(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】生物由来代替カーボンブラック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 1/02 20060101AFI20230607BHJP
C07G 99/00 20090101ALI20230607BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20230607BHJP
C09C 1/48 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C12P1/02 Z
C07G99/00 Z
C12P1/04 Z
C09C1/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567298
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021031431
(87)【国際公開番号】W WO2021226552
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521195098
【氏名又は名称】リビング・インク・テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャン,アパルナ
(72)【発明者】
【氏名】デイビース,フィオナ
(72)【発明者】
【氏名】フルブライト,スコット
(72)【発明者】
【氏名】アルバース,ステバン
(72)【発明者】
【氏名】キム,カンミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4J037
【Fターム(参考)】
4B064AF01
4B064AG01
4B064AH19
4B064BG10
4B064CA02
4B064CA06
4B064CA08
4B064DA16
4J037AA02
4J037DD06
4J037FF28
(57)【要約】
微生物バイオマスからカーボンブラック顔料を製造するための方法が開示される。ある特定の態様では、方法は、水性溶媒中の複数の微生物細胞による微生物バイオマス溶液を提供すること、第一の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって複数の微生物細胞を核化すること、第二の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって複数の微生物細胞の中及び/又は上に結晶形成を開始させて、複数の結晶外殻被覆微生物細胞を形成することであって、第一の可溶性イオンの電荷は、第二の可溶性イオンの電荷の反対であり、結晶は、第一及び第二のイオンの析出から形成される、形成すること、並びに複数の結晶外殻被覆微生物細胞の熱処理を行って、炭化バイオマスを形成すること、炭化バイオマスを洗浄して微生物炭を形成すること、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物バイオマスからカーボンブラック顔料を製造するための方法であって、
複数の微生物細胞を水性溶媒中に含む微生物バイオマス溶液を提供すること、
第一の可溶性イオンを前記微生物バイオマス溶液に添加することによって、前記複数の微生物細胞を核化すること、
第二の可溶性イオンを前記微生物バイオマス溶液に添加することによって、前記複数の微生物細胞の中及び/又は上に結晶形成を開始させて、複数の結晶外殻被覆微生物細胞を形成することであって、前記第一の可溶性イオンの電荷は、前記第二の可溶性イオンの電荷の反対であり、前記結晶は、前記第一及び第二のイオンの析出から形成される、形成すること、及び
前記複数の結晶外殻被覆微生物細胞の熱処理を行って、炭化バイオマスを形成すること、
前記炭化バイオマスを洗浄して、微生物炭を形成すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第一のイオンが、アニオンであり、前記第二のイオンが、カチオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のイオンが、カチオンであり、前記第二のイオンが、アニオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カチオンが、カルシウムであり、前記アニオンが、リン酸イオンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のイオン及び第二のイオンが、化学量論比で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記核化する工程が、前記第一のイオンを複数の微生物細胞と共に、約5分間から約2時間の継続時間にわたってインキュベートすることによる核形成インキュベーションを行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記インキュベーション工程が、前記微生物バイオマス溶液を約32℃~約65℃の温度まで加熱することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インキュベーション工程が、前記微生物バイオマス溶液を撹拌することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記撹拌工程が、前記微生物バイオマス溶液を約2000RPMで約2分間にわたってせん断混合することによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶形成工程が、前記核化された微生物バイオマス溶液を前記第ニのイオンと共に、約5分間から約2時間の継続時間にわたってインキュベートすることによる結晶化インキュベーションをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の結晶外殻被覆微生物が、細胞表面の結晶形成を有する及び/又は前記複数の結晶外殻被覆微生物が、細胞内の結晶形成を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物バイオマスが、複数の原核細胞を含み、前記原核細胞の平均細胞サイズは、約50μm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物バイオマスが、前記熱処理工程の前に、約30℃~約300℃の温度で乾燥され、前記微生物バイオマスが、水分含有量が約15%未満まで減少されるまで乾燥される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記熱処理工程が、前記炭化バイオマスが約20%~約70%の固定炭素を含むまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記熱処理工程が、酸素濃度が約10~15%となるまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化バイオマスの前記洗浄が、酸洗浄であり、前記酸洗浄は、約1分間~約1時間の時間長さにわたって前記炭化バイオマスのpHを約2未満に低下させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記酸洗浄に続いて、前記炭化バイオマスを水で洗浄することをさらに含み、前記酸洗浄及び続いての水洗浄が、多孔性微生物炭を生成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物炭の前記洗浄に続いて、粉砕工程をさらに含み、前記粉砕工程は、前記粉末化微生物炭の平均粒子サイズ径が約10ミクロン未満となるまで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
製造された前記カーボンブラック顔料が、結晶形成を行わない同等の熱処理による微生物バイオマスと比較して、増加した流動性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
製造された前記カーボンブラック顔料が、結晶形成を行わない同等の熱処理による微生物バイオマスと比較して、増加した多孔度を有する、及び/又は製造された前記カーボンブラック顔料が、結晶形成を行わない同等の熱処理による微生物バイオマスと比較して、増加した黒色度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
微生物バイオマスから設計されたカーボンブラック顔料を製造するための方法であって、
複数の結晶外殻被覆微生物細胞を含む前記微生物バイオマスの熱処理を行って、炭化バイオマスを形成すること、及び
前記炭化バイオマスの洗浄が、酸洗浄であること、
を含み、前記洗浄工程は、前記炭化バイオマスのpHを、約1分間~約1時間の時間長さにわたって約2未満まで低下させて、微生物炭を形成することを含む、方法。
【請求項22】
微生物バイオマス由来の、約0.01ミクロン~約100ミクロンの粒子サイズを有する炭化バイオマスを含む、設計されたカーボンブラック顔料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全内容が参照により本明細書に援用される2020年5月7日に出願された「Biologically-derived carbon black alternative and method of making the same」と題する米国仮特許出願第63/021,494号の優先権を、米国特許法第119条(e)の下で主張するものである。
開示される技術は、微生物バイオマスからの顔料及び着色剤の製造全般に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料及び着色剤は、年間300億ドル以上の産業である。しかし、これらの組成物の製造は、ヒトの健康及び環境に対して有害であり得る毒性のバイオプロダクトの生成を伴うものである。無毒性のバイオマスから顔料を作り出すこれまでの試みは、ほとんどの工業的用途に適するように充分に小さい粒子サイズを製造する能力という点で制限されてきた。したがって、持続可能な資源から工業的要求に適する顔料/着色剤を製造する方法が、本技術分野において求められている。
