(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】ナノ粒子の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20230606BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/52 20170101ALI20230606BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20230606BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230606BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230606BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230606BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/04 ZNA
A61K47/52
A61K45/00
A61K38/00
A61K31/7088
A61K47/69
A61K9/51
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568554
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021062751
(87)【国際公開番号】W WO2021229015
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514225146
【氏名又は名称】ライフ サイエンス インクバトーア ベトリープス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キューベルベック, アルミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC41
4C076DD29
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA42
4C084BA44
4C084MA38
4C084MA41
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB092
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA38
4C086MA41
4C086NA13
4C086ZB09
(57)【要約】
本開示は、薬学的に許容され得る化合物の担体としてのナノ粒子の組成物、組成物の調製方法、および医療目的、特に免疫予防法または免疫療法のための組成物の使用に関する。本発明はまた、組成物を含有するワクチンに関する。この組成物は、任意の種類の抗原が負荷された、二酸化ケイ素および表面上の官能基を有するナノ粒子を含み得、上記化合物は、ナノ粒子のペイロードを表し、150nm未満の粒径を有し得る。ナノ粒子の表面上の官能基は、そのような化合物の負電荷および正電荷を担持および/または安定化するのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素および表面上の官能基を有する、薬学的に許容され得る化合物が負荷されたナノ粒子を含む組成物であって、
- 前記官能基は、前記薬学的に許容され得る化合物の負電荷および正電荷の両方を担持および/または安定化することができ、
- 前記組成物のゼータ電位は、少なくとも±15mVの値を有し、
- 前記ナノ粒子は、150nm未満の粒径を有する、
組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、nm
2単位の前記ナノ粒子の表面に対する前記薬学的に許容され得る化合物の総数[分子/nm
2]に関して、最大0.5の表面負荷密度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物の多分散性指数(PDI)が0~0.32である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物のゼータ電位が、少なくとも±30mVの値を有する、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記負荷されたナノ粒子の合計の正味電荷が0とは異なる、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記官能基が、共有結合または吸着結合によって前記ナノ粒子の表面に結合されたリンカーLに連結されている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記リンカー化合物Lが、官能基として少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO
-)基を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記リンカー化合物Lが、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH
2もしくは-NHC(=NH
2
+)NH
2)またはアミノ基(-NH
2もしくは-NH
3
+)基を含む、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
前記リンカーLが、-SH、-COOH、-NH
2、-グアニジノ基(-NHC(=NH))NH
2)、-PO
3H
2、-PO
2CH
3H、-SO
3H、-OH、-NR
3
+X
-の群から選択される少なくとも1つの更なる官能基L’を含む、請求項6から8までのいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記リンカー化合物Lが、少なくとも式(I)の構造単位
*-(-O)3Si-(CH2)n-CH(COOX)-(CH2)p-C(O)-NH-CH(COOX)-(CH2)q-Y(I)
[式中、
Xは、互いに独立して、Hまたは負電荷であり、
Yは、互いに独立して、-NHC(=NH)NH
2、-NHC(=NH
2
+)NH
2、-NH
2または-NH
3
+であり、
n、pおよびqは、互いに独立して、0または1~25の数であり、
*-は、前記ナノ粒子との連結点である]
を含む、請求項6から9までのいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記薬学的に許容され得る化合物が、吸着結合によって前記ナノ粒子にコンジュゲートされている、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記薬学的に許容され得る化合物が、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(RNA、DNA、一本鎖もしくは二本鎖)、核酸またはペプチド抗原を含む群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記薬学的に許容され得る化合物が、病原体関連分子パターン(PAMP)、損傷関連分子パターン(DAMP)、欠損感染性粒子(DIP)またはエピトープを含む群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
PAMPが、TLRアゴニスト、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)リガンド、メラノーマ分化関連遺伝子5(MDA-5)リガンド、細胞質ゾルDNAセンサ(CDS)リガンド、STINGリガンド(環状ジヌクレオチド(CDN))の群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ペプチドが、酵素カテプシンBにより切断可能なリンカーを有するC末端伸長部を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ワクチンまたは免疫賦活剤として使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
二酸化ケイ素および表面上の官能基を有し、150nm未満の粒径を有するナノ粒子であって、前記ナノ粒子に共有結合または吸着結合したリンカーLを含み、前記リンカーLが、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH
2もしくは-NHC(=NH
2
+)NH
2)またはアミノ基(-NH
2もしくは-NH
3
+)基を含む、ナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬学的に許容され得る化合物の担体としてのナノ粒子の組成物、医療目的、特に免疫予防法または免疫療法のための組成物の使用、ならびにナノ粒子自体に関する。本発明はまた、組成物および/またはナノ粒子を含有するワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ナノ医療およびナノ送達システムは、比較的新しいが急速に発展している科学であり、ナノスケール範囲の材料を使用して、診断もしくは治療ツールの手段として機能させるか、または治療薬を体内の特定の標的部位に送達される。特に、ナノ粒子は、化学療法薬、生物学的薬剤、免疫療法薬の送達、および免疫療法におけるワクチンとして知られている。
【0003】
官能化ナノ粒子は、薬物送達系として、例えば抗原の担体としてよく知られている。文献には、特に、抗原がカプセル化されているかまたはナノ粒子の表面に結合している担体系が記載されている。
【0004】
国際公開第2006/037979号は、アジュバントおよび抗原、例えば腫瘍および病原体抗原を含む金ナノ粒子(GNP)、ならびに癌および感染性疾患の処置などの様々な用途におけるそれらの使用を記載している。糖質リガンドを有するナノ粒子または抗体に基づく免疫原性構造、ならびに治療目的および予防目的、ならびに糖質構造に対する抗体の単離および検出のためのそれらの使用も開示される。
【0005】
国際公開第2013/034741号および国際公開第2013/034726号は、リンカーを介して結合したエピトープペプチドを有し、例えば哺乳動物対象における腫瘍の予防的処置または治療的処置においてワクチンとしての使用が見出されるナノ粒子に関する。
【0006】
国際公開第2011/154711号は、インスリンなどのペプチドの送達のための担体として作用する糖化金ナノ粒子を記載している。
【0007】
国際公開第2010/006753号は、少なくとも1つの抗原が表面に結合した二酸化ケイ素の単分散ナノ粒子を開示している。ナノ粒子は、癌の免疫予防または免疫療法に使用される。
多くのナノ粒子が、特に癌の処置に関連して調査および開発されてきたが、特にそのアジュバント効果の点で、改善された特性を有する物質を提供することへの需要は依然として高い。さらに、薬理学的に関連する薬剤を身体の免疫系に提示するための柔軟で便利なシステムとしてナノ粒子を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/037979号
【特許文献2】国際公開第2013/034741号
【特許文献3】国際公開第2013/034726号
【特許文献4】国際公開第2011/154711号
【特許文献5】国際公開第2010/006753号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
したがって、本発明の目的は、特に免疫予防法または免疫療法に使用するための改善されたナノ粒子およびそれらを含む組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、医療処置のための広範囲の様々なリガンドを担持するのに適したすぐに使用可能なナノ粒子を生成するための簡単な方法を可能にするプラットフォーム技術を提供することである。これらのナノ粒子は、有効な免疫調節活性を有するべきである。
【0010】
これらの目的は、薬学的に許容され得る化合物(好ましくは任意の種類の抗原)が負荷された、二酸化ケイ素および表面上の官能基を有するナノ粒子を含む組成物を提供することによって解決される。化合物は、ナノ粒子のペイロードを表す。ナノ粒子は、150nm未満の粒径を有する。ナノ粒子の表面上の官能基は、そのような化合物の負電荷および正電荷を担持および/または安定化するのに適している。組成物は、少なくとも±15mVのゼータ電位を有する。
【0011】
本発明による組成物を用いて、コロイド懸濁液の安定性の欠如という、薬物送達のためのナノ粒子の1つの基本的な問題が克服される。
【0012】
水性系において、表面電荷は本質的にコロイド系の安定性を保証する。これらの電荷は正または負であり得る。粒子の凝集を実質的に低減またはそれどころか回避するためには、同じ電荷の十分な官能基が存在することが重要であり、これが静電反発をもたらす。コロイド担体系の電荷が反対に荷電した分子の吸着によって補償される場合、凝集体が形成され、コロイド系が崩壊するであろう。
【0013】
凝集体は、著しく大きな粒径を有し、このことは体内でのこれらの大きな粒子の効果的な輸送を危険にさらし、あまり効果的でない免疫調節有効性もたらす。
【0014】
150nm未満の粒径および少なくとも±15mVのゼータ電位を有するナノ粒子を含む本発明による組成物は、組成物が十分に安定であることを保証する。特に生理学的条件下では、その中に分散されたナノ粒子は、体内の主要な活性部位に効果的に輸送され得る。したがって、本発明による組成物は、リンパ系への、特に投与部位から樹状細胞が位置するリンパ節へのナノ粒子の改善された輸送を可能にする。
【0015】
皮下注射によって投与される場合、本発明による粒子は、血液循環に入るには大きすぎるため、それらの迅速な排出ならびに重度の全身有害作用は本質的に回避される。同時に、それらはリンパ管に侵入し、食作用によって樹状細胞に入るくらい十分小さい。粒子を皮内、腹腔内または筋肉内に投与する場合も同様である。したがって、静脈内または動脈内投与を除いて、粒子を非経口的に投与することが好ましい。
【0016】
本発明者らは、本発明による組成物中の粒子が表面上に多数の化合物を担持できることを見出した。ナノ粒子の所望の機能を考慮して、化合物は薬学的に許容され得る。化合物の総量は、nm2(表面負荷密度)単位のナノ粒子の表面に対して最大5%(重量基準)であり得る。大量の化合物を担持するナノ粒子の適合性は、高用量のそのような化合物(例えば、抗原または原薬)が送達される場合に特に重要である。
【0017】
本発明による組成物は、二酸化ケイ素および表面上の官能基を有するナノ粒子を含む。官能基は、ナノ粒子の表面に直接的または間接的に連結することができる。本発明の好ましい実施形態では、官能基は、リンカー(以下、リンカー化合物L)を介してナノ粒子の表面に連結している。リンカー化合物Lは、任意の方法によって、特に共有結合または吸着結合によって、最も好ましくは共有結合によってナノ粒子の表面に連結することができる。
【0018】
特に好ましい実施形態では、リンカー化合物Lは、カルボキシル(-COOH)もしくはカルボキシレート(-COO-)基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基および/またはグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2もしくは-NHC(=NH2
+)NH2)もしくはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む。好ましくは、それは、カルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、グアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)からなる群から選択される少なくとも1つの基との両方を含む。最も好ましいのは、リンカー化合物Lがカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)とを含むことである。
そのようなリンカー化合物Lは、アニオン性もしくはカチオン性の、また非極性の薬学的に許容され得る化合物(例えば、疎水性ペプチド)の吸着結合を可能にする。これにより、リンカーは、ナノ粒子の表面への広範囲の化学的に多様な化合物の単純なカップリングのためのプラットフォーム技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1-1】
図1a~
図1dは、以下のSiO
2粒子のTEM画像を示す。
図1aは、粒径68nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
図1bは、粒径40nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
図1cは、粒径25nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
図1dは、粒径15nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
【
図2】
図2は、粒径150nmのSiO
2ナノ粒子のSEMを示す。
【
