(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】膨張を介した接着装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20230606BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20230606BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J7/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567351
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021030644
(87)【国際公開番号】W WO2021226078
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513326370
【氏名又は名称】ビーブイダブリュ ホールディング エージー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーシェール,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ミルボッカー,マイケル
【テーマコード(参考)】
4J004
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC05
4J004FA09
(57)【要約】
対象表面の表面構造と噛み合うように設計された微細構造及びポリマーを含む接着装置。装置は、液体の存在下で膨潤し得る弾性架橋ポリマーを有する微細構造材料を含んでもよい。膨潤前状態では、装置の微細構造は対象表面微細構造と噛み合ってもよい。対象表面上の液体が装置の微細構造表面に接触すると、液体により装置の微細構造表面が膨潤してもよい。膨潤により微細構造が対象表面を把持し、装置と対象表面との間に接着がもたらされてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体を備える膨張を介した接着装置であって、前記基体が第1の微細特徴部と第2の微細特徴部とを含む微細構造表面を有し、前記第2の微細特徴部が前記第1の微細特徴部の周りに階層的に配置され、液体が吸収されて前記微細特徴部を変換するように前記基体が液体環境に置かれることにより、前記第1の微細特徴部又は前記第2の微細特徴部の少なくとも一方が第1の構造から第2の構造に変換するように構成された、膨張を介した接着装置。
【請求項2】
前記階層的に配置された第1及び第2の微細特徴部が、低表面エネルギーの領域と、一緒に並置された高表面エネルギーの領域とを関連付けて前記微細構造表面と対象表面との間にWenzel Cassie界面を生成するように構成された、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項3】
前記第1の微細特徴部が、高さ10~1000ミクロン、直径10~1000ミクロン、隣接する微細特徴部の中心間ピッチ25~1万ミクロンである、請求項2に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項4】
前記第2の微細特徴部が、高さ5~200ミクロン、直径5~200ミクロン、隣接する微細特徴部の中心間ピッチ10~1000ミクロンである、請求項3に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項5】
前記基体が、変換するように構成された前記少なくとも1つの第1又は第2の微細特徴部の膨潤率とは異なる膨潤率を有する、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項6】
前記液体が吸収されて前記微細特徴部を変換するように前記基体が液体環境に置かれることにより、前記第1の微細特徴部及び前記第2の微細特徴部の両方が第1の確認から第2の確認にそれぞれ変換するように構成された、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項7】
前記第1の微細特徴部が第1の確認から第2の確認に変換するように構成され、前記構造変化によって前記隣接する第2の微細特徴部が相互作用して対象表面に対するロック機構を生成する、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項8】
前記第1の微細特徴部及び前記第2の微細特徴部が自己相似である、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項9】
前記第1の微細特徴部が膨潤性であり、前記第2の微細特徴部が非膨潤性である、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項10】
前記第2の微細特徴部が膨潤性であり、前記第1の微細特徴部が非膨潤性である、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項11】
前記微細構造化表面が、グルコシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、及び多官能性モノマーを重合することによって得られるポリマーを含む、請求項に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項12】
前記グルコシルオキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-グルコシルオキシエチルメタクリレート、2-マンノシルオキシエチルメタクリレート、及び2-ガラクトシルオ
キシエチルメタクリレートからなる群から選択される、請求項11に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項13】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項11に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項14】
前記アルキル(メタ)アクリレートが、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項11に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項15】
前記多官能性モノマーが、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートや、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、トリアリルイソシアヌレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの1分子あたり少なくとも2つのアリル基を有するモノマー、並びにN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される、請求項11に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項16】
変換するように構成された前記微細特徴部が、前記第1の構造から前記第2の構造に変化するときにある方向において前記微細特徴部の移動を制限する内部要素を含む、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項17】
前記基体が膨潤性である、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項18】
前記微細構造表面が界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項19】
前記微細構造表面が毛細管現象を発生させるように構成された、請求項1に記載の膨張を介した接着装置。
