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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】多細胞形質転換用の修飾mRNA
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230606BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20230606BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567590
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021031204
(87)【国際公開番号】W WO2021226413
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】16/869,642
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517404108
【氏名又は名称】モルフォジェネシス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローマン,マイケル,ジェイ.ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ローマン,パトリシア,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス,メガーン
(72)【発明者】
【氏名】ラミヤ,ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バスタウルス,マリナ,ヴィクター,アブデルマセー
(72)【発明者】
【氏名】シャムブロット,マイケル,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
(57)【要約】
合成細菌メッセンジャーmRNAを用いて、自己、同種又は直接核酸癌ワクチンを調製することができる。癌細胞は、免疫原性細菌タンパク質をコードするDNAから得られるmRNAにより、インビトロ又はインビボのいずれかでトランスフェクトされる。癌に対する免疫応答は、インビボでのmRNAの直接投与又はインビトロでの癌細胞から作製されたワクチンの投与により作られる。mRNAのコドン修飾は、癌細胞における免疫原性ポリペプチドの発現を最適化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される鋳型核酸から転写されるヒトコドン最適化リボ核酸であって、トランスフェクトされた哺乳動物細胞におけるポリペプチドの発現のためにコドン最適化されている、ヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項2】
前記鋳型核酸は、配列番号19の配列を有する、請求項1に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞は、癌細胞である、請求項1に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項4】
前記癌細胞は、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫又は白血病細胞である、請求項3に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項5】
前記細胞において発現される前記ポリペプチドは、配列番号14の配列を有する、請求項1に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項6】
前記リボ核酸で形質転換された細胞において発現されるポリペプチドの量は、対応する非コドン最適化リボ核酸からの発現と比較して増加している、請求項1に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項7】
前記鋳型核酸は、配列番号17の配列を有する、請求項1に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【請求項8】
前記鋳型核酸は、配列番号18の配列を有する、請求項1に記載のヒトコドン最適化リボ核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2020年3月8日出願の米国特許出願第16/869,642号の継続出願であり、これは、2017年5月1日出願の米国特許出願第15/583,599号の一部継続出願であり、現在の米国特許第10,682,401号であり、2016年7月28日出願の米国特許出願第15/114,943号であり、現在の米国特許第9,636,388号であり、2016年5月19日出願の国際特許出願PCT/US第2016/033235号であり、2015年5月19日出願の米国特許仮出願第62/163,446号の優先権を主張するものであり、開示内容は、全ての図表、アミノ酸及び核酸配列を含む全内容を参照することにより援用される。
【0002】
本出願の配列表は、2020年4月12日に作成され、31KBである「Seq-List.txt」と表記されたものである。配列表の全内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
1.発明の分野
本発明は、概して、ワクチンに関し、特に、癌細胞のトランスフェクション又は合成細菌メッセンジャーリボ核酸(mRNA)による直接腫瘍内投与のいずれかによって調製される癌ワクチンに関する。
【0004】
本発明は、より具体的には、哺乳動物細胞において選択されたポリペプチドを効率的に発現する合成RNA、及びインビボ又はインビトロで細胞を形質転換するためのRNAの使用について記載する。
【0005】
2.関連技術の記載
本発明は、癌治療のための有効なmRNAワクチンの開発及び使用を提供する。デオキシリボ核酸(DNA)ワクチンは、低いトランスフェクション効率及び時間のかかる送達方法をはじめとするいくつかの欠点を有するが、本発明のmRNAワクチンは、腫瘍細胞に直接投与され、マルチ腫瘍抗原応答を誘発する免疫原性タンパク質に直ちに翻訳される。mRNAの短いインビボ半減期は、プラスミドDNAと比較して、宿主ゲノムに組み込まれる可能性を低くするため、より安全であると考えられる。DNAとは異なり、mRNAワクチンは、核エンベロープを通過する必要がないため、多くの場合、より迅速かつより高いレベルのタンパク質発現を生じる。さらに、トランスフェクトされたmRNAの発現は、細胞周期に依存せず、mRNAのレベルは、プロモーターによって駆動されないので、タンパク質発現及びワクチン投与量は、トランスフェクトされたmRNAのレベルを変化させることによって調節することができる。ペプチドとは対照的に、mRNAワクチンは、主要組織適合複合体(MHC)ハプロタイプ制限がなく、MHC I輸送シグナルの付加により、又はプロタミンとの組み合わせにより、自己アジュバント化するように設計される。mRNAワクチンの有効性は、RNAを分解から保護し、細胞取り込みを増強する錯化剤から利益を得ることができるが、インビボで細胞を、他の試薬又は物理的形質導入する方法なしで、mRNAでトランスフェクトすることができる。ワクチンとして使用するためのメッセンジャーRNAは、インビトロ転写を用いてプラスミドDNAから産生することができる。
【0006】
癌の治療は、診断される特定の種類に基づく。よくある癌として、膀胱癌、乳癌、結腸癌、リンパ腫、メラノーマ及び前立腺癌が挙げられる。治療レジメンは、これらに限定されるものではないが、病期、病因、患者の年齢及び全身の健康をはじめとする複数の因子の評価に基づいて、医師によって作製される。多くの癌について、治療レジメンには、手術、化学療法、放射線、骨髄/幹細胞移植、抗癌剤又は免疫療法やこれらの組み合わせが含まれる。最も一般的な治療には、手術、化学療法、放射線及び経口薬が含まれる。これらの治療は効果的であるが、多くの場合、多くの副作用がある。化学療法は、特に、癌性細胞だけでなく、体内の全ての新たに分裂する細胞を標的とする。
【0007】
いくつかの免疫療法の利点は、非疾患細胞を無傷のままにしながら、疾患細胞を標的とできることである。癌細胞は、正常な成長調節機構の崩壊から生じるので、身体はこれらの細胞の多くを依然として自己と見なす。癌免疫療法は、これらの疾患自己細胞の身体の許容度を超えて、身体がそれらを異物として区別することを可能にするものである。癌はまた、MHC分子等の細胞上の免疫活性化マーカーの発現を減少させることによって、身体の免疫系の直接的な抑制により免疫検出を回避することもできる。MHCは、身体に、どの細胞が自己であり、どの細胞が異物又は病的であるかを識別させる成分の1つである。
【0008】
固形癌の治療には、典型的に、化学療法及び/又は手術が含まれる。近年、自己免疫防御を刺激するためのワクチンの開発に関心が集まっている。特許文献1は、リンパ腫と診断された対象から単離された形質転換された自己又は非自己細胞を用いて、リンパ腫の進行期を治療するためのリンパ腫ワクチンについて詳細に記載している。単離された細胞を、Streptococcus pyogenes emm55遺伝子を保有するプラスミドベクターでトランスフェクトする。細菌タンパク質は、細胞表面上で発現され、トランスフェクトされた細胞が癌を有する対象に導入されると、リンパ腫細胞に対する免疫学的応答を生じる。
【0009】
これまで、FDAは前立腺癌の治療のための細胞癌免疫療法ワクチン、Provengeのみを承認している。しかしながら、いくつかのワクチンが、現在、臨床試験で試験されている。BiovaxIdは、無痛性濾胞性非ホジキンリンパ腫の治療において第III相臨床試験を行っている自己腫瘍由来免疫グロブリンイディオタイプワクチンである。
【0010】
原理上は、外因性DNA又はRNAのいずれかは、哺乳動物の体内でタンパク質を発現することができる。dDNA及びmRNA発現タンパク質の両方を用いて同様の免疫活性を産生することができるかどうかは不明である。従来の知見は、DNAがその安定性及び使用の容易さのために、ワクチン及び遺伝子治療の創出に優れていることである。プラスミドDNAワクチンの例は、口腔イヌメラノーマの治療のために開発されたMerial's Onceptである。
【0011】
mRNAワクチンに関する研究が報告されている。ある事例では、有効なmRNAワクチンは、リポソームを用いて送達された。この特定のワクチンは、インフルエンザウイルスタンパク質をコードするmRNAをマウスに投与した後、インビボで細胞傷害性Tリンパ球を誘導した。CureVac GMHによる他の研究によれば、mRNAワクチンが皮内送達時に体液性及び細胞性免疫応答を誘発することが示された。このワクチンは、ネイキッドフォームで投与され、また、mRNA安定性を増強し、タンパク質発現を改善するタンパク質であるプロタミンと複合体を形成した。このワクチンは、現在、去勢抵抗性前立腺癌の臨床試験中である。
