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  • 特表-リントラップ材を含む酸化触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】リントラップ材を含む酸化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20230607BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20230607BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20230607BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230607BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/10 301F
B01J23/44 A ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563066
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021061931
(87)【国際公開番号】W WO2021224362
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】20173091.8
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビルギット・フリードリヒ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091BA11
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148BA01Y
4D148BA03X
4D148BA06X
4D148BA07Y
4D148BA30X
4D148BA31X
4D148BA41X
4D148BA42Y
4D148BB15
4D148BB16
4D148DA03
4D148DA11
4D148DA12
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA13B
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD05B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA09
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA19
4G169EB12Y
4G169EB14Y
4G169EB17X
4G169EC17X
4G169EC17Y
4G169EC29
4G169EE06
4G169EE09
(57)【要約】
本発明は、第1端a及び第2端bと、長さLとを有するキャリア基材、担体材料上に、キャリア基材の容積に対して40~150g/Lの担持量で白金族金属を含有する物質ゾーンA、担体材料上に、キャリア基材の容積に対して75~200g/Lの担持量で白金族金属を含有する物質ゾーンB、を有する触媒に関し、ここで、物質ゾーンBは、キャリア基材の容積に対して、g/Lで計算して物質ゾーンAよりも多くの白金族金属含有量を有しており、かつ物質ゾーンBは、0.5~50μmの直径を有する細孔の割合が20~30%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒であって、
・第1端a及び第2端bと、長さLとを有するキャリア基材、
・担体材料上に、前記キャリア基材の容積に対して40~150g/Lで担持された白金族金属を含有する、物質ゾーンA、並びに
・担体材料上に、前記キャリア基材の容積に対して75~200g/Lで担持された白金族金属を含有する、物質ゾーンB、を含有し、
ここで、物質ゾーンBは、前記キャリア基材の容積に対して、g/Lで計算して物質ゾーンAよりもより多くの白金族金属含有量を有しており、かつ物質ゾーンBは、0.5~50μmの直径を有する細孔の割合が20~30%である、触媒。
【請求項2】
物質ゾーンAが白金族金属としてパラジウムと白金を含有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
物質ゾーンAにおける白金とパラジウムとの重量比が20:1~1:5であることを特徴とする、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
物質ゾーンAにおける前記白金族金属が、前記キャリア基材の容積に対して0.18~0.53g/Lの量で存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
物質ゾーンBが白金族金属として白金とパラジウムを含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
