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特表2023-525160毛包内への生物活性剤の送達のための組成物
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  • 特表-毛包内への生物活性剤の送達のための組成物 図1
  • 特表-毛包内への生物活性剤の送達のための組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】毛包内への生物活性剤の送達のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20230607BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230607BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230607BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 31/569 20060101ALI20230607BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230607BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230607BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/08
A61K45/00
A61P17/14
A61P31/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P35/00
A61P17/00
A61K31/569
A61Q7/00
A61Q19/00
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/33
A61K8/06
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569136
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 IL2021050549
(87)【国際公開番号】W WO2021229578
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/024,085
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】522441943
【氏名又は名称】フォリクル・ファーマ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,ドロン
(72)【発明者】
【氏名】バーマン,タル
(72)【発明者】
【氏名】ジブ,インバル
(72)【発明者】
【氏名】ゼエビ,オロン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA95
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD37
4C076DD37E
4C076DD39
4C076DD39E
4C076DD41
4C076DD41E
4C076DD46
4C076DD52E
4C076DD55E
4C076DD59E
4C076DD60E
4C076FF12
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF31
4C076FF34
4C076FF68
4C083AC061
4C083AC062
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC251
4C083AC252
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083CC01
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4C083EE22
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA22
4C084MA52
4C084MA63
4C084NA10
4C084NA11
4C084NA13
4C084ZA891
4C084ZA921
4C084ZB071
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4C084ZB321
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA10
4C086NA11
4C086NA13
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB32
(57)【要約】
本発明は、毛包内への生物活性剤の送達のための組成物を対象にする。組成物は、水中油エマルジョンとして調製され、及び1種以上の親油性生物活性剤、1種以上の油溶媒、1種以上の乳化剤及び水を含み、ここで、この生物活性剤は、エマルジョンの内部油相中に実質的に溶解し、及びここで、エマルジョンの平均液滴サイズは、約200~約1000nmの範囲内である。本発明はまた、この組成物を毛包内へ送達するための方法、並びにその疾患及び障害を治療する方法を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の親油性生物活性剤、1種以上の油溶媒、1種以上の乳化剤及び水を含む、水中油エマルジョンの形態の組成物であって;
ここで、前記1種以上の生物活性剤は、前記エマルジョンの内部油相中に実質的に溶解し;
ここで、前記エマルジョンの平均液滴サイズは、約200~約1000nmの範囲内であり;
ここで、前記1種以上の油溶媒は、エタノールに可溶性又は混和性であり;
ここで、前記1種以上の油溶媒は、天然若しくは合成の不飽和トリグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、その脂肪エステル又は脂肪エーテルからなる群より選択され;
そしてここで、前記1種以上の油溶媒は、約15℃未満の融点を有する、前記組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の可溶性増強剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エタノールをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記水中油エマルジョンの液滴サイズが、約400~約800nmの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記1種以上の生物活性剤が、10mg/ml未満かつlogP>1の水可溶性を有する疎水性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1種以上の生物活性剤が、ヒト又は獣医学的用途に好適な化粧用薬剤又は医薬用薬剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の生物活性剤が、抗炎症薬、カルシニュリンインヒビター、ヤヌスキナーゼインヒビター、5-アルファレダクターゼインヒビター、PDE4インヒビター、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、ステロイド、プロスタグランジンアナログ、アポトーシスインヒビター、抗寄生虫剤、麻酔剤、スタチン、高脂血症剤、高コレステロール血症剤及び抗がん剤からなる群より選択される医薬用薬剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の生物活性剤が、フィナステリド、デュタステリド、それらの塩又は誘導体から選択される5-アルファレダクターゼインヒビターである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の可溶性増強剤が、極性脂質、酸、アルコール、エステル、エーテル又はアミドなどの極性部分を有する脂質、エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソソルビド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチルセバケート、ジブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、トコフェロール、トコフェロールアセテートなどの共溶媒、及びソルビタンオレエート又はソルビタンセスキオレエートなどの約5.0未満の低いHLBを有する脂質可溶性表面活性剤からなる群より選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
2種の乳化剤を含み、ここで、1種の乳化剤が脂溶性界面活性剤であり、そして第2の乳化剤が水溶性界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
毛包に親油性生物活性剤を送達する必要のある哺乳動物対象の毛包に少なくとも1種の親油性生物活性剤を送達するための方法であって、a)請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を提供する工程;及びb)前記対象の皮膚の表面に前記組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項12】
