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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】微粉タルク
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/40 20060101AFI20230607BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230607BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C01B33/40
C08K3/34
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568599
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2021062524
(87)【国際公開番号】W WO2021228885
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】20290040.3
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20305475.4
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】メリ ジル
(72)【発明者】
【氏名】アブラー キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】トラカス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】イヌイシュ セオドール
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ アレクサンドラ
【テーマコード(参考)】
4G073
4J002
【Fターム(参考)】
4G073CC03
4G073FA10
4G073FB29
4G073FD30
4G073GA03
4G073GA06
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA20
4G073GA40
4G073GB03
4G073UA08
4G073UB19
4J002AC031
4J002BB011
4J002BB031
4J002BB121
4J002BC031
4J002BD041
4J002BG031
4J002BG061
4J002BG101
4J002CB001
4J002CD001
4J002CF211
4J002CG001
4J002CK021
4J002CP031
4J002DE267
4J002DJ007
4J002DJ037
4J002DJ046
4J002DJ057
4J002DL007
4J002FD016
(57)【要約】
微粉タルク、微粉タルクを含むポリマー組成物、微粉タルクの製造方法、ポリマー組成物の製造方法、及び微粉タルクの種々の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉タルクであって、
(A)約2.8以上のラメラリティーインデックス、
(B)以下の(a)及び(b)、すなわち、
(a)約1.0μm以上かつ約5.0μm以下のd95sedi、及び
(b)約7.0μm以上かつ約20.0μm以下のd95laser
のうちの一方又は両方、並びに
(C)以下の(a)~(c)、すなわち、
(a)約20m2/g以上かつ約30m2/g以下のBET表面積
(b)約0.5μm以上かつ約2.5μm以下のd50sedi、及び
(c)約2.0μm以上かつ約8.0μm以下のd50laser
のうちの1つ以上を有する、微粉タルク。
【請求項2】
微粉タルクであって、約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(delamination index according to tetrahedral-octahedral-tetrahedral layers:DI(TOT))を有する、微粉タルク。
【請求項3】
微粉タルクであって、約65mL/100g以上の吸油量及び約2.8以上のラメラリティーインデックスを有する、微粉タルク。
【請求項4】
微粉タルクであって、約43゜以下の接触角及び以下の(a)~(d)、すなわち、
(a)約6.5μm以下のd95sedi、
(b)約23.0μm以下のd95laser、
(c)約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))、
(d)約65mL/100g以上の吸油量、
のうちの1つ以上を有する、微粉タルク。
【請求項5】
以下の(a)~(e)、すなわち、
(a)約25.0μm以下かつ/あるいは約7.0μm以上のd95laser
(b)約10.0μm以下かつ/あるいは約1.0μm以上のd95sedi
(c)約12.0μm以下かつ/あるいは約2.0μm以上のd50laser
(d)約5.0μm以下かつ/あるいは約0.5μm以上のd50sedi
(e)約15m2/g以上かつ/あるいは約30m2/g以下のBET表面積、
のうちの1以上を有する、請求項2又は3記載の微粉タルク。
【請求項6】
以下の(a)~(c)、すなわち、
(a)約1150オングストローム以下かつ/あるいは約750オングストローム以上の干渉性散乱ドメイン(CSDc*)、
(b)約120以下かつ/あるいは約50以上の4面体‐8面体‐4面体(tetrahedral-octahedral-tetrahedral:TOT)層、
(c)約103以上かつ/あるいは約200以下のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))、
のうちの1つ以上を有する、請求項1~5のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
【請求項7】
以下の(a)及び(b)、すなわち、
(a)約70以上かつ/あるいは約200以下の形状因子、
(b)約2.8以上かつ/あるいは約6.0以下のラメラリティーインデックス、
のうちの1つ以上を有する、請求項1~6のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
【請求項8】
約65mL/100g以上かつ/あるいは約100mL/100g以下の吸油量を有する、請求項1~7のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
【請求項9】
約43゜以下かつ/あるいは約33゜以上の接触角を有する、請求項1~8のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
【請求項10】
ポリマー組成物であって、請求項1~9のうちいずれか一に記載の微粉タルクを含む、ポリマー組成物。
【請求項11】
請求項1~9のうちいずれか一に記載の微粉タルクを製造する方法であって、前記方法は、供給タルク材料を分級して前記供給タルク材料中の最も大きな粒子の一部を除去するステップを含み、前記供給タルク材料は、以下の(a)~(i)、すなわち、
(a)約2.8以上のラメラリティーインデックス、
(b)約15.0μm以下のd95sedi
(c)約40.0μm以下のd95laser
(d)約5.0μm以下のd50sedi
(e)約15.0μm以下のd50laser
(f)約40以上の形状因子、
(g)約10m2/g以上のBET表面積、
(h)約102以下のDI(TOT)、
(i)約110以上のTOT層、
のうちの1つ以上を有する、方法。
【請求項12】
請求項10記載のポリマー組成物を製造する方法であって、前記方法は、ポリマー又はポリマー前駆物質を請求項1~9のうちいずれか一に記載の微粉タルクと組み合わせるステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項1~9のうちいずれか一に記載の微粉タルクの使用であって、前記微粉タルクが混入されるポリマー組成物の曲げ弾性率を高めるための使用。
【請求項14】
請求項1~9のうちいずれか一に記載の微粉タルクの使用であって、前記微粉タルクが混入されるポリマー組成物の衝撃強度を高めるための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、新規な微粉タルク、この新規な微粉タルクを含むポリマー組成物、及び微粉タルク及びポリマー組成物を製造する方法に関する。本発明はさらに、新規な微粉タルク及びポリマー組成物の種々の使用、特にポリマー組成物の曲げ弾性率及び/又は衝撃強度を高めるための新規な微粉タルクの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉タルクは、ポリマー組成物、特にポリプロピレンを主成分とする組成物のための充填剤(フィラー)として技術開発された。特に、微粉タルクは、ポリマー組成物の物理的性質、例えば衝撃強度又は曲げ弾性率を向上させるために技術開発された。
【0003】
一般に、衝撃強度及び曲げ弾性率は、ポリマー組成物の衝撃強度の向上がその曲げ弾性率を減少させ、またその逆の関係が成り立つという点で互いに拮抗する性質であると理解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、例えばポリマー組成物の1つ以上の物理的性質、例えば、曲げ弾性率及び耐衝撃性のうちの一方又は両方を高めることができる新規な微粉タルクを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点によれば、微粉タルクであって、以下の性質(a)~(j)、すなわち、
(a)約1150オングストローム以下の干渉性散乱ドメイン(CSDc*)、
(b)約120以下の4面体‐8面体‐4面体(tetrahedral-octahedral-tetrahedral:TOT)層、
(c)約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(delamination index according to tetrahedral-octahedral-tetrahedral:DI(TOT))、
(d)約70以上の形状因子、
(e)約25.0μm以下のd95laser
(f)約10.0μm以下のd95sedi
(g)約2.5以上のラメラリティーインデックス(lamellarity index)、
(h)約15m2/g以上のBET表面積、
(g)約65mL/100g以上の吸油量、
(j)約43゜以下の接触角、
のうちの1つ以上を有することを特徴とする微粉タルクが提供される。
【0006】
第1の観点の性質(a)~(j)のうちの任意の1つ以上を組み合わせることができる。例えば、微粉タルクは、性質(a)~(j)のうちの1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個を有するのがよい。
【0007】
本発明の第1の観点の実施形態でもある本発明の第2の観点によれば、微粉タルクであって、約103以上の4面体‐8面体‐4面体(TOT)層によるデラミネーションインデックス(delamination index according to tetrahedral-octahedral-tetrahedral layers:DI(TOT))を有することを特徴とする微粉タルクが提供される。
【0008】
本発明の第1の観点の実施形態でもある本発明の第3の観点によれば、微粉タルクであって、約65mL/100g以上の吸油量及び約2.5以上のラメラリティーインデックスを有することを特徴とする微粉タルクが提供される。
【0009】
本発明の第1の観点の実施形態でもある本発明の第4の観点によれば、微粉タルクであって、約43゜以下の接触角及び以下の(a)~(d)のうちの1つ以上、すなわち、
(a)約6.5μm以下のd95sedi
(b)約23.0μm以下のd95laser
(c)約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))、
(d)約65mL/100g以上の吸油量、
を有することを特徴とする微粉タルクが提供される。
【0010】
本発明の第1の観点の実施形態でもある本発明の第5の観点によれば、微粉タルクであって、
(A)約2.5以上のラメラリティーインデックス、
(B)以下の(a)及び(b)のうちの一方又は両方、すなわち、
(a)約1.0μm以上かつ約5.0μm以下のd95sedi、及び
(b)約7.0μm以上かつ約20.0μm以下のd95laser、並びに、
(C)以下の(a)~(c)のうちの1つ以上、すなわち、
(a)約20m2/g以上かつ約30m2/g以下のBET表面積
(b)約0.5μm以上かつ約2.5μm以下のd50sedi、及び
(c)約2.0μm以上かつ約8.0μm以下のd50laser
を有することを特徴とする微粉タルクが提供される。
【0011】
本発明の第6の観点によれば、本発明の第1、第2、第3、第4、又は第5の観点のうちの任意の観点の微粉タルクを含むポリマー組成物が提供される。
【0012】
本発明の第7の観点によれば、微粉タルクを製造する方法であって、本方法は、供給タルク材料を分級して供給タルク材料中の最も大きな粒子の一部を除去するステップを含み、供給タルク材料は、以下の(a)~(f)、すなわち、
(a)約2.5以上のラメラリティーインデックス、
(b)約15.0μm以下のd95sedi
(c)約40.0μm以下のd95laser
(d)約5.0μm以下のd50sedi
(e)約40以上の形状因子、
(f)約10m2/g以上のBET表面積、
のうちの1つ以上を有することを特徴とする方法が提供される。
【0013】
本発明の第7の観点の方法は、例えば、本発明の第1、第2、第3、第4、又は第5の観点のうちの任意の観点に従って微粉タルクを製造することができる。
【0014】
本発明の第8の観点によれば、本発明の第7の観点の方法によって得られたかつ/あるいは得ることができる微粉タルクが提供される。
【0015】
本発明の第9の観点によれば、ポリマー組成物を製造する方法であって、ポリマー又はポリマー前駆物質を本発明の第1、第2、第3、第4、又は第5の観点の微粉タルクと組み合わせるステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0016】
本発明の第9の観点の方法は、例えば、本発明の第6の観点に従ってポリマー組成物を製造することができる。
【0017】
本発明の第10の観点によれば、本発明の第9の観点の方法によって得られたかつ/あるいは得ることができるポリマー組成物が提供される。
【0018】
本発明の第11の観点によれば、本発明の第1、第2、第3、第4、又は第5の観点の微粉タルクの使用であって、微粉タルクが混入されるポリマー組成物の曲げ弾性率を高めるための使用が提供される。ポリマー組成物は、例えば、本発明の第6の観点に係るポリマー組成物であるのがよい。
【0019】
本発明の第12の観点によれば、本発明の第1、第2、第3、第4、又は第5の観点の微粉タルクの使用であって、微粉タルクが混入されるポリマー組成物の衝撃強度を高めるための使用が提供される。ポリマー組成物は、例えば、本発明の第6の観点に係るポリマー組成物であるのがよい。
【0020】
本発明のある特定の実施形態は、以下の利点、すなわち、
・衝撃強度が高められたポリマー組成物、
・曲げ弾性率が高められたポリマー組成物、
・粒子の板状の形(例えば、ラメラリティーインデックス及び/又は形状因子によって実証される)を維持しながら、デラミネーション(層間剥離)を向上させた(これは、例えば、単一の結晶中のTOT層の数によって実証される)微粉タルク、
・トップカットが減少した微粉タルク(すなわち、d95)、
・比較的大きいBET表面積を備えた微粉タルク
・吸油量が増大した微粉タルク、
・接触角が減少した微粉タルク、
・分解温度が低下した微粉タルク、
・陽イオン交換容量が増大した微粉タルク、
のうちの1つ以上を提供することができる。
【0021】
本発明の上述の観点のうちの任意特定の1つ以上と関連して提供される細部、実施例及び好適例について本明細書においてさらに説明するが、これらは、本発明のすべての観点に同等に当てはまる。本明細書において説明する実施形態、実施例、及び好適例の任意の組み合わせは、その考えられるすべての変形例において、別段の指定がなければ又は文脈上明らかな矛盾がなければ、本発明に含まれる。
【0022】
次に、図面を参照して実施形態について説明するが、これらは例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】水分及び強固に結合された水の放出、並びに緑泥石、白雲石及びタルク(滑石)が見える領域を指示した熱重量分析(TGA)及び微分熱重量測定(DTG)によって得られた例示のプロット図である。
図2】本発明の微粉タルクに関するd95トップカットの関数としての含水量のプロット図である。
図3(a)】本発明の微粉タルクに関するd95トップカットの関数としての白雲石及び緑泥石の分解温度のプロット図である。
図3(b)】本発明の微粉タルクに関するd95トップカットの関数としてのタルク分解温度のプロット図である。
図4】本発明の微粉タルクに関するd95トップカットの関数としてのタルク、緑泥石及び白雲石の分解率のプロット図である。
図5】(a)滑らかなボールの状態に成形でき、(b)ひびの入ったボールを成形し、又は(c)滴下中の(水が滴っている状態の)ボールを成形するペーストを形成するために油が添加された粉末のサンプルの写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、新規な微粉タルクが、これを混入したポリマー組成物、特にポリプロピレン系組成物の衝撃強度と曲げ弾性率の両方を高めることができるという驚くべきかつ有利な知見に基づいている。新規な微粉タルクは、アスペクト比の高い供給タルク材料(例えば、高いラメラリティーインデックス及び/又は高い形状因子によって反映される)の最も大きな粒子の一部を除去することによって得られる。かくして、新規な微粉タルクは、比較的低いトップカット(すなわち、d95)を有する高アスペクト比タルクである。この新規な微粉タルクは、驚くべきこととして、供給タルク材料及び他の既知の微粉タルクの性質とは異なる多くの性質を有することが判明した。したがって、新規な微粉タルクは、多くの仕方で規定できる。
【0025】
微粉タルク
本明細書で用いる「タルク」という用語は、ケイ酸マグネシウム鉱物、もしくは鉱物緑泥石(ケイ酸アルミニウムマグネシウム)、又はこれら2つの混合物のいずれかを意味し、これは、オプションとして、他の鉱物、例えば白雲石及び/又はマグネサイト、又はさらにタルコースとも呼ばれている合成タルクと関連している。
【0026】
