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2023-524920免疫調節導入遺伝子を含む腫瘍溶解性ウイルスおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】免疫調節導入遺伝子を含む腫瘍溶解性ウイルスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20230607BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20230607BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230607BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230607BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20230607BHJP
   C12N 15/20 20060101ALN20230607BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K35/768
A61K35/15 Z
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/04
C12N15/12
C12N15/24
C12N15/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521641
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020055083
(87)【国際公開番号】W WO2021072273
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/913,658
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508259467
【氏名又は名称】アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティ
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】マクファデン,ダグラス グラント
(72)【発明者】
【氏名】トーレス-ドミンゲス,リノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラ,ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】ラフマーン,モハメド マスムズール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA55
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA55
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する粘液腫ウイルス、ならびに対象における血液癌を阻害および/または治療する際のその使用を提供する。本開示はまた、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する粘液腫ウイルスを有する白血球、ならびに対象における血液癌を阻害および/または治療するための白血球の使用を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の免疫調節タンパク質をコードする導入遺伝子を含む操作された粘液腫ウイルス(MYXV)。
【請求項2】
前記1つ以上の免疫調節タンパク質が、インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)、インターロイキン-12(IL-12)、融合関連小膜貫通(FAST)、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の操作されたMYXV。
【請求項3】
前記IL-12がIL-12Aである、請求項2に記載の操作されたMYXV。
【請求項4】
前記IL-12がIL-12Bである、請求項2に記載の操作されたMYXV。
【請求項5】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1結合分子である、請求項2に記載の操作されたMYXV。
【請求項6】
前記PD-L1結合分子が抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項5に記載の操作されたMYXV。
【請求項7】
前記1つ以上の免疫調節タンパク質が、toll様受容体(TLR)を刺激すること、核因子-κB(NF-κB)を活性化すること、またはインターフェロン調節因子(IRF)を活性化することができる、請求項1-6のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項8】
前記操作されたMYXVが、M001R、M002R、M003.1R、M003.2R、M004.1R、M004R、M005R、M006R、M007R、M008.1R、M008R、M009L、M013、M036L、M063L、M11L、M128L、M131R、M135R、M136R、M141R、M148R、M151R、M152R、M153R、M154L、M156R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、およびSODからなる群より選択される1つ以上の遺伝子における、またはそれに隣接する修飾を含む、請求項1-7のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項9】
前記操作されたMYXVが、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7またはSODにおける、またはそれに隣接する修飾を含む、請求項1-8のいずれか一項に記載の操作されたMYXV 。
【請求項10】
前記修飾が、欠失または挿入を含む、請求項8または請求項9に記載の操作されたMYXV。
【請求項11】
前記導入遺伝子が、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、またはSODの一部を置き換える、請求項8-10のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項12】
前記導入遺伝子が、MYXVのゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に位置する、請求項8-11のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項13】
導前記入遺伝子がM135Rの一部を置き換える、請求項8-12のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項14】
前記操作されたMYXVがM135Rノックアウトである、請求項8-13のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項15】
前記操作されたMYXVがSODノックアウトである、請求項8-11のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項16】
レポーター遺伝子をさらに含む、請求項1-15のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項17】
前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質、発光基質、または酵素をコードする、請求項15に記載の操作されたMYXV。
【請求項18】
LC3-IからLC3-IIへの変換アッセイによって決定されるように、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、感染細胞における自食作用を少なくとも5%増加させる、請求項1-17のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項19】
インビトロフローサイトメトリーアッセイによって決定されるように、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、感染した癌細胞の殺傷を少なくとも5%増加させる、請求項1-18のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項20】
インビトロフローサイトメトリーアッセイによって決定されるように、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、感染していない癌細胞の殺傷を少なくとも5%増加させる、請求項1-19のいずれか一項に記載の操作されたMYXV。
【請求項21】
請求項1-20のいずれか一項に記載の操作されたMYXV、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項22】
全身投与用に製剤化されている、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
局所投与用に製剤化されている、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
非経口投与用に製剤化されている、請求項21-23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1-20のいずれか一項に記載の操作されたMYXVにエキソビボで曝露される複数の細胞を含む組成物であって、前記複数の細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む、組成物。
【請求項26】
前記複数の細胞が単一の対象に由来する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1-20のいずれか一項に記載の操作されたMYXVまたは請求項21-24のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における癌を阻害または治療する方法。
【請求項28】
請求項25-26のいずれか一項に記載の組成物を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における癌を阻害または治療する方法。
【請求項29】
前記操作されたMYXVが、前記複数の細胞の少なくとも一部の表面にエキソビボで吸着される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記操作されたMYXVが、前記複数の細胞の表面への操作されたMYXVの結合を可能にする条件下で、前記操作されたMYXVに前記複数の細胞を曝露することによって吸着される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記操作されたMYXVが、前記複数の細胞の少なくとも一部に感染している、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記癌が固形腫瘍である、請求項28-31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記癌が対象の第2の位置に転移している、請求項28-31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の位置が、前記対象の肺、脳、肝臓、および/またはリンパ節を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が、骨肉腫、トリプルネガティブ乳癌、または黒色腫を含む、請求項27-34に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象に追加の治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項27-35に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記追加の治療薬が、前記組成物を投与する前に前記対象に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記追加の治療薬が、前記組成物を投与した後で前記対象に投与される、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記追加の治療薬が、前記組成物と共に対象に同時投与される、請求項36-38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象がヒトである、請求項27-39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
癌を有するかまたは癌を有することが疑われる対象を選択する工程をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記操作されたMYXVが、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞に感染することができる、請求項27-41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞が癌細胞を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記複数の細胞が前記対象の組織から得られるか、または由来する、請求項29-43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の細胞が、前記対象に対して同種異系であるドナーに由来する、請求項29-43に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記複数の細胞が、前記対象に対して、HLA一致、HLA不一致、ハプロタイプ一致、またはそれらの組み合わせであるドナーの組織から得られるか、または由来する、請求項29-43に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
請求項1-20のいずれか一項に記載の操作されたMYXV、請求項21-24のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項25-46のいずれか一項に記載の組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年10月10日に出願された米国仮特許出願第62/913,658号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、粘液腫ウイルスおよび癌の治療、例えば、1つ以上の多重特異性免疫細胞エンゲージャーを発現する粘液腫ウイルスを用いる血液癌の治療のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
様々なタイプの癌を治療するために使用される現在の治療は、癌性細胞に毒を与えるかまたはこれを殺傷することによって機能する傾向がある。不運にも、癌細胞に毒性のある治療は、通常、健康な細胞にも毒性がある傾向がある。さらに、癌の効果的な治療はとらえどころのないままである。化学療法や放射線療法などの現在の主流の治療法は、治療ウィンドウ(例えば、有効性を達成するのに十分高いが、毒性を回避するのに十分低い濃度)が狭い可能性がある。これらのタイプの治療法は、様々なタイプの腫瘍、およびこれらの治療を投与できる限られたウィンドウに起因して、適用範囲が限られている鈍いツールと見なされる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、1つ以上の免疫調節タンパク質をコードする導入遺伝子を含む操作された粘液腫ウイルス(MYXV)である。
【0005】
いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫調節タンパク質は、インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)、インターロイキン-12(IL-12)、融合関連小膜貫通(FAST)、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、IL-12はIL-12Aである。いくつかの実施形態において、IL-12は、IL-12Bである。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1結合分子である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合分子は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫調節タンパク質は、トール様受容体(TLR)を刺激し、核因子-κB(NF-κB)を活性化し、またはインターフェロン調節因子(IRF)を活性化することができる。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、M001R、M002R、M003.1R、M003.2R、M004.1R、M004R、M005R、M006R、M007R、M008.1R、M008R、M009L、M013、M036L、M063L、M11L、M128L、M131R、M135R、M136R、M141R、M148R、M151R、M152R、M153R、M154L、M156R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、およびSODからなる群より選択される1つ以上の遺伝子においてまたはそれに隣接する修飾を含む。いくつかの実施形態では、操作されたMYXVは、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7またはSODにおいてまたはそれに隣接する修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾は、欠失または挿入を含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、またはSODの一部を置き換える。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、MYXVのゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に位置する。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、M135Rの一部を置き換える。いくつかの実施形態では、操作されたMYXVは、M135Rノックアウトである。いくつかの実施形態では、操作されたMYXVは、SODノックアウトである。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、レポーター遺伝子をさらに含む。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質、発光基質または酵素をコードする。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、LC3-IからLC3-IIへの変換アッセイによって決定されるように、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、感染細胞における自食作用(オートファジー)を少なくとも5%増加させる。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、インビトロフローサイトメトリーアッセイによって決定されるように、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、感染した癌細胞の殺傷を少なくとも5%増加させる。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、インビトロフローサイトメトリーアッセイによって決定されるように、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、感染していない癌細胞の殺傷を少なくとも5%増加させる。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、操作されたMYXVおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、全身投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、複数の細胞は、エキソビボで操作されたMYXVに曝露され、ここで、複数の細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、単一の対象に由来する。いくつかの実施形態において、操作されたMYXV、医薬組成物、または複数の細胞は、癌を治療する方法において、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、複数の細胞の少なくとも一部の表面上にエキソビボで吸着される。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、複数の細胞の表面への操作されたMYXVの結合を可能にする条件下で、操作されたMYXVに複数の細胞を曝露することによって吸着される。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、複数の細胞の少なくとも一部に感染している。いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌は、対象の第2の場所に転移している。いくつかの実施形態では、第2の場所は、対象の肺、脳、肝臓、および/またはリンパ節を含む。いくつかの実施形態では、癌は、骨肉腫、トリプルネガティブ乳癌、または黒色腫を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療薬が対象に投与される。いくつかの実施形態では、組成物を投与する前に、追加の治療薬を対象に投与する。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、組成物を投与した後に対象に投与される。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、組成物と共に対象に同時投与される。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、癌を有するか、または癌を有することが疑われる。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞に感染することができる。いくつかの実施形態において、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞は、癌細胞を含む。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、対象の組織から得られるか、または由来する。いくつかの実施形態では、複数の細胞は、対象に対して同種異系であるドナーからのものである。いくつかの実施形態において、複数の細胞は、対象に対してHLA適合、HLA不適合、ハプロタイプ一致、またはそれらの組み合わせであるドナーの組織から得られるか、または誘導される。いくつかの実施形態では、操作されたMYXV、医薬組成物、または組成物はキットの一部である。
【0006】
いくつかの実施形態は、1つ以上の免疫調節タンパク質を発現するように操作された粘液腫ウイルス(MYXV)に関する。
【0007】
いくつかの実施形態は、toll様受容体(TLR)を刺激するか、または核因子-κB(NF-κB)または(インターフェロン調節因子)IRFを活性化することができる1つ以上の免疫調節タンパク質を発現するように操作される粘液腫ウイルス(MYXV)に関する。
【0008】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の粘液腫ウイルスおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0009】
いくつかの実施形態は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、または免疫調節タンパク質を発現するように操作された粘液腫ウイルス(MYXV)によってエキソビボで処理されたそれらの組み合わせを含む組成物に関する。
【0010】
いくつかの実施形態は、免疫調節タンパク質を発現するように操作された粘液腫ウイルス(MYXV)を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における癌を阻害または治療する方法に関する。
【0011】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における癌を阻害または治療する方法に関する。
【0012】
いくつかの実施形態は、粘液腫ウイルスまたは本明細書に記載の医薬組成物を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の特定の実施形態の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に示されている。本開示の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、およびその添付の図面を参照することによって得られる。
図1】免疫調節導入遺伝子を含む本開示の組換えMYXVを生成するために使用することができる組換えプラスミド設計の例示的な概略図を提供する。