哺乳動物対象における毛包の疾患及び障害を治療するか及び/又は予防するための方法であって、a)請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を提供する工程、及びb)前記対象の皮膚の表面に前記組成物を適用する工程を含む、前記方法。
【請求項13】
前記毛包の疾患又は障害が、脱毛、感染性疾患、免疫学的障害、自己免疫疾患、新生物障害、炎症性症状、並びに皮脂腺及び/又は毛包全体が詰まっている症状からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の親油性生物活性剤が、抗炎症薬、カルシニュリンインヒビター、ヤヌスキナーゼインヒビター、5-アルファレダクターゼインヒビター、PDE4インヒビター、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、ステロイド、プロスタグランジンアナログ、アポトーシスインヒビター、抗寄生虫剤、麻酔剤、スタチン、高脂血症剤、高コレステロール血症剤及び抗がん剤からなる群より選択される医薬用薬剤である、請求項11又は請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の生物活性剤が、フィナステリド及び/又はデュタステリドである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物の皮膚への適用後、前記毛包内に存在する前記生物活性剤の単位面積当たりの量が、治療される前記対象の前記皮膚に存在する単位面積当たりの量よりも高い、請求項11又は請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物の皮膚への適用後、前記生物活性剤の血中濃度が、所望の全身的治療効果を達成するために必要な濃度よりも低い、請求項11又は請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物の皮膚への適用後、前記生物活性剤の血中濃度が、同じ前記生物活性剤の治療用量の経口又は非経口投与後に得られる濃度よりも少なくとも10倍低い、請求項11又は請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
それぞれの毛が皮膚全体に成長する構造は、毛包と呼ばれる。皮膚毛包疾患としては、感染性疾患、免疫学的障害、自己免疫疾患、皮脂腺又は全ての毛包の詰まり、がん、及び多重原因炎症性症状が挙げられる。毛包は、皮膚面積の0.2%~2%しか占めていない。したがって、毛包疾患を治療するため又は美容用途のために毛包を対象とした全身的又は局所的な薬物治療は、毛包に届く用量の割合が非常に少ないので、極めて不経済な製品となる。
【0002】
薬物治療並びに美容用途及び獣医学的用途のために、生物活性剤を毛包に対して効率的に標的化する必要がある。高用量及び潜在的な望ましくない副作用及び毒性から全身又は皮膚全体を回避させる一方で、毛包に対して適切な薬物レベルを提供する必要がある。
【0003】
その薬理学的効果を毛包において発揮する多くの薬物又は化粧品は、しばしば副作用を有し、全身的毒性又は局所的なかぶれを引き起こし得る。結果として、全身的曝露を減らし及び/又は毛包以外の部分の皮膚に送達される局所量を低減する、毛包への標的化送達系について差し迫った需要が存在する。このような生物活性剤は、例えば、以下を含み得る:5アルファレダクターゼインヒビター、ヤヌスキナーゼインヒビター、ビタミンA誘導体、抗生物質、抗炎症剤、抗寄生虫剤、免疫調節剤、麻酔薬及び抗酸化薬並びに他の局所機能性化粧品類(過酸化ベンゾイル、アゼライン酸、ビタミンA及びそれらの誘導体など)。
【0004】
米国特許第9186324号は、薬物の毛包送達のための無水エマルジョンを記載する。しかし、これらの組成物は重く、ねばつく脂っぽい皮膚触感を起こし、例えば、脱毛のため、又は顔若しくは広い体表面の治療には適していない。患者のコンプライアンスは、臨床的有効性及び成功のために重要であるので、患者が使いやすい、べたつかない、脂っぽくない、かつ、てからない、伸びのよさ及び吸収性が速い製品が、医師だけでなく消費者及び又は患者によって期待されている。
【0005】
米国特許出願公開第20200147071号は、ヒト対象の髪の成長及び頭皮を刺激する方法を開示しているが、この方法は、特異的毛包内送達、若しくは薬物の毛包に対する任意の標的化を示さず、又は、血中レベルの低下、副作用の軽減、若しくは毛包と比較した皮膚薬物濃度の低下を示す何らかのデータを開示することができない。
【0006】
種々の刊行物が、毛包への薬物の送達におけるリポソーム及びナノリポソーム並びに固体脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子の使用を、開示している。しかし、不溶性薬物についてのリポソームのカプセル化能力は、非常に限定的である。さらに、多くの場合、時間経過によりリポソーム不安定性が生じ、及びスケールアップ及び製造は、特別な装置及びプロセスを要する。
【0007】
固体脂質ナノ粒子は、室温にて固体であるので、その非常に非極性な性質により疎水性薬物を可溶化することが非常に限定的である、ポリマー又は完全に飽和した脂質のいずれかからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9186324号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0147071号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
リポソーム及び固体脂質送達系とは対照的に、新規な組成物は、高い強度の不溶性疎水性薬物に対応し、及びこの薬物を特異的に毛包内に送達し、貯蔵寿命期間にわたって非常に安定でもあり、及び非常に良好な皮膚触感及びユーザー体験を示す。
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、先行技術組成物と比較して哺乳動物皮膚の毛包器官への生物活性剤の特異的送達を可能にし、それによって、全身的血中レベルの有意な低減をもたらす医薬組成物を提供することである。
【0011】
本発明の1つの目的は、先行技術組成物と比較して哺乳動物の皮膚の毛包器官内への生物活性剤の特異的送達を可能にし、それによって、有意に低下した全身的血中レベルをもたらす、医薬組成物を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、1種以上の生物活性剤の毛包器官内への特異的送達をもたらすことが可能であり、かつ組成物の皮膚全体への曝露が大幅に低減し、及び局所的なかぶれが軽減している、組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、経口及び/又は非経口投与又は従来の局所薬物治療と比較して、毛包疾患のために投与した場合に、有意に改善された安全性及び患者耐容性を有する有効な組成物を提供することである。
【0014】
本発明の組成物のさらなる目的及び利益は、説明が進むにつれて明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要旨
本発明にしたがい、毛包内への送達(すなわち、毛包内送達)のための、少なくとも1種の生物活性剤を含む組成物が提供され、ここで、生物活性剤は水中油エマルジョンの内部油相中に溶解しており、及びここで、このエマルジョンは、約200~約1,000ナノメートルの平均液滴サイズを有し、及びこの平均液滴サイズは、製品の貯蔵寿命にわたって有意に変わることはなく、及びここで、この組成物は、促進貯蔵条件にて少なくとも6ヶ月にわたる物理的及び化学的安定性を示す。
【0016】
本発明者らは、約200nm~約1,000nmの平均液滴サイズを有する水中油エマルジョンの油相中に溶解した生物活性剤を含む、皮膚に局所的に少しすりこみながら塗布された組成物が、隣接する治療された皮膚と比較して、はるかに大きな部分用量を生物活性剤を毛包内に送達する(すなわち、毛包内送達)ことを、予期せず見出した。本発明者らはまた、約400nm~約800nmの液滴サイズが好ましいことも見出した。
【0017】
マイクロ及びナノ液滴は、非常に大きい界面面積に起因して、保存の際に凝集し癒合する傾向がある。特定の組成物が、貯蔵寿命下及び促進安定条件下で長期間にわたり安定であり、その平均液滴サイズは、変化しないか又は有意に増大しないことが、予期せず見出された。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、生物活性剤は、好ましくは、毛包内に送達され、血液中に有意に浸透しない。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、局所用製品は、心地よい皮膚触感を有し、脂っぽくなく、べたつかず、てからず、吸収性が速い及び伸びのよさを有し、及び毛深い皮膚、頭皮及び顔における、大きく露出した表面上及び露出していない(衣服に覆われた)皮膚表面上の使用に好適である。
【0020】
したがって、本発明はまず、毛包内への生物活性剤の標的化送達における使用を意図する治療用組成物を対象にする。本組成物は、1種以上の親油性生物活性剤、1種以上の油溶媒、1種以上の乳化剤及び水を含む水中油エマルジョンの形態で調製され;
ここで、上記1種以上の生物活性剤は、上記エマルジョンの内部油相中に実質的に溶解し;
ここで、上記エマルジョンの平均液滴サイズは、約200~約1000nmの範囲内であり;
ここで、上記1種以上の油溶媒は、エタノールに可溶性又は混和性であり;
ここで、上記1種以上の油溶媒は、天然若しくは合成の不飽和トリグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、その脂肪エステル又は脂肪エーテルからなる群より選択され;
