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特表2023-525084多発性硬化症の処置のためのペプチド及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】多発性硬化症の処置のためのペプチド及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230607BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230607BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20230607BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230607BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230607BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230607BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20230607BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C12N9/02
C12N15/12
C12N15/53
C12N5/0783
A61P25/00
A61P27/02
A61K39/00 H
A61P43/00 121
A61K31/225
A61K48/00
A61K35/17
G01N33/53 D
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022567648
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021061985
(87)【国際公開番号】W WO2021148683
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】20173201.3
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370219
【氏名又は名称】アンシス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マリー・サン-レミ
(72)【発明者】
【氏名】リュック・ヴァンダー・エルスト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・カルリエ
(72)【発明者】
【氏名】ミロス・エラック
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ファン・ランペルバルグ
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ファン・メヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・ワルグラフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・グローレ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4B065
4C084
4C085
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC05
4B050LL01
4B063QA01
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QS12
4B063QS32
4B063QS39
4B065AA93X
4B065BB19
4B065BD14
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA211
4C084ZA212
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZC751
4C085AA02
4C085BB11
4C085CC21
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BB64
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA23
4C087MA35
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA21
4C087ZA33
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB29
4C206DB43
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA43
4C206MA55
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA76
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA21
4C206ZA33
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA20
4H045BA41
4H045BA53
4H045CA40
4H045DA86
4H045DA89
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、脱髄性障害の処置で使用するためのミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)に由来する免疫原性ペプチドに、及び野生型MOGエピトープ配列を提示する抗原提示細胞に対する細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の生成に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
12~50アミノ酸の長さを有する単離された免疫原性ペプチドであって:
a1)配列Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-を有する酸化還元酵素モチーフ(式中、nは2、0、1又は3から選択される整数であり、mは2、1、0又は3から選択される整数であり、Xは任意のアミノ酸であり、Zは任意のアミノ酸であり、Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを表す);
a2)MHCクラスII T細胞エピトープFLRVPSWKI(配列番号2)及びFLRVPCWKI(配列番号1)、又はNKT細胞エピトープFLRVPCW(配列番号63)及びFLRVPSW(配列番号64)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するT細胞エピトープ
を含み、
前記酸化還元酵素モチーフ及び前記エピトープは配列VRYを含む3~7アミノ酸のリンカー配列によって分離され、前記ペプチドはタンパク質の上のジスルフィド結合に対する還元活性を有する、免疫原性ペプチド。
【請求項2】
前記酸化還元酵素モチーフが以下のアミノ酸モチーフ:
(a)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは0であり、mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及びL-オルニチン等の非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(b)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは1であり、Xは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はRであり、
mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及びL-オルニチン等の非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(c)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中nは2であり、それによって前記酸化還元酵素モチーフの中に内部のX1X2アミノ酸対を形成し、
Xは任意のアミノ酸であり、好ましくは少なくとも1つのXはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくはK又はRであり、
mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及びL-オルニチン等の非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(d)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは3であり、それによって前記酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3アミノ酸のストレッチが形成され、
Xは任意のアミノ酸であり、好ましくは少なくとも1つのXはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくはK又はRであり、
mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸であり、より好ましくはK又はHである);又は
(h)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは0~3であり、mは0であり、前記C又は[CST]残基の1つは、前記モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基にアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基を有するように改変されている(配列番号184~203))、
から選択される、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記T細胞エピトープがそのC末端でアミノ酸配列TLFに連なり、以下のT細胞エピトープ-フランカー配列:FLRVPCWKITLF(配列番号3)又はFLRVPSWKITLF(配列番号4)を導く、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記免疫原性ペプチドがC末端で前記エピトープに連なる1つ又は複数のKアミノ酸残基を更に含み、リンカー-T細胞エピトープ-フランカーの以下の配列:FLRVPCWKITLFK(配列番号5)、FLRVPSWKITLFK(配列番号6)、FLRVPCWKITLFKK(配列番号7)、FLRVPSWKITLFKK(配列番号8)、FLRVPCWKITLFKKK(配列番号9)又はFLRVPSWKITLFKKK(配列番号10)を導く、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記酸化還元酵素モチーフがZm-C-XX-C-の配列を有し、Zは好ましくはK及びHからなる群から選択される塩基性アミノ酸であり、mは0、1又は2であり、好ましくは前記酸化還元酵素モチーフが配列CPYC(配列番号23)又はCHGC(配列番号297)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記酸化還元酵素モチーフが:HCPYC(配列番号24)、KCPYC(配列番号51)、KHCPYC(配列番号50)、KCRPYC(配列番号216)、KHCRPYC(配列番号217)、HCHGC(配列番号265)、KCHGC(配列番号266)、KHCHGC(配列番号267)、KCRHGC(配列番号268)及びKHCRHGC(配列番号269)からなる群から選択される配列を有する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
前記酸化還元酵素モチーフがZm-C-X-C-の配列を有し、Zは好ましくはK及びHからなる群から選択される塩基性アミノ酸であり、mは0、1又は2であり、Xは好ましくはRである、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記酸化還元酵素モチーフが:CRC、KCRC(配列番号43)、HCRC(配列番号270)及びKHCRC(配列番号271)からなる群から選択される配列を有する、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
KCRCVRYFLRVPSWKITLFKK (配列番号272)、
KCRCVRYFLRVPCWKITLFKK (配列番号273)、
KCRCVRYFLRVPSWKITLFK (配列番号274)、
KCRCVRYFLRVPCWKITLFK (配列番号275)、
KCRCVRYFLRVPSWKITLF (配列番号276)、
KCRCVRYFLRVPCWKITLF (配列番号277)、
KCRPYCVRYFLRVPSWKITLFKK (配列番号257)、
KCRPYCVRYFLRVPCWKITLFKK (配列番号278)、
KCRPYCVRYFLRVPSWKITLFK (配列番号279)、
KCRPYCVRYFLRVPCWKITLFK (配列番号280)、
KCRPYCVRYFLRVPSWKITLF (配列番号281)、
KCRPYCVRYFLRVPCWKITLF (配列番号282)、
KHCPYCVRYFLRVPSWKITLFKK (配列番号27)、
KHCPYCVRYFLRVPCWKITLFKK (配列番号28)、
KHCPYCVRYFLRVPSWKITLFK (配列番号283)、
KHCPYCVRYFLRVPCWKITLFK (配列番号284)、
KHCPYCVRYFLRVPSWKITLF (配列番号285)、
KHCPYCVRYFLRVPCWKITLF (配列番号286)、
HCPYCVRYFLRVPSWKITLFKK (配列番号287)、
HCPYCVRYFLRVPCWKITLFKK (配列番号288)、
HCPYCVRYFLRVPSWKITLFK (配列番号289)、
HCPYCVRYFLRVPCWKITLFK (配列番号290)、
HCPYCVRYFLRVPSWKITLF (配列番号25)、
HCPYCVRYFLRVPCWKITLF (配列番号26)、
CPYCVRYFLRVPSWKITLFKK (配列番号291)、
CPYCVRYFLRVPCWKITLFKK (配列番号292)、
CPYCVRYFLRVPSWKITLFK (配列番号293)、
CPYCVRYFLRVPCWKITLFK (配列番号294)、
CPYCVRYFLRVPSWKITLF (配列番号295)、及び
CPYCVRYFLRVPCWKITLF (配列番号296)
:からなる群から選択されるアミノ配列のいずれか1つを含むかそれからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、DNA、pDNA、cDNA、RNA及びmRNA又はその改変バージョンを含む群から選択される、ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド、請求項10に記載のポリヌクレオチド、又は請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
脱髄性障害の処置、予防及び/又はその症状の低減で使用するための、好ましくは前記脱髄性障害はMOG自己抗原又は抗MOG抗体によって引き起こされる疾患又は障害である、請求項12に記載のペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物。
【請求項14】
前記障害が多発性硬化症(MS)及び視神経脊髄炎(NMO)から選択される、請求項12に記載の使用のためのペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物。
【請求項15】
MSの処置、予防及び/又はその症状の低減で使用するための、対象が:HLA-DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*07:01からなる群から選択されるHLA-DRB1*タイプを有し、好ましくは対象がHLA-DRB1*04:01又はHLA-DRB1*15:01を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物。
【請求項16】
NMOの処置、予防及び/又はその症状の低減で、又はNMOの症状の低減で使用するための、対象が:HLA-DRB1*03:01及びHLA-DPB1*05:0114からなる群から選択されるHLAタイプを有する、請求項12~14のいずれか一項に記載のペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物。
【請求項17】
前記MSが、Clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)から選択される、請求項12又は14に記載の使用のためのペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物。
【請求項18】
前記対象がフマル酸化合物で処置されているか、処置されたか、又は処置される、請求項12~17のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド、ポリヌクレオチド又は医薬組成物。
【請求項19】
MOGエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞の集団の生成のためのin vitroの方法であって:
- 末梢血細胞を提供する工程;
- 前記細胞を請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項10に記載のポリヌクレオチドとin vitroで接触させる工程;及び
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程、
を含む方法。
【請求項20】
MOGエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞の集団の生成のための方法であって:
- 請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項10に記載のポリヌクレオチドの有効量を対象に投与する工程;
- 前記対象の末梢血細胞集団から前記細胞溶解性CD4+ T細胞を得る工程、
を含む方法。
【請求項21】
MOGエピトープを提示するAPCに対するNKT細胞の集団の生成のための方法であって:
- 請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項10に記載のポリヌクレオチドの有効量を対象に投与する工程;
- 前記対象の末梢血細胞集団から前記NKT細胞を得る工程、
を含む方法。
【請求項22】
請求項19、20又は21に記載の方法によって入手できる、MOGエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
【請求項23】
請求項19、20又は21に記載の方法によって入手できる、医薬として使用するためのMOGエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
【請求項24】
脱髄性障害の処置、その症状の改善及び/若しくはその予防で使用するための、又は脱髄性障害の症状を低減するための、請求項23に記載の使用のための細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
【請求項25】
請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド、請求項10に記載のポリヌクレオチド又は請求項24に記載のCD4+ T細胞若しくはNKT細胞、又はその任意の混合物を含み、任意選択で薬学的に許容される担体を更に含む医薬組成物。
【請求項26】
脱髄性障害の処置、又は脱髄性障害の症状の低減、又は脱髄性障害の予防に好適な追加の有効成分を更に含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
医薬として使用するための、請求項25又は26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
好ましくはMOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、最も好ましくは多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)の処置、その症状の改善及び/又はその予防で使用するための、請求項27に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項29】
好ましくはMOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、最も好ましくは多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)の処置、その症状の改善及び/又はその予防のための医薬の製造のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の免疫原性ペプチド、請求項10に記載のポリヌクレオチド又は請求項22に記載のCD4+ T細胞若しくはNKT細胞、又はその任意の混合物の使用。
【請求項30】
対象における脱髄性障害の処置、その症状の改善及び/又はその予防のための医薬であって、請求項1~9のいずれか一項に記載のペプチド、請求項10に記載のポリヌクレオチド又は請求項22に記載のCD4+ T細胞若しくはNKT細胞、又はその任意の混合物を含む医薬。
【請求項31】
前記脱髄性障害が:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、中心性橋脱髄症、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、消失白質病及び風疹性精神遅滞から選択される、請求項30に記載の医薬。
【請求項32】
フマル酸化合物を更に含む、請求項30又は31に記載の医薬。
【請求項33】
前記フマル酸化合物が:フマル酸モノメチル(MMF)、フマル酸ジメチル(DMF)、in vivoでMMFに代謝される化合物、フマル酸ジロキシメル若しくはフマル酸テピラミド等のフマル酸モノメチルプロドラッグ、又はその任意の1つ又は複数の組合せ、又はその任意の1つ又は複数の重水素化形、クラスレート、溶媒和物、互変異性体、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩、又は上述のいずれか1つの組合せからなる群から選択される、請求項32に記載の医薬。
【請求項34】
試料中のMOG抗原に特異的なMHCクラスII制限CD4+ T細胞を検出するためのin vitro方法であって;
- 対象試料を、単離されたMHCクラスII分子及び請求項1~9に記載のペプチド又は請求項10に記載のポリヌクレオチドの複合体と接触させる工程;
- 前記複合体と前記試料中の細胞との結合を測定することによってCD4+ T細胞を検出する工程であって、細胞への前記複合体の結合は前記試料中のCD4+ T細胞の存在の指標となる工程、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性ペプチドに関する。特に、本発明は、脱髄性障害、例えば多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)の処置で使用するための、ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)に由来するT細胞エピトープに連結する酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチド及びこれらのペプチドによって生成される細胞溶解性CD4+ T細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原に対する望ましくない免疫応答の生成を阻止するために、いくつかの戦略が記載されている。WO2008/017517は、所与の抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含むペプチドを使用した新しい戦略を記載する。これらのペプチドは、CD4+T細胞を細胞溶解性CD4+T細胞と呼ばれる細胞溶解特性を有する細胞型に変換する。これらの細胞は、アポトーシス誘発を通して、ペプチドが由来する抗原を提示する抗原提示細胞(APC)を死滅させることが可能である。WO2008/017517は、アレルギー及び自己免疫疾患、例えばI型糖尿病のためにこの概念を実証する。
【0003】
WO2009101207及びCarlierら(2012)Plos one 7,10 e45366は、抗原特異的細胞溶解性細胞をより詳細に更に記載する。WO2016059236は、追加のヒスチジンが酸化還元酵素モチーフに近接して存在する更に改変されたペプチドを開示する。WO2012069568は、抗原性タンパク質のNKT細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含むペプチドを更に開示する。これらのペプチドはNKT細胞の活性化を導き出すことが可能であり、それは感染性及び自己免疫性疾患又はがん等の多くの疾患の処置のための価値あるアプローチを表す。WO2017182528は、多発性硬化症の処置で使用するためのMOGエピトープを含む免疫原性ペプチドの使用を記載する。
【0004】
多発性硬化症(MS)は中枢神経系の最も一般的な自己免疫性障害であり、その有病率は過去20年のほとんどで実質的に増加した。2016年には世界中で2,200,000人以上がMSに罹患していたと推定された。MSの世界の有病率は男性と女性の間でかなり異なる。思春期前の児童では、有病率はおおよそ等しい。しかし、思春期及びそれ以降では、女性が約2倍の集団群がこの疾患を起こす(GDB 2016 Motor Neuron Disease Collaborators。2018年。Lancet Neurol. 17(12)、1083~1097頁)。MSは、医学画像及び/又は臨床検査と合わせて臨床症状を調査することによって最も一般的に診断される。
