(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】3D印刷によって物品を製造するためのポリマー、組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20230606BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230606BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230606BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230606BHJP
【FI】
C08G73/10
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568398
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2021062684
(87)【国際公開番号】W WO2021228973
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】521152851
【氏名又は名称】ヴァージニア テック インテレクチュアル プロパティーズ, インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソリアノ, エドゥアルド
(72)【発明者】
【氏名】ポリーノ, ジョーエル
(72)【発明者】
【氏名】クワン, カーミット エス.
(72)【発明者】
【氏名】アリントン, クレイ ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】メーナクシスンダラム, ビスワナト
(72)【発明者】
【氏名】ロング, ティモシー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, クリストファー ブライアント
(72)【発明者】
【氏名】ラウ, ダニエル アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA05
4J043PB02
4J043PB14
4J043QB15
4J043QB23
4J043QB26
4J043RA06
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA21
4J043TA25
4J043TA26
4J043TB03
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA542
4J043XA04
4J043XA19
4J043YA24
4J043ZA60
4J043ZB51
(57)【要約】
本発明は、例えば、3次元(3D)物品のフォトファブリケーションのためのリソグラフィプロセスといったVat光重合プロセスに使用され得るポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマーに関する。本発明は、これらのポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマーを含むポリマー組成物に更に関する。なおも更に、本発明は、前述のポリマー組成物を組み込んでいる3次元(3D)物体を形成するためのvat光重合方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
に従った繰り返し単位p、q及びrを含むポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマー(P1)であって、式中、
・n
p、n
q及びn
rは、それぞれ各繰り返し単位p、q及びrのモル%であり、
・繰り返し単位p、q及びrは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており、
・0<n
p≦100モル%であり、
・0<n
q≦100モル%であり、
・n
rは、≧0モル%であり、
- Ar
1及びAr
2は、互いに独立して、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- Ar
3は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される四価芳香族部分であり、
- Z
1、Z
2及びZ
3は、互いに独立して、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルであり、
- R
1及びR
2は、互いに独立して、H又はアルキルであり、
- Xは、OR
3、Cl、Br、F又はIであり、ここで、R
3は、H又はアルキルであり、
- Yは、
・O-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、kは、1~20であり、及びR
4は、H又はアルキルである)、
・O-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6又はO-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、pは、0~20であり、Arは、1個又は2個の芳香族又はヘテロ芳香族環を含み、R
5及びR
6は、H若しくはアルキル、フェニル又はCOOR
7であり、ここで、R
7は、H又はアルキルである)、
・O-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、qは、0~20であり、及びR
8は、H又はアルキルである)、
・O-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、rは、0~20であり、及びR
9は、H又はアルキルである)、
・
【化2】
(ここで、sは、0~20である)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,PR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、q及びR
8は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、r及びR
9は、上記で定義された通りである)、
・
【化3】
(ここで、sは、上記で定義された通りである)
からなる群から選択され、
R
a、R
b及びR
cは、独立して、H又はアルキルである、ポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマー(P1)。
【請求項2】
Ar
1及びAr
2は、
【化4】
(式中、
Mは、
・1~6個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくは-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン、好ましくは-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
・1~6個の炭素原子を有するアルキリデン、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
・-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、及び
・式-O-Ar
4-O-(ここで、Ar
4は、それぞれの基が5~50個の炭素原子を有する、1個又はいくつかの置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基を有する)の基
からなる群から選択される二価の部分である)
からなる群から選択される、請求項1に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)。
【請求項3】
前記Z
1、Z
2及びZ
3の二価有機ラジカルは、
【化5】
(式中、
- Gは、
・1~6個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくは-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン、好ましくは-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
・1~6個の炭素原子を有するアルキリデン、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
・-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-
からなる群から選択される)
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)。
【請求項4】
Z
1、Z
2及びZ
3の少なくとも1つは、式(VIII):
【化6】
(式中、
- Gは、
・1~6個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくは-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン、好ましくは-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
・1~6個の炭素原子を有するアルキリデン、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
・-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-
からなる群から選択され、及び
- Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各Rについて独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)
に従う、請求項1~3のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)。
【請求項5】
・50モル%≦(n
p+n
q)≦100モル%であり、ここで、n
q>0モル%であり、及びn
p≧0モル%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)。
【請求項6】
(ポリスチレン標準を用いて、DMFを移動相として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されて)
- 100,000g/モル未満、90,000g/モル未満若しくは90,000g/モル未満、及び/又は
- 1,000g/モル超、2,000g/モル超若しくは3,000g/モル超
の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)。
【請求項7】
調合物(F)であって、
- 請求項1~6のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)と、
- 少なくとも1種の溶媒と、
- 任意選択的に、1種の光増感剤と、
- 任意選択的に、1種の光開始剤と、
- 任意選択的に、1種のブロッカーと
を含む調合物(F)。
【請求項8】
- 前記溶媒は、クロロベンゼン、クロロホルム、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、水、エタノール、メタノール及びアンモニアからなる群から選択され、
- 前記光増感剤は、ベンゾフェノン、アントラキノン、9-アントラセンメタノール及びこれらの混合物からなる群から選択され、
- 前記光開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択され、及び/又は
