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特表2023-524918一体化された閉鎖部を含む無結節縫合
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】一体化された閉鎖部を含む無結節縫合
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20230607BHJP
   A61L 17/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61L 17/04 20060101ALI20230607BHJP
   A61L 17/06 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61B17/06 510
A61L17/00
A61L17/04
A61L17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021505947
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 US2020049494
(87)【国際公開番号】W WO2021230900
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/025,433
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/047,104
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521044523
【氏名又は名称】モリバー、クレイトン エル.
【氏名又は名称原語表記】MOLIVER,Clayton L.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】モリバー、クレイトン エル.
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC02
4C081BA16
4C081BB08
4C081BC02
4C081DA04
4C081DA06
4C081DB01
4C160BB18
4C160MM22
(57)【要約】
自己保持縫合糸は、組織を貫通するための第1の端部と、縫合糸を通る断続的な開口の存在により、対向する組織面をともに堅固に保持する無結節の縫合糸ループ閉鎖の形成を可能にするように形成された複数の断続的な開口を含む長尺状の縫合糸本体とを有する。縫合糸本体の一方向の通過を可能にし、したがって、後方に滑らない縫合糸内に自己保持又は自己係合ループを形成する。縫合糸の断続的な開口の1つを通して縫合糸を引っ張ることによって組織面の間に所望のサイズのループが形成されると、縫合糸はクリップ留めされ、縫合糸に固定された残りの縫合糸を使用してさらなるループが開始される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己保持縫合糸において、
縫合針に固定され、又は固定可能である、縫合糸であって、前記縫合糸は、前記針に固定され、又は固定可能な第1の端部と、長尺状の無結節の縫合糸本体であって、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿って一定の間隔で配列された複数の視覚的に識別可能な開口を含む複数開口区分を有した長尺状の無結節縫合糸本体とを備え、前記開口は、前記縫合針が開口を通過することにより、長尺状の前記縫合糸本体を横方向に貫通することを可能にし、かつ、前記第1の端部の配備方向と実質的に反対の方向への縫合糸の後方移動に抵抗するように寸法が定められていることによって、創傷の対向する組織表面の間に配備された時に縫合糸の一方向自己保持ループを形成し、前記縫合糸本体の前記複数の視覚的に識別可能な開口により、糸結びを使用せずに前記創傷の全体に一連の一方向自己保持ループを形成することができる、自己保持縫合糸。
【請求項2】
前記開口が互いに実質的に隣接して、前記開口のチェーンを形成する、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項3】
前記隣接する開口が概ね同じ直径である、請求項2に記載の自己保持縫合糸。
【請求項4】
前記隣接する開口が、より大きな直径の開口とより小さな直径の開口とが交互に現れる、請求項2に記載の自己保持縫合糸。
【請求項5】
前記縫合糸本体は可撓性を有し、張力を加えると開口を変形及び平坦化することができる、請求項2に記載の自己保持型縫合糸。
【請求項6】
前記縫合糸本体に棘がある、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項7】
前記縫合糸本体が生体吸収性である、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項8】
前記縫合糸本体が非生体吸収性である、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項9】
前記複数の開口のそれぞれは、視覚的に識別可能な独特の着色を有する、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項10】
前記複数の開口のそれぞれが、視覚的に識別可能な独特の色を有する複数のロケーターバンドのうちの1つに配置されている、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項11】
前記縫合針は、鋭利な近位の針先端から幅広の遠位の針ハブまでテーパ状になっており、幅広の前記遠位の針ハブは、前記複数開口区分における前記少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口の最も外側の寸法に近い最も外側の寸法を有する、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項12】
前記長尺状の無結節縫合糸本体は、幅広の前記遠位の針ハブから複数開口区分まで延びるリーダー区分をさらに備える、請求項11に記載の自己保持縫合糸。
【請求項13】
前記リーダー部分は、幅広の前記遠位の針ハブの最も外側の寸法とほぼ一致する外側寸法を有する、請求項12に記載の自己保持縫合糸。
【請求項14】
長尺状の前記無結節縫合糸が、前記縫合針と前記複数開口区分との間に延びるテーパ状のリーダーを備え、前記テーパ状のリーダーが、縫合針に取り付けられた第1の狭いリーダー端から、複数開口区分まで延びる、幅広の末端のリーダー端までテーパ状になり、幅広の前記リーダー端は、前記複数開口区分にある前記少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口の最も外側の寸法に近い、最も外側の寸法を有する、請求項1に記載の自己保持縫合糸。
【請求項15】
自己保持縫合糸において、
縫合糸に固定され、又は固定可能である縫合糸であって、前記縫合糸は、針に固定され、又は固定可能な第1の端部と、長尺状の無結節の縫合糸本体であって、前記縫合糸本体に沿って長手方向に一定の間隔で配列された複数の視覚的に識別可能な開口を備える複数開口区分を有する長尺状の無結節縫合糸本体と、前記縫合糸本体に沿って長手方向に一定の間隔で配列された複数の隆起とを有し、前記複数の隆起のうちの1つ以上及び複数の開口のうちの1つ以上が、繰り返し、交互、又は断続的なパターンで配列され、前記縫合針の前方への引っ張りによってもたらされる張力がかかる時に前記開口を通る前記隆起の通過を可能にするが、前記第1の端部の配備方向と実質的に反対の方向への前記開口を通る前記縫合糸の後方移動に抵抗するために、前記開口は可撓性を有し、かつ寸法が決定され、これにより、対向する組織表面の間に一方向にロックされた縫合糸のループを形成し、及び複数の前記視覚的に識別可能な開口により、糸結びを使用せずに、創傷全体にわたって一連の一方向の自己保持ループを形成することができる、自己保持縫合糸。
【請求項16】
前記縫合糸本体の前記隆起が概ね球形である、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項17】
前記縫合糸本体の前記隆起は、形状が概ね円錐形であり、前記縫合糸の前記第1の端部に向かう円錐形の前縁は、前記円錐形の末端よりも円周が小さい、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項18】
前記縫合糸が生体吸収性又は非生体吸収性材料で形成されている、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項19】
前記隆起は、圧縮によって変形可能かつ屈曲可能であることによって、ループ形成開口を通って後方に引っ張ることができない寸法を達成する、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項20】
前記視覚的に識別可能な開口のそれぞれが独特の色で識別される、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項21】
前記視覚的に識別可能な開口のそれぞれが、視覚的に識別可能な独特の色を有する複数のロケーターバンドのうちの1つに配置されている、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項22】
前記縫合針は、鋭利な近位の針先端から幅広の遠位の針ハブまでテーパ状になっており、幅広の前記遠位の針ハブは、前記複数開口区分にある前記少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口の最も外側の寸法に近い、最も外側の寸法を有する、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項23】
前記長尺状の無結節縫合糸本体は、前記幅広の遠位の針ハブから前記複数開口区分まで延びるリーダー区分をさらに備える、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項24】
前記リーダー部分は、前記幅広の遠位の針ハブの最も外側の寸法とほぼ一致する外側寸法を有する、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項25】
前記長尺状の無結節縫合糸は、テーパ状のリーダーであって、前記縫合針と前記複数開口区分との間に延在し、前記縫合針に取り付けられた第1の狭いリーダー端から、前記複数開口区分まで延びる幅広の末端リーダー端までテーパ状になる、テーパ状のリーダーを備え、幅広の前記末端リーダー端部は、前記複数開口区分の前記少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口の最も外側の寸法に近い、最も外側の寸法を有する、請求項15に記載の自己保持縫合糸。
【請求項26】
自己保持縫合糸において、
