(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】改変されたiPSC
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230606BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230606BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230606BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20230606BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230606BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/10 ZNA
C12N15/85 Z
A61P35/00
A61K35/545
A61K35/28
A61K45/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568380
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 GB2021051125
(87)【国際公開番号】W WO2021229212
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517122578
【氏名又は名称】アダプティミューン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン ガース
(72)【発明者】
【氏名】ザイドル クリスティーヌ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AB01
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4C084AA19
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4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、細胞ゲノムに組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞、及びその使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞であって、細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、前記改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項2】
異種TCRをコードする前記少なくとも1つの異種核酸配列が、発現可能な異種核酸配列である、請求項1に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項3】
前記改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞が、好ましくは前記細胞表面で発現または提示される核酸配列をコードする異種TCRによってコードされる、前記少なくとも1つの異種TCRを発現または提示する、請求項1または2に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項4】
前記改変された造血系細胞が、前記改変されたiPSCに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項5】
前記造血系細胞が、以下のうちのいずれか1つから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞:
(a)場合によっては中胚葉マーカー、ブラキュリ、グーセコイド、Mixl1、KDR(FLK1またはVEGFR2としても知られる)、FoxA2、GATA6またはPDGFアルファRのいずれか1つ以上を発現し得る、中胚葉細胞、
(b)場合によっては(a)CD34+、または(b)CD34+CD73-、または(c)CD34+CD73-CXCR4-(CD184-)であり得る、造血内皮細胞、
(c)場合によっては(a)CD34+、または(b)CD34+CD45+、または(c)CD117+、CD133+、CD45+、FLK+、CD38-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD34+及び/またはCD45+、(d)CD34+、CD133+、CD45+、FLK1+、CD38-であり得る、造血前駆細胞
(d)場合によっては(a)CD5+及び/またはCD7+、または(b)CD44+、CD25+、CD2+、CD45+、CD3-、CD4-、CD8-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD5+及び/またはCD7+であり得る、前駆T細胞、
(e)場合によっては(a)CD4+CD8+(b)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+CD8+であり得る、二重陽性T細胞(DP T細胞)、
(f)場合によっては(a)CD4+、(b)CD8+、(c)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+またはCD8+であり得る、単独陽性T細胞(SP T細胞)、あるいは
(g)場合によってはアルファベータT細胞、ガンマデルタT細胞、NKT細胞、CD4+であるTヘルパー細胞(TH)、CD8+である細胞傷害性T細胞(TC)であり得る、成熟T細胞。
【請求項6】
RAG1発現が、低減または排除される、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項7】
rag1遺伝子が、不活性化またはノックアウトされている、請求項6に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項8】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記細胞ゲノムにおける前記遺伝子座の1つまたは両方の対立遺伝子にまたはその中に組み込まれている、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項9】
前記遺伝子座が、前記細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子である、請求項6に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項10】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記内因性タンパク質をコードする前記遺伝子に隣接してまたはその中に組み込まれている、請求項7に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項11】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記内因性タンパク質をコードする前記遺伝子のイントロンまたはエクソン、場合によっては3’エクソン内に組み込まれている、請求項9または10に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項12】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記内因性タンパク質をコードする前記遺伝子または核酸配列のTAG終止配列の前の前記3’エクソン内に組み込まれている、請求項9に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項13】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列の前記組み込みが、前記内因性タンパク質の産生に対して妨害的ではない、請求項7~10のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項14】
前記異種TCRをコードする前記核酸と前記内因性遺伝子をコードする前記核酸との間の融合配列、好ましくは前記異種TCRをコードする前記核酸と前記内因性タンパク質をコードする前記核酸との間の融合遺伝子もしくは配列、またはマルチシストロニック融合遺伝子もしくは配列を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項15】
前記異種TCRをコードする前記核酸が、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列によって、前記内因性タンパク質をコードする核酸に接続されている、請求項14に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項16】
前記異種TCRをコードする前記核酸が、場合によっては酵素による切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列を含む、TCRα及びTCRβ鎖のコード配列を含む、請求項14または15に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項17】
リボソームスキッピングを媒介する前記核酸配列が、T2AまたはP2Aスキップ配列である、請求項15または16に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項18】
酵素による切断部位を含むペプチドをコードする前記核酸配列が、フーリン切断部位、好ましくはRAKRをコードする、請求項15~17のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項19】
前記異種TCR及び前記内因性タンパク質の転写及び発現が、同じプロモーターからのものである、請求項9~18のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項20】
前記異種TCRが、場合によっては酵素による切断部位、好ましくはフーリン切断部位、好ましくはRAKR、及び/またはリボソームスキップ配列、好ましくはT2AまたはP2Aスキップ配列を含むペプチドによって接続された、前記内因性タンパク質との融合タンパク質として発現する、請求項9~19のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項21】
前記異種TCRが、好ましくは前記細胞表面で発現及び/または提示される、TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含む新生異種TCRとして前記細胞において発現及び/または提示される、請求項1~20のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項22】
前記内因性タンパク質が、場合によっては分泌経路を介して、前記細胞表面に及び/または細胞膜に輸送されるタンパク質である、請求項9~21のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項23】
前記内因性タンパク質が、膜タンパク質または膜貫通タンパク質、場合によっては受容体タンパク質、好ましくは受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、好ましくはCD45またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプC、すなわちPTPRCである、請求項3~22のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項24】
前記遺伝子座が、膜タンパク質または膜貫通タンパク質、場合によっては受容体タンパク質、好ましくは受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、好ましくはCD45またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプC、すなわちPTPRCをコードする遺伝子であるか、またはその中に存在する、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項25】
前記遺伝子座が、1番染色体上の前記PTPRC(CD45)遺伝子であるか、またはその中に存在する、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項26】
前記組み込みが、前記PTPRC(CD45)遺伝子のエクソン33に、場合によっては、TAG終止コドンの前に、または前記TAG終止コドンの真隣及び/または直前に存在する、請求項25に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項27】
前記融合遺伝子もしくは配列、またはマルチシストロニック融合遺伝子もしくは配列が、前記異種TCRをコードする前記核酸と、PTPRCをコードする核酸、酵素による切断部位、好ましくはフーリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び好ましくはT2AまたはP2Aスキップ配列から選択されるリボソームスキッピングを媒介する核酸配列を含み、前記異種TCRをコードする前記核酸配列が、酵素による切断部位、好ましくはフーリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び好ましくはT2AまたはP2Aスキップ配列から選択されるリボソームスキッピングを媒介する核酸配列を含む、TCRα及びTCRβ鎖のコード配列を含む、請求項14~26のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項28】
前記異種TCRが、以下から選択される抗原もしくはそのペプチド抗原に結合するか、または特異的に結合する、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞:
(a)がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原、または
(b)がん状態に関連する、及び/または腫瘍またはがん細胞もしくは組織によって提示される、がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原。
【請求項29】
前記がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原が、以下から選択される、請求項28に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞:
(a)がん-精巣抗原、
(b)MAGE抗原、
(c)MAGE A4もしくはそのペプチド抗原、場合によっては、配列GVYDGREHTV(配列番号2)を含むペプチド抗原、または
(d)AFPもしくはそのペプチド抗原、場合によっては、配列FMNKFIYEI(配列番号21)を含むペプチド抗原。
【請求項30】
前記がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原が、ペプチド提示分子、場合によっては主要組織適合複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)、場合によってはクラスIまたはクラスII、場合によってはHLA-A2またはHLA-A
*02、またはHLA-A
*0201と複合体を形成する、請求項28または29に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項31】
前記異種TCRが、以下を有するTCRを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞:
(a)配列番号9、もしくは配列番号6のアミノ酸残基1~136の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルファ鎖可変ドメイン、及び/または配列番号10、もしくは配列番号7のアミノ酸残基1~133の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むベータ鎖可変ドメイン、または
(b)配列番号22のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルファ鎖可変ドメイン、及び/または配列番号23のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むベータ鎖可変ドメイン。
【請求項32】
前記iPSCまたは造血系細胞が、異種共受容体をコードする核酸を更に含み、及び/または異種共受容体を発現もしくは提示し、場合によっては、前記共受容体が、CD8共受容体である、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項33】
前記異種CD8共受容体が、ヘテロ二量体またはホモ二量体、CD8αbヘテロ二量体またはCD8ααホモ二量体である、請求項32に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項34】
前記異種CD8共受容体が、以下を含む、請求項32または33に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞:
(a)アミノ酸配列VLLSNPTSG、配列番号17に対して少なくとも80%の配列同一性のCDR1、アミノ酸配列YLSQNKPK、配列番号18に対して少なくとも80%の配列同一性のCDR2、及びアミノ酸配列LSNSIM、配列番号19に対して少なくとも80%の配列同一性のCDR3、または
(b)配列番号19のアミノ酸番号22~235に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項35】
前記iPSCまたは造血系細胞が、異種共刺激リガンド、場合によっては4-1BBLもしくはCD80をコードする核酸を更に含む、及び/または異種共刺激リガンド、場合によっては4-1BBLもしくはCD80を発現もしくは提示する、先行請求項のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞。
【請求項36】
前記がん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原、または請求項28~30のいずれか1項に記載の前記がん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原を発現もしくは提示しているがん及び/または腫瘍細胞もしくは組織への、前記iPSCまたは造血系細胞及び/または異種TCRの前記結合が、場合によっては、以下のうちのいずれか1つ以上によって決定される、前記iPSCまたは造血系細胞の活性化を人工する、請求項1~35のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞:
(a)T細胞活性化マーカー、例えばCD3+細胞上のCD69及び/またはCD25のいずれかのアップレギュレーション、
(b)サイトカイン産生のアップレギュレーション、例えばIFNガンマ、IL-2または、グランザイムBのいずれか1つ以上、
(c)前記抗原もしくは抗原ペプチドの存在下での細胞毒性活性の誘導、または
(d)前記抗原もしくは抗原ペプチドを提示する腫瘍細胞を死滅させる能力。
【請求項37】
先行請求項のいずれか1項に記載の異種TCRをコードする核酸領域と、前記異種TCRをコードする前記核酸領域の組み込みのための、前記細胞ゲノムにおける前記遺伝子座の核酸領域に相同な核酸領域を含む少なくとも1つの相同領域と、を含む、核酸構築物またはベクター。
【請求項38】
前記遺伝子座が、膜タンパク質または膜貫通タンパク質、場合によっては受容体タンパク質、好ましくは受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、好ましくはCD45またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプC、すなわちPTPRCをコードする遺伝子であるか、またはその中に存在する、請求項37に記載の核酸構築物またはベクター。
【請求項39】
前記遺伝子座が、1番染色体上の前記PTPRC(CD45)遺伝子であるかまたはその中に存在する、請求項37または38に記載の核酸構築物またはベクター。
【請求項40】
前記遺伝子座が、前記PTPRC(CD45)遺伝子のエクソン33に、場合によっては、TAG終止コドンの前に、または前記TAG終止コドンの真隣及び/または直前に存在する、請求項37~39のいずれか1項に記載の核酸構築物またはベクター。
【請求項41】
前記異種TCRをコードする前記核酸が、場合によっては、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列、好ましくはフーリン切断部位、好ましくはRAKR及び/またはリボソームスキップ配列、好ましくはT2AまたはP2Aスキップ配列を含む、TCRα及びTCRβ鎖のコード配列を含む、請求項37~40のいずれか1項に記載の核酸構築物またはベクター。
【請求項42】
前記構築物またはベクターが、前記異種TCRをコードする前記核酸領域の組み込みのための、前記細胞ゲノムにおける前記遺伝子座の核酸領域に各々相同であり、かつ前記組み込み部位の反対側に隣接する、左手及び右手相同領域を含む、請求項37~41のいずれか1項に記載の核酸構築物またはベクター。
【請求項43】
前記構築物またはベクターが、以下のうちのいずれか1つ以上を更に含む、請求項37~42のいずれか1項に記載の核酸構築物またはベクター:
(a)組換え標的配列、好ましくはloxP(X-over P1の遺伝子座)配列、
(b)発現可能な選択マーカー配列、好ましくはプロモーター、例えばEF1Aプロモーターから構成的に発現する、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、及び場合によってはネオマイシン耐性遺伝子。
【請求項44】
前記構築物またはベクターが、配列番号45の配列を含む前記異種TCRをコードするヌクレオチド配列と、配列番号43及び配列番号44の配列を含む相同領域と、配列番号48を含む組換え標的配列と、配列番号47及び配列番号49を含む発現可能な選択マーカー配列と、を含む、請求項37~43のいずれか1項に記載の核酸構築物またはベクター。
【請求項45】
請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を産生するプロセスであって、異種T細胞受容体(TCR)をコードする前記核酸配列を前記細胞ゲノムにおける前記遺伝子座にまたはその中に組み込むことを可能にする条件下で、請求項37~44のいずれか1項に記載の核酸構築物またはベクターを、場合によっては請求項5に定義される改変されていない人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞に導入し、場合によっては、前記改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を単離することを含む、前記プロセス。
【請求項46】
請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項47】
療法及び/または医学における使用のための、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または請求項46に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
個体または対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、防止、またはその進行の遅延における使用のための、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または請求項46に記載の薬学的組成物であって、場合によっては、前記治療が、がん免疫療法及び/または養子T細胞療法、場合によっては、同種異系養子T細胞療法である、前記改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または前記薬学的組成物。
【請求項49】
個体または対象におけるがん及び/または腫瘍の前記治療のための医薬品の製造における、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または請求項46に記載の薬学的組成物の使用であって、場合によっては、前記治療が、がん免疫療法及び/または養子T細胞療法、場合によっては、同種異系養子T細胞療法である、前記使用。
【請求項50】