図3】
図3は、本発明によるナノ粒子の横断面の概略図を示す。Aはリンカー化合物Lによる表面官能化を表し、Bは非晶質SiO
2シェルを表し、Cはコア材料を表し、これは空隙、水または任意の他の材料ならびに非晶質SiO
2であり得る。直径d1は0~149nmであり、d2は10~150nmである。
【
図4】
図4bは、本発明による好ましい3つの部分からなるバイオコンジュゲートを示す。
図4bで使用したペプチドは、ヒトNY-ESO-1由来の極めて疎水性のエピトープである。N末端伸長のために、酵素的(カテプシンB)切断可能ペプチドリンカーVal-Citを使用して、MHC IまたはMHC IIに対する天然の未修飾抗原の放出を確実にした。ナノ粒子への溶解性および静電引力を高めるために、伸長部分「Lys-Lys-Lys」を使用した。また、例えばLys-Lys-Lys-AspまたはArg
6による伸長も可能である。
【
図5】
図5aは、Z平均対ペプチド濃度を示し、
図5bは、PDI対ペプチド濃度を示す。
【
図6】6%ポリ(I:C)LMWの負荷まで、吸着されたポリ(I:C)による粒径の増加のために、測定されたZ平均値は増加する(
図6b)。また、低いPDI(<0.1)は、滑らかな粒子負荷(
図6a)を示す。
【
図7-1】
図7a:ナノ粒子を含まないポリ(I:C)LMW。
図7b:ポリ(I:C)を含まないSiO
2-Argナノ粒子。
図7c:6重量%のポリ(I:C)を担持したSiO
2-Argナノ粒子。
図7d:8重量%のポリ(I:C)を担持したSiO
2-Argナノ粒子。
【
図8】
図8:72時間の刺激後のサイトカイン発現(任意単位)対様々なタイプのサイトカイン。
【
図9】
図9:96時間の刺激後のサイトカイン発現(任意単位)対様々なタイプのサイトカイン。
【
図10】
図10aおよび
図10b:分化したTHP-1細胞をポリ(I:C))[12.5μg/ml]、SiO
2-Arg[0.5mg/mL]または新規なアジュバント(SiO
2-Arg[0.5mg/mL]に結合したポリ(I:C)[12.5μg/ml])で刺激した後の異なる時点でのサイトカイン放出。
【
図11-1】シリカナノ粒子に吸着的に結合したTLR3アゴニスト(群E)は、同じ濃度および同一の試験条件下で適用された遊離TLR3アゴニスト(群C)よりも明らかに優れていることを示すことができた。免疫ブースターZelNate(登録商標)(群B)もまた、プラセボ群(群A)と比較して、この研究で有意な改善を示さなかった。これは、有意な効果が観察されなかった群Dの未修飾シリカナノ粒子にも当てはまる(
図11aおよび
図11b)。
【
図12】
図12は臨床スコアを示す。データは、平均臨床スコア(最大スコア=5)±SEM(n=10)として抗原負荷後の日数との関連で提示している。
【
図13】ワクチン誘導性HPV16 E7
11-19特異的CD8
+T細胞を評価するために、エクスビボ再刺激脾細胞をIFN-γ細胞内サイトカイン染色(ICS)とそれに続くフローサイトメトリーで評価した(
図13)。
【
図14】
図14は、遊離抗原HPV16 E7抗原YMLDLQPET+ポリ(I:C)(HMW、高分子量)「遊離抗原+TLRアゴニスト」または23nmの直径を有するアルギニル化シリカナノ粒子に両方とも吸着結合したKKKW-Cit-YMLDLQPET+ポリ(I:C)(HMW)のいずれかを受けたマウスの生存率を示す。
【
図16】
図16:H2-Kb陽性細胞を、SiO
2-PO
3H
2の有無で、天然のもしくは伸長OVA
257-264エピトープまたは全長OVAタンパク質の5μM溶液と6時間インキュベートした後のOVA
257-264MHC I発現。25-D1.16検出抗体で標識した後、フローサイトメトリーによって定量化を行った。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
ナノ粒子のゼータ電位は、ナノ粒子の表面電荷特性を特徴付けるために当業者に知られている一般的に使用されるパラメータである。それは、粒子の電位を反映している。粒子の凝集を回避するために、互いに反発する同じ電荷の十分な官能基が存在することが重要である。凝集体は、コロイド系を崩壊させる。結果として生じる凝集体は、個々の粒子よりも著しく大きい粒径を有し、したがって、リンパ管の有窓内皮を介した所望の輸送機構はもはや保証されない。それはコロイド系の安定性を示す尺度として受け入れられている。
【0021】
現在の特性評価方法は、懸濁液中の粒子の平均電気泳動移動度を測定するアンサンブル測定(例えば、位相分析光散乱、ドップラー速度測定、ストリーミング電位差測定)に基づく(Sci.Rep.12 Dec.2017;7(1):17479,PMCID:PMC5727177)。動的光散乱(DLS)(ZetaSizer Nano ZS,Malvern Instruments社、英国)を用いて本発明による組成物のゼータ電位を測定することが特に好ましい。
【0022】
本発明による組成物のゼータ電位は、少なくとも±15mV、好ましくは±30mV、より好ましくは±60mV、最も好ましくは±25~±40mVの値を有する。これにより、望ましくはコロイド懸濁液である組成物が安定化され、これは系の崩壊が本質的に回避されることを意味する。
【0023】
本発明による組成物は、150nm未満、好ましくは100nmまたはそれ未満の粒径を有するナノ粒子を含有する。50nmまたはそれ未満の粒径を有するナノ粒子がより好ましく、20~30nmの粒径を有するナノ粒子が最も好ましい。本明細書で定義される粒径は、全範囲にわたるランダムな分布は存在せず、代わりに、その範囲内の定義された粒径が選択され、その標準偏差は最大15%、好ましくは最大10%であり、標準偏差は常に二峰性または多峰性分布の場合の極大値に関連するように解釈されるべきである。
【0024】
ナノ粒子の粒径の指標は、Z平均直径である。動的光散乱で測定されるZ平均直径は、キュムラント平均としても知られているパラメータである。これは、本技術によって生み出される主要かつ最も信頼性の高いパラメータである。Z平均直径は、典型的には、ISO 22412:2017に従った品質管理設定で使用される。動的光散乱技術は、強度加重分布を与え、分布における各粒子の寄与は、粒子によって散乱された光の強度に関連するであろう。強度加重分布は、ZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments社、英国)で測定することが好ましい。
【0025】
好ましい実施形態では、本発明によるナノ粒子のZ平均直径は、ISO 22412:2017に従って測定して、5nm以上150nm未満、好ましくは15nm以上60nm以下、より好ましくは20nm以上40nm以下、さらにより好ましくは20nm~30nmの範囲にある。
【0026】
本発明によるナノ粒子の粒径および組成物の安定性は、最大0.2μmの孔径を有する滅菌フィルターによる濾過によってさらに確認される。しかしながら、これは直径50nm未満のナノ粒子にのみ実用的である。
【0027】
本発明の組成物の安定性は、その多分散性指数(PDI)によって実証され得る。PDIは、一般に、系の均一性、本発明の文脈において、コロイド状ナノ粒子懸濁液の均一性および安定性の指標である。PDIはナノ粒子サイズ分布を反映している。より広い範囲の粒径を有するサンプルはより高いPDIを有するが、均一なサイズの粒子からなるサンプルはより低いPDIを有する。当業者は、PDIを測定するための方法および機器、特にZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments社、英国)を知っている。
【0028】
0.7を超えるPDIは、サンプルが広いサイズ分布を有することを示す。0.1未満のPDIは単分散であると考えられる。様々なサイズ分布アルゴリズムは、これらの2つの極値の間に収まるデータを扱うこれらのパラメータの計算は、ISO標準文書13321:1996 EおよびISO 22412:2008に定義されている。
【0029】
本発明による組成物は、0~0.32、好ましくは0.1~0.3、より好ましくは0.1~0.2、最も好ましくは0.1未満のPDIを示す。0.1未満のPDIを有する本発明による組成物は、好ましくは単分散である。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明によるナノ粒子のZ平均直径は、20nm以上40nm以下の範囲内であり、PDIは0.1~0.30であり、ゼータ電位は±20mV~±40mVである。
【0031】
より好ましい実施形態では、本発明によるナノ粒子のZ平均直径は20~30nmの範囲内であり、PDIは0.1~0.2であり、ゼータ電位は±25~±40mVである。
【0032】
最も好ましい実施形態では、本発明によるナノ粒子のZ平均直径は20nm~30nmの範囲内であり、PDIは0.1未満であり、ゼータ電位は±25mV~±40mVである。
【0033】
また、TEMまたはSEMにより、負荷および放出された粒子の粒径を測定することも可能である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「透過型電子顕微鏡法(TEM)」という用語は、電子ビームが超薄試料を透過し、それが通過するときに試料と相互作用する顕微鏡法技術を指す。試料を透過した電子から画像が形成され、対物レンズによって拡大されて集束され、画像スクリーン、たいていのTEMでは蛍光スクリーン、加えてモニタ、もしくは写真フィルムの層に現れるか、またはCCDカメラなどのセンサによって検出される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「走査型電子顕微鏡(SEM)」という用語は、電子の集束ビームで表面を走査することによってサンプルの画像を生成する電子顕微鏡の一種を指す。電子はサンプル中の原子と相互作用し、サンプルの表面トポグラフィおよび組成に関する情報を含む様々な信号を生成する。電子ビームはラスタ走査パターンで走査され、ビームの位置は検出された信号の強度と組み合わされて画像を生成する。
【0036】
図1a~
図1dは、以下のSiO
2粒子のTEM画像を示す。
図1aは、粒径68nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
図1bは、粒径40nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
図1cは、粒径25nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
図1dは、粒径15nmのSiO
2ナノ粒子のTEM画像を示す。
【0037】
図2は、粒径150nmのSiO
2ナノ粒子のSEMを示す。
【0038】
本発明に関連して、「ナノ粒子」は、最終的に結合または吸着される抗原の認識点として機能する官能基をその表面上に有する粒子状結合マトリックスを意味すると解釈される。ここでの表面は、粒子内の空洞(細孔)のすべての領域、つまり外面の他に、内面も包含する。官能基は、表面に直接的または間接的に結合していてもよい。
【0039】
本発明によれば、ナノ粒子は、別の材料との混合物であってもよい二酸化ケイ素(SiO2)を含む。したがって、この材料は、二酸化ケイ素が典型的には多成分系において最も高い割合を有する更なる成分と混合することもできる。本発明のナノ粒子は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の二酸化ケイ素を含むことができる。
【0040】
本発明によるナノ粒子の特に好ましい実施形態では、材料は、本質的に純粋な、すなわち調製プロセスの過程で予想される不純物のみを含む二酸化ケイ素を含む。本発明のより好ましい実施形態では、ナノ粒子材料は二酸化ケイ素からなる。
【0041】
他の材料の例は、金属、金属カルコゲナイド、磁性材料、磁性合金、半導体材料、金属酸化物、ポリマー、オルガノシラン、他のセラミックまたはガラスである。金属は、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Gd、Ru、RhおよびZnの群、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0042】
本発明の更なる実施形態では、ナノ粒子は、二酸化ケイ素を含むコーティングを有する。コアは、金属、ポリマー、またはFe2O3もしくはFe3O4などの強磁性金属などの任意の他の材料を含んでもよい。コアは、二酸化ケイ素を欠いていてもよい。
【0043】
本発明による二酸化ケイ素ナノ粒子は、例えば、国際公開第2010/006753号に記載されており、これは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0044】
二酸化ケイ素ナノ粒子は、とりわけ、古典的なStoeber合成を使用して調製することができ、この場合、定義されたサイズの単分散ナノスケール二酸化ケイ素は、水性アルコール-アンモニア媒体中でのテトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解によって調製することができる(J.Colloid Interface Sci.1968,26,62)。
【0045】
二酸化ケイ素ナノ粒子の調製プロセスは、欧州特許第0216 278号および国際公開第2005/085135号に詳細に記載されており、したがって、これらの文献は、その全体が参照により本発明の開示内容に組み込まれる。少なくとも1つのアミンが、好ましくは媒体中で使用される。
【0046】
本発明によるナノ粒子の二酸化ケイ素マトリックスは、多孔質または非多孔質のいずれかであり得る。多孔度は、本質的に製造プロセスに依存する。欧州特許第0216278号に従った合成では、特に非多孔質粒子が得られる。
【0047】
本発明によれば、ナノ粒子は、その表面上に官能基を含む。これらの官能基は、負電荷および正電荷の両方を担持および/または安定化することができる。これらの電荷は、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(RNA、DNA)、核酸、小分子またはペプチド抗原などの薬学的に許容され得る化合物に属し得る。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、薬学的に許容され得る化合物は、病原体関連分子パターン(PAMP)、損傷関連分子パターン(DAMP)、欠損感染性粒子(DIP)またはエピトープの群から選択される。
【0049】
負電荷および正電荷の両方を担持および/または安定化することができる官能基は、例えば、-SH、-COOH、-NH2、-グアニジノ基(-NHC(=NH))NH2)、-PO3H2、-PO2CH3H、-SO3H、-OH、-NR3
+X-である。好ましい官能基は、-COOH、-グアニジノ基(-NHC(=NH))NH2)および-NH2である。官能基は、それらの塩形態で存在してもよい。
【0050】
本発明による組成物は、nm2単位のナノ粒子の表面に対する薬学的に許容され得る化合物の総数[分子/nm2]に関して、最大0.5、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.03~0.4、最も好ましくは0.05~0.3の表面負荷密度を有するナノ粒子を含む。
【0051】
この表面負荷密度は、完全な球体を仮定し、粒子当たりのモル負荷によって計算される。例えば、直径25nmの球状粒子は、1964nm2(A=π*d2)の表面積および1.64E-8ngの重量を有する(非晶質シリカの仮定密度は2000 kg/m3)。そのような粒子に5重量%のペプチドKKKV-Cit-YMLDLQPET(M=1,910.31g/mol)を負荷すると、4.283E-22 molになる。この値にアボガドロ定数を乗算すると、1964nm2の1個の粒子に結合した258個の単一分子のKKKV-Cit-YMLDLQPETが得られる。これは、0.13分子/nm2の表面負荷密度に相当する。
【0052】
本発明による組成物は、6.0~8.0、好ましくは6.5~7.8、より好ましくは6.8~7.5、さらにより好ましくは7.2~7.4のpHを有するように配合される。組成物のpHは、典型的には約1mM~50mMの範囲で使用される、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)またはヒスチジンなどの緩衝液の使用によって維持することができる。別の方法では、組成物のpHは、生理学的に許容され得る酸または塩基を使用することによって調整することができる。
【0053】
本発明の一実施形態では、官能基は-PO3H基である。本発明によるリン酸化ナノ粒子は、例えば、アンモニアの添加下で(ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシランとシリカナノ粒子との反応によって調製することができる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、官能基は、リンカーLを介してナノ粒子に連結されている。リンカーは、例えば共有結合または吸着結合によってナノ粒子に連結することができる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基を含む。
【0056】