縫合針に固定され、又は固定可能である、縫合糸であって、前記縫合糸は、前記針に固定され、又は固定可能な第1の端部と、長尺状の無結節の縫合糸本体であって、前記縫合糸本体の長手方向の平面を横方向に貫通して、かつ、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿って一定の間隔で配列された複数の視覚的に識別可能な開口を含む複数開口区分を有した長尺状の無結節縫合糸本体と、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿って配置された複数の棘とを備え、前記開口は、前記縫合針が開口を通過することにより、長尺状の前記縫合糸本体を横方向に貫通することを可能にし、かつ、前記棘が前記第1の端部の配備方向と実質的に反対の方向への縫合糸の後方移動に抵抗するように寸法が定められていることによって、対抗する組織の表面の間にある縫合糸に一方向自己保持ループを形成し、前記縫合糸本体の前記複数の視覚的に識別可能な開口により、糸結びを使用せずに前記創傷の全体に一連の一方向自己保持ループを形成することができる、自己保持縫合糸。
【請求項27】
前記縫合糸本体は、断面が概ね円形である、請求項26に記載の自己保持縫合糸。
【請求項28】
前記縫合糸本体は、断面が概ね楕円形、リボン状、又は砂時計の形状である、請求項26に記載の自己保持縫合糸。
【請求項29】
前記縫合糸本体が生体吸収性である、請求項26に記載の自己保持縫合装置。
【請求項30】
前記縫合糸本体が非生体吸収性である、請求項26に記載の自己保持縫合装置。
【請求項31】
前記棘は、前記開口を通る縫合糸材料の後方通過を防止するように適合された、歯、鱗屑、突起、切り込み、及び棘状突起のうちの1つ以上の形態である、請求項26に記載の自己保持縫合装置。
【請求項32】
前記棘が、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿って等間隔に対になるように配置され、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿ってらせん状に配置され、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿って互い違いに配置され、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿ってツイスト切削の多重らせんに配置され、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿って重なり合って配置され、前記縫合糸本体の長手方向軸に沿ってランダムに配置され、及びそれらの組み合わせから選択される配置で縫合糸本体上に配置される、請求項26に記載の自己保持縫合装置。
【請求項33】
前記視覚的に識別可能な開口のそれぞれが独特の色で識別される、請求項26に記載の自己保持縫合糸。
【請求項34】
前記視覚的に識別可能な開口のそれぞれが、視覚的に識別可能な独特の色を有する複数のロケーターバンドのうちの1つに配置される、請求項26に記載の自己保持縫合糸。
【請求項35】
前記縫合糸針は、鋭利な近位の針先端から幅広の遠位の針ハブまでテーパ状になっており、幅広の前記遠位の針ハブは、前記複数開口区分にある前記少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口の最も外側の寸法に近い最も外側の寸法を有する、請求項26に記載の自己保持型縫合糸。
【請求項36】
前記長尺状の無結節の縫合糸本体が、幅広の前記遠位の針ハブから複数開口区分まで延びるリーダー区分をさらに備える、請求項35に記載の自己保持型縫合糸。
【請求項37】
前記リーダー部分は、幅広の前記遠位の針ハブの最も外側の寸法とほぼ一致する外側の寸法を有する、請求項36に記載の自己保持縫合糸。
【請求項38】
前記長尺状の無結節縫合糸が、前記縫合針と前記複数開口区分との間に延びるテーパ状のリーダーを備え、前記テーパ状のリーダーが、前記縫合針に取り付けられた第1の狭いリーダー端から幅広の末端リーダー端までテーパ状になり、前記末端の末端リーダー端は前記複数開口区分まで延び、複数開口区分内の少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口の最も外側の寸法に近似する最も外側の寸法を有する、請求項26に記載の自己保持縫合糸。
【請求項39】
組織を縫合する方法において、
縫合針に取り付けられた縫合糸本体を備えた無結節縫合糸を設ける工程を備え、前記縫合糸本体は複数の一体化された閉鎖部を含んでなり、前記縫合糸本体は、前記縫合針に取り付けられ、又は取り付け可能である、第1の端部と、前記縫合糸本体に沿って長手方向に一定の間隔をもって配列された複数の視覚的に識別可能な開口を有する長尺状の無結節縫合糸本体とを有し、前記視覚的に識別可能な開口は、前記縫合針が前記視覚的に識別可能な開口を通過し、したがって前記長尺状の縫合糸本体を貫通して横方向に通過することを可能にし、前記第1の端部の配備の方向と実質的に反対の方向への縫合糸の後方移動に抵抗するように適合及び寸法決定されることによって、対向する組織表面の間の縫合糸に一方向の自己保持ループを形成する、組織を縫合する方法。
【請求項40】
前記縫合糸本体は、創傷の第2の側の外側に配置された、前記少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口を含む縫合糸の末端尾部を残しながら、前記創傷の第1の側及び前記第2の側を通って引っ張られるように適合され、前記縫合糸本体は、創傷の前記第1及び第2の側をともに合わせて引っ張る自己保持ループが形成されるまで、前記創傷の第2の側の外側に配置された少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口を通して引っ張られるように適合及び寸法決定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記縫合糸は、前記自己保持ループを形成する前記視覚的に識別可能な開口を越えてクリップ留めされ、前記縫合糸本体の残りの部分と針とが、さらなる自己保持ループを形成する、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、外科的創傷閉鎖のための縫合糸に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、その背景は、既存の縫合糸及びその使用方法に関連して説明される。創傷閉鎖様式は、創傷の種類、深さ、閉鎖する組織の種類、必要な張力の程度、及び望ましい美容上の結果によって異なる。創傷は通常、1つ以上のステープル、縫合糸、及び接着剤で閉じられる。
【0003】
縫合糸は最も一般的に採用されている閉鎖様式であり、縫合糸は生体吸収性材料(最終的には体内で完全に分解する)又は非吸収性(永久的、非分解性)材料を含む多くの材料から作られている。縫合糸は別の針に通すこともあるが、通常は針に取り付けられた縫合糸で構成される。より大きな引張強度が必要な場合には非吸収性の縫合糸が一般的に利用される。非吸収性縫合糸は、創傷治癒が長引く創傷、及び長期の身体的支持が必要な場合に使用される。吸収性縫合糸は、縫合糸の除去が修復に影響を与える可能性がある場合、又は完全な創傷治癒後に長期の物理的支持が不要な場合に利用される。必要に応じて、引張強度を高めるために、吸収性縫合糸を備えた二重層閉鎖を採用することができる。表在性創傷閉鎖では、張力の低下が許容され、より良い創傷縁の近似及び審美的結果を提供し得る場合、吸収性縫合糸を使用することができる。多種多様な外科用針が利用可能である。針本体の形状とサイズ、及び針先の構造は、通常、特定の用途のニーズに基づいて選択される。
【0004】
縫合糸を適用するための様々な技術は長い間公知であり、創傷のタイプ、外科的状況、必要な張力、及び望ましい美容上の結果に基づいて選択されている。出血や長い傷を迅速に制御するために、連続縫合を使用して、傷の長さに沿って張力を分散させることができる。ただし、連続縫合では、ステッチの損失や感染により、傷全体が開く可能性がある。皮下閉鎖と表面閉鎖の両方で、結節縫合は、皮膚循環障害のリスクが少なくなり、皮膚と筋膜を近づけることができる。感染した場合、部分的な創傷修復が可能である。しかしながら、結節縫合は、時間、訓練、及び有意の器用さを必要とする、反復した糸結びを必要とする。糸結びを結ぶのに費やされる労働強度と時間に加えて、糸結びの形成に関連する合併症には、(a)結ばれた縫合糸が皮下閉鎖後に皮膚を押し通す吹き出し、(b)糸結びの隙間での感染のより大きな病巣、(c)より大きな異物の刺激及び瘢痕をもたらす、糸結びの質量の増加、(d)糸結びの緩み又は喪失を伴う滑りが含まれる。糸結びの形成に伴う縫合糸のループは、絞扼性組織からの虚血及び外科的創傷での裂開又は破裂のリスクの増加につながる可能性がある。
【0005】
糸結びの形成に伴う問題に対する1つの解決策は、有棘縫合糸又は自己保持縫合糸を使用することによるものであり、これらは、1964年にアルカモによる特許文献1によって最初に開示された。
【0006】
有棘縫合糸に関するさらなる特許には、米国特許第5,374,268号(棘のような突起を有する武装アンカー)、米国特許第5,584,859号及び第6,264,675号(有棘側方部材を有する縫合糸アセンブリ)、及び米国特許第5,931,855号及び米国特許第6,241,747号(双方向の棘のある縫合糸)が含まれる。米国特許第8,795,332号、第8,915,943号及び第10,016,196号は、末端ループ要素を有するアンカーを含む、アンカーを備えた一方向縫合糸を記載している。
【0007】
縫合材料の棘は後方への滑りを防ぎ、自己保持することができるため、無結節の縫合が可能になり、手術室での時間を大幅に節約できる。それらの導入以来、有棘縫合糸は様々な外科的用途で利用されており、吸収性及び非吸収性の両方のモノフィラメント材料ならびに編組形態で利用可能である。広く利用されている有棘縫合糸には、双方向の棘を有する、クイルSRS(クイル自己保持システム、アンジオテック ファーマシューティカルズ、カナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバー);1本の針と末端にループがあり、一方向の棘があるV-Loc吸収性創傷閉鎖装置(コヴィディエン、米国マサチューセッツ州マンスフィールド);棘とアンカーのらせん状の分布を示す、ストラタフィックス(STRATAFIX無結節組織制御デバイス、米国ニュージャージー州サマーヴィル、エチコン インコーポレイテッド)が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,123,077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有棘縫合糸の利点にもかかわらず、裂開を防ぐための閉鎖における十分な強度は、把握できないままである。
結節縫合方法で迅速に実施することができる強力で信頼性の高い自己保持閉鎖を提供する無結節縫合材料に対するニーズが依然満たされずに残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に開示される一実施形態によれば、縫合糸針に取り付けられ、又は取り付け可能な縫合糸を含んでなる自己保持縫合糸が提供され、縫合糸は、針に取り付けられ、又は取り付け可能な第1の端部と、長尺状の無結節モノフィラメント又はマルチフィラメント縫合糸本体とを含み、縫合糸本体は、縫合糸本体に沿って横方向に貫通して一定の長手方向間隔で配列された視覚的に識別可能な複数の開口を有し、開口はその開口を通って縫合糸針の通過を可能にする寸法にされており、それによって長尺状の縫合糸本体を横方向に通過して、第1の端部の配備方向と実質的に反対の方向へと縫合糸が後退移動することに抵抗し、したがって、対向する組織表面の間に配備されると、縫合糸に一方向の自己保持ループを形成し、複数の視覚的に識別可能な開口により、糸結びを使用せずに一連の一方向の自己保持ループが自己保持縫合糸の残りの部分で傷を横切って形成される。
