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特表2023-524810熱プラズマを利用してガラスを融解させる装置およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】熱プラズマを利用してガラスを融解させる装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 3/02 20060101AFI20230606BHJP
   C03B 5/235 20060101ALI20230606BHJP
   C03B 5/03 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C03B3/02
C03B5/235
C03B5/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567553
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 US2021030401
(87)【国際公開番号】W WO2021225925
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/022,001
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ,アンドリュー ヴォス
【テーマコード(参考)】
4G014
【Fターム(参考)】
4G014AB01
4G014AD01
4G014AF00
(57)【要約】
原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする装置およびその方法は、供給口からチャンバ内に原料バッチ材を供給する工程と、所定液面レベルより上位に配置された複数のプラズマトーチを利用し、各々のプラズマトーチがチャンバ内にプラズマ炎を放つことでチャンバを加熱する工程と、原料バッチ材を融解させて該所定液面レベルに達する溶融ガラスにする工程とを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする装置は、
内部の所定液面レベルにまで達する溶融ガラスを閉じ込めるよう構成されたチャンバと、
原料バッチ材をチャンバに供給するよう構成された供給口と、
複数が該所定液面レベルより上位に配置されて、その各々がその中に供給された作動流体を熱分解してプラズマ炎をチャンバ内に放つよう構成されている、熱プラズマトーチと
を備えている。
【請求項2】
供給口はチャンバの第1壁に配置されており、複数の熱プラズマトーチはチャンバの第2壁と第3壁に配置されており、第2壁および第3壁は各々が、概ね互いに平行で且つ概ね第1壁に直交している方向に広がっている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記所定液面レベルより下位に配置されている複数の電極を更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
燃焼バーナーは備えていない、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
供給口は、原料バッチ材が複数の熱プラズマトーチのどの1つのプラズマ炎にも全く接触しない状態で、原料バッチ材をチャンバ内に供給するよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
複数の熱プラズマトーチは、交流(AC)プラズマトーチ、直流(DC)プラズマトーチ、または、高周波(RF)プラズマトーチから構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
複数の熱プラズマトーチの各々に供給される作動流体の少なくとも約90%を再循環させるよう構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする方法は、
原料バッチ材を供給口からチャンバ内に供給する工程と、
チャンバ内の所定液面レベルより上位に配置された複数の熱プラズマトーチを利用して、熱プラズマトーチの各々がその中に供給された作動流体を熱分解してチャンバ内にプラズマ炎を放つことでチャンバを加熱する工程と、
原料バッチ材を融解させて該所定液面レベルにまで達する溶融ガラスにする工程と
を含んでいる。
【請求項9】
供給口はチャンバの第1壁に配置されており、複数の熱プラズマトーチはチャンバの第2壁と第3壁に配置されており、第2壁および第3壁は各々が、概ね互いに平行で且つ概ね第1壁に直交している方向に広がっている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定液面レベルより下位に配置されている複数の電極を利用してチャンバを加熱する工程を更に含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
