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特表2023-525006フローサイトメータデータにおけるスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法及びシステム
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  • 特表-フローサイトメータデータにおけるスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法及びシステム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】フローサイトメータデータにおけるスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20230607BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
G01N15/14 B
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567392
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-12-29
(86)【国際出願番号】 US2021028604
(87)【国際公開番号】W WO2021225792
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/020,758
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/076,611
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.WINDOWS
3.WINDOWS NT
4.WINDOWS XP
5.iOS
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ハルパート,リチャード リー
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA05
2G043EA01
2G043FA06
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA09
2G043LA02
2G043NA01
2G043NA02
(57)【要約】
第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、第1の蛍光色素に対するデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割することを含む。実施形態では、方法はまた、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定することと、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることとを含む。第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるためのシステム及びコンピュータ可読媒体も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付ける方法であって、
第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを、前記第1の蛍光色素に対する前記蛍光フローサイトメータデータの強度に応じた数の分位数に分割することと、
前記第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、前記第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定することと、
前記第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける前記第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、前記ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の線形回帰は、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と前記第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間の線形フィットを算出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼロ調整標準偏差を推定することは、
前記第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と前記第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間で算出された線形フィットのy切片を決定することによって、前記第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて前記第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差を算出することと、
決定されたy切片に基づいて、前記第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を調整することと
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の線形回帰は、分割された各分位数について、前記ゼロ調整標準偏差と前記第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スピルオーバー拡散係数を計算することは、前記ゼロ調整標準偏差と前記第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きを得ることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スピルオーバー拡散係数は式1に従って計算される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【数1】
ここで、
SSは、前記スピルオーバー拡散係数であり、
σは、前記第2の蛍光色素から収集された光の標準偏差であり、
σは、前記第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、前記第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の推定値であり、
Fは、前記第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値である。
【請求項7】
前記第1の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記分位数の数は、蛍光フローサイトメータデータのサイズに基づいて決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記蛍光フローサイトメータデータは、複数の異なる蛍光色素から放出された光から収集される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対について、スピルオーバー拡散係数を計算することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数は、スピルオーバー拡散行列に結合される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
システムであって、
蛍光フローサイトメータデータを得るように構成された粒子分析器構成要素と、
プロセッサとを備え、該プロセッサは、該プロセッサに動作可能に結合されたメモリを備え、該メモリに命令が記憶されており、該命令が前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを、前記第1の蛍光色素に対する前記蛍光フローサイトメータデータの強度に応じた数の分位数に分割することと、
前記第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、前記第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定することと、
前記第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける前記第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、前記ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることと
をさせるシステム。
【請求項15】
方法によって第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるための命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記方法は、
第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを、前記第1の蛍光色素に対する前記蛍光フローサイトメータデータの強度に応じた数の分位数に分割することと、
前記第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位について前記第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定することと、
前記第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける前記第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、前記ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることと
を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
フローサイトメトリは、血液試料の細胞又は他の種類の生体試料又は化学試料の対象粒子などの生物学的材料を特徴付け、しばしば選別するために使用される技術である。フローサイトメータは、通常、血液試料などの流体試料を受け入れるための試料容器と、シース液を収容するシース容器とを含む。フローサイトメータは、流体試料中の粒子(細胞を含む)をセルストリームとしてフローセルに輸送するとともに、シース液をフローセルに導く。フローストリームの成分を特徴付けるために、フローストリームを光で照射する。形態や蛍光標識の存在など、フローストリーム中の材料の変動により、観測された光に変動が生じる可能性があり、これらの変動により、特徴付け及び分離が可能になる。例えば、流体懸濁液中の分子、分析物結合ビーズ、又は個々の細胞などの粒子は、通常、2つ以上のレーザからの励起光に粒子がさらされる検出領域を通過し、粒子の光散乱及び蛍光特性が測定される。粒子又はその成分は、通常、検出を容易にするために蛍光染料で標識されている。スペクトル的に異なる蛍光染料を使用して異なる粒子又は成分を標識することにより、複数の異なる粒子又は成分を同時に検出することができる。いくつかの実施態様では、分析器に複数の検出器が含まれ、1つの検出器は、測定される散乱パラメータのそれぞれに用いられ、1つ以上の検出器は、検出される異なる染料のそれぞれに用いられる。例えば、一部の実施形態は、染料ごとに1つ以上のセンサ又は検出器が使用されるスペクトル構成を含む。得られたデータは、各光散乱検出器及び蛍光放出について測定された信号を含む。
【0002】
フローサイトメータは、測定されたデータを記録し、データを分析するための手段をさらに備えてもよい。例えば、データの記憶及び分析は、検出電子機器に接続されたコンピュータを使用して実施することができる。例えば、データは、各行が1つの粒子のデータに対応し、列が測定された特徴の各々に対応する表形式で保存することができる。粒子分析器からのデータを保存するために「FCS」ファイル形式などの標準ファイル形式を使用すると、別個のプログラム及び/又は機械を使用してデータを分析することが容易になる。現在の分析方法を使用すると、データは、通常、視覚化を容易にするために一次元ヒストグラム又は二次元(2D)プロットで表示されるが、他の方法を使用して多次元データを視覚化することも可能である。
【0003】
フローサイトメータを使用して測定されるパラメータには、通常、前方散乱(FSC)と呼ばれる、主に前方に沿って狭い角度で粒子によって散乱される励起波長の光と、側方散乱(SSC)と呼ばれる、励起レーザと直交する方向に粒子によって散乱される励起光と、スペクトル波長範囲にわたって信号を測定する1つ以上の検出器内の蛍光分子、又は主にその特定の検出器もしくは検出器のアレイで検出される蛍光染料から放出される光とが含まれる。光散乱特性及びさまざまな細胞タンパク質又はその他の構成要素を蛍光染料標識抗体又はその他の蛍光プローブで標識することによって生じる蛍光発光によって、異なる細胞タイプを識別することができる。
【0004】
フローサイトメータとスキャニングサイトメータとの両方は、例えば、BD Biosciences(San Jose,Calif.)から商業的に入手可能である。フローサイトメトリは、例えば、Landy他(編),Clinical Flow Cytometry,Annals of the New York Academy of Sciences Volume 677(1993);Bauer他(編),Clinical Flow Cytometry:Principles and Applications,Williams & Wilkins(1993);Ormerod(編),Flow Cytometry:A Practical Approach,Oxford Univ.Press(1994);Jaroszeski他(編),Flow Cytometry Protocols,Methods in Molecular Biology No.91,Humana Press(1997);及び、Practical Shapiro,Flow Cytometry,4th ed.,Wiley-Liss(2003)に記載されており、すべて参照により本明細書に組み込まれる。蛍光イメージング顕微鏡法は、例えば、Pawley(編),Handbook of Biological Confocal Microscopy,第2版,Plenum Press(1989)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
フローサイトメータデータを1つ以上の検出器から受信した後、多くの場合、データ分析プロセスを行って、ユーザがデータを理解できるようにする。しかし、フローサイトメータデータの分析は、スピルオーバー(特定の蛍光色素を示す粒子変調光が、そのパラメータを測定するように構成されていない1つ以上の検出器によって受信される現象)によって複雑になることが多い。そのため、光が「スピルオーバー」して、オフターゲットの検出器によって検出される可能性がある。スピルオーバーはアンミキシングによって修正でき、この場合、観測されたスピルオーバーのレベルを介して、蛍光色素の強度値と、検出器の測定値とを関連付ける連立方程式を解くことによって、新しい蛍光色素ごとの強度値が算出される。アンミキシングは、検出器の数がアンミックスされる蛍光色素の数と等しい場合、「補償」と呼ばれることが多い。図1Aは、従来のスピルオーバー補償プロセスを示すフローチャートである。ステップ101では、特定の蛍光色素に対して陽性及び陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団を識別する。ステップ102では、スピルオーバーが蛍光フローサイトメータデータに信号を加える程度を定量化するスピルオーバー係数を含む蛍光スピルオーバー行列を算出する。ステップ103では、蛍光フローサイトメータデータを、スピルオーバーが補償されるように、蛍光スピルオーバー行列に基づいて数学的に調整する。アンミキシングは、各蛍光色素から他の各蛍光色素への強度寄与を補正するが、ノイズ寄与、即ちスピルオーバーによって蛍光フローサイトメータデータに寄与される誤差を補正することはできない。このノイズは、「スピルオーバー拡散」と呼ばれる。一部の例では、スピルオーバー拡散ノイズは建設的であり、その結果、信号強度は他の方法で観察されるものよりも高くなるが、他の例では、ノイズは破壊的であり、その結果、強度が低くなる。
【0006】
スピルオーバー拡散を定量化する従来の方法は、Nguyen他(2013),Quantifying spillover spreading for comparing instrument performance and aiding in multicolor panel design,Cytometry Part A,83(3),306-315.に記載されているように、スピルオーバー拡散係数の算出を伴い、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、従来のスピルオーバー拡散係数の1つの制限は、特定のパラメータに対して陽性である(即ち、対象の蛍光色素から光を放出する)サンプルを表すフローサイトメータデータの集団、及び同じパラメータに対して陰性である(即ち、対象の蛍光色素から光を放出しない)フローサイトメータデータの集団を識別する必要があるという点である。例えば、図1Bは、Nguyen他(2013)によるスピルオーバー拡散係数の算出に必要な陽性100b及び陰性100aの集団の識別を示している。同様に、図2は、スピルオーバー補償及びスピルオーバー拡散の特徴付けがともに実行されるための従来のワークフローを描いている。蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別(ステップ101)、蛍光スピルオーバー行列の算出(ステップ102)、及びスピルオーバー補償(ステップ103)の後、スピルオーバー拡散係数を含むスピルオーバー拡散行列が算出され得る(ステップ201)。しかしながら、蛍光スピルオーバー行列の算出102と同様に、スピルオーバー拡散行列の算出201は、陽性集団及び陰性集団の識別を必要とし、ユーザにとって、しばしば誤差が生じやすく、時間のかかる作業である。
【発明の概要】
【0007】
そこで、本発明者は、フローサイトメータデータ分析において、スピルオーバー拡散を特徴付けるための効率的なソリューションが望まれていることを見出した。
【0008】
本発明の態様は、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法を含む。一部の実施形態では、方法は、第1の蛍光色素から放出された光が第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおいて誤差を引き起こす程度を評価するために、第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素のそれぞれについて収集されたフローサイトメータデータを受信することを含む。受信後、本方法の実施形態は、蛍光フローサイトメータデータを、第1の蛍光色素に対するデータの強度に応じた数の分位数に分割することをさらに含む。本方法の実施形態は、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を推定することをさらに含む。実施形態では、ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差(σ)を算出すること、及び、σに基づいて第2の蛍光色素から放出された光の観測値の標準偏差(σ)を調整することを含む。実施形態では、ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間の線形フィットの算出を含む第1の線形回帰を計算することを伴う。実施形態では、σは、第1の線形回帰で算出された線形フィットのy切片から取られる。本方法の実施形態は、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることをさらに含む。一部の実施形態では、第2の線形回帰を計算することは、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを伴う。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散係数は、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きから取られる。実施形態では、このようにして得られたスピルオーバー拡散係数は、第1及び第2の蛍光色素の各組み合わせについて算出され(即ち、各蛍光色素に由来するスピルオーバーが他の各蛍光色素について特徴付けられ)、スピルオーバー拡散行列に組み入れられる。本方法の実施形態は、スピルオーバー拡散行列に基づいて蛍光フローサイトメータデータを調整することをさらに含んでもよい。
【0009】
本発明の態様は、さらにシステムに関し、システムは、蛍光フローサイトメータデータを得るように構成された粒子分析器構成要素と、プロセッサとを備え、プロセッサは、プロセッサに動作可能に結合されたメモリを備え、メモリに命令が記憶されており、命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けさせる。一部の実施形態では、プロセッサは、第1の蛍光色素から放出された光が第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおいて誤差を引き起こす程度を評価するために、第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素のそれぞれについて収集された蛍光フローサイトメータデータを受信するように構成される。データが受信された後、プロセッサは、蛍光フローサイトメータデータを、第1の蛍光色素に対するデータの強度に応じた数の分位数に分割するように構成されてもよい。実施形態では、プロセッサは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を推定するようにさらに構成される。実施形態では、ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差(σ)を算出すること、及び、σに基づいて第2の蛍光色素から放出された光の観測値の標準偏差(σ)を調整することを含む。実施形態では、ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間の線形フィットの算出を含む第1の線形回帰を計算することを伴う。実施形態では、σは、第1の線形回帰で算出された線形フィットのy切片から取られる。プロセッサは、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得るようにさらに構成されてもよい。一部の実施形態では、第2の線形回帰を計算することは、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを伴う。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散係数は、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きから取られる。実施形態では、このようにして得られたスピルオーバー拡散係数は、第1及び第2の蛍光色素の各組み合わせについて算出され(即ち、各蛍光体に由来するスピルオーバーが他の各蛍光色素について特徴付けられ)、スピルオーバー拡散行列に組み入れられる。プロセッサは、スピルオーバー拡散行列に基づいて蛍光フローサイトメータデータを調整するようにさらに構成されてもよい。
