(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】四元金属バルク水素化処理触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/888 20060101AFI20230606BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230606BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20230606BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20230606BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20230606BHJP
B01J 27/051 20060101ALI20230606BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20230606BHJP
C10G 47/06 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
B01J23/888 M
B01J35/10 301A
B01J37/03 B
B01J37/00 D
B01J37/20
B01J27/051 M
C10G45/08 Z
C10G47/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567128
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2021051748
(87)【国際公開番号】W WO2021224692
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】デュマ、ヴィオレル
(72)【発明者】
【氏名】クパーマン、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウクング、イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】メーセン、テオドララス ルドヴィカス ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ブライト、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、チャールズ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA05
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA21C
4G169BA29C
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB09A
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4G169BD06C
4G169BD07C
4G169BE01C
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4G169EB19
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4G169FB50
4G169FB63
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4G169FC07
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4H129AA02
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4H129KB02
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4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD16X
4H129KD16Y
4H129KD22Y
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129KD40X
4H129KD40Y
4H129KD44X
4H129KD44Y
4H129NA01
4H129NA37
(57)【要約】
ニッケル、モリブデン、タングステン、及びチタンの酸化物からなるバルク触媒、ならびにバルク触媒の合成方法が提供される。上記触媒は、炭化水素原料の水素化処理、特に水素化脱硫及び水素化脱窒素に有用である。上記バルク触媒の前駆体は焼成されておらず、且つ水酸化物を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属酸化物換算で1~60重量%のNiと、
(b)金属酸化物換算で1~40重量%のMoと、
(c)金属酸化物換算で5~80重量%のWと、
(d)金属酸化物換算で2~45重量%のTiと
を含むバルク触媒前駆体。
【請求項2】
有機化合物系成分をさらに含む、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項3】
前記有機化合物系成分が、有機酸もしくはその塩、糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせの群から選択される、請求項2に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項4】
前記有機化合物系成分が、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、オキサミン酸、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース、マルトース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの組み合わせの群から選択される、請求項2に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項5】
前記有機化合物系成分に対するNiのモル比が3:1~20:1の範囲である、請求項2に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項6】
Ti/(Ni+Mo+W)のモル比が10:1~1:10の範囲である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項7】
Ni/Wのモル比が10:1~1:10の範囲である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項8】
W/Moのモル比が100:1~1:100の範囲である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項9】
式:
A
v[Ni(OH)
x(L)
p
y]
z[Mo
mW
1-mO
4][Ti(OH)
nO
2-n/2]
w
(式中、
(i)Aは、アルカリ金属カチオン、希土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、またはそれらの組み合わせであり、
(ii)Lは有機化合物系成分であり、且つ
(iii)0≦y≦2/p、0≦x<2、0≦v<2、0<z、0<m<1、0<n<4、0.1<w/(z+1)<10である)
のバルク触媒前駆体である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項10】
四元系状態図の領域によって規定され、
但し、前記領域は10個の点ABCDEFGHIJによって規定され、
但し、前記10個の点は、金属酸化物換算(重量%)で:
A(Ni=0.39、Mo=0.00、W=0.41、Ti=0.2)、
B(Ni=0.08、Mo=0.00、W=0.72、Ti=0.2)、
C(Ni=0.09、Mo=0.17、W=0.54、Ti=0.2)、
D(Ni=0.31、Mo=0.25、W=0.24、Ti=0.2)、
E(Ni=0.40、Mo=0.14、W=0.26、Ti=0.2)、
F(Ni=0.34、Mo=0.00、W=0.36、Ti=0.3)、
G(Ni=0.07、Mo=0.00、W=0.63、Ti=0.3)、
H(Ni=0.08、Mo=0.15、W=0.48、Ti=0.3)、
I(Ni=0.27、Mo=0.22、W=0.21、Ti=0.3)、及び
J(Ni=0.35、Mo=0.12、W=0.23、Ti=0.3)
である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項11】
8個の点ABCDEFGHによって規定される四元系状態図の領域によって規定され、但し、前記8個の点は、金属酸化物換算(重量%)で:
A(Ni=52.5、Mo=3.5、W=14、Ti=30)、
B(Ni=38.5、Mo=17.5、W=14、Ti=30)、
C(Ni=21、Mo=17.5、W=31.5、Ti=30)、
D(Ni=35、Mo=3.5、W=31.5、Ti=30)、
E(Ni=60、Mo=4、W=16、Ti=20)、
F(Ni=44、Mo=20、W=16、Ti=20)、
G(Ni=24、Mo=20、W=36、Ti=20)、及び
H(Ni=40、Mo=4、W=36、Ti=20)
である、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項12】
1~15重量%の結合剤をさらに含む、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項13】
以下の特性、すなわち、
50~250m
2/gのBET比表面積、
0.02~0.80cm
3/gの細孔容積、
1.00~3.00cm
3/gの粒子密度、
のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載のバルク触媒前駆体。
【請求項14】
硫化された請求項1に記載のバルク触媒前駆体であることを特徴とする、硫化されたバルク触媒。
【請求項15】
請求項1に記載のバルク触媒前駆体の調製方法であって、
(a)反応混合物中で、
(i)Ni含有前駆体、
(ii)Mo含有前駆体、
(iii)W含有前駆体、
(iv)Ti含有前駆体、
(v)場合により、有機化合物系成分、及び
(vi)プロトン性液体
を配合することと、
(b)前記混合物を、前記バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと
を含み、
前記バルク触媒前駆体を調製するステップが200℃以下の温度で実施される、前記調製方法。