加熱する工程は燃焼バーナーを使用しない、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
原料バッチ材が複数の熱プラズマトーチのどの1つのプラズマ炎にも全く接触しない状態で、原料バッチ材をチャンバ内に供給する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
複数の熱プラズマトーチは、交流(AC)プラズマトーチ、直流(DC)プラズマトーチ、または、高周波(RF)プラズマトーチから構成されている、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
複数の熱プラズマトーチの各々に供給される作動流体の少なくとも約90%を再循環させる、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は、合衆国法典第35編第119条のe(米国特許法)に基づき、2020年5月8日出願の米国特許仮出願第63/022,001号の優先権を主張するものであるが、斯かる仮出願はここで参照することによりその全体が本願の一部を構成しているものとする。
【技術分野】
【0002】
本件開示は、広義には、原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにすることに関するものであり、より具体的には、熱プラズマを利用することで原料バッチ材料を融解させて溶融ガラスにすることに関連している。
【背景技術】
【0003】
各種テレビ、それに、携帯電話やタブレットのような手で持つ電子機器類の表示用途向けの、ガラスシートなどのようなガラス製品の作製に際して、大抵の固体の原料バッチ材は、通例は、融解容器内で融解されて溶融ガラスになる。溶融ガラスの上方の領域を加熱するために、融解容器は1つ以上の燃焼バーナーを使用することが多いが、その際には、天然ガスなどの炭化水素含有燃料源を酸素と反応させることで、溶融ガラスの表面より上方に高温の炎を発生させる目的を果たしている。
【0004】
しかしながら、そのような燃焼に基づく加熱は、いくつかの潜在的な欠点を伴う可能性がある。例えば、炭化水素の燃焼は、二酸化炭素や一酸化炭素などの炭素含有ガスを生成してしまう結果となるが、そのような排出物は、気候変動の幾多の誘因として広く認識されており、世界中の法域で規制や課税の対象となることが増えている。炭化水素の燃焼は、典型例としては、環境に有害であると考えられる上記以外の排出物、例えば窒素酸化物(NO)などを生成してしまう結果となり、汚染抑止機器類を使って排出部を許容レベルまで削減することが必要になる場合がある。これに加えて、天然ガスなどの炭化水素含有燃料の経費、組成、または、その両方が大幅に変動するのは、長期間を経てのことであったり、世界の或る特定地域のことであったり、または、その両事情で起こり得ることながら、経費のみならず燃焼エネルギー出力までも予測不可能な変動、望ましくない変動、または、予測できないうえに望ましくない変動に結びつきつつある。従って、1つ以上のこれらの欠点を最小限に抑える態様で融解容器を加熱することが所望されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件開示の各実施形態は、原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする装置を含んでいる。この装置はチャンバを備えており、チャンバはその内部に所定液面レベルまで溶融ガラスを閉じ込めるよう構成されている。装置はまた、原料バッチ材をチャンバ内に供給するよう構成された供給口を備えている。これに加えて、装置は該所定液面レベルより上位に配置された複数の熱プラズマトーチを備えており、プラズマトーチは各々がその中に供給された作動流体を熱分解してチャンバ内にプラズマ炎を放つよう構成されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本件開示の各実施形態は、原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする方法も含んでいる。この方法は、原料バッチ材を供給口からチャンバ内に供給する工程を含んでいる。この方法は、チャンバ内の所定液面レベルより上位に配置された複数のプラズマトーチを利用してチャンバを加熱する工程も含んでおり、プラズマトーチは各々がその中に供給された作動流体を熱分解してチャンバ内にプラズマ炎を放つ。これに加えて、この方法は、原料バッチ材を融解させて該所定液面レベルに達する溶融ガラスにする工程を含んでいる。
