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特表2023-524517ヒドロキシプロピルセルロースを含む放出調節製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】ヒドロキシプロピルセルロースを含む放出調節製剤
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/08 20060101AFI20230605BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 31/5415 20060101ALI20230605BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C08B11/08
A61K47/38
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/16
A61K47/26
A61K47/04
A61K31/5415
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566421
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 US2021029581
(87)【国際公開番号】W WO2021222369
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】63/019,215
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591223105
【氏名又は名称】ハーキュリーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ダイチアン シュウ
(72)【発明者】
【氏名】アニタ チャン
(72)【発明者】
【氏名】アーモル バトラ
(72)【発明者】
【氏名】ニンジー ニック チェン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C090
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA94
4C076DD24A
4C076DD26A
4C076DD27A
4C076DD27C
4C076DD28C
4C076DD29A
4C076DD29C
4C076DD34C
4C076DD38A
4C076DD41C
4C076DD45C
4C076DD67
4C076DD67A
4C076DD68C
4C076EE16
4C076EE23C
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE31A
4C076EE32
4C076EE32M
4C076EE36
4C076EE38
4C076EE38A
4C076EE53C
4C076EE55C
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC89
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA12
4C090AA02
4C090AA05
4C090AA08
4C090AA09
4C090BA28
4C090BB52
4C090BB65
4C090BB82
4C090BB92
4C090BD05
4C090BD08
4C090BD19
4C090BD36
4C090BD37
4C090DA23
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA28
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA12
(57)【要約】
本開示は、約3.0~約3.9のモル置換度、約800,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量、および100μm未満の体積平均粒子径を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびそれに由来する放出調節製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3.0~約3.9のモル置換度、約700,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量、および100μm未満の体積平均粒子径を有するヒドロキシプロピルセルロース。
【請求項2】
前記モル置換度が約3.2~約3.8である、請求項1に記載のヒドロキシプロピルセルロース。
【請求項3】
前記モル置換度が約3.4~約3.7である、請求項1に記載のヒドロキシプロピルセルロース。
【請求項4】
前記重量平均分子量が1,000,000~1,500,000ダルトンの範囲で変化する、請求項1記載のヒドロキシプロピルセルロース。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、25℃で1重量%水溶液中で少なくとも300mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載のヒドロキシプロピルセルロース。
【請求項6】
粘度が、25℃で1%水溶液中で約1000~約3000mPa・sの範囲で変化する、請求項1に記載のヒドロキシプロピルセルロース。
【請求項7】
約3.0~約3.9のモル置換度、約700,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量、および100μm未満の体積平均粒子径を有するヒドロキシプロピルセルロースを含む放出調節製剤。
【請求項8】
前記モル置換度が約3.2~約3.8である、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項9】
前記モル置換度が約3.4~約3.7である、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項10】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、全製剤の約5重量%~約99重量%の範囲で存在する、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項11】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、全製剤の約10重量%~約90重量%の範囲で存在する、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項12】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、全製剤の約15重量%~約75重量%の範囲で存在する、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項13】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、25℃で1重量%水溶液中で少なくとも300mPa・sの粘度を有する、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項14】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、25℃で1重量%水溶液中で約1000~3000mPa・sの範囲の粘度を有する、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項15】
25℃で1mg/Lを超える水溶性を有する少なくとも1つの薬物の薬学的有効量をさらに含む、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項16】
前記薬物の水溶解度が20mg/Lを超える、請求項15に記載の放出調節製剤。
【請求項17】
前記薬物の水溶解度が700mg/Lを超える、請求項15に記載の放出調節製剤。
【請求項18】
前記薬物が、解熱薬、鎮痛薬、抗炎症薬、駆虫薬、心血管薬、抗細菌薬、気管支拡張薬、抗喘息薬、胃腸薬、糖尿病治療薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗てんかん薬、抗利尿薬、並びに、その薬学的に許容可能な塩およびエステルからなる群より選択される、請求項15に記載の放出調節製剤。
【請求項19】
前記薬物が、エトドラク、アルベンダゾール、シプロフロキサシン、エリスロマイシンおよびその誘導体、イブプロフェン、ジクロフェナク、トファシチニブ、カルベジロール、メトプロロール、サクビトリル、バルサルタン、サルブタモール、ドキソフィリン、テオフィリン、シメチジン、オメプラゾール、メトホルミン塩酸塩、シタグリプチン、チニダゾール、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アシクロビル、カルバマゼピン、並びにその薬学的に許容可能な塩およびエステルからなる群より選択される、請求項15に記載の放出調節製剤。
【請求項20】
充填剤、結合剤、界面活性剤、崩壊剤、潤滑剤、および流動助剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項7に記載の放出調節製剤。
【請求項21】
前記充填剤が、単糖、二糖、多糖類、無機酸塩、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の放出調節製剤。
【請求項22】
前記充填剤が、セルロース、ラクトース、スクロース、糖、澱粉、加工澱粉、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、ケイ酸、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウム錯体および酸化物、二リン酸カルシウム二水和物、および、硫酸水素塩からなる群より選択される、請求項20に記載の放出調節製剤。
