(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】自動車を作動させる方法、装置、自動車
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20230607BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20230607BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B60T8/17 C
B60T13/74 D
B60T7/02 B
B60T7/02 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568860
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021061974
(87)【国際公開番号】W WO2021228674
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102020206139.4
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ザイザー,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ダールケ,フランツ
【テーマコード(参考)】
3D048
3D124
3D246
【Fターム(参考)】
3D048AA06
3D048BB25
3D048CC41
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH42
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3D246AA09
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3D246GA04
3D246GB37
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA08A
3D246LA04A
3D246LA15Z
(57)【要約】
【課題】 本発明は自動車(1)を作動させる方法であって、前記自動車(1)が第1の調整要素(18)と、操作可能な第2の調整要素(19)と、起動可能なブレーキ力発生器(15)およびブレーキマスタシリンダ(14)を備えるブレーキ装置(12)とを有しており、前記ブレーキマスタシリンダ(14)内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持されており、前記第1の調整要素(18)は第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能であり、前記端部位置の間に交替位置(WS)を設定し、前記第1の調整要素(18)の現在位置が前記交替位置(WS)を越えれば、前記自動車(1)に対し加速値を設定し、前記現在位置が前記交替位置(WS)を下回れば、前記自動車(1)に対し第1の減速値(VW)を設定し、前記第1の減速値(VW)の設定の際、前記液圧ピストンが前記第1の減速値(VW)の大きさに依存して変位するように前記ブレーキ力発生器(15)を起動させ、前記自動車(1)のドライバーによる前記第2の調整要素(19)の操作の際に前記液圧ピストンを変位させる、自動車を作動させる方法に関する。
【解決手段】 前記ドライバーによる前記第2の調整要素(19)の操作を検知する際に、前記第1の減速値(VW)を減少させることが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を作動させる方法であって、前記自動車(1)が第1の調整要素(18)と、操作可能な第2の調整要素(19)と、起動可能なブレーキ力発生器(15)およびブレーキマスタシリンダ(14)を備えるブレーキ装置(12)とを有し、前記ブレーキマスタシリンダ(14)内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持され、前記第1の調整要素(18)が第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能であり、前記端部位置の間に交替位置(WS)を設定し、前記第1の調整要素(18)の現在位置が前記交替位置(WS)を越えれば、前記自動車(1)に対し加速値を設定し、前記現在位置が前記交替位置(WS)を下回れば、前記自動車(1)に対し第1の減速値(VW)を設定し、前記第1の減速値(VW)の設定の際、前記液圧ピストンが前記第1の減速値(VW)の大きさに依存して変位するように