IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノースウェスタン ユニバーシティの特許一覧 ▶ ユーシカゴ アーゴン,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2023-524742硬放射線検出用の酸素ドープおよびフッ素ドープされたセシウムおよびルビジウム鉛ペロブスカイト化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】硬放射線検出用の酸素ドープおよびフッ素ドープされたセシウムおよびルビジウム鉛ペロブスカイト化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/08 20060101AFI20230606BHJP
【FI】
H01L31/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567127
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021030816
(87)【国際公開番号】W WO2021226191
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/020,176
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】518132226
【氏名又は名称】ユーシカゴ アーゴン,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ウェンウェン リン
(72)【発明者】
【氏名】ダック ヤング チョン
(72)【発明者】
【氏名】マーコーリ ジー.カナッツディス
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA05
5F849AB01
5F849FA05
5F849XB13
(57)【要約】
酸素原子またはフッ素原子でドープされた無機ペロブスカイト、ドープペロブスカイトの製造方法、およびドープペロブスカイトを光活性層として組み込む硬放射線検出器が提供される。このドープペロブスカイトには、ドーパント原子源として、酸化鉛、フッ化鉛、または酸化鉛またはフッ化鉛に熱分解する化合物を利用する。このドーパント原子源の存在でのペロブスカイトの結晶化中に、ドーパント源からの酸素原子またはフッ化物原子がペロブスカイト結晶格子に取り込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表す)を有するペロブスカイト単結晶;および
前記ペロブスカイト単結晶の結晶格子中に酸素原子ドーパントまたはフッ素原子ドーパントを含む、ドープペロブスカイト。
【請求項2】
前記酸素原子ドーパントを含む、請求項1に記載のドープペロブスカイト。
【請求項3】
前記ドープペロブスカイトは、酸素ドープCsPbBr3である、請求項2に記載のドープペロブスカイト。
【請求項4】
前記酸素ドープCsPbBr3は、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素ドーパント濃度を有する、請求項3に記載のドープペロブスカイト。
【請求項5】
前記ドープペロブスカイトは、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパント濃度またはフッ素原子ドーパント濃度を有する、請求項1に記載のドープペロブスカイト。
【請求項6】
前記フッ素原子ドーパントを含む、請求項1に記載のドープされたペロブスカイト。
【請求項7】
入射放射線を検出する装置であって、
化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPb、またはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表す)を有するペロブスカイト単結晶、および前記ペロブスカイト単結晶の結晶格子中に酸素原子ドーパントまたはフッ素原子ドーパントを含む光活性層;
前記光活性層と電気的に連通し前記光活性層全体に電場を印加するように構成された第1の電極;
前記光活性層と電気的に連通し前記光活性層全体に電場を印加するように構成された第2の電極;および
前記光活性層が入射X線、γ線、および/またはα粒子に曝露された場合に、前記光活性層内に生成される光電流を測定するように構成された信号検出器を含む、装置。
【請求項8】
前記信号検出器に作動可能に結合され、かつ光電流データを記憶するように構成されたコンピュータ可読媒体;および
前記コンピュータ可読媒体に作動可能に結合され、かつ前記光電流データのグラフ表示を生成するように構成されたコンピュータインターフェースをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ドープペロブスカイトは、前記酸素原子ドーパントを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記ドープペロブスカイトは、酸素ドープCsPbBr3である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ドープペロブスカイトは、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパント濃度または酸素原子ドーパント濃度を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記光活性層は、単一のペロブスカイト相のみを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記ドープペロブスカイトは、前記フッ素原子ドーパントを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
請求項7に記載の装置を用いて入射放射線を検出する方法であって、
前記装置の光活性層をX線、γ線、および/またはα粒子を含む入射放射線に曝露し、それによって酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトが前記入射放射線を吸収して材料内に光電流を発生する工程;そして
前記光電流を検出して前記吸収された入射放射線のエネルギーおよび強度のうちの少なくとも一方を測定する工程を含む、方法。
【請求項15】
化学式CsAX3(式中、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、Xは1種以上のハロゲン原子を表す)を有する酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトを製造する方法であって、
化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPb、Sn、Si、Ge、またはそれらの2種以上の組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表す)を有するペロブスカイトと、PbO、加熱するとPbOに分解される鉛と酸素を含む化合物、PbF2、または加熱するとPbF2に分解される鉛と酸素を含む化合物を含むドーパント源化合物との混合物を生成する工程;
前記ペロブスカイトおよび前記ドーパント源を溶融して融液を生成する工程;そして
前記融液から酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトを結晶化する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記ドープペロブスカイトは、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパントの濃度またはフッ素原子ドーパント濃度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物中の前記ドーパント源化合物の濃度は、0.01モル%~1モル%の範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ペロブスカイトはCsPbBr3である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ペロブスカイトは酸素ドープペロブスカイトであり、前記ドーパント源化合物はPbOを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ペロブスカイトは酸素ドープペロブスカイトであり、前記ドーパント源化合物は、PbO2、Pb3O4、Pb(OH)2、PbCO3、Pb2(OH)2CO3、またはそれらの2種以上の組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ペロブスカイトはフッ素ドープペロブスカイトであり、前記ドーパント源化合物はPbF2を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月5日付けの米国仮特許出願番号63/020,176号に対する優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