【0010】
本開示の態様は、主題の方法を実行するための命令を有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体をさらに含む。一部の実施形態では、非一時的記憶媒体は、少なくとも第1及び第2の蛍光色素から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信するための命令、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割するための命令、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定する命令、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得る命令、第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数をスピルオーバー拡散行列に組み入れる命令、及びスピルオーバー拡散行列に基づいて蛍光フローサイトメータデータを調整する命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。図面に含まれるものは以下の図である。
図1A】スピルオーバー補償のための従来のプロセスを示すフローチャートである。
図1B】スピルオーバー補償及びスピルオーバー拡散行列算出のための従来のプロセスに従って、蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別を示すグラフ表示である。
図2】スピルオーバー拡散行列の算出とともにスピルオーバー補償を行うための従来のプロセスを示す図である。
図3】第1の線形回帰のグラフ表示である。
図4】第2の線形回帰のグラフ表示である。
図5A】本方法の実施形態に従って算出されたスピルオーバー拡散行列を示す図である。
図5B】従来のプロセスに従って算出されたスピルオーバー拡散行列を示す図である。
図6】AutoSpillアルゴリズムによるスピルオーバー補償のプロセスを示すフローチャートである。
図7】AutoSpillアルゴリズムとともに本方法の実施形態を実行するプロセスを示すフローチャートである。
図8】本方法の実施形態を従来のスピルオーバー補償アルゴリズムとともに実行するプロセスを示すフローチャートである。
図9】特定の実施形態によるフローサイトメータを示す図である。
図10】特定の実施形態によるプロセッサの一例の機能ブロック図である。
図11】特定の実施形態によるコンピューティングシステムのブロック図である。
図12】本方法の実施形態に従って、補償されたデータ及び補償されていないデータについて実施された回帰分析を示す図である。
図13】本方法に従って算出されたスピルオーバー拡散行列と、従来のスピルオーバー拡散行列との一致度を示す図である。
図14】蛍光フローサイトメータデータについて第1の線形回帰を実行した場合の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、第1の蛍光色素に対するデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割することを含む。実施形態では、方法はまた、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定することと、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることとを含む。第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるためのシステム及びコンピュータ可読媒体も提供される。
【0013】
本発明がより詳細に説明される前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、もちろん、変化し得ることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する対象となるためのものであり、限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0014】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びこの記載の範囲内の任意の他の記載される値又は中間値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、記載の範囲において任意の具体的に除外された限界に従って、同様に主題の発明に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0015】
ある特定の範囲は、「約」という用語の前に数値を伴って本明細書において提示される。「約」という用語は、本明細書において、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近いか、又は近似しているその数についての文字通りの裏付けを提供するために使用される。数が具体的に記載された数に近いか、又は近似しているかどうかを判定する際、記載されていない数に近いか、又はそれに近似している数は、それが提示される文脈において、具体的に記載された数の実質的等価物を提供する数であり得る。
【0016】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験で使用することができるが、代表的な例示的な方法及び材料がここで説明される。
【0017】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、あたかも各個々の刊行物又は特許が、参照することによって組み込まれるように具体的かつ個々に示されているかのように、参照することによって本明細書に組み込まれ、方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照によって本明細書に組み込まれ、それらの方法及び/又は材料に関連して刊行物が引用される。いかなる刊行物の引用も、出願日以前のその開示に関するものであり、本発明が、先行発明を理由に、そのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された公開日は、実際の公開日とは異なる場合があり、独立して確認される必要がある場合がある。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、任意選択の要素を除外するために起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙、又は「否定的な」制限の使用に関連して、「もっぱら」、「単独で」などの排他的な用語を使用するための先行する基礎として機能することが意図される。
【0019】
本開示を読むと当業者に明らかになるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の一部の実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又はそれと組み合わされ得る別個の構成要素及び特徴を有する。任意の記載された方法は、記載されたイベントの順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0020】
システム及び方法は、文法的な流動性のために機能的説明とともに記述されてきた、又は記述されるであろうが、米国特許法第112条に基づいて明確に記載されていない限り、特許請求の範囲は、必ずしも「手段」又は「ステップ」の限定の解釈によって限定されると解釈すべきではなく、法的均等論の下で特許請求の範囲によって提供される定義の意味及び等価物の完全な範囲を付与されるべきであり、特許請求の範囲が米国特許法第112条に基づいて明確に記載されている場合には、米国特許法第112条に基づく完全な法的等価物を付与されるべきであることを明確に理解されたい。
【0021】
蛍光フローサイトメータデータにおけるスピルオーバー拡散を特徴付けするための方法
上述したように、本開示の態様は、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるための方法を含む。実施形態では、方法は、蛍光フローサイトメータデータを受信することを含む。「蛍光フローサイトメータデータ」とは、粒子分析器における任意の数の蛍光検出器によって収集された、フローセル内の試料(例えば、細胞、粒子)のパラメータに関する情報を意味する。実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、2~40の異なる蛍光色素の範囲である複数の異なる蛍光色素からの信号を含み、例えば、3~30の異なる蛍光色素、例えば3~20の異なる蛍光色素を含み、3~5の異なる蛍光色素を含む場合もある。一部の実施形態では、複数の異なる蛍光色素は、2以上の異なる蛍光色素を含み、例えば、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、20以上、25以上及び30以上の異なる蛍光色素を含む。蛍光フローサイトメータデータは、以下に記載するものを含む、任意の好適なプロトコルによって得ることができる。
【0022】
一部の実施形態では、方法は、試料中の分析物(例えば、細胞、粒子)の決定されたパラメータ(例えば、蛍光)に基づいて1つ以上の集団クラスタを生成することを含む。本明細書で使用されるように、細胞又は他の粒子などの分析物の「集団」、又は「亜集団」は、一般的に、測定されたパラメータデータがデータ空間においてクラスタを形成するように、1つ以上の測定蛍光パラメータに関して特性(例えば、光学特性、インピーダンス、又は時間特性)を有する分析物のグループを指す。このように、集団はデータ中のクラスタとして認識される。逆に、各データクラスタは、一般的に、特定のタイプの細胞又は分析物の集団に対応すると解釈されるが、通常は、ノイズ又はバックグラウンドに対応するクラスタも観察される。クラスタは、次元のサブセット、例えば、測定された蛍光パラメータ(即ち、蛍光色素)のサブセットに関して定義することができ、これは、測定されたパラメータ又は試料の測定から抽出された特徴のサブセットのみにおいて異なる集団に対応する。
【0023】
一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来する強度信号を含む。言い換えれば、第1の蛍光色素から放出された光は、第2の蛍光色素から放出された光を収集するように構成された検出器によって収集される。序論の部分で説明したように、収集時点(即ち、1つ以上の蛍光検出器によって受信された時点)での蛍光フローサイトメータデータは、スピルオーバー拡散の影響を受ける。スピルオーバーとは、特定の蛍光色素を示す粒子変調光が、そのパラメータを測定するように構成されていない1つ以上の検出器によって受信される現象である。そのため、光は「スピルオーバー」して、オフターゲットの検出器によって検出される可能性がある。したがって、スピルオーバー拡散は、スピルオーバーによって引き起こされる蛍光フローサイトメータデータ中に存在するノイズである。そのため、一部の実施形態では、1つ以上の検出器による特定の波長の光の意図しない検出のため、未調整のフローサイトメータデータは誤りである。この場合、第1の蛍光色素から放出された光は、第2の蛍光色素からの光を検出するように構成された検出器に信号を加え、即ち、第1の蛍光色素はスピルオーバーを引き起こす。したがって、検出器によって収集された結果のフローサイトメータデータは、第1の蛍光色素から放出された光の存在に起因するスピルオーバー拡散の影響を受ける。
【0024】
フローサイトメータデータが受信された後、本発明の実施形態は、フローサイトメータデータを分割することを含む。本明細書に記載される「分割」は、データを複数の、別個の、グループに分配することを指す。一部の例では、蛍光フローサイトメータデータを分割することは、フローサイトメータデータを分位数に分配することを含む。「分位数」は、頻度分布を等しいグループに分割する一連の値の各々を記述するために、その従来の意味で参照され、各々が集団全体の同じ割合を含む。したがって、実施形態では、各分位数は、他の各分位数と同じ割合の蛍光フローサイトメータデータポイントを含む。特定の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に従って分割される。言い換えれば、個々の蛍光フローサイトメータデータポイントに関連する第1の蛍光色素から放出された光の強度は、そのデータポイントが分割される分位数を決定する。実施形態では、第1の蛍光色素に対するデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割することは、第1の蛍光色素について受光した同様の強度の光に関連するデータポイントを同じ分位数に分配することを含む。
【0025】
蛍光フローサイトメータデータは、任意の好適な数の異なる分位数に分配されてもよい。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータが分配される分位数の数は、蛍光フローサイトメータデータのサイズ、即ち、何個のデータポイントが存在するかに応じてスケーリングされてもよい。一部の実施形態では、より大きなフローサイトメータデータセットは、より多くの異なる分位数に分割され、一方、より小さなフローサイトメータデータセットは、より少ない異なる分位数に分割される。他の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、一般に、既定の数の分位数に分割される。そのような実施形態では、分位数の既定の数は、フローサイトメータデータセットの異なるサイズに適するように変更されてもよい。分位数の既定の数を変更することは、各分位数が各分位数におけるデータポイントの標準偏差を推定するために十分な数のデータポイントを有することを確保するために、フローサイトメータデータが分配される分位数の数を減少させることを伴ってもよい。特定の実施形態では、分位数の既定の数は256である。一部の実施形態では、より小さいフローサイトメータデータセットが提示された場合、分位数の数は、8分位数と低い数に減らされてもよい。そのため、一部の実施形態では、分位数の数は8~256の範囲である。
【0026】
蛍光フローサイトメータデータが分割された後、本発明の実施形態は、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を推定することを含む。「ゼロ調整」とは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定を反映するように調整された分位数に含まれるフローサイトメータデータポイントについて算出された標準偏差を意味する。ゼロ調整標準偏差を推定するために、本発明の実施形態は、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値を各分位数について算出することを含む。本発明の実施形態は、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差(σ)を算出することをさらに含む。一部の実施形態では、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差は、ロバスト標準偏差であり、即ち、標準偏差は外れ値効果に耐性がある。特定の実施形態では、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値及び第2の蛍光色素から放出された光の標準偏差は、その後、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差(σ)を推定するために使用される。
【0027】
実施形態では、σを推定することは、第1の線形回帰を実行することを含む。実施形態では、第1の線形回帰を実行することは、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値の平方根と、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差(σ)との間の線形フィットを算出することを含む。実施形態では、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値の平方根は、x軸に沿ってプロットされ、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差は、y軸に沿ってプロットされる。一部の実施形態では、第1の線形回帰は、通常の最小二乗回帰モデルで実行される。通常の最小二乗回帰モデルは、例えば、Hutcheson,G.D.(1999),The multivariate social scientist(pp.56-113)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、第1の線形回帰は、加重最小二乗モデルで実行される。加重最小二乗モデルは、例えば、Strutz,T.(2015),Data Fitting and Uncertainty:A practical introduction to weighted least squares and beyondに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。さらに他の実施形態では、第1の線形回帰は、ロバスト線形モデルによって実行される。ロバスト線形モデルは、例えば、Andersen,R.(2008),Modern methods for robust regressionに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
線形フィットが算出された後、本発明の実施形態は、線形フィットのy切片を決定することによって、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいてσを算出することを含む。言い換えれば、第1の蛍光色素から放出された光の蛍光の中央値がゼロであるとき(即ち、線がy軸と交差するとき)、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差は、σとされる。例えば、図3は、第1の線形回帰のグラフ表示である。第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値の平方根がx軸302に沿ってプロットされ、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差がy軸301に沿ってプロットされる。フローサイトメータデータポイント304について、線形フィット303が算出される。線形フィット303がy軸301と交差する値305は、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差σの推定値とされる。第1の線形回帰によってσが推定された後、本発明の実施形態は、σの推定値に基づいてゼロ調整標準偏差を計算することをさらに含む。そのような実施形態では、ゼロ調整標準偏差は、σとσ との差の平方根、即ち、
【数1】

によって決定される。
【0029】
本発明の態様は、スピルオーバー拡散係数を得ることをさらに含む。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散係数を得ることは、検出器によって第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータが、同じ検出器による第1の蛍光色素からの光の同時収集によって影響される程度を定量化することを含む。いくつかの例では、スピルオーバー拡散の影響を受ける蛍光フローサイトメータデータは、他の方法で観察されるものよりも高い信号強度によって影響される(即ち、スピルオーバー拡散ノイズは建設的である)。他の例では、スピルオーバー拡散の影響を受ける蛍光フローサイトメータデータは、他の方法で観察されるものよりも低い信号強度によって影響される(即ち、スピルオーバー拡散ノイズは破壊的である)。実施形態では、スピルオーバー拡散係数を得ることは、第2の線形回帰を実行することを伴う。そのような実施形態では、第2の線形回帰を実行することは、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを含む。実施形態では、ゼロ調整標準偏差はy軸に沿ってプロットされ、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値はx軸に沿ってプロットされる。その後、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きから、スピルオーバー拡散係数が得られる。一部の実施形態では、第2の線形回帰は、通常の最小二乗回帰モデルで実行される。他の実施形態では、第2の線形回帰は、加重最小二乗モデルで実行される。さらに他の実施形態では、第2の線形回帰は、ロバスト線形モデルによって実行される。特定の実施形態では、第1及び第2の線形回帰の両方は、加重最小二乗モデルによって実行される。他の実施形態では、第1及び第2の線形回帰の両方は、ロバスト線形モデルによって実行される。
【0030】
例えば、図4は、第2の線形回帰のグラフ表示である。ゼロ調整標準偏差がy軸401に沿ってプロットされ、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値がx軸402に沿ってプロットされる。線形フィット403は、蛍光フローサイトメータデータ404に基づいて算出される。スピルオーバー拡散係数は、線形フィット403の傾き405から得られる。
【0031】
その結果、実施形態では、本明細書に記載されるスピルオーバー拡散係数は、式1に従って計算され得る。
【0032】