前記ブレーキ力発生器(15)を起動させ、前記自動車(1)のドライバーによる前記第2の調整要素(19)の操作の際に前記液圧ピストンを変位させる前記方法において、前記ドライバーによる前記第2の調整要素(19)の操作を検知する際に、前記第1の減速値(VW)を減少させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の調整要素(19)の操作の際、第2の減速値を設定し、前記第2の減速値の設定の際、前記液圧ピストンが前記第2の減速値の大きさに依存して変位するように前記ブレーキ力発生器(15)を起動させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の減速値(VW)を、前記第2の調整要素(19)の操作の程度に依存して連続的に変化させることを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の減速値(VW)を、前記第2の調整要素(19)の操作を検知してすぐに減少させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の減速値(VW)を、前記第1の調整要素(18)の移動とは独立に減少させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキ装置(12)が少なくとも1つの摩擦ブレーキ機構(13)を有し、前記ブレーキマスタシリンダ(14)を前記摩擦ブレーキ機構(13)のスレーブシリンダと流動技術的に結合させ、その結果前記液圧ピストンの変位の際に前記摩擦ブレーキ機構(13)が操作されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動車(1)が少なくとも1つの電気機械(7)を有し、前記電気機械(7)を前記液圧ピストンの変位の程度に依存して発電機で作動させることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
自動車を作動させるための装置であって、前記自動車(1)が、第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能である第1の調整要素(18)と、操作可能な第2の調整要素(19)と、ブレーキ力発生器(15)およびブレーキマスタシリンダ(14)を備えるブレーキ装置(12)とを有し、前記ブレーキマスタシリンダ(14)内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持されている前記装置において、特に、規定どおりの使用の際に、請求項1~7のいずれか一項による方法を実施するために整備されている制御器(17)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項9】
第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能である第1の調整要素(18)と、操作可能な第2の調整要素(19)と、ブレーキ装置(12)とを備え、前記ブレーキ装置(12)が起動可能なブレーキ力発生器(15)とブレーキマスタシリンダ(14)とを有し、前記ブレーキマスタシリンダ(14)内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持されている自動車において、請求項8による装置(16)が設けられていることを特徴とする自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を作動させる方法であって、前記自動車が第1の調整要素と、操作可能な第2の調整要素と、起動可能なブレーキ力発生器およびブレーキマスタシリンダを備えるブレーキ装置とを有し、前記ブレーキマスタシリンダ内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持され、前記第1の調整要素が第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能であり、前記端部位置の間に交替位置を設定し、前記調整要素の現在位置が前記交替位置を越えれば、前記自動車に対し加速値を設定し、前記現在位置が前記交替位置を下回れば、前記自動車に対し第1の減速値を設定し、前記第1の減速値の設定の際、前記液圧ピストンが前記第1の減速値の大きさに依存して変位するように前記ブレーキ力発生器を起動させ、前記自動車のドライバーによる前記第2の調整要素の操作の際に前記液圧ピストンを変位させる前記方法に関するものである。
【0002】
さらに、本発明は、制御器を備えた、自動車を作動させるための装置に関する。
【0003】
