(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】超微細で高性能な微結晶セルロース製品およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
C08B 1/00 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
C08B1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022546694
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2021099143
(87)【国際公開番号】W WO2021209075
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】202010284261.6
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522304453
【氏名又は名称】牡丹江霖潤薬用輔料有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】尹麗敏
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA01
4C090BA24
4C090BB12
4C090BB36
4C090BB52
4C090BD20
4C090BD24
4C090CA01
(57)【要約】
本発明は、超微細で高性能な微結晶セルロース製品及びその調製方法を提供するものである。具体的には、前記微結晶セルロース製品は、平均粒子径D50が1~25μm、緩やかな密度が0.50~0.80g/mlである。これは、通常の微結晶セルロースを高剪断力機械の作用下に高剪断力装置によって製造されたものである。本発明の微結晶セルロース製品は、低粒子径、高密度、球状または準球状の独特な粒子形状、良好な流動性、強い圧縮性、良好な味ときめ細かさなどの特性を持ち、食品、医薬、化学工業などの広い分野で応用できる
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径D50が1~25μmであり、緩やかな密度が0.50~0.80g/mlであることを特徴とする微結晶セルロース粒子。
【請求項2】
通常の微結晶セルロースから高せん断力学的作用により得られ、高せん断力学的作用における通常の微結晶セルロースの固形分が15%~60%であることを特徴とする請求項1記載の微結晶セルロース粒子。
【請求項3】
高せん断機械的作用が、20N・m以上のトルクの高せん断力装置であることを特徴とする請求項2に記載の微結晶セルロース粒子。
【請求項4】
高せん断力装置が高強度、高せん断力のスクリュー押出装置であることを特徴とする請求項3に記載の微結晶セルロース粒子、好ましくは当該装置がスクリュー押出機、スクリューニーダー又はスクリュー押出ニーダーであることを特徴とする微結晶セルロース粒子である。
【請求項5】
通常の微結晶セルロースに高せん断力装置の高せん断力により機械的作用を与える工程を含み、高せん断力による機械的作用において、通常の微結晶セルロースの固形分濃度が15%~60%である請求項1~4の微結晶セルロース粒子の作製方法。
【請求項6】
前記通常の微結晶セルロースが、天然セルロースパルプから加水分解法又は電子線照射法により得られた微結晶セルロースの半製品、又は既存の微結晶セルロース粉末製品であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記天然セルロースパルプの原料源は、木材パルプ、麻パルプ、竹パルプ、綿、コットンリンター、藁、葦、藁パルプ、サトウキビバガス、藻類、細菌微生物などを含むがこれらに限られないことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記既存の微結晶セルロース粉末製品は、PH101、PH102、PH112、PH301、PH302、PH105またはPH103のコードネームを有する微結晶セルロースを含むがこれらに限定されないことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記微結晶セルロース粒子を得るために、前記高剪断力装置によって処理された材料を希釈、分散、乾燥、篩い分けおよび/または粉砕するステップをさらに任意に含むことを特徴とする、請求項5~8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~4の微結晶セルロース粒子の、医薬品、健康食品、食品、工業、軽工業、日用化学品、石油、パーソナルケア、農芸化学等の産業で用いられるアジュバント又は担体としての用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、微結晶セルロースの分野に関し、特に超微細で高性能な微結晶セルロース製品およびその調製方法に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
微結晶セルロースは、天然セルロースを希酸で究極の重合度(levelling off degree of polymerization ,LODP)まで加水分解した流動性のある微粉末である。白色または白色に近い色で、無味無臭です。究極の重合度(LODP)は通常100~350です。水、希酸、有機溶媒、グリースには溶解しない。希薄なアルカリ水溶液では部分的に溶解し、膨潤します。微結晶セルロースは、高温、高湿、強い光照射の条件下でも性質が安定しており、医薬、食品、日用化学品、軽工業などの各産業に広く応用されている。
【0003】
微結晶セルロースは医薬品補助材料として、広く医療産業に適用されています。医薬品業界では、主に接着剤、崩壊剤、充填剤として使用され、主に打錠工程で使用されます。湿式造粒、乾式造粒、直接打錠に使用することができます。耐圧性に優れ、崩壊や潤滑の役割を果たします。重要な医薬品の補助材料です。微結晶セルロースは、そのユニークな多孔質構造により、医薬品の徐放効果を発揮することもできます。微結晶セルロースは、食品産業において重要な機能性食品基材である食物繊維として使用することができます。理想的な食品添加物であり、脂肪の代用品として使用することができます。
【0004】
微結晶セルロースは、PH101(平均粒子径40~60μm、緩やかな密度0.26~0.32g/mL)、PH102(平均粒子径70~100μm、緩やかな密度0.28~0.33g/mL)、PH 103(平均粒子径45~75μm、緩やかな密度0.26~0.34g/mL)およびPH 112(平均粒子径90~140μm、緩やかな密度0.28~0.37g/mL)など多くの種類の製品が販売されています。また、PH301(平均粒子径40~60μm、ゆるやかな密度0.34~0.45g/ml)、PH302(平均粒子径90~140μm、ゆるやかな密度0.35~0.50g/ml)、PH105(平均粒子径20~40μm、ゆるい密度0.2~0.3g/ml)といった高密度または小粒子径の特殊タイプの微結晶セルロースの製品も存在する。
【0005】
以下の表は、日本のASAHIの製品マニュアルを引用したもので、市販されている一般的な微結晶セルロース製品のパッケージに表記されている製品パラメータです。
【0006】
【0007】
微結晶セルロースは、粒子径や密度の異なる製品では、その応用特性も異なります。一般に、微結晶セルロースの粒子径は小さいほど、医薬品などの他の成分と均一に混合するのに有利であり、粒子径の小さい材料や有効成分含有量の少ない材料と混合して含有量の均一性を向上させるのに適している。また、粒径の小さい従来の微結晶セルロースは、粒径が小さいほど錠剤の強度性能が高くなるという独自の利点がある。しかし、微結晶セルロースは、粒子径が小さいほど流動性が小さくなる傾向があり、直接圧縮などの製剤化には不向きで、医薬や食品への応用は大きく制限される。
【0008】
小粒径の微結晶セルロース製品は、従来、特に粉砕助剤の存在下で、乾式粉砕、ふるい分け、ボールミルで製造されている。中国発明特許CN101481424Bには、微結晶セルロースを60Co-γ照射で分解して超微粉化処理し、機械的に粉砕または/および化学的に分解して粒径10μm以下の超微粉化結晶セルロースを得ることが開示されている。しかし、これらの方法で製造された微結晶セルロース製品の密度は、あまり高くなりませんでした。市販の粒径の小さな微結晶セルロース製品は、一般に平均粒径D50が15~30μm程度で、密度が0.2~0.3g/mlと緩やかなものである。そのため、粒子径が小さいほど流動性が悪くなるという問題がある。産業界への応用が大きく制限される。
【0009】
