(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】エアロゾル物質収集装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/80 20200101AFI20230607BHJP
【FI】
A24F40/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568772
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 IB2021054165
(87)【国際公開番号】W WO2021229536
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190440
【氏名又は名称】エスダブリュエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥロット、ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ルイヤール、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ビナード、フランク
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA06
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB12
4B162AB14
4B162AC13
4B162AC17
4B162AC50
4B162AD04
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4B162AD13
4B162AD20
4B162AD40
4B162AE02
4B162AE06
(57)【要約】
本開示は、エアロゾル物質試料を収集するためのエアロゾル物質収集装置及びエアロゾル物質収集装置方法に関する。本開示のエアロゾル物質収集装置は、複数のサンプルカートリッジを含む、円形に形成されたサンプルカートリッジホルダを含む。各サンプルカートリッジは、エアロゾル物質試料を収集するためのフィルタ媒体(フィルタ部材)を含む。本開示のエアロゾル物質収集装置は、エアロゾル発生装置を受容するためのドッキング装置を更に含む。ドッキング装置は、エアロゾル発生装置を複数のサンプルカートリッジの内の1つと係合するように配置する。エアロゾル物質収集装置は更に、エアロゾル物質試料を収集するために、エアロゾル物質試料を調整可能な所定のパフ体積をもってサンプルカートリッジに吸入するエアロゾル吸入装置を更に含む。エアロゾル物質収集装置は完全に自動化でき、パフ単位でエアロゾル物質試料が収集される。エアロゾル物質収集装置及びエアロゾル物質収集装置方法は、非燃焼加熱式たばこ製品装置から収集されたエアロゾルの分析に適しているが、たばこなどの喫煙用品や、エアロゾルを生成させる電子たばこなど、その他の装置又は製品の試験に対しても適用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル物質収集装置であって、
それぞれ、フィルタ部材を内部に備えた内室を画定するハウジングを有し且つ、前記フィルタ部材の一方の側に対応する入口及び前記フィルタ部材の他方の側に対応する出口を有する複数のサンプルカートリッジを保持するためのサンプルカートリッジホルダと、
エアロゾル発生装置が、前記サンプルカートリッジホルダに保持された前記各サンプルカートリッジの前記入口に順次係合するように、前記サンプルカートリッジホルダに対して移動可能であるように、前記エアロゾル発生装置を受容するためのドッキング装置と、
前記ドッキング装置の反対側に配置され、前記サンプルカートリッジホルダ内に保持された前記各サンプルカートリッジの前記出口に順次係合するように設けられることにより、前記ドッキング装置に受容された前記エアロゾル発生装置によって生成されたエアロゾル物質試料を所定のパフ体積をもって収集するためのエアロゾル吸入装置とを含み、
前記所定のパフ体積の前記エアロゾル物質試料が、前記サンプルカートリッジホルダ内に含まれる前記フィルタ部材に収集されるように、前記サンプルカートリッジを通過させるようにした、エアロゾル物質収集装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記サンプルカートリッジホルダは、回転可能であって外周部を有するホイールを含み、
複数の前記サンプルカートリッジは、前記ホイールの前記外周部に沿って配置される、エアロゾル物質収集装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記サンプルカートリッジホルダは、6個から20個の前記サンプルカートリッジ、特に10個から15個の前記サンプルカートリッジを保持するように構成されている、エアロゾル物質収集装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記ドッキング装置は、前記サンプルカートリッジに順次係合するべく、前記サンプルカートリッジホルダに対して、近接する方向及び離反する方向に移動可能に設けられ、
前記サンプルカートリッジホルダは、前記サンプルカートリッジを前記ドッキング装置の前に順次配置するように移動可能に設けられる、エアロゾル物質収集装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記サンプルカートリッジホルダは、第1外側カバー及び前記第1外側カバーから間隔を空けて配置された第2外側カバーを含み、
複数の前記サンプルカートリッジは、互いに離間した前記第1外側カバーと前記第2外側カバーとの間に配置される、エアロゾル物質収集装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のエアロゾル物質収集装置であって、
コントローラを更に含み、
前記コントローラは、前記ドッキング装置及び前記サンプルカートリッジホルダと通信可能であって、前記ドッキング装置及び前記サンプルカートリッジホルダを同期して移動させる、エアロゾル物質収集装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記コントローラは、前記エアロゾル吸入装置と更に通信可能であって、前記ドッキング装置に配置された前記エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾルのパフを周期的に収集するべく、前記エアロゾル吸入装置を制御する、エアロゾル物質収集装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記コントローラは、1つ以上のマイクロプロセッサを含む、エアロゾル物質収集装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれかに記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記コントローラは、
(a)前記ドッキング装置を前記サンプルカートリッジホルダに配置された前記サンプルカートリッジと係合するように移動させ、
