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特表2023-525060抗CD25抗体、その抗原結合断片及びその医薬用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】抗CD25抗体、その抗原結合断片及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230607BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230607BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230607BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P37/04
A61P35/00
A61P43/00 105
G01N33/574 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567574
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 CN2021093791
(87)【国際公開番号】W WO2021228218
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】202010408502.3
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520392096
【氏名又は名称】上海盛迪医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1288 Haike Road, Zhangjiang Town, Pudong New District, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】陳 思萌
(72)【発明者】
【氏名】張 偉
(72)【発明者】
【氏名】姜 福偉
(72)【発明者】
【氏名】廖 成
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA77X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗CD25抗体、その抗原結合断片及びその医薬用途を提供する。具体的には、抗CD25抗体及びその抗腫瘍薬を調製する用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
1)前記VHは、配列番号17におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号18におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
2)前記VHは配列番号1におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号2におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
3)前記VHは配列番号3におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号4におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
4)前記VHは配列番号5におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号6におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
5)前記VHは配列番号7におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号8におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
6)前記VHは配列番号9におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号10におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
7)前記VHは配列番号11におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号12におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
8)前記VHは配列番号13におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号14におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、或いは
9)前記VHは配列番号15におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、且つ前記VLは配列番号16におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
前記CDRはKabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムによって定義され、好ましくは、前記CDRはKabat番号付けシステムによって定義される、
抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
VHとVLを含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
1)前記VHはそれぞれ配列番号45、46、47で示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、且つ前記VLはそれぞれ配列番号48、49、50で示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
2)前記VHはそれぞれ配列番号27、28、29で示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、且つ前記VLはそれぞれ配列番号30、31、32で示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
3)前記VHはそれぞれ配列番号33、34、35で示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、且つ前記VLはそれぞれ配列番号36、37、38で示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、或いは
4)前記VHはそれぞれ配列番号39、40、41で示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、且つ前記VLはそれぞれ配列番号42、43、44で示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、
抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗CD25抗体はマウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体であり、
好ましくは、前記抗CD25抗体はヒト化抗体である、
請求項1~2の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
1)前記VHはIGHV1-46*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGHJ1*01から選ばれるFR4を含み、且つ前記VLはIGKV4-1*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGKJ4*01から選ばれるFR4を含み、
2)前記VHはIGHV1-18*01から選ばれるFR1~FR2、IGHV1-69*02から選ばれるFR3、及びhIGHJ6*01_14から選ばれるFR4を含み、且つ前記VLはIGKV3-11*01から選ばれるFR1、IGKV5-2*01から選ばれるFR2、IGKV6-21*01から選ばれるFR3、及びhIGKJ4*01_12から選ばれるFR4を含み、
3)前記VHはIGHV1-18*01から選ばれるFR1、IGHV4-31*01から選ばれるFR2、IGHV1-3*01から選ばれるFR3、及びhIGHJ6*01から選ばれるFR4を含み、且つ前記VLはIGKV4-1*01から選ばれるFR1~FR3、及びhIGKJ2*01から選ばれるFR4を含み、或いは
4)前記VHはIGHV3-23*04から選ばれるFR1~FR3、IGHJ1*01から選ばれるFR4を含み、且つ前記VLはIGKV2-28*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGKJ4*01から選ばれるFR4を含む、
請求項1~2の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記VHは配列番号25で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号26で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号59で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号60で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号1で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号2で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号3で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号4で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号5で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号6で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号7で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号8で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号9で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号10で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号11で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号12で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号13で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号14で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号15で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号16で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号17で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号18で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
前記VHは配列番号19で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号20で示され、
前記VHは配列番号21で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号22で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、或いは
前記VHは配列番号23で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記VLは配列番号24で示され、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合断片はscFv、Fv、Fab又はFab’断片である、請求項1~5の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗CD25抗体はIgG抗体であり、好ましくはIgG1、IgG2、IgG4であり、
好ましくは、前記抗CD25抗体は、FcγRIIIaとの結合能力を向上させ、及び/又はFcγRIIbとの結合能力を低減するために、Fc領域において脱フコシル化部位を有し、
より好ましくは、前記脱フコシル化部位は297位である、
請求項1~5の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
重鎖と軽鎖を含み、
1)前記重鎖は配列番号51で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖は配列番号52で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
2)前記重鎖は配列番号53で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖は配列番号54で示され、又はそれと少なくとも80%の同一性を有し、
3)前記重鎖は配列番号55で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖は配列番号56で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、
4)前記重鎖は配列番号57で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖は配列番号58で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、或いは
5)前記重鎖は配列番号61で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ前記軽鎖は配列番号62で示され、又はそれと少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する、
請求項1~7の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗CD25抗体又はその抗原結合断片は以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し、即ち、
(a)ヒトCD25と結合するKD値が1×10-7M未満であり、
(b)IL-2とCD25の結合を抑制しないか又は基本的に抑制せず、
(c)腫瘍浸潤性Tregを消耗し、Teffの機能に影響を与えないか又は基本的に影響を与えず、
(d)1よりも高い活性化抑制率(A/I)でFcγ受容体と結合し、
(e)FcγRI、FcγRIIc及び/又はFcγRIIbとの結合よりも高い親和性でFcγRIIIaと結合し、好ましくは、FcγRIIbとの結合よりも高い親和性でFcγRIIIaと結合し、
(f)腫瘍の成長を抑制し、及び
(g)強化されたCDC、ADCC及び/又はADCP反応を誘発し、好ましくは、増加されたADCC反応を誘発する、
請求項1~8の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片と競合してヒトCD25と結合し、或いは競合して同じヒトCD25エピトープと結合し、又はそれと結合する、抗CD25抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載のベクターを含む宿主細胞であって、
好ましくは、前記宿主細胞は細菌、酵母又は哺乳動物細胞であり、
より好ましくは、前記宿主細胞は大腸菌、ピキア酵母、チャイニーズハムスター卵巣細胞又はヒト胎児腎臓293細胞である、
宿主細胞。
【請求項14】
抗CD25抗体又はその抗原結合断片を調製する方法であって、
請求項13に記載の宿主細胞に請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片を発現することと、
前記宿主細胞から前記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を単離することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片と、
