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特表2023-525023リーシュマニア症の免疫予防剤および免疫治療剤としての細胞外小胞の使用
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  • 特表-リーシュマニア症の免疫予防剤および免疫治療剤としての細胞外小胞の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】リーシュマニア症の免疫予防剤および免疫治療剤としての細胞外小胞の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/56 20150101AFI20230607BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 39/008 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61K35/56
A61P33/02
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/008
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567441
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 TR2021050425
(87)【国際公開番号】W WO2021225551
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2020/06914
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】シャヒン,フィクレッティン
(72)【発明者】
【氏名】イスレク,ゼイネプ
(72)【発明者】
【氏名】ボズクルト,バトゥハン トゥルハン
(72)【発明者】
【氏名】キルバシュ,オウス カーン
(72)【発明者】
【氏名】ウシシク,メフメット ヒクメット
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA16
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB262
4C084ZB381
4C084ZB382
4C084ZC751
4C085AA03
4C085BA04
4C085DD23
4C085DD32
4C085DD41
4C085EE01
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085FF12
4C085FF14
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087AA05
4C087BB01
4C087CA04
4C087MA16
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA63
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB38
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、疾患リーシュマニア症における免疫治療および予防剤としての寄生虫に感染したマクロファージから得た細胞外小胞の使用に関する。本発明の目的は、リーシュマニア症の処置および予防における、72時間以内にリーシュマニア寄生虫および感染細胞に対するほぼ完全な活性を示すが、健常細胞に何ら副作用を示さない、薬物製剤の使用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄生虫感染マクロファージの培養培地から得て、免疫治療および予防剤としてリーシュマニア症に使用する細胞外小胞。
【請求項2】
次の種リーシュマニア種(Leishmania spp.)(リーシュマニア・アラビカ(L. Arabica)、リーシュマニア・アーチバルディ(L. archibaldi)、リーシュマニア・アリステデシ(L. aristedesi)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(L. braziliensis)、リーシュマニア・シャガシ(L. chagasi)、リーシュマニア・コロンビエンシス(L. colombiensis)、リーシュマニア・デアネイ(L. Deanei)、リーシュマニア・ドノバニ(L. donovani)、リーシュマニア・エンリエティ(L. enrietii)、リーシュマニア・エクアトレンシス(L. equatorensis)、リーシュマニア・フォラティニ(L. forattinii)、リーシュマニア・ガルンハミ(L. garnhami)、リーシュマニア・ゲルビル(L. gerbil)、リーシュマニア・グヤネンシス(L. guyanensis)、リーシュマニア・ヘレリ(L. herreri)、リーシュマニア・ヘルチギ(L. hertigi)、リーシュマニア・インファンタム(L. infantum)、リーシュマニア・キリッキー(L. killicki)、リーシュマニア・ラインソニ(L. lainsoni)、リーシュマニア・メジャー(L. major)、リーシュマニア・メキシカーナ(L. Mexicana)、リーシュマニア・ナイフィ(L. naiffi)、リーシュマニア・パナメンシス(L. panamensis)、リーシュマニア・ペルビナ(L. peruviana)、リーシュマニア・ピファノイ(L. pifanoi)、リーシュマニア・シャウィ(L. shawi)、リーシュマニア・タレントラエ(L. tarentolae)、リーシュマニア・トロピカ(L. tropica)、リーシュマニア・ツラニカ(L. turanica)、リーシュマニア・ベネゼレンシス(L. venezuelensis))、プラスモジウム種(Plasmadium spp.)(プラスモジウム・ファルシパルム(P. falciparum)、プラスモジウム・ビバックス(P. vivax)、プラスモジウム・オバレ(P. ovale))、シストソーマ種(Schistosoma spp.)、トキソプラズマ種(Toxoplasma spp.)(トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii))、トリパノソーマ・ブルセイ亜種(Trypanosoma brucei ssp.)を含む群から選択される少なくとも1個の寄生虫で感染させたマクロファージから得られる、請求項1の細胞外小胞。
【請求項3】
リーシュマニア・インファンタムがマクロファージに感染する寄生虫として選択される、請求項2による寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞。
【請求項4】
次の方法の少なくとも1個の手段により単離する:水性二相系(ATPS)での単離、累進的遠心機、超遠心分離機、スクロース勾配超遠心分離機、ポリマー沈殿、限外濾過、クロマトグラフィー方法での単離(親和性クロマトグラフィー(抗体およびペプチド親和性)、サイズ分離クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー))、マイクロビーズによる単離およびイオン電荷に従う沈殿(電荷ベースの沈殿)および加塩、請求項1~3の何れかの寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞。
【請求項5】
-細胞外小胞を単離する寄生虫の培養培地を採取する、
-培養培地から細胞残渣および寄生虫などの望ましくない物質を除去するために、2,000g~10,000gの速度で5~20分間遠心する、
-遠心後濾過により220nm以上のサイズの粒子を除去する、
-遠心分離により得た小胞-タンパク質混合物を、それを分離するためにPEG相およびDEX相からなる二相液体系に移す、
-PEG相の対タンパク質およびDEX相の対リン脂質構造膜の化学傾向を利用して、小胞から非小胞タンパク質、細胞脂肪および他の不純物を除去する、
-単離小胞を得る
工程を含む二相液体系による単離方法を介して単離される、請求項4による寄生虫感染細胞外小胞。
【請求項6】
請求項1~5の何れかによる寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を含むおよびエマルジョン系、生物学的および化学ナノ粒子(ポリマーナノ粒子、固体脂質ナノ粒子)、無機ナノ粒子(金属ナノ粒子)、脂質小胞系(リポソーム、ニオソームおよびエトソーム)、デンドリマー、ポリマー-薬物コンジュゲート、ミセルおよび炭素ナノチューブを含む群から選択される少なくとも1個のナノ担体系を含む、医薬組成物。
【請求項7】
活性物質として抗寄生虫および/または抗新生物活性を示す活性化合物およびそれらの二成分および三成分組み合わせを含む群から選択される少なくとも1個の活性化合物を含む、請求項6の医薬組成物。
【請求項8】
抗寄生虫活性を示す活性化合物としてニタゾキサニド、メラルソプロール、エフロルニチン、メトロニダゾール、チニダゾール、ミルテホシン、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、チアベンダゾール、ジエチルカルバマジン、イベルメクチン、ニクロサミド、プラジカンテル、アルベンダゾール、リファンピシン、アンホテリシンB、フマギリン、フラゾリドン、ニフルセミゾン、オルニダゾール、パロモマイシン硫酸塩、ペンタミジン、ピリメタミン、フェンベンダゾール、トリクラベンダゾール、フルベンダゾール、アバメクチン、スラミン、レバミソール、オキシクロザニド、モネパンテル、デルクアンテル、尿素スチバミン、スチボグルコン酸ナトリウム、アンチモン酸メグルミン、パロモマイシン、フルコナゾールならびにそれらのおよび二成分または三成分組み合わせおよび封入体を含む群から選択される少なくとも1個の薬剤を含む、請求項7の医薬組成物。