(b)前記ドッキング装置に配置された前記エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾルのパフを収集するべく、前記エアロゾル吸入装置を制御し、前記サンプルカートリッジに配置された前記フィルタ部材に前記エアロゾル物質試料を収集するべく、前記サンプルカートリッジに流入する前記エアロゾルのパフを制御し、
(c)前記サンプルカートリッジホルダに保持された前記サンプルカートリッジから前記ドッキング装置を脱離させ、
(d)前記サンプルカートリッジホルダを移動させることにより、後続の前記サンプルカートリッジを前記ドッキング装置と整合させ、
(e)複数の前記サンプルカートリッジのそれぞれに、前記エアロゾル物質試料を順次収集するべく、(a)から(d)の動作を繰り返すよう構成された、エアロゾル物質収集装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記エアロゾル吸入装置は、所定のパフ体積をもって前記エアロゾル物質試料のパフを収集するように構成され、前記所定のパフ体積を調整するよう構成された、エアロゾル物質収集装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記エアロゾル吸入装置は、シリンダ内にて移動可能なプランジャを含み、前記プランジャは、吸入力を発生させるべく、前記シリンダ内にて変位する、エアロゾル物質収集装置。
【請求項12】
請求項11に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記エアロゾル吸入装置は、空気圧シリンダを更に含む、エアロゾル物質収集装置。
【請求項13】
請求項11に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記エアロゾル吸入装置によって収集される前記パフ体積を制御するべく、前記プランジャが変位する距離を検知する距離センサを更に備える、エアロゾル物質収集装置。
【請求項14】
請求項13に記載のエアロゾル物質収集装置であって、
前記距離センサは、前記プランジャが変位する距離を測定するために使用されるレーザを含む、エアロゾル物質収集装置。
【請求項15】
エアロゾルを、基材から燃焼させることなく生成させるエアロゾル発生装置からエアロゾル物質試料を収集するエアロゾル物質収集方法であって、
(a)前記基材を、該基材を燃焼させることなく加熱するべく、前記エアロゾル発生装置に投入するステップと、
(b)内室を画定するハウジングと、一方の側に対応して前記エアロゾル発生装置を受容する入口及び他方の側に対応する出口の間に配置されたフィルタ部材とを有し且つ、サンプルカートリッジホルダに保持された複数のサンプルカートリッジに対して、前記エアロゾル発生装置を個々に係合するよう移動するステップと、
(c)前記エアロゾル発生装置から前記エアロゾル物質試料のパフを生成させ且つ、前記サンプルカートリッジの前記フィルタ部材により前記エアロゾル物質試料が収集されるよう、前記サンプルカートリッジの前記出口から前記エアロゾル物質試料を所定のパフ体積をもって吸引するステップと、
(d)前記サンプルカートリッジホルダを移動させることにより、後続の前記サンプルカートリッジを前記エアロゾル発生装置と整合させるステップと、
(e)別のエアロゾル物質試料を収集するべく、(a)から(d)のステップを繰り返すステップと、を含む、エアロゾル物質収集方法。
【請求項16】
請求項15に記載のエアロゾル物質収集方法であって、
前記エアロゾル発生装置から生成される前記エアロゾル物質試料の少なくとも3つのパフが対応する前記サンプルカートリッジに収集され、各エアロゾルのパフに含まれる定量すべき成分の濃度に応じて、好ましくは少なくとも5つのパフが対応する前記サンプルカートリッジに収集され、より好ましくは少なくとも10のパフが対応する前記サンプルカートリッジに収集される、エアロゾル物質収集方法。
【請求項17】
請求項15又は請求項16に記載のエアロゾル物質収集方法であって、
前記サンプルカートリッジは、回転可能であって外周部を有するホイールを含み、複数の前記サンプルカートリッジは、前記ホイールの前記外周部に沿って配置される、エアロゾル物質収集方法。
【請求項18】
請求項15から請求項17のいずれかに記載のエアロゾル物質収集方法であって、
前記エアロゾル発生装置は、前記エアロゾル発生装置を前記サンプルカートリッジホルダに保持された前記サンプルカートリッジに対して係脱可能に移動させるためのドッキング装置に受容される、エアロゾル物質収集方法。
【請求項19】
請求項15から請求項18のいずれかに記載のエアロゾル物質収集方法であって、
前記エアロゾル発生装置及び前記サンプルカートリッジホルダの移動は、コントローラによって自動的に制御され、前記コントローラは、各サンプルカートリッジの前記出口から所定のパフ体積を吸入するためのエアロゾル吸入装置を更に制御する、エアロゾル物質収集方法。
【請求項20】
請求項19に記載のエアロゾル物質収集方法であって、
前記コントローラは、パフ体積、パフ持続時間、及びパフの間隔を制御及び調整する、エアロゾル物質収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年5月15日を出願日とする米国仮特許出願第63/025,620号に基づいており、それに基づく優先権を主張し、同出願に言及することにより、その内容を本出願の一部にする。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者は、紙巻たばこのように、中に詰められたたばこ等の詰物を燃焼させることによって機能する従来の喫煙用品から離れつつある。基材を燃焼させることなくエアロゾルを生成させる様々な異なるエアロゾル発生装置が開発されている。このようなエアロゾルを生成させる装置は、例えば、非燃焼加熱式装置、電子たばこなどがある。これらの装置では、エアロゾルを形成するべき基材を燃焼させる代わりに加熱することによってエアロゾルを生成させる。エアロゾルは、気体(通常は空気)と、固体微粒子及び又は液滴との混合体であって、この混合体が使用者によって吸引される。エアロゾルを形成する基材は、固体及び又は液体であり得る。例えば、一実施形態では、エアロゾルを形成する基材は、たばこ又は植物由来材料であり得る。別の実施形態では、エアロゾルを形成する基材は、ニコチン及び又はたばこの芳香及び植物抽出物を含む溶液とすることができる。更に別の実施形態では、エアロゾルを形成する基材は、たばこ又は植物性基材とたばこ又は植物性抽出物を含む溶液との組み合わせとすることができる。
【0003】
上記のエアロゾル発生装置は、従来のたばこの多くの欠点を回避しつつ、使用者が吸引するためのエアロゾルを生成させることができる。例えば、エアロゾル発生装置から生成されたエアロゾルに含まれる成分、例えばタールのような物質の燃焼によって生成されるさまざまな成分が低濃度に抑えられる。更に、基材を燃焼させるものでないため、エアロゾル発生装置は重大な火災の危険性を生じることなく作動する。
【0004】