図2】STING導入遺伝子を含む本開示のMYXVを生成するために使用される組換えプラスミドの設計、および組換え後の改変されたMYXVゲノムを示す。
図3A】候補MYXV-STINGクローンまたは対照をスクリーニングすることから得られたPCR産物のアガロースゲル電気泳動を介したSTINGの検出を示す。
図3B】候補MYXV-STINGクローンまたは対照に感染したRK13細胞からの溶解物のウエスタンブロットによるSTINGの検出を示す。
図4】MYXV-STINGの複製能力がRK13細胞における対照ウイルスと類似していたことを示している。
図5A図5A図5B、および図5Cは、モック感染したか(図5A)、MYXV-M135KO-GFPに感染したか(図5B)、またはMYXV-M135KO-GFP-STINGに感染した(図5C)、RK13、Vero、およびA549細胞株から得られた顕微鏡画像である。
図5B図5A図5B、および図5Cは、モック感染したか(図5A)、MYXV-M135KO-GFPに感染したか(図5B)、またはMYXV-M135KO-GFP-STINGに感染した(図5C)、RK13、Vero、およびA549細胞株から得られた顕微鏡画像である。
図5C図5A図5B、および図5Cは、モック感染したか(図5A)、MYXV-M135KO-GFPに感染したか(図5B)、またはMYXV-M135KO-GFP-STINGに感染した(図5C)、RK13、Vero、およびA549細胞株から得られた顕微鏡画像である。
図6】モック感染、MYXV-STINGに感染した、またはMYXV-GFPに感染したA549細胞からの溶解物のウエスタンブロットによって検出されたLC3-IIの存在を示す。
図7A図7Aおよび図7Bは、それぞれ、感染後24時間および48時間での本開示のMYXVによるTHP-1細胞の感染を示す。
図7B図7Aおよび図7Bは、それぞれ、感染後24時間および48時間での本開示のMYXVによるTHP-1細胞の感染を示す。
図8A図8Aおよび図8Bは、それぞれ、感染後24時間および48時間での本開示のMYXVによるU266細胞の感染を示す。
図8B図8Aおよび図8Bは、それぞれ、感染後24時間および48時間での本開示のMYXVによるU266細胞の感染を示す。
図9】フローサイトメトリーによって評価された、本開示のMYXVによるTHP-1細胞の殺傷を実証する。
図10】フローサイトメトリーによって評価された、本開示のMYXVによるU266細胞の殺傷を実証する。
図11】フローサイトメトリーによって評価された、本開示のMYXVによる初代ヒト多発性骨髄腫細胞の殺傷を実証する。
図12】骨髄生検中のBM抽出の6時間後および24時間後に分析された、同じ一次細胞サンプルから示されたPacific Blue 420標識MM集団の喪失を示している。
図13A図13A-13Cは、BOR耐性VK12598細胞株がMYXVに対して感受性であることを示す。図13Aは、MYXV(Venus+)のVK12598細胞株への結合を示す。
図13B図13A-13Cは、BOR耐性VK12598細胞株がMYXVに対して感受性であることを示す。図13Bは、蛍光顕微鏡を介してVK12598細胞株の生産的感染を示す。
図13C図13A-13Cは、BOR耐性VK12598細胞株がMYXVに対して感受性であることを示す。図13Cは、フローサイトメトリーを介してVK12598細胞株の生産的感染を示す。
図14A図14Aおよび14Bは、多剤耐性VK12653細胞株のMYXV結合および感染を示す。図14Aは、MYXV(Venus+)のVK12653細胞株への結合を示す。
図14B図14Aおよび14Bは、多剤耐性VK12653細胞株のMYXV結合および感染を示す。図14Bは、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーを介するVK12653細胞株の生産的感染を示す。
図15A図15A-15Cは、自己移植レシピエントにおける既存の多発性骨髄腫癌を治療するための粘液腫ウイルスを用いるエキソビボ療法を示す。図15Aは、VK12598細胞(上のパネル)と4つの実験コホート(下のパネル)を移植してから4週間後にマウスのMスパイクを提供するウエスタンブロットを示す。MM細胞移植の4週間後のMスパイクのレベル。
図15B図15A-15Cは、自己移植レシピエントにおける既存の多発性骨髄腫癌を治療するための粘液腫ウイルスを用いるエキソビボ療法を示す。図15Bは、低Mスパイク(0.1)を有する代表的なモック処置マウスにおけるMM細胞(CD138+B220-)のパーセンテージおよび高Mスパイク(0.6)を有する代表的な骨髄レシピエントマウスにおけるMM細胞(CD138+B220-)のパーセンテージを示す。
図15C図15A-15Cは、自己移植レシピエントにおける既存の多発性骨髄腫癌を治療するための粘液腫ウイルスを用いるエキソビボ療法を示す。図15Cは、MYXV-M135KO-GFPを用いてエキソビボで処理された骨髄で処理されたマウスのMスパイクを示す。移植後8日目、29日目、および37日目にMスパイクバンドは検出されなかった。
図16A】MYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗-muPDL1-GFP、またはMYXV-p14FAST-GFPを用いる感染24時間後および48時間でGFP陽性であったTHP-1細胞のパーセントを示す。
図16B】MYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗-muPDL1-GFP、またはMYXV-p14FAST-GFPを用いる感染24時間後および48時間でGFP陽性であったU266細胞のパーセントを示す。
図17A】MYXV-WT-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、およびMYXV-p14FAST-GFPによって24時間および48時間で殺傷された感染THP-1細胞のパーセントを示す。
図17B】MYXV-WT-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、およびMYXV-p14FAST-GFPによって24時間および48時間で殺傷された非感染THP-1細胞のパーセントを示す。
図18A】MYXV-WT-GFPおよびMYXV-p14FAST-GFPによって24時間および48時間で殺傷された感染U266細胞のパーセントを図示する。
図18B】MYXV-WT-GFPおよびMYXV-p14FAST-GFPによって24時間および48時間で殺傷された非感染U266細胞のパーセントを図示する。
図19】MYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗-muPDL1-GFP、またはMYXV-p14FAST-GFPに感染した培養物について、感染したTHP-1細胞に対する死滅したTHP-1細胞の比率を提供する。
図20】MYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗muPDL1-GFP、またはMYXV-p14FAST-GFPに感染した培養物について、感染したU266細胞に対する死滅したU266細胞の比率を提供する。
図21】(GFP陽性)MYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、およびMYXV-SODKO-TNFα-GFPに感染した初代ヒトCD138+多発性骨髄腫細胞のパーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の態様は、免疫調節導入遺伝子を発現する腫瘍溶解性ウイルス組換え構築物、および血液癌などの癌を治療するためのそれらの使用に関する。腫瘍溶解性ウイルスは、粘液腫ウイルス(MYXV)であり得、本発明の構築物で使用される免疫調節導入遺伝子は、インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)、プログラムされたデスリガンド1(抗PDL1)に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント、融合関連小膜貫通(FAST)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン12(IL-12)、またはそれらの組み合わせを含み得る。本明細書に記載のMYXVは、微小残存病変(MRD)および薬剤耐性MRDを含む血液癌を治療するために使用できる。
【0015】
本明細書に記載のMYXVは、再発性多発性骨髄腫(MM)疾患などの血液癌を治療し、難治性および薬剤耐性のMRDを完全に排除するためのより効果的な治療法であり得る。MMは、溶解性骨病変、貧血、腎不全、高カルシウム血症を含む末端器官損傷を引き起こす悪性血漿細胞のクローン性増殖を特徴とし得る血液悪性腫瘍である(Hari P.Recent advances in understanding multiple myeloma.Hematol Oncol Stem Cell Ther.2017;印刷中)。MMの骨髄(BM)腫瘍微小環境は、悪性MM細胞の分化、移動、増殖、生存、および薬剤耐性をサポートおよび維持する重要な役割を果たす(Kawano Y,Moschetta M,Manier S,Glavey S,Goerguen GT,Roccaro AM,et al.Targeting the bone marrow microenvironment in multiple myeloma.Immunol Rev.2015;263(1))。移植適格患者のための自己幹細胞移植は、化学療法とともに、MMの標準治療であり得る(Landgren O,Lu SX,and Hultcrantz M.MRD Testing in Multiple Myeloma:The Main Future Driver for Modern Tailored Treatment.Semin Hematol.2018;55(1):44-50;Hoyos V,and I.B.The immunotherapy era of myeloma:monoclonal antibodies,vaccines,and adoptive T-cell therapies.Blood.2016;128(13):1679-87)。しかし、これらの治療法の主なハードルは、治療抵抗性のMM細胞の貯蔵庫として機能することができ、微小残存病変(MRD)をもたらす腫瘍性クローンに起因する疾患の再発であり得る。
【0016】
転帰の改善にもかかわらず、MMは依然としてほとんどの患者にとって不治であると見なされており、リスクの高い特徴を有する患者では低い生存率が観察される(Bustoros M,Mouhieddine TH,Detappe A,and IM.G.Established and Novel Prognostic Biomarkers in Multiple Myeloma.Am Soc Clin Oncol Educ Book.2017;37:548-60)。MYXVなどの腫瘍溶解性ウイルスは、形質転換された癌細胞に選択的に感染してこれを殺傷する能力、および宿主の免疫系を活性化するそれらの能力のために設計および/または選択できる哺乳動物ウイルスである。本明細書に記載のMYXVは、免疫調節導入遺伝子を利用し、宿主免疫系と組み合わせて働き、癌細胞を標的にすることができる。したがって、本明細書に記載の粘液腫ウイルスは、難治性および薬剤耐性の微小残存病変を軽減または排除するために役立つことができ、再発したMM疾患を治療するためにより効果的であり得る。
【0017】
定義
特に断りのない限り、専門用語は従来の使用法に従って使用される。 分子生物学の一般的な用語の定義は、Oxford University Press,1994(ISBN 0-19-854287-9)によって発行されたBenjamin Lewin、Genes V(ISBN 0-19-854287-9)、Kendrew et al.(編),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN 0-632-02182-9)、およびRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,published by VCR Publishers,Inc.,1995(ISBN 1-56081-569-8)に記載されている。
【0018】
別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0019】
以下の用語および方法の説明は、本発明の化合物、組成物、および方法をよりよく説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。また、本開示で使用される用語は、特定の実施形態および例を説明することのみを目的としており、限定されることを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0020】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。
【0021】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリストされた項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに代替(「または」)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「1(つ)以上」または少なくとも1つは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上、任意の数までを意味し得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」または「含むこと」という用語は、「含む(include)」を意味する。したがって、「AまたはBを含むこと」は、A、B、またはAおよびBを含むことを意味する。「含む」および「含むこと」、「含み」、および「含んだ」などのこの用語のバリエーションは、本明細書で使用される場合、様々な付加的な構成要素または工程が共同して利用され得ることを意味する。
【0024】
「有効量」または「治療有効量」は、治療的および/または有益な効果であり得る所望の効果を生み出すのに十分である、本開示の化合物または組成物の量を指す。この例では、有効量は、対象の年齢、一般的な状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、治療の期間、任意の同時治療の性質、使用される薬学的に許容される担体、および熟練作業者の知識と技能内にある同様の要因によって変動し得る。適切である場合、任意の個々の場合における有効量または治療有効量は、関連するテキストおよび文献を参照することによって、および/または実験によって決定することができる。(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy(最新版)を参照のこと)。
【0025】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は交換可能に使用され、ヒトと非ヒト動物の両方を指す。本開示の「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、齧歯動物(例えば、マウス、ラットなど)などの哺乳動物、および非哺乳動物を含む。対象はヒトである可能性がある。対象はヒトの患者である可能性がある。いくつかの実施形態において、本開示の対象は、ヒトの対象である。
【0026】
本明細書で使用される「細胞」という用語は、単一の細胞ならびに複数の細胞または細胞の集団を含む。薬剤を細胞に投与または曝露することには、インビトロ、エキソビボ、およびインビボでの投与または曝露が含まれ得る。
【0027】
「それを必要とする対象」または「必要とする対象」は、血液癌などの癌を有することが知られているか、または有することが疑われる対象である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、悪性新生物、例えば、分化の喪失、成長速度の増加、周囲組織への浸潤を伴う特徴的な退形成を受け、転移することができる新生物を指す。
【0029】
残存癌は、癌を減少または根絶するために対象に与えられた何らかの型の治療の後に対象に残る癌である。転移性癌は、転移性癌が由来する元の(原発性)癌の起源の部位以外の、体内の1つ以上の部位、例えば、第2の部位にある癌である。局所再発は、元の癌と同じ部位(同じ組織内など)またはその近くでの癌の再発である。血液癌は、血液、骨髄、および/またはリンパ系に影響を与える癌である。
【0030】
血液癌の非限定的な例には、白血病、リンパ腫、および骨髄腫が含まれ、これには、例えば、以下が含まれる:多発性骨髄腫(MM);活動性多発性骨髄腫;くすぶり型骨髄腫;形質細胞腫;骨の孤立性形質細胞腫;髄外形質細胞腫;軽鎖骨髄腫;非分泌性骨髄腫;免疫グロブリンG(IgG)骨髄腫;免疫グロブリンA(IgA)骨髄腫;免疫グロブリンM(IgM)骨髄腫;免疫グロブリンD(IgD)骨髄腫;免疫グロブリンE(IgE)骨髄腫;高二倍体多発性骨髄腫;非高二倍体多発性骨髄腫;ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫;急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄性白血病;本態性血小板血症;真性赤血球増加症;原発性骨髄線維症;全身性肥満細胞症;慢性骨髄性白血病;慢性好中球性白血病;慢性好酸球性白血病;環状鉄芽球を伴う難治性貧血;多系統異形成を伴う難治性細胞減少症;過剰芽球1型を伴う難治性貧血;過剰芽球2型を伴う難治性貧血;孤立した欠失(del)(5q)を伴う骨髄異形成症候群(MDS);分類不可能なMDS;慢性骨髄単球性白血病(CML);非定型慢性骨髄性白血病;若年性骨髄単球性白血病;骨髄増殖性/骨髄異形成症候群-分類不能;Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫;Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性縦隔B細胞リンパ腫;バーキットリンパ腫/白血病;濾胞性リンパ腫;慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫;B細胞前リンパ球性白血病;リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストロームマクログロブリン血症;マントル細胞リンパ腫;辺縁帯リンパ腫;移植後リンパ増殖性疾患;HIV関連リンパ腫;原発性滲出液リンパ腫;血管内大細胞型B細胞リンパ腫;原発性皮膚B細胞リンパ腫;有毛細胞白血病;重要性が不明な単クローン性免疫グロブリン血症;未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、細網内皮症、細網症、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病、ワルデンストロームマクログロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、形質細胞白血病、急性赤芽球血症および赤白血病、急性赤芽球性骨髄症、急性赤白血病、Heilmeyer-Schoener病、急性巨核芽球性白血病、マスト細胞白血病、汎骨髄症、骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症、リンパ肉腫細胞白血病、幹細胞白血病、不特定の細胞型の慢性白血病、不特定の細胞型の亜急性白血病、加速期慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性好塩基性白血病、急性好酸球性白血病、急性単球性白血病、成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄性樹状細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、侵攻性NK細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性特発性骨髄線維症、Kahler病、骨髄腫症、孤立性骨髄腫、形質細胞白血病、血管中心性免疫増殖性病変、リンパ性肉芽腫症、血管免疫芽球性リンパ節腫脹症、T-ガンマリンパ増殖性疾患、ワルデンストロームマクログロブリン血症、アルファ重鎖疾患、ガンマ重鎖疾患、およびフランクリン病。いくつかの実施形態において、血液癌は多発性骨髄腫である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療において治療的有用性を有する任意の化学剤を指す。このような疾患には、腫瘍、新生物、および癌、ならびに乾癬などの過形成性増殖を特徴とする疾患が含まれ得る。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、抗新生物剤などの、癌の治療に使用される薬剤である。いくつかの実施形態において、化学療法剤は放射性化合物である。当業者は、使用する化学療法剤を容易に特定することができる(例えば、Slapak and Kufe,Principles of Cancer Therapy,Chapter 86 in Harrison’s Principles of Internal Medicine,14th edition;Perry et al.,Chemotherapy,Ch.17 in Abeloff,Clinical Oncology 2nd ed.,2000 Churchill Livingstone,Inc;Baltzer and Berkery.(eds):Oncology Pocket Guide to Chemotherapy,2nd ed.St.Louis,Mosby-Year Book,1995;Fischer Knobf,and Durivage (eds):The Cancer Chemotherapy Handbook,4th ed.St.Louis,Mosby-Year Book,1993)。併用療法は、癌を治療するために複数の薬剤を投与することである。例えば、免疫調節導入遺伝子を発現する粘液腫ウイルスを投与することができ、1つ以上の化学療法剤を同時にまたは任意の順序で時間的に分離して投与することができる。
【0032】
本明細書で使用される「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、疾患または状態に苦しむ患者に医薬組成物を投与することを指す。本明細書で使用される場合、癌などの「疾患を阻害または治療する」という用語は、疾患または状態の発症または進行を遅延または阻害することを指す。「治療」とは、疾患または病的状態が発症し始めた後、その兆候または症状を改善する治療的介入を指す。疾患または病的状態に関連する「改善すること」という用語は、いかなる治療の観察可能な有益な効果も指す。有益な効果は、例えば、感受性のある対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部もしくはすべての臨床症状の重症度の低下、転移などの疾患の進行の遅延、対象の全体的な健康もしくは幸福の改善、または特定の疾患に特有である当該技術分野でよく知られている他のパラメーターによって証明することができる。「予防的」治療は、例えば、転移性癌などの病状を発症するリスクを低減する目的で、疾患の兆候を示さないか、または初期の兆候のみを示す対象に投与される治療である。
【0033】
本明細書で使用される場合、本明細書に開示される治療用化合物と併せて有用な「薬学的に許容される担体」は、従来のものであり得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,19th Edition(1995)は、治療薬の薬剤送達に適した組成物および製剤を説明している。
【0034】
一般に、担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸薬、錠剤、またはカプセルの型)の場合、従来の非毒性固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存料、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの少量の非毒性補助物質を含むことができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「医薬品」および「治療薬」という用語は、対象または細胞に適切に投与されたときに所望の治療的または予防的効果を誘導することができる化合物または組成物を指す。
【0036】
「複製コンピテント」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト血液細胞(例えば、血液癌細胞、または末梢血単核細胞)などの特定の宿主細胞内で感染および複製することができる粘液腫ウイルスなどのウイルスを指す。
【0037】
「免疫調節導入遺伝子」という用語は、ウイルスゲノムに導入することができ、免疫系の機能に影響を及ぼし得る、例えば、炎症、先天性または適応性免疫シグナル伝達、先天性または適応免疫細胞活性化(例えば、標的細胞の殺傷、サイトカイン、ケモカイン、または他の炎症性メディエーターの産生)、先天性または適応性免疫細胞ホーミング(例えば、走化性、血管外遊出、および/または部位での蓄積)、先天性または適応性免疫細胞増殖、先天性または適応性免疫細胞分化、抗体産生、抗癌免疫応答、あるいはそれらの組み合わせに影響を与える産物をコードする遺伝子配列を指す。免疫調節導入遺伝子の例には、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、およびIL-12が含まれるが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
粘液腫ウイルス
