(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】炎症性腸疾患の治療
(51)【国際特許分類】
C07D 215/56 20060101AFI20230605BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20230605BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230605BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230605BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230605BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230605BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230605BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230605BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20230605BHJP
A61K 9/54 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
C07D215/56 CSP
A61K31/4704
A61P1/04
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/28
A61K9/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566661
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2021061462
(87)【国際公開番号】W WO2021219879
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522425976
【氏名又は名称】アキリオン アーベー
【氏名又は名称原語表記】AQILION AB
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,マーティン ハンス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA45
4C076AA60
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC16
4C076FF25
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
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4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
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4C084NA12
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB11
4C084ZC02
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
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4C086BC29
4C086MA01
4C086MA02
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4C086NA12
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4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB11
4C086ZC02
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、炎症性腸疾患の治療又は予防に使用するための、式(I)による化合物:
【化1】
(式(I)は、本明細書においてより具体的に定義される)、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供する。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的組成物、及び本発明の化合物を使用した治療方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性腸疾患の治療又は予防に使用するための、式(I)による化合物:
【化1】
若しくはその互変異性体であって、
式中、
R
1が、水素、ヒドロキシル、C
1~3アルキル、OC
1~3アルキル、又はハロゲンであり、
R
2が、水素、ヒドロキシル、OC
1~3アルキル、ハロゲン、又は少なくとも1つのハロゲンで任意選択的に置換されたC
1~3アルキルである、化合物若しくはその互変異性体、
又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
前記使用するための化合物が、式(Ia)の化合物:
【化2】
又はその互変異性体である、請求項1に記載の使用するための化合物。
【請求項3】
R
2が、水素である、請求項1又は2に記載の使用するための化合物。
【請求項4】
R
1が、水素又はハロゲンである、請求項3に記載の使用するための化合物。
【請求項5】
前記化合物が、
【化3】
から選択される、請求項1又は2に記載の使用するための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、
【化4】
から選択される、請求項5に記載の使用するための化合物。
【請求項7】
前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎又はクローン病である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項8】
前記化合物が、小腸及び/又は大腸に局所的に投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用するための化合物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む薬学的組成物であって、前記薬学的組成物が、小腸及び/若しくは大腸における前記化合物の放出に適合した固体又は半固体形態を有する、薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的組成物が、腸溶性コーティングを含む、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記薬学的組成物が、10モルパーセント(mol%)未満の前記式(I)の化合物の前駆体を含有し、前記mol%が、前記組成物中に存在する式(I)の化合物と前記前駆体とを合わせた総モル数に対する、前記組成物中に存在する化合物の割合である、請求項9又は10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記薬学的組成物が、前記式(I)の化合物の前記前駆体を実質的に含まない、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記式(I)の化合物の前記前駆体が、式(II)の化合物:
【化5】
若しくはその互変異性体であって、
式中、
R
1が、水素、ヒドロキシル、C
1~3アルキル、OC
1~3アルキル、又はハロゲンであり、
R
2が、水素、ヒドロキシル、OC
1~3アルキル、ハロゲン、又は少なくとも1つのハロゲンで任意選択的に置換されたC
1~3アルキルであり、
R
3及びR
4が、独立して、水素、C(O)H、C(O)メチル、C(O)エチル、C(O)プロピル、C(O)CH(CH
3)
2、C(O)C(CH
3)
3、C(O)フェニル、C(O)CH
2フェニル、CO
2H、CO
2CH
3、CO
2CH
2CH
3、CO
2CH
2フェニル、C(O)NHCH
3、C(O)N(CH
3)
2、C(O)NHCH
2CH
3、C(O)N(CH
2CH
3)
2、C(O)NHフェニル、C(O)NHCH
2フェニル、任意選択的に1~3個の複数の結合を含有するC
5~C
20カルボン酸のアシル残基、並びにアミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソ-ロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンのアシル残基から選択され、かつメチル、エチル、OCH
3、OCH
2CH
3、SCH
3、S(O)CH
3、S(O)