放射性核物質が悪意のある目的で使用されるのを防止することは、地球規模の主要な安全課題である。この困難な問題を解決するために、高感度で化学的に安定な低コストの室温放射線検出半導体(RTSD)に大きな需要がある。理想的なRTSDには、放射が弱い場合や遮蔽されている場合でも、低線量の放射源を効率的に特定する能力が必要とされる。高エネルギー分解能で放射線源を特定するには、RTSDの候補材は複数の多様かつ厳格な基準を同時に満たす必要がある。いくつかの最も望ましい基準は、以下に示す通りである:(i)室温でのキャリアの熱電離を阻害するのに十分に広いバンドギャップ(1.5 eV超のEg);(ii)高エネルギー放射線の高い吸収効率を確実にするための高い平均原子番号(Z)および密度;(iii)光誘起キャリアの深い準位での捕捉に対する高い格子耐性;(iv)長期性能での分極効果の不在;(v)高い放射線硬度および高い化学安定性;および(vi)種々の低線量放射線源の特定および特性評価を可能にする高いキャリア移動度と寿命の積(μτ)。上記の厳しい要件のために、限られた数の半導体化合物のみが電離放射線検出器材料として有望とされている。現在までに分光性能を備える優れた半導体検出材料として、高純度ゲルマニウム(HPGe)、CdTe系化合物、TlBr、BiI3、HgI2、およびPbI2が挙げられている。HPGeはγ線に対して0.8%未満の最高のエネルギー分解能を提供するが、本質的にバンドギャップが狭いために、検出器を機能させる際には液体窒素で冷却する必要があり、その広範な用途の妨げとなっている。最も商業化されているRTSDであるCdTe系化合物でさえ、Teの析出、マクロな規模での欠陥、および組成の不均一性に関連する本質的な欠点を依然として抱えている。TlBrは、高い電子移動度と寿命の積(μτ)および電子寿命を有する、γ線に対する分光性能を示す開発中のRTSDである。しかしTlBrは、分極が誘発する固有の不安定性および材料加工に致命的な低い機械的硬度という問題を抱えている。HgI2、PbI2、およびBiI3などのその他の高密度の二元系半導体検出材料は、抵抗は高いもののそれらの2次元結晶構造の性質による吸湿性および機械的変形性に悩まされている。
【0003】
最近になって、ペロブスカイト構造を有し、かつ強い光子阻止能および高い化学的安定性を備える全無機半導体であるCsPbBr3が、約3.8%の高いエネルギー分解能および122 keVのγ線に対する10-3 cm2/Vの長い正孔移動度と寿命の積を有する有望な半導体放射線検出器材料として特定された(He, Y. H. et al., Nat Commun 2018, 9, 1609)。この化合物は、原子番号がともに高いCs原子およびPb原子で構成されていて、緻密な結晶構造により密度が高い。平均原子番号および密度の双方が高いことで、放射線照射時に高い光子阻止能が確保される。しかし硬放射線の照射時の収率および検出性能にはバッチ毎にばらつきがあり、検出性能および収率の制御が不可能である。
【発明の概要】
【0004】
硬放射線の検出に使用するための酸素ドープペロブスカイトおよびフッ素ドープペロブスカイト、これらのドープペロブスカイトを組み込む放射線検出器、その放射線検出器の使用方法、およびこれらのドープペロブスカイトの製造方法が提供される。
【0005】
ドープペロブスカイトの例は、化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3を(0<x<1)有するペロブスカイト単結晶を含み、これらの式中で、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表し、このペロブスカイト単結晶の結晶格子中には酸素原子ドーパントまたはフッ素原子ドーパントを有する。
【0006】
入射放射線を検出するための装置の例は、化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(0<x<1)を有するペロブスカイト単結晶を含む光活性層を含み、これらの式中で、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、Xは1種以上のハロゲン原子を表し、このペロブスカイト単結晶の結晶格子中には酸素原子ドーパントまたはフッ素原子ドーパントを有する。この装置はさらに、光活性層と電気的に連通している第1の電極;光活性層と電気的に連通している第2の電極;および光活性層が入射X線、γ線、および/またはα粒子に曝露されると光活性層内に生成される光電流を測定するように構成された信号検出器を含み、これらの第1および第2の電極は、光活性層全体に電場を印加するように構成されている。
【0007】
本明細書に記載の装置を用いて入射放射線を検出する方法の例は、装置の光活性層をX線、γ線、および/またはα粒子を含む入射放射線に曝露し、それによって酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトが入射放射線を吸収して材料内に光電流を発生する工程;およびその光電流を検出して吸収された入射放射線のエネルギーおよび強度のうちの少なくとも一方を測定する工程を含む。
【0008】
化学式CsAX3(式中、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、Xは1種以上のハロゲン原子を表す)を有する酸素ドープまたはフッ素ドープペロブスカイトを製造する方法の例は、化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPb、Sn、Si、Ge、またはそれらの2種以上の組合せ、およびXは1種以上のハロゲン原子を表す)、およびPbO、加熱するとPbOに分解される鉛と酸素を含む化合物、PbF2、または加熱するとPbF2に分解される鉛と酸素を含む化合物を含むドーパント源化合物を有するペロブスカイトの混合物を生成する工程;ペロブスカイトおよびドーパント源を溶融して融液を生成する工程;および融液から酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトを結晶化する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下に本発明の例示的な実施態様を、添付の図面を参照して説明し、これら図面では同一の番号は同一の要素を示す。
【0010】
図1A図1Aは、結晶成長のための3つの温度域の垂直ブリッジマン炉内の温度特性を示す。図1Bは、種々の濃度のPbOを用いて製造された全てのブール(円柱状の人造石)からの粉砕試料の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。CsPbBr3の模擬的なパターンは、Pnmaの空間群に属する斜方晶の室温相に由来する。図1Cは、Ga接点(ショットキー接合)およびAu接点(オーミック接触)を有する、4.0×4.0×1.0 mm3大のCsPbBr3結晶の電流-電圧(I-V)曲線を示す。
【0011】
図1B-C】図1Aは、結晶成長のための3つの温度域の垂直ブリッジマン炉内の温度特性を示す。図1Bは、種々の濃度のPbOを用いて製造された全てのブール(円柱状の人造石)からの粉砕試料の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。CsPbBr3の模擬的なパターンは、Pnmaの空間群に属する斜方晶の室温相に由来する。図1Cは、Ga接点(ショットキー接合)およびAu接点(オーミック接触)を有する、4.0×4.0×1.0 mm3大のCsPbBr3結晶の電流-電圧(I-V)曲線を示す。
【0012】
図2A-D】図2Aは、非酸素ドープCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。図2Bは、種々の濃度のPbOを用いたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。図2Cは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶に印加されたバイアス電圧の関数として正孔捕集の効率を示す。図2Dは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3の122 keVのγ線に対するエネルギー分解能および正孔移動度と寿命の積を示す。
【0013】
図3A図3Aは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。図3Bは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶の印加バイアス電圧の関数として電子捕集の効率を示す。図3Cは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3の電子移動度と寿命の積を示す。
【0014】
図3B-C】図3Aは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。図3Bは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶の印加バイアス電圧の関数として電子捕集の効率を示す。図3Cは、種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3の電子移動度と寿命の積を示す。
【0015】
図4A図4A~4Cは、PbOをドーパント源化合物として0.10%の濃度で用いて製造されたブールの前端部(図4A);中央部(図4B);後端部(図4C)から抽出されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。ブールの長さは約4.0 cmである。
【0016】
図4B図4A~4Cは、PbOをドーパント源化合物として0.10%の濃度で用いて製造されたブールの前端部(図4A);中央部(図4B);後端部(図4C)から抽出されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。ブールの長さは約4.0 cmである。
【0017】
図4C図4A~4Cは、PbOをドーパント源化合物として0.10%の濃度で用いて製造されたブールの前端部(図4A);中央部(図4B);後端部(図4C)から抽出されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。ブールの長さは約4.0 cmである。
【0018】
