(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-12
(54)【発明の名称】ハイドロフルオロカーボンの伝熱組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20230605BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20230605BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20230605BHJP
C10M 107/24 20060101ALI20230605BHJP
C10M 105/06 20060101ALI20230605BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20230605BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20230605BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20230605BHJP
【FI】
C09K5/04 C
C10M105/38 ZAB
C10M107/34
C10M107/24
C10M105/06
C10M107/02
C10M101/02
C10N40:30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567684
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021030608
(87)【国際公開番号】W WO2021226048
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】サラ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・トーマス・クー
(72)【発明者】
【氏名】ルーシー・メアリー・クラークソン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104CB02A
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104PA20
(57)【要約】
本発明は、冷蔵、空調、ヒートポンプシステム、チラー、及び他の伝熱用途で使用するための、1-クロロ-1,2ジフルオロエチレンを含む伝熱組成物に関する。本発明の伝熱組成物は、優れた容量と性能を提供しながら、好ましい燃焼特性を提供し、減少した地球温暖化係数を持つことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-クロロ-1,2ジフルオロエチレン(HFO-1122a)を含む、伝熱組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の伝熱組成物を含み、冷蔵システム、空調、加熱及び冷却からなる群から選択される伝熱システム。
【請求項3】
ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、フッ素化シクロプロパン、フッ素化メチルシクロプロパン、ハイドロフルオロクロロカーボン、炭化水素、ハイドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、及びそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の伝熱組成物。
【請求項4】
前記ハイドロフルオロカーボンは、ジフルオロメタン(HFC-32);1-フルオロエタン(HFC-161);1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a);1,2-ジフルオロエタン(HFC-152);1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a);1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143);1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a);1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa);1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245ca);1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb);1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa);1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea);1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロプロパン(HFC-4310)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の伝熱組成物。
【請求項5】
前記ハイドロフルオロカーボンは1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)である、請求項3に記載の伝熱組成物。
【請求項6】
前記ハイドロフルオロオレフィンは、1,1,2-トリフルオロエテン(HFO-1123)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、E-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234zf);2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf);E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFO-1234ze);1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1255ye);Z-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))、E-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブタ-2-エン(E-HFO-1336mzz);Z-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブタ-2-エン(Z-HFO-1336mzz);1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン(HFO-1438mzz)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の伝熱組成物。
【請求項7】
前記ハイドロフルオロオレフィンは2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)である、請求項3に記載の伝熱組成物。
【請求項8】
さらに、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、及びそれらの混合物から選択される冷媒を含む、請求項1に記載の伝熱組成物。
【請求項9】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、及びそれらの混合物から選択される冷媒を1重量%~50重量%で含む、請求項8に記載の伝熱組成物。
【請求項10】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)を含み、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)と1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)の合計量に基づき、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)が25~75重量%である、請求項8に記載の伝熱組成物。
【請求項11】
さらに、潤滑剤を含む、請求項1に記載の伝熱組成物。
【請求項12】