上記の観点から、当業者は、いくつもの成分を、制御された量をもって含むエアロゾルを生成させるために、エアロゾル発生装置及びエアロゾル発生装置に使用される基材を改良しようと試みてきた。例えば、エアロゾル発生装置に使用され且つ、エアロゾルを生成させる基材を開発する際に繰り返される問題の1つは、各パフにおけるエアロゾル中のニコチン、たばこ及び、植物の香りの濃度が正確に制御できるかということである。各パフにおけるエアロゾル中のニコチン、たばこ、植物の香りの濃度を正確に制御することは困難であり、各パフにおけるエアロゾルに含まれるニコチンやその他の成分の量は、パフ毎に大きく異なる可能性がある。具体的には、上記の非燃焼加熱式たばこ製品の多くでは、最初のパフにおけるエアロゾルと最後のパフにおけるエアロゾルとでは、パフによって持ち込まれる成分の量が大きく異なる場合がある。また、各パフにおけるエアロゾルの質及び又は各パフにおけるエアロゾル中の成分量は、エアロゾルを形成する基材が加熱されるにつれて、時間の経過と共に減少するのが一般的である。
【0005】
上記の観点から、エアロゾル発生装置を更に改善するために、異なるエアロゾル発生物質又は試作品を異なる条件下で試験するための試験装置が必要である。しかし、当業者は、エアロゾル発生装置から生成されたエアロゾル物質試料の収集及び、試験を行うための適切な試験装置を開発することができなかった。たばこの燃焼によって生成される煙試料を収集するための様々な試験装置は存在する。しかし、これらの試験装置はエアロゾル発生装置に適していない。具体的には、たばこを燃やすことによって生成される炭素ベースのような固体粒子とは対照的に、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾルの主たる構成は、気体と、固体微粒子及び又は液滴との混合体である。
【0006】
したがって、エアロゾル物質試料を収集し且つ、分析するためには、たばこの燃焼によって生成される煙試料を収集するための様々な試験装置と異なる試験装置が必要とされる。
【0007】
上記の観点から、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル物質試料を収集するエアロゾル物質収集装置の必要性が存在する。また、試験者がエアロゾルを形成する同一の基材から生成される複数のパフの分析を比較できるように、パフ毎にエアロゾル物質試料を収集できるエアロゾル物質収集装置が必要とされている。更にエアロゾル物質収集装置では、エアロゾル物質試料をパフ毎に収集できることに加えて、ガスクロマトグラフィのような高価で時間のかかる方法を用いて、累積されたパフの分析又は単一のパフの分析を複数回繰り返すことによりデータの収集が行われるような従来の装置とは異なり、正確な分析に要するスティック等の基材の数を最小化することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般的に、本開示は、エアロゾル物質収集装置に関する。エアロゾル物質収集装置は、非燃焼加熱式たばこ製品及び又は電子たばこから生成されるエアロゾル物質試料の収集に特に適している。エアロゾル物質収集装置は、エアロゾル発生装置に配置されたエアロゾルを形成する単一の基材から生成されるエアロゾルのパフを個々に且つ、自動的に収集できる。エアロゾル物質試料は、個々のサンプルカートリッジに配置されたフィルタパッド(フィルタ部材)に収集される。
【0009】
一実施形態では、本開示は、エアロゾル物質収集装置に関する。エアロゾル物質収集装置は、複数のサンプルカートリッジを保持するためのサンプルカートリッジホルダを含む。一様態では、サンプルカートリッジホルダは、回転可能であって外周部を有するホイールを含む。サンプルカートリッジは、ホイールの外周部に沿って配置される。サンプルカートリッジホルダは、6個から20個のサンプルカートリッジ、特に10個から15個のサンプルカートリッジを保持するように構成されている。サンプルカートリッジホルダは、第1外側カバー及び第1外側カバーの反対側に配置される第2外側カバーを含む。サンプルカートリッジは、第1外側カバーと第2外側カバーとの間に配置される。サンプルカートリッジホルダは、試験前、試験中、又は試験後において、サンプルカートリッジホルダ(サンプルカートリッジ)に配置されるフィルタパッド中の水分の増減が抑制されるように構成されている。
【0010】
サンプルカートリッジホルダに配置される各サンプルカートリッジは、内室を画定するハウジングを含む。内室の内部にはフィルタパッドなどのフィルタ部材が配置されている。サンプルカートリッジは、フィルタ部材の一方の側に対応する入口と、フィルタ部材の他方の側に対応する出口とを更に含む。
【0011】
エアロゾル物質収集装置は、エアロゾルを形成する基材からエアロゾルを生成させるためのエアロゾル発生装置を受容するためのドッキング装置を更に含む。ドッキング装置は、ドッキング装置に配置されたエアロゾル発生装置がサンプルカートリッジホルダに保持された各サンプルカートリッジの入口に順次係合するように、サンプルカートリッジホルダに対して移動可能であるように設けられる。例えば一実施形態では、ドッキング装置は、サンプルカートリッジに順次係合するべく、サンプルカートリッジホルダに対して、近接する方向及び離反する方向に移動可能であるように設けられる。一方、サンプルカートリッジホルダは、サンプルカートリッジがドッキング装置の前に順次配置されるように、周方向に回転する。
【0012】
エアロゾル物質収集装置は、ドッキング装置の反対側に配置され且つ、サンプルカートリッジホルダ内に保持された各サンプルカートリッジの出口に順次係合するエアロゾル吸入装置を更に含む。エアロゾル吸入装置は、ドッキング装置に受容されたエアロゾル発生装置によって生成されたエアロゾルを、所定のパフ体積をもって吸入する。所定のパフ体積のエアロゾルは、エアロゾル物質試料がフィルタ部材に収集されるように、サンプルカートリッジを通過する。
【0013】
本開示のエアロゾル物質収集装置は、1つ以上のマイクロプロセッサを含むコントローラを更に含む。コントローラは、ドッキング装置及びサンプルカートリッジホルダに通信可能であって、ドッキング装置及びサンプルカートリッジホルダを同期して移動させる。また、コントローラは、エアロゾル吸入装置とも通信可能であって、ドッキング装置に配置されたエアロゾル発生装置から生成されるエアロゾルのパフを周期的に吸入するべく、エアロゾル吸入装置を制御する。
【0014】
一実施形態では、例えば、コントローラは、ドッキング装置をサンプルカートリッジホルダに配置されたフィルタカートリッジ(サンプルカートリッジ)に係合させるべく、ドッキング装置を自動的に移動させるように制御する。コントローラは、ドッキング装置に配置されたエアロゾル発生装置によって生成されたエアロゾルのパフを吸入するべく、エアロゾル吸入装置を制御する。パフは、エアロゾル物質試料がフィルタ部材に収集されるように、サンプルカートリッジを通過する。その後、コントローラは、サンプルカートリッジホルダに保持されたサンプルカートリッジからドッキング装置を脱離させる。またコントローラは、サンプルカートリッジホルダを移動させることにより、後続のサンプルカートリッジをドッキング装置と整合させる。上記の方法を繰り返すことによって、エアロゾル物質試料は個々のサンプルカートリッジにパフ単位で収集される。
【0015】
本開示は、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル物質試料を収集するエアロゾル物質試料収集方法にも関する。エアロゾル発生装置は、材料を燃焼させることなく、基材又は材料からエアロゾルを生成させる。本方法には、基材を加熱するためのエアロゾル発生装置に基材を投入することが含まれる。エアロゾル発生装置は、サンプルカートリッジホルダに保持されたフィルタカートリッジに係合するように移動される。所定のパフ体積がサンプルカートリッジの出口から吸引されることにより、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル物質試料が、サンプルカートリッジに配置されたフィルタパッドに収集される。サンプルカートリッジホルダは、後続のサンプルカートリッジがエアロゾル発生装置と整合するように移動される。本方法では、エアロゾル物質試料がパフ毎に収集される。