図5A図5A~5Dは、非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのBr 3d電子のX線光電子スペクトル(図5A);非ドープCsPbBr3、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3、およびPbOからのPb 3d電子およびO 1s電子のX線光電子スペクトル(それぞれ図5B図5C);および非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのCs 4d電子のX線光電子スペクトル(図5D)を示す。スペクトルを標準ガウス分布を用いて適合させた。
【0019】
図5B図5A~5Dは、非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのBr 3d電子のX線光電子スペクトル(図5A);非ドープCsPbBr3、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3、およびPbOからのPb 3d電子およびO 1s電子のX線光電子スペクトル(それぞれ図5B図5C);および非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのCs 4d電子のX線光電子スペクトル(図5D)を示す。スペクトルを標準ガウス分布を用いて適合させた。
【0020】
図5C図5A~5Dは、非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのBr 3d電子のX線光電子スペクトル(図5A);非ドープCsPbBr3、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3、およびPbOからのPb 3d電子およびO 1s電子のX線光電子スペクトル(それぞれ図5B図5C);および非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのCs 4d電子のX線光電子スペクトル(図5D)を示す。スペクトルを標準ガウス分布を用いて適合させた。
【0021】
図5D図5A~5Dは、非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのBr 3d電子のX線光電子スペクトル(図5A);非ドープCsPbBr3、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3、およびPbOからのPb 3d電子およびO 1s電子のX線光電子スペクトル(それぞれ図5B図5C);および非ドープCsPbBr3およびドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造されたCsPbBr3からのCs 4d電子のX線光電子スペクトル(図5D)を示す。スペクトルを標準ガウス分布を用いて適合させた。
【0022】
図6A-B】図6A~6Bは、空気中で酸化されたPb金属の表面層からのO 1s電子のX線光電子スペクトル(図6A);および光分解した暗色のPbBr2粉末の表面からのO 1s電子のX線光電子スペクトル(図6B)を示す。表面層からの信号を取得するために、XPS測定の前に表面エッチングは実施しなかった。スペクトルを標準ガウス分布を用いて適合させた。
【0023】
図7A-B】図7A~7Fは、非ドープCsPbBr3結晶の0.5 mWのレーザー出力を用いる室温PLスペクトル(図7A);種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶の0.5 mWのレーザー出力を用いる室温PLスペクトル(図7B);PbO濃度の関数としての一般的なピーク位置および強度(図7C);非ドープCsPbBr3結晶に対する524 nmでの発光の室温時間分解減衰スペクトル(図7D);種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶に対する534 nmでの発光の室温時間分解減衰スペクトル(図7E);および濃度の関数としての平均光ルミネセンス(PL)減衰時間(図7F)を示す。
【0024】
図7C-D】図7A~7Fは、非ドープCsPbBr3結晶の0.5 mWのレーザー出力を用いる室温PLスペクトル(図7A);種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶の0.5 mWのレーザー出力を用いる室温PLスペクトル(図7B);PbO濃度の関数としての一般的なピーク位置および強度(図7C);非ドープCsPbBr3結晶に対する524 nmでの発光の室温時間分解減衰スペクトル(図7D);種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶に対する534 nmでの発光の室温時間分解減衰スペクトル(図7E);および濃度の関数としての平均光ルミネセンス(PL)減衰時間(図7F)を示す。
図7E-F】図7A~7Fは、非ドープCsPbBr3結晶の0.5 mWのレーザー出力を用いる室温PLスペクトル(図7A);種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶の0.5 mWのレーザー出力を用いる室温PLスペクトル(図7B);PbO濃度の関数としての一般的なピーク位置および強度(図7C);非ドープCsPbBr3結晶に対する524 nmでの発光の室温時間分解減衰スペクトル(図7D);種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶に対する534 nmでの発光の室温時間分解減衰スペクトル(図7E);および濃度の関数としての平均光ルミネセンス(PL)減衰時間(図7F)を示す。
【0025】
図8A-B】図8Aは、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造された試料からのレーザー出力に依存する室温PLスペクトルを示し;かつドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造された試料から採取された、レーザー出力が5 mW(図8B);2.5 mW(図8C);1 mW(図8D);0.5 mW(図8E);0.25 mW(図8F)の場合の室温PLスペクトルを示す。 2つのガウスピークを用いて、全てのスペクトルを適合させた(黒色実線、破線)。
図8C-D】図8Aは、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造された試料からのレーザー出力に依存する室温PLスペクトルを示し;かつドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造された試料から採取された、レーザー出力が5 mW(図8B);2.5 mW(図8C);1 mW(図8D);0.5 mW(図8E);0.25 mW(図8F)の場合の室温PLスペクトルを示す。 2つのガウスピークを用いて、全てのスペクトルを適合させた(黒色実線、破線)。
図8E-F】図8Aは、ドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造された試料からのレーザー出力に依存する室温PLスペクトルを示し;かつドーパント源化合物として0.05%のPbOを用いて製造された試料から採取された、レーザー出力が5 mW(図8B);2.5 mW(図8C);1 mW(図8D);0.5 mW(図8E);0.25 mW(図8F)の場合の室温PLスペクトルを示す。 2つのガウスピークを用いて、全てのスペクトルを適合させた(黒色実線、破線)。
【0026】
図9図9は、観察されたピークに対する(PL強度の)対数値対(レーザー出力の)対数値のプロットを示す。
【0027】
図10A図10Aは、酸素ドープしたCsPbBr2Cl結晶から製造された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(電子捕集)のグラフである。図10Bは、酸素ドープしたCsPbBr2Cl結晶の室温PLスペクトルのグラフである。
【0028】
図10B図10Aは、酸素ドープしたCsPbBr2Cl結晶から製造された面状装置の122 keVのγ線パルス波高スペクトル(電子捕集)のグラフである。図10Bは、酸素ドープしたCsPbBr2Cl結晶の室温PLスペクトルのグラフである。
【0029】
図11A図11Aは、CsPbBr2Cl(0.2%のPbO)の酸素ドープ試料のPL寿命を示す。図11Bは、CsPbBr2Cl(1%のPbO)の酸素ドープ試料のPL寿命を示す。ドープ濃度が低下すると、減衰時間が長くなる。
【0030】
図11B図11Aは、CsPbBr2Cl(0.2%のPbO)の酸素ドープ試料のPL寿命を示す。図11Bは、CsPbBr2Cl(1%のPbO)の酸素ドープ試料のPL寿命を示す。ドープ濃度が低下すると、減衰時間が長くなる。
【0031】
図12図12は、CsPbBr2Clの2種の異なる酸素ドープ試料から得られたγ線スペクトルを示し、スペクトルの解像度は、添加されたPbOドーパント源の量によって制御できる。
【0032】
図13図13は、PbO酸素ドーパント源を用いてドープされたCsPbBr2.83I0.17試料から得られたγ線スペクトルを示す。57-Co線源のエネルギーを分解する酸素ドープしたCsPbBr2.83I0.17から作製された放射線検出器装置は、122 keVのg線を検出することができた。0.5%のPbO濃度を用いて試料をドープした。
【0033】
図14A図14Aおよび14Bは、フッ素ドープCsPbBr3試料(0.5%のPbF2)(図14A)および非ドープCsPbBr3材料(図14B)のPL寿命を示す。PL減衰時間の大幅な増大は、フッ素のドーパントに起因する。これは、ハロゲン化物(例えばBr)の空孔濃度の低減に起因する可能性がある。