【数2】
【0033】
式1に示すように、SSはスピルオーバー拡散係数であり、σは第2の蛍光色素から収集された光の標準偏差であり、σは第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の推定値であり、Fは第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値である。そのため、スピルオーバー拡散係数は、所定の蛍光検出器によって収集された蛍光フローサイトメータデータが、特定の蛍光色素に関連する光の存在によって影響される程度を測定するものである。言い換えれば、スピルオーバー拡散係数は、所定の検出器によって収集された関連する蛍光色素から放出された光によって蛍光フローサイトメータデータに寄与される誤差(即ち、ノイズ)を推定するものである。実施形態では、第1及び第2の蛍光色素の所定の対について、スピルオーバー拡散係数が高いほど、スピルオーバー拡散が大きい。実施形態では、スピルオーバー拡散係数は、特定の蛍光色素に対して陽性(即ち、関連するパラメータを示す)及び陰性(即ち、関連するパラメータを示さない)である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を行わずに得られる。
【0034】
一部の実施形態では、第1及び第2の線形回帰は、結合線形回帰に結合される。そのような実施形態では、結合線形回帰は、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差(σ)を算出し、同時にスピルオーバー拡散係数を得るように構成される。実施形態では、結合線形回帰は、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の二乗と、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出するように構成される。一部の実施形態では、結合線形回帰は、加重最小二乗モデルによって実行される。他の実施形態では、結合線形回帰は、ロバスト線形モデルによって実行される。
【0035】
本発明の実施形態はまた、各検出器で収集された蛍光フローサイトメータデータが各蛍光色素に関連する光の存在によってどのように影響されるかを決定することができるように、第1及び第2の蛍光色素の可能な各組み合わせについてスピルオーバー拡散係数を算出することを含む。別の言い方をすれば、本発明の態様は、スピルオーバー拡散係数が第1及び第2の蛍光色素の可能な各対に提供されるように、複数のスピルオーバー拡散係数を(例えば、上記のように)算出することを含む。実施形態では、第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数は、スピルオーバー拡散行列に結合される。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散行列は、特定の蛍光色素の対応する検出器による検出が他の蛍光色素からのスピルオーバーによってどのように影響されるかを実証する。実施形態では、本明細書に記載のスピルオーバー拡散係数を含むスピルオーバー拡散行列は、前述した蛍光色素に対して陽性又は陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を行わずに、他の各蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおける各蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散効果を特徴付ける。例えば、図5Aは、23種類の異なる蛍光色素についてスピルオーバー拡散係数(例えば、上記のように得られる)を提供するスピルオーバー拡散行列の一実施形態を示している。行列の各列は、23種類の異なる蛍光色素のうちの1つを検出するように構成された検出器に対応し、行列の各行は、検出されるフローサイトメータデータのパラメータに対応する。列と行とが交差するセルには、議論されている蛍光色素(即ち、第1の蛍光色素)が関連する検出器(即ち、第2の蛍光色素から放出された光の検出)に誤差を寄与する程度を示す、第1及び第2の蛍光色素の対について算出されたスピルオーバー拡散係数が配置される。蛍光色素がスピルオーバー拡散を引き起こす総程度は、その行の全ての値を合計することによって概算することができ、検出器がスピルオーバー拡散によって影響される総程度は、その列の全ての値を合計することによって算出することができる。一部の実施形態では、総拡散効果(即ち、蛍光フローサイトメータデータの特定のサブセットに対するスピルオーバー拡散の累積効果)を算出するために、スピルオーバー拡散係数が合計される。
【0036】
上述したように、実施形態では、本明細書に記載のスピルオーバー拡散行列には、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別を行わずに計算されたスピルオーバー拡散係数が配置される。しかしながら、一部の実施形態では、本明細書に記載されるスピルオーバー拡散行列には、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別を行って算出されたスピルオーバー拡散係数に近似するスピルオーバー拡散係数が配置され、即ち、それらはNguyen他(2013)により教示されたように算出されたスピルオーバー拡散係数に近似する。例えば、図5Bは、図5Aに示されるスピルオーバー拡散行列を算出するために使用される同じデータセットに基づいて算出される従来のスピルオーバー拡散行列(即ち、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団を識別することを必要とする)を示している。本明細書に記載されるように算出されたスピルオーバー拡散行列(図5Aに示す)を、従来のように算出されたスピルオーバー拡散行列(図5Bに示す)と比較すると、蛍光色素-蛍光色素の各対のスピルオーバー拡散の大きさに関して、2つの行列間の高いレベルの一致が観察される。
【0037】
本開示の態様は、スピルオーバー拡散を考慮するために蛍光フローサイトメータデータを調整することをさらに含む。「調整する」とは、フローセル中の照射される試料(例えば、細胞、粒子)中の蛍光色素の存在をより正確に定量化するように、データを変更することを意味する。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、スピルオーバー拡散に起因する誤差をもはや含まないように調整される。実施形態では、蛍光フローサイトメータデータを調整することは、スピルオーバー拡散調整集団を生成することを含む。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散調整集団を生成することは、フローサイトメータデータの関連する集団(複数可)からスピルオーバー拡散の大きさを減算すること、即ち、スピルオーバー拡散によって影響される信号の影響を打ち消すことを含む。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散の大きさは、スピルオーバー拡散行列から決定される。一部の実施形態では、フローサイトメータデータを調整することは、フローサイトメータデータの関連部分から総拡散効果を減算することを含む。
【0038】
本発明の一部の実施形態は、スピルオーバーについて蛍光フローサイトメータデータを補償することをさらに含む。序論の部分で記載したように、スピルオーバーは、特定の蛍光色素を示す粒子変調光が、そのパラメータを測定するように構成されていない1つ以上の検出器によって受信される現象である。したがって、補償は、蛍光フローサイトメータデータからこのオーバーラップを数学的に除去する。スピルオーバーについて蛍光フローサイトメータデータを補償するために、任意の好適な方法を使用することができる。一部の実施形態では、アンミキシングが実行されてもよい。アンミキシングでは、蛍光集団を分離し、各蛍光色素に関連するスペクトルを識別するために、単一染色された参照コントロールを用いる。他の実施形態では、スピルオーバー補償は、AutoSpillアルゴリズムによって実行される。AutoSpillは、FlowJo LLC(Becton Dickinsonの子会社)が開発した、スピルオーバーを算出し、ある蛍光色素から放出された光が他の蛍光色素について収集したフローサイトメータデータに信号を加える程度を数学的に特徴付けるスピルオーバー係数で構成された蛍光スピルオーバー行列を生成するアルゴリズムである。AutoSpillは、Roca他(2020),AutoSpill:a method for calculating spillover coefficients in high-parameter flow cytometry.bioRxivに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。AutoSpillは、細胞の自動ゲーティング、ロバスト線形回帰に基づく初期スピルオーバー行列の算出、及び誤差を低減するための反復改良を組み合わせたものである。AutoSpillは、一次チャネル(単色コントロールの染料に割り当てられたチャネル)の蛍光を従属変数、二次チャネル(即ち、他の検出器によって収集された光)の蛍光を独立変数として線形回帰の傾きからスピルオーバー係数を決定する。スピルオーバーがないことは、この回帰の傾きがゼロであることに対応する。さらに、AutoSpillは、スピルオーバー行列を反復的に改良し、補償を再算出し、それによって、スピルオーバー行列の誤差及び補償の誤差を無視できる大きさに減少させる。例えば、図6は、AutoSpillアルゴリズム600を表すサンプルワークフローを示している。ステップ601において、蛍光スピルオーバー行列は、(例えば、上述したように)線形回帰を用いてスピルオーバー係数を得ることによって算出される。ステップ602では、ステップ601で算出された蛍光スピルオーバー行列に基づいて、蛍光フローサイトメータデータが補償される。
【0039】
本発明の一部の実施形態では、(上述したように得られた)スピルオーバー拡散係数で構成されたスピルオーバー拡散行列は、スピルオーバーについて蛍光フローサイトメータデータを補償するとともに算出される。算出の実行は、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別が行われてもよいし、行われなくてもよい。一部の実施形態では、スピルオーバー補償とともにスピルオーバー拡散行列を算出することは、陽性集団及び陰性集団の識別を行わずに実行される。そのような実施形態では、スピルオーバー行列の算出及びスピルオーバー補償は、AutoSpillによって実行される。例えば、図7は、AutoSpillに関するワークフローを示している。AutoSpillは、陽性集団及び陰性集団の識別を不要にする線形回帰を実行するので、(上記の図1A図1B及び図2で説明した)ステップ101は不要である。そのため、AutoSpillは、蛍光スピルオーバー行列の算出(ステップ601)と、算出された蛍光スピルオーバー行列に基づく蛍光フローサイトメータデータの補償(ステップ602)とを実行する。サンプルが補償された後、本明細書に記載のスピルオーバー拡散係数を用いて、スピルオーバー拡散行列を算出する(ステップ701)。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、必要に応じて、スピルオーバーによって引き起こされるデータ中に存在する誤差を考慮するために追加的に調整されてもよい。
【0040】
他の実施形態では、スピルオーバー補償とともにスピルオーバー拡散行列を算出することは、陽性集団及び陰性集団を識別して実行される。このような実施形態では、スピルオーバー補償は、AutoSpill以外のアルゴリズムによって実行されてもよい。実施形態では、補償は、アンミキシングを介して実行される。例えば、図8は、フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団が識別される(ステップ101)ワークフローを示す。集団が識別された後、蛍光スピルオーバー行列の算出(ステップ102)と、蛍光スピルオーバー行列に基づく蛍光フローサイトメータデータの補償(ステップ103)とは、従来の方法で実施され得る。補償に続いて、本明細書に記載されるように、スピルオーバー拡散行列が算出される(ステップ701)。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、必要に応じて、スピルオーバーによって引き起こされるデータ中に存在する誤差を考慮するために追加的に調整されてもよい。ステップ701は、フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団を識別することを必要としないが、そのような識別は、スピルオーバー補償のために実行される。
【0041】
上記で要約したように、本発明の方法において使用される蛍光フローサイトメータデータは、任意の好適なプロトコルを用いて得ることができる。一部の実施形態では、粒子を有する試料を光源で照射し、試料からの光を検出して、検出された光の測定値に少なくとも部分的に基づいて、関連する粒子の集団を生成する。一部の例では、試料は、生体試料である。「生体試料」という用語は、全生物、植物、菌類、又は、特定の例では、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、気管支肺胞洗浄液、羊水、羊膜臍帯血、尿、膣液、及び精液中に見られ得る動物の組織、細胞、又は成分のサブセットを指すために、その従来の意味で使用される。したがって、「生体試料」は、天然生物又はその組織のサブセットの両方、並びに、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の切片、呼吸管、胃腸管、心血管、及び泌尿器管、涙液、唾液、乳、血液細胞、腫瘍、臓器を含むが、これらに限定されない、生物又はその組織のサブセットから調製されたホモジネート、溶解物、又は抽出物を指す。生体試料は、健康組織及び疾患組織(例えば、がん性、悪性、壊死性など)の両方を含む、任意のタイプの生体組織であり得る。特定の実施形態では、生体試料は、血液又はその誘導体、例えば、血漿、涙液、尿、精液などの液体試料であり、一部の例では、試料は、静脈穿刺又はフィンガースティックから取得された血液など、全血を含む血液試料である(血液は、アッセイの前に、防腐剤、抗凝固剤などの任意の試薬と組み合わされてもよく、組み合わされなくてもよい)。
【0042】
特定の実施形態では、試料のソースは、「哺乳動物(mammal)」又は「哺乳動物(mammalian)」であり、これらの用語は、肉食動物目(例えば、イヌ及びネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、及びラット)、並びに霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、及びサル)を含む、哺乳綱内の生物を示すために広く使用される。一部の例では、対象はヒトである。方法は、両方の性別のヒト対象から、発達の任意の段階(即ち、新生児、乳幼児、年少者、青年、成人)で取得された試料に適用され得、特定の実施形態では、ヒト対象は、年少者、青年、又は成人である。本発明は、ヒト対象からの試料に適用され得るが、以下に限定されるものではないが、鳥、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜、及びウマなどの他の動物対象からの(即ち、「非ヒト対象」の)試料に対しても実施され得ることを理解されたい。
【0043】
主題の方法を実施する際に、粒子を有する試料(例えば、フローサイトメータのフローストリーム中の)は、光源からの光で照射される。一部の実施形態では、光源は、広帯域光源であり、例えば、50nm以上、100nm以上、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上に及び、500nm以上に及ぶなど、広範囲の波長を有する光を放出する。例えば、ある好適な広帯域光源は、200nm~1500nmの波長を有する光を放出する。好適な広帯域光源の別の実施例は、400nm~1000nmの波長を有する光を放出する光源を含む。方法が広帯域光源で照射することを含む場合、対象の広帯域光源プロトコルは、以下に限定されないが、広帯域光源の中でも、特に、ハロゲンランプ、重水素アークランプ、キセノンアークランプ、安定化ファイバ結合広帯域光源、連続スペクトルを有する広帯域LED、超高輝度発光ダイオード、半導体発光ダイオード、広域スペクトルLED白色光源、マルチLED統合白色光源、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0044】
他の実施形態では、方法は、例えば、50nm以下、40nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下の範囲のような狭い波長範囲の光を放出する光源など、特定の波長又は狭い波長範囲を放出する狭帯域光源で照射することを含み、特定の波長の光(即ち、単色光)を放出する光源を含む。方法が狭帯域光源で照射することを含む場合、対象の狭帯域光源プロトコルは、狭波長LED、レーザダイオード、又は1つ以上の光学バンドパスフィルタ、回折格子、モノクロメータ、若しくはそれらの任意の組み合わせに結合される広帯域光源を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0045】
本発明の態様は、蛍光検出器を用いて蛍光を収集することを含む。蛍光検出器は、一部の例では、フローセル内の粒子に関連する蛍光分子、例えば標識された特異的結合メンバー(対象のマーカーに特異的に結合する標識抗体など)からの蛍光放出を検出するように構成されてもよい。特定の実施形態では、方法は、1つ以上の蛍光検出器を用いて試料からの蛍光を検出することを含み、蛍光検出器の数は、例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上であってもよく、25以上であってもよい。実施形態では、各蛍光検出器は、蛍光データ信号を生成するように構成される。試料からの蛍光は、200nm~1200nmの波長範囲のうちの1つ以上にわたって、各蛍光検出器によって独立して検出され得る。一部の例では、方法は、波長範囲にわたって試料からの蛍光を検出することを含み、該波長範囲は、例えば200nm~1200nm、例えば300nm~1100nm、例えば400nm~1000nm、例えば500nm~900nmであってもよく、600nm~800nmであってもよい。他の例では、方法は、1つ以上の特定の波長で各蛍光検出器で蛍光を検出することを含む。例えば、蛍光は、主題光検出システムにおける異なる蛍光検出器の数に応じて、450nm、518nm、519nm、561nm、578nm、605nm、607nm、625nm、650nm、660nm、667nm、670nm、668nm、695nm、710nm、723nm、780nm、785nm、647nm、617nm及びその任意の組み合わせの1つ以上で検出されてもよい。特定の実施形態では、方法は、試料中に存在する特定の蛍光色素の蛍光ピーク波長に対応する光の波長を検出することを含む。実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、1つ以上の蛍光検出器(例えば、1つ以上の検出チャネル)から受信され、該蛍光検出器(検出チャネル)の数は、例えば2以上、例えば3以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば6以上であってもよく、8以上であってもよい。
【0046】
蛍光フローサイトメータデータにおけるスピルオーバー拡散を特徴付けるためのシステム
本開示の態様は、蛍光フローサイトメータデータを分類するためのシステムを含む。実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、クラスタリングされ、スピルオーバー拡散について調整され、別個の集団が異なって分類されるように分割される。一部の実施形態では、システムは、蛍光フローサイトメータデータを生成するように構成された粒子分析器と、蛍光フローサイトメータデータを分析するように構成されたプロセッサとを含む。
【0047】
一部の実施形態では、主題粒子分析器は、フローセルと、フローセル内の粒子を照射するように構成されたレーザとを有する。実施形態では、レーザは、連続波レーザなどの任意の好適なレーザであってよい。例えば、レーザは、紫外ダイオードレーザ、可視ダイオードレーザ及び近赤外ダイオードレーザなどのダイオードレーザであってもよい。他の実施形態では、レーザは、ヘリウムネオン(HeNe)レーザであってもよい。一部の例では、レーザは、ヘリウムネオンレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、キセノンレーザ、窒素レーザ、COレーザ、COレーザ、アルゴンフッ素(ArF)エキシマレーザ、クリプトンフッ素(KrF)エキシマレーザ、キセノン塩素(XeCl)エキシマレーザ又はキセノンフッ素(XeF)エキシマレーザ又はそれらの組み合わせなどのガスレーザである。他の例では、対象のフローサイトメータは、スチルベン、クマリン、又はローダミンレーザなどの色素レーザを含む。さらに他の例では、対象のレーザは、ヘリウムカドミウム(HeCd)レーザ、ヘリウム水銀(HeHg)レーザ、ヘリウムセレン(HeSe)レーザ、ヘリウム銀(HeAg)レーザ、ストロンチウムレーザ、ネオン銅(NeCu)レーザ、銅レーザ又は金レーザ及びそれらの組み合わせなどの金属蒸気レーザを含む。さらに他の例では、主題フローサイトメータは、例えば、ルビーレーザ、Nd:YAGレーザ、NdCrYAGレーザ、Er:YAGレーザ、Nd:YLFレーザ、Nd:YVOレーザ、Nd:YCaO(BOレーザ、Nd:YCOBレーザ、チタンサファイアレーザ、ツリウムYAGレーザ、イッテルビウムYAGレーザ、イッテルビウムレーザ又はセリウムドープレーザ及びそれらの組み合わせなどの固体レーザを含む。
【0048】
本発明の態様はまた、前方散乱光を検出するように構成された前方散乱検出器を含む。主題フローサイトメータにおける前方散乱検出器の数は、必要に応じて変化してもよい。例えば、主題の粒子分析器は、1つ又は複数の前方散乱検出器を含んでもよく、前方散乱検出器の数は、例えば2以上、例えば3以上、例えば4以上であってもよく、5以上であってもよい。特定の実施形態では、フローサイトメータは、1つの前方散乱検出器を含む。他の実施形態では、フローサイトメータは、2つの前方散乱検出器を含む。
【0049】
