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特表2023-524823ニードルアレイ装置および関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ニードルアレイ装置および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230606BHJP
   A61N 1/32 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61B18/14
A61N1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567612
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-12-29
(86)【国際出願番号】 US2021030959
(87)【国際公開番号】W WO2021226281
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/020,461
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519388952
【氏名又は名称】サイノシュア,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Cynosure,LLC
【住所又は居所原語表記】5 Carlisle Road Westford,Massachusetts 01886 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ミルコフ・ミルコ・ゲルゴギエフ
(72)【発明者】
【氏名】ボール・ジェームス
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053JJ03
4C053JJ21
4C160KK20
4C160KK24
4C160KK58
4C160KK63
4C160KK64
4C160MM22
(57)【要約】
【課題】接触型の技術でニキビ処置やその他の美容処置等の処置を行うシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】一部を述べると、本開示は、ニキビおよび/または過剰発汗および/または不要な毛および/または不要な血管を処置する方法に関する。同方法は、複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、複数のニードルを治療部位の真皮に挿入する過程と、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程と、皮脂腺および/または1つ以上の汗腺および/または血管病変および/または不要な毛包および/または不要な血管を処置するように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、を備え得る。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニキビを処置する方法であって、
複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、
複数のニードルを治療部位の真皮に挿入する過程と、
肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程と、
前記肥大化した皮脂腺を処置するように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、肥大化した皮脂腺の直径が、約50μm超である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程が、
前記複数のニードルのそれぞれから、低電力パルスを送り込むこと、
前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および
収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、前記肥大化した皮脂腺の近傍にあるニードルを求めること、
を含む方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記低電力パルスは、前記収集されたインピーダンスデータが肥大化した皮脂腺の有無を示唆するコントラストを呈するまで繰り返し送り込まれる一連の低電力パルスである方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、通電する過程が、
前記複数のニードルのうちの、前記肥大化した皮脂腺の近傍に位置したニードルから、エネルギーを送り込むこと、
を含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、少なくとも1つのニードルが、液体送出口、および溶液を受け入れる流路を有する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記溶液が、導電性溶液である方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、さらに、
複数のニードルのうちの少なくとも1つのニードルを、多重化方式などの通電方式に従って指定する過程、
を備える方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、複数のニードルが、各クラスタ内部に1本のニードルを設けた六角形状のニードルクラスタ同士の配置となっている方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、正常サイズの皮脂腺が、エネルギー曝露対象から外される方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程が、さらに、
治療部位に関するインピーダンスマッピングを実行すること、
を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程が、さらに、
前記インピーダンスマッピングで得られた1つ以上のインピーダンス測定値に応じて、前記肥大化した皮脂腺を特定すること、
を含む方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程が、さらに、
前記皮脂腺をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、
を含む方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、さらに、
前記治療部位に関する診断用インピーダンス測定を実行する過程、
を備える方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、さらに、
前記診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値を除外する過程、
を備える方法。
【請求項16】
組織の美容処置を行う方法であって、
複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、
複数のニードルを治療部位の1つ以上の組織層に挿入する過程と、
組織対象の位置を検出する過程と、
組織対象の1つ以上の部分の美容処置を行うように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、
を備える方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、組織対象が、毛包、汗腺、血管病変、血管および皮脂腺からなる群から選択される方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、組織対象の位置が、
前記複数のニードルのそれぞれから、低電力パルスを送り込むこと、
前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および
収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、前記組織対象の近傍にあるニードルを求めること、
を含む方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、組織対象の位置を検出する過程が、さらに、
前記組織対象をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、
を含む方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法において、組織対象の位置を検出する過程が、さらに、
治療部位に関するインピーダンスマッピングを実行すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2020年5月5日付出願の米国仮特許出願第63/020,461号の優先権及び利益を主張する。同出願の全開示内容は、参照によって本明細書に取り入れたものとする。
【背景技術】
【0002】
ニキビの処置は、皮膚科医にとって大きな問題である。ニキビが原因で皮膚科を訪れる人々は、毎年何百万人にも及ぶ。典型的に、ニキビは10代前半に発生し、20代半ばまでに治まるが、多くの場合、特に、女性の場合には、成人以降も長引く慢性的な問題となっている。
【0003】
ニキビの中で最も一般的な尋常性ざ瘡は、皮脂腺から分泌される皮脂が毛穴を塞ぐことで発生する。分泌が続くことで、塞がった毛穴に皮脂が蓄積する。毛穴中の細菌が原因となって感染が起こり、吹き出物として知られる一般的に見た目の良くない皮膚症状が生じる。脂腺増殖症も、皮脂腺が皮脂を過剰に産生して成長又は肥大化してなる有り触れた種類のニキビである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のニキビ処置は、照射線療法で皮脂腺を破壊するものであった。しかし、照射線は皮脂腺を特異的な標的としていないため、突然変異毒性によって正常組織を重大な病的状態に陥らせる可能性がある。皮膚癌の増リスクも、照射線療法と関係している。ニキビ処置の多くは、皮脂腺が選択的に消失せず、周囲の正常組織にも悪影響が及ぶことから、非治癒性の程度のものとなって不満が残る。結果として、何年にもわたる長期的な処置となるほか、患者に瘢痕を生じる可能性もある。
【0005】
本開示は、上記の一部又は全部に対処するシステムおよび方法や、接触型の技術でニキビ処置やその他の美容処置を行うシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部を述べると、本明細書に記載のシステムおよび方法は、人体の組織の処置を行う。具体的な一例として、後述のシステムおよび方法は、毛包が油分や死んだ皮膚細胞で詰まることで引き起こされる皮膚症状であって、顔、首、および従来から尋常性ざ瘡になり易いとされるその他の領域を含む様々な身体部分に影響を及ぼす症状を治療する。
【0007】
さらに、一部を述べると、本開示は、組織特性評価回路を用いて顔やその他の組織領域にある皮脂腺を特定すると共に、手持ちアプリケータを使って皮脂腺の標的処置を行うことでニキビを処置又は予防するシステムおよび方法に関する。各種実施形態では、規則的なパターンに従って配置されたニードル群を具備するマイクロニードルアレイが用いられる。規則的なパターンとしては、各頂点および中心(あるいは、頂点同士の内側)にニードルを設けてなる六角形やその他の正多角形のようなものが挙げられる。これらのニードルは電極と称される場合もある。つまり、マイクロニードルアレイは電極のアレイでもあり得る。
【0008】
一部を述べると、本開示は、ニキビを処置する方法に関する。同方法は、複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、複数のニードルを治療部位の真皮(dermis)に挿入する過程と、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程と、前記肥大化した皮脂腺を処置するように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、を備える。
【0009】
一実施形態において、肥大化した皮脂腺の直径は、約50μm超である。一実施形態において、検出する過程は、前記複数のニードルのそれぞれから、低電力パルスを送り込むこと、前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、前記肥大化した皮脂腺の近傍にあるニードルを求めること、を含む。一実施形態において、前記低電力パルスは、前記収集されたインピーダンスデータが肥大化した皮脂腺の有無を示唆するコントラストを呈するまで繰り返し送り込まれる一連の低電力パルスである。