【請求項20】
前記界面活性剤が、前記微細構造表面の下にある毛細管微細構造に流体を送達するように構成された、請求項18に記載の膨張を介した接着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる資料を含む。著作権の所有者は、米国特許商標庁の特許ファイル又は記録に見られるような特許文書又は特許開示の複製に異議を唱えないが、それ以外のすべての著作権を留保する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して、微細構造化の型と接触させながら特定のモノマーを重合することによって得られる架橋ポリマー微細構造化表面を含む接着装置に関する。装置は対象表面への優れた接着性を発揮することができ、対象表面の固液界面に装置を接着配置するのに有用であり得る。
【0003】
流動液相を含む対象表面によって対象表面と装置との間の接着が阻害されることがある。そのような対象表面の組成及び形態は頻繁に変化している。ある場合においては、液相は潤滑剤として作用することがある。液相は、装置の固相と対象表面の固相との間の反発障壁としても作用することがある。
【0004】
液相・固相構造のために、液相が潤滑剤又は反発障壁として作用している場合、一方の表面を他方の表面に接着させるのが困難なことがある。身体の構造物には、表面に作用する潤滑力や反発力に打ち勝つように一方の表面を他方の表面に固定されることが要求され得る。例えば、医療用インプラントとして使用される手術用メッシュを臓器に固定することは、間質液があるために困難なことがある。このような問題を克服するため、医療用インプラントの動きを最小限に留めるかなくすために、縫合糸又は同様の手段を利用してインプラントを固定位置に固定する。しかしながら、そのような手段の利用の主な欠点は、下にある組織に引き起こされ得る物理的損傷である。医療用インプラントを固定するために組織を穿刺することは、炎症、腫脹、瘢痕、並びに下にある組織から縫合糸を引き裂く可能性などの望ましくない副作用を引き起こし、さらなる損傷を招くこともある。
【0005】
したがって、侵襲的固定手段を必要とせずにその表面が他方の表面に接着できるようにする特性を持った微細加工表面が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、一実施形態では、膨潤性微細構造化表面を含む。いくつかの実施形態では、微細構造表面は、液体環境に導入されると体積が増加してもよい。特定の環境では、液相は固相の周りに配置されてもよい。固相は、微細構造化表面が接着する対象表面を含んでもよい。微細構造表面の膨潤機構を開始するため、表面は対象表面の周りに配置された液相と接触してもよい。あるいは、対象表面と接触する前に液相で表面を前処理することによって微細構造表面の膨潤が開始されてもよい。特定の実施形態では、微細構造表面の前処理を設けることによって、対象表面の周りに配置された液相が存在してもしなくてもよい。
【0007】
特定の実施形態では、微細構造表面の対象表面への接触は、2つの表面を押圧して合わせる垂直力の作用を含んでもよい。いくつかの実施形態では、垂直力は固有皺を誘発するのに十分であってもよい。特定の実施形態では、対象表面は既存の表面微細構造を有してもよい。例えば、哺乳動物組織は、細胞形態に起因するか、そのような構造を有することにおける何らかの進化的利点に起因するかにかかわらず、微細構造化表面を有し得る。
【0008】
本開示の一実施形態では、微細構造表面は自らの垂直力を発生させることができてもよ
い。そのような力は、毛細管現象、表面張力、ファンデルワールス力、水素結合などに起因し得る。
【0009】
特定の実施形態では、微細構造表面はWenzel-Cassie界面を生成してもよい。Wenzel-Cassie界面は、疎液性及び親液性表面構造の微小領域を含み得る。いくつかの実施形態では、これらの疎液性及び親液性の微小領域は並置されている。微小領域のそのような並置により、2つの対向する表面を互いに接着させる対向力が生み出され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、微細構造表面が対象表面と接触しているとき、微細構造表面の親液性部分は対象表面の周りに配置された液相を引き付け、表面微細構造の疎液性部分は液相をはじくか、異なる液相が存在する場合はその液相を引き付けるか、気相を引き付けるか、又は固体表面を引き付けてもよいことが理解され得る。いくつかの実施形態では、そのような相の組み合わせが微細構造表面の疎液性部分に存在してもよい。親液・疎液性界面形状がいくつか組み合わされることにより、これらの形状が分離されて互いに接触しないか相互作用しない場合と比較して、表面の表面エネルギーが低下し得ることがさらに理解できる。
【0011】
典型的なWenzel-Cassie界面は、親液性領域及び疎液性領域を生成することができる階層的微細構造を含む微細構造化表面を含んでもよく、親液性領域及び疎液性領域は高表面エネルギー及び低表面エネルギーと呼ぶこともある。得られるWenzel-Cassie界面は、Wenzel-Cassie構造のない界面よりも低エネルギーであり得るため、界面は剥離方向及び剪断方向の両方でエネルギー的に転位に抵抗し得る。いくつかの実施形態では、Wenzel-Cassie界面の形成により、微細構造表面と対象表面とを互いに噛み合わせる「吸い込み」効果を生じさせてもよい。
【0012】
あるいは、他の接着機構を使用して所望の噛合いを生じさせてもよい。いくつかの実施形態では、垂直力の接着機構は必要とされない場合がある。いくつかの実施形態では、熱力学、エントロピー、及び/又は他の力学による垂直方向の機構によって界面が噛み合わされてもよい。噛合い後、又は少なくとも表面の一部の噛合い後、微細構造表面の膨潤によって微細構造が対象表面の微細構造に固定されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、膨潤機構は接着機構を生成してもよい。例えば、液体が装置の微細構造に吸収されることによって空隙が生成されてもよい。いくつかの実施形態では、空隙によって、微細構造表面と対象表面との接触面積が増加してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、微細構造表面は、固定の初期段階中に再配置可能であってもよい。例えば外科手術では、本開示の膨張接着機構を備えた軟組織補強人工装具が、第1のほぼ所望の位置において最初に患者内に配置されてもよい。次いでその後、装置は第2の位置、すなわち意図した通りに修復可能な位置に再配置されてもよい。そのような再配置可能性は、装置を体腔に送達することが初回のステップでは困難な低侵襲手術において特に認識されている。他の固定手段なしで装置を配置して対象表面に接着させることにより、手術が大幅に容易になる。さらに、装置の再配置可能性によって、外科医は縫合糸又は他の恒久的な接着方法を使用せずに様々な修復方策を試みることができるようになり、したがって、従来技術の装置よりも遥かに大きな利点がもたらされる。
【0015】
いくつかの実施形態では、微細構造表面は、対象表面微細構造の形状に合わせて調整されてもよい。例えば、微細構造の空間周波数、高さ、幅、及び全体形状は、対象形態に合わせて一緒に又は個別に最適化されてもよい。いくつかの実施形態では、対象表面が既知である場合、微細構造表面は対象表面形態と干渉するように設計することができる。いく
つかの実施形態では、対象表面がフィラメント状構造を含む場合、本開示の微細構造表面は膨潤してフック構成を生成するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、微細構造表面は、対象表面のループ状繊維に相互貫通する装置の直線繊維を最初に含んでもよい。微細構造表面が膨潤すると、最初に直線状であった繊維がフック状の形態に変化し、それによってフィラメント状構造と係合し、微細構造表面及び対象表面の位置を変えるのに必要な力を実質的に増加させてもよい。
