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特表2023-524883高解像度ネガ型3D印刷機用のシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】高解像度ネガ型3D印刷機用のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/223 20170101AFI20230606BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230606BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20230606BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20230606BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20230606BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230606BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230606BHJP
   B22F 10/12 20210101ALI20230606BHJP
   B22F 10/10 20210101ALI20230606BHJP
【FI】
B29C64/223
B29C64/106
B29C64/205
B29C64/268
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/12
B22F10/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568598
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2021050276
(87)【国際公開番号】W WO2021229308
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】62/704,446
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519016549
【氏名又は名称】アイオー テック グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ジラン ジブ
(72)【発明者】
【氏名】ゼノウ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ネシェル ガイ
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AA36
4F213AA39
4F213AA42
4F213AA43
4F213AA44
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL23
4F213WL34
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL74
4F213WL75
4F213WL92
4F213WL95
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】高解像度で液体の重合性材料から固体の3次元物体を製作するためのシステム及び方法を提供する
【解決手段】材料を非デジタル的にフィルム上に塗布し、余分な材料をデジタル的にレーザで除去して、印刷する層のネガ像を残し、その後で、製作している物体の既存部分とその像を係合させ、非デジタル式UV硬化光源に曝す。デジタル化の唯一の部分は材料除去であり、この部分はレーザで行われるため、印刷の速度及び製造プロセスの堅牢性は、従来の付加的な又は3Dの製作技法よりも大幅に改善される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の均一層を基材に塗布し、塗布された基材をネガ印刷ユニットに供給するように構成された印刷及び塗布ユニットを備えるシステムであって、前記ネガ印刷ユニットは、前記塗布された基材から余分な材料を除去し、前記材料の残留セグメントを有する前記塗布された基材の結果バージョンをサンプル造形ユニットに供給するように構成され、前記サンプル造形ユニットは、製作中の物品の層の像を表す前記材料の前記残留セグメントを有する前記塗布された基材をサンプルと係合させ、前記サンプルとの接触中に前記材料の前記残留セグメントを硬化させるように構成される、システム。
【請求項2】
前記塗布システムは、
明確に規定された孔を備えたフィルムのスクリーン又はステンシル上に、ブレード又はスキージを用いて前記材料を塗布し、さらに前記材料をソフト又はハードな係合で前記基材に転写するように構成されたスクリーン印刷モジュールと、
前記材料を前記基材の上に印刷するように構成されたディスペンサと、
前記材料を前記基材の上に印刷するように構成されたインクジェットヘッドと、
前記材料の前記均一層を前記基材に塗布するように構成されたグラビア又はマイクログラビア・システムと、
前記材料の前記均一層を前記基材に塗布するように構成されたスロットダイ・システムと、
前記材料の前記均一層を前記基材に塗布するように構成されたローラ塗布システムと、
前記材料のシリンジと、前記材料を前記シリンジから前記基材の上に送るポンプであって、前記ポンプが、前記塗布された材料をローラ又はナイフの間の間隙に向かって及びそこを通して搬送し、前記間隙で規定される厚さを有する前記材料の前記均一層を前記基材上に作り出す、シリンジ及びポンプと、
のうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記塗布システムは、制御された環境を備えた閉鎖区画内にある、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記塗布システムは、前記基材に2以上の材料を塗布するように構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記塗布システムは、間隙を含み、前記間隙の幅を調整しながら、前記基材を並進させて前記塗布システムを双方向的に通過させるように構成される、請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記材料は、ポリマ材又はポリマ材とモノマ材の混合物、金属ペースト、半田ペースト、セラミックペースト、高粘度材料、低粘度材料、ワックス材、感受性材料、又はUV光で又は加熱で硬化可能な材料のうちの1つである、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ネガ印刷ユニットは、前記塗布された基材から材料再利用システムの材料を射出するように構成されたレーザベースのシステムである、請求項1から6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記基材は、連続した透明フィルム基材、金属層で被覆された透明フィルム基材、又は金属層及び誘電体層で被覆された透明フィルム基材のうちの1つである、請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
硬化中に前記サンプルと前記基材との接触部に支持材を注入するように構成された支持材付加ユニットをさらに備える、請求項1から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
印刷及び塗布ユニットで基材に材料を塗布して、その上に材料の均一層を有する塗布された基材を作り出すステップと、
前記塗布された基材をネガ印刷ユニットへ搬送し、そこで材料の余剰分を除去して、前記材料の像を前記基材上に残したままにするステップと、
サンプル造形ユニットにおいて、前記基材上に残る前記材料を係合させ、サンプルとの接触中に硬化させるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記材料の前記均一層は、
空気ポンプ又は機械式ポンプを用いてシリンジから前記基材の上に前記材料の一部を送りし、ローラ又はナイフの間に明確に規定された間隙に向かって及びそこを通して前記基材を並進させ、前記間隙で規定される厚さを備えた前記材料の前記均一層を作り出すこと、明確に規定された孔を備えたフィルムのスクリーン又はステンシルに前記材料を塗布し、ブレード又はスキージを用いて、前記材料をソフト又はハードな係合で前記基材に転写する、スクリーン印刷モジュール、ディスペンサ、インクジェットヘッド、前記材料の前記均一層を前記基材に塗布するグラビア又はマイクログラビア・システム、前記材料の前記均一層を前記基材に塗布するスロットダイ・システム、前記材料の前記均一層を前記基材に塗布するローラ塗布システム、のうちの1つによって作り出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基材上の前記材料の前記均一層は、制御された環境を備えた閉鎖区画内で作り出される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記印刷及び塗布ユニットは、前記基材に2以上の材料を塗布する、請求項10から12のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記印刷及び塗布ユニットは、間隙を含み、前記間隙の幅を調整しながら、前記基材を並進させて前記間隙を双方向的に通過させる、請求項10から13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記材料は、ポリマ材又はポリマ材とモノマ材の混合物、金属ペースト、半田ペースト、セラミックペースト、高粘度材料、低粘度材料、ワックス材、感受性材料、又はUV光で又は加熱で硬化可能な材料のうちの1つである、請求項10から14のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ネガ印刷ユニットは、高周波レーザを有するレーザベースのシステムであり、前記方法は、前記レーザを用いて前記基材から材料再利用システムへ前記材料を射出するステップを含む、請求項10から15のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記基材は、連続した透明フィルム基材、金属層で被覆された透明フィルム基材、又は金属層及び誘電体層で被覆された透明フィルム基材のうちの1つである、請求項10から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記基材は、前記ネガ印刷ユニットで印刷された前記像を前記サンプル造形ユニットへ送り出すために、ローラ搬送される、請求項10から17のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ネガ印刷ユニットで印刷された前記材料内の前記像は、前記サンプル造形ユニットでUV光によって硬化する又はヒータによって乾燥する、請求項10から18のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
支持材付加ユニットで前記硬化中に前記サンプルに支持材を注入するステップをさらに備える、請求項10から19のうちのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月11日出願の米国特許仮出願第62/704446号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、高解像度で液体の重合性材料から固体の3次元物体を製作するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の付加又は3次元製造技法では、3次元物体の造形は層ごとに行われる。層形成は、可視光又はUV光照射の作用下で光硬化性樹脂を固化させることによって行われる。2つの技法が知られており、一方は成長する物体の上面に新たな層を形成するもの、他方は、成長する物体の下面に新たな層を形成するものである。