より好ましい実施形態では、そのようなリンカーは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)をさらに含む。
【0057】
本発明の最も好ましい実施形態では、リンカー化合物Lは、少なくとも一般式(I)の構造単位
*-(-O)3Si-(CH2)n-CH(COOX)-(CH2)p-C(O)-NH-CH(COOX)-(CH2)q-Y(I)
[式中、
Xは、互いに独立して、Hまたは負電荷であり、
Yは、互いに独立して、-NHC(=NH)NH2、-NHC(=NH2
+)NH2、-NH2または-NH3
+であり、
n、pおよびqは、互いに独立して、0または1~25の数であり、
*-は、ナノ粒子との連結点である]を含む。
【0058】
好ましい実施形態では、リンカー化合物Lは、nが3であり、pが1であり、qが4であり、Yが互いに独立して-NH2または-NH3
+基である、少なくとも式(I)の構造単位を含む。
【0059】
特に好ましい実施形態では、リンカー化合物Lは、nが3であり、pが1であり、qが3であり、Yが互いに独立して-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2基である、少なくとも式(I)の構造単位を含む。
【0060】
本発明の別の態様は、本発明によるナノ粒子の調製方法であって、
- 第1のステップ(i)では、水、少なくとも1つの可溶化剤および少なくとも1つのアミンまたはアンモニアを含む媒体中でのテトラアルコキシシランおよび/またはオルガノトリアルコキシシランの加水分解重縮合が行われ、ここで、まず一次粒子のゾルが生成され、その後、反応の程度に対応して制御された方法で対応するシランの連続的な計量投入によって更なる核生成が制限されるように、得られたナノ粒子が5~150nmの範囲内の所望の粒径にされ、
- 第2のステップ(ii)では、ステップ(i)からのナノ粒子を[(3-トリエトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物と反応させ、これを同時反応でL-アルギニンまたはL-リジンとアミドを形成させる、方法を提供することである。
【0061】
方法のステップ(ii)でL-アルギニンの使用することが好ましい。
【0062】
別の実施形態では、リンカー化合物Lは、L-アルギニンとN-(3-トリエトキシシリルプロピル)マレイミドとの反応によっても得ることができた。反応は、好ましくは8を超えるpH値で行われる。
【0063】
本発明の一実施形態では、[(3-トリエトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物と、アグマチン、ヒスタミン、カダベリンまたはスペルミジンとの反応によってリンカー化合物Lを生成することも可能である。
【0064】
本発明の更なる実施形態は、リンカー化合物Lが共有結合または吸着結合した二酸化ケイ素ベースの表面を含むナノ粒子であって、リンカーLは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2もしくは-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)を含む。好ましい実施形態では、リンカーLは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2もしくは-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基とを含む。より好ましい実施形態では、リンカーLは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基とを含む。
【0065】
【0066】
図3は、本発明によるナノ粒子の横断面の概略図を示す。Aはリンカー化合物Lによる表面官能化を表し、Bは非晶質SiO
2シェルを表し、Cはコア材料を表し、これは空隙、水または任意の他の材料ならびに非晶質SiO
2であり得る。直径d1は0~149nmであり、d2は10~150nmである。
【0067】
本発明の一実施形態では、薬学的に許容され得る化合物は、吸着または共有結合によってナノ粒子にコンジュゲートされる。吸着結合が好ましい。
【0068】
本発明の更なる目的は、二酸化ケイ素および表面上の官能基を有し、150nm未満の粒径を有するナノ粒子であって、それに共有結合または吸着結合したリンカーLを含み、リンカーLが、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2もしくは-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)基を含むナノ粒子である。
【0069】
薬学的に許容され得る化合物の吸着結合の主な利点は、ほとんどの共有結合性コンジュゲーションとは対照的に、副生成物が形成されないか、または「反応」混合物中に残存しないことである。共有結合の場合、反応性官能基を分子に付加することによって結合すべき分子を化学的に修飾することが必要になる可能性がある。これは、ペプチド/抗原の構造における基本的な介入であり、RNAもしくはDNAベースの抗原またはアジュバントの場合、複雑な化学修飾を構成する。さらに、医薬品局によって既に承認されている既知の化合物の共有結合は、規制上の理由から新たな承認を必要とする新たな独立した物質(新規化学物質、NCE)を作り出す。
【0070】
好ましい実施形態では、式(I)によるリンカー化合物Lは、正電荷もしくは負電荷を有する薬学的に許容され得る化合物を吸着によって担持および/または安定化することができる。
【0071】
特に好ましい実施形態では、式(I)によるリンカー化合物Lは、負電荷を有する薬学的に許容され得る化合物を吸着によって担持および/または安定化することができる。
【0072】
より好ましい実施形態では、式(I)によるリンカー化合物Lは、リン酸基またはホスホン酸基を有する薬学的に許容され得る化合物を吸着によって担持および/または安定化することができる。
【0073】
驚くべきことに、リンカー化合物Lのアルギニン基と薬学的に許容され得る化合物のリン酸基の負電荷との間の静電相互作用は、「共有結合様」安定性を有することが見出された。
【0074】
本明細書における「結合」という用語は、表面官能基と抗原との間の任意の種類の相互作用、特に共有結合および非共有結合、例えば疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン結合、水素結合、リガンド-受容体相互作用、ヌクレオチドの塩基対合またはエピトープと抗体結合部位との間の相互作用に関する。
【0075】
薬学的に許容され得る化合物が疎水性、例えば疎水性ペプチドである場合、その親水性を高めることが有利である。タンパク質またはペプチドの場合、これは、例えば極性アミノ酸によるN末端またはC末端伸長によって可能である。本発明の好ましい実施形態では、タンパク質またはペプチドは、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、セリン、トレオニンまたはチロシン、好ましくはリジン、アルギニン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、より好ましくはリジンを含む群から選択される1つもしくはそれを超える極性アミノ酸で伸長される。
【0076】
したがって、本発明は、特に、溶解性を向上させるための極性アミノ酸を有するN末端またはC末端伸長部を含み、吸着結合によってリンカー化合物L、リンカーユニットUおよび
図4aに示される抗原/エピトープに連結された3つの部分からなるバイオコンジュゲートに関する。
【0077】
本発明によるリンカーユニットUは、例えば、様々なタイプのリンカーを含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)に使用される。化学的に切断可能なリンカーには、酸で切断可能な、還元可能なジスルフィドおよび外因性刺激によって切断可能なものの3つの主なタイプがある。
【0078】
ADCの例は、ゲムツズマブオゾガマイシン(ファイザー社のMylotarg(登録商標)、リンカーは4-(4-アセチルフェノキシ)ブタン酸)、イノツズマブオゾガマイシン(ファイザー社のBesponsa(登録商標)、リンカーは4-(4’-アセチルフェノキシ)-ブタン酸(AcBut)と3-メチル-3-メルカプトブタンヒドラジド(ジメチルヒドラジドとして知られている)との縮合生成物である)、トラスツズマブエムタンシン(ロシュ社のKadcyla(登録商標)、リンカーは4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレートである)またはブレンツキシマブベドチン(SGN-035としても知られている;Seattle Genetics Inc.社によるAdcetris(登録商標)、リンカーはジペプチドバリン-シトルリンである)である。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、ペプチドは、MHC IまたはMHC IIに対して天然の未修飾抗原の放出を確実にするために酵素カテプシンBにより切断可能なリンカー(catB切断リンカー)を有するN末端伸長部を含むリンカーユニットUを含む。酵素的catB切断リンカーは、カテプシンB感受性ジペプチドVal-Cit、Phe-Cit、Leu-Cit、Ile-Cit、Trp-Cit、Phe-Lys、Ala-LysまたはVal-Lysのうちの1つを含み、好ましいジペプチドはVal-CitまたはTrp-Citであり、より好ましくはVal-Citである。
【0080】
一実施形態では、本発明による組成物は、リン酸化ナノ粒子と、吸着結合によってナノ粒子にコンジュゲートされた1つもしくはそれを超えるペプチドとを含み、ペプチドは、カテプシンB感受性ジペプチドとしてVal-CitまたはTrp-Citを含む。
【0081】
図4bは、本発明による好ましい3つの部分からなるバイオコンジュゲートを示す。
図4bで使用したペプチドは、ヒトNY-ESO-1由来の極めて疎水性のエピトープである。N末端伸長のために、酵素的(カテプシンB)切断可能ペプチドリンカーVal-Citを使用して、MHC IまたはMHC IIに対する天然の未修飾抗原の放出を確実にした。ナノ粒子への溶解性および静電引力を高めるために、伸長部分「Lys-Lys-Lys」を使用した。また、例えばLys-Lys-Lys-AspまたはArg
6による伸長も可能である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、HPV16 E782-90エピトープLLMGTLGGIVは、酵素により切断可能なリンカーVal-Citおよびカチオン性可溶化配列Lys-Lys-LysによってN末端部位で拡大され、KKKV-Cit-LLMGTLGIVをもたらす。
【0083】
本発明の別の好ましい実施形態では、HPV16 E711-19エピトープYMLDLQPETは、酵素により切断可能なリンカーTrp-Citおよびカチオン性可溶化配列Lys-Lys-LysによってN末端部位で拡大され、KKKW-Cit-YMLDLQPETをもたらす。
【0084】
更なる実施形態は、表面上にリンカー化合物Lを有するSiO2ナノ粒子を含む本発明による組成物であり、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、吸着結合によりリンカー化合物Lにコンジュゲートされている1つもしくはそれを超えるペプチドまたは抗原とを含み、ペプチドまたは抗原は、リンカーユニットUおよび1つもしくはそれを超えるアミノ酸による親水性伸長部を含む。
【0085】
好ましい実施形態は、表面上にリンカー化合物Lを有するSiO2ナノ粒子を含む本発明による組成物であって、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、吸着結合によりリンカー化合物Lにコンジュゲートされている1つもしくはそれを超えるペプチドまたは抗原とを含み、ペプチドまたは抗原は、カテプシンB感受性ジペプチドおよびLys-Lys-Lysによる親水性伸長部を含むものである。
【0086】
より好ましい実施形態は、表面上にリンカー化合物Lを有するSiO2ナノ粒子を含む本発明による組成物であって、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、吸着結合によりリンカー化合物Lにコンジュゲートされている1つもしくはそれを超えるペプチドまたは抗原とを含み、ペプチドまたは抗原は、カテプシンB感受性ジペプチドとしてVal-CitまたはTrp-Citと、Lys-Lys-Lysによる親水性伸長部とを含むものである。
【0087】
別の実施形態は、表面上にリンカー化合物Lを有するSiO2ナノ粒子を含む本発明による組成物であって、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基-HC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、吸着結合によりリンカー化合物Lにコンジュゲートされている1つもしくはそれを超えるモデルペプチドSIINFEKLとを含み、ペプチドは、カテプシンB感受性ジペプチドとしてVal-CitまたはTrp-Citと、Lys-Lys-Lysによる親水性伸長部とを含むものである。
【0088】
しかしながら、ペプチドのこの親水性修飾は、MHCI(すなわち、免疫優性である)へのより強い結合をもたらし、それによって標的エピトープを置換し、腫瘍細胞上に存在しないエピトープに対する免疫応答を誘発し得る。この影響を回避するために、親水化サブ分子とエピトープとの間にスペーサが必要になる可能性がある。
【0089】
本発明の任意の実施形態は、いわゆる自己犠牲スペーサ(PABC、p-アミノベンジルカルバメート)の使用である。そのような自己犠牲スペーサの例は、4-アミノベンジルアルコール、2-アミノベンジルアルコールまたは4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-ヒドロキシベンジルアルコールの構造単位を含む化合物である。(欧州特許出願公開第0648503号、国際公開第2007/031734号、国際公開第2015/162291号、米国特許第6,180,095号、米国特許第6,214,345号)。
【0090】
自己犠牲スペーサは、分子部分への結合の1つが放出されると、残りの結合が分割され、先に結合した分子が放出されるように、少なくとも2つの更なる分子部分に化学的に結合している分子部分として定義される。
【0091】
自己犠牲スペーサが使用される場合、スペーサは、酵素的catB切断リンカーとペプチドとの間に配置されることが好ましい。一例として、以下のバイオコンジュゲートを生成することができる:(Arg6)-(Val-Cit)-(PABC)-(SIINFEKL)、ここで、SIINFEKLはモデル抗原である。
【0092】
驚くべきことに、酵素的catB切断リンカー系は、自己犠牲スペーサを必要とせずに使用できることが見出された。
【0093】
治療的ワクチン接種に使用されるエピトープは、典型的には、8~11アミノ酸(MHC Iでは)およびMHC IIでは最大25アミノ酸からなる。それらのエピトープでは、はるかに大きな薬物と比較してこれらのエピトープのサイズが小さいため、自己犠牲スペーサを使用する必要はない。
【0094】
薬学的に許容され得る化合物は、好ましくは、タンパク質(例えば、抗体もしくは酵素など)、ペプチド、核酸(RNAもしくはDNA)、ポリヌクレオチド、脂質、多糖類もしくは有機化合物(「小分子」、好ましくは、例えば50~1000Daの分子量を有する化学療法薬など)またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
好ましくは、薬学的に許容され得る化合物は、病原体関連分子パターン(PAMP)、損傷関連分子パターン(DAMP)、欠損感染性粒子(DIP)または抗原からなる群から選択される。
【0096】
本発明による「抗原」は、細胞性または体液性の免疫応答を誘導することができる構造体である。抗原は、好ましくはタンパク質原性であり、すなわち、それらはタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはそれらのフラグメントである。原則として、それらは任意のサイズ、起源および分子量を有することができる。それらは、少なくとも1つの抗原決定基または抗原エピトープを含有する。
【0097】
代替的な実施形態では、抗原は、それ自体核酸であるか、または抗原提示細胞の核内への輸送後に、MHC分子に提示されるタンパク質生成抗原に翻訳される核酸によってコードされる。
【0098】
核酸は、一本鎖および二本鎖のDNAもしくはRNAまたはオリゴヌクレオチドであり得る。核酸はまた、脂質、炭水化物、タンパク質またはペプチドとの複合体の構成要素であり得る。
【0099】
本発明による「ペプチド」は、好ましくはペプチド結合によって連結された任意の種類の任意の数のアミノ酸、好ましくは天然に存在するアミノ酸から構成される。特に、ペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸、好ましくは少なくとも5個、少なくとも7個、少なくとも9個、少なくとも12個または少なくとも15個のアミノ酸を含む。好ましい実施形態では、ペプチドは、100アミノ酸の長さを超えず、より好ましくは、50アミノ酸の長さを超えない。さらにより好ましくは、それは25アミノ酸以下である。最も好ましい実施形態では、ペプチドは、8~20アミノ酸の長さを有する。ペプチドはまた、翻訳後修飾、例えばリン酸化、グリコシル化、脂質化(ミリストイル化またはパルミトイル化など)、シトルリン化、(リジンの)アセチル化、(プロリンまたはリジンの)ヒドロキシル化を示すことができる。
