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特表2023-525117電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム
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  • 特表-電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム 図1
  • 特表-電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム 図2a
  • 特表-電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム 図2b
  • 特表-電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム 図3
  • 特表-電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20230607BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230607BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230607BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20230607BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20230607BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/65
H02M3/155 H
H02J15/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568751
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021062341
(87)【国際公開番号】W WO2021228770
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102020112880.0
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ユケム,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】アンル,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ガース,アルノ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H730
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA05
4K021CA06
5H730AS05
5H730BB13
5H730CC02
5H730DD02
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
(57)【要約】
本願は、電解反応によって水から水素を生成するように設計および構成され、アクティブに制御される整流器(30)を介してAC電圧グリッド(ACグリッド)(20)から電力が供給される電解槽(40)を動作させる方法について記載しており、この方法は、
-無負荷電圧ULLより高い入力電圧UElにより、主にオーミック挙動で、電解槽(40)を通常動作モードで動作させるステップと、
-無負荷電圧ULLより低い入力電圧UElにより、主に容量性挙動で、電解槽(40)を待機動作モードで動作させるステップと、
-第1の遷移期間Δtの間に待機動作モードから通常動作モードに遷移するステップであって、待機動作モード中の電解槽(40)の入力部(41)における入力電圧UElを0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1より高く保つことによって、第1の遷移期間Δtを短縮する、ステップとを備える。本願はさらに、この方法を実行するための接続回路(1)、アクティブ制御整流器(30)および電解システム(60)について記載している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解反応によって水から水素を生成するように設計および構成され、かつアクティブに制御される整流器(30)を介してAC電圧(AC)グリッド(20)から電力が供給される電解槽(40)を動作させる方法であって、
-無負荷電圧ULLより高い入力電圧UElにより、主にオーミック挙動で、電解槽(40)を通常動作モードで動作させるステップと、
-無負荷電圧ULLより低い入力電圧UElにより、主に容量性挙動で、電解槽(40)を待機動作モードで動作させるステップと、
-第1の遷移期間Δtの間に待機動作モードから通常動作モードに遷移するステップであって、待機動作モード中の電解槽(40)の入力部(41)における入力電圧UElを0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1より高く保つことによって、第1の遷移期間Δtを短縮する、ステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
第1の電圧閾値UTH,1が、無負荷電圧ULLの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の値に対応することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
待機動作モードにおける電解槽(40)の入力部(41)の入力電圧UElが、電解槽(40)の無負荷電圧ULLよりも少なくとも5%低く保たれることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法において、
-第2の遷移期間Δtの間に通常動作モードから待機動作モードへ遷移するステップをさらに含み、待機動作モード中の電解槽(40)の入力部(41)における入力電圧UElを0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1より高く保つことによって第2の遷移期間Δtを短縮することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の方法において、
待機動作モードにおける電解槽の入力電圧UElが、電解槽の入力部(41)を、プリチャージ抵抗器(2)および/またはインダクタ(11)を介して、整流器(30)に割り当てられたAC/DCコンバータ(37)のDCコンバータ出力部(37.2)にクロック式に接続することによって第1の電圧閾値UTH,1より高く維持されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