【0016】
本発明の他の特徴及び態様は、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
当業者を対象にした本開示の完全かつ実現可能な開示が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【
図1】
図1は、本開示に係るエアロゾル物質収集装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2は、特にドッキング装置及びサンプルカートリッジホルダを図示した、
図1に示すエアロゾル物質収集装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すドッキング装置及びサンプルカートリッジホルダのさらなる斜視図であり、サンプルカートリッジホルダに配置されたサンプルカートリッジを更に示している。
【
図4A】
図4Aは、本開示に係るエアロゾル物質収集装置に使用されるサンプルカートリッジの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すサンプルカートリッジホルダの反対側に配置された本開示に係るエアロゾル吸入装置の一部を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示に係るパフ体積を監視及び制御するための距離センサを含む、本開示に係るエアロゾル吸入装置の斜視図である。
【0018】
本明細書及び図面において繰り返し用いられる参照符号は、本発明の同一又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
【0020】
本明細書で使用するとき、エアロゾル形成基材なる用語は、エアロゾルを形成する揮発性化合物を放出することができる基材を指すものとする。エアロゾル形成基材は、液体、固体、又はその両方の組み合わせからなる。エアロゾルは、加熱又はその他の適切な手段によってエアロゾル形成基材から生成される。エアロゾル形成基材は、キャリア又は支持体に吸着、コーティング、含浸、又は充填されるものであって良い。エアロゾル形成基材は、固体(stand-alone solid)、液体(stand-alone liquid)、ゲル、又は上記のいずれかの組み合わせ又は部分的組合せを含む。
【0021】
エアロゾル形成基材は、様々な化学成分及び薬物を含む。例えば、エアロゾル形成基材はニコチン又はたばこを含み、或いはたばこから形成される。またエアロゾル形成基材は、大麻を含む様々な他の植物から形成されてもよく、CBD及び又はTHCを含む。
【0022】
本明細書で使用するとき、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを生成させる装置に関する。エアロゾル形成基材は、例えば喫煙装置のようなエアロゾル発生装置の一部をなす。エアロゾル発生装置は、エアロゾルを生成させるべく、電源からエアロゾル形成基材にエネルギーを供給するための構成を少なくとも1つを含む。
【0023】
ヒーターを含むエアロゾル発生装置は、非燃焼加熱式エアロゾル発生装置と称される。ヒーターは、エアロゾル発生装置のエアロゾル形成基材を加熱して、エアロゾルを生成させるために使用されることが望ましい。
【0024】
エアロゾル発生装置は、電気加熱式エアロゾル発生装置であってもよい。電気加熱式エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材を加熱するために、電力によって動作するヒーターを含む。またエアロゾル発生装置は、燃料加熱式エアロゾル発生装置であってもよい。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置のエアロゾル形成基材と相互作用して、使用者の口から使用者の肺に直接吸引されるためのエアロゾルを生成させる喫煙装置である。エアロゾル発生装置の例としては、以下で詳細に説明するように、eHTP装置、cHTP装置、aHTP装置などが挙げられる。
【0025】
電気加熱式たばこ製品(eHTP)は、エアロゾルに含まれるニコチンを生成するために、たばこを燃焼させることなく、電気式のたばこ加熱装置(THD)によって加熱されるたばこ基材を含む。eHTPの部類には、たばこ基材を含み且つ、電気式のたばこ加熱装置(THD)が使用される製品を含む。電気式のたばこ加熱装置(THD)の特徴は、抵抗によって発生する熱又は誘導によって発生する熱によってたばこを間接的に加熱すること、たばこ基材を燃焼させないこと、バッテリによって駆動すること、消耗品(HTP)の固定サイズ又は装置のハードウェア/ソフトウェアの固定サイズのいずれかによってパフ数及び又はパフ持続時間が制限されること及び、THDと組み合わせて使用する場合はたばこ加熱装置(THS)と呼ばれること、を有する。eHTPの部類には、たばこ基材が含まれるように紙又は他の材料で包装されたたばこを含む消耗品を有する製品が含まれてもよい。
【0026】
炭素加熱式たばこ製品(cHTP)は、エアロゾルに含まれるニコチンを生成するために、炭素の燻りによって加熱されるたばこ基材を含む。cHTPの部類には、消耗品にたばこ基材が含まれること、炭素を燻ることによってたばこを間接的に加熱すること及び、パフ数及び又はパフ持続時間は、消耗品ごとに1回に限定されること、が含まれる。またcHTPの部類には、使い捨てのたばこ加熱装置を備えること、火によって燻り始める炭素系の熱源を備えること、エアロゾルに燃焼に関連する成分(例えば一酸化炭素)が存在すること、が含まれてもよい。cHTPの部類には、たばこを炭素の燻りによって加熱する水たばこ製品は含まれない。現在の世界的なcHTPの商品の例には、Eclipse、Revo、Teeps、iQOS、Glo、Lil、MOK、Ploom S及び、Pulzeが挙げられる。
【0027】
エアロゾル加熱式たばこ製品(aHTP)は、エアロゾルに含まれるニコチンを生成するために、たばこを燃焼させることなく、電気式のたばこ加熱装置(THD)から生成されるエアロゾルによって加熱されるたばこ基材を含む。aHTPの部類には、たばこ基材を含み且つ、電気式のたばこ加熱装置(THD)が使用される製品を含む。電気式のたばこ加熱装置(THD)の特徴は、電子液体系の消耗品から生成されるエアロゾルによってたばこ基材を加熱すること、たばこ基材を燃焼させないこと、バッテリによって駆動すること、消耗品(HTP)の固定サイズ又は装置のハードウェア/ソフトウェアの固定サイズのいずれかによってパフ数及び又はパフ持続時間が制限されること及び、THDと組み合わせて使用する場合はたばこ加熱装置(THS)と呼ばれること、を有する。aHTPの部類には、たばこ基材が含まれるように紙又は他の材料で包装されたたばこを含む消耗品を有すること、抵抗(又は誘導)によって発生する熱によってたばこを間接的に加熱すること及び、たばこの消耗品は電子液体系の消耗品よりも頻繁に交換されること、が含まれてもよい。aHTPの部類には、たばこを含むあらゆる物質の燃焼を伴う製品は含まれない。aHTPは「ハイブリッド」と呼ばれることが多く、現在世界中で販売されているaHTPの製品の例には、Ploom TECH、Ploom TECH+、iFuse、Glo Sens及び、lil Hybridなどが挙げられる。