粘液腫ウイルス(MYXV)は、その独特の生物学のために、多発性骨髄腫(MM)のような血液癌に対する治療用ウイルスとして潜在的によく適している。MYXVは、ポックスウイルス科およびレポリポックスウイルス属のメンバーである(Chan WM,Rahman MM,and McFadden G.Oncolytic myxoma virus:the path to clinic.Vaccine.2013;31(39):4252-8,Chan WM,and McFadden G.Oncolytic Poxviruses.Annu Rev Virol.2014;1(1):119-41)。
【0039】
MYXVは、様々なヒトおよびマウスの癌、例えば、原発性癌と確立された細胞株の両方を標的とすることができる新規の腫瘍溶解性ウイルスである(Stanford MM,and McFadden G.Myxoma virus and oncolytic virotherapy:a new biologic weapon in the war against cancer.Expert Opin Biol Ther.2007;7(9):1415-11425;Wang G,Barrett JW,Stanford M,Werden SJ,Johnston JB,Gao X,et al.Infection of human cancer cells with myxoma virus requires Akt activation via interaction with a viral ankyrin-repeat host range factor.Proc Natl Acad Sci USA.2006;103(12):4640-5;Bartee E,Chan WM,Moreb JS,Cogle CR,and McFadden G.Selective purging of human multiple myeloma cells from autologous stem cell transplantation grafts using oncolytic myxoma virus.Biol Blood Marrow Transplant.2012;18(10):1540-51;Chan WM,Rahman MM,and McFadden G.Oncolytic myxoma virus:the path to clinic.Vaccine.2013;31(39):4252-8;Kim M,Madlambayan GJ,Rahman MM,Smallwood SE,Meacham AM,Hosaka K,et al.Myxoma virus targets primary human leukemic stem and progenitor cells while sparing normal hematopoitic stem and progenitor cells.Leukemia.2009;32:2313-7;Villa NY,Wasserfall CH,Meacham AM,Wise E,Chan W,Wingard JR,et al.Myxoma virus suppresses proliferation of activated T lymphocytes yet permits oncolytic virus transfer to cancer cells.Blood.2015;125(24):3778-88)
【0040】
本来は、MYXVはウサギ特異的であり、一般に、免疫コンピテントなヒト、マウス、または他の家畜において感染または疾患を引き起こさない。しかし、発癌に関連する癌経路の変異の性質により、マウスとヒトの両方の癌細胞は、MYXVを含む一部のウイルスによる感染に抵抗する能力が低下する可能性がある(例えば、損なわれた先天性免疫経路)(Chan WM,and McFadden G.Oncolytic Poxviruses.Annu Rev Virol.2014;1(1):119-41,Sypula J,’Wang F,Ma Y,Bell J,and McFadden G.Myxoma virus tropism in human tumors.Gene Ther and Mol Biol.2004;8:103-14)。
【0041】
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態において、改変された(例えば、操作された)粘液腫ウイルス(MYXV)である。MYXVは、複製コンピテントであるポックスウイルスのLeporipoxvirus種に属する任意のウイルスであり得る。MYXVは、MYXVの野生型株である場合もあれば、MYXVの遺伝子組み換え株である場合もある。いくつかの場合において、MYXVはLausanne株である。いくつかの場合において、MYXVは南米のMYXV株であり、Sylvilagus brasiliensisにおいて循環する。いくつかの場合において、MYXVはSylvilagus bachmaniにおいて循環するカリフォルニアのMYXV株である。いくつかの場合において、MYXVは、6918であり、遺伝子M009L、M036L、M135R、およびM148R(2019年8月27日にGenBankによって提供されたような、参照により本明細書に組み込まれるGenBankアクセッション番号EU552530)の改変を含む弱毒化スペイン野外株である。いくつかの場合において、MYXVは6918VP60-T2(GenBankアクセッション番号EU552531、これは、2019年8月27日にGenBankによって提供された参照により本明細書に組み込まれる)である。いくつかの場合において、MYXVはSG33であり、これは、遺伝子M151R、M152R、M153R、M154L、M156R、M008.1R、M008R、M007R、M006R、M005R、M004.1R、M004R、M003.2R、M003.1R、M002R、およびM001Rに影響を与えるゲノム欠失を含む株である(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)アクセッション番号1-1594)。いくつかの場合において、MYXVは標準実験室株(SLS)と呼ばれる株である。
【0042】
いくつかの場合において、MYXVゲノムは、Cameron,et al.,「The complete DNA sequence of Myxoma Virus,」Virology 264:298-318(1999)に開示されている核酸配列に対して、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を含む、例えば、95%から98%の間、95%から99%の間の、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の核酸配列同一性を含む。いくつかの場合において、MYXVは、Cameron,et al.,「The complete DNA sequence of Myxoma Virus,」Virology 264:298-318(1999)に開示された配列を含む。
【0043】
大きくて遺伝的に安定なポックスウイルスゲノムは、遺伝子操作、例えば、1つ以上の欠失および/または1つ以上の治療的(例えば、免疫調節)導入遺伝子の導入を伴うウイルスの生成を可能にする(Nayerossadat N,Maedeh T,and Ali PA.Viral and nonviral delivery systems for gene delivery.Adv Biomed Res.2012;1:27)。
【0044】
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態において、粘液腫ウイルス(MYXV)および改変された(例えば、操作された)MYXVである。MYXVは、複製コンピテントであるポックスウイルスのLeporipoxvirus種に属する任意のウイルスであり得る。MYXVは、MYXVの野生型株である場合もあれば、MYXVの遺伝子組み換え株である場合もある。
【0045】
粘液腫ウイルスゲノムは、本明細書に開示され、および/または当業者に知られており、例えば、Sambrook et al.((2001) Molecular Cloning:a Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press)に記載されている分子生物学技術を使用して、1つ以上の治療用導入遺伝子(例えば、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12などの免疫調節導入遺伝子)を発現するように改変することができる。当業者は、粘液腫ウイルスゲノムのどの部分を削除して、ウイルスが依然として生産的感染を可能にし、例えば、複製コンピテントウイルスを提供することができるかを決定することができる。例えば、削除できるウイルスゲノムの非必須領域は、公開されているウイルスゲノム配列を他のよく特徴付けられたウイルスのゲノムと比較することから推測できる(例えば、C.Cameron,S.Hota-Mitchell,L.Chen,J.Barrett,J.-X.Cao,C.Macaulay,D.Willer,D.Evans,and G.McFadden,Virology (1999) 264:298-318)を参照のこと)。
【0046】
いくつかの実施形態において、開示されるMYXV組換え構築物は、多発性骨髄腫(MM)などの再発性/難治性の原発性ヒト血液悪性腫瘍を治療し、そして微小残存病変(MRD)を標的とし、かつ低減または排除する腫瘍溶解性ウイルス候補である。いくつかの実施形態において、MYXVは、1つ以上の導入遺伝子を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、MYXVゲノムにおける1つ以上の遺伝子改変、欠失、および/または破壊を含む。例えば、本開示のMYXVは、ゲノム内の1つ以上の遺伝子内、またはこれらの遺伝子に隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含むことができる。挿入、欠失または改変は、遺伝子ノックアウト(例えば、遺伝子によってコードされる産物の機能性をそれによって低下または排除する1つ以上のヌクレオチドの欠失、または遺伝子によってコードされる産物の発現および/または機能をそれによって破壊する1つ以上のヌクレオチドの挿入)を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入、欠失、または改変は、遺伝子ノックアウトを含まない(例えば、配列は、2つの遺伝子の発現を破壊することなく、2つの遺伝子間の遺伝子間遺伝子座に挿入され得る)。改変は、例えば、本明細書に開示される遺伝子の一部を置き換える導入遺伝子であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、宿主動物において疾患を引き起こすウイルスの能力に関連する1つ以上の遺伝子内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、宿主細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、自然免疫応答を回避するウイルスの能力に関連する1つ以上の遺伝子内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、感染細胞における免疫シグナル伝達(例えば、サイトカイン受容体シグナル伝達)を調節する1つ以上の遺伝子内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、感染細胞における細胞死経路を調節する1つ以上の遺伝子(例えば、M011L遺伝子アクセッション番号GQ398535などのアポトーシスを促進または阻害する産物をコードする遺伝子)内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、癌細胞におけるウイルス複製を調節する(例えば、癌細胞におけるウイルス複製の速度を増加または減少させる)1つ以上の遺伝子内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、宿主動物において疾患を引き起こすウイルスの能力に関連し、宿主細胞向性に関連し、自然免疫応答を回避するウイルスの能力に関連し、感染細胞における免疫シグナル伝達を調整でき、感染細胞における細胞死経路を調節することができる、癌細胞におけるウイルス複製を調節することができ、またはそれらの組み合わせである、1つ以上の遺伝子は、M001R、M002R、M003.1R、M003.2R、M004.1R、M004R、M005R、M006R、M007R、M008.1R、M008R、M009L、M013、M036L、M063L、M011L、M128L、M131R、M135R、M136R、M141R、M148R、M151R、M152R、M153R、M154L、M156R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、およびSODのいずれか1つ以上を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、MYXV遺伝子の改変を含む。いくつかの場合において、改変は、MYXV遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を損なう欠失である。いくつかの場合において、改変は部分的な欠失である。例えば、部分的欠失は、MYXV遺伝子の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の欠失であり得る。いくつかの実施形態において、部分的欠失は、MYXV遺伝子の最大で10%、最大で20%、最大で30%、最大で40%、最大で50%、最大で60%、最大で70%、最大で80%、最大で90%、または最大で95%の欠失であり得る。他の場合、改変は、MYXV遺伝子の完全な欠失である。いくつかの実施形態において、改変は、MYXV遺伝子を本開示の1つ以上の導入遺伝子(例えば、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12)で置き換えることである。
【0051】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、宿主細胞向性(例えば、ウサギ細胞向性)に関連する1つ以上の遺伝子内またはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子は、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの場合において、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子は、M135R、M136R、またはそれらの組み合わせを含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、M135R遺伝子の改変を含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、M135R遺伝子の部分的欠失または完全な欠失を含む。M135R遺伝子の欠失または破壊は、例えば、MYXVが抗癌効果を示す(例えば、癌細胞に感染し、これを殺傷する)能力を損なうことなく、本開示のMYXVが宿主動物に疾患を引き起こす能力を弱めることができる。
【0053】
いくつかの場合において、改変は、M135R遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を損なう欠失である。いくつかの場合において、改変は部分的欠失である(例えば、M135R遺伝子の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の欠失、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、最大95%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の欠失)。他の場合、改変は、M135R遺伝子の完全な欠失である。いくつかの実施形態において、欠失は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100、少なくとも200、または少なくとも300の核酸の欠失である。いくつかの実施形態において、欠失は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおけるM135Rの発現を駆動するプロモーター)を破壊する。いくつかの実施形態において、欠失は、終止コドン、例えば、完全長のM135R転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM135R遺伝子配列に導入する。
【0054】
いくつかの実施形態において、MYXVは、M135R遺伝子の機能を損なうM135R遺伝子の改変(例えば、M135R遺伝子の発現および/または機能を破壊する配列の挿入)を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1500、または少なくとも2000の核酸の挿入である。いくつかの実施形態において、挿入は、M135R遺伝子配列のリーディングフレームを変更し、それにより、M135R転写物および/またはタンパク質の発現を破壊する。
【0055】
いくつかの場合において、変異は、置換、例えば、M135R遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または発現レベルを弱める置換である。いくつかの実施形態において、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30の核酸が置換される。いくつかの実施形態において、置換は、終止コドン、例えば、完全長のM135R転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM135R遺伝子配列に導入する。いくつかの実施形態において、置換は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおいてM135Rの発現を駆動するプロモーター)を破壊する。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される改変または変異は、M135R遺伝子および/またはタンパク質の活性レベルを、野生型MYXV、または機能的な野生型M135RをエンコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱める。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される改変または変異は、M135R遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルを、野生型MYXV、または機能的な野生型M135RをコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱める。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるMYXVは、野生型MYXV、または機能的な野生型M135RをコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱められたM135Rタンパク質の活性レベルを有する。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるMYXVは、野生型MYXV、または機能的な野生型M135RをコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱められたM135R遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルを有する。
【0060】
いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、MYXVゲノム内のM135R遺伝子を置換し、例えば、M135R遺伝子を破壊し、これを本開示の1つ以上の導入遺伝子(例えば、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12)で置き換える。いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、MYXVゲノム内のM135R遺伝子の一部を置き換える(例えば、M135R遺伝子の一部をSTING、抗PDL1、FAST、TNFαで置き換える)。いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、MYXVゲノム内のM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、M135-136遺伝子座に挿入される。MYXVの場合、本明細書で使用される136は、MYXVのM136遺伝子座を指すことができる。いくつかの実施形態において、M136とは、MYXVのM136Rを指す。
【0061】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、M153遺伝子の改変を含む。M153遺伝子産物はE3-ユビキチンリガーゼであり、これは、多様な細胞受容体およびタンパク質のダウンレギュレーション、例えば、ヒト細胞におけるMHCクラスIおよびCD4の分解に関与している可能性がある。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、弱められたM153タンパク質の活性および/または発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、M153タンパク質の弱められた活性および/または発現レベルは、免疫エピトープの提示、例えば、ウイルスおよび/または癌免疫ペプチドのMHC依存性提示を増強することができる。感染した癌細胞による免疫エピトープの提示の増強は、抗癌CD8+T細胞応答などの抗癌T細胞応答を含むより強い免疫応答を誘発し得る。いくつかの実施形態において、M153タンパク質の弱められた活性および/または発現レベルは、MHC-1によるM153KOウイルス感染腫瘍細胞からの直接抗原提示を増加させ、MYXVによって媒介される免疫活性化を増強する。
【0062】
いくつかの実施形態において、MYXVは、M153遺伝子の部分的欠失または完全な欠失を含む。いくつかの場合において、改変は、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を損なう欠失である。いくつかの場合において、改変は部分的欠失である(例えば、M153遺伝子の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の欠失、最大10%、最大20%、最大30%、最大40%、最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、最大95%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の欠失)。いくつかの実施形態において、欠失は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100、少なくとも200、または少なくとも300の核酸の欠失である。いくつかの実施形態において、欠失は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおいてM153の発現を駆動するプロモーター)を破壊する。いくつかの実施形態において、欠失は、終止コドン、例えば、完全長のM153転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM153遺伝子配列に導入する。
【0063】
他の場合において、改変は、M153遺伝子の完全な欠失である(例えば、M153遺伝子の全コード領域の欠失、M153遺伝子全体の欠失など)。いくつかの実施形態において、MYXVは、M153遺伝子の機能を損なうM153遺伝子の改変(例えば、M153遺伝子の発現および/または機能を破壊する配列の挿入)を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1500、または少なくとも2000の核酸の挿入である。いくつかの実施形態において、挿入は、M153遺伝子配列のリーディングフレームを変更し、それにより、M153転写物および/またはタンパク質の発現を破壊する。
【0064】
