(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】車両用のカメラを備える装飾要素
(51)【国際特許分類】
B60R 13/00 20060101AFI20230606BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B60R13/00
G02B5/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551822
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 ES2020070142
(87)【国際公開番号】W WO2021170887
(87)【国際公開日】2021-09-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515015698
【氏名又は名称】ザニーニ オート グループ、エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー プジャダス, アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】ペラルタ モラレス,ジェルソン, ジェー
(72)【発明者】
【氏名】イスキエルド フェルナンデス,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ブラヴォ ガルシア,ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】カノネス ボンハム,ダビド
【テーマコード(参考)】
2H042
3D024
【Fターム(参考)】
2H042AA06
2H042AA07
2H042AA12
2H042AA22
3D024BA03
3D024BA07
(57)【要約】
車両用の装飾要素(1)は、装飾要素(1)の後側部に不透明樹脂ベース(8)と、カメラ(9)と、を含み、不透明樹脂ベース(8)は、カメラ(9)を配置可能とする厚みを有しており、さらに、装飾要素(1)の前側部に、複数の不連続部を有する不透明層(3)およびメタリック調装飾層(4)の2つの装飾層が設けられている透明樹脂層(2)とを含む。カメラ(9)は、不透明層(3)の複数の不連続部の1つに面するよう配置されている。メタリック調装飾層(4)は、CrまたはMoと、Al、Mg、AgまたはInとの合金を含む。メタリック調装飾層(4)により、色歪みが防止され、さらに、カメラ(9)が外部の観察者から隠される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の装飾要素であって、
前記装飾要素の後側部に、カメラ(9)と、前記カメラ(9)を配置可能とする厚みを有している不透明樹脂ベース(8)と、を含み、
さらに、前記装飾要素の前側部に、透明樹脂層(2)と、前記透明樹脂層(2)上に存在する、複数の不連続部を有する不透明層(3)およびメタリック調装飾層(4)の2つの装飾層と、を含み、
前記不透明層(3)の前記複数の不連続部の1つに面するよう、チャンバーが配置されており、
前記メタリック調装飾層(4)は、CrまたはMoと、Al、Mg、AgまたはInとの合金を含むことを特徴とする車両用の装飾要素。
【請求項2】
前記メタリック調装飾層(4)の厚さは、10~100nmである請求項1に記載の車両用の装飾要素。
【請求項3】
前記不透明層(3)および前記メタリック調装飾層(4)の双方は、前記透明樹脂層(2)の後部側に位置している請求項1または2に記載の車両用の装飾要素。
【請求項4】
前記不透明層(3)および前記メタリック調装飾層(4)の双方は、前記透明樹脂層(2)の前部側に位置している請求項1または2に記載の車両用の装飾要素。
【請求項5】
前記不透明層(3)と前記メタリック調装飾層(4)との間にプライマー層(5)が存在する請求項3に記載の車両用の装飾要素。
【請求項6】
前記透明樹脂層(2)と前記メタリック調装飾層(4)との間にプライマー層(5)が存在する請求項4に記載の車両用の装飾要素。
【請求項7】
前記装飾要素の最前部に、他の全ての層を保護する保護層(7)をさらに含む請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用の装飾要素。
【請求項8】
前記チャンバーの直上部分において反射防止特性を有する層(6´)をさらに含む請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用の装飾要素。
【請求項9】
請求項3に記載の車両用の装飾要素を製造するための製造方法であって、
前記メタリック調装飾層(4)は、PVDスパッタリングプロセスにより前記不透明層(3)の後部側に被覆されることを特徴とする車両用の装飾要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両装飾品(vehicle accessories)の分野に属し、より具体的には、本発明は、装飾要素自体によって外部観察者から隠されているカメラを備えた車のエンブレム等の装飾要素(decorative element)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両、特に、自動車について、ドライバー、または、巡航速度(cruise speed)、自律制御システムに、衝突の危険性を警告等するために、車両の周囲の情報を提供するカメラを搭載するニーズが増加している。このカメラは、好ましくは車両の前方または後方に配置されている。さらに、メーカーのブランドイメージを維持または向上させるために、カメラの機能は、美的基準に適合していなければならない。同様に、レーダーを搭載した車両も存在する。
【0003】