【0016】
同様に、対象表面が多孔質表面を含む場合、微細構造表面は、対象表面の孔に相互貫通する隆起部、柱、及び同様の突起を含んでもよい。貫通すると、微細構造表面は膨潤して、装置の突起と対象表面の孔との間に把持を生じさせてもよい。
【0017】
他の実施形態では、微細構造表面の膨潤状態を逆転させることができるように、変形例が可逆性の態様を含んでもよい。そのような可逆性機構は、温度、重量オスモル濃度、pHなどの変化を含み得る。さらに、微細構造表面の全体又は一部は吸収性であってもよく、加水分解又は化学分解が施されてもよい。微細構造表面は、対象表面を補強又は強化するように設計されたメッシュ構造などの構造的態様を含んでもよい。いくつかの実施形態では、表面間結合を破壊するのに必要なエネルギーが調整されてもよい。例えば、カップ表面、バスタブ表面、タイヤ表面など、繰り返し接触するように意図された表面では、特定の接着エネルギー又は力が望ましい場合がある。さらに、微細構造表面は、特定の状況下、例えば高圧、高温、又は高い酸性若しくはアルカリ性で機械的に故障するように設計されてもよい。
【0018】
本開示の特定の実施形態では、微細構造表面は、多面若しくは多層であってもよく、かつ/又は複数の機能を有する複数の領域を含んでもよい。いくつかの領域は微細構造を含まなくてもよい。いくつかの微細構造表面は、同じ又は異なる設計寸法で装置表面にわたって空間的に変調された表面を有することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、微細構造表面は接着様式間を移行してもよい。例えば、微細構造表面は、最初に粘膜接着性であり、次いで膨潤して機械的接着を引き起こし、次いでその後、Wenzel-Cassie接着を生じさせるか、又はその逆であってもよい。
【0020】
本開示のこれら及び他の態様を以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】膨潤による微細構造の変化を示す、膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図1B】膨潤による微細構造の変化を示す、膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図2】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図3】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図4】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図5】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図6】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図7】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図8】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【
図9】膨張を介した微細構造表面の一実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の微細構造化表面は、階層的に配置された微細構造を含んでもよい。いくつかの実施形態では、微細構造表面は、膨潤性の態様を含んでもよい。いくつかの実施形態では
、本開示の微細構造表面は、第1の微細特徴部が第2の微細特徴部上に配置される微細構造の階層的配置を含んでもよい。一般に、微細構造表面は、エンボス加工(すなわち、形成構造体が主に雄突起からなるパターンを示す場合)、デボス加工(すなわち、形成構造体が主に雌毛細管ネットワークからなるパターンを示す場合)、又はいずれかのタイプの形成構造体の表面上への樹脂溶融物の押出などの既知のプロセスによって基体上に形成されてもよい。対照的に、微細構造化表面を説明するために本明細書で使用される場合、「平面の」という用語は、肉眼で見たときの表面の全体的な巨視的形状を指すことがある。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態では、基体材料は、エンボス表面の構造をなした後に固体又は液体調製物を架橋して得られてもよい。主な目標は、微細構造特徴部が膨潤条件下でコンフォーマルであることであってもよい。
【0024】
特定の実施形態では、膨潤性微細構造表面の1つの特徴は、バルク状微細構造配置によって誘発され得る表面エネルギーを用いることである。いくつかの実施形態では、表面エネルギーは湿潤コーティングの添加によって誘発することができ、湿潤コーティングは液体を表面に引き込んだ後に液体によって吸収されてもよい。表面コーティングは、微細構造化表面に捕捉される液体の種類に応じて、親液性又は親油性であってもよい。界面活性剤は、水溶液及び油溶液の両方を捕捉する能力を有し得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤を必要とせず、微細構造膨潤を誘発するのに必要な表面エネルギーが表面テクスチャのみによってもたらされてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、微細構造表面は、微細構造表面と対象表面との間にWenzel-Cassie界面を生成するように構成されてもよい。Wenzel-Cassie界面の生成によって、驚くほど非直感的な環境でも、多くの場合は微細構造表面が対象表面に接着し得る。例えば、一実施形態では、柱状の錯体の微細構造表面が湿潤生体組織に接着し得る。
【0026】
特定の実施形態では、界面活性剤は、表面の下にある毛細管微細構造に流体を送達することができるため、有用であり得る。未処理の毛細管微細構造でも流体の輸送に有効であり得るが、その有効性は制限されることがあり、液体が毛細管の内部に到達した後にしか毛細管構造は流体を移動させることができない。界面活性剤は、湿潤対象表面と微細構造化表面との間の間隙を埋めることができる。いくつかの実施形態では、典型的には、界面活性剤が消散した後に流体の層が毛細管微細構造によって微細構造化表面に固定されてもよい。
【0027】
図1A及び
図1Bを参照すると、膨潤性微細構造化装置100は、基体102を有する階層的膨潤性微細構造を含んでもよい。特定の実施形態では、階層的微細構造は、階層的に配置された2つの微細特徴部を含んでもよい。他の実施形態では、
図1A及び
図1Bに示すように、階層的微細構造は階層的に配置された3つの微細特徴部を含んでもよい。微細構造化装置100は、
図1A及び
図1Bの一実施形態に示されたもの以外の、階層的に配置された任意の数の微細特徴部を含んでもよい。
【0028】
図1に示すように、いくつかの実施形態では、基体102は複数の第1の層の微細特徴部104を含んでもよい。第1の層の微細特徴部104は、微細構造化装置100の用途に応じて膨潤性又は非膨潤性であってもよい。第1の層の微細特徴部104は、高さ10~1000ミクロン、直径10~1000ミクロン、隣接する微細特徴部の中心間ピッチ25~1万ミクロンであってもよい。いくつかの実施形態では、基体は複数の第2の層の微細特徴部をさらに含んでもよい。第2の層の微細特徴部106は、膨潤性又は非膨潤性であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の層の微細特徴部106は、高さ5~200ミクロン、直径5~200ミクロン、隣接する微細特徴部の中心間ピッチ10~10
00ミクロンであってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、基体は複数の第3の層の微細特徴部108をさらに含んでもよい。第3の層の微細特徴部108は、膨潤性又は非膨潤性であってもよい。いくつかの実施形態では、第3の層の微細特徴部108は、高さ1~5ミクロン、直径5~200ミクロン、隣接する微細特徴部の中心間ピッチ10~1000ミクロンであってもよい。