電解槽(40)の入力部(41)とDCコンバータ出力部(37.2)のクロック式の接続が、2点制御によって実施されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の方法において、
AC/DCコンバータ(37)のDCコンバータ出力部(37.2)における最小DC電圧UW,minが、電解槽(40)の無負荷電圧ULLより高いことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の方法において、
電解槽(40)が、指定された境界条件下において保守動作モードでさらに動作され、この保守動作モードでは、電解槽(40)の入力電圧UElが危険電圧値未満、特に0Vの値であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の方法において、
電解槽(40)が、例えば産業プラントなどの消費設備に割り当てられ、電解槽(40)の動作および/または電解槽(40)に電力を供給するコンポーネントの動作が、エネルギー管理を実行する消費設備の制御ユニットを介して制御されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
計算期間において消費設備とエネルギー供給業者との間で合意された最大エネルギーΔEを超えないようにする目的で、計算期間中に、電解槽(40)の通常動作モードと待機動作モードとの間の少なくとも1回の変更が行われることを特徴とする方法。
【請求項11】
DC源(10)、特にACグリッド(20)にACコンバータ入力部(37.1)が接続されるAC/DCコンバータ(37)のDCコンバータ出力部(37.2)と、電解槽(40)との間の接続回路(1)であって、
-接続回路(1)をDC源(10)に接続するための2つの入力接続部(5.1、5.2)を有する入力部(5)、および接続回路(1)を電解槽(40)の入力部(41)に接続するための2つの出力接続部(6.1、6.2)を有する出力部(6)と、
-プリチャージ抵抗器(2)と回路遮断器(3)の直列接続、またはインダクタ(11)と回路遮断器(3)の直列接続であって、入力接続部(5.1、5.2)のうちの1つを出力接続部(6.1、6.2)のうちの対応する1つに接続する直列接続と、
-プリチャージ抵抗器(2)、インダクタ(11)と並列に、または直列接続と並列に配置される更なる回路遮断器(4)と、
-出力部(6)に存在するDC電圧UElと入力部(5)に存在するDC電圧Uとの間の電圧差を特定するための測定ユニット(8)と、
-接続回路(1)、特に回路遮断器(3)および更なる回路遮断器(4)を制御するための制御ユニット(7)とを備え、
接続回路(1)が、DC源と、任意選択的に、エネルギー管理を実行する消費設備の制御ユニットと協働して、請求項1~10の何れか一項に記載の方法に従って電解槽(40)を動作させるように設計および構成されていることを特徴とする接続回路。
【請求項12】
請求項11に記載の接続回路(1)において、
回路遮断器(3)が、半導体スイッチおよび/または電磁スイッチを含むことを特徴とする接続回路。
【請求項13】
請求項11または12に記載の接続回路(1)において、
更なる回路遮断器(4)が、電気機械スイッチにより形成され、この電気機械スイッチが、任意選択的に、半導体スイッチと並列接続されていることを特徴とする接続回路。
【請求項14】
請求項11~13の何れか一項に記載の接続回路(1)において、
直列接続が、回路遮断器(3)およびインダクタ(11)により形成され、接続回路(1)が、DC/DCコンバータ、特に降圧コンバータ(14)として設計および構成されることを特徴とする接続回路。
【請求項15】
AC電圧を有するACグリッド(20)から電解槽(40)に電力を供給するためのアクティブ制御整流器(30)であって、
-ACグリッド(20)に接続するための複数の入力接続部を有するAC入力部(33)、および電解槽(40)に接続するための2つの出力接続部を有するDC出力部(34)と、
-還流ダイオード(53)が逆並列に接続された半導体スイッチ(52)を含むコンバータ回路を有するAC/DCコンバータ(37)と、
-整流器(30)の半導体スイッチ(52)を駆動するための整流器制御ユニット(39)とを備え、整流器(30)がさらに、請求項11~14の何れか一項に記載の接続回路(1)を備えることを特徴とするアクティブ制御整流器。
【請求項16】
請求項15に記載のアクティブ制御整流器(30)において、
接続回路(1)の直列接続が、回路遮断器(3)およびプリチャージ抵抗器(2)によって形成され、整流器(30)が一段整流器(30)として設計されていることを特徴とするアクティブ制御整流器。
【請求項17】
請求項13に記載の接続回路(1)を有する、請求項15に記載のアクティブ制御整流器(30)において、
整流器(30)が、AC/DCコンバータ(37)と整流器(30)のDC出力部(6)との間に配置されたDC/DCコンバータを含む二段整流器(30)として設計されていることを特徴とするアクティブ制御整流器。
【請求項18】
電解システム(60)であって、請求項15~17の何れか一項に記載のアクティブ制御整流器(30)と、アクティブ制御整流器(30)の出力側に接続された電解槽(40)とを備えることを特徴とする電解システム。
【請求項19】
請求項18に記載の電解システム(60)において、
電解槽(40)の現在の動作モードを知らせるように構成された通知装置(42)を備え、任意選択的には、電解システム(60)が、待機動作モードにおいて、任意選択的には通常動作モードにおいても、電解システム(60)の通電状態のコンポーネントに触れるのを防止するように構成された遮断装置をさらに備えることを特徴とする電解システム。
【請求項20】
請求項18または19に記載の電解システム(60)において、
電解システム(60)が、エネルギー管理を実行する消費設備の制御ユニットを介して制御される消費設備の一部として設計されていることを特徴とする電解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解反応によって水から水素を生成するように設計および構成された電解槽を動作させる方法、この方法を実行するための接続回路、整流器および電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、水を電解反応によってその元素である水素と酸素に変換する電解槽を使用して生成されることが多い。この場合、電解槽には、アクティブに制御される整流器によってAC電圧グリッド(ACグリッド)から電力が供給される。電解槽は通常、無負荷電圧ULLとして知られる電圧で2つの領域に分けられる電流-電圧特性を有する。無負荷電圧ULL未満では、電解槽の電極上に二重層が形成されることにより、電解槽は主に容量性挙動を示すようになる。無負荷電圧より低い電圧では、電解反応はまだ起こっていないか、または少なくともそれほど大きくは起こっていない。無負荷電圧ULLを上回る入力電圧では、その電圧で電解反応が生じることにより、電解槽は主にオーミック挙動を示すようになる。電解反応の速度、よって水素の生成速度は、例えば、電解槽の入力電圧によって制御され、通常は、入力電圧が高くなるに連れて速くなる。
