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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】キメラインフルエンザワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/44 20060101AFI20230607BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20230607BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C12N15/44
C07K14/11 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
A61K39/145
A61P31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567535
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 US2021031406
(87)【国際公開番号】W WO2021226533
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】63/022,328
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チー-ヒューイ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,シン-ユー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シー-チー
(72)【発明者】
【氏名】コ,イー-アン
(72)【発明者】
【氏名】リン,クオ-イー
(72)【発明者】
【氏名】マー,チェー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チン-ジェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085AA04
4C085BA55
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、H1サブタイプHA(H1 HA)又はH5サブタイプHA(H5 HA)の球状頭部ドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上の球状頭部ドメイン配列と融合した、H1サブタイプHA(H1 HA)及び/又はH5サブタイプHA(H5 HA)のステムドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上のステムドメイン配列を含む、キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチドに、関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H1サブタイプHA(H1 HA)又はH5サブタイプHA(H5 HA)の球状頭部ドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上の球状頭部ドメイン配列と融合した、H1サブタイプHA(H1 HA)及び/又はH5サブタイプHA(H5 HA)のステムドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上のステムドメイン配列を含む、キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド。
【請求項2】
前記HAが、インフルエンザA HA、インフルエンザB HA又はインフルエンザC HAである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記相同性が、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ステムドメイン配列が、H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1 HAのC末端ステムセグメント;H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメント;又はH5 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメントである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
H1 HAの前記ステムドメイン共通配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
H5 HAの前記球状頭部ドメイン共通配列が、配列番号3、配列番号7又は配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
HAにおける1つ以上のグリコシル化部位が、モノグリコシル化され、このモノグリコシル化HAが、各グリコシル化部位においてN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)のみを有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、免疫原として使用される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド及びアジュバントを含む、免疫原性組成物。
【請求項11】
前記アジュバントが、糖脂質アジュバントである、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
有効量の請求項1~9のいずれか1項に記載のキメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド又は請求項10に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、対象をインフルエンザウイルスに対して免疫化するか又はインフルエンザウイルス疾患を予防する方法。
【請求項13】
CD4及びCD8T細胞免疫応答を惹起する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
H1、H3、H5及びH7株及びサブタイプに対するより高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、より良い中和活性及びより強い交差防御活性を有するステム特異的抗体を誘導する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
より多くのIFN-γ、IL-4及びCD8記憶T細胞産生によりワクチン効力を増大する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列及び任意選択的にシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記シグナルペプチドが、配列番号13又は配列番号14の配列を含む、請求項16に記載の組換えポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項17に記載の組換えポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/022.328号(2020年5月8日出願)に対する優先権を主張し、この出願は、本明細書中でその全体が全ての目的のために参考として組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、本明細書にその全体が組み込まれる配列表を含む。当該ASCIIコピーは、2021年5月6日に作成され、G4590-08600PCT_SeqListing.txtと名付けられており、28キロバイトの大きさである。
【0003】
発明の分野
本開示は、キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド、それを含む免疫原性/ワクチン組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
インフルエンザワクチン製造の従来の方法は、特定病原体除去(SPF)胚形成雌ニワトリ卵においてウイルスを培養することであり、このプロセスは、多くの場合、大量生産のために6か月超を要する。しかし、いくつかのワクチンウイルス株は、卵の中では増殖が不十分であり、また、ニワトリ卵に対するアレルギーを有する人々は、安全性への懸念を抱く。ウイルスの細胞培養に基づく新規なアプローチが、卵ベースの方法に置き換わるべく開発されている。しかし、細胞培養方法は、未だ、危険なウイルスを産生する潜在的な危険性を有する。これらの問題を克服するために、代替の戦略の探求は、組換えHAベースのワクチンがインフルエンザウイルス感染に対する中和抗体を誘導し得ることを実証した。しかし、特定のインフルエンザウイルスサブタイプによって誘導された抗体は、通常、他のインフルエンザサブタイプを効果的に中和することができなかった。さらに、このワクチンは、このウイルスの絶え間ない突然変異ゆえに、毎年更新されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、広範囲のインフルエンザウイルス株に対する普遍的なワクチンを開発する需要が、未だに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
一態様において、本開示は、H1サブタイプHA(H1 HA)又はH5サブタイプHA(H5 HA)の球状頭部(globular head)ドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上の球状頭部ドメイン配列と融合した、H1サブタイプHA(H1 HA)及び/又はH5サブタイプHA(H5 HA)のステムドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上のステムドメイン配列を含む、キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチドを、提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記HAは、インフルエンザA HA、インフルエンザB HA又はインフルエンザC HAである。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記相同性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記ステムドメイン配列は、H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1 HAのC末端ステムセグメント;H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメント;又はH5 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメントである。
【0010】
いくつかの実施形態において、H1 HA及び/又はH5 HAの上記ステムドメイン共通配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、H1 HA又はH5 HAの上記球状頭部ドメイン共通配列は、配列番号3、配列番号7又は配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一実施形態において、上記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、HAにおける1つ以上のグリコシル化部位は、モノグリコシル化される。さらなる実施形態において、このモノグリコシル化HAは、各グリコシル化部位においてN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)のみを有する。
【0014】
一実施形態において、上記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、免疫原として使用される。
【0015】
別の態様において、本開示は、キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド及びアジュバントを含む免疫原性組成物を、提供する。一実施形態において、このアジュバントは、糖脂質アジュバントである。