【請求項23】
前記潤滑剤が、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、パルミチン酸、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、鉱油、ワックス、カルナバワックス水素化植物油、ベヘン酸グリセリル、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、およびステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸のスクロース脂肪酸エステル、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、並びに、それらの任意の組合せ、からなる群より選択される、請求項20に記載の放出調節製剤。
【請求項24】
前記結合剤が、ポリビニルピロリドン、スクロース、ラクトース、澱粉、加工澱粉、糖、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアーゴム、ペクチン、ワックスベースの結合剤、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コポビドン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウムヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびそれらの任意の組み合わせ、からなる群より選択される、請求項20に記載の放出調節製剤。
【請求項25】
前記薬学的に許容される賦形剤が、製剤全体の約1重量%~約85重量%の量で存在する、請求項20に記載の放出調節製剤。
【請求項26】
錠剤、カプセル、粉末、顆粒、サシェ、またはロゼンジの形態である、請求項7に記載の放出調節製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示されているプロセス、手順、方法、製品、結果、および/または概念(以下「本開示」と総称する)は、概して、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびその適用に関する。本開示はさらに、ヒドロキシプロピルセルロース由来の放出調節製剤(調節放出性医薬製剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物は、しばしば、コーティング剤、フィルム形成剤、放出調節のための速度制御剤、安定化剤、懸濁化剤、錠剤結合剤、および粘度増加剤としての使用を含む、特定の所望の治療効果を達成するためのポリマーを含む。
【0003】
ほとんどすべての薬理学的に活性な化合物は、ある濃度範囲内で血漿中に存在する場合に最も効果的であり、この範囲を超えると有害な副作用を引き起こす可能性があることが長い間知られてきた。また、血漿中の過剰な薬物は、濃度が最大薬理効果をもたらす推奨血中濃度を著しく上回る場合、浪費される可能性があり、したがって、薬物製剤の製造および使用の両方に不必要なコストがかかる。あるいは、血漿中の薬物濃度が最も有効な範囲を下回る場合、有効成分が最大限に有効でないか、または全く有効でない可能性があるという危険性がある。
【0004】
生理学的に可能な場合、経口剤形は、容易で低コストの投与を提供するので、ほとんどの医薬化合物の好ましい投与経路である。しかしながら、特に化合物を1日3~4回服用しなければならない場合、患者のコンプライアンスは、医薬化合物の経口投与と併せて考慮すべき重要な因子である。患者のコンプライアンスを最大化するために、効果的な治療を達成するために患者が必要とする1日投与単位の数を減らすことが望ましい。より少なく、より長時間作用型の投与量を使用することにより、経時的な血中薬物濃度の不変性も改善され、また、薬剤は1日を通して理想的な治療量に近づくことができるため、治療が改善される可能性がある。
【0005】
これらの目標を達成する1つの方法は、治療用血液レベルを長期間にわたって維持するのに有効であり、最適な治療をもたらす、放出調節製剤を使用することである。これらは、ほぼ一定の血中濃度を維持し、1日3~4回投与される従来の即時放出製剤に関連する変動を回避するため、投与頻度を減らすだけでなく、副作用の重症度および頻度も減らす。
【0006】
市販されている多くの異なる放出調節剤形がある。これらの調節された送達系の多くは、薬物を送達するための有用なレベルの制御を提供する親水性ポリマーマトリックスを利用する。製剤が摂取された後、活性医薬成分はポリマーマトリックスからゆっくりと放出され、その結果、活性成分の放出が長引く。改変放出組成物を処方するための1つのアプローチは、1つ以上のポリマーと所望の薬物との乾燥配合を含み、流体に曝されるとゲルを形成する組成物を形成し、次いで、薬物は、ゲルからの拡散によってゆっくりと放出される。
【0007】
錠剤は、含有される医薬品の放出を改変する過去に調製されてきたが、完全には満足できるものではなかった。それらの中には、高価な材料のため、またはそれらを製造するための複雑な装置またはプロセスのために製造するには高価すぎるものもあれば、遅延放出を得るために必要な添加剤のために大きすぎるものもある。他の錠剤は、均一な放出時間を欠いているため、不満足であった。
【0008】
もう一つの重要な考慮事項は、調節された薬物放出を引き起こす物質が生理学的に許容されなければならないことである。人には毒性作用がないか、あるいはごくわずかでなければならない。長期間使用しても人の組織に蓄積しないように、完全に排除する必要がある。上述のプロセスに関連する問題を克服する、放出調節として経口送達可能な医薬製剤を製造するための組成物およびプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本開示は、約3.0~約3.9のモル置換度、約700,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量、および100ミクロン未満の体積平均粒子径を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を提供する。本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースのモル置換度は、約3.2~約3.8、または約3.4~約3.7の範囲で変化する。本開示の非限定的な一実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量は、約1,000,000~約1,500,000ダルトンの範囲で変化する。本開示の1つの非限定的な実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースは、25℃で1重量%(1wt.%)水溶液中で少なくとも300mPa・sの粘度を有する。本開示の別の非限定的な実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、25℃で1重量%水溶液中で約1000~約3000mPa・sの範囲で変化することができる。
【0010】
別の態様では、本開示は、約3.0~約3.9のモル置換度、約700,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量、および100μm未満の体積平均粒子径を有するヒドロキシプロピルセルロースを含む放出調節製剤を提供する。本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースのモル置換度は、約3.2~約3.8、または約3.4~約3.7の範囲で変化する。本開示の非限定的な一実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量は、1,000,000~約1,500,000ダルトンの範囲で変化する。本開示の放出調節製剤中に存在するヒドロキシプロピルセルロースは、25℃で1重量水溶液中で少なくとも300mPa・sの粘度を有する。本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、25℃で1重量水溶液中で約1000mPa・s~約3000mPa・sの範囲で変化する。
【0011】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、放出調節(改変)製剤中のヒドロキシプロピルセルロースの量は、全製剤の約5重量%~約99重量%、または約10重量%~約90重量%、または約15重量%~約75重量%の範囲で変化する。
【0012】
さらに、本開示の放出調節製剤はまた、25℃で1mg/Lを超える水溶性を有する少なくとも1つの薬物の薬学的有効量を含む。本開示の1つの非限定的な実施形態において、薬物の水溶解度は、20mg/L超、または700mg/L超である。
【0013】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、薬物は、解熱薬、鎮痛薬および抗炎症薬、駆虫薬、心血管薬、抗細菌薬、気管支拡張薬、抗喘息薬、胃腸薬、抗糖尿病薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗てんかん薬、利尿薬、または薬学的に許容されるその塩およびエステルからなる群から選択される。
【0014】
本開示の別の非限定的な実施形態では、薬物は、エトドラク、アルベンダゾール、シプロフロキサシン、エリスロマイシンおよびその誘導体、イブプロフェン、ジクロフェナク、トファシチニブ、カルベジロール、メトプロロール、サクビトリル、バルサルタン、サルブタモール、ドキソフィリン、テオフィリン、シメチジン、オメプラゾール、メトホルミン塩酸塩、シタグリプチン、チニダゾール、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、アシクロビル、カルバマゼピン、並びにそれらの薬学的に許容可能な塩およびエステルからなる群より選択される。