前記潤滑剤は、ポリオールエステル油、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィン、及びそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の伝熱組成物。
【請求項13】
前記潤滑剤は、ポリオールエステル油、鉱油、アルキルベンゼン油、及びそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の伝熱組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の伝熱組成物を含む噴霧可能な組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の伝熱組成物を含む発泡剤組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の発泡剤を使用して製造されたポリマー発泡体。
【請求項17】
請求項1に記載の伝熱組成物を含む噴射剤組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の伝熱組成物を含むエアロゾル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵、空調、ヒートポンプシステム、チラー、自動車用空調、有機ランキンサイクルシステム及び他の伝熱用途で使用するための、1-クロロ-1,2ジフルオロエチレン(HFO-1122a)を含む伝熱組成物に関する。本発明の伝熱組成物は、良好な容量及び性能を提供しながら地球温暖化係数を低下させることができる。
【背景技術】
【0002】
継続的な規制圧力により、冷媒、伝熱流体、発泡剤、溶剤、及びエアロゾルに代わる、より環境的に持続可能な、オゾン層破壊及び地球温暖化係数の低い代替品を特定する必要性が高まっている。これらの用途に広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層破壊物質であり、モントリオール議定書のガイドラインに従って段階的に廃止されている。ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、多くの用途においてCFC及びHCFCの主要な代替品である。それらはオゾン層に「友好的」であると考えられているが、一般的には依然として高い地球温暖化係数を持っている。
【0003】
例えば、いくつかのHFCベースの冷媒が、オゾン層破壊係数(ODP)を持つHCFC冷媒であるR-22を置き換えるために開発されてきた。これらには、R-404A、R-407C、R-407A、R-417A、R-422D、R-427A、R-438Aなどが含まれる。ただし、HFCベースのR-22代替品のほとんどは、R-22よりも地球温暖化係数(GWP)が高く、性能特性も低下している。例えば、R-404AとR-407Aは、条件によってはR-22よりも冷蔵容量(CAP)がわずかに高くなるが、性能(COP)は低くなる。R-407CはGWPがわずかに低いが、冷蔵用途ではCAPとCOPも低くなる。他の多くのR-22代替品は、GWPが高いだけでなく、CAPとCOPが低くなっている。
図3は、R-22といくつかのR-22代替品のGWPの比較を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、安全上の懸念により、商業用及び住宅用の可燃性冷媒の広範な採用が制限されている。蒸気圧縮HVAC&Rシステム用の冷媒の選択には、性能、安全性、及び環境への影響の間のトレードオフが必要である。R-404Aなどの現在の世代の冷媒は通常、可燃性流体と不燃性流体の混合物で構成されており、全体の組成は不燃性に分類される。これらの冷媒は、R-11やR-22などの歴史的に使用されている単一分子流体の代替となることを目的としている。しかし、R-410AとR-404Aは地球温暖化係数(GWP)が非常に高く、そして、効率が高く、毒性がなく、引火性がなく、GWPが低い冷媒を見つけることは困難であった。
【0005】
環境に受け入れられるほとんどの冷媒は可燃性であり、これまでのほとんどの研究は、可燃性冷媒流体を最適に処理するように冷蔵及び空調システムの設計を適応させることに焦点を当ててきた。これらの研究では、冷媒の充填を制限したり、及び/又は追加の換気を備えたシステムを設計したりすることで、可燃性を軽減する方法を特定した。最近の研究のほとんどは、ベースラインの冷媒性能とGWPへの影響を変えることなく、冷媒の可燃性を制限する本質的な方法に焦点を当てている。実際、冷媒の可燃性を抑制する従来の方法は、許容できる熱力学的特性を有する既知の不燃性冷媒とブレンドして、不燃性ブレンドを生成することである。現在の例は、2L分類のR-32と1分類のR-125の不燃性ブレンドであるR-410Aである。ただし、R-125はGWPが高いため、少量しか添加できず、他の可燃性冷媒とのブレンドで可燃性を低下させる可能性が制限される。
【0006】
冷蔵容量は、特定のコンプレッサーに対して、冷媒によって利用可能な冷蔵力を表す。R-22からの置き換えには、R-22に近い高冷蔵容量の流体が必要である。
【0007】
COPは、蒸気状態の冷媒を圧縮するためにコンプレッサーに適用されるエネルギーに供給される冷却エネルギーの比率を表す。R-22の代替の文脈では、プラントの電力消費の増加が許容される場合、R-22よりも低い冷媒のCOP値が適している。
【0008】
最後に、凝縮圧力は、冷蔵回路の対応する機械部品に冷媒によって加えられる応力を示す。後者用に設計された既存の冷蔵システムを置き換えることができる冷媒は、既存の冷媒の凝縮圧力よりも大幅に高い凝縮圧力を示してはならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、低いGWPを有するだけでなく、予想外に低い可燃性及び容量と性能との間の良好なバランスを有する伝熱組成物が発見された。本発明の範囲を決して限定することを意図するものではないが、本発明の伝熱組成物は、新しい冷蔵、空調、ヒートポンプ、チラー、又は他の伝熱装置において有用である。別の実施形態では、本発明の伝熱組成物は、既存の設備における冷媒(R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-507、R-407A、R-407F、R-417A、R-422Dなどを含むが、これらに限定されない)の改良として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
継続的な規制圧力により、冷媒、伝熱流体、発泡剤、溶剤、及びエアロゾルに代わる、より環境的に持続可能な、オゾン層破壊及び地球温暖化係数の低い代替品を特定する必要性が高まっている。これらの用途に広く使用されているクロロフルオロカーボン(CFC)及びハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層破壊物質であり、モントリオール議定書のガイドラインに従って段階的に廃止されている。
ハイドロフルオロカーボン(HFC)は、多くの用途においてCFC及びHCFCの主要な代替品である。それらはオゾン層に「友好的」であると考えられているが、一般的には依然として高い地球温暖化係数を持っている。オゾン層を破壊する物質や地球温暖化を促進する物質に取って代わることが確認された新しいクラスの化合物は、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)などのハロゲン化オレフィンである。
【0011】
本発明の伝熱組成物は、1-クロロ-1,2ジフルオロエチレン(HCFO-1122a)単独で構成されるか、他の冷媒(ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロフルオロクロロオレフィン、炭化水素、ハイドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、プロピレン、及びそれらの混合物を含むがこれらに限定されない)との組み合わせから構成される。HCFO-1122aは、シス異性体とトランス異性体の両方で存在する。本明細書で使用される場合、HCFO-1122aは、シス-HCFO-1122a又はトランス-HCFO-1122a単体であるか、又はシス-HCFO-1122aとトランス-HCFO-1122aとの何らの組み合わせ若しくは混合物であるかにかかわらず、すべての1-クロロ-1,2ジフルオロエチレンを指す。