【0005】
対象で現れることがある臨床症状は多様であり、多数の神経症状が含まれる。しかし、自律神経、視覚、運動及び感覚の問題が最も一般的であるようである(Compston及びColes。2008年。Lancet. 372(9648):1502~17頁)。
【0006】
ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)は、ミエリン鞘及び希突起膠細胞膜の最も外部の表面において単独で発現される糖タンパク質である。MOGの正確な分子機能はなお論争中であるが、それはミエリン鞘の完成及び/又は維持に関与し、これによって構造的完全性を提供するためにミエリン鞘の上で細胞接着因子としておそらく作用するとのコンセンサスが当技術分野にあるようである(Peschlら。Front. Immunol. (2017)。8, 529頁)。MOGの仮定された重要性は、哺乳動物のMOGの高度に均一なコード領域(Pham-Dinhら(1994) J. Neurochem. 63(6)、2353~2356頁)、並びにMOGが実験モデル及び炎症性脱髄性疾患においてT及びB細胞応答のための自己抗原として作用することができるとの観察(Peschlら。Front. Immunol. (2017)。8, 529頁)によって立証される。MS病因におけるMOGに対する抗体(抗MOG Ab)の役割が報告されており、それはMSの診断におけるバイオマーカーとみなすことができるが、ヒトMOG Abの正確な病理学的作用及び免疫病理学的役割はまだ決定されていない(Peschlら。Front. Immunol. (2017)。8, 529頁)。更に、抗MOG Abは、視神経脊髄炎(NMO)に関与することが示されている。
【0007】
MSを診断される個人の平均年齢は、概ね30歳である。これは、しばしば診断の十年又は二十年後に現れる疾患の進行相と合わさり、世界の集団の中で障害補正寿命年数(DALY)にかなりの程度寄与する。いくつかの療法が疾患のある特定の態様(進行)を軽減することが証明されたが、MSで利用可能な公知の治療法はない。一部の場合には(ある特定の)MSサブタイプと臨床症状において実質的な重複を有するNMOのためにも、利用可能な治療法はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2008/017517
【特許文献2】WO2009101207
【特許文献3】WO2016059236
【特許文献4】WO2012069568
【特許文献5】WO2017182528
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Carlierら(2012)Plos one 7、10 e45366
【非特許文献2】GDB 2016 Motor Neuron Disease Collaborators。2018年。Lancet Neurol. 17(12)、1083~1097頁
【非特許文献3】Compston及びColes。2008年。Lancet. 372(9648):1502~17頁
【非特許文献4】Peschlら、Front. Immunol. (2017)。8, 529頁
【非特許文献5】Pham-Dinhら(1994) J. Neurochem. 63(6)、2353~2356頁
【非特許文献6】Jahngら、Journal of experimental Medicine 199:947~957頁、2004年
【非特許文献7】Van Belle及びvon Herrath、Molecular Immunology 47:8~11頁、2009年
【非特許文献8】Liebersら(1996)Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁
【非特許文献9】Dobson及びGiovannoni、(2019) Eur. J. Neurol. 26(1)、27~40頁
【非特許文献10】Berer及びKrishnamoorthy (2014) FEBS Lett. 588(22)、4207~4213頁
【非特許文献11】Lubetzki及びStankoff、(2014) Handb Clin Neurol. 122、89-99頁
【非特許文献12】International Multiple Sclerosis Genetics Consortium Nat Genet. (2013). 45(11):1353~60頁
【非特許文献13】Ascherio (2013) Expert Rev Neurother. 13(12 Suppl)、3~9頁
【非特許文献14】Kutzelniggら(2005)、Brain. 128(11)、2705~2712頁
【非特許文献15】Wingerchuk 2006年、Int MS J. 2006年5月;13(2):42~50頁
【非特許文献16】Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁
【非特許文献17】Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁
【非特許文献18】Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁
【非特許文献19】Copierら(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁
【非特許文献20】Mahnkeら(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁
【非特許文献21】Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁
【非特許文献22】Schnelzer & Kent(1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁
【非特許文献23】Tamら、(2001) Biopolymers 60、194~205頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、脱髄性疾患であるMS及びNMO等のMOG自己抗原誘導性の又は抗MOG抗体誘導性の疾患のための新規の及び/又は向上した処置戦略が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、脱髄性障害、例えば限定されずに多発性硬化症及び視神経脊髄炎(NMO)の処置のための、ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)に由来する新規ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、それらがHLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01に、WO2017182528で開示される先行技術のペプチドより大いに高い親和性で結合する利点を有する。本発明のペプチドによるMS患者の細胞の刺激は、溶解特性を有する特異的CD4+ T細胞を誘導した。
【0012】
したがって、本発明は以下の態様を提供する:
態様1。以下を含む単離された免疫原性ペプチド:
a1)配列Zm-[CST]-Xn-C-(配列番号66~90)又はZm-C-Xn-[CST]-(配列番号91~115)を有する酸化還元酵素モチーフ(式中、nは0~6から選択される整数、好ましくは0、1、2又は3であり、mは0~3から選択される整数であり、Xは任意のアミノ酸であり、Zは任意のアミノ酸であり、Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを表す);
a2)以下からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するT細胞エピトープ:MHCクラスII T細胞エピトープFLRVPCWKI(配列番号1)及びFLRVPSWKI(配列番号2)、又はNKT細胞エピトープFLRVPCW(配列番号63)及びFLRVPSW(配列番号64)、
ここで、前記酸化還元酵素モチーフ及び前記エピトープは3~7アミノ酸及び配列VRYを含むリンカー配列によって分離され、以下のリンカー-エピトープ配列に導く:VRYFLRVPCWKI(配列番号241)、VRYFLRVPSWKI(配列番号242)、VRYFLRVPCW(配列番号243)及びVRYFLRVPSW(配列番号244)。
態様2。前記T細胞エピトープがそのC末端でアミノ酸配列TLFに連なり、以下のT細胞エピトープ-フランカー配列に導く、態様1によるペプチド:FLRVPCWKITLF(配列番号3)、FLRVPSWKITLF(配列番号4)、FLRVPCWTLF(配列番号245)又はFLRVPSWTLF(配列番号246)。
態様3。前記免疫原性ペプチドがC末端でエピトープに連なる1つ又は複数のKアミノ酸残基を更に含み、例えばリンカー-T細胞エピトープ-フランカーの以下の配列のうちのいずれか1つに導くか:
FLRVPCWKITLFK(配列番号5)、FLRVPSWKITLFK(配列番号6)、FLRVPCWKITLFKK(配列番号7)、FLRVPSWKITLFKK(配列番号8)、FLRVPCWKITLFKKK(配列番号9)又はFLRVPSWKITLFKKK(配列番号10)、
或いは、前記免疫原性ペプチドがC末端でエピトープに連なる1つ又は複数のHアミノ酸残基を更に含み、例えばリンカー-T細胞エピトープ-フランカーの以下の配列のうちのいずれか1つに導くか:FLRVPCWKITLFH(配列番号11)、FLRVPSWKITLFH(配列番号12)、FLRVPCWKITLFHH(配列番号13)、FLRVPSWKITLFHH(配列番号14)、FLRVPCWKITLFHHH(配列番号15)又はFLRVPSWKITLFHHH(配列番号16)、
或いは、前記免疫原性ペプチドがC末端でエピトープに連なる1つ又は複数のRアミノ酸残基を更に含み、例えばリンカー-T細胞エピトープ-フランカーの以下の配列のうちのいずれか1つに導く、態様1又は2によるペプチド:
FLRVPCWKITLFR(配列番号17)(FLRVPSWKITLFR(配列番号18)、FLRVPCWKITLFRR(配列番号19)、FLRVPSWKITLFRR(配列番号20)又はFLRVPCWKITLFRRR(配列番号21)、又はFLRVPSWKITLFRRR(配列番号22)。
態様4。酸化還元酵素モチーフがZm-C-Xn-C-の配列(配列番号116~140)を有する、態様1~3のいずれか1つによるペプチド。
態様5。酸化還元酵素モチーフがZm-[CST]-XX-C-又はZm-C-XX-[CST]-の配列を有する、態様1~3のいずれか1つによるペプチド。
態様6。前記酸化還元酵素モチーフが以下のアミノ酸モチーフから選択される、態様1~5のいずれか1つによるペプチド:
(a)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは0であり、mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(b)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-
(式中、nは1であり、Xは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はRであり、
mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(c)態様1で規定されるZm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは2であり、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部のX1X2アミノ酸対を形成し、Xは任意のアミノ酸であり、好ましくは少なくとも1つのXはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はRであり、
mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(d)態様1で規定されるZm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは3であり、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3アミノ酸のストレッチを形成し、Xは任意のアミノ酸であり、好ましくは少なくとも1つのXはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はRであり、
mは0、1又は2から選択される整数であり、
Zは任意のアミノ酸、好ましくは、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはK又はHである);
(e)態様1で規定されるZm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは4であり、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3X4(配列番号154)アミノ酸のストレッチを形成し、mは0、1又は2から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(f)態様1で規定されるZm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは5であり、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3X4X5(配列番号166)アミノ酸のストレッチを形成し、mは0、1又は2から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);
(g)態様1で規定されるZm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは6であり、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3X4X5X6(配列番号177)アミノ酸のストレッチを形成し、mは0、1又は2から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はH、最も好ましくはKである);又は
(h)Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-(式中、nは0~6であり、mは0であり、C又は[CST]残基の1つは、モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基にアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基を有するように改変されている(配列番号184~203))。
態様7。少なくとも1つのXがプロリン(P)又はチロシン(Y)であり、好ましくは各Xがプロリン又はチロシンであり、より好ましくは前記酸化還元酵素モチーフのXn又はXX部分が配列PYを含み、好ましくは酸化還元酵素モチーフが配列CPYC(配列番号23)を含む、態様1~6のいずれか1つによるペプチド。
態様8。酸化還元酵素モチーフのアミノ酸Zが塩基性アミノ酸、好ましくはH、K、R及び任意の非天然の塩基性アミノ酸からなるアミノ酸の群から選択される塩基性アミノ酸、より好ましくはH、K及びRから選択される塩基性アミノ酸であり、最も好ましくはZがH又はKである、態様1~7のいずれか1つによるペプチド。
態様9。酸化還元酵素モチーフb1)がHCPYC(配列番号24)の配列を有する、態様1~8のいずれか1つによるペプチド。
態様10。前記ペプチドが:アミノ配列HCPYCVRYFLRVPSWKITLF(配列番号25)、HCPYCVRYFLRVPCWKITLF(配列番号26)、KHCPYCVRYFLRVPSWKITLFKK(配列番号27)、KHCPYCVRYFLRVPCWKITLFKK(配列番号28)、KHCPYCVRYFLRVPSWKITLF(配列番号247)又はKHCPYCVRYFLRVPCWKITLF(配列番号248)を含むかそれからなり、好ましくはアミノ配列KHCPYCVRYFLRVPSWKITLFKK(配列番号27)を含むかそれからなる、態様1~9のいずれか1つによるペプチド。
態様11。前記T細胞エピトープがNKT細胞エピトープであり、ペプチドは12~50アミノ酸、好ましくは12~30アミノ酸の長さを有するか;又は前記T細胞エピトープがMHCクラスII T細胞エピトープであり、ペプチドは12~50アミノ酸、好ましくは12~30アミノ酸の長さを有する、態様1~10のいずれか1つによる免疫原性ペプチド。
態様12。態様1~11のいずれか1つによる免疫原性ペプチドをコードする、好ましくは単離されたデオキシリボ核酸(DNA)、プラスミドDNA(pDNA)、コードDNA(cDNA)、リボ核酸(RNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)又はその改変バージョンから選択されるポリヌクレオチド(核酸分子)、ポリヌクレオチド(核酸分子)。一部の実施形態では、前記核酸は、遺伝子療法のために使用することができる(ウイルス)ベクター若しくはプラスミドに任意選択で組み込まれた発現カセットの一部であってよいか、又は医薬及び遺伝子療法の分野で公知である技術により投与される封入されたか裸のDNA若しくはRNAの形で存在してもよい。
態様13。医薬用の態様1~11のいずれか1つによるペプチド、又は態様12によるポリヌクレオチド。
態様14。脱髄性障害の処置、その症状の改善及び/又はその予防で使用するための、態様13によるペプチド又はポリヌクレオチド。
脱髄性障害には、限定されずに以下のものが含まれる:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、中心性橋脱髄症、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、消失白質病及び風疹性精神遅滞。
好ましいものは、MOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、アドレノロイコジストロフィー、消失白質病及び風疹性精神遅滞である。より好ましい脱髄性障害は、多発性硬化症(MS)及び視神経脊髄炎(NMO)である。ある特定の実施形態では、前記MSは、Clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)から選択される。
態様15。MOGエピトープを提示するAPCに対して細胞溶解性CD4+ T細胞の集団を生成するためのin vitroの方法であって、以下の工程を含む:
- 末梢血細胞を提供する工程;
- 前記細胞を態様1~11のいずれか1つのペプチド又は態様12によるポリヌクレオチドとin vitroで接触させる工程;及び
- IL-2の存在下で前記細胞を増量する工程。
態様16。MOGエピトープを提示するAPCに対して細胞溶解性CD4+ T細胞の集団を生成するための方法であって、以下の工程を含む:
- 態様1~11のいずれか1つのペプチド又は態様12によるポリヌクレオチドの有効量を対象に投与する工程;
- 前記対象の末梢血細胞集団から前記細胞溶解性CD4+ T細胞を得る工程。
態様17。MOGエピトープを提示するAPCに対してNKT細胞の集団を生成するための方法であって、以下の工程を含む:
- 態様1~11のいずれか1つのペプチド又は態様12によるポリヌクレオチドの有効量を対象に投与する工程;
- 前記対象の末梢血細胞集団から前記NKT細胞を得る工程。
態様18。態様15、16又は17の方法によって入手できる、MOGエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
態様19。態様15、16又は17の方法によって入手できる、医薬用のMOGエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
態様20。脱髄性障害の処置、その症状の改善及び/若しくはその予防で使用するための、又は脱髄性障害の症状を低減するための、態様19による使用のための細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団。
脱髄性障害には、限定されずに以下のものが含まれる:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、中心性橋脱髄症、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、消失白質病及び風疹性精神遅滞。
好ましいものは、MOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、アドレノロイコジストロフィー、消失白質病及び風疹性精神遅滞である。より好ましい脱髄性障害は、多発性硬化症(MS)及び視神経脊髄炎(NMO)である。ある特定の実施形態では、前記MSは、Clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)から選択される。
態様21。態様1~11のいずれか1つのペプチド、態様12によるポリヌクレオチド又は態様18~20のいずれか1つのCD4+ T細胞若しくはNKT細胞、又はその任意の混合物を含む医薬組成物。
態様22。薬学的に許容される担体を任意選択で更に含み、脱髄性障害の処置、又は脱髄性障害の症状の低減、又は脱髄性障害の予防に好適な追加の有効成分を任意選択で更に含む、態様21の医薬組成物。
脱髄性障害には、限定されずに以下のものが含まれる:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、中心性橋脱髄症、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、消失白質病及び風疹性精神遅滞。
好ましいものは、MOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、アドレノロイコジストロフィー、消失白質病及び風疹性精神遅滞である。より好ましい脱髄性障害は、多発性硬化症(MS)及び視神経脊髄炎(NMO)である。ある特定の実施形態では、前記MSは、Clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)から選択される。
態様23。医薬用の態様21又は22の医薬組成物。
態様24。脱髄性障害の処置、その症状の改善及び/又はその予防で使用するための、態様23による使用のための医薬組成物。
脱髄性障害には、限定されずに以下のものが含まれる:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、中心性橋脱髄症、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、消失白質病及び風疹性精神遅滞。
好ましいものは、MOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、例えば、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、アドレノロイコジストロフィー、消失白質病及び風疹性精神遅滞である。より好ましい脱髄性障害は、多発性硬化症(MS)及び視神経脊髄炎(NMO)である。ある特定の実施形態では、前記MSは、Clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)から選択される。
態様25。対象が再発寛解MS(RRMS)を診断される、MSの処置、その症状の改善及び/又はその予防で使用するための、前記態様のいずれか1つによるペプチド、ポリヌクレオチド、CD4+ T細胞、NKT細胞又は医薬組成物。
態様26。対象が以下からなる群から選択されるHLA-DRB1*タイプを有する:HLA-DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*07:01、好ましくは対象がHLA-DRB1*15:01を有する、MSの処置、その症状の改善及び/又はその予防で使用するための、前記態様のいずれか1つによるペプチド、ポリヌクレオチド、CD4+ T細胞、NKT細胞又は医薬組成物。
態様27。対象が以下からなる群から選択されるHLAタイプを有する:HLA-DRB1*03:01及びHLA-DPB1*05:01、NMOの処置、その症状の改善及び/又はその予防で使用するための、前記態様のいずれか1つによるペプチド、ポリヌクレオチド、CD4+ T細胞、NKT細胞又は医薬組成物。
態様28。脱髄性障害、好ましくはMOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか又は悪化する脱髄性障害、最も好ましくは多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)の処置、その症状の改善及び/又はその予防のための医薬の製造のための、態様1~11のいずれか1つによる免疫原性ペプチド、態様12によるポリヌクレオチド又は態様18~20のいずれか1つのCD4+ T細胞若しくはNKT細胞、又はその任意の混合物の使用。
態様29。対象における脱髄性障害の処置、その症状の改善及び/又はその予防のための方法であって、態様1~11によるペプチド、態様12によるポリヌクレオチド又は態様18~20のいずれか1つのCD4+ T細胞若しくはNKT細胞、又はその任意の混合物を対象に提供する工程を含む方法。
態様30。前記脱髄性障害が:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、中心性橋脱髄症、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、消失白質病及び風疹性精神遅滞から選択される、態様29による方法。
