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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】CNSの増殖性疾患の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20230606BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P35/04
A61K45/00
A61K31/4188
A61K31/5377
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567459
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 AU2021000036
(87)【国際公開番号】W WO2021222967
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2020901435
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519271986
【氏名又は名称】オーセントラ セラピュティクス ピーティーワイ エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】AUCENTRA THERAPEUTICS PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュドン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZC201
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC73
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
神経膠芽腫を含む、CNSにおける増殖性細胞疾患及び状態の処置において使用するためのチアゾール-ピリミジン化合物類が開示されている。化合物は、CDK4及び/またはCDK6の活性を阻害することにより腫瘍細胞増殖を遮断することができ、かつ血液脳関門を通過することができると考えられる。化合物は、一般構造I:(I)を有する:
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態を処置する方法であって、前記対象に、治療有効量の、下に示される式Iの化合物:
【化1】

[式中:
は、H、アルキル、アリール、アラルキル、脂環式、複素環式、ハロゲン、NO、CN、CF、OH、O-アルキル、O-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、CONH、CONH-アルキル、CONH-アリール、及びCONH-脂環式から選択され;
は、H、アルキル、ハロゲン、NO、CN、CF、OH、O-アルキル、及びNHから選択され;
は、少なくとも1個のNヘテロ原子を含む複素環式、NH-アルキル、NH-アリール、N-(アルキル)、N-(アリール)、及びN-(アルキル)(アリール)から選択され;かつ
nは、0~3の範囲から選択される整数であり;かつ
ここで、前記アルキル、前記アリール、前記アラルキル、前記脂環式及び前記複素環式基は、アルキル、ハロゲン、CN、OH、O-メチル、NH、NH-アルキル、N(アルキル)、COOH、COH、CO(アルキル)、CONH及びCFから選択される1個または複数の基で任意選択で置換されていてよい]
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、
任意選択で、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/または添加剤と組み合わせて投与することを含む前記方法。
【請求項2】
がH、アルキル(例えば、C1~6アルキル、例えば、C1~3アルキル、例えば、メチル、エチル及びC(CHまたはC3~6シクロアルキル、例えば、シクロペンチル)、または複素環式(例えば、1または2個のN、OまたはSヘテロ原子を含む飽和または不飽和5または6員環式基)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、H、メチル、エチル、シクロプロピルまたはシクロペンチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がH、アルキル(例えば、C1~6アルキルまたは、好ましくは、C1~3アルキル、例えば、メチルまたはエチル)、CNまたはハロゲン(好ましくは、F)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
がH、メチル、エチル、CNまたはFである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
が、アルキル(例えば、C1~6アルキルまたは、好ましくは、C1~3アルキル、例えば、メチル、エチル及びCH(CH)、NH、NH-アルキル、例えば、NH-メチル及びNH-エチル、N(アルキル)、例えば、N(C1~3アルキル)(例えば、N(CH、N(CHCH)及びN(CH)(CHCH))、COH及びCO(C1~3アルキル)(例えば、COCH)から選択される1個または複数の基で任意選択で置換されている複素環式基(好ましくは、1個、しかし、より好ましくは2個のNヘテロ原子を含む飽和または不飽和5または6員環式基)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
が、以下:
【化2】

から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
nが0、1または2である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物が:
5-(2-((5-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-4-メチル-5-(2-((5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)チアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-5-(2-((5-(4-エチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
2-((5-(4-アセチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-4-(4-メチル-2-(メチルアミノ)チアゾール-5-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル;
N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N-シクロペンチル-4-メチルチアゾール-2-アミン
N-シクロペンチル-5-(5-フルオロ-2-((5-モルホリノピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン
5-(2-((5-(4-(エチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-(エチル(メチル)アミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(5-フルオロ-2-((5-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(5-フルオロ-2-((5-((4-イソプロピルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;または
5-(2-((5-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン
である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグが静脈内及び/または経口投与用に製剤化されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを前記対象に、テモゾラミド(TMZ)または他のキナーゼ阻害薬と組み合わせて投与する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記他のキナーゼ阻害薬をPI3K、mTOR及び/またはMEKの阻害薬から選択する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増殖性細胞疾患または状態が神経膠芽腫(GBM)、髄芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、星状細胞腫、上衣腫、乏突起膠腫、または転移性脳腫瘍である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態を処置するための医薬の製造における、請求項1~9のいずれか1項において定義されたとおりの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用。
【請求項15】
対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態を処置するための、請求項1~9のいずれか1項において定義されたとおりの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態を処置する際のチアゾール-ピリミジン化合物類の方法及び使用に関する。
【0002】
優先権書類
本出願は、「CNSの増殖性疾患の処置」と標題された2020年5月6日出願のオーストラリア特許仮出願第2020901435号による優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
原発性脳腫瘍は新生物の多様な群からなり、様々な細胞系譜に由来する。世界保健機関(WHO)の分類によると、中枢神経系(CNS)の腫瘍は、星細胞系、乏突起膠細胞系、または混合型に分類される。これらの腫瘍はサブタイプによりさらに分類され、組織診に基づき、IからIVにグレード分類されるが、その際、グレードIVが最も攻撃的である。米国だけでも、ほぼ80,000の新たな症例の原発性脳腫瘍及び他のCNS腫瘍が毎年診断されると推定されている。不幸なことに、これらのがんは、予後不良及び低い生存率により特徴づけられ;多形性神経膠芽腫(GBM)がCNSの最も攻撃的な原発性腫瘍であり、悪性原発性CNS腫瘍のうちの45%を、かつすべての神経膠腫のうちの54%を占める。近年では多くのがんの生存率が改善し続けているが、CNSのがんは、同じレベルの成功率をまだ経験していない。例えば、2009年から2013年の間に脳癌と診断された患者が5年生存する可能性は、およそ25%であった。これは、同じ期間で合わせたすべてのがんでの約68%の生存率と著しく対照的である。GBM患者では、生存中央値は15~23カ月に過ぎず、5年生存率は約4.6%であり、これは、すべての脳腫瘍型のうちで最も低い値である。
【0004】
無限の細胞周期リエントリ及び進行をもたらす異常な細胞周期制御が、ヒトがんのホールマークである。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)が、様々なサイクリンサブユニットと関連することが公知であり、細胞周期制御、アポトーシス、神経生理、分化及び転写を含む、細胞における様々な重要な調節経路の調節において中枢となる役割を果たす。今日までに、少なくとも20種のCDK及び30サイクリンが同定されている。それらは、機能を反映して2つの主要な群、すなわち、細胞周期調節因子CDK及び転写調節因子CDKに分類され得る(Wang S et al., Trends Pharmacol Sci 29(6):302-313, 2008)。細胞周期調節因子CDK類には、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、及びCDK7が含まれ、これらは、それらのサイクリンパートナー(例えば、サイクリンA、B、C、D1、D2、D3、E、F)と共に機能して、細胞周期の促進を調節する。転写調節因子CDK類には、CDK7、CDK8、CDK9及びCDK11が含まれ、これらは、サイクリンC、H、K、L1、L2、T1及びT2と一緒に作用して、転写調節において役割を果たす傾向がある。CDKクラスの機能を考慮すると、CDKが細胞増殖性疾患及び状態、特に、がんに関与していることは驚くべきことではない。細胞増殖は、細胞分裂サイクルの直接的または間接的調節解除の結果であり、CDKは、このサイクルの様々な相の調節において重要な役割を果たす。したがって、CDK及びそれらの関連サイクリンの阻害薬は、がん治療のための有用な標的であると考えられる。
