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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】X線画像化システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/30 20060101AFI20230606BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20230606BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230606BHJP
   H05G 1/52 20060101ALI20230606BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
H01J35/30
H01J35/08 F
H01J35/08 B
H01J35/08 Z
G01N23/04
H05G1/52 B
A61B6/00 300C
A61B6/00 300S
A61B6/00 333
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022567352
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2021061229
(87)【国際公開番号】W WO2021224097
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】20173258.3
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317016811
【氏名又は名称】エクシルム・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン、ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ホールステッド、ユリウス
(72)【発明者】
【氏名】トゥオヒマー、トミ
(72)【発明者】
【氏名】ルンドストレーム、ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン、ダニエル
【テーマコード(参考)】
2G001
4C092
4C093
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA13
4C092AA01
4C092AC03
4C092AC08
4C092CE07
4C093AA01
4C093AA07
4C093CA39
4C093DA02
4C093EA07
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
(57)【要約】
X線画像化システムが開示され、ターゲットと、ターゲットと相互作用してX線放射を発生する電子ビームを提供するように構成された電子ビーム源と、電子ビームをターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けるように構成された電子光学系と、ターゲット上の第1及び第2の位置で発生されたX線放射を受けるように構成されたX線検出器アレイと、発生されたX線放射に曝露される試料を受けるための試料位置領域と、試料位置領域は、第1の位置で発生されたX線放射は第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、X線検出器アレイに結合された処理ユニットとを備え、処理ユニットは、第1の位置及び第2の位置から生じるX線放射に基づいて、試料位置領域に位置付けられた試料の画像を作成するように構成される。電子ビームは、第1及び第2の位置の連続的な曝露間の時間が10μs未満であるように位置間で移動され、それによって熱誘発機械的応力を低減する。対応する方法も開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像化システムであって、
ターゲットと、
前記ターゲットと相互作用してX線放射を発生する電子ビームを提供するように構成された電子ビーム源と、
前記電子ビームを前記ターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けるように構成された電子光学系と、
前記ターゲット上の前記第1及び第2の位置で発生されたX線放射を受けるように構成されたX線検出器アレイと、
発生されたX線放射に曝露される試料を受けるための試料位置領域と、ここで、前記試料位置領域は、前記第1の位置で発生されたX線放射が前記第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、
前記X線検出器アレイに結合された処理ユニットとを備え、前記処理ユニットは、前記第1の位置及び前記第2の位置から生じる前記X線放射に基づいて、前記試料位置領域に位置付けられた試料の画像を作成するように構成され、
前記X線検出器アレイ及び前記電子ビーム源は、任意の一瞬においてX線検出器によって受け取られた前記X線放射が前記ターゲット上の前記第1の位置から生じたのか又は前記第2の位置から生じたのかを決定することができるように構成され、
前記第1の位置及び前記第2の位置における連続的な曝露間の時間は、10μs未満である、X線画像化システム。
【請求項2】
前記第1の位置及び前記第2の位置の連続的な曝露間の時間は、5μs未満、例えば1μs未満である、請求項1に記載のX線画像化システム。
【請求項3】
前記電子光学系は、任意の1つの位置の連続曝露の期間が時間制限よりも短い持続時間を有するように、前記ターゲット上の前記少なくとも第1の位置及び第2の位置に前記電子ビームを交互に向けるように構成される、請求項1又は2に記載のX線画像化システム。
【請求項4】
前記ターゲットは固体反射ターゲットであり、前記時間制限は、
【数1】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、Sは、
【数2】
によって与えられ、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポット径、hは前記ターゲットへの電子の侵入深さである、請求項3に記載のX線画像化システム。
【請求項5】
前記ターゲットは透過ターゲットであり、前記時間制限は、
【数3】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズである、請求項3に記載のX線画像化システム。
【請求項6】
前記ターゲットは、少なくとも1つの液体ジェットを含み、前記時間制限は、
【数4】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、δは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動方向に沿った前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズであり、vjetは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動速度である、請求項3に記載のX線画像化システム。
【請求項7】
前記電子ビーム源は、前記第1の位置及び前記第2の位置の外側の前記ターゲットの領域からX線放射が発生されないように、前記ターゲット上の前記第1の位置と前記第2の位置との間の切り替えの間に前記電子ビームをブランクするように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のX線画像化システム。
【請求項8】
前記ターゲットは、前記電子ビームがそれぞれの位置に向けられたときに、異なるエネルギースペクトルを有するX線放射を発生する前記第1の位置及び前記第2の位置において異なる材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のX線画像化システム。
【請求項9】
X線画像化のための方法であって、
ターゲット上に電子ビームを向けることによってX線放射を発生することと、ここで、前記電子ビームは、前記ターゲット上の少なくとも第1の位置及び第2の位置に交互に向けられ、それによって前記第1の位置及び前記第2の位置でX線放射を交互に発生し、
前記発生されたX線放射を試料位置領域に向けることと、ここで、前記試料位置領域は、前記第1の位置で発生されたX線放射が前記第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、
