(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】膵臓がんおよび他の固形腫瘍を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20230607BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230607BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230607BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230607BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230607BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20230607BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230607BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230607BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230607BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230607BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230607BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230607BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230607BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230607BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P35/00
A61P1/18
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7068
A61K31/337
A61K9/10
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/44
A61K9/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567526
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2021030740
(87)【国際公開番号】W WO2021226148
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522432192
【氏名又は名称】ドラッグセンダー オーストラリア ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルースラーティ, エルキ
(72)【発明者】
【氏名】ジャーベレネン, ハリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA17
4C076BB13
4C076CC16
4C076CC27
4C076DD23
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE41
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA26
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086EA17
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
固形腫瘍のがんを処置するための方法および組成物が、本明細書で提供される。インビボおよびインビトロ両方の薬理学および機構論的試験からの結果は、本発明のCEND-1/iRGDアナログ(
図2)と化学療法剤とを組み合わせると、これらの薬物の腫瘍透過が有意に増大し、それらの有効性が改善されることを示す。本発明の方法は、広いクラスのがんおよび/または固形腫瘍に適用可能であるが、この治験薬の当初の適応症は、膵管腺癌(PDAC)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置、阻害、または前記がんの腫瘍の容積の低減を必要とする被験体または患者において前記がんを処置する、阻害する、または前記がんの腫瘍の容積を低減するための方法であって、ここで前記方法は、CEND-1またはその薬学的に受容可能な塩を、少なくとも1種の抗がん剤または治療の同時の、別個のまたは逐次的な投与と組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記腫瘍は、高密度腫瘍間質によって特徴づけられる悪性固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍は、乳がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化器系がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、および頭頚部がんからなる群より選択されるがんの固形腫瘍である、請求項1~2に記載の方法。
【請求項4】
前記膵臓がんは、原発性膵臓がん、転移性膵臓がん、難治性膵臓がん、抗がん剤耐性膵臓がんおよび腺癌からなる群より選択される、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記がんは、管腺癌(ステージ0~IV)である、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗がん剤または治療は、化学療法剤、低分子、抗体、抗体薬物結合体、ナノ粒子、細胞療法、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド摸倣物、核酸分子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および導入遺伝子をコードする核酸分子、ウイルス、サイトカイン、細胞傷害性ポリペプチド;アポトーシス促進性ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、細胞傷害性細胞、例えば、細胞傷害性T細胞ならびに/またはワクチン(mRNAまたはDNA)からなる群より選択される、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
前記化学療法剤は、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ヌクレオシド、ゲムシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗物質、白金薬剤、シスプラチン、カルボプラチン、ステロイド、メトトレキサート、抗生物質、アドリアマイシン、イホスファミド、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、マイタンシノイド、メルタンシン、エムタンシン、抗体、例えば、トラスツズマブ、抗上皮成長因子レセプター2(HER2)抗体、トラスツズマブ、カスパーゼ、カスパーゼ-8;ジフテリア毒素A鎖、Pseudomonas外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素、DAB389EGF、Ricinus communis毒素(リシン);キメラ抗原レセプターT細胞(CAR-T)、キメラ抗原レセプターマクロファージ(CAR-M)、キメラ抗原レセプターナチュラルキラー細胞(CAR-K)、および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、抗PD-1抗体、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ; 抗CTLA-4抗体、イピリムマブ;二重特異的抗体、カツマクソマブ、ModernaのmRNA-4157および/またはBioNTechのBNT122からなる群の1またはこれより多くから選択される、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
CEND-1は、がん治療1用量あたり約0.2~20mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.3~17mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.4~14mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.5~11mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.6~8mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.7~5mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.8~3.2mg/kg 体重からなる群より選択される量で投与される、請求項1~7に記載の方法。