さらに、本発明はこの種の装置を備えた自動車に関する。
【背景技術】
【0004】
冒頭で述べた種類の方法および自動車は、従来技術から知られている。通常、自動車は、ブレーキマスタシリンダを備えた液圧式のブレーキ装置を有し、ブレーキマスタシリンダ内には少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持されている。液圧ピストンが変位すると、自動車を減速させる減速トルクが発生する。ブレーキ装置内に、起動可能な電気機械式のブレーキ力発生器を組み付けることが多くなってきている。この種のブレーキ力発生器は電動機を有し、電動機は、伝動機構により、液圧ピストンが電動機によって変位可能であるように液圧ピストンと連結されている。
【0005】
加えて、特に電気駆動機を備えた自動車がいわゆるワンペダル機能を備えた第1の調整要素を有していることが増えている。この種の調整要素により、自動車に対し選択的に加速または減速を設定可能である。第1の調整要素は第1の端部位置と第2の端部位置との間で移動可能であり、この場合これら端部位置の間に交替位置が設定される。第1の調整要素を用いて自動車を作動させるため、第1の調整要素の現在位置が監視される。その際、第1の調整要素の現在位置が交替位置を越えていれば、自動車に対し加速値が設定される。第1の調整要素の現在位置が交替位置を下回っていれば、自動車に対し第1の減速値が設定される。前述したワンペダル機能は、One-Pedal-Driving(OPD)とも呼ばれる。自動車が、ワンペダル機能を備えた第1の調整要素と、起動可能なブレーキ力発生器を備えたブレーキ装置との双方を有していれば、第1の減速値の設定の際に、通常は、液圧ピストンが第1の減速値の大きさに依存して変位するようにブレーキ力発生器またはブレーキ力発生器の電動機が起動される。その際、液圧ピストンの変位の程度は自動車の減速の程度と対応している。
【0006】
また、自動車は、たとえばブレーキペダルのような操作可能な第2の調整要素を有しているのが通常であり、この場合自動車のドライバーによる第2の調整要素の操作の際に液圧ピストンが変位する。第2の調整要素を操作するには、ドライバーは操作に抵抗する反力に打ち勝たねばならない。反力は、反力に依存する自動車の減速度を記述する減速度・反力特性曲線によって記述される。
【0007】
ワンペダル機能を備えた第1の調整要素がなければ、減速度・反力特性曲線は通常特徴的な経過を有する。この経過にドライバーは慣れている。ドライバーが自動車の減速度を増大させたければ、ドライバーは、たとえばこれまで操作されなかった第2の調整要素を操作するために、特定の第1の反力に打ち勝たねばならない。
【0008】
しかしながら、ワンペダル機能を備えた第1の調整要素も設けられていれば、前述したように、第1の減速値の設定の際に、液圧ピストンが変位するようにブレーキ力発生器が起動される。その際、自動車の減速度は液圧ピストンの変位の程度と対応している。いま、ドライバーがこれまで操作されなかった第2の調整要素の操作によって自動車の減速度を増大させたければ、このためにドライバーは、第1の反力よりも大きい反力に打ち勝たねばならない。このため、液圧ピストンはすでに変位してしまっており、自動車を早くも減速させるという結果になる。ドライバーにとってこれは不慣れなことであり、したがって望ましいものではない。
【発明の概要】
【0009】
請求項1の構成要件を備える本発明による方法によって、ドライバーが自動車の減速度を増大させるために打ち勝たねばならない反力が少なくともほぼ期待される反力に対応していることが達成される。このため、請求項1の構成要件を備える本発明による方法は、ドライバーによる第2の調整要素の操作を検知する際に、第1の減速値を減少させることを特徴としている。すなわち、ドライバーが第2の調整要素を操作していることが検知されれば、第1の減速値を減少させる。第1の減速値の減少のために、少なくとも一時的に自動車の減速度も減少する。対応的に、第2の調整要素の操作によって自動車の減速度を新たに増大させるためにドライバーが打ち勝たねばならない反力が減少する。好ましくは、第2の調整要素は第3の端部位置と第4の端部位置との間で特に無段階に移動可能である。好ましくは、反力は、ドライバーによる第2の調整要素の操作の際に圧縮されるばね機構によって提供される。すなわち、ばね機構は第2の調整要素を第3の端部位置の方向に押し、特に第3の端部位置まで押す。ドライバーが反力に反作用する操作力を提供しなければ、第2の調整要素は非操作状態にある。第2の調整要素の操作とは、ドライバーが第2の調整要素に作用する操作力を提供し、この操作力によって、非操作状態での第2の調整要素が占める位置と比較される第4の端部位置の方向に第2の調整要素の位置が移動することと理解される。