2CH
3、S(O)
2N(CH
3)
2、CF
3、OCF
3、F、CI、OH、CO
2H、CO
2CH
3、CO
2CH
2CH
3、C(O)NH
2、C(O)N(CH
3)
2、NH
2、NH
3+、N(CH
3)
2、NCH
3
3+、NHC(O)CH
3、NC(=NH)NH
2、OS(O)
2OH、S(O)
2OH、OP(O)(OH)
2、及びP(O)(OH)
2を含む群から選択される置換基によって任意選択的に1~3回置換されており、但し、R
3及びR
4が、両方とも水素ではないか、又は、R
3が、水素であり、R
4が、P(O)(OH)
2、P(O)(OCH
3)
2、P(O)(OCH
2CH
3)
2、P(O)(Oフェニル)
2、P(O)(OCH
2フェニル)
2、S(O)
2OH、S(O)
2NH
2、若しくはS(O)
2N(CH
3)
2である、化合物若しくはその互変異性体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である、請求項11又は12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記式(II)の化合物が、式(IIa)の化合物:
【化6】
である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記薬学的組成物中に存在する前記式(II)の化合物のR
1及びR
2が、前記薬学的組成物中に存在する前記式(I)の化合物のR
1及びR
2と同じである、請求項13又は14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
1つ以上の更なる治療剤を更に含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療又は予防に使用するための、請求項9~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
炎症性腸疾患の治療又は予防のための医薬の製造における、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項19】
炎症性腸疾患を治療又は予防する方法であって、その治療又は予防を必要とする対象に、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又は請求項9~16のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記炎症性腸疾患が、クローン病又は潰瘍性大腸炎である、請求項19に記載の方法、又は請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記対象の小腸及び/又は大腸に、前記式(I)の化合物、又は前記薬学的組成物を送達するステップを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記式(I)の化合物若しくは前記薬学的組成物を前記対象に経口又は直腸投与するステップを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性腸疾患の治療及び/又は予防に関する。本発明はまた、炎症性腸疾患の治療及び/又は予防における有用性を見出す投与計画並びにキットに関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease、IBD)は、胃腸壁の慢性炎症を特徴とする異種の疾患及び障害の群である。慢性炎症によって引き起こされる症状には、腹痛、下痢、一般的な体調不良感、並びに食欲不振及び食物からの栄養素の吸収不良が含まれ、これは、多くの場合、体重減少をもたらす。IBDには2つの主要な形態、即ち、典型的には下行結腸及び直腸で始まり、かつ連続的に拡大して全結腸(全大腸炎)に影響を及ぼし得る潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis、UC)、並びに最も一般的には回腸及び上行結腸に影響を及ぼすクローン病(Crohn’s disease、CD)がある。分類不能大腸炎(Indeterminate Colitis、IC)もまた、IBDの一形態とみなされ得る。IBDは、疾患状態がCD及びUCに区別できない場合、ICとして分類される。
【0003】
現在利用可能なIBD治療は、主に、症状の低減及び寛解の維持を対象としている。寛解を延長するために、多くの場合、長期維持療法が必要とされる。一次治療は、多くの場合、アミノサリチレート及び/又はコルチコステロイドの使用を伴う。二次治療には、免疫抑制剤、腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor、TNF)阻害剤、及びインテグリン阻害剤が含まれる。二次治療は、単独療法として、又は1つ以上の一次若しくは二次治療と組み合わせて使用され得る。多くの場合、外科的介入が必要である。
【0004】
また、免疫調節薬は、IBDの治療にとって有望であることが示されている。N-アルキル1,2-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-2-オキソ-キノリン-3-カルボキサニリド(以下、N-アルキルキノリン-3-カルボキシアニリドと称される)は、免疫調節特性を有することが示されている化合物の1つの特に有望なクラスである。N-アルキルキノリン-3-カルボキサニリドの免疫調節特性及び治療可能性は、1980年代に最初に報告された(例えば、米国特許第4,547,511号を参照されたい)。このクラスの1つのメンバーはラキニモドであり、クローン病の治療に有益であることが報告されている(例えば、D’Haens et al.,Gut.2015,64(8):1227-35及び国際公開第2011/014255号を参照されたい)。
【0005】
当初の見込みにもかかわらず、N-アルキルキノリン-3-カルボキサニリドの臨床的成功は、不十分な有効性、毒性、及び不安定性によって制限されている。例えば、Jansson et al.(J.Org.Chem.2006,71,1658-1667)は、N-アルキルキノリン-3-カルボキサニリドが求核剤に対して化学的に反応性であり、それらを中性形態で不安定にすることを報告した。ラキニモドなどのN-アルキルキノリン-3-カルボキサミドはまた、シトクロムP450(CYP)酵素によって容易に代謝されて、異なる効力、毒性、及び物理化学的特性を潜在的に有する様々な活性代謝産物となることが示されている(例えば、Tuvesson et al.,2005,Drug Metab.Dispos,33:866-872,2005を参照されたい)。特に、ラキニモドは、ヒトの安全性及び不十分な有効性に対する懸念により、再発寛解型多発性硬化症の治療について、欧州では販売認可が下りなかった(EMA 2014公開医薬品審査報告書-EMA/451905/2014)。
【0006】
残念ながら、多くの患者にとって、利用可能なIBD治療は、症状を低減し、かつ疾患の進行を遅らせる効果がない。また、利用可能な治療の多くは、感染症のリスクの増加、肝臓の炎症、悪心及び病気、体重増加、並びに稀に進行性多巣性白質脳症などの深刻な有害作用を引き起こす。したがって、IBDのより効果的な治療的及び予防的処置が、臨床的に非常に必要である。特に、副作用の管理がしやすい一方で、IBDに罹患している患者に臨床的利益をもたらす効果的な治療に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、炎症性腸疾患の治療及び/又は予防において使用するための、式(I)の化合物:
【0008】
【0009】
若しくはその互変異性体であって、
式中、
R1が、水素、ヒドロキシル、C1~3アルキル、OC1~3アルキル、又はハロゲンであり、
R2が、水素、ヒドロキシル、OC1~3アルキル、ハロゲン、又は少なくとも1つのハロゲンで任意選択的に置換されたC1~3アルキルであり、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0010】
本発明はまた、式(I)の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む薬学的組成物であって、当該薬学的組成物が、小腸及び/若しくは大腸における当該化合物の放出に適合した固体又は半固体形態を有する、薬学的組成物を提供する。組成物は、任意選択的に、1つ以上の追加の治療剤を含み得る。
【0011】
本発明者らは、本発明による使用するための化合物及び組成物が、クローン病及び潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療並びに/又は予防に驚くほど効果的であることを見出した。本発明者らは、式(I)の化合物が、驚くべきことに、インビボ炎症性腸疾患マウスモデルにおいて炎症性腸疾患と関連する炎症/浮腫を低減し、かつインビボ潰瘍性大腸炎マウスモデルにおいて潰瘍性大腸炎の発症を予防するのに効果的であることを見出した。式(I)の化合物の有効性によって、炎症性腸疾患、特にクローン病及び潰瘍性大腸炎の症状を低減するための効果的な治療的処置におけるそれらの使用が可能になり、疾患寛解が延長される。