【0016】
別の態様において、本開示は、本開示のポリペプチドをコードする核酸配列及び任意選択的にシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む組換えポリヌクレオチドを、提供する。いくつかの実施形態において、このシグナルペプチドは、配列番号13又は配列番号14の配列を含む。
【0017】
別の態様において、本開示は、本開示の組換えポリヌクレオチドを含むベクターを、提供する。本開示のベクターを含む宿主細胞もまた、提供される。
【0018】
別の態様において、本開示は、有効量の、本開示のキメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド又は免疫原性組成物を対象に投与することを含む、対象をインフルエンザウイルスに対して免疫化する方法を、提供する。
【0019】
別の態様において、本開示は、有効量の、本開示のキメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド又は免疫原性組成物を対象に投与することを含む、対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防する方法を、提供する。
【0020】
一実施形態において、本明細書中で記載される方法は、CD4及びCD8T細胞免疫応答を惹起する。
【0021】
一実施形態において、本明細書中で記載される方法は、H1、H3、H5及びH7株及びサブタイプに対するより高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、より良い中和活性及びより強い交差防御活性を有するステム特異的抗体を誘導する。
【0022】
一実施形態において、本明細書中で記載される方法は、より多くのIFN-γ、IL-4及びCD8+メモリーT細胞産生により、ワクチン効力を増大する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1-1】図1(A)~(C)。共通H5球状頭部及び共通H1ステム(cHA)を有するキメラH5/1構築物ならびにcHAmg免疫原によるワクチン接種によって惹起された広範に交差防御的なステム特異的抗体。(A)swap H1/5(H1球状頭部及びH1+H5[HA2]ステム)、swap H5/1(H5球状頭部及びH5+H1[HA2]ステム)ならびにキメラH5/1(cHA:H5球状頭部及びH1ステム)の構築物。(B)H1N1 California/07/2009及びH5N1 Vietnam/1194/2004ウイルスに対する中和活性。(C)PBS(対照)、HA+Alu、又はHA+C34でワクチン接種したマウスにおいて2日間にわたってHA(黒色バー)又はPBS(白色バー)対照で刺激した脾細胞におけるグランザイムB(GrzB)産生CD8 T細胞の数を、フローサイトメトリー分析によって評価した。
図1-2】図1(D)~(I)。共通H5球状頭部及び共通H1ステム(cHA)を有するキメラH5/1構築物ならびにcHAmg免疫原によるワクチン接種によって惹起された広範に交差防御的なステム特異的抗体。(D~I)Al(OH)をアジュバントとしたcHAfg及びcHAmg対C34をアジュバントとしたcHAfg及びcHAmgでワクチン接種したマウスからの抗体力価を、A/California/07/2009 H1N1 HAタンパク質(D)、A/Brisbane/59/2007 H1N1 HAタンパク質(E)、A/Brisbane/10/2007 H3N2 HAタンパク質(F)、A/Vietnam/1194/2004 H5N1 HAタンパク質(G)、A/Shanghai/2/2013 H7N9 HAタンパク質(H)及びA/Brisbane/59/2007(Bris/07)ステムHA(no.4900)タンパク質(I)をコーティング抗原として用いたELISAによって、42日目に測定した。陰性対照(免疫前血清)によって発生する吸光度よりも2.5倍高い吸光度を発生するエンドポイント抗体力価を、抗血清の最終希釈物として定義する。データを、スチューデントt検定及びPrismからの双方向ANOVAを用いて調べた;相違を、*P<0.05;**P<0.01にて、統計学的に有意とみなした。データは、平均±SEMを表す。
図2-1】図2(A)~(B)。cHAワクチン接種マウス由来の抗血清の、H1N1、H3N2又はH5N1のHA及びサブタイプを発現する標的細胞に対するADCCレポーターアッセイ。水酸化アルミニウムもしくはC34をアジュバントとしたcHAfg又はcHAmgタンパク質によって免疫化したマウスから収集した抗血清を、(A)H1N1ウイルス、(B)H5N1ウイルス、によって感染したMDCK細胞と共に30分間にわたってインキュベートした。その後、ADCCレポーターアッセイを、マウスFcγRIIIを発現するJurkatエフェクター細胞を用いて行い、相対発光単位(RLU)を測定した。値は、平均±SEM、***P<0.001である。P値を、Prismソフトウェアにより二方向ANOVAを用いて計算した。
図2-2】図2(C)。cHAワクチン接種マウス由来の抗血清の、H1N1、H3N2又はH5N1のHA及びサブタイプを発現する標的細胞に対するADCCレポーターアッセイ。水酸化アルミニウムもしくはC34をアジュバントとしたcHAfg又はcHAmgタンパク質によって免疫化したマウスから収集した抗血清を、(C)H3N2ウイルスによって感染したMDCK細胞と共に30分間にわたってインキュベートした。その後、ADCCレポーターアッセイを、マウスFcγRIIIを発現するJurkatエフェクター細胞を用いて行い、相対発光単位(RLU)を測定した。値は、平均±SEM、***P<0.001である。P値を、Prismソフトウェアにより二方向ANOVAを用いて計算した。
図3-1】図3(A)~(C)。アジュバントC34を伴うcHAmgにより、より多くのCD4及びCD8T細胞が応答し、そして広範な中和抗体が惹起されて、より広範な交差防御が得られた。BALB/cマウスを、アジュバントAl(OH)又はC34を伴うcHAfg及びcHAmgによって免疫化した;免疫化マウスの脾臓由来の細胞を、3回の免疫化後に得、そしてIFN-γ(A)、IL-4(B)及びGzB(C)分泌細胞を、特異的ペプチドを用いるELISpotアッセイによって測定した。スポット形成細胞(SFC)の数を、平均±SEMで表す。
図3-2】図3(D)~(E)。アジュバントC34を伴うcHAmgにより、より多くのCD4及びCD8T細胞が応答し、そして広範な中和抗体が惹起されて、より広範な交差防御が得られた。BALB/cマウスを、アジュバントAl(OH)又はC34を伴うcHAfg及びcHAmgによって免疫化した。cHAfg及びcHAmgワクチン接種マウス由来の抗血清の中和活性を、(D)H1N1ウイルス及び(E)H5N1ウイルスに対してアッセイした。データを、平均±SEMで表す。結果を、Prismソフトウェアにて、スチューデントt検定及び双方向ANOVAを用いて計算した;有意な相違を、*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001として記した。
図4-1】図4(A)~(C)。H1N1及びH5N1ウイルスの致死用量でチャレンジされたマウスにおける交差防御的な効力。BALB/cマウスを、3回用量の、アジュバントAl(OH)又はC34を伴うcHAfg及びcHAmgにより、2週間間隔で免疫化した。免疫化マウスを、H1N1 A/California/07/2009(A)、H1N1 A/New Caledonia/1999(B)、H1N1 A/WSN/1933(C)によりチャレンジし、そして効力を、感染後14日間にわたって生存率を記録することによって評価した。**P<0.01。生存率における有意な相違を、ログランク(Mantel-Cox)検定によって分析した。
図4-2】図4(D)~(F)。H1N1及びH5N1ウイルスの致死用量でチャレンジされたマウスにおける交差防御的な効力。BALB/cマウスを、3回用量の、アジュバントAl(OH)又はC34を伴うcHAfg及びcHAmgにより、2週間間隔で免疫化した。免疫化マウスを、H1N1 A/Solomon Islands/03/2006(D)、H5N1 A/Vietnam/1194/2004/NIBRG14(E)、又はH5N1A/Turkey/1/2005/NIBRG23(F)によりチャレンジし、そして効力を、感染後14日間にわたって生存率を記録することによって評価した。**P<0.01。生存率における有意な相違を、ログランク(Mantel-Cox)検定によって分析した。
図5-1】図5(A)~(D)。キメラHAタンパク質の設計及び調製。(A)設計されたインフルエンザHA配列を、共通H1N1配列及び共通H5N1配列pCHA5-IIを用いて構築し、キメラHAを作製した。球状頭部ドメインは、C52とC277との間の残基(H3番号付け)のアミノ酸配列からなる。ステム領域は、HA1及びHA2サブユニットの部分からなる。タンパク質構造を、タンパク質データバンクIDコード2IBX(VN1194 H5 HA)及び3LZG(A/California/04/2009)からダウンロードした。最終画像を、PyMolによって作成した。共通HAの構造は公開されたことがないので、鳥インフルエンザH5(Vietnam/1194/2004)の頭部ドメイン及びパンデミックH1N1(California/07/2009)のステム領域の画像を、キメラHA構築物のために用いる。(B~D)キメラHAタンパク質の精製及びゲル濾過クロマトグラフィー分析。(B)精製HAタンパク質を、SDS/PAGEによって分析した。M:分子量マーカー。左:cHAfg、HEK293T細胞から直接精製された完全グリコシル化cHA;(C)cHAmg、HEK293S細胞から精製され、エンドグリコシダーゼHによって消化されたモノグリコシル化cHA(D)精製した分泌型HAタンパク質のゲル濾過分析。クロマトグラフィーによって示される、HEK293T細胞由来の完全グリコシル化cHA及び三量体として存在するモノグリコシル化cHA(200kDaを超える)。この図は、HEK293T細胞によって発現されたcHAタンパク質を較正標準(破線)と重ねた、重ね合わせ溶出プロファイルを表す。
図5-2】図5(E)。キメラHAタンパク質の設計及び調製。(E)LC-MS/MSによって決定された、cHAfg及びcHAmgのグリコシル化部位における主なグリカンに印をつけた模式図。一般的なグリカン記号にしたがった。
図6-1】図6(A)。分泌型HAの構築物及び精製。(A)HAの外部ドメインをコードする配列を、発現ベクターpcDNA内に調製し、そしてHEK293T細胞にトランスフェクトさせた。タンパク質を、安定化/三量体化シグナル、foldon、及び精製のためのC末端(His)タグを含むように操作した。
図6-2】図6(B)。分泌型HAの構築物及び精製。(B)精製HAタンパク質を、SDS/PAGEによって分析した。M:分子量マーカー。レーン1:H1N1(A/Brisbane/59/2007)HAタンパク質;レーン2:H1N1(A/California/07/2009)HAタンパク質;レーン3:H3N2(Brisbane/10/2007)HAタンパク質;レーン4:H5N1(Vietnam/1194/2004)HAタンパク質;レーン5:H7N9(A/Shanghai/2/2013)HAタンパク質。
図7-1】図7(A)~(B)。cHAfg及びcHAmgでワクチン接種したマウス由来の抗血清のHA結合活性。BALB/cマウス(1群あたりn=10)を、2週間間隔でAl(OH)もしくはC34をアジュバントとしたcHAfg又はcHAmgによって免疫化した。Al(OH)アジュバントを有するcHAfg及びcHAmg対C34アジュバントを有するcHAfg及びcHAmgでワクチン接種したマウスからの抗体力価を、A/California/07/2009H1N1HAタンパク質(A)、A/Brisbane/59/2007H1N1HAタンパク質(B)をコーティング抗原として用いたELISAによって、28日目に測定した。エンドポイント抗体力価を、陰性対照(免疫前血清)によって発生する吸光度(OD)より2.5倍高い吸光度を発生する血清の最高希釈として定義した。データを、Prismからの双方向ANOVAを用いて調べた;相違を、**P<0.01;***P<0.001にて統計学的に有意とみなした。データは、平均±SEMを表す。
