(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
C23C 16/27 20060101AFI20230606BHJP
C01B 32/26 20170101ALI20230606BHJP
G01N 27/30 20060101ALI20230606BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
C23C16/27
C01B32/26
G01N27/30 B
C23C16/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568462
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2021092641
(87)【国際公開番号】W WO2021228015
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】202010390590.9
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518309666
【氏名又は名称】中南大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏秋平
(72)【発明者】
【氏名】周科朝
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼莉
(72)【発明者】
【氏名】李海超
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼万林
(72)【発明者】
【氏名】苗冬田
(72)【発明者】
【氏名】李志伸
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼尹豪
【テーマコード(参考)】
4G146
4K030
【Fターム(参考)】
4G146AA04
4G146AA17
4G146AB07
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4G146AD11
4G146AD40
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4G146BC09
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4G146BC37A
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4G146BC38A
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4K030AA07
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4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030JA12
(57)【要約】
本発明は、高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極及びその製造方法と応用を開示する。当該製造方法は、フォトエッチング法によってステンレスシートに規則的なパターンをエッチングし、スルーホールパターンを有するステンレスシートで基板の表面を被覆してから、ステンレスシートと基板をともに化学気相成長炉に置き、基台によって位置規制、固定し、基板の表面の露出部分にパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させることで、パターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極を得、化学気相成長プロセスにおいて、基板の表面の温度を750~950℃、成長気圧を2.5~5KPaに制御し、導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合を(1~20):(0.3~1):(45~49)とし、最後に、製造されたホウ素ドープダイヤモンド電極を作動電極とし、白金シートを対向電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、検出電極システムを組み立てる。従来技術と比べて、本発明の製造方法は、簡単で、操作が制御されやすく、製造コストも低くなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆してから、金属シートと基板をともに化学気相成長炉に置き、基板の表面の露出部分にパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させることで、パターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極を得、化学気相成長プロセスにおいて、基板の表面の温度を750~950℃、成長気圧を2.5~5KPaに制御し、導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合を1~20:0.3~1:30~49とするステップを含む、ことを特徴とする高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項2】
スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆してから、金属シートと基板をともに化学気相成長炉に置き、基台によって位置規制、固定し、前記金属シートはステンレスシートであり、前記基板はシリコンシートである、ことを特徴とする請求項1に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項3】
所望のパターンに応じて、フォトエッチング法によって金属シートの表面に対応するスルーホールパターンをエッチングし、前記パターンは、正方形アレイ模様、長方形アレイ模様、円形アレイ模様のうちの1つである、ことを特徴とする請求項1に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項4】
スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆してから、金属シートと基板をともに化学気相成長炉に置き、そして、5~20℃/minの速度で基板の表面の温度を750~950℃に昇温させる、ことを特徴とする請求項1に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項5】
前記化学気相成長は熱フィラメント化学気相成長であり、熱フィラメントの巻き数は10~15であり、化学気相成長プロセスにおいて、熱フィラメントの温度を2100~2400℃に制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項6】
化学成長プロセスにおいて、最初に導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合が、10~20:0.3~1:45~49であり、1~2h堆積させた後、導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合を2~5:0.3~1:45~49となるように調整し、6~10h堆積させる、ことを特徴とする請求項1に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項7】
前記ホウ素ドープダイヤモンド層の厚みは5~20μmであり、前記ホウ素ドープダイヤモンド層におけるダイヤモンドの結晶粒径は5~10μmである、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項8】
前記ホウ素ドープダイヤモンド層は多孔質ホウ素ドープダイヤモンド層であり、前記多孔質ホウ素ドープダイヤモンド層は、パターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させた後、高温エッチング処理を行うことによって得られ、前記高温エッチング処理は、高温雰囲気エッチング処理又は高温金属エッチング処理である、ことを特徴とする請求項1に記載の高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極。
【請求項10】
作動電極として電気化学センサーに応用する、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い比表面積を有するホウ素ドープダイヤモンド電極及びその製造方法と応用に関し、特に、高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極及びその製造方法と応用に関し、電極製造の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素ドープダイヤモンド電極は、その優れた電気化学性能により、バイオセンシング分野、水処理分野及び生命探知分野などに非常に広く応用されている。その低バックグラウンド電流、高安定性及び低吸着特性により、ホウ素ドープダイヤモンド電極は、数多くの電極材料の中で格段に目立っている。ホウ素ドープダイヤモンド電極は、電気化学電極に属し、主に、生物信号、化学信号及び物理信号を、認識分析可能な電気信号に変換し、ダイヤモンド電極は、その低バックグラウンド電流という特徴により、低濃度検出の分野において重要な地位を占めている。
【0003】