【0007】
本件開示の各実施形態の上記以外の特徴および利点は、後段以降の詳細な説明に明示されており、部分的にはその説明から当業者には容易に明らかになるか、或いは、後段以降の詳細な説明や特許請求の範囲の各請求項は元より添付の図面を含め、本件に記載されているような開示の各実施形態を実施することによっても当業者なら認識する。
【0008】
前述の概説と後段以降の詳細な説明の両方は、特許請求の範囲に記載された各実施形態の本質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図した実施形態を提示するものと理解するべきである。添付の図面は、本明細書の更なる理解をもたらすように添付され、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成している。図面は、本開示の多様な実施形態を例示しており、詳細な説明と併せて、各実施形態の諸原理および諸動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】具体例のフュージョンダウンドロー式(降下延伸融合式)ガラス製造装置および製造法の概略図。
図2】本件開示の各実施形態による具体例のガラス融解容器の概略側面断面図。
図3図2の具体例のガラス融解容器の概略頂面断面図。
図4図2および図3の具体例のガラス融解容器の概略端面断面図。
図5】本件開示の各実施形態による具体例のプラズマトーチの概略側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本件開示の好ましい各実施形態を詳細に参照してゆくが、それらの実施例を添付の図面に例示する。いつでも可能な場合は、同一の部材、または、類似している部材に言及するのに、図面全体を通して同一の参照番号を使用する。しかしながら、本件開示は多くの異なる形態で具現化することができるのであって、本明細書に明示された各実施形態に限定されると考えるべきではない。
【0011】
多様な範囲が1つの特定の値の「およその値(約~)」を下の極限値とする範囲として表されていたり、もう1つ別の特定の値の「およその値(約~)」を上の極限値とする範囲として表されていたり、または、前者のおよその値から後者のおよその値までの範囲として表されていることがある。そのような範囲が表現されている場合、別の実施形態が、前者の丁度の値を下の極限値とする範囲、後者の丁度の値を上の極限値とする範囲、または、前者の丁度の値から後者の丁度の値までの範囲を含んでいる。同様に、各値がその前に「約(abоut)」を置くことで近似値として表されている場合、その特定の値の丁度の値はもう1つ別の実施形態であることが分かる。個々の範囲の極限点は、もう一方の極限点との関係があるから、また、もう一方の極限点とは無関係であるから、その両方の意味で重要となることが分かる。
【0012】
本明細書で使用されているような方向を表す用語、例えば、上、下、右、左、前、後、頂、底などは、描かれた図に言及する際に限って作成されたものであり、絶対的な配向を含意する意図は無い。
【0013】
別段そうと分かる言明がない限り、本明細書に明示されているどの方法であれ、その各工程が特定の順序で実施されることを要件としていると思料すべしとの意図は全くないし、どの装置についてであれ、特定の配向が要件とされると思料すべしとの意図も全く無い。従って、或る方法の請求項がその各工程によって踏襲されてゆく順序を実際に列挙していない場合や、何であれ装置の請求項が個々の構成部材に対する順序または配向を実際に列挙していない場合や、各請求項でも明細書の説明でも各工程が特定の順序に限定されるべきであることを別途特別に述べていない場合や、或る装置の各構成部材に対する特定の順序や配向が言及されていない場合は、いかなる点であれ順序または配向が暗示されているとは決して解釈するべきではない。このことは全ての起こり得る言外の意の解釈基準についても成り立ち、例えば、各工程の配分、操作の流れ、各構成部材の順序、または、各構成部材の配向に関する論理の諸問題、文法上の構成または句読点に由来する平易な意味づけ、および、明細書に記載されている各実施形態の数または種類などについても成り立つ。
【0014】
本明細書で使用されているような、単数形「或る・或る1つの(a)」、「或る・或る1つの(an)」、および、「その・この・該(the)」は、文脈が明確に別途そうではないと表明をしていない限り、複数を指した意味を含んでいる。従って、例えば、「或る・或る1つの」構成部材への言及は、文脈が明らかに別途の表明をしていない限り、2つ以上のそのような構成部材を有している態様を含んでいる。
【0015】