図7-2】図7(C)~(F)。cHAfg及びcHAmgでワクチン接種したマウス由来の抗血清のHA結合活性。BALB/cマウス(1群あたりn=10)を、2週間間隔でAl(OH)もしくはC34をアジュバントとしたcHAfg又はcHAmgによって免疫化した。Al(OH)アジュバントを有するcHAfg及びcHAmg対C34アジュバントを有するcHAfg及びcHAmgでワクチン接種したマウスからの抗体力価を、A/Brisbane/10/2007H3N2HAタンパク質(C)、A/Vietnam/1194/2004H5N1HAタンパク質(D)、A/Shanghai/2/2013H7N9HAタンパク質(E)及びA/Brisbane/59/2007(Bris/07)ステムHA(#4900)タンパク質(F)をコーティング抗原として用いたELISAによって、28日目に測定した。エンドポイント抗体力価を、陰性対照(免疫前血清)によって発生する吸光度(OD)より2.5倍高い吸光度を発生する血清の最高希釈として定義した。データを、Prismからの双方向ANOVAを用いて調べた;相違を、**P<0.01;***P<0.001にて統計学的に有意とみなした。データは、平均±SEMを表す。
図8図8(A)及び(B)。ストーク反応性抗体(F10 IgG)の組換えH1、H5及びcHAに対する結合。(A)精製F10を、SDS/PAGEによって分析した。M:分子量マーカー。レーン1:F10抗体。(B)F10 IgGと種々のHAとの結合親和性を、ELISAを用いて測定した。x軸は、種々のHAタンパク質の濃度を示し、そしてy軸は、OD405nmにおける吸光値を示す。
図9図9(A)~(D)。C34の抗体力価に対する用量依存性効果。BALB/cマウス(1群あたりn=10)に、2週間間隔で、0.5μg、2μg又は10μgのC34をアジュバントとした20μg cHAを注射した。マウス血清を、第2回目(D28)及び第3回目(D42)の免疫化の2週間後に、収集した。抗体力価を、H1N1A/California/07/2009(A及びC)ならびにH5N1 Vietnam/1194/2004(B及びD)のHAタンパク質を用いたELISAを用いて測定した。抗体力価のP値を、Prismからの双方向ANOVAを用いて計算した;相違を、*P<0.05;**P<0.01にて、統計学的に有意とみなした。データは、平均±SEMを表す。
図10図10(A)~(C)。C34の抗原特異的サイトカイン分泌細胞に対する用量依存性効果。BALB/cマウス(1群あたりn=5)に、2週間間隔で、0.5、2及び10μgの3つの異なる用量のC34をアジュバントとした20μgの精製cHAを注射した。cHA免疫化マウスの脾細胞を、第2回目(D28)及び第3回目(D42)の免疫化の2週間後に、得た。(A)IFN-γ及び(B)IL4分泌細胞を、Elispot分析によって評価した。(C)脾細胞におけるグランザイムB産生CD8T細胞の数を、特異的ペプチドを用いるElispot分析によって決定した。***P<0.001。P値を、Prismソフトウェアにより、二方向ANOVAを用いて計算した。
図11-1】図11(A)~(C)。H1N1及びH5N1ウイルスを致死用量でチャレンジしたcHAfg又はcHAmgワクチン接種マウスの体重。H1N1 A/California/07/2009(A)、H1N1 A/NewCaledonia/1999(B)、H1N1 A/WSN/1933(C)ウイルスによってチャレンジした免疫化マウスの体重変化を、感染後14日間にわたってモニタリングした。体重変化を、平均±SEMで表す。
図11-2】図11(D)~(F)。H1N1及びH5N1ウイルスを致死用量でチャレンジしたcHAfg又はcHAmgワクチン接種マウスの体重。H1N1 A/Solomon Islands/03/2006(D)、H5N1 A/Vietnam/1194/2004(E)又はH5N1 A/Turkey/1/2005(F)ウイルスによってチャレンジした免疫化マウスの体重変化を、感染後14日間にわたってモニタリングした。体重変化を、平均±SEMで表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の実施は、別段に示さない限り、当業者の技術範囲内である分子生物学、微小生物学、組換えDNA及び免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、文献によって完全に例示される。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.,Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.),Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Antibodies:A Laboratory Manual,by Harlow and Lane s(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988);及びHandbook of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986)を参照されたい。
【0025】
定義
明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかでない限り、複数の言及を含む。例えば、用語「キメラ膜貫通受容体」は、複数のキメラ膜貫通受容体を含む。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「ヘマグルチニン」及び「HA」は、当業者に公知の任意のヘマグルチニンをいう。特定の実施形態において、ヘマグルチニンは、インフルエンザヘマグルチニン、例えば、インフルエンザAヘマグルチニン、インフルエンザBヘマグルチニン、又はインフルエンザCヘマグルチニンである。代表的なヘマグルチニンは、シグナルペプチド、ステムドメイン、球状頭部ドメイン、管腔ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む、当業者に公知のドメインを含む。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「ステムドメインポリペプチド」、「HAステムドメイン」、「インフルエンザウイルスヘマグルチニンステムドメインポリペプチド」及び「HAストークドメイン」は、インフルエンザヘマグルチニンのAステムステムドメインを作り上げる1つ以上のポリペプチド鎖を含むか、又はそれからなるポリペプチドをいう。ドメインポリペプチドは、1本のポリペプチド鎖であっても、2本のポリペプチド鎖であっても、又はもっと多くのポリペプチド鎖であってもよい。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「インフルエンザウイルスヘマグルチニン頭部ドメインポリペプチド」、「インフルエンザウイルスヘマグルチニン頭部ドメイン」、「HA球状頭部ドメイン」、及び「HA頭部ドメイン」は、インフルエンザヘマグルチニンポリペプチドの球状頭部ドメインをいう。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原」は、免疫応答を惹起することができる、任意の物質として定義される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫原性」は、免疫原、抗原、又はワクチンの、免疫応答を刺激する能力をいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「エピトープ」は、抗体又はT細胞受容体の抗原結合部位と接触する、抗原分子の部分として定義される。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「ワクチン」は、疾患の原因となる生物全体(殺傷済又は弱体化済)又はそのような生物の構成部分、例えばタンパク質、糖タンパク質、ペプチド、糖ペプチド、糖脂質、多糖類、又はそれらの任意の組み合わせからなり、その生物が引き起こす疾患に対する免疫を付与する、抗原を含む調製物をいう。ワクチン調製物は、天然であっても、合成であっても、又は組換えDNA技術によって得られてもよい。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原特異的」は、特定の抗原、又は抗原の断片を供給し、特異的な細胞増殖をもたらす、細胞集団の特性をいう。
【0034】
「有効量」は、所望の治療効果又は予防効果を達成するために必要な期間にわたる投薬量で、有効な量をいう。
【0035】
本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個人の疾患状態、年齢、性別及び体重などの要因、ならびにその個体において所望の応答を惹起するその物質/分子の能力にしたがって、変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が、その物質/分子の任意の毒性効果又は有害効果をしのぐ量でもある。「予防有効量」は、所望の予防効果を達成するために必要な期間にわたる投薬量で、有効な量をいう。必ずしもというわけではないが、代表的に、予防用量は疾患にかかる前、又は疾患のより初期の段階で、対象において使用されるがゆえに、予防有効量は治療有効量より少なくなる。
【0036】
鳥インフルエンザH5(pCHA5-II)の共通DNA配列を、マウスにおける投与のためのワクチンとして使用し、結果は、種々のH5サブタイプに対する広範な保護を有することを示した(Chen,M.W.et al.Broadly neutralizing DNA vaccine with specific mutation alters the antigenicity and sugar-binding activities of influenza hemagglutinin.Proc.Natl Acad.Sci.USA 108,3510-3515(2011))。本開示は、最も一般的な鳥インフルエンザH5及びヒトインフルエンザH1配列に基づく種々のキメラワクチンの設計及び評価を報告する。これらの構築物の中で、球状頭部としての共通H5及びステムとしての共通H1を有するキメラHA(cHA)ワクチンは最良であり、そして強いCD4及びCD8T細胞免疫応答を惹起することが、示された。興味深いことに、各グリコシル化部位にGlcNAcのみを有するモノグリコシル化cHA(cHAmg)ワクチンは、より高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、H1、H3、H5及びH7株ならびにサブタイプに対するより良い中和活性及びより強い交差防御活性を有する、より多くのステム特異的抗体を誘導した。さらに、クラススイッチのために設計した、糖脂質アジュバントと組み合わせたcHAmgワクチンは、さらにワクチン効力を増大し、より多くのIFN-γ、IL-4及びCD8記憶T細胞産生を伴った。
【0037】
キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド
本開示は、CD4及びCD8T細胞免疫応答を惹起するための免疫原又はワクチンとして使用される、キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチドを、提供する。したがって、キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、対象においてインフルエンザウイルス疾患を予防し得る。
【0038】
本開示のキメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチドは、H1サブタイプHA(H1 HA)又はH5サブタイプHA(H5 HA)の球状頭部共通配列と少なくとも60%の相同性をそれぞれ有する1つ以上の球状頭部ドメイン配列と融合した、H1サブタイプHA(H1 HA)及び/又はH5サブタイプHA(H5 HA)のステムドメイン共通配列と少なくとも60%の相同性をそれぞれ有する1つ以上のステムドメイン配列を、含む。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「相同性」は、ポリマー分子間、例えば核酸分子(例えばDNA分子及び/又はRNA分子)間及び/又はポリペプチド分子間の全体にわたる関連性をいう。適合する残基のアラインメントによって決定された類似性または同一性の閾値レベルを共有するポリマー分子(例えば核酸分子(例えばDNA分子及び/又はRNA分子)及び/又はポリペプチド分子)は、相同であると呼ばれる。相同性は、分子間の関係性をいう定性的用語であり、定量的な類似性又は同一性に基づき得る。類似性及び同一性は、2つの比較される配列の間で適合する配列の程度を規定する、定量的用語である。いくつかの実施形態において、ポリマー分子は、その配列が、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一であるか又は類似する場合に、互いに「相同」であるとみなされる。
