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特表2023-524649核酸及び細胞保存剤組成物並びに使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】核酸及び細胞保存剤組成物並びに使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/00 20060101AFI20230606BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20230606BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230606BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20230606BHJP
【FI】
C12N5/00
C12N1/04
C12N5/07
C12N15/10 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022564084
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 US2021027573
(87)【国際公開番号】W WO2021216353
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/012,637
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/012844
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522410167
【氏名又は名称】エスアイオー2 メディカル プロダクツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ピッキリーリ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカート,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クリバノフ, アレクサンダー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヘクソム,ティア
(72)【発明者】
【氏名】ヌネズ,ブランディー
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BD12
4B065BD25
4B065BD38
4B065BD39
4B065BD40
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。血液又は他の生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存する方法並びに血液又は他の生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットも記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.高張液又は等張液を生成するために十分な量で存在する1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、及び
e.Ficoll
を含む保存剤組成物であって、グリセロール又はマンニトールを含まない保存剤組成物。
【請求項2】
前記1種以上の浸透圧剤は、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約0.5重量%~約20重量%の量で存在する、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項3】
前記1種以上の浸透圧剤は、ナトリウム含有溶液、カリウム含有溶液、マグネシウム含有溶液及びカルシウム含有溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、スクロース若しくはグルコースなどの糖、酒石酸若しくはグルカル酸又はその塩を含むが、これらに限定されない高張塩溶液又は等張塩溶液を生成するために十分な量で存在する、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項4】
前記1種以上の酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジチオスレイトール(DTT)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、クエン酸、シュウ酸、アウリントリカルボン酸(ATA)、酒石酸、グルカル酸又はそのいずれかの塩である、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項5】
酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項6】
前記1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、アジ化ナトリウム、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンである、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項7】
前記任意選択の血漿増量剤は、デンプン、タンパク質コロイド又は非タンパク質コロイドである、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項8】
前記タンパク質コロイドは、アルブミン、オボアルブミン又はゼラチンである、請求項7に記載の保存剤組成物。
【請求項9】
前記非タンパク質コロイドは、ヒドロキシエチルデンプンである、請求項7に記載の保存剤組成物。
【請求項10】
前記Ficollは、前記組成物の約10重量%~約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項11】
前記Ficollは、前記組成物の約20重量%~約30重量%の量で存在する、請求項10に記載の保存剤組成物。
【請求項12】
前記Ficollは、Ficoll 400である、請求項1に記載の保存剤組成物。
【請求項13】
a.高張液を生成するために十分な量で存在する1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、及び
e.1種以上の細胞表面リモデリングポリマー
を含む保存剤組成物。
【請求項14】
前記1種以上の浸透圧剤は、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在する、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項15】
前記1種以上の浸透圧剤は、ナトリウム含有溶液、カリウム含有溶液、マグネシウム含有溶液及びカルシウム含有溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、スクロース、酒石酸若しくはその塩又はグルカル酸若しくはそのいずれかの塩を含むが、これらに限定されない高張液を生成するために十分な量で存在する、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項16】
前記1種以上の酵素阻害剤は、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在する、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項17】
前記1種以上の酵素阻害剤は、酒石酸又はグルカル酸である、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項18】
前記1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンである、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項19】
前記任意選択の血漿増量剤は、デンプン、タンパク質コロイド又は非タンパク質コロイドである、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項20】
前記1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約10重量%~約50重量%の量で存在する、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項21】
前記1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)及びボロン酸のコポリマー、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)三ペプチドポリマー誘導体、マングビーンフィトヘマグルチニン及びマンノース6リン酸受容体に対する反復リガンドを有する合成糖ペプチドからなる群から選択される、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項22】
前記細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーである、請求項13に記載の保存剤組成物。
【請求項23】
前記ポロキサマーは、ポロキサマーp188である、請求項22に記載の保存剤組成物。
【請求項24】
前記ポロキサマーは、ポロキサマーp407である、請求項22に記載の保存剤組成物。
【請求項25】
a.任意選択により、1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、
e.任意選択により、1種以上の細胞表面リモデリングポリマー、
f.任意選択により、ヒドロキシエチルデンプン、N-ビニルピロリドン(NVP)のポリマー、Ficoll、タンパク質コロイド、非タンパク質合成コロイド、エチレンジオール、プロピレングリコール、水溶性ポリマー及びカルボキシメチルセルロース又はその塩からなる群から選択される1種以上の薬剤、及び
g.任意選択により、ポリプロピレングリコール(PPG)
を含む保存剤組成物であって、少なくとも1種の細胞表面リモデリングポリマー(e)又は薬剤(f)が存在し、ただし、細胞表面リモデリングポリマー(e)が存在しないとき、前記1種以上の任意選択の浸透圧剤は、存在する場合、前記組成物の約0.1重量%~約1重量%の量で存在することを条件とし、前記量は、等張液又は高張液を生成するために十分であり、及びさらに、薬剤(f)が存在しないとき、前記1種以上の任意選択の浸透圧剤は、存在する場合、等張液を生成するために十分な量で存在するか、又は前記組成物の約0.1重量%~約1重量%であることを条件とし、前記量は、等張液又は高張液を生成するために十分である、保存剤組成物。
【請求項26】
前記1種以上の任意選択の浸透圧剤は、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で存在する、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項27】