【0100】
抗原決定基としても知られている本発明による「エピトープ」は、免疫系によって、具体的には抗体、B細胞またはT細胞によって認識される抗原の一部である。T細胞エピトープは、抗原提示細胞の表面に提示され、そこでMHC分子に結合する。ヒトでは、プロフェッショナル抗原提示細胞はMHCクラスIIペプチドを提示するように特殊化されているが、ほとんどの有核体細胞はMHCクラスIペプチドを提示する。MHCクラスI分子によって提示されるT細胞エピトープは、典型的には8~11アミノ酸長のペプチドであるが、MHCクラスII分子はより長いペプチド、13~17アミノ酸長を提示し、非古典的MHC分子も糖脂質などの非ペプチドエピトープを提示する。
【0101】
本発明のより好ましい実施形態では、薬学的に許容され得る化合物は、少なくとも1つの病原体関連分子パターン(PAMP)を含む化合物である。
【0102】
PAMPは、いわゆるパターン認識受容体(PRR)によって認識され、微生物病原体の主要なセンサとしての機能を有し、それらに対する免疫応答を開始する。PRRは、細胞質ゾル内および細胞外で、血流、リンパ液および間質液中に存在する分泌形態で、細胞膜およびエンドソーム膜上の膜結合コンテクストなどの細胞内区画に関連する異なる位置に見出すことができる。
【0103】
PRRの4つの主要なサブファミリー、Toll様受容体(TLR)、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン(NOD)-ロイシンリッチリピート(LRR)含有受容体(NRL)、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)様受容体(RLR)またはRIG-I様ヘリカーゼ(RLH)およびC型レクチン受容体(CLR)が存在する。更なるPRRは補体系内にある。
【0104】
本発明によれば、TLRによって認識されるPAMPが好ましい。TLRは、細胞膜上、エンドサイトーシス小胞または他の細胞内オルガネラの膜上および細胞質ゾルTLR上に発現される膜結合TLRに分類することができる。TLR4は、原形質膜および細胞内区画などの異なる細胞位置で経路を引き起こすことができるので、TLRの中でユニークな役割を有している。TLRは、「PAMP」(病原体関連分子パターン)と呼ばれることが多い微生物上の独特な構造を認識する。TLRへのリガンド結合は、炎症および免疫に関与する因子の産生を誘導する細胞内シグナル伝達経路のカスケードを引き起こす。
【0105】
表1は、本発明に従って適切なPAMPとしてのTLRアゴニストを示す。
表1:TLRアゴニストおよびそれらのPAMP
【表1】
【0106】
本発明によるより好ましいPAMPは、TLR3、TLR7、TLR8、TLR9アゴニストの群から選択され、最も好ましくはTLR3およびTLR9の群から選択される。
【0107】
特に好ましい実施形態は、表面上にリンカー化合物Lを有するSiO2ナノ粒子を含む本発明による組成物であって、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、吸着結合によりリンカー化合物Lにコンジュゲートされている1つもしくはそれを超えるPAMPとを含み、PAMPはポリ(U)またはCpG ODNから選択されるものである。
【0108】
好ましいTLR3アゴニストは、ポリ(I:C)(dsRNA、TLR3アゴニストならびにRIG-Iアゴニスト)、ポリI:ポリC12U(dsRNA、TLR3アゴニスト、商品名Ampligen(登録商標)、INN:リンタトリモド)、NAB2(核酸バンド2、酵母から単離され、パターン認識受容体TLR3およびMDA-5のアゴニストとして同定されたdsRNA)の群から選択される。
【0109】
好ましいTLR4アゴニストは、MPL-A(モノホスホリル脂質A、例えば、特定の形態のアルミニウム塩上に吸着されたMPL-AからなるSalmonella minnesota R595もしくはAS04由来)またはLPS(リポ多糖、例えば大腸菌055:B5由来)から選択される。また好ましいTLR4アゴニストは、合成TLR-4アゴニストアジュバントであるLPS模倣物である。TLR4リガンド機能を模倣するペプチド配列の例としては、例えば、APPHALSおよびQEINSSY(A.Shanmugamら、PLoS ONE,February 2012,Vol.7,Issue 2;e30839)が挙げられる。そのようなペプチド配列を有効成分ポリペプチドの配列に導入することにより、ポリペプチドはアジュバント機能を有し得る。
【0110】
別の好ましいPRRアゴニストは、マウスにおけるポリU(ssRNA、TLR8アゴニスト(ヒト)およびTLR7アゴニストである。
【0111】
本発明の好ましい実施形態によれば、薬学的に許容され得る化合物は、ヌクレオチド化合物、特にdsRNA構造を含むTLR7アゴニストを含むオリゴヌクレオチドアゴニスト(国際公開第2010/105819号、国際公開第2006/063252号)、国際公開第2007/031319号に記載されているものを含む短いssRNA TLR7およびTLR8アゴニスト、先に記載されたような免疫賦活性CpGジヌクレオチドなどのTLR9アゴニスト(国際公開第2001/022990号)、特にCpGジヌクレオチドODN 2006(Hartmann and Krieg,2000,The Journal of Immunology,2000,164 944-952)である。
【0112】
好ましいTLR7アゴニストは、G:U塩基対に加えて4~8個のG:C塩基対によって形成される二本鎖構造の中央のG:U塩基対を特徴とする。適切なTLR7アゴニストの例は、ヌクレオチド配列5’-GUCCUUCAA-S’(配列番号1)から本質的になるオリゴヌクレオチド剤であって、好ましくはこの配列の5’末端から取られたもの、例えば、5’-GUCC-3’(配列番号2)、5’-GUCCU-3’(配列番号3)、5’-GUCCUU-S’(配列番号4)、5’-GUCCUUC-3’(配列番号5)、または5’-GUCCUUCA-S’(配列番号6)である(国際公開第2006/063252号)。
【0113】
より好ましいTLR7アゴニストは、国際公開第2010/105819号に記載されており、RNAポリ/オリゴヌクレオチドは、G:U塩基対、好ましくはG:UおよびG:C塩基対ならびにA:U塩基対に加えて、4~8個のG:C塩基対によって形成される二本鎖構造の中心にあるG:Uゆらぎ塩基対を特徴とする。好ましいポリ/オリゴヌクレオチドは、以下の一般式(II)および(III)によって定義される構造を有し、カセットを含有する2つの別個のRNA鎖を定義する:
5’XnG/UVm 3’(II)、5’oWmU/GYn 3’(III)、
式中、G/UおよびU/Gは、ゆらぎ塩基対が形成するように選択され、
2<n≦12、2<m≦12、2≦o<12であり、
Xは、Yの対応する塩基とワトソン・クリック塩基対を形成する任意の塩基を定義し、Vは、RNAステム構造中のWの対応する塩基とワトソン・クリック塩基対を形成する任意の塩基を定義し、Nはループ中の任意の塩基である。
【0114】
式(II)および(III)のこれらの別々のRNA鎖の全長は、好ましくは5塩基~45塩基である。
【0115】
少なくとも1つのステムアンドループ構造を有する最も好ましいポリ/オリゴヌクレオチドは、以下の一般式(Il)および(III)によって定義される構造を有し、カセットを含有する2つの別個のRNA鎖を定義する:
5’XnG/UVm 3’(II)、5’oWmU/GYn 3’(III)、
式中、G/UおよびU/Gは、ゆらぎ塩基対が形成するように選択され、
2≦n≦12、2≦m≦12、2≦o≦12であり、
式中、Xは、Yにおいて対応するGおよびC塩基とワトソン・クリック塩基対を形成するGsまたはCsを表し、Vは、Wにおいて対応する塩基とワトソン・クリック塩基対を形成するGsまたはCsを表す。
【0116】
塩基対カセットの反復(すなわち、二本鎖構造の複数のG・U塩基対)は活性を有するであろう。
【0117】
これらの別個のRNA鎖の好ましい全長は、5塩基~45塩基である。
【0118】
特定の実施形態では、一本鎖ポリ/オリゴヌクレオチドは、2つの部分、5’部分および3’’部分を含有し、好ましくはこれらからなり、2つの部分の一方は、n個のUを含有し、好ましくはこれらからなり、他方の部分は、p個のGおよびq個のAを含有し、好ましくはこれらからなり、式中、n、pおよびqは0より大きい整数であり、p+q=mであり、mは最大25の整数であり、好ましくは11に等しいまたはそれを超えて21未満またはそれに等しい整数であり、nはmより大きい。一実施形態では、nは100未満またはそれに等しい。別の実施形態では、nは100より大きく、好ましくは1000より大きく、より好ましくは3000より大きく、最も好ましくは3000~5000程度である。特定の実施形態では、nは、本発明のポリ/オリゴヌクレオチド調製物において異なる分子において異なっていてもよい。好ましい実施形態では、pは1に等しく、Gは、GおよびAを含むかまたはGおよびAからなる部分の中心にある。
【0119】
少なくとも1つのステムアンドループ構造を有する一本鎖ポリ/オリゴヌクレオチドの例としては、以下が挙げられる:
C2UC2Gn(式中、nは4またはそれより大きい整数、
好ましくは8~9より大きい整数である):
C3UC2Gn(式中、nは6より大きい整数である);
C2UC3Gn(式中、nは6より大きい整数である);
C3UC3Gn(式中、nは7より大きい整数である);
C4UC3Gn(式中、nは8より大きい整数である);
C3UC4Gn(式中、nは8より大きい整数である);
C4UC4Gn(式中、nは9より大きい整数である);
GnC2UC2(式中、nは5より大きい整数である);
GnC3UC2(式中、nは6より大きい整数である);
GnC2UC3(式中、nは6より大きい整数である);
GnC3UC3(式中、nは7より大きい整数である);
GnC4UC3(式中、nは8より大きい整数である);
GnC3UC4(式中、nは8より大きい整数である);
GnC4UC4(式中、nは9より大きい整数である);
A5GAgUn7(式中、nは11より大きい整数である);
A6GAUn(式中、nは12より大きい整数である);
A5GA6Un(式中、nは12より大きい整数である);
A6GA6Un(式中、nは13より大きい整数である);
A7GA6Un(式中、nは14より大きい整数である);
A6GA7Un(式中、nは14より大きい整数である);
A7GA7Un(式中、nは15より大きい整数である);
A8GA7Un(式中、nは16より大きい整数である);
A7GA8Un(式中、nは16より大きい整数である);
A8GA8Un(式中、nは17より大きい整数である);
A9GA8Un(式中、nは18より大きい整数である);
A8GA9Un(式中、nは18より大きい整数である);
A9GA9Un(式中、nは19より大きい整数である);
A10GA9Un(式中、nは20より大きい整数である);
A9GA10Un(式中、nは20より大きい整数である);
A10GA10Un(式中、nは21より大きい整数である);
A5GA10GA4Un(式中、nは21より大きい整数である);
UnA5GA5(式中、nは11より大きい整数である);
UnA6GA5(式中、nは12より大きい整数である);
UnA5GA6(式中、nは12より大きい整数である);
UnA6GA6(式中、nは13より大きい整数である);
UnA7GA6(式中、nは14より大きい整数である);
UnA6GA7(式中、nは14より大きい整数である);
UnA7GA7(式中、nは15より大きい整数である);
UnA8GA7(式中、nは16より大きい整数である);
UnA7GA8(式中、nは16より大きい整数である);
UnA8GA8(式中、nは17より大きい整数である);
UnAgGA8(式中、nは18より大きい整数である);
UnA8GA9(式中、nは18より大きい整数である);
UnA9GA9(式中、nは19より大きい整数である);
UnA10GA9(式中、nは20より大きい整数である);
UnA9GA10(式中、nは20より大きい整数である);
UnA10GA10(式中、nは21より大きい整数である);
UnA5GA10GA4(式中、nは21より大きい整数である)。
【0120】
好ましくは、上記の例において、nは1000より大きく、より好ましくは3000であり、さらにより好ましくは3000~5000程度である。
【0121】
TLR7特異的リガンドには、一方の鎖または少なくとも1つの完全二本鎖部分を形成する鎖の一部がn個のGを含み、好ましくはそれからなり、他方の鎖または同じ少なくとも1つの完全二本鎖部分を形成する鎖の一部がp個のUおよびq個のCを含み、好ましくはそれからなり、nは5に等しいまたはそれを超えて9未満またはそれに等しい整数であり、pはn未満またはそれに等しい整数であり、qは整数であり、p+q=nであるポリ/オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0122】
本発明の更なる実施形態では、選択的TLR8活性を示すRNAポリ/オリゴヌクレオチドが提供され、G:Uゆらぎ塩基対中のUヌクレオシドは、各側でG塩基に隣接している。選択的TLR8活性を示すRNAポリ/オリゴヌクレオチドは、一本鎖または部分的に二本鎖であり得る。好ましくは、G:Uゆらぎ塩基対の各側のCヌクレオシドに隣接するG-Uゆらぎ塩基対中にGヌクレオシドを有するRNAポリ/オリゴヌクレオチドは、本明細書で定義されるヘアピン構造を形成し、式中、nは5~100、好ましくは20~100である。前述のRNAポリ/オリゴヌクレオチドは、高度に選択的なTLR8活性を示す。選択的TLR8活性を示す前述のRNAポリ/オリゴヌクレオチドは、好ましくは、G:Uゆらぎ塩基対の各側に少なくとも2つの隣接する塩基対を有する。本明細書で使用される「選択的TLR8活性」という用語は、上で定義したRNAポリ/オリゴヌクレオチドがTLR8活性を示すが、TLR7活性を示さないことを意味する。
【0123】
好ましいTLR9アゴニストは、米国特許第6,429,199号、米国特許出願公開第2007/0065467号、国際公開第01/22990号、米国特許出願公開第2003/0100527号に記載されているように、CpG ODN(CpGリッチモチーフを有する非メチル化DNA、TLR9アゴニスト)から選択される。
【0124】
RIG-I、MDA-5およびLGP-2などのRNAヘリカーゼは、ウイルスRNAの検出に関与している。TLRとは対照的に、RNAヘリカーゼは細胞質ゾルであり、免疫細胞および非免疫細胞、例えば線維芽細胞および上皮細胞を含む広範囲の細胞型で発現される。したがって、免疫細胞だけでなく、1つまたはそれを超えるRNAヘリカーゼを発現する非免疫細胞も、ウイルスRNAを検出し、それに応答することができる。TLRヘリカーゼ系とRNAヘリカーゼ系との両方が協働してウイルスRNAを最適に検出する。
【0125】
本発明によれば、薬学的に許容され得る化合物は、RIG-Iアゴニスト、例えば、欧州特許出願公開第1920755号または欧州特許出願公開第3581656号に記載されている遊離のキャップされていない5’リン酸を有するオリゴヌクレオチドである。本発明によるRIG-Iアゴニストは、ポリ(I:C)のサイズに応じてRIG-Iおよび/またはMDA-5によって認識される5’ppp-dsRNA、3 p-hpRNA、ポリ(I:C)/LyoVec複合体;RIG-Iによって間接的に認識されるポリ(dA:dT)/LyoVec複合体の群から選択される。他のRIG-Iアゴニストは、国際公開第09/141146号に記載されている平滑末端を有する5’三リン酸オリゴヌクレオチド、または米国特許出願公開第2012/0288476号に記載されている5’リン酸オリゴヌクレオチドに基づくRIG-Iアゴニストである。
【0126】
別の好ましいRIG-Iアゴニストは、ポリ(dA:dT)(B-DNAの合成類似体であるdsDNA)である。ポリ(dA:dT)は、複数のPRRによって認識される:cGAS、AIM2、DAI、DDX41、IFI16およびLRRFIP1を含む細胞質ゾルDNAセンサ(CDS)による感知は、I型インターフェロンの産生を引き起こす。細胞質ゾルDNAセンサAIM2による感知は、インフラマソームの形成ならびにその後のIL-1βおよびIL-18の分泌を引き起こす。細胞質ゾルRNAセンサRIG-Iによる間接的な感知は、RNAポリメラーゼIIIによる5’三リン酸部分(5’ppp-dsRNA)を有するdsRNAへのポリ(dA:dT)の転写時に起こり得る。RIG-Iによるこの間接的な感知は、I型インターフェロンの産生をもたらす。
【0127】