【請求項16】
Ni含有前駆体、プロトン性液体、及び場合により、有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、
Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、
前記第1の混合物、前記第2の混合物、またはそれらの組み合わせにTi含有前駆体を添加することと、
前記第1の混合物と前記第2の混合物の両方を60℃~150℃の温度に加熱することと、
前記第1の混合物と前記第2の混合物を互いに配合することと
によって前記反応混合物が調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Ti含有前駆体が、TiO
2ナノ粒子、コロイド状TiO
2、フュームドTiO
2、水酸化チタン、有機チタン化合物、ハロゲン化チタン、有機チタンハロゲン化物、水溶性チタン塩、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載のバルク触媒前駆体の調製方法であって、
(a)反応混合物中で、
(i)Ni含有前駆体、
(ii)Mo含有前駆体、
(iii)W含有前駆体、
(iv)場合により、有機化合物系成分、及び
(v)プロトン性液体
を配合することと、
(b)前記混合物を、中間バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、
(c)前記中間バルク触媒前駆体をTi含有前駆体と複合化して、前記バルク触媒前駆体を形成することと
を含み、
前記バルク触媒前駆体を調製するステップが200℃以下の温度で実施される、前記調製方法。
【請求項19】
前記反応混合物が、
Ni含有前駆体、プロトン性液体、及び場合により、有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、
Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、
前記第1の混合物と前記第2の混合物の両方を60℃~150℃の温度に加熱することと、
前記第1の混合物と前記第2の混合物を互いに配合することと
によって前記反応混合物が調製される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Ti含有前駆体が、TiO
2ナノ粒子、フュームドTiO
2、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記中間バルク触媒前駆体がNi-Mo-Wバルク触媒前駆体である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記反応させることが、
(a)大気圧下で60℃~100℃の範囲、もしくは
(b)自生圧力下で100℃超
のいずれかの1つ以上の温度で実施される、請求項15または請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記有機化合物系成分が、有機酸もしくはその塩、糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項15または請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記有機化合物系成分が、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、オキサミン酸、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース、マルトース、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
以下のステップ、すなわち、
前記バルク触媒前駆体を、0~40重量%の、結合剤、従来の水素化処理触媒、クラッキング化合物、もしくはそれらの混合物の群から選択される材料と複合化するステップ、
噴霧乾燥する、(フラッシュ)乾燥する、粉砕する、混練する、スラリー混合する、乾式もしくは湿式混合する、もしくはそれらの組み合わせのステップ、
成形するステップ、
200℃以下の温度で、乾燥する及び/もしくは熱処理するステップ、または
硫化するステップ
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項15あるいは請求項18に記載の方法。
【請求項26】
炭化水素原料の水素化処理方法であって、バルク触媒の存在下、水素化処理条件で前記炭化水素原料を水素と接触させて、少なくとも1種の生成物を得ることを含み、
前記バルク触媒が、
(a)金属酸化物換算で1~60重量%のNiと、
(b)金属酸化物換算で1~40重量%のMoと、
(c)金属酸化物換算で5~80重量%のWと、
(d)金属酸化物換算で2~45重量%のTiと
を含むバルク触媒前駆体から誘導される、または誘導することが可能である前記方法。
【請求項27】
前記水素化処理が、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素化、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化、水素化分解(hydrogenolysis)、水素化精製、水素化異性化、及び水素化分解(hydrocracking)からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記水素化処理条件が、
200℃~450℃の温度と、
250~5000psig(1.7~34.6MPa)の圧力と、
0.1~10h
-1の液時空間速度と、
100~15,000SCF/B(17.8~2672m
3/m
3)の水素ガス速度と
を含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月4日出願の米国仮出願第63/019,479号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
分野
本開示は、炭化水素原料の水素化処理に使用するための四元金属バルク触媒、ならびに係る触媒の調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
炭化水素原料の水素化処理は、一般に、触媒の存在下、通常は高温高圧である水素化処理条件下で、炭化水素原料を水素と反応させるすべてのプロセスを包含する。水素化処理としては、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱酸素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化、水素化分解(hydrogenolysis)、水素化精製、水素化異性化、及び水素化分解(hydrocracking)などのプロセスが挙げられる。
【0004】
水素化処理触媒は通常、アルミナなどの耐火性担体上に、促進成分としての1種以上の第8族~第10族の非貴金属と共に、1種以上の硫化第6族金属を含む。水素化脱硫及び水素化脱窒素に特に好適な水素化処理触媒は、一般に、コバルト、ニッケル、鉄、またはそれらの組み合わせなどの金属で促進された硫化モリブデンまたは硫化タングステンを含む。
【0005】
担持触媒に加えて、バルク触媒(「非担持」触媒とも呼ばれる)を使用する水素化処理も公知である。バルク水素化処理触媒組成物は、従来の担持水素化処理触媒に比較して相対的に高い触媒活性を有するのではあるが、当技術分野において、さらに向上した水素化処理活性を有する新規なバルク触媒組成物を開発することが引き続き求められている。
【発明の概要】
【0006】
要約
第1の態様において、(a)金属酸化物換算で1~60重量%のNiと、(b)金属酸化物換算で1~40重量%のMoと、(c)金属酸化物換算で5~80重量%のWと、(d)金属酸化物換算で2~45重量%のTiとを含むバルク触媒前駆体が提供される。
【0007】
第2の態様において、硫化された本明細書に記載のバルク触媒前駆体であることを特徴とする、硫化されたバルク触媒が提供される。
【0008】
第3の態様において、本明細書に記載のバルク触媒前駆体の調製方法であって、(a)反応混合物中で、(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)Ti含有前駆体、(v)場合により、有機化合物系成分、及び(vi)プロトン性液体を配合することと、(b)上記混合物を、上記バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることとを含み、上記バルク触媒前駆体を調製するステップが200℃以下の温度で実施される、上記調製方法が提供される。
【0009】
第4の態様において、本明細書に記載のバルク触媒前駆体の調製方法であって、(a)反応混合物中で、(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)場合により、有機化合物系成分、及び(v)プロトン性液体を配合することと、(b)上記混合物を、中間バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で反応させることと、(c)上記中間バルク触媒前駆体をTi含有前駆体と複合化して、上記バルク触媒前駆体を形成することとを含み、上記バルク触媒前駆体を調製するステップが200℃以下の温度で実施される、上記調製方法が提供される。
【0010】
第5の態様において、炭化水素原料の水素化処理方法であって、バルク触媒の存在下、水素化処理条件で上記炭化水素原料を水素と接触させて、少なくとも1種の生成物を得ることを含み、上記バルク触媒が、(a)金属酸化物換算で1~60重量%のNiと、(b)金属酸化物換算で1~40重量%のMoと、(c)金属酸化物換算で5~80重量%のWと、(d)金属酸化物換算で2~45重量%のTiとを含む触媒前駆体から誘導される、または誘導することが可能である、上記方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記述
【
図1】本開示の一態様に係る、多面体Ni-Mo-W-Ti組成空間を画定する頂点の分率座標を用いた四元系状態図である。
【0012】
【
図2】本開示の一態様に係る、多面体Ni-Mo-W-Ti組成空間を画定する頂点の分率座標を用いた四元系状態図である。
【0013】
【
図3】例4のNi-Mo-W-Ti触媒前駆体に対して77Kで行ったN
2物理吸着の等温線プロットである。
【0014】
【
図4】例4のNi-Mo-W-Ti触媒前駆体について得られた高角環状暗視野走査型透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)画像である。