【0028】
詳細な説明
【0029】
本開示が例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広範な態様を限定することを意図するものではないことは、当業者には理解できるであろう。
【0030】
本開示は一般的にエアロゾル物質収集装置に関する。エアロゾル物質収集装置は、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル物質試料を収集することに適している。但し、エアロゾル物質収集装置は、あらゆる種類のエアロゾル物質又は、煙試料の微粒子物質を収集することも可能である。例えばエアロゾル物質収集装置は、たばこのような可燃性の製品から生成される煙試料の収集に簡単に適応できる。以下の説明では主に、エアロゾル形成基材が燃焼されないエアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル物質試料を収集することに関する。
【0031】
本開示におけるエアロゾル物質収集装置は、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル物質試の各パフを、対応するサンプルカートリッジに自動的に収集できる。各サンプルカートリッジは、フィルタパッドなどのフィルタ部材を含む。各パフに含まれるエアロゾル物質試料の成分を分析することにより、各パフのエアロゾルに含まれる成分の相対的な量及び、各成分の量がパフからパフへどのように変化するかを決定することができる。
【0032】
エアロゾル物質収集装置は、移動可能であって且つ、エアロゾル形成基材を有するエアロゾル発生装置を支持するためのドッキング装置を含む。ドッキング装置は、種々のエアロゾル発生装置及び、ドッキング装置に含まれる基材の大きさに対して調整可能である。ドッキング装置は、エアロゾル発生装置に含まれる様々な非燃焼加熱装置を収容できるように構成されると共に、例えば、エアロゾル形成基材がロッド状又はスティック状をなす場合、様々なロッドの直径に対してエアロゾル形成基材を収容できるよう構成される。ドッキング装置はエアロゾル発生装置を保持し且つ、エアロゾル発生装置をサンプルカートリッジホルダに整合させる。
【0033】
サンプルカートリッジホルダは、電動ホイール状をなし、複数のサンプルカートリッジを支持する。各サンプルカートリッジはフィルタ部材と、フィルタパッド(フィルタ部材)にエアロゾル収集物質を収集するべく、1パフをサンプルカートリッジに通過させるための入口及び出口とを含む。サンプルカートリッジホルダは、外周部を有し、各サンプルカートリッジは、ホイールの外周部に沿って配置される。ホイールの位置、即ちサンプルカートリッジの位置はコントローラによって自動的に制御される。サンプルカートリッジホルダは、ホイールの位置を示す様々なセンサーセルを含む。サンプルカートリッジには、試験に適切なフィルタ部材が含まれるとよい。一実施形態では、サンプルカートリッジは、略35mmから略50mmの直径を有するフィルタパッドを含む。
【0034】
エアロゾル物質収集装置は、コントローラによって制御されるエアロゾル吸入装置を更に含む。エアロゾル吸入装置は、ドッキング装置に配置されたエアロゾル発生装置から生成されるエアロゾルのパフを吸引するための吸入力を発生させる。一態様ではエアロゾル吸入装置は、吸入力を発生し且つ、パフ体積を制御するべく、電磁弁を備えた空気圧ジャッキであってよい。パフ体積を更に制御するべく、エアロゾル物質収集装置は、エアロゾル吸入装置と共に配置されたレーザ距離センサなどの距離センサを更に含む。距離センサは気圧ジャッキのピストンの変位を制御することによって、パフ体積を繰り返し精度良く制御する。また、パフ体積はパフ中にコントローラによって追従され、規定された限界に対するパフ体積のばらつき又は、加熱構造によるエアロゾル生成の不具合が即座に検出される。
【0035】
エアロゾル物質収集装置は、エアロゾル発生装置、サンプルカートリッジホルダに配置されたサンプルカートリッジ及び、エアロゾル吸入装置の間の接続を可能にする空気圧式リニアテーブル装置を更に含む。サンプルカートリッジ、エアロゾル発生装置、及び又はエアロゾル吸入装置の間の接続において、適切なガスケットが含まれることにより、生成されるエアロゾル物質試料のパフ及び、収集されるエアロゾル物質試料のパフの漏れが抑制される。ドッキング装置、エアロゾル発生装置及び、サンプルカートリッジは、エアロゾルがサンプルカートリッジに配置されたフィルタ部材に接触する前に凝縮することを抑制できる最小の表面積を確保するように設計される。
【0036】
コントローラは、エアロゾル物質収集装置を用いた本開示のエアロゾル物質収集方法を自動的に実行する。コントローラは、1つ以上のコンピュータなどのようなマイクロプロセッサを1つ以上含むものであって良く、エアロゾル物質試料を収集するエアロゾル物質収集方法において、パフ時間、パフ間隔、及びサンプルカートリッジホルダの回転を制御するように設定される。例えば一実施形態では、コントローラは、ドッキング装置を移動させることによって、エアロゾル発生装置とサンプルカートリッジホルダに配置されたフィルタカートリッジ(サンプルカートリッジ)とを係合させる。例えば、一実施形態では、コントローラは、エアロゾル発生装置に含まれるエアロゾル形成基材を、サンプルカートリッジホルダに配置されたサンプルカートリッジの入口に配置する。その後、コントローラは、エアロゾル吸入装置を制御することによって、エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾルのパフが吸入される。コントローラはパフ体積を調節できる。パフは、エアロゾル物質試料がフィルタ部材に収集されるように、サンプルカートリッジを通過する。次に、コントローラは、サンプルカートリッジホルダに保持されているサンプルカートリッジからドッキング装置を脱離させる。その後、コントローラは、サンプルカートリッジホルダを移動又は回転させることにより、後続のサンプルカートリッジをドッキング装置と整合させる。更にその後、コントローラは、上記方法を繰り返すことにより、エアロゾル発生装置から生成される2回目のパフのエアロゾルを生成させた後、そのエアロゾル物質試料を収集する。
【0037】
エアロゾル物質収集装置は、生成したパフ数及び、パフ毎に加熱されたエアロゾル形成基材の数を制御するためのカウンタを適宜含む。
【0038】
本開示のエアロゾル物質収集方法及びエアロゾル物質収集装置は、様々な利点及びメリットを提供することができる。例えば、サンプルカートリッジホルダは、さらなる分析のために用いられるフィルタ媒体(フィルタ部材)に収集されたエアロゾルのパフの試料を自動的に生成できる。収集されたエアロゾル物質試料は、パフ毎に収集された試料である。但し他の態様では、必要に応じて1個のサンプルカートリッジに複数のパフから収集されたエアロゾル物質試料が含まれてもよい。但し、パフ毎に収集されたエアロゾル物質試料は、各パフに含まれる成分を同定するための試料であることに加え、試験者がエアロゾル発生装置の使用中において持ち込まれる成分が変化しているかどうかを決定づけるべく、異なるエアロゾル物質試料を比較するための試料であるとよい。更に、本開示のエアロゾル物質収集装置は、様々なパラメータを制御し且つ、様々なパラメータを変更することができる。例えば、エアロゾル物質収集装置は、パフ体積、パフ持続時間、パフの間隔、及び試験中におけるエアロゾル形成基材から収集されるべきパフの数を制御できる。更に、エアロゾル物質収集装置は、エアロゾルのパフの収集中において、エアロゾルに含まれる成分の損失及び、フィルタサンプルに含まれる水分の増減が抑制されるように構成されている。