中国発明特許CN109666078Aは、高せん断機械的前処理の後、酸加水分解によって微結晶セルロースを調製する方法を開示している。前処理工程では、高せん断機械力により繊維が切断され、セルロースへの酸溶液のアクセス性が向上し、セルロースへの酸溶液の浸透速度が増加し、セルロース非晶領域への酸溶液の酸加水分解速度が増加し、化学物質の使用または反応時間を短縮することができる。この方法で調製した微結晶セルロースの密度は改善されず、微結晶セルロース製品の平均粒子径は依然として38.7μm以上である。
【0010】
中国発明特許CN110229239Aは、高い緩い密度を持つ微結晶セルロースとその製造方法を開示している。酸加水分解で得られたフィルターケーキをニーダーで混練し、噴霧乾燥することで、緩い密度が0.6~0.65g/cm3の微結晶セルロース製品を得ることができる。しかし、この微結晶セルロース製品の粒径も大きく、平均粒径D50は45~50μmに達する。
【0011】
中国発明特許CN103726378A、CN103526624A及びCN1671743Aも、微結晶セルロースを調製する方法を開示している。しかし、これらの方法によって調製された微結晶セルロース製品の粒子径または緩やかな密度は、本発明の範囲に含まれない。例えば、粒子径は25μm以上であるか、または緩い密度は0.5g/mlよりはるかに低い。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明は、先行技術の微結晶セルロース製品の欠点を克服するために、超微粒子サイズと極めて高い密度を有する微結晶セルロース製品及びその製造方法を提供する。本発明の微結晶セルロース製品は、より優れた性能とより広い応用分野を有する。
【0013】
本発明の技術的スキームは以下の通りである。
【0014】
本発明は、微結晶セルロース粒子を提供するものであり、該微結晶セルロース粒子の平均粒子径D50が1~25μmであり、ゆるみ密度が0.5~0.8g/mlであることを特徴とするものである。好ましくは、微結晶セルロース粒子の平均粒子径D50が1~25μmであり、緩密度が0.52~0.75g/mlである。より好ましくは、微結晶セルロース粒子の平均粒子径D50は10~20μmであり、緩やかな密度は0.55~0.75g/mlである。
【0015】
好ましくは、上記微結晶セルロース粒子は、通常の微結晶セルロースから高せん断機械的作用により得られたものであり、通常の微結晶セルロースの固形分濃度は、高せん断機械的作用において15%~60%である。より好ましくは、通常の微結晶セルロースの固形分濃度は、高せん断機械的作用において30%~50%である。
【0016】
好ましくは、前記高剪断機械作用は、20N・mより大きいトルクの高剪断力装置を使用することである。より好ましくは、前記高剪断機械作用は、50N・mより大きいトルクの高剪断力装置を用いることである。前記高剪断力機器は、スクリュー押出機、スクリューニーダー又はスクリュー押出混練機等の高強度かつ高剪断力を有するスクリュー押出機であることが好ましい。前記高剪断力装置は、連続的であっても間欠的であってもよく、また、多段、多回、繰り返し処理に分けることができる。
【0017】
また、本発明の他の目的として、高せん断力装置を介して通常の微結晶セルロースに高せん断力学的作用を与える工程を含む、上記微結晶セルロース粒子の調製方法を提供し、通常の微結晶セルロースの固形分は、高せん断力学的作用において15%~60%であることを特徴としている。より好ましくは、高せん断機械的作用において、通常の微結晶セルロースの固形分濃度は30%~50%である。前記高剪断力学的作用は、20N・m以上のトルクを有する高剪断力装置を用いることである。より好ましくは、前記高剪断機械的作用は、50N・m以上のトルクを有する高剪断力装置を用いることである。
【0018】
なお、上記通常の微結晶セルロースとは、平均粒子径D50及び/又はルース密度が本発明とは異なる微結晶セルロース製品を指す。その平均粒子径D50が25μmを超えるもの、及び/又はルース密度が0.50g/ml以下のものである。例えば、先行技術における微結晶セルロースを調製するための原料を当該技術分野における従来の方法によって調製した微結晶セルロース製品、または従来の加水分解法または電子線照射法を施した天然セルロースパルプから調製した微結晶セルロースフィルターケーキまたは半製品、または既存の市販の微結晶セルロース製品などを挙げることができる。前記従来の加水分解法の例として、セルロースパルプを温度110~170℃、酸濃度0.03~0.35mol/Lで酸加水分解し、洗浄、濾過して濾過ケーキを得ることができる。