【発明の概要】
【0003】
微生物バイオマスからカーボンブラック顔料を製造するための方法が開示される。ある特定の態様では、方法は、水性溶媒中の複数の微生物細胞による微生物バイオマス溶液を提供すること、第一の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって、複数の微生物細胞を核化すること、第二の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって、複数の微生物細胞の中及び/又は上に結晶形成を開始させて、複数の結晶外殻被覆微生物細胞(crystal encrusted microbial cells)を形成することであって、第一の可溶性イオンの電荷は、第二の可溶性イオンの電荷の反対であり、結晶は、第一及び第二のイオンの析出から形成される、形成すること、並びに複数の結晶外殻被覆微生物細胞の熱処理を行って、炭化バイオマスを形成すること、炭化バイオマスを洗浄して微生物炭(microbechar)を形成すること、を含む。
【0004】
ある特定の実施形態では、第一のイオンは、アニオンであり、第二のイオンは、カチオンである。さらなる実施形態では、第一のイオンは、カチオンであり、第二のイオンは、アニオンである。これらの実施形態の例示的な実行では、カチオンは、カルシウムであり、アニオンは、リン酸イオンである。ある特定の実施形態によると、第一のイオン及び第二のイオンは、化学量論比で存在する。
【0005】
ある特定の態様では、核化する工程は、第一のイオンを複数の微生物細胞と共に、約5分間から約2時間の継続時間にわたってインキュベートすることによる核形成インキュベーションを行うことを含み得る。インキュベーション工程は、微生物バイオマス溶液を約32℃~約65℃の温度まで加熱することをさらに含み得る。インキュベーション工程は、微生物バイオマス溶液を撹拌することをさらに含み得る。ある特定の実施形態では、撹拌工程は、微生物バイオマス溶液を約2000rpmで約2分間にわたってせん断混合することによって行われる。
【0006】
ある特定の実施形態では、結晶形成工程は、結晶化インキュベーションをさらに含み得る。ある特定の実行では、この工程は、微生物バイオマス溶液を約5分間~約2時間の継続時間にわたってインキュベートすることによって行われる。ある特定の実行では、結晶形成工程は、細胞表面結晶形成及び/又は細胞内結晶形成を伴う複数の結晶外殻被覆微生物の形成をもたらす結果となる。
【0007】
ある特定の実施形態では、微生物バイオマスは、複数の原核細胞を含み、原核細胞の平均細胞サイズは、約50μm未満である。
ある特定の実施形態では、微生物バイオマスは、熱処理工程の前に、約30℃~約300℃の温度で乾燥され、微生物バイオマスは、水分含有量が約15%未満まで減少されるまで乾燥される。ある特定の実行では、熱処理工程は、炭化バイオマスが約20%~約70%の固定炭素量を有するまで行われる。さらなる実行では、熱処理工程は、酸素濃度が約10~15%となるまで行われる。
【0008】
ある特定の実施形態では、炭化バイオマスの洗浄は、酸洗浄である。例示的な実行では、酸洗浄は、約2未満のpHを有する溶液中で炭化バイオマスを洗浄することによって行われる。ある特定の実行では、この洗浄は、約1分間~約1時間の時間長さにわたって行われる。例示的な実施形態では、酸洗浄及び続いての水洗浄によって、多孔性微生物炭が生成する。
【0009】
ある特定の実施形態によると、酸洗浄工程に続いて粉砕工程が微生物炭に対して行われて、粉末化微生物炭が形成される。ある特定の実行では、粉砕工程は、粉末化微生物炭の平均粒子サイズ径が約10μm未満となるまで行われる。
【0010】
ある特定の態様では、本開示の方法によって製造されたカーボンブラック顔料は、結晶形成工程による処理なしでの同等の熱処理による微生物バイオマスと比較して、増加した流動性を有する。さらに、製造されたカーボンブラック顔料は、結晶形成工程による処理なしでの同等の熱処理による微生物バイオマスと比較して、増加した多孔度を有する。さらなる実施形態では、製造されたカーボンブラック顔料は、結晶形成工程による処理なしでの同等の熱処理による微生物バイオマスと比較して、増加した黒色度を有する。
【0011】
さらなる態様では、微生物バイオマスから設計されたカーボンブラック顔料を製造するための方法が開示される。この方法はまた、複数の結晶外殻被覆微生物細胞を含み得る微生物バイオマスの熱処理を行って、炭化バイオマスを形成すること、及び炭化バイオマスの洗浄が酸洗浄であること、を含み、洗浄工程は、炭化バイオマスのpHを、約1分間から約1時間の時間長さにわたって約2未満まで低下させて、微生物炭を形成することを含み得る。
【0012】
さらなる態様では、設計されたカーボンブラック顔料が、微生物バイオマス由来の、約0.01ミクロン~約100ミクロンの粒子サイズを有する炭化バイオマスを含み得ることが開示される。
【0013】
複数の実施形態が開示されるが、当業者であれば、開示される装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示し記載する以下の詳細な記述から、本開示のなお他の実施形態が明らかとなるであろう。認識されるように、開示される装置、システム、及び方法は、すべて本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な明白な態様での改変が可能である。したがって、図面及び詳細な記述は、限定するものとしてではなく、本質的に例示するものとして見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1Aは、1つの実施形態に従う、炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理された炭化スピルリナ属(Spriulina)バイオマス(アルスロスピラ属(Arthrospira))の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図1Bは、1つの実施形態に従う、炭化の前にすべての塩が洗浄除去された炭化スピルリナ属バイオマス(アルスロスピラ属)のSEM画像である。
図1Cは、1つの実施形態に従う、洗浄された塩未添加のバイオマスが炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で再度処理された場合の炭化スピルリナ属バイオマス(アルスロスピラ属)のSEM画像である。
【
図2】
図2Aは、1つの実施形態に従う、純粋な未処理の炭化スピルリナ属バイオマス(アルスロスピラ属)の画像である。
図2Bは、1つの実施形態に従う、炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理された純粋未処理炭化スピルリナ属バイオマス(アルスロスピラ属)のSEM画像である。
【
図3】
図3Aは、1つの実施形態に従う、未処理炭化酵母菌(サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、又は他の酵母菌属)バイオマスのSEM画像である。
図3Bは、1つの実施形態に従う、炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理された炭化サッカロマイセス属/カンジダ属/又は他の酵母菌属)バイオマスのSEM画像である。
【
図4】表1は、例4の結果の概要を示す。
図4Aは、1つの実施形態に従う、炭化の前にすべての塩が洗浄除去された炭化スピルリナ属バイオマスを示す。
図4Bは、1つの実施形態に従う、炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理された炭化スピルリナ属バイオマスを示す。
【
図5】
図5Aは、1つの実施形態に従う、炭化の前にすべての塩が洗浄除去された純粋未処理炭化酵母菌バイオマスを示す。
図5Bは、1つの実施形態に従う、炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理された炭化酵母菌バイオマスを示す。
【
図6-1】表2~表4は、炭化前にバイオマスに塩を添加し、炭化後に酸洗浄することで、黒色度値が大きく増加することを示す。
【
図6-2】
図6Aは、1つの実施形態に従う、炭化の前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理された炭化バイオマスの顕微鏡画像である。
図6Bは、1つの実施形態に従う、炭化後酸洗浄によって塩が除去された、塩を添加した炭化バイオマスの顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、範囲は、「約」1つの特定の値、から、及び/又は「約」別の特定の値、まで、として表され得る。そのような範囲が表される場合、さらなる態様は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似として表される場合、特定の値がさらなる態様を形成することは理解される。さらに、各範囲の終点が、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、これらの両方で意味を持つことは理解される。また、本明細書において数多くの値が開示され、その各値が、その値自体に加えて、「約」その特定の値、としても本明細書において開示されることも理解される。例えば、「10」の値が開示される場合、「約10」も開示される。また、2つの特定の単位の間にある各単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0016】