【請求項9】
CEND-1は、がん治療1用量あたり3.2mg/kg 体重に相当する量で投与される、請求項1~8に記載の方法。
【請求項10】
CEND-1は、抗がん治療の投与の前またはその間に投与され、ここで前記がん治療は、4回/日、3回/日、1日に2回、1日に1回、2日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、2週間に1回、3週間に1回、および/または1ヶ月に1回からなる群より選択される投与レジメンである、請求項1~9に記載の方法。
【請求項11】
CEND-1は、乾燥製剤中に存在するか、または生体適合性媒体で懸濁される、請求項1~10に記載の方法。
【請求項12】
前記生体適合性媒体は、水、緩衝化水性媒体、食塩水、緩衝化食塩水、アミノ酸の必要に応じて緩衝化した溶液、タンパク質の必要に応じて緩衝化した溶液、糖の必要に応じて緩衝化した溶液、ビタミンの必要に応じて緩衝化した溶液、合成ポリマーの必要に応じて緩衝化した溶液、および脂質含有エマルジョンからなる群より選択される、請求項1~9に記載の方法。
【請求項13】
CEND-1は、静脈内投与される、請求項1~12に記載の方法。
【請求項14】
膵臓がんの処置を必要とする患者において膵臓がんを処置する方法であって、前記方法は、前記患者に、有効量のCEND-1を、ゲムシタビンおよび/もしくはnab-パクリタキセル、またはこれらの薬学的に受容可能な塩と組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記膵臓がんは、原発性膵臓がん、転移性膵臓がん、難治性膵臓がん、抗がん剤耐性膵臓がんおよび腺癌からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんは、管腺癌(ステージ0~IV)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
CEND-1は、がん治療1用量あたり約0.2~20mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.3~17mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.4~14mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.5~11mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.6~8mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.7~5mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.8~3.2mg/kg 体重からなる群より選択される量で投与される、請求項14~16に記載の方法。
【請求項18】
CEND-1は、がん治療1用量あたり3.2mg/kg 体重に相当する量で投与される、請求項14~17に記載の方法。
【請求項19】
CEND-1は、抗がん治療の投与の前またはその間に投与され、ここで前記がん治療は、4回/日、3回/日、1日に2回、1日に1回、2日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、2週間に1回、3週間に1回、および/または1ヶ月に1回からなる群より選択される投与レジメンである、請求項14~18に記載の方法。
【請求項20】
CEND-1は、1日あたりまたは化学療法の1用量あたり0.01~100mg/kg 体重、0.02~90mg/kg 体重、0.03~80mg/kg 体重、0.04~70mg/kg 体重、0.05~60mg/kg 体重、0.06~50mg/kg 体重、0.07~40mg/kg 体重、0.08~30mg/kg 体重、0.09~30mg/kg 体重、0.1~25mg/kg 体重、0.11~20mg/kg 体重、0.12~15mg/kg 体重、0.13~10mg/kg 体重、0.14~9mg/kg 体重、0.15~8mg/kg 体重、0.16~7mg/kg 体重、0.17~6mg/kg 体重、0.18~5mg/kg 体重、0.19~4mg/kg 体重、または0.2~3.2mg/kg 体重から選択される範囲の量で投与され;
nab-パクリタキセルは、1~500mg/m
2、10~450mg/m
2、20~400mg/m
2、30~350mg/m
2、40~300mg/m
2、50~250mg/m
2、60~200mg/m
2、70~175mg/m
2、80~160mg/m
2、90~150mg/m
2、100~140mg/m
2、110~140mg/m
2、115~135mg/m
2または120~130mg/m
2から選択される範囲の量で投与され;
ゲムシタビンは、1~5000mg/m
2、100~4500mg/m
2、200~4000mg/m
2、300~3500mg/m
2、400~3000mg/m
2、500~2500mg/m
2、550~2000mg/m
2、600~1750mg/m
2、650~1500mg/m
2、700~1400mg/m
2、750~1300mg/m
2、800~1200mg/m
2、または900~1100mg/m
2から選択される範囲の量で投与される、
請求項14~19に記載の方法。
【請求項21】
CEND-1は、1日あたりまたは化学療法の1用量あたり0.2~3.2mg/kg 体重の範囲で投与され;nab-パクリタキセルは、125mg/m
2で投与され;ゲムシタビンは、1000mg/m
2で投与される、請求項14~20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法の有効性または臨床活性は、全奏効率(ORR)、無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を決定することによって測定される、請求項1~21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法の有効性または臨床活性は、25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%より高い%から選択される全奏効率(ORR);25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より高い%から選択される無増悪生存(PFS);および/または25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より高い%から選択される全生存(OS)、のうちの1またはこれより多くを決定することによって測定される、請求項1~22に記載の方法。
【請求項24】
CEND-1/iRGDアナログおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項25】
前記CEND-1/iRGDアナログは、
図2中の構造として示されるiRGDアナログに相当する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記iRGDアナログ(
図2)は、先行技術のiRGD分子と比較して、以下:
改善された薬物動態特性;
血漿/血清中の改善された安定性;
製剤化された溶液中の改善された安定性;
貯蔵中の改善された安定性;ならびに/または
アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼのようなプロテアーゼからの改善された保護、
からなる群より選択される有利なインビトロ/インビボ効力および/または有効性を維持しながら、1またはこれより多くの改善された特性を有する、請求項24~25に記載の組成物。
【請求項27】
改善された薬物動態特性は、吸収、分布、代謝、および/または排泄のうちの1またはこれより多くから選択される、請求項24~26に記載の組成物。
【請求項28】
iRGDアナログ(CEND-1);および抗がん剤を含む、キットまたは組成物。
【請求項29】
前記iRGDアナログは、
図2中の構造として示される、請求項26に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形腫瘍(例えば、膵臓腺癌および他の固形腫瘍)を、CEND-1ペプチドおよび抗がん治療(例えば、標準治療の抗がん治療)との組み合わせで処置するために有用な方法および医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