【0012】
「HFO-1225」という用語は、本明細書では、すべてのペンタフルオロプロペンを指すために使用される。そのような分子の中には、1,1,1,2,3ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)(シス型及びトランス型の両方)が含まれる。したがって、HFO-1225yezという用語は、本明細書では、それがシス形態であるかトランス形態であるかに関係なく、1,1,1,2,3ペンタフルオロプロペンを指すために一般的に使用される。したがって、「HFO-1225yez」という用語は、シス-HFO-1225yez、トランス-HFO-1225yez、及びこれらのすべての組み合わせ及び混合物をその範囲内に含む。
【0013】
HCFO-1122aの可燃性プロファイルは、GWPが低いだけでなく、予想外に可燃性が低く、容量と性能のバランスが取れた伝熱組成物を提供する。
【0014】
1-クロロ-1,2ジフルオロエチレン(HFO-1122a)と組み合わせて使用できるハイドロフルオロカーボン(HFC)の例には、ジフルオロメタン(HFC-32);1-フルオロエタン(HFC-161);1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a);1,2-ジフルオロエタン(HFC-152);1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a);1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a);1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134);1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC-125);1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa);1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245ca);1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245eb);1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236fa);1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea);1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロプロパン(HFC-4310)、1,1,1、2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、及びその混合物が含まれる。好ましいハイドロフルオロカーボンには、HFC-134a、HFC-32、HFC-152a、HFC-125、及びそれらの混合物が含まれる。
【0015】
例示的なハイドロフルオロオレフィン(HFO)には、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、1,1-ジフルオロエチレン(R-1132a)、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132、特にE異性体)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234zf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、特にE-異性体、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1255ye)、特にZ異性体、E-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン(R-1336mzz(E))、Z-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン(R-1336mzz(Z))、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペンタ-2-エン(HFO-1438mzz)及びそれらの混合物が含まれる。好ましいハイドロフルオロオレフィンには、1,1-ジフルオロエチレン(R-1132a)、E-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234zf)、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、E-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン(R-1336mzz(E))及びそれらの混合物が含まれる。
【0016】
例示的なハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd、特にE異性体)、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd、特にZ異性体)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、及び、HCFO-1214の異性体などのジクロロ-テトラフルオロプロペンが含まれる。
【0017】
例示的なヨードカーボンには、トリフルオロヨードメタン(R-13I1)が含まれる。
【0018】
例示的な炭化水素(HC)には、プロピレン、プロパン、ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、及びそれらの混合物が含まれる。好ましい炭化水素には、プロピレン、プロパン、ブタン、及びイソブタンが含まれる。
【0019】
例示的なハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)には、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)、及び1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)が含まれる。
【0020】
例示的なクロロフルオロカーボン(CFC)には、トリクロロフルオロメタン(R-11)、ジクロロジフルオロメタン(R-12)、1,1,2-トリフルオロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R-114)、クロロ-ペンタフルオロエタン(R-115)及びそれらの混合物が含まれる。
【0021】
例示的なハイドロフルオロエーテル(HFE)には、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロ-3-メトキシ-プロパン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロ-4-メトキシ-ブタン及びそれらの混合物が含まれる。
【0022】
例示的なフルオロケトンは、1,1,1,2,2,4,5,5,5-ノナフルオロ-4(トリフルオロメチル)-3-ペンタノンである。
【0023】