【0010】
一実施形態において、通電する過程は、前記複数のニードルのうちの、前記肥大化した皮脂腺の近傍に位置したニードルから、エネルギーを送り込むこと、を含む。一実施形態では、少なくとも1つのニードルが、液体送出口、および溶液を受け入れる流路を有する。一実施形態において、前記溶液は、導電性溶液である。
【0011】
一実施形態において、前記方法は、さらに、複数のニードルのうちの少なくとも1つのニードルを、多重化方式などの通電方式に従って指定する過程、を備える。一実施形態において、前記複数のニードルは、各クラスタ内部に1本のニードルを設けた六角形状のニードルクラスタ同士の配置となっている。一実施形態では、正常サイズの皮脂腺が、エネルギー曝露対象から外される。
【0012】
一実施形態において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程は、さらに、治療部位に関するインピーダンスマッピングを実行すること、を含む。一実施形態において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程は、さらに、前記インピーダンスマッピングで得られた1つ以上のインピーダンス測定値に応じて、前記肥大化した皮脂腺を特定すること、を含む。一実施形態において、肥大化した皮脂腺の位置を検出する過程は、さらに、前記皮脂腺をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、を含む。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記治療部位に関する診断用インピーダンス測定を実行する過程、を備える。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値を除外する過程、を備える。
【0013】
一部を述べると、本開示は、過剰発汗を処置する方法に関する。同方法は、複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、前記複数のニードルを治療部位の皮下に挿入する過程と、1つ以上の汗腺の位置を検出する過程と、前記1つ以上の汗腺を処置するように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、を備える。
【0014】
一実施形態において、検出する過程は、前記複数のニードルのそれぞれから、低電力パルスを送り込むこと、前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、前記1つ以上の汗腺の近傍にあるニードルを求めること、を含む。一実施形態において、前記低電力パルスは、前記収集されたインピーダンスデータが1つ以上の汗腺の有無を示唆するコントラストを呈するまで繰り返し送り込まれる一連の低電力パルスである。
【0015】
一実施形態において、通電する過程は、前記複数のニードルのうちの、前記1つ以上の汗腺の近傍に位置したニードルから、エネルギーを送り込むこと、を含む。一実施形態では、少なくとも1つのニードルが、液体送出口、および溶液を受け入れる流路を有する。一実施形態において、前記溶液は、導電性溶液である。
【0016】
一実施形態において、前記方法は、さらに、複数のニードルのうちの少なくとも1つのニードルを、多重化方式などの通電方式に従って指定する過程、を備える。一実施形態において、前記複数のニードルは、各クラスタ内部に1本のニードルを設けた六角形状のニードルクラスタ同士の配置となっている。一実施形態では、前記1つ以上の汗腺のうちの一部が、エネルギー曝露対象から外される。
【0017】
一実施形態において、1つ以上の汗腺の位置を検出する過程は、さらに、治療部位に関するインピーダンスマッピングを実行すること、を含む。一実施形態において、1つ以上の汗腺の位置を検出する過程は、さらに、前記インピーダンスマッピングで得られた1つ以上のインピーダンス測定値に応じて、前記1つ以上の汗腺を特定すること、を含む。一実施形態において、1つ以上の汗腺の位置を検出する過程は、さらに、前記1つ以上の汗腺をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、を含む。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記治療部位に関する診断用インピーダンス測定を実行する過程、を備える。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値を除外する過程、を備える。
【0018】
一部を述べると、本開示は、不要な毛を処置する方法に関する。同方法は、複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、前記複数のニードルを、不要な毛を含む治療部位の真皮に挿入する過程と、不要な毛包の毛幹の位置を検出する過程と、前記不要な毛包を処置するように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、を備える。
【0019】
一実施形態において、検出する過程は、前記複数のニードルのそれぞれから、低電力パルスを送り込むこと、前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、不要な毛幹の近傍にあるニードルを求めること、を含む。一実施形態において、前記低電力パルスは、前記収集されたインピーダンスデータが不要な毛幹の有無を示唆するコントラストを呈するまで繰り返し送り込まれる一連の低電力パルスである。
【0020】
一実施形態において、通電する過程は、前記複数のニードルのうちの、前記不要な毛包の近傍に位置したニードルから、エネルギーを送り込むこと、を含む。一実施形態では、少なくとも1つのニードルが、液体送出口、および溶液を受け入れる流路を有する。一実施形態において、前記溶液は、導電性溶液である。
【0021】
一実施形態において、前記方法は、さらに、複数のニードルのうちの少なくとも1つのニードルを、多重化方式などの通電方式に従って指定する過程、を備える。一実施形態において、前記複数のニードルは、各クラスタ内部に1本のニードルを設けた六角形状のニードルクラスタ同士の配置となっている。
【0022】
一実施形態において、不要な毛の位置を検出する過程は、さらに、不要な毛包の毛幹のインピーダンスマッピングを実行すること、を含む。一実施形態において、不要な毛を検出する過程は、さらに、前記インピーダンスマッピングで得られた1つ以上のインピーダンス測定値に応じて、前記不要な毛幹を特定すること、を含む。一実施形態において、不要な毛の位置を検出する過程は、さらに、前記不要な毛幹をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、を含む。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記治療部位に関する診断用インピーダンス測定を実行する過程、を備える。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値を除外する過程、を備える。
【0023】
一部を述べると、本開示は、血管病変を処置する方法に関する。同方法は、複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、前記複数のニードルを、治療部位の真皮に挿入する過程と、1つ以上の血管(例えば、不要な血管等)の位置を検出する過程と、前記1つ以上の血管(例えば、1つ以上の前記不要な血管等)を処置するように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、を備える。
【0024】
一実施形態において、検出する過程は、さらに、前記複数のニードルのそれぞれから、低エネルギー電力パルスを送り込むこと、前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、前記1つ以上の血管の近傍にあるニードルを求めること、を含む。一実施形態において、前記低電力パルスは、前記収集されたインピーダンスデータが1つ以上の血管の有無を示唆するコントラストを呈するまで繰り返し送り込まれる一連の低電力パルスである。一実施形態において、通電する過程は、前記複数のニードルのうちの、前記1つ以上の血管の近傍に位置したニードルから、エネルギーを送り込むこと、を含む。一実施形態では、少なくとも1つのニードルが、液体送出口、および溶液を受け入れる流路を有する。一実施形態において、前記溶液は、導電性溶液である。
【0025】
一実施形態において、前記方法は、さらに、複数のニードルのうちの少なくとも1つのニードルを、多重化方式などの通電方式に従って指定する過程、を備える。一実施形態において、前記複数のニードルは、各クラスタ内部に1本のニードルを設けた六角形状のニードルクラスタ同士の配置となっている。一実施形態において、正常な血液濃度の1つ以上の血管を含む領域が、エネルギー曝露対象から外される。一実施形態において、1つ以上の血管の位置を検出する過程は、さらに、治療部位に関するインピーダンスマッピングを実行すること、を含む。一実施形態において、1つ以上の血管の位置を検出する過程は、さらに、前記インピーダンスマッピングで得られた1つ以上のインピーダンス測定値に応じて、肥大化した1つ以上の血管を特定すること、を含む。
【0026】
一実施形態において、1つ以上の血管の位置を検出する過程は、さらに、前記インピーダンスマッピングで得られた1つ以上のインピーダンス測定値に応じて、1つ以上の高くなっている血液容積率(blood volume fraction)を特定すること、を含む。一実施形態において、1つ以上の血管の位置を検出する過程は、さらに、前記1つ以上の血管をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、を含む。一実施形態において、血液容積率が高くなっている1つ以上の領域の位置を検出する過程は、さらに、血液容積率が高くなっている当該1つ以上の領域をまたぐ2つの隣接したニードル間のインピーダンス差を測定すること、を含む。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記治療部位に関する診断用インピーダンス測定を実行する過程、を備える。一実施形態において、前記方法は、さらに、前記診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値を除外する過程、を備える。一部の実施形態では、インピーダンスマッピングで検出された一部の血管が意図的に処置されない一方、検出された残りの血管については、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電することによるRF電力で処置される。というのも、1つ以上の血管を処置対象とするのは、外から見える1つ以上の血管病変であるからと想定又は理解され、この1つ以上の特定の血管を処置すれば、それら1つ以上の血管病変の見た目が改善することが期待されるからである。
【0027】
一部を述べると、本開示は、組織を処置する方法に関する。同方法は、複数のニードルを具備したニードルアレイを用意する過程と、複数のニードルを治療部位の1つ以上の組織層に挿入する過程と、組織対象の位置を検出する過程と、組織対象の1つ以上の部分の美容処置を行うように、前記複数のニードルのうちの少なくとも1つに通電する過程と、を備える。
【0028】
一実施形態において、前記組織対象は、毛包、汗腺、血管、血管病変および皮脂腺のうちの1つ以上を含む群から選択される、一実施形態において、組織対象の位置を検出する過程は、さらに、前記複数のニードルのそれぞれから、低電力パルスを送り込むこと、前記複数のニードルのそれぞれに関するインピーダンスデータを収集すること、および収集された前記インピーダンスデータに基づいて、前記複数のニードルのうちの、前記組織対象の近傍にあるニードルを求めること、を含む。一実施形態において、組織対象の位置を検出する過程は、さらに、治療部位に関するインピーダンスマッピングを実行すること、を含む。
【0029】
本開示は様々な態様や実施形態に関するものであるが、本明細書で開示する各種態様や実施形態は、統合システムとして又は一部適宜別々の構成要素や装置やシステムとしつつ統合、合体又は共用できるものと理解されたい。つまり、各態様に対し、本明細書で開示する各自の実施形態を任意の程度で適宜組み込むことで、任意の実施態様とすることも可能である。また、前述した各種システム、プローブ、アプリケータ、ニードルアレイ、コントローラ、構成要素および部品は、任意の適切な組織表面や美容用途や審美用途や医療用途やその他の方法において、その他のあらゆる装置やシステムと併用することが可能である。
【0030】
