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特表2023-5249124’-チオ-5-アザ-2’-デオキシシチジンを使用して血液がんを治療するための組成物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(54)【発明の名称】4’-チオ-5-アザ-2’-デオキシシチジンを使用して血液がんを治療するための組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20230606BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230606BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A61K31/53
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023509462
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021028726
(87)【国際公開番号】W WO2021216936
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】63/014,346
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504164240
【氏名又は名称】サウザーン リサーチ インスチチュート
(71)【出願人】
【識別番号】522040089
【氏名又は名称】ピノットバイオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】スト マーク ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブーヘイカー レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ドゥ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョニョン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA07
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC64
4C086GA03
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、4’-チオ-5-アザ-2’-デオキシシチジン(アザ-T-dCyd)を含む、血液がんを治療するための医薬組成物、及びアザ-T-dCydを含む経口投与のための組成物を使用して血液がんを治療する方法に関する。本発明は、毒性を有することが従来知られているアザ-T-dCyd用量であっても、血液がんマウスモデル又はヒトにおいて毒性を有することなく、有意な血液がん治療効果を提供する。本要約は、特定の技術分野での調査を目的とする走査ツールとして意図され、本発明を限定するよう意図されるものではない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する治療有効量の化合物と、
【化1】
薬学的に許容され得る担体と、を含む、医薬組成物であって、
前記治療有効量が、約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、
前記医薬組成物が、経口投与のために製剤化されている、医薬組成物。
【請求項2】
前記治療有効量が、約5mg/m2~約35mg/m2以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記治療有効量が、約5mg/m2~約10mg/m2以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記治療有効量が、約35mg/m2~約55mg/m2以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療有効量が、約55mg/m2~約66mg/m2以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
血液がんの治療を必要とするヒト対象において血液がんを治療する方法であって、前記方法が、以下の構造を有する有効量の化合物を前記対象に投与することを含み、
【化2】
前記有効量が、24時間の期間当たり約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、それによって、前記対象において前記血液がんを治療する、方法。
【請求項7】
前記有効量が、24時間の期間当たり約5mg/m2~約35mg/m2以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有効量が、24時間の期間当たり約5mg/m2~約10mg/m2以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記有効量が、24時間の期間当たり約35mg/m2~約55mg/m2以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記有効量が、24時間の期間当たり約55mg/m2~約66mg/m2以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記有効量が、治療有効量である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記有効量が、複数の用量を介して投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記有効量が、2回又は3回の用量を介して投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、前記投与ステップの前に、血液がんの治療の必要性があると診断されている、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
血液がんの治療を必要とする対象を特定するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
投与することが、反復投与である、請求項6に記載の方法。
【請求項17】
投与することが、
(a)約4日~約6日の期間にわたって、前記有効量の前記化合物を投与することを含む、第1の治療サイクルと、
(b)約1日~約3日の期間にわたって、前記化合物の投与を控えることを含む、第1の休薬期間と、
(c)約4日~約6日の期間にわたって、前記有効量の前記化合物を投与することを含む、第2の治療サイクルと、
(d)少なくとも約8日の期間にわたって、前記化合物の投与を控えることを含む、第2の休薬期間と、を含む、治療過程を介する、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記有効量が、単回用量で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記有効量が、複数の用量を介して投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
投与することが、
(a)約5日の期間にわたって1日当たり1回、前記有効量の前記化合物を投与することを含む、第1の治療サイクルと、
(b)約2日の期間にわたって、前記化合物の投与を控えることを含む、第1の休薬期間と、
(c)約5日の期間にわたって1日当たり1回、前記有効量の前記化合物を投与することを含む、第2の治療サイクルと、
(d)少なくとも約9日の期間にわたって、前記化合物の投与を控えることを含む、第2の休止期間
とを含む、治療過程を介する、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
前記有効量が、単回用量で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有効量が、複数の用量を介して投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記血液がんが、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、又は孤立性骨髄腫である、請求項6に記載の方法。
【請求項24】
有効量の請求項1に記載の医薬組成物と、
(a)制御されていない細胞増殖の障害の治療に関連する少なくとも1種の薬剤、
(b)制御されていない細胞増殖の障害の治療に関連して前記組成物を投与するための説明書、及び
(c)制御されていない細胞増殖の障害を治療するための説明書
のうちの1つ以上と、を含む、キット。
【請求項25】
前記薬剤が、化学療法剤である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTor阻害剤から選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記抗腫瘍性抗生物質剤が、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記代謝拮抗剤が、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項29】
前記アルキル化剤が、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
前記有糸分裂阻害剤が、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド、ビンクリスチン、イキサベピロン、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項31】
前記mTor阻害剤が、エベロリムス、シロリムス、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体から選択される、請求項26に記載のキット。
【請求項32】
前記医薬組成物及び前記薬剤が、共包装されている、請求項24に記載のキット。
【請求項33】
前記医薬組成物及び前記薬剤が、連続的に投与されるものである、請求項24に記載のキット。
【請求項34】
前記医薬組成物及び前記薬剤が、同時に投与されるものである、請求項24に記載のキット。
【請求項35】
前記制御されていない細胞増殖の前記障害が、がんである、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月23日に出願された米国特許出願第63/014,346号の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
デシタビン及びアザシチジン等のシチジン類似体に基づくDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤は、骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)を有する高齢患者の治療に優れた有効性を有する。しかしながら、多くの制限がある。例えば、多くの患者は、デシタビン又はアザシチジンに応答しない。加えて、治療効果は、それに応答する患者であっても、好中球減少症、血球減少症等の副作用により限定される。最後に、PKプロファイルが不良であるため、治療剤は一般に、注射剤として使用され、したがって患者コンプライアンスが低いことに悩まされる。