【0015】
別の非限定的な実施形態では、本開示の放出調節製剤は、充填剤、結合剤、界面活性剤、崩壊剤、潤滑剤、および流動助剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。本開示の1つの非限定的な実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、単糖、二糖、多糖類、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される充填剤である。本開示の別の非限定的な実施形態では、充填剤は、セルロース、ラクトース、スクロース、糖、澱粉、加工澱粉、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、ケイ酸、硫酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムおよびマグネシウム錯体および酸化物、二リン酸カルシウム二水和物および硫酸水素塩からなる群から選択される。
【0016】
本開示の別の非限定的な実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、鉱油、ワックス、水素化植物油、ベヘン酸グリセリル、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される潤滑剤である。
【0017】
本開示の別の非限定的な実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、ポリビニルピロリドン、スクロース、ラクトース、澱粉、加工澱粉、糖、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアーゴム、ペクチン、ワックスベースの結合剤、微結晶セルロース(MCC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コポビドン、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される結合剤である。
【0018】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、放出調節製剤の総重量に基づいて、約1重量%~約85重量%の量で存在する。本開示の別の非限定的な実施形態では、放出調節製剤は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、サシェ(サッシェ/小袋/匂い袋)、またはロゼンジ(口内錠/舐剤/甘味入りの錠剤)の形態である。
【0019】
本発明の目的、特徴、および利点は、以下の説明を図面/図と併せて読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、代表的なヒドロキシプロピルセルロース試料のNMRスペクトルを示す。
図2図2は、実施例1の30重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を使用することによって調製された実施例6の放出調節製剤中に存在するヒドロクロロチアジド(HCTZ)薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル(プロフィール)、および比較例5の30重量%のHPCを使用することによって調製された実施例6Aの比較放出調節製剤中に存在するHCTZ薬物の溶解プロファイルとの比較を示す。
図3図3は、実施例1のHPCの60重量%を使用することによって調製された実施例7の放出調節製剤中に存在するヒドロクロロチアジド(HCTZ)薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル、および比較例5のHPCの30重量%を使用することによって調製された実施例7Aの比較放出調節製剤中に存在するHCTZ薬物の溶解プロファイルとの比較を示す。
図4図4は、実施例2のHPC20重量%を使用して調製された実施例8の放出調節製剤中に存在するイブプロフェン薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル、および比較例5のHPC20重量%を使用して調製された実施例8Aの比較放出調節製剤中に存在するイブプロフェン薬物の溶解プロファイルとの比較を示す。
図5図5は、実施例2の10重量%のHPCを使用して調製された実施例9の放出調節製剤中に存在するイブプロフェン薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル、および比較例5の10重量%のHPCを使用して調製された実施例9Aの比較放出調節製剤中に存在するイブプロフェン薬物の溶解プロファイルとの比較を示す。
図6図6は、25重量%の実施例2のHPCを使用して調製した実施例10の放出調節製剤中に存在するイブプロフェン薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル、および25重量%の比較例5のHPCを使用して調製した実施例10Aの比較放出調節製剤中に存在するイブプロフェン薬物の溶解プロファイルとの比較を示す。
図7図7は、実施例3の15重量%のHPCを使用することによって調製された実施例11の放出調節製剤中に存在するヒドロクロロチアジド(HCTZ)薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル、および比較例5の15重量%のHPCを使用することによって調製された実施例11Aの比較放出調節製剤の溶解プロファイルとの比較を示す。
図8図8は、実施例4の15重量%のHPCを使用することによって調製された実施例12の放出調節製剤中に存在するヒドロクロロチアジド(HCTZ)薬物(24時間にわたって放出された全薬物の%として)の溶解プロファイル、および実施例11Aの比較放出調節製剤の溶解プロファイルとの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の概念の少なくとも1つの実施形態を、例示的な図面、実験、結果、および実験手順によって詳細に説明する前に、本発明の概念は、その適用において、以下の説明に記載されるか、または図面、実験および/または結果に示される構成要素の構成および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明の概念は、他の実施形態が可能であるか、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。そのようなものとして、本明細書で使用される言語は、可能な限り広い範囲および意味を与えられることを意図しており、実施形態は、例示的なものであり、網羅的なものではない。また、本明細書で使用される語句および用語は、説明のためのものであり、限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【0022】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含むものとする。一般的に、本明細書に記載される化学の関連および技術に用いられる命名法は、当技術分野で既知であり、一般的に用いられるものである。反応および精製技術は、製造業者の仕様に従って、または当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実施される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、並びに医薬および医薬化学の研究所手順および技術に関連して使用される命名法は、当該分野で既知であり、一般的に使用されるものである。患者の化学合成、化学分析、医薬的調整物、製剤、送達、および治療には、標準的な技術が用いられる。
【0023】
明細書に記載されたすべての特許、公開特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関連する当業者の技術レベルを示すものである。本出願のいずれかの部分において参照されるすべての特許、公開特許出願、および非米国特許公開物は、個々の特許または刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0024】
本明細書中で開示されかつ特許請求された全ての組成物および/または方法は、本開示に照らして過度の実験を伴わずに作製され得そして実行され得る。本発明の組成物および方法は、好ましい態様に関連して記載されているが、本発明の概念、意図、および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の組成物および/または方法、並びに、その方法の工程または工程の順序に改変を加え得ることは、当業者に明らかであろう。当業者に明らかなそのような同様の置換および修飾はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の趣旨、範囲および概念内にあるとみなされる。
【0025】
本開示に従って利用される場合、別段の指示がない限り、以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0026】
