞より限定された分化能を有する。
【0031】
幾つかの他の実施形態において、細胞供給源は、心筋細胞にリプログラミングされ得る、分化された体細胞である。例えば、細胞供給源は、線維芽細胞であってよい(例えば、Engel and Ardehali, Stem Cells Int.(2018) 2018:1-10参照)。心臓発達転写因子Gata4、Mef2c、およびTbx5(GMT)を過剰発現することによる心筋細胞様細胞への線維芽細胞の直接的リプログラミングが、報告されている(Ieda et al., Cell.(2010) 142(3):375-86)。幾つかの実施形態において、SANLPCはその後、本明細書に記載される方法を利用して心筋細胞の集団から濃縮されてよい。
【0032】
発達上、心筋細胞前駆細胞または心筋前駆細胞は、心臓中胚葉細胞に由来し、cTNT+であることにより特徴づけられる。hPSC(例えば、hESCおよびヒトiPSC)からヒト心臓前駆体を作製する一方法は、(1)アクチビンシグナル伝達経路の活性化因子(例えば、アクチビン)および骨形成タンパク質4(BMP4)受容体の活性化因子を含む培地とPSCを接触させることにより、hPSCを中胚葉に分化するように誘導すること;ならびに(ii)中胚葉細胞をWntシグナル伝達アンタゴニストと接触させることにより、中胚葉を心臓前駆体に分化するように誘導すること、を含む。
【0033】
アクチビンは、発達全体を通して多くの細胞型により生成されるタンパク質のトランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-β)ファミリーのメンバーである。アクチビンAは、I型(Act RI-AおよびAct RI-B)およびII型(Act RII-AおよびAct RII-B)セリン-トレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体に結合するジスルフィド結合されたホモダイマー(2つのベータA鎖)である。アクチビンは主に、活性化アクチビン受容体複合体が受容体関連SMADをリン酸化する際にSMAD2/3タンパク質を通してシグナル伝達する。得られたSMAD複合体は、細胞増殖および分化を含む、種々の機能を調節する。
【0034】
BMPは、トランスフォーミング成長因子ベータスーパーファミリーの一部である。BMP4は、BMPR1およびBMPR2として知られるセリン-トレオニンキナーゼ受容体の2つの異なる型に結合する。これらの受容体を介したシグナル伝達は、SMADおよびMAPキナーゼ経路を介して起こって、BMP4の標的遺伝子の転写を実行する。BMP4およびBMP2を含む、様々なBMPが、本明細書に提供された細胞を作製する際の使用に適する。
【0035】
Wntシグナル伝達アンタゴニストは、Wntシグナル伝達経路に拮抗する分子(例えば、化合物;核酸、例えば非コード化RNA;ポリペプチド;およびポリペプチドをコードする核酸)であり、したがって減少された経路の出力(すなわち、減少された標的遺伝子発現)をもたらす。例えば、Wntシグナル伝達アンタゴニストは、経路の正の調節成分を不安定にすること、その発現を減少させること、もしくはその機能を阻害すること、または経路の負の調節成分を安定化すること、その発現もしくは機能を増強すること、により機能し得る。したがってWntシグナル伝達アンタゴニストは、経路の1つまたは複数の負の調節成分をコードする核酸であり得る。Wntシグナル伝達アンタゴニストは、経路の負の調節成分をmRNAまたはタンパク質レベルのどちらかで安定化させる低分子または核酸でもあり得る。同様に、対象のWntシグナル伝達アンタゴニストは、mRNAまたはタンパク質のレベルで成分を阻害する経路の正の調節成分の低分子または核酸阻害剤(例えば、マイクロRNA、shRNAなど)であり得る。幾つかの実施形態において、Wntシグナル伝達アンタゴニストは、低分子化合物(例えば、Xav-939、C59、ICG-001、IWR1、IWP2、IWP4、IWP-L6、ピルビニウム、PKF115-584、および同様のもの)である。特有の実施形態において、Wntアンタゴニズムは、Xav-939とC59の併用、またはXav-939とIWP-L6の併用により実現されてよい。米国特許出願公開第180251734号も参照されたい。
【0036】
例えば、心臓前駆細胞を作製するために、PSCは最初に、胚様体(EB)を形成させるために凝集体に導入されてよい。それを実行するために、PSC(例えば、hPSC)は、BMP成分を含み、場合によりさらにRho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤を含むEB培地中で一定時間(例えば、8~24時間)培養されて、胚様体を作製してよい。EB培地は、ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)基礎培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)基礎培地、またはStemPro(登録商標)-34と、それに添加されるBMP成分および/またはROCK阻害剤で作製されてよい。幾つかの実施形態において、EB培地中のBMP4の濃度は、約0.1と10ng/mlの間(例えば、約0.5~5ng/ml、または約0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ng/ml)である。幾つかの実施形態において、EB培地中のROCK阻害剤(例えば、Y-27632;Biotechne-Tocris #1254)は、1~20μM(例えば、10μMなどの5~15μM)の範囲であってもよい。例えばEB培地は、1ng/mlのBMP4および10μMY-27632を含有してよい。
【0037】