米国国立がん研究所は、2018年におよそ1,735,350のがんの新症例が、米国で診断され、609,640名の人々がこの疾患で死亡するであろうと概算している。外科手術、放射線療法、化学療法、および最も近年では免疫療法を通じて、ある特定の形態のがんの処置が進歩しているにもかかわらず、固形腫瘍の大部分のタイプは、本質的に不治である。有効な処置が特定のがんに関して利用可能である場合にしても、その処置の副作用は、患者のクオリティー・オブ・ライフに対して顕著に有害な影響を有し得る。
【0003】
膵臓がんは、特に重篤ながんであり、生命を脅かす状態である。大部分の症例では、上記疾患の早期のステージは無症候性であり、膵臓がんのうちの20%未満が、手術を受ける余地がある。さらに、侵襲性および転移性の膵臓がんは、化学療法および放射線療法における既存の処置への応答は不十分であり、奏効率は、代表的には30%未満である。米国国立がん研究所(NCI)は、膵外分泌部のがんの生存率は、5%未満であり、診断後のメジアン生存時間は、1年未満であると概算している。予後不良が継続していることおよび膵臓がんの有効な処置がないことによって、膵臓がんに罹患した患者の臨床上の管理および予後を改善する毒性が少なくかつより有効な処置ストラテジーを開発する未だに満たされていない医学的ニーズが強調される。
【0004】
なぜ大部分の抗がん剤は毒性を有し、固形腫瘍に対する有効性が制限されているのかに関する重要な理由は、抗がん薬が血管から3~5細胞直径の深さに透過するに過ぎず、上記腫瘍のいくらかの面積が上記薬物の有効でない濃度に曝されたままにされるかまたは薬物に全く曝されないままにされるという事実である。例として、投与されたnabパクリタキセルのうちの1%未満が、膵管腺癌組織に透過する/入ることができることもあることが、試験から示唆されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
CEND-1での化学療法の改善された透過
インビボおよびインビトロ両方の薬理学および機構論的試験からの結果は、本発明のCEND-1/iRGDアナログ(
図2)と化学療法剤とを組み合わせると、これらの薬物の腫瘍透過が有意に増大し、それらの有効性が改善されることを示す。本発明の方法は、広いクラスのがんおよび/または固形腫瘍に適用可能であるが、この治験薬の当初の適応症は、膵管腺癌(PDAC)である。なぜならその予後不良に加えて、薬物進入に対する物理的バリアとして作用する高密度細胞外マトリクス間質によって特徴づけられるからである。腫瘍ホーミングおよびCEND-1によって開始される輸送プロセスは、PDAC間質において活発であることが示されており、前臨床試験によって、増大した薬物透過および異なる種類のPDACモデルでの有効性が示されていることから、CEND-1は、PDACを標的化するために特によく適しているようである。
【0006】
それを必要とする被験体または患者においてがんを処置する、阻害する、またはその腫瘍の容積を低減するための方法が本明細書で提供され、ここで上記方法は、CEND-1またはその薬学的に受容可能な塩を、少なくとも1種の抗がん剤または治療の同時の、別個のまたは逐次的な投与と組み合わせて投与する工程を包含する。ある特定の実施形態において、上記腫瘍は、高密度腫瘍間質によって特徴づけられる悪性固形腫瘍である。他の実施形態において、上記腫瘍は、乳がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化器系がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、および頭頚部がんからなる群より選択されるがんの固形腫瘍である。別の実施形態において、上記膵臓がんは、原発性膵臓がん、転移性膵臓がん、難治性膵臓がん、抗がん剤耐性(cancer drug resistant)膵臓がんおよび腺癌からなる群より選択される。特定の実施形態において、上記がんは、管腺癌(例えば、ステージ0~IV)などである。
【0007】
特定の実施形態において、上記抗がん剤または治療は、化学療法剤、低分子、抗体、抗体薬物結合体、ナノ粒子、細胞療法、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド摸倣物、核酸分子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および導入遺伝子をコードする核酸分子、ウイルス、サイトカイン、細胞傷害性ポリペプチド;アポトーシス促進性ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、細胞傷害性細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、ならびに/またはワクチン(mRNAまたはDNA)からなる群より選択される。
【0008】
他の実施形態において、上記化学療法剤は、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ヌクレオシド、ゲムシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗物質、白金薬剤、シスプラチン、カルボプラチン、ステロイド、メトトレキサート、抗生物質、アドリアマイシン、イホスファミド(isofamide)、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、マイタンシノイド、メルタンシン、エムタンシン、抗体(例えば、トラスツズマブ)、抗上皮成長因子レセプター2(HER2)抗体、トラスツズマブ、カスパーゼ、カスパーゼ-8;ジフテリア毒素A鎖、Pseudomonas外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素、DAB389EGF、Ricinus communis毒素(リシン);キメラ抗原レセプターT細胞(CAR-T)、キメラ抗原レセプターマクロファージ(CAR-M)、キメラ抗原レセプターナチュラルキラー細胞(CAR-K)、および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、抗PD-1抗体、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ;抗CTLA-4抗体、イピリムマブ;二重特異的抗体、カツマクソマブ、ModernaのmRNA-4157および/またはBioNTechのBNT122からなる群のうちの1またはこれより多くから選択される。
【0009】
特定の実施形態において、上記CEND-1(例えば、
図2に示されるiRGDアナログ)は、がん治療1用量あたり約0.2~20mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.3~17mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.4~14mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.5~11mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.6~8mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.7~5mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.8~3.2mg/kg 体重からなる群より選択される量で投与される。特定の実施形態において、CEND-1は、がん治療1用量あたり3.2mg/kg 体重に相当する量で投与される。
【0010】
ある特定の実施形態において、CEND-1は、抗がん治療の投与の前またはその間に投与され、ここで上記がん治療は、4回/日、3回/日、1日に2回、1日に1回、2日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、2週間に1回、3週間に1回、および/または1ヶ月に1回からなる群より選択される投与レジメンである。1つの実施形態において、CEND-1は、乾燥製剤中に存在するか、または生体適合性媒体で懸濁される。
【0011】
特定の実施形態において、上記生体適合性媒体は、水、緩衝化水性媒体、食塩水、緩衝化食塩水、アミノ酸の必要に応じて緩衝化した溶液、タンパク質の必要に応じて緩衝化した溶液、糖の必要に応じて緩衝化した溶液、ビタミンの必要に応じて緩衝化した溶液、合成ポリマーの必要に応じて緩衝化した溶液、および脂質含有エマルジョンからなる群より選択される。特定の実施形態において、CEND-1は、静脈内投与される。
【0012】
それを必要とする患者において膵臓がんを処置する方法がまた本明細書で提供され、上記方法は、上記患者に、有効量のCEND-1を、ゲムシタビンおよび/もしくはnab-パクリタキセル、またはこれらの薬学的に受容可能な塩と組み合わせて投与する工程を包含する。ある特定の実施形態において、上記膵臓がんは、原発性膵臓がん、転移性膵臓がん、難治性膵臓がん、抗がん剤耐性膵臓がんおよび腺癌からなる群より選択される。特定の実施形態において、上記がんは、管腺癌(ステージ0~IV)である。
【0013】