【0030】
図1Bに示すように、いくつかの実施形態では、微細構造化装置100は膨潤してもよい。基体及び/又は各層の微細特徴部の化学的構成に基づいて、1つ、2つ、又はすべての領域を一緒に又は独立して膨潤させてもよいことが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、基体のみが膨潤してもよい。他の実施形態では、第1の複数の微細特徴部のみを膨潤させてもよい。さらに他の実施形態では、第2の複数の微細特徴部のみを膨潤させてもよい。さらに他の実施形態では、第3の複数の微細特徴部のみを膨潤させてもよい。特定の実施形態では、基体及び/又は微細特徴部の任意の組み合わせを膨潤させてもよい。
図1Bでは、3つの複数の微細特徴部のそれぞれが、水性環境に置かれたときに膨潤させられ得る。特定の実施形態では、微細構造化装置100がテクスチャのある対象表面110と干渉するとき、テクスチャのある対象表面が装置の特定の部分116で噛み合ってもよい。微細構造化表面を膨潤させると、微細特徴部の膨潤によって装置100と対象表面110とが、部分116における微細特徴部の対象表面微細構造との相互作用を通じて固定されるようになってもよい。
【0031】
本開示によれば、微細構造化表面100は、濡れ性が異なる領域を含んでもよい。この濡れ性の相違は微細構造表面上の領域間の表面エネルギーの相違によって示され、本明細書では「表面エネルギー勾配」と定義される。表面エネルギー勾配を有する表面は、垂直力が膨潤プロセスにおいて液体を取り込むか、膨潤プロセスが起こっている間に初期接着をもたらすかにかかわらず、自らの垂直力を発生し得る。
【0032】
基体の表面は、表面上に置かれた液滴によって生成される接触角によって特徴付けられてもよい。液滴の接触角の定量化によって、基体の表面エネルギーの一般的なプロファイルを得ることができる。当業者は、接触角の定量化が傾斜方法などの方法によって測定され得ることを理解するであろう。接触角は、固体表面の粗さ、汚染、化学的/物理的処理又は組成、並びに液滴の性質及び汚染といった、化学的及び物理的特性などの表面不均一性に依存し得る。超疎水性表面は少なくとも150度の液滴の接触角を生成することが一般的に理解される。
【0033】
固体表面の表面エネルギーが小さくなるほど、接触角は大きくなり得る。固体表面の表面エネルギーが大きくなるほど、接触角は小さくなり得る。表面エネルギーが微細構造化表面の表面にわたって変化すると、接触角も変化し得る。微細構造表面が微細構造化表面上に別個の表面エネルギー領域(ミクロンスケールであり得る別個の疎水性領域及び親水性領域)を有する場合、Wenzel Cassie界面が形成され得る。いくつかの実施形態では、これらの別個の領域は、界面層で化合物流体の異なる成分を引き付けてもよい。化合物液体のこれらの異なる成分が、微細構造化表面上の異なるが隣接する(並置された)領域に固定され得る。2つの成分はエネルギー入力が混ざることを必要とするので、この2つの成分がWenzel-Cassie界面を形成し、微細構造化表面の接着特性をもたらし得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、表面エネルギーは微視的変動の有無にかかわらず巨視的に変動してもよく、微細構造化表面が対象表面に対して変位すると、液相の接触角は、異なる微視的領域において異なる状態で全体的に変化してもよい。この現象は、接触角混同と呼ばれる。理論に束縛されるものではないが、これらの微視的領域において接触角を変換す
るためのエネルギーコストが存在する可能性があり、これが表面の接着特性を生み出すことにもなり得る。
【0035】
先に開示したとおり、特定の実施形態では、これらの接着特性は流体界面を固定するために用いることができる。いくつかの実施形態では、対象表面を微細構造化表面に固定し、これによって対象表面を微細構造化表面にわたって滑りにくくするために接着特性を用いてもよい。
【0036】
ここまで、本開示は、微細構造表面の特性と、これに対応し剪断力によって定量化される剪断並進とを提供するものである。いくつかの実施形態では、この同じパターンが、剥離力によって定量化される直交並進に影響を及ぼし得る。並進力も剥離力も、液体界面を破壊する(剪断)、又は固体表面から液体界面を分離する(剥離)のに必要なエネルギーに依存し得る。これらの2つのエネルギーは典型的には同じでないが、エネルギーを表す式は両方とも接着仕事量、表面張力、及び接触角に依存し得る。
【0037】
接着仕事量は、所与の表面の表面エネルギー特性を理解し定量化するのに有用なツールであり得る。所与の表面の表面エネルギー特性を特徴付けるために利用できる別の有用な方法は、臨界表面張力と呼ばれるパラメータであり得る。これが剪断力及び剥離力を受けた微視的かつ巨視的な表面エネルギー変化であることを理解されたい。
【0038】
本開示の文脈において、空間的に変動する表面エネルギー(すなわち、表面エネルギー勾配)は、微細構造の膨潤状態を可能にするのに適した界面を維持するのに有用であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、液滴が受ける力は、微細構造化表面のより高い表面エネルギーの方向への移動(力ベクトル)を引き起こしてもよい。本開示の階層的微細構造化表面の場合、表面エネルギー勾配は、巨視的レベルでの緩やかな変化、及び微視的レベルでの表面エネルギーの明確に画定された領域間の急な不連続性又は境界として特徴付けられてもよい。表面エネルギー勾配はまた、段階的な勾配で生み出されてもよく、任意の特定の液滴(又は液体界面の部分)に及ぼされる力は、それぞれの特定の界面接触の微細領域における表面エネルギーによって決定される。
【0040】
いくつかの実施形態では、微細構造特徴部の配向又は位置及びサイズ並びにその様々な組成は、変更してもよい。いくつかの実施形態では、階層的微細構造化表面を形成するために別個の層で互いに積み重ねられた異なるサイズの特徴部を含む一般的な幾何学的形態を有する表面を使用してもよい。
【0041】
本明細書で使用される「自己相似」という用語は、ある微細特徴部のセットの別の微細特徴部のセットに対する、スケールがより大きいかより小さい共通のスケール変換を含むように理解され得る。物理学では、自己相似はスケール不変性と同義であると理解されることが多い。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、微細構造化表面上に階層的に配置された領域に存在する異なる表面エネルギー(疎水性領域及び親水性領域)は、それらの配向及び分布が毛細管又は流体通路の配向及び位置に対してなされる場合、改良された状態で使用されてもよい。2つの表面間に吸引効果を生じさせ得る界面に流体の流れを誘発することが有益になり得る場合がある。他の実施形態では、固定構造が維持され得るように、流体流出表面から流体を排出するように流体の流れを誘発することが有益であり得る。
【0043】
特定の実施形態では、第2の材料と比較して表面エネルギーが比較的低い材料を使用し
て毛細管現象を発生させ、第1の表面に堆積した流体が、表面エネルギーが比較的低い少なくとも1つの領域に典型的に接触し、したがって表面エネルギー勾配を伴う駆動力を受けるようにしてもよい。
【0044】
例えば、一実施形態では、表面エネルギーが比較的低い領域が本開示の微細構造化表面の第1の階層に配置されてもよく、下にある第2の階層の表面エネルギーがより高く、第1の階層が微細構造化表面に直交する方向に毛細管効果を生じさせるようにしてもよい。特徴部の高さ、幅、横方向ピッチ(面内空間周波数)及び直交方向ピッチ(面外空間周波数)のうちの少なくとも1つにおける自己相似となる階層的微細構造が、表面エネルギー力と協働して相互作用を強化してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、全体的な表面エネルギー勾配を複合的に生み出すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つの表面エネルギー勾配が「X」平面内にあり、別の表面エネルギー勾配が「Y」平面内にあり、「XY」平面が微細構造化平面を含んでもよい。さらなる考慮には、直線座標、円筒座標、及び/又は球面座標の群から選択された分布を反映する微細特徴部の配置が含まれ得る。