いくつかの場合において、変異は、置換、例えば、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または発現レベルを弱める置換である。いくつかの実施形態において、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30の核酸が置換される。いくつかの実施形態において、置換は、終止コドン、例えば、完全長のM153転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM153遺伝子配列に導入する。いくつかの実施形態において、置換は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおいてM153の発現を駆動するプロモーター)を破壊する。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される改変または変異は、M153遺伝子および/またはタンパク質の活性レベルを、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱める。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される改変または変異は、M153遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルを、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱める。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるMYXVは、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱められたM153タンパク質の活性レベルを有する。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるMYXVは、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%弱められたM153遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルを有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、MYXVゲノム内のM153遺伝子を置き換える(例えば、M153遺伝子を破壊し、またはそれを本開示の1つ以上の導入遺伝子(例えば、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12)で置き換える)。いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、MYXVゲノム内のM153遺伝子の一部を置き換える(例えば、M153遺伝子の一部を、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12で置き換える)。
【0070】
導入遺伝子
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態において、導入遺伝子を含む粘液腫ウイルス(MYXV)組換え構築物である。
【0071】
癌と腫瘍の微小環境の状況では、さまざまな免疫調節因子が癌細胞と免疫系の間の相互作用に影響を与える可能性がある。
例えば、免疫調節因子は、悪性細胞と直接相互作用し、腫瘍微小環境への細胞傷害性リンパ球の浸潤に正または負の影響を及ぼし、癌細胞に対する免疫応答を媒介するサイトカインおよびケモカインの産生に正または負の影響を及ぼし、またはそれらの組み合わせである。1つ以上の免疫調節導入遺伝子をMYXVゲノムに導入して、例えば、癌をより効果的に治療または低減する免疫応答を促進することができる。
【0072】
例えば、いくつかの実施形態において、異なる形態の免疫調節および/または細胞死を調節する1つ以上のMYXV内因性遺伝子が除去される。いくつかの実施形態において、1つ以上の治療的免疫調節導入遺伝子は、ウイルスゲノムに導入される(例えば、免疫原性を増加させるため、および/または癌細胞死の好ましい形態を誘導するために)。いくつかの実施形態において、1つ以上のMYXV内因性遺伝子が除去され、1つ以上の免疫調節導入遺伝子がウイルスゲノムに導入される。
【0073】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、免疫調節導入遺伝子である。 いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、STING、抗PDL1、FAST、TNFα、IL-12、またはそれらの組み合わせを含む。
【0074】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、免疫シグナル伝達経路(例えば、パターン認識受容体の下流のシグナル伝達経路などの自然免疫シグナル伝達経路)に関与する免疫調節導入遺伝子を発現する組換えMYXV構築物である。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)をコードする。抗腫瘍細胞応答の生成は、細胞応答を誘発する経路に関与するSTINGなどの導入遺伝子のMYXVベクターでのクローニングと発現から恩恵を受ける可能性がある。STING経路の活性化とそれに続くI型インターフェロンの分泌は、細胞性免疫応答の誘発と直接相関し得る。STINGは、腫瘍の自然免疫感知の重要な要素として提案されており、その活性化は抗腫瘍細胞応答に関連している。STING経路の活性化は、抗癌適応免疫応答を促進することもできる。
【0075】
STING経路は、センサーサイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)によって検出される細胞質ゾルDNAの存在下で活性化され得る。DNAに結合すると、cGASはSTINGに結合して活性化するサイクリックGMP-amp(cGAMP)を生成し得る。STINGアゴニストの腫瘍内注射は、いくつかの癌マウスモデルにおいて強力な治療効果を示す。STING経路の活性化を、MYXVなどの癌細胞に選択的に感染する腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせると、抗腫瘍活性の改善をもたらし得る。さらに、いくつかの場合において、STINGはオートファジーを誘発し得、これは細胞死の一因となり得る。
【0076】
表1は、STING配列の例を提供する。配列番号1はDNA配列を提供し、配列番号2はSTINGのアミノ酸配列を提供する。いくつかの場合において、STINGは改変されて、構成的に活性なSTING(例えば、cGAMPによる活性化を必要としないかまたは依存しないSTING)を生成できる。いくつかの実施形態において、本開示のSTINGは、STINGの構成的に活性なバリアントである。配列番号3はDNA配列を提供し、配列番号4は構成的に活性なSTINGのアミノ酸配列を提供する。
【0077】
【表1】


【0078】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号2または4に対して、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるSTINGをコードする。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号2または配列番号4であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるSTINGをコードする。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号1または3に対して、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるSTINGをコードする。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号1または配列番号3であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるSTINGをコードする。本開示のMYXVはヒトのSTINGをコードし得る。
【0079】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、融合関連小膜タンパク質(FAST)などの合胞体形成を促進する免疫調節導入遺伝子を発現する組換えMYXV構築物である。いくつかの場合において、FASTはMYXV感染細胞の死を促進する。
【0080】
いくつかの場合において、本開示のMYXVは、p14 FASTを含むか、またはコードする。p14 FASTタンパク質は、爬虫類レオウイルス由来の小さな(14kDa、375bp)融合性タンパク質である。いくつかの場合において、p14 FASTは、細胞間融合を促進する能力を通じて、宿主細胞間の横方向のウイルス拡散を促進することができます。 p14FASTアミノ酸配列の非限定的な例を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
いくつかの場合において、本開示のMYXVは、配列番号5の配列を有するFASTを含む(例えば、コードする)。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号5に対して、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列の配列同一性を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるFASTをコードする。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号5であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるFASTをコードする。本開示のFASTは、ヒトFASTであり得る。
【0083】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、PD-L1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする免疫調節導入遺伝子を発現する組換えMYXV構築物である。いくつかの場合において、抗体はPD-L1に対して拮抗的であり、PD-1とPD-L1の間の相互作用を妨害し、免疫活性化(例えば、抗腫瘍免疫応答の活性化)を可能にする。
【0084】
抗PDL1抗体、その抗原結合フラグメント、またはその一部からのアミノ酸配列の非限定的な例を表3に提供する。
【0085】
【表3】
【0086】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号6-13のいずれか1つ以上に対して、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる抗PD-L1をコードする。いくつかの実施形態では、本開示のMYXVは、配列番号6-13のいずれか1つ以上であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる抗PD-L1をコードする。いくつかの場合において、本開示のMYXVは、配列番号6-13のいずれか1つ以上である抗PD-L1配列(例えば、表3のCDRおよび/または可変ドメインを含むscFv)を含むかまたはコードする。
【0087】
CDRおよび/またはその可変ドメインを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントの配列は、本明細書に開示されるアミノ酸または核酸配列に対して、少なくとも70%の相同性、少なくとも71%の相同性、少なくとも72%の相同性、少なくとも73%の相同性、少なくとも74%の相同性、少なくとも75%の相同性、少なくとも76%の相同性、少なくとも77%の相同性、少なくとも78%の相同性、少なくとも79%の相同性、少なくとも80%の相同性、少なくとも81%の相同性、少なくとも82%の相同性、少なくとも83%の相同性、少なくとも84%の相同性、少なくとも85%の相同性、少なくとも86%の相同性、少なくとも87%の相同性、少なくとも88%の相同性、少なくとも89%の相同性、少なくとも90%の相同性、少なくとも91%の相同性、少なくとも92%の相同性、少なくとも93%の相同性、少なくとも94%の相同性、少なくとも95%の相同性、少なくとも96%の相同性、少なくとも97%相同性、少なくとも98%の相同性、少なくとも99%の相同性、少なくとも99.1%の相同性、少なくとも99.2%の相同性、少なくとも99.3%の相同性、少なくとも99.4%の相同性、少なくとも99.5%の相同性、少なくとも99.6%の相同性、少なくとも99.7%の相同性、少なくとも99.8%の相同性、少なくとも99.9%の相同性、少なくとも99.91%の相同性、少なくとも99.92%の相同性、少なくとも99.93%の相同性、少なくとも99.94%の相同性、少なくとも99.95%の相同性、少なくとも99.96%の相同性、少なくとも99.97%の相同性、少なくとも99.98%の相同性、または少なくとも99.99%の相同性を有することができる。
【0088】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、免疫応答(例えば、抗癌免疫応答)をアップレギュレートすることができるサイトカインをコードする免疫調節導入遺伝子を発現する組換えMYXV構築物である。いくつかの場合において、本開示のMYXV構築物は、TNFアルファ(TNFα)をコードする配列を含む。いくつかの場合において、本開示のMYXV構築物は、IL-12をコードする配列を含む。
【0089】
TNFα配列およびIL-12配列の非限定的な例を表4に提供する。
【0090】
【表4】


【0091】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号14-19のいずれか1つ以上に対して、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるサイトカインをコードする。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、配列番号14-19のいずれか1つ以上であるアミノ酸配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなるサイトカインをコードする。いくつかの場合において、本開示のMYXVは、配列番号14-19のいずれか1つ以上であるサイトカイン配列を含むかまたはコードする。
【0092】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、MMを含む血液癌を標的とするためにこれらの免疫調節導入遺伝子の1つ以上で武装された組換えMYXV構築物である。本開示において、免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXVは、標準的な治療法に耐性のある難治性疾患を有する患者からの初代ヒトMM細胞に選択的に感染し、そしてこれを殺傷することが示されている。さらに、これらのウイルス構築物は、MM細胞のアポトーシスおよび死を誘導することによってMM細胞の生存率を損なう可能性があることが実証されている。特に、2種類のMM細胞の殺傷を観察することができ、これらは、ウイルスに感染したMM細胞の直接的な細胞毒性殺傷と、感染していないMM細胞の「オフターゲット」殺傷である。理論に拘束されることを望まないが、感染していないMM細胞の殺傷は、MYXV活性化免疫細胞、例えば、免疫調節導入遺伝子の産物によって活性化される免疫細胞によって媒介され得る。
【0093】
本開示の配列は、本明細書に開示されるアミノ酸配列または核酸配列に対して、少なくとも70%の相同性、少なくとも71%の相同性、少なくとも72%の相同性、少なくとも73%の相同性、少なくとも74%の相同性、少なくとも75%の相同性、少なくとも76%の相同性、少なくとも77%の相同性、少なくとも78%の相同性、少なくとも79%の相同性、少なくとも80%の相同性、少なくとも81%の相同性、少なくとも82%の相同性、少なくとも83%の相同性、少なくとも84%の相同性、少なくとも85%の相同性、少なくとも86%の相同性、少なくとも87%の相同性、少なくとも88%の相同性、少なくとも89%の相同性、少なくとも90%の相同性、少なくとも91%の相同性、少なくとも92%の相同性、少なくとも93%の相同性、少なくとも94%の相同性、少なくとも95%の相同性、少なくとも96%の相同性、少なくとも97%の相同性、少なくとも98%の相同性、少なくとも99%の相同性、少なくとも99.1%の相同性、少なくとも99.2%相同性、少なくとも99.3%の相同性、少なくとも99.4%の相同性、少なくとも99.5%の相同性、少なくとも99.6%の相同性、少なくとも99.7%の相同性、少なくとも99.8%の相同性、少なくとも99.9%の相同性、少なくとも99.91%の相同性、少なくとも99.92%の相同性、少なくとも99.93%の相同性、少なくとも99.94%の相同性、少なくとも99.95%の相同性、少なくとも99.96%の相同性、少なくとも99.97%の相同性、少なくとも99.98%の相同性、または少なくとも99.99%の相同性を有することができる。
【0094】
本開示の導入遺伝子は、抗原結合タンパク質、例えば、抗体からの1つ以上の可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードすることができる。いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子(例えば、抗PDL1)は、1つ以上の抗体に由来する1つ以上の単鎖可変フラグメント(scFv)を含む。scFv(単鎖可変フラグメント)は、ペプチドリンカーによって接続された抗体のVHドメインとVLドメインを含むことができる融合タンパク質である。例えば、導入遺伝子は、2つの標的の結合を可能にする2つのscFvを含むことができる。
【0095】
抗原結合タンパク質は、抗体可変領域またはCDRに基づいて操作することができる。抗体の可変(V)領域は、抗原結合を仲介し、抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。可変領域は、フレームワーク領域と呼ばれる比較的不変の配列、および異なる結合特異性の抗体間で配列がかなり異なる超可変領域を含む。超可変領域内には、主に抗体の結合特異性を決定するアミノ酸残基がある。これらの残基を含む配列は、相補性決定領域(CDR)として知られている。抗体の1つの抗原結合部位は6つのCDRを含み、3つは軽鎖の超可変領域にあり、3つは重鎖の超可変領域にある。軽鎖のCDRはL1、L2、およびL3と呼ばれ、重鎖のCDRはH1、H2、およびH3と呼ばれる。CDRは、それぞれLCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3と指定することもできる。抗原結合に対する各CDRの寄与は、抗体によって異なる。CDRの長さはさまざまであり得る。例えば、CDRの長さはしばしば5-14残基であるが、0残基まで短く、または25残基以上まで長いCDRが存在する。CDR配列を予測または指定するために、いくつかの方法、例えば、Kabat、Chothia、IMGT、paratome、Martin、およびAHoの方法を使用できる。これらのCDR予測方法では、例えば、配列の挿入と欠失の番号が異なるため、異なる番号付けシステムを使用できる。
【0096】
抗原結合タンパク質またはそのフラグメントは、抗体の一部、例えば、インタクトな抗体の抗原結合または可変領域を含むことができる。抗体フラグメントの非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fabコンジュゲートの二量体および三量体、Fv、scFv、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、ならびに線状抗体が含まれる。FabおよびFab’は、ジスルフィド結合を介して軽鎖のVLおよびCLドメインに連結された重鎖のVHおよびCH1ドメインを含むことができる抗原結合フラグメントである。F(ab’)2は、ジスルフィド結合によって結合された2つのFabまたはFab’を含むことができる。Fvは、非共有結合性相互作用によって一緒に保持されたVHドメインとVLドメインを含む。scFv(単鎖可変フラグメント)は、ペプチドリンカーによって接続されたVHドメインとVLドメインを含むことができる融合タンパク質である。VHドメインおよびVLドメインの配向と、リンカーの長さの操作を使用して、単量体、二量体(ダイアボディ)、三量体(トリアボディ)、または四量体(テトラボディ)であり得る、さまざまな形態の分子を作成できる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示の導入遺伝子は、リンカー配列(例えば、導入遺伝子によってコードされるタンパク質の異なるドメイン間のリンカー配列)をコードすることができる。いくつかの実施形態において、リンカーは、抗体可変領域を結合して、scFvを形成するために使用される。いくつかの実施形態において、リンカーは、2つのscFvを結合して、多重特異性構築物を形成するために使用される。リンカー配列は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50アミノ酸残基の長さであり得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、少なくとも1、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも9、少なくとも11、または少なくとも15アミノ酸の長さである。いくつかの実施形態において、リンカーは、最大で5、最大で7、最大で9、最大で11、最大で15、最大で20、最大で25、または最大で50アミノ酸の長さである。
【0098】
柔軟なリンカーは、グリシンおよびセリン残基のストレッチを含む配列を有することができる。グリシンおよびセリン残基のサイズが小さいことは、柔軟性を提供し、接続された機能ドメインの移動を可能にする。セリンまたはスレオニンの取り込みは、水分子と水素結合を形成することによって水溶液中のリンカーの安定性を維持し、それによってリンカーとタンパク質部分の間の好ましくない相互作用を減らすことができる。柔軟なリンカーにはまた、柔軟性を維持するためのスレオニンやアラニンなどの追加のアミノ酸や、溶解性を向上させるためのリジンやグルタミンなどの極性アミノ酸を含めることもできる。リジッドなリンカーは、例えば、アルファヘリックス構造を有することができる。アルファヘリックスリジッドリンカーは、タンパク質ドメイン間のスペーサーとして機能し得る。リンカーは、表5の配列のいずれか、またはその反復(例えば、配列番号20-29のいずれかの2、3、4、5、6、7、8、9、または10回の反復)を含むことができる。配列番号20-25は柔軟なリンカーを提供する。配列番号26-29はリジッドなリンカーを提供する。
【0099】
【表5】
【0100】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、1つ以上の追加の導入遺伝子(例えば、例えば、1つ以上のSTING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12に加えて、1つ以上の導入遺伝子)を含むことができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、MYXVによって感染された細胞における自食作用(オートファジー)を増加させることができる。自食作用は、例えば、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、または非感染細胞と比較して、免疫調節導入遺伝子を発現する操作されたMYXVによって増加させることができる。いくつかの実施形態において、自食作用は、LC3-IからLC3-IIへの変換アッセイで測定した場合に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍増加する。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、感染した癌細胞の殺傷(例えば、「オンターゲット」の殺傷)を増加させることができる。感染した癌細胞の殺傷は、例えば、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、または感染していない癌細胞と比較して、免疫調節導入遺伝子を発現する操作されたMYXVによって増加させることができる。本開示のMYXVは、例えば、生/死染色アッセイによって決定されるように、感染した癌細胞の殺傷を、例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍増加させることができる。MYXVは、非癌細胞よりも癌細胞に優先的に感染し、優先的に殺傷することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、感染していない癌細胞の殺傷(例えば、「オフターゲット」殺傷)を増加させることができる。感染していない癌細胞の殺傷は、例えば、導入遺伝子を欠くMYXVと比較して、または感染していない癌細胞と比較して、免疫調節性導入遺伝子を発現する操作されたMYXVによって増加させることができる。本開示のMYXVは、例えば、生/死染色アッセイによって決定されるように、非感染癌細胞の殺傷を例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、または少なくとも10倍増加させることができる。MYXVは、非癌細胞よりも癌細胞に優先的に感染し、優先的に殺傷することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、1つの免疫調節導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、2つの免疫調節導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、3つの免疫調節導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、4つの免疫調節導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、5つの免疫調節導入遺伝子を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、1つ以上の非免疫調節性導入遺伝子を含み得る(例えば、1つ以上のSTING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12に加えて、1つ以上のレポーター導入遺伝子の非免疫調節性導入遺伝子)。