ある特定の実施形態では、タルクは、ケイ酸マグネシウム鉱物もしくは鉱物緑泥石、又はこれらの組み合わせである。オプションとして、タルクは、白雲石もしくはマグネサイト、又はこれらの組み合わせをさらに含むのがよい。タルク中の他の鉱物、例えば白雲石及び/又はマグネサイトの全量は、タルクの全重量を基準として、約35重量%未満であるのがよく、例えば、約30重量%未満、約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.75重量%以下、又は0.5重量%以下である。ある特定の実施形態では、タルクは、ケイ酸マグネシウム鉱物を含み、本質的にケイ酸マグネシウム鉱物から成り、又はケイ酸マグネシウム鉱物から成る。ある特定の実施形態では、タルクは、ケイ酸マグネシウム鉱物及び/又は緑泥石の混合物である。緑泥石は、例えば、斜緑泥石((Mg,Fe2+5Al(Si3Al)O10(OH)8)を含み、本質的に斜緑泥石から成り、又は斜緑泥石から成る。例えば、緑泥石は、主成分として斜緑泥石を含むのがよい。ケイ酸マグネシウム鉱物と緑泥石の重量比は、約5:1~約1:4であるのがよく、例えば、約4:1~約1:1、約4:1~約2:1、約4:1~約2.5:1、約4:1~約3:1、約2:1、約3:1、又は約4:1である。ある特定の実施形態では、タルクは、合成タルクもしくはタルコースを含み、本質的に合成タルクもしくはタルコースから成り、又は合成タルクもしくはタルコースから成る。
【0027】
ある特定の実施形態では、タルクは、ヒドロキシル化ケイ酸マグネシウムであり、これは、層状フィロケイ酸塩のファミリーに属する。この元素構造は、6環シリカ4面体SiO2(“T”という)相互間にサンドイッチされたMgO4(OH)8面体層(“O”という)から成る。これは、TOT層で作られた反復基本単位を形成する。このTOT層は、次に、サイズを測定することができる干渉性結晶構造を備えた結晶子を形成するようc*軸に沿って積み重なる。
【0028】
微粉タルクは、例えば、巨視的結晶質のタルクであるのがよい(すなわち、微視的結晶質タルクではない)。
【0029】
タルクの結晶構造(例えば、微視的結晶質又は巨視的結晶質)は、一般に、エイチ・ジェイ・ホーランド(H. J. Holland)及びエム・ジェイ・マータ(M. J. Murtagh),「アン・XRD・モーフォロジー・インデックス・フォア・テールズ:ジ・エフェクト・オブ・パーティクル・サイズ・アンド・モーフォロジー・オン・ザ・スペシフィック・サーフェース・エリア(An XRD Morphology Index for Tales: The Effect of Particle Size and Morphology on the Specific Surface Area)」,アドバンシズ・イン・エックス‐レイ・アナリシス(Advances in X-ray Analysis),2000年,第42巻,p.421~428及び国際公開第2016/007363(A1)号パンフレットに記載されているように「形態学的インデックス」(“M”又は“MI”)と関連して説明でき、この非特許文献及び特許文献を参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。例えば、比較的高いMIを有するタルクは、「板状」又は「ラメラ(薄板状)」タルクであるとみなされ、一般に、巨視的結晶質構造を有する場合があり、これに対し、比較的低いMIを有するタルクは、板状度が小さくかつ微視的結晶質構造を有する場合がある。本明細書で用いられる「板状」という用語は、MIが約0.6以上のタルク組成物を意味している。幾つかの実施形態によれば、タルクの形態学的インデックスは、0.7以上、0.75以上、0.8以上、0.85以上、又は0.9以上であるのが良い。
【0030】
本明細書において、以下の性質、すなわち、
(a)約1150オングストローム以下の干渉性散乱ドメイン(CSDc*)、
(b)約120以下の4面体‐8面体‐4面体(TOT)層、
(c)約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))、
(d)約70以上の形状因子、
(e)約25.0μm以下のd95laser
(f)約10.0μm以下のd95sedi
(g)約2.5以上のラメラリティーインデックス、
(h)約15m2/g以上のBET表面積、
(i)約65mL/100g以上の吸油量、
(j)約43゜以下の接触角、
のうちの1つ以上を有する微粉タルクが提供される。
【0031】
微粉タルクは、性質(a)~(j)のうちの任意の1つ以上を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、性質(a)~(j)のうちの、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、又は9個以上を有するのが良い。例えば、微粉微粉タルクは、性質(a)~(j)の全て(すなわち、10個)を有するのが良い。
【0032】
微粉タルクは、例えば、性質(a)~(j)について任意の組み合わせを有することができる。
【0033】
性質(a)~(j)は、広義には、粒子形状に関連した性質(すなわち、CSDc*、TOT層の数、形状因子、ラメラリティーインデックス、及びDI(TOT))、粒径に関連した性質(すなわち、d95laser、d95sedi)、粒子表面と関連した性質(すなわち、BET表面積、吸油量、及び接触角)に分級できる。
【0034】
微粉タルクは、例えば、粒子形状に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上及び粒径に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上を有するのがよい。微粉タルクは、例えば、粒子形状に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上及び粒子表面に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上を有するのがよい。微粉タルクは、例えば、粒径に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上及び粒子表面に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上を有するのがよい。微粉タルクは、例えば、粒子形状に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上、粒径に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上、及び粒子表面に関する性質(a)~(j)のうちの1つ以上を有するのがよい。
【0035】
例えば、微粉タルクは、約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))を有するのが良い。
【0036】
例えば、微粉タルクは、約65mL/100g以上の吸油量及び約2.5以上のラメラリティーインデックスを有するのがよい。
【0037】
例えば、微粉タルクは、約43゜以下の接触角及び以下の性質、すなわち、
約6.5μm以下のd95sedi
約23.0μm以下のd95laser
約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))、
約65mL/100g以上の吸油量、
の1つ以上を有するのが良い。
【0038】
例えば、微粉タルクは、以下の性質、すなわち、
(A)約2.5以上のラメラリティーインデックス
(B)以下の性質のうちの一方又は両方、すなわち、
約1.0μm以上、約5.0μm以下のd95sedi、及び
7.0μm以上、20.0μm以下のd95laser、及び
(C)以下の(a)~(c)のうちの1つ以上、すなわち、
約20m2/g以上かつ約30m2/g以下のBET表面積、
約0.5μm以上かつ約2.5μm以下のd50sedi、及び
約2.0μm以上かつ約8.0μm以下のd50laser
を有するのが良い。
【0039】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約1150オングストローム以下のCSDc*を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約1050オングストローム以下のCSDc*を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約800オングストロームから約1050オングストロームまでの範囲にあるCSDc*を有するのがよい。
【0040】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約120以下のTOT層を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約110以下のTOT層を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約85~約110のTOT層を有するのがよい。
【0041】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約103以上のDI(TOT)を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約110以上のDI(TOT)を有するのがよい。
【0042】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約70以上の形状因子を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約120以上の形状因子を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約123以上の形状因子を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックスと、約125以上の形状因子を有するのがよい。
【0043】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約25.0μm以下のd95laserを有するのがよい。
【0044】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約10.0μm以下のd95sediを有するのがよい。
【0045】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約12.0μm以下のd50laserを有するのがよい。
【0046】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約5.0μm以下のd50sediを有するのがよい。
【0047】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約15m2/g以上のBET表面積を有するのがよい。
【0048】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約65mL/100g以上の吸油量を有するのがよい。
【0049】
例えば、微粉タルクは、約2.8以上のラメラリティーインデックス及び約43゜以下の接触角を有するのがよい。
【0050】
微粉タルクの性質について以下にさらに説明する。
【0051】
粒子形状の性質
CSDc*及びTOT層の数は、一般に、タルク粒子中の層の数に関する。形状因子及びラメラリティーインデックスは、一般に、タルク粒子の全体的な形状に関する。DI(TOT)は、タルク粒子の層の数とタルク粒子の全体的な形状との関係を規定する。
【0052】
微粉タルクの干渉性散乱ドメイン(CSD)及びTOT層の数は、X線解析(XRD)を用い、そしてシェラー(Scherrer)の式をタルクX線解析パターンの(002)及び(006)ピークに適用することによって求めることができる。
【0053】
例えば、XRDパターンは、λ=1.5406Åの波長のCuKα線を用いたPAnalytical X'PRO X線解析計を用いて得ることができる。サンプルを得るには、アルミニウムホルダーを充填し、それにより疑似ランダム配列状態を得る。取得パラメータの一例は、2θ範囲=8~80゜であるのがよく、ただし、ステップサイズが0.01゜、ステップ持続時間が2秒である。次に、シェラーの式をタルクパターンの(002)及び(006)ピークに適用し、これらピークは、XRDパターン上の約2θ=9.3~9.7゜及び2θ=28.3~28.9゜のところに配置されている。この式は、バックグラウンドラインに対して半分の高さのところにおけるピークの幅かを用いており、その目的は、c*軸に従ってタルク結晶子の干渉性散乱ドメインを計算することにある。すると、単一のタルク結晶子中のTOT層の数を導き出すことができる。この方法は、合成タルクに関する論文(デュマ等(Dumas et.al.),アンゲヴァンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie International Edition),2016年,第55巻,p.9868~9871)に具体化されており、この論文を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【0054】
シェラーの式は、以下のように表される。
Lは、干渉性散乱ドメイン(CSDc*)(Å)である。
λは、X線ビームの波長(Å)である。
FWHMは、検討対象の回折ピークの最大値の半分のところにおける半値全幅(rad)である。
θは、回折ピークの位置(rad)である。
【0055】
この干渉性散乱ドメインから、干渉性散乱ドメイン内に積み重ねられたTOT層の数(N(TOT))を以下のようにして導き出すことが可能である。
Lは、c*軸に沿う干渉性散乱ドメイン(Å)である。
dは、タルク基本単位の高さ、すなわち、d(002)離隔距離である。
【0056】
dは、XRDパターン上の(002)ピークの位置及びブラッグ(Bragg)の公式を用いて計算される。
nは、回折次数である。
λは、X線ビームの波長(Å)である。
θは、回折ピークの位置(rad)である。
【0057】
微粉タルクは、例えば、約1150オングストローム以下のCSDc*を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1100オングストローム以下、約1050オングストローム以下、約1000オングストローム以下、又は約950オングストローム以下のCSDc*を有するのがよい。
【0058】
微粉タルクは、例えば、約750オングストローム以上のCSDc*を有していてもよい。例えば、微粉タルクは、約800オングストローム以上、約850オングストローム以上、又は約900オングストローム以上のCSDc*を有するのがよい。
【0059】
例えば、微粉タルクは、約750オングストロームから約1150オングストロームまでの範囲、約850オングストロームから約1050オングストロームまでの範囲、又は約900オングストロームから約1000オングストロームの範囲のCSDc*を有するのがよい。
【0060】
微粉タルクは、例えば、約120以下のTOT層を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約115以下のTOT層、約110以下のTOT層、約105以下のTOT層、又は約100以下のTOT層を有するのがよい。
【0061】
微粉タルクは、例えば、約50以上のTOT層を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約55以上のTOT層、約60以上のTOT層、約65以上のTOT層、約70以上のTOT層、約75以上のTOT層、約80以上のTOT層、約85以上のTOT層、約90以上のTOT層、又は約95以上のTOT層を有するのがよい。
【0062】
例えば、微粉タルクは、約50~約120のTOT層、約60~約120のTOT層、約70~約120のTOT層、約80~約115のTOT層、約85~約110のTOT層、約80~105のTOT層、約85~約100のTOT層、約90~約100のTOT層、又は約95~約100のTOT層を有するのがよい。
【0063】
形状因子は、PANACEA(Particle Assessment by Natural Alignment and Conductivity Effect Analysis)法により測定された性質を意味している。これは、鉱物の形状因子を測定することができる技術知識である。米国特許第5,576,617号明細書に記載された技術知識を用いるのがよく、この米国特許を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。測定中、微粉タルク懸濁液をポンプによって導電率が一方の極値から他方の極値まで測定されるセルを通って循環させる。ポンプをターンオンすると、非球形粒子は、自然にパイプの軸に沿って整列する。この位置では、粒子は、電荷の流れに対して最小限の抵抗を示す。この場合、導電率の測定値は、最大である。ポンプがオフのとき、粒子は、ブラウン運動に従ってランダムに配向する。この位置では、電荷は、懸濁液中において進むべき長い経路をたどらなければならない。すると、導電率の値が減少する。試験によって与えられる数値は、これら2つの測定値の比(最も高い値÷最も低い値)から結果として得られる。それゆえ、より薄板状の生成物は、低いラメラリティー(低い形状因子を示す)生成物と比較して、これら2つの測定値相互の高い比(高い形状因子)をもたらす。
【0064】
形状因子の測定自体のため、乾燥生成物50gに相当する懸濁液容積を取る。ポンプオフのときのセディメンテーションを回避するため、10mLの分散剤(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、及び80mLの脱イオン水を添加し、その後、懸濁液を均質化する。次に、懸濁液を53μmのBSSふるいに通して測定を妨害する場合のある粗い粒子をなくす。脱イオン水(約200mL)を添加し、その目的は、1.08~1.12の密度(すなわち、12~17重量%、例えば約15重量%の重量濃度)を得ることにある。次に、懸濁液のpHを測定してこれが8.5から10までの範囲内にあることを点検し、もしそうでない場合は水酸化ナトリウムを添加する。次に、懸濁液を少なくとも20分間静置する。次に、サンプルを再懸濁化するために激しく揺すぶった後、PANACEA法を実施する。形状因子は、少なくとも3回の測定の平均値から得られる。
【0065】
微粉タルクは、例えば、約70以上の形状因子を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約75以上、約80以上、約85以上、約90以上、約95以上、約100以上、約105以上、約110以上、約115以上、又は約120以上の形状因子を有するのがよい。
【0066】
微粉タルクは、例えば、約200以下の形状因子を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約195以下、約190以下、約185以下、約180以下、約175以下、約170以下、約165以下、約160以下、約155以下、約150以下、約145以下、約140以下、約135以下、又は約130以下の形状因子を有するのがよい。