【0011】
特定の実施形態では、開口は互いに実質的に隣接しており、隣接する開口のチェーンを形成している。特定の実施形態では、開口は、開口の直径以下の長さを有する縫合材料の部分によって分離されている。特定の実施形態では、開口は概ね同一の直径であるが、他の実施形態では、隣接する開口は、より大きな直径の開口とより小さな直径の開口との間で交互になる。
【0012】
特定の実施形態では、縫合糸本体は可撓性を有し、張力下で開口を変形及び平坦化するために十分に伸張することができる。特定の実施形態では、開口を形成する材料には棘がある。本明細書に開示される自己保持縫合糸は、生体吸収性又は非生体吸収性であり得る。特定の実施形態では、縫合糸上の開口の位置は、容易に識別できるように明確に着色されている。
【0013】
他の実施形態では、縫合糸に固定され、又は固定可能である縫合糸を含む自己保持縫合糸が提供され、縫合糸は、針に固定され、又は固定可能である第1の端部と、細長い無結節縫合糸本体とを含み、細長い無結節縫合糸本体は、縫合糸本体の長手方向に沿って一定の間隔をもって配列された複数の視覚的に識別可能な開口と、縫合糸本体の長手方向に沿って一定の間隔をもって配列された複数の隆起とを有し、複数の隆起のうちの1つ以上及び複数の開口のうちの1つ以上は、反復する交互のパターンをもって配列され、針の前方への引っ張りによってもたらされる張力の下で開口を通る隆起の通過を可能にするが、第1の端部の配備方向と実質的に反対の方向への開口を通る縫合糸の後方移動に抵抗すべく、可撓性を有し、かつ寸法が決められ、それによって、対向する組織表面の間の縫合糸の自己保持ループを形成し、及び、複数の視覚的に識別可能な開口において、糸結びを使用せずに、一連の一方向の自己保持ループを創傷全体に形成することが可能になる。特定の実施形態では、縫合糸本体の隆起は球形であるが、他の実施形態では、縫合糸本体の隆起は円錐形であり、縫合糸の第1の端部に向かう円錐形の前縁は、円錐形の末端よりも円周が小さい。特定の実施形態では、隆起は、開口を通して引っ張られて創傷閉鎖ループを形成する隆起が、例えば、持針器、クランプ、止血鉗子、又は鉗子などの外科用器具によって、ループを形成する開口を通って後方に引っ張ることができない寸法へと平らにされるように設計されるように変形可能である。
【0014】
他の実施形態では、縫合糸針に取り付けられた縫合糸を含む自己保持縫合糸が提供され、縫合糸は長尺状の無結節縫合糸本体を有し、無結節縫合糸本体は、縫合糸本体の長手方向面を貫通して横方向に通り、及び、縫合糸本体に沿って長手方向に一定の間隔をもって配列された複数の視覚的に識別可能な開口と、縫合糸本体に沿って一定の間隔をもって配列された複数の棘とを有し、開口は、縫合糸針が開口を通過することによって、長尺状の縫合糸本体を横方向に通過することを可能にするように寸法が決定され、棘は、第1の端部の配備方向と実質的に反対の方向に向かう、縫合糸の後方への移動に抵抗し、それにより、対向する組織表面の間に配備されると、縫合糸に一方向のロッキング又は自己保持のループを形成し、ここで、複数の視覚的に識別可能な開口は、糸結びを使用せずに傷を横切って一方向の一連の自己保持ループが形成されることを可能にする。特定の実施形態では、縫合糸本体は、一般に断面が円形であるが、他の実施形態では、縫合糸本体は、一般に楕円形であるか、又はいくつかの実施形態では、断面がリボン状又は砂時計状をなす。棘は、縫合糸材料が開口を通って後方に通過することを防ぐように適合された、歯、鱗屑、円錐形の突起、切り込み、及び棘状突起のうちの1つ以上の形態であり得る。棘は、互い違いの配置、ツイスト切削多重らせん配置、らせん配置、重なり配置、ランダム配置、及びそれらの組み合わせから選択される配置で、縫合糸の本体上に配置され得る。
【0015】
それぞれの棘、交互の棘、又は断続的な棘には、コアを横方向に貫通する長手方向のスリットの形態の開口が配置されている。特定の実施形態では、開口の位置は、独特の着色を介して、又は視覚的に識別可能な独特の着色を有する複数のロケーターバンドのうちの1つに配置することによって視覚的に識別可能である。
[0014] 特定の実施形態では、開口は、縫合糸本体を貫通する横方向のスリットとして形成される。開口スリットは一般に閉じているが、外科用針及びそれに固定された縫合糸本体によって開かれ、通過を可能にするように寸法が決められている。ループが必要な場合、縫合糸のコアに開口が配置され、縫合糸が開口を通して引っ張られて、縫合糸のアンカー又は棘によって引き戻されないように固定又はロックされる所望のサイズの一方向ループを形成する。特定の実施形態では、縫合糸コアは、開口の位置でより強靭である。縫合糸本体に使用される材料、必要な引張強度、及び縫合糸材料が長手方向に裂ける傾向に応じて、特定の実施形態では、縫合糸の少なくとも開口を含む部分は、周囲方向に通る、又は縫合糸本体を横方向に貫通してナノファイバーを含めることなどによって、長手方向の断裂に備えて強化される。
【0016】
特定の実施形態では、対称的な対で縫合糸の全長にわたって等間隔に配置された一連の一方向のアンカー又は棘を備えた中実のコアを有する縫合糸が提供される。他の実施形態では、アンカー又は棘は、コアの長手方向軸に沿ってらせん状に配置される。他の実施形態では、アンカー又は棘は、縫合糸本体の長手方向軸に沿って互い違い状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ってツイスト切削された多重らせん状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿って重なり合って配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ったランダムに配置され、及びそれらの組み合わせによって配置される。長手方向のスリット形状の開口は、複数の棘の位置の間に配置され、各開口はコアを横方向に貫通する。特定の実施形態では、開口の位置は、独特の着色を介して、又は視覚的に識別可能な独特の着色を有する複数のロケーターバンドのうちの1つに配置することによって視覚的に識別可能である。視覚的に識別可能な色は、縫合糸の開口のない部分とは異なる視覚信号を提供する染料によって達成することができる。特定の実施形態では、識別可能な色は、電磁放射の励起波長によって活性化されたときに独特の位置信号を提供し、血液によって隠された手術野においてさえ視覚的に判別可能である、蛍光染料などの染料によって提供される。
【0017】
特定の実施形態では、自己保持縫合糸は、近位針先端であって、鋭利な、鈍い、又はテーパ状の近位針先端から、幅広の遠位針ハブまでテーパ状になっている縫合針を含み、幅広の遠位ハブは、複数の開口の通過を可能にするまで組織を十分に伸ばすように寸法が決められた最外周を有する。長尺状の無結節縫合糸本体は、幅広の遠位針ハブから複数開口区分まで延びるリーダー区分をさらに含み得る。特定の実施形態では、リーダー部分は、幅広の遠位針ハブの最も外側の寸法とほぼ一致する外側寸法を有する。
【0018】
さらに別の実施形態では、自己保持縫合糸は、長尺状の無結節縫合糸本体であって、縫合針と複数開口区分との間に延びるテーパ状のリーダーを有した長尺状の無結節縫合糸本体を含み、テーパ状のリーダーは、縫合針に取り付けられた第1の狭いリーダー端から、複数開口区分まで延びる幅広リーダー端であって、複数の開口の通過に対応するために十分に組織を伸張するように幅広リーダー端の寸法が決められている幅広リーダー端まで、テーパ状になっている。
【0019】
組織を縫合する新規な方法は、縫合針に取り付けられた縫合糸本体を設ける工程を備え、縫合糸本体は、針に取り付けられ、又は取り付け可能である、第1の端部と、縫合糸本体に沿って長手方向に一定の間隔をもって配列された複数の視覚的に識別可能な開口を有する長尺状の無結節縫合糸本体とを有し、視覚的に識別可能な開口は、縫合糸針が開口を通過し、したがって長尺状の縫合糸本体を貫通して横方向に通過することを可能にし、配備の方向と実質的に反対の方向への縫合糸の後方移動に抵抗するように適合及び寸法決定されることによって、第1の端部は、対向する組織表面の間の縫合糸に一方向の自己保持ループを形成する。配備される時には、縫合糸本体は、創傷の第2の側の外側に配置された少なくとも1つの視覚的に識別可能な開口を含む縫合糸の末端尾部を残しながら、創傷の第1及び第2の側を通して引っ張られる。視覚的に識別可能な開口は、創傷の第2の側の外側に配置された末端尾部で識別され、針が開口に通され、縫合糸本体が、創傷の第1及び第2の側を合わせて引っ張る自己保持ループが形成されるまで開口を通して引っ張られる。断続的な縫合を行う場合、縫合糸は、自己保持ループを形成する視覚的に識別可能な開口にまたがってクリップ留めされ、残りの縫合糸本体及び針は、創傷が徐々に閉じられるときに、さらなる自己保持ループを形成するために使用される。必要に応じて、一連のループを創傷の長さ全体にわたって緩く配置し、次に必要に応じて外科医が再びループを締め、単一のループが創傷の閉鎖の張力のすべてに耐えることなく、創傷の縁を近づけることができる。創傷の閉鎖が完了するまで、ループを繰り返し締めることができる。
【0020】
本明細書に記載の縫合糸はまた、連続縫合糸でも使用することができる。通常、連続縫合糸は、連続縫合糸の最初と最後で固定される。組織を貫通して端の糸結びを引っ張ったり、壊したりするなどして、固定端のうちのいずれかが破壊された場合、又は縫合糸がその長さに沿ってどこかで壊れた場合、創傷閉鎖全体が損なわれる可能性がある。対照的に、縫合糸本体に沿った複数のループ又は開口を含む本明細書で与えられる縫合糸を使用して、連続縫合を実行する時、外科医は、縫合糸本体の縫合糸の開始と終了の間にある、1つ以上の開口を貫通して縫合糸を通過させる。縫合糸本体の1つ以上の開口を貫通して固定することにより、連続縫合糸の内部開口は、固定端が損なわれた場合に創傷閉鎖全体が損なわれることを防止する。
【0021】
特徴及び利点を含む本発明のより完全な理解のために、添付の図とともに本発明の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本明細書に開示される複数の開口の実施形態の構造を示す上面図。
図1B】創傷を閉じるための図1Aの実施形態の使用方法を示している断面図。
図1C】創傷を閉じるための図1Aの実施形態の使用方法を示している断面図。
図1D】創傷を閉じるための図1Aの実施形態の使用方法を示している断面図。
図1E】創傷を閉じるための図1Aの実施形態の使用方法を示している断面図。
図1F】棘のない図1Aの実施形態で形成された閉鎖部の拡大図。
図1G】縫合糸に棘がある図1Aの実施形態で形成された閉鎖部の拡大図。
図2A】隣接する開口の直径がより大きな開口とより小さな開口との間で交互になる、本明細書に開示される複数開口の実施形態の構造を示す上面図。
図2B】創傷を閉じるための図2Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図2C】創傷を閉じるための図2Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図2D】創傷を閉じるための図2Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図2E】創傷を閉じるための図2Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図2F】棘のない図2Aの実施形態で形成された閉鎖部の拡大図。