本発明によるPRRアゴニストは、CDSリガンドおよびSTINGリガンドである。細胞質ゾルDNAセンサ(CDS)は、損傷した、誤って局在化した、または病原性のDNAを検出し、典型的にはTBK 1-IRF3経路を介してI型IFN産生を誘導する。環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS)、IFN誘導性IFI16タンパク質、およびヘリカーゼDDX41を含むいくつかのCDSが同定されている。細胞質ゾルDNAによるI型IFNの誘導は、小胞体膜タンパク質STING(IFN遺伝子の刺激因子)によって媒介される。
【0128】
本発明による適切なCDSリガンドは、dsDNA-EC、G3-YSD、HSV-60 CDSアゴニスト、ISD、ODN TTAGGG(A 151)、ポリ(dA:dT)、ポリ(dG:dC)またはVACV-70である。
【0129】
好ましいCDSリガンドは、病原体由来のdsDNA(例えば、大腸菌K12)、HIV-1由来のdsDNA部分、HSV-60由来のdsDNA部分(単純ヘルペスウイルス)、ISDインターフェロン刺激DNA(例えば、Listeria monocytogenes由来)、VACV-70、ワクシニアウイルスDNAに由来するウイルスDNAモチーフを含有する70bpオリゴヌクレオチドである。
【0130】
別の好ましいCDSリガンドは、ポリ(dG:dC)、ポリ(デオキシグアニル-デオキシシチジル)酸ナトリウム塩である。これは、ポリ(dG-dC)・ポリ(dC-dG)の反復合成二本鎖DNA配列である。細胞内ポリ(dG:dC)は、cGAS、DAI、DDX41、IFI16およびLRRFIP1などのいくつかの細胞質ゾルDNAセンサ(CDS)によって検出され、I型インターフェロン(IFN)の産生を引き起こす。IFNのこの誘導は、小胞体タンパク質STINGによって媒介されるようである。さらに、ポリ(dG:dC)は、細胞質ゾルDNAセンサAIM2(黒色腫2には存在しない)を活性化して、炎症促進性サイトカインIL-1βおよびIL-18の分泌をもたらすインフラマソーム形成を引き起こす。
【0131】
細胞質ゾルDNAセンサの刺激を達成するために、ポリ(dG:dC)を、例えばトランスフェクション剤を使用することによって細胞質に送達しなければならない。したがって、本発明によるナノ粒子は、トランスフェクション剤として役立ち得る。
【0132】
米国特許第8,815,503号またはMDA-5(メラノーマ分化抗原5)またはNAB2(核酸バンド2)に記載されている免疫刺激のためのアンチセンスRNAオリゴヌクレオチド、酵母から単離されかつパターン認識受容体TLR3およびMDA-5のアゴニストとして同定されたdsRNAも適している。
【0133】
STINGはまた、細菌および哺乳動物の両方の環状ジヌクレオチド(CDN)の直接的なセンサであり、TBK-1/IRF-3およびNF-κBシグナル伝達経路を活性化して、堅牢なI型IFNおよび炎症促進性サイトカインを誘導する。
【0134】
本発明によるSTINGリガンドは、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMPまたはc-di-GMPである。
【0135】
好ましいSTINGアゴニストは、MK-1454(インターフェロン遺伝子タンパク質の刺激因子の合成環状ジヌクレオチド(CDN)およびアゴニスト)、ポリ(dG:dC)、ADU-S100(インターフェロン遺伝子タンパク質の刺激因子の合成環状ジヌクレオチド(CDN)およびアゴニスト)、膜貫通タンパク質173(TMEM173)(潜在的な免疫調節活性および抗新生物活性を有する)、MIW815(腫瘍内投与時に、STINGアゴニストMIW815がSTINGに結合し、STING媒介経路を刺激する)の群から選択される。
【0136】
本発明による組成物は、免疫賦活剤として使用され得る。本発明の免疫賦活剤は、好ましくは、薬学的に許容され得る化合物としてTLR3アゴニストを含む。本発明の更なる目的は、本発明による組成物を含む免疫賦活剤である。本発明の免疫賦活剤は、ヒトまたは動物に投与することができる。
【0137】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物は、好ましくは免疫抑制事象の前に投与される。動物、好ましくはウシへの投与の場合、そのような免疫抑制事象は、例えば、輸送後または安定剤が変更されたときに引き起こされる動物のストレスまたは疲労の増加の結果であり得る。安定しない気候、準最適な供給量の飼料または水、および初乳の供給不足もまた、免疫抑制に影響を与える可能性がある。ヒトへの投与の場合、そのような免疫抑制事象は、例えば、外科手術である。
【0138】
したがって、本発明による組成物は、免疫系の弱化によってしばしば引き起こされるウシ伝染性鼻気管炎(IBR)またはウシ呼吸器病(BRD)、好ましくはBRDの予防および/または処置に使用される。
【0139】
本発明による組成物は、ヒトにおける周術期免疫刺激のために使用される。
【0140】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物は、好ましくは手術前に患者に投与される。
【0141】
免疫賦活剤は、1つまたはそれを超えるアジュバントを含み、アジュバント免疫療法において使用される。当該技術分野で周知のように、アジュバントは、免疫応答を増強する薬剤である。アジュバントは当該技術分野で周知である(例えば、「Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach」,Pharmaceutical Biotechnology,Volume 6,Eds.Powell and Newman,Plenum Press,New York and London,1995を参照)。
【0142】
例示的なアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、スクアレン、スクアランおよびミョウバン(水酸化アルミニウム)が挙げられ、これらは当該技術分野で周知の材料であり、いくつかの供給元から市販されている。特定の実施形態では、アルミニウム塩またはカルシウム塩(例えば、水酸化物塩またはリン酸塩)をアジュバントとして使用することができる。ミョウバン(水酸化アルミニウム)は、多くの既存のワクチンに使用されている。
【0143】
本発明の特に好ましい実施形態では、ナノ粒子は、両方、すなわち病原体関連分子パターン(PAMP)、損傷関連分子パターン(DAMP)、欠損感染性粒子(DIP)および少なくとも1つの抗原からなる群から選択される化合物を含む。
【0144】
最も好ましいのは、PAMPおよび抗原を含む化合物を含有する本発明によるナノ粒子である。
【0145】
非常に好ましい実施形態は、表面上にリンカー化合物Lを有するSiO2ナノ粒子を含む本発明による組成物であり、リンカー化合物Lは、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2または-NHC(=NH2
+)NH2)と、少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基と、1つもしくはそれを超えるPAMPと、吸着結合によりリンカー化合物Lにコンジュゲートされている1つもしくはそれを超える抗原またはエピトープとを含み、抗原またはエピトープは、リンカーユニットUおよび1つもしくはそれを超えるアミノ酸による親水性伸長部を含む。PAMPは、好ましくは、TLR3アゴニストまたはdsRNA構造を含むTLR7アゴニストを含むオリゴヌクレオチドアゴニストから選択される。
【0146】
開示される組成物および方法は、多種多様な抗原に適用可能である。特定の実施形態では、抗原は、タンパク質(組換えタンパク質を含む)、ポリペプチドまたはペプチド(合成ペプチドを含む)である。特定の実施形態では、抗原は、脂質または炭水化物(多糖)である。特定の実施形態では、抗原は、タンパク質抽出物、細胞(腫瘍細胞を含む)または組織である。
【0147】
特定の実施形態では、抗原は、以下からなる群から選択することができる:
(a)癌細胞に対する免疫応答を誘導するのに適したポリペプチド;
(b)感染性疾患に対する免疫応答を誘導するのに適したポリペプチド;
(c)アレルゲンに対する免疫応答を誘導するのに適したポリペプチド;および
(d)家畜またはペットにおいて免疫応答を誘導するのに適したポリペプチド。
【0148】
いくつかの実施形態では、抗原または抗原決定基は、感染性疾患の予防に有用なものである。そのような処置は、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ならびに他の哺乳動物種および非哺乳動物種を含む広範囲の宿主、好ましくはヒトに影響を及ぼす多種多様な感染性疾患を処置するのに有用であろう。したがって、組成物のために選択される抗原または抗原決定基は、医療技術者によく知られているものであろう。
【0149】
本発明による組成物と共に使用するための適切な抗原は、病原性細菌、真菌またはウイルス生物、コロナウイルス(SARS-CoV-2)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(BRSV)、ウシ呼吸器コロナウイルス(BRCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ウシヘルペスウイルス-1(BHV-1)、パラインフルエンザ3型ウイルス(PI-3 V)、Pasteurella multocida、Mannheimia haemolytica、istophilus somni、ycoplasma bovisに由来し得るが、これらに限定されない。
【0150】
感染性疾患の例としては、ウイルス感染性疾患、例えばCOVID-19、ウシ伝染性鼻気管炎(IBR)、ウシ呼吸器病(BRD)、SARSおよびHPVによって引き起こされる子宮頸癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
本明細書で提供される疾患または症状ずれかに関連する任意の抗原を、本明細書に記載される組成物および方法で使用することができる。これらには、癌、感染症もしくは感染性疾患または変性もしくは非自己免疫疾患に関連する抗原が含まれる。好ましいエピトープは、ヒトパピローマウイルス感染に関連するエピトープ(例えば、YMLDLQPET(HPV16 E711-19)、FAFRDLCIVY(HPV16 E652-61)、TIHDIILECV(HPV16 E629-38)、RRFHNIAGHYR(HPV18 E6125-135)、KATLQDIVLHLE(HPV18 E75-16)、HVDIRTLEDLLM(HPV 16 E773-84)、LEDLLMGTL(HPV16 E779-87)、LLMGTLGIV(HPV16 E782-90)、癌抗原であるニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)および腫瘍特異的抗原のクラスとしてのネオアンチゲンである。
【0152】
別の実施形態では、感染症または感染性疾患に関連する抗原は、本明細書で提供される感染因子のいずれかに関連する。
【0153】
一実施形態では、感染性因子は、パピローマウイルス科のウイルス、SARSファミリーのウイルスである。さらに別の実施形態では、感染因子は、SARS-CoV-2またはヒトパピローマウイルスである。
【0154】
一実施形態では、本発明による組成物は、個別化された癌処置のためのワクチンとして使用される。
【0155】
本発明による組成物は、HPVの予防またはHPV陽性ヒトの処置またはHPV陽性腫瘍の処置のためのワクチンとして使用される。
【0156】
本発明の更なる目的は、本発明による組成物を含むワクチンを提供することである。
【0157】
本発明による組成物は、好ましくは安定な分散液である。
【0158】
ナノ粒子は、ナノ粒子が溶媒によって化学的に攻撃されず、物理的に修飾されず、逆もまた同様である限り、任意の所望の溶媒中に分散形態であり得、その結果、得られるナノ分散液は安定であり、特に薬学的および物理的に安定である。分散液は、ナノ粒子が単分散および非凝集形態であり、沈降傾向がなく、無菌濾過が可能であることを特に特徴とする。
【0159】
また、本発明の目的は、本発明によるナノ粒子を含む凍結乾燥物である。凍結乾燥物は、添加剤、例えば、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルデンプン、デキストランおよびフィコール)ならびに糖(例えば、トレハロース、ラクトース、スクロース、グルコース、ガラクトース、マルトース、マンノースおよびフルクトース)、ポリヒドロキシアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトールおよびイノシトール)、アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、プロリンおよびリジン)ならびにメチルアミン(例えば、トリメチルアミン-N-オキシド、ベタインおよびサルコシン)を含み得る。本発明による凍結乾燥物は、ワクチン接種前に滅菌水で再懸濁することができる。
【0160】
本発明による医薬組成物は、特に感染性疾患、敗血症性ショック、腫瘍、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性または急性炎症プロセスの結果として、患者生体の個々の部分の全体的な状態または状態の病原性変化を少なくとも一時的に示す患者の予防、治療、制御または後処置に使用することができる任意の組成物である。したがって、特に、本発明の意味における医薬組成物がワクチンおよび/または免疫療法薬であることが可能である。
【0161】
本発明による組成物は、固体または液体組成物の形態であり得る医薬組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、一般に、何らかの種類の担体、例えばゼラチンもしくはアジュバントもしくは不活性希釈剤などの固体担体、または水、石油、動物油もしくは植物油、鉱油もしくは合成油などの液体担体を含む。プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどの生理食塩水またはグリセロールまたはグリコールが含まれてもよい。
【0162】
本発明による組成物は、必要に応じて他の有効成分を含んでもよく、または薬学的に許容され得る医薬品添加剤、担体、緩衝剤、安定剤、等張剤、保存剤もしくは酸化防止剤、または当業者に周知の他の材料の1つもしくはそれを超えるものを含んでもよい。そのような材料は非毒性であるべきであり、薬学的に許容され得る化合物の有効性を妨げるべきではない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば経口または非経口に依存し得る。
【0163】
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または罹患部位での注射のために、本発明による組成物は、パイロジェンフリーであり、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容され得る水溶液の形態である。
【0164】
保存剤は、一般に、微生物の増殖を遅らせ、組成物の貯蔵寿命を延ばし、複数回使用の包装を可能にするために、本発明による組成物に含まれる。保存剤の例としては、フェノール、メタ-クレゾール、ベンジルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸およびそのエステル、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、1-チオグリセロールおよび塩化ベンゼトニウムが挙げられる。
【0165】
本発明のナノ粒子含有組成物は、経腸または非経口経路を含む任意の数の異なる経路によって患者に投与され得る。医薬組成物の非経口投与が好ましい。非経口投与には、以下の経路による投与が含まれる:静脈内、皮膚または皮下、経鼻、膣、直腸、筋肉内、眼内、経上皮、腹腔内、心臓内、骨内、皮内、髄腔内、腹腔内、経皮、経粘膜、ならびに吸入および局所(皮膚、眼、直腸、鼻、吸入およびエアロゾルを含む)、ならびに直腸全身経路。好ましい実施形態では、医薬組成物は局所(例えば、粘膜、皮膚)適用のためのものである。
【0166】
投与は、例えば注射によって、または送達ガンを使用してバリスティックに実施して、表皮の外層を通る経皮通過を促進する。次いで、ナノ粒子は、例えばリンパ系を通って移動するにつれて成熟する樹状細胞によって取り込まれ、エピトープペプチドおよび/またはエピトープペプチドが由来するもしくはエピトープペプチドが一部を形成する抗原に対する免疫応答およびワクチン接種の調節をもたらす。ナノ粒子はまた、エアロゾルで送達され得る。これは、ナノ粒子のサイズが小さいことによって可能になる。
【0167】
特に好ましいのは、皮内、皮下、筋肉内または静脈内注射である。投与は、例えば、いわゆるワクチン接種ガンを用いて、または注射器を用いて行うことができる。粘膜投与、特に粘膜ワクチン接種は、病原体が粘膜経路を介して体内に侵入した場合に有益であり得る。生体、好ましくはヒト患者によって吸入され、鼻および/または気管支粘膜によって取り込まれるエアロゾルとして物質を調製することも可能である。粘膜投与の他の可能な形態は、膣および直腸坐剤である。これらの投与形態は、費用対効果が高く(注射器および針のような消耗品がない)、安全であり(感染および操作ミスのリスクが非常に低く)、適用が容易であり、患者のコンプライアンスが高い(針恐怖がない)。また、粘膜免疫系(MALT)に直接対処する。
【0168】