【0003】
アクティブ制御可能な半導体スイッチとして、トランジスタ、特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)または金属酸化膜電界効果トランジスタ(MOSFET)を有する整流器が、アクティブに制御される整流器としてますます使用されるようになってきている。この場合、それぞれの還流ダイオードが、トランジスタと逆並列に接続される。整流器の還流ダイオードは、本来ならばトランジスタを介して設定できるはずのAC/DCコンバータのDCコンバータ出力部における電圧範囲が、最小DC電圧UW,minという下限を有することを意味する。この制限は、基本的に、AC/DCコンバータの出力部における最小DC電圧UW,min未満では、還流ダイオードの少なくとも1つが導通状態にあり、その結果、アノード側に存在する電圧が、還流ダイオードのカソード側に存在する電圧に対応し、還流ダイオードの順方向電圧内にあることに起因するものである。さらに、電力消費が公称電力に近い場合、整流器側の変換損失を可能な限り低くして、電力を電解槽に供給することが通常望ましい。ここで、公称電力とは、電解槽が損傷することなく安全に連続運転できる最大電力を意味するものと理解されたい。公称電力は、電解槽の様々なコンポーネントとそれらの相互作用に依存し得るものであり、通常は製造業者によって指定される。
【0004】
当該電解槽は、通常、その無負荷電圧ULLと公称電圧との間に大きな入力電圧範囲を有する。この場合、公称電圧は、電解槽の入力部に存在する電圧であり、その公称電力で電解槽が動作する。AC/DCコンバータの出力部における最小DC電圧UW,minが電解槽の無負荷電圧ULLを下回るように、例えば整流器のAC入力部に接続される変圧器の適切な設計などにより適切な措置がとられる場合、これは通常、電解槽の高入力電圧におけるアクティブ制御整流器の高い変換損失と関連する。そのため、最小DC電圧UW,minは、電解槽の無負荷電圧ULLよりも高いことが多いが、これは電解槽の円滑な始動と円滑なシャットダウンを複雑にする。
【0005】
電解槽の始動時には、電解槽のかなりの静電容量を充電する必要がある。この場合、還流ダイオードの損傷を防ぐために、プリチャージ中の電流をある値に制限する必要がある。具体的には、電流制限用のプリチャージ抵抗器を用いてプリチャージが行われる。一方、静電容量はできるだけ早くプリチャージすることが望ましく、そのためには抵抗値をできるだけ小さくする必要がある。しかしながら、オーム抵抗値が低いほど、その電力損失は大きくなり、またコンポーネントのコストも高くなる。例えば電解槽を整流器から切り離すだけで、水素製造を一時停止することは可能である。しかしながら、完全に抑制できない漏れ電流のために、電解槽は放電を続け、一時停止の時間によってはかなりの放電量になるため、再起動する必要がある。電解槽が消費設備、例えば産業プラント内で運転される場合、そのような長い電解槽の充電および放電の持続時間は、消費設備の効率的なエネルギー管理を妨げ、複雑なものにする。具体的には、所与の条件下では、電解槽を消費設備のエネルギー管理に組み込むことは不可能であるか、少なくとも困難を伴う。例えば、ある計算期間において、消費設備のピーク負荷削減の一環として、水素製造を短縮し、代わりに次の計算期間においてそれを継続することが望ましい。それには、数秒の範囲、有利には最大でも2秒のプリチャージ期間が必要である。
【0006】
NaCl水溶液の電解に使用される電解槽のためのバックアップ電源は、文献FR2972200A1から知られている。そのような電解槽の場合、ACグリッドに障害が発生して、整流器に接続されたACグリッドから来るその通常の電源が故障した場合でも、電解槽の入力部を分極することが必要である。この目的のために、電解槽の入力部は、整流器、バッテリ、DC/DCコンバータおよびダイオードを介してACグリッドに接続される。通常の電源としてのACグリッドが故障した場合、電解槽の入力部は、バッテリ、DC/DCコンバータおよびダイオードを介して分極されたままになる。
【0007】
文献DE102019200238A1は、電解槽による二酸化炭素の還元方法を開示しており、この方法では、印加される保護電位と電解質フラッシングによる再生段階を繰り返すことによって塩類化が抑制される。
【0008】
文献WO2020132064A1は、二酸化炭素(COx)還元反応器を運転するための方法を開示している。この方法は、運転の様々な段階において、電力をオフにするか、低減するか、または何らかの他の方法で制御することを含む。
【0009】
文献DE102014224013A1は、電解セルによる二酸化炭素利用方法を開示しており、この方法では、保護電圧が休止モードでカソードに印加され、保護電圧の印加がなければ電極が電解質溶液に侵されることになる。
【0010】
文献WP2019/246433A1は、DC配電システムの操作方法を開示している。この方法は、アクティブ整流器を用いた第1の電圧変換を含み、それにより、第1の入力AC電圧を第1の出力DC電圧に変換して、それをDCバスに供給する。DCバスの第1の出力DC電圧は、第2の入力DC電圧として降圧コンバータの第2の入力部に供給され、降圧コンバータは、第2の電圧変換を介して第2の出力DC電圧に変換し、それをDC負荷、例えば電解セルスタックに供給する。
【0011】
文献DE102018133641A1には、コンバータおよび電解槽を有する電解デバイスを動作させる方法が記載されている。AC電圧側では、コンバータが、デカップリングインピーダンスを介してAC電圧グリッドに接続され、電圧注入で動作する。DC電圧側では、電解槽がコンバータに接続されている。電解デバイスは、AC電圧グリッドの公称周波数に対応しかつ時間的に一定であるグリッド周波数で、電解槽の定格電力の50%~100%の電力で動作する。この方法によれば、AC電圧グリッドに予備電力を瞬時に供給することができる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的
本発明は、水に対して行われる電解反応による電解槽の水素生成を高度に動的な方法で調節することができる電解槽の動作方法を規定することを目的とする。冒頭に述べたタイプのアクティブ制御整流器を使用する場合、先ず、特に水素の生成を一時的に停止できる必要がある。この場合、一時停止は、可能な限り、数分から数時間まで延長できる必要がある。さらに、この場合、電解反応すなわち水素生成を伴う通常動作モードから、電解反応すなわち水素生成が少なくとも大きく抑制される待機動作モードへの遷移、およびその逆の遷移をできるだけ迅速に行う必要がある。本発明の別の目的は、この方法を実行するのに適した接続回路と、そのような接続回路を有する整流器を開示することである。本発明の別の目的は、この方法を実行するのに適した電解システムを開示することである。
【0013】
解決手段