【0004】
成長する物体の上面に新たな層を形成する場合には、各照射ステップの後、造形中の物体を樹脂「プール」の中に下降させ、新たな樹脂層を上面に塗布し、新たな照射ステップが行われる。このような技法の例は、Hullの米国特許第5236637号に提示されている。このような「トップダウン」技法の不利な点は、成長する物体を液体樹脂の深いプールに沈め、物体の次の層を形成する前に液体樹脂の正確な被覆層を再構成する必要があることである。
【0005】
成長する物体の底部に新たな層を形成する場合には、各照射ステップの後、造形中の物体を製作ウェル内の底板から分離する必要がある。このような技法の例は、Hullの米国特許第5236637号に提示されている。このような「ボトムアップ」技法は、代わりに比較的浅いウェル又はプールから物体を持ち上げることによって、物体を沈める深いウェルを不要にする可能性を有するが、商業的に実施する場合に、このような「ボトムアップ」製作技法の問題は、固化層を底板から分離する時に、それらの間の物理的及び化学的相互作用のため、細心の注意を払わなければならず、付加的な機械要素を採用しなければならないということである。例えば、米国特許第7438846号では、弾性分離層を用いて、底部造形面における固化材料の「非破壊的」分離を達成する。 他の手法では、例えば米国特許第9636873号に示されるように、スライド式造形板を採用する。このような手法は、装置を複雑にし、方法を時間の掛かるものにし、及び/又は潜在的に製造物を歪ませる可能性のある機械的なステップを導入するものである。
【0006】
3次元物体を製造するための連続プロセスは、米国特許第7892474号で「トップダウン」技法に関してかなり詳しく提案されており、現在までの最良の手法は、国際公開第2014/126837号により提供されている。そこでは、同じ重合性液体の第1及び第2の層又はゾーン間に界面が形成される。第1の層又はゾーン(「デッドゾーン」と呼ばれる場合もある)は、重合の抑制剤(少なくとも重合を抑制する量)を含み、第2の層又はゾーンでは、重合がもはや実質的に抑制されないところまで抑制剤が消耗している(或いは、さもなければそこに組み込まれていない又は浸透していない)。第1のゾーンと第2のゾーンは、互いの間に厳密な界面を形成するのではなく、むしろ、急峻な界面とは対照的にそれらの間に相間の形成とも見なすことのできる組成の勾配が存在し、それは、相が互いに混和性であり、さらにそれらの間に(製作されている3次元物体と、重合性液体が照射される造形面との間にも)、(部分的又は完全に重なる)重合の勾配を作り出すからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5236637号
【特許文献2】米国特許第7438846号
【特許文献3】米国特許第9636873号
【特許文献4】米国特許第7892474号
【特許文献5】国際公開第2014/126837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
望みはあるが、この技法にはいくつかの限界がある。第1に、一度に1つの材料配合にしか使用できず、この技法で製造可能な物品の物理的特性が大きく制限される。第2に、製造速度は、使用する抑制剤、液相の粘度、及びUV光源出力によって制限される。さらに、物品は依然として樹脂浴に浸されており、残留物を除去するためにプロセスの終わりに洗浄する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
現在の付加又は3次元(「3D」)の製造技法による上述の限界を考慮すると、本発明は、製作している物品の次層をフィルム上に高解像度で作り出し、フィルムと物品のそれまでに形成された部分との接触中に対応する光源に曝して、形成物品の次層を製造することによって、3次元物品を製造するための遥かに高速な方法を提供するものである。これは連続シーケンスの製造プロセスであるため、他の技法に比べ、物品の形成速度及び汎用性が向上する。複数の材料を各層で導入することができ、製造プロセスの終わりに洗浄を必要としない。
【0010】
1つの実施形態では、廃棄物を低減し、製造速度を向上させる3D印刷の新たな方法が提供される。材料を非デジタル的にフィルム上に塗布し、余分な材料をデジタル的にレーザで除去し、その後、完全な像を、製作している物体の既存部分(本明細書では「サンプル」とも呼ぶ)と係合させ、非デジタル式UV硬化光源に曝す。デジタル化の唯一の部分は材料除去であり、この部分はレーザで行われるため、印刷の速度及び製造プロセスの堅牢性は、従来の付加的又は3Dの製作技法よりも大幅に改善される。
【0011】
本手法に最も適した材料のうちの1つは、材料射出ユニットとサンプル造形ユニットとの間を移動しないことになる高粘度材料であるが、材料粘度が低下すると製造中のサンプルの最終解像度も低下することを考慮しながら、あらゆる材料を使用することができる。
【0012】
本発明に従って構成されたネガ型3D印刷システムの1つの実施形態は、フィルム及びローラに基づく塗布システムと、材料再利用ユニットの上部に位置決めされるレーザ射出システムと、フィルムがUV硬化中にサンプルと接触するサンプル造形ユニットを含む。別の任意のユニットは、機械的、化学的、又は光学的(例えば、レーザ)手段、又はこれらの手法のいずれかの組み合わせを用いて動作することのできるサンプル剥離ユニットである。
【0013】
塗布システムは、複数の方式のいずれかで実装することができる。例えば、1つの実施形態では、塗布システムは、塗布されたフィルムが2つのローラ間を通過するフィルム形成ユニットを備えたシリンジを含むことができる。使用可能な他の塗布手法は、従来のスクリーン印刷、ディスペンサユニット(複数可)印刷、マイクログラビア塗布、スロットダイ塗布、インクジェット印刷、又はローラ塗布を含むことができる。
【0014】
