(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(54)【発明の名称】形状記憶合金ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
F28F 21/08 20060101AFI20230607BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20230607BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20230607BHJP
F03G 7/06 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
F28F21/08 Z
F28F3/08 311
C09K5/14 Z
F03G7/06 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023508123
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021061030
(87)【国際公開番号】W WO2021219667
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516357166
【氏名又は名称】エクサジン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EXERGYN LIMITED
【住所又は居所原語表記】DCU Cleantech Innovation Campus,Old Finglas Road,Glasnevin,Dublin 11, IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キース ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー モーハン
(72)【発明者】
【氏名】フィンタン マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ケリー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー イングリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ フォックス
(72)【発明者】
【氏名】ケビン オトゥール
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ランガン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ブラックバーン
(57)【要約】
【課題】本発明は、重ねて積層された複数の形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)プレートの少なくとも1つのスタックを備えるヒートポンプに関する。
【解決手段】端のプレートを除くSMAプレートの各々は、当該プレートを貫通して機械加工された複数の流体ポートを有する。流体ポートは、スタックを通る流体の通過を可能にする。流体は、吸入ポートを通ってSMAプレートに導入され、出口ポートを通ってスタックから外部に排出される。少なくとも1つのSMAスタックは、SMAコアを備え、当該SMAコアは、筐体内に位置している。任意選択的に、筐体は、圧縮負荷が印加されたときにSMAプレートを無傷で整列した状態に保つための複数の座屈支持体を有するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレートの少なくとも1つのスタックを備えるヒートポンプであって、少なくとも2つのプレートは、形状記憶合金で形成されて組み立てられており、前記複数の形状記憶合金プレートは、前記スタックを通る流体の通過を可能にするように適合した1つまたは複数の流体ポートを有し、
少なくとも1つのプレートは、前記流体を前記スタック内に導入するための吸入ポートを有する寸法であり、
少なくとも1つのプレートは、前記吸入ポートを通って導入される前記流体を外部に排出するための出口ポートを有する寸法である、ヒートポンプ。
【請求項2】
少なくとも1つの形状記憶合金プレートの組成は、他の前記複数の形状記憶合金プレートの組成とは異なる、請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記複数の形状記憶合金プレートは、複数のプレート補強スロットをさらに備える、請求項1または2に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
各々のプレートの前記補強スロットは、隣接するプレートのそれぞれの補強スロットと整列するように位置している、請求項3に記載のヒートポンプ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプレートの周囲の切欠きまたは切抜き部が、前記吸入ポートを画定する、請求項1から4のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプレートの周囲の切欠きまたは切抜き部が、前記出口ポートを画定する、請求項1から5のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項7】