図2G】縫合糸に棘がある図2Aの実施形態で形成された閉鎖部の拡大図。
図3A】本明細書に開示される無結節縫合糸の球及びループの実施形態の一実施形態の構造を示す上面図。
図3B】創傷を閉じるための図3Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図3C】創傷を閉じるための図3Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図3D】創傷を閉じるための図3Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図3E】創傷を閉じるための図3Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図3F】球形又はベル形の隆起などの隆起が変形可能であり、隆起が外科用器具によって平坦化可能に設計されて、ループ形成開口を通って後方に引っ張ることができない寸法を達成する実施形態を示す図。
図3G】球形又はベル形の隆起などの隆起が変形可能であり、隆起が外科用器具によって平坦化可能に設計されて、ループ形成開口を通って後方に引っ張ることができない寸法を達成する実施形態を示す図。
図3H】球形又はベル形の隆起などの隆起が変形可能であり、隆起が外科用器具によって平坦化可能に設計されて、ループ形成開口を通って後方に引っ張ることができない寸法を達成する実施形態を示す図。
図4A】概ね円形の断面を有する有棘無結節縫合糸の一実施形態の構造を示す図。
図4B】創傷を閉じるための図4Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図4C】創傷を閉じるための図4Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図4D】創傷を閉じるための図4Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図4E】創傷を閉じるための図4Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図5A】非円形断面を有する有棘無結節縫合糸の一実施形態の構造を示す図。
図5B】創傷を閉じるための図5Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図5C】創傷を閉じるための図5Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図5D】創傷を閉じるための図5Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図5E】創傷を閉じるための図5Aの実施形態の使用方法を示す断面図。
図6】縫合糸の本体の色とは異なる色のバンドを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態の構造を示し、各バンドは開口を含み、開口位置の容易な識別を可能にする、上面図。
図7A】組織貫通先端から幅広のハブに向かってテーパ状になる針と、それに続く、例えば、有棘区分として設計された複数開口区分まで延びる比較的幅広のリーダーとを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態を示す図。
図7B】組織貫通先端から幅広のハブに向かってテーパ状になる針と、それに続く、例えば、球とループの区分として設計された複数開口区分に延びる比較的幅広のリーダーとを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態を示す図。
図7C】組織貫通先端から幅広のハブに向かってテーパ状になる針と、それに続く、例えば、隣接する開口のチェーンとして設計された複数開口区分に延びる比較的幅広のリーダーとを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態を示す図。
図8A】従来のテーパ針と、それに続く、例えば、有棘区分として設計された複数開口区分に延びるテーパ状のリーダーとを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態を示す図。
図8B】従来のテーパ針と、それに続く、例えば、ループ部分区分として設計された複数開口区分まで延びるテーパ状のリーダーとを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態を示す図。
図8C】従来のテーパ針と、それに続く、例えば、隣接する開口のチェーンとして設計された複数開口区分まで延びるテーパ状のリーダーとを有する有棘無結節縫合糸の一実施形態を示す。
図9A】従来のテーパ状の針と、それに続く比較的大きな棘を特徴とする有棘の複数の開口を有する有棘の無結節縫合糸の実施形態を示す図。丸で囲んだ挿入図に示されているように、縫合糸が組織を通して矢印の方向に引っ張られると、棘が中央の縫合糸フィラメントに対して横になり、開口が平らにされる。
図9B】従来のテーパ状針とそれに続く有棘複数開口区分を有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示す図。それぞれの棘は、直接隣接する棘に対してそれぞれ互い違いになっている。丸で囲んだ挿入図に示されているように、縫合糸が組織を通して矢印の方向に引っ張られると、棘が中央の縫合糸フィラメントに対して横になり、開口が平らにされる。
図9C】マイクロマシニングを使用して基部フィラメントを切断することによって棘及び開口が形成される、複数開口縫合糸の製造方法の一実施形態を示す図。
図10】従来のテーパ状の針と、それに続く比較的小さな棘を特徴とする有棘の複数の開口を有する有棘のある無結節縫合糸の実施形態を示す上面図。
図11】従来のテーパ状の針と、それに続く、縫合糸の中心軸からオフセットされた開口を特徴とする有棘複数開口区分とを有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示す上面図。
図12】従来のテーパ状針と、それに続く比較的大きな棘及び角のある開口を特徴とする有棘の複数の開口区分を有する有棘の無結節縫合糸の実施形態を示す上面図。
図13】従来のテーパ状の針と、それに続く比較的小さな棘及び散在する角のある開口を特徴とする有棘の複数の開口区分とを有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示す上面図。
図14】開口が棘の平面に対してほぼ直角に配置されている有棘無結節縫合の実施形態を示している斜視図。
図15】縫合糸の本体からぶら下がっている開口を有する有棘無結節縫合糸の実施形態を示している斜視図。
図16】開口の本体に融合、ねじれ、又は織り込まれたネックを有する開口部ループを有するマルチフィラメントの有棘無結節縫合糸の実施形態を示す斜視図。
図17】棘の位置の間に形成された開口を有する、織られたマルチフィラメントの有棘無結節縫合糸の実施形態を示している斜視図。
図18A】互いに対称に配向された対で縫合糸の長さにわたって等間隔に配置された一連の一方向アンカーを備えた中実コアを有するモノフィラメント縫合糸の実施形態の拡大断面図。
図18B】コアの断面が本質的に円形であり得ることを示す断面図。
図18C】他の実施形態による、コアが平坦化され、楕円形又はリボン状であり得ることを示す断面図。
図18D】他の実施形態による、縫合糸本体は、ダンベル又は砂時計の形状を有することを示す断面図。
図19】棘の位置の間に配置された長手方向のスリットの形態の開口を有するモノフィラメント縫合糸の代替の実施形態の拡大断面図。
図20A】それ自体及びそれが配置される組織にロックする自己ロック式有棘縫合糸の実用的な実施形態を示す写真。
図20B】それ自体及びそれが配置される組織にロックする自己ロック式有棘縫合糸の実用的な実施形態を示す写真。
図20C】それ自体及びそれが配置される組織にロックする自己ロック式有棘縫合糸の実用的な実施形態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の様々な実施形態の作成及び使用について以下で詳細に説明するが、本発明は、多種多様な特定の状況で使用することができる多くの適用可能な発明の概念を提供することを理解されたい。本明細書で論じられる特定の実施形態は、本発明を作成及び使用するための特定の方法の単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
本明細書で提供されるのは、対向する組織面を共に堅固に保持する無結節の縫合糸ループ閉鎖の形成を可能にする構造にされた特殊な縫合糸である。縫合糸は、一端又は両端を様々な構成の外科用針に取り付けることができる。外科用針は、組織を貫通して貫通し、縫合糸が通過するための経路を組織内に作成するために使用される。通常、組織を完全に近づけるには、創傷の周りの組織を通る針と縫合糸の多数の通路が必要である。古典的な断続的な縫合を行う場合、縫合糸は向かい合った両側の組織面を貫通して引っ張られ、糸結びが形成され、又は結ばれて反対側の組織を一緒に保持する縫合糸ループが形成され、ループに続く縫合糸本体が切断される。
【0025】
本明細書に開示される縫合糸は、長尺状の縫合糸本体を横方向に貫通する複数の開口が存在するため、同じ縫合糸デバイスを使用して複数の無結節ループの形成を可能にするように設計されている。糸結びの形成を回避することができる。縫合線の最も脆弱な部分は糸結びであり、次に脆弱な箇所は糸結びのすぐ隣の部分である。縫合糸の糸結びに関連する引張強度の低下が35%から95であると報告されている。さらに、外科的に糸結びを形成するには時間がかかり、人為的ミスとバラつきをもたらし、感染の病巣を作り出す。本明細書に開示される複数の開口の縫合糸を使用することにより、糸結びの形成が回避される。
【0026】
本明細書に開示される縫合糸本体の開口は、選択された開口を通る縫合糸の一方向の通過を可能にするように構成及び適合され、したがって、後方に滑らずに、縫合糸内に自己保持又は自己係合するループを形成する。縫合糸ループ閉鎖を形成するとき、複数の開口を含む縫合糸の近位端に取り付けられた針は、針に縫合糸が続く様式で、創傷の第1及び第2の、向かい合う両側を通って、複数の開口うちの少なくとも1つを含む縫合糸本体の端部の遠位端のみが創傷の第1の側から伸びたままである状態まで、運針される。末端開口の少なくとも1つは視覚的に識別できるよう設けられ、針は、創傷の第1及び第2の対向する側を一緒に近づける所望のサイズの自己保持ループが形成されるまで、開口を通過し、続いて縫合糸本体が通過する。縫合糸本体の末端開口を通して縫合糸を引っ張ることによって所望の大きさのループが形成されると、端部のループを形成する開口の後ろで縫合糸がクリップ留めされ、残りの縫合糸本体を使用してプロセスが繰り返される。本明細書に開示される縫合糸は、生体吸収性又は非生体吸収性であり得る。
【0027】
本明細書に記載の縫合糸はまた、連続縫合を行うのに適しており、重要な利点を提供する。縫合糸本体に沿った複数のループ又は開口を含む、本明細書で提供される縫合糸を使用して、外科医は、連続縫合糸に沿って、自己保持ループが望まれる1つ以上の場所を選択した。外科医は、連続縫合を行うときには、縫合糸本体の最初と最後の間の縫合糸本体の1つ以上の選択された開口を通して縫合針を通す。縫合糸本体の1つ以上の開口を通して縫合糸を固定することにより、連続縫合の縫合糸の内部開口は、縫合糸を通る縫合糸の後方への移動を防ぎ、創傷の長手方向の束を防ぎ、連続縫合の縫合糸の固定端が損なわれた場合に創傷閉鎖全体の喪失を防ぐ。