ある特定の実施形態において、CEND-1は、がん治療1用量あたり約0.2~20mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.3~17mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.4~14mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.5~11mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.6~8mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.7~5mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.8~3.2mg/kg 体重からなる群より選択される量で投与される。1つの実施形態において、CEND-1は、がん治療1用量あたり3.2mg/kg 体重に相当する量で投与される。
【0014】
特定の実施形態において、CEND-1は、抗がん治療の投与の前またはその間に投与され、ここで上記がん治療は、がん治療は、4回/日、3回/日、1日に2回、1日に1回、2日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、2週間に1回、3週間に1回、および/または1ヶ月に1回からなる群より選択される投与レジメンである。特定の実施形態において、CEND-1は、1日あたりまたは化学療法の1用量あたり0.01~100mg/kg 体重、0.02~90mg/kg 体重、0.03~80mg/kg 体重、0.04~70mg/kg 体重、0.05~60mg/kg 体重、0.06~50mg/kg 体重、0.07~40mg/kg 体重、0.08~30mg/kg 体重、0.09~30mg/kg 体重、0.1~25mg/kg 体重、0.11~20mg/kg 体重、0.12~15mg/kg 体重、0.13~10mg/kg 体重、0.14~9mg/kg 体重、0.15~8mg/kg 体重、0.16~7mg/kg 体重、0.17~6mg/kg 体重、0.18~5mg/kg 体重、0.19~4mg/kg 体重、または0.2~3.2mg/kg 体重から選択される範囲の量で投与され;
nab-パクリタキセルは、1~500mg/m2、10~450mg/m2、20~400mg/m2、30~350mg/m2、40~300mg/m2、50~250mg/m2、60~200mg/m2、70~175mg/m2、80~160mg/m2、90~150mg/m2、100~140mg/m2、110~140mg/m2、115~135mg/m2または120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与され;
ゲムシタビンは、1~5000mg/m2、100~4500mg/m2、200~4000mg/m2、300~3500mg/m2、400~3000mg/m2、500~2500mg/m2、550~2000mg/m2、600~1750, 650~1500mg/m2、700~1400mg/m2、750~1300mg/m2、800~1200mg/m2、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与される。
【0015】
さらに別の実施形態において、CEND-1は、1日あたりまたは化学療法の1用量あたり0.2~3.2mg/kg 体重の範囲で投与され;nab-パクリタキセルは、125mg/m2で投与され;ゲムシタビンは、1000mg/m2で投与される。
【0016】
本明細書で提供される本発明の方法のある特定の実施形態において、上記方法の有効性または臨床活性は、全奏効率(ORR)、無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を決定することによって測定される。なおさらなる実施形態において、上記方法の有効性または臨床活性は、25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%より高い%から選択される全奏効率(ORR);25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より高い%から選択される無増悪生存(PFS);および/または25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より高い%から選択される全生存(OS)、のうちの1またはこれより多くを決定することによって測定される。
【0017】
CEND-1/iRGDアナログおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物がまた、本明細書で提供される。特定の実施形態において、本発明の組成物は、
図2中の構造として示されるiRGDアナログ(CEND-1/iRGDアナログ)に相当する。本発明のiRGDアナログは、アミノ末端およびカルボキシ末端をブロックするために使用される特異的部分において、先行技術のiRGDペプチドとは異なり、これは、先行技術の環式iRGD分子を超える顕著な利点を生じた。例えば、本発明のCEND-1/iRGDアナログ(
図2に示される)は、以下の分子式:C
37H
60N
14O
14S
2;MW 989.1;および近年のCAS登録番号:2580154-02-3を有する。それに対して、少なくとも1個の劣った治療特性を有する1つの先行技術のiRGDは、分子式:C
35H
57N
13O
14S
2;分子量948.04;およびCAS登録番号1392278-76-0を有するiRGDに相当する。
【0018】
先行技術のCAS登録番号1392278-76-0の環式ペプチドおよび他の公知のiRGD分子と比較した、本発明のiRGDアナログ(
図2; C
37H
60N
14O
14S
2; MW 989.1)の利点は、有利なインビトロ/インビボ効力および有効性を維持しながら、以下のうちの1またはこれより多くのものを含む:
有利な薬物動態特性;
血漿/血清中の改善された安定性;
製剤化された溶液中の改善された安定性;
貯蔵中の改善された安定性;ならびに/または
アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼのようなプロテアーゼからの改善された保護。
【0019】
ある特定の実施形態において、有利なおよび/または改善された薬物動態特性は、吸収、分布、代謝、および/または排泄のうちの1またはこれより多くから選択される。
【0020】
iRGDアナログ(CEND-1);および抗がん剤を含むキットまたは組成物がまた、本明細書で提供される。特定の実施形態において、上記iRGDアナログは、
図2中の構造として示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施例中に記載されるウォーターフォールプロットを示す。
【
図2】
図2は、分子式C
37H
60N
14O
14S
2;MW 989.1;およびCAS登録番号:2580154-02-3を有する本発明のCEND-1またはCEND-1/iRGDアナログ環式ペプチドの化学構造を示す。それは、全て天然のアミノ酸を有し、以下のとおりにも表され得る: Ac-Cys-Arg-Gly-Asp-Lys-Gly-Pro-Asp-Cys-NH
2 (CysとCysの架橋)。それはまた、以下のとおりに表され得る: L-システイニル-L-アルギニルグリシル-L-α-アスパルチル-L-リジルグリシル-L-プロリル-L-α-アスパルチル-,環状(1.fwdarw.9)-ジスルフィド(N末端アミノ基は、アセチル基でブロックされ、C末端カルボニル基は、カルボキシアミド基でブロックされる)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
それを必要とする被験体または患者においてがんの腫瘍を処置する、阻害するまたはその容積を低減するための方法が、本明細書で提供され、ここで上記方法は、CEND-1またはその薬学的に受容可能な塩を、少なくとも1種の抗がん剤または治療の同時の、別個のまたは逐次的な投与と組み合わせて投与する工程を包含する。本発明は、固形腫瘍を抗がん治療でより有効に処置するための改善された方法および医薬を提供する。CEND-1は、9個のアミノ酸を含む環化(システイン側鎖を介するS-S結合)構造を有する腫瘍透過ペプチド(iRGDおよび内部移行するアルギニルグリシルアスパラギン酸環状ペプチドとしても公知である)である。特定の実施形態において、本発明のCEND-1/iRGDアナログは、本発明のiRGDアナログペプチド配列に相当し、その配列は、Ac-Cys-Arg-Gly-Asp-Lys-Gly-Pro-Asp-Cys-NH2として示され、CAS登録番号2580154-02-3を有する、