X線検出器アレイを使用して、前記試料位置領域を通過したX線放射を検出することと、
任意の一瞬において前記X線検出器アレイによって受け取られた前記X線放射が前記第1の位置から生じたのか又は前記第2の位置から生じたのかを決定するように、前記電子ビームの方向を、前記試料位置領域を通過したX線放射の検出と相関させて、前記第1の位置及び前記第2の位置から生じた前記X線放射に基づいて画像を作成することと、を含み、
前記少なくとも第1及び第2の位置の連続的な曝露の間に経過した時間は、10μs未満である、方法。
【請求項10】
前記少なくとも第1及び第2の位置の連続的な曝露間の時間が、5μs未満、例えば1μs未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
任意の1つの位置の連続曝露の期間が、時間制限よりも短い持続時間を有するように、前記ターゲット上の前記少なくとも第1の位置及び第2の位置に前記電子ビームは交互に向けられる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ターゲットは固体反射ターゲットであり、前記時間制限は、
【数5】
によって与えられる特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、Sは、
【数6】
によって与えられ、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポット径、hは前記ターゲットへの電子の侵入深さである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲットは透過ターゲットであり、前記時間制限は、
【数7】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲットは、少なくとも1つの液体ジェットを含み、前記時間制限は、
【数8】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、δは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動方向に沿った前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズであり、vjetは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動速度である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の位置及び前記第2の位置の外側の前記ターゲットの領域からX線放射が発生されないように、前記ターゲット上の前記第1の位置と前記第2の位置との間の切り替えの間に前記電子ビームをブランクすることをさらに含む、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記電子ビームは予め定められたパターンに従って前記ターゲット上に向けられ、前記画像は前記予め定められたパターンに基づいて作成される、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲットは、前記電子ビームがそれぞれの位置に向けられたときに、異なるスペクトルを有するX線放射を発生させる前記第1及び第2の位置において異なる材料を含む、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームがターゲットと相互作用してX線放射を発生させるX線画像化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビームとターゲットとの間の相互作用によってX線放射が発生する複数のスポットを利用する従来技術のX線システムが、米国特許第5,835,561号に開示されている。このシステムでは、各スポットは複数のコリメータ要素のうちの1つに関係付けられている。コリメータ要素は、X線管の放射面の前に配置され、各コリメータ要素は、検出器アレイの中心に向けられたその開口軸を有し、検出器アレイがちょうどカバーされるような発散を提供する。したがって、各コリメータ開口から1つずつの複数のペンシルビームを発生することができ、各ペンシルビームは、画像化される物体の異なる部分を通過する。電子ビームがターゲットを横切って走査されるとき、いかなる瞬間でも、物体を通過して検出器アレイに至る単一のX線ペンシルビームのみが存在する。(X線放射が発生されるスポットの数に対応する)コリメータ開口の数は、典型的には、再構成画像内の画素の数に対応する。この従来技術のシステムの目的は、さらに以前のシステムよりも低い放射線曝露で心臓病患者のリアルタイムX線画像化を提供することである。このようなシステムは、X線曝露を低く保つことが望まれる状況、例えば生体を画像化するときに有用であり得るが、高いX線パワーが求められる状況ではあまり有利ではない。
【0003】
「Scanning-beam digital X-ray(SBDX)system for cardiac angiography」(Proc. SPIE 3659,Medical Imaging 1999;Physics of Medical Imaging,28 May 1999)において、著者Solomonらは、心臓血管造影のための高度な走査ビームデジタルX線システムを開示している。電子ビームは、集束線源コリメータの背後に位置付けられた透過ターゲットを横切って走査される。コリメータは、その軸が検出器アレイの中心と位置合わせされた開口の格子であり、コリメータ開口を通るX線ビームの発散は、検出器のサイズに一致する。
【0004】
「Motionless electromagnetic phase stepping versus mechanical phase stepping in x-ray phase-contrast imaging with a compact source」(Phys. Med. Biol. 60(2015),p.3031-3043)において、著者Harmonらは、X線位相コントラスト画像化を開示し、磁場の方向に応じて、格子線に対して垂直又は平行な方向にスポットを移動させるために、X線焦点スポットが磁場によってシフトされることができることに言及している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、電子ビームがターゲット上の異なる位置に交互に向けられ、発生されたX線放射を検出するための検出器アレイが、特定の時間フレームの間に検出される光子がターゲット上のそれぞれの特定の位置に帰することができるように、時間分解光子計数を実行するように構成される場合に、改善されたX線画像化システムを得ることができるという認識に基づく。それによって、本発明の実施形態は、ターゲットの局所的な熱負荷を増加させることなく、又はスポットサイズを増加させることなく、より高い光子フラックスを提供することができる。
【0006】
電子ビームが、熱平衡が確立されないように十分に短い持続時間にわたって各それぞれの位置に向けられることを確実にすることによって、ターゲット上の任意の特定の位置に連続的に堆積されることができるものよりも高いパワーが印加されてもよい。言い換えると、ターゲット上の任意の1つの位置の連続曝露の期間は、時間制限よりも短い持続時間を有するべきである。
【0007】
電子ビームが最後にターゲット上の特定の位置に向けられてからその位置が著しく冷却されないようにするために、十分に短い時間内に電子ビームがその位置に戻る、又は少なくともほぼ戻ることをさらに確実にすることによって、ターゲットの過剰な熱サイクルが回避され、熱誘発機械的応力に関連する問題が回避される。どの期間内に電子ビームが同じ位置に戻るべきか(すなわち、十分に短い時間と考えられるもの)を決定するために、各状況の特徴的な時間スケールを決定することができる。言い換えれば、電子ビームがターゲット上の第1の位置及び第2の位置のそれぞれにそれぞれ向けられる連続する期間の間に経過する時間は、時間制限よりも短くなるべきである。
【0008】
あるいは、異なる位置の間で同じ電子ビームを交互に移動させるのではなく、交互にオン及びオフに切り替えられる2つの別個の電子ビームを使用することができる。
【0009】
