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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びライナーの硬化方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20230608BHJP
【FI】
C08G59/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523280
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063318
(87)【国際公開番号】W WO2021234012
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175463.7
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522156472
【氏名又は名称】ラポロ レジンズ アンパルトセルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タルパダ、ヴィノッド
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AB01
4J036AD08
4J036AF06
4J036AJ01
4J036AJ05
4J036AJ08
4J036EA01
4J036EA02
4J036EA03
4J036EA04
4J036FA03
4J036FA06
4J036FA10
4J036FA11
4J036FA12
4J036FA14
4J036FB06
4J036GA01
4J036GA24
4J036HA01
4J036JA01
4J036JA05
(57)【要約】
本発明は、電磁放射線によって硬化可能かつ重合可能樹脂組成物に関する。組成物は、1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、ヨードニウム塩を含む光開始剤と、第1の光増感剤及び第2の光増感剤と、銅錯体と、1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、1種以上の希釈剤を含む。本発明はまた、ライナーの硬化方法及び複合部品を製造するための樹脂組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線によって硬化可能かつ重合可能である樹脂組成物であって、
1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、
ヨードニウム塩を含む光開始剤と、
1種以上の光増感剤と、
銅錯体と、
ブタンジオール及びその誘導体と、
ピナコール及びその誘導体と、
1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、
1種以上の希釈剤と、
を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
50~90%の前記1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、
0.3~1.5%の前記光開始剤と、
0.2~6.5%の前記1種以上の光増感剤と、
0.01~5.0%の前記銅錯体と、
0.01~5.0%のブタンジオール及びその誘導体と、
0.01~5.0%のピナコール及びその誘導体と、
0.1~0.5%の1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、
5~45%の前記1種以上の希釈剤と、
を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の重合性及び/又は架橋性有機化合物が、トリメチロールプロパン-トリアクリラート及びオキシビス(メチル-2,1-エタンジイル)ジアクリラート、BPAエポキシ樹脂、例えば液体、半固体及び固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、ノバラックエポキシ樹脂、ハロゲン化及び非ハロゲン化エポキシ樹脂、カルダノール系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ソルビトール系エポキシ樹脂、バイオエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂の化合物から選択される、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ヨードニウム塩が、ヨードニウム、ジフェニル-4,4’-ジ-C10-13-アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート及び(4-(1-メチルエチル)フェニル)-(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(1-)から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