この目的は、冒頭に述べたタイプの方法の場合、本発明では、独立請求項1の特徴によって達成される。本発明に係る接続回路を開示する目的は、独立請求項11の特徴により達成され、本発明に係るアクティブ制御整流器を開示する目的は、独立請求項15の特徴により達成される。本発明に係る電解システムを特定する目的は、独立請求項18の特徴によって達成される。本方法の有利な実施形態は請求項2~10に与えられ、接続回路の有利な実施形態は従属請求項12~14に与えられている。従属請求項16および17は、アクティブ制御整流器の有利な実施態様を対象としている。従属請求項19および20は、電解システムの有利な実施形態を対象としている。
【0014】
本発明の説明
本発明に係る方法は、電解反応によって水から水素を生成するように設計および構成された電解槽の動作に関する。電解槽は、アクティブ制御整流器を介してAC電圧グリッド(ACグリッド)から電力の供給を受ける。本方法は、
-電解槽の無負荷電圧ULLより高い入力電圧UElにより、主にオーミック挙動で、電解槽を通常動作モードで動作させるステップと、
-電解槽の無負荷電圧ULLより低い入力電圧UElにより、主に容量性挙動で、電解槽を待機動作モードで動作させるステップと、
-第1の遷移期間Δtの間に待機動作モードから通常動作モードに遷移するステップであって、待機動作モード中の電解槽の入力部における入力電圧UElを0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1より高く保つことによって、第1の遷移期間Δtを短縮する、ステップとを備える。
【0015】
電解槽は、電解反応によって水から水素を生成するように構成された電解槽である。そのような電解槽は、より大規模な消費設備、例えば産業プラントで運転されることが多くなっている。一方で、それらは、局所的な水素生成によって工業プラントの水素需要を賄うために使用されることもある。また、電解槽が消費設備の局所的なエネルギー管理に参加できるように、電解槽の電力消費を動的に調節することが望ましい。この目的のために、電解槽は、電解反応、例えば水素を生成する水の分解が起こる通常動作モードを有する。電解反応は、無負荷電圧ULLよりも高い電圧により、電解槽の少なくとも主にオーミック挙動で、場合によっては電解槽の完全なオーミック挙動で起こる。電解反応の速度は、電解槽の電力消費に影響を与え、電解槽の入力電圧UElを介してアクティブ制御整流器によって制御される。入力電圧UElが無負荷電圧ULLを下回る待機動作モードでは、電解槽が少なくとも主に容量性挙動を示し、場合によっては完全に容量性挙動を示すこともある。ここでは電解反応は起こらず、少なくともそれほど大きな程度とはならない。待機動作モードでは、電解槽の入力電圧UElが0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1よりも高く維持されるため、待機動作モードにおいても、電解槽に関連するまたは固有の静電容量はある程度までプリチャージされたままである。したがって、電解槽の入力電圧UElを無負荷電圧より高い値まで上昇させるために必要な電荷輸送量は、例えば、電解槽に付随する静電容量が完全に放電された状態で電解槽を再始動する場合よりも少なくて済む。輸送する必要のある電荷が少ないため、アクティブ制御整流器と電解槽との間の電流が同じでも、待機動作モードと通常動作モードの間の遷移期間Δtを非常に小さく保つことが可能である。遷移期間Δtが短いため、待機動作モードで電解反応を一時停止し、通常動作モードで電力を消費する電解反応を高度に動的な方法で、かつ大きなデッドタイムなしに実行することが可能である。遷移期間Δtが短いため、遷移期間が長い場合に比べて、電解槽の動作挙動を消費設備のエネルギー管理に非常に良好に組み込むことが可能である。この場合、ハードウェアの費用無しで、あるいは少なくともハードウェア費用を低減して、電解槽の入力電圧UElを第1の電圧閾値UTH,1より高く維持することができる。例えば、多くの場合、既に存在する接続回路を使用することができ、この場合、追加のハードウェア費用が必要ないことを意味する。したがって、関連する追加の費用を殆ど伴わずに、よって極めて安価に本方法を実施することが可能である。
【0016】
待機動作モードにおける電解槽の入力電圧UElは、0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1より高く維持されるため、付随する電荷輸送が少ないことにより、待機動作モードから通常動作モードへの第1の遷移期間Δtを最小にすることが可能である。しかしながら、動作モードの変更に必要な電荷輸送の程度が少ないことは、待機動作モードから通常動作モードへの遷移時のみに効果があるわけではない。それはさらに、通常動作モードから待機動作モードへの第2の遷移期間Δtを最小にすることを可能にする。このため、本方法の有利な一態様は、
-第2の遷移期間Δtの間に通常動作モードから待機動作モードに遷移するステップであって、待機動作モードの間に電解槽の入力部における入力電圧UElを0Vとは異なる第1の電圧閾値UTH,1より高く保つことによって、第2の遷移期間Δtを短縮する、ステップを含むことができる。
【0017】
第1電圧閾値UTH,1が無負荷電圧に近いほど、第1の遷移期間Δtを短く保つことができる。しかしながら、一方で、無負荷電圧を超えたときに、電解反応が突然始まるわけではないことを考慮する必要がある。むしろ、電解反応は、無負荷電圧ULL付近の狭く規定された領域で始まり、入力電圧UElが増加するに連れて、強く連続的に増大することになる。したがって、待機動作モードにおいて電解反応を安全に休止させるためには、無負荷電圧からの安全距離を遵守することが必要である。本方法の有利な一態様によれば、第1の電圧閾値UTH,1が、電解槽の無負荷電圧ULLの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の値に対応し得る。代替的または追加的には、待機動作モードにおける電解槽の入力部の入力電圧UElを、電解槽の無負荷電圧ULLよりも少なくとも5%低く保つことができる。これらの値は、電解槽の無負荷電圧ULLの少なくとも80%以上最大95%以下、特に好ましくは少なくとも90%以上最大95%以下の、電解槽の入力電圧UElの対応する許容範囲を有する。これらの許容範囲内で、待機動作モードから通常動作モードへの第1の遷移期間Δtは、最大10秒の値、好ましくは最大5秒の値に制限され得る。
【0018】