個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療、防止、またはその進行を遅延させる方法であって、前記個体に、請求項1~34のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または請求項44に記載の薬学的組成物を投与することを含み、場合によっては、前記治療が、がん免疫療法及び/または養子T細胞療法、場合によっては、同種異系養子T細胞療法である、前記方法。
【請求項51】
前記がん及び/または腫瘍が、固形腫瘍である、請求項47~49のいずれか1項に記載の使用のための、または請求項50に記載の方法における使用のための、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または請求項46に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または前記薬学的組成物が、1つ以上の更なる治療剤と組み合わせて使用するためのものであるか、もしくはそのように使用されるか、場合によっては、別々に、順次、もしくは同時に投与されるか、もしくはそのような投与のためのものである、請求項47~49のいずれか1項に記載の使用のための、または請求項50に記載の方法における使用のための、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または請求項46に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
以下を含む、キット:
(a)個体もしくは対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、防止、もしくはその進行を遅延させるための、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、もしくは請求項46に記載の薬学的組成物と、それらの使用説明書を含む添付文書、または
(b)個体もしくは対象におけるがん及び/または腫瘍を治療、防止、もしくはその進行を遅延させるための、場合によっては別々に、順次、もしくは同時に投与されるか、もしくは投与するための1つ以上の更なる治療剤と組み合わせられた、請求項1~36のいずれか1項に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、もしくは請求項46に記載の薬学的組成物と、それらの使用説明書を含む添付文書。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、細胞ゲノムに組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞、及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
養子T細胞療法は、がん治療のための重要な療法的介入として広く認識されている。ほとんどの現行のアプローチは、自己または患者由来のT細胞を使用する。これらとしては、CAR(キメラ抗原受容体)または親和性が向上されたTCR(T細胞受容体)を発現するようにウイルス形質導入された、TIL(腫瘍浸潤リンパ球)またはT細胞が挙げられる。
【0003】
自己療法の1つの欠点は、それらの製造に関連する複雑さである。代替的な「既製の」アプローチは、健康なドナー由来のT細胞またはヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)から分化させたT細胞などの、同種異系源からの操作されたT細胞の産生である。加えて、患者は、アフェレシススロットが自身のリンパ球を収集し、T細胞製品が作製される作製時間の間待つ必要があり、加えて、患者はまた、最初から製造に利用可能な細胞の数及び機能性が低いので、T細胞機能不全を罹患し得るか、または以前の化学療法を数回受ける場合があり、自身のリンパ球数及び機能が損なわれる。
【0004】
同種異系アプローチは、改善された応答に関連する、より機能的かつ強力な抗がん能力と関連するT細胞表現型についてスクリーニングすることができる均一な細胞産生物のより容易に入手可能な供給を提供し得るので、特に有利である。要するに、患者ごとに変動することのない、より定義されたT細胞表現型によって、患者は、より早く治療を受けることになる。遺伝子編集は、最も侵襲的かつ耐性の高い疾患を有する非常に広範な患者群に、低減されたコストで、標準化された高品質のT細胞産生物としてのT細胞療法への迅速なアクセスを提供することができると予想される。
【0005】
本発明は、定義された腫瘍抗原特異性の組換え異種T細胞受容体(TCR)、SPEAR TCR(親和性が向上された特定のペプチド受容体(Specific Peptide Enhanced Affinity Receptor))を発現する同種異系hiPSC由来のT細胞(iT細胞)を提供する。
【0006】
αβTCRを使用する任意の同種異系T細胞産生物の前提条件は、クローンT細胞集団の産生である。これは、移植片対宿主病(GvHD)のリスクを軽減するために必要である。定義されたαβTCRの発現が制限されたiT細胞は、特定のTCRをコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたhiPSCのクローンから成功裏に産生されている[Minagawa,A.,et al.,Enhancing T Cell Receptor Stability in Rejuvenated iPSC-Derived T Cells Improves Their Use in Cancer Immunotherapy.Cell Stem Cell,2018.23(6):p.850-858 e4]。関連する研究では、分化したiT細胞におけるαβTCR発現の制限は、TCR対立遺伝子の排除によって駆動され、これは、内因性TCR遺伝子の誤った再編成を防止することが示唆されている。しかしながら、プロモーターサイレンシングの現象に起因して、レンチウイルス形質導入は、hiPSC及び分化した細胞における安定な導入遺伝子発現を促進するには非効率的な方法である[Zou,J.,et al.,Oxidase-deficient neutrophils from X-linked chronic granulomatous disease iPS cells:functional correction by zinc finger nuclease-mediated safe harbor targeting.Blood,2011.117(21):p.5561-72]。加えて、T細胞を発現する組換え異種T細胞受容体に由来するTiPSCの開発は、初期T細胞材料に存在する天然TCRの発現を防止するための追加の介入を必要とするであろう。
【0007】
代替的なアプローチは、分化したiT細胞における内因性TCR発現を防止するように、hiPSCを遺伝子操作することである。これは、両方の対立遺伝子における複数の遺伝子、例えば、TCR定常ドメイン(TRBC1/2及びTRAC)、または異種T細胞受容体ノックインと併せてTCR遺伝子再編成に関与する可能性のある遺伝子(例えば、RAG1/2)の不活性化を必要とするので、困難なアプローチである。しかしながら、分化したiT細胞においてTCR発現を可能にするためにどの遺伝子座を標的とするかを確認することは、困難かつ予測不可能である。本明細書では、標的とされる組換え異種T細胞受容体配列の挿入によって、分化したiT細胞においてその発現を可能にする最小限の編集戦略に基づくデータを提示する。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞であって、細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。
【0009】
本発明によれば、異種TCRをコードする少なくとも1つの異種核酸配列は、発現可能な異種核酸配列であり得る。例えば、核酸配列は、コード遺伝子もしくは複数の遺伝子の発現を可能にする及び/または調節することが可能な1つ以上のコードオープンリーディングフレーム及び/または1つ以上の調節核酸配列、または細胞内の1つ以上のコードオープンリーディング、例えば、コードされた配列もしくは遺伝子の転写及び/または転写後修飾及び/または翻訳を可能にする配列を有し得る。好適な調節配列は、転写もしくは翻訳の開始配列、終止配列、または終結配列、オペレーター配列、プロモーター配列、エンハンサー配列、末端反復、リボソーム結合部位、キャップ配列、ポリAテール配列のうちのいずれかを含み得る。
【0010】
好ましくは、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、好ましくは細胞表面に発現または提示される異種TCRコード配列によってコードされる少なくとも1つの異種TCRを発現または提示する。好ましくは、少なくとも1つの異種TCRは、膜結合機能性TCR、好ましくは膜固定ヘテロ二量体TCRタンパク質、好ましくは可変アルファ(α)及びベータ(β)鎖を含み、好ましくはインバリアントCD3鎖分子との複合体として発現される好ましくはアルファ;ベータTCR(場合によってはガンマ:デルタ)として、細胞表面に提示される。好ましくは、少なくとも1つの異種TCRは、がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド、及び/または腫瘍及び/またはがん細胞(例えば、がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチドを発現する)、及び/またはそれらからのペプチドもしくは抗原ペプチドに結合するか、または特異的に結合することが可能である。好ましくは、TCRの結合は、本明細書に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞の活性化、及び/または本明細書に記載のT細胞活性の活性化を促進する。
【0011】
本発明によれば、改変された造血系細胞は、改変された人工多能性幹細胞iPSCに由来し得る。例えば、改変されていない人工多能性幹細胞iPSCは、細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含むように、例えば、改変された人工多能性幹細胞を産生し、次いでそれを改変された造血系細胞に分化させることができるように、改変または操作、例えば、組換え操作され得る。あるいは、改変されていない造血系細胞は、例えば分化プロセスによって、改変されていない人工多能性幹細胞iPSCから誘導され得、次いで、細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含むように改変または操作され得る。
【0012】
本発明によれば、人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞は、以下のうちのいずれか1つから選択され得る:
(a)場合によっては、中胚葉マーカー、ブラキュリ、グーセコイド、Mixl1、KDR(FLK1またはVEGFR2としても知られる)、FoxA2、GATA6またはPDGFアルファRのうちのいずれか1つ以上を発現し得る、中胚葉細胞、
(b)場合によっては、(a)CD34+、または(b)CD34+CD73-、または(c)CD34+CD73-CXCR4-(CD184-)であり得る、造血内皮細胞、
(c)場合によっては、(a)CD34+または(b)CD34+CD45+または(c)CD117+、CD133+、CD45+、FLK+、CD38-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD34+及び/またはCD45+、(d)CD34+、CD133+、CD45+、FLK1+、CD38-であり得る、造血前駆細胞、
(d)場合によっては、(a)CD5+及び/またはCD7+、または(b)CD44+、CD25+、CD2+、CD45+、CD3-、CD4-、CD8-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD5+及び/またはCD7+であり得る、前駆T細胞、
(e)二重陽性T細胞(DP T細胞)、場合によっては(a)CD4+CD8+(b)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+CD8+、
(f)場合によっては、(a)CD4+、(b)CD8+、(c)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+、またはCD8+であり得る、単独陽性T細胞(SP T細胞)、
(g)成熟T細胞、場合によっては、アルファベータT細胞、ガンマデルタT細胞、NKT細胞、CD4+であるTヘルパー細胞(TH)、CD8+である細胞傷害性T細胞(TC)、あるいは
(h)人工多能性幹細胞iPSC、場合によっては、CD34+前駆細胞から誘導または作製されたヒト人工多能性幹細胞iPSC、場合によっては臍帯血から単離された、更に場合によってはpEB-C5及びpEB-TGエピソームプラスミドを使用した、ヒト人工多能性幹細胞iPSC。
【0013】
したがって、人工多能性幹細胞iPSCは、好ましくはCD34+前駆細胞から誘導または作製され、場合によっては好ましくは臍帯血から単離され、更に場合によってはpEB-C5及び/またはpEB-TGエピソームプラスミドを使用して単離された、人工多能性幹細胞及び/またはヒト人工多能性幹細胞iPSCである。
【0014】
本発明の実施形態では、iPSCは、例えば、RAG1遺伝子の不活性化またはノックアウトによって、RAG1発現を低減または排除するように改変され得る。
【0015】
改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、及び胚性幹細胞を含むそれらの前駆体を含む、リンパ系の細胞、ならびに多能性幹細胞(例えば、それからリンパ球が分化され得るもの)であり得る。T細胞は、胸腺で成熟し、細胞媒介性免疫を主に担い、また適応免疫系に関与するリンパ球であり得る。本発明によれば、T細胞としては、限定されないが、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞(または幹細胞様メモリーT細胞)、及び2つのタイプのエフェクターメモリーT細胞:例えば、TEM細胞及びTEMRA細胞を含む)、制御性T細胞(サプレッサーT細胞としても知られる)、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞、ならびにガンマ-デルタT細胞を挙げることができる。細胞傷害性T細胞(CTLまたはキラーT細胞)は、感染した体細胞または腫瘍細胞の死を誘導することが可能なTリンパ球のサブセットである。好ましくは、T細胞は、場合によっては、CD4+T細胞もしくはCD8+T細胞もしくはそのようなT細胞の集団、場合によっては、CD4+T細胞;またはCD8+T細胞、もしくはCD4+T細胞及びCD8+T細胞の混合集団である。
【0016】
本発明によれば、異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞ゲノムにおける、すなわち、人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞のゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれる。遺伝子座は、例えば、特定の遺伝子または遺伝子マーカーが位置する染色体上の特定の及び/または固定された位置であり得、遺伝子もしくは遺伝子マーカーもしくは遺伝子要素の特定の及び/または固定された位置、及び/または遺伝子もしくは例えば、遺伝子のイントロンもしくはエクソン、または遺伝子の調節エレメント(例えば、転写もしくは翻訳の開始配列、終止配列、または終結配列、オペレーター配列、プロモーター配列、エンハンサー配列、末端反復、リボソーム結合部位、キャップ配列、ポリAテール配列)などの遺伝子の遺伝子要素の、内の特定の固定された位置であり得る。
【0017】
本発明によれば、異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞ゲノムにおける遺伝子座の1つまたは両方の対立遺伝子にまたはその中に組み込まれ得る。例えば、遺伝子座が、遺伝子もしくは内因性遺伝子、または染色体上の特定の位置及び/または固定された位置、及び/または人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞の特定の遺伝子もしくは内因性遺伝子が位置する位置である場合、異種TCRをコードする異種核酸配列は、遺伝子座のいずれか1つまたは両方の対立遺伝子に組み込まれ得る。
【0018】
したがって、遺伝子座は、遺伝子であり得るか、または細胞、もしくは人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子内に存在する。
【0019】
本発明によれば、異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞、または人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子に隣接して、またはその中に組み込まれ得る。場合によっては、異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞、または人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子または核酸配列のイントロンまたはエクソン内、場合によっては5’エクソンまたは3’エクソン、好ましくは3’エクソン内に組み込まれ得る。
【0020】
本発明によれば、異種TCRをコードする異種核酸配列は、内因性タンパク質をコードする遺伝子のTAG終止配列の前の3’エクソン内に組み込まれ得る。好ましくは、異種TCRをコードする異種核酸配列の組み込みは、内因性タンパク質の産生に対して妨害的ではない。例えば、改変された細胞による内因性タンパク質の産生は、天然タンパク質と同等に翻訳及び/または産生及び/またはプロセシングされ得る内因性タンパク質配列の全てまたは実質的に全てを提供するべきである。例えば、内因性タンパク質をコードする遺伝子は、依然として転写及び/または転写後プロセシング及び/または翻訳が可能であり得、内因性タンパク質配列または内因性タンパク質配列の実質的に全てを産生し、これらは、場合によっては、細胞において翻訳後プロセシング及び/または輸送され得る。好ましくは、異種TCRをコードする異種核酸配列の組み込みは、内因性タンパク質をコードする遺伝子の欠失もしくは置換、及び/または産生される内因性タンパク質の欠失及び/または不活性化を生じず、場合によっては、融合遺伝子の結果物及び/または遺伝子産生物が、融合タンパク質として産生されるように、異種TCRをコードする異種核酸配列と、内因性タンパク質をコードする核酸配列または遺伝子との連結を生じ得る。
【0021】
本発明によれば、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、例えば、異種TCRをコードする核酸の組み込みによって生成される、異種TCRをコードする核酸と内因性タンパク質をコードする核酸との間の融合配列、例えば、異種TCRをコードする核酸と内因性タンパク質をコードする核酸との間の融合遺伝子もしくは配列またはマルチシストロニック融合遺伝子もしくは配列を含み得、例えば、異種TCRの発現が、内因性タンパク質の発現に関連し、及び/または異種TCRが、遺伝子座における遺伝子の遺伝子産生物、例えば、内因性遺伝子をコードする核酸と同時転写及び/または同時翻訳及び/または同時発現し得る。
【0022】
したがって、本発明は、異種TCRをコードする核酸が、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列によって、内因性タンパク質をコードする核酸に接続され得る、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。
【0023】
したがって、本発明は、異種TCRをコードする核酸が、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする少なくとも1つ、場合によっては2つの核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する少なくとも1つ、場合によっては2つの核酸配列によって、内因性タンパク質をコードする核酸に接続され得る、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。リボソームスキッピングを媒介する核酸配列は、T2A及び/またはP2Aスキップ配列のいずれかであり得る。酵素による切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列は、フーリン切断部位をコードし得、コードされるフーリン部位の配列は、好ましくはRAKRであり得る。
【0024】
本発明によれば、異種TCRをコードする核酸は、場合によっては、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする少なくとも1つ、場合によっては2つの介在核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する少なくとも1つ、場合によっては2つの核酸配列を含む、TCRα及び/またはTCRβ鎖のコード配列を含み得る。リボソームスキッピングを媒介する核酸配列は、T2A及び/またはP2Aスキップ配列のいずれかであり得る。酵素による切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列は、フーリン切断部位をコードし得、コードされるフーリン部位の配列は、好ましくはRAKRであり得る。
【0025】
したがって、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞の異種TCR及び内因性タンパク質の転写及び/または発現は、同じプロモーターからのものであり得る。したがって、異種TCRをコードする異種核酸配列及び内因性タンパク質をコードする核酸配列または遺伝子は、本明細書で言及される転写及び/または転写後修飾、または同時転写修飾及び/または翻訳の調節配列のための同じ調節配列を共有し得る。転写後修飾または同時転写は、成熟した機能的RNA分子を産生するための転写後のRNA一次転写産生物のプロセシングを含み得、及び/または、mRNAプロセシング、及び/または5’プロセシング、及び/またはキャッピング、及び/または3’プロセシング、及び/または切断及びポリアデニル化、及び/またはイントロンスプライシング、及び/またはヒストンmRNAプロセシングのうちのいずれかを含み得る。
【0026】
本発明は、異種TCRが、場合によっては、酵素による切断部位、好ましくはフーリン切断部位、好ましくはRAKR及び/またはリボソームスキップ配列、好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列を含むペプチドによって接続される、内因性タンパク質との融合タンパク質として発現される、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。
【0027】
したがって、融合タンパク質は、場合によっては、酵素による切断部位もしくはフーリン切断部位の切断、及び/または場合によっては細胞の小胞体内で実施されるスキップ配列ペプチドの除去によって、新生、遊離、または天然の異種TCRを放出するように細胞においてプロセシングされ得る。
【0028】
本発明は、好ましくは細胞表面で発現及び/または提示される、TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含む新生異種TCRとして、異種TCRが細胞において発現及び/または提示される、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。新生タンパク質は、融合タンパク質から分離され得、それによって、例えば、細胞内での翻訳後プロセシング中に内因性タンパク質から分離され得、そのようなタンパク質は、細胞小胞体またはゴルジに存在し、次いで、がんもしくは腫瘍抗原もしくはそのペプチドに、及び/または腫瘍及び/またはがん細胞及び/または腫瘍及び/またはがん組織及び/またはそれらからのペプチドもしくは抗原ペプチドに結合するか、または特異的に結合すること、及び/または本明細書に記載の改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞の活性化を促進すること、及び/または本明細書に記載のT細胞活性を活性化することが場合によっては可能な、膜結合機能的TCR、好ましくは膜固定ヘテロ二量体TCRタンパク質、好ましくはアルファ;ベータTCRとして、場合によっては輸送され、及び/または細胞表面に提示される。
【0029】
本発明によれば、内因性タンパク質は、場合によっては分泌経路を介して細胞表面に、及び/または細胞の細胞膜に、輸送されるタンパク質であり得る。好ましくは、内因性タンパク質は、膜タンパク質及び/または膜貫通タンパク質、場合によっては受容体タンパク質、好ましくは受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、好ましくはCD45またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプC、すなわちPTPRCである。
【0030】
