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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】カンナビノイドの使用および製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20230606BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230606BHJP
   A61K 9/66 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P11/00
A61K9/20
A61K47/10
A61K9/66
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568568
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021062495
(87)【国際公開番号】W WO2021228863
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/063086
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21168856.9
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446381
【氏名又は名称】アド アドヴァンスト ドラッグ デリヴァリー テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADD ADVANCED DRUG DELIVERY TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,レインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ジェスコ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ペリンガー,ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA42
4C076BB01
4C076CC15
4C076DD09E
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD59S
4C076EE16
4C076EE23E
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE49E
4C076FF51
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA54
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA59
(57)【要約】
カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用および製剤が提供される。カンナビノイド、特にカンナビジオールは、SARS-CoV-2コロナウイルスによって引き起こされる疾患であるCOVID-19に罹患している患者の治療に使用される。製剤は、カンナビノイド、特にカンナビジオールの経口投与を特に対象とする。これらの製剤は、COVID-19に罹患している患者を治療するのに有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2による感染に罹患した患者またはSARS-CoV-2により感染するリスクにある対象の治療用カンナビノイド。
【請求項2】
前記カンナビノイドが、カンナビジオール(2-[(1R,6R)-3-メチル-6-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)であることを特徴とする、請求項1に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項3】
前記治療が、サイトカイン放出症候群(CRS)を予防または改善するためおよび/またはウイルス量を低減するためのものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項4】
前記治療が、サイトカイン放出症候群(CRS)を予防または改善するためのものであることを特徴とする、請求項3に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項5】
前記治療が、血清IL-6レベルを低下させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項6】
前記治療が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を予防または改善するためのものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項7】
前記治療が、非重症化期の間に開始されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項8】
前記患者が、発熱、乾性咳、息切れ、および身体検査におけるラ音/クラックルの証拠、筋肉痛、疲労、呼吸困難、食欲不振、嗅覚および味覚の喪失、ならびに腎炎から選択される少なくとも1つの疾患症状を有すると診断された場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項9】
患者がCTスキャンまたは胸部x線のいずれかによって病理学的肺特徴を示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項10】
前記患者が、発熱、乾性咳、息切れ、および身体検査におけるラ音/クラックルの証拠、筋肉痛、疲労、呼吸困難、食欲不振、嗅覚および味覚の喪失、ならびに腎炎から選択される少なくとも1つの疾患症状を有すると診断され、かつ、CTスキャンまたは胸部x線のいずれかによって病理学的肺特徴を示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項11】
前記治療が、末梢酸素飽和度(SpO2)の低下に基づいて開始されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項12】
前記患者が、周囲空気中で安静時に≦93%の末梢酸素飽和度(SpO2)を示すか、またはSpO2>97%を維持するために3L/分~5L/分の酸素を必要とする場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項11に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項13】
前記治療が、過去24時間においてFiO2(吸入酸素分圧)が安定しており、酸素飽和度が>3%悪化、またはPaO2(動脈血酸素分圧)が>10%低下していると定義される、肺病変の悪化時に開始されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項14】
前記治療が、以下の1つまたは複数:血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mL、
に基づいて開始されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項15】
前記患者が、発熱、乾性咳、息切れ、および身体検査におけるラ音/クラックルの証拠、筋肉痛、疲労、呼吸困難、食欲不振、嗅覚および味覚の喪失、ならびに腎炎から選択される少なくとも1つの疾患症状を有すると診断され;かつ、血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mLから選択される少なくとも1つの検査所見を示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項16】
前記患者が、血小板減少<120.000×10E9/L、および/またはリンパ球数<0.6×10E9/Lを示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項17】
前記患者が、発熱、乾性咳、息切れ、および身体検査におけるラ音/クラックルの証拠、筋肉痛、疲労、呼吸困難、食欲不振、嗅覚および味覚の喪失、ならびに腎炎から選択される少なくとも1つの疾患症状を有すると診断され;および/または、血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mLから選択される少なくとも1つの検査所見を示し;かつ、血小板減少<120.000×10E9/L、および/またはリンパ球数<0.6×10E9/Lを示す場合に、前記治療を開始することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項18】
前記患者がリスク群に属し、特に前記患者が脂肪炎に罹患していることを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項19】
前記カンナビノイドが、レムデシビル(ウイルスのRNAポリメラーゼの阻害剤)およびリトナビル/ロピナビル(HIV治療薬)から選択される1つまたは複数の抗ウイルス剤と組み合わせて;特発性肺線維症に対する薬物と組み合わせて;または、血栓に対する薬剤または心不整脈に対する薬剤と組み合わせて、適用されることを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項20】
前記カンナビノイドが経口投与されることを特徴とする、請求項1~19のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項21】
前記カンナビノイドが、150mg~5000mgの用量で1日に1~4回、例えば250mg~5000mgの用量で1日に1~4回投与されることを特徴とする、請求項1~20のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項22】
前記用量が、375mg、750mg、1500mgまたは3000mgであり、この用量が1日に1~4回投与されることを特徴とする、請求項20に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項23】
前記用量がBIDで投与されることを特徴とする、請求項21に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項24】
前記カンナビノイドが、1500mgの用量でBIDで投与されることを特徴とする、請求項1~23のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項25】
前記カンナビノイドが、固体分散体として製剤化されることを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項26】
前記固体分散体が、カンナビノイド、および、水性媒体と組み合わせた場合にミセル溶液を形成することができる両親媒性ブロックコポリマーである可溶化剤を含むことを特徴とする、請求項25に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項27】
前記可溶化剤が、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項25または26に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項28】
前記可溶化剤が、ポロキサマー、特にポロキサマー188であることを特徴とする、請求項27に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項29】
前記カンナビノイドおよび前記可溶化剤が、1:0.2~10.0、好ましくは1:0.5~6.0、特に1:1~5のカンナビノイド:可溶化剤の重量比で存在することを特徴とする、請求項26~28のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項30】
前記個体分散体が、さらに抗酸化剤を含むことを特徴とする、請求項25~29のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項31】
前記抗酸化剤が、前記カンナビノイドの量に対して、0.5~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%、特に1.0~1.8質量%の量で使用されることを特徴とする、請求項30に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項32】
前記抗酸化剤がパルミチン酸アスコルビルであることを特徴とする、請求項30または31に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項33】
前記個体分散体が、カンナビノイド、可溶化剤としての両親媒性ブロックコポリマー、および水溶性フィルム形成剤を混合して含むことを特徴とする、請求項25に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項34】
前記カンナビノイドおよび前記両親媒性ブロックコポリマーが、1:0.11~0.41、好ましくは1:0.16~0.36、より好ましくは1:0.21~0.31のカンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマーの重量比で存在することを特徴とする、請求項33に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項35】
前記両親媒性ブロックコポリマーが、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むことを特徴とする、請求項33または34に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項36】