【0028】
本明細書で提供される縫合糸は、手動による縫合、内視鏡、腹腔鏡及びロボットによる縫合に利用することができる。糸結びは、内視鏡及び腹腔鏡手術で特に問題があり、典型的には手動で結ぶ糸結びやロボットの糸結びよりも弱い糸結びが形成される。本明細書で提供される縫合糸は、内視鏡的腹腔鏡下創傷閉鎖において長年にわたって見出されていたニーズに応えるものである。
【0029】
本発明の理解を容易にするために、及び本明細書の特許請求の範囲を解釈する際の疑義を回避するために、特定の用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する分野の当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。本発明の特定の実施形態を説明するために使用される用語は、特許請求の範囲に概説されている場合を除いて、本発明を制限するものではない。
【0030】
「a」、「an」、及び「the」などの用語は、明示的に定義されていない限り、単一の物のみを指すことを意図せず、特定の例の説明に使用できる一般化できる物を含む。特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」と併せて使用される場合の「a」又は「an」という用語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び/又は「1つ以上」とも矛盾しない。
請求項における「又は」という用語の使用は、代替物を相互に排他的であると言及することが明示的に示されていない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。したがって、特に明記しない限り、選択肢のグループにおける「又は」という用語は、一群の構成要素の「任意の1つ又は組み合わせ」を意味する。さらに、代替案を相互に排他的であると明示的に言及しない限り、「A、B、及び/又はC」という句は、要素Aのみ、要素Bのみ、要素Cのみ、又はA、B、及びCを合わせた任意の組み合わせを有する実施形態を意味する。
【0031】
同様に、誤解を避けるために、また代替案を相互に排他的であると明示的に言及しない限り、「少なくとも1つ」という句は、選択肢のリストと組み合わせる場合、リストからの単一の選択肢、又はリストの内の選択肢の任意の組み合わせを意味するものである。例えば、特に明記しない限り、「A、B、及びCの少なくとも1つ」という句は、「グループA、B、C、又はA、B、及びCの任意の組み合わせからの少なくとも1つ」を意味する。したがって、特に定義されていない限り、この句には、リストに上げられた選択肢の1つ以上が必要であり、必ずしも全てが必要なわけではない。
【0032】
「含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などのその任意の形式)、「有する(having」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」などのその任意の形式)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」)又は「含む(containing)」(及び「含む(contains)」及び「含む(contain)」などのその任意の形式)は、包括的又は制限がなく、追加の、記載されていない要素又は工程を除外するものではない。
【0033】
明細書及び特許請求の範囲で使用される「有効な」という用語は、所望の、期待される、又は意図された結果を提供又は達成するのに適切であることを意味する。
「アンカー」と「棘」の用語は、明細書及び特許請求の範囲で同じ意味で使用される。
【0034】
「約」又は「ほぼ」という用語は、当業者によって理解されるものに近いと定義され、非限定的な一実施形態では、これらの用語は、10%以内、5%以内、1%以内、及び特定の側面では0.5%以内と定義される。
【0035】
本明細書及びそれに添付された特許請求の範囲の目的のために、「縫合装置」という用語は、縫合針に取り付けられた長尺状の縫合糸本体を指す。特定の実施形態では、本明細書で提供される縫合糸本体は、断面が円形又は一般に円形である。他の実施形態では、縫合糸本体は非円形であり、卵形であるか、又は平らなリボンのような形状を有し得る。本明細書で使用される場合、「縫合糸本体」は、縫合糸の糸状体構成要素を指し、縫合針を含まない。縫合糸本体は、モノフィラメント、すなわち単一のフィラメントで形成され得るか、又はマルチフィラメント、すなわち複数のフィラメント、例えば、撚糸、又は編組の方法で配置された2つ以上のフィラメントから形成され得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「自己保持」、「自己係合」、又は「自己ロック」縫合糸という用語は、縫合糸内に安定したループを形成するにあたり、糸結びを形成する必要なしにそれ自体に固定される縫合糸を意味する。
【0037】
本明細書で提供される特定の実施形態では、有棘縫合材料は、複数の開口を含む縫合糸本体の少なくとも一部に利用される。有棘縫合材料は、一般に、本体の長さ方向に沿って本体の表面から突出する複数の棘を有した、長尺状の本体を含む。棘は、縫合糸が組織を一方向に通過できるように構成されているが、反対方向への動きには抗う。本明細書で使用される場合、「棘」という用語は、縫合糸本体の開口に引っかかることによって、縫合糸本体の開口を貫通する縫合糸の後方滑りを防ぐのに十分な、縫合糸の粗面化又は突起を意味する。そのような粗面化又は突起は、上記の開口を貫通した縫合糸材料の後方への通過を防止するように適合された、歯、鱗、円錐形の突起、切り込み、及び針状突起のうちの1つ以上の形態である。当業者は、棘が、米国特許第3,123,077号(アルカモ)、米国特許第7,056,331号(カプラン)、及び米国特許第9,248,580号(レオン)に開示されているものなど、これらに限定されないが、無数の形状であり得ることを理解するであろう。双方向棘の非限定的な例は、米国特許第D870,283号(アダムス)、米国特許第5,931,855号(ブンク)及び米国特許第6,241,747号(ラフ)に開示されている。
【0038】
棘又はアンカーは、一方向又は双方向に選択された配置で縫合糸の本体に配置され、対称的な対で縫合糸の長さにわたって等間隔に配置され、コアの長手方向軸に沿ってらせん状に配置され、長手方向に沿って互い違いの配置で配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ったツイスト切削にて複数のらせん状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿って重ね合わせて配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ってランダムに配置され、及びそれらの組み合わせによって配置され得る。
【0039】
本明細書及びそれに添付される特許請求の範囲において、「生体適合性」という用語は、一旦移植されると、創傷治癒及び/又は組織再生を著しく妨害せず、重大な代謝障害を引き起こさない材料を指す。「生分解性」及び「生体吸収性」の用語は、本明細書において互換的に使用され、自発的に、及び/又は哺乳動物の身体によって成分に分解され、創傷治癒及び/又は組織の再生を著しく妨害しないような方式で、かつ重大な代謝障害を引き起こすことなく、消費又は排除される材料を指す。
【0040】
縫合材料に適した生体吸収性材料には、脂肪族ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びそれらのコポリマーを含むポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリジオキサノン、結晶性p-ジオキサノン/ラクチドコポリマー、ポリアミド、チロシン由来ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリペプチド、ポリデプシペプチド、ナイロンコポリアミド、脂肪族ポリエステル、ポリジヒドロピラン、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ無水物、修飾多糖類及び修飾タンパク質、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されたポリマーが含まれるが、これらに限定されない。天然高分子には、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、ラミニン、ゼラチン、ケラチン、コンドロイチンスルフェート、脱細胞組織などがある。一般的に使用される生体吸収性縫合材料の例には、ポリ(p-ジオキサノン)(外科用縫合用にエチコン社からPDS II(登録商標)として販売される)、約33%のトリメチレンカーボネート及び約67%のグリコリドのコポリマーにジエチレングリコールを添加したもの(例えば、MAXONTM、メドトロニック社)、~60%のグリコリドと、~26%のトリメチレンカーボネートと、~14%のジオキサノンとで構成されるターポリマー(例:BIOSYNTM、メドトロニック社)、グリコリドと、カプロラクトンと、トリメチレンカーボネートと、ラクチドとのコポリマー(例、CAPROSYNTM、メドトロニック社)、約75%のグリコリドと約25%のε-カプロラクトンとのコポリマー(縫合用にジョンソンエンドジョンソン社からMONOCRYL(登録商標)として販売)、及びポリグラクチン910(グリコリドとラクチドの90/10ランダムコポリマーとして形成されたコーティング縫合糸(VICRYLTMとしてエチコン社から販売))が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
非分解性縫合糸は、アクリル、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリカーボネート、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET、別名ポリエステル)、ポリアミド (別名ナイロン、ナイロン6やナイロン6.6など)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-コヘキサフルオロプロピレン(PVDF/HFP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(例:発泡ポリテトラフルオロエチレン)、ポリブテスター(ブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコールのブロックコポリマー)などのポリエーテルエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない材料で形成される。金属合金、金属(ステンレス鋼線など)、絹、綿も非分解性の縫合糸に使用される。
【0042】
一般的に使用される非分解性縫合糸の例には、ポリプロピレン縫合糸(エチコン社によるPROLENEブルーモノフィラメント)、及び、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(エチコン社PRONOVAポリ(ヘキサフルオロプロピレン-VDF縫合糸)などのポリマーブレンドが含まれるが、これらに限定されない。非分解性の縫合糸材料で作られた縫合糸は、縫合糸が永久に残ることができるか、又は身体から物理的に除去される用途に特に適している。