- 前記ブロッカーは、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジアジン、トリアジン、ベンゾエート、オキサラニリド、アゾベンゼン、金属酸化物及びこれらの任意の組み合わせ並びにこれらの混合物からなる、アボベンゾン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェンからなる群から選択される、請求項7に記載の調合物(F)。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)を調製するプロセスであって、極性非プロトン性溶媒及び有機塩基の存在下において、
- 式(IX):
【化7】
の化合物を、任意選択的に、式(X)及び(XI):
【化8】
のいずれか1つの化合物、並びに
- 式(XII):
NR
nR
m-Z
2-NR
nR
m (XII)
の化合物、任意選択的に、式(XIII)又は(XIV):
NR
nR
m-Z
1-NR
nR
m (XIII)
NR
nR
m-Z
3-NR
nR
m (XIV)
のいずれか1つの化合物と反応させることを含み、式中、
- Ar
1及びAr
2は、互いに独立して、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- Ar
3は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される四価芳香族部分であり、
- Xは、OR、Cl、Br、F又はIであり、ここで、Rは、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- R
n及びR
mは、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- Z
1、Z
2及びZ
2は、互いに独立して、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
- Yは、
・O-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、kは、1~20であり、及びR
4は、H又はアルキルである)、
・O-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6又はO-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、pは、0~20であり、Arは、1個又は2個の芳香族又はヘテロ芳香族環を含み、R
5及びR
6は、H若しくはアルキル、フェニル又はCOOR
7であり、ここで、R
7は、H又はアルキルである)、
・O-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、qは、0~20であり、及びR
8は、H又はアルキルである)、
・O-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、rは、0~20であり、及びR
9は、H又はアルキルである)、
・
【化9】
(ここで、sは、0~20である)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,PR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、q及びR
8は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、r及びR
9は、上記で定義された通りである)、
・
【化10】
(ここで、sは、上記で定義された通りである)
からなる群から選択され、
R
a、R
b及びR
cは、独立して、H又はアルキルである、プロセス。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)を調製するプロセスであって、極性非プロトン性溶媒、及び/若しくは水性溶媒、及び/若しくはアルコール、及び/若しくは有機塩基又はこれらの混合物の存在下において、
- 式R
nR
mN-P-NR
nR
m(ここで、Pは、式(XV):
【化11】
(式中、
- Ar
1は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- Xは、OR、Cl、Br、F又はIであり、ここで、Rは、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- R
n及びR
mは、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- R
1は、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- Z
1は、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルである)
に従った繰り返し単位pを含む)のPAI前駆体ポリマー(P0)を、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・PR
aR
bR
c-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、q及びR
8は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、r及びR
9は、上記で定義された通りである)、
・
【化12】
(ここで、sは、上記で定義された通りである)
からなる群から選択される化合物と反応させることを含み、R
a、R
b及びR
cは、独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである、プロセス。
【請求項11】
3次元(3D)物品を付加製造システムで製造する方法であって、
- 請求項7又は8に記載の調合物(F)を提供する工程、
- 前記調合物(F)から前記3次元(3D)物品の層を印刷する工程、
- 任意選択的に、前記3D物品を50~450℃の範囲の温度で硬化させる工程
を含む方法。
【請求項12】
前記印刷する工程は、前記ポリマー組成物に光、例えばUV光又は可視光を照射する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも部分的に、請求項11又は12に記載の方法によって入手可能な3次元(3D)物品又は物体であって、式(XVI)及び任意選択的に式(XVIII):
【化13】
、好ましくは、
【化14】
【化15】
、好ましくは、
【化16】
(式中、
- Ar
1及びAr
2は、互いに独立して、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- R
1及びR
2は、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- Z
1及びZ
2は、互いに独立して、式(XIX):
【化17】
(式中、
- Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各Rについて独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である)
のラジカルである)
に従った繰り返し単位を含む3次元(3D)物品又は物体。
【請求項14】
vat光重合、ステレオリソグラフィ(SLA)、直接インク書込み(DIW)、デジタルライトプロセッシング(DLP)又はインクジェットプロセスによる3D物体の製造のための、単独での又は他の成分と組み合わせての、請求項1~6のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)又は請求項7若しくは8に記載のポリマー調合物(F)の使用。
【請求項15】
物品をコートするための、単独での又は他の成分と組み合わせての、請求項1~6のいずれか一項に記載のPAI前駆体ポリマー(P1)又は請求項7若しくは8に記載のポリマー調合物(F)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国において2020年5月14日に番号第63/025,142号で出願された1つの特許出願及び欧州において2020年7月14日に番号第20185789.3号で出願された1つの特許出願の優先権を主張するものであり、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、例えば、3次元(3D)物品のフォトファブリケーションのためのVat光重合及びリソグラフィプロセスに使用され得るポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマーに関する。本発明は、これらのポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマーを含むポリマー組成物に更に関する。なおも更に、本発明は、前述のポリマー組成物を組み込んでいる3次元(3D)物体を形成するためのリソグラフィ方法などのVat光重合方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物は、例えば、エンジンパーツとしての、自動車及び航空宇宙産業のための物品並びに例えば埋込式デバイス及び歯科用人工装具としての、ヘルスケア産業における物品を製造するために一般に使用されている。これらの物品は、製造後に良好な機械的特性を示さなければならないが、それらは、とりわけ、その使用温度(ときに150℃もの高温)で経時的にこれらの特性の十分な百分率も保持しなければならない。特に、ポリ(アミドイミド)(PAI)ポリマーは、機械的強度と安定性との組み合わせを呈し、需要のある航空宇宙及び自動車環境における汎用性を可能にする。更に、低い熱膨張の断熱性及び係数により、マイクロエレクトロニクス産業において、これらポリマーの幅広い影響が可能となる。
【0004】
ポリマー材料からの3D物品のフォトファブリケーションのための、リソグラフィプロセスなどのVat光重合プロセスは、それらの相対速度及び簡単さのために最近人気を得ている。一般に、リソグラフィプロセスなどのvat光重合プロセスは、重合性組成物を特定の場所で局部的に硬化させるために、光、例えばUV照射の使用を伴う。局部的な硬化は、3次元物品の製造を可能にする。Vat光重合(VP)又はUV補助型直接インク書込み式印刷(DIW)は、光ベースのリソグラフィ添加剤製造技術の2つの例であり、高いパーツ解像度が得られる。
【0005】
リソグラフィプロセスは、一般に、部品を良好な解像度で得るために、液体である重合性組成物を使用する。室温で液体である重合性組成物は、印刷プロセスにおいて使用するのがより容易であるが、それらは、一般に、中程度の機械的特性及び熱安定性を有する物品をもたらす。
【0006】
国際公開第18035368A1号パンフレットは、液槽光重合のためのポリマー樹脂に関する。ポリマー樹脂は、ポリアミド酸ジアクリレートエステル又はその塩、それにペンダント式に結合した複数の光架橋性基を含むポリアミド酸ジアクリレートエステル又はその塩、好適な波長及び強度の光源に曝されたときに光架橋性基の架橋を開始させるのに好適な光開始剤及び好適な有機溶媒を含み得る。
【0007】
Hegde et al.“3D printing all-aromatic high-performance polyimides using μSLA:Processing the non-processable”(252nd ACS National Meeting&Exposition,August 21-25,2016)及びHedge et al.“3D Printing All-Aromatic Polyimides using Mask-Projection Stereolithography:Processing the Nonprocessable”(Adv.Mater.2017,29,2017年6月19日発行)は、各繰り返し単位が4,4’-オキシジアニリン(ODA)及びピロメリット酸二無水物に由来し、且つ2個の光架橋性アクリレート基を含有するポリアミド酸ジアクリレートエステル(PADE)の3D印刷を開示している。