【0040】
いくつかの実施形態において、本開示にしたがうポリペプチドは、H1 HA又はH5 HAの既知のヒト及び鳥インフルエンザウイルス株にわたる共通配列に対し少なくとも60%の相同性を有する1つ以上の配列を含み得る。いくつかの実施形態において、相同性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である。いくつかの実施形態において、ステムドメイン配列は、H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1 HAのC末端ステムセグメント;H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメント;又はH5 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメントである。
【0041】
いくつかの実施形態において、H1 HA及び/又はH5 HAのステムドメイン共通配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0042】
配列番号1(H1 ステム)
DTLCIGYHANNSTDTVDTVLEKNVTVTHSVNLLEDKHNGKL
【0043】
配列番号2(H1 ステム)
NTTCQTPKGAINTSLPFQNIHPITIGKCPKYVKSTKLRLATGLRNVPSIQSRGLFGAIAGFIEGGWTGMVDGWYGYHHQNEQGSGYAADLKSTQNAIDKITNKVNSVIEKMNTQFTAVGKEFNHLEKRIENLNKKVDDGFLDIWTYNAELLVLLENERTLDYHDSNVKNLYEKVRNQLKNNAKEIGNGCFEFYHKCDNTCMESVKNGTYDYPKYSEEAKLNREEIDGVKLESTRIYQ
【0044】
配列番号5(H1 ステム)
DTLCIGYHANNSTDTVDTVLEKNVTVTHSVNLLEDKHNGKL
【0045】
配列番号6(H1+H5 ステム)
NTTCQTPKGAINTSLPFQNIHPITIGKCPKYVKSTKLRLATGLRNVPSIQSRGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEAVGREFNNLERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGV
【0046】
配列番号9(H5 ステム)
DQICIGYHANNSTEQVDTIMEKNVTVTHAQDILEKTHNGKL
【0047】
配列番号10(H5+H1 ステム)
NTKCQTPMGAINSSMPFHNIHPLTIGECPKYVKSNRLVLATGLRNSPQRERRRKKR
GLFGAIAGFIEGGWTGMVDGWYGYHHQNEQGSGYAADLKSTQNAIDKITNKVNSVIEKMNTQFTAVGKEFNHLEKRIENLNKKVDDGFLDIWTYNAELLVLLENERTLDYHDSNVKNLYEKVRNQLKNNAKEIGNGCFEFYHKCDNTCMESVKNGTYDYPKYSEEAKLNREEIDGV
【0048】
一実施形態において、H1 HA又はH5 HAの球状頭部ドメイン共通配列は、配列番号3、配列番号7又は配列番号11のアミノ酸配列を含む。
【0049】
配列番号3(H5 球状頭部)
CDLDGVKPLILRDCSVAGWLLGNPMCDEFINVPEWSYIVEKANPANDLCYPGNFNDYEELKHLLSRINHFEKIQIIPKSSWSDHEASSGVSSACPYQGKSSFFRNVVWLIKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHPNDAAEQTRLYQNPTTYISVGTSTLNQRLVPKIATRSKVNGQSGRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIMKSELEYGNC
【0050】
配列番号7(H1 球状頭部)
CKLRGVAPLHLGKCNIAGWILGNPECESLSTASSWSYIVETSSSDNGTCYPGDFIDYEELREQLSSVSSFERFEIFPKTSSWPNHDSNKGVTAACPHAGAKSFYKNLIWLVKKGNSYPKLSKSYINDKGKEVLVLWGIHHPSTTADQQSLYQNADAYVFVGTSRYSKKFKPEIAIRPKVRDQEGRMNYYWTLVEPGDKITFEATGNLVVPRYAFAMERNAGSGIIISDTPVHDC
【0051】
配列番号11(H5 球状頭部)
CDLDGVKPLILRDCSVAGWLLGNPMCDEFINVPEWSYIVEKANPANDLCYPGNFNDYEELKHLLSRINHFEKIQIIPKSSWSDHEASSGVSSACPYQGKSSFFRNVVWLIKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHPNDAAEQTRLYQNPTTYISVGTSTLNQRLVPKIATRSKVNGQSGRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIMKSELEYGNC
【0052】
一実施形態において、キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列を含む。
【0053】
配列番号4(キメラH5/1)
DTLCIGYHANNSTDTVDTVLEKNVTVTHSVNLLEDKHNGKLCDLDGVKPLILRDCSVAGWLLGNPMCDEFINVPEWSYIVEKANPANDLCYPGNFNDYEELKHLLSRINHFEKIQIIPKSSWSDHEASSGVSSACPYQGKSSFFRNVVWLIKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHPNDAAEQTRLYQNPTTYISVGTSTLNQRLVPKIATRSKVNGQSGRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIMKSELEYGNCNTTCQTPKGAINTSLPFQNIHPITIGKCPKYVKSTKLRLATGLRNVPSIQSRGLFGAIAGFIEGGWTGMVDGWYGYHHQNEQGSGYAADLKSTQNAIDKITNKVNSVIEKMNTQFTAVGKEFNHLEKRIENLNKKVDDGFLDIWTYNAELLVLLENERTLDYHDSNVKNLYEKVRNQLKNNAKEIGNGCFEFYHKCDNTCMESVKNGTYDYPKYSEEAKLNREEIDGVKLESTRIYQ
【0054】
配列番号8(Swap H1/5)
DTLCIGYHANNSTDTVDTVLEKNVTVTHSVNLLEDKHNGKLCKLRGVAPLHLGKCNIAGWILGNPECESLSTASSWSYIVETSSSDNGTCYPGDFIDYEELREQLSSVSSFERFEIFPKTSSWPNHDSNKGVTAACPHAGAKSFYKNLIWLVKKGNSYPKLSKSYINDKGKEVLVLWGIHHPSTTADQQSLYQNADAYVFVGTSRYSKKFKPEIAIRPKVRDQEGRMNYYWTLVEPGDKITFEATGNLVVPRYAFAMERNAGSGIIISDTPVHDCNTTCQTPKGAINTSLPFQNIHPITIGKCPKYVKSTKLRLATGLRNVPSIQSRGLFGAIAGFIEGGWQGMVDGWYGYHHSNEQGSGYAADKESTQKAIDGVTNKVNSIIDKMNTQFEAVGREFNNLERRIENLNKKMEDGFLDVWTYNAELLVLMENERTLDFHDSNVKNLYDKVRLQLRDNAKELGNGCFEFYHKCDNECMESVRNGTYDYPQYSEEARLKREEISGV
【0055】
配列番号12(Swap H5/1)
DQICIGYHANNSTEQVDTIMEKNVTVTHAQDILEKTHNGKLCDLDGVKPLILRDCSVAGWLLGNPMCDEFINVPEWSYIVEKANPANDLCYPGNFNDYEELKHLLSRINHFEKIQIIPKSSWSDHEASSGVSSACPYQGKSSFFRNVVWLIKKNSTYPTIKRSYNNTNQEDLLVLWGIHHPNDAAEQTRLYQNPTTYISVGTSTLNQRLVPKIATRSKVNGQSGRMEFFWTILKPNDAINFESNGNFIAPEYAYKIVKKGDSTIMKSELEYGNCNTKCQTPMGAINSSMPFHNIHPLTIGECPKYVKSNRLVLATGLRNSPQRERRRKKRGLFGAIAGFIEGGWTGMVDGWYGYHHQNEQGSGYAADLKSTQNAIDKITNKVNSVIEKMNTQFTAVGKEFNHLEKRIENLNKKVDDGFLDIWTYNAELLVLLENERTLDYHDSNVKNLYEKVRNQLKNNAKEIGNGCFEFYHKCDNTCMESVKNGTYDYPKYSEEAKLNREEIDGV
【0056】
いくつかの実施形態において、免疫原性を増大させるために、HA上の1つ以上のグリコシル化部位が、モノグリコシル化される。好ましくは、モノグリコシル化HAは、各グリコシル化部位に、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)のみを有する。
【0057】
キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、任意の好適な方法によって生成され得る。そのような方法の多くは、当業者に公知である。例えば、タンパク質は、化学合成されてもよく、又は組換えDNA技術(例えば、細菌細胞において、細胞培養物(哺乳動物細胞、酵母細胞又は昆虫細胞)において、植物もしくは植物細胞において、又は無細胞原核生物もしくは真核生物ベースの発現系によって、他のインビトロ系によって、など)を用いて産生されてもよい。したがって、本開示は、本開示のポリペプチドをコードする核酸配列及び任意選択的にシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む組換えポリヌクレオチドを、提供する。本開示は、本開示の組換えポリヌクレオチドを含むベクターを、提供する。本開示のポリペプチドの実施形態は、本明細書中で記載される。一実施形態において、シグナルペプチドは、配列番号13(MEKIVLLLAIVSLVKS)又は配列番号14(MKAILVVLLYTFATANA)の配列を含む。本開示のベクターを含む宿主細胞もまた、提供される。
【0058】
免疫原性組成物
免疫原性組成物は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体及び/又はアジュバントを含む。一実施形態において、アジュバントは、糖脂質アジュバントである。アジュバントの例としては、Al(OH)、AlPO、C34、スクアレン及びQS21が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本開示のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドは、1つ以上の薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて、調合されるか又は投与され得る。免疫原性/ワクチン組成物は、無菌であっても、パイロジェン・フリーであっても、又は無菌かつパイロジェン・フリーの両方であってもよい。医薬品、例えばワクチン組成物の調合及び/又は製造における一般的考慮は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005(本明細書中でその全体が参考として組み込まれる)において見出され得る。
【0060】