その自身の優れた性能に基づいて、最適化により高い比表面積を有するホウ素ドープダイヤモンド電極を設計することができれば、電極そのものの応答信号を強化でき、これによって、低濃度分野におけるその検出メリットを大幅に向上させる。伝統的な多孔質ダイヤモンド電極と比べて、パターニングされたダイヤモンド電極は、寸法と形状の設計の上でより柔軟になり、電極の物質移動の設計の面でより容易に実現、最適化される。従来のパターニングされたダイヤモンド電極の製造方法は、主に、プラズマエッチング法又はフォトエッチング法を採用し、即ち、現在、十分な厚みのダイヤモンド膜を製造してから、上記方法により膜全体をパターニングするというトップダウン手法を採用するのが通常である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の欠点について、本発明は、高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極及びその製造方法と応用を提供することを目的とする。本発明で採用されるパターニングの製造方法は、ボトムアップ手法に属し、即ち、パターニングされたマスクとベースを直接一体として接続した後、ベースにパターニングされたダイヤモンド電極を直接成長させた。当該方法の設計ステップは、エッチングなどの方法よりも簡単で、操作が制御されやすく、製造コストも低くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法は、以下のステップを含む。
【0006】
スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆してから、金属シートと基板をともに化学気相成長炉に置き、基板の表面の露出部分にパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させることで、パターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極を得、化学気相成長プロセスにおいて、基板の表面の温度を750~950℃、成長気圧を2.5~5KPaに制御し、導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合を1~20:0.3~1:45~49とする。
【0007】
本発明において、基板の表面の露出部分とは、スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆した後、露出したスルーホールパターンの部分を意味する。
【0008】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆してから、金属シートと基板をともに化学気相成長炉に置き、基台によって位置規制、固定する。
【0009】
実際の操作中に、基台は、電極に必要な実際の寸法が2~10cm2であれば、化学気相成長の基台の寸法を4~15cm2に設計し、残りの寸法が固定時に必要とする余裕寸法であり、高温耐性があるモリブデンワイヤを用いて該当寸法の基台金具に切断し組み立てを完成するように設計される。
【0010】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、前記金属シートはステンレスシートである。
【0011】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、スルーホールパターンを有する前記金属シートの製造プロセスは、所望のパターンに応じて、フォトエッチング法によって金属シートの表面に対応するスルーホールパターンをエッチングすることである。
【0012】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、前記パターンは、正方形アレイ模様、長方形アレイ模様、円形アレイ模様のうちの1つである。
【0013】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、前記基板はシリコンシートである。本発明において、ダイヤモンドを成長させるためのベースに、安定した酸化物中間層を形成できるシリコンベースを採用し、他の金属系ベースと比べて、シリコンベースは、単一のベースよりも熱膨張係数が小さい中間酸化物層を形成でき、このように成長させるダイヤモンドは、抜けにくくなる。
【0014】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、スルーホールパターンを有する金属シートで基板の表面を被覆してから、金属シートと基板をともに化学気相成長炉に置き、そして、5~20℃/min、好ましくは5~15℃/minの速度で基板の表面の温度を750~950℃に昇温させる。
【0015】
本発明者は、基板をその周囲で位置規制、固定すること、及び徐々に昇温させることにより、金属シートと基板の熱膨張係数が異なることによる金属シートの変位、変形などの現象に起因して、成長させたダイヤモンドパターンが不規則になり、ひいては成長に失敗してしまうことを回避できることを見出した。
【0016】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、前記化学気相成長は熱フィラメント化学気相成長であり、熱フィラメントの巻き数は10~15であり、化学気相成長プロセスにおいて、熱フィラメントの温度を2100~2400℃に制御する。