本明細書では、本願の出願人の教示内容の上記の構成やそれ以外の構成について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】本開示の例示的な一実施形態において、ニードルアレイを組織に適用し、肥大化した皮脂腺などの特定の部類の組織構造や器官構造を特定・処置する様子を示した概略図である。
図1B】本開示の例示的な一実施形態において、ニードルアレイを組織に適用し、肥大化した皮脂腺などの特定の部類の組織構造や器官構造を特定・処置する様子を示した他の概略図である。
図2A】本開示の例示的な一実施形態において、ニードルアレイを組織に適用し、肥大化した皮脂腺などの特定の部類の組織構造や器官構造を特定・処置する様子を示したさらなる他の概略図である。
図2B】本開示の例示的な一実施形態において、ニードルアレイを組織に適用し、肥大化した皮脂腺などの特定の部類の組織構造や器官構造を特定・処置する様子を示したさらなる他の概略図である。
図3】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、約100Hz~約1GHz等)の周波数範囲にかけての、脂肪-対-濡れた皮膚のインピーダンス特性比、具体的には、濡れた皮膚のインピーダンス振幅に対する脂肪のインピーダンス振幅の比(実線)および濡れた皮膚のインピーダンス位相角に対する脂肪のインピーダンス位相角の比(破線)を示したグラフである。
図4】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、血液-対-濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の誘電率および導電率を4種類の曲線で示したグラフである。
図5】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、血液-対-濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の比インピーダンス振幅を2種類の曲線で示したグラフである。
図6】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、血液-対-濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の位相角を2種類の曲線で示したグラフである。
図7】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、血液-対-濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)のインピーダンス振幅比およびインピーダンス位相角比を2種類の曲線で示したグラフである。
図8】本開示の例示的な一実施形態における、外周にわたって液体送出口を有するRF電極ニードルの一例を示す概略図である。
図9】本開示の例示的な一実施形態における、電極アプリケータホルダ上に六角形状のパターンで取り付けられている、液体送出口を有するRF電極ニードルの一例を示す概略図である。
図10】本開示の例示的な一実施形態における、電極アプリケータホルダ上に六角形状のパターンで取り付けられている、液体送出口を有するRF電極ニードルの一例を示す概略断面図である。
図11】本開示の例示的な一実施形態における、外周にわたって且つ先端部に液体送出口を有するRF電極ニードルの一例を示す概略図である。
図12】本開示の例示的な一実施形態における、液体送出口を有さないRF電極ニードルの一例を示す概略図である。
図13】本開示の例示的な一実施形態における、先端部に液体送出口を有するRF電極ニードルの一例を示す概略図である。
図14】本開示の例示的な一実施形態における、電極ホルダ上に取り付けられたRF電極ニードルの一例を示す概略図であり、電極が付いた電極アプリケータホルダをハンドピースから取り外すことが可能となっている。
図15】約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)および脂肪(脂腺組織に対する代用物)の誘電率および導電率を含む誘電特性を示したグラフである(全データの出典:Gabriel S、Lau RW及びGabriel Cによる"The dielectric properties of biological tissues: III. Parametric models for the dielectric spectrum of tissues". Physics in Medicine & Biology. 1996 Nov; 41(11):2271ならびにGabriel C、Peyman A及びGrant EHによるElectrical conductivity of tissue at frequencies below 1 MHz Physics in medicine & biology. 2009 Jul 27;54(16):4863)
図16】約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、脂肪(皮脂腺に対する代用物)-対-濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の誘電特性比、具体的には、濡れた皮膚の導電率に対する脂肪の導電率の比(実線)および濡れた皮膚の誘電率に対する脂肪の誘電率の比(破線)を示したグラフである。
図17】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、約100Hz~約1GHz等)の周波数範囲にかけての、濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の比電気インピーダンス振幅(実線)および脂肪(脂腺組織に対する代用物)の比電気インピーダンス振幅(破線)のグラフである。
図18】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、約100Hz~約1GHz等)の周波数範囲にかけての、濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の比インピーダンス位相角(実線)および脂肪(脂腺組織に対する代用物)の比インピーダンス位相角(破線)を示したグラフである。
図19】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲間の周波数の、脂肪の比誘電率および導電率、ならびに人工汗の比誘電率および導電率を、4種類の曲線で示したグラフである。
図20】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、汗-対-脂肪の比インピーダンス振幅を2種類の曲線で示したグラフである。
図21】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、汗-対-脂肪の位相角を2種類の曲線で示したグラフである。
図22】本開示の例示的な一実施形態における、約0.0001MHz~約1000MHz(例えば、100Hz~1GHz等)の周波数範囲にかけての、汗-対-脂肪のインピーダンス振幅比およびインピーダンス位相角比を2種類の曲線で示したグラフである。
図23】本開示の例示的な一実施形態における、RFベースのシステム用の温度制御可能な回路トポロジーを概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
皮脂腺にエネルギーを送達してニキビ処置および/または処置対象となる特定の種類の皮脂腺の検出を行うための装置および方法について説明する技術を開示する。皮脂腺は、皮膚の真皮中に位置している。皮脂腺は、手のひらと足の裏を除く全身に分布しており、頭皮と顔面に最も多く存在している。皮脂腺は、脂質物質である皮脂を産生・放出して皮膚表面の保護や潤滑を助けるという機能を果たす。皮脂は、脂質類、細胞残屑およびケラチンで構成されている。ニキビは、一般的に、皮脂腺から皮膚表面への出口が詰まって毛包内に皮脂が蓄積することなどで起こる皮脂腺の肥大化と関係している。ニードルアレイを有する処置装置にRFエネルギーを送ることで、組織、具体的には、処置対象となる肥大化した皮脂腺などの組織内構造へとRF処置エネルギーを送達するようにニードルを動作させることができる。皮脂腺は、皮膚や毛の水分や潤滑の維持を助ける。また、一部の研究では、皮脂腺が免疫系の働きに貢献していることも示唆されている。よって、肥大化した皮脂腺を処置することに重点を置いたニキビ処置では、皮膚や場合によっては免疫系の重要な機能の実施や手助けを行う正常な皮脂腺を処置から外すことが重要となる。
【0033】
一実施形態での処置は、例えば、一対のニードル電極間の組織領域にかけて行われる。前記アレイは、少なくとも1つのハンドピースまたはアプリケータに組み込まれたものであり得る。一部の実施形態でのアレイは、例えば着脱式ニードルアレイ等の着脱可能な消耗品とされる。
【0034】
好適なマイクロニードル穿刺システムは、約1ミリワット~約10キロワットまたは約100ミリワット~100ワットの範囲内の電力送達レベルを有するものであり得る。このようなマイクロニードル穿刺システムは、約1ナノ秒~約10秒、約1マイクロ秒~約1秒、または約1ミリ秒~約500ミリ秒の時間にわたってRFエネルギーを送達し得る。
【0035】
好適なマイクロニードル穿刺システムは、電極および/またはニードル電極とも称されるマイクロニードル穿刺電極を備える。これらは、先端部のみが非絶縁となるように非絶縁、絶縁または略絶縁されたものであり得る。これにより、組織内で、同先端部の標的深度にてRFエネルギーが届けられ得る。前記ニードル電極の標的深度は、対象組織に基づいて異なり得る。例えば、皮脂腺は、皮膚表面から約1~2mmの深さにあり、汗腺は、皮膚表面から約2~約5mmの深さの範囲内にあり得る真皮/皮下接合部よりも下側の深さにある。各ニードル電極の直径は、約100~約1000マイクロメートル、より好ましくは約200~約600マイクロメートルの範囲内であり得る。皮膚表面への進入のチクリ感/痛みを阻止するためのニードルの比較的小径化の要望は、繰返し使用しても電極が真っ直ぐ/曲がらないように維持する必要性との間でバランスを取らなければならない。今後の材料の進歩によっては、この必要性に応えるなおいっそう小径の電極がもたらされる可能性がある。
【0036】
各種実施形態での処置は、1つ以上の肥大化した皮脂腺を縮小および/または損傷および/または破壊するように数回の処置セッションにわたって行われる。また、同腺の縮小、損傷、破壊もしくは破壊、および/またはRFエネルギーへの曝露は、尋常性ざ瘡や脂腺増殖症の症状を軽減する。さらに、各種実施形態でのRFエネルギーは、皮脂腺の皮脂産生を妨害するように制御された量および/または時間変化パターン(例えば、各ニードルクラスタからの多重化送達等)に従って印加される。数回の処置セッションにより、肥大化した皮脂腺は、処置前の状態と比べて皮脂産生が減少または停止するように制限、制御または改質され得る。一部の実施形態では、初回の処置レジメンの後、ニキビの発生および/または増加を予防、緩和または改変するための不定期の処置が行われ得る。
【0037】
典型的に言って、皮脂は、皮膚に保湿と潤滑成分を与えるほか、皮膚免疫バリアの役割も果たしているとも考えられる。しかしながら、皮脂腺が1つ以上肥大化し、皮脂を過剰に産生している場合もある。特定の理論や仕組みによるものではないが、尋常性ざ瘡は、皮脂腺による皮脂の分泌や皮膚表面への皮脂流の変化(例えば、増加等)に応じて発生するように見受けられる。一般的に言えば、皮脂腺の皮脂産生の増加および/または皮脂流の制限もしくは閉塞が、尋常性ざ瘡や脂腺増殖症の典型的症状に繋がる。
【0038】
尋常性ざ瘡に対するエネルギーベースの処置では、他のものの場合も、患部にエネルギーを送達する装置が伴う。しかしながら、典型的に言って、これらの装置は、補助的な装置なしでは真皮中の皮脂腺の位置を特定することができない。一般的には、皮脂腺の位置を特定するのに様々な画像化技術を別個で使用することができ、このような画像化技術には、共焦点顕微鏡法、光コヒーレンストモグラフィー、多光子顕微鏡法、および人間の真皮の散乱特性を踏まえたその他の同様の技術が含まれる。典型的には、これらの画像化技術の後に、表皮や真皮の大半を外して皮脂腺を損傷させることで周囲組織の損傷を最小限に抑えるという標的エネルギー送達が用いられる。これらの手法は、本明細書に開示する1つ以上の実施形態と併用することも可能であり、本明細書に開示するニードルアレイや処置モードとの共同作用による利点を奏するであろう。
【0039】
各種実施形態において、本開示は、皮脂腺を検出・標的化した後、標的領域内の皮脂腺を処置するように構成されたRFエネルギーを送り届ける方法およびシステムについて説明する。各種実施形態でのRFエネルギー診断送達装置は、ニードルやマイクロニードルとも称される電極のアレイを備える。図1A及び1Bは、ニードルアレイ(マイクロニードルアレイや電極のアレイとも称される)5を組織に適用し、肥大化した皮脂腺などの特定の部類の組織構造や器官構造を特定・処置する様子を示した概略図である。図示のとおり、図1A及び図1Bには、個々のニードルNからなるニードルのアレイが概略的に描かれている。各ニードルNは、制御系統およびエネルギー供給系統と電気的に連通している。各種実施形態での各ニードルは、電極である。各種実施形態では、RFエネルギーが、少なくとも一対の2本のニードル間、または少なくとも1つのニードルと患者の身体に取り付けられた中性の電極パッドとの間の対単位で生成され得る。