前記吸入ポートおよび前記出口ポートは、独立した構造ユニットである、請求項1から6のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項8】
前記吸入ポートおよび前記出口ポートは、形状記憶合金で形成されている、請求項1から7のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項9】
前記複数の形状記憶合金プレートは、実質的に矩形、正方形、2D形状、円形、または六角形の形状である、請求項1から8のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項10】
前記流体ポートは、蛇行形状を画定して、前記流体のための流路を画定する、請求項1から9のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項11】
筐体と、
前記筐体内に位置する少なくとも1つの形状記憶合金コアであって、前記形状記憶合金コアは、形状記憶合金で形成された複数のプレートの少なくとも1つのスタックを含み、前記複数のプレートは、前記形状記憶合金コアを通る流体の通過を可能にするように適合した複数の流体ポートを有する、形状記憶合金コアと、
前記流体を前記形状記憶合金コア内に導入するように適合した吸入ポートと、
前記吸入ポートを通って導入される前記流体を外部に排出するように適合した出口ポートと、
を備え、前記筐体は、圧縮負荷が印加されている間、前記複数のプレートを無傷に保つように適合した少なくとも1つの座屈支持体を備える、ヒートポンプ。
【請求項12】
少なくとも1つの形状記憶合金コアは、他の前記複数の形状記憶合金プレートの組成と比較して異なる組成を有する少なくとも1つの形状記憶合金プレートを有する、請求項11に記載のヒートポンプ。
【請求項13】
少なくとも1つの形状記憶合金コアは、前記コアの他のスタック内の複数の積層プレートを作る形状記憶合金とは異なる組成を有する形状記憶合金で形成された複数の積層プレートを備える、請求項11または12に記載のヒートポンプ。
【請求項14】
前記吸入ポートおよび前記出口ポートは、独立した構造ユニットである、請求項11から13のいずれかに記載のヒートポンプ。
【請求項15】
前記複数の形状記憶合金プレートは、実質的に矩形、正方形、2D形状、円形、または六角形の形状である、請求項11から14のいずれかに記載のヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、形状記憶合金ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ(Heat Pump:HP)技術は、暖房、換気、および空調(Heating Ventilation and Air Conditioning:HVAC-R)用途で広く商業的に使用されている。これにより、エネルギーの節約および排出低減を提供でき、典型的には、ビル、車などでの加熱および冷却システムのために導入されている。
【0003】
形状記憶合金(Shape Memory Alloy:SMA)チューブを使用するヒートポンプは、当該技術分野で周知である。SMAは、臨界温度よりも低い温度で、外力によって変形された形状を保持する一方、臨界温度まで加熱された後、記憶された元の形状を形状回復力によって回復するために合金の形状記憶効果が働く合金を指す。チタン・ニッケル合金などのSMAは、所定の形状を有するように高い温度で製造される。
【0004】
米国特許出願公開第20160084544号(Radermacherら)には、SMA材料チューブを使用するヒートポンプシステムが開示されており、SMAチューブは、未知の材料のチューブまたはロッドで満たされて体積を占めており、したがって、デッドサーマルマスを除去してシステムの効率を高めるのに役立つ。しかしながら、この構成での問題は、当該SMAチューブは熱効率が悪く、均一に膨張および/または収縮しないということである。さらに、チューブは、使用中に座屈するという欠点がある。米国特許出願公開第20120273158号(Cuiら)には、熱を放出するためにSMAワイヤの束をねじるシステムが開示されている。このシステムも効率が悪く、動作中に座屈するという欠点がある。当該技術分野の他の特許公報には、米国特許第5,339,653号(DeGregoria)、およびFujitsuに譲渡された米国特許出願公開第2013/139538号が含まれ、一般的なヒートポンプが開示されている。
【0005】