【0003】
4’-チオ-5-アザ-2’-デオキシシチジン(アザ-T-dCyd)は、National Cancer Institute(NCI)によって初期の臨床評価に供された新規のDNMT1阻害剤である。この阻害剤は、細胞中の高いDNMT除去及び阻害活性、シチジンデアミナーゼによる分解速度の低下、並びに5-アザシチジン骨格を有する従来の化合物と比較して比較的少ない毒性のある副生成物の生成により、近年注目を集めている。しかしながら、アザ-T-dCydは、MDS及びAML等の血液がんを有する血液がん同所性モデルにおいて高い毒性を示すため、ヒト患者に適用され得る抗がん剤としてのアザ-T-dCydの開発は、困難であった。具体的には、2017年に、固形がんモデル又は他の正常な動物の最大耐用量(MTD)よりも有意に低い1.5~2.0mg/kgの用量で、Aza-T-dCydをALL同所性異種移植片モデルに投与したにもかかわらず、動物において重度の毒性が認められたことが報告され、更なる開発が困難であったことを示している。更に、2018年には、MDS同所性動物モデルにおけるアザ-T-dCydの毒性が、治療効果が観察されないほど重度であったことも報告された。これらの研究を考慮して、血液がんの治療のためのアザ-T-dCydの開発が成功する可能性は低いと判断された。
【0004】
アザ-T-dCydを含むデシタビン、アザシチジン等のシチジン系抗がん剤は、一般的に、ヒトの体内での一人当たりの取り込み又は代謝の速度又は程度の差により、経口投与のための抗がん剤として開発されることが困難であるという問題を有する。すなわち、同じ量で投与されるが、シチジン系抗がん剤は、一人当たりの平均薬物曝露に基づき、極めて高い曝露の変動を有する。具体的には、一個人に対する最適用量は、別の個人に対して治療的に有効ではない可能性があり、更に別の個人に対しては重度の毒性をもたらす用量である可能性さえあり、このため、治療濃度域が非常に狭くなる。
【0005】
韓国特許出願第10-2010-7028070号は、シチジン類似体の経口製剤及びその使用方法に関し、テトラヒドロウリジンではなく5-アザシチジンを含む経口投与用の非腸溶性組成物を提供する。しかしながら、血液がんに対するアザ-T-dCydの抗がん効果の更なる研究が依然として必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的に従って、本明細書において具体化され、広く説明されるように、本発明は、一態様において、特定の投与量範囲のアザ-T-dCydを含む血液がんを治療するための医薬組成物、及びアザ-T-dCydを含む経口投与用組成物を使用して血液がんを治療する方法に関する。
【0007】
したがって、以下の構造を有する治療有効量の化合物と、
【化1】
薬学的に許容され得る担体と、を含む医薬組成物が開示され、治療有効量は、約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。様々な更なる態様において、治療有効量は、約30mg/m2~約70mg/m2以下である。
【0008】
様々な態様において、治療有効量は、約5mg/m2~約35mg/m2以下である。様々な更なる態様において、治療有効量は、約5mg/m2~約10mg/m2以下である。様々な更なる態様において、治療有効量は、約30mg/m2~約70mg/m2以下である。様々な更なる態様において、治療有効量は、約35mg/m2~約45mg/m2以下である。様々な更なる態様において、治療有効量は、約45mg/m2~約55mg/m2以下である。様々な更なる態様において、治療有効量は、約55mg/m2~約66mg/m2以下である。
【0009】
以下の式1のアザ-T-dCydを含み、5~70mg/m2で経口投与される、血液がんを治療するための医薬組成物も開示される。
【化2】
【0010】
様々な態様において、医薬組成物は、5~35mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、5~10mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、30~70mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、35~45mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、45~55mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、55~66mg/m2で経口投与されてもよい。
【0011】
様々な態様において、投与は、以下を含むサイクルで実施されてもよい:(a)4~6日間の組成物の投与、(b)投与(a)後1~3日間の休薬、(c)休薬(b)後4~6日間の組成物の投与、及び(d)投与(c)後8~10日間の休薬。
【0012】
様々な態様において、血液がんは、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、MDS、急性リンパ性白血病、AML、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0013】
開示される医薬組成物を作製する方法も開示される。
【0014】
また、血液がんの治療を必要とするヒト対象においてそれを行う方法も開示され、本方法は、以下の構造を有する有効量の化合物を対象に投与することを含み、
【化3】
有効量は、24時間の期間当たり約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、それによって、対象において血液がんを治療する。
【0015】
また、血液がんの治療を必要とするヒト対象においてそれを行う方法も開示され、本方法は、以下の構造を有する有効量の化合物を対象に投与することを含み、
【化4】
有効量は、24時間の期間当たり約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、それによって、対象において血液がんを治療する。
【0016】
また、血液がんを治療する方法も開示され、これは、以下の式1のアザ-T-dCydを含む経口投与用組成物を、5~70mg/m2の用量で血液がん患者に投与することを含む。
【化5】
【0017】
様々な態様において、投与は、以下を含むサイクルで実施される:(a)4~6日間の組成物の投与、(b)投与(a)後1~3日間の休薬、(c)休薬(b)後4~6日間の組成物の投与、及び(d)投与(c)後8~10日間の休薬。
【0018】
様々な態様において、血液がんは、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、MDS、急性リンパ性白血病、AML、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0019】
また、有効量の開示される医薬組成物と、(a)制御されていない細胞増殖の障害の治療に関連する少なくとも1つの薬剤、(b)制御されていない細胞増殖の障害の治療に関連して組成物を投与するための説明書、及び(c)制御されていない細胞増殖の障害を治療するための説明書、のうちの1つ以上と、を含むキットが開示される。
【0020】
本発明の態様は、システム法定クラス等の特定の法定クラスで説明及び特許請求され得るが、これは便宜のみを目的とし、当業者は、本発明の各態様が任意の法定クラスで説明及び特許請求され得ることを理解するであろう。特に明記されない限り、本明細書に記載の任意の方法又は態様が、そのステップが特定の順序で実施されることを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、請求項又は説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであることを具体的に述べていない場合、いかなる点においても、順序が推論されることは、決して意図されていない。これは、ステップ若しくは操作フローの配置に関する論理の問題、文法構成若しくは句読点に由来する明らかな意味、又は本明細書に記載の態様の数若しくはタイプを含む、解釈のための任意の可能な不明確な基準に適用できる。
【0021】
本発明の上記及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照してその例示的な実施形態を詳細に説明することによって、当業者にはより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】急性骨髄性白血病(AML)実験動物モデルにおける、治療群当たりの生存率及び体重の差の比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:0.4、0.8、又は1.5mpk;シクロホスファミド:100mpk)。
図2】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりの生存率及び体重の差の比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:1.5、2.0、又は2.5mpk;デシタビン:2.5mpk、アザシチジン:5.0mpk)。
図3】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりの全血算(CBC)サンプリングのレベルの比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:1.5、2.0、又は2.5mpk;デシタビン:2.5mpk、アザシチジン:5.0mpk)(WBC:白血球、RBC:赤血球、NEU:好中球)。
図4】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりのCBCサンプリングのレベルの比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:1.5、2.0、又は2.5mpk;デシタビン:2.5mpk、アザシチジン:5.0mpk)(HB:ヘモグロビン、PLT:血小板、LYM:リンパ球)。
図5】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりのCBCサンプリングのレベルの比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:1.5、2.0、又は2.5mpk;デシタビン:2.5mpk、アザシチジン:5.0mpk)(MON:単球、EOS:好酸球)。
図6】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりのCBCサンプリングのレベルの比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:1.5、2.0、又は2.5mpk;デシタビン:2.5mpk、アザシチジン:5.0mpk)(BAS:好塩基球、LUC:大型非染色細胞)。