前記1種以上の任意選択の浸透圧剤は、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約0.1重量%~約1重量%の量で存在する、請求項26に記載の保存剤組成物。
【請求項28】
浸透圧剤は、存在しない、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項29】
前記1種以上の任意選択の浸透圧剤は、ナトリウム含有溶液、カリウム含有溶液、マグネシウム含有溶液若しくはカルシウム含有溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、マンニトール、スクロース若しくはグルコースなどの糖、酒石酸、グルカル酸又はそのいずれかの塩を含むが、これらに限定されない、列挙されるような等張液、高張液又は高浸透圧液を生成するために十分な量で存在する、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項30】
前記1種以上の酵素阻害剤は、前記保存剤組成物中において、前記組成物の約0.5重量%~約30重量%の量で存在する、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項31】
前記1種以上の酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジチオスレイトール(DTT)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、クエン酸、シュウ酸、アウリントリカルボン酸(ATA)、酒石酸若しくはグルカル酸又はそのいずれかの塩である、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項32】
前記酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩である、請求項31に記載の保存剤組成物。
【請求項33】
前記1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、アジ化ナトリウム、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンである、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項34】
前記任意選択の血漿増量剤は、グリセロール、デンプン、タンパク質コロイド又は非タンパク質コロイドである、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項35】
前記タンパク質コロイドは、アルブミン、オボアルブミン又はゼラチンである、請求項34に記載の保存剤組成物。
【請求項36】
前記非タンパク質コロイドは、ヒドロキシエチルデンプンである、請求項34に記載の保存剤組成物。
【請求項37】
前記1種以上の任意選択の細胞表面リモデリングポリマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)及びボロン酸のコポリマー、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)三ペプチドポリマー誘導体、マングビーンフィトヘマグルチニン及びマンノース6リン酸受容体に対する反復リガンドを有する合成糖ペプチドからなる群から選択される、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項38】
前記任意選択の細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーである、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項39】
前記ポロキサマーは、ポロキサマーp188である、請求項38に記載の保存剤組成物。
【請求項40】
前記ポロキサマーは、ポロキサマーp407である、請求項38に記載の保存剤組成物。
【請求項41】
前記1種以上の任意選択の薬剤は、前記組成物の約10重量%~約50重量%の量で存在する、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項42】
前記任意選択の薬剤は、ヒドロキシエチルデンプンである、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項43】
前記1種以上の任意選択の薬剤は、Ficollである、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項44】
前記Ficollは、Ficoll 400である、請求項43に記載の保存剤組成物。
【請求項45】
1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、存在し、及び薬剤は、存在しない、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項46】
1種以上の薬剤は、存在し、及び細胞表面リモデリングポリマーは、存在しない、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項47】
1種以上の薬剤は、存在し、及び1種以上の細胞表面リモデリングポリマーも存在する、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項48】
前記任意選択のポリプロピレングリコール(PPG)は、前記組成物の約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、請求項25に記載の保存剤組成物。
【請求項49】
請求項1~48のいずれか一項に記載の保存剤組成物及び生物学的試料の組み合わせ。
【請求項50】
前記生物学的試料は、細胞又は組織試料である、請求項49に記載の組み合わせ。
【請求項51】
前記生物学的試料は、体液に由来する、請求項49に記載の組み合わせ。
【請求項52】
前記体液は、血液(例えば、全血又はその画分)である、請求項51に記載の組み合わせ。
【請求項53】
前記生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞又は循環腫瘍細胞を含む、請求項49に記載の組み合わせ。
【請求項54】
前記生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む、請求項49に記載の組み合わせ。
【請求項55】
前記核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである、請求項54に記載の組み合わせ。
【請求項56】
前記核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである、請求項54に記載の組み合わせ。
【請求項57】
前記生物学的試料に対する前記保存剤組成物の比は、約1:10~約1:1v/vである、請求項49~56のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項58】
前記生物学的試料に対する前記保存剤組成物の比は、約1:5~約1:4v/vである、請求項57に記載の組み合わせ。
【請求項59】
前記組成物は、周囲温度で少なくとも2週間にわたり、生物学的試料中の前記核酸及び/又は細胞を保存することができる、請求項49~58のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項60】
生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存する方法であって、請求項1~48のいずれか一項に記載の保存剤組成物と前記生物学的試料とを組み合わせる工程を含む方法。
【請求項61】
前記生物学的試料は、細胞又は組織試料である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記生物学的試料は、体液に由来する、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記体液は、血液(例えば、全血又はその画分)である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞又は循環腫瘍細胞を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記生物学的試料に対する前記保存剤組成物の比は、約1:10~約1:1v/vである、請求項60~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記生物学的試料に対する前記保存剤組成物の比は、約1:5~約1:4v/vである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.請求項1~48のいずれか一項に記載の保存剤組成物、及び
b.任意選択により、前記保存剤組成物の使用説明書
を含むキット。
【請求項71】
前記生物学的試料は、細胞又は組織試料である、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記生物学的試料は、体液に由来する、請求項70に記載のキット。
【請求項73】
前記体液は、血液(例えば、全血又はその画分)である、請求項70に記載のキット。
【請求項74】
前記生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞又はそれらの組み合わせを含む、請求項70に記載のキット。
【請求項75】
前記生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む、請求項70に記載のキット。
【請求項76】
前記核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである、請求項75に記載のキット。
【請求項77】
前記核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである、請求項75に記載のキット。
【請求項78】
生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.任意選択により所定量の任意選択の抗凝固剤を収容する、血液又は他の生物学的試料を収集するチューブ、
b.所定量の、請求項1~48のいずれか一項に記載の保存剤組成物を収容するシリンジ、及び
c.任意選択により、前記シリンジに取り付け可能な針
を含むキット。
【請求項79】
前記生物学的試料は、細胞又は組織試料である、請求項78に記載のキット。
【請求項80】
前記生物学的試料は、体液に由来する、請求項78に記載のキット。
【請求項81】
前記体液は、血液(例えば、全血又はその画分)である、請求項78に記載のキット。
【請求項82】
前記生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞又はそれらの組み合わせを含む、請求項78に記載のキット。
【請求項83】