図2に示される具体的な環状ペプチド化学構造に相当する。CEND-1の薬理学的効果は、αv-インテグリン(増殖中の腫瘍において高度に発現されるが、健常組織では発現されない)との原発性RGD腫瘍ホーミングモチーフ相互作用を介して腫瘍に制限される。二次的な「CendR」モチーフは、NRP-1を介して腫瘍微小環境を調節する。実験モデルに基づけば、ニューロピリン-1との相互作用は、一時的な薬物導管(drug conduit)への固形腫瘍微小環境の転換をもたらし、CEND-1との組み合わせにおいて与えられる抗がん治療の効率的腫瘍アクセスを可能にする。CEND-1は、上述の腫瘍微小環境調節機序を介して、腫瘍への抗がん薬の蓄積および透過を増大させるが、通常組織へはそうでないことが、試験から示された。結果として、抗腫瘍活性が増強されると同時に、治療限界(therapeutic margin)/安全性プロフィールが潜在的に改善される。本発明のCEND-1/iRGDアナログ(
図2)に加えて;当該分野で公知の他のiRGDペプチドおよびアナログ(例えば、上述のもの)は、本明細書で提供されるデータ、投与量および結果に鑑みて、本発明の方法において使用され得る。
【0023】
ある特定の実施形態において、上記腫瘍は、高密度腫瘍間質によって特徴づけられる悪性固形腫瘍である。他の実施形態において、上記腫瘍は、乳がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化器系がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、および頭頚部がんからなる群より選択されるがんの固形腫瘍である。別の実施形態において、上記膵臓がんは、原発性膵臓がん、転移性膵臓がん、難治性膵臓がん、抗がん剤耐性膵臓がんおよび腺癌からなる群より選択される。特定の実施形態において、上記がんは、管腺癌(例えば、ステージ0~IV)などである。
【0024】
本明細書で使用される場合、語句「固形腫瘍」とは、嚢腫(cyst)または腫瘍転移(すなわち、疾患のその転移ステージにある)以外の液体含有量が低い本質的に固形の新生物増殖に言及する。
【0025】
本明細書で使用される場合、語句「組み合わせにおいて」とは、それを必要とするそれぞれの患者への1種より多くの治療剤の投与に言及する。特定の実施形態において、CEND-1は、少なくとも1種の他の抗がん治療剤とともに投与される。
【0026】
本明細書で使用される場合、語句「同時の、部個のまたは逐次的な投与」とは、1種またはこれより多くの他のがん治療剤と同時に;またはその共投与される抗がん剤を用いる投与の前、またはその後のいずれかにCEND-1を投与することに言及し;その結果、その共投与が、同じ投与レジメンまたは異なる投与レジメンのいずれかで投与される別個の薬学的組成物に由来する。ある特定の実施形態において、CEND-1は、上記1種またはこれより多くの抗がん剤のその後のおよび逐次的な投与の前に、投与される。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「悪性の」とは、異常な細胞が制御なしに分裂し、近くの組織に侵襲し得る腫瘍またはがんに言及する。悪性がん細胞はまた、血液およびリンパ系を経て身体の他の部分へと拡がり得る。
【0028】
本発明によって発見された新規の薬物導管機序に基づいて、本発明の方法および医薬は、CEND-1(例えば、iRGDアナログ)を使用して、固形腫瘍を処置するために使用される任意の抗がん剤の治療効果を増強するために適している。従って、本発明の方法および医薬は、CEND-1/iRGDアナログと、固形腫瘍を処置するために使用される任意の抗がん剤(例えば、ドセタキセルまたはパクリタキセル(nab-パクリタキセルを含む)のようなタキサン、ゲムシタビンのようなヌクレオシド、ドキソルビシンのようなアントラサイクリン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗物質、シスプラチンまたはカルボプラチンのような白金薬剤、メトトレキサートのようなステロイド、アドリアマイシンのような抗生物質、イホスファミド、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、またはトラスツズマブのような抗体のうちの少なくとも1種)との組み合わせを含み得る。
【0029】
CEND-1によって効果が増強され得る抗がん剤は、ヒト化モノクローナル抗体のような抗体であり得る。例としては、抗上皮成長因子レセプター2(HER2)抗体、トラスツズマブ(Herceptin: Genentech, South San Francisco, Calif.)は、HER2/neu過剰発現乳がん(Whiteら, Annu. Rev. Med. 52:125-141 (2001))を処置するための結合体において有用な治療剤である。
【0030】
CEND-1によって効果が増強され得る抗がん剤はまた、細胞傷害性薬剤であり得、これは、本明細書で使用される場合、細胞死を直接的にまたは間接的に促進する任意の分子であり得る。有用な細胞傷害性薬剤は、低分子、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド摸倣物、核酸分子、細胞およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例として、有用な細胞傷害性薬剤としては、細胞傷害性低分子(例えば、ドキソルビシン、ドセタキセルまたはトラスツズマブ)、抗微生物ペプチド(例えば、さらに以下で記載されるもの);アポトーシス促進性ポリペプチド(例えば、カスパーゼおよび毒素(例えば、カスパーゼ-8));ジフテリア毒素A鎖、Pseudomonas外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素(例えば、DAB389EGF、Ricinus communis毒素(リシン));ならびに細胞傷害性細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)が挙げられる。例えば、Martinら, Cancer Res. 60:3218-3224(2000); Kreitman and Pastan, Blood 90:252-259 (1997); Allamら, Cancer Res. 57:2615-2618 (1997);およびOsborne and Coro nado-Heinsohn, Cancer J. Sci. Am. 2: 175 (1996)を参照のこと。当業者は、これらのおよび本明細書で記載されるかまたは当該分野で公知のさらなる細胞傷害性薬剤が、本開示の方法および医薬においてCEND-1と組み合わされ得ることを理解する。
【0031】
1つの実施形態において、CEND-1によって効果が増強され得る抗がん剤は、治療用ポリペプチドであり得る。本明細書で使用される場合、治療用ポリペプチドは、生物学的に有用な機能を有する任意のポリペプチドであり得る。有用な治療用ポリペプチドは、サイトカイン、抗体、細胞傷害性ポリペプチド;アポトーシス促進性ポリペプチド;および抗血管新生ポリペプチドを包含するが、これらに限定されない。CEND-1によって効果が増強され得る抗がん剤は、抗血管新生薬剤であり得る。本明細書で使用される場合、用語「抗血管新生薬剤」とは、血管の成長および発生である血管新生を低減または防止する分子を意味する。CEND-1と抗血管新生薬剤との組み合わせは、血管新生と関連するがんを処置するために使用され得る。種々の抗血管新生薬剤は、慣用的な方法によって調製され得る。このような抗血管新生薬剤としては、低分子;血管新生因子のドミナントネガティブ形態、転写因子および抗体のようなタンパク質;ペプチド;ならびに核酸分子(リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびに例えば、血管新生因子およびレセプターのドミナントネガティブ形態、転写因子、ならびに抗体およびその抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Hagedorn and Bikfalvi, Crit. Rev. Oncol. Hematol. 34:89-110 (2000)、およびKirschら, J. Neurooncol. 50:149-163 (2000)を参照のこと。
【0032】
特定の実施形態において、上記抗がん剤または治療は、化学療法剤、低分子、抗体、抗体薬物結合体、ナノ粒子、細胞療法、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド摸倣物、核酸分子、リボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および導入遺伝子をコードする核酸分子、ウイルス、サイトカイン、細胞傷害性ポリペプチド;アポトーシス促進性ポリペプチド、抗血管新生ポリペプチド、細胞傷害性細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、ならびに/またはワクチン(mRNAまたはDNA)からなる群より選択される。
【0033】