前記電子線照射法の一例として、照射線量0.2Mrad~10Mradの電子線照射により、微結晶セルロースを製造する。前記天然セルロースパルプの原料は、特に限定されず、微結晶セルロースの製造に当該技術分野で一般的に使用される材料であればよく、次の原料またはパルプが含まれるが、これに限定されない:木材パルプ、麻パルプ、竹パルプ、綿、綿リンター、わら、リード、わらパルプ、杖バガス、藻類、細菌微生物などである。前記既存の市販の微結晶セルロース製品としては、PH101、PH102、PH112、PH301、PH302、PH105またはPH103などのコードネームを有する微結晶セルロース製品が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0019】
ここで、上記方法において、微結晶セルロース粒子は、高せん断力装置によって処理された材料から得られ、これは、さらに任意に、希釈、分散、乾燥、篩い分けおよび/または微粉砕のステップを含むものである。
【0020】
本発明の他の目的として、医薬、健康食品、食品、工業、軽工業、日用化学品、石油、パーソナルケア、農芸化学などの産業におけるアジュバントまたは担体としての上記微結晶セルロース粒子の用途が提供される。
【0021】
また、本発明の微結晶セルロース粒子における前記粒子は、粉体等と理解することも可能である。それらは、平均粒径D50が1~25μm、緩み密度が0.50~0.80g/mlの粒状または粉末状の粒子を有する微結晶セルロース製品を指す。
【0022】
本発明で使用する高せん断力装置または機器は、極めて高いせん断力と圧力や摩擦などの機械的作用により、粒子の粒径を小さくすることができる。本発明は、従来の微結晶セルロースの製造方法と異なり、高せん断処理時に固体の粉砕助剤を使用せず、また塩類などの水溶性粉砕助剤も使用しないため、微結晶セルロースを高せん断処理することができる。
【0023】
本発明の高せん断力装置または機器は、連続装置でも間欠装置でもよく、また、複数の繰り返し工程に分割して使用することもできる。一般に、押出機やニーダーなどのスクリュー装置を用いる場合、そのトルクは20N・m以上であることが望ましい。本発明の実施例では、そのトルクは50N・m以上であり、50~150N・mの間で制御される。実際の押出し運転では、トルクは変動する。初期は低く、後に上昇する。例えば、最初は50N・m程度であり、後に100N・m以上になる。この方法で調製された微結晶セルロース製品は、本発明で説明した粒子径および密度に達することができる。
【0024】
本発明で用いる高剪断機械加工では、材料の固形分濃度は一般に15%~60%、好ましくは30%~50%である。処理する材料が加水分解された微結晶セルロースフィルターケーキであり、固形分が高すぎる場合、適当な固形分になるまで、処理前または処理中に適量の水を加えることができる。固形分濃度が低すぎる場合は、高剪断処理の前または処理中に脱水することができる。脱水方法は、遠心分離、濾過、プレス、赤外線照射、ホットブロー、エアブロー、またはそれらの組合せとすることができる。また、微結晶セルロースの乾燥粉末や加水分解した微結晶セルロースフィルターケーキの高固形分を添加して、最終混合物の固形分を適当なものにすることによっても得ることができる。処理される材料が既存の微結晶セルロース粉末である場合、適切な固形分量が達成されるまで、処理前または処理中に適切な量の水を添加することができる。固体微結晶セルロース粉末は、工場で製造された微結晶セルロース粉末または市販の既存製品、例えば、PH101、PH102、PH112、PH301、PH302、PH105、PH103などであるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明の方法は、微結晶セルロース製品を調製するための粉砕などの従来の方法とは異なり、高せん断力の機械的作用を制御することにより、粒子径を小さくしながら微結晶セルロースの密度を著しく高め、小粒子径かつ高密度の高性能微結晶セルロース製品を得ることができます。
【0026】
本発明では、高剪断装置で処理された材料をさらに適量の水に応じて希釈分散させることができ、分散処理時の一般的な固形分量を1%~25%に制御することが可能である。使用される分散装置としては、高剪断ミキサー、ホモジナイザー、ホモジナイザーポンプ等の任意の高剪断分散装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