本明細書及び最後にある請求項における、組成物中の特定の要素又は成分の重量部の言及は、その要素又は成分と、重量部が表されている組成物又は物品中の他のいずれかの要素又は成分との間の重量の関係を示すものである。したがって、2重量部の成分X及び5重量部の成分Yを含有する配合物の場合、X及びYは、2:5の重量比で存在し、配合物中に追加の成分が含有されているかどうかにかかわらず、その比で存在する。
【0017】
成分の重量パーセント(重量%)は、特にそうでないことが記載されていない限り、その成分が含まれている製剤又は組成物の総重量に基づいている。
本明細書で用いられる場合、「所望に応じた」又は「所望に応じて」の用語は、続いて記載されるイベント又は状況が、発生しても又は発生しなくてもよいこと、並びにその記載が、前記イベント又は状況が発生する場合及びそれが発生しない場合を含むことを意味している。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「微生物炭」の用語は、本発明で開示される方法に従って製造された熱処理後の炭化バイオマスを意味する。微生物炭は、さらなる改質を行うことなく、カーボンブラック顔料として機能することができる。意図する目的に応じて、微生物炭は、機械的(例:粉末化)又は化学的(例:酸/塩基洗浄)手段によってさらに処理されてもよい。微生物炭を改質/処理する方法は、あらゆる点で参照により本明細書に援用される米国特許出願第16/677,644号(米国特許出願公開第2020-014069号)に開示されている。
【0019】
微生物バイオマスから、微生物バイオマスを熱処理することによって、設計されたカーボンブラック顔料を製造するための方法が本明細書において開示され、微生物バイオマスは、複数の結晶外殻被覆微生物細胞を含む。熱処理の結果、炭化バイオマスが形成される。ある特定の実行では、方法は、炭化バイオマスを約0.01ミクロン~約100ミクロンの粒子サイズに粉砕して、粉末化微生物炭を形成することをさらに含む。
【0020】
ある特定の態様では、開示される方法は、微生物バイオマスからカーボンブラック顔料を製造する方法であり、水性溶媒中に複数の微生物細胞を含む微生物バイオマス溶液を提供すること、第一の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって複数の微生物細胞を核化すること、第二の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって複数の微生物細胞の中及び/又は上に結晶形成を開始させて、複数の結晶外殻被覆微生物細胞を形成することであって、第一の可溶性イオンの電荷は、第二の可溶性イオンの電荷の反対である、形成すること、複数の結晶外殻被覆微生物細胞の熱処理を行って、炭化バイオマスを形成すること、炭化バイオマスを洗浄すること、並びに炭化バイオマスを約0.01ミクロン~約100ミクロンの粒子サイズに粉砕して、粉末化微生物炭を形成すること、を含む。
【0021】
微生物バイオマス
生物学的物質は、主として炭水化物、タンパク質、及び脂質を含む。これらの分子は、500~600℃で熱分解に掛けられると、複雑な解重合及び脱水反応を起こし、続いて様々な開裂、脱離、及び縮合反応を起こして、非凝縮性揮発性物質、凝縮性蒸気(冷却後には液体タール)、及び固体残渣としての炭素質の炭(char)を生成する。
【0022】
炭水化物は、炭素、水素、及び酸素から成る分子である。細胞内では、炭水化物は、通常、セルロース及びヘミセルロース(木質植物)、デンプン(植物及び藻類)、並びにグリコーゲン(藍藻類、真菌、細菌)などの長鎖多糖類として貯蔵される。グリコーゲンは、スピルリナ属などの藍藻類における炭水化物の主たる貯蔵形態である。それは、大きく、広く分岐したグルコースの多糖であり、デンプンに類似の構造を有するが、分岐度はより高い。グリコーゲンを高温(500℃超)で熱分解すると、デンプンから得られるものに類似の生成物が発生する。これらの生成物としては、水、一酸化炭素、エタン、ホルムアルデヒド、ケテン、プロペン、二酸化炭素、アセトアルデヒド、ギ酸、アクロレイン、ヒドロキシアセトアルデヒド、ピルブアルデヒド、ヒドロキシプロパン、2-フルアルデヒド、フルフリルアルコール、5-メチル-2-フルアルデヒド、レボグルコセノム(levoglucosenome)、5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒド、及びレボグルコサンが挙げられる。これらの生成物の多くは、揮発性物質として失われるが、固体残渣の炭素質の炭を形成するものもある。
【0023】
グリコーゲンなどの多糖類は、加水分解反応によって、そのより小さい単糖の構成要素に分解され得る。グリコーゲン加水分解の1つの方法は、熱及び希酸を適用してグリコーゲンの分岐からグルコース単位を加水分解することを含む。この反応は、100℃で容易に発生する。グルコースなどの単糖単位は、160℃に加熱されると、カラメル化と称するプロセスを起こし、その時点で結晶糖が溶融して透明の溶融糖となる。温度が165℃まで上昇した場合、溶融糖は注ぐことが可能となるが、冷却すると、硬いガラス状の脆い状態となる。さらに210℃まで加熱した場合、冷却すると、より軟質で粘着性のテクスチャとなる。グルコースが500℃まで熱分解されると、主生成物は、(1)低分子量化合物、(2)フラン/ピラン環誘導体、及び(3)無水糖、の3つの主要な種類に分類することができる。高い単糖/単純糖含有量を有する生物学的物質は、500℃までの熱分解加熱プロセスの過程で溶融特性を、及び粘着性物質中の揮発性物質の放出に起因するバイオマスのマッシュルーム効果(mushrooming effect)を示し得る。
【0024】
タンパク質は、ペプチド結合で連結されたアミノ酸のポリマー鎖であり、40℃という低い温度において、熱変性を非常に受け易い。変性のプロセスは、タンパク質分子内の弱い結合を開裂して構造の変化を引き起こすことを含む。それに続いて、タンパク質が固体又は粘稠液体として「固化」する変性タンパク質の凝固が多くの場合発生し、それは、冷却されると不可逆的であるプロセスである。熱分解の極端な温度にさらされると、タンパク質は、脱炭酸、脱アミノ化、炭化水素残基の開裂、二量体化、及びペプチド結合の開裂の経路による熱分解を起こして、アミド/アミン/ニトリル、エステル、炭化水素、及びN-ヘテロ環化合物、特にジケトピペラジン(DKP)を形成する。
【0025】
脂質も、熱分解を起こし易い。水分の存在下で加熱されると、脂質のエステル結合が加水分解されて、遊離脂肪酸を放出する。熱分解の過程で、脂質は、脱水、脱炭酸、エステル結合の加水分解、二重結合の共役、重合、脱水素環化、芳香族化、脱水素、及び炭素-炭素開裂による分解を含む経路によって熱分解する。
【0026】
ある特定の実施形態によると、開示される方法のための微生物バイオマスは、数多くの微生物源から誘導され得る。ある特定の実行では、微生物バイオマスは、複数の微生物細胞を含む。ある特定の実施形態では、これらの細胞(又は細胞の群)は、約10ナノメートル~約300マイクロメートルの平均サイズを有する。出発物質は、以下の特性のうちの1つ以上を有し得る:単細胞生物、群体生物、多細胞生物、若しくは糸状生物に由来する細胞、未処理細胞、球状の形状を呈する細胞若しくは細胞物質、熱処理の前にある特定の細胞成分が除去された細胞、及び/又は溶液中の細胞若しくは溶液から取り出されたものであってよい細胞。
【0027】
微生物バイオマスを成す複数の細胞は、化学的栄養、従属栄養、又は独立栄養によってエネルギーを獲得することができる。ある特定の実施形態では、微生物は、真核生物である。別の選択肢としての実施形態では、微生物は、原核生物である。ある特定のさらなる実施形態では、微生物バイオマスを成す複数の微生物細胞は、天然の水域に見られるものなどの前述の微生物のいずれかの混合物である。
【0028】
様々な実行は、コロニー形成タイプの細菌、藻類、及び藍藻類を用いる。様々な実行では、微生物バイオマスの複数の細胞は、300ミクロン未満の凝集物の径である。本開示の1つの態様は、顔料部分が約0.01~300ミクロンである実行に関する。このサイズが、濃い色を得ることができるように、許容される密度まで分散する顔料粒子の量を増加させることを可能とすることは理解される。様々な実行では、0.01~300ミクロンのサイズは、いくつかの方法で実現することができる。ある特定の実行では、サイズは、適切なサイズの生物細胞を増殖させることによって実現することができる。別の選択肢としての実行では、サイズは、細胞又は細胞凝集物を適正なサイズ(0.01~300ミクロン)まで粉砕することによって実現することができる。なお別の実行では、0.01~300ミクロン径の細胞、さらには細胞又は凝集物の粉砕の両方が用いられてもよい。
【0029】