【0043】
本明細書に開示される縫合装置はさらに、潤滑性、耐久性、及び治療機能を改善するために、表面上に従来のコーティング及びその同等物を含み得る。そのようなコーティングは、縫合糸の表面に浸漬、噴霧、拭き取り、又は回転によって適用することができる。潤滑性コーティングには、シリコーン、蜜蝋、及びパラフィンが含まれるが、これらに限定されない。コーティングはまた、ポリブチレート、テフロン、ポリグラクチン370、ポリカプロレート、及びポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)などであるがこれらに限定されない生体吸収性又は非吸収性ポリマーから作製され得る。コーティングは、抗生物質、抗菌剤(例えば、銀、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル及びトリクロサン(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)などのポリクロロフェノキシフェノール)、及びそれらの組み合わせ)、鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、抗炎症剤、抗掻痒剤、コルチコステロイド、及び抗増殖剤を含むがこれらに限定されない治療剤をさらに含み得る。
【0044】
本明細書に開示される縫合糸本体を形成する材料は、押出、編織、編組、手編み、3D印刷、及びエレクトロスピニングを含むがこれらに限定されない、当業者に公知の工程に従って製造され得る。特定の実施形態では、開口部ループから延びるネックを含む、本明細書に開示される開口は、縫合糸本体への編織、編組、もしくは撚糸、レーザー切断、溶接、接着、押出、3D印刷、又はディスペンサーを介した溶融塗布が含まれるがこれらに限定されない多くの手段を通して適用され得る。特定の実施形態では、開口を含む縫合糸の少なくとも部分は、長手方向の裂傷に対して強化され、これには縫合糸本体に沿って周方向又は横方向に通るナノファイバーを含めることが含まれる。
【0045】
「縫合針」は、組織に縫合糸を配備するために使用される針を指す。縫合針には、さまざまな形、サイズ、構成がある。針には主に外傷性針と非外傷性針の2種類がある。外傷性の針には、チャネル又はドリル切削の穴(つまり、穴又は目)を開けた端があり、縫合糸とは別に供給され、現場で糸が通される。非外傷性の針は目がなく、機械的スエージング、接着、セメント固定、熱収縮チューブなどによって工場で縫合糸に取り付けられる。スエージングの取り付けの場合、縫合糸材料は、針の平滑末端のチャネル又はハブに挿入され、その後、縫合糸と針を一緒に保持するために最終的な形状に変形される。非外傷性の針は、糸を通すために現場で余分な時間を必要とせず、針の取り付け部位の縫合糸の端は針本体よりも小さい。したがって、ほとんどの最新の縫合糸はスエージング加工の非外傷性針として提供される。縫合針は、例えば、半湾曲、1/4円、3/8円、1/2円、5/8円、及び複合湾曲などの直線又は湾曲であり得る。本明細書に開示される縫合装置で有用な外科用針は、外科用ステンレス鋼、高強度金属合金、高弾性金属合金、耐火金属合金などの従来の材料及びそれらの同等物から作製され得る非切削テーパ先端針である。
【0046】
一実施形態では、組織を縫合する方法が提供され、この方法は、(a)縫合針に取り付けられた縫合糸本体を与える工程であって、縫合糸本体は、縫合糸本体の長手方向平面を貫通して横方向に延びる複数の開口を含む、縫合針に取り付けられた縫合糸本体を与える工程と、(b)創傷の第1の側及び第2の側の組織を通して針を配備する工程と、(c)縫合糸本体を第1の側及び第2の側を通したまま引っ張る工程であって、縫合糸の末端尾部を創傷の第2の側の外側に配置したままにする、縫合糸本体を第1の側及び第2の側を通したまま引っ張る工程と、(d)縫合糸の末端尾部に開口を配置し、及び、創傷の第1の側及び第2の側をともに合わせて引っ張るループが形成されるまで、開口を通して縫合糸を引っ張る工程と、(e)開口をまたいでループを形成するように、縫合糸をクリップ留めする工程と、そして、工程(a)~(e)を繰り返して、さらにステッチを形成する工程とを備える。
【0047】
既存の縫合糸は、モノフィラメントの形態で、あるいは、編組、撚糸、又は編織によって単一の長尺状の糸を形成する、2つ以上のフィラメントからなるマルチフィラメントの形態で利用可能である。本明細書に開示される特定の実施形態では、縫合糸本体は無結節でモノフィラメントであり、したがって、外来性障害の成長を支持する隙間を最小限に抑える。本明細書に開示される他の実施形態では、縫合糸本体は無結節でマルチフィラメントである。本明細書に開示される特定の実施形態では、縫合糸本体はコーティングされることにより、外来性障害の成長を支持する隙間を最小限に抑える。
【0048】
図1Aを参照する。一実施形態による縫合装置10は、針22及び縫合糸本体11を含み、縫合糸本体は、複数の開口17を有した、複数開口区分16を備える。図示の実施形態では、複数開口区分16が、リーダー区分14を介して縫合針12に取り付けられている。このようなリーダー区分は、短い場合も長い場合もあるが、存在しない場合もある。図1B図1Eに示すように、ステッチを開始するとき、縫合針12は、創傷6の第1及び第2の側18を通過する。図1Cに示されるように、1つ以上の縫合糸末端開口20は、創傷から突出したままである。1C.図1Dに示されるように、図1Dにおいて、縫合糸末端開口20は、外科医によって視覚されるように配置され、縫合針12は、縫合糸末端開口20を通過し、続いて、複数開口区分16の十分な部分を通ってループ23を形成し、これは、創傷6の第1及び第2の側18をともに合わせて引っ張るために締められる。図1B図1Eでは、適切な円周のループ23が形成された後、末端開口20を超える複数開口区分16の残りの部分が切断され、縫合装置の残りが次のステッチを開始するために使用される。
【0049】
図1Eの領域Aは、図1Fに拡大して示されている。図1Fに示される実施形態では、縫合材料は柔軟であり、張力がない場合、複数開口区分16が互いに連結された一連の概ね円形の形状として現れるのに十分な可撓性を有する。いくつかの実施形態では、開口は並んでいるが、他の実施形態では、複数の開口は、開口のない短い区分を介在させることによって分離されている。縫合糸材料の可撓性及び柔軟性のために、概ね円形の形状は、張力を受けると、平らな又は楕円形の構造に折りたたむことができる。したがって、図1Fに示すように、矢印の方向に縫合糸末端開口20を通過すると、末端開口を通過する縫合糸の開口17は、張力から解放されると直ちに概ね円形の形状に戻り、末端開口20を通る後方への動きに抵抗する。末端開口20は、ループが2つの組織の側面を一緒に保持することによりループに張力がかかるために平らな形状を保持し得る。さらに、各開口の内径は外径よりも小さい。末端の開口を介して引っ張られた開口のより大きな外径は、末端の開口のより小さな内径を通る後方通過に抵抗する。図1Eの領域Bは、図1Gに拡大して示される。図1Gに示される代替の実施形態では、複数開口区分16の縫合糸は、棘があり、したがって、複数の棘8を含む。矢印の方向に縫合糸末端開口20を通過すると、棘8は、末端開口20を通る後方への動きに抵抗する。この実施形態で提供される開口の連続ストリングは、縫合糸を引っ張って自己係合ループを形成することができる開口の容易な識別を提供する。
【0050】
図2Aを参照する。一実施形態による縫合装置20は、隣接する開口の直径がより大きな開口とより小さな開口との間で交互になる複数の開口27を有する複数開口区分26を備える。図示の実施形態では、複数開口区分26が、リーダー区分24を介して縫合針22に取り付けられている。このようなリーダー区分は、短い場合も長い場合もあるが、存在しない場合もある。図2B~2Eに示すように、ステッチを開始するとき、縫合針22は、創傷21の第1の側及び第2の側28を通過する。図2Cに示すように、縫合糸末端開口30は、創傷から突出したままである。図2Dに示されるように、縫合糸末端開口30は、外科医によって視覚されるように配置され、縫合針22は、縫合糸末端開口20を通過し、続いて、複数開口区分26の十分な部分を通ってループ31を形成し、これは、創傷21の第1及び第2の側28をともに合わせて引っ張るために締められる。図2Eに示すように、適切な円周のループ31が形成された後、より小径の末端開口30を超える複数開口区分26の残りの部分が切断され、縫合装置の残りが次のステッチを開始するために使用される。
【0051】
図2Eの領域Aは、図2Fに拡大して示されている。図2Fに示される実施形態では、縫合材料は柔軟であり、張力がない場合、複数開口区分26はより小径の開口23とより大径の開口27が互い違いに連結された一連の概ね円形の形状として現れるのに十分な可撓性を有する。ここでも、縫合糸材料の可撓性及び柔軟性のために、概ね円形の形状は、張力を受けると、平らな又は楕円形の構造に折りたたむことができ、平らにされたより大径の開口を通すことができるよう引き延ばされた、より小径の開口を通って、より大径の開口を引っ張ることができる。したがって、図2Fに示すように、矢印の方向により小径の縫合糸末端開口29を通過すると、縫合糸のより大径の開口27はそれらの概ね円形の形状に戻り、より小径の末端開口29を通る後方への動きに抵抗し、より小径の開口は糸への張力のために、さらに平坦な形状を保持し得る。張力によって誘発された末端開口29の平坦な形状は、次の外側開口のより大きな直径に加えて、より小径の末端開口を通る後方通過に抵抗する。図2Eの領域Bは、図2Gに拡大して示されている。図2Gに示される代替の実施形態では、複数開口区分26の縫合糸は、複数の棘25を含む。矢印の方向に小径の端部開口29を通過すると、棘25は、小径の端部開口29を通る後方への動きに抵抗する。この実施形態で提供される開口の連続ストリングは、縫合糸を引っ張って自己係合ループを形成することができる開口の容易な識別を提供する。特定の実施形態では、より小さな開口は、より大きな直径の開口とは異なる色であり、したがって、針が通過する末端開口を形成するためのより小さな直径の開口の識別を用意にする。
【0052】
図3Aを参照する。一実施形態による縫合装置30は、縫合糸41に沿って間隔を置いて中実の隆起37の間に配置された複数の開口33を有する複数開口区分36を備える。図示の実施形態では、1つの開口の後に2つの隆起が続くが、例えば、開口と隆起が交互になるもの、2つ以上の隆起と2つ以上の開口が交互になっているものなどを含むがこれらに限定されない、他の多くの配置が企図される。中実の隆起37は、拡大された挿入部分Aに示されるように概ね円形であるか、又は、拡大された挿入部分Bに示されるようなベル又はピラミッド形状のような円錐形で、円錐の針を指向した前縁が円錐形の末端よりも小径であるものであってもよい。図示の実施形態では、複数開口区分36は、リーダー区分34を介して縫合針32に取り付けられている。このようなリーダー区分は、短い場合も長い場合もあるが、存在しない場合もある。図3B~3Eに示すように、ステッチを開始するとき、縫合針32は、創傷42の第1及び第2の側38を通過する。図3Cに示すように、縫合糸末端開口40は、創傷から突出したままである。図3Dに示されるように、縫合糸末端開口40は、外科医によって視覚されるように配置され、縫合針32は、縫合糸末端開口40を通過し、続いて、複数開口区分36の十分な部分を通ってループ43を形成し、これは、創傷42の第1及び第2の側38をともに合わせて引っ張るために締められる。図4Eに示すように、適切な円周のループ43が形成された後、末端開口40を超える複数開口区分36の残りの部分が切断され、縫合装置の残りが次のステッチを開始するために使用される。