【0106】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、1つ以上のレポーター導入遺伝子(例えば、1つ以上のSTING、抗PDL1、FAST、TNFα、および/またはIL-12に加えて1つ以上のレポーター導入遺伝子)を含むことができる。レポーター導入遺伝子(またはレポーター遺伝子)を使用して、MYXVをインビトロ、エキソビボ、またはインビボでモニターまたは定量化できる。いくつかの実施形態において、レポーター導入遺伝子は、本開示のMYXVによって感染された細胞を同定するために使用され得る。例えば、本開示のMYXVは、蛍光導入遺伝子を発現することができ、感染細胞は、蛍光(例えば、蛍光顕微鏡法またはフローサイトメトリー)を介して同定することができる。いくつかの実施形態において、レポーター導入遺伝子は、本開示のMYXVによって感染された細胞を定量するために使用され得る。例えば、本開示のMYXVは、蛍光導入遺伝子を発現することができ、感染細胞は、蛍光を介して定量することができる(例えば、蛍光顕微鏡法またはフローサイトメトリーを介する感染細胞の数または割合の定量)。いくつかの実施形態において、レポーター導入遺伝子は、本開示のMYXVによって感染された細胞におけるウイルス複製またはウイルス量を定量するために使用され得る。例えば、本開示のMYXVは、蛍光導入遺伝子を発現することができ、感染細胞は、蛍光を介して定量することができる(例えば、蛍光顕微鏡のフローサイトメトリーを介する細胞の平均蛍光強度の定量)。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、インビボでのウイルス負荷またはウイルス複製を定量するために使用され得るレポーター遺伝子を発現することができる(例えば、インビボイメージングシステム(IVIS)を使用するイメージング)。
【0107】
本開示のレポーター導入遺伝子は、構成的に発現させることができる(例えば、構成的プロモーターの制御下で)。本開示のレポーター導入遺伝子は、条件付きで発現させることができる(例えば、条件付きプロモーター、例えば、複製サイクルの特定の段階でのみ活性であるか、またはより活性であるプロモーターの制御下で発現される)。
【0108】
レポーター導入遺伝子の非限定的な例には、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、TdTomato、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、Verde蛍光タンパク質(VFP)、kindling蛍光タンパク質(KFP)、mCherry、mTangerine、mRaspberry、mPlum、DsRedなど)、ならびに発光に関与する酵素および基質(例えば、ルシフェリンおよび/またはルシフェラーゼ)が含まれる。
【0109】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、レポーター導入遺伝子を含まないか、またはコードしない(例えば、いかなる蛍光または発光タンパク質もコードしない)。
【0110】
1つ以上の免疫調節導入遺伝子の発現に加えて、本開示のMYXVは、MYXV治療の抗癌効果を増強することができる1つ以上の他の遺伝子を運ぶように改変され得る。このような遺伝子は、アポトーシスの誘発に関与するか、または感染細胞を免疫破壊の標的にすることに関与する遺伝子、例えば、インターフェロンに対する細胞の応答性を回復する遺伝子、または細菌の細胞表面抗原などの免疫応答を刺激する、細胞表面マーカーの発現をもたらす遺伝子であり得る。本開示のMYXVは、新生物または癌細胞の増殖および成長を遮断することに関与する1つ以上の遺伝子を発現するように改変することができ、それによって、癌細胞の分裂を防止または低減する。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、化学療法剤の合成に関与する遺伝子などの治療遺伝子を含むように改変され得る。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、特定の種の細胞におけるウイルス複製を増加させる導入遺伝子を含むことができる(例えば、ヒト癌細胞の殺傷および阻害の増加のためのヒト癌細胞における複製の増加)。
【0111】
治療の方法
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態において、本開示の粘液腫ウイルス(MYXV)を利用する対象における血液癌を治療する方法である。血液癌は、微小残存病変(MRD)および/または薬剤耐性MRDを含む血液癌であり得る。
【0112】
以下の実施例に開示されるように、インビトロ研究は、標準的な治療に失敗した患者から難治性の原発性ヒト多発性骨髄腫(MM)細胞を有意に排除する本開示のMYXV構築物の能力を実証した。MYXVを使用して実施された研究では、MYXVは、ヒトおよびマウスの多くのタイプの癌に対して向性を有する非常に特異的な抗癌剤であり得ることが示されている。
【0113】
本開示の治療は、多くの新規かつ有利な態様を含むことができる。例えば、これらのウイルス構築物は、各ウイルスに直接感染した薬剤耐性の初代ヒトMM細胞(例えば、GFP+またはTdTomato+などのウイルスレポーター遺伝子を発現するCD138+細胞)を選択的に標的にして直接排除する、これまでのところ、唯一の腫瘍溶解ウイルスである。いくつかの実施形態において、1つ以上の免疫調節性導入遺伝子を含む本開示のMYXVは、ウイルス感染細胞の直接殺傷によって血液癌細胞を排除することができるだけでなく、非感染癌細胞の「オフターゲット」殺傷を強化することによって(例えば、ウイルス活性化免疫細胞を介して)疾患を排除することもできる。いくつかの実施形態において、導入遺伝子を含む本開示のMYXVは、他のウイルス(例えば、非武装ウイルスまたは免疫調節導入遺伝子を欠くウイルス)と比較して、非感染癌細胞の殺傷の増加を誘発することができる。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、感染していないMM細胞(例えば、GFP-またはTdTomoto-などのウイルスレポーター遺伝子について陰性であるCD138+細胞)の増強された「オフターゲット」殺傷を示し得る。特定の理論に拘束されることを望まないが、感染していない細胞のウイルス増強殺傷は、MYXV活性化免疫細胞(例えば、本開示の導入遺伝子、他のウイルス成分、またはそれらの組み合わせによって活性化される免疫細胞)によって媒介され得る。
【0114】
血液悪性腫瘍(例えば、血液悪性腫瘍の難治性および/または微小残存病変(MRD))を治療するためのMYXVの使用は、化学療法や幹細胞移植を含む現在の治療法、および他の候補腫瘍溶解性ウイルスを超えた、複数の利点を含み得る。MYXVは、例えば、ウイルスがヒトの癌細胞に感染することを可能にするが、ウイルスが非癌性のヒト細胞に感染することを可能にしない、限定された向性を含む。ヒトの病原体から適応したほとんどのウイルスとは異なり、MYXVはヒトに病気を引き起こさないため、このことは免疫システムが低下している患者にさえも安全にする。ヒト集団における既存の抗MYXV適応免疫の欠如は有利であり得、例えば、ヒト病原体から適応したウイルスのように迅速に除去されることなく、ウイルスが癌細胞に感染して殺傷することを可能にする。
【0115】
本明細書に開示されるエキソビボ治療アプローチにおいて、細胞(例えば、骨髄(BM)細胞および/または末梢血単核細胞(PBMC))とのMYXVのインキュベーションは、高速であり得、例えば、エキソビボで1時間のウイルスインキュベーションのみを必要とし、その後、癌患者に細胞を再注入する。
【0116】
したがって、本開示の態様は、治療を必要とする対象における血液癌を阻害および/または治療するための方法を提供する。特定の実施形態では、この方法は、ヒト対象などの対象に、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を投与し、それによって必要としている対象の血液癌を治療および/または阻害する工程を含む。対象は哺乳動物であり得る。対象はヒトであり得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、MYXVは、MYXV-STINGを含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、MYXV-抗PD-L1を含む。いくつかの実施形態において、MYXVはMYXV-FASTを含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、MYXV-TNFαを含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、MYXV-IL-12を含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、レポーター導入遺伝子(例えば、蛍光タンパク質または発光基質または酵素)を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を含み、さらにレポーター導入遺伝子を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、ウイルスゲノム中の1つ以上の遺伝子における改変、挿入、欠失、または破壊を含む。例えば、本開示のMYXVは、M001R、M002R、M003.1R、M003.2R、M004.1R、M004R、M005R、M006R、M007R、M008.1R、M008R、M009L、M013、M036L、M063L、M011L、M128L、M131R、M135R、M136R、M141R、M148R、M151R、M152R、M153R、M154L、M156R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、およびSOD遺伝子のいずれか1つ以上の中またはそれに隣接する改変、挿入、欠失、または破壊を含むことができる。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVにおけるウイルス遺伝子の欠失または破壊は、宿主動物に疾患を引き起こし、宿主細胞の向性を調節し、非癌細胞における自然免疫回避を減少させ、感染細胞における免疫シグナル伝達を調節し、感染細胞における細胞死経路を調節し、癌細胞におけるウイルス複製を増加させ、またはそれらの組み合わせであるウイルスの能力を低下させることができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、宿主細胞向性(例えば、ウサギ細胞向性)に関連する1つ以上の遺伝子内のまたはそれに隣接する1つ以上の挿入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態において、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子は、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、M-T7、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの場合において、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子は、M135R、M136R、またはそれらの組み合わせを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、M135R遺伝子における改変、挿入、欠失、または破壊を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、M135R遺伝子の欠失または破壊を含む。M135R遺伝子の欠失または破壊は、例えば、MYXVが抗癌効果を示す(例えば、癌細胞に感染しおよびこれを殺傷し、抗腫瘍免疫応答を誘発し、またはそれらの組み合わせである)能力を損なうことなく、本開示のMYXVが宿主動物において疾患を引き起こす能力を弱めることができる。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、M153遺伝子における修飾、挿入、欠失、または破壊を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、SOD遺伝子における修飾、挿入、欠失、または破壊を含む。いくつかの実施形態では、本開示のMYXVは、SOD遺伝子の欠失または破壊を含む。
【0123】
MYXVは、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞(例えば、ヒト細胞)に感染し得る。「欠損した生来の抗ウイルス応答」を有することは、本明細書で使用される場合、ウイルスに曝露されたとき、またはウイルスに侵入されたときに、1つ以上の抗ウイルス防御機構を誘導することに失敗する細胞を指し得る。例えば、欠損した生来の抗ウイルス応答は、ウイルス複製を阻害することの失敗、抗ウイルス性サイトカイン(例えば、インターフェロン)を産生することの失敗、抗ウイルス性サイトカインに応答することの失敗(例えば、インターフェロン応答経路を誘導すること)、アポトーシスの誘導の失敗、生来の免疫受容体(例えば、パターン認識受容体)を介した認識の誘発の失敗、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0124】
欠損した生来の抗ウイルス応答は、様々な要因、例えば、悪性形質転換、変異、感染、遺伝的欠陥、または環境ストレスによって引き起こされ得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、遺伝的欠陥、環境ストレス、または感染症(例えば、異なる病原体による既存の感染症)によって引き起こされる欠損した生来の抗ウイルス応答を含む対象には投与されない。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、悪性形質転換(例えば、癌)によって引き起こされる欠損した生来の抗ウイルス応答を含む対象に投与される。欠損した生来の抗ウイルス応答を含む細胞は、癌細胞、例えば、正常細胞、例えば、非癌細胞と比較して、ウイルスへの曝露またはウイルスによる感染の際に減少したかまたは欠陥のある生来の抗ウイルス応答を有する、癌細胞であり得る。これには、例えば、インターフェロン(例えば、I型インターフェロン)に反応しない癌細胞、および/またはアポトーシス応答もしくはアポトーシス経路の誘導の低下もしくは欠陥を有する癌細胞が含まれ得る。この方法のいくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞に感染することができる。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物の癌細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、ヒト癌細胞、例えば、ヒト血液癌細胞である。
【0127】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、癌を治療するために使用される。多発性骨髄腫について本明細書で提供される実施例は、拡張して考えると、他の血液癌に適用可能である。開示された方法に従って治療することができる癌の種類には、白血病、リンパ腫、および骨髄腫などの血液癌、例えば、以下が含まれるがこれらに限定されない:多発性骨髄腫(MM);活動性多発性骨髄腫;くすぶり型骨髄腫;形質細胞腫;骨の孤立性形質細胞腫;髄外形質細胞腫;軽鎖骨髄腫;非分泌性骨髄腫;免疫グロブリンG(IgG)骨髄腫;免疫グロブリンA(IgA)骨髄腫;免疫グロブリンM(IgM)骨髄腫;免疫グロブリンD(IgD)骨髄腫;免疫グロブリンE(IgE)骨髄腫;高二倍体多発性骨髄腫;非高二倍体多発性骨髄腫;ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫;急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄性白血病;本態性血小板血症;真性赤血球増加症;原発性骨髄線維症;全身性肥満細胞症;慢性骨髄性白血病;慢性好中球性白血病;慢性好酸球性白血病;環状鉄芽球を伴う難治性貧血;多系統異形成を伴う難治性細胞減少症;過剰芽球1型を伴う難治性貧血;過剰芽球2型を伴う難治性貧血;孤立した欠失(del)(5q)を伴う骨髄異形成症候群(MDS);分類不可能なMDS;慢性骨髄単球性白血病(CML);非定型慢性骨髄性白血病;若年性骨髄単球性白血病;骨髄増殖性/骨髄異形成症候群-分類不能;Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫;Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性縦隔B細胞リンパ腫;バーキットリンパ腫/白血病;濾胞性リンパ腫;慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫;B細胞前リンパ球性白血病;リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストロームマクログロブリン血症;マントル細胞リンパ腫;辺縁帯リンパ腫;移植後リンパ増殖性疾患;HIV関連リンパ腫;原発性滲出液リンパ腫;血管内大細胞型B細胞リンパ腫;原発性皮膚B細胞リンパ腫;有毛細胞白血病;重要性が不明な単クローン性免疫グロブリン血症;未分化大細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、細網内皮症、細網症、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病、ワルデンストロームマクログロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、形質細胞白血病、急性赤芽球血症および赤白血病、急性赤芽球性骨髄症、急性赤白血病、Heilmeyer-Schoener病、急性巨核芽球性白血病、マスト細胞白血病、汎骨髄症、骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症、リンパ肉腫細胞白血病、幹細胞白血病、不特定の細胞型の慢性白血病、不特定の細胞型の亜急性白血病、加速期慢性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性好塩基性白血病、急性好酸球性白血病、急性単球性白血病、成熟を伴う急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄性樹状細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、侵攻性NK細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞白血病、慢性骨髄性白血病、慢性特発性骨髄線維症、Kahler病、骨髄腫症、孤立性骨髄腫、形質細胞白血病、血管中心性免疫増殖性病変、リンパ性肉芽腫症、血管免疫芽球性リンパ節腫脹症、T-ガンマリンパ増殖性疾患、ワルデンストロームマクログロブリン血症、アルファ重鎖疾患、ガンマ重鎖疾患、およびフランクリン病。いくつかの実施形態において、血液癌は多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態において、癌は血液癌である。特定の実施形態では、癌は多発性骨髄腫を含む。
【0128】
本明細書で提供されるのは、いくつかの実施形態において、血液癌を治療する(例えば、血液癌の進行を阻害、軽減、安定化、低減、または遅延させる)方法である。いくつかの実施形態において、方法は、血液癌を治療するために必要とする対象に本開示のMYXVを投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、血液癌を有するかまたは有することが疑われる、ヒト対象などの対象を選択する工程をさらに含む。
【0129】
本開示のMYXVは、血液癌を治療するための有効量で投与することができる。この量は、対象の癌細胞の数(例えば、対象の血液中の癌細胞の濃度)を減らすために十分であり得る。
【0130】
対象に投与される有効量は、MYXVの薬力学的特性、投与様式、対象の年齢、健康および体重、病状の性質および程度、治療の頻度と同時治療の種類(ある場合)、ならびにウイルスの毒性および力価などの多くの要因に応じて変動し得る。
【0131】
MYXVは、対象の臨床反応に依存して、必要に応じて調整され得る適切な量で最初に投与され得る。ウイルスの有効量は経験的に決定することができ、安全に投与できるMYXVの最大量と、望ましい結果を生み出すウイルスの最小量に依存する。
【0132】
ウイルスを全身投与するときに、疾患部位にウイルスを注射することによって達成されるのと同じ臨床効果を生み出すために、著しく大量のウイルスの投与が必要とされ得る。しかし、適切な用量レベルは、望ましい結果を達成する最小量であるべきである。
【0133】
投与されるウイルスの濃度は、投与されるMYXVの特定の株の毒性、および標的とされる細胞の性質に応じて変動する。一実施形態では、「感染単位」とも呼ばれる、約3×10^10未満のフォーカス形成単位(「ffu」)またはプラーク形成単位(「pfu」)の用量が、ヒト対象に投与される。様々な実施形態において、約10^2から約10^9 ffuの間、約10^2から約10^7 ffuの間、約10^3から約10^6 ffuの間、または約10^4から約10^5ffuの間が、単回投与で投与され得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、対象は、本開示のMYXVの特定の用量のフォーカス形成単位(FFU)またはプラーク形成単位(PFU)を投与される。
【0135】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるMYXVの用量は、少なくとも1x10^2、2x10^2、3x10^2、4x10^2、5x10^2、6x10^2、7x10^2、8x10^2、9x10^2、1x10^3、2x10^3、3x10^3、4x10^3、5x10^3、6x10^3、7x10^3、8x10^3、9x10^3、1x10^4、2x10^4、3x10^4、4x10^4、5x10^4、6x10^4、7x10^4、8x10^4、9x10^4、1x10^5、2x10^5、3x10^5、4x10^5、5x10^5、6x10^5、7x10^5、8x10^5、9x10^5、1x10^6、2x10^6、3x10^6、4x10^6、5x10^6、6x10^6、7x10^6、8x10^6、9x10^6、1x10^7、2x10^7、3x10^7、4x10^7、5x10^7、6x10^7、7x10^7、8x10^7、9x10^7、1x10^8、2x10^8、3x10^8、4x10^8、5x10^8、6x10^8、7x10^8、8x10^8、9x10^8、1x10^9、2x10^9、3x10^9、4x10^9、5x10^9、6x10^9、7x10^9、8x10^9、9x10^9、1x10^10、2x10^10、3x10^10、4x10^10、5x10^10、6x10^10、7x10^10、8x10^10、9x10^10、1x10^11、2x10^11、3x10^11、4x10^11、5x10^11、6x10^11、7x10^11、8x10^11、9x10^11、1x10^12、2x10^12、3x10^12、4x10^12、5x10^12、6x10^12、7x10^12、8x10^12、9x10^12、1x10^13、2x10^13、3x10^13、4x10^13、5x10^13、6x10^13、7x10^13、8x10^13、9x10^13、1x10^14、2x10^14、3x10^14、4x10^14、5x10^14、6x10^14、7x10^14、8x10^14、9x10^14、1x10^15、2x10^15、3x10^15、4x10^15、5x10^15、6x10^15、7x10^15、8x10^15、9x10^15、1x10^16、2x10^16、3x10^16、4x10^16、5x10^16、6x10^16、7x10^16、8x10^16、9x10^16、1x10^17、2x10^17、3x10^17、4x10^17、5x10^17、6x10^17、7x10^17、8x10^17、9x10^17、1x10^18、2x10^18、3x10^18、4x10^18、5x10^18、6x10^18、7x10^18、8x10^18、9x10^18、1x10^19、2x10^19、3x10^19、4x10^19、5x10^19、6x10^19、7x10^19、8x10^19、9x10^19、1x10^20、2x10^20、3x10^20、4x10^20、5x10^20、6x10^20、7x10^20、8x10^20、または9x10^20 FFUまたはPFUの本開示のMYXVである。