本発明の一実施形態では、本発明による組成物を含むワクチンは、粘膜投与に使用される。
【0169】
本発明のナノ粒子の例外的に小さいサイズは、標的分子または治療分子に結合されている場合であっても細胞によって取り込まれ得るので、細胞および組織への送達にとって大きな利点である。したがって、ナノ粒子はAPCによって内在化され得、エピトープペプチドはクラスI MHCおよびクラスII MHCを介してプロセシングおよび提示される。
【0170】
本発明の特に好ましい実施形態
1.二酸化ケイ素および表面上の官能基を有する、薬学的に許容され得る化合物が負荷されたナノ粒子を含む組成物であって、
-官能基は、薬学的に許容され得る化合物の負電荷および正電荷の両方を担持および/または安定化することができ、
-組成物のゼータ電位は、少なくとも±15mVの値を有し、
-ナノ粒子は、150nm未満、好ましくは100nmまたはそれ未満の粒径を有する、組成物。
【0171】
2.ナノ粒子が、nm2単位のナノ粒子の表面に対する薬学的に許容され得る化合物の総数[分子/nm2]に関して、最大0.5、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.03~0.4、最も好ましくは0.05~0.3の表面負荷密度を有する、実施形態1に記載の組成物。
【0172】
3.組成物の多分散指数(PDI)が、0~0.32、好ましくは0.1~0.3、より好ましくは0.1~0.2、最も好ましくは0.1未満である、実施形態1または2に記載の組成物。
【0173】
4.組成物のpH値が6.0~8.0である、実施形態1から3までのいずれかに記載の組成物。
【0174】
5.組成物のゼータ電位が、少なくとも±30mVの値を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0175】
6.ナノ粒子のZ平均直径が、5nm以上150nm未満、好ましくは15nm以上60nm以下、より好ましくは20nm以上50nm以下、さらにより好ましくは20nm~30nmの範囲にある、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0176】
7.負荷されたナノ粒子の正味電荷が、合計で0とは異なる、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0177】
8.官能基が、共有結合または吸着結合によってナノ粒子の表面に結合されたリンカーLに連結されている、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0178】
9.リンカー化合物Lが、官能基として少なくとも1つのカルボキシル(-COOH)またはカルボキシレート(-COO-)基を含む、実施形態8に記載の組成物。
【0179】
10.リンカー化合物Lが、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2もしくは-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)基を含む、実施形態8または9に記載の組成物。
【0180】
11.リンカーLが、-SH、-COOH、-NH2、-グアニジノ基(-NHC(=NH))NH2)、-PO3H2、-PO2CH3H、-SO3H、-OH、-NR3
+X-の群から選択される少なくとも1つの更なる官能基L’を含む、実施形態8から10までのいずれかに記載の組成物。
【0181】
12.リンカー化合物Lが、少なくとも式(I)の構造単位
*-(-O)3Si-(CH2)n-CH(COOX)-(CH2)p-C(O)-NH-CH(COOX)-(CH2)q-Y(I)
[式中、
Xは、互いに独立して、Hまたは負電荷であり、
Yは、互いに独立して、-NHC(=NH)NH2、-NHC(=NH2
+)NH2、-NH2または-NH3
+であり、
n、pおよびqは、互いに独立して、0または1~25の数であり、
*-は、ナノ粒子との連結点である]
を含む、実施形態8から11までのいずれかに記載の組成物。
【0182】
13.薬学的に許容され得る化合物が、吸着結合によってナノ粒子にコンジュゲートされている、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0183】
14.薬学的に許容され得る化合物が、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(RNA、DNA、一本鎖もしくは二本鎖)、核酸またはペプチド抗原を含む群から選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0184】
15.薬学的に許容され得る化合物が、病原体関連分子パターン(PAMP)、損傷関連分子パターン(DAMP)、欠損感染性粒子(DIP)またはエピトープを含む群から選択される、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0185】
16.PAMPが少なくとも1つのリン酸基を含有する、実施形態15に記載の組成物。
【0186】
17.PAMPがパターン認識受容体(PRR)アゴニストである、実施形態15または16に記載の組成物。
【0187】
18.PAMPが、TLRアゴニスト、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG-I)リガンド、メラノーマ分化関連遺伝子5(MDA-5)リガンド、細胞質ゾルDNAセンサ(CDS)リガンド、STINGリガンド(環状ジヌクレオチド(CDN))の群から選択される、実施形態15から17までのいずれかに記載の組成物。
【0188】
19.PAMPが、5’-三リン酸-RNA、細胞質ゾルDNAセンサ(CDS)、2’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、c-ジ-AMP(ビス-(3’-5’)-環状二量体アデノシン一リン酸)、c-ジ-GMP(ビス-(3’-5’)-環状二量体グアノシン一リン酸、二本鎖(ds)RNAの群から選択される、実施形態15から18までのいずれかに記載の組成物。
【0189】
20.TLRアゴニストが、TLR1/2、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8およびTLR9アゴニストの群から選択される、実施形態18に記載の組成物。
【0190】
21.TLRアゴニストが、リポ多糖(LPS)、モノホスホリル脂質A(MPL-A)、ポリ(U)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(非メチル化DNA)、Pam3CSK4(合成トリアシル化リポペプチド)である、実施形態20に記載の組成物。
【0191】
22.ペプチドが8~100個のアミノ酸を含む、実施形態14に記載の組成物。
【0192】
23.ペプチドが、MHCクラスIエピトープまたはMHCクラスIIエピトープである、実施形態22に記載の組成物。
【0193】
24.ペプチドが、極性アミノ酸でN末端またはC末端に伸長されている、実施形態22または23に記載の組成物。
【0194】
25.極性アミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、セリン、トレオニン、チロシンの群から選択される、実施形態24に記載の組成物。
【0195】
26.ペプチドが、酵素カテプシンBにより切断可能なリンカーを有するN末端伸長部を含む、実施形態22から25までのいずれかに記載の組成物。
【0196】
27.酵素により切断可能なリンカーが、カテプシンB感受性ジペプチドVal-Cit、Phe-Cit、Leu-Cit、Ile-Cit、Trp-Cit、Phe-Lys、Ala-LysまたはVal-Lysのうちの1つを含む、実施形態26に記載の組成物。
【0197】
28.スペーサが、酵素により切断可能なリンカーとペプチドとの間に配置されている、実施形態26または27に記載の組成物。
【0198】
29.スペーサが自己犠牲スペーサである、実施形態28に記載の組成物。
【0199】
30.スペーサが、4-アミノベンジルアルコール、2-アミノベンジルアルコールまたは4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-ヒドロキシベンジルアルコールの構造単位を含む、実施形態28または29に記載の組成物。
【0200】
31.ナノ粒子が、別の材料との混合物であってもよい、少なくとも二酸化ケイ素(SiO2)を含む、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0201】
32.ナノ粒子がSiO2からなる、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0202】
33.組成物が安定な分散液である、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0203】
34.組成物のpH値が7.2~7.4である、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0204】
35.組成物が等張性である、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0205】
36.組成物が更なる薬学的に許容され得る添加剤を含有する、先行する実施形態のいずれかに記載の組成物。
【0206】
37.ワクチンとして使用するための、実施形態1に記載の組成物。
【0207】
38.免疫賦活剤として使用するための、実施形態1に記載の組成物。
【0208】
39.免疫系の活性化のためおよびアジュバントとして使用するための、実施形態38に記載の組成物。
【0209】
40.ウシ呼吸器病(BRD)の予防および/または処置に使用するための、実施形態38に記載の組成物。
【0210】
41.ヒトにおける周術期免疫刺激のための、実施形態38に記載の組成物。
【0211】
42.個別化された癌処置のための、実施形態1に記載の組成物。
【0212】
43.HPVの予防もしくはHPV陽性ヒトの処置またはHPV陽性腫瘍の処置のためのワクチンとして使用するための、実施形態37に記載の組成物。
【0213】
44.二酸化ケイ素および表面上の官能基を有し、150nm未満の粒径を有するナノ粒子であって、ナノ粒子に共有結合または吸着結合したリンカーLを含み、リンカーLが、官能基として少なくとも1つのグアニジノ基(-NHC(=NH)NH2もしくは-NHC(=NH2
+)NH2)またはアミノ基(-NH2もしくは-NH3
+)基を含む、ナノ粒子。
【0214】
45.実施形態44に記載のナノ粒子を含む凍結乾燥物。
【0215】
46.実施形態1に記載の組成物を含むワクチン。
【0216】
47.実施形態1に記載の組成物を含む免疫賦活剤。
【実施例】
【0217】
実施例1
直径25nmの単分散二酸化ケイ素ナノ粒子の調製
500mLの無水エタノールを500mLのメスシリンダからスクリューキャップ付き1000mLのガラスびんに採取した。358mLの滅菌DI水を加え、混合物を十分に振盪した。
【0218】
69.6mLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をびんに加えた。びんをしっかりと閉じ、十分に振盪した。1時間の待機時間の後、無色透明の混合物は室温(22℃)になった。次いで、9.5mLのアンモニア水(25%)を素早く加えた。
【0219】
びんを手で10秒間非常によく振盪し、室温で保存した。
【0220】
室温で24時間後、より狭いサイズ分布を得るために、さらに34.8mLのTEOSを混合物に加えた(シード成長プロセス)。室温でさらに24時間後、再び混合物に34.8mLを加えた(シード成長プロセスを続けた)。室温で24時間後、50μLの反応混合物を一方向PMMAキュベット(幅10mM)に入れ、1.5mLのDI水(0.2μm濾過)で希釈した。キュベットを粒径測定のためにZetaSizer Nano(ZetaSizer Nano ZS、Malvern Instruments社、英国)に入れた。
適用パラメータ:
測定角度:173°後方散乱(NIBSデフォルト)
測定セル:DTS1070(粒径およびゼータ電位に使用)
屈折率SiO2:1.460
吸収:0.010
分散剤:水
屈折率:1.330
粘度:0.8872cP(=サンプル粘度)
温度:25℃
10回を超える粒径測定の実行
結果:
Z平均(体積基準):23.86nm
PDI:0.108
強度ピーク:26.77nm
pH:11.0(新たに較正された複合電極)
【0221】
ナノ粒子懸濁液を2リットルの丸底フラスコに移し、エタノールならびにアンモニアガスを、加熱式水浴を備えたロータリーエバポレーターによって除去した。400mLの滅菌DI水を少量ずつ加えた。体積を198.15gに減少させた。
【0222】
懸濁液の固形分(純粋なナノ分散二酸化ケイ素)を250μLの蒸発により三連で測定し、残渣を秤量した。
結果:
固形分:163.3mg/mL
pH:8.0(新たに較正された複合電極)
【0223】
70.0mg/mLの固形分を得るために、蒸留残渣を264.5mLの滅菌DI水で希釈した。
実施例2:
アルギン酸化シリカナノ粒子(SiO2-Arg)を得るためのL-アルギニンによるナノ粒子の官能化
【0224】
実施例1で得られた462.65gのナノ粒子懸濁液462.65gを500mLのガラスびんに入れた。磁気撹拌機を加え、びんを磁気撹拌機に置いた。17.35gのLの(+)-アルギニン(CAS番号74-79-3、PanReac AppliChem社、欧州薬局方・米国薬局方、製品コードA1345.0500)をナノ粒子懸濁液に加えた。アルギニンが完全に溶解したら、10.8のpH値が得られ、次いで、5.34mLの3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(CAS番号93642-68-3、Gelest Corp.社、製品コード:SIT8192.6)を室温でゆっくりと加えた。反応混合物は非常に混濁したが、約30分以内にきれいになった。この時間中、2つの反応が同時に起こった:
【0225】
シランのエトキシ基は、高いpH値のために加水分解された。生成されたシラノール基は、ナノ粒子上に沈殿し、ナノ粒子の上に表面コーティングを構築した。並行して、過剰のアルギニンのアミノ基は無水コハク酸基と反応し、アミド結合を形成する。
【0226】
環状無水物を開環することによって、アルギニンの消費および主にカルボン酸基の形成により、pH値は9.8に低下した。
【0227】
24時間撹拌した後、懸濁液を100kDaの膜(Pall Corp.社Macrosep(登録商標)Advance、製品コードMAP 100C38)を備えた20ファルコンチューブに移した。ナノ粒子懸濁液を4,000rpm(使用した遠心分離機で=2,737g)で10分間遠心分離して、開始体積より少なくとも5小さい体積にした。遠心分離後、ファルコンチューブ内の体積を滅菌DI水で元へ戻し、遠心分離を5回繰り返した。遠心分離ステップは、過剰なアルギニンおよび結合していない可能性のある反応生成物を除去するために必要である。
【0228】
遠心分離後、回収した上清の固形分を3連で測定した。方法は実施例1と同じであった。
結果:
収率:178.3g
固形分:97.16mg/mL
【0229】
ナノ粒子懸濁液を168.17mLの滅菌DI水で希釈して、50.0mg/mLの最終濃度を得た。
実施例3
直径25nmのリン酸化シリカナノ粒子の合成
【0230】
200mLの無水エタノールを250mLのメスシリンダからスクリューキャップ付き500mLの耐圧ガラスびんに採取し、143.5mLの滅菌DI水を加え、混合物を十分に振盪した。27.85mLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をびんに加えた。びんをしっかりと閉じ、十分に振盪した。
【0231】
1時間の待機時間の後、無色透明の混合物は室温(22℃)になった。次いで、3.95mLのアンモニア水(25%)を素早く加えた。びんを手で10秒間非常によく振盪し、室温で保存した。室温で24時間後、さらに1.5mLの(ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシラン(CAS番号757-44-8、Gelest Corp.社、製品コードSID3412.0)を室温で混合物に加えた。10mLのアンモニア水(25%)も加え、反応混合物を85℃の水浴に24時間入れた。
【0232】
この温度で、2つの反応が並行して行われた:高いpH値のために、シランのエトキシ基が加水分解された。シラノール基はシリカナノ粒子上に沈殿し、ナノ粒子の上に表面コーティングを構築した。並行して、しかしながらはるかに遅く、リン酸エステルが加水分解されて、アンモニアを対イオンとする対応する酸が得られた。50μLの反応混合物を一方向PMMAキュベット(10mM幅)に入れ、1.5mLのDI水(0.2μm濾過)で希釈した。キュベットを粒径測定のためにZetaSizer Nanoに入れた。
結果:
Z平均(体積基準):21.3nm
PDI:0.144
強度ピーク:27.7nm
【0233】