記1種以上の光増感剤が、カンファーキノン、アントラセン、例えば9,10-ジブトキシ-アントラセン、エトキシナフタレン、例えば1,4-ジエトキシナフタレンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記銅錯体が、ナフテン酸銅、安息香酸銅、硫酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、炭酸銅から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物が、ブタンジオール及びその誘導体、ピナコール及びその誘導体、アスコルビン酸、2,3-ジメチル2,3-ブタンジオール、4,4ジフェニルシクロヘキサジエノンから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記組成物が、エミッタからの電磁放射線によって重合可能であり、360~700nmの範囲の光を放出し、好ましくは380~480nmの範囲の光を放出し、かつ好ましくは硬化後の前記組成物が、5%未満、例えば3%未満、例えば2%未満の体積収縮を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
電磁放射線によって硬化可能かつ重合可能である樹脂組成物であって、
1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、
ヨードニウム塩を含む光開始剤と、
1種以上の光増感剤と、
ブタンジオール及びその誘導体と、
ピナコール及びその誘導体と、
1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、
を含み、
硬化後の前記樹脂組成物は、5%未満、例えば3%未満、例えば2%未満の体積収縮を有する、樹脂組成物。
【請求項10】
ライナーの硬化方法であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を提供するステップと、
前記ライナーに前記樹脂組成物を含浸するステップと、
360~700nmの範囲、例えば380~480nmの光を使用して前記樹脂組成物を硬化するステップと、
を含み、
前記ライナーは、好ましくはフェルト又は繊維強化されており、前記繊維は、好ましくはポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維又は玄武岩である、方法。
【請求項11】
前記方法が、
a:ヨードニウム、ジフェニル-4,4’-ジ-C10-13アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート及び(4-(1-メチル-エチル)フェニル)-(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(1-)から選択される光開始剤並びにカンファーキノン、ピナコール及びアントラセンを増感剤として含む樹脂組成物を提供するステップと、
b:混合物にエーテル又はアルコールから選択される溶媒を添加するステップと、
c:前記混合物が前記溶媒に溶解するまで撹拌するステップと、
d:固体エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAグリシジルエーテル樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル樹脂及びエポキシ希釈剤を添加して、プロポキシル化グリセリルトリアクリラートと共に前記硬化性組成物を得るステップと、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップbの前にアスコルビン酸を前記混合物に添加するさらなるステップを含み、好ましくは、ステップdの間に、ポリエステルアクリラート、エポキシアクリラート、ポリウレタンアクリラート、及び/又はポリエーテルアクリラートから選択される少なくとも1種のさらなる成分を添加することを含み、好ましくは、ステップdの間にテトラメチルエチレングリコール、プロポキシル化グリセリルトリアクリラート、及び銅塩又は銅錯体を添加するさらなるステップを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ステップdの間に、アシル、芳香族、エーテル、ジオキソラン、アクリロイル基を有するカルボン酸アミド及びオキセタンアクリラートを含む単官能性、二官能性及び/又は三官能性アクリラートから選択される少なくとも1種のさらなる成分を添加することを含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
以下のさらなるステップを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法:
e:前記光硬化性樹脂組成物を繊維ライナー上に塗布するステップと、
f:波長360~700、好ましくは380~480nm、強度0.001W/cm~15W/cm、好ましくは0.01W/cm~10W/cmの光を、前記繊維ライナーの表面に3~200m/h、好ましくは10~90m/hrの速度で照射するステップと、