EBはその後、アクチビンA、BMP4、および場合により塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;塩基性FGF、FGF-塩基性、FGF-β、FGF2、ヘパリン結合成長因子、またはヘパリンに結合するFGFファミリーメンバーとしても知られる)を含む第一の分化培地(中胚葉誘導培地)中で培養されてよい。中胚葉誘導培地は、RPMI基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、DMEM基礎培地、IMDM基礎培地、またはStemPro(登録商標)-34と、それに添加される指示された因子で作製されてよい。アクチビンA、BMP4、およびbFGF濃度の選択は、高割合のALDH+細胞および低割合のCD235a+細胞を含有し、かつ20日目に高割合のcTNT+細胞を作製する、中胚葉集団の同定に基づいてよい。幾つかの実施形態において、中胚葉誘導培地中のBMP4の濃度は、約0.1と30ng/mlの間(例えば、約5~10もしくは5~15ng/ml;または約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ng/ml)である。幾つかの実施形態において、中胚葉誘導培地は、約0.1および30ng/ml(例えば、約5~10もしくは5~15ng/ml;または約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ng/ml)の濃度でアクチビンAを含む。幾つかの実施形態において、中胚葉誘導培地は追加的に、0.1~30ng/ml(例えば、約5~10もしくは5~15ng/ml;または約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ng/ml)のbFGFを含有する。特有の実施形態において、中胚葉誘導培地は、約10ng/mlのBMP4、約6ng/mlのアクチビンA、および約5ng/mlのbFGFを含有する。hPSCは、中胚葉誘導培地中で約1~3日間(例えば、1、1.5、2、2.5、または3日間)培養されてよい。
【0038】
この培養ステップの後、細胞はさらに、IWP2などのWntシグナル伝達アンタゴニストを含み、場合によりVEGFを含む第二の分化培地(心臓誘導培地)中で少なくとも1~3日間(例えば、1、1.5、2、2.5、または3日間)培養されてよい。心臓誘導培地は、RPMI基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、DMEM基礎培地、IMDM基礎培地、またはStemPro(登録商標)-34と、それに添加される指示された因子で作製されてよい。幾つかの実施形態において、心臓誘導培地は、IWP2を0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10μMなどの0.1~10μMのIWP2、および場合により0.1~30ng/mlのVEGF(例えば、5~10もしくは5~15ng/ml;または0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25,または30ng/ml)のVEGFを含有してよい。ペースメーカー細胞への分化系列決定を促進するために、心臓誘導培地は、BMP4、レチノイン酸(RA)、アクチビン/結節阻害剤(例えば、SB-431542)、FGF阻害剤(PD173074またはSU5402)、および/またはVEGFの1つまたは複数を含有してよい。幾つかの実施形態において、心臓誘導培地は、0.5~10ng/ml(例えば、1~5ng/mlまたは2.5ng/ml)でBMP4、0.05~2μM(例えば、0.1~0.5μMまたは0.125μM)でRA、0.1~10μM(例えば、1~5μMまたは3μM)でSB-431542、0.05~2μM(例えば、0.5~1.5μMまたは1μM)でPD173074を含有する。
【0039】
心臓誘導培地中でのインキュベーションの後、細胞をさらに、心臓基礎培地中でさらに1~3週間(例えば、7~15日間)培養して、心筋細胞を含む細胞集団を得てよい。心臓基礎培地は、例えばRPMI基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、DMEM基礎培地、IMDM基礎培地、または場合によりVEGF(例えば、先に列挙された通り0.1~30ng/ml)を補充されたStemPro(登録商標)であってよい。
【0040】
幾つかの実施形態において、EBは、慣例的にEB20として知られるEB分化培地中で心臓前駆細胞(および究極的に心筋細胞)に分化するように誘導される(例えば、Lee et al., Circ Res.(2012) 110(12):1556-63参照)。心臓前駆体をその後、RPMI基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、DMEM基礎培地、IMDM基礎培地、またはStemPro(登録商標)などの心臓基礎培地中でさらに培養して、ヒト心筋細胞(例えば、心筋トロポニンT(cTnT+細胞))を含む細胞集団を得てよい。心臓基礎培地は、先に記載された通りVEGFを含有してよい。
【0041】
hPSC(例えば、hESCおよびヒトiPSC)からヒト心臓前駆体を作製するための代わりの方法は、(i)hPSC中でWnt/βカテニンシグナル伝達を活性化して、第一の細胞集団を得ること;および(ii)第一の細胞集団中でWnt/βカテニンシグナル伝達を阻害して、心筋細胞前駆体を含む第二の細胞集団を得ること、を含む。幾つかの実施形態において、低分子が、Wnt/βカテニンシグナル伝達を連続的に活性化および阻害するために用いられてよい。hPSC中のWnt/βカテニンシグナル伝達の活性化は、hPSCをWntシグナル伝達アゴニストと接触させることにより実現されてよい。幾つかの実施形態において、Wntシグナル伝達アゴニストは、βカテニンを安定化すること、したがってβカテニンの各レベルを上昇させることにより、機能する。βカテニンは、複数の方法で安定化され得る。βカテニンの分解を容易にすることによりWntシグナル伝達経路の複数の負の調節成分が機能するため、対象のWntシグナル伝達アゴニストは、成分をmRNAまたはタンパク質レベルで阻害する、経路の負の調節成分の低分子または核酸阻害剤(例えば、マイクロRNA、shRNAほか)であり得る。例えば、Wntシグナル伝達アゴニストは、グリコーゲン合成キナーゼ3β(GSK-3β)の阻害剤である。幾つかのそのような実施形態において、GSK-3の阻害剤は、低分子化合物(例えば、CHIR-99021、TWS119、BIO、SB 216763、SB 415286、CHIR-98014、および同様のもの)である。Wnt/βカテニンシグナル伝達の阻害は、予めWntシグナル伝達アゴニストと接触された細胞を、上記のものなどのWntシグナル伝達アゴニストと接触させることにより実現されてよい。一般に、Wnt/βカテニンシグナル伝達の阻害を終了した後、心臓前駆体をさらに、RPMI基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、DMEM基礎培地、IMDM基礎培地、またはStemPro(登録商標)などの心臓基礎培地中で培養して、ヒト心筋細胞(例えば、心筋トロポニンT(cTnT+細胞))を含む細胞集団を得てよい。
【0042】