前記生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む、請求項78に記載のキット。
【請求項84】
前記核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである、請求項83に記載のキット。
【請求項85】
前記核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである、請求項83に記載のキット。
【請求項86】
生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.任意選択により所定量の抗凝固剤を収容する、血液又は他の生物学的試料を収集するチューブ、及び
b.所定量の、請求項1~48のいずれか一項に記載の保存剤組成物を収容する密封アンプル
を含み、前記アンプルは、取り外し可能な密閉部材を含み、前記アンプルは、使用者によって前記密閉部材が取り外されたときに分配手段を受け入れるように構成される、キット。
【請求項87】
前記生物学的試料は、細胞又は組織試料である、請求項86に記載のキット。
【請求項88】
前記生物学的試料は、体液に由来する、請求項86に記載のキット。
【請求項89】
前記体液は、血液(例えば、全血又はその画分)である、請求項88に記載のキット。
【請求項90】
前記生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞又はそれらの組み合わせを含む、請求項86に記載のキット。
【請求項91】
前記生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む、請求項86に記載のキット。
【請求項92】
前記核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである、請求項91に記載のキット。
【請求項93】
前記核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである、請求項91に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月8日提出の国際出願PCT/米国特許出願公開第2021/012844号及び2020年4月20日提出の米国仮特許出願第63/012,637号の利益、それらに対する優先権を主張し、及びそれらを参照によりその全体において組み込む。
【0002】
開示の分野
本開示は、血液又は他の生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するための組成物、方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
様々な診断目的のために、DNA及びRNAの配列、構造又は発現の変化を分析する多くの核酸ベースの試験が使用されている。実際、核酸は、非侵襲性の生物医学的研究のための一般的な検査対象である。しかしながら、生物学的試料が収集された後、その試料内の核酸、例えばRNA及びDNAは、細胞/ゲノムの核酸であろうとセルフリー核酸であろうと、分解を始める。さらに、遺伝子誘導及び遺伝子転写物の分解は、血液又は他の生物学的試料収集の数分以内に起こり始め、それは、試料収集時点での試料の遺伝子発現の正確な分析を困難なものにする。さらに、一般に、血液又は他の生物学的試料が新鮮であるほど、その試料の核酸の品質が良好である。これは、対象の血液又は生物学的試料の核酸を分析する際に問題となる。血液及び他の生物学的試料は、分析される場所及び時点と異なる場所及び非常に異なる時点で収集される場合が多い。この理由のため、血液又は他の生物学的試料は、収集後、それらが分析され得る前に貯蔵され、輸送される必要がある。血液及び他の生物学的試料が収集された後に生じる核酸の急速な分解のため、試料の核酸の分析時点での高品質を確実なものにするために、試料中に存在する核酸を保存する方法が必要とされている。
【0004】
血液又は他の生物学的試料中のセルフリー核酸の場合、収集する場所及び時点と、分析する場所及び時点とが異なることにより、さらなる問題、すなわち細胞溶解の問題が生じる。収集された試料における細胞溶解は、細胞核酸によるセルフリー核酸プロファイルの汚染をもたらすおそれがあり、血液又は生物学的試料中のセルフリー核酸を正確に分析することを困難にする。細胞溶解は、血液又は他の生物学的試料が収集された直後に起こり始める。これは、試料を分析する前に長期間保存する必要がある場合に問題となる。従って、血液及び他の生物学的試料は、その核酸のセルフリープロファイルが維持されるように保存することがさらに必要である。
【0005】
同様に、細胞(例えば、生物学的試料中の循環腫瘍細胞)の検出又は分析に基づく診断適用のために、それらの細胞をインタクトな形態で保存することが重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の概要
第一の態様では、本開示は、
a.高張液又は等張液を生成するために十分な量で存在する1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、及び
e.Ficoll
を含む核酸及び細胞保存剤組成であって、グリセロール又はマンニトールを含まない核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。
【0007】
第二の態様では、本開示は、
a.高張液を生成するために十分な量で存在する1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、及び
e.1種以上の細胞表面リモデリングポリマー
を含む核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。
【0008】
第三の態様では、本開示は、
a.任意選択により、1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、
e.任意選択により、1種以上の細胞表面リモデリングポリマー、
f.任意選択により、ヒドロキシエチルデンプン、N-ビニルピロリドン(NVP)のポリマー、Ficoll、タンパク質コロイド、非タンパク質合成コロイド、エチレンジオール、プロピレングリコール、水溶性ポリマー及びカルボキシメチルセルロース又はその塩からなる群から選択される1種以上の薬剤、及び
g.任意選択により、ポリプロピレングリコール(PPG)
を含む核酸及び細胞保存剤組成物であって、少なくとも1種の細胞表面リモデリングポリマー(e)又は薬剤(f)が存在し、ただし、細胞表面リモデリングポリマー(e)が存在しないとき、1種以上の任意選択の浸透圧剤は、存在する場合、組成物の約0.1重量%~約1重量%の量で存在することを条件とし、その量は、等張液又は高張液を生成するために十分であり、及びさらに、薬剤(f)が存在しないとき、1種以上の任意選択の浸透圧剤は、存在する場合、等張液を生成するために十分な量で存在するか、又は組成物の約0.1重量%~約1重量%であることを条件とし、その量は、等張液又は高張液を生成するために十分である、核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。
【0009】
第四の態様では、本開示は、本開示の保存剤組成物及び生物学的試料の組み合わせを対象とする。
【0010】
第五の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存する方法であって、本開示の保存剤組成物と生物学的試料とを組み合わせる工程を含む方法を対象とする。
【0011】
第六の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.本明細書に開示される保存剤組成物、及び
b.任意選択により、前記保存剤組成物の使用説明書
を含むキットを対象とする。
【0012】
第七の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.任意選択により所定量の任意選択の抗凝固剤を収容する、血液又は他の生物学的試料を収集するチューブ、
b.所定量の、本明細書に開示される保存剤組成物を収容するシリンジ、及び
c.任意選択により、前記シリンジに取り付け可能な針
を含むキットを対象とする。
【0013】
第八の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.任意選択により所定量の抗凝固剤を収容する、血液又は他の生物学的試料を収集するチューブ、及び
b.所定量の、本明細書に開示される保存剤を収容する密封アンプル
を含み、前記アンプルは、取り外し可能な密閉部材を含み、前記アンプルは、使用者によって密閉部材が取り外されたときに分配手段を受け入れるように構成される、キットを対象とする。
【0014】
いくつかの実施形態では、生物学的試料は、体液に由来する。いくつかの実施形態では、体液は、血液である。
【0015】
いくつかの実施形態では、核酸は、セルフリー(「cf」)DNAである。本開示の他の実施形態では、核酸は、細胞(すなわちゲノム又は「g」)DNAである。
【0016】
いくつかの実施形態では、核酸は、セルフリー(「cf」)RNAである。他の実施形態では、核酸は、細胞(すなわちゲノム又は「g」)RNAである。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、骨細胞、血液細胞(例えば、赤血球及び/又は白血球)、筋細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞又は循環腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、実験室由来細胞又は改変細胞である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示の詳細な説明
定義
本明細書で別段の定義がない限り、本出願で使用される科学用語及び技術用語は、当業者が一般に理解している意味を有するものとする。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0019】
本出願及びその様々な実施形態及び態様を通して、「含む(comprise)」という用語若しくは「含む(comprises)」又は「含んでいる」などの変形は、記載された整数又は整数群を含むことを認めるが、他の任意の整数又は整数群を排除することを認めるものではないことが理解されるであろう。
【0020】
用語「包含している」又は「包含する」は、「含むが、限定されない」を意味するために使用される。「含む」及び「含むが、限定されない」は、互換的に使用される。
【0021】
「例えば」又は「例として」という用語に続く例は、本開示を網羅又は限定することを意味するものではない。
【0022】
文脈上別段の要求がない限り、単数の用語は、複数を含み、複数の用語は、単数を含むものとする。
【0023】
冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0024】