【0005】
CDK4/6は、細胞周期を制御し、INK4ファミリーのタンパク質によりしっかりと調節される。多数の研究により、CDK4/6経路が、CNS腫瘍及び神経膠腫を含むがんのかなり大部分において超活性化していることが立証されている(Xu G et al., J Neurooncol 136: 445-452, 2018;Parsons DW et al., Science 321:1807-1812, 2008;Bax D A et al., Clin Cancer Res 16:3368-3377, 2010;及びCancer Genome Atlas Research, N. Nature 455:1061-1068, 2008)。小児及び成人における神経膠腫のゲノムスケールでのプロファイリングから、GBMの80%超で、CDK4/6-Rb軸が調節解除されており、これは、(i)p16INK4a及びp15INK4bをコードするCDKN2A/B遺伝子の欠失、(ii)CDK4/6の増幅/過剰発現、ならびに(iii)Rbの欠失/変異から生じる(Schmidt EE et al., Cancer Res 54:6321-6324, 1994)。CDK4、p16INK4a及びRbは、不十分な生存の独立した予測因子である(Aoki K et al.、Neuro Oncol 20:66-77、2018)。したがって、CDK4/6の阻害は、がん、特に神経膠芽腫を処置するための有効なアプローチであり得る。3種のCDK4/6阻害薬、すなわち、パルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブが米国食品医薬品局(FDA)により、乳癌の処置のために承認されており、GBM患者において治験された。しかしながら、パルボシクリブでの転帰は残念なものであり、治験は中止された。有効性の欠如は、血液脳関門(BBB)を通過して、脳において薬物曝露する能力が限定的であることにより得る(Karen E et al., In 2013 AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics, Vol. 12(11 Suppl) 2013)。
【0006】
成長因子受容体及びプロテインキナーゼを介しての細胞シグナル伝達は、細胞成長及び増殖の別の重要な調節因子である。正常な細胞成長では、成長因子が、受容体活性化を介して(すなわち、PDGFまたはEGFなど)、MAPキナーゼ経路を活性化させる。正常及び無制御の細胞成長に関係する最も重要なMAPキナーゼ経路の1つは、Ras/Rafキナーゼ経路である。活性なGTP結合Resは、Rafキナーゼの活性化及び間接的なリン酸化をもたらす。次いで、Rafは、MEK1及びMEK2をリン酸化する(Ahn et al., Methods Enzymol 332:417-431, 2001)。次いで、活性化MEKは、ERK1及びERK2をリン酸化する。続いて、リン酸化ERKは二量体化して、次いで、核に移行し、そこで蓄積し(Khokhlatchev et al., Cell 93:605-615, 1998)、次いで、核輸送、シグナル伝達、DNA修復、ヌクレオソーム構築及び転座、ならびにmRNAプロセシング及び翻訳を含むいくつかの重要な細胞機能に関係する(Ahn et al., Molecular Cell 6:1343-1354, 2000)。総じて、成長因子での処置は、増殖及び治療に対する抵抗性をもたらすERK1/2の活性化につながる。したがって、MAPキナーゼ経路の標的化は、幅広いがん型に治療機会を提供し、最近では、MEK阻害薬、セルメチニブが、神経線維腫症1型(NF1)症候性及び/または進行性、手術不能の叢状神経線維腫、不治遺伝的状態を有する患者の処置について、USブレークスルーセラピー指定を認められている。NF1遺伝子変異は、RAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達の調節不全をもたらし得、これは、無制御に細胞を成長させ、分化させ、コピーさせ得て、したがって、腫瘍を増殖させる。セルメチニブは、腫瘍増殖の阻害につながるMEK酵素を阻害する。
【0007】
がん細胞において、破壊されたシグナル伝達経路の主な帰結は、細胞がアポトーシス、増殖、及び転移を回避することを可能にするタンパク質発現のアンバランスである。GBMサブタイプ腫瘍のおよそ40%が、PI3K/AKT経路を介して下流細胞内シグナル伝達のカスケードを活性化させる機能不全EGFR、細胞表面受容体チロシンキナーゼにより特徴づけられる。変異を介してのその増幅及び過剰発現は、血管新生、遊走及び転移により補助される神経膠腫増殖及び生存を促進する。したがって、EGFRは、魅力的な治療標的として提案されている。しかしながら、再発性GBMを有する患者におけるEGFR阻害薬、エルロチニブの第II相試験は、有意な利益を示さなかった。PKC及びPI3K/AKTを標的とする阻害薬であるエンザスタウリンなどの、臨床第II~III試験において試験された他のチロシンキナーゼ阻害薬は、単独で、または化学治療と組み合わせて使用された場合に、GBM患者において効果を実証しなかった。これらのEGFR阻害薬化合物の失敗は、不十分な薬物動態(PK)及びBBB透過性による可能性がある。
【0008】
CNS薬物の承認率は典型的には、非CNS薬物よりもかなり低く、腫瘍学CNS薬物開発の流失率(attrition rate)は非常に高い。したがって、脳腫瘍を処置するための薬物の発見は、大きな障害及び歴史的失敗により特徴づけられる。処置の成功のためには、薬物は第一に、密着結合により密接に接合して傍細胞移動(para-cellular movement)を防いでいる脳内の毛細血管に固有の、密接に接続した内皮細胞の層であるBBBを通過し得なければならない。内皮細胞を通って脳に至る化合物の通過は、その頂端膜;すなわち、循環血液と接触する膜で発現されるATP結合カセット(ABC)トランスポーターの作用により制限され得る。これらのうち、P-糖タンパク質(P-gp)及び乳癌耐性タンパク質(BCRP)が、多数の化合物の脳透過を一緒に制限する2種の主要なトランスポーターである(Wager et al., Expert Opin Drug Discov 6:371-381, 2011;Agarwal et al., J Pharmacol Exp Ther 336:223-233, 2011)。実際に、多くの化学治療薬が、このバリアにより脳へのアクセスを妨げられている。
【0009】
GBMの位置及びその正常な周囲脳組織の広範な浸潤は、外科的切除により腫瘍を完全に除去することができないことを意味する。さらに、周囲の正常な脳を侵襲する腫瘍細胞は、BBBにより治療薬から防御される。残念なことに、テモゾロミド(TMZ、神経膠芽腫のための唯一の標準治療の化学治療)などの、それでもアクセスするものも、限定的な有効性を有し、良くても数か月ほど生存を改善するにすぎない。今のところ、GBM治療のための治験の大部分が失敗している。前臨床データにより、CDK4/6阻害薬(すなわち、パルボシクリブ及びアベマシクリブ)の浸透はBBBでの活発な流出により制限されることが示された。アベマシクリブは、げっ歯類脳においてパルボシクリブよりも比較的高い曝露を示したが、しかしながら、その治療可能性は、露見しているままである。明らかに、CDK4/6などの新たな標的を指向し、かつ脳腫瘍及びCNSの他のがんを処置するために有効であるようにBBBを十分に通過し得る薬物を同定することが必要とされている。
【0010】
本出願人は、神経膠芽腫を含むCNSにおける増殖性細胞疾患及び状態の処置で使用するためのチアゾール-ピリミジン化合物類を同定した。理論に束縛されることは望まないが、これらの化合物は、CDK4及び/またはCDK6の活性を阻害することにより腫瘍細胞増殖を遮断し、かつBBBを通過することができると考えられる。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様では、本開示は、対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態を処置する方法であって、対象に、治療有効量の、下に示される式Iの化合物:
【化1】

[式中:
は、H、アルキル、アリール、アラルキル、脂環式、複素環式、ハロゲン、NO、CN、CF、OH、O-アルキル、O-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、CONH、CONH-アルキル、CONH-アリール、及びCONH-脂環式から選択され;
は、H、アルキル、ハロゲン、NO、CN、CF、OH、O-アルキル、及びNHから選択され;
は、少なくとも1個のNヘテロ原子を含む複素環式、NH-アルキル、NH-アリール、N-(アルキル)、N-(アリール)、及びN-(アルキル)(アリール)から選択され;かつ
nは、0~3の範囲から選択される整数であり;かつ
ここで、前記アルキル、アリール、アラルキル、脂環式及び複素環式基は、アルキル、ハロゲン、CN、OH、O-メチル、NH、NH-アルキル、N(アルキル)、COOH、COH、CO(アルキル)、CONH及びCFから選択される1個または複数の基で任意選択で置換されていてよい]
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、
任意選択で、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/または添加剤と組み合わせて投与することを含む前記方法を提供する。
【0012】
式Iの化合物は、抗増殖性活性を有することが見い出されており(例えば、これらの化合物は、CDK4及び/またはCDK6の活性を阻害することにより腫瘍細胞増殖を遮断すると考えられる)、さらに、BBBを通過することができる。
【0013】
第2の態様では、本開示は、対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態、例えば、神経膠芽腫を処置するための医薬を製造する際の、第1の態様において定義されたとおりの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0014】
第3の態様では、本開示は、対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態、例えば、神経膠芽腫を処置するための、第1の態様において定義されたとおりの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】T98G GBM細胞系における、単一の作用物質としての、かつ(A)mTOR(エベロリムス;図面では「Eve」として示される)、(B)PI3K(アルペリシブ;「Alp」)または(C)MEK(セルメチニブ;「Sel」)の阻害薬と組み合わせての化合物1(5-(2-((5-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン)の抗増殖性活性を示している。
図2】単独か、もしくはTMZと組み合わせた5μMパルボシクリブ(「Palb」)または化合物1での処置から48時間後のGBM U87細胞のアネキシンV/PIアッセイの結果を示している。
図3】CDK4/6-媒介Rbリン酸化の標的化を介しての、化合物1によるGBM U87細胞コロニー形成の阻害を示している。
図4】Balb/Cマウスにおける、2mg/kgの静脈内投与後(A)、及び(B)10mg/kg経口投与から24時間後の化合物1及び化合物2(N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン)の脳取り込みを示すグラフ結果を示し;他方で(C)は、Balb/Cマウスにおける2mg/kg静脈内投与後の化合物6(N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン)の脳取り込みを示す。