本明細書で使用されているような「原料バッチ材」なる表現は、融解炉のチャンバに供給されて融解されて溶融ガラスになる大抵の固体材料、例えば、固相の各種金属酸化物などを指している。
【0016】
本明細書で使用されているような「溶融ガラス」という表現は、或るガラス組成物について、その液化温度(それより高温になると結晶相がガラスと平衡状態で共存できなくなる温度)以上であるものを指す。
【0017】
本明細書で使用されるような「熱プラズマトーチ」という表現は作動流体から生成されるプラズマの流れを方向付ける装置を指しており、作動流体は熱プラズマトーチ内に供給されて熱プラズマトーチ内部のエネルギー源にさらされると熱分解される。具体例の熱プラズマトーチとしては、直流(DC)、交流(AC)、および、高周波(RF)を用いて作動流体を熱分解してプラズマの流れを生成する各種トーチが挙げられる。
【0018】
本明細書で使用されるような「プラズマ炎」という表現は、熱プラズマトーチから発射されるプラズマの流れを指す。
【0019】
本明細書で使用されるような「燃焼バーナー」という表現は、主に燃料の燃焼から熱を生成する装置を指しており、「燃焼」という表現は、天然ガスなどの燃料と空気から得られる酸素などの酸化剤との間の発熱酸化還元化学反応を指す。
【0020】
図1に示されているのは、具体例のガラス製造装置10である。実施例によっては、ガラス製造装置10は、融解容器14を設けることができるガラス融解炉12を備えているとよい。融解容器14のほかにも、ガラス融解炉12は、1つ以上の上記以外の構成要素を備えており、例えば、原材料を加熱して原材料を溶融ガラスに変換する加熱素子(本明細書でより詳細に説明する)などを備えている。更なる各実施例では、ガラス融解炉12は、融解容器の近隣から喪失される熱を低減する熱管理装置(例えば、断熱構成部材)を備えていてもよい。また別な各実施例では、ガラス融解炉12は、原材料を融解してガラス溶融物にするのを容易にする各種電子装置類、電気機械装置類、または、その両方を備えているとよい。また更に、ガラス融解炉12は、支持構造体(例えば、支持シャーシ、支持部材など)、または、それ以外の構成部材を備えていてもよい。
【0021】
ガラス融解容器14は通例は耐火性セラミック材料のような耐火性材料から構成されており、例えば、アルミナやジルコニアを含有している耐火性セラミック材料から構成されている。実施例によっては、ガラス融解容器14が耐火性セラミック煉瓦から構成されているものもある。ガラス融解容器14の特定の各実施形態について、後段以降でより詳細に説明してゆく。
【0022】
実施例によっては、ガラス融解炉は、ガラス基板、例えば、切れ目ない長尺のガラスリボンなどを作製するためのガラス製造装置の一構成要素として組み込まれているものもある。実施例によっては、スロットドロー(スロット吐出成型延伸)装置、フロートバス(溶融金属槽浮動成型)装置、フュージョン(融合成型)法などで使うダウンドロー(降下延伸)装置、アップドロー(引上げ延伸)装置、プレスローリング(ローラー圧延成型)装置、チューブドロー(管引延伸)装置、または、これら以外の何であれ本件開示の多様な局面から恩恵を受けることになるガラス製造機器を備えているガラス製造装置の一構成要素として、本件開示のガラス融解炉が組み込まれているものもある。具体例として、図1は、フュージョンドロー(延伸融合)加工して1本のガラスリボンを成型することで後続加工により複数の個別のガラスシートにするためのフュージョンダウンドロー式(降下延伸融合式)のガラス製造装置10の一構成要素としてのガラス融解炉12を概略的に例示している。
【0023】
ガラス製造装置10(例えば、フュージョンダウンドロー式の装置10)は、ガラス融解容器14に対して溶融材料流れの上流側に配置された上流側ガラス製造装置16を選択的に設けるようにしてもよい。実施例によっては、上流側ガラス製造装置16の一部分または全体が、ガラス融解炉12の一部として組み込まれていることもある。
【0024】
図示した実施例で分かるように、上流側ガラス製造装置16は、保管ビン18、原材料放出装置20、該原材料放出装置に接続されたモータ22などから構成されているとよい。保管ビン18は、矢印26で示されているように、ガラス融解炉12の融解容器14に供給することのできる量の原料バッチ材24を保管するよう構成されているとよい。原料バッチ材24は、通例、1種類以上のガラス形成金属酸化物および1種類以上の変性剤を含んでいる。実施例によっては、原材料放出装置20がモータ22によって動力を与えられることで、原材料放出装置20が所定量の原料バッチ材24を貯蔵ビン18から融解容器14に送り出すことができるよう図っているものもある。これら以外の実施例では、モータ22が原材料放出装置20に動力を与えることで、融解容器14より下流側で検知される溶融ガラスの液面レベルに基づいた制御速度で、原料バッチ材24を導入することができるようにしている。導入後、融解容器14内の原料バッチ材24は加熱されて溶融ガラス28を作成することができる。