及びここで、上記1種以上の油溶媒は、約15℃未満の融点を有する。
【0021】
本発明のこの態様の1つの好ましい実施形態において、上記開示の組成物は、少なくとも1種の可溶性増強剤をさらに含む。
【0022】
本発明のこの態様のいくつかの好ましい実施形態において、本組成物は、エタノールをさらに含む。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、上記水中油エマルジョンの液滴サイズは、約400~約800nmの範囲内である。
【0024】
本明細書で開示されるとおり、本発明の組成物中に存在する上記1種以上の生物活性剤は、親油性薬剤(好ましくは、ヒト又は獣医学的用途のための、医薬用、機能性化粧品又は化粧用製品)である。1つの好ましい実施形態において、上記1種以上の生物活性剤は、10mg/ml未満及びlogP>1の水可溶性を有する疎水性である。
【0025】
本発明の組成物は、任意の親油性生物活性剤を含み得るが、好ましくは、上記薬剤は、抗炎症薬、カルシニュリンインヒビター、ヤヌスキナーゼインヒビター、5-アルファレダクターゼインヒビター、PDE4インヒビター、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、ステロイド、プロスタグランジンアナログ、アポトーシスインヒビター、抗寄生虫剤、麻酔剤、スタチン、高脂血症剤、高コレステロール血症剤及び抗がん剤からなる群より選択される医薬用薬剤である。
【0026】
1つの好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の生物活性剤は、5-アルファレダクターゼインヒビターである。特に好ましい5-アルファレダクターゼインヒビターとしては、フィナステリド、デュタステリド、及びこれらの化合物いずれかの塩及び誘導体が挙げられる。
【0027】
本明細書で開示されるとおり、本発明の組成物は、1種以上の可溶性増強剤をさらに含む。当該分野で当業者に周知であるものの中で任意の好適な可溶性増強剤が使用され得るが、好ましくは、上記増強剤は、極性脂質、酸、アルコール、エステル、エーテル又はアミドなどの極性部分を有する脂質、エタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソソルビド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチルセバケート、ジブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、トコフェロール、トコフェロールアセテートなどの共溶媒、及びソルビタンオレエート又はソルビタンセスキオレエートなどの約5.0未満の低いHLBを有する脂質可溶性表面活性剤からなる群より選択される。
【0028】
本発明の組成物は、任意の好適な乳化剤又は乳化剤の組み合わせを含み得る。しかし、1つの好ましい実施形態において、本組成物は、2種の乳化剤を含み得、ここで、1種の乳化剤が脂溶性界面活性剤であり、及び第2の乳化剤が水溶性界面活性剤である。
【0029】
別の態様において、本発明はまた、少なくとも1種の親油性生物活性剤を、毛包に親油性生物活性剤を必要とする哺乳動物対象の毛包に送達するための方法も含み、この方法は、a)本明細書で開示されるとおりの組成物を提供する工程;及びb)上記対象の皮膚の表面に上記組成物を適用する工程を含む方法を対象とする。
【0030】
別の態様において、本発明はまた、哺乳動物対象における毛包の疾患及び障害を治療するか及び/又は予防するための方法も含み、この方法は、a)本明細書で開示されるとおりの組成物を提供する工程;及びb)上記対象の皮膚の表面に上記組成物を適用する工程を含む。
【0031】
本明細書で直ちに開示された方法は、哺乳動物対象における毛包の疾患及び障害を治療又は予防するために使用されてもよく、この疾患及び障害としては、脱毛、感染性疾患、免疫学的障害、自己免疫疾患、新生物障害、炎症性症状、並びに皮脂腺及び/又は毛包全体が詰まっている症状からなる群より選択される症状が挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0032】
本明細書で開示された2つの方法のいずれかを用いる目的のための、少なくとも1種の親油性生物活性剤は、抗炎症薬、カルシニュリンインヒビター、ヤヌスキナーゼインヒビター、5-アルファレダクターゼインヒビター、PDE4インヒビター、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗生物質、ステロイド、プロスタグランジンアナログ、アポトーシスインヒビター、抗寄生虫剤、麻酔剤、スタチン、高脂血症剤、高コレステロール血症剤及び抗がん剤からなる群より選択される医薬用薬剤である。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の生物活性剤は、フィナステリド及び/又はデュタステリドである。他の好ましい実施形態において、上記生物活性剤は、ステロイド薬である。なお他の好ましい実施形態において、上記生物活性剤は、ヤヌスキナーゼインヒビターである。
【0034】
本明細書で(及び本明細書中以下でより詳細に)説明される通り、本発明の組成物は、中に含まれる生物活性剤を毛包に選択的に送達する能力によって特徴づけられる。この結果、皮膚の非毛包部分又は血中のどちらにおいても、薬剤はずっと低いレベルで検出される。したがって、本明細書で開示されるいずれかの方法の1つの好ましい実施形態において、上記組成物の皮膚への適用後、上記毛包内に存在する上記生物活性剤の単位面積当たりの量は、治療される上記対象の上記皮膚に存在する単位面積当たりの量よりも高い。さらに、これらの方法のいくつかの実施形態において、上記組成物の皮膚への適用後、上記生物活性剤の血中濃度は、所望の全身的治療効果を達成するために必要な濃度よりも低い。いくつかの場合、上記生物活性剤の血中濃度は、同じ上記生物活性剤の経口又は非経口投与後に得られる濃度よりも少なくとも10倍低い。
【0035】
本発明の治療方法のいくつかの好ましい実施形態において、上記哺乳動物対象は、ヒト対象である。他の好ましい実施形態において、上記対象は、非ヒト哺乳動物である。
【0036】
本発明は、1つの態様において、上述の組成物又は上述の投薬形態を製造する方法をさらに提供し、この方法は、疎水性生物活性剤を油相中に混合及び加熱しながら溶解する工程、水相及びその成分を混合、加熱及びホモジナイズしながら加える工程、平均液滴サイズを制御する工程、混合物を冷却する工程及び最終容器に充填する工程を含む。上述の組成物又は上述の投薬形態を製造するための別の任意選択的な方法は、水相を除く全ての成分を融解し、その後水相を加え、その後上記組成物を選択した温度でホモジナイズし、次いでその後の使用のために冷却する工程を含む。
【0037】
ここで記載する方法、用途、材料及び実施例は、説明のみのためのものであり、限定を意図しない。本明細書中で記載した材料、用途及び方法と類似又は均等な材料、用途及び方法が、本発明を実施又は試験する際に使用され得る。本発明の他の特徴及び利点が、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】毛による被覆百分率として測定した、毛の成長速度に対する種々の製剤における経口及び局所投与されたデュタステリドの局所的効果を、グラフ化して示す。治療群は、(左から右に示す)未処理、未治療、経口、ゲル中に懸濁したデュタステリド、FOL002 0.05%デュタステリド及びFOL002 0.01%である。
図2】脱毛テストステロンモデルにおける、28日間にわたって毎日投与した後の、マウス毛包の皮膚の組織学的写真である。治療群:未処理、未治療、0.05%デュタステリド含有FOLサブミクロン製剤1日1回投与、0.2%デュタステリド含有FOLサブミクロン製剤1日2回投与、0.25%フィナステリド含有FOLサブミクロン製剤1日1回投与。デュタステリド治療群の場合、組織切片を、動物の治療した側(後期成長期/退行期)を左側に、未処理側(休止期)を左側に、対にして示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
何らの理論又は機構に制限されることはないが、本発明は、エマルジョンの内部油相中に実質的に溶解され、約1ミクロン未満の平均エマルジョン液滴サイズを有する薬物又は生物活性剤が、皮膚に少しすりこみながら塗布した際に、毛包内により良く浸透するが、皮膚の毛包以外の部分にはごくわずかしか浸透しないことを実証することによって、特異的毛包内送達を実証するという、驚くべき知見に基づく。その上さらに、予期せぬことに、平均液滴サイズは、通常の貯蔵寿命条件下、又は促進安定条件における保存下のいずれにおいても、有意に変わらない。
【0040】
本明細書中で開示される組成物は、薬物を毛包に標的化することにより、薬理学的効力を増大し及び他の器官へのこの薬物の曝露を低減することによって、副作用、毒性及び局所的なかぶれを軽減することができる。その上、この組成物は、適用が容易であり、皮膚上に容易に伸び、及び十分に吸収され、脂っぽくなく、べたつかず、てからない。
【0041】
毛包内標的化組成物は、以下を含むエマルジョンである:a)少なくとも1種の油溶媒、及びb)(a)油溶媒中に実質的に溶解した少なくとも1種の生物活性剤、及びc)少なくとも1種の安定化剤、及びd)水、及びe)任意選択的に、化学的安定化剤、着色剤、香料、抗酸化剤及び微生物保存料などの機能的賦形剤。この組成物の液滴サイズは、約200nm~約1,000nm(ナノメートル)の範囲内であり、及び(a)油相中に溶解した(b)生物活性剤の量は、所望の薬理学的効果を生じるために十分であり、同時に、この生物活性剤が毛包を介さずに皮膚に吸収された量は少なく、かつ全身的に吸収された量もまた非常に少なく、治療効果及び又は重篤な副作用若しくは毒性を生じるレベルより低い。