1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又はベクターと、
を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片、請求項11に記載のポリヌクレオチドと請求項15に記載の医薬組成物から選ばれる何れか一項又はそれらの任意の組み合わせの、
がんを治療するための薬剤又は医薬組成物の調製における用途。
【請求項17】
がんに罹患した対象を治療する方法であって、
対象に治療有効量の請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又は抗原結合断片、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項15に記載の医薬組成物又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、
方法。
【請求項18】
対象の腫瘍内部又は腫瘍浸潤性のTreg細胞数を低減し、及び/又はその活性を抑制する方法であって、
対象に治療有効量の請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又は抗原結合断片、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項15に記載の医薬組成物又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、
方法。
【請求項19】
対象の腫瘍内部のTeff/Tregの割合を増加する方法であって、
対象に治療有効量の請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又は抗原結合断片、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項15に記載の医薬組成物又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、
方法。
【請求項20】
対象の体内での腫瘍細胞に対するCDC、ADCC及び/又はADCPを強化させる方法であって、
対象に治療有効量の請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又は抗原結合断片、請求項11に記載のポリヌクレオチド、請求項15に記載の医薬組成物又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、
方法。
【請求項21】
前記対象はがん又は腫瘍に罹患しており、
好ましくは、前記がん又は腫瘍は扁平上皮がん、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、肝細胞がん(HCC)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)がん、腎がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎がん、前列腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形性膠芽細胞腫、子宮頸がん、脳がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がんと頭頸部がんから選ばれる、
請求項16の用途と請求項17~20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
体内又は体外でCD25を検出する方法であって、
請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又は抗原結合断片、及び/又は請求項11に記載のポリヌクレオチドを使用することを含み、
好ましくは、CD25が存在する場合、前記抗CD25抗体又は抗原結合断片、ポリヌクレオチドと前記CD25との間の相互作用を検出する、
方法。
【請求項23】
CD25を検出するための試薬キットであって、
請求項1~10の何れか一項に記載の抗CD25抗体又は抗原結合断片及び/又は請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む、
試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年5月14日に提出された中国特許出願(出願番号202010408502.3)の優先権を主張する。上記中国特許出願の全文は、本願に援用されている。
【0002】
本開示は、生物医薬分野、特にがん免疫治療分野に属し、がん(例えば、固形腫瘍)を治療する方法を含み、抗CD25抗体又はその抗原結合断片の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍免疫療法は、腫瘍治療分野においてよく注目されている課題であり、現在、主に、腫瘍内部のCD4とCD8T細胞を向上させたり、腫瘍内部の抑制型免疫細胞の数と活性を抑制すること、例えば、制御性T細胞(Treg)、骨髓由来の抑制性細胞MDSCや腫瘍関連マクロファージ細胞を抑制することにより達成される。腫瘍内部のTreg細胞の低減又は除去による治療対策は、既に臨床的に検証された。
【0004】
CD25は、272個のアミノ酸からなるI型膜タンパク質であり、そのT細胞での発現がTCRシグナルによって調節されるので、よくT細胞が活性化された印とされている。IL-2は、免疫活性化作用を有し、腫瘍を治療する免疫調節剤であり、細胞表面のIL-2受容体(IL-2R)を介して作用を果たす。IL-2Rは、IL-2Rα(即ち、CD25)、IL-2Rβ(即ち、CD122)とIL-2Rγ(即ち、CD132)という3つのサブユニットを含む。3つのサブユニットは、3つのサブユニットIL-2Rα/β/γの全てを含む高結合力受容体、IL-2Rβ/γを含む中等結合力受容体と、IL-2Rαである低結合力受容体という3つの受容体形態を形成することができる。IL-2Rα(即ち、CD25)は、単独でIL-2との親和性が比較的低く(Kdが10-8 M)、且つ細胞内シグナルを伝達しない。IL-2RβとIL-2Rγは、IL-2による下流シグナル伝達経路の活性化に必要なもので、IL-2がIL-2Rβ及びIL-2Rγと同時に結合する場合、2つの受容体サブユニットはヘテロ二量体を形成する。IL-2Rα(即ち、CD25)は、IL-2Rβ及びIL-2Rγと合わせて高親和性の受容体(Kdが10-11 M)を形成する場合、下流JAK-STAT、PI3K-AKT及びMAPKシグナル伝達経路を活性化することで、T細胞、NK細胞などのリンパ球の増殖と活性を促進することができる。
【0005】
一部の既存の抗CD25抗体は、IL-2とCD25の結合を阻害又は抑制し、例えば、WO2004/045512、WO2006/108670、WO1993/011238、WO1990/007861及びWO2017/174331が参照される。バシリキシマブ(basiliximab)及びダクリズマブ(daclizumab、DAC)は、何れもIL-2とCD25の結合を抑制するIgG1型抗ヒトCD25抗体であり、CD25によってIL-2の免疫活性化機能を仲介するもので、何れもエフェクターT細胞(Teff)の活性化を低減するために開発された。バシリキシマブは、現在、移植片対宿主病(GVHD)への適用が承認されているキメラ抗CD25抗体であるが、ダクリズマブは、多発性硬化症の治療への適用が承認されているヒト化抗CD25抗体である。
【0006】
CD25は、Tregにおける発現存在度が他の免疫細胞よりもはるかに高いため、CD25はTregの特異的マーカーとして抗体の開発に用いられてもよく、抗体仲介性の細胞傷害作用(ADCC)及び抗体仲介性の細胞食作用(ADCP)によって腫瘍内部のTreg細胞を除去し、Tregによる腫瘍内部T細胞への抑制を解消することで、抗腫瘍免疫を促進する。しかし、CD25は、IL-2によるエフェクターT細胞の活性化も同時に仲介しており、CD25抗体によりIL-2シグナル伝達経路が抑制されると、Teffが抑制され、その抗腫瘍活性が拮抗されてしまう。幾つかの文献によると、抗CD25は単独で、又は組み合わせてがん又はTregの消耗に関連する用途に用いられる(WO 2004/074437、WO 2006/108670、WO 2006/050172、WO 2011/077245、WO 2016/021720、WO 2004/045512)ため、IL-2とCD25の結合を許容する抗CD25抗体が必要となる。臨床前に開発されたCD25抗体は、7D4(ラット抗マウスCD25、例えば、Malek et al.PNAS、1983 Sep、80(18):5694-8、Onizuka S et al、Cancer Res.1999 Jul 1、59(13):3128-33を参照)、7G7B6(抗ヒトCD25、例えば、Zhang et al.、Cancer Biother Radiopharm.2009 Jun、24(3): 303-309を参照)、及びPC61(ラット抗マウスCD25、例えば、Yulius Y Setiady et al.、Eur J Immunol.2010 Mar、40(3):780-6を参照)を含み、マウスがんモデルで試験する時に、PC61は、そのCD25とIL2の結合への抑制作用のため、抗腫瘍活性を示せないが、7D4は、IL2のCD25への結合に影響を与えないため、PC61よりも優れた抗腫瘍活性を示している。更に、WO2019/175216には、ロシュ社及びTUSK社により共同開発されたCD25を標的とする抗体RG6292が提供されており、その固形腫瘍における安全性と薬効を検出するために、既に臨床第I相に入った。WO2018167104にも、IL-2とCD25の結合に影響を与えない抗CD25抗体が提供されている。
【0007】
腫瘍抑制効果がより優れ、安全性がより高く、IL-2とCD25の結合を抑制せず、ADCCとADCP効果によりTregを除去すると共に、Teff活性への抑制を回避することができる抗CD25抗体の開発は、依然としてこの分野において必要なことである。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、抗CD25抗体、その抗原結合断片、及びそれらをコードする核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、がん(特に固形腫瘍)を治療するための方法と製薬用途を提供する。
【0009】
抗CD25抗体、その抗原結合断片
本開示は、重鎖可変領域(VH)及び/又は軽鎖可変領域(VL)を含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
1)上記VHは配列番号1におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号2におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
2)上記VHは配列番号3におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号4におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
3)上記VHは配列番号5におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号6におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
4)上記VHは配列番号7におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号8におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
5)上記VHは配列番号9におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号10におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
6)上記VHは配列番号11におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号12におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
7)上記VHは配列番号13におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号14におけるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
8)上記VHは配列番号15におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号16におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
9)上記VHは配列番号17におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号18におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
10)上記VHは配列番号19におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号20におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
11)上記VHは配列番号21におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号22におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
12)上記VHは配列番号23におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号24におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
13)上記VHは配列番号25におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号26におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、或いは
14)上記VHは配列番号59におけるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLは配列番号60におけるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む、
抗CD25抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
上記CDRはKabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムによって定義され、幾つかの具体的な実施形態において、CDRはKabat番号付けシステムによって定義される。
【0011】
幾つかの実施形態において、1)、2)、3)、5)又は6)で示されるVHとVLを含む抗体又はその抗原結合断片は、IL-2とCD25の結合を阻害又は部分的に阻害し、他の幾つかの実施形態において、4)、7)、8)、9)、10)、11)、12)又は13)で示されるVHとVLを含む抗体又はその抗原結合断片は、IL-2とCD25の結合を阻害せず、抑制せず、又はほぼ阻害せず、抑制しない。
【0012】
幾つかの実施形態において、VH及び/又はVLを含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
上記VHは配列番号27、33、39又は45から選ばれるHCDR1、及び/又は配列番号28、34、40又は46から選ばれるHCDR2、及び/又は配列番号29、35、41又は47から選ばれるHCDR3を含み、上記VLは配列番号30、36、42又は48から選ばれるLCDR1、及び/又は配列番号31、37、43又は49から選ばれるLCDR2、及び/又は配列番号32、38、44又は50から選ばれるLCDR3を含む、
抗CD25抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0013】
幾つかの実施形態において、VH及び/又はVLを含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
i)上記VHは、配列番号27で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号28で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、及び配列番号29で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、及び/又は上記VLは、配列番号30で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号31で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、及び配列番号32で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含み、