ターゲットは、固体ターゲット又は液体ターゲットとすることができる。ターゲットは、透過ターゲット又は反射ターゲットとして実装することができる。ターゲットが液体ターゲットとして実装される実施形態では、ターゲットは好ましくは1つ以上の液体ジェットである。単一の液体ジェットがターゲットとして使用される場合、電子ビームが交互に移動される異なる位置は、その液体ジェット上にある。単一の液体ジェットは、電子ビームが液体ジェットの移動方向に対して実質的に垂直な方向に沿って異なる位置間で移動される透過モードで使用されるフラットジェットとして実装することができる。2つ以上の液体ジェットがターゲットとして使用される場合、電子ビームが交互に移動される異なる位置は、異なる液体ジェット上とすることができる。固体反射ターゲットは、回転ターゲット、すなわち回転アノードとして実装されてもよく、そのような場合、電子ビームは、ターゲットの回転方向に対して実質的に垂直な方向に沿って異なる位置間で移動されてもよい。
【0010】
X線放射が時間分解方式で検出されるとき、検出器によって捕捉された各画像は、ターゲット上の異なる場所のそれぞれ1つに関係付けられることができる。次いで、単一のX線スポットから得られる解像度及び鮮明度を維持しながら、異なる位置に関係する画像を結合して、異なる位置からのX線放射が重なるエリアの単一の画像にすることができる。したがって、物体の同じ部分の少なくとも第1及び第2の画像がキャプチャされ、第1の画像は、ターゲット上の第1の位置からのX線放射を使用してキャプチャされ、第2の画像は、ターゲット上の第2の位置からのX線放射を使用してキャプチャされる。画像は、その後、後処理において物体の部分の単一の画像に結合される。
【0011】
固体ターゲットを使用する本発明の実施形態では、電子ビームは、ターゲット内の熱定常状態をエミュレートするように、十分に高い速度(短い期間又は連続する曝露間の時間)でターゲット上の異なる位置の間で交互にされることが好ましい。これにより、熱サイクルに起因する機械的応力が低減され、ひいてはターゲットの耐用寿命を延ばすことにつながるかもしれない。言い換えれば、電子ビームは、デューティサイクル中の温度変化を無視できるような高速で、異なる位置間で交互にされる。したがって、本発明の実施形態は、電子ビームの、したがって発生されるX線放射の出力の増加を可能にし、同時に、ターゲット材料の温度サイクルによる熱応力に関係する潜在的な問題が軽減される。
【0012】
電子ビームが2つの別個の位置の間で交互にする実施形態では、デューティサイクルは、好都合には、両方の位置に対して50%に設定することができ、すなわち、電子ビームは、(2つの位置の間で電子ビームを移動させるのに必要な時間を無視して)時間の半分だけそれぞれの位置に留まる。滞留時間を短くすることによって、熱サイクルの量を制限することができる。しかし、電子ビームが2つより多い位置の間で交互になる実施形態では、2つの連続する曝露間の時間は、所定の滞留時間に対してより長くなる。原理的には、位置の数は任意に大きくすることができ、その場合、各位置はほとんど曝露されない。しかしながら、実際には、利用可能な位置の数は制限される。制限は、検出器容量(例えば、各画素がいくつのタイムスタンプされた値を保存することができるか)、電源制限、又はターゲットサイズに関連してもよい。位置の数を制限する理由に関係なく、温度サイクルに起因してターゲットに誘起される熱応力を制限することが有利である。多くて10μs、例えば5μs未満、又は好ましくは1μs未満がそれぞれの位置における連続する曝露間に経過することが好ましい。曝露間の時間を長くすることは、過剰な熱サイクルによってターゲットを損傷するリスクを生じさせるか、又はこのリスクを軽減するために印加パワーの制限を強いることになる。
【0013】
異なる位置の間で電子ビームを移動させるための技術は、例えば静電偏向の使用として、当該技術分野において一般に知られている。電子ビームは、既存の技術を使用して非常に高速で異なる位置の間で移動させることができる。したがって、電子ビームをターゲット上の異なる位置の間でどれだけ速く交互にされることができるかについての上限は、電子ビームを移動させるための利用可能な技術によって決定されるのではなく、むしろ検出器の時間分解能によって決定される。というのは、各それぞれの位置から発生された光子は、後処理再構成の間に、キャプチャされた画像を合成画像に組み合わせることを可能にするために、一緒に結合されるべきであるからである。
【0014】
以下の詳細な説明では、ターゲットにおける熱の発生及び放散を記述する特徴的な時間スケールの式が導出される。好ましくは、電子ビームは、そのような特徴的な時間スケールの10倍未満、より好ましくはそのような特徴的な時間スケールの5倍未満の期間でターゲット上の位置間を移動する。
【0015】
代替実施形態では、ターゲットは、異なる位置に異なる材料を含むことができ、したがって、1回の実行中に異なるX線スペクトルを用いて試料を画像化する機会を提供する。パワーは、高パワーで同時に獲得されたわずかに異なる角度のみからの異なるスペクトルで撮影された少なくとも2つの画像である。時間分解検出は、各検出イベントをそれぞれのX線スペクトルに関係付けるために使用することができ、したがって、検出器におけるエネルギー区別は必要とされない。これを達成するために複数の別個のX線源及び検出器を有することと比較して、これは有利であるかもしれない。この実施形態の典型的な用途は、骨ミネラル密度測定である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
図1図1は、本発明の1つの実施形態にしたがう典型的なセットアップを図示する。
図2図2は、実施形態にしたがうX線画像化システムを概略的に示す。
図3図3は、本発明にしたがう方法を概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
投影放射線撮影では、物体を通過し、物体によって様々な程度に吸収されたX線放射を捕捉することによって画像が作成される。図1は、本発明の原理を図示するセットアップを概略的に示す。電子ビーム(図1には図示せず)がターゲット110に入射してX線放射を発生させ、試料位置領域に位置付けられた試料120を通過した後、X線放射はX線検出器アレイ130を使用して検出される。電子ビームがターゲットと相互作用してX線放射を生成する領域は、X線スポットと呼ぶことができ、このスポットのサイズは、X線源のスポットサイズと呼ぶことができる。X線検出器アレイによって捕捉された画像は、係数Mによって幾何学的に拡大される
【数1】
ここで、SDDは線源-検出器間距離であり、SODは線源-物体間距離である。捕捉された画像において最大の鮮明度を達成するために、X線源のスポットサイズは、可能な限り小さくあるべきである。任意の有限サイズのX線源は、次式によって与えられる画像の不鮮明さをもたらす。
【数2】
ここで、dは線源サイズ、例えばX線スポットの直径である。
【0018】
十分なコントラストで短い曝露時間を達成するために、全X線フラックスは十分に高くなければならない。X線フラックスは、ターゲットに衝突する電子ビームのパワーを増加させることによって増加させることができる。しかしながら、電子ビームスポットのサイズを維持しながら電子ビームパワーを増加させることは、ターゲットに送達されるパワー密度を増加させる。パワー密度が高くなりすぎる場合、ターゲットに永久的な損傷を引き起こす可能性がある。したがって、より多くの電子ビームパワーをターゲットに印加し、それによって総X線フラックスを増加させるために、従来技術では、線源サイズを増加させることが必要とされてきた。一方、これは、上述したように、画像の鮮鋭度の低下につながる。
【0019】
したがって、(ターゲットに送達されるピークパワーを制限するために)電子ビームパワーを増加させ、X線源スポットサイズをより大きくすることによって総光子フラックスを増加させようとするいかなる試みも、必然的に、画像鮮明度の低下をもたらす。
【0020】
これらの一見矛盾する要件を解決するために、本発明の実施形態は、ターゲット110上の少なくとも第1の位置110a及び第2の位置110bに交互に向けられる可動電子ビームを使用する。熱的な観点から、印加されたパワーがターゲットのより大きなエリアにわたって分配されるので、これは、より大きな電子スポットを使用することに対応する。しかしながら、各位置におけるスポットサイズを増大させる必要がないので、画像の鮮明さは必ずしも悪影響を受けない。
【0021】
単一のスポット(図1に示す110a又は110bのスポット)から利用可能な高解像度を維持するために、検出された光子は、それらが生じた特定の位置に関係付けられるべきであり、すなわち、検出器130及び電子ビームは、任意の一瞬においてX線検出器130によって受け取られたX線放射が第1の位置110aから生じたのか又は第2の位置110bから生じたのかを決定することができるように構成されるべきである。別個の場所110a、110bからの放射線が重なる領域に位置付けられている物体120に対して、高鮮明度の合成画像が、次いで、後処理において再構築することができる。