【請求項9】
抗新生物活性を示す活性化合物としてシクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、カペシタビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビン、ペメトレキセド、マイトマイシン、ブレオマイシン、エピルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、パクリタキセル、イリノテカン、ドセタキセル、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、トラスツズマブ、デノスマブ、リツキシマブ、スニチニブ、ゾレドロン酸、アビラテロン、アナストロゾール、ビカルタミド、エキセメスタン、ゴセレリン、メドロキシプロゲステロン、オクトレオチド、タモキシフェン、ベンダムスチン、カルムスチン、クロラムブシル、ロムスチン、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、フルダラビン、ラルチトレキセド、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、エリブリン、トポテカン、ビンブラスチン、ビノレルビン、アファチニブ、アフリベルセプト、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、インターフェロン、イピリムマブ、ラパチニブ、ニボルマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ソラフェニブ、トラスツズマブエムタンシン、テムシロリムス、ベムラフェニブ、イバンドロン酸、パミドロン酸、ベキサロテン、ブセレリン、シプロテロン、デガレリクス、フォリン酸、フルベストラント、ランレオチド、レナリドマイド、レトロゾール、ロイプロレリン、メゲストロール、メスナ、サリドマイド、ビンクリスチンならびにそれらのおよび二成分または三成分組み合わせおよび封入体を含む群から選択される少なくとも1個の薬剤を細胞外小胞および/またはナノ担体系と組み合わせて含む、請求項7の医薬組成物。
【請求項10】
寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、3D-MPLを含むトコフェロールエマルジョン系、コレステロール、CGオリゴヌクレオチドの少なくとも1個;またはこれらの2個以上の組み合わせと組み合わせて含む、請求項6~9の何れかの医薬組成物。
【請求項11】
処置のための投与方法が非経腸、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、局所、髄腔内、鼻腔内、脳室内、眼、膣、尿道、経皮、舌下、くも膜下、直腸、歯周、神経周囲、硬膜外、関節周囲、経口、鼓室内、腫瘍内、肺内、滑膜内、筋肉内、卵巣内、髄膜内、海綿体内、冠動脈内、脳内、硬膜外、皮膚、頬側、歯を含む群から選択される少なくとも1個の投与方法を含む、請求項6~10の何れかの医薬組成物。
【請求項12】
アジュバントとしてリーシュマニア症の処置に使用するための、寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、3D-MPLを含むトコフェロールエマルジョン系、コレステロール、CGオリゴヌクレオチドの少なくとも1個;またはこれらの2個以上の組み合わせに取り込むことにより形成される、請求項6~11の何れかによる医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疾患リーシュマニア症における免疫治療および予防剤としての寄生虫に感染したマクロファージから得た細胞外小胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
リーシュマニア症は、リーシュマニア原虫寄生虫に感染した雌スナバエの刺咬により、ヒトに伝染する一群のベクター媒介疾患に与えられた一般名である。従って、スナバエに感染するとき無鞭毛型である該寄生虫は、ハエの消化器系において前鞭毛型として発育し、ハエが刺咬した動物またはヒトに前鞭毛型として伝染する。前鞭毛型は体内のマクロファージに感染し、マクロファージで無鞭毛型に変わったとき、疾患を引き起こす。
【0003】
世界保健機関によると、リーシュマニア症は、世界の60を超える国、特にトルコおよび周辺地帯を含む南欧諸国、中東諸国および北アフリカ諸国で広くみられる。リーシュマニア症の1タイプとして知られる内臓リーシュマニア症(VL)は、俗に地方名カラアザールで知られ、処置されないならば、2年以内に死に至り得る。リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)は、トルコ地帯で本疾患を引き起こし、VLを引き起こし得る主寄生虫種である。
