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特表2023-525157高結晶性かつ熱安定性の高いフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法
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  • 特表-高結晶性かつ熱安定性の高いフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】高結晶性かつ熱安定性の高いフッ化ビニリデン系ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/22 20060101AFI20230607BHJP
   C08F 4/40 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
C08F14/22
C08F4/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569130
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2021062887
(87)【国際公開番号】W WO2021229081
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】2004832
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】515031137
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドュ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER
(71)【出願人】
【識別番号】520307757
【氏名又は名称】エコール ナシオナル シュペリウール ドゥ シミ ドゥ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】ECOLE NATIONALE SUPERIEURE DE CHIMIE DE MONTPELLIER
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,アントニー
(72)【発明者】
【氏名】デヴィスム,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】アメドゥリ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】エイド,ナディム
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J015CA02
4J015CA14
4J100AC24P
4J100AC27Q
4J100AC27R
4J100AE39Q
4J100BB18Q
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA02
4J100FA03
4J100FA28
(57)【要約】
本発明は、フッ化ビニリデンモノマーを含む少なくとも1つのモノマーを重合させる方法に関し、当該方法は、当該少なくとも1つのモノマーを重合開始剤及び酸化剤と接触させることを含み、ここで、当該重合開始剤は、次の式(I):(RfSO2 -)xMx+を示し、式中、Rfは、1~3個の炭素原子を含むフルオロアルキル基であり、Mx+は、一価カチオン、二価カチオン、三価カチオン、又は四価カチオンから選択される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデンモノマーを含む少なくとも1つのモノマーを重合させる方法であって、前記少なくとも1つのモノマーを重合開始剤及び酸化剤と接触させることを含み、ここで、前記重合開始剤は、次の式(I):
(I) (RfSO2 -)xMx+
を示し、式中、
Rfは、1~3個の炭素原子を含むフルオロアルキル基であり、
Mx+は、一価カチオン、二価カチオン、三価カチオン、又は四価カチオンから選択される、方法。
【請求項2】
前記式中、Rfが1個の炭素原子を含むフルオロアルキル基であり、好ましくはRfはトリフルオロメチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式中、Mx+が、Li+、Na+、K+、NH4 +、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Co2+、Pb2+、Fe3+及びAl3+から選択され、好ましくは、Li+、Na+、K+及びNH4 +から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記式中、xが1又は2であり、好ましくはxは1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤が過酸化化合物、過硫酸塩化合物、二酸素及びハロゲン酸化物から選択され、好ましくは酸化剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムから選択される過硫酸塩化合物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのモノマーが、エチレン結合を含むフッ化ビニリデン以外の含フッ素コモノマー、スチレンコモノマー、メタクリルコモノマー、アクリルコモノマー、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのコモノマーをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エチレン結合を含むフッ化ビニリデン以外の含フッ素コモノマーが、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロブタジエン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2-トリフルオロメタクリル酸、2-トリフルオロメタクリル酸アルキル、α,β-ジフルオロアクリル酸、α,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、β,β-ジフルオロアクリル酸、β,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、α,β,β-トリフルオロアクリル酸、α,β,β-トリフルオロアクリル酸アルキル、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-プロパ-2-エン、ペルフルオロブタジエン及びそれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤を前記重合開始剤と接触させて混合物を形成する第1のステップと、前記混合物を前記モノマーと接触させる第2のステップとを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記重合が、40~100℃、好ましくは50~75℃の温度で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記重合が、界面活性剤の非存在下で実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
フッ化ビニリデン単位を含み、及び、1~3個の炭素原子を含むフルオロアルキル基である末端基Rfを少なくとも部分的に含むポリマーであって、前記ポリマーの平均分子量Mnは、10,000 g/mol以上、好ましくは20,000 g/mol以上、より好ましくは30,000 g/mol~50,000 g/molである、ポリマー。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法で得られる、請求項11に記載のポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ化ビニリデン及び任意でさらにモノマーを重合させる方法に関する。本発明はまた、当該方法で得られ、末端フルオロアルキル基を少なくとも1つ含むポリマーにも関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ポリマーは、熱安定性、(溶媒、油、水、酸及び塩基に対する)化学的不活性、低屈折率、低誘電率、低散逸率、低吸水率並びに優れた耐候性及び耐酸化性といった特有の性質を持ち、付加価値の高い材料である。したがって、航空、マイクロエレクトロニクス、エンジニアリング、化学産業、光学、繊維加工仕上げ、自動車産業、配線絶縁などの多くの分野に適用され得る。
【0003】
中でも、フッ化ビニリデンを含むポリマーは、圧電材料から水処理、リチウムイオン電池まで、幅広い用途で使用できるため、特に重要である。
【0004】
一般に、このようなポリマーは、含フッ素又は非含フッ素界面活性剤及び過硫酸塩開始剤を使用し、水中で乳化重合プロセスを介して調製することができる。当該プロセスは効率が良いものの、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、ペルフルオロオクタン酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸などの界面活性剤の使用は、生物蓄積、毒性、及び残留性といった問題につながる。
【0005】
また、鎖末端の官能基の性質は、ポリマーの熱安定性に影響を与える重要な要因であると考えられる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、又は過硫酸ナトリウムを重合開始剤として使用すると、得られるスルホン酸末端基含有ポリマーは熱安定性が低く、そのような末端基から分解することがある。
【0006】
さらに、フッ化ビニリデン重合由来のポリマーは結晶化度が低く、それによりアセトン、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解性を示す。
【0007】
文献US2009/0124755は、テトラフルオロエチレンの重合単位を含むフルオロポリマー製造のための乳化重合プロセスに関し、当該プロセスではペルフルオロ脂肪族スルフィネートが分散剤として使用される。
【0008】
文献US5285002では、水性乳化重合においてフルオロアルキルラジカル供給源として使用されるフルオロアルキルスルフィネートが開示されている。
【0009】
論文「“First MALDI-TOF Mass Spectrometry of Vinylidene Fluoride Telomers Endowed with Low Defect Chaining” (Macromolecules, 2004, 37, p.7602)」は、ペルオキシピバル酸tert-ブチルによって開始する、トリフルオロヨードメタンでのフッ化ビニリデンのラジカルテロマー化に関するものであり、低分子量のテロマーが生成された。
【0010】
論文「“Novel source of trifluoromethyl radical as efficient initiator for the polymerization of vinylidene fluoride” (Macromolecular Rapid Communications, 2012, 33, p.302)」は、安定ペルフルオロアルキルラジカル(ペルフルオロ-3-エチル-2,4-ジメチル-3-ペンチル)を開始剤として使用したフッ化ビニリデンのラジカル重合について説明している。
【0011】
論文「“Visible-Light hypervalent iodide carboxylate photo(trifluoro)methylations and controlled radical polymerization of fluorinated alkenes” (Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, p.10027)」は、開始剤として超原子価フッ素化化合物を使用したフッ化ビニリデンのラジカル重合を教示している。
【0012】
論文「“Fluoroalkyl pentacarbonylmanganese(I) complexes as initiators for the radical (co)polymerization of fluoromonomers” (Polymers, 2020, 12, 384)」は、ペンタカルボニルマンガン(I)錯体をフッ化ビニリデンのラジカル重合開始のために使用することを開示している。
【0013】
文献US5639837は、フッ素含有オレフィンが、フルオロ脂肪族スルフィネート又はスルフィン酸、及び、塩素酸、臭素酸又は次亜塩素酸イオンの組み合わせである開始系を使用して重合されるプロセスを開示している。
【0014】
文献US7754810は、フルオロポリマー製造のための乳化プロセスに関し、当該プロセスでは、少なくとも2つのフルオロ界面活性剤の組み合わせを分散剤として使用し、当該フルオロ界面活性剤は少なくともペルペルフルオロアルコキシスルフィネート又はペルフルオロアルキルスルフィネートである。
【0015】
文献US10093761は、モノマーとスルフィネート含有分子との重合から誘導されるフッ素含有ポリマーに関する。
【0016】
文献US2014005333は、水、少なくとも1つのエチレン性不飽和フルオロモノマー及び少なくとも1つのオリゴマーフルオロスルフィン化合物の混合により得られるマイクロエマルション並びに/又は少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性モノマーフルオロスルフィン化合物に関する。
【0017】
高い熱安定性及び高い結晶化度を有するポリマーを得ることができ、かつ毒性の問題を引き起こさない、フッ化ビニリデンモノマー含有ポリマーの調製方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0018】
本発明の第1の目的は、フッ化ビニリデンモノマーを含む少なくとも1つのモノマーを重合させる方法であって、当該方法は、当該少なくとも1つのモノマーを重合開始剤及び酸化剤と接触させることを含み、当該重合開始剤は、次の式(I):
(I) (RfSO2 -)xMx+
を示し、式中、
-Rfは、1~3個の炭素原子を含むフルオロアルキル基であり、
-Mx+は、一価カチオン、二価カチオン、三価カチオン、又は四価カチオンから選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、Rfは1個の炭素原子を含むフルオロアルキル基であり、好ましくはRfはトリフルオロメチル基である。
【0020】
いくつかの実施形態では、Mx+は、Li+、Na+、K+、NH4 +、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Co2+、Pb2+、Fe3+及びAl3+から選択され、好ましくは、Li+、Na+、K+及びNH4 +から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、xは1又は2であり、好ましくはxは1である。
【0022】