本明細書に開示される全ての範囲は、その中に含まれるあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と記載された範囲は、最小値の1と最大値の10との間(両端値を含む)の全ての部分範囲、すなわち最小値の1以上、例えば1~6.1で始まり、最大値の10以下の最大値、例えば5.5~10で終わるあらゆる部分範囲を含むと考えられるべきである。用語「約」は、成分の重量パーセント又は混合物のv/vに関連して使用される場合、列挙された数の+/10%を意味する。
【0025】
本開示の各実施形態は、単独で又は本開示の他の実施形態の1つ以上と組み合わせて解釈され得る。
【0026】
例示的な方法及び材料が本明細書に記載されるが、本明細書に記載されるものと類似の又は均等な方法及び材料も様々な態様及び実施形態の実施又は試験において使用できることが理解されるべきである。材料、方法及び実施例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0027】
本開示をより容易に理解するために、特定の用語をまず定義する。これらの定義は、当業者に理解されているように、本開示の残りの部分に照らして読まれるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記載する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「浸透圧剤」は、高張液又は等張液を生成する薬剤を指す。浸透圧剤の例には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、スクロース若しくはグルコースなどの糖、酒石酸並びにグルカル酸又はそのいずれかの塩が含まれるが、これらに限定されない。理論に束縛されることを望むものではないが、1種以上の浸透圧剤は、血液又は他の生物学的試料中の浸透圧を変更するのに役立ち、例えば、血液又は他の生物学的試料中に存在する細胞から水を放出させ、不均衡をなくす。これにより、例えば、細胞は、収縮し、それによりさもなければ生物学的試料のセルフリー核酸の細胞核酸による汚染を引き起こすか、又は細胞のアッセイ及び分析を困難にする細胞溶解に対する抵抗性が増大し得る。さらに、任意選択の血漿増量剤がこの効果を高めると考えられる。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「高張液」は、溶質濃度が生理的濃度よりも高い溶液を指す。高張液の例としては、約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%及び25%(重量)NaCl溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「等張液」は、溶質濃度が生理的濃度とほぼ等しい溶液を指す。等張液の例としては、約0.5%、0.7%及び1%(重量)NaCl溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「酵素阻害剤」は、単独で又は本開示の保存剤組成物において、カルシウム、マグネシウム、マンガン又は亜鉛などの金属イオンと錯体を生成して血液凝固を減少させ、ヌクレアーゼを阻害し、及び/又は酵素による細胞溶解を減少させる薬剤を指す。本開示の酵素阻害剤の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジチオトレイトール(DTT)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、クエン酸、シュウ酸、アウリントリカルボン酸(ATA)、酒石酸、グルカル酸又はナトリウム塩及びカリウム塩を含むが、これらに限定されない、そのいずれかの塩が含まれるが、これらに限定されない。理論に束縛されることを望むものではないが、ヌクレアーゼの阻害は、生物学的試料内のセルフリー核酸の分解を抑制又は減少させる。本開示の酵素阻害剤が阻害する酵素の例には、リソスタフィン、ザイモラーゼ、プロテアーゼ、グリカナーゼ又は細胞溶解を誘導することが知られている他の酵素が含まれるが、これらに限定されず、これにより血液又は他の生物学的試料の細胞を保存するように作用する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「代謝阻害剤」は、単独で又は本開示の保存剤組成物において、細胞呼吸、細胞代謝及び代謝機能などの細胞プロセスを阻害し、それによりセルフリー核酸の分解を減少させる薬剤を指す。理論に束縛されることを望むものではないが、本開示の代謝阻害剤は、細胞代謝機能を阻害し、細菌の増殖を抑制することによって細胞の増殖を遅延させ、それによりセルフリー核酸の分解を減少させると考えられる。本開示の代謝阻害剤の例には、アジ化ナトリウム、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「血漿増量剤」は、高張性の(hyperoncotic)又は高張性の(hypertonic)溶液を生成する薬剤を指す。血漿増量剤の例には、グリセロール、デンプン、タンパク質コロイド(例えば、アルブミン、オボアルブミン及びゼラチン)及び非タンパク質コロイド(例えば、ヒドロキシエチルデンプン)が含まれるが、これらに限定されない。理論に束縛されることを望むものではないが、本開示の組成物の任意選択の血漿増量も血漿又は他の生物学的試料中の浸透圧を高めるのに役立ち、細胞から水を放出させ、不均衡をなくす。これにより、細胞は、収縮し、それによりさもなければ生物学的試料のセルフリー核酸の細胞核酸による汚染を引き起こすか、又は細胞のアッセイ及び分析を困難にする細胞溶解に対する抵抗性が増大する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞表面リモデリングポリマー」は、本開示の組成物において記載される量で存在する場合、共有結合性の相互作用、疎水性相互作用又は静電気的な相互作用を通して血液又は他の生物学的試料中で(例えば、細胞表面受容体への結合によるか又は細胞表面上の特異的な官能基と反応することにより)細胞表面と相互作用し、それによりいくつかの場合に血液又は他の生物学的試料中の細胞を沈降させるポリマーを指す。理論に束縛されることを望むものではないが、生物学的試料中の細胞の沈降及び/又は細胞表面及びポリマーの相互作用は、細胞溶解及びさもなければ例えば試料内のセルフリー核酸又はインタクトな細胞を汚染し得る、それに続く試料への細胞核酸の放出を防止又は低減すると考えられる。核酸及び/又は細胞は、その後、当技術分野で公知の従来の方法を介して単離され、分析され得る。細胞表面リモデリングポリマーの例としては、N-ビニルピロリドン(NVP)及びボロン酸のコポリマー、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)三ペプチドポリマー誘導体、マングビーンフィトヘマグルチニン、ポロキサマー及びマンノース6リン酸受容体に対する1つ以上のリガンドを特徴とする合成糖ペプチド(例えば、複数のセリン-O-マンノース-6-リン酸(M6Pn)残基を有する糖ペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。マンノース6リン酸受容体に対する反復リガンドを有する糖ペプチドの例については、Banik, Steven; Pedram, Kayvon;W isnovsky, Simon; Riley, Nicholas; Bertozzi, Carolyn (2019): Lysosome Targeting Chimeras (LYTACs) for the Degradation of Secreted and Membrane Protein. ChemRxiv.Preprint.https://doi.org/10.26434/chemrxiv.7927061.v2を参照されたい。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「Ficoll」は、エピクロロヒドリンとの糖の重合から形成される水溶性高分子量スクロースポリマーを指す。例えば、Ficoll 400及びFicoll 70である。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「ポロキサマー」は、ポリオキシプロピレンの中央の疎水性鎖にポリオキシエチレンの2本の親水性鎖が隣接している水溶性トリブロックコポリマーを指す。ポロキサマーの例としては、ポロキサマーp188及びポロキサマーp407が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「タンパク質コロイド」は、1種以上のタンパク質が溶液中に分散されている混合物を指す。本開示のタンパク質コロイドの例には、アルブミン、オボアルブミン又はゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。アルブミンは、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)又はオボアルブミンとして提供され得る。ゼラチンの例には、尿素結合ゼラチン(例えば、Haemaccel(登録商標))、コハク化ゼラチン(例えば、Gelofusine(登録商標))及びオキシポリゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「非タンパク質コロイド」は、1種以上の大きい分子又は超微細粒子が溶液中に分散されている混合物を指す。非タンパク質コロイドの例には、ヒドロキシエチル化デンプン(HES)などのアミロペクチンの分岐天然ポリマー及びデキストラン、例えばデキストラン40及び/又はデキストラン70などの多糖が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される場合、「水溶性ポリマー」は、水溶液に可溶なポリマーを指す。水溶性ポリマーの例には、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリデキストロース、ポリグリシン、ポリエチレンイミン、ポリリシン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドのポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸ポリマー、ポリオキサゾリン、ポリリン酸塩、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン誘導体、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン又はデンプンベースの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。本開示の水溶性ポリマーのさらなる非限定的な例については、Betageri, G. V., Kadajji, V. G., Polymers, 2011, 3, pp. 1972-2009を参照されたい。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」には、リボ核酸(RNA)及びデオキシリボ核酸(DNA)の両方が含まれる。RNA及び/又はDNAは、直鎖若しくは分枝鎖、一本鎖若しくは二本鎖又は断片であり得る。