【0004】
他の寄生虫疾患と同様、化学療法はリーシュマニア症の処置の最も有効な方法である。しかしながら、抗寄生虫化合物の高毒性および時間と共に薬物に対して寄生虫により獲得される耐性は、化学療法の適応性を制限する。このような感染症における慣用治療の改善は、低毒性でより有効かつ選択的な薬物または薬物製剤に対する顕著な要請を示している。処置方法の欠点により、科学者はリーシュマニア症における新規方法に挑戦することを強いられてきた。これらの挑戦の中で、エクソソーム類が有効な結果をもたらしている。
【0005】
細胞外小胞は、物質の細胞間輸送に関与し、少なくとも1個の脂質二重層により細胞質液から分離される小嚢である。細胞外小胞の一つであるエクソソームは、原核生物から高等真核生物に至る多くの生物および植物で遊離される、種々のサイズの脂質二重層膜を含む小胞である。これら小胞の重要性は、他の細胞の細胞機能に影響する情報を伝達する伝達する能力にある。エクソソームを介するシグナル伝達は、タンパク質、脂質、核酸および糖からなる多くの異なるカテゴリーの生体分子により実施される。エクソソームは、産生された細胞の表面タンパク質を運搬するため、インビボ系では、それらが送達された細胞のタイプを標的とする。これらの性質により、エクソソームは、薬物、生理活性物質および遺伝子療法のための核酸の運搬に適する。エクソソームの他の特徴的な態様は、運搬するシグナルおよび積荷が産生された細胞と現時点での細胞の生理的状態に固有または特異的であることである。異なる生物のエクソソーム、同じ生物の異なるタイプの細胞のエクソソームおよび異なる状態の同じ細胞のエクソソームは、異なる性質を示す。
【0006】
各細胞は、各々の目的でエクソソームを産生する。免疫療法における、シグナル伝達経路に関与するエクソソームの使用は、特に免疫系を標的とする疾患の研究における、新規方法として注目されている。これらの研究の範囲内で、異なる細胞群(真核生物および原核生物)から単離されたエクソソームが免疫応答の制御に使用される。寄生虫感染症において、病原性微生物により産生されるエクソソームが、感染の発症および進行ならびに宿主免疫細胞との相互作用に果たす役割が、最近、感染症の処置および予防に使用されている。
【0007】
中国特許CN109890964(当分野で知られる出願)は、細胞外小胞および眼疾患処置のための眼組織への治療剤の送達のためのその使用を開示する。
【0008】
中国特許CN1646147A(当分野で知られる出願)は、全身性に産生された免疫応答を特定の臓器または組織にターゲティングするための方法および組成物を開示する。
【0009】
国際特許WO2018101782(当分野で知られる出願)は、T細胞を刺激するためのエクソソームおよびその医薬用途を開示する。
【0010】
国際特許WO201389738(当分野で知られる出願)は、樹状細胞、Bリンパ球またはマクロファージなどの抗原提示細胞から単離することにより産生され、リーシュマニア症の処置に使用され得る、エクソソームを産生する方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多くの他の寄生虫疾患と同様、化学療法はリーシュマニア症の処置の最も有効な方法である。しかしながら、抗寄生虫化合物の高毒性および時間と共に薬物に対して寄生虫により獲得される耐性は、化学療法の適応性を制限する。このような感染症における慣用治療の改善は、低毒性でより有効かつ選択的な薬物または薬物製剤に対する顕著な要請を示している。処置方法の欠点により、科学者はリーシュマニア症における新規方法に挑戦することを強いられてきた。これらの挑戦の中で、エクソソーム類が有効な結果をもたらしている。
【0012】
特に疾患カラアザール(VL)の処置は、五価アンチモン剤に多く依存している。この化学療法の成功を限定的とする主な問題は、アンチモン剤に対する寄生虫の耐性の増加である。さらに、アンチモン剤は毒性であり、強い副作用を有し、患者の長期入院を必要とする。
【0013】
リーシュマニア症の処置において、五価アンチモン剤(ペントスタムおよびglucanthime)、ミルテホシン、パロモマイシン、デオキシコール酸と製剤化されたアンホテリシン(ファンギゾン)およびリポソームと製剤化されたアンホテリシン(アムビゾーム)が使用される。しかしながら、費用の高さおよび毒性副作用が処置を制限する課題として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明の目的は、リーシュマニア症の処置および予防における、72時間以内にリーシュマニア寄生虫および感染細胞に対するほぼ完全な活性を示すが、健常細胞に何ら副作用を示さない薬物製剤の使用である。