ある特定の実行によると、微生物バイオマスは、複数の微生物細胞を含む。開示される微生物の方法に適する微生物細胞としては、微細藻類、藻類、大型藻類、藍藻類、真菌、及び細菌を含む従属栄養、独立栄養、混合栄養、又は好極限性微生物が挙げられる。ある特定の実行では、複数の細胞は、前述の細胞の混合物である。ある特定の実施形態によると、複数の微生物細胞を含む微生物は、以下から選択される1又は複数である:シネコシスティス属(Synechocystis)PCC 6803、シネココッカス属(Synechococcus)PCC 6717、シネココッカス属PCC 6301、シネココッカス属IU 625、シネココッカス属PCC 6312 シネココッカスエロンガツス(Synechococcus elongatus)PCC 7942、ノストック属種(Nostoc sp.)、シネココッカス属6911、シネココッカスレオポリエンシス(Synechococcus leopoliensis)、プランクトラックスルベセンス(plankthorax rubescens)、シネココッカス属PCC 7002、アルソスピラプラテンシス(Arthospira platensis)PCC 7345、ヘマトコッカスプルバイリス(Haematococcus pluvailis)、ナビクラペリクロサ(Navicula pelliculosa)、クリプトモナスエロサ(Cryptomonas erosa)、ロドモナスミヌタ(Rhodomonas minuta)、ポルフィリジウムプルプレウム(Porphyridium purpureum)、フェオダクチルムトリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)、ナンノクロロプシス属種(Nannochloropsis sp.)、シネコシスティス属種、シネココッカス属種、ノストック属種、プランクトラックス属種、アルソスピラ属種、ヘマトコッカス属種、ナビクラ属種、クリプトモナス属種、ロドモナス属種、ポルフィリジウム属種、フェオダクチルム属種、ナンノクロロプシス属種、ボルボックス属種(Volvox sp.)、アナベナ属種(Anabena sp.)、クロレラ属種(Chlorella sp.)、ユーグレナ属種(Euglena sp.)、アクナンテス属種(Achnantes sp.)、ボツリオコッカス属種(Botryococcus sp.)、キートケロス属種(Chaetoceros sp.)、クロオコックス属種(Chroococcus sp.)、コスマリウム属種(Cosmarium sp.)、ミクロシスチス属種(Microcystis sp.)、ミクロスポラ属種(Microspora sp.)、ペジアストルム属種(Pediastrum sp.)、セネデスムス属種(Scenedesmus sp.)、スピロギラ属種(Spirogyra sp.)、スピルリナ属種(Spirulina sp.)、ジグネマ属種(Zygnema sp.)、クロロビウム属種(Chlorobium sp.)、エスシェリシア属種(Escherichia sp.)、スピリルム属種(Spirillum sp.)、クロモバクテリウム属種(Chromobacterium sp.)、ジャンシノバクテリウム属種(Janthinobacterium sp.)、ストレプトマイセス属種(Streptomyces sp.)、キサントモナス属種(Xanthomonas sp.)、サルシナ属種(Sarcina sp.)、セラチア属種(Serratia sp.)、リゾビウム属種(Rhizobium sp.)、プレボテラ属種(Prevotela sp.)、アクチノマイセス属種(Actinomyces sp.)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus sp.)、プロテウス属種(Proteus sp.)、ミクロコッカス属種(Micrococus sp.)、ルガモナス属種(Rugamonas sp.)、シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)、ヘリコバクター属種(Helicobacter sp.)、サッカロマイセス属種(Saccharomyces sp.)、カンジダ属種(Candida sp.)、ロイコスポリジウム属種(Leucosporidium sp.)、ロドトルラ属種(Rhodotorula sp.)、シゾサッカロマイセス属種(Schizosaccharomyces sp.)、デッケル属種(Dekker sp.)、ブレッタノマイセス属種(Brettanomyces sp.)、シネコシスティス属種、シネココッカス属種、ノストック属種、プランクトラックス属種、アルソスピラ属種、ヘマトコッカス属種、ナビクラ属種、クリプトモナス属種、ロドモナス属種、ポルフィリジウム属種、フェオダクチルム属種、ナンノクロロプシス属種、ボルボックス属種、アナベナ属種、クロレラ属種、ユーグレナ属種、アクナンテス属種、ボツリオコッカス属種、キートケロス属種、クロオコックス属種、コスマリウム属種、ミクロシスチス属種、ミクロスポラ属種、ペジアストルム属種、セネデスムス属種、スピロギラ属種、スピルリナ属種、ジグネマ属種、クロロビウム属種、エスシェリシア属種、スピリルム属種、クロモバクテリウム属種、ジャンシノバクテリウム属種、ストレプトマイセス属種、キサントモナス属種、サルシナ属種、セラチア属種、リゾビウム属種、プレボテラ属種、アクチノマイセス属種、スタフィロコッカス属種、プロテウス属種、ミクロコッカス属種、ルガモナス属種、シュードモナス属種、ヘリコバクター属種、サッカロマイセス属種、カンジダ属種、ロイコスポリジウム属種、ロドトルラ属種、シゾサッカロマイセス属種、デッケル属種、及びブレッタノマイセス属種。当業者であれば、他の微生物も可能であることは理解される。
【0030】
ある特定の実施形態によると、未処理微生物細胞の各々の径は、約300ミクロン未満である。これらの実施形態のある特定の実行によると、微生物は、ヘマトコッカス、ユーグレナ、及び/又はオドンテラ属種である。
【0031】
さらなる実行によると、未処理微生物細胞の各々の径は、約10ミクロン未満である。これらの実施形態のある特定の実行によると、微生物は、以下のうちの1又は複数であってよい:プランクトラックス属種、アルソスピラ属種、シネコシスティス属種、シネココッカス属種、ノストック属種、プランクトラックス属種、アルソスピラ属種、ヘマトコッカス属種、ナビクラ属種、クリプトモナス属種、ロドモナス属種、ポルフィリジウム属種、フェオダクチルム属種、ナンノクロロプシス属種、アクナンテス属種、ボツリオコッカス属種、キートケロス属種、クロオコックス属種、コスマリウム属種、ミクロシスチス属種、ミクロスポラ属種、ペジアストルム属種、セネデスムス属種、スピロギラ属種、スピルリナ属種、ジグネマ属種、クロロビウム属種、エスシェリシア属種、スピリルム属種、クロモバクテリウム属種、ジャンシノバクテリウム属種、ストレプトマイセス属種、キサントモナス属種、サルシナ属種、セラチア属種、リゾビウム属種、プレボテラ属種、アクチノマイセス属種、スタフィロコッカス属種、プロテウス属種、ミクロコッカス属種、ルガモナス属種、シュードモナス属種、ヘリコバクター属種、サッカロマイセス属種、カンジダ属種、ロイコスポリジウム属種、ロドトルラ属種、シゾサッカロマイセス属種、デッケル属種、ブレッタノマイセス属種、ラクトバチルス属種(Lactobacillus sp.)、パイロコッカス属種(Pyrococcus sp.)、コリネバクテリウム属種(Corynebacterium sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、バチルス属種(Bacillus sp.)、ストレプトコッカス属種(Streptococcus sp.)、アセトバクター属種(Acetobacter sp.)、クロストリジウム属種(Clostridium sp.)、トリコデルマ属種(Trichoderma sp.)、ペニシリウム属種(Penicillium sp.)、プロクロロコッカス属種(Prochlorococcus sp.)、アナベナ属種、クロレラ属種、サーモシネココッカス属種(Thermosynechococcus sp.)、クラミドモナス属種(Chlamydomonas sp.)、グロエオカプサ属種(Gloeocapsa sp.)、アナバエノプシス属種(Anabaenopsis sp.)、カロトリクス属種(Calothrix sp.)、オシラトリア属種(Oscillatoria sp.)、グロエバクター属種(Gloebacter sp.)、シアニディオシゾン属種(Cyanidioschyzon sp.)、クリプテコジニウム属種(Crypthecodinium sp.)、及び/又はガルディエリア属種(Galdieria sp.)。
【0032】
ある特定の実施形態では、微生物バイオマスを成す複数の微生物細胞は、未処理の全細胞微生物を含む。別の選択肢としての実施形態では、微生物バイオマスは、破壊された微生物細胞(例:細胞壁及び/又は細胞膜の完全性が破壊された)を含む。これらの実施形態のある特定の態様では、微生物バイオマスは、破壊された微生物細胞成分を含む。これらの実施形態のある特定の実行によると、1又は複数の微生物成分が、微生物バイオマスから除去される。例示的な実行では、脂質、アミノ酸、炭水化物、ミネラル、及び/又は着色剤分子が、微生物バイオマスから除去される。
【0033】
ある特定の実行では、細胞は、バイオマス全体から抽出された細胞成分を有し得る。例示的な実施形態では、これらの細胞成分は、炭水化物、タンパク質、脂肪、ミネラル、核酸物質、及び/又は前述のいずれかの組み合わせのうちの1又は複数である。
【0034】
ある特定の実行では、微生物バイオマスを構成する複数の微生物細胞は、熱処理の前に、ある特定の細胞成分を除去するために処理される。例示的な処理としては、限定されるものではないが、塩の添加/除去、冷浸漬、超音波処理、高圧ホモジナイゼーション、凍結解凍、酸抽出、塩基抽出、有機抽出、無機抽出、リゾチーム抽出、機械的抽出、膜ろ過、及び/又は高圧抽出が挙げられる。
【0035】
ある特定の実施形態では、微生物バイオマスは、微生物バイオマス溶液中での処理のために調製される。例示的な実行では、微生物バイオマスは、水性溶媒に溶解されて、微生物バイオマス溶液が作製される。ある特定の実施形態では、水性溶媒は、水である。
【0036】
核形成及び結晶形成
ある特定の態様では、開示される方法は、微生物バイオマスを成す複数の微生物細胞の細胞表面上及び/又は細胞内空間中に結晶を形成させる工程を含む。ある特定の実施形態では、細胞結晶形成を引き起こす工程は、2つの工程、核形成工程及び結晶形成工程、を含む。例示的な実行では、核形成工程は、第一の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって行われ、結晶化工程は、第二の可溶性イオンを微生物バイオマス溶液に添加することによって行われ、第一の可溶性イオンの電荷は、第二の可溶性イオンの電荷の反対である(例:第一のイオンの電荷が正である場合、第二のイオンの電荷は正であり、第一のイオンの電荷が負である場合、第二のイオンの電荷は正である)。第一及び第二のイオンは、結合して、細胞表面上及び/又は細胞空隙中に不溶性結晶を形成する。
【0037】
