(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】キャリアシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230605BHJP
G01N 33/548 20060101ALI20230605BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20230605BHJP
【FI】
G01N33/543 593
G01N33/548 Z
G01N33/553
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567433
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 GB2021051101
(87)【国際公開番号】W WO2021224631
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】イエルーン ヴァーヘイエン
(72)【発明者】
【氏名】タルン ヴェマルカル
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル カウバーン
(57)【要約】
キャリアシステム(100)は、アッセイにおいてアッセイ試料を担持するための1つ又は複数のキャリア(12)を提供する。キャリアは、剥離層(14)によって基材(10)に固定されている。キャリアは、アッセイ試料を受容するのに適しており、剥離層は、生体適合性水溶液の存在下で基材からキャリアを剥離するように構成されている。アッセイを実施するために、通常、アッセイ試料が懸濁される、生体適合性水溶液は、キャリアシステムに供給される。アッセイ試料は、キャリアによって受容され、剥離層は、生体適合性水溶液によって活性化され、キャリアを剥離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離層によって基材に固定されたキャリアを含むアッセイのためのキャリアシステムであって、前記キャリアは、アッセイ試料を受容するのに適しており、前記剥離層は、使用時に、生体適合性水溶液の存在下で前記基材から前記キャリアを剥離するように構成されている、キャリアシステム。
【請求項2】
前記キャリアが前記基材と接触している間に、前記キャリア上で前記アッセイ試料を受容するように適合されている、請求項1に記載のキャリアシステム。
【請求項3】
前記アッセイ試料は、前記生体適合性水溶液中に懸濁され、前記キャリアシステムが前記生体適合性水溶液と接触させているとき、前記アッセイ試料は、前記キャリア上で受容され、前記キャリアは、前記基材から剥離される、請求項1又は2に記載のキャリアシステム。
【請求項4】
前記剥離層は、前記剥離層の活性化後、前記生体適合性水溶液が生体適合性を維持するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項5】
前記剥離層は、水溶性である材料などの、水活性化可能である材料を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項6】
前記剥離層は、エタノールなどの非水溶媒中で活性化可能でない、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項7】
前記剥離層は、デキストランなどの糖、又はポリビニルアルコール、又はポリ(アクリル酸)、又はポリ(乳酸コグリコール酸)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項8】
前記キャリアは、磁性材料を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項9】
前記キャリアは、前記キャリアの上面と前記キャリアの対向底面との間に層構造を含み、前記層は、1つ又は複数の磁化層を含む、請求項8に記載のキャリアシステム。
【請求項10】
前記1つ又は複数の磁化層の横方向寸法の、前記1つ又は複数の磁化層の厚さ又は集合的な厚さに対する比率は、500よりも大きい、請求項9に記載のキャリアシステム。
【請求項11】
前記キャリアの最小横方向寸法は、5マイクロメートルから200マイクロメートルの間である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項12】
前記キャリアは、リソグラフィにより規定される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項13】
前記キャリアは、SU-8フォトレジストなどの、フォトレジスト層を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項14】
前記キャリアの表面は、前記アッセイ試料を受容するために適合され、例えば、前記表面は、ポリマーがチオール基によって共有結合されている金キャップ層を含む、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項15】
前記キャリアは、バーコード又は2次元コードから選択される読み取り可能なコードなどの、読み取り可能な情報を含む、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項16】
複数のキャリアを含み、前記キャリアの各々は、前記剥離層によって前記基材に固定されている、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項17】
前記基材に固定された前記キャリアが使用のために除去可能である滅菌包装を含む、請求項1乃至16のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項18】
アッセイのためのキャリアシステムを製造する方法であって、
基材を提供するステップと、
前記基材上に剥離層を形成するステップと、
前記剥離層上でアッセイ試料を受容するためのキャリアを、前記キャリアが前記基材に固定されているように、堆積させるステップと、
を含み、
前記剥離層は、使用時に、生体適合性水溶液の存在下で前記基材から前記キャリアを剥離するように構成されている、
方法。
【請求項19】
前記基材上に前記剥離層を形成するステップは、前記剥離層をスピンコーティングすることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記剥離層上に前記キャリアを堆積させるステップは、例えば、リソグラフィプロセスによって、前記剥離層上に前記キャリアを作製することを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記剥離層は、使用時に、1時間から72時間の間の時間内に、前記生体適合性水溶液の存在下で前記基材から前記キャリアを剥離するように適合されている、請求項18乃至20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記キャリアが前記基材と接触している間に、前記アッセイ試料は、前記キャリアによって受容される、請求項18乃至21のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【請求項23】
表面が前記アッセイ試料を受容するのに適しているように、前記キャリアの前記表面を適合させるステップをさらに含む、請求項18乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記剥離層上に前記キャリアを堆積させるステップの後に、エタノールに前記キャリアシステムを浸漬することによって前記キャリアシステムを滅菌するステップをさらに含む、請求項18乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記キャリアが前記基材に固定されている状態で、前記キャリアシステムを滅菌包装内に包装するステップをさらに含む、請求項18乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記キャリアを堆積させるステップは、磁気構造を形成することを含む、請求項18乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の前記キャリアシステムを使用してアッセイを実施する方法であって、前記キャリアを剥離するために生体適合性水溶液を前記キャリアシステムに導入するステップを含む、方法。
【請求項28】
試料が前記キャリアによって受容されるように、アッセイのための前記試料を前記キャリアに導入するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記キャリアが前記基材と接触している間に、前記試料は、前記キャリアによって受容される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アッセイ試料は、前記生体適合性水溶液中に懸濁される、請求項27乃至29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記キャリアは、磁性材料を含み、前記方法は、前記キャリアに磁場を印加することをさらに含み、前記磁場は、前記剥離層が前記基材から前記キャリアを剥離した後でも、前記基材と接触している前記キャリアを保持するように作用する、請求項27乃至30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記磁場は、印加され、少なくとも5秒間、又は少なくとも1分間、又は少なくとも5分間、又は少なくとも30分間、前記基材と接触している前記キャリアを保持する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の前記キャリアシステムを使用する方法であって、キャリアが前記基材と接触している間に、試料が前記キャリアによって受容されるように、アッセイのための前記試料を前記キャリアに導入するステップと、前記キャリア上で受容された前記試料を保存するステップとを含む、方法。
【請求項34】
保存のために前記キャリア上で受容された前記試料を凍結するステップを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記キャリア上で受容された前記試料を保存する前に、前記基材から前記キャリアを剥離するステップをさらに含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
アッセイを実施するための方法であって、
生体適合性水溶液の存在下で基材からキャリアを剥離するように構成されている剥離層によって前記基材に固定された前記キャリアを提供するステップと、
前記基材に固定された前記キャリアを、アッセイ試料が懸濁される生体適合性水溶液と接触させるステップと、
前記キャリアが前記基材と接触している間に、前記キャリア上で前記アッセイ試料を受容するステップと、
前記生体適合性水溶液によって前記剥離層の活性化によって、前記基材から前記キャリアを剥離するステップと、
を含む、方法。
【請求項37】
前記アッセイ試料は、細胞、好ましくは接着細胞を含む、請求項1乃至36のいずれか1項に記載のキャリアシステム又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアシステム及び方法に関し、特に、アッセイのためのキャリアシステム、及びキャリアシステムを製造する方法、ならびにキャリアシステムを使用してアッセイを実施する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アッセイは、アッセイ試料中の分析物の存在、量又は活性を定性的に或いは定量的に測定するための調査手順である。しばしば、アッセイ試料は、細胞又は細胞培養であり、分析物は、その細胞又は細胞培養のタンパク質又は遺伝子配列であるが、より一般的には、分析物は、代謝物、ペプチド、タンパク質、核酸、細胞外小胞、オルガネラ、細胞、又は組織を含み得る。
【0003】
しばしば、アッセイ試料は、測定ステップの前に試薬に曝される。生物学及び薬学などの分野では、アッセイ試料が多数の異なる試薬に曝されることが一般的である。例えば、分析物が疾患モデルとしての役割を果たす細胞培養のタンパク質又は遺伝子配列である場合、細胞培養の異なる試料は、多数の異なる薬剤候補に曝され得る。典型的に、アッセイ試料と試薬との間の相互作用は、ウェルプレート内で行われる。測定ステップは、ウェルプレート内で行われてもよく、或いは他の場所で行われてもよい。いくつかのケースでは、測定ステップは、例えば、フローサイトメータ内の、流動条件下で行われてもよい。
【0004】
一定のタイプの細胞などの、いくつかの生物学的アッセイ試料は、水溶液中に懸濁されてもよい。しかしながら、溶液中に容易に懸濁されることができず、接着細胞などの、表面に付着しているときに最も生存能力のある、多くの生物学的アッセイ試料が存在する。典型的に、測定するステップを含む、そのような試料のアッセイは、アッセイ試料がウェルプレートの底に付着している間に実施される必要がある。そのようなアッセイでは、ウェルプレートの底に付着しているアッセイ試料をウェルプレートから剥離せずに別の容器に容易に移すことができないという事実によって、アッセイプロセスが不利に制限され得る。これは、試料を損傷し得る。
【0005】
ウェルプレートに付着したアッセイ試料を測定することは、非効率的である。典型的に、アッセイ試料は、ウェルプレート全体にわたって付着し、或いは播種されるが、アッセイ試料の1又は2%のみが、実際に画像化され、或いは測定される。これは、アッセイ試料が希少資源、例えば、培養するのが特に困難である細胞、又は腫瘍の生検中に採取された細胞などの初代細胞であるとき、特に問題である。
【0006】
接着細胞は、表面に付着しているときに最も生存能力のあるアッセイ試料の一例である。例えば、フローサイトメータを使用して、流動条件下で接着細胞をアッセイすることに強い関心がある。しかしながら、これは、アッセイ前に付着状態から接着細胞を剥離することを必要とする。これは、接着細胞が損傷されることがあるので、或いは懸濁を強いられる接着細胞が接着細胞の正常な生物学的状態を正確に表さないことがあるので、実施されるアッセイにバイアスをかけ得る。この問題の重大性は、従来のアッセイでは、基材から接着細胞を剥離した後、細胞が正常な或いは乱れのない状態に戻るまで12から48時間待つのが普通であるという事実によって示される。
【0007】
表面に付着しているときに最も生存能力のある、或いは表面上で凝集する傾向があるアッセイ試料上でアッセイを実施する別の問題は、そのようなアッセイ試料がフローサイトメトリー装置におけるチャネルを詰まらせる傾向があり得ることである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ここで参照が行われるべき添付の独立請求項に定義されるように、アッセイのためのキャリアシステム、及びアッセイのためのキャリアシステムを製造する方法、ならびにアッセイのためのキャリアシステムを使用する方法を提供する。本発明の好ましい或いは有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0009】
したがって、有利には、本発明の第1の態様は、アッセイ試料を担持するためのキャリア又は粒子を含む、アッセイのためのキャリアシステムを提供し得る。キャリアは、剥離層によって基材に固定されている。有利には、キャリアは、アッセイ試料を受容するのに適しており、剥離層は、使用時に、生体適合性水溶液の存在下で基材からキャリアを剥離するように構成されている。例えば、剥離層は、生体適合性水溶液によって、活性化され、キャリアを剥離し得る。したがって、剥離層は、活性化されると、基材からキャリアを剥離し得る。
【0010】
一般に、アレイシステムに導入するためのアッセイ試料は、生体適合性水溶液中に懸濁され得る。キャリアシステムのユーザがアッセイを実施したいとき、アッセイ試料を担持する生体適合性水溶液間の接触は、溶液中にキャリアを自動的に剥離し得る。
【0011】
したがって、好ましくは、キャリアシステムは、キャリアが、溶液中に剥離される前に、アッセイ試料(例えば、接着細胞)がキャリアに付着し得るように、アッセイ試料を担持する生体適合性水溶液と接触させ、アッセイ試料を担持し得る。
【0012】
好ましい一実施形態では、アッセイ試料は、接着細胞であってもよく、キャリア、又は粒子は、細胞がキャリアに接着するのに適したサイズであってもよい。例えば、以下でより詳細に説明されるように、キャリアは、接着細胞が付着するのに適した、5から200マイクロメートルの範囲の横方向寸法の平面状の上面を有してもよい。次いで、アッセイ試料は、キャリア上でアッセイを介して担持されてもよい。特に好ましい一実施形態では、キャリア、及びキャリアが担持するアッセイ試料が、外部磁場の印加によってアッセイを介して方向付けられ得るように、キャリアは、磁性を帯びていてもよい。
【0013】
本発明の態様は、基材に固定されたキャリア又は粒子を参照して本明細書に説明されるが、典型的な用途では、キャリアは、同じ基材に固定され、例えば、マルチチャネルアッセイを実施するために使用される多数のキャリア又は粒子のうちの1つであってもよい。したがって、本発明の典型的な一実施形態では、基材は、10、100、又は500よりも多いキャリア、最大で1000、5000、又は10,000又はそれ以上もの数などの、多くのキャリアを担持してもよい。以下で説明されるように、マルチチャネルアッセイにおける使用のためのキャリアによって担持されるバーコードなどの標識によって、各キャリアは、個々に識別可能であってもよく、或いはキャリアのサブグループは、識別可能であってもよい。基材に固定された、複数のキャリア、又はアッセイ試料キャリアは、キャリアアレイ又は粒子アレイと呼ばれ得る。
【0014】
しかしながら、簡略化のために、本明細書に説明される本発明の実施形態は、通常、1つのキャリアのみを参照して説明されることとなる。
【0015】
好ましい一実施形態では、アッセイ試料は、アッセイ試料がキャリアによって、或いはキャリア上で受容され得るように、キャリアシステムに導入されてもよい。アッセイ試料は、生化学物質又は生物の細胞又は有機試料であってもよい。好ましくは、アッセイ試料は、接着細胞であり得る。キャリア上で受容されたアッセイ試料は、好ましくは、キャリアが基材から剥離される前に、キャリアの表面に付着し、接着し、播種し、或いは結合し得る。次いで、アッセイは、剥離されたキャリア上で受容され、剥離されたキャリアによって担持されたアッセイ試料に対して実施されてもよい。アッセイは、アッセイ試料の分析物の存在、量又は活性を測定することを含んでもよい。アッセイ試料が細胞であるとき、例えば、分析物は、その細胞のタンパク質又は遺伝子配列であってもよい。
【0016】
キャリア上で受容されたアッセイ試料は、操作及び搬送に便利であり得る。これは、例えば、アッセイ試料をウェルプレートに移動させるために、アッセイ試料を試薬に曝すために、或いは測定ステップにおいて検出器に対してアッセイ試料を配置するために、アッセイを実施するときに有利であり得る。
【0017】
本発明のさらなる一実施形態では、便宜上、キャリア上のアッセイ試料の受容は、将来のアッセイにおける使用のためのアッセイ試料を保存するために使用されてもよい。