【0015】
本発明の他の目的は、単核食細胞系の一部として生体適合性小胞系として植物由来エクソソームを検出することによる、細胞性ターゲティングに基づく治療の効果の観察である。
【0016】
本発明のさらなる目的は、エクソソームの薬物積載能力を使用して、エクソソームに活性物質を積載し、そうして、特定の薬物を標的細胞に運搬し、それにより薬物のバイオアベイラビリティを増強し、腫瘍特異的標的領域において所望の効果を達成することである。
【0017】
本発明の他の目的は、エクソソームを介する抗原虫薬物の寄生虫感染マクロファージへの標的化送達により薬物とマクロファージ表面の直接接触を防止し、寄生虫に対する選択性の獲得により、抗寄生虫活性の改善および薬物のマクロファージにおける毒性を低減することである。
【0018】
発明の詳細な記載
本発明は、疾患リーシュマニア症における免疫治療および予防剤としての寄生虫に感染したマクロファージから得られる細胞外小胞の使用であり、本発明に関連する図を以下に定義する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】マクロファージ細胞を寄生虫と培養培地でインキュベーション後5時間後の寄生虫感染を示す光学顕微鏡像である。
【0020】
図2】8種の異なる用量で72時間投与したときの、リーシュマニア・インファンタム寄生虫の生存能に対するアンホテリシンB積載感染マクロファージエクソソームの効果を表すグラフである。
【0021】
図3】5種の異なる用量で24時間、48時間および72時間投与したときの、J774マクロファージ細胞の生存能に対するアンホテリシンB積載感染マクロファージエクソソームの効果を表すグラフである。
【0022】
図4】5種の異なる用量で72時間投与したときの、リーシュマニア・インファンタム寄生虫感染マクロファージ細胞の生存能に対するアンホテリシンB積載感染マクロファージエクソソームの効果を表すグラフである。
【0023】
図5】感染マクロファージから得たエクソソームを5種の異なる用量で72時間投与した24時間後のリーシュマニア・インファンタム感染マクロファージ細胞の感染率を表すグラフである。
【0024】
X. リーシュマニア・インファンタム寄生虫
Y. 寄生虫感染マクロファージ細胞
本発明によって、細胞性細胞外小胞であり、シグナル伝達経路に関与するエクソソームが、免疫系細胞を標的とするリーシュマニア寄生虫に対する免疫系を刺激する免疫治療剤として作用することによる、新規処置方法を提供する。リーシュマニア寄生虫感染マクロファージ細胞から単離されるエクソソームを、マクロファージ細胞に免疫調節活性を提供するために使用し、処置に不適切である既存の化学療法方法の代わりの免疫療法方法である。
【0025】
予防期において;寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞で処置したマクロファージ細胞(Y)をリーシュマニア寄生虫で感染させ、マクロファージ細胞(Y)の感染率が減少することが観察された。
【0026】
免疫療法期中、寄生虫感染マクロファージの細胞外小胞にアンホテリシンBを積載し、エクソソームを薬物送達系として使用した。アンホテリシンB積載細胞外小胞はリーシュマニア寄生虫および感染マクロファージ細胞に高度に致死性であるが、しかしながら健常マクロファージ細胞(X)に事実上副作用を有しないことが観察された。
【0027】
感染細胞エクソソームは、生体適合性であるため抗原誘導反応の可能性を阻止もしながら、リーシュマニア抗原に対する体の免疫を増加させる。
【0028】
疾患リーシュマニア症における免疫治療および予防剤として使用する寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を得る方法は
-寄生虫培養を調製する/寄生虫を感染性とする、
-マクロファージ培養を調製する、
-マクロファージ培養細胞を(リーシュマニア・インファンタム)寄生虫で感染させる、
-二相液体系を介して感染マクロファージ細胞から得た細胞外小胞を単離する、
-(リーシュマニア・インファンタム)寄生虫で感染させたマクロファージから得たエクソソームにアンホテリシンBを積載し、それを封入する、
-封入物質の量を指定する、
-前鞭毛型の増殖に対するアンホテリシンB積載エクソソームの効果を決定するために、レサズリンアッセイを実施する、
-感染マクロファージをアンホテリシンB積載感染マクロファージエクソソームで処理する、
-マクロファージを寄生虫感染マクロファージエクソソームで処理し、次いで寄生虫で感染させる、
-感染率を決定する、
-最終産物として寄生虫感染マクロファージを得る
工程を含む。
【0029】