前記両親媒性ブロックコポリマーが、ポロキサマー、特にポロキサマー188であることを特徴とする、請求項35に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項37】
前記カンナビノイドおよび前記水溶性フィルム形成剤が、1:0.03~0.33、好ましくは1:0.08~0.28、より好ましくは1:0.13~0.23のカンナビノイド:水溶性フィルム形成剤の重量比で存在することを特徴とする、請求項33~36のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項38】
前記水溶性フィルム形成剤がポリビニルピロリドンであることを特徴とする、請求項33~37のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項39】
前記水溶性フィルム形成剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースであることを特徴とする、請求項33~37のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項40】
前記成分が、1:0.11~0.41:0.03~0.33、好ましくは1:0.16~0.36:0.08~0.28、より好ましくは1:0.21~0.31:0.13~0.23のカンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマー:水溶性フィルム形成剤の重量比で存在することを特徴とする、請求項33~39のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項41】
前記個体分散体が、さらに抗酸化剤を含むことを特徴とする、請求項33~40のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項42】
前記抗酸化剤が、前記カンナビノイドの量に対して、0.5~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%、特に1.0~1.8質量%の量で使用されることを特徴とする、請求項41に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項43】
前記抗酸化剤がパルミチン酸アスコルビルであることを特徴とする、請求項41または42に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項44】
前記個体分散体が希釈剤を含むことを特徴とする、請求項33~43のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項45】
前記カンナビノイドおよび前記希釈剤が、1:0.5~2.7、好ましくは1:0.9~2.3、特に1:1.3~1.9のカンナビノイド:希釈剤の重量比で存在することを特徴とする、請求項44に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項46】
前記希釈剤が、微結晶セルロースおよび/またはマンニトールであることを特徴とする、請求項44または45に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項47】
前記個体分散体が水分吸着剤を含むことを特徴とする、請求項33~46のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項48】
前記カンナビノイドおよび前記水分吸着剤が、0.14~0.44、好ましくは0.19~0.39、特に0.24~0.34のカンナビノイド:水分吸着剤の重量比で存在することを特徴とする、請求項47に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項49】
前記水分吸着剤が二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項47または48に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項50】
前記個体分散体が、トリグリセリド;および/またはモノ-およびジ-グリセリド;および/または脂肪酸を含まないまたは本質的に含まないことを特徴とする、請求項33~49のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項51】
前記カンナビノイドがカンナビジオールであることを特徴とする、請求項33~50のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項52】
前記製剤が、USPパドル法に従って0.1N HCl+2% CTAB中でのin virto溶解試験に供した場合、60分以内に少なくとも75質量%、好ましくは60分以内に少なくとも90質量%のカンナビノイドを放出することを特徴とする、請求項33~51のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項53】
前記製剤が、USPパドル法に従って0.1N HCl+2% CTAB中でのin virto溶解試験に供した場合、45分以内に少なくとも75質量%、好ましくは45分以内に少なくとも85質量%のカンナビノイドを放出することを特徴とする、請求項33~52のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項54】
前記カンナビノイドが、コアおよびコア上のコーティングを含む製剤中に組み込まれ、前記コーティングは、カンナビノイド、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤、および全成分の重量に基づいて20質量%以下の他の賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1~24のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項55】
前記水溶性フィルム形成剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が使用されることを特徴とする、請求項54に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項56】
前記フィルム形成剤が、カンナビノイドの総量に基づいて、0.3~10質量%の総比率で含まれることを特徴とする、請求項54または55に記載の治療用カンナビノイド。
【請求項57】
前記含有されるカンナビノイドの30質量%超かつ80質量%未満が2時間以内に放出される;および/または、前記含有されるカンナビノイドの40質量%超かつ90質量%未満が3時間以内に放出される;および/または、前記含有されるカンナビノイドの50質量%超かつ95質量%未満が4時間以内に放出される、ことを特徴とする、請求項54~56のいずれか一項に記載の治療用カンナビノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用および製剤に関する。本発明によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、コロナウイルスSARS-Cov-2によって引き起こされる疾患であるCOVID-19に罹患している患者の治療に使用される。
【0002】
本発明はまた、カンナビノイド、特にカンナビジオールの経口投与のための製剤を提供する。これらの製剤は、COVID-19に罹患している患者を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
重度の急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染症であるコロナウイルス疾患2019(COVID-19)は、中国武漢において2019年12月に最初に確認され、その後世界的に広がっており、コロナウイルスパンデミックをもたらした。異なる集団間で検査率が大きく乖離しているために、感染者数が不明であり、疾患の死亡率は依然として不確かである。さらに、基礎疾患に対する死亡の関連性について方法論的懸念がある。しかしながら、現在、死亡率は、インフルエンザ由来の<1%の死亡率と少なくとも同程度であるか、またはそれよりも高いと想定する理由がある。さらに、COVID-19はインフルエンザよりも感染力が高い:推定基礎繁殖数(R0)は、インフルエンザについては1.4~1.6の範囲であり、COVID-19については2~3の範囲である。
【0004】
WHOの暫定的な指針に基づいて、COVID-19を有する患者の管理は、対症療法、モニタリング、同時感染症の抗菌治療、ならびに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および敗血症などの疾患合併症の管理からなる。
【0005】
様々な薬物および治療レジメンを試験するために多くの臨床研究が開始されているが、さらなる治療法の選択が依然として緊急に必要とされている。
【0006】
特定のカンナビノイドがCOVID-19の治療において有用であり得ることが最近示唆された。あるin vitro細胞培養研究では、炎症の人工モデルにおいて、特定のカンナビス・サティバ抽出物が、SARS-CoV-2の受容体であるACE2をダウンレギュレートし、また、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入に必要とされる別の重要なタンパク質であるセリンプロテアーゼTMPRSS2もダウンレギュレートすることが示唆されている(非特許文献1)。抽出物を用いて、マウスウォッシュおよび喉のうがい薬製品の形態で使用が容易な予防的治療を開発できることが提案される。
【0007】
COVID-19とは別に、カンナビノイド、特にカンナビジオールは薬物と考えられている。カンナビノイドは、疼痛、炎症、てんかん、睡眠障害、多発性硬化症の徴候、食欲不振、および統合失調症を含む多くの臨床状態を治療するのに有益であり得るという証拠がある(非特許文献2)。
【0008】
様々な適応症におけるカンナビノイドの使用が提案されているが、これまで限られた用途しか市場認可を受けていない。
【0009】
COVID-19の治療におけるカンナビノイドの有用性を示すデータは、これまで開示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】B. Wang et al. (2020). In Search of Preventative Strategies: Novel Anti-Inflammatory High-CBD Cannabis Sativa Extracts Modulate ACE2 Expression in COVID-19 Gateway Tissues. Preprints 2020040315 (doi: 10.20944/preprints202004.0315.v1)
【非特許文献2】N. Bruni et al., Cannabinoid Delivery Systems for Pain and Inflammation Treatment. Molecules 2018, 23, 2478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、COVID-19患者の治療のための組成物および治療レジメンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、SARS-CoV-2に感染した患者を治療するためのカンナビノイド、特にカンナビジオールが提供される。カンナビノイドは、抗ウイルス剤として、および/または、サイトカイン放出症候群(CRS)を予防または改善するために、投与される。
【0013】
カンナビノイドは、ウイルス量を減少させる。
【0014】
さらに、この治療は、血清IL-6レベルを低下させる。また、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を予防または改善する。
【0015】
カンナビノイドは予防的に投与され得る。
【0016】
患者の治療は、病気の診断の直後に、例えば、COVID-19の非重症化期に開始される。
【0017】
患者のIL-6レベルが上昇した場合に治療を開始することができる。
【0018】
カンナビノイドは、レムデシビル(ウイルスのRNAポリメラーゼの阻害剤)またはリトナビル/ロピナビル(HIV治療薬)などの1つまたは複数の抗ウイルス剤と組み合わせて;特発性肺線維症に対する薬物と組み合わせて;または、血栓に対する薬剤または心不整脈に対する薬剤と組み合わせて、適用することができる。
【0019】
カンナビノイドは、好ましくは経口投与される。150mg~5000mgの用量で1日に1~4回、例えば、250mg~5000mgの用量で1日に1~4回投与される。
【0020】
カンナビノイドは、固体分散体として、製剤化することができる。個体分散体は、カンナビノイドと、水性媒体と組み合わせた場合にミセル溶液を形成することができる両親媒性ブロックコポリマーである可溶化剤とを含む。
【0021】
ブロックコポリマーは、好ましくはポロキサマーである。
【0022】
固体分散体は、水溶性フィルム形成剤をさらに含むことができる。
【0023】
カンナビノイドはまた、コアおよびコア上のコーティングを含む製剤に組み込むことができ、コーティングは、カンナビノイドと、1つ以上の水溶性フィルム形成剤と、全成分の重量に基づいて20質量%以下の他の賦形剤とを含む。
【0024】
さらなる目的およびその解決手段は、以下の本発明の詳細な説明から結論付けることができる。
【0025】
以下において、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】カンナビノイドを含有する固体分散体の調製および固体分散体と水性媒体との相互作用を概略的に示す。
図2】活性物質としての2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール、およびフィルム形成剤としての低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、3種類のペレット製品からのin vitro放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