【0022】
任意のターゲットは、ターゲットを損傷することなく特定のエリアにどれだけのパワーを連続的に印加することができるかについて、ある程度の制限を有する。しかしながら、より高いパワーは、そのようなより高いパワーが印加される期間がターゲットの加熱及び冷却のための時間スケール上で短いという条件で、断続的に印加されることができる。ターゲット上の特定の位置に印加される平均パワーは、(一定であると仮定することができる)電子ビームパワーにデューティサイクル、すなわちターゲット上の各位置が電子ビームによって衝突される時間の割合を乗じたものである。損傷を引き起こすことなくターゲットに送達されることができる総パワーはまた、各特定の場所に印加されることができるパワーを制限してもよい。この限界は、例えばターゲットのより良好な冷却を提供することによって増大させることができる。
【0023】
一例として、直径Dの円形スポットにわたって分布するPの連続的な熱負荷を扱うことができるターゲットを考える。電子ビームが50%のデューティサイクルで2つの異なる位置の間で交互に偏向される(すなわち、時間の50%の間に電子スポットがそれぞれの位置に向けられる)と仮定し、2つの位置の間で電子ビームを移動させるために必要な時間を無視すると、電子ビームパワーは2倍に増加されることができる。このようにして、それぞれの場所に印加される平均パワーは、依然としてPであるが、ターゲットに送達される総パワーは、Pを、2Pに等しいデューティサイクルで割ったものである。これは、2つより多い位置に一般化されてもよい。電子ビームがn個の位置の間で交互にする場合、デューティサイクルは1/nであり、ターゲットに送出することができる最大総パワーはnPになる(この場合も、位置間で電子ビームを移動させるのに必要な時間を無視することができると仮定する)。ターゲットを損傷することなく最大総パワーを達成することを可能にするために、位置については、1つの位置に印加されるパワーが隣接する位置の加熱に寄与しないように、十分に離間される必要がある。さらに、スポットサイズDに対する最大許容パワーがPであると仮定すると、短時間の間に印加されるより高いパワーnPはサイズDeffの有効面積にわたって分布されると考えることができる。平均パワー密度が同じであるべきであると規定することによって、Deffは、
【数3】
としてスケーリングしなければならないことが分かる。したがって、隣接する位置間の距離は、
【数4】
よりも大きくなるように選択することができる。電子ビームが閉じた経路に沿って連続的にターゲット上を移動する場合、デューティサイクルは、電子ビームスポット直径Dを経路の長さ(L)で割ったものとして近似することができる。したがって、そのような場合にターゲットに送達される総パワーは、PL/Dとなるであろう。
【0024】
特定の位置でターゲットによって連続的に吸収されることができるものよりも高い電子ビームパワーを印加することを可能にするために、より高いパワーが印加される時間は、何らかの時間制限よりも短くあるべきである。この時間制限は、以下に説明するように、ターゲットのタイプ及び特性に依存する。
【0025】
使用されるターゲット材料及び本発明の様々な実施形態に含まれるパワーレベルに応じて、本発明のスキームは、ターゲット材料の繰り返される冷却及び加熱に起因するターゲット寿命に関する問題をもたらす可能性がある。そのような熱サイクルは、いくつかの状況では、熱誘発機械的応力を生じさせるかもしれず、これは、順に、ターゲットに恒久的損傷をもたらすかもしれない。これを回避するために、電子ビームは、ターゲット内の熱定常状態をエミュレートするように、十分に高いレート(短い期間又は連続する曝露間の時間)でターゲット上の異なる位置間で交互にすることができる。ターゲット加熱のための特徴的な時間スケールは、ターゲットの熱伝導率及び体積熱容量ならびに電子ビームスポットサイズによって与えられる。ターゲット加熱の時間スケールは、以下の特性に依存すると仮定することができる。
C 単位質量当たりのターゲット熱容量[J/(kg・K)]
ρ ターゲット密度[kg/m
κ ターゲット熱伝導率[W/m・K]
δ 電子ビームスポットサイズ[m]
h ターゲットの電子侵入深さ[m]
t 透過ターゲットの厚さ[m]
【0026】
関連する時間スケールは、電子ビームによってターゲット内に堆積されたエネルギーの量と、ターゲットによって伝導された熱パワーとを推定することによって推測することができる。電子ビームのパワーはターゲット内で到達する温度レベルに影響を与えるが、特徴的な時間スケールはターゲットの特性及び電子ビームのジオメトリにのみ依存することに留意されたい。厚さtの透過ターゲット(電子ビームが一方の側に衝突し、X線放射が反対側から収集される、すなわち「透過」する種類のターゲット)について、熱が蓄積される体積は、電子ビームスポットサイズによって規定される(必ずしも円形ではない)断面積と、ターゲット厚さによって規定される高さとを有する円筒によって近似することができる。非円形スポットについて、電子ビームスポットサイズδは、スポットサイズの幾何平均とみなすことができる。温度上昇1度当たりにターゲットに蓄積されるエネルギーの量は、数値因子を無視すると、次のように書くことができる。
Cρδt (1)
【0027】
電子ビームによって衝突される体積内の温度上昇は、円筒の包絡面のエリアAを通るこの体積から熱流を引き起こす(透過ターゲットについて、電子ビームの方向の熱伝導は無視することができる)。熱は、円筒から逃げるために、ある平均距離lを移動する必要があり、この距離は、電子ビームスポットサイズによって決定される近似値である。
温度上昇1度当たりに電子ビームによって衝突される体積から伝導されるパワーは、数値因子を無視すると、次のように書くことができる。
【数5】
【0028】
式(1)による1度の温度上昇当たりの蓄積エネルギーを、式(2)による1度の温度上昇当たりの散逸パワーで割ることによって、特徴的な時間スケールτは次のように書くことができる。
【数6】
【0029】
実際には、透過ターゲットは、その熱的及び機械的特性のために選択された基板(例えば、ダイヤモンド)上に設けられたX線発生材料(例えば、タングステン)の薄膜からなることが多い。この場合、電子ビームによって衝突される円筒の端面を通しても熱伝達がある。熱輸送に対するこの寄与は、ターゲット材料から基板材料への熱伝達と、基板材料の熱伝導率とに依存する。基板は熱伝導率を改善するように構成されているので、温度上昇1度当たりより多くのパワーが拡散され、したがって、特徴的な時間スケールは、基板なしで提供される同様のターゲットに対してよりも短くなる。したがって、上記で提供された推定値は、透過ターゲットの特徴的な時間スケールの上限と見なすことができる。
【0030】
有限の電子侵入深さhを有する反射ターゲット(電子ビームがターゲットの一方の側に衝突し、X線放射がターゲットの同じ側から収集される、すなわち「反射」する種類のターゲット)について、電子ビームからのエネルギーが蓄積される体積は、電子ビームスポットサイズによって決定される底面積と、侵入深さによって与えられる高さとを有する円筒によって近似することができる。上記の式(1)と同様に、温度上昇1度当たりのエネルギーは、したがって、任意の数値因子を無視して、以下のように書くことができる。
Cρδh (4)
【0031】
この円筒から引き出されるパワーは、円筒の包絡面及びその端面によって規定されるエリアAを通過する。熱が移動しなければならない平均距離lは、電子ビームスポットサイズと電子侵入深さの両方によって決定される。2つの長さは平行な経路として見ることができるので、平均距離の逆数は2つの長さの逆数の和である。したがって、温度上昇1度当たりの散逸パワーは、任意の数値因子を無視して、以下のように書くことができる。
【数7】
【0032】
透過ターゲットの場合に関して、特徴的な時間スケールは、式(4)による1度の温度上昇当たりの蓄積エネルギーを、式(5)による1度の温度上昇当たりの散逸パワーで割ることによって得ることができる。
【数8】
ここで、Sは、次式によって与えられる逆寸法の幾何学的因子である。
【数9】
δ>>hであると仮定することができる大きな電子スポットについて、Sはh/δで減少し、時間スケールは主に侵入深さによって決定される。
【数10】