マクロファージの感染に使用し、次の種を含む群から選択される少なくとも1個の寄生虫に由来する細胞外小胞:リーシュマニア種(Leishmania spp.)(リーシュマニア・アラビカ(L. Arabica)、リーシュマニア・アーチバルディ(L. archibaldi)、リーシュマニア・アリステデシ(L. aristedesi)、リーシュマニア・ブラジリエンシス(L. braziliensis)、リーシュマニア・シャガシ(L. chagasi)、リーシュマニア・コロンビエンシス(L. colombiensis)、リーシュマニア・デアネイ(L. Deanei)、リーシュマニア・ドノバニ(L. donovani)、リーシュマニア・エンリエティ(L. enrietii)、リーシュマニア・エクアトレンシス(L. equatorensis)、リーシュマニア・フォラティニ(L. forattinii)、リーシュマニア・ガルンハミ(L. garnhami)、リーシュマニア・ゲルビル(L. gerbil)、リーシュマニア・グヤネンシス(L. guyanensis)、リーシュマニア・ヘレリ(L. herreri)、リーシュマニア・ヘルチギ(L. hertigi)、リーシュマニア・インファンタム(L. infantum)、リーシュマニア・キリッキー(L. killicki)、リーシュマニア・ラインソニ(L. lainsoni)、リーシュマニア・メジャー(L. major)、リーシュマニア・メキシカーナ(L. Mexicana)、リーシュマニア・ナイフィ(L. naiffi)、リーシュマニア・パナメンシス(L. panamensis)、リーシュマニア・ペルビナ(L. peruviana)、リーシュマニア・ピファノイ(L. pifanoi)、リーシュマニア・シャウィ(L. shawi)、リーシュマニア・タレントラエ(L. tarentolae)、リーシュマニア・トロピカ(L. tropica)、リーシュマニア・ツラニカ(L. turanica)、リーシュマニア・ベネゼレンシス(L. venezuelensis))、プラスモジウム種(Plasmadium spp.)(プラスモジウム・ファルシパルム(P. falciparum)、プラスモジウム・ビバックス(P. vivax)、プラスモジウム・オバレ(P. ovale))、シストソーマ種(Schistosoma spp.)、トキソプラズマ種(Toxoplasma spp.)(トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii))、トリパノソーマ・ブルセイ亜種(Trypanosoma brucei ssp.)。
【0030】
寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を、次の方法の少なくとも1個の手段により単離する:水性二相系(ATPS)、累進的遠心機、超遠心分離機、スクロース勾配超遠心分離機、ポリマー沈殿、限外濾過での単離、クロマトグラフィー方法での単離(親和性クロマトグラフィー(抗体およびペプチド親和性)、サイズ分離クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー))、マイクロビーズおよびイオン電荷に従う沈殿(電荷ベースの沈殿)および加塩による単離。
【0031】
寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を含む医薬組成物は、エマルジョン系、生物学的および化学ナノ粒子(ポリマーナノ粒子、固体脂質ナノ粒子)、無機ナノ粒子(金属ナノ粒子)、脂質小胞系(リポソーム、ニオソームおよびエトソーム)、デンドリマー、ポリマー-薬物コンジュゲート、ミセルおよび炭素ナノチューブを含む群から選択される少なくとも1個のナノ担体系を含む。
【0032】
本発明の医薬組成物は、抗寄生虫および/または抗新生物活性を示す活性化合物を含む群から選択される少なくとも1個の活性化合物およびそれらの二成分および三成分組み合わせを活性物質として含む。ニタゾキサニド、メラルソプロール、エフロルニチン、メトロニダゾール、チニダゾール、ミルテホシン、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、チアベンダゾール、ジエチルカルバマジン、イベルメクチン、ニクロサミド、プラジカンテル、アルベンダゾール、リファンピシン、アンホテリシンB、フマギリン、フラゾリドン、ニフルセミゾン、ニタゾキサニド、オルニダゾール、パロモマイシン硫酸塩、ペンタミジン、ピリメタミン、チニダゾール、アルベンダゾール、メベンダゾール、チアベンダゾール、フェンベンダゾール、トリクラベンダゾール、フルベンダゾール、アバメクチン、ジエチルカルバマジン、スラミン、パモ酸ピランテル、レバミソール、ニクロサミド、ニタゾキサニド、オキシクロザニド、モネパンテル、デルクアンテル、アンホテリシンB、尿素スチバミン、スチボグルコン酸ナトリウム、アンチモン酸メグルミン、パロモマイシン、フルコナゾールならびにそれらのおよび二成分または三成分組み合わせおよび封入体を含む群から選択される少なくとも1個の薬剤が抗寄生虫活性を示す活性化合物として使用される。