【0039】
例えば
図1を参照することにより、本開示に係るエアロゾル物質収集装置10の一実施形態が示されている。図に示すように、エアロゾル物質収集装置10は、複数のサンプルカートリッジを保持するためのサンプルカートリッジホルダ12を含む。図の実施例では、サンプルカートリッジホルダ12は、複数のステーション間で回転するホイール状をなす。サンプルカートリッジホルダ12の各ステーションには、異なるサンプルカートリッジが保持されている。
【0040】
サンプルカートリッジホルダ12の前には、エアロゾル発生装置を受容するドッキング装置14が配置されている。ドッキング装置14は、エアロゾル発生装置をサンプルカートリッジホルダ12に含まれるサンプルカートリッジに係合するように移動可能に構成されている。
【0041】
エアロゾル物質収集装置10は、ドッキング装置14に配置されたエアロゾル発生装置からエアロゾルのパフを吸入するための吸入力を発生させるように構成されたエアロゾル吸入装置16を更に含む。エアロゾル吸入装置16は、サンプルカートリッジホルダ12の、ドッキング装置14と反対側に配置され、サンプルカートリッジホルダ12に配置されたサンプルカートリッジと係合する。
【0042】
図1に示すように、本実施形態におけるエアロゾル物質収集装置10は、タッチスクリーン20を備えたコンピュータ又はマイクロプロセッサとして図示されているコントローラ18を更に含む。一様態では、コントローラ18は、エアロゾル物質試料を自動的に収集するべく、使用者からの入力を受け付ける。タッチスクリーン20を使用することにより、使用者は、パフ体積、収集するエアロゾル物質試料の数、試験するエアロゾル形成基材の数などを入力することができる。
【0043】
図2及び
図3を参照することにより、サンプルカートリッジホルダ12とドッキング装置14がより詳細に示されている。サンプルカートリッジホルダ12は、ホイール状をなし、フレーム22に回転可能に支持されている。サンプルカートリッジホルダ12は、エアロゾル物質試料の収集中において、サンプルカートリッジホルダ12を回転させるためのモーターと接続されている。サンプルカートリッジホルダ12は、第1外側カバー24及び、第1外側カバー24から間隔を空けて配置された第2外側カバー26を含む。第1外側カバー24と第2外側カバー26との間には、回転可能なカートリッジ係合部50が配置されている。
図3に示すように、カートリッジ係合部50は、両外側カバー24、26の間で回転するように構成されており、複数のサンプルカートリッジ28を保持する。
図3に示すように、エアロゾル物質試料を収集するためのサンプルカートリッジ28は、カートリッジ係合部50の外周部に沿って等間隔に配置されている。
【0044】
図4A及び
図4Bを参照することにより、サンプルカートリッジ28の一実施例がより詳細に示されている。サンプルカートリッジ28は、内室を画定するハウジング30を含む。ハウジング30の一方の側には入口32が設けられ、ハウジング30の他方の側には出口34が設けられている。サンプルカートリッジ28内部には、エアロゾル物質試料の収集に適した材料から作成されたフィルタ部材36が配置されている。例えば、一実施形態では、フィルタ部材36は円形状をなすフィルタパッドであってよい。一様態では、フィルタパッドの直径は、略40mmから略48mmの範囲を網羅できるように、略30mmから略60mmであるとよい。ある特定の実施形態では、フィルタパッドの直径は略44mmである。フィルタパッドは、上記過程にて生成されるエアロゾルのパフを収集するのに特に適している。
【0045】
ハウジング30は、サンプルカートリッジ28からフィルタ部材36を脱着可能するべく、互いに分離可能な協動する2つの部材から形成される。例えば、
図4Bに示されているように、ハウジング30は、第1部材38及び第1部材38に対して係脱可能な第2部材40を含む。第1部材38及び第2部材40の係合には、液密性が確保される。
【0046】
サンプルカートリッジ28は、弾力性を有する材料から形成されたガスケットを更に含む。例えば、
図4A及び
図4Bに示すように、入口32の周囲には第1ガスケット42が配置され、出口34の周囲には第2ガスケット44が配置されている。第1ガスケット42は、エアロゾルのパフが漏れなくサンプルカートリッジ28に流入されるよう、サンプルカートリッジ28及びエアロゾル発生装置の間に液密性を確保する。一方、第2ガスケット44は、サンプルカートリッジ28及びエアロゾル吸入装置16の間に流密性を確保する。エアロゾル吸入装置16は、エアロゾル物質試料をフィルタ部材36に収集させるべく、エアロゾルが所定のパフ体積をもって入口32からサンプルカートリッジ28を通過して出口34まで至る吸入力を発生させる。
【0047】
サンプルカートリッジホルダ12は、所定の数のサンプルカートリッジ28を保持するように設計されている。例えば、サンプルカートリッジホルダ12は、4個から40個のサンプルカートリッジ28の間で、1単位でサンプルカートリッジ28を保持できる。例えば、サンプルカートリッジホルダ12は、8個より多いサンプルカートリッジ、例えば10個より多いサンプルカートリッジ、例えば12個より多いサンプルカートリッジ、例えば14個より多いサンプルカートリッジ、例えば16個より多いサンプルカートリッジ、例えば18個より多いサンプルカートリッジ、例えば20個より多いサンプルカートリッジなどを含む。またサンプルカートリッジホルダ12は、100個未満のサンプルカートリッジ、例えば50個未満のサンプルカートリッジ、例えば30個未満のサンプルカートリッジ、例えば20個未満のサンプルカートリッジ、例えば16個未満のサンプルカートリッジなどを含む。
【0048】
一実施形態では、
図2に示すように第1外側カバー24は、サンプルカートリッジ28をサンプルカートリッジホルダ12に出し入れするための開口部46を含む。開口部46はドッキング装置14と協動することに加え、サンプルカートリッジ28の出し入れにも使用される。サンプルカートリッジ28は、サンプルカートリッジホルダ12の第1外側カバー24と第2外側カバー26の間に配置されたカートリッジ係合部50に適切な手段をもって保持されている。一実施形態では例えば、各サンプルカートリッジ28は、
図4Bに示すようにホルダ係合部48を含む。ホルダ係合部48は、サンプルカートリッジ28のハウジング30から外方に延びる突部又は延長部である。一方、第1外側カバー24と第2外側カバー26との間に配置されるカートリッジ係合部50には、開口部が間隔を空けて設けられている。各サンプルカートリッジ28のホルダ係合部48は、サンプルカートリッジホルダ12のカートリッジ係合部50に設けられた対応する開口部の大きさに収まるように形成されている。カートリッジ係合部50が、第1外側カバー24及び第2外側カバー26の間を回転することによって、カートリッジ係合部50の開口部はエアロゾル吸入装置16と協動する。