ナノ粒子懸濁液を500mLの丸底フラスコに移し、エタノールならびにアンモニアガスを、加熱式水浴を備えたロータリーエバポレーターによって除去した。200mLの滅菌DI水を少量ずつ加えた。体積を120mLまで減少させた。この体積を、100kDaの膜(Pall Corp.社Macrosep(登録商標)Advance、製品コードMAP100C38)を備えた6本のファルコンチューブに入れた。ナノ粒子懸濁液を4,000rpm(使用した遠心分離機で=2,737g)で10分間遠心分離して、開始体積より少なくとも80小さい体積にした。遠心分離後、ファルコンチューブ内の体積を滅菌DI水で元へ戻し、遠心分離を5回繰り返した。遠心分離ステップは、過剰な結合していない可能性のある反応生成物を除去するために必要である。遠心分離後、回収した上清の固形分を3連で測定した。方法は実施例1と同じであった。
結果:
収率:83.3g
固形分:104.0mg/mL
【0234】
ナノ粒子懸濁液を86.6mLの滅菌DI水で希釈して、50.0mg/mLの最終濃度を得た。
反応スキーム1:
実施例1=a)および実施例2=b)
【化1】
反応スキーム2:
実施例3
【化2】
実施例4
ポリ(I:C)の吸着結合によるポリ(I:C)@SiO
2-Argの調製
【0235】
200mLのエタノール、143.5mLの滅菌脱イオン水および27.85mLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の混合物を調製した。3.70mLのアンモニア、25%(水中NH3)を室温で加えた。反応混合物を10秒間振盪することによって激しく混合し、撹拌せずに室温で24時間放置した。翌日、別の部分である27.85mLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を混合物に加えた。得られた混合物から50μLを取り出し、ZetaSizer Nano ZS(Malvern社)で動的光散乱(DLS)によって測定した。以下の結果が得られた:
Z平均:25.53nm
平均:20.36nm
多分散指数(PDI):0.136
【0236】
続いて、先に生成した100mLの二酸化ケイ素粒子の一部をロータリーエバポレーターで約30mLの体積に濃縮し、再び100mLまで充填した。これを3回繰り返し、反応溶液からエタノールおよびアンモニアを除去した。得られた懸濁液を滅菌脱イオン水で100kDaの膜上で5回洗浄した。最後の洗浄ステップの後、懸濁液の固形分を7.9%のSiO2で重量測定により測定し、計算された量の水を加えることによって懸濁液を固形分5.0%に調整した。
【0237】
実施例1で生成した15mLの二酸化ケイ素粒子(750mgのSiO2)に、500mgのL-アルギニン(CAS番号74-79-3;abcr GmbH社、ドイツ国)(=2.87mmol)を加え、アルギニンを完全に溶解させながら撹拌した。透明な粒子懸濁液が得られ、この懸濁液に、室温で撹拌しながら127μLの(3-トリエトキシシリルプロピル)コハク酸無水物基(CAS番号:93642-68-3)(=0.45mmol)をゆっくりと加えた。
【0238】
上記で得られた2.00mLの「アルギニル化」シリカナノ粒子を、1mL当たり0.833mgのポリ(I:C)の濃度を有する3.00mLのポリ(I:C)(InvivoGen社製(フランス国トゥールーズ在)ポリ(I:C)-LMW、サイズ0.2~1kb、CAS番号31852-29-6)の低分子量溶液と混合した。ボルテックスミキサーで15秒間完全に混合した後、1時間後に透明な懸濁液を250mgのグルコースと混合した。配合物は、以下のものを含む:
100mg 「アルギニル化」シリカナノ粒子、SiO2-Arg(c=20mg/mL)
2.5mg ポリ(I:C)-LMW(c=0,5mg/mL)
250mg グルコース(c=50mg/mL)(配合物の等張化のため)
【0239】
次いで、混合物を0.2μm滅菌フィルターを使用して3つの滅菌2.0mLのHDPEバイアルに充填した。得られた懸濁液は澄んでおり完全に透明である。
【0240】
ポリ(I:C)負荷粒子は、滅菌フィルターを容易に通過する。2種類のフィルターを使用した:Pall Life Sciences社、Acrodisc Supor(登録商標)膜(低タンパク質結合)0.2μm、カタログ番号PN4602およびVWR0.2μmセルロースアセテート膜0.2μm、カタログ番号514-0061。
【0241】
より多量のポリ(I:C)を加えた後でも、懸濁液は澄んでおり完全に透明のままである。
実施例5
SiO2-Argナノ粒子のペプチド負荷容量
【0242】
ペプチド負荷実験では、直径25nm(Z平均)、固形分20mg/mLおよびアルギニル化表面を有する100μLのシリカナノ粒子に、異なる量のモデルペプチドKKKW-Cit-SIINFEKLを負荷した。生理学的条件をシミュレートするために、塩化ナトリウム(NaCl)を加えて等張懸濁液(0.9%NaCl)を得た。最大10%のペプチドをナノ粒子に加えた。KKKW-Cit-SIINFEKLはpH10.24の等電点を有し、4つの塩基性アミノ酸(リジン)および1つの酸性アミノ酸(グルタミン酸)によって決定されるカチオン特性を示す。
【0243】
50μLの対応する粒子-ペプチド-NaCl混合物を1.5mLの滅菌濾過脱イオン水で希釈し、ZetaSizer Nano(Malvern Instruments社、英国)中で動的光散乱(DLS)によって測定した。各サンプル番号1~10について、100μLのSiO
2-Argストック溶液を使用した。得られた結果を表2に示す。
表2:動的光散乱の結果
【表2】
1保存溶液SiO
2-Arg:20mg/mLのSiO
2-Arg
2ストック溶液ペプチド:4mg/mLのペプチド(KKKW-Cit-SIINFEKL)
3ストック溶液NaCl:100mg/mLのNaCl
【0244】
図5aは、Z平均対ペプチド濃度を示し、
図5bは、PDI対ペプチド濃度を示す。
【0245】
図5aおよび
図5bに示すように、最大5重量%このペプチドをナノ粒子に加えて、凝集または沈殿なしに安定な懸濁液を維持することができる。裸の粒子と比較して、直径はわずかに増加しており(+5nm)、PDIは依然として非常に狭い粒径分布を示す。この光学透明懸濁液は、依然として滅菌フィルターを通過している。
【0246】
ペプチドを負荷した粒子は、滅菌フィルターを容易に通過する。2種類のフィルターを使用した:Pall Life Sciences社、Acrodisc Supor(登録商標)膜(低タンパク質結合)0.2μm、カタログ番号PN4602およびVWR0.2μmセルロースアセテート膜0.2μm、カタログ番号514-0061。
【0247】
ペプチド負荷が増加すると、粒径が増加し、吸着ペプチドがシリカナノ粒子表面に結合することを示している。より高いペプチド濃度(上記の例では6%)では、ナノ懸濁液は崩壊しており、これは、濁りや凝集による測定可能な粒径の増加によって示される。これらの懸濁液は滅菌フィルターを通過せず、非経口投与には非常に好ましくない。
実施例6
SiO2-Argナノ粒子のポリ(I:C)負荷容量
【0248】
負荷実験では、直径25nm(Z平均)、固形分20mg/mLおよびアルギニル化表面を有する50μLのシリカナノ粒子に、Gibco(商標)によってRNase/DNaseフリーの水中の異なる量のポリ(I:C)溶液を負荷した。ポリ(I:C)(LMW)は、Invivogen Europe社(カタログ番号tlrl-picw)から入手した。生理学的条件をシミュレートするために、塩化ナトリウム(NaCl)を加えて等張懸濁液(0.9%NaCl)を得た。最大8%のポリ(I:C)をナノ粒子に加えた。コロイドは安定したままであった:沈殿または濁りは観察されなかった。粒径および分布ならびにゼータ電位は、目視観察を裏付けるものである。
【0249】
ゼータ電位は、Smoluchowski計算モデルに従って、以下の条件下で測定した:
測定温度:25℃
平衡時間:30秒
測定ごとに10~100回、サンプルごとに5回の測定(ゼータ電位=5回の測定の平均値を行う。
表3:動的光散乱の結果
【表3】
*)2つのピーク:27.38nm(67.8%)および362.6nm(32.2%)
**)2つのピーク:7.691nm(22.9%)および18.4nm(77.1%)
【0250】
6%ポリ(I:C)LMWの負荷まで、吸着されたポリ(I:C)による粒径の増加のために、測定されたZ平均値は増加する(
図6b)。また、低いPDI(<0.1)は、滑らかな粒子負荷(
図6a)を示す。8%の負荷では、2つのピーク(7.691nmおよび18.4nm)が現れ、より低い直径の値に向かう方向のピークの強いピーク広がりも起こり、PDI値は悪化している(
図7d)。これらのデータは、粒子の「過負荷」を示す:結合していないポリ(I:C)は追加のピークを生成し、それぞれ測定ピークを広げる。
図7a:ナノ粒子を含まないポリ(I:C)LMW
図7b:ポリ(I:C)を含まないSiO
2-Argナノ粒子
図7c:6重量%のポリ(I:C)を担持したSiO
2-Argナノ粒子
図7d:8重量%のポリ(I:C)を担持したSiO
2-Argナノ粒子
実施例7
ペプチドおよびポリ(I:C)によるSiO
2-Argナノ粒子の負荷
【0251】
ペプチドおよびポリ(I:C)負荷実験では、直径25nm(Z平均)、固形分20mg/mLおよびアルギニル化表面を有する100μLのシリカナノ粒子に、異なる量のモデルペプチドKKKW-Cit-SIINFEKLおよび各50μgのポリIC(LMW)(2.5mg/mLの濃度を有する20μLのポリ(I:C)ストック溶液)を負荷した。
【0252】
生理学的条件をシミュレートするために、塩化ナトリウム(NaCl)を加えて等張懸濁液(0.9%NaCl)を得た。最大4%のペプチドをナノ粒子に加えた。コロイドは安定したままであった:沈殿または濁りは観察されなかった。粒径および分布ならびにゼータ電位は、目視観察を裏付けるものである。
表4:動的光散乱の結果
【表4】
*(pept.=ペプチド)
実施例8
ssRNA(ポリ(U))によるSiO
2-Argナノ粒子の負荷
【0253】
ssRNA負荷実験では、直径25nm(Z平均)、固形分50mg/mLおよびアルギニル化表面(合計20mgの二酸化ケイ素)を有する400μLのシリカナノ粒子に、濃度1.0mg/mLを有する500μLのポリ(U)溶液(合計0.5mgのポリ(U))および濃度90mg/mLを有する100μLの塩化ナトリウム(NaCl)を加えて、等張懸濁液(0.9%NaCl)を得た。この場合のシリカナノ粒子へのポリ(U)の負荷量は2.44重量%である。50μLのこのサンプルをDLSによって測定した。ポリ(U)は、InvivoGen社製(フランス国トゥールーズ在)(カタログコード:tlrl-sspu)から得た。
表5:動的光散乱の結果
【表5】
実施例9
非メチル化DNA(CpG ODN)によるSiO
2-Argナノ粒子の負荷
【0254】
DNA負荷実験では、直径25nm(Z平均)、固形分50mg/mLおよびアルギニル化表面(合計2mgの二酸化ケイ素)を有する40μLのシリカナノ粒子に、濃度1.0mg/mLを有する50μLのODN2395溶液(合計0.5mgのODN2395)および濃度90mg/mLを有する10μLの塩化ナトリウム(NaCl)を添加して、等張懸濁液(0.9% NaCl)を得た。この場合のシリカナノ粒子の担持量は2.44重量%である。50μLのこのサンプルをDLSによって測定した。
【0255】
ODN2395は、InvivoGen社(フランス国)(カタログコード:tlrl-2395)から入手した。これは、構造:5’-tcgtcgtttt
cggcgc:gcgccg-3’(塩基はホスホロチオエート(ヌクレアーゼ耐性)であり、回文配列に下線が引かれている)を有する22量体である。
表6:動的光散乱の結果
【表6】
実施例10
エピトープの溶解度向上の例
【0256】
酵素により切断されたリンカーのN末端部位に、極性アミノ酸の付加を使用して、ペプチド全体の溶解度を高めることができる。例えば、HLA-A:02免疫原性HPV 16 E782-90エピトープLLMGTLGIVは、極めて無極性であり、水への溶解度が非常に悪い。ヒトワクチンにおける使用は困難である。動物研究では、研究者らはそれをDMSOに溶解する。例えば皮下注射後の溶解性は疑わしい:希釈は大きなペプチド粒子の沈殿をもたらす可能性があり、これはリンパ節への輸送にとって非常に好ましくない。
本発明によれば、エピトープLLMGTLGIVは、酵素により切断可能なリンカーVal-Citおよびカチオン性可溶化配列Lys-Lys-LysによってN末端部位で拡大され、
KKKV-Cit-LLMGTLGIV
が生じる。
【0257】
完全な合成を、自動化マイクロ波支援固相ペプチド合成(SPPS)によって1回の実行で行った。
【0258】
このペプチドは、水への溶解性に優れる。カテプシンBによるエンドソームおよび/または細胞質ゾルの切断後、天然のHPV 16 E782-90が放出される。また、残りのKKKV-Citは、MHC IまたはMHC IIのいずれにも提示するには短すぎるために、免疫原性ではない。
実施例11
初代ヒトマクロファージモデル(THP-1)におけるヒトTLR誘導サイトカイン
【0259】
分化したTHP-1細胞をポリ(I:C)、SiO2-Argおよびポリ(I:C)@SiO2-Argで刺激した後のサイトカインの産生を、Qiagen社製のMulti-Analyte ELISArrayを用いて行った。ナノ粒子直径は22.1nm(Z平均)、PDIは0.08である。
【0260】
すべての実験は、InvivoGen Europe社(フランス国トゥールーズ在)製の低分子量ポリ(I:C)-LMWを用いて行った。
【0261】
サイトカインのスクリーニングにより、サイトカインの有意な産生が示された。
図8:72時間の刺激後のサイトカイン発現(任意単位)対様々なタイプのサイトカイン
【0262】
TNF-α、IL8(CXCL8)、MCP-1(CCL2)、RANTES(CCL5)、IP-10(CXCL10)、MIG(CXCL9)。ポリ(I:C)@SiO
2-Argによる72時間の刺激後。SiO
2-Argナノ粒子では、IL8(CXCL8)、MCP-1(CCL2)、RANTES(CCL5)、IP-10(CXCL10)、MIG(CXCL9)の高いサイトカイン放出も認められた。
図9:96時間の刺激後のサイトカイン発現(任意単位)対様々なタイプのサイトカイン
【0263】
96時間の刺激後、サイトカインIL1-β、IL12、IL17 A、TARC、IFN-αの発現速度が増加し、SiO2-Argナノ粒子では、IL8(CXCL8)、MCP-1(CCL2)、RANTES(CCL5)、IP-10(CXCL10)、MIG(CXCL9)の高いサイトカイン放出も認められた。
【0264】
TLR3アゴニストポリ(I:C)-LMWとSiO
2-Argとの組み合わせがサイトカイン放出を刺激できるかどうかを調べるために、分化したヒトマクロファージ様THP-1細胞を、SiO
2-Argに吸着結合したポリ(I:C)-LMW(ポリ(I:C)@SiO
2-Arg)または個々の化合物と共にインキュベートし、次いでサイトカイン特異的酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に供した。THP-1細胞の上清を、いくつかの時点でインターロイキン8(IL-8)および腫瘍壊死因子α(TNF-α)について分析した(
図9)。IL-8およびTNF-αは、自然免疫系応答の重要なメディエーターであり、様々な免疫細胞の活性を調節する。これらの2つのサイトカインの放出は、免疫系の刺激が成功したことの証明である。
【0265】
図10aおよび
図10b:分化したTHP-1細胞をポリ(I:C))[12.5μg/ml]、SiO
2-Arg[0.5mg/mL]または新規なアジュバント(SiO
2-Arg[0.5mg/mL]に結合したポリ(I:C)[12.5μg/ml])で刺激した後の異なる時点でのサイトカイン放出。
【0266】
図10a:IL-8放出の定量化を、ELISA MAXTMDeluxe Set Human IL-8(BioLegend社、米国)を使用して行った。
【0267】
図10b:TNF-α放出の定量化を、ELISA MAXTMDeluxe Set Human TNF-α(BioLegend社、米国)を使用して行った。
実施例12
マウスのインフルエンザAモデルにおける実験
【0268】
TLR3アゴニストの免疫刺激効力を決定するために、実施例6に従って調製した懸濁液を、インフルエンザAウイルスPR8/34の5倍のLD50用量に対するその予防効果に関して、免疫刺激剤としての他の活性化合物と共にインビボ研究で試験した。
以下の活性化合物を試験した:
- プラセボ:グルコース溶液(5%)
- 遊離ポリ(I:C)LMW:低分子量ポリ(I:C)は、シチジン酸ポリ(C)ホモポリマーの鎖にアニールされたイノシン酸ポリ(I)ホモポリマーの短い鎖を含む。グルコース溶液(5%)中のポリ(I:C)LMWの平均サイズは0.2kb~1kb(InvivoGen社、フランス国)である。
- ZelNate(登録商標):Mannheimia haemolytica(バイエルAG社、ドイツ国)によるウシ呼吸器病(BRD)の予防を補助するFDA承認の免疫賦活剤
- 実施例6に従って調製したポリ(I:C)@SiO
2-アルギニル化
- 5%グルコース溶液中で直径25nmの未修飾のシリコンナノ粒子
表7:各群が10匹のマウスからなる、マウスにおける予防試験の概要
【表7】
【0269】