塗布は、例えば、溶媒の蒸発又は酸化を防止し、後の再利用のために材料廃棄物を最小限に抑えるため、制御された環境で行うことができ、一部の実施形態では、閉ループで実装することができ、ここでは、フィルム上に塗布される材料は、再利用ユニットを通過し、サイクルごとにそれまで未使用の部分への僅かな材料の追加を伴う。
【0015】
塗布システムは、場合により、複数材料の3D印刷をサポートすることができる。
【0016】
ネガ型デジタル式レーザ射出システムは、フィルム表面から材料のネガ像を射出させるのに十分なエネルギを備えたパルスレーザを含むことができる。そのような目的のために採用できるレーザは、赤外(IR)レーザ、紫外(UV)レーザ、炭酸ガス(CO2)レーザなどを含むことができる。
【0017】
材料の転写に用いるフィルムは、フィルム上の被覆の有無を問わず、透明なフィルムである、少なくとも使用されるレーザの波長に対して透明な(又はそれに近い)透明フィルムである必要がある。使用できる透明フィルムの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリイミド(PI)などである。
【0018】
フィルムの被覆は、フィルムから材料再利用システムへの材料射出を強化するために使用される。そのために、レーザ波長で吸収し、ネガ型レーザ射出システムへの曝露でデジタル的に透明な領域を作り出す添加物を有する金属又は他のポリマ被覆を使用することができる。
【0019】
上述したように、本システムを用いた3D印刷に使用できる材料リストは非常に幅広く、可能な材料の全てを詳細に列挙することは現実的でない。例として、可能な材料は、UV硬化性モノマ及びポリマ、ビスコース又は感受性材料、アクリレート、エポキシ、ウレタン、接着剤、ペースト等、並びにセラミック、金属、有機添加剤、繊維強化剤などの添加物を有するUV硬化性モノマ及びポリマ、又はUV硬化性ワックスを有するUV/可視光硬化性材料配合物とすることができる。
【0020】
本システムは、光で硬化する又は部分的に硬化する低粘度又は高粘度の材料に使用でき、また、UV硬化性末端の有無を問わず、セラミック及び金属のペースト、はんだペースト(エポキシ系又はウレタン系)、又はシリコーン系材料など、熱で硬化する材料に使用することも可能である。反応は、光によって、熱によって、又は他の触媒(Pt、OHなど)によって、或いはこれらのメカニズムの組み合わせによって進行することができる。
【0021】
本システムは、高感度材料の3D印刷、例えば、生体適合性材料の3D印刷にも使用することができる。また、室温又は高温(多少の調整を伴う)での熱可塑性材料の3D印刷にも使用することができる。
【0022】
本システムの実施形態で使用する硬化システムは、デジタルプロセスではなく、従って境界範囲の硬化手段を採用することができる。例えば、IR又は他の熱硬化システム(後処理として)と同様に、UV又は可視光硬化システムを使用することが可能である。また、硬化反応に化学的潜在性の触媒を使用することも可能である。
【0023】
一例として、基本的なUV配合物は、アクリレート、エポキシ、ウレタン、及び他のUV又は光感受性材料などのモノマ及びポリマを、光感受性開始剤又は/及び共開始剤又は増感剤、例えば、アセトフェノン、チオキサントン、ホスフィン酸化物、ヨードニウム及びスルホニウム塩などと共に使用することができる。
【0024】
サンプル剥離システムの構成は、フィルムの化学的性質に依存すること、硬化後に何らかのレーザアブレーション又は上面の洗浄を伴うこと、及び/又は機械式システムとすることができる。複数の手法のいずれかを使用することができ、例えば、Y軸に向けた低角度剥離を提供するシステム(例えば、フィルムをサンプルから小角度で離れるように動かすことによる)、又は2つのZ軸、1つはフレーム(フィルムを保持する)に対する軸、もう1つはサンプルに対する軸を提供するシステム、又はサンプルからフィルムを剥離するために音響振動を提供するシステムを使用できる。
【0025】
本発明のこれら及び他の実施形態について、以下で詳細に説明する。
本発明は、非限定的で例示的に、添付図面の図に示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態を概要の形で示す図であり、この実施形態は、フィルムに材料を塗布するステップと、余分な材料を回収システム内へ除去するステップと、次いで、塗布されたフィルムをサンプルとの接触中に非デジタル式硬化システム(UV又は熱に基づく)に曝すステップとを含み、それによって、廃棄物を低減し、支持材を不要にする。
図2】本発明の1つの実施形態に従って構成されたシステムの概略図であり、塗布プロセス、材料回収ユニットによるネガ印刷、及びサンプルとの接触中の硬化に焦点を当てており、随意的なサンプル剥離ユニットも示されている。
図3a】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、材料のネガ射出プロセスを含む。
図3b】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、材料のネガ射出プロセスを含む。
図3c】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、材料のネガ射出プロセスを含む。
図3d】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、随意的な初期硬化プロセスを含む。
図3e】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、サンプル接触プロセスを含む。
図3f】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、サンプル接触プロセスを含む。
図3g】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、硬化プロセスを含む。
図3h】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、剥離プロセスを含む。