【0067】
例えば、微粉タルクは、約70から約200までの範囲、約80から約200までの範囲、約90から約200までの範囲、約100から約180までの範囲、約100から約160までの範囲、約100から約150までの範囲、約110から約140までの範囲、又は約120から約130までの範囲にある形状因子を有するのがよい。
【0068】
ラメラリティーインデックス(L.I.)は、次の比によって定められる。
上記表現において、以下に説明するとともに実施例において説明するように、“d50laser”は、レーザー回折法(規格NFX-11-666又はISO 13320-1)によって測定された平均粒子径(d50)の値であり、“d50sedi”は、セディグラフ(sedigraph)(規格Afnor-X-11-683 ISO 13317-3)を用いたセディメンテーションにより得られるメジアン直径の値である。これについては、ジー・ボデ(G. Baudet)及びジェー・ピー・ロナ(J. P. Rona),Ind. Min. Mines et Carr. Les techn.,1990年6‐7月,p.55~61による論文を参照するのがよく、かかる論文は、このインデックスが粒子の最も大きな寸法と最も小さな寸法の平均比と相関していることを示している。
【0069】
上述のセディメンテーション技術では、微粉タルク材料について本明細書において言及されている粒径についての性質は、米国ジョージア州ノークロス所在のマイクロメリティックス・インストゥルメンツ・コーポレーション(Micromeritics Instruments Corporation)(www.micromeritics.com)によって供給されている、本明細書では“Micromeritics Sedigraph 5100ユニット”と呼ばれていて、ストークスの法則に基づくSedigraph 5100機器を用いて水媒体中に完全に分散した状態にある粒状材料のセディメンテーションによって周知の仕方で測定されたものである。かかる機器は、当該技術分野では「等価球径」(e.s.d)と呼ばれていて、所与のe.s.d値よりも小さいサイズ(粒径)を有する粒子の累積重量百分率の測定値及びプロットを提供する。この平均粒径d50sediは、このようにして求められた粒子e.s.dの値であり、d50値よりも小さい等価球径を有する50重量% k粒子が存在する。d95sedi値は、95重量%の粒子がd95sedi値よりも小さいe.s.dを有する値である。粒径についての性質をISO 13317-3又はそれに準ずる方法に従って算定することができる。
【0070】
上述したレーザー回折法では、微粉タルク材料について本明細書において言及している粒径についての性質を湿式マルヴァーン(Malvern)レーザー散乱法(規格ISO 13320-1)によって測定する。この方法では、粉末状態、懸濁液状態及び乳濁液状態の粒子の粒径は、ミー理論(Mie theory)の適用に基づいたレーザービームの回折を用いて測定できる。かかる機器、例えば、Malvern Mastersizer S(マルヴァーン・インストゥルメンツ(Malvern instruments)社によって供給されている)は、当該技術分野において「等価球径」(e.s.d)と呼ばれていて、所与のe.s.d値よりも小さいサイズ(粒径)を有する粒子の累積体積百分率の測定値及びそのプロットを提供する。この平均粒径d50は、d50値よりも小さい等価球径を有する50重量%の粒子が存在する粒子のe.s.dについてこのようにして求められた値である。誤解を避けるために、レーザー光散乱を用いる粒径の測定は、上述したセディメンテーション法と等価の方法ではない。
【0071】
本願の準備の際に用いられたセディグラフ及びレーザー粒径測定法の詳細が実施例に記載されている。
【0072】
一般に、約2.8以上のラメラリティーインデックスを有するタルク材料は、「高アスペクト比」(High Aspect Ratio:HAR)タルクと呼ばれる場合がある。
【0073】
微粉タルクは、例えば、約2.5以上のラメラリティーインデックスを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約2.6以上、約2.7以上、約2.8以上、又は約2.9以上のラメラリティーインデックスを有するのがよい。特に、微粉タルクは、約2.8以上又は約2.9以上のラメラリティーインデックスを有するのがよい。
【0074】
微粉タルクは、例えば、約6.0以下のラメラリテーインデックスを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約5.5以下、約5.0以下、約4.5以下、約4.0以下、又は約3.5以下のラメラリティーインデックスを有するのがよい。
【0075】
例えば、微粉タルクは、約2.8から約6.0までの範囲、約2.8から約5.0までの範囲、約2.8から約4.0までの範囲、又は約2.8から約3.5までの範囲にあるラメラリティーインデックスを有するのがよい。
【0076】
TOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))は、以下の方程式によって定義される。
【0077】
微粉タルクは、例えば、約103以上のDI(TOT)を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約105以上、約110以上、約115以上、約120以上、又は約125以上のDI(TOT)を有するのがよい。
【0078】
微粉タルクは、例えば、約200以下のDI(TOT)を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約195以下、約190以下、約185以下、約180以下、約175以下、約170以下、約165以下、約160以下、約155以下、約150以下、約145以下、又は約140以下のDI(TOT)を有するのがよい。
【0079】
微粉タルクは、例えば、約103から約200までの範囲、約110から約200までの範囲、約120から約200までの範囲、約110から約190までの範囲、約120から約180までの範囲、約120から約170までの範囲、約120から約160までの範囲、約120から約150までの範囲、又は約120から約140までの範囲あるDI(TOT)を有するのがよい。
【0080】
粒径の性質
以下に言及する“sedi”粒径は、ラメラリティーインデックスと関連して上述したセディメンテーション法によって測定された粒径に関する。以下において言及する“laser”粒径は、ラメラリティーインデックスと関連して上述したレーザー回折法によって測定された粒径に関する。
【0081】
微粉タルクは、例えば、約25.0μm以下のd95laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約24.0μm以下、約23.0μm以下、約22.0μm以下、約21.0μm以下、約20.0μm以下、約19.0μm以下、約18.0μm以下、約17.0μm以下、約16.0μm以下、又は約15.0μm以下のd95laserを有するのがよい。
【0082】
微粉タルクは、例えば、約7.0μm以上のd95laserを有していてもよい。例えば、微粉タルクは、約8.0μm以上、約9.0μm以上、約10.0μm以上、約11.0μm以上、又は約12.0μm以上、d95laserを有していてもよい。
【0083】
微粉タルクは、例えば、約7.0μmから約25.0μmまでの範囲、約7.0μmから約20.0μmまでの範囲、約10.0μmから約20.0μmまでの範囲、又は約12.0μmから約16.0μmまでの範囲にあるd95laserを持ってもよい。
【0084】
特定の実施形態では、例えば本発明の第4の観点では、微粉タルクは、約23.0μm以下のd95laserを有する。例えば、微粉タルクは、約22.0μm以下、約21.0μm以下、約20.0μm以下、約19.0μm以下、約180μm以下のd95laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約7.0μm以上、約10.0μm以上、又は約12.0μm以上のd95laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約7.0μmから約23.0μmまでの範囲、約10.0μmから約23.0μmまでの範囲、約12.0μmから約23.0μmまでの範囲、約7.0μmから約20.0μmまでの範囲、約10.0μmから約20.0μmまでの範囲、約12.0μmから約20.0μmまでの範囲、約7.0μmから約18.0μmまでの範囲、約10.0μmから約18.0μmまでの範囲、又は約12.0μmから約18.0μmまでの範囲にあるd95laserを有するのがよい。
【0085】
特定の実施形態では、例えば本発明の第5の観点では、微粉タルクは、約20.0μm以下かつ約7.0μm以上のd95laserを有する。例えば、微粉タルクは、約10.0μmから約20.0μmまでの範囲、約12.0μmから約20.0μmまでの範囲、約7.0μmから約18.0μmまでの範囲、約10.0μmから約18.0μmまでの範囲、又は約12.0μmから約18.0μmまでの範囲にあるd95laserを有するのがよい。
【0086】
微粉タルクは、例えば、約12.0μm以下のd50laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約11.0μm以下、約10.0μm以下、約9.0μm以下、又は約8.0μm以下のd50laserを有するのがよい。
【0087】
微粉タルクは、例えば、約2.0μm以上のd50laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約3.0μm以上、約4.0μm以上、約5.0μm以上、又は約6.0μm以上のd50laserを有するのがよい。
【0088】
微粉タルクは、約2.0μmから約12.0μmまでの範囲、約2.0μmから約10.0μmまでの範囲、約3.0μmから約10.0μmまでの範囲、約4.0μmから約10.0μmまでの範囲、約2.0μmから約8.0μmまでの範囲、約3.0μmから約8.0μmまでの範囲、約4.0μmから約8.0μmまでの範囲、又は6.0μmから約8.0μmまでの範囲にあるd50laserを有するのがよい。
【0089】
特定の実施形態では、例えば本発明の第5の観点では、微粉タルクは、約2.0μm以上かつ約8.0μm以下のd50laserを有する。例えば、微粉タルクは、約2.0μmから約8.0μmまでの範囲、約3.0μmから約8.0μmまでの範囲、約4.0μmから約8.0μmまでの範囲、約5.0μmから約8.0μmまでの範囲、又は約6.0μmから約8.0μmまでの範囲のd50laserを有するのがよい。
【0090】
微粉タルクは、例えば、約15.0μm以下のd75laserを有するのがよい。微粉タルクは、例えば、約14.0μm以下、約13.0μm以下、約12.0μm以下、約11.0μm以下、約10.0μm以下、約9.0μm以下、又は約8.0μmのd75laserを有するのがよい。
【0091】
微粉タルクは、例えば、約4.0μm以上のd75laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約4.5μm以上、約5.0μm以上、約5.5μm以上、又は約6.0μm以上のd75laserを有するのがよい。
【0092】
微粉タルクは、例えば、約4.0μmから約15.0μmまでの範囲、約4.0μmから約12.0μmまでの範囲、約4.0μmから約10.0μmまでの範囲、約5.0μmから約10.0μmまでの範囲のd75laserを持ってもよい。
【0093】
微粉タルクは、例えば、約6.0μm以下のd25laserを有するのがよい。微粉タルクは、例えば、約5.5μm以下、約5.0μm以下、又は約4.5μm以下のd25laserを有するのがよい。
【0094】
微粉タルクは、例えば、約1.0μm以上のd25laserを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1.5μm以上、約2.0μm以上、約2.5μm以上、又は約3.0μm以上のd25laserを有するのがよい。
【0095】
例えば、微粉タルクは、約1.0μmから約6.0μmまでの範囲、約1.5μmから約5.0μmまでの範囲、又は約2.0μmから約4.5μmまでの範囲にあるd25laserを有するのがよい。
【0096】
微粉タルクは、例えば、約10.0μm以下のd95sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約9.0μm以下、約8.0maikuom以下、約7.0μm以下、約6.0μm以下、又は約5.0μm以下のd95sediを有するのがよい。
【0097】
微粉タルクは、例えば、約1.0μm以上のd95sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1.5μm以上、約2.0μm以上、約2.5μm以上、約3.0μm以上、約3.5μm以上、又は約4.0μm以上のd95sediを有するのがよい。
【0098】
微粉タルクは、例えば、約1.0μmから約10.0μmまでの範囲、約1.0μmから約8.0μmまでの範囲、約1.0μmから約6.0μmまでの範囲、又は約1.0μmから約5.0μmまでの範囲、約2.5μmから約10.0μmまでの範囲、約2.5μmから約8.0μmまでの範囲、約2.5μmから約6.0μmまでの範囲、又は約2.5μmから約5.0μmまでの範囲にあるd95sediを有するのがよい。
【0099】
特定の実施形態、例えば本発明の第4の観点では、微粉タルクは、約6.5μm以下のd95sediを有する。例えば、微粉タルクは、約6.0μm以下、約5.5μm以下、又は約5.0μm以下のd95sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1.0μm以上、約2.0μm以上、又は約2.5μm以上のd95sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1.0μmから約6.5μmまでの範囲、約1.0μmから約5.0μmまでの範囲、約2.5μmから約6.5μmまでの範囲、又は約2.5μmから約5.0μmまでの範囲にあるd95sediを有するのがよい。
【0100】
特定の実施形態、本発明の第5の観点では、微粉タルクは、約1.0μm以上かつ約5.0μm以下のd95sediを有する。例えば、微粉タルクは、約2.0μmから約5.0μm以下までの範囲、又は約2.5μmから約5.0μm以下までの範囲にあるd95sediを有するのがよい。
【0101】
微粉タルクは、例えば、約5.0μm以下のd50sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約4.5μm以下、約4.0μm以下、約3.5μm以下、約3.0μm以下、約2.5μm以下、又は約2.0μm以下のd50sediを有するのが良い。
【0102】
微粉タルクは、例えば、約0.5μm以上、約1.0μm以上、又は約1.5μm以上のd50sediを有するのがよい。
【0103】
微粉タルクは、例えば、約0.5μmから約5.0μmまでの範囲、約0.5μmから約4.0μmまでの範囲、約0.5μmから約3.0μmまでの範囲、又は約0.5μmから約2.5μmまでの範囲にあるd50sediを有するのがよい。
【0104】
特定の実施形態、例えば本発明の第五の観点では、微粉タルクは、約0.5μmから約2.5μmまでの範囲にあるd50sediを有する。
【0105】
微粉タルクは、例えば、約6.0μm以下のd75sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約5.0μm以下、約4.0μm以下、又は約3.0μm以下のd75sediを有するのがよい。
【0106】
微粉タルクは、例えば、約1.0μm以上のd75sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1.5μm以上、又は約2.0μm以上のd75sediを有するのがよい。
【0107】
微粉タルクは、例えば、約1.0μmから約6.0μmまでの範囲、約1.0μmから約4.0μまでの範囲、又は約1.0μmから約3.0μmまでの範囲にあるd75sediを有するのがよい。
【0108】
微粉タルクは、例えば、約2.0μm以下のd25sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約1.5μm以下、又は約1.0μm以下のd25sediを有するのがよい。
【0109】
微粉タルクは、例えば、約0.1μm以上のd25sediを有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約0.2μm以上、又は約0.5μm以上のd25sediを有するのがよい。
【0110】
微粉タルクは、例えば、約0.1μmから約2.0μmまでの範囲、約0.2μmから約1.0μmまでの範囲、又は約0.5μmから約1.0μmまでの範囲にあるd25sediを有するのがよい。
【0111】
本発明の微粉タルクの分解(タルクからエンスタタイト(頑火輝石)への分解)温度を、例えば、本発明によるものではない微粉タルクの分解温度と比較して低くすることができる。例えば、微粉タルクの分解温度を、本発明によるものではない微粉タルクと比較して、少なくとも約10℃だけ低くすることができる。例えば、本発明の微粉タルクの分解温度を本発明によるものではない微粉タルクと比較して、少なくとも約15℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、又は少なくとも約30℃だけ低くすることができる。例えば、分解温度を本発明によるものではない微粉タルクと比較して、最高約200℃まで低くすることができる。例えば、分解温度を本発明によるものではない微粉タルクと比較して、最高約180℃まで、最高約160℃まで、最高約150℃まで、最高約140℃まで、最高約120℃まで、又は最高約100℃まで低くすることができる。本発明によるものではない微粉タルクは、例えば、市販の微粉タルク、例えば、Luzenac HAR T84タルク(登録商標)であるのがよい。Luzenac HAR T84タルク(登録商標)は、約1.9μmのd50sedi、約10.5μmのd95sedi、約10.5μmのd50laser、約32.1μmのd95laser、約19.4m2/gのBET表面積、約130のTOT層、約123の形状因子、及び約95のDI(TOT)を有する。分解温度は、例えば、N2の流れ及び10℃/minの増加した温度レート下で50℃から1000℃までの範囲にある温度で熱重量分析(TGA)により測定することができる。
【0112】