好ましい実施形態では、脱髄性障害はMOG自己抗原及び/又は抗MOG抗体によって引き起こされるか悪化し、したがって以下からなる群から選択される:多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、アドレノロイコジストロフィー、消失白質病及び風疹性精神遅滞である。より好ましい実施形態では、脱髄性障害は多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)である。ある特定の実施形態では、前記MSは、Clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)から選択される。
態様31。前記対象にフマル酸化合物を投与する工程を更に含む、態様29又は30による方法。
フマル酸化合物の例は、以下の通りである:フマル酸モノメチル(MMF)、フマル酸ジメチル(DMF)、in vivoでMMFに代謝される化合物、フマル酸ジロキシメル若しくはフマル酸テピラミド等のフマル酸モノメチルプロドラッグ、又はその任意の1つ又は複数の組合せ、又はその任意の1つ又は複数の重水素化形、クラスレート、溶媒和物、互変異性体、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩、又は上述のいずれか1つの組合せ。
態様32。試料中のMOG抗原に特異的なMHCクラスII制限CD4+ T細胞を検出するためのin vitro方法であって;
- 対象試料を単離されたMHCクラスII分子及び態様1~11によるペプチド又は態様12によるポリヌクレオチドの複合体と接触させる工程;
- 前記複合体の前記試料中の細胞との結合を測定することによってCD4+ T細胞を検出する工程であって、複合体の細胞への結合は前記試料中のCD4+ T細胞の存在を示す工程を含む方法。
【0013】
本発明の上の及び更なる態様及び好ましい実施形態は、以下のセクションで、及び添付の請求項で記載される。添付の請求項の主題は、この明細書にこれにより具体的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】P1~P5の免疫原性ペプチドの酸化還元活性の動態を示す図である。DTTは陽性対照として使用され、ブランクはアッセイ緩衝液を表す。結果は、相対蛍光単位(RFU)で表す。アッセイは、実施例のセクションで詳細に記載される。
図2】P1~P5ペプチドのHLA-DR3(DRB1*03:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図3】P1~P5ペプチドのHLA-DR4(DRB1*04:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図4】P1~P5ペプチドのHLA-DR15(DRB1*15:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図5】P1、P6及びP7ペプチドのHLA-DR3(DRB1*03:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図6】P1、P6及びP7ペプチドのHLA-DR4(DRB1*04:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図7】P1、P6及びP7ペプチドのHLA-DR15(DRB1*15:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図8】P4及びP8~P11ペプチドのHLA-DR3(DRB1*03:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図9】P4及びP8~P11ペプチドのHLA-DR4(DRB1*04:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図10】P4及びP8~P11ペプチドのHLA-DR15(DRB1*15:01 MHC II)タンパク質への結合を示す図である。減少する蛍光シグナル(RFU)は、ビオチン標識高親和性対照ペプチドとの競合の後に生じ、Eu3+ストレプトアビジン相互作用によって明らかにされた用量依存的関係を実証する。
図11】患者MS017(S9)、MS022(S10)及びMS027(S12)のCD4+細胞株について、P2ペプチドに特異的なエフェクター細胞(CD154+)の頻度(S、刺激)を示す図である。
図12】MS026 CD4+細胞株(S11)の培養上清中のP2によって誘導されたサイトカイン(IL-5及びIL-13)の特異的分泌を示す図である。
図13】患者MS017(S12)、MS020(S7)、MS021(S9)、MS024(S7)、MS026(S12)、MS027(S12)、MS028(S11)及びMS029(S9)のCD4+細胞株について、P4ペプチドに特異的なエフェクター細胞(CD154+)の頻度(S、刺激)を示す図である。
図14】患者MS017(S9)及びMS020(S10)のCD4+細胞株について、P4ペプチドに特異的なエフェクター細胞(CD154+)及びFasリガンドを発現するエフェクター細胞(CD154+/FasL+)の頻度(S、刺激)を示す図である。
図15】MS017(S15)、MS024(S20)及びMS026(S14)CD4+細胞株の培養上清中のP4によって誘導されたサイトカイン(IL-5)の特異的分泌を示す図である(S、刺激)。
図16】患者MS017(S14)及びMS026(S13)のCD4+細胞株について、P4ペプチド及びその対応する短いC-WTエピトープ(DPHFLRVPCWKITLFKK、配列番号29)に特異的なエフェクター細胞(CD154+)の頻度を示す図である(S、刺激)。
図17】患者MS024(S20)、MS017(S9)、MS026(S13)、MS028(S11)及びMS029(S9)のCD4+細胞株について、P4ペプチド及びその対応する短いS-WTエピトープ(KLHRTFDPHFLRVPSWKITLFK、配列番号253)に特異的なエフェクター細胞(CD154+)の頻度を示す図である(S、刺激)。
図18】MS017(S15)CD4+細胞株の培養上清中のP4ペプチド並びにその対応する短いC-WTエピトープ(DPHFLRVPCWKITLFKK、配列番号29)及び長いC-WTエピトープ(QYRLRGKLRAEIENLHRTFDPHFLRVPCWKITLFVIVPVLGP、配列番号30)によって誘導されたサイトカイン(IL-5)の特異的分泌を示す図である(S、刺激)。
図19】MS017(S12)及びMS024(S20)CD4+細胞株の培養上清中のP4ペプチド並びにその対応する短いS-WTエピトープ(KLHRTFDPHFLRVPSWKITLFK、配列番号253)によって誘導されたサイトカイン(IL-5)の特異的分泌を示す図である(S、刺激)。
図20】P4ペプチド又はその対応する短いS-WTエピトープ(KLHRTFDPHFLRVPSWKITLFK、配列番号253)を加えた標識自家LCLを、患者MS017(S7)、MS026(S12)、MS028(S11)及びMS029(S9)のP4特異的CD4+細胞株と共培養したときの、特異的LCLアポトーシスのパーセンテージを示す図である(S、刺激)。
図21】7日目から28日目まで毎日実行した臨床EAEスコアリング(0~5)の盲検化評価を示す図である。0日目にEAEを誘導するためにマウスにMOG35~55を注射し、未処置のままにしたか、IMCY-0189又はP4で治療的に処置した(詳細についてはtable 2(表2)を参照する)。各群のマウスについて平均臨床スコアを毎日決定した。
図22】各群のマウスの図21に示すEAEスコアから計算されたAUCを示す図である。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図23】各群のマウスの図21に示すEAEスコアから計算されたMMSを示す図である。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図24】table 2(表2)に示す各群のマウスの炎症レベルを示す図である。各H&E染色切片で概ね20細胞の炎症性病巣を数えた。炎症性浸潤巣が20を超える細胞からなったとき、20細胞のどれくらいの病巣が存在していたかについて推定した。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図25】table 2(表2)に示す各群のマウスの脱髄レベルを示す図である。脱髄は、各抗MBP(免疫組織化学を使用して)染色切片で評価した。脱髄スコアは、各切片の脱髄領域の推定値を表す。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図26】table 2(表2)に示す各群のマウスの血清ニューロフィラメントレベルを示す図である。Neurofilament light(NF-L)タンパク質レベルは、NF-light Simoa(登録商標)アッセイアドバンテージキットを通してQuanterix(商標)で定量化した。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図27】4日目から43日目まで毎日実行した臨床EAEスコアリング(0~5)の盲検化評価を示す図である。マウスをIMCY-0189で予防的に免疫化したか又は免疫化せず、次に0日目にEAEを誘導するためにMOG35~55を注射し、IMCY-0189で再び免疫化したか又は免疫化しなかった(詳細はtable 4(表4)を参照する)。各群のマウスについて平均臨床スコアを毎日決定した。
図28】各群のマウスの図27に示すEAEスコアから計算されたAUCを示す図である。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図29】各群のマウスの図27に示すEAEスコアから計算されたMMSを示す図である。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図30】table 4(表4)に示す各群のマウスの炎症レベルを示す図である。各H&E染色切片で概ね20細胞の炎症性病巣を数えた。炎症性浸潤巣が20を超える細胞からなったとき、20細胞のどれくらいの病巣が存在していたかについて推定した。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図31】table 4(表4)に示す各群のマウスの脱髄レベルを示す図である。脱髄は、各抗MBP(免疫組織化学を使用して)染色切片で評価した。脱髄スコアは、各切片の脱髄領域の推定値を表す。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図32】table 4(表4)に示す各群のマウスの血漿ニューロフィラメントレベルを示す図である。Neurofilament light(NF-L)タンパク質レベルは、NF-light Simoa(登録商標)アッセイアドバンテージキットを通してQuanterix(商標)で定量化した。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は特定の実施形態に関して記載されるが、本発明はそれに限定されず、請求項によって限定されるだけである。請求項の中のいかなる参照符号も、請求範囲を限定するものと解釈されるべきでない。以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためにだけ提供される。本明細書で特記されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、それらが本発明の分野の当業者にとってのものと同じ意味を有する。本明細書で提供される定義は、当業者が理解するもの未満の請求範囲を有するものと解釈されるべきでない。
【0016】
別途指示されない限り、具体的に詳細に記載されない全ての方法、工程、技術及び操作は、当業者に明らかになるように、それ自体公知の様式で実行することができ、及び実行されている。例えば標準のハンドブック、上で言及した一般的な背景技術、及びその中の更なる引用文献に再び言及される。
【0017】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別途指図しない限り、単数及び複数の両方の指示を含む。用語「任意の」は、本明細書で使用される通り、態様、請求項又は実施形態に関して使用される場合、任意の単一のもの(すなわち誰か)、並びに、言及される前記態様、請求項又は実施形態の全ての組合せを指す。
【0018】
本明細書で使用される用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバーも、要素も、方法工程も排除しない。前記用語は、実施形態「事実上からなる」及び「からなる」も包含する。
【0019】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲の中に包含される全ての数字及び分数、並びに列挙されるエンドポイントを含む。
【0020】
測定可能な値、例えばパラメータ、量、期間等を指す場合に本明細書で使用される用語「約」は、そのような変動が開示される発明で実行するのに適当である限り、指定値の及びそれから+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含するものである。修飾子「約」が指す値は、それ自体も具体的に、及び好ましくは開示されることを理解すべきである。
【0021】
本明細書で使用されるように、「疾患の処置で使用するための組成物」で使用される用語「使用するための」は、対応する処置方法、及び疾患の処置のための医薬の製造のための調製物の対応する使用も開示するものとする。
【0022】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結される9~200アミノ酸のアミノ酸配列を含む分子を指すが、それは非アミノ酸構造、合成アミノ酸又は改変アミノ酸を含むことができる。
【0023】
本発明によるペプチドは、タンパク原性及び/又は非タンパク原性アミノ酸を含有することができる。前記ペプチドは、従来の20アミノ酸若しくはその改変バージョンのいずれかを含有することができるか、又は、化学的ペプチド合成によって若しくは化学的若しくは酵素的改変によって組み込まれる天然に存在しないアミノ酸を含有することができる。
【0024】
本明細書で使用される用語「抗原」は、巨大分子、一般的にはタンパク質(多糖の有無にかかわらず)の、又は1つ又は複数のハプテンを含み、T細胞エピトープを含むタンパク質性の組成物で作製される構造を指す。
【0025】
本明細書で使用される用語「抗原性タンパク質」は、1つ又は複数のT細胞エピトープを含むタンパク質を指す。本明細書で使用される自己抗原又は自己抗原性タンパク質は、体内に存在するヒト又は動物タンパク質を指し、それは同じヒト又は動物の体の中で免疫応答を導き出す。
【0026】
用語「エピトープ」は、抗原性タンパク質の1つ又はいくつかの部分(コンホメーション依存エピトープを規定することができる)を指し、それは、抗体又はその部分(Fab'、Fab2'等)又はB若しくはT細胞リンパ球の細胞表面に提示される受容体が特異的に認識、結合し、それは、前記結合によって免疫応答を誘導することができる。
【0027】
本発明との関連で、用語「T細胞エピトープ」は、優勢、亜優勢又は劣勢のT細胞エピトープ、すなわち、T又はNKT細胞の細胞表面における受容体によって特異的に認識及び結合される抗原性タンパク質の部分を指す。エピトープが優勢、亜優勢又は劣勢であるかどうかは、エピトープに対して導き出される免疫反応に依存する。優勢は、タンパク質の全ての可能なT細胞エピトープの中で、そのようなエピトープがT又はNKT細胞によって認識され、それらを活性化することができる頻度に依存する。
【0028】
本発明との関連で、T細胞エピトープはMHCクラスII分子によって認識されてCD4+ T細胞に提示されるエピトープであってよいか、又はCD1d分子によって認識されてNKT細胞に提示されるエピトープであってよい。
【0029】
MHCクラスII分子によって認識されるエピトープは、MHC II分子の溝にはめ込まれる+/-9アミノ酸の配列を一般的に含むか又はそれからなる。T細胞エピトープを表すペプチド配列の中で、エピトープのアミノ酸はP1~P9と番号付けされ、エピトープのN末端のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。MHCクラスII分子によって認識され、MHCクラスI分子によって認識されないペプチドは、MHCクラスII限定T細胞エピトープと呼ばれる。
【0030】
用語「MHC」は、「主要組織適合抗原」を指す。ヒトでは、MHC遺伝子はHLA(「ヒト白血球抗原」)遺伝子として知られる。一貫して追従される規則はないが、一部の文献ではHLAタンパク質分子を指すのにHLAを使用し、HLAタンパク質をコードする遺伝子を指すのにMHCを使用する。このように、本明細書で使用する場合、用語「MHC」及び「HLA」は同等物である。ヒトのHLA系は、マウスでのその同等物、すなわちH2系を有する。最も熱心に研究されたHLA遺伝子は、9つのいわゆる古典的MHC遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA DQB1、HLA-DRA及びHLA-DRB1である。ヒトでは、MHCは3つの領域:クラスI、II及びIIIに分類される。A、B及びC遺伝子はMHCクラスIに属すが、6つのD遺伝子はクラスIIに属する。MHCクラスI分子は、細胞表面でベータ-2-ミクログロブリンと会合する、3つのドメイン(アルファ1、2及び3)を含有する単一の多形鎖で構成される。クラスII分子は、2つの鎖(アルファ1及び2、並びにベータ1及び2)を各々含有する、2つの多形鎖で構成される。クラスI MHC分子は、事実上全ての有核細胞で発現される。HLA系はメンデル方式で遺伝するので、HLA系列の遺伝子又はハプロタイプは所与の集団の対象において区別することができる。
【0031】
一般的に、本開示のペプチドは、WO2017182528で開示される先行技術のペプチドより大いに高い親和性によりHLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01への向上した結合を有する。したがって、脱髄性障害を患っている患者の好ましいHLAタイプは、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01からなる群から選択される。全世界のMS患者集団では、約50%~60%はHLA-DRB1*タイプ15:01を有する。更に、MS患者集団の75%以上は、HLA-DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01又はHLA-DRB1*07:01タイプのHLAを有する。したがって、本発明を考慮したMS患者の好ましいHLAタイプは、以下からなる群から選択される:DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*07:01。HLA-DRB1*タイプ15:01を有するMS患者がより好ましい。以下からなる群から選択されるHLAタイプを有するRRMSを診断されたMS患者が更に好ましい:DRB1*15:01、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*07:01。HLAタイプHLA-DPB1*15:01を有するRRMSを診断されたMS患者が更に好ましい。したがって、本発明でNMO患者の好ましいHLAハプロタイプはHLA-DRB1*03:01及びHLA-DPB1*05:01であり、より好ましくはHLA-DRB1*03:01である。クラスI MHC分子との関連で提示されるペプチド断片は、CD8+Tリンパ球(細胞溶解性Tリンパ球又はCTL)によって認識される。CD8+ Tリンパ球は、刺激性抗原を有する細胞を溶解することができる細胞溶解性エフェクターに頻繁に成熟する。クラスII MHC分子は活性化リンパ球及び抗原提示細胞の上で主に発現される。CD4+ Tリンパ球(ヘルパーTリンパ球又はTh)は、マクロファージ又は樹状細胞のような抗原提示細胞の上で通常見出されるクラスII MHC分子によって提示される特異なペプチド断片の認識で活性化される。CD4+ Tリンパ球は増殖し、抗体媒介及び細胞媒介の応答を支持するIL-2、IFN-ガンマ及びIL-4等のサイトカインを分泌する。
【0032】
機能的HLAは、内因性並びに外来の、潜在的に抗原性のペプチドが結合する深い結合溝によって特徴付けられる。溝は、明確な形状及び物理化学的性質によって更に特徴付けられる。ペプチド末端が溝の末端にピン留めされるという点で、HLAクラスI結合部位は閉鎖的である。それらは、保存されたHLA残基との水素結合のネットワークにも関与する。これらの制限を考慮すれば、結合するペプチドの長さは8、9又は10残基に限定される。しかし、最高12アミノ酸残基のペプチドもHLAクラスIに結合することが可能であることが実証された。異なるHLA複合体の構造の比較は、ペプチドが比較的直線状の伸長した立体配置を採用するか又は溝からはみ出る中央の残基を含むことができる、結合の一般様式を確認した。
【0033】
HLAクラスI結合部位と対照的に、クラスII部位は両端が開放的である。これは、ペプチドが実際の結合領域から伸長し、それによって両端で「張り出す」ことを可能にする。したがって、クラスII HLAは、7、8又は9から25を超えるアミノ酸残基の様々な長さのペプチドリガンドに結合することができる。HLAクラスIに類似して、クラスIIリガンドの親和性は「定常」及び「可変」構成要素によって決定される。定常部分は、HLAクラスII溝の中の保存された残基と結合したペプチドの主鎖の間で形成される水素結合のネットワークから再びもたらされる。しかし、この水素結合パターンはペプチドのN-及びC末端残基に制限されず、全鎖に分布する。後者は、それが複合型ペプチドの立体配置を厳密に直線状の様式の結合に制限するので重要である。これは、全てのクラスIIアロタイプに共通する。ペプチドの結合親和性を決定する第2の構成要素は、クラスII結合部位の中の多型のある特定の位置のために変動する。異なるアロタイプは溝の中に異なる相補的ポケットを形成し、それによって、ペプチドのサブタイプ依存性選択又は特異性を説明する。重要なことに、クラスIIポケットの中に保持されるアミノ酸残基への制約は、クラスIの場合より一般に「ソフト」である。異なるHLAクラスIIアロタイプの間に、ペプチドの大いにより多くの交差反応性がある。MHC II分子の溝にフィットするMHCクラスII T細胞エピトープの+/-9アミノ酸(すなわち8、9又は10)の配列は、通常P1~P9と番号付けされる。エピトープのN末端の追加のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端側のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。
【0034】
CD1d分子によって認識されるエピトープは、Tリンパ球、特にNKT細胞の細胞表面で受容体が特異的に認識して結合する抗原性タンパク質の一部を指す。CD1d分子によって認識されるエピトープは、CD1d分子の溝にはめ込まれる+/-7アミノ酸の配列を一般的に含むか又はそれからなる。一般的に、NKT細胞エピトープは疎水性である。CD1d分子の構造は、CD1d割れ目の末端に位置する2つの疎水性ポケットを占めるために疎水性アミノ酸残基を必要とすること、及び脂肪族残基が割れ目の中央の位置を占めるべきであることを示す。したがって、CD1d結合配列の一般的であるが限定するものでない例として、[FWHY]が、F、W、H又はYが第1のアンカー残基(P1)を占めることができること、P4位置をI、L、M又はVが占めることができること、及びP7をF、W、H又はYが占めることができることを示す場合、モチーフ[FWHY]-xx-[ILMV]-xx-[FWHY](配列番号147)を使用することができる。この一般的なモデルモチーフの「x」は、任意のアミノ酸を表す。特定の実施形態では、一般的なモデルモチーフは、配列[FW]-xx-[ILM]-xx-[FW](配列番号148)によって、好ましくは配列[FW]-xx-[ILM]-xx-[W](配列番号149)によって規定することができる。
【0035】
用語「NKT細胞」は、それらがNK1.1及びNKG2D等の受容体を有し、CD1d分子によって提示されるエピトープを認識するという事実によって特徴付けられる先天性免疫系の細胞を指す。本発明との関連で、NKT細胞は、1型(不変異体)若しくは2型サブセットに、又は1型若しくは2型NKT細胞より多形性であるT細胞受容体を有するより特徴付けられていないNKT細胞のいずれかに属することができる。自己免疫疾患における、又は同種因子若しくはアレルゲンに対する免疫応答の制御におけるNKT細胞の関与は、いくつかの機会に報告されている(Jahngら、Journal of experimental Medicine 199:947~957頁、2004年;Van Belle及びvon Herrath、Molecular Immunology 47:8~11頁、2009年)が、記載するのが比較的困難である。本発明との関連で、CD1d分子がペプチドを提示することができることを予想外に観察した。CD1d分子の特徴は、2つの抗パラレルベータ鎖でできているプラットホームの上にある割れ目を形成する2つの抗パラレルアルファ鎖でできていることである。割れ目は狭くて深く、古典的に脂質だけであると考えられる疎水性残基だけを受け入れる。実際、疎水性残基を有するペプチドは、CD1dの割れ目に結合する能力を有する。その上、割れ目は両側が開放的であるので、7アミノ酸より長いペプチドを収容することができる。CD1dモチーフを有する疎水性ペプチドは自己抗原、同種因子及びアレルゲンで見出され、それによって、CD4+ NKT細胞を活性化する能力を前記自己抗原、同種因子又はアレルゲンに与える。前記自己抗原、同種因子又はアレルゲンを提示する細胞を死滅させることによる直接的な排除は、これらの抗原/因子に対して免疫応答を開始する能力を排除する。
【0036】
用語「CD1d分子」は、両側が開放されてNKT細胞に脂質、糖脂質又は疎水性ペプチドを提示することが可能な、深い疎水性の溝に配置される3つのアルファ鎖及びベータ鎖の抗パラレルセットで作製される非MHC由来の分子を指す。用語「免疫障害」又は「免疫疾患」は、免疫系の反応が生物体における機能不全又は非生理的状況の責任を負うか又は維持する疾患を指す。
【0037】