好ましくは、第2の調整要素の位置はブレーキ力発生器の起動によって影響を受けない。非操作状態では、第2の調整要素の位置はこのとき第3の端部位置に対応している。すなわち、液圧ピストンが変位するようにブレーキ力発生器が起動されれば、第2の調整要素は第3の端部位置にとどまる。これとは択一的に、第2の調整要素は、当該第2の調整要素の位置がブレーキ力発生器の起動によって変更されるように液圧ピストンおよび/または変位可能に支持されているブレーキ力発生器の操作要素と連結されている。たとえば、第2の調整要素は、液圧ピストンが変位するようにブレーキ力発生器が起動されれば、第4の端部位置の方向に移動する。対応的に、非操作状態での第2の調整要素の位置は可変であり、第1の減速値によって、したがってブレーキ力発生器の起動または液圧ピストンの変位の程度によって影響を受ける。
【0010】
有利な実施形態では、第2の調整要素の操作の際、第2の減速値を設定し、この場合第2の減速値の設定の際、液圧ピストンが第2の減速値の大きさに依存して変位するようにブレーキ力発生器を起動させることが企図されている。すなわち、第2の調整要素を操作すると、液圧ピストンは少なくともブレーキ力発生器を用いて変位せしめられる。択一的にまたは付加的に、第2の調整要素と液圧ピストンとの間に機械的連結部が設けられ、その結果液圧ピストンは、第2の調整要素の操作の際に、この機械的連結部のために変位せしめられる。好ましくは、第2の減速値の大きさは第2の調整要素の操作の程度と次のように対応しており、すなわち操作の程度が大きくなる場合に第2の減速値が大きくなるように対応している。前述したように、第1の減速値の減少によって少なくとも一時的に自動車の減速度の減少が生じる。第2の調整要素の操作の際に第2の減速値が設定されると、減速度の一時的な減少は、好ましくは、第2の減速値が増大するよりも強く第1の減速値が減少することによって達成される。択一的にまたは付加的に、自動車の減速度の減少は、好ましくは、第3の端部位置に境を接して減速範囲が設定されることによって達成され、この場合第2の調整要素の位置がこの減速範囲内にあれば、第2の減速値は設定されず、または、ゼロの第2の減速値が設定される。
【0011】
有利な実施形態によれば、第1の減速値を、第2の調整要素の操作の程度に依存して連続的に変化させることが設けられている。第1の減速値のこのような変化は、ドライバーにとって特に快適である。これに対し、第1の減速値の不連続な、または、段階的な変化は、快適性を阻害することがある。好ましくは、第2の調整要素の操作の程度が減少すれば、第1の減速値を再び増大させる。
【0012】
好ましくは、第1の減速値を、第2の調整要素の操作を検知してすぐに減少させる。すなわち、第1の減速値を可能限り迅速に減少させる。第1の減速値をすぐに減少させるので、即座に1つの状態が達成され、この状態以後は、反力の増大が望む通りに自動車の減速度の増大を伴う。
【0013】
好ましくは、第1の減速値を、第1の調整要素の移動とは独立に減少させる。すなわち、第2の調整要素が操作されると、第1の調整要素の位置が変化しなくても、または、一定のままであっても、第1の減速値を減少させる。
【0014】
有利な実施形態によれば、ブレーキ装置が少なくとも1つの摩擦ブレーキ機構を有し、この場合ブレーキマスタシリンダを摩擦ブレーキ機構のスレーブシリンダと流動技術的に結合させ、その結果液圧ピストンの変位の際に摩擦ブレーキ機構が操作されることが設けられている。すなわち、自動車は摩擦ブレーキ機構の操作に基づいて減速される。これは技術的に特に簡単に実施可能である。
【0015】
有利な実施形態によれば、自動車が少なくとも1つの電気機械を有し、この場合電気機械を液圧ピストンの変位の程度に依存して発電機で作動させることが設けられている。自動車の減速は、電気機械を発電機で作動させることによって達成される。その際、液圧ピストンの変位の際にブレーキマスタシリンダから搬送される作動液は、好ましくは、ブレーキマスタシリンダと流動技術的に結合されている少なくとも1つの低圧流体アキュムレータ内へ搬送される。これによって摩擦ブレーキ機構の操作が低減、または、阻止される。
【0016】
本発明による、自動車を作動させるための装置は、前記自動車が、第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能である第1の調整要素と、操作可能な第2の調整要素と、ブレーキ力発生器およびブレーキマスタシリンダを備えるブレーキ装置とを有し、この場合前記ブレーキマスタシリンダ内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持され、請求項8の構成要件により、特に、規定どおりの使用の際に本発明による方法を実施するために整備されている制御器が設けられていることを特徴としている。これからも、すでに取り上げた利点が得られる。更なる有利な構成要件および構成要件の組み合わせは、以前の説明および請求の範囲から明らかである。