【0042】
1つの実施形態において、毛包内標的化組成物は、a)少なくとも油溶媒において、及びb)(a)油溶媒中に実質的に溶解した少なくとも1種の生物活性剤、及びc)少なくとも1種の乳化剤、及びd)少なくとも1種のゲル化剤、及びe)任意選択的に、エタノール及びf)任意選択的に、可溶性増強剤及びg)水、及びh)任意選択的に、化学的安定化剤、着色剤、香料、抗酸化薬及び微生物保存料などの機能的賦形剤を含むエマルジョンである。液滴サイズは、約200nm~約1,000nm(ナノメートル)の範囲内であり、及び(a)油相中に溶解した(b)生物活性剤の量は、所望の薬理学的効果を生じるために十分であり、同時に、毛包を介さずに皮膚に吸収された量は少なく、かつ全身的に吸収された量もまた非常に少なく、全身的治療効果及び又は重篤な副作用若しくは毒性を生じ得るレベル未満である。
【0043】
局所用クリーム及びローションの液滴サイズは、慣用的に測定されておらず、市販の医療品又は化粧品の大部分において重要だと考えられていない。本発明者らは、種々の市販の医薬クリーム及びローションの平均液滴サイズを試験し、及び平均した平均液滴サイズが、約1ミクロン~約10ミクロンであることを見出した。例えば、DermovateTMクリームは、約2ミクロンの平均液滴サイズを有し、及びMetrocreamTMは、約3ミクロンの平均液滴サイズを有する。したがって、全ての試験した先行技術調製物は、特に、本開示の組成物の平均液滴サイズの範囲よりも大きな平均液滴サイズを有することによって、特徴づけられる。
【0044】
定義
用語「約」は、本明細書中で使用される場合、元の値の±5%以内にある任意の値をいう。例えば、「約100」は、「95~105」をいう。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「平均液滴サイズ」は例えば、動的光散乱法によって(例えば、Malvern instrument DLS NanosizerTMなどのデバイスを用いて)測定した、液滴の特定の方向の径を測定し、液滴のそれぞれの径の合計を測定した液滴の数によって、割ることによって得られる値をいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「毛包内標的化」又は「毛包内送達」は、生物活性剤、薬物又は化粧用薬剤の、皮脂腺を含む毛包近傍内への送達をいう。この差次的送達は、皮膚の表面全体よりも毛包幹を優先すると理解される。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「エタノール中で可溶性である」は、周囲温度でエタノール中に十分に又は少なくともわずかに可溶性であることを意味する。1グラムの油溶媒が、周囲温度で100ml未満のエタノール中に溶解する場合、わずかに可溶性である。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「実質的に溶解する」とは、生物活性剤分子の分子状態が、最終生成物を投与した場合に薬理学的効果発揮するために十分な量で、エマルジョンの油相中に溶解していることをいう。
【0049】
毛包疾患
毛包疾患としては、限定されないが、脱毛、例えばアンドロゲン性雄性脱毛、雌性脱毛、円形脱毛症(AA)、化学療法誘導性脱毛(CIA)、瘢痕性脱毛症(scarring alopecia)、瘢痕性脱毛症(cicatricial alopecia);扁平毛孔性苔癬、前頭部繊維化性脱毛症、毛包炎、毛嚢虫、小棘性束毛症(Trichodysplasia Spinulosa)、毛母基異形成(pilomatrix dysplasia)、虫食い状皮膚萎縮症(atrophoderma vormicula)、Rombo症候群、Loeys-dietz症候群、デルモトリチック症候群(dermotrichic syndrome)、毛包性角化症(keratosis folliculari)、Hailey-Hailey病、帯状疱疹、貧毛症、脂漏症及び多毛症が挙げられる。尋常性ざ瘡、酒さなどの多くの種類のざ瘡は、抗生物質、過酸化ベンゾイル、アゼライン酸及び誘導体、ビタミンA誘導体及び殺菌剤などの種々の薬物によって一般に治療されている、毛包疾患である。
【0050】
生物活性薬剤
本発明において使用される生物活性剤は、以下から選択されるがこれらに限定されない、ヒト又は獣医学的用途のための化粧用薬剤機能性化粧品又は医薬品であってもよい:ステロイド系抗炎症薬、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、モネタゾン(monethasone)、ハロメタゾン(halomethasone)、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン若しくはコハク酸ベタメタゾン、フルオロキノロン(fluorocinolone)、トリアムシノロン、クロベタゾール、ジフロラゾン、ロテプレドノールエタボネート、アムシノニド及びヒドロコルチゾン並びにそれらの混合物;非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナク、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、トルメチン、スリンダク、メクロフェナム酸、ケトプロフェン、ピロキシカム、トラマドール、エトドラク、セレコキシブ、ナブメトン及びフルルビプロフェン若しくはそれらの塩及びそれらの混合物;カルシニュリンインヒビター、例えば、ピメクロリムス、タクロリムス及びシクロスポリン;JAKキナーゼインヒビター、例えば、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、パクリチニブ、ルキソリチニブ、トファシチニブ、ウパダシチニブ、デルゴコトニブ(delgocotonib)及びバリシチニブ並びに例としてその誘導体、塩及び遊離塩基;PDE4インヒビター、例えば、クリサボロール、ロリプラム、アプレミラスト、ロフルミラスト、ホルスコリン及びテオフィリン;5-アルファレダクターゼインヒビター、例えば、デュタステリド、フィナステリド、エプリステリド;並びに免疫抑制剤、例えば、イムラン、ミコフェノール酸モフェチル;レチノイド、例えば、アシトレチン、イソトレチノイン、トレチノイン;抗ウイルス剤、例えば、レジパスビル、レテルモビル、ドコサノール(べへニルアルコール);抗真菌剤、例えば、アンホテリシンB、グルカン合成インヒビター、例えば、イトラコナゾール、カスポファンギン、ミカファンギン、又はアニデュラファンギン(LY303366)、エコナゾール、テルコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィン又はグリセオフルビン;アスタキサンチン、リコピンを含む抗がん性天然生成物、抗酸化剤、ダイズジアデジン、ゲニステイン、ポリペノール、EGCG、コエンザイムQ10、トコフェロール、ケルセチン、レスベラトロール、フラーレン及び誘導体、アゼライン酸及びその誘導体及びクルクミン並びにそれらの組み合わせ、プロスタグランジン、例えば、ビマトプロスト、ラタノプロスト;アポトーシスインヒビター、例えば、ピフィスリンA;麻酔薬、例えば、ジブカイン(シンコカイン)、リドカイン、ベンゾカイン、ロピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、プリロカイン;鉱物コルチコイド(アルドステロン)レセプターアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトン;機能性化粧品、例えば、ビタミンA及び誘導体、ガルブリジン、グリチルリチン酸、アゼライン酸、酸化防止剤、ベツリン酸:抗寄生虫薬及び抗原虫薬、例えば、イベルメクチン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ミルテホシン、クロタミトン、リンデン、ジスルフィラム、メスルフェン、安息香酸ベンジル、スピノシン、ダプソン、ペルメトリン、ブリモニジン;PPARγアゴニスト、例えば、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン;血管収縮薬、例えば、ナファゾリン、メフェンテルミン;抗がん薬、例えば、ラパチニブ、ダサチニブ、イミキモド;抗インテグリン、例えば、リフィテグラスト;SP1R調節因子、例えば、シポニモド、フィンゴリモド;抗線維症薬、例えば、オベチコール酸;抗ヒスタミン、例えば、デストラタジン(destoratadine);プロスタグランジンアナログ、例えば、ビマトプロスト、ラタノプロスト;スタチン及び抗高脂血症及び抗高コレステロール血症、例えば、エゼチミブ、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン。
【0051】
好ましくは、本発明の組成物に含まれる生物活性剤は、親油性薬剤である。
【0052】
油溶媒
油溶媒は、水と混合せず、生物活性剤を溶解するために使用される脂質材料である。油溶媒は、例えば、トリグリセリド、脂肪酸又はアルコール並びに脂肪エステル及びエーテルである。トリグリセリドは、天然の植物抽出物であっても、又は合成のものであってもよい。
【0053】