本発明によれば、異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列は、細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれ得、遺伝子座が、膜タンパク質もしくは膜貫通タンパク質、場合によっては受容体タンパク質、好ましくは受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、好ましくはCD45またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプC型すなわちPTPRCをコードする遺伝子であるか、またはその中に存在する。好ましくは、遺伝子座は、1番染色体上のPTPRC(CD45)遺伝子であるか、はその中に存在する。
【0031】
本発明によれば、異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列は、細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込まれ得、遺伝子座または組み込み部位が、PTPRC(CD45)遺伝子のエクソン33に、好ましくは、1番染色体上のPTPRC(CD45)遺伝子に、場合によっては、TAG終止コドンの前に、またはTAG終止コドンの真隣及び/または直前に存在する。
【0032】
本発明は、融合遺伝子もしくは配列、またはマルチシストロニック融合遺伝子もしくは配列が、異種TCRをコードする核酸と、酵素による切断部位、好ましくはフーリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び/または、好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列から選択される、リボソームスキッピングを媒介する核酸配列を含むPTPRCをコードする核酸と、を含み、異種TCRをコードする核酸配列が、好ましくは酵素による切断部位、好ましくはフーリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び/または好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列から選択される、リボソームスキッピングを媒介する核酸配列を含む、TCRα及びTCRβ鎖のコード配列を含む、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。
【0033】
TCR結合
本発明によれば、異種TCRは、以下のうちのいずれかである抗原またはペプチド抗原に結合し得るか、または特異的に結合し得る:
(a)がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原、または
(b)がん状態に関連する、及び/または腫瘍またはがん細胞もしくは組織によって提示されるがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原。
【0034】
本発明によれば、異種TCRは、場合によっては、がん及び/または腫瘍によって、及び/またはペプチド提示分子、例えば、主要組織適合複合体(MHC)またはHLAとの複合体において提示されるか、あるいは(例えば、内因性に発現されるがん及び/または腫瘍細胞表面抗原またはペプチド抗原として)ペプチド提示分子を含まずに提示される、抗原またはそのペプチド抗原に、例えば、がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に、結合し得るか、または特異的及び/または選択的に結合し得る。がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原は、正常な細胞または組織よりも高いレベル、好ましくは顕著に高いレベル、例えば、10、100、1000、1000、10,000、100,000、1000,000倍超高いレベルで、がん及び/または腫瘍細胞もしくは組織によって発現される抗原またはそのペプチド抗原であり得、好ましくは、抗原またはそのペプチド抗原は、正常な細胞または組織によって発現されない。がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原は、がん-精巣抗原、NY-ESO-1、MART-1(T細胞によって認識される黒色腫抗原)、WT1(Wilms腫瘍1)、gp100(糖タンパク質100)、チロシナーゼ、PRAME(黒色腫で優先的に発現される抗原)、p53、HPV-E6/HPV-E7(ヒトパピローマウイルス)、HBV、TRAIL、DR4、チログロビン、TGFBIIフレームシフト抗原、LAGE-1A、KRAS、CMV(サイトメガロウイルス)、CEA(がん胎児性抗原)、AFP(α-フェトプロテイン)、MAGE、黒色腫関連抗原もしくはMAGEA遺伝子ファミリーのメンバー、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A8、及びMAGE-A9、MAGE-A10、もしくはMAGE-A12、またはそれらのペプチド抗原のうちのいずれかであり得る。
【0035】
本発明によれば、TCRは、MAGE A4またはその抗原ペプチド、例えば、配列番号1のヒトMAGE A4もしくはMAGE A4、またはその抗原ペプチドに結合し得る。TCRは、配列番号2、GVYDGREHTVを含むMAGE A4の抗原ペプチドに結合し得る。あるいは、TCRは、アルファフェトプロテイン(AFP)、またはその抗原ペプチド、例えば、配列番号20のアルファフェトプロテイン(AFP)もしくはAFPのペプチド抗原、またはFMNKFIYEI(配列番号21)を含むAFPのペプチド抗原、またはアルファフェトプロテイン(AFP)配列番号20に由来する残基158~166に結合し得る。
【0036】
TCRは、以下を含むAFP抗原ペプチドに結合し得る:
(a)配列番号20の残基158~166(AFP158)、
(b)配列番号20の残基137~145(AFP137)、
(c)配列番号20の残基325~334(AFP325)、
(d)配列番号20の残基542~550(AFP542)、または
(e)残基FMNKFIYEI(配列番号21)。
【0037】
特異的結合TCR
本発明によれば、異種TCRは、抗原またはそのペプチド抗原、場合によっては、がん性状態に関連する、例えば、本明細書に記載の、及び/または腫瘍もしくはがん細胞もしくは組織によって提示される、がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合し得るか、または特異的に結合し得る。
【0038】
特異性は、異種TCRと特異的標的がん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原との間の結合の強度を表し、受容体-リガンド系の結合状態と非結合状態との間の比である解離定数Kdによって説明され得る。加えて、異種TCRが結合することができる異なるがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原が少ないほど、その結合特異性は高い。
【0039】
本発明によれば、異種TCRは、10、9、8、7、6、5、4、3、2つ未満の異なるがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合し得る。
【0040】
本発明によれば、異種TCRは、抗原またはそのペプチド抗原、例えば、がん及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原、例えば、配列番号1のMAGE A4、配列番号2を含むMAGE A4の抗原ペプチド、配列番号20のアルファフェトプロテイン(AFP)、または、AFPのペプチド抗原、またはFMNKFIYEI(配列番号21)を含むAFPのペプチド抗原に、場合によっては表面プラズモン共鳴で、場合によっては25℃で、場合によっては6.5~6.9または7.0~7.5のpHで測定して、0.01μM~100μM、0.01μM~50μM、0.01μM~20μM、0.05μΜ~20μΜ、または0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1μΜ、0.15μΜ、0.2μΜ、0.25μΜ、0.3μΜ、0.35μΜ、0.4μΜ、0.45μΜ、0.5μΜ、0.55μΜ、0.6μΜ、0.65μΜ、0.7μΜ、0.75μΜ、0.8μΜ、0.85μΜ、0.9μΜ、0.95μΜ、1.0μΜ、1.5μΜ、2.0μΜ、2.5μΜ、3.0μΜ、3.5μΜ、4.0μΜ、4.5μΜ、5.0μΜ、5.5μΜ、6.0μΜ、6.5μΜ、7.0μΜ、7.5μΜ、8.0μΜ、8.5μΜ、9.0μΜ、9.5μΜ、10.0μΜ、または10μΜ~1000μΜ、10μM~500μΜ、50μΜ~500μΜまたは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μΜ、150μΜ、200μΜ、250μΜ、300μΜ、350μΜ、400μΜ、450μΜ、500μΜの解離定数で結合し得る。解離定数、KDまたはkoff/konは、解離速度定数koff、及び会合速度定数konを実験によって測定することによって決定され得る。TCR解離定数は、TCRが、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含む、TCRの可溶性形態を使用して測定され得る。
【0041】
本発明によれば、異種T細胞受容体(TCR)、及び/または異種T細胞受容体(TCR)を含む改変された細胞は、ペプチド提示分子、例えば、主要組織適合複合体(MHC)またはHLA、場合によってはクラスIまたはII、例えばHLA-A2、またはHLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:642、もしくはHLA-A*02:07から選択されるもの、好ましくはHLA-A*02:01もしくはHLA-A*02:642との複合体の、またはそれらによって提示される、抗原またはそのペプチド抗原、例えば、本明細書に記載のがん及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原に、例えば、本明細書に上述の、好ましくは50μΜ、100μΜ、200μΜ、500μΜなどの0.01μΜ~100μΜ、好ましくは0.05μΜ~20.0μΜの解離定数で特異的に、及び/または高い親和性で、及び/または選択的に結合し得る。
【0042】
本発明によれば、異種T細胞受容体(TCR)、及び/または異種T細胞受容体(TCR)を含む改変された細胞は、場合によってはHLA*02、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:06、HLA-A*02:642、またはHLA-A*02:07から選択されるHLA-A*02、好ましくはHLA-A*02:01またはHLA-A*02との複合体の、MAGE A4(配列番号1)、そのペプチド抗原、または配列番号2GVYDGREHTVを含むその抗原ペプチドに、例えば、本明細書に上述の、好ましくは50μΜ、100μΜ、200μΜ、500μΜなどの0.01μΜ~100μΜ、好ましくは0.05μΜ~20.0μΜの解離定数で特異的に、及び/または高い親和性で、及び/または選択的に結合し得る。
【0043】
本発明によれば、異種T細胞受容体(TCR)、及び/または異種T細胞受容体(TCR)を含む改変された細胞は、場合によっては、HLA-A2、またはHLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:642、もしくはHLA-A*02:07から選択される任意のHLA、好ましくはHLA-A*02:01もしくはHLA-A*02:642との複合体の、AFP(配列番号20)、そのペプチド抗原、または配列FMNKFIYEI(配列番号21)を含むペプチド抗原に、例えば、本明細書に上述の、好ましくは50μΜ、100μΜ、200μΜ、500μΜなどの0.01μΜ~100μΜ、好ましくは0.05μΜ~20.0μΜの解離定数で特異的に、及び/または高い親和性で、及び/または選択的に結合し得る。
【0044】
あるいは、異種T細胞受容体(TCR)、及び異種T細胞受容体(TCR)を含む改変された細胞は、抗原またはそのペプチド抗原に、例えば、内因的に発現されるがん及び/または腫瘍細胞表面抗原またはペプチド抗原(例えば、AFPもしくはMAGE A4、またはその抗原ペプチド)として本明細書に記載の、がん及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原に、例えば、本明細書に上述の、好ましくは、50μΜ、100μΜ、200μΜ、500μΜなどの0.01μΜ~100μΜ、好ましくは0.05μΜ~20.0μΜの解離定数で、結合し得るか、または特異的に及び/または選択的に結合し得、及び/または高い親和性で結合し得、場合によっては、結合が、ペプチド提示分子または抗原提示分子との複合体、例えば、主要組織適合複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)または主要組織適合複合体クラス関連タンパク質(MR)1としての、細胞表面抗原の提示に依存しない。
【0045】
本発明によれば、TCR結合は、密接に関連するがん及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原配列と比較して、場合によってはがん及び/または腫瘍細胞表面上に発現される際に、1つの抗原またはそのペプチド抗原、例えば、本明細書に記載のがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原(例えば、AFPもしくはMAGE A4またはその抗原ペプチド)に特異的であり得る。密接に関連するがん及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原配列は、同様のまたは同一の長さであり得、及び/または同様の数または同一の数のアミノ酸残基を有し得る。密接に関連するペプチド抗原配列は、50または60または70または80~90%の同一性、好ましくは、80~90%の同一性を共有し得、及び/または1、2、3、または4つのアミノ酸残基が異なり得る。例えば、密接に関連するペプチド配列は、配列GVYDGREHTV、配列番号2、またはFMNKFIYEI、配列番号21を含むかまたは有するポリペプチド配列に由来し得る。
【0046】
結合親和性は、平衡方法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))、または動態(例えば、BIACORE(商標)分析)によって決定され得る。アビディティは、例えば、相互作用の価数を考慮して、複数の部位において2つの分子が互いに結合する強度の合計である。本発明によれば、改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、異種TCRを欠く細胞または代替的な異種TCRもしくはCARを有する細胞と比較して、がん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原、またはがん細胞もしくは組織の腫瘍によって提示され、異種TCRによって認識されるがん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原に対する改善された親和性及び/またはアビディティを示し得る。
【0047】
選択的結合は、異種TCRが、別のものと比較して、1つのがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対してより高い親和性で結合することを示す。選択的結合は、異種TCRとの複合体における別のリガンド抗原の1つのリガンド抗原による置き換えについての平衡定数によって示される。
【0048】
異種TCR
本発明によれば、細胞ゲノムにおける遺伝子座に組み込まれた異種TCRをコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、異種T細胞受容体(TCR)を発現し得る。抗原に結合すると、改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、抗原を担持する細胞に対してT細胞エフェクター機能及び/または細胞溶解作用を呈し得、及び/または増殖及び/または細胞分裂を行い得る。ある特定の実施形態では、TCRを含む改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、同じがん及び/または腫瘍抗原及び/またはペプチド(抗原ペプチド)を標的とする形質導入されたTCRまたはキメラ抗原受容体(CAR)のいずれかを含むT細胞と比較して、同等またはより良好な治療効力を呈する。活性化された改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、限定されないが、TNFアルファ、IFNy、及びIL2を含み得る、抗腫瘍サイトカインを分泌し得る。
【0049】
「異種」または「外因性」という用語は、細胞または宿主細胞などの特定の生物学的系にとって外来のものであり、その系において自然に存在せず、人工的または組換え的手段によって系に導入され得るポリペプチドまたは核酸を指す。したがって、異種であるTCRの発現は、それによって、多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞、例えば、T細胞の免疫原性の特異性を変化させ得るので、それらは、がんを有する個体のがん細胞の表面上に存在する、本明細書に記載の1つ以上の腫瘍またはがん抗原及び/またはペプチドを認識し、それらの改善された認識を示す。免疫原性細胞またはT細胞の改変及びその後の増殖は、インビトロ及び/またはエクスビボで実施され得る。
【0050】
TCR構造
好ましくは、異種TCRは、人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞によって、自然に、すなわち改変前に、または内因的に発現しない(すなわち、TCRは外因性または異種である)。異種TCRは、αβTCRヘテロ二量体を含み得る。異種TCRは、組換えまたは合成または人工的TCR、すなわち、自然に存在しないTCRであり得る。例えば、異種TCRは、特定のがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対するその親和性またはアビディティを増加させるように操作され得る(すなわち、親和性が向上されたTCRまたは親和性が向上された特定のペプチド受容体(SPEAR)TCR)。親和性が向上されたTCRまたは(SPEAR)TCRは、自然に存在するTCRと比較して1つ以上の変異、例えば、TCRα及びβ鎖の可変領域の超可変相補性決定領域(CDR)における1つ以上の変異を含み得る。これらの変異は、本明細書に記載のがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対する、または場合によっては、腫瘍及び/またはがん細胞によって発現される場合、本明細書に記載のがん及び/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原を示すMHCに対するTCRの親和性を増加させることができる。親和性が向上されたかまたは成熟したTCRを生成する好適な方法は、ファージまたは酵母ディスプレイを使用するTCR変異体のライブラリーをスクリーニングすることを含み、当該技術分野で周知である(例えば、Robbins et al J Immunol(2008)180(9):6116、San Miguel et al(2015)Cancer Cell 28(3)281-283、Schmitt et al(2013)Blood 122 348-256、Jiang et al(2015)Cancer Discovery 5 901)を参照されたい)。親和性が向上された好ましいTCRは、本明細書に記載のMAGEファミリーの腫瘍抗原、またはAFPもしくはそのペプチド抗原を発現している腫瘍またはがん細胞に結合し得る。
【0051】
MAGEA4/AFP TCR
本発明によれば、異種TCRは、配列番号5のα鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントと、配列番号7のβ鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントと、を含み得る、MAGE A4 TCRであり得る。あるいは、異種TCRは、配列番号22のα鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントと、配列番号23のβ鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントと、を含み得る、AFP TCRであり得る。
【0052】
バリアントは、参照アミノ酸配列に対して(例えば、α鎖参照配列及び/またはβ鎖参照配列のいずれかに関して)少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。TCRは、配列番号6のα鎖参照ヌクレオチド配列もしくはそのバリアント、及び配列番号8のβ鎖参照ヌクレオチド配列もしくはそのバリアント(MAGE A4)、または配列番号24のα鎖参照ヌクレオチド配列もしくはそのバリアント、及び配列番号25のβ鎖参照ヌクレオチド配列(AFP)もしくはそのバリアントによってコードされ得る。バリアントは、参照ヌクレオチド酸配列に対して(例えば、AFPまたはMAGE A4 TCRのα鎖参照配列及び/またはβ鎖参照配列のいずれかに関して)少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド酸配列を有し得る。
【0053】
TCR CDR
本発明によれば、例えば、MAGE A4では、異種TCRは、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含み得、
(i)アルファ鎖可変ドメインが、以下の配列を有するCDRを含み、
VSPFSN(αCDR1)、配列番号11、もしくは配列番号5のアミノ酸48~53、
LTFSEN(αCDR2)、配列番号12、もしくは配列番号5のアミノ酸71~76、及び
CVVSGGTDSWGKLQF(αCDR3)、配列番号13、もしくは配列番号5のアミノ酸111~125、及び/または
(ii)ベータ鎖可変ドメインが、以下の配列を有するCDRを含む
KGHDR(βCDR1)、配列番号14、もしくは配列番号7のアミノ酸46~50、
SFDVKD(βCDR2)、配列番号15、もしくは配列番号7のアミノ酸68~73、及び
CATSGQGAYEEQFF(βCDR3)、配列番号16、もしくは配列番号7のアミノ酸110~123、もしくはそれに対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性、場合によってはそれに対してそれぞれ100%の配列同一性を有する配列。
【0054】
本発明によれば、例えば、AFPでは、異種TCRは、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含み得、
(i)アルファ鎖可変ドメインが、配列を有するCDRを含み、
【化1】
配列番号26、または配列番号22のアミノ酸27~32、またはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、
【化2】
配列番号27、または配列番号22のアミノ酸50~55、またはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、及び
【化3】
配列番号28、または配列番号22のアミノ酸90~101、またはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、ならびに
(ii)ベータ鎖可変ドメインが、以下の配列を有するCDRを含む
【化4】
配列番号29、または配列番号23のアミノ酸27~31、またはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、
【化5】
配列番号30、または配列番号23のアミノ酸49~54、またはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、及び
【化6】
配列番号31、または配列番号23のアミノ酸92~102、またはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列;場合によっては、配列同一性は、それぞれ少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性、場合によっては100%の配列同一性のうちのいずれかであり得る。
【0055】
TCR可変ドメイン
本発明によれば、異種TCRは、アルファ鎖可変ドメインが、配列番号9、もしくは配列番号5のアミノ酸残基1~136の配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/またはベータ鎖可変ドメインが、配列番号10、もしくは配列番号7のアミノ酸残基1~133の配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、96%、97%、98%、または99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCR、例えば、MAGE A4 TCRを含み得る。