【0015】
【
図5】例5のNi-Mo-W-Ti触媒前駆体に対して77Kで行ったN
2物理吸着の等温線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な記述
用語の定義
用語「バルク」は、混合金属触媒組成物を記述する場合に「非担持」と同義で使用することができ、当該触媒組成物が、予備成形され成形され、その後含浸または堆積によって金属が担持された触媒担体を有する、従来の触媒形態の触媒ではないことを意味する。
【0017】
本明細書では、用語「大気圧」は、外圧を変更する手段が利用されていない大気の圧力を記述するために使用される。一般に、極端な地球上の高度で実施されない限り、「大気圧」は約1気圧(約14.7psiまたは約101kPa)である。
【0018】
同義で使用することができる用語「重量パーセント」及び「重量%」とは、別段の指定がない限り、当該組成物の総重量を基準とした、所与の成分の重量によるパーセントを指す。すなわち、別段の指定がない限り、すべての重量%値は、当該組成物の総重量を基準とする。開示される組成物または処方中のすべての成分の重量%値の合計は100に等しいと理解されたい。
【0019】
バルク触媒及びバルク触媒前駆体
Ni、Mo、W、及びTiの酸化物を含む四元金属バルク触媒前駆体組成物が提供される。水素化処理に使用する前に、上記触媒前駆体を硫化してもよく、これにより金属が金属硫化物に変換される。硫化後では、上記組成物は、添付の特許請求の範囲の目的の「触媒」に対応する/「触媒」と規定される。
【0020】
バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及びチタン(Ti)金属を含む。バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、金属酸化物換算で1~60重量%、例えば5~40重量%または20~60重量%のNi;金属酸化物換算で1~40重量%、例えば1~25重量%または3~20重量%のMo;金属酸化物換算で5~80重量%、例えば10~35重量%または20~75重量%のW;及び金属酸化物換算で2~45重量%、例えば5~40重量%、10~35重量%、または20~30重量%のTiを含んでいてもよい。したがって、本明細書に開示のバルク触媒は、呼称Ni-Mo-W-Ti(但し、各金属が上記で指定された量で存在する)を有することができる。
【0021】
いくつかの態様において、上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、
図1に示すような、四元系状態図の領域によって規定することができ、但し、上記領域は10個の点ABCDEFGHIJによって規定され、上記10個の点は、金属酸化物換算(重量%)で:A(Ni=0.39、Mo=0.00、W=0.41、Ti=0.2)、B(Ni=0.08、Mo=0.00、W=0.72、Ti=0.2)、C(Ni=0.09、Mo=0.17、W=0.54、Ti=0.2)、D(Ni=0.31、Mo=0.25、W=0.24、Ti=0.2)、E(Ni=0.40、Mo=0.14、W=0.26、Ti=0.2)、F(Ni=0.34、Mo=0.00、W=0.36、Ti=0.3)、G(Ni=0.07、Mo=0.00、W=0.63、Ti=0.3)、H(Ni=0.08、Mo=0.15、W=0.48、Ti=0.3)、I(Ni=0.27、Mo=0.22、W=0.21、Ti=0.3)、及びJ(Ni=0.35、Mo=0.12、W=0.23、Ti=0.3)である。
【0022】
いくつかの態様において、上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、
図2に示すような、8個の点ABCDEFGHによって規定される四元系状態図の領域によって規定することができ、但し、上記8個の点は、金属酸化物換算(重量%)で:A(Ni=52.5、Mo=3.5、W=14、Ti=30)、B(Ni=38.5、Mo=17.5、W=14、Ti=30)、C(Ni=21、Mo=17.5、W=31.5、Ti=30)、D(Ni=35、Mo=3.5、W=31.5、Ti=30)、E(Ni=60、Mo=4、W=16、Ti=20)、F(Ni=44、Mo=20、W=16、Ti=20)、G(Ni=24、Mo=20、W=36、Ti=20)、及びH(Ni=40、Mo=4、W=36、Ti=20)である。
【0023】
上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中の金属のモル比は、原則として広い範囲で変化することができる。上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中のTi/(Ni+Mo+W)のモル比は、10:1~1:10または3:1~1:3の範囲であってよい。上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中のNi/Wのモル比は、10:1~1:10の範囲であってよい。上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体中のW/Moのモル比は、100:1~1:100の範囲であってよい。
【0024】
上記バルク触媒前駆体は水酸化物であり、以下の化学式:
Av[Ni(OH)x(L)p
y]z[MomW1-mO4][Ti(OH)nO2-n/2]w
(式中、(i)Aは、アルカリ金属カチオン、希土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、またはそれらの組み合わせであり、(ii)Lは有機化合物系成分であり、且つ(iii)0≦y≦2/p、0≦x<2、0≦v<2、0<z、0<m<1、0<n<4、0.1<w/(z+1)<10である)を有するものであることによってキャラクタライズされてもよい。
【0025】
上記バルク触媒前駆体は、硫化してバルク触媒を形成する前に、少なくとも60重量%(少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%)のNi、Mo、W、及びTiの酸化物から構成されていてもよい。いずれかの態様において、上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、40重量%以下の結合剤を含んでいてもよい。結合剤を添加して、触媒の物理的及び/または熱的特性を改善することができる。
【0026】
上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は有機化合物系成分をさらに含んでいてもよく、上記有機化合物系成分は、上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体の調製に使用される少なくとも1種の有機錯化剤に基づくかまたはそれ由来であってよい。上記有機化合物系成分が存在する場合、上記組成物中のニッケルと有機化合物系組成物のモル比は、3:1~20:1の範囲であってよい。
【0027】
上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体のBET比表面積は、少なくとも20m2/g、少なくとも50m2/g、少なくとも75m2/g、少なくとも100m2/gであってよい。いずれかの態様において、上記自己担持触媒及び/または対応する自己担持触媒前駆体のBET比表面積は、250m2/g以下、200m2/g以下、175m2/g以下、150m2/g以下、125m2/g以下であってよい。BET比表面積に関する上記の下限のそれぞれは、上記の上限のそれぞれとの組み合わせで、明示的に企図される。用語「BET比表面積」とは、S. Brunauer, P.H. Emmett and E. Teller (J. Am. Chem. Soc. 1938, 60, 309-331)の方法に準拠した窒素吸着データから測定される比表面積を指す。
【0028】
上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体の細孔容積は、少なくとも0.02cm3/g、少なくとも0.03cm3/g、少なくとも0.04cm3/g、少なくとも0.05cm3/g、少なくとも0.06cm3/g、少なくとも0.08cm3/g、少なくとも0.09cm3/g、少なくとも0.10cm3/g、少なくとも0.11cm3/g、少なくとも0.12cm3/g、少なくとも0.13cm3/g、少なくとも0.14cm3/g、少なくとも0.15cm3/gであってよい。いずれかの態様において、上記自己担持触媒及び/または対応する自己担持触媒前駆体の細孔容積は、0.80cm3/g以下、0.70cm3/g以下、60cm3/g以下、50cm3/g以下、0.45cm3/g以下、0.40cm3/g以下、0.35cm3/g以下、0.30cm3/g以下であってよい。上記の細孔容積の下限のそれぞれは、上記の上限のそれぞれとの組み合わせで、明示的に企図される。細孔容積はE.P. Barrett, L.G. Joyner and P.P. Halenda (J. Am. Chem. Soc. 1951, 73, 373-380)によって記載された手順に準拠した窒素吸着データから測定される。
【0029】
上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体の粒子密度は、少なくとも1.00g/cm3(例えば、少なくとも1.10g/cm3、少なくとも1.20g/cm3、少なくとも1.30g/cm3、少なくとも1.40g/cm3、少なくとも1.50g/cm3、または少なくとも1.60g/cm3)であってよい。いずれかの態様において、上記自己担持触媒及び/または対応する自己担持触媒前駆体の粒子密度は、3.00g/cm3以下(例えば、2.90g/cm3以下、2.80g/cm3以下、2.70g/cm3以下、2.60g/cm3以下、2.50g/cm3以下、または2.40g/cm3以下、2.30g/cm3以下、または2.20g/cm3以下)であってよい。上記の粒子密度の下限のそれぞれは、上記の上限のそれぞれとの組み合わせで、明示的に企図される。粒子密度(D)は、式D=M/V(式中、Mは重量、Vは触媒試料の体積である)を適用することによって得られる。体積は、28mmHgの真空下で試料を水銀に浸漬することによる体積変位を測定することによって測定される。
【0030】
上記バルク触媒及び/または対応するバルク触媒前駆体は、粉末X線回折によって、低強度のブロードな回折ピークを有する低結晶性物質としてキャラクタライズすることができる。本明細書ではブロードな回折ピークとは、半値全幅(FWHM)が1°を超える(2θスケールで)ピークを意味する。