植物由来のトリグリセリドとしては、例えば、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、キャノーラ油又は落花生油が挙げられ、脂肪エステル又は酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレイン酸、カプリン酸、カプリル酸、ミリスチン酸又はアルコール、並びに脂肪酸エステル及びエーテル、例えば、オクチルドデカノール、イソプロピルミリステート又はそれらの任意の組み合わせなどである。
【0054】
好ましい油溶媒は、エタノールに可溶性又は混和性であり、室温で液体であり、及び15℃より高い温度で固化しない脂質であり、例えば不飽和トリグリセリド、例えばヒマシ油及びオリーブ油、並びに不飽和遊離脂肪酸及び脂肪アルコール及び脂肪エステル又はエーテル並びに種々の脂肪酸エステル及びエーテル、例えばジエチルセバケート、ジイソプロピルアジペート、ジブチルアジペート又は例えばデシルオレエート及びオクチルドデカノールである。
【0055】
好ましい油溶媒は、室温にて液体であり、及び冷却の際のみに固化する脂質である。
【0056】
安定化剤
安定化剤は、界面張力を下げることができ、かつ相分離の傾向を低減し得、及び油液滴の周りに癒合及び凝集を回避する強いエンベロープを形成することにより、安定性を上昇させる、乳化剤及び表面活性剤である。
【0057】
界面活性剤安定化剤の例は、ポリソルベート及びソルビタン、ポリエチレングリコールエステル及びエーテル、例えばMyrj、Brig及び脂肪酸のスクロースエステル又はポリグリセロール脂肪酸のエステルである。
【0058】
好適な投薬形態、乳化剤、油及び安定化剤のさらなる詳細は、例えば以下を含む、当該分野の任意の標準的な参考文献から、得られ得る:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co,Easton,Pa,USA(1980)。
【0059】
組成物
本組成物は、油溶媒、安定化剤及び水から作られる。油溶媒は、所望の濃度の選択された生物活性剤を溶解する能力のある油である。安定化剤は、乳化剤及びゲル化剤及び懸濁化剤であり、及び水相は、皮膚保水剤、例えば、グリセリン又はプロピレングリコール又はブチレングリコール又はヘキシレングリコール及び一般的添加剤、例えば、着色剤、pH緩衝剤、香料及び微生物保存料並びに皮膚浸透増強剤、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル又はエタノールを、含み得る。
【0060】
本組成物は、業界標準機器によってホモジナイズされて、約200nm~約1,000nm及びより好ましくは、~約400nm、~約800nmの特定平均油液滴サイズを生成する。
【0061】
平均液滴サイズは、製品貯蔵寿命にわたって、促進安定条件下で、有意に変化しない。
【0062】
ビヒクル形態
好ましい投薬形態は、これらに限定されないが、任意の液体又は半固体又は固体の投薬形態である。局所送達系は、懸濁液、軟膏、ローション、クリーム、フォーム、スプレー、局所パッチであってもよい。ビヒクルは、任意の許容できる溶媒及び不活性成分、並びに抗酸化薬保存料及び着色剤を含んでもよい。送達形態は、医薬、化粧品、獣医学的薬品の分野及び製剤分野において周知であるとおり、単回用量又は多回用量形態であってもよい。
【0063】
利益及び用途
生物活性剤の毛包標的化送達は、薬理学的効力の増大、より低量の生物活性剤の使用、他の器官の副作用及び毒性からの回避、皮膚かぶれの軽減、血中レベルの低下及び全身的副作用の軽減などの、多くの利点を提供する。その上、副作用、毒性及び局所的なかぶれの軽減は、患者コンプライアンス及び臨床効果を増大するであろう。良好な患者コンプライアンスを支持する別の利点は、この製品の、迅速かつ容易に伸びることによる利便性、心地よい皮膚触感及び使用性、及び脂っぽくない、べたつかない及びてからない、有益な製品特性である。
【0064】
特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約200nm(ナノメートル)~約2,000nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約200nm(ナノメートル)~約1,500nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約200nm(ナノメートル)~約1,200nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約200nm(ナノメートル)~約1,000nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約200nm(ナノメートル)~約800nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約300nm(ナノメートル)~約700nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約400nm(ナノメートル)~約2,000nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約400nm(ナノメートル)~約1,200nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約400nm(ナノメートル)~約1,000nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約400nm(ナノメートル)~約800nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約400nm(ナノメートル)~約700nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約500nm(ナノメートル)~約1,200nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約500nm(ナノメートル)~約1,000nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約500nm(ナノメートル)~約800nmである。特定の好ましい実施形態において、エマルジョンの平均液滴サイズは、約500nm(ナノメートル)~約700nmである。
【0065】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1種の油溶媒は、トリグリセリド油、ジグリセリド油又はモノグリセリド油、脂肪酸及び脂肪アルコール又は脂肪エステル及びエーテル、例えば:イソステアリン酸及び誘導体、イソプロピルパルミテート、イソプロピルイソステアレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルジメレート(diisopropyl dimerate)、マレエート化ダイズ油、オクチルパルミテート、セチルラクテート、セチルリシノレエート、トコフェニルアセテート、アセチル化ラノリンアルコール、セチルアセテート、フェニルトリメチコン、グリセリルオレエート、トコフェニルリノレエート、コムギ胚芽グリセリド、アラキジルプロピオネート、ミリスチルラクテート、デシルオレエート、プロピレングリコールリシノレエート、イソプロピルラノレート、ペンタエリトリルテトラステアレート、ネオペンチルグリコールジカプリレート/ジカプレート、イソノニルイソノナノエート、イソトリデシルイソノナノエート、ミリスチルミリステート、トリイソセチルシトレート、オクチルドデカノール、オクチルヒドロキシステアレート、ジエチルセバケート並びにそれらの混合物から選択される。好適な液体油としては、飽和、不飽和又は多価不飽和油が挙げられる。例として、不飽和油は、オリーブ油、ヒマシ油、トウモロコシ油ダイズ油、キャノーラ油、綿実油、ココナツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ルリジサ実油、チョウジ油、麻実油油、ニシン油、肝油、サケ油、亜麻仁油、コムギ胚芽油、マツヨイグサ油又は任意の割合のそれらの混合物であってもよい。
【0066】
特定の好ましい実施形態において、油溶媒は、室温にて液体であり、及び生成又は保存の際に固化せず、及びその融点温度は20℃未満、好ましくは15℃未満、及びより好ましくは、10℃未満及びより好ましくは、5℃未満、及びより好ましくは、0℃未満である。
【0067】
特定の好ましい実施形態において、油溶媒及び親油性乳化剤並びに可溶性増強剤を含むエマルジョンの油相は、室温にて液体であり、及び生成又は保存の際に固化せず、及びその融点温度は、20℃未満、好ましくは15℃未満、及びより好ましくは、10℃未満及びより好ましくは、5℃未満及びより好ましくは、0℃未満である。
【0068】
特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも約1重量%~約40重量%の油溶媒を含み、特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも約4重量%~約35重量%の油溶媒を含み、特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも約6重量%~約30重量%の油溶媒を含み、特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも約8重量%~約25重量%の油溶媒を含み、特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも約10重量%~約25重量%の油溶媒を含み、特定の実施形態において、本組成物は、少なくとも約12重量%~約24重量%の油溶媒を含む。