Lianらの前掲書に記載されたプロトコルに基づく例示的な非限定的プロトコルでは、心筋細胞は、以下の通りCHIRを用いる心臓誘導を介してヒトPSCから作製されてよい。-1日目に、6E6 hPSCは、ビトロネクチンコーティング6ウェルプレートのE8培地中に播種および培養され、一晩、プレートに接着されてよい。0日目に、細胞培地が、CHIR-99021(「CHIR」;Tocris4423/10)を心筋細胞基礎(CM)培地(RPMI(L-グルタミンを有する)/インスリン不含のB-27+213μg/ml L-アスコルビン酸2リン酸塩(Sigma))に添加して、2、4、6、8、10または12μMのCHIR濃度に到達することにより調製されてよい。プレート中の古い培地は、ウェルあたり4mlのCHIR補充基礎CM培地と交換されてよい。CHIR濃度の最適化が、望ましいであろう(例えば、2~12μMの範囲のCHIRが、テストされてよい)。1日目に、培地が、吸引により除去されてよい。ウェルを、DMEMで1回洗浄して、細胞片を除去してよい。その後、室温のRPMI/B-27/インスリン不含培地が、ウェルあたり4mlの容量で添加されてよい。プレートは、37℃、5%CO2でインキュベートされてよい。2~3日目に、培地が、吸引により除去されてよい。ウェルが、DMEMで1回洗浄されて、細胞片を除去してよい。その後、IWRIが、新鮮なRPMI/B-27/インスリン不含培地4mlに添加されて、最終的なIWRI濃度2.5μMを達成してよい。5日目に、培地が、ウェルあたり4ml容量の室温のRPMI/B-27/インスリン不含培地と交換されてよい。プレートは、37℃、5%CO2でインキュベートされてよい。5、6、7日目に、細胞培養物は、心臓前駆細胞を含む。7日目以降、培地は、心筋細胞を作製するためにウェルあたり4ml容量の室温のRPMI/B-27培地と交換されてよい。プレートは、37℃、5%CO2でインキュベートされてよい。心筋細胞は、フローサイトメトリー(cTNT/NKX2-5)によりカウントされてよい。堅固な自発収縮が、12日目までに起こるはずである。細胞は、6か月より長期間、この自発鼓動の表現型で維持され得る。このプロトコルは、多量の心臓前駆体および/または心筋細胞を生成するために規模拡大されてよい。例えば、バイオリアクター、大型ローラーボトル、および他の培養装置が、マルチウェル組織培養プレートの代わりに用いられてよい。
【0043】
幾つかの実施形態において、出発集団は、心臓血管中胚葉細胞である。そのような細胞は、表面マーカーPDGRF-アルファ(高)およびKDR(低)を発現する(米国特許第10,561,687号)。加えて、これらの細胞は、表面マーカーCD56を発現し、Q-RT-PCRによりMESP1およびT(ブラキウリ)を発現し、cTNT+心筋細胞を生じ得る。心臓血管中胚葉細胞へのFGF阻害剤の添加は、培養20日目に評定される場合、洞房結節様心筋細胞の割合を劇的に上昇させる(同書)。したがって、幾つかの実施形態において、心臓血管中胚葉細胞は、心臓導入相の全てまたは一部の間にFGF阻害剤でも処置される。
【0044】
特有の実施形態において、培養方法は、a)胚様体を作製するための期間、BMP成分(例えば、BMP4)を含み、場合によりさらにRho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤を含む胚様体培地中でhPSCをインキュベートすること;b)心臓血管中胚葉細胞を作製するための期間、BMP成分(例えば、BMP4)およびアクチビン成分(例えば、アクチビンA)を含み、場合によりFGF成分(例えば、bFGF)を含む中胚葉誘導培地中で胚様体をインキュベートすること;c)TBX18を発現する心臓血管前駆細胞を作製するための期間、先に選択された量のBMP成分(例えば、BMP4)、およびレチノイン酸(RA)、および場合によりFGF阻害剤、Wnt阻害剤、場合によりIWP2、VEGFおよびアクリビン/結節阻害剤(例えば、SB-431542)の1種または複数を含む心臓誘導培地心臓誘導培地中で心臓血管中胚葉細胞をインキュベートすることであって、心臓血管中胚葉細胞が好ましくは、FGF阻害剤(例えば、PD 173074(Tocris)、SU 5402(Tocris)、および任意の他のFGF受容体阻害剤またはFGFシグナル伝達阻害剤)とインキュベートされ、FGF阻害剤が、心臓誘導相の全てまたは一部の間に提供される、インキュベートすること;ならびに(d)SANLPCが濃縮された心筋細胞の集団を作製するための期間、VEGFを含む基礎培地中で心臓血管前駆細胞をインキュベートすること、を含む。培養物中の心筋細胞は、SIRPAおよび胸腺細胞分化抗原1(THY-1/CD90)などの心筋細胞特異的表面マーカーを用いることにより単離され得、場合により単離された集団は、SIRPA
+CD90
-である。
図2Aも参照されたい。
【0045】
先に記載された様々な分化段階で用いられる培地は、非限定的にRPMI基礎培地(場合によりB27サプリメントを有する)、DMEM基礎培地、IMDM基礎培地、またはStemPro(登録商標)-34を含む、任意の適切な基礎培地と、基礎培地に添加される示された因子(例えば、サイトカインおよび低分子)で作製され得る。
【0046】
II.洞房結節様ペースメーカー細胞のさらなる濃縮
上記の培養方法は、最大で約50%のSANLPCを有する心筋細胞集団を
もたらし得る。しかし、生物学的ペースメーカー細胞療法の重要な要件である、約50%を超える(および約99%までの)純度を有するさらに濃縮されたSANLPC細胞組成物を得ることが、望ましい。本発明者らは予想外に、細胞表面分子CD34が、心筋細胞中のSANLPCに対する明らかなマーカーであることを発見した。CD34は、早期リンパ造血幹細胞および前駆細胞、ならびに内皮細胞上で典型的に発現される膜貫通型糖タンパク質である。本発明者らは、CD34について心筋細胞の集団を染色することが、他の型の心筋細胞からのNKX2-5-CD90-SIRPA+SANLPCの分離を可能にすることを見出した(実施例2参照)。したがって、NKX2-5-CD90-SIRPA+SANLPCは、細胞表面のCD34を標的とする薬剤(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を用いて心筋細胞の集団からさらに濃縮され得る。抗CD34抗体は、市販の供給源(例えば、CD34 BV421クローン581およびCD34 APCクローン8G12、両者ともBD Biosciences、それぞれCat. No.562577および340441)から容易に入手可能である。幾つかの実施形態において、混入した内皮細胞は、抗CD31抗体などのCD31結合剤を用いることにより除去され得る。SANLPCは、CD31-であり、一方で内皮細胞は、CD31+である。