図5】皮下GBM U87細胞異種移植片での化合物1及び化合物2のin vivo抗腫瘍活性を実証するグラフ結果を示す。
図6】それぞれGBM U87及びG4T GBM患者由来モデルの同所異種移植片での化合物1及び化合物2のin vivo抗腫瘍活性を実証するグラフ結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の態様では、本開示は、対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態を処置する方法であって、対象に、治療有効量の、下に示される式Iの化合物:
【化2】

[式中:
は、H、アルキル、アリール、アラルキル、脂環式、複素環式、ハロゲン、NO、CN、CF、OH、O-アルキル、O-アリール、COOH、CO-アルキル、CO-アリール、CONH、CONH-アルキル、CONH-アリール、及びCONH-脂環式から選択され;
は、H、アルキル、ハロゲン、NO、CN、CF、OH、O-アルキル、及びNHから選択され;
は、少なくとも1個のNヘテロ原子を含む複素環式、NH-アルキル、NH-アリール、N-(アルキル)、N-(アリール)、及びN-(アルキル)(アリール)から選択され;かつ
nは、0~3の範囲から選択される整数であり;かつ
ここで、前記アルキル、アリール、アラルキル、脂環式及び複素環式基は、アルキル、ハロゲン、CN、OH、O-メチル、NH、NH-アルキル、N(アルキル)、COOH、COH、CO(アルキル)、CONH及びCFから選択される1個または複数の基で任意選択で置換されていてよい]
またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、
任意選択で、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/または添加剤と組み合わせて投与することを含む前記方法を提供する。
【0017】
式Iの化合物は、抗増殖性活性を有することが見い出されており(例えば、これらの化合物は、CDK4及び/またはCDK6の活性を阻害することにより腫瘍細胞増殖を遮断すると考えられる)、さらに、BBBを通過することができる。したがって、式Iの化合物は、神経膠芽腫などのCNSの増殖性細胞疾患及び状態ならびに無制御の細胞増殖と関連する(または、言い換えると、細胞周期の制御を必要とする)CNSの他の疾患及び状態の処置において有用であると考えられる。本明細書で使用される場合、本開示の範囲内の抗増殖作用は、in vitro全細胞アッセイにおいて細胞増殖を阻害する能力により実証され得る。性能についての方法を含むそのようなアッセイの例(複数可)は、本明細書において後記で提供される実施例においてより詳細に記載される。
【0018】
好ましくは、式Iの化合物は、CDK4及び/またはCDK6から選択される1種または複数のプロテインキナーゼの活性を調節する(例えば、阻害する)。上述のとおり、CDK4及びCDK6は、細胞周期調節因子としてのそれらの役割を介して、がん細胞増殖を促進する。したがって、少なくともCDK4及び/またはCDK6を阻害する式Iの化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物及びプロドラッグは、in vitro及びin vivo用途の両方において(例えば、in vitro細胞ベースアッセイ)、かつ対象においてがんまたは別の増殖性障害もしくは状態を処置する治療方法の基礎として有用性を有する。
【0019】
式Iの化合物は、細胞周期におけるステップまたは段階のいずれか、例えば、核膜の形成、細胞周期の静止期からの進出(G0)、G1進行、染色体脱凝集、核膜破壊、START、DNA複製の開始、DNA複製の進行、DNA複製の停止、中心体複製、G2進行、有糸分裂または減数分裂機能の活性化、染色体凝集、中心体分離、微小管核形成、紡錘体形成及び機能、微小管モータータンパク質との相互作用、染色分体分離及び隔離、有糸分裂機能の不活性化、収縮環の形成、ならびに細胞質分裂機能を阻害し得る。特に、式Iの化合物は、クロマチン結合、複製複合体の形成、複製ライセンシング、リン酸化または他の二次的改変活性、タンパク質分解による分解、微小管結合、アクチン結合、セプチン結合、微小管形成中心核形成活性及び細胞周期シグナル伝達経路の構成成分への結合など、ある特定の遺伝子機能に影響を及ぼし得る。
【0020】
第2の態様では、本開示は、対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態、例えば、神経膠芽腫を処置するための医薬を製造する際の、第1の態様において定義されたとおりの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0021】
第3の態様では、本開示は、対象において中枢神経系(CNS)の増殖性細胞疾患または状態、例えば、神経膠芽腫を処置するための、第1の態様において定義されたとおりの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの使用を提供する。
【0022】
本明細書では、当業者に周知であるいくつかの用語を使用する。それでも明瞭さを目的として、いくつかのこれらの用語を本明細書において後記で定義する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「処置すること」という用語には、疾患または状態の確立された症状の予防、さらには緩和が含まれる。したがって、疾患または状態を「処置すること」の行為には、(1)疾患または状態に罹患しているか、または罹患しやすい対象において、疾患または状態の発生の臨床症状の出現を予防すること、または遅延させること;(2)疾患もしくは状態またはその少なくとも1つの臨床的もしくは亜臨床症状を阻害すること(すなわち、疾患もしくは状態の発生またはその再発(維持処置の場合に)を停止させる、減少させる、または遅延させること);及び(3)疾患または状態を軽減する、または減弱させること(すなわち、疾患もしくは状態またはその臨床もしくは亜臨床症状の少なくとも1つの退縮を惹起すること)が含まれる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語には、1~8個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基、分枝状アルキル基及び環式アルキル基(例えば、メチル、エチルプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなど)が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、置換(モノ-またはポリ-)または非置換モノ芳香族またはポリ芳香族基を指し、その際、前記ポリ芳香族基は、縮合していても、または縮合していなくてもよい。したがって、この用語には、6~10個の炭素原子を有する基(例えば、フェニル、ナフチルなど)が含まれる。「アリール」という用語は、「芳香族」という用語と同意語であることも理解されるべきである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」という用語は、上で定義したとおりのアルキル及びアリールという用語の連結として使用される。
【0027】
「脂肪族」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、アルカン、アルケン及びアルキンならびにその置換誘導体などの非芳香族基が含まれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「脂環式」という用語は、環式脂肪族基を指す。
【0029】
「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「複素環式」という用語は、環中に1個または複数のヘテロ原子(例えば、N)を含む飽和または不飽和環式基を指す。
【0031】
「誘導体」という用語は、本明細書で使用される場合、実体の任意の化学的改変を含む。そのような化学的改変の例示は、ハロゲン基、アルキル基、アシル基またはアミノ基による水素の置き換えである。
【0032】
本明細書で使用される場合、「医薬の製造」という語句は、直接的に医薬として、または式Iの化合物の1つまたは複数を含む医薬の製造のいずれかの段階での式Iの化合物の1つまたは複数の使用を含む。
【0033】
式Iの化合物の一部は、単一の立体異性体、ラセミ体、及び/または鏡像異性体及び/またはジアステレオ異性体の混合物として存在し得る。すべてのそのような単一の立体異性体、ラセミ体及びその混合物が本開示の範囲内に包含される。ジアステレオ異性体、鏡像異性体、及び幾何異性体などの異性体型は、当業者に公知の物理的及び/または化学的方法により分離することができる。
【0034】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、式Iの化合物の所望の生物学的活性を維持している塩を指し、薬学的に許容される酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。式Iの化合物の適切な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸から、または有機酸から調製することができる。そのような無機酸の例は、塩酸、硫酸及びリン酸である。適切な有機酸は、有機酸の脂肪族、脂環族、芳香族、複素環式カルボン酸及びスルホン酸群から選択することができ、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸である。薬学的に許容される塩についての追加の情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, Mack Publishing Co, Easton PA 1995において見い出され得る。
【0035】
「溶媒和物」という用語は、適切な溶媒での溶媒和から生じる式Iの化合物のいずれかの形態を指す。そのような形態は、例えば、溶媒と溶解化合物との間で形成され得る結晶性溶媒和物または複合体であり得る。
【0036】
「プロドラッグ」という用語は、通常は代謝手段により(例えば、加水分解、還元または酸化により)、生体系内で式Iの化合物に変換される化合物を意味する。例えば、ヒドロキシル基を含有する式Iの化合物のエステルプロドラッグは、in vivoでの加水分解により、式Iの化合物に変換され得る。ヒドロキシル基を含有する式Iの化合物の適切なエステルは、例えば、酢酸エステル、クエン酸エステル、乳酸エステル、酒石酸エステル、マロン酸エステル、シュウ酸エステル、サリチル酸エステル、プロピオン酸エステル、コハク酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、メチレン-ビス-P-ヒドロキシナフトエ酸エステル、ゲンチシン酸エステル、イセチオン酸ゲンチシン酸、ジ-p-トルオイル酒石酸エステル、メタンスルホン酸エステル、エタンスルホン酸エステル、ベンゼンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、シクロヘキシルスルファミン酸エステル及びキナ酸エステルであり得る。別の例として、カルボキシ基を含有する式Iの化合物のエステルプロドラッグは、in vivoでの加水分解により、式Iの化合物に変換可能であり得る。エステルプロドラッグの例には、Leinweber FJ, Drug Metab Rev 18:379-439 (1987)により記載されたものが含まれる。同様に、アミノ基を含有する式Iの化合物のアシルプロドラッグは、in vivoで加水分解により式Iの化合物に変換され得る。アミンを含む、これら及び他の官能基のためのプロドラッグの例は、Prodrugs: challenges and rewards, Valentino J Stella (ed), Springer, 2007において提供されている。
【0037】
固体である式Iの化合物の場合には、化合物(またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ)は種々の結晶性または多形形態で存在し得て、それらすべてが、本開示の範囲内に包含されることは、当業者により理解されるであろう。
【0038】