メーカーのフロントエンブレムの一部の領域のメタリック調と車両の後方に位置するレーダーの保護機能を組み合わせるよう試みるソリューションが開発されている。そのような構成は、一般的にレードーム(radome)と呼ばれている。このような場合、レーダーを外部の観測者から隠しておくために、メタリック調の外観の表面は、可視光に対するエンブレムの不透明性を維持すると共に、レーダーによって発信および受信される信号を通過させなければならない。これらの特徴を有するレードームは、国際出願PCT/ES2018/070016において開示されている。同出願人によるこの特許出願は、カメラと、電波透過樹脂、中間装飾層、および透明樹脂層により構成される内側ベース層と、を備える車両用レードームを開示している。さらに、カメラは、レードームの内側にあるか、または、透明樹脂層と同一線上に存在している(align)ことが開示されている。しかしながら、このレードームは、カメラがSiおよび/またはGe等の半金属を含む金属のような層(metal-like layer)の背後に隠れている場合、画像の色歪み(distortion of the color)が生じるという欠点がある。この色歪みの発生を防ぐために、カメラがメタリック調の層(metallic-looking layer)の前方に配置した場合、カメラは外部の観察者から見えてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、内蔵カメラを備える車両用装飾要素を提供することである。その装飾要素は、装飾要素の前側部(自動車から離れて配置されることが意図された部分)に、透明樹脂層を有しており、その透明樹脂層上には2つの装飾層が存在している。1つ目の層は、不透明であり、一般的には暗い色であるが、必ずしもそうではない。2つ目の層は、外部の観察者にメタリック調の外観を提供するための層である。メタリック調は、CrまたはMoと、Al、Mg、Ag、またはInとの合金によって実現される。この合金は、カメラにより受信される画像の色歪みが生じない波長範囲において透過率を確保する。装飾層は、透明樹脂層の前部側(太陽光線の入射側に面する側)または後部側(車両に最も近い側)のいずれかに配置することができる。任意に、金属化層(metallized layer)の(樹脂または不透明層への)接着(adhesion)を向上させるための中間プライマー層を設けてもよい。さらに、任意に、要素の最前部に保護層を設け、他の全ての層および/またはカメラの直前の部分にある反射防止特性を有する層を保護してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の特徴をよりよく理解するのを助け、本記述を補足するために、以下の図が説明の不可欠な部分として添付される。以下の図は、説明のためのものであり、性質(character)を限定するものではない。
【
図1】
図1は、自動車の正面部にエンブレムが取り付けられている自動車を示している。
【
図3】
図3は、本発明に係る実装形態を示している。
【
図4】
図4は、本発明に係る実装形態を示している。
【
図5】
図5は、カメラが位置しているベースエリアの詳細を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明に組み込まれている装飾層の特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、装飾要素1を示す車両を描写している。
図2に示されているように、要素の外側から不透明な装飾エリア(不透明装飾層3)、および、メタリック調のエリア(メタリック調装飾層4)が視認できる。本発明の装飾要素1は、カメラ9が配置されている樹脂ベース8(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、または双方の組み合わせ、またはPMMA、ASA、ASA/PC、PP、PAまたはPOM)と、透明樹脂層2(ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートの層)と、透明樹脂層2上の2つの装飾層(不透明装飾層3、メタリック調装飾層4)と、を含んでいる。
図3は、不透明(通常は暗色)装飾層3が外側の透明樹脂層2の後側部(車両に最も近い側)を部分的に覆っている第1実施形態を示している。この第1実装形態において、不透明装飾層3は、ピグメントデポジション法(pigment deposition method)によって、約5~50μmの層として、外側の透明樹脂層2の後部側に直接被覆され得る(applied)。または、不透明装飾層3は、同様の位置において0.6~3mmの間の厚みの樹脂であり得る。この不透明装飾層3は、
図2に示されるように、装飾要素1に描かれたエンブレムに応じて複数の不連続部(discontinuities)を有する。この層の複数の不連続部の1つは、カメラ9を配置するために使用される。
【0007】
メタリック調装飾層4は、CrまたはMoと、Al、Mg、AgまたはInとの合金により構成される。メタリック調装飾層4は、好ましくは、PVDスパッタリングプロセスにより不透明装飾層3の後部側に配置される。メタリック調装飾層4は、非常に薄く、その結果、色歪みを生じさせることなく、外光をチャンバー(chamber:区切られた室)に通すことができるが、それにもかかわらず、メタリック調装飾層4は、外側から見た際に、所望のメタリック調の外観を提供するのに十分なレベルの反射率を有している。双方の条件を達成するために、メタリック調装飾層4の厚さは、10~100nm、好ましくは20~30nmである。代替的に、メタリック調装飾層4は、上述の特徴に従って、合金を含む薄膜から構成され得る。この薄膜は、射出成形金型にセットされ(placed in an injection mould)、不透明装飾層3および外側の透明樹脂層2を構成する樹脂を用いてオーバーインジェクションされる(over-injected)。
【0008】
代替的に、不透明装飾層3は、メタリック調装飾層4の薄膜上に成膜された(deposited)ピグメント(pigment:色素、顔料)である。不透明装飾層3は、射出成形金型にセットされ、外側の透明樹脂層2を形成する樹脂でオーバーインジェクションされる。