図7】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりのCBCサンプリングのレベルの比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:1.5、2.0、又は2.5mpk;デシタビン:2.5mpk、アザシチジン:5.0mpk)(MCV:平均赤血球容積、MCH:平均赤血球ヘモグロビン、MCHC:平均赤血球ヘモグロビン濃度、HCT:ヘマトクリット)。
図8】クリアランス(CL)、中心容積(V2)、末梢容積(V3)、及びコンパートメント間クリアランス(Q)についての種間の相対的スケーリング結果を例示する代表的なデータを示す。
図9】AML実験動物モデルにおける、治療群当たりの腫瘍体積及び腫瘍成長率(%)の比較を例示する代表的なデータを示す(アザ-T-dCyd:0.5、1.0、又は2.0mpk;ベネトクラクス:50mpk;及びアザシチジン:2.5又は5.0mpk)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の更なる利点は、以下の説明に部分的に記載され、部分的に説明から明らかになるか、又は本発明の実施によって学ぶことができる。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲で具体的に指摘される要素及び組み合わせによって実現及び達成されるであろう。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求されるように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0024】
本発明は、本発明の以下の詳細な説明及び本発明に含まれる実施例を参照することによってより容易に理解され得る。上記のように、4’-チオ-5-アザ-2’-デオキシシチジン(アザ-T-dCyd)は、ALL等の血液がんを有する動物モデルにおいて、1.5mpkの小用量でも毒性を示す。したがって、アザ-T-dCydを血液がんの治療に使用することは、特に、デシタビン及びアザシチジン等の他のシチジン系薬物と比較して、困難なままである。
【0025】
ここで、アザ-T-dCydを5日間の経口投与(PO)、2日間の休薬、5日間の投与、及び9日間の休薬を通して、1.4~2.6mpkの用量で血液がんマウスモデルに投与することによって、有意な抗がん効果が得られ得ることが実証される。これらのデータを考慮すると、ヒト血液がんに関して、アザ-T-dCydを4~6日間の経口投与(PO)、1~3日間の休薬、4~6日間の投与、及び8~10日間の休薬を通して、30~70mg/m2で投与したとき、有意な抗がん効果が得られる可能性が高い。
【0026】
本発明の化合物、組成物、物品、システム、デバイス、及び/又は方法が開示及び説明される前に、それらは、別途指定されない限り、特定の合成方法に、又は別途指定されない限り、特定の試薬に限定されず、それらは、当然のことながら変更されてもよいことを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定するよう意図されるものではないことを理解されたい。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験で使用され得るが、ここで、例示的な方法及び材料を説明する。
【0027】
本発明の態様は、システム法定クラス等の特定の法定クラスで説明及び特許請求され得るが、これは便宜のみを目的とし、当業者は、本発明の各態様が任意の法定クラスで説明及び特許請求され得ることを理解するであろう。特に明記されない限り、本明細書に記載の任意の方法又は態様が、そのステップが特定の順序で実施されることを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、請求項又は説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであることを具体的に述べていない場合、いかなる点においても、順序が推論されることは、決して意図されていない。これは、ステップ若しくは操作フローの配置に関する論理の問題、文法構成若しくは句読点に由来する明らかな意味、又は本明細書に記載の態様の数若しくはタイプを含む、解釈のための任意の可能な不明確な基準に適用できる。
【0028】
本出願全体をとおして、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、その全体が、本出願に関係する技術水準をより完全に説明するために参照により本出願に援用される。開示される参考文献はまた、参考文献に依る文章で論じられ、それらに含まれる材料について、個別にかつ具体的に参照により本明細書に援用される。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書に提供される刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる可能性があり、これらは、独立した確認を必要とし得る。
【0029】
A.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「官能基(a functional group)」、「アルキル(an alkyl)」、又は「残基(a residue)」への言及は、2つ以上のそのような官能基、アルキル、又は残基等の混合物を含む。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「含むこと」という用語は、「からなること」及び「から本質的になること」という態様を含むことができる。
【0031】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。更に、範囲の各終点は、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解されたい。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「約」及び「又は約」という用語は、問題の量又は値が、およそ又はほぼ同じ何らかの他の値に指定された値であり得ることを意味する。概して、本明細書で使用される場合、それは、別途指示又は推論されない限り、±10%の変動が示される公称値であると理解される。この用語は、同様の値が、特許請求の範囲に列挙される同等の結果又は効果を促進することを伝達するよう意図されている。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、並びに他の量及び特徴は、正確である必要はないが、所望に応じて、許容範囲、変換係数、切り捨て、測定誤差等、及び当業者に既知の他の要因を反映する近似的及び/又はより大きい若しくはより小さいことが可能であることを理解されたい。一般に、量、サイズ、配合、パラメータ、又は他の量若しくは特徴は、そのように明示的に記載されているかどうかにかかわらず、「約」又は「およそ」である。「約」が定量値の前に使用される場合、別段明記されない限り、パラメータは、その特定の定量値自体も含むことが理解される。
【0033】
本明細書及び結びの特許請求の範囲における、組成物中の特定の要素又は構成要素の重量部への言及は、要素又は構成要素と、重量部が表現される組成物又は物品中の任意の他の要素又は構成要素との間の重量関係を示す。したがって、2重量部の構成要素Xと5重量部の構成成分Yとを含有する化合物において、X及びYは、2:5の重量比で存在し、追加の構成成分が化合物中に含有されるかどうかにかかわらず、そのような比で存在する。
【0034】
特に反対の記載がない限り、構成要素の重量パーセント(重量%)は、その構成要素が含まれる製剤又は組成物の総重量に基づいている。
【0035】
本明細書で使用される場合、「EC50」は、生物学的プロセス、又はタンパク質、サブユニット、オルガネラ、リボ核タンパク質等を含むプロセスの構成要素の50%の阻害に必要とされる物質(例えば、化合物又は薬物)の有効濃度を指すよう意図されている。一態様において、EC50は、本明細書の他の箇所で更に定義されるように、インビボでの50%の阻害に必要とされる物質の濃度を指し得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「EC90」は、生物学的プロセス、又はタンパク質、サブユニット、オルガネラ、リボ核タンパク質等を含むプロセスの構成要素の90%の阻害に必要とされる物質(例えば、化合物又は薬物)の有効濃度を指すよう意図されている。一態様において、EC50は、本明細書の他の箇所で更に定義されるように、インビボでの90%の阻害に必要とされる物質の濃度を指し得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「CC50」は、生物学的プロセス、又はタンパク質、サブユニット、オルガネラ、リボ核タンパク質等を含むプロセスの構成要素の50%の阻害に必要とされる物質(例えば、化合物又は薬物)の有効毒性濃度を指すよう意図されている。
【0038】
本明細書で使用される場合、「任意の」又は「任意に」という用語は、それに続いて記載される事象又は状況が、起こる可能性があるか又は起こらない可能性があること、並びにその記載が、当該事象又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、魚、鳥、爬虫類、又は両生類等の脊椎動物であり得る。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、又は齧歯類であり得る。この用語は、特定の年齢又は性別を示すものではない。したがって、成人及び新生児の対象、並びに雌雄を問わない胎児が包含されることが意図される。一態様において、対象は哺乳動物である。患者は、疾患又は障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒト及び動物対象を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患、病態、又は障害を治癒、改善、安定化、又は予防することを意図した患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、具体的に疾患、病態、又は障害の改善に向けた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の原因の除去に向けた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病的な状態、又は障害の治癒ではなく、症状の緩和のために設計された治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的若しくは完全に阻害することに向けられた治療、及び補助的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、又は障害の改善に向けられた別の特定の療法を補充するために使用される治療を含む。様々な態様において、この用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む、対象の任意の治療を包含し、(i)疾患にかかりやすい素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において、疾患が生じるのを予防すること、(ii)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、又は(iii)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすこと、を含む。