「治療有効量」または「有効量」という用語は、有利なまたは所望の臨床結果をもたらすために十分な量である。治療有効量を1回または複数の投与で投与することができる。典型的には、治療有効量は、疾患もしくは状態を処置するために、または別段に、例えば、がんまたは別の増殖性細胞疾患もしくは状態などの疾患または状態を緩和する、寛解する、安定化する、逆転させる、その進行を減速させる、または遅延させるために十分である。例に過ぎないが、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの治療有効量は、1日あたり約0.1から約250mg/体重kg、より好ましくは1日あたり約0.1から約100mg/体重kg、さらにより好ましくは1日あたり約0.1及び約25mg/体重kgを含んでよい。しかしながら、前記にも関わらず、治療有効量が変動し得て、特定の化合物(またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ)の活性、特定の化合物(またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ)の作用の代謝安定性及び長さ、年齢、体重、性別、健康、投与経路及び時間、特定の化合物(またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ)の排泄速度、ならびに例えば、処置されているがんまたは他の増殖性細胞疾患もしくは状態の重症度を含む様々な因子に依存することは当業者に理解されるであろう。
【0039】
一部の実施形態では、Rは、H、アルキル(例えば、C1~6アルキル、例えば、C1~3アルキル、例えば、メチル、エチル及びC(CHまたはC3~6シクロアルキル、例えば、シクロペンチル)、または複素環式(例えば、1または2個のN、OまたはSヘテロ原子を含む飽和または不飽和5または6員環式基)である。最も好ましくは、Rは、H、C1~3アルキル(例えば、メチル)またはC3~6シクロアルキル、例えば、シクロペンチルである。
【0040】
一部の実施形態では、Rは、H、アルキル(例えば、C1~6アルキルまたは、好ましくは、C1~3アルキル、例えば、メチルまたはエチル)、CNまたはハロゲン(好ましくは、F)である。
【0041】
一部の実施形態では、Rは、アルキル(例えば、C1~6アルキルまたは、好ましくは、C1~3アルキル、例えば、メチル、エチル及びCH(CH)、NH、NH-アルキル、例えば、NH-メチル及びNH-エチル、N(アルキル)、例えば、N(C1~3アルキル)(例えば、N(CH、N(CHCH及びN(CH)(CHCH))、COH及びCO(C1~3アルキル)(例えば、COCH)から選択される1個または複数の基で任意選択で置換されている複素環式基(好ましくは、1個、しかし、より好ましくは2個のNヘテロ原子を含む飽和または不飽和5または6員環式基)である。
【0042】
一部の特定の実施形態では、Rは、下記:
【化3】

から選択される。
【0043】
一部の実施形態では、nは、0、1または2である。nが1または2である場合、それにより、前記化合物は、ピリジン環の4位に炭素原子へのアルキル橋(例えば、-CH-または-CHCH-橋)を備えている。
【0044】
特に好ましい一実施形態では、前記化合物は:
5-(2-((5-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-4-メチル-5-(2-((5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)チアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-5-(2-((5-(4-エチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
2-((5-(4-アセチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-4-(4-メチル-2-(メチルアミノ)チアゾール-5-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル;
N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N-シクロペンチル-4-メチルチアゾール-2-アミン;
N-シクロペンチル-5-(5-フルオロ-2-((5-モルホリノピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-(エチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(2-((5-(4-(エチル(メチル)アミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(5-フルオロ-2-((5-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;
5-(5-フルオロ-2-((5-((4-イソプロピルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン;または
5-(2-((5-(4-(ジエチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン
である。
【0045】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、標準的な細胞傷害性アッセイにより測定されるとおり、ヒト細胞系において抗増殖活性を示す。好ましくは、前記化合物は、標準的な細胞生存アッセイにより測定されるとおり、5μM未満、なおより好ましくは、1μM未満のIC50値を示す。より好ましくはさらに、前記化合物は、0.5μM未満のIC50値を示す。
【0046】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、当業者に周知の任意の標準アッセイにより測定されるとおり、1種または複数のプロテインキナーゼを阻害する。好ましくは、前記化合物は、本明細書において後記の実施例2に記載のキナーゼアッセイにより測定されるとおり、1μM未満または0.5μM未満、より好ましくはさらに、0.1μM未満のIC50値を示す。
【0047】
第1の態様の方法において使用するための式Iの化合物の特定の例を下の表1に示す。
【表1-1】

【表1-2】
【0048】
式Iの化合物(ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物及びプロドラッグ)は、がんまたは別の増殖性疾患もしくは状態の処置のために、1種または複数の追加の作用物質(複数可)と組み合わせて投与することができる。例えば、1つよりも多いがんシグナル伝達経路を同時に阻害して、がん細胞を、抗がん治療(例えば、他の抗がん作用物質、化学治療、放射線治療またはその組合せでの処置)に対してより感受性にするために、前記化合物を他の抗がん作用物質と組み合わせて使用することができる。したがって、特に、そのような抗がん作用物質がBBBを透過することができる場合には、式Iの化合物を、次のカテゴリーの抗がん作用物質のうちの1つまたは複数と組み合わせて使用することができる:
・ 臨床腫瘍学において使用されるような他の抗増殖/抗新生物薬及びその組合せ、例えば、アルキル化薬(例えば、カルムスチン、プロカルバジン、ロムスチン、ビンクリスチン、及びTMZ);代謝拮抗薬(例えば、ゲムシタビン及び抗葉酸薬、例えば、5-フルオロウラシル及びテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、フルダラビン及びヒドロキシ尿素);抗腫瘍抗生物質(例えば、アンスラサイクリン、例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン及びミトラマイシン);細胞分裂抑制薬(例えば、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビンならびにタキソール及びタキソテールを含むタキソイドならびにポロキナーゼ阻害薬);及びトポイソメラーゼ阻害薬(例えば、エピポドフィロトキシン、例えば、エトポシド及びテニポシド、アムサクリン、トポテカン及びカンプトテシン);
・ 細胞増殖抑制作用物質、例えば、抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン及びヨードキシフェン)、抗アンドロゲン(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド及びシプロテロン酢酸塩)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、ロイプロレリン及びブセレリン)、プロゲストゲン(例えば、メゲストロール酢酸塩)、アロマターゼ阻害薬(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール及びエキセメスタンとして)及び5α-レダクターゼの阻害薬、例えば、フィナステリド;
・ 抗侵襲作用物質(例えば、c-Srcキナーゼファミリー阻害薬、例えば、4-(6-クロロ-2,3-メチレンジオキシアニリノ)-7-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]-5-テトラヒドロピラン-4-イルオキシキナゾリン(AZD0530;国際特許公開番号WO01/94341)、N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-{6-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]-2-メチルピリミジン-4-イルアミノ}チアゾール-5-カルボキサミド(ダサチニブ)及びボスチニブ(SKI-606))、及びマリマスタットを含むメタロプロテイナーゼ阻害薬、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体機能の阻害薬またはヘパラナーゼに対する抗体;
・ 成長因子機能の阻害薬(例えば、成長因子抗体及び成長因子受容体抗体、例えば、抗erbB2抗体トラスツズマブ(Herceptin(商標))、抗EGFR抗体パニツムマブ、抗erbB1抗体セツキシマブ(Erbitux、C225)ならびにStern et al. Critical reviews in oncology/haematology, 2005, Vol. 54, pp11-29により開示されている任意の成長因子または成長因子受容体抗体)。そのような阻害薬には、チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、上皮成長因子ファミリーの阻害薬(例えば、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害薬、例えば、N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(エルロチニブ、OSI-774)及び6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)-キナゾリン-4-アミン(CI 1033)、erbB2チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、ラパチニブ);肝細胞成長因子ファミリーの阻害薬;インスリン成長因子ファミリーの阻害薬;血小板由来成長因子ファミリーの阻害薬、例えば、イマチニブ及び/またはニロチニブ(AMN107);セリン/トレオニンキナーゼの阻害薬(例えば、Ras/Rafシグナル伝達阻害薬、例えば、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、チピファルニブ(R115777)及びロナファルニブ(SCH66336)を含むファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬)、MEK及び/またはAKTキナーゼを介した細胞シグナル伝達の阻害薬、c-kit阻害薬、ablキナーゼ阻害薬、PI3キナーゼ阻害薬、Plt3キナーゼ阻害薬、CSF-1Rキナーゼ阻害薬、IGF受容体(インスリン様成長因子)キナーゼ阻害薬;オーロラキナーゼ阻害薬(例えば、AZD1152、PH739358、VX-680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX-528及びAX39459)ならびにサイクリン依存性キナーゼ阻害薬、例えば、CDK4及び/またはCDK6阻害薬(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ及びアベマシクリブ)も含まれる;