【0136】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるMYXVの用量は、最大で1x10^2、2x10^2、3x10^2、4x10^2、5x10^2、6x10^2、7x10^2、8x10^2、9x10^2、1x10^3、2x10^3、3x10^3、4x10^3、5x10^3、6x10^3、7x10^3、8x10^3、9x10^3、1x10^4、2x10^4、3x10^4、4x10^4、5x10^4、6x10^4、7x10^4、8x10^4、9x10^4、1x10^5、2x10^5、3x10^5、4x10^5、5x10^5、6x10^5、7x10^5、8x10^5、9x10^5、1x10^6、2x10^6、3x10^6、4x10^6、5x10^6、6x10^6、7x10^6、8x10^6、9x10^6、1x10^7、2x10^7、3x10^7、4x10^7、5x10^7、6x10^7、7x10^7、8x10^7、9x10^7、1x10^8、2x10^8、3x10^8、4x10^8、5x10^8、6x10^8、7x10^8、8x10^8、9x10^8、1x10^9、2x10^9、3x10^9、4x10^9、5x10^9、6x10^9、7x10^9、8x10^9、9x10^9、1x10^10、2x10^10、3x10^10、4x10^10、5x10^10、6x10^10、7x10^10、8x10^10、9x10^10、1x10^11、2x10^11、3x10^11、4x10^11、5x10^11、6x10^11、7x10^11、8x10^11、9x10^11、1x10^12、2x10^12、3x10^12、4x10^12、5x10^12、6x10^12、7x10^12、8x10^12、9x10^12、1x10^13、2x10^13、3x10^13、4x10^13、5x10^13、6x10^13、7x10^13、8x10^13、9x10^13、1x10^14、2x10^14、3x10^14、4x10^14、5x10^14、6x10^14、7x10^14、8x10^14、9x10^14、1x10^15、2x10^15、3x10^15、4x10^15、5x10^15、6x10^15、7x10^15、8x10^15、9x10^15、1x10^16、2x10^16、3x10^16、4x10^16、5x10^16、6x10^16、7x10^16、8x10^16、9x10^16、1x10^17、2x10^17、3x10^17、4x10^17、5x10^17、6x10^17、7x10^17、8x10^17、9x10^17、1x10^18、2x10^18、3x10^18、4x10^18、5x10^18、6x10^18、7x10^18、8x10^18、9x10^18、1x10^19、2x10^19、3x10^19、4x10^19、5x10^19、6x10^19、7x10^19、8x10^19、9x10^19、1x10^20、2x10^20、3x10^20、4x10^20、5x10^20、6x10^20、7x10^20、8x10^20、または9x10^20 FFUまたはPFUの本開示のMYXVである。
【0137】
いくつかの実施形態において、対象は、体重1キログラムあたりの本開示のMYXVの特定の用量のフォーカス形成単位(FFU)またはプラーク形成単位(PFU)を投与される。
【0138】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるMYXVの用量は、対象の体重1キログラムあたり、少なくとも1x10^2、2x10^2、3x10^2、4x10^2、5x10^2、6x10^2、7x10^2、8x10^2、9x10^2、1x10^3、2x10^3、3x10^3、4x10^3、5x10^3、6x10^3、7x10^3、8x10^3、9x10^3、1x10^4、2x10^4、3x10^4、4x10^4、5x10^4、6x10^4、7x10^4、8x10^4、9x10^4、1x10^5、2x10^5、3x10^5、4x10^5、5x10^5、6x10^5、7x10^5、8x10^5、9x10^5、1x10^6、2x10^6、3x10^6、4x10^6、5x10^6、6x10^6、7x10^6、8x10^6、9x10^6、1x10^7、2x10^7、3x10^7、4x10^7、5x10^7、6x10^7、7x10^7、8x10^7、9x10^7、1x10^8、2x10^8、3x10^8、4x10^8、5x10^8、6x10^8、7x10^8、8x10^8、9x10^8、1x10^9、2x10^9、3x10^9、4x10^9、5x10^9、6x10^9、7x10^9、8x10^9、9x10^9、1x10^10、2x10^10、3x10^10、4x10^10、5x10^10、6x10^10、7x10^10、8x10^10、9x10^10、1x10^11、2x10^11、3x10^11、4x10^11、5x10^11、6x10^11、7x10^11、8x10^11、9x10^11、1x10^12、2x10^12、3x10^12、4x10^12、5x10^12、6x10^12、7x10^12、8x10^12、9x10^12、1x10^13、2x10^13、3x10^13、4x10^13、5x10^13、6x10^13、7x10^13、8x10^13、9x10^13、1x10^14、2x10^14、3x10^14、4x10^14、5x10^14、6x10^14、7x10^14、8x10^14、9x10^14、1x10^15、2x10^15、3x10^15、4x10^15、5x10^15、6x10^15、7x10^15、8x10^15、9x10^15、1x10^16、2x10^16、3x10^16、4x10^16、5x10^16、6x10^16、7x10^16、8x10^16、9x10^16、1x10^17、2x10^17、3x10^17、4x10^17、5x10^17、6x10^17、7x10^17、8x10^17、9x10^17、1x10^18、2x10^18、3x10^18、4x10^18、5x10^18、6x10^18、7x10^18、8x10^18、9x10^18、1x10^19、2x10^19、3x10^19、4x10^19、5x10^19、6x10^19、7x10^19、8x10^19、9x10^19、1x10^20、2x10^20、3x10^20、4x10^20、5x10^20、6x10^20、7x10^20、8x10^20、または9x10^20 FFUまたはPFUの本開示のMYXVである。
【0139】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるMYXVの用量は、対象の体重1キログラムあたり、最大で1x10^2、2x10^2、3x10^2、4x10^2、5x10^2、6x10^2、7x10^2、8x10^2、9x10^2、1x10^3、2x10^3、3x10^3、4x10^3、5x10^3、6x10^3、7x10^3、8x10^3、9x10^3、1x10^4、2x10^4、3x10^4、4x10^4、5x10^4、6x10^4、7x10^4、8x10^4、9x10^4、1x10^5、2x10^5、3x10^5、4x10^5、5x10^5、6x10^5、7x10^5、8x10^5、9x10^5、1x10^6、2x10^6、3x10^6、4x10^6、5x10^6、6x10^6、7x10^6、8x10^6、9x10^6、1x10^7、2x10^7、3x10^7、4x10^7、5x10^7、6x10^7、7x10^7、8x10^7、9x10^7、1x10^8、2x10^8、3x10^8、4x10^8、5x10^8、6x10^8、7x10^8、8x10^8、9x10^8、1x10^9、2x10^9、3x10^9、4x10^9、5x10^9、6x10^9、7x10^9、8x10^9、9x10^9、1x10^10、2x10^10、3x10^10、4x10^10、5x10^10、6x10^10、7x10^10、8x10^10、9x10^10、1x10^11、2x10^11、3x10^11、4x10^11、5x10^11、6x10^11、7x10^11、8x10^11、9x10^11、1x10^12、2x10^12、3x10^12、4x10^12、5x10^12、6x10^12、7x10^12、8x10^12、9x10^12、1x10^13、2x10^13、3x10^13、4x10^13、5x10^13、6x10^13、7x10^13、8x10^13、9x10^13、1x10^14、2x10^14、3x10^14、4x10^14、5x10^14、6x10^14、7x10^14、8x10^14、9x10^14、1x10^15、2x10^15、3x10^15、4x10^15、5x10^15、6x10^15、7x10^15、8x10^15、9x10^15、1x10^16、2x10^16、3x10^16、4x10^16、5x10^16、6x10^16、7x10^16、8x10^16、9x10^16、1x10^17、2x10^17、3x10^17、4x10^17、5x10^17、6x10^17、7x10^17、8x10^17、9x10^17、1x10^18、2x10^18、3x10^18、4x10^18、5x10^18、6x10^18、7x10^18、8x10^18、9x10^18、1x10^19、2x10^19、3x10^19、4x10^19、5x10^19、6x10^19、7x10^19、8x10^19、9x10^19、1x10^20、2x10^20、3x10^20、4x10^20、5x10^20、6x10^20、7x10^20、8x10^20、または9x10^20 FFUまたはPFUの本開示のMYXVである。
【0140】
本開示のMYXVは、任意の所望の間隔で投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは1時間ごとに投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、22、24、26、28、30、32、36、40、44、または48時間ごとに投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、1日2回、1日1回、週5回、週4回、週3回、週2回、週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1か月に1回、5週間に1回、6週間に1回、8週間に1回、2か月に1回、12週間に1回、3か月に1回、4か月に1回、6か月に1回、 年に1回、またはそれ以下の頻度で投与することができる。
【0141】
本開示のMYXVは、例えば、全身、経口、局所、非経口、静脈内注射、静脈内注入、腫瘍内注射、皮下注射、筋肉内注射、皮膚内注射、腹腔内注射、脳内注射、くも膜下注射、脊髄内注射、胸骨内注射、関節内注射、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、動脈内投与、髄腔内投与、吸入、病巣内投与、皮膚内投与、硬膜外投与、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜)を介した吸収、被膜内投与、被膜下投与、心臓内投与、経気管投与、皮下投与、くも膜下投与、被膜下投与、脊髄内投与、または胸骨内投与を含む様々な形態および経路によって、治療有効量で対象に投与することができる。
【0142】
いくつかの実施形態において、ウイルスは全身投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスは、疾患部位への注射によって投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスは経口投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスは非経口的に投与される。
【0143】
本開示のMYXV(例えば、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する)は、単独の治療として投与することができ、または1つ以上の他の治療法と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、化学療法、免疫療法、細胞療法、放射線療法、幹細胞移植(自己幹細胞移植など)、またはそれらの組み合わせと組み合わせて投与される。例えば、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現するMYXVは、放射線療法または従来の化学療法薬の投与、および/または、自己幹細胞移植もしくは同種異系幹細胞移植(例えば、HLA一致、HLA不一致、またはハプロタイプ一致移植)などの幹細胞移植などの別の治療の前または後のいずれかに投与され得る。
【0144】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、免疫チェックポイントモジュレーターとの組み合わせであり得る。免疫チェックポイント阻害剤の例には、AstraZenecaのデュルバルマブ(Imfinzi)、Genentechのアテゾリズマブ(MPDL3280A)、EMD Serono/Pfizerのアベルマブ、CytomX TherapeuticsのCX-072、Novartis PharmaceuticalsのFAZ053、3D Medicine/AlphamabのKN035、Eli LillyのLY3300054、またはEMD SeronoのM7824(抗PD-L1/TGFbetaトラップ)などのPD-L1阻害剤;GlaxoSmithKlineのAMP-224(Amplimmune)、およびrHIgM12B7などのPD-L2阻害剤;Bristol-Myers Squibbのニボルマブ(Opdivo)、Merckのペンブロリズマブ(Keytruda)、AgenusのAGEN 2034、BeiGeneのBGB-A317、Boehringer-Ingelheim PharmaceuticalsのBl-754091、CBT PharmaceuticalsのCBT-501(genolimzumab)、IncyteのINCSHR1210、Janssen Research&DevelopmentのJNJ-63723283、MedImmuneのMEDI0680、MacroGenicsのMGA 012、Novartis PharmaceuticalsのPDR001、PfizerのPF-06801591、Regeneron Pharmaceuticals/SanoのREGN2810(SAR439684)、またはTESAROのTSR-042などのPD-1阻害剤;Bristol-Myers Squibbのイピリムマブ(Yervoy(登録商標)、MDX-010、BMS-734016、MDX-101としても知られる)、Pfizerのトレメリムマブ(CP-675,206、チシリムマブ)、またはAgenusのAGEN1884などのCTLA-4阻害剤;Bristol-Myers SquibbのBMS-986016、Novartis PharmaceuticalsのIMP701、Novartis PharmaceuticalsのLAG525、またはRegeneronPharmaceuticalsのREGN3767などのLAG3阻害剤;MacroGenicsのエノブリツズマブ(MGA271)などのB7-H3阻害剤;Innate PharmaのLirilumab(IPH2101;BMS-986015)などのKIR阻害剤;urelumab(BMS-663513、Bristol-Myers Squibb)、PF-05082566(抗-4-1BB、PF-2566、Pfizer)、またはXmAb-5592(Xencor)などのCD137阻害剤;およびバビツキシマブなどのPS阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、MYXVは、例えば、TIM3、CD52、CD30、CD20、CD33、CD27、OX40、GITR、ICOS、BTLA(CD272)、CD160、2B4、LAIR1、TIGHT、LIGHT、DR3、CD226、CD2、またはSLAMに対して作用するか、またはこれらに特異的である、抗体もしくはその抗原結合フラグメント、RNAi分子、または小分子と組み合わされる。
【0145】
本開示のMYXVは、標準的な技術を使用して調製することができる。例えば、ウイルスは、培養ウサギ細胞、または不死化許容ヒトまたは霊長類細胞に、使用されるMYXV株を感染させ、ウイルスが培養細胞内で複製し、これが、細胞表面を破壊しそれによってウイルス粒子を放出して採取するための標準的な方法によって放出できるように、感染を進行させることによって調製することができる。一旦採取されると、ウイルス力価は、例えば、ウサギ細胞のコンフルエントなローンに感染すること、およびプラークアッセイを実施することによって決定され得る(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mossman et al.(1996)Virology 215:17-30を参照のこと)。
【0146】
MYXVの細胞送達
本明細書でさらに開示されるのは、いくつかの実施形態において、本開示のMYXVが最初に細胞に吸着され、細胞が対象に投与される新規の送達戦略である。この方法は、ウイルスを保有する「キャリア」細胞を介して、本開示のMYXVを疾患部位に送達することができる。いくつかの実施形態において、ウイルスのこの細胞支援送達は、腫瘍負荷を低減または排除し、そして対象の生存を増加させる能力を有する。
【0147】
キャリア細胞を介したMYXVの送達は、血液癌の新しい潜在的な治療レジメンを表す。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、複数の細胞(例えば、骨髄および/または末梢血からの白血球)に吸着され、そして白血球は、対象に注入される。癌を有するレシピエントへの白血球注入の前に、エキソビボで白血球をMYXVでプレロードすることは、多発性骨髄腫(MM)および本明細書に開示される他の任意の血液癌に利用することができる。いくつかの実施形態において、癌を有するレシピエントへの白血球注入の前に、エキソビボで白血球をMYXVでプレロードすることは、離れた腫瘍部位への白血球の局在化および浸潤に適した任意の癌を治療するのに効果的であり得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、組み合わされた「白血球/MYXV」療法は、腫瘍床における癌細胞死の増加を引き起こし、抗腫瘍免疫原性を増強する。例えば、いくつかの実施形態において、本開示のMYXV(例えば、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現するMYXV)は、エキソビボでウイルスに事前に吸着または事前に感染した白血球の遊走を介して、微小残存病変(MRD)を有する骨髄床などの癌部位に送達される。この全身送達法は、ウイルスが患者に注入される前に最初に白血球に送達されるため、「エキソビボウイルス療法」またはEVV(例えば、EV2)と呼ばれることもある。
【0149】
いくつかの実施形態において、MYXVの細胞媒介性送達は、感染した血液癌細胞の直接殺傷のレベルを増加させ、理論に拘束されるものではないが、宿主免疫系の活性化因子として作用し、これは、癌の長期的な退行をもたらし得る。これは、現在の治療法では困難であることが証明されている、骨および/またはリンパ節の血液癌の新しい治療法を提供することができる。
【0150】
したがって、特定の実施形態において、本開示の方法は、本開示の吸着されたMYXV(例えば、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を含むMYXV)を含む癌白血球を有する対象に投与し、それによって、対象の癌を治療および/または阻害する工程を含む。本開示のMYXVは、MYXVの複数の細胞の表面への結合を可能にする条件下で、複数の細胞をMYXVに曝露することによって吸着されることができる。
【0151】
いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、白血球(例えば、骨髄および/または末梢血からの白血球)に吸着され、そして白血球は、対象に注入される。白血球は骨髄由来であり得る(例えば、骨髄吸引液または骨髄生検から)。白血球は、血液(例えば、末梢血単核細胞)に由来し得る。いくつかの実施形態において、白血球は、対象、例えば、癌を有する対象から得られ、MYXVで吸着され、そして対象に再注入される(例えば、自己細胞移植として)。いくつかの実施形態において、白血球は、対象の組織から得られる。いくつかの実施形態において、白血球は、1つ以上の同種異系ドナー(例えば、HLA一致、HLA不一致、またはハプロタイプ一致のドナー)から得られる。いくつかの実施形態において、白血球は、HLA一致兄弟から得られる。
【0152】
白血球は、本開示のMYXVが吸着される前または後の、例えば、赤血球溶解、密度勾配遠心分離(例えば、Ficoll-Paque)、白血球アフェレーシス、抗体またはその誘導体を含む技術(例えば、蛍光活性化細胞選別または磁気活性化細胞選別を介したポジティブまたはネガティブ選択)、またはそれらの任意の組み合わせによって分類または精製することができる。いくつかの実施形態において、白血球は、本開示のMYXVが吸着される前または後に癌細胞を富化するために選別または精製される(例えば、癌に関連するマーカーを発現する細胞、例えば、多発性骨髄腫細胞のCD138)。いくつかの実施形態において、白血球は、本開示のMYXVが吸着される前または後に、非癌細胞を富化するために選別または精製される。いくつかの実施形態において、細胞は、本開示のMYXVが吸着される前または後に、1つ以上の細胞サブセット(例えば、単球、リンパ球、B細胞、血漿細胞、T細胞、好中球、好塩基球、好酸球、巨核球、NK細胞、NKT細胞、マスト細胞、生来のリンパ系細胞、一般的な骨髄前駆細胞、一般的なリンパ系前駆細胞、骨髄芽細胞、単芽球、前単球、リンパ芽球、前リンパ球、血球芽細胞、巨核芽細胞、前巨核球、幹細胞、プロB細胞、プレB細胞、それらの前駆体、またはそれらの任意の組み合わせ))を富化するために選別または精製される。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、白血球に吸着され、そして白血球は、MYXVを含む細胞について富化される(例えば、MYXVが結合および/または内在化される)。
【0153】
白血球は、本開示のMYXVを吸着する前または後に保存することができる(例えば、凍結保存することができる)。いくつかの実施形態において、白血球は、凍結保存され得、そして後で対象への注入の前に解凍され得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、この方法は、本開示のMYXVを白血球(例えば、末梢血単核細胞、骨髄細胞、またはそれらの精製/富化サブセット)の表面に吸着させる工程を含む。いくつかの実施形態において、粘液腫ウイルスを白血球の表面に吸着させる工程は、単核末梢血細胞および/または骨髄細胞の表面へのMYXVの結合を可能にする条件下で、白血球をMYXVに曝露することを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、本開示のMYXVで白血球を感染させる工程を含む。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVで白血球を感染させる工程は、MYXVを白血球の少なくとも一部に内在化することを可能にする条件下で、白血球をMYXVに曝露することを含む。白血球をMYXVに曝露することは、任意の適切な試薬または条件(例えば、滅菌細胞培養培地、培地補充物、ならびに、白血球の吸着および/または感染を可能にし、白血球の生存能力を維持するための適切なインキュベーション条件)を含み得る。
【0155】
MYXVおよび白血球は、ウイルスが白血球に吸着することを可能にする任意の比率で互いに曝露され得る。いくつかの実施形態において、白血球の表面に白血球ウイルスを吸着させる工程は、約0.000001、0.00001、0.0001、0.0001、0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、1x10^4、1x10^5、1x10^6、1x10^9、1x10^10、1x10^11、1x10^12、1x10^13、1x10^14、または1x10^15の白血球あたりのウイルスの感染多重度(MOI)で白血球をMYXVに曝露する工程を含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、白血球の表面への白血球ウイルスの吸着は、少なくとも0.000001、少なくとも0.00001、少なくとも0.0001、少なくとも0.0001、少なくとも0.001、少なくとも0.01、少なくとも0.02、少なくとも0.03、少なくとも0.04、少なくとも0.05、少なくとも0.06、少なくとも0.07、少なくとも0.08、少なくとも0.09、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1、少なくとも1.1、少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000、少なくとも1x10^4、少なくとも1x10^5、少なくとも1x10^6、少なくとも1x10^9、少なくとも1x10^10、少なくとも1x10^11、少なくとも1x10^12、少なくとも1x10^13、少なくとも1x10^14、または少なくとも1x10^15の白血球あたりのウイルスの感染多重度(MOI)で、白血球をMYXVに曝露することを含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、白血球の表面に白血球ウイルスを吸着させる工程は、最大0.000001、最大0.00001、最大0.0001、最大0.0001、最大0.001、最大0.01、最大0.02、最大0.03、最大0.04、最大0.05、最大0.06、最大0.07、最大0.08、最大0.09、最大0.1、最大0.2、最大最大0.3、最大0.4、最大0.5、最大0.6、最大0.7、最大0.8、最大0.9、最大1、最大1.1、最大1.2、最大1.3、最大1.4、最大1.5 、最大1.6、最大1.7、最大1.8、最大1.9、最大2、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、最大10、最大11、最大12、最大13、最大14、最大15、最大16、最大17、最大18、最大19、最大20、最大25、最大30 、最大35、最大40、最大45、最大50、最大60、最大70、最大80、最大90、最大100、最大1 50、最大200、最大250、最大300、最大400、最大500、最大600、最大700、最大800、最大900、最大1000、最大2000、最大3000、最大4000、最大5000、最大6000、最大7000、最大8000、最大9000、最大1x10^4、最大1x10^5、最大1x10^6、最大1x10^9、最大1x10^10、最大1x10^11、最大1x10^12、最大1x10^13、最大1x10^14、または最大1x10^15の白血球あたりのウイルスの感染多重度(MOI)で、白血球をMYXVに曝露することを含む。
【0158】