他の実施形態において、上記化学療法剤は、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ヌクレオシド、ゲムシタビン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗物質、白金薬剤、シスプラチン、カルボプラチン、ステロイド、メトトレキサート、抗生物質、アドリアマイシン、イホスファミド、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター、マイタンシノイド、メルタンシン、エムタンシン、アウリスタチン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびF(MMAF)、天然の抗有糸分裂薬、抗体、トラスツズマブ、抗上皮成長因子レセプター2(HER2)抗体、トラスツズマブ、カスパーゼ、カスパーゼ-8;ジフテリア毒素A鎖、Pseudomonas外毒素A、コレラ毒素、リガンド融合毒素、DAB389EGF、Ricinus communis毒素(リシン);キメラ抗原レセプターT細胞(CAR-T)、キメラ抗原レセプターマクロファージ(CAR-M)、キメラ抗原レセプターナチュラルキラー細胞(CAR-K)、ならびに腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、抗PD-1抗体、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ;抗CTLA-4抗体、イピリムマブ;二重特異的抗体、カツマクソマブ、抗CD47抗体、エンホルツマブ、サシツズマブ、抗体薬物結合体、ModernaのmRNA-4157および/またはBioNTechのBNT122からなる群のうちの1またはこれより多くから選択される。
【0034】
特定の実施形態において、上記CEND-1(例えば、
図2に示されるiRGDアナログ)は、がん治療1用量あたり約0.2~20mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.3~17mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.4~14mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.5~11mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.6~8mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.7~5mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.8~3.2mg/kg 体重からなる群より選択される量で投与される。特定の実施形態において、CEND-1は、がん治療1用量あたり3.2mg/kg 体重に相当する量で投与される。
【0035】
本明細書で使用される場合、語句「がん治療1用量あたり」とは、各時間で抗がん治療剤が投与され、CEND-1が腫瘍への治療剤透過を促進するために同様に共投与されるように、CEND-1と1種またはこれより多くの抗がん剤とが共投与されることに言及する。CEND-1の1用量あたりの共投与は、治療剤と正確に同時である必要はなく、CEND-1は、治療剤の投与の前または後のいずれかに投与され得る。
【0036】
ある特定の実施形態において、CEND-1は、抗がん治療の投与の前またはその間に投与され、ここで上記がん治療は、4回/日、3回/日、1日に2回、1日に1回、2日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、2週間に1回、3週間に1回、および/または1ヶ月に1回からなる群より選択される投与レジメンである。1つの実施形態において、CEND-1は、乾燥製剤中に存在するか、または生体適合性媒体で懸濁される。
【0037】
特定の実施形態において、上記生体適合性媒体は、水、緩衝化水性媒体、食塩水、緩衝化食塩水、アミノ酸の必要に応じて緩衝化した溶液、タンパク質の必要に応じて緩衝化した溶液、糖の必要に応じて緩衝化した溶液、ビタミンの必要に応じて緩衝化した溶液、合成ポリマーの必要に応じて緩衝化した溶液、および脂質含有エマルジョンからなる群より選択される。特定の実施形態において、CEND-1は、静脈内投与される。
【0038】
本発明の方法は、膵臓がんの処置に関して特に適しており、上記がんは、薬物進入の物理的障壁として作用する顕著な高密度腫瘍間質によって特徴づけられる。従って、進行した膵臓がんを、CEND-1の第1の臨床適応症として選択した。臨床的有用性の例として、本発明者らは、腫瘍応答を増強するその能力を含め、単独で、またはnab-パクリタキセルおよびゲムシタビンとの組み合わせにおいて与えた場合の、CEND-1の安全性および有効性の結果を示す。
【0039】
それを必要とする患者において膵臓がんを処置する方法がまた、本明細書で提供され、上記方法は、上記患者に、有効量のCEND-1を、ゲムシタビンおよび/もしくはnab-パクリタキセル、またはこれらの薬学的に受容可能な塩との組み合わせにおいて投与する工程を包含する。ある特定の実施形態において、上記膵臓がんは、原発性膵臓がん、転移性膵臓がん、難治性膵臓がん、抗がん剤耐性膵臓がんおよび腺癌からなる群より選択される。特定の実施形態において、上記がんは、管腺癌(ステージ0~IV)である。
【0040】
別の実施形態において、膵臓がんの処置における使用のための上記のCEND-1は、好ましくは、膵臓がんに対して有効であることが公知の少なくとも1種のさらなる抗がん薬(例えば、ゲムシタビン)と組み合わせて投与され得る。本発明の文脈において、CEND-1を使用すると、静脈内経路によって投与されるゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルのような他の膵臓がん薬物の臨床活性が増強され得ることが見出された。
【0041】
ある特定の実施形態において、CEND-1は、がん治療1用量あたり約0.2~20mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.3~17mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.4~14mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.5~11mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.6~8mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.7~5mg/kg 体重、がん治療1用量あたり約0.8~3.2mg/kg 体重からなる群より選択される量で投与される。1つの実施形態において、CEND-1は、がん治療1用量あたり3.2mg/kg 体重に相当する量で投与される。
【0042】
特定の実施形態において、CEND-1は、抗がん治療の投与の前またはその間に投与され、ここで上記がん治療は、4回/日、3回/日、1日に2回、1日に1回、2日に1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、8日に1回、9日に1回、10日に1回、11日に1回、12日に1回、13日に1回、2週間に1回、3週間に1回、および/または1ヶ月に1回からなる群より選択される投与レジメンである。特定の実施形態において、
【0043】
CEND-1は、1日あたりまたは化学療法の1用量あたり0.01~100mg/kg 体重、0.02~90mg/kg 体重、0.03~80mg/kg 体重、0.04~70mg/kg 体重、0.05~60mg/kg 体重、0.06~50mg/kg 体重、0.07~40mg/kg 体重、0.08~30mg/kg 体重、0.09~30mg/kg 体重、0.1~25mg/kg 体重、0.11~20mg/kg 体重、0.12~15mg/kg 体重、0.13~10mg/kg 体重、0.14~9mg/kg 体重、0.15~8mg/kg 体重、0.16~7mg/kg 体重、0.17~6mg/kg 体重、0.18~5mg/kg 体重、0.19~4mg/kg 体重、または0.2~3.2mg/kg 体重から選択される範囲の量で投与される;
【0044】
nab-パクリタキセルは、1~500mg/m2、10~450mg/m2、20~400mg/m2、30~350mg/m2、40~300mg/m2、50~250mg/m2、60~200mg/m2、70~175mg/m2、80~160mg/m2、90~150mg/m2、100~140mg/m2、110~140mg/m2、115~135mg/m2または120~130mg/m2から選択される範囲の量で投与される;
【0045】
ゲムシタビンは、1~5000mg/m2、100~4500mg/m2、200~4000mg/m2、300~3500mg/m2、400~3000mg/m2、500~2500mg/m2、550~2000mg/m2、600~1750mg/m2、650~1500mg/m2、700~1400mg/m2、750~1300mg/m2、800~1200mg/m2、または900~1100mg/m2から選択される範囲の量で投与される。