・ 抗脈管形成作用物質、例えば、血管内皮成長因子の作用を阻害するもの(例えば、抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ(Avastin(商標))及びVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬、例えば、バンデタニブ(ZD6474)、バタラニブ(PTK787)、スニチニブ(SU11248)、アキシチニブ(AG-013736)、パゾパニブ(GW786034)及び4-(4-フルオロ-2-メチルインドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-(3-ピロリジン-1-イルプロポキシ)キナゾリン(AZD2171;国際特許公開番号WO00/47212内の実施例240)、国際特許公開番号WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856及びWO98/13354に開示のものなどの化合物、ならびに他の機構により作用する化合物(例えば、リノミド、インテグリンαvβ3機能及びアンジオスタチンの阻害薬);
・ 血管損傷作用物質(vascular damaging agent)、例えば、コンブレスタチンA4ならびに国際特許公開番号WO99/02166、WO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434及びWO02/08213に開示の化合物;
・ エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えば、ジボテンタン(ZD4054)またはアトラセンタン;
・ アンチセンス治療、例えば、前記で列挙されている標的を対象とするもの、例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンス;
・ 例えば、異常な遺伝子、例えば、異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2を置き換えるアプローチ、GDEPT(遺伝子指向酵素プロドラッグ治療)アプローチ、例えば、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を使用するもの、及び化学治療または放射線治療、例えば、多剤耐性遺伝子治療に対する患者忍容性を増大させるアプローチを含む遺伝子治療アプローチ;ならびに
・ 例えば、サイトカイン、例えば、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子を用いるトランスフェクションなどの患者腫瘍細胞の免疫原性を増大させるex vivo及びin vivoアプローチを含む免疫治療アプローチ、T細胞アネルギーを低下させるアプローチ、トランスフェクトされた免疫細胞、例えば、サイトカイン-トランスフェクトされた樹状細胞を使用するアプローチ、サイトカイン-トランスフェクトされた腫瘍細胞系を使用するアプローチ及び抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチ。
【0049】
一部の実施形態では、式Iの化合物(ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物及びプロドラッグ)をTMZと組み合わせて投与することができる(及び/または放射線と共に用いる)。神経膠芽腫異種移植片を使用して、アベマシクリブまたはパルボシクリブ(両方ともCDK4/6阻害薬)をTMZまたは放射線と共に使用することにより、DNA二本鎖切断修復が阻害され、かつアポトーシスが増大することが実証されている(Raub TJ et al. Drug Metab Dispos 43:1360-1371, 2015;及びMichaud K et al. Cancer Res 8:70, 2010)。パルボシクリブは、mTOR阻害薬、エベロリムスと組み合わせた場合に、神経膠芽腫異種移植片に対して相乗作用する(Olmez I et al. Clinic Cancer Res DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-17-0803, 2018)。パルボシクリブは、腫瘍細胞抗原及び抗腫瘍T細胞応答を増大させることも示されており、このことは、CDK4及び/またはCDK6阻害の免疫効果が存在することを示唆している(Deng J et al. Cancer Discovery DOI: 10.1158/2159-8290.CD-17-0915, 2018)。他の実施形態では、式Iの化合物(ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物及びプロドラッグ)は、PI3K、mTOR及び/またはMEKの阻害薬から選択されるキナーゼ阻害薬と組み合わせて投与することができる。
【0050】
他の抗がん作用物質と組み合わせて使用される場合、式Iの化合物及び他の抗がん作用物質を、同じ医薬組成物で、または別々の医薬組成物で投与することができる。別々の医薬組成物で投与される場合、前記化合物及び他の抗がん作用物質を同時に、または連続的に任意の順序で(例えば、数秒または数分またはさらに数時間(例えば、2~48時間)以内に)投与することができる。
【0051】
式Iの化合物を典型的には、ヒト対象において、がんまたは別の増殖性細胞疾患もしくは状態の処置に適用する。しかしながら、対象は、例えば、家畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ及びヤギ)、コンパニオン動物(例えば、イヌ及びネコ)及びエキゾチック動物(例えば、非ヒト霊長類、トラ、ゾウなど)から選択してもよい。
【0052】
本開示に従って処置され得るCNSのがんならびに他の増殖性細胞疾患及び状態には、神経膠芽腫(例えば、GBM)、髄芽細胞腫、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫を含む脳及び脊髄がん、他の悪性CNS腫瘍、例えば、星状細胞腫、上衣腫(ependymonas)、乏突起膠腫または転移性脳腫瘍)、ならびにCNSの良性新生物、例えば、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄膜腫及び頭蓋咽頭腫が含まれる。
【0053】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物を、例えば、GBMを含むCDK4及び/またはサイクリンDの過剰発現により特徴づけられるものから選択される、CNSのがんならびに他の増殖性細胞疾患及び状態を処置するために使用する。CDK4及び/またはサイクリンD過剰発現は、例えば、当業者に周知の技術のいずれか(例えば、qPCRなどの定量的増幅技術)を使用して、適切な試料において、CDK4及び/またはサイクリンDをコードするmRNAの量を評価することにより決定することができる。
【0054】
一部の好ましい実施形態では、式Iの化合物を、例えば、髄芽腫を含む、CDK6及び/またはサイクリンDの過剰発現により特徴づけられるものから選択されるCNSのがんならびに他の増殖性細胞疾患及び状態(Tadesse et al., Targeting CDK6 in Cancer: State of the Art and New Insights in pressに概説されている)を処置するために使用する。CDK6及び/またはサイクリンD過剰発現は、例えば、当業者に周知の技術のいずれか(例えば、qPCRなどの定量的増幅技術)を使用して、適切な試料において、CDK6及び/またはサイクリンDをコードするmRNAの量を評価することにより決定することができる。
【0055】
式Iの化合物は、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/または添加剤を用いて医薬組成物に製剤化することができる。適切な担体及び希釈剤の例は、当業者に周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA 1995に記載されている。本明細書に記載の医薬組成物の様々な異なる形態のために適切な添加剤の例は、Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見い出すことができる。適切な担体の例には、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロール及び水が含まれる。意図されている投与経路及び標準的な薬務に関連して、担体、希釈剤及び/または添加剤を選択することができる。
【0056】
式Iの化合物を含む医薬組成物は、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤及び可溶化剤をさらに含んでよい。適切な結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、流動性ラクトース、ベータ-ラクトース、トウモロコシ甘味剤、天然及び合成ゴム、例えば、アラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが含まれる。適切な滑沢剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。防腐剤、安定化剤、色素及び香味剤も医薬組成物に供給することができる。防腐剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。抗酸化剤及び懸濁化剤を使用することもできる。
【0057】
式Iの化合物を含む医薬組成物を経口、直腸、膣、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、髄腔内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、経鼻、頬側または舌下投与経路に適応させることができる。経口投与では、圧縮錠剤、丸剤、錠剤、ゲル剤(gellule)、滴剤、及びカプセル剤を特に使用することができる。他の投与形態では、医薬組成物は、静脈内、動脈内、髄腔内、皮下、皮内、腹腔内または筋肉内注射することができ、かつ滅菌または滅菌可能な溶液から調製される液剤または乳剤を含んでよい。式Iの化合物を含む医薬組成物は、坐剤、膣坐剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、噴霧剤、液剤または散布剤の形態であってもよい。医薬組成物は、単位剤形で(すなわち、単位用量を、または複数もしくはその副単位の単位用量を含有する別個のポーションの形態で)製剤化することができる。
【0058】
式Iの化合物は、例えば、適切なその酸付加塩または塩基塩を含む薬学的に許容される塩として提供することができる。適切な薬学的塩の概説は、Berge et al., J Pharm Sci 66:1-19 (1977)において見い出すことができる。塩は、例えば、強無機酸、例えば、鉱酸(例えば、硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸)と、強有機カルボン酸、例えば、非置換であるか、もしくは(例えば、ハロゲンにより)置換されている1~4個の炭素原子のアルカンカルボン酸、例えば、酢酸と、飽和もしくは不飽和ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテトラフタル酸)と、ヒドロキシカルボン酸(例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸)と、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)と、安息香酸と、または有機スルホン酸(例えば、非置換であるか、または例えば、ハロゲンにより置換されている(C~C)-アルキル-またはアリール-スルホン酸)、例えば、メタン-またはp-トルエンスルホン酸)と共に形成される。
【0059】