【0047】
したがって本開示は、抗CD34抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、scFv、scFv-Fc融合物、Fab、またはF(ab’)2)、またはCD34に特異的に結合する任意の他の薬剤(例えば、CD34の天然または修飾リガンドを含むFc融合タンパク質)を用いることによりSANLPCが濃縮された心筋細胞の集団を生成する方法を提供する。結合されたSANLPCの選択/濃縮は、非限定的に、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、磁気活性化セルソーティング(MACS)(例えば、免疫磁気セルソーティング)、浮力活性化セルソーティング(BACS(商標))(例えば、Lio et al., PLoS One(2015) 10(5):e0125036参照)および同様のものを含む、当該技術分野で入手可能なソーティング方法を利用することにより完遂されてよい。セルソーティング方法の組み合わせもまた、必要に応じて、ソート時間を低減し純度および回収率を改善するために利用されてよい。
【0048】
幾つかの実施形態において、SANLPCが濃縮された心筋細胞の集団は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のSANLPCを含む。幾つかの実施形態において、SANLPCが濃縮された心筋細胞集団は、NKX2-5+である、心房様心筋細胞(ALCM)および心室様心筋細胞(VLCM)を実質的に含まない。
【0049】
SANLPC細胞培養分解過程の間のCD34の一過性発現が、細胞培養物からSANLPCを回収するための最適時間を決定するために用いられ得る。例えば、細胞培養物のアリコートが、CD34のレベルを測定して所望のSANLPC数が細胞培養物中で実現されたかどうかを評定するために、評定され得る。細胞培養物は、1つ以上の段階で評定され得る。追加的心筋細胞マーカーまたはSANLPC特異性マーカーが、例えば、免疫に基づく技術(例えば、フローサイトメトリー)、またはmRNAに基づく技術(例えば、定量的RT-PCR)を用いることにより、測定され得る。
【0050】
CD34発現はまた、SANLPC組成物の純度を評価するための基本原理として、例えばペースメーカー細胞療法製品のための品質制御の一部として用いられ得る。反対に、CD34発現は、作業心筋細胞(例えば、心室および/または心房心筋細胞)組成物中に混入したSANLPCを検出するための基本原理として用いられ得る。
【0051】
III.医薬組成物および使用
本開示の濃縮されたSANLPC細胞調製物は、疲労~失神にわたる症状を伴い緩徐で不規則な心拍(徐脈性不整脈)を生じる、SANもしくはAVN機能の加齢関連の損失、先天性疾患、または心臓手術を有する対象を処置するために生物学的ペースメーカー療法において用いられ得る。幾つかの実施形態において、本発明の細胞療法を必要とする患者は、徐脈、不整脈、左および/もしくは右脚ブロック、心房細動、または洞不全症候群および先天性AVブロックなどの先天性心疾患を有する。幾つかの実施形態において、対象は、1回または複数回の心筋梗塞または心不全に見舞われている。幾つかの実施形態において、心不全の型は、左心不全、右心不全、拡張不全、または収縮不全である。幾つかの実施形態において、心不全は、うっ血性心不全である。幾つかの実施形態において、ペースメーカー処置の適応となる患者としては、左室駆出率の低減(例えば、≦35%)、左脚ブロック(Arnold et al., J am Coll Cardiol.(2018) 72:3112-22)、左および右心室の非同期収縮(心臓同期不全;Cleland et al., N Engl J Med.(2005) 15:1539-49)、および/またはQRS幅延長(Bristow et al., N Engl J Med.(2004) 21:2140-50)を有する心不全の患者、ならびに虚血性心筋症(心筋梗塞;Bristow、前掲書)により引き起こされた心不全の患者が挙げられる。
【0052】
本開示のSANLPC細胞調製物は、それを必要とする対象に、最小侵襲法を介して投与されてよく、および/または局所的に移植されてよい。様々な方法が、患者の心臓(例えば、心房)に細胞を投与するために当該技術分野で知られており、冠動脈内投与、心筋内投与、または経心内膜投与を含むが、これらに限定されない。SANLPCは、カテーテルに基づくアプローチを用いることにより心臓に導入され得る。カテーテルは、大腿静脈、鎖骨下静脈、頸静脈もしくは腋窩静脈を介して、または心室、心房もしくはSAN領域への心内膜移植により、挿入されてよい。細胞はまた、胸部を通して挿入される針を利用して、心外膜アプローチにより心室、心房、またはSAN領域に移植され得る。フルオロスコピー(X線に基づく方法)または3Dマッピングは、カテーテル/針を意図する注射部位に先導するために用いられ得る。
【0053】
本明細書に記載されたSANLPC濃縮細胞調製物は、細胞および医薬的に許容できる担体を含有する医薬組成物中で提供されてよい。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、PSC由来(例えば、iPSC由来)SANLPCの集団と、医薬的に許容できる担体および/または添加剤とを含む。例えば、安定化された水、生理学的生理食塩水、一般的緩衝剤(例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸)、安定化剤、塩、抗酸化剤、界面活性剤、懸濁剤、等張剤、場合により任意の動物由来成分を含有しない細胞培地、および/または防腐剤が、医薬組成物に含まれてよい。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、処置を必要とする対象への投与に適した投与剤形に配合される。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、心筋内投与、経心内膜投与、または冠動脈内投与に適した投与剤形に配合される。貯蔵および運搬のために、細胞は場合により、凍結保存されてよい。使用に先立ち、細胞は、目的の細胞型を支援する滅菌担体中で解凍され希釈されてもよい。
【0054】
治療的に有効な数のSANLPCが、患者に投与される。本明細書で用いられる用語「治療的に有効な」は、疾患、障害、および/または病気の症状(複数可)の発生または進行を処置、予防、および/または遅延するために疾患、障害および/または病気に罹患した、または罹り易いヒト対象に投与される場合に充分である、細胞の数または医薬組成物の量を指す。治療的に有効な量が、少なくとも1単位用量を含む投与レジメンを介して典型的に投与されることは、当業者に察知されよう。