【0040】
ニードルアレイ5全体には、ニードルのクラスタ群、すなわち、ニードルの1以上のサブアレイが様々なパターンで配置され得る。これらのニードルは、皮脂腺SGや肥大化した皮脂腺ESGを含む組織と接触させられる。正常な皮脂腺SGの直径の測定値は、約50μm以下となる。肥大化した皮脂腺ESGの直径の測定値は、100μm超、例えば100μm~1mm、あるいは、例えば100μm~5mmとなる。図1AではクラスタC1,C2が、図1BではクラスタC2が、六角形状の個々のクラスタまたはサブアレイとして印されている。各頂部に6本、そして、中心に1本のニードルが設けられている。クラスタC2内のニードルN1,N2は、肥大化した皮脂腺ESGに関連付けて印されている。図2A及び図2Bでは、各ニードルNを具備したニードルアレイ10と共に、六角形状のクラスタC3,C4が印されている。
【0041】
六角形状にニードルクラスタ同士を配置することにより、有利なことに、任意の電極についての最も近い等距離の他電極数が最大(本例では、6個)となる規則的な配置構成がもたらされる。六角形状のクラスタや配置構成の電極やニードル(例えば、マイクロニードル等)を具備したニードルアレイを使って、皮膚内の皮脂腺が特定され得る。真皮と脂質である皮脂とではインピーダンスが異なり、真皮のインピーダンスは濡れた皮膚のインピーダンスと類似し、皮脂のインピーダンスは脂肪組織のインピーダンスと類似する。これにより、前記ニードルのグリッドを診断走査させた際に、介在空間の皮脂濃度が高くなっている(皮脂腺が肥大化している)隣接ニードル対が特定される。例えば、図1A図2A等では、走査処理によってSGとESGが区別される。そして、図1B図2Bに示すように、ESGがRFによって処置される。図2Bでは、2つのESGが同時に処置される。
【0042】
正常な皮脂腺、例えば、直径が約50μm以下の皮脂腺を走査した際に得られる、同皮脂腺をまたぐ2つの隣接したニードル間の差分であるインピーダンス測定値は、最小のインピーダンス差となるか、あるいは、皮脂腺が正常である(すなわち、肥大化していない)場合や走査領域内に皮脂腺が存在しない場合の特徴である低いインピーダンス差の範囲内の傾向を示す。前記アレイ内のマイクロニードル同士の縁-縁間隔は、約100μm~約3mm、約100μm~約1mm、または約200μm~約500μmと様々であり得る。
【0043】
大型の皮脂腺(例えば、ESG等)は、ベースライン測定値からのインピーダンス変動が大きくなる。小型の皮脂腺(SG)は、ベースラインからのインピーダンス変動が小さくなる。ベースラインは、外れ値(例えば、高インピーダンスや低インピーダンス等)を除外した場合の電極群の平均インピーダンス測定値として定義され得る。所与の処置セッションごとに、マイクロニードルアレイが組織部位に挿入される。同アレイは、再利用可能な又は使い捨てのハンドピースに切離し可能に又は直に連結したものであり得る。同組織部位の診断走査により、各電極のインピーダンスまたは各対の電極間のインピーダンスが測定される。この診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値が除外されてから、この特定の組織部位についてのベースラインインピーダンスが求められる。一実施形態では、高インピーダンス値および/または低インピーダンス値であると判断された場合に、当該高インピーダンス値および/または低インピーダンス値に係るマイクロニードルまたはマイクロニードル対が、後に続く治療処置用に確保される。他の実施形態において、前記システムは、前記ベースラインインピーダンスが求められた後、高インピーダンス値および/または低インピーダンスを再び参照し、例えば同システムの目下の周波数等に基づいて、治療目的用にどちらのインピーダンス値を調査するのかを決定する。
【0044】
前記アレイのマイクロニードル同士の縁-縁間隔は、約100μm~約1mm、約200μm~約500μmと様々であり得る。例えば、図3の約0.01MHz~約1000MHz、約0.03MHz~約500MHzおよび約1MHz~約10MHzで見受けられるインピーダンス振幅比のコントラストに基づくことで、肥大化した皮脂腺(ESG)の有無を識別する診断系統の設計が可能になる。
【0045】
他の実施形態において、前記アレイは、六角形状以外の形状で構成されてもよく、そのような別の形状には、長方形状、五角形状、八角形状、円形状、またはその他の幾何形状が含まれる(但し、これらに限定されない)。処置直前に、電極やマイクロニードルの前記アレイが皮膚の治療部位に挿入される。図1A及び1Bならびに図2A及び2Bでは、処置セッションとして、各アレイ5,10が組織に接触している状態が描かれている。
【0046】
各種実施形態では、電極のアレイ(例えば、ニードルアレイやマイクロニードルアレイ等)を適切に配置した後、対象の皮脂腺が2段階の処理で処置される。まず、少なくとも1つの例として、低エネルギーの診断用パルスが前記ニードルアレイに印加される。皮脂-対-皮膚真皮の誘電特性の違いに基づいて、各々の皮脂腺の位置が特定される。制御系統により、前記ニードルアレイが、モノポーラ方式とバイポーラ方式のいずれかで通電される。モノポーラ方式の診断過程では、前記ニードルアレイの各電極と中性のリターン電極との間のインピーダンスによって、皮脂腺に挿入された電極が特定される。場合によっては、前記ニードルアレイのニードルが、偶然、皮脂腺内に挿入されている可能性もある。バイポーラ方式の診断過程では、2つ、3つ又は4つ以上の電極同士の対間又は群間インピーダンスの測定値によって、前記アレイの電極間に位置した皮脂腺の位置が算出される。各種実施形態において、前記制御系統は、2つ、3つ又は4つ以上の電極同士の各群ごとに逐次的に通電を行い、前記ニードルアレイの前記ニードルが形成する処置領域内にある各皮脂腺のマッピングを行う。
【0047】
前記診断過程は、前記ニードルアレイの電極のうちの、皮脂腺に(偶然)直に挿入された一部の電極および別の皮脂腺を取り囲んでいる最も近い電極対(あるいは、一対以上の電極数からなる電極群)を特定して終わる。各種実施形態では、インピーダンスの変動によって皮脂腺の位置および皮脂腺の近似サイズが求められる。2つ以上の電極からなる電極群に取り囲まれた皮脂腺によって生じるインピーダンス変動は、皮脂腺がない場合の同様の電極同士の群間インピーダンス測定値のニードルアレイ平均に比べて、かつ、その皮脂腺が大きければ大きいほど増加する。
【0048】
一実施形態では、隣接するニードル同士の対のうち、図1A及び図1BのN1,N2や図2A及び図2Bのニードル対N3,N4,N5,N6などの選ばれた一部の対が、肥大化した皮脂腺ESGをRFエネルギーによって処置するように通電される。これらの対は、前記診断過程で求められた最大脂質濃度のESGに基づき選択され得る。その後、処置手法による処置が施される。具体的に述べると、これらのニードル対は、図1B図2Bに示すように、各々のニードル対間の組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る。RFが届けられることにより、選択的なRF加熱が行われる。処置セッションにもよるが、選択的なRF加熱には、短期間の高い出力/電力が要求される。
【0049】
一実施形態において、前記アレイの通電は、痛みが管理又は緩和されるように選択的に行われる。通電は、選ばれた一部のニードルに対して同時に短時間行うことで、それに伴う痛みが緩和され得る。エネルギーの送達量が変わらないのであれば、治療レベルで印加されるパルスを長いパルスではなく短いパルスとすることで、感じる痛みが減少する場合もある。ほかにも、一度に処置するESGを1つ又は少数にするように前記アレイを選択的に通電することにより、痛みが管理又は緩和される。冷却やその他の手法も併用されてよい。各種実施形態において、前記ニードルアレイは、1本以上のアンビリカルや1つ以上の合同処置システムと共に用いることが可能なハンドピース又はアプリケータとして実現される。表皮冷却で患者の気を逸らすことによって痛みを管理するようにしてもよい。
【0050】
各種実施形態では、位置を特定した皮脂腺のサイズが、インピーダンス変動から推定される。一般的に、炎症を起こしていない皮脂腺の直径は、約50μm以下である。しかしながら、様々な状況で皮脂腺の分泌(output)が妨げられた場合、同腺が巨大化して炎症を引き起こすことがあり、1ミリメートル以上の直径になる可能性もある。大型の皮脂腺は、ベースラインからのインピーダンス変動が大きくなる。小型の腺は、ベースラインからのインピーダンス変動が小さくなる。ベースラインは、外れ値(例えば、高インピーダンスや低インピーダンス等)を除外した場合の電極群の平均インピーダンス測定値として定義され得る。各種実施形態では、前記制御系統が、最も肥大化した皮脂腺ESGを選んでエネルギーを送達する。カットオフとして、正常サイズのSGよりも50%、2倍、3倍、4倍または5倍大きいESGが、処置対象として規定され得る。正常サイズの皮脂腺や小型の皮脂腺については、インピーダンスのコントラストの小ささから無視することができる(left intact)。利用可能なRF電力や痛覚に基づき、最大の大きさのESGから小型のESGへとラウンドロビン型による処置方式が選択されてもよい。あるいは、全てのESGが、一度の短いパルスで処置されてもよい。いずれにせよ、前記制御系統は、各処置領域が未処置領域で取り囲まれることになるように処置対象ESGを選択する。
【0051】
各種実施形態において、診断過程は、加熱された際の皮脂腺の比インピーダンスの動的変化が顕著になる周波数域で行われ得る。例えば、一実施形態において、前記診断過程は、表皮と皮脂腺の比インピーダンスがおおよそ2倍以上異なる周波数から開始される。その際、同診断は2段階で進められる。第1段階として、診断電極同士の群間に、中間的出力の診断用パルスが印加される。同診断用パルスの当該中間的出力には、例えば皮膚凝固等の望ましくない加熱影響が伴うことなく比インピーダンスの意図した動的変化を引き起こすものが選択される。診断用の当該中間的出力は、同中間的出力のRF加熱によって皮脂腺の比インピーダンス変化が周囲の真皮の比インピーダンス変化よりも遥かに大きくなるように選択される。(任意で前記第1段階と並行して行われてもよい)第2段階として、前記中間的出力のRF加熱による真皮のインピーダンスの変化が皮脂腺で確認されるインピーダンスの動的変化よりも遥かに小さくなることに基づき、インピーダンスによる位置特定がなされる。診断用の電力レベルは、約1ナノワット~約10ワットと様々であり得る。好適な電力レベルは、試験機(exemplary assembly)で求めて、同試験機の寄生インピーダンスを含めた実際の組織による試験に基づいたものとされる。
【0052】
他の実施形態において、前記診断過程は、診断用周波数が変化するにつれて皮脂腺および/または真皮の比インピーダンスおよび/または当該比インピーダンスの比が急速に変化する範囲にわたって診断用周波数を掃引することで行われ得る。この診断手法は、前記電極を含めた診断系統の寄生インピーダンスが信号対雑音比の低いデータを生成する場合に極めて有利であり得る。例えば、図3にプロットされた比インピーダンス位相角の比、すなわち、濡れた皮膚のインピーダンス位相角に対する脂肪のインピーダンス振幅の比(破線)に基づくと、約1kHz~約1MHzの周波数範囲が比インピーダンス位相角の比の急速に変化する範囲となる。各種実施形態において、皮脂腺の位置を求める際の最適な周波数は、皮脂腺の比インピーダンスと周囲の真皮の比インピーダンスとの間のコントラストを可能にする周波数である(本例では、脂肪を脂腺組織に対する代用物とし、濡れた皮膚を真皮組織に対する代用物としている)。
【0053】
各種実施形態において、制御系統は、対象の皮脂腺の位置が特定された後、対象の皮脂腺(例えば、肥大化した皮脂腺等)の内側にあるか又は対象の皮脂腺(例えば、肥大化した皮脂腺等)の近傍にあると特定された各電極に対し、検出/診断ではなく処置に適した高電力の処置用パルスを送り込む。大抵の場合、前記ニードルアレイのうちの比較的少数の割合の電極のみが標的の皮脂腺の近傍となることから、当該標的の皮脂腺付近の僅かな真皮の部分のみが熱損傷を受けることになる。
【0054】