いくつかの実施形態において、白血球の表面への粘液腫ウイルスの吸着は、白血球あたり、約、例えば、0.000001-1×10^15、0.0001-1x10^6、0.001-1x10^4、0.001-1000、0.001-100、0.001-10、0.001-1、0.001-0.1、0.001-0.01、0.01-1x10^4、0.01-1000、0.01-100、0.01-10、0.01-1、0.01-0.1、0.1-1x10^4、0.1-1000、0.1-100、0.1-10、0.1-1、1-1x10^4、1-1000、1-100、または1-10のウイルスの間の感染多重度(MOI)で、白血球をMYXVに曝露することを含む。
【0159】
いくつかの実施形態において、白血球の表面に粘液腫ウイルスを吸着する工程は、約0.1から10の間の感染多重度(MOI)で、白血球をMYXVに曝露することを含む。いくつかの実施形態において、白血球の表面に粘液腫ウイルスを吸着する工程は、約0.01から100の間の感染多重度(MOI)でMYXVに白血球を曝露することを含む。いくつかの実施形態において、白血球の表面に粘液腫ウイルスを吸着する工程は、約0.001から1000の感染多重度(MOI)で、白血球をMYXVに曝露することを含む。
【0160】
いくつかの実施形態において、白血球は、約5分、10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、95分、100分、105分、110分、115分、120分、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、4.5時間、5時間、5.5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、18時間、20時間、22時間、または24時間の期間、本開示のMYXVと接触または吸着される。
【0161】
いくつかの実施形態において、白血球は、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、少なくとも30分、少なくとも35分、少なくとも40分、少なくとも45分、少なくとも50分、少なくとも55分、少なくとも60分、少なくとも65分、少なくとも70分、少なくとも75分、少なくとも80分、少なくとも85分、少なくとも90分、少なくとも95分、少なくとも100分、少なくとも105分、少なくとも110分、少なくとも115分、少なくとも120分、少なくとも2.5時間、少なくとも3時間、少なくとも3.5時間、少なくとも4時間、少なくとも4.5時間、少なくとも5時間、少なくとも5.5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも24時間、またはそれ以上の期間、本開示のMYXVと接触または吸着される。
【0162】
いくつかの実施形態において、白血球は、最大で5分、最大で10分、最大で15分、最大で20分、最大で25分、最大で30分、最大で35分、最大で40分、最大で45分、最大で50分、最大で55分、最大で60分、最大で65分、最大で70分、最大で75分、最大で80分、最大で85分、最大で90分、最大で95分、最大で100分、最大で105分、最大で110分、最大で115分、最大で120分、最大で2.5時間、最大で3時間、最大で3.5時間、最大で4時間、最大で4.5時間、最大で5時間、最大で5.5時間、最大で6時間、最大で7時間、最大で8時間、最大で9時間、最大で10時間、最大で11時間、最大で12時間、最大で13時間、最大で14時間、最大で15時間、最大で16時間、最大で18時間、最大で20時間、最大で22時間、最大で24時間、またはそれ以下の期間、本開示のMYXVと接触または吸着される。
【0163】
いくつかの実施形態において、BMまたはPBMC細胞は、エキソビボで約1時間、MYXV構築物と接触または吸着される。
【0164】
追加のエキソビボ方法
本明細書に開示される場合、MYXVは、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞に選択的に感染することができ、細胞におけるそのような欠損の指標として使用することができる。したがって、対象から取り出された細胞は、本開示の方法を使用して、生来の抗ウイルス応答の欠損についてアッセイされ得る。そのような決定は、他の指標と組み合わせると、対象が特定の病状、例えば癌に苦しんでいる可能性があることを示し得る。細胞は、既知の生検方法を使用して、ヒト対象を含む対象から除去し得る。生検の方法は、検査する細胞の場所と種類に依存する。細胞を培養し、例えば、生MYXVを培地に添加することによって、MYXVに曝露することができる。感染多重度(MOI)は、MYXVへの曝露時に感染することが知られている陽性対照細胞培養を使用して、所定の細胞タイプ、密度、および培養技術のために適切なMOIを決定するように変動し得る。
【0165】
培養細胞に添加されるMYXVの量は、細胞型、培養方法、およびウイルス株に応じて変動し得る。
【0166】
MYXVによる培養細胞の感染力は、細胞死を引き起こすMYXVの能力を含む、当業者に知られている様々な方法によって決定され得る。これにはまた、ウイルス発現産物との酵素反応または化学反応を完了するために、細胞培養への試薬の添加も含み得る。ウイルス発現産物は、MYXVゲノムに挿入されたレポーター遺伝子から発現し得る。
【0167】
一実施形態では、MYXVは、感染状態の検出の容易さを高めるように改変し得る。例えば、MYXVは、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、またはラジオイメージングによって容易に検出できるマーカーを発現するように遺伝子改変し得る。マーカーは、比色反応または放射性標識反応に関与し得る、発現された蛍光タンパク質または発現された酵素であり得る。いくつかの実施形態において、マーカーは、試験されている細胞の特定の機能を妨害または阻害する遺伝子産物であり得る。
【0168】
医薬組成物
本開示のMYXVまたは本開示のMYXVを含む細胞は、医薬組成物の成分として製剤化することができる。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する粘液腫ウイルス、および薬学的に許容される希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。組成物は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存料、および様々な適合性のある担体を含み得る。
【0169】
医薬組成物は、追加の抗癌剤などの追加の治療剤を含み得る。一実施形態では、組成物は化学療法剤を含む。化学療法剤は、例えば、対象の癌細胞または腫瘍性細胞に対して効果を示し、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現するMYXVの腫瘍殺傷効果を阻害または減少させない実質的に任意の薬剤であり得る。例えば、化学療法剤は、アントラサイクリン、アルキル化剤、アルキルスルホネート、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有剤またはサイトカインであり得るが、これらに限定されない。化学療法剤は、癌性または腫瘍性である特定の細胞型に対して有効であることが知られているものであり得る。
【0170】
薬学的に許容される希釈剤の割合および同一性は、例えば、選択された投与経路、生ウイルスとの適合性、および標準的な製薬慣行によって決定することができる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現するMYXVの生物学的特性を著しく損なうことのない成分で製剤化される。医薬組成物は、有効量の単数または複数の活性物質が薬学的に許容されるビヒクルと混合して組み合わされるように、対象への投与に適した薬学的に許容される組成物の調製のための既知の方法によって調製することができる。適切なビヒクルは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,USA 1995)に記載されている。これに基づいて、組成物は、1つ以上の薬学的に許容されるビヒクルまたは希釈剤とともに、MYXVの溶液またはMYXVを含む細胞を含み得、適切なpHであり、および生理学的流体と等浸透圧である緩衝液に含まれ得る。
【0171】
医薬組成物は、本明細書に開示されるように、選択された投与経路に依存して様々な形態で対象に投与され得る。本発明の組成物は、経口的または非経口的に投与され得る。非経口投与には、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻、肺内、髄腔内、腫瘍内、直腸および局所の投与様式が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる継続的な注入(例えば、静脈内注入)によるものであり得る。
【0172】
医薬組成物は、例えば、不活性希釈剤または担体と共に経口投与され得るか、またはそれは、ハードシェルまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入され得るか、またはそれは錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の場合、1つ以上の免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXVが賦形剤とともに取り込まれて、摂取可能な錠剤、頬側錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形で使用することができる。
【0173】
本開示のMYXVの溶液または本開示のMYXVを含む細胞は、生理学的に適切な緩衝液中で調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための保存料を含むことができるが、それは生きているウイルスを不活化することはない。適切な製剤の選択および調製のための従来の手順および成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesおよび1999年に発行されたThe United States Pharmacopeia:The National Formulary(USP 24 NF19)に記載されている。使用される医薬組成物の用量は、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、体調、サイズと体重を含む個々の対象のパラメーター、治療の期間、併用療法の性質(もしあれば)、投与の特定の経路、医療従事者の知識と専門知識の範囲内にある他の同様の要因に依存する。特定の実施形態において、治療用ウイルスは、室温での保存のために凍結乾燥され得る。
【0174】
キット
本開示の態様は、1つ以上の免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXV、およびそれらを含むキットに関する。BiKE、BiTEおよび/またはMiTEなどの1つ以上の免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXV、またはMYXVを含む医薬組成物は、例えば、MYXVの使用説明書を含むキットとしてパッケージすることができる。キットは、本明細書に開示される任意のMYXVを含み得、例えば、1つ以上の免疫調節性導入遺伝子、1つ以上のレポーター導入遺伝子、1つ以上の非免疫調節導入遺伝子、またはそれらの組み合わせを含むMYXVを含み得る。キットは、例えば、レシピエント対象への投与のための剤形にMYXVを製剤化するための、1つ以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含むことができる。
【0175】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、本開示のMYXV(例えば、1つ以上の免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXV)、および本明細書に開示されるようなMYXVの細胞送達用材料を含むキットである。キットは、例えば、骨髄および/または末梢血からの白血球などの複数の細胞を含むことができる。白血球は、MYXVおよび細胞のレシピエントとなる対象に対して、自己、同種異系、ハプロタイプ一致、HLA一致、またはHLA不一致であり得る。いくつかの実施形態において、複数の細胞は、本開示のMYXVに事前に吸着されているか、または曝露されている。キットは、MYXVを複数の細胞に吸着させるための、および/またはMYXV吸着された細胞をレシピエントに投与するための説明書を含むことができる。キットは、例えば、MYXVを複数の細胞に吸着させ、未結合のMYXVを除去し、MYXV吸着細胞をレシピエント対象への投与用の剤形に製剤化するため、またはそれらの任意の組み合わせのための、1つ以上の薬学的に許容される緩衝液、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含むことができる。
【0176】
いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXVおよび複数の細胞を含む。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXV、ならびに、MYXVを複数の細胞に吸着させるための、および/またはMYXV吸着細胞をレシピエントに投与するための説明書を含む。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXVおよび2つ以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含む。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXV、複数の細胞、ならびに、MYXVを複数の細胞に吸着させるための、および/またはMYXV吸着細胞をレシピエントに投与するための説明書を含む。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXV、複数の細胞、および1つ以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含む。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXV、MYXVを複数の細胞に吸着させるための、および/またはMYXV吸着細胞をレシピエントに投与するための説明書、ならびに1つ以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含む。いくつかの実施形態において、キットは、複数の細胞、MYXVを複数の細胞に吸着させるための、および/またはMYXVが吸着された細胞をレシピエントに投与するための説明書、ならびに1つ以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含む。いくつかの実施形態において、キットは、本開示のMYXV、複数の細胞、MYXVを複数の細胞に吸着させるための、および/またはMYXV吸着細胞をレシピエントに投与するための説明書、ならびに1つ以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、担体、賦形剤、またはビヒクルを含む。
【実施例
【0177】
実施例1:免疫調節導入遺伝子を発現する組換えMYXV構築物の設計および構築
この実施例は、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する組換えMYXV構築物の設計および構築を実証する。
【0178】
本開示の免疫調節導入遺伝子をコードするDNA配列が生成され、例えば、商業的にまたはPCR増幅によって得られる。いくつかの場合において、コードされるタンパク質は、分泌を促進するためのシグナル配列を含むことができる。いくつかの場合において、タンパク質は、タンパク質の検出および/または精製のためのエピトープタグ(例えば、V5タグ)を含むことができる。
【0179】
導入遺伝子を粘液腫ウイルスゲノムに組み込むためのプラスミドが生成される。導入遺伝子は、ウイルス感染細胞でのみ発現できるポックスウイルス合成初期/後期プロモーター(sE/L)の下で発現させることができます。導入遺伝子に加えて、レポーター遺伝子、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)またはTdTomatoも任意選択で含まれ、導入遺伝子を発現する組換えウイルスの迅速な選択および精製のために、ポックスウイルスプロモーターの下で発現され得る。ホタルルシフェラーゼ(F-Luc)などの追加のレポーター遺伝子により、例えば、生きている動物において、ウイルス複製のリアルタイムモニタリングが可能になる。導入遺伝子とレポーター遺伝子は、親の野生型MYXVバックボーンを維持するためにオープンリーディングフレームの間に挿入できる(例えば、M135とM136のオープンリーディングフレームの間)。導入遺伝子は、遺伝子ノックアウトウイルスのバックグラウンドに挿入することもできます。例えば、導入遺伝子は、M135遺伝子の対応する欠失または破壊を伴ってM135遺伝子座に挿入されるか、または導入遺伝子は、M136遺伝子の対応する欠失または破壊を伴ってM136遺伝子座に挿入され得る。
【0180】
最終的な組換えプラスミドカセットは、(i)導入遺伝子、(ii)任意選択のレポーター遺伝子、および(iii)相同組換えを促進するためにウイルスゲノム中の配列と一致するDNA配列を有する相同性アーム/組換えアームを含む。
【0181】
組換えプラスミドの構築は、細菌における組換えによる複数のDNA断片からの単一のプラスミドの構築を可能にするゲートウェイ(Gateway)技術(Multisite Gateway Pro)によって行われる。最終的な組換えカセットを作成するために、異なる要素を含む複数のエントリークローンが生成される。エントリークローンは以下を含み得る:(i)ウイルスゲノムの配列と一致するDNA配列を含む第1の相同性/組換えアーム、(ii)プロモーター(例えば、ポックスウイルス合成初期/後期プロモーター)、任意選択でシグナル配列、エピトープタグなどを有する本開示の免疫調節導入遺伝子、(iii)任意選択で、プロモーター(例えば、ポックスウイルス後期p11プロモーターの制御下にあるGFPおよび/またはTdTomato)を有する1つ以上のレポーター遺伝子、ならびに(iv)ウイルスゲノムの配列と一致するDNA配列を含む第2の相同性/組換えアーム。最終的な組換えプラスミドカセットを構築するために、すべての要素は、標準的なプロトコルを使用したLR組換え反応によってGatewayデスティネーションベクターで組換えられる。
【0182】
組換えプラスミドの例を図1に提供する。2つの相同性アームは、収束する配列に整列させることができる(例えば、遺伝子間領域における組換えカセットの挿入のため)。いくつかの場合において、相同性アーム1はM135オープンリーディングフレームを含むことができ、相同性アーム2はM136オープンリーディングフレームを含むことができ、粘液腫ウイルスゲノムのM135とM136オープンリーディングフレームの間の導入遺伝子とレポーター遺伝子の挿入を容易にする。
【0183】
2つの相同性アームは、削除される配列をスキップするウイルスゲノム内の2つの別個の配列に整列することができる(例えば、ウイルスゲノムの遺伝子の全部または一部の欠失、および組換えカセットによる置換のため)。いくつかの場合において、相同性アーム1はM134オープンリーディングフレームまたはその一部を含むことができ、M135オープンリーディングフレームを何も含まないかまたは断片を含むことができ、相同性アーム2はM136オープンリーディングフレームまたはその一部を含むことができ、M135オープンリーディングフレームを何も含まないかまたは断片を含むことができ、これにより、M135オープンリーディングフレームの残りの部分を削除できる。いくつかの場合において、相同性アーム1は、SODの上流にある配列を含むことができ、SODオープンリーディングフレームを含まないかまたは断片を含むことができ、相同性アーム2は、SODオープンリーディングフレームまたはその一部の下流である配列を含むことができ、そしてSODオープンリーディングフレームを何も含まないかまたは断片を含むことができ、これにより、SODオープンリーディングフレームの残りの部分を削除することができる。
【0184】
プラスミド構築後、導入遺伝子および/またはレポーター遺伝子の発現は、プラスミドをMYXVに感染したRK13細胞にトランスフェクトした後、ウエスタンブロット分析によって試験することができる。
【0185】
導入遺伝子およびレポーター遺伝子を隣接配列と共にコードする最終的な組換えプラスミドを、野生型MYXV Lausanneに感染したRK13細胞にトランスフェクトする。組換えウイルスは、レポーター遺伝子マーカーの発現に基づいて単離され、連続的に精製される。
【0186】
免疫調節導入遺伝子の発現は、ウエスタンブロット分析および機能アッセイによって再度確認される。ウイルスは、野生型ウイルスのバックグラウンドおよびノックアウトバックグラウンド(例えば、M135のノックアウトを伴う)上に免疫調節導入遺伝子を含むように生成される。
【0187】
この方法は、STING、TNFα、抗PDL1、FAST、および/またはIL-12などの、本開示の免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXVを生成するために使用される。
【0188】
実施例2:STINGを発現する組換えMYXVの設計と構築
この実施例は、構成的に活性化されたSTINGの変異体を発現する組換えMYXVの設計および構築を実証する。STINGを利用した遺伝子のバージョンには、機能獲得型変異(R284S)があり、これは、単一の塩基対(852G/T)の置換によるものである。配列番号3の配列を含む、変異体cDNA STINGは、GenScriptによって合成された。852G/T変異は、下線と太字で示される。
【0189】
【0190】
MYXV-STINGは、野生型(wt)MYXV株 Laussane(MYXV-Lau)ゲノムのM135遺伝子座にC末端V5タグを有するSTING発現カセットを挿入することによって構築された。STINGの発現は、ポックスウイルスP11後期プロモーター(P11)の制御下にある。増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現カセットは、STINGのすぐ下流に挿入され、その発現は、ポックスウイルス合成初期/後期プロモーター(sE/L)によって駆動された。MYXV感染はGFP発現のライブイメージングによって監視できるため、eGFPはインビトロおよびインビボでのMYXV複製の蛍光マーカーとして機能し得る。
【0191】
MYXV-STING-GFP構築物を作製するために、組換えプラスミドが、Gateway System(ThermoFisher Scientific)を使用して構築された。図2は、組換えプラスミドの設計と、組換え後のMYXV-STING-GFPの改変ゲノムを図示する。
【0192】
上流および下流のハイブリダイズする配列をPCRによって増幅し、適切なpDONRベクターを用いたGatewayBP組換えによってエントリークローンを生成した。最終的な組換えプラスミドは、3つのエントリークローンをデスティネーションベクターと順次様式で再結合することによって構築した。STINGおよびeGFP発現カセットは、RK13細胞にMYXV-Lauを感染させ、適切な組換えプラスミドをトランスフェクトすることにより、MYXVゲノムに挿入された。組換えウイルスの純粋なストックを得るために、複数ラウンドの病巣(foci)精製を実施し、適切なプライマーセットを使用したPCRによって特異性を確認した。
【0193】
【0194】
図3Aは、PCR産物のアガロースゲル電気泳動によるSTINGの検出を図示する。図3Aの候補1と2はSTINGに陽性である。候補3と対照はSTINGに対して陰性である。
【0195】
STINGタンパク質の発現は、MYXV-STING-GFPに感染したRK13細胞からの溶解物のウエスタンブロットによって確認された。V5エピトープタグに特異的なマウスモノクローナル抗体を使用し、43kDaのバンドの検出を可能にした(図3B)。STINGは、RK13細胞培養の3つからの溶解物で検出されたが、第4の培養および対照は陰性であった。
【0196】
MYXV-STINGの複製能力は、5のMOIで感染したRK13細胞における単一段階の増殖曲線を介して試験された。複製は、MYXV-STINGと対照親ウイルスとの間で類似していた(図4)。
【0197】
実施例3:MYXV-STINGは感染細胞に自食作用(オートファジー)を誘導する
親ウイルスからのMYXV-STING-GFPの精製中に、この新しいウイルスが、RK13感染細胞において、感染した細胞における、穴のような、または液胞のような構造が存在することを特徴とする、特定の表現型を促進することが予想外に観察された。
【0198】
精製されたMYXV-STINGを使用して、RK13、Vero、およびA549細胞株を10の感染多重度(MOI)で感染させた。48時間後、3つの細胞株すべてが穴様または液胞様構造を示した。図5Aは、モック感染したRK13、Vero、およびA549細胞の光学顕微鏡画像を提供する。図5Bは、MYXV-M135KO-GFPに感染したRK13、Vero、およびA549細胞の蛍光および光学顕微鏡画像を提供する。図5Cは、MYXV-M135KO-STING-GFPに感染したRK13、Vero、およびA549細胞の蛍光および光学顕微鏡画像を提供する。
【0199】