収集された光を検出するための任意の好適な検出器が、本明細書に記載される前方散乱検出器に使用され得る。対象の検出器は、光学センサ又は検出器を含むことができるが、これらに限定されるものではない。該光学センサ又は検出器は、例えば、検出器の中でも、特に、アクティブピクセルセンサ(APS)、アバランシェフォトダイオード、画像センサ、電荷結合素子(CCD)、強化電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンタ、ボロメータ、焦電検出器、フォトレジスタ、光電池、フォトダイオード、光電子増倍管(PMT)、フォトトランジスタ、量子ドット光導電体又はフォトダイオード及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、収集された光は、電荷結合素子(CCD)、半導体電荷結合素子(CCD)、アクティブピクセルセンサ(APS)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサ又はN型金属酸化膜半導体(NMOS)画像センサで測定される。特定の実施形態では、検出器は、光電子増倍管であり、例えば、各領域のアクティブ検出表面積が0.01cm~10cmの範囲にある光電子増倍管であり、該表面積の範囲は、例えば0.05cm~9cm、例えば0.1cm~8cm、例えば0.5cm~7cmであってもよく、1cm~5cmであってもよい。
【0050】
主題の粒子分析器が複数の前方散乱検出器を含む場合、各検出器は同じであってもよく、検出器の集合は異なるタイプの検出器の組み合わせであってもよい。例えば、主題の粒子分析器が2つの前方散乱検出器を含む場合、一部の実施形態では、第1の前方散乱検出器はCCDタイプのデバイスであり、第2の前方散乱検出器(又は画像センサ)はCMOSタイプのデバイスである。他の実施形態では、第1及び第2の前方散乱検出器の両方は、CCDタイプのデバイスである。さらに他の実施形態では、第1及び第2の前方散乱検出器の両方は、CMOSタイプのデバイスである。さらに他の実施形態では、第1の前方散乱検出器はCCDタイプのデバイスであり、第2の前方散乱検出器は光電子増倍管(PMT)である。さらに他の実施形態では、第1の前方散乱検出器はCMOSタイプのデバイスであり、第2の前方散乱検出器は光電子増倍管である。さらに他の実施形態では、第1及び第2の前方散乱検出器の両方は光電子増倍管である。
【0051】
実施形態では、前方散乱検出器は、連続的に、又は離散的な間隔で光を測定するように構成される。一部の例では、対象の検出器は、収集された光の測定を連続的に行うように構成される。他の例では、対象の検出器は、離散間隔で測定するように構成され、0.001ミリ秒ごと、0.01ミリ秒ごと、0.1ミリ秒ごと、1ミリ秒ごと、10ミリ秒ごと、100ミリ秒ごとに光を測定してもよく、1000ミリ秒ごとに光を測定してもよく、又は何らかの他の間隔で光を測定してもよい。
【0052】
本発明の実施形態は、フローセルと前方散乱検出器との間に配置された光分散/分離器モジュールも含む。対象の光分散デバイスは、波長分離デバイスの中でも、特に、色ガラス、バンドパスフィルタ、干渉フィルタ、ダイクロイックミラー、回折格子、モノクロメータ及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、バンドパスフィルタは、フローセルと前方散乱検出器との間に配置される。他の実施形態では、1より多い数のバンドパスフィルタがフローセルと前方散乱検出器との間に配置され、該バンドパスフィルタの数は、例えば、2以上、3以上、4以上であってもよく、5以上であってもよい。実施形態では、バンドパスフィルタは、2nm~100nmの範囲の最小帯域幅を有し、該最小帯域幅の範囲は、例えば3nm~95nm、例えば5nm~95nm、例えば10nm~90nm、例えば12nm~85nm、例えば15nm~80nmであってもよく、20nm~50nmであってもよい。所定の波長の光が前方散乱検出器に到達し、他の波長の光が反射される。
【0053】
本発明の特定の実施形態は、光の側方散乱波長(例えば、粒子の表面及び内部構造から屈折及び反射された光)を検出するように構成された側方散乱検出器を含む。他の実施形態では、フローサイトメータは複数の側方散乱検出器を含み、該側方散乱検出器の数は、例えば2以上、例えば3以上、例えば4以上であってもよく、5以上であってもよい。
【0054】
収集された光を検出するための任意の好適な検出器が、本明細書に記載される側方散乱検出器に使用され得る。対象の検出器は、光学センサ又は検出器を含むことができるが、これらに限定されるものではない。該光学センサ又は検出器は、例えば、検出器の中でも、特に、アクティブピクセルセンサ(APS)、アバランシェフォトダイオード、画像センサ、電荷結合素子(CCD)、強化電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンタ、ボロメータ、焦電検出器、フォトレジスタ、光電池、フォトダイオード、光電子増倍管(PMT)、フォトトランジスタ、量子ドット光導電体又はフォトダイオード及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、収集された光は、電荷結合素子(CCD)、半導体電荷結合素子(CCD)、アクティブピクセルセンサ(APS)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサ又はN型金属酸化膜半導体(NMOS)画像センサで測定される。特定の実施形態では、検出器は、光電子増倍管であり、例えば、各領域のアクティブ検出表面積が0.01cm~10cmの範囲にある光電子増倍管であり、該表面積の範囲は、例えば0.05cm~9cm、例えば0.1cm~8cm、例えば0.5cm~7cmであってもよく、1cm~5cmであってもよい。
【0055】
主題の粒子分析器が複数の側方散乱検出器を含む場合、各側方散乱検出器は同じであってもよく、側方散乱検出器の集合は異なるタイプの検出器の組み合わせであってもよい。例えば、主題の粒子分析器が2つの側方散乱検出器を含む場合、一部の実施形態では、第1の側方散乱検出器はCCDタイプのデバイスであり、第2の側方散乱検出器(又は画像センサ)はCMOSタイプのデバイスである。他の実施形態では、第1及び第2の側方散乱検出器の両方はCCDタイプのデバイスである。さらに他の実施形態では、第1及び第2の側方散乱検出器の両方は、CMOSタイプのデバイスである。さらに他の実施形態では、第1の側方散乱検出器はCCDタイプのデバイスであり、第2の側方散乱検出器は光電子増倍管(PMT)である。さらに他の実施形態では、第1の側方散乱検出器はCMOSタイプのデバイスであり、第2の側方散乱検出器は光電子増倍管である。さらに他の実施形態では、第1及び第2の側方散乱検出器の両方は光電子増倍管である。
【0056】
本発明の実施形態は、フローセルと側方散乱検出器との間に配置された光分散/分離器モジュールも含む。対象の光分散デバイスは、波長分離デバイスの中でも、特に、色ガラス、バンドパスフィルタ、干渉フィルタ、ダイクロイックミラー、回折格子、モノクロメータ及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0057】
実施形態では、主題の粒子分析器は、1つ以上の蛍光波長を検出するように構成された蛍光検出器も含む。他の実施形態では、粒子分析器は複数の蛍光検出器を含み、該蛍光検出器の数は、例えば2以上、例えば3以上、例えば4以上、5以上、10以上、15以上であってもよく、20以上であってもよい。
【0058】
収集された光を検出するための任意の好適な検出器を、本明細書に記載される蛍光検出器に使用され得る。対象の検出器は、光学センサ又は検出器を含むことができるが、これらに限定されるものではない。該光学センサ又は検出器は、例えば、検出器の中でも、特に、アクティブピクセルセンサ(APS)、アバランシェフォトダイオード、画像センサ、電荷結合素子(CCD)、強化電荷結合素子(ICCD)、発光ダイオード、フォトンカウンタ、ボロメータ、焦電検出器、フォトレジスタ、光電池、フォトダイオード、光電子増倍管(PMT)、フォトトランジスタ、量子ドット光導電体又はフォトダイオード及びそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、収集された光は、電荷結合素子(CCD)、半導体電荷結合素子(CCD)、アクティブピクセルセンサ(APS)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサ又はN型金属酸化膜半導体(NMOS)画像センサで測定される。特定の実施形態では、検出器は、光電子増倍管であり、例えば、各領域のアクティブ検出表面積が0.01cm~10cmの範囲にある光電子増倍管であり、該表面積の範囲は、例えば0.05cm~9cm、例えば0.1cm~8cm、例えば0.5cm~7cmであってもよく、1cm~5cmであってもよい。
【0059】
主題の粒子分析器が複数の蛍光検出器を含む場合、各蛍光検出器は同じであってもよく、蛍光検出器の集合は異なるタイプの検出器の組み合わせであってもよい。例えば、主題の粒子分析器が2つの蛍光検出器を含む場合、一部の実施形態では、第1の蛍光検出器はCCDタイプのデバイスであり、第2の蛍光検出器(又は画像センサ)はCMOSタイプのデバイスである。他の実施形態では、第1及び第2の蛍光検出器の両方はCCDタイプのデバイスである。さらに他の実施形態では、第1及び第2の蛍光検出器の両方は、CMOSタイプのデバイスである。さらに他の実施形態では、第1の蛍光検出器はCCDタイプのデバイスであり、第2の蛍光検出器は光電子増倍管(PMT)である。さらに他の実施形態では、第1の蛍光検出器はCMOSタイプのデバイスであり、第2の蛍光検出器は光電子増倍管である。さらに他の実施形態では、第1及び第2の蛍光検出器の両方は光電子増倍管である。
【0060】
本発明の実施形態は、フローセルと蛍光検出器との間に配置された光分散/分離器モジュールも含む。対象の光分散デバイスは、波長分離デバイスの中でも、特に、色ガラス、バンドパスフィルタ、干渉フィルタ、ダイクロイックミラー、回折格子、モノクロメータ及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0061】
本開示の実施形態では、対象の蛍光検出器は、1つ以上の波長、例えば2つ以上の波長、例えば5つ以上の異なる波長、例えば10以上の異なる波長、例えば25以上の異なる波長、例えば50以上の異なる波長、例えば100以上の異なる波長、例えば200以上の異なる波長、例えば300以上の異なる波長で収集された光を測定するように構成され、400以上の異なる波長でフローストリーム中の試料によって放出された光を測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のフローサイトメータにおける2つ以上の検出器は、収集された光の同じ波長又は重複する波長を測定するように構成される。
【0062】
一部の実施形態では、対象の蛍光検出器は、ある波長範囲(例えば、200nm~1000nm)にわたって収集された光を測定するように構成される。特定の実施形態では、対象の検出器は、ある波長範囲にわたって光のスペクトルを収集するように構成される。例えば、粒子分析器は、200nm~1000nmの波長範囲のうちの1つ以上にわたって光のスペクトルを収集するように構成された1つ以上の検出器を含んでもよい。さらに他の実施形態では、対象の検出器は、1つ以上の特定の波長でフローストリーム中の試料によって放出された光を測定するように構成される。例えば、粒子分析器は、450nm、518nm、519nm、561nm、578nm、605nm、607nm、625nm、650nm、660nm、667nm、670nm、668nm、695nm、710nm、723nm、780nm、785nm、647nm、617nm及びそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上で光を測定するよう構成された1つ以上の検出器を含んでもよい。特定の実施形態では、1つ以上の検出器は、蛍光アッセイにおいて試料とともに使用されるものなど、特定のフルオロフォアと対になるように構成されてもよい。
【0063】
好適なフローサイトメトリシステムとしては、Ormerod(編),Flow Cytometry:A Practical Approach,Oxford Univ.Press(1997)、Jaroszeski他(編),Flow Cytometry Protocols,Methods in Molecular Biology No.91,Humana Press(1997)、Practical Flow Cytometry,3rd ed.,Wiley-Liss(1995)、Virgo他,(2012)Ann Clin Biochem.Jan;49(pt 1):17-28、Linden他,Semin Throm Hemost.2004 Oct;30(5):502-11、Alison他,J Pathol,2010 Dec;222(4):335-344、及びHerbig他,(2007)Crit Rev Ther Drug Carrier Syst.24(3):203-255に記載されているものを含み得るが、これらに限定されず、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。特定の例では、対象のフローサイトメトリシステムは、BD Biosciences FACSCanto(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences FACSCanto(商標)IIフローサイトメータ、BD Accuri(商標)フローサイトメータ、BD Accuri(商標)C6 Plusフローサイトメータ、BD Biosciences FACSCelesta(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences FACSLyric(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences FACSVerse(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences FACSymphony(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences LSRFortessa(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences LSRFortessa(商標)X-20フローサイトメータ、BD Biosciences FACSPresto(商標)フローサイトメータ、BD Biosciences FACSVia(商標)フローサイトメータ、並びに、BD Biosciences FACSCalibur(商標)セルソーター、BD Biosciences FACSCount(商標)セルソーター、BD Biosciences FACSLyric(商標)セルソーター、BD Biosciences Via(商標)セルソーター、BD Biosciences Influx(商標)セルソーター、BD Biosciences Jazz(商標)セルソーター、BD Biosciences Aria(商標)セルソーター、BD Biosciences FACSAria(商標)IIセルソーター、BD Biosciences FACSAria(商標)IIIセルソーター、BD Biosciences FACSAria(商標)Fusionセルソーター及びBD Biosciences FACSMelody(商標)セルソーター、BD Biosciences FACSymphony(商標)S6セルソーターなどが挙げられる。
【0064】
一部の実施形態では、主題のシステムは、米国特許第10,663,476号、同第10,620,111号、同第10,613,017号、同第10,605,713号、同第10,585,031号、同第10,578,542号、同第10,578,469号、同第10,481,074号、同第10,302,545号、同第10,145,793号、同第10,113,967、同第10,006,852号、同第9,952,076号、同第9,933,341号、同第9,726,527号、同第9,453,789号、同第9,200,334号、同第9,097,640号、同第9,095,494号、同第9,092,034号、同第8,975,595号、同第8,753,573;8,233,146号、同第8,140,300号、同第7,544,326号、同第7,201,875号、同第7,129,505号、同第6,821,740号、同第6,813,017号、同第6,809,804号、同第6,372,506号、同第5,700,692号、同第5,643,796号、同第5,627,040号、同第5,620,842号、同第5,602,039号、同第4,987,086号、同第4,498,766号に記載されたフローサイトメトリシステムであり、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
特定の例では、本発明のフローサイトメトリシステムは、無線周波数タグ付き発光(FIRE)を使用する蛍光画像化によってフローストリーム中の粒子を画像化するように構成され、Diebold他,Nature Photonics Vol.7(10);806-810(2013)に記載されているもの、並びに米国特許第9,423,353号、同第9,784,661号、同第9,983,132号、同第10,006,852号、同第10,078,045号、同第10,036,699号、同第10,222,316号、同第10,288,546号、同第10,324,019号、同第10,408,758号、同第10,451,538号、同第10,620,111号、及び米国特許出願公開第2017/0133857号、同第2017/0328826号、同第2017/0350803号、同第2018/0275042号、同第2019/0376895号、同第2019/0376894号に記載されているものが挙げられ、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
特定の実施形態では、主題のシステムはプロセッサをさらに含み、プロセッサは該プロセッサに動作可能に結合されたメモリを有し、メモリに命令が記憶されており、命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けさせる。実施形態では、プロセッサは、蛍光フローサイトメータデータを受信するように構成される。実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは複数の異なる蛍光色素からの信号を含み、異なる蛍光色素の数は、例えば2~20の範囲であってもよく、3~5であってもよい。一部の実施形態では、複数の異なる蛍光色素は、2以上の異なる蛍光色素を含み、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、及び20以上の異なる蛍光色素が含まれる。蛍光フローサイトメータデータは、任意の好適なプロトコルで得ることができる。
【0067】
一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来する強度信号を含む。言い換えれば、第1の蛍光色素から放出された光は、第2の蛍光色素から放出された光を収集するように構成された検出器によって収集される。序論の部分で説明したように、収集時点(即ち、1つ以上の蛍光検出器によって受信された時点)での蛍光フローサイトメータデータは、スピルオーバー拡散の影響を受ける。スピルオーバーとは、特定の蛍光色素を示す粒子変調光が、そのパラメータを測定するように構成されていない1つ以上の検出器によって受信される現象である。そのため、光は「スピルオーバー」して、オフターゲットの検出器によって検出される可能性がある。したがって、スピルオーバー拡散は、スピルオーバーによって引き起こされる、蛍光フローサイトメータデータ中に存在するノイズである。そのため、一部の実施形態では、1つ以上の検出器による特定の波長の光の意図しない検出のため、未調整のフローサイトメータデータは誤りである。この場合、第1の蛍光色素から放出された光は、第2の蛍光色素からの光を検出するように構成された検出器に信号を加え、即ち、第1の蛍光色素はスピルオーバーを引き起こす。したがって、検出器によって収集された結果のフローサイトメータデータは、第1の蛍光色素から放出された光の存在に起因するスピルオーバー拡散の影響を受ける。
【0068】
蛍光フローサイトメータデータが受信された後、プロセッサは、蛍光フローサイトメータデータを分割するように構成されてもよい。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータを分割することは、フローサイトメータデータを分位数に分配することを含む。実施形態では、各分位数は、他の各分位数と同じ割合の蛍光フローサイトメータデータポイントを含む。特定の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に従って分割される。言い換えれば、個々の蛍光フローサイトメータデータポイントに関連する第1の蛍光色素から放出された光の強度は、そのデータポイントが分割される分位数を決定する。実施形態では、第1の蛍光色素に対するデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割することは、第1の蛍光色素について受光した光の同様の強度に関連するデータポイントを同じ分位数に分配することを含む。
【0069】
実施形態では、プロセッサは、蛍光フローサイトメータデータを任意の好適な数の異なる分位数に分配するように構成される。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータが分配される分位数の数は、蛍光フローサイトメータデータのサイズ、即ち、何個のデータポイントが存在するかに応じてスケーリングされてもよい。一部の実施形態では、より大きなフローサイトメータデータセットは、より多くの異なる分位数に分割され、一方、より小さなフローサイトメータデータセットは、より少ない異なる分位数に分割される。他の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、一般に、既定の数の分位数に分割される。そのような実施形態では、分位数の既定の数は、フローサイトメータデータセットの異なるサイズに適するように変更されてもよい。分位数の既定の数を変更することは、各分位数が各分位数におけるデータポイントの標準偏差を推定するために十分な数のデータポイントを有することを確保するために、フローサイトメータデータが分配される分位数の数を減少させることを伴ってもよい。特定の実施形態では、分位数の既定の数は256である。一部の実施形態では、より小さいフローサイトメータデータセットが提示された場合、分位数の数は、8分位数と低い数に減らされてもよい。このように、一部の実施形態では、分位数の数は8~256の範囲である。