図3i】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、剥離プロセスを含む。
図3j】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、剥離プロセスを含む。
図3k】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、サンプル表面洗浄プロセスを含む。
図3l】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、全体としての結果及び構造を示す。
図3m】本発明の実施形態によるプロセスの態様を示し、全体としての結果及び構造を示す。
図4】本発明に従って構成されるシステムの一例を示し、フィルム上に材料を塗布し、フィルムを移動させてレーザ射出ユニットを通し、硬化用のUV光へ曝す間にサンプル接触させるためのリール及びローラを備える。
図5図4に示すシステムの別の例を示し、いくつかの層が印刷されている。
図6図6は、図4に示すシステムのさらに別の例を示し、いくつかの層が印刷され、層間には支持材が任意に付加されている。
図7図4に示すシステムのさらに別の例を示し、いくつかの層が印刷され、支持材を注入するために構成された支持材付加システムを含む。
図8a】本発明の実施形態の態様を示し、サンプルとの接触前に、複数の材料が印刷中に使用される。
図8b】本発明の実施形態の態様を示し、サンプルとの接触後に、複数の材料が印刷中に使用される。
図9a】本発明の実施形態の態様を示し、印刷は硬化プロセス中にサンプル歪みを防止するため粘着防止ホイルを使用する。
図9b】本発明の実施形態の態様を示し、印刷はサンプル剥離プロセス中にサンプル歪みを防止するために粘着防止ホイルを使用する。
図10】本発明の実施形態の態様を示し、印刷は高速で正確なサンプル造形を可能にする機械的剥離システムを使用するステップを含む。
図11】本発明の実施形態の態様を示し、印刷はサンプル造形中に余分な材料の廃棄物を低減するめに材料回収システムを使用するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、高解像度で液体の重合性材料から固体の3次元物体を製作するための方法及び装置に関する。1つの実施形態では、本発明に従って構成されたシステムは、初期に重合性液体を塗布したフィルムのネガ像を高解像度でレーザ射出するステップと、フィルムとサンプルの接触中に対応する光源にその像を曝すステップとを採用して、サンプルの次層を製造する。これは連続シーケンスの製造プロセスであるため、従来の3D印刷プロセスに比べ、3D物体の形成速度及び汎用性が向上する。しかしながら、本発明を詳細に説明する前に、その概要を提示することが役立つ。図1は、そのような概要を提供し、本発明に従って構成されたシステム100のいくつかの構成要素:フィルムに材料を塗布するステップ10と、余分な材料を回収システム内へ除去するステップ12と、塗布されたフィルムをサンプルとの接触中に非デジタル式硬化システム(UV又は熱に基づく)に曝すステップ14と、を示している。
【0028】
所望の像のネガ画像を取り扱うことにより、本発明のいくつかの重要な基本的特徴が明らかになる。第1に、塗布プロセスに起因する材料の余剰分を再利用することができ、サンプル構築プロセス中に有意な廃棄物が生じない。第2に、支持材が不要である(ただし、後述するように、支持材の使用は選択肢として残る)。硬化及び接触の間、ネガ画像はフィルムによりその上面で支持されるので、ほとんどの場合、支持材が不要となる。構造によっては、付加的な支持を必要とする又はそれから利益を得る可能性があるので、本発明はそのような選択肢を考慮に入れる。第3に、本発明に従って構成されたシステムは、射出と造形が2つの異なる領域で行われ、それらのプロセスを同時に行うことができるので、非常に高速度で印刷する能力を有する。印刷速度の主な制約は、硬化プロセス又はネガ印刷時間のいずれかであるが、これら個々のプロセスのタイミングは加法的ではなく、つまりは、硬化時間とネガ印刷時間の加法的な組み合わせによって全体としての印刷速度が制限されることはない。また、硬化プロセスがデジタル的ではないため、硬化に用いるUV光源に対する制約も従来の3D印刷プロセスよりも少ない。
【0029】
ネガ印刷ユニットは、材料のネガ像をフィルム表面から回収ユニットへ射出するのに十分なエネルギを有するパルスレーザを備えたレーザ支援堆積/レーザ分注システムとすることができる。レーザは、UV、IR、CO2、又は何らかの他のレーザとすることができる。
【0030】
印刷ユニットがレーザ支援堆積/レーザ分注システムである場合、均一に塗布された基材は、システムの堅牢性において重要な役割を持つ。それゆえ、印刷ユニットの前に付加的な塗布システムが追加される。この塗布システムは、マイクログラビア・コータ又はスロットダイ・コータ又はローラ塗布システムに基づく塗布システムなど、従来の塗布システムとすることができる。また、スクリーン印刷に基づく塗布システム、ディスペンサ、又はインクジェットシステムとすることもできる。本発明の1つの実施形態では、塗布システムは、図4に示すようにシリンジ及び間隙システムに基づくことができる。このようなシステム400では、材料402がシリンジ404から基材406に分注され(例えば、シリンジから基材の上に材料を駆動する空気ポンプ又は機械式ポンプによって)、塗布された基材408は、明確に規定された間隙410に向かって移動し(例えば、モータ駆動のローラ又は他のアクチュエータによって)、そこを通過する。間隙は、図4に示すように、ブレード又は他の種類の障壁で、或いは互いに近接配置された2つの円柱(例えば、ローラ)で規定することができる。
【0031】
間隙410を通過した後には、材料の均一層412が基材上に形成され、レーザ支援堆積/レーザ分注システム414は、塗布された基材から材料回収システムへ材料を射出することができる。塗布された基材416は、レーザ支援堆積/レーザ分注システム414から硬化ステーション418に移動し、UV光及び/又は熱の存在下で受入基材420と接触し、それによって、製作さている物品の新たな層に対する材料を硬化させる。