いくつかの実施形態では、酸化剤は過酸化化合物、過硫酸塩化合物、二酸素及びハロゲン酸化物から選択され、好ましくは酸化剤は過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムから選択される過硫酸塩化合物である。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記少なくとも1つのモノマーはさらに、エチレン結合を含むフッ化ビニリデン以外の含フッ素コモノマー、スチレンコモノマー、メタクリルコモノマー、アクリルコモノマー、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのコモノマーを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、エチレン結合を含むフッ化ビニリデン以外の含フッ素コモノマーは、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロブタジエン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2-トリフルオロメタクリル酸、2-トリフルオロメタクリル酸アルキル、α,β-ジフルオロアクリル酸、α,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、β,β-ジフルオロアクリル酸、β,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、α,β,β-トリフルオロアクリル酸、α,β,β-トリフルオロアクリル酸アルキル、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-プロパ-2-エン、ペルフルオロブタジエン及びそれらの組み合わせから選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、本方法は、酸化剤を重合開始剤と接触させて混合物を形成する第1のステップと、当該混合物をモノマーと接触させる第2のステップとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、重合は、40~100℃、好ましくは50~75℃の温度で実施される。
【0027】
いくつかの実施形態では、重合は、界面活性剤の非存在下で実施される。
【0028】
本発明の第2の目的は、フッ化ビニリデン単位を含み、及び、1~3個の炭素原子を含むフルオロアルキル基である末端基Rfを少なくとも部分的に含むポリマーを提供することであり、当該ポリマーの平均分子量(Mn)は、10,000 g/mol以上、好ましくは20,000 g/mol以上、より好ましくは30,000 g/mol以上である。
【0029】
いくつかの実施形態では、当該ポリマーは、上記した方法によって得ることができる。
【0030】
本発明によって、従来技術の欠点を克服することが可能になる。特に、本発明は、高い熱安定性及び高い結晶化度を有するフッ化ビニリデン単位含有ポリマーを調製する方法を提供し、当該方法は、毒性の問題を引き起こさない。
【0031】
これは、本発明の方法に従って達成される。具体的には、式(I)の重合開始剤を(酸化剤と組み合わせて)使用することによって達成され、強いC-F結合の性質により、ポリマーの熱安定性を高めることが可能になる。
【0032】
さらに、特定のフルオロアルキルRf基を含む重合開始剤の使用により、毒性の問題を実質的に回避できる(毒性の問題は、例えば、毒性がより高く、生物蓄積及び残留性の問題につながると考えられる、炭素原子数をより多く含むフルオロアルキル基で観察され得る)。
【0033】
有利な実施形態では、界面活性剤、特に含フッ素界面活性剤が存在しないことにより、高い残留性、毒性、及び生物蓄積の問題を回避することが可能になる。
【0034】
さらに有利な実施形態では、酸化剤の存在により、重合プロセスを比較的低い温度で実施することが可能になる。すなわち、酸化剤により、ペルフルオロアルキルラジカルをより低い温度で発生させることができる。さらに、重合プロセスが比較的低い温度で実施可能であることにより、ポリマーの結晶化度を高め、アセトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、又はジメチルスルホキシドなどの溶媒に対する溶解度を低下させることが可能である。具体的には、温度がより低いと、ポリマーの頭部/尾部構成の調節が可能になる。通常のポリマー分子は、通常、モノマー単位はすべて、頭-尾(head to tail)配置で結合する。PVDFに関しては、頭-頭反転又は尾-尾反転によりポリマーの結晶化度が低下する傾向があることが分かった。本発明の重合方法は、反転速度を低下させることを可能にし、その結果、結晶性の高いポリマーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、TGAサーモグラムを2つ示す。Y軸にポリマーの重量(%)を示し、X軸に温度(℃)を示す。
図2図2は、本発明によるポリマーの様々なVDF含有(コ)ポリマーの19F NMRスペクトルを示す。
図3図3は、本発明によるポリマーの様々なVDF含有(コ)ポリマーの19F NMRスペクトルを示す。
図4図4は、本発明によるポリマーの様々なVDF含有(コ)ポリマーの19F NMRスペクトルを示す。
図5図5は、本発明によるポリマーの様々なVDF含有(コ)ポリマーの19F NMRスペクトルを示す。
図6図6は、TGAサーモグラムを2つ示す。Y軸にポリマーの重量(%)を示し、X軸に時間(分)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0037】
重合方法
本発明の方法は、フッ化ビニリデン(VDF)モノマーを含む少なくとも1つのモノマーを重合させるのに使用される。
【0038】
いくつかの実施形態では、PVDFホモポリマーを得るために、本発明の方法を用いてフッ化ビニリデンモノマーのみを重合させる。
【0039】
他の実施形態では、本発明を用いて、VDFモノマーだけでなく、エチレン結合を含む含フッ素コモノマー、及び、スチレンコモノマー、(メタ)アクリルコモノマーといった非含フッ素コモノマー、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1つの他のコモノマーも重合させる。この場合、本発明の方法は、VDFコポリマーをもたらす。「コポリマー」とは、少なくとも2つの異なるモノマー由来の単位を含むポリマーを意味する。したがって、ターポリマーも上記の定義に含まれる。「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリルという用語を含む。
【0040】
(VDFモノマー以外の)含フッ素コモノマーは、重合可能なエチレン結合を含む。「含フッ素モノマー」とは、少なくとも1つのフッ素原子又はトリフルオロメチル基を含むモノマーを意味する。
【0041】
このようなコモノマーは、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロブタジエン、3,3,3-トリフルオロプロペンなどのトリフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)などのテトラフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-プロパ-2-エン(ヘキサフルオロイソブチレン、HFIB)、ペルフルオロブチルエチレン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンなどのペンタフルオロプロペン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)及びペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)などのペルフルオロアルキルビニルエーテル、2-トリフルオロメタクリル酸(MAF)、2-トリフルオロメタクリル酸アルキル、α,β-ジフルオロアクリル酸、α,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、β,β-ジフルオロアクリル酸、β,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、α,β,β-トリフルオロアクリル酸、α,β,β-トリフルオロアクリル酸アルキル、及びそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0042】