【0046】
他の一般的な設計指針には、空間的に一定の態様であるか空間的に変動する態様であるかにかかわらず、離散対連続の構造を用いることが含まれ得る。離散的な構造は流体捕捉型であってもよいし、流体駆動型であってもよい。しかしながら、一方が他方を誘発するために用いることができる。例えば、いくつかの実施形態では、段階的に離散的な構造は、個別の流体体積の形態で流体の流れを駆動することができる。微細構造階層の連続的に変動する正弦波プロファイルを用いてシャラマッハ波を捕捉してもよい。
【0047】
さらに、上記で概説した一般原理の直接的な組み合わせであり得る多くの微細な界面形成の機構がある。いくつかの実施形態では、液滴は毛細管入口上に配置され、毛細管の入口内に部分的に延在してもよい。毛細管内にあり得る液滴の下部は、表面エネルギーが比較的低い領域において縁部が毛細管壁と接触するメニスカスを形成してもよい。2つの隣接する表面間の表面エネルギー勾配は、メニスカスの縁部付近における液滴下部との接触を決定するように選択されてもよい。液滴の配向及び液滴のメニスカスの深さは、流体粘度、流体表面張力、毛細管サイズ及び形状、並びに上面及び毛細管入口の表面エネルギーなどの要因によって決定されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、液滴が毛細管入口上に配置され、液滴の下縁部が異なる表面エネルギーの2つの表面間の表面エネルギー勾配にさらされると、メニスカスがより凹状になってもよい。メニスカスがより凹状に変化すると、流体は表面エネルギーが比較的高い表面の上部領域付近で毛細管壁を濡らし、流体は異なる表面エネルギーの2つの表面間に確立された表面エネルギー差に起因する外力を受け得る。
【0049】
組み合わされた表面エネルギー差の力及び毛細管圧力は同じ方向に協働して流体を毛細管内に引き込み、第1の表面から離れる流体輸送を生じ得る。流体液滴が毛細管内に下方に移動すると、毛細管の上部領域における第1の表面の比較的低い表面エネルギーの性質により、下面への流体の引付けが最大になり得る。そのような補強的な固定機構は、毛細管閉塞を生じさせ得る変動する流体組成又は流体中の固体に起因する流体輸送不良の頻度を減少させるので、実際の使用に重要であり得る。いくつかの実施形態では、この表面エネルギー勾配は、界面体積の周囲又は隔離領域に微粒子状汚染物を除去し、微細構造表面の残りの表面積が意図したように動作するように適用され得る。例えば、そのような補強的な固定機構は、界面堆積の領域で赤血球を流れから隔離することによって全血から血清を除去するために使用してもよい。
【0050】
同様に、表面エネルギー勾配は、流体障壁として、又は界面体積の範囲内の複合流体のセパレータとして使用することができる。いくつかの実施形態では、流体成分、例えば水性成分を脂質から分離することによって界面体積中の流体のエントロピーを低下させるエネルギーコストは、表面エネルギー勾配に沿った表面エネルギーの低下によって相殺されてもよい。したがって、対象表面に対する微細構造化表面の変位によって水性成分及び脂質成分の再混合がもたらされ、これはエネルギー入力を必要とするため、そのような流体障壁微細構造は固定される傾向を有し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、微細構造設計における規則性が有益な特徴であることが理解されよう。しかしながら、対象表面が正確に知られていない環境又は界面流体組成が大まかに知られているだけのいくつかの実施形態では、ある程度のランダム性は、所望の結果、すなわち接着面を達成するために有益なことがある。例えば、いくつかの実施形態では、特定の高さ、ピッチ、直径、及び/又は形状を有する繰り返された微細構造を含む微細構造化表面が利用されてもよいが、これらの設計要素のいずれかが平均値であってもよい。すなわち、接着性について意図された設計機能は、平均値で満たされる特定のパラメータを微細構造表面に折り込むことによって達成されてもよい。例えば、ピッチ、高さ、幅、及び/又は形状は、関連するパラメータの平均値が得られるように周期的又はランダムに変動してもよい。特定の微視的位置においてパラメータ値がランダムに分布されたそのような装置は、広範囲の環境でロバスト性を有し得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、代表的な対象環境で見られる経験的に得られた標準偏差は、微細構造パラメータの設計された標準偏差と一致し得る。
【0053】
ランダム性は、例えば階層内及び階層間で、微細構造化表面設計全体にわたって好適に組み込んでもよい。いくつかの層、例えば第1の対象表面接触層には、所定の範囲内の変動する高さ、平均、及び高さの標準偏差の要素を組み込んでもよい。層間のランダム性においては、特定の相関を規定してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、第1の層のランダム性は、後続の層と反相関であるか正に相関するかのいずれかである。ある層におけるピッチの変動は、別の層における高さの変動と対になってもよい。同様に、微細特徴部の幾何学的形状を変動させてもよい。例えば、円筒断面設計が楕円断面の族にわたって変動してもよい。さらに、バルク状材料組成の変動は、微細構造特徴部の形状的変動と相関するか否かにかかわらず実施することができる。ランダム性はまた、連続及び離散の微細構造の観点から導入されてもよい。連続性又は離散性は、空間的態様においてそれ自体でランダムに中断されてもよく、又は多数の階層が離散性又は連続性に関してランダムに変化してもよい。要するに、ランダム性は、設計動作のロバスト性を高める目的で設計機能に冗長性を導入することができる設計の一態様である。
【0055】
理論に束縛されることを望むものではないが、微細構造化表面と対象表面との間の動力学における本開示の改良は、界面体積における流体取り扱いの改良として概ね特徴付けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、対象表面及び微細構造化表面の上面が協働して界面流体がエネルギー的に存在しにくい界面体積の境界を形成してもよい。他の実施形態では、界面流体を捕捉してもよい。
【0056】
界面活性剤の使用に関して、注目すべき界面活性剤の特徴がいくつかあり得る。微細構造化表面に存在する界面活性剤又は界面活性剤成分の溶解度は、親水性部分に対する界面活性剤の疎水性部分の量及び種類に依存すると考えられる。非イオン性界面活性剤材料の場合、この関係は親水性-親油性バランス(HLB)の観点から特徴付けられることが多く、HLB値が低いほど親油性となる。したがって、HLB値が最低の界面活性剤又は界
面活性剤成分は、非極性マトリックスにおいて可溶性が高く、透過速度も速くなり得る。湿潤剤として作用する界面活性剤は、約7~9の範囲のHLB値を含み得る。結果として、溶解度の高い(低HLBの)界面活性剤又は界面活性剤成分は、表面の濡れ性を高めるのにそれほど効果的ではない場合がある。
【0057】
拡散は、分子サイズ、分子形状、及び粘度を含む因子によって影響され得る。例えば、所与のHLB(類似の溶解度)において、バルク状の親水性物質を有する界面活性剤(例えば、ソルビタンエステル)は、より線状の親水性物質を有する界面活性剤(例えば、脂肪アルコールエトキシレート)よりもゆっくりと拡散し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示における界面活性剤は、表面堆積物及び下にあるポリマー構造が、任意の設計された表面エネルギー勾配が飽和するか任意のWenzel-Cassie界面構造が破壊されるほど濡れ性を有さないものであってもよい。特定の濃度で溶解した界面活性剤はWenzel-Cassie界面形成を補強し得るが、濃度が高いとWenzel-Cassie界面形成が分散され得ることを理解されたい。本開示の好適な界面活性剤は、水溶液中の表面張力が低表面エネルギーの表面の臨界表面張力とバルク状材料との間となるものであってもよい。