したがって、座屈に耐え、および/または高い熱効率を有するヒートポンプが必要であり、これが、本発明の目的を構成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、添付の特許請求の範囲で述べられているように、SMAによって形成された複数のプレートの少なくとも1つのスタックを備えるヒートポンプに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態では、複数のプレートの少なくとも1つのスタックを備えるヒートポンプデバイスであって、
少なくとも2つのプレートは、形状記憶合金で形成されて組み立てられており、複数の形状記憶合金プレートは、スタックを通る流体の通過を可能にするように適合した1つまたは複数の流体ポートを有し、
少なくとも1つのプレートは、流体をスタック内に導入するための吸入ポートを有する寸法であり、
少なくとも1つのプレートは、吸入ポートを通って導入される流体を外部に排出するための出口ポートを有する寸法であるヒートポンプデバイスが提供される。
【0008】
一実施形態では、プレートは、重ねて組み立てられており、各々のプレートは、当該プレートを貫通して機械加工された複数の流体ポートを有し、スタックを通る特定の温度の流体の通過を可能にする。流体は、吸入ポートを通ってスタックに導入され、スタックを通過した後、流体は、出口ポートを通って外部に排出される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、吸入ポートおよび出口ポートは、独立した構造ユニットであり、プレートを作るために使用されるのと同じSMAを使用して形成されている。さらに、複数のSMAプレートの少なくとも1つのスタックは、SMAコアを備える。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によると、SMAスタックは、負荷が印加されている間、積層プレートを無傷で整列した状態に保つように適合した複数の座屈支持体を有する筐体内に位置している。
【0011】
一実施形態では、複数の積層プレートの各々を形成するSMAの組成は同じである。本発明の別の実施形態では、少なくとも1つのプレートを形成するSMAの組成は、スタック内の他のプレートの組成とは異なる。
【0012】
本発明の別の実施形態では、複数のSMAスタックは、筐体内に位置しており、あるSMAスタック内の複数のプレートを形成するSMAの組成は、他のSMAスタック内で積層された複数のプレートを形成するSMAの組成とは異なる。
【0013】
本発明は、流体と接触するSMA材料の表面積を増加させる。さらに、スタック内の流体がスタックを通過するとき、当該流体は、SMA材料のみと接触し、全体的な熱損失を低減する。SMAスタックの外側を通過する一部の流体は、筐体と接触し得る。
【0014】
一実施形態では、少なくとも1つのプレートの周囲の切欠きまたは切抜き部が、出口ポートを画定する。
【0015】
一実施形態では、吸入ポートおよび出口ポートは、独立した構造ユニットである。
【0016】
一実施形態では、吸入ポートおよび出口ポートは、形状記憶合金で形成されている。
【0017】
SMA材料を使用した吸入ポートおよび出口ポートの構造は、熱損失をさらに低減する。本発明で記載されるスタックの形成は、座屈に耐え、外部の支持体の必要性を低減する。
【0018】
筐体は、SMAプレートが熱的に分離されることを確実にし、筐体および座屈支持体は、圧縮下で個々のプレートまたはスタックの移動も可能にしつつ、SMAプレートが液圧負荷に耐えることができることを保証する。本発明はまた、あるSMAスタックを別のものと交換することが容易であるため、ヒートポンプの容易な改良を可能にする。
【0019】
これは、より優れたSMA組成が利用可能になると、古いSMA組成で形成されたプレートを有するスタックを、新しく向上したSMA組成で形成されたプレートを有するスタックに交換することが容易であることを意味する。
【0020】
一実施形態では、
複数のプレートの少なくとも1つのスタックであって、少なくとも2つのプレートは、形状記憶合金で形成されて重ねて組み立てられており、複数の形状記憶合金プレートは、スタックを通る流体の通過を可能にするように適合した複数の蛇行流体ポートを有する少なくとも1つのスタックと、
流体をスタック内に導入するように適合した吸入ポートと、
吸入ポートを通って導入される流体を外部に排出するように適合した出口ポートと、
を備え、吸入ポートおよび出口ポートは、形状記憶合金で形成されているヒートポンプが提供される。
【0021】
流体がスタックを通って流れることを可能にする、プレート内の一連のフローポートがあることが理解されるであろう。この流路は、単一パス、複数パス、蛇行もしくは螺旋または複数の螺旋もしくは曲がりくねった流路であり得る。蛇行流路が好ましい実施形態である。
【0022】
別の実施形態では、
形状記憶合金で形成されて重ねて組み立てられた複数のプレートの少なくとも1つのスタックであって、複数の形状記憶合金プレートは、スタックを通る流体の通過を可能にするように適合した少なくとも1つの流体ポートを有する少なくとも1つのスタックと、
流体をスタック内に導入するように適合した吸入ポートと、
吸入ポートを通って導入される流体を外部に排出するように適合した出口ポートと、