この方法の有利な一実施形態によれば、待機動作モードにおける電解槽の入力電圧UElは、電解槽の入力部を、プリチャージ抵抗器および/またはインダクタを介してクロック式にアクティブ制御整流器に割り当てられたAC/DCコンバータのDCコンバータ出力部に接続することによって、第1の電圧閾値UTH,1より高く維持することができる。この場合、アクティブ制御整流器は、入力側がACグリッドに接続されたままであってもよい。AC/DCコンバータ内に存在する還流ダイオードと組み合わせて、DCコンバータ出力部でDC電圧が維持され、このDC電圧は電解槽の無負荷電圧ULLよりも必ず高くされる。クロック式の接続は、プリチャージ抵抗器と直列に、またはインダクタと直列に配置された回路遮断器によって実施することができる。電解槽の入力部がプリチャージ抵抗器を介してAC/DCコンバータのDCコンバータ出力部にクロック式で接続される場合、電解槽の入力部に電流が流れるアクティブ時間帯(回路遮断器が閉じているとき)と、電解槽の入力部に電流が流れない非アクティブ時間帯(回路遮断器が開いているとき)が発生することになる。電解槽の入力電圧UElは、アクティブ時間帯に上昇し、一方、非アクティブ時間帯に、例えば、完全に防止することができない漏れ電流によって、再び低下する。本方法の好ましい一態様によれば、電解槽の入力部とDCコンバータ出力部とのクロック式の接続を、電圧制御方式で、特に2点制御で実施することができる。この場合、電解槽の入力電圧UElは、制御のためのフィードバック信号として使用することができる。直列に配置された回路遮断器を有するプリチャージ抵抗器は、多くの場合、アクティブ制御整流器および電解槽の組合せに既に存在しており、よって追加のコストは生じない。電解槽の入力部がインダクタを介してAC/DCコンバータのDCコンバータ出力部にクロック式で接続される場合、インダクタはAC/DCコンバータと整流器のDC出力部との間に配置されるDC/DCコンバータ、特に降圧コンバータの一部であってよい。回路遮断器が閉じているときは、インダクタによって電流の増加が抑制され、回路遮断器が開いているときは、インダクタによって電流の減少が引き起こされる。この場合、降圧コンバータは、遮断を伴うモードでも、遮断を伴わないモードでも動作することができる。
【0019】
本方法の好ましい一実施形態では、AC/DCコンバータのDCコンバータ出力部における最小DC電圧UW,minを電解槽の無負荷電圧ULLより高くすることができる。これは、例えば、変圧器がアクティブ制御整流器の上流に入力側で接続され、それにより整流器がACグリッドに接続される適切な設計によって達成され得る。具体的には、変圧器は、振幅UACを有するACグリッドのAC電圧が振幅Uを有する整流器のAC入力部に存在するAC電圧に変換されるように設計することができ、振幅Uは、AC/DCコンバータ内部に存在する還流ダイオードと関連して、電解槽の無負荷電圧ULLより高い最小DC電圧UW,minをDCコンバータ出力部で生成する。反対に、DCコンバータ出力部に存在する最小DC電圧UW,minに関するそのような設計は、電解槽が高い入力電圧UElで動作することが意図されている場合に、変換損失を最小にすることを意味している。
【0020】
本方法の有利な一実施形態によれば、電解槽をさらに、指定された境界条件下において保守動作モードで運転することができ、この保守動作モードでは電解槽の入力電圧UElは危険電圧値未満である。これは、例えば、電解槽および/またはアクティブ整流器の修理および/または保守作業を行う必要があり、感電による人身事故を確実に排除しなければならないような場合である。これらの危険電圧値は、国独自の方法で指定される場合がある。特に、この場合、電解槽の入力電圧が0Vとされることがある。しかしながら、そのような保守動作モードは、その後、電解槽のプリチャージ期間の延長に関連付けられる。しかしながら、保守動作モードが使用される場合は少ないため、関連する充電期間の延長、場合によっては電解槽の放電期間の延長も許容される。
【0021】
本方法の更なる実施形態では、電解槽が、例えば産業プラントなどの消費設備に割り当てられ、消費設備の他の電気消費装置および/または発電機とともに、共通のグリッド接続点を介して消費設備に電力を供給するACグリッドに接続され得る。特に大規模な消費設備の場合、計算期間内にACグリッドから許容される最大エネルギー引き込みを指定するのが通例である。これにより、消費設備のエネルギー供給業者は、計算期間中に平均的に発電すべき電力に関して、計画基準を得ることができる。計算期間中に合意された最大エネルギーの遵守は、通常、消費設備のエネルギー管理システムEMSを介して監視および制御される。電解槽は、消費設備の必須消費装置を構成する。このため、本方法の一実施形態では、電解槽の動作および/または電解槽に電力を供給する少なくとも1のコンポーネントの動作を、エネルギー管理を実行する消費設備の制御ユニットを介して制御することができる。電解槽に電力を供給する少なくとも1のコンポーネントは、特に、後述する接続回路および/または後述するアクティブ整流器を含むことができる。この場合、計算期間において消費設備とエネルギー供給業者との間で合意された最大エネルギーΔEを超えないようにする目的で、計算期間中に、電解槽の通常動作モードと待機動作モードとの間の少なくとも1回の変更を行うことができる。この場合、第1の遷移期間Δt、場合によっては第2の遷移期間Δtも、計算期間の最大5%の値、特に最大2%の値を下回ると特に有利である。これにより、電解槽を、消費設備のEMSに特に効率的に組み込むことができる。消費設備の制御ユニットは、独立した制御ユニットとして設計することができる。しかしながら、その代替例として、消費設備のコンポーネントの既存の制御ユニットに部分的または完全に実装することも可能である。
【0022】
本発明に係る接続回路は、DC源と電解槽との間に配置される。それは、
-接続回路をDC源に接続するための2つの入力接続部を有する入力部、および接続回路を電解槽の入力部に接続するための2つの出力接続部を有する出力部と、
-プリチャージ抵抗器と回路遮断器の直列接続、またはインダクタと回路遮断器の直列接続であって、入力接続部のうちの1つを出力接続部のうちの対応する1つに接続する直列接続と、
-プリチャージ抵抗器と並列に、またはプリチャージ抵抗器と回路遮断器の直列接続と並列に、またはインダクタと回路遮断器の直列接続と並列に配置される更なる回路遮断器と、
-出力部に存在するDC電圧UElと入力部に存在するDC電圧Uとの間の電圧差を特定するための測定ユニットと、
-接続回路、特に回路遮断器および更なる回路遮断器を制御するための制御ユニットとを備える。特徴的には、接続回路は、DC源と、任意選択的に、エネルギー管理を実行する消費設備の制御ユニットと協働して、本発明に係る方法に従って電解槽を動作させるように設計および構成されている。
【0023】
DC源は、特に、AC/DCコンバータのDCコンバータ出力部であってよく、そのACコンバータ入力部がACグリッドに接続される。AC/DCコンバータは、アクティブ制御整流器に割り当てられるものであってもよい。接続回路の制御ユニットは、通信および/または制御に関して、消費設備の制御ユニットに接続することができる。それにより、本方法に関連して既に述べた利点が得られる。
【0024】
接続回路の有利な一実施形態によれば、回路遮断器が、半導体スイッチおよび/または電磁スイッチを含むことができる。この場合、「および」は、特に、ハイブリッドスイッチとして知られているものを意味し、これは、半導体スイッチと並列に配置された電気機械スイッチを含む。ハイブリッドスイッチを使用すると、電気機械スイッチを単独で使用した場合に発生するスイッチングアークを抑制することが可能になる。同様のことが、接続回路の更なる回路遮断器にも当てはまる。接続回路の直列接続が回路遮断器およびインダクタを介して形成される、接続回路の一実施形態では、接続回路を、DC/DCコンバータ、特に降圧コンバータとして設計および構成することができる。この目的のために、接続回路は、2つの入力接続部のうちの他方の入力接続部を、回路遮断器とインダクタとの接続点に接続する更なる半導体スイッチを備えることができる。更なる半導体スイッチは、ダイオードまたはアクティブに制御される半導体スイッチであってもよい。