希釈・分散された材料は、噴霧乾燥、流動層乾燥、気流乾燥、フラッシュ乾燥などにより、さらに乾燥させることができる。必要に応じて、乾燥した材料をさらに篩い分けしたり、微粉砕したりすることも可能です。
【0028】
本発明において、加水分解微結晶セルロース濾過ケーキの調製にセルロース原料またはセルロースパルプを用いる場合、セルロース原料のパルプおよび供給源はどのようなものでも適用可能である。これらの原料またはパルプとしては、木材パルプ、麻パルプ、竹パルプ、綿、綿ステープルカシミヤ、わら、葦、わらパルプ、サトウキビバガス、藻類、細菌微生物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明により製造される超微細高密度微結晶セルロース製品は、微結晶セルロースのあらゆる既知の応用分野に適用でき、また、医薬品、健康食品、工業、軽工業、日用化学、石油、パーソナルケア、農薬などの産業を含むあらゆる潜在または新興応用分野にも適用することが可能である。医薬分野では、その用途は、結合剤、崩壊剤、賦形剤、味覚マスキング剤、分散剤、吸着剤等であるが、これらに限定されるものではない。本発明の製品は、湿式造粒、乾式造粒、直接圧縮、押出球形化、噴霧乾燥、ペレット、マイクロタブレット、コーティング、液体製剤、クリーム、注射、スプレーなど、あらゆる製剤工程で使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、薬用用途としては、漢方薬などがある。また、本発明の微結晶セルロース粉末は、食品分野にも広く利用される。例えば、乳飲料、固形飲料、コーヒー・茶飲料、炭酸飲料などの各種乳製品、肉製品、ジャム、調味料、スープ、冷凍食品、ヨーグルト、発酵乳、チーズ、ビスケットなどに適用することが可能である。これらの従来の食品用途に加えて、本発明の超微細結晶セルロースは、いくつかの新しい分野にも応用することができる。例えば、超微細結晶セルロースは、その独特で繊細な味と味マスキングまたは味調整機能により、風味物質、顔料または他の栄養素のキャリアとして、特に圧縮キャンディにおいて使用することが可能である。その優れた機能と流動性は、圧縮キャンディの品質と性能を大きく向上させます。また、糖アルコールの使用を減らす、あるいは置き換えることができます。さらに他の応用例としては、噴霧乾燥や打錠において、活性微生物のカプセル化剤または賦形剤として使用されることが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の微結晶セルロース製品は、粒子径が小さく、同時に緩み密度が高いため、流動性、圧縮性などの特性が向上し、応用分野が広くなっている。特に、本発明の微結晶セルロース製品は、球状または準球状粒子である独特の粒子形状を有している。市販されている既存の微結晶セルロース製品は、いずれも断面が繊維状の製品であり、球状の粒子は存在しない。さらに、本発明の微結晶セルロースの安息角も、現在市販されている微結晶セルロース製品の中で最も安息角が小さいUF-702の安息角よりも小さくなっている。本発明の微結晶セルロース製品は、流動性が良く、圧縮性が強いという打錠工程に非常に適した特性を有するだけでなく、粒子径が小さく、球状または球状に近い形状を有するため、味やきめが細かく、また臭いをマスキングすることができ、医薬品や食品の成型に好適である。
【0031】
〔図面の簡単な説明〕
図1 実施例1の製品の32倍光学顕微鏡下での粒子構造図
図2 実施例1の製品の63倍光学顕微鏡による粒子構造図
図3 市販のAVICEL PH101の32倍光学顕微鏡による粒子構造図
〔発明を実施するための形態〕
以下の実施例は、本発明の内容を説明し、例示するためのものである。実施例の内容は、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0032】
本発明でいう粒径、密度、安息角、顕微鏡測定は以下の通りである。
【0033】
1. 粒度分布。Malvern 2000レーザー粒度分布計で測定。
【0034】
2. 緩やかな密度の測定方法。微結晶セルロース粉末を取り、乾いた100mlメスシリンダーに100mlの印まで加え、粉末を自然に沈ませる。上部が水平になったときの粉体積v(ml)を読み取る。粉体をすべて流し、m(g)単位で計量します。緩やかな密度=m/v(g/ml)。
【0035】