免疫原性組成物は、投薬調合物に適合する様式で、かつ治療的に有効な、保護的なそして免疫原性である量で、投与される。投与される量は、例えば、抗体を合成する、及び必要である場合に細胞媒介性免疫応答を発生する、個人の免疫系の受容能を含めて、治療される対象に依存する。投与に必要な活性成分の正確な量は、臨床医の判断にゆだねられる。しかし、好適な投薬量範囲は、当業者によって容易に決定される。初回投与及びブースター用量のための好適なレジメンもまた変動するが、初回投与及びそれに続くその後の投与が、含まれ得る。ワクチンの投薬量もまた、投与の経路に依存し得、そして宿主の大きさにしたがって変わり得る。
【0061】
本明細書中で記載されるワクチン組成物の調合物は、薬理学分野で公知の方法又はこれから開発される任意の方法によって、調製され得る。一般に、このような調製方法としては、活性成分を賦形剤及び/又は1つ以上の他の副成分と一緒にする工程を含み、及び次いで、必要な場合及び/又は望ましい場合、製品を所望の単回用量単位又は多回用量単位に分割するか、成形するか、及び/又は包装することを含む。
【0062】
用途
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が、インフルエンザウイルス株に対する免疫応答を提示し得ることは、しばらく前から知られていた。近年の研究は、ヒトにおけるCTL応答が、多数のエピトープに向けられ得ることを、示している。
【0063】
本明細書中で、ヒト及び他の哺乳動物におけるインフルエンザウイルス疾患の予防の方法が、提供される。また、対象においてインフルエンザウイルスに対して免疫応答を惹起する方法も、提供される。この方法は、有効量の、本開示のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド又は免疫原性組成物/ワクチンを、対象に投与することによって、対象においてインフルエンザウイルス株(例えば、H1、H3、H5及びH7株ならびにサブタイプ)に対する免疫応答特異的を、誘導することを含む。好ましくは、この方法は、CD4及びCD8T細胞免疫応答を惹起する。より好ましくは、この方法は、H1、H3、H5及びH7株ならびにサブタイプに対し、より高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、より良い中和活性及びより強い交差防御活性を有する、ステム特異的抗体を誘導する。この方法はまた、ワクチン効力を増大し、より多くのIFN-γ、IL-4及びCD8+記憶T細胞産生を伴う。
【0064】
対象における抗体力価は、ワクチン接種後に増大する。例示的な態様において、本開示の免疫組成物又はワクチンは、インフルエンザからの予防的保護を提示するために使用される。インフルエンザからの予防的保護は、本開示のワクチン又は組み合わせワクチンの投与後に達成され得る。ワクチン(組み合わせワクチンを含む)は、1回、2回、3回、4回又はそれ以上の回数で投与され得るが、1回のワクチン投与で充分である可能性が高い(任意選択的に、後に1回のブースターを行う)。したがって、投薬は、調整される必要がある場合がある。
【0065】
予防効果用量は、臨床的に許容できるレベルでインフルエンザウイルスに対して保護する、治療有効用量である。いくつかの実施形態において、治療有効用量は、ワクチンについての包装挿入物に列挙される用量である。
【0066】
本開示のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド又は免疫原性組成物/ワクチンは、治療有効な結果をもたらす任意の経路で投与され得る。これらとしては、限定されないが、皮内、筋肉内及び/又は皮下投与が挙げられる。いくつかの実施形態において、本開示のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド又は免疫原性組成物/ワクチンは、当該分野で公知の不活化ワクチンの投与と同様に、筋肉内又は皮内投与され得る。
【0067】
本発明は、以下の記載に示されるか又は図面に図示される構成要素の構成及び配置の詳細にその用途を限定しない。本発明は、他の実施形態及び種々の方法での実践もしくは実施が可能である。
【実施例
【0068】
方法
ワクチン及びプラスミド構築。2009年初頭~2013年に入手可能であったH1N1ウイルス由来の全部で102の完全長HA配列を、NCBIデータベースからダウンロードし、そしてBioEditプログラムからのClustalWアルゴリズムによって並べた。各位置において最も保存的なアミノ酸を選択して、共通H1配列を作成した。共通ヘマグルチニンH5(pCHA5-II)配列を、以前の記載の通りに作製した。共通ヘマグルチニンH5(pCHA5-II)及び共通H1のヌクレオチド配列を、pcDNA発現ベクター内にクローニングし、そして得られたプラスミドを、swap及びキメラHA構築のためのテンプレートとして使用した。Swap H1/5は、HA1(配列番号8のアミノ酸1~327)であるH1及びHA2(配列番号8のアミノ酸328~503)であるH5から構成され、球状頭部であるH1及びH1+H5(HA2)ステムを生じる。Swap H5/1は、HA1(配列番号12のアミノ酸1~330)であるH5及びHA2(配列番号12のアミノ酸331~506)であるH1から構成され、球状頭部であるH5及びH5+H1(HA2)ステムを生じる。キメラH5/1構築物については、球状頭部ドメインは、配列番号4のC42~C274の間の残基(H3番号付け)のアミノ酸配列から構成され、そしてステム領域は、HA1及びHA2サブユニット(配列番号4のアミノ酸1~41及び配列番号4の275~511)の部分からなる。膜貫通ドメインを、バクテリオファージT4 fibritin foldon三量体化配列、トロンビン切断部位及びHAのC末端の(His)-タグからのさらなる残基と置き換えた。共通HAの両DNA配列を、ヒトに好ましいコドンを用いて発現のために最適化し、そして種々の領域をPCRによって増幅して、その後、発現のためにpcDNAベクター内にクローニングした。その上さらに、インフルエンザウイルス季節性H1N1 Brisbane/59/2007、パンデミック H1N1 California/07/2009、H3N2 Brisbane/10/2007、H7N9 A/Shanghai/2/2013及び鳥インフルエンザH5N1 Vietnam/1194/2004由来のHA遺伝子をも最適化し、合成し、そしてpcDNA発現ベクター内にクローニングした。配列を、DNA配列決定によって確認し、そしてタンパク質発現及び精製のために高品質で調製した。
【0069】
発現細胞からの組換え分泌型HAの発現。ヒト上皮性腎臓(HEK)293T及びHEK293S細胞を、慣用的に10%ウシ胎仔血清(Gibco)を補充したDMEM(Gibco)中で維持した。一過性形質転換のために、293T又は293S細胞を、10cm皿(Nunc、Roskilde、Denmark)内に播種し、そして全ての手順を、製造業者のプロトコールにしたがって実施した。簡潔にいうと、80%コンフルーエンシーの293T又は293S細胞を、Mirus TransIT(R)-LT1(Mirus Bio)トランスフェクション試薬で、3:1の比の試薬対プラスミドDNAを用いてトランスフェクトした。TransIT(R)-LT1試薬を、Opti-MEM(Gibco)で希釈し、混合物を、5~20分間にわたって室温でインキュベートした。この溶液に、プラスミドDNAを加え、そして完全に混合した後、15~30分間のインキュベーションを行った。トランスフェクションの前に、細胞を、10%ウシ胎仔血清を補充した新鮮なDMEM(Gibco)培地で置換した。TransIT(R)-LT1試薬/DNA複合物を、細胞に加え、そして48時間にわたって37℃にてインキュベートした。ヘマグルチニンの発現を、抗(his)抗体(Qiagen)又は特異的抗ヘマグルチニン抗体及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化二次抗体(PerkinElmer)を用いたイムノブロットによって確認した。
【0070】
組換え分泌型ヘマグルチニンの精製。ヒト293T細胞における発現のために、目的の遺伝子を担うpcDNAを、高品質で調製し、そしてMirus TransIT(R)-LT1(MirusBio)を用いて細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、培地を収集し、そして1,000×gにて10分間にわたる遠心分離によって、細胞を清澄化した。上清を、Ni-NTA(ニッケル-ニトリロ三酢酸)アフィニティーカラム(GE Healthcare)によって精製した。上清を、20mM Tris-HCl pH8.0及び300mM NaCl中で事前に平衡化したNi-NTAアフィニティーカラム上にロードした。未結合タンパク質を、20mM Tris-HCl pH8.0及び300mM NaCl(緩衝液A)中25~50mMのイミダゾール勾配で洗浄した。次いで、HAタンパク質を、緩衝液A中100~300mMイミダゾール勾配で溶出した。精製HAタンパク質を、Amicon Ultrafiltration Unit(MW30Kカットオフ)(Millipore)によってPBS、pH7.4中に濃縮した。純度を、SDS-PAGEを用いてモニタリングし、そしてタンパク質を、抗(his)抗体(Qiagen)又は特異的抗ヘマグルチニン抗体及び西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化二次抗体(PerkinElmer)を用いたウエスタンブロットを用いて確認した。最後に、HAタンパク質の三量体形態を、サイズ排除カラム、Superdex 200 Increase 10/300 GLゲル濾過カラム(GE Healthcare)を用いることによって得た。
【0071】
モノグリコシル化HAタンパク質の調製。N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIに欠損のあるHEK293S細胞を、高マンノースグリカン31を有するHAを産生するために使用した。HEK293S細胞由来の精製HAタンパク質を、Endo H(NEB)で20℃にて一晩処理し、モノグリコシル化HAmgを生成した。タンパク質対Endo Hの比は、HAについて3対1(w/v)であった。次いで、Endo H及びモノグリコシル化HAタンパク質を、Superdex 200 Increase 10/300 GLゲル濾過カラム(GE Healthcare)によって分離した。HAmgタンパク質を、Amicon Ultrafiltration Unit(MW30Kカットオフ)(Millipore)によってPBS、pH7.4中に濃縮し、そしてSDS-PAGE及びLC-MS/MS分析によって確認した。
【0072】
HAタンパク質に対するN連結グリコシル化の同定。10マイクログラムのタンパク質を、SDS-PAGE上で泳動させ、ゲル消化に備えた。所望のタンパク質バンドを、鋭利なメスで切り出し、1mm片のさいの目にし、そして1.3mlエッペンドルフチューブに入れた。500μlの50% ACN(アセトニトリル)中25mM重炭酸アンモニウムで3分間にわたって2回洗浄した後、SpeedVacエバポレーター(Thermo)を用いてゲル片を乾燥させた。乾燥サンプルを、100μlの25mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)中50mMジチオトレイトール(DTT)の添加により、37℃にて1時間にわたって還元し、その後、10,000gにて1分間遠心分離した。この溶液を除去し、そしてゲルサンプルを、100μlの25mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)中100mMヨードアセトアミド(IAA)の添加によってアルキル化工程に進め、そして暗所で室温にて1時間にわたってインキュベートした。500μlの25mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)中50%アセトニトリル及び500μlの100%アセトニトリルでの洗浄後、サンプルを、10,000gにて1分間にわたって遠心分離し、そして上清を完全に除去した。ゲルサンプルを、SpeedVacエバポレーターで乾燥させ、そして200μlの25mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)中に再溶解した。次いで、ゲルサンプルを、0.5μgトリプシン(Promega、Madison、WI、USA)及び1μgキモトリプシン(Promega、Madison、WI、USA)で一晩処理した。一晩の消化の後、サンプルに100μlの5%TFA中50%アセトニトリルを加えた。サンプルを10秒間にわたって超音波処理し、次いで、10秒間にわたって停止した。このプロセスを、10回繰り返した。ペプチド混合物を含む上清を、サンプルチューブから除去し、そして新しいチューブに移した。この手順を、2回繰り返した。合わせた上清を、SpeedVac濃縮機中で乾燥させ、そしてLC-MS/MS分析のために処理した。