g:前記繊維ライナーを室温まで冷却するさらなるステップ。
【請求項15】
単純なチューブ、ハット形材、補強材、垂直及び水平、側面接続、ハット形材(トップハット)、ティーハット及びその他のフィッティング構造体として製造された、フェルトライナー、ガラスライナー、オープンフォームを含む他のキャリア材料のライナーなどのライナーシステムを使用した、パイプ、パイプ側接続、パイプフィッティング、マンホール、タンク、及び他の垂直又は水平構造を補修及び/又は硬化するための、請求項1に記載の樹脂組成物の使用、又は、繊維ガラス、炭素繊維、玄武岩繊維、ポリエステル及びその他の曲げ可能な有機及び無機繊維から選択された材料を用いて、パイプ、タンク、及びその他の構造物を外側から包むための前記樹脂組成物の使用、又は、ボート製造、風力タービンブレード及び他の複合構造体のための複合構造を補修及び/又は構築するための、請求項1に記載の樹脂組成物の使用、又は、鋼、コンクリート、粘土、石、プラスチック、硬質複合材、硬質プラスチック、及びその他の硬質材料などの材料の表面をスプレー、ローラー、ブラシ、ディップ及び他の塗布方法によって修復及び/又はコーティング及び/又は保護するための、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、無機充填剤及び他の材料の形態の充填剤又は補強材が添加された可能性のある、請求項1に記載の樹脂組成物の使用、又は3D印刷技術における、請求項1に記載の樹脂組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物及びライナーの硬化方法に関する。樹脂組成物は、液体及び気体に使用されるライン及びタンクシステムの修復、チューブの腐食からの保護、又は加圧パイプの補強に使用することができる。さらに、樹脂組成物は、例えばボート製造及び風力タービンブレード用の複合材に使用することができる。樹脂組成物は、1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、1種以上の光開始剤と、1種以上の銅錯体と、1種以上の光増感剤と、1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物とを含む。
【背景技術】
【0002】
UV光、可視光及びIR光を含む電磁放射線などの電磁放射線によって重合可能かつ/又は架橋可能な樹脂組成物は、多くの用途での使用に適している。1つの用途は、ライナーを硬化するためのものであり、例えば、パイプラインにおいて、再ライニングプロセスで硬化するためのものである。
【0003】
パイプライン及びタンクは、典型的には、鋼、鋳鉄、コンクリート、粘土又は非常な硬質プラスチックなどの頑丈で重い材料で作られる。既存のパイプライン及びタンクを交換することは、通常、特にパイプライン又はタンクが地下又は下水パイプラインなどのアクセス困難な場所にある場合、費用のかかるプロセスである。したがって、欠陥のあるパイプライン又はタンクを交換する代わりに修理することが好ましい。例えば、漏れている下水パイプラインなどの欠陥のあるパイプラインを改修するために、再ライニングと呼ばれるプロセスが使用され、このプロセスでは繊維ライナーが既存のパイプラインに挿入される。一般に織繊維又は不織繊維で作られたライナーは樹脂含浸され、取り付け及び硬化後に、パイプライン又はタンクとほぼ同じ直径を有するチューブのような形状を有する。
【0004】
ライナー内の樹脂組成物は、パイプラインに挿入された後に硬化させることができる。硬化されると、ライナーは頑丈で、硬く、流体密封性になる。ライナーの内面は、非常に滑らかであり、すなわち、低い表面粗さを有する。粗さが減少するため、ライナーがパイプラインの有効流量領域を減少させる場合であっても、ライナーが設置されている場合の流量は、通常、ライナーがない場合の流量と比較して改善される。
【0005】
プルイン又は反転は、既存のパイプラインのライニング及び再ライニングに使用される一般的な技術である。反転は、ライナーの一端を旋回ヘッドに固定し、その後、加圧流体、例えば水又は蒸気を使用してライナーをパイプライン内に反転させることによって行われる。パイプライン、タンク、又は他の幾何学的構造体の内面に剛性で流体密封性の複合壁構造を形成するために、UV光、可視光のような電磁放射、又は水若しくは蒸気のような高温流体が、通常、ライナーのその後の硬化を実行するために使用される。
【0006】
ライナーを硬化するための有利な技術は、国際公開第2008/101499号パンフレットとして公開された国際出願DK2008/000073号明細書に記載されている。上述の特許出願は、ライナーを硬化するための装置に関する。装置は、ライナーを硬化するために使用される1組のLED(発光ダイオード)を有する可動式かつフレキシブルな「ライトトレイン(“light train”)」を備える光硬化装置を含む。
【0007】
光硬化装置は、他の上述の目的のために使用されるため、容易に利用可能であるため、典型的には圧縮空気の使用によって冷却される。従来技術の装置では、圧縮空気は、光硬化装置を真っ直ぐに通るヒートシンクを通って導かれる。空気以外の冷却媒体も同様に使用することができる。