【0025】
ガラス製造装置10は、ガラス融解炉12に対して溶融材料流れの下流側に配置された下流側ガラス製造装置30を選択的に備えていてもよい。実施例によっては、下流ガラス製造装置30の一部はガラス融解炉12の一部として組み込んでもよい。場合によっては、以下で論じる第1接続導管32、または、下流側ガラス製造装置30の上記以外の部分がガラス融解炉12の一部として組み込まれていてもよい。下流側ガラス製造装置の各要素は、第1接続導管32を含め、貴金属から形成されているとよい。好適な貴金属としては、白金、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、および、パラジウムから成る金属群から選択された白金族の各種金属またはそれらの各種合金が挙げられる。例えば、ガラス製造装置の下流構成要素は、約70重量%ないし約90重量%の白金と約10重量%ないし約30重量%のロジウムから構成されている白金-ロジウム合金から形成することができる。しかし、それ以外の好適な金属には、モリブデン、パラジウム、レニウム、タンタル、チタン、タングステン、および、これらの各種合金が含まれる。
【0026】
下流側ガラス製造装置30は、融解容器14のより下流側に配置されて上述の第1接続導管32によって融解容器14に連結されている第1調整(すなわち、処理用)容器、例えば、清澄処理容器34などを備えていてもよい。実施例によっては、溶融ガラス28は、第1接続導管32により融解容器14から清澄処理容器34に重力を利用して供給されるものもある。例えば、重力により溶融ガラス28は融解容器14から第1接続導管32の内部通路を経て清澄処理容器34に至るようにしてもよい。しかしながら、これ以外の多様な調整容器を融解容器14の下流側に配置してもよく、例えば、融解容器14と清澄処理容器34との間などに配置してもよいと解釈するべきである。実施例によっては、調整容器を融解容器と清澄処理容器の間に使用するものもあるが、その場合、主要な融解容器からの溶融ガラスは更に加熱されて融解加工を継続するか、または、清澄処理容器に入る前に融解容器内の溶融ガラスの温度よりも低い温度まで冷却される。
【0027】
多様な技術によって、清澄処理容器34内の溶融ガラス28から気泡を除去することができる。例えば、原料バッチ材24は酸化スズなどの多価化合物(すなわち、清澄剤)を含んでいる場合があり、加熱すると、化学還元反応を受けて酸素を放出することがある。これ以外の好適な清澄剤には、ヒ素、アンチモン、鉄、セリウムなどがあるが、これらに限定されない。清澄処理容器34は融解容器の温度よりも高い温度に加熱され、それによって溶融ガラスおよび清澄剤を加熱する。清澄剤(1種類以上)の温度誘起による化学還元によって生成された酸素の泡は、清澄処理容器内の溶融ガラスを通り抜けて上昇するが、その場合、融解炉で生成された溶融ガラス中の気体は、清澄剤によって生成された酸素の気泡内で拡散したり酸素の気泡に融合したりする。拡大した気泡は上昇して清澄処理容器内の溶融ガラスの自由表面に達し、その後、清澄処理容器から外へ排気される。酸素の気泡は、清澄処理容器内の溶融ガラスの機械的混合を追加的に誘発することがある。
【0028】
下流側ガラス製造装置30は、溶融ガラスを混ぜるための混合容器36のような、もう1つ別の調整容器を更に備えていてもよい。混合容器36は清澄処理容器34より下流側に配置されていてもよい。混合容器36が均質なガラス溶融組成物をもたらす目的で使用されることにより、その使用が無ければ清澄処理容器を出る時に清澄処理済み溶融ガラス内部に存在している恐れのある化学的または熱的に不均質なコード(すじ)を減じることができる。図示しているように、清澄処理容器34は、第2接続導管38によって混合容器36に連結される。実施形態によっては、溶融ガラス28は第2接続導管38によって清澄処理容器34から混合容器36へ重力を利用して供給することができる。例えば、重力により、溶融ガラス28は清澄処理装置34から第2接続導管38の内部通路を経て混合容器36に至るようにするとよい。混合容器36は清澄処理容器34の下流側に示されているが、混合容器36は清澄処理容器34より上流側に配置されていて構わないことに留意するべきである。実施形態によっては、下流側ガラス製造装置30は多数の混合容器を備えていてもよく、例えば、清澄処理容器34より上流側の混合容器と清澄処理容器34の下流側の混合容器とを備えているものもある。これら多重的な混合容器はどれも同じデザインでもよいし、或いは、互いに異なるデザインでもよい。
【0029】