を備え、吸入ポートおよび出口ポートは、形状記憶合金で形成されているヒートポンプが提供される。
【0023】
さらなる実施形態では、ヒートポンプで使用するためのデバイスが提供され、前記デバイスは、複数のプレートの少なくとも1つのスタックを備え、
少なくとも2つのプレートは、形状記憶合金で形成されて組み立てられており、複数の形状記憶合金プレートは、スタックを通る流体の通過を可能にするように適合した1つまたは複数の流体ポートを有し、
少なくとも1つのプレートは、流体をスタック内に導入するための吸入ポートを有する寸法であり、
少なくとも1つのプレートは、吸入ポートを通って導入される流体を外部に排出するための出口ポートを有する寸法である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して、例示としてのみ与えられるその実施形態の以下の説明から、より明確に理解されるであろう。
【
図1a】本発明の好ましい実施形態の斜視図である。
【
図1b】本発明の実施形態によるヒートポンプを収容した、流体入口ポートおよび出口ポートを有する筐体を示す。
【
図3】本発明によるSMAプレートの複数の異なる図を示す。
【
図4】
図4aは、本発明の一実施形態によるヒートポンプの分解図を示す。
図4bは、本発明の一実施形態によるヒートポンプの組立図を示す。
【
図5】
図5aは、本発明の別の実施形態による、複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの分解図を示す。
図5bは、本発明の別の実施形態による、複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの組立図を示す。
【
図6】
図6aは、本発明のさらなる実施形態による、複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの分解図を示す。
図6bは、本発明のさらなる実施形態による、複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの組立図を示す。
【
図7】本発明の別の実施形態による、蛇行流を示すために
図6のヒートポンプの実施形態の切断断面部を示す。
【
図8】
図8(a)から
図8(d)は、ヒートポンプの複数のカスケード配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
SMA材料を使用するヒートポンプの動作は、本発明の譲受人に譲渡され、参照により完全に本明細書に組み込まれる、PCT特許出願公開第WO2019/149783号で既知であり、完全に記載されている。
【0026】
図1aは、本発明の好ましい実施形態の斜視図を示す。開示されたヒートポンプデバイスは、SMAによって形成され、かつ重ねて、または並べて組み立てられた複数のプレート101の少なくとも1つのスタックを備える。複数のプレート101の各々は、プレート101を貫通して機械加工された複数の流体ポート102を有する。流体ポート102は、プレート101のスタックを通る流体の通過を可能にするように設計されている。プレート101のスタックは、流体がプレート101を通過するときに、熱を吸収しエネルギーを蓄積するか、または熱を放出するように適合し、複数のプレート補強スロット103をさらに備える。プレート補強スロット103は、動作中にスタックが圧縮されたときに座屈に耐えるために強固なロッドが挿入されることを可能にする。スロット103は、数mmの直径およびスタックの長さのオーダーであり得、サイズは、所望の設計に基づいて選択され得る。理想的には、2つ以上のロッドは、スタックの一体性を維持し、かつ使用中に互いに対してプレートが滑ることを防止するために使用される。さらに、同ロッドは、プレートの回転を防止する。
図1bは、スタック/コアが配置された例示的な筐体である。特定の温度の流体、例えば水は、1つの入口104を介してスタック/コアを収容したチャンバー内に導入または注入され、流体は、105で出る。ヒートポンプの例示的な動作は、前述のPCT特許出願公開第WO2019/149783号に記載されている。本明細書に前で記載されているようなSMAヒートポンプは、好ましくは圧縮力または引張力を使用して動作させることができることが理解されるであろう。
【0027】
スタックの形状および配置に関して、吸入ポートは、流体をスタック内に導入するように適合し、出口ポートは、吸入ポートを通って導入される流体を外部に排出するように適合する。少なくとも1つのプレートは、流体をスタック内に導入するための吸入ポートを有する寸法であり、少なくとも1つの他のプレートは、吸入ポートを通って導入される流体を外部に排出するための出口ポートを有する寸法であり、吸入ポートおよび出口ポートは、形状記憶合金によって形成されている。吸入ポートおよび出口ポートは、独立した構造ユニットであり、熱損失を最小化するために複数のプレートのスタックと同じSMA材料を使用して作られ得る。各々のプレートで機械加工された流体ポート102は、流体にさらされるプレートの表面積を大幅に増加させることを可能にし、また、流体がSMA材料にのみ接触することを確実にし、全体的な熱損失を低減する。流体ポートは、以下でより詳細に記載される格子、円形、または多角形のパターンなどの任意の幾何学的パターンで構築され得る。