【0034】
図14B図14Aおよび14Bは、フッ素ドープCsPbBr3試料(0.5%のPbF2)(図14A)および非ドープCsPbBr3材料(図14B)のPL寿命を示す。PL減衰時間の大幅な増大は、フッ素のドーパントに起因する。これは、ハロゲン化物(例えばBr)の空孔濃度の低減に起因する可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
酸素原子および/またはフッ素原子をドープした無機ペロブスカイト、およびそのドープペロブスカイトの製造方法が提供される。さらにドープペロブスカイトを光活性層として組み込む放射線検出器、およびその放射線検出器を用いてX線、γ線、および/またはα粒子などの硬放射線を検出する方法が提供される。
【0036】
ペロブスカイトは、一般式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(0<x<1)を有し、かつ標準的なまたは歪んだペロブスカイト構造を有し、式中、AはPbまたはPbと元素周期律表のIVA族(14族)から選択される1種以上の追加元素との組合せであり、Xは1種以上のハロゲン原子を表す。Aの原子の例としては、Si、Sn、Ge、およびPb原子が含まれる。AがIVA族からの2種類以上の元素を含む場合に、A元素とCsのモル比は1:1である。例えば、AがPbとIVA族からの1種の追加元素を表す場合に、上記の一般式は式Cs(A1-xA’x)X3で表すことができ、式中、AはPbを表し、A’は追加元素を表す。同様に、Xが複数の種類のハロゲンを含む場合に、ハロゲン元素とCsのモル比は3:1である。従ってペロブスカイトが複数のハロゲンを含む場合に、上記の一般式は、式CsA(X3-xX’x)で表すことができ、式中、XおよびX’は2種の異なるハロゲン原子を表す。最後に、ペロブスカイトが1種の追加のIVA族元素と2種の異なるハロゲン原子を含む場合に、上記の一般式は、式Cs(A1-xA’x)(X3-xX’x)で表すことができ、式中、AはPbを表し、A’は追加のIVA族元素を表し、XとX’は2種の異なるハロゲン原子を表す。
【0037】
ドープペロブスカイトは、(a)化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(0<x<1)を有するペロブスカイト(式中、AはPb、Sn、Si、Ge、またはそれらの2種以上の組合せ、およびXは1種以上のハロゲン原子を表す);および(b)酸素ドーパント源となる化合物および/またはフッ素ドーパント源となる化合物の混合物を形成して製造できる。次いでこの混合物を加熱して融液を形成して、次に結晶化する。融液の結晶化中に、ドーパント源化合物からの酸素原子またはフッ素原子がペロブスカイト結晶格子中に取り込まれ、酸素原子および/またはフッ素原子でドープされたペロブスカイトが提供される。従ってこの化合物は、新たな合金ではなくドープされた化合物である。さらに、ドーパントは、多結晶材料の粒子の外面または表面だけでなく、結晶の内部にも取り込まれるので、結晶はドーパント原子によって表面不動態化されるだけではない。ドープペロブスカイトは、単結晶あるいは多結晶であってもよい。但しいずれの場合でも、ドーパント原子は結晶のバルク格子中に取り込まれる。さらにドープのプロセスは、事前に形成された結晶中への酸素またはフッ素の拡散には依存しないので、このプロセスは、ペロブスカイトの大きな単結晶のバルク全体に亘って、例えば0.1 mm、0.5 mm、1 mm、またはそれ以上の厚さを有する結晶に亘って均一なドープが提供できる。ドープしたCsAX3、RbAX3、またはCs1-xRbxPbX3ペロブスカイトは、単一の結晶化産物として製造できる、あるいはCsAX3、RbAX3、またはCs1-xRbxPbX3ペロブスカイトの1種以上の同族体を含む固溶体の形態で製造できる。
【0038】
それからペロブスカイトを結晶化する混合物中のドーパント源化合物の濃度は、結晶化されたドープペロブスカイト中に第2相として酸化鉛、フッ化鉛、または他のドーパント源化合物が析出するのを回避するのに十分に低いことが望ましく、すなわちドーパント源化合物の濃度は、単相のドープペロブスカイトを生成するのに十分に低いことが望ましい。第2相の析出を引き起こすドーパント源化合物の濃度は、特定のペロブスカイトの出発材料および使用されるドーパント源化合物に依存するが、一般的には、1モル%以下のドーパント源化合物の濃度が第2相の生成を防止するのには十分である。これには、ドーパント源化合物のモル%が0.5モル%以下または0.3モル%以下である混合物の実施態様を含み、さらにドーパント源化合物のモル%が0.1モル%以下である混合物の実施態様を含む。例示のみを目的とするが、0.02モル%~0.1モル%の範囲などの約0.01モル%~0.3モル%の範囲でドーパント源濃度(例えば、PbO濃度またはPbF2濃度)を有する混合物を使用してもよい。
【0039】
酸素またはフッ素のドーパント源を提供する化合物(本明細書では「ドーパント源化合物」と呼ぶ)は、CsAX3またはCs1-xRbxPbX3ペロブスカイトの格子中に不純物として酸素またはフッ素を導入できる任意の鉛含有化合物であってもよい。例として、適切な酸素ドーパント源化合物には、PbO、Pb3O4およびPbO2などの酸化鉛、ならびに鉛と酸素の両方を含み加熱すると酸化鉛に分解する他の化合物が含まれる。分解して酸化鉛を生成する酸素と鉛の両方を含む化合物の例には、Pb(OH)2、PbCO3、およびPb2(OH)2CO3が含まれる。化合物Pb(OH)2、PbCO3、およびPb2(OH)2CO3は、PbBr2などの他の鉛含有化合物の酸化によって形成される。単一のドーパント源化合物を用いてもよく、または2種以上のドーパント源化合物の組合せを用いてもよい。さらなる例として、適切なフッ素のドーパント源化合物には、PbF2などのフッ化鉛、SnF2などのフッ化スズ、および鉛とフッ素の両方を含み加熱するとフッ化鉛に分解する他の化合物が含まれる。
【0040】
ドープペロブスカイトは、垂直ブリッジマン法、水平凍結法、チョクラルスキー法、トップシードフラックス法、または狭帯域精製法を含む固相凝固法によって大きな単結晶として成長させて、生産コストを削減できかつ大容量の結晶ブールを作製できる。但し成長方法は固相凝固法には限定されない。その他の適切な方法には、低温溶液法、化学蒸気輸送法、物理蒸気輸送法などが挙げられる。成長方法によっては、ドープペロブスカイトを、融剤を使用せずに固相凝固法によって単結晶として成長させて、高い不純物等級が得られる。但し融剤の助けを借りて固相凝固法を実施して、結晶化温度をさらに低下させてもよい。
【0041】
本明細書に記載の外因性の酸素ドープおよび/またはフッ素ドープCsAX3、RbAX3、またはCs1-xRbxPbX3ペロブスカイトを光活性層として利用する硬放射線検出器は、真性のCsAX3、RbAX3、またはCs1-xRbxPbX3ペロブスカイトを光活性層として利用する硬放射線検出器に比較して、エネルギー分解能、キャリア移動度と寿命の積を向上させ、かつ/あるいは組成均一性(収率)を改善する。さらにこのドープは、ドープに起因する可能性のある格子整合性およびキャリア寿命の向上により、フォトルミネッセンス(PL)強度の向上、および/またはフォトルミネッセンス放出減衰時間の延長(例えば100 ns以上)を提供できる。本発明のいずれかの特定の理論に拘束されることを意図しないが、ドーパント原子の格子中への取込みによる結晶中のハロゲン原子(例えばClおよび/またはBr)空孔の減少により、少なくとも部分的にこの特性の向上を説明できることが提案されている。例として、少なくとも500 ns、少なくとも1000 ns、および少なくとも2000 nsのフォトルミネッセンス減衰時間を提供できる。例えば、500 ns~2800 nsの範囲の減衰時間を実現できる。このような向上は、例えば、CsAX3、RbAX3、またはCs1-xRbxPbX3に対するO不純物(すなわち酸素原子ドーパント)またはF不純物(すなわちフッ素原子ドーパント)のモル比が、例えば10 ppm以上および100 ppm以上を含む1 ppm以上であるペロブスカイトで実現できる。例えば、約1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパントおよび/またはフッ素原子ドーパント濃度を用いてもよい。
【0042】
本明細書に記載の様々な発明の背後にある特定の理論に拘束されることを意図しないが、本発明者らは、ペロブスカイトのドープが、他の方法では電子-正孔対を捕捉しかつ高い収率および電荷捕集効率の達成を妨げると思われる支配的な深いエネルギー準位を不動態化することを提案する。本発明者らはまた、支配的な深いエネルギー準位を外因性のドープによって不働態化できる、または排除できることを提案する。結果として、ペロブスカイトの外因性のドープによって、組成の均一性が向上し、エネルギー分解能を改善し、80%までの収率の向上が実現できる。
【0043】
ドープペロブスカイトを用いて作製できる硬放射線検出器の一例は、以下の構成要素を含む:(a)化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(0<x<1)を有する酸素ドープおよび/またはフッ素ドープペロブスカイトを含む光活性層(式中、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、Xは1種以上のハロゲン原子を表し、さらに酸素のドーパントおよびフッ素のドーパントは、ペロブスカイトの結晶格子中に組み込まれる);(b)光活性層と電気的に連通し光活性層全体に電場を印加するように構成された第1の電極;(c)光活性層と電気的に連通し光活性層全体に電場を印加するように構成された第2の電極;および(d)光活性層が電離入射放射線に曝露された場合に光活性層内に生成される光電流を測定するように構成された信号検出器。