治療を受ける患者
COVID-19の経過は、一般に、3つの段階に分けることができる:
I)無症状潜伏期(ウイルスはすでに検出可能であり得る)
II)非重症症状期(ウイルス検出可能)
III)重症呼吸器症状段階
感染後初期に、ウイルスを排除し、重症段階IIIへの進行を予防するために、免疫応答が必須である。この段階で免疫応答を高めるための戦略が重要であり得る。免疫抑制療法は、この初期の疾患段階で患者を危険にさらすことが予想される。ウイルス量を減少させる治療は、疾患の進行を防ぐことができる。抗ウイルス剤は、この段階で投与することができる。
【0028】
初期免疫応答が損なわれるかまたは不充分である場合、または、有効な抗ウイルス治療がない場合、ウイルスは増殖し、次いで大量の組織損傷を引き起こし、最終的に炎症誘発性サイトカインによって引き起こされる炎症をもたらす。高いウイルス負荷は、SARS-CoV-2の受容体であるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現が高い組織に強く影響を及ぼし、破壊する。その結果、損傷した細胞は、炎症誘発性マクロファージおよび顆粒球によって主に媒介される自然炎症をもたらす。肺ならびに他の器官および組織が影響を受け得る。ACE2は、肺および腸上皮において多く発現されるが、心臓、心血管系および腎臓を含む他の組織においても見出される。
【0029】
重症の場合、サイトカイン放出症候群(CRS)が観察される。
【0030】
CRSは、多くの感染性および非感染性疾患において起こり得る。CRSは、全身性炎症反応症候群の形態である。免疫細胞は、受容体-リガンド相互作用を介して、ストレスを受けたまたは感染した細胞によって活性化される。CRSは、多くの白血球が活性化されて炎症性サイトカインを放出し、これが病原性炎症の正のフィードバックループにおいてさらに白血球を活性化し、炎症誘発性サイトカインの急速な上昇をもたらす場合に起こる。
【0031】
サイトカインストームという用語は、CRSの重症例に使用される。
【0032】
COVID-19において、全身性過剰炎症は、肺および心臓の炎症性リンパ球性および単球性浸潤をもたらし、ARDSおよび心不全を引き起こす。劇症型COVID-19およびARDSを有する患者は、CRP、LDH、IL-6、およびフェリチンの上昇を含むCRSの古典的な血清バイオマーカーを有する。
【0033】
集中治療を必要とする患者は、典型的には、集中治療を必要としない患者よりも高い血中濃度の炎症誘発性サイトカインを有する。COVID-19症例による遡及的研究において、同様の現象が示された:炎症誘発性サイトカインIL-6の血中濃度は、COVID-19で死亡した患者において、疾患生存者と比較して有意に高かった。さらに、疾患発症の4日後にすでに、IL-6濃度は、生存者よりも非生存者において高かった。非生存者のIL-6濃度曲線は、死亡直前の急激な増加を特徴とするが、IL-6濃度は生存者において安定なままであった(F. Zhou et al. (2020). Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study. Lancet 395(10229): 1054-62)。
【0034】
IL-6のレベルが高いことは、CRSの顕著で重要な原動力である。
【0035】
CRSは、いくつかの病理学的事象の原因であると考えられる。
【0036】
例えば、肺病理に寄与する関連因子は、ヒアルロナンの産生および調節の障害である:サイトカインは、ヒアルロナン合成酵素-2の強力な誘導因子である。ヒアルロナンは、その分子量の1000倍までの水を吸収する能力を有し、したがって、重症患者の肺において観察される透明な液体ゼリーの根本的な理由であると推測される。
【0037】
重症段階IIIに進行する患者において、肺炎症は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の主な原因である。肺における広範な炎症の急速な発症は、呼吸不全をもたらす。ARDSはCOVID-19による主な死因である。
【0038】
COVID-19を有する患者における死亡の別の主な原因は、心筋損傷による循環不全である。劇症型心筋炎で死亡した患者の報告もある。これらの知見と一致して、D-ダイマーレベル>1μg/mLおよび高感度心筋トロポニンIの上昇は、遡及的研究における院内死亡のより高い確率と関連した。この研究では、死亡した患者の半分超は心筋トロポニンIが上昇しており、肺炎の入院患者の約90%はD-ダイマー濃度が上昇しており、これは高い凝固活性を示した(F. Zhou et al., loc. cit.)。
【0039】
したがって、凝固促進状態を誘導し、プラーク破裂を助長する炎症誘発性サイトカインの放出は、患者を血栓症および虚血にかかりやすくし、COVID-19患者における心臓事象に寄与する。
【0040】
さらに、COVID-19患者における病態生理学的プロセスは、特定の白血球数にも反映される。
【0041】
高い白血球数ならびにリンパ球減少症および高い好中球対リンパ球比は、COVID-19患者において共通している(Y. Liu et al. (2020). Neutrophil-to-lymphocyte ratio as an independent risk factor for mortality in hospitalized patients with COVID-19. J Infect)。
【0042】
利用可能な臨床データは、疾患の経過の初期にウイルスに対する免疫応答が必須であるが、後期には免疫応答の特定の成分が実際に損傷を与えることを示す。
【0043】
本発明は、薬理学的介入が、ウイルス量を低減するおよび/または免疫応答の望ましくない成分を予防または低減することができるという知見に基づく。本発明は、
本発明は、二重の作用様式を有する活性薬剤の投与に依存する。
【0044】
本発明は特に、サイトカイン放出症候群(CRS)および望ましくない炎症プロセスを含むその臨床症状を予防または改善することを可能にする。これは、炎症誘発性サイトカイン、特にIL-6の放出を妨げる薬理学的介入によって達成される。
【0045】
IL-6受容体に対するヒト化モノクローナル抗体であるトシリズマブの使用を調査する予備的な臨床データは、重症SARS-CoV-2肺炎を有する患者におけるIL-6遮断療法の有益な効果を示唆している(X. Xu et al., Effective treatment of severe COVID-19 patients with tocilizumab. ChinaXiv:20200300026 (2020))。
【0046】
本発明は、より単純かつより便利な治療、すなわち経口投与することができる治療を提供する。さらに、本発明によれば、活性薬剤は抗ウイルス活性も有する。
【0047】
さらに、本発明によれば、治療は、より早期に、すなわち、疾患の重症段階に達する前に開始される。特に、CRSおよびその結果が依然として予防され得るか、または少なくともCRSの重症段階への進行が停止され得るかもしくは有意に減速され得る時点で、治療を開始することが考慮される。
【0048】
これはまた、重症症例のみに治療を適用するアプローチと比較して、より多くの患者が治療から利益を受け得ることを意味する。
【0049】
本発明によれば、治療される患者は、SARS-CoV-2に感染している。感染の確認はPCRによって決定することができる。
【0050】
治療は入院時に開始してもよいが、好ましくは、以下で考察される基準の1つ以上が満たされる場合、SARS-CoV-2感染が確認された患者において開始される。
【0051】
感染の症候期にある患者は、発熱、乾性咳、息切れ、および身体検査におけるラ音/クラックルの証拠、筋肉痛、疲労、呼吸困難、食欲不振、嗅覚および味覚の喪失、ならびに腎炎のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、疾患症状を示す。
【0052】
したがって、患者がSARS-CoV-2について陽性と検査されており、上に列挙した症状の少なくとも1つを示す場合、治療を開始することができる。
【0053】
COVID-19の肺の病理学的特徴は、胸部コンピュータ断層撮影(CT)または胸部x線におけるすりガラス濃度(ground glass opacities)、クレージークレービングパターン(crazy-craving pattern)、および後期では圧密化を含む。
【0054】
患者がSARS-CoV-2について陽性と検査され、CTスキャンまたは胸部x線のいずれかによって病理学的肺特徴を示す場合に、治療が開始され得る。
【0055】
治療は、末梢酸素飽和度(SpO2)に基づいて開始され得る。
【0056】
患者がSARS-CoV-2について陽性と検査され、末梢酸素飽和度(SpO2)の低下を示す場合に、治療が開始され得る。特に、患者が周囲空気中で安静時に≦93%の末梢酸素飽和度(SpO2)を示すか、またはSpO2>97%を維持するために3L/分~5L/分の酸素を必要とする場合、治療を開始することができる。
【0057】
さらに、SARS-CoV-2について陽性と検査された患者の治療は、過去24時間においてFiO2(吸入酸素分圧)が安定しており、酸素飽和度が>3%悪化、またはPaO2(動脈血酸素分圧)が>10%低下していると定義される肺病変の悪化時に開始することが可能である。
【0058】
患者はまた、NIV(非侵襲的換気)またはCPAP(持続的気道陽圧)の開始時に治療されてもよいが、より早期の治療開始が好ましい。
【0059】
治療を開始するための適切な基準はまた、検査所見に基づいてもよい。
【0060】
SARS-CoV-2陽性と検査された患者の治療を開始するための検査所見としては、以下の1つまたは複数が含まれる:血清IL-6≧5.4pg/ml;CRPレベル>70mg/L(他の感染性または非感染性経過の確認なし);CRPレベル>=40mg/Lかつ48時間以内に倍加(他の感染性または非感染性経過の確認なし);ラクテートデヒドロゲナーゼ>250U/L;D-ダイマー>1μg/mL;血清フェリチン>300μg/mL。
【0061】
好ましくは、治療開始は、IL-6のレベルの上昇に基づく。
【0062】
必要に応じて、SARS-CoV-2について陽性と検査された患者が、上記の症状基準の少なくとも1つを示し、上記の臨床検査基準の少なくとも1つを満たす場合、治療を開始する。
【0063】
さらに、SARS-CoV-2について陽性と検査された患者の治療は、患者が、必要に応じて上記の基準の1つに加えて、血小板減少<120.000×10E9/L、および/またはリンパ球数<0.6×10E9/Lを示す場合に開始することができる。
【0064】
治療される患者は、リスク群に属し得る。例えば、治療される患者は、脂肪炎に罹患し得る。特に、治療される患者は、脂肪炎に罹患し、血清IL-6レベル≧5.4pg/mlを有し得る。
【0065】
治療の進行は、例えば最初の投与、14日目および28日目の間の、IL-6、CRP、トランスアミナーゼ、LDH、D-ダイマー、フェリチン、IL-1β、IL-18、インターフェロンガンマ、好中球、リンパ球、好中球対リンパ球比(NLR)(%)の低下によって、監視することができる。
【0066】
治療は、関連する臨床的改善が達成されるまで、例えば、補充酸素療法から解放されるまで、または発熱が消散するまで継続される。
【0067】
臨床的有効性は、全体的な臨床的改善;中等度のCOVID-19を有する患者における侵襲的換気の防止;疾患重症度を示す検査パラメータの改善によって確認することができる。
【0068】
本発明によれば、カンナビノイドはまた、SARS-CoV-2に感染するリスクがある対象の治療(予防的投与)のために使用され得る。予防的投与は、特にカンナビノイドの抗ウイルス活性に基づく。
【0069】
予防の有効性は、SARS-CoV-2への曝露後の対象におけるウイルス量の不存在またはウイルス量の減少によって;疾患の無症候性経過によって、または、予防的に治療されていない対象と比較して低下した疾患の重症度によって、評価され得る。
【0070】
活性成分
カンナビノイドは、いわゆるカンナビノイド受容体と親和性を有する不均質な薬理活性物質の群である。カンナビノイドには、例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)および非精神活性カンナビジオール(non-psychoactive cannabidiol)(CBD)が含まれる。
【0071】
カンナビノイドは、フィトカンナビノイドおよび合成カンナビノイドの両方であってよい。フィトカンナビノイドは、約70種のテルペンフェノール化合物の群である(V.R. Preedy (ed.), Handbook of Cannabis and Related Pathologies (1997))。これらの化合物は、典型的には、フェノール環に結合したモノテルペン基を含み、フェノール性ヒドロキシル基に対してメタ位にあるC~Cアルキル鎖を有する。
【0072】
カンナビノイドの好ましい群は、以下の一般式(1)のテトラヒドロカンナビノールである:
【化1】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0073】
上記の一般式(1)の化合物のさらに好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0074】
特に、式(1)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0075】
一般式(1)の化合物は、立体異性体の形態で存在してもよい。好ましくは、中心6aおよび10aはそれぞれR立体配置を有する。
【0076】
テトラヒドロカンナビノールは、特に化学名(6aR,10aR)6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オールを有するΔ9-THCである。その構造は以下の式(2)で表される:
【化2】
【0077】
カンナビノイドの別の好ましい群は、以下の一般式(3)のカンナビジオールである:
【化3】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0078】