一態様において、対象は霊長類等の哺乳動物であり、更なる態様において、対象はヒトである。「対象」という用語はまた、飼いならされた動物(例えば、ネコ、イヌ等)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ミバエ等)を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」又は「予防すること(preventing)」という用語は、特に事前の行為によって、何かが起こるのを妨げる、回避する、排除する、未然に防ぐ、阻止する、又は妨害することを指す。減少させる、阻害する、又は予防するが本明細書で使用される場合、具体的に別段の指示がない限り、他の2つの語の使用も明示的に開示される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「診断された」という用語は、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、本明細書に開示される化合物、組成物、又は方法によって診断又は治療することができる状態を有することが見出されたことを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「投与すること」及び「投与」という用語は、対象に医薬調製物を提供する任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、及び皮下投与等の注射剤を含む非経口投与が挙げられるが、これらに限定されない。投与は、連続的又は間欠的であり得る。様々な態様において、調製物は、治療的に投与することができる、すなわち、既存の疾患又は状態を治療するために投与される。更なる様々な態様において、調製物は、予防的に投与され得る、すなわち、疾患又は状態の予防のために投与される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「有効量」及び「有効な量」という用語は、所望の結果を達成するのに十分であるか、又は望ましくない状態に影響を及ぼすのに十分な量を指す。例えば、「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに、又は所望ではない症状に影響を及ぼすのに十分であるが、副作用を引き起こすのに概して不十分である量を指す。任意の特定の患者への具体的な治療有効用量レベルは、治療される障害及び障害の重症度、使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身の健康、性別及び食事;投与時期;投与経路;使用される特定の化合物の排泄率;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物、及び医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。所望であれば、有効な1日用量は、投与のために複数の用量に分割することができる。結果的に、単回用量組成物は、1日用量を構成するためにそのような量又はその約数を含有することができる。任意の禁忌が発生した場合、個々の医師によって投与量が調整され得る。投与量は変動し得、1日又は数日間にわたって毎日1回以上の用量投与で投与され得る。ガイダンスは、所与のクラスの医薬品の適切な投与量についての文献に見出すことができる。更なる様々な態様において、調製物は、「予防有効量」、すなわち、疾患又は状態の予防に有効な量で投与することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「剤形」とは、対象への投与に好適な媒体、担体、ビヒクル、又はデバイスにおける薬理活性材料を意味する。剤形は、本発明の開示される化合物、開示される作製方法の生成物、又はそれらの塩、溶媒和物、若しくは多形体を、防腐剤、緩衝液、食塩水、又はリン酸緩衝生理食塩水等の薬学的に許容され得る賦形剤と組み合わせて含むことができる。剤形は、従来の医薬品製造及び配合技術を使用して作製され得る。剤形は、無機又は有機緩衝液(例えば、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、又はクエン酸塩のナトリウム又はカリウム塩)、及びpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム又はカリウム、クエン酸塩又は酢酸塩、アミノ酸、及びそれらの塩)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、α-トコフェロール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デソキシコール酸ナトリウム)、溶液及び/又は凍結/凍結乾燥安定剤(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調整剤(例えば、塩又は糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、抗発泡剤(例えば、ポリジメチルシロゾン)、防腐剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、高分子安定剤及び粘度調整剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)、並びに共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含むことができる。注射使用のために製剤化された剤形は、防腐剤とともに注射用滅菌生理食塩水中に懸濁された開示される化合物、開示される作製方法の生成物、又はそれらの塩、溶媒和物、又は多形体を有することができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「キット」は、キットを構成する少なくとも2つの構成要素の集合を意味する。全体で、構成要素は、所与の目的の機能単位を構成する。個々の部材構成要素は、物理的に一緒に包装されてもよいか、又は別々に包装されてもよい。例えば、キットを使用するための説明書を含むキットは、他の個々の部材構成要素とともに説明書を物理的に含んでもよいか、又は含まなくてもよい。代わりに、説明書は、別個の部材構成要素として、コンピュータ可読メモリデバイス上に供給されてもよいか、若しくはインターネットウェブサイトからダウンロードされてもよい紙形態若しくは電子形態のいずれかで、又は記録されたプレゼンテーションとして供給され得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「説明書」とは、キットに関する関連材料又は方法を説明する文書を意味する。これらの資料には、以下の任意の組み合わせが含まれ得る:背景情報、構成要素のリスト及びそれらの入手可能性情報(購入情報等)、キットを使用するための簡単又は詳細なプロトコル、トラブルシューティング、参考文献、技術サポート、並びに任意の他の関連文書。説明書は、キットとともに、あるいは別個の部材構成要素として、コンピュータ可読メモリデバイス上に供給されてもよいか、若しくはインターネットウェブサイトからダウンロードされてもよい紙形態若しくは電子形態のいずれかとして、又は記録されたプレゼンテーションとして供給され得る。説明書は、1つ以上の文書を含むことができ、将来の更新を含むことを意図している。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療剤」という用語は、生物(ヒト又は非ヒト動物)に投与されたときに、局所及び/又は全身作用によって所望の薬理学的効果、免疫原性効果、及び/又は生理学的効果を誘導する任意の合成又は自然発生的な生物活性化合物又は物質組成物を含む。したがって、この用語は、タンパク質、ペプチド、ホルモン、核酸、遺伝子構築物等の分子を含む薬物、ワクチン、及びバイオ医薬品と従来見なされる化合物又は化学物質を包含する。治療剤の例は、Merck Index(第14版)、Physicians’Desk Reference(第64版)、及びThe Pharmacological Basis of Therapeutics(第12版)等の周知の文献に記載されており、それらには、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント;疾患若しくは病気の治療、予防、診断、治癒、若しくは軽減に使用される物質;身体の構造若しくは機能に影響を及ぼす物質、又は生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性又はより活性になるプロドラッグが含まれるが、これらに限定されない。例えば、「治療剤」という用語には、アジュバント;抗生物質及び抗ウイルス薬等の抗感染薬;鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、食欲抑制薬、抗炎症薬、抗てんかん薬、局所及び全身麻酔薬、催眠薬、鎮静剤、抗精神病薬、神経弛緩薬、抗うつ薬、抗不安薬、拮抗薬、ニューロン遮断薬、抗コリン作用薬及びコリン様作用薬、抗ムスカリン薬及びムスカリン薬、抗アドレナリン薬、抗不整脈薬、降圧薬、ホルモン、及び栄養素、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗ヒスタミン、抗嘔吐薬、抗悪性腫瘍薬、鎮痒薬、下熱剤;鎮痙薬、循環器官用薬(カルシウムチャネル遮断薬、ベータ-遮断薬、ベータ-作動薬、及び抗不整脈薬を含む)、降圧薬、利尿薬、血管拡張薬;中枢神経刺激剤;感冒薬;充血除去薬;臨床検査薬;ホルモン;骨成長刺激剤及び骨吸収阻害剤;免疫抑制薬;筋弛緩剤;精神刺激薬;鎮静剤;精神安定剤;タンパク質、ペプチド、及びそれらの断片(自然発生的、化学合成、又は組換え生成にかかわらず);並びに核酸分子(2つ以上のヌクレオチド、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれか(二本鎖及び一本鎖分子の両方、遺伝子構築物、発現ベクター、アンチセンス分子等を含む)の高分子形態)、小分子(例えば、ドキソルビシン)、及び例えば、タンパク質及び酵素等の他の生物活性巨大分子を含むが、これらに限定されない全ての主要な治療分野で使用するための化合物又は組成物が含まれる。この薬剤は、獣医学的用途を含む医療用途、及び植物を含むような農業、並びに他の分野で使用される生物活性剤であり得る。「治療剤」という用語には、医薬品;ビタミン;ミネラルサプリメント、疾患若しくは病気の治療、予防、診断、治癒、若しくは軽減に使用される物質;又は身体の構造若しくは機能に影響を及ぼす物質;又は所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性又はより活性になるプロドラッグも含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
「薬学的に許容され得る」という用語は、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない、すなわち、許容されないレベルの望ましくない生物学的効果を引き起こすことのない、又は有害な様式で相互作用することのない、材料を説明する。