【0073】
内毒素測定。内毒素レベルを、Pierce(R)LAL Chromogenic Endotoxin Quantitation Kit(Thermo Scientific)を用いて決定した。タンパク質サンプルを、10倍、20倍、100倍及び1000倍希釈し、他方で、内毒素標準を、10、5、2.5、1.25、0.63、0.31、0.15及び0ng/mlで調製した。マイクロプレートをヒーティングブロック内で10分間にわたり37℃にて平衡化した後、タンパク質サンプル又は標準を、Limulus AmebocyeLasate(LAL)Pyrochrome試薬(最終容量100μl)(1:1)と、内毒素非含有ウェル内で37℃にて10分間にわたって混合した。100μlの基質溶液を各ウェルに加え、そしてプレートを、37℃にて6分間にわたってインキュベートした。反応を、50μlの停止試薬(25%酢酸)の添加により停止した。ウェルの吸光度を、405nmにてSpectraMax M5(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を用いて測定した。標準曲線を、吸光度対対応する標準の濃度をプロットすることによって得た。標準曲線を、サンプルの内毒素濃度を決定するために使用した。全ての精製タンパク質の内毒素値は、0.5ng/ml未満であった。
【0074】
マウスワクチン接種。アジュバントC34を、記載のように化学合成し、DMSO中に溶解した。雌6~8週齢BALB/cマウス(1群あたりn=10)を、PBS中の、50μgの水酸化アルミニウム(ミョウバン;Sigma)又は2μgのC34と混合した20μgの精製キメラHAfg又はHAmgタンパク質(pH7.4)により、筋肉内で免疫化した。対照マウスには、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を注射した。3回のワクチン接種を、2週間間隔で行った。血液を、第2回目及び第3回目の免疫化の14日間後に収集した。血液を、37℃で30分間にわたってインキュベートし、そして1,2000rpmにて10分間にわたって遠心分離して、血清を収集した。ワクチン接種マウスから収集した血清中のHA特異的抗体を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び中和アッセイによって評価した。
【0075】
ELISAによるHA特異的抗体の決定。HA特異的抗体力価を、H1N1 A/Brisbane/59/2007、H1N1 A/California/07/2009、H3N2 Brisbane/10/2007、H7N9 A/Shanghai/2/2013及びH5N1 Vietnam/1194/2004HAタンパク質を基質として用いるELISAによって検出した。96ウェルELISAプレート(Greiner bio-one、Frickenhausen、Germany)を、ELISAコーティング緩衝液、100mM重炭酸ナトリウム(pH8.8)中に5μg/mlの濃度で希釈した1ウェルあたり100μlのタンパク質でコーティングし、そしてプラスチックシーラーで4℃にて一晩カバーした。プレートをTBST(137mM NaCl、20mM Tris-base、0.05% Tween 20、pH7.4)中1% BSAで37℃にて1時間にわたってブロックした後、TBSTで3回洗浄し、プレートを、2倍連続希釈の200μlのマウス血清と共に、37℃にて2時間にわたってインキュベートした。血清を除去しそしてプレートを6回洗浄した後、HA特異的IgGを、200μlの二次HRP標識抗マウス抗体(1:8000)(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を用いてモニタリングした。37℃にて1時間のインキュベーション後、このプレートを、TBSTで6回洗浄し、そして100μlのSuper Aquablue ELISA基質(eBioscience、San Diego、CA、USA)で1分間にわたり現像した。反応を、100μlの0.625Mシュウ酸の添加により停止した。ウェルの吸光度を、405nmにてSpectraMax M5(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を用いて測定した。陰性対照(免疫前血清)によって発生した吸光度(OD)よりも2.5倍高い吸光度を発生したエンドポイント抗体力価を、最も高い希釈の血清として定義した。バックグラウンドエンドポイント抗体力価を、1:50未満とした。
【0076】
骨髄由来樹状細胞の回収。GM-CSF培養骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、以前の記載のように調製した。簡潔にいうと、骨髄単細胞浮遊物を、RBC溶解に供し、赤血球(RBC)を除去した。残った細胞を、10mlの20ng/mLマウスGM-CSF(eBioscience)、10% FBS(BenchMark)、50μM 2-ME、100単位/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを補充したRPMI 1640中で培養した。細胞を、各シャーレ内でプレート培養し、2×10細胞/シャーレの最終細胞密度を達成した。培養物に、3日目に20ng/mLマウスGM-CSFを補充した10mlの新鮮な培養培地を加えることによって再度満たし、6日目には2分の1容量の上述の完全培養培地によってリフレッシュした。8日目に、ゆっくりとピペッティングすることによって非接着細胞を集めることにより、未成熟BMDCを回収し、そして10/mlの密度で再度プレート培養した。CD8+T細胞アッセイのために、未成熟BMDCを、CD8+T細胞及びキメラHAタンパク質(100μL中0.1mg/ウェル)と48時間にわたって共培養した。グランザイムB産生CD8+T細胞の数を、洗浄後のフローサイトメトリー分析によって決定した。
【0077】
酵素結合イムノスポット(ELISpot)アッセイ。ELISPOTプレートを、抗マウスIFN-γ、IL-4(Mabtech AB、Stockholm、Sweden)又はグランザイムB(R&D Systems)を用いて、製造業者の指示にしたがってコーティングした。プレートを、4回洗浄し、そして30分間にわたり10%ウシ胎仔血清(Gibco)を補充したRPMI-1640と共にインキュベートした。キメラ免疫化マウス由来のIFN-γ、IL-4及びグランザイムB分泌細胞の検出のために、脾細胞を収集し、そして1ウェルあたり5×10で37℃にて5%CO中で24時間にわたって、再刺激のために、HA由来の特異的ペプチドと共に培養した。細胞を取り出し、そしてビオチン化抗マウスIFN-γ、IL-4(Mabtech AB)又はグランザイムB(R&D Systems)特異的抗体と共にインキュベートした。プレートを5回洗浄した後、ストレプトアビジン-ALP結合体を添加し、そして即時使用可能BCIP/NPT基質を用いて現像した。乾燥後、生じたスポットの数を、Immune Spot Reader(Cellular Technology Ltd.)によって分析した。データを、3連のウェルから得た。
【0078】
中和アッセイ。100 TCID50のウイルスを含む培養物上清を、等容量の2倍連続希釈した血清と混合し、そして37℃にて1時間にわたってインキュベートした。次いで、この混合物を、96ウェルプレートの各ウェル内のMDCK細胞に添加し、そして37℃にて3日間にわたってインキュベートした。この細胞に、30μlのCellTiter-Glo(Promega)を添加し、ATP存在の定量を基にして生存細胞の数を決定した。血清の中和活性を、細胞がウイルス誘導による死から有意に保護された最大希釈倍率として決定した。
【0079】
マイクロ中和アッセイ。ウイルスを100 TCID50で含む感染培地(0.3% BSA、2μg/ml TPCK-トリプシンで補充したDMEM)を、等容量の2倍連続希釈の血清と混合し、37℃にて1時間にわたってインキュベートした。次いで、この混合物を、96ウェルプレートの各ウェル内のMDCK細胞(1ウェルあたり1.5×10細胞)に添加し、そして37℃にて16~20時間にわたってインキュベートした。細胞を、PBSで洗浄し、アセトン/メタノール溶液(容量/容量1:1)中で固定し、そして5%スキムミルクでブロックした。1時間の37℃でのインキュベーション後、ウェルをPBSTで6回洗浄し、そしてウイルス力価を、100μlのインフルエンザA NP(1:2500)に対するmAbを用いることによってモニタリングした。37℃にて1時間のインキュベーション後、ウェルをPBSTで6回洗浄し、そして100μlの二次HRP標識抗ウサギ抗体(1:5000)(PerkinElmer、Waltham、MA、USA)を加えた。37℃にて1時間のインキュベーション後、ウェルを再びPBSTで6回洗浄し、そして50μlの1Step Ultra TMB基質(Thermo)によって1分間にわたって現像させた。反応を、50μlの1M HSOの添加によって停止した。ウェルの吸光度を、450nmにて、SpectraMax M5(Molecular Devices、Sunnyvale、CA、USA)を用いて測定した。
【0080】
抗体依存性細胞媒介型細胞傷害性レポーターアッセイ。96ウェル平底プレートの各ウェル内のMDCK細胞(1ウェルあたり1×10細胞)を、37℃にて24時間にわたってインキュベートした。翌日、1×10 MDCK細胞に、インフルエンザウイルスを、1の感染(MOI)多重度で24時間にわたって感染させた。次いで、培地を、4% Low IgG血清を補充したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地1640で置き換え、その後、連続希釈のキメラHAタンパク質ワクチン接種マウス由来抗血清を加え、37℃にて30分間にわたってインキュベートした。Jurkatエフェクター細胞発現マウスFcγRIII(Promega)を、4% low IgG FBSを含むRPMI1640培地中に浮遊させ、そして1:5の標的細胞:エフェクター細胞比を、感染MDCK細胞に加えた。37℃にて6時間にわたるインキュベーション後、アッセイプレートを、37℃インキュベーターから取り出し、そして15分間にわたり周囲温度にて平衡化した後に、Bio-GloTM Luciferase Assay Buffer(Promega)を1:1の比で加えた。発光を、CLARIOstarプレートリーダーにおいて測定した。
【0081】
ウイルスチャレンジ実験。2週間間隔での3回のワクチン接種の2週間後、免疫化マウスを、H1N1 California/07/2009、H1N1 A/New Caledonia/1999、H1N1 A/WSN/1933、H1N1 A/Solomon Islands/03/2006ならびにリアソータントなH5N1ウイルスA/Vietnam/1194/2004/NIBRG14及びH5N1A/Turkey/1/2005/NIBRG23の10 LD50(50%のマウスの死をもたらすウイルス用量)により、鼻腔内チャレンジした。感染後、マウスを、14日間にわたって毎日観察し、そして生存及び体重を記録した。体重の百分率を、毎日の体重をチャレンジ前の体重と比較することによって1群あたり動物各個体について計算し、そして初期重量の25%を超えて体重減少したマウスを屠殺し、死亡として評点した。マウス研究は、Academia Sinicaの施設内動物管理使用委員会によって承認されている。全ての動物実験を、バイオセイフティーレベル-3拡張条件下で実施した。
【0082】