【0017】
本発明による自動車は、第1の端部位置と第2の端部位置との間で特に無段階に移動可能である第1の調整要素と、操作可能な第2の調整要素と、ブレーキ装置とを備え、この場合前記ブレーキ装置は、起動可能なブレーキ力発生器とブレーキマスタシリンダとを有し、前記ブレーキマスタシリンダ内に少なくとも1つの液圧ピストンが変位可能に支持されている。この自動車は、請求項9の構成要件により、本発明による装置が設けられていることを特徴としている。これからも、すでに取り上げた利点が得られる。更なる有利な構成要件および構成要件の組み合わせは、以前の説明および請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車1の簡略図である。自動車1は、本実施形態では4つの車輪2と3を有し、この場合車輪2は前車軸4に付設され、車輪3は後車軸5に付設されている。さらに、自動車1は駆動機7を備えた駆動装置6を有し、駆動機は、本実施形態では、発電機で作動可能な電気駆動機7である。駆動機7は、差動装置8と軸9,10,11とによって前車軸4の車輪2と結合され、その結果車輪2は駆動機7によって駆動可能である。
【0020】
自動車1は、さらに、ブレーキ装置12を有している。ブレーキ装置12は4つの摩擦ブレーキ機構13を有し、この場合車輪2と3のそれぞれに、これら摩擦ブレーキ機構13のうちのそれぞれ1つの他の摩擦ブレーキ機構が付設されている。摩擦ブレーキ機構13を操作するために、ブレーキ装置12はブレーキマスタシリンダ14を有し、ブレーキマスタシリンダは、本実施形態ではタンデムブレーキマスタシリンダ14として形成され、その結果ブレーキマスタシリンダ14内には、図示していない2つの液圧ピストンが変位可能に支持されている。ブレーキマスタシリンダ14は、摩擦ブレーキ機構13のスレーブシリンダと流動技術的に結合されている。
【0021】
ブレーキマスタシリンダ14には、ブレーキ力発生器15が付設されている。ブレーキ力発生器15は、起動可能な電動機を有している。電動機は、当該電動機の起動の際に液圧ピストンを変位させるように液圧ピストンと連結されている。
【0022】
自動車1は、さらに、制御器17を備えた装置16を有している。制御器17は通信技術的に駆動機7と結合され、駆動機7を起動させるために形成されている。また、制御器17は通信技術的にブレーキ力発生器15と結合され、ブレーキ力発生器15またはブレーキ力発生器15の電動機を起動させるために形成されている。
【0023】
自動車1は、さらに、第1の調整要素18を有している。第1の調整要素18はペダルとして形成され、第1の端部位置と第2の端部位置との間で無段階に移動可能である。その際、第1の端部位置における第1の調整要素18の位置は、第1の端部位置から第2の端部位置への調整距離に関して0%のパーセント値に相当している。第2の端部位置では、第1の調整要素18の位置は100%のパーセント値に相当している。第1の調整要素18は通信技術的に制御器17と結合され、その結果制御器17には、第1の調整要素18の現在位置が提供される。制御器17は、第1の調整要素18の端部位置間に設置される仮想交替位置を設定する。
【0024】
第1の調整要素18の位置が交替位置を越えると、制御器17は自動車1に対し加速値を与える。このとき、第1の調整要素18の現在位置は交替位置と第2の端部位置との間に設置されている加速範囲内にある。加速値が設定されると、制御器17は、自動車1が加速されるように駆動機7を起動させる。
【0025】
第1の調整要素18の位置が交替位置を下回ると、制御器17は自動車1に対し第1の減速値を設定する。このとき、現在位置は第1の端部位置と交替位置との間に設置されている減速範囲内にある。第1の減速値が自動車1に対し設定されると、制御器17は、液圧ピストンが第1の減速値の大きさに依存して変位されるようにブレーキ力発生器15を起動させる。第1の減速値が増大すると、液圧ピストンの変位の程度も増大する。
【0026】
液圧ピストンが変位すると、自動車1は減速され、この場合自動車1の減速の程度は液圧ピストンの変位の程度と対応している。液圧ピストンの変位により、作動液がブレーキマスタシリンダ14から搬送される。好ましくは、自動車1は摩擦ブレーキ機構13の操作によって減速される。このため、作動液をスレーブシリンダ内へ搬送する。これとは択一的に、自動車1は好ましくは駆動機7の発電機作動によって減速される。この事例では、摩擦ブレーキ機構13の操作を阻止するため、作動液を少なくとも1つの図示していない低圧流体アキュムレータ内へ搬送する。