【0012】
ヒト試験は、液体及び固形腫瘍に対してmRNAを用いて実施されている。急性骨髄性リンパ腫、転移性メラノーマ、前立腺癌、腎細胞癌腫/卵巣癌腫、神経芽細胞腫、脳腫瘍、肺癌、結腸癌及び腎細胞癌腫が含まれる。現在実施されている臨床試験のほとんどは、癌細胞ではなく、自己樹状細胞へのmRNAのトランスフェクションを含む。加えて、mRNAの腫瘍内投与を使用する臨床試験は試みられていない。図3は、mRNAワクチンを用いて公表された臨床試験の表である。
【0013】
リポソーム及びカチオン性ポリマー等の送達ビヒクルは、トランスフェクションの増強において有望であると考えられる。リポソーム又はポリマー複合体が細胞質に入ると、mRNAは送達ビヒクルから分離して抗原翻訳を可能にしなければならない。残念ながら、これらのビヒクルは、mRNAと適切に複合体を形成しないため、コードされたタンパク質の適切な翻訳を可能にしないことがある。抗原産生は起こり得るが、所望の効果を生じるには不十分な量である。
【0014】
多くの免疫療法は、疾患特異的であり、概念が複雑で、産生するにはさらに複雑で費用がかかる。そのような治療が商業的に実行可能であるかどうかは、未知である。mRNAの患者の腫瘍への直接的な投与は、多発性腫瘍抗原応答を誘発する免疫原性タンパク質に直ちに翻訳され、これは広範囲に及ぶことを意味する。例えば、単一の合成mRNAは、複数の種における複数のタイプの癌を治療するために使用することができる。mRNAは送達するのが簡単であり、費用対効果が高く、輸送及び保管が容易であり、投与も容易である。優れた安全性プロファイルと共に、mRNAのこれらの特性は、発展途上国においてさえも、世界中の癌患者を治療することを可能にする。
【0015】
癌細胞を死滅させる免疫系を誘導することは、全ての癌免疫療法の基礎である。任意のタイプの免疫療法を成功させるためには、腫瘍関連抗原に対する免疫応答がトリガーされ、増幅されなければならない。免疫応答は、抗原提示細胞、好中球、ナチュラルキラー細胞、Tヘルパー細胞、T細胞傷害性細胞及びB細胞等を含む任意の数の免疫細胞を含むことができる。しかしながら、単一の腫瘍抗原に対する免疫応答のトリガー及び活性化は、ヒト癌ワクチン試験において有益な臨床的有効性に変換するのに十分であるとは証明されておらず、これはおそらく免疫回避変異体によるものであり、また、全腫瘍細胞又は腫瘍細胞溶解物プラス外因性のアジュバントを複数の関連する腫瘍抗原の供給源として使用していない。それが、腫瘍抗原が患者の腫瘍細胞上で発現される際に、腫瘍抗原に関してトリガーを供給できることが必須である理由である。これを達成する唯一の方法は、コード核酸を腫瘍細胞に提供することであり、その結果、細胞機構は、これらの抗原の全てが免疫系の細胞に曝露されるように、腫瘍抗原と共にトリガー抗原を発現することができる。次いで、そのような曝露は、抗原間エピトープの拡散をもたらし、その結果、適応免疫応答は、トリガー抗原の非存在下でさえ、それらの抗原を有する全ての腫瘍細胞を育て活性化する。
【0016】
核酸をワクチンとして使用することは、多くの他の利点を有する。核酸ワクチンは、体液性及び細胞性免疫応答の両方を誘導することができ、有効投与量が低く、操作が簡単であり、迅速な試験を利用し、大規模生産及び単離において費用対効果が高く、再現性があり、高頻度で生産することができ、容易に単離され、従来のワクチンよりも温度安定性があり、長い貯蔵寿命を有し、貯蔵及び輸送が容易であり、コールドチェーンを必要とする可能性が低い。
【0017】
DNAは、ワクチンにうまく使用されている。DNAは、生物の設計図、すなわち、遺伝的指示として役立つ二本鎖分子である。DNAは、かなり安定で非反応性であり、長期間保存することができるので、ワクチンとしての使用に適している。しかしながら、DNAは、自己複製性であり、紫外線照射によって容易に損傷される。
【0018】
一方、RNAは一本鎖であり、DNAの指示を実行するように機能し、すなわち、RNAは遺伝子コードを転写してタンパク質を作り出す。RNAは、DNAよりも反応性が高く、安定性は低いが、紫外線には耐性がある。結果として、こうした性質が、RNAをワクチンとしての使用に、より適したものとさせる。一般に、mRNAは、宿主染色体に組み込まれる可能性がゼロである。mRNAの送達は、目的の抗原のより速い発現をもたらし、発現のために必要なコピーを少なくする。mRNA発現は一過性であり、これは不利であるように思われるが、実際にその安全性が増す。mRNAは、有糸分裂後及び非分裂細胞におけるタンパク質産生のために、DNAよりも有効である。その理由は、DNAは核膜及びプラスミド膜を通した転位を必要とするが、mRNAはプラスミド膜を通した転位のみを必要とするからである。mRNAは、翻訳のための鋳型であるだけでなく、toll様受容体のための配位子として作用し、ヌクレアーゼ感受性であるため、それは水平伝播の懸念が少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第7,795,020号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、免疫原性細菌タンパク質をコードするリボ核酸メッセージ(mRNA)(配列番号1、配列番号13、配列番号15及び配列番号16)の使用に基づく。メッセージは、数多くの公知の技術のいずれかを用いて細胞質内に送達することができる。いったんmRNAが細胞質に到達すると、導入済みの細胞機構を用いて、コードされたタンパク質に翻訳される。次いで、細菌タンパク質、例えば、配列番号2又は配列番号14のアミノ酸配列を有するM様タンパク質を、癌細胞に対して免疫原性を与える細胞において発現させる。例えば、M様タンパク質は、細菌源、A群及びG群連鎖球菌(GAS及びGGS)から誘導されるため、哺乳動物体には異物と見なされる。抗原提示細胞(APC)等の免疫監視細胞は、異種タンパク質によって誘引される。APCは、癌細胞全体を食菌し、次いで、M様タンパク質を含む全ての異種/突然変異タンパク質を他の免疫細胞に提示する。
【0021】
細胞内での細菌タンパク質の産生は、対応する遺伝子コードの挿入によって達成される。M様タンパク質の遺伝子は、emmLと呼ばれる。いったんemmLメッセージが、細胞のDNAにおける突然変異によって産生される異常タンパク質を含有する癌細胞に送達されると、M様タンパク質が、細胞において発現され、免疫細胞を誘引してそれを飲み込み、前にマスクされた突然変異タンパク質の免疫系への提示をもたらす。異常タンパク質は、長期間存在していた可能性があるが、それらは「自己」タンパク質に由来するので、身体はそれらを必ずしも異物や脅威と見なすわけではない。細菌性タンパク質抗原は、損傷及び有害であると以前は識別できなかった細胞に免疫系が対処するためのプライマー又はトリガーとして作用する。
【0022】
mRNAは、実施例に記載されるように産生される。いったん得られると、免疫原性メッセージを含有するmRNAは、本発明の概要に記載されるプライミング作用を必要とする自己細胞又は同種細胞に送達される。mRNAはまた、腫瘍内に、又はリンパ腫等のいくつかの癌の場合には、リンパ節内にも直接送達することができる。
【0023】
emmL遺伝子によってコードされる1つのM様タンパク質は、以前にDNAを介して細胞内に送達されており、免疫学的効果を生じるために細胞内で発現されることが示されている。染色体への遺伝子組み込みの可能性を含むDNA送達に関する懸念のために、RNAを介したメッセージの送達は、宿主DNAに組み込むことができないため、より安全な代替手段である。宿主DNAに組み込むDNAのこの能力は、外因性DNA組み込みが有害な影響を引き起こし得る医療用途において特に関連がある。DNA発現とは対照的に、mRNA発現は、細胞内で最大数時間から数日しか持続しない。細胞内に送達されないmRNAは、環境中に存在するRNaseによって迅速に分解されるため、水平伝播のリスクがない。emmL mRNAを癌細胞にうまくトランスフェクトすると、癌細胞及びその表面に免疫原性細菌タンパク質を発現させることができ、それによって免疫原性応答を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】M様タンパク質のmRNA産生のために設計された組換えプラスミドの骨格に使用されるプラスミドを示す。
図2図1の線状化ベクターにライゲーションされるemmL遺伝子の供給源として使用されるプラスミドDNAを示す。
図3-1】固形癌において実施されたmRNA試験の要約である。
図3-2】固形癌において実施されたmRNA試験の要約である。(続き)
図4】mRNAとDNAとの間の細胞産生経路の違いを実証する図である。
図5】細菌抗原をコードするmRNAを産生するための組換えDNAベクターの作製を示す。
図6】抗M様抗体に対する単離されたEmm55のウェスタンブロットを示す。
図7】DNA及びRNAトランスフェクションからのタンパク質発現の比較結果を示す。
図8】Flashgelシステムを用いた合成emm55 mRNAのアガロースゲルの写真である。
図9】1、2、3及び4週後の、emmL mRNA又は水(対照)(C2)をワクチン接種したマウスにおける、EmmLタンパク質に対して反応性のある抗体を示すグラフである。
図10】emmL mRNAによるワクチン接種の前後にEmmLタンパク質に反応するマウス血液中の抗体の存在を示すウェスタンブロットである。
図11】哺乳動物細胞において高効率で翻訳される合成mRNAの産生に使用される新規二本鎖DNA分子のマップである。このDNA分子は、T7RNAポリメラーゼ(配列番号8)、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子5'非翻訳領域(配列番号9)の一部、emmLのコード領域を挿入するために使用されるSacI、NotI、BglII、EcoRV及びSpeIに対する制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有するポリリンカー(配列番号7)、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子3'非翻訳領域の一部(配列番号10)、インビトロ転写の前にプラスミドを線状化するために使用されるBamHI、EcoRI及びXbaIに対する制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有するポリリンカー(配列番号11)を含む。図11に対応するDNA配列は、配列番号12である。
図12A】emm55の相対適応性プロットを示す。Y軸は、emm55の各コドンの適応指数であり、1.0は、ヒト細胞発現に完全に適応される。示されているのは、元のemm55配列である。
図12B】JCatアルゴリズムによる最適化後のemm55を示す。