物質ゾーンBにおける白金とパラジウムとの重量比が20:1~1:5であることを特徴とする、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
物質ゾーンBにおける前記白金族金属が、前記キャリア基材の容積に対して0.53~1.06g/Lの量で存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
物質ゾーンAが、前記キャリア基材の全長Lにわたってコーティングされ、かつ物質ゾーンBが、前記キャリア基材の前記第2端aから前記長さLの40~80%にわたって延在し、前記物質ゾーンA上に位置することを特徴とする、請求項1~7の一項以上に記載の触媒。
【請求項9】
前記キャリア基材がフロースルー基材であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項10】
細孔の割合が以下の工程、すなわち、
・被験触媒領域を選択する工程、
・前記細孔を有機樹脂で充填した被験触媒領域の横断面を作成する工程、
・走査型電子顕微鏡(SEM)によって横断面の画像を作成する工程、
・前記SEM画像の被験部分領域を選択する工程、
・画像解析プログラムによって、前記SEM画像の選択した部分領域をバイナリイメージに変換する工程、
・前記バイナリイメージを使用して画像解析プログラムによって空隙率分布の計算を実行して、細孔の割合を求める工程、を含む方法によって測定されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項11】
リーンバーンエンジンで作動するモータービークルの排ガスを浄化する方法であって、前記排ガスを請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒上に通すことを特徴とし、ここで、前記排ガスは、前記キャリア基材の前記第1端aで前記触媒に入り、前記第2端bで再び出る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化するためのリントラップ材を含む酸化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOに加えて、ディーゼルエンジンのそのままの排ガスは最大で15容積%と比較的高い酸素含有量を有する。更に、微粒子の排出物が含まれ、それらは、シリンダ内の燃料の部分的に不完全な燃焼から生じる主にすすの残留物、及びいくつかの場合には有機物の凝集物からなる。
【0003】
微粒子排出物(particle emissions)の除去には、触媒活性のあるコーティングを有する及び有しないディーゼル微粒子フィルターが適するのに対し、酸化窒素は、例えば、いわゆるSCR触媒における選択的触媒還元により窒素に変換することができ、一酸化炭素及び炭化水素は、適した酸化触媒で酸化され無害化される。
【0004】
酸化触媒は、文献中に広く記載されている。これらは、例えば、セラミック又は金属材料から作製されたいわゆるフロースルー基材であり、必須の触媒活性成分として、白金及びパラジウムなどの貴金属を、高表面積で多孔質の高融点酸化物、例えば、酸化アルミニウム上に担持している。
排ガスが連続的に接触するよう、排ガスの流れる方向に、組成の異なる物質ゾーンを有する、予めゾーン化された酸化触媒も記載されている。
【0005】
例えば、米国特許出願公開第2010/257843号、同第2011/099975号、及び国際公開第2012/079598(A1)号は、白金とパラジウムを含有するゾーン化された酸化触媒を記載している。
前述の構成成分の他に、ディーゼルエンジンの排ガスにはまた、オイルの添加剤に由来するリン化合物がしばしば含まれる。これらはディーゼル酸化触媒の上に堆積して、その耐用年数にわたって酸化能力を低下させる。
【0006】
この問題及びその解決の可能性はすでに文献に記載されている。
例えば、JP2015066516Aには、その最上層にリントラップ材としてマグネシウムとセリウムの複合酸化物を含有する三元触媒が開示されている。
JP2013146706Aでは二層触媒が教示され、下層が貴金属を含有し、上層は貴金属を全く含まないか、下層よりも貴金属を含まず、上層が下層よりも高い空隙率を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それらの耐用年数全体にわたってリンの汚染から効果的に保護される酸化触媒が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、
・第1端a及び第2端bと、長さLとを有するキャリア基材、
・担体材料上に、キャリア基材の容積に対して40~150g/Lで担持された白金族金属を含有する、物質ゾーンA、並びに
・担体材料上に、キャリア基材の容積に対して75~200g/Lで担持された白金族金属を含有する、物質ゾーンB、を含有する触媒に関し、
ここで、物質ゾーンBは、キャリア基材の容積に対して、g/Lで計算して物質ゾーンAよりもより多くの白金族金属含有量を有しており、かつ物質ゾーンBは、0.5~50μmの直径を有する細孔の割合が20~30%である。
【0009】