本発明との関連で使用されるエピトープに関して本明細書で使用される用語「相同体」は、天然に存在するエピトープと少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有し、それによって抗体又はB及び/又はT細胞の細胞表面受容体に結合するエピトープの能力を維持する分子を指す。エピトープの特定の相同体は、多くても3つ、特に多くても2つ、特に1つのアミノ酸で改変される天然のエピトープに対応する。
【0038】
本発明のペプチドに関して本明細書で使用される用語「誘導体」は、少なくともペプチド活性部分(すなわち、酸化還元モチーフ及び細胞溶解CD4+ T細胞活性を導き出すことが可能なMHCクラスIIエピトープ)を含有し、及び、それに加えてペプチドを安定させるか又はペプチドの薬物動態学的若しくは薬力学的特性を変更すること等の異なる目的を有することができる相補部分を含む分子を指す。
【0039】
本明細書で使用される、2つの配列の「配列同一性」という用語は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2つの配列を整列させたときの短い方の配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸の数で割り算したものに関する。特に、配列同一性は70%~80%、81%~85%、86%~90%、91%~95%、96%~100%、又は100%である。
【0040】
本明細書で使用される用語「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」及び「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」は、適当な環境で発現されるとき、関連するペプチド配列又はその誘導体若しくは相同体の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのようなポリヌクレオチド又は核酸には、そのペプチドをコードする正常な配列、並びに要求される活性を有するペプチドを発現することが可能であるこれらの核酸の誘導体及び断片が含まれる。本発明によるペプチド又はその断片をコードする核酸は、哺乳動物を起源とするか、又は哺乳動物、特にヒトのペプチド断片に対応するペプチド又はその断片をコードする配列である。そのようなポリヌクレオチド又は核酸分子は、自動シンセサイザー及び遺伝子コードの周知のコドン-アミノ酸関係を使用して容易に調製することができる。そのようなポリヌクレオチド又は核酸は、ポリヌクレオチド又は核酸の発現、及び細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母細胞、ヒト細胞、動物細胞又は植物細胞等の好適な宿主でのポリペプチドの生成のために適合させた、プラスミドを含む発現ベクターに組み込むことができる。治療手段のために、本明細書に開示される免疫原性ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ウイルス及び非ウイルス性の発現系等の発現系、カセット、プラスミド又はベクター系の一部であってよい。治療目的のための公知のウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス及びレトロウイルスである。非ウイルス性のベクターを使用することもでき、非限定的な例には以下のものが含まれる:Sleeping Beauty(SB)又はPiggyBac(PB)に由来するそれら等のトランスポゾンをベースとしたベクター系。核酸は、他の担体、例えば、限定されずにナノ粒子、カチオン性脂質、リポソーム等によって送達することもできる。
【0041】
用語「免疫障害」又は「免疫疾患」は、免疫系の反応が生物体における機能不全又は非生理的状況の責任を負うか又は維持する疾患を指す。免疫障害には、とりわけ、アレルギー性障害及び自己免疫性疾患が含まれる。
【0042】
用語「自己免疫性疾患」又は「自己免疫性障害」は、生物体がそれ自身の構成成分部分を「自己」として認識する(分子未満のレベルまで)ことができないことによる、それ自身の細胞及び組織に対する生物体の異常な免疫応答からもたらされる疾患を指す。疾患の群は、2つのカテゴリー(臓器特異的で全身性疾患)では分裂され得る。「アレルゲン」は、素因のある、特に遺伝的に素因のある個体(アトピー性)患者において、lgE抗体の生成を導き出す物質、通常巨大分子又はタンパク質性組成物として定義される。同様の定義が、Liebersら(1996)Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁に提示されている。
【0043】
本明細書で使用される用語「脱髄」は、結果として病巣又はプラークの形成をもたらすニューロンの軸索を囲むミエリン鞘の損傷及び/又は分解を指す。ミエリンは、脳、視神経及び脊髄の神経線維を囲んでいる防御的カバーとして作用するものと理解される。脱髄のために、影響を受けた神経に沿ったシグナル伝達が損なわれ(すなわち遅くなるか停止される)、感覚、運動、認知及び/又は他の神経機能の欠損等の神経症状を引き起こす場合がある。脱髄疾患患者が患う具体的な症状は、疾患及び疾患の進行状態によって異なる。これらには、かすみ目及び/又は複視、運動失調、クローヌス、構音障害、疲労、ぎこちなさ、手麻痺、片側不全麻痺、生殖器知覚麻痺、協調運動障害、感覚異常、目の麻痺、筋肉協調の障害、筋力低下、感覚喪失、視力障害、神経症状、不安定な歩行(歩調)、痙攣性不全対麻痺、失禁、難聴、言語障害及び他を含めることができる。
【0044】
したがって、本明細書で使用され、当技術分野で一般的に使用される「脱髄性疾患」又は「脱髄性障害」は、ニューロンのミエリン鞘の障害、例えば損傷を含む、神経系の任意の病態を示す。脱髄性疾患は、中枢神経系の脱髄性疾患及び末梢神経系に層化することができる。或いは、脱髄性疾患は脱髄の原因によって分類することができる:ミエリンの破壊(脱髄性ミエリン分解)又は異常な変性ミエリン(ミエリン形成異常白質ジストロフィー)。脱髄性疾患の非限定的な例は、多発性硬化症(MS)-(例えば、再発/寛解多発性硬化症、二次性進行性多発性硬化症、進行性再発性多発性硬化症、原発性進行性多発性硬化症及び急性劇症多発性硬化症)、視神経脊髄炎(NMO)、視神経炎、急性散在性脳脊髄炎、バロー病、HTLV-I関連ミエロパシー、シルダー病、横断性脊髄炎、特発性炎症性脱髄性疾患、ビタミンB12誘導中枢神経系神経障害、橋中央ミエリン溶解、脊髄癆を含むミエロパシー、アドレノロイコジストロフィー等のロイコジストロフィー、進行性多病巣性白質脳症(PML)等の白質脳症、及び風疹性精神遅滞である。上で指摘した注解のいくつかは、分子レベルで異常なプロセスの同一若しくは類似のセット及び/又は(臨床)症状の同一若しくは類似のセットで特徴付けられる一群の疾患を示す一般的な分類名であることを、当業者は理解する。脱髄性障害を有するヒト患者は、脱髄性障害の1つ又は複数の症状、例えば、限定されずに、視覚障害、麻痺、四肢脱力、振戦若しくは痙縮、熱不耐性、言語障害、失禁、めまい又は自己受容(例えば、平衡、協調、四肢位置の感覚)障害を有することができる。脱髄性障害の家族歴(例えば、脱髄性障害の遺伝的素因)をもつか、又は上記の脱髄性障害の軽度であるかまれな症状を示すヒト(例えば、ヒト患者)は、本方法のために、脱髄性障害(例えば、多発性硬化症)を起こす危険があるとみなすことができる。本開示との関連で好ましい脱髄性疾患は、多発性硬化症(MS)又は視神経脊髄炎(NMO)を限定されずに含む、MOG自己抗原によって引き起こされるか又は抗MOG抗体が関与するものである。
【0045】
本明細書及び当技術分野で「MS」と略される用語「多発性硬化症」は、中枢神経系に影響を及ぼす自己免疫性障害を示す。MSは、若齢成人で最も一般的な非外傷性障害性疾患(Dobson及びGiovannoni、(2019) Eur. J. Neurol. 26(1)、27~40頁)、及び中枢神経系に影響を及ぼす最も一般的な自己免疫性障害(Berer及びKrishnamoorthy (2014) FEBS Lett. 588(22)、4207~4213頁)とみなされる。MSは、中枢神経系の脱髄性障害と当技術分野でみなされる(Lubetzki及びStankoff。(2014). Handb Clin Neurol. 122、89-99頁)。MSは、精神的より身体的なものから精神医学的な問題にわたる多数の異なる症状で対象において現れることができる。一般的な症状には、かすみ目又は複視、筋力低下、片目の失明並びに協調及び感覚の問題が含まれる。ほとんどの場合、MSは、再発寛解型疾患並びに非再発性進行、すなわち二次性及び原発性進行性のMSを引き起こす遅延型の神経変性を担う初期の炎症による二段階疾患と見ることができる。この分野で進歩は見られるが、疾患の決定的な根底にある原因はこれまで捉えどころのないままであり、150以上の一塩基多型がMS感受性と関連付けられている(International Multiple Sclerosis Genetics Consortium Nat Genet. (2013). 45(11):1353~60頁)。ビタミンD欠乏症、喫煙、紫外線B(UVB)曝露、小児肥満及びEBウイルス感染症が疾患の発生に寄与することが報告されている(Ascherio (2013) Expert Rev Neurother. 13(12 Suppl)、3~9頁)。
【0046】
したがって、MSは、再発性(炎症が優占的特徴である)から進行性(神経変性が優占)にわたる範囲に存在する単一の疾患と考えることができる。したがって、本明細書で使用される用語多発性硬化症は、任意の種類の疾患経過分類に属する任意の種類の多発性硬化症を包含することが明白である。特に、本発明は、clinically Isolated Syndrome(CIS)、再発寛解MS(RRMS)、二次性進行性MS(SPMS)、原発性進行性MS(PPMS)、急性劇症多発性硬化症及びMSを疑われるradiology isolated syndrome(RIS)さえも診断されるか又はそれを有することが疑われる患者のための強力な処置戦略であると想定される。厳密にはMSの疾患経過と考えられていないが、脳及び/又は脊髄の磁気共鳴画像化(MRI)により、MS病巣に対応し、他の診断によって明白に説明することができない異常を示す対象を分類するためにRISが使用される。CISは、中枢神経系の炎症及び脱髄によって引き起こされる神経症状の最初の発症(定義上、 24時間以上持続する)である。RISにより、CISで分類される対象はMSを発症し続けてもしなくてもよく、脳MRIでMS様病巣を示す対象はMSを起こす可能性がより高い。RRMSはMSの最も一般的な疾患経過であり、MSを有する対象の85%はRRMSを診断される。RRMSを診断される患者は、本発明からみて好ましい患者群である。RRMSは、再発又は増悪と代わりに言い表される、新規の又は増加する神経症状の発作によって特徴付けられる。RRMSでは、前記再発の後に症状の部分的又は完全寛解の期間が続き、これらの寛解期間中に疾患進行は起こらず、及び/又は観察されない。RRMSは、活性RRMS(再発及び/又は新規のMRI活性の証拠)、非活性RRMS、悪化するRRMS(再発の後の特定期間の間の能力障害の増加)、又は悪化しないRRMSと更に分類することができる。RRMSを診断される対象の一部はSPMS疾患経過に進行するが、それは経時的な神経機能の進行性の悪化、すなわち能力障害の蓄積によって特徴付けられる。SPMSは、活性(再発及び/又は新規のMRI活性)、非活性、進行性(経時的な疾患悪化)又は非進行性のSPMS等に下位分類をすることができる。最後に、PPMSは、初期の再発も寛解もない神経機能の悪化、及びしたがって症状の開始からの能力障害の蓄積によって特徴付けられるMS疾患経過である。更なるPPMSサブグループ、例えば活性PPMS(時折の再発及び/又は新規のMRI活性)、非活性PPMS、進行性PPMS(新規のMRI活性に関係なく経時的な疾患悪化の証拠)及び非進行性PPMSを形成することができる。一般に、MSの疾患経過は、再発及び寛解期間に関する、重症度(再発の場合)及び持続期間における、実質的な対象間の変動性によって特徴付けられる。
【0047】
いくつかの疾患緩和療法がMSで利用可能であり、したがって、本発明は代替処置戦略として、又はこれらの既存の療法と一緒に使用することができる。活性医薬成分の非限定的な例には、フマル酸化合物、インターフェロンベータ-1a、インターフェロンベータ-1b、酢酸グラチラマー、酢酸グラチラマー、ペグインターフェロンベータ-1a、テリフルノミド、フィンゴリモド、クラドリビン、シポニモド、オザニモド、アレムツズマブ、ミトキサントロン、オクレリズマブ及びナタリズマブが含まれる。フマル酸化合物の例は、以下の通りである:フマル酸モノメチル(MMF)、フマル酸ジメチル(DMF)、in vivoでMMFに代謝される化合物、フマル酸ジロキシメル若しくはフマル酸テピラミド等のフマル酸モノメチルプロドラッグ、又はその任意の1つ又は複数の組合せ、又はその任意の1つ又は複数の重水素化形、クラスレート、溶媒和物、互変異性体、立体異性体若しくは薬学的に許容される塩、又は上述のいずれか1つの組合せ。或いは、本発明は、再発管理を目指す処置又は投薬、例えば、限定されずにメチルプレドニゾロン、プレドニゾン及び副腎皮質ホルモン(ACTH)と一緒に使用することができる。更に、本発明は、特異的症状の緩和を目指す療法と一緒に使用することができる。非限定的な例には、以下からなる群から選択される症状の改善又は回避を目指す投薬が含まれる:膀胱の問題、腸機能障害、うつ病、めまい、眩暈、感情の変化、疲労、かゆみ、疼痛、性的問題、痙縮、振戦及び歩行困難。
【0048】
MSは、3つの絡み合う特質によって特徴付けられる:1)中枢神経系での病巣形成、2)炎症、及び3)ニューロンのミエリン鞘の分解。中枢神経系及び白質の脱髄疾患と従来みなされていたにもかかわらず、皮質及び深部の灰白質の脱髄が白質の脱髄を超える可能性があるというより近年の報告書が現れている(Kutzelniggら(2005)。Brain. 128(11)、2705~2712頁)。MSが分子レベルでどのように引き起こされるかについて、2つの主な仮説が仮定されている。一般的に受け入れられている「裏返し仮説」は、中枢神経系に移動して疾患プロセスを開始する末梢自己反応性エフェクターCD4+ T細胞の活性化に基づく。中枢神経系に一旦入ると、前記T細胞はAPCによって局所的に再活性化され、追加のT細胞及びマクロファージを動員して炎症性病巣を確立する。注目すべきことに、MS病巣は病巣の縁に大部分見出されるCD8+ T細胞、及び病巣のより中央で見出されるCD4+ T細胞を含有することが示された。これらの細胞は脱髄、希突起膠細胞破壊及び軸索傷害を引き起こすと考えられ、神経機能障害につながる。更に、炎症を制限し、修復を開始するために免疫調節ネットワークが誘発され、それは臨床寛解によって反映される少なくとも部分的な再ミエリン化をもたらす。それにもかかわらず、十分な処置なしでは、更なる攻撃が疾患の進行にしばしばつながる。
【0049】
患者のMRIでの見かけ上より古く、不活性な病巣の典型的な発生によって立証されるように、MSの開始は最初の臨床症状が検出されるよりかなり前に始まると考えられている。診断方法の開発の前進により、MSは疾患の臨床症状の前でさえも今や検出することができる(すなわち前症候的MS)。本発明との関連で、「MSの処置」及び類似の表現は、症候的及び前症候的なMSの処置及び処置戦略を想定する。特に、免疫原性ペプチド及び/又は生じた細胞溶解性CD4+ T細胞が前症候的MS患者を処置するために使用される場合、臨床症状を部分的に、又は完全にさえ回避することができるような初期に疾患は止められる。
【0050】
用語「視神経脊髄炎」又は「NMO」及び「NMOスペクトル障害(NMOSD)」、別名、「ドヴィック病」は、白血球及び抗体が視神経及び脊髄を主に攻撃するが、脳を攻撃することもある自己免疫性障害を指す(Wingerchuk 2006年、Int MS J. 2006年5月;13(2):42~50頁でレビューされる)。視神経への傷害は疼痛及び視力喪失を引き起こす腫脹及び炎症をもたらし;脊髄への傷害は脚又は腕の脱力又は麻痺、感覚喪失並びに膀胱及び腸機能の問題を引き起こす。NMOは、再発寛解型疾患である。再発の間、視神経及び/又は脊髄への新規の傷害は、能力障害の蓄積につながることがある。MSと異なり、この疾患の進行相はない。したがって、攻撃を阻止することは、優れた長期成果にとって決定的である。抗MOG抗体と関連する場合では、抗MOG抗体は脱髄をもたらすミエリン鞘への攻撃を誘発することがあると考えられる。大半の場合でのNMOの原因は、自己抗原への特異的攻撃による。対象の最高1/3は、ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)と呼ばれるミエリンの成分に対する自己抗体に陽性である可能性がある。抗MOG関連のNMOを有する者は、横断性脊髄炎及び視神経炎の発症を同様に有する。
【0051】
用語「治療的有効量」は、患者で所望の治療的又は予防的効果をもたらす本発明のペプチド又はその誘導体の量を指す。例えば、疾患又は障害に関して、それは、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度低減する量、特に、疾患又は障害に関連するかそれを引き起こす生理的又は生化学的パラメータを部分的又は完全に正常に戻す量である。一般的に、治療的有効量は、正常な生理的状況の改善又は復旧へ導く、本発明のペプチド又はその誘導体の量である。例えば、免疫障害によって侵された哺乳動物を治療的に処置するために使用される場合、それは前記哺乳動物の体重1kg当たりの1日量のペプチドである。或いは、投与が遺伝子療法による場合、裸のDNA又はウイルスベクターの量は、本発明のペプチド、その誘導体又は相同体の妥当な投薬量の局所生成を確実にするように調整される。
【0052】
ペプチドを指す場合の用語「天然」は、配列が天然に存在するタンパク質(野生型又は突然変異体)の断片と同一であるという事実に関する。それと対照的に、用語「人工」は、そのように天然に存在しない配列を指す。人工配列は、限定的な改変、例えば天然に存在する配列の中で1つ又は複数のアミノ酸を変更/削除/挿入することによって、又は、天然に存在する配列のN若しくはC末端でアミノ酸を付加/除去することによって天然配列から得られる。
【0053】
用語「酸化還元酵素モチーフ」、「チオール-酸化還元酵素モチーフ」、「チオレダクターゼモチーフ」、「チオレドックスモチーフ」又は「酸化還元モチーフ」は、本明細書で同義語として使用され、一般的な配列チオレダクターゼ配列モチーフC-Xn-[CST]-(配列番号91~95)又は[CST]-Xn-C-(配列番号66~70)のモチーフを指し、nは0~6の整数である。そのようなペプチドモチーフは、保存された活性ドメイン共通配列:C-Xn-[CST]-又は[CST]-Xn-C-の中の、例えば、C-XX-C(配列番号116)、C-XX-S(配列番号150)、C-XX-T(配列番号151)、S-XX-C(配列番号152)、T-XX-C(配列番号153)の中の酸化還元活性システインを通してタンパク質(酵素等)のジスルフィド結合に還元活性を発揮し(Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁)、ここで「X」は任意のアミノ酸を表し、Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xはチロシン、フェニルアラニン又はトリプトファン以外の任意のアミノ酸を表す。
【0054】
用語「システイン」、「C」、「セリン」、「S」及び「トレオニン」、「T」は、本明細書で開示される酸化還元酵素モチーフに存在するアミノ酸残基に照らして使用される場合、天然に存在するシステイン、セリン又はトレオニンアミノ酸をそれぞれ指す。別途明記されていない限り、前記用語は、したがって、化学改変されたシステイン、セリン及びトレオニン、例えばモチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基にアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基を有するように改変されたものを排除する。
【0055】
その更なる実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、T細胞エピトープのN末端に配置される。
【0056】
或いは、免疫原性ペプチドは、以下の一般的なアミノ酸式:Zm-[CST]-Xn-C-(配列番号66~90)又はZm-C-Xn-[CST]-(配列番号91~115)の形の酸化還元酵素モチーフを含有することができる
(式中、nは0~6から選択される整数であり、mは0~3から選択される整数であり、Xは任意のアミノ酸であり、Zは任意のアミノ酸であり、Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを表す)。
【0057】
好ましくは前記酸化還元酵素モチーフは、特にnが0又は1であり、mが0である場合、標準のC-XX-[CST]又は[CST]-XX-C酸化還元酵素モチーフの反復配列、例えば、1つ又は複数のアミノ酸によって互いから間隔を置くことができる前記モチーフの反復配列(例えばCXXC X CXXC X CXXC(配列番号249))、互いに隣接する反復配列(CXXCCXXCCXXC(配列番号250))、又は互いに重なる反復配列(CXXCXXCXXC(配列番号251)若しくはCXCCXCCXCC(配列番号252))の一部でない。
【0058】
それゆえに、したがって、Zm-[CST]-C-又はZm-C-[CST]-の形のモチーフが想定される(式中、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。そのようなモチーフの非限定的な好ましい例は、KCC、KKCC(配列番号31)、RCC、RRCC(配列番号32)、RKCC(配列番号33)又はKRCC(配列番号34)である。
【0059】
Zm-[CST]-X-C-又はZm-C-X-[CST]-の形のモチーフが更に想定される(式中、Xは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はRであり、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。そのようなモチーフの非限定的な好ましい例は、KCXC、KKCXC、RCXC、RRCXC、RKCXC、KRCXC、KCKC、KKCKC、KCRC、KKCRC、RCRC、RRCRC、RKCKC、KRCKC(配列番号35~48に対応する)又はRCKC(配列番号240)である。
【0060】
Zm-[CST]-XX-C-又はZm-C-XX-[CST]-の形のモチーフが更に想定される。これらのモチーフでは、内部のX1X2アミノ酸対は酸化還元酵素モチーフの中にある(式中、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K又はR又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。X1及びX2は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は非天然のアミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい。好ましくは、前記モチーフの中のX1及びX2は、C、S又はT以外の任意のアミノ酸である。更なる例では、前記モチーフの中のX1又はX2の少なくとも1つは、H、K又はR、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸である。モチーフの別の例では、前記モチーフの中のX1又はX2の少なくとも1つはP又はYである。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2アミノ酸対の具体的な非限定例:PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH及びRH。この形の特に好ましいモチーフは、HCPYC、KHCPYC、KCPYC、RCPYC、HCGHC、KCGHC及びRCGHC(配列番号49~55に対応する)である。この形の代わりの好ましいモチーフは、KKCPYC、KRCPYC、KHCGHC、KKCGHC及びKRCGHC(配列番号210~214)である。
【0061】