ある特定の実施形態では、第一のイオンは、アニオンであり、第二のイオンは、カチオンである。ある特定の別の選択肢としての実施形態では、第一のイオンは、カチオンであり、第二のイオンは、アニオンである。例示的な実施形態では、第一及び第二のイオンは、第一及び第二のイオンの溶液それぞれの添加によって、微生物バイオマス溶液に順に添加される。そのような第一及び第二のイオンの溶液は、イオンの可溶性塩を水性溶媒(例:水)に溶解することによって調製することができる。例示的な実行では、第二のイオンの溶液を微生物バイオマスに添加すると、第一及び第二のイオンは、析出して、細胞の中/上に結晶化し、一方第一及び第二のイオンの対イオンは、高い可溶性のままで溶解した状態に維持される。これらの実施形態のある特定の例示的な実行では、カチオンは、カルシウムであり、アニオンは、リン酸イオンである。カルシウム溶液及びリン酸イオン溶液は、(ある特定の実施形態によると)塩化カルシウム及びリン酸ナトリウムをそれぞれ水に溶解することによって調製される。第二のイオンの溶液を添加すると、カルシウムとリン酸イオンは、細胞の中/上に結晶を形成し、一方ナトリウムイオン及び塩化物イオンは、溶液中に溶解されている。
【0038】
さらなる実施形態では、第一及び第二のイオンは、微生物バイオマス溶液の溶媒中で析出/結晶化するいかなるイオン対であってもよい。例示的なイオン対を表1に示すが、これらは限定するものとして解釈されるべきではない。列A及びBのイオンが、各々、ある特定の実施形態に従って、第一のイオン又は第二のイオンのいずれであってもよいことは理解されたい。
【0039】
【0040】
ある特定の実施形態によると、第一のイオン及び第二のイオンは、化学量論比で存在する。さらなる実施形態では、第一及び第二のイオンは、約2:1~約1:2の比で存在する。
【0041】
いくつかの実施形態では、アニオンとカチオンとの所与の組み合わせが、いずれかの順番で順に添加されてよいが、ある特定の実施形態では、一方が他方の前に添加される必要がある。例えば、塩化カルシウム及びリン酸ナトリウムの場合、ある特定の実施形態では、順番は重要である。独立して、これらのイオンは、水溶液中で非常に可溶性である。これらのイオンを含有する2つの混合物の添加によって、不溶性のリン酸カルシウムと高可溶性の塩化ナトリウムが生成される。カルシウムイオンとリン酸イオンの選択は重要であり、なぜなら、微生物細胞表面は、細胞外カルシウムイオンの受動拡散を可能とする一方で、リン酸イオンは、ほとんどの生細胞中に極めて広く存在するからである。塩化カルシウム溶液中での微生物バイオマスの膨潤は、微生物細胞表面が負電荷となる傾向にあり、それが正のカルシウムイオンを、細胞膜中及びさらには細胞の内部空間へ誘引することから、有益である。これによって、細胞中におけるカルシウムイオンの高い濃度が可能となり、それが、リン酸ナトリウム溶液を添加したときの高い結晶化度に繋がる。しかし、リン酸ナトリウム溶液中での藻類の膨潤を試みた場合、リン酸イオンは、膜から拒絶され、細胞外の溶液中に留まる。塩化カルシウムを添加すると、析出物のほとんどは、細胞外で形成される。
【0042】
本明細書において核化する工程とも称される核形成工程に戻ると、第一のイオンを微生物バイオマス溶液に添加することにより、第一のイオンを細胞表面上及び細胞内の部位に結合させることができ、さらなる結晶成長のための核形成部位が得られる。ある特定の実施形態では、核化する工程は、第一のイオンを複数の微生物細胞と共に、約1分間から約24時間の継続時間にわたってインキュベートすることによる核形成インキュベーションを行うことをさらに含む。さらなる実行では、インキュベーションは、約5分間~約2時間の継続時間にわたる。なおさらなる実行では、インキュベーション工程は、約1時間である。
【0043】
ある特定の実施形態では、インキュベーション工程は、微生物バイオマス溶液を約32℃~約65℃の温度まで加熱することをさらに含む。
なおさらなる実施形態では、核形成工程は、第一のイオンの細胞中への浸透を増加させる目的で、撹拌工程を行うことをさらに含む。ある特定の実行では、撹拌工程は、微生物バイオマス溶液を約2000RPMで約2分間にわたってせん断混合することによって行われる。別の選択肢としての実行では、撹拌工程は、超音波処理によって行われる。
【0044】
続いて結晶形成工程を考えると、核化する工程に続いて、第二のイオンが微生物バイオマス溶液に添加され、析出物/結晶形成が、細胞の上/中にある核形成部位で進行する。そのような結晶の形成は、複数の結晶外殻被覆微生物をもたらす。ある特定の実施形態では、結晶形成工程は、微生物バイオマス溶液を、約1分間から約24時間の継続時間にわたってインキュベートすることによる結晶化インキュベーションを行うことをさらに含む。さらなる実行では、結晶化インキュベーションは、約5分間~約2時間の継続時間にわたる。なおさらなる実行では、インキュベーション工程は、約1時間である。ある特定の実行では、結晶化インキュベーションは、約25℃である。
【0045】
ある特定の実施形態では、複数の結晶外殻被覆微生物は、細胞表面の結晶形成を有する。さらなる実施形態では、複数の結晶外殻被覆微生物は、細胞内の結晶形成を有する。さらなる実施形態では、複数の結晶外殻被覆微生物は、細胞表面及び細胞内の両方の結晶形成を有する。
【0046】
ある特定の別の選択肢としての実施形態によると、制御された方法で結晶を成長させるための別の方法は、過飽和及びゆっくりとした冷却である(溶液の冷却)。ほとんどの化合物の溶解度は、温度の上昇と共に増加する。例えば、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)の場合:5.4g/100mL(0℃);12g/100mL(20℃);14.5g/100mL(25℃);23.3g/100mL(40℃);94.6g/100mL(100℃)である。94.6gのリン酸三ナトリウムを、100℃で100mlの水に溶解することができる。この溶液が0℃まで冷却されると、89.2gのリン酸ナトリウムが析出することになる。塩化カルシウムも、同様の溶解度の傾向を有し、温度の上昇が溶解度の増加をもたらす:49.4g/100mL(-25℃)、59.5g/100mL(0℃)、65g/100mL(10℃)、81.1g/100mL(25℃)、102.2g/100mL(30.2℃)。逆の溶解度の傾向を呈する限定された一連の化合物が存在する。例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)は、温度の上昇と共に溶解度が減少する傾向を有し:1.89g/L(0℃)、1.73g/L(20℃)、0.66g/L(100℃)、この場合、温度の上昇が析出をもたらすことになる。過飽和法は、化学種、藻類種、及び濃度などに応じて、細胞内及び細胞外の両方に結晶をもたらす結果となり得、微生物細胞が核剤として機能する。この方法の利点は、続いての処理のための添加したミネラルの再利用性、及び溶解度の高いミネラルを添加したことによる炭の洗浄の容易さである。例としての処理は、以下のようにして行われる:100gの塩化カルシウムを、30℃で100mLのDI水に溶解する。次に、8重量%の藻類を塩化カルシウム溶液に添加し、これを、せん断ミキサーを用いて2000RPMで5分間せん断混合し、続いて30℃で1時間撹拌する。次に、この溶液を25℃に冷却し、それを10分間維持した。析出物を含むこの溶液を遠心分離し、乾燥した。
【0047】
さらなる別の選択肢としての実施形態によると、別の結晶形成法は、制御された乾燥である(溶媒の蒸発)。例示的な実行では、溶媒が蒸発するに従って、環境が一定であることによって溶媒の溶解度は変わらずに維持されるが、溶媒の量が減少することから、可溶性化合物の全溶解容量が減少する。充分に蒸発させると、溶媒和された化合物が、成長する結晶として析出する。例えば、25℃の水100mLには、81gの塩化カルシウムを溶解することができる。100mLの水が、25℃で50mLまで蒸発されると、40gの塩化カルシウムが析出することになる。微生物細胞が、核剤として機能する。この方法の利点は、スケール変更性及び再利用性である。
【0048】
なおさらなる別の選択肢としての実施形態では、さらなる結晶化法は、イオンの溶液に貧溶媒を混合することである(溶媒混合)。化合物は各々、その化合物を溶解可能な溶媒と溶解不可能な溶媒とを有する。前者は、良溶媒と称され、後者は、貧溶媒である。リン酸三ナトリウムは、水(良溶媒としても知られる)には非常に高い溶解度を有し、一方エタノール(貧溶媒としても知られる)には可溶性ではない。したがって、リン酸三ナトリウムの水溶液にエタノールを添加すると、溶液(エタノール+水)の溶解度は、混合溶液が良溶媒から貧溶媒へ変化するに従って次第に減少する。この変化の結果として、結晶化が起こる。例としての処理は、以下の通りである:14gのリン酸三ナトリウムを、25℃で100mLのDI水に溶解する。次に、8重量%の藻類を塩化カルシウム溶液に添加し、これを、せん断ミキサーを用いて2000RPMで5分間せん断混合し、続いて25℃で1時間撹拌する。次に、50mLのエタノールを添加する。この混合物をろ過し、乾燥する。
【0049】
理解されるように、各々の結晶化法は、他の結晶化法と併用可能であり得る。例えば、熱過飽和溶液を冷却し、貧溶媒を添加して結晶を生成してもよい。本明細書で挙げる方法は、包括的ではない。他の結晶成長法としては、気体からの堆積が挙げられる(例:化学蒸着)。
【0050】
理論に束縛されるものではないが、結晶形成処理は、以下をもたらすと考えられる。1)物理的なバリアとして作用し、炭化の過程で細胞が分離された状態を維持して、温度からの溶融によって細胞が一緒に融合することを防止する、樹枝状結晶の成長を細胞表面にもたらす。ほとんどの炭水化物、脂質、及びタンパク質の溶融温度は、200℃未満であるが、熱処理の過程で適用される温度は、500℃を超える場合がある。2)細胞空隙中に結晶成長をもたらして、細胞膜をせん断し、同時に内部の折り畳み部(internal folds)が互いに結合することを妨げ、強い黒色化に寄与する高い多孔度を生成する。3)ミネラルベースの熱分散部をもたらし、表面及び内部空間から、バイオマスを均一に炭化する。一般的なバイオマスの熱伝導率は、約0.1W/mKであるが、一方一般的なミネラルのそれは、一桁高い(約1W/mK)。
【0051】