【0009】
透明樹脂層2および不透明装飾層3のために選択された材料に応じて、メタリック調装飾層4の被覆(application)を行うためには、メタリック調装飾層4の接着を向上させるための中間プライマー層5が必要となり得る。中間プライマー層5は、好ましくは、必ずしも必要ではないが、UV硬化性シロキサンベースのアクリル化合物(UV-curable siloxane-based acrylic compounds)を含む。
【0010】
任意に、非常に厳しい腐食要件(corrosion requirement)の場合、メタリック調装飾層4を保護するために保護ワニス6が被覆されてもよい。このワニスは、カメラによって認識される画質を向上させるために、任意に反射防止特性を有していてもよい。
【0011】
アセンブリの前側部(車両に最も近い側と反対側の太陽光線が入る側)は、保護層7のコーティング(例えば、アクリルベースにシロキサン基を含むバス(bath containing siloxane groups on an acrylic base))を有し、外側の透明樹脂層2の衝撃耐性およびUV耐性を向上させ得る。
【0012】
不透明樹脂ベース8は、カメラ9を配置できる程度の厚みを有していなければならない。任意に、赤外線カメラ等の1つ以上のカメラを配置することができる。カメラは、不透明装飾層3による影響を受けることなく、メタリック調装飾層4を通して外部から光を受ける。不透明樹脂ベース8の内側部分は、カメラ9に保持ゾーン(retention zone)10を提供する。アセンブリは、内部の不透明樹脂ベース8とチャンバー(カメラ)9との間にトロイダルガスケット(toroidal gasket)またはシーリング接着剤等の何らかのシーリング要素(sealing element)11を含み、不透明樹脂ベース8とチャンバー(カメラ)9の間のシーリングが損なわれることを防止する。代替的に、
図5に示されるように、シーリング要素11は、チャンバー(カメラ)9とキャップ10´との間、および不透明樹脂ベース8とキャップ10´との間に配置され得る。キャップ10´は、クリップ、接着剤、ねじ、または溶接等の手段によって不透明樹脂ベース8に取り付けられる。
【0013】
図4は、本発明に係る装飾要素の第2実施形態を示している。メタリック調装飾層4は、外側の透明樹脂層2の前部側に配置されている。不透明装飾層3は、メタリック調装飾層4上に配置されている。したがって、不透明装飾層3は、光線の入口により近くなる。メタリック調装飾層4の透明樹脂層2に対する接着を向上させるために、中間プライマー層5が必要とされ得る。メタリック調装飾層4は、スパッタリングプロセス(PVD)によって成膜(deposited)され得る。
【0014】
透明樹脂層2の外層の前側部を部分的に覆う不透明装飾層3(通常は暗色であり、この場合も同様である)は、ある種のピグメントデポジションシステム(pigment deposition system)により形成され得る。代替的に、不透明装飾層3、メタリック調装飾層4、および中間プライマー層5から成る薄膜が製造された後に、その薄膜が透明樹脂層2上にオーバーモールドされてもよい。または、不透明装飾層3、メタリック調装飾層4、および中間プライマー層5(および任意に保護層7)は、透明樹脂層2上に1つずつ成膜されてもよい。代替的に、不透明装飾層3は、メタリック調装飾層4の薄膜上に成膜されたピグメントである。
【0015】
任意に、使用されるカメラとそのレンズの特徴に応じて、反射防止特性を有する層6´が外側の透明樹脂層2の後部側に被覆される。
【0016】
図6のグラフは、Ge、In、Cr、Moおよび70%/30%の比率のCrとAlの合金の層によって引き起こされる色歪みの度合い(degree of color distortion)を示している。対象の化合物のコーティングなしの場合とコーティングありの場合に知覚される(perceived)色の数値(CIE Yuv スケールに従って色座標で表される)を比較する。可視範囲をカバーする複数の異なる色の波長について示されている。値が高いほど色歪みが大きいことを示しており、しきい値0.04になると、色歪みが人間の目に顕著に知覚されることになる。
【0017】
下の表は、同じ層厚のGe、In、Cr、およびCrとAlの合金(3つの異なる割合の合金)の層の透過率を示している。透過率の値は、可視範囲(可視範囲全体を平均化した値)、950nmの赤外線、および、1550nmの赤外線の波長に対するものである。
【表1】
【0018】
実験から得た色歪みおよび透過率のデータから、CrAlは、可視範囲全体で見ると、色の歪みの値が最も低いと結論付けられる。その透過率レベルは、全波長域で十分なものとなっている。Alの反射率が高いことに関連して、Alの割合を増加させると透過率の減少を示すことが観察されている。しかしながら、CrとAlの含有量の変化により、所望の美的基準に従って色合いを調整することができる。Crは、接着特性と耐腐食(corrosion resistance)特性を有していることから、Crを、50%以上の比率で使用することが望ましい。Cr70%とAl30%の比率が極めて適していると考えられる。Cr値が低い場合は、プライマーコートを使用して接着性を向上させ、および/または、ワニスコートを使用して耐腐食性を向上させることが、より望ましい。
【0019】
Moは、腐食および接着に関して、Crと同様の性質を示す。
図6は、CrとMoとの間で同様の結果を示しており、本発明においてMoは、Crの代替物となる。Moとの合金中の金属Al、Mg、Ag、およびInにより、先の実装形態における方法と同様の方法で、知覚される色合いを変化させることができる。
【0020】
この記述および図面を参照して、本発明のいくつかの好ましい実施形態に従って本発明が説明されたが、本分野における当業者であれば、特許請求の範囲に記載された発明の主題(subject matter)を逸脱することなく、好ましい実施形態に複数の変更・変形が取り入れられ得ることを理解できるであろう。
【国際調査報告】