下流側ガラス製造装置30はもう1つ別の調整容器を更に備えていてもよいが、例えば、混合容器36より下流側に配置することのできる放出容器40備えている。放出容器40は溶融ガラス28を調整することで、下流側の成型装置に供給することができるようにする。例えば、放出容器40はアキュムレータ、流れ制御装置、または、その両方として作用することで、出口導管44を経て成型体42に至る溶融ガラス28の一貫した流れをもたらすことができるようにしている。図示したように、混合容器36は第3接続導管46により放出容器40に連結することができる。実施例によっては、溶融ガラス28が混合容器36から第3接続導管46を経由して放出容器40へ、重力を利用して供給されるようにしたものもある。例えば、重力が溶融ガラス28に作用して混合容器36から第3接続導管46を経由して放出容器40へ送り込むことができる。
【0030】
下流側ガラス製造装置30は、先に言及した成型体42と入口導管50とが設けられた成型装置48を更に備えていてもよい。出口導管44は、溶融ガラス28を放出容器40から成型装置48の入口導管50に送り出すよう配置されているとよい。例えば、出口導管44が入口導管50の内側面の内部で該内側面から離して入れ子に置かれることにより、溶融ガラスの自由表面が出口導管44の外側面と入口導管50の内側面との間に位置決めされるようにすることができる。フュージョンダウンドロー式(降下延伸融合式)のガラス製造装置の成型体42はその上面にトラフ(溝)52が配置され、また、その最下部端縁56に沿って延伸方向に収束成型面54の各々が収束して設けられている。放出容器40、出口導管44、および、入口導管50を経て成型体のトラフに送り出された溶融ガラスはトラフの各側壁から溢れ出してから、各収束成型面54に沿って分流した溶融ガラスとなって降下する。溶融ガラスの分流は各々が最下部端縁56より下で且つそれに沿って合流した結果、1枚のリボン状のガラス58を生じることになるが、このガラスリボンに重力、エッジロール72、引張りロール82などによって張力を付与することにより最下部端縁56から延伸方向または流れ方向60にガラスリボンを延伸することで、ガラスが冷えてガラスの粘性が増すにつれてガラスリボンの寸法を制御できるようになる。従って、ガラスリボン58は粘弾性転移を経た後に機械的特性を獲得するが、この特性がガラスリボン58に安定した寸法特性を与える。実施形態によっては、ガラスリボン58をその弾性領域でガラス分離装置100によって複数の個別のガラスシート62に分離するようにしたものもある。この時点で、ロボット64が把持ツール65を使用して個別のガラスシート62をコンベアシステムに移送することができるが、そのまま直ぐに、個別のガラスシートを更に加工してもよい。
【0031】
図2は、本件開示の各実施形態による具体例のガラス融解容器14の概略側面断面図である。ガラス融解容器14はチャンバ114を備えており、原材料放出装置20は供給口116を通してチャンバ114に所定量の原料バッチ材24を供給する。ガラス融解容器14は複数の電極102および複数の熱プラズマトーチ104も備えている。
【0032】
動作中、複数の電極102および複数の熱プラズマトーチ104がチャンバ114を加熱することで、原料バッチ材24が融解されて溶融ガラス28になってチャンバ114内の所定液面レベル(L)にまで達するよう図っている。図2で見て取れるように、複数のプラズマトーチ104は所定液面レベル(L)より上位に配置されており、複数の電極102は所定液面レベル(L)より下位に配置されている。
【0033】
図3および図4はそれぞれ、前者は図2の具体例のガラス融解容器14の概略頂面図を後者は端面断面図である。図3および図4で見て取れるように、プラズマトーチ104は各々がプラズマ炎108をチャンバ114内に放つ。加えて、図3に示すように、供給口116がチャンバ114の第1壁120上に配置されており、複数の熱プラズマトーチ104がチャンバ114の第2壁122および第3壁124上に配置されており、第2壁122および第3壁124は各々が概ね互いに平行で且つ概ね第1壁120に直交している方向に広がっている。更に、図3に示すように、原料バッチ材24をチャンバ114内に供給するにあたり、原料バッチ材24が複数のプラズマトーチ104のどの1つのプラズマ炎108にも全く接触しない状態で供給する。例えば、本件開示の各実施形態には、原料バッチ材24が最も近いプラズマ炎108から所定距離を置いてチャンバ114内に供給される各実施形態であって、最も近いプラズマ炎108から少なくとも約1メートル離れた距離であり、その範囲は例えば、約1メートルないし約10メートル離れた距離であり、より具体的には、最も近いプラズマ炎108から約2メートルないし約5メートル離れた距離である各実施形態が含まれている。
【0034】