RNA及びDNAは、細胞RNA(すなわちゲノムRNA)、細胞DNA(すなわちゲノムDNA)、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせであり得る。核酸は、生物学的試料、特に血液試料中に見出される。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的試料」は、核酸及び/又は細胞を含む、実験室由来の又は実験室で改変された細胞を含む、生物学的供給源から得られる試料を指す。生物学的試料は、細胞試料、培養物試料又は組織試料であり得る。さらに、生物学的試料は、体液、例えば血液、血漿、血清、尿、唾液、便、母乳、涙、汗、脳脊髄液、滑液、精液、膣液、腹水、羊水又は細胞培養培地などに由来し得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「保存剤」は、生物学的試料に添加され、その試料中の核酸及び/又は細胞溶解物の分解を阻害するか、抑制するか又は遅らせる組成物を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「処理された生物学的試料」は、本開示に記載されるような保存剤組成物と混合された生物学的試料を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「細胞」は、血液試料又は他の生物学的試料中に存在し得る任意の細胞を指す。細胞の種類には、幹細胞、骨細胞、血液細胞(例えば、赤血球又は白血球)、筋細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞(CTC)並びに実験室由来細胞及び/又は改変細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
本開示の保存剤組成物
本開示の組成物は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞の保存及び安定化に有用である。本開示の保存剤組成物が核酸及び/又は細胞を含有する生物学的試料に添加されると、その試料中の核酸の分解及び/又は細胞溶解は、未処理の生物学的試料と比較して減少、遅延又は防止され、当技術分野で知られる従来の技術、特に高スループット技術により、核酸及び/又は細胞のその後の単離及びより正確な分析が可能になる。さらに、本開示の保存剤組成物は、細胞溶解を阻害、遅延又は減少させ、試料中のセルフリー核酸が長期間にわたって量及び特性においてより一貫したままであることを可能にする。処理された生物学的試料における細胞溶解の減少は、ヌクレアーゼの放出も減少させ、それにより試料内の核酸及び/又は細胞の分解をさらに防止又は減少させる。本開示の組成物によって保存され得る核酸には、RNA、DNA又はそれらの組み合わせが含まれる。RNA及びDNAは、細胞性若しくはセルフリー又はそれらの組み合わせ、すなわち細胞RNA、細胞DNA、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、DNA及び/又はRNAは、セルフリーDNA及び/又はセルフリーRNAである。本開示の組成物及び方法を用いて溶解を減少させる細胞は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞及び実験室由来細胞又は改変細胞であり得るが、これらに限定されない。
【0046】
第一の態様では、本開示は、
a.高張液又は等張液を生成するために十分な量で存在する1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、及び
e.Ficoll
を含む核酸及び細胞保存剤組成物であって、グリセロール又はマンニトールを含まない核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。
【0047】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の浸透圧剤は、本開示の保存剤組成物中において、組成物の約0.5重量%~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、浸透圧剤は、組成物の約1重量%~約15重量%、約1重量%~約20重量%又は約0.5重量%~約10重量%の量で存在する。
【0048】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の浸透圧剤は、ナトリウム含有溶液、カリウム含有溶液、マグネシウム含有溶液及びカルシウム含有溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、スクロース若しくはグルコースなどの糖、酒石酸若しくはグルカル酸又はそのいずれかの塩を含むが、これらに限定されない高張液又は等張液を生成するために十分な量で存在する。
【0049】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、本開示の保存剤組成物中において、組成物に対して約0.5重量%~約30重量%の量、いくつかの態様では約0.5重量%~約5重量%の量、他の態様では約1重量%~約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、酵素阻害剤は、組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在す。別の実施形態では、酵素阻害剤は、組成物の約1重量%~約10重量%の量で存在する。
【0050】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジチオトレイトール(DTT)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、クエン酸、シュウ酸、アウリントリカルボン酸(ATA)、酒石酸、グルカル酸又はそのいずれかの塩である。塩には、ナトリウム塩及びカリウム塩又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、本開示の保存剤組成物中において、組成物の約0.01重量%~約10重量%の量で存在する。別の実施形態では、任意選択の代謝阻害剤は、組成物の約0.01重量%~約5重量%の量で存在する。別の実施形態では、任意選択の代謝阻害剤は、組成物の約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。
【0052】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、アジ化ナトリウム、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンである。
【0053】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、任意選択の血漿増量剤は、本開示の保存剤組成物中において、組成物の約0.5重量%~約40重量%、例えば組成物の約0.5重量%、約1重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%又は約40重量%の量で存在する。
【0054】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、任意選択の血漿増量剤は、デンプン、タンパク質コロイド(例えば、アルブミン、オボアルブミン及びゼラチン)又は非タンパク質コロイド(例えば、ヒドロキシエチルデンプン)である。
【0055】
理論に束縛されることを望むものではないが、Ficollは、クラウディング剤として作用し、細胞を溶液から追い出し、それにより細胞の溶解及びそれに続く細胞の分解又はさもなければ例えば試料内のセルフリー核酸を汚染し得る、細胞核酸の試料中への放出を防止又は低減する。核酸及び/又は細胞は、その後、当技術分野で公知の従来の方法によって単離され、より的確に分析され得る。
【0056】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、Ficollは、組成物の約10重量%~約50重量%の量で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、1種以上の薬剤は、本組成物の約10重量%~約40重量%又は約15重量%~約35重量%又は約20重量%~約30重量%の量で存在する。
【0057】
本開示の第一の態様のいくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物の1つ以上の成分は、本保存剤組成物の他の成分の1つ以上の役割又は機能を果たし得る。例えば、酒石酸若しくはグルカル酸又はその塩は、本開示の組成物中に酵素阻害剤、浸透圧剤又はその両方として存在し得る。
【0058】
第二の態様では、本開示は、
a.高張液を生成するために十分な量で存在する1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、及び
e.1種以上の細胞表面リモデリングポリマー
を含む核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。
【0059】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の浸透圧剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、1種以上の浸透圧剤は、本組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在する。別の実施形態では、1種以上の浸透圧剤は、本組成物の約1重量%~約10重量%の量で存在する。
【0060】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の浸透圧剤は、ナトリウム含有溶液、カリウム含有溶液、マグネシウム含有溶液及びカルシウム含有溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、スクロース若しくはグルコースなどの糖、酒石酸若しくはグルカル酸又はそのいずれかの塩を含むが、これらに限定されない高張液を生成するために十分な量で存在する。
【0061】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約1重量%~約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、本組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在する。別の実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、本組成物の約1重量%~約10重量%の量で存在する。
【0062】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、酒石酸又はグルカル酸である。