3. タップ密度の測定方法。上記のゆるやかな密度測定用材料を入れたメスシリンダーを振動計に載せ、500回振動させ、体積V(ml)を読み取り、密度m/v(g/ml)に変換する。
【0036】
4. 安息角の測定方法。固定円錐法を使用する。微結晶セルロース粉末を、漏斗を通して一定の直径を持つ円盤の中心に注入する。円盤の半径をrとする。粉体集積層の斜辺にある材料が円盤の縁に沿って自動的に流れ出るまで注入を停止する。粉体集積によって形成された円錐の高さ h を測定する。安息角θ=arctan(h/r)を計算する。
【0037】
5. 光学顕微鏡による測定。スライドグラスに微結晶セルロース粉末を少量取り、少量の絶対エタノールを加えて均一に分散させた後、顕微鏡下に置いて観察し、適切な倍率を調整し、微調整することで画像を鮮明にする。
【0038】
実際の押出加工では、トルクは変動するものです。最初のうちはトルクが小さい。例えば、最初は50 N・m程度で、その後トルクは上昇し、一般的には100~150 N・mに達します。トルクが150 N・mを超えると、装置の限界に達する。調製された微結晶セルロース製品は、トルクが100N・m以上になると、いずれも本発明に記載の粒子径および密度に到達することができる。
【0039】
実施例1
市販の木材から得られたセルロースパルプを採取し、高温酸加水分解(加水分解温度115~170℃、酸濃度0.03~0.35mol/L)を1~2時間行って加水分解した微結晶セルロースを得、ろ過・洗浄してpHを4~5にしてケーキ中の固体分を40%に増加させる。この固形分のフィルターケーキを高剪断押出装置(高剪断刃を有する連続押出機)にて3回押出し、押出装置のトルクを50~150 N・mに制御して押出しる。押出機の中間層には、冷却のために冷却水が導入される。押出物を水で希釈して攪拌し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、本発明の微結晶セルロース製品を得ることができる。
【0040】
粒子径、密度および安息角の測定を通じて、上記で得られた微結晶セルロース粒子製品は、緩み密度が0.670g/ml、タップ密度が0.807g/mlであった。その粒度分布は、D10が8.721μm、D50が19.776μm、D90が48.369μmである。安息角は27.8°です。
【0041】
上記で得られた微結晶セルロース粒子生成物を光学顕微鏡でそれぞれ32倍、63倍で観察した。その結果を
図1及び
図2に示す。本製品は、球状または準球状の粒子であり、独特の粒子形状を有していることが判る。
【0042】
比較として、市場で最も代表的なAVICEL PH101微結晶セルロース製品を取り上げ、32倍の光学顕微鏡で形態を観察してみます。その結果を
図3に示すが、繊維の断面形状であることがわかる。
【0043】
実施例2
市販のVivapur PH102微結晶セルロースパウダーを使用し、その究極の重合度は225である。粒度と密度の測定を通じて、緩い密度は0.32g/ml、タップ密度は0.44g/ml、粒度分布D10は29.623μm、D50は104.997μm、D90は227.668μmである。
【0044】
Vivapur PH102微結晶セルロース粉末500gを秤量し、水500gを加え、固形分として50%となるように混合する。この固形分のフィルターケーキを高剪断押出装置で3回押し出し、押出装置のトルクを50~150N・mの間に制御する。押出装置の中間層では、冷却水により冷却される。押出物を水で希釈して攪拌し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、本発明の微結晶セルロース製品を得ることができる。
【0045】
粒度と密度の測定を通じて、上記で得られた微結晶セルロース製品は、緩い密度が0.598g/ml、タップ密度が0.738g/ml、粒度分布D10が8.629μm、D50が18.649μmおよびD90が36.61μmである。
【0046】
実施例3
市販の竹から得られたセルロースパルプを採取し、高温(加水分解温度115~170℃、酸濃度0.03~0.35mol/L)で1~2時間酸分解して加水分解微結晶セルロースを得て、ろ過してpH4~5まで水洗する。濾過ケーキを水で希釈し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、従来の微結晶セルロース製品を得る。得られた微結晶セルロース粉末に測定を行った結果、緩密度は0.440g/ml、タップ密度は0.575g/ml、粒度分布D50は39.01μmであった。