可燃性は、特に冷媒及び伝熱用途を含む、組成物が不燃性又は微燃性であることが非常に重要又は必須である多くの用途において重要な特性である。化合物及び組成物の可燃性を測定するには、引火点の測定やANSI/ASHRAE34-2019付録Bで規定されているASTME681など、さまざまな方法がある。好ましくは、不燃性組成物は周囲温度以下で不燃性であり、好ましくは60℃以下で不燃性であり、さらにより好ましくは100℃以下で不燃性である。微燃性の冷媒は、ANSI/ASHRAE34-2019セクション6で指定されているように、23℃で特定の値を下回る燃焼速度を示す。不燃性の範囲が広いほど、使用、取り扱い、又は輸送中の安全性が高まる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の伝熱組成物は、ANSI/ASHRAE34-2019で定義されているように、より低い可燃性及び火炎伝播がないことを含む、低減された可燃性プロファイルを示す。好ましくは、本発明の伝熱組成物は、可燃性の低下を示し、液相と気相との間の分別時に可燃性の低下を維持する。例えば、50%漏れ試験では、容器に初期組成物が充填され、これは、好ましくは可燃性の低下を示す。容器は、-25℃又は25℃などの所望の温度に維持することができ、初期気相組成が測定され、好ましくは可燃性の低下を示す。組成物を一定温度で容器から漏出させ、初期組成物の50重量%が除去されるまで漏出速度を設定する。その時点で最終気相組成が測定され、好ましくは可燃性の低下を示す。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、伝熱組成物は、容器又は装置からの伝熱組成物の漏れに続いて、組成又は蒸気圧の最小の変化を示す。このような漏れの場合、本発明の伝熱組成物を容器に入れ、一定温度に維持する。伝熱組成物は、組成物全体の50重量%が容器から漏れるまで、ゆっくりとした速度で容器から漏れることが許される。本発明の好ましい実施形態では、伝熱組成物の蒸気圧は、50%漏れの後、著しく変化していない。好ましくは、蒸気圧の変化は20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは2%未満である。本発明の別の実施形態では、50%漏れ後の容器内の気相及び液相は、燃焼性の低下を示す。
【0026】
決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、R-22、R-407C、R-404A、R-410A、R-134a、及び/又はR-507の代替品として使用するための本発明の伝熱組成物の例を表1に示す。組成のわずかな変化は、本発明の範囲内であるとみなされるべきであることが理解される。これには、±3wt%以内、好ましくは±2wt%以内、より好ましくは±1wt%以内の組成が含まれるが、これらに限定されない。現在、HFO-1122aのGWPは確立されていない。以下の例では、HFO-1122aのGWPは5以下と推定されている。
【0027】
決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、R-22、R-407C、R-404A、R-410A、R-134a、及び/又はR-507の代替品として使用するために、R-134a、R-1234yf、及び混合物をさらに含む、本発明の伝熱組成物の例を表2に示す。組成のわずかな変化は、本発明の範囲内であるとみなされるべきであることが理解される。これには、±3wt%以内、好ましくは±2wt%以内、より好ましくは±1wt%以内の組成が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
温度グライドとも呼ばれるグライドは、サブクール又は過熱を除いた、冷蔵システムの構成部品内の冷媒による相変化プロセスの開始温度と終了温度の差の絶対値である。この用語は通常、共沸混合物の凝縮又は蒸発を表す。本発明の一実施形態は、低グライドを有する伝熱組成物である。好ましくはグライドが12℃未満であり、より好ましくはグライドが7℃未満であり、さらにより好ましくはグライドが5℃未満であり、さらにより好ましくはグライドが2℃未満であり、さらにより好ましくはグライドが1℃未満である。
【0029】
地球温暖化係数(GWP)は、ガスが大気中に閉じ込める熱量の相対的な尺度である。GWPは通常、100年間の二酸化炭素に対する相対値で表される。本発明の一実施形態は、GWP値が低く、好ましくはGWPが1000未満、より好ましくは800未満、より好ましくは<600、より好ましくは<400、さらにより好ましくは<200である伝熱組成物である。本発明の別の実施形態は、GWPが約1~1000である伝熱組成物である。
【0030】
本発明の一実施形態は、冷蔵、空調、チラー、又はヒートポンプシステムで使用される場合に、同様の用途で使用されるHFC又はHCFCベースの冷媒と同等又はそれ以上の容量、性能、又はその両方を提供する伝熱組成物である。
【0031】
本発明の一実施形態は、R-22又はR-407Cを置き換えるために使用される伝熱組成物である。伝熱組成物は、R-22又はR-407Cが設置された、又はそれらを含む既存の設備を改良するために使用され得る。伝熱組成物は、R-22又はR-407C用に設計された新しい機器にも使用できる。
【0032】
本発明の一実施形態は、R-404A又はR-507を置き換えるために使用される伝熱組成物である。伝熱組成物は、R-404A又はR-507が設置された、又はそれらを含む既存の機器を改良するために使用することができる。伝熱組成物は、R-404A又はR-507用に設計された新しい機器にも使用できる。
【0033】
本発明の一実施形態は、R-134aを置き換えるために使用される伝熱組成物である。
【0034】
本発明の一実施形態は、R-407A又はR-407Fを置き換えるために使用される伝熱組成物である。
【0035】
本発明の一実施形態は、R-410Aを置き換えるために使用される伝熱組成物である。
【0036】
新しい冷媒を使用して既存のシステムを改良するか、別の冷媒用に設計された新しいシステムを使用するには、新しい冷媒の動作特性が、機器が設計又は設置された特性にできるだけ近いことが重要であり、これの利点は、冷媒を変更する際の機器又は動作条件への変更(これは困難で、時間とコストがかかる可能性がある)を最小限に抑えることである。このような特性には、冷媒の質量流量、冷媒容量、性能係数(COP)、効率、圧力比、及び所望の動作条件での吐出温度が含まれる。例えば、新しい冷媒を使用したときに質量流量が大幅に異なる場合、システム内のサーモスタット膨張弁(TXV)の交換が必要になる場合がある。動作条件の例は、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではないが、低温冷蔵、中温冷蔵、空調、暖房、高周囲冷蔵又は空調などである。
【0037】
本発明の一実施形態では、本発明の伝熱組成物の質量流量は、R-22、R-404A、又はR-407Cを冷蔵、空調、チラー、又はヒートポンプシステムで使用した場合の質量流量の20%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内、さらに好ましくは2%以内である。本発明の一実施形態において、本発明の伝熱組成物の容量は、冷蔵、空調、チラー、又はヒートポンプシステムで使用される場合のR-22又はR-404A又はR-407Cの容量の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。本発明の一実施形態において、本発明の伝熱組成物を使用するシステムの効率は、R-22、R-404A、又はR-407Cを冷蔵、空調、チラー、又はヒートポンプシステムで使用する場合のシステムの効率の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。本発明の一実施形態において、本発明の伝熱組成物のCOPは、R-22、R-404A、又はR-407Cを冷蔵、空調、チラー、又はヒートポンプシステムで使用する場合のシステムのCOPの80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。本発明の一実施形態では、本発明の伝熱組成物のコンプレッサー吐出温度の増加は、R-22、R-404A、又はR-407Cを冷蔵、空調、チラー、又はヒートポンプシステムで使用する場合のコンプレッサー吐出温度より、60°Fを超えない、好ましくは50°Fを超えない、より好ましくは40°Fを超えない、さらにより好ましくは30°Fを超える。本発明の別の好ましい実施形態では、システムは液体注入を使用する。
【0038】
本発明の一態様は、特に、R-22、R-407C、R-404A、R-134a、R-410A及び/又はR-507、特にR-22及び/又はR-404A用に設計されたシステムにおいて、本発明の伝熱組成物を使用して低温冷蔵を生成する方法である。
【0039】
本発明の一態様は、特に、R-22、R-407C、R-404A、R-134a、R-410A及び/又はR-507、特にR-22及び/又はR-404A用に設計されたシステムにおいて、本発明の伝熱組成物を使用して中温冷蔵を生成する方法である。
【0040】
本発明の一態様は、特に、R-22、R-407C、R-404A、R-134a、R-410A及び/又はR-507、特にR-22及び/又はR-407C用に設計されたシステムにおいて、本発明の伝熱組成物を使用して空調を生成する方法である。
【0041】
本発明の一態様は、本発明の伝熱組成物を用いて伝熱システムを改良する方法である。
