(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】獣医学的使用のための長時間作用性抗IL31抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230606BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230606BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230606BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230606BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230606BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230606BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230606BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230606BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230606BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230606BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230606BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230606BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230606BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 U
A61P37/08
A61P17/04
A61P17/00
A61P11/06
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/26
G01N33/53 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563136
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 US2021028548
(87)【国際公開番号】W WO2021216810
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517299032
【氏名又は名称】キンドレッド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, シー ジアン
(72)【発明者】
【氏名】グェン, ラム
(72)【発明者】
【氏名】チュー, チンイー
(72)【発明者】
【氏名】チン, リチャード
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ハンチュン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB12
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC18
4C076DD23
4C076DD37R
4C076DD38A
4C076DD60
4C076DD67A
4C076EE23
4C085AA14
4C085BB17
4C085GG01
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
イヌIL31および/またはネコIL31に結合する長時間作用性抗IL31抗体に関する様々な実施形態が提供される。そのような抗体は、イヌ、ネコおよびウマなどのコンパニオンアニマルにおけるIL31誘導状態を治療するための方法において使用することができる。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号23のアミノ酸配列を含むエピトープに結合し、低pHなどで、野生型Fcポリペプチドと比較して増加した親和性で新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができるコンパニオンアニマル種由来のバリアントIgG Fcポリペプチドを含む、イヌIL31に結合する単離抗体。
【請求項2】
PSDX
1X
2KIのアミノ酸配列(配列番号45)を含むエピトープに結合し、ここで、Xは任意のアミノ酸残基である、イヌIL31に結合する単離抗体。
【請求項3】
X
1が疎水性アミノ酸であるか、またはX
1がA、V、IおよびLから選択されるか、またはX
1がVおよびIから選択される;ならびに、X
2が親水性アミノ酸であるか、またはX
2がA、R、K、QおよびNから選択されるか、またはX
2がRおよびQから選択される、請求項2に記載の単離抗体。
【請求項4】
X
1がVであり、X
2がRであるか、またはX
1がIであり、X
2がQである、請求項2または請求項3に記載の単離抗体。
【請求項5】
配列番号88のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する、請求項2~4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
バイオレイヤー干渉法によって測定して、5×10
-6M未満、1×10
-6M未満、5×10
-7M未満、1×10
-7M未満、5×10
-8M未満、1×10
-8M未満、5×10
-9M未満、1×10
-9M未満、5×10
-10M未満、1×10
-10M未満、5×10
-11M未満、1×10
-11M未満、5×10
-12M未満、または1×10
-12M未満の解離定数(Kd)で、イヌIL31に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
STAT-3リン酸化の低減によって測定して、コンパニオンアニマル種におけるIL31シグナル伝達機能を低減する、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
コンパニオンアニマル種が、イヌ、ネコまたはウマである、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
イムノブロット解析および/またはバイオレイヤー干渉法によって決定して、ネコIL31またはウマIL31に結合する、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
イヌIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
ネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
イムノブロット解析および/またはバイオレイヤー干渉法によって決定して、ヒトIL31に結合しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
モノクローナル抗体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
イヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体またはキメラ抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項15】
マウス可変重鎖フレームワーク領域またはマウス可変軽鎖フレームワーク領域を含むキメラ抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項16】
重鎖および軽鎖を含み、
a)重鎖が、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H1配列;配列番号2、62、89または87のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H2配列;および、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H3配列を含み、
b)軽鎖が、配列番号8または配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L1配列;配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L2配列;および、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L3配列を含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項17】
a)(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号2または配列番号89のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖、または
b)(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(ii)配列番号62または配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H2;および(iii)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖
を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
a)(i)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖、または
b)(i)配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖
を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
(a)配列番号4、70または79の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号5、71または80のHC-FR2配列、(c)配列番号6、72、73または81のHC-FR3配列、(d)配列番号7、74、124または82のHC-FR4配列、(e)配列番号11、75または83の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号12、76または84のLC-FR2配列、(g)配列番号13、77または85のLC-FR3配列、または(h)配列番号14、78または86のLC-FR4配列のうちの1つ以上をさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項20】
a)(i)配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
b)(i)配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号15または配列番号123のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
c)(i)配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列
を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項21】
配列番号24、配列番号16または配列番号32の可変軽鎖配列を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項22】
配列番号25、配列番号15、配列番号123または配列番号33の可変重鎖配列を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項23】
配列番号24の可変軽鎖配列および配列番号25の可変重鎖配列;配列番号16の可変軽鎖配列および配列番号15または配列番号123の可変重鎖配列;または配列番号32の可変軽鎖配列および配列番号33の可変重鎖配列を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項24】
コンパニオンアニマルに由来する定常重鎖領域または定常軽鎖領域を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
バリアントIgG Fcポリペプチドが、約5.0~約6.5の範囲のpH、例えば約5.0のpH、約5.2のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、約6.2のpH、または約6.5のpHで、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、または任意のタンパク質-タンパク質相互作用ツールによって測定して、野生型IgG Fcポリペプチドよりも高い親和性でFcRnに結合する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
バリアントIgG Fcポリペプチドが、約5.0~約6.5の範囲のpH、例えば約5.0のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、または約6.5のpHで、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、または任意のタンパク質-タンパク質相互作用ツールによって測定して、5×10
-6M未満、1×10
-6M未満、5×10
-7M未満、1×10
-7M未満、5×10
-8M未満、1×10
-8M未満、5×10
-9M未満、1×10
-9M未満、5×10
-10M未満、1×10
-10M未満、5×10
11M未満、1×10
11M未満、5×10
-12M未満または1×10
-12M未満の解離定数(Kd)でFcRnに結合する、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項27】
バリアントIgG Fcポリペプチドが、野生型Fcポリペプチドと比較して増加した親和性でFcRnに結合し、抗体タンパク質が、野生型Fcポリペプチドを含む抗体と比較して増加した血清半減期を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項28】
バリアントIgG Fcポリペプチドが、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106または配列番号107のアミノ酸配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項29】
バリアントIgG Fcポリペプチドが、
a)配列番号90の23位に対応する位置にチロシンまたはフェニルアラニン、
b)配列番号90の82位に対応する位置にチロシン、
c)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にヒスチジン、
d)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にチロシン、
e)配列番号90の207位に対応する位置にチロシン、
f)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にヒスチジン、
g)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にチロシン、または
h)配列番号90の207位に対応する位置にチロシン
を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項30】
バリアントIgG Fcポリペプチドが、
a)配列番号90の23位にチロシンまたはフェニルアラニン、
b)配列番号90の82位にチロシン、
c)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にヒスチジン、
d)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にチロシン、
e)配列番号90の207位にチロシン、
f)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にヒスチジン、
g)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にチロシン;または
h)配列番号90の207位にチロシン
を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項31】
a)配列番号108、配列番号109または配列番号110の重鎖アミノ酸配列、
b)配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列、
c)配列番号114、配列番号115または配列番号116の重鎖アミノ酸配列、
d)配列番号117、配列番号118または配列番号119の重鎖アミノ酸配列、または
e)配列番号120、配列番号121または配列番号122の重鎖アミノ酸配列
を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項32】
a)(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号108、配列番号109または配列番号110の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;または
b)(i)配列番号21の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;
c)(i)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号114、配列番号115または配列番号116の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;
d)(i)配列番号38の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号117、配列番号118、配列番号119の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;または
e)(i)配列番号39の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号120、配列番号121または配列番号122の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列
を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項33】
配列番号21の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項34】
配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項35】
Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびFab’-SHから選択される抗体断片である、請求項1~34のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項36】
二重特異性であり、IL31ならびにIL4R、IL17、TNFα、CD20、CD19、CD25、IL4、IL13、IL23、IgE、CD11α、IL6R、α4-インテグリン、IL12、IL1β、IL5、IL5R、IL22、IL22R、IL33、IL33R、TSLP、TSLPRまたはBlySから選択される1つ以上の抗原に結合する、請求項1~35のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離核酸。
【請求項38】
請求項37に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項39】
請求項38に記載の宿主細胞を培養することと、抗体を単離することとを含む、抗体を産生する方法。
【請求項40】
請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項41】
請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物であって、薬学的に許容される担体が、L-ヒスチジン、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含み、薬学的組成物が、5.0~6.2のpHを有する、薬学的組成物。
【請求項42】
5.0~6.0、または5.3~5.7、または5.5のpHを有する、請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
5mM~100mM、10mM~50mM、20mM~30mM、10~30mM、または20mMのL-ヒスチジン濃度を有する、請求項40または請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
80~200mM、100~175mM、120~150mM、または140mMの塩化ナトリウム濃度を有する、請求項41~43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
0.005mg/mL~0.5mg/mL、0.01mg/mL~0.1mg/mL、または0.05mg/mLのポリソルベート80濃度を有する、請求項41~44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
薬学的に許容される担体が少なくとも一種類の糖を含む、請求項41~45のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
0.5%~20%、1%~10%、1%~5%または1%~3%の糖濃度を有する、請求項46に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
薬学的に許容される担体が、スクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトースおよび/またはソルビトールを含む、請求項41~47のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
抗菌剤を含む、請求項41~48のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項50】
m-クレゾールまたはメチルパラベンを含む、請求項41~49のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
0.2%のm-クレゾールおよび/または0.9%のメチルパラベンを含む、請求項41~50のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
IL31誘導状態を有するコンパニオンアニマル種を治療する方法であって、コンパニオンアニマル種に、治療的有効量の請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体または請求項40~51のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項53】
IL-31誘導状態を有するコンパニオンアニマル種を治療する方法であって、コンパニオンアニマル種に、治療的有効量の抗IL31抗体を、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、12週間ごと、14週間ごと、16週間ごと、18週間ごと、20週間ごと、22週間ごと、または24週間ごとに投与することを含む、方法。
【請求項54】
抗IL31抗体が、請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体または請求項40~51のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
コンパニオンアニマル種が、イヌ、ネコまたはウマである、請求項52~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
IL31誘導状態が掻痒またはアレルギー状態である、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
IL31誘導状態が、アトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、乾癬、強皮症および湿疹から選択される、請求項52~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
抗体または薬学的組成物が非経口投与される、請求項52~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
抗体または薬学的組成物が、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑膜内経路、髄腔内経路または吸入経路によって投与される、請求項52~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