【0031】
上記バルク触媒及び触媒前駆体の調製
本バルク触媒前駆体は水酸化物であり、硫化してバルク触媒を形成する前のステップが200℃以下の温度で実施され、硫化してバルク触媒を形成する前には、上記触媒前駆体が水酸化物を維持する方法によって調製される
【0032】
一態様において、上記バルク触媒前駆体の調製における第1のステップは、沈殿またはコゲル化ステップであり、この沈殿またはコゲル化ステップは、反応混合物中で、溶液中のNi含有前駆体化合物と溶液中のモリブデン及びタングステン前駆体化合物とを反応させて、沈殿またはコゲルを得ることを含む。上記沈殿またはコゲル化は、上記ニッケル前駆体ならびにモリブデン及びタングステン前駆体が沈殿またはコゲルを形成する温度及びpHで実施される。
【0033】
チタンは、インシチュまたはエクスシチュ経路のいずれかで導入することができる。インシチュ経路では、Ti含有前駆体化合物を反応混合物に添加して、Ni-Mo-W酸化物の共沈またはコゲル化中にチタンを沈殿させてもよい。エクスシチュ経路は、1種以上のチタン前駆体化合物を、Ni-Mo-W酸化物の沈殿またはコゲルと複合化させてもよい。
【0034】
いずれかの態様において、チタンのインシチュ添加は、(a)反応混合物中で、(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)Ti含有前駆体、(v)場合により、有機化合物系成分、及び(vi)プロトン性液体を配合することと、(b)上記バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で上記混合物を反応させることとを含む。上記反応混合物は、(1)Ni含有前駆体、プロトン性液体、及び場合により、有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、(2)Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、(3)上記第1の混合物、第2の混合物、またはそれらの組み合わせにTi含有前駆体を添加することと、(4)上記第1の混合物と第2の混合物の両方を60℃~150℃の温度に加熱することと、(5)上記第1の混合物と第2の混合物を互いに配合することとによって得ることができる。上記反応ステップの後に、必要に応じて、得られたバルク触媒前駆体を、例えばろ過または噴霧乾燥によって液体から分離してもよい。
【0035】
いずれかの態様において、チタンのエクスシチュ添加は、a)反応混合物中で、(i)Ni含有前駆体、(ii)Mo含有前駆体、(iii)W含有前駆体、(iv)場合により、有機化合物系成分、及び(vi)プロトン性液体を配合することと、(b)中間バルク触媒前駆体の沈殿を生じさせるのに十分な条件下で上記混合物を反応させることと、(c)上記中間バルク触媒前駆体をTi含有前駆体と複合化して、上記バルク触媒前駆体を形成することとを含んでいてもよい。上記反応混合物は、(1)Ni含有前駆体、プロトン性液体、及び場合により、有機化合物系成分を含む第1の混合物を調製することと、(2)Mo含有前駆体、W含有前駆体、及びプロトン性液体を含む第2の混合物を調製することと、(3)上記第1の混合物と第2の混合物の両方を60℃~150℃の温度に加熱することと、(4)上記第1の混合物と第2の混合物を互いに配合することとによって得ることができる。上記反応ステップの後に、必要に応じて、得られた中間バルク触媒を、例えばろ過または噴霧乾燥によって液体から分離してもよい。
【0036】
上記触媒前駆体が形成される温度は60℃~150℃の範囲であってよい。上記温度が上記プロトン性液体の沸点(例えば、水の場合の100℃など)よりも低い場合、上記プロセスは一般に大気圧で実施される。上記反応は、反応温度が上記プロトン性液体の沸点より高い水熱条件下で実施することもできる。通常、係る条件によって大気圧を超える圧力が生じ、そこで、反応は好ましくはオートクレーブ中で、好ましくは自生圧力下で、すなわち追加の圧力を印加することなく実施される。オートクレーブは、液体をその沸点を超えて加熱するように設計された、圧力に耐えることが可能な装置である。いずれかの態様において、上記バルク触媒前駆体の形成プロセスは、(a)大気圧下で50℃~100℃の範囲の、または(b)自生圧下で100℃を超える温度のいずれかの1つ以上の温度で実施される。
【0037】
反応時間は、大気圧の反応条件下及び水熱反応条件下の両方で、反応を実質的に完結するのに十分に長く選択される。反応時間は非常に短い場合もある(例えば、反応性の高い反応物質では1時間未満)。明らかに、反応性の低い原料の場合は、おそらく24時間もの長い反応時間が必要になる場合がある。状況によっては、反応時間は温度と逆の関係で変化する場合がある。
【0038】
一般に、反応ステップの間は、反応混合物はその自然なpHに維持される。pHは、0~12(例えば、3~9、または5~8)の範囲に維持されてもよい。製品の所望の特性に応じて、pHを変更して、沈殿またはコゲル化の速度を増減させてもよい。
【0039】
上記金属前駆体は、溶液、懸濁液、またはそれらの組み合わせで反応混合物に添加してもよい。可溶性塩をそのまま添加する場合、それらの塩を反応混合物に溶解し、その後沈殿またはコゲル化させる。
【0040】
Mo含有前駆体化合物の代表的な例としては、(二及び三)酸化モリブデン、モリブデン酸、アルカリ金属モリブデン酸塩(例えば、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム)、モリブデン酸アンモニウム(例えば、モリブデン酸アンモニウム、二モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム)、及びヘテロポリモリブデン酸塩(例えば、ケイモリブデン酸、リンモリブデン酸)が挙げられる。
【0041】
W含有前駆体化合物の代表的な例としては、(二及び三)酸化タングステン、タングステン酸、アルカリ金属タングステン酸塩(例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、メタタングステン酸ナトリウム、ポリタングステン酸ナトリウム)、タングステン酸アンモニウム(例えば、タングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム)、及びヘテロポリタングステン酸塩(例えば、ケイタングステン酸、リンタングステン酸)が挙げられる。
【0042】
Ni含有前駆体化合物の代表的な例としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、臭化ニッケル、炭酸ニッケル、ヒドロキシ炭酸ニッケル、重炭酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、リン酸ニッケル、及び硫酸ニッケルが挙げられる。
【0043】
本明細書に記載の種類のバルク触媒の調製に好適な任意のチタン含有化合物を、Ti含有前駆体化合物として使用することができる。上記Ti含有前駆体は、四価チタン(Ti4+)含有化合物、三価チタン(Ti3+)含有化合物、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0044】
代表的なTi含有前駆体化合物としては、TiO2ナノ粒子、コロイド状TiO2、ヒュームドTiO2、水酸化チタン、有機チタン化合物、ハロゲン化チタン、及び水溶性チタン塩が挙げられる。
【0045】
二酸化チタンナノ粒子はいずれの種類の二酸化チタンであってもよい。上記二酸化チタンは高含有量のアナターゼ及び/またはルチルを有していてもよい。例えば、上記二酸化チタンは、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98重量パーセントのアナターゼ及び/またはルチル、またはさらには少なくとも99重量パーセントのアナターゼ及び/またはルチルも含んでいてよい。いくつかの実施形態において、上記二酸化チタンは本質的にアナターゼ及び/またはルチルからなる。上記二酸化チタンは粒子の中央粒径(D50)は、好ましくは100nm未満(例えば、3~50nm)である。上記酸化チタンナノ粒子は、分散剤中への分散によって調製されたゾルとして、水または溶媒を含有するペーストとして、または粉末として組成物中に導入されてもよい。ゾルの調製に使用される分散剤としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール)、及びケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が挙げられる。
【0046】
代表的な有機チタン化合物としては、一般構造Ti(OR)4(式中、各Rは独立にC1~C4アルキルである)のチタンアルコキシド及びチタンのアシル化合物が挙げられる。代表的なチタンアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、及びチタンテトラ-tert-ブトキシドが挙げられる。代表的なチタンのアシル化合物としては、チタンアセチルアセトナート、チタンオキシアセチルアセトナート、及び酢酸チタンが挙げられる。他の代表的な有機チタン化合物としては、一般式Ti(OR’)2(acac)2(式中、各Rは独立にC1~C4アルキルであり、「acac」はアセチルアセトナートである)であることを特徴とする有機チタン化合物が挙げられる。
【0047】
式TiX4またはTiX3(式中、Xは、クロロ、ブロモ、ヨード、もしくはフルオロである)によって表されるハロゲン化チタン、またはそれらの混合物をチタン前駆体として使用することができる。一態様において、上記ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン、またはそれらの組み合わせである。
【0048】
本開示はまた、Ti含有前駆体化合物として、クロロチタントリイソプロポキシド[Ti(O-i-Pr)3Cl]などの有機チタンハライドの使用も企図する。
【0049】
代表的な水溶性チタン塩としては硝酸チタン及び硫酸チタンが挙げられる。
【0050】
上記有機化合物系成分は、溶液中で金属-リガンド錯体を形成するのに好適な有機化合物であってもよい。上記有機化合物系成分は、有機酸もしくはその塩、糖、糖アルコール、またはそれらの組み合わせから選択することができる。
【0051】
代表的な有機酸としては、グリオキシル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、オキサロ酢酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸、オキサミン酸、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられる。
