(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】遊離アミノ酸及び遊離チロシンの含有量が高いケラチン加水分解物、これを製造するための方法及び動物飼料及び植物栄養素としての使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20230607BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20230607BHJP
A23K 10/26 20160101ALI20230607BHJP
C07K 1/12 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C07K14/78
A01G7/06 A
A23K10/26
C07K1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567622
(86)(22)【出願日】2021-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021061812
(87)【国際公開番号】W WO2021224310
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520064643
【氏名又は名称】ブルターニュ シミ フィヌ
【氏名又は名称原語表記】BRETAGNE CHIMIE FINE
【住所又は居所原語表記】BOISEL,56140 PLEUCADEUC,France
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ブロイン エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュプレイ ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】スーラード ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲラート ルノー
【テーマコード(参考)】
2B022
2B150
4H045
【Fターム(参考)】
2B022EA10
2B022EB10
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2B150AA07
2B150AB03
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2B150DD01
4H045AA20
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4H045CA50
4H045EA05
4H045EA07
4H045FA16
4H045GA05
(57)【要約】
本発明は、加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%、好ましくは少なくとも90重量%の遊離アミノ酸を含み、加水分解物の遊離アミノ酸の総重量に対して2~4重量%、好ましくは2.5~3.5重量%の遊離チロシンを含むケラチン加水分解物、及び特に酸加水分解、pH調整及び脱塩のステップからなる加水分解物の調製方法に関する。本発明はまた、特にペットフード、養殖用飼料、及び植物のバイオスティミュラントのための加水分解物の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン加水分解物であって、
前記加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%、好ましくは少なくとも90重量%の遊離アミノ酸を含み、
前記加水分解物は遊離アミノ酸の総重量に対して2~4重量%、好ましくは2.5~3.5重量%の遊離チロシンを含有する、
ことを特徴とするケラチン加水分解物。
【請求項2】
前記加水分解物中のシスチンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも93重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の遊離形態のシスチンを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のケラチン加水分解物。
【請求項3】
脱塩されていること、すなわち加水分解物の総重量に対して11重量%未満、好ましくは7重量%未満の塩を含み、塩は塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム及びリン酸カリウムから選ばれ、好ましくは塩化ナトリウムである、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のケラチン加水分解物。
【請求項4】
下記の遊離アミノ酸を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のケラチン加水分解物:
加水分解物中のアスパラギン酸の総重量に対して、少なくとも95重量%、好ましくは100重量%の、遊離形態のアスパラギン酸;
加水分解物中のスレオニンの総重量に対して、少なくとも95重量%、好ましくは100重量%の、遊離形態のスレオニン;
加水分解物中のセリンの総重量に対して、少なくとも95重量%、好ましくは100重量%の、遊離形態のセリン
加水分解物中のグルタミン酸の総重量に対して、少なくとも93重量%、好ましくは95重量%以上の、遊離形態のグルタミン酸;
加水分解物中のグリシンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは93重量%以上の、遊離形態のグリシン;
加水分解物中のアラニンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは93重量%以上の、遊離形態のアラニン;
加水分解物中のフェニルアラニンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは93重量%以上の、遊離形態のフェニルアラニン;
加水分解物中のプロリンの総重量に対して、少なくとも93重量%、好ましくは95重量%以上の、遊離形態のプロリン。
【請求項5】
17種のアミノ酸を含むケラチン材料から得られる請求項1~4のいずれか1項に記載のケラチン加水分解物であって、
アミノ酸のそれぞれについて、加水分解物中の遊離アミンの重量と出発ケラチン材料中のこれらのアミノ酸の重量との間の割合の変動の絶対値が20%未満であり、好ましくはこれらのアミノ酸のうち15種類について、前記変動の絶対値が10%未満である、
ケラチン加水分解物。
【請求項6】