【0018】
アッセイのための細胞を保存する従来の、先行技術の方法は、以下を含み得る。
-(例えば、化学的に)接着細胞を剥離し、培地に単一細胞懸濁液を作る。
-細胞を1mLあたり約1Mの細胞に濃縮する(遠心分離機で行われる)。
-培地を5-20%のDMSO(ジメチルスルホキシド)又は同等量で補液する。
-次いで、この混合液は、凍結用チューブ(すなわち、超低温保存バイアル)に加えられる。
-次いで、凍結用チューブは、毎分1℃で-70℃までゆっくり冷却させる(典型的に、これは、バイアルをイソプロパノールに浸漬し、-70℃の冷凍庫に入れることによって行われる)。
-その後、バイアルは、(冷凍庫又は液体窒素の中で)-70℃で保存される。
-解凍するとき、凍結されたバイアルは、解凍されるまで、37℃の温水浴槽に入れられる。
-次いで、新しい培地が加えられ、細胞はスピンダウンされ、再度新しい培地が加えられる。
-次いで、細胞は、フラスコ又はプレート又はディッシュに播種され、アッセイが実施される。
【0019】
本発明の一実施形態を使用して、この方法は、以下のように著しく改善され得る。
-本明細書に説明されるように、接着細胞を、基材に付着したキャリアに付着させる。
-任意に、本明細書に説明されるように、基材から液体中にキャリアを剥離する。代替的に、キャリアは、基材上に保持されてもよい。
-次いで、細胞は、1-2日間培養されるか、或いは直接凍結されるかのいずれかである(前者が、健康な細胞を維持するために好ましい)。
-キャリア、すなわち、細胞を搭載し、或いは細胞を担持する遊離キャリアを担持する基材は、5-20%のDMSOを含む培地でリフレッシュされている培地中にあり、液体1mLあたり約1Mの細胞が存在することを確認する。培地がリフレッシュされるとき、遠心分離機又は重力のいずれかは、キャリアを濃縮するために使用されてもよい。代替的に、本明細書に説明されるように、磁性キャリアが使用される場合、培地がリフレッシュされるとき、キャリアは、磁気的に引き下ろされ、或いは保持されてもよい。
-次いで、プロトコルは、細胞がアッセイにおいて使用する準備ができているキャリア上で受容されることを除いて、従来の細胞凍結と同様に行われることとなる。
【0020】
本発明の実施形態は、多くの利点をもたらす。
-細胞は、凍結前に剥離される必要がない。
-細胞は、凍結後、播種され、或いは任意の基材に付着する必要がない。
-生きている、接着細胞を保存することができる。
-これは、研究者が(接着細胞を必要とする)実験を行いたいが、後の分析又は追加実験のためにいくつかのアッセイされた試料を保存したい場合に有用である。
-これは、人々が大きなバッチの細胞を培養し、長期間にわたって複数の実験を行いたいときに有用である。次いで、バッチ全体、又は複数の細胞をキャリアに付着させることができ、次いで、凍結される。次いで、人々が実験を行いたいとき、細胞の一部分又は全部を解凍し得る。これは、最小限の実験間のばらつき及びバイアスを保証する。従来、人々が行わなければならないことは、(複数回の継代、すなわち細胞が培養中に増えすぎたときに剥離し、再播種するサイクルを通じて)細胞を継続的に培養することであるが、突然変異及び変化は、これらの異なる継代ステップにわたって蓄積される。もう1つの既知の解決策は、実験前に新しいバッチを常に解凍することである。しかしながら、これは、(解凍、2日間の培養、剥離、再播種が必要であるので)労働集約的であるだけでなく、ばらつき及び潜在的にバイアスを導入する。
-本発明の実施形態は、人々が迅速なアッセイを行いたいときに有用である。本アプローチは、人々がアッセイの前に「解凍、2日間の培養、剥離、再播種」ステップを行う必要がないことを確認する。この状況では、細胞は、解凍され、実験/アッセイは、(剥離及び再播種ステップなしで)直接、或いは1-2日間の培養後のいずれかで開始され得る。
【0021】
従来、アッセイレディ細胞は、入手可能であるが、これらの細胞は、まだ液体中に懸濁されており、アッセイ前に基材に付着する必要がある。本発明の実施形態は、これらのアッセイレディ細胞が同じ「状態」(例えば、アッセイレディ細胞が何回継代されたか、アッセイレディ細胞がどの細胞周期ステップであるか、アッセイレディ細胞が突然変異又は代謝問題などのアーティファクトがないことを確認すること)で全て凍結されていることを保証する。したがって、本発明の一実施形態では、キャリア上のアッセイレディ細胞は、例えば、凍結状態で、使用できる状態で販売されてもよい。さらに、本明細書に説明されるように、アッセイレディ細胞は、例えば、各キャリア上のバーコード又は他の読み取り可能な標識によって、個々に識別されるキャリア上にあってもよい。
【0022】
本発明のキャリアシステムの好ましい一実施形態では、剥離層は、アッセイ試料を含み、或いは担持するためのアッセイ試料溶液又はアッセイ試料培地の存在下で活性化可能であってもよい。例えば、アッセイ試料溶液は、生体適合性水溶液及びアッセイ試料を含んでもよい。したがって、アッセイ試料溶液をキャリアシステムに導入するという単一の行為は、アッセイ試料がキャリアによって受容され、キャリアが基材から剥離される結果となり得る。
【0023】
多くのアッセイ試料は、生存性を保つために生体適合性水溶液中で維持され、搬送される必要がある。したがって、生体適合性水溶液の存在下でキャリアを剥離するように構成されている剥離層によって基材に固定された、アッセイ試料を受容するための、キャリアの提供は、特に便利である。例えば、生体適合性水溶液は、非細胞毒性であってもよい。
【0024】
好ましい一実施形態では、剥離層は、剥離層の活性化後、生体適合性水溶液が生体適合性を維持するように構成されていてもよい。好ましくは、剥離層は、非生物学的適合性又は毒性の成分を生体適合性水溶液中に剥離しないことがある。そうでなければ、そのような成分は、生体適合性水溶液をアッセイ試料に対して有毒にし得る。より一般的には、好ましくは、剥離層は、任意の方法でアッセイ試料を変更し、或いは変化し得る任意の材料又は成分を生体適合性水溶液中に剥離しないことがある。有利には、そのような剥離層は、キャリアシステムを使用して実施されるアッセイの結果に影響を及ぼさないことがある。例えば、剥離層は、生体適合性材料で形成されてもよい。
【0025】
好ましい一実施形態では、アッセイ試料は、表面上で受容されたときに最も生存能力のあるものである。そのようなアッセイ試料の一例は、接着細胞であってもよい。そのようなアッセイ試料がキャリアによって、或いはキャリアの表面上で受容され、キャリアが基材から剥離されると、アッセイ試料は、別の表面上に移動するのではなく、キャリア上に留まっていてもよい。これは、剥離されたキャリア上に受容され、剥離されたキャリアによって担持されたそのようなアッセイ試料が、操作及び搬送に便利であることを意味し得る。さらに、そのようなアッセイ試料は、アッセイが実施されている間、代表的な生物学的状態のままであってもよい。これは、そのようなアッセイ試料のアッセイにおける任意のバイアスを低減し得る。特に、先行技術の方法において必要とされるような、機械的又は化学的手段を介してそのようなアッセイ試料に懸濁を強いる必要がないことがある。有利には、そのようなアッセイ試料の凝集はまた、低減され得る。
【0026】
有利には、本発明を具現化するキャリア上で受容されたアッセイ試料は、例えば、フローサイトメータ又は蛍光顕微鏡法を使用して測定されてもよい。
【0027】
好ましい一実施形態では、剥離層は、水活性化可能である材料、言い換えれば、生体適合性水溶液中の水などの、水の存在下でキャリア又は粒子を剥離する材料を含んでもよい。水活性化可能な材料は、水溶性材料であってもよい。水溶性材料は、水の存在下で溶解し、キャリアを剥離してもよい。剥離層は、完全に溶解してもよく、或いは完全に溶解しないことがある。剥離層は、剥離層とキャリアとの間の結合が弱まり、キャリアが基材から剥離されるそのような程度にしか溶解しないことがある。
【0028】
代替的に或いは追加的に、剥離層は、水又は水溶液の存在下で変化する他の特性を有する材料を含んでもよい。例えば、剥離層の材料の接着性は、水又は水溶液の存在下で低減されてもよい。水溶性剥離層と同様に、これらの剥離層は、キャリアが水の存在下で基材から剥離されてもよいが、好ましくは、剥離層の任意の成分を、アッセイ試料に影響を及ぼし得る溶液中に添加することなく、剥離され得るという利点を有し得る。
【0029】
本書で後でより詳細に説明されるように、好ましい一実施形態では、キャリアシステムの製造は、リソグラフィプロセスを含んでもよい。次いで、剥離層は、必要とされるリソグラフィプロセスに適しており、或いは適合する材料で形成されてもよい。剥離層は、リソグラフィプロセスの少なくともいくつかのステップの前に基材に塗布され、次いで、キャリアが剥離層の上に形成されてもよい。リソグラフィプロセスに適しているために、有利には、剥離層は、リソグラフィプロセスにおいて使用されるプロセス及び化学物質によって影響を及ぼさないことがある。
【0030】
好ましい一実施形態では、剥離層は、エタノールなどの非水溶媒中で活性化可能でない材料を含んでもよい。本書で後でより詳細に説明されるように、キャリアシステムを製造する方法は、アッセイ試料を受容するために適合されたコーティングをキャリアに施すことを含んでもよい。有利には、このプロセスは、キャリアが剥離層によって基材に固定されている間に実行され得る。例えば、コーティングは、10から120分の間などの時間、キャリアシステムを溶液に浸漬することによって施され、コーティングを形成し、或いは堆積させてもよく、コーティングは、ポリマーであってもよい。一般に、そのような溶液は、エタノールなどの非水溶媒を含むので、有利には、キャリアシステムが非水溶媒に曝されている間、剥離層が基材に固定されたキャリアを保持し得るように、剥離層は、そのような溶媒によって、影響を受けないことがあり、或いは活性化されないことがある。特に、有利には、キャリアの製造中、必要とされる時間及び条件下で非水溶媒に曝されているとき、剥離層は、キャリアを剥離しないことがある。
【0031】
代替的に或いは追加的に、キャリアシステムは、キャリアが剥離層によって基材に固定されている間、滅菌プロセスを受けてもよい。滅菌は、製造プロセスの一部であってもよく、或いはアッセイを実施するためのキャリアシステムの準備であってもよい。有利には、滅菌は、キャリアシステムを使用して実施されるアッセイを逆に妨害し得る不要な種類の生命体又は生物学的因子を排除する。滅菌は、キャリアシステムをエタノールなどの非水滅菌液に浸漬することを含んでもよい。滅菌液は、純粋なエタノールを含んでもよい。キャリアシステムは、最大10、15、20又は25分、典型的に、最大約30分又は1時間、滅菌液に浸漬され得る。剥離層がエタノールなどの非水溶媒に可溶でない材料を含む場合、有利には、剥離層は、キャリアシステムが非水溶媒に浸漬されている間、基材に固定されたキャリアを保持してもよい。特に、有利には、キャリアの滅菌に必要とされる時間及び条件下で非水溶媒に曝されているとき、剥離層は、キャリアを剥離しないことがある。
【0032】
剥離層は、糖を含んでもよい。糖類は、生体適合性があり得る材料の例である。糖を含む剥離層は、水溶液などの生体適合性水溶液の存在下でキャリアを剥離してもよい。糖類は、水溶性であってもよい。好ましくは、剥離層は、デキストランなどの糖を含み得る。デキストランを含む剥離層は、生体適合性があってもよい。キャリアシステムの製造では、剥離層は、スピンコート法を使用して基材に塗布されてもよい。有利には、糖、特にデキストランを含む剥離層は、スピンコーティングに適していることがある。
【0033】
典型的に、デキストランは、約3から2000kDa又はそれ以上の範囲の長さのポリマー分子を含み得る。任意のデキストランの溶液は、スピンコートされ、剥離層を形成してもよい。70kDaのデキストランは、1から10分の間の剥離層活性化時間を提供することが見出された。5000から40000kDaの範囲の、より大きなデキストラン分子は、生体適合性水溶液への可溶性がより低く、より長い剥離時間を提供するために使用されてもよい。したがって、3kDa又は50kDaから500kDa又は2000kDaの範囲の、より小さなデキストラン分子は、より短い剥離時間を提供するために使用されてもよく、2000kDa又は3000kDa又は5000kDaから6000kDa又は10000kDa又は40000kDaの範囲などの、より大きなデキストランは、より長い剥離時間を提供するために使用されてもよい。
【0034】
デキストランなどの、糖を含む剥離層は、リソグラフィプロセスに適していてもよく、エタノールを含む溶媒などの非水溶媒中、或いは純粋なエタノール中で活性化可能でないことがある。
【0035】
その材料、構造及び厚さなどの、剥離層のパラメータは、キャリアシステムへの生体適合性水溶液の導入後、キャリアが剥離されるのに要する所望の時間に応じて、選択され、或いは設計されてもよい。好ましい一実施形態では、剥離層のパラメータは、アッセイ試料がキャリア上で受容された可能性のある時間後に、キャリアを剥離するように選択されてもよい。キャリアが基材と接触している間にキャリア上でアッセイ試料を受容することは、アッセイ試料がキャリアの露出表面によってのみ受容されることを保証し得る。典型的に、キャリアの1つの表面のみがアッセイ中に測定され得るので、有利には、これは、アッセイ試料の大部分が測定され、アッセイ試料の無駄を減らし、或いは無駄をなくすことを保証し得る。これは、アッセイ試料が希少資源、例えば、培養するのが特に困難な細胞、又は生検中に採取された細胞などの初代細胞であるとき、特に有利である。
【0036】
デキストランなどの糖を含む剥離層は、生体適合性水溶液の存在下で、5又は10秒以下など、比較的迅速にキャリアを剥離してもよい。典型的に、いくつかのアッセイ試料は、キャリアシステムへのアッセイ試料の導入後、キャリア上で受容されるのに5秒よりもはるかに長い時間を要し得る。例えば、接着細胞がキャリア上で受容されるのに3時間以上要してもよい。したがって、剥離層は、より長い剥離時間を有する材料を含んでもよい。
【0037】
剥離層は、ポリビニルアルコール(PVA)を含んでもよい。ポリビニルアルコールを含む剥離層の剥離時間は、デキストランを含む剥離層の剥離時間よりもはるかに長くてもよい。ポリビニルアルコールを含む剥離層は、キャリアシステムへの生体適合性水溶液及びアッセイ試料の導入後、約1、2、3、6又は9時間、最大で12時間以上も、キャリアを剥離するように構成されていてもよい。したがって、ポリビニルアルコールを含む剥離層は、接着細胞などの、アッセイ試料がキャリア上で受容されるように、生体適合性水溶液の導入後、適切な時間にキャリアを剥離するように設計されてもよい。
【0038】
糖類と同様に、ポリビニルアルコールは、生体適合性があると考えられ得る材料である。ポリビニルアルコールを含む剥離層は、水溶性であってもよく、スピンコーティングに適していてもよく、リソグラフィプロセスに適合してもよい。ポリビニルアルコールを含む剥離層は、エタノールを含む溶媒などの非水溶媒中、或いは純粋なエタノール中では活性化可能でないことがある。
【0039】
他の材料は、PLGA(PLG又はポリ(乳酸コグリコール酸))又はポリ(アクリル酸)(PAA)などの、剥離層を形成するために使用されてもよい。剥離層の構造はまた、層ごとに堆積されたポリマー及び/又は糖類などの、複数の材料から形成されてもよい。上述されたように、本発明を具現化するキャリアシステムを製造することは、アッセイ試料を受容するために適合されたコーティングがキャリアに施されるステップを含んでもよい。代替的に或いは追加的に、キャリアシステムは、滅菌を受けてもよい。上述されたように、これらのプロセスの各々は、エタノールなどの非水溶媒を使用して実施されてもよく、有利には、キャリアは、非水溶媒の存在下で基材に固定されたままであり得る。
【0040】
代替的に、いくつかの実施形態では、剥離層の材料、構造及び厚さは、製造中、例えば、コーティングの塗布において、或いは滅菌プロセス中、水溶液の使用を可能にするために選択されてもよい。キャリアシステムが上記のプロセスのいずれか又は両方のために水溶液に浸漬される累積時間よりも長い時間後にのみ、キャリアが剥離されるように、剥離層のパラメータが選択される場合、これらのプロセスは、実行されてもよく、キャリアは、基材に固定されたままであってもよい。また、アッセイが実施されるべきとき、キャリアが剥離層によって基材に固定されている間に、剥離層は、アッセイ試料がキャリア上に受容されるための時間を依然として提供すべきであることに留意されたい。
【0041】
概して、所望の剥離時間を達成するために、剥離層の材料と、厚さ及び構造などの他の特性とは、変化させてもよく、或いは予め決定されてもよい。
【0042】
好ましい一実施形態では、キャリアは、磁性材料を含んでもよい。これは、アッセイ中に多くの利点を有し得る。外部磁場が印加されるとき、キャリアは、外部場のために十分な磁気モーメントを有し、キャリアに所望の力を印加してもよい。
【0043】
例えば、剥離層がキャリアを剥離した後でも、力は、印加され、基材と接触しているキャリアを保持してもよい。上述されたように、キャリアが基材と接触している間に、アッセイ試料がキャリアによって受容されることが有利であり得る。剥離層がキャリアを剥離した後でも、外部場を印加し、基材と接触しているキャリアを保持することによって、キャリアは、任意の時間、基材上の所定の位置に保持されてもよい。例えば、これは、特定のアッセイ試料がキャリアによって受容されるのに要する典型的な時間に、剥離層の剥離時間を一致させる必要性を取り除いてもよく、或いは特定の剥離時間を有するように設計された剥離層によって保持されているキャリアが、キャリア上で受容される剥離時間よりも長い任意の時間を必要とするアッセイ試料を受容することを可能にしてもよい。言い換えれば、特定のアッセイ試料がキャリアによって受容されるのに要する典型的な時間よりも短い活性化時間を有する剥離層が使用されてもよい。
【0044】
同様に、有利には、外部場によって印加される力は、アッセイ試料を担持する間、アッセイ中に溶液を介してキャリアを移動させ、或いは駆動するのに十分である。例えば、試料が細胞である場合、力は、キャリア及び細胞を移動させるのに十分であるべきである。
【0045】
キャリアは、リソグラフィにより規定されてもよく、或いは作製されてもよい。有利には、リソグラフィにより規定されたキャリアは、高いアスペクト比を有し得る。有利には、そのようなキャリアは、キャリアの体積に対してアッセイ試料を受容するための大きな表面積を有し得る。好ましい一実施形態では、便宜上、キャリアは、キャリアシステムの剥離層上或いはその上にリソグラフィにより規定され、或いは作製されてもよい。
【0046】
キャリアは、キャリアを規定され、或いは作製するために使用されるリソグラフィプロセスのアーティファクトであり得るフォトレジスト層を含んでもよい。有利には、フォトレジスト層は、水溶性でない1つの材料又は複数の材料を含み得る。
【0047】
キャリアの製造中、フォトレジスト層は、放射線に曝され、フォトレジスト層の領域を溶媒で洗い流すか或いは溶解させることによってパターン化されてもよい。典型的に、リソグラフィプロセスでは、フォトレジストは、水溶性であり、溶媒は、水性溶媒である。本発明の実施形態では、水溶性でないフォトレジストは好ましい。次いで、有利には、フォトレジストを洗い流すステップは、水系溶媒以外の溶媒を含み得る。したがって、有利には、剥離層は、洗浄プロセスによって影響を受けないことがある。