各種実施形態において、処置セッション中のRF電力レベルは、約0.001ワット~約1000ワットと様々であり得る。好適な電力レベルは、試験機で求めて、同試験機の寄生インピーダンスを含めた実際の組織による試験に基づいたものとされる。例えば、試験機での好適な処置電力レベルは、各種電力レベルに相当する処置で皮膚組織切片群を検査することにより求められ得る。そして、各皮膚組織切片について、肥大化した皮脂腺の機能障害(disruption)が評価され得る。この評価は、正常サイズの皮脂腺が損傷を受けていないことを確認することも含み得る。大型の皮脂腺が機能障害/損傷を生じて正常サイズの腺が損傷していない組織切片に関連付けられた電力レベルにより、所与の処置セッションの電力レベルが設定され得る。
【0055】
一部の実施形態では、真皮に届く一部のエネルギーにより、コラーゲンリモデリングや皮膚の引き締めなどの付加的な利点が生じる。各種実施形態において、前記制御系統は、インピーダンス差が最も大きい電極を優先的に通電することで、望ましくない副作用なしで熱損傷組織部分を回復させる。前記制御系統は、各処置領域が未処置領域で取り囲まれることになるように処置対象のESGを選択し得る。このような非一様の又は適応型の「部分的」処置により、組織の回復が速まる。
【0056】
各種実施形態において、処置用の周波数は、標的となる皮脂腺のインピーダンスが周囲の真皮よりも低くなるように選択されるのが最適であり得る。この場合の皮脂腺は、周囲の真皮よりも効率的に加熱されると共に、周囲の真皮よりも高温に達する。例えば、標的となる皮脂腺の処置中の温度は、約45℃超になると想定される。
【0057】
他の実施形態において、処置用の周波数は、皮脂腺のインピーダンスが周囲の真皮と同様か又は周囲の真皮よりも高くなるように選択され得る。この状況においても、皮脂腺は、熱容量の低さと熱伝導率の低さから周囲の真皮よりも高温に加熱され得る。あるいは、処置用の周波数は、皮脂腺のインピーダンスが周囲の真皮と同様か又は周囲の真皮よりも高くなるように選択され得る。この場合の皮脂腺は、より効率的に加熱される周囲の真皮からの熱拡散によって加熱される。真皮の熱損傷を区画的に配置されたRF電極間のESGを含む領域のみに限定することにより、熱損傷を受けた真皮領域を処置後速やかに回復させることができる。脂肪と濡れた皮膚の周波数データが存在している範囲のうち、約100Hz~約1GHzでは、脂肪のインピーダンスが濡れた皮膚のインピーダンスよりも高くなる。これが、真皮のほうが熱生成効率が高くなって周囲の真皮からの熱拡散で皮脂腺が加熱される場合に相当する。
【0058】
真皮よりもESGのほうが加熱効率が高くなるようにRF周波数が選択された場合の通電時間は、脂腺組織の熱緩和時間に対応する。ESGよりも真皮のほうが加熱効率が高くなるようにRF周波数が選択された場合の通電時間は、RF電極間の真皮組織および埋まっているESGの熱緩和時間に対応する。また、RF電極群が通電される時間は、肥大化した皮脂腺に熱が蓄積して遥かに小径である正常な皮脂腺よりも高温になるように選択され得る。各種実施形態では、皮脂腺のこのような処置が、選択的電気焼灼術(selective electrothermolysis)と称される。
【0059】
皮脂腺の別の処置方法として、同腺に栄養を送る血管に対しての選択的加熱および凝固に基づく方法があり得る。
【0060】
初めの診断過程で、肥大化した皮脂腺の位置が、上記のようにして求められる。後に続く処置過程では、まず、皮脂腺の内側にあると特定された電極に対してのみ、高エネルギーの処置用パルスが供給される。次に、皮脂腺の近傍にあると特定された電極によって高エネルギーの処置用パルスが届けられることにより、同皮脂腺付近の血管の全体又は一部が選択的に加熱されて凝固する。これは、皮脂腺に栄養を送る血液供給の減少および/または切離しを目的としている。
【0061】
図4には、Gabriel達による“The dielectric properties of biological tissues: I Literature survey, Phys. Med. Biol. 41 (1996) 2231-2249、Gabriel S、Lau RW及びGabriel Cによる"The dielectric properties of biological tissues: III. Parametric models for the dielectric spectrum of tissues". Physics in Medicine & Biology. 1996 Nov; 41(11):2271 、ならびにGabriel C、Peyman A及びGrant EHによるElectrical conductivity of tissue at frequencies below 1 MHz Physics in medicine & biology. 2009 Jul 27;54(16):4863からのデータに基づく、濡れた皮膚(すなわち、真皮)および血液の誘電特性がプロットされている。図5には、100Hz~1GHzの周波数域での濡れた皮膚および血液の比電気インピーダンス振幅の算出値|z|、図6には、100Hz~1GHzの周波数域での濡れた皮膚および血液の位相角の算出値θがプロットされている。図7には、血液-対-真皮の比電気インピーダンス振幅の比および位相角の比がプロットされている。図7から、血液の比インピーダンスと真皮の比インピーダンスとが2倍超異なる周波数範囲が広域にわたって存在していることが分かる。例えば、約100Hz~約50MHzの周波数域では、血液の比インピーダンスが真皮のインピーダンスの約25%~約50%となる。標的となる皮脂腺の近傍にあると特定された電極から約100Hz~約50MHzの範囲内のRF電力を送達させて、周囲の真皮(すなわち、血管を取り囲む真皮)に届けられる電力密度を血管の1/2~1/4まで抑えることにより、血管への選択的な電力送達が行われる。
【0062】
血管内の血液のRFインピーダンスが低いことで、標的となる皮脂腺の付近にあると特定された2つ以上の電極間に位置する血管に送り込まれるRF電力は大きくなる。血管へのRF電力流および対応する血管の加熱により、同血管の壁が損傷する。好適には、RFパルスのON時間は、RF電力による血管の選択的加熱への選択的光熱融解理論(R. Rox Anderson達による“Selective Photothermolysis: Precise Microsurgery by Selective Absorption of Pulsed Radiation, Science”, Vol. 220 pp. 524-528)の適用に基づいて血管の選択的加熱を生じさせるように選択される。高い周波数のRF電力送達のほうが、RF導体の外周部の電流密度を増加させて血管壁に対してより局所的な損傷を生じさせる「表皮効果」があるので好ましい。RF電力の送達から5~100秒以内に、血管壁の熱的な損傷、機械的な損傷およびその他の損傷によって、損傷した血管内の血液の全体又は一部が凝固する(Falati達による“Real-time in vivo imaging of platelets, tissue factor and fibrin during arterial thrombus formation in the mouse”, Nature Medicine ・ Volume 8 ・ Number 10 ・ October 2002, pp. 1175-1180 、およびFurie達による“Thrombus Formation in Vivo”, The Journal of Clinical Investigation, Vol. 115:12, December 2005, pp. 3355-3362)。ここで述べている凝固とは、血管の完全な凝固に繋がる一連の事象の発端を含み得る。皮脂腺に栄養を送る血管が凝固することで、同腺は、血管新生によって同腺への送血が復活するまで機能障害状態(gland disruption)となる。皮脂腺への血流を断絶することにより、同腺のサイズは減少し得る。同腺の機能障害状態は、同腺の壊死も招き得る。所与の皮膚部位内における肥大化した皮脂腺のサイズ減少や壊死は、同部位のニキビ症状の軽減に繋がる。
【0063】
各種実施形態では、RF電極を通電した際に、高い電流密度によって、同RF電極近くの部位が望ましくない温度にまで達する可能性がある。一例として、送達ニードル電極を中空とし、エネルギー送達の直前に低温の導電性液体(例えば、生理食塩水等)の供給を可能とすることで、望ましくない電極温度の緩和および/または低減を行うようにしてもよい。
【0064】
(RF送達用の機器および装置)
図8に、各種溶液を供給するのに適した液体送出口を有するニードルの一例を示す。例えば、図9は、六角形状のアレイ内の一実施形態になるが、液体送出口を有するRF電極ニードルが電極ホルダ上に六角形状のパターンで取り付けられた一例を示す概略図である。外周の約60°の角度ごとに開口部が形成され得て、その向きは前記電極アレイの六角形状のグリッドに沿ったものとなり得る。これにより、2つの隣接した(例えば、水平方向および/または斜め方向に隣接した)ニードル同士のそれぞれの開口部の向きは、互いの方向に向いたものとなり得る。すると、図10に示すように、それらの間の空間が、前記アレイ内の隣接する一方または両方のニードルから供給された液体によって満たされ得る。例示的な一実施形態において、各電極の外周の開口部の向きは、例えば図10に示すように前記電極アレイ内で最も近隣の電極の方向に向いたものとされるのが好ましくあり得る。
【0065】
図8は、本開示の一実施形態における、外周にわたって液体送出口LDP又は切欠きを有したRF電極ニードル20の図である。同液体には、ニキビの処置、回復の向上または処置前、処置中もしくは処置後の1つ以上の組織特性を冷却もしくは改変するための、導電性溶液、薬剤またはその他の化合物が含まれ得る。前記アレイのうちの1本以上のニードルで、異なる(various)溶液が供給されるようにしてもよい。所与の溶液ごとの貯蔵部およびポンプ装置が、所与のLDP口と流体連通したものとされ得る。一部の実施形態では、皮脂腺が存在しない表皮や表皮上層(superficial dermis)にエネルギーが届けられることがないように、前記ニードルの軸部分が絶縁され得る。絶縁されていないニードル先端領域が、真皮中の皮脂腺SGの深さの略範囲にエネルギーを送達させるように挿入される。大抵の実施形態において、真皮中の皮脂腺の深さは、約0.5~約1.5mm(ないし約2mm)または約0.75~約1.25mmの深さと様々である。各種実施形態において、電極又はマイクロニードルのアレイは、ニードルアレイとも称される。
【0066】
図9は、RF電極ニードルアレイ21の一例の概略図である。図示のニードルNは、液体送出口LDPを有する。ニードルNは、電極アプリケータホルダ(すなわち、電極アプリケータ基材23)上に六角形状のパターンで取り付けられている。図9に示すように、取り付けられた電極の液体送出口LDPは、最も近い電極を指し示すような向きをしている。
【0067】
図10は、液体送出口LDPを有するRF電極ニードル27が電極アプリケータホルダ上に六角形状のパターンで取り付けられた一例を示す概略断面図である。それぞれのニードルは、外周に6つのLDPを有している様子が描かれている。各種実施形態において、各ニードルNのLDPの数は、1~約16個のLDPと様々であり得る。前記ニードルの断面の中心同士は、各線分によって六角形や三角形の配置構成を形成するようにして繋がれている。同断面の平面には、前記ニードルの中心間に広がる様々な三角形が含まれており、6つの三角形によって、ニードルN同士の六角形状の配置構成が規定される。同断面(および前記三角形の側辺)は、前記液体送出口の中間部に位置しており、かつ、前記電極の軸心と直交している。同概略図では、前記RF電極の壁部分(液体送出口でない部分)が濃い斜交平行線部分として描写されており、前記液体送出口が薄い輪郭線部分として描写されている。取り付けられた前記電極の前記液体送出口は、最も近い電極を指し示すような向きをしている。所定の液体送出口の、最も近い電極に対する向きを強調するために、液体送出口を有する前記RF電極の中心同士を繋ぐ一点鎖線が描き足されている。
【0068】
図11は、外周にわたって且つ先端部Tに液体送出口LDPを有するRF電極ニードル30の一例を示す概略図である。先端部の当該口は、先端部Tの中心から偏心した向きで描かれている。
【0069】
図12は、液体送出口を有さないRF電極ニードル32の一例を示す概略図である。ニードルの同例の長さ、同じく、本明細書で述べるその他のニードルの長さも、約1mm~約50mmの範囲内であり得る。ニードルの同例のうちの、対象者の皮膚組織に挿入される長さは、約1mm~約5mmの範囲内であり得る。ニードルの同例の厚み又は直径、同じく、本明細書で述べるその他のニードルの厚み又は直径も、約0.1~約1mmの範囲内であり得る。
【0070】
図13は、先端部Tに液体送出口LDPを有するRF電極ニードル38の一例を示す概略図である。同図の実施形態における前記LDPは、図示のように、偏心した向きとなっている。
【0071】