【0052】
代表的な糖としては、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノース、スクロース、ラクトース、マルトースなど、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0053】
代表的な糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールなど、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0054】
上記プロトン性液体は、上記金属化合物の反応を妨害しない任意のプロトン性液体であってよい。例としては、水、カルボン酸、及びアルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール)が挙げられる。上記プロトン性液体は、水単独、または水とアルコールの混合物であってもよい。
【0055】
さらなる処理
上記バルク触媒前駆体は、水素化処理プロセスで使用される前に、以下のプロセスステップ、すなわち、(i)結合剤、従来の水素化処理触媒、クラッキング化合物、もしくはそれらの混合物の群から選択される材料と複合化するステップ、(ii)噴霧乾燥する、(フラッシュ)乾燥する、粉砕する、混練する、スラリー混合する、乾式もしくは湿式混合する、もしくはそれらの組み合わせのステップ、(iii)成形するステップ、(iv)乾燥する及び/もしくは熱処理するステップ、及び(v)硫化するステップのうちの1つ以上に供されてもよい。(i)~(v)のこれらのプロセスステップの掲載は便宜的なものに過ぎず、これらのプロセスがこの順序で実施されるように制約されることを述べているのではない。これらのプロセスステップを以下にさらに詳述する。
【0056】
さらなる処理ステップ(i) - さらなる材料との複合化
必要に応じて、結合剤、従来の水素化処理触媒、クラッキング化合物、またはそれらの混合物の群から選択されるさらなる材料を、上記バルク触媒前駆体の上述の調製の間に、または上記バルク触媒前駆体の調製後にそのバルク触媒前駆体に添加してもよい。上記材料は、上記バルク触媒前駆体の調製後、且つ噴霧乾燥もしくはその代替技法の前に、または噴霧乾燥もしくはその代替技法を利用しない場合には、成形の前に添加されることが好ましい。場合により、上記のように調製されたバルク金属前駆体を、上記材料と複合化する前に固液分離に供してもよい。固液分離後に、場合により、洗浄ステップを含めてもよい。さらに、任意選択の固液分離及び乾燥ステップの後、且つ上記材料と複合化する前に、上記バルク触媒粒子を熱処理することも可能である。
【0057】
すべての上述のプロセスの代替の形態において、「上記バルク触媒前駆体を材料と複合化する」という表現は、上記材料がバルク金属粒子に添加されるか、またはその逆であり、且つ得られた組成物が混合されることを意味する。混合は好ましくは液体の存在下で行われる(「湿式混合」)。これにより、最終的なバルク触媒組成物の機械的強度が向上する。
【0058】
上記バルク触媒前駆体を上記さらなる材料と複合化すること、及び/または触媒前駆体の調製中に上記材料を組み入れることによって、特にバルク金属粒子のメジアン粒子径が少なくとも0.5μm(例えば、少なくとも1μm、少なくとも約2μm)であるが5000μm以下(例えば、1000μm以下、500μm以下、150μm以下)である場合に、バルク触媒の機械的強度が特に高くなる。上記触媒前駆体のメジアン粒子径は、1~150μm(例えば、2~150μm)の範囲であってよい。
【0059】
上記バルク金属粒子と上記材料の複合化によって、バルク金属粒子がこの材料中に包埋されるか、またはその逆となる。通常、上記バルク金属粒子のモルホロジーは、得られるバルク触媒組成物中で本質的に維持される。
【0060】
利用される結合剤は、水素化処理触媒における結合剤として従来から利用されている任意の材料であってよい。例としては、シリカ、シリカ-アルミナ(例えば、従来のシリカ-アルミナ、シリカ被覆アルミナ、及びアルミナ被覆シリカ)、アルミナ(例えば、ベーマイト、擬ベーマイト、またはギブサイト)、チタニア、チタニア被覆アルミナ、ジルコニア、ハイドロタルサイト、またはそれらの混合物がある。好ましい結合剤は、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、チタニア、チタニア被覆アルミナ、ジルコニア、ベントナイト、またはそれらの混合物である。これらの結合剤は、そのままで、または解膠後に利用してもよい。
【0061】
アルミナが結合剤として使用される場合には、当該アルミナの表面積は、BET法によって測定して、50~600m2/g(例えば、100~450m2/g)の範囲であってよい。上記アルミナの細孔容積は、窒素吸着によって測定して、0.1~1.5cm3/gの範囲であってよい。
【0062】
一般に、添加される結合剤は、上記バルク金属粒子よりも触媒活性が低いか、または触媒活性が全くない。想定される触媒用途に応じて、全組成物の0~40重量%の結合剤量が好適である場合がある。但し、本開示のバルク金属粒子の得られる高い活性を活用するためには、添加される結合剤の量は、一般に、全組成物の0.1~30重量%(例えば、1~20重量%、3~20重量%、または4~12重量%)の範囲である。
【0063】
さらなるプロセスステップ(ii) - 噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾式または湿式混合
上記の(さらなる)材料のいずれかを場合により含むバルク触媒前駆体は、噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはそれらの組み合わせに供されてもよく、湿式混合と混練またはスラリー混合と噴霧乾燥の組み合わせに供されることが好ましい。
【0064】
これらの技法は、上記の(さらなる)材料のいずれかが添加される前または後(添加される場合)、固液分離後、熱処理の前または後、及び再湿潤化の後に利用することができる。
【0065】
上記触媒前駆体は、上記の材料のいずれかと複合化されると共に上記技法のいずれかに供されることが好ましい。噴霧乾燥、(フラッシュ)乾燥、粉砕、混練、スラリー混合、乾式もしくは湿式混合、またはそれらの組み合わせの上記の技法のいずれかを利用することによって、上記触媒前駆体粒子と上記材料のいずれかの間の混合の程度が向上すると考えられる。これは、上記の方法のいずれかを利用する前ならびに後に上記材料が添加される場合に利用される。但し、ステップ(ii)の前に上記材料が添加されることが一般に好ましい。ステップ(ii)の後に上記材料が添加される場合、得られる組成物は、成形などの任意のさらなるプロセスステップの前に、任意の従来の技法によって完全に混合することができる。噴霧乾燥の利点は、この技法が利用されると廃水流が生じないことである。
【0066】
噴霧乾燥は、100℃~200℃(例えば、120℃~180℃)の範囲の出口温度で行うことができる。
【0067】
乾式混合とは、乾燥状態の上記触媒前駆体粒子を乾燥状態の上記材料のいずれかと混合することを意味する。湿式混合は、一般に、上記触媒前駆体粒子を含む湿潤ろ過ケーキと、場合により、粉末または湿潤ろ過ケーキとしての上記材料のいずれかを混合して、それらの均質なペーストを形成することを含む。
【0068】
さらなるプロセスステップ(iii) - 成形
必要に応じて、場合により、上記の(さらなる)材料のいずれかを含む上記バルク触媒前駆体は、場合により、ステップ(ii)が利用された後に成形されてもよい。成形としては、押出成形、ペレット化、ビーズ化、及び/または噴霧乾燥が挙げられる。上記バルク触媒組成物がスラリー型反応器、流動床、移動床、または膨張床に利用されることになる場合、一般に噴霧乾燥またはビーズ化が利用されることに留意されたい。固定床または沸騰床の用途では、一般に上記バルク触媒組成物は押出成形され、ペレット化され、及び/またはビーズ化される。後者の場合、成形ステップの前または成形ステップ中の任意の段階で、成形を容易にするために従来から使用されている任意の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、ステアリン酸アルミニウム、界面活性剤、グラファイト、デンプン、メチルセルロース、ベントナイト、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、またはそれらの混合物を含んでいてもよい。さらに、アルミナが結合剤として使用される場合、上記成形ステップの前に硝酸などの酸を添加してアルミナを解膠し、押出成形体の機械的強度を高めることが望ましい場合がある。
【0069】
成形が押出成形、ビーズ化、及び/または噴霧乾燥を含む場合、上記成形ステップは水などの液体の存在下で行われることが好ましい。押出成形及び/またはビーズ化に関しては、強熱減量として表される成形用混合物中の液体の量は、20%~80%の範囲であってよい。
【0070】
さらなるプロセスステップ(iv) - 乾燥及び/または熱処理
好ましくは100℃を超える任意選択の乾燥ステップの後に、得られた成形バルク触媒組成物を、必要に応じて熱処理してもよい。但し、熱処理は、本開示のプロセスに対して必須ではない。本開示に係る「熱処理」とは、窒素などの不活性ガス中、または空気もしくは純酸素などの酸素含有ガス中で、100℃~200℃の温度で、0.5~48時間の範囲で変化する時間実施される処理を指す。上記熱処理は水蒸気の存在下で行われてもよい。
【0071】
すべての上記のプロセスステップにおいて、液体の量は制御される必要がある。上記バルク触媒組成物を噴霧乾燥に供する前に液体の量が少な過ぎる場合には、追加の液体を添加する必要がある。逆に、上記バルク触媒組成物の押出成形の前に液体の量が多過ぎる場合には、ろ過、デカンテーション、または蒸発などの固液分離技法を使用して液体の量を低減する必要があり、必要に応じて、得られる材料を乾燥し、その後ある程度まで再度湿潤化する。上記のすべてのプロセスステップについて、液体の量を適宜制御することは当業者の範囲内である。
【0072】
さらなるプロセスステップ(v) - 硫化
上記四元金属バルク触媒は、一般にその硫化形態で使用される。触媒の硫化は、従来の硫化方法を含む、触媒を硫化物形態にするのに有効な任意の方法で行うことができる。硫化は、触媒前駆体を、該前駆体の調製の直後または更なるプロセスステップ(i)~(iV)のいずれか1つの後に、元素状硫黄、硫化水素、ジメチルジスルフィド、または有機もしくは無機ポリスルフィドなどの硫黄含有化合物と接触させることによって行うことができる。上記硫化ステップは液相及び気相中で行うことができる。