【0008】
しかしながら、硬化性樹脂組成物の(光)硬化の分野では、硬化構造部品、すなわち少なくとも0.5mmの厚さを有し、引張強度及び弾性率、硬度、接着性及び耐薬品性などの適切な機械的特性を有する部品及び樹脂物体を提供するための改善された信頼性の高い樹脂及び方法を見出すことが長年必要とされてきた。安全性の考慮はまた、(共)重合性遊離モノマーと混合された重合性又は架橋性樹脂、すなわち反応性又は非反応性希釈剤を硬化する場合に主要な役割を果たす。反応性又は非反応性希釈剤は、一般に比較的揮発性の化合物であり、偶発的に発生する高温での爆発リスクのために危険である場合があり、硬化材料の調製中の毒性の側面の原因となり得る。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、例えば樹脂含浸ライナーなどの物品を硬化するのに適した硬化性樹脂組成物であって、LED-UV発光体などの電磁放射線を使用することによって、信頼性が高く制御された方法で樹脂組成物を硬化することができ、物品の全深さにわたって十分な硬化度を有する硬化物品を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、効率的かつ費用対効果の高い方法で硬化させることができる硬化性樹脂組成物を提供することである。
【0011】
光誘起重合又は光重合反応で樹脂組成物を硬化する原理は、反応性官能基(例えば、アクリル、ビニル、エポキシなど)を有するモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーを含む組成物を光照射に曝露して活性種(フリーラジカル又はカチオン)を生成し、ポリマー化を開始することにある。これらの種の生成は、樹脂組成物中の感光性成分の励起によって、一般に「光開始剤」という名称である添加剤を介して起こる。
【0012】
光開始剤は、重合開始のための活性種を生成する規定の電磁放射線波長間隔を有する。この間隔は、光開始剤と組み合わせて光増感剤を用いた光増感によって延ばすことができる。光増感剤は、光開始剤によって吸収されたものとは異なる電磁放射線波長を吸収し、このエネルギーを光開始剤に伝達し、その結果、そのスペクトル感度を拡張する分子である。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、電磁放射線によって硬化可能かつ重合可能である樹脂組成物であって、
1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、
ヨードニウム塩を含む光開始剤と、
1種以上の光増感剤と、
銅錯体と、
ブタンジオール及びその誘導体と、
ピナコール及びその誘導体と、
1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、
1種以上の希釈剤と、を含む、樹脂組成物に関する。
【0014】
樹脂組成物は、1種の増感剤を使用して非常に良好に機能するが、光開始剤を少なくとも2種の光増感剤と組み合わせることが可能であることが分かった。光増感剤の高い三重項エネルギーを使用して、開始剤を増感し、したがって光分解収率を向上させる。したがって、より多くの反応種が生成され、その結果、重合はより速くなる。光増感剤の例としては、カンファーキノン、アンスラキノン、アントラセン、ピレン、フェノチアジン、ピナコール(テトラメチルエチレングリコールとしても示される)、アセトフェノン、キサントン、カルバゾール誘導体、エトキシナフタレン誘導体、フルオレノン及びアシルホスフィンオキシドが挙げられ得る。
【0015】
銅錯体及び少なくとも1種の酸化還元又は光化学的転位有機化合物とのさらなる組合せは、硬化(すなわち、増加反応)中の樹脂組成物中の反応を改善し、それによって硬化組成物の特性を向上させるのに役立つ。
【0016】
希釈剤は、樹脂組成物の粘度を調整するとともに、硬化後の最終的な特性を調整するのに役立つ。
【0017】
一般に、樹脂組成物は、
50~90%の前記1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、
0.1~5.0%の前記光開始剤と、
0.1~6.5%の前記1種以上の光増感剤と、
0.1~5.0%の第二の光増感剤と、
0.01~5.0%の前記銅錯体と、
0.01~5.0%のブタンジオール及びその誘導体と、
0.01~5.0%のピナコール及びその誘導体と、
0.1~5.0%の1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、
5.0~45.0%の1種以上の希釈剤と、を含む。
【0018】
すべてのパーセンテージは、重量パーセンテージである。
【0019】
樹脂組成物は、常に1種の光増感剤を含むべきである。しかしながら、組成物はまた、第3、第4、第5及び第6の光増感剤などの第2又はそれ以上の光増感剤を含んでもよい。好ましくは、光増感剤はそれぞれ、組成物の0.1~5.0%の量で存在する。
【0020】