【0069】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1種の乳化剤は、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、双性イオン性、両性及び両性電解質の界面活性剤、及びそれらの界面活性剤の混合物から選択される。可能性のある界面活性剤の非限定の例としては、ポリソルベートs、、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)及びポリ(オキシエチレン)(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80);ポリ(オキシエチレン)(POE)脂肪酸エステルs、、例えば、ポリエチレングリコール400モノステアレート(Myrj)45、Myrj49及びMyrj59;ポリ(オキシエチレン)アルキリルエーテル、例えば、ポリ(オキシエチレン)セチルエーテル、ポリ(オキシエチレン)パルミチルエーテル、ポリエチレン酸化物ヘキサデシルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、brij 38、brij 52、brij 56及びbrij W1;スクロースエステル、ソルビトールの部分エステル及びその無水物、、例えば、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノラウレート;モノ又はジグリセリド、イソセテス-20、メチルココイルタウレートナトリウム、メチルオレオイルタウレートナトリウム、ラウリルスルフェートナトリウム、トリエタノールアミンラウリルスルフェート及びベタインが挙げられる。PEG-脂肪酸エステルポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、K、など)のアルコール-油トランスエステル化誘導体、例えば、トコフェニルPEG-100スクシネート(TPGS、Eastmanから入手可能)もまた、好適な界面活性剤である。さらなる例としては、脂肪酸ポリグリセロールエステル、例えば、ポリグリセリル3-オレエート及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(POE-POP)ブロックコポリマーが挙げられる。
【0070】
本発明の1以上の実施形態において、表面活性剤は、単独で非イオン性であり、1以上の非イオン性界面活性剤を含む。本発明の1以上の実施形態にしたがい、2種の表面活性剤が選択され、1つはHLB>9で水溶性又は水分散性であり、2番目はHLB<9で脂溶性又は油分散性である。
【0071】
本発明の1以上の実施形態において、表面活性剤は、スクロースと食品脂肪酸のメチル及びエチルエステルから調製されるか、又はスクログリセリドからの抽出によって調製される、スクロースの脂肪酸とのモノ-、ジ-及びトリ-エステル(スクロースエステル)、を含む。例示的なスクロースエステルとしては、スクロースモノ-パルミテート及びスクロースモノラウレートを含む。好適なスクロースエステルとしては、高含量のモノエステルを有するものが挙げられ、これらは、より高いHLB値を有する。
【0072】
先行技術のエマルジョン組成物とは異なり、毛包を標的する安定なエマルジョンを得るために使用される全界面活性剤は、低量である。皮膚かぶれを軽減するために界面活性剤レベルを低くすることが好ましい。全界面活性剤は、エマルジョン組成物の0.1~5.0%W/Wの範囲内であり、代表的には3未満、及び2%W/W未満、又は1%W/W未満の範囲内でさえある。
【0073】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリマー安定化剤は、天然に存在するポリマー材料、例えば、イナゴマメガム、アルギン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、卵アルブミン、ゼラチンアガー、カラギーナンガムアルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、クインスシード抽出物、トラガカントガム、デンプン、化学的に修飾されたデンプンなど、半合成のポリマー材料、例えば、セルロースエーテル(例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアールガム、ヒドロキシプロピルグアールガム、可溶性デンプン、陽イオン性セルロース、陽イオン性糖類など及び合成のポリマー材料、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールポリアクリル酸ポリマー、ポリメタクリル酸ポリマー、例えば、CarbopolTMタイプ又はPemuleneTRTM、ポリビニルアセテートポリマー、ポリビニルクロリドポリマー、ポリビニリデンクロリドポリマーなどから選択される。上記化合物の混合物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0074】
ゲル化剤は、エマルジョン組成物の約0.1%~約5.0%W/Wの範囲内の量で、存在する。1以上の実施形態において、これは、代表的に、エマルジョン組成物の0.5%W/W未満である。
【0075】
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1種の生物活性剤は、水不溶性であり、10mg/ml未満又は1mg/ml未満の水溶性を有し、並びに1を超える及び約3.5~約8.0のpH又はこの範囲内の任意のpHにおいて約1.5~約6.0及び約2.0~約5.0であるLogPを有する。
【0076】
特定の好ましい実施形態において、生物活性剤は、少なくともエマルジョンの油相において約1%の可溶性を有する。特定の好ましい実施形態において、生物活性剤は、少なくともエマルジョンの油相において約2%の可溶性を有する。特定の好ましい実施形態において、生物活性剤は、少なくともエマルジョンの油相において約3%の可溶性を有する。特定の好ましい実施形態において、生物活性剤は、少なくともエマルジョンの油相において約5%の可溶性を有する。
【0077】
特定の好ましい実施形態において、油相は、生物活性剤のための可溶性増強剤を含む。可溶性増強剤は、例として、極性脂質及び、酸、アルコール、エステル、エーテル若しくはアミドなどの極性部分を有する脂質又は共溶媒、例えばエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソソルビド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジエチルセバケート、ジブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、トコフェロール、トコフェロールアセテート、又は代表的には約5.0未満の低いHLBを有する脂質可溶性表面活性剤、例えば、ソルビタンオレエート又はソルビタンセスキオレエートから選択される。
【0078】
生物活性剤が油相と水相との間に分かれることが予測され、及び生物活性成分のわずかな部分が水相中に存在し得る。生物活性剤がイオン化し、水相中に可溶性である場合には、相中に存在する部分は増大し得る。しかし、このような場合であっても、油相中に溶解する生物活性剤の用量が、意図される薬理学的活性を発揮するために十分である限り、有効な毛包内送達が予期される。水相中及び油相中の活性成分の可溶性は、時々、生成物pHによって調節され得る。このような場合、生物活性剤について非イオン化かつより低い水溶性の状態を支持するpHが、使用される。
【0079】
特定の好ましい実施形態において、生物活性剤は、油液滴中に実質的に溶解し、例えば、用量の少なくとも約98.0%が油液滴中に溶解する。いくつかの好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約95.0%が、油液滴中に溶解する。他の好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約90.0%が、油液滴中に溶解する。1つの好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約80.0%が、油液滴中に溶解する。別の好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約70.0%が、油液滴中に溶解する。なお別の好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約50.0%が、油液滴中に溶解する。1つの好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約30.0%が、油液滴中に溶解する。別の好ましい実施形態において、生物活性剤用量の少なくとも約10.0%が、油液滴中に溶解する。
【0080】
特定の好ましい実施形態において、約1時間~約12時間及びより好ましくは約2時間~約6時間にて毛包内で測定した生物活性剤濃度は、皮膚において測定された濃度よりも少なくとも約1.5倍高い。
【0081】
特定の好ましい実施形態において、約1時間~約12時間及びより好ましくは約2時間~約6時間、又は毎日の局所適用を繰り返した後で、毛包内で測定した生物活性剤濃度は、血中又は血漿中で測定された濃度よりも少なくとも約10倍高い。
【0082】
特定の好ましい実施形態において、予期される局所的な薬理学的効果は、血中又は血漿中で生物活性剤が検出されないか、又は血中又は血漿中の生物活性剤の測定レベルが予期される同じ薬理学的効果を惹起する経口用量後に測定された血中レベルと比較して、少なくとも約10倍低い。
【0083】
製品製造