物質ゾーンBは、白金族金属として、例えば、白金のみ、パラジウムのみ、又は白金とパラジウムを含有する。白金とパラジウムが好ましく、特に20:1~1:5の重量比、好ましくは10:1~1:3の重量比である。
物質ゾーンBにおいて、白金族金属はキャリア基材の容積に対して特に0.53~2.5g/Lの量、好ましくは0.60~1.4g/Lの量で存在する。
【0010】
物質ゾーンBにおいて0.5~50μmの直径を有する細孔の割合は20~30%である。
本出願の文脈における細孔の割合とは、総容積に対する細孔の容積を意味すると理解される。この場合、例えば、物質ゾーンBにおける細孔の割合20%とは、物質ゾーンBの総容積の20%が0.5~50μmの直径を有する細孔によって形成されていることを意味する。
物質ゾーン又は触媒領域の細孔の割合は、以下の工程を含む方法によって求めることができる:
・被験触媒領域を選択する工程、
・細孔を有機樹脂で充填した被験触媒領域の横断面を作成する工程、
・走査型電子顕微鏡(SEM)によって横断面の画像を作成する工程、
・SEM画像の被験部分領域を選択する工程、
・SEM画像の選択した部分領域を画像解析プログラムによってバイナリイメージに変換する工程、及び
・バイナリイメージを使用して画像解析プログラムによって空隙率分布の計算を実行して、細孔の割合を求める工程。
【0011】
細孔が有機樹脂で充填された触媒領域の横断面を生成するためには、当業者に知られているクロスセクション法を利用することができる。
同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)による横断面の画像の生成は、既知の包括的に説明された方法に従って行われる。具体的な測定条件は重要ではなく、すなわち、それらは最終結果に影響を及ぼさない。この場合、後方散乱一次電子の検出が撮像方法として使用される。これらの後方散乱一次電子は被験物質の平均原子番号に依存した信号強度を提供する。したがって、より重い元素はそれらがより多くの散乱を生じるため明るく見え、一方、より軽量の元素はより暗く見える。このように、得られたSEM画像において、細孔は暗灰色から黒色に見えるが、ウォッシュコート材料はより明るく見える。図1に、このようにして作成された以下の実施例1の触媒のSEM画像を示す。画像では支持体と2つの物質ゾーンA及びBは互いに容易に識別することができる。次の工程では、SEM画像の被験部分領域、又は複数の被験部分領域、例えば物質ゾーンの領域を選択し、画像解析ソフトウェアを使用して閾値法によってバイナリイメージを作成する。本発明の文脈において、画像解析ソフトウェアはMatlab Version2019及び附属の画像処理ツールボックスを使用してプログラミングした。図2図1のSEM画像から画像解析ソフトウェアによって作成したバイナリイメージを示す。画像では、細孔は黒色に見え、ウォッシュコート材料は白色に見える。グレーの領域は、関心のない選択されていない領域である。次いで、形態学的画像処理法によって画像解析ソフトウェアを使用して細孔の割合を計算する。上記のMatlabでプログラミングされた画像解析ソフトウェアの他に、当業者に知られている他のプログラムもまた利用することができ、例えば細孔の解析を行うためのプラグインをプログラミングして必要に応じて適合させることができる例えばImageJプログラムも利用することができる。
【0012】
物質ゾーンBの担体材料は、酸化アルミニウム、ドープされたアルミニウム酸化物、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、又はこれらの材料のうちの少なくとも2つの混合物又は混合酸化物又は複合酸化物である。しかしながら、特には酸化アルミニウムである。
【0013】
物質ゾーンAは、白金族金属として、例えば、白金のみ、パラジウムのみ、又は白金とパラジウムを含有する。白金とパラジウムが好ましく、特に20:1~1:5の重量比、好ましくは15:1~1:1の重量比である。
物質ゾーンAにおいて、白金族金属はキャリア基材の容積に対して特に0.18~1.4g/Lの量、好ましくは0.25~0.7g/Lの量で存在する。
【0014】
物質ゾーンA中の白金族金属は担体材料上に存在する。この目的において当業者によく知られている全ての材料が担体材料と考えられる。特に担体材料は、BET表面積が30~250m/g、好ましくは100~200m/g(DIN66132に従って求められる)であり、好ましくは酸化アルミニウム、ドープされた酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、及びこれらの材料のうちの少なくとも2つの混合物又は混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。
酸化アルミニウム、マグネシウム/アルミニウム混合酸化物、及びアルミニウム/ケイ素混合酸化物が好ましい。
【0015】
更には、例えば1~10wt%、特に3~6wt%の酸化ランタンでドープされた酸化アルミニウムもまた使用することができる。
【0016】
物質ゾーンAの細孔の割合は重要ではない。物質ゾーンAは、好ましくは、0.5~50μmの直径の細孔を10~30%の割合で有する。
【0017】