図13A】野生型ウリジン(WT)及びN1-メチルプソイドウリジン含有mRNAを用いたHEK293T及びB16-F10細胞の一過性トランスフェクション後に発現されたEmm55のWes(登録商標)キャピラリー電気泳動分析のシミュレートウエスタンブロットである。溶解物は0.5μg/μLであった。ERK1を正規化対照として使用した。-はEGFP mRNAをトランスフェクトした細胞。*は、HEK293T細胞溶解物をウサギ抗ERK1のみと共にインキュベートしたEmm55FreqDistトランスフェクションの6時間後である。emm55Jcatである。
図13B】emm55MostFreqである。
図13C】emm55FreqDistである。*は、HEK293T細胞溶解物をウサギ抗ERK1のみと共にインキュベートしたEmm55FreqDistトランスフェクションの6時間後である。
図14A図13に示す画像からのEmm55の正規化された発現を示す。コドン適応性指数を用いて、JCatアルゴリズムにおけるコドン最適化を求めた。1.0が完全に最適化されたものである。HEK293T細胞における発現を示す。
図14B】B16-F10細胞における発現を示す。
図15A】HEK293T細胞におけるEmm55発現の時間経過を示す。Wes(登録商標)最大シグナル強度で実施された初期アッセイである。
図15B】タンパク質負荷を減少させたレプリカ実験である。Bonferroni事後試験を用いた一元配置分散分析で求めた有意性。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****P<0.0001(n=3)。☆emm55JCat-N1とpAc/emm55との間の有意性。★emm55JCat-WTとpAc/emm55との間の有意性。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、プラスミドDNAを細胞の核に直接導入することによって調製される、以前から使用されていたワクチンよりも効率的にかつ安価に調製される癌ワクチンを提供する。細胞質に挿入されたmRNAをコードするemmL(配列番号1、配列番号13、配列番号15及び配列番号16)の使用は、腫瘍細胞をトランスフェクトするのにより有効である。
【0026】
本発明はさらに、形質転換細胞における発現の増加を最適化するように設計された、いくつかの新たなemmLコードRNAを提供する。Emm55タンパク質のより強力な発現は、emm55ヌクレオチド配列を哺乳動物発現に適合させるように設計された、いくつかのコドン最適化アルゴリズムを用いて達成された。
【0027】
mRNAは、癌細胞への抗原タンパク質メッセージ送達が可能である。mRNAは、宿主DNAに組み込むことができないため、より安全な代替手段であるだけでなく、発現は最大で数時間から数日に制限される。mRNA送達はまた、抗原性メッセージを細胞タンパク質産生プロセスのさらに下流に配置するため、細胞においてより迅速な発現を提供する。mRNAは、細胞質内に送達されればよく、DNAは、有効であるために核内に最終的には到達しなければならない。mRNAが有糸分裂後及び非分裂細胞の両方においてタンパク質産生を誘導することができるので、mRNAの使用はタンパク質抗原の産生の利点である。
【0028】
抗原タンパク質のmRNA送達は、DNA送達より安全な代替手段であるが、mRNAの安定性及び免疫原性に対処しなければならない。安定性及び免疫原性の増加を促進する要素の多くは、組換えベクター鋳型に改良操作された。適切な要素がベクター中に含まれていない場合、それらを付加することができ、例えば、鋳型ベクターが、ポリ(A)テールコード配列を含まない場合、テールは転写中に付加される。
【0029】
細胞質において安定性を高めるために、mRNAは、5'-メチルグアノシンキャップと3'-ポリ(A)テール(配列番号3)の両方を含有しなければならない。これらの要素は、mRNAをタンパク質に翻訳することに関与する細胞機構の成分を引きつけ、付加させることに関与する。これらの成分が存在しないと、分解前にmRNAがタンパク質翻訳に利用可能になる時間が減少してしまう。従って、これらの要素は実施例に記載されるように、mRNAに組み込まれている。
【0030】
効率的な免疫原性は、ウイルスベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、脂質及びエレクトロポレーションを用いた送達の増強等の技術の利用によって増加させることができる。ウイルスベクターは、プラスミドDNA(pDNA)の送達に広く使用されているが、いくつかのリスクを有し、コストが増加する。mRNAを用いたエレクトロポレーションは、よりストリンジェントでない電気的設定のため、細胞に対してより毒性が低く、mRNAの送達のための好ましい方法である。DNAは、DNAを細胞外膜及び核膜を通過させるためにより高い電荷を必要とし、一方、mRNAは、細胞外膜を通過するだけでよい。
【0031】
ワクチンのためのmRNAの製造には、pDNAと比較して経済的及び製造的利益の両方がある。mRNAは、線状化されたpDNA鋳型からインビトロで合成され、少量のDNAしか必要とされない。一方、大量のpDNAの製造は、労働集約的であり、ワクチン製造に必要な大量のpDNAを製造するのに十分な細菌を増殖させるために、大型の発酵タンク等の機器を必要とする。大型培養物から単離されたpDNAは純粋であるが、プラスミドの環状性のために、最終産物は、弛緩、線状及び超らせんの3つの構造形態で生じる。各形態は、細胞内に1回抗原タンパク質を産生する能力を有するが、各DNA形態は、細胞膜を介して細胞に入る能力が異なる。mRNAの産生は、ただ1つの構造形態を作り出す。さらに、製造の合成方法により、バッチ間の再現性が高い。
【0032】
製造の観点から、mRNAはDNAから合成され、再現性が高い。これは、大規模な成長が必要とされない、すなわち、かかる時間及び材料がより少なく、汚染のリスクがより少ないので、ワクチンとして使用するために重要である。これらの要因は、コストの低減に寄与する。さらに、mRNAの合成は、線状化されたプラスミドDNAを1つしか必要とせず、100個のmRNA分子を産生するため、より高い収率をもたらす。mRNAは、インビトロで産生され、従って、分離後の大腸菌汚染(ゲノムDNA又はエンドトキシン)はない。これは、より少ない精製工程及び品質管理試験につながる。インビトロ転写の合成的性質はまた、選択マーカーを含むベクター配列が最終産物の一部ではないので、バッチ間の再現性及びより純粋な生成物のより良好なバッチが確実となる。また、DNAとは対照的に、mRNAは、単一の分子コンホメーションを有するが、プラスミドDNAは3つである。mRNAはまた、プラスミドDNAよりもトランスフェクトが容易であり、必要な電圧がより低いため、エレクトロポレーション中の細胞死がより少なくなる。DNAと同様に、mRNAも凍結乾燥することができる。規制の観点から、mRNAは、非複製性で一過性であるためより安全であり、また、mRNAは容易に分解され、抗生物質耐性を付与しないため、環境問題を最小限にするか、又は全く提起しない。
【0033】
以下の比較は、癌細胞への抗原emmLメッセージ送達のために、DNAの代わりにmRNAを使用することの利点を例示するものである。比較は、上流生産、下流生産、及び細胞送達の3つの部分に分けられる。生産コストの低下、製造時間の短縮、優れたメッセージ送達、及び安全性の向上を含む利益の大部分は、上流生産と細胞送達において見られる。各セクションは、DNAプロセスとmRNAプロセスの間の大きな差異、同じく各プロセスについての類似のステップを示す。
【0034】
上流生産
両方の核酸産物の上流生産は、細菌培養増殖までほぼ同一である。mRNAの約100倍の量を産生するのに、少量のDNAしか必要とされない。例えば、インビトロ転写実験では、わずか0.2μgのDNAから25μgのmRNAが生じた。これは、同量の培養を用いて産生されたDNAより25倍多いmRNAである。培養拡大は、非常に高価で時間がかかり、汚染やDNAの突然変異のリスクを増加させる。
【0035】
小さな細菌培養物のみを増殖すればよいという利点は重要である。この培養物からの少量のDNAの分離は小規模で行える。この小型化によって、時間や資源を節約し、汚染リスクを低減する。最終的なmRNA産物の産生には、DNA鋳型からmRNAを転写するさらなる工程が必要である。これは、インビトロで行われる合成工程である。転写の合成的性質のために、バッチ間に良好な再現性があり、手順には数時間しかかからない。DNA含有細菌を培養するには、数日必要である。
【0036】
mRNAではなくpDNAを使用することの重大な欠点は、最終産物がゲノムDNA(gDNA)で汚染される可能性があることである。また、単離されたpDNAは、同じ効率で細胞をトランスフェクトしない、線状、超らせん状、及び環状の3つの立体配置を形成する。mRNA最終産物は、単一の立体配座で純粋であり、gDNA又はpDNAで汚染されていない。
【0037】
チャート1は、DNAとmRNAの製造に用いられるステップを比較したものである。
【表1】
【0038】
下流生産(自家製剤)
下流生産の大部分は、DNAとmRNAについて同じである。1つの違いは、エレクトロポレーションのステップにある。mRNAは、細胞膜と核膜の両方を通過しなければならないDNAとは異なり、核膜は通過せず、細胞膜のみを通過すればよいので、必要な電圧は低い。低い電圧は、エレクトロポレーション中の細胞死を少なくするので好ましい。mRNAトランスフェクト細胞の生存率の増加は、十分な割合で、M様タンパク質を容易に発現するワクチン細胞に翻訳される。
【0039】
チャート2は、トランスフェクトされた細胞におけるワクチン接種に対する作製を通しての腫瘍組織におけるDNA及びmRNAの処理を比較する。
【表2】
【0040】
細胞送達
mRNA送達を使用することの大きな利点は、以下の細胞送達フローチャートにおいて実証される。チャートに示されるように、細胞へのmRNA送達は、抗原性M様タンパク質への即時の翻訳に先立ってスキップされる。トランスフェクトされたDNAは、さらに細胞膜を通過しなければならないだけでなく、mRNAワクチンによって開始されるタンパク質合成の出発点で、細胞質ゾルに戻す送達のためにmRNAに転写されなければならない。
【0041】
mRNAワクチンは、所望の効果に応じて、適合性の免疫学的アジュバント又はリプレッサーとコンジュゲートさせることができる。免疫刺激分子のカクテルであるTriMix等のアジュバントを、コードされた免疫原に対する免疫応答の増大を誘発するmRNAベースのワクチンに添加することができる。免疫抑制因子は、十分な免疫応答を開始する身体の能力を妨げる他の要素の免疫抑制酵素に対抗するのに有用である。これらの免疫抑制剤要素は、免疫化中に共送達されるサイレンシングRNA(siRNA)を使用することによってサイレンシングされる。mRNAベースの癌ワクチンと併せて投与することができるさらなるタイプの免疫抑制剤は、チェックポイント阻害剤である。これらは一般に、腫瘍細胞又は免疫活性化細胞上に存在する受容体に結合する、抗PD1及び抗CTLA4等の抗体からなり、ブロックされないままであれば、免疫抑制を誘導する。このプロセスは、「ブレーキを外す」と呼ばれており、それが意味するように、「ブレーキ」のこの解除は、mRNA癌ワクチン等の免疫療法が、癌性細胞を攻撃する免疫系の成果に磨きをかけることを可能にする。