「a」または「an」という語は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と併せて使用される場合、「1つ」を意味することができるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを参照するように明示的に示されているかまたは選択肢が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替的および「および/または」のみを参照する定義を支持している。本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、装置に対する誤差の固有の変動、値を決定するために使用される方法、および/または試験対象間に存在する変動を含むことを示すように使用される。用語「少なくとも1つ」の使用は、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むが、これらに限定されない、1つ以上の任意の量だけでなく、1を含むと理解されるであろう。用語「少なくとも1つ」は、それが添付される用語に応じて、最大で100または1000またはそれ以上まで延びることができ、加えて、100/1000の量は、より高い制限も満足できる結果を生み出すことができるので、制限的ではないと考えられる。さらに、用語「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ」の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、並びにX、YおよびZの任意の組み合わせを含むと理解されるであろう。
【0027】
本明細書および請求項で使用される用語「含む(comprising)」(および「含む(comorise)」および「含む(comprises)」などの任意の形態)、「有する(having)」(および「有する(have)」」および「有する(has)」などの任意の形態)、「備える(including)」(および「備える(includes)」および「備える(include)」などの任意の形態)、「含有する(containing)」(および「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの任意の形態)という語は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、引用されていない要素、または方法の工程を排除しない。
【0028】
本明細書において「またはその組合せ」とは、用語を前述して掲げたアイテムの順列および組合せのすべてを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのうちの少なくとも1つを含むことが意図され、順序が特定のコンテキストにおいて重要である場合、BA、CA、CB、CBA、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABも含む。この実施例に続いて、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCC、CBBAAA、CABABBなど、1つ以上の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者は、文脈から別段明らかでない限り、いかなる組み合わせにおいても、アイテムまたは用語の数に上限はないことを典型的に理解するであろう。
【0029】
本明細書で使用される場合、「薬品」または「活性のある薬学的成分」または「API(原薬)」とは、薬品(医薬品)の製造に使用されることを意図した物質または物質の混合物であって、製剤の製造に使用されるときに製剤の活性成分となるものをいう。そのような物質は、疾病の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防において薬理学的活性もしくは他の直接的効果を提供すること、またはヒトもしくは他の動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことを意図している。さらに、用語「薬物」または「活性のある薬学的成分」または「API」は、本開示において互換的に使用することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、本開示の組成物に関連する用語「放出調節」は、即時放出を意図するものではなく、制御放出、徐放、延長放出、経時的放出、遅進(retarded)放出、延長放出および遅延放出を包含する組成物を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「放出調節性医薬製剤」または「放出調節性剤形」という用語は、時間経過および/または位置の薬物放出特性が、溶液または即時放出性剤形のような従来の剤形によって提供されない治療目的または利便性目的を達成するように選択される剤形として記載することができる。放出調節固形経口投与製剤には、延長放出製剤および遅延放出製剤の両方が含まれる(「SUPAC-MR:放出調節固形経口投与製剤」に関するUSFDAガイドラインに従って)。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「医薬有効量」という用語は、疾患の治療または予防に必要とされ得る非毒性で十分な量の薬物を記載することができ、疾患の種類、疾患の重症度、製剤中に含まれる活性成分または他の成分の種類および含有量、剤形、患者の年齢、体重、健康状態、性別および摂食行動、薬物投与時間などを含むがこれらに限定されない種々の因子に応じて調整することができる。任意の個々の場合における適切な有効量は、日常的な実験のみを用いて当業者によって決定され得る。
【0033】
本開示の一態様は、約3.0~約3.9の範囲で変化する無水グルコース(MS)のモル当たりのモル置換度および約700,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を提供する。本開示の非限定的な一実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースのモル置換度は、約3.2~約3.8の範囲で変化することができる。本開示の別の非限定的な実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースのモル置換度は、約3.4~約3.7の範囲で変化することができる。
【0034】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量は、約750,000~約2,000,000ダルトンまたは約800,000~約2,000,000ダルトンまたは約800,000~約1,700,000ダルトンまたは約1,000,000~約1,500,000ダルトンの範囲で変化させることができる。
【0035】
本開示によるヒドロキシプロピルセルロースは、粉末形態で存在することができ、100μm未満の体積平均粒径を有する粒子を有することができる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの体積平均粒子径は、約40μm~約80μmまたは約50μm~約75μmの範囲で変化させることができる。本開示のヒドロキシプロピルセルロースの体積平均粒子径とは、レーザー散乱式粒度分布測定装置「Malvern Mastersizer 3000」を用いて測定を行った粒度分布において、累積体積が50%に達した時点の粒度D50をいう。
【0036】
本開示によるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、ヒドロキシアルキルセルロースを調製するための関連技術分野で公知の方法によって調製することができる。本開示の1つの非限定的な実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、(i)原料セルロース材料をアルカリ水溶液と反応させてアルカリセルロースを得ること、(ii)アルカリセルロースをプロピレンオキサイドとさらに反応させて粗ヒドロキシプロピルセルロース生成物を得ること、(iii)過剰のアルカリ溶液を酸性水溶液で中和すること、および(iv)粗生成物を洗浄、濾過および乾燥して、最終精製ヒドロキシプロピルセルロース生成物を得ることによって得ることができる。精製されたヒドロキシプロピルセルロース生成物は、粉末形態のヒドロキシプロピルセルロースを得るためにさらに粉砕することができ、本開示に従って得られたヒドロキシプロピルセルロースの1重量%水溶液は、25℃で少なくとも300mPa・sの粘度を有することができる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、約300~約10,000mPa・sまたは約500~約8000mPa・sまたは約1000~約5000mPa・sまたは約1500~約3000mPa・sの範囲で変化させることができる。
【0037】
本開示の別の態様は、約3.0~約3.9の範囲で変化する無水グルコース(MS)1モル当たりのモル置換度数および約700,000~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量を有するヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含む、放出調節製剤または放出調節剤形を提供する。本開示の非限定的な一実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースのモル置換度は、約3.2~約3.8の範囲で変化することができる。本開示の別の非限定的な実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースのモル置換度は、約3.4~約3.7の範囲で変化することができる。
【0038】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の重量平均分子量は、約750,000~約2,000,000ダルトンの範囲で変化させることができる。本開示の別の非限定的な実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量は、約800,000~約2,000,000ダルトンまたは約800,000~約1,700,000ダルトンまたは約1,000,000~約1,500,000ダルトンの範囲で変化させることができる。