本発明の酸化触媒において、好ましくは、それぞれキャリア基材の容積に対するg/Lとして、物質ゾーンBの担持量は物質ゾーンAの担持量よりも高い。
【0018】
物質ゾーンBの担持量は好ましくは75~150g/Lである。物質ゾーンAの担持量は好ましくは50~75g/Lである。
【0019】
物質ゾーンA及びBは、異なる様式でキャリア基材上に配置されてもよい。
【0020】
好ましい実施形態では、物質ゾーンAはキャリア基材の全長Lにわたってコーティングされ、かつ物質ゾーンBは、キャリア基材の第1端aから長さLの20~80%、好ましくは30~70%にわたって延在し、物質ゾーンA上に位置する。
【0021】
更に好ましい実施形態では、物質ゾーンAは、キャリア基材の第2端から長さLの40~60%にわたって延在し、かつ物質ゾーンBは、キャリア基材の第1端から長さLの40~60%にわたって延在し、ここで、
L=L+L又は
L<L+L又は
L>L+Lであり
式中、Lは物質ゾーンAの長さであり、Lは物質ゾーンBの長さである。
【0022】
L>L+Lの場合、支持体の一部がコーティングされていないままであることを意味する。特にこの場合、物質ゾーンAとBとの間に少なくとも0.5cmの長さ、すなわち、例えば0.5~1cmの間隙が残る。
【0023】
本発明による触媒は、支持体を含む。これは、特にフロースルー基材であるが、またウォールフローフィルタであってもよい。
ウォールフローフィルタは長さLのチャネルを有する支持体であり、それらはウォールフローフィルタの第1端と第2端の間に平行に延在し、第1端又は第2端のいずれかにおいて交互に閉鎖され、多孔質壁によって分離される。フロースルー基材は、特に長さLのチャネルがその2つの端部において開放されているという点でウォールフローフィルタとは異なる。
未コーティング状態において、ウォールフローフィルタは、例えば、30~80%、具体的には50~75%の多孔率を有する。未コーティング状態において、ウォールフローフィルタの平均細孔サイズは、例えば、5~30マイクロメートルである。
概して、ウォールフローフィルタの細孔は、いわゆる開放細孔であり、すなわち、チャネルへの接続部を有する。更に、細孔は、一般には、互いに相互接続されている。これは、一方では、内側細孔表面の容易なコーティングを可能にし、他方では、ウォールフローフィルタの多孔性壁を通した排ガスの容易な通過を可能にする。
【0024】
ウォールフローフィルタと同様に、フロースルー基材も当業者に既知であり、市販されている。それらは、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコーディエライトからなる。
【0025】
本発明の触媒は、従来のディップコーティング法又は真空吸引コーティング法など当業者によく知られている方法で、ウォッシュコート、すなわちそれぞれの物質ゾーンを形成する成分の水性懸濁液によって製造することができる。続いて熱による後処理(焼成)を行なってもよい。
当業者は、ウォールフローフィルタの場合、コーティングされる材料の平均細孔サイズ及び平均粒径が、ウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔性壁上に存在するように、互いに適合させることができる(オンウォールコーティング)、ことを認識している。コーティングされる材料の平均粒径はまた、当該材料がウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔性壁内に位置するように、すなわち、内側細孔表面がコーティング(インウォールコーティング)されるように、選択できる。この場合、コーティング材料の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔の中へ入り込むように十分に小さくなければならない。
【0026】
本発明の別の実施形態では、不活性材料の波形シートで構成されたキャリア基材が使用される。そのようなキャリア基材は、当業者には「波形基材」として知られている。好適な不活性材料は、例えば、50~250μmの平均繊維径、及び2~30mmの平均繊維長を有する繊維質材料である。好ましくは、繊維質材料は耐熱性であり、二酸化ケイ素、特にガラス繊維からなる。
このようなキャリア基材の製造では、例えば、前述の繊維材料のシートは既知の方法で波形にされ、個々の波形シートは、本体を通って延びるチャネルを有する円筒状のモノリシック構造体の形態にされる。好ましくは、横方向の波形構造を有するモノリシック構造体は、いくつかの波形シートを、層間で異なる向きの波形を有する平行な層として積み重ねることによって形成される。一実施形態では、非波形の(すなわち平坦な)シートを波形シートの間に配置することができる。
波形シートから作製された基材は物質ゾーンA及びBで直接コーティングすることができるが、好ましくは、それらを最初に、不活性材料、例えば二酸化チタンでコーティングして、その後にのみ触媒物質でコーティングする。
【0027】
本発明の触媒は、ディーゼルエンジンの排ガス中の一酸化炭素、炭化水素、及び一酸化窒素の酸化に非常に適している。このプロセスにおいて、今日までに知られている触媒よりもリン化合物による汚染の影響をはるかに受けにくい。