【0025】
本発明に係る整流器は、アクティブに制御される整流器として具現化される。それは、AC電圧を有するACグリッドから電解槽に電力を供給するために使用され、
-ACグリッドに接続するための複数の入力接続部を有するAC入力部、および電解槽に接続するための2つの出力接続部を有するDC出力部と、
-還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチを含むコンバータ回路を有するAC/DCコンバータと、
-整流器の半導体スイッチを駆動するための整流器制御ユニットとを備える。特徴的には、本発明に係る整流器は、本発明に係る接続回路をさらに備える。
【0026】
アクティブ制御整流器は、AC/DCコンバータと整流器のDC出力部との間に配置されるDC/DCコンバータを含まない一段整流器であってよい。これは、例えば、接続回路の直列接続が、回路遮断器とプリチャージ抵抗器によって形成される場合である。その代替例として、整流器を、AC/DCコンバータと整流器のDC出力部との間に配置されたDC/DCコンバータを有する二段整流器として設計することも可能である。DC/DCコンバータは、特に降圧コンバータであってもよい。これは、例えば、接続回路の直列接続が、回路遮断器と、回路遮断器と直列に配置されたインダクタとによって形成される場合である。整流器の複数の入力接続部は、相接続と中性接続とを含むことができる。代替例として、複数の入力接続部が、複数の相接続、特に三相接続を含むことも可能である。複数の相接続の場合、入力接続部がさらに中性接続を含むことができるが、これは必須ではない。整流器のAC/DCコンバータは(よって整流器自体も)、変換する電力の流れに関して双方向に動作させることができる。この場合、AC/DCコンバータを電圧調整方式で動作させることが可能である。電圧調整動作では、AC/DCコンバータとそれに接続されたACグリッドとの間の電力交換を、例えば有効電力/周波数特性および/または無効電力/電圧特性などの1または複数の特性を介して制御することができる。これにより、アクティブ整流器は、グリッド誘導またはグリッド支持方式で、できるだけ瞬時に反応するように動作することができる。整流器制御ユニットは、整流器の半導体スイッチだけでなく、整流器の他のコンポーネント、例えばAC/DCコンバータのACコンバータ入力部と整流器のAC入力部との間に配置されるAC切断ユニットも制御することができる。接続回路の制御ユニットは、別個の制御ユニットとして具現化されるようにしてもよい。その代替例として、接続回路の制御ユニットを整流器制御ユニットの一部とすることも可能であるが、整流器制御ユニットの寸法が適切であることが条件となる。この場合にも、本方法に関連して既に説明した利点がもたらされる。
【0027】
本発明に係る電解システムは、アクティブ制御整流器と、アクティブ制御整流器の出力側に接続された電解槽とを備える。電解システムは、電解槽に電力を供給するACグリッドに直接接続されるか、または電解システムに割り当てられた変圧器を介して接続され得る。有利な一実施形態では、電解システムが、電解槽の現在の動作モードを知らせるように構成された通知装置を含むことができる。これにより、特に電解槽の待機動作モードを示すことが可能になる。何故なら、この場合、電解反応は起こらず、(電解槽の通電状態の入力と、場合によっては電解システムの他の通電状態のコンポーネントを除けば)外観は保守動作モードと殆ど変わらないためである。代替的または追加的には、電解システムは、同様に、待機動作モードにおいて、任意選択的には通常動作モードにおいても、電解システムの通電状態のコンポーネントに触れるのを防ぐように構成された遮断装置を含むことができる。電解槽または電解システムの他の通電状態のコンポーネントが危険電圧値未満の値まで放電されたときにのみ、遮断装置がその遮断効果を解除することが可能である。これにより、通電状態のコンポーネントに触れることによって生じる可能性のある人身事故を、安全に除外することができる。
【0028】
電解システムの有利な一実施形態によれば、電解システムを、消費設備の一部として設計することができ、エネルギー管理を実行する消費設備の制御ユニットを介して制御することができる。電解システムの電解槽、接続回路および/または整流器は、この場合、特に、消費設備に割り当てられた制御ユニットによって制御され得る。
【0029】
本発明の有利な実施形態は、以下の説明および従属請求項に規定されており、その特徴は、個別に、あるいは互いに任意の組合せで適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1図1は、本発明に係る電解システムの一実施形態を示している。
図2図2aは、本発明に係る接続回路の第1の実施形態を示している。図2bは、本発明に係る接続回路の第2の実施形態を示している。
図3図3は、本発明の一実施形態におけるアクティブ制御整流器のAC/DCコンバータの回路トポロジーを示している。
図4図4は、本発明に係る方法の一実施形態における電解槽の入力部における入力電圧UElの時間プロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る電解システム60の一実施形態を示している。電解システム60は、変圧器31を介してAC入力部33がAC電圧グリッド(ACグリッド)20に接続されたアクティブ制御整流器30を含む。整流器30のDC出力部34は、電解槽40の入力部41に接続されている。アクティブ制御整流器30は、AC切断ユニット35と、ACグリッド20における高周波干渉信号の伝播を低減/減衰させるためのフィルタユニット36と、AC/DCコンバータ37とを備える。AC/DCコンバータ37は、ACコンバータ入力部37.1に存在する振幅U37のAC電圧を、DCコンバータ出力部37.2に存在するDC電圧Uに変換するように構成されている。この目的のために、AC/DCコンバータ37の半導体スイッチは、整流器制御ユニット39によって適切に駆動される。また、整流器制御ユニット39は、AC切断ユニット35と、場合によっては整流器または電解システムの他のコンポーネントも駆動することができる。本発明に係る接続回路1は、DCコンバータ出力部37.2と整流器のDC出力部34との間に配置され、その入力部5がDCコンバータ出力部37.2に、その出力部6が整流器30のDC出力部34にそれぞれ接続されている。接続回路1は、そのコンポーネントを駆動するための制御ユニット7をさらに備え、その制御ユニットが、例えば図1において整流器制御ユニット39の一部として具現化されている。しかしながら、代替例として、接続回路1の整流器制御ユニット39および制御ユニット7をそれぞれ別個の制御ユニットとして具現化することも可能である。電解システム60は、さらに、電解槽40の現在の動作モードを知らせるための通知装置42を含む。さらに任意選択的に、電解槽40の待機動作モードおよび/または通常動作モードにおいて、人が電解システム60の通電状態のコンポーネントに接触するのを防止する遮断装置(図1には図示せず)を含むことができる。