本発明の微粉タルクの陽イオン交換容量(CEC)を、例えば、本発明によるものではない微粉タルクのCECと比較して増大させることができる。例えば、本発明の微粉タルクのCECを本発明によるものではない微粉タルクと比較して約5%だけ増大させることができる。例えば、本発明の微粉タルクのCECは、本発明によるものではない微粉タルクと比較して、約10%、約15%、約20%、又は約25%だけ増大させることができる。例えば、微粉タルクのCECを本発明によるものではない微粉タルクと比較して、最大約50%、最大約45%、最大約40%、最大約35%、又は最大約30%だけ増大させることができる。本発明によるものではない微粉タルクは、例えば、市販の微粉タルク、例えば、Luzenac HAR T84タルク(登録商標)であるのがよい。Luzenac HAR T84タルク(登録商標)は、約1.9μmのd50sedi、約10.5μmのd95sedi、約10.5μmのd50laser、約32.1μmのd95laser、約19.4m2/gのBET表面積、約130のTOT層、約23の形状因子及び約95のDI(TOT)を有する。CECは、例えば、ISO 11260又はAFNOR NFX 31-130によって測定することができる。
【0113】
粒子表面の性質
BET表面積は、単位重量に対する微粉タルクの粒子の表面の面積を意味し、これは、かかる粒子表面を完全に覆う単分子層を形成するよう粒子表面に吸着された窒素の量によってBET法により求められる(BET法、AFNOR規格X11-621及び622又はISO 9277による測定値)。本願の準備に用いられたBET比表面積測定法の詳細が実施例に記載されている。
【0114】
微粉タルクは、例えば、約15m2/g以上のBET表面積を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約16m2/g以上、約17m2/g以上、約18m2/g以上、約19m2/g以上、約20m2/g以上、約21m2/g以上、又は約22m2/g以上のBET表面積を有するのがよい。
【0115】
微粉タルクは、例えば、約30m2/g以下のBET表面積を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約29m2/g以下、約28m2/g以下、約27m2/g以下、約26m2/g以下、又は約25m2/g以下のBET表面積を有するのがよい。
【0116】
微粉タルクは、例えば、約15m2/gから約30m2/gまでの範囲、約17m2/gから約30m2/gまでの範囲、約20m2/gから約28m2/gまでの範囲、又は約20m2/gから約25m2/gまでの範囲にあるBET表面積を有するのがよい。
【0117】
微粉タルクの吸油量を、アマニ油を用いたASTM-D 1483-95又はISO 787-5に従って求めることができる。重量百分率で表された吸油量は、以下のようにして計算することができる。
【0118】
mL/100gで表された吸油量は、次のようにして計算できる。
【0119】
本願の準備の際に用いられた吸油量測定法の詳細が実施例に記載されている。
【0120】
微粉タルクは、例えば、約65mL/100g以上の吸油量を有するのが良い。例えば、微粉タルクは、約66mL/100g以上、約67mL/100g以上、約68mL/100g以上、約69mL/100g以上、又は約70mL/100g以上の吸油量を有するのがよい。
【0121】
微粉タルクは、例えば、約100mL/100g以下の吸油量を有するのがよい。たとえば、微粉タルクは、約90mL/100g以下、約80mL/100g以下、又は約75mL/100g以下の吸油量を有するのがよい。
【0122】
微粉タルクは、例えば、約65mL/100gから約100mL/100gまでの範囲、約68mL/100gから約100mL/100gまでの範囲、約65mL/100gから約80mL/100gまでの範囲、約68mL/100gから約80mL/100gまでの範囲、又は約68mL/100gから約75mL/100gまでの範囲にある吸油量を有するのがよい。
【0123】
例えばTAPPI T558及びASTM D-5725に従って、FibroDat機器、例えばDAT Dynamic Absorption Tester Model 68-96を用いて接触角を測定することができ、試験液は、水である。本願の準備の際に用いられた接触角測定方法の詳細が実施例に記載されている。
【0124】
微粉タルクは、例えば、約43゜以下の接触角を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約42゜以下、約41゜以下、約40゜以下、約39゜以下、又は約38゜以下の接触角を有するのがよい。
【0125】
微粉タルクは、例えば、約33゜以上の接触角を有するのがよい。例えば、微粉タルクは、約34゜以上、約35゜以上、又は約36゜以上の接触角を有するのがよい。
【0126】
微粉タルクは、例えば、約33゜から約43゜までの範囲、約33゜から約40゜までの範囲、又は約35゜から約40゜までの範囲にある接触角を有するのがよい。
【0127】
オプションとしての表面処理
ある特定の実施形態では、微粉タルクは、表面処理剤で処理される。表面処理されたタルクは、例えば、被覆タルクと呼ばれる場合がある。タルクの表面処理は、微粉タルクの凝集度を減少させ又はなくすとともに/あるいはポリマー組成物中への微粉タルクの混入を促進するのに役立つことができる。
【0128】
ある特定の実施形態では、微粉タルクは、表面処理剤で処理されない(非被覆タルク)。
【0129】
適当な表面処理剤は、極性ラジカル、例えばアミン類、シラン類、シロキサン類、アルコール類、又はこれらの酸及び金属塩のファミリーを備えた疎水性炭素鎖を備えたコンパウンドを含む。
【0130】
ある特定の実施形態では、かかる表面処理剤は、ポリエーテル又はその誘導体、例えば、ポリエーテル改質ポリシロキサンである。
【0131】
ある特定の実施形態では、ポリエーテルは、ポリオキシアルキレン(POA)、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)又はポリアルキレンオキシド(PAO)である。本明細書で用いられる「ポリアルキレングリコール」という用語は、20,000g/mol以下の数平均分子量を有するPOAを意味し、「ポリアルキレンオキシド」という用語は、20,000g/molを超える数平均分子量を有するPOAを意味している。ある特定の実施形態では、表面処理剤は、約100~約15,000g/mol、例えば、約200~約10,000g/mol、は約500~約9000g/mol、約1000~約9000g/mol、約2000~約9000g/mol、約4000~約9000g/mol、約6000~約9000g/mol、又は約6000~約8500g/molの数平均分子量を有するポリアルキレングリコールを含み又はこのポリアルキレングリコールである。
【0132】
ある特定の実施形態では、ポリエーテルは、パラホルムアルデヒド(ポリメチレンオキシド)、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されたポリアルキレンオキシドである。
【0133】
ある特定の実施形態では、表面処理剤は、ポリエチレングリコールを含み又はポリエチレングリコールである。ある特定の実施形態では、表面処理剤は、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコール(PPG)の混合物である。ある特定の実施形態では、表面処理剤は、約200~約10,000g/mol、例えば、約500~約9000g/mol、約1000~約9000g/mol、約2000~約9000g/mol、約4000~約9000g/mol、約6000~約9000g/mol、又は約6000~約8500g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコールである。例示のPEGは、BASFからのポリグリコールのPuriol(商標)類、例えばPuriol(商標)8005を含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、表面処理剤は、脂肪酸及び/又はその金属塩、例えばステアリン酸又はステアリン酸金属塩、例えば、マグネシウム、カルシウム、又はステアリン酸亜鉛を含み又は脂肪酸及び/又はその金属塩、例えばステアリン酸又はステアリン酸金属塩、例えば、マグネシウム、カルシウム、又はステアリン酸亜鉛である。これは、C8~C24の炭素鎖長を有する脂肪酸及びC8~C24の炭素鎖長を有する脂肪酸の混合物を含む。
【0135】
適当なシランを主成分とする作用剤は、アミノシラン、例えば、トリメトキシシリルエチルアミン、トリエトキシシリルエチルアミン、トリプロポキシシリルエチルアミン、トリブトキシシリルエチルアミン、トリメトキシシリルプロピルアミン、トリエトキシシリルプロピルアミン、トリプロポキシシリルプロピルアミン、トリイソプロポキシシリルプロピルアミン、トリブトキシシリルプロピルアミン、トリメトキシシリルブチルアミン、トリエトキシシリルブチルアミン、トリプロポキシシリルブチルアミン、トリブトキシシリルブチルアミン、トリメトキシシリルペンチルアミン、トリエトキシシリルペンチルアミン、トリプロポキシシリルペンチルアミン、トリブトキシシリルペンチルアミン、トリメトキシシリルヘキシルアミン、トリエトキシシリルヘキシルアミン、トリプロポキシシリルヘキシルアミン、トリブトキシシリルヘキシルアミン、トリメトキシシリルヘプチルアミン、トリエトキシシリルヘプチルアミン、トリプロポキシシリルヘプチルアミン、トリブトキシシリルヘプチルアミン、トリメトキシシリルオクチルアミン、トリエトキシシリルオクチルアミン、トリプロポキシシリルオクチルアミン、トリブトキシシリルオクチルアミン等である。ヒドロカルビル基及び極性基を有する適当な作用剤は、ヒドロカルビルアミン、例えば、トリエタノールアミン(TEA)、及びアミノアルコール作用剤、例えば、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノールである。AMP‐95(登録商標)は、5%の水を含む市販の2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール配合物である。
【0136】
表面処理剤は、所望の結果を達成するのに有効な量添加するのがよい。ある特定の実施形態では、表面処理剤の量は、タルクの重量に対して約0.1重量%~5重量%、例えば、タルクの重量に対して約0.1重量%~2重量%である。
【0137】
表面処理剤は、微粉タルクに添加して従来方法を用いて混合することによって利用できる。表面処理剤は、相対的に粗いタルク開始材料からの微粉タルクの調製中かつ微粉タルクがポリマー組成物に添加される前に使用されるのがよい。
【0138】
微粉タルクの製造方法
また、本明細書では、微粉タルクを製造する方法であって、供給タルク材料を分級して供給タルク材料中の最も大きな粒子の一部を除去するステップを含み、供給タルク材料は、以下の性質、すなわち、
(a)約2.5以上のラメラリティーインデックス、
(b)約15.0μm以下のd95sedi
(c)約40.0μm以下のd95laser
(d)約5.0μm以下のd50sedi
(e)約40以上の形状因子、
(f)約10m2/g以上のBET表面積、
のうちの1つ以上を有することを特徴とする方法が提供される。
【0139】
微粉タルクは、本明細書において説明した任意の観点又は任意の実施形態によるものであるのがよい。
【0140】
分級は、供給タルク材料の粒子をサイズ(粒径)で分離するプロセスを意味している。分級は、例えば、任意適当な方法によって実施でき、かかる方法としては、例えば、風力分級、ふるい分け及びセディメンテーションが挙げられる。分級は、例えば、乾燥分級であるのがよい。
【0141】
本明細書において説明する方法では、供給タルク材料の最も大きな粒子の一部を除去する。かくして、本発明の微粉タルクは、大きな粒子を除去した後に残る細かいタルク粒子である。
【0142】
換言すると、供給タルク原料を分級すると、かかるタルク材料を2つのフラクションに分けることができる。微細なフラクションは、本発明の微粉タルクである。粗いフラクションは、副生物である。
【0143】
除去される大粒子の割合は、微粉タルクの標的粒径分布に応じて選択されるのがよい。例えば、約10重量%~約95重量%の最も大きな粒子を除去すると、微粉タルクを作ることができる。例えば、約20重量%~約95重量%、約30重量%~約95重量%、約40重量%~約95重量%、約50重量%~約95重量%、約60重量%~約95重量%、約70重量%~約95重量%、又は約80重量%~約90重量%の最も大きな粒子を除去して微粉タルクを作るのがよい。
【0144】
微細なフラクションの量は、分級タービンの速度に直接相関(正の相関)させるのがよい。分級機の速度が速ければ速いほど、微細な製品の収率(%)は低くなる。分級機の回転数が速ければ速いほど、微細なフラクションのトップカット(例えば、d95やd98)は小さくなる。かくして、分級タービンの速度を所望の粒径及び製品収量に応じて調節するのがよい。
【0145】
供給タルク材料が乾燥押し固めグレードである場合、供給タルク材料を分級に先立って粉砕するのがよい。粉砕は、例えば、アトリッターミル(attritor mill)、ピンミル(pin mill)、ロングギャップミル(long gap mill)、又は低圧ジェットミルのような機器を用いて実施されるのがよい。粉砕は、押し固め状態の供給タルク材料をバラバラにして、供給タルク材料が粉砕後に専ら独立した粒子(凝集物ではなく)構成されるようにするのに役立つ。
【0146】
上述の粉砕法を実施するための例示のシステム動作パラメータが以下の表に記載されている。






【0147】
供給タルク材料は、例えば、粉砕に先立って、バイモーダル粒径分布曲線(2つのピークを有する)を呈するのがよい。粉砕は、例えば、バイモーダル粒径分布曲線をモノモーダル粒径分布曲線(1つのピークを有する)に変換することができる。
【0148】
供給タルク材料
本発明の微粉タルクを製造するために用いられる供給タルク材料は、以下の性質、すなわち、
(a)約2.5以上のラメラリティーインデックス、
(b)約15.0μm以下のd95sedi
(c)約40.0μm以下のd95laser
(d)約5.0μm以下のd50sedi
(e)約15.0μm以下のd50laser
(f)約40以上の形状因子、
(g)約10m2/g以上のBET表面積、
(h)約102以下のDI(TOT)、
(i)約110以上のTOT層、
のうちの1つ以上を有するのが良い。
【0149】
例えば、供給タルク材料は、性質(a)~(i)のうちの、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、又は9個を有するのがよい。
【0150】
供給タルク原料の粒子形状、粒径、及び表面特性を本明細書において説明した本発明の微粉タルクの場合と同一の仕方で測定することができる。
【0151】
供給タルク材料は、例えば、約2.5以上、約2.8以上、約3.0以上、約3.5以上、約4.0以上、又は約4.5以上のラメラリティーインデックスを有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約8.0以下、約7.0以下、又は約6.0以下のラメラリティーインデックスを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約2.8から約8.0までの範囲、約3.0から約7.0までの範囲、又は約4.0から約6.0までの範囲にあるラメラリティーインデックスを有するのがよい。
【0152】
供給タルク材料は、例えば、約15.0μm以下のd95sediを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約14.0μm以下、約13.0μm以下、又は約12.0μm以下のd95sediを有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約8.0μm以上、約9.0μm以上、又は約10.0μm以上のd95sediを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約8.0μmから約15.0μmまでの範囲、約10.0μmから約15.0μmまでの範囲、又は約10.0μmから約12.0μmまでの範囲にあるd95sediを有するのがよい。
【0153】
供給タルク材料は、例えば、約5.0μm以下のd50sediを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約4.0μm以下、約3.0μm以下、又は約2.0μm以下のd50sediを有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約0.5μm以上、約1.0μm以上、又は約1.5μm以上のd50sediを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約0.5μmから約5.0μmまでの範囲、又は約1.0μmから約3.0μmまでの範囲にあるd50sediを有するのがよい。
【0154】
供給タルク材料は、例えば、約40.0μm以下のd95laserを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約38.0μm以下、約36.0μm以下、約35.0μm以下、又は約34.0μm以下のd95laserを有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約20.0μm以上、約25.0μm以上、又は約30.0μm以上のd95laserを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約20.0μmから約40.0μmまでの範囲、約25.0μmから約35.0μmまでの範囲、又は約30.0μmから約35.0μmまでの範囲にあるd95laserを有するのがよい。
【0155】
供給タルク材料は、例えば、約15.0μm以下のd50laserを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約14.0μm以下、約13.0μm以下、約12.0μm以下、又は約11.0μm以下のd50laserを有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約8.0μm以上、約9.0μm以上、又は約10.0μm以上のd50laserを有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約8.0μmから約15.0μmまでの範囲、又は約9.0μmから約12.0μmまでの範囲にあるd50laserを有するのがよい。
【0156】