油相を混合し及び60~65℃まで加熱して、生物活性剤を加え、及び完全に均一になって溶解するまで混合し、水相を加え、所望のエマルジョンが形成されるまで混合を続けホモジナイズする。激しく撹拌しながら約25~約40℃まで冷ます。
【0084】
特定の好ましい実施形態において、平均液滴サイズは、貯蔵寿命の間、かつ/又は安定性の促進条件で、5.0%を超えて有意に変化しない。特定の好ましい実施形態において、平均液滴サイズは、貯蔵寿命の間、かつ/又は安定性の促進条件で、10.0%を超えて有意に変化しない。特定の好ましい実施形態において、平均液滴サイズは、貯蔵寿命の間、かつ/又は安定性の促進条件で、20.0%を超えて有意に変化しない。特定の好ましい実施形態において、平均液滴サイズは、貯蔵寿命の間、かつ/又は安定性の促進条件で、30.0%を超えて有意に変化しない。特定の好ましい実施形態において、平均液滴サイズは、貯蔵寿命の間、かつ/又は安定性の促進条件で、50.0%を超えて有意に変化しない。
【0085】
ここで、以下の実施例において、本発明は、その態様がより完全に理解され及び認識されるように、特定の好ましい実施形態に関連して説明されるが、本発明をその特定の実施形態に限定することを意図しない。対照的に、全ての代替法、改変及び均等物が、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に網羅されることが意図される。したがって、好ましい実施形態を含む以下の実施例は、本発明の実施を説明することに寄与し、示される詳細は、本発明の好ましい実施形態の例示及び説明的考察の目的のものしかなく、最も有用かつ容易に理解されると思われる製剤手順の記載及び本発明の態様の原則及び概念を提供するために提示される。
【実施例
【0086】
実施例1:サブミクロンエマルジョン中のデュタステリドの組成物
以下の表に提示した本組成物の生成の一般的手順は、生物活性剤を油相中に約60~65℃で溶解することによるものである。水相(例えば表20、21を参照されたい)は、約60~70℃まで加熱され、油相を混合する間に添加され、その後、所望のエマルジョンが形成されるまでホモジナイズする。このエマルジョンを、激しく撹拌しながら約25~約40℃まで冷ます。
【0087】
表1は、オレイン酸及びIPMを含む製剤を示す。この設定における最も物理的に安定した製剤は、002及び020であった。低濃度のゲル化剤が、製剤の物理的安定性を維持するために寄与した。ヒマシ油がIPMに置き換わっている(表2)製剤007、013及び018の組において、最も物理的に安定であった。Carbopolは、非常に速い遠心分離(10krpm)であっても、クリーミングを阻害した(製剤004、007、013及び018)。ポリグリセリル-3オレエートを有する製剤は、大きな液滴サイズ及び/又は物理的不安定性を示した。類似の液滴サイズが、油の濃度を低下して(12%対24%)得られる。表3は、オレイン酸を減らし及び代わりにオクチルドデカノールを添加すること(全油濃度12%)が、液滴サイズを増大したことを示す。選択した製剤を、化学的及び物理的安定性について、時間経過にわたって試験した。製剤018、022及び027は、6ヶ月にわたって物理的及び化学的安定性を示した(表4)。
【0088】
【表1】
【0089】
予期せぬことに、オレイン酸及びIPMを含む組成物が、エタノールの濃度と平均液滴サイズの間に逆相関を示した。すなわち、エタノールが多くなると、平均液滴サイズがより小さくなり、その逆も同様であった(表1Bを参照されたい)。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
ヒマシ油+オレイン酸を含む組成物もまた、液滴サイズに対しエタノール濃度依存的効果を(022&018対004を)示したが、ポリソルベート60+ポリグリセリル-3オレエート又はポリソルベート20がない場合のみ、このエタノール依存性効果を反転した。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
実施例2:
マウスにおけるテストステロン誘導性脱毛モデルを用いた毛による被覆及び局所的安全性評価
C57blマウスの背面の毛を、電気バリカンで刈り、その後、「除毛クリーム」(Veet、Oxy Reckit Benckiser、Chartes、France)を適用した。除毛24時間後、マウスにテストステロン、1mg/マウスの皮下注射を、頚部領域にて毎日与えた。初回テストステロン注射の24時間後、マウスに、下の表5の通りに治療を受けさせることを開始した。局所製剤を、刈り上げた背中の皮膚全体に適用した。毛による被覆を、ImagJソフトウェアによって分析した。
【0097】
【表7】
【0098】
適用部位における皮膚は、損なわれておらず、種々のエマルジョン及びミノキシジルでの治療後の異常は検出されなかった。対照的に、デュタステリドエタノール/IPM/MCT/オレイン酸溶液による治療後、皮膚は、目に見える皮膚毒性によって損傷した。
【0099】
結果は、本発明の局所治療(すなわち、局所デュタステリド製剤FOLN002)のみが、有意な程度(≧75%)に毛による被覆の再生に成功した。反対に、経口フィナステリド及び経口デュタステリド治療(認可されたヒト用量の同等量よりも5倍高い用量で投与した)は、相対的に低い毛による被覆における改善しか生じず(それぞれ20及び30%)、他方で、0.2%デュタステリドの無水エマルジョン(FOLD004、組成物について表18を参照されたい)は、ミノキシジル又は経口投与よりも有効であったが、新規な本組成物(FOLN002)よりも効力が低かった。
【0100】
実施例3:
毛の成長、局所的安全性、DHT発現及びデュタステリドのインビボ血中濃度
C57blマウスの背面の毛を、電気バリカンで刈り、その後、「除毛クリーム」(Veet、Oxy Reckit Benckiser、Chartes、France)を適用した。除毛24時間後、マウスにテストステロン、1mg/マウスの皮下注射を、頚部領域にて毎日与えた。初回テストステロン注射の24時間後、マウスに、下の表6の通りに治療を受けさせることを開始した。局所製剤を、刈り上げた背中の皮膚全体に適用した。毛による被覆を、ImagJソフトウェアによって分析した。
【0101】
【表8】
【0102】
結果は、0.01%の低量のデュタステリド(FOLN002-0.01%)によって治療されたマウスが、ゲル-0.2%デュタステリド(表7)で治療されたマウスと比較して、有意に改善された毛による被覆を示したことを示す。表7の本組成物のいくつかによって7、14、21及び28日目の時点でもたらされた、毛による被覆における変化を、図1にグラフでまとめる(左から右へ:未処理、NT、経口0.005%、ゲル0.2%、FOL002-0.05%及びFOL002-0.01%)。加えて、本発明の全ての製剤が、全ての濃度及びレジメンにて、皮膚においてDHT発現を低減した。対照的に、デュタステリド(ヒト認可用量×5と同等の用量にて)及びゲル製剤の経口投与は、皮膚におけるDHTの濃度の低下を示さなかった(表8)。対照的に、デュタステリドの血中濃度は、FOLN002-0.01%で治療されたマウスにおいて、20倍以上のデュタステリドを含むゲル-0.2%製剤と比較して2.5倍低かった。(それぞれ132対325ng/ml)(表9)。
【0103】
皮膚におけるDHT発現に対する効果は用量依存的ではなかった。このことは、毛包内デュタステリドの用量が低くても、経口投与経路よりも有効であることを示唆している。
【0104】
最も高い投与用量は、約20mg/kg/dと同等であった。相対的なヒト同等用量(HED)は、2mg/kg/dであり、ヒト経口用量の200倍であった。0.2%デュタステリド含有FOL製剤の毎日1回又は2回局所適用をマウスにおいて28日間繰り返した後に、皮膚又は全身的な毒性を観察した。
【0105】
【表9】
【0106】
【表10】
【0107】
【表11】
【0108】
実施例4
マウスにおけるテストステロン誘導性脱毛モデルを用いる、毛による被覆に対する局所効果
脱毛の誘導:C57blマウスの背面の毛を、電気バリカンで刈り、その後、「除毛クリーム」(Veet、Oxy Reckit Benckiser、Chartes、France)を適用した。除毛24時間後、マウスにテストステロン、1mg/マウスの皮下注射を、頚部領域にて毎日与えた。初回テストステロン注射の24時間後、マウスに、下の表10の通りに治療を受けさせることを開始した。
【0109】
治療を、背中の右側の上の脊柱に沿った2.5×1cmの指定領域に適用した。同じ部位への反復適用を、特定のサイズのステンシルを用いて行った。残りの背中の皮膚を、未治療のままにした。治療した2.5×1cmの指定領域及び治療していない皮膚における毛による被覆を、ImagJソフトウェアによって分析した。
【0110】
表11に示した結果は、治療部位における毛による被覆が治療していない部位と比較して有意に高かったことで、FOL製剤の効果が主に局所的であったことを、再び明らかに証明した。治療した皮膚及び治療しない皮膚の組織学的評価は、臨床的に観察された毛による被覆と相関する、毛の成長周期及び毛包発生状態に対する、治療関連効果を示した。局所デュタステリド又はフィナステリドによって治療された右側皮膚部位は、治療していないマウスと比較して増強した毛の成長を、毛包の休止期状態を上回る成長期及び退行期状態と共に、それぞれ示した。これらの組織学的結果を、図2に示す。皮膚毒性は、観察されなかった。
【0111】
【表12】
【0112】
【表13】
【0113】
実施例5:
デュタステリドのインビトロ経皮送達
28時間の間にブタ耳皮膚の厚み全体を通るデュタステリドの浸透を、Franz Cell TDDシステムを用いて評価した。0.2%デュタステリドを含む4つのFOL製剤を、4連で試験した。デュタステリド分析を、HPLCを用いて実施した。レシーバー溶液中にデュタステリドは検出されなかった。