【0044】
ドープペロブスカイトが入射放射線を吸収すると、電子-正孔対が形成されて光電流を生成する。装置は、光電流を測定するように構成された1種以上の追加の電子部品をさらに備えてもよい。入射放射線は、α粒子放射線などの粒子放射線、またはγ放射線などの電磁放射線(すなわち、約1×10-10~約2×10-13 mの範囲の波長)、および/またはX線領域の放線線(すなわち、0.01 nm~1 nmの波長にほぼ対応する1 keV~100 keVの範囲のX線エネルギー)を含んでもよい。
【0045】
第1および第2の電極のうちの少なくとも1つは、入射放射線に対して少なくとも部分的に透過性であることが望ましい。これらの電極は例えば、FTOなどの導電性酸化物、または金またはアルミニウムなどの金属を含んでもよい。ドープペロブスカイトが入射放射線を吸収すると、電子-正孔対が形成され、印加電界中でそれぞれの電極に向かって移動する。電子または正孔の光電流を、バイアス方向を変えることによって別々に測定できる。この装置は、光検出器が生成した光電流信号を増幅するための信号増幅器、プロセッサ、データ記憶部(例えばコンピュータ可読媒体)、およびコンピュータインターフェースなどの出力インターフェースをさらに含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、当業者なら分かるように、プロセッサが情報に接触できるような情報の電子的な保管場所または記憶部である。コンピュータ可読媒体は、限定はされないが、任意の種類のランダムアクセスメモリ(RAM)、任意の種類の読取り専用メモリ(ROM)、任意の種類のフラッシュメモリ(磁気記憶装置、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)など)、スマートカード、フラッシュメモリ装置などを含んでもよい。プロセッサは、専用コンピュータ、論理回路、ハードウェア回路、またはその他の方法によって実行され得る命令を実行する。プロセッサは、ハードウェアおよび/またはファームウェアで実行してもよい。プロセッサは命令を実行し、すなわちプロセッサは、その命令によって呼び出される操作を実行/制御することを意味する。用語「実行」は、アプリを実行するプロセス、または命令によって要求された操作を実施することである。命令は、1種以上のプログラミング言語、スクリプト言語、アセンブリ言語などを用いて記述されていてもよい。プロセッサは、光検出器によって生成された信号を受信、送信、表示、かつ/あるいは別の方法で処理するように構成されたコンピュータ可読媒体および出力インターフェースと作動可能に結合できる。例えばプロセッサ、コンピュータ可読媒体、および出力インターフェースは、測定された光電流の図形表示を生成するように構成されてもよい。
【実施例
【0046】
本実施例には、ドーパント源化合物としてPbOを用いる酸素ドープCsPbBr3および酸素ドープCsPbBr3-xClx、ならびにフッ素ドープCsPbBr3の成長を説明する。さらに硬放射線検出器内の光活性層として、酸素ドープCsPbBr3の使用を説明する。
実験部分
【0047】
試薬:本発明で使用された化学薬品には以下が含まれる:(1)CsBr粉、純度99.999%、Alfa Aesar;(2)PbBr2、純度99.999%、Alfa Aesar;(3)PbO粉末、純度99.999%、Alfa Aesar;(4)鉛棒、純度99.999%、Alfa Aesar。本試料を、光沢のある金属表面が灰色に変化するまで1ヶ月間空気中に放置した;(5)PbO2粉末、純度99.999%、Alfa Aesar;および(6)光分解したPbBr2粉末。白色の5N純度のPbBr2粉末を空気中に放置し、かつ暗色になるまで白熱灯によって2週間照射した。
【0048】
合成、精製、および結晶成長:多結晶のCsPbBr3原材料を、1:1の化学量論比を有する106.405 gのCsBr(0.50 mol)と183.505 gのPbBr2(0.50 mol)の前駆体を内径22 mmの石英ガラス管内に真空下で火炎により封入した後に直接化学反応させて合成した。この合成を、温度プログラム式の揺動炉内で650oCで48時間実施して、完全な反応を確実にした後に室温まで20oC/cmの速度で徐々に冷却した。得られた三元系生成物には、いかなる精製処理も行わなかった。合成後に、ドーパント源化合物として特定濃度のPbOを含む25 gのCsPbBr3原材料をそれぞれ、厚さ1.5 mmおよび内径10 mmの先端が円錐形の石英アンプル内に入れた。CsPbBr3原材料に添加されるドーパント源化合物であるPbOの濃度を、モル比で0.00%、0.01%、0.05%、0.10%、0.30%、0.50%、1%(すなわち0.01モル%~1モル%)に変動させた。その後に、これらのアンプルを3×10-4 mbarの真空度で密封した。結晶成長を、3つの温度域の垂直型ブリッジマン炉内で実施した(Bridgman, P. W. et al., Proceedings of the American Academy of Arts and Sciences 1925, 60 (6), 305-383)。実際の結晶成長の前に、この管をブリッジマン炉の高温域に12時間静止させて、完全な溶解を確実に行うようにした。続いてアンプルを、0.5 mm/hの遅い移動速度かつ約5.1 oC/cmの温度勾配で、高温域(580 oC)から中間域(500 oC)まで、かつ低温域(380 oC)まで下方に移動させた。CsPbBr3の全融液が完全に結晶化した後に、アンプルを5 oC/hの冷却速度を生成するように5.0 mm/hの上昇させた降下速度で室温まで冷却した。種々の濃度のドーパント源化合物を用いて製造した6本のブールは全て、同一の温度設定および移動速度で同一炉の下で1本ずつ成長させた。
【0049】
結晶処理および特性解析:炉から成長させた新品のブールを、ダイヤモンドソーを使用して成長方向に垂直な方向に沿って切断した。切片をブールの前端部から後端部に亘って切り出して、800番の炭化ケイ素サンドペーパーで研磨した。布を用いて最終の仕上げ研磨を実施して非常に平滑なウェハーを得た。結晶からの研磨試料のPXRD分析を、40 kV/20 mAで作動する、かつ平面試料形状を有する位置感知検出器を備えた(米国標準技術研空所(NIST)製シリコンに対して)較正されたCPS 120 INEL回折計(Cu Kaグラファイト単色放射線、λ=1.5418 Å)を用いて実行した。単結晶X線データからの模擬的な粉末パターンを、PowderCellソフトウェアパッケージを使用して計算した(Kraus, W. N., G, PowderCell 2.3 1998)。
【0050】
X線光電子分光測定:X線光電子分光(XPS)測定を、300 Wで作動する単色Al KαのX線源(1486.6 eV)を搭載したThermo Scientific ESCALAB 250 Xi分光計で実施した。試料を、超高真空(P<10-8 mbar)下で150 eV(外観走査)または25 eV(高解像度走査)の移動エネルギーで分析した。全てのピークを、外来性炭素での284.7 eVのC 1sピークの結合エネルギーによって較正した。CsPbBr3結晶では、分厚い結晶から新たに劈開させた露出面を測定に用いて表面の吸収水分および二酸化炭素を排除して、露出面をイオンミリング(Ar+イオン)によってさらにエッチングした。酸化されたPb金属および光分解したPbBr2試料では、それらの表面の酸化層に注目しているので、表面エッチングは実施しなかった。
【0051】
装置の作製:寸法が約5×5 mm2かつ厚さが1.00 mmの研磨したCsPbBr3ウェハーを選択して、ガラス基板表面に検出器を作製した。CsPbBr3の抵抗率(約1010 Ω・cm)は、暗電流からのバックグラウンド信号を抑制する程には十分に高くないので、ショットキー接合を応用してバックグラウンド正孔からの暗電流をさらに抑制した。CsPbBr3結晶の伝導型はp型であるので、仕事関数の低いGa接点を選択して、接点から半導体への正孔の注入を阻止するショットキー接合を構築した。従って上部電極および下部電極を、それぞれGa液体金属および速乾性のAu塗料を塗布して作製した。この装置は、硬放射線を検出して漏れ電流を抑制すると逆バイアス電圧で動作する。試料ホルダーとしてCu箔片を備えたガラス基板を用い、かつそのCu箔片を直径0.1 mmのCuワイヤを用いてウェハーの電極に結合した。
【0052】
電荷輸送測定:暗所内の直流(DC)での電流-電圧(I-V)測定を実施して、漏れ電流を評価しかつ抵抗率を概算した。DC導電率を、Keithley 6517B電位計およびKeithley 6105抵抗アダプターで測定した。電磁干渉および光伝導応答を、金属製筐体によって排除した。
【0053】
硬放射線分光測定:厚さ1.00 mmのCsPbBr3検出器のスペクトル応答を、eV-550前置増幅器箱、分光増幅器(ORTEC、モデル572A)、およびコンピュータに取り付けられたマルチチャネル波高分析器(モデルASPEC-927)を含む自作システムを使用して実行した。最終的な信号を、MAESTRO-32ソフトウェア内に読み込んだ。γ線分光測定を大気中で実施し、57Coの放射線源(約0.05 mCi)と検出器の間の距離を約12 cmに設定した。最適な線形増幅器ゲイン、増幅器成形時間、および記録時間を、それぞれ100、2.0 μs、および300 sとした。放射線源無しで、バイアス電圧をかけて得たパルス状のγ線波高スペクトルを、同一の実験条件下でバックグラウンドノイズとして捕集した。正孔輸送下の測定では、入射γ線は接地されたGa接点を透過した。電荷捕集用のAu接点を、負のバイアスに接続してショットキー接合が逆バイアス下で確実に機能するようにした。電子輸送下の測定では、入射γ線は接地されたAu接点を透過した。電荷捕集用のGa接点を、正のバイアスに接続してショットキー接合が逆バイアスでも確実に機能するようにした。
【0054】