【0027】
自動車1は、さらに、第2の調整要素19を有し、第2の調整要素はブレーキペダル19である。ブレーキペダル19は、第3の端部位置と第4の端部位置との間で無段階に移動可能である。その際、第3の端部位置でのブレーキペダル19の位置は、第3の端部位置から第4の端部位置への調整距離に関して0%のパーセント値に相当している。第4の端部位置では、ブレーキペダル19の位置は100%のパーセント値に相当している。
【0028】
ブレーキペダル19にはばね機構20が付設され、ばね機構はブレーキペダル19を第3の端部位置の方向に、特に第3の端部位置まで押している。したがって、ブレーキペダル19はばね機構20のばね力に抗して第4の端部位置の方向に移動可能であり、その結果ばね力は、ブレーキペダル19を第4の端部位置の方向に移動させるために克服しなければならない反力である。ばね機構20は、一方ではブレーキペダル19と、他方では図示していないハウジング、特にブレーキ力発生器15のハウジングとの間で、予め緊張させて保持されている。したがってばね機構20は、一方では直接にまたはブレーキペダル19で間接的に支持され、他方では直接にまたはハウジングで間接的に支持されている。
【0029】
ブレーキペダル19は、自動車1のドライバーによって操作可能である。ブレーキペダル19の操作とは、ドライバーがブレーキペダル19を次のように操作力で付勢すること、すなわちブレーキペダル19が非操作状態で占める位置と比べて、ブレーキペダル19が第4の端部位置の方向に変位するように操作力で付勢することと理解される。
【0030】
本実施形態では、ブレーキペダル19は次のように液圧ピストンと機械的に連結されており、すなわちブレーキペダル19が操作されると、液圧ピストンが前記機械的な連結によって変位するように液圧ピストンと機械的に連結されている。他の実施例によれば、ブレーキペダル19と液圧ピストンとの間のこの種の機械的連結が省略される。
【0031】
本実施形態では、ブレーキペダル19は変位可能に支持されているブレーキ力発生器15の操作要素と次のように連結されており、すなわち液圧ピストンが変位するようにブレーキ力発生器15を起動したときに、ブレーキペダル19が第4の端部位置の方向に移動するように連結されている。対応的に、非操作状態でのブレーキペダル19の位置は可変であり、第1の減速値の大きさによって影響を受け、したがってブレーキ力発生器19の起動または液圧ピストンの変位の程度によって影響を受ける。
【0032】
ブレーキペダル19は通信技術的に制御器17と結合され、その結果制御器17には、ブレーキペダル19の操作の程度またはブレーキペダル19の現在位置が提供される。ブレーキペダル19を操作すると、制御器17は自動車1に対し第2の減速値を設定する。自動車1に対する第2の減速値が設定されると、制御器17はブレーキ力発生器15を次のように起動させ、すなわち液圧ピストンが第2の減速値の大きさに依存して変位するように起動させる。第2の減速値が増大すると、液圧ピストンの変位の程度も増大する。
【0033】
次に、
図2に関して、自動車1を作動させる有利な方法を説明する。このため、
図2は第1のグラフA、第2のグラフB、第3のグラフCを示している。
【0034】
第1のグラフAでは、第1の調整要素18の位置のパーセント値が時間tに依存して図示されている。第2のグラフBでは、第1の減速値VWが時間tに依存して図示されている。第3のグラフCでは、ブレーキペダル19の位置のパーセント値が図示されている。
【0035】
第1の時点T1と第2の時点T2の間で、第1の調整要素18の位置は加速範囲にある。対応的に、時点T1とT2の間では、第1の減速値VWは設定されない。ブレーキペダル19の位置は第3の端部位置に対応している。
【0036】
第2の時点T2と第3の時点T3の間では、第1の調整要素18は交替位置WSから出発して第1の端部位置へ移動し、その結果第3の時点T3で、第1の調整要素18の位置は第1の端部位置に対応している。以下では、第1の調整要素18の位置は一定に保持される。時点T2とT3の間での第1の調整要素18の位置は減速範囲にあるので、制御器17は第1の減速値VWを設定する。第1の端部位置への第1の調整要素18の移動のために、時点T2とT3の間では、第1の減速値VWの大きさが第1の減速値の大きさまで連続的に上昇して最大値MWに達する。第1の減速値VWの設定に基づき、制御器17は、ブレーキ力発生器15が液圧ピストンを変位させるように第2の時点T2からブレーキ力発生器15を起動させる。その際、液圧ピストンの変位の程度は第1の減速値VWの大きさと対応している。第1の減速値VWが大きくなると、液圧ピストンの変位の程度も大きくなる。ブレーキペダル19と液圧ピストンおよび/またはブレーキ力発生器15の操作要素との連結のために、ブレーキペダル19は第4の端部位置の方向に移動する。その際、ドライバーによる操作力は提供されない。この限りでは、ブレーキペダル19は時点T2とT3の間で非操作状態にある。