ii)上記VHは、配列番号33で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号34で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、及び配列番号35で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、及び/又は上記VLは、配列番号36で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号37で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、及び配列番号38で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含み、
iii)上記VHは、配列番号39で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号40で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、及び配列番号41で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、及び/又は上記VLは、配列番号42で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号43で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、及び配列番号44で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含み、或いは
iv)上記VHは、配列番号45で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR1、配列番号46で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR2、及び配列番号47で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するHCDR3を含み、及び/又は上記VLは、配列番号48で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR1、配列番号49で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR2、及び配列番号50で示され、又はそれと多くとも3個、2個又は1個のアミノ酸変異を有するLCDR3を含む、
抗CD25抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0014】
幾つかの具体的な実施形態において、上記のアミノ酸変異を有する抗CD25抗体又はその抗原結合断片及び親抗体又は抗原結合断片は、相同又は基本的に相同のヒトCD25と結合する親和性及び/又は機能(例えば、ADCC、ADCP、抗腫瘍活性)を有する。
【0015】
幾つかの実施形態において、本開示の上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片は、10-7M以下の解離平衡定数でヒトCD25と結合する。幾つかの実施形態において、10-8M、10-9M、10-10M又は10-11M以下の解離平衡定数でヒトCD25と結合する。
【0016】
幾つかの実施形態において、VH及び/又はVLを含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
上記VHはそれぞれ配列番号27、28と29で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLはそれぞれ配列番号30、31と32で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
上記VHはそれぞれ配列番号33、34と35で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLはそれぞれ配列番号36、37と38で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、
上記VHはそれぞれ配列番号39、40と41で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLはそれぞれ配列番号42、43と44で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含み、或いは
上記VHはそれぞれ配列番号45、46と47で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3を含み、上記VLはそれぞれ配列番号48、49と50で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3を含む、
抗CD25抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0017】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片はVHとVLを含み、そのうち、
上記VHは配列番号1で示され、上記VLは配列番号2で示され、
上記VHは配列番号3で示され、上記VLは配列番号4で示され、
上記VHは配列番号5で示され、上記VLは配列番号6で示され、
上記VHは配列番号7で示され、上記VLは配列番号8で示され、
上記VHは配列番号9で示され、上記VLは配列番号10で示され、
上記VHは配列番号11で示され、上記VLは配列番号12で示され、
上記VHは配列番号13で示され、上記VLは配列番号14で示され、
上記VHは配列番号15で示され、上記VLは配列番号16で示され、或いは
上記VHは配列番号17で示され、上記VLは配列番号18で示され、前記抗体はマウス抗体又はその断片である。
【0018】
幾つかの具体的な実施形態において、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLとそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するVH及び/又はVLを含む、抗CD25抗体又はその抗原結合断片変異体を提供する。
【0019】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片はマウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体又はその断片であり、例えば、ヒト化抗体又はその断片である。
【0020】
幾つかの実施形態において、マウス抗CD25抗体又はその抗原結合断片によりキメラ抗体を調製し、ヒト化した後、復帰変異を行う。ここで、US20030040606及びUS7494647におけるヒト化の方法が全文に組み込まれている。
【0021】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片はVHとVLを含み、そのうち、
上記VHはIGHV1-46*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGHJ1*01から選ばれるFR4を含み、上記VLはIGKV4-1*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGKJ4*01から選ばれるFR4を含み、
上記VHはIGHV1-18*01から選ばれるFR1~FR2、IGHV1-69*02から選ばれるFR3、及びhIGHJ6*01_14から選ばれるFR4を含み、上記VLはIGKV3-11*01から選ばれるFR1、IGKV5-2*01から選ばれるFR2、IGKV6-21*01から選ばれるFR3、及びhIGKJ4*01_12から選ばれるFR4を含み、
上記VHはIGHV1-18*01から選ばれるFR1、IGHV4-31*01から選ばれるFR2、IGHV1-3*01から選ばれるFR3、及びhIGHJ6*01から選ばれるFR4を含み、上記VLはIGKV4-1*01から選ばれるFR1~FR3、及びhIGKJ2*01から選ばれるFR4を含み、或いは
上記VHはIGHV3-23*04から選ばれるFR1~FR3、及びIGHJ1*01から選ばれるFR4を含み、上記VLはIGKV2-28*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGKJ4*01から選ばれるFR4を含む。
【0022】
幾つかの具体的な実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片はVH及び/又はVLを含み、そのうち、
上記VHはそれぞれ配列番号27、28と29で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、IGHV1-46*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGHJ1*01から選ばれるFR4を含み、上記VLはそれぞれ配列番号30、31と32で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3、IGKV4-1*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGKJ4*01から選ばれるFR4を含み、
上記VHはそれぞれ配列番号33、34と35で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、IGHV1-18*01から選ばれるFR1~FR2、IGHV1-69*02から選ばれるFR3、及びhIGHJ6*01_14から選ばれるFR4を含み、上記VLはそれぞれ配列番号36、37と38で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3、IGKV3-11*01から選ばれるFR1、IGKV5-2*01から選ばれるFR2、IGKV6-21*01から選ばれるFR3、及びhIGKJ4*01_12から選ばれるFR4を含み、
上記VHはそれぞれ配列番号39、40と41で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、IGHV1-18*01から選ばれるFR1、IGHV4-31*01から選ばれるFR2、IGHV1-3*01から選ばれるFR3、及びhIGHJ6*01から選ばれるFR4を含み、上記VLはそれぞれ配列番号42、43と44で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3、IGKV4-1*01から選ばれるFR1~FR3、及びhIGKJ2*01から選ばれるFR4を含み、或いは
上記VHはそれぞれ配列番号45、46と47で示されるHCDR1、HCDR2とHCDR3、IGHV3-23*04から選ばれるFR1~FR3、及びIGHJ1*01から選ばれるFR4を含み、上記VLはそれぞれ配列番号48、49と50で示されるLCDR1、LCDR2とLCDR3、IGKV2-28*01から選ばれるFR1~FR3、及びIGKJ4*01から選ばれるFR4を含む。上記FRを復帰変異することで、抗体活性を維持することができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片はVH及び/又はVLを含み、そのうち、
上記VHは配列番号19で示され、上記VLは配列番号20で示され、
上記VHは配列番号21で示され、上記VLは配列番号22で示され、
上記VHは配列番号23で示され、上記VLは配列番号24で示され、
上記VHは配列番号25で示され、上記VLは配列番号26で示され、或いは
上記VHは配列番号59で示され、上記VLは配列番号60で示され、上記抗体はヒト化抗体又はその断片である。
【0024】
幾つかの具体的な実施形態において、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLとそれぞれ少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するVH及び/又はVLを含む、抗CD25抗体又はその抗原結合断片変異体を提供する。
【0025】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片は、抗体の重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3とIgG4の重鎖定常領域及びその一般的な変異体を更に含み、上記抗体の軽鎖定常領域はヒト抗体κとλ鎖定常領域及びその一般的な変異体から選ばれ、また例えば、マウスIgG2aなど、マウスのIgGである。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記抗原結合断片はFab、Fab’、F(ab’)2、単鎖抗体(scFv)、二量化のV領域(二重抗体)、ジスルフィド結合安定化のV領域(dsFv)とその他のCDRを含むペプチドの抗原結合断片から選ばれる。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記何れか一項に記載の抗CD25抗体又はその抗原結合断片と競合してヒトCD25と結合し、又は競合して同じエピトープと結合する、単離したモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を更に提供する。
【0028】
幾つかの実施形態において、VH及び/又はVLを含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
上記VHは配列番号1で示され、上記VLは配列番号2で示され、
上記VHは配列番号3で示され、上記VLは配列番号4で示され、
上記VHは配列番号5で示され、上記VLは配列番号6で示され、
上記VHは配列番号9で示され、上記VLは配列番号10で示され、或いは
上記VHは配列番号11で示され、上記VLは配列番号12で示され、IL-2とCD25の結合を阻害又は部分的に阻害する、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0029】
他の幾つかの実施形態において、VH及び/又はVLを含む抗CD25抗体又はその抗原結合断片であって、
上記VHは配列番号7で示され、上記VLは配列番号8で示され、
上記VHは配列番号13で示され、上記VLは配列番号14で示され、
上記VHは配列番号15で示され、上記VLは配列番号16で示され、
上記VHは配列番号17で示され、上記VLは配列番号18で示され、
上記VHは配列番号19で示され、上記VLは配列番号20で示され、
上記VHは配列番号21で示され、上記VLは配列番号22で示され、
上記VHは配列番号23で示され、上記VLは配列番号24で示され、
上記VHは配列番号25で示され、上記VLは配列番号26で示され、或いは
上記VHは配列番号59で示され、上記VLは配列番号60で示され、IL-2とCD25の結合を阻害せず、抑制せず、ほぼ阻害せず、抑制せず、又は低い程度で阻害し、抑制する、
抗体又はその抗原結合断片を提供する。例えば、抗体が存在しない場合のIL-2シグナル伝達と比べ、上記抗CD25抗体又は抗原結合断片は、約50%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%未満のIL-2シグナル伝達、例えば、約25%未満のIL-2シグナル伝達を阻害する。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片のVH及び/又はVLと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するVH及び/又はVLを含む、抗CD25抗体又はその抗原結合断片変異体を提供する。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域VH及び/又はVLと比べ、それぞれ0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸変化を含むVH及び/又はVLを含む、抗CD25抗体又はその抗原結合断片変異体を提供する。上記アミノ酸変化は、可変領域中のアミノ酸残基の保存的置換であってもよい。幾つかの実施形態において、上記のアミノ酸変化を含む抗体又は抗原結合断片は、親抗体又は抗原結合断片と相同又は基本的に相同のヒトCD25と結合する親和性及び/又は機能(例えば、ADCC、ADCP、抗腫瘍活性)を有する。
【0032】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び/又は軽鎖を含み、そのうち、
上記重鎖は配列番号51で示され、上記軽鎖は配列番号52で示され、
上記重鎖は配列番号53で示され、上記軽鎖は配列番号54で示され、
上記重鎖は配列番号55で示され、上記軽鎖は配列番号56で示され、