上記の一般式(3)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0079】
特に、式(3)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0080】
カンナビジオールは、特に、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオールである。本明細書において、カンナビジオールまたはその略語CBDという用語が使用される場合、特に明記しない限り、この特定の化合物を意味する。
【0081】
CBDは、向精神性Δ9-THC以外のカンナビス種(Cannabis sp.)の主要な構成成分である。THCの向精神作用は、主に神経細胞上で発現されるカンナビノイド受容体CB1によって媒介される。THCとは対照的に、CBDは、向精神活性を有さない末梢および中枢に作用する化合物である。
【0082】
本発明によれば、Δ9-THC((6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オール)およびCBD(2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)の組合せを使用することができる。
【0083】
カンナビノイドのさらに好ましい群は、以下の一般式(4)のカンナビノールである:
【化4】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0084】
上記の一般式(4)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0085】
特に、式(4)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0086】
カンナビノールは、特に、6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6H-ジベンゾ[b,d]ピラン-1-オールである。
【0087】
本発明によれば、大麻(ヘンプ)抽出物のカンナビノイドまたはカンナビノイド混合物も使用することができる。
【0088】
例えば、ナビキシモルス(Nabiximols)は、標準化された含有量のテトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を含む、大麻草(カンナビス・サティバ (Cannabis sativa L.))の葉および花の薬物として使用される植物エキス混合物である。
【0089】
合成カンナビノイドも使用することができる。
【0090】
それらには、3-(1,1-ジメチルヘプチル)-6,6a,7,8,10,10a-ヘキサヒドロ-1-ヒドロキシ-6,6-ジメチル-9H-ジベンゾ[b,d]ピラン-9-オンが含まれる。この化合物は、2つのキラル中心を含む。薬物ナビロン(nabilone)は、(6aR,10aR)形態と(6aS,10aS)形態の1:1混合物(ラセミ体)である。ナビロンは、本発明による好ましいカンナビノイドである。
【0091】
合成カンナビノイドのさらなる例は、JWH-018(1-ナフチル-(1-ペンチルインドール-3-イル)メタノン)である。
【0092】
カンナビノイド、特にカンナビジオールの使用は、それらの薬力学的特性に基づく。カンナビノイド受容体には、主に脳で発現されるCB1、および主に免疫系の細胞で見出されるCB2が含まれる。CB1およびCB2受容体の両方が免疫細胞上に見出されているという事実は、カンナビノイドが免疫系の調節において重要な役割を果たすことを示唆している。この知見とは別に、いくつかの研究では、カンナビノイドが、サイトカインおよびケモカインの産生をダウンレギュレートし、いくつかのモデルにおいて、炎症反応を抑制するメカニズムとして制御性T細胞(Treg)をアップレギュレートすることが示される。エンドカンナビノイド系はまた、免疫調節にも関与する。
【0093】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、COVID-19患者におけるCRSの予防、またはCOVID-19患者におけるCRSの重症段階への進行の少なくとも停止または有意に減速させるのに特に適している。
【0094】
この治療的有用性は、カンナビノイドの薬力学的特性、特にエンドカンナビノイド系とのそれらの相互作用、ならびにセロトニン作動性受容体、アデノシンシグナル伝達、バニロイド受容体、PPAR-γ受容体およびGPR55を含むさらなる薬理学的標的に基づき、これは免疫制御性または免疫抑制性でさえあることが示されている。
【0095】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、自然免疫系(すなわち、好中球、マクロファージおよび他の骨髄細胞を介した病原体に対する迅速な反応を可能にする免疫系の一部)に影響を及ぼす。自然免疫系の影響を受ける細胞タイプとしては、特に、単核細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、ミクログリア細胞および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)が挙げられる(J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan (2020). Immune responses regulated by cannabidiol. Cannabis and Cannabinoid Research 5(1): 12-31):
・ヒト単核細胞における炎症誘発性サイトカインの放出は、ナノモルまたはマイクロモル濃度のCBDによって抑制される。
・CBD(20mg/kg)は、LPS誘発性肺炎後のマウスの気管支肺胞洗浄液中のマクロファージおよび好中球を含む白血球の数を減少させる。この効果は、アデノシンA2A受容体によって媒介される(A. Ribeiro et al. (2012)。非向精神性植物由来カンナビノイドであるカンナビジオールは、急性肺損傷のマウスモデルにおいて炎症を減少させる(role for the adenosine A(2A) receptor. Eur J Pharmacol 678(1-3): 78-85). Furthermore, CBD also inhibits the migration of human neutrophils (D. McHugh et al. (2008))。さらに、CBDはまた、ヒト好中球の移動を阻害する(D. McHugh et al. (2008). Inhibition of human neutrophil chemotaxis by endogenous cannabinoids and phytocannabinoids: evidence for a site distinct from CB1 and CB2. Mol Pharmacol 73(2): 441-50)。好中球対リンパ球比が高いことは、これらの患者における死亡率の独立した危険因子であることが示されているので、好中球数の減少は、COVID-19を有する患者において治療上の関連性がある(Y. Liu et al., loc. cit.)。
・CBDは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を有する個体に由来する樹状細胞におけるCD83樹状細胞活性化マーカーを抑制するが、健康な個体では抑制しない(A.T. Prechtel and A. Steinkasserer (2007). CD83: an update on functions and prospects of the maturation marker of dendritic cells. Arch Dermatol Res 299(2): 59-69)。
・CBD(1~16μmol/l)は、中枢神経系の主要な自然免疫細胞であるミクログリア細胞においてアポトーシスを誘導する(H.Y. Wu et al. (2012). Cannabidiol-induced apoptosis in murine microglial cells through lipid raft. Glia 60(7): 1182-90)。
・ナチュラルキラー(NK)細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞の数は、健常ラットにおいてCBD(5mg/kg/日)によって影響を受けないか、またはさらに増加した(2.5mg/kg/日)ことから、CBDがNK/NKT関連非特異的免疫応答を増強し得ることが示唆される(B. Ignatowska-Jankowska et al. (2009). Cannabidiol-induced lymphopenia does not involve NKT and NK cells. J Physiol Pharmacol 60 Suppl 3: 99-103)。
・さらに、CBDは、MDSCの制御性免疫細胞集団を誘導することができる。化学的に誘発された急性肝炎を有するマウスにおいて、CBD(25mg/kg)は、IL-2、TNF-αおよびIL-6などの炎症誘発性サイトカインの減少と共にMDSCの発現を誘導する;この効果はTRPV1受容体によって媒介される(V.L. Hegde et al. (2011). Role of myeloid-derived suppressor cells in amelioration of experimental autoimmune hepatitis following activation of TRPV1 receptors by cannabidiol. PLoS One 6(4): e18281)。
【0096】
さらに、カンナビノイド、特にCBDは、適応免疫系の細胞に対して効果を示す。適応免疫系は、T細胞およびB細胞から構成される。T細胞は、感染細胞を直接溶解するか、または感染細胞のアポトーシスを誘導するか(細胞傷害性T細胞)、または病原体に対する抗体を産生するB細胞を含む他の免疫細胞(Tヘルパー[Th]細胞)を動員する:
・健常ラットでの研究において、5mg/kgのCBDを毎日投与すると、ヘルパーT細胞および細胞傷害性T細胞を含むT細胞およびB細胞の数が著しく減少した(B. Ignatowska-Jankowska et al., loc. cit.)。
・TNF-αおよびIL-12などの炎症誘発性サイトカインの減少およびIL-10などの抗炎症性サイトカインの増加をもたらすTh1からTh2への免疫応答のシフトは、CBDの抗炎症効果の原因であることが示唆されている(L. Weiss et al. (2006). Cannabidiol lowers incidence of diabetes in non-obese diabetic mice. Autoimmunity 39(2): 143-51)。
・活性化メモリーT細胞株において、CBDは、Th17シグネチャーサイトカインIL-17の減少によって示されるように、自己抗原特異的Th17細胞表現型を用量依存的に(1~5μmol/l)減少させた。この発見は、IL-6産生および分泌の減少、ならびにIL-10の産生の増加を伴っており、Th17細胞増殖に関連する重要な変化であった(E. Kozela et al. (2013). Cannabinoids decrease the th17 inflammatory autoimmune phenotype. J Neuroimmune Pharmacol 8(5): 1265-76)。これらの結果は、COVID-19で死亡した患者の病理学的所見がTh17細胞の割合の増加を含んでいたので、COVID-19に関して特に関連性がある(Z. Xu et al. (2020). Pathological findings of COVID-19 associated with acute respiratory distress syndrome. Lancet Respir Med 8(4): 420-2)。
・CBDは、いくつかの疾患モデルにおいて制御性T細胞(Treg)を誘導することが示された(J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan (2020), loc. cit.)。虚血再灌流誘導腎臓損傷を有するマウスでは、制御性T-17(Treg17)細胞のレベルは減少し、Th17レベルは増加した。Treg17細胞の生理学的機能は、Th17媒介性炎症作用の抑制を含む。腎損傷誘導後の10mg/kgのCBDの投与は、腎保護的であり、これらの効果を逆転させた(B. Baban et al. (2018). Impact of cannabidiol treatment on regulatory T-17 cells and neutrophil polarization in acute kidney injury. Am J Physiol Renal Physiol 315(4): F1149-f58)。これらの結果は、COVID-19におけるCBDの有益な効果をさらに支持する。
【0097】
多くの研究は、カンナビノイド、特にCBDが、TNF-α、IFN-γ、IL-6、IL-1β、IL-2、IL-17Aなどの炎症誘発性サイトカイン、およびCCL-2などのケモカインの抑制によってそれらの免疫抑制および抗炎症効果を発揮することを実証している。炎症誘発性サイトカインIL-6は、重度のCOVID-19を有する患者におけるサイトカイン放出症候群(CRS)において中心的な役割を有し、IL-6シグナル伝達は、カンナビノイド、特にCBDによって影響を受ける主要な古典的経路の1つである。カンナビノイド、特にCBDは、急性肺損傷のモデルを含む様々な炎症動物モデルにおいて循環IL-6を抑制するので、IL-6の抑制によりCRSが予防されることは、COVID-19を有する患者におけるカンナビノイド、特にCBDの最も関連のある作用様式であると考えられる。
【0098】