【0012】
本発明は更に、炎症性腸疾患を治療及び/又は予防する方法であって、薬学的有効量の式(I)の化合物若しくは本発明の薬学的組成物を、炎症性腸疾患に罹患しているか、若しくはそれを発症するリスクがある対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、炎症性腸疾患に罹患しているか、若しくはそれを発症するリスクがある対象の小腸及び/又は大腸に、式(I)の化合物又は本発明の薬学的組成物を送達する方法を提供する。
【0014】
炎症性腸疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における式(I)の化合物の使用も本明細書に提供される。本発明は更に、本発明による化合物を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤及び任意選択的に1つ以上の更なる治療剤と一緒に含む、キットを提供する。本発明のキットは、炎症性腸疾患の治療及び/又は予防における使用を見出す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】C57Bl/6マウスを使用して潰瘍性大腸炎のDSSモデルにおけるマウスで測定された大腸炎スコアを示す。実施例化合物1を投与されたマウスは、ビヒクルのみ(CMC-Na、2%w/v)又は抗TNFα抗体を投与されたマウスと比較して、大腸炎スコアがより低かった。
【
図2】潰瘍性大腸炎のDSSモデルにおけるC57Bl/6の体重変化(実験1日目からの%変化)を示す。実施例化合物1を投与されたマウスは、ビヒクルのみ(CMC-Na、2%w/v)又は抗TNFα抗体を投与されたマウスと比較して、体重減少が少なかった。
【
図3】実験10日目の、潰瘍性大腸炎のDSSマウスモデルにおけるマウスの結腸長(cm)を示す。実施例化合物1を投与されたマウスは、ビヒクルのみ(CMC-Na、2%w/v)又は抗TNFα抗体を投与されたマウスと比較して、結腸長がより長いことが判明した。
【
図4】炎症性腸疾患のマウスモデルにおける、実施例化合物2で処置した後のマウス群の体重変化を示す。
【
図5】炎症性腸疾患のマウスモデルにおける、実施例化合物2で処置したマウスの炎症マーカーを示す。
【
図6】炎症性腸疾患のマウスモデルにおける、実施例化合物2で処置したマウスの炎症マーカーを示す。
【
図7】インビボ薬物動態試験における様々な時点での血漿中の実施例化合物2のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、特定のN-デスアルキルキノリン-3-カルボキサニリドが、炎症性腸疾患の症状及び発症を治療又は予防する際に驚くべき有効性を示すことを見出した。特に、本発明者らは、式(I)に記載のN-デスアルキルキノリン-3-カルボキサニリドは、クローン病及び潰瘍性大腸炎などのIBDの治療又は予防に驚くほど有益な特性を示すことを見出した。
【0017】
以下でより詳細に考察されるように、本発明者らは、5-クロロ-4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-N-フェニル-キノリン-3-カルボキサミド(5-chloro-4-hydroxy-1-methyl-2-oxo-N-phenyl-quinoline-3-carboxamide、DELAQ)が、潰瘍性大腸炎のインビボマウスモデルにおいて、体重減少を低減し、かつ潰瘍性大腸炎の臨床症状の発症に対する保護効果を有したことを見出した。本発明者らはまた、潰瘍性大腸炎と関連する浮腫の低減を示す結腸短縮の低減にDELAQが効果的であることを見出した。DELAQのカリウム塩を使用した更なる試験では、本発明者らは、マウスのCD4+養子移入誘発炎症性腸疾患において評価されるように、DELAQが炎症性腸疾患と関連する炎症/浮腫を阻害するのに有効であることを見出した。更に、DELAQのカリウム塩で経口処置したマウスは、未処置動物と比較してCYP1A1mRNA発現が有意に増加し、これは、化合物が結腸内のアリール炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor、AhR)を活性化するのに効果的であることを示している。炎症の低減におけるDELAQの驚くべき有効性は、クローン病及び潰瘍性大腸炎などのIBDの効果的な治療及び予防におけるその使用を可能にする。いくつかの実施形態では、化合物の有効性及び他の特性は、それが経口投与されたときに有効であることを可能にする。
【0018】
N-デスアルキルキノリン-3-カルボキサミド
N-デスアルキルキノリン-3-カルボキサニリドは、ラキニモド及びタスキニモドなどのN-アルキルキノリン-3-カルボキサニリドの活性代謝産物であることが以前に報告されている。単離された形態では、N-デスアルキルキノリン-3-カルボキサニドは、安定性が不十分であり、かつ水溶性が低いために、インビボ投与には好適でないことが報告されている(例えば、Tuvesson et al.,2005,Drug Metab.Dispos,33:866-872,2005、国際公開第2012/050500号、及びMariout et al.,2017,Tox.Appl.Pharm.,326,54-65を参照されたい)。
【0019】
しかしながら、本発明者らは、式(I)のN-デスアルキルキノリン-3-カルボキサニリドが、IBD、特にCD及びUCの治療及び予防に驚くほど効果的であることを見出した。したがって、本発明は、炎症性腸疾患、特にCD及びUCの治療又は予防において使用するための、式(I)による化合物:
【0020】
【0021】
を提供する。
【0022】
式(I)の化合物において、R1は、水素、ヒドロキシル、C1~3アルキル、OC1~3アルキル、又はハロゲンであり得る。好ましくは、R1は、水素、ヒドロキシル、メチル、エチル、OCH3、OCH2CH3、F、Cl、Br、及びIから選択される。より好ましくは、R1は、水素、エチル、OCH3、F、及びClから選択される。更により好ましくは、R1は、水素、エチル、OCH3、及びClから選択される。
【0023】
式(I)の化合物において、R2は、水素、ヒドロキシル、OC1~3アルキル、ハロゲン、又は少なくとも1つのハロゲンで任意選択的に置換されたC1~3アルキル(例えば、モノハロC1~3アルキル、ジハロC1~3アルキル及びトリロC1~3アルキル)であり得、ハロゲンは、F、Cl、Br及びIから選択される。好ましくは、R2は、水素、ヒドロキシル、C1~3アルキル、OCH3、OCH2CH3、F、Cl、又は少なくとも1つのF若しくはClで置換されたC1~3アルキル(例えば、モノハロC1~3アルキル、ジハロC1~3アルキル及びトリハロC1~3アルキル)から選択される。より好ましくは、R2は、水素、ヒドロキシル、メチル、エチル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、モノクロロメチル、ジクロロメチル及びトリクロロメチルから選択される。更により好ましくは、R2は、水素、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルから選択される。更により好ましくは、R2は、水素又はトリフルオロメチルである。
【0024】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物において、R1は、水素、OCH3及びエチルから選択され、R2は、水素及びトリフルオロメチルから選択される。例えば、R1は、水素であり得、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり得る。例えば、R1は、OCH3であり得、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり得る。例えば、R1エチルであり得、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり得る。
【0025】
特定の実施形態では、式(I)の化合物において、R2は、R1がOCH3である場合、トリクロロメチルではない。
【0026】
特定の好ましい実施形態では、式(I)の化合物において、R2は、水素である。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明による使用するための化合物は、式(Ia)の化合物:
【0028】
【0029】
である。
【0030】
好ましい一実施形態では、式(I)の化合物は、
【0031】
【0032】
からなる群から選択される。
【0033】
別の好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、DELAQである。