抗体が一投与あたり0.01mg/kg~100mg/kg体重の量で投与される、請求項52~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
抗体または薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤またはMAPK阻害剤を投与することを含む、請求項52~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
抗体または薬学的組成物と組み合わせて、抗IL4R抗体、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、抗IL5抗体、抗IL5R抗体、抗IL22抗体、抗IL22R抗体、抗IL33抗体、抗IL33R抗体、抗TSLP抗体、抗TSLPR抗体および抗BlyS抗体から選択される1つ以上の抗体を投与することを含む、請求項52~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低減する方法であって、請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体または請求項40~51のいずれか一項に記載の薬学的組成物を、抗体の細胞外IL31への結合を許容する条件下で細胞に曝露し、それにより、IL31受容体への結合を低減すること、および/または細胞によるIL31シグナル伝達機能を低減することを含む、方法。
【請求項64】
細胞が、エクスビボで抗体または薬学的組成物に曝露される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
細胞が、in vivoで抗体または薬学的組成物に曝露される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
細胞が、イヌ細胞、ネコ細胞またはウマ細胞である、請求項61~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
コンパニオンアニマル種由来の試料中のIL31を検出する方法であって、試料を請求項1~36のいずれか一項に記載の抗体または請求項40~51のいずれか一項に記載の薬学的組成物と、抗体のIL31への結合を許容する条件下で接触させることと、試料中の抗体とIL31との間に複合体が形成されているかどうかを検出することとを含む、方法。
【請求項68】
試料が、イヌ、ネコまたはウマから得られた生物学的試料である、請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月22日に出願された米国仮出願第63/014,033号、および2020年4月23日に出願された米国仮出願第63/014,549号の利益を主張し、これらの各々は、任意の目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、2021年4月21日に作成された2021-04-21_01157-0034-00PCT_ST25.txtという表題のファイルとして提供されており、このファイルのサイズは225Kbである。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、単離された長時間作用性抗IL31抗体、例えば、イヌIL31および/またはネコIL31に結合する抗体、ならびに、それを使用する方法、例えば、IL31誘導状態を治療する方法、または、例えば、イヌ、ネコおよびウマなどのコンパニオンアニマルの細胞におけるIL31シグナル伝達機能を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン31(IL31)は、主にTh2細胞によって産生されるサイトカインであり、掻痒性および他の形態のアレルギー疾患(例えば、アトピー性皮膚炎)などの皮膚疾患の促進に関与すると理解されている。IL31は、その受容体に結合し、JAK1の活性化などの下流活性を活性化することによって機能し、皮膚炎および他の障害に関連する臨床的問題の多くを引き起こすと考えられている。
【0005】
ネコ、イヌおよびウマなどのコンパニオンアニマルは、アトピー性皮膚炎を含むヒト皮膚疾患に類似する多くの皮膚疾患に罹患している。しかしながら、IL31配列は、ヒト、ネコ、イヌおよびウマの間で異なる。したがって、IL31シグナル伝達を低減するため、およびIL31誘導状態を治療するためにコンパニオンアニマルIL31に特異的に結合するように使用することができ、かつ、より長い投与間隔および/または投与用量の低減を可能にし得る、血清半減期が増加した方法および化合物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
いくつかの実施形態では、イヌIL31に結合する長時間作用性の単離抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は増加した血清半減期を有する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はバリアントFcポリペプチドを含み、この場合、抗IL31抗体は野生型Fcポリペプチドを含む抗体と比較して増加した血清半減期を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、イヌIL31に結合し、野生型Fcポリペプチドと比較して増加した親和性で新生児型Fc受容体(FcRn)に結合することができるコンパニオンアニマル種由来のバリアントIgG Fcポリペプチドを含む、単離抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号22のアミノ酸34~50を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号23のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、PSDX1X2KIのアミノ酸配列(配列番号45)を含むエピトープに結合し、ここで、Xは任意のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、X1は、疎水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X1は、A、V、IおよびLから選択される。いくつかの実施形態では、X1は、VおよびIから選択される。いくつかの実施形態では、X2は、親水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X2はA、R、K、QおよびNから選択される。いくつかの実施形態では、X2はRおよびQから選択される。いくつかの実施形態では、X1はVであり、X2はRである。いくつかの実施形態では、X1はIであり、X2はQである。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号88のアミノ酸配列を含むエピトープに結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体は、バイオレイヤー干渉法によって測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、または1×10-12M未満の解離定数(Kd)で、イヌIL31に結合する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗体は、STAT-3リン酸化の低減によって測定して、コンパニオンアニマル種におけるIL31シグナル伝達機能を低減する。いくつかの実施形態では、コンパニオンアニマル種は、イヌ、ネコまたはウマである。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は、イムノブロット解析および/またはバイオレイヤー干渉法によって決定して、ネコIL31またはウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、イヌIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する。いくつかの実施形態では、抗体は、ネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する。いくつかの実施形態では、抗体は、イムノブロット解析および/またはバイオレイヤー干渉法によって決定して、ヒトIL31に結合しない。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、イヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス可変重鎖フレームワーク領域またはマウス可変軽鎖フレームワーク領域を含むキメラ抗体である。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖および軽鎖を含み、
a.重鎖は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H1配列;配列番号2、62、89または87のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H2配列;および、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H3配列を含み、
b.軽鎖は、配列番号8または配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L1配列;配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L2配列;および、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L3配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2または89のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号62または87のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体は、(a)配列番号4、70または79の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号5、71または80のHC-FR2配列、(c)配列番号6、72、73または81のHC-FR3配列、(d)配列番号7、74、124または82のHC-FR4配列、(e)配列番号11、75または83の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号12、76または84のLC-FR2配列、(g)配列番号13、77または85のLC-FR3配列、または(h)配列番号14、78または86のLC-FR4配列のうちの1つ以上を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体は、
a.(i)配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
b.(i)配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号15または配列番号123のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
c.(i)配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列
を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号24、配列番号16または配列番号32の可変軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号25、配列番号15、配列番号123または配列番号33の可変重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号24の可変軽鎖配列および配列番号25の可変重鎖配列;配列番号16の可変軽鎖配列および配列番号15または配列番号123の可変重鎖配列;または配列番号32の可変軽鎖配列および配列番号33の可変重鎖配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、コンパニオンアニマルに由来する定常重鎖領域または定常軽鎖領域を含むキメラ抗体である。
【0021】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、約5.0~約6.5の範囲のpH、例えば約5.0のpH、約5.2のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、約6.2のpH、または約6.5のpHで、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、または任意のタンパク質-タンパク質相互作用ツールによって測定して、野生型IgG Fcポリペプチドよりも高い親和性でFcRnに結合する。
【0022】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、約5.0~約6.5の範囲のpH、例えば約5.0のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、または約6.5のpHで、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、または任意のタンパク質-タンパク質相互作用ツールによって測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×1011M未満、1×1011M未満、5×10-12M未満、または1×10-12M未満の解離定数(Kd)でFcRnに結合する。
【0023】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、例えば低pHで、野生型Fcポリペプチドと比較して増加した親和性でFcRnに結合し、抗体は、野生型Fcポリペプチドを含む抗体と比較して増加した血清半減期を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106または配列番号107のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、
a)配列番号90の23位に対応する位置にチロシンまたはフェニルアラニン、
b)配列番号90の82位に対応する位置にチロシン、
c)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にヒスチジン、
d)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にチロシン、
e)配列番号90の207位に対応する位置にチロシン、
f)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にヒスチジン、
g)配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にチロシン、または
h)配列番号90の207位に対応する位置にチロシン
を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、
a)配列番号90の23位にチロシンまたはフェニルアラニン、
b)配列番号90の82位にチロシン、
c)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にヒスチジン、
d)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にチロシン、
e)配列番号90の207位にチロシン、
f)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にヒスチジン、
g)配列番号90の82位にチロシンおよび207位にチロシン;または
h)配列番号90の207位にチロシン
を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体は、
a)配列番号108、配列番号109または配列番号110の重鎖アミノ酸配列、
b)配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列、
c)配列番号114、配列番号115または配列番号116の重鎖アミノ酸配列、
d)配列番号117、配列番号118または配列番号119の重鎖アミノ酸配列、または
e)配列番号120、配列番号121または配列番号122の重鎖アミノ酸配列
を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗体は、
a.(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号108、配列番号109または配列番号110の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;
b.(i)配列番号21の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;
c.(i)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号114、配列番号115または配列番号116の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;
d.(i)配列番号38の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号117、配列番号118、配列番号119の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列;または
e.(i)配列番号39の軽鎖アミノ酸配列;(ii)配列番号120、配列番号121または配列番号122の重鎖アミノ酸配列;または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列
を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号21の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗体は、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFab’-SHから選択される抗体断片である。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗体は、二重特異性であり、IL31ならびにIL4R、IL17、TNFα、CD20、CD19、CD25、IL4、IL13、IL23、IgE、CD11α、IL6R、α4-インテグリン、IL12、IL1β、IL5、IL5R、IL22、IL22R、IL33、IL33R、TSLP、TSLPRまたはBlySから選択される1つ以上の抗原に結合する。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記の抗IL31抗体をコードする単離核酸が提供される。いくつかの実施形態では、上記の抗IL31抗体をコードする核酸を含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施形態では、上記の抗IL31抗体をコードする核酸を含むそのような宿主細胞を培養することと、抗体を単離することとを含む、抗IL31抗体を産生する方法が提供される。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗IL31抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗IL31抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、薬学的に許容される担体が、L-ヒスチジン、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含む、薬学的組成物が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、5.0~6.2のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、5.0~6.0、または5.3~5.7、または5.5のpHを有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、5mM~100mM、10mM~50mM、20mM~30mM、10~30mM、または20mMのL-ヒスチジン濃度を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、80~200mM、100~175mM、120~150mM、または140mMの塩化ナトリウム濃度を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、0.005mg/mL~0.5mg/mL、0.01mg/mL~0.1mg/mL、または0.05mg/mLのポリソルベート80濃度を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、少なくとも一種類の糖を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、0.5%~20%、1%~10%、1%~5%、または1%~3%の少なくとも一種類の糖の濃度を有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、スクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトースおよび/またはソルビトールを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、抗菌剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、m-クレゾールまたはメチルパラベンを含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、0.2%のm-クレゾールおよび/または0.9%のメチルパラベンを含む。
【0040】
抗体および薬学的組成物の使用
いくつかの実施形態では、IL31誘導状態を有するコンパニオンアニマル種を治療する方法であって、コンパニオンアニマル種に、治療的有効量の本明細書に記載の抗IL31抗体または本明細書に記載の抗体を含む薬学的組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0041】
いくつかの実施形態では、コンパニオンアニマル種に長時間作用性抗IL31抗体を投与することを含む、IL31誘導状態を有するコンパニオンアニマル種を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、治療的有効量の抗IL31抗体を、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、12週間ごと、14週間ごと、16週間ごと、18週間ごと、20週間ごと、22週間ごと、または24週間ごとにコンパニオンアニマル種に投与する。
【0042】
いくつかの実施形態では、コンパニオンアニマル種は、イヌ、ネコまたはウマである。いくつかの実施形態では、IL31誘導状態は掻痒またはアレルギー状態である。いくつかの実施形態では、IL31誘導状態は、アトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、乾癬、強皮症および湿疹から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または薬学的組成物は、非経口投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または薬学的組成物は、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑膜内経路、髄腔内経路または吸入経路によって投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または薬学的組成物は、一投与あたり0.01mg/kg~100mg/kg体重の量で投与される。
【0044】
いくつかの実施形態では、方法は、抗IL31抗体または薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤またはMAPK阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、抗IL31抗体または薬学的組成物と組み合わせて、抗IL4R抗体、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、抗IL5抗体、抗IL5R抗体、抗IL22抗体、抗IL22R抗体、抗IL33抗体、抗IL33R抗体、抗TSLP抗体、抗TSLPR抗体および抗BlyS抗体から選択される1つ以上の抗体を投与することを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞内のIL31シグナル伝達機能を低減する方法であって、抗IL31抗体、本明細書に記載の薬学的組成物を、抗体の細胞外IL31への結合を許容する条件下で細胞に曝露し、それによりIL31受容体への結合を低減すること、および/または細胞によるIL31シグナル伝達機能を低減することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、エクスビボで抗体または薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、in vivoで抗体または薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、イヌ細胞、ネコ細胞またはウマ細胞である。