【0039】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、粉末形態で存在することができ、100μm未満の体積平均粒径を有する粒子を有することができる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、HPCの体積平均粒子径は、約40~約80μmまたは約50~75μmの範囲で変化させることができる。本開示のヒドロキシプロピルセルロースの体積平均粒子径とは、レーザー散乱式粒度分布測定装置「Malvern Mastersizer 3000」を用いて測定を行って得られた粒度分布において、累積体積が50%に達した時点の粒度メジアン(D50)をいう。
【0040】
さらに、本開示によるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、本開示の放出調節製剤中に存在する少なくとも1つの活性医薬成分(API)の放出を改変するのに十分な量で使用することができる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、ヒドロキシプロピルセルロースの量は、トータル放出調節製剤の約5重量%~約99重量%、または約10重量%~約90重量%、または約15重量%~約75重量%、または約30重量%~約60重量%の範囲で変化させることができる。
【0041】
本開示の放出調節製剤は、少なくとも1つの活性医薬成分(API)をさらに含むことができる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、活性医薬成分は、薬物であり得る。あるいは、活性医薬成分(API)は、生物機能性成分であり得る。本開示の目的に有用な生体機能性成分の実施例としては、ビタミン、例えば、ビタミンC、ビタミンB1、B2、B3、B6、およびB12;ミネラル、例えば、亜鉛、マグネシウム、鉄、およびメラトニン;ハーブ栄養補助食品、例えば、クルクミン、アッシュワガンダ、およびフェヌグリーク抽出物;アミノ酸、例えば、イソロイシン、グリシン、L-トリプトファン、グルコサミン、コンドロイチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。広範囲の水溶性を有する任意の薬物を、本開示の放出調節製剤に適切に使用することができる。本開示の非限定的な一実施形態において、薬物は、25℃で、1mg/Lを超える、または16mg/Lを超える、または20mg/Lを超える、または700mg/Lを超える、または18,000mg/Lを超える、または300,000mg/Lを超える水溶性を有する薬物群から選択することができる。さらに、本開示の放出調節製剤に使用するのに適した薬物は、解熱薬、鎮痛薬および抗炎症薬、駆虫薬、心血管薬、抗細菌薬、気管支拡張薬、抗喘息薬、消化器薬、抗糖尿病薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗てんかん薬、抗利尿薬、またはその薬学的に許容される塩およびエステルなどの異なる治療クラスに属するものから選択することができる。
【0042】
解熱、鎮痛および抗炎症薬の例としては、エトドラク、イブプロフェン、ジクロフェナクおよびトファシチニブが挙げられるが、これらに限定されない。駆虫薬の例としては、アルベンダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。心血管薬の実施例としては、カルベジロール、メトプロロール、サクビトリルおよびバルサルタンが挙げられるが、これらに限定されない。抗菌薬の実施例としては、エリスロマイシン、シプロフロキサシンまたは任意の薬学的に許容される塩もしくはエステルが挙げられるが、これらに限定されない。気管支拡張薬の例としては、サルブタモールが挙げられるが、これらに限定されない。抗喘息薬の例としては、ドキソフィリンおよびテオフィリンが挙げられるが、これらに限定されない。胃腸薬の実施例としては、シメチジン、およびオメプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。抗糖尿病薬の実施例としては、メトホルミン塩酸塩およびシタグリプチンが挙げられるが、これらに限定されない。抗原虫薬の例としては、チニダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。抗ウイルス薬の例としては、アシクロビルが挙げられるが、これらに限定されない。抗てんかん薬の例としては、カルバマゼピンが挙げられるが、これらに限定されない。抗利尿薬の実施例としては、クロロチアジドおよびヒドロクロロチアジドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
さらに、活性医薬成分は、本開示の放出調節製剤中に医薬有効量で存在することができる。上記のように、本開示の放出調節製剤は、幅広い水溶性を有する任意の薬物に好適であり得る。したがって、本開示の放出調節製剤中に存在する薬物または薬物の量は、使用される薬物または薬物の種類、治療/治癒される病気の性質および重症度、製剤中に含まれる活性成分または他の成分の種類および含有量、剤形、患者の年齢、体重、健康状態、性別および摂食行動、薬物投与時間などを含むがこれらに限定されない様々な因子に応じて変更することができる。
【0044】
本開示の放出調節製剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。医薬品組成物で一般的に使用されている薬学的に許容される賦形剤、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients, Rows et al., Eds., 4th Edition, Pharmaceutical Press (2003) or Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (以前はRemington's Pharmaceutical Sciences), Alfonso R. Gennaro, ed., Lippincott Williams & Wilkins; 20th edition (Dec. 15, 2000) に記載される賦形剤は、現在の放出調節製剤での使用にも適している。そのような賦形剤の実施例としては、充填剤、顔料、結合剤、潤滑剤、流動助剤、香味料、甘味料、防腐剤、安定剤、酸化防止剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
薬学的に許容される賦形剤は、本発明の放出調節製剤の治療特性に影響を与えることなく、量で存在させることができる。薬学的に許容される賦形剤は、全放出調節製剤の約1重量%~約85重量%の範囲で含むことができる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、全放出調節製剤の約5重量%~約75重量%、または全放出調節製剤の約5重量%~約60重量%を構成することができる。
【0046】
本開示の放出調節製剤中に存在し得る充填剤の具体例は、セルロース;オリゴ糖、例えばラクトースおよびスクロース;糖;澱粉;加工澱粉;糖アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、キシリトールおよびラクチトール;ケイ酸;無機酸塩;硫酸カルシウム;並びにアルミニウムおよびケイ酸マグネシウム錯体および酸化物を含むことができるが、これらに限定されない。無機酸塩賦形剤の具体例としては、リン酸塩、例えば二リン酸カルシウム二水和物および硫酸水素塩を挙げることができるが、これらに限定されない。さらに、充填剤は、全放出調節製剤の約5.0重量%~約15重量%の量で存在することができる。
【0047】
本開示の放出調節製剤中に存在することができる結合剤の例は、ポリビニルピロリドン(PVP)、スクロース、ラクトース、澱粉、加工澱粉、糖、アラビアゴム、トラガカントゴム、グアーゴム、ペクチン、ワックスベースの結合剤、微結晶セルロース(MCC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、コポビドン、ゼラチンおよびアルギン酸ナトリウムを含むことができるが、これらに限定されない。バインダーは、合計放出調節製剤の約1重量%~約80重量%の量で存在することができる。
【0048】
同様に、本開示の放出調節製剤中に存在することができる好適な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク、カルナウバロウ、水素化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、ステアリルフマル酸ナトリウムおよび酸のスクロース脂肪酸エステル、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、エルカ酸などを含むことができるが、これらに限定されない。さらに、潤滑剤は、合計放出調節製剤の約0.1重量%~約20重量%の量で存在させることができる。
【0049】
本開示の放出調節製剤は、少なくとも1つの追加の放出調節剤をさらに含むことができる。このような放出調節剤の実施例としては、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸系ポリマー、例えばアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(Eudragit RS、Rohm Pharma GmbH社製)およびエチルアクリレート-メチルメタクリレートコポリマー懸濁液(Eudragit NE、Rohm Pharma GmbH社製)が挙げられるが、これらに限定されない。追加の放出調節剤は、合計放出調節製剤の約5重量%~約50重量%の量で存在することができる。