【0008】
Herzberger et al.“3D Printing All-Aromatic Polyimides Using Stereolithographic 3D Printing of Polyamic Acid Salts”(ACS Macro Lett.,2018,7(4),pp 493-497)は、4,4’-オキシジアニリン(ODA)及びピロメリット酸二無水物に由来し、且つ2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを含有するポリアミド酸(PAA)構造物の3D印刷を記載している。
【0009】
フォトファブリケーション後に良好な機械的特性を示し、且つ高温、例えば150℃超への曝露後にそれらの機械的特性を実質的に保持する3D物品を製造することができる、リソグラフィプロセスにおいて使用される、正しく設定された熱的特性(Tm及びTg)を有する重合性ポリマー及び組成物が必要とされている。とりわけ、ポリマーの流れを熱により誘導するために必要な温度で熱的に安定である、高温3D印刷プロセスに好適である重合性ポリマー及び組成物も必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】光重合中の貯蔵弾性率(G’、Pa)及び損失率(G’’Pa)対時間を示す、本発明に従った調合物の光レオロジープロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態において、要素又は成分は、個々の列挙された要素又は成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素又は成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分もこのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、及び
- 本明細書での端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含み、及び
- 特定の化合物は、特定の化学的表現に従って表されるものの、化合物の全ての異性体が本明細書において式により含められるものと理解されるべきである。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、例えば、3次元(3D)物品のフォトファブリケーションのためのリソグラフィプロセスに使用され得るポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマーに関する。
【0013】
VAT光重合は、紫外(UV)光又は可視光の焦点を架橋性フォトポリマー樹脂の液槽に合わせることによって動作する付加製造プロセスである。次いで、複雑な3次元(3D)構造物を層ごとの方式で構築することができる。
【0014】
本発明のPAI前駆体ポリマーは、例えば、リソグラフィプロセス(又はステレオリソグラフィ技術、SLA)などのVat光重合プロセス、インクジェット技術、直接インク書込み(DIW)又はデジタルライトプロセッシング(DLP)を用いて、物品を製造するために3D印刷され得る。
【0015】
本発明のPAI前駆体ポリマーは、とりわけ、液体、粉末又はペレットの形態であり得る。
【0016】
PAI前駆体ポリマーは、とりわけ、PAI繰り返し単位を含有するため、印刷された材料は、PAIポリマー自体に類似の特性、とりわけ機械的特性を示すことが知られている。
【0017】
本発明のポリ(アミドイミド)(PAI)前駆体ポリマー(P1)は、式(I):
【化1】
に従った繰り返し単位p、q及びrを含み、式中、
・n
p、n
q及びn
rは、それぞれ各繰り返し単位p、q及びrのモル%であり、
・繰り返し単位p、q及びrは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており、
・0<n
p≦100モル%であり、
・0<n
q≦100モル%であり、
・n
rは、≧0モル%であり、
モル%は、PAI前駆体ポリマー中の総モル数に基づき、
- Ar
1及びAr
2は、互いに独立して、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- Ar
3は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される四価芳香族部分であり、
- Z
1、Z
2及びZ
3は、互いに独立して、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルであり、
- R
1及びR
2は、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくはHであり、
- Xは、OR
3、Cl、Br、F又はIであり、ここで、R
3は、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- Yは、
・O-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、kは、1~20、好ましくは1~8、より好ましくは2~6であり、更に一層好ましくは2又は3に等しく、及びR
4は、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである)、
・O-(CH
2)p-Ar-CR
5=CHR
6又はO-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、pは、0~20、好ましくは1~8であり、Arは、1個又は2個の芳香環又はヘテロ芳香環を含み、R
5及びR
6は、H、アルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル、フェニル又はCOOR
7であり、ここで、R
7は、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである)、
・O-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、qは、0~20、好ましくは1~8であり、及びR
8は、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである)、
・O-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、rは、0~20、好ましくは1~8であり、及びR
9は、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである)、
・
【化2】
(ここで、sは、0~20、好ましくは1~8である)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,PR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、q及びR
8は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、r及びR
9は、上記で定義された通りである)、
・
【化3】
(ここで、sは、上記で定義された通りである)
からなる群から選択され、
R
a、R
b及びR
cは、独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである。
【0018】
本発明のPAIポリマーは、少なくとも繰り返し単位p及びqを含むようなものである。そのため、あまりに多くの反応性アクリレートからのあまりに多くの架橋が材料を脆化させ得ることが起こり得るため、架橋度合いを調整し、必要に応じて、印刷されている対象をより固くする(脆さを少なくする)ことが可能である。PAIポリマーは、全てのアクリレートレベルを微細にチューニングする可能性をもたらし、したがって印刷と材料特性とのバランスを取って最適化させることが可能となる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明のPAI前駆体ポリマーは、ポリマーがポリマー中の総モル数に基づいて50モル%以上の繰り返し単位qを含むように、繰り返し単位qを含む。これらの実施形態に従い、50モル%≦nq≦100モル%である。PAI前駆体ポリマーは、例えば、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上の繰り返し単位qを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明のPAI前駆体ポリマーは、ポリマーがポリマー中の総モル数に基づいて50モル%以上の繰り返し単位p及びqを含むように、繰り返し単位p及びqを含む。これらの実施形態に従い、50モル%≦(np+nq)≦100モル%である。PAI前駆体ポリマーは、例えば、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上の繰り返し単位p及びqを含むことができる。これらの実施形態では、np及びnqは、nq>0モル%及びnp>0モル%、例えばnq>10モル%及びnp>0モル%又はnq>50モル%及びnp>10モル%となる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明のPAIポリマーは、ポリマーがポリマー中の総モル数に基づいて50モル%以上の繰り返し単位p、q及びrを含むように、繰り返し単位p、q及びrを含む。これらの実施形態に従い、50モル%≦(np+nq+nr)≦100モル%である。PAIポリマーは、例えば、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上の繰り返し単位p、q及びrを含むことができる。これらの実施形態では、np、np及びnrは、nq>0モル%、np>0モル%及びnr≧0モル%、例えばnq>10モル%、np>0モル%及びnr>0モル%又はnq>50モル%及びnp>0モル%、nr>10モル%となる。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明のPAI前駆体ポリマーは、繰り返し単位qから本質的になる。これらの実施形態に従い、nqは、95~100モル%、例えば96~99.5モル%、97~99モル%又は98~98.5モル%を占める。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明のPAI前駆体ポリマーは、繰り返し単位p及びqから本質的になる。これらの実施形態に従い、nq及びnpの合計は、95~100モル%、例えば96~99.5モル%、97~99モル%又は98~98.5モル%を占める。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明のPAI前駆体ポリマーは、繰り返し単位p、q及びrから本質的になる。これらの実施形態に従い、(nq+np+nr)の合計は、95~100モル%、例えば96~99.5モル%、97~99モル%又は98~98.5モル%を占める。
【0025】
本発明のPAI前駆体ポリマーは、更なる繰り返し単位も含むことができる。例えば、本発明のPAI前駆体ポリマーは、式(Rs):
【化4】
に従った繰り返し単位sを含むことができ、式中、
・n
sは、繰り返し単位sのモル%であり、
・繰り返し単位sは、前駆体ポリマーの他の繰り返し単位に対して、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており、