組換えF10抗体の発現及び精製。F10抗体をコードするプラスミドを、無血清馴化FreeStyleTM 293F細胞内にポリエチレンイミンを用いてトランスフェクトし、そしてオービタルシェーカープラットフォーム上で135rpmにて回転する125ml無菌エルレンマイヤーフラスコ内のFreeStyleTM293発現培地(Gibco)中で培養した。上清を、トランスフェクションの72時間後に収集し、そして細胞を、1,000×gでの10分間にわたる遠心分離によって清澄化した。上清を、5カラム容量(CV)のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)洗浄緩衝液(pH7.0)及びその後5CVの洗浄緩衝液において事前に平衡化した、プロテイン-Aカラム(GE Healthcare)上にロードした。F10抗体を、0.2Mグリシン緩衝液(pH2.5)で溶出し、そして画分を、0.5mL 1M Tris-HCl pH9.0を中和のために含むチューブ内に収集した。精製を、SDS-PAGEを用いることによってモニタリングした。
【0083】
統計学的分析。免疫応答の評価のために使用した動物実験を、少なくとも3回繰り返し(1群あたりn=5)、そしてウイルスチャレンジ研究を、少なくとも2回(1群あたりn=10)行った。統計学的分析のために、各マウスの応答を、個々のデータ点として計数した。動物研究から得られたデータを、Prismからの双方向ANOVAを用いて調べた;データを、平均±SEMとして表し、そして相違は、*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001において有意であるとみなした。
【0084】
実施例1 モノグリコシル化キメラHAの調製及び性質決定。
普遍的なワクチンを設計するため、本発明者らは、まず、インフルエンザAウイルス群1(H1及びH5は主要なサブタイプであるが、他方で、H2、H6、及びH9は少数のサブタイプである)に対する広範な保護を有するワクチンを得ることを目的とした。したがって、2009年初頭~2013年に入手可能であったH1N1ウイルス由来のHA配列を使用して、共通H1配列を作成した。次いで、共通H5及び共通H1を、ワクチン設計のためのテンプレートとして使用した。インフルエンザウイルス複製において、HA前駆体(HA0)は、2つのサブユニット、HA1及びHA2に、タンパク質分解的に開裂する;HA1サブユニットは、5-N-アセチルノイラミン酸(シアル酸)結合部位を担い、そしてHA2サブユニットは、宿主細胞膜とのウイルス融合を担う(図5A)。他方で、HAは、3次元(3D)構造に基づいて2つの構造的ドメインである球状頭部及びステムに分けられ得る。ステム領域は、HA2ドメイン、N末端36~50残基及びHA1ドメインのC末端の短い鎖を含む。したがって、本発明者らは、ワクチンを、H1及びH5からのドメインの種々の組み合わせに基づき設計した。本発明者らは、まず、比較のために、swap H1/5(H1球状頭部及び[H1+H5(HA2)ステム]、swap H5/1(H5球状頭部及び[H5+H1(HA2)ステム]、ならびにキメラH5/1(H5球状頭部及びH1ステム)を作製した(図1A及び図5A)。この結果は、共通H1N1及びswap H1/5による免疫化が、交差防御的な活性を誘導せず、しかしswap H5/1及びキメラH5/1は、H1N1及びH5N1ウイルスに対する交差中和活性を惹起したことを示した(図1B)。本発明者らは、次に、この交差防御がCD8T細胞応答によるものであるか否かを調べ、そして、グランザイムBがキメラH5/1-免疫化マウスにおいてより多く分泌されていることを見出した。このことは、キメラH5/1ワクチンは、swap H5/1ワクチンと比較して、より強いCD8T細胞応答を誘導することを示唆する。
【0085】
実施例2 キメラH5/1(cHA)の免疫応答に対するグリコシル化の効果
異なるグリコシル化状態を有するキメラH5/1(cHA)ワクチンの免疫原性を調べるため、モノグリコシル化cHA(cHAmg)及び完全グリコシル化cHA(cHAfg)ワクチンを比較した(図5)。Endo-Hは、高マンノースについて特異的であるが、複合型グリカンについて特異的ではない。N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIが欠損しており、高マンノース型N-グリカンを有する糖タンパク質を産生する、HEK293S細胞において発現されるHA糖タンパク質を、Endo-Hで処理して、N-グリカンを1つのGlcNAc残基に切断させた。cHAmgを産生するために、cHAを、ヒト細胞(HEK293S)から産生させ、そして精製した高マンノースグリカンを有するcHAを、Endo-Hで処理して、N-グリカンの外側部分を取り除き、各グリコシル化部位のアスパラギン残基に結合したN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を1つのみ有するHAを生成した。Endo-H処理の後、混合物をゲル濾過し、Endo-Hを三量体cHAmgから分離した。濃縮後、cHAmgタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS/PAGE)及び液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)分析に供して、純度及びグリカン組成(図5C)を確認した。インフルエンザHAは、ウイルス表面上で三量体として存在するので、ゲル濾過を実施し、cHAfg及びcHAmgが三量体として存在すること(200kDaを超える)を確認した(図5D)。本発明者らは、また、比較のために、ヒト細胞(HEK293T)由来の別の完全グリコシル化cHAfgを作製した(図5B)。この細胞培養物は、約6mg/Lの収量のcHAfgをもたらした。
【0086】
組換えcHAfg及びcHAmgのN連結グリコシル化部位及びグリカンプロファイルを、7つのグリコシル化部位(N28、N40、N171、N182、N292、N303、及びN497)を示すLC-MS/MSによって分析した;cHAfgのN-グリカンは、ほぼ複合型であり、cHAmgは、約99%がN-グリコシル化部位の各々においてGlcNAcのみを有する単一の糖型として得られ得る(図5E及び表1)。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例3 完全グリコシル化キメラH5/1(cHAfg)及びモノグリコシル化キメラH5/1(cHAmg)によって免疫化したマウスからの抗血清の交差反応性
cHA構築物によって惹起される抗体の結合活性を評価するために、BALB/cマウスを、Al(OH)又はC34(α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)のアナログである)をアジュバントとした20μgのcHAfg又はcHAmgタンパク質によって筋肉内で免疫化した。このマウスを、0、2、及び4週間目に免疫化し、そしてHAに誘導された血清を、28日目及び42日目に得、そして種々の組換えHA(図6)を用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて測定した。2回の免疫化後の抗血清の最大希釈と比較し、3回の免疫化は、HA特異的抗体のより高い力価を有する抗血清を実際に産生した(図1D~I及び図7)。そしてcHAmgによるワクチン接種は、cHAfgと比較してより良い抗体応答を誘導した(図1D、E、及びG)。さらに、cHAmgからの抗血清は、H3及びH7 HAタンパク質に対してわずかに優れた結合を示し(図1F及びH)、Al(OH)アジュバントとC34アジュバントとの間に有意な相違は観察されなかった。これらのデータは、cHAワクチンが、H1N1、H3N2、H5N1ならびにH7N9株由来のHAを認識する交差反応性抗体を惹起し得たことを示す。
【0089】
F10は、インフルエンザウイルスの種々のサブタイプの間で非常に保存されているHAのステム領域を標的することが知られる、広範に中和するIgG抗体である。F10の組換えH1、H5、及びcHAに対する結合を比較するため、F10の種々のHAに対する結合アビディティを測定した。その結果は、F10が、H1、H5及びcHAタンパク質に結合し得たことを示した(図8)。F10様抗体がcHAワクチン接種によって惹起されるかを調べるため、cHAによって誘導された血清のHAステム番号4900に対する結合を、ELISAを用いて測定した。この結果は、cHAmgワクチンが、cHAfgよりも高いステム特異的抗体力価を誘導し得ることを示し(図1I及び図7F)、そしてより良い結果が、C34をアジュバントに伴うcHAワクチンによって観察された(図1I)。これは、より多くのステム特異的抗体を誘導した。
【0090】
実施例4 cHAmg及びアジュバントC34によるマウスのワクチン接種は、H1、H3、H5ウイルス及びそのサブタイプに対する強いCD4及びCD8T細胞応答、抗体依存性エフェクター機能ならびに中和活性を惹起する
抗体媒介型中和と比べて、Fc媒介型エフェクター機能もまた、インフルエンザ感染に対する保護において重要な役割を果たす。したがって、本発明者らは、抗体がFc受容体媒介型免疫応答を誘導するか否かを試験した。マウスに適合したADCCアッセイを、FcγRIIIを発現するJurkatエフェクター細胞を用いて実施し、cHAfg及びcHAmgによって免疫化したマウス由来の血清のADCC活性を評価した(図2)。予想したとおり、cHAfg又はcHAmgをワクチン接種したマウス由来の血清は、H5N1 NIBRG14(A/Vietnam/1194/2004)、NIBRG23(A/Turkey/1/2005)、RG5(A/Anhui/1/2005)、又はRG2(A/Indonesia/5/2005)ウイルスに対して比較に値するレベルのADCC活性を誘導した。興味深いことに、より良いADCC活性が、Al(OH)をアジュバントとしたcHAmg群において観察され(図2B)、そして類似の結果が、H1N1 A/California/07/2009、A/Brisbane/59/2007、A/Solomon Islands/3/2006、A/New Caledonia/20/1999(図2A)、H3N2 A/Wisconsin/67/2005及びA/Victoria/361/2011ウイルスに対する実験において観察された(図2C)。
【0091】
cHA免疫化マウスにおける抗原特異的サイトカイン分泌細胞の役割を評価するために、脾細胞を、2回及び3回の免疫化後に収集し、そしてIFN-γ、IL-4、及びグランザイムB(GzB)分泌細胞を、刺激のためにHA由来の特異的ペプチドを用いた酵素結合免疫吸着スポット(ELISpot)アッセイによって評価した。図3に示されるように、Al(OH)をアジュバントとしたcHAfg及びcHAmgワクチンは、類似のレベルのサイトカイン分泌細胞を産生した。しかし、より多くのCD4/IFN-γTh1細胞(図3A)、CD4/IL-4Th2(図3B)及びCD8GzB分泌型細胞(図3C)が、Al(OH)をアジュバントとしたよりもC34をアジュバントとしたcHAmgワクチン接種において惹起された。これらの結果は、C34をアジュバントとしたcHAmgが、cHAfgと比較してより多くのCD4Tヘルパー応答及びより強いCD8細胞傷害性効果を刺激することを確認した。
【0092】
抗体力価及び細胞媒介型免疫に対するC34の用量依存性を評価するために、マウスを、0.5、2及び10μgの3つの異なる用量のC34をアジュバントとしたcHAfgによって、筋肉内で免疫化した。結果は、2回又は3回の免疫化後に、2μgのC34をアジュバントとしたcHAfgが、0.5及び10μgのC34によるよりも高い力価を誘導化したことを示した(図9)。さらに、3回の免疫化後に、2μgのC34をアジュバントとしたcHAfgワクチンは、0.5及び10μgのC34よりも多くのIFN-γを誘導し(図10A)、ならびに2及び10μgのC34は、0.5μgのC34よりも多くのIL-4を誘導した(図10B)。他方で、cHAfgワクチンが0.5、2、又は10μgのC34をアジュバントとした場合に、2回及び3回の免疫化後、CD8GzB分泌細胞における増大に関して、相違はなかった(図10C)。これらの観察に基づき、2μgのC34を、実験を通じて使用した。
【0093】
cHAによって誘導された抗血清の中和活性を、さらに調べた。cHAmgワクチン接種からの抗血清は、同種のウイルスH1N1 A/California/07/2009(図3D)及び異種のウイルスH5N1 NIBRG14(A/Vietnam/1194/2004)、NIBRG23(A/Turkey/1/2005)、RG5(A/Anhui/1/2005)又はRG2(A/Indonesia/5/2005)に対して、より良い中和活性を有することを示した(図3E)。さらに、cHAmgでワクチン接種したマウス由来の抗血清は、異種のウイルスH1N1 A/Brisbane/59/2007、A/New Caledonia/20/1999及びA/Solomon Islands/3/2006に対して有意な中和活性を示す(図3D)。cHA免疫化マウス由来の抗血清は、H1N1及びH5N1ウイルスの感染を明らかにブロック可能であり、そしてcHAmgの中和活性は、一般に、cHAfgよりも高く、特に、異種のウイルスに対して高い。