【0032】
図2でより詳細に説明される本発明に係る接続回路1では、整流器30が、本発明に係る整流器として設計され、本発明に係る方法に従って電解槽40の動作を制御するよう構成されている。電解槽40は、通常動作モードにおいて、その無負荷電圧ULLより高い入力電圧UElで動作することができる。通常動作モードでは、電解槽40で電解反応、例えば水をその成分である水素と酸素に分解する反応が起こり、電解槽40は本質的にオーミックコンシューマのように動作する。この場合、電解反応の速度は、電解槽40の入力電圧UElを変化させることにより、整流器30によって制御される。電解槽40はさらに、待機動作モードでは、無負荷電圧ULL未満で動作することができ、その場合、(少なくとも有意な)電解反応はなく、よって電解槽40の(少なくとも有意な)電力消費はない。
【0033】
そして、待機動作モードから通常動作モードへの第1の遷移期間Δtの値を小さくするとともに、通常動作モードから待機動作モードへの第2の遷移期間Δtの値を小さくするために、電解槽40の入力電圧UElは待機動作モードにおいても、0Vと異なる第1の閾値UTH,1より高く維持される。第1の閾値UTH,1は、電解槽40の無負荷電圧ULLの80%、好ましくは90%となるように選択することができる。しかしながら、入力電圧UElは、有利には、電解槽の無負荷電圧の95%の値を超えないようにすべきである。第1の遷移期間Δtおよび第2の遷移期間Δtは、1秒~数秒の値に制限することができる。そのような動作状態の動的な変化により、電解システム60は、電解システム60を含む消費設備、例えば産業プラントのエネルギー管理システムに効率的に組み込むことができる。
【0034】
図1における変圧器31および整流器30は、一例として三相整流器30として示されている。しかしながら、その代替例として、ACグリッド、変圧器31および整流器30を単相コンポーネントとして具現化し、それぞれが相導体および中性接続を有することも可能である。また、それらが異なる数の相導体を有することも可能であり、例えば2つの相導体を有することも可能である。本発明の範囲内で、変圧器31を介在させずに整流器30をACグリッド20に直接接続することも可能である。
【0035】
図2aは、本発明に係る接続回路1の第1の実施形態を示している。接続回路1は、DC源10に接続するための2つの入力接続部5.1、5.2を有する入力部5と、電解槽40に接続するための2つの出力接続部6.1、6.2を有する出力部6とを備える。DC源10は、特に、入力側がACグリッド20に接続されたAC/DCコンバータ37であってよい。接続回路1の入力接続部5.1、5.2のうちの一方は、プリチャージ抵抗器2および回路遮断器3の直列接続を介して出力接続部6.1、6.2のうちの対応する1つに接続されている。この直列接続には、さらに回路遮断器4が並列に配置されている。接続回路1は、測定ユニット8をさらに備え、この測定ユニットは、出力部6に存在し、よって電解槽40にも存在するDC電圧UElを検出するための電圧センサ9.2と、入力部5に存在するDC電圧Uを検出するための更なる電圧センサ9.2とを有する。測定ユニット8は、出力部6を介して流れる電流I(t)を検出するための電流センサ9.1も有する。回路遮断器3および更なる回路遮断器4は、接続回路1の制御ユニット7により制御される。制御ユニット7は、さらに、測定ユニット8と通信して、測定ユニット8を駆動するように構成されており、それが破線で示す制御ラインによって象徴されている。
【0036】
電解槽40の通常動作モードでは、接続回路1の更なる回路遮断器4が、電解槽40がDC源10に低抵抗で接続されるように、常に閉じられる。この場合、回路遮断器3は開いていてもよいし、同様に閉じていてもよい。電解槽40の待機動作モードでは、更なる回路遮断器4が常に開かれる。回路遮断器3は、クロック式に閉じられ、再び開かれる。この場合、回路遮断器3のクロック式の開閉は、(出力部6に存在し、よって電解槽40の入力部41に存在する)検出されたDC電圧UElに応じて行うことができる。これにより、電解槽40の入力電圧UElの2点制御を実施することが可能であり、それが、図4に関連してより詳細に説明するように、電解槽の入力電圧UElの時間的プロファイルに繋がる。
【0037】
図2bは、本発明に係る接続回路1の第2の実施形態を示しており、この実施形態は、図2aによる接続回路の第1の実施形態と共通する多くの特徴を有している。このため、以下では、接続回路の第1の実施形態との相違点を主に説明し、共通する特徴については、図2aの説明を参照するものとする。
【0038】
第2の実施形態によれば、接続回路1は、DC/DCコンバータとして、特に降圧コンバータ14として具現化される。この場合、接続回路1の第1の入力接続部5.1は、回路遮断器3とインダクタ11の直列接続を介して、対応する出力接続部6.1に接続される。回路遮断器3は、図2bにおいて、アクティブ制御可能な半導体スイッチとして設計されており、制御ユニット7によって駆動される。接続回路1は、さらに、回路遮断器3とインダクタ11との間の接続点13を接続回路1の他方の入力接続部5.2に接続する更なる半導体スイッチ12を有する。図2bにおいて、更なる半導体スイッチ12は、制御ユニット7によって同様に駆動されるアクティブ制御可能な半導体スイッチとして設計されている。しかしながら、その代替例として、更なる半導体スイッチ12をダイオードとして具現化することも可能である。接続回路1の更なる回路遮断器4は、電気機械的回路遮断器として設計され、回路遮断器3およびインダクタ11の直列接続と並列に配置される。
【0039】
電解槽40の待機動作モードの間、入力部5に存在するDC電圧Uを、回路遮断器3および更なる半導体スイッチ12の適切な駆動によって出力部6に存在するDC電圧UElに変換することが可能である。この場合、更なる回路遮断器4は常に開いており、出力電圧UElは、回路遮断器3および更なる半導体スイッチ12のクロック動作によって第1の電圧閾値UTH,1より高く維持される。通常動作モードの間、更なる回路遮断器4は、常に閉じられ、その結果、第1の入力接続部5.1が第1の出力接続部6.1に低インピーダンスで接続される。更なる半導体スイッチ12は、通常動作モードにおいて常に開かれる。
【0040】