本発明の医薬組成物において、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、カペシタビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビン、ペメトレキセド、マイトマイシン、ブレオマイシン、エピルビシン、ドキソルビシン、エトポシド、パクリタキセル、イリノテカン、ドセタキセル、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、トラスツズマブ、デノスマブ、リツキシマブ、スニチニブ、ゾレドロン酸、アビラテロン、アナストロゾール、ビカルタミド、エキセメスタン、ゴセレリン、メドロキシプロゲステロン、オクトレオチド、タモキシフェン、ベンダムスチン、カルムスチン、クロラムブシル、ロムスチン、メルファラン、プロカルバジン、ストレプトゾシン、フルダラビン、ラルチトレキセド、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン、ミトキサントロン、エリブリン、トポテカン、ビンブラスチン、ビノレルビン、アファチニブ、アフリベルセプト、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、インターフェロン、イピリムマブ、ラパチニブ、ニボルマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ソラフェニブ、トラスツズマブエムタンシン、テムシロリムス、ベムラフェニブ、イバンドロン酸、パミドロン酸、ベキサロテン、ブセレリン、シプロテロン、デガレリクス、フォリン酸、フルベストラント、ランレオチド、レナリドマイド、レトロゾール、ロイプロレリン、メゲストロール、メスナ、サリドマイドならびにそれらのおよび二成分または三成分組み合わせおよび封入体を含む群から選択される少なくとも1個の薬剤が抗新生物活性を示す活性化合物として細胞外小胞および/またはナノ担体系と組み合わせて使用される。本発明の医薬組成物は、寄生虫感染マクロファージから得た細胞外小胞を、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、3D-MPLを含むトコフェロールエマルジョン系、コレステロール、CGオリゴヌクレオチドの少なくとも1個;またはこれらの2個以上の組み合わせと組み合わせて含む。
【0033】
非経腸、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、局所、髄腔内、鼻腔内、脳室内、眼、膣、尿道、経皮、舌下、くも膜下、直腸、歯周、神経周囲、硬膜外、関節周囲、経口、鼓室内、腫瘍内、肺内、滑膜内、筋肉内、卵巣内、髄膜内、海綿体内、冠動脈内、脳内、硬膜外、皮膚、頬側、歯を含む群から選択される少なくとも1個の投与方法が、処置のための本発明の医薬組成物の投与方法として使用される。
【0034】
寄生虫の培養
リーシュマニア・インファンタム(MHOM/MA/67/ITMA-P263)前鞭毛型を、27℃でRPMI培地(熱不活性化10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、20mM HEPES、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)中でインキュベートする。対数増殖期に到達した寄生虫(10/ml)を感染性とする。
【0035】
マクロファージの培養
マクロファージJ774細胞株(ATCC)を、10%FBS添加熱不活性化RPMI 1640栄養培地(2mM L-グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン)で、加湿雰囲気中、5%COで37℃で単層まで増殖させ、細胞を72時間間隔で継代する。
【0036】
リーシュマニア・インファンタム寄生虫でのマクロファージ細胞感染
マクロファージを、10:1(寄生虫:マクロファージ)比で、37℃で寄生虫で感染させ、5時間後、感染マクロファージを培地で洗浄して、残存寄生虫を除去する。次いで、固定し、ギムザ染色し、感染のパーセンテージを、次の式に従い決定する:
【数1】
【0037】
リーシュマニア・インファンタム寄生虫感染マクロファージ細胞の培地の回収
寄生虫感染マクロファージ細胞から得た細胞外小胞を、二相液体系による単離、累進的遠心機、限外濾過、クロマトグラフィー方法、ポリマーベースの単離およびマイクロビーズによる単離を含む群から選択される単離方法により単離する。これらの中で、最も純粋な細胞外小胞単離は二相液体系での単離により達成され、それ故この単離方法が本発明の範囲内で好ましい。
【0038】
細胞外小胞の単離
・細胞外小胞を単離する寄生虫の培養培地を採取する、
・培養培地から細胞残渣および寄生虫などの望ましくない物質を除去するために、2,000g~10,000gの速度で5~20分間遠心する、