図14は、電極ホルダ(すなわち、電極アセンブリ)42上に取り付けられたRF電極ニードルアレイ40の一例を示す概略図である。電極ホルダ(すなわち、電極アセンブリ)42は、支持構造に切離し可能に連結している。一部の実施形態において、ホルダ42は、電極が付いた同電極アプリケータホルダをハンドピースまたは別の支持体もしくは構造45から取り外すことが可能となっている。前記RF電極は、患者の皮膚に挿入され得る。ばね付き連結具、圧入収容口などの機械的連結手段(couplers)48が電極ホルダ42と協働することで、ハンドピース45への電極ホルダ42の連結が行われ得る。
【0072】
一部の実施形態では、電極アプリケータアセンブリ42が、患者ごとに交換又は減菌処理される。処置用ハンドピースは、複雑な機械部品や電子部品、さらには、任意で液体供給部品を有している。ハンドピース45により、皮膚への電極の挿入、RF診断、任意の液体供給、治療エネルギー送達、および皮膚からの電極の引き抜きが容易になる。ここでは、電極(例えば、マイクロニードル等)の皮膚への挿入や皮膚からの引き抜きを容易にする機械部品や電子部品を具体的に図示していないが、これらは当業者にとって既知のものであり、また、Potenza(登録商標)RFマイクロニードル穿刺システム(Jeisys Medical,Inc.社製)などのマイクロニードル穿刺装置にも存在している。前記ハンドピースのうちの患者に触れない部分を再利用可能にして患者ごとの交換を不要にすると、経済的に有利である。よって、図示のように、前記処置用ハンドピースのうちの、前記マイクロニードルアレイを含む部分が、同ハンドピースに切離し可能に連結したものとなっている。
【0073】
各種実施形態では、中空の前記電極から送り込まれる導電性液体が、施術に伴い得る処置痛みを緩和するための麻酔薬を含有したものとされ得る。各種実施形態において、低温液体を送り込む個々の電極ニードルは、例えば図13に示すように先端部が開口したもの、例えば図8に示すように外周が開口したもの、あるいは、例えば図11に示すようにこれらの組合せとされ得る。他にも、液体を送り込まない電極が、例えば図12に示されている。
【0074】
各種実施形態では、電極のスプリアスな分極によって、電極間の評価対象組織のインピーダンスや誘電特性の特性評価に誤差が生じる可能性がある。電極材料や仕上げ処理の選択しだいで、電極のスプリアスな分極を改善することが可能である。例えば、粗い白金黒層で被覆された白金電極により、電極のスプリアスな分極の影響が低減され得る。
【0075】
図15は、脂肪および濡れた皮膚の誘電率および導電率を含む誘電特性を示したチャート図である。約1MHz未満の周波数域についての濡れた皮膚のデータは、角質層を除いた皮膚下層のデータである。具体的に述べると、約1MHz未満の周波数域(約0.0001MHz~約1MHz)についての濡れた皮膚のデータは、角質層を取り除いてからデータ収集を行った皮膚下層のデータである。約1MHz超の周波数域(約1MHz~約1000MHz)についての濡れた皮膚のデータは、角質層を残した皮膚層からのものであるが、約1MHz超等の高周波数域では角質層を含むデータと含まないデータとに変わりがないことから、約1MHz未満のデータとの間で不連続性が生じない。図3図16図17及び図18は、図15のデータに基づいて算出したものである。したがって、図3、16、17及び18に示したデータも、角質層がない場合を含む。
【0076】
脂肪は、脂腺組織に対する代用物として、濡れた皮膚は、真皮組織に対する代用物として利用している。図15には、約100Hz~約1GHzの周波数域における脂肪と濡れた皮膚の比誘電率および導電率がプロットされている。脂肪と濡れた皮膚の誘電率および導電率から、広域にわたっての周波数範囲の検討が可能となる。これにより、脂腺組織と真皮組織との間で強いコントラストが生じると考えられる周波数範囲についての賢明な選択が可能となる。
【0077】
図16は、脂肪(皮脂腺に対する代用物)-対-濡れた皮膚(真皮組織に対する代用物)の誘電特性比、具体的には、周波数(MHz)をx軸とした場合の、濡れた皮膚の導電率に対する脂肪の導電率の比(実線)と、周波数(MHz)をx軸とした場合の、濡れた皮膚の誘電率に対する脂肪の誘電率の比(破線)をy軸に示したグラフである。図16に示すように、脂肪および濡れた皮膚についての2種類の誘電特性の一方又は両方(すなわち、脂肪の導電率/濡れた皮膚の導電率の比および/または脂肪の誘電率/濡れた皮膚の誘電率の比)が特定の周波数で2倍超、5倍超又は10倍超異なり且つ1以外の値となる(例えば、誘電特性比が1超又は1未満である)周波数範囲(x軸:周波数(MHz))が広域にわたって存在している。
【0078】
あるいは、皮脂の誘電特性と皮膚の真皮の誘電特性が互いに異なり且つそれらの誘電特性比が約0.9~約1.1の範囲外、約0.8~約1.2の範囲外または約0.6~約1.4の範囲外となる周波数で皮脂腺が標的とされるのが好ましい。脂肪の誘電特性と濡れた皮膚の誘電特性とが例えば10倍超、5倍超の差、2倍超異なる周波数域が、皮脂腺を標的とするうえで好ましい条件である。再び図15を参照すると、y軸の誘電特性比データのうち、10以上の比および0.1以下の比が、診断用の目的に極めて有用であり、この領域では、脂肪の導電率/濡れた皮膚の導電率の比の特性および脂肪の誘電率/濡れた皮膚の誘電率の比の特性が比較的大きな違いとなり、例えば、多くの領域で10倍超異なるということが分かる。皮脂の誘電特性と皮膚の真皮の誘電特性とが互いに異なって且つ脂肪/濡れた皮膚の導電率比および/または脂肪/濡れた皮膚の誘電率比が例えば2超、5超、10超等となる周波数が、処置対象の皮脂腺(脂肪を脂腺組織に対する代用物とする)を標的とするうえで好ましい。所与の実施形態において、上記全ての倍数は、約5%又は10%異なっていてもよい。
【0079】
図17に示すように、約100Hz~約1000MHzの周波数範囲候補では、脂肪のインピーダンスが濡れた皮膚のインピーダンスよりも高くなる。その場合、皮脂腺は、周囲の真皮からの熱拡散によって加熱される。周囲の組織からの熱拡散のほうが、組織加熱の効率がよい場合がある。真皮の熱損傷を区画的に配置されたRF電極間のESGを含む領域のみに限定することにより、熱損傷を受けた真皮領域を処置後速やかに回復させることができる。
【0080】
各種実施形態では、前記制御系統が、組織インピーダンスの測定値を利用して皮脂腺を電磁エネルギーの標的とする。真皮組織と皮脂とのインピーダンス差に基づいて、皮脂腺の標的化が行われる。例えば、組織の比誘電率εγと導電率σを用いることで、同組織の比アドミタンス(admittivity)γを算出することができる。
【0081】
【数1】
【0082】
(式中、εは真空の誘電率であり、ω=2πfは角周波数であり、iは虚数単位:i=√-1である。)
【0083】
比電気インピーダンスzは,比アドミタンスγの逆数である。
【0084】
【数2】
【0085】
診断手順での測定対象の組織特性は、比電気インピーダンスの振幅|z|および位相角の正接θであり得る。これらの項は、同組織の比誘電率と導電率から、次のように記述することができる。
【0086】
【数3】
【0087】
図17には、濡れた皮膚と脂肪の比電気インピーダンス振幅|z|の算出値が、図18には、濡れた皮膚と脂肪の位相角θの算出値がプロットされている。図15には、脂肪-対-濡れた皮膚の比電気インピーダンス振幅の比と位相角の比がプロットされている。
【0088】
図15は、脂肪-対-濡れた皮膚のインピーダンス比-対-周波数のチャート図である。図15から、図示のように、脂肪の比インピーダンスと濡れた皮膚の比インピーダンスが2倍超、5倍超又は10倍超異なる周波数範囲が存在することが分かる。皮脂腺を標的とする際には、比インピーダンスが10倍超異なる場合が最適であり、5倍超異なる程度では理想性が劣り、2倍超異なる程度では好適性が最小になる。図15に基づくと、約100Hz~約1000MHzの周波数範囲候補では、脂肪のインピーダンス振幅が濡れた皮膚のインピーダンス振幅よりも高くなる。その場合の皮脂腺は、より効率よく加熱される周囲の真皮からの熱拡散によって加熱され得る。真皮の熱損傷を区画的に配置されたRF電極間のESGを含む領域のみに限定することにより、熱損傷を受けた真皮領域を処置後速やかに回復させることができる。
【0089】
図3図15図16図17及び図18のグラフでは、真皮と皮脂腺との関係がそれらの相対的な電気特性によって示されている。しかし、同データは、実際には、真皮に対する代用物である濡れた皮膚のデータと、皮脂腺に対する代用物である脂肪組織のデータである。将来的には、真皮組織や脂腺組織のデータ、その他にも、皮脂や真皮の誘電特性についてのより正確なデータが利用可能になると考えられることから、上記グラフはやや変化する可能性があるものの、RFエネルギーによるESGの指定・処置の技術的内容は一貫して同じである。
【0090】
前述した装置や方法は、別の局所的組織構造や、各種組織、器官、細胞、細胞小器官、細胞分泌物(output)や産生物、およびその他の症状にまで拡張されることも想定され得る。例えば、汗腺についての位置特定型選択的電気焼灼術を、過剰発汗する皮膚の領域に適用するようにしてもよい。別の例としては、不要な血液や白髪を有する組織領域が挙げられる。これらの組織領域は、レーザーベースの選択的光熱融解にとって十分な色素コントラストを呈さない場合が多いため、本明細書で開示するような位置特定型選択的電気焼灼術による処置が施され得る。
【0091】
(不要な毛)
肥大化した皮脂腺の処置についての上記のアプローチと同様のものを、不要な毛の処置にも適用することが可能である。初めの診断過程では、毛幹の導電率が周囲の真皮に比べて低いことを利用して、毛包の位置が求められる。後に続く処置過程では、周囲の真皮に比べて毛幹の導電率が低いことで特定済みの各毛包の近傍にあると特定された電極に対してのみ、高エネルギーの処置用パルスが供給される。同処置用パルスにより、毛包の近傍にある血管の全体又は一部を選択的に加熱して凝固させる高いRF電力が送達される。このような処置手法は、従来のレーザー除毛では処置が困難な白色の毛、赤色の毛、ブロンドの毛および薄い色の毛の処置に極めて有用である。一般的に言って、不要な体毛は、その人にとって羞恥心や社会不安の原因となり得る。毛包の美容処置による不要な毛の除去や阻止は、自尊心を育んで羞恥心や社会不安を軽減させることができる。したがって、不要な毛の美容処置や本明細書で開示するその他の美容処置は、数多くの利点を人々に奏し、社会的場面での他者からの嘲笑や批判を乗り越える手助けとなる。
【0092】
(血管病変)
肥大化した皮脂腺の処置についての上記のアプローチと同様のものを、不要な血管病変の処置にも適用することが可能である。皮膚上の不要な血管病変は、一般的に、患部における血管径の増大や血管密度の増加と関連付けられる。血管病変の例としては、毛細血管拡張症、びまん性紅斑、血管腫、単純性血管腫などが挙げられる。いずれの場合も、血管径の増大および血管密度の増加のどちらかによって、患部の真皮中の血液容積率が高くなっている。
【0093】
初めの診断過程では、血液-対-真皮の誘電特性の違いならびに対応するインピーダンス振幅および位相(図4図5及び図6)を利用して、血液容積率が高くなっている位置が特定され得る。血液-対-真皮の比電気インピーダンス振幅の比および位相角の比については、図7にプロットされている。図7から、血液の比インピーダンスと真皮の比インピーダンスとが2倍超異なる周波数範囲が広域にわたって存在していることが分かる。例えば、約100Hz~約50MHzの周波数域では、血液の比インピーダンスが真皮のインピーダンスの約25%~約50%となる。血液容積率が高くなれば高くなるほど、2つ以上の電極からなる電極群に取り囲まれているところのインピーダンス変動は、血液容積率が高くなっていない同様の電極同士の群間インピーダンス測定値のアレイ平均に比べて大きくなる。血液容積率が最大となっている領域が、エネルギー送達の標的とされる。
【0094】
一般的に言って、クモ状静脈瘤などの不要な血管や血管病変は、その人にとって羞恥心や社会不安の原因となり得る。血管や病変の美容処置による不要な赤斑やシミやクモ状静脈瘤やその他の不要な目立った痕や吹き出物の除去や阻止は、自尊心を育んで羞恥心や社会不安を軽減させることができる。したがって、血管や病変の美容処置や本明細書で開示するその他の美容処置は、数多くの利点を人々に奏し、社会的場面での他者からの嘲笑や批判を乗り越える手助けとなる。
【0095】