Zm-[CST]-XXX-C-又はZm-C-XXX-[CST]-の形のモチーフが更に想定され、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3アミノ酸のストレッチが形成される(式中、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K又はR又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。ある特定の例では、X1、X2及びX3は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい。好ましくは、前記モチーフの中のX1、X2及びX3は、C、S又はT以外の任意のアミノ酸である。具体的実施形態では、前記モチーフの中のX1、X2又はX3の少なくとも1つは、H、K又はR、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸である。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの具体例はXPY、PXY及びPYXである(式中、Xは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えばK、R又はH、又は非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンである)。非限定例には、KPY、RPY、HPY、GPY、APY、VPY、LPY、IPY、MPY、FPY、WPY、PPY、SPY、TPY、CPY、YPY、NPY、QPY、DPY、EPY、KPY、PKY、PRY、PHY、PGY、PAY、PVY、PLY、PIY、PMY、PFY、PWY、PPY、PSY、PTY、PCY、PYY、PNY、PQY、PDY、PEY、PLY、PYK、PYR、PYH、PYG、PYA、PYV、PYL、PYI、PYM、PYF、PYW、PYP、PYS、PYT、PYC、PYY、PYN、PYQ、PYD、又はPYEが含まれる。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの代わりの例はXHG、HXG及びHGXである(式中、Xは任意のアミノ酸、例えばKHG、RHG、HHG、GHG、AHG、VHG、LHG、IHG、MHG、FHG、WHG、PHG、SHG、THG、CHG、YHG、NHG、QHG、DHG、EHG、及びKHG、HKG、HRG、HHG、HGG、HAG、HVG、HLG、HIG、HMG、HFG、HWG、HPG、HSG、HTG、HCG、HYG、HNG、HQG、HDG、HEG、HLG、HGK、HGR、HGH、HGG、HGA、HGV、HGL、HGI、HGM、HGF、HGW、HGP、HGS、HGT、HGC、HGY、HGN、HGQ、HGD、又はHGEであってよい)。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの更に代わりの例はXGP、GXP及びGPXである(式中、Xは任意のアミノ酸、例えばKGP、RGP、HGP、GGP、AGP、VGP、LGP、IGP、MGP、FGP、WGP、PGP、SGP、TGP、CGP、YGP、NGP、QGP、DGP、EGP、KGP、GKP、GRP、GHP、GGP、GAP、GVP、GLP、GIP、GMP、GFP、GWP、GPP、GSP、GTP、GCP、GYP、GNP、GQP、GDP、GEP、GLP、GPK、GPR、GPH、GPG、GPA、GPV、GPL、GPI、GPM、GPF、GPW、GPP、GPS、GPT、GPC、GPY、GPN、GPQ、GPD、又はGPEであってよい)。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの更に代わりの例はXGH、GXH及びGHXである(式中、Xは任意のアミノ酸、例えばKGH、RGH、HGH、GGH、AGH、VGH、LGH、IGH、MGH、FGH、WGH、PGH、SGH、TGH、CGH、YGH、NGH、QGH、DGH、EGH、KGH、GKH、GRH、GHH、GGH、GAH、GVH、GLH、GIH、GMH、GFH、GWH、GPH、GSH、GTH、GCH、GYH、GNH、GQH、GDH、GEH、GLH、GHK、GHR、GHH、GHG、GHA、GHV、GHL、GHI、GHM、GHF、GHW、GHP、GHS、GHT、GHC、GHY、GHN、GHQ、GHD、又はGHEであってよい)。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの更に代わりの例はXGF、GXF及びGFXである(式中、Xは任意のアミノ酸、例えばKGF、RGF、HGF、GGF、AGF、VGF、LGF、IGF、MGF、FGF、WGF、PGF、SGF、TGF、CGF、YGF、NGF、QGF、DGF、EGF、及びKGF、GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、GLF、GFK、GFR、GFH、GFG、GFA、GFV、GFL、GFI、GFM、GFF、GFW、GFP、GFS、GFT、GFC、GFY、GFN、GFQ、GFD、又はGFEであってよい)。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの更に代わりの例はXRL、RXL及びRLXである(式中、Xは任意のアミノ酸、例えばKRL、RRL、HRL、GRL、ARL、VRL、LRL、IRL、MRL、FRL、WRL、PRL、SRL、TRL、CRL、YRL、NRL、QRLRL、DRL、ERL、KRL、GKF、GRF、GHF、GGF、GAF、GVF、GLF、GIF、GMF、GFF、GWF、GPF、GSF、GTF、GCF、GYF、GNF、GQF、GDF、GEF、及びGLF、RLK、RLR、RLH、RLG、RLA、RLV、RLL、RLI、RLM、RLF、RLW、RLP、RLS、RLT、RLC、RLY、RLN、RLQ、RLD、又はRLEであってよい)。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2X3アミノ酸のストレッチの更に代わりの例はXHP、HXP及びHPXである(式中、Xは任意のアミノ酸、例えばKHP、RHP、HHP、GHP、AHP、VHP、LHP、IHP、MHP、FHP、WHP、PHP、SHP、THP、CHP、YHP、NHP、QHP、DHP、EHP、KHP、HKP、HRP、HHP、HGP、HAF、HVF、HLF、HIF、HMF、HFF、HWF、HPF、HSF、HTF、HCF、HYP、HNF、HQF、HDF、HEF、HLP、HPK、HPR、HPH、HPG、HPA、HPV、HPL、HPI、HPM、HPF、HPW、HPP、HPS、HPT、HPC、HPY、HPN、HPQ、HPD、又はHPEであってよい)。
特に好ましい例は以下の通りである: CRPYC、KCRPYC、KHCRPYC、RCRPYC、HCRPYC、CPRYC、KCPRYC、RCPRYC、HCPRYC、CPYRC、KCPYRC、RCPYRC、HCPYRC、CKPYC、KCKPYC、RCKPYC、HCKPYC、CPKYC、KCPKYC、RCPKYC、HCPKYC、CPYKC、KCPYKC、RCPYKC、及びHCPYKC(配列番号215~239に対応する)。
【0062】
Zm-[CST]-XXXX-C-又はZm-C-XXXX-[CST]-の形のモチーフが更に想定され、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3X4(配列番号154)アミノ酸のストレッチを形成する(式中、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K又はR又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。X1、X2、X3及びX4は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は本明細書に規定される非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい。好ましくは、前記モチーフの中のX1、X2、X3及びX4はC、S又はT以外の任意のアミノ酸である。ある特定の非限定例では、前記モチーフの中のX1、X2、X3又はX4の少なくとも1つは、H、K又はR、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。具体例には、LAVL(配列番号56)、TVQA(配列番号57)又はGAVH(配列番号58)、及びそれらのバリアント、例えば:X1AVL、LX2VL、LAX3L又はLAVX4;X1VQA、TX2QA、TVX3A又はTVQX4;X1AVH、GX2VH、GAX3H又はGAVX4(配列番号155~165に対応する);が含まれる(式中、X1、X2、X3及びX4は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい)。
【0063】
Zm-[CST]-XXXXX-C-又はZm-C-XXXXX-[CST]-の形のモチーフが更に想定され、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3X4X5(配列番号166)アミノ酸のストレッチを形成する(式中、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K又はR又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。X1、X2、X3、X4及びX5は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい。好ましくは、前記モチーフの中のX1、X2、X3、X4及びX5はC、S又はT以外の任意のアミノ酸である。ある特定の例では、前記モチーフの中のX1、X2、X3、X4又はX5の少なくとも1つは、H、K又はR、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。具体例には、PAFPL(配列番号59)又はDQGGE(配列番号60)、及びそれらのバリアント、例えば:X1AFPL、PX2FPL、PAX3PL、PAFX4L又はPAFPX5;X1QGGE、DX2GGE、DQX3GE、DQGX4E又はDQGGX5(配列番号167~176に対応する)が含まれる(式中、X1、X2、X3、X4及びX5は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は本明細書に規定される非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい)。
【0064】
態様1で規定されるように、Zm-[CST]-XXXXXX-C-又はZm-C-XXXXXX-[CST]-の形のモチーフが更に想定される(式中、nは6であり、それによって酸化還元酵素モチーフの中に内部X1X2X3X4X5X6(配列番号177)アミノ酸のストレッチを形成し、mは0~3から選択される整数であり、Zは任意のアミノ酸、好ましくはH、K、R及び本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHである)。mが1又は2であり、ZはH、K又はR又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸、好ましくはK又はHであるモチーフが好ましい。X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい。好ましくは、前記モチーフの中のX1、X2、X3、X4、X5及びX6はC、S又はT以外の任意のアミノ酸である。ある特定の例では、前記モチーフの中のX1、X2、X3、X4、X5又はX6の少なくとも1つは、H、K又はR、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸から選択される塩基性アミノ酸である。具体例には、DIADKY(配列番号61)又はそのバリアント、例えば:X1IADKY、DX2ADKY、DIX3DKY、DIAX4KY、DIADX5Y又はDIADKX6(配列番号178~183に対応する)が含まれる(式中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい)。
【0065】
Zm-[CST]-Xn-C-又はZm-C-Xn-[CST]-の形のモチーフが更に想定される(式中、nは0~6であり、mは0であり(すなわち、[CST]-Xn-C-又はC-Xn-[CST]-)、C又は[CST]残基の1つは、モチーフのアミノ酸残基のN末端アミド又はC末端カルボキシ基にアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基を有するように改変されている)。そのようなモチーフの好ましい実施形態では、nは2であり、mは0であり、内部のX1X2は、各々個々に、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R及びH、又は非天然アミノ酸からなる群から選択される任意のアミノ酸であってよい。好ましくは、前記モチーフの中のX1及びX2は、C、S又はT以外の任意のアミノ酸である。更なる例では、前記モチーフの中のX1又はX2の少なくとも1つは、H、K又はR、又は本明細書に規定される非天然の塩基性アミノ酸、例えばL-オルニチンから選択される塩基性アミノ酸である。モチーフの別の例では、前記モチーフの中のX1又はX2の少なくとも1つはP又はYである。酸化還元酵素モチーフの中の内部X1X2アミノ酸対の具体的な非限定例:PY、HY、KY、RY、PH、PK、PR、HG、KG、RG、HH、HK、HR、GP、HP、KP、RP、GH、GK、GR、GH、KH及びRH。好ましくは前記改変は、モチーフの最初のシステインのN末端アセチル化(N-アセチルシステイン)をもたらす。
【0066】
上記の免疫原性ペプチドの中の酸化還元モチーフは、免疫原性ペプチドの中のT細胞エピトープ配列の直ぐ隣に隣接して置かれるか、又はリンカーによってT細胞エピトープから分離される。より詳細には、リンカーは7アミノ酸以下のアミノ酸配列を含む。最も詳細には、リンカーは1、2、3又は4、5、6又は7アミノ酸を含む。前記リンカーは、天然のMOGアミノ酸配列中のエピトープに連なるアミノ酸を包含することができるか又はこれらのアミノ酸と異なってもよい。
【0067】
更に、免疫原性ペプチドは、エピトープ配列の後に隣接配列(「フランカー」)を有することができる。前記フランカーは、TLF等の天然のMOGアミノ酸配列中のエピトープに連なるアミノ酸を包含することができるか又はこれらのアミノ酸と異なってもよい。本発明での好ましいフランカーは、TLF、TLFK(配列番号264)及びTLFKK(配列番号263)である。
【0068】
リンカー及び/又は隣接配列の配列は、全体として免疫原性ペプチドの免疫原性に影響を及ぼすことができる。
【0069】
用語ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質は、MOG遺伝子によってコードされるヒトタンパク質を指す。本明細書で使用される用語MOG(タンパク質)又はミエリン希突起膠細胞糖タンパク質は、NCBI遺伝子4340及びUniProtKB識別子Q16653(MOG_HUMAN)(配列番号62)に対応するアミノ酸配列によって規定される:
【0070】
【化1】
【0071】
ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質は、希突起膠細胞の細胞表面及びミエリン鞘の最外部表面に発現される膜タンパク質であり、免疫介在性脱髄に関与する主要な標的抗原である。このタンパク質は、ミエリン鞘の完成及び維持に、並びに細胞間伝達に関与することができる。或いは、異なるアイソフォームをコードするスプライシングされた転写物バリアントが同定された。したがって、本発明の免疫原性ペプチドへの組込みが想定されるMOGエピトープは、正規のMOGアミノ酸配列(配列番号62)及び/又は1つ又は複数のMOGタンパク質アイソフォームに存在するエピトープであってよい。本発明との関連で好適なMOGエピトープは、FLRVPCWKI(配列番号1)を含むか又はそれからなるMOGエピトープである。ヒト及びマウスMOGタンパク質の配列番号1の部分は、100%配列同一性によって特徴付けられる。換言すると、配列番号1は、ヒト及びマウス両方のMOGタンパク質で回収することができる。代わりに、本発明との関連で好ましいMOGエピトープであるアミノ酸配列FLRVPSWKI(配列番号2)を形成するために、点突然変異をMOGエピトープ配列番号1に導入することができる。FLRVPCWKI(配列番号1)及びFLRVPSWKI(配列番号2)T細胞エピトープは、9アミノ酸の長さを有し、7アミノ酸の長さのNKT細胞エピトープFLRVPCW(配列番号63)及びFLRVPSW(配列番号64)を更にそれぞれ含むMHCクラスIIエピトープである。
【0072】
本明細書では、アミノ酸はそれらのフルネーム、それらの3文字略記号又はそれらの1文字略記号で呼ばれる。
【0073】
本明細書では、アミノ酸配列のモチーフは、Prositeのフォーマットに従って書かれる。モチーフは、配列の特異的部分でのある特定の配列多様性を記載するために使用される。記号Xは、任意のアミノ酸が受け入れられる位置のために使用される。角括弧(「[]」)の間に所与の位置のための許容されるアミノ酸を掲載することによって、代替物が指示される。例えば、[CST]は、Cys、Ser又はThrから選択されるアミノ酸を表す。代替物として排除されるアミノ酸は、中括弧(「{}」)の間にそれらを掲載することによって指示される。例えば、{AM}は、Ala及びMet以外の任意のアミノ酸を表す。必要に応じてモチーフの中の異なる要素は、ハイフン(-)によって互いから分離される。本明細書で開示されるモチーフとの関連で、開示される一般的な酸化還元酵素のモチーフは、モチーフの外部の異なるエレメントへの連結を形成しないハイフンが一般的に付随する。これらの「開放的な」ハイフンは、リンカー配列又はエピトープ配列等の免疫原性ペプチドの別の部分へのモチーフの物理的連結の位置を示す。例えば、「Zm-C-Xn-[CST]-」の形のモチーフは、[CST]が免疫原性ペプチドの他の部分に連結されるアミノ酸であり、Zは免疫原性ペプチドの末端アミノ酸であることを示す。好ましい物理的連結は、ペプチド結合である。モチーフ内の同一要素の反復は、その要素の後ろに括弧間の数値又は数値範囲を置くことによって示され得る。例えば、この点で、「Xn」はn掛ける「X」を指す。X(2)は、X-X又はXXに対応する;X(2、5)は2、3、4又は5Xアミノ酸に対応し、(A)(3)はA-A-A又はAAAに対応する。アミノ酸を区別するために、酸化還元酵素モチーフの外側のものは外部アミノ酸と呼ぶことができ、酸化還元モチーフの中のものは内部アミノ酸と呼ばれる。特に明記しない限り、Xは任意のアミノ酸、特にL-アミノ酸、より詳細には天然に存在する20個のL-アミノ酸の1つを表す。
【0074】
MOGのT細胞エピトープ及び改変されたペプチドモチーフ配列を含み、還元活性を有する、本明細書に開示されるペプチドのいずれか1つは、抗原提示細胞への抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞又はNKT細胞の集団を生成することが可能である。
【0075】
したがって、その最も広い意味で、本発明は、免疫反応を誘発する能力を有するMOGの少なくとも1つのT細胞エピトープ、及びペプチドジスルフィド結合上に還元活性を有する改変された酸化還元酵素配列モチーフを含むペプチドに関する。T細胞エピトープ及び改変された酸化還元酵素モチーフ配列はペプチドの中で互いに直近していることができるか、又は必要に応じて1つ又は複数のアミノ酸(いわゆる、リンカー配列)によって分離されてもよい。
【0076】
必要に応じて、ペプチドはエンドソーム標的配列及び/又は追加の「隣接」配列を更に含む。
【0077】
本発明のペプチドは、免疫反応を誘発する能力を有するMOGのMHCクラスII T細胞エピトープ又はNKT細胞エピトープ及び改変された酸化還元酵素モチーフを含む。ペプチドの中のモチーフ配列の還元活性は、例えばインスリンの溶解性が還元後に変更されるインスリン溶解性アッセイで、又はインスリン等の蛍光標識基質によって、スルフヒドリル基を還元するその能力について検査することができる。そのようなアッセイの例は蛍光ペプチドを使用し、Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem.350、105~112頁に記載される。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらがジスルフィド架橋を通して互いと共有結合するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元の結果、還元された個々のペプチドは再び蛍光性になる。
【0078】
改変された酸化還元酵素モチーフは、T細胞エピトープのアミノ末端側に、又はT細胞エピトープのカルボキシ末端に配置され得る。
【0079】
更に詳細に説明する場合、本発明のペプチドは、化学合成によって作製することができ、化学合成は、非天然アミノ酸を取り込むことを可能にする。したがって、上記で列挙される酸化還元酵素モチーフ中の「C」は、システイン、或いはメルカプトバリン、ホモシステイン又はチオール官能基を有する他の天然若しくは非天然アミノ酸等の、チオール基を有する別のアミノ酸を表す。還元活性を有するためには、改変された酸化還元酵素モチーフ中に存在するシステインは、システインジスルフィド架橋の部分として存在すべきではない。Xは、S、C、又はTを含む20個の天然アミノ酸のいずれかであり得るか、或いは非天然アミノ酸であり得る。特定の実施形態では、Xは、Gly、Ala、Ser又はThr等の小側鎖を有するアミノ酸である。更なる特定の実施形態では、Xは、Trp等のかさ高い側鎖を有するアミノ酸ではない。更なる特定の実施形態では、Xはシステインではない。更なる特定の実施形態では、改変された酸化還元酵素モチーフ中の少なくとも1つのXが、Hisである。他の更なる特定の実施形態では、改変された酸化還元酵素中の少なくとも1つのXが、Proである。
【0080】
ペプチドは、安定性又は溶解度を高めるための改変、例えば、N末端NH2基又はC末端COOH基の改変(例えば、COOHの、CONH2基への改変)を更に含み得る。
【0081】
改変された酸化還元酵素モチーフを含む本発明のペプチドでは、モチーフは、エピトープがMHC又はCD1d溝にフィットする場合、モチーフがMHC又はCD1d結合溝の外側に留まるように位置する。改変された酸化還元酵素モチーフは、ペプチドの中のエピトープ配列の直近に[言い換えると、モチーフとエピトープとの間のゼロアミノ酸のリンカー配列]置かれるか、又は、7アミノ酸以下のアミノ酸配列を含むリンカーによってT細胞エピトープから分離される。特に、リンカーは1、2、3、4、5、6、又は7アミノ酸を含む。特定の実施形態は、エピトープ配列と、改変された酸化還元酵素モチーフ配列との間に0、1、2又は3アミノ酸のリンカーを有するペプチドである。改変された酸化還元酵素モチーフ配列がエピトープ配列に隣接しているペプチドでは、これは、エピトープ配列と比較して、位置P-4からP-1又はP+1からP+4として示される。ペプチドリンカーの他に、ペプチドの部分を互いに(例えば改変された酸化還元酵素モチーフ配列とT細胞エピトープ配列を)連結するリンカーとして、他の有機化合物を使用することができる。
【0082】
本発明のペプチドは、T細胞エピトープ及び改変された酸化還元酵素モチーフを含む配列のN又はC末端に、追加の短いアミノ酸配列を更に含むことができる。そのようなアミノ酸配列は、本明細書では「隣接配列」と一般的に呼ばれる。隣接配列は、エピトープと、エンドソーム標的配列との間に、及び/又は改変された酸化還元酵素モチーフと、エンドソーム標的配列との間に配置することができる。エンドソーム標的配列を含まないある特定のペプチドでは、ペプチド中の改変された酸化還元酵素モチーフ及び/又はエピトープ配列のN及び/又はC末端に短いアミノ酸配列が存在してよい。特に隣接配列は、1~7アミノ酸の配列、最も詳細には1、2、又は3アミノ酸の配列である。
【0083】
好ましくは、酸化還元酵素モチーフのZは、免疫原性ペプチドのN末端又はC末端に対応する。
【0084】
改変された酸化還元酵素モチーフは、エピトープからN末端に位置され得る。
【0085】
本発明のある特定の実施形態では、単一エピトープ配列及び改変された酸化還元酵素モチーフ配列を含む、ペプチドが提供される。更なる特定の実施形態では、改変される酸化還元酵素モチーフは、ペプチド中で数回(1、2、3、4回又は更に多い回)、例えば、1つ又は複数のアミノ酸によって互いと間隔を取り得る改変された酸化還元酵素モチーフの繰り返しとして、又は互いと直近している繰り返しとして現れる。或いは、1つ又は複数の改変された酸化還元酵素モチーフは、T細胞エピトープ配列のN及びC末端の両方で提供される。
【0086】
本発明のペプチドに関して想定される他の変形として、各エピトープ配列が、改変された酸化還元酵素モチーフに先行され、及び/又は改変された酸化還元酵素モチーフが続くT細胞エピトープ配列の繰り返し(例えば、「改変された酸化還元酵素モチーフ-エピトープ」の繰り返し又は「改変された酸化還元酵素モチーフ-エピトープ-改変された酸化還元酵素モチーフ」の繰り返し)を含有するペプチドが挙げられる。本明細書中では、改変された酸化還元酵素モチーフは全て、同じ配列を有するが、必須ではない。改変された酸化還元酵素モチーフをそれ自体が含むエピトープを含むペプチドの反復性配列はまた、「エピトープ」及び「改変された酸化還元酵素モチーフ」の両方を含む配列を生じることが知られている。そのようなペプチドでは、1つのエピトープ配列内の改変された酸化還元酵素モチーフは、第2のエピトープ配列の外側の改変された酸化還元酵素モチーフとして機能を果たす。
【0087】
通常、本発明のペプチドは、唯一のT細胞エピトープを含む。以下で記載するように、タンパク質配列中のT細胞エピトープは、機能性アッセイ及び/又は1つ又は複数のin silica予測アッセイによって同定され得る。T細胞エピトープ配列中のアミノ酸は、MHCタンパク質の結合溝中のそれらの位置に従って付番される。ペプチド内に存在するT細胞エピトープは、8~25アミノ酸、更に詳細には8~16アミノ酸からなり、更に最も詳細には8、9、10、11、12、13、14、15又は16アミノ酸からなる。
【0088】
より詳細な実施形態では、T細胞エピトープは、9アミノ酸の配列からなる。更なる特定の実施形態では、T細胞エピトープは、MHC-クラスII分子によってT細胞に提示されるエピトープである[MHCクラスII制限T細胞エピトープ]。代わりの実施形態では、T細胞エピトープは、CD1d分子によってT細胞に提示されるNKT細胞エピトープである[NKT細胞特異的エピトープ]。通常、T細胞エピトープ配列は、MHC IIタンパク質又はCD1dタンパク質の裂け目にフィットするオクタペプチド又はより具体的にはノナペプチド配列を指す。
【0089】
本発明のペプチドのT細胞エピトープは、タンパク質の天然のエピトープ配列に対応することができるか、又は、天然のT細胞エピトープ配列と同様に改変されたT細胞エピトープがMHC又はCD1d裂け目内で結合するその能力を保持する場合には、その改変バージョンであってもよい。改変されたT細胞エピトープは、MHCタンパク質又はCD1dタンパク質に対して天然のエピトープと同じ結合親和性を有することができるが、より低い親和性を有することもできる。特に、改変されたペプチドの結合親和性は、元のペプチドより10分の1以上、特に5分の1以上低い。本発明のペプチドは、タンパク質複合体に安定化効果を有する。したがって、ペプチド-MHC/CD1d複合体の安定化効果は、MHC又はCD1d分子への改変されたエピトープのより低い親和性を補償する。
【0090】