上記重鎖は配列番号57で示され、上記軽鎖は配列番号58で示され、或いは
上記重鎖は配列番号61で示され、上記軽鎖は配列番号62で示される。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び/又は軽鎖とそれぞれ少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する重鎖及び/又は軽鎖を含む、抗CD25抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片はIgG1型であり、Fc領域は脱フコシル化部位を有し、強化されたFcγRIIIa結合能力を持つ。上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片はTreg細胞へのADCC作用を増加し、その抗腫瘍活性を強化することができる。
【0035】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片はIgG1型であり、Fc領域は脱フコシル化部位(例えば、A330I変異)を有し、低減されたFcγRIIb結合能力を持つ。上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片は、FcγRIIb受容体により仲介されるADCC/ADCPへの抑制性シグナルを低減することで、Treg細胞へのADCC作用を強化し、その抗腫瘍活性を強化することができる。
【0036】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又は抗原結合断片は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し、即ち、
(a)ヒトCD25と結合するKD値が1×10-7M未満であり、
(b)IL-2とCD25の結合を抑制せず(又は基本的に抑制せず)、
(c)腫瘍浸潤性Tregを消耗し、Teffの機能に影響を与えず(又は基本的に影響を与えず)、
(d)1よりも高い活性化抑制率(A/I)でFcγ受容体と結合し、
(e)FcγRI、FcγRIIc及び/又はFcγRIIbとの結合よりも高い親和性でFcγRIIIaと結合し、FcγRIIbとの結合よりも高い親和性でFcγRIIIaと結合し、
(f)多種の腫瘍の成長を抑制する。
【0037】
本開示に係るCD25のタンパク質との結合又は抗CD25抗体のCD25との結合のKD値は1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、又は1×10-10M未満であってもよい。
【0038】
本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片は、腫瘍成長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%を抑制することができる。
【0039】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又は抗原結合断片は、高い親和性でFcγRと結合し、例えば、高い親和性で活性化受容体と結合する。幾つかの具体的な実施形態において、本開示に係る抗体は、高い親和性でFcγRI及び/又はFcγRIIA及び/又はFcγRIIIAと結合する。具体的な実施形態において、抗体は、少なくとも1つの活性化Fcγ受容体と約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M未満の解離定数で結合する。
【0040】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又は抗原結合断片はIgG1抗体であり、少なくとも1つのFc活性化受容体と結合することができる。例えば、当該抗体は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIaとFcγRIIIbから選ばれる1つ又は複数の受容体と結合することができる。幾つかの具体的な実施形態において、本開示に係る抗体は、FcγRIIIAと結合することができる。幾つかの実施形態において、本開示に係る抗体は、FcγRIIIAとFcγRIIAと何れかのFcγRIと結合することができる。一態様において、抗体は、高い親和性でこれらの受容体と結合し、例えば、約10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M未満の解離定数で結合することができる。
【0041】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又は抗原結合断片は、低い親和性で抑制性受容体FcγRIIbと結合する。一態様において、抗体は、約10-7Mよりも高い、約10-6Mよりも高い又は約10-5Mよりも高い解離定数でFcγRIIbと結合する。
【0042】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又は抗原結合断片は、IgG1サブクラス由来であり、好ましくはADCC及び/又はADCP活性を有する。他の幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体は、IgG2サブクラス由来である。
【0043】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又は抗原結合断片は、50%未満のCD25によるIL-2シグナル伝達を抑制又は阻害する。例えば、抗体が存在しない場合のIL-2シグナル伝達と比べ、抗CD25抗体又は抗原結合断片は、約40%、35%、30%未満、好ましくは、約25%未満のIL-2シグナル伝達を抑制又は阻害する。
【0044】
ポリヌクレオチド及びベクター
本開示は、本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片をコードする、単離したポリヌクレオチドを提供する。上記ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAであってもよい。
【0045】
本開示は、上記のようなポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供し、発現ベクターは、真核生物発現ベクター、原核生物発現ベクター、ウィルスベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ファージであってもよい。
【0046】
宿主細胞
本開示は、上記のような発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供し、それは、真核細胞や、原核細胞であってもよい。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記宿主細胞は、細菌、酵母菌、哺乳動物細胞である。幾つかの具体的な実施形態において、上記宿主細胞は、大腸菌、ピキア酵母、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はヒト胎児腎臓(HEK)293細胞である。
【0048】
調製方法
本開示は、抗CD25抗体又はその抗原結合断片を調製するための方法であって、上記のような宿主細胞において当該抗体又はその抗原結合断片を発現し、且つ当該宿主細胞から当該抗体又はその抗原結合断片を単離することを含む方法を提供する。
【0049】
選択的に、精製工程を含んでもよく、例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製し、非特異的に結合した成分を洗い流し、更にPH勾配法により、結合した抗体を溶出し、SDS-PAGEにより検出して収集する。選択的に、通常の方法によりろ過して濃縮する。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに例えば、-70℃で冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0050】
抗体及び抗原結合断片の製造・精製方法は、従来技術でよく知られており、且つ、例えば冷泉港の抗体実験技術マニュアル(5~8章及び15章)で見出すことができる。例えば、ヒトFcRn又はその断片をマウスに免疫することができ、得られた抗体は復元、精製されることができると共に、通常の方法によりアミノ酸シークエンシングを行うことができる。抗原結合断片は、同じく通常の方法により調製することができる。
【0051】
本開示に係る工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製と精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローニングして発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。哺乳動物発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒト抗原に特異的に結合する抗体を発現することによって安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を製造する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製して収集することができる。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。
【0052】
組成物
本開示は、治療有効量の上記のような抗CD25抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容される賦形剤、希釈又はベクターを含む医薬組成物などの組成物を提供する。幾つかの具体的な実施形態において、上記医薬組成物の単位用量には、0.01~99 wt%の抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含んでもよく、或いは、医薬組成物の単位用量における抗CD25抗体又はその抗原結合断片の含有量は0.1~2000 mgであり、幾つかの具体的な実施形態では1~1000 mgである。
【0053】
治療方法及び製薬用途
本開示は、抗CD25抗体又はその抗原結合断片、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物、コードポリヌクレオチドのうちの何れか一項又はそれらの任意の組み合わせ、疾患を診断、治療、予防するための方法及び薬剤、医薬組成物を調製する用途(例えば、増殖性病状(例えば、がん又は腫瘍)の治療や予防又は関連病状の進行の遅延を提供する。
【0054】
幾つかの実施形態において、対象の病状を予防、治療又は緩和する方法であって、上記対象に本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及び/又はコードポリヌクレオチドを投与することを含む方法を提供する。幾つかの具体的な実施形態において、上記対象の病状は増殖性疾患、例えば、腫瘍又はがんである。幾つかの実施形態において、上記対象は、形成された腫瘍、例えば、固形腫瘍に罹患している。
【0055】
幾つかの実施形態において、対象の腫瘍内部又は腫瘍浸潤性Tregの細胞数を減少する方法を提供し、幾つかの実施形態において、対象の腫瘍内部又は腫瘍浸潤性Tregの細胞活性を除去又は抑制する方法を提供し、何れも、上記対象に本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及び/又はコードポリヌクレオチドを投与することを含む。
【0056】
幾つかの実施形態において、対象の腫瘍内部Teff/Tregの割合を増加する方法であって、上記対象に本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及び/又はコードポリヌクレオチドを投与することを含む方法を提供する。幾つかの具体的な実施形態において、腫瘍中のエフェクターT細胞と制御性T細胞の割合(Teff/Treg)は、5、10、15、20、40又は80を超えるように増加する。
【0057】
幾つかの実施形態において、対象の体内での腫瘍細胞に対するCDC、ADCC及び/又はADCPを強化する方法であって、上記対象に本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及び/又はコードポリヌクレオチドを投与することを含む方法を提供する。幾つかの具体的な実施形態において、対象の体内での腫瘍細胞に対するADCC及び/又はADCP効果は強化されている。幾つかのさらなる具体的な実施形態において、対象の体内での腫瘍細胞に対するADCC効果は強化されている。
【0058】
幾つかの実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体又はその抗原結合断片、上記抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物及び/又はコードポリヌクレオチドの、対象の病状を予防、治療又は緩和する薬剤を調製するための製薬用途、対象の腫瘍内部又は腫瘍浸潤性Tregの細胞数を減少する薬剤を調製するための製薬用途、対象の腫瘍内部又は腫瘍浸潤性Tregの細胞活性を除去又は抑制する薬剤を調製するための製薬用途、対象の腫瘍内部のTeff/Tregの割合を増加する薬剤を調製するための製薬用途、対象の体内での腫瘍細胞に対するCDC、ADCC及び/又はADCPを強化する薬剤を調製するための製薬用途を提供する。
【0059】
幾つかの具体的な実施形態において、上記対象の病状は、増殖性病状(例えば、がん又は腫瘍)であり、又は増殖性病状(例えば、がん又は腫瘍)に罹患している。上記腫瘍はがん、リンパ腫、白血病、芽細胞腫と肉腫を含むが、これらに限定されない。このようながんの更に具体的な実例は、扁平上皮がん、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、肝細胞がん(HCC)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、胃腸(管)がん、腎がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎がん、前列腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形性膠芽細胞腫、子宮頸がん、脳がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がんと頭頸部がんを含む。
【0060】
幾つかの具体的な実施形態において、上記がん又は腫瘍は固形腫瘍であってもよく、肉腫(組織(例えば、海綿質骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、造血細胞又は線維性結合組織)中の間葉由来の形質転換細胞によるがんを含む)、がん(上皮細胞による腫瘍を含む)、中皮腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫などを含むが、これらに限定されない。固形腫瘍に関わるがんは、脳がん、肺がん、胃がん、十二指腸がん、食管がん、乳がん、結腸・直腸がん、腎がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、黒色腫、口腔がん、肉腫、眼がん、甲状腺がん、尿道がん、膣がん、頸部がん、リンパ腫などを含むが、これらに限定されない。
【0061】
幾つかの具体的な実施形態において、上記がんは、CD25を発現した腫瘍に関わり、ホジキンリンパ腫などのリンパ腫と、慢性リンパ性白血病(CLL)などのリンパ球性白血病を含むが、これらに限定されない。
【0062】
検出用途
本開示は、抗CD25抗体又はその抗原結合断片の検出用途を提供する。
【0063】
本開示は、抗CD25抗体又はその抗原結合断片を含む、CD25を検出する試薬を提供する。本開示は、抗CD25抗体又はその抗原結合断片を使用することを含む、体内(in vivo)又は体外(in vitro)でCD25を検出するための方法、システム又は装置を更に提供する。
【0064】
幾つかの実施形態において、体外検出方法、システム又は装置は、例えば、(1)試料を抗CD25抗体又はその抗原結合断片に接触させることと、(2)抗CD25抗体又はその抗原結合断片と試料の間で形成された複合体を検出することと、及び/又は(3)参照試料(例えば、対照試料)を抗体に接触させることと、(4)参照試料と比較することにより、抗体と試料の間の複合体形成程度を決定することと、を含み得る。例えば、対照試料又は対象におけるものと比べ、試料又は対象における複合体形成の変化(例えば、統計学的に有意な変化)は、試料にCD25が存在することを示す。
【0065】
幾つかの実施形態において、検出のために、本開示に係るCD25結合タンパク質又は抗CD25抗体は、蛍光団及び発色団で標識することができる。
【0066】
幾つかの実施形態において、試薬キットを更に提供し、上記試薬キットは、CD25と結合するタンパク質又は抗CD25抗体を含み、診断マニュアルを更に含んでもよい。試薬キットは、少なくとも1つの付加的な試薬、例えば、マーカーや付加的な診断剤を更に含んでもよい。体内での使用に対して、抗体は、医薬組成物として調製することができる。