【0042】
ワクチンは、チェックポイント阻害剤療法だけでなく、化学療法、放射線療法、全細胞ワクチン、他の核酸療法、ナチュラルキラー細胞療法又はキメラ抗原受容体療法と併用して、RNAワクチンの投与前又は投与と同時に使用することができる。
【0043】
他の場合には、癌患者は、ワクチンの投与前又は投与と同時に、サイトカイン、抗融合剤、走化性剤、及び化学物質のメトロノミック用量を含むが、これらに限定されない、腫瘍微小環境を変更するレジメンで治療される。
【0044】
チャート3は、細胞侵入から翻訳までの細胞におけるDNAとmRNAの処理を比較したものである。
【表3】
【0045】
実施例23~25において、emmLをコードするmRNAは、インビトロ転写反応を用いて産生することができる。mRNA及びEmmLタンパク質の安定性及び翻訳効率を改善し、mRNA免疫原性を低下させるために、得られたmRNAに対するいくつかの修飾をこの反応において行うことができる。例えば、限定されるものではないが、アンチリバースキャップアナログ[ARCA、P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸)]、N1-メチル-グアノシン、2'フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、イノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン及び2-アジド-グアノシン等のemmL mRNAの5'末端に修飾核酸を付加させることができる。
【0046】
他の例では、長さ約50~200アデノシンモノホスフェートのポリ(A)テールを、emmL mRNAの3'末端、又は5'修飾ヌクレオチドキャップとポリ(A)テールの両方をemmL mRNAに付加することができる。
【0047】
emmL mRNAは、リボヌクレオチドアナログを用いて合成することができる。この段階で化学修飾を行って、翻訳効率及び安定性をさらに改善することができる。例としては、5-メチル-シチジン-5'-三リン酸、プソイドウリジン-5'-三リン酸、2-チオウリジン-5'三リン酸、及びN1-メチルプソイドウリジン-5'-三リン酸が挙げられる。
【0048】
EmmLタンパク質が高レベルで産生されるように、mRNAを細胞に送達するための方法は、多数存在する。例えば、インビトロ転写後に産生されたemmL mRNAを、組織又は腫瘍に直接注射することができる。
【0049】
脂質又はポリマー等の複合化剤を使用して、RNAを分解から保護し、細胞による取り込みを増強し、細胞質中の翻訳機構への送達を改善することができる。一実施形態において、emmL mRNAは、コレステロール及び合成リン脂質等の親油性材料から調製されたリポソームと複合体を形成する。
【0050】
一実施形態において、emmL mRNAは、コレステロール及び天然リン脂質等の親油性材料から調製されたリポソームと複合体を形成する。
【0051】
一実施形態において、emmL mRNAは、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルサルフェート(DOTAP)等であるが、これらに限定されないカチオン性脂質と複合体を形成する。
【0052】
一実施形態において、emmL mRNAは、3-[(3-クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)等であるが、これらに限定されない両性イオン性脂質と複合体を形成する。
【0053】
一実施形態において、emmL mRNAは、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール_2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3ホスホエタノールアミン(DSPE-PEG)等であるが、これらに限定されないPEG化脂質と複合体を形成する。
【0054】
一実施形態において、emmL mRNAは、カチオン性、双性イオン性及びPEG化脂質の混合物と複合体を形成する。
【0055】
一実施形態において、emmL mRNAは、プロタミンと複合体を形成する。
【0056】
一実施形態において、emmL mRNAは、メラノーマの治療のためのmRNAワクチンを調製するために使用されている、日本の赤血球凝集ウイルス等の特定の材料から調製されたリポソームと複合体を形成する[26]。
【0057】
一実施形態において、emmL mRNAは、特定の細胞を高効率でトランスフェクトするためにウイルス成分を模倣する複数の材料で合理的に設計されたポリマーと複合体を形成することができる。これらには、膜破壊ペプチド、核酸結合成分、保護コート層、及び外側標的化リガンドが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
一実施形態において、複合体化成分を組み合わせて単一のナノ粒子に製剤化することができる。
【0059】
一実施形態において、emmL mRNA又はemmL mRNA複合体は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死配位子1(PD-L1)、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)又はIg及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)等の免疫チェックポイント分子に対する干渉RNA又は干渉RNA複合体と組み合わせることができる。1つの非限定的な例は、PD-1を標的とするemmL mRNA複合体及び低分子干渉RNA(siRNA)複合体である。
【0060】
一実施形態において、emmLコード領域を、ウイルスRNA複製遺伝子と組み合わせて、自己複製可能なリニアRNA分子を形成することができる。次いで、このリニアRNA分子を、親油性化合物及び脂質と共に製剤化して、自己複製mRNAで細胞をトランスフェクトすることができるリポソームを形成することができる。
【0061】
一実施形態において、emmL mRNA又は脂質、プロタミン又はリポソームと共に製剤化されたemmL mRNAは、生分解性ポリマーと複合体を形成する。限定されない一例としては、薬物送達デバイスとして使用するために食品医薬品局によって承認されているポリカプロラクトンが挙げられる。生分解性ポリマー複合体化の利点は、ポリマーが分解することにつれて、mRNA又はmRNA複合体を長期間にわたって送達することができることである。この持続送達が、ワクチンの有効性を高めることができる。
【0062】
一実施形態において、emmL mRNA又はemmL mRNA複合体は、emmL mRNAワクチンの有効性を増強する組織特異的因子又は腫瘍特異的因子を含有する生分解性ポリマー中に製剤化することができる。一例としては、血管新生又は脈管形成を阻害し、それによって相乗的抗腫瘍効果を提供する因子を含有するバイオポリマーと共に製剤化されたemmL mRNAワクチンが挙げられる。
【0063】
一実施形態において、emmL mRNA又はemmL mRNA複合体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4又はTIGIT等の免疫チェックポイント分子の発現を低下させる因子を含有する生分解性ポリマー中に製剤化することができる。限定されない例として、PD-1の発現を減少させ、それによって相乗的抗腫瘍効果を提供する、小分子又は抗体等の既存の又は新規の医薬試薬が挙げられる。
【0064】
一実施形態において、emmL mRNA又はemmL mRNA複合体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4又はTIGIT等の免疫チェックポイント分子の発現を減少させる因子のための干渉RNA又は干渉RNA複合体を含有する生分解性ポリマー中に製剤化することができる。限定されない一例として、emmL mRNA複合体及び低分子干渉RNA(siRNA)複合体が挙げられる。
【0065】
一実施形態において、emmL mRNA又はemmL mRNA複合体を、合成二本鎖RNAポリリボイノシンポリリボシチジル酸[ポリ(I:C)]等のアジュバントと組み合わせることができる。
【0066】
pSFCMVT/emmL設計要素の分析
いくつかの設計要素は、EmmLタンパク質産生のレベルを改善することができた。
【0067】
実施例1に詳述したmRNAワクチン(配列番号1~3)を、Oxford Genetics pSF-CMV_T7プラスミドDNAベクターにクローニングして、pSFCMVT7/emmLを産生した。哺乳動物細胞のトランスフェクション後のmRNA発現が検出されたが、低レベルのEmm55タンパク質のみがウェスタンブロットで検出された。pSFCMVT7/emmLのレトロスペクティブ分析は、哺乳動物細胞における翻訳効率を改善できる設計要素を識別した。
【0068】
EmmLタンパク質産生のレベルを改善することができる少なくとも2つの異なるタイプの設計要素が存在する。近位要素は、emmLコード領域に近く、pAc/emm55からのemmLのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅中に付加される。遠位要素は、emmLコード領域から離れており、mRNAからのタンパク質の発現を増強するために一般的に有用である。
【0069】
近位要素は、哺乳動物細胞発現のために最適化された翻訳開始配列を、emmLコード領域のN末端に導入することを含む。この配列は、RYMRMVATGGC(RはA又はGであり、YはC又はTであり、MはA又はCであり、VはA、C又はGである)と決定されている(配列番号4)。一実施形態において、最適な翻訳開始配列、ATAGCCATGGC(配列番号5)は、emmLの天然開始コドンを置換する。
【0070】
この近位設計要素の一実施形態において、オリゴヌクレオチドPCRプライマーは、縮重位置(配列番号4におけるR、Y、M及びV)に各ヌクレオチドの等モル濃度が存在するように合成され、最終オリゴヌクレオチド合成産物は、全ての可能なプライマー配列を含む。本実施形態において、最適な翻訳開始配列は、emmL遺伝子が哺乳動物発現プラスミドDNAベクターにサブクローニングされた後のウエスタンブロット等のアッセイにおけるEmmLタンパク質発現のレベルを比較することによって経験的に決定される。
【0071】