【0046】
いくつかの実施形態では、コンパニオンアニマル種由来の試料中のIL31を検出する方法であって、試料を抗IL31抗体または本明細書に記載の薬学的組成物と、抗体のIL31への結合を許容する条件下で接触させることと、試料中の抗体とIL31との間に複合体が形成されているかどうかを検出することとを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、試料は、イヌ、ネコまたはウマから得られた生物学的試料である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A】
図1Aは、M14、M18、M19およびM87マウスモノクローナル抗体クローンの可変軽鎖配列のアラインメントである。
【
図1B】
図1Bは、M14、M18、M19およびM87マウスモノクローナル抗体クローンの可変重鎖配列のアラインメントである。
【
図2A】様々な濃度のキメラM14抗体を用いたイヌIL31結合分析のグラフである。
【
図2B】様々な濃度のキメラM14抗体を用いたイヌIL31結合分析の別のグラフである。
【
図3A】様々な濃度のイヌ化M14抗体を用いたイヌIL31結合分析のグラフである。
【
図3B】様々な濃度のイヌ化M14抗体を用いたイヌIL31結合分析の別のグラフである。
【
図4】様々な濃度のイヌ化M14抗体でのイヌIL31シグナル伝達の阻害を示すイムノブロットである。
【
図5A】M14抗体でプローブしたGST-イヌ-IL31欠失のイムノブロットである。
【
図5B】抗GST抗体でプローブしたGST-イヌ-IL31欠失のイムノブロットである。
【
図6A】M14抗体でプローブしたGST-イヌ-IL31欠失のイムノブロットである。
【
図6B】抗GST抗体でプローブしたGST-イヌ-IL31欠失のイムノブロットである。
【
図7A】M14抗体でプローブしたヒトFcに融合したネコおよびウマIL31タンパク質のイムノブロットである。
【
図7B】抗FC抗体でプローブしたヒトFcに融合したネコおよびウマIL31タンパク質のイムノブロットである。
【
図8】抗イヌIL31抗体(上のパネル)および抗GST抗体(下のパネル)を使用した成熟イヌIL31エピトープの精密エピトープマッピングおよびアラニンスキャニングのイムノブロット解析を示す。
【
図9】抗イヌIL31抗体(上のパネル)および抗GST抗体(下のパネル)を使用した成熟イヌIL31エピトープの精密エピトープマッピングおよびアラニンスキャニングのイムノブロット解析を示す。
【
図10】抗イヌIL31抗体(上のパネル)および抗GST抗体(下のパネル)を使用した成熟イヌIL31エピトープの精密エピトープマッピングおよびアラニンスキャニングのイムノブロット解析を示す。
【
図11】抗イヌIL31抗体(上のパネル)および抗GST抗体(下のパネル)を使用した成熟イヌIL31エピトープの精密エピトープマッピングおよびアラニンスキャニングのイムノブロット解析を示す。
【
図12】抗イヌIL31抗体(上のパネル)および抗GST抗体(下のパネル)を使用した成熟イヌIL31エピトープの精密エピトープマッピングおよびアラニンスキャニングのイムノブロット解析を示す。
【
図13】抗イヌIL31抗体M14のセイウチIL31に対するイムノブロット交差反応性である。
【
図14】野生型イヌIgG-B Fcポリペプチドに結合する様々な濃度のイヌFcRn(12.5、25、50、100および200nM)のBiacoreセンサーグラムを示す。
【
図15】バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)Yに結合する様々な濃度のイヌFcRn(12.5、25、50、100および200nM)のBiacoreセンサーグラムを示す。
【
図16】バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)Fに結合する様々な濃度のイヌFcRn(12.5、25、50、100および200nM)のBiacoreセンサーグラムを示す。
【
図17】バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)Mに結合する様々な濃度のイヌFcRn(12.5、25、50、100および200nM)のBiacoreセンサーグラムを示す。
【
図18】バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドYTEに結合する様々な濃度のイヌFcRn(12.5、25、50、100および200nM)のBiacoreセンサーグラムを示す。
【
図19】イヌFcRnに結合するキメラバリアントイヌIgG-A Fc F00抗体(A)およびIgG-D Fc F00抗体(B)のOctetRedセンサーグラムを、Phe変異を有しないキメラバリアントイヌIgG-A Fc(C)およびPhe変異を有しないIgG-D Fc(D)のセンサーグラムと比較した図である。
【
図20】2mg/kgでのラットへの皮下投与後のキメラバリアントイヌIgG-A F00抗体(「IgG-A F00」;n=2)およびPhe変異を有しないキメラバリアントイヌIgG-A(「IgG-A」;n=2)の血清薬物動態プロファイルを示す。
【
図21】イヌFcRnに結合するバリアントイヌIgG-B Fc(0Y0、0YH、0YYまたは00Y)を有するキメラ抗体のOctetRedセンサーグラムを、野生型イヌIgG-Bを有するキメラ抗体のセンサーグラムと比較した図である。
【
図22】実施例18に記載のイヌにおけるin vivo薬物動態研究から得られた経時的に正規化された抗体のパーセントを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
【0049】
特定の実施形態の説明
イヌIL31および/またはネコIL31に結合する抗体、例えば、長時間作用性抗IL31抗体が提供される。IL31に結合する抗体を形成することができる抗体の重鎖および軽鎖も提供される。さらに、1つ以上の特定の相補性決定領域(CDR)を含む抗体、重鎖および軽鎖が提供される。イヌIL31に対する抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。イヌIL31に対する抗体を産生または精製する方法も提供される。イヌIL31に対する抗体を使用する治療方法が提供される。そのような方法としては、限定されないが、コンパニオンアニマル種におけるIL31誘導状態を治療する方法が挙げられる。コンパニオンアニマル種からの試料中のIL31を検出する方法が提供される。
【0050】
本明細書で提供されるIL31抗体に関連して使用され得る、プロテインAへの結合の増加、C1qへの結合の減少、CD16への結合の減少、FcRnへの結合の増加を有するコンパニオンアニマルからのバリアントIgG Fcポリペプチドも提供される。
【0051】
読者の便宜のために、本明細書で使用される用語の以下の定義が提供される。
【0052】
本明細書で使用される場合、Kdなどの数値用語は、科学的測定に基づいて計算され、したがって適切な測定誤差の影響を受ける。場合によっては、数値用語は、最も近い有効数字に丸められた数値を含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、特に明記しない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書で使用される場合、「または」という用語は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。複数従属請求項の文脈では、他の請求項を参照するときの「または」の使用は、代替の請求項のみを指す。
【0054】
抗IL31抗体
IL31に対する新規抗体、例えば、イヌIL31、ネコIL31および/またはウマIL31に結合する抗体が提供される。本明細書で提供される抗IL31抗体としては、限定されないが、モノクローナル抗体、マウス抗体、キメラ抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体およびウマ化抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、M14、M18、M19およびM87などの単離マウスモノクローナル抗体である。
【0055】
モノクローナル抗体M14、M18、M19およびM87は、以下のように単離した。簡潔には、マウスをイヌIL31で免疫化し、標準的なハイブリドーマ技術によってマウスモノクローナル抗体クローンを得た。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、IL31結合抗体を産生するハイブリドーマクローンについてスクリーニングした。結合親和性および本明細書に記載の細胞ベースの機能アッセイに基づいて、モノクローナル抗体M14、M18、M19およびM87を産生するハイブリドーマクローンをさらなる調査のために選択した。4つのクローンの各々の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を配列決定し、配列アラインメントによって分析した(
図1)。
【0056】
モノクローナル抗体M14のアミノ酸配列も本明細書で提供される。例えば、モノクローナル抗体M14の可変重鎖CDR(配列番号1~3;配列番号89は、CDR-H2の代替定義である)、可変軽鎖CDR(配列番号8~10)、可変領域重鎖フレームワーク配列(配列番号4~7)、および可変領域軽鎖フレームワーク配列(配列番号11~14)が提供される。モノクローナル抗体M14の可変軽鎖、軽鎖、可変重鎖、ならびに可変およびヒンジ重鎖のアミノ酸配列が提供される(それぞれ、配列番号24、36、25および40)。
【0057】
さらに、モノクローナル抗体M18、M19およびM87のCDR、フレームワーク配列、可変軽鎖、可変重鎖のアミノ酸配列が提供される(例えば、
図1を参照されたい)。モノクローナル抗体M19の可変重鎖CDR(配列番号1~3;配列番号89は、CDR-H2の代替定義である)、可変軽鎖CDR(配列番号8~10)、可変軽鎖(配列番号65)、軽鎖(配列番号38)、可変およびヒンジ重鎖(配列番号42)、ならびに可変重鎖(配列番号68)が提供される。モノクローナル抗体M18の可変重鎖CDR(配列番号1、62および3;配列番号87は、CDR-H2の代替定義である)、可変軽鎖CDR(配列番号63、9および10)、可変軽鎖(配列番号64)、軽鎖(配列番号37)、可変およびヒンジ重鎖(配列番号41)、ならびに可変重鎖(配列番号67)が提供される。モノクローナル抗体M87の可変軽鎖(配列番号66)、軽鎖(配列番号39)、可変およびヒンジ重鎖(配列番号43)、ならびに可変重鎖(配列番号69)が提供される。
【0058】
モノクローナル抗体M14、M18、M19およびM87に由来するキメラ抗体、イヌ化抗体、ネコ化抗体およびウマ化抗体も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、イヌ化モノクローナル抗体M14のアミノ酸配列、例えば配列番号15~21、70~78および123~124が提供される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体M14に由来するネコ化抗体のアミノ酸配列、例えば配列番号32~35および79~86が提供される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体M14に由来するキメラ抗体のアミノ酸配列、例えば、配列番号26、27、30および31が提供される。
【0059】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体(二重特異性T細胞エンゲージャーなど)および三重特異性抗体)、および抗体断片(Fab、F(ab’)2、ScFv、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディなど)を含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。イヌ、ネコ、およびウマ種は、多くの哺乳動物に共通する異なる種類(クラス)の抗体を有する。
【0060】
抗体という用語には、限定されないが、Fv、単鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、ジscFv、sdAb(単一ドメイン抗体)および(Fab’)2(化学的に結合したF(ab’)2を含む)などの抗原に結合することができる断片が含まれる。抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、その名称が容易に結晶化するその能力を反映する残留「Fc」断片とを産生する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片が得られる。抗体という用語には、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびマウス、ヒト、カニクイザル、イヌ、ネコ、ウマなどの様々な種の抗体も含まれる。さらに、本明細書で提供されるすべての抗体コンストラクトについて、他の生物体由来の配列を有するバリアントも企図される。したがって、抗体のマウスバージョンが開示される場合、当業者は、マウス配列ベースの抗体をネコ、イヌ、ウマなどの配列に変換する方法を理解するであろう。抗体断片には、単鎖scFv、タンデムジscFv、ダイアボディ、タンデムトリsdcFv、ミニボディなどのいずれかの配向も含まれる。抗体断片には、ナノボディ(sdAb、軽鎖を含まない、重鎖の一対の可変ドメインなどの単一のモノマードメインを有する抗体)も含まれる。抗体断片は、いくつかの実施形態では特定の種であるものとして(例えば、マウスscFvまたはイヌscFv)と呼ばれ得る。これは、コンストラクトの供給源ではなく、非CDR領域の少なくとも一部の配列を示す。いくつかの実施形態では、抗体は、標識を含むか、または第2の部分にコンジュゲートされる。
【0061】
「標識」および「検出可能な標識」という用語は、特異的結合対のメンバー間の反応(例えば、結合)を検出可能にするために抗体またはその被分析物に結合した部分を意味する。特異的結合対の標識されたメンバーは、「検出可能に標識された」と称される。したがって、「標識結合タンパク質」という用語は、結合タンパク質の同定を提供する標識が組み込まれたタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、標識は、視覚的または機器的手段、例えば放射性標識アミノ酸の組み込みまたは標識アビジン(例えば、蛍光マーカーまたは光学的方法もしくは比色法によって検出することができる酵素活性を含有するストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合によって検出可能なシグナルを生成することができる検出可能なマーカーである。ポリペプチドの標識の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:放射性同位体または放射性核種(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、または153Sm);色素原、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;2次レポーター(例えば、ロイシンジッパー対配列、2次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)によって認識される所定のポリペプチドエピトープ;および磁性剤、例えばガドリニウムキレート。イムノアッセイに一般的に使用される標識の代表的な例としては、光を生成する部分、例えばアクリジニウム化合物、および蛍光を生成する部分、例えばフルオレセインが挙げられる。これに関して、部分自体は検出可能に標識されていなくてもよいが、さらに別の部分と反応すると検出可能になり得る。
【0062】
「モノクローナル抗体」という用語は、抗体の実質的に均一な集団の抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る可能性のある天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、モノクローナル抗体の試料は、抗原上の同じエピトープに結合することができる。修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495に最初に記載されているハイブリドーマ法によって作製され得るか、または米国特許第4,816,567号に記載されているような組換えDNA法によって作製され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、McCafferty et al.,1990,Nature 348:552-554に記載されている技術を使用して作製されたファージライブラリから単離され得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、クローンM14、M18、M19およびM87から選択される単離マウス抗体である。
【0064】
「アミノ酸配列」とは、ペプチドまたはタンパク質中のアミノ酸残基の配列を意味する。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用され、最小長さに限定されない。このようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然アミノ酸残基を含有することができ、限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、トリマーおよびマルチマーが挙げられる。完全長タンパク質およびその断片の両方が定義に包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、本開示の目的のために、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加、および置換(一般に本質的に保存的)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発などの意図的なものであってもよく、またはタンパク質を産生する宿主の突然変異またはPCR増幅によるエラーなどの偶発的なものであってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「IL31」とは、細胞におけるIL31の発現およびプロセシングから生じる任意の天然IL31を指す。この用語は、別途指示がない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびカニクイザル)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物、およびコンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコおよびウマ)を含む任意の脊椎動物起源からのIL31を含む。この用語はまた、IL31の天然に存在するバリアント、例えばスプライスバリアントまたは対立遺伝子バリアントも含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、イヌIL31は、配列番号22または配列番号44のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ネコIL31は、配列番号28のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ウマIL31は、配列番号29のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒトIL31は、配列番号46のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、セイウチIL31は、配列番号47のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、マウスIL31は、配列番号61のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、IL31は、配列番号49、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、または配列番号60のアミノ酸配列を含む。
【0067】
抗体の「IL31結合ドメイン」という用語は、IL31に結合する抗IL31抗体の軽鎖および重鎖によって形成される結合ドメインを意味する。
【0068】
いくつかの実施形態では、IL31結合ドメインは、ヒトIL31に結合するよりも大きい親和性でイヌIL31に結合する。いくつかの実施形態では、IL31結合ドメインは、ネコIL31またはウマIL31などの他のコンパニオンアニマルのIL31に結合する。いくつかの実施形態では、IL31結合ドメインはヒトIL31に結合しない。
【0069】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば、抗体、抗体断片、または抗体結合領域を含む足場タンパク質)が結合する標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物または脂質などの抗原)上の部位を指す。エピトープは、多くの場合、アミノ酸、ポリペプチドまたは糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の3次元構造特徴ならびに特定の荷電特徴を有する。エピトープは、標的分子の近接残基または並置された非近接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖類、脂質部分)の両方から形成され得る。近接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖類、脂質部分)から形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒への曝露時に保持されるが、3次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には変性溶媒での処理時に失われる。エピトープは、限定されないが、少なくとも3、少なくとも5または8~10個の残基(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)を含み得る。いくつかの例では、エピトープは、20残基未満(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)、15残基未満または12残基未満の長さである。2つの抗体は、抗原に対する競合的結合を示す場合、抗原内の同じエピトープに結合し得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基までの一定の最小距離によって同定することができる。いくつかの実施形態では、エピトープは上記の距離によって同定することができ、抗体残基と抗原残基との間の結合(例えば、水素結合)に関与する残基にさらに限定することができる。エピトープは、様々なスキャンによっても同定することができ、例えば、アラニンまたはアルギニンスキャンは、抗原結合分子が相互作用することができる1つ以上の残基を示すことができる。明示的に示されない限り、エピトープとしての残基のセットは、他の残基が特定の抗体のエピトープの一部であることを排除しない。むしろ、そのようなセットの存在は、エピトープの最小系列(または種のセット)を示す。したがって、いくつかの実施形態では、エピトープとして同定された残基のセットは、抗原上のエピトープに対する残基の排他的なリストではなく、抗原に関連する最小のエピトープを示す。
【0070】
いくつかの実施形態では、エピトープは、アミノ酸配列PSDX1X2KI(配列番号45)を含み、ここで、Xは任意のアミノ酸残基である。いくつかの実施形態では、X1は、疎水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X1は、A、V、IおよびLから選択される。いくつかの実施形態では、X1は、VおよびIから選択される。いくつかの実施形態では、X2は、親水性アミノ酸である。いくつかの実施形態では、X2はA、R、K、QおよびNから選択される。いくつかの実施形態では、X2はRおよびQから選択される。いくつかの実施形態では、X1はVであり、X2はRである。いくつかの実施形態では、X1はIであり、X2はQである。いくつかの実施形態では、エピトープは配列番号88のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号23のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号22のアミノ酸34~50内にある。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号22のアミノ酸34~50を含む。
【0071】