ある特定の別の選択肢としての実施形態では、塩の乾燥粉末が、バイオマスへ直接添加されてよい。これらの添加される結晶は、イオン前駆体若しくは析出物のいずれか、又は他のいかなるミネラルであってもよい。好ましくは、これらのミネラル粉末は、固化防止特性を有し、同時に炭化温度よりも高い溶融温度を有する。これらのミネラル添加剤としては、限定されるものではないが、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、及び/又はアルミノケイ酸ナトリウムが挙げられる。ミネラル添加剤のサイズは、好ましくは、バイオマス粒子と等しい又はそれよりも1桁小さく、より好ましくは、2桁小さい。多くの微生物バイオマスのサイズは、1マイクロメートル~数十マイクロメートルの範囲内、及びそれ以上である。したがって、これらの添加剤のサイズは、好ましくは、1桁マイクロメートルの範囲である。これらのミネラル粉末は、様々なコーティング方法によって適用することができ、限定されるものではないが、流動床、粉末コーティングスプレー、様々なミルを用いた共粉砕などが挙げられる。乾燥ミネラル析出物が、微生物バイオマスに添加され、それは、溶液の形態であっても又は乾燥形態であってもよい。これらの実施形態は、ミネラル、並びに/又は他の変換及び結合剤をバイオマスに添加する工程を含み得る。これらのミネラルは、熱処理の過程でバイオマスのサイズ及び構造が実質的に変化しないように、バイオマス及び/又はバイオマス中に見られる成分を安定化するように作用する。
【0052】
これらの実施形態の例示的な実行では、添加されるミネラルは、サンプルの全質量の約0.1~約70%を構成する。ある特定の実行では、ミネラルは、いかなる物質状態で添加されてもよい(例:気体、液体、又は固体)。ある特定の実施形態では、ミネラルは、単純炭水化物をより素早く揮発させ、したがって、バイオマスを炭化中に一緒に粘着させないようにする。
【0053】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、ミネラルは、以下の機能の1つ以上を発揮し得るものと考えられる:i)粒子自体の表面に見られる官能基の変化によって、粒子の電磁的表面「電荷」を変化させること;ii)独特の領域で細胞壁/膜を通して「燃える」独特の加熱ユニットとして作用すること。すなわち、ミネラルは、熱エネルギーを吸収して、このエネルギーを非常に高い温度で非常に独特の領域で放散させる。このことにより、バイオマス表面の特定の位置が、表面の「ホットスポット」となり、そこでは、局所的な領域が温度上昇を起こし、したがって、ミネラルバイオマスを取り囲む小領域内に新しい有機種を作り出す特有の反応が起こる。炭化プロセスの後に行われる洗浄工程でミネラルが洗い流されると、有機物質中に独特の穴が現れ、炭粒子上に「綿毛状の球体(fuzzy spheres)」の外観を引き起こす;iii)バイオマスの炭化時にバイオマス中の様々な生成物の発生を改変することができる「バインダー」として作用すること;iv)生成される気体酸素種の全体量を低下させる反応に関与すること。これは、バイオマスに添加された様々なミネラルが、バイオマス中に見られる有機物質から酸素を除去することができる反応を行う場合に起こる;v)炭水化物を、有機物質の別の形態へ分解させ、それによって、バイオマスの「溶融」に繋がる構造的変換の量を低減すること;vi)有機物質の気体種への分解を加速し、それによって、サンプル中で「液化」するバイオマスの量を低減すること;及び/又はvii)バイオマス構成成分に構造的変化を引き起こす要素を付与すること。
【0054】
バイオマスは、有機物質、すなわち、タンパク質、炭水化物、及び脂質、さらには内在性及び外来性ミネラルの両方であってよい無機要素も含有する。ミネラルは、アルカリ金属、アルカリ性金属、及び遷移金属であり、例えば、Ca、K、Si、Mg、Al、S、Fe、P、Cl、Na、及び一部の微量金属である。これらのミネラルは、異なる種の中で変動し得る。木質バイオマスの場合、Cl、K、N、S、及びSi由来の灰分は、より少ないが、Ca及びMgは、より多く含有する。ミネラルは、熱分解の過程で、酸化耐性によってバイオ炭を安定化させることが知られている。特に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、バイオマスの分解及び炭形成反応を触媒する。灰分含有量を低減させる前処理は、多くの場合、炭の収率を低下させる結果となる。Feによる含浸は、芳香族の縮合度及びバイオ炭の多孔度に影響を与え得る。同様に、K及びNaなどのある特定のアルカリ金属は、塩素と反応して、気相で放出されるKOH、KCl、K2SO4、NaCl、Na2SO4などの気体化合物を形成し得る。Si、K、及びCaは、その溶融しやすい傾向に起因して、CaO、SiO2、K2Oを形成する凝集の主たる原因元素である。ミネラルは、レボグルコサンなどのある特定の糖副生物と反応することで二次反応を触媒して、レボグルコセノン、フラン誘導体、及び軽質酸素化物などの他の揮発性物質を形成し得る。バイオマス中に高い含有量のミネラルが存在することは、油分の収量を低下させ、炭及び気体生成物を増加させることによって、生成物の分布に影響を与える。灰分の触媒活性は、燃焼及びガス化の動態を変化させる。洗浄によってバイオマスの灰分含有量を低下させると、ピーク燃焼温度を高めるが、ガス化質量減少率ピーク温度を低下させることが示された。
【0055】
さらなる実行では、バイオマスへの添加は、単純炭水化物を気体種に変化する種の添加を含む。さらなる実行は、単純炭水化物及び/又はタンパク質を封鎖(sequestering)することができるバインダーの添加を含む。
【0056】
微生物バイオマスの乾燥
ある特定の態様では、微生物バイオマスは、水分含有量を低下させて細胞を濃縮するために、乾燥される。ある特定の実行では、微生物バイオマスは、15%を例とする約10%~約20%の水分含有量に到達するまで乾燥される。さらなる実施形態では、微生物バイオマスは、水分含有量が約5%以下に到達するまで乾燥される。
【0057】
乾燥工程は、本技術分野で公知の様々な技術に従って行われてよい。例示的な実施形態では、細胞は、ドラムろ過、ろ過/乾燥、デッドエンドろ過、精密ろ過、限外ろ過、加圧ろ過、真空ろ過、タンジェンシャルフローろ過、珪藻土ろ過、膜ろ過、磁気分離、正浸透、電気浮遊(electrofloation)、ローラープレス、ベルト型収穫機(belt harvesters)、キャピラリー抽出、単純な加熱/蒸発、ハイドロサイクロン、クロスフロー、支援分離(磁気、電気、誘電、音響)、粒床フィルタ、プレコートフィルタ、ディスクスタック遠心分離(disc stack centrifugation)、クロスフローろ過、デカンタ型遠心分離、スプレー乾燥、又は有機凝集(organic flocculation)によって乾燥される。乾燥は、その全内容が参照により本明細書に援用されるAdvancement and Challenges in Harvesting Techniques for Recovery of Microalgae Biomass, Difusa et. al、に記載の技術よって行われてもよい。
【0058】
ある特定の実施形態によると、方法は、バイオマスを乾燥する工程をさらに含む。この乾燥工程は、本技術分野で公知であるいくつかの技術のうちの1つによって行われてよい。例示的な乾燥方法としては、限定されるものではないが、ドラム乾燥、スプレー乾燥、トレー乾燥、パルス燃焼乾燥、蒸発乾燥、対流乾燥、凍結乾燥、スパイラルプレート乾燥(spiral plate drying)、表面張力乾燥機、真空トレー乾燥機、太陽光伝導乾燥機(solar conduction driers)、浸透圧乾燥機、膜分離乾燥機、沈澱乾燥機、凝集乾燥機、泡浮遊分離(froth floatation separation)、遠心分離、及び、又はろ過が挙げられる。
【0059】
ある特定の実行では、乾燥工程は、バイオマスから、全溶液の約30~約99%を除去する。ある特定の別の選択肢としての実行では、乾燥工程は、開示される方法から省略される。
【0060】
熱処理
ある特定の実施形態によると、微生物バイオマスの乾燥に続いて、微生物バイオマスは、微生物炭を生成するために、熱処理を受ける。ある特定の態様では、熱処理は、反応容器中で行われる。例示的な実行では、反応容器は、生成プロセス中にいかなる追加のガスが導入されることも除外するために、密封することが可能である。1つの実施形態では、二酸化炭素、酸素、及び他のいずれかの反応性ガス種などの不要ないかなるガスも押し出すように、不活性ガスが容器に添加されてもよい。ある特定の別の選択肢としての実施形態では、全体としての燃焼温度を高め、チャンバー内での化学反応を促進するために、空気及び他の反応性ガスが、燃焼チャンバーに添加される。別の実施形態では、加熱プロセスの過程での異なる時点で様々な種類の反応を得るために、続いての工程で様々な種類の不活性及び反応性ガスが反応チャンバーに導入されてよい。適切な反応容器は、本技術分野で公知の様々な反応容器を含む。例示的な反応容器としては、限定されるものではないが、バッチ反応器、ロータリーキルン(垂直又は水平)、シャフト炉、流動床、噴流床(sprouted bed)、同伴床、スクリュー反応器、ヘルスホフ多段焼却炉(herreshoff over/multiple hearth furnace)、Torbed反応器、マイクロ波反応器、コンパクト移動床、ベルト乾燥機/反応器、及び固定床反応器が挙げられる。
【0061】
ある特定の態様では、細胞の熱処理は、熱分解、ガス化、燃焼、熱酸化分解、焙焼、及び熱水炭化から成る群より選択されるプロセスによって行われる。ある特定の実施形態では、熱処理工程は、上記プロセスの組み合わせを用いることを含む。
【0062】