【0032】
本発明の他の実施形態では、塗布システムはスクリーン印刷モジュールを含むことができ、その場合、明確に規定された孔を備えたフィルムのスクリーン又はステンシル上に、ブレード又はスキージを用いて材料が塗布され、材料がソフト又はハードな係合で基材に転写される。代わりに、塗布システムは、材料をキャリア基材に印刷するためのディスペンサ又はインクジェットヘッドを含むことができる。或いは、塗布システムは、材料の高度に均一な層を基材に塗布するグラビア又はマイクログラビア・システムとすることができる。さらに別の実施形態では、塗布システムは、材料の高度に均一な層を基材に塗布するスロットダイ・システムとすることができる。或いは、塗布システムは、材料の高度に均一な層を基材に塗布するローラ塗布システムとすることができる。
【0033】
本発明のこれらの及び/又は他の実施形態のいずれにおいても、制御された環境(温度、圧力など)を備えた閉鎖区画内に塗布システムを配置して、印刷材料からの溶剤の蒸発を防ぎ又は材料の酸化を防ぎ、それによって材料のポットライフを延ばすことができる。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、塗布システムは2以上の材料を収容する。これにより、制御された順序で中間基材(例えば、図4の基材406などのフィルム)の上に複数の材料を印刷する可能性が生み出され、最終基材(例えば、図4の受入基材420)の上に2以上の材料を印刷することが可能となる。
【0035】
本発明の1つの実施形態では、塗布システムの中間基材は、コータローラ間の間隙を広げながら、制御された方法で前方及び後方に(中間基材に材料を付与する観点から)並進可能であり、ローラの汚染なしに中間基材の同じ領域を印刷材料で複数回再塗布する可能性を与える。また、このようなプロセスは、初期印刷プロセス中に消費される中間基材の量を低減し(又は排除し)、浪費を防止する。
【0036】
一部の実施形態では、中間基材上に塗布された材料の現在の均一層が印刷ユニットにおける印刷によって(完全に又は部分的に)消費された後、中間基材は、次の印刷プロセスのために、再塗布のために塗布システムにループして戻る、又は新たな均一塗布層を付与するために塗布システムに並進して戻ることができる。
【0037】
印刷に使用されるフィルム(又は他の中間基材)は、金属(又は他の)被覆の有無を問わず、レーザ波長に透明な基材とすることができる。そのようなフィルム(基材)の例は、PET、BOPP、PIなどである。レーザ波長で吸収し、ネガ型レーザ噴出システムへの曝露でデジタル的に透明な領域を作り出す添加物(複数可)を有する金属又はポリマ被覆で、このフィルムを被覆することができる。
【0038】
本発明に従って構成されたシステムで使用可能な印刷用材料の中には、何らかの液体又はペースト材料がある。しかしながら、本発明のシステムの利点は主に、他の方法では高解像度で適切に印刷できない高粘性材料が採用される場合に存在する。例えば、UV光/可視光硬化性材料配合物、並びにビスコース又は感光材料のUV硬化性モノマ及びポリマを、本発明に従って構成されたシステムを用いて印刷することができる。本発明に従って構成されたシステムで印刷できる他の材料は、UV硬化又は熱硬化のいずれかを用いるアクリレート、エポキシ、ウレタン、接着剤、ペースト、又はインクである。本発明に従って構成されたシステムで印刷できるさらに別の材料は、セラミック、金属、有機添加剤、繊維強化剤などの添加物を含むUV硬化性モノマ及びポリマである。また、UV硬化性ワックス、光によって硬化する又は部分的にでも硬化する低粘度又は高粘度の材料、UV硬化性末端の有無を問わず熱又は他の触媒(Pt、OHなど)によって反応が開始されるエポキシ系、ウレタン系、又はシリコーン系の材料、セラミック及び金属のペースト、及び半田ペースト、生体適合性材料、並びに熱可塑性材料(室温で又は環境温度の調整による高温で)は全て、本発明に従って構成されたシステムで印刷することができる。可能性のある基本的な配合及びメカニズムでは、アクリレート、エポキシ、ウレタン、或いは他のUV又は光感受性材料のモノマ及びポリマを、例えばアセトフェノン、チオキサントン、ホスフィン酸化物、ヨードニウム及びスルホニウム塩などの感光性開始剤又は/及び共開始剤又は増感剤と共に使用することができる。
【0039】
図2は、本発明の1つの実施形態に従って構成されたシステム200を示す。このシステムでは、材料202は先ず、塗布システム206、例えば上述したようにシリンジ及び間隙システムを用いるものによって、透明基材204の上に分注される。材料が塗布された基材208は、ネガ印刷ユニット210に供給され、そこでは、塗布された基材から余分な材料(すなわち、サンプルに付加されない塗布材料の部分)を除去する(例えば、レーザ射出を介して)ことによって、サンプルに付加される層のネガ像が作り出される。図示するように、この余分な材料を材料再利用システム212で集めて、再利用のために塗布システム206に戻すことができる。図示するように、塗布された基材上に残る材料214は、硬化システム(例えば、UV硬化システム)216及び/又は画像化システムに供給され、サンプル220との接触中にUV硬化及び/又は乾燥を使用できるサンプル造形ユニット218にほどなく到着する。材料がサンプル(すなわち、受入基材222上に配置される、製造中の物品のそれまでに形成された部分)と接触している間に硬化/乾燥させることによって、サンプルの次層がその上に直接印刷される。次に、サンプル剥離システム224は、搬送基材204からのサンプル220の剥離を達成する。
【0040】