【0056】
本発明によれば、異種TCR、例えば、AFP TCRは、アルファ鎖可変ドメインが、配列番号22のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/またはベータ鎖可変ドメインが、配列番号23のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、85%、90%、96%、97%、98%、または99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0057】
MAGE A4&AFP TCR CDR及びフレームワーク
「前駆TCR」または「親TCR」という用語は、本明細書において、配列番号5及び7のMAGE A4 TCRα鎖及びMAGE A4 TCRβ鎖をそれぞれ含むTCR、または配列番号22及び23のAFP TCRα鎖及びAFP TCRβ鎖をそれぞれ含むTCRを指すために使用される。
【0058】
ペプチド-HLA複合体では、前駆TCRと比較して、同等、等価、もしくはより高い親和性を有し、及び/または同等、等価、もしくは前駆TCRよりも遅いオフレートを有する、変異または改変された異種TCRを提供することが望ましい。本発明によれば、異種TCRは、前駆TCRと比較して、アルファ鎖可変ドメイン及び/またはベータ鎖可変ドメインに存在する2つ以上の変異を有し得、「操作されたTCR」または「変異TCR」と示され得る。これらの変異(複数可)は、標的AFPもしくはMAGE A4またはそのペプチド抗原に対する結合親和性及び/または特異性及び/または選択性及び/またはアビディティを改善し得る。ある特定の実施形態では、アルファ鎖可変ドメインに、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8つの変異、例えば4もしくは8つの変異、及び/またはベータ鎖可変ドメインに、1、2、3、4、もしくは5つの変異、例えば5つの変異が存在する。いくつかの実施形態では、本発明のTCRのα鎖可変ドメインは、配列番号9(MAGE A4)のアミノ酸残基または配列番号22(AFP)のアミノ酸1~112の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明のTCRのβ鎖可変ドメインは、配列番号10(MAGE A4)のアミノ酸残基または配列番号23(AFP)のアミノ酸1~112の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0059】
本発明によれば、異種TCR(例えば、MAGE A4 TCR)は、アルファ鎖可変ドメインが、配列番号9、または配列番号5のアミノ酸残基1~136のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1~47、54~70、77~110、及び126~136がそれぞれ、配列番号9のアミノ酸残基1~47、54~70、77~110、及び126~136の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有し、及び/またはアミノ酸残基48~53、71~76、及び111~125、CDR1、CDR2、CDR3がそれぞれ、それぞれ配列番号9のアミノ酸残基48~53、71~76、及び111~125、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0060】
本発明によれば、異種TCRは、アルファ鎖可変ドメインにおいて、以下の配列が、以下のとおりである、TCRを含み得る:
(i)そのアミノ酸残基1~47が、(a)配列番号9のアミノ酸残基1~47の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号9の残基1~47と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(ii)アミノ酸残基48~53が、VSPFSN、CDR1、配列番号11、または配列番号9のアミノ酸48~53であり、
(iii)そのアミノ酸残基54~70が、(a)配列番号9のアミノ酸残基54~70の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号9のアミノ酸残基54~70の配列と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(iv)アミノ酸残基71~76が、LTFSEN、CDR2、配列番号12、または配列番号9のアミノ酸71~76であり得、
(v)そのアミノ酸残基77~110が、配列番号9のアミノ酸残基77~110の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号9のアミノ酸残基77~110の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得、
(vi)アミノ酸111~125が、CVVSGGTDSWGKLQF、CDR3、配列番号13、または配列番号9のアミノ酸111~125であり得、
(vii)そのアミノ酸残基126~136が、配列番号9のアミノ酸残基126~136の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号9のアミノ酸残基126~136の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る。
【0061】
本発明によれば、異種TCR(例えば、MAGE A4 TCR)は、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号10のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1~45、51~67、74~109、及び124~133が、それぞれ配列番号10のアミノ酸残基1~45、51~67、74~109、及び124~133の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し、アミノ酸残基46~50、68~73、及び110~123が、それぞれ配列番号10のアミノ酸残基46~50、68~73、及び110~123、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0062】
本発明によれば、異種TCRは、ベータ鎖可変ドメインにおいて、以下の配列が、以下のとおりである、TCRを含み得る:
(i)そのアミノ酸残基1~45が、(a)配列番号10のアミノ酸残基1~45の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号10の残基1~45と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(ii)アミノ酸残基46~50が、KGHDR、CDR1、配列番号14、または配列番号10のアミノ酸46~50であり、
(iii)そのアミノ酸残基51~67が、(a)配列番号10のアミノ酸残基51~67の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号10のアミノ酸残基51~67の配列と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(iv)アミノ酸残基68~73が、SFDVKD、CDR2、配列番号15、または配列番号10のアミノ酸68~73であり得、
(v)そのアミノ酸残基74~109が、配列番号10のアミノ酸残基74~109の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号10のアミノ酸残基74~109の配列と比較して、1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得、
(vi)アミノ酸110~123が、CATSGQGAYEEQFF、CDR3、配列番号16、または配列番号10のアミノ酸110~123であり得、
(vii)そのアミノ酸残基124~133が、配列番号10のアミノ酸残基124~133の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号10のアミノ酸残基124~133の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る。
【0063】
本発明によれば、異種TCRは、配列番号9のアルファ鎖可変ドメイン及び/または配列番号10のベータ鎖可変ドメインを含む、TCRを含み得る。本発明によれば、TCRは、配列番号5のアルファ鎖及び/または配列番号7のベータ鎖を含む、TCRを含み得る。
【0064】
AFP TCR CDR及びフレームワーク
本発明によれば、異種TCR(例えば、AFP TCR)は、アルファ鎖可変ドメインが、配列番号22のアミノ酸残基1~112のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1~26、33~49、56~89、及び102~112が、それぞれ配列番号22のアミノ酸残基1~26、33~49、56~89、及び102~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有し、及び/またはアミノ酸残基27~32、50~55、90~101、CDR1、CDR2、CDR3がそれぞれ、それぞれ配列番号22のアミノ酸残基27~32、50~55、90~101、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対してそれぞれ少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0065】
本発明によれば、異種TCR(例えば、AFP TCR)は、アルファ鎖可変ドメインにおいて、以下の配列が、以下のとおりである、TCRを含み得る:
(i)そのアミノ酸残基1~26が、(a)配列番号22のアミノ酸残基1~26の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号22の残基1~26と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(ii)アミノ酸残基27~32が、
【化7】
αCDR1、配列番号26、または配列番号22のアミノ酸27~32であり、
(iii)そのアミノ酸残基33~49が、(a)配列番号22のアミノ酸残基33~49の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号22のアミノ酸残基33~49の配列と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(iv)アミノ酸残基50~55が、
【化8】
αCDR2、配列番号27、または配列番号22のアミノ酸50~55であり得、
(v)そのアミノ酸残基56~89が、配列番号22のアミノ酸残基56~89の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号22のアミノ酸残基56~89の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得、
(vi)アミノ酸90~101が、
【化9】
αCDR3、配列番号28、または配列番号22のアミノ酸90~101であり得、
(vii)そのアミノ酸残基102~112が、配列番号22のアミノ酸残基102~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号22のアミノ酸残基102~112の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る。
【0066】
本発明によれば、TCR(例えば、AFP TCR)は、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号23のアミノ酸残基1~112のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1~26、32~48、55~91、及び103~112が、それぞれ配列番号23のアミノ酸残基1~26、32~48、55~91、及び103~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し、アミノ酸残基27~31、49~54、及び92~102がそれぞれ、それぞれ配列番号23のアミノ酸残基27~31、49~54、及び92~102、βCDR1、βCDR2、βCDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0067】
本発明によれば、TCRは、ベータ鎖可変ドメインにおいて、以下の配列が、以下のとおりである、TCRを含み得る:
(i)そのアミノ酸残基1~26が、(a)配列番号23のアミノ酸残基1~26の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号23の残基1~26と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(ii)アミノ酸残基27~31が、
【化10】
βCDR1、配列番号29、または配列番号23のアミノ酸27~31であり、
(iii)そのアミノ酸残基32~48が、(a)配列番号23のアミノ酸残基32~48の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号23のアミノ酸残基32~48の配列と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(iv)アミノ酸残基49~54が、
【化11】
βCDR2、配列番号30、または配列番号23のアミノ酸49~54であり得、
(v)そのアミノ酸残基55~91が、配列番号23のアミノ酸残基55~91の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号23のアミノ酸残基55~91の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得、
(vi)アミノ酸92~102が、
【化12】
βCDR3、配列番号31、または配列番号23のアミノ酸92~102であり得、
(vii)そのアミノ酸残基103~112が、配列番号23のアミノ酸残基103~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号23のアミノ酸残基103~112の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る。
【0068】
本発明によれば、異種TCRは、アルファ鎖が、配列番号41のアミノ酸残基を含み、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号23または配列番号42のアミノ酸残基を含む、TCRを含み得る。
【0069】
変異体AFP TCR
本発明の実施形態は、親AFP TCR(アルファ鎖が、配列番号22のアミノ酸残基を含み、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号23のアミノ酸残基を含む)、またはアルファ鎖が、配列番号41のアミノ酸残基を含み、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号23または配列番号42のアミノ酸残基を含む、AFP TCRと比較して変異した異種TCRを含み得る。
【0070】
したがって、そのような変異した異種TCRは、以下を含み得る:
a.配列DRGSQAを有するαCDR1、配列番号32
b.配列AVNSDSSYALNFを有するαCDR2、配列番号33
c.配列AVNSDSGVALNFを有するαCDR2、配列番号34
d.配列DRGSQAを有するαCDR1、配列番号32、及び配列AVNSDSGVALNFを有するαCDR2、配列番号34
e.配列AVNSQSGYALNFを有するαCDR2、配列番号35
f.配列AVNSQSGYSLNFを有するαCDR2、配列番号36
g.配列AVNSQSSYALNFを有するαCDR2、配列番号40
h.配列DRGSQAを有するαCDR1、配列番号32、及び配列AVNSQSGYALNFを有するαCDR2、配列番号35
i.配列AVNSQSGVALNFを有するαCDR2、配列番号36
j.配列AVNSQNGYALNFを有するαCDR2、配列番号37
k.配列DRGSFSを有するαCDR1、配列番号38
l.配列DRGSYSを有するαCDR1、配列番号39
m.配列DRGSYSを有するαCDR1、配列番号39、及びAVNSDSSYALNFを有するαCDR2、配列番号33、
n.配列DRGSYSを有するαCDR1、配列番号39、及び配列AVNSDSSYALNFを有するαCDR2、配列番号33
o.配列DRGSYSを有するαCDR1、配列番号39、及び配列AVNSQSGYALNFを有するαCDR2、配列番号35
【0071】
本発明によれば、異種TCRまたは異種変異TCRは、以下に対応するアミノ酸のうちの1つ以上に変異を含むアルファ鎖可変ドメインを含み得る:配列番号22に示される付番を参照して、31Q、32S、94D、95S、96G、97Y、及び98A。例えば、アルファ鎖可変ドメインは、以下の変異のうちの1つ以上を有し得る:配列番号22に示される付番に従って、Q31F/Y、S32A、D94Q、S95N、G96S、Y97V、A98S。
【0072】
本発明によれば、異種TCRは、配列番号22のTCRアルファ鎖可変ドメインを含み得るが、それは、以下に対応するアミノ酸のうちの1つ以上に変異を含む:配列番号22に示される付番に従って、31Q、32S、94D、95S、96G、97Y、及び98A、例えば、Q31F/Y、S32A、D94Q、S95N、G96S、Y97V、A98Sのうちの1つ以上、及び/または配列番号23もしくは配列番号42のD1~T112を含むベータ鎖可変ドメイン。
【0073】
本発明によれば、異種TCRは、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含み得、
(i)アルファ鎖可変ドメインは、以下の配列を有するCDRを含み、
【化13】
配列番号32、または配列番号41のアミノ酸27~32、
【化14】
配列番号27、または配列番号22のアミノ酸50~55、及び
【化15】
配列番号35、または配列番号41のアミノ酸90~101、
(ii)ベータ鎖可変ドメインが、以下の配列を有するCDRを含む
【化16】
配列番号29、または配列番号23のアミノ酸27~31、
【化17】
配列番号30、または配列番号23のアミノ酸49~54、及び
【化18】
配列番号31、または配列番号23のアミノ酸92~102。
【0074】
本発明によれば、異種TCRは、アルファ鎖可変ドメインが、配列番号41のアミノ酸残基1~112を含み、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号33または配列番号42のアミノ酸残基1~112を含む、TCRを含み得る。
【0075】
本発明によれば、異種TCRは、アルファ鎖が、配列番号41のアミノ酸残基を含み、ベータ鎖可変ドメインが、配列番号33または配列番号42のアミノ酸残基1~112を含む、TCRを含み得る。
【0076】
TCRバリアント
アミノ酸及びヌクレオチド配列同一性は、一般に、アルゴリズムGAP(GCG Wisconsin Package(商標),Accelrys,San Diego CA)を参照して定義される。GAPは、Needleman&Wunschアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))を使用して2つの完全な配列を整列させ、これによって一致の数を最大化し、ギャップの数を最小化する。一般に、ギャップ作成ペナルティ=12、及びギャップ伸長ペナルティ=4のデフォルトパラメータが使用される。GAPの使用が好ましい場合があるが、他のアルゴリズム、例えば、BLAST、psiBLAST、またはTBLASTN(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:405-410の方法を使用する)、FASTA(Pearson and Lipman(1988)PNAS USA 85:2444-2448の方法を使用する)、または一般にデフォルトパラメータを用いるSmith-Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman(1981)J.Mol Biol.147:195-197)が使用され得る。
【0077】
特定のアミノ酸配列バリアントは、1つのアミノ酸、2、3、4、5~10、10~20、または20~30個のアミノ酸の挿入、付加、置換、または欠失によって、参照配列とは異なり得る。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の残基を挿入、欠失、または置換した参照配列を含み得る。例えば、最大15、最大20、最大30、または最大40個の残基が、挿入、欠失、または置換され得る。
【0078】
いくつかの好ましい実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の保存的置換によって、参照配列とは異なり得る。保存的置換は、同様の特性を有する異なるアミノ酸によるアミノ酸の置き換えを伴う。例えば、脂肪族残基は、別の脂肪族残基によって置き換えられ得るか、非極性残基は、別の非極性残基によって置き換えられ得るか、酸性残基は、別の酸性残基によって置き換えられ得るか、塩基性残基は、別の塩基性残基によって置き換えられ得るか、極性残基は、別の極性残基によって置き換えられ得るか、または芳香族残基は、別の芳香族残基によって置き換えられ得る。保存的置換は、例えば、以下の基内のアミノ酸間であり得る:
アラニン及びグリシン;
グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、及びアスパラギン;
アルギニン及びリジン;
アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、及びアスパラギン酸
イソロイシン、ロイシン及びバリン;
フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン
セリン、スレオニン、及びシステイン。
【0079】
CD8α共受容体
本発明によれば、細胞ゲノムにおける遺伝子座に組み込まれた異種TCRをコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含み、及び/または本発明による異種TCRを発現または提示する改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、異種共受容体を更に発現または提示し得る(例えば、細胞は、例えば遺伝子ノックインによって、共受容体をコードする核酸、例えばCD8共受容体で形質導入されるか、またはそれを含むように操作される)。異種共受容体は、CD8共受容体であり得る。CD8共受容体は、CD8-α及びCD8-β鎖、またはCD8-α及びCD8-α鎖を含む、CD8鎖の二量体または対を含み得る。好ましくは、CD8共受容体は、CD8-α及びCD8-α鎖を含むCD8αα共受容体である。CD8α共受容体は、配列番号3、配列番号3、またはそのバリアントに対して少なくとも80%の同一性のアミノ酸配列を含み得る。CD8α共受容体は、ホモ二量体であり得る。
【0080】
好ましくは、CD8共受容体は、クラス1のMHCに結合し、TCRシグナル伝達を強化する。本発明によれば、CD8共受容体は、配列番号3の参照アミノ酸配列を含み得るか、またはそのバリアントであり得る。バリアントは、参照アミノ酸配列配列番号3に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。CD8共受容体は、配列番号4の参照ヌクレオチド配列によってコードされ得るか、またはそのバリアントであり得る。バリアントは、参照ヌクレオチド配列配列番号4に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。
【0081】
本発明によれば、異種CD8共受容体は、Ig様V型ドメインに以下の配列を有するCDRを含む、CD8共受容体を含み得る:
(i)VLLSNPTSG、CDR1、配列番号17、もしくは配列番号3のアミノ酸45~53、
(ii)YLSQNKPK、CDR2、配列番号18、もしくは配列番号3のアミノ酸72~79、
(iii)LSNSIM、CDR3、配列番号19、もしくは配列番号3のアミノ酸80~117、
または、それらに対して、それぞれ少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列。
【0082】