【0048】
フォトレジスト層は、SU-8フォトレジストを含んでもよい。SU-8フォトレジストは、例えば、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、γ-ブチロラクトン又はシクロペンタノンを含む溶媒に可溶であってもよい。有利には、SU-8フォトレジストは、生体適合性水溶液に可溶でないことがある。したがって、SU-8フォトレジストは、アッセイにおいて存在する場合、生体適合性があり得る。
【0049】
好ましい一実施形態では、キャリアの表面は、アッセイ試料を受容するために適合され、或いは変更されてもよい。有利には、そのような適合は、アッセイ試料がその表面によって受容される効率又は速度を改善し得るので、アッセイ試料がキャリア上で受容されるための時間を短縮し、有利には、アッセイ試料がキャリアに確実に結合されるように、アッセイ試料とキャリアとの間の結合又は引力の強さを増大させ得る。これはまた、アッセイ中にアッセイ試料がキャリアから移動し、或いは離れる任意の傾向を減少させ得る。キャリアの表面は、接着細胞を受容するために適合されてもよい。適合された表面は、キャリアが基材に固定されているときに曝されるキャリアの表面であってもよい。
【0050】
キャリアの表面は、アッセイ試料を受容するために適合されたコーティングを含んでもよい。そのようなコーティングを含むキャリアは、生体機能化されたものと称され得る。コーティングは、アッセイ試料として接着細胞を受容するために適合されてもよい。コーティングは、帯電コーティングであってもよい。これは、アッセイ試料がもともと帯電されているときに特に好ましいことがある。例えば、典型的に、細胞は、マイナス40ミリボルトからマイナス80ミリボルトの間の膜電位を有する。正電荷を有する表面を規定するコーティングを提供することは、キャリアの帯電された表面上のアッセイ試料の付着を促進し得る。有利には、帯電された表面、好ましくは、正に帯電された表面を提供することが、より効果的な細胞接着を導き得ることを見出した。コーティングは、荷電ポリマーを含んでもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、コーティングは、金キャップの形態でキャリアの金層上に塗布される。
【0052】
キャリアの金キャップは、キャリアの片面上或いは表面上にのみ存在してもよい。特に、金キャップは、キャリアが基材に固定されている間に曝されるキャリアの表面上にのみ存在してもよい。これは、キャリアの1つの表面にのみが生体機能化されるので、キャリアの1つの表面にのみがアッセイ試料を受容する傾向があることを保証する。キャリアの1つの表面上にのみでアッセイ試料を受容することの利点は、本明細書に説明される。いくつかの実施形態では、キャリアは、リソグラフィプロセスを使用して作製されてもよい。リソグラフィプロセスは、金キャップを含む特定の表面にのみを有するキャリアを作製するために特に適していることがある。
【0053】
ポリマー(荷電ポリマー)は、金キャップに共有結合されてもよい。アッセイ試料を受容するために適合された表面は、ポリマーがチオール基によって共有結合されている金キャップ層を含んでもよい。有利には、これは、表面に吸着された各ポリマーが同じ配向を有することを保証する。代替的に、ポリマーは、ファンデルワールス力によってキャリアの金キャップに吸着されてもよい。
【0054】
荷電ポリマーは、正電荷輸送基を含むポリマーであってもよい。ポリマーは、ポリオルニチン又はポリ-d-リジンであってもよい。ポリマーは、高分子電解質であってもよい。
【0055】
代替的に或いは追加的に、コーティングは、複数のリガンドを含んでもよい。複数のリガンドは、抗体を含んでもよい。アッセイのアッセイ試料が細胞であるとき、複数のリガンドは、インテグリンなどの細胞受容体に特異的に結合する抗体を含んでもよい。
【0056】
アッセイ試料が細胞であるとき、代替的に或いは追加的に、コーティングは、細胞外マトリクスタンパク質を含んでもよい。細胞外マトリクスタンパク質は、細胞接着を増加させ、或いは強化するように選択されたタンパク質であってもよい。タンパク質は、コラーゲン、ラミニン又はEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されるタンパク質混合物のマトリゲルであってもよい。
【0057】
キャリアの表面は、接着細胞を受容するために適合された物理的構造を含んでもよい。表面の物理的構造又はトポグラフィは、接着細胞がその表面上に接着し、或いは播種する程度に影響を及ぼし得る。有利には、細胞接着は、キャリアの表面の表面積を増加させることによって増加し得る。表面積は、表面の粗さを増加させることによって増加してもよい。例えば、表面は、イオンビームを使用してエッチングされていてもよい。
【0058】
表面の硬度はまた、接着細胞がキャリアのその表面上で受容される速度又は効率に影響を及ぼし得る。細胞接着は、表面のヤング率と密接に関係する。したがって、キャリアの表面の硬度、すなわちヤング率は、アッセイ試料である細胞の接着を最適化するために調整されてもよい。
【0059】
まとめると、アッセイ試料が接着細胞を含む一実施例では、本発明の典型的な一実施形態によるアッセイにおけるステップは、以下を含み得る。
1.キャリアアレイは、ウェルプレート、フラスコ、又は任意の他の細胞培養容器に配置される。
2.剥離された細胞(単一細胞)は、培地と混合され、キャリアアレイ上に搭載される。
3.細胞は、沈降し、キャリアに付着することとなる(典型的に、最短2-3時間)。
4.水性培地は、犠牲層(剥離層)をゆっくりと溶解する。
5.接着細胞を有するキャリアは、液体中に剥離される。
6.細胞を有するキャリアは、移動し、アッセイされ、測定され、保存されるなどし得る。
【0060】
上述されたように、キャリアは、磁性材料を含んでもよい。外部場が印加されるとき、キャリアは、外部場がキャリアに所望の力を印加するのに十分な磁気モーメントを有してもよい。所望の力は、キャリアの用途に応じてもよい。実用的な実装形態では、典型的に、印加された外部場は、2T、又は1T又は0.5T未満であり、典型的に、0.05T、又は0.1T又は0.25Tよりも大きくてもよい。磁性材料を含むキャリアは、外部磁場の印加によって可動であってもよい。例えば、キャリアは、液体培地内で可動であってもよい。液体培地は、キャリアシステムに導入され、キャリアを剥離する生体適合性水溶液であってもよい。磁気モーメントは、キャリア自体の磁化に起因してもよく、或いは外部場によってキャリアに誘発されてもよい。しかしながら、キャリアが、所望の力を発生させることができる十分な磁性材料を含むことが重要である。キャリアに印加された外部場によって発生され得る磁気モーメントは、キャリアにおける磁性材料の総体積Vに、その材料の磁化Msを乗じたものに依存し得る。したがって、好ましくは、本発明を具現化するキャリアのV.Msの値は、10-18J/T又は5x10-18J/T又は10-17J/Tなどの、所定の値よりも大きい。
【0061】
例えば、磁性材料は、Fe、Co、Ni、CoFe、CoFeB、FePt、CoNi、NiFeなどの金属又は金属合金から選択される材料を含んでもよい。
【0062】
外部場は、印加され、検出器に対して、キャリア及びキャリア上で受容されたアッセイ試料を配向してもよい。有利には、これは、キャリアが検出器に対して最適な位置及び角度に配置され得るとき、そのようなキャリアを用いて実施されるアッセイからの結果の一貫性及び品質を改善し得る。キャリア上で受容されたアッセイ試料を配向する能力は、キャリアが、例えば、水溶液中で懸濁状態にあるときに特に有利であり、マイクロ流体又はフローサイトメトリー用途において特に有益であり得る。
【0063】
磁性キャリアの構造は、キャリア及びアッセイ試料が支持される液体の変更、(例えば、採取のための測定後に)特定のキャリアを選別すること、(アッセイ試料がキャリアとウェルとの間に押し込まれないように)アッセイ試料を担持するキャリアの面を上にしてウェル又はフラスコの底へのキャリアの沈降を可能にするなどの、アッセイにおける多くの利点を可能にする。
【0064】
次いで、磁性キャリアを使用したイメージングアッセイの好ましい一実施形態は、細胞を含むアッセイ試料に関して、以下のようなステップを含み得る。
-アッセイ試料は、キャリアに付着し、剥離層が活性化した後、磁場を使用し、キャリアを基材上に保持する。
-(付着していない細胞(すなわち、キャリアに付着していない任意の細胞)を除去し、培地をリフレッシュするために)(キャリア上の)アッセイ試料は、新しい容器又はウェルに移される。
-(インキュベーション又は細胞増殖のために)細胞が上を向く状態で、細胞を有するキャリアを容器の底に磁気的に引き下ろす。
-アッセイ試薬(例えば、薬剤)を添加する。
-(磁場を使用し、所定の位置にキャリアを固定して)液体を除去する。
-(液体が交換されるとき、磁場を使用し、所定の位置にキャリアを固定して)様々なアッセイ液(例えば、洗浄バッファ、標識抗体)を順次添加する。
-(磁場を使用して)キャリアを反転させ、ウェルの底を通して顕微鏡イメージングを行う。
【0065】
代替の一実施形態では、(繰り返しになるが、細胞を含むアッセイ試料のコンテキストにおいて説明された)フローベースアッセイを使用して、本発明を具現化するキャリアの使用は、凝集せず(詰まらず)、検出器を通過するキャリア上の細胞のグループ又は単一細胞のイメージングを可能にし、蛍光強度(分光測定)又はキャリア上の細胞の全画像を撮影することのいずれかを使用して測定を可能にするなどの、さらなる利点をもたらし得る。
【0066】
本発明の一実施形態では、キャリア又は粒子は、キャリアの上面と、キャリアの対向底面との間に層構造を含んでもよく、層は、1つ又は複数の磁化層を含み、好ましくは、1つ又は複数の磁化層の横方向寸法の、1つ又は複数の磁化層の厚さ又は集合的な厚さに対する比率は、500よりも大きい。そのような構造を有するキャリアは、キャリアの表面において低い浮遊磁場を有してもよい。有利には、これは、同じ構造を有する複数のキャリアが提供されるとき、キャリアが別のキャリアと相互作用しないことがあることを意味し得る。特に、キャリアは、凝集し、或いは塊にならないことがある。キャリアが磁化残留であるか否かにかかわらず、このようなケースがあり得る。
【0067】
キャリアは、非磁性層をさらに含んでもよく、有利には、非磁性層は、磁性層に機械的支持を提供してもよく、その機械的特性及びその密度などのキャリアの物理的特性を決定してもよい。非磁性層は、磁化層のための適切な基材を提供してもよい。したがって、有利には、非磁性層は、Al、Ta、Pt、Pd、Ru、Au、Cu、W、MgO、Cr、Ti、Si、Ir、SiO2、SiO、Sn、Ag、ポリマー及びプラスチック、これらの材料の合金、ならびにこれらの材料を含む複合物又は混合物から選択される材料を含んでもよい。
【0068】
好ましい一実施形態では、キャリアは、バーコード又は2次元コードから選択される読み取り可能なコードなどの、読み取り可能な情報を含んでもよい。これは、例えば、カメラ及び適切なソフトウェアを用いて情報を読み取ることによって、キャリアが遠隔で識別されることを可能にしてもよい。マルチチャネルアッセイは、各キャリアが読み取り可能な情報を担持する複数のキャリアを提供することによって実施されてもよい。
【0069】
好ましい一実施形態では、読み取り可能な情報は、キャリア上で受容されたアッセイ試料を識別するために使用されてもよい。マルチチャネルアッセイでは、2つ以上のタイプのアッセイ試料は、一度に分析され得る。アッセイ試料が細胞である場合、2つ以上の異なるタイプの細胞は、一度に分析されてもよい。読み取り可能なコードは、特定のキャリア上のアッセイ試料のタイプを示してもよい。アッセイは、複数の異なるコード化されたキャリアを使用して実施されてもよく、異なるコード化されたキャリアは、異なるタイプのアッセイ試料を担持してもよい。アッセイ試料がキャリア上で受容された後、異なるタイプのアッセイ試料を有するキャリアは、プールされてもよい。例えば、各々が異なるタイプの細胞を含む(担持する)、複数のキャリアは、様々な細胞をその薬剤に曝すために、特定の薬剤を含むウェルプレート内でプールされ、或いは混合されてもよい。有利には、このような方法で読み取り可能な情報を使用したキャリアの識別は、キャリア、ひいてはキャリア上で受容されたアッセイ試料が互いに正確に区別され得るマルチプレックスプラットフォームを提供し得る。
【0070】
特定のタイプのアッセイ試料が、同一の読み取り可能な情報を有するキャリアによって受容されることがあってもよい。そのケースでは、読み取り可能な情報は、異なるアッセイ試料のタイプを担持するキャリアを区別することのみを必要とする。言い換えれば、アッセイのチャネル数、すなわちプレックスは、アッセイにおいて使用される個々のアッセイ試料のタイプの数に等しい。しかしながら、各キャリアに、固有の読み取り可能な情報を提供することが有利であり得る。キャリアのサブセットは、特定のアッセイ試料のタイプに関連する固有の読み取り可能な情報を含んでもよい。サブセットのキャリアの固有の読み取り可能な情報はまた、アッセイ中にサブセットの各アッセイ試料によって経験された試験条件、例えば、アッセイ中、アッセイ試料が曝される特定の薬物を識別するために使用されてもよい。このケースでは、読み取り可能な情報は、キャリアシステムの複数のキャリアの全てのキャリアを区別することができる必要がある。言い換えれば、アッセイのプレックスは、アッセイにおいて使用されるキャリアの数と等しくてもよい。
【0071】
バーコード、又は2次元コードの使用は、プレックスチャネル間の最小限のクロストークで、既存のマルチプレックスアッセイプラットフォームよりも、異なるキャリアを識別するための著しく、よりロバストなプロセスを提供し得る。さらに、このような方法での読み取り可能な情報の使用は、現在可能であるよりも非常に多くのマルチプレックスチャネルの使用を可能にし得る。例えば、バーコーディング又は2次元コードは、1000プレックス、又は10,000プレックス、又は必要に応じてそれ以上(すなわち、アッセイは、1000、又は10,000、又はそれ以上のマルチプレックスチャネルを含んでもよい)を可能にし得る。バーコード又は2次元コードの使用は、各キャリアが、固有の読み取り可能な情報を含むことが必要とされるときに特に有利であり得る。
【0072】
好ましい一実施形態では、キャリア(又は各キャリア)は、磁性材料を含んでもよく、適切な外部磁場は、印加され、コード又は情報を読み取るための所定の位置に、液体培地を介してキャリアを誘導し、或いは移動させ、或いは駆動してもよい。液体培地は、キャリアを剥離するために、キャリアシステムに導入される水溶液を含み、或いは構成されていてもよい。例えば、コード又は情報を表示するための大きな上面又は底面を有する高いアスペクト比の形状を有するキャリアは、コード又は情報の簡便な読み取りのために、基材又は他の支持面と接触しているように方向付けられてもよい。磁場が印加され、読み取り位置にキャリアを誘導してもよく、アッセイ結果は、読み取り可能なコード、及び、キャリア上で受容されたアッセイ試料を読み取ることによって取得されてもよい。
【0073】
好ましい一実施形態では、キャリアシステムは、剥離層によって基材に固定されたアッセイ試料を受容するための複数のキャリアを含んでもよい。アッセイ試料は、各々のキャリア上で受容されてもよい。同じタイプのアッセイ試料は、各キャリア上で受容されてもよい。代替的に、異なるタイプのアッセイ試料は、いくつかのキャリア上或いは各々のキャリア上で受容されてもよい。複数のキャリアを提供することによって、有利には、マルチプレックスアッセイは、キャリアシステムを使用して実施されてもよい。
【0074】
本発明の第2の態様は、アッセイのためのキャリアシステムを製造するための方法を提供することができ、本方法は、基材を提供するステップと、基材上に剥離層を形成するステップと、剥離層上でキャリアを、キャリアが基材に固定されているように、堆積させ、或いは形成するステップと、を含み、剥離層は、使用時に、生体適合性水溶液の存在下で基材からキャリアを剥離するように構成されている。
【0075】
好ましい一実施形態では、基材上に剥離層を形成するステップは、剥離層をスピンコーティングすることを含んでもよい。剥離層は、スピンコーティングに特に適している材料を含んでもよい。例えば、剥離層は、デキストランなどの糖、又はポリビニルアルコール(PVA)、又はポリ(乳酸コグリコール酸)(PLGA)、又はポリ(アクリル酸)(PAA)を含んでもよい。
【0076】
好ましい一実施形態では、剥離層上にキャリアを堆積させるステップは、剥離層上にキャリアを作製することを含んでもよい。言い換えれば、キャリアシステムを製造する方法は、キャリアを作製するステップを含んでもよい。便宜上、これは、キャリアが、キャリアシステムの製造と同じプロセスで製造されることを可能にし得る。代替的に、キャリアを堆積させるステップは、剥離層上に既に作製されたキャリアを堆積させることを含んでもよい。例えば、キャリアは、第三者によって製造されてもよい。
【0077】
複数のキャリアは、剥離層上に堆積され、或いは作製されてもよい。
【0078】
キャリアシステムを製造する方法は、リソグラフィプロセスを含んでもよい。特に、キャリアは、リソグラフィにより規定されてもよい。有利には、これは、高いアスペクト比を有するキャリアを提供してもよい。キャリアの作製は、リソグラフィプロセスを含んでもよい。リソグラフィプロセスは、物理気相成長プロセスを含んでもよく、有利には、物理気相成長プロセスは、キャリアを作製するために使用される様々な層の堆積におけるサブナノメートルの制御を可能にする。リソグラフィプロセスを使用して製造されたキャリアの厚さは、ナノメートルオーダであってもよく、横方向寸法におけるキャリアの最小サイズは、5から200ミクロンの間であってもよく、或いは20から200ミクロンの間であってもよい。(横方向寸法における)キャリアは、正方形又は長方形又は円形などの、任意の便宜の形状であってもよい。5又は10又は20ミクロンの最小横方向寸法を有するキャリアは、単一細胞を受容するのに適していることがあるので、単一細胞が目的であるアッセイにおいて有利であり得る。より大きなキャリア、例えば、200ミクロンに近い最小横方向寸法を有するキャリアは、複数の細胞を受容するのに適していてもよい。好ましい一実施形態では、キャリアは、100ミクロンの最小横方向寸法を有してもよい。
【0079】
キャリアの作製は、剥離層上或いはその上にフォトレジスト層を形成することを含んでもよい。
【0080】
フォトレジスト層は、剥離層の上にスピンコートされてもよい。上述されたように、有利には、フォトレジスト層は、水溶性でない1つの材料又は複数の材料を含み得るので、フォトレジスト層の部分は、剥離層に影響を及ぼさない非水溶媒を使用して、洗い流され、或いは溶解され得る。
【0081】
フォトレジスト層が水性溶媒に可溶でない場合、生体適合性があると考えられ得る。例えば、フォトレジスト層は、生体適合性ポリマーを含んでもよい。
【0082】
適切なフォトレジスト層は、SU-8フォトレジスト層であってもよい。SU-8フォトレジスト層は、水溶性でないことがある。リソグラフィプロセスは、フォトレジスト層の不要な領域を洗い流し、或いは溶解する前に、フォトレジストにフォトマスクを塗布し、フォトレジスト層を紫外線に曝すことを含んでもよい。