【0073】
上記硫化は一般に、インシチュ及び/またはエクスシチュで行うことができる。上記硫化はインシチュで実施される(すなわち、上記硫化は、上記バルク触媒前駆体組成物が水素化処理装置中に装填された後に、水素化処理反応器中で実施される)ことが好ましい。
【0074】
水素化処理における使用
本開示のバルク触媒前駆体は、炭化水素原料を水素化処理するのに特に有用である。水素化処理としては、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化、水素化分解(hydrogenolysis)、水素化処理、水素化異性化、及び水素化分解(hydrocracking)などのプロセスが挙げられる。
【0075】
広範囲の石油及び化学用炭化水素原料を本開示に従って水素化処理することができる。炭化水素原料としては、原油、タールサンド、石炭液化、シェール油から得られるまたはそれらに由来するもので、常圧蒸留残油、水素化分解油、ラフィネート、水素化精製油、常圧及び減圧軽油、コーカー軽油、常圧及び減圧残油、脱アスファルト油、脱ワックス油、スラックワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、生物再生可能(biorenewable)原料など、及びそれらの混合物を含む炭化水素原料が挙げられる。好適な原料は、軽油、潤滑油、及び残油などの、比較的軽質の留出留分から重質の原料までの範囲である。軽質留分原料の例としては、ナフサ(一般的な沸点範囲は約25℃~約210℃)、軽油(一般的な沸点範囲は約150℃~約400℃)、灯油またはジェット燃料(一般的な沸点範囲は約150℃~約250℃)などが挙げられる。重質原料の例としては、減圧(または重質)軽油(一般的な沸点範囲は約315℃~約610℃)、ラフィネート、潤滑油、サイクル油、ワックス状油などが挙げられる。好ましい炭化水素原料の沸点範囲は約150℃~約650℃(例えば、約150℃~約450℃)である。
【0076】
水素化処理条件は、200℃~450℃、または315℃~425℃の温度、250~5000psig(1.7~34.6MPa)、または300~3000psig(2.1~20.7MPa)の圧力、0.1~10hr-1、または0.5~5hr-1の液時空間速度(LHSV)、及び100~15,000SCF/B(17.8~2672m3/m3)、または500~10,000SCF/B(89~1781m3/m3)の水素ガス速度を挙げることができる。
【0077】
本開示に係る水素化処理は、1つ以上の固定床、移動床、または流動床反応器などの任意且つ適宜の反応器システムを使用して、1つまたは複数の反応帯域中で実施することができる。固定床反応器は、1つ以上の槽、各槽中の触媒の単床または複数床、及び1つ以上の槽中の水素化処理触媒の種々の組み合わせを含んでいてもよい。
【0078】
例
以下の例示的な例は非限定的であることを意図する。
【0079】
例1(比較例)
バルク触媒前駆体
[Ni(2)-Mo(1)-W(1)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に70.6gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び102.0gのメタタングステン酸アンモニウム水和物を添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次いでこの溶液を80℃に加熱した。
【0080】
溶液Bの調製:別の500mLビーカー中で、100gの脱イオン水に232.6gの硝酸ニッケル及び13.9gのマレイン酸を溶解した。
【0081】
溶液Bを溶液Aに10mL/分の速度で添加した。添加中にpHを監視した。溶液Bを添加するとすぐに緑色沈殿が形成された。添加後の最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを80℃で4時間エイジングした。
【0082】
上記スラリーをろ過して湿潤ケーキを回収した。この湿潤ケーキを300gの脱イオン水で洗浄して、硝酸アンモニウム副生成物を除去した。次いでこの湿潤ケーキを130℃のオーブン中で乾燥して水分をすべて除去した。
【0083】
例2(比較例)
バルク触媒前駆体
[Ni-Mo-W-Co]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2500gの脱イオン水に45.0gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び58.0gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次いでこの溶液を80℃に加熱した。
【0084】
溶液Bの調製:別の500mLビーカー中で、125gの脱イオン水に140.0gの硝酸ニッケル、140.0gの硝酸コバルト、及び16.0gのマレイン酸を溶解した。
【0085】
溶液Bを溶液Aに10mL/分の速度で添加した。添加中にpHを監視した。溶液Bを添加するとすぐに緑色沈殿が形成された。添加後の最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを80℃で4時間エイジングした。
【0086】
上記スラリーをろ過して湿潤ケーキを回収した。この湿潤ケーキを300gの脱イオン水で洗浄して、硝酸アンモニウム副生成物を除去した。次いでこの湿潤ケーキを130℃のオーブン中で乾燥して水分をすべて除去した。
【0087】
例3
Tiのエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni-Mo-W-Ti]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、1000gの脱イオン水に10.4gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び44.8gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次いでこの溶液を80℃に加熱した。
【0088】
溶液Bの調製:別の500mLビーカー中で、100gの脱イオン水に128.5gの硝酸ニッケル及び7.1gのマレイン酸を溶解した。
【0089】
溶液Bを溶液Aに10mL/分の速度で添加した。添加中にpHを監視した。溶液Bを添加するとすぐに緑色沈殿が形成された。添加後の最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを80℃で4時間エイジングした。
【0090】
上記スラリーをろ過して湿潤ケーキを回収した。この湿潤ケーキを300gの脱イオン水で洗浄して、硝酸アンモニウム副生成物を除去した。この湿潤ケーキをビーカーに移し、撹拌しながら60℃で加熱した。次に、100gの親水性ヒュームドTiO2(AEROXIDE(登録商標)TiO2 P25、Evonik)を、混合物が均一になるまで上記湿潤ケーキに混合した。この湿潤ケーキを130℃で乾燥して水分をすべて除去した。
【0091】
例4
Tiのインシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni-Mo-W-Ti]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、1000gの脱イオン水に10.4gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び44.8gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整した。次いでこの溶液を80℃に加熱した。
【0092】
ゲルCの調製:500mLのビーカー中で、210gのエチレングリコールに128.3gの硝酸ニッケルを溶解した。別の1Lビーカー中で、1200gのエチレングリコールに116.1gのチタンテトラ-n-ブトキシド[Ti(OBu)4]を混合した。このTi(OBu)4/エチレングリコール溶液を上記硝酸ニッケル/エチレングリコール溶液に5mL/分の速度で添加した。ゲルCを80℃で2時間エイジングした。
【0093】
次いで溶液AにゲルCを10mL/分の速度で添加した。添加中にpHを監視した。ゲルCを添加するとすぐに緑色沈殿が形成された。添加後の最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを80℃で4時間エイジングした。
【0094】
このスラリーをろ過し、湿潤ケーキを回収した。この湿潤ケーキを300gの脱イオン水で洗浄して、硝酸アンモニウム副生成物及びエチレングリコールを除去した。この湿潤ケーキを130℃で乾燥して水分をすべて除去した。
【0095】
図3は、上記触媒前駆体に対して77Kで行ったN
2物理吸着の等温線プロットを示す。
図3は、この材料がB型のスリット様形状の孔を有することを示している。
【0096】
図4は、この触媒前駆体について得られたHAADF-STEM画像を示す。
図4は、4種の金属酸化物のすべてが均一に分布していることを示している。TiO
2の島は観察されない。
【0097】
例5
Tiのインシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni-Mo-W-Ti]
の合成
766.1gのチタンテトラ-n-ブトキシドを使用したことを除いて、例4を繰り返した。
【0098】
図5は、上記触媒前駆体に対して77Kで行ったN
2物理吸着の等温線プロットを示す。
図5は、この材料がB型のスリット様形状の孔を有することを示している。
【0099】
例6
押出成形体の製造
触媒評価の前に、触媒前駆体を押出成形体へと成形した。乾燥した触媒前駆体を微粉末(<100メッシュ)に粉砕し、適宜の量の結合剤及び水と混合して押出成形可能な混合物を作成し、続いてCarverプレスで押出成形した。
【0100】
例7
バルク触媒前駆体のキャラクタリゼーション
例1~5のバルク触媒前駆体について、粒子密度(D)、BET表面積(SA)、及び細孔容積(PV)を測定した。結果を以下の表1に示す。表1は、TiO
2を添加することにより細孔容積を向上させ、粒子密度を低減することが可能であることを示している。
【表1】
【0101】
例8
触媒評価 - テトラリンの水素化分解(hydrogenolysis)
例1及び3~4由来の触媒前駆体押出成形体のテトラリン水素化分解活性を、固定床反応器中で試験した。すべての触媒前駆体を、二硫化ジメチルの形態の300wppmの硫黄をスパイクした(spiked)テトラリンを使用して予備硫化した。これらの触媒前駆体を、450°F及び800psigのH2圧力で24時間、スパイクしたテトラリン原料を使用して硫化し、次いで25°F/時間で650°Fまで昇温し、650°F/800psigで10時間保持した。