h>>δであると仮定することができる密に集束された電子スポットについて、Sは1/hで減少し、時間スケールは、電子スポットサイズによって主に決定される。
【数11】
この後者の場合、加熱された円筒の端面を通る熱伝導は無視することができ、状況は透過ターゲットの場合と同じになり、したがって、この限界における特徴的な時間スケールは、透過ターゲットの場合と同じであり、上記の式(3)を参照されたい。
【0033】
数値例として、ターゲットがC=130J/(kg K)、ρ=19300kg/m、κ=173W/(m K)を有するタングステンから作られていると仮定し、電子スポットサイズ及び侵入深さが両方とも5μmであると仮定すると、上記の式(6)は約90nsの特徴的な時間スケールを与える。20μmのより大きな電子ビームスポット及び5μmの同じ電子侵入深さに対して、特徴的な時間スケールは約230nsになる。
【0034】
液体ジェットターゲットの場合、状況は少し異なる。電子ビームスポットにおけるターゲットの冷却に対する支配的な寄与は、ターゲット材料の流れである。このプロセスの特徴的な時間スケールは、次のように書くことができる。
【数12】
ここで、δは液体ジェットの進行方向に沿った液体ジェットターゲットでにおける電子ビームのスポットサイズであり、vjetは液体ジェットの進行速度である。
【0035】
現実的なパラメータを有する回転アノードは、この文脈では、静止した反射固体ターゲットとみなすことができる。液体ジェットに典型的に使用されるのと同じオーダー(数百m/sのオーダー)のターゲット速度を達成するためには、非現実的に大きい及び/又は高速回転するアノードが必要となる。そのような用途では、典型的には、回転方向に垂直な焦点の長い方の寸法を有する線焦点が使用される。本発明の概念の範囲内で、回転方向に垂直な方向に沿って移動される円形スポットが代わりに使用されてもよい。これはさらに、回転アノードで通常使用されるよりも有利な取り出し角を可能にしてもよい。
【0036】
ターゲットが長時間の曝露の下で耐えることができるパワーよりも高いパワーをターゲット上の位置に断続的に印加することを可能にするために、ターゲット上の任意の1つの位置の連続曝露の期間(電子ビームがその位置から移動される前)は、好ましくは、上記で導出された特徴的な時間スケールの10倍未満であり、より好ましくは、特徴的な時間スケールの5倍未満である。
【0037】
熱サイクルによる損傷からターゲットを保護するために、ターゲット上の異なる位置の間で電子ビームを切り替えるための期間が、好ましくは、上記で導出された特徴的な時間スケールの10倍未満、より好ましくは、特徴的な時間スケールの5倍未満であることも好ましい。言い換えると、電子ビームがターゲット上の位置のそれぞれに向けられる連続する期間の間に経過する時間(言い換えると、連続する曝露の間に経過する時間)は、それぞれ、特徴的な時間スケールの10倍より短いことが好ましく、5倍未満であることがより好ましい。
【0038】
上述したように、それぞれの電子ビームスポット位置に印加することができる電子パワーには限界がある。n個の位置を含む実施形態において最大許容連続パワーがPである場合、デューティサイクルが1/nであるとき、印加パワーはnPに設定されてもよい。上記の計算から、電子ビームスポットは、ターゲットの熱容量及び熱伝導率によって制限される特徴的な時間スケールτに等しい時間にわたって各それぞれの位置に留まるべきであると仮定することができ、これは、電子ビームがnτ秒後に各それぞれの位置に戻るべきであることを意味する。各曝露において、エネルギーの量τnPは、対応する温度上昇を伴って、各それぞれの場所に印加されるであろう。代わりに、滞留時間がτより短くされた場合、より少ない量のエネルギーが各曝露に印加され、したがって温度上昇はより低くなる。デューティサイクル及び印加パワーが位置の数によってのみ支配されると仮定すると、総フラックス(1秒当たりのX線光子)は滞留時間に依存しない。滞留時間を減少させることは、各位置での連続する曝露間の時間も減少することを意味する。好ましくは、同じ位置での連続する曝露間の時間は、10μs未満、例えば5μs未満、例えば1μs未満である。
【0039】
一実施形態では、特徴的な時間スケールは、上記で計算されたように90nsである。電子ビームが2つの位置の間で交互にされ、滞留時間が特徴的な時間スケールに等しく設定されると仮定すると、位置間で電子ビームを移動させるのに必要な時間を無視する場合、連続する曝露間の時間は180nsとなる。代わりに滞留時間が特徴的な時間スケールの10倍に設定される場合、連続する曝露間の時間は1.8μsとなる。
【0040】
スポットサイズが幾分大きい実施形態では、特徴的な時間スケールは230nsである。このスポットが10個の異なる位置の間で交互にされる場合、連続する曝露間の時間は2.3μsである。このスポットが100の異なる位置の間で交互にされ、滞留時間が100nsに設定される場合、連続する曝露間の時間は10μsである。
【0041】
本発明によるX線画像化システム200が図2に概略的に示されている。それは、それぞれの電子ビームスポット位置(図1の110a及び110bを参照)からのX線放射から作成された、例えば物体又は試料220の画像を記録するための検出器230を備える。システム200は、X線ターゲット210と、電子ビームIを発生する電子源201とを備える。電子源201は、概して、電圧源700によって出力される陰極202を備え、電子源203、例えば熱電子、熱電界、又は冷電界荷電粒子源を含む。電子源201からの電子ビームIは、加速開口部204に向かって加速されてもよく、そのポイントでビームIは、整列板205の配置、レンズ206、及び偏向板207の配置を備えてもよい電子光学系で領域に入射する。整列板205、偏向板207、及びレンズ206の可変的特性が、制御器500によって供給される信号によって制御可能であってもよい。図示するように、偏向及び整列手段207、205は、少なくとも2つの横方向に電子ビームIを加速するように動作可能である。
【0042】
上述したように、さまざまなコンポーネント及びパーツは、図面に示されるような、ハウジング600の外に位置付けられてもよい電圧源700及び制御器500を除いて、ハウジング600内部に位置付けられてもよい。
【0043】
電子光学系の下流で、電子ビームIはX線ターゲット210に衝突してX線放射を発生させることができる。電子ビームIとターゲット210との間の相互作用によって発生されたX線放射は、ハウジング600から、例えばX線窓208を介して、概ね試料220及び検出器アレイ230に向かう方向に導出されてもよい。
【0044】
システムはまた、任意選択で、ターゲット210から下流の電子を測定/検出するためのセンサ装置240を備えることができる。センサは、例えば、電流計242を介して接地に接続された導電板であってもよく、それはターゲット210の下流に電子ビームIによって流された総電流のおおよその測定値を供給する。制御器500は電流計242からの実信号へのアクセスを有することが理解される。
【0045】
検出器230のサイズは、試料位置領域の利用可能なサイズを決定することができる。本発明は、ターゲット210の異なる位置から生じるX線放射を用いて試料を画像化することに依存するので、X線放射と検出器の視野とが重なる体積が、使用可能な試料位置領域を規定する。検出器による画質の制限を回避するために、画素サイズは、X線源(すなわち、スポット)の有限サイズによって必然的に導入される不鮮明さと比較して小さくあるべきである。しかしながら、必要とされる画素解像度は、検査されることが意図される物体の特徴的な長さスケール及びX線画像化システムの倍率から決定されてもよい。入射するX線放射をその原点に従って分類するために、検出器は、各検出イベントのタイムスタンプを記録するか、又はある時間窓若しくは時間窓のセット内で発生する検出イベントを一緒に結合することができなければならない。検出器の時間分解能は、好ましくは、電子ビームがそれぞれのスポット部位の各々に位置する時間と比較して短くあるべきである。有利であり得る検出器テクノロジーの例は、CERNによってホストされるMedipixコラボレーション内で開発されたTimepix3チップである。一般に、各画素に関係する処理能力を提供する検出器は、本発明において有利に使用されることができる。
【0046】