「CDR」という用語は、当業者に対する少なくとも1つの同定様式によって定義される相補性決定領域を意味する。いくつかの実施形態では、CDRは、Chothia番号付けスキーム、カバット番号付けスキーム、KabatとChothiaとの組み合わせ、AbM定義、接触定義、またはKabat、Chothia、AbMもしくは接触定義の組み合わせのいずれかに従って定義することができる。抗体内の様々なCDRは、限定されないが、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含むそれらの適切な数および鎖型によって示すことができる。「CDR」という用語は、本明細書では、超可変ループを含む「超可変領域」またはHVRも包含するように使用される。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2、配列番号62、配列番号89または配列番号87のアミノ酸配列を含むCDR-H2、または(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号8または配列番号63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、または(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号2または89のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖と、(a)配列番号8または63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖とを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むCDR-H1、(b)配列番号62または87のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖と、(a)配列番号8または63のアミノ酸配列を含むCDR-L1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖とを含む。
【0075】
本明細書で使用される「可変領域」という用語は、少なくとも3つのCDRを含む領域を指す。いくつかの実施形態では、可変領域は、3つのCDRおよび少なくとも1つのフレームワーク領域(「FR」)を含む。「重鎖可変領域」または「可変重鎖」という用語は、少なくとも3つの重鎖CDRを含む領域を指すために互換的に使用される。「軽鎖可変領域」または「可変軽鎖」という用語は、少なくとも3つの軽鎖CDRを含む領域を指すために互換的に使用される。いくつかの実施形態では、可変重鎖または可変軽鎖は、少なくとも1つのフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、HC-FR1、HC-FR2、HC-FR3およびHC-FR4から選択される少なくとも1つの重鎖フレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、LC-FR1、LC-FR2、LC-FR3およびLC-FR4から選択される少なくとも1つの軽鎖フレームワーク領域を含む。フレームワーク領域は、軽鎖CDR間または重鎖CDR間に並置され得る。例えば、抗体は、以下の構造を有する可変重鎖を含み得る:(HC-FR1)-(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)-(HC-FR4)。抗体は、以下の構造を有する可変重鎖を含み得る:(CDR-H1)-(HC-FR2)-(CDR-H2)-(HC-FR3)-(CDR-H3)。抗体はまた、以下の構造を有する可変軽鎖を含み得る:(LC-FR1)-(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)-(LC-FR4)。抗体はまた、以下の構造を有する可変軽鎖を含み得る:(CDR-L1)-(LC-FR2)-(CDR-L2)-(LC-FR3)-(CDR-L3)。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号4の可変領域重鎖フレームワーク1(HC-FR1)配列、(b)配列番号5のHC-FR2配列、(c)配列番号6のHC-FR3配列、(d)配列番号7のHC-FR4配列、(e)配列番号11の可変領域軽鎖フレームワーク1(LC-FR1)配列、(f)配列番号12のLC-FR2配列、(g)配列番号13のLC-FR3配列、または(h)配列番号14のLC-FR4配列のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号16、(b)配列番号24、または(c)配列番号32の可変軽鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号15または配列番号123、(b)配列番号25、または(c)配列番号33の可変重鎖配列を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号16の可変軽鎖配列および配列番号15または配列番号123の可変重鎖配列、(b)配列番号24の可変軽鎖配列および配列番号25の可変重鎖配列、または(c)配列番号32の可変軽鎖配列および配列番号33の可変重鎖配列を含む。
【0077】
本明細書で使用される「定常領域」という用語は、少なくとも3つの定常ドメインを含む領域を指す。「重鎖定常領域」または「定常重鎖」という用語は、少なくとも3つの重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む領域を指すために互換的に使用される。非限定的な例示的重鎖定常領域としては、γ、δ、α、εおよびμが挙げられる。各重鎖定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体であり、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。特定のアイソタイプは、サブクラスにさらに細分することができる。例えば、IgG抗体としては、限定されないが、IgG1(γ1定常領域を含む)、IgG2(γ2定常領域を含む)、IgG3(γ3定常領域を含む)およびIgG4(γ4定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgA抗体としては、限定されないが、IgA1(α1定常領域を含む)およびIgA2(α2定常領域を含む)抗体が挙げられ、およびIgM抗体としては、限定されないが、IgM1およびIgM2が挙げられる。「軽鎖定常領域」または「定常軽鎖」という用語は、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を指すために互換的に使用される。非限定的な例示的軽鎖定常領域としては、λおよびκが挙げられる。ドメイン内の機能を変化させない欠失および変化は、特に指定されない限り、「定常領域」という用語の範囲内に包含される。イヌ、ネコおよびウマは、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMなどの抗体クラスを有する。イヌIgG抗体クラス内には、IgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-Dがある。ネコIgG抗体クラス内には、IgG1a、IgG1bおよびIgG2がある。ウマIgG抗体クラス内には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6およびIgG7がある。
【0078】
「キメラ抗体」または「キメラ」という用語は、重鎖または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来し、重鎖または軽鎖の残りの少なくとも一部が異なる供給源または種に由来する抗体を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、第1の種からの少なくとも1つの可変領域(例えば、マウス、ラット、カニクイザルなど)および第2の種からの少なくとも1つの定常領域(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマなど)を含む抗体を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのマウス可変領域および少なくとも1つのイヌ定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのマウス可変領域および少なくとも1つのネコ定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体のすべての可変領域は、第1の種に由来し、キメラ抗体のすべての定常領域は、第2の種に由来する。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、コンパニオンアニマル由来の定常重鎖領域または定常軽鎖領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにコンパニオンアニマル定常重鎖および軽鎖を含む。例えば、キメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにイヌ定常重鎖および軽鎖を含み得る;キメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにネコ定常重鎖および軽鎖を含み得る;または、キメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにウマ定常重鎖および軽鎖を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、
a.(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号27の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖配列、または
b。(i)配列番号30の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号31の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖配列
を含むキメラ抗体を含む。
【0080】
「イヌキメラ」または「イヌキメラ抗体」とは、イヌに由来する重鎖の少なくとも一部または軽鎖の少なくとも一部を有するキメラ抗体を指す。「ネコキメラ」または「ネコキメラ抗体」とは、ネコに由来する重鎖の少なくとも一部または軽鎖の少なくとも一部を有するキメラ抗体を指す。「ウマキメラ」または「ウマキメラ抗体」とは、ウマに由来する重鎖の少なくとも一部または軽鎖の少なくとも一部を有するキメラ抗体を指す。いくつかの実施形態では、イヌキメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにイヌ定常重鎖および軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、ネコキメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにネコ定常重鎖および軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、ウマキメラ抗体は、マウス可変重鎖および軽鎖ならびにウマ定常重鎖および軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス可変重鎖フレームワーク領域またはマウス可変軽鎖フレームワーク領域を含むキメラ抗体である。
【0081】
本明細書で使用される「イヌ抗体」は、イヌにおいて産生される抗体;イヌ免疫グロブリン遺伝子を含むかまたはイヌ免疫グロブリンペプチドを含む非イヌ動物において産生される抗体;またはファージディスプレイなどのin vitro方法を使用して選択される抗体であって、抗体レパートリーがイヌ免疫グロブリン配列に基づく抗体を包含する。「イヌ抗体」という用語は、イヌ配列である配列の属を示す。したがって、この用語は、抗体が作成されたプロセスを示すものではなく、関連する配列の属を示すものである。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、IgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-D定常領域から選択されるイヌ重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はイヌIgG-A、IgG-B、IgG-CまたはIgG-D抗体である。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号17の重鎖アミノ酸配列、(b)配列番号18の重鎖アミノ酸配列、(c)配列番号19の重鎖アミノ酸配列、または(d)配列番号20の重鎖アミノ酸配列を含む。
【0083】
本明細書で使用される「ネコ抗体」は、ネコにおいて産生される抗体;ネコ免疫グロブリン遺伝子を含むかまたはネコ免疫グロブリンペプチドを含む非ネコ動物において産生される抗体;またはファージディスプレイなどのin vitro方法を使用して選択される抗体であって、抗体レパートリーがネコ免疫グロブリン配列に基づく抗体を包含する。「ネコ抗体」という用語は、ネコ配列である配列の属を示す。したがって、この用語は、抗体が作成されたプロセスを示すものではなく、関連する配列の属を示すものである。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、IgG1、IgG2aおよびIgG2b定常領域から選択されるネコ重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、ネコIgG1、IgG2aまたはIgG2b抗体である。
【0085】
本明細書で使用される「ウマ抗体」は、ウマにおいて産生される抗体;ウマ免疫グロブリン遺伝子を含むかまたはウマ免疫グロブリンペプチドを含む非ウマ動物において産生される抗体;またはファージディスプレイなどのin vitro方法を使用して選択される抗体であって、抗体レパートリーがウマ免疫グロブリン配列に基づく抗体を包含する。「ウマ抗体」という用語は、ウマ配列である配列の属を示す。したがって、この用語は、抗体が作成されたプロセスを示すものではなく、関連する配列の属を示すものである。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6およびIgG7定常領域から選択されるウマ重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、ウマIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6およびIgG7抗体である。
【0087】
「イヌ化抗体」とは、非イヌ可変領域の一部の少なくとも1つのアミノ酸が、イヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置換されている抗体を意味する。いくつかの実施形態では、イヌ化抗体は、少なくとも1つのイヌ定常領域(例えば、γ定数領域、α定数領域、δ定数領域、ε定数領域、μ定数領域など)またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、イヌ化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)2などの抗体断片である。「イヌ化」という用語はまた、非イヌ免疫グロブリンの最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合配列)である非イヌ(例えば、マウス)抗体の形態を示す。イヌ化抗体には、レシピエントのCDRからの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非イヌ種のCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されたイヌ免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれ得る。いくつかの例では、イヌ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌ残基によって置換される。さらに、イヌ化抗体は、レシピエント抗体にもインポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見られないが、抗体性能をさらに改良および最適化するために含められる残基を含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、マウス可変重鎖またはマウス可変軽鎖の一部の少なくとも1つのアミノ酸残基が、イヌ可変領域からの対応するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、修飾された鎖は、イヌ定常重鎖またはイヌ定常軽鎖に融合される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号15または配列番号123の重鎖配列、(b)配列番号17の重鎖配列、(c)配列番号18の重鎖配列、(d)配列番号19の重鎖配列、(e)配列番号20の重鎖配列、(f)配列番号16の軽鎖配列、または(g)配列番号21の軽鎖配列を含むイヌ化抗体である。
【0089】
「ネコ化抗体」とは、非ネコ可変領域の一部の少なくとも1つのアミノ酸が、ネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置換されている抗体を意味する。いくつかの実施形態では、ネコ化抗体は、少なくとも1つのネコ定常領域(例えば、γ定数領域、α定数領域、δ定数領域、ε定数領域、μ定数領域など)またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ネコ化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)2などの抗体断片である。「ネコ化」という用語はまた、非ネコ免疫グロブリンの最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合配列)である非ネコ(例えば、マウス)抗体の形態を示す。ネコ化抗体には、レシピエントのCDRからの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ネコ種のCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されたネコ免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれ得る。いくつかの例では、ネコ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ネコ残基によって置換される。さらに、ネコ化抗体は、レシピエント抗体にもインポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見られないが、抗体性能をさらに改良および最適化するために含められる残基を含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、マウス可変重鎖またはマウス可変軽鎖の一部の少なくとも1つのアミノ酸残基が、ネコ可変領域からの対応するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、修飾された鎖は、ネコ定常重鎖またはイヌ定常軽鎖に融合される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号32の軽鎖配列、(b)配列番号34の軽鎖配列、(c)配列番号33の重鎖配列、または(d)配列番号35の重鎖配列を含むネコ化抗体である。
【0091】
「ウマ化抗体」とは、非ウマ可変領域の一部の少なくとも1つのアミノ酸が、ウマ可変領域からの対応するアミノ酸で置換されている抗体を意味する。いくつかの実施形態では、ウマ化抗体は、少なくとも1つのウマ定常領域(例えば、γ定数領域、α定数領域、δ定数領域、ε定数領域、μ定数領域など)またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ウマ化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)2などの抗体断片である。「ウマ化」という用語はまた、非ウマ免疫グロブリンの最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合配列)である非ウマ(例えば、マウス)抗体の形態を示す。ウマ化抗体には、レシピエントのCDRからの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ウマ種のCDRからの残基(ドナー抗体)で置換されたウマ免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれ得る。いくつかの例では、ウマ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ウマ残基によって置換される。さらに、ウマ化抗体は、レシピエント抗体にもインポートされたCDRまたはフレームワーク配列にも見られないが、抗体性能をさらに改良および最適化するために含められる残基を含むことができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、マウス可変重鎖またはマウス可変軽鎖の一部の少なくとも1つのアミノ酸残基が、ウマ可変領域からの対応するアミノ酸で置換されている。いくつかの実施形態では、修飾された鎖は、ウマ定常重鎖またはイヌ定常軽鎖に融合される。
【0093】
「断片結晶化可能ポリペプチド」または「Fcポリペプチド」とは、エフェクター分子および細胞と相互作用する抗体分子の部分である。これは、免疫グロブリン重鎖のC末端部分を含む。本明細書で使用される場合、Fcポリペプチドは、全Fcポリペプチドの1つ以上の生物活性を有するFcドメインの断片を含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドの生物活性は、FcRnに結合する能力である。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドの生物活性は、C1qに結合する能力である。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドの生物活性は、CD16に結合する能力である。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドの生物活性は、プロテインAに結合する能力である。Fcポリペプチドの「エフェクター機能」は、刺激に応答して任意の抗体によって全体的または部分的に行われる作用または活性であり、補体固定および/またはADCC(抗体依存性細胞傷害性)誘導を含み得る。
【0094】
「IgX Fc」という用語は、Fc領域が特定の抗体アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMなど)に由来することを意味し、「X」は抗体アイソタイプを示す。したがって、例えば、「IgG Fc」はγ鎖のFc領域を示し、「IgA Fc」はα鎖のFc領域を示し、「IgD Fc」はδ鎖のFc領域を示し、「IgE Fc」はε鎖のFc領域を示し、「IgM Fc」はμ鎖のFc領域を示す。いくつかの実施形態では、IgG Fc領域はCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCL1を含む。「IgG-N-Fc」は、Fc領域が抗体アイソタイプの特定のサブクラス(例えばイヌIgGサブクラスA、B、CまたはD;ネコIgGサブクラス1、2aまたは2bなど)に由来することを示し、「N」はサブクラスを示す。いくつかの実施形態では、IgX FcまたはIgX-N-Fc領域は、イヌ、ネコまたはウマなどのコンパニオンアニマルに由来する。いくつかの実施形態では、IgG Fc領域は、IgG-A、IgG-B、IgG-CまたはIgG-Dなどのイヌγ重鎖から単離される。いくつかの例では、IgG Fc領域は、IgG1、IgG2aまたはIgG2bなどのネコγ重鎖から単離される。IgG-A、IgG-B、IgG-CまたはIgG-DのFc領域を含む抗体は、組換え産生系においてより高い発現レベルを提供し得る。
【0095】
「IgX Fc」および「IgX Fcポリペプチド」という用語は、特に指示されない限り、野生型IgX FcポリペプチドおよびバリアントIgX Fcポリペプチドを含む。
【0096】
「野生型」とは、天然に存在するポリペプチドまたはその断片の非変異バージョンを指す。野生型ポリペプチドを組換え的に産生してもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、野生型IgG Fcポリペプチドは、配列番号90または配列番号91のアミノ酸配列を含む。
【0098】
「バリアント」とは、単一または複数の非天然アミノ酸の置換、欠失および/または付加によって参照ポリペプチドとは異なるポリペプチドである。いくつかの実施形態では、バリアントは、参照ポリペプチド(例えば、野生型ポリペプチド)の少なくとも1つの生物活性を保持する。
【0099】