【0049】
第1外側カバー24及び第2外側カバー26は、エアロゾル物質試料の収集中において様々な利点を提供する。例えば、両外側カバー24、26は、サンプルカートリッジホルダ12内のサンプルカートリッジ28を覆う。これにより、エアロゾル物質試料の収集中において、エアロゾルに含まれる成分の損失及び、サンプルカートリッジ28に含まれるフィルタ部材36中の水分の増減が抑制される。第1外側カバー24は、サンプルカートリッジ28の出し入れを容易にするべく、開口部46の回転移動が手動で行われるように構成されている。
【0050】
図2及び
図3に示すように第1外側カバー24は、エアロゾル発生装置を保持し且つ移動させるためのドッキング装置14に隣接して配置されている。ドッキング装置14は、トレイ52と、エアロゾル発生装置のノズルを受容する調整可能な開口部56を含む調節可能なノズル係合装置54とを有する。開口部56は、エアロゾル発生装置に応じて異なる形状及びサイズに係合するように設計される。例えば、一実施形態では、ロッド状又はスティック状をなすエアロゾル形成基材はエアロゾル発生装置に投入される。本実施例では、エアロゾル形成基材の一方の端部がノズル係合装置54の開口部56に挿入される。
【0051】
他の実施形態では、エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置内に含まれる液体を含む。この実施形態では、エアロゾル発生装置は、ノズル係合装置54の開口部56に挿入されるべき吸口を含む。
【0052】
ドッキング装置14は、サンプルカートリッジホルダ12に対して移動可能である。例えば、一様態では、ドッキング装置14は、トレイ52に配置されたエアロゾル発生装置を、サンプルカートリッジホルダ12に対して近接する方向及び離反する方向に移動可能なリニアアクチュエータモータを含む。例えば、まずエアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材と共に配置される。その後、エアロゾル発生装置を作動させることにより、エアロゾル形成基材は、燃焼されることなく加熱される。その後、固形のロッド状をなすエアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生装置の吸口は、ノズル係合装置54の開口部56に挿入される。エアロゾル発生装置がドッキング装置14に適切に受容されると、ドッキング装置14はエアロゾル発生装置をサンプルカートリッジホルダ12に保持された複数のサンプルカートリッジ28の内の1つと係合するよう、エアロゾル発生装置を移動させる。特にドッキング装置14は、エアロゾル発生装置をドッキング装置14に近接する方向に移動させることによって、非係合位置から係合位置に変位させる。係合位置は、ノズル係合装置54に受容されたエアロゾル発生装置の吸口が、サンプルカートリッジホルダ12に保持されたサンプルカートリッジ28の入口32に係合する位置である。前述のように、サンプルカートリッジ28は、エアロゾル発生装置の吸口に対して液密性を確保するためのガスケット(第1ガスケット42)を含む。
【0053】
エアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル収集物質の1回目のパフがサンプルカートリッジ28を通過すると、ドッキング装置14は、エアロゾル発生装置をサンプルカートリッジホルダ12から離反する方向、即ち係合位置から非係合位置に変位させる。その後、サンプルカートリッジホルダ12のカートリッジ係合部50を回転させることにより、サンプルカートリッジホルダ12に保持された、後続のサンプルカートリッジ28が、ドッキング装置14に整合するように配置される。その後、ドッキング装置14は、再びエアロゾル発生装置を非係合位置から係合位置に変位させる。更にその後、エアロゾル収集物質の2回目のパフが、前記した後続のサンプルカートリッジ28を通過することにより、2回目のエアロゾル物質試料が収集される。上記方法は、必要な回数だけ、エアロゾル形成基材が枯渇するまで又は、エアロゾル発生装置が加熱されている間だけ繰り返される。これらによって、各サンプルカートリッジ28は、対応するエアロゾルの単一のパフからエアロゾル収集物質試料を収集できる。
【0054】
図5及び
図6を参照することにより、エアロゾル吸入装置16がより詳細に示されている。エアロゾル吸入装置16は、サンプルカートリッジ28のうちの1つと係合し且つ、ドッキング装置14に受容されたエアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル(すなわち、エアロゾル収集物質のパフ)を調整可能な所定の体積をもって収集する。エアロゾル吸入装置16は、サンプルカートリッジホルダ12の、ドッキング装置14の反対側、即ちサンプルカートリッジホルダ12の第2外側カバー26に隣接して配置された吸入ノズル58を含む。吸入ノズル58は、距離センサ62によって制御され且つ、吸入力を発生させるシリンダ60と流体連通している。
【0055】
例えば、シリンダ60は、シリンダ60内にプランジャ64を含む空気圧シリンダ又は油圧シリンダであってよい。プランジャ64がシリンダ60から引き出される方向に変位されることによって、吸入力が発生し、その吸入力は吸入ノズル58に伝達される。吸入ノズル58は、ドッキング装置14に受容されたエアロゾル発生装置と係合位置にあるサンプルカートリッジ28の出口34と整合するようにサンプルカートリッジホルダ12に配置される。前述のように、エアロゾル収集物質試料を収集する各サンプルカートリッジ28は、吸入ノズル58に対して液密性を確保するためのガスケット(第2ガスケット44)を含む。一実施形態では、シリンダ60は、エアロゾルのパフの吸引及び排出を行うための電磁弁を備えた空気圧ジャッキである。距離センサ62は、所定のパフ体積を制御するべく、プランジャ64の変位を制御する。例えば、ある実施形態では、距離センサ62は、プレート66に接触するように配置されたレーザを含む。プレート66は、プランジャ64に接続され、プランジャ64の変位に連動して前後に移動する。このようにして、シリンダ60が吸入ノズル58に供給される吸入量を制御するべく、距離センサ62に含まれるレーザは、プランジャ64がシリンダ60から引き出される方向に変位した変位量を正確に測定する。これにより、ドッキング装置14に受容されたエアロゾル発生装置から収集すべきエアロゾルのパフの体積が所定値に制御及び設定される。
【0056】
例えばエアロゾル吸入装置16は、パフの容量を略35mLから略100mLまでの範囲を0.2mL単位で制御できる。エアロゾル物質試料の収集時において、所定のパフ体積は一律であるとよい。パフ体積は、消費されるエアロゾル形成基材、ドッキング装置14に受容されたエアロゾル発生装置の種類又は、試験者が望む試験内容に基づいて設定されるとよい。
【0057】
図1に示すように、上記する本開示のエアロゾル物質収集装置は、タッチスクリーン20を含むコントローラ18を有する。タッチスクリーン20は、使用者によるエアロゾル物質収集装置の起動及び、使用者が入力したパラメータに従ったエアロゾル物質収集方法の実行の操作を受け付ける。例えば、タッチスクリーン20の操作によって、エアロゾルの生成方法の選択、パフ処理の開始、パフ体積の調整及び、各処理ステップ間の時間間隔の設定が行われる。