加水分解物の遊離アミノ酸の総重量に対する重量比で、以下の遊離アミノ酸を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の加水分解物:
6.00~10.00重量%、好ましくは7.00~9.00重量%、より好ましくは7.83重量%のアスパラギン酸;
3.00~7.00重量%、好ましくは4.00~6.00重量%、より好ましくは4.93重量%のスレオニン;
11.00~15.00重量%、好ましくは12.00~14.00重量%、より好ましくは12.88重量%のセリン;
8.50~12.50重量%、好ましくは9.50~11.50重量%、より好ましくは10.47重量%のグルタミン酸;
6.50~10.50重量%、好ましくは7.50~9.50重量%、より好ましくは8.56重量%のグリシン;
3.00~7.00重量%、好ましくは4.00~6.00重量%、より好ましくは5.04重量%のアラニン;
3.50~7.50重量%、好ましくは4.50~6.50重量%、より好ましくは5.61重量%のバリン;
4.00~8.00重量%、好ましくは5.00~7.00重量%、より好ましくは5.80重量%のシスチン;
0.10~2.00重量%、好ましくは0.20~1.00重量%、より好ましくは0.57重量%のメチオニン;
1.50~5.50重量%、好ましくは2.50~4.50重量%、より好ましくは3.50重量%のイソロイシン;
6.00~10.00重量%、好ましくは7.00~9.00重量%、より好ましくは7.77重量%のロイシン;
2.50~3.50重量%、好ましくは3.00~3.50重量%、より好ましくは3.15重量%のチロシン;
3.00~7.00重量%、好ましくは4.00~6.00重量%、より好ましくは5.08重量%のフェニルアラニン;
0.50~3.00重量%、好ましくは1.00~2.00重量%、より好ましくは1.66重量%のリジン;
0.10~2.00重量%、好ましくは0.20~1.00重量%、より好ましくは0.74重量%のヒスチジン;
4.00~8.00重量%、好ましくは5.00~7.00重量%、より好ましくは5.82重量%のアルギニン;
8.50~12.50重量%、好ましくは9.50~11.50重量%、より好ましくは10.59重量%のプロリン。
【請求項7】
動物ケラチン材料、好ましくは家禽から、請求項1~6のいずれか1項に記載の加水分解物を製造するための方法であって、以下に示す順序で、少なくとも以下のステップを含むことを特徴とする方法:
- 加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%の遊離アミノ酸が加水分解物に含まれる条件下でケラチン材料を酸による少なくとも1回の加水分解に付し、ここで加水分解物のアミノ酸の残りは800ダルトン以下の分子量を有するペプチドの形態であり;
- 加水分解物を、pHを3から5の範囲、好ましくは4から5の範囲の値に調整するステップに付し、沈殿物と液相を回収し;
- 沈殿物と液相を分離し、好ましくは遠心分離し;
- 沈殿物を、沈殿物の全重量に対して1重量%未満の塩を含む脱塩沈殿物が得られるまで、少なくとも1回の水による洗浄に付し、一方では脱塩沈殿物を回収し、他方では洗浄水を回収し;
- この洗浄水と液相を合わせて溶液を得、この溶液を電気透析により脱塩して脱塩溶液を得て;
- 脱塩した溶液に脱塩した沈殿物を添加し;
- 脱塩して得られた懸濁液を回収する。
【請求項8】
加水分解を、100~115℃の範囲の温度で、1時間~24時間、好ましくは6~20時間の範囲の時間行う、請求項7に記載の加水分解物を製造するための方法。
【請求項9】
化学的加水分解が以下の2段階で行われる、請求項7又は8に記載の加水分解物を製造するための方法:
- 60~80℃の範囲の温度で4~5時間行われる第1の加水分解と、それに続く
- 100~115℃の範囲の温度で5~8時間行う第2の加水分解。
【請求項10】
得られた懸濁液を乾燥し、乾燥の終わりに得られた固体を回収する、請求項7~9のいずれか1項に記載の加水分解物を製造するための方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の加水分解物又は請求項7~10のいずれか1項に記載の工程に従って得られた加水分解物の、愛玩動物用飼料、養殖用飼料及び植物のバイオスティミュラントから選ばれる製品の成分としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離アミノ酸を高含有する加水分解物の分野、並びに動物飼料、特にネコ及びイヌ、養殖及び農業における、特に植物のバイオスティミュラントとしてのその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸に基づく組成物は、栄養補助食品、化粧品、植物、動物及びヒトの栄養などの様々な分野で、そしてこれらの分野のそれぞれにおいて非常に異なる特定の用途のために使用されている。この中には、ヒトの毛髪の成長や艶を目的とした用途や、動物飼料、特に養殖やイヌ・ネコの給餌において特定のタンパク質源を構成する遊離アミノ酸を供給することを目的とした用途がある。
【0003】
アミノ酸に基づく組成物を得る方法の1つは、ケラチン材料の加水分解物を製造することである。
【0004】
天然のケラチン材料は、本質的に高分子量のポリペプチドからなり、高度に架橋された構造を有するため、酵素に容易にアクセスできない。この天然ケラチン材料は、容易に消化することができない。しかし、ケラチン材料をアミノ酸に加水分解することにより、消化性が向上することが知られている。
【0005】
特に食品サプリメント、動物栄養レシピを配合するための成分、又は動物飼料の原料として販売用に提供されているケラチン加水分解物は、一般に、非常に部分的な加水分解によって得られるものである。これらの加水分解物は、一般に、ペプチド及びポリペプチドを形成するいわゆる「連結」アミノ酸の高レベルの存在に起因する高分子量を特徴とする。市販の組成物の分子量は、典型的には5.000から50.000ダルトンの範囲である。これらのケラチン加水分解物は、比較的難消化性で、遊離アミノ酸をほとんど含まない。実際、工業レベルで非常に高いレベルの遊離アミノ酸を有するケラチン加水分解物を得ることは、技術的に複雑で高価である。さらに、過度の加水分解は、アミノ酸の変性及び破壊の危険性を示す。
【0006】
特許出願WO2019/043128は、加水分解ステップの後にチロシン抽出ステップが続くプロセスを実施することによって得られる、高レベルの遊離アミノ酸を有するケラチン加水分解物を概説している。この加水分解物は、高レベルの遊離アミノ酸に係る利点、特に良好な消化性を有する。しかし、この加水分解物は、酸加水分解後に一般的に存在するすべてのアミノ酸を含んでおらず、特にシステインとチロシンのレベルが低い。それにもかかわらず、アミノ酸を追加することなく、完全でバランスのとれた食品に使用できる加水分解物を得ることは、一般に求められている特性である。