ペプチドの中にT細胞エピトープ及び還元性化合物を含む配列は、MHCクラスII又はCD1d決定因子の中でのプロセシング及び提示のために後期エンドソームへのペプチドの取り込みを促進するアミノ酸配列(又は、別の有機化合物)に更に連結することができる。後期エンドソーム標的化はタンパク質の細胞質テールに存在するシグナルによって媒介され、良好に同定されたペプチドモチーフに対応する。後期エンドソーム標的化はタンパク質の細胞質尾部に存在するシグナルによって媒介され、良好に特定されたペプチドモチーフ、例えばジロイシンをベースとした[DE]XXXL[LI](配列番号204)又はDXXLLモチーフ(配列番号205)(例えばDXXXLL、配列番号206))、チロシンをベースとしたYXX0モチーフ又はいわゆる酸性クラスターモチーフ(配列番号207)に対応する。記号0は、Phe、Tyr及びTrp等のかさばった疎水性の側鎖を有するアミノ酸残基を表す。後期エンドソーム標的配列は、MHCクラスII又はCD1d分子による抗原由来のT細胞エピトープのプロセシング及び効率的な提示を可能にする。そのようなエンドソーム標的化配列は、例えば、gp75タンパク質(Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁)、ヒトCD3ガンマタンパク質、HLA-BM 11(Copierら(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁)、DEC205受容体の細胞質テール(Mahnkeら(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁)の中に含有される。エンドソームへの選別シグナルとして機能するペプチドの他の例は、Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁のレビューの中で開示される。或いは、配列は、抗原に対するT細胞応答を克服することなく後期エンドソームでの取り込みを促進する、タンパク質からの亜優勢又は劣勢なT細胞エピトープのそれであってよい。後期エンドソーム標的化配列は、効率的な取り込み及びプロセシングのために抗原由来のペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に位置することができ、最高10アミノ酸のペプチド配列等の隣接配列を通してカップリングさせることもできる。標的化目的のために劣勢なT細胞エピトープを使用する場合、後者は抗原由来のペプチドのアミノ末端に一般的に位置する。
【0091】
したがって、本発明は、抗原性タンパク質のペプチド及び特異的免疫反応を導き出すことにおけるそれらの使用を想定する。これらのペプチドは、それらの配列の中に、すなわち、多くても10、好ましくは7アミノ酸以下で分離されている還元性化合物及びT細胞エピトープを含む、タンパク質の断片に対応することもできる。或いは、及びほとんどの抗原性タンパク質では、本発明のペプチドは、還元性化合物、特に本明細書に記載される還元性の改変された酸化還元酵素モチーフを、抗原性タンパク質のT細胞エピトープのN末端又はC末端に結合させることによって生成される(それの直近に、又は多くても10、特に多くても7アミノ酸のリンカーにより)。更に、タンパク質のT細胞エピトープ配列及び/又は改変された酸化還元酵素モチーフを改変することができ、及び/又は、天然に存在する配列と比較して、1つ又は複数の隣接配列及び/又は標的配列を導入すること(又は、改変すること)ができる。したがって、本発明の特色を目的の抗原性タンパク質の配列の中で見出すことができるかどうかによって、本発明のペプチドは「人工の」又は「天然に存在する」配列を含むことができる。
【0092】
ペプチドを指す場合の用語「天然」は、配列が天然に存在するタンパク質(野生型又は突然変異体)の断片と同一であるという事実に関する。それと対照的に、用語「人工」は、そのように天然に存在しない配列を指す。人工配列は、限定的な改変、例えば天然に存在する配列の中で1つ又は複数のアミノ酸を変更/削除/挿入することによって、又は、天然に存在する配列のN-若しくはC末端でアミノ酸を付加/除去することによって天然配列から得られる。
【0093】
本発明のペプチドは、長さがかなり異なることができる。ペプチドの長さは、すなわち7~9アミノ酸のエピトープ、それに隣接した2~11アミノ酸の改変された酸化還元酵素モチーフからなる9又は11アミノ酸から、最大12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40又は50アミノ酸まで異なることができる。例えば、ペプチドは、40アミノ酸のエンドソーム標的化配列、約2アミノ酸の隣接配列、2~11アミノ酸の本明細書に記載される酸化還元酵素モチーフ、4~7アミノ酸のリンカー及び7、8又は9アミノ酸の最低長のT細胞エピトープペプチドを含むことができる。
【0094】
したがって、特定の実施形態では、完全ペプチドは、9アミノ酸から最大20、25、30、40、50、75又は100アミノ酸からなる。より詳細には、還元化合物が本明細書中に記載するような改変された酸化還元酵素モチーフである場合、エンドソーム標的配列を有さない、必要に応じてリンカーに結合されたエピトープ及び改変された酸化還元酵素モチーフを含む(人工又は天然)配列(本明細書中で、「エピトープ改変酸化還元酵素モチーフ」配列と称される)の長さは、重要である。「エピトープ改変酸化還元酵素モチーフ」はより詳細には、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19アミノ酸の長さを有する。9、10、11、12、13又は14~19アミノ酸のそのようなペプチドは、必要に応じてそのサイズがあまり重要ではないエンドソーム標的シグナルにカップリングされ得る。
【0095】
上記で詳述するように、特定の実施形態では、本発明のペプチドは、T細胞エピトープ配列に連結された本明細書中に記載するような還元改変酸化還元酵素モチーフを含む。
【0096】
更なる特定の実施形態では、本発明のペプチドは、それらの天然配列内に酸化還元酵素特性を有するアミノ酸配列を含まないT細胞エピトープを含むペプチドである。
【0097】
概して、本発明のペプチドは天然ではなく(したがって、それ自体タンパク質の断片でない)、T細胞エピトープに加えて、それにより改変された酸化還元酵素モチーフが最大7、より詳細には最大4又は最大2アミノ酸からなるリンカーによってT細胞エピトープから即座に分離される本明細書中に記載するような改変された酸化還元酵素モチーフを含有する人工ペプチドである。
【0098】
本発明によるペプチド(又はそのようなペプチドを含む組成物)の哺乳動物への投与(すなわち、注射)時に、ペプチドは、抗原由来T細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を導き出し、表面受容体の還元を通して更なるシグナルをT細胞に提供することが示されている。この最適上限の活性化は、T細胞エピトープを提示する細胞に対する細胞溶解性特性、並びにバイスタンダーT細胞に関する抑制特性を獲得するT細胞を生じる。このようにして、抗原由来T細胞エピトープ、及びエピトープの外側に改変された酸化還元酵素モチーフを含有する本発明で記載するペプチド又はペプチドを含む組成物は、人間を含む哺乳動物の直接的な免疫化に使用することができる。したがって、本発明は、医療としての使用のための本発明のペプチド及びそれらの誘導体を提供する。したがって、本発明は、本発明による1つ又は複数のペプチドを、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。
【0099】
本発明は、細胞溶解性特性を持つ抗原特異的なT細胞が小ペプチドによる免疫化によって導き出され得る方法を提供する。(i)抗原由来のT細胞エピトープをコードする配列及び(ii)酸化還元特性を有するコンセンサス配列を含有し、更に必要に応じて効率的なMHCクラスII又はCD1d提示のためのペプチドの、後期エンドソームへの取り込みを促進する配列も含むペプチドは、サプレッサーT細胞を導き出すことが見出されている。
【0100】
本発明のペプチドの免疫原性特性は、免疫反応の処置及び防止において特に目的となる。
【0101】
本明細書に記載されるペプチドは医薬として使用され、特に哺乳動物、特にヒトにおける免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造のために使用される。
【0102】
本発明は、本発明のペプチド、その相同体又は誘導体を使用することによってそのような治療を必要とする哺乳動物の免疫障害の処置の方法であって、上記方法は、例えば、免疫障害の症状を低減するために、免疫障害を患うか、又は免疫障害のリスクがある上記哺乳動物に、治療上有効な量の本発明のペプチド、その相同体又は誘導体を投与する工程を含む方法について記載している。ヒト及び動物、例えばペット及び畜産動物の両方の処置が想定される。ある実施形態では、処置される哺乳動物はヒトである。上で言及される免疫障害は、特定の実施形態では、アレルギー性疾患及び自己免疫性疾患から選択される。より詳細には、そのような免疫原性ペプチドは、MSの症状の処置又は緩和で使用するために提供される。
【0103】
本明細書に規定される本発明のペプチド又はそのようなものを含む医薬組成物は、好ましくは皮下又は筋肉内投与を通して投与される。好ましくは、ペプチド又はそのようなものを含む医薬組成物は、肘と肩の中間の上腕の側部の辺りの皮下に(SC)注射することができる。2回以上の別個の注射が必要な場合、それらは両腕に同時投与することができる。
【0104】
本発明によるペプチド又はそれを含む医薬組成物は、治療上有効な用量で投与される。例示的であるが非限定的な投薬レジメンは、50~1500μg、好ましくは100~1200μgである。より具体的な投薬スキームは、患者の状態及び疾患の重症度によって50~250μg、250~450μg又は850~1300μgであってよい。投薬レジメンは、同時に又は連続的に、単回投与又は2、3、4、5若しくはそれより多い回数の用量での投与を含むことができる。例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々25μg(各々100μL)の2回の別個の注射による50μgのペプチドのSC投与と、続く各々12.5μg(各々50μL)の2回の別個の注射による25μgのペプチドの3回の連続注射を含む低用量スキーム。
- 各々75μg(各々300μL)の2回の別個の注射による150μgのペプチドのSC投与と、続く各々37.5μg(各々150μL)の2回の別個の注射による75μgのペプチドの3回の連続投与を含む中間用量スキーム。
- 各々225μg(各々900μL)の2回の別個の注射による450μgのペプチドのSC投与と、続く各々112.5μg(各々450μL)の2回の別個の注射による225μgのペプチドの3回の連続投与を含む高用量スキーム。
【0105】
他の例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々225μgの2回の別個の注射による450μgのペプチドの2週おきの6回のSC投与を含む投与スキーム。
- 各々675μgの2回の別個の注射による1350μgのペプチドの2週おきの6回のSC投与を含む投与スキーム。
【0106】
本明細書に規定される免疫原性ペプチドの特定の、しかし非限定的な投与レジメンは、50~1500μg、好ましくは450~1500μgである。投与レジメンは、単回投与又は2、3、4、5、6回若しくはそれより多い回数の同時又は連続投与での投与を含むことができる。免疫原性ペプチドによる前記処置は、好ましくは5~9日ごとに、例えば約7日ごとに1~6回、例えば1~4回実行することができる。
【0107】
全ての上のペプチドについて追加のバリアントが想定され、酸化還元酵素モチーフのヒスチジン隣接残基と第1のシステインの間に1つ又は2つのアミノ酸Xが存在する。一般的に、これらの外部アミノ酸Xは、His、Cys、Ser及びThrでない。
【0108】
本発明のペプチドは、試料中のクラスII制限CD4+T細胞又はNKT細胞を検出するin vitro診断方法で使用することもできる。この方法では、MHCクラスII又はCD1d分子及び本発明によるペプチドの複合体と試料を接触させる。CD4+ T細胞又はNKT細胞は、試料中の細胞と複合体の結合を測定することによって検出され、ここで、細胞への複合体の結合は試料中のCD4+ T細胞又はNKT細胞の存在の指標となる。
【0109】
複合体は、ペプチド及びMHCクラスII又はCD1d分子の融合タンパク質であってよい。
【0110】
或いは、複合体中のMHC又はCD1d分子は四量体である。複合体は可溶性分子として提供することができるか、又は担体に結合していてよい。
【0111】
したがって、特定の実施形態では、本発明の処置及び防止の方法は、本明細書中に記載するような免疫原性ペプチドの投与を含み、ここで、ペプチドは、処置されるべき疾患において役割を果たす抗原性タンパク質のT細胞エピトープ(例えば、上述したようなもの)を含む。更なる特定の実施形態では、使用されるエピトープは、優勢エピトープである。
【0112】
本発明によるペプチドは、ペプチドを合成することによって調製され、ここで、T細胞エピトープ及び改変された酸化還元酵素モチーフは、0~7アミノ酸で分離されている。ある特定の実施形態では、改変された酸化還元酵素モチーフは、タンパク質中に存在するような配列構成を保存するようにエピトープ配列の外側に1、2又は3つの突然変異を導入することによって得られ得る。通常、P-2及びP-1におけるアミノ酸、並びにP+10及びP+11におけるアミノ酸は、天然配列の部分であるノナペプチドに関して、ペプチド配列において保存される。これらの隣接残基は概して、MHCクラスII又はCD1dへの結合を安定化する。他の実施形態では、エピトープのN末端又はC末端にある配列は、T細胞エピトープ配列を含有する抗原性ペプチドの配列とは無関係である。
【0113】
したがって、ペプチドを設計する上記方法に基づいて、ペプチドは、化学的ペプチド合成、組換え発現方法、又はより例外的な場合では、タンパク質のタンパク質分解性又は化学的断片化によって生成される。
【0114】
上記方法において生成されるようなペプチドは、in vitro及びin vivo方法で、T細胞エピトープの存在に関して検査することができ、in vitroアッセイでそれらの還元活性に関して検査することができる。最終的な品質管理として、ペプチドをin vitroアッセイで検査して、ペプチドが、改変された酸化還元酵素モチーフを有するペプチド中にも存在するエピトープ配列を含有する抗原を提示する抗原提示細胞に関して、アポトーシス経路を介して細胞溶解性であるCD4+T細胞又はNKT細胞を生成することができるかどうかを検証することができる。
【0115】
本発明のペプチドは、組換えDNA技法を使用して、細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞において生成され得る。ペプチドの限定長さを考慮して、ペプチドは、化学的ペプチド合成によって調製することができ、ここで、ペプチドは、異なるアミノ酸を互いにカップリングすることによって調製される。化学的合成は、例えばD-アミノ酸、天然に存在しない側鎖を有するアミノ酸等のインクルージョンに特に適している。
【0116】
化学的ペプチド合成は十分に記述されており、ペプチドは、Applied Biosystems社及び他の企業等の企業に発注され得る。
【0117】
ペプチド合成は、固相ペプチド合成(SPPS)又は逆に溶液相ペプチド合成のいずれかとして実施され得る。最良の公知のSPPS方法は、t-Boc及びFmoc固相化学である:
【0118】
ペプチド合成中に、いくつかの保護基が使用される。例えば、ヒドロキシル及びカルボキシ官能基は、t-ブチル基によって保護され、リジン及びトリプトファンは、T-Bocによって保護され、アスパラギン、グルタミン、システイン及びヒスチジンは、トリチル基によって保護され、アルギニンは、pbf基によって保護される。適切である場合、そのような保護基は、合成後にペプチド上に残され得る。ペプチドは、SPPSの範囲を超えるタンパク質合成を達成する非常に大きな可能性を提供する、元々Kentによって記載され(Schnelzer & Kent(1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁)、例えばTamら、(2001) Biopolymers 60、194~205頁に概説されたようにライゲーション戦略(無保護のペプチド断片の化学選択的カップリング)を使用して、互いに連結させてより長いペプチドを形成することができる。100~300残基のサイズを有する多くのタンパク質が、この方法によって首尾よく合成されている。合成ペプチドは、SPPSの大きな前進のため、生化学、薬理学、神経生物学、酵素学及び分子生物学の研究分野においてますます重大な役割を果たし続けている。
【0119】
或いは、ペプチドは、コードヌクレオチド配列を含む適切な発現ベクターにおいて本発明のペプチドをコードする核酸分子を使用することによって合成され得る。そのようなDNA分子は、自動DNA合成機及び遺伝子コードの周知のコドンアミノ酸関係を使用して、容易に調製することができる。そのようなDNA分子はまた、オリゴヌクレオチドプローブ及び従来のハイブリダイゼーション方法論を使用してゲノムDNAとして又はcDNAとして得られ得る。そのようなDNA分子は、細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母細胞、動物細胞又は植物細胞等の適切な宿主におけるDNAの発現及びポリペプチドの産生に適応しているプラスミドを含む発現ベクターに取り込まれてもよい。
【0120】
目的のペプチドの物理特性及び化学特性(例えば、溶解度、安定性)を検査して、ペプチドが治療用組成物における使用に適している/適する予定であるかどうかを決定する。通常、これは、ペプチドの配列を調節することによって最適化される。必要に応じて、ペプチドは、合成後に当該技術分野で公知の技法を使用して修飾され得る(化学的修飾、例えば官能基を付加/欠失させる)。
【0121】
T細胞エピトープ自体、抗原提示細胞の表面上の適切なHLA分子に結合させることと、関連するT細胞亜集団を刺激することによって、Tヘルパー細胞のレベルで初期事象を導き出すと考えられる。これらの事象は、T細胞増殖、リンホカイン分泌、局所炎症反応、更なる免疫細胞の、当該部位への動員、及びB細胞カスケードの活性化をもたらして、抗体の産生をもたらす。これらの抗体のアイソタイプの1つであるIgEは、アレルギー症状の発症において根本的に重要であり、その産生は、Tヘルパー細胞のレベルで、分泌されるリンホカインの性質によって事象のカスケードにおいて早期に影響される。T細胞エピトープは、T細胞受容体による認識の基本要素又は最小ユニットであり、そこで、エピトープは受容体認識に必須のアミノ酸残基を含み、これは、タンパク質のアミノ酸配列において連続的である。
【0122】
しかしながら、T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを有するペプチドの投与時に、下記の事象が起きると考えられる:
抗原の活性化(i)MHCクラスII分子によって提示される抗原由来ペプチドとの同族相互作用から生じる特定のT細胞。還元酵素配列は、CD4分子等のT細胞表面タンパク質を還元し、その第2のドメインは、拘束されたジスルフィド架橋を含有する。このことが、シグナルをT細胞に伝達する。酸化経路の増加に関連する一連の結論の中で、カルシウム流入及びNF-κB転写因子の核へのトランスロケーションの増加が重要な事象である。後者は、IFN-ガンマ及びグランザイムの転写の増加をもたらし、このことが細胞にアポトーシス誘導メカニズムを介して細胞溶解性特性を獲得させ、細胞溶解性特性は、グランザイムB分泌、及びFas-FasL相互作用を包含するメカニズムによってペプチドを提示する細胞に影響を及ぼす。細胞死滅効果がアポトーシス経路を介して得られるため、細胞溶解性細胞は、細胞障害性細胞よりもこれらの細胞に関してより適切な用語である。抗原提示標的細胞の破壊は、同じ抗原上に位置されるエピトープに特異的な他のT細胞の活性化を防止するか、又は同じ抗原提示細胞によってプロセシングされる未関係の抗原に対して、T細胞活性化の更なる結論は、細胞間接触依存性メカニズムによるバイスタンダーT細胞の活性化を抑制することである。そのような場合では、異なる抗原提示細胞によって提示される抗原によって活性化されるT細胞はまた抑制され、提供される細胞溶解性及びバイスタンダーT細胞の両方は近接近しており、すなわち、同じ抗原提示細胞の表面上で活性化される。
【0123】
上で仮定された作用機構は、上で引用されたPCT出願WO2008/017517及び本発明者の刊行物で開示される実験データで立証される。
【0124】
同様に、WO2012/069568及び本発明者の刊行物で仮定され、示される通り、NKT細胞エピトープは以下の機構により免疫応答を低減する。NKT細胞がチオレダクターゼ活性を含有するように改変されるペプチドによって活性化されるとき、後者はNKT細胞の特性をかなり増加させ、それによって抗原特異的CD4+ NKT細胞によって自己抗原を有する細胞の死を増加させ、これは自己抗原に対する免疫応答を抑制する。自己免疫疾患における、又は同種因子若しくはアレルゲンに対する免疫応答の制御におけるNKT細胞の関与は、いくつかの機会に報告されている(JahngらJournal of experimental Medicine 199:947~957頁、2004年;Van Belle及びvon Herrath、Molecular Immunology 47:8~11頁、2009年)が、記載するのが比較的困難である。WO2012/069568では、ペプチドをCD1d分子が提示することができることが示された。CD1d分子の特徴は、2つの抗パラレルベータ鎖でできているプラットホームの上にある割れ目を形成する2つの抗パラレルアルファ鎖でできていることである。割れ目は狭くて深く、古典的に脂質だけであると考えられる疎水性残基だけを受け入れる。疎水性残基を有するペプチドは、CD1dの割れ目に結合する能力を有する。その上、割れ目は両側が開放的であるので、7アミノ酸より長いペプチドを収容することができる。CD1dモチーフを有する疎水性ペプチドは自己抗原、同種因子及びアレルゲンでしばしば見出され、それによって、CD4+ NKT細胞を活性化する能力を前記自己抗原、同種因子又はアレルゲンに与える。前記自己抗原、同種因子又はアレルゲンを提示する細胞を死滅させることによる直接的な排除は、これらの抗原/因子に対して免疫応答を開始する能力を排除する。
【0125】
本発明は、CD1d分子に結合する能力を付与するMOGに由来する疎水性残基を含有するペプチドの生成に関する。投与の後、そのようなペプチドはAPCによって取り込まれ、後期エンドソームに誘導され、そこで、それらはCD1dにロードされ、APCの表面で提示される。前記疎水性MOGペプチドは一般配列[FWHY]-XX-[ILMV]-XX-[FWTHY](配列番号208)又は[FW]-XX-[ILMV]-XX-[FW](配列番号209)に対応するモチーフによって特徴付けられ、そこで、位置P1及びP7はフェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)等の疎水性残基によって占有される。しかし、P7は、それがフェニルアラニン又はトリプトファンの代わりの疎水性残基、例えばトレオニン(T)又はヒスチジン(H)を受け入れるという点で許容的である。P4の位置は、イソロイシン(I)、ロイシン(L)又はメチオニン(M)等の脂肪族残基によって占有される。
【0126】
本発明は、抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞をin vivo又はin vitroのいずれかで生成する方法及び、それとは独立して、細胞溶解性CD4+T細胞を、特徴的な発現データに基づくFoxp3+Treg等の他の細胞集団と区別する方法を提供する。
【0127】
本発明は、抗原特異的CD4+T細胞の産生に関するin vivo方法について記載する。特定の実施形態は、本明細書に記載される本発明のペプチドで動物(ヒトを含む)を免疫化し、次に、免疫化された動物からCD4+ T細胞を単離することによってCD4+ T細胞を生成又は単離する方法に関する。本発明は、APCに向けた抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞の生成のためのin vitro方法を記載する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞を生成する方法を提供する。
【0128】
一実施形態では、末梢血細胞の単離、本発明による免疫原性ペプチドによるin vitroでの細胞集団の刺激、及び刺激された細胞集団の、特にIL-2の存在下での増量を含む方法が提供される。本発明による方法は、多数のCD4+ T細胞が生成され、抗原性タンパク質に特異的であるCD4+ T細胞を生成することができる(抗原特異的エピトープを含むペプチドを使用することによって)という利点を有する。
【0129】
代わりの実施形態では、CD4+ T細胞はin vivoで、すなわち本明細書に記載される免疫原性ペプチドの対象への注射、及びin vivoで生成される細胞溶解性CD4+ T細胞の収集によって生成することができる。
【0130】
本発明の方法によって得られ得るAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞は、アレルギー反応の防止及び自己免疫疾患の処置における免疫療法のための哺乳動物への投与に関して特に関心が持たれる。同種異系細胞及び自己細胞の使用はともに想定される。
【0131】
細胞溶解性CD4+T細胞集団は、以下で本明細書中に記載するように得られる。本明細書中に記載するような抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞は、医薬として、より詳細には、養子細胞療法における使用のために、より詳細には、急性アレルギー反応及び多発性硬化症等の自己免疫疾患の再発の処置において使用することができる。記載される通りに生成した単離された細胞溶解性CD4+ T細胞又は細胞集団、特に抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞集団は、免疫障害の予防又は処置のための医薬の製造のために使用される。単離又は生成された細胞溶解性CD4+ T細胞を使用した処置の方法が、開示される。
【0132】
WO2008/017517で説明される通り、APCに向けた細胞溶解性CD4+ T細胞は、細胞の発現特性に基づいて天然のTreg細胞から区別することができる。特に、細胞溶解性CD4 + T細胞集団は、天然のTreg細胞集団と比較して以下の特徴の1つ又は複数を実証する:
活性化の後のCD103、CTLA-4、Fasl及びICOSを含む表面マーカーの発現の増加、CD25の中間的発現、CD4、ICOS、CTLA-4、GITRの発現、及びCD127(IL7-R)の低い発現か無発現、CD27の無発現、転写リプレッサーFoxp3のではなく、転写因子T-bet及びegr-2(Krox-20)の発現、IFN-ガンマの高い生成、及びIL-10、IL-4、IL-5、IL-13又はTGF-ベータの無又は極微量の生成。
【0133】
更に、細胞溶解性T細胞はCD45RO及び/又はCD45RAを発現し、CCR7、CD27を発現せず、高レベルのグランザイムB及び他のグランザイム並びにFasリガンドを提示する。
【0134】
本発明のペプチドは、生きている動物、一般的にヒトへの投与の後に、第三者T細胞に抑制性活性を発揮する特異的T細胞を導き出す。
【0135】
具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、FasL及び/又はインターフェロンガンマの発現によって特徴付けられる。具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、グランザイムBの発現によって更に特徴付けられる。
【0136】
本発明のペプチドは、ある特定の抗原の特異的なT細胞エピトープを含むが、同じ抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって導き出される障害の防止又は処置に、或いはある特定の状況では、更には他の異なる抗原が、本発明のペプチドによって活性化されるT細胞の近傍でMHCクラスII分子による同じメカニズムを通して提示される場合に他の異なる抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫応答によって導き出される障害の処置のために使用することができることを、このメカニズムはまた暗示し、実験結果がそのことを示している。
【0137】
上述する特徴を有し、更に抗原特異的であり、すなわち、抗原特異的な免疫応答を抑制することが可能な細胞型の単離細胞集団が開示される。
【0138】
本発明は、薬学的に許容可能な担体を更に含む本発明による1つ又は複数のペプチドを含む医薬組成物を提供する。上記で詳述するように、本発明はまた、医療としての使用のための組成物に又は組成物を使用することで免疫障害の哺乳動物を処置する方法に、及び免疫障害の防止又は処置のための医薬の製造のための組成物の使用に関する。医薬組成物は、例えば、免疫障害、特に風媒性のアレルギー及び食品が媒介するアレルギー、並びにアレルギーが原因の疾患を処置又は防止するのに適したワクチンである。本明細書で更に記載される医薬組成物の一例として、本発明によるペプチドは、水酸化アルミニウム(アラム)等の、哺乳動物への投与に好適なアジュバントの上に吸着される。通常、アラム上に吸着されたペプチド50μgは、皮下経路によって2週間隔で3回注射される。経口、鼻腔内又は筋肉内を含めて他の投与経路が可能であることは、当業者に明らかなはずである。更に、注射の回数及び注射する量は、処置する状態によって異なることができる。更に、それらがMHC-クラスII又はCD1d提示及びT細胞活性化においてペプチド提示を促進するならば、アラム以外の他のアジュバントを使用することができる。したがって、有効成分を単独で投与することが可能であるが、それらは医薬製剤として一般的に提示される。獣医及びヒト使用のための本発明の製剤は、上記の少なくとも1つの有効成分を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に含む。本発明は、有効成分として、本発明による1つ又は複数のペプチドを、薬学的に許容可能な担体と混合して含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、処置又は予防の方法に関して以降指示されるもの等の有効成分の治療的有効量を含むべきである。必要に応じて、組成物は他の治療成分を更に含む。好適な他の治療成分、並びにそれらが属するクラスに依存するそれらの通常の投薬量は当業者に周知であり、免疫障害を処置するために使用される他の公知の薬物から選択することができる。
【0139】
本明細書で規定される免疫原性ペプチドは、水酸化アルミニウム(アラム)等の哺乳動物への投与に好適なアジュバントの上に吸着させることができる。一般的に、アラムの上に吸着されるペプチドの50μgが、2週間隔で3回の機会に皮下経路によって注射される。経口、鼻腔内又は筋肉内を限定されずに含めて他の投与経路が可能であることは、当業者に明らかなはずである。更に、注射の回数及び注射する量は、処置する状態の程度、並びに患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事等の他のパラメータによって異なることができる。更に、それらがMHC-クラスII又はCD1dにおけるペプチド提示及びT又はNKT細胞活性化を促進するならば、アラム以外の他のアジュバントを使用することができる。したがって、免疫原性ペプチドをいかなるアジュバントなしで投与することが可能であるが、それらは医薬製剤として一般的に提供される。獣医及びヒト使用のための製剤は、上記の少なくとも1つの免疫原性ペプチドを、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に含む。
【0140】
本明細書に規定される免疫原性ペプチドに関して本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、例えば組成物を溶解、分散若しくは拡散することによって処置する部位へのその適用若しくは伝播を容易にするために、及び/又はその有効性を損なうことなくその保存、輸送若しくは取扱いを容易にするために、それと一緒に免疫原性ペプチドが製剤化される任意の材料又は物質を意味する。それらには、全溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えばフェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれる。医薬製剤中の免疫原性ペプチドの作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、固体又は液体又は液体を形成するために圧縮される気体であってよく、すなわち、製剤は濃縮液、乳剤、溶液、粒状体、粉剤、噴霧剤、エアゾール、懸濁液、軟膏、クリーム、錠剤、ペレット又は粉末として好適に使用することができる。ペプチドの医薬製剤で使用するための好適な医薬担体は当業者に周知であり、本発明の中でのそれらの選択に特に制限はない。それらには、添加剤、例えば湿潤剤、分散剤、展着剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれてもよいが、それらが製薬慣行と一貫している場合に限られ、すなわち哺乳動物に恒久的な傷害を与えない担体及び添加剤に限る。免疫原性ペプチドの医薬製剤は、任意の公知の方法で、例えば有効成分を選択された担体材料及び適当な場合には界面活性剤等の他の添加剤と一緒に、一段階又は多段階手順で均一に混合し、コーティングし、及び/又は磨砕することによって調製することができる。それらは、例えば通常約1~10μmの直径を有するマイクロスフェアの形でそれらを得る目的で、すなわち、免疫原性ペプチドの制御されたか又は持続的放出のためのマイクロカプセルの製造のために、微粉化によって調製することもできる。
【0141】
搾出剤又は乳化剤としても知られる免疫原性ペプチドの医薬製剤で使用するのに好適な界面活性剤は、優れた乳化、分散及び/又は湿潤特性を有する非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性の材料である。好適なアニオン性界面活性剤には、水溶性石鹸及び水溶性の合成界面活性剤の両方が含まれる。好適な石鹸は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、高級脂肪酸(C10~C22)の非置換の若しくは置換されたアンモニウム塩、例えばオレイン酸若しくはステアリン酸のナトリウム若しくはカリウム塩、又はヤシ油若しくは獣脂オイルから入手できる天然脂肪酸混合物のものである。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム又はカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩及び硫酸塩;スルホン化されたベンズイミダゾール誘導体及びアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪スルホン酸塩又は硫酸塩は通常アルカリ又はアルカリ土類金属塩、非置換のアンモニウム塩又は8~22の炭素原子を有するアルキル若しくはアシル基で置換されるアンモニウム塩、例えば、リグニンスルホン酸又はドデシルスルホン酸のナトリウム又はカルシウム塩、又は天然脂肪酸から得られる脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸又はスルホン酸エステル(ラウリル硫酸ナトリウム等)及び脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩の形である。好適なスルホン化されたベンズイミダゾール誘導体は、8~22の炭素原子を一般的に含有する。アルキルアリールスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸又はジブチル-ナフタレンスルホン酸又はナフタレン-スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム、カルシウム又はアルカノールアミン塩である。対応するリン酸塩、例えばリン酸エステルの塩、及びp-ノニルフェノールとエチレン及び/又はプロピレンオキシドの付加物、又はリン脂質も好適である。例えば、この目的のための好適なリン脂質は、ケファリン又はレシチンタイプの天然(動物又は植物細胞を起源とする)又は合成リン脂質、例えば、ホスファチジル-エタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びそれらの混合物である。好適な非イオン性界面活性剤には、分子中に少なくとも12の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミン又はアミドのポリエトキシル化及びポリプロポキシル化誘導体、アルキルアレーンスルホン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩、例えば、脂肪族及び脂環式アルコールのポリグリコールエーテル誘導体、飽和及び不飽和脂肪酸及びアルキルフェノールが含まれ、誘導体は、(脂肪族)炭化水素部分に3~10のグリコールエーテル基及び8~20の炭素原子を、アルキルフェノールのアルキル部分に6~18の炭素原子を一般的に含有する。更なる好適な非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に1~10の炭素原子を含有するポリプロピレングリコール、エチレンジアミノ-ポリプロピレングリコールとのポリエチレンオキシドの水溶性付加物であり、その付加物は20~250のエチレングリコールエーテル基及び/又は10~100のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、プロピレングリコール単位につき1~5のエチレングリコール単位を通常含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例は、ノニルフェノール-ポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール及びオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等)、グリセロール、ソルビタン、スクロース及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルも、好適な非イオン性界面活性剤でもある。好適なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換されたフェニル又はヒドロキシで必要に応じて置換される4炭化水素基を有する四級アンモニウム塩、特にハライドが含まれる;例えば、N置換基として少なくとも1つのC8C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイル等)及び、更なる置換基として、非置換であるかハロゲン化された低級アルキル、ベンジル及び/又はヒドロキシ-低級アルキル基を含有する四級アンモニウム塩。
【0142】
注射用の好適な免疫原性ペプチドの医薬剤形又は医薬製剤には、無菌の水性溶液又は分散液;ゴマ油、落花生油又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び無菌の注射用溶液又は分散液の即時使用の調製のための無菌の粉末が含まれる。全ての場合に、形態は無菌でなければならず、かつ容易な注射針通過が存在するという程度まで流体でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌類等の微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、その好適な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えばレシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合は要求される粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物活動の防止は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物で用いることによって、注射用組成物の長期吸収をもたらすことができる。
【0143】
無菌の注射用溶液は、必要に応じて上に列挙される他の様々な成分と一緒に免疫原性ペプチドを必要な量で適当な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌を実行することによって調製される。一般に、分散液は、塩基性の分散媒体及び上に列挙されるものから必要とされる他の成分を含有する無菌のビヒクルの中に、滅菌された免疫原性ペプチドを組み込むことによって調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌の粉末の場合は、好ましい調製方法は、前もって滅菌濾過したその溶液から免疫原性ペプチドと任意の追加の所望の成分の粉末を与える、減圧乾燥及びフリーズドライ技術である。
【0144】
製剤化の後、本明細書に規定される医薬製剤又は本明細書に規定されるペプチド又は本明細書に規定されるフマル酸化合物は、剤形に適合する様式で、かつ治療的に有効な量で投与することができる。
【0145】
本明細書に規定される本発明のペプチド又はそのようなものを含む医薬組成物は、好ましくは皮下又は筋肉内投与を通して投与される。好ましくは、ペプチド又はそのようなものを含む医薬組成物は、肘と肩の中間の上腕の側部の辺りの皮下に(SC)注射することができる。2回以上の別個の注射が必要な場合、それらは両腕に同時投与することができる。
【0146】
本発明によるペプチド又はそれを含む医薬組成物は、治療的有効用量で投与される。例示的であるが非限定的な投与レジメンは、50~1500μg、好ましくは100~1200μgである。より具体的な投与スキームは、患者の状態及び疾患の重症度によって50~250μg、250~450μg又は850~1300μgであってよい。投与レジメンは、単回投与又は2、3、4、5回若しくはそれより多い回数の同時又は連続投与での投与を含むことができる。
【0147】
ある特定の実施形態では、処置は対象の疾患の間に数回繰り返すことができる。そのような連続処置は、毎日、又は1~10日間の中断で、例えば5~9日ごとに、例えば約7日ごとに実行することができる。
【0148】
或いは、前記処置は、週一回、隔週、毎月、隔月又は3~4カ月ごとに繰り返すことができる。
【0149】
例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々25μg(各々100μL)の2回の別個の注射による50μgのペプチドのSC投与と、続く各々12.5μg(各々50μL)の2回の別個の注射による25μgのペプチドの3回の連続注射を含む低用量スキーム。
- 各々75μg(各々300μL)の2回の別個の注射による150μgのペプチドのSC投与と、続く各々37.5μg(各々150μL)の2回の別個の注射による75μgのペプチドの3回の連続投与を含む中間用量スキーム。
- 各々225μg(各々900μL)の2回の別個の注射による450μgのペプチドのSC投与と、続く各々112.5μg(各々450μL)の2回の別個の注射による225μgのペプチドの3回の連続投与を含む高用量スキーム。
【0150】
他の例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々225μgの2回の別個の注射による450μgのペプチドの2週おきの6回のSC投与を含む投与スキーム。
- 各々675μgの2回の別個の注射による1350μgのペプチドの2週おきの6回のSC投与を含む投与スキーム。
【0151】
他の例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々225μgの2回の別個の注射による450μgのペプチドの2週おきの6回のSC投与を含む投与スキーム。
- 各々675μgの2回の別個の注射による1350μgのペプチドの2週おきの6回のSC投与を含む投与スキーム。
【0152】
免疫原性ペプチド製剤は、様々な剤形で、例えば上記の注射用溶液の型で容易に投与されるが、薬物放出カプセル剤等を用いることもできる。水性溶液での非経口投与のために、例えば、溶液は必要に応じて好適に緩衝すべきであり、液体希釈剤を十分な生理食塩水又はグルコースで先ず等張性にすべきである。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与のために特に好適である。この関係で、用いることができる無菌の水性媒体は、本開示を考慮して当業者は知るだろう。例えば、1回の投薬量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解させ、1000mlの皮下注入液に加えるか、又は提案された注入部位に注射することができる。処置対象の状態によって、投薬量の多少の変動が当然起こる。いかなる場合も、投与担当者が個々の対象のために適当な投与量を決定する。
【0153】
免疫原性ペプチドの他の薬学的に許容される形は、当業者が容易に想定することができる。
【0154】
本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体(並びに、用語「有効成分」に全て含まれるそれらの生理的に許容される塩又は医薬組成物)は、処置される状態に適当であり、化合物、ここでは投与されるタンパク質及び断片、に適当である任意の経路によって投与することができる。可能な経路には、領域性、全身性、経口(固体の形又は吸入)、直腸、経鼻、局所(目、口内及び舌下を含む)、経膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)が含まれる。好ましい投与経路は、例えばレシピエントの状態で、又は処置される疾患で異なることができる。本明細書で記載されるように、担体は、製剤の他の成分に適合し、レシピエントに有害でないという意味において、最適には「許容される」。製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(口内及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)投与に適するものが含まれる。
【0155】
非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及びその製剤を予定レシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の無菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量又は多回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示することができ、使用直前に無菌の液体担体、例えば注射用水を付加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時使用の注射溶液及び懸濁液は、前に記載した種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0156】
一般的な単位薬量製剤は、本明細書で上に挙げたような有効成分の日用量又は単位下位日用量、又はその適当な分数を含有するものである。上で特に指摘した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤タイプに関係する技術分野で慣用される他の薬剤を含むことができることを理解すべきであり、例えば、経口投与に適するものは着香料を含むことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体は、より低い頻度の投薬を可能にするために、又は所与の発明化合物の薬物動態学的若しくは毒性プロファイルを改善するために有効成分の放出を制御及び調節することができる、有効成分として1つ又は複数の本発明の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するために使用することができる。個別の単位が1つ又は複数の本発明の化合物を含む経口投与のために適合させた制御放出製剤は、従来の方法によって調製することができる。組成物中の有効成分の作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。したがって、制御放出組成物は、適当なポリマー担体、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン等を選択することによって達成することができる。薬物放出の速度及び作用期間は、有効成分を粒子、例えばマイクロカプセル、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル等に組み込むことによって制御することもできる。投与経路によっては、医薬組成物は、保護コーティングを必要とすることがある。注射のために好適な医薬形態には、無菌の水性溶液又は分散液、及びその即時使用の調製のための無菌の粉末が含まれる。したがって、この目的のための一般的な担体には、生体適合性の水性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの有効成分を組み合わせて使用する場合、それらは処置される哺乳動物において必ずしも共同の治療効果を同時に直接的にもたらすとは限らないという事実を考慮して、対応する組成物は、2つの成分を別々であるが隣接したリポジトリ又はコンパートメントに含有する医療用のキット又はパッケージの形であってもよい。後者との関連で、各有効成分は、したがって、他の成分のそれと異なる投与経路に好適な方法で製剤化することができ、例えば、それらのうちの1つは経口又は非経口製剤の形であってよく、他は静脈内注射又はエアゾールのためのアンプルの形である。
【0157】
本発明に得られるような細胞溶解性CD4+T細胞は、in vitro及びin vivoで実証されるように、MHCクラスII依存性同族活性化後にAPCアポトーシスを誘導して、樹状細胞及びB細胞の両方に影響を及ぼして、(2)IL-10及び/又はTGF-βの非存在下で接触依存性メカニズムによってバイスタンダーT細胞を抑制する。WO2008/017517で詳細に議論されるように、細胞溶解性CD4+T細胞は天然及び適応性のTregから区別することができる。
【0158】
同様に、本発明で得たNKT細胞、すなわちチオレダクターゼ活性を含有する本発明によるMOG由来のペプチドによって活性化され、後者はNKT細胞の特性をかなり増加させ、それによって抗原特異的CD4+ NKT細胞によってMOG自己抗原を有する細胞の死を増加させ、これは前記MOG自己抗原に対する免疫応答を抑制する。この機構は、WO2012/069568で詳細に議論される。
【0159】
本発明はその具体的実施形態と一緒に記載されたが、上の記載を考慮して多くの代替形態、改変及び変形形態が当業者に明らかになることは明白である。したがって、以下の通りに添付の請求項の精神及び広い範囲に全てのそのような代替形態、改変及び変形形態を包含するものである。本明細書に開示される本発明の態様及び実施形態は、以下の非限定的な実施例によって更に支えられる。
【実施例
【0160】
(実施例1)
ペプチド設計
WO2017182528で開示されるP1ペプチドHCHGCGGFLRVPCWKI(配列番号65)と比較して、下で表されるアラインメントに示す通り、ミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG)のT細胞エピトープに連結される酸化還元酵素モチーフを含む、4つのペプチド(P2~ P5)が合成される:
P1: HCHGC-GGFLRVPCWKI [配列番号65]
P2: HCPYCVRYFLRVPSWKITLF [配列番号25]
P3: HCPYCVRYFLRVPCWKITLF [配列番号26]
P4: KHCPYCVRYFLRVPSWKITLFKK [配列番号27]
P5: KHCPYCVRYFLRVPCWKITLFKK [配列番号28]
【0161】
全ての4つのペプチドは、天然のヒトMOGエピトープFLRVPCWKI(配列番号1)(P3及びP5)又はCの代わりにSを有するバリアント(P2及びP4)、MOGタンパク質に天然に存在するC末端のTLF隣接配列、及び人工リンカーVRYを含む。P2及びP3は、配列HCPYC(配列番号24)の酸化還元酵素モチーフを有する。P4及びP5は、配列KHCPYC(配列番号50)の酸化還元酵素モチーフ及びそれらのC末端に2Kを有する。
【0162】
(実施例2)
免疫原性ペプチドの酸化還元酵素活性の調査。