【0042】
本発明の伝熱組成物は、潤滑油と組み合わせて使用することができる。例示的な潤滑油には、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィン、及びそれらの混合物が含まれる。本発明の潤滑油は、非常に低い粘度から高い粘度までの範囲であり、好ましくは100°Fで15~800cSt、より好ましくは20~100cStの粘度を有する。本発明で使用される典型的な冷蔵潤滑油は、100°Fで15、32、68、及び100cStの粘度を有する。
【0043】
以下は、ポリオールエステル(POE)潤滑油の例示的な説明であり、決して本発明の範囲を限定することを意味するものではない。POE油は、典型的には、カルボン酸又はカルボン酸の混合物と、アルコール又はアルコールの混合物との化学反応(エステル化)によって形成される。カルボン酸は、典型的には一官能性又は二官能性である。アルコールは、典型的には一官能性又は多官能性(ポリオール)である。ポリオールは、典型的には、二官能性、三官能性、又は四官能性である。ポリオールの例には、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。カルボン酸の例には、2-エチルヘキサン酸を含むエチルヘキサン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸を含むトリメチルヘキサン酸、直鎖オクタン酸を含むオクタン酸、n-ペンタン酸を含むペンタン酸、ジメチルペンタン酸を含むネオ酸、C5~C20のカルボン酸、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。カルボン酸は、天然源に由来する場合もあり、これには大豆、パーム、オリーブ、菜種、綿実、ココナツ、パーム核、トウモロコシ、トウゴマ、ゴマ、ホホバ、ピーナッツ、ヒマワリなどの植物油、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。天然油のカルボン酸は、典型的にはC18の酸であるが、とりわけC12~C20の酸も含む。本発明の一実施形態において、POE油は、1つ以上の一官能性カルボン酸と共に1つ以上のポリオールを使用して配合される。本発明の一実施形態において、POE油は、1つ以上の二官能性カルボン酸と共に1つ以上の一官能性ポリオールを使用して配合される。本発明の一実施形態では、POE油は異なるPOE油の混合物である。本発明の一実施形態では、POE油は、1つ又は複数のC5~C10カルボン酸を使用して配合される。
【0044】
本発明の炭化水素潤滑油は、圧縮冷蔵潤滑の分野で「鉱油」として一般に知られているものを含むことができる。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖及び分岐炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状パラフィン)、及び芳香族(すなわち、交互二重結合によって特徴付けられる1つ又は複数の環を含む不飽和の環状炭化水素)を含む。本発明の炭化水素潤滑油は、圧縮冷蔵潤滑の分野で「合成油」として一般に知られているものをさらに含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖及び分枝アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、及びポリ(アルファオレフィン)を含む。
【0045】
パラフィン系又はナフテン系としてのオイルの伝統的な分類は、精製された潤滑剤中のパラフィン系又はナフテン系分子の数を参照する。パラフィン系原油はパラフィンワックスの割合が高いため、ナフテン系原油よりも粘度指数と流動点が高くなる。
【0046】
アルキルベンゼン潤滑油は、分岐状又は直鎖状のアルキル側鎖を有し、鎖長の分布は通常炭素数10~20であるが、他のアルキル鎖長分布もあり得る。別の好ましいアルキルベンゼン潤滑油は、(C6H6)-C(CH2)(R1)(R2)の形の少なくとも1つのアルキルベンゼンを含み、ここで(C6H6)はベンジル環であり、R1とR2は飽和アルキル基(好ましくは少なくとも1個のイソC3基、より好ましくは1~6個のイソC3基を含む。)である。R1又はR2のいずれかが水素原子であってもよいが、いずれかが水素原子ではないことが好ましい。
【0047】
PAGオイルは、「キャップなし」、「シングルエンドキャップ」、又は「ダブルエンドキャップ」のいずれかである。市販のPAG油の例には、ND-8、Castrol PAG46、Castrol PAG100、Castrol PAG150、Daphne Hermetic PAG PL、Daphne Hermetic PAG PRが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
ポリビニルエーテル(PVE)オイルは、HFC冷媒で使用するために開発された別のタイプの含酸素冷蔵オイルである。PVE冷蔵機油の市販例としては、出光製のFVC32DやFVC68Dが挙げられる。決して本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、本発明の実施形態において、ポリビニルエーテル油には、米国特許第5,399,631号及び第6,454,960号に記載されているような文献に開示されているものが含まれる。本発明の別の実施形態において、ポリビニルエーテル油は、式1によって示されるタイプの構造単位から構成される:
式1:-[C(R1,R2)-C(R3,-O-R4)]-
式中、R1、R2、R3、及びR4は独立して、水素及び炭化水素から選択され、炭化水素は、1つ又は複数のエーテル基を任意に含むことができる。本発明の好ましい実施形態では、式2に示されるように、R1、R2、及びR3はそれぞれ水素である:
式2:-[CH2-CH(-O-R4)]-
本発明の別の実施形態において、ポリビニルエーテル油は、式3によって示されるタイプの構造単位から構成される:
式3:-[CH2-CH(-O-R5)]m-[CH2-CH(-O-R6)]n-
式中、R5及びR6は独立して水素及び炭化水素から選択され、m及びnは整数である。
【0049】
ANSI/ASHRAE Standard97-2007(ASHRAE97)など、当業者に知られているさまざまな試験を使用して、冷媒/潤滑剤混合物の熱/化学的安定性を評価することができる。このような試験では、任意選択で触媒又は水、空気、金属、金属酸化物、セラミックなどを含む他の物質の存在下で、冷却剤と潤滑剤の混合物が、通常、所定のエージング期間、高温でエージングされる。エージング後、混合物を分析して、混合物の分解又は劣化を評価する。試験用の典型的な組成は、冷媒/潤滑剤の50/50wt/wt混合物であるが、他の組成を使用することができる。通常、エージング条件は約140℃~200℃で1~30日間である。175℃で14日間のエージングは非常に典型的である。
【0050】
エージェントに続く混合物を分析するには、通常、複数の手法が使用される。色の変化、沈殿、又は重質の兆候がないか、混合物の液体画分を目視検査して、冷媒又は潤滑油の全体的な分解をチェックする。試験中に使用される金属試験片の目視検査も行われ、腐食、堆積物などの兆候がないかどうかを確認する。ハロゲン化物分析は、典型的には、存在するハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物)の濃度を定量化するために、液体画分に対して行われる。ハロゲン化物濃度の増加は、ハロゲン化冷媒のより多くの画分がエージング中に劣化したことを示し、安定性が低下したことを示す。液体画分の全酸価(Total Acid Number、TAN)は通常、回収された液体画分の酸性度を決定するために測定される。酸性度の増加は、冷媒、潤滑油、又はその両方の分解の兆候である。GC-MSは通常、サンプルの蒸気画分に対して実行され、分解生成物を特定及び定量化する。
【0051】
冷媒/潤滑剤の組み合わせの安定性に対する水の影響は、非常に乾燥した(<10ppm水)から非常に湿った(>10000ppm水)までのさまざまな水分レベルでエージングテストを実行することによって評価できる。酸化安定性は、空気の存在下又は非存在下でエージングテストを行うことで評価できる。
【0052】