【0017】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、化学成長プロセスにおいて、最初に導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合が、10~20:0.3~1:45~49であり、1~2h堆積させた後、導入されるメタン、ボラン、水素ガスの割合を2~5:0.3~1:45~49となるように調整し、6~10h堆積させる。
【0018】
パターニング成長の領域の範囲は、伝統的なベース全体の成長領域に対して非常に小さいため、成長プロセスにおいて核生成しにくい問題がある。これは、主に、炭素原子は、核生成、島形成、成膜などの一連の工程において、それらの工程を完成するために十分な熱力学的運動が必要であるが、炭素原子が所定の領域内において成長するように限定され、その分、核生成と成膜の難しさを増加させ、1つの成長周期を長くするためである。本発明者は、成長の初期でメタンの濃度を高くする方法により核生成しにくい問題を克服できることを見出した。
【0019】
実際の操作中に、先ず、スルーホールパターンを有する金属シートとシリコンシート基板をともにアセトン溶液に置き、10~20分間超音波洗浄し、表面の油汚れを除去し、次に、脱イオン水で5~20分間超音波洗浄し、べーキングしてから堆積を行う。
【0020】
本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、前記ホウ素ドープダイヤモンド層の厚みは5~20μmであり、前記ホウ素ドープダイヤモンド層におけるダイヤモンドの結晶粒径は5~10μmである。
【0021】
好ましいものとして、本発明に係る高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法では、前記ホウ素ドープダイヤモンド層は多孔質ホウ素ドープダイヤモンド層であり、前記多孔質ホウ素ドープダイヤモンド層は、パターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させた後、高温エッチング処理を行うことによって得られ、前記高温エッチング処理は、高温雰囲気エッチング処理又は高温金属エッチング処理である。
【0022】
ホウ素ドープダイヤモンド層に高温エッチング処理を行うことにより、ホウ素ドープダイヤモンド層は、多孔質構造となり、即ち、ホウ素ドープダイヤモンド層の表面に微小孔及び/又はコーンが分布しているようになり、パターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の比表面積をさらに大きくする。
【0023】
実際の操作中に、高温雰囲気エッチング処理とは、基板の表面の露出部分にパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させた後、空気又は水素ガス雰囲気に置き、温度が600~1000℃、圧力が10Pa~105Pa、処理時間が5~180minである熱処理を行うことを意味する。
【0024】
高温金属処理エッチングとは、基板の表面の露出部分にパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド層を堆積成長させた後、ホウ素ドープダイヤモンド層の表面に炭素に高い触媒能を有する金属層を堆積してから、金属層が堆積されたホウ素ドープダイヤモンド層を熱処理し、金属層を高温下で球状化し、ダイヤモンドの表面に分散して分布した金属ナノ球又はミクロン球を形成し、高温下で、ダイヤモンドにおける炭素原子は、引き続き金属ナノ球又はミクロン球に固溶され、水素ガス雰囲気を加えることで、金属ナノ球又はミクロン球における炭素原子が過飽和固溶するときに析出した固体炭素をエッチングし、金属ナノ球又はミクロン球を、引き続きダイヤモンドの内部に移動させ、最終的に、ホウ素ドープダイヤモンド層の表面に多量の微小孔及びコーンを形成することを意味し、前記金属層の材料は、金属鉄、コバルト、ニッケルから選ばれる1つ又は複数であり、熱処理の温度は600~1000℃、時間は1min~3h、圧力は0.1~1大気圧である。
【0025】
本発明は、上記製造方法によって製造された高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極をさらに提供する。
【0026】
本発明は、作動電極として上記製造方法によって製造された高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の電気化学センサーへの応用をさらに提供する。
【0027】
応用中に、ホウ素ドープダイヤモンド電極を作動電極とし、白金シートを対向電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、電気化学センサー(3電極検出センサー)を組み立てる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、高い比表面積を有するパターニングされたホウ素ドープダイヤモンド電極の製造方法を提供し、本発明の製造方法は、ボトムアップ手法に属し、即ち、パターニングされたマスクとベースを直接一体として接続した後、ベースにパターニングされたダイヤモンド電極を直接成長させ、当該方法の設計ステップは、エッチングなどの方法よりも簡単で、操作が制御されやすく、製造コストも低くなる。