キャリア移動度と寿命の積の概算:放射線検出効率に対する半導体検出材料の性能を評価するための最も重要な性能指数は、キャリア移動度と寿命の積、すなわちμτである。キャリア移動度と寿命の積の測定では、A. Manyによって説明され、さらにRuzinらが発展させた装置と類似の装置を用いて、γ線スペクトルの電圧依存性からキャリア移動度と寿命の積を概算した(Many, A., J Phys Chem Solids 1965, 26 (3), 575-578;およびRuzin, A. et al., J. Appl. Phys. 1997, 82 (9), 4166-4171)。電子での移動度と寿命の積を、試料に印加された各バイアス電圧での電荷捕集効率(CCE)の解析から導き出した。電荷捕集効率(CCE)は、単一キャリアの以下の式1:Hecht式によって、試料に印加されたバイアス電圧であるパラメータVに相関していた。
【数1】
式1中、CCE(V)は印加されたVの下での電荷捕集効率、
はバイアス電圧Vでの測定された光電ピーク/ショルダーチャネル数、L(0.10 cm)は検出器の厚さ、
は光電ピークの理論上の飽和チャネル数を指す。電子の移動度と寿命の積(μeτe)および
は、
の実験データから導き出すことができる。
【0055】
フォトルミネッセンスおよび時間分解フォトルミネッセンス減衰時間の測定:室温でのスペクトル測定および時間分解測定を、Edinburgh Instruments FS5分光蛍光光度計を使用して、研磨せずに新たに劈開したCsPbBr3結晶に対して実施した。FSシステムの構造は、405 nmの波長を有するEPL405パルスダイオードレーザー励起源、時間相関単一光子計数(TCSPC)技術での寿命選択、および光電子増倍管(PMT)980検出器から構成されていた。CsPbBr3結晶を、SC-10の試料ホルダーモジュールに取り付けた。放射スリット幅を0.5 nmに設定した。495 nmのロングパスフィルターを、検出器への放射経路に採用した。PLデータを、400~800 nmの発光範囲から1 nmの間隔および0.5秒の滞留時間で捕集した。PL減衰時間の測定では、FASTソフトウェアパッケージを用いて、各減衰を2つまたは3つの延伸指数の組合せに適合させた。測定された減衰曲線を、以下の式2の指数関数の合計に適合させた。
【数2】
式2中、
は振幅であり、
は減衰時定数、および
はバックグラウンドである。平均PL減衰時間を、減衰成分の減衰時間と相対光強度の積を合計して取得した。試料をブールの前端部から抽出し、機械研磨による損傷層の存在しない表面を得るために、それ以上の研磨を実施しなかった。平均PL減衰時間を、減衰成分の減衰時間と相対光強度の積を合計して取得した。
結果および考察
【0056】
結晶成長および組成分析:結晶成長を、3つの温度域の垂直ブリッジマン炉で実施した。図1Aは、結晶化のために5.1℃/cmの温度勾配かつ0.5 mm/hの成長速度を提供する、炉の長手方向に沿った炉の温度特性を示している。ブールの頂部に見られる黄色の堆積物は、アンプルの冷却プロセス中のCsPbBr3の蒸気輸送によるものであった。全てのブールは、透明であり亀裂は無く、CsPbBr3のバンドギャップである2.25 eVに一致するオレンジ色であった。0.50%および1.00%のPbO濃度を用いて製造したブールは、過剰なドーパント源化合物であるPbOと溶融シリカとの反応によりPbSiO3を生成して、溶融アンプルの内壁部に付着していた。管への固着の発生は、ドーパント源化合物であるPbOのCsPbBr3格子中への平衡固溶状態を0.50%未満とする必要があることを示している。図1Bに示すように、PXRDによる全てのブールからの粉砕試料の組成分析では、CsPbBr3以外の相が検出されなかったことを明示している。CsPbBr3結晶はp伝導型でかつ1010 Ω・cmと不十分な抵抗率であるので、仕事関数がより低いGa液体金属を接点として選択してショットキー接合を構築して、接点から半導体への正孔注入を阻止して暗電流をさらに低減した。仕事関数がより高いAu塗料を接点として選択して、半導体とのオーミック接触を形成した。図1Cは、種々のPbO濃度を用いて製造された6つの全てのブールからの結晶の室温での電流-電圧(I-V)特性を示す。全てのI-V曲線は典型的な整流機能を示し、Ga接点がCsPbBr3半導体とショットキー接合を形成したことを示している。逆バイアス電圧下での全ての暗電流は、-100 Vで10 nA未満の低水準に制御でき、この水準は、装置がγ線を検出する場合に信号対雑音の比が高いγ線応答を得るのに十分な低さである。
【0057】
検出性能の向上:種々のPbO濃度を用いて製造されたCsPbBr3結晶から作製された検出器で、0.05 mCiの57Co放射線源からの122 keVのγ線の波高スペクトルを測定した。図2Aは、-200 Vの印加電圧の正孔捕集構成(陽極照射)での非ドープCsPbBr3結晶から作製された面状装置からのγ線スペクトル応答を示す。この装置は、信号をバックグラウンドノイズから識別できるので、計数モードでは弱い光応答を示した。しかしこの装置ではγ線を分解できなかった。図3Aは、ドーパント源化合物として種々の濃度のPbOを用いて製造されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の正孔捕集構成での122 keVのγ線に対する波高スペクトルを示す。ドーパント源化合物としてPbOを用いて製造された試料は全て、全エネルギーの光ピークを観察できるので、122 keVのγ線を分解した。表1に示すように、エネルギー分解能は、ドーパント源化合物として0.01%の濃度のPbOを用いた場合に最高の4.1%を達成し、次いで1.0%のPbO濃度での19.0%まで徐々に低下し、このことは、最高のエネルギー分解能を達成するPbOの最適濃度は0.05%の近傍であることを示している。図2Bに示すように、正孔捕集効率が低下すると仮定すると、全エネルギー光ピークのピークチャネル数は、PbO濃度の増加につれて減少した。過剰なPbOは、CsPbBr3の格子内に取り込まれない可能性がある。逆に過剰なPbOは、結晶内の第2相として存在し、キャリア散乱中心として機能して、順に正孔捕集効率を低下させる可能性がある。放射線検出効率に対する半導体検出材料の性能を評価するための最も重要な性能指数は、キャリア移動度と寿命の積、すなわちμτである。図2Cは、印加電圧の関数として正孔捕集効率を示す。0.05%のPbOを用いて製造された酸素ドープペロブスカイトの正孔移動度と寿命の積、すなわちμhτhは、1.0×10-3 cm2/Vの最大値を達成し、PbOを1.00%の濃度のドーパント源として用いた場合には、1.7×10-4 cm2/Vの最小値にまで徐々に低下した(図2D)。この傾向は、γ線のエネルギー分解能の傾向によく一致している。注目すべきことには、1.00%の濃度での正孔のμhτhは、PbO濃度が0.50%よりも低いと考えられているCsPbBr3格子中のPbOの固溶限よりも遥かに高いにもかかわらず、10-4 cm2/V台を維持していた。纏めると、酸素ドーパント源としてPbO化合物を用いる酸素ドープは、エネルギー分解能の発生およびμhτhの大幅な向上に繋がる。
【0058】
さらに電子捕集構成(陰極照射)の下での検出性能を測定かつ評価した。図3Aは、+400Vの印加電圧での電子捕集構成の下での酸素非ドープCsPbBr3結晶から作製された面状装置からのγ線スペクトル応答を示す。この装置では、エネルギー分解の無い計数モードでγ線を検出した。しかし酸素ドーパント源として0.05%のPbOを用いて製造された試料は、11.3%のエネルギー分解能および6.2×10-4 cm2/Vの電子移動度と寿命の積により122 keVのγ線を分解できた。ドーパント源として0.05%のPbOを用いて製造された試料での1.0×10-3 cm2/Vの正孔移動度と寿命の積に比較して(図3Bおよび3C)、電子輸送は正孔輸送よりも劣っていて、正孔輸送がCsPbBr3材料内では優勢であったことを示している。ドーパント源化合物濃度の増加に伴って正孔移動度と寿命の積が低下する傾向に類似して、電子移動度と寿命の積もまた、0.05%のドーパント源化合物濃度での6.2×10-4 cm2/Vから1.00%のドーパント源化合物濃度での9.0×10-5 cm2/Vまで徐々に低下した。
【0059】
【表1】
【0060】
収率の向上:ドーパント源化合物である微量のPbOによる酸素ドープは、検出性能を大幅に向上させるだけでなく、ブリッジマン法によって育成させた結晶の収率もまた向上させた。図4A~4Cは、ドーパント源化合物として0.10%の濃度のPbOを用いて製造されたブールの前端部(図4A);中央部(図4B);後端部(図4C)から抽出されたCsPbBr3結晶から作製された面状装置の122 keVのγ線のパルス波高スペクトル(正孔捕集)を示す。3種の全ての試料は、5.8%~7.8%の範囲のエネルギー分解能で122 keVのγ線を分解したが、このことは検出性能においてブールの成長方向に沿って高い組成均一性を有することを示している。全体の収率は、酸素ドープによって約80%まで上昇していた。酸素ドープでは、格子内に均一な分布でO不純物を導入でき、これにより主要な深い準位での捕捉/消滅する電子-正孔対を不導体化できると考えられる。
【0061】