本発明によれば、異種CD8共受容体は、Ig様V型ドメインに配列番号3のアミノ酸配列の残基22~135、またはそのアミノ酸残基22~44、54~71、80~117、124~135が、それぞれ配列番号3のアミノ酸残基22~44、54~71、80~117、124~135、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し、それぞれアミノ酸残基45~53、72~79、及び118~123が、配列番号3のアミノ酸残基45~53、72~79、及び118~123の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有する、アミノ酸配列を含む、CD8共受容体を含み得る。
【0083】
本発明によれば、CD8共受容体は、Ig様V型ドメインに以下の配列を有する、CD8共受容体を含み得る:
(i)そのアミノ酸残基22~44が、(a)配列番号3のアミノ酸残基22~44の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号3の残基22~44と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(ii)アミノ酸残基45~53が、VLLSNPTSG、配列番号17、CDR1、または配列番号3のアミノ酸45~53であり、
(iii)そのアミノ酸残基54~71が、(a)配列番号3のアミノ酸残基54~71の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号3のアミノ酸残基54~71の配列と比較して、1、2、もしくは3つのアミノ酸残基が挿入もしくは欠失され得、
(iv)アミノ酸残基72~79が、YLSQNKPK、CDR2、配列番号18、または配列番号3のアミノ酸72~79であり得、
(v)そのアミノ酸残基80~117が、配列番号3のアミノ酸残基80~117の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号3のアミノ酸残基80~117の配列と比較して、1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得、
(vi)アミノ酸118~123が、LSNSIM、CDR3、配列番号19、または配列番号3のアミノ酸80~117であり得、
(vii)そのアミノ酸残基124~135が、配列番号3のアミノ酸残基124~135の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または、配列番号3のアミノ酸残基124~135の配列と比較して、1、2、または3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る。
【0084】
異種CD8共受容体をコードする核酸を含む、及び/または異種CD8共受容体を発現する改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、本明細書に開示のアッセイによって決定可能であるように、異種CD8共受容体を発現しない改変された細胞(例えば、人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞)と比較して、場合によっては、HLAに存在する場合、抗原ペプチド、腫瘍、またはがん抗原による刺激に対してまたはその刺激の際に改善された親和性及び/またはアビディティ及び/または改善されたT細胞活性化を示し得る。改変された細胞の異種CD8は、MHCと相互作用するかまたは特異的に結合し得、MHCは、クラスIまたはクラスII、好ましくはクラスI主要組織適合複合体(MHC)、HLA-I分子、またはMHCクラスI HLA-A/B2M二量体を含むHLA-I分子であり得、好ましくはCD8-αは、好ましくはCD8のIgV様ドメインを介して、クラスI MHCのα3部分(残基223と229との間)と相互作用する。したがって、異種CD8は、異種CD8を欠く細胞と比較して、場合によっては、抗原提示細胞、樹状細胞、及び/または腫瘍もしくはがん細胞、腫瘍もしくはがん組織の表面上での、HLA pMHCIまたはpHLAによって結合または提示される、HLA及び/または抗原ペプチドへの細胞のTCR結合を改善する。したがって、異種CD8は、異種CD8を欠く細胞(iPSCまたは造血系細胞)と比較して、場合によっては、抗原提示細胞、樹状細胞、及び/または腫瘍もしくはがん細胞、または腫瘍もしくはがん組織の表面上での、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞の、細胞(TCR)/ペプチド-主要組織適合複合体クラスI(pMHCI)相互作用のオフレート(koff)、したがって、その半減期を改善または増加させ得、それによって、改善されたライゲーション親和性及び/またはアビディティをも提供し得る。異種CD8は、幹細胞iPSCまたは造血系細胞表面上でのTCRの組織化を改善して、pHLA結合における協働性を可能し得、改善された治療的アビディティを提供し得る。したがって、異種CD8共受容体、改変された人工多能性幹細胞iPSC、または造血系細胞は、亜鉛依存的な様式でLCK(リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ)に結合またはそれと相互作用して、NFAT、NF-κB、及びAP-1のような転写因子の活性化をもたらし得る。
【0085】
本発明によれば、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、異種CD8共受容体を欠く多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞と比較して、場合によっては、腫瘍のがん細胞または組織によって提示される、場合によっては、がん、及び/または腫瘍抗原、またはそのペプチド抗原に応答して、改善または増加された、CD40Lの発現、サイトカイン産生、細胞毒性活性、樹状細胞成熟の誘導、または樹状細胞サイトカイン産生の誘導を有し得る。
【0086】
共刺激リガンド
本発明によれば、改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、外因性または異種または組換え共刺激リガンド、少なくとも1つの共刺激リガンドを、場合によっては1、2、3、または4つ更に含み得る(例えば、発現し得るかまたは提示し得る)(例えば、細胞は、例えば遺伝子ノックインによって、共刺激リガンドをコードする核酸で形質導入されるか、またはそれを含むように操作される)。改変された細胞または複数の細胞は、異種TCR及び少なくとも1つの外因性共刺激リガンドを同時発現し得る。異種TCRと少なくとも1つの外因性共刺激リガンドとの間の相互作用は、非抗原特異的シグナル及び細胞の活性化を提供し得る。共刺激リガンドとしては、限定されないが、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、及び免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのリガンドが挙げられる。TNFは、全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。TNFスーパーファミリーメンバーとしては、限定されないが、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CDl54、CD137L/4-1BBL、TNF-アルファ、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子ベータ(TNFP)/リンフォトキシン-アルファ(LTa)、リンフォトキシン-ベータ(TTb)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Tall-l、グルコルチコイド誘導TNF受容体リガンド(GITRL)、及びTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が挙げられる。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識、結合、または接着プロセスに関与する、細胞表面タンパク質及び可溶性タンパク質の大きな群である。これらのタンパク質は、免疫グロブリンドメイン(フォールド)を有する免疫グロブリンと、構造的特色を共有する。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドとしては、限定されないが、CD28の両方のリガンドであるCD80及びCD86が挙げられる。ある特定の実施形態では、少なくとも1つの共刺激リガンドは、4-1BBL、CD275、CD80、CD86、CD70、OX40L、CD48、TNFRSF14、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。少なくとも1つの外因性または組換え共刺激リガンドは、4-1BBLまたはCD80であり得、好ましくは、少なくとも1つの外因性または組換え共刺激リガンドは、4-1BBLである。改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞は、2つの外因性または組換え共刺激リガンドを含み得、好ましくは、2つの外因性または組換え共刺激リガンドは、4-1BBL及びCD80である。
【0087】
改変された細胞は、免疫抑制性腫瘍微小環境を克服する外因性のまたは組換えられた、少なくとも1つの構築物を含み得る(例えば、細胞は、例えば遺伝子ノックインによって、少なくとも1つの構築物をコードする核酸で形質導入されるか、またはそれを含むように操作される)。そのような構築物は、限定されないが、環式AMPホスホジエステラーゼ及び優性-劣性形質転換成長因子ベータ(TGFベータ)受容体IIであり得る。改変された幹細胞iPSC、または造血系細胞、改変されたT細胞、または改変されたT細胞の集団は、当該細胞の細胞溶解活性に正の効果を有するサイトカインを放出するように操作され得る。そのようなサイトカインとしては、限定されないが、インターロイキン-7、インターロイキン-15、及びインターロイキン-21が挙げられる。
【0088】
細胞機能及び活性化
本発明は、iPSCまたは造血系細胞及び/または異種TCRの、抗原またはペプチド抗原、例えば、がん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原、または本明細書に記載のがん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原を発現もしくは提示するがん及び/または腫瘍細胞もしくは組織に結合することが、場合によっては、以下のうちのいずれか1つ以上によって決定される、iPSCまたは造血系細胞の活性化及び/または機能を誘導することができる、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する:
(a)T細胞活性化マーカー、例えばCD3+細胞上のCD69及び/またはCD25のいずれかのアップレギュレーション、
(b)サイトカイン産生のアップレギュレーション、例えばIFNガンマ、IL-2または、グランザイムBのいずれか1つ以上、
(c)抗原もしくは抗原ペプチドの存在下での細胞毒性活性の誘導、
(d)抗原もしくは抗原ペプチドを提示する腫瘍細胞を死滅させる能力、
(e)サイトカイン及び/またはインターフェロンのiPSCまたは造血系細胞分泌の増加、
(f)例えば、細胞マーカーによって判定される(例えば、Ki67発現レベルによって判定される)、iPSCもしくは造血系細胞増殖の増加、
(g)iPSCもしくは造血系細胞抗原応答性の増加、
(h)iPSCもしくは造血系細胞の標的細胞の死滅の増加、
(i)iPSCもしくは造血系細胞のCD28シグナル伝達の増加、
(j)iPSCもしくは造血系細胞の腫瘍に浸潤する能力の増加、
(k)iPSCもしくは造血系細胞の、樹状細胞が提示した抗原を認識しそれに結合する能力の増加、
(l)iPSCもしくは造血系細胞の、例えば、T-regに対する抑制応答の低減、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、PD-L1タンパク質発現、もしくはCCL3、IL8、IL1β、CXCL10、もしくはsIL2Rαから選択される血清サイトカインレベル、もしくはPD-1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、BTLA、もしくはTIGITから選択される阻害性受容体のレベルによって決定される、T細胞抑制因子に抵抗する能力の増加、または
(m)iPSCもしくは造血系細胞による、インターフェロン-γ、インターロイキン-6、インターロイキン-10、IL-2、TNF-α、IFN-γ、及びグランザイムBなどのサイトカイン産生のレベルの増加。
【0089】
TCR+細胞の持続性
本発明は、例えば、本明細書に記載の異種T細胞受容体(TCR)を発現または提示する改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞の持続性の測定によって決定される、培養物または対象試料において改善されたTCR+細胞持続性を示す、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を提供する。注入された操作及び改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞の持続性は、治療効果と相関し、また長期的な安全対策である。細胞持続性は、qPCRまたはフローサイトメトリー(FCM)によって決定され得る。例えば、DNAからのコード遺伝子のPCRによるTCR+(例えば、AFP TCRまたはMAGE-A4 TCR)細胞の定量化。あるいは、T細胞表現型、及び異種TCRに関連する活性の定量化は、例えば、以下の様々なアッセイによって決定され得る:
●細胞産生物/培養物中または輸液前後の対象血液中のT細胞系統の決定のための表現型分析。
●細胞産生物/培養物中または対象試料からのT細胞の老化及び活性化状態の定量化
●TCR+T細胞のインビボ機能を反映する可溶性因子の以下定量化。
【0090】
核酸構築物またはベクター
本発明は、本発明による異種TCRをコードする核酸領域と、異種TCRをコードする核酸領域の組み込みのための、細胞ゲノムにおける遺伝子座の核酸領域に相同な核酸領域を含む少なくとも1つの相同領域と、を含む、核酸構築物またはベクターを提供する。好ましくは、遺伝子座は、本明細書に前述されるとおりである。
【0091】
好ましくは、遺伝子座は、膜タンパク質または膜貫通タンパク質、場合によっては受容体タンパク質、好ましくは受容体タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)、好ましくはCD45またはタンパク質チロシンホスファターゼ受容体タイプC、すなわちPTPRCをコードする遺伝子であるか、またはその中に存在する。したがってかつ好ましくは、遺伝子座は、1番染色体上のPTPRC(CD45)遺伝子に存在するか、またはその中に存在し、場合によっては、遺伝子座は、PTPRC(CD45)遺伝子のエクソン33に、場合によっては、TAG終止コドンの前に、またはTAG終止コドンの真隣及び/または直前に存在する。
【0092】
異種TCRをコードする核酸は、場合によっては、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列を含む、例えば本明細書に記載のTCRα及び/またはTCRβ鎖のコード配列を含み得、好ましくは、酵素による切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列が、フーリン切断部位、好ましくはRAKRをコードし、好ましくはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列が、リボソームスキップ配列、好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列である。
【0093】
本発明によれば、構築物またはベクターは、異種TCRをコードする核酸領域の組み込みのための、細胞ゲノムにおける遺伝子座の核酸領域に対して、各々相同であり、場合によっては組み込み部位の反対側に隣接する、左手及び/または右手相同領域を含み得る。
【0094】
したがって、構築物またはベクターは、以下のうちのいずれか1つ以上を更に含み得る:
(a)組換え標的配列、好ましくはloxP(X-over P1の遺伝子座)配列、
(b)発現可能な選択マーカー配列、好ましくはプロモーター、例えばEF1Aプロモーターから構成的に発現する、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、場合によってはネオマイシン耐性遺伝子。
【0095】
本発明によれば、構築物またはベクターは、配列番号45の配列を含む異種TCRをコードするヌクレオチド配列と、配列番号43及び配列番号44の配列を含む相同領域と、場合によっては配列番号48を含む組換え標的配列、及び/または配列番号47及び配列番号49を含む発現可能な選択マーカー配列と、を含み得る。
【0096】
本発明は、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を産生するプロセスであって、異種T細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を細胞ゲノムにおける遺伝子座にまたはその中に組み込むことを可能にする条件下で、本発明による核酸構築物またはベクターを、場合によっては本明細書に定義される改変されていない人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞に導入し、場合によっては、改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞を単離することを含む、プロセスを更に提供する。このプロセスは、AAV、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、または操作されたメガヌクレアーゼを用いるものなどの既知のゲノム編集方法論を使用して達成され得る。
【0097】
治療
本発明は、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物を更に提供する。
【0098】
本発明は、治療及び/または医学における使用のための、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物を更に提供する。
【0099】
本発明はまた、以下を含む、以下の医学的使用または治療する方法のうちのいずれか1つ以上を提供する:
(a)場合によっては、治療が、がん免疫療法及び/または養子T細胞療法、場合によっては、同種異系養子T細胞療法である、個体または対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、防止、またはその進行の遅延における使用のための、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物、
(b)場合によっては、治療が、がん免疫療法及び/または養子T細胞療法、場合によっては、同種異系養子T細胞療法である、個体または対象におけるがん及び/または腫瘍の治療のための医薬品の製造における、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物の使用、
(c)場合によっては、治療が、がん免疫療法及び/または養子T細胞療法、場合によっては、同種異系養子T細胞療法である、個体に、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物を投与することを含む、個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療、防止、またはその進行を遅延させる方法。
【0100】
本発明によれば、固形腫瘍であり得るがん及び/または腫瘍は、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性または進行性NSCLC、扁平上皮NSCLC、腺癌NSCLC、腺扁平上皮癌NSCLC、大細胞NSCLC、卵巣癌、胃癌、尿路上皮癌、食道癌、食道胃接合部癌(EGJ)、黒色腫、膀胱癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、口腔癌、中咽頭癌、下咽頭癌、喉の癌、喉頭癌、扁桃腺癌、舌癌、軟口蓋癌、喉頭癌、滑膜肉腫、粘液様円形細胞型脂肪肉腫(myxoid round cell liposarcoma)(MRSLCS)から選択され得、場合によっては、がんまたは腫瘍が、本明細書に記載のMAGEもしくはAFPタンパク質ペプチド、その抗原、またはペプチド抗原、場合によっては、本明細書に記載のMAGE-A4タンパク質、そのペプチド、抗原、または抗原ペプチドを発現する。
【0101】
本発明によれば、がんは、乳癌、転移性乳癌、肝臓癌、腎細胞癌、滑膜肉腫、尿路上皮癌または腫瘍、膵臓癌、結腸直腸癌、転移性胃癌(stomach cancer)、転移性胃癌(gastric cancer)、転移性肝臓癌、転移性卵巣癌、転移性膵臓癌、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、結腸直腸癌または腺癌、肺癌または腺癌、膵臓癌または腺癌、粘膜腺腫、膵臓の腺管癌、血液悪性疾患のうちのいずれか1つ以上から選択され得、場合によっては、がんまたは腫瘍が、本明細書に記載のMAGEもしくはAFPタンパク質、そのペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原、場合によっては、本明細書に記載のMAGE-A4タンパク質、そのペプチド、抗原、またはペプチド抗原を発現する。
【0102】
本発明によれば、がん及び/または腫瘍は、肝臓癌であり得るか、または胆管癌、肝臓血管肉腫、肝芽腫、肝細胞癌(HCC)のうちのいずれかから選択される肝臓癌であり得、場合によっては、がんが、移植または切除に適さず、好ましくは、がんが、肝細胞癌(HCC)であり、加えて、肝臓癌が、糖尿病、肥満、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変のうちのいずれか1つ以上と同時であり得、場合によっては、がんまたは腫瘍が、本明細書に記載のMAGEもしくはAFPタンパク質、そのペプチド、抗原、またはペプチド抗原、場合によっては、本明細書に記載のMAGE-A4タンパク質、そのペプチド、抗原、またはペプチド抗原を発現する。
【0103】
本発明によれば、がんは、再発したがん、難治性のがん、または再発性のがん、または局所再発性のがん、または転移性のがん、切除不能ながん、または外科的もしくは放射線療法の選択肢がない局所に限定されたがん、または手術不能ながん、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。本発明によれば、がん及び/または腫瘍は、固形腫瘍であり得る。
【0104】
本発明はまた、以下の方法における使用のための、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物を提供する:
(a)T細胞活性化のアップレギュレーション、
(b)サイトカイン産生のアップレギュレーション、例えばIFNガンマ、IL-2または、グランザイムBのいずれか1つ以上、
(c)抗原もしくは抗原ペプチドの存在下での細胞毒性活性の誘導、または
(d)場合によっては、がん及び/または腫瘍を有する対象において、場合によっては、がん及び/または腫瘍が、本明細書に記載のがん及び/または腫瘍抗原もしくはそのペプチド抗原、好ましくは本明細書に記載のMAGEもしくはAFPタンパク質、そのペプチド、抗原、もしくはペプチド抗原を発現する、抗原もしくは抗原ペプチドを提示する腫瘍細胞の死滅の誘導。
【0105】
組み合わせ
本発明は、改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物が、場合によっては別々に、順次、または同時に投与されるか、または投与するための1つ以上の更なる治療剤と組み合わせて使用するためのものであるか、またはそのように使用される、前述の医学的使用または治療する方法に従って使用するための、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または薬学的組成物を更に提供する。
【0106】