emmLコード領域のC末端を修飾するために使用することができる他の近位設計要素は、天然終止コドンの後に付加される終止コドンの付加である。多くの真核生物発現プラスミドベクターは、発現遺伝子の最後のコドンの直後に、3つ全ての終止コドン変形、TAG、TAA及びTGAのDNA配列を含有する。天然emmL終止コドンのDNA配列はTAGであるので、配列番号6を、追加の近位設計要素として含めることができる。
【0072】
もう1つの近位設計要素は、制限エンドヌクレアーゼ認識部位の付加であり、これをemmLコード領域のN末端及びC末端に付加して、プラスミドクローニングベクターへのその挿入を容易にすることができる。制限エンドヌクレアーゼ認識部位の選択は、目的プラスミドに基づいて行われる。使用することができる制限エンドヌクレアーゼのいくつかの例は、SacI、NotI、BglII、EcoRV及びSpeIである。好ましい一実施形態において、SacI及びSpeI部位がemmLコード領域内で切断されず、反応条件を共有するので、SacI及びSpeI部位をemmLコード領域のN末端及びC末端に付加して、それらを同時に使用して、目的のプラスミドへの挿入のためのemmLコード領域PCRアンプライマーを調製することができる。
【0073】
emmLコード領域の遠位にある設計要素は、emmLコード領域の任意のバリエーション、又は近位設計要素に適合される他の遺伝子が挿入されるように、プラスミドクローニングベクターに付加される。これらの遠位要素は、emmL又は任意の他の哺乳動物mRNAの高レベルmRNA及びタンパク質発現を駆動することができるmRNA発現ベクターを作製するように操作することができる。
【0074】
1つの遠位設計要素は、バクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーター領域のDNA配列である。バクテリオファージRNAポリメラーゼの例は、T7、T3及びSP6である。一実施形態において、T7RNAポリメラーゼのプロモーター(配列番号8)は、EmmLコード領域からT7RNAポリメラーゼの動作に関して最終的に上流になるように付加されるいくつかの遠位要素のうちの最初のものである。
【0075】
非翻訳領域(UTR)と呼ばれる、転写されるが翻訳されない真核生物遺伝子コード領域近の5'及び3'のRNA配列は、インビトロで転写されたmRNAからのタンパク質翻訳に対して強い正又は負の影響を有する。一般に、高レベルのタンパク質発現を支持するUTRは構造化されておらず、負の調節配列を欠き、遺伝子発現パターンをさらに精緻化するのに役立つマイクロRNAの結合部位を含有する。一般に哺乳動物細胞において高度に発現される遺伝子のUTR、又はmRNAワクチン発現が望まれる組織に一致する発現パターンを有する遺伝子由来のUTRの両方を使用して、EmmLタンパク質等の遺伝子産物の送達を最適化することができる。アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子由来のUTRは、哺乳動物免疫療法に使用されるRNAの設計を含む、広範囲の真核生物における高レベルの翻訳を媒介するのに広く使用されている。組織特異的UTRの例は、松果体及び脳幹における差次的発現を駆動するトリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)アイソフォームである。
【0076】
一実施形態において、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子5'UTRが、RNAポリメラーゼ活性に関して、emmLコード領域から上流に位置する。配列番号9は、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子5'非翻訳領域の限定されない1つの例である。
【0077】
一実施形態において、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子3'UTRを、RNAポリメラーゼ活性に関して、emmLコード領域の下流に位置させることができる。配列番号10は、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子3'非翻訳領域の限定されない1つの例である。
【0078】
一実施形態において、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子5'及び3'UTRの両方を、emmLコード領域に隣接するように配置させることができる。
【0079】
一実施形態において、5'UTR及び3'UTRは、ワクチンによって標的とされる新生物細胞のタイプに基づいて選択される。1つの限定されないセットの例において、メラノーマ細胞において高度に発現される遺伝子、例えば、チロシナーゼ(TYR)、メラニン形成関連転写因子(MITF)、メラノコルチン受容体1(MC1R)、テロメラーゼ(TERT)、シクロオキシゲナーゼ2(COX2)、C-X-Cモチーフケモカイン受容体4(CXCR4)及びバキュロウイルスIAP反復含有5遺伝子(BIRC5)の5'及び3'UTRを使用して、メラノーマを治療するために使用されると、emmLベースのワクチンに高レベルの細胞特異的発現を提供することができる。
【0080】
一実施形態において、ワクチン発現をさらに精緻化するために、所望の発現レベル及び特異性を付与する一次遺伝子転写物内に位置しない他の遺伝要素を、5'及び3'UTRの前、後、又は内に含めることができる。
【0081】
他の遠位設計要素は、emmLコード領域を他の隣接する遠位設計要素に挿入するために使用することができる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を提供する合成DNA配列である。一実施形態において、SacI、NotI、BglII、EcoRV及びSpeIの制限エンドヌクレアーゼ認識部位が使用される(配列番号7)。
【0082】
他の遠位設計要素は、emmLコード領域の直後に目的プラスミドを切断して、線状プラスミドDNA分子を産生する制限エンドヌクレアーゼ認識部位を提供する合成DNA配列である。線状化は、RNAポリメラーゼ活性のための有効終了を提供し、これは、均一な長さのmRNA転写物の産生を増加させる。配列の例は配列番号11であり、これは、BamHI、EcoRI及びXbaIに対する制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含む。1つの好ましい実施形態において、BamHIは、emmLコード領域内で切断されず、5'ヌクレオチドオーバーハングを残すので、emmLコード領域を含有するプラスミドを線状化するために使用され、これによって、3'ヌクレオチドオーバーハングよりも高い効率の転写が可能になる。
【0083】
一実施形態において、上記の遠位設計要素を含有する二本鎖DNA分子が、重複する相補的合成一本鎖オリゴヌクレオチド分子の使用によって合成される。これらの分子はアニーリングされ、残っているギャップは、Taqポリメラーゼ等のDNAポリメラーゼで満たされる。
【0084】
一実施形態において、2つの相補的合成一本鎖オリゴヌクレオチド分子を合成して、全ての所望の遠位設計要素を包含することができる。次いで、これらのオリゴヌクレオチド分子をアニールする。上記の実施形態のいずれにおいても、得られた平滑末端合成DNA分子は、鋳型非特異的アデノシンを付加することによって、Invitrogen pCR(登録商標)II-TOPOプラスミド等のPCRクローニングベクターに挿入することができる。これは、72℃で約200μMの最終濃度のTaqポリメラーゼ及びデオキシアデノシン三リン酸と平滑末端合成DNA分子を10分間インキュベートすることによって達成される。
【0085】
一実施形態において、上記の遠位設計要素を含有するプラスミドは、pT7XLUTRと命名される。pCR(登録商標)II-TOPOに挿入された合成DNA分子のマップを図11に示し、ヌクレオチド配列を配列番号12として示す。この配列は上記の遠位設計要素を含むが、所望の発現レベル又は特異性を支持するために付加される要素の全体又は完全な範囲を表すものではない。
【0086】
pT7XLUTRを用いて大腸菌を形質転換することができる。pT7XLUTRで形質転換された細菌は、50~100μg/mLのカナマイシン又はカルベニシリンを補充したLuria Bertaniブロスを含有する寒天プレート等の、PCRクローニングベクターと一致する抗生物質を含有する寒天プレート上で選択することができる。細菌培養物は、液体抗生物質選択培地、例えば、50~100μg/mLのカナマイシン又はカルベニシリンを補充したLuria Bertaniブロス、及び当業者に公知の方法を用いて調製されたプラスミドDNA中での成長によって拡大させることができる。
【0087】
記載された設計要素のいくつかを組み込んだRNAは、Emm55の発現を増加させることが見出された。配列は、配列番号13、配列番号15及び配列番号16で示される。
【0088】
実施例
以下の実施例は、本発明の例示として提供され、限定されるものではない。
【0089】
実施例1 イヌリンパ腫に対する自己mRNAワクチン
75ポンドの雄の去勢済みローデシアンリッジバックの膨潤した下顎リンパ節及び鼠径リンパ節が獣医に提示される。患畜は、拡大した節のうちの1つに対して細針吸引が実施される。病理学者による精査により、患畜は低悪性度びまん性リンパ腫と診断される。
【0090】
飼い主は、免疫療法で報告された副作用がごくわずかであるため、化学療法及びステロイドの代わりに免疫療法を行うことを選択する。患畜が全身麻酔下にある間、獣医は右下顎リンパ節を切除する。組織試料は、実験室処理のために夜間配送される。
【0091】
実験室で組織試料を受け取ると、以下のことが行われる。1)移動媒体は、任意の細菌汚染についてチェックされ、2)組織寸法が測定され、3)無傷のリンパ節は、いくつかのボーラスの洗浄媒体を使用して繰り返し吸引されて、腫瘍細胞を放出し、4)吸引された細胞が収集され、カウントされる。
【0092】
適切な量の細胞を用いて、mRNAをコードするemmLでエレクトロポレーションする。BioRad Gene Pulse機を用いて、120×10の細胞を80μgのmRNAでトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞の少量を凍結保存し、残りを約24時間培養する。24時間後、細胞を照射し、必要になるまで凍結保存した10×10の細胞ワクチン用量に分注する。
【0093】
患畜は、合計8回のワクチン用量を投与される。各用量は、実験室から獣医クリニックに夜間配送され、投与予定日に到着する。獣医師は、針を備えた注射器を使用して、各用量を皮内投与する。8回のワクチン用量を、7日毎(+/1日)に4週間、次いで月に1回、4ヶ月間投与する。最初の投与の前に、血液試料が採取される。その後の採血は、5回目のワクチン、8回目のワクチンの前、及び最後のワクチンの8週間後に行う。血液試料は、末梢血及び血漿のために処理され、研究室で保存される。それらは、後に抗腫瘍免疫応答の評価に使用される。
【0094】