図4に示したように、ガラス融解容器14は電極106がチャンバ114の底から伸びており、ここでは、電極106は所定の液面レベル(L)より下位に配置されている。更に図4に示すように、プラズマトーチ104は、所定の液面レベル(L)に概ね平行な方向にプラズマ炎108を放つ。
【0035】
一方、図2ないし図4は、チャンバ114の各壁から伸びる電極102とチャンバ114の底から伸びる電極106とが設けられているガラス融解容器14を例示しているが、本件開示の各実施形態は、多種電極のみがチャンバ114の各壁から伸びているもの、電極116のみがチャンバ114の底から伸びているもの、または、いずれのタイプの電極もガラス融解容器14に設けられていないものを含んでいてもよい。電極102、電極106、または、その両タイプは各々が、当業者には周知の各種方法に従って1つ以上の電源(図示せず)に接続することができる。
【0036】
本件開示の各実施形態はまた、ガラス融解容器14が燃焼バーナーを備えていないものも含んでいる。
【0037】
図5は、本件開示の各実施形態による具体例のプラズマトーチ104の概略側面断面図である。図5に示すプラズマトーチ104は、陰極126および陽極128が設けられた直流(DC)プラズマトーチであり、電力が供給されると、プラズマアーク放電130に点火し、プラズマトーチ104に供給されている作動流体132にエネルギー投入することで、目的のプラズマ炎108を生成する。
【0038】
図5は直流プラズマトーチを例示しているが、本件開示の各実施形態は、複数のプラズマトーチ104が、例えば、交流(AC)プラズマトーチから成るもの、直流(DC)プラズマトーチから成るもの、または、高周波(RF)プラズマトーチから成るものを含んでいる。斯かるプラズマトーチとしては、例えば、当業者の周知するところに従ってガラス融解容器14に組込むことができる、または、組込むよう改変することができる、市場で入手可能な交流プラズマトーチ、直流プラズマトーチ、または、高周波プラズマトーチが挙げられる。具体例の市場で入手可能なプラズマトーチとしては、プラザリウム(Plazarium)社から入手できる各種の直流産業用スチームプラズマトーチが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
作動流体132はどの特定の流体であると限定されないが、例えば、水、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、または、これらの各種組合せから選択することができる。従って、具体例の各実施形態は、複数のプラズマトーチ104の各々が、水、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、または、これらの各種組合せから選択された作動流体132を熱分解するものを含んでいる。
【0040】
或る具体例の各実施形態においては、作動流体132は水である。
【0041】
或る具体例の各実施形態では、プラズマトーチ104に供給されている作動流体132の熱分解によって生成されるプラズマ炎108は、温度が少なくとも約2000℃であるとよいが、例えば、少なくとも約2500℃であり、また更に具体的には、少なくとも約3000℃であり、温度範囲にして約2000℃ないし約30,000℃であるとよいが、例えば、約2500℃ないし約25,000℃であり、また更に具体的には、約3000℃ないし約20,000℃などである。
【0042】
本件開示の各実施形態は、複数のプラズマトーチ104の各々に供給されている作動流体132の少なくとも一部が融解容器14を経由してプラズマトーチ104に再循環されるものを含んでいる。例えば、図5に示すように、作動流体源からの主要な(再循環ではない)作動流体132aと融解容器14からの再循環作動流体132bの両流体がプラズマトーチ104に供給されて混合された結果、作動流体132を生成する。或る具体例の各実施形態においては、複数のプラズマトーチ104の各々に供給されている作動流体132の少なくとも約90%、例えば、少なくとも約95%、範囲にして約90%ないし約99%、更に具体的には、約95%ないし約99%が、融解容器14を経由して再循環される(すなわち、図5に示すように、複数のプラズマトーチ104の各々に供給されている作動流体132の総量のうち少なくとも約90%、例えば、少なくとも約95%、範囲にして約90%ないし約99%、更に具体的には、約95%ないし約99%が再循環作動流体132bである)。
【0043】
上記の各実施形態はフュージョンダウンドロー法に言及しながら既に説明したが、そのような各実施形態は、これ以外のガラス成型法、例えば、各種のフロート法、スロットドロー法、アップドロー法、チューブドロー法、プレスローリング法などにも適用できるものと理解するべきである。
【0044】