任意で、含フッ素コモノマーは、塩素、臭素、及びヨウ素などの他の(フッ素以外の)ハロゲンを含んでもよい。このような含フッ素コモノマーは、ヨードトリフルオロエチレン(ITFE)、ブロモトリフルオロエチレン(BrTFE)、クロロフルオロエチレン(CFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及びクロロトリフルオロプロペンから選択されてよい。クロロフルオロエチレンは、1-クロロ-1-フルオロエチレン又は1-クロロ-2-フルオロエチレン(Z及びE)のいずれかであってよい。クロロトリフルオロプロペンは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又は2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのいずれかであってよい。
【0043】
より好ましくは、含フッ素コモノマーは、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロブタジエン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-プロパ-2-エン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2-トリフルオロメタクリル酸、2-トリフルオロメタクリル酸アルキル、α,β-ジフルオロアクリル酸、α,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、β,β-ジフルオロアクリル酸、β,β-ジフルオロアクリル酸アルキル、α,β,β-トリフルオロアクリル酸、α,β,β-トリフルオロアクリル酸アルキル、ペルフルオロブタジエン及びそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0044】
非含フッ素スチレンコモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン(2、3又は4及びそれらの組み合わせ)、アセトキシスチレン、ベンズヒドリルスチレン、ハロゲン化スチレン(ヨード、クロロ、ブロモ)、アルコキシスチレン(アルキル/アリールホスフィノ)スチレン、酢酸ビニル塩、安息香酸ビニル塩、安息香酸ビニル塩から選択されてよい。
非含フッ素(メタ)アクリルコモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせから選択されてよい。このようなモノマーは、(メタ)アクリル酸、1~22個の炭素原子を好ましくは有するアルキル基を有し、少なくとも1個のヘテロ原子(O、S)を含んでもよい、飽和又は不飽和の直鎖状、分枝状又は環状(メタ)アクリレートモノマーから選択されてよい。
【0045】
非含フッ素(メタ)アクリルコモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリ(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、ル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸C12-C14アルキル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸C16-C18アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸3-スルホプロピルカリウム塩、塩化メタクロイルコリン、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸2,2,6,6-テトラメチル4-ピペリジル、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール、ビスフェノールAジメタクリレート、コハク酸モノ-ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、テトラアクリル酸ペンタエリスリトール、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸tris(2-アクリロイルオキシエチル)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
特に好ましい化合物は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0047】
さらに他の可能コモノマーとしては、ビニルホスホン酸アルキル、ビニルホスホン酸、ビニルケトン、イソプレン、ブタジエン、ビニルイミダゾール類、アルキルビニルアンモニウムハライド、ビニルカルバゾール類、ビニルピロリドン類、ビニルスルホン酸塩、ビニルフェロセン類、ビニルフタルイミド類、ビニルカプロラクタム類、ビニルピリジン類、ビニルシラン類、ビニルシロキサン類及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
本重合方法を用いてVDF以外のコモノマーも重合させる場合、VDFモノマーと他のコモノマーのモル比は0.01~99%、好ましくは0.1~50%であってよい。例えば、当該比は0.01~1、又は1~5、又は5~10、又は10~20、又は20~30、又は30~40、又は40~50、又は50~60、又は60~70、又は70~80、又は80~90、又は90~99であってよい。
【0049】
上記したモノマーは重合開始剤及び酸化剤と接触させる。よって、酸化剤は、上記モノマーの重合を開始できるラジカルを形成するために、重合開始剤と反応し得る。
【0050】
重合開始剤は次の式(I):
(I) (RfSO2 -)xMx+
を示す。
【0051】
よって、重合開始剤は、含フッ素スルフィネート又はポリスルフィネート化合物である。
【0052】
Rfは、1~3個の炭素原子、好ましくは1又は2個の炭素原子、より好ましくは1個の炭素原子を含むフルオロアルキル基である。「フルオロアルキル基」とは、炭素-炭素結合、少なくとも1つの炭素-フッ素結合、及び任意で1つ以上の炭素-水素結合を含む基を意味する。いくつかの好ましい実施形態では、フルオロアルキル基はペルフルオロアルキル基であってよい。つまり、フルオロアルキル基は、炭素-フッ素結合及び炭素-炭素結合のみを含む。
【0053】
Rfは、1~7個のフッ素原子、好ましくは2~7個、より好ましくは3~7個のフッ素原子を含んでよい。好ましい実施形態では、Rfは、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基又はヘプタフルオロプロピル基から選択されてよい。さらに好ましくは、Rfはトリフルオロメチル基である。
【0054】
xは1~4の整数である。好ましくはxは1又は2であり、より好ましくはxは1である。
【0055】
したがって、Mx+は、一価カチオン、二価カチオン、三価カチオン、又は四価カチオンから選択されてよい。
【0056】
したがって、Mx+は、Li+、Na+、K+、NH4 +、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、Co2+、Pb2+、Fe3+、Al3+から選択されてよい。
【0057】
好ましくは、Mx+は一価又は二価カチオンであり、より好ましくは一価カチオンである。
【0058】