式Iの化合物は、それらの様々な結晶形、多形及び無水/含水形で供給することができる。これに関して、そのような化合物の合成調製において使用される溶媒からの精製及びまたは単離方法をやや変化させることにより、そのような形態のいずれかで、化学化合物を単離することができることは当業者に周知である。
【0060】
式Iの化合物を合成する方法は、既に記載されている(例えば、WO2017/020065を参照されたい)。一部の実施形態では、式Iの化合物は、次の一般合成スキーム:
【化4】

を適合させることにより合成することができ、その際、一般反応条件は:(a)DMF-DMAまたはBredereck試薬、還流;(b)Select Fluor、MeOH;(c)EtN、HgCl、DCM;(d)TFA/DCM(1:1)、還流;(e)A、B、NaOH、2-メトキシエタノール、マイクロ波及び(f)Pddba、キサントホス、t-BuONa、ジオキサン、マイクロ波である。
【0061】
上のスキーム1の合成方法の記載に関連して、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験期間及び後処理手順を含む提示されている反応条件はすべて、容易に選択することができることは、当業者に理解されるであろう。さらに、分子の様々な部分に存在する官能基が、利用される試薬及び反応条件と適合性である必要があることは当業者に理解されるであろう。
【0062】
必要な出発物質は、有機化学の標準的な手順により得ることができる。そのような出発物質の調製は、次の代表的なプロセスバリアントと併せて、本明細書において後記の実施例内で記載する。別法では、必要な出発物質は、当業者の通常の技能の範囲内である例示の手順と類似の手順により得ることができる。さらに、化合物の合成中に、またはある特定の出発物質の合成中に、ある特定の置換基を保護して、それらの不所望の反応を防ぐことが望ましいことがあることは分かるであろう。当業者は、そのような保護が必要とされる場合、及びそのような保護基を導入し、後で除去し得る方法を容易に理解するであろう。保護基の例は、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis by Theodora Green(出版社:John Wiley & Sons)に記載されている。保護基は、該当する保護基の除去に適切であると当業者に周知の任意の簡便な方法により除去することができ、そのような方法は、分子内の他の箇所の基の最小の侵害で、保護基の除去を行うように選択する。したがって、反応物が、例えば、アミノ、カルボキシルまたはヒドロキシルなどの基を含むならば、本明細書において記述の反応のいくつかにおいて、基を保護することが望ましいことがある。
【0063】
加えて、当業者は、スキーム1に示されている式Aまたは式Bの化合物のカップリング反応において使用するために適した反応条件を選択することができるであろう。しかしながら、典型的には、反応を無水条件下で、かつ不活性雰囲気、例えば、アルゴンまたは窒素の存在下で実施する。反応を高温、例えば、80~180℃の範囲内で、例えば、20分から48時間の適切な時間にわたって実施することもできる。適切には、反応をマイクロ波加熱下、例えば、80~180℃で、20分から1.5時間にわたって実施する。
【0064】
当業者に周知の技術を使用して、生じた化合物を単離及び精製することができる。
【0065】
本開示の方法及び使用を、次の非限定的実施例及び添付の図面を参照して、本明細書においてさらに後記する。
【実施例
【0066】
実施例1 代表的な化合物の合成
一般
H及び13C NMRスペクトルは、300Kで、Bruker AVANCE III 500分光計(500MHzでH)で記録した。H NMRスペクトルは、残留非重水素化溶媒(またはテトラメチルシラン)のHシグナルを基準とした。高分解能質量スペクトルはAB SCIEX TripleTOF(登録商標)5600質量分析計で記録し、すべての試料のイオン化は、ESIを使用して実施した。化合物の純度を分析用HPLCにより決定したところ、95%超であった。CBM-20Aコミュニケーションバスモジュール、DGU-20A5R脱気ユニット、LC-20AD液体クロマトグラフポンプ、SIL-20AHTオートサンプラー、SPD-M20Aフォトダイオードアレイ検出器、CTO-20Aカラムオーブン及びPhenomenex Kinetex 5u C18 100A 250mm×4.60mmカラムを備えたShimadzu Prominence UFLC(UltraFast Liquid Chromatograph)システムで、方法A(1mL/分の流速で、7分にわたってFA0.1%を含有するMeOH5%から95%への勾配、続いて、13分にわたってFA0.1%を含有するMeOH95%)、方法B(1mL/分の流速で、7分にわたってFA0.1%を含有するMeCN5%から95%への勾配、続いて、13分にわたってFA0.1%を含有するMeCN95%)を使用して、分析用HPLCを実施した。
【0067】
5-(2-((5-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン(1):
2-メトキシエタノール(3mL)中の粗製1-(5-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(524mg、2.00mmol)の溶液に、((E)-3-(ジメチルアミノ)-2-フルオロ-1-(4-メチル-2-(メチルアミノ)チアゾール-5-イル)プロパ-2-エン-1-オン(243mg、1.00mmol)及びNaOH(80.0mg、2.00mmol)を添加した。反応混合物を180℃で1時間にわたってマイクロ波照射下で加熱し、室温に冷却し、次いで、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、32%アンモニア0.5mlを常に添加しながらDCMからDCM:MeOH=90:10へ傾斜)により精製して、1を茶色の固体(76mg、17.2%)として得た。H NMR (DMSO-d) δ 1.50 (q, 2H, J 11.0), 1.84 (d, 3H, J 11.0), 2.21 (s, 7H), 2.47 (s, 3H, thiazole-CH), 2.64 (t, 2H, J 11.0), 2.86 (t, 3H, J 3.5), 3.63 (d, 1H, J 11.0), 7.39 (app d, 1H, J 7.0), 7.92 (d, 1H, J 9.0), 7.98 (s, 1H), 8.10 ( 1H, J 4.0), 8.41 (s, 1H), 9.43 (s, 1H). HRMS (ESI): m/z 443.2136 [M+H]
【0068】
N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン(2):
ジオキサン(3mL)中の5-(2-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N-シクロペンチル-4-メチルチアゾール-2-アミン(200mg、0.68mmol)の溶液に、1-((6-ブロモピリジン-3-イル)メチル)-4-エチルピペラジン(233.mg、0.82mmol)、Pd2dba3(31mg、0.034mmol)、キサントホス(41mg、0.07mmol)及びt-BuONa(98mg、1.02mmol)を添加し、マイクロ波照射下で、150℃で1時間にわたって加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMからDCM:MeOH=93:7へ傾斜)により精製して、2をオレンジ色の固体(100mg、29%)として得た。H NMR (DMSO-d) δ 0.99 (t, 3H, J 7.0), 1.49-1.59 (m, 4H), 1.64 - 1.72 (m, 2H), 1.90 - 1.97 (m, 2H), 2.38 (s br, 10H), 2.48 (d, 3H, J 2.5), 3.42 (s, 2H), 3.95 - 3.98 (m, 1H), 7.64 (dd, 1H, J 8.5 & 2.0), 8.10 (d, 1H, J 8.5), 8.16 (d, 1H, J 2.0), 8.27 (d, 1H, J 7.0), 8.46 (d, 1H, J 3.5), 9.77 (s, 1H). HRMS (ESI): m/z 497.2601 [M+H]
【0069】
N-シクロペンチル-4-メチル-5-(2-((5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)チアゾール-2-アミン(3):
2-メトキシエタノール(3mL)中の粗製1-(5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(441mg、2.00mmol)及び(E)-1-(2-(シクロペンチルアミノ)-4-メチルチアゾール-5-イル)-3-(ジメチルアミノ)プロパ-2-エン-1-オン(279mg、1.00mmol)の混合物に、NaOH(80.0mg、2.00mmol)を添加した。反応混合物を180℃で、マイクロ波照射下で1時間にわたって加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMからDCM:MeOH=92:8へ傾斜)により精製して、DCM及びMeOHで再結晶化させて、3を暗黄色の固体(70.0mg、16%)として得た。融点210~213℃。H NMR (DMSO-d) 1.49-1.68 (m, 7H), 1.89-1.94 (m, 2H), 2.46 (s, 3H), 2.85 (t, 4H, J 4.5), 3.02 (t, 4H, J 5.0), 3.98 (m, 1H), 6.90 (d, 1H, J 5.5), 7.36 (dd, 1H, J 9.0 & 3.0), 7.98 (d, 1H, J 3.0), 8.07 (d, 1H, J 9.0), 8.18 (d, 1H, J 7.0), 8.33 (d, 1H, J 5.5), 9.33 (s, 1H). HRMS (ESI): m/z 437.2222 [M+H]
【0070】
N-シクロペンチル-5-(2-((5-(4-エチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン(4):
2-メトキシエタノール(3mL)中の粗製1-(5-(4-エチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(496mg、2.00mmol)及び(E)-1-(2-(シクロペンチルアミノ)-4-メチルチアゾール-5-イル)-3-(ジメチルアミノ)プロパ-2-エン-1-オン(279mg、1.00mmol)の混合物に、NaOH(80.0mg、2.00mmol)を添加した。反応混合物を180℃で、マイクロ波照射下で1時間にわたって加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMからDCM:MeOH=96:4に傾斜)により精製し、MeOHから再結晶化させて、4を黄色の固体(117mg、25%)として得た。H NMR (CDCl) δ 1.14 (t, 3H, J 7.0), 1.56-1.76 (m, 6H), 2.06-2.12 (m, 2H), 2.49 (q, 2H, J 7.5), 2.54 (s, 3H), 2.64 (s, 3H), 3.19 (t, 4H, J 4.5), 3.14 (t, 4H, J 5.0), 3.86 (app s, 1H), 5.77 (s, 1H), 6.84 (d, 1H, J 5.0), 7.34 (dd, 1H, J 9.0 & 3.0), 7.94 (d, 1H, J 3.0), 7.94 (s, 1H), 8.01 (d, 1H, J 3.0), 8.26 (d, 1H, J 9.0), 8.33 (d, 1H, J 5.5). HRMS (ESI): m/z 465.2541 [M+H]
【0071】
2-((5-(4-アセチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-4-(4-メチル-2-(メチルアミノ)チアゾール-5-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル(5):