【0102】
上記触媒を、2300psigの反応器全圧、8000SCF/Bの水素供給速度、及び1h-1のLHSVで評価した。テトラリン原料には300wppmの硫黄が含まれていた。
【0103】
【0104】
上記結果は、例3のバルク触媒の活性が例1の従来のバルク触媒に匹敵することを示しているが、例3のバルク触媒の活性金属(すなわち、Ni、Mo、及びW)の量はより少ない。例4のバルク触媒の活性は、より高い温度において、例1及び例3のバルク触媒よりも有意に高い。いかなる理論にも拘束されるものではないが、TiO2を導入するインシチュ経路によって金属がより高度に分散し、触媒の酸性度をかなり増加させることが考えられる。TiO2対照触媒自体は、如何なる実質的な量でも開環を生じさせるのに十分な活性を有していない。
【0105】
例9(比較例)
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に45gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び72gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0106】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に184.5gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0107】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを80℃で4時間、撹拌しながらエイジングした。エイジング後にろ過によって生成物を回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0108】
例10(比較例)
バルク触媒前駆体
[Ni(7.5)-Mo(1)-W(3)]
の合成
次の試薬を括弧内に示した量で、すなわち、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(10.4g)、メタタングステン酸アンモニウム(44.8g)、マレイン酸(5.8g)、及び硝酸ニッケル(128.3g)を使用したことを除いて、例9を繰り返した。
【0109】
例11(比較例)
バルク触媒前駆体
[Ni(3.8)-Mo(1)-W(1.1)]
の合成
次の試薬を括弧内に示した量で、すなわち、モリブデン酸アンモニウム(17.6g)、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(27.8g)、マレイン酸(5.8g)、及び硝酸ニッケル(110.3g)を使用したことを除いて、例9を繰り返した。
【0110】
例12
Tiのインシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(2.7)]
の合成
スラリーAの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に45gのヘプタモリブデン酸アンモニウム、72gのメタタングステン酸アンモニウム、及び56gのTiO2(Venator Hombikat 8602)を添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0111】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に184.5gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0112】
溶液BをスラリーAに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後にろ過によって生成物を回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0113】
例13
Tiのエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(2.7)]の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に45gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び72gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0114】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に184.5gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0115】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後にろ過によって生成物を回収した。ろ過ケーキ及び56gのTiO2(Venator Hombikat 8602)を均質になるまで混合し、80℃で2時間撹拌した。この混合物をろ過により回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0116】
例14
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(2.7)]
の合成
TiO2源としてVenator Hombikat ADW-1 TiO2を使用したことを除いて、例12を繰り返した。
【0117】
例15
Tiのエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(6.6)-Mo(1)-W(3)-Ti(9.8)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に32gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び139.4gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0118】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に354.7gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0119】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後にろ過によって生成物を回収した。ろ過ケーキ及び56gのTiO2(Evonik AEROXIDE(登録商標)E0167)を均一になるまで混合し、80℃で2時間撹拌した。この混合物をろ過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0120】
例16
バルク触媒前駆体
[Ni(6.6)-Mo(1)-W(3)-Ti(5)]の合成
93.1gのTiO2(Evonik AEROXIDE(登録商標)E0167)を使用したことを除いて、例14を繰り返した。
【0121】
例17
バルク触媒前駆体
[Ni(6.6)-Mo(1)-W(3)-Ti(2.5)]
の合成
46.6gのTiO2(Evonik AEROXIDE(登録商標)E0167)を使用したことを除いて、例14を繰り返した。
【0122】
例18
Ti化合物のインシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(3)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に45gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び72gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0123】
ゲルCの調製:210gのエチレングリコールに184.3gの硝酸ニッケルを溶解した。別の1Lビーカー中で、1200gのエチレングリコール中に321.6gのTi(OBu)4を混合した。次いで、このTi(OBu)4混合物を、激しく混合しながら5mL/分の速度で上記硝酸ニッケル混合物に添加した。得られたゲルを80℃で2時間エイジングした。
【0124】
ゲルCを溶液Aに15分以内に添加した。ゲルCの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過により生成物を回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0125】
例19
バルク触媒前駆体
[Ni(7.5)-Mo(1)-W(3)-Ti(3.8)]
の合成
210gのエチレングリコールに128.3gの硝酸ニッケルを溶解し、230gのエチレングリコールに76.1gのTi(OBu)4を混合したことを除いて、例16を繰り返した。
【0126】
例20
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(2.7)]
の合成
U.S. Research Nanomaterials, Inc.製のアナターゼナノ粉末(99.5% 5nm)をTiO2源として使用したことを除いて、例12を繰り返した。
【0127】
例21
Tiのエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(7.5)-Mo(1)-W(3)-Ti(21.2)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、1000gの脱イオン水に10.4gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び44.8gのメタタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0128】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に128.5gの硝酸ニッケル及び7.1gのマレイン酸を溶解した。
【0129】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過によって生成物を回収した。ろ過ケーキ及び100gの親水性ヒュームドTiO2(Evonik AEROXIDE(登録商標)P25)を均一になるまで混合し、80℃で2時間撹拌した。この混合物をろ過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0130】
例22
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(2.7)]