【0028】
本発明はまた、ディーゼルエンジンなどのリーンバーンエンジンで作動するモータービークルの排ガスを浄化する方法に関し、方法は、排ガスを本発明の触媒上に通し、ここで、排ガスが、キャリア基材の第1端aで触媒に入り、第2端bで再び出ることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1の触媒のSEM画像である。
図2図1のSEM画像から画像解析ソフトウェアによって作成したバイナリイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施例1
a)400cpsiのセル密度及び4ミルの壁厚で5.66インチ×4.00インチの寸法を有する市販のコーディエライトの円形フロースルー基材に、5%の酸化ケイ素でドープされた市販の酸化アルミニウム上に担持された12:1の質量比の0.353g/Lの白金とパラジウムを含有するウォッシュコートを、その全長にわたってコーティングした。ウォッシュコートの担持量は60g/Lであった。上記の方法によって求められた細孔の割合(図1及び図2も参照)は15%であった。
b)第2工程では、工程a)で得られた触媒に、一端から開始してその長さの75%わたって、高多孔質酸化アルミニウム上に担持された1:1の質量比の0.79g/Lの白金とパラジウムを含有するウォッシュコートでコーティングした。ウォッシュコートの担持量は110g/Lであった。上記の方法によって求められた、第2工程で塗布された層の細孔(直径0.5~50μmの細孔)の割合(図1及び2も参照)は24%であった。
得た触媒を以下ではK1と称する。
【0031】
実施例2
a)400cpsiのセル密度及び4ミルの壁厚で5.66インチ×4.00インチの寸法を有する市販のコーディエライトの円形フロースルー基材に、5%の酸化ケイ素でドープされた市販の酸化アルミニウム上に担持された12:1の質量比の0.353g/Lの白金とパラジウムを含有するウォッシュコートを、その長さの50%にわたってコーティングした。ウォッシュコートの担持量は60g/Lであった。上記の方法によって求められたた細孔の割合は15%であった。
b)第2工程では、工程a)で得られた触媒に、コーティングされていない端から開始してその長さの50%わたって、高多孔質酸化アルミニウム上に担持された1:1の質量比の1.4g/Lの白金とパラジウムを含有するウォッシュコートでコーティングした。ウォッシュコート担持量は75g/Lであった。上記の方法によって求められた第2工程で塗布された層の細孔(直径0.5~50μmの細孔)の割合は24%であった。
得た触媒を以下ではK2と称する。
【0032】
比較例1
工程b)においてウォッシュコートの担持量が60g/Lのみであったという点を違えて実施例1を繰り返した。
得た触媒を以下ではVK1と称する。
【0033】
比較例2
a)400cpsiのセル密度及び4ミルの壁厚で5.66インチ×4.00インチの寸法を有する市販のコーディエライトの円形フロースルー基材に、5%の酸化ケイ素でドープされた市販の酸化アルミニウム上に担持された3:1の質量比の0.353g/Lの白金とパラジウムを含有するウォッシュコートを、その長さの50%にわたってコーティングした。ウォッシュコートの担持量は100g/Lであった。上記の方法によって求められた細孔(直径0.5~50μmの細孔)の割合は15%であった。
b)第2工程では、工程a)で得られた触媒を、コーティングされていない端から開始してその長さの50%にわたって、高多孔質酸化アルミニウム上に担持された3:1の質量比の1.4g/Lの白金とパラジウムを含有するウォッシュコートでコーティングした。ウォッシュコートの担持量は100g/Lであった。上記の方法によって求められた第2工程で塗布された層の細孔(直径0.5~50μmの細孔)の割合は15%であった。
得た触媒を以下ではVK2と称する。
【0034】
比較試験
a)触媒K1、K2、VK1、及びVK2を、湿度7%、650℃で50時間エージングした。
b)エージングした触媒を、リンを含有しているオイル添加剤を燃料に添加してエンジン試験ベンチで10、20、30、及び40時間劣化させた。オイル添加剤の添加は、1時間当たり0.6g/LのPへの曝露として計算した。
c)工程b)に従ってリンで処理した触媒について、負荷した炭化水素がもはや酸化されず、通り抜ける(THCスリップ)時間を求めた。この目的のために、全ての触媒に同じ量のディーゼルを加えて発熱を生じさせ、プロセスにおけるHCスリップを測定した。575℃の目標温度に達するかどうかも測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
K1は24g/Lの曝露で575℃の目標温度に達する唯一の触媒である。物質ゾーンBのウォッシュコートの担持量がより少ないVK1は、試験において、すでに18g/Lの段階で525℃のみにしか達しない。
【0037】
VK2と比較して、K2はリンに対してより耐性であり、わずか12g/LのPで失われるが、5000ppmのHC通り抜けで540℃に達し、一方、VK2は、8000ppmのHC通り抜けで490℃にしか達しない。
図1
図2
【国際調査報告】