治療の過程を通して、患畜のリンパ節は、全体的な生活の質と共にモニターされる。全体的な疾患状態が、腫瘍量の減少及び抗腫瘍免疫応答によって評価される。腫瘍量は、治療の過程を通してリンパ節の各々に対して実施される測定を通して評価される。抗腫瘍免疫応答は、抗体レベルを評価するための標準酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)及び細胞傷害性T細胞(CTL)応答を評価するためのフローサイトメトリーを用いて測定される。
【0095】
治療の過程の間、患畜産のリンパ節サイズは増加し、治療過程が続くにつれて、後に減少する。この観察結果は、おそらく、腫瘍部位、この場合は、リンパ節への免疫細胞の浸潤によるものである。ELISA及びフローサイトメトリーの結果は、4回目のワクチン接種後に抗体産生及びCTLの増加を示し、その後、一連のワクチン接種の完了後に持続する。
【0096】
実施例2 馬メラノーマに対する直接mRNAワクチン
15歳雌のアンダルシアンの、たてがみ、及び肛門周囲領域に黒い病変部が提示された。細針吸引物を検討すると、病理医は患畜をメラノーマと診断する。所有者は、患畜の肛門周囲病変を切除するという複雑な性質のため、免疫療法を行うことを選択する。
【0097】
100μgのmRNAを100μLの滅菌ヌクレアーゼフリーHO中に含む3つのワクチン用量を調製する。3つの用量及び3つの無針注射装置(J-Tip)が、獣医師に送られる。患畜の病変部のうちの3つが、治療コースを受けるように選択され、時点当たり合計300μgのmRNAである。2週間毎に、以前に行われたように、さらに3回の用量が獣医クリニックに送られ、各用量が、J-Tipデバイスを使用して同じ3つの病変部に投与される。患畜は、病変部ごとに合計6回のワクチン投与を受ける。
【0098】
一連のワクチンの開始前、5回目のワクチン投与前、及び一連完了後の2週間後に、採血を行う。血液試料は、末梢血及び血漿のために処理され、保存される。それらは、後に抗腫瘍免疫応答の評価に使用される。
【0099】
全体的な疾患状態が、腫瘍量の減少及び抗腫瘍免疫応答によって評価される。腫瘍量は6つのワクチン用量の各々が投与される前に、病変に対して実施される測定を通して評価される。抗腫瘍免疫応答は、抗体レベルを評価するための標準ELISA及びCTL応答を評価するためのフローサイトメトリーを用いて測定される。
【0100】
免疫療法を受けている他の患畜に見られるように、メラノーマ病変は、最初はサイズが増加し、一連のワクチンが進行するにつれて、その後減少する。ELISA及びFACSの結果は、第2のワクチン後の抗体産生及びCTLの増加を示し、一連のワクチンの完了後に持続が見込まれる。
【0101】
実施例3 emmL mRNAの作製方法の概要
方法の概要:ベクター及びインサートの制限酵素消化
最適なmRNA産生のための適切な組換えプラスミドを作製するために、二重原核生物及び真核生物プロモーター、非翻訳3'及び5'領域、選択マーカーを含むプラスミド骨格を使用した。このタイプのベクター、例えば、pSFCMVT7は、抗原性M様タンパク質、例えば、Emm55をコードするmRNAの製造及び安定化を補助する複数の特徴を有する。ベクターpSFCMVT7及びプラスミドpAc/emmLを含有するインサートの両方を、制限酵素SacI及びEcoRVを用いて切断した。プラスミドマップについては、図1及び図2を参照されたい。
【0102】
ゲル電気泳動によるDNAフラグメントの分離
適切な酵素を用いて制限消化を実施した後、DNAフラグメントをゲル電気泳動により単離した。DNAバンド長を評価するために、両方の消化反応を用いて参照DNAラダーを実行して、目的のバンドの識別を補助する。DNAを含むバンドをゲルから抽出した。
【0103】
ゲル抽出/DNA単離
目的のDNAを含有するゲルスライスを可溶化し、DNAを抽出して、ベクター及びインサートを一緒にライゲーションして組換えプラスミドpSFCMVT7/emmLを作製した。
【0104】
ベクター及びインサートライゲーション
ベクター及びプラスミドを含有するインサートの制限消化の間に、「粘着性末端」が作製され、これは後にライゲーション反応で接合された。「粘着性末端」は、相補的ヌクレオチドとの水素結合に利用可能な不対ヌクレオチドを指す。ベクターpSFCMVT7及びインサートemmLを同じ制限酵素で切断したので、それらは、T4 DNAリガーゼへの曝露時に結合された相補的末端を含有する。
【0105】
細菌へのトランスフェクション
mRNA産生プラスミドpSFCMVT7/emmLを作製した後、それを、単離され、インビトロmRNA合成に使用される十分なDNAを産生するコンピテント細菌に形質転換、すなわちトランスフェクトした。インビトロジェンのStbl3大腸菌は、トランスフェクションに使用することができる細菌のタイプの一例である。修飾は、プラスミドが細胞及び最終的には核に入ることを可能にする、細胞膜中の小さな開口部を開くために細菌に熱ショックを与えることによって誘導された。
【0106】
細菌培養の成長と拡大
プラスミドでトランスフェクトした細菌を、選択的抗生物質を含有する適切な増殖培地上に置いた。pSFCMVT7の場合はカナマイシンである。細菌がプラスミドで正しく形質転換される場合、カナマイシンの抗細菌特性を妨げ、カナマイシン耐性細菌が培地上で選択的に増殖することを可能にするタンパク質を産生する。
【0107】
プラスミドの単離及び精製
pDNAを含む十分な数の細菌が増殖したら、細胞を溶解し、プラスミドを細胞内から放出させた。pDNAを、濾過及びアニオン交換カラムを通して、gDNA、タンパク質及び他の細胞残屑から単離した。
【0108】
鋳型DNAの調製:プラスミドDNAの線状化
単離されたDNAは、mRNA産生のための鋳型DNAを含む。転写反応が起こるためには、プラスミドを線状化しなければならない。線状化は、目的のオープンリーディングフレーム遺伝子から下流で起こることが重要である。
【0109】
mRNA転写反応
鋳型が調製された後、メッセージは、インビトロ転写反応によって作製される。この反応は、5'末端のキャッピング及び安定化増加のためのポリ(A)テールの付加を含む、細胞におけるmRNAの転写をシミュレートする。
【0110】
mRNA精製
メッセージがmRNAに転写されると、残留DNA鋳型は分解され、その結果、純粋なmRNA産物を使用して、自家細胞、同種異系細胞、又は腫瘍内にトランスフェクトすることができる。細胞内に入ると、mRNAは免疫活性化のために細胞表面上にM様タンパク質を産生し、提示する。
【0111】
癌細胞へのmRNAのトランスフェクション
mRNAを癌細胞に送達することができる1つの方法は、エレクトロポレーション法によるものである。この方法は、弱い電流を利用して、細胞膜に小さな孔を開け、次いでmRNAが膜を通って細胞質内に移動することを可能にするものである。
【0112】
実施例4 制限酵素消化
表1に、pDNAの迅速消化のための手順を示す。
【表4】
【0113】
実施例5 ゲル電気泳動によるDNAフラグメントの分離
表2に、DNAフラグメント分離の手順を示す。
【表5】
【0114】
実施例6 ゲル抽出/DNA単離
表3に、抽出及びDNA単離の手順を示す。
【表6】
【0115】
実施例7 ベクター及びインサートライゲーション
表4に、ベクターインサート及びライゲーションのための手順を示す。
【表7】
【0116】
実施例8 DNAの大腸菌への形質転換
表5に、大腸菌の形質転換の手順を示す。
【表8】
【0117】
実施例9 細菌培養の成長と膨張
表6に、細菌培養物の増殖及び増殖の手順を示す。
【表9】
【0118】
実施例10 プラスミドの単離及び精製
表7に、プラスミドの単離及び精製のための手順を示す。
【表10】
【0119】
実施例11 鋳型DNAの調製
表8に、鋳型DNAの調製及びプラスミド線状化のための手順を示す。
【表11】
【0120】
実施例12 mRNA転写
表9に、mRNAを転写する手順を示す。
【表12】
【0121】
実施例13 mRNA精製
表10に、mRNAを精製する手順を示す。
【表13】
【0122】
実施例14 mRNAによる癌細胞へのトランスフェクション
以下の表11に、哺乳動物の癌細胞をemmL mRNAでトランスフェクションするための手順を示す。
【表14】
【0123】
実施例15 DNA pSFCMVT7/emmLのクローニングステップ
図5は、細菌抗原をコードするmRNAを産生するための組換えDNAベクターを作製するための手順を示す。
【0124】
実施例16 M様タンパク質への抗体の直接結合
図6に示されるウェスタンブロットは、単離されたM様タンパク質、特に、Emm55に対する抗M様タンパク質抗体の特異性を実証する。
【0125】
ローディングバッファ中で130mMのβ-MEを用いて、SDS-PAGE(10%)によりタンパク質を分離した。試料を100℃で3分間煮沸し、13,000xgで2分間室温で回転させた。ブロット(左端)を、一次抗体(α-M様タンパク質)を用いて、5%乳中、室温で1.5時間プローブした。一次抗体希釈は1:500であった。二次抗体(ヤギα-マウス結合HRP)は、1:5000の希釈であった。ヌルブロット(左から2番目)は、二次抗体の非特異的結合を示す。
【0126】
化学発光を用いて、ニトロセルロースブロット上のタンパク質を可視化した(曝露:10分)。
【0127】
実施例17 DNAと比較してmRNAで見られる発現の増加を実証する蛍光顕微鏡画像及びチャート
RNA及びDNAを哺乳動物細胞にトランスフェクトし、タンパク質発現についてアッセイした実験から、結果を比較した。結果は、等しいトランスフェクション量のRNAが5倍の発現量となったことを示す(図7参照)。
【0128】
実施例18 合成されたemmL mRNA、無テール(untailed)及び有テール(tailed)
図8に示される変性アガロースゲルを得るために使用される手順は、合成されたemmL mRNA、具体的には、Lonza FlashGelシステムを使用するemm55 mRNAの可視化を実証するものである。
【0129】
20ngの試料及び100ngのラダーを、DEPC処理水を用いて総量を2.5μLの容積に希釈することによって調製した。等量のホルムアルデヒド試料緩衝液を各試料に添加した。試料を混合し、次いで65℃で15分間インキュベートした後、氷上で1分間インキュベートした。試料を1.2%RNAゲルカセットに装填し、次いで225ボルトで8分間実行した。ゲルを室温で10分間インキュベートし、次いでFlashGelカメラを用いて可視化した。mRNAサイズを、RNA Millennium Markerにより決定した。
【0130】
実施例19
チャート4は、RNA(emmL mRNA)及びDNA(pSFCMVT17/emmL)を哺乳動物細胞にトランスフェクトし、α-M様タンパク質で染色し、フローサイトメトリー分析を用いてアッセイした実験の結果を示す。結果は、RNAトランスフェクト細胞がDNAトランスフェクト細胞と同等のシグナル、すなわち9%となることを示す。