本明細書で使用される「バリアントIgG Fcポリペプチド」とは、単一または複数のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加によって参照IgG Fcポリペプチドとは異なり、参照IgG Fcポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を実質的に保持するIgG Fcポリペプチドである。
【0100】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、コンパニオンアニマル種のバリアントIgG Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、バリアントイヌIgG FcポリペプチドまたはネコIgG Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチド(例えば、バリアントイヌIgG-A Fcポリペプチド、バリアントイヌIgG-C Fcポリペプチド、またはバリアントイヌIgG-D Fcポリペプチド、バリアントネコIgG1a Fcポリペプチド、バリアントネコIgG1b Fcポリペプチド、またはバリアントネコIgG2 Fcポリペプチド)は、参照(例えば、野生型)ポリペプチドが実質的に欠く活性を有する。例えば、いくつかの実施形態では、バリアントイヌIgG-A Fcポリペプチド、バリアントイヌIgG-C FcポリペプチドまたはバリアントイヌIgG-D Fcポリペプチドは、プロテインAに結合する。
【0101】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、修飾されたプロテインA結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、プロテインAに対する結合親和性が増加している。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、プロテインAカラムクロマトグラフィーを使用して精製され得る。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、修飾されたCD16結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、CD16に対する結合親和性が減少している。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcは、ADCC免疫応答が低減し得る。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、修飾されたC1q結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、C1qに対する結合親和性が低減する。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、補体結合が低減し得る。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcは、補体媒介性免疫応答が低減し得る。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、修飾されたFcRn結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、FcRnに対する結合親和性が増加している。
【0102】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、修飾された新生児受容体(FcRn)結合親和性を有する。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、例えば低pHで、FcRnに対する結合親和性が増加している。
【0103】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、約5.0~約6.5の範囲のpH、例えば約5.0のpH、約5.2のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、約6.2のpH、または約6.5のpHで、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、または任意のタンパク質-タンパク質相互作用ツールによって測定して、野生型IgG Fcポリペプチドよりも高い親和性でFcRnに結合する。
【0104】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、約5.0~約6.5の範囲のpH、例えば約5.0のpH、約5.5のpH、約6.0のpH、または約6.5のpHで、バイオレイヤー干渉法、表面プラズモン共鳴法、または任意のタンパク質-タンパク質相互作用ツールによって測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、または1×10-12M未満の解離定数(Kd)でFcRnに結合する。
【0105】
いくつかの実施形態では、イヌIL31に結合する長時間作用性の単離抗体が提供される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は増加した血清半減期を有する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体はバリアントFcポリペプチドを含み、この場合、抗IL31抗体は野生型Fcポリペプチドを含む抗体と比較して増加した血清半減期を有する。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、野生型Fcポリペプチドと比較して増加した親和性でFcRnに結合することができるバリアントIgG Fcポリペプチドを含み、抗体は、野生型Fcポリペプチドを含む抗IL31抗体と比較して増加した血清半減期を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の23位に対応する位置にチロシンまたはフェニルアラニンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位に対応する位置にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の207位に対応する位置にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位に対応する位置にチロシンおよび207位に対応する位置にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の207位に対応する位置にチロシンを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の23位にチロシンまたはフェニルアラニンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位にチロシンおよび207位にヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位にチロシンおよび207位にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の207位にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位にチロシンおよび207位にヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の82位にチロシンおよび207位にチロシンを含む。いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号90の207位にチロシンを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、バリアントIgG Fcポリペプチドは、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107のアミノ酸配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、本明細書に記載のバリアントイヌIgG-A、IgG-B、IgG-CまたはIgG-D Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(a)配列番号96または配列番号97のアミノ酸配列を含むバリアントイヌIgG-A Fcポリペプチド;配列番号94、配列番号95、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106または配列番号107のアミノ酸配列を含むバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド;または(c)配列番号98または配列番号99のアミノ酸配列を含むバリアントイヌIgG-D Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号105のアミノ酸配列を含むバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含むバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含むバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号108、配列番号109または配列番号110のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号114、配列番号115または配列番号116のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号117、配列番号118または配列番号119のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、配列番号120、配列番号121または配列番号122のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、a)配列番号108、配列番号109または配列番号110の重鎖アミノ酸配列、b)配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列、c)配列番号114、配列番号115または配列番号116の重鎖アミノ酸配列、d)配列番号117、配列番号118または配列番号119の重鎖アミノ酸配列、またはe)配列番号120、配列番号121または配列番号122の重鎖アミノ酸配列を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(i)配列番号26の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号108、配列番号109または配列番号110の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(i)配列番号21の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号125、配列番号126または配列番号127の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(i)配列番号37の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号114、配列番号115または配列番号116の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(i)配列番号38の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号117、配列番号118、配列番号119の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、(i)配列番号39の軽鎖アミノ酸配列、(ii)配列番号120、配列番号121または配列番号122の重鎖アミノ酸配列、または(iii)(i)のような軽鎖アミノ酸配列および(ii)のような重鎖アミノ酸配列を含む。
【0118】
「親和性」という用語は、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強さを意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、当該技術分野で公知の一般的な方法、例えば、イムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)または表面プラズモン共鳴法デバイスなどによって測定することができる。
【0119】
「KD」、「Kd」、「Kd」または「Kd値」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すために互換的に使用される。いくつかの実施形態では、抗体のKdは、供給業者の指示書に従って、Octet(登録商標)System(Pall ForteBio LLC,Fremont,CA)などのバイオセンサーを使用するバイオレイヤー干渉法アッセイを使用して測定される。簡潔には、ビオチン化抗原をセンサー先端に結合させ、抗体の会合を90秒間監視し、解離を600秒間監視する。希釈および結合工程のためのバッファーは、20mMホスフェート、150mM NaCl、pH7.2である。任意のドリフトを補正するために、バッファーのみのブランク曲線が差し引かれる。データを、ForteBioデータ分析ソフトウェアを使用して2:1結合モデルに当てはめて、会合速度定数(kon)、解離速度定数(koff)およびKdを決定する。平衡解離定数(Kd)は、koff/konの比として計算される。「kon」という用語は、抗体と抗原との会合の速度定数を指し、「koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を指す。
【0120】
抗原またはエピトープに「結合する」という用語は、当該技術分野でよく理解されている用語であり、そのような結合を決定する方法も当該技術分野でよく知られている。分子は、特定の細胞または物質と反応するか、それと会合するか、またはそれに対する親和性を有し、反応、会合または親和性が、当該技術分野で公知の1つ以上の方法、例えば、イムノブロット、ELISA KD、KinEx A、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴法デバイスなどによって検出可能である場合、「結合」を示すと言われる。
【0121】
「表面プラズモン共鳴法」とは、例えばBIAcore(商標)システム(BIAcore International AB、GE Healthcare社、Uppsala,SwedenおよびPiscataway,N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによってリアルタイムの生物特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を示す。さらなる説明については、Jonsson et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26を参照されたい。
【0122】
「バイオレイヤー干渉法」とは、バイオセンサー先端および内部参照層上の固定化タンパク質の層から反射された光の干渉パターンを分析する光学分析技術を指す。バイオセンサー先端に結合する分子の数の変化は、リアルタイムで測定することができる干渉パターンのシフトを引き起こす。バイオレイヤー干渉法のための非限定的な例示的デバイスは、Octet(登録商標)システム(Pall ForteBio LLC)である。例えば、Abdiche et al.,2008,Anal.Biochem.377:209-277を参照されたい。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、バイオレイヤー干渉法によって測定して、5×10-6M未満、1×10-6M未満、5×10-7M未満、1×10-7M未満、5×10-8M未満、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-9M未満、5×10-10M未満、1×10-10M未満、5×10-11M未満、1×10-11M未満、5×10-12M未満、または1×10-12M未満の解離定数(Kd)で、イヌIL31、ネコIL31またはウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、バイオレイヤー干渉法によって測定して、5x10-6M~1x10-6M、5x10-6M~5x10-7M、5x10-6M~1x10-7M、5x10-6M~5x10-8M、5x10-6M~1x10-8M、5x10-6M~5x10-9M、5x10-6M~1x10-9M、5x10-6M~5x10-10M、5x10-6M~1x10-10M、5x10-6M~5x10-11M、5x10-6M~1x10-11M、5x10-6M~5x10-12M、5x10-6M~1x10-12M、1x10-6M~5x10-7M、1x10-6M~1x10-7M、1x10-6M~5x10-8M、1x10-6M~1x10-8M、1x10-6M~5x10-9M、1x10-6M~1x10-9M、1x10-6M~5x10-10M、1x10-6M~1x10-10M、1x10-6M~5x10-11M、1x10-6M~1x10-11M、1x10-6M~5x10-12M、1x10-6M~1x10-12M、5x10-7M~1x10-7M、5x10-7M~5x10-8M、5x10-7M~1x10-8M、5x10-7M~5x10-9M、5x10-7M~1x10-9M、5x10-7M~5x10-10M、5x10-7M~1x10-10M、5x10-7M~5x10-11M、5x10-7M~1x10-11M、5x10-7M~5x10-12M、5x10-7M~1x10-12M、1x10-7M~5x10-8M、1x10-7M~1x10-8M、1x10-7M~5x10-9M、1x10-7M~1x10-9M、1x10-7M~5x10-10M、1x10-7M~1x10-10M、1x10-7M~5x10-11M、1x10-7M~1x10-11M、1x10-7M~5x10-12M、1x10-7M~1x10-12M、5x10-8M~1x10-8M、5x10-8M~5x10-9M、5x10-8M~1x10-9M、5x10-8M~5x10-10M、5x10-8M~1x10-10M、5x10-8M~5x10-11M、5x10-8M~1x10-11M、5x10-8M~5x10-12M、5x10-8M~1x10-12M、1x10-8M~5x10-9M、1x10-8M~1x10-9M、1x10-8M~5x10-10M、1x10-8M~1x10-10M、1x10-8M~5x10-11M、1x10-8M~1x10-11M、1x10-8M~5x10-12M、1x10-8M~1x10-12M、5x10-9M~1x10-9M、5x10-9M~5x10-10M、5x10-9M~1x10-10M、5x10-9M~5x10-11M、5x10-9M~1x10-11M、5x10-9M~5x10-12M、5x10-9M~1x10-12M、1x10-9M~5x10-10M、1x10-9M~1x10-10M、1x10-9M~5x10-11M、1x10-9M~1x10-11M、1x10-9M~5x10-12M、1x10-9M~1x10-12M、5x10-10M~1x10-10M、5x10-10M~5x10-11M、1x10-10M~5x10-11M、1x10-10M~1x10-11M、1x10-10M~5x10-12M、1x10-10M~1x10-12M、5x10-11M~1x10-12M、5x10-11M~5x10-12M、5x10-11M~1x10-12M、1x10-11M~5x10-12M、または1x10-11M~1x10-12MのKdでイヌIL31、ネコIL31またはウマIL31に結合する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、イムノブロット解析によって決定して、イヌIL31、ネコIL31またはウマIL31に結合する。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、イムノブロット解析および/またはバイオレイヤー干渉法によって決定して、ヒトIL31に結合しない。
【0125】
いくつかの実施形態では、IL31への結合について本明細書に記載の抗IL31抗体(例えば、M14、M18、M19またはM87)と競合する抗IL31抗体が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体のいずれかとの結合と競合する抗体を作製または使用することができる。いくつかの実施形態では、イヌIL31またはネコIL31への結合においてモノクローナルM14抗体と競合する抗IL31抗体が提供される。
【0126】
「増加した」または「より大きい」とは、参照に対する増加を意味する。いくつかの実施形態では、「増加した」または「より大きい」とは、参照値に対して約5%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約125%以上、約150%以上、約200%以上、または約300%以上の全体的な増加を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、「増加する」または「より大きい」とは、参照値に対して約5%~約50%、約10%~約20%、約50%~約100%、約25%~約70%の全体的な増加を引き起こす能力を意味する。
【0127】
いくつかの実施形態では、バリアントFcポリペプチド、例えばバリアントIgG Fcポリペプチドは、参照Fcポリペプチドに対して約5%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約125%以上、約150%以上、約200%以上の増加した親和性で、FcRnまたはFcRn/B2Mに結合することができる。いくつかの実施形態では、バリアントFcポリペプチドは、参照Fcポリペプチドに対して約5%~約50%、約10%~約20%、約50%~約100%、約25%~約70%の増加した親和性で、FcRnまたはFcRn/B2Mに結合することができる。いくつかの実施形態では、参照Fcポリペプチドは野生型Fcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、異なるバリアントFcポリペプチドである。いくつかの実施形態では、親和性は、約5.0~約6.5の範囲のpHでバイオレイヤー干渉法によって測定される。
【0128】
いくつかの実施形態では、薬物動態分析が、半減期、Tmax、Cmaxおよび曲線下面積(AUC)を含む、任意の数の薬物動態パラメーターを決定するために行われる。例えば、動物に、本明細書に記載の抗IL31抗体および異なる時間間隔(例えば、注射前および/または投与後0.5、1、6、24、48、72、168、216および/または336時間)で採取される血清試料を投与することができる。血清試料中の抗体濃度は、例えばELISAによって決定することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、参照抗IL31抗体に対して約5%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上、約125%以上、約150%以上、約200%以上、約250%以上、または約300%以上の血清半減期を有する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、参照抗IL31抗体に対して約5%~約50%、約10%~約20%、約50%~約100%、約25%~約70%の血清半減期を有する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、参照抗IL31抗体に対して約1.5倍以上、約2倍以上、約3倍以上の血清半減期を有する。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、参照抗IL31抗体に対して約5%~約50%、約10%~約20%、約50%~約100%、約25%~約70%、約200%~約300%長い血清半減期を有する。いくつかの実施形態では、参照抗IL31抗体は、野生型Fcポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、異なるバリアントFcポリペプチドである。
【0130】
「バリアント」とは、最大パーセント配列同一性を達成するために、必要に応じて、配列をアラインメントし、ギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、天然配列ポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを意味する。そのようなバリアントとしては、例えば、ポリペプチドのN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加、欠失されているポリペプチドが挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態では、バリアントは、天然配列ポリペプチドと少なくとも約50%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0132】