2-メトキシエタノール(4mL)中の粗製1-(5-(4-アセチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(315mg、1.20mmol)の溶液に、tert-ブチル(E)-(5-(2-シアノ-3-(ジメチルアミノ)acryloyl)-4-メチルチアゾール-2-イル)(メチル)カルバメート(350mg、1.00mmol)及びNaOH(82.0mg、2.40mmol)を添加した。反応混合物を180℃で90分間にわたってマイクロ波照射下で加熱し、室温に冷却し、次いで、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、32%水性アンモニアを3%まで連続添加しながら、DCMからDCM:MeOH=90:10へ傾斜)により精製した。固体をDCM及びMeOHで洗浄し、次いで、濾過して、5を淡黄色の固体(157mg、35%)として得た。H NMR (DMSO-d) δ 2.04 (s, 3H), 2.40 (s, 3H), 2.87 (s, 3H), 3.10 (t, 2H, J 5.0), 3.16 (t, 2H, J 5.0), 3.58 (t, 4H, J 5.0), 7.46 (dd, 1H, J 9.5 & 3.0), 7.90 (d, 1H, J 9.0), 8.06 (d, 1H, J 3.0), 8.26 (q, 1H, J 3.0), 8.75 (s, 1H), 10.33 (s, 1H). HRMS (ESI): m/z 450.1844 [M+H]
【0072】
N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン(6):
ジオキサン(3mL)中の5-(2-アミノピリミジン-4-イル)-N-シクロペンチル-4-メチルチアゾール-2-アミン(275mg、1.00mmol)の溶液に、1-((6-ブロモピリジン-3-イル)メチル)-4-エチルピペラジン(341mg、1.2mmol)、Pddba(45.8mg、0.05mmol)、キサントホス(58mg、0.1mmol)及びt-BuONa(144mg、1.5mmol)を添加し、マイクロ波照射下で、150℃で1時間にわたって加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、DCMからDCM:MeOH:NHOH=9:1:0.3へ傾斜)により精製し、DCM及びMeOHで再結晶化させて、6を白色の固体(200mg、42%)として得た。H NMR (CDCl) δ 1.09 (t, 3H, J 7.0), 1.58 - 1.76 (m, 6H), 2.08 - 2.14 (m, 2H), 2.43 (q, 2H, J 7.0, CHCH), 2.55 (s br, 11H), 3.48 (s, 2H), 3.86 - 3.92 (m, 1H), 5.42 (d, 2H, J 7.0), 6.90(d, 1H, J 5.5), 7.68 (dd, 1H, J 9.0 & 2.5), 7.89 (s, 1H), 8.19 (d, 1H, J 2.0), 8.35 - 8.38 (m, 2H). HRMS (ESI): m/z 479.2703[M+H]
【0073】
5-(2-((5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン(7):
1-(5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(702mg、3.00mmol)及び(469mg、2.00mmol)及び((E)-3-(ジメチルアミノ)-2-フルオロ-1-(4-メチル-2-(メチルアミノ)チアゾール-5-イル)プロパ-2-エン-1-オン(243mg、1.00mmol)を反応させることにより、化合物7をオレンジ色の固体(40.0mg、10%)として得た。H NMR (DMSO-d6) δ 1.75-1.80 (m, 2H), 2.45 (d, 3H, J 2.0), 2.62 (t, 2H, J 6.0), 2.85 (t, 2H, J 5.5), 3.45 (t, 2H, J 5.0), 3.53 (t, 2H, J 6.0), 7.13 (dd, 1H, J 9.0 & 3.0), 7.78 (s, 1H), 7.79 (d, 1H, J 4.5), 8.08 (q, 1H, J 4.5), 8.37 (d, 1H, J 3.5), 9.21 (s, 1H). HRMS (ESI): m/z 415.1821 [M+H]
【0074】
5-(2-((5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-N-シクロペンチル-4-メチルチアゾール-2-アミン(8):
2-メトキシエタノール(5mL)中の1-(5-(4-アミノピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(702mg、3.00mmol)及び(E)-1-(2-(シクロペンチルアミノ)-4-メチルチアゾール-5-イル)-3-(ジメチルアミノ)プロパ-2-エン-1-オン(558mg、2.00mmol)の混合物に、NaOH(160.0mg、4.00mmol)を添加した。反応混合物を180℃で、マイクロ波照射下で2時間にわたって加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィーにより精製して、8を黄色の固体(90mg、10%)として得た。H NMR (CDCl) δ 1.50-1.77 (m, 10H), 1.95 (d, 2H, J 10.5), 2.07-2.13 (m, 2H), 2.54 (s, 3H), 2.75-2.85 (m, 3H), 3.53 - 3.56 (m, 2H), 3.85 - 3.91 (m, 1H), 5.43 (d, J 5.0, 1H), 6.84 (d, 1H, J 5.5), 7.34 (dd, 1H, J 9.0 & 3.0), 7.75 (s, 1H), 8.00 (d, 1H, J 3.0), 8.25 (d, 1H, J 9.0), 8.32 (d, 1H, J 5.5). HRMS (ESI): m/z 451.2415 [M+H]
【0075】
N-シクロペンチル-5-(2-((5-モルホリノピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-(トリフルオロメチル)チアゾール-2-アミン(9):
2-メトキシエタノール(3mL)中の1-(5-モルホリノピリジン-2-イル)グアニジントリフルオロアセテート(442mg、2.00mmol)及び(E)-1-(2-(シクロペンチルアミノ)-4-メチルチアゾール-5-イル)-3-(ジメチルアミノ)-2-フルオロプロパ-2-エン-1-オン(297mg、1.00mmol)の混合物に、NaOH(80.0mg、2.00mmol)を添加した。反応混合物を180℃で、マイクロ波照射下で、1時間にわたって加熱し、室温に冷却し、減圧下で濃縮した。残渣をクロマトグラフィーにより精製して、9を茶色の固体(120mg、26%)として得た。H NMR (DMSO-d) δ 1.50-1.57 (m, 4H), 1.66 - 1.69 (m, 2H), 1.90 - 1.95 (m, 2H), 2.47 (d, 1H, J 2.5), 3.09 (t, 4H, J 5.0), 3.75 (t, 4H, J 5.0), 3.96 (m, 1H), 7.42 (dd, 1H, J 9.0 & 3.0), 7.96 (d, 1H, , J 9.0), 7.98 (d, 1H, J 3.0), 8.24 (d, 1H, J 7.0), 8.41 (d, 1H, J 7.0), 9.52(s, 1H). HRMS (ESI): m/z 456.1976 [M+H]
【0076】
実施例2 生物学的活性
キナーゼアッセイ
Eurofins Pharma DiscoveryまたはReaction Biology Corporation Kinase Profilerサービスを使用して、放射測定アッセイ(RIA)によりCDK及び他のキナーゼの阻害を測定した。CDK4/サイクリンD1、CDK6/サイクリンD3及びCDK9/T1の阻害を、ADP Glo Kinaseアッセイ(Promega Corporation、Madison WI、米国)を使用して社内でも決定した。簡単に述べると、CDK4/サイクリンD1及びCDK6/サイクリンD3のキナーゼ反応を、キナーゼ反応緩衝液(40nM TrisベースpH7.5、20mM MgCl、0.4mM DTT)、0.1mg/ml BSA及びRB-CTF基質(網膜芽細胞腫タンパク質1 C末端画分)を用いて行った。CDK9/サイクリンT1では、キナーゼ反応を、標準的なアッセイ緩衝液及びKinase Dilution Buffer及びRBER-IRStide基質を用いて行った。試験化合物について、10の濃度(10μMから0.5nMまで)のために、1:3の系列希釈物を調製した。ATPを添加することによりキナーゼ反応を開始し、40分間にわたって37℃でインキュベートし、次いで、ADP Glo試薬10μLを添加することにより停止した。室温(RT)、暗所で、40分間にわたってインキュベートした後に、1ウェルあたりキナーゼ検出試薬20μLを添加し、40分間にわたってインキュベートした。EnVision Multilabelプレートリーダー(PerkinElmer、Buckinghamshire、英国)を使用して、ルミネセンスを測定した。それぞれ、CDKキナーゼの存在及び非存在下で陽性及び陰性対照を行った。4-パラメーターロジスティック非線形回帰モデルをGraphpadプリズム(Version 6.0)で用いて、50%阻害(IC50)値を計算した。それぞれのキナーゼについてK(ATP)及びIC50値から、見掛け阻害定数(K)値を計算した。代表的な化合物の結果を表2に示す。
【表2】
【0077】
細胞培養
この実施例で使用される3種のGBM細胞系すべて、すなわち、U87、U251及びT98Gを、10%ウシ胎児血清を含むイーグル最小必須培地(EMEM)中で、75cmフラスコ内、37℃及び5%COで培養した。いずれの実験セットアップの前にも、すべての細胞系をマイコプラズマ非含有であることを確認した。
【0078】
MTT増殖アッセイ及び組合せ研究
既に報告されているとおりに(Wang S et al., J Med Chem 47:1662-1675, 2004;及びDiab S. et al. CheMedChem 9:962-972, 2014)、実施例1からの代表的な化合物を、それぞれ固形腫瘍細胞系(GBM細胞系を含む)及び白血病細胞系での標準的なMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)及びレザズリンアッセイに掛けた。細胞増殖の50%を阻害するために必要とされる化合物濃度(GI50)を、GraphPad Prism 8(GraphPad Software、Inc.;San Diego、CA、米国)を使用して決定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0079】
組合せ研究のために、細胞を、10μLのエベロリムス(mTORの阻害薬)、アルペリシブ(PI3Kの阻害薬)またはセルメチニブ(MEKの阻害薬)と、10μLの本開示のCDK4/6阻害薬の1種とで、様々な濃度で72時間にわたって処理した。その間に、50μLのMTTを各ウェルに添加し、3.5時間のインキュベーションの後に、吸光度を550nmで、EnVision(登録商標)マルチラベルプレートリーダー(Buckinghamshire、英国)により測定した。Chou-Talalay法により、CompuSyn v 1.0(ComboSyn、NJ、米国)を用いて、結果を決定した。1未満、1及び1超の併用指数(CI)の値を、それぞれ相乗性、相加性及び拮抗性薬物相互作用と判断した(Chou TC et al., Trends Pharmacol Sci 4:450-454, 1983)。結果は図1に示されている。組合せ処置は、増殖に対して、単一作用物質処置と比べて高いレベルの阻害活性をもたらした。1未満のCIにより示されるとおり、相乗レベルの阻害の証拠が存在した。
【0080】
アポトーシスアッセイ