【0047】
上記で得られた竹パルプ微結晶セルロース濾過ケーキを、固形分40%に制御し、高剪断押出装置で3回押出し、押出装置のトルクを50~150N・mに制御して、竹パルプ微結晶セルロースを得た。押出機の中間層には、冷却のために冷却水が導入される。押出物を水で希釈して攪拌し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、本発明の微結晶セルロース製品を得る。
【0048】
粒度と密度の測定を通じて、上記で調製した微結晶セルロース製品は、緩い密度が0.624g/ml、タップ密度が0.811g/ml、粒度分布がD10が5.613μm、D50が12.221μmおよびD90が31.201μmである。
【0049】
実施例4
市販の麻繊維から得られたセルロースパルプを採取し、高温酸加水分解(加水分解温度115~170℃、酸濃度0.03~0.35mol/L)を1~2時間行い、加水分解微結晶セルロースを取得する。水でpH4~5に洗浄し、濾過ケーキを水で希釈し、pH5~8に中和した後、スプレードライして従来の微結晶セルロース製品を得る。得られた微結晶セルロース粉末を定量した結果、緩密度は0.388g/ml、タップ密度は0.561g/ml、粒度分布D50は36.7μmであった。
【0050】
上記で得られた麻パルプ微結晶セルロースフィルターケーキを、固形分40%に制御し、高剪断押出装置で3回押出し、押出装置のトルクが50~150N・mになるように制御して、押出機で押出した。押出機の中間層には、冷却水を通し、冷却する。押出物を水で希釈して攪拌し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、本発明の微結晶セルロース製品を得る。
【0051】
上記で調製した微結晶セルロース製品は、粒径および密度測定の結果、緩密度が0.619g/ml、タップ密度が0.774g/ml、粒度分布がD10が6.665μm、D50が14.447μm、およびD90が30.297μmであることがわかった。
【0052】
実施例5
市販の木材から得られたセルロースパルプを採取し、高温(加水分解温度115~170℃、酸濃度0.03~0.35mol/L)で1~2時間酸加水分解して加水分解微結晶セルロースを得、ろ過・洗浄してpHを4~5にしてケーキ中の固体分を42%に増加させる。この固形分のフィルターケーキを高剪断押出装置(高剪断刃を有する連続押出機)にて3回押出し、押出装置のトルクを50~150N・mに制御して押出した。押出機の中間層には、冷却のために冷却水が導入される。押出物を水で希釈して攪拌し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、本発明の微結晶セルロース製品を得る。
【0053】
上記で得られた微結晶セルロース粒子は、粒径、密度、安息角を測定した結果、緩密度が0.600g/ml、タップ密度が0.730g/ml、粒度分布がD10 8.773μm、D50 21.459μm、D90 48.528μm、安息角30.5°である。
【0054】
比較例
市販の木材から得られたセルロースパルプを採取し、高温(加水分解温度115~170℃、酸濃度0.03~0.35mol/L)で1~2時間酸加水分解して加水分解微結晶セルロースを得て、ろ過・洗浄してpHを4~5に、ケーキ固形分を35%に増加させる。この固形分のフィルターケーキを高剪断押出装置(高剪断刃付き連続押出機)で3回押出し、押出工程では押出装置のトルクを14~20N・mに制御する。なお、押出工程で水が揮発するとトルクは徐々に大きくなり、適量の水を加えることで20N・m以下に抑えることができる。押出機の中間層には、冷却のために冷却水が導入される。押出物を水で希釈して攪拌し、pH5~8に中和した後、噴霧乾燥して、本発明の微結晶セルロース製品を得る。
【0055】
粒子径および密度の測定により、得られた微結晶セルロース粒子の緩密度は0.487g/ml、タップ密度は0.574g/ml、粒度分布D10は11.598μm、D50は37.001μm、D90は87.476μmであった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】実施例1の製品の32倍光学顕微鏡下での粒子構造図
【
図2】実施例1の製品の63倍光学顕微鏡による粒子構造図
【
図3】市販のAVICEL PH101の32倍光学顕微鏡による粒子構造図
【国際調査報告】