【0070】
蛍光フローサイトメータデータが分割された後、プロセッサは、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を推定するように構成されてもよい。ゼロ調整標準偏差を推定するために、本発明の実施形態は、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値を各分位数について算出することを含む。本発明の実施形態は、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差(σ)を算出することをさらに含む。一部の実施形態では、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差は、ロバスト標準偏差であり、即ち、標準偏差は外れ値効果に耐性がある。特定の実施形態では、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値及び第2の蛍光色素から放出された光の標準偏差は、その後、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差(σ)を推定するために使用される。
【0071】
実施形態では、σを推定することは、第1の線形回帰を実行することを含む。実施形態では、第1の線形回帰を実行することは、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値の平方根と、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差(σ)との間の線形フィットを算出することを含む。実施形態では、第1の蛍光色素から放出された光の強度の中央値の平方根は、x軸に沿ってプロットされ、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差は、y軸に沿ってプロットされる。一部の実施形態では、第1の線形回帰は、通常の最小二乗回帰モデルで実行される。他の実施形態では、第1の線形回帰は、加重最小二乗モデルで実行される。さらに他の実施形態では、第1の線形回帰は、ロバスト線形モデルによって実行される。
【0072】
線形フィットが算出された後、プロセッサは、線形フィットのy切片を決定することによって、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいてσを算出するように構成されてもよい。言い換えれば、第1の蛍光色素から放出された光の蛍光の中央値がゼロであるとき(即ち、線がy軸と交差するとき)、第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差は、σとされる。第1の線形回帰によってσが推定された後、本発明の実施形態は、σの推定値に基づいてゼロ調整標準偏差を計算することをさらに含む。そのような実施形態では、ゼロ調整標準偏差は、σとσ との差の平方根、即ち、
【数3】

によって決定される。
【0073】
プロセッサは、さらに、スピルオーバー拡散係数を得るように構成されてもよい。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散係数を得ることは、検出器によって第2の蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータが同じ検出器による第1の蛍光色素からの光の同時収集によって影響される程度を定量化することを含む。一部の例では、スピルオーバー拡散の影響を受ける蛍光フローサイトメータデータは、他の方法で観察されるものよりも高い信号強度によって影響される(即ち、スピルオーバー拡散ノイズは建設的である)。他の例では、スピルオーバー拡散の影響を受ける蛍光フローサイトメータデータは、他の方法で観察されるものよりも低い信号強度によって影響される(即ち、スピルオーバー拡散ノイズは破壊的である)。実施形態では、スピルオーバー拡散係数を得ることは、第2の線形回帰を実行することを伴う。そのような実施形態では、第2の線形回帰を実行することは、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを含む。実施形態では、ゼロ調整標準偏差はY軸に沿ってプロットされ(即ち、従属変数)、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値はX軸に沿ってプロットされる(即ち、独立変数)。その後、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きから、スピルオーバー拡散係数が得られる。一部の実施形態では、第2の線形回帰は、通常の最小二乗回帰モデルで実行される。他の実施形態では、第2の線形回帰は、加重最小二乗モデルで実行される。さらに他の実施形態では、第2の線形回帰は、ロバスト線形モデルによって実行される。特定の実施形態では、第1及び第2の線形回帰の両方は、加重最小二乗モデルによって実行される。他の実施形態では、第1及び第2の線形回帰の両方は、ロバスト線形モデルによって実行される。
【0074】
その結果、実施形態では、本明細書に記載のスピルオーバー拡散係数は、式1に従って計算され得る。
【0075】
【数4】
【0076】
式1に示すように、SSはスピルオーバー拡散係数であり、σは第2の蛍光色素から収集された光の標準偏差であり、σは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の推定値であり、Fは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値である。そのため、スピルオーバー拡散係数は、所定の蛍光検出器によって収集された蛍光フローサイトメータデータが、特定の蛍光色素に関連する光の存在によって影響される程度を測定する。言い換えれば、スピルオーバー拡散係数は、所定の検出器によって収集された関連する蛍光色素から放出された光によって蛍光フローサイトメータデータに寄与される誤差(即ち、ノイズ)を推定する。実施形態では、第1及び第2の蛍光色素の所定の対について、スピルオーバー拡散係数が高いほど、スピルオーバー拡散が大きい。実施形態では、スピルオーバー拡散係数は、特定の蛍光色素に対して陽性(即ち、関連するパラメータを示す)及び陰性(即ち、関連するパラメータを示さない)である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を行わずに得られる。
【0077】
一部の実施形態では、第1及び第2の線形回帰は、結合線形回帰に結合される。そのような実施形態では、結合線形回帰は、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差(σ)を算出し、同時にスピルオーバー拡散係数を得るように構成される。実施形態では、結合線形回帰は、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の二乗と、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出するように構成される。一部の実施形態では、結合線形回帰は、加重最小二乗モデルによって実行される。他の実施形態では、結合線形回帰は、ロバスト線形モデルによって実行される。
【0078】
プロセッサはまた、各検出器で収集された蛍光フローサイトメータデータが各蛍光色素に関連する光の存在によってどのように影響を受けるかを決定することができるように、第1及び第2の蛍光色素の可能な各組み合わせについてスピルオーバー拡散係数を算出するように構成されてもよい。別の言い方をすれば、本発明の態様は、スピルオーバー拡散係数が第1及び第2の蛍光色素の可能な各対に提供されるように、複数のスピルオーバー拡散係数を(例えば、上記のように)算出することを含む。実施形態では、第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数は、スピルオーバー拡散行列に結合される。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散行列は、特定の蛍光色素の対応する検出器による検出が他の蛍光色素からのスピルオーバーによってどのように影響されるかを実証する。実施形態では、本明細書に記載のスピルオーバー拡散係数を含むスピルオーバー拡散行列は、前述した蛍光色素に対して陽性又は陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を行わずに、他の各蛍光色素について収集された蛍光フローサイトメータデータにおける各蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散効果を特徴付ける。行列の各列は、異なる蛍光色素のうちの1つを検出するように構成された検出器に対応し、行列の各行は、検出されるフローサイトメータデータのパラメータに対応する。列と行とが交差するセルには、議論されている蛍光色素(即ち、第1の蛍光色素)が関連する検出器(即ち、第2の蛍光色素から放出された光の検出)に誤差を寄与する程度を示す、第1及び第2の蛍光色素の対について算出されたスピルオーバー拡散係数が配置される。蛍光色素がスピルオーバー拡散を引き起こす総程度は、その行の全ての値を合計することによって概算することができ、検出器がスピルオーバー拡散によって影響される総程度は、その列の全ての値を合計することによって算出することができる。一部の実施形態では、総拡散効果(即ち、蛍光フローサイトメータデータの特定のサブセットに対するスピルオーバー拡散の累積効果)を算出するために、スピルオーバー拡散係数が合計される。
【0079】
上述したように、実施形態では、本明細書に記載のスピルオーバー拡散行列には、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別を行わずに計算されたスピルオーバー拡散係数が配置される。しかしながら、一部の実施形態では、本明細書に記載されるスピルオーバー拡散行列には、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別を行って算出されたスピルオーバー拡散係数に近似するスピルオーバー拡散係数が配置され、即ち、それらはNguyen他(2013)により教示されたように算出されたスピルオーバー拡散係数に近似する。
【0080】
プロセッサは、スピルオーバー拡散を考慮するために蛍光フローサイトメータデータを調整するようにさらに構成されてもよい。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、スピルオーバー拡散に起因する誤差をもはや含まないように調整される。実施形態では、蛍光フローサイトメータデータを調整することは、スピルオーバー拡散調整集団を生成することを含む。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散調整集団を生成することは、フローサイトメータデータの関連する集団(複数可)からスピルオーバー拡散の大きさを減算すること、即ち、スピルオーバー拡散によって影響される信号の影響を打ち消すことを含む。特定の実施形態では、スピルオーバー拡散の大きさは、スピルオーバー拡散行列から決定される。一部の実施形態では、フローサイトメータデータを調整することは、フローサイトメータデータの関連部分から総拡散効果を減算することを含む。
【0081】
一部の実施形態では、プロセッサは、スピルオーバーについて蛍光フローサイトメータデータを補償するように構成される。蛍光フローサイトメータデータをスピルオーバーについて補償するために、任意の好適な方法を使用することができる。一部の実施形態では、アンミキシングが実行されてもよい。アンミキシングでは、蛍光集団を分離し、各蛍光色素に関連するスペクトルを識別するために、単一染色された参照コントロールを用いる。他の実施形態では、スピルオーバー補償は、AutoSpillアルゴリズムによって実行される。
【0082】
本発明の一部の実施形態では、(上述したように得られた)スピルオーバー拡散係数で構成されたスピルオーバー拡散行列は、スピルオーバーについて蛍光フローサイトメータデータを補償するとともに算出される。算出の実行は、関連する蛍光色素の各々に関する蛍光フローサイトメータデータの陽性集団及び陰性集団の識別が行われてもよいし、行われなくてもよい。一部の実施形態では、スピルオーバー補償とともにスピルオーバー拡散行列を算出することは、陽性集団及び陰性集団の識別を行わずに実行される。そのような実施形態では、スピルオーバー行列の算出及びスピルオーバー補償は、AutoSpillによって実行される。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、必要に応じて、スピルオーバーによって引き起こされるデータ中に存在する誤差を考慮するために追加的に調整されてもよい。
【0083】
他の実施形態では、スピルオーバー補償とともにスピルオーバー拡散行列を算出することは、陽性集団及び陰性集団を識別して実行される。このような実施形態では、スピルオーバー補償は、AutoSpill以外のアルゴリズムによって実行されてもよい。実施形態では、補償は、アンミキシングを介して実行される。一部の実施形態では、蛍光フローサイトメータデータは、必要に応じて、スピルオーバーによって引き起こされるデータ中に存在する誤差を考慮するために追加的に調整されてもよい。
【0084】
図9は、本発明の例示的な実施形態によるフローサイトメトリのためのシステム900を示す。システム900は、フローサイトメータ910と、コントローラ/プロセッサ990と、メモリ995とを含む。フローサイトメータ910は、1つ以上の励起レーザ915a~915c、集束レンズ920、フローチャンバー925、前方散乱検出器930、側方散乱検出器935、蛍光収集レンズ940、1つ以上のビームスプリッタ945a~945g、1つ以上のバンドパスフィルタ950a~950e、1つ以上のロングパス(「LP」)フィルタ955a~955b及び1つ以上の蛍光検出器960a~960fを含む。
【0085】
励起レーザ915a~915cは、レーザビームの形態で光を放出する。励起レーザ915a~915cから放出されるレーザビームの波長は、図9の例のシステムでは、それぞれ、488nm、633nm、及び325nmである。レーザビームは、まず、ビームスプリッタ945a及び945bのうちの1つ以上を経由して導かれる。ビームスプリッタ945aは、488nmの光を透過させ、633nmの光を反射させる。ビームスプリッタ945bは、紫外光(10~400nmの範囲の波長を有する光)を透過させ、488nm及び633nmの光を反射させる。
【0086】
レーザビームは、次に集束レンズ920に導かれ、フローチャンバー925内の試料の粒子が位置する流体ストリームの部分にビームを集束させる。フローチャンバーは、流体システムの一部であり、通常、一度に1つずつ、ストリーム中の粒子を、調査のために集束されたレーザビームに向ける。フローチャンバーは、ベンチトップサイトメータではフローセル、ストリームインエアーサイトメータではノズルチップを備えることができる。
【0087】
レーザビーム(複数可)からの光は、サイズ、内部構造、及び粒子上又は粒子内に付着又は自然に存在する1つ以上の蛍光分子の存在などの粒子の特性に応じて、様々な異なる波長での再放出を伴う回折、屈折、反射、散乱及び吸収によって試料内の粒子と相互作用する。蛍光放出は、回折光、屈折光、反射光、及び散乱光と同様に、ビームスプリッタ945a~945g、バンドパスフィルタ950a~950e、ロングパスフィルタ955a~955b、及び蛍光収集レンズ940のうちの1つ以上を介して前方散乱検出器930、側方散乱検出器935、及び1つ以上の蛍光検出器960a~960fのうちの1つ以上にルーティングされてもよい。
【0088】
蛍光収集レンズ940は、粒子及びレーザビームの相互作用から放出された光を収集し、その光を1つ以上のビームスプリッタ及びフィルタに向けてルーティングする。バンドパスフィルタ950a~950eなどのバンドパスフィルタは、狭い範囲の波長がフィルタを通過することを可能にする。例えば、バンドパスフィルタ950aは、510/20フィルタである。前の数字は、スペクトル帯域の中心を表す。後ろの数字は、スペクトル帯域の範囲を提供する。従って、510/20フィルタは、スペクトル帯域の中心から両側に10nmずつ、即ち500nmから520nmまで延在する。ショートパスフィルタは、指定された波長以下の波長の光を透過させる。ロングパスフィルタ955a~955bなどのロングパスフィルタは、所定の波長以上の波長の光を透過させる。例えば、670nmのロングパスフィルタであるロングパスフィルタ955aは、670nm以上の光を透過させる。フィルタは、特定の蛍光染料に対する検出器の特異性を最適化するために選択されることが多い。フィルタは、検出器に透過される光のスペクトル帯域が、蛍光染料の発光ピークに近くなるように構成することができる。
【0089】
ビームスプリッタは、異なる波長の光を異なる方向へ導く。ビームスプリッタは、ショートパス及びロングパスのようなフィルタ特性によって特徴付けることができる。例えば、ビームスプリッタ945gは620SPビームスプリッタであり、ビームスプリッタ945gが620nm以下の波長の光を透過させ、620nmより長い波長の光を異なる方向に反射させることを意味する。一実施形態では、ビームスプリッタ945a~945gは、ダイクロイックミラーなどの光学ミラーを備え得る。
【0090】
前方散乱検出器930は、フローセルを通る直接ビームから軸を外れて配置され、回折光、主に前方方向に粒子を通って又は粒子の周りを移動する励起光を検出するように構成される。前方散乱検出器によって検出される光の強度は、粒子の全体的なサイズに依存する。前方散乱検出器は、フォトダイオードを含むことができる。側方散乱検出器935は、粒子の表面及び内部構造からの屈折及び反射光を検出するように構成され、粒子の構造の複雑さが増すにつれて増加する傾向がある。粒子に関連する蛍光分子からの蛍光発光は、1つ以上の蛍光検出器960a~960fによって検出され得る。側方散乱検出器935及び蛍光検出器は、光電子増倍管を含むことができる。前方散乱検出器930、側方散乱検出器935及び蛍光検出器で検出された信号は、これらの検出器によって電子信号(電圧)に変換され得る。このデータは、試料に関する情報を提供することができる。
【0091】
動作中、サイトメータの動作は、コントローラ/プロセッサ990によって制御され、検出器からの測定データは、メモリ995に記憶され、コントローラ/プロセッサ990によって処理され得る。明示的に示されていないが、コントローラ/プロセッサ990は、検出器に結合されてそこから出力信号を受信し、また、フローサイトメータ910の電気的及び電気機械的な構成要素に結合されて、レーザ、流体フローパラメータなどを制御することができる。入力/出力(I/O)機能997がシステムにおいてまた提供されてもよい。メモリ995、コントローラ/プロセッサ990、及びI/O997は、全体がフローサイトメータ910の不可欠な部分として提供されてもよい。そのような実施形態では、ディスプレイは、システム900のユーザに実験データを提示するためのI/O機能997の一部も形成してもよい。あるいは、メモリ995及びコントローラ/プロセッサ990及びI/O機能の一部又は全部は、汎用コンピュータなどの1つ以上の外部装置の一部であってもよい。一部の実施形態では、メモリ995及びコントローラ/プロセッサ990の一部又は全部は、フローサイトメータ910と無線又は有線通信することができる。メモリ995及びI/O997と組み合わせたコントローラ/プロセッサ990は、フローサイトメータ実験の準備及び分析に関連する様々な機能を実行するように構成することができる。
【0092】
図9に示されるシステムは、フローセル925から各検出器までのビーム経路におけるフィルタ及び/又はスプリッタの構成によって定義される、6つの異なる波長帯域(本明細書では、所定の検出器の「フィルタウィンドウ」と呼ぶことがある)で蛍光を検出する6つの異なる検出器を含む。フローサイトメータ実験に使用される異なる蛍光分子は、それぞれの特徴的な波長帯域で光を放出する。実験に使用される特定の蛍光標識及びそれらに関連する蛍光発光帯域は、検出器のフィルタウィンドウと概して一致するように選択され得る。しかし、より多くの検出器が提供され、より多くの標識が利用されると、フィルタウィンドウと蛍光発光スペクトルとの完全な対応は不可能になる。一般に、特定の蛍光分子の発光スペクトルのピークは1つの特定の検出器のフィルタウィンドウ内にある可能性があるが、その標識の発光スペクトルの一部は他の1つ以上の検出器のフィルタウィンドウにも重なる。これは、スピルオーバーと呼ばれることがある。I/O997は、蛍光標識のパネルと、複数のマーカーを有する複数の細胞集団とを有するフローサイトメータ実験に関するデータを受信するように構成することができ、各細胞集団は、複数のマーカーのサブセットを有する。I/O997は、1つ以上のマーカーを1つ以上の細胞集団に割り当てる生体データ、マーカー密度データ、発光スペクトルデータ、標識を1つ以上のマーカーに割り当てるデータ、及びサイトメータ構成データを受信するように構成することも可能である。標識スペクトル特性及びフローサイトメータ構成データなどのフローサイトメータ実験データも、メモリ995に記憶することができる。コントローラ/プロセッサ990は、マーカーへの標識の1つ以上の割り当てを評価するように構成することができる。
【0093】
当業者であれば、本発明の実施形態に係るフローサイトメータは、図9に描かれたフローサイトメータに限定されないが、当技術分野において公知の任意のフローサイトメータを含むことができることを認識するであろう。例えば、フローサイトメータは、様々な波長で、様々な異なる構成の任意の数のレーザ、ビームスプリッタ、フィルタ、及び検出器を有し得る。
【0094】
図10は、データを分析し表示するための、プロセッサ1000の一例に関する機能ブロック図である。プロセッサ1000は、生物学的イベントのグラフィック表示を制御するための様々な処理を実施するように構成され得る。フローサイトメータ1002は、(例えば、上記のように)生体試料を分析することによって蛍光フローサイトメータデータを得るように構成され得る。本装置は、生物学的イベントデータをプロセッサ1000に提供するように構成され得る。データ通信チャネルは、フローサイトメータ1002とプロセッサ1000との間に含まれ得る。データは、データ通信チャネルを介してプロセッサ1000に提供することができる。プロセッサ1000は、(例えば、上述のような)プロットを含むグラフィカル表示をディスプレイデバイス1006に提供するように構成することができる。プロセッサ1000は、例えば、ディスプレイデバイス1006によって示された蛍光フローサイトメータデータの集団の周りに、プロットに重ねてゲートをレンダリングするようにさらに構成され得る。一部の実施形態では、ゲートは、単一のパラメータヒストグラム又は二変量プロット上に描かれた1つ以上のグラフィック対象領域の論理的組み合わせであり得る。一部の実施形態では、ディスプレイは、分析物パラメータ又は飽和検出器データを表示するために使用することができる。