すべての場合において、注入量は100μLであった。
【0270】
10匹のC57BL/6マウスからなる各動物群(A~E)を、インフルエンザAウイルスの皮下投与の24時間前に、それぞれの活性化合物またはプラセボで処置した。ウイルスを鼻腔内投与した。
【0271】
この研究では、動物の健康のための信頼性が高く容易に測定できるマーカーとして体重を使用した。病気の動物は食べる量が少なくなり、体重が非常に急速に減少する。倫理的理由から、研究は、終了基準として、ウイルス投与日の体重に基づいて25%の体重減少を定義した。対照的に、より古い研究からの多くの刊行物において、「終了基準」は、ウイルス性疾患による動物の死である。
【0272】
この研究では、「アルギニル化」表面を有するシリカナノ粒子に吸着結合した、実施例6に従って調製したポリ(I:C)の製剤は、驚くほど強い免疫刺激効果を示し、E群の動物の統計的に有意に長い生存率および有意に少ない体重減少をもたらした。
【0273】
同じ濃度の有効成分を有するナノ粒子(C群)に結合していない遊離ポリ(I:C)は、プラセボ群(A群)と比較していかなる統計学的に有意な改善も示さない。未修飾シリカナノ粒子(群D)も統計的に有意な改善を示さなかった。
【0274】
上記の比較実験から、シリカナノ粒子に吸着的に結合したTLR3アゴニスト(群E)は、同じ濃度および同一の試験条件下で適用された遊離TLR3アゴニスト(群C)よりも明らかに優れていることを示すことができた。免疫ブースターZelNate(登録商標)(群B)もまた、プラセボ群(群A)と比較して、この研究で有意な改善を示さなかった。これは、有意な効果が観察されなかった群Dの未修飾シリカナノ粒子にも当てはまる(
図11aおよび
図11b)。
【0275】
図12は臨床スコアを示す。データは、平均臨床スコア(最大スコア=5)±SEM(n=10)として抗原負荷後の日数との関連で提示している。
実施例13
腫瘍を含まないA2.DR1マウスにおけるHPV16 E7
11-19特異的CD8T細胞免疫応答の生成
【0276】
ヒトHPV16 E6/E7由来のHLA-A2結合エピトープの免疫原性は、遺伝子改変マウスにおいてのみ研究することができる。したがって、HLAヒト化A2.DR1 BL6マウスを用いてインビボ研究を行った。A2.DR1マウスは、HLA-A2+/HLA-DR1+、H-2表現型を示すために多数の遺伝子改変を受け、HLA-A2およびHLA-DR1によって拘束される複数のエピトープに対する機能的CD4+およびCD8+T細胞応答を組み立てることが示されていることから、非常に洗練されたマウスモデルである(Kruse,S.Therapeutic vaccination against HPV-positive tumors in a MHC-humanized mouse model,Ruperto Carola University Heidelberg,2019,Dissertation;Kruseら、Therapeutic vaccination using minimal HPV16 epitopes in a novel MHC-humanized,Oncoimmunology,2019,Vol.8,1,p.e1524694)。
【0277】
様々な製剤の有効性を、毎週3回の皮下免疫化(0日目:プライム、7日目:ブースト、14日目:ブースト、21日目:脾臓サンプリング)後に高頻度のエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導するそれらの能力のために調べた。
使用物質:
- ポリ(I:C)-HMW:ポリ(I:C)-HMWの平均サイズは1.5~8kb、InvivoGen社(フランス国)
- 実施例3のSiO2-PO3H2
●KKKW-Cit-E711-19+ポリ(I:C)-HMW@SiO2-Argの調製:
【0278】
2.72mg(1.48μmol)のKKKW-Cit-E 711-19を、滅菌条件下で592μLのDNase/RNaseフリー蒸留水に溶解する。溶液をボルテックス下で50mg/mLのSiO2-Argのストック溶液2.37mL加える。296mgの固体グルコースを加え、固体が完全に溶解するまで溶液を混合する。最後に、サンプルをボルテックスしながら、2.96mLのポリ(I:C)-HMWを1.0mg/mLのストック溶液として加える。ワクチンを0.45μmフィルターで濾過する。1.8mLを各々3本の別々のバイアル(免疫ごとに1バイアル)に充填し、4℃で保存する。
【0279】
HPV16 E7
11-19のN末端ペプチド伸長の影響(=アミノ酸の1文字表記でYMLDLQPET)ならびにナノ粒子表面修飾の影響を調査した。ワクチン誘導性HPV16 E7
11-19特異的CD8
+T細胞を評価するために、エクスビボ再刺激脾細胞をIFN-γ細胞内サイトカイン染色(ICS)とそれに続くフローサイトメトリーで評価した(
図13)。
図13:
Y軸:
HPV-001:RW-Cit-E7
11-19[50nmol]+ポリ(I:C)-HMW[50μg]
HPV-002:RW-Cit-E7
11-19[50nmol]+ポリ(I:C)-HMW[50μg]@SiO
2-Arg[2.25mg]
HPV-003:RW-Cit-E7
11-19[50nmol]+ポリ(I:C)-HMW[50μg]@SiO
2-PO
3H
2[2.25mg]
HPV-004:KKKW-Cit-E7
11-19[50nmol]+ポリ(I:C)-HMW[50μg]@SiO
2-Arg[2.25mg]
X軸:
脾臓IFN-y
+/CD8
+T細胞(%)
【0280】
ゴルジ装置-輸送阻害剤の存在下でのE711-19による脾細胞のエクスビボ刺激後のIFN-γ陽性E711-19特異的CD 8+T細胞の頻度その後のIFN-γICSの後、IFN-γ陽性E711-19特異的T細胞をフローサイトメトリーによって決定した。データを平均+/-SEMとして表す。各点は1匹のマウスを表す。
【0281】
図13に示すように、エピトープにコンジュゲートしたナノ粒子による3つの免疫化は、エピトープ注射と比較してより高い頻度で抗原特異的脾臓IFN-γ
+CD8
+T細胞を誘導することができた。さらに、ナノ粒子の2つの表面修飾(HPV-002対HPV-003)の直接比較により、エピトープをSiO
2-Arg(HPV-002)にコンジュゲートした場合により良好な性能が実証された。
【0282】
さらに、N末端ペプチド伸長(HPV-003対HPV-004)の影響を分析したところ、「KKKW-Cit-」修飾(HPV-004)は、エピトープ特異的CD8+T細胞のより高い頻度をもたらした。
【0283】
この実験は、本発明によるHPV16ワクチンが高頻度のエピトープ特異的CD8+T細胞を誘導する能力を首尾よく実証した。要約すると、SiO2-Argならびに「KKKW-Cit-」ペプチド伸長は、SiO2-PO3H2ナノ粒子および「RW-Cit-」ペプチド伸長よりも有益な特性を示している。したがって、両方の組み合わせを腫瘍研究における治療有効性のために使用した。
実施例14
増殖の遅いPAP-A2-HPV16腫瘍における治療効果
【0284】
最終研究目標は、前駆病変または確立された癌のいずれかと診断された患者に与えられる治療用抗HPV16ワクチンの開発である。したがって、治療ワクチン接種実験において腫瘍増殖の制御を誘導する新規ワクチンの能力を試験した。
増殖の遅いPAP-A 2-HPV16腫瘍モデルにおける早期治療処置研究のための免疫スケジュール:
【0285】
HPV16 E7由来のエピトープとコンジュゲートしたSiO2-Argの治療有効性を評価するために、HLAヒト化A2.DR1 BL6マウスにおけるHPV16 E6+/E7+PAP-A2腫瘍モデルを使用した。1.5・106個のPAP-A2細胞を皮下注射したが、これは2~3週間以内に大きな腫瘍をもたらすはずである。腫瘍接種後4日目から開始して、倫理的エンドポイント(腫瘍体積1000mm3)に達するまで、腫瘍担持マウスを完全ワクチン(HPV-008)または対照としての個々の化合物で毎週(合計3回の免疫化、プライムブーストブースト)処置した。
【0286】
図14は、遊離抗原HPV16 E7抗原YMLDLQPET+ポリ(I:C)(HMW、高分子量)「遊離抗原+TLRアゴニスト」または23nmの直径を有するアルギニル化シリカナノ粒子に両方とも吸着結合したKKKW-Cit-YMLDLQPET+ポリ(I:C)(HMW)のいずれかを受けたマウスの生存率を示す。
【0287】
図14に示すように、両方ともアルギニル化シリカナノ粒子に吸着的に結合したKKKW-Cit-YMLDLQPET+ポリ(I:C)(HMW)による腫瘍担持マウスの処置は、9匹のマウスのうち5匹で完全な腫瘍退縮をもたらし、全生存率は55%であった。対照的に、キャリア対照(遊離抗原+TLR3アゴニスト)マウスの90%は、過剰な腫瘍増殖のために排除されなければならなかった。
図15aおよび
図15bは、両方の群の個々の腫瘍増殖を示す。
【0288】
単一化合物およびエピトープとコンジュゲートしたSiO2-Argを用いた治療的ワクチン接種からの結果をまとめると、KKKW-Cit-YMLDLQPETワクチン接種とコンジュゲートした三重表面アルギニル化ナノ粒子を用いて最良の治療的抗腫瘍結果が達成されたと結論付けることができる。
実施例15
交差提示実験
DC2.4細胞における細胞内プロセシング後のOVA257-264のMHC I交差提示
【0289】
免疫原性エピトープに結合した酵素的切断(W-Cit)部位の機能性を実証するために、マウス樹状細胞(DC2.4細胞、不死化マウス樹状細胞)におけるモデル抗原OVA257-264(=アミノ酸の一文字表記でSIINFEKL)の交差提示に関する実験を行った。したがって、ナノ粒子を含むまたは含まない様々なOVA由来構築物とのインキュベーション後の主要組織適合遺伝子複合体I(MHCI)上のSIINFEKLの発現を、MHCI上に提示された天然のエピトープの抗体(25-D1.16、SIINFEKL抗体に結合したPE/Cy7抗マウスH-2Kb、Biolegend,Inc.社、米国)特異的検出によって決定した。MHC Iに結合していない遊離のMHC I結合エピトープまたはMHC I上の伸長エピトープは、MHC Iに提示されるSIINFEKLに対して高度に選択的である抗体によって認識されない。
【0290】
実験では、それぞれナノ粒子の有無で、全長タンパク質(OVA=オボアルブミン)、N末端およびC末端伸長エピトープ(OVA247-264A5K、いわゆる合成ロングペプチド(SLP))、カテプシンB切断可能配列を有するN末端伸長エピトープ(例示的に示されるRW-Cit-OVA257-264)または天然のエピトープ(OVA257-264)の5μM溶液と5・104個のDC2.4細胞のインキュベーション後のOVA257-264提示有効性を比較した。平均直径25nm(他の実験で使用したSiO2-Argに匹敵するサイズ)の表面リン酸化シリカナノ粒子(SiO2-PO3H2)を担体として使用した。6時間のインキュベーション時間後、試験物質をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄することによって除去する。次のステップでは、細胞のFc(フラグメント、結晶性)受容体への検出抗体の非特異的結合を遮断するために、細胞をCD16/CD32抗体とインキュベートした。25-D1.16抗体とのインキュベーション後、交差提示OVA 257-264の量をフローサイトメトリーによって定量化した。
【0291】
図16:H2-Kb陽性細胞を、SiO
2-PO
3H
2の有無で、天然のもしくは伸長OVA
257-264エピトープまたは全長OVAタンパク質の5μM溶液と6時間インキュベートした後のOVA
257-264MHC I発現。25-D1.16検出抗体で標識した後、フローサイトメトリーによって定量化を行った。
【0292】
図16に示すように、天然のエピトープおよび酵素切断部位を有する伸長エピトープのみがMHC上に有意な量で提示される。ナノ粒子にイオン結合したペプチドとのインキュベーションによって、提示されたエピトープの取り込み、ひいてはその量をわずかに増加させることができる。天然のエピトープは、必ずしも細胞内に内在化される必要はないが、MHC分子上に外因的に負荷され得るので、N末端伸長エピトープは、天然配列を放出するために内在化されなければならない。細胞をRW-Cit-OVA
257-264とインキュベートした後のMHC I上の天然のエピトープの検出は、酵素切断部位の機能性の証拠を裏付けるものである。
実施例16
ヒト血清中の安定性測定
【0293】
HEK-Blue(商標)hTLR3細胞は、NF-kBの活性化を監視することによってヒトTLR3によるヒトTLR3の刺激を測定するように設計されている。HEK-Blue(商標)hTLR3細胞は、hTLR3遺伝子と、NF-kBおよびAP-1誘導性プロモーターの制御下に置かれた最適化分泌胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子とをHEK293細胞に共トランスフェクションすることによって得た。TLR3リガンドによる刺激は、SEAPの産生を誘導するNF-kBおよびAP-1を活性化する。SEAPのレベルは、SEAPのリアルタイム検出を可能にする細胞培養培地であるHEK-Blue(商標)検出を用いて容易に決定することができる。SEAPによる基質の加水分解は、肉眼で容易に検出することができるか、または96ウェルプレートリーダー(Invivogen社、https://www.invivogen.com/hek-blue-htlr3を参照)で測定することができる紫/青色を生じる。
【0294】
ポリ(I:C)およびポリ(I:C)@SiO2-Argを37℃で60分間ヒト血清(HS)に曝露した。血清は5、10および20%の濃度で使用した。20%の血清濃度は、末梢リンパの組成に非常によく対応する。
【0295】
ポリ(I:C)およびポリ(I:C)@SiO2-Argを別々にヒト血清に加えて、1mL当たり1μgのポリ(I:C)の濃度を得た。ポリ(I:C)@SiO2-Argの場合、SiO2濃度は40μg/mLであった。この場合のSiO2-Argにおけるポリ(I:C)ペイロードは約2.5%であった。HSに曝露した後、20μLの培地を取り、HEK-Blue(商標)検出培地中の180μLのHEK-Blue(商標)hTLR3細胞に加えた。この混合物を37℃で13時間インキュベートし、プレートを96ウェルプレートリーダー(Tecan Reader社、型式:Infinite M200 Pro)で分析した。
【0296】
【0297】
20%ヒト血清中の遊離ポリ(I:C)の計算された半減期は、選択された条件下で24.2分(60分後の初期濃度の18%)である。半減期計算:
t1/2=ln 2/(ln 100/ln 18)*60 [分]
【0298】
同じ条件下でのポリ(I:C)@SiO2-Argの半減期は、395分(60分後の初期濃度の90%)と計算される。
t1/2=ln 2/(ln 100/ln 90)*60 [分]
【0299】
したがって、ポリ(I:C)のアルギニル化シリカナノ粒子への結合は、半減期を16倍増加させる(=395/24.2)。
実施例17
ウシ血清中の安定性測定
【0300】
HEK-Blue(商標)hTLR3細胞は、NF-kBの活性化を監視することによってヒトTLR3によるヒトTLR3の刺激を測定するように設計されている。HEK-Blue(商標)hTLR3細胞は、hTLR3遺伝子と、NF-kBおよびAP-1誘導性プロモーターの制御下に置かれた最適化分泌胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子とをHEK293細胞に共トランスフェクションすることによって得た。TLR3リガンドによる刺激は、SEAPの産生を誘導するNF-kBおよびAP-1を活性化する。SEAPのレベルは、SEAPのリアルタイム検出を可能にする細胞培養培地であるHEK-Blue(商標)検出を用いて容易に決定することができる。SEAPによる基質の加水分解は、肉眼で容易に検出することができるか、または96ウェルプレートリーダー(Invivogen社)で測定することができる紫/青色を生じる。
【0301】
ポリ(I:C)およびポリ(I:C)@SiO2-Argを、ウシ胎児血清(FBS)に37℃で60分間曝露した。血清は5、10および20%の濃度で使用した。20%の血清濃度は、末梢リンパの組成に非常によく対応する。
【0302】
ポリ(I:C)およびポリ(I:C)@SiO
2-Argを別々にウシ血清に加えて、1mL当たり1μgのポリ(I:C)の濃度を得た。ポリ(I:C)@SiO
2-Argの場合、SiO
2濃度は40μg/mLであった。この場合のSiO
2-Argにおけるポリ(I:C)ペイロードは約2.5%であった。FBSに曝露した後、20μLの培地を取り、HEK-Blue(商標)検出培地中の180μLのHEK-Blue(商標)hTLR3細胞に加えた。この混合物を37℃で13時間インキュベートし、プレートを96ウェルプレートリーダー(Tecan Reader社、型式:Infinite M200 Pro)で分析した。
結果は、
図18から確認することができた。
【0303】
遊離ポリ(I:C)は、より高い血清濃度で分解の明確な徴候を示すが、ポリ(I:C)@SiO2-Argは、有意に高い安定性を示す。ポリ(I:C)@SiO2-Argの半減期計算は、非常に低い崩壊速度のために役に立たない。
【配列表】
【国際調査報告】