【0067】
本開示の実施例により提供される抗CD25抗体又はその抗原結合断片は、高い特異性、高い親和性、低い免疫原性という特徴がある。また、本開示に係る抗体は、Tregを抑制し、Teffに影響を与えず、対象の体内でのADCC、ADCP及び/又はCDCを強化し、腫瘍の発生と進行を抑制する良好な効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1A-1B】ELISAによる組換えタンパク質活性の同定である。ここで、図1Aは組換えヒトCD25タンパク質の活性検出結果、図1Bは組換えサルと組換えマウスCD25タンパク質の活性検出結果である。
図2】FACSによる、ヒトCD25タンパク質を安定的に発現した細胞株2F8の測定であり、ここで、白いピークはCD25陽性ピーク、灰色のピークは対照ピーク、一次抗体はヒトIgG1陰性対照抗体である。
図3A-3C】FACSによる抗体機能の測定と検出である。図3Aは、FACSにより抗体DAC、7G7B6、Tab06とCHO-K1細胞の結合を測定した結果であり、図3Bは、FACSにより抗体DAC、7G7B6、Tab06と、ヒトCD25タンパク質を安定的に発現したCHO-K1-CD25細胞との結合を測定した結果であり、図3Cは、FACSにより抗体DAC、7G7B6、Tab06とSu-DHL-1の結合を測定した結果であり、ここで、マウスIgG又はヒトIgGアイソタイプを陰性対照として使用する。
図4A-4C】ELISAによる抗体とCD25の結合の測定と検出である。図4Aは7G7B6、Tab06と組換えヒトCD25タンパク質との結合結果、図4Bは7G7B6、Tab06と組換えサルCD25タンパク質との結合結果、図4Cは7D4と組換えマウスCD25タンパク質との結合結果であり、使用される陰性対照はマウスIgGとヒトIgGである。
図5A-5C】FACSによるキメラ型抗CD25抗体とSU-DHL-1細胞の結合の検出である。図5AはcAb001、cAb002、cAb004、cAb006の検出結果、図5BはcAb028、cAb029、cAb037の検出結果、図5CはcAb042、cAb046の検出結果であり、使用される陽性対照はTab06とDAC、陰性対照はヒトIgG(即ち、hIgG)である。
図6A-6G】FACSによるキメラ型抗CD25抗体とTreg細胞、活性化されたCD4及びCD8エフェクターT細胞におけるCD25抗原との結合の検出である。図6AはcAb006の結果、図6BはcAb037の結果、図6CはcAb042の結果、図6DはcAb046の結果、図6Eは陽性対照7G7B6の結果、図6Fは陽性対照DACの結果、図6Gは陽性対照Tab06の結果である。
図7A-7B】FACSによる、IL-2と受容体CD25の結合能力へのキメラ型抗CD25抗体の影響の検出である。図7AはcAb001、cAb002、cAb028、cAb029の検出結果図、図7BはcAb006、cAb037、cAb042、cAb046の検出結果図であり、使用されるIL-2とCD25の結合を阻害する抗CD25抗体対照はDAC、IL-2とCD25の結合を阻害しない抗CD25抗体対照はTab06、陰性対照はヒトIgG(即ち、hIgG-1)である。
図8】FACSによるヒト化抗CD25抗体とSU-DHL-1細胞の結合の検出である。
図9】FACSによる、ヒト末梢血Tリンパ球pStat5シグナル伝達経路へのヒト化抗CD25抗体の影響の検出である。
図10】ADCCレポーター遺伝子の細胞における蛍光活性を検出することにより、ヒト化抗CD25抗体により仲介されたSU-DHL-1細胞へのADCC作用を検出することである。
図11A-11B】ヒト化抗CD25抗体により仲介されたhCD25マウスのMC38移植腫瘍に対する抗腫瘍活性の結果であり、ここで、図11Aは腫瘍抑制効果図であり、図11Bは対応するマウス体重図である。
図12A-12B】ヒト化抗CD25抗体により仲介されたhCD25マウスのMC38移植腫瘍に対する腫瘍内リンパ球の分析結果であり、ここで、図12Aは抗体のTregへの傷害効果であり、図12Bは抗体によるCD3のアップレギュレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
発明の詳細
本開示が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書の他所で別途明確に定義されていない限り、本明細書に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を有する。
【0070】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J.Biol.Chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0071】
「CD25」又は「CD25タンパク質」又は「CD25ポリペプチド」は、本明細書に記載の既知又は野生型のCD25、及び任意の天然に存在するスプライス変異体、アミノ酸変異体又はアイソフォームを含む(これらに限定されない)任意のこのようなタンパク質又はその変異体、結合体又は断片を任意選択的に含んでもよい。完全なヒトCD25配列は、Uniprot登録番号P01589で見出すことができ、その22~240番目のアミノ酸が成熟したヒトCD25の細胞外領域に対応する。
【0072】
「CD25と結合する」とは、ヒト由来可能であるCD25又はそのエピトープと相互作用できることを意味する。「抗原結合部位」とは、本開示の抗体又は抗原結合断片により認識される、抗原上の不連続の3次元空間部位を指す。
【0073】
「抗体」とは、2本の同じ重鎖と2本の同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合で連結してなるテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指す。免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるので、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンは、5種類、或いは免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれるIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに分けることができ、その対応する重鎖がそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の差によって、更に異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられてもよい。軽鎖は、定常領域によって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、何れもκ鎖又はλ鎖を有してもよい。抗体重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸の配列の変化が大きく、可変領域(V領域)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的に安定的で、定常領域(C領域)となる。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)と、4つの配列が比較的に保存的な骨格領域(FR)とを含む。3つの超可変領域は、抗体の特異性を決定し、相補性決定領域(CDR)とも称される。それぞれの軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)は、3つのCDR領域と、4つのFR領域とからなり、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。軽鎖の3つのCDR領域はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。幾つかの実施例において、本開示の抗体は、CD25に特異的に又は基本的に特異的に結合する。
【0074】
「CD25と結合する抗体」とは、IL-2受容体のCD25サブユニットと結合可能な抗体である。当該サブユニットは、IL-2受容体のαサブユニットとも呼ばれる。このような抗体は、本明細書において「抗CD25抗体」とも呼ばれる。
【0075】
本開示に係る抗体又は抗原結合断片のVL領域とVH領域のCDRアミノ酸残基は、数と位置において既知のKabat番号付けシステムに合致する。KabatにおけるEU番号は、一般的に定常ドメイン及び/又はFcドメインにも使用される。
【0076】
「CDR」の決定又は定義については、抗体の構造を解明し、及び/又は抗体-リガンド複合体の構造を解明することによってCDRの明確な描写及び抗体の結合部位を含む残基の同定を達成することができる。これは、例えばX線結晶学などの当業者に既知の様々な技術の何れか1つによって実現することができる。種々の分析方法は、CDRの同定に使用することができ、Kabat番号付けシステム、Chothia番号付けシステム、AbM番号付けシステム、IMGT番号付けシステム、接触定義、立体配座定義を含むが、これらに限定されない。Kabat番号付けシステムは、抗体における残基に番号を付けるための基準であり、一般的にCDR領域の同定に使用される(例えば、Johnson&Wu、2000、Nucleic Acids Res.、28:214-8を参照する)。Chothia番号付けシステムは、Kabat番号付けシステムと類似するが、Chothia番号付けシステムは、ある構造ループ領域の位置を考慮に入れた。(例えば、Chothia et al.、1986、J.Mol.Biol.、196:901-17、及びChothia et al.、1989、Nature、342:877-83を参照する)。AbM番号付けシステムは、抗体構造をモデル化したOxford MolecuLar Groupにより生産されたコンピュータプログラム一式を使用する(例えば、Martin et al.、1989、ProcNatl Acad Sci(USA)、86:9268-9272;「AbMTM、A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies」、Oxford、UK;Oxford MolecuLar Ltdを参照する)。AbM番号付けシステムは、知識データベース及びab initio法の組み合わせを用いて、基本配列から抗体の三次構造をモデル化する(Samudrala et al.、1999、PROTEINS、Structure、Function and Genetics Suppl.、3:194-198における「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach」に記載されたものを参照する)。接触定義は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づくものである(例えば、MacCallum et al.、1996、J.Mol.Biol.、5:732-45を参照する)。立体配座定義において、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー寄与をする残基として同定することができる(例えば、Makabe et al.、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156-1166を参照する)。なお、他のCDR境界定義は、上記方法の1つに厳格に従うとは限らないが、特定の残基又は残基群が抗原結合に顕著に影響しないという予測又は実験結果によって、それらは短縮又は延長可能であるとはいえ、依然としてKabat CDRの少なくとも一部と重複する。本明細書に使用されるように、CDRは、この分野で既知の任意の方法(方法の組み合わせを含む)によって定義されたCDRを指すことができる。本明細書に使用される方法は、これらの方法の何れか1つによって定義されたCDRを用いることができる。本開示の実施例では、kabat番号付け規則によってCDRを定義しているが、当業者は、Chothia、拡張された、AbM、IMGT、接触及び/又は立体配座定義の何れか1つによってCDRを改めて定義してもよいと理解可能である。
【0077】
IgG抗体のFc領域は、幾つかの種類の細胞Fcγ受容体(FcγR)と相互作用して下流エフェクター機序を刺激と調節する。FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、FcγRIIc(CD32c)、FcγRIIIa(CD16a)とFcγRIIIb(CD16b)という5種類の活性化受容体、及び1種類の抑制性受容体FcγRIIb(CD32b)がある。IgG抗体と免疫系のコミュニケーションはFcγRにより制御と仲介され、FcγRは抗体により感知・収集された情報を免疫系に伝達することで、特に生物療法の背景下で、自然・適応免疫系間の関連を提供する(Hayes J et al.、2016.JInflamm Res 9:209-219)。IgGサブクラスは、FcγRとの結合能力が相違しており、このような相違結合によって、それらの一連の機能的反応を引き起こす能力が決定される。例えば、ヒトにおいて、FcγRIIIaは抗体依存性細胞仲介性の細胞傷害作用(ADCC)活性化に関与する主な受容体であり、IgG1のIgG3との密接は、当該受容体に対する最も高い親和性を示し、それらのADCCを効果的に誘導する能力を反映し、IgG2は当該受容体に弱く結合するが、ヒトIgG2アイソタイプを持つ抗CD25抗体もTregを効果的に消耗することができると発見された。
【0078】
「制御性T細胞」、「Treg」又は「Treg細胞」とは、自己免疫、アレルギー反応と感染を専門的に制御するCD4Tリンパ球系譜である。通常、それらはT細胞群の活性を調節するが、ある自然免疫系細胞種に影響を与えることもできる。バイオマーカーであるCD4、CD25とFoxp3の発現により、Tregを同定することができる。天然に存在するTreg細胞は、通常、末梢のCD4Tリンパ球の約5~10%を占める。しかし、腫瘍微小環境(即ち、腫瘍浸潤性Treg細胞)において、それらは全CD4Tリンパ球群の20~30%を占めることができる。活性化したヒトTreg細胞は、パーフォリン又はグランザイムB依存性経路によって標的細胞、例えばTeffとAPC(抗原提示細胞)を直接殺すことができ、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)Treg細胞は、APCによってインドールアミン2、3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の発現を誘導し、それで更にトリプトファンを減少することでT細胞の活性化を抑制し、Treg細胞は、体内でインターロイキン-10(IL-10)と形質転換成長因子(TGFβ)を放出することができるので、MHC分子、CD80、CD86とIL-12の発現を抑制することでT細胞の活性化が直接抑制されると共にAPC機能が抑制される。Treg細胞は更に、高レベルのCTLA4を発現することにより免疫を抑制することができ、CTLA4は、抗原提出細胞におけるCD80及びCD86と結合してエフェクターT細胞の正確な活性化を阻止することができる。
【0079】
本明細書の「免疫エフェクター細胞」は、免疫応答のエフェクター段階に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞は、骨髄細胞又はリンパ球様細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞と、細胞溶解性T細胞(CTL)とを含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ細胞、単核細胞、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、肥満細胞と好塩基球を含む。
【0080】
本明細書の「抑制しない」、「阻害しない」、「非阻害性」、「非IL-2阻害性」、「阻害なし」とそのような表現(抗CD25抗体の存在下でIL-2とCD25の結合を阻害せず、又は抑制せず、例えば、「IL-2とCD25の結合を抑制しない」について)は、その中の抗CD25抗体がCD25によるIL-2のシグナル伝達を阻害せず、又は抑制せず、特にCD25を発現した細胞中のインターロイキン-2シグナル伝達を抑制しないことを含む。つまり、抗体が存在しない場合のIL-2シグナル伝達と比べ、本開示に係る抗CD25抗体は、50%未満のCD25によるIL-2シグナル伝達を抑制する。好ましくは、抗体が存在しない場合のIL-2シグナル伝達と比べ、抗CD25抗体は、約40%、35%、30%未満、好ましくは約25%未満のIL-2シグナル伝達を抑制する。
【0081】