【0050】
本開示の放出調節製剤に使用するのに適したpH調整剤の例は、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸およびリン酸;有機酸、例えば、酢酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、シュウ酸、乳酸、グルタル酸、サリチル酸および酒石酸;並びにそれらの塩;またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0051】
他の薬学的に許容される賦形剤も、本開示の放出調節製剤中に存在することができる。例えば、フードイエロー(食品黄色)No.5、フードレッドNo.2およびフードブルーNo.2、食品レーキ(顔料)色素、または鉄セスキオキサイドのような着色剤または食品色素;アミンベースの緩衝剤または炭酸塩ベースの緩衝剤のようなpH緩衝剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、水素化油、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールのような界面活性剤;トコフェロール、テトラナトリウムエデト酸塩、ニコチンアミドまたはシクロデキストリンのような安定剤;およびクエン酸、酒石酸、リンゴ酸またはアスコルビン酸のような酸性化剤。
【0052】
本開示の放出調節製剤は、乾燥固体投薬形態で存在することができる。乾燥固体剤形は、正確な投与量を、通常は経口で、特定の部位に送達するのに特に有用であるが、舌下/頬、直腸、膣および眼のような、当業者に知られている他の経路を介して投与することもできる。本開示の1つの非限定的な実施形態において、放出調節製剤は、経口投与に適した固体投薬形態で存在することができる。このような剤形としては、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、サシェ剤またはロゼンジ剤が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の1つの非限定的な実施形態において、放出調節製剤は錠剤である。
【0053】
さらに、本開示の放出調節製剤のタブレット形態は、嗅覚または味覚をマスキングし、安定化し、有効性を維持することなどを目的として、基材でコーティングすることができる。コーティングは、糖またはフィルム形成ポリマーを含むことができる。
【0054】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、錠剤は、製剤からの薬物/活性医薬成分の放出をさらに調節するために、糖でコーティングされ、フィルムでコーティングされ、腸溶性コーティングされ、または放出調節剤の薄層またはフィルムでコーティングされ得る。
【0055】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、錠剤は糖被覆され得る。錠剤の糖衣は、基本的には、錠剤の表面を囲む糖の厚くて硬い被膜であり、これは、特定の不快な味付け薬物または任意の他の活性医薬成分の風味を隠すのに望ましく、また、光および湿気の影響下で錠剤が破れないように安定性を与えるのにも望ましい。本開示による錠剤の糖衣は、糖ベースのマテリアル(基材)を用いて実施することができる。本開示の目的に有用な糖ベースのマテリアルの実施例としては、白色軟糖が挙げられるが、これに限定されない。追加の薬学的に許容される賦形剤を糖ベースのマテリアル中に添加して、結合能および機械的強度の改善、および付着防止特性のような糖ベースコーティングの特性を向上させることもできる。このような追加の賦形剤の実施例としては、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、プルラン、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、糖ベースのコーティングはまた、さらなる医薬賦形剤として、香味剤または着色剤/顔料を含み得る。
【0056】
本開示の別の非限定的な実施形態では、錠剤をフィルムコーティングすることができる。錠剤のフィルムコーティングは、一般に、保護ポリマーの薄膜で錠剤のコアを包むことを含む。したがって、本開示の錠剤は、ポリマーの薄膜、特にコーティング層としての水溶性フィルムベースの重合体を含むことができる。タブレットフィルムコーティングには、合成および天然高分子の両方を使用することができる。合成高分子の実施例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-アクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドンおよびマクロゴールを含むことができるが、これらに限定されない。天然ポリマーの例は、プルランのような多糖類を含むことができるが、これらに限定されない。
【0057】
本開示の別の非限定的な実施形態では、錠剤は、腸溶フィルムコーティングされ得る。錠剤上の小腸溶フィルムコーティングは、錠剤処方から胃を保護し、胃酸から薬物を保護し、そして通常胃または小腸のより低い領域である特定の位置で活性医薬成分を放出するために望ましい。本錠剤の腸溶性フィルムコーティングは、腸溶性フィルムコーティングベースの材料を用いて行うことができる。このような物質の例は、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸共重合体L、メタクリル酸共重合体LD、メタクリル酸共重合体S等のアクリル酸誘導体、セラック等の天然物質を挙げることができる。
【0058】
さらに、本開示の放出調節製剤のタブレット形態は、本放出調節製剤の放出調節効率をさらに向上または改善するために、放出調節剤の薄層またはフィルムでコーティングすることができる。この目的のために、本開示の錠剤は、本放出調節製剤の薄層もしくはフィルム、または追加の放出調節剤の薄層もしくはフィルム、または両方の組み合わせでコーティングすることができる。
【0059】
1つの非限定的な実施形態において、錠剤は、本開示の放出調節製剤の薄層またはフィルムでコーティングすることができる。コーティング目的のために使用される放出調節製剤は、本開示において本明細書中で上記されたように、糖衣、フィルムコーティング、および腸溶コーティングのために使用されるコーティング材料の少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0060】
本開示の別の非限定的な実施形態では、錠剤は、追加の放出調節剤の薄層またはフィルムでコーティングすることができる。このような追加の放出調節剤の例は、限定されないが、ヒプロメロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタクリル酸共重合体、グアー、グアーガム、アルギン酸塩、デンプン誘導体、ワックスおよび脂肪を含むことができる。
【0061】
本開示の目的のために使用されるコーティング材料は、バインダー、潤滑剤、可塑剤、安定剤、着色剤などの、本開示において上に記載される薬学的に許容される賦形剤の少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0062】
本開示の放出調節製剤を調製するために使用される方法、特に錠剤のような固体経口投薬形態における放出調節製剤に関して制限はない。本開示の目的には、湿式顆粒錠剤化法、乾燥顆粒錠剤化法、または乾燥直接錠剤化法など、医薬当業者で周知の任意の錠剤化方法を好適に用いることができる。1つの非限定的な実施形態において、タブレット形態の放出調節製剤は、湿式造粒法によって調製することができ、この方法は、(i)ヒドロキシプロピルセルロース、薬物(複数可)などの活性医薬成分および他の必要な医薬上許容される賦形剤の混合物を配合して均一な均質ブレンドを作る工程、(ii)混練ブレンドを得るために湿潤剤を添加し、続いてそれを造粒して得られた顆粒を得る工程、(iii)得られた顆粒を圧縮に適した最適なサイズに乾燥およびサイズ決定する工程、(iv)処理ステップ(iii)から得られたサイズの顆粒をステアリン酸マグネシウムなどの適切な医薬上許容される潤滑剤と配合する工程、および(v)処理ステップ(iv)から得られた混合顆粒をタブレットに圧縮する工程を含む。
【0063】
別の非限定的な実施形態では、本開示の放出調節製剤は、(i)ヒドロキシプロピルセルロース、活性医薬成分および薬学的に許容される賦形剤などの本開示の放出調節製剤の様々な成分を予め決定された量を分配および混合して均一な粉末ブレンドを得る工程と、(ii)均一な粉末ブレンドをスラッギングまたはローラ圧縮のいずれかによって圧縮して、平坦な大型錠剤またはペレットを得る工程と、(iii)平坦な大型錠剤またはペレットを粉砕および篩(ふるいにかける)して均一な顆粒を得る工程と、(iv)顆粒を錠剤圧縮に供する工程とを含む乾燥顆粒化方法によって調製することができる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および崩壊剤、滑剤などのような他の賦形剤も、錠剤の圧縮に供する前に均一な顆粒中に添加することができる。
【0064】
別の非限定的な実施形態では、本開示の放出調節製剤は、乾燥直接錠剤法または直接圧縮可能な方法によって調製することができ、これは、(i)ヒドロキシプロピルセルロースなどの本開示の放出調節製剤の種々の成分、薬物などの活性医薬成分、および粉末成分を得るための潤滑剤を含む医薬上許容される賦形剤を予備粉砕またはふるい分けする工程、(ii)粉末成分を均一にブレンドまたは混合して均一なブレンドを得る工程、および(iii)均一なブレンドを錠剤圧縮に供して錠剤を得る工程を含む。
【0065】