in vitro細胞培養研究は、特定のCannabis sativa抽出物が、SARS-CoV-2の受容体であるACE2をダウンレギュレートし、また、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入に必要とされる別の重要なタンパク質であるセリンプロテアーゼTMPRSS2をダウンレギュレートすることを示唆している(B. Wang et al., loc. cit.)。これは、カンナビノイドがCOVID-19患者に投与された場合にさらなる有益な効果を有し得ることを示唆する。
【0099】
本発明によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールを併用治療の一部として適用することもできる。
【0100】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、1つまたは複数の抗ウイルス剤と組み合わせて投与することができる。併用療法のために使用され得る抗ウイルス薬は、HIV、エボラ、C型肝炎、インフルエンザ、SARS、またはMERS(他のコロナウイルス疾患の2つ)のために元々開発されたものである。それらは、ウイルスの増殖を阻止するか、またはウイルスがヒト細胞に侵入するのを防ぐように設計される。
【0101】
一態様では、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、レムデシビル(ウイルスのRNAポリメラーゼの阻害剤)と組み合わせて使用される。別の態様において、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、リトナビル/ロピナビル(HIV医薬)と組み合わせて使用される。
【0102】
カンナビノイド、特にカンナビジオールはまた、患者の肺が血液に充分な酸素を供給できないことを防ぐ、特発性肺線維症に対して開発された肺患者用の医薬と組み合わせて使用することができる。
【0103】
さらに、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、心血管治療薬、特に血栓または心不整脈に対する治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0104】
投薬および投与
本発明によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、好ましくは経口投与される。
【0105】
しかしながら、他の投与経路も、特に経口薬を摂取できない患者について企図される。このような他の経路は、特に静脈内、筋肉内または皮下注射である。
【0106】
投与は1日当たり1~4回である。典型的には、投与は1日2回(BID)である。
【0107】
本発明によれば、患者は有効量のカンナビノイド、特にカンナビジオールで治療される。
【0108】
単回用量は、150mg~5000mg、例えば250mg~5000mgであってもよく、1日に1~4回、例えば、BIDで投与される。
【0109】
例示的な用量は、375mg、750mg、1500mg、および3000mgであり、1日に1~4回、例えば、BIDで投与される。
【0110】
特に好ましい用量は、1500mgであり、1日に1~4回、好ましくはBIDで投与される。
【0111】
上記のように、カンナビノイド、特にカンナビジオールは、抗ウイルス活性を有し、様々な動物モデルにおいて免疫系に対して抑制的な薬力学的効果を有する。
【0112】
多様な動物モデルにおいて、大多数の症例において、炎症プロセスは、主に腹腔内または経口投与される2.5~20mg/kg体重の用量で抑制されることが示されている。代替経路は、経皮、鼻腔内およびIV(静脈内)投与である(J.M. Nichols and B.L.F. Kaplan BLF (2020), loc. cit.)。
【0113】
大多数の症例において、IL-6分泌に対する抑制効果を決定する細胞モデルでは、有効濃度は5μMの大きさであった(J. Chen et al. (2016). Protective effect of cannabidiol on hydrogen peroxide-induced apoptosis, inflammation and oxidative stress in nucleus pulposus cells. Mol Med Rep 14(3): 2321-7)。
【0114】
314.5g/molのCBDの分子量に基づいて、得られる濃度は1,570ng/mlである。
【0115】
Ribeiroらは、一度は予防的介入において(A. Ribeiro et al. (2012), loc. cit.)および一度は急性期における治療的介入において(A. Ribeiro et al. (2014). Cannabidiol improves lung function and inflammation in mice submitted to LPS-induced acute lung injury. Immunopharmacol Immunotoxicol 37(1): 35-41)、ARDSの疾患モデルとしてマウスにおけるLPS誘発急性肺損傷に対するCBDの影響を調査した。ARDSは、COVID-19の病理学的シナリオにおいて大きな役割を果たす。
【0116】
マウスに、腹腔内経路を介して0.3、1.0、10、20、30、40および80mg/kgのCBDを予防的に投与した。投与の60分後、大腸菌LPSの鼻腔内点滴注入により急性肺損傷を誘発した。滴下注入の1、2、4および7日後にマウスを死亡させた。全白血球遊走、ミエロペルオキシダーゼ活性、TNF-αおよびIL-6を含む炎症誘発性サイトカイン産生ならびに血管透過性は有意に減少した(A. Ribeiro et al. (2012), loc. cit.)。効果は用量依存的であったが、予防的適用を伴うこの研究において20mg/kgでほぼ最大に達した。
【0117】
その後の研究において、同じ群が、LPSによって急性肺損傷が誘発された後のCBDの効果を調査した。試験シナリオは、介入の時点をLPS投与の6時間後に選択したことを除いて同様であった。20および80mg/kgの用量を、先の研究の結果に基づいて選択した(A. Ribeiro et al. (2014), loc. cit.)。本研究は、20mg/kgでの、機械的肺機能の改善、肺への白血球移動(好中球、マクロファージおよびリンパ球)の減少、肺組織におけるミエロペルオキシダーゼ活性の減少、血管透過性の減少および炎症誘発性サイトカイン/ケモカインの産生を示した。
【0118】
マウスおよびラットにおけるCBDの腹腔内および経口適用後の全身曝露についての比較調査は、単回用量としての120mg/kgが、マウスにおける14,000ng/mlの最大血漿濃度をもたらすことを示した(S. Deiana et al. (2012). Plasma and brain pharmacokinetic profile of cannabidiol (CBD), cannabidivarine (CBDV), Delta(9)-tetrahydrocannabivarin (THCV) and cannabigerol (CBG) in rats and mice following oral and intraperitoneal administration and CBD action on obsessive-compulsive behaviour. Psychopharmacology (Berl) 219(3): 859-73)。
【0119】
これらのデータを考慮し、得られた血漿濃度について用量比例関係を仮定すると、動物モデルにおいて有効であることが示された20mg/kgの用量は、2,300ng/mlの標的ピーク曝露をもたらす。
【0120】
ヒトにおける全身曝露データに関して、Epidyolex(登録商標)の絶食投与後、定常状態条件下での朝方の最大値が541ng/mlであることが観察される。夕方の最大値はより高い。1日2回のEpidyolex投与で、朝方と夕方との間に3.8倍の全身曝露が観察される(L. Taylor et al. (2018). A Phase I, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Single Ascending Dose, Multiple Dose, and Food Effect Trial of the Safety, Tolerability and Pharmacokinetics of Highly Purified Cannabidiol in Healthy Subjects. CNS Drugs 32(11): 1053-67)。
【0121】
したがって、Epidyolexで既に承認されているように1日2回投与される1,500mgのCBDの標準用量は、安全かつ有効であると考えられる。
【0122】
上記のデータに基づいて、患者はまた、本明細書に概説される範囲内の他の用量から利益を得るであろう。
【0123】
ガレノス製剤
特に経口投与の際のカンナビノイドの低いかつ変化するバイオアベイラビリティは、これらの化合物の効果的な臨床的使用を妨げる。
【0124】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは、その高度に親油性の性質のために製剤化することが困難である。
【0125】
実際、カンナビノイドは、非常に低い水溶性(2~10μg/ml)を有する高親油性分子(logP6~7)である。logPは、n-オクタノール/水分配係数の常用対数である。分配係数は実験的に決定することができる。値は、典型的には、室温(25℃)での値を指す。分配係数は、分子構造から大まかに算出することもできる。
【0126】
低い溶解度に加えて、カンナビノイド、特にCBDは、高い初回通過代謝を受けやすく、これはさらに経口投与後の低い全身利用能の一因となる。
【0127】
カンナビノイドの様々な製剤が提案されてきた。
【0128】
カンナビノイドの高親油性により、塩形成(すなわち、pH調整)、共溶媒和(例えば、エタノール、プロピレングリコール、PEG400)、ミセル形成(例えば、ポリソルベート80、Cremophor-ELP)、マイクロエマルション形成およびナノエマルション形成を含む、エマルション化(乳化)、複合体形成(例えば、シクロデキストリン)、および脂質ベース製剤(例えば、リポソーム)中への封入が、従来技術において製剤戦略の中で検討されている。ナノ粒子系も提案されている(N. Bruni et al., loc. cit.)。
【0129】
様々な経口固形製剤が、例えば国際公開第2008/024490号および国際公開第2018/035030号などの特許文献において提案されている。これらの文献は、放出挙動に関するデータを含まないため、カンナビノイドの投与のために提案された形態の実際の適合性は不明なままである。
【0130】
国際公開第2015/065179号は、カンナビジオールに加えて、乳糖およびショ糖脂肪酸モノエステルを含む圧縮錠剤について記載する。
【0131】
ドロナビノール(Dronabinol)(Δ9-THC)は、カプセル形態(Marinol(登録商標))、および経口溶液(Syndros(登録商標))として市販されている。Marinol(登録商標)カプセルは、ゴマ油中に活性成分を含むソフトゼラチンカプセルである。
【0132】
ナビキシモルス(nabiximols)を含有する製剤Sativex(登録商標)は、頬の内側に噴霧される口腔スプレーである。
【0133】
油、界面活性剤の混合物であり、場合により親水性溶媒を含有する自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)もまた、特定のカンナビノイドの経口バイオアベイラビリティを改善するためのアプローチとして関心を集めている(K. Knaub et al. (2019). A Novel Self-Emulsifying Drug Delivery System (SEDDS) Based on VESIsorb Formulation Technology Improving the Oral Bioavailability of Cannabidiol in Healthy Subjects. Molecules, 24(16), 2967)。胃液または腸液などの水相と接触すると、SEDDSは穏やかな撹拌条件下で自然に乳化する。
【0134】
Vesifact AG(Baar, Switzerland)によって開発された自己乳化型薬物送達製剤技術であるVESIsorb(登録商標)は、特定の親油性分子の経口バイオアベイラビリティの増加を示した。
【0135】
特定の形態のてんかんの治療のためのオーファンドラッグとして米国FDAによって最近承認された製剤Epidiolexは、活性成分であるカンナビジオールに加えて、賦形剤である無水エタノール、ゴマ油、ストロベリー香料、およびスクラロースを含有する経口溶液の形態で提供される。
【0136】
しかしながら、これら提案の全てにかかわらず、カンナビジオールなどのカンナビノイドの、特に経口固形剤形のための改良された剤形が依然として必要とされている。
【0137】
先行技術において提案された様々なアプローチは、完全に満足のいくものではない。これらのアプローチのいくつかは、液体製剤に依存する。このような製剤の取り扱いは、固形製剤の場合よりも困難である。先行技術の製剤は、多くの場合、調製するのが複雑であり、時にはカンナビノイドの低いバイオアベイラビリティしかもたらさない。
【0138】
当技術分野で知られている製剤を本発明の治療態様において使用することができるが、本発明は改良された製剤も提供する。
【0139】
これらの製剤は、本発明の治療態様の文脈において有用であるだけでなく、それ自体の寄与を構成することを理解されたい。本明細書に開示される製剤は、含有される活性成分の使用が示される任意の治療のために使用され得る。
【0140】
本発明の一態様では、カンナビノイド、特にカンナビジオールと可溶化剤とを含む固体分散体である製剤が提供される。以下にさらに詳述するように、満足のいくバイオアベイラビリティを示す経口投与用の固体剤形をこのようにして得ることができる。
【0141】
この態様によれば、ほぼ水不溶性のCBDのような高度に親油性のカンナビノイドは、水性媒体中での可溶化によって薬物溶解度を高めるために、可溶化剤と組み合わされる。溶解度の増加は、ひいては薬物化合物の吸収速度を増加させる。
【0142】