供給タルク材料は、例えば、約40以上の形状因子を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約60以上、約80以上、約100以上、又は約120以上の形状因子を有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約200以下、約180以下、約160以下、約140以下、又は約130以下の形状因子を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約40から約200までの範囲、約80から約180までの範囲、約100から約160までの範囲、約110から約140までの範囲、又は約120から約130までの範囲にある形状因子を有するのがよい。
【0157】
供給タルク材料は、例えば、約10m2/g以上のBET表面積を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約12m2/g以上、約14m2/g以上、約15m2/g以上、約16m2/g以上、又は約18m2/g以上のBET表面積を有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約30m2/g以下、約25m2/g以下、又は約20m2/g以下のBET表面積を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約10m2/gから約30m2/gまでの範囲、約12m2/gから約25m2/gまでの範囲、約14m2/gから約23m2/gまでの範囲、又は約16m2/gから約20m2/gまでの範囲にあるBET表面積を有するのがよい。
【0158】
供給タルク材料は、例えば、約102以下のDI(TOT)を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約100以下、約99以下、約98以下、約97以下、約96以下、又は約95以下のDI(TOT)を有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約80以上、約85以上、又は約90以上のDI(TOT)を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約80から約102までの範囲、約85から約98までの範囲、又は約90から約97までの範囲のDI(TOT)を有するのがよい。
【0159】
供給タルク材料は、例えば、約110以上のTOT層を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約115以上、約120以上、約125以上、又は約130以上のTOT層を有するのがよい。供給タルク材料は、例えば、約150以下、約145以下、又は約140以下のTOT層を有するのがよい。例えば、供給タルク材料は、約110~約150、約120~約150、又は約125~約145のTOT層を有するのがよい。
【0160】
例えば、供給タルク材料が粉砕されていない場合、供給タルク材料は、約120以上のTOT層を有するのがよい。例えば、供給タルク材料が粉砕されていない場合、供給タルク材料は、約125以上、又は約130以上のTOT層を有するのがよい。例えば、供給タルク材料が粉砕されていない場合、供給タルク材料は、約150以下、約145以下、又は約140以下のTOT層を有するのがよい。
【0161】
例えば、供給タルク材料が粉砕されている場合、供給タルク材料は、約120未満のTOT層、例えば、約110~約120のTOT層、又は約115~約120TOT層を有するのがよい。
【0162】
供給タルク材料は、例えば、以下の性質、すなわち、
(a)約2μmのd50sedi
(b)約9μm~約10μmのd95sedi
(c)約10μmのd50laser
(d)約32μmのd95laser
(e)約12m2/g~約20m2/gのBET表面積、
(f)約130のTOT層、
(g)約123の形状因子、
(h)約95のDI(TOT)、
(i)約4のラメラリティーインデックス、
のうちの1つ以上を有するのがよい。
【0163】
ポリマー組成物
本明細書において説明した微粉タルクは、ポリマー組成物中の充填剤(フィラー)として使用できる。微粉タルクは、増量充填剤又は機能充填剤として使用できる。本明細書で用いられる「機能充填剤」という用語は、ポリマー組成物の物理的(例えば、機械的)性質のうちの1つ以上を高める目的で、ポリマー組成物中に混入される添加剤を意味するものと理解されたい。「増量充填剤」は、典型的には、ポリマー組成物の性質をほとんど改変せず、本質的に費用を軽減するのに役立つ。かくして、本明細書でしている微粉タルクを含むポリマー組成物もまた提供される。
【0164】
ある特定の実施形態では、微粉タルクは、例えば、ポリマー組成物の1つ以上の機械的性質を改変し又は高めるためにポリマー組成物中の機能充填剤として使用できる。
【0165】
ある特定の実施形態では、微粉タルクは、例えば、ポリマー組成物に混入するのに費用が高くつき又は困難な場合のある他の充填材料を補充し又はこれに取って代わるための増量充填剤として使用される。
【0166】
微粉タルクは、例えば、ポリマー組成物中にポリマー組成物の全重量に基づいて、約1重量%以上の量存在するのがよい。例えば、微粉タルクは、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約5重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上の量存在するのがよい。
【0167】
微粉タルクは、例えば、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約70重量%以下の量存在するのがよい。例えば、微粉タルクは、ポリマー組成物中に、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下の量存在するのがよい。
【0168】
微粉タルクは、例えば、ポリマー組成物中に、約1重量%から約70重量%までの範囲、約5重量%から約60重量%までの範囲、約10重量%から約50重量%までの範囲、約10重量%から約40重量%までの範囲、又は約10重量%から約30重量%までの範囲にある量存在するのがよい。
【0169】
ポリマー組成物は、微粉タルク以外の充填剤を含むのがよく、かかる充填剤としては、アルカリ土類金属炭酸塩又は硫酸塩、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、白雲石、石こう(ジプサム)、含水カンダイト(kandite)粘土、例えばカオリン、ハロイサイト又は球状粘度、無水(焼成)カンダイト粘度、例えばメタカオリン又は十分に焼成された焼成カオリン、マイカ、パーライト、長石、霞石閃長岩、珪灰石、珪藻土、重晶石、ガラス、及び天然又は合成シリカ又は珪酸塩が挙げられるが、これらには限定されない。ある特定の実施形態では、ポリマー組成物は、本発明の微粉タルク以外のタルクを含む場合がある。ある特定の実施形態では、ポリマー組成物は、本発明の微粉タルク以外のタルクを含まない。
【0170】
微粉タルク以外の充填剤コンパウンドは、ポリマー組成物の調製中、又は変形例として、微粉タルクの調製中に含まれる場合があり、例えば、微粉タルクは、他の充填剤コンパウンドと混合され又は配合されるのがよく、オプションとして、表面処理剤と組み合わされるのがよい。
【0171】
特定の実施形態では、他の充填剤コンパウンドの量は、ポリマー組成物の全重量に基づいて約10重量%未満、例えば、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満、約0.2重量%未満、又は約0.1重量%未満の量で存在する。
【0172】
ポリマー組成物は、天然ポリマーもしくは合成ポリマー又はこれらの混合物を含むことができる。ポリマーは、例えば、熱可塑性又は熱硬化性であるのがよい。本明細書で用いられる「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及び/又はコポリマー、並びに架橋及び/又は絡み合いポリマーを含む。
【0173】
ポリマー組成物に適用される場合のある「前駆物質」という用語は、当業者であれば容易に理解されよう。例えば、適切な前駆物質は、モノマー、架橋剤、架橋剤及び促進剤を含む硬化系、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含むのがよい。微粉タルクをポリマーの前駆物質と混合する場合、次に、ポリマー組成物は、前駆物質成分を硬化させるとともに/あるいは重合して所望のポリマーを形成することによって形成されることになる。
【0174】
本発明のポリマー組成物中に含まれるポリマー(ホモポリマー及び/又はコポリマーを含む)は、以下のモノマー、すなわち、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、アルキル基中に1~18個の炭素原子を持つアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ブタジエン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸又はフマル酸のエステル、テトラヒドロフタル酸又はテトラヒドロフタル酸無水物、イタコン酸又はイタコン酸無水物、架橋二量体、三量体、又は四量体を含み又は含まないイタコン酸のエステル、クロトン酸、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、シクロヘキサンジメタノール、1,6ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、アジピン酸又はコハク酸、アゼライン酸及び二量体脂肪酸、トルエンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートのうちの1つ以上から調製されるのがよい。
【0175】
ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシポリマー、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリシクロペンタジエン及びそれらのコポリマーのうちの1つ以上から選択されるのがよい。適当なポリマーは、液状ゴム、例えばシリコーンをさらに含む。
【0176】
本発明に従って使用できるポリマーは、有利には、熱可塑性ポリマーである。熱可塑性ポリマーは、熱の作用で軟化し、そして冷却時に元の特定に再び硬化し、すなわち加熱‐冷却サイクルが完全に可逆的であるものである。従来の定義上、熱可塑性ポリマーは、分子結合を持つ直鎖状及び分岐状鎖有機ポリマーである。本発明に従って使用できるポリマーの例としては、ポリエチレン、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びその中密度等級、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ビニル/ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。
【0177】
ある特定の実施形態では、ポリマーは、ポリアルキレンポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、又はエチレン、プロピレン及びブチレンモノマーのうちの2つ以上のコポリマー、例えば、エチレン‐プロピレンコポリマーである。ある特定の実施形態では、ポリマーは、プロピレン、ポリエチレン及びエチレン‐プロピレンコポリマーのうちの2つ以上の混合物、例えば、プロピレンとポリエチレンの混合物である。
【0178】
ある特定の実施形態では、ポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレンとポリエチレンの混合物を含み、本質的にポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレンとポリエチレンの混合物から成り、あるいは、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレンとポリエチレンの混合物から成る。ある特定の実施形態では、ポリマーは、ポリプロピレンである。
【0179】
ポリマー組成物中に微粉タルクが存在することにより、例えば、ポリマー組成物の曲げ弾性率及び/又は衝撃強度を高めることができる。
【0180】
ポリマー組成物の正確な曲げ弾性率及び衝撃強度は、用いられるポリマーそのもの及びポリマー組成物中の任意他の成分に応じて様々であってよい。
【0181】
ポリマー組成物は、例えば、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも少なくとも約1.0%高い曲げ弾性率を有するのがよい。例えば、ポリマー組成物は、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも少なくとも約2.0%高い、少なくとも約3.0%高い、少なくとも約4.0%高い、又は少なくとも約5.0%高い曲げ弾性率を有するのがよい。
【0182】
ポリマー組成物は、例えば、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも最高約50.0%高い曲げ弾性率を有するのがよい。例えば、ポリマー組成物は、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも最高約45.0%、最大約40.0%、最高約35.0%、最高約30.0%、最高約25.0%、最高約20.0%、最高約15.0%、又は最高約10.0%高い曲げ弾性率を有するのがよい。
【0183】
ポリマー組成物は、例えば、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも約1.0%~約50.0%、約2.0%~約30.0%、約3.0%~約20.0%、約4.0%~約10.0%高い曲げ弾性率を有するのがよい。
【0184】
曲げ弾性率を、ISO 178(試験片支持体相互間のスパン=64mm、試験速度=1mm/s、曲げひずみ=最大0.3%、測定対象は少なくとも7つの試験片)に準拠して80mm×10mm×4mmのバー(棒)について測定されるのがよい。
【0185】
ポリマー組成物は、例えば、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも少なくとも約1.0%高い衝撃強度を有するのがよい。例えば、ポリマー組成物は、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも少なくとも約5.0%高い、少なくとも約10.0%高い、又は少なくとも約15.0%高い衝撃強度を有するのがよい。
【0186】
ポリマー組成物は、例えば、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも最高約50.0%高い衝撃強度を有するのがよい。例えば、ポリマー組成物は、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも最高約45.0%、最高約40.0%、又は最高約35.0%高い衝撃強度を有するのがよい。
【0187】
ポリマー組成物は、例えば、本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも約1.0%~約50.0%、約5.0%~約40.0%、約10.0%~約40.0%、約15.0%~約30.0%高い衝撃強度を有するのがよい。
【0188】
衝撃強度は、本明細書において説明されているシャルピー衝撃強度又は落重衝撃強度を意味するのがよい。
【0189】
シャルピー衝撃強度(KJ/m)(ノッチなしフラットワイズ及び垂直衝撃)を、-20℃においてISO 179-1に従って、80mm×10mm×4mmのバーについて測定するのがよい。-21℃における落重インデックス(J)を、EN ISO 6603:2に従って60×60×3mmのプラークについて測定するのがよい。
【0190】
衝撃強度(例えば、シャルピー衝撃強度)を再計算して、これをISO曲げ弾性率に置き換えるのが良い。これは、比較タルクと本発明の微粉タルクを用いて、ポリマー組成物を異なるタルク投入量で押し出すことによって決められる。次に、曲げ弾性率及び衝撃強度を各組成物について測定する。曲げ弾性率とタルク投入量との関係を表す曲線をプロットする。本発明の微粉タルクに関して曲げ弾性率とタルク投入量の曲線において、20%タルク投入量の比較タルクと同一の曲げ弾性率に対応した本発明の微粉タルクの投入量を計算する。次に、本発明の微粉タルクについての衝撃強度とタルク投入量の曲線をプロットする。ISO曲げ弾性率での衝撃強度は、20%タルク投入量での比較タルクと同一の曲げ弾性率を提供するタルク投入量に対応した衝撃強度である。
【0191】
ポリマー組成物は、約4.0以下、約3.5以下、約3.2以下、約3.1以下、約3.0以下、又は約2.9以下のスクラッチ(ひっかき)抵抗性ΔL*を有するのがよい。ポリマー組成物は、約2.0以上、約2.5以上、約2.7以上、約2.8以上、又は約2.9以上のスクラッチ抵抗性ΔL*を有するのがよい。ポリマー組成物は、約2.0~約4.0、約2.5~約3.5、約2.7~約3.2、約2.7~約3.1、約2.7~約3.0、約2.7~約2.9、約2.8~約3.2、約2.9~約3.2、又は約2.8~約3.0のスクラッチ抵抗性ΔL*を有するのがよい。スクラッチ抵抗性は、10Nの荷重を用いたGMW 14688法Aに従ってエリクセンスクラッチ試験によって求められるのがよい。
【0192】
エリクセンスクラッチ試験では、半径(0.5±0.01)mmの研磨球形端部を備えた円筒形の硬質金属ペンを有するエリクセンスクラッチ試験機を用いて、規定された機械的荷重下において材料サンプルの表面上をスクラッチしてこれに斜交平行模様を施す。ペンを(1000±50)mm/分の速度で、表面の40mm以上にわたってスクラッチする。スクラッチ領域の輝度又はルミナンス(CIELAB色空間内でL*で測定される)LS *をスクラッチしていない領域の輝度LU *と比較して次式、すなわち、
に従って定められたスクラッチ抵抗パラメータΔL*でスクラッチされた領域の視認性を定量化する。
【0193】
輝度の値は、ISO 7724の要件を満たす分光光度計、例えば、SCEを除く、D65照度、10nmスペクトル間隔、反射測定、d/8ジオメトリー、25mm又は27mm径のポートホール、及び色空間CIE LAB 1964(10゜)を用いたコニカミノルタCM-3700d分光光度計(コニカミノルタ・センシング・ヨーロッパB.V.(Konica Minolta Sensing Europe B.V.)から入手できる)を用いて求めることができる。スクラッチは、ΔL*の大きな値を有する材料中で目に見え、その結果、かかる材料は、スクラッチ抵抗の低いものと形容される。
【0194】