図3は、図1のアクティブ制御整流器30のAC/DCコンバータ37の一実施形態を示している。図1の整流器30に対応するように、AC/DCコンバータ37は、例えば、別個の中性接続のない三相AC/DCコンバータ37として設計され、合計3つのブリッジ分岐51を有するコンバータ回路50を備える。ブリッジ分岐51の各々は、2つの直列接続された半導体スイッチ52を有し、その各々に、逆平行に接続された還流ダイオード53が割り当てられている。還流ダイオード53は、それぞれの半導体スイッチ52の固有ダイオードとして、または別個のダイオードとして設計することができる。半導体スイッチ52は、MOSFETまたはIGBT半導体スイッチであってもよい。コンバータ回路50の三相の実施形態に対応するように、AC/DCコンバータ37のACコンバータ入力部37.1は、3つの入力接続部を含み、各々が、それらに割り当てられたブリッジ分岐51の2つの半導体スイッチ52の接続点54に接続されている。AC/DCコンバータ37のDCコンバータ出力部37.2は、正(+)および負(-)の出力接続部を備える。
【0041】
AC/DCコンバータ37は、電力変換時に、有効電力P(t)をそのACコンバータ入力部37.1からそのDCコンバータ出力部37.2に伝送し、場合によっては、そのDCコンバータ出力部37.2からそのACコンバータ入力部37.1へと反対方向にも伝送するように設計されている。AC/DCコンバータ37は、さらに、AC/DCコンバータ37のACコンバータ入力部37.1と、ACコンバータ入力部37.1に接続されたACグリッド20(図3では明示的に図示せず)との間で無効電力Q(t)を交換するように設計され得る。電力変換のために、半導体スイッチ52は、整流器の整流器制御ユニット39(図3では明示的に図示せず)により適切に駆動される。変換されたDC電圧Uのレベル、言い換えればDC電圧範囲は、この場合、最小DC電圧UW,minと最大DC電圧UW,maxとの間の値を採用することができる。最小DC電圧UW,minは、還流ダイオード53を介して、(還流ダイオード53の順方向電圧とは別に)ACコンバータ入力部37.1に存在するAC電圧の振幅U37に対応する値に制限される。還流ダイオード53によって、コンバータ回路50は、入力側に存在するAC電圧の振幅U37よりも大きいが、(少なくとも著しく)小さくはないDC電圧UをDCコンバータ出力部37.2において生成することが可能である。この場合の変換損失は、入力側に存在するAC電圧の振幅U37に対する出力側に存在するDC電圧Uの比率が大きくなるに連れて大きくなる。そこで、高いDC電圧における変換損失を低減するために、ACコンバータ入力部37.1におけるAC電圧、よってDCコンバータ出力部37.2における最小DC電圧を、電解槽の無負荷電圧ULLよりも高くすることができる。これは、例えば、AC/DCコンバータ37がACグリッド29に接続される変圧器31の適切な設計によって達成され得る。
【0042】
図3は、2つの電圧段のみを有する二段コンバータ回路50の一例を示している。しかしながら、3以上の電圧段を有するコンバータ回路50、例えば三段または五段のコンバータ回路も、本発明の範囲内で可能である。さらに、本発明の範囲内で、コンバータ回路をセンタタップ回路として設計することも可能である。この場合、DCコンバータ出力部37.2の出力接続部、例えば負の出力接続部(-)を、ACコンバータ入力部37.1に接続された変圧器31のセンタタップに接続することができる。代替例として、負の出力接続部(-)をACグリッド20の中性導体に接続することもできる。
【0043】
図4は、本発明に係る方法の一実施形態における、その待機動作モードからその通常動作モードへの遷移中の電解槽40の入力電圧UElの時間的プロファイルを示している。また、図4は、図2aの接続回路1を使用して、遷移前に時系列的に待機動作モードにおいて生じ得る入力電圧UELの時間的プロファイル、および遷移後に時系列的に通常動作モードにおいて生じ得る入力電圧の時間的プロファイルも示している。
【0044】
待機動作モードでは、時間の関数としての入力電圧UElが、第1の電圧閾値UTH,1から形成される下限値と上限値との間を移動するのこぎり歯状のプロファイルを有している。上限値は、この場合、電解槽40の無負荷電圧ULLの95%に対応するように選択されている。のこぎり歯状のプロファイルは、接続回路1の更なる回路遮断器4が常に開いている状態で、回路遮断器3がクロック式に開閉することに起因する。これは、入力電圧UElが上昇する間の電解槽40の一時的な充電フェーズを含む。この場合、電解槽40に割り当てられたコンデンサは、接続回路1の閉じた回路遮断器3によって充電され、それにより可能になった電流I(t)がプリチャージ抵抗器2を通って流れる。入力電圧UElの上昇の後には、電圧の低下を伴う放電フェーズがそれぞれ続く。この電圧低下は、電解槽40内の漏れ電流によるものであり、これを完全に防止することはできない。図4において、電圧低下の図示された勾配は、純粋に例示的な性質のものであり、発生する漏れ電流のレベルに応じて、図4に示されているものよりも大幅に低くなる場合もある。
【0045】
時刻tにおいて、例えば電解システム60を含む消費設備のエネルギー管理システムによって、電解槽40をその通常動作モードにすべきであることがアクティブ制御整流器30に通知される。この目的のために、接続回路1の更なる回路遮断器4が閉じられ、電解槽40が、ACグリッド20が上流側に接続されたAC/DCコンバータ37から形成されるDC源10に低抵抗で接続される。同時に、AC/DCコンバータ37の半導体スイッチ52は、AC/DCコンバータ37が入力電圧のために通常動作モードにおいて望ましい設定電圧値UEl,Sollに対応するDC電圧をDCコンバータ出力部37.2で有するように、整流器制御ユニット39を介して駆動される。電解槽40の入力電圧UElは、待機動作モードにおいて既に無負荷電圧ULLに近いため、電圧設定値UEl,Sollに達するまでに必要とされる電圧変化が大幅に減少し、よって電解槽40への電荷輸送もほんの僅かとなる。このため、待機動作モードと通常動作モードとの間の第1の遷移期間Δtは、0Vから行われる電解槽のプリチャージと比べて大幅に短縮される。同様のことが、電解槽40の通常動作モードから待機動作モードへの遷移中の第2の遷移期間Δtにも当てはまる。
【0046】
接続回路1の第1の実施形態の代わりに、図2bの第2の実施形態が使用される場合、図4に示すものと同様の時間プロファイルがもたらされる。しかしながら、待機動作モードにおけるのこぎり歯状のプロファイルは、電圧差が非常に小さく、無視できるほどである場合があり、これは、時間的にほぼ一定のDC電圧を設定することができることを意味している。
【符号の説明】
【0047】
1 接続回路
2 プリチャージ抵抗器
3 回路遮断器
4 回路遮断器
5 入力部
5.1、5.2 入力接続部
6 出力部
6.1、6.2 出力接続部
7 制御ユニット
8 測定ユニット
9.1 電流センサ
9.2 電圧センサ
10 DC源
11 インダクタ
12 半導体スイッチ
13 接続点
14 降圧コンバータ
20 ACグリッド
30 整流器
31 変圧器
33 AC入力部
34 DC出力部
35 AC切断ユニット
36 フィルタユニット
37 AC/DCコンバータ
37.1 ACコンバータ入力部
37.2 DCコンバータ出力部
39 整流器制御ユニット
40 電解槽
41 (電解槽の)入力部
50 コンバータ回路
51 ブリッジ分岐
52 半導体スイッチ
53 還流ダイオード
図1
図2a
図2b
図3
図4
【国際調査報告】