【0050】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、親化合物(例えば、本明細書に開示される化合物)の構造に由来する構造を有し、その構造が、本明細書に開示されるものと十分に類似しており、その類似性に基づいており、当業者によって、特許請求される化合物と同じ若しくは類似の活性及び有用性を示すこと、又は前駆体として、特許請求される化合物と同じ若しくは類似の活性及び有用性を誘導することが予想される化合物を指す。例示的な誘導体としては、塩、エステル、及びアミド、エステル若しくはアミドの塩、並びに親化合物のN-オキシドが挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」という用語は、使用直前に滅菌水性又は非水性溶液、分散液、懸濁液、又はエマルジョン、並びに滅菌注射用溶液又は分散液に再構成するための滅菌粉末を指す。好適な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒又はビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、カルボキシメチルセルロース及びそれらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、並びにオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材料を使用することによって、分散液の場合には必要とされる粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持され得る。これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントも含有することができる。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤の包含によって保証することができる。また、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含めることが望ましい場合もある。注射可能な医薬品形態の長期吸収は、吸収を遅延させるモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の薬剤の包含によってもたらされ得る。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、及びポリ(無水物)等の生分解性ポリマー中に、薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。デポー注射用製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによっても調製される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通す濾過によって、又は使用直前に滅菌水又は他の滅菌注射用媒体中に溶解又は分散され得る滅菌固体組成物の形態で、滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。好適な不活性担体としては、ラクトース等の糖を挙げることができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメートルの範囲の有効粒径を有する。
【0052】
特に明記されない限り、本明細書に記載の任意の方法が、そのステップが特定の順序で実施されることを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、そのステップが従う順序を実際に列挙しないか、又は請求項又は説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであることが別段具体的に述べられていない場合、いかなる点においても、順序が推論されることは、決して意図されていない。これは、ステップ若しくは操作フローの配置に関する論理の問題、文法構成又は句読点に由来する明らかな意味、及び本明細書に記載の実施形態の数又はタイプを含む、解釈のための任意の可能な不明確な基準に適用できる。
【0053】
本発明の組成物を調製するために使用される構成要素、及び本明細書に開示される方法内で使用される組成物自体が開示される。これら及び他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合、これらの化合物の各々の様々な個々の及び集合の組み合わせ及び並べ替えの具体的な参照を明示的に開示することはできないが、各々が、本明細書に具体的に企図及び記載されることが理解される。例えば、特定の化合物が開示され、論じられ、化合物を含むいくつかの分子に対して行われ得るいくつかの修飾が論じられる場合、具体的にそうではないと指示されない限り、化合物のあらゆる組み合わせ及び順列、並びに可能な修飾が明確に企図される。したがって、分子A、B、及びCのクラスだけでなく、分子D、E、及びFのクラス、並びに組み合わせ分子の一例として、A-Dが開示される場合、各々が個別に列挙されていない場合でも、各々が個別にかつ集合的に企図され、すなわち、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、及びC-Fが開示されていると見なされる。同様に、これらの任意のサブセット又は組み合わせも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、及びC-Eのサブグループが開示されると見なされるであろう。この概念は、限定されないが、本発明の組成物の作製及び使用方法におけるステップを含む、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施され得る様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップの各々は、本発明の方法の任意の特定の実施形態又は実施形態の組み合わせによって実施され得ることを理解されたい。
【0054】
本明細書に開示される組成物が、ある特定の機能を有することが理解される。開示される機能を実施するためのある特定の構造要件が本明細書に開示され、開示される構造に関連する同じ機能を実施することができる様々な構造があり、これらの構造が典型的には、同じ結果を達成することが理解される。
【0055】
B.医薬組成物
一態様において、以下の構造を有する治療有効量の化合物と、
【化6】
薬学的に許容され得る担体と、を含む医薬組成物が開示され、治療有効量は、約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0056】
一態様において、以下の構造を有する治療有効量の化合物と、
【化7】
薬学的に許容され得る担体と、を含む医薬組成物が開示され、治療有効量は、約30mg/m2~約70mg/m2以下であり、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0057】
一態様において、以下の式1のアザ-T-dCydを含み、5~70mg/m2で経口投与される、血液がんを治療するための医薬組成物が開示される。
【化8】
【0058】
一態様において、以下の式1のアザ-T-dCydを含み、30~70mg/m2で経口投与される、血液がんを治療するための医薬組成物が開示される。
【化9】
【0059】
様々な態様において、本発明の化合物及び組成物は、意図される投与方法に従って製剤化される医薬組成物で投与され得る。本明細書に記載の化合物及び組成物は、1つ以上の生理学的に許容され得る担体又は賦形剤を使用して、従来の方法で製剤化され得る。例えば、医薬組成物は、局所投与又は全身投与、例えば、点滴又は耳への注射による投与、送気(耳等)、静脈内、局所、又は経口投与のために製剤化され得る。
【0060】
当業者によって容易に理解されるように、投与のための医薬組成物の性質は、投与様式に依存し、当業者によって容易に決定され得る。様々な態様において、医薬組成物は、滅菌又は滅菌可能である。本発明に取り上げられる医薬組成物は、担体又は賦形剤を含有することができ、これらの多くは、当業者に既知である。使用され得る賦形剤としては、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、及び重炭酸緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、ポリペプチド(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、水、及びグリセロールが挙げられる。
【0061】
様々な態様において、本発明の医薬組成物は、経口製剤である。組成物の製剤化のために、経口製剤は、1つ以上の緩衝液(例えば、生理食塩水若しくはPBS)、抗酸化剤、抗菌剤、キレート剤(例えば、EDTA若しくはグルタチオン)、充填剤、膨張剤、結合剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、懸濁化剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、希釈剤、又は賦形剤を使用して調製され得る。
【0062】
経口投与のための固体調製物は、錠剤、ピル、粉末、顆粒剤、及びカプセル剤を含んでよく、少なくとも1つの賦形剤、例えば、デンプン(トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン等を含む)、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロキシメチル-セルロース、又はゼラチンを1つ以上の化合物と混合することによって調製されてもよい。例えば、錠剤又は糖衣錠は、活性成分を固体賦形剤と組み合わせ、混合物を粉砕し、好適なアジュバントを添加し、得られた生成物を顆粒混合物に加工することによって得られてもよい。
【0063】
更に、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の潤滑剤も使用される。経口投与用の液体調製物としては、懸濁化剤、内服用液体、エマルジョン、又はシロップが使用され、一般的に使用される水又は液体パラフィン等の単純希釈剤以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、香料、及び防腐剤も含まれてもよい。更に、場合によっては、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムが崩壊剤として添加されてもよく、抗凝固剤、芳香族化合物、乳化剤、可溶化剤、分散剤、香味剤、抗酸化剤、包装剤、顔料、及び防腐剤が更に含まれてもよい。
【0064】
使用される薬学的担体は、例えば、固体、液体、又は気体であり得る。固体担体の例としては、ラクトース、テラアルバ、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、シュガーシロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、及び水である。気体担体の例としては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。