【0029】
製造プロセスにおいて、直接ステンレスシートをマスクとして採用し、シリコンベースを被覆し、マスクとするステンレス被覆層は、シリコンベースよりも、熱膨張係数がはるかに大きく、このように、高温成長時に本来固定されたマスクが変位、変形などの現象を発生しやすくなることにより、成長させたダイヤモンドパターンが不規則になり、ひいては成長に失敗してしまう。本発明において、周囲での位置規制、固定と、徐々な昇温とを組み合わせる方法を巧みに設計することで、上記現象の発生を回避する。
【0030】
一方、パターニング成長の領域の範囲は、伝統的なベース全体の成長領域に対して非常に小さいため、成長プロセスにおいて核生成しにくい問題がある。これは、主に、炭素原子は、核生成、島形成、成膜などの一連の工程において、それらの工程を完成するために十分な熱力学的運動が必要であるが、炭素原子が所定の領域内において成長するように限定され、その分、核生成と成膜の難しさを増加させ、1つの成長周期を長くし、ひいては規則的なパターンを形成できないためであり、本発明では、成長の初期でメタンの濃度を高くする方法により核生成しにくい問題を克服する。
【0031】
上記方法によって製造されたパターニングされたダイヤモンド電極は、規則的な微細構造を有し、電極の比表面積が大きく、電極の応答電流が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ダイヤモンド電極のパターニングの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例により本発明の実質的な特徴と顕著な進歩を説明するが、本発明は、実施例に制限されるものではない。
【0034】
実施例1
【0035】
ステップ1では、ステンレスシートをパターニングする。その方法は、フォトエッチング装置によって、ステンレスシートに所望の正方形アレイ模様に応じて、対応する模様を有するスルーホールパターンをエッチングし、中間スペース層を得ることである。
【0036】
ステップ2では、熱フィラメント化学気相成長基台を設計する。その方法は、検出電極に必要な実際の寸法2cm2に応じて、化学気相成長の基台の寸法を4cm2に設計し、残りの寸法が固定時に必要とする余裕寸法であり、高温耐性があるモリブデンワイヤを用いて該当寸法の基台金具に切断し組み立てを完成することである。
【0037】
ステップ3では、化学気相法によって、シリコンシート基板上にホウ素ドープダイヤモンド膜を堆積させる。その方法は、ステップ1で製造されたパターンシートとシリコンシート基板をアセトン溶液に置き、10分間超音波洗浄し、表面の油汚れを除去し、次に、脱イオン水で5分間超音波洗浄し、ベーク炉においてベーキングしてから化学気相成長室に入れ、5℃/minの速度でシリコンシート基板の表面の温度を750℃に上昇させ、ホウ素ドープダイヤモンド膜の成長を行わせることである。
【0038】
成長プロセスにおける熱フィラメントの巻き数を10とし、熱フィラメントの温度を2100℃に制御し、室圧を約2.5キロパスカルに制御し、導入されるガスのマスフローを、メタン20sccm、ボラン0.3sccm、水素ガス49sccmとなるように制御し、1h成長させた後、ボランと水素ガスの導入量を変えずに、メタンの導入量を5sccmとなるように調整して6h成長させ、最終的に得られたホウ素ドープダイヤモンド膜の厚みは5~10μmであり、成長させたダイヤモンド膜の結晶粒の大きさは5~7ミクロンである。
【0039】
ステップ4では、ステップ3で得られたパターニングされたダイヤモンド電極をパッケージして、白金シートを対向電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、3電極検出センサーを構成する。
【0040】
ステップ5では、ステップ4で製造された電極によりドーパミン溶液を検出する。当該パターニングされた電極は、非多孔質電極よりも、有効活性面積が大きく(パターニングされた電極の場合に面積は0.25cm2であり、パターニングされていない電極の場合に0.14cm2であり、ポインター実験は2mMのフェリシアン化カリウム溶液によるものであり、走査速度は10mV/sである)、電荷移動抵抗が小さい(パターニングされた電極の場合に4.5Ωであり、パターニングされていない電極の場合に10.5Ωであり、ポインター実験は電気化学抵抗テストであり、具体的には、2mMのフェリシアン化カリウム溶液に行われ、テストの周波数は1Hz~1MHzであり、開放電圧は10mVである)。検出対象は、濃度範囲が0.01~500μMであるドーパミン溶液であり、干渉対象は500μMのアスコルビン酸溶液であり、2種類の溶液は、いずれも0.01Mのリン酸塩PBS溶液をベース溶液として採用する。干渉物質をそれぞれ濃度が異なるドーパミン溶液に加え、パッキングされた電極を用いて検出分析を行い、検出分析の過程において、サイクリックボルタンメトリー法(走査速度は20mV/秒である)と方形波ボルタンメトリー法(パルス幅値は30mVであり、周波数は5ヘルツとする)を採用する。検出の結果は、当該電極のドーパミンに対する検出限界が60nMであり、検出直線範囲が5~50μMになることを示した。