好ましくは、製剤の調製または貯蔵中に毒性または他の有害な分解生成物は形成されない。
【0143】
カンナビノイド、特にカンナビジオールおよび可溶化剤を含む固体分散体は、水または胃腸液などの他の水性媒体と接触するとミセルの形成をもたらす。ミセルは、可溶化剤によって囲まれた薬剤物質から本質的に形成される(図1参照)。
【0144】
したがって、本発明の一態様は、ミセルが分散している水相を含むミセル組成物であり、このミセルはカンナビノイド、特にカンナビジオール、および可溶化剤を含む。
【0145】
適切な可溶化剤は、周囲温度で固体である。それらは界面活性剤特性を有し、水性媒体、特に水中で適切な濃度範囲で使用される場合、ミセル溶液を形成することができる。
【0146】
適切な可溶化剤としては、特に両親媒性ブロックコポリマーが挙げられる。
【0147】
より詳細には、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーを使用することができる。
【0148】
適切なブロックコポリマーは、特にポロキサマーである。ポロキサマーは、分子量が1,100~14,000を超える範囲のブロックコポリマーである。異なるポロキサマーは、製造中に添加されるプロピレンおよびエチレンオキシドの相対量のみが異なる。
【0149】
ポロキサマーは、以下の一般式を有する:
【化5】
【0150】
この一般式において、nはポリオキシエチレン単位の数を示し、mはポリオキシプロピレン単位の数を示す。
【0151】
一実施形態では、可溶化剤は、ポロキサマー188(Kolliphor P188;旧商品名Lutrol F 68)/BASF;CAS番号:9003-11-6)。
【0152】
Kolliphor P188は、上記一般式のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、式中、nは約79であり、mは約28である。
【0153】
Kolliphor P188は、52~57℃の融点を有するマイクロパールの形態の白色~わずかに黄色がかったワックス状物質として入手可能である。これは、ポロキサマー188に関するPh.Eur.,USP/NFの要件を満たす。
【0154】
カンナビノイドおよび可溶化剤は、典型的には1:0.2~10.0、好ましくは1:0.5~6.0、特に1:1~5のカンナビノイド:可溶化剤の重量比で存在する。
【0155】
本発明の上記の製剤の態様による固体分散体は、ホットメルトプロセスによって調製することができる。カンナビノイドおよび可溶化剤は、カンナビジオールおよび可溶化剤が分子状態で存在する均質な溶融物を形成できる温度まで加熱され、その後、冷却されると固体分散体を形成する。
【0156】
溶融物をペレットに加工する。これは、バッチ式噴霧造粒/ペレット化(流動床トップスプレー、Wurster=ボトムスプレー技術)によって行うことができる。
【0157】
あるいは、好ましくは、連続噴霧造粒/ペレット化(流動床MicroPx Technology、ProCell Technology)を使用する。
【0158】
別の調製方法は、カンナビノイド、特にカンナビジオールを可溶化剤の水溶液、例えば可溶化剤の水溶液に分散させることに依存する。
【0159】
溶液は、バッチ式噴霧造粒/ペレット化(流動床トップスプレーまたはWurster=ボトムスプレー技術)によって、または好ましくは連続噴霧造粒/ペレット化(流動床MicroPx Technology、ProCell Technology)によって処理して、固体顆粒を得ることができる。
【0160】
製剤は、活性成分および可溶化剤に加えて、1つまたは複数の賦形剤を含有してもよい。特に、カンナビノイド、特にカンナビジオールを酸化から保護するために、抗酸化剤または抗酸化剤の組合せを含むことが考えられる。
【0161】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは酸化されやすい。例えば、カンナビジオールは、単量体および二量体ヒドロキシキノンに酸化され得る。酸化は変色につながり得る。
【0162】
酸化は、分子酸素によってだけでなく、使用される1つまたは複数の賦形剤によって製剤に導入され得る過酸化物によっても起こり得る。
【0163】
製剤に含まれ得る有用な抗酸化剤としては、パルミチン酸アスコルビル、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルオール(BHT、E321)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)、アスコルビン酸、およびエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)ナトリウムが挙げられる。
【0164】
パルミチン酸アスコルビルは、好ましい抗酸化剤である。これは酸化による変色を効果的に抑制することができる。
【0165】
抗酸化剤または抗酸化剤の組合せは、カンナビノイド、特にCBDの添加前に可溶化剤の溶融物または溶液に添加することができる。
【0166】
抗酸化剤は、典型的には、カンナビノイド(特にカンナビジオール)の量に対して、0.5~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%、特に1.0~1.8質量%の量で使用される。
【0167】
固体分散体は、好ましくは、全ての成分に対して20質量%を超える追加の賦形剤を含有しない。
【0168】
固体分散体は、好ましくはトリグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のトリグリセリドを含有することを意味する。
【0169】
さらに、固体分散体は、好ましくは脂肪酸を含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満の脂肪酸を含有することを意味する。
【0170】
好ましくは、モノ-、ジ-およびトリグリセリドならびに脂肪酸の総量は、全成分に対して5質量%未満である。
【0171】
固体分散体顆粒またはペレットは、市販の標準的な技術および装置を用いて、硬質ゼラチンカプセル、小袋またはスティックパックに充填することができる。
【0172】
単位当たりの有効性成分含量に応じて、固体分散体顆粒を、嚥下可能なカプセルに充填することができる(例えば、25mg/用量のためのカプセルサイズ2-1)。あるいは、高用量単位については、より大きなカプセルを顆粒の一次包装材料として使用することができる。このようなカプセルは嚥下用ではない(例えば、100~200mg/用量に対して最大000/スプリンクルキャップのカプセルサイズ)。むしろ、固体分散体顆粒は、食品に振りかけられるか、または液体、例えば水に分散される。
【0173】
固体分散体顆粒を液体に分散させて得られた組成物は、胃管を介してシリンジで嚥下できない患者に適用することができる。
【0174】
あるいは、固体分散体顆粒を錠剤に加工することもできる。固体分散体顆粒は、崩壊剤、流動促進剤、および/または潤滑剤などの1つまたは複数の賦形剤と組み合わされる。次いで、得られた混合物を錠剤に圧縮する。
【0175】
本発明の別の態様によれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールの放出のための製品は、コアおよびコア上のコーティングを含み、コーティングは、カンナビノイド、特にカンナビジオール、1つまたは複数の高親油性生理活性物質、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤、および全成分の重量に基づいて20質量%以下の他の賦形剤を含む。
【0176】
好ましくは、製剤の調製または貯蔵中に毒性または他の有害な分解生成物は形成されない。
【0177】
驚くべきことに、カンナビノイド、特にカンナビジオールの固体経口剤形を提供することができ、放出は、カンナビノイドの量に対するフィルム形成剤の量によって制御することができることが見出された。
【0178】
1つまたは複数のフィルム形成剤の使用は、カンナビノイドを含有するコーティングの形成を可能にするだけでなく、放出を制御する役割も果たす。特に、フィルム形成剤は、水にわずかしか溶解しないカンナビノイドの放出を促進する。フィルム形成剤によって、これらは充分な量および速度で放出される。
【0179】
この目的のために、コアは、カンナビノイド、特にカンナビジオールに加えて、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含むコーティングを備える。カンナビノイドに加えて、コーティングは、好ましくは、任意の他の生理活性物質を含有しない。
【0180】
好適な水溶性フィルム形成剤の例は、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0181】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、特に、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が6mPa・s以下であるHPMCのような、低粘度HPMCであることが好ましい。
【0182】
商品名Pharmacoat(登録商標)603で市販されているような、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が3mPa・sであるHPMCが特に好ましい。
【0183】
カンナビノイドおよび1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含むコーティングは、他の慣用されている賦形剤を含むことができる。本発明によれば、さらなる賦形剤の量は、全成分の重量に基づき20質量%以下に制限される。好ましくは、全成分の重量に基づき10質量%以下のさらなる賦形剤が含まれる。
【0184】
特に好ましい実施形態では、コーティングは、カンナビノイドおよびフィルム形成剤からなる。
【0185】
本発明によるペレットは、カンナビノイドの総量に対して、0.1~10質量%の総量で、好ましくは0.5~8質量%の総量で、特に1~6質量%の総比率で、1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含有するコーティングを有する。
【0186】
フィルム形成剤の量が少なすぎると、放出は非常にゆっくりとかつ不完全にしか行われないと考えられる。特定された範囲内の比率を選択することにより、生理活性物質の放出を調整することができる。例えば、経口製剤からの放出は、生理活性物質が胃腸通過の通常の時間にわたって放出されるように調節することができる。
【0187】
コーティングがコアに塗布される。コアは、任意の構造を有することができ、任意の生理学的に許容可能な材料から構成されてよい。コアとして、例えば、錠剤、ミニタブレット、ペレット、顆粒または結晶を使用することができる。コアは、例えば、糖、酒石酸または微結晶セルロースを含むかまたはそれらからなることができる。微結晶セルロースで作られたペレットのような不活性スターターコアが好ましい。このようなペレットは、Cellets(登録商標)の名称で市販されている。
【0188】
コアのサイズは限定されない。適切なサイズは、10μm~2000μmの範囲、例えば50μm~1500μmの範囲、好ましくは100μm~1000μmの範囲であり、サイズはふるい分析によって決定することができる。特に、500~710μmのふるい分級物からなるペレットが使用され得る。
【0189】
本発明の本態様による製品は、まず、1つまたは複数のカンナビノイドおよび1つまたは複数の水溶性フィルム形成剤を含む噴霧液を作製することによって製造することができる。
【0190】
カンナビノイドは非常に低い水溶性しか有さないため、典型的には有機溶媒または有機溶媒と水との混合物が使用される。
【0191】
次いで、噴霧液をコアに塗布する。液体成分を蒸発させ、それによって、溶媒および水をほとんど含まないコーティングがコア上に形成される。これは、例えば流動層システム(fluidized bed system)、噴流層システム(jet bed system)、噴霧乾燥機またはコーターにおいて行うことができる。
【0192】
その後、コーティングされたコアを経口製剤として使用することができる。コーティングされたペレット(コーティングペレット)は、例えば、サシェ(sachet)で提供することができ、またはさらに加工してもよい。
【0193】
本発明の本態様によりコーティングされたコアには、1つまたは複数のさらなるコーティングを設けてもよい。これは、放出の追加の制御を可能にする。
【0194】
好ましい実施形態では、放出を制御するさらなるコーティングは設けられない。
【0195】
コーティングペレットを使用して、多粒子製剤(multiparticulate dosage form)を得ることができる。例えば、それらを、カプセル中に充填することができ、または錠剤中に組み込むことができる。一実施形態によれば、それらは経口分散性錠剤に加工される。
【0196】
異なる放出プロファイルを有するコーティングペレットを、1つの剤形(カプセル/錠剤/サシェ)中において組み合わせることができる。本発明の本態様による製品は、その中に含まれるカンナビノイド、または2種以上のカンナビノイドが含まれる場合には含まれる全てのカンナビノイドを、摂取後に消化管で放出する。製品は、特に放出制御のために使用される。特に、それらは、含まれる生理活性物質の30質量%超かつ80質量%未満を2時間以内に放出する。さらに、それらは、特に、含まれる生理活性物質の40質量%超かつ90質量%未満を3時間以内に放出する。さらに、それらは、含まれる生理活性物質の50質量%超かつ95質量%未満を4時間以内に放出する。2種以上のカンナビノイドが含まれる場合、その情報は含まれる全ての物質に関連する。
【0197】
各場合において、放出は、37℃で、0.4%のTween(登録商標)80を添加した1000mlのリン酸緩衝液(pH6.8)中において、ブレードスターラー装置で決定する。
【0198】
本発明のさらなる製剤アプローチによれば、カンナビノイド、特にカンナビジオールの放出速度を、可溶化剤と水溶性フィルム形成剤との組合せを製剤に組み込むことによって調整することができる、固体剤形が提供される。このような製剤において、水溶性フィルム形成剤は、ポリマー結合剤および追加の可溶化剤として作用する。製剤は固体分散体の形態である。