樹脂組成物中の1種以上の光増感剤、ブタンジオール及びその誘導体、ピナコール及びその誘導体、有機酸及び銅錯体の組合せは、制御された硬化速度を与え、適切な電磁放射線で樹脂の発熱を硬化させる。ピーク発熱温度が100~230℃の間、例えば100~160℃の間になるように組成物を配合することが可能である。反応は、5~250秒、より好ましくは5~100秒の規定された時間内に完全に硬化する。このシステムは、高い機械的強度で鋳鉄並びにアルミニウム表面に良好な接着性を与える。
【0021】
樹脂組成物は、好ましくは、硬化性組成物に含まれる場合、低収縮などの優れた要求特性を有する硬化物品を提供することができるエポキシ化合物に基づく。したがって、好ましくは、少なくとも1種の重合性及び/又は架橋性有機化合物は、プロポキシル化グリセリルトリアクリラート(GPTA)、トリメチロールプロパントリアクリラート及びオキシビス(メチル-2,1-エタンジイル)ジアクリラート、BPAエポキシ樹脂、例えば液体、半固体及び固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、ノバラックエポキシ樹脂、ハロゲン化及び非ハロゲン化エポキシ樹脂、カルダノール系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ソルビトール系エポキシ樹脂、バイオエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂の化合物及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0022】
ヨードニウム塩は、光開始剤として優れて機能することが証明されている。したがって、樹脂組成物中の光開始剤は、ヨードニウム塩に基づく。好ましくは、ヨードニウム塩は、ヨードニウムジフェニル-4,4’-ジ-C10-13-アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート及び(4-(1-メチルエチル)フェニル)-(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)-ボラート(1-)から選択される。
【0023】
樹脂組成物中の光増感剤は、例えば、カンファーキノン及びその誘導体、アントラキノン、アントラセン、ピレン、フェノチアジン、ピナコール、アセトフェノン、キサントン、カルバゾール誘導体、エトキシナフタレン、フルオレノン及びアシルホスフィンオキシドから選択することができ、これらはすべて光増感剤として良好に機能する。好ましくは、光増感剤は、カンファーキノン、アントラセン、例えば9,10-ジブトキシアントラセン、エトキシナフタレン、例えば1,4-ジエトキシナフタレンから選択される。
【0024】
樹脂組成物に銅錯体を含有させると、樹脂の硬化及び固化が向上する。好ましくは、銅錯体は、ナフテン酸銅、安息香酸銅、硫酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、及び炭酸銅から選択される。
【0025】
樹脂組成物はまた、ブレンステッド酸の形成に影響を及ぼすことによって硬化を改善する酸化還元又は光化学的転位有機化合物を含む。好ましくは、酸化還元又は光化学的転位有機化合物は、ブタンジオール及びその誘導体、アスコルビン酸、2,3-ジメチル2,3-ブタンジオール、及び4,4-ジフェニルシクロヘキサジエノンから選択される有機酸に基づく。
【0026】
ブタンジオール及びその誘導体はまた、反応速度に影響を及ぼし、反応性を改善するのに役立つ。ピナコール及びその誘導体はまた、樹脂充填繊維の反応性及び硬化を改善するのに役立つ。好ましくは、充填樹脂の厚さは4~10mmまで達成される。
【0027】
希釈剤は、樹脂組成物の粘度を低下させる働きをし、好ましくは、1種以上の希釈剤は、プロポキシル化グリセリルトリアクリラート、1,4-ブタタンジオールジグリシジルエーテル、C12-C14アルキルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、カルダノール系単官能性、二官能性及び三官能性エポキシ反応性及び非反応性希釈剤、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルアクリラート、3,3,5,トリメチルシクロヘキシルアクリラート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリラート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、トリ及びテトラエチレングリコールジアクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、プロピレングリコール200-600ジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、グリセリン(PO)3トリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、イソデシルメタクリラート、ベンジルメタクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、ポリエステルアクリラート、例えばモノ、ジ、トリ、テトラ、ヘキサ官能性ポリエステルアクリラート、ホスファートメタクリラート、カルボキシエチルアクリラート、アルカリ剥離性ポリエステルアクリラートから選択される。