好ましくは、M+はNa+又はK+である。この場合、式(I)の重合開始剤は、スルフィン酸ナトリウム又はスルフィン酸カリウムである。
【0059】
重合開始剤は、重合するモノマーの合計(上記のとおり、VDF及び/又は他のモノマー)に対して0.01~5 mol%、好ましくは0.1~2 mol%の含有量で添加されてよい。重合開始剤の含有量は、0.01~0.1 mol%、0.1~0.5 mol%、0.5~1 mol%、1~1.5 mol%、1.5~2 mol%、2~2.5 mol%、2.5~3 mol%、3~3.5 mol%、3.5~4 mol%、4~4.5 mol%、4.5~5 mol%であってよい。
【0060】
酸化剤は、過酸化化合物、過硫酸塩化合物、二酸素及びハロゲン酸化物から選択されてよい。具体的には、酸化剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化水素/尿素付加物、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、過炭酸bis(tert-ブチルシクロヘキシル)、クミルペルオキシド、クミルヒドロキシペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシド、過酢酸、五酸化ヨウ素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、二ヨウ素、塩素、臭素、二酸素から選択されてよい。好ましくは、酸化剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムから選択される。
【0061】
酸化剤は、重合するモノマーの合計(上記のとおり、VDF及び/又は他のコモノマー)に対して0.03~5 mol%、好ましくは0.1~2 mol%の含有量で添加されてよい。重合開始剤の含有量は、0.03~0.1 mol%、0.1~0.5 mol%、0.5~1 mol%、1~1.5 mol%、1.5~2 mol%、2~2.5 mol%、2.5~3 mol%、3~3.5 mol%、3.5~4 mol%、4~4.5 mol%、4.5~5 mol%であってよい。
【0062】
重合開始剤と酸化剤のモル比は0.2~5、好ましくは0.5~2である。重合開始剤の酸化剤に対するモル比は、特に0.2~0.5、又は0.5~1、又は1~1.5、又は1.5~2、又は2~2.5、又は2.5~3、又は3~3.5、又は3.5~4、又は4~4.5、又は4.5~5であってよい。
【0063】
したがって、本発明の方法は、上述のVDFモノマー(及び任意で上記した任意の他のコモノマー)を、上記重合開始剤及び上記酸化剤と接触させるステップを含む。
【0064】
好ましい実施形態では、本方法は、酸化剤を重合開始剤と接触させて混合物を形成する第1のステップと、当該混合物をVDFモノマー(及び任意で上記した任意の他のコモノマー)と接触させる第2のステップとを含む。例えば、VDFモノマー(及び任意で他のコモノマー)を当該混合物に添加してよい。
【0065】
第1のステップは、溶媒の存在下で行ってよい。溶媒は、水、アセトニトリル、酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-ホルミルモルホリン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホキシド、N,N'-ジメチルプロピレンウレア、酢酸、メチルエチルケトン、又は1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン及びペルフルオロシクロヘキサンなどの含フッ素溶媒から選択されてよい。
【0066】
安定性を向上させたりpHを調整したりするために、他の化合物を添加してもよく、例えば、単相又は二相重合の場合の共溶媒、ワックス、非含フッ素界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム又はSDS、ハロゲン化セチルアンモニウム、ポリ(アクリル酸)、Triton(商標)X-100、Triton(商標)N-101、Triton(商標)X-114、Triton(商標)X-405、Triton(商標)X-45、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)40、TWEEN(登録商標)60、TWEEN(登録商標)65、TWEEN(登録商標)80、TWEEN(登録商標)85、Span(登録商標)20、Span(登録商標)60、Span(登録商標)65、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、Brij(登録商標)58、Brij(登録商標)O10、BRIJ(登録商標)O20、Brij(登録商標)L4、Brij(登録商標)S100、Brij(登録商標)L23、Brij(登録商標)93、Brij(登録商標)C10、Brij(登録商標)S20)が挙げられる。
【0067】
別の実施形態では、モノマーを反応器に移し、次に上記の酸化剤を(好ましくは上記溶媒とともに)導入、次いで、重合開始剤をさらに(好ましくは上記溶媒とともに)追加し、その後、反応器を加熱してもよい。
【0068】
別の実施形態では、酸化剤を(好ましくは上記溶媒と一緒に)反応器に移し、次に重合開始剤を(好ましくは上記溶媒と一緒に)移し、その後反応器を所望の温度まで加熱し、モノマーを導入してもよい。
【0069】
別の実施形態では、酸化剤を(好ましくは上記溶媒と一緒に)反応器に移し、次にモノマーを導入し、反応器を所望の温度に加熱した後、重合開始剤を(好ましくは上記溶媒と一緒に)を徐々に導入してもよい。
【0070】
別の実施形態では、重合開始剤を(好ましくは上記溶媒と一緒に)反応器に移し、次にモノマーを導入し、反応器を所望の温度に加熱した後、酸化剤を(好ましくは上記溶媒と一緒に)を徐々に導入してもよい。
【0071】
本発明の方法は、好ましくは、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、4,8-ジオキサ-3H-ペルフルオロノナン酸アンモニウム(Dyneon社によって市販されるADONA(登録商標)、Omnova社製のPOLYFOX(登録商標)、Merck社製のTIVADA(登録商標)、及びChemours社製のGenX(式C3F7OCF(CF3)CO2Hを示す)などの界面活性剤なしで実施されてよい。より好ましくは、本方法は、界面活性剤の非存在下で実施される。
【0072】
重合反応は、好ましくは30~90℃、より好ましくは40~80℃、さらに好ましくは50~75℃で行ってよい。重合反応を完了するために、温度は1分~5時間、好ましくは10分~3時間の間、一定であってよい。いくつかの実施形態では、モノマーは、周囲温度で反応器に導入されてよい。他の実施形態では、モノマーはもっと低い温度、例えば-196℃~0℃で導入してよい。別の異なるモノマーに対しては導入温度は異なってよい。2回目の添加中の温度は、1回目の添加中の温度よりも高くても低くても(好ましくは低くても)よい。例えば、1回目の添加は-50~0℃の温度で行ってよく、その後-196~-50℃の温度に到達するために温度を低下してもよい。2回以上添加する場合も同様である。次いで、温度を所望の重合反応温度まで上昇してよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、VDFモノマー以外のコモノマーを使用する場合、モノマーをすべて、酸化剤及び重合開始剤と同時に接触させる。例えば、酸化剤及び重合開始剤を含む混合物中に、すべてのモノマーを同時に添加する。
【0074】
あるいは、VDFモノマー以外のコモノマーを使用する場合、各種コモノマーは、酸化剤及び重合開始剤を含む混合物に別々に添加する。例えば、第1の種類のコモノマー(例えばHFPモノマー)を最初に混合物に添加し、続いて第2の種類のモノマー(VDFモノマー)を添加してよい。あるいは、複数の種類のモノマー(例えば、HFP及びPMVEモノマー)を、酸化剤及び重合開始剤を含む混合物に同時に添加し、続いてVDFモノマーを添加してよい。