本開示の1つの非限定的な実施形態において、放出調節製剤中に存在するヒドロキシプロピルセルロースは、(i)活性医薬成分の低用量ダンピングを提供することができ、(ii)活性医薬成分をある期間にわたって均一に放出することができ、(iii)効果的なタブレット圧縮特性を提供することができ、そして(iv)活性医薬成分の制御放出をより低いポリマー使用レベルで提供することができる。
【0066】
以下の実施例は、特に明記しない限り、本開示を説明し、部およびパーセンテージは、重量%である。各実施例は、本開示の限定ではなく、本開示の説明によって提供される。実際、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本開示において様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、1つの実施形態の一部として図示または記載された特徴を別の実施形態上で使用して、さらに別の実施形態を得ることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に入るそのような修正および変形を包含することが意図される。
実施例
【0067】
本開示の実施例1~4は、本開示のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を提供する。
実施例1(Ex1):3.72のHP-MSによるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の調製
【0068】
切断した精製セルロース1部を、ヘプタン7部、第三ブタノール2部、水0.5部および50%水酸化ナトリウム水溶液0.2部の混合物に浸漬し、スラリーを得た。スラリーを撹拌してアルカリセルロースを得た。次に、2.6部のプロピレンオキサイド(PO)をアルカリセルロースを含むスラリーに添加し、反応混合物を得た。次いで、得られた反応混合物を105℃に加熱し、全てのPOが反応するまでそこに保持した。次いで、粗ヒドロキシプロピルセルロース生成物を含有する反応混合物を室温に冷却し、過剰の水酸化ナトリウムを酢酸で中和した。溶媒を濾過により除去し、次いで生成物を熱水で洗浄し、濾過して塩および不純物を除去した。こうして得られた精製ケーキを、<5%の水分に達するまで約130~140℃で乾燥させた。このようにして得られた乾燥ヒドロキシプロピルセルロースを、D50<100μmの微粒子を有する粉末状のヒドロキシプロピルセルロースが得られるまで粉砕した。ヒドロキシプロピルモル置換度を3.7と分析した。Mwは1,510,000ダルトンであり、水溶液粘度は水中1wt%で1800mPa・sであった。体積平均粒子径(D50)は52μmであった。
実施例2(Ex2):HP-MS3.72を使用したHPCの調製
【0069】
本実施例のHPCは、2.8部のプロピレンオキサイドを用いた以外は実施例1と同様にして作製した。
実施例3(Ex3):HP-MS3.56によるHPCの調製
【0070】
本実施例のHPCは、2.0部のプロピレンオキサイドを用いた以外は、実施例1に記載の手順を用いて調製した。
実施例4(Ex4):HP-MS3.56によるHPCの調製
【0071】
本実施例のHPCは、2.1部のプロピレンオキサイドを用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。
比較例5(Comp.Ex.5):
【0072】
Ashland Specialty Ingredient G.P.によって販売されている市販のHPC、Klucel HXFを比較例として用いて、本開示の実施例1~4のHPCの利益を説明した。
【0073】
実施例1~4および比較例5のヒドロキシプロピルセルロースについて、ヒドロキシプロピルモル置換度(HP-MS)、分子量(MW)分布、粘度、および体積平均粒子径について、下記の試験方法に従って測定した。実測値を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
試験方法:
1.ヒドロキシプロピルモル置換度測定:
実施例1-4および比較例5のHPCのHP-MS値は、NMRにより以下のようにして求めた:
【0076】
試料加水分解:最初に25mgの試料を1.00gのD2O中で30分間膨潤させた。膨潤した試料に、0.5gmの35% DClを添加した。溶液バイアルを、ヒートブロック中で70℃で1時間維持した。試料溶液を約30分間冷却し、分析のために5mmのNMRチューブに移した。
NMR測定:定量
【0077】
1H NMRスペクトルは、Bruker 400MHz NMR分光計を用いて記録し、トップスピンソフトウェアで処理した。収集パラメータは、温度300K、スイープ(sweep)幅20ppm、パルス幅45deg、走査回数32、緩和遅延30sとした。処理パラメータは、線広がり(ラインブロードニング/line broadening)0.3Hzとした。
【0078】
スペクトルは、スタンダードプラクティス(standard practice)を用いて補正したベースラインおよびベースであった。最上場(most up-field)信号の中心(ヒドロキシプロピル置換のメチル)は1.05ppmとした。スペクトルは以下のように積分した:
領域A(IA)=1.90~0.15ppm(積分面積は300の値に較正され、他の積分面積はこの積分値に相対的であった)。
領域B(IB)=5.70~2.15ppm。
代表的なHPC試料のNMRスペクトルを図1に示す。
HP MSおよび重量%のHPを以下のように計算した:
HP MS = (7/(IB-IA))*100
Wt.% HP = ((HP MS * MW OC3H6OH)/(MW AHG + (HP MS*(MW C3H6OH-MW H))))*100
MW OC3H6OH = 75.086
MW C3H6OH = 59.087
MW AHG = 162.141
MW H = 1.008
2.分子量(MW)分布:
【0079】
本実施例1~4および比較例5のヒドロキシプロピルセルロースの分子量(MW)分布の分析は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用することによって決定した。分子量は、分子中の原子の原子量の合計である。ポリマーに関して本明細書中で使用される場合、用語、分子量、アベレージ分子量、平均分子量、および見かけの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される個々の高分子の分子量の算術平均を指す。分析SECからの相対分子量平均を、狭い分子量分布を有するポリ(エチレングリコール/エチレンオキシド)(PEG/PEO)標準に対して計算した。サイズ排除クロマトグラフィーは、以下の方法に従って行った:
(a)クロマトグラフィーのセットアップ
【0080】
セットアップに含まれるすべてのWatersモジュールは、Waters Corporation, 34 Maple Street, Milford, MA 01757, USA によって製造されている。セットアップは、異なる製造業者と同様のものに置き換えることができる。
Waters M515溶媒デリバリーシステム
Waters M717オートサンプラー
相対SECのWaters M2414示差屈折率検出器(DRI)
カラムバンク-以下の「分析条件」セクションの詳細を参照
Waters Empower 2ソフトウェア
* RI レンジ1.00 to 1.75 RIU
測定範囲7 x 10-7 RIU
ドリフト-2 x 10-7 RIU
(b)SECの分析条件
移動相-55%0.1M酢酸リチウム/45%エタノール
流速-0.8 ml/min
カラム-TSKgel guard (6mm x 40 mm) + 2 Linear TSK GMPWXLカラム、13 μm; 300 mm x 7.8mm (TOSOH Bioscience LLC, 3604 Horizon Drive, Suite 100, King of Prussia, PA 19406, USA
カラム温度-35℃
DRI(示差屈折率)検出器温度-35℃
キャリブレーション-狭い分子量分布を有するPEO/PEG標準(PSS-USA, Inc. Amherst Fields Research Park, 160 Old Farm Road, Amherst, MA 01002)
試料濃度-通常は 1mg/ml(特に断りのない限り)
注入量-200μl
3.粘度測定:
【0081】
攪拌イオン交換水にHPCをゆっくり加え、1時間攪拌した。温度を25℃の温度浴中で1時間平衡化する。ブルックフィールド粘度計を用いて、LVスピンドル#4を用いて30rpmで粘度を測定し、3分後に読み取る。
4.粒度測定:
【0082】
実施例1~4および比較例5のヒドロキシプロピルセルロースの粉末形態の粒径は、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折粒度計を用いて測定した。測定は、汎用ホッパー/試料トレイペアと標準ステンレス鋼ベンチュリ管粉末ディスペンサーを装備したAero Sドライパウダーフィーダーを使用して、粉末形成の試料で行った。Aero Sホッパーギャップを4.0mmに設定した。粉末試料は、1/4のティースプーン測定スプーンを完全に充填して測定し、ホッパーに装填した。粉体供給速度を30%に設定し、空気圧を3.0バールに設定した。オブスキュレーション限界は、オブスキュレーションフィルタリングをオフにして、0.2%下限と10%上限に設定した。バックグラウンド測定時間は10秒、試料測定時間は20秒に設定し、測定は、オブスキュレーションが一旦設定範囲内に収まってから、安定化時間0.1秒後に開始するように設定した。体積分布を用いて粒子径に換算したFraunhofer散乱モデルと「汎用」解析モデルをデータ解析に用いた。
【0083】