【0034】
疑義を避けるために、本明細書では、式(I)の化合物は、特に明記しない限り、その全ての互変異性体形態、塩及び溶媒和物を含むことが意図される。
【0035】
本発明による使用のための化合物は、有機化学の当業者に既知の方法を使用して調製され得る。本発明による特定の化合物を調製するための特定の方法は、実施例セクションにおいて本明細書に記載される。
【0036】
式(I)の化合物に存在する置換基に応じて、化合物は、エステル、アミド、カルバメート及び/又は塩を形成し得る。本発明での使用に好適である式(I)の化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかしながら、薬学的に許容されない対イオンを有する塩は、例えば、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩、並びにその生理学的に機能的な誘導体の調製における中間体として使用するために、本発明の範囲内である。本発明による使用のための好適な塩は、有機酸又は無機酸を用いて形成されたものを含む。特に、本発明による酸を用いて形成された好適な塩は、例えば、非置換であるか、若しくは例えば、ハロゲンによって置換されている1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸などの、飽和若しくは不飽和ジカルボン酸などの、ヒドロキシ-カルボン酸などの、アミノ酸などの鉱酸、強有機カルボン酸を用いるか、又は例えば、非置換であるか、若しくは例えばハロゲンによって置換されている(C1~C4)-アルキル-若しくはアリール-スルホン酸などの有機スルホン酸を用いて形成されたものを含む。薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フタル酸、アスパラギン酸、及びグルタミン酸、リジン及びアルギニンから形成されたものを含む。塩中に存在し得る好適なカチオンとしては、ナトリウム、カリウム及びカルシウムなどのアルカリ金属カチオン、並びにアンモニウム又はアミノカチオンが挙げられる。
【0037】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が、それらが反応するか、又はそれらから沈殿若しくは結晶化される溶媒とともに複合体を形成することができることを理解するであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られる。例えば、水との複合体は「水和物」として知られている。複合体は、化学量論的又は非化学量論的量で溶媒を組み込むことができる。溶媒和物は、Water-Insoluble Drug Formulation,2nd ed R.Lui CRC Press,page 553及びByrn et al Pharm Res 12(7),1995,945-954に記載される。溶液中で作製される前に、式(I)の化合物は、溶媒和物の形態であり得る。本発明による医薬としての使用に好適である式(I)の化合物の溶媒和物は、会合する溶媒が薬学的に許容されるものである。例えば、水和物は、薬学的に許容される溶媒和物である。
【0038】
式(I)の化合物は、結晶性又は非結晶性であり得る。本発明の特定の化合物は、2つ以上の多型形態を有し得る。
【0039】
薬学的組成物
式(I)の化合物は、単独で投与されることは可能である一方で、組成物、特に、薬学的組成物中に存在することが好ましい。本発明の薬学的組成物は、式(I)の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む。
【0040】
薬学的組成物は、経口、非経口(皮下、皮内、骨内注入、筋肉内、血管内(ボーラス又は注入)、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸及び局所(皮膚、口腔内、舌下及び眼内を含む)投与に好適なものを含むが、最好適な経路は、例えば、治療下のIBDの種類に依存し得る。
【0041】
経口投与に好適な本発明の薬学的組成物は、それぞれが所定量の活性成分を含有するカプセル、カシェ若しくは錠剤などの別個の単位として、粉末若しくは顆粒として、水性液体若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液として、あるいは水中油型液体エマルジョン又は油中水型液体エマルジョンとして提示され得る。式(I)の化合物はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとして提示されてもよい。様々な薬学的に許容される担体及びそれらの製剤は、標準的な製剤専門書、例えば、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。また、Wang,Y.J.and Hanson,M.A.,Journal of Parenteral Science and Technology,Technical Report No.10,Supp.42:2S,1988も参照されたい。
【0042】
直腸投与のための薬学的組成物は、カカオバター、合成グリセリドエステル、又はポリエチレングリコールなどの担体とともに坐剤として提示され得る。かかる担体は、典型的には、常温で固体であるが、直腸腔内では液化及び/又は溶解して薬物を放出する。
【0043】
例えば人体において、好適な条件下で、脱アルキル化又は加水分解によって式(I)の化合物に変換可能な特定の化合物が知られている。そのような化合物は、本明細書では、式(I)の化合物の前駆体と称される。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、10%モルパーセント(mol%)未満の式(I)の化合物の前駆体を含有し、mol%は、組成物中に存在する式(I)の化合物と式(I)の化合物の前駆体とを合わせた総モル数に対する、組成物中に存在する化合物の割合であると理解される。好ましくは、前駆体は、5mol%未満の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、4、3、2、又は1mol%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1mol%未満)の前駆体である。
【0045】
好ましくは、式(I)の化合物の前駆体は、10重量%未満の量で本発明の組成物中に存在し、重量%は、式(I)の化合物と式(I)の化合物の前駆体とを合わせた総質量に対する、組成物中に存在する化合物の割合であると理解される。より好ましくは、式(I)の化合物の前駆体は、5重量%未満の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、4、3、2又は1重量%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2又は0.1重量%未満)の前駆体である。
【0046】
より好ましくは、本発明の組成物は、式(I)の化合物の前駆体を実質的に含まない。
【0047】
特定の実施形態では、式(I)の化合物の前駆体は、式(II)の化合物:
【0048】
【0049】
である。
【0050】
疑義を避けるために、本明細書では、式(II)の化合物は、特に明記しない限り、その全ての互変異性体形態、塩及び溶媒和物を含むことが意図される。
【0051】
式(II)の化合物において、R1は、水素、ヒドロキシル、C1~3アルキル、OC1~3アルキル、又はハロゲンであり得る。好ましくは、R1は、水素、ヒドロキシル、メチル、エチル、OCH3、OCH2CH3、F、Cl、Br、及びIから選択される。より好ましくは、R1は、水素、エチル、OCH3、F、及びClから選択される。更により好ましくは、R1は、水素、エチル、OCH3、及びClから選択される。
【0052】
式(II)の化合物において、R2は、水素、ヒドロキシル、OC1~3アルキル、ハロゲン、又は少なくとも1つのハロゲンで任意選択的に置換されたC1~3アルキル(例えば、モノハロC1~3アルキル、ジハロC1~3アルキル及びトリロC1~3アルキル)であり得、ハロゲンは、F、Cl、Br及びIから選択される。好ましくは、R2は、水素、ヒドロキシル、C1~3アルキル、OCH3、OCH2CH3、F、Cl、又は少なくとも1つのF若しくはClで置換されたC1~3アルキル(例えば、モノハロC1~3アルキル、ジハロC1~3アルキル及びトリハロC1~3アルキル)から選択される。より好ましくは、R2は、水素、ヒドロキシル、メチル、エチル、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、モノクロロメチル、ジクロロメチル及びトリクロロメチルから選択される。更により好ましくは、R2は、水素、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルから選択される。更により好ましくは、R2は、水素又はトリフルオロメチルである。
【0053】