【0058】
例えば、一実施形態では、サンプルカートリッジホルダ12、ドッキング装置14、及びエアロゾル吸入装置16は、1つ以上のマイクロプロセッサを含むコントローラ18と通信可能である。コントローラ18は、ドッキング装置14及びサンプルカートリッジホルダ12が同期するように、ドッキング装置14の動き及びサンプルカートリッジホルダ12のカートリッジ係合部50の動きを制御する。また、コントローラ18は、エアロゾル吸入装置16と通信することによって、サンプルカートリッジ28がドッキング装置14に受容されたエアロゾル発生装置と整合した位置にあるとき、ドッキング装置14に受容されたエアロゾル発生装置から生成されるエアロゾル収集物質のパフが周期的に吸引される。例えば、コントローラ18は、パフ体積及びパフの間隔を制御及び調整するべく、シリンダ60及び距離センサ62と通信可能である。例えば、ある実施形態では、エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材が本開示のエアロゾル物質収集装置に搭載された後、サンプルカートリッジホルダ12のサンプルカートリッジ28に係合すると、コントローラ18はエアロゾル吸入装置16を制御することによってパフを開始する。そのパフがサンプルカートリッジ28を通過することによって、エアロゾル物質試料が収集される。1つのパフのエアロゾルが収集されるまでにかかる時間は、一般的に略1秒より長く、例えば略2秒より長く、例えば略3秒より長く、一般的に略6秒より短く、略4秒より短い。現在最も広く採用されているパフ持続時間は、eHTP、cHTPなどの加熱式の製品の場合、2秒であって、電子たばこ及びハイブリッド式のたばこ製品の場合、一般的に3秒である。エアロゾル物質試料のパフがサンプルカートリッジ28に収集された後、サンプルカートリッジホルダ12のカートリッジ係合部50が回転される。コントローラ18は、本開示のエアロゾル物質収集装置内に含まれる様々な装置の動き及び、エアロゾルの生成方法に対して規定されたパフの間隔に応じて、エアロゾルのパフ間の時間を制御する。一般に、エアロゾル物質試料を収集する間隔は略6秒から略60秒の範囲である。コントローラ18には、単一のエアロゾル発生装置から生成されるパフの数を制御するためのカウンタが内蔵されてあってよい。カウンタは、試験されたエアロゾル形成基材又はスティックの数及び、パフ毎に各エアロゾル収集カートリッジに収集されたエアロゾルのパフの数を制御するべく、コントローラ18に含まれるとよい。またコントローラ18は、サンプルカートリッジホルダ12に含まれる各サンプルカートリッジ28にエアロゾル物質試料が収集されたことをもって、サンプルカートリッジ28をサンプルカートリッジホルダ12から取り外し可能であることを示すカウンタを更に含むとよい。
【0059】
エアロゾル物質試料がサンプルカートリッジ28のフィルタ部材36に収集されると、フィルタ部材36は、サンプルカートリッジ28から取り外されることにより、適切な分析に使用される。例えば、エアロゾル物質試料に含まれる様々な成分の定性及び、各成分の定量が行われる。本開示のエアロゾル物質収集装置は、様々な利益を提供する。例えば、本開示のエアロゾル物質収集装置は、他の装置を使用することなく、単一のエアロゾル形成基材から複数のエアロゾル物質試料を収集できる。また、本開示のエアロゾル物質収集装置は完全に自動化されている。
【0060】
本開示のエアロゾル物質収集装置及び方法は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解できるであろう。
【0061】
実施例1
【0062】
以下の例(実施例1)は、本開示のエアロゾル物質収集装置及びエアロゾル物質収集装置方法が市販の喫煙装置と同様に正確であることを実証するために実施された。
【0063】
実施例1では、フランスで購入したPhilip Morrisから提供されているHEETS AMBERブランドの非燃焼加熱式スティックが用いられた。本開示のエアロゾル物質収集装置において、上記非燃焼加熱式のスティックを試験するために使用された非燃焼加熱式の装置には、IQOSブランドの装置が用いられた。
【0064】
非燃焼加熱式たばこ製品のスティックは、本開示のエアロゾル物質収集装置及び、市販のリニア喫煙装置に配置された。市販のリニア喫煙装置には、Borgwaldt RM4が用いられた。両装置の設定では、カナダ保健省の提示する重喫煙の内容に従い、パフ体積が55mL、パフ持続時間が2秒間及び、パフの間隔が30秒に設定された。
【0065】
本開示のエアロゾル物質収集装置における試験では、エアロゾル発生装置内の10本の非燃焼加熱式たばこ製品のスティックに対して行われ、パフはパフ毎に収集された。即ち、各パフは、対応するサンプルカートリッジに順次収集された。各サンプルカートリッジには、各HTPスティックの1つのパフが収集され、喫煙時間の終了時には、合計10のパフが収集された。市販のリニア喫煙装置における試験では、エアロゾル発生装置内の3本の非燃焼加熱式たばこ製品のスティックに対して行われ、パフはまとめて収集された。
【0066】
その結果を下記の表1に示す。
【0067】
【0068】
上記のように、本開示のエアロゾル物質収集装置及びエアロゾル物質収集方法を用いて得られた結果は、市販のリニア喫煙装置を用いて得られた結果と非常によく類似していた。
【0069】
実施例2
【0070】
実施例2は、エアロゾル物質収集装置及びエアロゾル物質収集方法の様々な利点及びメリットを示す。
【0071】
本開示のエアロゾル物質収集装置は、実施例1で使用されたHTPスティック及び、HTP装置を用いた試験に使用される。エアロゾル発生加熱装置内のHTPスティックから生成されるエアロゾル物質試料は、本開示のエアロゾル物質収集装置によって収集された。本開示のエアロゾル物質収集装置の設定では、パフ体積が55mL、パフ持続時間が2秒間及び、パフの間隔が10秒に設定された。10本の非燃焼加熱式のスティックは、パフ毎に収集される方法にて試験された。
【0072】
各パフのエアロゾル収集量、ニコチン及び、グリセリンを分析した。その結果を下記の表2~表4に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
上記のように、本開示のエアロゾル物質収集装置及びエアロゾル物質収集方法は、非燃焼加熱式たばこ製品によって生成される各パフを監視することができる。
【0077】
本発明は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載した本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変更又は変形が可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。加えて、様々な実施形態の態様は、その全体又はその一部を相互に交換できることを理解されたい。更に、当業者であれば、上記の詳細な説明及び実施例は説明のみを目的としており、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の範囲をいかなる意味でも限定することを意図していないことを理解できるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】