【0063】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約0.01重量%~約10重量%の量で存在する。別の実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、本組成物の約0.01重量%~約5重量%の量で存在する。別の実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、本組成物の約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。
【0064】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンである。
【0065】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、任意選択の血漿増量剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約5重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%又は約40重量%など、本組成物の約1重量%~約40重量%の量で存在する。
【0066】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、任意選択の血漿増量剤は、デンプン、タンパク質コロイド又は非タンパク質コロイドである。いくつかの実施形態では、タンパク質コロイドは、アルブミン、オボアルブミン又はゼラチンである。いくつかの実施形態では、非タンパク質コロイドは、ヒドロキシエチルデンプンである。
【0067】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、本開示の組成物中において、約10及び約50重量%の量で存在する。
【0068】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)及びボロン酸のコポリマー、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)三ペプチドポリマー誘導体、マングビーンフィトヘマグルチニン及びマンノース6リン酸受容体に対する反復リガンドを有する合成糖ペプチドからなる群から選択される。
【0069】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーである。別の実施形態では、細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーp188である。別の実施形態では、細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーp407である。
【0070】
本開示の第二の態様のいくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物の1つ以上の成分は、保存剤組成物の1つ以上の成分の役割又は機能を果たすことができる。例えば、酒石酸若しくはグルカル酸又はその塩は、本開示の組成物中に酵素阻害剤、浸透圧剤又はその両方として存在し得る。
【0071】
第三の態様では、本開示は、
a.任意選択により、1種以上の浸透圧剤、
b.1種以上の酵素阻害剤、
c.任意選択により、1種以上の代謝阻害剤、
d.任意選択により、血漿増量剤、
e.任意選択により、1種以上の細胞表面リモデリングポリマー、
f.任意選択により、ヒドロキシエチルデンプン、N-ビニルピロリドン(NVP)のポリマー、Ficoll、タンパク質コロイド、非タンパク質合成コロイド、エチレンジオール、プロピレングリコール、水溶性ポリマー及びカルボキシメチルセルロース又はその塩からなる群から選択される1種以上の薬剤、
g.任意選択により、ポリプロピレングリコール(PPG)
を含む核酸及び細胞保存剤組成物であって、少なくとも1種の細胞表面リモデリングポリマー(e)又は薬剤(f)が存在し、ただし、細胞表面リモデリングポリマー(e)が存在しないとき、1種以上の任意選択の浸透圧剤は、存在する場合、組成物の約0.1重量%~約1重量%の量で存在することを条件とし、その量は、等張液又は高張液を生成するために十分であり、及びさらに、薬剤(f)が存在しないとき、1種以上の任意選択の浸透圧剤は、存在する場合、等張液を生成するために十分な量で存在するか、又は組成物の約0.1重量%~約1重量%であり、その量は、等張液又は高張液を生成するために十分である、核酸及び細胞保存剤組成物を対象とする。
【0072】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の浸透圧剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約0.1重量%~約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、浸透圧剤は、本組成物の約0.1重量%~約10重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約20重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、浸透圧剤は、本組成物の約0.1重量%~約1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、浸透圧剤は、存在しない。
【0073】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の浸透圧剤は、ナトリウム含有溶液、カリウム含有溶液、マグネシウム含有溶液及びカルシウム含有溶液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、アミノ酸、ソルビトール、マンニトール、スクロース若しくはグルコースなどの糖、酒石酸、グルカル酸又はそのいずれかの塩を含むが、これらに限定されない、列挙されるような等張液又は高張液を生成するために十分な量で存在する。
【0074】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約0.5重量%~約30重量%の量、いくつかの態様では約0.5重量%~約5重量%の量、他の態様では約1重量%~約30重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、酵素阻害剤は、本組成物の約1重量%~約20重量%の量で存在する。別の実施形態では、酵素阻害剤は、本組成物の約1重量%~約10重量%の量で存在する。
【0075】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジチオスレイトール(DTT)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、クエン酸、シュウ酸、アウリントリカルボン酸(ATA)、酒石酸、グルカル酸又はそのいずれかの塩である。塩としては、ナトリウム及びカリウム塩又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の酵素阻害剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩である。
【0077】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約0.01重量%~約10重量%の量で存在する。別の実施形態では、任意選択の代謝阻害剤は、本組成物の約0.01重量%~約5重量%の量で存在する。別の実施形態では、任意選択の代謝阻害剤は、本組成物の約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。
【0078】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の代謝阻害剤は、アジ化ナトリウム、チメロサール、プロクリン又はクロロヘキシジンである。
【0079】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、任意選択の血漿増量剤は、本開示の保存剤組成物中において、本組成物の約0.5重量%~約40重量%の量、例えば本組成物の約0.5重量%、約1重量%、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%又は約40重量%などで存在する。
【0080】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、任意選択の血漿増量剤は、グリセロール、デンプン、タンパク質コロイド(例えば、アルブミン、オボアルブミン及びゼラチン)又は非タンパク質コロイド(例えば、ヒドロキシエチルデンプン)である。いくつかの実施形態では、タンパク質コロイドは、アルブミン、オボアルブミン又はゼラチンである。いくつかの実施形態では、非タンパク質コロイドは、ヒドロキシエチルデンプンである。
【0081】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の細胞表面リモデリングポリマーは、本開示の組成物中において、約10及び約50重量%の量で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の細胞表面リモデリングポリマーは、本組成物の約10重量%~約40重量%又は約15重量%~約35重量%又は約20重量%~約30重量%の量で存在する。
【0082】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、N-ビニルピロリドン(NVP)及びボロン酸のコポリマー、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)三ペプチドポリマー誘導体、マングビーンフィトヘマグルチニン及びマンノース6リン酸受容体に対する反復リガンドを有する合成糖ペプチドからなる群から選択される。
【0083】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマー又は血液若しくは他の生物学的試料中の細胞に対して界面活性剤として作用する他の両親媒性化合物である。別の実施形態では、細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーp188である。別の実施形態では、細胞表面リモデリングポリマーは、ポロキサマーp407である。
【0084】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、本組成物の約1重量%~約50重量%の量で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、本組成物の約1重量%~約40重量%又は約15重量%~約35重量%又は約20重量%~約30重量%の量で存在する。
【0085】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、ヒドロキシエチルデンプンである。本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、Ficollである。いくつかの実施形態では、Ficollは、Ficoll 400である。本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、タンパク質コロイドである。いくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、非タンパク質コロイドである。いくつかの実施形態では、1種以上の任意選択の薬剤は、水溶性ポリマーである。