【表15】
【0131】
実施例20
emmL mRNA(治療)又は滅菌水(対照)のいずれかをワクチン接種したマウスからの血液試料を、emmLタンパク質に反応する抗体の存在について試験した。図9に示されるように、対照マウス(C2)からの血液試料は、α-M様タンパク質抗体を含有していなかったが、治療マウス(T2)試料はわずかな上昇を示した。
【0132】
実施例21
チャート5は、マウスにメラノーマ腫瘍細胞を移植し、その後、emmL mRNA(治療)又は滅菌水(対照)のいずれかを注射した実験の結果を示す。注入レジメンは、腫瘍移植の10日後に開始した。レジメンは、7日毎に注入される、治療又は対照のいずれかに、3回注射であった。実験中の5匹の全てのマウスは、注射2回目後も生存していた。この時点で、3匹の治療マウスのうち2匹が、対照マウスよりも腫瘍が小さかった。5匹のマウスのうちの3匹は注射3回目後も生存しており、その時点で、残りの2匹の治療マウスの腫瘍は、残りの対照マウスの腫瘍よりも依然として小さかった。
【表16】
【0133】
実施例22
図10は、マウスの血液試料を、emmL mRNAによるワクチン接種の前後に、emmLタンパク質に反応する抗体の存在について試験した実験の結果を示す。ウェスタンブロット画像は、ワクチン接種後に採取された血液試料では、ワクチン接種前試料からの抗体の結合が増加していることを示す。
【0134】
実施例23
高忠実度Taq DNAポリメラーゼを用いたPCRを用いて、pAc/emm55プラスミドからemmLコード領域を増幅する。一実施形態において、このアンプライマーは、pSFCMVT7/emmLの5'及び3'UTR内の潜在的に阻害性の要素を最小限にするために、pSF-CMV_T7ベクターと適合性のある制限エンドヌクレアーゼ部位を含む近位要素で設計されている。
【0135】
近位設計要素は、T7RNAポリメラーゼの活性に関して、NcoI及びXhoIの制限エンドヌクレアーゼ認識部位、最適翻訳開始配列(配列番号4又は5)、及びemmLコード領域の下流側の2つの追加の終止コドン(配列番号6)を含む。得られたアンプライマーを、pCR(登録商標)II-TOPO等のPCRクローニングベクターに挿入することができる。得られたプラスミドを用いて、大腸菌を形質転換し、pCR(登録商標)II-TOPOの場合、50~100μg/mLのカナマイシン又はカルベニシリンを補充したLuria Bertaniブロスを含有する寒天プレート等の、PCRクローニングベクターと一致する選択的抗生物質を含有する寒天プレート上での陽性形質転換のために選択する。
【0136】
得られたプラスミドを含有する細菌培養物は、液体抗生物質選択培地、例えば、pCR(登録商標)II-TOPOの場合、50~100μg/mLのカナマイシン又はカルベニシリンを補充したLuria Bertaniブロス中での成長によって拡大させることができる。プラスミドDNAは、当業者に公知の方法を用いて、これらの細菌培養物から調製することができる。次いで、制限エンドヌクレアーゼNcoI及びXhoIを使用して、pCR(登録商標)II-TOPOプラスミドDNAから、近位設計要素に隣接するemmLコード領域を切り出すことができる。次いで、近位設計要素DNAフラグメントに隣接するemmLコード領域を、NcoI及びXhoIで消化されたpSF-CMV_T7ベクターに挿入することができる。ライゲーション、細菌形質転換、50~100μg/mLのカナマイシンを含有する寒天プレート上での陽性形質転換のための選択、50~100μg/mLのカナマイシンを補充したLuria Bertaniブロス中での拡大、及び当業者に公知の方法を使用するプラスミドDNA調製の後、得られたプラスミド、pSF/emmLを、制限エンドヌクレアーゼXhoIによる線状化後のインビトロmRNA合成のための鋳型として使用することができる。得られたmRNA及び予測されたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号13及び14として示す。
【0137】
実施例24
高忠実度Taq DNAポリメラーゼを用いて、pAc/emm55プラスミド由来のemmLコード領域を、pT7XLUTRのポリリンカー領域と適合する制限エンドヌクレアーゼ部位を含む近位設計要素で増幅する。一実施形態において、これは最適な翻訳開始配列(配列番号4又は5)及び2つの追加の終止コドン(配列番号6)も含むことができる。この実施形態の完全な配列を配列番号15に示す。得られたアンプライマーは、pCR(登録商標)II-TOPO等のPCRクローニングベクターに挿入することができる。実施例23に記載の細菌形質転換、選択、拡大及びプラスミドDNA調製に続いて、得られたプラスミドを制限エンドヌクレアーゼSacI及びSpeIで消化して、pCR(登録商標)II-TOPOから近位設計要素を有するemmLコード領域を切り出すことができる。次いで、近位設計要素を有するemmLコード領域を、SacI及びSpeIで消化されたpT7XLUTRプラスミドベクターにライゲートして、pT7XLUTR/emmLを産生することができる。得られたpT7XLUTR/emmLプラスミドを用いて、大腸菌を形質転換することができる。
【0138】
実施例23に記載の選択、拡大及びプラスミドDNA調製に続いて、得られたpT7XLUTR/emmLプラスミドを、制限エンドヌクレアーゼBamHIによる線状化後、インビトロmRNA合成のための鋳型として使用することができる。得られたmRNA及び予測されたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号15及び14として示す。
【0139】
実施例25
高忠実度Taq DNAポリメラーゼを用いて、pAc/emm55プラスミドからemmLコード領域を最小限の5'及び3'UTRで増幅する。T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列(配列番号8)は、最適な翻訳開始配列(配列番号4又は5)、2つの追加の終止コドン(配列番号6)及びXhoI制限エンドヌクレアーゼ部位と共に近位設計要素として付加される。
【0140】
得られたPCR産物を、pCR(登録商標)II-TOPO等のPCRクローニングベクターに挿入することができる。実施例23に記載の細菌形質転換、選択、拡大及びプラスミドDNA調製に続いて、得られたプラスミドpT7/emmLを、制限エンドヌクレアーゼXhoIでの線状化後に、インビトロmRNA合成の鋳型として使用することができる。得られたmRNA及び予測されたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号16及び14として示す。
【0141】
実施例23~25において、emmLをコードするmRNAは、インビトロ転写反応を用いて産生することができる。mRNA及びEmmLタンパク質の安定性及び翻訳効率を改善し、mRNA免疫原性を低下させるために、得られたmRNAに対するいくつかの変形例をこの反応において行うことができる。例えば、限定されるものではないが、アンチリバースキャップアナログ[ARCA、P1-(5'-(3'-O-メチル)-7-メチル-グアノシル)P3-(5'-(グアノシル))三リン酸)]、N1-メチル-グアノシン、2'フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、イノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン及び2-アジド-グアノシン等のemmL mRNAの5'末端に修飾核酸を付加させることができる。
【0142】
他の例では、長さが約50~200アデノシンモノホスフェートのポリアデニル化[ポリ(A)]テールを、emmL mRNAの3'末端に付加させたり、5'修飾ヌクレオチドキャップとポリ(A)テールの両方をemmL mRNAに付加することができる。
【0143】
emmL mRNAは、リボヌクレオチドアナログを用いて合成することができる。この段階で化学修飾を行って、翻訳効率及び安定性をさらに改善することができる。例としては、5-メチル-シチジン-5'-三リン酸、プソイドウリジン-5'-三リン酸、2-チオウリジン-5'三リン酸、及びN1-メチルプソイドウリジン-5'-三リン酸が挙げられる。
【0144】
配列番号4
最適な翻訳開始配列の縮重DNA配列。RはA又はGであり、YはC又はTであり、MはA又はCであり、VはA、C又はGである。
RYMRMVATGGC
【0145】
配列番号5
最適な翻訳開始配列のDNA配列。
ATAGCCATGGC
【0146】
配列番号6
2個の終止コドンを含むDNA配列。
TAATGA
【0147】
配列番号7
SacI、NotI、BglII、EcoRV及びSpeIの制限エンドヌクレアーゼ認識部位のDNA配列。
GAGCTCGCGGCCGCAGATCTGATATCACTAGT
【0148】
配列番号8
T7RNAポリメラーゼプロモーターのDNA配列。
TAATACGACTCACTATAG
【0149】
配列番号9
アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子5'非翻訳領域の50リボヌクレオチド。
aagcuucuuguucuuuuugcagaagcucagaauaaacgcucaacuuuggc
【0150】
配列番号10
アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子3'非翻訳領域の74リボヌクレオチド。
cuuuuugaugccauugccgacgcccuuggcaaggguuaccacuaaaccagccucaagaacacccgaauggaguc
【0151】
配列番号11
BamHI、EcoRI及びXbaIの制限エンドヌクレアーゼ認識部位のDNA配列。GGATCCGAATTCTCTAGA
【0152】
配列番号12
pT7XLUTRを調製するために使用される合成二本鎖DNA分子のDNA配列。T7RNAポリメラーゼ、SacI、NotI、BglII、EcoRV、SpeI、同様に、BamHI、EcoRI、及びXbaIの制限エンドヌクレアーゼ認識部位に下線を引いてある。

【0153】
配列番号13(実施例23のRNA配列)
mRNA分子に対して5'から3'に書かれたプラスミド鋳型からのemmLのインビトロmRNA合成後の合成mRNA配列。アンチリバースキャップアナログ(ARCA)を転写物の5'末端に付加し、約50~200個のアデノシンモノホスフェート(a50-200)をインビトロ転写中に転写物の3'末端に付加する。5'小文字は、pSF-T7_CMVプラスミドベクター由来の5'非翻訳領域(UTR)である。ARCAキャップの直後のグアニン(g)は、T7RNAポリメラーゼによって産生される+1リボヌクレオチドである。太字は、下線を引いた5'NcoI制限エンドヌクレアーゼ部位を作るために付加されたリボヌクレオチド、及び最適な翻訳開始配列を示す。大文字は、emmLのコード配列を示す。mRNA配列の3'末端において、太字は、2つのさらなる終止コドンを示す。3'XhoI制限エンドヌクレアーゼ部位に下線を引いてある。