【0114】
実施例6:
ブタにおける局所デュタステリドのPK及び安全性
2つの濃度でのFOLN027の28日間の反復した局所適用後の、局所的な安全性及び全身的な曝露を、20kgの家畜の雄ブタにおいて試験した。下の表12のように、製剤を、連続する28日間の期間にわたって局所的に1日1回適用した。臨床観察及びDraizeスコアリングを、毎日行った。デュタステリドの病理組織学のための生検及び生物分析のための血液を、3つの事前に決定していた時点で、試験を通して収集した。血漿中で測定したデュタステリド濃度を、表13にまとめる。これらの結果は、デュタステリドの有意な血中レベルは、使用された最も高い局所用量(6.3mg/日)によってのみ測定可能であったことを示す。この場合であっても、血漿濃度は、経口治療の場合にみられる濃度の約半分でしかなかった。
【0115】
【表14】
【0116】
【表15】
【0117】
約20kgの若いブタにおいて、4%の体表面面積(BSA)への、2mg/dまでのFOLN027の28日間の反復した局所適用後、デュタステリドに対する全身的曝露はなかった。ブタにおける連続した28日間の局所適用後の、デュタステリドFOL製剤の局所的な安全性の評価は、毒性効果を示さなかった。
【0118】
実施例7:
ヒト対象におけるデュタステリドエマルジョンの皮膚毛包標的化。
9cm平方(3cm×3cm)の正方形を、前脚上に印づけした。種々の0.5%デュタステリド製剤の100マイクロリットルのサンプルを、塗布して30秒間にわたって擦りこんだ。3時間後、各正方形に、5回にわたってテープ脱毛し、その後、充分な石鹸及び水で洗浄した。各正方形を、ホットワックスで処理し、1種のサンプルにつき得た約80~約120の毛包を含む全ての毛を、引き抜いて、収集した。毛包におけるデュタステリドの量を、UHPLCによって測定した。製剤FOL040は、単回適用の3時間後に試験して0.67mcg/cm2及びFOL0410.71mcg/cm2を示し、他方で、溶媒中に溶解した同用量のデュタステリドは、ずっと低い0.29mcg/cm2の量を示す。別の試験において、サンプル試験項目を、2日間にわたって1日2回及び3日目の朝に適用し、その後、ホットワックス脱毛及び毛包収集を最終適用の3時間後又は6時間後に行った。製剤040は、3時間後に2.9mcg/cm2及び6時間後に1.3mcg/cm2を示し、及び製剤041は、3時間後に3.1mcg/cm2及び6時間後に1.3mcg/cm2を示す。同用量のデュタステリドの他の2種の製剤:(1)溶媒中に溶解、エタノール/IPM/MCT/オレイン酸比が3/1/1/1、透明な溶液を形成する製剤、及び(2)水中油エマルジョン中に調合したFOL042、約5ミクロンの平均液滴サイズを有し、高剪断ホモジナイゼーションを除いてFOL041と同じ組成物である製剤は、それぞれ、3時間後に1.4mcg/cm2及び6時間後に1.0mcg/cm2、並びに3時間後に0.4mcg/cm2及び6時間後に0.2mcg/cm2を示した。製剤FOL040の液滴サイズは811nmであり、製剤FOL041の液滴サイズは480nmであり、及び製剤FOL042の液滴サイズは5,600nmであった。これらの結果は、2つの本発明の組成物が、毛包内への有意な蓄積を示したこと、及びより小さな平均液滴サイズが、薬物の毛包標的化においてより良く働くことを示す。
【0119】
【表16】
【0120】
実施例8:
サブミクロンエマルジョンにおける油内部相中に溶解した種々の薬物の組成物。
【0121】
【表17】
【0122】
【表18】
【0123】
実施例9:
ブタの耳毛包におけるパクリチニブ
パクリチニブを、約650nmの平均液滴サイズを有する水中油エマルジョン(本発明)、3ミクロンの平均液滴サイズを有する類似のエマルジョン(本発明の範囲外)又はエタノール及び油溶液(先行技術組成物)のいずれかに製剤化した。これらの組成物のそれぞれを、別々に、新鮮に得られたブタの耳に塗布し、及び30秒間にわたって擦りこんだ。塗布の1時間後、皮膚を5回セロテーブで脱毛し、及びワックス脱毛によって毛包を収集した。毛包サンプル中のパクリチニブの量を、UHPLCによって測定した。得られた結果は、ヤヌスキナーゼインヒビターパクリチニブの先行技術組成物による治療と比較して有意により高い毛包レベルが、本発明の組成物による治療後にみられたことを示す。
【0124】
【表19】
【0125】
実施例10:
偽薬サブミクロンエマルジョン及び無水エマルジョンの相対的な皮膚触感
表18の製剤FOLD001、002、003及び004並びに表1及び2の製剤FOLN002、003、004、006、007、008、011、012、013、014、016、017、018、020、021、022及び024を、30~65歳の12人の健康な志願者に対して盲検した。対象は、一般的皮膚触感、伸び、吸収、脂っぽさ、ねばつき及びてかりについてアンケートに記入した。また、製剤を、スプレーポンプからの噴霧可能性についても試験した。選択した製剤FOLN002(表1)及びFOLD004(表18)は、雄性脱毛の禿げた人についても試験した。
【0126】
製剤FOLD001~004は、皮膚触感が悪いか又は低く、悪いから中程度の伸び、脂っぽさねばつき及びてかり、中程度の吸収性及び低~中程度の一般的スコアであった。これらはまた、噴霧不能であった。表1及び表2からの全てのFOLN製剤は、有意に優れており、良好な一般的スコア、伸びのよさ及び良好な吸収を有した。これらは、脂っぽくなく、べたべたせず、てからず、かつ噴霧可能である。FOLN002は、脂っぽい皮膚触感を有しかつ伸び及び吸収で劣るFOLD004よりも、頭部皮膚触感が優れていた。
【0127】
【表20】
【0128】
実施例11:
毛包及び皮膚の間のプロゲステロン濃度の比
プロゲステロンを含む製剤を、下の表19のように調製した。製剤を、3×3cmのブタの耳の皮膚に適用し、その後、30秒間もんだ。皮膚サンプルを、37℃でインキュベートした。インキュベーション後、皮膚表面全体を、静かに洗浄した。毛包及び隣接した処理皮膚(毛包を含まない)を、生検穴あけを用いて収集した。プロゲステロンを、メタノール中に抽出し、及びその後、抽出物を、プロゲステロンの検出のためにELISAに供した。
【0129】
【表21】
【0130】
組成物027に調合したプロゲステロン(プロゲステロンをエマルジョンの油相中に完全に溶解したサブミクロンローション)は、毛包含量対皮膚含量の最も高い比を示す;027による比は、溶液中に溶解したプロゲステロン(030)の適用後に得られた比よりも高く、030による比は、プロゲステロンを溶解しない油とのサブミクロンエマルジョン(010)の適用後に得られた比よりも高く、及び010による比は、水中0.3% CMCゲル中に懸濁したプロゲステロン粉末(011)の適用後に得られた比よりも高い。この結果は、本発明にしたがって調合した疎水性薬剤(プロゲステロン)の、より高い毛包内送達を示す。
【0131】
実施例12:
デュタステリドの特異的毛包内送達に対する液滴サイズの効果
ブタの耳を、水で静かに洗浄し、及びガーゼパッドを用いて乾かし、及び30分間にわたって32℃で湿潤化オーブン内にてインキュベートした後、試験製剤適用を行った。3×3cmの適用部位を、油性マーカーを用いて印づけした。各製剤50μLを、皮膚に4連で適用した。製剤FOLN002を、皮膚内に30秒間にわたってもみこみ、その後、3時間の32℃でのインキュベーションを湿潤化オーブン内で行った。皮膚を、乾燥したガーゼパッドを用いて静かに洗浄し、その後、2枚×5回のテープ脱毛を行った。
【0132】
各適用部位からの毛包を、ワックス脱毛によって収集した。デュタステリドを、メタノール中で50℃にて48時間にわたる撹拌を伴うインキュベーションによって、ワックス及び皮膚サンプルから抽出した。その後、デュタステリドを、UPLCによって定量した。表20は、毛包対皮膚において見出されたデュタステリドの平均比を提示する。より小さい液滴サイズ(1mM未満)を有する製剤は、皮膚と比較して、有意により多くのデュタステリド(5倍)を毛包内に送達し、他方で、液滴サイズが1mMを超える場合には、より少ない量のデュタステリドが、毛包及び皮膚において見出された。この結果は、本発明にしたがって調合した疎水性薬剤(デュタステリド)の、より高い毛包内送達を示す。
【0133】
【表22】
【0134】
実施例13:
サブミクロンエマルジョンの油相中に溶解した種々の薬物の毛包内送達
65℃未満で、表21のように、タクロリムス5.35%、シクロスポリン5.45%、10%ロバスタチン5%、エゼチミブ5.1%及びクリサボロール5%を、油相中に溶解し、及び表24のように、アゼライン酸7.5%を、油相中に溶解した。約65℃に加熱した水相を、激しく混合しながら加え、及びただちに高剪断ホモジナイザーを用いて1分間にわたりホモジナイズし、その後、エタノールをエマルジョンに添加して、さらに1分間ホモジナイズし、及び周囲温度まで冷ました。製剤の物理的安定性を、少なくとも1週間後、5℃、25℃及び40℃にて試験した(表23)。
【0135】
特異的毛包内送達及び又は生物学的活性の程度を、上の実施例11に記載した方法のとおりに、特異的ELISAキットを用いて評価する。
【0136】
【表23】
【0137】
【表24】
【0138】
【表25】
【0139】
【表26】
【0140】
本発明が、上記の例示的実施例の詳細に限定されず、及び本発明が、その本質的な特性から逸脱しない他の特定の形態で実施されてもよいことは、当業者に明らかとなるであろう。したがって、本実施形態及び実施例は、あらゆる態様において例示であって限定ではないと考えられることが、望まれる。
図1
図2
【国際調査報告】