【0083】
フォトレジスト層が基材上のキャリアの領域を規定するようにパターン化されると、必要に応じて、キャリア間の剥離層は、除去されてもよい。有利には、これは、その後のキャリアの剥離中に生体適合性水溶液に曝される剥離層の体積を減少させ、溶液に溶解する剥離層の任意の濃度を減少させ、その濃度がアッセイ結果に及ぼし得る任意の影響を最小化し得る。
【0084】
本明細書に説明されるように、キャリアの作製中、後続の材料の層がキャリア上に堆積され得る。これらの材料はまた、キャリア間の基材上或いは剥離層上に堆積されてもよい。任意のそのような材料がキャリア間に堆積される場合、アッセイが実施されるときにキャリアの下の剥離層のエッジへの生体適合性水溶液のアクセスを妨げないことが重要である。必要に応じて、キャリア間の材料は、作製中に除去され、キャリアの下の剥離層のエッジが曝されることを保証し得るので、剥離層は、生体適合性水溶液によって活性化され、キャリアを剥離し得る。
【0085】
キャリアシステムを製造するための方法は、剥離層上にキャリアを堆積させ、或いは形成し、或いは作製するステップの後に、キャリアシステムをエタノールに浸漬することによって、キャリアシステムを滅菌するステップをさらに含んでもよい。有利には、滅菌は、キャリアシステムを使用して実施されるアッセイを逆に妨害し得る不要な種類の生命体又は生物学的因子を排除し得る。典型的に、キャリアシステムは、最大10、15、20又は25分、滅菌液に浸漬され得る。滅菌は、キャリアシステムを、エタノールなどの非水滅菌液に浸漬することを含んでもよい。滅菌液は、純粋なエタノールを含んでもよい。これは、キャリアが滅菌液に浸漬されている間、キャリアが基材に固定されたままとなるので、剥離層は、非水溶媒中で活性化可能でない、デキストラン又はポリビニルアルコールなどの材料を含むとき、有利であり得る。滅菌液が剥離層に影響を及ぼす場合でも、剥離層の剥離時間が、キャリアシステムが滅菌液に浸漬される時間よりも長ければ、同様の効果は達成され得る。
【0086】
キャリアシステムを滅菌するステップはまた、乾熱滅菌法、蒸気滅菌法、又はガス滅菌法を使用して実施されてもよい。乾熱滅菌は、剥離層がこの滅菌方法によって最も影響を受けにくいので、このステップに最も適していることがある。
【0087】
キャリアを堆積させ、或いは作製するステップは、磁気構造又は層を形成することを含んでもよい。特に、本方法がリソグラフィプロセスを含むとき、本方法は、フォトレジスト層の上に磁性材料を堆積させることを含んでもよい。金などのさらなる材料はまた、フォトレジスト層の上に、或いはキャリアの磁性材料の上に堆積されてもよい。金キャップは、生体適合性を提供してもよい。さらに、バーコード、QRコード、又は他の読み取り可能な情報は、リソグラフィによりキャリアに付加されてもよい。
【0088】
本方法は、キャリア上に金層を堆積させ、キャップを形成するステップをさらに含んでもよい。有利には、金キャップは、生体適合性があってもよい。金は、キャリアが基材と接触しているときに曝されるキャリアの表面上にのみ堆積されてもよい。
【0089】
本方法は、アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させることをさらに含んでいてもよい。好ましい一実施形態では、キャリアの表面は、接着細胞を受容するために適合されてもよい。
【0090】
アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させるステップは、剥離層上にキャリアを堆積させるステップの前に実施されてもよい。代替的に、アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させるステップは、剥離層上にキャリアを堆積させるステップの後に実施されてもよい。剥離層上にキャリアを堆積させるステップが、剥離層上にキャリアを作製することを含むとき、アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させるステップは、その作製プロセスのステップであってもよい。
【0091】
上述されたように、アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させるステップは、キャリアの表面にコーティングを施すことを含んでもよい。
【0092】
コーティングは、帯電コーティングであってもよい。コーティングは、荷電ポリマーを含んでもよい。荷電ポリマーは、正電荷輸送基を含むポリマーであってもよい。ポリマーは、高分子電解質であってもよい。荷電ポリマーは、正電荷輸送基を含むポリマーであってもよい。ポリマーは、ポリオルニチン又はポリ-d-リジンであってもよい。
【0093】
ポリマーは、20から120分の間などの所定時間、キャリアシステムを、ポリマーを含む溶液に浸漬することによって塗布されてもよい。溶液は、使用されるポリマーに応じて、約1nMから10mMの間の濃度のポリマーを含んでもよい。溶液は、エタノールなどの非水溶媒を含んでもよい。溶液は、非水溶媒とポリマーとから構成されていてもよい。非水溶媒の使用は、剥離層が、非水溶媒中で活性化可能でないことがある、デキストラン又はポリビニルアルコールなどの、材料を含むときに有利であり得る。これは、キャリアがポリマーを含む溶液に浸漬されている間、キャリアが基材に固定されたままとなるためであり得る。
【0094】
ポリマーは、チオール基を含んでもよく、キャリアの金キャップと共有結合するチオール基であってもよい。有利には、これは、表面上に結合された各ポリマーが同じ配向を有することを保証する。代替的に、ポリマーは、ファンデルワールス力を介してキャリアの金キャップに吸着されてもよい。
【0095】
代替的に或いは追加的に、コーティングは、複数のリガンドを含んでもよい。複数のリガンドは、抗体を含んでもよい。複数のリガンドは、インテグリンなどの細胞受容体に特異的に結合する抗体を含んでもよい。代替的に或いは追加的に、コーティングは、細胞外マトリクスタンパク質を含んでもよい。細胞外マトリクスタンパク質は、細胞接着を増加させ、或いは強化するように選択されたタンパク質であってもよい。タンパク質は、コラーゲン、ラミニン、又はEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されるタンパク質混合物のマトリゲルであってもよい。
【0096】
アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させるステップは、例えば、キャリアの表面積を増加させることによって、キャリアの表面トポロジを変更することを含んでもよい。表面積は、表面の粗さを増加させることによって増加してもよい。例えば、表面は、イオンビームを使用してエッチングされていてもよい。代替的に或いは追加的に、点、ピット、突起又は溝は、キャリアの表面上に設けられてもよい。
【0097】
アッセイ試料を受容するためにキャリアの表面を適合させるステップは、キャリアの表面の硬度を変更することを含んでもよい。これは、タンパク質又はポリマーの緻密層を含むコーティングを施すことによって達成されてもよい。
【0098】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様のようなキャリアシステム、又は上述された本発明の第2の態様のような製造されたキャリアシステムを使用してアッセイを実施する方法を提供し得る。本方法は、キャリアを剥離するために生体適合性水溶液をキャリアシステムに導入するステップを含む。本方法は、アッセイ試料がキャリアによって受容されるように、アッセイ試料をキャリアに導入するステップをさらに含んでもよい。有利には、アッセイ試料は、キャリアが基材と接触している間に、キャリアによって受容され得る。アッセイは、その上に受容されたアッセイ試料を有するキャリア上で実施されてもよい。キャリアが基材と接触している間に、キャリア上で受容されるアッセイ試料の利点は、第1の態様に関連して説明されている。
【0099】
好ましい一実施形態では、キャリアは、磁性材料を含んでもよく、本方法は、キャリアに磁場を印加することをさらに含んでもよく、磁場は、剥離層が基材からキャリアを剥離した後でも、基材と接触しているキャリアを保持するように作用してもよい。これは、剥離層が、アッセイ試料がキャリアによって受容されるための典型的な時間よりも短い時間でキャリアを剥離するときに特に有利であり得る。例えば、剥離層がデキストランなどの糖を含む場合、生体適合性水溶液の存在下で、剥離層は、5秒以下でキャリアを剥離してもよい。しかしながら、アッセイ試料がキャリアによって受容されるための典型的な時間は、5秒よりも長いことがある。次いで、有利には、アッセイ試料がキャリアに受容されるのに必要とされる時間、(キャリアを基材に押し付ける力を磁気的に印加することによって)磁場が基材と接触しているキャリアを保持している間、アッセイ試料がキャリアによって受容され得る。これは、キャリアが基材と接触している間に、キャリア上でアッセイ試料を受容するという利点を維持しつつ、特定のアッセイ試料がキャリアによって受容されるのに要する典型的な時間に、剥離層の剥離時間を一致させる必要性を取り除き得る。
【0100】
磁場は、印加され、少なくとも5秒間基材と接触しているキャリアを保持してもよい。言い換えれば、磁場は、印加され、水の存在下でデキストランなどの糖を含む剥離層を活性化するための典型的な時間よりも長い時間、基材と接触しているキャリアを保持してもよい。磁場は、5秒よりもはるかに長い間印加されてもよい。例えば、磁場は、少なくとも1、5若しくは10分、又は少なくとも1、3若しくは12時間印加されてもよい。好ましい一実施形態では、磁場は、アッセイ試料が接着細胞である場合、2から4時間、又は約3時間印加されてもよい。これは、接着細胞がキャリア上で受容される典型的な時間である。典型的に、磁場は、10分未満、又は1、3、若しくは12時間未満印加され得るが、この時間は、アッセイ用途に依存することとなる。
【0101】
本発明の一態様に関連して説明された特徴は、本発明の他の態様に適用され得ることは明らかである。
【0102】
アッセイ試料を受容するためのキャリア又は粒子を含むキャリアシステムは、上述されている。キャリアに関する特に好ましい特徴はまた、上述されている。しかしながら、キャリアシステムは、剥離層によって基材に固定され得る、試料を受容し、担持するのに適した任意のキャリアを含んでもよく、そのようなキャリアシステムは、上述された利点を有し得ることを理解されたい。
【0103】
本発明のさらなる特定の好ましい実施形態は、プレ機能化の有無にかかわらず、ウェハ上或いは基材上のキャリアを含んでもよい。ウェハは、顧客のニーズに応じて、1000-1000万の範囲のキャリア、又はそれ以上のキャリアを担持し得る。代替的に、ウェハ上或いは基材上のキャリアは、ウェハが各々、ウェルプレートのウェルに入った状態で提供されてもよい。このケースでは、典型的に、ウェルのサイズに応じて、ウェハあたり100-10,000のキャリアが存在し得る。この実施形態の一実施例は、1つ又は複数のウェルに既に設置されたキャリア及び基材を含むウェルプレートであってもよい。さらなる一実施形態では、ウェハ上或いは基材上のキャリアは、細胞などのアッセイ試料が、凍結状態で、既に付着し、アッセイする準備ができている状態で提供されてもよい。典型的に、そのようなウェハは、1000-100,000のキャリアを担持し得る。
【0104】
本発明を具現化するキャリアシステムは、様々な形態でユーザに提供されてもよい。一実施形態では、基材上のキャリアを含むキャリアシステムは、アッセイを実行することを望むユーザへの供給のために、例えば、乾燥した、滅菌包装又は包みに、滅菌され、包装されてもよい。そのようなキャリアシステムはまた、液体又は気体であり得る、無菌培地内に供給されてもよい。代替的に、上述されたように、キャリアシステムは、通常、アッセイにおいて使用できる状態にある冷凍された、細胞などの、アッセイ試料を予め搭載して提供されてもよい。そのようなキャリアシステムでは、キャリアは、個々のキャリア、又はキャリアのグループを識別するためなどの、識別のために適切にマークされてもよい。
【0105】
本出願人によって出願された同時係属中の出願である、PCT/GB2019/053188は、マルチチャネルアッセイのためのリソグラフィにより規定されたキャリアの作製を説明する。本発明のコンテキストでは、PCT/GB2019/053188に説明されたプロセスは、水溶性フォトレジストを使用しないように変更する必要があるが、PCT/GB2019/053188に説明された多くの特徴は、本発明に直接適用可能である。例えば、SU-8フォトレジストは、使用され得る。PCT/GB2019/053188は、その全体を参照により本明細書に援用し、附属書類において以下で再現される。
【0106】
先行技術では、アッセイにおける使用のための異なるタイプの磁性粒子が説明されていることに留意されたい。例えば、特許公開WO2009/029859は、電着又は化学気相成長によって、1nmから200nmの幅の、磁性ナノディスクを形成するための方法を説明する。ナノディスクは、塩化ナトリウム又は塩化カリウムの層上に形成され、水に溶解され、或いは銅、銀、又はアルミニウムの層上に形成され、酸/金属エッチング液に溶解される。この方法の生成物は、DNAアレイにおける使用のためにユーザに提供される溶液中の遊離ナノディスクである。(溶液は、ナノディスクを塩層から除去するために使用された溶液でもよく、或いはナノディスクは、洗浄され、DNAアレイにおける使用のための適切な溶液に再度分散させてもよい。)ナノディスクは、それらの表面上に適切な分子で形成され、ナノディスクが溶液中にあるとき、特定の所望の標的、すなわち細胞の表面上の特定の構造に結合することができ、それらの標的は、ナノディスクの磁場を感知する磁場センサの使用によって識別され得る。ナノディスクは、小さすぎて細胞を担持し、或いは支持することができなく、ナノディスクがあまりにも小さすぎて細胞を支持することができないので、基材上のアッセイにおいて使用できない。ナノディスクは、外部磁場によって個々に影響され得るが、そのようなナノディスク内の磁性材料の体積は、ナノディスクがアッセイ試料に結合した後でも、アッセイ内の細胞などのアッセイ試料を方向付けるには不十分である。
【0107】
特許公開US2013/0052343は、溶液中のアッセイ試料を標的化するための別のタイプの磁性粒子を説明する。これらの粒子は、2又は3マイクロメートルから100マイクロメートル又は500マイクロメートルに至るまでの直径であり、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)の層の上に堆積された感光性樹脂の層で規定された型での堆積によって形成される。感光性樹脂は、粒子が形成されるべき領域において選択的に除去され、粒子は、堆積され、次いで、PMMAは、アセトンなどの溶媒に溶解され、粒子を遊離する。次いで、粒子は、洗浄され、使用のために適切な溶液中に懸濁される。粒子は、このような形態でユーザに対して提供され、標的化し、所望の分子種又は細胞種の認識を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0108】
ここで、本発明の具体的な実施形態は、添付の図面を参照しながら、例として説明される。
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による、剥離層によって基材に固定された複数のキャリア又は粒子を含むキャリアシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のキャリアシステムを製造するためのプロセスを示す。
【
図3】
図3は、接着細胞がキャリア上で受容される速度又は効率を改善するための、キャリアの多数の異なる表面適応を示す。
【
図4】
図4は、アッセイ試料を含む生体適合性水溶液を導入するプロセス中の
図1の複数のキャリアのうちの1つの一連の概略図を示す。
図4aは、アッセイ試料を含む生体適合性水溶液の導入直前のキャリアを示し、
図4bは、生体適合性水溶液の導入後、剥離層によってもはや基材に固定されていないが、外部場によって基材と接触して保持されているキャリアを示し、
図4cは、剥離されたキャリア上で受容されたアッセイ試料を示す。
【0109】
添付図面のシート5から13は、その全体を参照により本明細書に援用した同時係属中の出願であるPCT/GB2019/053188の図面を再現し、附属書類において以下で再現される。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明の第1の実施形態によるキャリアシステム100が
図1に示される。キャリアシステム100は、シリコンチップの形態の基材10を含む。4つのキャリア又は粒子12は、デキストランを含む剥離層14によって基材10に固定されている。キャリアシステムは、接着細胞のアッセイにおいて使用され得る。キャリア12の各々は、1つの接着細胞又は複数の接着細胞を受容するのに適している。各キャリアは、比較的大きな、正方形の上面及び下面を有する、平坦な、或いは高いアスペクト比の、立方体の形状である。剥離層と接触するキャリアの下側とは反対側にある、各キャリアの上面16は、接着すべき細胞に適合されている。キャリアは、100ミクロンの横方向寸法を有する。各キャリアは、
図1には示されていない、磁性材料の層を含む。
【0111】
各キャリアは、クイックレスポンス(QR)コード又は2次元データマトリクスコードなどのバーコード18を含む。所定の読み取り可能なコードは、各キャリアに割り当てられ、キャリアを識別する。例えば、所定のバーコード18は、キャリア12上で受容された特定の接着細胞、又は接着細胞がアッセイの一部として曝される特定の接着細胞及び特定の試薬を参照し得る。言い換えれば、バーコード18は、マルチチャネルアッセイがキャリア12によって実施されることを可能にする。
【0112】
図1に示されるように、剥離層14は不連続であるので、基材は、キャリア12の各々の間で曝される15。しかしながら、製造中、剥離層14はもともと、基材10の全面を覆うデキストランの連続層をスピンコーティングすることによって形成され、キャリア間の剥離層の部分は、キャリアの形成後に除去された。したがって、キャリアの下の剥離層14は、単一の層とみなされ得る。
【0113】
図1は、基材10に固定された4つのキャリア12を示すが、任意の数のキャリア12は、基材に固定され得る。単一のキャリア12は、基材に固定され得る。
【0114】
本発明の一実施形態によるキャリアシステム100を製造するためのリソグラフィプロセスが
図2に示される。
【0115】
図2aは、20重量%の量のデキストラン70を含む水溶液を基材上にスピンコーティングすることによってシリコン基材10上に形成された剥離層14を示す。剥離層のスピンコーティング後、シリコン基材10は、ベークされる。デキストラン70剥離層のケースでは、ベークは、150℃で2分間である。フォトレジスト層20は、剥離層14の上にSU-8フォトレジストをスピンコーティングすることによって、剥離層14の上に形成される。次いで、SU-8フォトレジストは、ベークされる。
【0116】