「抗体依存性細胞仲介性の細胞傷害作用」(ADCC)は、Fc受容体(FcR)を発現した非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球とマクロファージ細胞)が標的細胞に結合された抗体を認識することで標的細胞の溶解を発生させる、細胞仲介性の反応を指す。「抗体依存性細胞仲介性の食作用」(ADCP)は、Fc受容体(FcR)を発現した食細胞(例えば、マクロファージ細胞)が標的細胞に結合された抗体を認識することで標的細胞への食作用を発生させる、細胞仲介性の反応を指す。「補体依存性細胞傷害作用」(CDC)は、補体の存在下で、抗原発現細胞への抗体溶解を指す。CDC、ADCCとADCPは、本分野において既知で使用可能な測定方法(Clynes et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA95、652-6)により測定することができ、抗体の定常領域は、補体と仲介性細胞依存性細胞の傷害作用と食作用に対する抗体の固定能力で重要である。従って、抗体によるADCC、ADCPの仲介が必要か否かによって抗体のアイソタイプを選択することができる。
【0082】
ADCCは、抗体グリカンからフコース部分を除去する方法により、例えば、YB2/0細胞系において抗体を産生することにより、又はヒトIgG1のFc部分に特定の変異を導入することにより、増加することができる(例えば、S298A/E333A/K334A、S239D/I332E/A330L、G236A/S239D/A330L/I332E)(Lazar et al.(2006)Proc Natl AcadSci USA 103、2005-2010、Smith et al.(2012)Proc Natl 25Acad Sci USA 109、6181-6)。ADCPも、ヒトIgG1のFc部分に特定の変異を導入することにより増加することができる(Richards et al.(2008) MolCancer Ther 7、2517-27)。
【0083】
「マウス抗体」は、本開示において、当該分野の知識と技術により調製されたヒトCD25又はそのエピトープに対するモノクローナル抗体である。調製時にCD25抗原を試験対象に注射した後、所望の配列又は機能特性を持つ抗体を発現したハイブリドーマを分離する。本開示の一具体的な実施形態において、上記マウス抗ヒトCD25抗体又はその抗原結合断片は、マウスκ、λ鎖若しくはその変異体の軽鎖定常領域を更に含み、又は、マウスIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4若しくはその変異体の重鎖定常領域を更に含んでもよい。
【0084】
「キメラ抗体(chimeric antibody)」は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合してなる抗体であり、マウス抗体により誘発される免疫応答反応を低減することができる。キメラ抗体を作成するには、まず、マウス特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作成し、そしてマウスハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングし、更に、必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングし、マウス可変領域遺伝子とヒト定常領域遺伝子とをキメラ遺伝子になるように連結した後、ヒトベクターに挿入し、最後に真核細胞系又は原核細胞系においてキメラ抗体分子を発現する。ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4又はその変異体の重鎖定常領域から選ばれてもよく、好ましくはヒトIgG2又はIgG4重鎖定常領域を含み、又はアミノ酸変異した後にADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、抗体依存性の細胞仲介性の細胞傷害作用)毒性のないIgG1を使用する。
【0085】
「ヒト化抗体(humanized antibody)」は、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)とも呼ばれ、マウスのCDR配列をヒトの抗体可変領域フレームワークに移植して産生された抗体を指す。キメラ抗体が大量のマウスタンパク質成分を持つことにより誘導された強い免疫応答反応を克服することができる。免疫原性の低下に伴う活性の低下を回避するために、上記ヒト抗体可変領域に対して最も少ない逆変異を行うことにより、活性を維持することができる。本開示に係る抗体は、親和性の成熟したヒト化抗体であってもよく、親和性の成熟した抗体の親配列(全ての配列を含む)のCDRは、少なくとも80%が相同で、例えば、90%相同である。親和性の成熟した抗体は、1つ又は複数のCDRに1つ又は複数の改変されたアミノ酸を有する抗体であり、これにより、抗体は、改変されたアミノ酸を有しない親抗体と比べてCD25に対する親和性が改善される。
【0086】
「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列の可変と定常領域を有する抗体を含む。本開示に係るヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列でコードされていないアミノ酸残基(例えば、体外のランダム又は部位特異的な変異誘発、又は体内の体細胞変異により導入された変異)を含むことができる。しかし、「ヒト抗体」は、別種の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系から誘導されたCDR配列をヒト骨格配列に移植した抗体(即ち、「ヒト化抗体」)を含まない。
【0087】
「抗原結合断片」は、単鎖抗体(即ち、全長重鎖と軽鎖)、Fab、修飾されたFab、Fab’、修飾されたFab’、F(ab’)2、Fv、Fab-Fv、Fab-dsFv、単一ドメイン抗体(例えば、VH又はVL又はVHH)、scFv、2価又は3価又は4価抗体、Bis-scFv、diabody、tribody、triabody、tetrabody及び上記の何れか1つのエピトープ結合断片を含む(例えば、Holliger and Hudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136、Adair and Lawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209-217を参照する)。これらの抗体断片を産生・調製する方法は、この分野において公知のものである(例えば、Verma et al.、1998、Journal of Immunological Methods、216、165-181を参照する)。Fab-Fv形態は、WO2009/040562に初めて開示され、そのジスルフィド結合の安定化形態であるFab-dsFvは、WO2010/035012に初めて開示された。本開示に係る抗原結合断片は、WO2005/003169、WO2005/003170とWO2005/003171に記載されたFab及びFab’断片を更に含む。多価抗体は、多重特異性、例えば、二重特異性のものを含んでもよく、又は単一特異性のものであってもよく(例えば、WO92/22583とWO05/113605参照)、後者の一例としては、WO92/22583に記載されたTri-Fab(又はTFM)である。幾つかの具体的な実施形態において、本開示に係る抗CD25抗体は、二重、多重特異性抗体をカバーする。
【0088】
「エピトープ」とは、抗原における免疫グロブリン又は抗体と特異的に結合する部位である。エピトープは、隣接するアミノ酸から、又はタンパク質の三次折畳により並列して隣接しないアミノ酸から形成されてもよい。隣接するアミノ酸から形成されたエピトープは、通常、変性溶媒に暴露された後に保持されるが、三次折畳により形成されたエピトープは通常、変性溶媒で処理された後に無くなる。エピトープは、通常、特別な空間配座で、少なくとも3~15個のアミノ酸を含む。所定の抗体により結合するエピトープを決定する方法は、この分野でよく知られているもので、免疫ブロット法と免疫沈降検出分析などを含む。エピトープの空間配座の決定方法は、この分野における技術と本明細書に記載の技術、例えば、X線結晶分析法と2次元核磁気共鳴などを含む。
【0089】
「特異的結合」、「選択的結合」とは、抗体と所定の抗原におけるエピトープとの結合を指す。通常、組換えヒトCD25又はそのエピトープを分析物として使用すると共に抗体をリガンドとして使用し、機器において表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定する場合、抗体は、約10-7 M未満又はそれ以下の平衡解離定数(KD)で所定の抗原又はそのエピトープと結合し、且つ所定の抗原又はそのエピトープに対する結合親和性が、所定の抗原(又はそのエピトープ)又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSAなど)に対する結合親和性の少なくとも2倍である。「抗原を認識する抗体」は、本明細書において「特異的に結合する抗体」と互換可能に使用されてもよい。
【0090】
「結合親和性」とは、見掛け会合定数又はKaである。Kaは解離定数(Kd)の逆数である。例えば、結合タンパク質は、特定の標的分子に対して少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10と10-11 Mの結合親和性を有してもよい。第2標的に対して、リガンドと第1標的との結合より高い親和結合は、第2標的と結合するKa(又は、それ以下の数値のKd)よりも高い第1標的と結合するKa(又は、Kdの数値)で示すことができる。このような場合に、第2標的(例えば、第2立体配座又はその類似体の同じタンパク質、或いは第2タンパク質)に対して、結合タンパク質は、第1標的に特異性(例えば、第1立体配座又はその類似体のタンパク質)を有する。結合親和性の差異(例えば、特異性又はその他に対する比較)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、50、70、80、100、500、1000又は105倍である。
【0091】
「保存的置換」は、元のアミノ酸残基と類似の特性を有する別のアミノ酸残基に置換されることを指す。例えば、リジン、アルギニンとヒスチジンは、塩基性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有し、また、アスパラギン酸とグルタミン酸は、酸性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有する。更に、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システインとトリプトファンは、電荷をもたない極性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有し、また、アラニン、バリン、ロイシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニンとメチオニンは、非極性側鎖を持つことにおいて類似の特性を有する。更に、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンとヒスチジンは、芳香族側鎖を持つことにおいて類似の特性を有する。従って、上記のような類似の特性を示す群におけるアミノ酸残基が置換される場合にも、それは特性の特定の変化を示さないことが当業者に明らかである。
【0092】
「配列相同性」又は「配列同一性」とは、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列類似性である。2つの比較される配列における位置が同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットに占められる場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置がアデニンに占められる場合、上記分子が当該位置で相同である。2つの配列間の相同性百分率は、2つの配列の共有するマッチング又は相同位置数を比較される位置数で割って100%をかける関数である。例えば、配列が最適にアラインメントされる場合、2つの配列の10個の位置に6個がマッチングし、又は相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般的には、2つの配列をアラインメントすることで最大の相同性百分率を得た場合に比較する。
【0093】
「交差反応」は、本開示の抗体の異なる種由来のCD25との結合能力を指す。例えば、ヒトCD25に結合する本開示の抗体は、別の種のCD25に結合することもできる。交差反応性は、結合測定(例えばSPR及びELISA)において精製抗原との特異的反応性、又はCD25を生理学的に発現した細胞との結合又は機能的相互作用を検出することによって測定される。交差反応性を決定する方法は、本明細書に記載されるような標準的な結合測定、例えば、表面プラズモン共鳴分析や、フローサイトメトリーを含む。
【0094】
「抑制」又は「阻害」は交換可能に使用されてもよく、部分的と完全な抑制/阻害の両方をカバーする。CD25に対する抑制/阻害は、抑制や阻害のない場合にCD25の結合が発生される時に活性が現れる正常なレベル又は種類を低減又は変更することが好ましい。抑制と阻害は、抗CD25抗体と接触した場合、抗CD25抗体と接触していないCD25に比べて、任意の測定可能なCD25結合親和性が低減されることを含むことも意図する。
【0095】
「成長の抑制」(例えば、細胞について)は、細胞成長の何れの測定可能な低下も含むことを意図する。
【0096】
抗体及び抗原結合断片の製造・精製方法は、従来技術でよく知られており、且つ、例えば冷泉港の抗体実験技術マニュアル(5~8章及び15章)で見出すことができる。例えば、ヒトCD25又はその断片をマウスに免疫することができ、得られた抗体は復元、精製されることができると共に、通常の方法によりアミノ酸シークエンシングを行うことができる。抗原結合断片は、同じく通常の方法により調製することができる。発明に記載の抗体又は抗原結合断片は、遺伝子工学的方法により、非ヒト由来のCDR領域に1つ又は複数のヒトFR領域を追加したものである。ヒトFR生殖細胞系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)のホームページであるhttp://imgt.cines.frから取得可能であり、又は免疫グロブリン雑誌、2001ISBN012441351から得ることができる。
【0097】
本開示に係る抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、異種、同種異系、同系又はその修飾された形態であってもよく、そのうち、モノクローナル抗体は、特に複数の実施例に適用される。一般的に、本開示に係る抗体は組換え抗体である。本明細書に使用される「組換え」は、例えば細胞又は核酸、タンパク質又はベクターなどの製品を広義に指し、上記細胞、核酸、タンパク質又はベクターが既にヘテロ核酸又はタンパク質を導入したり、天然の核酸又はタンパク質を改変したりすることで修飾され、又は上記細胞がこのように修飾された細胞に由来することを表す。例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)細胞形態に存在しない遺伝子を発現するか、又は元々異常に発現され、低く発現され又は完全に発現されていない天然遺伝子を発現する。
【0098】
「モノクローナル抗体」又は「単クローン抗体」は、単一のクローン細胞株から得られた抗体を指し、上記の細胞株は真核の、原核の又はファージのクローン細胞株に限定されない。モノクローナル抗体又は抗原結合断片は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術(例えば、CDR-グラフト)、又は他の従来技術により組換えて得ることができる。
【0099】
本開示に係る抗体又は抗原結合断片は、従来の方法により調製及び精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローニングして発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。哺乳動物発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒト抗原に特異的に結合する抗体を発現することによって安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を製造する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製して収集することができる。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに例えば、-70℃で冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0100】