本明細書で使用される場合、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」および「相同性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために、必要に応じて、配列をアラインメントし、ギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALINE(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術の範囲内にある様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0133】
アミノ酸置換は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸を別のアミノ酸で置換することを含み得るが、これに限定されない。例示的な置換を表2に示す。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、その生成物を所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0134】
【0135】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0136】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0137】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、重鎖および軽鎖を含み、
a.重鎖は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H1配列;配列番号2、配列番号62、配列番号89または配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H2配列;および、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-H3配列を含み、
b.軽鎖は、配列番号8または配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L1配列;配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L2配列;および、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性または少なくとも98%の配列同一性を有するCDR-L3配列を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、重鎖および軽鎖を含み、
a.(i)配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号25のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
b.(i)配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号15または配列番号123のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
c.(i)配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
d.(i)配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号67のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
e.(i)配列番号65のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号68のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列;または
f.(i)配列番号66のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変軽鎖配列;(ii)配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の配列同一性を有する可変重鎖配列;または(iii)(i)のような可変軽鎖配列および(ii)のような可変重鎖配列。
【0139】
「ベクター」という用語は、クローニングされたポリヌクレオチドまたは宿主細胞内で増殖させることができるポリヌクレオチドを含有するように操作することができるポリヌクレオチドを表すために使用される。ベクターは、以下の要素:複製開始点、目的のポリペプチドの発現を調節する1つ以上の調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサーなど)、または1つ以上の選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子および比色アッセイにおいて使用することができる遺伝子、例えば、β-ガラクトシダーゼなど)のうちの1つ以上を含み得る。「発現ベクター」という用語は、宿主細胞において目的のポリペプチドを発現させるために使用されるベクターを指す。
【0140】
「宿主細胞」とは、ベクターまたは単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得るかまたはレシピエントであった細胞を指す。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。例示的な真核細胞としては、哺乳動物細胞、例えば霊長類または非霊長類動物細胞;真菌細胞、例えば酵母;植物細胞;および昆虫細胞が挙げられる。非限定的な例示的哺乳動物細胞としては、限定されないが、NS0細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell)、293細胞、およびCHO細胞、ならびに293-6E、DG44、CHO-SおよびCHO-K細胞などのそれらの誘導体が挙げられる。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、天然、偶発的または意図的な突然変異のために、(形態またはゲノムDNA補体において)元の親細胞と必ずしも完全に同一ではない場合がある。宿主細胞は、本明細書で提供されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドでin vivoでトランスフェクトされた細胞を含む。
【0141】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、通常天然に見出されるかまたは産生される成分の少なくともいくつかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の成分の少なくともいくつかから分離される場合、「単離された」と呼ばれる。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合、ポリペプチドを含有する上清を、それを産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」ことと考えられる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的に天然に見出されるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、ゲノムDNAまたはミトコンドリアDNAなど)の一部ではない場合、または例えばRNAポリヌクレオチドの場合に、それが産生された細胞の成分の少なくともいくつかから分離されている場合、「単離された」と呼ばれる。したがって、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、クロマトグラフィー、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびCHTクロマトグラフィーなどを使用して精製される。
【0142】
「コンパニオンアニマル種」という用語は、ヒトのコンパニオンとなるのに適した動物を指す。いくつかの実施形態では、コンパニオンアニマル種は、イヌ、ネコ、ドッグ、キャット、ホース、ウサギ、フェレット、モルモット、げっ歯類などの小型哺乳動物である。いくつかの実施形態では、コンパニオンアニマル種は、ウマ、ウシ、ブタなどの家畜である。
【0143】
「IL31シグナル伝達機能」という用語は、IL31がその受容体または受容体複合体に結合するときに起こる下流活性のいずれか1つまたは組み合わせを指す。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、ヤヌスキナーゼ(Jak)1またはJak 2シグナル伝達分子の活性化を含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、STAT-3またはSTAT-5タンパク質のリン酸化を含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、ERK1/2 MAPキナーゼシグナル伝達経路を活性化することを含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、PI3K/AKTシグナル伝達経路を活性化することを含む。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能は、Jak1/2シグナル伝達経路を活性化することを含む。
【0144】
「STATリン酸化」とは、リン酸化によるSTATタンパク質の発現後修飾を意味する。例えば、「STAT-3リン酸化」は、STAT-3のリン酸化を指し、「STAT-5リン酸化」はSTAT-5のリン酸化を指す。いくつかの実施形態では、STAT-3のリン酸化がイムノブロット解析によって測定される。例えば、細胞(例えば、イヌ単球DH82細胞)を、本明細書に記載の抗IL31抗体の存在下、37℃で24時間、15%熱不活性化ウシ胎児血清、2mmol/L GlutaMax、1mmol/Lピルビン酸ナトリウムおよび10nm/mLイヌインターフェロン-c(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)を含有する増殖培地(例えば、MEM、Life Technologies(登録商標))において1ウェルあたり1×105細胞の密度で96ウェル細胞培養プレートに置床する。抗ホスホSTAT-3抗体および抗STAT-3抗体(R&D Systems)を使用した細胞溶解物のイムノブロット解析を使用して、リン酸化STAT-3および非リン酸化STAT-3の濃度を互いに対して検出し、β-アクチン対照と比較した。イムノブロットによってタンパク質の濃度を定性的または定量的に決定するための方法は、当業者に理解されている。いくつかの実施形態では、相対濃度は、イムノブロットの目視検査によって定性的に決定される。いくつかの実施形態では、リン酸化STAT-3および非リン酸化STAT-3の濃度は、イムノブロットをデジタル画像化し、バンドの強度を決定し、既知濃度のSTAT-3タンパク質の線形標準曲線を使用して試料中のリン酸化STAT-3または非リン酸化STAT-3の濃度を逆算することによって定量的に決定される。
【0145】
「低減する」または「阻害する」とは、参照と比較して、活性、機能、または量を減少、低減、または停止させることを意味する。いくつかの実施形態では、「低減する」または「阻害する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、「低減する」または「阻害する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、「低減する」または「阻害する」とは、75%、85%、90%、95%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。いくつかの実施形態では、上記の量は、同じ期間にわたる対照用量(プラセボなど)と比較して、一定期間にわたって阻害または減少される。本明細書で使用される「参照」とは、比較目的で使用される任意の試料、標準、またはレベルを指す。参照は、健康または非疾患性試料から得ることができる。いくつかの例では、参照は、コンパニオンアニマルの非疾患性または非治療試料から得られる。いくつかの例では、参照は、試験または治療されている動物ではない特定の種の1つ以上の健康な動物から得られる。
【0146】
本明細書で使用される「実質的に低減した」という用語は、当業者が2つの値の間の差を該値によって測定された生物学的特性の文脈内で統計的に有意であると見なすような、数値と参照数値との間の十分に高い程度の低減を示す。いくつかの実施形態では、実質的に低減した数値は、参照値と比較して、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれか1つよりも大きく低減する。
【0147】
いくつかの実施形態では、IL31抗体は、コンパニオンアニマル種におけるIL31シグナル伝達機能を、STAT-3リン酸化における低減によって測定して、抗体の非存在下におけるIL31シグナル伝達機能と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%低減することができる。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能の低減またはSTAT-3リン酸化の低減は、10%~15%、10%~20%、10%~25%、10%~30%、10%~35%、10%~40%、10%~45%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~100%、15%~20%、15%~25%、15%~30%、15%~35%、15%~40%、15%~45%、15%~50%、15%~60%、15%~70%、15%~80%、15%~90%、15%~100%、20%~25%、20%~30%、20%~35%、20%~40%、20%~45%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~100%、25%~30%、25%~35%、25%~40%、25%~45%、25%~50%、25%~60%、25%~70%、25%~80%、25%~90%、25%~100%、30%~35%、30%~40%、30%~45%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、30%~100%、35%~40%、35%~45%、35%~50%、35%~60%、35%~70%、35%~80%、35%~90%、35%~100%、40%~45%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、40%~100%、45%~50%、45%~60%、45%~70%、45%~80%、45%~90%、45%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~100%、60%~70%、60%~80%、60%~90%、60%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~100%、80%~90%、80%~100%、または90%~100%である。
【0148】
薬学的組成物
「薬学的製剤」および「薬学的組成物」という用語は、有効成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0149】
「薬学的に許容される担体」とは、対象への投与のための「薬学的組成物」を一緒に含む治療剤と共に使用するための当該技術分野で慣用的な非毒性の固体、半固体、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、処方助剤、または担体を指す。薬学的に許容される担体は、使用される投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、製剤の他の成分と適合性である。薬学的に許容される担体は、使用される製剤に適している。薬学的に許容される担体の例としては、アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、イヌまたは他の動物アルブミン;バッファー、例えばホスフェート、シトレート、トロメタミンまたはHEPESバッファー;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物;水;塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、または三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン、セルロース系物質;ポリエチレングリコール;スクロース;マンニトール;または限定されないが、アルギニンを含むアミノ酸が挙げられる。
【0150】
薬学的組成物は、凍結乾燥形態で保存することができる。したがって、いくつかの実施形態では、調製プロセスは凍結乾燥工程を含む。次いで、凍結乾燥組成物は、典型的には、イヌ、ネコまたはウマへの投与前に、非経口投与に適した水性組成物として再製剤化され得る。他の実施形態では、特に抗体が熱変性および酸化変性に対して非常に安定である場合、薬学的組成物は、液体として、すなわち水性組成物として保存することができ、これをイヌ、ネコまたはウマに直接または適切な希釈で投与することができる。凍結乾燥組成物は、滅菌注射用水(WFI)で再構成することができる。抗菌剤(例えば、静菌試薬、例えばベンジルアルコール)が含まれ得る。したがって、本発明は、固体または液体形態の薬学的組成物を提供する。
【0151】
薬学的組成物のpHは、投与される場合、約pH5~約pH8の範囲であり得る。本発明の組成物は、治療目的で使用される場合、無菌である。無菌状態は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)による濾過を含む、当該技術分野で公知のいくつかの手段のいずれかによって達成することができる。無菌状態は、抗菌剤の有無にかかわらず維持され得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、5.0~6.2、5.0~6.0または5.3~5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1または6.2のpHを有する。
【0153】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、L-ヒスチジン、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、80nM~200nM、100nM~180nM、100nM~175nM、110nM~170nM、120nM~160nM、120nM~150nM、130nM~150nM、130nM~160nM、100nM、80nM、110nM、120nM、130nM、140nM、150nM、160nM、170nM、180nMまたは200nMの濃度で塩化ナトリウムを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、0.005mg/mL~0.5mg/mL、0.01mg/mL~0.1mg/mL、0.1mg/mL~0.5mg/mL、0.005mg/mL~0.01mg/mL、0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.05mg/mL、0.06mg/mL、0.07mg/mL、0.08mg/mL、0.09mg/mLまたは0.1mg/mLの濃度のポリソルベート80を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、5mM~100mM、10mM~50mM、20mM~30mM、10mM~30mM、20mM~80mM、30mM~70mM、40mM~60mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、40mMまたは50mMの濃度でL-ヒスチジンを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、m-クレゾールまたはベンジルアルコールを含む。いくつかの実施形態では、m-クレゾールの濃度は、約0.2%、約0.1%~約0.3%、約0.08%~約0.25%、または約0.05%~約0.25%である。いくつかの実施形態では、ベンジルアルコールの濃度は、約1%、約0.5%~約2%、約0.2%~約2.5%、約1%~約5%、約0.5%~約5%、または約1%~約3%である。
【0158】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は糖を含む。いくつかの実施形態では、糖は、スクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトース、および/またはソルビトールである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、0.5%~20%、1%~10%、1%~5%、1%~3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%の濃度で糖を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、抗菌剤を含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、m-クレゾールまたはメチルパラベンを含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、0.2%のm-クレゾールを含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体または薬学的組成物は、0.9%のメチルパラベンを含む。
【0160】
抗体および薬学的組成物の使用
本発明の抗体を含む抗体または薬学的組成物は、IL-31誘導状態を治療するために有用であり得る。本明細書で使用される場合、「IL31誘導状態」とは、IL31濃度の上昇したレベルまたは変化した勾配に関連する、それによって引き起こされる、またはそれによって特徴付けられる疾患を意味する。そのようなIL31誘導状態には、限定されないが、掻痒性疾患またはアレルギー疾患が含まれる。いくつかの実施形態では、IL31誘導状態は、アトピー性皮膚炎、掻痒症、喘息、乾癬、強皮症または湿疹である。IL31誘導状態は、イヌ、ネコまたはウマを含むがこれらに限定されないコンパニオンアニマルにおいて示され得る。
【0161】
本明細書で使用される場合、「治療」とは、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法である。本明細書で使用される「治療」とは、コンパニオンアニマルを含む哺乳動物における疾患の治療剤の任意の投与または適用を包含する。本開示の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、限定されないが、1つ以上の症候の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の拡大の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患進行の遅延または減速、病状の改善、疾患または疾患の進行の阻害、疾患またはその進行の阻害または減速、その発症の停止、および寛解(部分的であるか全体的であるかにかかわらず)のいずれか1つ以上が含まれる。増殖性疾患の病理学的結果の低減も「治療」に包含される。本明細書で提供される方法は、治療のこれらの態様のいずれか1つ以上を企図する。上記と一致して、治療という用語は、障害のすべての態様の100%の除去を必要としない。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体またはそれを含む薬学的組成物を、IL31誘導状態を治療するために本明細書の方法に従って利用することができる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または薬学的組成物を、IL31誘導状態を治療するために、イヌ、ネコまたはウマなどのコンパニオンアニマルに投与する。
【0163】
物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの「治療的有効量」は、治療される疾患の種類、病状、疾患の重症度および経過、治療目的の種類、任意の以前の治療、病歴、以前の治療に対する応答、担当獣医の裁量、動物の年齢、性別および体重、ならびに動物において所望の応答を誘発する物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの能力などの要因に従って変動し得る。治療的有効量はまた、物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの任意の毒性または有害効果を、治療上有益な効果が上回る量である。治療的有効量は、1回以上の投与で送達され得る。治療的有効量とは、所望の治療的または予防的結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を指す。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、非経口投与、皮下投与、静脈内注入または筋肉内注射によって投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、ボーラス注射として、または一定期間にわたる連続的注入によって投与される。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、動脈内経路、滑膜内経路、髄腔内経路または吸入経路によって投与される。