ポリマー組成物は、注入方向に平行な方向において、約60×10-6-1以上、例えば、約65×10-6-1以上、約70×10-6-1以上、約75×10-6-1以上、約80×10-6-1以上、約85×10-6-1以上、又は約90×10-6-1以上の線熱膨張率を有するのがよい。ポリマー組成物は、注入方向に平行な方向において、約100×10-6-1以下、例えば、約95×10-6-1以下、約90×10-6-1以下、約85×10-6-1以下、約80×10-6-1以下、約75×10-6-1以下、又は約70×10-6-1以下の線熱膨張率を有するのがよい。ポリマー組成物は、注入方向と平行な方向において、約60×10-6-1~約100×10-6-1、例えば、約60×10-6-1~約90×10-6-1、約60×10-6-1~約80×10-6-1、約70×10-6-1~約100×10-6-1、又は約80×10-6-1~約100×10-6-1の線熱膨張率を有するのがよい。
【0195】
ポリマー組成物は、注入方向に垂直な方向において、約60×10-6-1以上、例えば、約65×10-6-1以上、約70×10-6-1以上、約75×10-6-1以上、約80×10-6-1以上、約85×10-6-1以上、又は約90×10-6-1以上の線熱膨張率を有するのがよい。ポリマー組成物は、注入方向に垂直な方向において、約100×10-6-1以下、例えば、約95×10-6-1以下、約90×10-6-1以下、約85×10-6-1以下、約80×10-6-1以下、約75×10-6-1以下、又は約70×10-6-1以下の線熱膨張率を有するのがよい。ポリマー組成物は、注入方向に垂直な方向において、約60×10-6-1~約100×10-6-1、例えば、約60×10-6-1~約90×10-6-1、約60×10-6-1~約80×10-6-1、約70×10-6-1~約100×10-6-1、又は約80×10-6-1~約100×10-6-1の線熱膨張率を有するのがよい。
【0196】
ポリマー組成物は、約60×10-6-1以上、例えば、約65×10-6-1以上、約70×10-6-1以上、約75×10-6-1以上、約80×10-6-1以上、約85×10-6-1以上、又は約90×10-6-1以上の平均線熱膨張率を有するのがよい。ポリマー組成物は、約100×10-6-1以下、例えば、約95×10-6-1以下、約90×10-6-1以下、約85×10-6-1以下、約80×10-6-1以下、約75×10-6-1以下、又は約70×10-6-1以下の平均線熱膨張率を有するのがよい。ポリマー組成物は、約60×10-6-1~約100×10-6-1、例えば、約60×10-6-1~約90×10-6-1、約60×10-6-1~約80×10-6-1、約70×10-6-1~約100×10-6-1、又は約80×10-6-1~約100×10-6-1の平均線熱膨張率を有するのがよい。
【0197】
ポリマー組成物のサンプルプレートの線熱膨張率をサンプルプレートの膨張を温度の関数として測定してプロットすることにより、温度の増加の作用下において、注入方向に平行な方向及びこれに垂直な方向において求めることができる。
【0198】
上述の「本発明の微粉タルクを含まないという点を除き同一であるポリマー組成物」という表現は、例えば、本発明の微粉タルクを除去して、別の微粉タルクで置き換えられなかったポリマー組成物であってもよい。変形例として、本発明の微粉タルクを除去して、本発明の範囲に含まれない微粉タルク、例えば市販の微粉タルク、例えばLuzenac HAR T84 talc(登録商標)で置き換えてもよい。Luzenac HAR T84 talc(登録商標)は、約1.9μmのd50sedi、約10.5μmのd95sedi、約10.5μmのd50laser、約32.1μmのd95laser、約19.4m2/gのBET表面積、約130のTOT層、約123の形状因子及び約95のDI(TOT)を有する。
【0199】
ポリマー組成物の製造方法
ポリマー組成物を調製するには、ポリマー又はポリマー前駆物質を、本発明の微粉タルク及び他のオプションとしての成分と組み合わせるのがよい。微粉タルク(及び他のオプションとしての成分)をポリマー前駆物質と組み合わせると、ポリマー前駆物質と微粉タルク(及び他のオプションとしての成分)の結果として生じる組み合わせを硬化されることができる。
【0200】
ポリマー組成物を調製するには、かかるポリマー組成物の成分(微粉タルクを除く)を密に混ぜ合わせるのがよい。次に、微粉タルクを成分と任意所望の追加の成分の混合物と適切に配合し、例えばドライブレンドするのがよく、その後、これを処理して最終のポリマー複合体又は物品を形成する。
【0201】
ポリマー組成物は、例えば、本明細書において開示した任意の実施形態に従ったものであるのがよい。
【0202】
本発明のポリマー組成物の調製は、当業者には直ちに明らかなように、当技術分野において知られている任意適当な混合方法によって達成できる。かかる方法としては、例えば、個々の成分又はその前駆物質のドライブレンド及びその後の従来方法による処理が挙げられる。材料のうちのある特定のものを所望ならばあらかじめ混合し、その後、配合混合物に添加するのがよい。
【0203】
熱可塑性ポリマー組成物の場合、かかる処理は、物品を組成物から製造する押出機で直接メルト混合するか、又は別個の混合装置で予備混合するのを含むのがよい。変形例として、個々の成分のドライブレンドを予備メルト混合なしで直接射出成形してもよい。
【0204】
ポリマー組成物を調製するには、その成分を密に混ぜ合わせるのがよい。次に、微粉タルクをポリマー及び任意の所望の追加の成分と適切にドライブレンドするのがよく、その後、上述したように処理を行う。
【0205】
他の充填剤コンパウンドを混合段階で添加して配合するのがよい。
【0206】
架橋又は硬化済みポリマー組成物の調製のため、未硬化成分又はこれらの前駆物質、及び所望ならば微粉タルク及び任意所望の非タルク成分のブレンドを用いられるポリマーの性情及び量に従って、有効量の任意の適当な架橋剤又は硬化系に熱、圧力及び/又は光の適切な条件下で接触させて、ポリマーを架橋するとともに/あるいは硬化させる。
【0207】
微粉タルク及び任意の所望の他の成分が重合時に現場に存在しているポリマー組成物調製の場合、モノマー及び任意の所望の他のポリマー前駆物質、微粉タルク及び任意の他の成分のブレンドを熱、圧力及び/又は光の適切な条件下で、用いられるモノマーの性情及び量に従って接触させてモノマーを微粉タルク及び任意他の成分と現場で重合する。
【0208】
ある特定の実施形態では、微粉タルクを撹拌によりポリマー(例えば、ポリプロピレン)及びオプションとして硬化剤を含む混合物中に分散させる。混合物は、離型剤をさらに含むのがよい。
【0209】
結果として生じる分散液をガス抜きして連行空気を除去するのがよい。次に、結果として生じる分散液を適当なモールド中に注ぎ込んで硬化させるのがよい。適切な硬化温度は、20℃から200℃までの範囲、例えば20℃から120℃までの範囲、あるいは例えば60℃から90℃までの範囲にある。
【0210】
開始ポリマー混合物は、プレポリマー(例えば、プロピレンモノマー)をさらに含むのがよい。プレポリマーは、開始ポリマーと対応していてもよく、あるいは対応していなくてもよい。
【0211】
開始ポリマー又はポリマー/モノマー溶液の粘度、硬化剤の量、離型剤の量、及び微粉タルクの量を最終硬化済み製品の要件に従って変化させるのがよい。一般に、添加される微粉タルクの量が多ければ多いほど、分散液の粘度はそれだけいっそう高くなる。分散剤を添加して分散液の粘度を下げるのがよい。変形例として、開始溶液中のポリマーの量を減少させてもよい。
【0212】
適当な硬化剤は、当業者には直ちに明らかであり、かかる硬化剤としては、有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物が挙げられる。硬化剤としての過酸化物及びヒドロペルオキシドの例としては、ジメチルジブチルペルオキシヘキサン、ベンジルペルオキシド(過酸化ベンジル)、ジクミルペルオキシド(過酸化ジクミル)、メチルエチルケトンペルオキシド(メチルエチルケトン過酸化物)、ラウリルペルオキシド(過酸化ラウリル)、シクロヘキサノンペルオキシド(シクロヘキサノン過酸化物)、t‐ブチルペルベンゾアート、t‐ブチルヒドロペルオキシド、t‐ブチルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、及びt‐ブチルペルオクトアートが挙げられる。
【0213】
配合組成物は、追加の成分、例えばスリップ助剤(例えばErucamide)、加工助剤(例えばPolybatch(登録商標)AMF-705)、離型剤及び酸化防止剤をさらに含むのがよい。
【0214】
適当な離型剤は、当業者には直ちに明らかであり、かかる離型剤としては、脂肪酸、脂肪酸の亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、及び有機リン酸エステル塩が挙げられる。特定の例は、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛である。代表的には、スリップ助剤、加工助剤、及び離型剤をマスターバッチの重量に基づいて約5重量%未満の量で添加する。次に、当業者には直ちに明らかなように、当該技術分野において知られている従来技術を用いて、ポリマー物品を押し出し、圧縮成形し又は射出成型するのがよい。かくして、以下に説明するように、本発明は、本発明のポリマー組成物から作られる物品にも関する。
【0215】
ある特定の実施形態では、ポリマー組成物は、着色剤を含み、着色剤は、存在する場合には、ポリマー組成物の配合中に添加される。着色剤をマスターバッチの形態で添加するのがよい。適当な着色剤は、多種多様である。
【0216】
ある特定の実施形態では、微粉タルクを充填剤が添加されていないポリマーが供給されていて溶融状態になる二軸スクリュー押出機に添加する。微粉タルクをホッパーを通して、例えば、重量供給方式により押出機中に供給し、そしてかかる微粉タルクは、ポリマーと均質に混じり合う。混合物は、押出機から出、そしてこれを冷却されるのが良い。次に、例えば、混合物をさらに圧縮成型し又は射出成型して有用な形状にするのがよい。
【0217】
上述の方法は、配合及び押し出しを含むのがよい。配合は、二軸スクリュー配合機、例えば、Clextral BC 21ダブルスクリュー押出機、Leistritz ZSE 18ダブルスクリュー押出機、又はBaker Perkins 25mm二軸スクリュー配合機を用いて実施されるのがよい。ポリマー、微粉タルク及びオプションとしての追加の成分を予備混合して単一のホッパーから供給するのがよい。結果として生じるメルトを、例えば水浴中で冷却し、次にペレット化するのがよい。試験片、例えばシャルピーバー又は引っ張りダンベルを射出成形し、圧縮成形し、鋳型し、あるいは吹き込み成型してフィルムの状態にする。
【0218】
スクリュー温度は、約100℃~約300℃、例えば、約150℃~約280℃、例えば、約180℃~約250℃、又は約200℃~約230℃であるのがよい。
【0219】
スクリュー速度は、約100~1200rpm、例えば、約100~1000rpmの間、例えば、約200~800rpmの間、例えば、約250~650rpm、例えば、約200~400rpm、又は約500~700rpmであるのがよい。ある特定の実施形態では、スクリュー速度は約300rpmである。他の実施形態では、スクリュー速度は、約600rpmである。
【0220】
適当な射出成形装置は、例えば、Billion 50T Proximaプレスを含む。ポリマー組成物を乾燥させ、その後、成形する。乾燥は、任意適当な温度、例えば、約60℃で、適当な期間にわたって、例えば約1時間~20時間、例えば約2時間~18時間、約1時間~3時間、約4時間~8時間、又は約12時間~18時間かけて実施されるのがよい。乾燥中における温度は、一定に保たれてもよく又は変化してもよい。ある特定の実施形態では、乾燥中の温度は、約70℃~120℃、例えば、約80℃~100℃の間、例えば、約90℃である。
【0221】
成形は、一般に、ポリマー組成物が流動性になる温度で実施される。例えば、成形温度は、約100℃~300℃、例えば、約200℃~300℃、又は約240℃~約280℃であるのがよい。成形に続き、成形片は、放冷して硬化させる。
【0222】
他の適当な加工技術は、ガス支援射出成形、カレンダリング、真空成形、熱成形、吹き込み成形、圧伸成形、スピニング、フィルム成形、貼り合わせ又はこれらの任意の組み合わせを含む。当業者には明らかなように、任意の適当な装置を使用することができる。
【0223】
ポリマー組成物を処理して、本明細書において説明しているように、任意適当な仕方で商品を形成し又はかかる商品に組み込むのがよい。ポリマー組成物から形成できる物品は、多種多様である。例示としては、自動車車体部品及びパネル、例えば、ボンネット(フード)、ウィング部品、ウィングミラーケーシング、ドア(フロント及び/又はリア)、テールゲート及びバンパー(フロント及び/又はリア)が挙げられる。
【0224】
微粉タルクの使用
本発明の微粉タルクは、例えば、ポリマー組成物中に使用できる。例えば、微粉タルクを用いると、これが混入されたポリマー組成物の曲げ弾性率及び/又は衝撃強度(例えば、上述したようなシャルピー衝撃強度又は落下衝撃強度)を高めることができる。
【0225】
ポリマー組成物は、例えば、本明細書において説明した任意の実施形態によるものであるのがよい。
【0226】
ポリマー組成物を処理して、本明細書において説明しているように、任意適当な仕方で商品を形成し又はかかる商品に組み込むのがよい。ポリマー組成物から形成できる物品は、多種多様である。例示としては、自動車車体部品及びパネル、例えば、ボンネット(フード)、ウィング部品、ウィングミラーケーシング、ドア(フロント及び/又はリア)、テールゲート及びバンパー(フロント及び/又はリア)が挙げられる。
【0227】
以下の番号を付けた実施態様項は、本発明の特定の実施形態を規定している。
〔実施態様項1〕微粉タルクであって、以下の性質、すなわち、
(a)約1150オングストローム以下の干渉性散乱ドメイン(CSDc*
(b)約120以下の4面体‐8面体‐4面体(TOT)層
(c)約103以上のTOT層によるデラミネーションインデックス(DI(TOT))
(d)約70以上の形状因子
(e)約25.0μm以下のd95laser
(f)約10.0μm以下のd95sedi
(g)約2.5以上のラメラリティーインデックス
(h)約15m2/g以上のBET表面積
(i)約65mL/100g以上の吸油量
(j)約43゜以下の接触角
のうちの1つ以上を備えている、微粉タルク。
〔実施態様項2〕特徴(a)~(j)のうちの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個を備えている、実施態様項1記載の微粉タルク。
〔実施態様項3〕約1150オングストローム以下のCSDc*を有する、実施態様項1又は2記載の微粉タルク。
〔実施態様項4〕約1050オングストローム以下のCSDc*を有する、実施態様項1~3のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項5〕約750オングストローム以上のCSDc*を有する、実施態様項1~4のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項6〕約120以下のTOT層を有する、実施態様項1~5のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項7〕約110以下のTOT層を有する、実施態様項1~6のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項8〕約50以上のTOT層を有する、実施態様項1~7のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項9〕約103以上のDI(TOT)を有する、実施態様項1~8のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項10〕約120以上のDI(TOT)を有する、実施態様項1~9のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項11〕約200以下のDI(TOT)を有する、実施態様項1~10のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項12〕約70以上の形状因子を有する、実施態様項1~11のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項13〕約100以上の形状因子を有する、実施態様項1~12のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項14〕約200以下の形状因子を有する、実施態様項1~13のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項15〕約25.0μm以下のd95laserを有する、実施態様項1~14のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項16〕約20.0μm以下のd95laserを有する、実施態様項1~15のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項17〕約7.0μm以上のd95laserを有する、実施態様項1~16のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項18〕約10.0μm以下のd95sediを有する、実施態様項1~17のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項19〕約6.0μm以下のd95sediを有する、実施態様項1~18のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項20〕約5.0μm以下のd95sediを有する、実施態様項1~19のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項21〕約12.0μm以下のd50laserを有する、実施態様項1~20のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項22〕約8.0μm以下のd50laserを有する、実施態様項1~21のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項23〕約2.0μm以上のd50laserを有する、実施態様項1~22のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項24〕約4.0μm以上のd50laserを有する、実施態様項1~23のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項25〕約5.0μm以下のd50sediを有する、実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項26〕約3.0μm以下のd50sediを有する、実施態様項1~25のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項27〕約2.5μm以下のd50sediを有する、実施態様項1~26のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項28〕約0.5μm以上のd50sediを有する、実施態様項1~27のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項29〕約1.0μm以上のd95sediを有する、実施態様項1~28のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項30〕約2.5μm以上のd95sediを有する、実施態様項1~29のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項31〕約2.5以上のラメラリティーインデックスを有する、実施態様項1~30のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項32〕約2.8以上のラメラリティーインデックスを有する、実施態様項1~31のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項33〕約6.0以下のラメラリティーインデックスを有する、実施態様項1~32のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項34〕約15m2/g以上のBET表面積を有する、実施態様項1~33のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項35〕約17m2/g以上のBET表面積を有する、実施態様項1~34のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項36〕約30m2/g以下のBET表面積を有する、実施態様項1~35のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項37〕約65mL/100g以上の吸油量を有する、実施態様項1~36のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項38〕約68mL/100g以上の吸油量を有する、実施態様項1~37のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項39〕約100mL/100g以下の吸油量を有する、実施態様項1~38のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項40〕約43゜以下の接触角を有する、実施態様項1~39のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項41〕約40゜以下の接触角を有する、実施態様項1~40のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項42〕約33゜以上の接触角を有する、実施態様項1~41のうちいずれか一に記載の微粉タルク。
〔実施態様項43〕ポリマー組成物であって、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の微粉タルクを含む、ポリマー組成物。
〔実施態様項44〕上記ポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレン‐エチレンコポリマー、又はこれらの組み合わせから選択される、実施態様項43記載のポリマー組成物。
〔実施態様項45〕上記ポリマーは、ポリプロピレンである、実施態様項43又は44記載のポリマー組成物。
〔実施態様項46〕上記微粉タルクは、約1重量%以上の量で上記ポリマー組成物中に存在する、実施態様項43~45のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項47〕上記微粉タルクは、約10重量%以上の量で上記ポリマー組成物中に存在する、実施態様項43~46のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項48〕上記微粉タルクは、約70重量%以下の量で上記ポリマー組成物中に存在する、実施態様項43~47のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項49〕上記微粉タルクは、約30重量%以下の量で上記ポリマー組成物中に存在する、実施態様項43~48のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項50〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも少なくとも約1.0%高い曲げ弾性率を有する、実施態様項43~49のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項51〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも少なくとも約2.0%高い曲げ弾性率を有する、実施態様項43~50のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項52〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも最大約50.0%高い曲げ弾性率を有する、実施態様項43~51のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項53〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の曲げ弾性率よりも最大約30.0%高い曲げ弾性率を有する、実施態様項43~52のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項54〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも少なくとも約1.0%高い衝撃強度を有する、実施態様項43~53のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項55〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも少なくとも約5.0%高い衝撃強度を有する、実施態様項43~54のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項56〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも最大約50.0%高い衝撃強度を有する、実施態様項43~55のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項57〕上記ポリマー組成物は、実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを含まないという点を除き、同一であるポリマー組成物の衝撃強度よりも最大約30.0%高い衝撃強度を有する、実施態様項43~56のうちいずれか一に記載のポリマー組成物。
〔実施態様項58〕実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクを製造する方法であって、上記方法は、供給タルク材料を分級して上記供給タルク材料中の最も大きな粒子の一部を除去するステップを含み、上記供給タルク材料は、以下の(a)~(i)のうちの1つ以上、すなわち、
(a)約2.5以上のラメラリティーインデックス、
(b)約15.0μm以下のd95sedi
(c)約40.0μm以下のd95laser
(d)約5.0μm以下のd50sedi
(e)約15.0μm以下のd50laser
(f)約40以上の形状因子、
(g)約10m2/g以上のBET表面積、
(h)約102以下のDI(TOT)、
(i)約110以上のTOT層、
を有する、方法。
〔実施態様項59〕上記分級は、空気分級によって行われる、実施態様項58記載の方法。
〔実施態様項60〕上記供給タルク材料は、約2.8から約10.0までの範囲にあるラメラリティーインデックスを有する、実施態様項58又は59記載の方法。
〔実施態様項61〕上記供給タルク材料は、約5.0μmから約15.0μmまでの範囲にあるd95sediを有する、実施態様項58~60のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項62〕上記供給タルク材料は、約20.0μmから約40.0μmまでの範囲にあるd95laserを有する、実施態様項58~61のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項63〕上記供給タルク材料は、約0.5μmから約5.0μmまでの範囲にあるd50sediを有する、実施態様項58~62のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項64〕上記供給タルク材料は、約40~150の形状因子を有する、実施態様項58~63のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項65〕上記供給タルク材料は、約10m2/gから約30m2/gまでの範囲にあるBET表面積を有する、実施態様項58~64のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項66〕上記方法は、上記供給タルク材料を上記分級前に粉砕するステップを含む、実施態様項58~65のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項67〕実施態様項43~57のうちいずれか一に記載のポリマー組成物を製造する方法であって、上記方法は、上記ポリマー又はポリマー前駆物質を実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の上記微粉タルクと組み合わせるステップを含む、方法。
〔実施態様項68〕上記方法は、上記ポリマー前駆物質と上記微粉タルクと組み合わせるステップ及び結果として生じる組成物を硬化させるステップを含む、実施態様項67記載の方法。
〔実施態様項69〕実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の微粉タルクの使用であって、上記微粉タルクが混ぜ込まれるポリマー組成物の曲げ弾性率を高めるための使用。
〔実施態様項70〕上記ポリマー組成物は、実施態様項43~57のうちいずれか一の記載に従っている、実施態様項69記載の使用。
〔実施態様項71〕実施態様項1~42のうちいずれか一に記載の微粉タルクの使用であって、上記微粉タルクが混ぜ込まれるポリマー組成物の衝撃強度を高めるための使用。
〔実施態様項72〕上記ポリマー組成物は、実施態様項43~57のうちいずれか一の記載に従っている、実施態様項71記載の使用。
【0228】
実施例
実施例1‐本発明の微粉タルクの製造
空気分級機(BORA 50 SD)を用いて高アスペクト比(HAR)の供給タルク材料(供給タルク材料A)3つのフラクションに分離した。第1に、最も細かい10重量%又は20重量%の供給タルク材料Aを分離して、本発明の微粉タルクA及び本発明の微粉タルクBをそれぞれ製造した。最も細かい10%の粒子を供給タルク材料Aから除去した後の残りの粗いフラクションをそれ自体、細かいフラクション(副生物A)及び粗いフラクション(副生物B)に分離し、又は最も細かい20%の粒子を供給タルク材料Aから除去した後の残りの粗いフラクションをそれ自体、供給物から最も細かい60~75重量%の粒子を除去することによって、細かいフラクション(副生物C)及び粗いフラクションに分離した。
【0229】
システム動作パラメータが以下の表1に示されている。
表1
【0230】
実施例2‐実施例1のタルク材料の分析
実施例1に記載されたタルク材料の粒径分布、ラメラリティーインデックス、及びBET表面積を、本明細書において説明したレーザー及びセディメンテーション法により分析した。これまた、幾つかの市販のタルク材料(比較タルクA及び比較タルクB)と比較した。
【0231】
結果が以下の表2に示されている。
表2
【0232】
実施例3‐実施例1のタルク材料を含むポリマー組成物
実施例1及び実施例2のタルク材料を以下の手順によってポリマー組成物中に混入した。
【0233】
コンパウンドを18mm径及びL/D48の二軸スクリュー押出機で押し出す。
15重量%タルクをサイドフィーダ1(150rpm)中に導入。
ポリマーは、ポリプロピレン(56M10 Sabic(登録商標))であった。
出力:3kg/h
スクリュー速度:600rpm
押出機温度:240℃(×3加熱ゾーン)、次に205℃
【0234】
ポリマー組成物の曲げ弾性率及びシャルピーノッチなし衝撃強度を本明細書において説明した方法(ISO norm 178に従って曲げ弾性率、及びISO norm 179-1に従ってシャルピーノッチなしフラットワイズ及び垂直衝撃)によって求めた。
【0235】
調節後の値は、最初にコンパウンドを灰化することによって現実の装填量をチェックした後に、そして第2に、同一装填量(この場合15重量%)で曲げ弾性率を再計算し、そして正味のポリマーの曲げ弾性率を考慮することによって得られる。曲げ弾性率とタルク装填量との関係は、線形である。
【0236】
結果は、以下の表3に示されている。
表3
【0237】
驚くべきこととして、本発明の微粉タルクは、ポリマー組成物の曲げ弾性率と衝撃強度の両方を向上させたことが判明した。
【0238】
実施例4‐本発明の微粉タルクの調製
【0239】
供給タルク材料Bを空気分級(BORA 50 SD)によってフラクションに分離した。
【0240】
分級に関するシステム動作パラメータが以下の表に示されている。
【0241】
これは、本発明の微粉タルクC及び本発明の微粉タルクDを生産した。
【0242】
本発明の微粉タルクC又はDを除去した後の残りの粗いフラクションを次に、乾式粉砕して微細フラクションからのものが得られるまで、その粒度分布を減少させた。
【0243】
乾式粉砕に関するシステム動作パラメータが以下の表に示されている。
【0244】
実施例5‐実施例4のタルク材料の分析
実施例4において説明したタルク材料の多くの粒子形状、粒径、及び表面特性を、本明細書において説明した方法によって分析した。これまた、幾つかの市販のタルク材料(比較タルクA~J)と比較した。
【0245】
結果は、以下の表4~表7に示されている。
表4

表5

表6

表7
【0246】
実施例6‐実施例4のタルク材料を含むポリマー組成物
図4及び図5のタルク材料を以下のようにポリマー組成物中に混入した。
・配合:
・79.4重量%PPコポリマー(SABIC(登録商標)56M10)
・記載した20重量%タルク
・0.6重量%添加剤ミックス(1/3 Irganox(登録商標)1010 + 1/3 Irgafos(登録商標)168 + 1/3 ステアリン酸カルシウム)
・処理条件
・押し出し:二軸スクリュー押出機L/D=48、直径=18mm
・温度分布:最初の3つの加熱ゾーンでは240℃×3+8つのその後の加熱ゾーンについて205℃×8
・スループット:10kg/h
・スクリュー速度:900rpm
・サイドフィーダ1内のタルク
・射出温度:205℃
・試験された製品
・比較タルクD
・本発明の微粉タルクC
【0247】
シャルピー衝撃強度(KJ/m)(ノッチなしフラットワイズ及び垂直衝撃)を、-20℃においてISO 179-1に従って80mm×10mm×4mmバーについて測定するのがよい。-21℃における落重インデックス(J)をEN ISO 6603:2に従って60×60×3mmプラークについて測定するのが良い。
【0248】
衝撃強度(例えば、シャルピー衝撃強度)を計算し直して、これをISO曲げ弾性率に置き換えるのが良い。これは、比較タルクと本発明の微粉タルクを用いて、ポリマー組成物を異なるタルク投入量で押し出すことによって決められる。次に、曲げ弾性率及び衝撃強度を各組成物について測定する。曲げ弾性率とタルク投入量との関係を表す曲線をプロットする。本発明の微粉タルクに関して曲げ弾性率とタルク投入量の曲線において、20%タルク投入量の比較タルクと同一の曲げ弾性率に対応した本発明の微粉タルクの投入量を計算する。次に、本発明の微粉タルクについての衝撃強度とタルク投入量の曲線をプロットする。ISO曲げ弾性率での衝撃強度は、20%タルク投入量での比較タルクと同一の曲げ弾性率を提供するタルク投入量に対応した衝撃強度である。
【0249】
結果は、以下の表8に示されている。
表8
【0250】
驚くべきこととして、本発明の微粉タルクは、比較タルク材料と比較して、曲げ弾性率において約5%の向上及び衝撃強度において15%を超える向上を提供することが判明した。
【0251】
結果を再計算してこれら結果をISO曲げ弾性率に置き換えることによって、衝撃強度における向上は、30%を超える。
【0252】
本発明の微粉タルク中のTOT層の減少及びDI(TOT)の増大の示すところによれば、製品は、層状度が高く、このことは、曲げ弾性率に対して直接的な影響を及ぼしている。
【0253】
本発明の微粉タルクの細かい粒度分布は、衝撃強度の向上にたいする強い作用効果を及ぼしていると考えられる。
【0254】
これら特性は、通常、互いに有害である。したがって、両方が組み合わされるということは驚くべきことである。
【0255】
実施例7‐実施例4のタルク材料を含むポリマー組成物
図4及び図5のタルク材料を以下のようにポリマー組成物中に混入した。
・配合:
・64.4重量%PPコポリマー(Exxon 7075L1)
・記載されたタルク(比較タルクDについては20重量%、本発明の微粉タルクCについては18.4重量%)
・15重量%エラストマー(DOW XUR 6044-1)
・0.6重量%添加剤ミックス(1/3 Irganox(登録商標)1010 + 1/3 Irgafos(登録商標)168 + 1/3 ステアリン酸カルシウム)
・処理条件
・押し出し:二軸スクリュー押出機L/D=48、直径=18mm
・温度分布:最初の3つの加熱ゾーンでは240℃×3+8つのその後の加熱ゾーンについて205℃×8
・スループット:7.5kg/h
・スクリュー速度:750rpm
・射出温度:205℃
・試験された製品
・比較タルクD
・本発明の微粉タルクC
【0256】
ポリマー組成物に関する曲げ弾性率及び落重衝撃強度を以下の方法によって求めた。
ISO norm 178による曲げ弾性率
ISO norm 6603-2による落重衝撃
・衝撃速度=4.4m/s
・重量≧0.31×E*(ただし、速度=4.4m/s)
・重量(単位:kg)
・E*=測定すべき最も高い穴あけエネルギー(J)
【0257】
結果は、以下の表9に示されている。
表9
【0258】
驚くべきこととして、-21℃における落重衝撃強度は、比較タルク材料と比較して本発明の微粉タルクを用いて約30%だけ増大していることが判明した。
【0259】
この実施例は、低温での衝撃強度特性に対する本発明の微粉タルクのプラスの影響を確証している。