の合成
Venator Hombikat S141をTiO2源として使用したことを除いて、例12を繰り返した。
【0131】
例23
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(6.2)]
の合成
Venator S141をTiO2源として128gの量で使用したことを除いて、例12を繰り返した。
【0132】
例24
Tiのインシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Ti(2.7)]
の合成
スラリーAの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に、56gのヘプタモリブデン酸アンモニウム、90gのメタタングステン酸アンモニウム、及び467gのコロイド状TiO2(15重量% TiO2固体、Cerion Nanomaterials)を添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0133】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に230gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0134】
溶液BをスラリーAに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過によって生成物を回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0135】
例25(比較例)
ケイ素のエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(7.5)-Mo(1)-W(3)-Si(2)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、1000gの脱イオン水に10.4gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び44.8gのタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0136】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に128.5gの硝酸ニッケル及び7.1gのマレイン酸を溶解した。
【0137】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過によって生成物を回収した。ろ過ケーキ及び8.9gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を均一になるまで混合し、80℃で2時間撹拌した。この混合物をろ過により回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0138】
例26(比較例)
ケイ素のエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(6.6)-Mo(1)-W(3)-Si(6.6)]
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に32.4gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び139.4gのタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0139】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に354.7gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0140】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過により生成物を回収した。ろ過ケーキ及び91gのシリカゲル(Davisil Grade 636)を均一になるまで混合し、80℃で2時間撹拌した。この混合物をろ過により回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0141】
例27(比較例)
バルク触媒前駆体
[Ni(6.6)-Mo(1)-W(3)-Si(2.9)]
の合成
39gの上記シリカゲルを使用したことを除いて、例27を繰り返した。
【0142】
例28(比較例)
ジルコニウムのエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(2.5)-Mo(1)-W(1.1)-Zr(1.8)]
の合成
溶液Aの調製:4Lフラスコ中で、2000gの脱イオン水に45gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び72gのタングステン酸アンモニウムを添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0143】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に184.5gの硝酸ニッケル及び10.1gのマレイン酸を溶解した。
【0144】
溶液Bを溶液Aに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過によって生成物を回収した。フィルターケーキ及び56gの焼成ZrO2(Aldrich)を均質になるまで混合し、80℃で2時間撹拌した。この混合物をろ過によって回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0145】
例29(比較例)
炭素のエクスシチュ添加による
バルク触媒前駆体
[Ni(6.6)-Mo(1)-W(3)-C(14.5)]
シリカゲルに代えて39gの活性炭(DARCO(登録商標)G-60)を使用したことを除いて、例27を繰り返した。
【0146】
例30
触媒評価 - 減圧軽油の水素化転化
例9~11、15~17、及び25~29由来のバルク触媒前駆体押出成形体を硫化し、三相固定床反応器中でVGO原料を用いてそれらの触媒活性を評価した。
【0147】
触媒前駆体を482°F/800psig(250℃/5.5MPa)で5時間硫化し、次いで572°F(300°C)まで30°F/時間で上昇させ、5時間浸漬し、次に650°F/800psig(343°C/5.5MPa)まで30°F/時間で上昇させ、6時間浸漬した。
【0148】
水素化処理条件には、2300psigの圧力、2h-1のLHSV、及び4880SCF/BのH2処理ガス速度が含まれていた。
【0149】
触媒活性は、粒子密度を2.5g/cm
3に正規化した場合の、Nを10ppmにするための温度で比較した。結果を表3にまとめる。
【表3】
【0150】
表3の結果は、種々の量のTiO2の添加によって、HDNの目標を達成するために必要な温度がNi-Mo-W触媒と同一のままでありながら、活性を犠牲にすることなく粒子密度が減少することを示している。比較すると、SiO2、ZrO2、及びCの添加によって、粒子密度も低下するが、活性が低下する。
【0151】
例31
触媒評価 - テトラリンの水素化分解(hydrogenolysis)
例10~11のNi-Mo-Wバルク触媒前駆体、及び例14、18、及び20~24のNi-Mo-W-Tiバルク触媒前駆体のテトラリンの水素化分解活性を、例9に記載した3相固定床反応器中で試験した。
【0152】
触媒評価条件は、2300psigの反応器圧力、3500SCF/Bの水素供給速度、及び1h-1のLHSVを含んでいた。テトラリン原料は300wppmの硫黄を含んでいた。
【0153】
【0154】
表4の結果は、テトラリンの開環について、Ni-Mo-Wを含まないTiO2単独では活性がないことを示している。Ni-Mo-W-Ti系は、TiO2の種類及び調製方法に応じたさまざまなレベルの活性を有する。TiO2の種類及び調製の選択により、低粒子密度と開環活性の向上の両方における利点が得られる可能性がある。
【0155】
例32
触媒試験 - 直留軽油/テトラリン原料の水素化転化
例9~11のNi-Mo-Wバルク触媒前駆体、及び例14、18、及び22~23のNi-Mo-W-Tiバルク触媒前駆体の触媒活性を、30体積%直留軽油/70体積%テトラリン配合原料を用いて、固定床反応器中で試験した。触媒活性は、多核芳香族化合物(PNA)の転化率に基づいて比較した。
【0156】
触媒前駆体を、例8に記載したようにして硫化した。
【0157】
水素化処理条件は、1200psigの圧力、1hr-1のLHSV、及び3500SCF/BのH2ガス速度を含んでいた。
【0158】
【0159】
表5の結果は、Ni-Mo-W-Ti系の直留軽油/テトラリン原料の水素化転化に対する活性は、Ni-Mo-W系と同等であることを示している。
【0160】
例33(比較例)
三元金属バルク触媒前駆体
[Ni(1.25)-Mo(1)-Ti(1.12)]
の合成
スラリーAの調製:4Lフラスコ中で、3200gの脱イオン水に112gのヘプタモリブデン酸アンモニウム及び57gのTiO2(Venator S141)を添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0161】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に230gの硝酸ニッケル及び12.6gのマレイン酸を溶解した。
【0162】
溶液BをスラリーAに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過によって生成物を回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【0163】
例34(比較例)
三元金属バルク触媒前駆体
[Ni(1.1)-W(1)-Ti(1.37)]
の合成
スラリーAの調製:4Lフラスコ中で、3200gの脱イオン水に182.7gのメタタングステン酸アンモニウム及び79gのTiO2(Venator S141)を添加した。アンモニア水でpHを9.8に調整し、この溶液を80℃まで加熱した。
【0164】
溶液Bの調製:100gの脱イオン水に230gの硝酸ニッケル及び12.6gのマレイン酸を溶解した。
【0165】
溶液BをスラリーAに15分以内に添加した。溶液Bの添加中に緑色沈殿が形成された。最終的なpHは6.0~7.0であった。このスラリーを撹拌しながら、80℃で4時間エイジングした。エイジング後に、ろ過によって生成物を回収し、脱イオン水で洗浄し、130℃で乾燥した。
【国際調査報告】