代替の一実施形態では、剥離層14は、ポリビニルアルコール(PVA)を含む水溶液を基材上にスピンコーティングすることによって、デキストラン70ではなく、ポリビニルアルコールから形成され得る。
【0117】
図2bは、パターン化されたフォトマスク22を介してフォトレジストを紫外線24に曝し、曝されたレジストを95℃で2分間ベークすることによって、SU-8フォトレジスト層20に対して実施されるリソグラフィパターニングステップを示す。これは、フォトレジスト層20の特定の領域を紫外線24に曝し、それらの領域に架橋を起こす。フォトレジスト層20の残りは、可溶性のままであり、適切な非水溶媒で洗い流され得る。このプロセスは、不連続性が、フォトレジスト層に形成され、下にある剥離層に影響を及ぼすことなく、各キャリアのベースを規定することを可能にする。
【0118】
バーコードはまた、SU-8に穴の配列又はパターンを作ることによってSU-8フォトレジスト層のリソグラフィパターニング中に付加される。これらの穴は、顕微鏡の透過モードで読み取られることができ、キャリアを識別するために、或いはそのキャリア上で受容されたアッセイ試料の識別に使用され得るバーコードとして機能し得る。
【0119】
図2cは、適切な溶媒への曝露後のフォトレジスト層20を示す。SU-8フォトレジストの主要な溶媒は、PGMEA、γ-ブチロラクトン又はシクロペンタノンである。フォトレジストの可溶性の、非架橋領域は、溶媒によって洗い流され、不連続なSU-8フォトレジスト層を生成する。γ-ブチロラクトン又はシクロペンタノンは、非水溶媒であるので、フォトレジスト層の非架橋領域を洗い流すことは、剥離層14を溶解しない。剥離層14は、γ-ブチロラクトン又はシクロペンタノンなどの非水溶媒に可溶でない。洗浄後、残りのSU-8は、各キャリアのベース26を形成する。
【0120】
次いで、マスクとしてフォトレジストを使用して、酸素プラズマエッチングが施され、キャリア間の領域において基材10から剥離層14を除去する。
図2dは、このエッチングプロセス後の、キャリアのベース26を形成する剥離層及びフォトレジスト層の重なる部分を示す。
【0121】
図2eは、磁性材料を含むさらなる層28がキャリアのフォトレジストベース26の上に堆積された後のキャリアシステムを示す。これらの層28は、非磁性材料の層が散在される複数の磁性材料の層を含み、マグネトロンスパッタリングによって付加される。キャリアがキャリアの凝集を回避するために低い浮遊磁場を有することを保証するために、11層を含む層構造が使用され、層は、以下の通り、Au(20.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/Au(20.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(5.0)である(厚さはnm)。キャリアのSU-8フォトレジスト層は、厚さが約1.5から2ミクロンであり、有利には、キャリアに機械的安定性をもたらすことに留意されたい。したがって、磁性層は、機械的に支持される。
【0122】
次いで、金キャップは、トップダウンリソグラフィプロセスを使用してキャリア上に形成される。金キャップは、キャリアが基材に固定されている間に曝されるキャリアの表面上に堆積される。金キャップは、生体適合性を提供することができ、さらに、コーティング又は表面適合は、キャリアの所望のアッセイ用途に応じて、金キャップに施され得る。
【0123】
図2fは、金キャップ層が、ポリマーを含むコーティング29を施すことによって接着細胞を受容するのに特に適しているように適合された後のキャリアシステムを示す。
【0124】
ポリマーは、チオール基を含み、20から120分の間、ポリマーを含む溶液にキャリアシステムを浸漬することによって塗布される。溶液は、約10μMから10mMの間の濃度のポリマーを含む。ポリマーは、チオール基によってキャリアの金キャップに共有結合する。溶液は、エタノールなどの非水溶媒を含む。剥離層は、そのような非水溶媒に可溶でないので、キャリアシステムがポリマーを含む溶液に浸漬されている間、キャリアは、基材に固定されたままとなる。
図3aは、キャリア12に共有結合されたチオール基を含む荷電ポリマー32のコーティングを含むキャリア12の概略図を示す。
【0125】
代替のコーティングは、キャリアに施され得る。荷電ポリマーの代わりに、コーティング29は、インテグリンなどの細胞受容体に特異的に結合する抗体、又は、コラーゲン若しくはEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されるタンパク質混合物のマトリゲルなどの細胞外マトリクスタンパク質を含む複数のリガンドを含み得る。
図3bは、複数のリガンド34を含むコーティングが施されたキャリア12の概略図を示す。
【0126】
コーティングを施す代わりに、本方法は、例えば、金キャップを変更することによって、接着細胞を受容するのに特に適しているようにキャリアの物理的表面を変更することを含み得る。
図3cは、キャリア、及び特に金キャップの物理的構造が、接着細胞を受容するために適合されている一実施形態を示す。この実施形態では、表面積は、キャリアの上面に溝30を設けることによって増加されている。溝30は、追加のリソグラフィステップによって、或いは製造プロセス中、金の堆積前に、キャリアをエッチングすることによって(例えば、プラズマエッチングによって)形成される。表面の物理的構造又はトポグラフィは、接着細胞がその表面上に接着し、或いは播種する程度に影響を及ぼし得る。細胞接着は、キャリアの表面の表面積を増加させることによって強化され得る。
【0127】
図示されないが、キャリアシステムを製造する方法の最終ステップは、滅菌である。キャリアシステムを滅菌するために、キャリアシステムは、20分間純粋なエタノールに浸漬させる。これは、キャリアシステムを使用して実施されるアッセイを逆に妨害し得る不要な種類の生命体又は生物学的因子を排除する。繰り返しになるが、デキストラン又はポリビニルアルコールは、そのような非水溶媒に可溶でないので、キャリアシステムが滅菌される間、キャリアは、基材に固定されたままである。
【0128】
図4は、接着細胞42のアッセイに使用されるキャリアシステムを示し、生体適合性水溶液40及び接着細胞42をキャリアシステム100に導入するプロセスを含む。キャリア12によって受容される接着細胞42は、生存性を保つために生体適合性水溶液中で搬送される。接着細胞がキャリアによって受容されると、細胞は、所望の或いは自然な接着形態に到達する。上述された、キャリア上のコーティング29は、細胞がキャリアによって受容される効率又は速度を向上させるので、細胞がキャリア上で受容されるのに要する時間を短縮し、アッセイ試料とキャリアとの間の結合又は引力の強さを増大させる。したがって、有利には、アッセイ試料は、キャリアに確実に結合される。
【0129】
実際には、キャリアシステム100は、容器に入れられ、生体適合性水溶液に浸漬されることとなる。
図4aでは、これは、接着細胞42及び生体適合性水溶液40の滴を含む生体適合性水溶液の量を含む試験管44によって概略的に表されている。生体適合性水溶液40及び接着細胞42は、縮尺通りに描かれていない。
【0130】
生体適合性水溶液40がデキストランを含む剥離層14と接触するとき、剥離層14は溶解する。これは、キャリア12を剥離する。デキストランは、生体適合性があり、無毒であるので、水溶液40中にデキストラン剥離層14を溶解することは、接着細胞42に最小限の影響を及ぼすので、接着細胞42に対して実施されるべきアッセイの結果に最小限の影響を及ぼす。
図4bは、キャリア12を剥離するために完全に溶解している剥離層14を示す。しかしながら、剥離層に異なる材料を使用する他の実施形態では、剥離層14は、溶解しないことがあり、或いは完全に溶解しないことがある。そのようなケースでは、キャリア12が剥離されるように、剥離層14とキャリア12との間の結合が弱められることが要求されるのみである。
【0131】
典型的には、生体適合性水溶液の存在下で、デキストラン剥離層14は、5秒以下でキャリアを剥離することとなる。これは、接着細胞がキャリアによって受容されるのに要する典型的な時間よりもかなり短い。接着細胞がキャリア12によって受容されるのに3時間以上要することが必要であることがある。しかしながら、キャリアが基材と接触している間に、接着細胞がキャリア上で受容されることが好ましい。これは、キャリア12の外面、すなわち上面16が、キャリアの主な露出面のままであることを保証し、接着細胞42が、例えば、キャリア12の底面上で受容されることを防止する。
【0132】
図4bに示されるように、剥離層がキャリアを剥離した後でも、基材と接触しているキャリアを保持するために、外部磁場が印加される。上述されたように、キャリア12は、磁性材料を含む層28を含む。外部場は、キャリア12に、キャリアを基材に押し付ける力を印加し、剥離層14がキャリア12を剥離した後でも、基材10と接触しているキャリアを保持するように配置される。外部場は、
図4bの点線矢印によって表されている。
【0133】
代替の一実施形態では、剥離層は、接着細胞がキャリア上で受容されるための典型的な時間に一致し、或いはそれを超える剥離時間を考慮に入れて設計され得る。そのケースでは、
図4bに示されるように、外部場を印加するステップは、必要でないことがある。ポリビニルアルコールを含む剥離層は、生体適合性があり、12時間以上などの、より長い剥離時間を有するように作られ得る。有利には、これは、PVA層の配合(85-99%の範囲の加水分解度、又は異なる加水分解度を有する2つのPVAの比率)と、典型的に、約115℃でのベークとの組み合わせによって達成され得る。ベークするステップが省略される場合、数分以下まで、非常に短い剥離時間を有するPVA層が作製され得る。このような方法で、剥離層の剥離時間は、特定のアッセイ用途に必要とされるように設計され得る。
【0134】
したがって、典型的に、適切に作製されたポリビニルアルコール剥離層14を含むキャリアシステム100は、キャリア12によって受容されるのに3時間要する接着細胞と共に使用されるとき、上記されたように、外部場を印加し、基材と接触しているキャリアを保持する必要がないことがある。
【0135】
キャリアが基材から剥離されると、剥離されたキャリア12は、キャリアシステムを取り囲む水溶液40中を自由に移動することができる。これは、
図4cに示される。外部磁場は、所望のようにキャリアを操作し、移動させ、アッセイを実施するために、使用され、キャリアに力を印加し得る。生体適合性水溶液40はまた、接着細胞42がその生存性を保つために適切な環境を提供する。特に、接着細胞は表面上で受容されたときに最も生存能力があるので、接着細胞をそれ自体で操作し、搬送しようとするよりも、キャリア上で受容された接着細胞を操作し、搬送することがより便利である。キャリア12上で細胞を受容することは、各接着細胞が、生物学的に代表的な、接着状態のまま、あたかも懸濁状態にあるかのように搬送されることを可能にする。
【0136】
キャリア上で受容された接着細胞を有するキャリアが基材から剥離されると、アッセイが実施され得る。
【0137】
要約として、以下の番号のついた条項(clause)は、本発明の様々な好ましい実施形態を記載する。
1.剥離層によって基材に固定された粒子又はキャリアを含むアッセイのためのキャリアシステムであって、前記粒子又はキャリアは、アッセイ試料を受容するのに適しており、前記剥離層は、使用時に、生体適合性水溶液の存在下で前記基材から前記粒子又はキャリアを剥離するように構成されている、キャリアシステム。
【0138】
2.前記剥離層は、前記剥離層の活性化後、前記生体適合性水溶液が生体適合性を維持するように構成されている、条項1に記載のキャリアシステム。
【0139】
3.前記剥離層は、水溶性である材料などの、水活性化可能である材料を含む、条項1又は2に記載のキャリアシステム。
【0140】
4.前記剥離層は、エタノールなどの非水溶媒中で活性化可能でない、条項1乃至3のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0141】
5.前記剥離層は、デキストランなどの糖、又はポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む、条項1乃至4のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0142】
6.前記粒子は、磁性材料を含み、好ましくは、前記粒子は、前記粒子の上面と、前記粒子の対向底面との間に層構造を含み、前記層は、1つ又は複数の磁化層を含み、特に好ましくは、前記1つ又は複数の磁化層の横方向寸法の、前記1つ又は複数の磁化層の厚さ又は集合的な厚さに対する比率は、500よりも大きい、条項1乃至5のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0143】
7.前記粒子は、リソグラフィにより規定される、条項1乃至6のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0144】
8.前記粒子は、SU-8フォトレジストなどの、フォトレジスト層を含む、条項1乃至7のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0145】
9.前記粒子の表面は、前記アッセイ試料を受容するのに適合され、例えば、前記表面は、ポリマーがチオール基によって共有結合されている金キャップ層を含む、条項1乃至8のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0146】
10.前記粒子は、バーコード又は2次元コードから選択される読み取り可能なコードなどの、読み取り可能な情報を含む、条項1乃至9のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0147】
11.複数の粒子を含み、前記粒子の各々は、前記剥離層によって前記基材に固定されている、条項1乃至10のいずれか1項に記載のキャリアシステム。
【0148】
12.アッセイのためのキャリアシステムを製造する方法であって、
基材を提供するステップと、
前記基材上に剥離層を形成するステップと、
前記剥離層上でアッセイ試料を受容するための粒子又はキャリアを、前記粒子又はキャリアが前記基材に固定されているように、堆積させるステップと、
を含み、
前記剥離層は、使用時に、生体適合性水溶液の存在下で前記基材から前記粒子を剥離するように構成されている、
方法。
【0149】
13.前記基材上に前記剥離層を形成するステップは、前記剥離層をスピンコーティングすることを含む、条項12に記載の方法。
【0150】
14.前記剥離層上に前記粒子を堆積させるステップは、例えば、リソグラフィプロセスによって、前記剥離層上に前記粒子を作製することを含む、条項12又は13に記載の方法。
【0151】
15.前記剥離層は、使用時に、1時間から72時間の間の時間内に、前記生体適合性水溶液の存在下で前記基材から前記粒子を剥離するように適合されている、条項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【0152】
16.表面が前記アッセイ試料を受容するのに適しているように、前記粒子の前記表面を適合させるステップをさらに含む、条項12乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【0153】
17.前記剥離層上に前記粒子を堆積させるステップの後に、エタノールに前記キャリアシステムを浸漬することによって前記キャリアシステムを滅菌するステップをさらに含む、条項12乃至16項のいずれか1項に記載の方法。
【0154】
18.前記粒子を堆積させるステップは、磁気構造を形成することを含む、条項12乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【0155】
19.条項1乃至11のいずれか1項に記載の前記キャリアシステムを使用してアッセイを実施する方法であって、前記粒子又はキャリアを剥離するために生体適合性水溶液を前記キャリアシステムに導入するステップを含む、方法。
【0156】
20.試料が前記粒子によって受容されるように、アッセイのための前記試料を前記粒子に導入するステップをさらに含む、条項19に記載の方法。
【0157】
21.前記粒子が前記基材と接触している間に、前記試料は、前記粒子によって受容される、条項20に記載の方法。
【0158】
22.前記粒子は、磁性材料を含み、前記方法は、前記粒子に磁場を印加することをさらに含み、前記磁場は、前記剥離層が前記基材から前記粒子を剥離した後でも、前記基材と接触している前記粒子を保持するように作用する、条項21に記載の方法。
【0159】
23.前記磁場は、印加され、少なくとも5秒間、又は少なくとも1分間、又は少なくとも5分間、又は少なくとも30分間、前記基材と接触している前記粒子を保持する、条項22に記載の方法。
【0160】
24.条項1乃至11のいずれか1項に記載の前記キャリアシステムを使用する方法であって、粒子が前記基材と接触している間に、試料が前記粒子によって受容されるように、アッセイのための前記試料を前記粒子又はキャリアに導入するステップと、好ましくは、前記粒子上で受容された前記試料を凍結することによって、前記粒子又はキャリア上で受容された前記試料を保存するステップとを含む、方法。
【0161】
25.前記粒子上で受容された前記試料を保存する前に、前記基材から前記粒子を剥離するステップをさらに含む、条項24に記載の方法。
【0162】
[附属書類]
参考のため、本出願人によって出願された同時係属中の出願である、国際特許出願PCT/GB2019/053188の内容は、以下に再現される。これは、本発明の一実施形態におけるものと同様の、磁性キャリア、又は粒子の作製の詳細な説明を含み、本発明においてキャリアが剥離層に作製され、或いは付着する点を異にする。キャリアが剥離層上に作製される場合、剥離層を早期に活性化しないリソグラフィプロセスは、附属書類において説明されるものの代わりに使用される必要がある。そのような選択肢の1つは、附属書類に説明されるフォトレジストを、水性溶媒を使用せずに洗い流され得るフォトレジストに置き換えることである。PCT/GB2019/053188の図は、図面のシート5/13からシート13/13に記載される。
【0163】
(PCT/GB2019/053188:磁性キャリア及び方法)
本発明は、磁性キャリア、及び磁性キャリアを製造する方法、ならびに磁性キャリアを使用する方法に関する。
【0164】
(PCT/GB2019/053188:背景技術)
印加磁場を使用し、個々の磁性キャリアに機械的な力を及ぼすための技術は、様々なバイオテクノロジー用途で活用されている。
【0165】
現在、磁性ナノキャリア及びマイクロキャリアの重要な商業的用途の1つは、生体分子を分離し、識別するためのバイオアッセイのためのものである。超常磁性酸化鉄ナノキャリア(SPIONs)は、外部磁場源に向かって移動する特性を提供するので、従来、この商業範囲の用途に使用されている。これは、キャリアが、外部磁場の印加によってアッセイ情報を読み取るための所望の位置に向かって誘導されることを可能にする。これらのキャリアは、コロイド化学法によって作られたナノキャリア(直径5-20nm)である。これらのキャリアのサイズは、キャリアが、およそ20nmを超えて大きくなる場合、キャリアは、強磁性体となり、不利には、他のキャリアに対する1つのキャリアの浮遊磁場の影響は、キャリアの磁気凝集をもたらし、バイオアッセイにおける使用を防止するという事実によって制限される。