検出器が各検出イベントのタイムスタンプを作成する場合、検出イベントは、電子ビーム位置が対応する時間に既知である場合に電子ビーム位置に関係付けることができる。電子ビーム運動は、例えば、予め規定され、後処理システムに知られていてもよい。次いで、第1の検出イベントを電子ビーム運動パターンの開始時間と見なすことができ、検出イベントをそのパターン上にマッピングすることができる。別の実施形態は、シーケンスの開始をマークするX線源又は検出器によって提供されるトリガ信号を利用することができる。さらに別の実施形態では、X線源は、検出器からの記録と共に後処理ソフトウェアに送られる電子ビーム位置のプロトコルを時間の関数として発生させる。次に、後処理ソフトウェアは、X線源及び検出器によってそれぞれ記録された時間に基づいて、検出イベントを電子ビーム位置に分類することができる。これは、X線源及び検出器が共通のスケールで時間を測定することを必要とする。
【0047】
X線スポットの2つの位置に対して得られた2つの画像からの高解像度高コントラスト画像の作成は、画像の一方を他方に対して以下の量だけ平行移動させることによって行うことができる
【数13】
ここで、bはターゲット上の電子ビームスポット位置間の距離である。Δについての式は、基本ジオメトリから得ることができる。平行移動の後、2つの画像を結合することができる。当業者であれば、2つの画像を結合することは、いくつかの方法で実行されてもよく、信号対雑音比を改善するためのフィルタリングも含んでもよいことを理解する。1つの例は、各個々の画素を合計し、その結果を2で割ることである。このようにして、画像には等しい重みが与えられ、画素値は元の画像のダイナミックレンジ内に保たれる。
【0048】
電子ビームがターゲット上を連続的に移動し、必ずしも特定の位置で停止しない実施形態も、本発明の概念に含まれる。そのような実施形態の一例は、例えば三角波駆動信号を偏向板に印加することによって、予め定められた周波数で前後に連続的に移動される電子ビームを含む。移動するスポットから放出された光子を収集することは、上述したような有限サイズのX線スポットによって引き起こされる不鮮明さと同様に、モーションブラーが導入されるかもしれないことを意味する。したがって、電子ビームの移動速度は、検出器からの読み出しの間の時間中に導入されるモーションブラーを無視できると考えられるように設定されるべきである。電子ビームが一定周波数で異なる位置間を移動する実施形態では、同じ周波数で収集された画像は、同じ位置から放出されたX線放射によって発生される。したがって、後処理においてこれらの画像の位置を所定の動きに応じてシフトすることにより、高解像度かつ高コントラストの画像を得ることができる。正確なタイミングが分からない場合、すなわち、後処理システムが特定の時間に電子ビーム位置にアクセスできない場合、画像コントラストをさらに改善することができなくなるまで、異なる仮定を試みることができる。これは、周波数及び振幅が既知であるときに電子ビーム運動の位相を見出すこととみなすことができる。
【0049】
一例として、昆虫又はつぼみなどのミリメートルサイズの物体を画像化するためのセットアップを考える。偏向板に印加される三角波駆動信号は、ターゲット上の1mm離れた2つの位置の間で電子ビームを前後に移動させるように構成することができる。結像光学系は、55μm画素を有する上述のTimepix2チップ上の伝播ベースの位相コントラスト画像化のための適切な解像度を与えるために、約3の倍率を適切に提供することができる。適切な線源から検出器までの距離は、この場合、約2mである。三角形の駆動信号によって駆動される静電偏向は、スポットがTimepix3検出器の1.5nsの時間精度で3μmだけ移動するように、1MHzの周波数と、ターゲット上の電子ビームの極値点間に1mmの分離をもたらす振幅とに設定することができる。次いで、検出されたX線放射は、1μsを法とするそれぞれのタイムスタンプに従って、1nsの大きさのビンにビニングされる。各ビンは、画素座標データを含むときに1つの画像を与える。次いで、画像は、どの位相が最も高いコントラストを提供するかを見つけるために、異なる位相を有する元の三角形の駆動信号に従って画像をシフトする(すなわち、平行移動させる)ことによって、後処理において組み合わされることができる。
【0050】
異なる方向から撮影された少なくとも2つの画像を使用して、試料の部分的なトモグラフィー再構成を得ることができる。トモシンセシス及びコンピュータ断層写真法のために開発された技術は、限られた数の投影のみが利用可能である場合のためにこれらが開発されていることから、用いることができる。当業者は、得られた画像から可能な限り多くの情報を抽出するために、上述したような画像の平行移動及び追加を異なるトモグラフィー技術と組み合わせることが有利であるかもしれないことを理解するであろう。
【0051】
図3は、本発明による方法を概略的に示す。
X線放射は、電子ビームをターゲット上に向けることによって発生され301、電子ビームは、ターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けられ、それによって、第1及び第2の位置でX線放射を交互に発生する。ターゲットの過熱を防止するために、電子ビームは、所定の時間制限を超えて同じ位置に維持されるべきではない。好ましくは、この時間制限は、上記の式(6)及び(7)によって与えられる特徴的な時間スケールの10倍未満、特に5倍未満である。熱サイクルに起因するターゲットの損傷をさらに防止するために、電子ビームは、十分に高い速度で位置間で交互にされるべきであり、すなわち、交互の動きの期間は、時間制限を下回るべきである。好ましくは、電子ビームは、上記の式(6)及び(7)によって与えられる特徴的な時間スケールの10倍未満、特に5倍未満の期間で、ターゲット上の第1の位置及び第2の位置に交互に向けられる。言い換えれば、連続する曝露間の時間は、10μs未満、例えば5μs未満、例えば1μs未満であるべきである。いくつかの実施形態では、電子ビームは、第1の位置と第2の位置との間の切り替え中にブランクされ、すなわち遮断され、その結果、第1の位置及び第2の位置の外側の領域からX線放射は発生されない。他の実施形態では、電子ビームは、ターゲットが第1の位置と第2の位置との間で掃引されるとターゲットに連続的に衝突する。本開示は、X線放射が発生される2つの一次位置がある例を取り上げているが、X線放射を発生するために3つ以上の位置を使用することができ、電子ビームがターゲットを横切って掃引される実施形態では、X線放射が複数の位置から発生されることが明らかであろう。一例として、電子ビームは、予め定められたパターンに従ってターゲット上に向けることができ、このパターンは、検出されたX線放射から画像を後で作成するために使用することができる。
【0052】
発生されたX線放射は、調査されるべき試料を配置できる試料位置領域に向けられる302。試料位置領域は、第1の位置で発生されたX線放射が第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられる。次いで、X線検出器アレイを使用して、試料位置領域を通過したX線放射が検出される303。試料位置領域を通過したX線放射の検出は、電子ビームの方向と相関され304、第1の位置及び第2の位置から生じるX線放射に基づいて画像が作成される。電子ビームが予め定められたパターンに従ってターゲット上に向けられる実施形態では、電子ビームの方向と検出されたX線放射との間のそのような相関は、上述したような予め定められたパターンに基づくことができる。いくつかの実施形態では、第1の位置及び第2の位置から生じるX線放射に基づいて、部分的なトモグラフィー再構成が作成される。
【0053】
[結び]
X線画像化システムが開示され、X線画像化システムは、ターゲットと、ターゲットと相互作用してX線放射を発生する電子ビームを提供するように構成された電子ビーム源と、電子ビームをターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けるように構成された電子光学系と、ターゲット上の第1及び第2の位置で発生されたX線放射を受けるように構成されたX線検出器アレイと、発生されたX線放射に曝露される試料を受けるための試料位置領域と、ここで、試料位置領域は、第1の位置で発生されたX線放射が第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、X線検出器アレイに結合された処理ユニットとを備え、処理ユニットは、第1の位置及び第2の位置から生じるX線放射に基づいて、試料位置領域に位置付けられた試料の画像を作成するように構成される。本発明の実施形態では、電子ビームが特定の位置に向けられるたびに発生されるX線放射の曝露時間が十分に短くなるように、電子ビームは移動される。さらなる実施形態では、温度サイクル、及びそれによって熱誘発機械的応力が低減されるように、十分に短い期間で位置間で電子ビームは移動される。対応する方法も開示される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線画像化システムであって、