・n
sは、≧0モル%であり、
モル%は、PAI前駆体ポリマー中の総モル数に基づき、
- Ar
4は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される四価芳香族部分であり、
- Z
4は、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルであり、
- R
2は、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキル、より好ましくはHであり、及び
- Xは、OR
3、Cl、Br、F又はIであり、ここで、R
3は、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキルである。
【0026】
繰り返し単位p及びqは、置換又は非置換であり得る、5~50個の炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基である三価芳香族部分Ar
1及びAr
2を含む。これらの基は、好ましくは、
【化5】
からなる群から選択される芳香族基であり、式中、
Mは、
・1~6個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくは-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン、好ましくは-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
・1~6個の炭素原子を有するアルキリデン、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
・-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-、及び
・式-O-A
r4-O-(ここで、A
r4は、それぞれの基が5~50個の炭素原子を有する、1個又はいくつかの置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基である)の基
からなる群から選択される二価の部分である。
【0027】
好ましくは、繰り返し単位p及びqの三価芳香族部分Ar1及びAr2は、上記の式(II)に従う。
【0028】
繰り返し単位p、q及びrは、それぞれ二価の基Z
1、Z
2及びZ
3を含み、これらは、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルであり、二価の基は、互いに独立して、式(i)~(v):
【化6】
からなる群から選択されることが好ましく、式中、
- Gは、
・1~6個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくは-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン、好ましくは-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
・1~6個の炭素原子を有するアルキリデン、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
・-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-
からなる群から選択される。
【0029】
より好ましくは、繰り返し単位p、q及びrは、それぞれZ
1、Z
2及びZ
3の二価有機ラジカルの基を含み、これらの少なくとも1つは、式(VIII):
【化7】
に従い、式中、
- Gは、
・1~6個の炭素原子を有するアルキレン、好ましくは-C(CH
3)
2及び-C
nH
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・1~6個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン、好ましくは-C(CF
3)
2及び-C
nF
2n-(ここで、nは、1~6の整数である)、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキレン、
・1~6個の炭素原子を有するアルキリデン、
・4~8個の炭素原子を有するシクロアルキリデン、
・-O-、-S-、-C(O)-、-SO
2-、-SO-
からなる群から選択され、
- Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ土類金属(alkali earth metal)スルホネート、アルカリ土類金属(alkaline earth metal)スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び四級アンモニウムからなる群から選択され、及び
- iは、各Rについて独立して、ゼロ又は1~4の範囲の整数である。
【0030】
更により好ましくは、繰り返し単位p、q及びrは、それぞれZ
1、Z
2及びZ
3を含み、Z
1、Z
2及び/又はZ
3の少なくとも1つは、式(VIII):
【化8】
に従い、式中、
- Iは、0であり、及び
- Gは、式-C
nH
2nのアルキレンであり、ここで、nは、1~6、好ましくは1又は2の整数である。
【0031】
Z1、Z2及び/又はZ3の少なくとも1つが(i)、(ii)又は(iii)、例えばフェニレン(C6H6)である実施形態では、二価の基は、ポリマー鎖に対してオルト位(例えば、1,2-アミノフェニル)、メタ位(例えば、1,3-アミノフェニル)又はパラ(例えば、1,4-アミノフェニル)、好ましくは炭素鎖に対してパラ位(例えば、1,4-アミノフェニル)にあり得る。
【0032】
PAI前駆体ポリマー(P1)は、(ポリスチレン標準を用いて、DMFを移動相として使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されて)
- 100,000g/モル未満、90,000g/モル未満若しくは90,000g/モル未満、及び/又は
- 1,000g/モル超、2,000g/モル超若しくは3,000g/モル超
の数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0033】
一実施形態によれば、本発明のPAI前駆体ポリマー(P1)は、ASTM D3418に従って示差走査熱量法(DSC)によって測定されて120~300℃、好ましくは170~295℃、より好ましくは200~290℃、更により好ましくは250~285℃の範囲のTgを有する。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、上に記載されたPAI前駆体ポリマー(P1)は、フォトファブリケーションプロセスにおいて使用される調合物(F)に組み込まれ得る。特に、本発明のポリマー(P1)及び調合物(F)は、官能化ポリマーを硬化させるか又は架橋するために光が使用されるリソグラフィプロセスに組み込むことができる。
【0035】
本発明の調合物の架橋能力は、フォトレオロジーによって評価することができる。本発明の調合物(F)は、印刷、例えばUV光又は可視光などの光を調合物に照射すると、液体から固体に変化する。変化は、回転レオメーターで測定することができる。液体樹脂から固体への移行は、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の増加として現れる。G’及びG’’のクロスオーバーは、ゲル化点に近似しており、これは、ネットワーク形成時の液体からゲルへの変換を意味する。ゲル化点は、高品質な印刷された構造を実現するための重要な工学的パラメータである。そのため、調合物のG’及びG’’を測定することで、印刷されたパーツの剛性を評価することができ、したがって印刷された樹脂の次の層に耐える能力及び固体から液体への転移時間を評価することができる。
【0036】
本発明の調合物の架橋能力は、フォトレオロジーによって評価することができる。本発明の調合物(F)は、印刷、例えばUV光又は可視光などの光を調合物に照射すると、液体から固体に変化する。変化は、回転レオメーターで測定することができる。液体樹脂から固体への移行は、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’の増加として現れる。G’及びG’’のクロスオーバーは、ゲル化点に近似しており、これは、ネットワーク形成時の液体からゲルへの変換を意味する。ゲル化点は、高品質な印刷された構造を実現するための重要な工学的パラメータである。調合物のG’を測定することで、印刷されたパーツの剛性を評価することができ、したがって印刷された樹脂の次の層を支持する能力を評価することができる。G’及びG’’のクロスオーバーは、架橋速度及び液体-固体の移行時間の指標を与える。
【0037】
調合物(F)中の本発明のPAI前駆体ポリマーの濃度は、調合物(F)の総重量を基準として5~60重量%、例えば8~50重量%、10~40重量%又は15~40重量%であり得る。
【0038】
本発明の調合物(F)は、
- 少なくとも1種の溶媒、
- 任意選択的に、1種の光増感剤、
- 任意選択的に、1種の光開始剤、
- 任意選択的に、1種のブロッカー
も含む。
【0039】
本発明の調合物(F)は、好ましくは、例えば室温以上で液体である。
【0040】
調合物(F)は、用いられる3D印刷方法のタイプによって決まる大きい粘度範囲を有することができる。例えば、調合物(F)の粘度は、0.01~10,000Pa.sで変わり得る。調合物(F)の粘度は、物体がステレオリソグラフィ(SLA)によって印刷される場合、好ましくは0.01~10Pa.sの範囲である。調合物(F)の粘度は、物体が直接インク書込み(DIW)によって印刷される場合、好ましくは10~10,000Pa・sの範囲である。調合物(F)の粘度は、物体がインクジェッティングによって印刷される場合、好ましくは0.1Pa.s未満である。
【0041】
本発明によれば、光増感剤は、光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーをアクセプター分子に移動させることによりドナーとして作用する化合物である。
【0042】
本発明によれば、光開始剤は、とりわけ、吸収された光エネルギー、UV又は可視光を開始化学種、例えばフリーラジカル又はカチオンの形態の化学エネルギーに変換するために調合物に添加される化合物である。
【0043】
本発明によれば、ブロッカーは、光開始剤によってもたらされた未使用のラジカルを捕捉するか、又は入射光エネルギー、例えばUV光及び可視光の一部を吸収するために添加される化合物である。この化合物は、製造されるパーツの寸法正確性の向上を可能にする。
【0044】
本発明の調合物(F)は、2つ以上のポリマー(P1)、例えば3つの異なるポリマー(P1)の2つを含むことができる。
【0045】
溶媒
調合物(F)は、少なくとも1種の溶媒を含む。調合物(F)は、2種以上の溶媒、例えば2種の溶媒を含むことができる。溶媒の濃度は、調合物(F)の総重量を基準として1~95重量%、例えば5~90重量%、15~80重量%又は30~70重量%であり得る。
【0046】
本発明の第1の実施形態によれば、溶媒は、オルト-ジクロロベンゼン1,2ジクロロエタン、m-クレゾール、クロロベンゼン、クロロホルム、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
好ましくは、溶媒は、双極性非プロトン性溶媒である。好ましくは、溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc又はDMA)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(CHP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