【0166】
磁性キャリアを開発する技術者は、各用途のためにキャリアの磁気特性を最適化する必要がある。従来、バイオアッセイ用途を含む、全てのこれらの様々な用途のための磁性ナノキャリアの非常に望ましい特性は、キャリアの凝集を回避するためにネットゼロの磁化残留状態であることが通説である。
【0167】
ネットゼロの磁化残留状態は、磁場がないとき、磁性キャリアが正味の磁気モーメント及び外部浮遊磁場を有さないことを意味する。使用時、典型的に、磁性キャリアは、液体又は液体培地中に懸濁され、その培地内で自由に移動することができる。非ゼロの残留磁気モーメントを有するキャリアの場合、キャリアの浮遊磁場が相互作用し、キャリアを凝集させ、或いはひとまとまりにさせ得る。バイオテクノロジー用途において磁性キャリアを使用する目的は、外部磁場を印加することによって液体又は液体培地中に懸濁されるキャリアの動きを誘導し、或いは方向付けることができることであるので、これは好ましくない。磁性キャリアが凝集する場合、これは達成されないことがある。
【0168】
さらに、環境からの小さな磁場が磁性キャリアにおける磁気モーメントを誘発することによって凝集を引き起こすことができないことを保証するために、ゼロネットの磁化残留状態を有するキャリアはまた、小さな磁場において低い磁化率を有するべきであることが当業者に理解されている。
【0169】
さらに、高い磁化率を有するキャリアが使用される場合、印加磁場が印加され、所望の方法でキャリアを方向付け、或いは移動させた後、印加磁場が除去されると、磁場の印加中に凝集されたキャリアは、凝集されたままである。これはまた、バイオテクノロジー用途のための磁性キャリアにおいて回避されるべきであると当業者によって理解されている。
【0170】
したがって、凝集しない磁性ナノキャリアを生成する本技術分野の先行研究は、ゼロネットの残留磁化状態を有し、好ましくは、低い磁化率を有するシステム上に完全に焦点を当てている。これは、超常磁性ナノキャリアと、磁気渦マイクロ・ナノキャリアと、反強磁性結合を利用し、キャリアの隣接磁性層間に、反対の磁化配位を生成するマイクロ・ナノキャリアといった、様々なシステムを含む。
【0171】
重要なバイオテクノロジー用途は、生体試料のマルチプレックスイノムアッセイを実行することである。生体試料中のタンパク質の正確な定量は、研究と臨床診断との両方の用途にとって非常に重要である。マルチプレックスイノムアッセイは、与えられた試料中の複数の異なるタンパク質を同時に定量化する。このような方法で、試料のタンパク質フィンガープリントを分析することは、研究を加速させ、改善された診断を可能にする可能性がある。この市場ニーズに応じて、Luminex(RTM)、Firefly(RTM)、及びFireplex(RTM)などのマルチプレックスアッセイシステムは開発された。これらのシステムは、各キャリアが1つの特定の分析物に適した捕捉抗体でコーティングされている個々のキャリアセットを使用する。次いで、分析物に特異的なキャリアの複数のセットは、結合され、蛍光標識でマークされた検出抗体の使用を通じて複数の標的を同時に検出し、定量化し得る。Luminex(RTM)システムは、ポリスチレン又は常磁性ミクロスフェア、又はビーズに基づいており、異なる強度の赤色及び赤外線フルオロフォアで内部染色され、ビーズの1つのセットを別のセットから区別できる。Firefly(RTM)及びFireplex(RTM)システムはまた、フルオロフォアを使用し、1つのキャリアセットを別のセットから区別できるが、このケースでは、キャリアは、各端に異なるフルオロフォアを施すことによってコード化されたロッドの形態である。繰り返しになるが、フルオロフォアの測定は、1つのロッドを別のロッドから区別することを目的とする。しかしながら、実際には、これらのシステムは、アッセイ結果においてマルチプレックスのチャネル間を確実に区別する能力が制限されることに起因して、制限されたマルチプレックス(制限された、識別され得る異なるタンパク質の数)に悩まされている。
【0172】
(PCT/GB2019/053188:発明の概要)
本発明は、ここで参照が行われるべき添付の独立請求項に定義されるように、磁性キャリア、アッセイを実施するための複数の磁性キャリア、及び磁性キャリアを使用してアッセイを実施するための方法を提供する。本発明の好ましい或いは有利な特徴は、従属副請求項に記載されている。
【0173】
したがって、第1の態様では、本発明は、磁性キャリア、キャリアの上面とキャリアの対向底面との間の層構造、1つ又は複数の磁化層を含む1つ又は複数の層を提供し得る。1つ又は複数の磁化層の横方向寸法の、1つ又は複数の磁化層の厚さ、又は集合的な或いは実効的な厚さに対する比率は、500よりも大きい。言い換えれば、1つ又は複数の磁化層断面のアスペクト比は、500よりも大きくてもよい。好ましい実施形態では、比率は、より高くてもよく、例えば、800よりも大きく、或いは1000又は1500又は2000よりも大きくてもよい。
【0174】
キャリアは、非磁性層をさらに含んでもよく、有利には、非磁性層は、磁性層に機械的支持を提供してもよく、その機械的特性及びその密度などのキャリアの物理的特性を決定してもよい。
【0175】
キャリアは、1つの磁化層を含んでもよく、或いは2つ以上のそのような層を含んでもよい。キャリアが2つ以上の磁化層を含む場合、層は、互いに隣接していてもよく、或いは互いに接触していてもよく、或いは非磁性材料を間に挟んで互いに離隔されていてもよい。2つ以上の磁化層を有するキャリアにおける磁化残留層の、集合的な厚さ、又は総厚は、それらの磁性層の厚さの合計であってもよく、それらの間にある任意の非磁性層を含まないことがある。いくつかの実施形態では、層構造は、多数の磁化層及び/又は多数の非磁性材料の層を含んでもよい。
【0176】
磁化層、又は磁性層は、例えば、強磁性材料、元素若しくは合金、又は超常磁性ナノキャリアの複合体などの、任意の適切な1つ又は複数の磁性材料を含んでもよい。
【0177】
好ましくは、キャリアは、互いに積層された磁性材料及び/又は非磁性材料の、1つ又は複数の実質的に平坦な層を含む、実質的に平坦な形状である。好ましくは、層は、互いに実質的に同じ形状及びサイズであり、各々がキャリア自体と同じ横方向の形状及びサイズを有する。しかしながら、以下でさらに説明されるように、キャリアの形状及び構造は、これと異なってもよい。
【0178】
キャリアは、ゼロ又は非ゼロの磁化残留を有してもよい。しかしながら、本発明者らは、キャリアが非ゼロの磁化残留を有する場合であっても、本発明を具現化するキャリアの形状及び構造は、キャリアの表面において予想外に低い浮遊磁場を示すので、有利には、流体又は液体培地中に懸濁された複数のキャリアが凝集しなく、或いは塊にならないことがあることを見出した。驚くべきことに、本発明者らは、キャリアが完全に磁化残留であるか否かにかかわらず、このようなケースがあることを見出した。
【0179】
本発明の好ましい一実施形態では、外部場が印加されるとき、キャリアは、外部場がキャリアに所望の力を印加するのに十分な磁気モーメントを有する。所望の力は、キャリアの用途(液体培地中に懸濁されたキャリアを有するバイオアッセイにおいてなど)に依存してもよい。実用的な実施態様では、典型的に、印加された外部場は、2T、又は1T又は0.5T未満であり、典型的に、0.05T、又は0.1T又は0.25Tよりも大きくてもよい。
【0180】
例えば、バイオ又はケミカルアッセイでは、外部場を使用し、液体培地内でキャリアを誘導することが望まれ得る。磁気モーメントは、キャリア自体の磁化に起因してもよく、或いは外部場によってキャリアに誘発されてもよい。しかしながら、キャリアが、所望の力を発生させることができる十分な磁性材料を含むことが重要である。
【0181】
キャリアに印加された外部場によって発生され得る磁気モーメントは、キャリアにおける磁性材料の総体積Vに、その材料の磁化Msを乗じたものに依存し得る。したがって、好ましくは、本発明を具現化するキャリアのV.Msの値は、10-18J/T又は5x10-18J/T又は10-17J/Tなどの、所定の値よりも大きい。
【0182】
本発明者らは、キャリア内の磁性材料の物理的分布が、キャリア近傍の浮遊磁場を決定し、したがって、キャリアが互いに相互作用する傾向及び/又は凝集する傾向を決定し得ることを見出した。本発明者らは、高いアスペクト比ARを有する断面を有する1つ又は複数の層(好ましくは、平行層)の形態で磁性材料を分布することが、有利に低い浮遊磁場を発生し得ることを見出した。有利には、この好ましいキャリアのジオメトリは、低い浮遊磁場を有し、凝集する傾向がほとんど或いは全くないキャリアを提供し得る。
【0183】
より定量的にこのキャリアのジオメトリを評価するために、本発明者らは、好ましいキャリアにおいて、好ましくは、1つ又は複数の磁性層のパラメータAR/Ms2(ARは、無次元比であり、Msは、A/m(1000A/mは、1emu/cm3に相当する)で測定された1つ又は複数の磁性層における磁性材料の磁化である)は、8x10-10m-2/A-2、又は1.2x10-9m-2/A-2又は8x10-9m-2/A-2よりも大きいことを提案する。
【0184】
代替的に或いは追加的に、本発明者らは、好ましくは、パラメータAR/Msが、1x10-3m-1/A-1又は3x10-3m-1/A-1又は5x10-3m-1/A-1よりも大きいことを決定した。
【0185】
これらの限度は、層の上或いは層の下の、層の厚さの10倍において、約2500A/m(30Oe)未満の浮遊磁場に対応する。キャリアの用途及び環境に応じて、有利には、このレベルの浮遊磁場は、凝集を防止し得る。
【0186】
キャリア構造のARの値をアセスメントするとき、ARは、構造の断面の横方向寸法を構造の厚さで除算した値であり得る。磁性材料の層の場合、横方向寸法は、層の最小横方向寸法であってもよく、或いは層の形状がより複雑である場合、層の平均横方向寸法と見なすことが好ましいことがある。層の厚さが一定である場合、その厚さは、ARの計算に使用され得る。層の厚さが変化する場合、平均的な厚さが使用され得る。
【0187】
例えば、磁性材料がキャリアの横方向寸法全体に及ぶ場合、特にキャリアの厚さが、10倍、又は5倍未満などの、1つ又は複数の磁化層の厚さに十分に類似している場合、キャリア自体の同等の横方向及び厚さ寸法を使用し、ARを計算することが適切であり得る。AR/Msを評価するこのアプローチでは、キャリアのAR値を使用するのと同様に、キャリアにおける磁化された材料のMsに、キャリアにおける非磁性材料と磁化された材料との体積比を乗じた、希釈されたMs値を計算することによって、Msの値は、変更されてもよい。
【0188】
キャリアは、例えば、磁化されていない材料の層によって離隔された磁化層のスタックの形態で、複数の磁化層を含んでもよい。そのようなケースでは、磁化層が最も薄い層の厚さ又は平均層の厚さの5、10又は20倍未満などの、十分に短い距離で互いに離隔されている場合、ARは、任意の介在する非磁性層の厚さを含む、磁化層の集合的な厚さ又はスタックの最も外側の磁化層間の距離のいずれかを使用して評価されてもよい。
【0189】
キャリアがキャリアの厚さの十分な割合に及ぶ複数の層を含む場合、ARは、キャリアの厚さを使用して評価されてもよい。
【0190】
キャリアが複数の層を含む場合、ARを計算するための厚さを評価する代替のアプローチは、磁化された材料の希釈された厚さを計算することであってもよい。例えば、磁化された材料の2つ以上の平行層の集合的な厚さTmは、非磁性材料の層の集合的な厚さTnmによって分離される場合、磁化された材料の希釈された厚さは、Tm/(Tm+Tnm)となる。
【0191】
測定によって、キャリア全体の(AR/MS
2又はAR/MSの計算のための)AR及びMsを評価することも可能であり得る。不明な構造だが既知の寸法の、所定数のキャリアの磁気モーメントが(例えば、振動試料型磁力計を使用して)測定される場合、実効的なMsは、キャリアの総体積とキャリアごとの総モーメントとを使用して見出されてもよい。キャリア又は金属層の横方向寸法及び厚さは、例えば、顕微鏡及び/又は電子顕微鏡技術を使用して直接測定され、ARを評価してもよい。
【0192】
好ましくは、本発明を具現化するキャリアは、平面状の形状であり、その長さと幅との両方がその厚さよりも大きい。有利には、キャリアの長さ及び幅、又は互いに垂直に測定されたキャリアの2つの横方向寸法は、互いに類似しており、或いは約10%、30%、50%又は70%未満だけ互いに異なっている。典型的に、キャリアは、円形又は楕円形又は多角形のディスク、又は正方形若しくは長方形の周囲を有する一般的に平坦な立方体の形態であり得る。
【0193】
好ましくは、キャリア内の磁性材料は、キャリア内の1つ又は複数の層の形態で、キャリアの横方向寸法全体にわたって実質的に延在する。1つ又は複数の磁性層のアスペクト比は、1つ又は複数の層の最小横方向寸法、又は平均横方向寸法を参照してアセスメントされることができ、キャリアの横方向寸法と同じ、或いはキャリアの横方向寸法よりも小さくてもよい。1つの磁化層が存在する場合、アスペクト比ARは、磁性層の最小、或いは平均の、横方向寸法を、その厚さ(又は厚さが変化する場合、平均的な厚さ)で除算した値であってもよい。複数の磁化層が存在する場合、アスペクト比ARは、横方向寸法、又は異なる層が異なる横方向寸法を有する場合は平均横方向寸法を、層の集合的な厚さで除算した値として評価されてもよい。
【0194】
好ましい実施形態では、キャリアの上面及び底面は、5nm、又は10nm又は50nm又は100nmと、100μm又は50μm又は5μm又は1μm又は500nmとの間のキャリアの厚さによって分離されてもよい。キャリアの最小横方向寸法は、1μmよりも大きくてもよく、好ましくは、5μm又は10μmよりも大きくてもよく、最大横方向寸法は、500μm又は200μm又は100μm又は50μm未満であってもよい。キャリアの最小横方向寸法の、キャリアの厚さに対する比率は、10又は20又は50よりも大きくてもよく、且つ/或いは2000又は1000又は500よりも小さくてもよい。したがって、そのような好ましい実施形態では、キャリアは、むしろ平坦な、高いアスペクト比の形状を有してもよく、他の実施形態は、より低いアスペクト比のキャリアの形状、さらには球状又は立方体状のキャリアを想定する。そのような低いアスペクト比のキャリアは、上記及び本明細書で議論されるように、より高いアスペクト比を有する1つ又は複数の磁化層を含んでもよい。
【0195】
2つ以上の磁化層を含む実施形態では、好ましくは、それらの層は、互いに実質的に平行である。2つ以上の磁化層を含む実施形態では、好ましくは、それらの層は、互いに同様の形状及び/又は面積を有し、便宜上、互いに重なり合ってもよく、任意に、互いに完全に重なり合ってもよい。
【0196】
有利には、キャリアの対向上面及び底面は、平坦であるが、任意に、一方又は両方の表面は、凝集を回避するために十分に小さい浮遊磁場を有するキャリアの所望の特性に影響を及ぼすことなく、湾曲されてもよく、或いは平坦でないことがある。したがって、キャリア自体は、平坦であり、或いは湾曲されてもよい。しかしながら、各ケースでは、有利には、個々のキャリア又はキャリアのグループ(キャリアのグループ内のキャリアが同様にマークされている場合)が情報を読み取ることによって識別され得るように、対向上面及び底面は、バーコード又は2次元コードの形態の読み取り可能なコードなどの、読み取り可能な情報などの特徴が、上面及び/又は底面に適用されることを可能にするために十分に大きな面積であってもよい。そのような情報は、上面及び/又は底面に適用されてもよく、或いは上面及び/又は底面の下、例えば、コード又は情報が、1つ又は複数の表面層を介して読み取ることを可能にするために十分に透明である1つ又は複数の表面層の下に適用されてもよい。さらに、本明細書に説明されるように、有利には、上面又は底面は、バイオテクノロジー又は化学的用途のためのバイオ機能性又は化学機能性などの、キャリアへの他の機能性の用途のための適切な基材を形成し得る。
【0197】
したがって、好ましい一実施形態では、キャリアの形状は、高いアスペクト比の立方体又はディスクなどの、薄い(小さい厚さの)横方向に延在した形態であってもよい。(アスペクト比は、最小横方向寸法、又は平均横方向寸法の、厚さに対する比率を意味する)。代替的に、磁性キャリアは、円筒状の形状であり、キャリアの厚さは、円筒の軸方向であり、好ましくは、円筒の周辺形状は、有利には、凹入角がない、凸状或いは直線状である1つエッジ又は複数のエッジを典型的に有するように選択されるように説明されてもよい。好ましい周辺形状は、長方形又は正方形又は円形である。
【0198】
上述されたように、高いアスペクト比又は円筒形状であり、好ましくは、キャリアは、平坦であり、平坦な上面及び底面を有する一方、本発明の実施形態は、非凝集磁性キャリアを提供するという目的を達成しつつ、湾曲された或いは非平坦なキャリア、又は、湾曲された或いは非平坦な上面及び下面を有するキャリアを含み得ることが企図される。
【0199】
好ましくは、磁性キャリアの最小及び最大横方向寸法は、90%未満又は70%未満で異なる。好ましい実施形態では、キャリアの最小横方向寸法は、5μmよりも大きく、好ましくは、10μmよりも大きく、且つ/或いはキャリアの最大横方向寸法は、500μm未満、好ましくは、200μm、100μm又は75μm未満である。これらの寸法は、キャリアが使用されるための用途、及びキャリアの所望の機械的強度などの要件に応じて、当業者によって選択されてもよい。
【0200】
有利には、磁性キャリアの層構造は、磁化層及び非磁性層を含む。非磁性層は、キャリアに機械的強度を与えてもよく、磁化層のための適切な基材を提供してもよい。したがって、有利には、非磁性層は、AI、Ta、Pt、Pd、Ru、Au、Cu、W、MgO、Cr、Ti、Si、Ir、SiO2、SiO、Sn、Ag、ポリマー、プラスチック、これらの材料の合金、及びこれらの材料を含む複合体又は混合物から選択される材料を含み得る。
【0201】
キャリアは、2つ以上の非磁性材料の層を含んでもよく、同様にこの群から選択されてもよい。
【0202】
磁化層、又は強磁性層は、任意の適切な材料から形成されてもよく、好ましい実施形態では、例えば、Fe、Co、Ni、CoFe、CoFeB、FePt、CoNi、及びNiFeなどの金属又は金属合金から選択される材料を含んでもよい。
【0203】
例えば、磁化層は、磁性材料及び貴金属(Pt/CoFeBなど)の交互の層の磁性多層スタックを含んでもよく、この対は、垂直磁気異方性を提供することが知られている。
【0204】
好ましくは、磁化された、層は、面外磁化層であるが、面内磁化層などの異なる磁化層であってもよい。
【0205】
外部磁場に対する迅速な応答を達成するために、磁性キャリア関して、高い飽和磁気モーメントが望ましい。磁性材料は、これを達成するために選択される。
【0206】
磁性キャリアの層構造は、非磁性材料の2つ以上の層を含んでもよく、且つ/或いは磁化された材料の2つ以上の層を含んでもよい。好ましい一実施形態では、キャリアは、非磁性材料の2つの層の間に配置された磁化層を含んでもよい。