【0095】
プロセッサ1000は、ゲート内のディスプレイデバイス1006上の蛍光フローサイトメータデータを、ゲート外の蛍光フローサイトメータデータ中の他のイベントとは異なるように表示するようにさらに構成され得る。例えば、プロセッサ1000は、ゲート内に含まれる蛍光フローサイトメータデータの色を、ゲート外の蛍光フローサイトメータデータの色と異なるようにレンダリングするように構成することができる。このようにして、プロセッサ1000は、データの各ユニークな集団を表すために、異なる色をレンダリングするように構成され得る。ディスプレイデバイス1006は、モニタ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、又はグラフィカルインターフェースを提示するように構成された他の電子デバイスとして実装することができる。
【0096】
プロセッサ1000は、第1の入力デバイスからゲートを識別するゲート選択信号を受信するように構成され得る。例えば、第1の入力デバイスは、マウス1010として実装することができる。マウス1010は、(例えば、カーソルがそこに配置されたときに所望のゲート上又は内でクリックすることによって)ディスプレイデバイス1006上に表示される、又はディスプレイデバイス1006を介して操作される集団を識別するプロセッサ1000へのゲート選択信号を開始することができる。一部の実装では、第1の入力デバイスは、キーボード1008、又はタッチスクリーン、スタイラス、光学検出器、又は音声認識システムなどの、プロセッサ1000に入力信号を提供するための他の手段として実装することができる。一部の入力デバイスは、複数の入力機能を含むことができる。そのような実装では、入力機能は、それぞれ入力デバイスとみなすことができる。例えば、図10に示すように、マウス1010は、マウスの右ボタンとマウスの左ボタンとを含むことができ、これらの各々は、トリガーイベントを生成することができる。
【0097】
トリガーイベントは、プロセッサ1000に、蛍光フローサイトメータデータが表示される方法、データのどの部分が実際にディスプレイデバイス1006上に表示されるかを変更させ、及び/又は分析のための対象集団の選択等の更なる処理への入力を提供させることができる。
【0098】
一部の実施形態では、プロセッサ1000は、マウス1010によってゲート選択が開始されたときを検出するように構成され得る。プロセッサ1000は、ゲート処理を容易にするためにプロット視覚化を自動的に修正するようにさらに構成することができる。この修正は、プロセッサ1000によって受信されたデータの特定の分布に基づくことができる。
【0099】
プロセッサ1000は、記憶装置1004に接続することができる。記憶装置1004は、プロセッサ1000からデータを受信して記憶するように構成することができる。記憶装置1004は、プロセッサ1000による蛍光フローサイトメータデータなどのデータの検索を可能にするようにさらに構成され得る。
【0100】
ディスプレイデバイス1006は、プロセッサ1000から表示データを受信するように構成され得る。表示データは、蛍光フローサイトメータデータのプロット及びプロットのセクションの輪郭を描くゲートから構成され得る。ディスプレイデバイス1006は、フローサイトメータ1002、記憶装置1004、キーボード1008、及び/又はマウス1010からの入力と関連して、プロセッサ1000から受信した入力に従って提示される情報を変更するようにさらに構成され得る。
【0101】
一部の実装では、プロセッサ1000は、ソートのための例示的なイベントを受信するためのユーザインターフェースを生成することができる。例えば、ユーザインターフェースは、例示的なイベント又は例示的な画像を受信するための制御を含むことができる。例示的なイベント若しくは画像又は例示的なゲートは、試料に対するイベントデータの収集の前に、又は試料の一部についてのイベントの初期セットに基づいて提供され得る。
【0102】
コンピュータ制御システム
本開示の態様は、コンピュータ制御システムをさらに含み、システムは、完全自動化又は部分的自動化のための1つ以上のコンピュータをさらに含む。一部の実施形態では、システムは、コンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体を有するコンピュータを含み、コンピュータプログラムは、コンピュータにロードされると、少なくとも第1及び第2の蛍光色素から収集した強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信する命令、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割する命令、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定する命令、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得る命令、スピルオーバー拡散行列に第1及び第2の蛍光色素の各対について算出したスピルオーバー拡散係数を組み入れる命令、及びスピルオーバー拡散行列に基づいて蛍光フローサイトメータデータを調整する命令を含む。
【0103】
実施形態では、システムは、FlowJo(登録商標)(Ashland、OR)などのフローサイトメータデータを分析するためのソフトウェア又は分析ツール内でデータを分析するように構成される。FlowJo(登録商標)は、FlowJo LLC(Becton Dickinsonの子会社)により開発された、フローサイトメータデータを分析するためのソフトウェアパッケージである。このソフトウェアは、フローサイトメータデータを管理し、それに関するグラフィカルなレポートを作成するように構成される(https://www.flowjo.com/learn/flowjo-university/flowjo)。初期データは、データ分析ソフトウェア又はツール(例えば、FlowJo(登録商標))内で、手動ゲーティング、クラスタ分析、又は他の計算技術などの適切な手段によって分析することができる。本システム、又はその一部は、FlowJo(登録商標)などのデータ分析用ソフトウェアのソフトウェア構成要素として実装することができる。これらの実施形態では、本開示によるコンピュータ制御システムは、FlowJo(登録商標)などの既存のソフトウェアパッケージのソフトウェア「プラグイン」として機能することができる。
【0104】
実施形態では、システムは、入力モジュール、処理モジュール、及び出力モジュールを含む。主題のシステムは、ハードウェアおよびソフトウェア構成要素の両方を含み得、ここで、ハードウェア構成要素は、1つ以上のプラットフォームの形態、例えば、サーバの形態をとり得、それにより、機能要素、すなわちシステムの特定のタスク(情報の入力および出力の管理、情報の処理など)の実行を行うシステムのそれらの要素は、システムを表す1つ以上のコンピュータプラットフォーム上およびその全体でソフトウェアアプリケーションを実行することによって実行され得る。
【0105】
システムは、ディスプレイ及びオペレータ入力デバイスを含み得る。オペレータ入力デバイスは、例えば、キーボード、マウスなどであってもよい。処理モジュールは、主題の方法のステップを実行するために記憶された命令を有するメモリにアクセスするプロセッサを含む。処理モジュールは、オペレーティングシステム、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)コントローラ、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、及び入出力コントローラ、キャッシュメモリ、データバックアップユニット、並びに多くの他のデバイスを含み得る。プロセッサは、市販のプロセッサであり得るか、又は利用可能であるか、若しくは利用可能になるであろう他のプロセッサのうちの1つであり得る。プロセッサは、オペレーティングシステムを実行し、オペレーティングシステムは、周知の様式でファームウェア及びハードウェアとインターフェースし、当技術分野で既知のように、Java、Perl、C++、他の高レベル又は低レベル言語、並びにそれらの組み合わせなどの様々なプログラミング言語で書かれ得る様々なコンピュータプログラムの機能をプロセッサが調整し、かつ実行するのを容易にする。オペレーティングシステムは、通常、プロセッサと協調して、コンピュータの他の構成要素の機能を調整し、実行する。オペレーティングシステムはまた、全て既知の技術に従って、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、並びに通信制御及び関連サービスを提供する。プロセッサは、任意の好適なアナログ又はデジタルシステムであり得る。一部の実施形態では、プロセッサは、第1及び第2の光信号に基づいて、ユーザが光源をフローストリームと手動で位置合わせすることを可能にするアナログ電子機器を含む。一部の実施形態では、プロセッサは、例えば、負帰還制御などのフィードバック制御を提供するアナログ電子機器を含む。
【0106】
システムメモリは、様々な既知又は将来のメモリ記憶デバイスのいずれかであり得る。例としては、任意の一般的に入手可能なランダムアクセスメモリ(RAM)、常駐ハードディスク若しくはテープなどの磁気媒体、リードライトコンパクトディスクなどの光学媒体、フラッシュメモリデバイス、又は他のメモリ記憶デバイスが挙げられる。メモリ記憶デバイスは、コンパクトディスクドライブ、テープドライブ、リムーバブルハードディスクドライブ、又はディスクドライブを含む、様々な既知又は将来のデバイスのいずれかであり得る。そのようなタイプのメモリ記憶デバイスは、通常、それぞれ、コンパクトディスク、磁気テープ、リムーバブルハードディスク、又はフロッピーディスクなどのプログラム記憶媒体(図示せず)から読み出し、及び/又はプログラム記憶媒体に書き込む。これらのプログラム記憶媒体のいずれか、又は現在使用されている、若しくは後に開発され得る他のものは、コンピュータプログラム製品とみなされ得る。理解されるように、これらのプログラム記憶媒体は、通常、コンピュータソフトウェアプログラム及び/又はデータを記憶する。コンピュータ制御ロジックとも称されるコンピュータソフトウェアプログラムは、通常、システムメモリ、及び/又はメモリ記憶デバイスと併せて使用されるプログラム記憶デバイスに記憶される。
【0107】
一部の実施形態では、制御ロジック(プログラムコードを含むコンピュータソフトウェアプログラム)が記憶されたコンピュータ使用可能媒体を備えるコンピュータプログラム製品が説明される。制御ロジックは、プロセッサによって実行されるとコンピュータ、プロセッサに、本明細書に記載された機能を実行させる。他の実施形態では、一部の機能は、例えば、ハードウェアステートマシンを使用して、主にハードウェア内に実装される。本明細書に記載される機能を実行するためのハードウェアステートマシンの実装は、関連技術分野の当業者には明らかであろう。
【0108】
メモリは、磁気、光学、又はソリッドステート記憶デバイス(磁気若しくは光学ディスク、又はテープ、又はRAM、又は固定型若しくは携帯型のいずれかの任意の他の好適なデバイスを含む)などの、プロセッサがデータを記憶し、取り出すことができる任意の好適なデバイスであり得る。プロセッサは、必要なプログラムコードを担持するコンピュータ可読媒体から好適にプログラムされた汎用デジタルマイクロプロセッサを含み得る。プログラミングは、通信チャネルを介してプロセッサにリモートで提供され得るか、又はメモリ又は何らかの他の携帯型若しくは固定型のコンピュータ可読記憶媒体などのコンピュータプログラム製品に、メモリと一緒にそれらのデバイスのいずれかを使用して、あらかじめ保存され得る。例えば、磁気又は光学ディスクは、プログラミングを担持し得、ディスクライタ/リーダによって読み取ることができる。本発明のシステムは、例えば、コンピュータプログラム製品の形態のプログラミング、上記の方法を実施する際に使用するためのアルゴリズムも含む。本発明によるプログラミングは、コンピュータ可読媒体、例えば、コンピュータによって直接読み取り及びアクセスすることができる任意の媒体に記録され得る。そのような媒体としては、以下に限定されないが、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、CD-ROMなどの光学記憶媒体、RAM及びROMなどの電気記憶媒体、ポータブルフラッシュドライブ、並びに磁気/光学記憶媒体などのこれらのカテゴリのハイブリッドが挙げられる。
【0109】
プロセッサはまた、リモート位置でユーザと通信するための通信チャネルへのアクセスを有し得る。リモート位置とは、ユーザがシステムと直接接触せず、広域ネットワーク(「WAN」)、電話ネットワーク、衛星ネットワーク、又は携帯電話(すなわち、スマートフォン)を含む任意の他の好適な通信チャネルに接続されたコンピュータなど、外部デバイスから入力マネージャに入力情報を中継することを意味する。
【0110】
一部の実施形態では、本開示によるシステムは、通信インターフェースを含むように構成され得る。一部の実施形態では、通信インターフェースは、ネットワーク及び/又は別のデバイスと通信するための受信機及び/又は送信機を含む。通信インターフェースは、以下に限定されないが、無線周波数(RF)通信(例えば、無線周波数識別(RFID)、Zigbee通信プロトコル、WiFi、赤外線、無線ユニバーサルシリアルバス(USB)、超広帯域(UWB)、Bluetooth(登録商標)通信プロトコル、及び符号分割多元接続(CDMA)又はモバイル通信のためのグローバルシステム(GSM)などのセルラー通信を含む、有線又は無線通信のために構成され得る。
【0111】
一実施形態では、通信インターフェースは、主題のシステムと、同様の補完的データ通信のために構成される(例えば、診療所又は病院環境における)コンピュータ端末などの他の外部デバイスとの間のデータ通信を可能にするために、例えば、USBポート、RS-232ポート、又は任意の他の好適な電気接続ポートなどの物理ポート又はインターフェースなど、1つ以上の通信ポートを含むように構成される。
【0112】
一実施形態では、通信インターフェースは、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)通信、又は任意の他の好適な無線通信プロトコルのために構成され、主題のシステムが、コンピュータ端末及び/又はネットワーク、通信可能な携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント、又はユーザが併せて使用し得る任意の他の通信デバイスなど、他のデバイスと通信することを可能にする。
【0113】
一実施形態では、通信インターフェースは、携帯電話ネットワーク、ショートメッセージサービス(SMS)、インターネットに接続されたローカルエリアネットワーク(LAN)上のパーソナルコンピュータ(PC)への無線接続、又はWiFiホットスポットでのインターネットへのWiFi接続を介して、インターネットプロトコル(IP)を利用するデータ転送のための接続を提供するように構成される。
【0114】
一実施形態では、主題のシステムは、例えば、802.11若しくはBluetooth(登録商標)RFプロトコル、又はIrDA赤外線プロトコルなどの共通標準を使用して、通信インターフェースを介してサーバデバイスと無線で通信するように構成される。サーバデバイスは、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)若しくはノートブックコンピュータなどの別のポータブルデバイス、又はデスクトップコンピュータ、アプライアンスなどのより大きなデバイスであってもよい。一部の実施形態では、サーバデバイスは、液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ、並びにボタン、キーボード、マウス、又はタッチスクリーンなどの入力デバイスを有する。
【0115】
一部の実施形態では、通信インターフェースは、上述の通信プロトコル及び/又は機構のうちの1つ以上を使用して、ネットワーク又はサーバデバイスと、主題のシステム内、例えば、任意選択のデータ記憶ユニット内に記憶されたデータを自動的に又は半自動で通信するように構成される。
【0116】
出力コントローラは、人間であろうと機械であろうと、ローカルであろうとリモートであろうと、ユーザに情報を提示するための様々な既知の表示デバイスのいずれかのためのコントローラを含み得る。表示デバイスのうちの1つが視覚情報を提供する場合、この情報は、通常、ピクチャ要素のアレイとして論理的及び/又は物理的に編成され得る。グラフィカルユーザインターフェース(GUI)コントローラは、システムとユーザとの間にグラフィカル入力及び出力インターフェースを提供するための、及びユーザ入力を処理するための、様々な既知又は将来のソフトウェアプログラムのいずれかを含み得る。コンピュータの機能要素は、システムバスを介して互いに通信し得る。これらの通信のいくつかは、ネットワーク又は他のタイプのリモート通信を使用する代替の実施形態で達成され得る。出力マネージャはまた、既知の技術に従って、例えば、インターネット、電話、又は衛星ネットワークを介して、リモート位置でユーザに、処理モジュールによって生成された情報を提供し得る。出力マネージャによるデータの提示は、様々な既知の技術に従って実施され得る。一部の例として、データは、SQL、HTML、若しくはXMLドキュメント、電子メール若しくは他のファイル、又は他の形態のデータを含み得る。データは、ユーザが追加のSQL、HTML、XML、又は他のドキュメント若しくはデータをリモートソースから取り出すことができるように、インターネットURLアドレスを含み得る。主題のシステム内に存在する1つ以上のプラットフォームは、通常、一般的にサーバと称されるコンピュータのクラスのものであろうが、任意のタイプの既知のコンピュータプラットフォーム又は将来開発されるタイプであってもよい。また一方、それらは、メインフレームコンピュータ、ワークステーション、又は他のコンピュータタイプであってもよい。それらは、任意の既知又は将来のタイプのケーブル配線、又はネットワーク化されているか、又はされていないかのいずれかの無線システムを含む、他の通信システムを介して接続され得る。それらは、同一場所に配置され得るか、又は物理的に分離され得る。場合により、選択されたコンピュータプラットフォームのタイプ及び/又は構成に応じて、様々なオペレーティングシステムが、コンピュータプラットフォームのいずれかで採用され得る。適切なオペレーティングシステムとしては、Windows NT、Windows XP、Windows 7、Windows 8、iOS、Sun Solaris、Linux(登録商標)、OS/400、Compaq Tru64 Unix、SGI IRIX、Siemens Reliant Unixなどが挙げられる。
【0117】
図11は、特定の実施形態による例示的なコンピューティングデバイス1100の一般的なアーキテクチャを示している。図11に示されるコンピューティングデバイス1100の一般的なアーキテクチャは、コンピュータハードウェア及びソフトウェア構成要素の配置を含む。しかしながら、実施可能な開示を提供するために、これらの概して従来の要素の全てを示す必要はない。図示されるように、コンピューティングデバイス1100は、処理ユニット1110と、ネットワークインターフェース1120と、コンピュータ可読媒体ドライブ1130と、入力/出力デバイスインターフェース1140と、ディスプレイ1150と、入力デバイス1160とを含み、これらは全て、通信バスによって互いに通信することができる。ネットワークインターフェース1120は、1つ以上のネットワーク又はコンピューティングシステムへの接続性を提供することができる。したがって、処理ユニット1110は、ネットワークを介して他のコンピューティングシステム又はサービスから情報及び命令を受信することができる。処理ユニット1110はまた、メモリ1170と通信し、入力/出力デバイスインターフェース1140を介して任意選択のディスプレイ1150に出力情報をさらに提供することができる。例えば、分析システムの非一時的メモリに実行可能な命令として記憶された分析ソフトウェア(例えばFlowJo(登録商標)などの、データ分析ソフトウェア又はプログラム)は、フローサイトメトリイベントデータをユーザに表示することができる。入力/出力デバイスインターフェース1140はまた、キーボード、マウス、デジタルペン、マイクロフォン、タッチスクリーン、ジェスチャ認識システム、音声認識システム、ゲームパッド、加速度計、ジャイロスコープ、又は他の入力デバイスなどの任意選択の入力デバイス1160からの入力を受け入れることができる。
【0118】
メモリ1170は、1つ以上の実施形態を実装するために処理ユニット1110が実行するコンピュータプログラム命令(一部の実施形態ではモジュール又は構成要素としてグループ化される)を含み得る。メモリ1170は、概して、RAM、ROM、及び/又は他の永続的、補助的若しくは非一時的コンピュータ可読媒体を含む。メモリ1170は、コンピューティングデバイス1100の一般的な管理及び動作において処理ユニット1110によって使用されるコンピュータプログラム命令を提供するオペレーティングシステム1172を記憶することができる。データは、データ記憶デバイス1190に記憶されてもよい。メモリ1170は、本開示の態様を実装するためのコンピュータプログラム命令及び他の情報をさらに含み得る。
【0119】
コンピュータ可読記憶媒体
本開示の態様は、主題の方法を実施するための命令を有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体をさらに含む。コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書に説明される方法を実践するためのシステムの完全自動化又は部分自動化のために、1つ以上のコンピュータ上で採用されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法による命令は、「プログラミング」の形態でコンピュータ可読媒体上にコード化することができ、本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行及び処理のために命令及びデータをコンピュータに提供することに関与する任意の非一時的記憶媒体を指す。適切な非一時的記憶媒体の例は、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、ソリッドステートディスク、及びネットワーク接続ストレージ(NAS)を含み、かかるデバイスがコンピュータの内部にあるか外部にあるかを問わない。一部の例では、命令は集積回路デバイス上で提供されてもよい。対象の集積回路デバイスは、特定の例では、再構成可能なフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)又は複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)を含んでもよい。情報を含むファイルは、コンピュータ可読媒体上に「記憶」することができ、ここで、「記憶」とは、コンピュータによって後日アクセス可能及び検索可能であるように情報を記録することを意味する。本明細書で説明されるコンピュータ実装方法は、任意の数のコンピュータプログラミング言語のうちの1つ以上で書くことができるプログラミングを使用して実行することができる。かかる言語として、例えば、Java((Sun Microsystems,Inc.、Santa Clara,CA)、Visual Basic(Microsoft Corp.,Redmond,WA)、及びC++(AT&T Corp.,Bedminster,NJ)、並びに任意の多くの他の言語が挙げられる。