ターゲットと、
前記ターゲットと相互作用してX線放射を発生する電子ビームを提供するように構成された電子ビーム源と、
前記電子ビームを前記ターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けるように構成された電子光学系と、
前記ターゲット上の前記第1及び第2の位置で発生されたX線放射を受けるように構成されたX線検出器アレイと、
発生されたX線放射に曝露される試料を受けるための試料位置領域と、ここで、前記試料位置領域は、前記第1の位置で発生されたX線放射が前記第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、
前記X線検出器アレイに結合された処理ユニットとを備え、前記処理ユニットは、前記第1の位置及び前記第2の位置から生じる前記X線放射に基づいて、前記試料位置領域に位置付けられた試料の画像を作成するように構成され、
前記X線検出器アレイ及び前記電子ビーム源は、任意の一瞬においてX線検出器によって受け取られた前記X線放射が前記ターゲット上の前記第1の位置から生じたのか又は前記第2の位置から生じたのかを決定することができるように構成され、
前記第1の位置及び前記第2の位置の各々の連続的な曝露間の時間は、それぞれ10μs未満である、X線画像化システム。
【請求項2】
前記第1の位置及び前記第2の位置の連続的な曝露間の時間は、5μs未満、例えば1μs未満である、請求項1に記載のX線画像化システム。
【請求項3】
前記電子光学系は、任意の1つの位置の連続曝露の期間が時間制限よりも短い持続時間を有するように、前記ターゲット上の前記少なくとも第1の位置及び第2の位置に前記電子ビームを交互に向けるように構成される、請求項1に記載のX線画像化システム。
【請求項4】
前記ターゲットは固体反射ターゲットであり、前記時間制限は、
【数1】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、Sは、
【数2】
によって与えられ、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポット径、hは前記ターゲットへの電子の侵入深さである、請求項3に記載のX線画像化システム。
【請求項5】
前記ターゲットは透過ターゲットであり、前記時間制限は、
【数3】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズである、請求項3に記載のX線画像化システム。
【請求項6】
前記ターゲットは、少なくとも1つの液体ジェットを含み、前記時間制限は、
【数4】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、δは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動方向に沿った前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズであり、vjetは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動速度である、請求項3に記載のX線画像化システム。
【請求項7】
前記電子ビーム源は、前記第1の位置及び前記第2の位置の外側の前記ターゲットの領域からX線放射が発生されないように、前記ターゲット上の前記第1の位置と前記第2の位置との間の切り替えの間に前記電子ビームをブランクするように構成される、請求項1に記載のX線画像化システム。
【請求項8】
前記ターゲットは、前記電子ビームがそれぞれの位置に向けられたときに、異なるエネルギースペクトルを有するX線放射を発生する前記第1の位置及び前記第2の位置において異なる材料を含む、請求項1に記載のX線画像化システム。
【請求項9】
X線画像化のための方法であって、
ターゲット上に電子ビームを向けることによってX線放射を発生することと、ここで、前記電子ビームは、前記ターゲット上の少なくとも第1の位置及び第2の位置に交互に向けられ、それによって前記第1の位置及び前記第2の位置でX線放射を交互に発生し、
前記発生されたX線放射を試料位置領域に向けることと、ここで、前記試料位置領域は、前記第1の位置で発生されたX線放射が前記第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、
X線検出器アレイを使用して、前記試料位置領域を通過したX線放射を検出することと、
任意の一瞬において前記X線検出器アレイによって受け取られた前記X線放射が前記第1の位置から生じたのか又は前記第2の位置から生じたのかを決定するように、前記電子ビームの方向を、前記試料位置領域を通過したX線放射の検出と相関させて、前記第1の位置及び前記第2の位置から生じた前記X線放射に基づいて画像を作成することと、を含み、
前記少なくとも第1及び第2の位置の各々の連続的な曝露の間に経過した時間は、それぞれ10μs未満である、方法。
【請求項10】
前記少なくとも第1及び第2の位置の連続的な曝露間の時間が、5μs未満、例えば1μs未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
任意の1つの位置の連続曝露の期間が、時間制限よりも短い持続時間を有するように、前記ターゲット上の前記少なくとも第1の位置及び第2の位置に前記電子ビームは交互に向けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ターゲットは固体反射ターゲットであり、前記時間制限は、
【数5】
によって与えられる特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、Sは、
【数6】
によって与えられ、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポット径、hは前記ターゲットへの電子の侵入深さである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲットは透過ターゲットであり、前記時間制限は、
【数7】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲットは、少なくとも1つの液体ジェットを含み、前記時間制限は、
【数8】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、δは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動方向に沿った前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズであり、vjetは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動速度である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の位置及び前記第2の位置の外側の前記ターゲットの領域からX線放射が発生されないように、前記ターゲット上の前記第1の位置と前記第2の位置との間の切り替えの間に前記電子ビームをブランクすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記電子ビームは予め定められたパターンに従って前記ターゲット上に向けられ、前記画像は前記予め定められたパターンに基づいて作成される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲットは、前記電子ビームがそれぞれの位置に向けられたときに、異なるスペクトルを有するX線放射を発生させる前記第1及び第2の位置において異なる材料を含む、請求項9に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
[結び]