第2の実施形態に従い、溶媒は、水、エタノール、メタノール、第三級アミン(トリメチルアミン、好ましくはN-ブチルジエタノールアミン及び米国特許第6,479,581B1号明細書に記載されているアミン)及び/又はアンモニア(例えば、水性アンモニア)並びにこれらの混合物である。
【0049】
この第2の実施形態に従い、好ましくは、式(F)中の本発明のPAI前駆体ポリマーの濃度は、調合物(F)の総重量を基準として1~80重量%、例えば2~75重量%、5~70重量%、5~65重量%、10~65重量%、10~50重量%、10~40重量%、10~35重量%又は12~33重量%であり得る。
【0050】
第3の実施形態に従い、溶媒は、上述した第1の実施形態の少なくとも1種の溶媒と、上述した第2の実施形態の少なくとも1種の溶媒との混合物である。換言すれば、溶媒は、
- オルト-ジクロロベンゼン1,2ジクロロエタン、m-クレゾール、クロロベンゼン、クロロホルム、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒Aと、
- 水、エタノール、メタノール、第三級アミン及びアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒Bと
の混合物である。
【0051】
光増感剤
本発明によれば、光増感剤は、光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーをアクセプター分子に移動させることによりドナーとして作用する、調合物に特に添加された化合物である。
【0052】
本発明の実施形態によれば、光増感剤は、ベンゾフェノン、アセトフェノン、トリフェニレン、フルオレノン、アントラキノン、トリフェニルアミン、フェナントレン、9-アントラセンメタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される。光増感剤は、ベンゾフェノン、アントラキノン、9-アントラセンメタノール及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0053】
調合物(F)中の光増感剤の濃度は、調合物(F)の総重量を基準として0.01~10重量%、例えば0.1~5重量%、0.2~4重量%又は0.5~3重量%であり得る。
【0054】
光開始剤
本発明によれば、光開始剤は、UV又は可視光などの吸収された光エネルギーを開始化学種、例えばフリーラジカル又はカチオンの形態での化学エネルギーに変換するために調合物にとりわけ添加される化合物である。開始ラジカルが形成されるメカニズムに基づいて、光開始剤は、一般に、2つのクラスに分けられる:
- タイプI光開始剤は、照射時に単分子結合開裂を受けてフリーラジカルを生成し、
- タイプII光開始剤は、励起状態の光開始剤が第2の分子(共開始剤)と相互作用する二分子反応を受けてフリーラジカルを発生させる。
【0055】
調合物(F)中の光開始剤の濃度は、調合物(F)の総重量を基準として0.01~10重量%、例えば0.1~5重量%、0.2~4重量%又は0.5~3重量%であり得る。
【0056】
本発明の実施形態によれば、光反応開始剤は、ホスフィンオキシド、有機金属、ベンゾフェノン、チオキサントン、ホスフィネート、ヒドロキシケトン、ホスフィンオキシド+シアノアクリレート、ホスフィンオキシド+ホスフィネート及びこれらの混合物、好ましくはホスフィンオキシドからなる群から選択される。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、光開始剤は、
- アセトフェノン
- アニソイン
- アントラキノン
- アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物
- (ベンゼン)トリカルボニルクロム
- ベンジル
- ベンゾイン
- ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾフェノン
- 3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
- 4-ベンゾイルビフェニル
- 2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン
- 4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
- 4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
- カンファーキノン
- 2-クロロチオキサンテン-9-オン
- (クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート
- ジベンゾスベレノン
- 2,2-ジエトキシアセトフェノン
- 4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン
- 2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
- 4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン
- 4,4’-ジメチルベンジル
- 2,5-ジメチルベンゾフェノン
- 3,4-ジメチルベンゾフェノン
- ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン及びブレンド(例えば、50/50ブレンド)
- ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンのブレンド
- エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネートとフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシドのブレンド
- 4’-エトキシアセトフェノン
- 2-エチルアントラキノン
- フェロセン
- 3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン及び4-ヒドロキシベンゾフェノン
- 1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
- 2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン
- 2-メチルベンゾフェノン又は3-メチルベンゾフェノン
- メチルベンゾイルホルメート
- 2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン
- 2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン
- 2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン
- フェナントレンキノン
- 4’-フェノキシアセトフェノン
- フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド
- チオキサンテン-9-オン
- 2-イソプロピルチオキサントン
- リチウムフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート
- トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、混合された、プロピレンカーボネート中50%
- トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、混合された、プロピレンカーボネート中50%、及び
- 2,4,5,7-テトラヨード-3-ヒドロキシ-9-シアノ-6-フルオロン
- 2,4,5,7-テトラヨード-3-ヒドロキシ-6-フルオロン
- 5,7-ジヨード-3-ヒドロキシ-6-フルオロン、及び
- これらの混合物
からなる群から選択される。
【0058】
好ましくは、光開始剤は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0059】
より好ましくは、光反応開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド及び/又はフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドである。
【0060】
溶媒が水及び/又はアンモニア(例えば、水性アンモニア)である場合、光反応開始剤は、α-ヒドロキシケトン、ホスフィネート塩、アシルホスフィンオキシド、水酸化第二鉄、チオキサントン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アシルゲルマン類、ビス(アシル)ホスファンオキシド、フェニルグリオキシレート及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。そのような光開始剤の例は、以下の通りである:2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、4-(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート塩、Li-フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィネート、MAPO-モノアシルホスフィンオキシド、BAPO-ビスアシルホスフィンオキシド、水酸化鉄(III)、チオキサンタンアンモニウム塩、4-(トリメチルアンモニウム)メチルベンゾフェノンクロリド、ビス、トリス又はテトラアシルゲルマン類、ビス(アシル)ホスファンナトリウムオキシド及び2-[2(2-オキソ-2-フェニルアセチル)オキシエトキシ]エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート。
【0061】
ブロッカー
本発明によれば、ブロッカーは、(i)UV光によって照射される間に光開始剤によって形成された所定量のラジカルを捕捉し、(ii)光照射源がスイッチを切られた後に存在し得る未使用ラジカルを捕捉し、且つ/又は(iii)光照射中にシステムに配送されるエネルギーの一部を吸収するために調合物に添加される化合物である。
【0062】
調合物(F)中のブロッカーの濃度は、調合物(F)の総重量を基準として0.05~10重量%、例えば0.1~5重量%、0.2~4重量%又は0.5~3重量%であり得る。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、ブロッカーは、チオフェン、ナフトール、ジヒドロカルコン、フェノール、金属酸化物、スルホン酸、スルホン塩、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート、ジアジン、トリアジン、ベンゾエート、オキサラニリド、アゾベンゼン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
本発明のある実施形態によれば、ブロッカーは、
- 2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゼン)
- 1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン(アボベンゾン)
- 二ナトリウム2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(6-スルホ-1H-ベンズイミダゾール-4-スルホネート)(ビスジスリゾール二ナトリウム)