本発明の伝熱組成物は、染料、安定剤、酸捕捉剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、粘度調整剤、流動点降下剤、腐食防止剤、ナノ粒子、界面活性剤、相溶化剤、可溶化剤、分散剤、難燃剤、火炎抑制剤、薬剤、滅菌剤、ポリオール、ポリオールプレミックス成分、化粧品、洗浄剤、フラッシング剤、消泡剤、オイル、消臭剤、トレーサー化合物、及びその混合物と組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明の伝熱組成物は、冷蔵、空調、及び液体冷却を含む伝熱システムで使用することができる。伝熱システムは、サイクルの一部を低い動作温度範囲で作動させ、サイクルの別の部分を高い動作温度範囲で作動させる。これらの上限温度範囲と下限温度範囲は、特定の用途によって異なる。例えば、低温冷蔵の動作温度は、自動車の空調や冷却水とは異なる場合がある。好ましくは、動作温度範囲の上限は、約+15℃から約+90℃であり、より好ましくは、約+30℃から約+70℃である。好ましくは、より低い動作温度範囲は、約+25℃から約-60℃まで、より好ましくは約+15℃から約-30℃までである。例えば、低圧液体チラーは、約-10℃~+10℃の蒸発器温度及び約+30℃~+55℃のコンデンサー温度で動作することができる。例えば、自動車のACなどのエアコンは、蒸発温度が4℃、凝縮温度が40℃で動作し得る。冷蔵の場合、動作温度範囲の下限は特定の用途に依存し得る。例えば、冷蔵の典型的な適用温度には次のようなものがある:フリーザー(例:アイスクリーム):-15°F+/-2°F(-26℃+/-1.1℃);低温:0°F+/-2°F(-18℃+/-1.1℃);中温:38°F+/-2°F(3.3℃+/-1.1℃)。これらの例は、情報提供のみを目的としており、決して本発明の範囲を限定することを意図したものではない。本発明の範囲内で、他の動作温度及び動作温度範囲を使用することができる。
本発明の伝熱組成物はまた、発電のための熱回収及び有機ランキンサイクルにおいても有用である。
【0054】
本発明の範囲を決して限定することを意図するものではないが、本発明の伝熱組成物は、新しい冷蔵、空調、ヒートポンプ、又は他の伝熱装置において有用である。別の実施形態では、本発明の伝熱組成物は、既存の設備における冷媒(R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-407A、R-407F、R-410A、R-417A、R-422D、R-134aなどを含むが、これらに限定されない)の改良として有用である。本発明の伝熱組成物が既存の装置の他の冷媒の改良として使用される場合、圧力、吐出温度、質量流量などの動作特性は、交換される冷媒の動作特性と同様であることが好ましい。より好ましい実施形態では、本発明の伝熱組成物は、サーモスタット膨張弁(TXV)の交換など、装置に追加の変更を加える必要を回避するために交換される冷媒に十分近い動作特性を有する。
【0055】
方法とシステム
本発明の組成物は、冷蔵、空調、ヒートポンプシステム、チラー、自動車用空調、有機ランキンサイクルシステム、及びその他の熱伝達アプリケーションで使用される冷媒など、熱を伝達するための方法及びシステムにおける伝熱流体として、多数の方法及びシステムに関連して有用である。本発明の組成物は、エアロゾルを生成するシステム及び方法での使用にも有利であり、好ましくは、そのようなシステム及び方法におけるエアロゾル噴射剤を含むか又はそれからなる。泡を形成する方法、及び火災を消火及び抑制する方法も、本発明の特定の態様に含まれる。本発明はまた、特定の態様において、本組成物がそのような方法及びシステムにおいて溶媒組成物として使用される、物品から残留物を除去する方法を提供する。
【0056】
熱伝達方法
好ましい熱伝達方法は、一般に、本発明の組成物を提供すること、及び熱を組成物に、又は組成物から伝達させて、組成物の相を変化させることを含む。例えば、本方法は、流体又は物品から熱を吸収することにより、好ましくは、冷却される物体又は流体の近くで本冷媒組成物を蒸発させて、本組成物を含む蒸気を生成することにより、冷却を提供する。好ましくは、本方法は、冷媒蒸気を、通常はコンプレッサー又は同様の装置で圧縮して、比較的高い圧力で本組成物の蒸気を生成するさらなる工程を含む。一般に、蒸気を圧縮するステップにより、蒸気に熱が加えられ、比較的高圧の蒸気の温度が上昇する。好ましくは、本方法は、この比較的高温高圧の蒸気から、蒸発及び圧縮ステップによって加えられた熱の少なくとも一部を除去することを含む。熱除去ステップは、好ましくは、蒸気が比較的高圧の状態にある間に高温高圧の蒸気を凝縮させて、本発明の組成物を含む比較的高圧の液体を生成することを含む。この比較的高圧の液体は、その後、公称等エンタルピーの圧力低下を受けて、比較的低温で低圧の液体を生成することが好ましい。このような実施形態では、冷却すべき物体又は流体から伝達される熱によって気化されるのは、この温度が低下した冷媒液である。
【0057】
本発明の別のプロセス実施形態において、本発明の組成物は、加熱される液体又は物体の近くで組成物を含む冷媒を凝縮することを含む加熱を生成する方法において使用され得る。このような方法は、前述のように、上記の冷蔵サイクルとは逆のサイクルであることが多い。
【0058】
本発明の伝熱の組み合わせは、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムにおける効果的な作動流体である。典型的な蒸気圧縮冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムには、蒸発器、コンプレッサー、コンデンサー、及び膨張装置が含まれる。蒸気圧縮サイクルは、複数のステップで冷媒を再利用し、1つのステップで冷却効果を生成し、別のステップで加熱効果を生成する。このサイクルは次のように簡単に説明できる:液状の冷媒は膨張装置を通って蒸発器に入り、液状の冷媒は低温で蒸発器内で沸騰してガスを形成し、冷却する。低圧のガスはコンプレッサーに入り、そこでガスは圧縮されて圧力と温度が上昇する。高圧の(圧縮された)ガス状の冷媒はコンデンサーに入り、そこで冷媒が凝縮してその熱を環境に放出する。冷媒は膨張装置に戻り、コンデンサーの高圧レベルから蒸発器の低圧レベルまで液体が膨張するというサイクルが繰り返される。
【0059】
本発明の伝熱の組み合わせは、移動型システム又は定置型システムで有用である。定置型空調及びヒートポンプには、チラー、高温ヒートポンプ、住宅用及び軽商用及び商用空調システムが含まれるが、これらに限定されない。定置型冷蔵用途には、家庭用冷蔵庫、製氷機、ウォークイン及びリーチインのクーラー及びフリーザー、スーパーマーケットシステムなどの機器が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、移動型冷蔵システム又は移動型空調システムは、道路、鉄道、海又は空の輸送ユニットに組み込まれた任意の冷蔵又は空調装置を指す。本発明は、自動車用空調装置又は冷蔵道路輸送機器などの道路輸送用冷蔵又は空調装置に特に有用である。
【0060】
冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムで使用される典型的なコンプレッサーは、容積式及び動的コンプレッサーである。容積式コンプレッサーには、ピストンコンプレッサーなどの往復動コンプレッサー、スクロールコンプレッサーなどの軌道コンプレッサー、及びスクリューコンプレッサーなどの回転コンプレッサーが含まれる。典型的な動的コンプレッサーは遠心コンプレッサーである。本発明の伝熱組成物は、これらのコンプレッサータイプのいずれかを使用する伝熱装置で使用することができる。
【0061】
冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムは、1段階、2段階、又は多段階の圧縮を使用し得る。冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムは、二次熱伝達回路を備えた、又は備えていないカスケードシステムであり得る。
【0062】
伝熱システムで使用される熱交換器は、どのようなタイプのものでもよい。典型的な熱交換器には、平行流又は並流、向流、直交流が含まれる。好ましくは、本発明の伝熱組成物と共に使用される熱交換器は、向流、向流様、又は直交流である。
【0063】
本発明の伝熱の組み合わせは、既存のシステムの既存の伝熱流体/組み合わせの代替として使用することができ、又は新しいシステムにおける元の伝熱の組み合わせとして使用することができる。そのような新しいシステムは、既存の新しいシステム、又は本発明の伝熱の組み合わせで動作するように特別に設計された構成要素を有するシステムであり得る。