【0007】
さらに、酸加水分解のような化学的加水分解によって得られる加水分解物は塩を含んだ状態であるが、ほとんどの用途、特に動物飼料及びバイオスティミュラントにおいて、脱塩された加水分解物が必要とされる。しかし、脱塩工程では、一般に、ある種のアミノ酸、特に中和工程終了時に沈殿するアミノ酸が大量に失われることになる。実際、脱塩は濾過された溶液に対してのみ行うことができる。したがって、先行技術の方法に従って得られる加水分解物の収率は、必ずしも満足なものではない。
【発明の概要】
【0008】
驚くべきことに、そしてさらなる利点として、本発明の発明者らは、高レベルの酸遊離アミノ酸を有し、酸加水分解後に一般的に存在する全てのアミノ酸を含む脱塩ケラチン加水分解物を得ることを可能にするプロセスの実施によって、先行技術の問題を克服することに成功した。さらに、本発明に基づく加水分解物のアミノ酸プロファイルは、元のケラチン物質のアミノ酸プロファイルに近いものである。したがって、本発明に基づく加水分解物の使用は、元のケラチン材料に存在するアミノ酸のうち、付加的なアミノ酸の添加の大部分を省略ことを可能にするものである。
【0009】
本発明により得られる遊離アミノ酸、特に、バリン、ロイシン及びイソロイシンのような加水分解プロセス中に遊離形態で放出するのが最も困難なアミノ酸は、損傷又は変性されない。
【0010】
さらに、本発明によるプロセスは、プロセスの様々な段階から生じる全ての相が最大、すなわち実質的に全てのアミノ酸を抽出するように回収され処理されるので、アミノ酸の良好な収率、すなわち本発明による加水分解物のアミノ酸の合計とケラチン材料の出発点との間の良好な比を得ることが可能となる。
【0011】
本発明の対象は、加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%、好ましくは少なくとも90重量%の遊離アミノ酸を含むケラチン加水分解物であり、前記加水分解物は、加水分解物の遊離アミノ酸の総重量に対して2~4重量%、好ましくは2.5~3.5重量%の範囲の含有量で遊離チロシンからなるものである。
【0012】
有利には、前記加水分解物は、加水分解物中のシスチンの全重量に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%の遊離形態のシスチンを含む。
【0013】
好ましい実施形態において、前記加水分解物は脱塩されており、すなわち加水分解物の全重量に対して11重量%未満、好ましくは7重量%未満の塩を含み、塩は塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム及びリン酸カリウムから選択され、好ましくは塩化ナトリウムである。
【0014】
本発明の第2の目的は、動物のケラチン材料、好ましくは家禽から本発明によるケラチン加水分解物を調製するためのプロセスに関し、以下に概略的に示す順序で少なくとも以下の工程を含む:
- 加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%の遊離アミノ酸を含む加水分解物を得ることができる条件下で、ケラチン材料を酸による少なくとも1回の化学的加水分解に付し、ここで加水分解物のアミノ酸の残りは800ダルトン以下の分子量を有するペプチドの形態であり;
- 加水分解物を、pH3から5の範囲、好ましくは4から5の範囲の値に調整するステップに付し、沈殿物と液相を回収し;
- 沈殿物と液相を分離し、好ましくは遠心分離(essorage)によって行い;
- 沈殿物を、沈殿物の全重量に対して塩が1重量%未満である脱塩沈殿物が得られるまで、少なくとも1回の水による洗浄に付し、一方では脱塩沈殿物を、他方では洗浄水を回収し;。
- 洗浄水と液相を集めて溶液を得て、さらにこの溶液を電気透析で脱塩して脱塩溶液を得て;
- 前記脱塩液に脱塩した沈殿物を添加し;
- 得られた脱塩懸濁物を回収する。
【0015】
好ましい変形例では、得られた懸濁物質を乾燥し、乾燥終了時に得られた固体を回収する。
【0016】
本発明によるプロセスを実施するための手段は、単純であるという利点を有する:本発明は、リアクター(reacteurs)、遠心乾燥機(essoreuses)、及びスプレードライタワー(tours d’atomisation)のような産業において一般的に使用される手段を用いた装置で実施することが可能である。いくつかの段階を同じ装置内で実施することができ、さらに、異なる段階の収集は、顕著な問題なしに容易に実施される。
【0017】
本発明はさらに、動物飼料、特にネコ、イヌ、水産養殖又は農業におけるケラチン加水分解物の使用に関するものである。本発明は、より詳細には、愛玩動物給餌用飼料、養殖用飼料、及び植物のバイオスティミュラントから選ばれる製品の成分としての、本発明による又は本発明に従って調製された加水分解物の使用に関するものである。
【0018】
本明細書、特に実施例、及び後に続く図面は発明を網羅したものではないが、本発明の他の態様、利点、及び特性はこれらの開示によって明確にされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明によるプロセスの主要ステップと、これらの異なるステップの終了時に得られる相を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましくは、この加水分解物は、天然の、動物の、特に家禽のケラチン材料から、好ましくは家禽の羽毛から得られる。家禽といえば、鶏、特に産卵鶏、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ等を挙げることができる。天然ケラチン材料はまた、動物の毛、特に豚の剛毛、動物の蹄、動物の爪から選択されてもよい。
【0021】
特に、本発明による加水分解物は、毛髪のようなヒトケラチンから得られるものではない。
【0022】
既に述べたように、本発明による加水分解物は、加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%、好ましくは90重量%の遊離アミノ酸からなる。
【0023】
有利には、本発明による加水分解物の全アミノ酸含有量は、加水分解物の全重量に対して40%~95%、好ましくは45%~93%の範囲であり、加水分解物は更に鉱物質及び水を含む。
【0024】
さらに、本発明に基づく加水分解物は、遊離の分岐アミノ酸:未変性のバリン、ロイシン及びイソロイシンを特徴とする。しかしながら、これらの分岐アミノ酸は、同一の使用条件下で放出することがより困難であることが知られている。
【0025】
既に述べたように、本発明による加水分解物は、加水分解物中のシスチンの全重量に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%の遊離形態のシスチンを含むものである。