図3a~3mは、印刷プロセス全体に関係する様々なステップを詳細に示している。先ず図3aを参照すると、ネガ射出プロセス300が示される。材料の層302は、中間基材(例えば、フィルム又はホイル)304上に塗布されている。材料の又は金属被覆フィルムのレーザ吸収特性を利用して、塗布された基材から(サンプルに印刷される次層の)像のネガを射出するために、レーザ306が使用される。射出された材料308は、材料回収ユニット312(複数の材料が使用されている場合は、複数のユニット)に集められ(310)、この材料は後で再利用できる(図3a及び3b)。像材料314のセグメントだけが、さらなる使用のためにフィルム304上に留まる(図3c)。
【0041】
随意的に、図3dに示すように、サンプルとの接触前にフィルム上の像材料314を低出力UV光316又は温度に曝すことができる。一部の材料、主に液体材料は、例えば印刷解像度の激しい低下を避けるために、このような接触の前に高精細度の像材料境界を必要とするので、この処置により、材料像314の部分の境界を明確に規定することができる。このようなプロセスにおいて、UV部分硬化ステーション318は、UV光源316からのUV光326が材料層314に入射することになる作業空間324に不活性ガス(例えば、Ar、CO2、He、Neなど)322を導入するためのガス拡散システム320を含むことができる。不活性ガスは、1又は2以上のガス入口328から流入し、拡散器330を通り作業空間324に向かって流出する。ガス圧ホモジナイザを用いて、システムの全体に亘って一定の圧力を確保することができる。
【0042】
好ましくは、中間基材304は、薄い金属ホイル、例えば20nm厚のTi層で被覆される。金属ホイルの層は、存在する場合にUV光326の透過を実質的に減少させることになり、中間基材214との接触領域に近い材料層314の縁部だけを確実に硬化又は部分硬化させる。一例として、20nm厚のTi層は、中間基材314の非保護領域が透過させるUV光326のおよそ10分の1しか透過させない。例えばレーザアブレーション又は他のプロセスなどにより、金属ホイルが除去された領域では、UV光326は材料層314のセグメントの縁部に入射することになり、この場合も、これらの縁部だけが硬化又は部分硬化することが保証される。材料層314のセグメントの望まれない硬化又は過剰硬化を防止するための付加的な予防手段として、ガス拡散システム320は、UV光326が材料層314のセグメントに向かって反射しないように、無反射材料で作製することができる。
【0043】
拡散器を通してポンプ圧送される不活性ガス322の存在により、作業空間324からあらゆる酸素がパージされる。この作業空間領域の厚さは、拡散器330を通して押し込まれる際のガス圧に関係する。酸素がパージされた作業空間の領域に材料層314のセグメントを維持した状態で、UV硬化システムは次に、UV光源316からのUV光326へ曝すことによって、これらのセグメントの底部及び縁部を硬化させる。
【0044】
図3e及び3fは、フィルム304(すなわち、フィルム上にある塗布材料314のセグメント)とサンプルとの接触前及び接触後の図を提示するが、図3gはサンプルのUV露光及び造形を示す。この段階では、UV露光又は高温への曝露のいずれかを用いて、サンプルへの材料転写を達成することができる(このような場合、カプトンなどの被覆ポリイミドフィルムを使用することができる)。図示のように、フィルム304を受入基材334が存在する領域に至らせて、受入基材(又は、存在する場合にはサンプルの既存の層)をフィルム上の塗布材料314のセグメントと接触させる(例えば、受入基材が存在する状態を持ち上げることによって)。次に、塗布材料314のセグメントをUV光源338からのUV光336への曝露によって硬化させる。これは、上述と同じUV光源でもよいし、異なるUV光源でもよい。UV光336(及び/又は熱)への曝露は、塗布材料のセグメントを硬化させて、サンプル(すなわち、製作中の物体)の新たな層340のセグメントを形成する。
【0045】
硬化後、サンプルはフィルム304に(新たに硬化した層340のセグメントを介して)結合したままである。従って、剥離機構を設けることが好ましい。そのために、図3h~3jに示すように、フィルム304の金属被膜がたった今硬化した材料の下に残っており、レーザ波長吸収及びサンプル剥離に使用できるので、レーザ自体(ネガ印刷に使用される)306をサンプル剥離ユニットとして使用することが可能である。レーザ306は、新たに硬化した層340のセグメントが存在する位置を照射し、このような分離を可能にする。また、レーザを用いて、サンプル剥離中にフィルム304から剥がれた可能性のある金属残渣342をサンプルから取り除き(図3k)、サンプル上に存在する清浄な硬化層340を残すことができる(図3l)。いくつかの層340を印刷した結果350を図3mに示す。
【0046】
図4~7は、本発明の方法を実行するためのシステムの構成例を示す。本発明の1つの実施形態では、1つの材料だけを供給して一層だけを印刷する。図4は、そのような構成を示す。材料402をフィルム406上に塗布し、レーザシステム414がネガ像を除去し、複数のサンプル420が移動して順次フィルム406と接触する。材料416は接触中に硬化し、新たなサンプルが古いサンプルに置き換わる。
【0047】
図5は、図4に示した構成の3Dバージョンを示す。この場合は、同じサンプル520をフィルム406に繰り返し接触させ、そのたびに、新たな層522a、522bなどをサンプルに付加(印刷)する。硬化は、サンプルの上部がフィルム上の新たな層524の材料と接触している間に行われる。しかしながら、フィルム上の材料とサンプルとが直接接触していない場合、フィルムからサンプルへの転写が行われないことに留意する必要がある。従って、転写は、フィルム上にある材料の各単位の面積と、サンプルの表面構造に依存する。
【0048】
この問題を克服する1つの方法は、フィルム406と接触し、ひいてはフィルム上の全ての材料524をサンプルに転写することになる支持材602を加えることである。図6は、全ての材料をフィルムからサンプルに集めるために、支持材602を使用する方法を示す。
【0049】
図7は、支持材を用いた3Dネガ印刷用のオプションユニット702の使用法を示す。オプションユニット702は、硬化中にフィルム406と接触することになるサンプル高さを均一にするために、支持材704を機械的に(例えば、シリンジ706を介して)注入する。サンプル520は、硬化位置710と層間の支持材注入位置712との間を前後方向に移動する。