【0165】
本明細書に記載される抗IL31抗体は、一投与あたり0.01mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、一投与あたり0.5mg/kg体重~50mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、一投与あたり0.1mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、一投与あたり0.1mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、一投与あたり1mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、0.5mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、10mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、20mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、50mg/kg体重~100mg/kg体重の範囲、1mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲、5mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲、0.5mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲、0.01mg/kg体重~0.5mg/kg体重の範囲、0.01mg/kg体重~0.1mg/kg体重の範囲、または5mg/kg体重~50mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。
【0166】
抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに単回、または一連の治療にわたって投与することができる。例えば、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、少なくとも1回、2回以上、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、または少なくとも5回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに、1ヶ月に1回、例えば6ヶ月まで1ヶ月に1回投与することができる。いくつかの実施形態では、長時間作用性抗IL31抗体または長時間作用性抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに、必要に応じて、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに投与することができる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに、5週間ごとに、例えば6ヶ月まで投与することができる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに、6週間ごとに、例えば6ヶ月まで投与することができる。いくつかの実施形態では、長時間作用性抗IL31抗体または長時間作用性抗IL31抗体を含む薬学的組成物は、コンパニオンアニマルに、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、11週間ごと、12週間ごと、13週間ごと、14週間ごと、15週間ごと、16週間ごと、18週間ごと、20週間ごと、22週間ごと、または24週間ごとに投与することができる。
【0167】
いくつかの実施形態では、用量は、少なくとも2週間または3週間連続して週に1回投与され、いくつかの実施形態では、この治療サイクルは2回以上繰り返され、任意選択で1週間以上の治療なしで散在する。他の実施形態では、治療的有効用量は、2~5日間連続して1日1回投与され、いくつかの実施形態では、この治療サイクルは2回以上繰り返され、任意選択で1日以上または1週間以上の治療なしで散在する。
【0168】
いくつかの実施形態では、長時間作用性抗IL31抗体は、参照抗IL31抗体と比較して、低減した用量および/または増加した投与間隔で投与される。
【0169】
1つ以上のさらなる治療剤と「組み合わせて」投与することは、任意の順序での同時(コンカレント)および連続または逐次投与を含む。「同時に(concurrently)」という用語は、本明細書では、投与の少なくとも一部が時間的に重複するか、または1つの治療剤の投与が他の治療剤の投与と比較して短期間内である2つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、2つ以上の治療剤は、およその指定された数分以下の時間間隔で投与される。「遂次的に(sequentially)」という用語は、本明細書では、1つ以上の他の薬剤の投与を中断した後に1つ以上の薬剤の投与が続く、または1つ以上の他の薬剤の投与前に1つ以上の薬剤の投与が始まる、2つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、2つ以上の治療剤の投与は、およその指定された分数を超える時間間隔で投与される。本明細書で使用される場合、「と併せて」とは、別の治療様式に加えて1つの治療様式を投与することを指す。したがって、「と併せて」は、動物への他の治療様式の投与前、投与中または投与後の1つの治療様式の投与を指す。
【0170】
いくつかの実施形態では、方法は、抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物と組み合わせて、Jak阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤またはMAPK阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、抗IL31抗体、または、抗IL31抗体、抗IL4R抗体、抗IL17抗体、抗TNFα抗体、抗CD20抗体、抗CD19抗体、抗CD25抗体、抗IL4抗体、抗IL13抗体、抗IL23抗体、抗IgE抗体、抗CD11α抗体、抗IL6R抗体、抗α4-インテグリン抗体、抗IL12抗体、抗IL1β抗体、抗IL5抗体、抗IL5R抗体、抗IL22抗体、抗IL22R抗体、抗IL33抗体、抗IL33R抗体、抗TSLP抗体、抗TSLPR抗体もしくは抗BlyS抗体を含む薬学的組成物と組み合わせて投与することを含む。
【0171】
抗IL31抗体または抗IL31抗体を含む薬学的組成物を、IL31への抗体の結合を許容する条件下で、細胞に曝露する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、エクスビボで抗体または薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、in vivoで抗体または薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞内IL31への抗体の結合を許容する条件下で、抗IL31抗体または薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞外IL31への抗体の結合を許容する条件下で、抗IL31抗体または薬学的組成物に曝露される。いくつかの実施形態では、細胞は、限定されないが、対象への腹腔内注射、筋肉内注射、静脈内注射を含む、本明細書に記載の投与方法のいずれか1つ以上によって、抗IL31抗体または薬学的組成物にin vivoで曝露され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、抗体または薬学的組成物を含む培地に細胞を曝露することによって、抗IL31抗体または薬学的組成物にエクスビボで曝露され得る。いくつかの実施形態では、細胞膜の透過性は、抗体または薬学的組成物を含む培地に細胞を曝露する前に、当業者によって理解されているいくつもの方法(細胞を電気穿孔すること、または塩化カルシウムを含む溶液に細胞を曝露することなど)の使用によって影響され得る。
【0172】
いくつかの実施形態では、結合は、細胞によるIL31シグナル伝達機能の低減をもたらす。いくつかの実施形態では、IL31抗体は、細胞におけるIL31シグナル伝達機能を、STAT-3リン酸化における低減によって測定して、抗体の非存在下におけるIL31シグナル伝達機能と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%低減することができる。いくつかの実施形態では、IL31シグナル伝達機能の低減またはSTAT-3リン酸化の低減は、10%~15%、10%~20%、10%~25%、10%~30%、10%~35%、10%~40%、10%~45%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~100%、15%~20%、15%~25%、15%~30%、15%~35%、15%~40%、15%~45%、15%~50%、15%~60%、15%~70%、15%~80%、15%~90%、15%~100%、20%~25%、20%~30%、20%~35%、20%~40%、20%~45%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~100%、25%~30%、25%~35%、25%~40%、25%~45%、25%~50%、25%~60%、25%~70%、25%~80%、25%~90%、25%~100%、30%~35%、30%~40%、30%~45%、30%~50%、30%~60%、30%~70%、30%~80%、30%~90%、30%~100%、35%~40%、35%~45%、35%~50%、35%~60%、35%~70%、35%~80%、35%~90%、35%~100%、40%~45%、40%~50%、40%~60%、40%~70%、40%~80%、40%~90%、40%~100%、45%~50%、45%~60%、45%~70%、45%~80%、45%~90%、45%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~100%、60%~70%、60%~80%、60%~90%、60%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~100%、80%~90%、80%~100%、または90%~100%である。
【0173】
IL31誘導状態の検出、診断および監視のために抗IL31抗体、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを使用する方法が本明細書で提供される。コンパニオンアニマルが抗IL31抗体療法に応答するかどうかを決定する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、動物がIL31を発現する細胞を有するかどうかを、抗IL31抗体を使用して検出することを含む。いくつかの実施形態では、検出方法は、試料を抗体、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと接触させることと、結合のレベルが参照試料または比較試料(例えば、対照)のレベルと異なるかどうかを決定することとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載の抗体またはポリペプチドが対象動物のための適切な治療であるかどうかを決定するために有用であり得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、試料は生物学的試料である。「生物学的試料」という用語は、生きているものまたは以前に生きていたものからの物質の量を意味する。いくつかの実施形態では、生物学的試料は細胞または細胞/組織溶解物である。いくつかの実施形態では、生物学的試料としては、限定されないが、血液、(例えば、全血)、血漿、血清、尿、滑液および上皮細胞が挙げられる。
【0175】
いくつかの実施形態では、細胞または細胞/組織溶解物を抗IL31抗体と接触させ、抗体と細胞との間の結合を決定する。試験細胞が、同じ組織型の参照細胞と比較して結合活性を示す場合、それは、対象が抗IL31抗体による治療から利益を得るであろうことを示し得る。いくつかの実施形態では、試験細胞は、コンパニオンアニマルの組織に由来する。
【0176】
特異的抗体-抗原結合を検出するための当該技術分野で公知の様々な方法を使用することができる。実施され得る例示的なイムノアッセイとしては、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、比濁阻害イムノアッセイ(NIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。指標部分または標識基は、対象抗体に結合することができ、アッセイ装置および適合性イムノアッセイ手順の利用可能性によってしばしば決定される方法の様々な使用の必要性を満たすように選択される。適切な標識としては、限定されないが、放射性核種(例えば、125I、131I、35S、3H、または32P)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼもしくはp-ガラクトシダーゼ)、蛍光部分もしくはタンパク質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFPもしくはBFP)、または発光部分(例えば、Quantum Dot Corporation(Palo Alto,Calif.)によって供給されるQdot(商標)ナノ粒子)が挙げられる。上記の様々なイムノアッセイを実施する際に使用される一般的な技術は、当業者に公知である。
【0177】
診断の目的のために、抗体を含むポリペプチドは、限定されないが、放射性同位体、蛍光標識、および当該技術分野で公知の様々な酵素-基質標識を含む検出可能な部分で標識することができる。標識を抗体にコンジュゲートする方法は、当該技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は標識される必要はなく、その存在は、第1の抗IL31抗体に結合する第2の標識化抗体を使用して検出することができる。いくつかの実施形態では、抗IL31抗体は、競合的結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどの任意の公知のアッセイ方法で使用することができる。Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.1987)。抗IL31抗体およびポリペプチドは、in vivo画像化などのin vivo診断アッセイにも使用することができる。一般に、抗体またはポリペプチドは、免疫シンチグラフィーを使用して目的の細胞または組織を局在化させることができるように、放射性核種(例えば、111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、または本明細書に概説されるものを含む任意の他の放射性核種標識)で標識される。抗体はまた、当該技術分野で公知の技術を使用して病理学における染色試薬として使用され得る。
【0178】
いくつかの実施形態では、第1の抗体が診断に使用され、第2の抗体が治療剤として使用される。いくつかの実施形態では、第1および第2の抗体は異なる。いくつかの実施形態では、第1および第2の抗体は両方とも、別々のエピトープに結合することによって、同時に抗原に結合することができる。
【0179】
以下の実施例は、本開示の特定の態様を例示するものであり、本開示を限定することを決して意図するものではない。
【実施例】
【0180】
実施例1
イヌIL31に結合するマウスモノクローナル抗体の同定
IL31タンパク質(配列番号22)をコードするイヌIL31遺伝子を、C末端にポリ-Hisタグを有するように合成し、哺乳動物発現ベクターにクローニングした。イヌIL31遺伝子を保有するプラスミドを293細胞にトランスフェクトした。
【0181】
イヌIL31タンパク質を含有する上清を回収し、濾過した。イヌIL31を、Ni-NTAカラム(CaptivA(登録商標)Protein A Affinity Resin,Repligen)を使用して親和性精製した。
【0182】
マウスモノクローナル抗体を、293細胞によって産生されるイヌIL31を免疫原として使用する標準的な免疫化を使用して同定した。2つの異なるアジュバントを免疫化中に使用し(Antibody Solutions,Sunnyvale,CA)、モノクローナル抗体を標準的なハイブリドーマ技術によって得た。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を開発して、IL31結合抗体を産生するクローンをスクリーニングした。第1のイヌIL31をビオチン化し、次いでストレプトアビジン被覆ウェルに導入した。次いで、免疫化血清をウェルに加えた後、洗浄し、HRPコンジュゲート抗マウス抗体で検出した。イヌIL31結合抗体の存在により、陽性シグナルが発現した。ELISAによって試験した数千のクローンのうち、シグナル強度に基づいて最も高い結合親和性を有する170のクローンを、バイオセンサーアッセイ(Forte Bio Octet)によるさらなる試験のために選択した。ビオチン化イヌIL31をセンサー先端に結合させ、抗イヌIL31抗体を含有するハイブリドーマクローン上清を遅いオフレート(抗体とリガンドとの間の解離速度)に基づいて選択した。上位19の候補の結合親和性を単一濃度で測定し、抗体濃度をBiosensor Octetを使用したプロテインA力価アッセイによって測定した後、平衡解離定数(Kd)として報告した。上位19の候補のKdはそれぞれ10nM未満であった。
【0183】
さらに、ELISAに基づく高い結合活性を有する170個のクローンの各々を中和活性について試験した。以下の実施例4に記載の細胞ベースの機能アッセイを実施して、イヌDH82細胞を使用したイヌIL31媒介pSTATシグナル伝達の低減における上位候補の活性を評価した。4つの上位クローン(M14、M18、M19およびM87)をさらなる調査のために選択した。注目すべきことに、ELISAによって同定された高親和性結合剤の大部分は機能的ではなかった。
【0184】
実施例2
モノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするDNA配列の同定
M14、M18、M19およびM87を産生するハイブリドーマ細胞をペレット化した。RNAを抽出し、マウス免疫グロブリン(Ig)可変ドメインを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、標準的な技術を用いてcDNAを得た。4つのクローンの各々の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を配列決定し、配列アラインメントによって分析した(
図1、配列番号36~43)。注目すべきことに、M18のCDR-L1が14位にイソロイシンを有し(配列番号63)、M14およびM19が14位にメチオニンを有し(配列番号8)、M18のCDR-H2が9位にチロシンを有し(配列番号62および配列番号87)、M14およびM19が14位にアスパラギン酸を有する(配列番号2および配列番号89)ことを除いて、4つの活性抗体のうちの3つ(M14、M18およびM19)は同じ6つのCDR配列を共有する。CDR配列の類似性は、M14、M18およびM19が共通のエピトープを共有することを示唆している。
【0185】
実施例3
CHO細胞からのマウス-イヌキメラおよびイヌ化IL31-mAb M14の発現および精製
マウスM14 VH(配列番号25)およびマウスVL(配列番号24)をイヌ定常重鎖およびイヌ定常軽鎖に融合するために、キメラ抗体をコードするDNA配列を設計した。ヌクレオチド配列を化学的に合成し、CHO宿主細胞へのトランスフェクションに適した発現ベクターに挿入した。CHO細胞へのトランスフェクション後、軽鎖もしくは重鎖タンパク質またはその両方が細胞から分泌された。例えば、イヌIgG-Bを使用するキメラM14を、一段階プロテインAカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0186】
マウスM14 VHおよびVLを、CDR移植のための鋳型として適切なイヌ生殖系列抗体配列を検索および選択し、続いてタンパク質モデル化を行うことによってイヌ化した。イヌ化M14 IgG-B(配列番号18および配列番号21)は、プロテインAカラムまたは他のクロマトグラフィー法、例えばイオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィー、混合モードカラムクロマトグラフィー、例えばCHT、またはマルチモーダルモードカラムクロマトグラフィー、例えばCaptoMMCを用いて一段階で容易に発現および精製された。低pHまたは他のウイルス不活性化およびウイルス除去工程を適用することができる。精製されたタンパク質を賦形剤と混合し、濾過によって滅菌して、本発明の薬学的組成物を調製する。薬学的組成物は、IL31を阻害するために結合するのに十分な量でアトピー性皮膚炎を有するイヌに投与する。
【0187】
次いで、ベクターを使用して、FreestyleMax(商標)トランスフェクション試薬(Life Technologies)を使用してCHO-S細胞でパイロットスケールのトランスフェクションを行った。上清を、馴化培地を清澄化することによって回収した。タンパク質をシングルパスプロテインAクロマトグラフィー工程で精製し、さらなる調査に使用した。
【0188】
実施例4
IL31結合活性の実証
この実施例は、キメラM14(配列番号26および配列番号27)およびイヌ化M14(配列番号18および配列番号21)を用いて例示される本発明の抗体が、治療活性のために必要な動態でイヌIL31に結合することを実証する。
【0189】
結合分析は、バイオセンサーOctetを使用して以下のように行った。簡潔には、イヌIL31を、製造者の指示書に従って、EZ-Link(商標)NHS-LC-Biotin(Thermo Scientific,カタログ番号21336)を使用して第一級アミン基で、またはEZ-Link(商標)Biotin-LC-Hydrazide(ThermoFisher Scientific,カタログ番号21340)を使用してグリカン基でビオチン化した。遊離の未反応ビオチンを、広範な透析によってビオチン化IL31から除去した。ビオチン化イヌIL31をストレプトアビジンセンサー先端に捕捉した。4つの異なる濃度(400、200、66.6、および33nM)のキメラおよびイヌ化M14抗体とヒトおよびイヌIL31(アミンコンジュゲートビオチン)との会合、ならびに100nMのイヌ化M14抗体とイヌIL31(グリカンコンジュゲートビオチン)との会合を90秒間監視した。解離を600秒間監視した。任意のドリフトを補正するために、バッファーのみのブランク曲線を差し引いた。ForteBio(商標)データ分析ソフトウェアを使用して、データを2:1結合モデルに当てはめて、kon、koffおよびKdを決定した。希釈およびすべての結合工程のためのバッファーは、20mMホスフェート、150mM NaCl、pH7.2であった。
【0190】
CHO-S細胞から、C末端ポリHisタグを有するイヌIL31を発現させ、精製した。ヒトIL31をSino Biologicalandから入手し、StreptavidinバイオセンサーをForteBio(カタログ番号18-509)から入手した。結合動態は以下の通りであった。リガンドイヌIL31(アミンコンジュゲートビオチン)の場合、キメラM14のKd(M)は、イヌ化M14について<1.0×10
-11(
図2)および<1.0×10
-11(
図3)であった。リガンドイヌIL31(グリカンコンジュゲートビオチン)の場合、イヌ化M14のKd(M)は<1.0×10
-12であり、k
off(1/s)は<1.0×10
-7であった。
【0191】
キメラM14およびイヌ化M14は、ヒトIL31との明らかな結合シグナルを有していなかった。そのため、Kdを測定することができなかった。
【0192】
実施例5
M14がイヌIL31シグナル伝達を阻害することの実証
そのIL31受容体に結合した後、IL-31はヤヌスキナーゼ(Jak)1およびJak2シグナル伝達分子を活性化する。次に、活性化Jakは、下流シグナル伝達STAT-3およびSTAT-5のリン酸化を刺激する。抗ホスホ-Stat3イムノブロット解析を使用して、無細胞培地のプロテインA精製画分から抗IL31活性を検出した(Gonzales et.al.Vet Dermatol 2013;24:48-e12)。簡潔には、イヌ単球DH82細胞(アメリカンタイプカルチャーコレクション,Manassas,VA,USA)を、37℃で24時間、15%熱不活性化ウシ胎児血清、2mMol/L GlutaMax、1mmol/Lピルビン酸ナトリウムおよび10ng/mLイヌインターフェロン-c(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)を含有するMEM増殖培地(Life Technologies)において、1ウェルあたり1×10