【0059】
多くの場合、界面活性剤は、表面エネルギー勾配を変化させることなく平均表面エネルギーを変換させ得る。勾配は、異なる寸法特性の表面に界面活性剤が与える影響が異なるために生じる。
【0060】
許容可能な界面活性剤の例には、限定されないが、デラウェア州ウィルミントンのICI Surfactantsから入手可能なAtmer、Tergitol、Neodol、Ameroxol及びPegosperseが含まれ得る。本開示による特に好ましい界面活性剤材料は、実質的に飽和した疎水性物質を含んでもよい。
【0061】
以下は、微細構造化表面の設計を対象とした、本明細書に開示された原理の特定の実施形態である。これらの実施形態は、網羅的であることを意図しておらず、むしろ本開示の実施における一例を導くために開示された原理及び実施形態の例示である。
【0062】
化学組成
本明細書に記載の化学的な実施形態では、最大膨潤までの時間及び最大膨潤の大きさに関していくつかを制御してもよい。これは、能力/透過性バランスとしても知られ得る。特定の実施形態では、膨潤速度を制御する方法は、半透性コーティング、溶解性コーティング、並びに厚さ及び濃度を変動させて下にあるポリマーの液体吸収に対する制限の速度及び持続時間を設計することを含んでもよい。
【0063】
膨潤の大きさは、架橋密度、ポリマー骨格を含む疎水性及び親水性ブロックの相対的割合、結晶相及び非晶質相の位置、並びに他の材料の添加によって制御され得る。例えば、フロック、繊維、及び微粒子は、膨潤を低減する傾向を有し得る。一方、膨潤速度を増加させるために浸透効果を用いてもよい。例えば、イオン性塩の添加により、膨潤の速度及び大きさの両方が増加し得る。
【0064】
膨潤勾配は、硬化ポリマー内に異方的に分布し得る抑制固体を硬化前ポリマーと混合することによって同様に制御され得る。例えば、低比重の繊維又は微粒子は、重力から離れる方向の表面に移動する傾向を有し得る。表面張力は、添加剤を表面全体に集中させるのに役立ち得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、異なる組成のポリマーを堆積させて膨潤勾配を生み出すため
の柔軟性が印刷プロセスによってもたらされてもよい。いくつかの実施形態では、形状により膨潤勾配が生み出され得る。例えば、初期形状が球状の場合、膨潤は最も均一になり得る。より角張った構造は直線部よりも縁部でより大きく膨潤し得る。ポリマーは、硬化した表面形状に抑制された球状構成に膨潤し得る。
【0066】
例えば、特定の実施形態では、柱のノッチによって、柱が膨潤してノッチのある側へ屈曲してもよい。さらに、一方の側が他方の側よりも高い隆起部が、より低い側の方向に膨潤してもよい。一方の側を他方の側に対して抑制するために非弾性繊維が別個に適用されてもよい。
【0067】
本開示の様々な実施形態において使用され得る好ましいポリマーは、膨潤時に形状を保持し、溶液中で溶解又は分解しないポリマーである。特に対象となる2つの大まかな区分はアクリレート及びウレタンであるが、他の実施形態では他の区分を使用してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示に使用するポリマーは、(a)グルコシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、(b)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(c)アルキル(メタ)アクリレート及び(d)多官能性モノマーを重合することによって得てもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、グルコシルオキシアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、保護基を有しない糖残基を含有してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、糖残基の例には1~10の糖単位を有するものが含まれてもよく、いくつかの実施形態では1~5の糖単位が含まれてもよく、単糖類及びオリゴ糖類に由来する。単糖類の例には、グルコース、マンノース、ガラクトース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミンなどのヘキソースや、アラビノース、キシロース、リボースなどのペントースが含まれてもよい。オリゴ糖の例には、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソホロースなどの二糖類や、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース、並びに日本薬局方に収載されているデキストリン、アクロデキストリン、ブリティッシュガム、セロデキストリンなどのデンプン、セルロース、キチン、キトサン、及びマンナンの加水分解物が含まれてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、モノマー(a)の例には、2-グルコシルオキシエチルメタクリレート、2-マンノシルオキシエチルメタクリレート及び2-ガラクトシルオキシエチルメタクリレートが含まれる。
【0072】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b)の例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが含まれる。これらの中でも、生体組織に対する安全性の観点から、いくつかの実施形態では2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい場合がある。
【0073】
アルキル(メタ)アクリレート(c)の具体例には、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、グルコシルオキシアルキル(メタ)アクリレート(a)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b)及びアルキル(メタ)アクリレートは、0.1~10:10~40:5~20、より好ましくは0.1~10:19:10、さらにより好ましくは0.1~2:19:10のモル比で混合されてもよい。混合は、型構造物上に配置する直前に行われる。
【0075】
多官能性モノマー(d)としては、1分子あたり少なくとも2つの官能基を有するものであれば、任意のモノマーを使用することができる。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートなどの1分子あたり少なくとも2つのビニル基を有するモノマーや、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、トリアリルイソシアヌレート、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの1分子あたり少なくとも2つのアリル基を有するモノマー、並びにN,N’-メチレンビスアクリルアミドが含まれてもよい。これらの中でも、生体適合性の観点から、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)及びトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)が好ましい。
【0076】