【0064】
噴射剤及びエアロゾル組成物
別の態様では、本発明は、本発明の組成物を含むか、又は本質的にそれからなる噴射剤組成物を提供し、そのような噴射剤組成物は、好ましくは噴霧可能な組成物である。本発明の噴射剤組成物は、好ましくは、噴霧される材料と、本発明による組成物を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる噴射剤とを含む。噴霧可能な混合物には、不活性成分、溶媒、及び他の材料も存在し得る。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアロゾルである。スプレーするのに適した材料には、デオドラント、香水、ヘアスプレー、クレンザー、研磨剤などの化粧品原料や、抗喘息成分、抗口臭成分、その他の医薬品等の医薬品(好ましくは、吸入を意図した他の薬剤又は薬剤を含む)が含まれるが、これらに限定されない。医薬品又は他の治療薬は、好ましくは治療量で組成物中に存在し、組成物の残りの実質的な部分は本発明の組成物を含む。
【0065】
産業用、消費者用、又は医療用のエアロゾル製品は、通常、1つ又は複数の噴射剤と、1つ又は複数の有効成分、不活性成分、又は溶媒を含んでいる。噴射剤は、製品をエアロゾル化した形で放出する力を提供する。一部のエアロゾル製品は、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、さらには空気などの圧縮ガスで噴射されるが、ほとんどの商用エアロゾルは液化ガス噴射剤を使用している。最も一般的に使用される液化ガス噴射剤は、ブタン、イソブタン、プロパンなどの炭化水素である。ジメチルエーテル及びHFC-152a(1,1-ジフルオロエタン)も、単独で、又は炭化水素噴射剤とブレンドして使用される。残念ながら、これらの液化ガス噴射剤はすべて非常に可燃性が高く、エアロゾル製剤に組み込むと、しばしば可燃性のエアロゾル製品になる。本発明は、不燃性又は可燃性が低下した特定の用途のための液化ガス噴射剤及びエアロゾルを提供する。
【0066】
発泡剤、発泡体及び発泡性組成物
発泡剤はまた、本発明の組成物の1つ又は複数を含む又は構成することができる。特定の好ましい実施形態において、発泡剤は、本組成物を少なくとも約50重量%含む、特定の実施形態において、発泡剤は、本質的に本組成物からなる。特定の好ましい実施形態では、本発明の発泡剤組成物は、本発明の組成物に加えて、共発泡剤、充填剤、蒸気圧調整剤、火炎抑制剤、安定剤などの補助剤のうちの1つ以上を含む。
【0067】
他の実施形態では、本発明は発泡性組成物を提供する。本発明の発泡性組成物は、一般に、一般にセル構造を有する発泡体を形成することができる1つ又は複数の成分と、本発明の発泡剤とを含む。特定の実施形態では、1つ又は複数の成分は、発泡体及び/又は発泡性組成物を形成することができる熱硬化性組成物を含む。熱硬化性組成物の例には、ポリウレタン及びポリイソシアヌレート発泡体組成物、及びフェノール発泡体組成物も含まれる。そのような熱硬化性発泡体の実施形態では、本発明の組成物の1つ以上が、発泡性組成物中の発泡剤として、又は発泡剤の一部として、又は2つ以上の部分からなる発泡性組成物(これは、適切な条件下で反応及び/又は発泡して発泡体又はセル構造を形成することができる1つ又は複数の成分を含むことが好ましい)の一部として含まれる。特定の他の実施形態では、1つ又は複数の成分は、熱可塑性材料、特に熱可塑性ポリマー及び/又は樹脂を含む。熱可塑性発泡体成分の例としては、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリオレフィン、及びそれから形成される発泡体があり、好ましくは低密度発泡体である。特定の実施形態では、熱可塑性発泡性組成物は押出可能な組成物である。
【0068】
本発明はまた、本発明の組成物を含む発泡剤を含有するポリマー発泡体配合物から調製される発泡体、好ましくは独立セル発泡体にも関する。さらに他の実施形態では、本発明は、熱可塑性又はポリオレフィン発泡体(例えば、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)発泡体、好ましくは低密度発泡体)を含む発泡性組成物を提供する。
【0069】
当業者は、特に本明細書に含まれる開示を考慮して、本発明の発泡剤が形成される、及び/又は発泡性組成物に添加される順序及び方法は、一般に、本発明の操作性に影響を与えないことを理解する。例えば、押出可能な発泡体の場合、発泡剤の様々な成分、及び本組成物の成分でさえ、押出装置への導入前に混合されなくてもよく、又は、これらの成分が押出装置の同じ場所に添加されなくてもよい。したがって、特定の実施形態では、押出機の第1の位置で発泡剤の1つ又は複数の成分を導入することが望ましい場合がある。これは、発泡剤の1つ又は複数の他の成分を添加する場所の上流にあり、これらの成分が押出機内で一緒になること、及び/又はこの方法でより効果的に機能することが期待される。それにもかかわらず、特定の実施形態では、発泡剤の2つ以上の成分が前もって組み合わされ、直接又はプレミックスの一部として、発泡性組成物に一緒に導入され、次いで、これを発泡性組成物の他の部分にさらに添加する。
【0070】
特定の好ましい実施形態では、分散剤、セル安定剤、界面活性剤、及び他の添加剤も、本発明の発泡剤組成物に組み込むことができる。セル安定剤として機能するために、界面活性剤が任意に添加されるが、好ましくは添加される。代表的な材料の一部はDC-193、B-8404、及びL-5340の名称で販売されており、これらは、一般に、米国特許第2,834,748号、第2,917,480号、及び第2,846,458号に開示されているもののようなポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーであり、これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる。発泡剤混合物用のその他の任意の添加剤には、トリ(2-クロロエチル)ホスフェート、トリ(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2,3-ジブロモプロピル)-ホスフェート、トリ(1,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、リン酸二アンモニウム、各種ハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニルなどの難燃剤が含まれ得る。
【0071】
「Polyurethanes Chemistry and Technology」, Volumes I and II, Saunders and Frisch, 1962, John Wiley and Sons, New York, NY(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法など、当技術分野で周知の方法のいずれかを使用するか、又は本発明の発泡体の実施形態に従って使用するように適合させることができる。
【0072】
本発明の一実施形態は、ポリウレタン及びポリイソシアヌレート発泡体を形成する方法に関する。この方法は、一般に、本発明の発泡剤組成物を提供すること、発泡剤組成物を発泡性組成物に(直接的又は間接的に)添加すること、及び当技術分野でよく知られているような、発泡性組成物を発泡体又はセル構造を形成するのに有効な条件下で反応させることを含む。「Polyurethanes Chemistry and Technology」, Volumes I and II, Saunders and Frisch, 1962, John Wiley and Sons, New York, NY(これは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法など、当技術分野で周知の方法のいずれかを使用するか、又は本発明の発泡体の実施形態に従って使用するように適合させることができる。一般に、そのような好ましい方法は、イソシアネート、ポリオール又はポリオールの混合物、本組成物の1つ又は複数を含む発泡剤又は発泡剤の混合物、及び他の材料(触媒、界面活性剤、及び必要に応じて難燃剤、着色剤、又は他の添加剤など)を組み合わせることにより、ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体を調製することを含む。多くの用途において、ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体用の成分をプレブレンド配合で提供することは便利である。