【0120】
一部の実施形態では、対象のコンピュータ可読記憶媒体は、その上に記憶されたコンピュータプログラムを含み、コンピュータプログラムは、コンピュータにロードされると、少なくとも第1及び第2の蛍光色素から収集した強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信する命令、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に従って蛍光フローサイトメータデータを分割する命令、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定する命令、第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得る命令、スピルオーバー拡散行列に第1及び第2の蛍光色素の各対について算出したスピルオーバー拡散係数を組み入れる命令、及びスピルオーバー拡散行列に基づいて蛍光フローサイトメータデータを調整する命令を含む。
【0121】
実施形態では、システムは、FlowJo(登録商標)などのフローサイトメータデータを分析するためのソフトウェア又は分析ツール内でデータを分析するように構成される。初期データは、データ分析ソフトウェア又はツール(例えば、FlowJo(登録商標))内で、手動ゲーティング、クラスタ分析、又は他の計算技術などの適切な手段によって分析することができる。本システム、又はその一部は、FlowJo(登録商標)などのデータ分析用ソフトウェアのソフトウェア構成要素として実装することができる。これらの実施形態では、本開示によるコンピュータ制御システムは、FlowJo(登録商標)などの既存のソフトウェアパッケージのソフトウェア「プラグイン」として機能することができる。
【0122】
コンピュータ可読記憶媒体は、ディスプレイ及びオペレータ入力デバイスを有する1つ以上のコンピュータシステム上で採用されてもよい。オペレータ入力デバイスは、例えば、キーボード、マウスなどであってもよい。処理モジュールは、主題の方法のステップを実行するために記憶された命令を有するメモリにアクセスするプロセッサを含む。処理モジュールは、オペレーティングシステム、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)コントローラ、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、及び入出力コントローラ、キャッシュメモリ、データバックアップユニット、並びに多くの他のデバイスを含み得る。プロセッサは、市販のプロセッサであり得るか、又は利用可能であるか、若しくは利用可能になるであろう他のプロセッサのうちの1つであり得る。プロセッサは、オペレーティングシステムを実行し、オペレーティングシステムは、周知の様式でファームウェア及びハードウェアとインターフェースし、当技術分野で既知のように、Java、Perl、Python、C++、他の高レベル又は低レベル言語、並びにそれらの組み合わせなどの様々なプログラミング言語で書かれ得る様々なコンピュータプログラムの機能をプロセッサが調整し、かつ実行するのを容易にする。オペレーティングシステムはまた、全て既知の技術に従って、スケジューリング、入出力制御、ファイル及びデータ管理、メモリ管理、並びに通信制御及び関連サービスを提供する。
【0123】
ユーティリティ
主題の装置、方法及びコンピュータシステムは、生体試料中の分析物(例えば、細胞、粒子)のパラメータの決定において分解能及び精度を高めることが望ましい様々な用途に使用される。例えば、本開示は、スピルオーバー拡散によって影響されるデータの分析における使用を見出す。フローサイトメトリは、しばしば、複数の検出器による複数の蛍光パラメータの収集を伴うため、同じ光が複数の検出器によって検出されることにより、検出された蛍光強度が誤って増加する可能性がある。そのため、本開示は、複数の蛍光色素からの信号を含むフローサイトメータデータの分析中に用途を見出す。主題の装置、方法、及びコンピュータシステムは、特に、陽性集団及び陰性集団の定義が不十分なフローサイトメータデータにおけるスピルオーバー拡散を特徴付ける際に用途を見出す。一部の実施形態では、主題の方法及びシステムは、データに対する調整が、人間の入力を全く又はほとんど必要としないように、完全に自動化されたプロトコルを提供する。
【0124】
本開示は、多くの種類の分析物、特に、医療診断又は患者のケアのためのプロトコルに関連する分析物を特徴付けるために使用することができ、これには、タンパク質(遊離タンパク質と、細胞などの構造体の表面に結合したタンパク質との両方を含む)、核酸、ウイルス粒子などが含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、試料はインビトロ又はインビボのソースからのものであり得、試料は診断用試料であり得る。
【0125】
キット
本開示の態様は、キットをさらに含み、キットは、フロッピーディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROM、DVD-ROM、ブルーレイディスク、固体ディスク、及びネットワーク接続ストレージ(NAS)などの記憶媒体を含む。これらのプログラム記憶媒体のいずれか、又は現在使用されている若しくは後に開発される可能性のある他のものが、主題のキットに含まれ得る。実施形態では、プログラム記憶媒体は、蛍光フローサイトメータデータを集団にクラスタリングするための命令、集団のスピルオーバー拡散を決定するための命令、スピルオーバー拡散に基づいてフローサイトメータデータを調整するための命令、並びに(例えば、上記のように)調整されたフローサイトメータデータ間の分割を決定するための命令を含む。実施形態では、主題のキットにおいて提供されるコンピュータ可読媒体に含まれる命令、又はその一部は、FlowJo(登録商標)などのデータ分析用ソフトウェアのソフトウェア構成要素として実装され得る。これらの実施形態では、本開示によるコンピュータ制御システムは、FlowJo(登録商標)などの既存のソフトウェアパッケージのソフトウェア「プラグイン」として機能することができる。
【0126】
上記の構成要素に加えて、主題のキットは、例えば、FlowJo(登録商標)などの既存のソフトウェアパッケージにプラグインをインストールするための説明書を(一部の実施形態では)さらに含んでもよい。これらの説明書は、様々な形態で主題のキット内に存在してもよく、そのうちの1つ以上がキット内に存在してもよい。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、適切な媒体又は基材、例えば、情報が印刷される1枚又は複数枚の紙などの好適な媒体又は基板上、キットのパッケージ中、添付文書などの中の印刷情報としての形態である。これらの説明書のさらに別の形態は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、コンパクトディスク(CD)、ポータブルフラッシュドライブなどである。存在し得る、これらの説明書のさらに別の形態は、隔たったサイトで情報にアクセスするために、インターネットを介して使用され得るウェブサイトアドレスである。
【0127】
実験
データセット
MM1データセット(マウス脾臓細胞):単一染色コントロールの場合、C57Bl/6マウスの脾臓細胞をスライドグラスで破砕し、100μmメッシュで濾過し、赤血球を溶解させた。製造者の指示に従ってFoxp3転写因子染色バッファセット(eBioscience社製)で細胞の固定及び透過処理を行い、Fixable Viability Dye eFluor780(eBioscience社製)又は以下の抗体で4℃にて一晩染色した:抗CD4-BV421、抗CD24-BV510、抗CD3-BV570、抗CD4-BV605、抗CD3-BV650、抗CD4-BV711、抗CD4-BV785、抗CD3-RF488/抗CD4-RF488/抗TCRβ-RF488、抗CD4-PerCP-Cy5.5、抗CD4-PE-594、抗CD8-PE-Cy7、抗MHC-II-AF700(すべてBiolegend社製)、抗CD19-BV750、抗CD3-BB630-P/抗Thy1.2-BB630-P、抗CD45.2-BB660-P2/抗CD3-BB660-P2、抗TCRb-BB790-P/抗CD45-BB790-P、抗CD4-BUV395、抗CD4-BUV496、抗CD3-BUV563、抗CD3-BUV615-P、抗CD19-BUV661、抗CD21-BUV737、抗CD8-BUV805(すべてBD Biosciences社製)、抗CD4-PE/抗CD3-PE/抗CD8-PE、抗IgM-PE-Cy5、抗CD3-PE-Cy5.5、又は抗CD4-APC/抗CD8-APC(すべてeBioscience社製)。一部のフルオロフォアでは、同じ補償コントロールで複数の抗体を使用し、スラッシュで示した。試料はSymphonyフローサイトメータ(BD Biosciences社製)で取得した。
【0128】
HS1データセット(ヒトPBMC):末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll-Paque密度遠心分離(MP biomedicals社)を用いてヒトの健康なドナーのヘパリン化血液試料から分離し、凍結後、液体窒素で保存した。凍結したPBMCを解凍して計数し、各単色コントロールの細胞濃度を1×10に調整した。細胞をV底96ウェルプレートにプレーティングし、PBS(Fisher Scientific社製)で1回洗浄し、生/死マーカー及び表面マーカーに対する蛍光色素標識抗体で染色した:抗CD8-BUV805、抗CD4-BUV496、抗CD95-BUV737、抗CD4-BUV615-P、抗CD28-BB660-P、抗CD4-BB630、抗CD4-BV750-P、抗CD31-BV480、抗CXCR5-BV650、抗CD4-PE、抗CD4-PE-Cy5(すべてBD Biosciences社製);抗CD3-PerCP-Vio700(Miltenyi Biotec社製)、抗CD3-FITC、抗CD4-PE-Cy5.5、抗CCR7-PE-Cy7、抗CD4-eFluor780(すべてeBioscience社製);抗CD4-BV786、抗CD4-BV711、抗CD4-BV605、抗HLA-DR-BV570、抗CD127-BV421、抗CD4-PE/Dazzle 594、抗CD4-AF647(すべてBioLegend社製)。
【0129】
試料を4℃で60分間染色し、PBS/1% FBS(Tico Europe社製)で2回洗浄した後、Foxp3転写因子染色バッファセット(eBioscience社製)で製造者の指示に従って固定及び透過処理を行った。細胞を4℃で一晩保存した後、Divaソフトウェア(BD Biosciences)を搭載したSymphonyフローサイトメータで取得した。各試料について、最低5×10イベントを取得した。
【0130】
HS2データセット(ヒトPBMC):ヒトの健康なドナーの凍結PBMCをHS1セットと同様に処理し、生/死マーカー及び以下の表面マーカーに対する蛍光色素標識抗体で染色した:抗CD8-BUV805、抗CD4-BUV496、抗CD95-BUV737、抗CD28-BB660-P、抗ICOS-BB630、抗CXCR3-BV785、抗PD-1-BV750-P、抗CXCR5-BV650、抗CCR2-BV605、(すべてBD Biosciences社製);抗CD3-PerCP-Vio700(Miltenyi Biotec社製);抗CD45RA-FITC、抗CD14-PE-Cy5.5、Fixable Viability Dye eFluor780(すべてeBioscience社製);抗CD25-BV711、抗CD31-BV480、抗HLA-DR{BV570、抗CD127{BV421、抗CCR4-PE/Dazzle 594、抗CCR7-PE-Cy7(すべてBioLegend社製)。
【0131】
試料を4℃で60分間染色し、PBS/1% FBS(Tico Europe社製)で2回洗浄した後、Foxp3転写因子染色バッファセット(eBioscience社製)で製造者の指示に従って固定及び透過処理を行った。細胞を抗Ki67-BUV615-P、抗CTLA-4-PE-Cy5、抗RORt-PE(BD Biosciences社製)及び抗FOXP3-AF647(Biolegend社製)抗ヒト細胞内抗体で4℃にて一晩染色した。試料はSymphonyフローサイトメータ(BD Biosciences社製)で取得した。
【0132】
Be1データセット(ビーズ):UltraComp eBeads.Compensation Beads(ThermoFisher社製)は、Symphonyフローサイトメータでのマルチカラーフローサイトメトリ分析のための蛍光補償設定の最適化に使用された。UltraComp eBeads.は、以下の蛍光色素標識抗ヒト抗体で染色した:抗CD8-BUV805、抗CD4-BUV496、抗CD86-BUV737、抗CD141-BUV615-P、抗CD56-BUV563、抗CD16-BUV395、抗CD123-BB660-P、抗CD80-BB630、抗CD21-BV785、抗CD27-BV750-P、抗BAFF-R-BV650、抗CD94-BV605、抗CD40-APC-R700(すべてBD Bioscience社製);抗CD3-PerCP-Vio700(MiltenyBiotec);抗CD57-FITC、抗CD14-PE-Cy5.5、Fixable Viability Dye eFluor780(すべてeBioscience社製);抗CD24-BV711、抗CD19-BV480、抗HLA-DR-BV570、抗IgM-BV421、抗CD11c-APC、抗CD38-PE/Dazzle 594、抗CD10-PE-Cy5、抗IgD-PE-Cy7(すべてBiolegend社製)。
【0133】
初期ゲーティング
テッセレーションはパッケージtripack v.1.3-9を用いて実行され、密度推定及び空間演算はパッケージfields v.10.3及びsp v.1.4-1を用いて実行された。初期ゲートは、前方散乱及び側方散乱のイベントの二次元密度(FSC-A及びSSC-Aパラメータ)に対して各コントロールについて独立して算出された。対象集団をロバストに検出するために、2段階のテッセレーションを実行し、所望の密度ピークを分離した。まず、極値(1%と99%)でデータをトリミングした。次に、二次元密度のソフト推定で移動平均(ウィンドウサイズ3)によって、最大値を数値的に配置した。これらの密度最大値に対して最初のテッセレーションを実行し、FSC-AとSSC-Aとの両方の低い値に近いピークを無視して、最も高い最大値に対応するタイルを選択した。FSC-A/SSC-A平面上の矩形領域は、選択されたタイルに含まれるイベントの中央値及び平均絶対偏差の3倍を使用して選択された。この領域に対して、より細かい二次元密度推定を実行し、その後、再び最大値の数値検出(ウィンドウサイズ2)と最大値によるテッセレーションを実行した。最後に、密度が閾値(デフォルト値として最大値の33%)より大きく、かつ最も高い最大値を含むタイルに属するポイントを囲む凸包をゲートと定義した。
【0134】
方法
スピルオーバー拡散の特徴付けは、R v.3.6.3で、パッケージflowCore v.1.50.0、flow-Workspace v.3.32.0、ggplot2 v.3.3.0を用いて実施された。スピルオーバー拡散は、1つのパラメータにおける蛍光強度の、他のパラメータの蛍光強度の増加によって引き起こされる標準偏差の増加分と定義される。スピルオーバー拡散係数は、一次検出器に対応する単色コントロールの陽性集団と陰性集団との対について、一次検出器の蛍光強度と二次検出器の蛍光の標準偏差とを比較することにより算出することができる(Nguyen他(2013))。
【0135】
SSM係数
【数5】

の従来の式は、パラメータPからのスピルオーバーによってパラメータCに誘発される増分標準偏差を特徴付ける(Nguyen他,2013)。
【0136】
【数6】
【0137】
ここで、σpositiveとσnegativeはそれぞれ陽性集団及び陰性集団におけるC蛍光の標準偏差であり、Fpositive-Fnegativeは両者間のP蛍光強度の差である。従来のアルゴリズムでは、陽性集団及び陰性集団における蛍光の中央値及びロバスト標準偏差を用いて上記の量を推定するが、線形回帰のために、P蛍光(F)がゼロに等しいときの理論量を負とし、標準偏差は未知量(σ)である。この結果、Fをσに関連付ける式は次の通りであり、これは線形回帰でσを推定するのに適している。
【0138】
【数7】
【0139】
傾きβはスピルオーバー拡散係数
【数8】

と等しくないが、σがゼロに等しい特殊な場合を除く。
【0140】
回帰のためのデータを提供するために、パラメータPの単色-カラーコントロールのイベントは、分位数によって分割された。イベント数が多いコントロールの場合、256分位数を使用したが、標準偏差を確実に推定するのに十分なイベントが各分位数にあることを確認するために、8と少ない分位数を使用することもある。その他の各パラメータCについて、蛍光のロバスト標準偏差(84thパーセンタイルから中央値を引いたもの)をσの推定値として算出し、蛍光の中央値をFの推定値として算出した。F値は負及び/又は0に近い可能性があるため、単純な平方根関数の代わりに、回帰の前に、
【数9】

によって定義される平方根のような変換を経た。その結果、回帰はσの推定値を提供した。
【0141】
σの推定値を用いて、
【数10】

によって定義されるゼロ調整標準偏差σ'の推定値を各分位について算出し、これらの調整標準偏差が2次回帰のデータとなる。
【数11】

この回帰は、σの調整により強制的にゼロになるので、切片項なしで算出された。
【0142】
結果
ここでは、分位数分割及び線形回帰を使用して、Nguyen他によって観察された線形関係を推定した。これにより、元のアプローチの陽性集団及び陰性集団の上、下、又は中間にイベントを含めることができる。各単色コントロールのイベントを一次検出器で分位数に分割し、すべての二次検出器で各分位ビンについて自家蛍光レベルの標準偏差を推定した。次に、2つの線形回帰を用いて、まず蛍光がゼロのときの標準偏差を推定し、次にスピルオーバー拡散係数を推定した。F検定で有意でないと判断された係数は0に置き換えられ、負の係数も同様に0に置き換えられた。分位数の大部分は、実際には、従来の陽性集団及び陰性集団のサブサンプルであったが、追加の分位数を含めることにより、スピルオーバー拡散効果を推定する際の精度が向上した。なぜなら、これらのイベントはすべて、オンスケールかつフローサイトメータの線形範囲にあると仮定して、同じ線形関係に合致するからである(図12)。図12に描かれているように、コントロールセットMM1(左)及びHS1(右)について、各セットの1つの単色コントロールのゲートイベントにわたって回帰分析を実行し、十分に定義された陽性集団及び陰性集団はなく、主チャネル及び副チャネルは、それぞれ、y軸及びx軸に示されている。補償されていないデータポイントは青で、補償されたデータポイントは黒で表示されている。補償されていないデータからの回帰は破線で、補償されたデータからの回帰は実線で表示されている。
【0143】
その結果、補償行列が単色コントロールに存在する蛍光信号をうまく直交させたデータセットに対するスピルオーバー拡散は、正確に推定された(図13)。図13に示すように、結果は、コントロールセットMM1(左)及びHS1(右)について、本方法と通常のスピルオーバー拡散行列アルゴリズムとを比較し、両方の算出の差が小さいことを示す。値は、差の絶対値の対数スケールで、正の値(実線)と負の値(破線)とに分けて表示されている。
【0144】
調整ステップ(第1の回帰)では、初期推定値におけるσによるわずかな2次効果を除去し、より正確なSS係数の推定を可能にした。この調整ステップを省略した場合、つまり、βをスピルオーバー拡散係数とした場合、拡散効果は常に過小評価される。その場合、従来のSSMアルゴリズムとの比較では、明らかに負のバイアスが見られる(図14)。調整ステップを含めることで、そのバイアスが解消された。
【0145】
図14に示すように、コントロールセットMM1(左)及びHS1(右)について、本方法と通常のSSMアルゴリズムとで得られた結果を比較するが、本方法における第1の線形回帰が省略されたため、これにより得られる係数に系統的に下向きバイアスが生じる。スケール及びラインコードは、図13と同じである。
【0146】
添付の請求項にかかわらず、本開示は、以下の付記によっても定義される。
1.第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付ける方法であって、
第1の蛍光色素と第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に応じた数の分位数に分割すること、
第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定すること、及び
第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ること
を含む方法。
2.第1の線形回帰は、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間の線形フィットを算出することを含む、付記1に記載の方法。
3.ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間で算出された線形フィットのy切片を決定することによって、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差を算出すること、及び、決定されたy切片に基づいて、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を調整することをさらに含む、付記2に記載の方法。