【0199】
満足のいくバイオアベイラビリティを示す経口投与用の固体剤形を、このようにして得ることができる。本発明による剤形はまた、食効の低減を示す。
【0200】
好ましくは、製剤の調製または貯蔵中に毒性または他の有害な分解生成物は形成されない。
【0201】
カンナビノイド、特にカンナビジオール、両親媒性ブロックコポリマーおよび水溶性フィルム形成剤を含む固体分散体は、水または胃腸液などの他の水性媒体と接触するとミセルの形成をもたらす。ミセルは、可溶化賦形剤によって囲まれた薬剤物質から本質的に形成される。
【0202】
したがって、一態様は、ミセルが分散している水相を含むミセル組成物であり、ミセルは、カンナビノイド、特にカンナビジオールと、可溶化賦形剤、特に両親媒性ブロックコポリマーおよび水溶性フィルム形成剤とを含む。
【0203】
本発明の製剤中に存在する両親媒性ブロックコポリマーは、可溶化剤として作用する。両親媒性ブロックコポリマーへの言及は、複数のそのようなコポリマーが存在する可能性を含む。
【0204】
カンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーは、カンナビノイド、特にカンナビジオール、両親媒性ブロックコポリマーおよび水溶性フィルム形成剤を含む製剤中に存在し、カンナビノイド:両親媒性ブロックコポリマーの重量比は、典型的には1:0.11~0.41、好ましくは1:0.16~0.36、より好ましくは1:0.21~0.31である。
【0205】
両親媒性ブロックコポリマーは、周囲温度で固体である。
【0206】
それらは界面活性剤特性を有し、水性媒体、特に水中で適切な濃度範囲で使用される場合、ミセル溶液を形成することができる。
【0207】
特に、少なくとも1つのポリオキシエチレンブロックおよび少なくとも1つのポリオキシプロピレンブロックを含むブロックコポリマーを使用することができる。
【0208】
好ましいブロックコポリマーは、ポロキサマーである。ポロキサマーは、分子量が1,100~14,000を超える範囲のブロックコポリマーである。異なるポロキサマーは、製造中に添加されるプロピレンおよびエチレンオキシドの相対量のみが異なる。
【0209】
一実施形態では、可溶化剤は、ポロキサマー188である(Kolliphor P188;旧商品名Lutrol F 68)/BASF;CAS番号:9003-11-6)。
【0210】
Kolliphor P188は、上記一般式のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、式中、nは約79であり、mは約28である。
【0211】
Kolliphor P188は、52~57℃の融点を有するマイクロパールの形態の白色~わずかに黄色がかったワックス状物質として入手可能である。これは、ポロキサマー188に関するPh.Eur.,USP/NFの要件を満たす。
【0212】
さらなる賦形剤として、本発明の製剤は、水溶性フィルム形成剤を含有する。水溶性フィルム形成剤への言及はまた、2種以上のそのようなフィルム形成剤の組合せが使用される可能性を含む。
【0213】
カンナビノイドおよび水溶性フィルム形成剤は、カンナビノイド:水溶性フィルム形成剤の重量比が、典型的には1:0.03~0.33、好ましくは1:0.08~0.28、より好ましくは1:0.13~0.23で存在する。
【0214】
水溶性フィルム形成剤は、本製剤においてポリマー結合剤および追加の可溶化剤として作用する。
【0215】
好適な水溶性フィルム形成剤の例は、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0216】
好ましいフィルム形成剤は、PVP、特にPVP K30(例えば、Kollidon(登録商標)30)である。
【0217】
別の好ましいフィルム形成剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、特に、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が6mPa・s以下であるHPMCのような、低粘度HPMCである。
【0218】
上記の成分は、カンナビノイド(特にカンナビジオール):両親媒性ブロックコポリマー:水溶性フィルム形成剤(ポリビニルピロリドン)の重量比が、典型的には1:0.11~0.41:0.03~0.33、好ましくは1:0.16~0.36:0.08~0.28、より好ましくは1:0.21~0.31:0.13~0.23で存在する。
【0219】
カンナビノイド、特にカンナビジオールを酸化から保護するために、抗酸化剤または抗酸化剤の組合せをさらに含むことが特に考慮される。
【0220】
カンナビノイド、特にカンナビジオールは酸化されやすい。例えば、カンナビジオールは、単量体および二量体ヒドロキシキノンに酸化され得る。酸化は変色につながり得る。
【0221】
酸化は、分子酸素によってだけでなく、使用される1つまたは複数の賦形剤によって製剤に導入され得る過酸化物によっても起こり得る。
【0222】
製剤に含まれ得る有用な抗酸化剤としては、パルミチン酸アスコルビル、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルオール(BHT、E321)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、E320)、アスコルビン酸、およびエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)ナトリウムが挙げられる。
【0223】
パルミチン酸アスコルビルは、好ましい抗酸化剤である。これは酸化による変色を効果的に抑制することができる。
【0224】
抗酸化剤は、典型的には、カンナビノイド(特にカンナビジオール)の量に対して、0.5~2.5質量%、好ましくは0.8~2質量%、特に1.0~1.8質量%の量で使用される。
【0225】
他の賦形剤がさらに存在してもよい。
【0226】
好ましい実施形態では、製剤はさらに希釈剤を含有する。固体経口剤形において典型的に使用されるような希釈剤(または充填剤)を使用することができる。好ましい希釈剤は、微結晶セルロース(例えば、Avicel(登録商標)PH101)である。別の好ましい希釈剤は、マンニトール(例えば、Pearlitol 160 C)である。
【0227】
希釈剤を含有する製剤では、典型的には2つの相が存在し、一つの相は上に詳述したポリマー賦形剤中に埋め込まれた活性剤を含み、別の相は希釈剤を含む。
【0228】
活性成分および希釈剤は、典型的には、カンナビノイド(特にカンナビジオール):希釈剤(特に微結晶セルロース)の重量比が、1:0.5~2.7、好ましくは1:0.9~2.3、特に1:1.3~1.9で存在する。
【0229】
さらなる実施形態において、二酸化ケイ素(例えば、Syloid(登録商標)244 FP Silica)および/またはコロイド状二酸化ケイ素(例えば、Aerosil(登録商標)200)が、特に水分吸着剤としての役割を果たすために製剤中に含まれる。
【0230】
活性成分および総二酸化ケイ素成分は、典型的には、カンナビノイド(特にカンナビジオール):全ての二酸化ケイ素成分の総量の重量比が、0.14~0.44、好ましくは0.19~0.39、特に0.24~0.34で存在する。
【0231】
本発明による製剤は、上で論じた賦形剤を含有するものに限定されないが、製剤は、好ましくはトリグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のトリグリセリドを含有することを意味する。
【0232】
固体分散体は、好ましくはトリグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のトリグリセリドを含有することを意味する。
【0233】
さらに、固体分散体は、好ましくはモノグリセリドおよびジグリセリドを含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満のモノグリセリドおよびジグリセリドを含有することを意味する。
【0234】
さらに、固体分散体は、好ましくは脂肪酸を含まないか、または本質的に含まない。本質的に含まないとは、製剤が、全成分に対して5質量%未満の脂肪酸を含有することを意味する。
【0235】
好ましくは、モノ-、ジ-およびトリグリセリドならびに脂肪酸の総量は、全成分に対して5質量%未満である。
【0236】
固体分散体の形態の本発明の医薬製剤は、湿式造粒技術によって得ることができる。造粒はブレンダー中で行うことができる。好ましくは、流動床造粒技術を使用することができる。
【0237】
本発明によれば、カンナビノイド含有製剤を調製する方法は、以下の工程を含む:(i)カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、および、カンナビノイドおよび両親媒性ブロックコポリマーを少なくとも部分的に溶解することができる溶媒を含む液体組成物を調製する工程;(ii)液体組成物を流動床造粒機に導入する工程;(iii)溶媒を除去して粒子形態の固体分散体を得る工程;および(iv)流動床造粒機から粒子形態の固体分散体を回収する工程。
【0238】
本発明によれば、カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマーおよび溶媒を含む液体組成物はまた、好ましくは、水溶性フィルム形成剤を少なくとも部分的に溶解した形態で含む。
【0239】
さらに本発明によれば、カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマーおよび溶媒ならびに必要に応じて水溶性フィルム形成剤を含む液体組成物は、好ましくは、抗酸化剤を少なくとも部分的に溶解した形態で含む。
【0240】
液体組成物はまた、1つまたは複数のさらなる賦形剤を含んでもよい。これらは、任意の好適な形態で、例えば、溶解形態または分散形態で存在することができる。
【0241】
例として、二酸化ケイ素は、液体組成物中に分散形態で存在することができる。
【0242】
カンナビジオールおよび賦形剤は、好ましくは、医薬製剤について本明細書に示される重量比で液体組成物中に存在する。
【0243】
液体組成物を調製するために使用される溶媒は、カンナビノイド、両親媒性ブロックコポリマー、および好ましくは水溶性フィルム形成剤および/または抗酸化剤を少なくとも部分的に溶解することができる任意の溶媒であり得る。
【0244】
好ましい溶媒は、10%v/v以下の水を含むエタノール、例えば4%v/v以下の水を含むエタノール、例えば96%v/vのエタノールである。
【0245】
上述のように、液体組成物を流動床造粒機に導入する。好ましい実施形態では、液体組成物は、既に固体粒子を含有する流動床造粒機に噴霧される。
【0246】
造粒機に含まれる固体粒子は、1つまたは複数の賦形剤を含むことができる。好ましい実施形態では、固体粒子は、微結晶セルロースなどの希釈剤を含む。
【0247】
コロイド状二酸化ケイ素などの1つまたは複数の追加の賦形剤も存在し得る。
【0248】
流動床造粒機は、溶媒が除去され、粒子形態の固体分散体が得られるように動作される。例えば、45±10°Cの入口空気温度が選択される。
【0249】
溶媒除去は、所定の乾燥損失(LOD)に達するまで継続することができる。例えば、生成物は、2.0%以下の乾燥損失まで乾燥させることができる。
【0250】
乾燥後、生成物を排出し、ふるいにかける。
【0251】
得られる顆粒のサイズは限定されない。好適なサイズは、50μm~2000μmの範囲、例えば100μm~1000μmの範囲である。
【0252】
本発明による製剤は、好ましくは変色に対して安定である。色は、長期条件(25℃/60%rh)下で3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、特に12ヶ月間の保存時に、安定なままであるか、またはわずかにオフホワイトに変化する。
【0253】
顆粒は、自己乳化固体分散を表す。水性媒体と組み合わせると、ミセル溶液を得ることができる。
【0254】
上記の製剤は、USPパドル法に従って0.1N HCl+2% CTAB中でのin virto溶解試験に供した場合、60分以内に少なくとも75質量%、好ましくは60分以内に少なくとも90質量%のカンナビノイドを放出する。さらに、製剤は、45分以内に少なくとも75質量%、好ましくは45分以内に少なくとも85質量%のカンナビノイドを放出する。
【0255】
固体分散体顆粒は、市販の標準的な技術および装置を使用して、ボトル、サシェ(sachet)またはスティックパックに充填することができる。固体分散体顆粒は、食品に振りかけられるか、または液体、例えば水中に分散される。
【0256】
固体分散体顆粒を液体に分散させて得られた組成物は、胃管を介してシリンジで嚥下できない患者に適用することができる。
【0257】
単位当たりの最終用量強度に応じて、固体分散体顆粒を、嚥下可能なカプセルに充填することができる(例えば、25mg/用量のためのカプセルサイズ2-1)。あるいは、高用量単位については、より大きなカプセルを顆粒の一次包装材料として使用することができる。このようなカプセルは嚥下用ではない(例えば、100~200mg/用量に対して最大000/スプリンクルキャップのカプセルサイズ)。むしろ、固体分散体顆粒は、食品に振りかけられるか、または液体、例えば水に分散される。
【0258】
あるいは、固体分散体顆粒を錠剤に加工することもできる。固体分散体顆粒は、崩壊剤、流動促進剤、および/または潤滑剤などの1つまたは複数の賦形剤と組み合わされる。次いで、得られた混合物を錠剤に圧縮する。
【0259】
一実施形態では、それらは経口分散性錠剤に加工される。
【実施例
【0260】
本発明を具体的な実施例に基づいて説明するが、それによって何ら限定されない。
【0261】
実施例1
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、20重量部のカンナビジオールおよび80重量部のKolliphor P188を用いて得ることができる。顆粒を調製するために、以下の選択肢が利用可能である。