- ヘキシル2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]ベンゾエート(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート)
- メンチル-o-アミノベンゾエート(メンチルアントラニレート)
- 2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ビス{5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノール}(ベモトリジノール)
- 2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン
- 2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン
- 4-ヒドロキシ-2-メトキシ-5-(オキソ-フェニルメチル)ベンゼンスルホン酸(スリソベンゾン)
- 2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン
- 5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン
- (2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-(2-ヒドロキシフェニル)メタノン(ジオキシベンゾン)
- 2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン
- ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン-5,5’-ジスルホネート
- (2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)(4-メチルフェニル)メタノン(メキセノン)
- (2-ヒドロキシ-4-オクトキシ-フェニル)-フェニル-メタノン(オクタベンゾン)
- 2-(1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-[2-メチル-3-(2,2,4,6,6-ペンタメチル-3,5-ジオキサ-2,4,6-トリシラヘプタン-4-イル)プロピル]フェノール(ドロメトリゾールトリシロキサン)
- テレフタリリデンジカンファースルホン酸(エカムスル)
- 2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニル-2-プロペノエート(オクトクリレン)
- ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(イスコトリジノール)
- 2-エトキシエチル3-(4-メトキシフェニル)プロペノエート(シノキサート)
- イソペンチル4-メトキシシンナメート(アミロキサート)
- 2,2’-メタンジイルビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール](ビスオクトリゾール)
- 2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール
- 2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]
- 2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン
- 2-エチル-,2-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-3-ヒドロキシフェノキシ]エチルエステル
- 2-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール
- 2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
- 2,4-ジニトロフェニルヒドラジン
- N-(4-エトキシカルボニルフェニル)-N’-メチル-N’-フェニルホルムアミジン
- ヘキサデシル3,5-ビス-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート
- 2-エチル-2’-エトキシ-オキサラニリド、及び
- これらの混合物
からなる群から選択される。
【0065】
好ましくは、ブロッカーは、アボベンゾン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
溶媒が水及び/又はアンモニアであるとき、ブロッカーは、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)、ベンゾトリアゾール(BTZ)、ベンゾフェノン-9及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。そのようなブロッカーの例は、以下の通りである:ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン-5,5’-ビス(ナトリウムスルホネート)、二ナトリウム-2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-5,5’-ジスルホベンゾフェノン及び2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸。
【0067】
任意選択的な成分
本発明の調合物は、例えば、シリカなどの充填材、酸化防止剤、抗菌性化合物及び帯電防止化合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、カーボンブラック、シリカ(例えば、マイクロシリカ粒子)及びカーボンナノチューブなどの化学的に不活性の化学種であり得る。
【0068】
本発明の第3の態様によれば、上に記載されたPAI前駆体ポリマー(P1)は、組成物(C)に組み込まれ得る。
【0069】
組成物(C)は、PAI前駆体ポリマー(P1)を、組成物(C)の総重量を基準として少なくとも1重量%、例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%又は少なくとも30重量%の量で含むことができる。
【0070】
組成物(C)は、PAI前駆体ポリマー(P1)を、組成物(C)の総重量を基準として50重量%超、例えば55重量%超、60重量%超、65重量%超、70重量%超、75重量%超、80重量%超、85重量%超、90重量%超、95重量%超又は99重量%超の量で含むことができる。
【0071】
一実施形態に従い、組成物(C)は、PAI前駆体ポリマー(P1)を、組成物(C)の総重量を基準として1~99重量%、例えば3~96重量%、6~92重量%又は12~88重量%の範囲の量で含むことができる。
【0072】
組成物(C)は、光安定剤(例えば、UV光安定剤)、光増感剤、熱安定剤、酸捕捉剤(すなわち酸化亜鉛、酸化マグネシウム)、酸化防止剤、顔料、加工助剤、滑剤、難燃剤及び/又は導電性添加剤(すなわちカーボンブラック、カーボンナノフィブリル、グラファイト、銅、アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、ダイヤモンド及び銀粉末並びにグラフェン)からなる群から選択される1つ以上の追加の添加剤を任意選択的に更に含み得る。
【0073】
組成物(C)は、本発明のPAI前駆体ポリマー(P1)以外のポリマー、例えばスルホンポリマー、例えばポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)若しくはポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)、例えばポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリエーテル-イミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレン(SRP)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリ(エーテルケトン)(PEK)若しくはPEEKとポリ(ジフェニルエーテルケトンとのコポリマー)(PEEK-PEDEKコポリマー)、別のポリアミド-イミドポリマー(PAI2)及び/又はポリカーボネート(PC)も更に含み得る。
【0074】
組成物(C)は、ハロゲン難燃剤及びハロゲンを含まない難燃剤などの難燃剤を更に含み得る。
【0075】
組成物(C)は、ガラス繊維、例えばE-ガラス繊維又はASTM D2343に従って測定されて少なくとも76、好ましくは少なくとも78、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも82GPaの弾性率(引張弾性率とも呼ばれる)を有する高弾性率ガラス繊維を含み得る。
【0076】
組成物(C)は、R、S及びTガラス繊維からなる群から選択される高弾性率ガラス繊維も組成物(C)の総重量を基準として例えば少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも26重量%又は少なくとも28重量%の量で含み得る。
【0077】
組成物(C)は、円形横断面ガラス繊維及び/又は非円形横断面ガラス繊維(例えば、フラット、長方形、繭形状ガラス繊維)を含み得る。組成物(C)は、炭素繊維、グラフェン又はカーボンナノチューブを含み得る。組成物(C)は、当業者に周知の方法によって製造することができる。例えば、そのような方法としては、溶融混合プロセスが挙げられるが、それらに限定されない。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーの溶融温度よりも上にポリマー成分を加熱し、それにより熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することによって実施される。いくつかの実施形態において、処理温度は、約280~450℃、好ましくは約290~400℃、約300~360℃又は約310~340℃の範囲である。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、Bradburyミキサー、一軸スクリュー押出機及び二軸スクリュー押出機である。好ましくは、所望の成分の全てを押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投入するための手段を備えた押出機が使用される。ポリマー組成物の成分は、溶融混合装置に供給され、その装置において溶融混合される。成分は、乾燥ブレンドとしても知られる粉末混合物又は顆粒ミキサーとして同時に供給され得るか又は別々に供給され得る。
【0078】
第4の態様によれば、本発明は、本発明のPAI前駆体ポリマー(P1)を調製するプロセスに関する。
【0079】
本発明のPAI前駆体ポリマー(P1)を調製するプロセスは、極性非プロトン性溶媒及び有機塩基の存在下において、
- 式(IX):
【化9】
の化合物を、任意選択的に、式(X)及び(XI):
【化10】
のいずれか1つの化合物、並びに
- 式(XII):
NR
nR
m-Z
2-NR
nR
m (XII)
の化合物、任意選択的に、式(XIII)又は(XIV):
NR
nR
m-Z
1-NR
nR
m (XIII)
NR
nR
m-Z
3-NR
nR
m (XIV)
のいずれか1つの化合物と反応させることを含み、
式中、
- Ar
1及びAr
2は、互いに独立して、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- Ar
3は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される四価芳香族部分であり、