【0073】
最も典型的には、発泡体配合物は2つの成分に予めブレンドされる。
【0074】
イソシアネートと、任意選択で特定の界面活性剤及び発泡剤とが、一般に「A」成分と呼ばれる第1の成分を構成する。
【0075】
ポリオール又はポリオール混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤、及び他のイソシアネート反応性成分は、一般に「B」成分と呼ばれる第2成分を構成する。したがって、ポリウレタン又はポリイソシアヌレート発泡体は、A及びB側成分を混ぜ合わせること(少量の調製品には手動で混合し、好ましくは、ブロック、スラブ、ラミネート、現場打ちパネル及びその他の品目を形成するための機械混合技術、スプレー塗布発泡体、泡など)によって容易に調製される。任意選択で、難燃剤、着色剤、補助発泡剤、さらには他のポリオールなどの他の成分を、第3の流れとして混合ヘッド又は反応サイトに追加することができる。しかし、最も好ましくは、それらはすべて上記のように1つのB成分に組み込まれる。
【0076】
洗浄方法
本発明はまた、本発明の組成物を物品に適用することによって、製品、部品、構成要素、基材、又は任意の他の物品又はその一部から汚染物質を除去する方法を提供する。便宜上、「物品」という用語は、本明細書では、そのような製品、部品、構成要素、基材などすべてを指すために使用され、さらに、その任意の表面又は部分を指すことを意図している。さらに、「汚染物質」という用語は、物品上に存在する任意の望ましくない材料又は物質を指すことを意図しており、そのような物質が意図的に物品上に置かれたとしてもそうである。例えば、半導体デバイスの製造では、フォトレジスト材料を基板上に堆積させてエッチング操作用のマスクを形成し、続いて基板からフォトレジスト材料を除去することが一般的である。本明細書で使用される「汚染物質」という用語は、そのようなフォトレジスト材料をカバー及び包含することを意図している。
【0077】
本発明の好ましい方法は、物品に本組成物を適用することを含む。数多くの様々な洗浄技術が本発明の組成物を有利に使用できると考えられるが、超臨界洗浄技術と関連して本組成物を使用することは特に有利であると考えられる。超臨界洗浄は、米国特許第6,589,355号に開示されており、これは、本発明の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる。超臨界洗浄用途の場合、特定の実施形態では、本洗浄組成物に、本発明の組成物に加えて、1つ又は複数の追加成分(超臨界洗浄用途に関連して使用されることが知られているCO2及びその他の追加成分など)を含めることが好ましい。特定の実施形態では、本洗浄組成物を特定の蒸気脱脂法及び溶媒洗浄法と組み合わせて使用することも可能であり、望ましい場合もある。
【0078】
滅菌方法
特に医療分野で使用される多くの物品、装置、及び材料は、患者や病院スタッフの健康と安全など、健康と安全の理由から使用前に滅菌する必要がある。本発明は、滅菌すべき物品、装置又は材料を、本発明の化合物又は組成物と(1つ又は複数の滅菌剤と組み合わせて)接触させることを含む滅菌方法を提供する。多くの滅菌剤が当技術分野で知られており、本発明に関連する使用に適応できると考えられているが、特定の好ましい実施形態では、滅菌剤は、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、過酸化水素、二酸化塩素、オゾン、及びこれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、エチレンオキシドが好ましい滅菌剤である。当業者は、本明細書に含まれる教示を考慮して、本滅菌組成物及び方法に関連して使用される滅菌剤及び本化合物の相対比率を容易に決定することができ、そのような範囲はすべて、本明細書の広い範囲内にある。当業者に知られているように、エチレンオキシドなどの特定の殺菌剤は、比較的可燃性の成分であり、本発明による化合物は、組成物中に存在する他の成分と共に、滅菌組成物の可燃性を許容レベルまで低下させるのに有効な量で本組成物中に含まれる。
【0079】
本発明の滅菌方法は、約250°F~約270°Fの温度で(好ましくは、実質的に密閉されたチャンバー内で)の本発明の化合物又は組成物の使用を含む、高温又は低温滅菌のいずれかであり得る。このプロセスは通常2時間以内で完了する。ただし、プラスチック製品や電気部品などの一部の製品は、このような高温に耐えられず、低温滅菌が必要である。低温滅菌法では、滅菌すべき物品は、本発明の組成物を含む流体に、ほぼ室温から約200°Fの温度で、より好ましくは、ほぼ室温から約100°Fの温度で曝露される。
【0080】
本発明の低温滅菌は、好ましくは、実質的に密閉された、好ましくは気密のチャンバー内で行われる少なくとも2段階のプロセスである。第1工程(滅菌工程)では、洗浄され、ガス透過性バッグに包まれた物品は、チャンバー内に配置される。次に、真空引きすることによって、また可能な場合空気を蒸気で置換することによって、チャンバーから空気を排出する。特定の実施形態では、好ましくは約30%~約70%の範囲の相対湿度を達成するために、蒸気をチャンバーに注入することが好ましい。
【0081】
そのような湿度は、所望の相対湿度が達成された後にチャンバーに導入される滅菌剤の滅菌効果を最大にすることができる。滅菌剤が包装を浸透して物品の隙間に到達するのに十分な時間が経過した後、滅菌剤と蒸気がチャンバーから排出される。
【0082】
プロセスの好ましい第2工程(通気工程)では、滅菌残留物を除去するために物品を通気する。そのような残留物を除去することは、有毒な滅菌剤の場合に特に重要であるが、本発明の実質的に無毒な化合物が使用される場合には任意である。典型的なエアレーションプロセスには、エアウォッシュ、連続エアレーション、及びこの2つの組み合わせが含まれる。エアウォッシュはバッチプロセスであり、通常、チャンバーを比較的短時間、例えば12分間排気し、次いで大気圧以上の空気をチャンバーに導入することを含む。このサイクルは、滅菌剤の所望の除去が達成されるまで何度でも繰り返される。
【0083】
連続エアレーションは、通常、チャンバーの片側にある入口から空気を導入し、チャンバーの反対側にある出口からわずかに真空にすることによって空気を引き出すことを含む。
【実施例】
【0084】
以下の非限定的な例は、参照としてここに提供される。
【0085】
表1は、表2、3、4、5、6、及び7に示すような、実施例で使用される材料の化学名と化学式を示す。
【0086】
【0087】
以下の表は、指定された範囲内の地球温暖化係数を有する、本発明の範囲内の熱伝達の組み合わせを示す。ブレンドの成分に使用されたGWPは、AR4又はAR5に記載されているとおりである。AR4は、「気候変動2007-IPCCの第4次評価報告書に対する作業部会Iの物理科学的根拠の貢献(ISBN978052188009-1:ハードカバー;978052170596-7:ペーパーバック)である。AR5は第5次評価である。AR4とAR5の両方に分子が含まれる場合、AR4の値が使用された。AR4又はAR5に含まれていない分子のGWPは、パブリックドメインで報告された類似の構造又は値を有する分子のGWPに基づいて推定された。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
例1
可燃性
燃焼速度(BV)は、ANSI/ASHRAE34-2019に従って、冷媒の燃焼性クラス2(可燃性)とクラス2L(低燃焼性)を区別するための基準である。冷媒の最大燃焼速度が10cm/s未満であると、2Lに分類される。BVは、透明な窓を備えた密閉円筒容器内において、周囲温度で測定される。点火は、容器の中央に1/4インチ間隔で配置されたタングステン電極(15kV、30mA電源に接続)で行われる。画像は、キセノンランプ光源と一連のミラーを使用した定圧法を使用した適切な撮影技術で記録される。R-32、R-152a、及びHFO-1122aの燃焼速度は、ANSI/ASHRAE 34-2019に従って測定された。結果を表8にまとめる。
【0100】
【国際調査報告】