【0041】
実施例2
【0042】
ステップ1では、ステンレスシートをパターニングする。その方法は、フォトエッチング装置によって、ステンレスシートに所望の正方形アレイ模様、長方形アレイ模様、円形アレイ模様などに応じて、対応する模様を有するスルーホールパターンをエッチングし、中間スペース層を得ることである。
【0043】
ステップ2では、熱フィラメント化学気相成長基台を設計する。その方法は、検出電極に必要な実際の寸法4cm2に応じて、化学気相成長の基台の寸法を8cm2に設計し、残りの寸法が固定時に必要とする余裕寸法であり、高温耐性があるモリブデンワイヤを用いて該当寸法の基台金具に切断し組み立てを完成することである。
【0044】
ステップ3では、化学気相法によって、シリコンシート基板上にホウ素ドープダイヤモンド膜を堆積させる。その方法は、ステップ1で製造されたパターンシートとシリコンシート基板をアセトン溶液に置き、15分間超音波洗浄し、表面の油汚れを除去し、次に、脱イオン水で10分間超音波洗浄し、ベーク炉においてベーキングしてから化学気相成長室に入れ、10℃/minの速度でシリコンシート基板の表面の温度を850℃に上昇させ、ホウ素ドープダイヤモンド膜の成長を行わせることである。
【0045】
成長プロセスにおける熱フィラメントの巻き数を13とし、熱フィラメントの温度を2300℃に制御し、室圧を約4キロパスカルに制御し、導入されるガスのマスフローを、メタン15sccm、ボラン0.5sccm、水素ガス47sccmとなるように制御し、1.5h成長させた後、ボランと水素ガスの導入量を変えずに、メタンの導入量を3sccmとなるように調整して8h成長させ、最終的に得られたホウ素ドープダイヤモンド膜の厚みは10~15μmであり、成長させたダイヤモンド膜の結晶粒の大きさは7~9ミクロンである。
【0046】
ステップ4では、ステップ3で得られたパターニングされたダイヤモンド電極をパッケージして、白金シートを対向電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、3電極検出センサーを構成する。
【0047】
ステップ5では、ステップ4で製造された電極によりドーパミン溶液を検出する。当該パターニングされた電極は、非多孔質電極よりも、有効活性面積が大きく(パターニングされた電極の場合に面積は0.3cm2であり、パターニングされていない電極の場合に0.23cm2であり、ポインター実験は2mMのフェリシアン化カリウム溶液によるものであり、走査速度は10mV/sである)、電荷移動抵抗が小さい(パターニングされた電極の場合に5.0Ωであり、パターニングされていない電極の場合に14.0Ωであり、ポインター実験は電気化学抵抗テストであり、具体的には、2mMのフェリシアン化カリウム溶液に行われ、テストの周波数は1Hz~1MHzであり、開放電圧は10mVである)。検出対象は、濃度範囲が0.01~500μMであるドーパミン溶液であり、干渉対象は1000μMのアスコルビン酸溶液であり、2種類の溶液は、いずれも0.01Mのリン酸塩PBS溶液をベース溶液として採用する。干渉物質をそれぞれ濃度が異なるドーパミン溶液に加え、パッキングされた電極を用いて検出分析を行い、検出分析の過程において、サイクリックボルタンメトリー法(走査速度は20mV/秒である)と方形波ボルタンメトリー法(パルス幅値は30mVであり、周波数は5ヘルツとする)を採用する。検出の結果は、当該電極のドーパミンに対する検出限界が50nMであり、検出直線範囲が1~80μMになることを示した。
【0048】
実施例3
【0049】
ステップ1では、ステンレスシートをパターニングする。その方法は、フォトエッチング装置によって、ステンレスシートに所望の正方形アレイ模様、長方形アレイ模様、円形アレイ模様などに応じて、対応する模様を有するスルーホールパターンをエッチングし、中間スペース層を得ることである。
【0050】
ステップ2では、熱フィラメント化学気相成長基台を設計する。その方法は、検出電極に必要な実際の寸法10cm2に応じて、化学気相成長の基台の寸法を15cm2に設計し、残りの寸法が固定時に必要とする余裕寸法であり、高温耐性があるモリブデンワイヤを用いて該当寸法の基台金具に切断し組み立てを完成することである。
【0051】
ステップ3では、化学気相法によって、シリコンシート基板上にホウ素ドープダイヤモンド膜を堆積させる。その方法は、ステップ1で製造されたパターンシートとシリコンシート基板をアセトン溶液に置き、20分間超音波洗浄し、表面の油汚れを除去し、次に、脱イオン水で20分間超音波洗浄し、ベーク炉においてベーキングしてから化学気相成長室に入れ、15℃/minの速度でシリコンシート基板の表面の温度を950℃に上昇させ、ホウ素ドープダイヤモンド膜の成長を行わせることである。成長プロセスにおける熱フィラメントの巻き数を15とし、熱フィラメントの温度を2400℃に制御し、室圧を約5キロパスカルに制御し、導入されるガスのマスフローを、メタン10sccm、ボラン1sccm、水素ガス45sccmとなるように制御し、2h成長させた後、ボランと水素ガスの導入量を変えずに、メタンの導入量を2sccmとなるように調整して10h成長させ、最終的に得られたホウ素ドープダイヤモンド膜の厚みは15~20μmであり、成長させたダイヤモンド膜の結晶粒の大きさは9~10ミクロン直径である。