【0065】
経口剤形のための組成物の調製において、任意の便利な薬学的媒体を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等は、懸濁液、エリキシル剤及び溶液等の経口液体調製物を形成するために使用することができ、一方、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の担体は、粉末、カプセル及び錠剤等の経口固体調製物を形成するために使用することができる。投与が容易であるため、錠剤及びカプセルが好ましい経口投与単位であり、それによって固体の薬学的担体が用いられる。任意に、錠剤は、標準の水性又は非水性技術によってコーティングされ得る。
【0066】
本発明の組成物を含有する錠剤は、任意に1つ以上の副成分又はアジュバントとともに、圧縮又は成形することによって調製され得る。圧縮錠剤は、好適な機械において、任意に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤、又は分散剤と混合された粉末又は顆粒等の自由流動形態で、活性成分を圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、好適な機械において、不活性液体希釈剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を成形することによって作製され得る。
【0067】
上述の担体成分に加えて、上記の医薬製剤は、必要に応じて、希釈剤、緩衝液、香味剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(抗酸化剤を含む)等の1つ以上の追加の担体成分を含むことができる。本発明の化合物、及び/又はその薬学的に許容され得る塩を含有する組成物はまた、粉末又は液体濃縮物形態で調製され得る。
【0068】
様々な態様において、医薬組成物は、5~35mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、5~10mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、35~45mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、45~55mg/m2で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、55~66mg/m2で経口投与されてもよい。
【0069】
様々な態様において、医薬組成物は、24時間の期間当たり5mg/m2~35mg/m2以下で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、24時間の期間当たり5mg/m2~10mg/m2以下で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、24時間の期間当たり35mg/m2~45mg/m2以下で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、24時間の期間当たり45mg/m2~55mg/m2以下で経口投与されてもよい。様々な更なる態様において、医薬組成物は、24時間の期間当たり55mg/m2~66mg/m2以下で経口投与されてもよい。
【0070】
様々な態様において、投与は、以下を含むサイクルで実施されてもよい:(a)4~6日間の組成物の投与、(b)投与(a)後1~3日間の休薬、(c)休薬(b)後4~6日間の組成物の投与、及び(d)投与(c)後8~10日間の休薬。様々な更なる態様において、投与は、以下を含むサイクルで実施される:(a)5日間の組成物の投与、(b)投与(a)後2日間の休薬、(c)休薬(b)後5日間の組成物の投与、及び(d)投与(c)後9日間の休薬。
【0071】
様々な態様において、医薬組成物は、例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、MDS、急性リンパ性白血病、AML、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫等の血液がんを治療するために使用される。様々な更なる態様において、血液がんは、MDS及びAMLからなる群から選択されるいずれか1つ以上である。
【0072】
開示される組成物は、開示される化合物から調製され得ることが理解される。開示される組成物は、開示される使用方法で用いられ得ることも理解される。
【0073】
C.組成物を使用するための方法
本発明の医薬組成物は、例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、MDS、急性リンパ性白血病、AML、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫等の血液がんを治療又は制御する際に有用である。血液がんを治療又は制御するために、化合物及び化合物を含む医薬組成物は、それを必要とする対象に投与される。「対象」という用語は、特定の年齢又は性別を示すものではない。したがって、成人及び新生児の対象、並びに雌雄を問わない胎児が包含されることが意図される。組成物を投与する前に、対象は、血液がんの治療の必要性がある診断され得る。
【0074】
化合物又は組成物は、任意の方法に従って対象に経口投与され得る。投与は、連続的又は間欠的であり得る。調製物は、治療的に投与、すなわち、既存の血液がんを治療するために投与され得る。調製物はまた、予防的に投与、すなわち、血液がんの予防のために投与され得る。
【0075】
化合物の治療有効量又は投与量は、広い限度内で変動し得る。そのような投与量は、投与される特定の化合物、投与経路、治療されている状態、及び治療されている患者を含む、各特定の症例における個々の要件に応じて調整される。一般に、体重が約70Kg以上の成人ヒトへの経口投与の場合、上限を超えてもよいが、約10mg~約10,000mg、好ましくは約200mg~約1,000mgの1日投与量が適切であるべきである。1日投与量は、単回用量として、又は分割用量で投与され得る。単回用量組成物は、1日用量を構成するためにそのような量又はその約数の化合物又は組成物を含有することができる。任意の禁忌が発生した場合、個々の医師によって投与量が調整され得る。投与量は変動し得、1日又は数日間にわたって毎日1回以上の用量投与で投与され得る。
【0076】
1.治療方法
本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、MDS、急性リンパ性白血病、AML、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫等の血液がんを治療又は制御するのに有用である。したがって、治療有効量の開示される化合物を含む医薬組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。更なる態様において、本方法は、血液がんを治療するための方法であり得る。
【0077】
A.血液がんの治療
一態様において、血液がんの治療を必要とするヒト対象においてそれを行う方法も開示され、本方法は、以下の構造を有する有効量の化合物を対象に投与することを含み、
【化10】
有効量は、24時間の期間当たり約5mg/m2~約70mg/m2以下であり、それによって、対象において血液がんを治療する。
【0078】
一態様において、血液がんの治療を必要とするヒト対象においてそれを行う方法も開示され、本方法は、以下の構造を有する有効量の化合物を対象に投与することを含み、
【化11】
有効量は、24時間の期間当たり約30mg/m2~約70mg/m2以下であり、それによって、対象において血液がんを治療する。
【0079】
一態様において、血液がんを治療する方法も開示され、これは、以下の式1のアザ-T-dCydを含む経口投与用組成物を、5~70mg/m2の用量で血液がん患者に投与することを含む。
【化12】
【0080】
一態様において、血液がんを治療する方法も開示され、これは、以下の式1のアザ-T-dCydを含む経口投与用組成物を、30~70mg/m2の用量で血液がん患者に投与することを含む。
【化13】
【0081】
「経口投与」は、医薬組成物で使用される概念と同じであり、その説明は、上記の説明によって置き換えられる。
【0082】
様々な態様において、経口投与用の組成物は、5~35mg/m2で投与されてもよい。様々な更なる態様において、経口投与用の組成物は、5~10mg/m2で投与されてもよい。様々な更なる態様において、経口投与用の組成物は、35~45mg/m2で投与されてもよい。様々な更なる態様において、経口投与用の組成物は、45~55mg/m2で投与されてもよい。様々な更なる態様において、経口投与用の組成物は、55~66mg/m2で投与されてもよい。
【0083】
様々な態様において、有効量は、24時間の期間当たり約5mg/m2~約35mg/m2以下である。様々な更なる態様において、有効量は、24時間の期間当たり約5mg/m2~約10mg/m2以下である。様々な更なる態様において、有効量は、24時間の期間当たり約35mg/m2~約45mg/m2以下である。様々な更なる態様において、有効量は、24時間の期間当たり約45mg/m2~約55mg/m2以下である。様々な更なる態様において、有効量は、24時間の期間当たり約55mg/m2~約66mg/m2以下である。
【0084】
様々な態様において、有効量は、治療有効量である。様々な更なる態様において、有効量は、予防有効量である。
【0085】
様々な態様において、有効量は、単回用量で投与される。様々な更なる態様において、有効量は、複数の用量を介して投与される。様々な更なる態様において、有効量は、2回又は3回の用量を介して投与される。様々な更なる態様において、有効量は、2回の用量を介して投与される。様々な更なる態様において、有効量は、3回の用量を介して投与される。
【0086】
様々な態様において、対象は、投与ステップの前に、血液がんの治療の必要性があると診断されている。様々な更なる態様において、方法は、血液がんの治療を必要とする対象を特定するステップを更に含む。
【0087】
様々な態様において、投与することは、反復投与である。
【0088】
様々な態様において、投与することは、約4日~約6日の期間である。様々な更なる態様において、投与することは、約4日~約5日の期間である。様々な更なる態様において、投与することは、約5日~約6日の期間である。様々な更なる態様において、投与することは、約4日間の期間である。様々な更なる態様において、投与することは、約5日間の期間である。様々な更なる態様において、投与することは、約6日間の期間である。
【0089】
様々な態様において、投与することは、治療サイクルを介している。更なる態様において、投与することは、複数の治療サイクル及び複数の休薬期間を含む治療過程を介している。
【0090】