式(II)の化合物において、R3及びR4は、独立して、水素、C(O)H、C(O)メチル、C(O)エチル、C(O)プロピル、C(O)CH(CH3)2、C(O)C(CH3)3、C(O)フェニル、C(O)CH2フェニル、CO2H、CO2CH3、CO2CH2CH3、CO2CH2フェニル、C(O)NHCH3、C(O)N(CH3)2、C(O)NHCH2CH3、C(O)N(CH2CH3)2、C(O)NHフェニル、C(O)NHCH2フェニル、任意選択的に1~3個の複数の結合を含有するC5~C20カルボン酸のアシル残基、並びにアミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソ-ロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンのアシル残基から選択され得、かつメチル、エチル、OCH3、OCH2CH3、SCH3、S(O)CH3、S(O)2CH3、S(O)2N(CH3)2、CF3、OCF3、F、CI、OH、CO2H、CO2CH3、CO2CH2CH3、C(O)NH2、C(O)N(CH3)2、NH2、NH3+、N(CH3)2、NCH3
3+、NHC(O)CH3、NC(=NH)NH2、OS(O)2OH、S(O)2OH、OP(O)(OH)2、及びP(O)(OH)2を含む群から選択される置換基によって任意選択的に1~3回置換されていてもよく、但し、R3及びR4は、両方とも水素ではないか、又は、R3は、水素であり、R4は、P(O)(OH)2、P(O)(OCH3)2、P(O)(OCH2CH3)2、P(O)(Oフェニル)2、P(O)(OCH2フェニル)2、S(O)2OH、S(O)2NH2、若しくはS(O)2N(CH3)2であり得る。
【0054】
式(II)の化合物において、R3及びR4は、独立して、水素、C1~20アルキル(例えば、メチル及びエチル)及びC1~20アルキルカルボニル(当該アルキルは、直鎖若しくは分岐鎖であり、かつ任意選択的に1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、S及びP)を含み、かつ/又は任意選択的に1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、S及びP)で置換されている)、C6~10アリール並びにハロゲン(例えば、F及びCl)から選択され得、但し、R3及びR4は両方とも水素ではない。
【0055】
一実施形態では、式(II)の化合物において、R3は水素であり、かつR4はC(O)CH3であるか、R3はC(O)CH3であり、かつR4は水素であるか、又はR3及びR4はそれぞれC(O)CH3である。
【0056】
別の実施形態では、式(II)の化合物において、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロC1~3アルキルであり、R3は、水素であり、R4は、C(O)CH3である。例えば、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり、R3は、水素であり、R4は、C(O)CH3である。
【0057】
別の実施形態では、式(II)の化合物において、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロC1~3アルキルであり、R3は、C(O)CH3であり、R4は、Hである。例えば、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり、R3は、C(O)CH3であり、R4は、水素である。
【0058】
別の実施形態では、式(II)の化合物において、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロC1~3アルキルであり、R3及びR4は、C(O)CH3である。例えば、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり、R3及びR4は、C(O)CH3である。
【0059】
特定の好ましい実施形態では、式(II)の化合物において、R3は、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC1~20アルキルであり、R4は、水素である。例えば、R3は、任意選択的に1つ以上のヘテロ原子を含むC1~20アルキル、C1~16アルキル、C1~14アルキル、C1~10アルキル又はC1~6アルキルである。好ましくは、R3は、メチル、エチル又はプロピルであり、R4は、水素である。
【0060】
より好ましくは、R3は、メチル又はエチルであり、R4は、水素である。
【0061】
好ましい一実施形態では、式(II)の化合物において、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロC1~3アルキルであり、R3は、メチル、エチル又はプロピルであり、R4は、水素である。好ましくは、R1は、水素、エチル、OCH3又はClであり、R2は、水素又はトリフルオロメチルであり、R3は、メチル又はエチルであり、R4は、水素である。例えば、R1は、Clであり得、R2は、トリフルオロメチルであり得、R3は、メチルであり得、R4は、水素であり得る。例えば、R1及びR2は、両方とも水素であり得、R3は、メチルであり得、R4は、水素であり得る。例えば、R1は、エチルであり得、R2は、水素であり得、R3は、エチルであり得、R4は、水素であり得る。
【0062】
特に好ましい実施形態では、本発明の組成物中に存在する式(II)の化合物のR1及びR2は、本発明の組成物中に存在する式(I)の化合物のR1及びR2と同じである。
【0063】
特定の実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIa)の化合物:
【0064】
【0065】
である。
【0066】
疑義を避けるために、本文書では、式(IIa)の化合物は、特に明記しない限り、その全ての互変異性体形態、塩及び溶媒和物を含むことが意図される。
【0067】
本発明の組成物がDELAQを含む実施形態では、式(II)の化合物は、ラキニモド:
【0068】
【0069】
である。
【0070】
好ましくは、DELAQを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDELAQとラキニモドとを合わせた総モル数の10モルパーセント(mol%)未満の量でラキニモドを含有する。より好ましくは、DELAQを含む組成物は、5mol%未満の量でラキニモドを含有する。例えば、4、3、2、又は1mol%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1mol%未満)のラキニモドである。更により好ましくは、本発明の組成物は、ラキニモドを実質的に含まない。
【0071】
好ましくは、DELAQを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDELAQとラキニモドとを合わせた総質量の10重量%未満の量でラキニモドを含有する。より好ましくは、ラキニモドは、5重量%未満の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、4、3、2又は1重量%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1重量%未満)のラキニモドである。更により好ましくは、本発明の組成物は、ラキニモドを実質的に含まない。
【0072】
組成物がDMTASを含む実施形態では、式(II)の化合物は、タスキニモド:
【0073】
【0074】
である。
【0075】
好ましくは、DMTASを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDMTASとタスキニモドとを合わせた総モル数の10モルパーセント(mol%)未満の量でタスキニモドを含有する。より好ましくは、DMTASを含む組成物は、5mol%未満の量でタスキニモドを含む。例えば、4、3、2、又は1mol%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1mol%未満)のタスキニモドである。更により好ましくは、本発明の組成物は、タスキニモドを実質的に含まない。
【0076】
好ましくは、DMTASを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDMTASとタスキニモドとを合わせた総質量の10重量%未満の量でタスキニモドを含有する。より好ましくは、タスキニモドは、5重量%未満の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、4、3、2又は1重量%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1重量%未満)のタスキニモドである。更により好ましくは、本発明の組成物は、タスキニモドを実質的に含まない。