【0094】
実施例5 チャレンジ研究において、cHAmg/C34によるマウスのワクチン接種は、H1N1及びH5N1ならびにそのサブタイプに対する交差防御を提供する
cHAmgワクチン接種が種々のH1N1及びH5N1ウイルスに対して広範に交差防御的な免疫を提供するか否かを評価するために、ワクチン接種マウスを、致死用量の多数のH1N1及びH5N1ウイルスによって鼻腔内接種によりチャレンジし、そしてワクチン保護の効力を、生存率及び体重変化を記録することにより、14日間にわたって評価した(図4及び図11)。H1N1 A/California/07/2009ウイルスでチャレンジしたマウスについて、全てのcHAワクチンは、100%の保護を提供した(図4A)、さらに、C34をアジュバントとして用いるcHAmgによって免疫化したマウスは、cHAfgと比較して最小量の体重減少を示した(図11A)。C34をアジュバントとして用いるcHAfgによって免疫化したマウスは、A/New Caledonia/1999チャレンジに対し、30%の保護しか得なかった;しかし、C34をアジュバントとしたcHAmgワクチンは、交差株A/NewCaledonia/1999ウイルスに対して90%の保護を提供し、そして類似の結果が、Al(OH)をアジュバントとして用いるcHAワクチン接種において観察された(図4B)。交差株A/WSN/1933ウイルスによってチャレンジしたマウスについて、Al(OH)をアジュバントとして用いるcHAによって免疫化した全てのマウスが生存した;しかし、C34をアジュバントとして用いるcHAfgによって免疫化したマウスは、80%の保護しか得なかった(図4C)。A/Solomon Islands/03/2006による致死量チャレンジもまた、実施した。Al(OH)をアジュバントとして用いるcHAによって免疫化した全てのマウスが、より低い保護を示した;しかし、C34をアジュバントとして用いるcHAmgによって免疫化したマウスは、交差株A/Solomon Islands/03/2006ウイルスに対してより良い保護を示した(図4D)。H5N1 NIBRG14(A/Vietnam/1194/2004)及びNIBRG23(A/Turkey/1/2005)によってチャレンジしたマウスについて、全ての免疫化マウスが生存した(図4E及びF)。生存チャレンジ後の体重変化をも、評価した(図11)。データは、cHAが、種々のH1N1及びH5N1ウイルスに対する有意な保護免疫を惹起することにおいて有効であり、そしてcHAmgが、cHAfgと比較してより広い交差防御能力を提供することを、示した。
【0095】
インフルエンザウイルスの多数の株及びサブタイプに対して保護を提供するための、普遍的インフルエンザワクチンの開発に、現在関心が寄せられており、そして普遍的ワクチン開発のために使用されるエピトープは、24の非グリコシル化アミノ酸、核タンパク質NPを含むM2の非常に保存的な外部ドメイン及びHA-ステム領域を標的するか又はウイルス侵入をブロックして広範に中和抗体のより高い力価を誘導することが示されている種々のHA構築物を、含む。例えば、再編成したステムサブユニットを有する可溶性三量体HA(ミニ-HA)ワクチンが、異種及び異なるサブタイプのウイルスによる致死量チャレンジからマウスを完全に保護することが示され、そしてDNAプライムプロテインブーストによるキメラHAワクチン接種ならびに同じステム領域及び多様な外来性頭部ドメインへの曝露が、広範に保護的なステム特異的抗体を惹起することが、示されている。しかし、この結果は、CD8T細胞が、交差防御活性においてカギとなる役割を果たさなかったことを示した。DNAワクチンは有望であるが、未だ開発の初期段階にある。本研究において、球状頭部の共通H5及びステム領域の共通H1を発現するcHA構築物が、鳥ウイルスからヒトへと伝染するインフルエンザウイルスの実際の状況を模倣するように設計されている。完全グリコシル化cHAfg及びモノグリコシル化cHAmgの両方を比較のために調製し、そしてその結果は、cHAmgワクチンが、CD4及びCD8T細胞応答を介して(図3A~C)、H1、H3、H5及びH7サブタイプに対する交差反応性抗体のより高い力価を惹起したことを示した(図1D~H)。
【0096】
HAのグリコシル化が、タンパク質折り畳み及び安定性、その生物学的活性における調節(中和抗体由来の抗原性部位が免疫原性を低減されることから守ることを含む)において重要な役割を果たすことが、示された。さらに、超グリコシル化HAが、超可変頭部ドメインにおける抗原性部位をマスクするように発展し、それによって、免疫応答が保存的ステム領域に再度向けられた。本発明者らの結果において、cHAmg抗血清の中和活性は、cHAfgによって誘導された抗血清よりも著しく優れており、特に、異種H1N1 A/Brisbane/59/2007、A/Solomon Islands/03/2006、及びA/New Caledonia/20/1999に対して優れていた(図3D)。cHAmgワクチンのより広範な中和活性は、おそらく、以前に報告されているように多くの抗体バリアントの誘導によるものであろう。IgGは、マウスに存在する優勢な抗体であり、ADCCを誘導する免疫細胞上のFcγRIII受容体に対する高いアビディティを有するHA特異的抗体の主要なサブタイプである。本発明者らは、cHAmgによる免疫化が、より高いADCCを誘導し、そしてより良い保護活性を有するステム特異的抗体をより多く誘導することを示した(図1I及び2)。このことは、ADCCがインビボでのインフルエンザ保護のために必要であることを示す研究と一致する。水酸化アルミニウム(ミョウバン)は、Th2応答を刺激することが公知であり、FDAによってワクチンアジュバントとしての使用が認可されている;しかし、その作用様式は、充分に研究されていない。糖脂質C34は、樹状細胞におけるCD1dに対するリガンドでありかつCD1dによって提示されており、不変のナチュラルキラーT(iNKT)細胞上の受容体と相互作用し、iNKT細胞を刺激し、アジュバント効果を有するTh1サイトカイン(例えば、IFN-γ)及びクラススイッチ活性を有するTh2サイトカイン(例えば、IL-4)を産生させる。本発明者らの結果において、IFN-γ(Th1サイトカイン)、IL-4(Th2サイトカイン)分泌性細胞及びグランザイムB産生CD8T細胞の数は、Al(OH)をアジュバントとするよりも、C34をアジュバントとしたcHAmgによる免疫化によって、有意に増加した(図3A~C)。
【0097】
まとめると、広範囲保護的な免疫応答を有する次世代のインフルエンザワクチンの開発に、現在関心が寄せられており、普遍的ワクチンの開発に手が届きそうないくつかの有望な結果が報告されている。この目的に向かう努力において、本発明者らは、本研究において、共通H5頭部及び共通H1ステムを有するモノグリコシル化cHAワクチンが、異種インフルエンザウイルス(中和研究においてH1、H3、H5、及びH7ウイルスならびにサブタイプを含み、チャレンジ研究においてH1N1、H5N1、及びサブタイプを含む)に対し、広範な保護活性を示す有効なインフルエンザワクチンであることの原理証明を、首尾よく実証した。インフルエンザAウイルスの異なる株及びサブタイプに対する広範に保護的なワクチンの開発におけるこの成功により、本発明者らは、本研究において開発した戦略を、インフルエンザA及びBウイルスに対するより広い普遍的ワクチンを設計するために使用することを志す。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
【配列表】
2023525050000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
H1サブタイプHA(H1 HA)又はH5サブタイプHA(H5 HA)の球状頭部ドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上の球状頭部ドメイン配列と融合した、H1サブタイプHA(H1 HA)及び/又はH5サブタイプHA(H5 HA)のステムドメイン共通配列に対し少なくとも60%の相同性を各々有する1つ以上のステムドメイン配列を含む、キメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド。
【請求項2】
前記HAが、インフルエンザA HA、インフルエンザB HA又はインフルエンザC HAである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記相同性が、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ステムドメイン配列が、H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1 HAのC末端ステムセグメント;H1 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメント;又はH5 HAのN末端ステムセグメントもしくはH1+H5 HA配列のC末端ステムセグメントである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
H1 HAの前記ステムドメイン共通配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
H5 HAの前記球状頭部ドメイン共通配列が、配列番号3、配列番号7又は配列番号11のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
HAにおける1つ以上のグリコシル化部位が、モノグリコシル化され、このモノグリコシル化HAが、各グリコシル化部位においてN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)のみを有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記キメラインフルエンザウイルスHAポリペプチドが、免疫原として使用される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のキメラインフルエンザウイルスHAポリペプチド及びアジュバントを含む、免疫原性組成物。
【請求項11】
前記アジュバントが、糖脂質アジュバントである、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
有効量の請求項1~9のいずれか1項に記載のキメラインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)ポリペプチド又は請求項10に記載の免疫原性組成物をむ、対象をインフルエンザウイルスに対して免疫化するか又はインフルエンザウイルス疾患を予防するための医薬組成物
【請求項13】
免疫がCD4及びCD8T細胞免疫応答を惹起する、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項14】
免疫が、H1、H3、H5及びH7株及びサブタイプに対するより高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、より良い中和活性及びより強い交差防御活性を有するステム特異的抗体を誘導する、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項15】
免疫が、より多くのIFN-γ、IL-4及びCD8記憶T細胞産生によりワクチン効力を増大する、請求項12に記載の医薬組成物
【請求項16】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸配列及び任意選択的にシグナルペプチドをコードする核酸配列を含む、組換えポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記シグナルペプチドが、配列番号13又は配列番号14の配列を含む、請求項16に記載の組換えポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項17に記載の組換えポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【国際調査報告】