更なる態様において、各治療サイクルは、約4日~約6日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む。なお更なる態様において、各治療サイクルは、約4日~約5日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む。なお更なる態様において、各治療サイクルは、約5日~約6日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む。なお更なる態様において、各治療サイクルは、約4日間の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む。なお更なる態様において、各治療サイクルは、約5日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む。なお更なる態様において、各治療サイクルは、約6日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む。
【0091】
更なる態様において、各休薬期間は、約1日~約10日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約1日~約8日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約1日~約6日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約1日~約4日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約1日~約2日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約2日~約10日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約4日~約10日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約6日~約10日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。なお更なる態様において、各休薬期間は、約8日~約10日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む。
【0092】
様々な態様において、投与することは、(a)約4日~約6日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む、第1の治療サイクルと、(b)約1日~約3日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む、第1の休薬期間と、(c)約4日~約6日の期間にわたって、有効量の化合物を投与することを含む、第2の治療サイクルと、(d)少なくとも約8日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む、第2の休薬期間と、を含む、治療過程を介している。
【0093】
様々な態様において、投与は、以下を含むサイクルで実施される:(a)4~6日間の組成物の投与、(b)投与(a)後1~3日間の休薬、(c)休薬(b)後4~6日間の組成物の投与、及び(d)投与(c)後8~10日間の休薬。様々な更なる態様において、投与は、以下を含むサイクルで実施される:(a)5日間の組成物の投与、(b)投与(a)後2日間の休薬、(c)休薬(b)後5日間の組成物の投与、及び(d)投与(c)後9日間の休薬。
【0094】
様々な態様において、投与することは、(a)約5日の期間にわたって1日当たり1回、有効量の化合物を投与することを含む、第1の治療サイクルと、(b)約2日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む、第1の休薬期間と、(c)約5日の期間にわたって1日当たり1回、有効量の化合物を投与することを含む、第2の治療サイクルと、(d)少なくとも約9日の期間にわたって、化合物の投与を控えることを含む、第2の休薬期間と、を含む、治療過程を介している。
【0095】
様々な態様において、有効量は、単回用量で投与される。様々な更なる態様において、有効量は、複数の用量を介して投与される。様々な更なる態様において、有効量は、ある日は単回用量を介して、及び他の日は複数回用量を介して投与される。
【0096】
様々な態様において、血液がんは、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、MDS、急性リンパ性白血病、AML、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び孤立性骨髄腫からなる群から選択されるいずれか1つ以上であってもよい。様々な更なる態様において、血液がんは、MDS及びAMLからなる群から選択されるいずれか1つ以上である。
【0097】
様々な態様において、本方法は、有効量の少なくとも1つの化学療法剤を投与するステップを更に含む。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTor阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
更なる態様において、組成物及び化学療法剤は、連続的に投与される。なお更なる態様において、組成物及び化学療法剤は、同時に投与される。
【0099】
更なる態様において、組成物及び化学療法剤は、共製剤化される。なお更なる態様において、組成物及び化学療法剤は、共包装される。
【0100】
2.化合物及び組成物の使用
一態様において、本発明は、開示される組成物の使用に関する。更なる態様において、使用は、対象において血液がんを治療するための医薬品の製造に関する。
【0101】
更なる態様において、使用は、医薬品として使用するために開示される医薬組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0102】
更なる態様において、使用は、開示される医薬組成物を調製するためのプロセスに関し、薬学的に許容され得る担体は、治療有効量の化合物と密接に混合される。
【0103】
様々な態様において、使用は、対象における血液がんの治療に関する。一態様において、使用は、対象がヒトであることを特徴とする。一態様において、使用は、血液がんが、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、又は孤立性骨髄腫であることを特徴とする。
【0104】
更なる態様において、使用は、対象において血液がんを治療するための医薬品の製造に関する。一態様において、使用は、血液がんが、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、又は孤立性骨髄腫であることを特徴とする。
【0105】
3.医薬品の製造
一態様において、本発明は、血液がんを有するヒト対象において血液がんを治療するための医薬品の製造方法に関し、本方法は、治療有効量の開示される化合物を薬学的に許容され得る担体又は希釈剤と組み合わせることを含む。
【0106】
これらの用途に関して、本方法は、治療有効量の組成物をヒトに投与することを含む。本発明の文脈において、ヒトに投与される用量は、合理的な時間枠にわたってヒトにおける治療応答に影響を及ぼすのに十分であるべきである。当業者であれば、投与量が、ヒトの状態及びヒトの体重を含む様々な要因に依存することを認識するであろう。
【0107】
典型的な治療で投与される本開示の組成物の総量は、1日用量当たり、好ましくはマウスの体重では約10mg/kg~約1000mg/kg、並びにヒトの体重では約100mg/kg~約500mg/kg、及びより好ましくは200mg/kg~約400mg/kgである。この総量は、必ずしもそうではないが典型的には、1日当たり約1回~1日当たり約3回を約24か月の期間にわたって、及び好ましくは1日当たり2回を約12か月の期間にわたって、一連のより小さい用量として投与される。
【0108】
用量のサイズはまた、投与の経路、タイミング、及び頻度、並びに組成物の投与及び所望の生理学的効果に付随し得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によって決定される。様々な状態又は疾患状態、特に慢性状態又は疾患状態が、複数の投与を伴う長期間の治療を必要とし得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【0109】
したがって、一態様において、本発明は、開示される化合物、又はその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、若しくは多形体を、薬学的に許容され得る担体若しくは希釈剤と組み合わせることを含む、医薬品の製造に関する。
【0110】
4.キット
一態様において、有効量の開示される医薬組成物と、(a)制御されていない細胞増殖の障害の治療に関連する少なくとも1つの薬剤、(b)制御されていない細胞増殖の障害の治療に関連して組成物を投与するための説明書、及び(c)制御されていない細胞増殖の障害を治療するための説明書、のうちの1つ以上と、を含むキットが開示される。
【0111】
更なる態様において、薬剤は、化学療法剤である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、及びmTor阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
更なる態様において、化学療法剤は、アルキル化剤である。アルキル化剤の例としては、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン、及びストレプトゾシン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
更なる態様において、化学療法剤は、代謝拮抗剤である。代謝拮抗剤の例としては、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
更なる態様において、化学療法剤は、抗腫瘍性抗生物質剤である。抗腫瘍性抗生物質剤の例としては、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン、及びバルルビシン、又はそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
更なる態様において、化学療法剤は、有糸分裂阻害剤である。有糸分裂阻害剤の例としては、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、エトプシド、ビンクリスチン、イキサベピロン、ビノレルビン、ビンブラスチン、及びテニポシド、又はそれらの薬学的に許容され得る塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
更なる態様において、化学療法剤は、mTor阻害剤である。mTor阻害剤の例としては、エベロリムス、シロリムス、及びテムシロリムス、又はそれらの薬学的に許容され得る塩、水和物、溶媒和物、若しくは多形体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
様々な態様において、医薬組成物及び薬剤は、共包装される。様々な更なる態様において、医薬組成物及び薬剤は、共製剤化される。
【0118】
様々な更なる態様において、医薬組成物及び薬剤は、連続的に投与される。様々な更なる態様において、医薬組成物及び薬剤は、同時に投与される。