ある特定の実行によると、熱処理工程は、約100℃~約2000℃の温度範囲である。ある特定のさらなる実行では、温度範囲は、約100℃~約1000℃である。さらなる態様では、熱処理温度範囲は、200℃~約800℃である。さらなる態様では、熱処理温度範囲は、250℃~約750℃である。さらなる態様では、熱処理温度範囲は、300℃~約700℃である。さらなる態様では、熱処理温度範囲は、350℃~約750℃である。なおさらなる態様では、さらなる態様では、熱処理温度範囲は、400℃~約700℃である。なおさらなる実行では、熱処理工程は、約550℃である。ある特定の例示的な実行では、温度は、段階的な区間で上昇される。ある特定の別の選択肢としての実行では、温度は、所定の区間にわたって一定の速度で上昇される。
【0063】
ある特定の態様では、熱処理工程は、約1秒間~約24時間の時間長さにわたって行われる。さらなる態様では、時間長さは、約からであり、熱処理工程は、約600℃で、約5~7分間の時間長さにわたって行われる。
【0064】
ある特定の実行によると、熱処理工程は、所定の終点に到達するまで行われる。例示的な実行によると、炭化バイオマスが約20%~約75%の固定炭素を含む時点で、終点に到達する。さらなる実施形態では、炭化バイオマスが約20%~約50%の固定炭素を含む時点で、終点に到達する。なおさらなる実施形態では、炭化バイオマスが約20%~約30%の固定炭素を含む時点で、終点に到達する。
【0065】
さらなる実施形態では、熱処理工程は、炭化バイオマスが初期出発質量の約15%~約60%となるまで行われる。
さらなる実施形態では、熱処理工程は、炭化バイオマス中の近似揮発分レベルが約25%未満となるまで行われる。さらなる実施形態では、熱処理工程は、炭化バイオマス中の近似揮発分レベルが約20%未満となるまで行われる。なおさらなる実施形態では、熱処理工程は、炭化バイオマス中の近似揮発分レベルが約15%~約25%となるまで行われる。
【0066】
なおさらなる実施形態では、熱処理工程は、炭化バイオマス中の酸素濃度が約20%未満となるまで行われる。なおさらなる実施形態では、熱処理工程は、酸素濃度が約10~15%となるまで行われる。
【0067】
なおさらなる実施形態によると、熱処理工程は、炭化バイオマス中の灰分濃度が約20%未満となるまで行われる。ある特定のさらなる実施形態によると、熱処理工程は、炭化バイオマス中の灰分濃度が約10%~20%となるまで行われる。なおさらなる実施形態では、熱処理工程は、炭化バイオマス中の灰分濃度が約10%未満となるまで行われる。
【0068】
ある特定の態様では、熱処理工程の終点は、酸素と固定炭素との所定の比率によって定められる。これらの実施形態の例示的な実行では、熱処理の終点は、炭化バイオマスの最終酸素対最終炭素比が、約0.30未満の酸素対炭素(例:3部の最終酸素対10部の最終炭素)である時点で到達される。
【0069】
ある特定の実施形態では、終点は、上記のパラメータの2つ以上が達成された時点で到達される。
【0070】
熱処理後洗浄
さらなる実行では、開示される方法はまた、バイオマスの熱処理後洗浄/活性化工程も含む。例示的な実行では、洗浄は、洗浄剤を酸性又は塩基性の性質とする物質で炭化バイオマスを洗浄することによって行われ得る。例示的な実施形態では、以下の1又は複数が用いられる:塩酸、塩化水素酸、漂白剤、リン酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化亜鉛。ある特定の実行では、酸又は塩基の濃度は、洗浄剤の約0.2%~約20%である。酸洗浄剤が用いられるある特定の実行では、洗浄剤は、約-1.0~約6のpHを有する。例示的な実行では、洗浄剤は、約0.1~約3.0のpHを有する。
【0071】
ある特定の実施形態によると、熱処理後洗浄は、1~10回以上繰り返される。ある特定の実行では、各洗浄は、約30秒間~約12時間の継続時間を有し得る。そのような洗浄は、炭化バイオマスの中/周囲/上に存在するミネラルの約60%~約100%を除去するように作用し得る。
【0072】
ある特定の実行では、水洗浄も、熱処理後洗浄工程に含まれる。ある特定の実施形態では、水洗浄は、酸/塩基洗浄の前、後、又は前と後の両方に行われる。
特定のいかなる理論にも束縛されるものではないが、炭化後洗浄工程は、以下の機能のうちの1又は複数を果たすものと考えられる:i)より大きい粒子をより小さい粒子とすること(例:細胞接着及び細胞結合を引き起こし得るバイオマス物質を溶解することで、粒子の表面積及び粒子自体に伴う電磁電荷を変化させる);ii)ミネラル種を除去し、結果としてミネラル含有量(灰分含有量)を材料の全体質量の1%~30%のミネラルとすること。例示的な実施形態では、灰分含有量は、約10%未満である。このことは、より高濃度の炭素をサンプル中に存在させ、したがって、ミネラル種が通常は灰白色であることから、より黒色の材料となる;iii)除去された場合に、より高い表面積を可能とするが、粒子の体積は変化させずに維持する表面ミネラルを除去すること;iv)バイオマスを一緒により「粘着」させる細胞成分の分解;酸洗浄は、バイオマスの電荷を変化させ得る。
【0073】
粉砕
ある特定の実施形態では、熱処理工程後に粉砕は必要とされず、微生物炭は、さらなる処理なしで、又は化学的処理のみで、顔料として用いることができる。しかし、ある特定の別の選択肢としての実施形態では、微生物炭の粉砕が、0.01ミクロン~100ミクロンの値の粒子径サイズである目的の顔料粒子サイズ又は細胞凝集物径を得るために必要とされる。ある特定の実施形態では、粉砕工程は、乳鉢/乳棒、ロータリータンブラー、振動タンブラー、磁気タンブラー、ロールミル、ビーズミル撹拌器、ディスクミル、バスケットミル、ジェットミル、ボールミル、ジョークラッシャー、ローターミル、カッティングミル、ナイフミル、クライオミル、ハンマーミル、ピンミル、サイクロンミル、及び分級ミルから成る群より選択される装置によって行われる。
【0074】
さらなる実施形態によると、粉砕工程は、アンモニア凍結爆砕法、スチーム加水分解法、及び湿潤酸化法から成る群より選択される方法で行われる。
なおさらなる実施形態によると、粉砕工程は、超音波処理によって行われる。
【0075】
ある特定の実施形態によると、粉砕工程は、粉末化微生物炭の平均粒子サイズ径が約10ミクロン未満となるまで行われる。
ある特定の実行では、粉砕工程は、炭化バイオマスに、1又は複数の機械的粉砕添加剤を粉砕の過程で添加することを含む。さらなる実施形態によると、1又は複数の機械的粉砕添加剤は、鋼鉄、クロム、ステンレス鋼、セラミック、ゴム、石器、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、磁器、シリカ、及びガラスからなるリストより選択される。ある特定のさらなる実施形態によると、機械的粉砕添加剤は、約1/32インチ~約5インチ径の範囲内の粒子サイズを有する。
【0076】
ある特定の態様では、粉砕工程は、炭化バイオマスに、1又は複数の化学的粉砕添加剤を粉砕の過程で添加することを含む。これらの実施形態のある特定の実行では、1又は複数の化学的粉砕添加剤は、分散剤、界面活性剤、湿潤剤、研磨剤、セッケン洗剤、超分散剤、非イオン性高HLBポリアルコキシル化界面活性剤、非イオン性ポリマー、消泡剤、水、樹脂、表面張力調整剤、疎水性アニオン性ポリマー、アセチレン系ジオール、及びアセチレンジオールから成るリストより選択される。
【0077】
粉末化微生物炭の粉砕後改質
ある特定の実施形態によると、開示される方法はさらに、粉砕工程の後に、粉末化微生物炭を改質することを含む。ある特定の態様では、これらの粉砕後改質工程は、個々の粒子サイズを低下させようとするものである。さらなる態様では、これらの工程は、微生物炭を特定の用途に適するものとするために、粒子表面の所望される特性を実現するために行われる。ある特定の実施形態によると、粉砕後改質は、微生物炭の重金属含有量を低減しようとするものである。さらなる実施形態では、粉砕後処理は、可溶性の無機塩の除去及び、又は灰分含有量の低減を行おうとするものである。なおさらなる実施形態では、粉砕後改質は、全溶解固体濃度を低下させる。さらなる実行では、粉砕後改質は、pHを調整すること及び、又は粒子の表面積を増加させることを含む。さらなる態様では、粉砕後処理は、微生物炭の水分含有量をさらに低下させようとするものである。
【0078】
ある特定の態様では、微生物炭の改質は、微生物炭に化学添加剤を添加することによる。これらの実施形態のある特定の実行によると、化学添加剤は、芳香族化合物、アルコール、塩(例:過硫酸アンモニウム)、界面活性剤(例:Avenel)、油/脂/脂肪酸/脂質、水(例:蒸気)、イオン液体、水素化、化学加水分解、酵素加水分解、アルカリ溶媒(例:水酸化ナトリウム、アンモニア、二酸化炭素)、二酸化炭素、塩素ガス、硫黄ガス、窒素ガス、及び酸素ガスであってよい。
【0079】
ある特定の実行では、粉末化後微生物炭の表面改質は、過酸化水素処理を通して行われる。例示的な実施形態では、粉末化の後、微生物炭は、凍結乾燥によって分離され、純度分析が成される。分離後、微生物炭は、さらに、30%(重量/重量)過酸化水素溶液で官能化され、還流される。ある特定の実施形態では、還流は、約60℃で約24時間行われる。還流後、過剰の過酸化水素が除去される。例示的な実施形態では、過酸化水素は、チューブでのDI水に対する透析によって、残留過酸化物が検出されなくなるまで除去される。最終官能化粉末は、次に、再度凍結乾燥され、表面改質の度合いを測定する補助とするために、SEM EDSによって分析される。
【0080】
さらなる態様によると、微生物炭の改質は、微生物炭を乾燥することを含む。これらの実施形態によると、この乾燥工程は、ドラムろ過、デッドエンドろ過、精密ろ過、限外ろ過、加圧ろ過、真空ろ過、タンジェンシャルフローろ過、珪藻土ろ過、膜ろ過、磁気分離、正浸透、電気浮遊、ローラープレス、ベルト型収穫機、キャピラリー抽出、単純な加熱/蒸発、ハイドロサイクロン、クロスフロー、支援分離(磁気、電気、誘電、音響)、粒床フィルタ、プレコートフィルタ、ディスクスタック遠心分離、クロスフローろ過、デカンタ型遠心分離、及び有機凝集から成るリストより選択される方法によって行われる。ある特定の実施形態では、乾燥工程は、前述の方法の組み合わせによって行われる。
【0081】
ある特定の態様では、粉末化後乾燥工程は、水分低減の所定の閾値が満たされるまで行われる。ある特定の例示的な実施形態では、乾燥工程は、微生物炭の水分含有量が約8%未満に低減されるまで行われる。