【0028】
固体エポキシ樹脂を含めると、鋳鉄、アルミニウム、並びにPVCなどの様々な基材上の接着特性が向上する。固体エポキシ樹脂はまた、発熱温度を制御する役割を果たすだけでなく、反応性を改善するのに役立つ。組み合わせて、固体エポキシ樹脂及びプロポキシル化グリセリルトリアクリラート(GPTA)は、発熱温度を30~50%まで低下させ、例えば220℃から100℃まで低下させる。
【0029】
一実施形態において、硬化後の樹脂組成物は、5%未満、例えば3%未満、例えば2%未満の体積収縮を有する。例えば、樹脂組成物が、樹脂を含むライナー又は構造体が硬化後に密着する必要がある、記載された再ライニング方法によってパイプ又はタンクを補修することを意図する場合、小さい体積収縮が望ましい。
【0030】
紫外線(UV)及び可視光(VIS)、赤外線(IR)光を含む広範囲の電磁放射線波長を使用して樹脂組成物を硬化させることが可能であり、一実施形態では、樹脂組成物は、360~700nmの範囲の光を放射する、好ましくは380~480nmの範囲の光を放射する、発光源からの波長のUV、IR及びVIS光(以下、光と称する)の電磁放射線によって重合可能である。
【0031】
波長範囲380~480nmの光を使用すると、硬化される物品が3mmを超える、例えば3~6mm、又は10mmまでの厚さを有する場合であっても、樹脂組成物の良好な硬化が提供される。樹脂は、1つ又は2つ以上の適切な波長の組合せの光を使用して硬化させることができる。したがって、樹脂は、例えば365nm及び415nm、又は415nm及び472nmなどの2つの異なる波長の光を使用して硬化させることができる。適切な光波長は、当業者によって容易に選択され、使用される増感剤に応じて、例えば、第1の波長が、例えば第1の増感剤がほとんどのエネルギーを吸収する波長として選択され、第2又は第3の波長が、第2の増感剤がほとんどのエネルギーを吸収する波長として選択されるように適合され得る。
【0032】
本発明はまた、電磁放射線によって硬化性及び重合性である樹脂組成物であって、
1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物と、
ヨードニウム塩を含む光開始剤と、
1種以上の光増感剤と、
1種以上のブタンジオール及びその誘導体と、
1種以上のピナコール及びその誘導体と、
1種以上の銅錯体と、
1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、を含み、
硬化後の樹脂組成物は、5%未満、例えば3%未満、例えば2%未満の体積収縮を有する。
【0033】
例えば、樹脂が記載された再ライニング方法によってパイプ又はタンクを補修することを目的としている場合、様々な基材への接着性に加えて、小さい体積収縮が望ましく、樹脂を含むライナーは硬化後に密着する必要がある。
【0034】
1種以上の重合性及び/又は架橋性有機化合物は、好ましくは、硬化性組成物に含まれる場合、制御された発熱反応及び求められる特性、例えば良好な接着性、低収縮及び高強度を有する硬化物品を提供することができるエポキシ化合物をベースとする。したがって、少なくとも1種の重合性及び/又は架橋性有機化合物は、好ましくは、プロポキシル化グリセリルトリアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート及びオキシビス(メチル-2,1-エタンジイル)ジアクリラート、BPAエポキシ樹脂、例えば液体、半固体及び固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、ノバラックエポキシ樹脂、ハロゲン化及び非ハロゲン化エポキシ樹脂、カルダノール系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ソルビトール系エポキシ樹脂、バイオエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂の化合物及びそれらの任意の組合せから選択される。
【0035】
光開始剤は、光開始剤として良好な特性を有するヨードニウム塩を含む。好ましくは、ヨードニウム塩は、ヨードニウムジフェニル-4,4’-ジ-C10-13-アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート及び(4-(1-メチルエチル)フェニル)-(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(1-)から選択される。
【0036】
樹脂組成物中の1種以上の光増感剤は、例えば、カンファーキノン及びその誘導体、アントラキノン、アントラセン、ピレン、フェノチアジン、ピナコール、アセトフェノン、キサントン、カルバゾール誘導体、エトキシナフタレン、フルオレノン及びアシルホスフィンオキシドから選択することができ、これらはすべて光増感剤として良好に機能する。好ましくは、光増感剤は、カンファーキノン、アントラセン、例えば9,10-ジブトキシアントラセン、エトキシナフタレン、例えば1,4-ジエトキシナフタレンから選択される。