本件開示内容の真髄および範囲から逸脱することなく本件開示の実施形態に対して多様な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかである。従って、本件開示は、添付の特許請求の範囲の各請求項およびそれらの均等物の範囲内にある限り、そのような修正および変更を網羅するものと解釈すべきである。
【0045】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0046】
実施形態1
原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする装置は、
内部の所定液面レベルにまで達する溶融ガラスを閉じ込めるよう構成されたチャンバと、
原料バッチ材をチャンバに供給するよう構成された供給口と、
複数が該所定液面レベルより上位に配置されて、その各々がその中に供給された作動流体を熱分解してプラズマ炎をチャンバ内に放つよう構成されている、熱プラズマトーチと
を備えている。
【0047】
実施形態2
供給口はチャンバの第1壁に配置されており、複数の熱プラズマトーチはチャンバの第2壁と第3壁に配置されており、第2壁および第3壁は各々が、概ね互いに平行で且つ概ね第1壁に直交している方向に広がっている、実施形態1の装置。
【0048】
実施形態3
前記所定液面レベルより下位に配置されている複数の電極を更に備えている、実施形態1の装置。
【0049】
実施形態4
燃焼バーナーは備えていない、実施形態1の装置。
【0050】
実施形態5
供給口は、原料バッチ材が複数の熱プラズマトーチのどの1つのプラズマ炎にも全く接触しない状態で、原料バッチ材をチャンバ内に供給するよう構成されている、実施形態1の装置。
【0051】
実施形態6
熱プラズマトーチは各々が、前記所定液面レベルに概ね平行な方向にプラズマ炎を放つよう構成されている、実施形態1の装置。
【0052】
実施形態7
複数の熱プラズマトーチは、交流(AC)プラズマトーチ、直流(DC)プラズマトーチ、または、高周波(RF)プラズマトーチから構成されている、実施形態1の装置。
【0053】
実施形態8
プラズマ炎の温度は少なくとも約2000℃である、実施形態1の装置。
【0054】
実施形態9
作動流体は、水、水素、ヘリウム、ネオン、または、アルゴンから選択される、実施形態1の装置。
【0055】
実施形態10
複数の熱プラズマトーチの各々に供給される作動流体の少なくとも約90%を再循環させるよう構成されている、実施形態1の装置。
【0056】
実施形態11
原料バッチ材を融解させて溶融ガラスにする方法は、
原料バッチ材を供給口からチャンバ内に供給する工程と、
チャンバ内の所定液面レベルより上位に配置された複数の熱プラズマトーチを利用して、熱プラズマトーチの各々がその中に供給された作動流体を熱分解してチャンバ内にプラズマ炎を放つことでチャンバを加熱する工程と、
原料バッチ材を融解させて該所定液面レベルに達する溶融ガラスにする工程と
を含んでいる。
【0057】
実施形態12
供給口はチャンバの第1壁に配置されており、複数の熱プラズマトーチはチャンバの第2壁と第3壁に配置されており、第2壁および第3壁は各々が、概ね互いに平行で且つ概ね第1壁に直交している方向に広がっている、実施形態11の方法。
【0058】
実施形態13
前記所定液面レベルより下位に配置されている複数の電極を利用してチャンバを加熱する工程を更に含んでいる、実施形態11の方法。
【0059】
実施形態14
加熱する工程は燃焼バーナーを使用しない、実施形態11の方法。
【0060】
実施形態15
原料バッチ材が複数の熱プラズマトーチのどの1つのプラズマ炎にも全く接触しない状態で、原料バッチ材をチャンバ内に供給する、実施形態11の方法。
【0061】
実施形態16
熱プラズマトーチは各々が、前記所定液面レベルに概ね平行な方向にプラズマ炎を放つ、実施形態11の装置。
【0062】
実施形態17
複数の熱プラズマトーチは、交流(AC)プラズマトーチ、直流(DC)プラズマトーチ、または、高周波(RF)プラズマトーチから構成されている、実施形態11の方法。
【0063】
実施形態18
プラズマ炎の温度は少なくとも約2000℃である、実施形態11の方法。
【0064】
実施形態19
作動流体は、水、水素、ヘリウム、ネオン、または、アルゴンから選択される、実施形態11の方法。
【0065】
実施形態20
複数の熱プラズマトーチの各々に供給される作動流体の少なくとも約90%を再循環させる、実施形態11の方法。
【符号の説明】
【0066】
14 ガラス融解容器
28 溶融ガラス
102 電極
104 熱プラズマトーチ
106 電極
108 プラズマ炎
114 チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】