【0026】
好ましい変形例では、本発明による加水分解物は、以下を含む:
加水分解物中のアスパラギン酸の総重量に対して少なくとも95重量%、好ましくは100重量%の、遊離形態のアスパラギン酸;
加水分解物中のスレオニンの総重量に対して、少なくとも95重量%、好ましくは100重量%の、遊離形態のスレオニン;
加水分解物中のセリンの総重量に対して、少なくとも95重量%、好ましくは100重量%の、遊離形態のセリン;
加水分解物中のグルタミン酸の総重量に対して、少なくとも93重量%、好ましくは95重量%以上の、遊離形態のグルタミン酸;
加水分解物中のグリシンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは93重量%以上の、遊離形態のグリシン;
加水分解物中のアラニンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは93重量%以上の、遊離形態のアラニン;
加水分解物中のフェニルアラニンの総重量に対して、少なくとも90重量%、好ましくは93重量%以上の、遊離形態のフェニルアラニン;
加水分解物中のプロリンの総重量に対して、少なくとも93重量%、好ましくは95重量%以上の、遊離形態のプロリン。
【0027】
さらに、加水分解物のアミノ酸の少なくとも90重量%が、250ダルトン以下、好ましくは240ダルトン以下の分子量を特徴とする。その結果、この加水分解物を使用して、低アレルギー性、あるいは非アレルギー性の動物用完全飼料を調製することができる。
【0028】
得られた加水分解物は、有利には脱塩され、すなわち加水分解物の全重量に対して11重量%未満、好ましくは7重量%未満の塩からなり、塩は塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム及びリン酸カリウムより選ばれ、好ましくは塩化ナトリウム(NaCl)である。
【0029】
塩の割合を決定することは、当業者の能力の範囲内で行うことができる。好ましくは、塩類の割合は陰イオンの投入量によって決定される。具体的には塩化物イオンは、電位差滴定法により測定され、この時0.1N硝酸銀を使用し、その後、Ag/AgCl複合電極を使用し;リン酸イオンは、ISO 6878規格に準拠したリンモリブデン酸錯体の分光光度計により定量され、さらに硫酸塩はISO 2480: 1972に準拠したバリウム塩の添加により重量が測定される。
【0030】
陰イオンの投入量は陽イオンの投入によってさらに補充することができ、一般にナトリウムとカリウムの投入量はISO 9964-2:1993規格に基づく水素炎イオン化(ionisation de flamme)による分光光度法で測定される。
【0031】
塩(類)含量は、沈殿物の洗浄の質及び電気透析を継続する程度に依存する。要求される塩(類)含量に基づいて、これらの段階のパラメータを調整すること、特にそれらの持続時間を適合させることは、当業者の能力の範囲内である。
【0032】
本発明で定義する「乾燥加水分解物」又は「乾燥加水分解物」は、5重量%未満の水を含む加水分解物を意味する。加水分解物の水の重量は、赤外線熱天秤を使用して測定される。
【0033】
好ましくは、本発明による加水分解物は、加水分解物の遊離アミノ酸の総重量に対する重量で、以下の遊離アミノ酸を含んでいる:
6.00~10.00重量%、好ましくは7.00~9.00重量%、より好ましくは7.83重量%の範囲の含有量のアスパラギン酸;
3.00~7.00重量%、好ましくは4.00~6.00重量%、さらに好ましくは4.93重量%の範囲の含有量のスレオニン;
11.00~15.00重量%、好ましくは12.00~14.00重量%、さらに好ましくは12.88重量%の範囲の含有量のセリン;
8.50~12.50重量%、好ましくは9.50~11.50重量%、さらに好ましくは10.47重量%の範囲の含有量のグルタミン酸;
6.50~10.50重量%、好ましくは7.50~9.50重量%、さらに好ましくは8.56重量%の範囲の含有量のグリシン;
3.00から7.00重量%、好ましくは4.00から6.00重量%、さらに好ましくは5.04重量%の範囲の含有量のアラニン;
3.50~7.50重量%、好ましくは4.50~6.50重量%、さらに好ましくは5.61重量%の範囲の含量のバリン;
4.00~8.00重量%、好ましくは5.00~7.00重量%、さらに好ましくは5.80重量%の範囲の含有量のシスチン;
0.10~2.00重量%、好ましくは0.20~1.00重量%、さらに好ましくは0.57重量%の範囲の含有量のメチオニン;
1.50~5.50重量%、好ましくは2.50~4.50重量%、さらに好ましくは3.50重量%の範囲の含量のイソロイシン;
6.00から10.00重量%、好ましくは7.00から9.00重量%、さらに好ましくは7.77重量%の範囲の含有量のロイシン;
2.50~3.50重量%、好ましくは3.00~3.50重量%、より好ましくは3.15重量%の範囲の含有量のチロシン;
3.00から7.00重量%、好ましくは4.00から6.00重量%、さらに好ましくは5.08重量%の範囲の含有量のフェニルアラニン;
0.50~3.00重量%、好ましくは1.00~2.00重量%、さらに好ましくは1.66重量%の範囲の含有量のリジン;
0.10~2.00重量%、好ましくは0.20~1.00重量%、さらに好ましくは0.74重量%の範囲の含有量のヒスチジン;
4.00から8.00重量%、好ましくは5.00から7.00重量%、さらに好ましくは5.82重量%の範囲の含有量のアルギニン;
8.50~12.50%、好ましくは9.50~11.50%、さらに好ましくは10.59重量%の範囲の含有量のプロリン。
【0034】
本発明に基づくケラチン加水分解物のもう一つの利点は、そのアミノ酸プロファイルが元のケラチン材料のものに近いことである。実際、酸加水分解で破壊されたトリプトファンを除いて、元のケラチン材料中に存在する17種のアミノ酸は、最終加水分解物中にも遊離形態で現れる。
【0035】
従って、本発明に基づくケラチン加水分解物は、17種のアミノ酸からなり、アミノ酸の各々について、加水分解物中の遊離アミノ酸の重量とケラチン材料出発点におけるこのアミノ酸の重量との間の百分率変動は、絶対値で20%未満、好ましくはこれらのアミノ酸の15種類について、前記変動が絶対値で10%未満である。
【0036】
アミノ酸についての、パーセントでの変動は、ケラチン材料中のアミノ酸の重量と加水分解物中の遊離アミノ酸の重量との差の絶対値をケラチン材料中のアミノ酸の重量に100倍した比率、すなわち、以下の式に対応するものである:
(|ケラチン材料中のアミノ酸の重量-加水分解物中の遊離アミノ酸の重量|/ケラチン材料中のアミノ酸の重量)×100。
【0037】