- Xは、OR、Cl、Br、F又はIであり、ここで、Rは、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- R
n及びR
mは、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- Z
1、Z
2及びZ
2は、互いに独立して、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルからなる群から選択され、
- Yは、
・O
-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、kは、1~20であり、及びR
4は、H又はアルキルである)、
・O
-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6又はO-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、pは、0~20であり、Arは、1個又は2個の芳香族又はヘテロ芳香族環を含み、R
5及びR
6は、H若しくはアルキル、フェニル又はCOOR
7であり、ここで、R
7は、H又はアルキルである)、
・O
-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、qは、0~20であり、及びR
8は、H又はアルキルである)、
・O
-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、rは、0~20であり、及びR
9は、H又はアルキルである)、
・
【化11】
(ここで、sは、0~20である)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,PR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、q及びR
8は、上記で定義された通りである)、
・O
-,NR
aR
bR
cH
+-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、r及びR
9は、上記で定義された通りである)、
・
【化12】
(ここで、sは、上記で定義された通りである)
からなる群から独立して選択され、
R
a、R
b及びR
cは、独立して、H又はアルキルである。
【0080】
上述の通り、化合物(特に式(IX)の化合物)は、特定の化学的表示に従って示される一方、化合物のあらゆる異性体は、本明細書によって包含されることを意図される。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明のPAI前駆体ポリマー(P1)を調製するプロセスは、式:
【化13】
の化合物を反応させることも含み、式中、Ar4及びXは、上記で定義されている通りである。
【0082】
いくつかの実施形態では、溶媒は、クロロベンゼン、クロロホルム、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホランからなる群から選択される。
【0083】
他のいくつかの実施形態では、有機塩基は、ピリジン及びアルキルアミン、例えばトリメチルアミンからなる群から選択される。
【0084】
第2の実施形態に従い、本発明のPAI前駆体ポリマー(P1)を調製するプロセスは、極性非プロトン性溶媒及び/又は水性溶媒並びに有機塩基の存在下において、
- 式R
nR
mN-P-NR
nR
m(ここで、Pは、式(XV):
【化14】
(式中、
- Ar
1は、5~50個の炭素原子を有する置換又は非置換の飽和、不飽和又は芳香族単環式及び多環式基からなる群から選択される三価芳香族部分であり、
- Xは、OR、Cl、Br、F又はIであり、ここで、Rは、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- R
n及びR
mは、互いに独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- R
1は、H又はアルキル、好ましくはH又は1~5個の炭素原子を有するアルキルであり、
- Z
1は、任意選択的に1個又はいくつかのヘテロ原子を含む置換及び非置換の二価有機ラジカルである)
に従った繰り返し単位pを含む)のPAI前駆体ポリマー(P0)を、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・PR
aR
bR
c-(CH
2)
k-O-CO-CH=CHR
4(ここで、k及びR
4は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
p-Ar-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
p-OAr-CR
5=CHR
6(ここで、p、Ar、R
5及びR
6は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
q-CH=CHR
8(ここで、q及びR
8は、上記で定義された通りである)、
・NR
aR
bR
c-(CH
2)
r-O-CH=CHR
9(ここで、r及びR
9は、上記で定義された通りである)、
・
【化15】
(ここで、sは、上記で定義された通りである)
からなる群から選択される化合物と反応させることを含み、R
a、R
b及びR
cは、独立して、H又はアルキル、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキルである。
【0085】
この第2の実施形態に従い、PAI前駆体ポリマー(P0)は、式RnRmN-P-NRnRmの通りである。好ましくは、Rn及びRmは、Hであり、及びP0は、式H2N-P-NH2に従う。
【0086】
アミン部分(NRnRm又はNH2)が、上述した通りの式(i)、(ii)又は(iii)に従った基Z1、例えばフェニレン基(C6H6)を介してポリマーPに結合している実施形態において、アミン部分は、ポリマー鎖Pに関してオルト位(例えば、1,2-アミノフェニル)、メタ位(例えば、1,3-アミノフェニル)又はパラ位(例えば、1,4-アミノフェニル)、好ましくは炭素鎖Pに関してパラ位(例えば、1,4-アミノフェニル)にあり得る。
【0087】
第5の態様によれば、本発明は、3D物品を付加製造システムで製造する方法であって、
- 上に記載されたようなポリマー調合物(F)を提供する工程、
- 3D物品の層をポリマー調合物(F)から印刷する工程、
- 任意選択的に、3D物品を50~450℃、好ましくは100~300℃、更に一層好ましくは120~180℃の範囲の温度で硬化させる工程
を含む方法に関する。
【0088】
ある実施形態によれば、印刷する工程は、ポリマー調合物(F)、例えば印刷表面上に堆積されたそのような調合物(F)の層に光を照射することを含む。例えば、UV光を用いて、層は、好ましくは、5μm~300μm、例えば20μm~150μmの範囲のサイズを示す。
【0089】
光源は、例えば、レーザー光であり得る。照射は、好ましくは、ポリマー調合物(F)、例えばそのような調合物(F)の層の実質的な硬化を引き起こすのに十分な強度のものである。また、照射は、好ましくは、ポリマー調合物(F)の層の接着を引き起こすのに十分な強度のものである。
【0090】
本発明の別の実施形態によれば、3D物品を付加製造システムで製造する方法は、
- 上に記載されたようなポリマー調合物(F)を提供する工程、
- 3D物品の層をポリマー調合物(F)から、
a)調合物(F)の層を表面上にコートすること、
b)層に光、例えばUV光又は可視光を照射すること、
c)調合物(F)の層を前の照射された層上にコートすること、
d)層に光、例えばUV光又は可視光を照射すること、及び
e)工程c)及びd)を、3D物品を製造するのに十分な回数にわたって繰り返すこと
によって印刷する工程
を含む。
【0091】
一実施形態に従い、ポリマー調合物(F)は、プロセス中に室温である。代わりに、調合物は、とりわけ調合物中のポリマー濃度が高い場合、印刷前及び/又は印刷中に加熱することもできる。この場合、温度は、印刷前及び/又は印刷中に最大で130℃、最大で120℃又は最大で110℃に加熱することができる。
【0092】
本発明は、3D物体/物品の製造のための、本発明のポリマー(P1)又は本発明のポリマー調合物(F)の使用にも関する。
【0093】
ポリマー(P1)及びポリマー調合物(F)に関して上に記載された実施形態の全てが3D物体/物品の製造のための使用に等しく当てはまる。
【0094】
本発明は、本明細書で記載されるポリマー(P1)又はポリマー調合物(F)を使用して、少なくとも部分的に本発明の製造方法から得ることができる3D物体又は3D物品にも関する。
【0095】
そのような製造方法によって得ることができる3D物体又は物品は、様々な最終用途において使用することができる。特に、埋込式デバイス、歯科用人工装具、ブラケット並びに航空宇宙産業における複雑な造形パーツ及び自動車産業におけるアンダーフードパーツを挙げることができる。
【0096】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0097】
ここで、本発明は、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0098】
材料:トリエチルアミン(TEA)(Arcos Organics、≧99%)、塩化ナトリウム(Fisher Chemical、認証済みACS)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(Sigma-Aldrich、96%)、テトラヒドロフラン(THF)(Fisher Chemical、HPLCグレード)、無水ジエチルエーテル(DEE)(Fisher Chemical、認証済みACS)、無水ジクロロメタン(DCM)(Arcos Organics、99.9%)、硫酸マグネシウム(Fisher Chemical、認証済みACS)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPO)(97%、Sigma Aldrich)、塩化オキサリル(Arcos Organics、98%)、塩酸(Fisher Chemical、認証済みACS)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)(Sigma-Aldrich、≧97%)、塩化トリメリト酸無水物(TMAC)(Sigma-Aldrich、98%)、重水素化クロロホルム(CIL、99.8%)、重水素化ジメチルスルホキシド(D6-DMSO)(CIL、99.8%)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(Sigma-Aldrich、≧99.9%)並びに無水N-メチルピロリドン(NMP)(Sigma-Aldrich、≧99.5%)を、受け入れたままの状態で使用した。無水N,N-ジメチルアセトアミド(Arcos Organics、99.5%)を活性化モレキュラーシーブにより保存した。無水トリメリット酸(TMA)(TCI、>98%)及び4,4’-オキシジアニリン(ODA)(TCI、>98%)を使用前に昇華した。窒素ガス(99.999%)は、Praxairから購入した。
【0099】
分析方法:
1H核磁気共鳴(NMR)分光法を、400MHzでVarian Unity 400又は400MhzでBruker Avance III HDを使用して25℃で実施した。CDCl3又はD6-DMSOは、NMR分析用の溶媒としての役割を果たす。
【0100】
20mm平行プレートジオメトリ、UV硬貨アクセサリ並びに広域スペクトルバルブ及び320~500nmフィルターを装着したOmnicure S2000光源を備えたTA Instruments DHR-2レオメーターを使用して、フォトレオロジーを行った。25℃での0.3%ひずみ及び4Hzの振動操作をフォトレオロジー中に利用した。ポリマー溶液を30秒間振動させた後、250mW/cm2の強度で150秒間、UV照射した。