【0046】
さらに別の実施形態において、CEND-1は、1日あたりまたは化学療法の1用量あたり0.2~3.2mg/kg 体重の範囲で投与され;nab-パクリタキセルは、125mg/m2で投与され;ゲムシタビンは、1000mg/m2で投与される。
【0047】
本明細書で提供される本発明の方法のある特定の実施形態において、上記方法の有効性または臨床活性は、全奏効率(ORR)、無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を決定することによって測定される。なおさらなる実施形態において、上記方法の有効性または臨床活性は、25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%より高い%から選択される全奏効率(ORR);25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より高い%から選択される無増悪生存(PFS);および/または25%より高い、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%より高い%から選択される全生存(OS)、のうちの1またはこれより多くを決定することによって測定される。
【0048】
CEND-1/iRGDアナログおよび薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物がまた、本明細書で提供される。薬学的に受容可能な賦形剤は、当該分野で周知である。上記CEND-1組成物は、ボーラス注射または注入を介して、種々の経路を介して(例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、肺内、経口および吸入、皮下が挙げられる)、個体(例えば、ヒト)に投与され得る。いくつかの実施形態において、上記組成物は、静脈内投与される。
【0049】
上記製剤は、単位用量または複数用量が密閉された容器(例えば、アンプルおよびバイアル)において提示され得、使用直前に注射用の無菌液体賦形剤(例えば、食塩水)の添加のみを要するフリーズドライした(凍結乾燥した)状態で貯蔵され得る。
【0050】
特定の実施形態において、注射用のCEND-1は、静脈内投与のために100mg/バイアルの活性成分用量強度として供給される無菌の凍結乾燥された白色粉末である。CEND-1注射物は、CEND-1薬物物質と賦形剤としての酢酸ナトリウム三水和物およびマンニトールからなる。
【0051】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、
図2中の構造(CEND-1/iRGDアナログ)として示されるiRGDアナログに相当する。本発明のiRGDアナログは、アミノ末端およびカルボキシ末端をブロックするために使用される特異的な部分において先行技術のiRGDペプチドとは異なり、これらは、先行技術の環状iRGDペプチドを超える顕著な利点を生じる。例えば、本発明のCEND-1/iRGDアナログ(
図2に示される)は、以下の分子式 C
37H
60N
14O
14S
2;MW 989.1;および近年のCAS登録番号:2580154-02-3を有する。それに対して、少なくとも1種の劣った治療特性を有する1つの先行技術のiRGDは、分子式: C
35H
57N
13O
14S
2;分子量948.04;およびCAS登録番号1392278-76-0を有する「アカデミック」iRGDに相当する。
【0052】
本発明のiRGDアナログ(
図2; C
37H
60N
14O
14S
2; MW 989.1)の利点は、有利なインビトロ/インビボ効力および/または有効性を維持しながら、先行技術のCAS登録番号1392278-76-0環状ペプチドおよび他の公知のiRGD分子に対して、以下のうちの1またはこれより多くのものを含む:
有利な薬物動態特性;
血漿/血清中の改善された安定性;
製剤化された溶液中の改善された安定性;
貯蔵中の改善された安定性;および/または
アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼのようなプロテアーゼからの改善された保護。
ある特定の実施形態において、有利なおよび/または改善された薬物動態特性は、吸収、分布、代謝、および/または排泄のうちの1またはこれより多くから選択される。
【0053】
本明細書で使用される場合、語句「有利なインビトロ/インビボ効力および/または有効性を維持しながら」とは、有効性および/または効力がCEND-1によって減少されないように、それぞれの治療剤に対するCEND-1の継続した影響に言及する。
【0054】
iRGDアナログ(CEND-1);および抗がん剤を含むキットまたは組成物がまた、本明細書で提供される。請求項26に記載のキットにおいて、上記iRGDアナログは、
図2中の構造として示される。
【実施例】
【0055】
実施例1:転移性膵臓がんを有する患者におけるゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルと組み合わせたCEND-1のフェーズI治験(CEND-001治験といわれる)
この実施例は、CEND-1が、ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルとの組み合わせにおいて十分に耐容性があり、進行した膵臓がんを有する患者において臨床上の利益を提供したことを示す。ベンチマーク治験と比較した場合、奏効率は、倍化を超えて増大した。CEND-1はまた、
図2中に示される化学構造およびCAS登録番号2580154-02-3に相当する、本明細書でiRGDアナログまたはCEND-1/iRGDアナログ Ffigue1として言及される。
【0056】
材料:
CEND-1薬物製品は、高い化学的純度を有する、固相ペプチド合成技術を使用して製造される合成ペプチドである。注射用のCEND-1は、静脈内投与のために、100mg/バイアルの活性成分用量強度として供給される無菌の凍結乾燥白色粉末である。CEND-1注射物は、CEND-1薬物物質と賦形剤としての酢酸ナトリウム三水和物およびマンニトールからなる。
【0057】
方法:オープンラベルの用量上昇多施設(オーストラリアで3箇所の活動拠点)治験は、CEND-1単剤療法(1~7日間)の上昇用量での導入期間(run-in phase)、続いて、21日間の処置サイクルの中で、1日目、8日目、15日目でのCEND-1とnab-パクリタキセル(125mg/m
2)およびゲムシタビン(1000mg/m
2)との組み合わせを含んだ。患者は、nabパクリタキセルの静脈内注入(30分間(±3分間)かけて125mg/m
2)を先ず受ける。CEND-1を、nabパクリタキセル後の食塩水フラッシュの完了の直後に、1分間(±30秒間)かけてのゆっくりとしたIVプッシュとして適切な用量レベルで静脈内に与える。ゲムシタビンの静脈内注入(30分間(±3分間)かけて1000mg/m
2)を、可能な限り直ぐに、しかしCEND-1投与の遅くとも10分以内に開始する。
【表1-1】
【0058】
測定可能な転移性膵臓がんを有し、転移性疾患に関しては以前の処置はなく、0~1のECOG PSを有する患者(n=31)を含めた。一次エンドポイントは、安全性および最適な生物製剤用量であり、二次および探索的エンドポイントは、奏効率、薬物動態および生体マーカーを含んだ。
【0059】
結果:29名の患者が、第1の処置サイクルを完了し、応答に関して評価可能であった(データカットオフ、2020年4月27日)。用量を制限する毒性は観察されなかった。AEは、nabパクリタキセルおよびゲムシタビンのものと概して一致した。3名以上の患者に存在した唯一の薬物関連グレード(gr)3~4の有害事象(AE)は、18名の患者(62%)における好中球減少症および5名の患者(17%)における貧血であった。治験責任者が評価したRECIST 1.1基準によれば、1名の患者が完全奏効(3.4%)、16名の患者が部分奏効(55%)、10名の患者が安定病態(34%)、および2名の患者が進行性疾患(6.9%)を有した。利用可能なベースライン後評価で上昇したCA19-9を有する患者の中で、上記患者のうちの合計96%が、少なくとも20%のベースラインからの減少を有し、74%が、少なくとも90%の減少を有し、および/またはベースラインに対して正常化したCA19-9レベルを有した。
【0060】
結論:nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンとの組み合わせにおけるCEND-1の投与は安全であり、用量を制限する毒性はなかった。グレード3および4の有害事象の発生率は、類似の公開された治験におけるより低い。ベンチマーク治験におけるものより、処置のメジアン継続期間はより長く、奏効率は>2倍高かった。
【表1-2】
【0061】
以下の頻度は、iMPACT3治験(括弧の中のデータ(Von Hoffら, 2013))と比較する。
【0062】
有効性結果-奏効率