【0075】
あるいは、特定のモノマー(VDFなど)を混合物に、2以上の時点において添加、又は、一定時間にわたって連続的に添加してよい。
【0076】
酸化剤は、重合開始剤と反応して、二酸化硫黄及び含フッ素ラジカル(上記したRf°ラジカル、好ましくはCF3°ラジカル)を生成し得る。次いで、含フッ素ラジカルは、混合物中に存在するモノマーと反応して重合を開始し得る。重合は、形成されたポリマー(特に、形成されたポリマーの2つの末端のうちの1つ)が含フッ素ラジカル又は連鎖移動剤(溶媒など)と反応するときに終了し得る。
【0077】
本発明の方法は、10~50バールの範囲の圧力下で実施してよい。
【0078】
好ましくは、本発明の方法は、不活性雰囲気下、例えば窒素又はアルゴン雰囲気下で行ってよい。
【0079】
さらに、本発明の方法は、溶液、懸濁液又はエマルション中で実施してよい。
【0080】
本発明の方法は、オートクレーブ内で実施してよい。あるいは、ラジカル重合は、厚いホウケイ酸塩のカリウスチューブで行うことができる(寸法の例:長さ130 mm、内径10 mm、厚さ2.5 mm、総容積8 mL)。例えば、酸化剤、重合開始剤、及び任意で溶媒を含む異なる反応物を当該チューブに加えてよい。次に、チューブを少なくとも4回の解凍凍結サイクルで脱気してよく、中間シリンダーから気体状モノマーの量(g)で圧力低下のキャリブレーションを事前に行い、当該中間シリンダーから必要な量のモノマーを専門マニホールドを介して移してよい。チューブは、液体窒素の温度で動的真空下で密封してよい。次に、チューブを、所望の温度に調節される特注設計の加熱及び振とう装置に挿入してよい。次いで、重合反応を所望の時間、一定温度(例えば、40~100℃、好ましくは50~75℃)で行ってよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、1回以上の精製ステップを含んでよい。そのようなステップには、洗浄、沈殿、濾過、乾燥など、当業者にとって一般的な精製方法が含まれる。
【0082】
含フッ素ポリマー
上記の方法に従って得られるポリマーは、VDFモノマー由来の単位(VDF単位)、及び任意で(上記のとおり)VDFモノマー以外の1種類以上の他のコモノマー由来の単位を含む。本発明の含フッ素ポリマーは、末端基Rf(この基は重合開始剤に由来し、上記のとおりである)を部分的に含む。具体的には、上記の方法に従って得られたポリマーは、統計的分布においてポリマーの少なくとも一部が少なくとも1つの末端基Rfを含む統計的分布を有する。統計的分布におけるポリマーは、例えば、2つの同一の末端基Rf(例えば、2つのCF3基)、又は、第1の末端基Rf(例えば、CF3基)及び第1のRf基以外の第2の末端基(CF2H基であってよい)を含んでよい。第2の末端基が第1のRf基以外の基である場合、第2の末端基は例えば、媒体(例えば溶媒)から含フッ素ポリマーへの水素移動後に形成され得る。
【0083】
含フッ素ポリマーは、Rf基とR末端基以外の末端基とのモル比が5~100%、好ましくは40~100%であってもよい。
【0084】
含フッ素ポリマーは、10,000 g/mol以上、好ましくは20,000 g/mol以上、より好ましくは30,000~50,000 g/molの数平均分子量Mnを有してよい。例えば、含フッ素ポリマーの分子量は、10,000~15,000 g/mol、又は15,000~20,000 g/mol、又は20,000~25,000 g/mol、又は25,000~30,000 g/mol、又は30,000~35,000 g/mol、又は35,000~40,000 g/mol、又は40,000~45,000 g/mol、又は45,000~50,000 g/mol、又は50,000~55,000 g/mol、又は55,000~60,000 g/mol、又は60,000~65,000 g/mol、又は65,000~70,000 g/mol、又は70,000~75,000 g/mol、又は75,000~80,000 g/molであってよい。含フッ素ポリマーの分子量は、19F NMR分光法で測定する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本発明の含フッ素ポリマーは、VDFモノマー由来の単位を含むホモポリマーである。
【0086】
他の実施形態では、本発明の含フッ素ポリマーは、VDFモノマー由来の単位と、HFP、PMVE、TrFE、TFE、TFP、CTFE、BrTFE、ITFE、HFO-1234yf、HFO-1234ze、PPVE、CFE、MAF、ヘキサフルオロブタジエン及びHFIBモノマーといった上述した他のモノマー由来の単位を含むコポリマーである。
【0087】
好ましい実施形態によると、含フッ素ポリマーがコポリマーである場合、当該含フッ素ポリマーは、P(VDF-co-HFP)コポリマー、又はP(VDF-co-PMVE)コポリマー、又はP(VDF-ter-HFP-ter-PMVE)コポリマー、又はP(VDF-co-TFE)コポリマー、又はP(VDF-co-TrFE)コポリマー、又はP(VDF-co-CTFE)コポリマー、又はP(VDF-co-BrTFE)コポリマー、又はP(VDF-co-ITFE)コポリマー、又はP(VDF-co-HFIB)コポリマー、P(VDF-co-PPVE)コポリマー、P(VDF-ter-HFP-ter-CTFE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-HFP-ter-TrFE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-CTFE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-CFE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-HFP-ter-BrTFE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-PPVE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-PMVE)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-MAF)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-HFIB)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-1234ze)ターポリマー、又はP(VDF-ter-TrFE-ter-1234yf)ターポリマーであってよい。
【0088】
含フッ素ポリマーがコポリマーである場合、VDFモノマー由来の単位の含有量は、ポリマーの全重量に対して40~99重量%、好ましくは50~90重量%であってよい。例えば、当該含有量は、ポリマーの全重量に対して40~45重量%、又は45~50重量%、又は50~55重量%、又は55~60重量%、又は60~65重量%、又は65~70重量%、又は70~75重量%、又は75~80重量%、又は80~85重量%、又は85~90重量%、又は90~95重量%、又は95~99重量%であってよい。含有量は、19F NMR分光法で測定されてよい。
【0089】
したがって、含フッ素ポリマーがコポリマーである場合、VDFモノマー以外のモノマー由来の単位の含有量は、1~50モル%であってよく、好ましくは40~50モル%であってよい。例えば、当該含有量は、1~5モル%、又は5~10モル%、又は10~15%、又は15~20モル%、又は20~25モル%、又は25~30モル%、又は30~35モル%、又は35~40モル%、又は40若しくは45モル%、又は45~50モル%、又は50~55モル%、又は55~60モル%であってよい。上記含有量は、VDFモノマー以外の1種類以上のモノマーに関する含有量であってよい。