本発明による加水分解物の別の利点は、それが非常に消化しやすいということである。また、それは食品等級と認識されるものである。本発明による加水分解物は、そのタンパク質画分の真の消化率が少なくとも98%であることを特徴とする。この値は、可能な最大値(100%)に非常に近いものである。
【0038】
消化率は、“Effect of protein intake on true digestibility of amino acids in rapeseed meals for adult roosters force fed with moistened feed” Animal Feed Science and Technology. 34 (1991) 255-260においてZ. M. Larbier, A.M. Chagneau, and M. Lessireによって示された方法に従ってin vivoで測定される。
【0039】
プロセス
【0040】
図1は、以下に説明する本発明によるプロセスの主要ステップ、及びこれらの異なるステップの最後に得られる相を示す図である。ステップは長方形で、相は楕円で示されている。
図1の図に従って、プロセスは、加水分解の後にpH調整ステップを経て、液相と沈殿物を生成し、固液分離ステップに付す。その後、沈殿物を洗浄し、脱塩沈殿物(AA2)を得る。液相と洗浄水とを合わせ、この溶液(AA1)を脱塩工程に付し、脱塩溶液を得る。次に、脱塩溶液と脱塩沈殿物(AA2)を合わせ、得られた懸濁物を乾燥させることにより、乾燥脱塩加水分解物を得ることができる。
【0041】
酸による加水分解
【0042】
本発明によるケラチン加水分解物を調製するためのプロセスは、加水分解物のアミノ酸の総重量に関して少なくとも88重量%の遊離アミノ酸を含む加水分解物を得るのに適した条件において、酸による少なくとも1回の化学加水分解を実施するものであり、加水分解物のアミノ酸の残りは小さなペプチド、すなわち800ダルトン以下の分子量を有するものとなる。
【0043】
本発明による加水分解物中の小さなペプチドの割合は、一般に、加水分解物の全重量に対して5~12重量%の範囲である。
【0044】
実際、加水分解は完全ではないため、加水分解物中の小さなペプチドの割合はゼロではなく、一方で最大でも12重量%である。
【0045】
ケラチンの化学的加水分解は、酸、好ましくは塩酸、リン酸及び硫酸から選ばれる強酸、好ましくは塩酸を用いて行われる。酸、好ましくは塩酸の濃度は、14~34重量%の範囲であることが好ましい。
【0046】
好ましくは、酸/ケラチン材料重量比、特定の場合において酸/羽毛重量比は、2~5の範囲である。
【0047】
化学的加水分解は、一般に、100~115℃の範囲の温度で、1時間から24時間の範囲、好ましくは6~20時間の範囲の時間行われる。
【0048】
特定の変形例において化学的加水分解は2段階で行われ:60から80℃の範囲の温度で4から5時間の範囲の期間行われる第1の化学的加水分解があり。次に、100から115℃の範囲の温度で5から8時間の期間行われる第2の化学的加水分解がある。
【0049】
さらに、2つの加水分解は、中間休止ステップなしで、又は1時間から7日の間の中間休止ステップを挟んで実施できる。
【0050】
より具体的には、第1の化学加水分解を72℃で4.5時間行い、第2の化学加水分解を107℃で6時間行い、2つの化学加水分解の間に24時間から80時間の中間休止を取ることができる。
【0051】
好ましくは、加水分解物の表面に脂肪分が浮いている場合、この上澄みは除去される。
【0052】
pHの調整
【0053】
1段階又はそれより多い段階で行われる化学的加水分解の後に、pH調整段階が続く。加水分解物は、3から5、好ましくは4から5の範囲の値のpHに調整される。この段階は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれた塩基、好ましくは水酸化ナトリウムを添加することによって行われる。このステップは古典的なものであり、その実施は当業者の能力の範囲内にある。
【0054】
このステップはまた、溶解性の低いアミノ酸、特にシスチン、チロシン、ロイシン、イソロイシンを少なくとも部分的に沈殿させる効果を特徴とする。これらの溶解性の低いアミノ酸は沈殿物を形成し、他のアミノ酸は溶液中に残り、形成された塩と水とで液相を形成する。
【0055】
固液分離-脱水
【0056】
pH調整ステップの後に、沈殿物を液相から分離するステップを行う。分離ステップは、任意の固液分離技術を実施することによって、特に遠心力を加えることによって、又は特にフィルタープレスを用いてプレスすることによって実施することができる。好ましい変形例によれば、分離段階は、脱水により行われる。脱水段階は、好ましくは、約1000rpmの回転によって遠心力を加えることによって行われる。この方法は、固液分離を行うための当業者に知られており、布の上に沈殿物(固体画分)を維持しながら、遠心力の効果によって液相を排除することからなる。
【0057】
洗浄
【0058】
遠心され(essore)、回収された、好ましくは遠心乾燥機の布の上にある沈殿物を、沈殿物の全重量に対して1重量%未満の塩含有量を有する脱塩沈殿物が得られるまで、水で洗浄する。「塩類」という用語は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、リン酸カリウムを意味し、好ましくは塩化ナトリウム(NaCl)である。
【0059】
洗浄段階の間、布の上の所定の位置にある沈殿物の上を通過する水は、可溶化により、前記沈殿物中に存在する塩及びいくつかのアミノ酸を取り込み、一方、最も不溶性のアミノ酸を固体形態で残す。
【0060】
洗浄段階の終了時に、沈殿物の含水量は、沈殿物の全重量に対して50~60重量%の範囲である。
【0061】
脱塩された沈殿物は主に次のアミノ酸からなる:シスチン、チロシン及びロイシンからなり、またバリン、イソロイシン及びフェニルアラニンからなる。
【0062】
遠心乾燥と洗浄を同じ筐体、特に遠心乾燥機(essoreuse)で行うことも可能であり、本発明によるプロセスの実施手段を簡略化することに寄与する。
【0063】
洗浄水は回収され、遠心サイクルの終わりに得られる液相に加えられ、塩となっているアミノ酸の溶液が形成される。
【0064】
脱塩
【0065】
塩となっているアミノ酸の溶液は、電気透析による脱塩段階に供される。この塩となっているアミノ酸溶液は、すべてのアミノ酸を含むが、シスチン及びチロシンは、その中に非常に少量存在する。
【0066】
脱塩段階は、加水分解段階を通じて使用された塩酸に水酸化ナトリウムを加えることにより、pH調整段階で形成された塩類、具体的には塩化ナトリウムを除去することを目的とするものである。この脱塩ステップは、電気透析によって行われる。電気透析は、従来、純水と脱塩する溶液を対にして、電流を流した陰イオン膜と陽イオン膜との間を2つの溶液が交互に別々に循環することで行われる。脱塩終了時の溶液の塩分濃度は、溶液の総重量に対して1重量%以下となる。