【0053】
図3A~3Eに示される実施形態では、縫合糸材料は柔軟であり、張力がない場合、複数の開口33が一般に円形又は楕円形として現れるのに十分な可撓性を有する。縫合糸材料の可撓性及び柔軟性のために、概ね円形又は楕円形は、隆起37を収容するために伸張する。ループ形成開口40を通過すると、隆起37は、ループ形成開口40を通る後方への動きに抵抗し、ループ形成開口40は、組織の外向きの引っ張りによって引き起こされる縫合糸ループの張力のために平坦な形状をなす。張力によって誘発されるループ形成開口40の平坦な形状は、次の隆起が概ねゆるみのない直径を有することに加えて、末端開口40の内壁が縫合糸41に対して静止されるので、ループ形成開口を通る縫合糸の後方通過に抵抗する。特定の実施形態では、開口は、隆起とは異なる色であり、したがって、針が通過する末端の開口の識別を支援する。
【0054】
図3F図3Hに示される実施形態では、ループ形成の進行の例を示し、縫合糸材料は、圧力によって変形可能であり、圧縮によって圧着されて、ループ形成開口を通って後方に引っ張ることができない寸法を達成するように設計されている。球形又はベル形の隆起37などの隆起が、ループ形成開口40を通して引っ張られて創傷閉鎖ループを形成すると、隆起37は、図示の止血鉗子44などの外科用器具によって圧縮される。この実施形態では、縫合糸が選択されたループ形成開口を通って矢印の方向に引っ張られ、ループが創傷の縁に近づくように寄せられ、外科医が創傷に沿った各ループ寸法が十分であると判断した後、外科医は隆起37を圧縮して平らにすると、隆起が引っ張られた開口に応じて、その直径が20~40%だけ増加する。圧縮して圧縮後の寸法を保持できる縫合材料の非限定的な例の1つは、エチコン社によって「PDS」と呼ばれるポリジオキサノンである。
【0055】
図4Aを参照する。拡大図A及びBを含み、一実施形態による縫合装置50は、縫合糸51に沿って間隔を置いて配置された複数の開口59及び複数の棘62を含む複数開口区分56に有棘縫合材料を利用する。当業者は、棘62が、開口を通る縫合糸材料の後方移動に抵抗しながら、開口を一方向に通過するのに十分となる、無数の形状及び向きになり得ることを理解するであろう。矢印53は、開口間隔の一実施形態による、縫合装置の1つの区分における複数の開口を指している。開口59は、複数開口区分56の全長に沿って、所定の間隔で配置されている。図示の実施形態では、開口は円形に見えるが、他の実施形態では、開口は卵形又は細長い場合がある。
【0056】
図示の実施形態では、複数開口区分56が、リーダー区分54を介して縫合針52に取り付けられている。このようなリーダー区分は、短い場合も長い場合もあるが、存在しない場合もある。図4Aの挿入部分Bに示す実施形態では、縫合糸51は、断面が概ね円形である。図5A~5Eに示される代替の実施形態では、縫合糸は平らであるか、又はリボンのようである。図4B図4Eに示すように、ステッチを開始するとき、縫合針52は、創傷61の第1及び第2の側58を通過する。図4Cに示すように、縫合糸末端開口60は、創傷から突出したままである。図4Dに示されるように、縫合糸末端開口60は、外科医によって視覚されるように配置され、縫合針52は、縫合糸末端開口60を通過し、続いて、複数開口区分56の十分な部分を通ってループ63を形成し、これは、創傷61の第1及び第2の側58をともに合わせて引っ張るために締められる。図4Eに示すように、適切な円周のループ63が形成された後、末端開口60を超える複数開口区分66の残りの部分が切断され、縫合装置の残りが次のステッチを開始するために使用される。
【0057】
図4A~4Eに示される実施形態では、縫合糸材料は、縫合糸材料を横方向に貫通する複数の開口59を有する。末端開口60を通過すると、棘62は、末端開口60を通る後方への動きに抵抗する。特定の実施形態では、縫合糸本体にて開口が配置されている位置には、独特の色でマークが付されているので、針が通過すべき末端開口の識別を支援する。
【0058】
図5Aを参照する。拡大図A及びBに示されるように、一実施形態による縫合デバイス70は、縫合糸77に沿って間隔を置いて配置された複数の開口79を含む複数開口区分76であって、複数の棘82を含む複数開口区分76に有棘縫合材料を利用する。矢印73は、開口間隔の一実施形態による、縫合装置の1つの区分における複数の開口を指している。開口79は、複数開口区分76の全長に沿って間隔を置いて配置されている。当業者は、棘82が無数の形状及び向きになり得ることを理解するであろう。図示の実施形態では、複数開口区分76が、リーダー区分74を介して縫合針72に取り付けられている。このようなリーダー区分は、短い場合も長い場合もあるが、存在しない場合もある。図5Aの挿入部分Bに示す実施形態では、縫合糸77は平坦化されているか、又はリボン状である。
【0059】
拡大図A及びBを含む図6を参照する。一実施形態による縫合デバイス90は、縫合糸51及び複数の棘102に沿って間隔を置いて配置されたロケーターバンド96に配置された複数の開口99を含む複数開口区分56に有棘縫合材料を利用する。当業者は、棘102が、開口を通る縫合糸材料の後方移動に抵抗しながら、開口を一方向に通過するのに十分となる、無数の形状及び向きになり得ることを理解するであろう。同様に、開口は、Aに示されるように概ね円形又は楕円形であり得るか、又は部分Bに示されるようにスリット状であり得る。各ロケータバ部分ンド96は、縫合糸の本体51の色とは異なる視覚的に識別可能な色であり、及び各ロケーターバンド96は開口99を含む。視覚的に識別可能な色は、縫合糸の開口のない部分とは異なる視覚信号を提供する染料によって達成することができる。特定の実施形態では、識別可能な色は、電磁放射の励起波長によって活性化されたときに独特の位置信号を提供し、血液によって隠された手術野においてさえ視覚的に独特である蛍光染料などの染料によって提供される。蛍光色素は、例えば、インドシアニングリーン(ICG)、IRDye 800CW、ZW800-1などのシアニンベースの蛍光色素を含む、励起されて発光することができる任意の生物学的に適合性のある化合物を含み得るが、これらに限定されない。他の蛍光色素には、フルオレセイン、インドメタシン誘導体化ナフタリミン、プロトポルフィリンIX、及び重金属を含まない量子ドットが含まれるが、これらに限定されない。蛍光ピンク又は緑色染料のいずれかを含むポリプロピレンで構成されたモノフィラメント非吸収性外科用縫合糸は、単色縫合糸としてのみではあるが、現在獣医用に利用可能である。VISIPROTM(リバーポイント メディカル)を参照されたい。
【0060】
識別可能なロケーターバンドに開口を配置することで、開口の位置を簡単に識別できる。図示の実施形態では、開口は円形に見えるが、他の実施形態では、開口は卵形又は細長い場合がある。ロケーターバンドを使用して、例えば、図2A,3A,4A,5Aに示される、複数の開口の実施形態を含む、様々な構成の縫合糸材料の開口を識別することができる。
【0061】
図7A図7Cを参照する。一実施形態による縫合装置は、鋭利な先端111から幅広のハブ113に向かってテーパ状になる針112と、それに続く、比較的幅広のリーダー114であって、例えば、図7Aに示す複数開口区分、図7Bに示す球とループの区分、及び図7Cに示す隣接する開口のチェーンなどの様々な設計の複数開口区分まで延びる比較的幅広のリーダー114とを利用する。幅広のハブ113とそれに続く比較的幅広のリーダー114は、針及びリーダーが組織を徐々に広げて、例えば、複数開口区分56、36、又は16などの続いてくる複数開口区分が周囲寸法の増加によって行き詰ることなく組織を通して引っ張られることを可能にするように寸法決定される。
【0062】
加えて、又は代わりに、代替の実施形態では、複数開口区分は、針の末端又はハブの外寸に近い小さな外寸で針ハブから出発し、比較的短い距離にわたって徐々に厚くなり、複数開口自己保持システムに固有の最終的な縫合糸の必要な厚さに達することができる。この漸進的な径の増加は、同一の縫合糸のデザインから出発して、標準的な針に適合するように小径であるものが徐々に径を増加して、固定縫合糸が組織を順行性に漸進的に通過することを困難にする傾向を抑制又は減少させる、あらゆる実施形態で達成することができる。
【0063】
図8A図8Cを参照する。一実施形態による縫合装置は、従来のテーパ状の針122であって、テーパ状のリーダー部分124に結合するハブ又は末端123を有し、リーダー部分124は、第1の狭い端部126から、針122から幅広の末端端部128までテーパ状になるようにスエージングされ、幅広の末端端部128は、例えば、図8Aに示されるような複数開口の有棘区分、図8Bに示される球とループの区分などの隆起及びループ区分、及び、図8Cに示されるような隣接する開口のチェーンなどの様々のデザインの複数開口区分まで延びる、従来のテーパ状の針122を利用する。テーパ状のリーダー部分124は、リーダーが組織を徐々に広げて、例えば、複数開口区分56、36、又は16などのリーダーに続く複数開口区分が、周囲の径の増加によって行き詰る組織を通して引っ張られることを可能にするように寸法決定される。
【0064】
図9Aは、従来のテーパ状針12と、それに続く比較的大きな棘134を特徴とする有刺複数開口区分132を有する有棘無結節縫合糸の実施形態を示す。図示の実施形態では、開口136は、その所望の厚さを減少させる縫合糸本体の穴としてではなく、縫合糸フィラメント137の厚さに近い厚さを有する壁で形成される。図示の実施形態では、開口136及び棘134は、棘が開口に重ならないように、有棘複数開口区分の長さに沿って長手方向に配置される。図示の縫合糸の端部は、実際に縫合糸の第1のループを形成する末端開口138を含む。丸で囲んだ挿入図に示されているように、縫合糸が組織を通して矢印の方向に引っ張られると、棘が中央の縫合糸フィラメントに対して横になり、開口が平らにされる。
【0065】
図9Bは、従来のテーパ状針12とそれに続く有棘複数開口区分132とを有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示し、各棘134は、隣接する棘に対してそれぞれ互い違いになっている。図示の実施形態では、開口136は、その所望の厚さを減少させる縫合糸本体の穴としてではなく、縫合糸フィラメント137の厚さに近い厚さを有する壁で形成される。図示の実施形態では、開口136及び棘134は、棘が開口に重ならないように、有棘複数開口区分の長さに沿って長手方向に配置される。丸で囲んだ挿入図に示されているように、縫合糸が組織を通して矢印の方向に引っ張られると、棘が中央の縫合糸フィラメントに対して横になり、開口が平らにされる。
【0066】