【0055】
本明細書に他に定義されない限り、本開示に関連して用いられる科学的および技術的用語は、当業者に慣例的に理解される意味を有する。例示的方法および材料が以下に記載されるが、本明細書に記載されたものと類似の、または同等の方法および材料もまた、本開示の実践およびテストで用いられ得る。矛盾する場合には、本明細書が、定義を含み、管理する。一般に、心臓病学、医療、医療薬化学、細胞生物学、本明細書に記載された分子に関連して用いられる命名法およびそれらの技術は、当該技術分野で周知であり慣例的に用いられるものである。さらに、文脈によって他に要求されない限り、単一の用語は複数を包含し、複数の用語は単一を包含する。本明細書および実施形態全体を通して、言語「有する」および「含む」、または「有する(has)」、「含んでいる」、「含む(comprises)」または「含んでいる」などの変形例は、述べられた整数または整数群の包含を示唆し、任意の他の整数または整数群の除外を示唆しないことが理解されよう。本明細書で言及された全ての発行物および他の参考資料は、全体として参照により組み入れられる。複数の文書が、本明細書で引用されているが、この引用は、これらの文書のいずれかが当該技術分野で共通する一般的知識の一部を形成することの承認とはならない。
【0056】
本明細書で用いられる、該当する1つまたは複数の値に適用される用語「およそ」または「約」は、述べられた参照値と類似の値を指す。特定の実施形態において、用語は、他に述べられない限り、または他に文脈から明白にならない限り、述べられた参照値のいずれかの方向で(より大きな、またはより小さな)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満に含まれる値の範囲を指す。
【0057】
本発明がよりよく理解され得る目的で、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示目的に過ぎず、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【0058】
実施例
実施例1:細胞培養物中のSANLPC心筋細胞の分化
この実施例は、ヒト多能性幹細胞(hPSC)からSANLPCを分化するためのプロトコルを記載する。プロトコルはまた、Protzeの前掲書に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0059】
第一のプロトコルにおいて、SANLPCは、フローサイトメトリーを用いてNKX2-5
-CD90
-SIRPA
+心筋細胞として陰性選択により同定され単離された(
図1)。NKX2-5は、SANペースメーカー心筋細胞以外のあらゆる心筋細胞により発現される心臓転写因子である(Mommersteeg et al., Cardiovasc Res. 2010) 87:92-101; Sizarov et al., Circ Arrhythm Electrophysiol.(2011) 4:532-42)。細胞内タンパク質であり抗体による生存細胞染色を受け易くないNKX2-5の発現を読み出すことができるように、レポーターヒト胚性幹細胞株(HES3 NKX2-5:GFP)が用いられ;この細胞株は、NKX2-5対立遺伝子の1つの最初のエクソンに挿入されたGFP蛍光レポーターを有した。
【0060】
上記プロトコルは特異的レポーター細胞株の使用に依存するため、第二のプロトコルが開発され、そこでは分化培養物中の任意のNKX2-5
+心筋細胞の発達が、分化過程の間にFGFシグナル伝達を阻害することにより遮断され(
図2A)。NKX2-5:GFPレポーターを運搬しない細胞株中のNKX2-5
-SANペースメーカー心筋細胞の割合を視覚化するために、細胞は、固定され細胞内NKX2-5およびcTNTタンパク質について染色された。2×10
5細胞が、染色ごとに用いられた。手短に述べると、EBが、2型コラゲナーゼおよびTrypLE(商標)を用いて解離された。細胞はその後、洗浄され、PBS(Ca
2+Mg
2+)中の4%パラホルムアルデヒドにより4℃で10分間固定され、その後、PBS(Ca
2+Mg
2+)および5%FCSで2回洗浄された。細胞はその後、4℃で10分間洗浄緩衝液(PBS(Ca
2+Mg
2+)、0.3%BSA、0.3%Triton X、およびFCS)中で透過処理された。細胞はその後、3000rpmで4分間遠心分離され、懸濁され、染色緩衝液(PBS(Ca
2+Mg
2+)、0.3%BSA、0.3%Triton X)+cTNTのマウス抗心臓アイソフォームおよびウサギ抗ヒトNKX2-5抗体中にて、4℃で一晩インキュベートされた。細胞はその後、洗浄され、遠心分離され、洗浄緩衝液中に2回再懸濁された。細胞はその後、遠心分離され、再懸濁され、ヤギ抗マウスPE+dk抗ウサギAlexa Fluor647二次抗体を含有する染色緩衝液中にて4℃で30分間インキュベートされた。細胞はその後、洗浄され、洗浄緩衝液中に2回再懸濁された。細胞は再度、遠心分離され、FACS緩衝液(PBS(Ca
2+Mg
2+)+5%FCS)中に再懸濁された。NKX-GFPレポーター株が、陽性対照(NKX2-5抗体/Alexa Fluor647で対比染色された)として用いられた。
【0061】
第二のプロトコルの下で得られたデータは、生じた培養物が、非心筋細胞と、CD90
-SIRPA
+発現に基づき非心筋細胞から単離され得るNKX2-5
-SANペースメーカー心筋細胞とを含有したことを示す(
図2Bおよび2C)。このアプローチを用いて、SANLPCが濃縮された培養物が、複数のhPSC株(HES3、HES2、MSC-iPS1)から単離され得た(
図2Dおよび2E)(Protze、前掲書)。
【0062】
実施例2:NKX2-5-SANLPC心筋細胞のための細胞表面マーカーの同定