【0028】
図示される実施形態のSMAプレート101は、実質的に矩形の形状である。SMAプレートは、ある縮尺のスタック、コア、およびヒートポンプシステムを構築するための基本構成要素とみなされ得る。プレートスタックの構造は、より容易なモジュール設計を可能にし、その結果、様々な形状およびサイズのヒートポンプを容易に構築することができる。プレートの設計は、熱伝達の最適化の機能があり、図示される実施形態は単なる指標に過ぎない。同じ原理を使用して縮小するために、より小さいプレートおよびスタックも使用され得る。
【0029】
図2は、本発明の別の実施形態の正面図を示す。示される図では、SMAコアまたはヒートポンプデバイスを形成するSMAプレート101のスタックは、筐体201内に位置している。筐体201は、負荷が印加されたときにSMAスタックを無傷に保つための少なくとも1つの座屈支持体202を有する。圧縮力がSMAヒートポンプに印加されたとき、座屈支持体の位置、サイズ、および数の最適化が、構造を崩壊させることなく及ぼすことができる力の量を推定するために重要である。これは、SMAの発熱特性の最適な使用を確実にする。筐体201は、SMAプレートが熱的に分離されることを確実にし、筐体および座屈支持体202は、圧縮下で個々のプレートまたはスタックの移動も可能にしつつ、SMAプレート101が液圧負荷に耐えることができることを保証する。理想的には、2つ以上のロッドは、スタックの一体性を維持し、かつ使用中に互いに対してプレートが滑ることを防止するために使用される。さらに、同ロッドは、プレートの回転を防止する。
図1bに示すように、ヒートポンプの実施形態は、筐体内に組み込まれ得る。
【0030】
本発明の別の実施形態では、SMAプレートのスタック内の少なくとも1つのプレートの組成は、スタック内の他のプレートの組成とは異なる。異なるSMAブレンドが、単一のスタック内の異なるSMAプレートのために使用される。
【0031】
本発明の別の実施形態では、複数のSMAスタックを有するSMAコアが使用される。前記マルチスタック配置では、各々のスタックは、他のスタックと異なるSMA組成を有するプレートで構成されており、同じスタック内のプレートが、同じSMA組成を有することを意味する。
【0032】
本発明の別の実施形態では、各々のスタックが複数のSMAプレートを有する複数のスタックが使用される。各々のスタックは、同じスタック内の他のプレートの合金組成とは異なる合金組成を有する少なくとも1つのSMAプレートを有する。
【0033】
図3は、本発明によるSMAプレート301~306の複数の異なる図を示し、開口部は、ヒートポンプ設計仕様により任意の寸法または形状であり得る。形状記憶合金プレートは、示されるように、実質的に矩形または正方形の形状であり得ることが理解されるであろう。プレートはまた、円形および六角形を含む任意の2D形状であり得る。各々のプレート上で構成された様々な開口部またはスロットは、必要とされる用途に応じて選択され得る。特定の用途のためにスロットまたはスロット(複数)の特定の形状および寸法を選択することによって、最適な熱伝達設計を達成することができる。最適化は、既知の熱力学的モデル化技術を使用した有限要素分析を使用して計算され得る。例えば、各々のプレートの開口部は、ヒートポンプの用途に応じて、熱伝達を最適化するように、湾曲した端または傾斜した内壁を有し得る。
【0034】
図4aおよび
図4bは、本発明の一実施形態による、複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの分解図および組立図を示す。SMAプレートは、ある縮尺のコアおよびヒートポンプシステムを構築するための構成要素とみなされ得る。プレートの設計は、熱伝達の最適化の機能があり、図示されるサンプルは単なる指標に過ぎない。サンプル原理を使用して縮小するために、より小さいプレートおよびスタックも使用され得る。特定の用途のために、液圧および電気を含む様々な作動手段が使用され得る。
図4は、3つのプレートアセンブリ400、401、および402を示す。プレート401について、切欠きまたは切抜き部が、流体が入って出口ポートで出ることができる吸入ポート403を画定し、当該出口ポートは、実質的に、別の位置、典型的にはスタックの反対側の端に複製された吸入ポートである。スロット404は、オプションの支持体または補強ロッドが挿入されることを可能にする(図示せず)。
【0035】
図5aおよび