分子量652,000、25℃における1重量%水溶液粘度146mPa・s、および粒径D50が170μmのNisso HPC Hとして市販されている購入により入手可能なのHPCは、本開示のHPCよりも劣った改変薬物放出性能を示すことが予想される。Nisso HPC Hの分子量、粘度および粒径は、上記の試験方法に従って測定した。
薬物放出調節試験
【0084】
実施例1~4のヒドロキシプロピルセルロースは、薬物および他の医薬上許容される賦形剤と共に、放出調節製剤においてさらに使用される。表2は、本発明の放出調節製剤を製造するために使用される薬物のリストである。
【0085】
【表2】
実施例6:実施例1の30重量%のHPCを有する放出調節製剤(Ex.6)
【0086】
ヒドロクロロチアジド、実施例1のHPC、および噴霧乾燥ラクトース(成分1~3)を、表3に列挙した重量比で秤量し、USP篩(ふるい)#20を通してスクリーニングし、Turbulaミキサー中で10分間ブレンドした。フマル酸ステアリルナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムも別々に秤量し、USP篩#20を通してスクリーニングし、成分1~3のブレンドに添加した。こうして得られた、得られた粉末ブレンドを、Turbulaミキサーで2分間再度ブレンドし、均質な粉末ブレンドを得た。次いで、均質粉末ブレンド物を、圧縮シミュレータSTYL’oneを用いて錠剤に圧縮し、圧密力25kNで11.28の平坦面パンチおよびダイを用いて、プレス速度67RPM(64320錠/時)で操作するマネスティベータプレスをシミュレートした。個々の錠剤の重量が約500mgの錠剤が得られた。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例6A:比較例5の30重量%のHPCを有する比較放出調節製剤(Ex.6A)
30.0重量%の比較例5のHPCを用いた比較放出調節配合物(Ex.6A)を、上記の表3に列挙した量の成分を用いて、実施例6において上述したのと同じ方法で調製した。
【0089】
実施例6および6Aの錠剤の溶解試験は、USP装置Iを用いてpH=6.8の0.05Mリン酸塩中、100RPMの一定撹拌速度で50mgの用量で行った。試料を0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、6、8、10、12、14、16、20、22、24時間に採取し、0.45μmナイロン膜を通して濾過した。272nmでのインラインUV検出により試料を分析した。図2は、ヒドロクロロチアジド(HCTZ)の溶解プロファイルを、両製剤、すなわちEx.6およびEx.6Aについて24時間にわたって放出された全薬物の%として示す。図2から、実施例6の放出調節製剤からの薬物放出は、実施例6Aの比較放出調節製剤からの薬物放出よりも遅いことが明らかである。
実施例7:実施例1の60重量%のHPCを有する放出調節製剤(Ex.7)
【0090】
60重量%の実施例1のHPCを含む放出調節製剤(Ex.7)を本実施例で調製した。本実施例の放出調節製剤は、下記の表4に列挙する量の成分を使用して、実施例6に記載したのと同じ方法で調製した。
【0091】
【表4】
【0092】
実施例7A:比較例5の60重量%のHPCを有する比較放出調節製剤(Ex.7A)
60.0重量%の比較例5のHPCを含むコントロール放出調節製剤(Ex.7A)を、上記表4に列挙した量の成分を使用して、実施例7の放出調節製剤について上記したのと同じ方法で調製した。
【0093】
実施例7および7Aの錠剤の溶出試験は、実施例6および6Aにおいて上述したのと同様にして、USP装置Iを用いてpH=6.8の0.05Mリン酸塩中、100RPMの一定攪拌速度で50mgの用量で行った。図3は、ヒドロクロロチアジド(HCTZ)の溶解プロファイルを、両製剤、すなわちEx.7およびEx.7Aについて24時間にわたって放出された全薬物の%として示す。図3から、実施例7の放出調節配合からの薬物放出が、実施例7Aの放出調節配合と比較して遅いことが明らかである。
実施例8:実施例2の20重量%のHPCを有する放出調節製剤(Ex.8)
【0094】
この実施例では、約860mgの個々の錠剤重量の放出調節製剤錠剤(Ex.8)を、実施例2の20重量% HPCを用いて調製した。本実施例の放出調節製剤(Ex.8)は、以下の表5に記載の量の成分を用いて、実施例6において上述したのと同じ方法で調製した。
【0095】
【表5】
【0096】
実施例8A:比較例5の20重量%のHPCを有する比較放出調節製剤(Ex.8A)
20.0重量%の比較例5のHPCを含む比較放出調節製剤(Ex.8A)を、上記表5に列挙した量の成分を使用して、実施例8の放出調節製剤について上記したのと同じ方法で調製した。
【0097】
実施例8および8Aの錠剤の溶解試験は、pH=7.2の0.05Mリン酸塩中、および100RPMの一定攪拌速度でUSP装置Iを用いて、60mgの用量で、実施例6および6Aにおいて上記と同様に行った。221nmでのインラインUV検出により試料を分析した。図4は、イブプロフェンの溶解プロファイルを、24時間にわたって放出された全薬物の%として、両製剤、すなわちEx.8およびEx.8Aについて示している。実施例8の放出調節製剤からの薬物放出は、実施例8Aの放出調節製剤からの薬物放出よりも遅かった。
実施例9:実施例2の10重量%のHPCを有する放出調節製剤(Ex.9)
【0098】
実施例8の配合と同様に、この実施例は、実施例2の10重量%HPCを用いたことを除いて、実施例8に記載したのと同じ成分および手順を使用して、約860mgの個々の錠剤重量を有する放出調節製剤の調製を記載する。したがって、他の成分の重量割合を調整し、下記の表6に列挙した。
【0099】
【表6】
【0100】
実施例9A:比較例5の10重量%のHPCを有する比較放出調節製剤(Ex.9A)
10.0重量%の比較例5のHPCを含む比較放出調節製剤(Ex.9A)を、上記表6に列挙した量の成分を使用して、実施例9の放出調節製剤について上記したのと同じ方法で調製した。
【0101】
実施例9および9Aの錠剤の溶出試験は、実施例6および6Aで上述したのと同じ手順を用いて、pH=7.2の0.05Mリン酸塩中のUSP装置Iを用いて600mgの用量で実施した。221nmでのインラインUV検出により試料を分析した。図5は、イブプロフェンの溶解プロファイルを、Ex.9およびEx.9Aの両製剤について24時間にわたって放出された全薬物の%として示す。実施例9の放出調節配合からの薬物放出は、実施例9Aの放出調節配合からの薬物放出よりも遅かった。
実施例10:実施例2の25重量%のHPCを有する放出調節製剤(Ex.10)
【0102】
この実施例では、約500mgの個々の錠剤重量の放出調節製剤錠剤(Ex.10)を、実施例2の25重量% HPCを使用して調製した。本実施例の放出調節製剤(Ex.10)は、以下の表7に列挙された量の成分を用いて、実施例6に記載されたのと同じ方法で調製された。
【0103】
【表7】
【0104】
実施例10A:比較例5の25重量%のHPCを有する比較放出調節製剤(Ex.10A)
25.0重量%の比較例5のHPCを含む比較放出調節製剤(Ex.10A)も、上記の表7に列挙した量の成分を用いて、実施例10の放出調節製剤について上述したのと同じ方法で調製した。
【0105】
実施例10および10Aの錠剤の溶出試験は、実施例6および6Aで上述したのと同じ方法で、pH=7.2の0.05 Mリン酸塩中、および100RPMの一定撹拌速度でUSP装置Iを用いて600mgの用量で実施した。221nmでのインラインUV検出により試料を分析した。図6は、イブプロフェンの溶解プロファイルを、24時間にわたって放出された全薬物の%として、両製剤、すなわちEx.10およびEx.10Aについて示している。実施例10の放出調節配合からの薬物放出は、実施例10Aの比較放出調節配合からの薬物放出よりも遅かった。
実施例11:15重量%の実施例3のHPCを有する放出調節製剤(Ex.11)
【0106】
本実施例では、実施例3の15重量% HPCを用いて、個々の錠剤重量が約500mgの放出調節製剤の錠剤を調製した。錠剤は、以下の表8に列挙した量の成分を使用して、実施例6に記載したのと同じ方法で調製した。
【0107】
【表8】
【0108】
実施例11A:比較例5の15重量%のHPCを有する比較放出調節製剤(Ex.11A)
比較放出調節製剤(Ex.11A)15.0重量%の比較例5のHPCを、上記表8に記載された量の成分を用いて、実施例11の放出調節製剤について上述した方法と同じ方法で作成した。
【0109】
実施例11および11Aの錠剤の溶出試験は、実施例6に記載したのと同じ方法で、pH=6.8の0.15Mリン酸塩中、および100RPMの一定撹拌速度でUSP装置Iを用いて50mgの用量で実施した。実施例11の放出調節製剤(Ex.11)の溶解プロファイルを図7に示し、実施例11Aの比較放出調節製剤の溶解プロファイルと比較した。実施例11の放出調節製剤(Ex.11)からの薬物放出は、実施例11Aの比較放出調節配合(Ex.11A)からの薬物放出よりも遅かった。
実施例12:15重量%の実施例4のHPCを有する放出調節製剤(実施例12)
【0110】
本実施例では、実施例4の15重量% HPCを用いて、個々の錠剤重量が約500mgの放出調節製剤の錠剤を調製した。錠剤は、以下の表9に列挙した量の成分を使用して、実施例6に記載したのと同じ方法で調製した。
【0111】
【表9】
【0112】
本実施例の錠剤の溶出試験は、実施例6と同様にして、USP装置Iを用いてpH=6.8、一定攪拌速度100RPMの0.15 Mリン酸塩中で50mgの用量で行った。272nmでのインラインUV検出により試料を分析した。実施例12の放出調節製剤(Ex.12)の溶解プロファイルを図8に示し、対照(コントロール)放出調節製剤Ex.11Aの溶解プロファイルと比較した。実施例12の放出調節製剤からの薬物放出は、実施例11Aの比較放出調節製剤からの薬物放出よりも遅かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】