【0207】
キャリアは、印加磁場がないとき、ゼロの磁化残留を有するように、組み合わせて配置された2つ以上の磁化層を含んでもよい。そのようなキャリアは、外部場の印加がキャリアに磁気モーメントを誘発するように磁化率を有してもよい。したがって、外部場は、例えば、液体培地を介して、キャリアを移動させ、或いは誘導するために、印加されてもよい。しかしながら、有利には、本発明を具現化するキャリアの形状は、磁気モーメントが誘発されるときでも、有利には、キャリアの周囲の浮遊磁場が低すぎてキャリアの凝集を引き起こすことができないことがあるので、キャリアが高い或いは低い磁化率を有するか否かは重要でないことがある。
【0208】
有利には、そのようなキャリアでは、磁化層は、キャリアの上面からキャリアの厚さの25%を超えて離隔されており、キャリアの底面からキャリアの厚さの25%を超えて離隔されていることがある。有利には、この構造は、キャリアの対向上面及び底面における浮遊磁場をさらに低減し得る。
【0209】
好ましくは、磁化層は、0.1nm、又は0.4nm、1.0nm又は1.5nmよりも大きな、厚さ又は平均的な厚さを有し得る。好ましくは、磁化層の厚さは、キャリアの総厚の、25%未満、特に好ましくは、15%又は10%未満であり得る。キャリアの機械的強度が所望の用途に十分である場合、キャリアは、磁化層のみを含み得る。
【0210】
例えば、磁化層は、薄膜多層であってもよい。
【0211】
キャリアの上面又は底面の短い距離において或いは短い距離内で、横方向表面にわたって平均化された正味の磁場(浮遊磁場)は、好ましくは、2500A/m(30Oe)未満、特に好ましくは、800A/m(10Oe)未満又は400A/m(5Oe)未満であり得る。この磁場は、例えば、磁気原子間力顕微鏡を使用することによって、表面において測定され、或いは表面から10nm、50nm、100nmなどの短い距離において測定されてもよい。本発明者らの実験は、これらの外部磁場、又は浮遊磁場は、磁性キャリアの凝集を回避するのに十分に小さいことを示している。
【0212】
便宜上、本発明を具現化する磁性キャリアは、リソグラフィプロセスによって製造され、或いは作製されてもよい。
【0213】
上述されたように、有利には、本発明の第2の態様は、寸法を有する磁性キャリアを提供し得るが、好ましくは、キャリアの上面及びキャリアの対向底面は、5nmから200μmの間のキャリアの厚さによって分離され、キャリアの最小横方向寸法は、1μmよりも大きく、最小横方向寸法の、厚さに対する比率は、10よりも大きく、キャリアは、その厚さによる層構造を含み、層は、1つ又は複数の磁化残留、又は磁化層、及び非磁性材料の1つ又は複数の層を含む。便宜上、そのようなキャリアは、リソグラフィプロセスによって作製されてもよく、本明細書に説明された本発明の第1の側面の特徴のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0214】
本発明のさらなる一態様では、キャリアの上面又は底面は、読み取り可能なコードなどの、読み取り可能な情報を担持してもよい。例えば、これは、バーコード又は2次元コードであってもよい。これは、例えば、カメラ及び適切なソフトウェアを用いて、情報を読み取ることによってキャリアが遠隔で識別されることを可能にしてもよい。
【0215】
好ましい一実施形態では、キャリアの磁気特性は、適切な外部磁場が、印加され、コード又は情報を読み取るための所定の位置に、液体培地を介してキャリアを誘導し、或いは移動させ、或いは駆動することを可能にする。例えば、コード又は情報が担持される大きな上面又は底面を有する高いアスペクト比の形状を有するキャリアは、コード又は情報の簡便な読み取りのために、基材又は他の支持面と接触しているように方向付けられてもよい。
【0216】
本発明のさらなる一態様では、キャリアの上面及び/又は底面は、機能化され、例えば、生体機能化され、或いは化学的機能化されてもよい。有利には、これは、キャリアに読み取り可能な情報を適用することと組み合わせてもよい。例えば、キャリアの上面又は底面は、読み取り可能なコードを担持してもよく、同じ或いは対向表面は、機能化されてもよい。さらに、好ましい一実施形態では、複数のキャリアが提供され、各キャリアは、そのキャリアの機能化に対応する読み取り可能な情報を担持してもよい。
【0217】
そのようなキャリアは、液体又は流体のアッセイ試料にキャリアを提供し、キャリアの機能性を、アッセイ試料、例えば、アッセイ試料の生体分子又は他の成分と相互作用させることによって、バイオアッセイなどの、アッセイの実施を可能にしてもよい。磁場が印加され、読み取り位置にキャリアを誘導してもよく、アッセイ結果は、読み取り可能なコードを読み取り、キャリアの機能性とアッセイ試料との相互作用を測定することによって取得されてもよい。
【0218】
マルチチャネルアッセイは、各キャリアがそのキャリアの異なる機能性に対応する読み取り可能な情報を担持する複数のキャリアを提供することによって実施され得る。複数のキャリアは、キャリアのグループを含んでもよく、各グループのキャリアは、同様の読み取り可能な情報を担持し、同様に機能化されてもよい。複数のキャリアは、液体又は流体のアッセイ試料と接触させることができ、キャリアの機能性を、アッセイ試料と相互作用させることができる。磁場は、印加され、読み取り位置にキャリアを誘導し、アッセイ結果は、2つ以上のキャリアの読み取り可能な情報を読み取り、各キャリアの対応する機能性とアッセイ試料とのそれぞれの相互作用を測定することによって取得される。
【0219】
有利には、このような方法で読み取り可能な情報を使用したキャリアの識別は、キャリアが互いに正確に区別され得るマルチプレックスプラットフォームを提供し得る。例えば、バーコード、又は2次元コードの使用は、プレックスチャネル間の最小限のクロストークで、既存のマルチプレックスアッセイプラットフォームよりも、異なるキャリアを識別するための著しく、よりロバストなプロセスを提供してもよい。さらに、このような方法での読み取り可能な情報の使用は、現在可能であるよりも非常に多くのマルチプレックスチャネル数の使用を可能にし得る。例えば、バーコーディング又は2次元コードは、1000プレックス、又は10,000プレックス、又は必要に応じてそれ以上を可能にしてもよい。
【0220】
したがって、好ましい実施形態では、有利には、本発明は、バイオテクノロジー用途における使用のための強磁性マイクロディスク(マイクロキャリア、ナノキャリア、マイクロキャリアなど)の形態で、リソグラフィにより規定され、垂直(又は面外)に磁化されたキャリアに関し得る。例えば、これらのキャリアは、フォトリソグラフィ及び磁化薄膜多層の物理気相成長によって作製された強磁性マイクロキャリア又はマイクロディスク(各横方向寸法において、或いは2つの直交する横方向寸法において、1-500μmの間、又は1-200μmの間、又は好ましくは、5-100μmの間、10nm-200μmの間、又は好ましくは、20nm及び10μmの厚さ)であってもよい。例えば、キャリアは、40μmの直径又は一辺の長さ、100nmの厚さの、円形又は正方形であってもよい。或いは、キャリアは、100μmの直径又は一辺の長さ、1μmの厚さであってもよい。結果として得られる高い平面アスペクト比の超薄型ディスク、又はマイクロディスク(診断ツールのための生体機能性抗体などの機能化を担持する能力があるので、磁性キャリア(MC)と呼ばれ得る)は、高い磁気モーメントを有する強磁性体である。MCは、リソグラフィにより規定されてもよい。MCは、各磁性層のアスペクト比(典型的に、1nm、又は5nmの磁性層の総厚及び数十μmの横方向のサイズ)、及び、MCの平面に垂直な磁化方向は、各キャリアからの無視できる浮遊磁場をもたらすので、流体中に懸濁されるときに凝集しない。
【0221】
好ましい形態では、MCは、マイクロディスクの面法線に平行な磁化方向、ならびに保磁力による磁化反転、及び高い磁気異方性によって特徴付けられてもよい。これらの特性は全て、外部磁場の影響下にある流体中の磁気応答、ひいては機械的挙動に対する高度な制御を可能にし得る。
【0222】
好ましくは、キャリア、すなわちMCを作製するために使用される物理気相成長プロセスは、MCを形成する磁性薄膜の堆積においてサブナノメートルの制御を可能にし、したがって、MCの磁気特性のエンジニアリングにおいて極めて高い精度を提供する。有利には、これは、それらが、異なる用途に調整されることを可能にし得る。さらに、バーコード(又は他の読み取り可能な情報)は、リソグラフィによりMCの表面に付加されてもよく、表面材料は、目的の分子で最適な機能化のために選択されてもよい。
【0223】
(PCT/GB2019/053188:発明の具体的な実施形態及び最良の形態)
ここで、本発明の具体的な実施形態は、添付の図面を参照しながら、例として説明される。
【0224】
図1は、本発明の第1及び第2の実施形態による、磁性キャリアの作製のための2つのプロセス、プロセスA及びプロセスBにおけるステップを示す。
【0225】
図2は、実施形態のキャリアに使用される磁性薄膜Au(100.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(5.0)の磁気応答の極磁気光学カー効果(MOKE)測定である。
【0226】
図3(a)及び
図3(b)は、実施形態による、キャリアにおける読み取り可能なコード及び磁気状態がリンクされ、読み取り可能なコードが、印加磁場によって、カメラ又はバーコードリーダなどの、外部検出器に対して常に位置合わせされ得ることを保証する様子を示し、検出器によって画像化されたキャリアの読み取り可能なコードの画像を示す。
【0227】
図4は、実施形態による、製造されたキャリアの表面からの距離の関数としての浮遊磁場強度を示す。
【0228】
図5(a)及び
図5(b)は、本発明のさらなる一実施形態による、バイオアッセイに適した、機能化キャリアを示し、本発明のさらなる一実施形態による、合理的なマルチプレックスアッセイを実装するためのキャリアの使用を示す。
【0229】
本発明の具体的な一実施形態は、極薄の垂直に磁化されたCoFeB/Pt層から作られた高い磁気モーメントマイクロキャリアの作製を含む。これらのキャリアの形状の高いアスペクト比は、各キャリアからの極めて低い浮遊磁場をもたらすので、磁性ナノキャリアは、キャリア間の相互作用を示さない(したがって、凝集しない)。外部磁場が印加されるとき、キャリアは、磁気飽和に移行し、保磁力によるシャープなスイッチングを有し、完全に残留する。個々のバーコードは、シンプルでロバストなリソグラフィプロセスを使用してキャリアに付加され、光学的に読み取られ得る。以下で説明されるように、磁性キャリアを使用したロバストなマルチプレックスアッセイ、例えば、サイトカインアッセイは、アッセイ用途におけるその可能性を強調していることが実証されている。
【0230】
本実施形態では、有利には、リソグラフィにより作製された磁性キャリアは、高い磁気モーメント、キャリア間の相互作用がないこと、機能化のための大きな表面積、及びロバストなキャリアの特異的なバーコーディングを達成し得る。これらのキャリアは、機能化と読み取り可能な情報との両方を担持する能力の観点から、磁性キャリア(MC)と呼ばれ得る。有利には、キャリアの大きな表面積は、従来のアッセイキャリアよりも機能化のための、より大きな面積を提供し得る。
【0231】
リソグラフィにより規定された磁性ナノキャリアは、先行技術において知られており、例えば、T.Vemulkar,R.Mansellによる、D.C.M.C.Petit,R.P.Cowburn,及びM.S.Lesniak,“Highly tunable perpendicularly magnetized synthetic antiferromagnets for biotechnology applications,”,Appl.Phys.Lett.,2015、H.Joistenらによる、“Self-polarization phenomenon and control of dispersion of synthetic antiferromagnetic nanocarriers for biological applications,”,Appl.Phys.Lett.,vol.97,no.25,p.253112,2010、及びS.Leulmiらによる、“Comparison of dispersion and actuation properties of vortex and synthetic antiferromagnetic carriers for biotechnological applications,”,Appl.Phys.Lett.,vol.103,no.13,p.132412,2013である。しかしながら、これらのリソグラフィにより規定されたキャリア及び他の磁性ナノキャリア一般とは全く対照的に、本明細書で使用されるMCは、キャリアの凝集を防止するためにネットゼロの残留磁化状態のエンジニアリングを必要としない。任意に、本明細書で使用されるMCは、ネットゼロの残留磁化(及び外部場における磁気モーメントの発生に対する磁化率)を有してもよいが、当業者の従来の予想にもかかわらず、凝集を回避するためにネットゼロの残留を必要としない。外部場がないときの残留磁化がゼロであるか否かにかかわらず、キャリア中の磁化された材料の形状、及び/又はキャリアの形状に起因して、キャリアの浮遊磁場は、凝集を回避するために十分に低い。
【0232】
本実施形態でのMCは、40ミクロンの平面状の長さ及び幅と、およそ150ナノメートルの厚さとを有する、極めて高いアスペクト比の立方体である。
【0233】
磁性キャリア、すなわちMCの作製のための本発明の2つの実施形態による、2つのリソグラフィプロセス(A及びB)が
図1に示される。
【0234】
プロセスAは、
図1のA1から
図1のA11に示される。
図1のA1では、Si基材4上にマグネトロンスパッタリングによって50nmのAI犠牲層2が成長される。次いで、キャリアの薄膜スタックのベース6は、同じくマグネトロンスパッタリングによって、この犠牲層の上に成長される。
【0235】
このベースは、以下の11層(厚さはnm)、Au(100.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(5.0)から構成されている。
【0236】
図1のA2では、フォトレジスト8は、MCベース6の上にスピンコートされる。次いで、
図1のA3のように、フォトレジストは、キャリアのバーコード(又は読み取り可能なコード)を規定するフォトマスク10を使用してリソグラフィパターン中に曝される。この標準的なフォトリソグラフィプロセスは、
図1のA4に示されるフォトレジストに複数の穴12を生成し、
図1のA5に示されるように、15nmのTaなどのバーコードコントラスト材料14は、マグネトロンスパッタリングを使用してキャリアベースの上に堆積される。穴の形状及びパターンは、バーコード16を規定する。
【0237】
次いで、フォトレジストは、アセトンなどの溶媒中で除去され、
図1のA6に示されるように、フォトレジスト18の新しい層は、キャリアベース6及びバーコード16の上にスピンコートされる。これは、マスク20を使用して第2のリソグラフィパターニングプロセスに曝され、キャリアの形状を規定する。
図1のA7に示されるこのステップでは、バーコードが穴の中心に配列されるように、キャリアの形状を定義する複数の穴22は、位置合わせされる。
【0238】
図1のA9では、キャリア(MC)キャップ24及びイオンビームミリングハードマスク26は、マグネトロンスパッタリングによって付加され、それぞれ30-40nmのAu及び200nmのAIから構成されている。金の厚さは、生体適合性のために(上面と底面との両方の)キャリアの全面的なAuコーティングを保証し、生体機能化の表面を提供するように選択される。しかしながら、Auの厚さは、バーコードがAu層を介して読み取られることを可能にするために十分に薄い。
【0239】
次いで、
図1のA9では、フォトレジスト18は、アセトンなどの溶媒中で除去され、次いで、試料全体は、標準的なサブトラクティブパターニングプロセスであるイオンビームミリング28が施される。イオンビームミリングハードマスクによって保護されていない薄膜は、ミリングで除去される。したがって、ミリングは、規定されたキャリアの形状内にない、キャリアの薄膜スタックのベースを形成する全ての薄膜を除去する。ミリングプロセスは、犠牲層が到達されたときに停止される。任意の残りのAIハードマスク26は、3-5%水酸化テトラメチルアンモニウム溶液、又は同等のAI溶液エッチィング液に10-30分浸漬して溶解することによって除去されてもよい。
【0240】
したがって、フォトリソグラフィパターニングは、キャリアの平面形状を決定し、物理気相成長プロセスは、その厚さ及び組成を決定する。
【0241】
この段階で、バーコード有するキャリア30、MCは、完全に規定され、犠牲層の上にある。次いで、
図1のA10に示されるように、キャリアの磁性薄膜の保磁力場よりも大きな磁場32は、印加され、全てのキャリアがキャリアの上面及び底面に垂直な、「アップ」状態で、面外に磁化されることを保証する。代替的に、キャリアは全て、「ダウン」状態で磁化されてもよい。これは、キャリアの磁化を垂直方向のキャリアの物理的構造にリンクさせ、
図3に示されるような再堆積又は溶液中の分析などの任意の下流プロセスにおいて、バーコードの位置合わせを可能にする。
【0242】
最後に、
図1のA11に示されるように、キャリアの下のAI犠牲層は、適切な溶媒に溶解され、キャリア30を基材から離し、それらを液体培地の溶液中に剥離する。
【0243】
プロセスBは、
図1のB1から
図1のB11に示される。
図1のB1では、フォトレジスト層50は、Si基材4の上にスピンコートされる。次いで、
図1のB2では、フォトマスク52を使用して曝され、フォトレジストの複数のアイランド又はピラー54を作成し、
図1のB3では、一連の材料層56は、マグネトロンスパッタリングを使用して堆積され、磁性キャリアの層薄膜構造のベース58を形成する。アイランド又はピラーの形状は、キャリアの形状を規定する。したがって、
図1のB3は、キャリアの最初の層の堆積後の構造を示す。下から順に示されるこれらは、以下の薄膜層(厚さはnm)、Au(100.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(5.0)から構成されている。
【0244】
次いで、リソグラフィにより規定されたバーコードは、キャリアに付加される。
図1のB4に示されるように、第2の層のフォトレジスト60は、塗布され、
図1のB5に示されるように、各キャリアの所望のバーコードでパターン化されたフォトマスク62を使用して曝される。
図1のB6及びB7では、フォトレジストは、現像され、次いで、下流の現像装置において除去できるようにフラッド露光64される。各フォトレジストのアイランド又はピラー54の底層は、アイランドの上のキャリアの存在によってこの露光ステップから遮蔽される。
【0245】
図1のB8では、キャリアの上に15nmのTaなどのバーコードコントラスト材料66が成長される。次いで、