【0119】
様々な態様において、制御されていない細胞増殖の障害は、がんである。様々な更なる態様において、がんは、血液がんである。
【0120】
本開示の実施形態の上記の説明は、当業者が本発明を作製又は使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書に記載の一般的な原理は、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用され得る。したがって、本明細書に提示される説明及び図面は、本発明の現在好ましい実施形態を表し、したがって、本発明によって広く企図される主題を表すものであることを理解されたい。本発明の範囲は、当業者に明らかになり得る他の実施形態を完全に包含し、したがって、本発明の範囲が限定されないことが更に理解される。
【実施例
【0121】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法の作製方法及び評価方法の完全な開示及び説明を提供するために示されるものであり、純粋に例示的であることを意図するものであって、本開示を限定するものではない。数値(例えば、量、温度等)に関して正確さを確保するように努力がなされてはいるが、多少の誤差及び偏差は、考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は、重量部であり、温度は、℃であるか、又は周囲温度であり、圧力は、大気圧又はその付近である。
【0122】
1.アザ-T-dCydの用量の決定
骨髄移植を受けることができない高齢患者、すなわち、デシタビン及びアザシチジンの主要標的の場合、骨髄における毒性は、投与の用量を決定する限界用量となり、したがって、安全な投与を可能にする最大用量が決定されることになった。
【0123】
0.4~2.5mpkのアザ-T-dCydを1サイクル(5日間の経口投与(PO)、2日間の休薬、5日間の投与、及び9日間の休薬)で正常マウスに投与した後、骨髄を抽出し、次いで、骨髄を構成する各細胞の生存率及び組成変化を観察した。
【0124】
結果として、最大2.0mpkまで、骨髄における各細胞の生存率及び組成に有意な変化はなかったことが確認できる。2.0~2.5mpkは、ALLモデルにおいて高い毒性を示すことが報告された1.5mpkの用量と重複する範囲であり、したがって、この範囲の用量での投与は、治療を必要とすると予想されたが、骨髄に対する毒性に有意な影響を及ぼさなかったため、報告された毒性は、一般的ではなく、疾患特異的であると決定された。しかしながら、2.5mpkでは、骨髄の有意な変化が観察され始め、2.5mpkよりも低い用量で有効性が確認された場合、関連する用量を、好ましくない用量として決定した。
【0125】
Molm13 AML細胞を皮下移植した異種移植片モデルに、上記のようなアザ-T-dCydを1サイクル投与した結果として、1.5又は2.5mpkのアザ-T-dCydをPO投与した場合、腫瘍退縮に近い優れた抗がん効果が示されたことが確認できる。
【0126】
MV4-11 AML細胞を骨髄に移植した全身AMLモデルに0.4~2.5mpkのアザ-T-dCydをPO投与する3サイクルの結果として、2.0mpkのアザ-T-dCydの投与が、非常に優れた生存率改善を示し、マウスの体重を含む臨床観察も正常範囲に留まったことが確認された。2.5mpkのアザ-T-dCydのPO投与は、一部の対象の死亡をもたらし、1.5mpkのアザ-T-dCydのPO投与の場合、2.0~2.5mpkのアザ-T-dCydのPO投与の有効性に達しなかった有効性が示された(図1)。
【0127】
2.0のmpkのPOでのPK測定の結果として、曲線下総面積(AUC)が、約25%(±12.5%)の最大範囲で変化していることが確認され、その変化を包含する投与用量範囲が、1.4~2.6mpkのPOであることが確認された。
【0128】
1.5、2.0、又は2.5mpkのPOの1サイクルで、MV4-11 AML細胞を骨髄に移植した全身AMLモデルにアザ-T-dCydを投与し、対照としてデシタビン及びアザシチジンを最適用量で投与した結果として、デシタビンが、生存率改善を示さず、アザシチジンが、限られたレベルの生存率改善を示したが、2.0mpkのアザ-T-dCydの投与が、非常に優れた生存率改善を示したことが確認でき、体重を含む臨床観察も正常範囲に留まることが確認された(図2)。
【0129】
2.高齢患者へのアザ-T-dCydの適用
上記の実験プロセスで血液試料を採取することによって血液分析を実施して、上記の実施例1で決定された用量のアザ-T-dCydが高齢AML患者において使用され得るかどうかを確認した。
【0130】
結果として、白血球(WBC)、好中球、血小板、又は赤血球(RBC)レベル等の主要パラメータに変化がなかったことが確認された。しかしながら、デシタビン治療群では、全ての対象が血液試料採取前に既に死亡していた一方で、アザシチジン治療群では、対象は、1回目の血液試料採取まで生存していたが、重度の好中球減少症を示し、対象の一部は、2回目の血液試料採取時に重度の腫瘍負荷を示した。
【0131】
すなわち、本発明に従った最適な医薬組成物(マウスに基づき有効成分として1.4~2.6mpkのアザ-T-dCydを含む組成物)は、従来のアザ-T-dCydの研究ではまだ確認されていなかったMDS/AMLに対する優れた治療効果を示し、デシタビン及びアザシチジン等の従来の市販薬と比較して、有効性が予想外のレベルであったことが確認された(図3)。
【0132】
3.ヒトに対するアザ-T-dCydの用量の決定
A.種間スケーリングによるヒトパラメータ予測
ヒトに対する用量を、マウス、ラット、又はイヌのPKデータに基づいて決定し、上記の実施例1で決定されたアザ-T-dCydの用量を、ヒトに対するその用量に変換した。PKパラメータを相対成長スケーリングし、70kgのヒトにおけるPKを推定するために使用した。詳細を次のセクションに記載する。予測されるヒトPKパラメータを以下の表1に示す。また、図3及び図7も参照されたい。
【表1】
【0133】
B.CL、Vc、Vp、及びQの相対成長スケーリング
単純な相対成長スケーリングを使用して、CL、Vc、Vp、及びQを予測した。Yは、PKパラメータであり、BWは、体重であり、aは、相対成長係数であり、bは、相対成長指数である。最終的なPKパラメータ、CL、Vc、Vp、及びQを、ベストフィットラインに基づいて推定した(図8)。
【0134】
C.他のヒトPKパラメータの予測:Ka、F
3種からの平均吸収速度定数(Ka)及びバイオアベイラビリティ(F)は、それぞれ約2.63h-1及び0.54であった。3種のTmax範囲は、0.25~2時間であった。ヒトにおけるTmaxが1時間であると仮定すると、Kaは、2.8h-1と推定され、これは、3種からの平均Kaと変わらない。文献で報告されている式によって計算されたヒトFは、約0.65(マウスから)、0.59(ラットから)、又は0.66(イヌから)であった。Musther et al.(2014)European Journal of Pharmaceutical Sciences 57:280-291を参照されたい。上記の結果を考慮して、ヒトKa及びFを、それぞれ2.8h-1及び0.6に設定した。表2は、ヒトバイオアベイラビリティの予測のための参照表を表す(マウスから:F_ヒト=0.507*50.65+39.478=65.16、ラットから:F_ヒト=0.544*43.2+35.759=59.26、イヌから:F_ヒト=0.580*68.7+26.433=66.28)。
【0135】
D.デシタビンPKパラメータを使用したヒトPKのシミュレーション
動物のデシタビンIVデータを使用して予測されたヒトデシタビンCLは、約7L/時間であり、文献で報告されているデシタビンクリアランス(152L/時間)とは有意に異なった。これはおそらく、シチジンデアミナーゼの種の違いによるものであった。動物におけるアザ-T-dCyd及びデシタビンのNCAパラメータは、類似していた(表2)。したがって、種間スケーリングによって予測されたヒトPKパラメータの代わりに、デシタビンPKパラメータ(CL、Vc、Vp、Q)を使用して、ヒトシミュレーションを実施した。吸収速度定数(Ka)及びバイオアベイラビリティ(F)については、動物パラメータを使用した。この(ヒト)シミュレーションで使用されたPKパラメータを表3に示す。
【表2】

【表3】

【0136】
結果として、アザ-T-dCydの用量が5mg/m2~70mg/m2であった場合、血液がんに対する抗がん効果が示されたことが確認された。理論によって束縛されることを望むものではないが、これは、従来使用されていたデシタビン又はアザシチジン等の同じシチジン系薬物ファミリーによって到達不可能であるレベルでの優れた有効性であり、アザ-T-dCydに関する従来の報告によると、そのレベルは、毒性を有すると予想されるレベルの用量に対応する。表4は、マウスPK結果から測定したAUC値、及びヒトについての用量でシミュレートした数値(計算値)を示す。
【表4】
【0137】
4.アザ-T-DYCD及びベネトクラクスの併用治療
MV4-11 AML細胞を皮下移植した異種移植片AMLモデルに、2.0mpkのアザ-T-dCydを1サイクル(5日間のPO投与、2日間の休薬、5日間のPO投与、及び9日間の休薬)で投与した後、又は50mpkのベネトクラクスと組み合わせた0.5、1.0、若しくは2.0mpkのアザ-T-dCydを1サイクル(5日間のPO投与及び2日間の休薬を3週間)で投与した後、抗がん効果を観察した。5.0mpkのアザシチジン単独、又は50mpkのベネトクラクスと組み合わせた2.5mpkのアザシチジンを、対照として腹腔内(IP)投与した。
【0138】
結果として、2.0mpkのアザ-T-dCyd単独の投与は、非常に優れた抗がん効果を示した。また、ベネトクラクスと組み合わせた0.5mpk(15mg)のアザ-T-dCydの投与は、2.0mpkのアザ-T-dCyd単独の投与と類似した非常に優れた抗がん効果を示した。しかしながら、アザシチジン単独の投与は、腫瘍体積の減少を示さず、ベネトクラクス単独の投与は、限られたレベルの腫瘍退縮を示した。
【0139】
理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明に従って、4’-チオ-5-アザ-2’-デオキシシチジン(アザ-T-dCyd)、及びアザ-T-dCydを含む血液がんを治療するための医薬組成物を使用して、血液がんを治療する方法は、以前に毒性であることが知られているアザ-T-dCydの用量でも、血液がんマウスモデル又はヒトにおいて毒性を伴わず、血液がんに対する有意な治療効果を提供することができる。
【0140】
本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明の上記の例示的な実施形態に様々な修正が加えられ得ることが、当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は、それらが添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内であるという条件で、全てのそのような修正を包含することが意図される。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
【国際調査報告】