【0077】
組成物がDMROQを含む実施形態では、式(II)の化合物は、ロキニメクス:
【0078】
【0079】
である。
【0080】
好ましくは、DMROQを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDMROQとロキニメクスとを合わせた総モル数の10モルパーセント(mol%)未満の量でロキニメクスを含有する。より好ましくは、DMROQを含む組成物は、5mol%未満の量でロキニメクスを含む。例えば、4、3、2、又は1mol%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1mol%未満)のロキニメクスである。更により好ましくは、本発明の組成物は、ロキニメクスを実質的に含まない。
【0081】
好ましくは、DMROQを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDMROQとロキニメクスとを合わせた総質量の10重量%未満の量でロキニメクスを含有する。より好ましくは、ロキニメクスは、5重量%未満の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、4、3、2又は1重量%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1重量%未満)のロキニメクスである。更により好ましくは、本発明の組成物は、ロキニメクスを実質的に含まない。
【0082】
組成物がDEPAQを含む実施形態では、式(II)の化合物は、パキニモド:
【0083】
【0084】
である。
【0085】
好ましくは、DEPAQを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDEPAQとパキニモドとを合わせた総モル数の10モルパーセント(mol%)未満の量でパキニモドを含有する。より好ましくは、DEPAQを含む組成物は、5mol%未満の量でパキニモドを含む。例えば、4、3、2、又は1mol%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1mol%未満)のパキニモドである。更により好ましくは、本発明の組成物は、パキニモドを実質的に含まない。
【0086】
好ましくは、DEPAQを含む本発明の組成物は、組成物中に存在するDEPAQとパキニモドとを合わせた総質量の10重量%未満の量でパキニモドを含有する。より好ましくは、パキニモドは、5重量%未満の量で本発明の組成物中に存在する。例えば、4、3、2又は1重量%未満(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2若しくは0.1重量%未満)のロキニメクスである。更により好ましくは、本発明の組成物は、パキニモドを実質的に含まない。
【0087】
疑義を避けるために、本文書では、式(I)又は(II)の化合物のmol%が示される場合、mol%は、組成物中に存在する式(I)と(II)の化合物を合わせた総モル数であると理解される。例えば、合計100mmolの式(I)及び(II)の化合物を含有し、かつ式(II)の化合物が10mol%で存在する組成物において、当該組成物は、90mmolの式(I)の化合物及び10mmolの式(II)の化合物を含有する。更なる例として、合計100μmolのDELAQ及びラキニモドを含有し、かつ10mol%未満がラキニモドである本発明の組成物において、当該組成物は、10μmol未満のラキニモド(すなわち、存在する任意の対イオン又は溶媒の質量を除いて、3.6mg未満のラキニモド)、及び90μmol超のDELAQ(すなわち、存在する任意の対イオン又は溶媒の質量を除いて、29.5mg超のDELAQ)を含有する。
【0088】
加えて、本文書では、式(I)又は(II)の化合物の重量%が示される場合、重量%は、組成物中に存在する式(I)の化合物と(II)の化合物とを合わせた総質量に対する割合であると理解される。例えば、合計1000mgの式(I)及び(II)の化合物を含有し、式(II)の化合物が10重量%で存在する組成物において、当該組成物は、900mgの式(I)の化合物及び100mgの式(II)の化合物を含有する。更なる例として、合計1000mgのDELAQ及びラキニモド(存在する任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)を含有し、かつ10重量%未満がラキニモドである本発明の組成物において、当該組成物は、100mg未満のラキニモド(存在する任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)及び900mg超のDELAQ(任意の対イオン又は溶媒の質量を除く)を含有する。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、本質的に、式(I)の化合物及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤からなる。
【0090】
上記で特に言及した成分に加えて、本発明における使用するための組成物は、問題の組成物の種類を考慮して当技術分野で慣用的な他の薬剤を含み得ることを理解されたい。
【0091】
本発明の組成物は、1つ以上の更なる治療剤を含み得る。本発明の組成物中に存在し得る更なる治療剤の例としては、アミノサリチレート(例えば、メササラジン、オルサラジン、スルファサラジン、バルサラジド)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン及びベクロメタゾンジプロピオネート)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、シクロスポリン及びタクロリムス)、抗TNF薬(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ及びゴリムマブ)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン及びメトロニダゾール)、抗インテグリン薬(例えば、ベドリズマブ及びナタリズマブ)、インターロイキン阻害剤(例えば、ウステキヌマブ)、並びにヤヌスキナーゼ阻害剤(例えば、トファシチニブ、フィルゴチニブ、ウパダシチニブ、及びBMS-986165などのTYK2阻害剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
炎症性腸疾患
式(I)の化合物及び本発明の薬学的組成物は、IBD、例えばCD及びUCの治療における使用を見出す。
【0093】
したがって、本発明による使用のための式(I)の化合物、又は本発明の組成物は、CD若しくはUCなどのIBDを有する対象に投与され得る。対象は、ヒト対象、例えばヒト患者であり得る。
【0094】
対象は、難治性、再発性又は難治性-再発性として分類され得るIBDを有し得る。例えば、対象は、難治性、再発性若しくは難治性-再発性のCD又はUCを有し得る。追加的若しくは代替的に、対象は、アミノサリチレート及びコルチコステロイドなどの確立されたIBD治療に対して部分的又は完全に耐性であるIBDを有し得る。例えば、IBDは、アミノサリチレート及び/若しくはコルチコステロイド治療又は予防に対して部分的若しくは完全に耐性であるCD又はUCであり得る。追加的若しくは代替的に、対象は、アミノサリチレート及びコルチコステロイドなどの確立されたIBD治療への有害反応を経験したか、又は経験するリスクがあるものであり得る。
【0095】
本発明による使用のための式(I)の化合物、及び本発明の組成物は、IBDを発症するリスクがあると知られているか又は疑われる対象に投与され得る。例えば、CD若しくはUCなどのIBD発症に対する既知の又は疑われる遺伝的素因を有する対象である。例えば、式(I)の化合物、又は本発明の組成物は、IBDの寛解の延長及び/又はIBDの進行の遅延を必要とする対象に投与され得る。
【0096】
式(I)の化合物及び本発明の組成物は、IBDを治療又は予防する方法における有用性を見出し、当該方法は、式(I)の化合物又は本発明の組成物を、CD若しくはUCなどのIBDを有する対象に投与するステップを含む。特定の実施形態では、IBDを治療又は予防する方法は、IBDを発症するリスクがあると知られているか又は疑われる対象に、式(I)の化合物又は本発明の組成物を投与するステップを含む。
【0097】
特定の実施形態では、治療又は予防方法は、対象の小腸及び/若しくは大腸に式(I)の化合物又は本発明の薬学的組成物を送達するステップを含む。例えば、十二指腸、空腸及び回腸のうちの1つ以上、並びに/又は盲腸、上行結腸、横断結腸、下行結腸及び/若しくはS字結腸のうちの1つ以上に、式(I)の化合物又は本発明の薬学的組成物を送達するステップである。治療又は予防方法はまた、式(I)の化合物若しくは本発明の組成物を対象に経口又は直腸投与するステップを含み得る。