【0050】
本発明の実施形態に従って構成されたシステムのさらに高度な構成は、複数材料の3D印刷に関するものである。このような場合、複数の塗布ユニットを配置して転写フィルム(複数可)に異なる材料を供給し、異なる材料をフィルム(複数可)に塗布し、各材料それぞれに対するネガ像をフィルム(複数可)から除去し、材料をサンプルに接触させて、そこへ転写する。図8A~8Bは、第2の材料804を含む基材802と、第1の材料314を既に有するサンプル334との接触前及び接触後の図を示す。異なる材料のネガ像は適合性があるので、同じ層で共存することができる。
【0051】
フィルム自体は、透明な粘着防止ホイルとすることができる。例えば、硬化後にフィルムからのサンプルの容易な剥離を保証するために、PTFE又はPFE、或いは他の粘着防止ホイルを使用することができる。図9a~9bは、フィルム902の粘着防止特性に基づく剥離プロセスの前後の図を示す。サンプル剥離に関するこの手法は、上述のレーザ剥離機構を補完する手法とすること、又は使用される唯一の剥離機構とすることができる。
【0052】
サンプル剥離に関するさらに別の手法は、主として機械的な手法とすることができる。図10は、上述の剥離機構と共に又はそれなしで機能することのできる機械式剥離システム1002を示す。複数の機械的手法のいずれかを使用することができる。例えば、フィルム406をサンプル1004から小角度で離れるように動かすことによる、「Y」軸に向けた低角度剥離を使用することができる。代わりに、2つのZ軸、1つはフレーム(フィルム406を保持する)に対する軸、もう1つはサンプル1004に対する軸を使用することができる。別の手法として、音響振動を用いてサンプル1004からフィルム406を剥離することが考えられる。
【0053】
図11は、本発明の実施形態に従って構成されたシステムの1つの付加的な特徴である、材料再利用システム1102を示す。廃棄物を低減するために、ネガ像印刷は、未使用の材料を集め、それを塗布ユニット1104に再び注入するトレイ又は他の輸送手段の上方で行うことができる。
【0054】
上述の図には、様々なシステムの動作を制御する1又は2以上のユニットが示されていない。当業者であれば、多くの場合に制御装置又は類似名で呼ばれるこのようなユニットは、塗布システム、ネガ印刷ユニット、材料再利用システム、硬化システム(複数可)及びサンプル剥離システムの要素に信号を発することによって上述のプロセスを実行するようにプログラム可能な、プロセッサベースのユニットであることを理解できる。場合により、これらの信号は、エンドエフェクタ、ローラ、レーザ、UV又はIR照明/加熱システム、及び他の要素を作動させて、上述のタスクを実行する。このような制御装置は一般に、本明細書に記載する方法を規定するコンピュータ可読命令(すなわち、コンピュータプログラム又はルーチン)を実行するプロセッサ(複数可)を含み、これらの方法は、非一時的コンピュータ可読媒体上で具体化され実行される。このようなプロセスは、あらゆるコンピュータ言語で表現され、あらゆる適切なプログラマブルロジック・ハードウェア上で実行することができる。これに基づいて又はこれを用いて、本発明の方法を実践することのできるプロセッサベースの制御装置は、典型的には、情報を伝えるためのバス又は他の通信機構と、情報とプロセッサが実行する命令とを格納し、プロセッサが実行する命令の実行中に一時変数又は他の中間情報を格納するためにバスに接続されたRAM又は他の動的記憶デバイスなどのメインメモリと、静的情報とプロセッサに対する命令とを格納するためにバスに接続されたROM又は他の静的記憶デバイスと、を含むことになる。また、ハードディスク又はソリッドステート・ドライブなどの記憶デバイスを含むことができ、情報及び命令を格納するためにバスに接続することができる。対象の制御装置は、場合により、ユーザに情報を表示するためにバスに接続されたディスプレイを含むことができる。そのような場合、英数字及び/又は他のキーを含む入力デバイスも、情報及びコマンド選択をプロセッサに伝達するためにバスに接続することができる。また、カーソル制御デバイスなど、他のタイプのユーザ入力デバイスを含むことができ、方向情報及びコマンド選択をプロセッサに伝達するために、並びにディスプレイ上のカーソル移動を制御するためにバスに接続することができる。
【0055】
制御装置は、プロセッサに接続された通信インタフェースを含むこともでき、これは、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)を介して、制御装置との間で双方向の有線及び/又は無線データ通信を提供する。通信インタフェースは、様々なタイプの情報を表すデジタル・データストリームを伝送する電気信号、電磁信号、又は光信号を送受信する。例えば、制御装置をリモートユニットとネットワーク化して、ユーザが操作するホストコンピュータ又は他の機器へのデータ通信を可能にすることができる。従って、制御装置は、必要に応じて、エラーのトラブルシューティングを支援するための診断情報を含む、メッセージ及びデータをリモートユニットと交換することができる。
【0056】
以上のように、高解像度で液体の重合性材料から固体の3次元物体を製作するための方法及び装置が説明される。
【符号の説明】
【0057】
200 システム
202 材料
204 透明基材
206 塗布システム
208 材料が塗布された基材
210 ネガ印刷ユニット
212 材料再利用システム
216 UV硬化システム
218 サンプル造形ユニット
220 サンプル
222 受入基材
224 サンプル剥離システム
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図3g
図3h
図3i
図3j
図3k
図3l
図3m
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
【国際調査報告】