【0101】
TA Instruments Q50を使用して、25℃~600℃で10℃/分の加熱速度及びN2充填ガスにより熱重量測定(TGA)を実施した。
【0102】
空気下で1Hz、0.1%ひずみ及び3℃/分の加熱傾斜において、振動張力モードでTA Instruments DMA Q800を用いて、3D印刷バー及び対照フィルムで動的機械分析(DMA)を実施した。Tgをtanδのピークから測定した。
【0103】
分子量(Mn、Mw、Mz及びMz+1)の一般的な決定手順
分子量は、移動相としてN,N-ジメチルホルムアミドを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。Agilent Technologies製のガードカラム付きの2本の5μ混合Dカラムを使用して分離した。254nmの紫外線検出器を用いてクロマトグラムを得た。1.5ml/分の流量及び移動相中の0.2w/v%溶液の20μLの注入量を選択した。較正は、12の狭い分子量のポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を用いて行った。数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、より高い平均分子量Mz及びMz+1を報告した。
【0104】
無水トリメリット酸のアクリレートエステルジカルボン酸の合成
【化16】
スキーム1.TMAとHEAの反応
N
2入口、還流凝縮器及び電磁撹拌棒を備えた250mLの二口丸底フラスコにTMA(25.00g、0.1301モル)、HEA(18.13g、0.1561モル)及び80mLのTHFを充填した。溶液を窒素下において、20分間、25℃で撹拌した後、TEA(1.59g、0.0157モル)を添加した。次に、反応混合物を加熱して、60℃で60分間反応させた。60分後、反応混合物を冷却し、25℃で18時間撹拌した。次に、反応混合物を100mLのDEE及び100mLのDI水で希釈した後、分液漏斗に移した。有機層を収集し、100mLのDI水、100mLのHCl(1M)及び100mLの飽和NaCl/水溶液で更に抽出した。次に、有機層をMgSO
4で乾燥させて、回転蒸発を用いて濃縮した。得られた白色固体を更に真空オーブン内において30℃で一晩乾燥させた後、32.05gの白色固体(79.8%収率)を得た。反応により、スキーム1に記載する通り、2種類の異性体のパラ及びメタが得られ、
1H NMRにより、60%がパラ、40%がメタの異性体比率が得られた。
1H NMRにより、生成物の純度を調査した:
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6)δ 13.53(s,2H),8.29(dd,J=1.7,0.5Hz,1H),8.19-8.12(m,1H),7.83(dd,J=7.9,0.6Hz,0H),7.71(dd,J=7.9,0.5Hz,1H),6.37-6.28(m,1H),6.21-6.11(m,1H),5.92(dd,J=10.3,1.6Hz,1H),4.53-4.44(m,2H),4.43-4.35(m,2H)。
【0105】
無水トリメリット酸のアクリレートエステル二酸クロリドの合成
【化17】
スキーム2.塩化オキサリルとのTMA-HEAの反応
N
2入口、還流凝縮器、電磁撹拌棒及び6M KOH塩基トラップを装着した500mLの三口丸底フラスコにTMA-HEA(23g、0.0746モル)、DMF(0.25g、0.00342モル)及び160mLの無水DCMを添加した。得られた不均質溶液をN
2流下で1時間、25℃で撹拌した後、塩化オキサリル(19.87g、0.1567モル)を滴加した。滴加から4時間後、溶液を45℃まで加熱して、1時間反応させた。次に、反応物を25℃まで冷却し、残った塩化オキサリルを3時間かけて添加した。次に、反応物を一晩撹拌して、僅かに黄色の均質な溶液を得た。回転蒸発を使用して溶液を濃縮し、真空オーブン内において25℃で一晩乾燥させた。得られた赤色の粘性液体(22.9g、88.9%収率)を
1H NMRにより分析した。塩化オキサリルにより、TMA-HEAジカルボン酸の反応性塩化ジアシルモノマーへの転換が可能となった。
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ 8.62(dd,J=1.9,0.5Hz,0H),8.47(dd,J=1.8,0.5Hz,1H),8.35(m,J=8.2,5.3,1.8Hz,1H),7.97(dd,J=8.2,0.5Hz,1H),7.78(dd,J=8.2,0.5Hz,0H),6.44(dd,J=17.3,3.1,1.4Hz,1H),6.14(m,J=17.4,10.5,3.1Hz,1H),5.87(dd,J=10.5,1.4,1.0Hz,1H),4.64-4.57(m,2H),4.50-4.45(m,2H)。
【0106】
PAI#1-無水トリメリット酸のポリ(アミドアミドアクリレートエステル)及び4,4’-ジアミノジフェニルメタン(繰り返し単位qを含むPAI前駆体ポリマー)の合成
【化18】
スキーム3.TMA-HEA-Clの、ODAとの重合
ODA(13.532g、0.06758モル)、TEA(13.677g、0.1352モル)及び200mLのDMAcを、N2入口及び電磁撹拌棒を装着した、加熱乾燥させた500mLの丸底フラスコに加えた。次に、N
2流下で撹拌しながら、フラスコを0℃まで冷却した後、TMA-HEA-Cl(23.324g、0.06758モル)の冷却溶液及び100mLのDMAを添加した。得られた溶液をN
2流下で18時間撹拌した後、冷メタノールに滴下沈殿させた。黄色の沈殿物を真空濾過により収集し、真空オーブン中において30℃で2日乾燥させた。入手した黄色粉末の分子構造を
1H NMRにより調査した。
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6)δ 10.71-10.49(m,2H),8.33-8.12(m,2H),8.02-7.94(m,1H),7.86-7.65(m,4H),7.04(td,J=9.0,4.0Hz,4H),6.35-6.24(m,1H),6.07(dd,J=17.2,10.4,3.6Hz,1H),5.89(dd,J=10.4,5.5,1.5Hz,1H),4.48(d,2H),4.32(d,2H)。Mw=62,611g/モル;Mw/Mn=1.73
【0107】
PAI#2-無水トリメリット酸のポリ(アミドアミドアクリレートエステル)及び4,4’-ジアミノジフェニルメタン(75/25のモル比で繰り返し単位p及びqを含むPAI前駆体ポリマー)の合成
【化19】
スキーム4.TMA-HEA-Clの、MDAとの重合
N
2入口/出口、メカニカルスターラー、添加漏斗及び熱電対を装着した、500mLの三口フルジャケット式フラスコにODA(108.5g、0.547モル)、TEA(57.0g、0.550モル)及び600gの無水NMPを添加した。次いで、ODAの溶解時にフラスコを-5℃まで冷却し、その後、175gの無水NMP中のTMA-HEA-Cl(47.5g、0.1375モル)及びTMAC(86.9g、0.4125モル)からなる溶液を2.75時間(維持温度:<0℃))で滴加した。添加の完了後、添加漏斗を50mLのNMPで洗浄し、反応物を0℃で0.5時間維持した。次に、得られた琥珀色溶液を反応器フラスコから取り出し、ワーニングブレンダーを使用して3LのDI水に凝固させた。得られた沈殿物を真空濾過により収集して、3Lの水で3回洗浄した後、3Lのメタノールで4回洗浄した。次いで、洗浄後、粉末をオーブン内で35℃、-25inHgで減圧下において48時間乾燥させて、223g(84%収率)の淡黄色粉末を得た。Mw=71,760g/モル;Mw/Mn=1.91。NMRにより検出されたアクリレートの量=28モル%。
【0108】
架橋したTMA-HEA-ODA試料の乾燥及びイミド化:
PAI#1に対して、40重量%の、2.5重量%のTPOを含むPAI#1のNMP溶液を、フォトレオロジーを用いて架橋した(
図1)。
【0109】
フォトレオロジーから、溶液のクロスオーバー時間は、約5秒であり、平坦な貯蔵弾性率G’は、106Paを超えていることが測定された。硬化した試料を一定の空気流下において室温で2日にわたって乾燥させた。次に、部分的に乾燥させたゲルを穿孔金属ステージ上に配置し、真空オーブン(45mmHg)中で25℃、60℃、100℃及び150℃においてそれぞれ1時間加熱した。次に、試料をビスマス/スズ金属浴中の硝子真空槽に移し、240℃及び300℃で1時間、減圧下において加熱した。試料は、熱処理中に透明及び赤色になった。しかし、全体の形状は、保たれ、ヒビは、形成されなかった。TGAにより、熱処理した試料は、400℃のTd5%であることが確認された。熱処理した部分をDMA分析することで265℃のTgがもたらされた。もたらされたガラス転移温度は、対照TMA-ODA-PAI(Tg=約290℃)の薄膜と比較したとき、残ったポリ(HEA)がガラス転移を低下させたことを示した。
【0110】
PAAAE樹脂の直接インク書込み(DIW-UV補助)
プリンター:カスタム設計した紫外線補助直接インク書込み(UV-DIW)プラットフォームを使用して、合成したPAAAE溶液を印刷した。プリンターは、材料を押し出すためのNordson EFD Ultimus V DIWシステム及び押し出された材料を硬化するためのKeynote Photonics LC4500-UVデジタル光処理(DLP)プロジェクターを組み込んでいる。プロジェクターは、405℃でのUV照射及び組み立てられたプレートにおいて14mW/cm2の測定強度をもたらす。DIWノズル及びUVプロジェクターを、両方のシステムを、約120×120mmの、組み立てられたプレートに自由に移動可能にする、500mmの移動が可能な2つの垂直なZaber A-LST直線ステージに固定する。UV照射が、DIWノズルに隣接して投影されるように、プロジェクターを固定する。堆積した材料をUV照射に曝すために、プリンターを僅かに水平に動かさなければならない。押し出し及び硬化工程を分離することにより、ノズルの詰まりを防止し、堆積した材料が受けるUV照射の量を正確に制御することができる。250mm移動するZaber A-LST直線スライドにより、Z方向への移動がもたらされる。標準GCodeを使用して、プリンターの移動並びに押し出しの開始及び停止を制御する。
【0111】
UV-DIW印刷プロセス:Nordson EFD製の、層の高さが0.15mmの、25ゲージ(0.25mm)テーパーノズルにより、2.5重量%のTPOを含有する40重量%のPAAAEのNMP溶液から部品を印刷した。0.32MPaの圧力を加えて押し出しを開始し、ノズルを4mm/sで移動した。材料を堆積した後、各層をUV照射に2秒間曝露した。2秒の曝露が、材料を、過剰な硬化を防止しながら、印刷後の取扱いを可能にするのに十分な弾性率まで硬化させるのに十分であることが実験により発見された。
【0112】
付加製造されたPAAAEオルガノゲルの後処理:UV-DIWを使用して作製した部品をドラフト内の穿孔ステージに配置し、2日にわたり乾燥させた。次に、部分的に乾燥させたゲルを穿孔金属ステージ上に配置し、真空オーブン(45mmHg)中で25℃、60℃、100℃及び150℃においてそれぞれ1時間加熱した。次に、試料をビスマス/スズ金属浴中の硝子真空槽に移し、240℃及び300℃で1時間、真空下において加熱した。
【0113】
結果:UV-DIWにより作製したオルガノゲルは、暴露時間の調整後、印刷中に形状を保持した。Vat光重合により複雑な自己支持型構造体が得られ、これは、層形成中に形状を維持した。
【国際調査報告】