血管内の血液のRFインピーダンスが低いことで、血液容積率が高くなっている標的領域付近にあると特定された2つ以上の電極間に位置する血管に送り込まれるRF電力は大きくなる。血管へのRF電力流および対応する血管の加熱により、同血管の壁が損傷する。好適には、RFパルスのON時間は、RF電力による血管の選択的加熱への選択的光熱融解理論(R. Rox Anderson達による“Selective Photothermolysis: Precise Microsurgery by Selective Absorption of Pulsed Radiation, Science”, Vol. 220 pp. 524-528)の適用に基づいて肥大化血管の選択的加熱を生じさせるように選択される。高い周波数のRF電力送達のほうが、RF導体の外周部の電流密度を増加させる「表皮効果」があるので好ましい。RF電力の送達から5~100秒以内に、血管壁の熱的な損傷、機械的な損傷およびその他の損傷によって、損傷した血管内の血液が凝固する(Falati達による“Real-time in vivo imaging of platelets, tissue factor and fibrin during arterial thrombus formation in the mouse”, Nature Medicine・Volume 8・Number 10・October 2002, pp. 1175-1180 、およびFurie達による“Thrombus Formation in Vivo”, The Journal of Clinical Investigation, Vol. 115:12, December 2005, pp. 3355-3362)。肥大化血管の全体又は一部を選択的に凝固させると、回復後、標的領域中の高くなっていた血液容積率は減少するものと考えられる。高くなっていた血液容積率が減少することで、不要な血管病変の見た目改善に繋がると期待される。
【0096】
(汗腺)
多汗症は、一般的に、生理学的に必要な体温調節量を上回る過剰発汗と定義されている。多汗症が生活に与える社会的影響は、乾癬、ニキビ、白斑などの多くの皮膚疾患に匹敵する。社会的場面での過剰発汗のリスクを避けるために、限定的な生活様式をしばしば選ぶことになる。汗腺の調整美容処置による過剰発汗の阻止や改善は、自尊心を育んで羞恥心を軽減させることができる。よくある過剰発汗部位の例としては、腋窩(すなわち、脇の下)、手のひら、足の裏などが挙げられる。
【0097】
一般的な通説として、汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺の2種類が存在する。また、第3の汗腺である「アポエクリン腺」も発見されており、話題になっている。エクリン腺は、臭いのない透明な汗を分泌し、その主な機能は体温調節である。汗腺は全身に分布しており、単位面積あたりの腺数は様々である。アポクリン腺は、乳白色の汗を分泌し、主に腋窩と生殖器領域に見受けられる。どちらの種類の腺も、真皮/皮下(DH)の境界付近に存在している。ヒトの腋窩の研究では、汗腺の全て又は大部分がDH境界よりも下側の皮下組織にあることが分かっている(Beer達による“Immunohistochemical Differentiation and Localization Analysis of Sweat Glands in the Adult Human Axilla”,https://journals.lww.com/plasreconsurg/Abstract/2006/05000/Immunohistochemical Differentiation and.52.aspx)。
【0098】
RF電力による汗腺の局所的処置で熱損傷や壊死が生じることにより、多汗症の改善に繋がると期待される。汗腺の位置特定を行わないマイクロ波処置による多汗症の改善については、立証済みである(Hong達による“Clinical Evaluation of a Microwave Device for Treating Axillary Hyperhidrosis”, 2012 by the American Society for Dermatologic Surgery, Inc. Published by Wiley Periodicals, Inc. ISSN: 1076-0512, Dermatol Surg 2012;38:728-735, DOI: 10.1111/j.1524-4725.2012.02375.x)。汗腺の位置特定を行わないマイクロ波処置は、皮膚表面からDH接合部までの広範囲の部分の加熱を伴う。非選択的な容積加熱では、皮膚の冷却や痛み管理のための麻酔薬の局所的注射が必要となる。RF電力による汗腺の局所的処置であれば、非選択的な容積加熱にならないほか、安全性と患者の快適性が改善されると同時に、マイクロ波処置以上の効果がもたらされる。
【0099】
皮下や皮下組織は、脂肪組織で構成されている。脂肪(脂肪組織に対する代用物)の誘電特性は、Gabriel達による“The dielectric properties of biological tissues: I Literature survey, Phys. Med. Biol. 41 (1996) 2231-2249、Gabriel S、Lau RWおよびGabriel Cによる"The dielectric properties of biological tissues: III. Parametric models for the dielectric spectrum of tissues". Physics in Medicine & Biology. 1996 Nov; 41(11):2271 、ならびにGabriel C、Peyman AおよびGrant EHによるElectrical conductivity of tissue at frequencies below 1 MHz Physics in medicine & biology. 2009 Jul 27;54(16):4863.にまとめられたものを使用する。人工汗(ヒトの汗に対する代用物)の誘電特性は、Eldamak達による“Study of the Dielectric Properties of Artificial Sweat Mixtures at Microwave Frequencies”, Biosensors 2020, 10, 62にまとめられたものを使用する。図19には、約100Hz~約1GHzの周波数域における脂肪と人工汗の比誘電率および導電率がプロットされている。皮下や汗の誘電特性についてのより正確なデータが利用可能となり次第、正確な数値への更新が行われ得るであろうが、誘電特性に基づく汗腺の位置特定やRF処理の基本的概念の有効性に変わりはない。
【0100】
肥大化した皮脂腺の処置についての上記のアプローチと同様のものを、過剰発汗の処置にも適用することが可能である。初めの診断過程では、汗-対-脂肪の誘電特性の違いに基づいて汗腺の位置が特定される。同診断過程では、さらに、脂肪-対-真皮間特有の大きな違い(図3)から、絶縁されていないエネルギー送達用電極先端部が真皮内に位置しているのか皮下に位置しているのかを判定することも可能である。絶縁されていない同電極先端部が真皮内にあると判定された場合には、皮下に進入するように再配置され得る。そして、絶縁されていない同電極先端部が皮下内にある場合には、前記電極アレイを用いたインピーダンス変動診断によって汗腺の位置および近似サイズを求めることができる。
【0101】
後に続く処置過程では、汗腺の内側にあるか又は汗腺の近傍にあると特定された電極に対してのみ、高エネルギーの処置用パルスが供給される。前記アレイの比較的少数の割合の電極のみが汗腺の近傍にあると判明するはずなので、通電時には、これらの汗腺の近傍にある僅かな割合の体積の皮下のみが熱損傷を受けることになる。
【0102】
一般的に言って、不要な過剰発汗は、その人にとって羞恥心や社会不安の原因となり得る。汗腺の美容処置による不要な発汗の除去や阻止は、自尊心を育んで羞恥心や社会不安を軽減させることができる。したがって、過剰発汗の美容処置や本明細書で開示するその他の美容処置は、数多くの利点を人々に奏し、社会的場面での他者からの嘲笑や批判を乗り越える手助けとなる。
【0103】
図19から、脂肪の誘電特性と汗腺の誘電特性が約2倍超、約5倍超又は約10倍超異なる周波数範囲が広域にわたって存在していることが分かる。図20には、約100Hz~約1GHzの周波数域についての汗と真皮の比電気インピーダンス振幅||z|の算出値が、図21には、約100Hz~約1GHzの周波数域についての汗と真皮の位相角θの算出値がプロットされている。図22には、汗-対-脂肪の比電気インピーダンス振幅の比および位相角の比がプロットされている。図22から、約100Hz~約1GHzの周波数域では、汗の比インピーダンス振幅が脂肪のインピーダンスの約1/10程度であることが分かる。標的となる汗腺の近傍にあると特定された電極から約100Hz~約1GHzの範囲内のRF電力を送達させて、周囲の脂肪に届けられる電力密度を汗腺の~約1/10まで抑えることにより、汗腺への選択的な電力送達が行われる。処置対象として特定された各汗腺の近傍にあるRF電極が、同汗腺の熱緩和時間に合致する時間のあいだ通電される(R. Rox Andersonによる“Selective Photothermolysis: Precise Microsurgery by Selective Absorption of Pulsed Radiation, Science”, Vol. 220 pp. 524-528)。
【0104】
本明細書で開示するアプリケータやハンドピース、およびそれらのバリエーションは、その使用回数が制限・計数されるように制御回路と組み合わされてもよい。これにより、処置上限を上回ったことが追跡され得て、業者や制御系統によってハンドピースの電源が直接又は遠隔で切られ得る。
【0105】
本明細書では、組織表面よりも深いところの患者の皮膚(例えば、真皮、皮下等)やその他の標的組織をRFエネルギーで処置するという、RFエネルギーを利用したシステムおよび方法について説明した。本願の教示内容の各種態様では、非侵襲性の冷却あり(又は冷却なし)RFベース処置により、皮脂腺処置、ニキビ処置、汗腺処置、血管処置、クモ状静脈瘤処置、腺損傷/不活性化、皮膚の引き締め(緩み改善)、セルライト処置装置、および不要な毛や不要な血管病変の除去処置など(但し、これらは、本発明を限定するものでない)のうちの1つ以上を実現することができる。
【0106】
図23は、対象者の処置前診断、処置前インピーダンスマッピングおよび本番の処置にてインピーダンス評価フィードバックがやり取りされる制御系統を示すブロック図である。ここでは、交流電力が、AD変換部で直流電圧に変換される。同直流電圧は、RF電力増幅部に供給された後、患者絶縁部(例えば、変圧部等)に進入する。同患者絶縁部からのRF電力は、ハンドピース/電極と同ハンドピース(例えば、図14)に取り付けられている電極アレイ(例えば、図9図14等を参照)とに供給された後、同電極アレイのニードルから患者へと送り込まれる。当該RF電力は、モノポーラモードおよびバイポーラモードのいずれかで送達されるものとされてもいし、あるいは、同じシステムでモノポーラモードとバイポーラモードの両方を届けることが可能とされてもよい(例えば、Potenza(登録商標)RFマイクロニードル穿刺システム(Jeisys Medical,Inc.社製)は、1MHz又は2MHzのモノポーラRFとバイポーラRFを同一装置内に統合している)。前記電極アレイの電極は、ニードルやマイクロニードルとも称される。患者には、インピーダンス診断および/またはインピーダンスマッピングに適した比較的低いレベルでRF電力が届けられ得る。このRF電力は、約1ナノワット~約10ワットの範囲内であり得る。それ以外にも、患者には、対象の症状(例えば、ニキビ、不要な毛、過剰発汗、不要な血管病変(例えば、不要な血管等)等)を処置するのに適したレベルでRF電力が届けられ得る。処置用のRF電力範囲は、約1ミリワット~約10キロワットまたは約100ミリワット~約500ワットの範囲内である。
【0107】
図Aには示していないが、任意で、直流電圧が直流バックコンバータ部に進入するようにしてもよい。供給された直流電圧は、当該直流バックコンバータ部で目的のRF周波数に制御可能に変換される。制御後の直流電圧は、前記RF電力増幅部に供給されてから患者絶縁部(例えば、変圧部等)に進入する。そして、同患者絶縁部からのRF電力が、本明細書で開示したハンドピース/電極から患者に送り込まれる。
【0108】
(インピーダンス診断/インピーダンスマッピング)
再び図23を参照する。インピーダンス診断/インピーダンスマッピングを実施するために、比較的低いレベルのRF電力が、前記ハンドピース上に存在する電極から患者に送り込まれる。前記制御系統は、制御信号を供給することにより、前記ハンドピース上に存在する電極のアレイから診断/マッピング対象の患者の組織に対しての低レベルRF電力の多重化を行う。前記制御系統は、インピーダンス診断情報やインピーダンスマップ生成用の制御信号を受信することにより、患者の組織処置部位のインピーダンス情報を収集する。
【0109】
例えば、インピーダンス診断および/またはインピーダンスマッピングに適した比較的低いレベルでRF電力が患者に届けられる際のRF電力は、約1ナノワット~約10ワットの範囲内とされる。組織部位の診断走査が実施されると、前記制御系統が制御信号を収集することで、各電極のインピーダンスまたは各電極対のインピーダンスが測定される。
【0110】