【0098】
式(I)の化合物はまた、IBDの治療又は予防のための医薬の製造における使用も見出す。例えば、式(I)の化合物は、CD若しくはUCの治療又は予防のための医薬の製造に使用され得る。
【0099】
小腸及び/又は大腸への送達
本発明による組成物は、直腸又は経口投与後の小腸又は大腸における式(I)の化合物の選択的放出に適合され得る。例えば、特定の実施形態では、式(I)の化合物又は本発明の薬学的組成物は、小腸及び/又は大腸に局所的に投与される。これは、特定のコーティング及び/又は製剤の使用によって達成され得る。
【0100】
本発明の組成物は、腸溶性コーティングを有し得る。胃内での攻撃及び分解から組成物中の活性成分を保護し、腸内での放出を可能にする腸溶性コーティングが知られている。任意の特定の製剤の最適なコーティングは、正確な使用目的に依存し、コーティングは、腸の特定の領域内で、又は摂取後の特定の時間に、活性成分を放出するように調整され得る。
【0101】
本発明の組成物は、小腸内、例えば、十二指腸、空腸及び回腸のうちの1つ以上において、式(I)の化合物を放出するように適合され得る。追加的若しくは代替的に、本発明の組成物は、大腸内で、例えば、盲腸、上行結腸、横断結腸、下行結腸及び/又はS字結腸のうちの1つ以上において、式(I)の化合物を放出するように適合され得る。
【0102】
本発明の組成物は、好ましくは、小腸及び/又は大腸内で式(I)の化合物を放出するように適合された腸溶性コーティングを含む、固体又は半固体形態であり得る。そのような製剤は、活性成分と外側腸溶性コーティングとの間に1つ以上の中間層を含有し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、小腸の1つ以上の特定の領域でその内容物の一部を、及び大腸の1つ以上の特定の領域でその内容物の更なる部分を放出することが可能である。
【0103】
投与計画
治療効果を達成するために必要とされる式(I)の化合物の量は、特定の投与経路及び治療下の対象の特徴、例えば、種、年齢、重量、性別、医学的状態、特定のIBD及びその重症度、並びに他の関連する医学的及び身体的因子によって異なるであろう。通常の熟練した医師は、IBDの治療又は予防に必要な式(I)の化合物の有効量を容易に決定及び投与することができる。
【0104】
式(I)の化合物は、毎日(毎日数回を含む)、2日若しくは3日ごと、毎週、2、3若しくは4週ごと、又は治療される対象及びIBDに依存して高単回用量としても投与され得る。
【0105】
好ましくは、式(I)の化合物(あらゆる対イオン又は溶媒の質量を除く)は、投与当たり約1~1000mgの量で投与され得る。例えば、1、5、10、15、20、25、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、300、400、500、600、700、800、900、及び1000mgである。
【0106】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、組成物として投与される。好ましくは、組成物は、本発明の薬学的組成物である。
【0107】
式(I)の化合物は、本発明における唯一の活性成分として使用され得るが、1つ以上の更なる治療剤と組み合わせて使用することも可能であり、かかる組み合わせの使用は、本発明の一実施形態を提供する。かかる更なる治療剤は、IBDの治療若しくは予防に有用な薬剤、又は他の薬学的に活性な材料であり得る。かかる薬剤は、当技術分野で既知である。本発明で使用するための更なる治療剤の例としては、本明細書に記載のものが挙げられる。
【0108】
1つ以上の更なる治療剤は、式(I)の化合物投与量の投与と同時に、連続して、又は別々に使用してもよい。かかる組み合わせの個々の成分は、治療過程中の異なる時間において別々に投与することができ、又は分割された若しくは単一の組み合わせ形態で同時に投与することができる。当業者は、所望の治療効果を有するために必要な1つ以上の治療剤の有効量を容易に決定及び投与することができる。
【0109】
式(I)の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物は、経口若しくは直腸投与量として投与され得、したがって、式(I)の化合物の投与量は、小腸及び/又は大腸への式(I)の化合物の送達に好適な形態であり得る。
【0110】
本発明による使用のための好ましい単位用量(unit dosage)組成物は、式(I)の化合物の有効用量又はその適切な画分を含有するものである。特定の組成物からの式(I)の化合物の放出もまた、例えば、組成物が好適な制御放出賦形剤を含有する場合に持続することができる。
【0111】
キット
本発明は、式(I)の化合物と、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、任意選択的にIBDの治療又は予防に有用な1つ以上の更なる治療剤と、を含むキットを提供する。そのような更なる治療剤の例としては、本発明における使用に好適なものとして本明細書に記載されるものが挙げられ、更なる治療剤として本発明の薬学的組成物中に任意選択的に存在する。
【0112】
本発明のキットは、IBD、特にCD及びUCの治療並びに予防における使用を見出す。
【0113】
疑義を避けるために、本発明によるキットに存在する式(I)の化合物は、本発明による使用に好適な形態及び量である。好適な薬学的組成物及び製剤は、本明細書に記載されている。当業者は、本発明のキットを含むのに好適であり、かつ本発明による使用に好適な式(I)の化合物の量を容易に決定することができる。
【0114】
等価物
本発明は、本明細書において広く包括的に記載されている。当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成が、本発明の教示が使用される特定の1つ若しくは複数の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を、日常的な実験のみを使用して認識するか、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は、例としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内では、本発明は、具体的に記載及び特許請求される以外の方法で実施され得ることを理解されたい。本発明は、本明細書に記載の各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、物品、材料、キット及び/又は方法の任意の組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。更に、一般的な開示内に含まれるより狭い種群及び亜群の各々も、本発明の一部を形成する。これは、除外されるものが本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、属から任意の主題を除外する条件又は否定的限定(negative limitation)下で、本発明の一般的な説明を含む。
【0115】
参照による組み込み
論文、特許及び特許出願、並びに本明細書で言及又は引用される他の文書及び電子利用可能な情報の内容は、各個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度まで、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。出願人らは、そのような論文、特許、特許出願、又は他の紙(physical)文書及び電子文書からの任意及び全ての材料及び情報を本出願に物理的に組み込む権利を保有する。
【0116】
以下の実施例は本発明を図示する。
【実施例】
【0117】
実施例1:5-クロロ-4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-N-フェニル-キノリン-3-カルボキサミド遊離酸(実施例化合物1)の合成
【0118】
【0119】
トルエン(600mL)中のメチル5-クロロ-4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-キノリン-3-カルボキシレート(25g、0.0934mol)とアニリン(17.4g、0.0333mol、2当量)との混合物を100℃で17時間撹拌した。HPLCにより、生成物への総変換が明らかになった。反応物を加熱から除去し、生成物を沈殿させた。反応物を室温で2日間放置した。軟質固体ケーキをn-ヘプタン(500mL)に懸濁し、5分間撹拌した後、固体を濾別した。固体を、トルエンとn-ヘプタンの1:1混合物(1000mL)で洗浄して、粗製5-クロロ-4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-N-フェニル-キノリン-3-カルボキサミドを得た。生成物をトルエンから再結晶させ、ヘプタンで洗浄し、次いでカラムクロマトグラフィ(石油エーテル100%->DCM100%)によって更に精製した。AcCNからの最終再結晶化により、所望の生成物(21.5g、70%収率)が得られた。