図5bは、本発明の別の実施形態による、複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの分解図および組立図を示す。このヒートポンプでは、1つのプレートの周囲の切欠きまたはフィンガー部500は、流体が入り得る吸入ポート500を画定する。少なくとも1つのプレートの周囲の切欠きまたはフィンガー部は、出口ポート501を画定する。流体は、入口500に入りスタック内を移動してSMAプレートと接触し、出口ポートで出ることができ、当該出口ポートは、実質的に、別々の位置、典型的にはスタックの反対側の端で複製された入口ポートである。本実施形態では、単一のスロット502のみが、係合する支持ロッドのために提供され、プレートの中心に示されていることに留意されたい。さらなる切欠き503および504が周囲で作られ得、さらなる支持ロッドが容易に位置してヒートポンプを固定することを可能にし得る。
【0036】
図6aおよび
図6bは、本発明のさらなる実施形態による、
図5の実施形態と同様の複数の積層SMAプレートで構成されたヒートポンプの分解図および組立図を示す。この設計に示されるように、支持スロットの挿入を可能にするための3つのスロット600、601、および602がある。可変のサイズの切欠きまたはフィンガー部603は、複数の入口を画定するために、SMAプレートのうちの1つ以上の外周に作られている。入口は、プレート605、606で提供される他の開口部と共に、流体とSMA材料との間の効率的な熱伝達を可能にするサイズである。プレート604は、フローポートを提供してプレートスタックを通る流体の流れを可能にするための複数の開口部を有する。出口ポートは、実質的に、別々の位置、典型的にはスタックの反対側の端で複製された入口ポートであり、ここで流体は、スタックを出る。
【0037】
図7は、本発明の別の実施形態による、蛇行流を示すために
図6のヒートポンプの実施形態の切断断面部を示す。矢印で示すように、蛇行流が達成され得、それによって、流体は、スタックの一端に入り、スタックの反対側の端で出る前に、一連の流路を通ってプレートスタックの長さに沿って上下に移動する。プレート内の一連の切抜きによって決定される複数の異なる流路が提供され得る。
【0038】
本発明の文脈では、特定のプレートサイズは、必要とされるヒートポンプの特定の用途に応じて選択され得ることが理解されるであろう。物理的なプレート寸法は幅広く、各々のSMAプレートについての以下の寸法範囲が好ましい。
5mm~150mmの長さ範囲
5mm~150mmの幅範囲
0.5mm~150mmの高さ範囲
材料面積:80%~40%の開口面積範囲
理想的には1:1の比で、最大5:1の長さ対幅の比
【0039】
図8(a)~
図8(d)は、本発明の別の実施形態によるヒートポンプの複数のカスケード配置を示す。デルタTを増加させるために使用され得るSMAプレートのカスケード接続は、複数の解決法を使用して達成され得る。例えば、
図8aは、単一のスタック内で使用される、異なるブレンドの最適化されたSMAプレートを有するスタック内配置を示し、ブレンド1、ブレンド2、およびブレンド3プレートが、単一のスタック内に配置されている。
図8bは、
図8aのマルチスタックバージョンを示す。各々が複数のSMAブレンドを有するプレートのスタックは、マルチスタック配置内で同様または異なるSMAブレンドを有する他のプレートのスタックと相互作用する。例えば、スタック内カスケード配置は、マルチスタック配置内で直列の異なるまたは同様のスタック内カスケード配置と相互作用する。
図8cは、
図8bのマルチスタックバージョンである。各々が同じSMAブレンドを有するプレートのスタックは、異なるSMAブレンドを有する他のプレートのスタックと相互作用する。例えば、ブレンド1スタックは、マルチスタック配置内で直列のブレンド2スタック(等々)と相互作用する。
図8dは、マルチコア配置を示し、マルチスタックバージョン1、マルチスタックバージョン2、または両方の組合せのいずれかで構成されたコアは、直列で一緒に相互作用してカスケードを形成する。
図8に示す異なる種類のSMAスタックは、異なる潜熱を有する。カスケード接続されたブレンドにより、ヒートポンプ全体のデルタ温度の増加となる。
【0040】
本発明の文脈では、以下の定義が本明細書全体に適用されることが理解されるであろう。
プレート-プレートを通る流体の流れを可能にするためにプレート内に機械加工された1つ以上の流体ポートを有する個々のSMAプレート。
スタック-一緒に組み立てられる少なくとも2つのプレートを備える複数のSMAプレート。
筐体-プレートのスタックのための格納容器。熱分離および流体入口/出口を提供する。
コア-機械的に、軸方向に直列に並べられ、負荷される単一のスタックまたは複数のスタックで構成され得る。
【0041】
本明細書では、「備える(comprise)、備える(comprises)、備わる(comprised)、および備えている(comprising)」という用語またはその任意の変形、ならびに「含む(include)、含む(includes)、含まれる(included)、および含んでいる(including)」という用語またはその任意の変形は、完全に相互に交換可能であるとみなされ、それらすべてに、可能な限り広い解釈が与えられるべきであり、逆もまた同様である。
【0042】
本発明は、本明細書で前述した実施形態に限定されるものではなく、構造および細部の両方で変えられ得る。
【国際調査報告】