上記のプロトコルは、SANLPCへのhPSCの分化誘導を可能にするが、重要な難題が依然として残されている。生物学的ペースメーカー療法における適用のために、高度に濃縮されたペースメーカー集団が必要とされる。SANLPC分化を高い効率で(即ち、≧50%)日常的に実現することは、困難である。疾患モデリングにおける適用のために、分化プロトコルは、異なる患者特有のiPSCに適用される必要がある。細胞株間の内因性シグナル伝達の差は多くの場合、プロトコルの調節を必要とし、それは、主にNKX2-5-SANペースメーカー心筋細胞を含有するがNKX2-5+心筋細胞を含有しない細胞培養物を得るために、開発に4か月以上かかり得る(Protze、2017、前掲書)。それゆえ、分化培養物からの蛍光活性化セルソーティング(FACS)または磁気活性化セルソーティング(MACS)によるSANLPCの陽性選択を可能にする細胞表面マーカーは、非常に価値がある。この細胞表面マーカーは、SANLPCを小さな割合(5%、10%、20%、30%または40%以下などの、50%未満)でしか含有しない心筋細胞集団からでさえSANLPCが高度に濃縮された(例えば、≧80%SANLPC)集団の単離を可能にするであろう。
【0063】
NKX2-5
-SANLPC心筋細胞により特異的に発現される細胞表面マーカーを同定するために、本発明者らは、実施例1およびProtzeの前掲書に記載されたSANペースメーカープロトコルで分化された、hPSC由来(HES2 hPSC株)20日目培養物の単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)を実施した。10×Genomicsからのシーケンシングプラットフォームを、用いた(
図3A)。教師なしクラスタリングは、11の明らかに異なる細胞クラスターを同定し、その大部分が、TNNT2を発現しており、それらが心筋細胞に相当することを示した(
図3B)。クラスター1および2は、TNNT2
+NKX2-5
-TBX3
highTBX18
+を発現する細胞を含有し、それは、SANLPCを表した。本発明者らはまた、NKX2-5
+心筋細胞の3つのクラスター:SAN尾部細胞を表すTNNT2
+NKX2-5
+TBX3
+TBX18
-(クラスター3)、移行ゾーン細胞を表すTNNT2
+NKX2-5
+TBX3
lowSCN5A
+(クラスター4)、および心房心筋細胞を表すTNNT2
+NKX2-5
+TBX3
-SCN5A
+NPPA
+(クラスター5)、を同定した。NXK2-5
-SANLPCにより特異的に発現された遺伝子を同定しようと試みて、本発明者らは、差次的遺伝子発現分析を実施した。注目すべきことに、この分析は、細胞表面抗原CD34が、クラスター1および2で著しく濃縮されたことを明らかにした(
図3C)。
【0064】
CD34の染色がhPSC分化細胞中のNXK2-5-SANLPCを標識するかどうかをテストするために、本発明者らは、実施例1およびProtzeの前掲書に記載されたSAN分化プロトコルを用いてHES3 NKX2-5:GFPレポーター細胞株を分化した。EBの解離後に、1×105~3×105細胞が、96ウェルプレートに移され、2000rpm(500g)で遠心分離され、CD34に対する抗体(APC 1:300、BD Biosciences、Cat. No.340441)、SIRPA(Pe-Cy7 1:1000、BioLegend、Cat.No.323807、クローンSE5A5)、およびCD90(BV421、1:300、BD Biosciences、Cat.No.559869)を含有するFACS緩衝液(Ca2+またはMg2++5%FCS+0.02% NaN3を有さないPBS)100μlに再懸濁された。細胞は、4℃で30~45分間インキュベートされた。その後、100μlのFACS緩衝液が、インキュベートされた細胞に添加された。細胞は、2000rpmでペレット化され、FACS緩衝液200μlで洗浄され、再度ペレット化され、その後200μlのFACS緩衝液中に再懸濁された後、分析された。
【0065】
本発明者らは、SIRPAおよび線維芽細胞マーカーCD90について20日目SANLPC分化培養物を染色して、SIRPA
+CD90
-心筋細胞を同定した(
図4A)。この染色に抗CD34抗体(BD Biosciences、cat # 340441)を含めて、SANLPC分化培養物中の心筋細胞の30±3%がCD34を発現したことを示した。重要なことに、CD34
+発現は、これらの培養物に含有されるNKX2-5
+心筋細胞に比較して、NKX2-5
-SANLPC中で有意に濃縮された(37±2% vs 13±2%)(
図4B)。これらのデータは、scRNA-seqの結果と一致した。
【0066】
CD34は内皮細胞のための公知のマーカーであるため、本発明者らは、内皮細胞マーカーCD31との共染色も実施した(
図4C)。この分析は、培養物がCD31
+CD34
+内皮細胞の小集団を含有したことを示した。重要なことに、SIRPA
+CD90
-心筋細胞集団中に見出されたCD34
+細胞はCD31を発現せず、それらが内皮細胞でないことを裏付けた。
【0067】
CD34の特異性をさらにテストするために、本発明者らは次に、確立されたプロトコル(Lee,2017、前掲書)を利用して、HES3 NKX2-5:GFPレポーター株を心房(ALCM)および心室(VLCM)心筋細胞に分化させた。心房心筋細胞または心室心筋細胞はどちらも、CD34を発現すると見出されなかった(
図4D~F)。これらのデータは、CD34がSANLPCを特異的に標識することを示唆する。
【0068】
本発明者らは分化培養物中のCD34
+CD31
+内皮細胞の集団も検出したが、これらの細胞の割合は低かったため(約2%)、本発明者らは、内皮細胞からの混入の問題を想定していない(
図4C)。
【0069】
実施例3:分化の経過時間中のSANLPCの同定
CD34がSAN分化の間の早期にNKX2-5
-SANLPCを同定するために用いられ得るかどうかをテストするために、本発明者らは、HES3 NKX2-5:GFPレポーター細胞株において4~20日目にフローサイトメトリーによりCD90、SIRPA、NKX2-5:GFPおよびCD34の発現を分析した(
図5)。予想通り、分化の4日目では、SIRPA
+CD90
-心筋細胞は検出されなかった(
図5A)。10日までに、SIRPA
+CD90
-心筋細胞の確実な集団が存在し、20日目まで増加し続けた。本発明者らは、10日という早期にこの心筋細胞集団内でCD34
+細胞を検出できた(14±7%)。CD34
+筋細胞の割合は、20日まで増加し続けた(55±8%)(
図5B)。重要なことに、分化全体を通して、CD34発現は、NKX2-5
-SANLPCに特異的であった。これらのデータは、CD34が、SAN分化培養物中のNKX2-5
-SANLPCの割合をモニタリングするために10日という早期に用いられ得ることを示唆する。SANLPC含量を分化の早期に予測できることは、将来の細胞療法適用のための分化の規模拡大に大きく関連する。
【0070】
実施例4:SAN分化培養物からのSANLPCの濃縮
本発明者らは次に、CD34が、NKX2-5