【0052】
ステップ4では、ステップ3で得られたパターニングされたダイヤモンド電極をパッケージして、白金シートを対向電極とし、Ag/AgCl電極を参照電極として、3電極検出センサーを構成する。
【0053】
ステップ5では、ステップ4で製造された電極によりドーパミン溶液を検出する。当該パターニングされた電極は、非多孔質電極よりも、有効活性面積が大きく(パターニングされた電極の場合に面積は0.35cm2であり、パターニングされていない電極の場合に0.27cm2であり、ポインター実験は2mMのフェリシアン化カリウム溶液によるものであり、走査速度は10mV/sである)、電荷移動抵抗が小さい(パターニングされた電極の場合に6.0Ωであり、パターニングされていない電極の場合に16.0Ωであり、ポインター実験は電気化学抵抗テストであり、具体的には、2mMのフェリシアン化カリウム溶液に行われ、テストの周波数は1Hz~1MHzであり、開放電圧は10mVである)。検出対象は、濃度範囲が0.01~500μMであるドーパミン溶液であり、干渉対象は1500μMのアスコルビン酸溶液であり、2種類の溶液は、いずれも0.01Mのリン酸塩PBS溶液をベース溶液として採用する。干渉物質をそれぞれ濃度が異なるドーパミン溶液に加え、パッキングされた電極を用いて検出分析を行い、検出分析の過程において、サイクリックボルタンメトリー法(走査速度は20mV/秒である)と方形波ボルタンメトリー法(パルス幅値は30mVであり、周波数は5ヘルツとする)を採用する。検出の結果は、当該電極のドーパミンに対する検出限界が45nMであり、検出直線範囲が0.5~100μMになることを示した。
【0054】
比較例1
【0055】
当該比較例1は、ステップ3でパターンシートとシリコンシート基板を、その周囲で位置規制、固定しないこと以外、実施例1と同様の条件で行われ、その結果、パターンに合わせるダイヤモンドアレイを成長させることができなかった。これは、本来、シリコンベースとステンレスパターンシートとは、熱膨張係数が大きく異なっているので、良好に位置規制できなければ、変形や変位などの現象を発生し、ダイヤモンド膜の成長に失敗してしまうことにつながりやすいためである。
【0056】
比較例2
【0057】
当該比較例2は、ステップ3でメタンの初期の流量を8sccmとすること以外、実施例1と同様の条件で行われ、その結果、パターンに合わせるダイヤモンドアレイを成長させることができなかった。これは、本来、シリコンベースとステンレスパターンシートの間に、炭素原子の核生成のための領域が小さいので、炭素原子の濃度が十分に高くなければ、小さい領域内に核生成、成長させ、最終的に成膜させることがにくくなることにより、ダイヤモンド膜の成長に失敗してしまうためである。
【0058】
比較例3
【0059】
当該比較例3は、ステップ3で熱フィラメントの温度を1800℃となるように調整すること以外、実施例1と同様の条件で行われ、その結果、ダイヤモンドアレイを成長させることができなかった。これは、熱フィラメントの温度が低すぎることにより、ダイヤモンドの成長のために炭素原子を効果的に、十分に多く分解することができず、また、熱フィラメントの温度が低すぎると、ベースの温度にも影響し、炭素原子の核生成が阻害され、さらに炭素原子の成膜工程が阻害されるためである。
【0060】
比較例4
【0061】
当該比較例4は、30℃/minの速度でシリコンシート基板の表面の温度を750℃に上昇させること以外、実施例1と同様の条件で行われた。その結果、効果的に核生成できず、最終的にダイヤモンド膜を成長させていないことを見出した。これは、当該昇温速度が本出願に指摘された昇温速度よりも速すぎる問題があり、上記したように、ベースとマスクとは、熱膨張係数が大きく異なっているので、昇温が速すぎると、熱変形が深刻になり、昇温の初期と後期でパターニングの領域に明らかな変位現象が生じたことにより、炭素原子が同一の領域で効果的に核生成できず、最終的に成長に失敗してしまうためである。
【0062】
比較例5
【0063】
当該比較例5は、ステップ3で最初にメタンの流量を30sccmとすること以外、実施例3と同様の条件で行われた。その結果、ベースに効果的に核生成できず、最終的にダイヤモンド膜の成長に失敗したことを見出した。これは、使用されるメタンの初期の濃度が高すぎ、分解された炭素原子が成長領域内に過剰に堆積しているが、分解された原子状水素は、過剰な炭素原子を直ちに持ち運ぶことができず、過剰な炭素原子はグラファイト相を形成し、ダイヤモンド膜の成長を停止させ、最終的に成長領域内にグラファイト相が多く見られるようになり、ダイヤモンド膜の成長に失敗してしまうためである。
【国際調査報告】