【0086】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の細胞表面リモデリングポリマーは、存在し、及び薬剤は、存在しない。
【0087】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の薬剤は、存在し、及び細胞表面リモデリングポリマーは、存在しない。
【0088】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、1種以上の薬剤は、存在し、及び1種以上の細胞表面リモデリングポリマーも存在する。
【0089】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、任意選択のポリプロピレングリコール(PPG)は、本組成物の約0.1~10重量%の量で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、任意選択のPPGは、本組成物の約5重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約1重量%の量で存在する。
【0090】
本開示の第三の態様のいくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物の1つ以上の成分は、本保存剤組成物の成分の1つ以上の役割又は機能を果たし得る。例えば、酒石酸若しくはグルカル酸又はその塩は、本開示の組成物中に酵素阻害剤、浸透圧剤又はその両方として存在し得る。さらなる例として、ヒト血清アルブミンは、本開示の組成物中に1種以上の薬剤、任意選択の血漿増量剤又はその両方として存在し得る。
【0091】
本開示(例えば、本開示の第一、第二及び第三の態様)による保存剤組成物は、凍結乾燥粉末、顆粒、錠剤の形態又は溶液の形態であり得る(例えば、保存剤組成物は、好適なビヒクル中で再構成される)。凍結乾燥粉末、顆粒及び/又は錠剤は、生物学的試料に直接添加するか、又は生物学的試料に添加される前に再構成し得る。凍結乾燥粉末、顆粒及び/又は錠剤は、例えば、組成物を好適なビヒクルに溶解することによって再構成することができる。好適なビヒクルには、水、生理食塩水、リンゲル液、植物起源の固定油、脂肪酸のモノ及びジグリセリド、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール及び本開示の任意選択の血漿増量剤が含まれるが、これらに限定されない。代わりに、生物学的試料は、凍結乾燥粉末、顆粒、錠剤又は再構成組成物(すなわち溶液)に直接添加され得る。別の例として、生物学的試料が体液に由来する場合、体液は、保存剤組成物を可溶化するための許容可能なビヒクルとして役立ち得る。例えば、保存剤組成物の凍結乾燥粉末、顆粒及び/又は錠剤形態は、体液と混合し、それにより体液により可溶化することができる。いくつかの実施形態では、収集チューブ又は収集容器は、生物学的試料がチューブ又は容器に収集される前に、凍結乾燥粉末、顆粒、錠剤又は溶液として保存剤組成物を収容する。
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物は、水溶液の形態である。水溶液を生物学的試料と混合し得るか、又は生物学的試料を水溶液と混合し得る。
【0093】
保存剤組成物及び生物学的試料の組み合わせ並びに生物学的試料の核酸及び/又は細胞を保存する方法
第四の態様では、本開示は、本開示の保存剤組成物及び生物学的試料の組み合わせを対象とする。
【0094】
第五の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存する方法であって、本開示の保存剤組成物と生物学的試料とを組み合わせる工程を含む方法を対象とする。
【0095】
第四~第五の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、細胞試料又は組織試料である。
【0096】
第四~第五の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、体液に由来する。いくつかの実施形態では、体液は、血液、血漿、血清、尿、唾液、便、母乳、涙、汗、脳脊髄液、滑液、精液、膣液、腹水又は羊水である。好ましい実施形態では、体液は、血液、例えば全血又はその画分である。生物学的試料は、細胞を含み得るか又はセルフリーであり得る。
【0097】
第四~第五の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞又は循環腫瘍細胞を含む。
【0098】
第四~第五の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである。
【0099】
生物学的試料は、多くの方法で本開示の保存剤組成物と混合することができる。例えば、生物学的試料を好適な容器に収集した後、その容器に保存剤組成物を例えばシリンジ又はピペットによって添加することができる。代わりに、生物学的試料の収集前に、保存剤組成物を生物学的試料の収集に好適な容器に加えることができる。いくつかの実施形態では、保存剤組成物を生物学的試料に添加する。いくつかの実施形態では、生物学的試料を保存剤組成物に添加する。
【0100】
本開示は、本保存剤組成物の成分が同時に又は個別に生物学的試料に添加される方法も企図する。従って、いくつかの実施形態では、本開示は、いずれかの順序で又は同時に本開示の保存剤組成物の構成成分と生物学的試料を接触させることを含む、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存する方法を対象とする。いくつかの実施形態では、生物学的試料の収集に好適な容器は、保存剤組成物の成分の1つ以上を既に収容し、残りの成分を生物学的試料の収集と連続して又は同時に生物学的試料に添加する。例えば、好適な酵素阻害剤(例えば、酒石酸、又はEDTA若しくはその塩、又はグルカル酸)を既に収容する血液収集チューブを使用して、生物学的試料を収集し得る。生物学的試料の収集に続いて、残りの成分(すなわち浸透圧剤、任意選択により1種以上の代謝阻害剤、任意選択により血漿増量剤及び1種以上の薬剤)を生物学的試料に添加し得る。別の実施形態では、保存剤組成物の成分を、生物学的試料を収集した後、連続して又は同時に生物学的試料に添加する。いくつかの実施形態では、保存剤組成物の必要な成分の全てと、任意選択の成分とが任意選択により容器に入れられており、その後、その容器を使用して試料を収集する。
【0101】
いくつかの実施形態では、試料の収集に使用される容器は、凍結乾燥粉末形態の保存剤組成物を収容する。いくつかの実施形態では、試料の収集に使用される容器は、顆粒形態の保存剤組成物を収容する。いくつかの実施形態では、試料の収集に使用される容器は、錠剤形態の保存剤組成物を収容する。いくつかの実施形態では、試料収集に使用される容器は、保存剤組成物及び好適なビヒクルを収容する。いくつかの実施形態では、試料収集に使用される容器は、保存剤組成物を水溶液として収容する。別の実施形態では、血液試料の収集に使用される容器は、抗凝固剤をさらに含む。抗凝固剤の例には、EDTA(酵素阻害剤としても機能し得る)、クエン酸ナトリウム、クエン酸-テオフィリン-アデノシン-ジピリダモール(CTAD)、ヘパリンリチウム、ヘパリンナトリウム、フッ化ナトリウム、クエン酸-デキストロース溶液(ACD)及びポリアネトールスルホン酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適な容器は、真空血液試料収集チューブである。
【0102】
生物学的試料と混合し得る保存剤組成物の量は、当業者であれば日常の実験によって決定することができる。いくつかの実施形態では、生物学的試料に対する保存剤組成物の比は、約1:10~約1:1v/vであり得る。いくつかの実施形態では、生物学的試料に対する保存剤組成物の比は、約1:8~約1:2v/vであり得る。いくつかの実施形態では、生物学的試料に対する保存剤組成物の比は、約1:6~約1:3v/vであり得る。いくつかの実施形態では、生物学的試料に対する保存剤組成物の比は、約1:5~約1:4v/vであり得る。
【0103】
生物学的試料が保存された後、核酸及び/又は細胞は、抽出、遠心分離及びクロマトグラフィー法を含む、当業者に知られた方法を使用して、分析のために生物学的試料から単離し得る。当業者は、生物学的試料から核酸及び/又は細胞を単離するために使用し得る多くの方法があることを認識するであろう。
【0104】
本開示の保存剤組成物を使用して保存される核酸及び/又は細胞は、様々な温度条件下での長期間の保存後、処理された生物学的試料から単離され得る。いくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物と接触させた生物学的試料は、周囲条件下又は低温で少なくとも1日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間にわたって保存することができる。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、約-20℃~約30℃の範囲の温度で長期間にわたり、生物学的試料(すなわち生物学的試料中の核酸及び/又は細胞)を保存することを可能にする。いくつかの実施形態では、保存剤組成物は、周囲温度で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間にわたり、生物学的試料(すなわち生物学的試料中の核酸及び/又は細胞)を保存することができる。いくつかの実施形態では、保存剤組成物は、周囲温度で少なくとも2週間にわたり、生物学的試料を保存することができる。いくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物は、4℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間にわたり、生物学的試料(すなわち生物学的試料中の核酸及び/又は細胞)を保存することができる。いくつかの実施形態では、本開示の保存剤組成物は、-20℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間にわたり、生物学的試料(すなわち生物学的試料中の核酸及び/又は細胞)を保存することができる。本開示の組成物及び方法を使用して保存される核酸(RNA及びDNA)は、良好な収率、純度、完全性及びRNAについて増幅能を示す。
【0105】
生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキット
本開示による保存剤組成物は、使用者が受け取るキットの一部として提供され得る。キットは、本開示の保存剤組成物を生物学的試料と容易に混合することを可能にし、その結果、その生物学的試料中に存在する核酸及び/又は細胞は、長期間、例えば少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間又は少なくとも4週間にわたって保存される。保存剤組成物は、生物学的試料が収集された後に生物学的試料と混合されるように提供され得る。代わりに、保存剤組成物は、生物学的試料が収集される時点で生物学的試料と混合されるように提供される。