-SANLPCを単離するために、およびそれらをSAN分化培養物中に含有されるNKX2-5
+心筋細胞から分離するために用いられ得るかどうかをテストした。この試験のために、本発明者らは、FACSを用いてHES3 NKX2-5:GFPレポーター株の20日目SAN分化培養物からSIRPA
+CD90
-CD34
+心筋細胞およびSIRPA
+CD90
-CD34
-心筋細胞株を単離した(
図6A)。本発明者らは、ソートの直後にNKX2-5
-SANLPCの含量を分析し、ソート前対照(55±7%)に比較して、CD34
+でソートされた細胞中のSANLPCの最大で78±6%の有意な濃縮を見出した(
図6B)。したがって、NKX2-5
+心筋細胞の割合は、CD34
+でソートされた細胞において有意に低減された(45±7%から22±6%へ)。
【0071】
本発明者らはまた、CD34
+でソートされた細胞中のSANLPCマーカーの濃縮についてテストするために、CD34
+およびCD34
-でソートされた心筋細胞のRT-qPCR分析も実施した(
図6C)。CD34発現は、CD34
+でソートされた細胞において有意に濃縮され、ソーティング方策を検証した。SIRPA
+CD90
-CD34
+でソートされた細胞は、ソート前に比較して高レベルの汎筋細胞マーカー(pan-myocyte marker)TNNT2を発現し、SIRPA
+CD90
-細胞を選択することによる心筋細胞の濃縮を確認した。NKX2-5の発現は、CD34
+集団におけるNKX2-5
-SANLPCの濃縮について予想された通り、CD34
-集団に比較してCD34
+集団で有意に低減された。
【0072】
一致して、SANペースメーカーマーカーTBX3、SHOX2およびHCN4が、ソート前およびCD34-細胞よりCD34+細胞中で高レベルで発現された。作業心筋細胞および移行ゾーン細胞のマーカーである、ナトリウムイオンチャネル遺伝子SCN5Aおよびナトリウム利尿ペプチド遺伝子NPPAの発現が、CD34-細胞で強化された。総括すると、これらのデータは、CD34+がNXK2-5-SANLPCを特異的に標識すること、およびCD34+心筋細胞のソーティングがSAN分化培養物からのSANLPCの濃縮を可能にすること、を示唆する。この実施例において、SANLPCは、78±6%の純度に濃縮された。
【0073】
実施例5:MACSを用いるSANLPCの単離
磁気活性化ソーティング(MACS)はより多数の細胞のより迅速な単離を可能にするため、本発明者らは、SANLPCが市販のCD34 MicroBead Kit(Miltenyi Biotec)を用いて単離され得るかどうかもテストした。これらの実験では本発明者らは、先に記載された通りHES3 NKX2-5:GFPレポーター株の20日目SAN分化培養物を用いた。FACSに基づくアプローチ(実施例4)と対照的に、このMACSに基づくアプローチは、SIRPA
+CD90
-心筋細胞の選択を含まず、CD34
-細胞からCD34
+細胞を分離するに過ぎない(
図7A)。本発明者らは、磁気でソートされたCD34
+細胞が、ソート前に比較して全体的な心筋細胞含量(SIRPA
+CD90
-細胞)を濃縮されたことを見出し、CD34が分化培養物に含有される心筋細胞を標識することを確認した。対照的に、CD34
-でソートされた細胞は、ソート前に比較して低減された心筋細胞含量を有した。重要なことに、SIRPA
+CD90
-心筋細胞集団内のNKX2-5
-SANLPCの割合は、ソート前対照(57±4%)に比較して、CD34
+でソートされた細胞において81±4%まで有意に濃縮された(
図7B)。したがって、NKX2-5
+心筋細胞の割合は、CD34
+でソートされた細胞で有意に低減された(42±9%から19±4%へ)。
【0074】
MACSでソートされたCD34
+およびCD34
-細胞のRT-qPCR分析は、CD34
+でソートされた細胞中で有意により高いCD34発現を示し、ソーティング方策を確認した(
図7C)。汎筋細胞マーカーTNNT2の発現は、CD34
-細胞に比較してCD34
+細胞で有意により高く、これは、フローサイトメトリーの結果と一致し(
図7A)、CD34
+でソートされた集団中のより高い全体的心筋細胞含量をさらに確認する。NKX2-5の発現は、フローサイトメトリーで認められたNKX2-5
+細胞の割合の低減に基づき予想された通り、CD34
+細胞で低減された(
図7B)。SANペースメーカーマーカーTBX3、SHOX2およびHCN4は、ソート前またはCD34
-細胞よりCD34
+細胞で有意により高レベルで発現された。作業心筋細胞および移行ゾーン細胞マーカーNPPAの発現は、ソート前およびCD34
-細胞に比較してCD34
+細胞で低減された。要約すると、これらのデータは、SIRPA
+CD90
-CD34
+細胞についてのFACSソーティングを利用して本発明者らが得た結果と互換性があり、CD34 MicrobeadsでのMACSソーティングがNKX2-5
-SANLPCを81±4%の純度に濃縮するための実行可能な選択肢であることを実証する。このMACSに基づくアプローチを利用することは、動物モデルにおける生物学的ペースメーカーの能力を評定するための将来の移植実験で必要とされる、多数のSANLPCを単離することを可能にするであろう。
【0075】
実施例6:CD34を用いる他のhPSC細胞株からのSANLPCの単離
CD34が任意のhPSC株からNKX2-5
-SANLPCを単離するための細胞表面マーカーとして使用され得ることを実証するために、本発明者らはまた、HES2ヒト胚性幹細胞株にもこのアプローチを適用した。本発明者らは、HES2細胞株にSAN分化プロトコルを適用し、分化の20日目にCD34の発現について培養物を分析した。実施例2に記載されたものと同じプロトコルが、フローサイトメトリー分析のため細胞を染色するために用いられた。抗CD34抗体(BD Biosciences、cat #340441)を使用することは、SANLPC分化培養物中のSIRPA
+CD90
-心筋細胞の55±11%がCD34を発現することを示した(
図8Aおよび8D)。
【0076】
重要なことに、本発明者らはまた、確立されたプロトコル(Lee,2017、前掲書)を利用して、このHES2細胞株を心房(ALCM)および心室(VLCM)心筋細胞に分化させた。HES3 NKX2-5:GFPレポーター株の結果と類似して、心房心筋細胞または心室心筋細胞はどちらも、CD34を発現しなかった(
図8B~D)。これらのデータは、CD34がまたHES2細胞株に由来するSANLPCも特異的に標識することを示唆する。
【0077】
CD34がNKX2-5