観察された表現型の1つの可能な説明は、感染細胞における自食作用の誘導であり、これは、オートファゴソームの形成につながる可能性がある。自食作用がMYXV-STING感染細胞で誘導されたかどうかを調べるために、A549細胞をMYXVまたはMYXV-STINGに感染させ、感染後48時間から細胞溶解物に対してウエスタンブロットを行ってLC3-IIを検出した。自食作用の間、LC3-Iは、LC3が自食作用小胞と結合することを可能にするAtg7とAtg3を含むユビキチン様システムによる脂質化を通してLC3-IIに変換される。オートファゴソームにおけるLC3の存在、およびLC3のより低い移動形態であるLC3-IIへの変換は、自食作用の指標として使用されてきた。ウサギ抗ヒト-LC3BAb(2775S)を使用してLC3-IIを検出した。参照遺伝子GAPDHをローディング対照として使用した。ウイルスゲノムにおけるSTINGの存在は、MOI依存的にLC3-IIをアップレギュレートするように見えた(図6)。驚くべきことに、MYXV-GFPはLC3-IIもある程度アップレギュレートし、感染細胞培養におけるある程度の自食作用誘導を示す(図6)。
【0200】
実施例4:MYXVはインビトロでヒト血液癌細胞に感染して殺傷させる
本開示のMYXVに対するヒト血液癌細胞の感受性を評価するために、ヒト急性骨髄性白血病(AML)および多発性骨髄腫(MM)細胞株を組換えMYXVクローンに感染させた。AML細胞の例としてTHP-1細胞を使用した。MM細胞の例としてU266細胞を使用した。U266細胞は、20%ウシ胎児血清(FBS)、2mM L-グルタミン、および100U/mlのペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI1640で維持された。THP-1細胞は、10%FBS、2mM L-グルタミン、および100U/mlのペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI1640で維持された。
【0201】
細胞をモック感染させるか、または0.1、1、または10の感染多重度(MOI)でMYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗muPDL1-GFP、またはMYXV-p14FAST-GFPに感染させた。細胞は、ウイルスを吸着させるために37℃で1時間感染させ、感染後24時間または48時間(hpi)までインキュベートした。
【0202】
感染は、蛍光顕微鏡法によって24および48hpiで評価された。画像は5倍の倍率で、338.00ミリ秒の露出、2.5のゲインで撮影された。図7Aおよび図7Bは、それぞれ感染後24時間および48時間でのTHP-1細胞の感染を示す。図8Aおよび図8Bは、それぞれ感染後24時間および48時間でのU266細胞の感染を実証する。
【0203】
感染率はまた、フローサイトメトリーによって定量化され、感染細胞の集団がGFP発現について評価された。図16Aは、感染後24時間および48時間でGFP陽性であったTHP-1細胞のパーセントを示す。図16Bは、感染後24時間および48時間でGFP陽性であったU266細胞のパーセントを示す。
【0204】
細胞殺傷は、近IR生/死染色を使用するフローサイトメトリーによって、感染後24時間および48時間(hpi)で評価された。図9はTHP-1細胞の殺傷を実証する。図10は、U266細胞の殺傷を実証する。
【0205】
細胞殺傷は、GFP+細胞(感染細胞の直接殺傷または標的上殺傷のため)およびGFP陰性細胞(非感染細胞の間接殺傷または標的外殺傷のため)をゲーティングすることによってさらに特徴付けられた。図17Aは、24時間および48時間で殺傷された感染THP-1細胞の割合を図示する。図17Bは、24時間および48時間で殺傷された非感染THP-1細胞の割合を図示する。図18Aは、24時間および48時間で殺傷された感染U266細胞のパーセントを図示する。図18Bは、24時間および48時間で殺傷された非感染U266細胞のパーセントを図示する。図19は、感染したTHP-1細胞に対する死滅したTHP-1細胞の比率を提供する。図20は、感染したU266細胞に対する死滅したU266細胞の比率を提供する。
【0206】
これらのデータは、本開示の免疫調節導入遺伝子を発現するMYXVがヒト血液癌細胞に感染し、その中で複製し、そしてそれを殺傷することができ、いくつかの場合において、免疫調節導入遺伝子を欠くMYXVと比較して殺傷の増強を誘発できることを示す。例えば、MYXV-TNFαおよびMYXV-FASTは、野生型MYXVと比較して、THP-1(ヒトAML)細胞の強化された殺傷を誘発し、MYXV-FASTはU266(ヒトMM)細胞の強化された殺傷を誘発した。
【0207】
実施例5:免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXVは、骨髄からの初代ヒト多発性骨髄腫細胞を殺傷する
この実施例は、ヒト患者からの骨髄(BM)サンプル中の多発性骨髄腫(MM)細胞を殺傷する本開示のMYXVを実証する。
【0208】
初代骨髄サンプルは、骨髄生検を介して多発性骨髄腫患者から得られ、単核細胞を単離するためにFicoll-paque plus勾配を使用する精製に供された。次に、単核細胞を条件ごとに380μLの完全培地に再懸濁して24ウェルプレートに入れた。
【0209】
次に、懸濁液中のこれらの一次細胞をモック処理するか(すなわち、ウイルスを添加しない)、またはMYXV-WT-GFP、MYXV-M135KO-GFP、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗muPDL1-GFP、MYXV-p14FAST-GFP、MYXV-STING-GFP、またはMYXV-IL12-GFPとインキュベートした。実験は、MOI=10、1、および0.1を含むさまざまな感染多重度(MOI)で実施した。細胞を37℃で1時間インキュベートして、ウイルスを吸着を可能にした。1時間のインキュベーション後、120μLの完全培地を各ウェルに添加し、プレートを37℃でさらにインキュベートした。感染24時間後に、細胞を近IR生/死で標識した。続いて、一次細胞を、条件ごとに100μLの染色バッファー中の1μLのヒト抗CD138抗体で標識し、遮光して4℃で15分間インキュベートした。次に、100μLのCytofixを使用してすべてのサンプルを固定し、遮光して4℃で15分間インキュベートした後、フローサイトメトリー分析のために270μLの染色緩衝液に再懸濁した。
【0210】
殺傷されたMM細胞のパーセントは、フローサイトメトリーによって評価された。CD138は多発性骨髄腫(MM)細胞のマーカーとして使用された。図21は、感染したCD138+細胞の割合を示す(GFP陽性)。
【0211】
図11は、免疫調節導入遺伝子を発現する本開示のMYXVによるMM細胞の殺傷を示す。これらのデータは、免疫調節導入遺伝子を発現する本開示のMYXVが、原発性ヒト血液癌細胞に感染して殺傷させることができ、場合によっては、免疫調節導入遺伝子を発現しないMYXVと比較して増強された殺傷を誘発できることを示す。図12は、骨髄生検中のBM抽出の6時間後と24時間後に分析された、同じ初代細胞サンプルから示されたPacific Blue420標識MM細胞集団を示し、これらの細胞は6時間後には存在していたが、24時間後に数が大幅に減少したことを示す。
【0212】
実施例6:免疫調節性導入遺伝子を発現するMYXVは、血液癌細胞の死滅を増強する
この実施例は、原発性ヒト血液癌細胞を殺傷する能力について、免疫調節性導入遺伝子を発現する本開示のMYXVを評価することを実証する。初代血液および骨髄サンプルは、血液癌の患者から入手される。サンプルは、Ficoll-paque plus勾配を使用する精製に供され、単核細胞が単離され、赤血球(RBC)の大部分が除去される。
【0213】
次に、懸濁液中のこれらの初代細胞をモック処理するか(すなわち、ウイルスを添加しない)、または本開示のMYXVと共に37℃で1時間インキュベートして、ウイルスを吸着させる。実験は、MOI=10、1、および0.1を含むさまざまな感染多重度(MOI)で実施される。この後、モック処理またはMYXV処理した細胞を37℃で一晩(約24時間)インキュベートして、ウイルス感染が進行することを可能にする。
【0214】
ウイルス感染のパーセンテージならびに癌細胞の生存率、アポトーシス、および細胞死のパーセンテージは、フローサイトメトリーを使用して決定される。パーセンテージは、ウイルスに曝露された患者サンプル中の非感染癌細胞についても決定され、ウイルスに直接感染していないが(例えば、いかなるウイルス特異的蛍光タンパク質も発現していない)、免疫調節性導入遺伝子によって活性化される免疫細胞によって活性化される免疫細胞によって殺傷される、「オフターゲット」方式で殺傷され、細胞における癌細胞死の測定を可能にする。
【0215】
免疫調節性導入遺伝子(例えば、MYXV-SODKO-TNFα-GFP、MYXV-抗muPDL1-GFP、MYXV-p14FAST-GFP、MYXV-STING-GFP、またはMYXV-IL12-GFP)を発現する本開示のMYXVは、生産的に癌細胞に感染する。場合によっては、免疫調節導入遺伝子を発現する本開示のMYXVは、それらが感染する癌細胞を直接殺傷し、免疫調節導入遺伝子を介して非感染癌細胞の殺傷を促進する。
【0216】
実施例7:多発性骨髄腫(MM)に対する粘液腫ウイルス(MYXV)を用いる腫瘍溶解性ウイルス療法(MYXV):初代ヒトサンプルから癌細胞を排除するために適したMYXV構築物の同定。
実験は、初代ヒト細胞サンプルから難治性癌細胞を排除するために適したMYXV構築物および実験条件を同定するために実施される。骨髄または末梢血のサンプルは、血液癌(骨髄腫、白血病、またはリンパ腫)を有する対象から採取される。単核細胞が単離される(例えば、Ficoll-Paqueを介して)。癌細胞を含む単核細胞のサンプルは、様々な条件下(例えば、MOI、インキュベーション時間)の下で、本開示のMYXV構築物(例えば、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現し、および/または1つ以上の欠失を含む)で処理され、癌細胞を殺傷するMYXV構築物の能力は、本明細書に開示されるように(例えば、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡法、および/または細胞毒性アッセイを介して)決定される。
【0217】
同定された構築物および/または実験条件は、対象を治療するために使用することができる。例えば、適切であると特定されたMYXV構築物は、対象に直接投与することができ(例えば、注射または静脈内注入を介して)、またはMYXVに吸着した白血球を介して投与することができる。
【0218】
実施例8:粘液腫ウイルス(MYXV)による腫瘍溶解性ウイルス療法
対象は、血液癌(例えば、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫)を有すると特定される。血液癌は、任意選択で、微小残存病変(MRD)および/または薬剤耐性MRDを含む血液癌である可能性がある。
【0219】
必要に応じて、対象から採取されたサンプル(例えば、末梢血または骨髄サンプル)から癌細胞を殺傷する本開示のMYXV構築物(例えば、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する、および/または1つ以上の欠失を含む)を同定するために研究が行われる。
【0220】
MYXVは、対象に投与される(例えば、注射または注入を介して投与される)。MYXVは、対象の癌細胞に感染し、免疫調節導入タンパク質を発現し、癌細胞の殺傷と抗癌免疫応答の増強をもたらす。
【0221】
実施例9:MYXVに吸着された白血球の自己移植を介した粘液腫ウイルス(MYXV)を用いる腫瘍溶解性ウイルス療法。
MYXVは、MYXVに吸着された白血球の自己移植を介して、血液癌を有する対象に投与される。
【0222】
骨髄または末梢血サンプルは、血液癌(例えば、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫)を有する対象から得られ、単核細胞が(例えば、Ficoll-paqueを介して)単離される。癌細胞は、非癌細胞から分離することができる(例えば、FACSまたはMACSを介して)。本開示のMYXVは、白血球に吸着される(例えば、約0.1から10のMOIで約1時間吸着される)。MYXVに吸着された白血球は、静脈内注入を介して対象に戻して投与される。MYXVは、対象の癌細胞に感染し、癌細胞の殺傷と抗癌免疫応答をもたらす。
【0223】
実施例10:MYXVに吸着された白血球の同種異系移植を介した粘液腫ウイルス(MYXV)を用いる腫瘍溶解性ウイルス療法。
MYXVは、MYXVに吸着された白血球の同種異系移植を介して、血液癌(例えば、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫)を有する対象に投与される。骨髄または末梢血サンプルは、ドナー(例えば、HLA一致、HLA不一致、ハプロタイプ一致、または兄弟ドナー、あるいはそれらの組み合わせ)から得られる。単核細胞が単離される(例えば、Ficoll-Paqueを介して)。任意選択で、細胞は特定の白血球サブセットについて精製または濃縮される(例えば、FACSまたはMACSを介して)。本開示のMYXVは、白血球に吸着される(例えば、約0.1から10のMOIで約1時間吸着される)。MYXVに吸着された白血球は、静脈内注入を介して対象に戻して投与される。MYXVは、対象の癌細胞に感染し、癌細胞の殺傷と抗癌免疫応答をもたらす。
【0224】
実施例11:インビボで薬剤耐性の播種性MMを標的および排除するための、微小残存病変(MRD)のVk*MYC免疫コンピテントマウスモデルにおける自己移植と組み合わせたエキソビボMYXVウイルス療法。
この実施例は、白血球の表面に吸着したMYXVを使用することによる血液癌を有する対象の治療を実証する。同様の実験または後続の実験は、1つ以上の免疫調節導入遺伝子を発現する本開示のMYXVを用いて実施することができる。
【0225】
2つのC57BL/6由来のVK*MYC細胞株をインビボ実験のために使用した:ボルテゾミブ耐性(BOR耐性)であるVK12598、および多剤耐性株VK12653。最初に、これら2つのVK*MYC細胞株のMYXV結合および感染に対する感受性を評価した。
【0226】
VK12598およびVK12653へのMYXV結合、インビトロ研究:結合実験のために、MYXV-M093L-Venusウイルス(M093Lのアミノ末端にある蛍光タンパク質Venusの融合物を含む)を10の感染多重度(MOI)で使用した。簡単に説明すると、VK12598またはVK12653のいずれかをBM(または解凍したばかりのBM)から新たに単離し、MYXV-M093L-Venusと4℃で1時間インキュベートして、ウイルスを可能にした。未結合のウイルスは、ウイルス吸着細胞を2回洗浄することによって除去した。ビリオン結合のレベルは、フローサイトメトリーを使用して定量化した。ウイルス感染の分析のために、細胞をレポーターMYXV-GFP(E/L)/TdTomato(L)とMOI=10にて37℃で1時間インキュベートし、ウイルスを吸着させた。ウイルス感染を可能にするために、細胞を37℃で一晩インキュベートした。MYXVは両方の細胞株に効率的に結合した(図13Aおよび14A)。これに加えて、MYXVは両方の細胞株に生産的に感染する(図13B-Cおよび14B)。
【0227】
VK12598細胞株を使用するインビボ研究:最初のインビボ実験において、C57BL/6マウスに、VK12598細胞(例えば、マウスあたり1×10細胞)を事前に播種した。MM細胞移植の4週間後、マウスを出血させ、Mスパイクを測定した。M-スパイクのレベル(例えば、0、低=0.1、中=0.2、高=0.6)に従ってマウスを分離した(図15A、上部パネル)。次に、マウスを次のように処理した:C57BL/6 BM移植なし(コホートI)、C57BL/6 BM細胞のみ(コホートII)、MYXV-M135KO-GFPのみ(コホートIII)、MYXV-でexvivo処理したC57BL/6 BM M135KO-GFP(コホートIV)(図15A、下のパネル)。図15Bは、Mスパイクが低い(0.1)コホートIの代表的なマウスのMM(CD138+ B220-)のパーセンテージと、M-スパイクが高い(0.6)コホートIIの代表的なマウスのMM(CD138+ B220-)のパーセンテージを示す。図15Cは、コホートIVからの唯一の生存者のMスパイクを示し、これは、MMの完全な退行を示し、移植後8日目、29日目、および37日目にMスパイクバンドは検出されなかった。これらのデータは、エキソビボにてMYXVで処理された骨髄の移植がMMの退行を誘発する可能性があることを示す。まとめると、これらのデータは、この最初の実験のコホート治療が疾患の進行の遅すぎることを示唆している可能性があり、代わりにウイルス療法はこのモデルのはるかに早い段階で開始するべきである(例えば、MM移植後4週間ではなくMM移植後1週間未満)。MMの退行は、この遅い介入時間でも発生し得るが、ウイルス療法を早期に開始すると(例えば、死亡またはエンドポイントにそれほど近くないマウスコホートで)、ウイルス技術の評価を改善できる可能性がある。
【0228】
追加の試験において、MYXVは、他の治療法(SMAC模倣物LC161など)と組み合わせて試験される。VK12598癌細胞が移植され、M-Spikeが1-4週間で定量化され、マウスがシクロホスファミドで処理されて、1か月続く可能性のある一過性の完全応答(CR)が誘導される。シクロホスファミドの1週間後または2週間後の」いずれかで、ウイルス療法が、シクロホスファミドによって開始された部分的退行を延長または完了することができるかどうかをテストするために、マウスにBM+MYXVまたはPBMC+MYXV(例えば、本明細書に開示される免疫調節導入遺伝子を発現するMYXV)を移植する。この設定では、この化学療法に機能的に抵抗する疾患によって定義されるMM微小残存病変(MRD)を排除するMYXVの能力が調べられる。単剤療法または併用療法のいずれかとして、多剤耐性VK12653細胞株を排除するMYXVの能力も調べられる。
【0229】
実施形態
実施形態1.1つ以上の免疫調節タンパク質を発現するように操作された粘液腫ウイルス(MYXV)。
【0230】
実施形態2.免疫調節タンパク質がインターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)である、実施形態1の粘液腫ウイルス。
【0231】
実施形態3.免疫調節タンパク質がインターロイキン-12(IL-12)である、実施形態1の粘液腫ウイルス。
【0232】
実施形態4.免疫調節タンパク質がIL-12Aである、実施形態1に記載の粘液腫ウイルス。
【0233】
実施形態5.免疫調節タンパク質がIL-12Bである、実施形態1に記載の粘液腫ウイルス。
【0234】
実施形態6.免疫調節タンパク質が融合関連小膜貫通(FAST)である、実施形態1の粘液腫ウイルス。
【0235】
実施形態7.免疫調節タンパク質が免疫チェックポイント阻害剤である、実施形態1に記載の粘液腫ウイルス。
【0236】
実施形態8.免疫調節タンパク質が抗PDL1である、実施形態1に記載の粘液腫ウイルス。
【0237】
実施形態9.免疫調節タンパク質が腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質である、実施形態1に記載の粘液腫ウイルス。
【0238】
実施形態10.免疫調節タンパク質が、toll様受容体(TLR)を刺激すること、または核因子-κB(NF-κB)もしくはIRF(インターフェロン調節因子)を活性化することができる、実施形態1-9のいずれか1つに記載の粘液腫ウイルス。
【0239】
実施形態11.粘液腫ウイルスが、M011L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、またはM-T7で、またはそれらに隣接する修飾を含む、実施形態1-10のいずれか1つに記載の粘液腫ウイルス。
【0240】
実施形態12.実施形態1-11のいずれか1つの粘液腫ウイルス、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0241】
実施形態13.全身投与用に製剤化される、実施形態12の医薬組成物。
【0242】
実施形態14.局所投与用に製剤化される、実施形態13の医薬組成物。
【0243】
実施形態15.非経口投与用に製剤化される、実施形態12-14のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0244】
実施形態16.免疫調節タンパク質を発現するように操作された粘液腫ウイルス(MYXV)によってエキソビボで処理された末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む組成物。
【0245】
実施形態17.MYXVが実施形態1-11のいずれか1つの粘液腫ウイルスである、実施形態16の組成物。
【0246】
実施形態18.PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせが自己細胞を含む、実施形態19-21のいずれか1つに記載の組成物。
【0247】
実施形態19.PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせが同種異系ドナーから得られる、実施形態19-21のいずれか1つに記載の組成物。
【0248】
実施形態20.免疫調節タンパク質を発現するように操作された粘液腫ウイルス(MYXV)を対象に投与することを含む、必要とする対象における癌を阻害または治療する方法。
【0249】
実施形態21.MYXVが実施形態1-11のいずれか1つの粘液腫ウイルスである、実施形態20の方法。
【0250】
実施形態22.MYXVが実施形態1-11のいずれか1つの粘液腫ウイルスである、実施形態20の方法。
【0251】
実施形態23.PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせの表面にエキソビボで粘液腫ウイルスを吸着させることをさらに含む、実施形態22の方法。
【0252】
実施形態24.PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせの表面に粘液腫ウイルスを吸着させることは、PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせの表面への粘液腫ウイルスの結合を可能にする条件下で、PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせを粘液腫ウイルスに曝露することを含む、実施形態23の方法。
【0253】
実施形態25.癌が固形腫瘍である、実施形態22-24のいずれか1つに記載の方法。
【0254】
実施形態26.癌が対象の第2の位置に転移している、実施形態22-25のいずれか1つに記載の方法。
【0255】
実施形態27.第2の位置が、対象の肺、脳、肝臓、および/またはリンパ節を含む、実施形態26の方法。
【0256】
実施形態28.癌が骨肉腫、トリプルネガティブ乳癌、または黒色腫を含む、実施形態22-27のいずれか1つに記載の方法。
【0257】
実施形態29.対象に追加の治療薬を投与することをさらに含む、実施形態22-28のいずれか1つに記載の方法。
【0258】
実施形態30.MYXVまたは組成物を投与する前に、追加の治療薬が対象に投与される、実施形態29の方法。
【0259】
実施形態31.MYXVまたは組成物を投与した後、追加の治療薬が対象に投与される、実施形態29または30の方法。
【0260】
実施形態32.追加の治療薬が、MYXVまたは組成物との組み合わせとして対象に投与される、実施形態29または30の方法。
【0261】
実施形態33.対象がヒトである、実施形態22-32のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
実施形態34.この方法は、癌を有するかまたは癌を有することが疑われる対象を選択することをさらに含む、実施形態33に記載の方法。
【0263】
実施形態35.粘液腫ウイルスが、欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞に感染することができる、実施形態22-34のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
実施形態36.欠損した生来の抗ウイルス応答を有する細胞が癌細胞を含む、実施形態35に記載の方法。
【0265】
実施形態37.細胞が、免疫調節タンパク質を発現する粘液腫ウイルスに感染している、実施形態22-36のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
実施形態38.実施形態1-11の粘液腫ウイルスまたは実施形態12-19の医薬組成物を含むキット。
【0267】
本開示は、特定の実施形態に重点を置いて説明されてきたが、特定の実施形態のバリエーションが使用され得ることは当業者には明らかであり、本開示は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施され得ることが意図される。本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特徴、特性、化合物、または例は、本発明の他の任意の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解されるべきである。したがって、この開示には、以下の請求項によって定義される開示の精神および範囲に含まれるすべての改変が含まれる。したがって、本発明者らは、これらの特許請求の範囲と精神に含まれるすべてのものを本発明者らの発明として特許請求する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【図
図9
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図12
図13A
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【国際調査報告】