当業者に知られている従来の技術により、同じエピトープに対する結合から抗体を競合的にスクリーニングすることができる。例えば、競合及び交差競合研究を行うことにより、互いに競合したり、交差競合したりして抗原と結合する抗体を得ることができる。それらの交差競合によって同じエピトープと結合する抗体を得るハイスループット方法は、国際特許公開WO03/48731に記載されている。従って、当業者に知られている通常の技術により、本開示に係る抗体分子と競合してCD25における同じエピトープに結合する抗体及びその抗原結合断片を得ることができる。ここで、WO2018167104における抗体の競合的結合を検出する方法が全文に組み込まれている。
【0101】
「与える」、「投与」及び「処理」は動物、ヒト、実験の対象、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物と、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官や生物流体との接触を意味する。「与える」、「投与」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬と細胞との接触、及び試薬と流体との接触を含み、そのうち、上記流体は細胞と接触する。「与える」、「投与」及び「処理」は、また、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0102】
「治療」は、対象に内用又は外用の治療剤、例えば、本開示の何れか1つの抗体又はその抗原結合断片、又はその複合体を含む組成物を投与することを意味し、上記対象は、1つ又は複数の疾患又はその症状を患っており、患っている恐れがあり、又は患う傾向がある者であるが、上記治療剤は、これらの症状に対して治療作用を有することが知られている。通常、このような症状の退行を誘導することによるにせよ、臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこのような症状を抑制することによるにせよ、治療される対象又は集団に、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を投与する。任意の具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、対象の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の対象に必要な治療効果を発生させる能力などの複数の要因によって、変化することができる。当該症状の重症度や進行状況を評価するために医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる何れの臨床的検出方法によっても、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、ある対象における目標疾患症状の緩和において無効であり得るが、この分野で知られている何れかの統計学的検定方法、例えば、Student t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定によると、それは、統計学的に有意な数の対象において目標疾患症状を軽減できることが確認された。
【0103】
本明細書に使用される「がんの治療」という用語は下記のことを含む:(a)がんを抑制し、即ち、その進行を阻止することであって、がんの進行を阻害又は遅延すること、がんの転移を阻害又は遅延することを含むが、これらに限定されず、及び/又は(b)がんを緩和し、即ち、がんの消退を引き起こすことであって、上記がんに関連する1つ又は複数の症状を軽減又は緩和すること、転移されたがんを軽減又は緩和すること、及び/又は腫瘍を縮小又は除去することを含むが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書の「予防」は、がんの症状の発症を遅延又は予防することを指す。予防は、絶対的なこと(それで疾患が発生されない)であり、又はある個体若しくは限られた時間だけにおいて有効である可能性がある。
【0105】
「有効量」は、医学病状の症状又は病状の改善又は予防に十分な量を含む。有効量は、更に、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の対象又は獣医学的対象に使用される有効量は、例えば、治療すべき病状、対象の全体的体調、投与の方法や経路と用量、及び副作用の重症度といった要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を回避する最大用量又は投与計画であってもよい。
【0106】
「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」は、互換可能に使用されてもよく、このような名称は何れもそれらの子孫を含む。また、意図する又は意図しない変異のために、あらゆる子孫は、DNA含有量で精確に同じであることがあり得ないと理解すべきである。最初の形質転換細胞からスクリーニングされたものと同様の機能又は生物学的活性を有する変異子孫が含まれる。
【0107】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、必ずしもそうとは限らないことを意味し、当該表現には当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしもその必要がないことを意味する。
【0108】
「医薬組成物」とは、1種又は複数種の本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片又はその生理学的に/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと他の化学成分の混合物と、生理学的に/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤などの他の成分と、を含むことを意味する。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物活性を発揮するためのものである。
【0109】
「腫瘍」は、腫瘍に罹患していると診断され、又は罹患している可能性のある対象に適用され、がんは、任意の大きさの悪性又は潜在的に悪性の新生物や組織瘤腫を指し、原発性腫瘍と二次性新生物を含む。「がん」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍」及び「癌」は、本明細書において互換可能に使用されてもよく、相対的な異常を示し、制御されない及び/又は自己成長している腫瘍と腫瘍細胞を指すため、それらは、細胞増殖が明らかに制御できなくなることを特徴とする異常成長表現型を示している。通常、検出又は治療するための細胞は、前がん(例えば、良性)、悪性、転移前、転移と非転移細胞を含む。「固形腫瘍」は、組織の異常成長又は瘤腫であり、通常、嚢胞又は液体領域を含まず、特に白血病や非固形リンパ腫を除いた腫瘍及び/又は転移である(どこにあってもよい)。固形腫瘍は良性でも悪性でもよい。様々な固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類及び/又はそれらの存在する組織又は器官で命名される。固形腫瘍の実例は、肉腫(組織、例えば、海綿質骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、造血細胞又は線維性結合組織中の間葉に由来する形質転換細胞によるがんを含む)、がん(上皮細胞による腫瘍を含む)、黒色腫、リンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫と網膜芽細胞腫を含むが、これらに限定されない。
【0110】
具体的な説明のない限り、本明細書に使用される「1種」(a)及び「1つ」(an)という冠詞は、1個以上(即ち、少なくとも1個/種)の上記冠詞の文法的対象を指す。例えば、「1種の要素」とは、1個以上の要素である。
【実施例
【0111】
以下、実施例と合わせて更に説明するが、これらの実施例は、本開示の範囲を限定するものではない。
【0112】
実施例又は試験例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に通常の条件、或いは原料又は商品メーカーにより推奨された条件に従う。Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、冷泉港実験室、及び現代分子生物学方法、Ausubelら著、Greene出版協会、Wiley Interscience、NYが参照される。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販の一般的な試薬である。
【0113】
実施例1.組換えCD25タンパク質の活性の検出
組換えヒトCD25-Fc融合タンパク質(ACRO Biosystemsから購入)は、ヒトIgG1 Fcタグタンパク質をヒトCD25タンパク質(GenBank、登録番号:NP_000408.1)のC末端に融合したものである。組換えヒトCD25-Hisタンパク質(北京義翹神州から購入)は、複数群のアミノ酸タグをヒトCD25タンパク質(GenBank、登録番号:NP_000408.1)Met1-Cys213のC末端に融合したものである。組換えサルCD25-Hisタンパク質(北京義翹神州から購入)は、HisタグをサルCD25タンパク質(GenBank、登録番号:NP_001270633.1)Met1-Arg213のC末端に融合したものである。組換えマウスCD25-Hisタンパク質(北京義翹神州から購入)は、HisタグをマウスCD25タンパク質(GenBank、登録番号:NP_032393.3)Met1-Lys236のC末端に融合したものである。抗CD25抗体DAC(Efalizumab、ダクリズマブ)により、購入された組換えタンパク質に対して活性検証などの一連の品質管理検出を行った。
【0114】
ELISA(酵素結合免疫吸着実験)により組換えタンパク質の活性を検証した。具体的に、PBSで組換えヒトCD25-Fc融合タンパク質、ヒトCD25-Hisタンパク質、サルCD25-Hisタンパク質、マウスCD25-Hisタンパク質をそれぞれ1 μg/mLに希釈し、1ウェル100 μLでELISAマイクロプレートに入れ、4℃で一晩インキュベートし、ELISAブロッキング液(1%のBSA(w/v)含有、pH7.4のPBSリン酸塩緩衝液)を加え、37℃で2時間ブロッキングした後、勾配希釈された検出抗体DACと7D4(抗マウスCD25抗体)を順に加え、37℃で1時間インキュベートし、プレート洗浄液でプレートを2~3回洗浄し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識(HRP)の二次抗体を加え、37℃で1時間インキュベートし、プレート洗浄液でプレートを2~3回洗浄した。TMB基質をそれぞれのウェルに100 μL加え、室温で15分間インキュベートした後、それぞれのウェルに50 μLの停止液(2 M HCl)を加えた。ELISAプレートリーダー(SpectraMax M5e)でOD450 nm値を読み取り、その結果は図1Aと1Bに示される通りである。
【0115】
その結果、2種の組換えヒトCD25タンパク質、組換えサルCD25-Hisタンパク質は何れもDACと結合可能であり、且つ検出シグナルが検出抗体の濃度によって変化され、組換えマウスCD25-Hisタンパク質はDACと結合することができないが、7D4と結合可能であることが示されており、上記組換えCD25タンパク質は何れも活性を持つことが証明される。
【0116】
実施例2.組換えヒトCD25タンパク質を発現した安定細胞株の作製
組換えヒトCD25タンパク質をコードするプラスミドでCHO-K1細胞をトランスフェクションした後、スクリーニングにより組換えヒトCD25タンパク質を安定的に発現した細胞株を得た。ヒトCD25をコードするヌクレオチド配列は、クローニングされてpCDNA3.4ベクター(Invitrogenから購入)に連結されてプラスミドを調製した。Lipofectamine 2000でCHO-K1細胞系(何れもInvitrogenから購入)をトランスフェクションし、G418を含むCD-CHO培地で2週間選択的に培養し、有限希釈法により96ウェル培養プレートにおいてサブクローニングし、37℃で5%のCO(v/v)を含むインキュベーターに入れて培養し、2週間後に一部のモノクローナルウェルを24ウェルプレート内に増幅してから、6ウェルプレートに増幅して培養した。増幅されたクローンに対してフロー分析法により検出とスクリーニングを行った。図2の結果から、スクリーニングされた細胞株2F8は、ヒトCD25タンパク質を安定的に発現することができることを示している。
【0117】
実施例3.検出抗体に対する機能検証
DAC、7G7B6、Tab06、7D4は何れも抗CD25抗体である。DACの配列はUS5530101においてリストされており、当該特許は参照により本開示に組み込まれている。7G7B6は、放射性核種にCD25を発現したリンパ腫を狙わせる標的部分として提案された(Zhang et al、2009、Cancer Biother Radiopharm 24(3)、303-309)。Tab06は、IL-2とCD25の結合を抑制しない抗CD25抗体であり、配列がWO2018167104においてリストされている(当該特許の配列27と29)、当該特許は参照により本開示に組み込まれている。7D4はラットIgM抗マウスCD25抗体であり、PC61の存在下又はPC61による治療後又は類似の結合特性を持つ抗体の存在下で、7D4は既にCD25陽性細胞の検出に広く適用されている(Malek、1983、Immunology、Vol.80、pp.5694-5698、Onizuka S et al.、1999.Canc Res.59、3128-3133)。
【0118】
FACSにより検出抗体DAC、7G7B6、Tab06、7D4に対して機能検証を行った。具体的に、対数増殖期のSU-DHL-1細胞、CHO-K1細胞、及びヒトCD25を安定的に発現したCHO-K1細胞(CHO-K1-CD25細胞)を遠心分離で収集し、PBSで洗浄した後、200 gで5分間遠心分離した。2×10個の細胞数を含む培養液100 μLをプレートに播種し、400 gで5分間遠心分離した後に検出抗体(100 nM、勾配希釈)を加え、そのうち、対照群抗体はヒトIgGアイソタイプである。氷上で1 hインキュベートし、PBSにより不要の抗体を洗い流し、400 gで5分間遠心分離した。二次抗体Alexa Fluor 488ヤギ抗ヒト(Fc)抗体(Life Technologyから購入、製品番号A11013)を加えて氷浴で1時間染色し、PBSにより不要の抗体を洗い流し、400 gで5分間遠心分離した。それぞれのウェルに200 μLのフロー検出液を加えた後、マシンにかけて検出した。
【0119】
図3A~3Cに示されるように、Su-DHL-1細胞及びヒトCD25を安定的に発現したCHO-K1細胞(CHO-K1-CD25細胞)(即ち、モノクローナル2F8)との結合実験において、DACのシグナルは最も強く、Tab06はその次、7G7B6のシグナルは最も弱く、3つの抗体は何れも、Su-DHL-1細胞及びヒトCD25を安定的に発現したCHO-K1細胞と結合可能であるが、何れもCHO-K1細胞とは結合しない。
【0120】
7G7B6及びTab06に対してELISAにより機能検証を行った。具体的に、PBSで組換えヒトCD25-Hisタンパク質、組換えサルCD25-Hisタンパク質及び組換えマウスCD25-hisタンパク質を1 μg/mLに希釈し、1ウェル100 μLでELISAマイクロプレートに入れ、4℃で一晩インキュベートし、ELISAブロッキング液(1%のBSA含有、pH7.4のPBSリン酸緩衝液)を加え、37℃で2時間ブロッキングした後、順に勾配希釈された検出抗体をそれぞれ加え、37℃で1時間インキュベートし、プレート洗浄液でプレートを2~3回し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ標識(HRP)の二次抗体を加え、37℃で1時間インキュベートし、プレート洗浄液でプレートを2~3回洗浄した。それぞれのウェルにTMB基質100 μLを加え、室温で15分間インキュベートした後、それぞれのウェルに50 μLの停止液(2 MのHCl)を加え、OD450 nm値を読み取った。
【0121】
図4A~4Cに示されるように、7G7B6及びTab06は、それぞれヒトCD25タンパク質及びサルCD25タンパク質と結合可能であることで、7G7B6及びTab06はヒトサル交差反応活性を持つことが示され、7D4は、マウスCD25タンパク質と結合可能であることで、7D4はマウスCD25タンパク質との結合活性を持つことが示される。
【0122】
実施例4.組換えCD25タンパク質のマウスへの免疫によるマウス抗CD25モノクローナル抗体の取得
組換えヒトCD25-Fcを免疫原として6~8週齢のBalb/cとSJL/Jマウスに免疫し、組換えヒトCD25-Hisを免疫原としてSJL/Jマウスに免疫した。初回の免疫用量は、1匹のマウスあたり50 μgである。初回免疫後の2週間に、追加免疫を行い、免疫用量は、1匹のマウスあたり25 μgである。その後、3週間おきに1回追加免疫した。