-SANLPCを単離するために、およびHES2細胞株のSAN分化培養物中に含有されるNKX2-5
+心筋細胞からそれらを分離するために用いられ得るかどうかをテストするために、本発明者らは、実施例5に記載された通りCD34
+およびCD34
-細胞をソートした。HES3 NKX2-5:GFPレポーター株で認められる通り、磁気でソートされたCD34
+細胞は、全体的な心筋細胞含量(SIRPA
+CD90
-細胞)が濃縮され、一方でCD34
-でソートされた細胞は、ソート前に比較して低減された心筋細胞含量を有した(
図9A)。HES2細胞株はNKX2-5:GFPレポーターを有しないため、本発明者らは、固定された細胞内の、NKX2-5(1:1000、Cell Signaling、Cat. No.8792S、クローンE1Y8H)および筋細胞マーカーcTNC(1:2000、Thermo Scientific、Cat.No.MS-295-P、クローン13-11)についての細胞内抗体染色を利用して、ソートされた細胞中のNKX2-5発現を評定した(
図9B)。この分析は、cTNT
+心筋細胞集団内のNXK2-5
-SANLPCの集団が、ソート前対照(48±11%)に比較してCD34
+でソートされた細胞中で最大で77±4%に有意に濃縮されることを示した(
図9C)。したがって、NXK2-5
+心筋細胞の割合は、CD34
+でソートされた細胞中で有意に低減された(52±11%から23±4%へ)。
【0078】
MACSでソートされたCD34
+およびCD34
-細胞のRT-qPCR分析は、CD34
+でソートされた細胞中のより高いCD34発現を示し、ソーティング方策を確認した(
図9D)。汎筋細胞マーカーTNNT2の発現は、ソート前細胞に比較してCD34
+細胞でより高く、これはフローサイトメトリーの結果と一致する(
図9Aおよび9B)。NKX2-5の発現は、フローサイトメトリーにより認められたNKX2-5
+細胞の割合の低減に基づき予想された通り、CD34
+細胞中で低減された(
図9Bおよび9C)。SANペースメーカーマーカーTBX3、SHOX2およびHCN4は、ソート前およびCD34
-細胞中よりCD34
+細胞中で有意により高レベルで発現された。作業心筋細胞および移行ゾーン細胞マーカーNPPAの発現は、ソート前に比較してCD34
+細胞で有意に低減された。総括すると、このデータは、CD34
+細胞についてのMACSが、77±4%の純度にHES2細胞株からNKX2-5
-SANLPCをうまく濃縮することを実証する。したがって、このアプローチは任意の他のhPSC株に拡大され得ることが、予想される。
【0079】
実施例7:ヒトSAN心筋細胞中のCD34の発現
CD34がhPSC培養系を越える真のSANマーカーであることを検証するために、本発明者らは次に、CD34がヒト心臓のSAN心筋により発現されるかどうかをテストした。本発明者らは、過去に記載されたプロトコルを用いて凍結心臓組織から細胞核を単離し、単一核RNA-seq(snRNA-seq)を実施した(Selewa et al.,Scientific Reports (2020) 10:1535;およびWu et al., J Am Soc Nephrol.(2019)30:23-32)。SAN組織は、胎児心臓(妊娠19週目)から解離され、1×10
6個の核が、単離された。核はその後、10×Genomics systemを用いるシーケンシングに供された(
図10A)。
【0080】
教師なしクラスタリングは、18の明らかに異なる細胞クラスターを同定した。TNNT2を発現する細胞クラスターは、心筋細胞を表す。TNNT2
+NKX2-5
-TBX3
highTBX18
+細胞クラスターが同定され、本発明者らがSAN細胞核をうまく同定したことを示した(クラスター1)(
図10B)。加えて、本発明者らは、本発明者らが先に記載されたインビトロクラスターで同定された心筋細胞クラスターと類似の、TNNT2
+NKX2-5
+TBX3
midSCN5A
+移行ゾーン細胞クラスター(クラスター2)およびTNNT2
+NKX2-5
+TBX3
-SCN5A
+NPPA
+心房心筋細胞クラスター(クラスター3および4)を同定した。本発明者らがヒト心臓scRNA-seq試料中のCD34発現を分析した場合、高レベルのCD34発現が、内皮細胞クラスター(クラスター12、13、14)中で同定された(
図10C)。CD34は、線維芽細胞クラスター(クラスター16、17、18)でも発現された。重要なことに、CD34発現は、他の心筋細胞クラスター(心房心筋細胞および移行ゾーン心筋細胞;クラスター2、3、4)への発現と比較した場合、SANクラスター(クラスター1、青色の矢印、調整されたP値1.97e-62)において有意に濃縮された。
【0081】
タンパク質レベルでヒトSANのペースメーカー心筋細胞内のCD34発現を確認するために、本発明者らは、ヒト胎児心臓(妊娠19週目)からSAN組織を解離し、それをPFA固定し、それをパラフィンに包埋して、横断切片を作製した。切片を、TBX3抗体(1:1000、ThermoFisher、Cat.No.424800、ポリクローナル)およびNKK2-5抗体(1:1000、Cell Signaling、Cat.No.8792S、クローンE1Y8H)で免疫染色して、SANのTBX3
+NKX2-5
-ペースメーカー心筋細胞を同定した。このアプローチは、TBX3
-心房組織に隣接したTBX3
+ SANエリア(白色の点線により概説された)を同定できた(
図11A)。重要なことに、このSANエリアは、CD34をポジティブ染色した(1:100、BD Biosciences、Cat.No.340441)。NKK2-5についての連続切片の染色は、NKK2-5
+心房細胞と明らかに異なる同じエリア中のNKX2-5
-SAN細胞を同定できた(
図11B)。これらのNKX2-5
-SAN細胞は、CD34についてポジティブに染色された。心筋細胞マーカーcTNT(1:100、Miltenyi、Cat.No.130-119-575、クローンREA400)を、対比染色として用いて、NKX2-5
-CD34
+細胞が心筋細胞を表すことを確認した。重要なことに、TNNT2
+NKX2-5
+TBX3
-心房心筋細胞は、 CD34について陽性に染まらなかった。心房組織内で見出されたCD34
+細胞は、TNNT2
-であり、血管の内皮細胞を表す可能性が最も高い。
【0082】
総括すると、これらのデータは、CD34はSANペースメーカー心筋細胞により特異的に発現されるが、ヒト心臓内の心房細胞により特異的に発現されないことを示唆する。
【国際調査報告】