多官能性モノマー(d)と、グルコシルオキシアルキル(メタ)アクリレート(a)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b)及びアルキル(メタ)アクリレート(c)の合計とのモル比は、1:100~1:3200の範囲内であってもよい。いくつかの実施形態では、その範囲には、1:150、1:200、1:300、1:400、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1500、1:2000、1:2500、及び1:3000が含まれてもよい。特定の実施形態では、1:200~1:800の範囲が好ましい場合がある。多官能性モノマーのモル比が小さいほど、膨潤率は高くなるが、機械的強度は低くなる。したがって、上記範囲内のモル比が好ましい場合がある。
【0077】
本開示の使用に適したポリマーはまた、上記モノマー(a)~(d)以外の1つ以上のモノマーをさらに重合することによって得られてもよい。そのようなさらなるモノマーの具体例には、カルボキシル含有モノマー、アミド含有モノマー及びアミノ含有モノマーが含まれる。カルボキシル含有モノマーの例には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸が含まれ、アミド含有モノマーの例には、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、及びビニルピロリドンが含まれ、アミノ含有モノマーの例には、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ(メタ)アクリレートが含まれる。さらなる例には、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン及びブタジエンが含まれる。
【0078】
いくつかの実施形態では、モノマーや反応溶媒などに応じて適切な重合開始剤を選択することができる。水溶性モノマー又は反応溶媒として水含有溶媒を用いる場合、重合開始剤としては、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムなどの過硫酸塩を用いてもよい。疎水性モノマー又は反応溶媒として有機溶媒を用いる場合、重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ジ-ターシャリ-ブチルパーオキサイド、アセチルパーオキサイドなどの過酸化物や、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)などのアゾ化合物を用いてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、重合開始剤は、モノマーの合計に対し0.01~10wt.%の量で加えられてもよい。
【0080】
従来のラジカル重合開始剤を用いる場合、例えば、25℃~100℃で2時間~72時間重合反応を行ってもよい。重合開始剤を分解して重合度を高めるために、所定時間重合反応を行った後、高温でさらに重合反応を進行させてもよい。
【0081】
ここでポリウレタン系膨潤性ポリマーに目を向けると、いくつかの実施形態では、この膨潤性ポリマーに使用される骨格ポリマーは両親媒性であってもよい。しかしながら、骨格ポリマーは、カルボキシル基含有ポリウレタン(PU)(以下、PU系ポリマーと呼ぶ)、エポキシ樹脂(以下、エポキシ系ポリマーと呼ぶ)、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、及びエポキシ基を有する変性アクリレート共重合体樹脂(以下、アクリレート系共重合体と呼ぶ)の群の1つ又は複数から選択されてもよい。これらのポリマーは、様々な染料を支持するためのポリマー部分となり得る。いくつかの実施形態では、骨格は、非水性担体担持ポリマー分散液を安定化するための内部イオン性カルボキシル基を含有してもよい。
【0082】
脂肪族エポキシ樹脂は、典型的には、脂肪族アルコール又はポリオールのグリシジル化によって形成される。得られる樹脂は、単官能性(例えば、ドデカノールグリシジルエーテル)、二官能性(ブタンジオールジグリシジルエーテル)、又は官能性がより高いもの(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル)であり得る。これらの樹脂は、室温で低い粘度(10~200mPa)を示すことがあり、反応性希釈剤と呼ばれることが多い。それらは単独で使用されることは稀であり、むしろ他のエポキシ樹脂の粘度を変える(低下させる)ために使用される。このことから、「変性エポキシ樹脂」という用語は、粘度低下反応性希釈剤を含有するものを指すようになっている。関連のある区分は脂環式エポキシ樹脂であり、分子中に1つ以上の脂環式環を含有する(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)。この区分も室温で低い粘度を示すが、脂肪族エポキシ希釈剤よりも耐熱性が著しく高い。しかしながら、他の区分のエポキシ樹脂と比較して反応性はかなり低く、好適な促進剤を使用した高温硬化が通常必要である。
【0083】
NCO末端PUプレポリマーを有するPU系ポリマーは、ポリオールと1つ以上のジイソシアネートとの反応から得てもよい。
【0084】
エポキシ系ポリマーは、出発材料としてEEW(エポキシ当量)が780~850の市販のエポキシ樹脂(例えば、台湾のNan Ya Plastics Corporationから入手可能な商品名NPES-904の樹脂)から得てもよい。その2次的なヒドロキシル基は、1つ以上のジイソシアネートと反応させてもよい。
【0085】
本開示の実施形態では、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートとも呼ばれる)、4,4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン、フェニレン-1,4-ジイソシアネート、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-トルエン4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン4.4’-ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート二量体、並びにジアニシジンジイソシアネートであるがこれらに限定されないジイソシアネートが含まれてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、好ましいジイソシアネートにはC6-12アルキレンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート、又は1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートとも呼ばれる)が含まれてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、好ましいジアミンには、C6-12アルキレンジアミン、C5-6シクロアルキレンジアミン、トルエン-2,4-ジアミン又は1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,2-エチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、トルエン-2,4-ジアミン、又はイソホロンジアミンとも呼ばれる1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5トリメチルシクロヘキサンが含まれてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、好ましいジオールは、C6-12アルキレンジオール、トルエン-2,4-ジオール、又は1-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-3,5,5トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジオールとも呼ばれる)である。