【0262】
オプション(a)
成分を約100℃の温度に加熱する。溶融物は、約15~25℃の製品温度で流動床中のCBDの固体試料上に噴霧される。このバッチプロセスでは、トップスプレー、ボトムスプレーおよびタンジェンシャルスプレー構成を使用することができる。
【0263】
オプション(b)
成分を約100℃の温度に加熱する。溶融物は、最初は空である流動床装置に噴霧される。約15~25℃の製品温度で流動床条件下で溶融物を固化させると、顆粒が形成される。このバッチプロセスでは、トップスプレー、ボトムスプレーおよびタンジェンシャルスプレー構成を使用することができる。
【0264】
オプション(c)
溶融物からの顆粒の調製は、連続的に行うこともできる。これは、ProCellまたはMicroPx Technology(Glatt)を使用することによって行うことができる。
【0265】
オプション(d)
溶融物は、噴霧塔で処理することもできる。プリルノズルを用いて、規定サイズの球状粒子を得ることができる。
【0266】
実施例2
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、30重量部のカンナビジオールおよび70重量部のKolliphor P188を用いて得ることができる。顆粒を調製するために、実施例1に概説される選択肢が利用可能である。
【0267】
実施例3
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、40重量部のカンナビジオールおよび60重量部のKolliphor P188を用いて得ることができる。顆粒を調製するために、実施例1に概説される選択肢が利用可能である。
【0268】
実施例4
カンナビジオール含有顆粒(固体分散体)は、20.05重量部のカンナビジオール、76重量部のKolliphorP188、3.4重量部のAvicel PH 101、0.5重量部のAerosil 200、および0.05重量部のBHTを用いて得ることができる。
【0269】
約100℃の温度を有するKolliphor P188およびBHTからの溶融物を、流動床中の固体CBD、Avicel PH 101およびAerosil 200上に噴霧する。製品温度は約15~25℃である。このバッチプロセスでは、トップスプレー、ボトムスプレーおよびタンジェンシャルスプレー構成を使用することができる。
【0270】
実施例5
CBD/可溶化剤の異なる重量比に基づく組成物を、溶融し、次いで溶融物を冷却することによって調製した。組成物を、USPパドル法に従って、0.1N HCl中でのin vitro溶解に関して分析した。
【0271】
比較のために、DAC/NRF 22.10に従って、油性カンナビジオール溶液および市販品Bionic Softgelsも試験した。
【0272】
0.1N HCl中での60分間のin vitro溶解試験後のCBD放出:
CBD/Kolliphor P188=33/67;200mg CBD:69%薬物放出
CBD/Kolliphor P188=27/73;200mg CBD:82%薬物放出
CBD/Kolliphor P188=20/80;200mg CBD:96%薬物放出
油性(Miglyol 812)溶液中のCBD;200mg CBD:0%薬物放出
バイオトニックソフトゲル;25mg CBD:96%薬物放出。
【0273】
実施例6
93.5質量%の実施例1~4のいずれかによる顆粒、5質量%のPolyplasone XL(崩壊剤)、1%のAerosil 200(流動促進剤)および0.5%のステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)を用いて、錠剤を調製する。
【0274】
実施例7
顆粒の調製
29.7%w/wの活性成分を含有するカンナビジオール(CBD)顆粒を、以下の製造処方に従って調製する:
【0275】
第1の処理工程では、CBDおよび医薬賦形剤であるポロキサマー188、パルミチン酸アスコルビル、微結晶セルロース、二酸化ケイ素、コロイド状ケイ素ジオキシドおよびポリビニルピロリドンが造粒される。
【0276】
造粒には流動床造粒技術を用いる。
【0277】
製剤原料カンナビジオールおよび医薬賦形剤ポロキサマー188、パルミチン酸アスコルビルおよびポリビニルピロリドンをエタノール96%v/vに溶解する。二酸化ケイ素(Syloid(登録商標)244 FP)を溶液中に分散させる。
【0278】
微結晶セルロースおよびコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil(登録商標)200)を流動床造粒機に充填し、記載される溶液を用いて造粒する。顆粒を取り出し、ふるいにかける。
【0279】
96%v/vの揮発性成分エタノールは、流動床乾燥機における乾燥段階中に顆粒から除去される。入口空気温度は45±10°Cであり、生成物温度は30~35℃である。
【0280】
顆粒は、2.0%以下の乾燥損失(LOD)パーセンテージの基準値まで乾燥される。
【0281】
剤形
29.7%w/wのカンナビジオールを含有するカンナビジオール顆粒を、HDPEボトルに充填して、1500mgの総用量のカンナビジオールを提供する。顆粒を合計240mlの水道水(室温)を用いて適用する。顆粒を最初に100mlの水に分散させる。残りの量の水を使用して、容器を2回すすぐ。
【0282】
カンナビジオール顆粒の安定性
試料を加速条件下(40℃/75%)、中間条件下(30℃/65%rh)および長期条件下(25℃/60%rh)で保存する。
【0283】
加速貯蔵条件での貯蔵下で、外観は、1ヶ月後に白色から黄色がかった色に、2ヶ月後に黄色に変色した。色は、3ヶ月後の長期条件および4ヶ月後の中間条件においてわずかにオフホワイトに変化した。
【0284】
溶出は、3ヶ月後の加速条件での貯蔵に対してわずかに減少するが、依然として指定の範囲内である。溶出は、長期条件の3ヶ月後および中間条件の4ヶ月後に変化しないままである。
【0285】
3ヶ月後の加速条件で約6%のアッセイの減少が観察されるが、生成物は依然として貯蔵寿命の指定内にある。中間および長期条件において、アッセイの有意な減少は、それぞれ4ヶ月後および3ヶ月後に観察されない。
【0286】
不純物としてカンナビジオールおよびパルミチン酸アスコルビルの付加物が観察される。
【0287】
それは、長期的に0.4%のレベルであり、3ヶ月の貯蔵後の加速条件で0.5%のレベルであることが見出されている。中間条件において、レベルは4ヶ月後に0.5%である。
【0288】
この付加物の4つの可能な構造の(Q)SAR評価は、製剤が本明細書に開示される用量および投与スキームを使用して投与される場合、その存在が患者にさらなるリスクをもたらさないことを示す。
【0289】
水性分散体の安定性
1500mgのカンナビジオールを含有する水性分散体の化学的安定性を、保持時間試験において検査した。この目的のために、約5gの現像バッチ(Aerosil 200を含まない製剤)を240mlの水に分散させ、周囲温度で撹拌した。不純物プロファイルを2時間監視した。
【0290】
不純物プロファイルは、2時間の試験期間にわたって変化しないままである。したがって、投与のための水中の生成物の分散体は、投与に必要な期間にわたって安定であろう。
【0291】
CBD放出
放出は、EP 2.9.3/USP<711>に従って試験する。パドル溶出装置を使用する。溶出試験は、37°C±0.5°Cの標準温度および100rpmの撹拌機速度で実施する。
【0292】
45分後、0.1M HCl+2%(w/v)セチルトリメチルアンモニウム-ブロミド(CTAB)中で完全な放出が観察される。
【0293】
実施例8
実施例7に概説した方法に従って、追加の顆粒を調製した。組成に関する情報は、以下の表に含まれる。
【0294】
Pearlitol 160 Cは、160μmの平均粒子直径を有する結晶性Dマンニトール粉末である。
【0295】
放出は、in virto溶解法(1000mLの0.1M HCl+2%(w/v)CTAB)を用いて特定した。
【0296】
実施例9
以下の表1に示す量の成分を使用してペレットを作製した。
【0297】
この目的のために、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール(Canapure PH)を96%エタノールに溶解させた。この活性成分は、約6.1のlogPを有する。
【0298】
HPMC(Pharmacoat(登録商標)603)を水に溶解させて別の溶液を調製した。
【0299】
次いで、HPMC溶液をカンナビジオール溶液に徐々に添加した。
【0300】
次いで、非晶質(アモルファス)二酸化ケイ素(Syloid(登録商標)244 FP)を添加した。
【0301】
混合物をプロペラスターラーで撹拌した。
【0302】
得られた噴霧液を微結晶セルロース(Cellets(登録商標)500)で作られたスターターコアに噴霧(スプレー)した。
【0303】
これは、ウルスターインサート(Wurster insert)を有するMini-Glat流動層システムで行った。空気入口空気温度は40℃であった。平均噴霧速度は0.5g/分であった。
【0304】
【表1】
【0305】
【表2】
【0306】
実施例10
実施例1から得られたペレット製品からの放出を、特に37℃で、0.4%Tween(登録商標)80を添加した1000mlのリン酸緩衝液(pH6.8)中においてブレードスターラー装置を用いて調べる。得られた結果を図2に示す。
【0307】
実施例11
この実施例は、細胞培養ベースの感染モデルを使用して、SARS-CoV-2に対するカンナビジオール(CBD)の抗ウイルス活性を調べる。2つの異なるカンナビジオール組成物を試験した(実施例7の製剤およびCanapure PH)。
【0308】
各物質について、DMSO中に10mMのカンナビジオールを含有するストック溶液を調製した。溶解し濾過した溶液を室温で最大1週間保存した。
【0309】
抗ウイルスアッセイについて、Vero E6細胞およびSARS-CoV-2ウイルス(単離BetaCoV/Germany/BavPat1/2020 p.1)を異なるカンナビジオール濃度で24時間インキュベートした。各実験を三重に行った。
【0310】
より詳細には、ウェルあたり25.000個のVero E6細胞を96ウェルプレートに播種した。翌日、CBD物質を培養培地(FCSを含まないDMEM+1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に希釈して、所望の最終濃度(0μM、0.25μM、0.5μM、1μM、2.5μMまたは5μM)を得た。
【0311】
次いで、培地を細胞から除去し、異なる試験濃度を含有する培地を細胞に添加した。
【0312】
並行して、約150FFU(焦点形成単位)/ウェルを、異なる試験濃度を含有する培地と混合した。
【0313】
ウイルスを化合物と混合した後、Vero E6細胞を有する96ウェルプレートからの細胞培養培地を除去した。
【0314】
ウイルス含有プレートからの200pi試料をVero E6プレートに移した。
【0315】
細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0316】
続いて、残存ウイルス活性を、滴定によって細胞培養物中で試験し、その後、感染細胞をSARS-CoV-2特異的抗体で染色した。陽性細胞を計数し、「焦点形成単位」(FFU)を計算した。
【0317】
結果は、両方の物質(実施例7の製剤およびCanapure PH)が、用量依存的にFFU値を減少させることができた、すなわち、in virtoでSARS-CoV-2のウイルス活性を阻害することができたことを示す。物質間の差は統計的に有意ではなかった。
【0318】
最高濃度(5μM)での細胞の脱離が両方の物質について観察された。細胞の脱離は、それぞれの対照(DMSO)では見えず、示された濃度での物質の毒性効果を示唆した。試験した他の濃度については、毒性効果は観察されなかった。
【0319】
ウイルス活性の阻害をさらに特徴付けるために、上記のように決定されたデータからIC50値を計算した。最高濃度(5μM)のFFU値は、細胞に対する毒性効果がウイルス活性に対する物質の効果と干渉する可能性があるため、除外した。
【0320】
試験した物質は、1.015μM(実施例7の製剤)および0.789μM(Canapure PH)のIC50値でウイルス活性の阻害を示した。これらの値の差は統計的に有意ではなかった。
【0321】
実施例12-症例報告
49歳の男性患者は、2020年11月26日にCovid-19に感染し、2020年11月30日に陽性であることが確認された。この疾患の症状は、元々、低悪性度発熱、悪寒、体痛および疼痛、嗜眠および食欲不振を含んでいた。患者は、熱および疼痛を制御するためのNSAID、ビタミンCおよびベッド安静、大量の流体の飲用による家庭での自己治療で回復した。
【0322】
2020年8月4日に、病気は劇的な変化を起こして悪化した。患者は、完全な呼吸をすることができず、眩暈および低酸素になり始めた。患者を入院させ、Covid Pneumoniaと診断した。
【0323】
パルスオキシメトリは、86%酸素の酸素飽和度を示した。吸気容量は300ml未満であった。患者に、5日間コースのレムデシビル、ヘパリン、デキサメタゾンおよび5Lの補充酸素のIV流体を与えた。患者は、2020年8月12日まで病院内に留まり、その時点で患者は補助的な家庭用酸素を与えられて退院した。患者は依然として呼吸困難を有し、補充酸素なしでは血中酸素を90%超に維持することができなかった。
【0324】
その時点で、患者は、オレンジジュースと混合した実施例7の顆粒3gを毎日摂取し始めた。患者は呼吸が即時に改善されたことに気付き、胸部の緊張感は消え、わずか2日で患者は酸素補給なしで96%の酸素レベルを維持することができた。患者のICは700mlに増加し、1週間で1500mlに達することができた。患者の他の残存症状、疲労および食欲不振も同様に軽減された。
【0325】
20歳の男性患者がCovid-19に感染した。彼は実施例7の顆粒を3日間摂取した。この間、彼は軽度のCOVID症状のみを経験した。CBD摂取を1日止めた後、症状が悪化した。5日目以降に再びCBDを摂取すると、症状が再び軽減された。
図1
図2
【国際調査報告】