4.第2の線形回帰は、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを含む、付記1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.スピルオーバー拡散係数を計算することは、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きを得ることを含む、付記4に記載の方法。
6.スピルオーバー拡散係数は式1に従って計算される、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
【数12】

ここで、
SSは、スピルオーバー拡散係数であり、
σは、第2の蛍光色素から収集された光の標準偏差であり、
σは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の推定値であり、
Fは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値である。
7.第1の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
8.第2の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
9.第1及び第2の線形回帰は加重最小二乗モデルである、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
10.第1及び第2の線形回帰はロバスト線形モデルである、付記1~6のいずれか一項に記載の方法。
11.第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の二乗と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出するように構成された結合線形回帰モデルに第1及び第2の線形回帰を結合することをさらに含む、付記1に記載の方法。
12.結合線形回帰モデルは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を算出し、同時にスピルオーバー拡散係数を得るように構成されている、付記11に記載の方法。
13.結合線形回帰モデルは、加重最小二乗モデル及びロバスト線形モデルから選択される、付記11又は12に記載の方法。
14.分位数の数は、蛍光フローサイトメータデータのサイズに基づいて決定される、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
15.分位数の数は8~256の範囲である、付記14に記載の方法。
16.第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信することをさらに含む、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
17.蛍光フローサイトメータデータは、複数の異なる蛍光色素から放出された光から収集される、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
18.複数の異なる蛍光色素は、3~30の異なる蛍光色素の範囲である、付記17に記載の方法。
19.複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対についてスピルオーバー拡散係数を計算することをさらに含む、付記17又は18に記載の方法。
20.複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数が、スピルオーバー拡散行列に結合される、付記17~19のいずれか一項に記載の方法。
21.スピルオーバー拡散行列に基づいてフローサイトメータデータを調整することをさらに含む、付記20に記載の方法。
22.蛍光スピルオーバー行列を算出することをさらに含む、前記付記のいずれか一項に記載の方法。
23.蛍光スピルオーバー行列は、特定の蛍光色素に対して陽性である蛍光フローサイトメータデータの集団と特定の蛍光色素に対して陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を必要とせずに決定される、付記22に記載の方法。
24.特定の蛍光色素に対して陽性である蛍光フローサイトメータデータの集団と特定の蛍光色素に対して陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団を識別することをさらに含む、付記22に記載の方法。
25.蛍光スピルオーバー行列に基づいて、スピルオーバーについてフローサイトメータデータを補償することをさらに含む、付記22~24のいずれか一項に記載の方法。
26.システムであって、
蛍光フローサイトメータデータを得るように構成された粒子分析器構成要素と、
プロセッサとを備え、プロセッサは、プロセッサに動作可能に結合されたメモリを備え、メモリに命令が記憶されており、命令がプロセッサによって実行されると、該プロセッサに、
第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に応じた数の分位数に分割すること、
第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位数について、第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定すること、及び
第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ること
をさせるシステム。
27.第1の線形回帰は、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間の線形フィットを算出することを含む、付記26に記載のシステム。
28.ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間で算出された線形フィットのy切片を決定することによって、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差を算出すること、及び
決定されたy切片に基づいて、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を調整することをさらに含む、付記27に記載のシステム。
29.第2の線形回帰は、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを含む、付記26~28のいずれか一項に記載のシステム。
30.スピルオーバー拡散係数を計算することは、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きを得ることを含む、付記29に記載のシステム。
31.スピルオーバー拡散係数は式1に従って計算される、付記26~30のいずれか一項に記載のシステム。
【数13】

ここで、
SSは、スピルオーバー拡散係数であり、
σは、第2の蛍光色素から収集された光の標準偏差であり、
σは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の推定値であり、
Fは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値である。
32.第1の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、付記26~31のいずれか一項に記載のシステム。
33.第2の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、付記26~32のいずれか一項に記載のシステム。
34.第1及び第2の線形回帰は加重最小二乗モデルである、付記26~31のいずれか一項に記載のシステム。
35.第1及び第2の線形回帰はロバスト線形モデルである、付記26~31のいずれか一項に記載のシステム。
36.第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の二乗と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出するように構成された結合線形回帰モデルに第1及び第2の線形回帰を結合することをさらに含む、付記26に記載のシステム。
37.結合線形回帰モデルは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を算出し、同時にスピルオーバー拡散係数を得るように構成されている、付記36に記載のシステム。
38.結合線形回帰モデルは、加重最小二乗モデル及びロバスト線形モデルから選択される、付記36又は37に記載のシステム。
39.分位数の数は、蛍光フローサイトメータデータのサイズに基づいて決定される、付記26~38のいずれか一項に記載のシステム。
40.分位数の数は8から256の範囲である、付記39に記載のシステム。
41.第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信することをさらに含む、付記26~40のいずれか一項に記載のシステム。
42.蛍光フローサイトメータデータは、複数の異なる蛍光色素から放出された光から収集される、付記26~41のいずれか一項に記載のシステム。
43.複数の異なる蛍光色素は、3~30の異なる蛍光色素の範囲である、付記42に記載のシステム。
44.複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対についてスピルオーバー拡散係数を計算することをさらに含む、付記42又は43に記載のシステム。
45.複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数は、スピルオーバー拡散行列に結合される、付記42~44のいずれか一項に記載のシステム。
46.スピルオーバー拡散行列に基づいてフローサイトメータデータを調整することをさらに含む、付記45に記載のシステム。
47.蛍光スピルオーバー行列を算出することをさらに含む、付記26~46のいずれか一項に記載のシステム。
48.蛍光スピルオーバー行列は、特定の蛍光色素に対して陽性である蛍光フローサイトメータデータの集団及び特定の蛍光色素に対して陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を必要とせずに決定される、付記47に記載のシステム。
49.特定の蛍光色素に対して陽性である蛍光フローサイトメータデータの集団、及び特定の蛍光色素に対して陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団を識別することをさらに含む、付記47に記載のシステム。
50.蛍光スピルオーバー行列に基づいて、スピルオーバーについてフローサイトメータデータを補償することをさらに含む、付記47~49のいずれか一項に記載のシステム。
51.方法によって第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるための命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、方法は、
第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素によって放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを、第1の蛍光色素に対する蛍光フローサイトメータデータの強度に応じた数の分位数に分割すること、
第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて、分割された各分位について第2の蛍光色素から収集された光の強度のゼロ調整標準偏差を第1の線形回帰で推定すること、及び
第2の蛍光色素について得られたフローサイトメータデータにおける第1の蛍光色素に由来するスピルオーバー拡散を特徴付けるために、ゼロ調整標準偏差からスピルオーバー拡散係数を第2の線形回帰で得ることを含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
52.第1の線形回帰は、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間の線形フィットを算出することを含む、付記51に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
53.ゼロ調整標準偏差を推定することは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値の平方根と第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差との間で算出された線形フィットのy切片を決定することによって、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から放出された光の強度の標準偏差を算出すること、及び、決定されたy切片に基づいて、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を調整することをさらに含む、付記52に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
54.第2の線形回帰は、分割された各分位数について、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出することを含む、付記51~53のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
55.スピルオーバー拡散係数を計算することは、ゼロ調整標準偏差と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間で算出された線形フィットの傾きを得ることを含む、付記54に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
56.スピルオーバー拡散係数は式1に従って計算される、付記51~55のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【数14】

ここで、
SSは、スピルオーバー拡散係数であり、
σは、第2の蛍光色素から収集された光の標準偏差であり、
σは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づく、第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の推定値であり、
Fは、第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値である。
57.第1の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、付記51~56のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
58.第2の線形回帰は、通常の最小二乗モデル、加重最小二乗モデル、及びロバスト線形モデルから選択される、付記51~57のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
59.第1及び第2の線形回帰は、加重最小二乗モデルである、付記51~56のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
60.第1及び第2の線形回帰はロバスト線形モデルである、付記51~56のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
61.第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差の二乗と第1の蛍光色素から収集された光の強度の中央値との間の線形フィットを算出するように構成された結合線形回帰モデルに第1及び第2の線形回帰を結合することをさらに含む、付記51に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
62.結合線形回帰モデルは、第1の蛍光色素から収集された光の強度がゼロであるという仮定に基づいて第2の蛍光色素から収集された光の強度の標準偏差を算出し、同時にスピルオーバー拡散係数を得るように構成されている、付記61に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
63.結合線形回帰モデルは、加重最小二乗モデル及びロバスト線形モデルから選択される、付記61又は62に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
64.分位数の数は、蛍光フローサイトメータデータのサイズに基づいて決定される、付記51~63のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
65.分位数は、8~256の範囲である、付記64に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
66.第1の蛍光色素及び第2の蛍光色素から放出された光から収集された強度信号を含む蛍光フローサイトメータデータを受信することをさらに含む、付記51~65のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
67.蛍光フローサイトメータデータは、複数の異なる蛍光色素から放出された光から収集される、付記51~66のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
68.複数の異なる蛍光色素は、3~30の異なる蛍光色素の範囲である、付記67に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
69.複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対についてスピルオーバー拡散係数を計算することをさらに含む、付記67又は68に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
70.複数の蛍光色素における第1及び第2の蛍光色素の各対について算出されたスピルオーバー拡散係数は、スピルオーバー拡散行列に結合される、付記67~69のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
71.スピルオーバー拡散行列に基づいてフローサイトメータデータを調整することをさらに含む、付記70に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
72.蛍光スピルオーバー行列を算出することをさらに含む、付記51~71のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
73.蛍光スピルオーバー行列は、特定の蛍光色素に対して陽性である蛍光フローサイトメータデータの集団及び特定の蛍光色素に対して陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団の識別を必要とせずに決定される、付記72に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
74.特定の蛍光色素に対して陽性である蛍光フローサイトメータデータの集団及び特定の蛍光色素に対して陰性である蛍光フローサイトメータデータの集団を識別することをさらに含む、付記72に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
75.蛍光スピルオーバー行列に基づいて、スピルオーバーについてフローサイトメータデータを補償することをさらに含む、付記72~74のいずれか一項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【0147】
上記の発明は、明確な理解のために例示及び例により多少詳しく説明されてきたが、当業者であれば、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正が行われ得ることが、容易に明らかである。
【0148】
したがって、上記は単に本発明の原理を例示するにすぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本発明の原理を具現化し、その精神及び範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されるであろう。さらに、本明細書に記載される全ての例及び条件付き文言は、主に、読者が、本発明の原理及び発明者が当該技術分野を促進するために寄与する概念を理解するのを助けることを意図し、かかる具体的に記載される例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその特定の例を記載する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図する。追加的に、かかる等価物は、構造にかかわらず、現在既知である等価物及び将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行するように開発された任意の要素の両方を含むことが意図される。さらに、本明細書に開示されるものは、かかる開示が特許請求の範囲に明示的に記載されるかどうかにかかわらず、公衆に捧げられることを意図するものではない。
【0149】
したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明される例示的な実施形態に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。特許請求の範囲において、米国特許法第112条(f)又は米国特許法第112条(6)は、特許請求の範囲におけるかかる制限の冒頭に「のための手段」という正確な語句又は「のためのステップ」という正確な語句が記載される場合にのみ、特許請求の範囲における制限のために呼び出されるものとして明示的に定義され、かかる正確な語句が特許請求の範囲における制限で使用されない場合、米国特許法第112(f)又は米国特許法第112条(6)は呼び出されない。
【0150】
関連出願への相互参照
米国特許法第119条(e)に従って、本出願は、2020年5月6日に出願された米国仮特許出願第63/020,758号及び2020年9月10日に出願された米国仮特許出願第63/076,611号の出願日の優先権を主張し、その出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】