したがって、1つ以上の更なる治療剤は、化学療法剤、ホルモン療法剤、標的化薬物、または免疫療法を含み得る。したがって、化学療法は、ゲムシタビン、ドセタキセル、ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、ビノレルビン、リポプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、メトトレキサート、カペシタビン、タキサン、アントラサイクリン、パクリタキセル、ドセタキセル、パクリタキセルタンパク質結合粒子、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、ビンクリスチン、エトポシドのうちのいずれか1つ以上を含み得る。加えてまたはあるいは、化学療法は、以下から選択される1つ以上の化学療法剤を含み得る:FEC:5-フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド;FAC:5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド;AC:ドキソルビシン、シクロホスファミド;EC:エピルビシン、シクロホスファミド。加えてまたはあるいは、1つ以上の更なる治療剤は、ソラフェニブ、PD1もしくはPD-L1アンタゴニストもしくは阻害剤、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、スニチニブ、ブリバニブ、エベロリムス、チバンチニブ、リニファニブ、ソラフェニブ、PD1もしくはPD-L1アンタゴニストもしくは阻害剤、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、スニチニブ、ブリバニブ、エベロリムス、チバンチニブ、リニファニブ、またはクリゾチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、及びアファチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤もしくは上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、ペンブロリズマブもしくはニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害剤、またはデノスマブなどの核因子カッパ-Bリガンドに対するモノクローナル抗体、または上皮成長因子受容体アンタゴニスト抗体、場合によってはセツキシマブのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、「改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系細胞」という用語はまた、改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、または人工多能性幹細胞iPSCの改変された集団もしくは造血系細胞の集団を含み得る(改変されたという用語はまた、IPSC(複数可)及び造血系細胞(複数可)の両方に適用される)。
【0108】
キット
本発明は、以下を含むキットを更に提供する:
(a)本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、もしくは薬学的組成物と、個体もしくは対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、防止、もしくはその進行を遅延させるためのそれらの使用説明書を含む添付文書、または
(b)場合によっては別々に、順次、もしくは同時に投与されるか、もしくは投与するための、場合によっては本明細書に記載の1つ以上の更なる治療剤と組み合わせられた、個体もしくは対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、防止、もしくはその進行を遅延させるための、本発明による改変された人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系細胞、もしくは薬学的組成物と、それらの使用説明書を含む添付文書。
【0109】
本発明は、以下の図面及び実施例を参照することによって更に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】PTPRCスプライスバリアント。PTPRC遺伝子は、1番染色体上に位置し、33個のエクソンを含有する。選択的スプライシングを介して、この遺伝子から、複数のスプライスバリアントが産生される。スプライスバリアントは、エクソン4~6でのスプライシングの結果物である。各転写産生物は、同じ3’エクソン構造を含有する。Tchilian and Beverley 2006.Trends in Immunologyからの図を採用する。
【
図2】ADP A2M4ノックイン戦略-ADP A2M4 SPEARをPTPRCエクソン33にノックインするように、標的化戦略を設計した。編集は、AAVで実施した。rAAV修復テンプレートの相同性アームは、終止コドンの上流及び下流の500bpのゲノム配列に対応する。編集によって、各ポリペプチドコーディング配列が、フーリン切断部位(RAKR)及び2Aスキップペプチド(PTPRC_FuT2A_TCRα_FuP2A_TCRβ)によって分離された、PTPRCとADP A2M4との間のマルチシストロニック融合物が作製される。この設計は、単一の編集された対立遺伝子からの3つ全てのポリペプチドの発現を可能にする。エクソン33へのノックインはまた、複数のPTPRCスプライスバリアントにわたるA2M4の発現を可能にする。耐性カセットは、EF1Aプロモーターから構成的に発現したLOXP隣接NEO耐性遺伝子を含有する。
【
図3】ベクターマップpAAV MCS_PTPRC_FuT2A_A2M4_LOXP_NEO。相同性アーム(LHA及びRHA)、FuT2A_A2M4 TCR及びNEO耐性カセットを含有する標的化カセットを、pAAV MCSベクター(Agilent)におけるNotI制限部位間でクローニングした。ベクター骨格を例外として、各断片をPCRによって増幅させ、断片をGibsonアセンブリによってベクターにクローニングした。
【
図4】PCRスクリーニング戦略。編集したクローンを、96ウェルプレート内で限界希釈によって単離した。QuickExtract(商標)を使用して、各クローンからgDNAの試料を単離した。相同性アーム領域の外側及び導入遺伝子カセット内のプライマーを用いるPCRによって、クローンをスクリーニングした。プライマーPTPRC-5int-FWD及びPTPRC-5int-REVを使用して、LHA境界PCRを実施した。プライマーPTPRC-3int-FWD及びPTPRC-3int-REVを用いて、RHA境界PCRを実施した。PCR産生物を配列決定した。3つのクローンが分化のために進行した。ChiPSC31 PTPRC_A2M4クローン2、ADAPiJ001_J PTPRC_A2M4クローン3D10及びADAPiJ001_J PTPRC_A2M4クローン3G5。
【
図5A】CD7+CD5+前駆細胞のレンチウイルス形質導入を介して、iT細胞におけるADP A2M4の発現を誘導することができる。iPSC株ADAPi001_Jを分化させ、ステージ4のADP A2M4T細胞(CD7+CD5+前駆細胞)を含有して発現したレンチウイルスで形質導入した。分化プロトコルを通じて、形質導入した細胞を進行させた。抗Vα24抗体及びA2M4 MAGE-4デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びADP A2M4発現によって、細胞を表現型決定した。
【
図5B】CD7+CD5+前駆細胞のレンチウイルス形質導入を介して、iT細胞におけるADP A2M4の発現を誘導することができる。iPSC株ADAPi001_Jを分化させ、ステージ4のADP A2M4T細胞(CD7+CD5+前駆細胞)を含有して発現したレンチウイルスで形質導入した。分化プロトコルを通じて、形質導入した細胞を進行させた。抗Vα24抗体及びA2M4 MAGE-4デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びADP A2M4発現によって、細胞を表現型決定した。
【
図6A】編集したiPSCクローンから分化したiT細胞の表現型(ステージ5):ChiPSC31 PTPRC_A2M4クローン2(単一の対立遺伝子を標的とする)から分化したiT細胞。分化は、編集によって影響を受けない。編集されたクローンは、ADP A2M4 SPEARを発現する。抗Vα24抗体及びADP A2M4 MAGE-4デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びA2M4発現によって、細胞を表現型決定した。単一の対立遺伝子におけるノックインは、ADP A2M4発現を促進するのに十分である。
【
図6B】編集したiPSCクローンから分化したiT細胞の表現型(ステージ5):ADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3D10(両方の対立遺伝子を標的とする)から分化したiT細胞。分化は、編集によって影響を受けない。編集されたクローンは、ADP A2M4 SPEARを発現する。抗Vα24抗体及びADP A2M4 MAGE-4デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びA2M4発現によって、細胞を表現型決定した。単一の対立遺伝子におけるノックインは、ADP A2M4発現を促進するのに十分である。
【
図6C】編集したiPSCクローンから分化したiT細胞の表現型(ステージ5):ADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3G5(単一の対立遺伝子を標的とする)から分化したiT細胞。分化は、編集によって影響を受けない。編集されたクローンは、ADP A2M4 SPEARを発現する。抗Vα24抗体及びADP A2M4 MAGE-4デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びA2M4発現によって、細胞を表現型決定した。単一の対立遺伝子におけるノックインは、ADP A2M4発現を促進するのに十分である。
【
図7】編集されたiPSCクローンから分化したiT細胞は、特異的かつ強力な細胞溶解エフェクター機能を呈する:iT細胞溶解機能をKILRアッセイで評価した。MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVの濃度を減少させながら(10
-5M~10
-11M)T2細胞にパルスをかけ、ADAPi001_Jから分化したiT細胞(ADAP001_J WT NTD(非形質導入))、ADP A2M4レンチウイルスで形質導入したADAPi001_J由来のiT細胞(ADAPi001_J WT A2M4 TD)、及び編集したADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3G10から分化したiT細胞と共にインキュベートした。細胞溶解機能について、ADP A2M4形質導入PBLと健康なドナーから単離した非形質導入PBLとを比較した。
【
図8】iT細胞は、抗原陽性腫瘍細胞株と共にインキュベートすると、活性化マーカーCD69及びCD25をアップレギュレートする:ADAPi001_J iPSC株(NTD非形質導入)から分化したiT細胞、ADP A2M4レンチウイルス(TD)で形質導入したADAPi01_J由来のiT細胞、及び編集されたADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3G10から分化したiT細胞を、MAGE-A4ペプチドGVYDGREHTV(0.5μg)の存在下または不在下で、腫瘍株A375(HLA-A
*02陽性及びMAGE-A4陽性)及びCOLO205(HLA-A
*02陽性及びMAGE-A4陰性)で(24時間)同時培養した。同時培養後、フローサイトメトリーによって、T細胞活性化マーカーCD69及びCD25の発現のアップレギュレーションが決定された。活性化マーカーの発現について、ADP A2M4形質導入PBLと健康なドナーから単離した非形質導入PBLとを比較した。
【
図9】ADAPi001_J_7D10_RAG1
-/-における2つのRAG1対立遺伝子(エクソン2)内に存在するINDELの配列検証。1つの対立遺伝子(上)は、11bpの欠失を含有し、第2の対立遺伝子(下)は、16bpの欠失を含有する。両方のINDELは、RAG1を不活性化することが予測される。クローン7D10ADAPi001_J_7D10_RAG1
-/-を使用して、A2M4 TCRをPTPRC(Exon33)にノックインした。
【
図10A】RAG1
-/-iT細胞は、CD3及びTCRを発現しない。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。分化したiT細胞の表現型野生型ADAPi001_J。
【
図10B】RAG1
-/-iT細胞は、CD3及びTCRを発現しない。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。分化したiT細胞の表現型A2M4レンチウイルス形質導入野生型ADAPi001_J。
【
図10C】RAG1
-/-iT細胞は、CD3及びTCRを発現しない。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。分化したiT細胞の表現型ADAPi001_J_7D10_RAG1
-/-。
【
図10D】RAG1
-/-iT細胞は、CD3及びTCRを発現しない。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。分化したiT細胞の表現型A2M4レンチウイルス形質導入ADAPi001_J_7D10_RAG1
-/-。
【
図11A】PTPRCへのA2M4 TCRの単一の対立遺伝子ノックインによって、CD3及びTCR発現RAG1
-/-iT細胞を救出する。A2M4 TCRの単一コピーを、RAG1
-/-iPSCクローンADAPi001_J_7D10のPTPRC(Exon33)にノックインした。3つのクローンを単離し、iT細胞に分化させた。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。ADAPi001_J_1B8_RAG1
-/-_PTPRC
A2M4/WT。
【
図11B】PTPRCへのA2M4 TCRの単一の対立遺伝子ノックインによって、CD3及びTCR発現RAG1
-/-iT細胞を救出する。A2M4 TCRの単一コピーを、RAG1
-/-iPSCクローンADAPi001_J_7D10のPTPRC(Exon33)にノックインした。3つのクローンを単離し、iT細胞に分化させた。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。ADAPi001_J_2D4_RAG1
-/-_PTPRC
A2M4/WT。
【
図11C】PTPRCへのA2M4 TCRの単一の対立遺伝子ノックインによって、CD3及びTCR発現RAG1
-/-iT細胞を救出する。A2M4 TCRの単一コピーを、RAG1
-/-iPSCクローンADAPi001_J_7D10のPTPRC(Exon33)にノックインした。3つのクローンを単離し、iT細胞に分化させた。細胞表面マーカーCD45、CD4、CD8α、CD8β、CD56、CD3、TCR鎖Vα-24(A2M4-TCRに結合)、及びαβTCRの発現を、FACSによって測定した。ADAPi001_J_2E7_RAG1
-/-_PTPRC
A2M4/WT。
【
図12】RAG1
-/-iPSCクローンから分化したiT細胞は、A2M4 TCRをコードするレンチウイルスでの形質導入後、抗原陽性腫瘍細胞株を死滅させることができる。MAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)ペプチド及び非パルスGFP
+veA375(MAGE-A4
+ve、HLA-A2
*02
+ve)細胞を、野生型ADPAi001_JまたはADPAi001_J_c7D10_RAG1
-/-から分化させた、非形質導入またはA2M4形質導入iT細胞と同時培養した。緑のオブジェクト数(Green object counts)(GFP)の減少は、GFP
+ve A375腫瘍細胞株の死を表している。
【
図13】RAG1
-/-PTPRC
A2M4/WTiPSCクローンから分化したiT細胞は、抗原陽性腫瘍細胞を死滅させることができる。MAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)パルス及び非パルスGFP
+veA375(MAGE-A4
+ve、HLA-A2
*02
+ve)細胞を、iPSCクローンADAPi001_J_c1B8_RAG1
-/-_PTPRC
A2M4/WT、ADPAi001_J_c2D7_RAG1
-/-PTPRC
A2M4/WT、またはADPAi001_J_c2E4_RAG1
-/-PTPRC
A2M4/WTから分化させたiT細胞と同時培養した。緑のオブジェクト数(Green object counts)(GFP)の減少は、GFP
+ve A375腫瘍細胞株の死を表している。
【実施例】
【0111】
序論:
ここでは、定義された異種組換えαβTCRを発現するiT細胞の産生について説明する。第1の組の実験では、GMPコンプライアンスhiPSCソースから始め、HLA-A*02によって提示されるMAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)を認識する組換え異種T細胞受容体ADP A2M4をノックインした。抗TCRVα24及びデキストラマー染色によって測定して、操作されたiPSCに由来するADP A2M4 iT細胞が、ADP A2M4 TCRを特異的に発現することを示す。同種抗原を発現する腫瘍株を発現するHLA-A*02と共にインキュベートすると、編集されたADP A2M4 iT細胞は、CD25及びCD69を含む活性化マーカーをアップレギュレートし、これらの株の強力な抗原依存的死滅を呈する。第2の組の実験では、ADP A2M4 TCRをRAG1null iPSC株ADAPi001_Jにノックインした。以下の実施例は、治療上の価値及び活性を有するADP A2M4 TCR iT細胞の産生を可能にする、ゲノム編集が限定された同種異系hiPSC由来プラットフォームの開発を表している。
【0112】
ADP A2M4 TCRは、PTPRC遺伝子座でのノックインによってiT細胞に安定的に導入される。PTPRCは、TCRシグナル伝達の重要な調節因子である膜貫通タンパク質チロシンホスファターゼ(CD45)をコードする。PTPRC遺伝子は、33個のエクソンを含有し、エクソン4~6の選択的スプライシングによって生成される複数のアイソフォーム(CD45RABC、CD45R0、CD45RAB、CD45RAC、CD45RBC、CD45RA、CD45RB、及びCD45RC)をコードする(
図1)。CD45アイソフォームの発現は、T細胞発生、活性化、及び分化中に変化する。例えば、CD45RAは、主にナイーブT細胞サブセットに発現するが、CD45ROは、主にメモリーT細胞サブセットに発現する。
【0113】
PTPRCアイソフォームは全て、同じ3’エクソン構造を共有し、したがって、この領域の改変は、全てのPTRPCアイソフォーム間で共有されるであろう。rAAV標的化プラスミドを生成して、TAG終止コドンの直前のPTPRCエクソン33へのADP A2M4 TCRのノックインを可能にした。PTPRCとADP A2M4 SPEARとの間にマルチシストロニック融合遺伝子を生成するように、構築物を設計した。これによって、内因性PTPRCプロモーターからのPTPRCアイソフォーム及びADP A2M4の制御された転写及び発現が可能になる。T2AまたはP2Aスキップ配列ペプチドと組み合わせたフーリン切断部位は、PTPRC及びADP A2M4 TCRα及びA2M4 TCRβコード配列を分離する(
図2及び3)。これによって、単一mRNAからの複数のポリペプチドの産生が可能になる。小胞体におけるフーリンプロテアーゼによる切断によって、スキップ配列ペプチドを除去して、新生タンパク質配列の発現が可能になるであろう。
【0114】
iPSC細胞株の産生
pEB-C5及びpEB-TGエピソームプラスミドを使用する、臍帯血から単離したCD34+前駆体の再プログラミングを介して、iPSC株(ADAPi001)を作製した[Chou,B.K.,et al.,Efficient human iPS cell derivation by a non-integrating plasmid from blood cells with unique epigenetic and gene expression signatures.Cell Res,2011.21(3):p.518-29]。全てのADAPi001クローンは、追跡可能であり、GMP条件下で産生される。9つのADAPi001 hiPSCクローンを、各クローンについて生成された早期継代番号(p10)の小さなワーキングセルバンクで特徴評価した。cyto-SNP分析、核型決定、及びWGS(全ゲノム配列決定)を介して、ゲノム安定性を評価した。IHC(免疫組織化学)、フローサイトメトリー、及びPluritestを用いて、多能性を決定した[Muller,F.J.,et al.,A bioinformatic assay for pluripotency in human cells.Nat Methods,2011.8(4):p.315-7]。ADAPi001 iPSCクローンからのiT細胞の分化も確認した。
【0115】
iPSC細胞培養
iPSC株ChiPSC31(Takara)及びADAPi001_Jを編集実験に使用した。ChiPSC31 iPSC株を、DEF-CS500培養培地(Takara)を含むCOAT1マトリックス上で培養した。ADAPi001_J iPSC株を、mTeSR(商標)Plus培養培地(STEMCELL Technologies)を含むSynthemax(商標)II-SC基質(Corning)上で培養した。両方のiPSC株を、TrypLE(商標)Select(ThermoFisher)を用いる酵素による解離に適応させ、4~5日ごとに継代させた。加湿した37℃、5%のO2、5%のCO2のインキュベーター内に、iPSC培養物を維持した。多能性マーカー(POU5F1、NANOG、TRA-160、及びSOX2)の発現、及び分化マーカーSSEA-1の不在を、FACS分析によって定期的に監視した。
【0116】
AAV標的化ベクターの生成
pAAV-MCS(Agilent)プラスミドをNotI(NEB)で消化させて、左右逆位末端反復(ITR)領域間の配列を除去した。アガロースゲル抽出によって、ベクター骨格を精製した。左右の相同性アーム(LHA、配列番号43、及びRHA、配列番号44)、FuTA_A2M4導入遺伝子カセット、配列番号45、ならびにLOPX、配列番号48、隣接EF1A_Neo選択カセット配列番号47及び配列番号49を、PCRによって増幅させた。各プライマーは、Gibsonアセンブリによる標的化ベクターの生成を可能にする重複する配列を含有していた。iPSC株ADAPi001_Jから単離したゲノムDNA(gDNA)から、左及び右の相同性アーム配列(500bp)を増幅させた。LHAアームは、RHA上の1番染色体のヌクレオチド198755679~198756178に対応し、RHAは、ヌクレオチド198756182~198756681に対応する(Genome build GRCh38 Ensembl release 99-2020年1月)。ADP A2M4 TCR導入遺伝子は、2つのTCR鎖間にフーリン切断部位(RAKR)及びP2Aスキップ配列を有するTCRα及びTCRβ鎖のコード配列を含有する。LOXPに隣接する選択カセットを合成によって合成した(GeneArt)。pAAV_MCS_PTPRC_FuT2A_ A2M4_LOXPNEOプラスミドマップを
図3に示す。
【0117】
AAV産生
rAAV産生に使用したパッケージングプラスミドpHelper(Agilent 240071)及びAAV-3Rep-Capプラスミド(Cell Biolabs VPK-423)を、NEB(登録商標)5-alpha Competent E.coli.内で増殖させた。相同性アーム、FuT2A_A2M4、及びNEO選択カセットを含有するAAV標的化プラスミドを、NEB(登録商標)Stable Competent E.coli内で増殖させた。Plasmid Plus Giga Kit(Qiagen)またはEndoFree Plasmid Plus Giga Kit(Qiagen)を使用して、全てのプラスミドDNAを精製した。AAV導入遺伝子プラスミドにおけるITRの完全性を、AhdI及びBglI単一制限酵素消化液で確認した。
【0118】
rAAVを産生するために使用した293AAV細胞株(Cell Biolabs)を、10%(v/v)の熱不活性化FBS(Life Technologies)、DMEM、高グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸塩(Life Technologies)、Pen/Strep(Life Technologies)、及び非必須アミノ酸(Life Technologies)で培養した。トランスフェクションの24時間前に、293AAVを216×106/5CSの密度で5-cell stack(Corning)に播種した。Turbofectトランスフェクション試薬(Thremofisher)を使用して、2:1:1のモル比のrAAV導入遺伝子プラスミド、pHelper、及びAAV-3Rep-Capで293AAVをトランスフェクトした。各トランスフェクションには、合計2.6mgのプラスミドDNAを使用した。細胞を72時間培養し、その後採取し、ウイルス精製した。細胞を採取するために、6.25mMの最終濃度までEDTA(Thermofisher)を添加して、組織培養プラスチックからの細胞脱離を促進した。製造業者の指示に従って、イオジキサノール勾配超遠心分離またはAAVpro(登録商標)精製キット(Takara)を介して、rAAVウイルスを精製した。