X線画像化システムが開示され、X線画像化システムは、ターゲットと、ターゲットと相互作用してX線放射を発生する電子ビームを提供するように構成された電子ビーム源と、電子ビームをターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けるように構成された電子光学系と、ターゲット上の第1及び第2の位置で発生されたX線放射を受けるように構成されたX線検出器アレイと、発生されたX線放射に曝露される試料を受けるための試料位置領域と、ここで、試料位置領域は、第1の位置で発生されたX線放射が第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、X線検出器アレイに結合された処理ユニットとを備え、処理ユニットは、第1の位置及び第2の位置から生じるX線放射に基づいて、試料位置領域に位置付けられた試料の画像を作成するように構成される。本発明の実施形態では、電子ビームが特定の位置に向けられるたびに発生されるX線放射の曝露時間が十分に短くなるように、電子ビームは移動される。さらなる実施形態では、温度サイクル、及びそれによって熱誘発機械的応力が低減されるように、十分に短い期間で位置間で電子ビームは移動される。対応する方法も開示される。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] X線画像化システムであって、
ターゲットと、
前記ターゲットと相互作用してX線放射を発生する電子ビームを提供するように構成された電子ビーム源と、
前記電子ビームを前記ターゲット上の少なくとも第1及び第2の位置に交互に向けるように構成された電子光学系と、
前記ターゲット上の前記第1及び第2の位置で発生されたX線放射を受けるように構成されたX線検出器アレイと、
発生されたX線放射に曝露される試料を受けるための試料位置領域と、ここで、前記試料位置領域は、前記第1の位置で発生されたX線放射が前記第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、
前記X線検出器アレイに結合された処理ユニットとを備え、前記処理ユニットは、前記第1の位置及び前記第2の位置から生じる前記X線放射に基づいて、前記試料位置領域に位置付けられた試料の画像を作成するように構成され、
前記X線検出器アレイ及び前記電子ビーム源は、任意の一瞬においてX線検出器によって受け取られた前記X線放射が前記ターゲット上の前記第1の位置から生じたのか又は前記第2の位置から生じたのかを決定することができるように構成され、
前記第1の位置及び前記第2の位置における連続的な曝露間の時間は、10μs未満である、X線画像化システム。
[2] 前記第1の位置及び前記第2の位置の連続的な曝露間の時間は、5μs未満、例えば1μs未満である、[1]に記載のX線画像化システム。
[3] 前記電子光学系は、任意の1つの位置の連続曝露の期間が時間制限よりも短い持続時間を有するように、前記ターゲット上の前記少なくとも第1の位置及び第2の位置に前記電子ビームを交互に向けるように構成される、[1]又は[2]に記載のX線画像化システム。
[4] 前記ターゲットは固体反射ターゲットであり、前記時間制限は、
【数14】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、Sは、
【数15】
によって与えられ、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポット径、hは前記ターゲットへの電子の侵入深さである、[3]に記載のX線画像化システム。
[5] 前記ターゲットは透過ターゲットであり、前記時間制限は、
【数16】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズである、[3]に記載のX線画像化システム。
[6] 前記ターゲットは、少なくとも1つの液体ジェットを含み、前記時間制限は、
【数17】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、δは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動方向に沿った前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズであり、v jet は、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動速度である、[3]に記載のX線画像化システム。
[7] 前記電子ビーム源は、前記第1の位置及び前記第2の位置の外側の前記ターゲットの領域からX線放射が発生されないように、前記ターゲット上の前記第1の位置と前記第2の位置との間の切り替えの間に前記電子ビームをブランクするように構成される、[1]から[6]のいずれか一項に記載のX線画像化システム。
[8] 前記ターゲットは、前記電子ビームがそれぞれの位置に向けられたときに、異なるエネルギースペクトルを有するX線放射を発生する前記第1の位置及び前記第2の位置において異なる材料を含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載のX線画像化システム。
[9] X線画像化のための方法であって、
ターゲット上に電子ビームを向けることによってX線放射を発生することと、ここで、前記電子ビームは、前記ターゲット上の少なくとも第1の位置及び第2の位置に交互に向けられ、それによって前記第1の位置及び前記第2の位置でX線放射を交互に発生し、
前記発生されたX線放射を試料位置領域に向けることと、ここで、前記試料位置領域は、前記第1の位置で発生されたX線放射が前記第2の位置で発生されたX線放射と重なる領域に位置付けられ、
X線検出器アレイを使用して、前記試料位置領域を通過したX線放射を検出することと、
任意の一瞬において前記X線検出器アレイによって受け取られた前記X線放射が前記第1の位置から生じたのか又は前記第2の位置から生じたのかを決定するように、前記電子ビームの方向を、前記試料位置領域を通過したX線放射の検出と相関させて、前記第1の位置及び前記第2の位置から生じた前記X線放射に基づいて画像を作成することと、を含み、
前記少なくとも第1及び第2の位置の連続的な曝露の間に経過した時間は、10μs未満である、方法。
[10] 前記少なくとも第1及び第2の位置の連続的な曝露間の時間が、5μs未満、例えば1μs未満である、[9]に記載の方法。
[11] 任意の1つの位置の連続曝露の期間が、時間制限よりも短い持続時間を有するように、前記ターゲット上の前記少なくとも第1の位置及び第2の位置に前記電子ビームは交互に向けられる、[9]又は[10]に記載の方法。
[12] 前記ターゲットは固体反射ターゲットであり、前記時間制限は、
【数18】
によって与えられる特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、Sは、
【数19】
によって与えられ、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポット径、hは前記ターゲットへの電子の侵入深さである、[11]に記載の方法。
[13] 前記ターゲットは透過ターゲットであり、前記時間制限は、
【数20】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、ρは前記ターゲットの密度、Cは前記ターゲットの単位質量当たりの熱容量、κは前記ターゲットの熱伝導率、δは前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズである、[11]に記載の方法。
[14] 前記ターゲットは、少なくとも1つの液体ジェットを含み、前記時間制限は、
【数21】
によって与えられる、特徴的な時間スケールτ、の10倍、好ましくは5倍であり、
ここで、δは、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動方向に沿った前記ターゲットにおける前記電子ビームのスポットサイズであり、v jet は、前記少なくとも1つの液体ジェットの移動速度である、[11]に記載の方法。
[15] 前記第1の位置及び前記第2の位置の外側の前記ターゲットの領域からX線放射が発生されないように、前記ターゲット上の前記第1の位置と前記第2の位置との間の切り替えの間に前記電子ビームをブランクすることをさらに含む、[9]から[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16] 前記電子ビームは予め定められたパターンに従って前記ターゲット上に向けられ、前記画像は前記予め定められたパターンに基づいて作成される、[9]から[15]のいずれか一項に記載の方法。
[17] 前記ターゲットは、前記電子ビームがそれぞれの位置に向けられたときに、異なるスペクトルを有するX線放射を発生させる前記第1及び第2の位置において異なる材料を含む、[9]から[16]のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】