製造者プロトコルに従ってアネキシンV-FITCアポトーシス検出キットI(BD Pharmingen Inc.;San Diego、CA、米国)を用いて、化合物1がGBM細胞においてアポトーシスを誘導する能力を調査した。細胞ペレットを冷PBS1mLで2回洗浄し、300×gで5分間にわたって遠心した。上清を除去した後に、細胞ペレットを1×アネキシンV結合緩衝液100μL、アネキシンV-FITC3μL及びヨウ化プロピジウム染色液3μLで染色し、かつ暗所、室温で15分間にわたってインキュベートした。アポトーシス細胞のパーセンテージをCytoFLEXフローサイトメーターにより測定した。GBM U87細胞を5μMパルボシクリブ(「Palb」)または化合物1(5μMテモゾロミド(TMZ)を伴う、及び伴わない)で処理し、その後、48時間後に、細胞をアッセイした。図2の結果は、化合物1(TMZを伴う、及び伴わない)が、対照の抗がん作用物質、パルボシクリブ(TMZを伴う、及び伴わない)よりも高いレベルで、GBM細胞においてアポトーシスを誘導し得ることを示した。
【0081】
ウェスタンブロット分析
細胞を3×10の密度で、新鮮な培地10mLと共に滅菌培養皿に播種し、化合物処理の前に37℃、5%COで、終夜インキュベートした。24時間後に、細胞をPBSで収集し、300×gで5分間にわたって遠心し、溶解緩衝液100μL(25mM4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、300mM塩化ナトリウム、1.5mM塩化マグネシウム、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、20mM β-グリセロリン酸、1%Triton X-100、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、0.2mM EDTA、0.5mMジチオスレイトール、1mMオルトバナジン酸ナトリウム及び25×プロテアーゼ阻害薬カクテル)で溶解させた。タンパク質溶解産物を4℃での10分間の最大速度遠心分離の後に収集した。製造者プロトコルに従ってBio-Rad DCタンパク質アッセイキットII(Bio-Rad、Sydney、NSW、オーストラリア)を用いてBSA標準曲線を実行することにより、細胞溶解産物のタンパク質濃度を決定した。タンパク質30μgを測定し、3×ローディング緩衝液と混合し、かつ95℃で5分間にわたって、T100サーマルサイクラー(Bio-Rad)を用いて変性させた。次いで、各試料の分子質量をゲル電気泳動により、4~20%ポリアクリルアミドゲル上で、120Vで1時間にわたって分離した。溶解したタンパク質をニトロセルロース膜に移し、Tris緩衝生理食塩水中5%脱脂乳及びTween 20(TBST)で1時間にわたって室温でブロックした。抗体をTBST中5%脱脂乳中で希釈した。膜を一次抗体と共に-20℃で終夜インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、二次抗体で1時間にわたって室温で処理し、再びTBSTで4回洗浄した。次いで、Amersham ECLプライム/セレクトウエスタンブロッティング検出試薬(prime/select western blotting detection reagent;GE Healthcare、Sydney、NSW、オーストラリア)を使用して、膜での化学発光を現像した。ChemiDocTM多重化イメージングシステム(Bio-Rad)を使用して、バンド強度を決定した。使用する抗体は、Cell Signalling Technology(Danvers、MA、米国)から得た:p-Rb(S780)#9307、p-Rb(S795)#9301、p-Rb(S807/811)#8516、Rb #9309、サイクリンD1 #2978、サイクリンE #4132、CDK4 #12790、CDK6 #13331、β-アクチン #4970、HRP結合抗マウスIgG #7076及びHRP結合抗ウサギIgG #7074。図3Aは、化合物1(及びパルボシクリブ、陽性対照)がリン酸化Rbタンパク質(pRb Ser780、pRbSer795、pRb807/811)のレベルを低下させたことを示しており、その細胞CDK4/6阻害が確認される。
【0082】
in vitro腫瘍原性アッセイ
200~400細胞/ウェルの密度を12ウェルプレートに播種し、化合物処理の前に終夜インキュベートした。各ウェルを、化合物1(または陽性対照パルボシクリブ)を含有する新鮮な培地と2~3日ごとに交換した。10日後に、細胞をPBSで洗浄し、固定し、クリスタルバイオレット染色液(0.05%クリスタルバイオレット、1%ホルムアルデヒド、1%PBS、1%エタノール)で染色した;結果は図3Bに示されている。化合物1は、3種のGBM細胞系すべての成長及び増殖を阻害している。
【0083】
脳取り込みアッセイ
記載されたとおりの方法(T J Raub et al.、前出)を使用して、脳により取り込まれる実施例1からの化合物の性向(それにより、BBBを通過することができることが示される)を調査した。簡単に述べると、Balb/Cマウスに、化合物1または化合物2を静脈内投与した。投与後5分及び1時間目に、心臓血液を収集し、大脳半球を切除した。経口投与実験では、マウスに薬物を与え、血液及び大脳半球を投与後0.5、1、2、4、6、及び24時間目に収集した。ホモジナイズされた脳及び血漿中の薬物の濃度をLC-MS/MSにより測定した;脳ホモジネートにおける濃度を脳濃度に変換し(脳組織1gあたりで表される)、16μL/脳組織gの平均測定血漿体積について補正した。Centrifree(登録商標)UltrafiltrationDeviceを用いて、血漿及び脳における非結合画分を決定した。各薬物でのKp,uの値を、神経治療薬のためのセットガイドラインと比較した(Kulkarni AD et al. Expert Opin Drug Deliv 13:85-92, 2016)。等用量のパルボシクリブ及び/またはアベマシクリブを用いて、対照実験を行った。図4に示されている結果は、Kp,u:非結合薬物濃度の脳対血漿比として表されており、これは通常、次の帯域に分類される:Kp,u0.1未満、BBBを通過し得ない;Kp,u0.3~0.5、BBBに十分にアクセスする;Kp,u1.0超、BBBを自由に通過する(Kulkarni et al.、前出)。化合物1、2及び6は、対照抗がん作用物質よりも、BBBを通過する有意に高い性向を実証した。
【0084】
in vivo抗腫瘍有効性
化合物1及び化合物2を皮下異種移植片モデルにおいて、in vivo抗腫瘍活性についても調査した。簡単に述べると、U87 GBM細胞を収集し、血清非含有培地及びマトリゲルの1:1混合物に再懸濁し、5×10細胞を5~6週齢の雌のCD1 nu/nuマウスのひ腹に皮下注射した。平均腫瘍体積が150~200mmに達したら、動物を処置群に無作為化し(1群あたりn=10)、ビヒクル(水中0.5%カルボキシメチルセルロース)、化合物1または化合物2で毎日、21日間にわたって、図5A及び5Bに示されている用量で経口で処置した。マウスを毒性及び体重減少の徴候について毎日観察し、腫瘍体積を1日おきに測定した。ビヒクル処置と比較して、化合物は両方とも、いずれの明白な毒性も伴うことなく、腫瘍成長を著しく減少させた(化合物1及び化合物2のそれぞれで21日目にT/C=31%及び6%;両側t検定により決定した場合p<0.001)。
【0085】
別の研究で、U87異種移植マウス(1群あたりn=8)をそれぞれ、(1)ビヒクル、(2)化合物2(25mg/kg、PO、毎日)、(3及び4)TMZ(5mg/kgまたは50mg/kg、PO、5日/週)、(5)化合物2で事前処置(25mg/kg、PO、毎日×10)、続いて、TMZ(5mg/kg、PO、5日/週×2)、(6)TMZで事前処置(5mg/kg、PO、5日/週×2)、続いて、化合物2(25mg/kg、PO、毎日×10)、及び(7)化合物2及びTMZで同時処置で処置した。すべての処置群を21日目までに完了し、7日間の休薬日を続け、その後、第2のサイクルの処置を29日目から開始した(図5B)。化合物2は、ビヒクル処置群と比較した場合、いずれの明白な毒性も伴うことなく、単一の作用物としても、TMZと組み合わせても有意な抗腫瘍有効性を実証した(p<0.001)。
【0086】
化合物1及び化合物2のin vivo抗腫瘍有効性を、GBM同所マウス異種移植片モデルにおいても調査した。例えば、化合物2を、各処置コホートごとにU87 GBM細胞を同所移植されたNSGマウス(n=8)(The Jackson Laboratory、Ben Harbor、ME、米国)に1日1回、21日間にわたって経口投与した。TMZを1日1回5日間にわたって経口投与し、陽性対照として使用した。非侵襲性生物発光全身イメージング技術により、疾病負荷を測定した。化合物2での処置は、ビヒクル処置マウスと比較すると、21日目に腫瘍成長(TGI=81.4%、p<0.001)において有意な阻害をもたらした。ビヒクル対照と比較した場合、化合物2処置されたマウスでは、154.8%の寿命比[ILS=(T日-C日)/C日、ここで、C日=対照群の生存日数及びT日=処置群の生存日数]の上昇が観察された(図6A)。
【0087】
別の研究で、図6Bに示されているとおり、GBM患者由来G4T細胞を同所移植されたNSGマウス(n=8)に、それぞれビヒクル、化合物1、TMZ、ならびに化合物1及びTMZの同時処置を投与した。処置群のそれぞれの疾患負荷を生物発光全身イメージングにより測定した。化合物1は、単一の作用物質としても、またはTMZとの組み合わせのいずれでも、腫瘍成長の有意な阻害を実証した(p<0.001、図6B)。
【0088】
結論
式Iの化合物は、CDK4/6を阻害することが示されたことで、in vitro及びin vivo設定の両方においてGBM細胞系に対して抗増殖性活性を有する。さらに、代表的な化合物、すなわち、化合物1(5-(2-((5-(4-(ジメチルアミノ)ピペリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-N,4-ジメチルチアゾール-2-アミン)、化合物2(N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)-5-フルオロピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン)及び化合物6(N-シクロペンチル-5-(2-((5-((4-エチルピペラジン-1-イル)メチル)ピリジン-2-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-4-メチルチアゾール-2-アミン)は、血液脳関門を通過し得て、GBM腫瘍担持動物モデルにおいて高度に有効であることが見い出され、式Iの化合物が、GBMなどのCNSの増殖性細胞疾患及び状態を処置するための有効な治療薬を提供する優れた将来性を有することを示している。
【0089】
本明細書及び後続の特許請求の範囲を通じて、文脈が別段に要求しない限り、単語「含む」及び「包含する」ならびに「含むこと」及び「包含すること」などのその変化形は、述べられている整数または整数の群を包含することを意味するが、いずれかの他の整数または整数の群を排除するものではないことは理解されるであろう。
【0090】
本明細書における任意の従来技術への参照は、そのような従来技術が共通の一般知識の一部を形成するという示唆の任意の形態の承認ではなく、かつそのように解釈されるべきでもない。
【0091】
本開示がその使用において、記載の特定の用途に限定されないことは当業者には分かるであろう。本開示は、本明細書に記載または図示された特定の要素及び/または特徴に関して、その好ましい実施形態に限定されることもない。本開示は、開示の1つまたは複数の実施形態に限定されないが、後続の特許請求の範囲により記載及び定義される本開示の範囲から逸脱することなく、多数の再配列、変更及び置換が可能であることも分かるであろう。
【0092】
次の特許請求の範囲は、暫定的な特許請求の範囲に過ぎず、可能な特許請求の範囲の例として提供されており、本出願に基づき、いずれか将来の特許出願において請求されるものの範囲を限定することを意図したものではないことに注意されたい。後日、本開示の様々な態様をさらに定義する、または再定義するために、整数が例示の請求項に付加される、または削除されることがあり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】