【0067】
相の組み合わせ
【0068】
脱塩段階に続いて、水洗浄段階の最後に得られた脱塩沈殿物を脱塩溶液に導入することにより、懸濁物質が形成される。
【0069】
驚くべきことに、そして好ましいことに、本発明者らは、酸加水分解から生じる全てのアミノ酸が存在することを示した。さらに、本発明による加水分解物のアミノ酸プロフィールは、元のケラチン材料のものに近いものである。
【0070】
好ましくは、得られた懸濁物を乾燥させ、乾燥段階に続いて得られた固体を回収する。本発明による加水分解物は、好ましくは乾燥形態であり、それは加水分解物の全重量に対して5重量%未満の水からなる。
【0071】
乾燥形態の加水分解物は、加水分解物の全重量に対して11重量%未満、好ましくは7重量%未満の塩類を含んでなる。
【0072】
乾燥形態の加水分解物から回収される全アミノ酸の重量は、加水分解に関与したケラチン材料に含まれる全アミノ酸の重量の少なくとも80%に等しく、好ましくは少なくとも84%である。
【0073】
用途
【0074】
既に述べたように、本発明は、動物栄養学、特にネコ、イヌ、水産養殖、又は農業における加水分解物の使用に関するものである。
【0075】
本発明は、より詳細には、愛玩動物給餌用食品、養殖用飼料、及び植物のバイオスティミュラントから選ばれる製品の成分としての、本発明による、又は本発明に従って調製された加水分解物の使用に関するものである。
【0076】
第1の変形例によれば、本発明は、本発明によるケラチン加水分解物、又は本発明による調製工程によって得られたケラチン加水分解物を、動物飼料用の原料として、経口的に使用することを目的とするものである。
【0077】
本発明はまた、成分添加のない本発明による加水分解物からなる原料に関するものである。
【0078】
用語「原料」とは、植物又は動物由来する天然の状態の、新鮮な又は保存されたもの、及びそれらの工業的加工から得られたもの、並びに添加物を含むかどうかにかかわらず、有機又は無機物質で、そのまま又は加工後に、配合飼料の調製のために、又は予備混合物の担体として動物飼料に経口的に使用することを意図するものをいう(Directive 96/25/EC of the Council of April 29, 1996)。
【0079】
本発明による原料は、動物において完全でバランスのとれた飼料に組み込まれること、又はヒトにおいて食品サプリメントとして使用されることを意図したアミノ酸の混合物である。したがって、それは、陸上動物及び/又は海洋動物及び/又はヒトにおける経口投与を意図している。この原料は、治療薬のカテゴリーに該当しない。
【0080】
本発明は、加水分解物の、動物飼料における、より詳細には、遊離アミノ酸の原料供給源としての使用に関し、これにより、複雑な分子構造及び高分子量の植物性及び/又は動物由来の食物タンパク質を省くことが可能となる。
【0081】
本発明に従って動物飼料用原料を配合することは、従来のプロセスによって行うことができ、それは当業者の一般的な技術の一部を形成するものであってもよい。
【0082】
既に述べたように、本発明はさらに、前記完全飼料の総重量に対して0.25~40重量%の本発明による組成物又は好ましくは加水分解物を含む動物給餌用の完全飼料に関するものである。
【0083】
本発明による動物給餌用完全飼料は、経口経路を意図した組成物に通常使用される賦形剤、特に、保湿剤、増粘剤、食感改良剤、香味剤、コーティング剤、保存料、抗酸化剤、着色剤、植物エキス、デンプンなどの非タンパク質成分、植物繊維、ミネラル、及びビタミンを配合できる。
【0084】
もちろん、当業者は、動物給餌用の完全飼料の特性を変えないように、これらの賦形剤を選択するように注意する。
【0085】
本発明による動物給餌用完全飼料は、以下の提示物の1つに基づいて配合することができる:キブル、ドラジェ、タブレット、ソフトカプセル又はハードカプセル、あるいは懸濁液、溶液、ゲル、15重量%未満の水を含む乾燥製剤、又は少なくとも50重量%の水及び最大85重量%の水を含む湿潤製剤。
【0086】
本発明による動物給餌用完全飼料の配合は、従来のプロセスにより実施されてもよく、これは当業者の一般的な技能の一部を形成するものであってもよい。
【0087】
本発明はまた、動物給餌用の原料又は完全飼料を調製するための、本発明による組成物又は本発明による加水分解物の使用に関するものである。
【0088】
第2の変形によれば、本発明は、養殖用、特にエビの養殖用、特に幼生期及び成長期までの飼料における嗜好性を促進する成分としてのケラチン加水分解物の使用に関するものである。
【0089】
第3の変形例によれば、本発明は、植物のバイオスティミュラントとしてのケラチン加水分解物の使用を対象とする。本発明による加水分解物は、植物の様々な部分:種子、葉、花、及び果実に使用することができる。
【0090】
バイオスティミュラントは、植物又は根圏に適用された場合、栄養素の存在とは無関係に、栄養素の吸収又は使用、非生物的ストレスに対する耐性、作物の品質又は収量を助長/強化する自然のプロセスを刺激する機能を有する物質及び/又は微生物として定義される。
【0091】
加水分解物はさらに、農薬(produits phytosanitaires)、肥料、微生物、海藻抽出物、腐植酸及びフルボ酸から選ばれる成分、そしてまたミネラルと共に使用することができる。
【0092】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
【0093】
実施例
【0094】
表1~表3に示されるアミノ酸は、152/2009 EC規則に適応した方法によって測定される。
【0095】
アミノ酸は、イオン交換カラムを用いたクロマトグラフィー(HPLC)により分離され、ニンヒドリンとの反応及び570nmでの光度検出によりアッセイされる。
【0096】
実施例1-加水分解物
【0097】
加水分解物の調製
【0098】
加水分解
【0099】
乾燥重量が50%を占める9000kgの鶏の羽を、55,000リットルの反応器/加水分解器に導入する。化学的加水分解は、18,000リットルの塩酸(23%)を添加することによって行われ、加水分解は72℃で4.5時間行われる。得られた産物を48時間放置して、室温まで自然に温度変化させた。次に、酸を添加せずに107℃で6時間加熱することにより、2回目の加水分解を行う。得られた加水分解物は、88重量%の遊離アミノ酸からなり、加水分解物の残りのアミノ酸は、800ダルトン以下の分子量を有する小さなペプチドの形態である。
【0100】
精製
【0101】