・遠心後濾過により220nm以上のサイズの粒子を除去する、
・遠心分離により得た小胞-タンパク質混合物を、それを分離するためにPEG相およびDEX相からなる二相液体系に移す、
・PEG相の対タンパク質およびDEX相の対リン脂質構造膜の化学傾向を利用して、小胞から非小胞タンパク質、細胞脂肪および他の不純物を除去する、
・単離小胞を得る。
・単離エクソソームの粒子濃度をNanoSightデバイスで分析する。
【0039】
リーシュマニア・インファンタム寄生虫感染マクロファージから得たエクソソームへのアンホテリシンB積載および封入物質量の指定
アンホテリシンBを、室温で半時間エクソソームと処理し、エクソソームに積載されないアンホテリシンBを遠心により分離する。アンホテリシンBの自己蛍光性を、量の指定に利用する。吸光度値を385nmで読んだアンホテリシンBの封入量を、UV分光光度計により決定した。
【0040】
エクソソームの免疫治療用途:レサズリンアッセイ
リーシュマニア寄生虫を培養培地でインキュベートし、前鞭毛型の増殖に対するアンホテリシンB積載エクソソームの効果を分析する。簡潔には、リーシュマニア・インファンタム(MHOM/MA/67/ITMA-P263)前鞭毛型を、27℃でRPMI培地(熱不活性化10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、20mM HEPES、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有)でインキュベートする。対数増殖期に達した寄生虫(10/ml) - 2日間のインキュベーション後 - を、27℃で3日間、種々の濃度範囲のアンホテリシンBおよびアンホテリシンB積載エクソソーム製剤とインキュベートする。寄生虫の生存能アラマーブルーアッセイの適用により決定する。薬物および薬物-エクソソーム製剤の活性は、アラマーブルーアッセイプロトコールにより蛍光強度を読むサンプルからIC50値を取得することにより決定される。
【0041】
エクソソームの免疫治療用途:感染マクロファージをアンホテリシンB積載感染マクロファージエクソソームで処理する
寄生虫感染マクロファージ細胞の増殖に対するアンホテリシンB積載エクソソームの効果を分析する。簡潔には、マクロファージを、10:1(寄生虫:マクロファージ)比で、37℃で寄生虫で感染させる。5時間後、感染マクロファージを培地で洗浄して、残存寄生虫を除去し、固定し、ギムザ染色し、感染のパーセンテージを、次の式に従い決定する:
【数2】
【0042】
感染マクロファージを、種々の濃度範囲のアンホテリシンBおよびアンホテリシンB積載エクソソーム製剤と37℃で3日間インキュベートする。感染率を決定するために、固定し、ギムザ染色し、感染のパーセンテージを、次の式に従い決定する:
【数3】
【0043】
エクソソームの予防用途:マクロファージの寄生虫感染マクロファージエクソソームでの処理
細胞を、培養培地に10%ウシ胎児血清(Invitrogen)および1%PSA(Biological Industries, Beit Haemek, Israel)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、20,000細胞/ウェルで96ウェル培養プレート(Corning Glasswork, Corning, NY)で播種し、エクソソームで処理し、細胞の生存能レベルを1日目、2日目および3日目に測定した。細胞生存能を、3-(4,5-ジ-メチル-チアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシ-メトキシ-フェニル)-2-(4-スルホ-フェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)-方法(CellTiter96 AqueousOne Solution; Promega, Southampton, UK)を使用して測定する。10μl MTS溶液を、100μl培養培地内の細胞に加え、暗所で2時間インキュベートする。インキュベーション過程後、生存能分析を、ELISAプレートリーダー(Biotek, Winooski, VT)デバイスで490nm波長を介して吸光度測定を実施することにより得る。
【0044】
エクソソームの予防用途:マクロファージの寄生虫感染マクロファージエクソソームでの処理、次いで、寄生虫での感染後、感染率を決定する
エクソソームで処理後、マクロファージを、10:1(寄生虫:マクロファージ)比で、37℃で寄生虫で感染させる。5時間後、感染マクロファージを培地で洗浄して、残存寄生虫を除去し、固定し、ギムザ染色し、感染のパーセンテージを、次の式に従い決定する:
【数4】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】