図1のB9では、フォトレジストの最上層は、現像液を使用して完全に除去され、30-40nmのAuから構成されているキャリアキャップ68は、堆積される。レジストの底層は、そのまま残る。金の厚さは、生体適合性のために(上面と底面との両方の)MCの全面的なAuコーティングを保証し、生体機能化の表面を提供するように選択される。しかしながら、Auの厚さは、バーコードがAu層を介して読み取られることを可能にするために十分に薄い。
【0246】
したがって、フォトリソグラフィパターニングは、キャリアの平面形状を決定し、物理気相成長プロセスは、その厚さ及び組成を決定する。
【0247】
この段階で、バーコードを有するキャリア、MC、70は、完全に規定され、フォトレジストのアイランドの上にある。次いで、
図1のB10に示されるように、キャリアの磁性薄膜の保磁力場よりも大きな磁場72は、印加され、全てのキャリアがキャリアの上面及び底面に垂直な、「アップ」状態で、面外に磁化されることを保証する。代替的に、キャリアは全て、「ダウン」状態で磁化されてもよい。これは、キャリアの磁化を垂直方向のキャリアの物理的構造にリンクさせ、
図3に示されるような再堆積又は溶液中での分析などの任意の下流プロセスにおいて、バーコードの位置合わせを可能にする。
【0248】
したがって、プロセスA及びBにおいてこの実施形態に説明されるMCの薄膜構造は、Au(100.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(5.0)(厚さはnm)のベースとして規定される。15nmのTaバーコードは、この層の上にあり、次いで、これは、30-40nmのAuで覆われる。上面における、より薄いAuは、Auを介してバーコードを画像化することを可能にし、したがって、本明細書に説明される実施形態では、バーコードは、キャリアの上面を通してのみ視認可能である。したがって、この段階では、キャリアの磁化をキャリアの物理的構造にリンクさせることは、溶液中でキャリアのバーコード面の制御及び配向を可能にするために必要である。
【0249】
最後に、
図1のB11に示されるように、キャリアの下のフォトレジスト74は、適切な溶媒に溶解され、キャリア70を基材から離し、それらを液体培地の溶液中に剥離する。
【0250】
図2は、実施形態のキャリアに使用される磁性薄膜Au(100.0)/Ta(2)/Pt(4)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(1.2)/CoFeB(0.6)/Pt(5.0)の磁気応答の極磁気光学カー効果(MOKE)測定である。明らかに、薄膜の磁化は、飽和へのシャープで保磁力による磁気スイッチを有する、面外である。H
Cは、保磁力場、すなわち薄膜をその飽和磁気状態に磁気的にスイッチするために必要とされる磁場を示す。
【0251】
図3(a)は、バーコード(又は他の2次元コード)及びキャリア30、70の磁気状態がリンクされ、コードが、常に外部検出器に位置合わせされることを保証する様子を示す。まず、上述されたように、キャリアが溶液中に離される前に、H
Cを超える磁場は、使用され、キャリアの磁化を「アップ」状態に設定する。溶液中では、キャリアが任意の強い磁場パルスに曝されない場合、キャリアは、この磁化状態を保持することとなる。H
C未満の任意の印加磁場は、磁気モーメントMを外部印加磁場と一致させるようにキャリアの回転を単にもたらすこととなる。典型的に、10-1000Oeの場の強さと0-50Hzの周波数とは、キャリアの動きを制御するために使用され得る。バーコードは、各キャリアの上面に作製され、30-40nmのAuでコーティングされ、Auを介して光学的に画像化され得るので、磁気モーメントMを外部磁場と一致させることは、印加磁場(H)の方向にキャリアのバーコード面を独自に位置合わせすることに対応する。したがって、
図3に示されるように、キャリアは、平面基材などの、基材上に印加磁場によって方向付けられてもよく、バーコードリーダ及び蛍光検出器又はカメラなどの任意の関連検出器によって読み取ってもよい。
【0252】
図3(b)は、平面状の基材上のキャリアの画像と、バーコードなどの読み取り可能なコードを表示する画像とを示す。
【0253】
図4は、実施形態のキャリア30、70の表面からの距離の関数としての浮遊磁場強度を示す。キャリアの高いアスペクト比のジオメトリに起因して、浮遊磁場が低いことが分かる。有利には、これは、キャリアが凝集する任意の傾向を減少させる。
【0254】
本発明の一実施形態によるキャリアは、以下のように、マルチプレックスアッセイを実装するために使用されてもよい。プロセスのステップは、
図5(a)及び(b)に示される。例えば、上記されたように、各キャリア100は、リソグラフィにより作製されており、バーコード102(好ましくは、クイックレスポンス(QR)コード又は2次元データマトリクスコード)でパターン化されている。所定のバーコード、又は他の読み取り可能なコードは、マルチチャネルバイオアッセイにおいて識別されるべき特定のタンパク質などの、所望のアッセイ試料に割り当てられる。次いで、
図5(a)に示されるように、特定のタンパク質に対応するコードを担持する各キャリアは、そのそれぞれのタンパク質に特異的な捕捉抗体104で機能化される。これは、従来の生化学プロトコルを使用して実施され得る。キャリアの金の表面は、この機能化に適している。
【0255】
この実施形態及び他の実施形態では、キャリアの他の機能化が必要とされる場合、金以外の材料は、キャリアの上面及び底面の一方又は両方に使用されてもよい。例えば、SiO2は、使用されてもよい。
【0256】
分析物の検出は、従来のサンドイッチイノムアッセイで実施される。捕捉抗体が標的タンパク質106を捕捉するとき、捕捉抗体と補完的な蛍光標識検出抗体108への磁性キャリアの曝露は、タンパク質に結合し、標識化する。次いで、当業者が理解するように、検出抗体中のフルオロフォア110の蛍光は、タンパク質が捕捉され、したがって、アッセイにおいて試験された試料中に存在したことを示すために使用され得る。
【0257】
したがって、簡便なマルチプレックス分析物捕捉プラットフォームは、磁性キャリアの複数のセット(又はグループ)を含む、任意の所望の用途のために準備されることがあり、キャリアの各セットは、固有のコードを担持し、対応する捕捉抗体で機能化される。所望の範囲の標的タンパク質に関して、それらの標的タンパク質に対応するキャリアの複数のセットは、マルチチャネルアッセイを使用して診断が実施されるべき患者試料などの、アッセイ試料中で一緒に混合され得る。
【0258】
図5(b)に示される、好ましい一実施形態によるアッセイでは、分析物試薬は、液体培地122中に担持される機能化磁性キャリアの所望のセット120から構成されている。典型的な一実施例では、分析物試薬は、各標的タンパク質106の捕捉抗体で機能化されたおよそ100-1000のコード化された磁性キャリア(MC)のセット又はグループを含んでもよい。分析物試薬は、分析される試料と混合され、存在する任意の標的タンパク質と反応させる。次いで、磁性キャリアは、磁気分離124によって試料及び液体培地から除去される。これは、(例えば、試料を保持する容器の底に集まる128ように)外部磁場126を使用して共にキャリアを引き付け、試料が除去され、或いはデカントされることを含む。次いで、キャリアは、液体培地130中に再懸濁され、対応する蛍光標識検出抗体108に曝される。次いで、外部磁場の印加を介して、キャリアは、駆動され、或いは誘導され、読み取り面132上に配置される。例えば、表面は、スライドガラスであってもよい。とりわけ、各キャリアは、キャリアの上面に向かう或いはキャリアの上面から離れる固有の方向への磁化状態で、面外に磁化されているので、キャリアは、キャリアが全て、読み取り面上で、互いに同じ面内にあるように、また、キャリアが全て、同様に、例えば、各キャリアの上面が読み取り面から離れて向いている状態で配向されるように、誘導され得る。
【0259】
代替の一実施形態では、キャリアは、キャリアの上面又は底面に平行な磁場状態で、面内に磁化されてもよい。次いで、キャリアは、読み取り面上で外部磁場によって方向付けられ得るが、キャリアが全て、各キャリアの上面又は底面が表面から離れて向いている状態で位置合わせさせることはできない。この明らかな問題は、2つの方法のうちの1つで解決され得る。キャリアは、キャリアの上面と底面との両方の読み取り可能な情報で作製され得るので、情報は、いずれの面からも読み取られ得る。代替的に、キャリアは、例えば、キャリアの層を十分に透明にさせ、情報が上面と底面との両方から読み取られ得るようにすることによって、キャリアのいずれの面からも読み取られ得るように作製されてもよい。
【0260】
キャリアが読み取り面132に配置されると、キャリアの2つの画像は、適切なカメラ及び制御ソフトウェアを使用して撮影され得る。第1の画像134は、各キャリア上のコード又は情報を示す明視野画像である。これは、画像中のどのキャリアが各標的タンパク質の捕捉抗体を担持しているか、言い換えれば、各キャリアがマルチチャネルアッセイのどのチャネルに属するかを一義的に識別する。第2の画像136は、キャリアの蛍光画像である。キャリアが蛍光を発する場合、そのキャリア上の検出抗体は、対応するタンパク質を捕捉し、蛍光強度は、試料中のタンパク質の濃度を示し得る。キャリアが蛍光を発しない場合、そのキャリアは、その対応するタンパク質を捕捉していないので、試料中に存在しない。したがって、2つの画像の重ね合わせは、各キャリアに蛍光強度の値を割り当てることによって、どのタンパク質が試料中に存在したかを識別し得る。次いで、対応する分析ソフトウェアは、どのタンパク質が試料中に存在するかと、それらのタンパク質の濃度とを示す。
【0261】
キャリアのバーコーディングによって可能とされるマルチチャネル分析の重要な特徴は、プレックスチャネルの潜在的な数が非常に多く、最大でバーコードによってコード化され得るだけのチャネル数であり、1000チャネル、又はそれ以上さえあってもよい。同時に、個々のチャネル内のキャリアは、一義的に識別されることができ、チャネル間のほとんど或いは全くないクロストークを達成することができる。比較すると、従来のビーズベースのバイオアッセイは、クロストークに対する耐性がはるかに低い蛍光ベースのチャネル識別システムを使用する。例えば、1つの先行技術のシステムは、バーコーディングビーズにフルオロフォアの比率を使用し、分析物検出のためのポジティブシグナリングとしてフルオロフォア標識抗体を使用する。これは、チャネル識別の信頼性に課題をもたらし、プレックス番号を著しく制限する。
【0262】
(PCT/GB2019/053188:優先的特徴を記載する条項)
1.キャリアの上面と前記キャリアの対向底面との間に層構造を含み、前記層は、1つ又は複数の磁化層を含み、前記1つ又は複数の磁化層の横方向寸法の、前記1つ又は複数の磁化層の厚さ又は集合的な厚さに対する比率は、500よりも大きい、磁性キャリア。
【0263】
2.前記層は、非磁性層を含む、条項1に記載の磁性キャリア。
【0264】
3.前記1つ又は複数の磁化層の前記横方向寸法の、前記1つ又は複数の磁化層の前記厚さ又は集合的な厚さに対する比率は、1000よりも大きく、好ましくは、2000よりも大きい、条項1又は2に記載の磁性キャリア。
【0265】
4.前記1つ又は複数の磁化層は、磁化又は平均磁化Msを有する磁性材料の体積Vを含み、前記1つ又は複数の層の断面は、アスペクト比ARを有し、AR/Ms2(Msは、A/mで測定)は、8*10-10(A/m)-2よりも大きい、条項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0266】
5.前記1つ又は複数の磁化層は、磁化又は平均磁化Msを有する磁性材料の体積Vを含み、前記1つ又は複数の層の断面は、アスペクト比ARを有し、AR/Ms(Msは、A/mで測定)は、0.001(A/m)よりも大きい、条項1乃至4のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0267】
6.前記キャリアの前記上面及び底面は、5nmから200μmの間のキャリアの厚さによって分離され、且つ/或いは、前記キャリアの最小横方向寸法は、1μmよりも大きく、好ましくは、5μm又は10μmよりも大きい、条項1乃至5のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0268】
7.前記キャリアの前記最小横方向寸法の、前記キャリアの前記厚さに対する比率は、10よりも大きい、条項1乃至6のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0269】
8.前記キャリアの最大横方向寸法は、1000μm未満であり、好ましくは、500μm又は200μm未満である、条項1乃至7のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0270】
9.前記キャリアの前記最小横方向寸法は、前記キャリアの前記最大横方向寸法の少なくとも10%であり、好ましくは、前記最大横方向寸法の少なくとも30%又は50%又は70%である、条項8に記載の磁性キャリア。
【0271】
10.前記キャリアの横方向周辺部は、凸状或いは直線状の側面を含む形状であり、好ましくは、凸状の側面及び/又は凹入角を有しない形状である、条項1乃至9のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0272】
11.前記磁性層又は前記磁性層のうちの少なくとも1つの前記横方向寸法は、前記キャリアの前記横方向寸法と同じである、条項1乃至10のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0273】
12.前記非磁性層は、非磁性金属、非金属、半金属及び化合物、AI、Ta、Pt、Pd、Ru、Au、Cu、W、MgO、Cr、Ti、Si、Ir、SiO2、SiO、Sn、Ag、SiN、Ge、ポリマー、プラスチック、これらの材料の合金、及びこれらの複合体又は混合物から選択される材料を含む、条項1乃至11のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0274】
13.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、Fe、Co、Ni、CoFe、CoFeB、FePt、CoNi、NiFe及びFe2O3などの、磁性金属、磁性合金、磁性化合物及び超常磁性ナノキャリア複合体から選択された材料を含む、条項1乃至12のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0275】
14.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、面外磁化層である、条項1乃至13のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0276】
15.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、面内磁化層である、条項1乃至13のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0277】
16.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、非磁性材料の前記層と前記非磁性材料の第2の層との間に配置される、条項1乃至15のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0278】
17.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、前記キャリアの厚さの25%を超えて前記キャリアの前記上面から離隔されており、前記キャリアの厚さの25%を超えて前記キャリアの前記底面から離隔されている、条項16に記載の磁性キャリア。
【0279】
18.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、0.1nmよりも大きな厚さを有し、好ましくは、0.5nmよりも大きな厚さを有する、条項1乃至17のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0280】
19.前記1つ又は複数の磁化層の前記集合的な厚さは、前記キャリアの前記厚さの25%未満であり、好ましくは、15%又は10%未満である、条項1乃至18のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0281】
20.前記磁化層又は前記磁化層の各々は、薄膜多層である、条項1乃至19のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0282】
21.前記キャリアの前記上面又は底面にわたって平均化された正味の磁場(浮遊磁場)は、2500A/m未満であり、好ましくは、800A/m又は400A/m未満である、条項1乃至20のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0283】
22.リソグラフィにより作製された、条項1乃至21のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0284】
23.前記キャリアは、バーコード又は2次元コードから選択される読み取り可能なコードなどの、読み取り可能な情報を担持し、前記キャリアの前記上面又は底面の一方又は両方において、或いは、前記一方又は両方から読み取り可能である、条項1乃至22のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【0285】
24.前記キャリアの表面は、機能化され、前記読み取り可能な情報は、前記キャリアの機能性に対応する、条項23に記載の磁性キャリア。
【0286】
25.前記キャリアの上面又は底面が機能化され、前記情報は、機能化されているのと同じ表面において或いは前記同じ表面から読み取り可能であり、且つ/或いは、各キャリアの表面は、機能化され、各キャリアは、前記キャリアの前記機能化に対応する前記読み取り可能な情報を保持する、条項24に記載の磁性キャリア。
【0287】
26.リソグラフィプロセスによって、条項1乃至25のいずれか1項に記載の磁性キャリアを製造するための方法。
【0288】
27.アッセイを実施するための方法であって、条項24又は25に記載のキャリアを液体アッセイ試料に提供することと、前記キャリアの前記機能化を前記アッセイ試料と相互作用させることと、磁場を印加し、読み取り位置に前記キャリアを誘導することと、前記読み取り可能な情報、及び、前記キャリアの前記機能化と前記アッセイ試料との前記相互作用を読み取ることによってアッセイ結果を取得することとを含む、方法。
【0289】
28.マルチチャネルアッセイを実施するための方法であって、条項24又は25に記載の複数のキャリアをアッセイ試料に提供することと、前記キャリアの前記機能化を前記アッセイ試料と相互作用させることと、磁場を印加し、読み取り位置に前記キャリアを誘導することと、2つ以上のキャリアの前記読み取り可能な情報、及び、前記キャリアの前記対応する機能化と前記アッセイ試料との前記相互作用を読み取ることによってアッセイ結果を取得することとを含む、方法。
【図】
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【国際調査報告】