次に、加水分解物をデカンテーションして、水相の表面に浮遊する、ケラチン材料の残渣である脂肪を除去する。加水分解ステップ中に過剰に導入された塩酸は除去される。8000kgの濃縮液が回収される。次いで、4500kgの水が加えられ、12500kgの希釈された濃縮液が得られる。
【0102】
pH調整
【0103】
30.5%の水酸化ナトリウムを加水分解物に加え、pHを4から5の間の値にする。水酸化ナトリウムを添加すると、溶解性の低いアミノ酸、特にシスチン、チロシン、ロイシン及びイソロイシンが、少なくとも部分的に沈殿する。他のアミノ酸は液相に完全に溶けて残っている。
【0104】
脱水
【0105】
懸濁物を絞り機にかけて沈殿物を分離し、17,000kgの液相をタンクに回収する。
【0106】
洗浄
【0107】
帆布上に残った沈殿物は、塩(NaCI)を除去するために、3000kgの水を直接絞り機に導入して洗浄される。3440kgに相当する洗浄水は、遠心から生じた液相を既に含むタンクに送られ、AA1と呼ばれる溶液20440kgを得る。洗浄した沈殿物1560kgは回収され、これは産物AA2に相当する。
【0108】
AA1溶液の遊離アミノ酸組成を表1に示す。
【0109】
【0110】
AA1は、赤外線熱天秤によって測定された乾燥分含有量が34.07重量%であり、NaCI含有量が14.74重量%であり、またAA1アミノ酸の合計重量に対する遊離アミノ酸の含有量が93.4重量%であることを特徴とする。
【0111】
1%未満のNaClを含む洗浄済み沈殿物1560kgを回収する。赤外線熱天秤による測定で、乾燥分の含有量は44重量%である。洗浄乾燥した沈殿物の遊離アミノ酸組成を表2に示す。
【0112】
【0113】
AA2沈殿物は、AA2沈殿物の全アミノ酸の総重量に対する遊離アミノ酸の含有量が92.17重量%であることを特徴としている。
【0114】
脱塩
【0115】
20,440 kgのAA1溶液(遠心乾燥で生じた水と沈殿を洗浄した水を合わせた液相)を、水に対する電気透析で脱塩し、約14,300 kgの脱塩した溶液(1%未満の NaCl を含む)を得る。電気透析装置は、陰イオン膜と陽イオン膜を交互に2×600枚重ねたもので、その間を溶液が循環し、直流電流が流れる。
【0116】
相の組み合わせ
【0117】
1560kgに相当する洗浄済み沈殿物と14,300kgに相当する脱塩溶液を合わせて15,860kgの懸濁液を得、これを入口温度172℃、出口温度80℃、2500rpmのふるい装置のついた乾燥塔で霧化させて乾燥させた後、篩い分けする。約3860kgの粉末が得られ、その組成は表3に示すとおりである。
【0118】
表3は、第2列:全FAA(遊離アミノ酸)に対する加水分解物の各FAAの重量比;第3列:全AA(アミノ酸)に対する元のケラチン材料の各AAの重量比;第4列:加水分解物中の遊離アミノ酸の重量とケラチン材料中のこのアミノ酸の重量の、変動が百分率で絶対値により示されている。
【0119】
【0120】
得られた加水分解物は、乾燥分含量98.6%、NaCl含量4.7%、加水分解物全アミノ酸の総重量に対する遊離アミノ酸含量91.11重量%である。
【0121】
出発材料であるケラチン材料は乾燥分(乾燥分4500kg)に対して全アミノ酸を93%含有し、得られた加水分解物(そのままの状態で3860kg)はそのままの状態で全アミノ酸を90.6%含有することから、全アミノ酸の収率は83.6%であった。
【0122】
また、本発明による加水分解物のアミノ酸プロファイルは、元のケラチン材料のアミノ酸プロファイルに近いものである。実際、第4欄に示すように、17種のアミノ酸のそれぞれについて、加水分解物中の遊離アミノ酸の重量と出発ケラチン物質中のこのアミノ酸の重量との間の変動率は、絶対値で20%未満である。さらに、そのうちの15種については、この重量の変動は10%未満である。
【0123】
実施例2-消化率
【0124】
本発明による加水分解物のタンパク質の真の消化率は、98.99%に等しいので非常に高く、したがって可能な最大値(100%)に非常に近い値である。) この値は、動物界におけるタンパク質のバイオアベイラビリティを測定するための参照モデルである、去勢した雄鶏(coqs caecectomises)の以下のプロトコールに沿って得られたものである。
【0125】
実験プロトコール
【0126】
消化率測定は、個々のケージに収容され、試験期間外は標準飼料を与えられた去勢したオスの成鶏(coqs adultes caecectomises)に対して行われる。
【0127】
4羽の去勢した雄鶏(coqs caecectomises)の2回繰り返し使用する。全ての動物は24時間絶食させ、24gの試料(加水分解物)を56gの砂糖と混合した単一の飼料80gを摂取させる。
【0128】
内因性損失を含むすべての排泄物(=糞便)は、その発酵と腐敗をできる限り避けるために、その後の48時間の間に24時間周期で2回収集される。
【0129】
これらの糞便は、例えば羽毛のような様々な混入物を取り除き、凍結(-80℃)される前に注意深く除去される。
【0130】
糞便をオーブンで凍結乾燥し、2つの加水分解物のそれぞれに使用した4匹の動物の2つの複製に対応する2つのプールにまとめられ、混合される。この2つのプールを分析する。
【0131】
栄養分析(乾燥物、粗タンパク質(Dumas法ISO 16634-1:2008標準))は、加水分解物、鶏の糞便及び内因性損失について実施される。これらのデータは、真のタンパク質消化率を計算するために使用される。
【0132】
この真のタンパク質消化率の値については、鳥の糞に尿素窒素が混入していることを考慮して、糞中のタンパク質窒素を測定する(Terpstra method; Terpstra K. D. and N. De Hart. 1973. "The estimation of urinary nitrogen and faecal nitrogen in poultry excreta" Zeitschrift fur Tierphysiologie Tierernahrung und Futtermittelkunde. 32 (1-5): 306-320)。
【0133】
したがって百分率として測定される真のタンパク質消化率は、摂取された加水分解物の量と排泄された糞便の量との差によって、以下の式に基づいて内因性損失について補正することにより、定量的方法に従って算出される。
【0134】
[真のタンパク質消化率(%)]=([摂取したタンパク質加水分解物]-([排泄されたタンパク質糞便]-[内因性排泄タンパク質]))/[摂取した加水分解物タンパク質]×100。
【0135】
したがって、本発明による加水分解物は非常に容易に身体に吸収される。
【0136】
実施例3-動物飼料用の原料
【0137】
この加水分解物から動物飼料用の原料が調製され、その遊離アミノ酸の組成は表3(2列目)に示される通り追加アミノ酸を必要とするものではなく、特に、被毛の暗色化(茶色と黒)の原因となる色素メラニンの前駆体であるL-チロシンを添加する必要はなく、また皮膚の健康に不可欠であり動物の被毛のケラチンを構成しているL-シスチンの添加も必要ない。