【0090】
本発明による含フッ素ポリマーは、結晶化度が50%以下、好ましくは10~50%、より好ましくは20~45%であってもよい。結晶化度は、Netzsch社製のDSC200 F3 Maiaシステムを使用して示差走査熱量測定(DSC)によって測定する。結晶化度は、ΔHm/ΔHc(式中、ΔHc = 104.5 J.g-1は100%結晶性PVDFの融解エンタルピー、ΔHmはDSCで決定される融解エンタルピー(J.g-1)である)のパーセンテージ比に対応する。
【0091】
本発明による含フッ素ポリマーは、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上の分解温度を有してよい。「分解温度」とは、ポリマーが分解によりその重量の5%を損失する温度を意味する。分解温度は、TA Instruments社製のQ50装置を使用した熱重量分析(TGA)によって測定され得る。
【実施例
【0092】
以下の実施例により、本発明を非限定的な方法で説明する。
【0093】
試験A~Fは本発明に従い、試験G及びHは比較試験である。
【0094】
トリフルオロメチルスルフィン酸カリウム(CF3SO2K)を重合開始剤として使用した。
【0095】
過硫酸アンモニウム(APS)を酸化剤として使用した。
【0096】
ペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFO)は、30 wt%水溶液中の界面活性剤として使用した。
【0097】
試験は全て窒素雰囲気下で実施した。
【0098】
【表1】
【0099】
試験A:
VDFの重合を、APS、CF3SO2K、及び水を含むパージ溶液を真空オートクレーブに移して実行した。反応器を約-100℃まで冷却し、気体VDFを移した(nAPS/nVDF = 0.009(0.9 mol%)、nCF3SO2K/nVDF = 0.01(1 mol%))。その後、反応溶液を機械で激しく攪拌しながら、オートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に60℃まで昇温させた。1.5時間後、オートクレーブ内の圧力は34バールから6バールに低下した。次いで、オートクレーブを冷却し、氷水浴に浸漬し、減圧し、次いで外気に開放した。VDF変換率は100%であった。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して固体をすべて除去した。ブフナー装置を用いて生成物を濾過し、次いで水で洗浄した。少量のアセトンを固体に添加し、生成物を60℃の真空下(10-3バール)で一晩乾燥させた。最終生成物として白色粉末を得た(収率100%、含フッ素末端基100%、CF3末端基60%及びCF2H末端基40%)。得られたポリマーは、分解温度が430℃、融点が159℃、結晶化温度が129℃、結晶化度が44%であった。ポリマーの平均分子量Mnは、10,250 g/molであった。19F NMRスペクトルを図2に示す(ジメチルヒドロホスファイト/DMSO-d6(4/1)中、Bruker(400MHz)で記録)。
【0100】
試験B:
VDFとPMVEの共重合を、APS、CF3SO2K及び水を含むパージ溶液を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を冷却し、まずPMVEを導入し、次にVDFを添加した(nAPS/(nVDF+nPMVE) = 0.0089(0.89 mol%)、nCF3SO2K/(nVDF+nPMVE) = 0.0095(0.95 mol%)、nVDF0/nPMVE0 = 2.6/1.0(70%/30%))。その後、反応器を機械で激しく攪拌しながらオートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に60℃まで昇温させた。3時間後、オートクレーブ内の圧力は29バールから6バールに低下した。次いで、オートクレーブを氷水浴で冷却し、通気により減圧し、外気に開放した((VDF/PMVE)混合物の変換率は95%であった)。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して固体をすべて除去した。ブフナー装置を用いて生成物を濾過し、次いで水で洗浄した。少量のアセトンを固体に添加し、生成物を60℃の真空下(10-3バール)で一晩乾燥させた。最終生成物として白色の粘性物質を回収した(収率94%、%VDF/%PMVE = 74/26、この比率は19F NMRで測定)。得られたポリマーの分解温度は、409℃、ガラス転移温度は-29℃であり、ポリマーは、35,600 g/molの平均分子量Mnを有した。得られた19F NMRスペクトルを図3に示す(アセトン-d6中、Bruker(400MHz)で記録)。
【0101】
試験C:
VDFとHFPの共重合を、APS、CF3SO2K及び水を含むパージ溶液を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を冷却し、まずHFPを導入し、次にVDFを-100℃で添加した(nAPS/(nVDF+nHFP) = 0.0092(0.92 mol%)、nCF3SO2K/(nVDF+nHFP) = 0.01(1 mol%)、nVDF0/nHFP0 = 3.1/1(75 mol%/25 mol%))。その後、反応器を機械で激しく攪拌しながらオートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に60℃まで昇温させた。3時間後、オートクレーブ内の圧力は31バールから5バールに低下した。次いで、オートクレーブを氷水浴で冷却し、通気により減圧し、外気に開放した((VDF/HFP)混合物の変換率は100%であった)。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して固体をすべて除去した。ブフナー装置を用いて生成物を濾過し、次いで水で洗浄した。少量のアセトンを固体に添加し、生成物を60℃の真空下(10-3バール)で一晩乾燥させた。最終生成物として白色の粘性物質を回収した(収率100%、%VDF/%HFP=86/14、この比率は19F NMRで測定)。得られたポリマーの分解温度は407℃、ガラス転移温度は-26℃、融点は95.6℃、結晶化温度は43.8℃であった。ポリマーの平均分子量Mnは、16,500 g/molであった。得られた19F NMRスペクトルを図4に示す(アセトン-d6中、Bruker(400MHz)で記録)。
【0102】
試験D:
VDFとHFP及びPMVEの三元重合を、APS、CF3SO2K及び水を含むパージ溶液を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を冷却し、まずHFP及びPMVEを導入し、次にVDFを約-100℃で添加した(nAPS/(nVDF+nHFP+nPMVE) = 0.0093(0.93 mol%)、nCF3SO2K/(nVDF+nHFP+nPMVE) = 0.01(1 mol%)、%VDF0+%HFP0+%PMVE0 = 76/13/11)。反応溶液を機械で激しく攪拌しながら、オートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に60℃まで昇温させた。3時間後、オートクレーブ内の圧力は30バールから6バールに低下した。次いで、オートクレーブを冷却し、氷水浴に浸漬し、通気により減圧し、次いで外気に開放した(VDF/PMVE/HFP)混合物の変換率は91%であった)。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して固体をすべて除去した。ブフナー装置を用いて生成物を濾過し、次いで水で洗浄した。少量のアセトンを固体に添加し、生成物を60℃の真空下(10-3バール)で一晩乾燥させた。最終生成物として白色の粘性物質を回収した(収率89%、%VDF+%HFP+%PMVE = 74/13/13、この比率は19F NMRで測定)。得られたポリマーの分解温度は409℃、ガラス転移温度は-24℃であった。ポリマーの平均分子量Mnは、19F NMRで計算したところ、40,000 g/molであった。得られた19F NMRスペクトルを図5に示す(アセトン-d6中、Bruker(400MHz)で記録)。