【0119】
イオジキサノール勾配精製細胞ペレットを遠心分離(300g、5分)によって収集し、5mLの細胞溶解緩衝液(150mMのNaCl、5mMのTris-HCl、pH8.5)中に再懸濁させ、ドライアイス/エタノール浴及び37℃の水浴を使用して3回凍結解凍を施した。最終解凍後、溶解物をベンゾナーゼ(200U/mL)(Sigma)で1時間、37℃で処理した。残りの細片を遠心分離(1000g、29分、4℃)によって除去し、その後イオジキサノール勾配に充填した。イオジキサノール勾配(9mlの15%イオジキサノール、6mlの25%イオジキサノール、5mlの40%イオジキサノール、及び5mlの60%イオジキサノール)は、60%イオジキサノール(OptiPrep)(STEMCELL Technologies)を希釈することによって調製した。PBS-MK緩衝液(1×PBS、2.76mMのMgCl2、2mMのKCl)中に60%イオジキサノールを希釈することによって、25%及び40%のイオジキサノール相を調製した。PBS-MK緩衝液(1×PBS、1MのNaCl、2.76mMのMgCl2、2mMのKCl)中に60%イオジキサノールを希釈することによって、15%イオジキサノール相を調製した。これらの層を区別するために、フェノールレッドを25%及び60%の相に添加した。OptiSealポリプロピレン遠心チューブ(Beckman Coulter)に勾配相を段階的に添加する。細胞溶解物を15%相の上に充填し、18℃で90分間、67,000rpmの70Ti超遠心分離ロータで、チューブを遠心分離した。遠心分離後、40%相からrAAVを抽出する。rAAVウイルス調製物を、遠心分離フィルターユニット(MWCO 100kDa)(Millipore)を使用して更に濃縮し、緩衝液をPBS 0.001%(v/v)プルロン酸(Pluronic Acid)(Sigma)と交換した。ウイルス調製物を-80℃で保存した。
【0120】
QuantiTect Probe PCRキット(Qiagen)を使用するqPCRによって、ウイルス力価を確認した。プライマー及びプローブ配列を、ITRに対して設計する(Aurnhamer et al.,2012.Human Gene Ther Methods)。プライマー配列ITR_F GGAACCCCTAGTGATGGAGTT、配列番号54、ITR_R CGGCCTCAGTGAGCGA、配列番号55、プローブ56-FAM/CACTCCCTC/ZEN/TCTGCGCGCTCG/3IABkFQ。既知の濃度及びコピー数のpAAVS由来プラスミドDNAから調製した標準曲線に対して、ウイルス定量を決定した。PCRプログラムは、95℃で15分間の変性の1サイクル、続いて95℃で15秒間の変性及び60℃で60秒間のプライマーアニーリング/伸長の40サイクルからなっていた。qPCR反応を、QuantSudio7で実施し、QuantSudio(商標)Realtime PCRソフトウェアで分析した。
【0121】
遺伝子編集-PTPRC遺伝子座におけるエクソン33へのA2M4 SPEARのノックイン
iPSC株CHiPSC31及びADAPi001-Jを、単一細胞懸濁液としてTrypLE Select(ThermoFisher)を使用して酵素によって継代させた。解離後、iPSCを計数した(NucleoCounter NC-250)。GF3を補充した完全なDEF-CS500を含有する、コーティングした(Coat1)6ウェルプレートのウェルに、CHiPSC31(200~300×103)を播種した。翌日、培地を完全なDEF-CS500と交換した。1×CloneR(STEMCELL Technologies)を補充したmTeSR Plus(STEMCELL Technologies)を含有する、Synthemax(Corning)をコーティングした6ウェルプレートのウェルに、ADAPi001-J(2~3x105)を播種した。翌日、培地をmTeSR Plusと交換した。iPSC(CHiPSC31またはADAPi001-J)を48時間培養し、その後AAV形質導入した。CHiPSC31またはADAPi001-Jを、AAV3血清型ウイルス(500~10000Vg/細胞)で形質導入した。形質導入の48時間後に抗生物質選択(Geneticin、30~100μg/ml)を開始し、残りの培養物全体にわたって継続した。ウイルス形質導入の3~6日後、スクリーニング及びクローン単離のために、コーティングした96ウェルプレートにiPSCを播種した。クローンを、10~16日間96ウェルプレートで増殖させ、その後PCRスクリーニングを行った。場合によっては、陽性クローンに、限界希釈による追加のクローン単離を施した。組み込みを確認するために、PCRによって全てのクローンをスクリーニングした。全てのPCR産生物を配列検証した。
【0122】
クローン単離及びスクリーニング
編集したiPSC細胞プールをG418で選択した後、iPSCクローンを単離した。GF3及びG418(50μg/ml)を補充した完全なDEF-CS500と共に、編集したChiPSC31(3000個の細胞)を、10cmの皿に播種した。48時間ごとに、培地を、G418(50μg/ml)を補充した完全なDEF-CS500と交換した。11日間の増殖の後、クローンを手動で採取した。QuickExtract(商標)(Lucigen)を使用して、ゲノムDNA抽出のために試料を採取した。導入遺伝子組み込みについて、PCRによってクローンをスクリーニングした(
図4)。
【0123】
ADAPi001_J株から編集したクローンを、Synthemax(商標)をコーティングした96ウェルプレート内で限界希釈によって単離した。平均100細胞/ウェルで、細胞を播種した。9600個のiPSCをウェルA1に播種し、その後、カラム1(A1~H1)で2回連続希釈した。次いで、プレートの全ての列全体で、細胞を2倍に希釈した。1×CloneRを補充したmTeSR Plusに、編集したADAPiJ001_Jを播種した。2日ごとに、培地を、完全なmTeSR Plusと交換した。単一コロニーの存在についてウェルをスクリーニングする前に、細胞を12~14日間培養した。標的導入遺伝子の挿入を確認するために、クローンを拡大し、PCRによるスクリーニングのためにQuickExtract(商標)(Lucigen)を使用してゲノムDNAを単離した。
【0124】
PCR反応は相同性アームの境界を越えて行った。プライマーPTPRC-5int-FWD CAGTGATTCCTGCCCTGATTCTTA(配列番号50)及びPTPRC-5int-REV TACAGCCACAGGATCACGAGAAAG(配列番号51)で、5’LHA境界を増幅させた。プライマーPTPRC-5int-FWDは、1番染色体上のヌクレオチド198755562~198755585(+)(Genome build GRCh38 Ensembl release 99-2020年1月)に対応し、LHA配列の93ヌクレオチド上流に存在する。PTPRC-5int-REVプライマーは、A2M4導入遺伝子配列に存在する。プライマーPTPRC-3int-FWD CCTGCCGAGAAAGTATCCATCAT(配列番号52)及びPTPRC-3int-REV TAGCATACACACACATACCACCTT(配列番号53)で、3’RHA境界を増幅させた。プライマーPTPRC-3int-FWD1は、NEOカセットに存在し、PTPRC-3int-REV1は、1番染色体上のヌクレオチド198756729~198756752(-)に対応し、RHAから47ヌクレオチド下流に存在する。Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity2X Master Mix(NEB)を用いて、PCR反応を実施した。PCRプログラム変性98℃、30秒、1サイクル、40サイクル変性98℃、5秒、アニーリング66℃、10秒、伸長72℃、25秒、1サイクル伸長72℃、5分。PCR産生物をゲル精製し、サンガー配列決定して、組込みを確認した。陽性クローンを拡大し、小さな細胞バンクを作成した。フローサイトメトリーによって、多能性マーカー発現の維持を確認した。3つのクローンが分化のために進行した。ChiPSC31 PTPRC_A2M4クローン2、ADAPiJ001_J PTPRC_A2M4クローン3D10及びADAPiJ001_J PTPRC_A2M4クローン3G5。ChiPSC31 PTPRC_A2M4クローン2及びADAPiJ001_J PTPRC_A2M4クローン3G5は、1つの対立遺伝子でのADP A2M4のノックインを標的としていたが、AADAPiJ001_J PTPRC_A2M43D10は、両方の対立遺伝子にADP A2M4ノックインを標的としていた。
【0125】
T細胞分化
HiPSC維持培地を除去し、DMEM/F12(Invitrogen)で2回、細胞を洗浄した。2mLのStemPro34Plus(InvitrogenからのStemPro34;サプリメントを添加したStemPro34基礎培地、ならびにペニシリンストレプトマイシン(1% v/v:Invitrogen)、及びグルタミン(2mM:Invitrogen)、アスコルビン酸(50mg/ml:Sigma Aldrich)、及びモノチオグリセロール(100mM:Sigma Aldrich)、更に50ng/mLのアクチビンA(Miltenyi Biotecc)を補充した)を添加し、4時間インキュベートした。体積は、培養フラスコのサイズに依存し、典型的には、少なくとも2ml/9cm2、及び20ml/150cm2である。
【0126】
4時間後、培地を除去し、DMEM/F12で2回、細胞を洗浄して、残留する高濃度アクチビンAを除去した。5ng/mLのアクチビンA、10ng/mlのBMP4(Miltenyi Biotec)、及び5ng/mlのbFGF(Miltenyi Biotec)を補充した2mLのStemPro34 PLUSで培地を置き換え、44時間インキュベートした(ステージ1培地)。次いで、新鮮なステージ1培地で培地を置き換え、10μMのCHIR-99021(Selleckchem)を補充し、更に48時間培養した。
【0127】
4日目に培地を除去し、DMEM/F12で2回、細胞を洗浄して、残留するステージ1サイトカインを除去した。次いで、100ng/mLのSCF(Miltenyi Biotec)及び15ng/mLのVEGF(Miltenyi Biotec)を補充したStemPro34 PLUSで培地を置き換え、48時間インキュベートした(ステージ2培地)。次いで、培地に新鮮なステージ2培地を補充し、更に48時間細胞を培養した。
【0128】
次いで、最小限のSCF及びVEGFを必要とするステージ3培地で培地を置き換え、48時間ごとに半分を除去供給(demi depletion feeding)しながら、16~18日間細胞を培養した。これは、典型的には、遠心分離(300g、10分)による培地の採取及び懸濁液中の細胞の収集、ならびに新鮮な培地を含む培養物(すなわち、T150フラスコでは20mL)に細胞懸濁液を戻すことを伴う。
【0129】
およそ16日目に、生じた単層からCD34+細胞を後の培養のために単離した。Accutase(STEMCELL Technologies)を用いる37℃30分間の、次いでコラーゲンII(Invitrogen:2mg/ml)を用いる37℃30分間の連続的なインキュベーションによって、CD34+細胞を採取した。細胞懸濁液を収集し、洗浄し(DMEM/F12中、12分間、300gで2回の遠心分離)、その後、磁気活性化ビーズ(MACS)単離(Miltenyi:製造業者の指示に従って)を介して、CD34+細胞を単離した。
【0130】
継続的なリンパ球増殖及び分化のために、STEMCELL Technologies独自の2ステージ(リンパ球増殖/T細胞成熟)培地を用いた。
【0131】
ポロキサマーF108(Sigma)の存在下で、STEMCELL Technologiesリンパ球増殖培地中での培養中に、T細胞前駆体非編集対照株を、ADP A2M4 TCRを用いてレンチウイルスによって形質導入した。
【0132】
T細胞表現型
フローサイトメトリーを使用して、iPSC由来のT細胞を表現型決定した。CD3(クローンSK7)、A2M4デキストラマー、及び生死判定染色EF506で細胞を染色して、iPSC由来のT細胞におけるADP A2M4 TCRの発現を示した。
【0133】
図5は、形質導入したクローンの表現型データを示す。上述のように、CD7+CD5+前駆細胞のレンチウイルス形質導入を介して、iT細胞におけるADP A2M4の発現を誘導することができる。iPSC株ADAPi001_Jを分化させ、ステージ4のADP A2M4T細胞(CD7+CD5+前駆細胞)を含有して発現したレンチウイルスで形質導入し、分化プロトコルを通じて、形質導入した細胞を進行させた。抗TCR抗体抗Vα24及びMAGE-A4 GVYDGREHTV/HLA-A
*0201デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びADP A2M4発現によって、細胞を表現型決定した。
【0134】
図6は、編集したiPSCクローンから分化したiT細胞の表現型データを示す(ステージ5)。パネル(A)は、代替的な細胞株ChiPSC31 PTPRC_A2M4クローン2(単一の対立遺伝子を標的とする)から分化したiT細胞を示し、パネル(B)は、ADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3D10(両方の対立遺伝子を標的とする)から分化したiT細胞を示し、パネル(C)は、ADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3G5(単一の対立遺伝子を標的とする)から分化したiT細胞を示す。分化は、編集によって影響を受けない。フローサイトメトリーによってiT細胞を表現型決定し、CD45、CD7、CD5、CD4、CD8、CD56、及びCD3の発現を検出した。編集されたクローンは、ADP A2M4 TCRを発現する。抗TCR抗体抗Vα24及びMAGE-A4 GVYDGREHTV/HLA-A
*0201デキストラマーで染色することによって測定したFACS及びA2M4発現によって、細胞を表現型決定した。単一の対立遺伝子におけるノックインは、ADP A2M4 TCR発現を促進するのに十分であり、両方の対立遺伝子を標的とする場合、発現が改善される。
【0135】
フローサイトメトリー染色
フローサイトメトリーに、以下の抗体を使用した:CD8αβ-BV650(クローン2ST8.5H7)、TCRγδ-APC(クローンB1)、TCR Vα24-PE(クローンIP26)、CD3-APC-R700(クローンUCHT1)、CD4-BV605(クローンRPA-T4)、CD8α-PE-CY7(クローンRPA-T8)、CD69-BUV395(クローンFN50)、CD25-BV421(クローンBC96)、HLA-DR-AF488(クローンL243)、及びEF506-BV510。BD Fortessaで試料を取得した。
【0136】
KILR細胞毒性アッセイ
384ウェルの白色LUMITRAC 600マイクロプレート(Greiner)のウェル当たり、(KILR retroparticle(DiscoverX)を用いる形質導入によって生成された)10,000個のKILR T2を添加した。ステージ6の終了時に、ウェル当たり20,000個の細胞で、iPSC株に由来するT細胞を添加した。10
-5M~10
-11Mの力価で、MAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)を細胞に添加した。37℃の酸素正常状態下で24時間、細胞及びペプチドを同時培養し、その後、室温で1時間、KILR検出溶液(KILR検出キット(DiscoverX))を添加した。FLUOstar Omegaマイクロプレートリーダーを使用して、試料からの発光を検出した。iT細胞の細胞溶解活性を、健康なドナーからの非形質導入PBL対照と、ADP A2M4レンチウイルス形質導入PBL対照とを比較した。
図7は、ADAPi001_J(ADAP001_J WT NTDから分化したiT細胞(非形質導入))、ADP A2M4レンチウイルスで形質導入したADAPi001_J由来のiT細胞(ADAPi001_J WT A2M4 TD)、及び編集したADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3G10から分化したiT細胞から分化したiT細胞についてのデータを示す。シグナルの増加は、細胞死の増加を示し、データは、ノックイン編集されたADAPi001_J PTPRC_A2M4クローン3G10の強力な細胞溶解についてのエフェクター機能を示している。
【0137】
編集したADAPi001-J ADP A2M4 3D10iT細胞、ADP A2M4形質導入及び非形質導入ADAPi001-J(WT)由来のiT細胞もまた、MAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)の存在下または不存在下で24時間、A375(MAGE-A4+HLA-A*02+)またはCOLO205(MAGE-A4-HLA-A*02+)と同時培養した。サイトカイン(IFNγ及びIL-2)及びグランザイムB分泌を、ELISAによって測定した。編集したADP A2M4 iT細胞は、抗原依存的様式で高レベルの各サイトカインを放出することが見られた。
【0138】
抗原特異的活性化アッセイ
標的細胞として、A375(HLA-A
*02陽性及びMAGE-A4陽性)及びColo205(HLA-A
*02陽性及びMAGE-A4抗原陰性)腫瘍細胞株を使用した。(2時間かけて休止させた)1×10^6個のiPSC由来のT細胞またはPBL対照のいずれかと共に、200,000個の標的を96ウェル丸底プレート内で同時培養した。次いで、0.5μgのADP-A2A4ペプチド(GVYDGREHTV)を用いてまたは用いずに、標的細胞株及びT細胞を培養した。加えて、ペプチド及び標的細胞を用いずに、iPSC由来のT細胞を培養した。次いで、37℃で24時間、全ての細胞をインキュベートし、その後細胞を染色した。同時培養後、フローサイトメトリーによって、T細胞活性化マーカーCD69及びCD25の発現のアップレギュレーションが決定された。iT細胞について、非形質導入PBL対照と、ADP A2M4レンチウイルス形質導入PBL対照とを比較した(
図8)。抗原陽性腫瘍細胞株と共にインキュベーションすると、編集したADP A2M4 iT細胞は、活性化マーカーCD69及びCD25をアップレギュレートすることが見られた。
【0139】
RAG1 Null細胞ノックイン
iPSC細胞培養
配列によるRAG1編集、及びPTPRC遺伝子座へのA2MR TCRのノックインを、iPSC株ADAPi001_Jで実施した。ADAPi001_J iPSC株を、mTeSR(商標)Plus培養培地(STEMCELL Technologies)を含むSynthemax(商標)II-SC基質(Corning)上で培養した。両方のiPSC株を、TrypLE(商標)Select(ThermoFisher)を用いる酵素による解離に適応させ、4~5日ごとに継代させた。加湿した37℃、5%のO2、5%のCO2のインキュベーター内に、iPSC培養物を維持した。多能性マーカー(POU5F1、NANOG、TRA-160、及びSOX2)の発現、及び分化マーカーSSEA-1の不在を、FACS分析によって定期的に監視した。編集実験を順次行った。RAG1を不活性化したクローン7D10は、野生型ADAPi001_Jに由来した。RAG1-/-クローン7D10内のPTPRCエクソン33へのA2M4 TCRのノックインを介して、クローン1B7、2D7、及び2E7(RAG1-/-PTPRCA2M4/WT)を生成した。
【0140】
ガイドRNA配列
ガイドRNA TCTTTTCAAAGGATCTCACCを用いて、RAG1エクソン2を標的とした。この配列は、ヌクレオチド36,573,405~36,573,425、第11染色体(ヒトGRCh38 Ensembl release 103-2021年2月)に対応する。ガイドRNA GCAAGTCCAGCTTTAAATCA(ヌクレオチド198756151-198756171、1番染色体。ヒトGRCh38、ヒトGRCh38Ensembl release103-2021年2月)で、エクソン33 PTPRCを標的とした。IDTによって、ガイドRNA配列を合成した。
【0141】
リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体の調製
95℃で5分間の初期変性によって、crRNA及びtracrRNAをアニーリングし、その後、室温まで冷却した。室温で15分間、等モル量のアニーリングしたcrRNA/tracrRNA二本鎖及びCas9タンパク質をインキュベートして、10μMのリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を生成した。
【0142】
RAG1の不活性化
16ウェルNucleocuvette(商標)ストリップ(Lonza)を使用して、4D-Nucleofector(商標)によるヌクレオフェクションを介して、RNP複合体をiPSC細胞に導入した。緩衝液P3(Lonza)中に、100x10
3のADAPi-001_J(野生型)を再懸濁させた(5x10
6/ml)。3μlのRNP複合体(10μM)を20μlの細胞懸濁液に添加した。プログラムCA-137でヌクレオフェクションを実施した。1×CloneR(商標)(STEMCELL Technologies)を補充したmTeSR(商標)Plus培養培地(STEMCELL Technologies)に、以下のヌクレオフェクション細胞を直ちに播種した。2つの追加の継代のために、編集した細胞プールを増殖させ、その後、クローン単離のために播種した。平均100細胞/ウェルで、細胞を播種した。9600個のiPSCをウェルA1に播種し、その後、カラム1(A1~H1)で2回連続希釈した。次いで、プレートの全ての列全体で、細胞を2倍に希釈した。1×CloneR(商標)を補充したmTeSR Plusに、編集したADAPiJ001_Jを播種した。2日ごとに、培地を、完全なmTeSR Plusと交換した。単一コロニーの存在についてウェルをスクリーニングする前に、細胞を12~14日間培養した。クローンを増殖させ、RAG1(エクソン2)におけるINDELSを配列決定するために、PCRによるスクリーニングにQuickExtract(商標)(Lucigen)を使用してゲノムDNAを単離した。FWDプライマーCTTGGGACTCAGTTCTGCCC(11番染色体ヌクレオチド36573327~36573346(+)ヒトGRCh38 Ensembl release103-2021年2月)及びREVプライマーGAACTCAGTGGGGTGGATCG.第11染色体ヌクレオチド36573809~36573829(-)ヒトGRCh38 Ensembl release 103-2021年2月)を使用して、PCR反応(NEB Q5 HotStart)を実施した。Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity2X Master Mix(NEB)を用いて、PCR反応を実施した。PCRプログラム変性98℃、30秒、1サイクル、40サイクル変性98℃、5サイクル、アニーリング69℃、10秒、伸長72℃、30秒、1サイクル伸長72℃、2分。各クローンからのPCR産生物をTOPO Blunt(Thermofisher)にクローニングし、プラスミドクローンをサンガー配列決定して、各編集されたiPSCクローンに存在するINDELSを特徴評価する。この分析によって、クローンADAPi001_J_c7D10_RAG1
-/-が、1つの対立遺伝子において11bpの欠失、第2の対立遺伝子において16bpの欠失を有していたことが明らかになった。両方の変異は、RAG1に不活性化フレームシフト変異を導入することが予測される(
図1)。
【0143】
PTPRC(エクソン33)-ADAPi001_J_c7D10_RAG1-/-へのA2M4 TCRのノックイン
CRISPR Cas9及びrAAVによって供給される修復テンプレートを使用して、PTPRC遺伝子座(エクソン33)へのA2M4のノックインを実施した。gRNA配列gcaagtccagctttaaatca(1番染色体上のヌクレオチド198756152~198756171。ヒトGRCh38、Ensembl release103-2021年2月)を用いて、編集実験を実施した。Integrated DNA Technologiesによって、crRNAを合成した。
【0144】