XPS分析:酸素ドープにより、CsPbBr3格子内に組み込まれるO不純物を導入し、そのドープが主要な深い準位の不導体化をもたらすと推測されている。O不純物の格子内への取込みの可能性を確認するために、O 1sの結合エネルギーについてXPS分析を実施した。図5A~5Dおよび表2に示すように、非ドープCsPbBr3のBr 3d、Pb 3d、およびCs 4d電子の結合エネルギーに対比して、ドーパント源化合物としてPbOを0.05%の濃度で用いて製造された試料は、ほぼ同一のこれらの電子の結合エネルギーを示していた。しかし酸素ドープ試料では、非ドープ試料では観測されなかったO 1sの信号が観測でき、酸素ドープ試料にはO不純物が存在することが明白になった。酸素ドープ試料のO 1s電子の結合エネルギー(533.0 eV)は、ドーパント源化合物としてPbOを用いて製造された試料とは異なっていて、酸素ドープ試料内に存在する酸素不純物がPbO相ではないことを示している。酸素ドープ試料のO 1s電子の結合エネルギー(533.0 eV)は、H2Oの結合エネルギー(533.1 eV)に非常に近いので、表面水分が533.0 eVのピークに起因する1つの可能性が存在する。但しXPSの走査をAr+イオンによるエッチング後に新たに劈開した表面に実施したことを考慮すると、この可能性は排除できる。従って533.0 eVは、CsPbBr3格子中に組み込まれたO不純物に起因すると判断でき、PbOまたは表面吸収水分に起因するものではない。
【0062】
図5Cに示すように、PbOをドーパント源として用いて製造された酸素ドープCsPbBr3のO 1s電子の幅広の信号ピークは、それぞれ529.7 eVおよび527.8 eVの結合エネルギーを有する2つの分離ピークに分割できる。これらの2つのピークは、それぞれ斜方相(高温相)のPbOおよび正方相(室温相)のPbOからのO 1s電子に起因する可能性がある。これらの2つの異なるO 1s結合エネルギーは、PbOが斜方相と正方相のPbOの混合物であることを明示している。従ってPbOの相は斜方相だけに限定されない。
【0063】
【表2】
【0064】
酸素ドープにより、検出性能が向上する効果が大きいことが確認された。従って有効なドーパント源化合物の範囲を、PbOから、PbOを含むあるいは加熱するとPbOに分解する任意の材料にまで広げた。図6Aは、酸化されたPb金属からのO 1s電子のX線光電子スペクトルを示す。信号ピークは、それぞれ529.4 eVと527.7 eVの2つのピークに分割できる。529.4 eVのピークは斜方相のPbOに起因する可能性があり、527.7 eVのピークはPbO2に起因する可能性がある。その結果に基づいて、Pb金属の酸化した表面層は、PbOとPbO2から構成されていた。図6Bは、暗色のPbBr2粉末からのO 1s電子のX線光電子スペクトルを示す。信号ピークは、それぞれ532.7 eVと531.3 eVの2つのピークに分割できる。532.7 eVのピークはPbCO3中のPb-O結合に起因する可能性があり、もう一方のピークはPb(OH)2中のO-H結合に起因する可能性がある。従って暗色のPbBr2の表面層には、PbCO3、Pb(OH)2、およびPb2(OH)2CO3の混合物が含まれる可能性があり、これらは全て加熱するとPb酸化物を生成する。従って本発明での有効なドーパント源化合物の範囲を、PbOから、加熱するとPbOを生成できるPbO2、Pb3O4、PbCO3、Pb(OH)2、およびPb2(OH)2CO3にまで広げた。
【0065】
フォトルミネッセンス特性の向上:PL分光法を実施して成長させたままの結晶の格子整合性に関する考察を得て、いずれかの放射性欠陥が存在するか否かを判断した。図7Aは、0.5 mWの出力および405 nmの波長を有する青色レーザーを用いる非ドープ試料の室温でのPLスペクトルを示す。非ドープ試料は、そのピークが524.0 nmにある微弱なPL発光を示し、この発光は、CsPbBr3からの固有のバンドギャップ発光に起因する可能性がある。この微弱な発光は肉眼では確認できなかった。スペクトルには、600 nmから始まる広範な欠陥関連の発光が伴っていて、特定の欠陥が光誘起の電子-正孔対の放射の主要な捕捉および再結合中心として機能することが明らかになった。図7Bは、同一の実験条件下での酸素ドープ試料からのPLスペクトルを示す。ドーパント源化合物として0.05%の濃度のPbOを用いて製造された試料の概略のピーク強度は、非ドープ試料に対し、最大値として217倍高い強度まで向上した(表3)。最も重要なことは、酸素ドープ試料からの全てのスペクトルに広範な欠陥関連の発光が観察されなかったことであり、このことは非ドープ試料に存在した放射性欠陥が無いことを示している。緑色のPL発光は非常に強いので、その発光は肉眼で観察することができた。図7Cに示すように、PL強度は、ドーパント源化合物としてのPbOの濃度が増加するにつれて徐々に減衰した。注目すべきことは、ドーパント源として最高濃度である1.00%のPbOを用いて製造されたペロブスカイトでPL強度が105台を維持していたことであるが、これは非ドープ試料からの強度よりも依然1桁高い値である。非ドープ試料のピーク位置(524.0 nm)に比較して、酸素ドープ試料の全ての発光ピークは、赤色側の533.6 nmに移動していた。酸素ドープ試料の主要な発光ピークの赤色側への移動および顕著な向上は、発光が励起子発光に由来する可能性があることを示し、このことはキャリアから光子への変換効率がバンドギャップ発光よりも遥かに高いことが推定される。
【0066】
PL減衰時間測定は、キャリアの寿命が長いか否かを表す強力な手法であり、これにより材料の格子の完全性を順に評価することになる。図7Dは、非ドープ試料の524.0 nmでの発光の時間分解PL減衰スペクトルを示す。このPLは、その信号が機器応答からの信号を殆ど上回らない程度にまで劇的に減衰した。表3に示すように、平均減衰時間は約1.6 nsであった。図7Eは、種々の濃度のPbOを用いてドープされた試料の533.6 nmでの発光の時間分解PL減衰スペクトルを示す。0.05%のPbO濃度を用いて製造された試料は、2689 nsの最長の平均減衰時間を示し(図7F)、これはこのPbO濃度での最高のキャリア移動度と寿命の積によく一致している。平均PL減衰時間は、PbO濃度の増加につれて低下した。減衰時間は、1.00%のPbO濃度で最小値である49 nsまで低下した。PbOの濃度が高くなると、より多くの捕捉中心および散乱中心が導入されて、キャリアの寿命が短くなる可能性がある。
【0067】
【表3】
【0068】
酸素ドープ後の放射性遷移が励起子発光に由来するか否かを決定するために、0.25~5 mWの範囲のレーザー出力で、0.05%のPbOを用いたペロブスカイトの発光に対するPL発光の励起強度依存性を測定した(図8A~8F)。各ピークの強度は、レーザー出力の増加につれて着実に増加した。全ての発光ピークは、ガウス適合によって2つの個別のピーク(ピーク1およびピーク2)に分割できる。ピーク1および2のピーク位置は、レーザー出力を変更しても移動しなかった。表4は、種々のレーザー出力でのピーク1およびピーク2のピーク位置および強度を示す。
【0069】
励起強度Lの増加に伴うPL強度Iの増加は、指数kによって支配される冪乗則依存性I~Lkを有する。バンドギャップエネルギーより大きい光子エネルギーによる励起の場合に、勾配kの値は一般的に0<k <1または1 <k <2のいずれかの範囲となる。0<k <1の場合には、発光帯は、ドナー-アクセプター対の再結合(DAP)または自由結合放射再結合に起因していた。1 <k <2の場合には、発光は自由励起子遷移または結合励起子遷移のいずれかによるものであった。係数kは、線形範囲での(PL強度の)対数値対(レーザー出力の)対数値の勾配であり、2つのピークでは、1.52±0.08および1.54±0.08のk値が、それぞれピーク1および2で見出された(図9)。ピーク1および2は、自由励起子遷移または結合励起子遷移の範囲内に収まっている。ピーク1がピーク2よりもピークエネルギーが高く、FWHMが狭く、強度が高いことを考慮すると、ピーク1およびピーク2は、自由励起子発光および結合励起子発光に起因する可能性がある。
【0070】
要約すると、酸素ドープは、非ドープ試料での広範な欠陥発光に関連する放射欠陥を低減するだけでなく、より高い格子完全性によりバンドギャップ発光から励起子発光への遷移型の変化を引き起こした。
【0071】
【表4】
【0072】
さらなる実施例を図10、11、および12に示す。これらの例では、ドーパント源としてPbOを用いて酸素ドープCsPbBr3-xClxを製造し、ドープペロブスカイトの特性を上記の手順に従って測定した。CsPbBr3-xClx型の酸素ドープ混合ハロゲン化物結晶は、γ線に対して良好なエネルギー分解能を示した(図10Aおよび10B)。種々の量のPbOを用いてドープされたCsPbBr2Cl結晶は、それらの非ドープ相対物よりも強いPLを示し、酸素ドーパント源として0.2%のPbOを用いてドープされた混合ペロブスカイトは、1%のPbOを用いてドープされた混合ペロブスカイトよりも強いPLを示した(図10)。図11Aおよび11Bは、CsPbBr2Clの2種の異なる酸素ドープ試料のPL寿命を示しており、この寿命は、添加されるPbOドーパント源の量によって制御できる。図12は、CsPbBr2Clの2種の異なる酸素ドープ試料から得られたγ線スペクトルを示しており、スペクトルの分解能は、添加されるPbOドーパント源の量によって制御できる。別の実施例として、図13にPbO酸素ドーパント源を用いてドープされたCsPbBr3-xIx試料について示す。図13は、57-Co源の122 keVのg線のエネルギーを分解する酸素ドープCsPbBr2.83I0.17から作製された放射線検出装置を示す。0.5%のPbO濃度を用いてこの試料をドープした。
【0073】
フッ素原子ドープCsPbBr3およびCsPbBr3-xClxをまた、本明細書に記載の方法を用いて製造および特性解析したが、ドーパント源としてPbOをPbF2に置き換えた。フッ素は、CsPbBr3-xClxおよびCsPbBr3-xIx材料での有益なドーパントにできる。図14Aは、フッ素ドープCsPbBr3試料のPL寿命を示しており、PL寿命を非ドープCsPbBr3材料(図14B)に比較して大幅に増加させることができる。
【0074】