全ての評価可能な患者(N=29)の全奏効率(ORR)は、55%(対 23%)であった。16週間にわたる全体的な病勢コントロール率は、76%(対 48%)であった。
【0063】
図1は、Response Evaluation Criteria In Solid Tumor 1.1に従う標的病変のサイズにおけるベースラインからの最大パーセンテージ変化のウォーターフォールプロットに相当する。合計16名の患者が、部分奏効(55%)を示し、10名の患者が、安定病態(34%)を有した。
【0064】
CA19-9
合計24名の患者は、上昇したベースラインCA19-9(≧37 U/L)を有した。これらのうち、23名の患者は、少なくとも1回のオントリートメントCA19-9測定を有した。上記患者のうちの合計96%が、少なくとも20%のベースラインからの減少を有し(対 61%)、74%が、少なくとも90%の減少を有し、および/またはベースラインに対して正常化したCA19-9レベルを有した。
【0065】
処置曝露
処置のメジアン継続期間は、6.9+ヶ月(対 3.9ヶ月)であり、76%が、少なくとも6ヶ月間の処置を受けた(対 32%)。患者のうちの86%は、nab-パクリタキセル用量の低減を有し(対 41%)、76%は、ゲムシタビン用量の低減を有した(対 47%)。合計で、試験の間に投与された全てのnab-パクリタキセル用量のうちの53%が、125mg/m2の完全用量にあった(対 71%)。nab-パクリタキセル-ゲムシタビン群におけるメジアン相対用量強度(計画された累積用量に対する投与された累積用量の割合)は、nab-パクリタキセルに関しては78%およびゲムシタビンに関しては82%であった(それぞれ、対 81%および75%)。
【0066】
安全性
以下の表2は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)、バージョン5に従って観察された骨髄毒性の頻度を示す。この物質におけるグレード3~4の骨髄毒性の頻度は、好中球減少症に関しては66%、白血球減少症に関しては14%、好中球減少症に関しては23%、血小板減少症に関しては3%、および貧血に関しては24%であった。iMPACT3[Von Hoffら 2013]フェーズIII治験からのデータを、比較のために中央の列に示す。
【表2】
【0067】
CEND1-001試験
CEND1-001治験において、上で示されるように、CEND-1を、1~7日間の導入期間の間に、0.2mg/kg~3.2mg/kgへの上昇用量で最初に与え、その間に、単一薬剤のPKおよび安全性を評価した。
【0068】
コホート1aには8名の患者がいた: 用量レベル1(CEND-1 0.2mg/kg)の1名の患者、用量レベル2(0.8mg/kg)の1名の患者、用量レベル3(1.6mg/kg)の3名の患者および用量レベル4(3.2mg/kg)の3名の患者。コホート1bには23名の患者がおり、11名の患者は、用量レベル3(1.6mg/kg)、11名の患者は、用量レベル4(3.2mg/kg)、および用量レベル4(3.2mg/kg)に割り当てられた1名の患者は、導入期間の後に試験から離脱したが、CEND-1 0.2mg/kgでの導入投与(run-in dosing)のみを受けた。
【0069】
登録した31名の患者のうち、29名は、有効性に関して評価され、31名は、PKに関して評価され、30名は、PDに関して評価された(1.6mg/kg CEND-1用量でN=14および3.2mg/kg CEND-1用量レベルでN=14、CEND-1低用量群での2名の患者を含まない)。10名の患者の死亡が試験中に報告され、うち9例は、原発性疾患の進行(転移性膵臓がん)によって、1例は、左中大脳動脈卒中に起因して引き起こされたものであった。
【0070】
確認された客観的応答(OR)は、17/29(58.6%)名の患者において起こった(95% CI=38.9, 76.5)。CEND-1 1.6mg/kgおよび3.2mg/kgで処置した患者の客観的奏効率は、それぞれ、50%(7/14)および61.5%(8/13)(61.5%)であった。病勢コントロールは、CR+PR+SD>16週間として定義され、病勢コントロール率(DCR)は、CEND-1 1.6mg/kg群において64.3%(9/14)、CEND-1 3.2mg/kg群において92.3%(12/13)であった。全体的に、進行を有する患者数は、16/29(55.2%)であり、進行までのメジアン時間は、およそ9.7ヶ月間であった。
【0071】
これらの奏効率(OR)は、匹敵する治験において歴史的に達成されたものを明らかに上回りかつ顕著な改善である(表3)。nab-パクリタキセルに関するフェーズ3登録治験において、ゲムシタビン/nab-パクリタキセル組み合わせで処置した第1選択の転移性膵臓がん患者における奏効率は、23%であり、PFS 5.5ヶ月であった(Von Hoffら, 2013)。
【表3】
【0072】
3.2mg/kg用量レベルでの改善された転帰に関する傾向のため、これを、将来的な試験におけるさらなる探索のための用量として選択した。
【0073】
腫瘍生体マーカー
ベースラインからのCA19-9の≧50%低減を有する患者数は、サイクル5の1日目において20/22(90.9%)患者の多さへと増大した。
【0074】
1.6mg/kgおよび3.2mg/kgの用量レベルでのCEND-1の腫瘍生体マーカー結果は、投与の逐次サイクルにわたってCA値を減少させる傾向を示す。これは、転移性のがんを有する患者において、Nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンのような薬物との組み合わせでの、CEND-1のさらなる開発を裏付ける。
【0075】
CEND-1薬物動態
全体的に、CEND-1のメジアンTmaxは、PKサンプリングの全日にわたって0.067時間であった(最小は0.03、最大は0.55)。反復投与での増大なしに、Cmaxの用量比例増大が存在した。
【0076】
血漿CEND-1パラメーターの評価から、曝露(AUC0-t、 AUC0-6hおよびAUC0-inf)がCmaxに関して記載された同じパターンをたどり、用量の増大に伴って増大する傾向があることが示された。用量で正規化したPKパラメーター(AUC0-t/D、AUC0-6h/DおよびAUC0-inf/D)は、通院と用量との間で類似であった。
【0077】
CEND-1は、PKサンプリングの全日にわたって1.6時間~1.8時間の間のメジアンT1/2で排除された。CL平均値は、106.8mL/時/kg~266.5mL/時/kgの間であった。最終分布容積(Vz)の平均値は、PKサンプリングの全日にわたって220.9mL/kg~277.4mL/kgの間であった。
【0078】
CEND-1安全性
用量上昇の間のCEND-1導入の間に、DLTの以下の定義を使用した:
CEND-1単剤療法:
導入期間におけるDLTを、以下のように定義した:
- 5日間以上継続するグレード4の好中球減少症、または発熱および/もしくは感染を伴うグレード3もしくは4の好中球減少症
- グレード4の血小板減少症(または出血を伴うグレード3)
- グレード3もしくは4の処置関連非血液毒性(最大の処置にもかかわらず、>72時間継続するグレード3 悪心、嘔吐または下痢は、DLTを構成し、不十分な処置は、試験の不適切な実施を構成することから、DLT基準に対する例外を構成しない)
- 処置により発現したAEまたは関連する重度の検査異常に起因する2週間より長い投与遅延。
【0079】
試験の単一薬剤導入部分の間のあらゆるCEND-1用量レベルにおいてDLTもグレード3もしくは4の有害事象もなく、CEND-1に原因があるとされ得る臨床上顕著な有害事象は、報告されなかった。
上記試験の組み合わせ部分の間には、用量制限毒性の以下の定義を使用した:
- nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンの添付文書から予測される副作用より重篤で、継続時間がより長いまたはより高頻度のあらゆる副作用
- nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンの添付文書中に含まれない、上記の単剤療法のDLT定義を満たすあらゆる副作用 。
【0080】
試験の間に、DLTは報告されなかった。TEAEの大部分は、CTCAEグレード1または2であった。各グレードにおける報告されたTEAEの数は、CEND-1用量レベル間で同様であった。全体として、TEAEの重篤度は、CEND-1用量に伴って増大しなかった。SOCによる最も一般的なCTCAEグレード3~4のTEAEは、血液およびリンパ系の障害であった。全体的に、22名(71.0%)の患者がSAEを報告した。CEND-1用量の増大に伴って、増大する頻度のSAEの傾向はなかった。SOCによる最も一般的なSAEは、感染および外寄生(infestation)であった。CEND-1の安全性データは、有利な利益-リスクプロフィールおよび安全性プロフィールを示唆する。いかなるCEND-1単剤療法関連SAEもなく、CEND-1組み合わせ治療に関連するSAEも低頻度であることから、転移性の膵外分泌がんのこの治験治療の継続した評価が支持される。
【国際調査報告】