図9Cは、マイクロマシニングを使用してベースフィラメントを切断することによって棘及び開口が形成される、複数開口縫合糸の製造方法の一実施形態を示している。最小の縫合糸の質量は、縫合糸の所望の張力強度に基づいて決定される。ベースフィラメントの寸法は、棘134が棘切断ブレード131によってベースフィラメントに切断され、開口136が開口切断ブレード133によってベースフィラメントに切断された後、最小の縫合糸質量を提供するように選択される。開口136は、スリットがベースフィラメントの正中線にカットされるときに形成され、そのようなスリットは開口になる。棘及びスリットは、切断ブレードを使用してベースフィラメントに切断され、関節式ブレード、往復式ブレード、回転ブレード、及び例えば米国特許第8,926,659号(ジェノバ/エチコン)に開示されているような中空の接地ブレードからなる群から選択される。あるいは、レーザーを使用して、棘及び開口を切断することができる。特定の実施形態では、開口は、手術中に開口を簡単に見つけることができるように、ベース縫合糸フィラメントの色付きの帯によって識別される。
【0067】
従来のテーパ状針12と、それに続く比較的小さな棘144と複数の開口146を特徴とする有刺複数開口区分142を有する有棘無結節縫合糸の実施形態を示す。図示の実施形態では、開口146及び棘144は、棘が開口に重ならないように、有棘複数開口区分の長さに沿って長手方向に配置される。
【0068】
本明細書に開示される実施形態のそれぞれにおいて、隣接する開口間の距離は、手術のタイプ、ならびに縫合糸によって捕捉されなければならないが組織の引き裂きに抵抗しなければならない関与する組織の予想される強度及び組織反応性に応じて変化し得る。例えば、筋原線維又は比較的大量の結合組織及びコラーゲンを含む組織は、より小さな縫合糸ループと対峙することができ、そのような目的のために、選択された縫合糸は、より小さなループの形成を可能にするために互いにより近接した開口を有する。対照的に、脂肪組織はより大きなループを必要とする場合があり、そのような目的のための縫合糸はより大きな開口の間隔を有する場合がある。図示された開口の間隔及び介在する棘の数は例示的であり、非限定的である。
【0069】
図11は、従来のテーパ状の針と、それに続く、縫合糸の中心軸からオフセットされた開口を特徴とする有棘複数開口区分152とを有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示す。
【0070】
図12は、従来のテーパ状針と、それに続く比較的大きな棘及び角のある開口166を特徴とする有棘の複数の開口区分162を有する有棘の無結節縫合糸の実施形態を示し、それぞれの開口は2つの棘164の組の分岐167に形成される。
【0071】
図13は、従来のテーパ状の針と、それに続く比較的小さな棘及び散在する角のある開口176を特徴とする有棘の複数開口区分172とを有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示す。この実施形態では、縫合糸が組織を通して引っ張られると、開口が崩壊するか、又は一緒に折りたたまれ、したがって、縫合糸の全体の直径が減少する。
【0072】
図14は、従来のテーパ状針12とそれに続く有棘複数開口区分182とを有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示し、開口186は、棘184の平面に対してほぼ直角に配置される。
【0073】
図15は、従来のテーパ状針12とそれに続く有棘192を有する、有棘無結節縫合糸の実施形態を示し、開口196は、開口ネック197を介して縫合糸の本体から懸垂している。
【0074】
図16は、従来のテーパ状針12と、それに続く棘のある複数開口区分200とを有するマルチフィラメントの有棘無結節縫合糸の実施形態を示し、開口206は、2つ以上の縫合糸フィラメント209と融合され、ねじ合わされ、又は織り合わされたネック208を有する。
【0075】
図17は、特定の棘204の位置の間に形成された開口206を有する、織られたマルチフィラメントの有棘無結節縫合糸の断面の拡大図を示す。
図18Aは、モノフィラメント縫合糸の実施形態の拡大断面を示しており、縫合糸本体は、中実コア250と、対称的な対として縫合糸の長手方向軸に沿って等間隔に配置された一連の一方向アンカー又は棘252を含む。他の実施形態では、棘は、コアの縦軸に沿ってらせん状に配列されている。他の実施形態では、アンカー又は棘は、縫合糸本体の長手方向軸に沿って互い違い状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ってツイスト切削された多重らせん状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿って重なり合って配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ったランダムに配置され、及びそれらの組み合わせによって配置される。
【0076】
アンカー又は棘がコア上に一体的に形成されるため、コアの強度と完全性が維持される。図18Aの断面図に示されるように、コアは、断面が概ね円形であり得る。図18Cに示される他の実施形態では、コアは、断面図において平坦化され、したがって楕円形又はリボン状であり得るが、図18Dに示す実施形態では、縫合糸本体は、ダンベル又は砂時計の形状をしている場合がある。アンカー又は棘はコアよりも薄く、可撓性があり、組織を通して引っ張られるとコア表面に対して折りたたまれる。各棘において、交互の棘において、又は断続的な棘において、長手方向のスリットの形態の開口254が、コアを横方向に貫通するように配置されている。特定の実施形態では、開口の位置は、独特の着色を介して、又は視覚的に識別可能な独特の着色を有する複数のロケーターバンドのうちの1つに配置することによって視覚的に識別可能である。
【0077】
スリットは概ね閉じているが、外科用針と固定された縫合糸本体によって開かれ、これらを通過できるように寸法が決められている。上記のように利用される場合、ループが望まれるとき、縫合糸のコアに開口が配置され、縫合糸が開口を通して引っ張られて、引き戻されることに対してアンカー又は棘によって固定又はロックされる所望のサイズの一方向ループを形成する。必要に応じて、一連のループを創傷の長さ全体に緩く配置し、次に外科医が戻ってループを締め、単一のループが創傷の閉鎖部への張力のすべてに耐えることなく、創傷の縁を近づけることができる。創傷の閉鎖が完了するまで、ループを繰り返し締めることができる。図示の実施形態では、開口は、棘の位置でコア内にあると識別される。特定の実施形態では、縫合糸コアは、図18図18Dの断面図に示されるように、棘の基部が棘52の基部によって支えられているので、開口の位置でより強固になっている。縫合糸本体に使用される材料に応じて、特定の実施形態では、縫合糸の少なくとも開口を含む部分は、周囲方向に通る、又は縫合糸本体を横方向に貫通してナノファイバーを含めることなどによって、長手方向の断裂に備えて強化される。
【0078】
図19は、対称対で縫合糸の長さにわたって等間隔に配置された一連の一方向アンカー又は棘252を備えた中実コア250を有するモノフィラメント縫合糸の代替実施形態の拡大断面を示す。他の実施形態では、アンカー又は棘は、コアの長手方向軸に沿ってらせん状に配置される。他の実施形態では、アンカー又は棘は、縫合糸本体の長手方向軸に沿って互い違い状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ってツイスト切削された多重らせん状に配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿って重なり合って配置され、縫合糸本体の長手方向軸に沿ったランダムに配置され、及びそれらの組み合わせによって配置される。この実施形態では、長手方向のスリットの形態の開口256は、棘の位置の間に配置され、各開口は、コアを横方向に貫通している。
【0079】
図19に示されるような特定の実施形態では、開口の位置は、独特の着色を介して、又は視覚的に識別可能な独特の着色を有する複数のロケーターバンド258のうちの1つに配置することによって視覚的に識別可能である。視覚的に識別可能な色は、縫合糸の開口のない部分とは異なる視覚信号を提供する染料によって達成することができる。特定の実施形態では、識別可能な色は、電磁放射の励起波長によって活性化されたときに独特の位置信号を提供し、血液によって隠された手術野においてさえ視覚的に独特である蛍光染料などの染料によって提供される。蛍光色素は、例えば、インドシアニングリーン(ICG)、IRDye 800CW、ZW800-1などのシアニンベースの蛍光色素を含む、励起されて発光することができる任意の生物学的に適合性のある化合物を含み得るが、これらに限定されない。他の蛍光色素には、フルオレセイン、インドメタシン誘導体化ナフタリミン、プロトポルフィリンIX、及び重金属を含まない量子ドットが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
図20A図20Cは、それ自体及びそれが配置される組織にロックする自己ロック式有棘縫合糸の実用的な実施形態を示している。示されているように、縫合糸は、切開を閉じるために結節縫合糸として適用されている。デモンストレーションに使用された組織のモデルは柑橘系の果物である。図示の例を形成する際に、STRATAFIXブランドの有棘縫合糸は、縫合糸の本体300を通る開口302を形成することによって修正された。着色された縫合糸本体の各開口位置は、開口が容易に配置され得るように、白色のロケーターカラー304でマークされた。図20Aでは、縫合糸は、モデル組織の切開の両側を通して、固定された針を介して引っ張られ、組織表面から延びる少なくとも1つの開口を含む尾部を残す。図20Bでは、所望の末端開口が配置され、針が開口を通過し、切開の2つの側面の所望の接近が得られるまで、次の縫合糸が開口を通して引っ張られる。縫合糸の棘は、縫合糸が引っ張られた開口に対して固定される。縫合糸は、各末端開口の後ろに縫合糸の小さな尾を残してクリップ止めされる。次に、縫合糸の残りの部分を使用して、一連の縫合糸の次の縫合糸を作成する。必要に応じて、組織を通した縫合糸が裂けるという固有のリスクを伴う、切開の両側を最終位置に引っ張るためにどれか1つの縫合糸のみを必要とすることなく、縫合糸を最終的に望まれるよりも緩く配置して、切開の側面を徐々に近接させることができる。すべての縫合糸が所定の位置に配置されたら、縫合糸の次の棘を引っ張って係合することにより、個々の縫合糸をよりきつく引っ張ることができる。これは、既存の縫合糸を結んだ後では調整することができないので、断続的な縫合の特別な改善を提供する。
【0081】
本明細書に開示される縫合糸は、結節して、又は連続して配置されてもよく、後退したり緩んだりすることはない。縫合糸は、筋膜、筋肉、皮下組織、又は皮膚に好適である。縫合糸は、腹腔鏡、内視鏡、ロボット、又は従来の縫合に利用することができる。縫合糸は、既存の有棘及び非有棘縫合糸を含む顔面修復のための既存の縫合糸を置き換えるのに適しており、一般外科ならびに形成外科、整形外科、婦人科、心臓、小児及び泌尿器外科での使用に適している。縫合糸の組成は、永久的又は生体吸収性であり得る。
【0082】
本明細書で引用されたすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかもその全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。例示的な実施形態の様々な修正及び組み合わせ、ならびに本発明の他の実施形態は、説明を参照することにより当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような修正及び改良を包含することが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20A
図20B
図20C
【国際調査報告】