【0103】
試験E:
VDFの重合を、APS、CF3SO2K、及び水を含むパージ溶液を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を冷却し、気体VDFを移した(APS/CF3SO2K = 1.5/1)。その後、反応溶液を機械で激しく攪拌しながら、オートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に80℃まで昇温させた。15分後、圧力は1バールまで低下し、モノマーの完全変換を達成した(VDF変換=100%)。次いで、オートクレーブを冷却し、氷水浴に浸漬し、減圧し、次いで外気に開放した(外気に出た未反応VDFはなかった)。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して固体をすべて除去した。ブフナー装置を用いて生成物を濾過し、次いで水で洗浄した。少量のアセトンを固体に添加し、生成物を60℃の真空下(10-3バール)で一晩乾燥させた。最終生成物は白色粉末として回収された(収率100%)。ポリマーの平均分子量Mnは、4,600 g/molであった。ポリマーは、末端CF3基の末端CH2OH基に対する比は85/15であり、頭-頭結合のVDF含有量は1.9%であった。
【0104】
試験F:
VDFの重合を、APS、水、CF3SO2K及びAPFOを含むパージした混合物を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を冷却し、気体VDFを移した(APS/CF3SO2K = 1.5/1)。その後、反応溶液を機械で激しく攪拌しながら、オートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に80℃まで昇温させた。モノマーの完全変換を達成した。次いで、オートクレーブを冷却し、氷水浴に浸漬し、減圧し、次いで外気に開放した(VDF変換率=100%)。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して固体をすべて除去した。ブフナー装置を用いて生成物を濾過し、次いで水で洗浄した。少量のアセトンを固体に添加し、生成物を60℃の真空下(10-3バール)で一晩乾燥させた。最終生成物は白色粉末として回収された(収率100%)。ポリマーの平均分子量Mnは、3,000 g/molであった。ポリマーは、末端CF3基の末端CH2OH基に対する比は40/60であり、頭-頭結合のVDF含有量は1.2%であった。
【0105】
試験G:
VDFの重合を、CF3SO2K(nCF3SO2K/nVDF = 0.01(1 mol%))、水及びAPFOを含むパージした混合物を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を約-100℃に冷却し、気体VDFを移した。その後、反応溶液を機械で激しく攪拌しながら、オートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に80℃まで昇温させた。3時間後、圧力は33バールで一定であった。反応器を冷却し、氷水浴に浸漬し、減圧し、次いで外気に開放した。気体7gが放出され、固体もエマルションも存在せず、生成物は一切単離されなかった。
【0106】
試験H:
VDFの重合を、APS、水及びAPFOを含むパージした混合物を真空オートクレーブに移して実行した。次いで反応器を冷却し、気体VDFを移した(nAPS/nVDF = 0.01(1 mol%))。その後、反応溶液を機械で激しく攪拌しながら、オートクレーブを室温まで昇温させ、徐々に80℃まで昇温させた。15分後、圧力は33バールから4バールに低下した。次いでオートクレーブを冷却し、氷水浴に浸漬し、減圧し、次いで外気に開放した。VDF変換率は100%であった。反応生成物をビーカーに移し、オートクレーブを水で洗浄して生成物をすべて除去した。ロータリーエバポレーターを使用してエマルションを濃縮し、60℃の真空下(10-3バール)で一晩放置して乾燥させた。最終生成物は白色粉末として回収された(収率=100%)。得られたポリマーの分解温度は315℃、平均分子量Mnは7,000 g/mol、結晶化度 は43%、融点は164℃、結晶化温度は128℃であった。
【0107】
備考
試験A~Fによれば、本発明の重合プロセスにより、VDF単位並びにHFP及び/又はPMVE単位を含むトリフルオロメチル末端ポリマーを得られることを結論付けることができる。このような(コ)ポリマーは、比較的高い分解温度を示す。
【0108】
試験Fでは、APFOを界面活性剤として使用した。しかし、試験A及びE(APFOなし)によると、界面活性剤の非存在下でも重合を良好に実施できる。具体的には、試験Eと試験Fを比較すると、CF3末端鎖の割合は40%(試験F)から85%(試験E)に増加し、形成されたポリマーの平均分子量Mnも、3,000 g/mol(試験F)から4,600 g/mol(試験E)に増加した。
【0109】
比較試験Gから、酸化剤が存在しない場合、重合プロセスは実施できなかったことが示された。
【0110】
比較試験H(CF3SO2K非存在下での重合)は、酸素化基を含むポリマーをもたらした。
【0111】
試験A~D及びFのプロセスに従って得られたポリマーの分解温度(5wt%損失(T5%)の温度)を、TA Instruments社製のQ50装置を使用して測定した。約10mgのサンプルを40mL/分のN2下で、10℃/分の速度で500℃に加熱した。データは、TA Universal Analysis 2000ソフトウェアで分析した。
【0112】
結晶化度、結晶化温度(冷却サーモグラムのピーク頂点)、ガラス転移温度(熱容量がジャンプする際の変曲点)、融点(加熱サーモグラムのピーク頂点)を、Netzsch社製のDSC200 F3 Maiaシステムを使用して示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0113】
19F NMR分光法により、頭-頭結合の比及び末端CF3基の末端CH2OH基に対する比85/15が測定された。
【0114】
図1に示すTGAサーモグラム(窒素雰囲気下)では、試験A及び比較試験Hを比較している。具体的には、TGAサーモグラムは、CF3末端PVDF(試験A)が、APSで開始したPVDF(試験H)よりも優れた熱安定性を有することを示している。試験Hのポリマーの5%重量損失は315℃で発生する一方で、試験Aのポリマーの5%重量損失は427℃で発生し、熱抵抗が112℃増加したことを示している。
【0115】
図6に示すTGAサーモグラム(空気中及び一定温度)では、試験A及び比較試験Hを比較している。繰り返しになるが、これらのサーモグラムは、CF3末端PVDF(試験A)が、APSで開始したPVDF(試験H)よりも優れた熱安定性を持っていることを示している。具体的には、260℃で1時間後の試験Hのポリマーの重量損失は6.90%であるのに対し、試験Aのポリマーの重量損失は1.62%であり、これは本発明によるポリマーの熱安定性が優れていることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】