【0260】
実施例8‐本発明の微粉タルクの調製
高アスペクト比(HAR)供給タルク材料(供給タルク材料C)を空気分級(BORA 50 SD)によりフラクションに分離した。
【0261】
分級に関するシステム動作パラメータが以下の表10に示されている。
表10
【0262】
これは、本発明の微粉タルクEを生産した。
【0263】
実施例9‐実施例8のタルク材料の分析
実施例8において説明したタルク材料の多くの粒子形状、粒径、及び表面特性を、本明細書において説明した方法によって分析した。これまた、幾つかの市販のタルク材料(比較タルクK)と比較した。
【0264】
結果は、以下の表11~表14に示されている。
表11

表12

表13

表14
【0265】
実施例10‐実施例8及び実施例9のタルク材料を含むポリマー組成物
図8及び図9のタルク材料を以下のようにポリマー組成物中に混入した。
・配合:
・66.4重量%PP(7075 Exxon(登録商標)batch 169001 131A)
・15重量%Polyester Elastomer Engage(登録商標)11547(Dow(登録商標))
・記載した15重量%タルク
・0.6重量%添加剤ミックス(50% A20、50% PPC20添加剤 1/3 Irganox(登録商標) 1010 + 1/3 Irgafos(登録商標) 168 + 1/3ステアリン酸カルシウム)
・処理条件
・押し出し:二軸スクリュー押出機L/D=48、直径=18mm
・温度分布:最初の3つの加熱ゾーンでは240℃×3+8つのその後の加熱ゾーンについて205℃×8
・スループット:7.5kg/h
・スクリュー速度:750rpm
・真空なし
・サイドフィーダ1内のタルク、投与ユニット3
・メインフィーダー内のエラストマー、投与ユニット4
・スクリュープロフィール1
・射出温度:PPC20パラメータ:205℃
・試験された製品
・比較タルクK
・本発明の微粉タルクE
【0266】
シャルピー衝撃強度(ノッチなしフラットワイズ及び垂直衝撃)、アイゾット衝撃強度(ノッチあり)(ISO 180による)、未調節及び調節済み曲げ弾性率、スクラッチ抵抗、線熱膨張係数(CLTE)、落重衝撃(FWI)抵抗、破断時における伸び率及び引っ張り弾性率(ISO 527による引っ張り試験による)を本明細書において説明した方法によって測定した。
【0267】
結果が以下の表15に示されており、ただし、“σ”は、上記行の測定値における標準偏差を示している。
表15
【0268】
実施例8及び実施例9のタルク材料もまた、表16において規定された配合を含む第2の組をなすポリマー組成物中に混入した。
表16

上記表において、
・PPは、56M 10 (Sabic(登録商標)) Batch 159909
・添加剤は、50% A20、 50% PPC20添加剤1/3 Irganox(登録商標)1010 + 1/3 Irgafos(登録商標)168 + 1/3ステアリン酸カルシウム
・エラストマーは、Dow Chemicals(登録商標)社から入手できるXUR 6044-1
・タルクは、
・ポリマー組成物A~Eに関し、比較タルクK
・ポリマー組成物F~Jに関し、微粉タルクE
【0269】
以下の処理条件を用いてポリマー組成物A~Jを調製した。
・押し出し:二軸スクリュー押出機L/D=48、直径=18mm
・温度分布:最初の3つの加熱ゾーンでは240℃×3+8つのその後の加熱ゾーンについて205℃×8
・スループット:7.5kg/h
・スクリュー速度:750rpm
・真空なし
・サイドフィーダ1内のタルク、投与ユニット3
・メインフィーダー内のエラストマー、投与ユニット4
・スクリュープロフィール1
・射出温度:PPC20パラメータ:205℃
【0270】
シャルピー衝撃強度(ノッチなしフラットワイズ)、アイゾット衝撃強度(ノッチあり)、曲げ弾性率、線熱膨張係数(CLTE)、及び落重衝撃(FWI)抵抗を本明細書において説明した方法によって測定した。
【0271】
結果は、以下の表17及び18に示されており、“σ”は、上記行の測定値における標準偏差を示している。
表17

表18
【0272】
実施例11‐タルク材料の分解
熱重量分析(TGA)及び微分熱重量法(DTG)を用いてタルク材料の分解を研究することができる。例えば、図1は、TGA及びDTG分析により得られたタルク材料の例示の曲線を示しており、図1は、水分及び強固に結合した水が放出され、緑泥石、白雲石、及びタルクが分解する曲線の領域を示している。
【0273】
供給タルク材料Bを、実施例4の方法に従って空気分級(BORA 50 SD)によって多種多様なフラクションに分離しているが、各フラクションは、互いに異なるd95トップカットを有する。互いに異なるフラクションをTGA及びDTGを用いて分析した。
【0274】
図2は、分析中に放出され、d95値(レーザーによる)のフラクションとして測定された含水量(弱く結合された水(すなわち、水分)及び強固に結合された水(すなわち、構造水)を含む)のプロットを示している。サンプルの弱く結合された水(すなわち、水分)含有量は、トップカットの減少につれて増大することが理解できる。
【0275】
図3は、d95値(レーザーによる)の関数として測定された(a)緑泥石及び白雲石の分解温度、並びに(b)タルク分解温度のプロットを示している。白雲石分解温度がトップカットと相関のあることが理解できる。緑泥石分解温度は、トップカットとの相関がない。タルク分解温度は、トップカットと相関があり、事実、多項式相関を示している。一般に、タルクの分解温度は、トップカットの増大につれて減少する。理論に束縛されるものではないがこの挙動は、タルク分解を促進する低いトップカットフラクションの低い結晶化度に原因がある。図3(b)で理解できるように、d95トップカット(レーザーによる)を約35μmから約12μmに減少させることによって、タルクの分解温度は10℃だけ低くなっている。
【0276】
図4は、d95値(レーザーによる)の関数としてのタルク、緑泥石、及び白雲石の分解率のプロットを示している。タルク及び白雲石の分解率がトップカットと相関しているが、緑泥石の分解率は、そうではないことが理解できる。また、分解率は、小さなタルク粒子(すなわち、低いトップカットを有するタルクフラクション)ほど速いことが理解できる。
【0277】
実施例12‐粒径分布を求める方法(セディグラフによる)
マイクロメトリティックス・インストゥルメンツ(Micromeritics Instruments)社のSedigraph IIIを用いて粒径分布(PSD)を求めた。
【0278】
250mgのCalgon(メタリン酸ナトリウム)を検量し(分析てんびんを用いて)、そしてこの250mgのCalgonを1リットルの脱塩済み水を使用したビーカー内で完全に溶解させることによって(機械的攪拌によって)分散液を調製した。このステップは、45分~60分間かかった。次に、少なくとも10分間攪拌しながら、1mLのTriton X(ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル)をこの溶液に添加した。Calgon及びTriton Xは、湿潤・分散剤である。
【0279】
4.8gの微粉タルクサンプルと80mLの分散液を混ぜ合わせることによって、セディグラフィック分析のための微粉タルクのサンプルを調製した。当初、微粉タルクをビーカー内で数滴の80mL分散液と混ぜ合わせ、ペースト稠度が達成されるまで手動撹拌機を用いてこの混合物を混合した。次に、80mL分散液の残りの分をビーカーに添加した。ビーカーを30秒間超音波浴内に置いて気泡を除去した。
【0280】
次に、以下の設定でSedigraph IIIの利用により分散液についてセディグラフィック分析を実施した。
・分散液粘度:0.7523mPa.s
・分散液密度:0.9948g/cm3
・サンプル密度:タルク粉末について2.78g/cm3
・最大直径:52μm
・最小直径:0.4μm
・モード:高速
・気泡検出:粗い
【0281】
結果は、次の基準が満たされたときに有効であるとみなされた。
・レイノルズ数は、0.3未満であった
・ベースライン(分散液のみに関して)は、125~130キロカウント/s
・フルスケール(サンプル懸濁液に関して)は、95~105キロカウント/s
・ベース/フルスケール相互間の差は、35キロカウント/s以下であった。
【0282】
実施例13‐粒径分布を求める方法(レーザー回折による)
マイクロメトリティックス・インストゥルメンツ社のMastersizer 2000を用いて粒径分布(PSD)を求めた。
【0283】
微粉タルクのサンプルをレーザー回折分析のために調製した。微粉タルクの所要量を50mLビーカー内で秤量した。10μm以上のd50(セディグラフによる)を有する微粉タルクに関し、1g~2gの量の微粉タルクを用いた。10μm未満のd50(セディグラフによる)を有する微粉タルクに関し、0.2g~0.5gの量の微粉タルクを用いた。
【0284】
粗い微粉タルク(10μm以上のセディグラフによるd50を有する)に関し、サンプルを無水エタノール(99.5%)湿潤剤と混ぜ合わせた。特に、粉末サンプルをビーカーの底のところでほどよく分布させた。数滴のエタノールを粉末に添加し、そしてペースト稠度が達成されるまで手動攪拌機を用いてこれらを混合した。3mLの使い捨てピペットを用いて2mL~2.5mLのエタノールをビーカーに添加し、そして懸濁液を手動撹拌機で混合した。ビーカーを30秒間超音波浴内に置いて気泡を除去した。
【0285】
次に、以下の設定でMastersizer 2000を用いてサンプルのレーザー回折分析を実施した。
・サンプラー:Hydro 2000G
・測定理論:Mie 1.589- 0.01(すなわち、タルク屈折率)
・水の屈折率:1.33
・測定範囲:0.02~2000μm
・結果計算モデル:標準分析
・スナップの数
測定持続時間:8秒間
測定1回あたりのスナップの数:8000スナップ
バックグラウンドノイズ時間:8000スナップ
バックグラウンドノイズのスナップ数:8秒
・オブスキュレーション限度
低:5%
高:20%
・バックグラウンドノイズ警報(検出器n゜1のバックグラウンドノイズの値):150ユニット未満
・サンプラーの測定パラメータ
ポンプ:1800rpm
攪拌:700rpm
Ultra-sonics:100%
【0286】
分析を次のようにして行った。
最初に、オブスキュレーション下限を5%に設定し、オブスキュレーション上限を20%に設定したことをチェックした。撹拌機速度を700rpmに設定し、ポンプを1800rpmに設定し、Ultrasonicsを100%に設定した。レーザーの強度をチェックした。レーザーの強度が77.5%未満である場合、以下のこと、すなわち、測定セルがきれいであるかどうか、気泡がないかどうか、測定セルの窓に結露がないかどうかをチェックした。
【0287】
バックグラウンドノイズを測定し、レーザーの強度(赤色及び青色)を測定した。レーザーがいったん位置合わせされると、レーザーの強度及びバックグラウンドノイズの強度(これは、検出器n゜1から検出器n゜51まで連続的に下降状態になければならない)をチェックした。
【0288】
微粉タルク懸濁液の入ったビーカーから使い捨てピペットを用いて2mLサンプルを取り出し、そして1滴ごとに測定セル中に添加し、ついには、所望のオブスキュレーションが得られるようにし、すなわち、10μm以上のd50(セディグラフによる)を有する製品の場合、15%~20%のオブスキュレーションで測定し、10μm未満のd50(セディグラフによる)を有する製品の場合、5%~12%のオブスキュレーションで測定した。懸濁液を約60秒間、セル内で均質化した。
【0289】
ソフトウェアは、微粉の百分率として表されるPSD曲線を直接トレースしている。曲線の有効性は、検出器の関数として秤量残滓、信号対雑音比、及びバックグラウンドノイズの光度の分布状態によって制御される。得られた結果は、秤量残滓が1.5%未満である限り有効であり、曲線には異常がない。データ報告タブを用いて、検出器に対する測定信号及びバックグラウンドノイズの強度を調べるのがよい。バックグラウンドノイズの強度は、検出器n゜1から検出器n゜51まで安定して下降状態になければならない。測定信号の強度は、バックグラウンドノイズの強度よりも著しく高くなければならない。バックグラウンドノイズの強度は、セルがどれほどきれいであるかどうかで決まる。信号の強度は、主として、サンプルの濃度で(すなわち、オブスキュレーションで)決まる。
【0290】
圧力が高すぎる場合、又は水温が低すぎる場合、多くの問題、例えば測定セル内に気泡が入ったり、又は結露したりするなどの問題が生じる場合のあることが判明した。かかる問題を回避するため、濾過システムを設置して水の清浄度を高めるとともにその圧力を減少させ、そしてミキサータップを設置してタンクへの給水が行われる前に水温を20℃~25℃に調節することが推奨される。また、光学ベンチ(レーザー)を決してオフに切り替えないということが推奨される。
【0291】
実施例14‐BET比表面積を求める方法
規格NF X 11-621(題名は、“Determination de l'aire massique (surface specifique) des poudres par adsorption de gaz - Methode B.E.T. - Mesure volumetrique par adsorption d’azote a basse -temperature”(ガス吸収による粉末の質量面積(比表面)の算定-BET方法-低温での窒素吸収量による容積測定))に基づく方法を用いてBET比表面積を求めた。
【0292】
本方法は、真空ポンプ、VacPrep 061ガス抜きセクション、Tristar 3000S測定セクション及びサンプルホルダー、精度が0.1mgのMettler AG204スケール、デュワーフラスコ、窒素吸収ガス及びヘリウムキャリアガスを備えたMicromeritics測定装置(米国のマイクロメトリティックス・インストゥルメント・コーポレーション(Micromeritics Instrument Corp.)から入手できる)を利用した。
【0293】
サンプルを空のサンプルホルダーの近くで秤量し(0.1mg精度まで)、そしてその質量M0をgで記録した。次に、漏斗を用いて先に均質化された粉末サンプルをサンプルホルダー中に入れた。十分な空間(死容積)をサンプルとサンプルホルダーの頂部との間に残し、それによりガスの自由循環を可能にした。サンプルホルダーをガス抜きステーションのうちの1つの中に配置し、そして約20分間、10Paの主要真空下において250℃でガス抜きした。ガス抜き後、十分な量の窒素をサンプルホルダーに添加して、ガス抜きステーションから測定ステーションへのサンプルホルダーの移送中、空気の導入を回避した。
【0294】
次に、サンプルホルダーを測定ステーションに取り付け、そして液体窒素の入ったデュワーフラスコをサンプルホルダーの周囲に配置した。装置制御ソフトウェアを用いてBET測定を開始した。次に、この装置は、以下の動作を自動的に実施した。
・サンプルホルダーの移送のために導入された窒素の真空除去、
・漏れ試験、
・ヘリウムキャリアガスの添加、
・周囲温度での死容積の測定、
・液体窒素を用いた低温死容積の測定、
・ヘリウム真空除去、
・漏れ試験、
・950mmHgの窒素の添加及び飽和圧力の測定、
・分析値の収集。
【0295】
機器のデータ収集及び処理ソフトウェアは、変換されたBET線を5つの測定吸着点からプロットした。デュワーフラスコ、次に、サンプルホルダーを取り外した。本装置は、周囲温度に戻るようにされ、次にサンプルを再びサンプルホルダーの近くで秤量し(0.1mgの精度まで)、次にその重量を単位gでM2として記録した。サンプルの試験部分の質量Mを、次式に従って計算した(単位g)。
【0296】
次に、値Mをソフトウェアの計算プログラムに入力し、このソフトウェア計算プログラムは、サンプルのBET比表面積を単位m2/gで自動的に計算した。
【0297】
実施例15‐吸油量を求める方法
ISO 787-5に従って、サンプル微粒子の一塊り全体を湿潤させるのに必要な油の量(すなわち、水の添加で割れたり流出したりしないペーストを形成するのに必要な油の量)を測定することによって吸油量を求めた。
【0298】
用いられた機器は以下を含んでいた。
・目盛り付きビュレット、
・非切断ガラスプレート、
・2つの軟質ヘラ(長さ155mm×幅25mm)、
・1つの晶析装置、
・石鹸水、
・1mgまで正確なはかり、
・比重0.93g/mLのアマニ油。
【0299】
0.5g~5gの粒子(密度で決まる)を検量して、約10mLの体積を有するサンプルを作った。サンプルの質量をMとして記録した。サンプルをガラスプレート上に載せた。ビュレットにアマニ油を満たし、次にビュレット中の油の初期量をV0として書き留めた。ビュレットを用いて油(代表的には3~4滴)を徐々にサンプルに添加し、次にペーストが形成されるまでヘラを用いて混合した。次に、ペーストに1滴ずつ油を添加し、ペーストを各1滴添加するごとに練り、ついには、スムーズで固いかつ垂れないペーストを形成した。スムーズで固い垂れないペーストが水の添加によりひび割れせず又は滴下しないでボールの状態に付形できたときに形成されているとみなされた。図5(a)は、ペーストがスムーズであるときに付形できるボールの一例を示している。図5(b)は、亀裂が入ったペーストのボールを示している。図5(c)は、水を添加したときに滴下するペーストのボールを示している。十分な量の油がスムーズで固いかつ垂れないペーストを形成するよう添加された場合、ビュレット内に残っている油の最終量をV1として記録した。
【0300】
吸油量をmL/100gの単位で次式として測定した。
又は、重量%の単位では次式として測定した。
【0301】
実施例16‐接触角を求める方法
空調室内で23℃及び50%相対湿度の状態に保たれたFIBRO DAT 1100 Dynamic Absorption and Contact Angle Tester(オランダ国のフィブロ・システム(FIBRO System)社から入手できる)を用いて水接触角を測定した。手持型プレス機を用いて、タルクサンプルを加圧して密度約1.5g/cm3及び厚さ約2mmの圧縮ディスク又はタブレットの状態にした。これらの薄いディスク/タブレットのうちの6枚を機器内の関連のバーの中に嵌めこみ、そして脱イオン水をストロークパルス6(これは、水滴がFIBRO DAT 1100の注射器先端部から押し出す力の尺度である)で10のマイクロリットル液滴として各ディスクの表面に添加した。鉱物の表面上の水滴の接触角の変化を時間とともにモニタリングし、0.3秒後(液滴が最初に加圧ディスク表面上で安定したとき)に測定した結果を記録した。より疎水性の高い表面が、より高い水接触角を与える。
【0302】
上記内容は、本発明のある特定の実施形態を限定することなく広義に説明している。当業者に容易に明らかである変形例及び改造例は、特許請求の範囲の記載により定められた本発明の範囲内に含まれるものである。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
【国際調査報告】