【0123】
毎回の追加免疫後の1週間に血清試料を採取し、ELISAによりマウス血清中の抗体活性を検出した。1 μg/mLの組換えヒトCD25-Hisでプレートを被覆し、4℃で一晩置き、1%のBSA含有のPBST緩衝液により1時間ブロッキングし、プレートを3回洗浄した。ブロッキング緩衝液において1:100を始めとして、マウスの血清を10倍勾配希釈し、37℃で1時間インキュベートし、プレートを3回洗浄し、抗マウスIgG-Fc-HRPの二次抗体と共に1時間インキュベートした。PBSTで3回洗浄し、それぞれのウェルに100 μLのTMB基質を加え、15分間後に2 MのHClで反応を中止した。マイクロプレートリーダーにより450 nmでの吸光度を読み取った。免疫原である組換えヒトCD25-Fcで免疫されたマウス血清は、免疫原への結合度が異なり、血清の最高希釈倍数が1:10である場合にも、抗原抗体反応を示すことができる。
【0124】
最終回の免疫で100 μgの組換えヒトCD25-Fcと組換えヒトCD25-Hisを腹腔内注射し、5日間後にマウスを殺した後、脾臓を取り、粉砕して脾細胞を収集した。最終濃度が1%(w/w)のNHOHを加えて脾細胞中に混在する赤血球を溶解し、脾細胞懸濁液を得て、1000回転数で遠心分離して細胞を3回洗浄した。生細胞数5:1の比率でマウスの脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞SP2/0を混合し、高効率電気融合方法により細胞融合を行った。20%のウシ胎児血清、1×HAT(w/w)含有のDMEM培地により融合された細胞を96ウェル細胞培養プレートに希釈し、1ウェル200 μLで合計1×10個の細胞を、5%(v/v)のCOの37℃インキュベーターに置いた。14日間後、ELISAで融合された細胞をスクリーニングし、OD450 nm>1.0の陽性クローンを24ウェル細胞プレートに増幅し、37℃、5%(v/v)のCO条件下で、10%(w/w)のHTウシ胎児血清を含むDMEM培地で拡大培養を続けた。3日間後、24ウェル細胞プレート培養液を取って遠心分離して上清を収集し、ELISA、FACSにより組換えヒトCD25タンパク質とCD25陽性細胞への結合活性を確定した。2ラウンドの単クローン化を行い、且つ上記ELISA検出方法とフロー検出方法により優れたモノクローナル株をスクリーニングした。抗体のシークエンシングされたアミノ酸配列は表1に示されており、下線部は相補性決定領域CDR配列(Kabat番号付けシステムで)である。
【0125】
【表1-1】


【表1-2】


【表1-3】


【0126】
実施例5.組換えキメラ型抗CD25抗体の調製及びヒト化プロセス
キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体の定常領域を置換することにより、組換えキメラ型抗体が得られ、そしてマウスモノクローナル抗体可変領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒト重、軽鎖定常領域(Human IgG1、kappa)をコードするタンパク質配列を含むpTT5ベクターにクローニングした後、HEK293細胞をトランスフェクションし、つまり、得られたキメラ抗体の重鎖、軽鎖可変領域がそれぞれマウス抗体の重鎖、軽鎖可変領域と同様である。ヒト化抗体は、相同モデル化によりマウスモノクローナル抗体の構造を予測した後、マウス抗CDRを適当なヒトGermLineフレームワークに嵌合し(Bioinformation.2014、10(4):180-186、Methods Mol Biol.2019、1904:213-230)、そして抗体-抗原結合に影響を与え得る部位で復帰変異を導入し、最後にヒト化モノクローナル抗体の可変領域をコードするヌクレオチド配列を、ヒト重、軽鎖定常領域(Human IgG1、kappa)をコードするタンパク質配列を含むpTT5ベクターにクローニングした後、HEK293細胞をトランスフェクションした。5日間後、遠心分離して細胞を除去し、細胞培養液を収集してろ過した。pHを7.0に調整した後、取得された細胞培養液の上清液をタンパク質Aカラム(MabSelect SuRe、GE)にかけ、グリシンにより結合した抗体を溶離し、1 MのTrisで溶離液を中和した。
【0127】
抗体可変領域フレームワークの選択は表2に示され、抗体可変領域配列は表3に示され、重鎖CDR(HCDR1¥HCDR2¥HCDR3)と軽鎖CDR(LCDR1¥LCDR2¥LCDR3)は表4に示され、抗体アミノ酸配列全長は表5に示されている。ここで、PR006はcAb006のヒト化の抗体、PR071はcAb037のヒト化抗体、PR031はcAb042のヒト化抗体、PR058、PR157はcAb046のヒト化抗体である。
【0128】
【表2】

【0129】
【表3-1】


【表3-2】

【0130】
【表4-1】

【表4-2】


【0131】
【表5-1】


【表5-2】


【表5-3】

【0132】
実施例6.キメラ型抗CD25抗体のヒト(human)とカニクイザル(cyno)CD25タンパク質への親和性の検出
ELISA方法によりキメラ型抗CD25抗体のCD25組換えタンパク質との結合活性を検出した。1 g/mLのヒトCD25-His/サルCD25-His濃度で、1ウェル50 μLで96ウェルプレートを被覆した。洗浄液で未結合抗原を洗い流した(洗浄液:1×PBST)。洗浄後、1×PBSTで調製された1%のBSAブロッキング液により37℃で1時間ブロッキングした。洗浄液でプレートを3回洗浄した後、異なる希釈濃度の検出待ちのキメラ抗体を加え、37℃でインキュベーターで1時間インキュベートした。洗浄液でプレートを3回洗浄した後、1:5000で希釈されたヤギ抗ヒトIgG二次抗体100 μLを加え、37℃でインキュベーターで0.5時間インキュベートしてプレートを洗浄した後、TMB発色液であるA液及びB液を取って1:1の割合で混合した後、発色させた。15分間を経て1 Mの塩酸で発色反応を中止し、450 nmの蛍光値を検出した。その結果、検出されるキメラ型抗CD25抗体は、何れもヒト及びサルのCD25タンパク質と結合可能であることが示され、ELISAにより検出された半有効濃度(EC50)は表6と表7に示されている。
【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
実施例7.キメラ型抗CD25抗体のSU-DHL-1細胞との結合
リンパ腫細胞系SU-DHL-1がCD25を高発現しているため、フローサイトメトリーによりキメラ型抗CD25抗体のSU-DHL-1細胞との結合を検出した。対数増殖期のSU-DHL-1細胞を選択し、細胞を収集し、PBSで洗浄した後に遠心分離した。それぞれのウェルに100 μLの2×10個の細胞をプレートに播種し、400 gで5分間遠心分離した。様々な濃度の検出待ちの抗体を加え、氷上で1 hインキュベートした後、PBSで洗浄し、400 gで5 min遠心分離した。蛍光基を持つヤギ抗ヒト二次抗体Alexa Fluor 488を加え、氷浴で1 h染色し、PBSで洗浄した後にマシンにかけて検出した。図5A~5Cに示されるように、検出される本開示に係るキメラ型抗CD25抗体は、何れもSU-DHL-1細胞と結合可能である。表8は結合のEC50値である。
【0136】
【表8】

【0137】
実施例8.キメラ型抗CD25抗体のTreg細胞/活性化されたCD4T細胞/CD8T細胞との結合
CD25は、活性化されたTregにおいても、活性化されたエフェクターT細胞においても発現されるため、本開示に係る抗CD25抗体の、Treg及びCD4とCD8エフェクターT細胞に発現されるCD25に対する結合に差異があるか否かを検出するために、以下、FACSの方法により抗体のTreg及び活性化されたエフェクターT細胞への結合能力を比較した。
【0138】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を取り、磁気ビーズ法で天然CD4細胞を分離抽出し、Tregを誘導する培地((AIM V+10%のFBS+human IL-2(400 U/mL)+Rapamycin (0.1 g/mL)又はTGFβ (20 ng/mL)+atRA(200 nM))を加えると共に、抗CD3/CD28抗体で被覆された磁気ビーズを加えた。培養中に細胞密度を2×10/mLに維持し、37℃、5%のCOの条件下で培養した。7日間培養した後、Dynabeads(商標) ReguLatory CD4/CD25 T Cell Kit(Thermo Fisher、11363D)により細胞を分離して活性化型のCD4CD25Treg細胞を得て、FOXP3陽性率が90%よりも大きいTreg細胞を得た。
【0139】
新鮮なPBMCにおいて、それぞれCD4細胞ネガティブスクリーニング濃縮キット細胞及びCD8T細胞スクリーニングキットにより濃縮し、分離して純度が90%よりも大きい高純度のCD4とCD8エフェクターT細胞を得た。また、抗CD3/CD28抗体で被覆された磁気ビーズを加えて細胞を活性化と増幅した。3日間後、CD25を高発現したエフェクターCD4T細胞及びエフェクターCD8T細胞を得た。
【0140】
体外で誘導されたTreg細胞及び体外で活性化されたCD4とCD8エフェクターT細胞をそれぞれ様々な希釈濃度の検出待ちの抗体に入れて氷上で1 hインキュベートした後、PBSで洗浄した。更に、ヤギ抗ヒト抗体Alexa Fluor 488を加えて氷浴で1 h染色し、PBSで洗浄し、それぞれのウェルに200 μLのフロー検出液を入れて同じ条件下で同時にマシンにかけて検出した。
【0141】
その結果、図6A~6Gに示されるように、何れの検出されたキメラ抗体も、Treg細胞、活性化されたCD4とCD8エフェクターT細胞におけるCD25抗原と結合可能である。しかし、結合度から言えば、Tregとの結合力はCD4T細胞との結合よりはるかに大きく、且つCD4T細胞との結合はCD8T細胞との結合よりやや大きい。
【0142】
実施例9.キメラ型抗CD25抗体によるIL-2と受容体の結合能力への影響
対数増殖期のSU-DHL-1細胞と200 nMのIL-2-biotin及び様々な濃度の検出待ちのキメラ型抗CD25抗体を収集し、4℃で1 hインキュベートした後、PBSで細胞を1回洗浄した。Alexa Fluor 488 Streptavidin(1:1000)を加えて4℃で1 hインキュベートし、PBSで不要の二次抗体を除去し、FACSで蛍光細胞を検出した。抗体がIL-2とCD25の結合に影響を与えると、蛍光強度は弱くなる。
【0143】
下記の式で抑制率を算出した:
抑制率%=100×(抗体が加えられていない時の最大結合蛍光強度-抗体結合後の蛍光強度)/抗体が加えられていない時の結合強度。
【0144】
その結果、図7A~7Bに示されるように、DAC、cAb001、cAb002、cAb028、cAb029はIL-2とSU-DHL-1の結合を異なる程度で抑制していることで、上記のキメラ型抗体によりIL-2シグナル伝達経路が抑制されることが示唆されるのに対し、cAb006、cAb037、cAb042、cAb046はTab006と同様にIL-2とSU-DHL-1の結合を抑制しないことで、上記のキメラ型抗体は非拮抗型抗体に属することが示唆される。
【0145】
実施例10.ヒト化抗CD25抗体のSUDH-L1の細胞との結合
実施例7のフローサイトメトリー方法によりキメラ型抗CD25抗体のSU-DHL-1細胞との結合を検出した。図8は、本開示に係るヒト化抗CD25抗体RP006、PR031、PR058及びPR071が何れも良好なSU-DHL-1結合活性を持つことを示している。
【0146】
実施例11.ヒト化抗CD25抗体のヒト末梢血Tリンパ球pStat5シグナル伝達経路への影響
CD25は、IL-2サイトカイン受容体のα鎖として、β及びγ鎖と合わせて高親和性の受容体を形成した後、IL-2と結合してから、下流JAK-STAT、PI3K-AKTとMAPKシグナル伝達経路を活性化するので、IL-2によるPBMCにおけるSTAT-5のリン酸化のアップレギュレーションに対するキメラ型抗体の作用を更に検出した。
【0147】
凍結保存されたPBMCを蘇生し、ヒト化抗CD25抗体とPBMCを共にインキュベートした(37℃で、5%のCO)。30分間後、それぞれ100 U/mLのIL-2を加えて10分間誘導した。活性化されたPBMCを固定し、それぞれのウェルに200 μLの染色液(2%のFBS含有のPBS)を入れて5 μLのV450マウス抗ヒトCD3標識T細胞を加え、未結合の抗体を洗い流した後、300 μLの予冷膜透過剤Perm Buffer IIIを加え、ボルテックスで均一に混合し、30分間氷浴した。更に、Alexa Fluor(登録商標) 647マウス抗Stat5で60分間染色した。不要の抗体を除去し、フローサイトメーターにより検出した。
【0148】
図9に示されるように、DACは、IL-2により誘導されたCD3細胞内のStat5のリン酸化を明らかに抑制可能であるが、Tab06は、IL-2により誘導されたStat5のリン酸化を抑制することができない。PR006は300 nMと100 nMでStat5のリン酸化を弱く抑制することができるが、PR031、PR058、PR071はIL-2仲介性のStat5のリン酸化を抑制しない。
【0149】
実施例12.ヒト化抗CD25抗体により仲介されるSU-DHL-1細胞へのADCC作用
抗体仲介性細胞傷害(ADCC)は抗体治療の重要な機能の一つであり、ADCCの活性によりCD25を高発現したTreg細胞を傷害して腫瘍免疫を活性化する作用を達成することが求められており、以下、本開示に係るヒト化抗CD25抗体仲介性ADCCの活性を検出した。
【0150】
ADCCレポーター遺伝子細胞(Promega社のG7010 ADCC Bioassay Effector Cells)を使用してSU-DHL-1細胞と1:1の割合で混合し、様々な濃度の抗体を加えて6時間インキュベートした後、細胞蛍光活性を検出し、図10及び表9から、PR006、PR031、PR058及びPR071は何れも良好なADCC活性を持ち、そのうち、PR058、PR071の活性は抗体686よりも明らかに強いことが分かる。
【0151】
抗体686配列は、US20190284287Aの配列5、配列9を参照する。
【0152】
【表9】

【0153】
実施例13.ヒト化抗CD25抗体により仲介されたhCD25マウスのMC38移植腫瘍モデルに対する抗腫瘍活性
B-hIL2RAヒト化マウスのMC38結腸がんマウスモデルにおいてヒト化抗CD25抗体の抗腫瘍活性を評価した。上記PR058、686の可変領域をマウスIgG2aに連結してPR058 mIgG2a、686 mIgG2a抗体を構築し、動物実験に用いた。
【0154】
PBSで再懸濁されたMC38結腸がん細胞を5×10個/0.1 mLの濃度、0.1 mL/匹の体積でB-hIL2RAヒト化マウスの右側皮下に接種した。平均腫瘍体積が約113 mmに達する場合、個体の腫瘍体積が適当なマウス48匹を選択してランダムに群分けして、1群あたり8匹で、それぞれG1アイソタイプmIgG2a(3 mg/kg)対照群、G2 PR058 mIgG2a(3 mg/kg)群、G3 686 mIgG2a(3 mg/kg)群である合計6群であった。あらゆる群の投与経路は何れも腹腔内注射であり、1週1回投与し、3回連続投与し、最終回投与後の7日に実験を終了させた。腫瘍体積及び体重を週2回計測し、マウスの体重及び腫瘍体積を記録した。実験終了時に、動物を安楽死させ、腫瘍を剥ぎ取って秤量し、写真を撮り、相対腫瘍抑制率(TGI%)を算出した。
【0155】
研究の結果として、図11Aに示されるように、PR058は3 mg/kgの用量レベルで、MC38皮下移植腫瘍の成長に対して最も優れた抑制作用を有し、686よりも優れている。図11Bは、実験動物の投与期間における活動と摂食状態が良好で、実験動物の体重が何れもある程度向上していることを示し、被験薬は実験動物に顕著な毒性作用を果たせず、安全性が良いことが明らかになる。図12A図12Bの腫瘍内リンパ球の分析結果に示されるように、PR058は、Tregの傷害及びCD3数のアップレギュレーションをより強く仲介することができる。ここで、*はp<0.05で、mIgG2a群と比べて統計学的に差異があることを示し、**はp<0.01で、mIgG2a群と比べて統計学的に有意な差異があることを示し、***はp<0.001で、mIgG2a群と比べて統計学的に極めて有意な差異があることを示し、nsは、mIgG2a群と比べて統計学的に差異がないことを示す。
【0156】
以上、本開示の具体的な実施形態を説明したが、当業者であれば、これらは例示的な説明に過ぎず、本発明の原理及び主旨から逸脱しない限り、これらの実施形態に種々の変更や修正を行うことができると理解すべきである。従って、本開示の請求範囲は、添付される特許請求の範囲によって限定される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
【配列表】
2023525060000001.app
【国際調査報告】