5細胞の密度で、96ウェル平底細胞培養プレートに置床した。この実験では、イヌIL31-Fcの濃度は5ng/mL(8nM)であった。抗ホスホSTAT-3および抗STAT-3抗体は、R&D Systemsから購入した。抗ベータアクチン抗体は、Sigma-Aldrich製であった。
図4に示すように、イヌIL31シグナル伝達は、(STAT-3リン酸化の低減によって証明されるように)細胞に曝露されたイヌ化M14の濃度が増加するにつれて減少した(レーン1:抗IL31抗体なし、レーン2:3.3nM、レーン3:6.6nM、レーン4:9.9nM、レーン5:13.2nM)。
【0193】
実施例6
M14イヌIL31結合エピトープの同定
M14によって認識されるイヌIL31エピトープを同定するために、複数のGSTイヌIL31断片融合分子を作製し、タンパク質を大腸菌(E.coli)において細胞内発現させた。GST融合タンパク質を膜に転写した後、キメラM14を使用して膜をプローブした。IL31断片がエピトープを含む場合、陽性シグナルが得られた。
【0194】
図5を
図6と組み合わせると、M14が最小断片(配列番号23)を認識できることが実証された。
【0195】
実施例7
M14がネコIL31に交差反応することの実証
M14抗体がネコIL31(配列番号28)またはウマIL31(配列番号29)を認識するかどうかを調べるために、各タンパク質をヒトFcに融合し、哺乳動物293細胞において発現させた。部分的に精製したタンパク質を膜にブロットし、M14抗体でプローブした。
図1のイムノブロットは、M14がネコIL31に結合することを実証している。イムノブロットアッセイは、M14とウマIL31との間の結合を検出しなかった。しかし、バイオレイヤー干渉法分析により、M14抗体はウマIL31に結合するが、より低い親和性で結合することが明らかになった。センサーに固定化されているビオチン化ウマIL31を使用した予備的Kd測定により、親和性(Kd)が約10~50nMであることが明らかになった。
【0196】
実施例8
ネコ化M14
M14可変軽鎖を(配列番号32)としてネコ化し、M14可変重鎖を(配列番号33)としてネコ化した。最初に、マウス重鎖可変配列および軽鎖可変配列を使用して、ネコVHおよびVLの適切なバリアントを検索した。CDRを移植するために適切なネコのフレームを選択した。これらは、構造モデル化を使用してさらに最適化される。ネコIgG重鎖定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)およびネコ軽鎖定常ドメイン(CL1)に、ネコ化VHおよびVLを融合した。
【0197】
ネコM14キメラ抗体(配列番号30および配列番号31)またはネコ化M14抗体(配列番号34および配列番号35)は、IL31誘導状態の治療のためにネコに投与されるものであり得る。
【0198】
実施例9
M14イヌIL31結合エピトープの同定
M14によって認識されるイヌIL31エピトープのアミノ酸残基をさらに同定するために、アラニン変異を保有する複数のGSTイヌIL31エピトープ断片融合分子を大腸菌(E.coli)で発現させた。
図8~
図12は、抗イヌIL31-mAb(M14)またはイヌ化M14(上のパネル)および抗GST抗体対照(下のパネル)でプローブしたイヌIL31-GST融合タンパク質の精密エピトープマッピングのイムノブロットを示す。各レーンにおける試験したエピトープ断片をイムノブロットの下に列挙する。断片名は、試験した成熟イヌIL31(配列番号44)のアミノ酸の範囲およびアラニン変異が含まれる場合はその位置を示す。IL31断片が野生型エピトープを含む場合、陽性シグナルが得られ、IL31断片が抗体-リガンド相互作用に重要な残基にアラニン置換を含む場合、陰性シグナルが得られた。
【0199】
エピトープマッピング研究の結果を以下の表3に要約する。結果は、成熟イヌIL31(配列番号44)のP12、S13、D14およびK17が抗体M14の結合に関与し、R16およびI18が部分的にM14認識に関与することを示唆している。要するに、この研究の結果は、抗体M14のCDRに結合するIL31ポリペプチドのモチーフがPSDX1X2KIであり、ここで、X1およびX2は可変である(配列番号45)ことを示唆している。
【0200】
【0201】
実施例10
M14は、PSDX1X2KIエピトープモチーフを有する他の種のIL31に特異的に結合する
M14によって認識されるIL31エピトープモチーフ(PSDX1X2KI;配列番号45)は、ヒト(配列番号46)またはマウス(配列番号61)のIL31アミノ酸配列には存在しない。しかし、このモチーフは、ネコを含むいくつかの他の種で同定されている:
Felis catus(XP_011286140.1;配列番号28)
Odobenus rosmarus divergens(XP_004395998.1;配列番号47)
Papio Anubis(XP_003907358.1;配列番号49)
Ursus maritimus(XP_008687166.1;配列番号51)
Leptonychotes weddellii(XP_006746595.1;配列番号52)
Panthera tigris altaica(XP_007079636.1;配列番号53)
Acinonyx jubatus(XP_014919275.1;配列番号54)
Macaca fascicularis(EHH66805.1;配列番号55)
Macaca mulatta(EHH21279.1号;配列番号56)
Mandrillus leucophaeus(XP_011819882.1;配列番号57)
Chlorocebus sabaeus(XP_008003211.1;配列番号58)
Cercocebus atys(XP_011926625.1;配列番号59)
Rhinopithecus roxellana(XP_010366647.1;配列番号60)
【0202】
セイウチIL31(配列番号47)およびオリーブヒヒIL31(配列番号49)は、抗体M14によって認識され得るPSDX
1X
2KIエピトープ(配列番号45)を有する。タンパク質精製を容易にするために、C末端HisタグをセイウチIL31(配列番号48)およびオリーブヒヒIL31(配列番号50)に付加した。ウェスタンブロット分析により、M14がセイウチIL31に結合することが確認された(
図13)。M14抗体またはその誘導体は、上記の種のいずれかにおけるIL31誘導性疾患の治療剤および診断剤に使用することができる。
【0203】
実施例11
イヌ化M14抗体の熱安定性
イヌ化M14抗体の熱安定性を、ZoetisのCYTOPOINT(商標)、市販の抗IL31抗体と広範囲のpHにわたって比較し、示差走査蛍光(DSF)を使用して分析した。異なるpHでの各抗体の融解温度(Tm)を以下の表4に列挙する。CYTOPOINT(商標)およびイヌ化M14抗体の両方を、PD Minitrap(商標)G-25カラム(GE Healthcare)を使用して、表4に列挙したアッセイバッファーにバッファー交換した。各抗体のTmを、同じバッファーおよびタンパク質濃度を使用して評価した。イヌ化M14抗体は、広いpH範囲にわたって、CYTOPOINT(商標)と比較して改善された熱安定性を示した。さらに、0.22mg/ml抗体、CYTOPOINT(商標)では、55℃で2日間のストレス条件下で沈殿したが、イヌ化M14抗体では沈殿物は観察されなかった。
【0204】
【0205】
実施例12
イヌ化M14抗体バッファー製剤
様々なバッファー製剤中のイヌ化M14抗体の熱安定性を分析した。リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたはL-ヒスチジンを含有するバッファーを検討した。他の製剤変数としては、異なるpH(pH5.2、5.5、6.0、6.5および7.0)、異なる濃度の塩化ナトリウム(50mMおよび140mM)、異なるポリソルベート(ポリソルベート20およびポリソルベート80)、ならびに異なる抗菌剤(m-クレゾールおよびメチルパラベン)が挙げられた。各バッファー中のイヌ化M14抗体の融解温度(Tm)を、示差走査蛍光(DSF)技術によって20℃~95℃で測定した。表5は、試験した様々なバッファー中のイヌ化M14抗体のTm値を列挙している。
【0206】
表5
*ピークなしは、明確な融点が観察されなかったことを示す。
【0207】
以下の糖類(1%):スクロース、トレハロース、D-マンニトール、マルトースおよびソルビトールの各々の1つの存在下での製剤D1、D2、D3、D4、D5およびD6のTmを、DSFを使用してさらに試験した。
【0208】
糖類を含むおよび含まない製剤も、40℃で1日間、続いて45℃で1日間、続いて55℃で4日間のストレス条件下で試験した。サイズ排除HPLC分析を使用して、ストレス条件に供した後の様々な製剤中の抗体のモノマー形態および凝集形態を検出および定量した。試料をSHODEX(商標)KW803カラム(8mm×300mm)にロードし、KW-Gガードカラムに取り付けた。Agilent 1100クロマトグラフィーシステムを、0.5mL/分の一定流速で、ランニングバッファーとして2×PBS(270mM NaCl、5.4mM KCl、8.6mM Na2PO4)、pH7.2を用いて使用した。カラムは、サイログロブリン、ウシγ-グロブリン、ニワトリ卵白アルブミン、ウマミオグロビンおよびビタミンB12(分子量1,350~670,000)で構成されるBIORADゲル濾過標準(カタログ番号151-1901)で較正した。溶液中に残存するモノマー抗体の量は、214nmまたは280nmでUV吸光度を測定し、曲線下のピーク面積を計算することによって決定した。
【0209】
DSFおよびHPLC分析に基づいて、L-ヒスチジン、塩化ナトリウム、ポリソルベート80を含有し、5.0~6.2のpHを有する製剤、例えば製剤D1、D2、D3、D4、D6、D7、D10およびD12がより望ましいと考えられた。例えば、単回投与に望ましい製剤は以下の通りである。20mM L-ヒスチジン;140mM塩化ナトリウム;ポリソルベート80(0.05mg/mL);pH5.5。(防腐剤の存在下での)複数回投与に望ましい製剤は以下の通りである。
1.20mM L-ヒスチジン;140mM塩化ナトリウム;ポリソルベート80(0.05mg/mL);スクロース(1~3%);m-クレゾール(0.2%);pH5.5;および
2.20mM L-ヒスチジン;140mM塩化ナトリウム;ポリソルベート80(0.05mg/mL);トレハロース(1~3%);メチルパラベン(0.9%);pH5.5。
【0210】
実施例13
イヌFcRn/B2M結合が増強されたバリアントイヌIgG-Bポリペプチドのスクリーニング
ポリ-Hisタグを有するイヌFcRn(配列番号92)およびイヌB2M(配列番号93)ヘテロダイマー複合体をHEK細胞において一過性に発現させ、Ni-NTAクロマトグラフィーを使用して精製した。
【0211】
イヌIgG-B FcファージライブラリのFast Screening for Expression,Biophysical Properties and Affinity(FASEBA)を行った。簡潔には、イヌIgG-B Fcポリペプチドの読み枠をプラスミドpFASEBAにサブクローニングした。イヌIgG-B/イヌFcRn/イヌB2M複合体の3次元タンパク質モデル化に基づいて、イヌIgG-Bの12アミノ酸位置が、IgG-BとFcRn/B2Mとの結合に潜在的に関与していると同定された。同定されたイヌIgG-Bの12位置は、配列番号90のThr(21)、Leu(22)、Leu(23)、Ile(24)、Ala(25)、Thr(27)、Gly(80)、His(81)、Gln(82)、Leu(85)、Met(201)およびAsn(207)であった。
【0212】
イヌIgG-B Fcの12個の単一部位NNK変異ライブラリを、20個の可能なアミノ酸の各々が12個の部位の各々で置換されたバリアントIgG-B Fcポリペプチドを各ライブラリが含むように調製した。各ファージライブラリをpH6.0でイヌFcRn/B2M複合体に対してパニングした。3回のパニングの後、FcRn/B2M結合が増強されている可能性があるものとして合計53個のFcファージクローンを同定し、配列決定によって変異を同定した。
【0213】
SASAタグを有する53個のバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドの各々を発現する単一大腸菌(E.coli)コロニーを培養し、Fcポリペプチドを発現するように誘導した。バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを含有する細胞培地を、プレートまたはBiacoreチップ上で固定化BSAに曝露した。バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを結合したプレートまたはチップを可溶型イヌFcRn/B2M複合体に曝露して、pH6での遅いオフレート(koff)についてスクリーニングした。野生型IgG-B Fcポリペプチドと比較してイヌFcRn/B2M複合体とのより遅いkoffを示す各バリアントIgG-B Fcポリペプチドを同定した。4つのリードバリアントイヌIgG-Bポリペプチドを同定した:L(23)Y(配列番号95;「Y00」);L(23)F(配列番号94;「F00」);L(23)M;およびL(23)S。
【0214】
リードバリアントイヌIgG-Bポリペプチドの各々のkoffをさらに調べた。ビオチン化イヌFcRn/B2M複合体をBiacoreチップに固定化し、pH6.0でBiacore T200を使用して、被分析物としての各バリアントイヌIgG-Bポリペプチドに曝露した。野生型イヌIgG-B Fcポリペプチドのkoff(1/s)は1.22×10-1;バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)Y(「Y00」)のkoff(1/s)は1.38×10-2;バリアントIgG-B FcポリペプチドL(23)F(「F00」)のkoff(1/s)は6.31×10-2および8.47×10-2;バリアントイヌIgG-BポリペプチドL(23)Mのkoff(1/s)は1.26×10-1;および、バリアントイヌIgG-BポリペプチドL(23)Sのkoff(1/s)は2.41×10-1であった。
【0215】
Biacore T200を使用して結合分析を行った。簡潔には、SASAタグを有するリードバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチドを、それぞれSeries S Sensor Chip CM5に固定化した。各バリアントIgG-B Fcポリペプチドと様々な濃度のイヌFcRn/B2M複合体(12.5、25、50、100および200nM)との会合を、定常状態に達するまで25℃で監視した。10mM HEPES、500mM NaCl、3mM EDTA、0.005% Tween-20、pH6.0のランニングバッファーを使用した。バッファーのみのブランク曲線を対照として使用した。結果を
図10~
図14に示す。野生型イヌIgG-B Fcポリペプチドの定常状態Kdは1.25×10
-6(
図14);バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)Y(「Y00」)の定常状態Kdは1.13×10
-7(
図15);バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)F(「F00」)の定常状態Kdは3.67×10
-7(
図16);バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドL(23)Mの定常状態Kdは4.06×10
-7(
図17);および、バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドYTEの定常状態Kdは8.62×10
-8(
図18)であった。
【0216】
実施例14
イヌIgGにおけるPhe変異がイヌFcRn相互作用を増強する
FcRnに対するバリアントイヌFcポリペプチドの親和性を、キメラ抗体との関連で評価した。イヌカッパ軽鎖に融合した抗体可変軽鎖、ならびに配列番号96(F00;プロテインA+;C1q-;CD16-)または配列番号97(プロテインA+;C1q+;CD16+)を含むバリアントイヌIgG-A Fcポリペプチドおよび配列番号98(F00;プロテインA+;C1q-;CD16-)または配列番号99(プロテインA+;C1q+;CD16+)を含むバリアントイヌIgG-D Fcポリペプチドに融合した可変重鎖を発現させた。
【0217】
結合分析は、バイオセンサーOctetRedを使用して以下のように行った。簡潔には、ビオチン化TNFαをストレプトアビジンセンサー先端に捕捉した。20μg/mLの抗体の会合体をTNFαに結合させた。次いで、複合体を使用して、pH6.0でイヌFcRn(50μg/mL)に結合させた。解離をpH7.2で行った。
【0218】
キメラバリアントイヌIgG-A「F00」抗体(
図19、A)およびIgG-D「F00」抗体(
図19、B)の結合プロファイルによって示されるように、Phe変異は、Phe変異を有しないキメラバリアントイヌIgG-A(
図19、C)およびPhe変異を有しないIgG-D(
図19、D)と比較して、低pH(pH6.0、20mMクエン酸Na、140mM NaCl)でのイヌFcRn結合を増強した。Phe変異を有するキメラバリアントイヌIgG-AおよびIgG-D抗体(
図19、AおよびB)は、低pH(pH6.0)でのイヌFcRnとの会合の増強および中性pH(PBS pH7.2)での迅速な解離を示した。キメラバリアントイヌIgG-B「F00」抗体でも同様の結合プロファイルの増強が観察された。
【0219】
実施例15
イヌIgGにおけるPhe変異の薬物動態
薬物動態分析を、Sprague Dawleyラットを使用して行った。ラットに、2mg/kgのキメラバリアントイヌIgG-A「F00」抗体およびPhe変異を有しないキメラバリアントイヌIgG-Aを皮下投与した(1群あたり2匹のラット)。血清試料を注射前ならびに注射後0.5、1、6、24、48、72、168、216および336時間にラットから採取した。血清試料中のイヌキメラ抗体濃度を以下のようにELISAによって決定した。
【0220】
捕捉抗体(PBS中1μg/mL)を各ウェル中100μlで96ウェルMaxisorpプレート上にコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートし、PBST(0.05% Tween-20を含有するPBS)で5回洗浄した。各ウェルをPBST中5% BSA 200μlでブロックし、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをPBSTで5回洗浄した。対照抗体の希釈液(1,000ng/mL~0.1ng/mL)をプレートに二連で添加し、対照抗体を含まないブランクウェルと共に使用して標準曲線を作成した。血清試料を、5% BSA-PBSTにおける10倍、20倍および40倍希釈によって調製し、プレートに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄した。100μlのHRPコンジュゲート抗体(Bio-Rad、カタログ番号HCA204P)を5% BSA-PBST中0.25μg/mLで各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、PBSTで5回洗浄した。100μlのQuantaBlu(Thermo Scientific、カタログ番号15169)を各ウェルに添加した。蛍光を、10~15分間のインキュベーション後に325nm/420nmで測定した(発光/励起)。血清試料中の抗TNFαの力価を標準曲線に対して計算した。
【0221】
IgG-AのAUC
0~336hは150970であったが、IgG-A「F00」は848924ng/mL*hrであった(
図20)。最終半減期は、それぞれ33時間および152時間と推定された。したがって、単一のPhe変異は、ラットにおける抗体の薬物動態プロファイルを有意に改善した。
【0222】
実施例16
イヌ、ネコおよびウマIgG FcにおけるPhe変異
イヌIgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-D FcにおけるPhe変異と、FcRnとの相互作用を、3次元タンパク質構造分析を使用してモデル化した。Pheの芳香族側鎖は、「WPE」モチーフのPro疎水性環(π-CH)においてイヌFcRnと疎水性相互作用を有するようである。さらに、Phe疎水性側鎖は、同じ「WPE」モチーフのProの隣のGlu側鎖と直接接触していてもよい。この相互作用は、中性pHなどでGlu側鎖が脱プロトン化されて負電荷になる場合、エネルギーペナルティを有する可能性がある。したがって、芳香族からGlu-Hへの相互作用を最小限に抑えるために、Glu残基のある程度のプロトン化が必要とされ得る。これは、Phe変異を有するバリアントIgGとFcRnとの間の相互作用が中性pHで低減する理由を説明し得る。タンパク質構造分析に基づいて、相互作用はイヌIgG-A、IgG-B、IgG-CおよびIgG-D Fcの間で保存されているようである。
【0223】
さらに、ネコIgG1aおよびIgG2 FcにおけるPhe変異間の相互作用を、ネコFcRnと複合体化した場合にモデル化した。イヌIgG Fcで観察されたものと同じ相互作用が、ネコIgG Fcで保存されているようであった。
【0224】
ウマFcRnとの複合体におけるウマIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG5、IgG6およびIgG7 FcにおけるPhe変異間の相互作用もモデル化した。同じ相互作用がウマIgG Fcで維持されているようであった。
【0225】
実施例17
他の例示的バリアントイヌIgG FcがイヌFcRn相互作用を増強する
FcRnに対するさらなるバリアントイヌFcポリペプチドの親和性を、キメラ抗体との関連で評価した。イヌカッパ軽鎖に融合した抗体可変軽鎖、ならびに野生型IgG-B Fcポリペプチド(配列番号90を含む)、バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド0Y0(配列番号100を含む)、バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド0YH(配列番号101を含む)、バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド0YY(配列番号102を含む)およびバリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド00Y(配列番号103を含む)に融合した可変重鎖配列を発現させた。
【0226】
結合分析は、バイオセンサーOctetRedを使用して以下のように行った。簡潔には、ビオチン化標的をストレプトアビジンセンサー先端に捕捉した。20μg/mLの抗体の会合体をビオチン化標的に結合させた。次いで、複合体を使用して、pH6.0でイヌFcRn(50μg/mL)に結合させた。解離をpH7.2で行った。
【0227】
キメラバリアントイヌIgG-B抗体の各々は、キメラ野生型イヌIgG-B抗体と比較して、pH6.0でイヌFcRnに対する増強された結合を示し、各々が中性pHでかなりの解離速度を有していた(
図21)。
【0228】
実施例18
バリアントイヌIgG Fcがイヌにおけるin vivoでの抗体の半減期を延長する
FcRnに対するバリアントイヌFcポリペプチドのin vivo半減期を、キメラ抗体との関連で評価した。イヌカッパ軽鎖に融合した抗体可変軽鎖、ならびに野生型IgG-B Fcポリペプチド(配列番号90を含む)、バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドYTE(配列番号104を含む)、バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド0Y0(配列番号100を含む)、バリアントイヌIgG-B FcポリペプチドF00(配列番号94を含む)、バリアントイヌIgG-B Fcポリペプチド0YH(配列番号101を含む)およびバリアントイヌIgG-B FcポリペプチドY00(配列番号95を含む)に融合した可変重鎖を発現させ、PBS、pH7.2中40mg/mLに精製した。
【0229】
イヌ薬物動態は、Absorption Systems California,LLCで行った。雄ビーグル(約8~14kg)をMarshall Bioresources,North Rose,New Yorkから入手した。1群あたりn=2匹のイヌを用いて、合計12匹のイヌを研究に使用した。6つの抗体を4mg/Kgでイヌに皮下投与した。血清試料を注射前ならびに注射後6、24、48、72、96、120、144、168、216、264、336、504および672時間に採取した。イヌキメラ抗体濃度を記載のようにELISAによって決定した。144時間と336時間との間のCpをLn[Cp]に変換し、次いで、Ln[Cp]
t=-k*t+Ln[Cp]
144hの形式の線形方程式に当てはめた。次いで、以下の表6に列挙されるように、勾配kから最終半減期を計算した。イヌIgG-B Fcにおける0Y0、F00、0YHおよびY00変異は、イヌにおけるin vivoでの抗体の半減期を大幅に改善した。研究から得られた経時的に正規化された抗体パーセントを
図22に示す。
【0230】
表6:イヌにおける抗体半減期に対するバリアントイヌIgG Fcの効果
【配列表】
【国際調査報告】