【0138】
調製された原料は、アレルギーを起こさない。
【0139】
また、犬猫に対する嗜好性も確認されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン加水分解物であって、
前記加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量
%の遊離アミノ酸を含み、
前記加水分解物は遊離アミノ酸の総重量に対して2~4重量
%の遊離チロシンを含有する、
ことを特徴とするケラチン加水分解物。
【請求項2】
前記加水分解物中のシスチンの総重量に対して、少なくとも90重量
%の遊離形態のシスチンを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のケラチン加水分解物。
【請求項3】
脱塩されていること、すなわち加水分解物の総重量に対して11重量%未
満の塩を含み、塩は塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム及びリン酸カリウムから選ば
れる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のケラチン加水分解物。
【請求項4】
下記の遊離アミノ酸を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のケラチン加水分解物:
加水分解物中のアスパラギン酸の総重量に対して、少なくとも95重量
%の、遊離形態のアスパラギン酸;
加水分解物中のスレオニンの総重量に対して、少なくとも95重量
%の、遊離形態のスレオニン;
加水分解物中のセリンの総重量に対して、少なくとも95重量
%の、遊離形態のセリン
加水分解物中のグルタミン酸の総重量に対して、少なくとも93重量%、好ましくは95重量%以上の、遊離形態のグルタミン酸;
加水分解物中のグリシンの総重量に対して、少なくとも90重量
%以上の、遊離形態のグリシン;
加水分解物中のアラニンの総重量に対して、少なくとも90重量
%以上の、遊離形態のアラニン;
加水分解物中のフェニルアラニンの総重量に対して、少なくとも90重量
%以上の、遊離形態のフェニルアラニン;
加水分解物中のプロリンの総重量に対して、少なくとも93重量
%以上の、遊離形態のプロリン。
【請求項5】
17種のアミノ酸を含むケラチン材料から得られる請求項1~4のいずれか1項に記載のケラチン加水分解物であって、
アミノ酸のそれぞれについて、加水分解物中の遊離
アミノ酸の重量と出発ケラチン材料中のこれらのアミノ酸の重量との間の割合の変動の絶対値が20%未
満である、
ケラチン加水分解物。
【請求項6】
加水分解物の遊離アミノ酸の総重量に対する重量比で、以下の遊離アミノ酸を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の加水分解物:
6.00~10.00重量
%のアスパラギン酸;
3.00~7.00重量
%のスレオニン;
11.00~15.00重量
%のセリン;
8.50~12.50重量
%のグルタミン酸;
6.50~10.50重量
%のグリシン;
3.00~7.00重量
%のアラニン;
3.50~7.50重量
%のバリン;
4.00~8.00重量
%のは5.80重量%のシスチン;
0.10~2.00重量
%のメチオニン;
1.50~5.50重量
%のイソロイシン;
6.00~10.00重量
%のロイシン;
2.50~3.50重量
%のチロシン;
3.00~7.00重量
%のフェニルアラニン;
0.50~3.00重量
%のリジン;
0.10~2.00重量
%のヒスチジン;
4.00~8.00重量
%のアルギニン;
8.50~12.50重量
%のプロリン。
【請求項7】
加水分解物の遊離アミノ酸の総重量に対する重量比で、以下の遊離アミノ酸を含むことを特徴とする請求項6に記載の加水分解物:
7.00~9.00重量%のアスパラギン酸;
4.00~6.00重量%のスレオニン;
12.00~14.00重量%のセリン;
9.50~11.50重量%のグルタミン酸;
7.50~9.50重量%のグリシン;
4.00~6.00重量%のアラニン;
4.50~6.50重量%のバリン;
5.00~7.00重量%のシスチン;
0.20~1.00重量%のメチオニン;
2.50~4.50重量%のイソロイシン;
7.00~9.00重量%のロイシン;
3.00~3.50重量%のチロシン;
4.00~6.00重量%のフェニルアラニン;
1.00~2.00重量%のリジン;
0.20~1.00重量%のヒスチジン;
5.00~7.00重量%のアルギニン;
9.50~11.50重量%のプロリン。
【請求項8】
動物ケラチン材
料から、請求項1~
7のいずれか1項に記載の加水分解物を製造するための方法であって、以下に示す順序で、少なくとも以下のステップを含むことを特徴とする方法:
- 加水分解物のアミノ酸の総重量に対して少なくとも88重量%の遊離アミノ酸が加水分解物に含まれる条件下でケラチン材料を酸による少なくとも1回の加水分解に付し、ここで加水分解物のアミノ酸の残りは800ダルトン以下の分子量を有するペプチドの形態であり;
- 加水分解物を、pHを3から5の範
囲の値に調整するステップに付し、沈殿物と液相を回収し;
- 沈殿物と液相を分離
し;
- 沈殿物を、沈殿物の全重量に対して1重量%未満の塩を含む脱塩沈殿物が得られるまで、少なくとも1回の水による洗浄に付し、一方では脱塩沈殿物を回収し、他方では洗浄水を回収し;
- この洗浄水と液相を合わせて溶液を得、この溶液を電気透析により脱塩して脱塩溶液を得て;
- 脱塩した溶液に脱塩した沈殿物を添加し;
- 脱塩して得られた懸濁液を回収する。
【請求項9】
加水分解を、100~115℃の範囲の温度で、1時間~24時
間の範囲の時間行う、請求項
8に記載の加水分解物を製造するための方法。
【請求項10】
化学的加水分解が以下の2段階で行われる、請求項
8又は
9に記載の加水分解物を製造するための方法:
- 60~80℃の範囲の温度で4~5時間行われる第1の加水分解と、それに続く
- 100~115℃の範囲の温度で5~8時間行う第2の加水分解。
【請求項11】
得られた懸濁液を乾燥し、乾燥の終わりに得られた固体を回収する、請求項
8~
10のいずれか1項に記載の加水分解物を製造するための方法。
【請求項12】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の加水分解物又は請求項
8~
11のいずれか1項に記載の工程に従って得られた加水分解物の、愛玩動物用飼料、養殖用飼料及び植物のバイオスティミュラントから選ばれる製品の成分としての使用。
【国際調査報告】