12ウェルプレートのウェルに1×105個のiPSCを播種し、24時間後にトランスフェクトした。1×ClonerR(商標)(STEMCELL Technologies)を補充した完全なmTeSR-Plus(STEMCELL Technologies)中に、細胞を播種した。製造業者の指示に従って、トランスフェクション混合物を調製した。500ngのアニーリングしたcrRNA/tracrRNA二本鎖及び2.5μgのCas9タンパク質を、50μlのOptimem(Thermofisher)及び5μlのCas9に添加し、室温で15分間インキュベートして、リボヌクレオタンパク質(RNP)複合体を生成した。50μlのOptimem中の3μlのLipofectamine CRISPR-MAX(Thermofisher)を、RNP複合体形成後に添加し、次いで完全なトランスフェクション混合物を細胞に添加した。トランスフェクションの4時間後に、PTPRC_FuT2A_A2M4_LOXPNEOをコードするrAAV(血清型3)で、iPSCを形質導入した(1×103Vg/細胞)。rAAV形質導入の24時間後に、培地を、100μg/mlのG418(Thermofisher)を補充した完全なmTeSR-Plus(STEMCELL Technologies)と交換した。1回継代するために、編集した細胞プールを増殖させ、その後、限界希釈を用いて、Synthemax(商標)でコーティングした96ウェルプレート内でクローンを単離した。1.5×104個のiPSCをウェルA1に播種し、その後、カラム1(A1~H1)で2回連続希釈した。次いで、プレートの全ての列全体で、細胞を2倍に希釈した。1×CloneR(商標)を補充したmTeSR Plusに、編集したiPSCを播種した。2日ごとに、培地を、100μg/mlのG418(Thermofisher)を補充した完全なmTeSR Plusと交換した。単一コロニーの存在についてウェルをスクリーニングする前に、細胞を12~14日間培養した。標的導入遺伝子の挿入を確認するために、クローンを拡大し、PCRによるスクリーニングのためにQuickExtract(商標)(Lucigen)を使用してゲノムDNAを単離した。
【0145】
PCR反応は相同性アームの境界を越えて行った。プライマーPTPRC-5int-FWD CAGTGATTCCTGCCCTGATTCTTA及びPTPRC-5int-REV TACAGCCACAGGATCACGAGAAAGで、5’LHA境界を増幅させた。プライマーPTPRC-5int-FWDは、1番染色体上のヌクレオチド198755562~198755585(+)(ヒトGRCh38 Ensembl release 103-2021年2月)に対応し、LHA配列の93ヌクレオチド上流に存在する。PTPRC-5int-REVプライマーは、A2M4導入遺伝子配列に存在する。プライマーPTPRC-3int-FWD CCTGCCGAGAAAGTATCCATCAT及びPTPRC-3int-REV TAGCATACACACACATACCACCTTで、3’LHA境界を増幅させた。プライマーPTPRC-3int-FWD1は、NEOカセットに存在し、PTPRC-3int-REV1は、1番染色体上のヌクレオチド198756729~198756752(-)に対応し、RHAから47ヌクレオチド下流に存在する。(ヒトGRCh38、Ensembl release103-2021年2月)。Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity2X Master Mix(NEB)を用いて、PCR反応を実施した。PCRプログラム変性98℃、30秒、1サイクル、40サイクル変性98℃、5秒、アニーリング66℃、10秒、伸長72℃、25秒、1サイクル伸長72℃、5分。PCR産生物をゲル精製し、サンガー配列決定して、組込みを確認した。陽性クローンを拡大し、小さな細胞バンクを作成した。フローサイトメトリーによって、多能性マーカー発現の維持を確認した。
【0146】
IncuCyte(登録商標)細胞毒性アッセイ
20μlの完全なRPMI1640(RPMI1640、10%(v/v)FCS、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、2mMのL-グルタミン)中1500/ウェルの密度で、GFP+veA375(MAGE-A4+ve、HLA-A2*02+ve)標的細胞を、384ウェルプレート(Greiner Bio-One)に播種した。プレートをIncucyte Zoomに添加し、5%のCO2を含む37℃の加湿したインキュベーター内でインキュベートした。
【0147】
24時間後に、10μMの最終濃度のMAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)で標的にパルスをかけた。10μlの培地に、6000個のiT細胞を3回に分けて添加した。2時間ごとに6日間、Incucyteで画像を撮影した。次いで、Top-Hatプロセス定義を使用するZOOM2018Aソフトウェアを使用して、データを分析した。
【0148】
結論:
ADP A2M4 TCRを発現するiT細胞の分化を可能にする新規の編集戦略を提示してきた。編集されたADP A2M4 TCR iT細胞活性化及び細胞溶解エフェクター機能は、抗原に依存することが示された。CD56及びCD8αα発現、強力なサイトカイン及び細胞毒性を含む、編集されたADP A2M4 iT細胞の表現型は、編集されたADP A2M4 iT細胞が先天的かつ適応可能な表現型を有することを示唆している。
【0149】
デキストラマー染色は、編集されたADP A2M4 iT細胞が、ADP-A2M4 TCRのみを発現することを示唆しているが、この技術は、完全なTCRレパートリーに適用可能である。編集されたA2M4 TCR iT細胞は、健康なドナーからのA2M4 TCR形質導入PBLと比較して、同等であるか、または増加した、強力な細胞溶解性及びエフェクター機能を呈している。これは、自己A2M4 TCR T細胞のように、ADP-A2M4 iT細胞が、細胞療法に有効であり、患者に臨床的利益をもたらすであろうことを示唆している。
【0150】
ADP-A2M4 iT細胞の生成は、iPSC由来の同種異系プラットフォームを生成する上で重要なマイルストーンである。単一の定義された遺伝子座における遺伝子ノックインを介して、iT細胞におけるTCR発現を促進する能力は、様々な腫瘍抗原に対して特異的なTCRをコードする複数のクローンiPSCバンクを生成する機会を提供する。将来的には、この「既製の」プラットフォームは、腫瘍抗原発現プロファイルに特異的な患者に、適時な様式で、様々な、定義されかつ一貫したT細胞療法を送達することができる。
【0151】
配列
配列番号1、MAGE A4
【化19】
配列番号2、MAGE A4ペプチド
GVYDGREHTV
配列番号3、(CD8α)CDRは太字で下線付き、シグナル配列は斜体で下線付き
【化20】
配列番号4、(CD8α)
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGAGCCAGTTCCGGGTGTCGCCGCTGGATCGGACCTGGAACCTGGGCGAGACAGTGGAGCTGAAGTGCCAGGTGCTGCTGTCCAACCCGACGTCGGGCTGCTCGTGGCTCTTCCAGCCGCGCGGCGCCGCCGCCAGTCCCACCTTCCTCCTATACCTCTCCCAAAACAAGCCCAAGGCGGCCGAGGGGCTGGACACCCAGCGGTTCTCGGGCAAGAGGTTGGGGGACACCTTCGTCCTCACCCTGAGCGACTTCCGCCGAGAGAACGAGGGCTACTATTTCTGCTCGGCCCTGAGCAACTCCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCGGTCTTCCTGCCAGCGAAGCCCACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAACCACAGGAACCGAAGACGTGTTTGCAAATGTCCCCGGCCTGTGGTCAAATCGGGAGACAAGCCCAGCCTTTCGGCGAGATACGTCGGTTCAAGAGCTAAAAGAAGTGGTAGTGGTGCCCCTGTGA
配列番号5、(MAGE A4 TCRα鎖)CDRは太字で下線付き
【化21】
配列番号6、(MAGE A4 TCRα鎖コード配列)
ATGAAGAAGCACCTGACCACCTTTCTCGTGATCCTGTGGCTGTACTTCTACCGGGGCAACGGCAAGAACCAGGTGGAACAGAGCCCCCAGAGCCTGATCATCCTGGAAGGCAAGAACTGCACCCTGCAGTGCAACTACACCGTGTCCCCCTTCAGCAACCTGCGGTGGTACAAGCAGGACACCGGCAGAGGCCCTGTGTCCCTGACCATCCTGACCTTCAGCGAGAACACCAAGAGCAACGGCCGGTACACCGCCACCCTGGACGCCGATACAAAGCAGAGCAGCCTGCACATCACCGCCAGCCAGCTGAGCGATAGCGCCAGCTACATCTGCGTGGTGTCCGGCGGCACAGACAGCTGGGGCAAGCTGCAGTTTGGCGCCGGAACACAGGTGGTCGTGACCCCCGACATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGCGGGACAGCAAGAGCAGCGACAAGAGCGTGTGCCTGTTCACCGACTTCGACAGCCAGACCAACGTGTCCCAGAGCAAGGACAGCGACGTGTACATCACCGACAAGACCGTGCTGGACATGCGGAGCATGGACTTCAAGAGCAATAGCGCCGTGGCCTGGTCCAACAAGAGCGACTTCGCCTGCGCCAACGCCTTCAACAACAGCATTATCCCCGAGGACACATTCTTCCCAAGCCCCGAGAGCAGCTGCGACGTCAAGCTGGTGGAAAAGAGCTTCGAGACAGACACCAACCTGAACTTCCAGAACCTGAGCGTGATCGGCTTCAGAATCCTGCTGCTGAAGGTGGCCGGCTTCAACCTGCTGATGACCCTGAGACTGTGGTCCAGCGGCAGCCGGGCCAAGAGA
配列番号7、(MAGE A4 TCRβ鎖)CDRは太字で下線付き
【化22】
配列番号8、(MAGE A4 TCRβ鎖コード配列)
ATGGCCAGCCTGCTGTTCTTCTGCGGCGCCTTCTACCTGCTGGGCACCGGCTCTATGGATGCCGACGTGACCCAGACCCCCCGGAACAGAATCACCAAGACCGGCAAGCGGATCATGCTGGAATGCTCCCAGACCAAGGGCCACGACCGGATGTACTGGTACAGACAGGACCCTGGCCTGGGCCTGCGGCTGATCTACTACAGCTTCGACGTGAAGGACATCAACAAGGGCGAGATCAGCGACGGCTACAGCGTGTCCAGACAGGCTCAGGCCAAGTTCAGCCTGTCCCTGGAAAGCGCCATCCCCAACCAGACCGCCCTGTACTTTTGTGCCACAAGCGGCCAGGGCGCCTACGAGGAGCAGTTCTTTGGCCCTGGCACCCGGCTGACAGTGCTGGAAGATCTGAAGAACGTGTTCCCCCCAGAGGTGGCCGTGTTCGAGCCTTCTGAGGCCGAAATCAGCCACACCCAGAAAGCCACACTCGTGTGTCTGGCCACCGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAACTGTCTTGGTGGGTCAACGGCAAAGAGGTGCACAGCGGCGTGTCCACCGATCCCCAGCCTCTGAAAGAACAGCCCGCCCTGAACGACAGCCGGTACTGCCTGAGCAGCAGACTGAGAGTGTCCGCCACCTTCTGGCAGAACCCCAGAAACCACTTCAGATGCCAGGTGCAGTTTTACGGCCTGAGCGAGAACGACGAGTGGACCCAGGACAGAGCCAAGCCCGTGACACAGATCGTGTCTGCCGAAGCTTGGGGGCGCGCCGATTGTGGCTTTACCAGCGAGAGCTACCAGCAGGGCGTGCTGAGCGCCACCATCCTGTACGAGATCCTGCTGGGAAAGGCCACACTGTACGCCGTGCTGGTGTCTGCCCTGGTGCTGATGGCCATGGTCAAGCGGAAGGACAGCCGGGGC
配列番号9、(MAGE A4 TCRα鎖可変領域)136AA-CDRは太字で下線付き
【化23】
配列番号10、(MAGE A4 TCRβ鎖可変領域)133AA-CDRは太字で下線付き
【化24】
配列番号11、CDR1 MAGE A4 TCRα鎖、(残基48~53)
VSPFSN
配列番号12、CDR2 MAGE A4 TCRα鎖、(残基71~76)
LTFSEN
配列番号13、CDR3 MAGE A4 TCRα鎖、(残基111~125)
CVVSGGTDSWGKLQF
配列番号14、CDR1 MAGE A4 TCRβ鎖、(残基46~50)
KGHDR
配列番号15、CDR2 MAGE A4 TCRβ鎖、(残基68~73)
SFDVKD
配列番号16、CDR3 MAGE A4 TCRβ鎖、(残基110~123)
CATSGQGAYEEQFF
配列番号17、CDR1 CD8α(残基45~53)
VLLSNPTSG
配列番号18、CDR2 CD8α(残基72~79)
YLSQNKPK
配列番号19、CDR3 CD8α(残基118~123)
LSNSIM
配列番号20 ヒトアルファ-フェトプロテイン
【化25】
配列番号21 ヒトアルファ-フェトプロテインペプチド
FMNKFIYEI
親AFP TCR TRAV12-2
*02/TRAJ41
*01/TRACアルファ鎖アミノ酸細胞外配列(配列番号22)
【化26】
親AFP TCR TRBV9
*01/TRBD2/TRBJ2-7
*01/TRBC2 ベータ鎖アミノ酸細胞外配列(配列番号23)
【化27】
参照TCRアルファ鎖DNA配列(配列番号24)
【化28】
参照TCRベータ鎖DNA配列(配列番号25)
【化29】
DRGSQS(αCDR1)、配列番号26
IYSNGD(αCDR2)、配列番号27
AVNSDSGYALNF(αCDR3)、配列番号28
SGDLS(βCDR1)、配列番号29
YYNGEE(βCDR2)、配列番号30
ASSLGGESEQY(βCDR3)、配列番号31
DRGSQA(αCDR1)、配列番号32
AVNSDSSYALNF(αCDR2)、配列番号33
AVNSDSGVALNF(αCDR2)、配列番号34
AVNSQSGYALNF(αCDR2)、配列番号35
AVNSQSGYSLNF(αCDR2)、配列番号36
AVNSQNGYALNF(αCDR2)、配列番号37
DRGSFS(αCDR1)、配列番号38
DRGSYS(αCDR1)、配列番号39
AVNSQSSYALNF(αCDR2)、配列番号40
バリアントAFP TCR(AFP TRAV12-2
*02/TRAJ41
*01/TRACアルファ鎖アミノ酸細胞外配列、CDRは下線付き(配列番号41)
【化30】
バリアントAFP TCR TRBV9
*01/TRBD2/TRBJ2-7
*01/TRBC2ベータ鎖アミノ酸細胞外配列、CDRは下線付き(配列番号42)
【化31】
左相同性アーム(LHA)、配列番号43
TTTGGGGTTGCTCCAAGGTAAAGTTCAAAAAGTATCCTGCAGTCAACCCTTTAGCACCATAAAGAAACTAAATTATTTAGATGTTTTTATGAGAACATATCAAAAAGTACTTTTCTGTCATCCAATACTTCCACAAATAAATCATTAGTTCTTGCTAATCTTCATCTGGCATAAAAATAATGACATCAACTTTCTTCATGTAATTTCCCACTTAATTCCTTTACTAGGAGCAATATCAATTCCTATATGACGTCATTGCCAGCACCTACCCTGCTCAGAATGGACAAGTAAAGAAAAACAACCATCAAGAAGATAAAATTGAATTTGATAATGAAGTGGACAAAGTAAAGCAGGATGCTAATTGTGTTAATCCACTTGGTGCCCCAGAAAAGCTCCCTGAAGCAAAGGAACAGGCTGAAGGTTCTGAACCCACGAGTGGCACTGAGGGGCCAGAACATTCTGTCAATGGTCCTGCAAGTCCAGCTTTAAATCAAGGTTCA
右相同性アーム(RHA)、配列番号44
GAAAAGACATAAATGAGGAAACTCCAAACCTCCTGTTAGCTGTTATTTCTATTTTTGTAGAAGTAGGAAGTGAAAATAGGTATACAGTGGATTAATTAAATGCAGCGAACCAATATTTGTAGAAGGGTTATATTTTACTACTGTGGAAAAATATTTAAGATAGTTTTGCCAGAACAGTTTGTACAGACGTATGCTTATTTTAAAATTTTATCTCTTATTCAGTAAAAAACAACTTCTTTGTAATCGTTATGTGTGTATATGTATGTGTGTATGGGTGTGTGTTTGTGTGAGAGACAGAGAAAGAGAGAGAATTCTTTCAAGTGAATCTAAAAGCTTTTGCTTTTCCTTTGTTTTTATGAAGAAAAAATACATTTTATATTAGAAGTGTTAACTTAGCTTGAAGGATCTGTTTTTAAAAATCATAAACTGTGTGCAGACTCAATAAAATCATGTACATTTCTGAAATGACCTCAAGATGTCCTCCTTGTTCTACTCATATA
FuT2A_A2M4、配列番号45
TCCAGCGGCAGCCGGGCCAAGAGATCTGGATCAGGTGAGGGCAGAGGCAGCCTGCTGACATGTGGCGACGTGGAAGAAAACCCTGGCCCTATGAAGAAGCACCTGACCACCTTTCTCGTGATCCTGTGGCTGTACTTCTACCGGGGCAACGGCAAGAACCAGGTGGAACAGAGCCCCCAGAGCCTGATCATCCTGGAAGGCAAGAACTGCACCCTGCAGTGCAACTACACCGTGTCCCCCTTCAGCAACCTGCGGTGGTACAAGCAGGACACCGGCAGAGGCCCTGTGTCCCTGACCATCCTGACCTTCAGCGAGAACACCAAGAGCAACGGCCGGTACACCGCCACCCTGGACGCCGATACAAAGCAGAGCAGCCTGCACATCACCGCCAGCCAGCTGAGCGATAGCGCCAGCTACATCTGCGTGGTGTCCGGCGGCACAGACAGCTGGGGCAAGCTGCAGTTTGGCGCCGGAACACAGGTGGTCGTGACCCCCGACATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGCGGGACAGCAAGAGCAGCGACAAGAGCGTGTGCCTGTTCACCGACTTCGACAGCCAGACCAACGTGTCCCAGAGCAAGGACAGCGACGTGTACATCACCGACAAGACCGTGCTGGACATGCGGAGCATGGACTTCAAGAGCAATAGCGCCGTGGCCTGGTCCAACAAGAGCGACTTCGCCTGCGCCAACGCCTTCAACAACAGCATTATCCCCGAGGACACATTCTTCCCAAGCCCCGAGAGCAGCTGCGACGTCAAGCTGGTGGAAAAGAGCTTCGAGACAGACACCAACCTGAACTTCCAGAACCTGAGCGTGATCGGCTTCAGAATCCTGCTGCTGAAGGTGGCCGGCTTCAACCTGCTGATGACCCTGAGACTGTGGTCCAGCGGCAGCCGGGCCAAGAGATCTGGATCCGGCGCTACCAACTTTAGCCTGCTGAAGCAGGCCGGGGACGTGGAAGAAAACCCTGGCCCTAGGATGGCCAGCCTGCTGTTCTTCTGCGGCGCCTTCTACCTGCTGGGCACCGGCTCTATGGATGCCGACGTGACCCAGACCCCCCGGAACAGAATCACCAAGACCGGCAAGCGGATCATGCTGGAATGCTCCCAGACCAAGGGCCACGACCGGATGTACTGGTACAGACAGGACCCTGGCCTGGGCCTGCGGCTGATCTACTACAGCTTCGACGTGAAGGACATCAACAAGGGCGAGATCAGCGACGGCTACAGCGTGTCCAGACAGGCTCAGGCCAAGTTCAGCCTGTCCCTGGAAAGCGCCATCCCCAACCAGACCGCCCTGTACTTTTGTGCCACAAGCGGCCAGGGCGCCTACGAGGAGCAGTTCTTTGGCCCTGGCACCCGGCTGACAGTGCTGGAAGATCTGAAGAACGTGTTCCCCCCAGAGGTGGCCGTGTTCGAGCCTTCTGAGGCCGAAATCAGCCACACCCAGAAAGCCACACTCGTGTGTCTGGCCACCGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAACTGTCTTGGTGGGTCAACGGCAAAGAGGTGCACAGCGGCGTGTCCACCGATCCCCAGCCTCTGAAAGAACAGCCCGCCCTGAACGACAGCCGGTACTGCCTGAGCAGCAGACTGAGAGTGTCCGCCACCTTCTGGCAGAACCCCAGAAACCACTTCAGATGCCAGGTGCAGTTTTACGGCCTGAGCGAGAACGACGAGTGGACCCAGGACAGAGCCAAGCCCGTGACACAGATCGTGTCTGCCGAAGCTTGGGGGCGCGCCGATTGTGGCTTTACCAGCGAGAGCTACCAGCAGGGCGTGCTGAGCGCCACCATCCTGTACGAGATCCTGCTGGGAAAGGCCACACTGTACGCCGTGCTGGTGTCTGCCCTGGTGCTGATGGCCATGGTCAAGCGGAAGGACAGCCGGGGCTAA
合成ポリA配列、配列番号46
AATAAAATATCTTTATTTTCATTACATCTGTGTGTTGGTTTTTTGTGTG
EF1Aプロモーター、配列番号47
GCTCCGGTGCCCGTCAGTGGGCAGAGCGCACATCGCCCACAGTCCCCGAGAAGTTGGGGGGAGGGGTCGGCAATTGAACCGGTGCCTAGAGAAGGTGGCGCGGGGTAAACTGGGAAAGTGATGTCGTGTACTGGCTCCGCCTTTTTCCCGAGGGTGGGGGAGAACCGTATATAAGTGCAGTAGTCGCCGTGAACGTTCTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAG
LOXP、配列番号48
ATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAAGTTAT
NEO耐性遺伝子、配列番号49
ATGGGATCGGCCATTGAACAAGATGGATTGCACGCAGGTTCTCCGGCCGCTTGGGTGGAGAGGCTATTCGGCTATGACTGGGCACAACAGACGATCGGCTGCTCTGATGCCGCCGTGTTCCGGCTGTCAGCGCAGGGGCGCCCGGTTCTTTTTGTCAAGACCGACCTGTCCGGTGCCCTGAATGAACTGCAGGACGAGGCAGCGCGGCTATCGTGGCTGGCCACGACGGGCGTTCCTTGCGCAGCTGTGCTCGACGTTGTCACTGAAGCGGGAAGGGACTGGCTGCTATTGGGCGAAGTGCCGGGGCAGGATCTCCTGTCATCTCACCTTGCTCCTGCCGAGAAAGTATCCATCATGGCTGATGCAATGCGGCGGCTGCATACGCTTGATCCGGCTACCTGCCCATTCGACCACCAAGCGAAACATCGCATCGAGCGAGCACGTACTCGGATGGAAGCCGGTCTTGTCGATCAGGATGATCTGGACGAAGAGCATCAGGGGCTCGCGCCAGCCGAACTGTTCGCCAGGCTCAAGGCGCGCATGCCCGACGGCGAGGATCTCGTCGTGACCCATGGCGATGCCTGCTTGCCGAATATCATGGTGGAAAATGGCCGCTTTTCTGGATTCATCGACTGTGGCCGGCTGGGTGTGGCGGACCGCTATCAGGACATAGCGTTGGCTACCCGTGATATTGCTGAAGAGCTTGGCGGCGAATGGGCTGACCGCTTCCTCGTGCTTTACGGTATCGCCGCTCCCGATTCGCAGCGCATCGCCTTCTATCGCCTTCTTGACGAGTTCTTCTGA
プライマーPTPRC-5int-FWD(配列番号50)
CAGTGATTCCTGCCCTGATTCTTA
プライマーPTPRC-5int-REV(配列番号51)
TACAGCCACAGGATCACGAGAAAG
プライマーPTPRC-3int-FWD(配列番号52)
CCTGCCGAGAAAGTATCCATCAT
プライマーPTPRC-3int-REV(配列番号53)
TAGCATACACACACATACCACCTT
プライマーITR_F(配列番号54)
GGAACCCCTAGTGATGGAGTT
プライマーITR_R(配列番号55)
CGGCCTCAGTGAGCGA
【配列表】
【国際調査報告】