【0089】
上述の弾性ポリマーは、表面が内部よりも膨潤しにくいようにする膜形成の方法で硬化させてもよい。弾性ポリマーは、60℃未満で少なくとも1つのガラス転移温度を有するポリマーであってもよく、好ましくは、弾性ポリマーがブロック共重合体であり、共重合体の少なくとも1セグメント又は1ブロックが室温より低いガラス転移を有し(すなわち、25℃未満、これはソフトセグメント又はソフトブロックであると言われる)、共重合体の少なくとも1セグメント又は1ブロックが室温より高いガラス転移を有する(これはハードセグメント又はハードブロックであると言われる)。
【0090】
ソフトブロックとハードブロックの比を変動させることは、膨潤能力及び透過性に影響を及ぼし得る。
【実施例】
【0091】
以下に提供される例は、柱などの突起部の二次元グリッド、及び空間次元において装置表面上に延在する隆起部の一次元グリッドとして理解され得る。ほとんどの例において、膨潤性微細構造の膨潤後の形状は、膨潤前の形状に似ている。例えば、膨潤前の柱はその直径よりも高さが長く、膨潤後の構造も直径よりも高さが長いが、高さ寸法において真っ直ぐではなく湾曲していてもよい。この特徴は、ここでは構造化膨潤と呼ばれ、型上の架橋部、外面、又は膨潤性ポリマーと混合された非膨潤性要素のいずれかが微細構造の膨潤前形状を維持するものである。説明される微細構造化表面は、連続的なシート又は繊維の織物に適用され得ることも理解されるべきである。例えば、基体がメッシュである場合、メッシュを覆う架橋前のポリマーにパターンが適用されてもよく、ポリマーは型と接触している間に架橋される。あるいは、膨潤性の微細構造表面を織物に適用することができる。
【0092】
実施例1
図2を参照すると、膨張を介した接着装置200は非膨潤性基体202を含んでもよく、非膨潤性基体202の上に膨潤性微細構造204が印刷又はキャスティングされてもよい。印刷技術は当技術分野において周知である。キャスティング技術は、基体の片側を硬化性膨潤性ポリマーでコーティングし、次いで硬化性ポリマーを型に押し当てて基体と型との間に硬化性ポリマーを挟むことによって基体202と微細構造204とを形成することを含み得る。型は、硬化性膨潤性ポリマーから微細構造204を生成するように製造されてもよい。微細構造204は、10ミクロン~1000ミクロン、好ましくは50ミク
ロン~200ミクロンの円筒柱で、ピッチは10ミクロン~100ミクロン、直径は10ミクロン~50ミクロンであってもよい。エッジ効果により、柱の中心が外面よりも密に架橋されてもよい。
【0093】
微細構造が水又は他の何らかの液体にさらされると、外面が内部よりも大きく膨潤し、これにより直柱構造が屈曲してフック206又はループ208の形状になってもよい。
【0094】
実施例2
図3を参照すると、膨張を介した接着装置300は、基体302と第1の膨潤性微細特徴部304,310とを含み、第1の膨潤性微細特徴部304,310の上に第2の非膨潤性微細特徴部306が階層的に配置されてもよい。非膨潤性微細特徴部306の上に第3の非膨潤性微細特徴部308が配置されてもよい。第1の膨潤性微細特徴部304,310が膨潤するとき、破線で示すような膨潤形状312を得てもよい。隣接する微細構造の第2の微細特徴部306は、第1の微細特徴部304,310の膨潤を介して交差位置314で互いに向かって変位されてもよい。隣接する2つの第2の微細特徴部306が合わさるとき、装置300付近に配置された表面を把持することができる挟み運動が生じてもよい。
【0095】
実施例3
図4を参照すると、膨張を介した接着装置400は、基体402と非膨潤性の第1の微細特徴部404とを含んでもよい。第2の膨潤性微細特徴部406は、第1の微細特徴部404に隣接して基体402の周りに配置されてもよい。第1の微細特徴部404及び第2の微細特徴部406の間隔は、対象層をドメイン領域408内に引き込む親水性表面エネルギーを生成してもよい。対象基体が繊維状である場合、繊維はドメイン領域408を満たしてもよい。対象表面の表面上の流体は、第2の微細特徴部406を膨張させてもよい。第2の微細特徴部406の重合ポリマーの表面410は、高度に架橋された表皮を含んでもよい。この表皮表面410は、多くの架橋ポリマーに共通の効果をもたらしてもよい。表皮表面410の膨張速度及び能力は、内部412より小さくてもよい。これにより、第2の微細特徴部406を破線414で示すように屈曲させてもよい。屈曲方向はランダムであってもよいし、414で示すように内面416を平らにし、外面418を丸くすることによって偏らせてもよい。次いで、領域408に存在する繊維が破線414によって示される閉じたループ形状に捕捉されてもよい。
【0096】
実施例4
図5を参照すると、膨張を介した接着装置500は、基体502と、非膨潤性の第1の微細特徴部504と、膨潤性要素506と、第2の非膨潤性微細特徴部508とを含んでもよい。破線の形状510は膨潤した構成を示し、要素506が膨潤形状において球に近似している。膨潤形状510は、領域512において対象表面を把持することができる挟み作用を生じさせていることが分かる。
【0097】
実施例5
図6を参照すると、膨張を介した接着装置600は、液体透過性弾性基体602と膨潤性要素604とを備える。第1の非膨潤性微細特徴部606は、基体602の周りに配置されてもよい。対象表面からの液体が膨潤を引き起こすと、膨潤性要素604が膨潤されてもよい。膨潤性要素604が膨潤すると、非膨潤性微細特徴部606は矢印610が示すように隣接する微細特徴部に向けられ、挟み運動が生じてもよい。第1の微細特徴部606は、連続的な対象表面を順応的に把持してもよいし、領域612において繊維質の対象表面を捕捉してもよい。なお、微細特徴部606は、二次元で別個の四角形又は円形の柱の形態であるか、図示された次元で別個の隆起部であり得る。
【0098】
実施例6
図7を参照すると、膨張を介した接着装置700は、基体702と膨潤性のコイル状微細特徴部704とを含んでもよい。微細特徴部704は、位置706において非膨潤構成で示され、位置708において膨潤構成で示されている。微細特徴部704が膨潤すると長さが増加してもよく、それにより、対象表面に相互貫通してもよいし、対象表面の孔又は繊維に絡み合う傾向を有し得る旋回及び伸長運動が生じてもよい。
【0099】
実施例7
図8を参照すると、膨張を介した接着装置800は、基体802と、第1の非膨潤性の微細特徴部804と、第2の非膨潤性微細特徴部806と、第1の非膨潤性微細特徴部804の周りに配置された膨潤性微細特徴部810とを含んでもよい。非微細特徴部810が破線808で示す第2の構成に膨潤するとき、微細構造は微細特徴部806と協働して閉じたループを形成してもよい。
【0100】
実施例8
図9を参照すると、膨張を介した接着装置900は、基体902と、膨潤性の第1の微細特徴部904と、第1の微細特徴部の周りに配置された第2の非膨潤性微細特徴部906とを含んでもよい。第1の微細特徴部904が膨潤すると、膨潤は、非膨潤性の非弾性繊維908によって中央で抑制されてもよい。抑制された膨潤により、微細特徴部904の外縁部910が矢印912の方向で合わさる。この構成は捕捉領域914を生成してもよい。一般に、第2の微細構造906は第1の微細構造904に対して疎水性であってもよく、又はその逆であってもよい。微細構造904と906との間の表面エネルギーのこの相違によって、湿った対象表面との間にWenzel-Cassie界面が生成されてもよい。微細構造906が微細構造904に対して親水性であるか疎水性であるかに応じて、親水性表面又は疎水性表面が捕捉領域914内に引き込まれる。Wenzel-Cassie効果は、対象表面との局在化するが再配置可能な結合をもたらす高い剪断力として作用する。微細構造904の挟み作用により、対象表面へのより恒久的な付着が生じ得る。縁部910は、方向912に垂直に膨潤できるようにノッチ又はスロット付きであってもよい。
【国際調査報告】