前記ハンドピースの前記アレイ内の全てとはいわずとも大半の電極又は電極対について、インピーダンス値が求められる。調査する電極又は電極対が増えるほど、インピーダンスマップの相対精度は高まる。この診断用測定から高インピーダンス値および/または低インピーダンス値が除外されてから、この特定の組織部位についてのベースラインインピーダンスが求められ得る。一実施形態では、インピーダンス値が高い値および/または低い値であると判断された場合に、対象の処置症状に応じて当該高い値および/または低い値に係るマイクロニードルまたはマイクロニードル対が、後に続く治療処置用に確保される。他の実施形態において、前記システムは、前記ベースラインインピーダンスが求められた後に高インピーダンス値および/または低インピーダンスを再び参照し、治療目的用にどちらのインピーダンス値を調査するのかを、例えば同システムの目下の周波数等に基づいて決定する。
【0111】
(治療処置)
再び図23を参照する。患者の組織のインピーダンスマッピングに基づいて、前記ハンドピース上の単一の電極又は選ばれた一部の個々の電極(モノポーラモード)、あるいは、前記ハンドピース上の一部の電極対(バイポーラモード)が、目的の処置による効果が得られる部位であるとして患者の同組織の当該インピーダンスマッピングから特定された部位を治療処置するように通電される。同治療処置を実施するために、RF電力が、前記ハンドピース上に存在する電極から患者に送り込まれる。前記制御系統は、制御信号を供給することにより、前記ハンドピース上に存在する電極のアレイからインピーダンスマッピング済みの前記患者の同組織に対してのRF電力の多重化を行う。前記制御系統は、処置対象の患者組織の領域から収集されたインピーダンスデータを用いて構築済みの前記インピーダンスマップに基づき、前記ハンドピース上の単一の/個々の電極を介した多重化(モノポーラモード)、あるいは、特定の電極対を介した多重化(バイポーラモード)を行う。例えば、患者には、対象の症状(例えば、ニキビ、不要な毛、過剰発汗、不要な血管等)を処置するのに適したレベルでRF電力が届けられる。処置用のRF電力範囲は、約1ミリワット~約10キロワットまたは約100ミリワット~約500ワットの範囲内である。
【0112】
(ニキビ)
一実施形態では、隣接するニードル同士対又は電極同士の対のうちの選ばれた一部の対が、肥大化した皮脂腺(ESG)をRF電力によって治療処置するように通電される。インピーダンスマッピングにより、直径が比較的大きいか又は最も大きいESGが特定され得る。そして、マッピングされた同ESGが、処置に適したRE電力範囲及び時間で処置される。インピーダンスマッピングは、電極対間の脂質濃度が最も高いESGを特定するように利用されることもあり得る。そして、マッピングされた同ESGが、処置に適したRF電力範囲及び時間で処置される。比較的大きいESGであるほど、ニードル対間の空間の脂質濃度が比較的高く表現される。具体的に述べると、それぞれのニードル対は、各ニードル対間の組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る(バイポーラモード)。単一のニードル(または一部の個々のニードル)がESGに直に接触する場合には、単一の/個々の各電極が、同電極と接触している組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る(モノポーラモード)。処置セッションにもよるが、単一の/個々のニードル(モノポーラモード)にしろニードル対(バイポーラモード)にしろ、選択的なRF加熱には短期間の高い出力/電力が要求される。
【0113】
(過剰発汗)
一実施形態では、隣接するニードル同士対又は電極同士の対のうちの選ばれた一部の対が、汗腺をRFエネルギーによって治療処置するように通電される。インピーダンスマッピングにより、汗腺の存在が特定され得る。そして、マッピングされたこれらの汗腺のうちの選ばれた一部が、処置に適したRE電力範囲及び時間で処置される。具体的に述べると、それぞれのニードル対は、各ニードル対間の組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る(バイポーラモード)。処置セッションにもよるが、選択的なRF加熱には短期間の高い出力/電力が要求される。一実施形態では、患者の組織部位に存在していると特定された全ての汗腺が、処置に適したRF電力範囲及び時間で処置される。
【0114】
(不要な毛の除去)
一実施形態では、隣接するニードル同士対又は電極同士の対のうちの選ばれた一部の対が、不要な毛包をRFエネルギーによって治療処置するように通電される。インピーダンスマッピングにより、毛包内の毛幹の存在が特定され得る。そして、マッピングされたこれらの毛包のうちの選ばれた一部が、毛の除去処置に適したRE電力範囲及び時間で処置される。具体的に述べると、それぞれのニードル対は、各ニードル対間の組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る(バイポーラモード)。処置セッションにもよるが、選択的なRF加熱には短期間の高い出力/電力が要求される。一実施形態では、患者の組織部位に存在していると特定された全ての不要な毛包が、処置に適したRF電力範囲及び時間で処置される。
【0115】
(不要な血管)
一実施形態では、隣接するニードル同士対又は電極同士の対のうちの選ばれた一部の対が、不要な血管をRF電力によって治療処置するように通電される。インピーダンスマッピングにより、血液容積率の高さから不要な血管が特定され得る。そして、マッピングされた同不要な血管が、処置に適したRE電力範囲及び時間で処置される。その他にも、インピーダンスマッピングは、肥大化した血管の割合から不要な血管を特定するように利用されることもあり得る。そして、マッピングされた同不要な血管が、処置に適したRE電力範囲及び時間で処置される。具体的に述べると、それぞれのニードル対は、各ニードル対間の組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る(バイポーラモード)。単一のニードル(または一部の個々のニードル)が不要な血管に直に接触する場合には、単一の/個々の各電極が、同電極と接触している組織の熱緩和時間に略等しい時間のあいだ通電され得る(モノポーラモード)。処置セッションにもよるが、単一の/個々のニードル(モノポーラモード)にしろニードル対(バイポーラモード)にしろ、選択的なRF加熱には短期間の高い出力/電力が要求される。
【0116】
一般的に述べると、本明細書で開示した方法やシステムは、美容処置、審美処置、これら組合せなどの非医療的な各種処置を行うのに利用され得る。過剰発汗を軽減又は阻止するための組織の美容処理、不要な毛の除去、血管や病変の除去、ニキビの軽減又は防止は、全て有益な美容処置である。本明細書で開示したこれらの美容処置およびその他の美容処置は、上記の症状や本明細書で開示したその他の症状に悩む人々の見た目や幸福感を改善することができる。各種実施形態において、本開示は、1つ以上の組織対象に対する美容処置によって本明細書で開示した1つ以上の望ましくない症状を軽減、予防、反転または美容処置するようにRFエネルギーの伝達を制御する方法に関する。
【0117】
RFとインピーダンス検出を用いて組織を処置する各種システムのさらなる詳細は、米国特許出願公開第20200352633号(“NON-INVASIVE, UNIFORM AND NON-UNIFORM RF METHODS AND SYSTEMS RELATED APPLICATIONS”)に開示されている。同公報の全開示内容は、参照をもって取り入れたものとする。
【0118】
他にも、RFとインピーダンス検出を用いて組織を処置する各種システムのさらなる詳細は、米国特許出願公開第20190239939号(“METHODS AND APPARATUS FOR CONTROLLED RF TREATMENTS AND RF GENERATOR SYSTEM”)に開示されている。同公報の全開示内容は、参照をもって取り入れたものとする。
【0119】
分かり易いように、以下の説明では、そのほうが好都合又は適切と考えられる場合に一部具体的な細部を省略しながら本出願人の教示内容の実施形態の各種側面について説明していると理解されたい。例えば、代替的な実施形態については、同様または類似の構成の説明を多少省略している場合がある。また、周知の思想や概念についても、簡略性のために詳述していない場合がある。当業者であれば、本出願人の教示内容の実施形態によっては、具体的に説明した一部の細部が、同実施形態の完全な理解をもたらすためだけに本明細書に記載した物であって、必ずしも全ての実施態様で必須とならない可能性があることが分かるであろう。同じように、本開示内容の範囲を逸脱しない範囲で、一般常識に応じて変更や変形が記載の実施形態に施されてもよいことは明らかである。実施形態についての以下の詳細な説明は、本出願人の教示内容の範囲を限定するかの如く決して見なされるべきでない。
【0120】
本明細書で使用する「約」及び「実質的に同一」という用語は、例えば、実世界での測定又は取り扱い手順によって、これらの手順における不注意な誤りによって、電気素子の製造における差異/欠陥によって、電気損失によって起こり得る数値量の変動、並びに、その変動が先行技術によって実施されている既知の値を包含しない限り、同等であると当業者に認識される変動を意味する。一般に、「約」という用語は、記載された値または値の範囲よりも1/10だけ大きいか小さいこと、例えば、±10%を意味する。例えば、ある素子に約+3Vの直流(DC)電圧を印加することは、+2.7VDCと+3.3V DCの間の電圧を意味することができる。同様に、「実質的に同一」とされる値についても、最大で5%程度異なる場合がある。「約」または「実質的に」同一という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲に記載された定量的な値は、記載された値に対する同等物、例えば、発生し得るが当業者によって同等物と認識されるであろう当該値の数値量における変動も含まれる。
【0121】
さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かにかかわらず、一般に公開されることを意図していない。特許庁および本出願に基づいて発行された特許の読者が、本出願または継続する特許出願の審査を通じて添付されたクレームまたは他の方法で示されたクレームを解釈する際に役立つように、出願人は、特定のクレームにおいて「meansfor」または「step for」というフレーズが明示的に使用されていない限り、請求された特徴が35USC 112(f)の規定に基づいて解釈されることまたは同規定の適用を受けることを意図しないことに注意されたい。
【0122】
本書に添付されたすべての図面には、1つまたは複数の装飾的な特徴および図が含まれ、各図面には実線が含まれ、そのいずれかが点線にも組み込まれ、対応し、支持を提供し、代わりに、各図面には点線が含まれ、そのいずれかが実線にも組み込まれ、対応し、支持を提供するものである。
【0123】
用語「備える」、「具備する」、「含有する」、「含む」、「有する」、「持つ」の使用は、特に断りのない限り、一般に開放的かつ非限定的なものとして理解されるべきである。
【0124】
本書では、特に断らない限り、単数形の使用は複数形を含む(逆も同様)。さらに、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないと指示されない限り、複数形を含む。さらに、用語「約」の使用が定量的な値の前である場合、本教示は、特に断らない限り、特定の定量的な値自体も包含する。
【0125】
本教示が動作可能である限り、過程/工程の順序または特定の動作を実行するための順序は重要でないことを理解されたい。さらに、2つ以上の過程/工程または行為が同時に実施されてもよい。
【0126】
値の範囲またはリストが提供される場合、その範囲または値のリストの上限と下限の間に介在する各値は、個別に想定され、各値が本明細書に具体的に列挙されるかのように、本開示内に包含される。さらに、所与の範囲の上限と下限との間及びそれを含むより小さな範囲も、本開示内に企図され、包含される。例示的な値又は範囲の列挙は、所与の範囲の上限と下限との間及びそれを含む他の値又は範囲を否定するものでない。
【0127】
本開示の実施形態には、本願の教示内容の範囲を逸脱しない範疇で数多くの変更が施されてもよいと理解されたい。前述した図や例では特定の構成/構成要素に言及しているが、これは例示に過ぎず本発明を限定するものではない。当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される教示内容の範囲を逸脱しない範疇で、本開示の実施形態の形式や細部に様々な変更が施されてもよいことを理解するであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】