【0106】
いくつかの実施形態では、保存剤組成物は、分配手段における水溶液として提供される。いくつかの実施形態では、分配手段は、シリンジである。分配手段中の保存剤の量は、生物学的試料と混合される保存剤組成物の比が長期間にわたってその試料の核酸及び/又は細胞を保存することができるような所定の量であり得る。キットは、前記シリンジに取り付け可能な針をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、血液試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのものであり、任意選択により、所定量の抗凝固剤を収容する血液収集チューブをさらに含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、保存剤組成物は、密封アンプルで提供され、前記アンプルは、取り外し可能な密閉部材を含み、前記アンプルは、使用者によって密閉部材が取り外されたときに分配手段を受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、分配手段は、ピペット又はシリンジである。いくつかの実施形態では、キットは、血液試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのものであり、所定量の抗凝固剤を収容する血液収集チューブをさらに含む。
【0108】
さらなる実施形態では、キットは、血液試料中の核酸及び/又は細胞を保存し、任意選択により所定量の抗凝固剤を収容する血液収集チューブ及び本開示の保存剤組成物を含むことに向けられている。
【0109】
第六の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.本明細書中で開示される保存剤組成物、及び
b.任意選択により、前記保存剤組成物の使用説明書
を含むキットを対象とする。
【0110】
第七の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.任意選択により所定量の任意選択の抗凝固剤を収容する、血液又は他の生物学的試料を収集するチューブ、
b.所定量の、本明細書中で開示される保存剤組成物を収容するシリンジ、及び
c.任意選択により、前記シリンジに取り付け可能な針
を含むキットを対象とする。
【0111】
第八の態様では、本開示は、生物学的試料中の核酸及び/又は細胞を保存するためのキットであって、
a.任意選択により所定量の抗凝固剤を収容する、血液又は他の生物学的試料を収集するチューブ、及び
b.本明細書中で開示される所定量の保存剤を収容する密封アンプル
を含み、前記アンプルは、取り外し可能な密閉部材を含み、前記アンプルは、使用者によって密閉部材が取り外されたときに分配手段を受け入れるように構成される、キットを対象とする。
【0112】
第六~第八の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、細胞又は組織試料である。
【0113】
第六~第八の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、体液に由来する。いくつかの実施形態では、体液は、血液、血漿、血清、尿、唾液、便、母乳、涙、汗、脳脊髄液、滑液、精液、膣液、腹水又は羊水である。いくつかの実施形態では、体液は、全血又はその画分である。生物学的試料は、細胞を含み得るか又はセルフリーであり得る。
【0114】
第六~第八の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、幹細胞、骨細胞、血液細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、神経細胞、内皮細胞、性細胞、膵臓細胞、癌細胞、腫瘍細胞、循環腫瘍細胞又はそれらの組み合わせを含む。
【0115】
第六~第八の態様のいくつかの実施形態では、生物学的試料は、RNA、DNA又はそれらの組み合わせから選択される核酸を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、セルフリーRNA、セルフリーDNA又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、核酸は、細胞RNA、細胞DNA又はそれらの組み合わせである。
【0116】
均等物
前述の説明及び以下の実施例は、本開示のいくつかの特定の実施形態を詳述し、本発明者らが意図する本開示を実施する最良の形態を説明するものである。しかしながら、前述の内容が文章にどのように詳細に記載されていようと、本開示は、多くの方法で実施することができ、本開示は、添付の実施形態及びその均等物によって解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【0117】
本開示は、様々な用途、方法、化合物及び組成物に関して記載されているが、本明細書の開示から逸脱することなく、様々な変更形態及び修正形態がなされ得ることが理解されるであろう。以下の実施例は、本開示をより十分に説明するために提供されるものであり、本明細書で提示する教示の範囲を限定することを意図するものではない。本開示は、これらの例示的な実施形態に関して説明されてきたが、当業者であれば、これらの例示的な実施形態の多くの変形形態及び修正形態が過度の実験なしに可能であることを容易に理解するであろう。そのような変形形態及び修正形態は、全て本開示の範囲内である。
【実施例
【0118】
実施例
実施例1 - 保存剤組成物の実施形態
本開示の保存剤組成物の実施形態を調製した:
組成物1:2.86重量%NaCl(浸透圧剤)、0.02重量%NaN(代謝阻害剤)、0.75重量%2Na-EDTA及び0.75重量%4Na-EDTA(酵素阻害剤)、20.0重量%Ficoll PM400(薬剤)及びバランスのための水。
【0119】
組成物2:2.86重量%NaCl(浸透圧剤)、0.02重量%NaN(代謝阻害剤)、0.75重量%2Na-EDTA及び0.75重量%4Na-EDTA(酵素阻害剤)、20.0重量%ポロキサマーp188(細胞表面リモデリングポリマー)及びバランスのための水。
【0120】
実施例2 - 血漿体積の分析
本開示による保存剤組成物で処理した試料の血漿体積を評価するために、様々なドナーからの血液試料を血液試料収集チューブに収集する。実施例1の保存剤組成物は、2mLの保存剤組成物を収容するチューブに血液試料を添加することによって試験する。
【0121】
次に、室温において425gで約15分間、合わせた保存剤組成物及び血液試料を遠心分離し、その結果、収集チューブ中でペレットが形成される。次に、分離した成分を乱さずに、ピペットを使用して上部の血漿層(上清)を別個の収集チューブに移す。次いで、移した上清を4℃において16,000gで約15分間、再び遠心分離して、誤って移された細胞残屑又は沈殿物を除去し、残った血漿の体積を測定する。測定した体積を本明細書中で「血漿体積」と呼ぶ。
【0122】
理論に束縛されることを望むものではないが、「血漿体積」は、ハイスループットな適用において本開示の態様の使用を促進することにおいて重要な要素であると予想される。これらの適用における自動化及びロボットの使用は、理想的には3~6mLである一貫した血漿体積を必要とする。
【0123】
上記の手順に従って処理され、組成物1を収容するチューブ中に保存された混合物の「血漿体積」は、6~6.2mLであることが観察された。本手順に従って処理され、組成物2を収容するチューブ中に保存された混合物の「血漿体積」は、2.2~3.7mLであることが観察された。
【0124】
実施例3 - 単離されたcfDNA及びRNAの完全性の分析
種々のドナーからの血液試料を血液試料収集チューブに収集して、本開示の保存剤組成物の実施形態のcfDNA及びRNAを保存する能力を評価する。実施例1の保存剤組成物を、2mLの保存剤組成物を収容するチューブに血液試料を添加することによって試験する。
【0125】
cfDNA及びRNAは、当技術分野で知られる抽出及び分離技術を使用して試料から単離する。このようなcfDNA抽出方法の1つは、MagMAX(商標)Cell-Free DNA Isolationキットを使用することを含む。このようなRNA抽出方法の1つは、Beckman CoulterのRNAdvance Blood Kitに基づく手順を使用することを含む。
【0126】
単離されたcfDNA及びRNAを1日目に分析し、0日目に採血する。核酸の完全性を分析して、保存剤組成物の特性を評価する。
【0127】
cfDNAの完全性
長いDNAフラグメント及び短いDNAフラグメントのqPCRによってcfDNAの完全性を分析し、短いフラグメントに対する長いフラグメントの比によって特徴付ける(222bp/90bp)。得られた比は、本明細書中でDNA完全性数(DIN)と呼ぶ。DINは、cfDNA品質の客観的な測定基準である。DINが<0.5である場合、cfDNAは、純粋であるとみなされる(すなわち血漿がgDNA(細胞又はゲノムDNA)により汚染されていない)。
【0128】
gDNAの10倍希釈系列(1ng/μL~0.01ng/μL)を標準曲線のために調製する。5μLの100μMのフォワードプライマー、5μLの100μMのリバースプライマーを90μLのヌクレアーゼを含まない水と混合することにより、5μM濃度のフォワード及びリバースプライマーミックスを調製する。
【0129】
混合物#1中の1反応のためにそれぞれ1μLの標準試料又はcfDNA試料及び8μLのヌクレアーゼを含まない水、混合物#2中の1反応のために1μLのプライマー混合物及び10μLの2×PowerTrack SYBR Green Master Mix(ThermoFisher Scientific)を含む2つの別々の混合物を調製する。9μLの混合物#1及び11μLの混合物#2を96ウェル光学プレートのウェルに加えて、リアルタイムPCRを行う。熱サイクル条件を下の表に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
RNAの完全性
試料からのRNAの完全性を、アガロースゲル電気泳動を使用するBioAnalyzerによって分析し、RNA完全性数(RIN)によって特徴付ける。RINは、10(高度にインタクトなRNA)~1(完全に分解されたRNA)の範囲のRNAの全体的な品質の客観的な測定基準である。
【0132】
実施例1の組成物を使用して保存された血液試料中のcfDNAの特性:
qPCRアッセイからの短いフラグメントに対する長いフラグメントの比(222bp/90bp)が<0.1~0.7の範囲であることが観察されるため、組成物1又は2のいずれかを収容するチューブ中で保存される血液試料から抽出されたcfDNAの完全性(すなわちDIN)は、一般に高い。
【0133】
実施例1の組成物を使用して保存された血液試料中のRNAの特性:
7.4~9.1の範囲のRINを有することが観察されたため、組成物1又は2のいずれかを収容するチューブ中で保存される血液試料から単離されるRNAのRINは、一般に高い。
【国際調査報告】