【0037】
第4の時点T4から、ブレーキペダル19がドライバーによって操作される。すなわち、ドライバーは反力を上回る操作力を提供し、その結果ブレーキペダル19はドライバーによって第4の端部位置の方向に移動する。第4の時点T4と第5の時点T5の間で、ブレーキペダル19は連続的に第4の端部位置の方向に移動し、その結果ブレーキペダル19の位置のパーセント値が連続的に上昇する。ブレーキペダル19の操作は制御器17によって検知される。その結果、制御器17は時点T4とT5の間で第1の減速値VWの大きさを連続的に減少させる。
【0038】
第6の時点T6から、ブレーキペダル19の操作の程度が減少する。すなわちブレーキペダル19は、当該ブレーキペダル19が第7の時点T7で再び非操作状態になるまで、反力によって再び第3の端部位置の方向に移動する。ブレーキペダル19の操作の減少は制御器17によって検知される。その結果、制御器17は時点T6とT7の間で第1の減速値VWの大きさを連続的に増大させる。
【0039】
ブレーキペダル19が時点T4とT7の間で操作されるため、制御器17はこれらの時点の間で第2の減速値をも設定する。しかし、
図2では、第2の減速値の経過は見やすくするために図示していない。
【0040】
図3は、種々の減速度・反力特性曲線を図示した第4のグラフDを示している。減速度・反力特性曲線とは、ばね機構20によって提供される反力Fに依存する自動車1の減速度Vを記述する特性曲線である。
【0041】
第1の減速度・反力特性曲線L1は、第1の調整要素18のワンペダル機能が作動していない時の、または、ワンペダル機能を備えた第1の調整要素が設けられていない時の、ばね機構20によって提供される反力Fに依存する自動車1の減速度を記述している。ワンペダル機能が作動していなければ、第1の調整要素18の操作時には、従来のアクセルペダルによって知られているように常に加速値が設定される。
図3から明らかなように、自動車1の減速を増すためには、ドライバーはこれまで操作されなかった第2の調整要素19から出発して、特定の第1の値W1を持つ反力を克服しなければならない。
【0042】
第2の減速度・反力特性曲線L2は、第1の調整要素18のワンペダル機能が作動している時の、ばね機構20によって提供される反力Fに依存する自動車1の減速度Vを記述している。その際、第1の調整要素18の位置は減速範囲にある。この限りでは、第1の減速値VWが設定され、自動車1は減速される。ブレーキペダル19の操作時に第1の減速値VWが減らなければ、特性曲線L2から見て取れるように、自動車1の減速度Vを増すためにドライバーは特定の第2の値W2を持つ反力を克服しなければならない。値W2は、値W1よりも明らかに大きい。ドライバーは、自動車1の減速度Vを増すような大きな反力Fを克服しなければならないことに慣れていない。
【0043】
第3の減速度・反力特性曲線L3も、第1の調整要素18のワンペダル機能が作動している時に、提供される反力Fに依存する自動車1の減速度Vを記述している。第3の減速度・反力特性曲線L3の事例でも、第1の調整要素18の位置は減速範囲にあり、その結果第1の減速値VWが設定されて、自動車1は減速される。しかし、ドライバーが反力Fを克服し、したがってブレーキペダル19を操作すれば、以前に
図2に関して説明したように、第1の減速値VWは減少する。その結果、自動車1の減速度Vも一時的に減少する。それ故ドライバーは、自動車1の減速度Vを増すために、第1の値W1と第2の値W2との間にある特定の第3の値W3を持つ反力を克服するだけでよい。ドライバーが値W2を持つ反力を克服すれば、第2の減速値の増大が第1の減速値VWの減少よりも優勢になり、その結果総じて車両の減速度Vが上昇する。第3の値W3は第2の値W2よりも小さいので、ドライバーには、第2の特性曲線L2によるブレーキペダル19の操作よりも、第3の特性曲線L3によるブレーキペダル19の操作のほうが快適に思われる。
【符号の説明】
【0044】
1 自動車
7 電気駆動機(電気機械)
12 ブレーキ装置
13 摩擦ブレーキ機構
14 ブレーキマスタシリンダ
15 ブレーキ力発生器
16 装置
17 制御器
18 ペダル(第1の調整要素)
19 ブレーキペダル(第2の調整要素)
VW 第1の減速値
WS 交替位置
【国際調査報告】