LC/MS:M+H=329.10。1H NMR(400 MHz,DMSO-d6)δ:12.75(1H,s),7.73(1H,m),7.65(3H,m),7.44(3H,m),7.22(1H,m),3.70(s,3H)。
【0120】
実施例2:5-クロロ-4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-N-フェニル-キノリン-3-カルボキサミドカリウム塩(実施例化合物2)の合成
実施例化合物1(300mg)をエタノール(6.0mL)に懸濁し、5M水酸化カリウム水溶液(0.198mL、約1.1当量)を添加した。得られた懸濁液を手で十分に振とうし、次いで撹拌し、40℃~周囲温度で48時間温度循環させた。
【0121】
生成物を濾過により単離し、エタノール(2×1mL)で洗浄し、真空下45℃で一定重量まで乾燥させた。白色結晶が得られた。収率は、251mgであった。
【0122】
実施例3:潰瘍性大腸炎マウスモデルにおける実施例化合物1の生物学的活性
潰瘍性大腸炎を、飲料水(1.5%w/v)中のデキストラン硫酸ナトリウム(Dextran Sulphate Sodium、DSS)を5日間投与することによって、C57Bl/6マウスでモデル化した。DSS投与の開始時に開始して10日間、体重減少及び疾患の臨床症状についてマウスを毎日監視した。
【0123】
異なる処置群の動物に、ビヒクル、実施例化合物1(CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム、2%w/v)を含む0.1mg/mLの水性懸濁液として1mg/kg)、又は抗TNFα抗体(抗マウスTNFα抗体クローンXT3.11)を投与した。マウスの1つの対照群には、DSS、実施例化合物1又はビヒクルは投与しなかった(本明細書では「ナイーブ動物」と称される)。ビヒクル及び実施例化合物1を、-7日目、しかし9日目のいずれかに開始する毎日の投与として投与した。抗TNFα抗体を、0、2、4及び6日目に500μg/処置で投与した。10日目の終了後、結腸を取り出し、測定した。結腸の長さ及び重量も評価した。
【0124】
ナイーブ動物と比較して、DSS水を与えられた動物は、体重減少及び下痢を含む疾患の臨床徴候、並びに実験終了時の疾患の総病理学的徴候を示した。更に、結腸の長さは、ナイーブ動物と比較して罹患動物では有意に減少したが、重量は増加した。長さは短く、重量は増加した。長さ比は、潰瘍性大腸炎と関連する浮腫を示す。
【0125】
図1~
図3に示されるように、実施例化合物1による毎日の経口処置は、ビヒクル処置対照と比較して、試験の9日目に大腸炎の臨床スコアの有意な低下、体重減少の低減、及び実験終了時の結腸長の有意な増加をもたらし、これは処置の有効な効果を示している。
【0126】
実施例4:実施例化合物2の生物学的活性
実施例4a):炎症性腸疾患と関連する炎症/浮腫の阻害における実施例化合物2の活性
炎症性腸疾患と関連する炎症/浮腫を阻害する際の実施例化合物2の有効性を、マウスにおけるCD4+養子移入誘発炎症性腸疾患において評価した。
【0127】
マウスの詳細は以下の通りであった。
種/系統又は品種:Fox Chase C.B-17 SCID及びBalb/C
供給業者:Charles River
到着時の年齢/体重:CB-17 SCID-6~7週齢
Balb/C-11~12週齢
性別:メス
順化(Acclimation):到着後少なくとも7日間の順化(Acclimatization)
収容:5匹/ケージ
【0128】
試験1日目に、SCIDマウスを秤量し、体重に基づいて処置群に均一に分布させた。
【0129】
試験0日目に、Balb/Cマウスを絶命させ(terminated)、CD4+CD45RB高細胞単離(SCID IBD細胞分離プロトコルを使用)のために脾臓を採取した。細胞を選別して得た後、処置群の各動物に、最小4×105細胞(200μl/マウス注射)でCD4+CD45RB高細胞のIP注射を行った。続いて、細胞の注射を行わない実験を通してマウスのナイーブ群を追跡した。ナイーブ群は、5匹の動物を含んでいた。
【0130】
試験21日目に、実施例化合物2(1mg/kg、21日目~49日目まで毎日)による処置を開始した。化合物を、カルボキシメチルセルロースナトリウム(1%、w/v)を含む0.1mg/mLの懸濁液として製剤化した。マウスには、実施例化合物2又はビヒクルのいずれかを投与した。これらの群の各々は、10匹の動物を含んでいた。
【0131】
試験49日目に、動物をイソフルランで麻酔し、採血してから頸椎脱臼させた。全結腸を取り出し、測定し、秤量した。結腸を、そのインターフェロンγ及びIL-22レベルについて分析した。結果を
図5に示す。結腸内の炎症も、視覚的及び組織病理学的評価によってスコア付けした。結果を
図6に示す。
【0132】
各動物を3日又は4日間隔で秤量し、3つの群のマウスの平均体重を
図4に示す。図に見られるように、実施例化合物2で処置したマウスは、ビヒクルのみで処置したマウスよりも体重減少が少ない。
図5において、実施例化合物2で処置したマウスは、ビヒクルのみで処置したマウスよりも低いレベルの炎症マーカーを有していたことが分かる。同様に、
図6には、実施例化合物2で処置したマウスが、ビヒクルのみで処置したマウスよりも炎症の徴候が少ないことが分かる(
*はp<0.05の統計的有意性を示し、
**は、p<0.01の統計的有意性を示す)。
図5及び
図6の結果は、実施例化合物2が動物の結腸において局所的な抗炎症効果を有することを示す。
【0133】
実施例4b):実施例化合物2の投与後のマウスの結腸におけるアリール炭化水素受容体(AhR)の活性化
実施例化合物2が経口投与後の結腸におけるアリール炭化水素受容体(AhR)を活性化する可能性を、野生型(wild-type、WT)マウスにおいて評価した。
【0134】
マウスの詳細は以下の通りであった。
動物の数:51匹発注(試験用50匹+追加分1匹)
種/系統又は品種:C57Bl/6
供給業者:Taconic
到着時の年齢/体重:6~7週齢
性別:メス
収容:5匹/ケージ
【0135】
試験0日目に、動物を秤量し、体重に基づいて処置群に均一に分布させた。また、試験0日目に、処置を開始した(治療スケジュールの概要を以下の表に示す)。試験14日目に、動物は、頸椎脱臼させてから、CO2吸入により窒息死させた。全結腸を取り出し、収集し、CYP1A1(GAPDH&ACTBに対して正規化)のqPCR分析のために準備した。
【0136】
【0137】
実施例化合物2を、カルボキシメチルセルロースナトリウム(1%、w/v)を含む0.1mg/ml、0.01mg/ml、又は0.001mg/mlの懸濁液として製剤化した。
【0138】
【0139】
表に見られるように、1.0及び0.1mg/kgでの実施例化合物2塩で処置されたWTマウスは、未処理動物と比較して、CYP1A1 mRNA発現の有意な増加を有し、これは、AhRの活性化を示す。更に、結果は、肝臓CYP1A1発現の増加が結腸におけるCYP1A1の増加よりも少なかったため、実施例化合物2が局所的なAhR活性化効果を有することを示す。
【0140】
実施例4c):実施例化合物2のインビボ薬物動態
ラットにおけるインビボ薬物動態試験を実行して、経口投与後に実施例化合物2を全身的に吸収及び検出され得るかどうかを判定した。
【0141】
4匹のオスのSprague Dawleyラットに、約225g~250gの投与で、カルボキシメチルセルロースナトリウム(1%、w/v)を含む0.1mg/mLの懸濁液として製剤化された1mg/kgの実施例化合物2を投与した。投与後15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間及び24時間で採取した。
【0142】
各血液サンプリングで約250μLの血液をK3EDTAバイアルにサンプリングし、約100μLの血漿も調製した。
【0143】
血漿試料を、50μLの血漿を250μLの内部標準溶液(ACN中の20ng/mLのACN中のフェナセチン、1%ギ酸を含む)と混合することによって調製し、混合し、遠心分離した(20分、4000rpm)。
【0144】
血漿試料をWatersのOstro96ウェルプレートに移し、6~8psiの正圧を10分間適用することによってプレートを通して引き出した。100μLの上清を更に50μLのUP水で希釈し、試料を分析に供した。
【0145】
標準及びQC試料をブランクラットの結腸ホモジネート及びブランクラットの血漿に調製した。標準物質を、濃度0.1~10000ng/mLの分析物にスパイクし、QC試料を濃度3、30、300及び3000ng/mLの分析物にスパイクし、そうでなければ試料として処理した。
【0146】
様々な時点での血漿中の実施例化合物2のレベルを
図7に示す。化合物が血漿中で検出され、急速に除去されることが分かる。
【国際調査報告】