免疫原性ペプチドの酸化還元酵素活性は、Tomazzolli等(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁に記載される蛍光アッセイを使用して決定される。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらが共有結合のジスルフィド結合を形成するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元の結果、還元された個々のFITC標識ペプチドは蛍光を再び放射する。活性は、2反復の平均で表す。結果は、相対蛍光単位(RFU)で表す。全ての試験したペプチドP1~P5は、酸化還元酵素活性を示す(図1)。
【0163】
(実施例3)
可溶性HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01 MHC IIタンパク質への免疫原性ペプチドの結合活性の調査。
MHCII分子への免疫原性ペプチドの結合性を試験するために、可溶相競合アッセイを実行する。P1~P5ペプチドの増加する濃度は、可溶性HLA-DRB1*03:01(別名、DR3)、HLA-DRB1*04:01(別名、DR4)又はHLA-DRB1*15:01(別名、DR15)ヒトMHC IIタンパク質(Benaroya Research Institute社、Seattle、US、から購入)への結合に関して、ビオチン標識対照ペプチド(対応するMHCII分子の高親和性結合体、Eurogentec社、Seraing、Belgium)と競合する。結合がその平衡に接近するにつれて(18時間)、ビオチン標識ペプチド/MHC II複合体は捕捉され、未結合の試薬から分離され、時間分解蛍光(Eu3+ストレプトアビジン、PerkinElmer社、Brussels、Belgium)によって定量的に検出される。ビオチン化対照ペプチドは蛍光シグナル(Eu3+ストレプトアビジン/ビオチン相互作用)の原因であるので、蛍光強度の低下は、試験ペプチドの結合を反映する。データを処理し、試験ペプチドの用量依存性結合特性を確認するためにプロットする。全ての試験は、3反復で実行される。図2図3及び図4は、1つの実験の結果を示す。ペプチドP2~P5は、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01に対照P1ペプチドより大いに高い親和性で結合することが示される。
【0164】
(実施例4)
可溶性HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01 MHC IIタンパク質への免疫原性ペプチドの結合活性へのリンカーVRYの役割の調査。
P1と比較してP2~P5で観察された向上したMHCII結合がリンカーVRYによるものかどうか決定するために、以下のペプチドを試験した。
P6:-HCHGCVRYFLRVPCWKI [配列番号254]
P7:-HCPYCGG-FLRVPCWKI [配列番号255]
【0165】
P6は、リンカーGGがリンカーVRYで置き換えられた先行技術のペプチドP1に対応する。P7は、酸化還元酵素モチーフHCHGCがHCPYCモチーフで置き換えられた先行技術のペプチドP1に対応する。P6及びP7の両方は、酸化還元酵素活性を示した(示さず)。図5図7で、ペプチドP6は、HLA-DRB1*03:01、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01に対照ペプチドP1より大いに高い親和性で結合することが示される。P7ペプチドは、P1ペプチドと類似のMHCII結合を示す。
【0166】
同種の実験を、P4ペプチドの以下のバリアントで実行した:
P8: KHCHGCVRYFLRVPSWKITLFKK [配列番号256]
P9: KCRC--VRYFLRVPSWKITLFKK [配列番号257]
P10: KCRPYCVRYFLRVPSWKITLFKK [配列番号257]
P11:KHCPYCGG--FLRVPSWKITLFKK [配列番号259]
【0167】
P8、P9及びP10ペプチドは、酸化還元酵素モチーフKHCPYCがそれぞれKHCHGC、KCRC又はKCRPYCモチーフで置き換えられたペプチドP4に対応する。P11は、リンカーVRYがリンカーGGで置き換えられたペプチドP4に対応する。全てのペプチドは、酸化還元酵素活性を示した(示さず)。GGによるVRYリンカーの置き換えは、HLA-DRB1*04:01及びHLA-DRB1*15:01結合の強力な低下を、及びHLA-DRB1*03:01結合ではより低い程度の低下を誘導した(図8~10を参照、P4をP11と比較する、対数スケール)。酸化還元酵素モチーフの改変は、MHCII結合を有意に変更しなかった(図8~10を参照、ペプチドP8、P9及びP10をP4と比較する)。
【0168】
全体として、これらのデータは、リンカーVRYが酸化還元酵素配列から独立して本発明のペプチドのMHCII結合を増強することを示す。
【0169】
(実施例5)
溶解特性を有する特異的CD4+ T細胞を誘導する免疫原性ペプチドの能力。
PBMCは、Lymphoprep密度勾配の上のフマル酸ジメチル(DMF)によって処置した多発性硬化症患者の血液試料から単離した。患者のハプロタイプは、下のtable 1(表1)に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
供給業者の推奨によりCD14ミクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-050-201)で陽性免疫磁気分離を実行することによって、CD14+単球をこれらのPBMCから単離した。CD14+単球を6日間培養して成熟させ、自家樹状細胞(mDC)を生成した。供給業者の推奨によりCD19ミクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-050-301)で陽性免疫磁気分離を実行することによって、CD19+ B細胞をCD14- PBMC分画から単離した。CD19+ B細胞を培養してEBVで不死化させ、自家リンパ芽球細胞株(LCL)を生成した。
【0172】
供給業者の推奨によりナイーブCD4+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotec社、130-094-131)で陰性免疫磁気分離を実行することによって、ナイーブCD4+ T細胞もCD14- PBMC分画から精製した。P2及びP4ペプチドの存在下で、ナイーブCD4+ T細胞を自家mDC又はLCLと共培養した。CD4+ T細胞は、約10~12日ごとに周期的に再刺激した。
【0173】
抗原特異的CD4+ T細胞を生成するペプチドの能力は、ペプチドの有り(P2又はP4)無し(ペプチド無し)で自家LCLとの静止状態で一晩の共培養の後に、TCR誘導表面活性化マーカーCD154(CD40L)発現のフローサイトメトリー分析によって評価した。溶解マーカーFasリガンド(CD178)の表面発現も、ペプチドの有り(P4)無し(ペプチド無し)で自家LCLとの静止状態で一晩の共培養の後に、フローサイトメトリー分析によって評価した。
【0174】
CD4+ T細胞培養上清中でサイトカイン分泌を誘導するペプチドの能力は、ペプチドの有り(P2又はP4)無し(ペプチド無し)で自家mDCとの静止状態で一晩の共培養の後に、フローサイトメトリー分析によって評価した。上清は、供給業者の推奨によりLEGENDplexヒトThパネル(13-プレックス)(BioLegend社、740721)で分析した。
【0175】
抗原特異的CD4+ T細胞の細胞溶解活性は、抗原提示細胞として使用されたLCLの上で誘導されたアポトーシスの定量化によって評価した。ペプチド(P4)をロードしたか、又はロードしなかった蛍光標識自家LCLを、特異的CD4+ T細胞と静止状態で一晩共培養し、アネキシンV染色を通したフローサイトメトリーによってLCLアポトーシスを定量化した。対照として使用された、ロードしなかったLCLのアポトーシスパーセンテージを考慮して、特異的アポトーシスのパーセンテージを以下の通りに計算した:
【0176】
【数1】
【0177】
P2による結果
我々は、4人の異なるMS患者(MS017、MS022、MS026及びMS027)からP2特異的CD4+ T細胞株を生成することができた。3人の患者のCD4+細胞株(MS017(S9)、MS022(S10)及びMS027(S12))のP2による刺激が、高頻度のエフェクター細胞(CD3+CD4+CD154+)を誘導したことを我々は示した(図11)。更に、MS026 CD4+細胞株(S11)の培養上清中のP2によって誘導されたサイトカイン(IL-5及びIL-13)の特異的分泌が観察された(図12)。
【0178】
P4による結果
我々は、8人の異なるMS患者(MS017、MS020、MS021、MS024、MS026、MS027、MS028及びMS029)からP4特異的CD4+ T細胞株を生成することができた。8人の患者のCD4+細胞株(MS017(S12)、MS020(S7)、MS021(S9)、MS024(S7)、MS026(S12)、MS027(S12)、MS028(S11)及びMS029(S9))のP4による刺激が、高頻度のエフェクター細胞(CD3+CD4+CD154+)を誘導することを我々は示した(図13)。P4による刺激が、患者MS017(S9)及びMS020(S10)のCD4+細胞株に関して溶解マーカーFasリガンド(CD3+CD4+CD154+FasL+)を発現するエフェクター細胞の特異的増加を誘導したことも示され(図14)、それによって、P4が細胞溶解性CD4+ T細胞と呼ばれる溶解特性を有する特異的CD4+ T細胞を誘導することができることが実証された。更に、MS017(S15)、MS024(S20)及びMS026(S14)CD4+細胞株の培養上清中のP4によって誘導されたサイトカイン(IL-5)の特異的分泌が観察された(図15)。更に、患者MS017(S14)及びMS026(S13)のCD4+細胞株に関して、P4及びその対応する短いC-WT T細胞エピトープペプチド(配列:DPHFLRVPCWKITLFKK、配列番号29)とのP4特異的CD4+細胞株の静止状態で一晩の共培養の後、エフェクター細胞(CD3+CD4+CD154+)の特異的誘導を我々は示した(図16)。更に、患者MS024(S20)、MS017(S9)、MS026(S13)、MS028(S11)及びMS029(S9)のCD4+細胞株に関して、P4及びその対応する短いS-WT T細胞エピトープペプチド(配列:KLHRTFDPHFLRVPSWKITLFK、配列番号253)とのP4特異的CD4+細胞株の静止状態で一晩の共培養の後、エフェクター細胞(CD3+CD4+CD154+)の特異的誘導を我々は示した(図17)。更に、MS017(S15)CD4+細胞株の培養上清中のP4ペプチド並びにその対応する短いC-WT及び長いC-WT T細胞エピトープペプチド(短い配列:DPHFLRVPCWKITLFKK(配列番号29)又は長い配列:QYRLRGKLRAEIENLHRTFDPHFLRVPCWKITLFVIVPVLGP、配列番号30)によって誘導されたサイトカイン(IL-5)の特異的が観察された(図18)。MS017(S12)及びMS024(S20)CD4+細胞株の培養上清中のP4ペプチド及びその対応する短いS-WT T細胞エピトープペプチド(配列:KLHRTFDPHFLRVPSWKITLFK、配列番号253)によって誘導されたサイトカイン(IL-5)の特異的分泌も我々は観察し(図19)、それによって、P4特異的CD4+ T細胞がWT MOGエピトープ配列を提示するAPCと交差反応することができることを示した。
【0179】
最後に、P4ペプチド又はその対応する短いS-WT T細胞エピトープペプチド(KLHRTFDPHFLRVPSWKITLFK、配列番号253)をロードした標識自家LCLを、患者MS017(S7)、MS026(S12)、MS028(S11)及びMS029(S9)からのP4特異的CD4+ T細胞株と共培養したとき、我々は特異的LCLアポトーシスのパーセンテージの増加を示し、P4誘導細胞溶解性CD4+ T細胞の溶解活性を更に実証した(図20)。
【0180】
(実施例6)
マウスにおける実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)発症に及ぼすP4又はIMCY-0189ペプチドの治療的投与の影響。
マウスの群及び投与
試験では、合計48匹の雌C57BL/6マウス(Taconic Biosciences社、0日目に9週齢)を使用した。マウスは、最初の注射の前の7日間順応させた。試験開始時に全体の群で類似の平均重量を達成するために、マウスはバランス良く群に割り振った。下のTable 2(表2)は、各群に投与された処置を示す。
【0181】
【表2】
【0182】
全てのマウスの投与は、Table 2(表2)に示す日の各々の日に0.05mL/部位の量で皮下に1回実行し、各マウスは2つの部位で注射を受け、合計で0.1mL/マウス/投与日であった。IMCY-0189又はP4ペプチドの全投与量は1投与につき30μgであった。
【0183】
全ての投与は、各投与日で同じ時間(±1時間)であった。
【0184】
化合物調製
生理食塩水処置については、0.9% NaCl溶液を各投与日に調製した。
【0185】
IMCY-0189ペプチド調製:
酸化還元酵素モチーフHCPYC(配列番号24)、リンカーGW、マウスミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG35~55)MHCII T細胞エピトープYRSPFSRVV(配列番号261)及び隣接配列HLYR(配列番号262)(Smart Bioscience社)を含む、配列HCPYCGWYRSPFSRVVHLYR(配列番号260)を有する凍結乾燥免疫原性ペプチドIMCY-0189は、使用直前に可溶化した。凍結乾燥IMCY-0189は室温で10分間解凍し、酢酸Na緩衝液50mM NaCl 0.9% pH5.4に再懸濁させ、室温で10分間インキュベートした。再構成されたペプチドは、注射前にImject(商標)アラムアジュバントと次に混合した。
【0186】
P4ペプチド調製:
酸化還元酵素モチーフKHCPYC(配列番号50)、リンカーVRY、ヒトミエリン希突起膠細胞糖タンパク質(MOG201~212)MHCII T細胞エピトープFLRVPSWKI(配列番号2)及び隣接配列TLFKK(配列番号263)(Smart Bioscience社)を含む、配列KHCPYCVRYFLRVPSWKITLFKK(配列番号27)を有する凍結乾燥免疫原性ペプチドP4は、使用直前に可溶化した。凍結乾燥P4は室温で10分間解凍し、酢酸Na緩衝液50mM NaCl 0.9% pH5.4に再懸濁させ、室温で10分間インキュベートした。再構成されたペプチドは、注射前にImject(商標)アラムアジュバントと次に混合した。
【0187】
EAE誘導
EAEは全てのマウスで以下の通りに誘導した:
0日目、0時間目-MOGのアミノ酸35~55に対応するペプチド(MOG35~55)/CFAによる免疫化
0日目、2時間目-百日咳毒素の注射
1日目、0時間目-百日咳毒素の2回目の注射(最初の免疫化の24時間後)。
【0188】
マウスは背中の2つの部位にHookeキット(商標)MOG35~55/CFA乳濁液PTX、カタログ番号EK-2110(ロット#131、Hooke Laboratories社、Lawrence MA)の乳濁液成分(MOG35~55を含有する)で皮下に注射した。1つの注射部位は、背中上部の領域、ネックラインの概ね1cm尾側であった。第2の部位は背中下部の領域、尾基部の概ね2cm頭側であった。注射量は、各部位で0.1mLであった。各マウスは、200μgのMOG35~55を受けた。
【0189】
乳濁液の注射から2時間以内に、及び次に再び乳濁液の注射から24時間後に、キットの百日咳毒素成分を腹腔内に投与した。百日咳毒素(ロット#1008、Hooke Laboratories社)は両方の注射のために90ng/用量で投与し、各注射の量は0.1mLであった。
【0190】
EAEスコアリング
動物は、7日目に開始して試験の終わりまで毎日評価した。スコアリングは、各マウスの処置及び以前のスコアを知らされない者によって盲目で実行された。EAEは、下のTable 3(表3)に示すようにスケール0~5で評価された。臨床徴候が2つの上で規定されるスコアの間に入る場合は、中間のスコアが割り当てられた。
【0191】
【表3】
【0192】
血清ニューロフィラメントレベルの判定
28日目に、血液を全てのマウスからゲル凝固活性化剤管に収集し、室温で約30分間凝固させた。血液は、次に約10000gで5分間遠心分離する。血清をエッペンドルフ管に移し、Quanterix(商標)への発送まで-80℃で保存した。血清Neurofilament light(NF-L)タンパク質レベルは、Simoa(登録商標)NF-light Advantageキット、血清、血漿及びCSF中のNF-Lの定量的判定のためのデジタル式イムノアッセイを使用して定量化した。使用した抗体(Uman Diagnostics社、Umea Sweden)は、マウス、ウシ及びマカクのNF-Lエピトープとも交差反応し、このように、このアッセイはこれらの種での研究のために使用することができる。全ての試料は、40×の希釈倍率により2反復で試験した。
【0193】
最終収集
試験の終了時に、全てのマウスを安楽死させ、組織学的分析のために脊椎を収集して10%緩衝ホルマリンに入れた。
【0194】
組織学
各脊椎について、1枚のH&E染色スライド及び1枚の抗MBP染色スライドを調製し、分析した。各スライドは、脊髄の腰部、胸部及び頚部からの試料(3試料)の切片を含有した。全ての分析は、実験群及び全ての臨床リードアウトに盲検化された病理学者によって実行された。
【0195】
各H&E染色切片で概ね20細胞の炎症性病巣を数えた。炎症性浸潤巣が20を超える細胞からなったとき、20細胞のどれくらいの病巣が存在していたかについて推定した。
【0196】
脱髄は、各抗MBP(免疫組織化学を使用して)染色切片で評価した。抗MBP切片では、脱髄は白質帯の中の顕著な未染色領域として観察され、大きな液胞の存在と関連している。脱髄スコアは、以下の通り各切片の脱髄領域の推定値を表す:
0 - 脱髄なし(5%未満の脱髄領域)
1 - 5~20%の脱髄領域
2 - 20~40%の脱髄領域
3 - 40~60%の脱髄領域
4 - 60~80%の脱髄領域
5 - 80~100%の脱髄領域
【0197】
統計分析
AUC、MMS、炎症及び脱髄、及びNF-Lレベルの定量化データは、通常の一元配置ANOVAを実行することによって分析した。多重性の調整は、ホルム-サイダックの方法を使用して実行した。有意差は、以下の通りに称される:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0198】
結果及びデータの解釈
EAEスコアリング
全ての群の臨床EAEリードアウトを陰性対照(生理食塩水)群と比較することによって、EAE発症を評価した。EAEスコアリング、AUC(曲線下面積)及びMMS(平均最大スコア)は、図21図22及び図23に示す。
【0199】
生理食塩水群(陰性対照)のマウスは、このモデルの予想された範囲内のEAEを起こした。この群で、マウスは死ななかった。
【0200】
IMCY-0189又はP4で処置したマウスは、延期された疾患開始及び低減された最終スコア、及び陰性対照群と比較して統計学的に有意な低減されたAUC及びMMSを示した。これらの3群で、マウスは死ななかった。
【0201】
組織学
全ての群の炎症及び脱髄レベルを陰性対照(生理食塩水)群と比較することによって、組織学リードアウトを評価した。炎症及び脱髄データは、図24及び図25に示す。
【0202】
生理食塩水群(陰性対照)の組織学結果は臨床所見と一貫し、このモデルで予想された通りであった。
【0203】
IMCY-0189で処置したマウスは、炎症及び脱髄の統計学的に有意に低減されたレベルを示した。P4で処置したマウスは、低減されたレベルの脱髄及び低減されたレベルの炎症を示した。組織学的分析の結果は、臨床所見と一貫していた。
【0204】
血清ニューロフィラメントレベル
Neurofilament light(NF-L)は、軸索のために構造的支持を提供するニューロン細胞骨格の主成分の1つとして、ニューロンで発現される68kDaの細胞骨格フィラメントタンパク質である。ニューロフィラメントは、軸索損傷又はニューロン変性の後に放出される可能性がある。NF-Lは、多発性硬化症等の神経変性疾患と関連することが示されている。
【0205】
軸索損傷は、全ての群のNF-Lレベルを陰性対照(生理食塩水)群と比較することによって評価した。データは、図26に示す。
【0206】
生理食塩水群(陰性対照)のNF-Lレベルは臨床所見と一貫し、このモデルで予想された通りであった。
【0207】
IMCY-0189で処置したマウスは、陰性対照群と比較して統計学的に有意な低減されたNF-Lレベルを示した。P4で処置したマウスも、陰性対照群と比較して統計学的に有意な低減されたNF-Lレベルを示した。
【0208】
(実施例7)
マウスにおける実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)発症に及ぼす、HCPYC酸化還元酵素モチーフに連結したMOG35~55 MHCII T細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの予防的投与の影響。
EAE誘導
EAEは、ドナーB6.SJLマウスをMOG35~55/CFAで免疫化し、次に、11日後にそれらの脾臓をとり、MOG35~55ペプチドによる培養でそれらを3日間再刺激することによってレシピエントマウスにおいて誘導した。今や完全に脳炎誘発性であるそれらの細胞をマウスのレシピエント群に0日目に注射し、それらはEAEを発症した。
【0209】
ドナーマウス
B6.SJLドナーマウスは試験の開始前に13日間順応させ、免疫化時に9週齢であった。ドナーマウスは、以下の通りに脳炎誘発性細胞を生成するために使用した:
-14日目:MOG35~55/CFAによる免疫化。
-3日目:脾臓採取。マウスを安楽死させ、脾臓を採取し、プールし、細胞懸濁液を調製した。脳炎誘発性T細胞を生成するために、T150フラスコ中に4,000,000~5,000,000細胞/mLの細胞懸濁液を、3日間MOG35~55ペプチド(20μg/mL)、IL-12(20μg/mL)及び抗IFNγ(7μg/mL)の存在下の培養で準備した。
0日目:細胞収集及び転移。細胞を収集し、遠心回転させ、RPMI1640(FCSなし)に再懸濁させ、計数し、マウスにつき10,000,000細胞でレシピエントマウスに注射した。
【0210】
マウス(レシピエントマウス)の群及び投与
レシピエントマウスは最初の注射の前に6日間順応させ、処置を開始したとき(-21日目)、6週齢であった。試験開始時に全体の群で類似の平均重量を達成するために、マウスをバランス良く群に割り振った。下のTable 4(表4)は、各群に投与された処置を示す。
【0211】
【表4】
【0212】
全てのマウスの投与は、Table 4(表4)に示す日の各々の日に0.05mL/部位の量で皮下に1回実行し、各マウスは2つの部位で注射を受け、合計で100μgのペプチドに相当する0.1mL/マウス/投与日であった。
全ての投与は、各投与日で同じ時間(±2時間)であった。
【0213】
化合物調製
ビヒクル処置のために、Imject(商標)アラム溶液を各投与日に調製した。IMCY-0189は、実施例6に記載される配列を有する。凍結乾燥IMCY-0189は室温で10分間解凍し、酢酸Na緩衝液50mM pH5.4に再懸濁させ、室温で5分間インキュベートした。再構成されたペプチドは、注射前にImject(商標)アラムアジュバントと次に混合した。
【0214】
血漿ニューロフィラメントレベルの判定
終了時、K2EDTAを含有する管に全てのマウスから血液を収集し、静かに混合した。血液は、次に約10000gで5分間遠心分離した。血漿をエッペンドルフ管に移し、Quanterix(商標)への発送まで-80℃で保存した。血漿Neurofilament light(NF-L)タンパク質レベルは、実施例6に記載の通りにSimoa(登録商標)NF-light Advantageキットを使用して定量化した。
【0215】
EAEスコアリング、最終収集、組織学分析及び統計分析は、実施例6に記載の通りに実行した。
【0216】
結果及びデータの解釈
EAEスコアリング
試験群(IMCY-0189)の臨床EAEリードアウトを陰性対照群(アラム)と比較することによって、EAE発症を評価した。EAEスコアリング、AUC(曲線下面積)及びMMS(平均最大スコア)は、図27図28及び図29に示す。アラム群(陰性対照)のマウスは、このモデルの一般的なEAEを起こした。この群で、マウスは死ななかった。
【0217】
IMCY-0189で処置したマウスの全ての臨床リードアウト(疾患開始、最終スコア、AUC及びMMS)は、陰性対照群と比較して統計学的に有意に向上した。この群で、マウスは死ななかった。
【0218】
組織学
試験群(IMCY-0189)の炎症及び脱髄レベルを陰性対照群(アラム)と比較することによって、組織学リードアウトを評価した。炎症及び脱髄データは、図30及び図31に示す。
【0219】
アラム群(陰性対照)の組織学結果は臨床所見と一貫し、このモデルで予想された通りであった。
【0220】
IMCY-0189で処置したマウスは、炎症及び脱髄の統計学的に有意に低減されたレベルを示した。組織学的分析の結果は、臨床所見と一貫していた。
【0221】
血漿ニューロフィラメントレベル
Neurofilament light(NF-L)は、軸索のために構造的支持を提供するニューロン細胞骨格の主成分の1つとして、ニューロンで発現される68kDaの細胞骨格フィラメントタンパク質である。ニューロフィラメントは、軸索損傷又はニューロン変性の後に放出される可能性がある。NF-Lは、多発性硬化症等の神経変性疾患と関連することが示されている。
【0222】
試験群(IMCY-0189)のNF-Lレベルを陰性対照群(アラム)と比較することによって、軸索損傷を評価した。データは、図32に示す。
【0223】
アラム群(陰性対照)のNF-Lレベルは臨床所見と一貫し、このモデルで予想された通りであった。
【0224】
IMCY-0189で処置したマウスは、陰性対照群と比較して統計学的に有意に低減されたNF-Lレベルを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【配列表】
2023525084000001.app
【国際調査報告】