合成、精製、および結晶成長:ドーパント源としてPbF2を用いてフッ素をドープした多結晶CsPbBr3原料を、化学量論モル比を1:1としてCsBrとPbBr2の前駆体を真空下で火炎により密閉した内径22 mmの溶融石英管内で直接に化学反応させて合成した。CsBrとPbBr2の組合せ総量を85 gとした。この合成を温度プログラム式の揺動炉内で650℃かつ48時間で実施し、確実に完全反応させた後に、室温まで20 ℃/cmの速度で徐々に冷却した。得られた三元生成物には、いかなる精製処理も行わなかった。合成後に、ドーパント源化合物として種々の濃度のPbF2を0.01~1モル%で添加した。CsPbBr3およびPbF2をそれぞれ、1.5 mmの厚さかつ10 mmの内径を有する先端が円錐形の石英アンプル内に充填した。その後に、これらのアンプルを3×10-4 mbarの真空度で密封した。結晶成長を、3つの温度域の垂直ブリッジマン炉内で実施した(Bridgman, P. W. et al., Proceedings of the American Academy of Arts and Sciences 1925, 60 (6), 305-383)。実際の結晶成長の前に、管をブリッジマン炉の高温域に12時間静止させて、確実に完全溶解させた。続いてアンプルを、0.5 mm/hの緩やかな移動速度かつ約5.1 ℃/cmの温度勾配で、高温域(580℃)から中間域(500℃)、低温域(380℃)へと下方に移動させた。CsPbBr3融液全体が完全に結晶化した後に、アンプルを5 ℃/hの冷却速度を生成するように5.0 mm/hのより速い降下速度で室温まで冷却した。種々の濃度のドーパント源化合物を用いて製造した6本のブールを全て、同一の温度設定および移動速度で同一の炉を用いて1本ずつ成長させた。
【0075】
本明細書に説明のペロブスカイト結晶中の酸素およびフッ素ドーパントの存在は、固形材料中に存在するOおよびFをppmから%までの水準で測定できる、XPS分析、二次イオン質量分析(SIMS)分析、およびガス成分分析(IGA)によって検出してもよい。
【0076】
本明細書で使用される用語「例示的」は、実施例、実例、または例証として役立つことを意味する。本明細書で「例示的」として説明される任意の側面または設計を、他の側面または設計よりも好ましい、あるいは有益であると必ずしも解釈すべきではない。さらに本開示の目的では、別段に特定しない限り、「a」または「an」は、「1つ以上」を意味する場合があり、また1つのみを意味する場合もあり、両方の実施態様を包含している。
【0077】
前述の本発明の例示的な実施態様の説明を、例示および説明の目的で提示してきた。この説明は、網羅的であること、あるいは開示の正確な形態に本発明を限定することを意図するものではなく、修正および変更が上述の教示に照らして可能となり、または本発明の実施から得られてもよい。実施態様は、本発明の原理を説明するために、また本発明の実際の応用として選択されかつ説明され、当業者なら本発明を様々な実施態様で利用し、かつ考えられる特定の用途に適する様々な修正を加えて本発明を利用できるようになる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって定義されることを意図している。
図1A
図1B-C】
図2A-D】
図3A
図3B-C】
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A-B】
図7A-B】
図7C-D】
図7E-F】
図8A-B】
図8C-D】
図8E-F】
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
【手続補正書】
【提出日】2023-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表す)を有するペロブスカイト単結晶;および
前記ペロブスカイト単結晶の結晶格子中に酸素原子ドーパントまたはフッ素原子ドーパントを含む、ドープペロブスカイト。
【請求項2】
前記酸素原子ドーパントを含む、請求項1に記載のドープペロブスカイト。
【請求項3】
前記ドープペロブスカイトは、酸素ドープCsPbBr3である、請求項2に記載のドープペロブスカイト。
【請求項4】
前記酸素ドープCsPbBr3は、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素ドーパント濃度を有する、請求項3に記載のドープペロブスカイト。
【請求項5】
前記ドープペロブスカイトは、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパント濃度またはフッ素原子ドーパント濃度を有する、請求項1に記載のドープペロブスカイト。
【請求項6】
前記フッ素原子ドーパントを含む、請求項1に記載のドープされたペロブスカイト。
【請求項7】
入射放射線を検出する装置であって、
化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPb、またはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表す)を有するペロブスカイト単結晶、および前記ペロブスカイト単結晶の結晶格子中に酸素原子ドーパントまたはフッ素原子ドーパントを含む光活性層;
前記光活性層と電気的に連通し前記光活性層全体に電場を印加するように構成された第1の電極;
前記光活性層と電気的に連通し前記光活性層全体に電場を印加するように構成された第2の電極;および
前記光活性層が入射X線、γ線、および/またはα粒子に曝露された場合に、前記光活性層内に生成される光電流を測定するように構成された信号検出器を含む、装置。
【請求項8】
前記信号検出器に作動可能に結合され、かつ光電流データを記憶するように構成されたコンピュータ可読媒体;および
前記コンピュータ可読媒体に作動可能に結合され、かつ前記光電流データのグラフ表示を生成するように構成されたコンピュータインターフェースをさらに含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ドープペロブスカイトは、前記酸素原子ドーパントを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記ドープペロブスカイトは、酸素ドープCsPbBr3である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ドープペロブスカイトは、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパント濃度または酸素原子ドーパント濃度を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記光活性層は、単一のペロブスカイト相のみを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項13】
前記ドープペロブスカイトは、前記フッ素原子ドーパントを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
請求項7に記載の装置を用いて入射放射線を検出する方法であって、
前記装置の光活性層をX線、γ線、および/またはα粒子を含む入射放射線に曝露し、それによって酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトが前記入射放射線を吸収して材料内に光電流を発生する工程;そして
前記光電流を検出して前記吸収された入射放射線のエネルギーおよび強度のうちの少なくとも一方を測定する工程を含む、方法。
【請求項15】
化学式CsAX3(式中、AはPbまたはPbとSn、Si、およびGeのうちの1種以上との組合せを表し、Xは1種以上のハロゲン原子を表す)を有する酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトを製造する方法であって、
化学式CsAX3、化学式RbAX3、または化学式Cs1-xRbxPbX3(式中、0<x<1、AはPb、Sn、Si、Ge、またはそれらの2種以上の組合せを表し、かつXは1種以上のハロゲン原子を表す)を有するペロブスカイトと、PbO、加熱するとPbOに分解される鉛と酸素を含む化合物、PbF2、または加熱するとPbF2に分解される鉛とフッ素を含む化合物を含むドーパント源化合物との混合物を生成する工程;
前記ペロブスカイトおよび前記ドーパント源を溶融して融液を生成する工程;そして
前記融液から酸素ドープペロブスカイトまたはフッ素ドープペロブスカイトを結晶化する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記ドープペロブスカイトは、1 ppm~10000 ppmの範囲の酸素原子ドーパントの濃度またはフッ素原子ドーパント濃度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物中の前記ドーパント源化合物の濃度は、0.01モル%~1モル%の範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ペロブスカイトはCsPbBr3である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ペロブスカイトは酸素ドープペロブスカイトであり、前記ドーパント源化合物はPbOを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ペロブスカイトは酸素ドープペロブスカイトであり、前記ドーパント源化合物は、PbO2、Pb3O4、Pb(OH)2、PbCO3、Pb2(OH)2CO3、またはそれらの2種以上の組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記ペロブスカイトはフッ素ドープペロブスカイトであり、前記ドーパント源化合物はPbF2を含む、請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】