【0082】
この乾燥によって、バイオマスから、全溶液の30から99%の間のいずれかを除去する。
この乾燥は、このプロセスに含められても、又は含められなくてもよい。
【0083】
上記のいずれか/すべて、又は上記のいずれかによるいずれかの組み合わせ。ある特定の実施形態では、方法は、熱処理工程の前に、微生物バイオマスを洗浄する工程をさらに含む。
【0084】
ある特定の態様によると、開示される方法は、以下の工程に従って行われる。第一の工程では、湿潤又は乾燥のいずれであってもよいバイオマスが、第一のイオン源又は析出物前駆体であるカルシウム塩の水溶液に添加される。様々な実行では、塩化カルシウムがカルシウム源である。水性懸濁液中のカルシウム塩の濃度は、約0.75~30重量%、約1~20重量%、又は約1.5~10重量%である。
【0085】
さらなる工程では、バイオマスが溶液中に懸濁される。カルシウム塩の水溶液中に懸濁されるバイオマスの濃度は、固形分として約0.1~40重量%の範囲内、又は別の選択肢として約2~20重量%の範囲内である。懸濁液は、水性懸濁液の温度が約0~40℃、又は10~35℃である範囲で調製される。
【0086】
さらなる所望に応じて行われてよい工程において、混合物は、細胞膜を破壊するために、せん断処理又は超音波処理される。この工程はまた、細胞によるカルシウム塩の吸収を加速させ得る。
【0087】
別の工程では、混合物は、0~40℃で0~20時間、又は1~20時間、又は0.5~2時間にわたって撹拌される。
別の工程では、第二のイオン源又は析出物前駆体対イオンであるリン酸塩の水溶液が、混合物に添加される。第二のイオン源又は析出物前駆体対イオンであるリン酸塩は、固体の形態であってもよい。ある特定の実行では、リン酸三ナトリウムが用いられる。リン酸塩濃度は、バイオマス混合物の最終体積に基づいて算出して、約1.25~50重量%、約2~30%、又は約2.5~20%であってよい。
【0088】
次の所望に応じて行われてよい工程では、混合物は、0~40℃で1~20時間にわたって撹拌される。ある特定の実行では、混合物は、0~35℃で0~20時間にわたって、又はいくつかの実行では、約0.5~2時間にわたって撹拌される。
【0089】
次の工程では、析出物及びバイオマスがろ取される。析出物及びバイオマスは、例えば重力沈降、遠心沈降、フィルタープレスなどを例とする様々なろ過方法を用いて液体からろ過されてよい。様々な実行では、フィルタープレスが用いられる。
【0090】
別の工程では、固体は続いて乾燥され、炭化される。
さらなる工程では、炭は、酸洗浄されて灰分が除去される。ある特定の実行では、酸は、様々なミネラル成分を溶解するために用いられる。様々な実行では、酸は、塩化水素酸である。ある特定の実行では、酸は、約-1.0~6、又は約0.1~3.0のpHを有する。
【0091】
実施例
以下の例は、本明細書で請求される物品、装置、及び/又は方法が作製及び評価される方法の完全な開示及び記述を当業者に提供するために示されるものであって、本発明の単なる例示であることを意図しており、本発明者らが自身の発明と見なす範囲を限定することを意図するものではない。しかし、当業者であれば、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を成すことができ、それでも、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、同様の又は類似の結果を得ることができることは理解されるべきである。
【0092】
例1
この例では、3.46gの塩化カルシウムを、100.97gのDI水に添加した。次に、8.28gの酵母菌を塩化カルシウム水溶液に添加し、バイオマス懸濁液を得た。この混合物を、1.5インチのブレードを備えたせん断ミキサーを用いて、2000RPMで3分間せん断処理し、マグネティックスターラープレートを用いて100°Fで撹拌した。
【0093】
次に、7.38gのリン酸三ナトリウムを、149.81gのDI水に添加する。次に、リン酸三ナトリウム水溶液を、バイオマス混合物にすべてを一度に添加した。得られた最終混合物を、RTで1.5時間撹拌し、2500RPMで5分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、固体を160°Fで乾燥した。すべてのサンプルを、加熱したスクリュー式熱分解装置SPIRAJOULE(登録商標)SPJ HTを用い、窒素ガス環境中、565℃の温度で20分間処理した。
【0094】
例2
この例では、2.99gの塩化カルシウムを、99.50gのDI水に添加する。次に、8.11gのスピルリナ属を塩化カルシウム水溶液に添加し、バイオマス懸濁液を得た。この混合物を、1.5インチのブレードを備えたせん断ミキサーを用いて、2000RPMで2分間せん断処理し、マグネティックスターラープレートを用いて150°Fで撹拌した。
【0095】
次に、7.49gのリン酸三ナトリウムを、149.52gのDI水に添加する。リン酸三ナトリウム水溶液を、バイオマス混合物にすべてを一度に添加した。得られた最終混合物を、RTで2時間撹拌し、2500RPMで5分間遠心分離した。上澄みを廃棄し、固体を160°Fで乾燥した。すべてのサンプルを、加熱したスクリュー式熱分解装置SPIRAJOULE(登録商標)SPJ HTを用い、窒素ガス環境中、565℃の温度で20分間処理した。
【0096】
例3
1つの例では、炭化の前にバイオマスから塩を除去し、バイオマスが一緒に溶融するようにした。炭化の前にバイオマス上に塩が存在することにより、(i)粒子が別個の状態で維持され、及び(ii)バイオマスに孔が形成される。
【0097】
図1Aは、可溶性アニオン/カチオン混合物で処理し、続いて炭化したバイオマスを示す。
図1Bは、炭化の前に酸洗浄によって塩を除去し、続いて炭化したバイオマスを示す。
図1Bでは、バイオマスは、アモルファスの特徴を有していた。
図1Cは、「救出」された
図1Bのバイオマスを示し、すなわち、
図1Bからのバイオマスを、可溶性アニオン/カチオン混合物で再処理し、続いてこの再処理材料を炭化した。
図1Cでは、多くの孔が見られる。
【0098】
例4
この例では、用いたバイオマスは、塩をすべて洗浄除去した全細胞藍藻類として店舗で販売されている光合成微生物であった(Earthrise、spirulina(光合成原核生物)、食料品店にあるスピルリナ属)。
図2Aは、いかなる処理も受けていない炭化バイオマスを示す。
図2Bは、可溶性アニオン/カチオン混合物で処理し、続いて炭化したバイオマスを示す。
図2Bでは、非常に多孔性である表面を有する別個の粒子が示されている。
【0099】
例5
この例では、用いたバイオマスは、発酵槽からの全細胞酵母菌であった(UC-Anschutzからの研究者、酵母菌(従属栄養真核生物)、酵母菌)。
図3Aは、いかなる処理も受けていない炭化バイオマスを示す。
図3Bは、可溶性アニオン/カチオン混合物で処理し、続いて炭化したバイオマスを示す。
【0100】
例6
この例では、炭化前にバイオマスに塩を添加することで、高い流動性/注ぎ性の特性を有する炭が生成された。例4の結果の概要を表1に示す。
図4Aは、塩をすべて洗浄除去し、続いて炭化したスピルリナ属バイオマスを示す。
図4Aでは、バイマスは、キノコ形に広がって固体となり、その元の状態とは異なる非流動性物質となった。
図4Bは、洗浄した後、可溶性アニオン/カチオン混合物を連続して用いて塩を添加し、続いて炭化したスピルリナ属バイオマスを示す。
図4Bの例では、炭化バイオマスは、形態を変化させない流動性物質として維持された。
【0101】
図5Aは、炭化され、硬質物質を形成した塩を添加していない酵母菌バイオマスを示す。
図5Aから分かるように、炭化バイオマスは、容器の中央でパック状に固化し、その元の状態とは異なる形態に変化した。
図5Bは、炭化前に可溶性アニオン/カチオン混合物で処理した酵母菌バイオマスを示す。塩を添加した炭化バイオマスは、炭化後、容器を満たし、硬質物質に炭化されることなく、流動性を維持した。
【0102】
例7
表2~表4に示されるように、炭化前にバイオマスに塩を添加し、炭化後に酸洗浄することで、黒色度値が大きく増加することが示された。また、炭化前にバイオマスに塩を添加することで、炭化バイオマスが互いに粘着せず自由に流動することで表されるように、炭化バイオマスの流動性も大きく増加する。
【0103】
例8
図6Aには、塩を添加した炭化バイオマス上に形成された塩結晶の例が示される。
図6Bでは、塩を添加した炭化バイオマスから酸処理を介して塩が除去され、したがって、得られた炭化バイオマスの高多孔性の性質が明らかとなっている。
【0104】
イメージング
図1~
図3:走査型電子顕微鏡画像を、すべてのサンプルについてTGAの後に取得した。画像は、Jeol/EQ InTouchscopeを用いて取得した。5~10mgのサンプルを、SEM試料台に固定した両面カーボン上に振りかけた。イメージング中のいかなる帯電も低減するために、サンプルを、予めスパッタンリグによって金及びパラジウムでコーティングした。画像を、150×、500×、及び1500×の倍率で取得した。
【0105】
図4及び
図5:サンプルの光学画像を、TGA後に取得し、対象の材料をTGA内で炭化するために用いた5ml容積のるつぼ中で撮影した。画像は、携帯電話で撮影した。
図6:走査型電子顕微鏡画像を、すべてのサンプルについてTGAの後に取得した。画像取得は、エネルギー分散型X線分光装置を備えたPhenom Prox Desktop走査型電子顕微鏡で行った。5~10mgのサンプルを、SEM試料台に固定した両面カーボン上に振りかけた。イメージング中のいかなる帯電も低減するために、サンプルを、予めスパッタンリグによって金及びパラジウムでコーティングした。画像は、100,000×の倍率である。
【0106】
本開示について、好ましい実施形態を参照して記載してきたが、当業者であれば、開示される装置、システム、及び方法の趣旨並びに範囲から逸脱することなく、形式状でも詳細にも変更が成され得ることは認識されるであろう。
【国際調査報告】