【0154】
配列番号14(実施例23~25の予測タンパク質配列)
実施例2~4で産生したemmL転写物のアミノ酸配列を1文字予測した。*は終止コドンを示す。
MAKNTTNRHYSLRKLKTGTASVAVALTVLGTGLVAGQTVKASQTEPSQTNNRLYQERQRLQDLKSKFQDLKNRSEGYIQQYYDEEKNSGSNSNWYATYLKELNDEFEQAYNELSGDGVKKLAASLMEERVALRDEIDQIKKISEELKNKLRAKEEELKNKKEERELEHAAYAADAKKHEEYVKSMSLVLMDKEEERHKLEQSLDTAKAELVKKEQELQLVKGNLDQKEKELENEELAKESAISDLTEQITAKKAEVEKLTQDLAAKSAEIQEKEAEKDRQQHMYEAFMSQYKEKVEKQEQELAKLKQLETINNNLLGNAKDMIAKLSAENEQLASDKAKLEEQNKISEASRKGLRRDLDASREAKKQVEKDLANLTAELDKVKEDKQISDASRKGLRRDLDASREAKKQVEKALEEANSKLAALEKLNKELEESKKLTEKEKAELQAKLEAEAKALKEQLAKQAEELAKLRAGKASDSQTPDAKPGNKVVPGTGQAPQAGTKPNQNKAPMKETKRQLPSTGEAANPFFTAAALTVMATAGVAAVVKRKEENEAEFCRYPSHWRPRL*
【0155】
配列番号15(実施例24のRNA配列)
mRNA分子に関して5'から3'に記載された、制限エンドヌクレアーゼBamHIで線状化したpT7XLURTプラスミド鋳型からのemmLのインビトロmRNA合成後の合成mRNA配列。アンチリバースキャップアナログ(ARCA)を転写物の5'末端に付加し、約50~200個のアデノシンモノホスフェート(a50-200)をインビトロ転写中に転写物の3'末端に付加する。ARCAキャップの直後のグアニン(g)は、T7RNAポリメラーゼによって産生される+1リボヌクレオチドである。5'小文字はアフリカツメガエルのベータグロビン遺伝子の5'非翻訳領域に由来する。太字は、最適な翻訳開始配列を作製するために付加されるリボヌクレオチドを示す。emmLコード領域のSacI制限エンドヌクレアーゼ部位5'に下線を引いてある。大文字は、emmLのコード配列を示す。コード領域の小文字3'は、アフリカツメガエルベータグロビン遺伝子の3'非翻訳領域である。mRNA配列の3'末端において、太字は、2つのさらなる終止コドンを示す。SpeI及びBamHI制限エンドヌクレアーゼ部位に下線を引いてある。

【0156】
配列番号16(実施例24のRNA配列)
mRNA分子に関して5'から3'に記載された、プラスミド鋳型からのemmLのインビトロmRNA合成後の合成mRNA配列。アンチリバースキャップアナログ(ARCA)を転写物の5'末端に付加し、約50~200個のアデノシン一リン酸(a50-200)をインビトロ転写中に転写物の3'末端に付加する。ARCAキャップの直後のグアニン(g)は、T7 RNAポリメラーゼによって産生される+1リボヌクレオチドである。太字は、最適な翻訳開始配列を作製するために付加されるリボヌクレオチドを示す。大文字は、emmLのコード配列を示す。mRNA配列の3'末端において、太字は、2つのさらなる終止コドンを示す。3'XhoI部位に下線を引いてある。

【0157】
実施例26
コドン最適化アルゴリズムもまた、emm55 mRNAを合成するために使用した。Emm55発現を測定し、比較して、哺乳動物細胞におけるタンパク質合成及び安定性の相対的増加を求めた。野生型ウリジン(WT)を用いて各mRNAをインビトロで合成したところ、N1-メチルプソイドウリジン(N1)がタンパク質発現を改善することが示された。
【0158】
Streptococcus pyogenesemmにおける発現からヒトにおける発現までのemm55のヌクレオチド配列を最適化するために、3つの異なるアルゴリズムを使用した。コドン最適化は、JCatアルゴリズム(Grote2005)及びKarolinska Institute(FreqDist及びMostFreq)によって実行される2つの独自のアルゴリズムを使用して実施された。3つのアルゴリズムによって設計されたmRNAは、野生型(WT)ウリジンと化学修飾N1-メチルプソイドウリジン(N1)の両方を使用して、TriLink(登録商標)Biotechnologiesによってインビトロで合成され、インビトロ(Svitkin2017)及びインビボ(Pardi2015)でmRNA安定性及びタンパク質発現レベルを増加することができる。各mRNAの最終ヌクレオチド配列は、配列番号17、配列番号18及び配列番号19として示される。設計の一部として、BbsI及びBspQI制限エンドヌクレアーゼ部位を、emm55JCat及びemm55MostFreqからの塩基置換によって除去し、インビトロでmRNAを合成するために使用するTriLink(登録商標)プラスミドベクターへのクローニングを促進した。
【0159】
mRNAを、TriLink(登録商標)Biotechnologiesから供給されたmRNAの各チューブと共に受け取り、各チューブを独立して追跡できるようにストックアイテムとして添加した。mRNAは、-80℃で保存した。RD3-75.1を用いて純度及び無傷性を検証するために品質管理試験を実施した。ただし、mRNAは、SOP(標準作業手順書)に規定されたものではなくTriLink(登録商標)Biotechnologiesによって分注された。
【0160】
mRNAを、RD3-79.1(2.5μgmRNA/ウェル)を用いて、アタッチメント増強HEKサブラインHEK293T-AE及びB16-F10細胞に一過性トランスフェクトした。RD3-34.2(4μg pDNA/ウェル)を用いて、細胞をpAc/emm55でトランスフェクトした。トランスフェクションの2~48時間後、RD3-83.1を用いて細胞をRIPA緩衝液中で溶解し、RD3-14.2を用いてBCAアッセイにより溶解物のタンパク質濃度を求めた。
【0161】
EGFP mRNA及びpDNAをトランスフェクション陽性対照及びEmm55発現陰性対照として使用した。最初に、溶解物を変性SDS-PAGEを用いて分離し、ウェスタンブロットし、ニワトリ抗Emm55で染色し、RD3-74.1を用いて化学発光を用いて検出した。Emm55に相当するサイズのバンドは、ペルオキシダーゼ検出反応に一貫して勝り、定量化することができないバンドとなった。検知範囲の上限を増加するための、鶏抗Emm55又はヤギ抗鶏-西洋ワサビペルオキシダーゼの適切な希釈は識別できなかった。この理由から、ニワトリ抗Emm55を使用するProteinSimple Wes(登録商標)キャピラリー電気泳動システムを使用して、Emm55タンパク質検出を実施した。このシステムは、還元SDS-PAGEキャピラリーチューブ中のタンパク質及びタンパク質/抗体複合体を分解して、ウェスタンブロットデータのような抗体結合定量を提供する。これらのアッセイは、製造業者が提供するプロトコルを用いて行った。
【0162】
Wes(登録商標)アッセイは、ERK1、タンパク質レベルではなくリン酸化によって調節されるセリン/トレオニンキナーゼのレベルに対して正規化された細胞溶解物中のEmm55のレベルを測定し、細胞又は組織型内のデータ正規化に適したタンパク質を作製する。このアプローチは、Emm55検出と多重化することができ、サンプルローディングコントロールを提供し、実施する必要があるサンプルアッセイの数の半分をカットするので、内部全タンパク質正規化に勝る利点を有する。このアッセイの直線性を確立するために、1.5μgのトランスフェクトされていないHEK293T-AE溶解物中10ng~30pgのrEmm55を用いて標準曲線を構築した。Wes(登録商標)アッセイのための抗体希釈は、1:100の鶏抗Emm55及び1:100のヤギ抗鶏HRPであった。
【0163】
Wes(登録商標)アッセイアセンブリの指示は、質量でなく投入タンパク質濃度を指す。Wes(登録商標)を用いた実験は、0.1、0.25及び0.5μg/μLの細胞溶解物を用いて行った。0.5μg/μLは、B16-F10細胞溶解物を用いたWes(登録商標)ダイナミックレンジ内の結果を与えたが、0.25及び0.5μg/μLのHEK293T溶解物は、ピーク発現時点で検出能力を超える発現レベルを生じた。0.1μg/μL溶解物の濃度は、全時点で最適であることが見出されたが、高レベル発現が予想される場合、より低い濃度を使用してさらなるダイナミックレンジを提供することができる。しかしながら、この低い投入濃度は、特に、初期及び後期の時点で、低いが生物学的に意味のある発現レベルを見逃す可能性がある。
【0164】
Emm55のWes(登録商標)数値出力値をERK1の出力値で除算することによって、データ正規化を行った。データ複製を用いた実験では、個々の試料に対して正規化を行い、次いで平均±標準偏差値(n=3)を計算した。1つの時点(トランスフェクションの12時間後の0.1μg/μL emm55JCat-WT)で、異常に低いERK1レベルは、Grubbs極限スチューデント化偏差試験に基づいて、1滴の正規化されたデータ点を生じた。この場合、平均は、残りの2つのレプリカデータ点から計算された。両方のボンフェローニ事後検定を用いた一方向ANOVAを、GraphPad Prismソフトウェアを用いて実施して、平均の有意差を求めた。Tukey事後検定を用いて有意な所見を確認した。
【0165】
emm55の各コドンについてJCatアルゴリズムを用いてコドン適応指数(CAI)を計算した。このアルゴリズムは、mRNA配列がヒト細胞における翻訳のために完全に最適化される場合、1.0のスコアを返す。図12は、JCatによる最適化の前後のemm55の相対的適応性を示す。emm55の相対適応性プロットを図12A及び12Bに示す。
【0166】
結果は、コドン修飾emm55 mRNAがインビトロでヒトHE293T細胞及びマウスB16-F10メラノーマ細胞の一過性トランスフェクション後にEmm55ポリペプチドの強力な発現を駆動することを示した。pAc/Emm55(DNA)を用いたトランスフェクションのレベルに対するタンパク質レベルの比較は、pDNAの単一コピーがmRNAの多くのコピーを生じるので定量的ではないが、WT及びN1修飾Emm55JCatがトランスフェクション後4~12時間の間にHEK293細胞において有意に高いレベルのEmm55を発現したことを示した。Emm55JCat mRNAからのピークEmm55発現はトランスフェクション後約12時間であり、48時間で検出された。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
【配列表】
2023524818000001.xml
【国際調査報告】