【0037】
樹脂組成物はまた、ブレンステッド酸の形成に影響を及ぼすことによって硬化を改善する酸化還元又は光化学的転位有機化合物を含む。好ましくは、酸化還元又は光化学的転位有機化合物は、ブタンジオール、ピナコール、アスコルビン酸、2,3-ジメチル2,3-ブタンジオール及び4,4-ジ-フェニルシクロヘキサジエノンから選択される有機酸に基づく。
【0038】
ヨードニウム塩を含む光開始剤と、1種以上の光増感剤と、1種以上のブタンジオール及びその誘導体と、1種以上のピナコール誘導体と、1種以上の酸化還元又は光化学的転位有機化合物と、を含む樹脂組成物は、収縮に関して優れた特性を有することが証明されている。また、引張強度や弾性率、硬度、耐薬品性などの機械的特性も良好である。樹脂組成物は、鋳鉄、アルミニウム及びPVCなどの異なる基材に良好な接着性を有する。
【0039】
一実施形態では、樹脂組成物はまた、銅錯体を含む。樹脂組成物に銅錯体を含有させると、樹脂の硬化及び固化が向上する。好ましくは、銅錯体は、ナフテン酸銅、安息香酸銅、硫酸銅、テトラフルオロホウ酸銅、及び炭酸銅から選択される。
【0040】
樹脂組成物はまた、1種以上の希釈剤を含んでもよい。希釈剤は、粘度を低下させるだけでなく、樹脂組成物の発熱反応を制御するのに役立ち、好ましくは、1種以上の希釈剤は、プロポキシル化グリセリルトリアクリラート、1,4-ブタタンジオールジグリシジルエーテル、C12-C14アルキルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、カルダノール系単官能性、二官能性及び三官能性エポキシ反応性及び非反応性希釈剤、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、イソボルニルアクリラート、3,3,5,トリメチルシクロヘキシルアクリラート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリラート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリラート、テトラヒドロフルフリルアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、トリ及びテトラエチレングリコールジアクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、プロピレングリコール200-600ジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、グリセリン(PO)3トリアクリラート、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、イソデシルメタクリラート、ベンジルメタクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、ポリエステルアクリラート、例えばモノ、ジ、トリ、テトラ、ヘキサ官能性ポリエステルアクリラート、ホスファートメタクリラート、カルボキシエチルアクリラート、アルカリ剥離性ポリエステルアクリラートから選択される。
【0041】
本発明はまた、樹脂組成物、例えばライナーを含む複合材料の硬化方法に関する。この方法は、上述のような樹脂組成物を提供するステップと、ライナーに樹脂組成物を含浸させるステップと、紫外線(UV)及び可視(VIS)、赤外線(IR)光を使用して樹脂組成物を硬化して360~700nmの範囲の硬化したライナーを得るステップとを含み、又は樹脂組成物は、例えばボート製造及び風力タービンブレードのための複合材に使用することができる。
【0042】
硬化光として任意の適切な光源を使用することが可能であるが、硬化光は、費用対効果の高い方法で光を生成することができるLED(発光ダイオード)によって提供されることが好ましい。LEDはまた、狭い波長分布を有する波長特異的であるという利点を有する。したがって、LED光源は、380nm、390nm、415nm、450nm、及び472nmなどの選択された適切な波長付近の狭い帯域の光を放射するように設計することができる。放射光は、0.001W/cm~15W/cmの強度、例えば0.005W/cm~12W/cmの強度、例えば0.01W/cm~10W/cmの強度を有することができる。放射光は、3~200m/hの速度、例えば5~100m/hの速度、例えば10~90m/hの速度でライナーの表面に沿って通過することができる。
【0043】
樹脂は、繊維ライナーなどのキャリアに含まれていてもよい。好ましくは、繊維は、ポリマー繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、天然繊維又はガラス繊維である。一実施形態では、ライナーは、加圧パイプ又は非加圧パイプ、側面接続部、ハット形材(トップハット)及びティーハットをライニングすることを意図している。
【0044】
本方法はまた、
a:ヨードニウム、ジフェニル-4,4’-ジ-C10-13アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート及び(4-(1-メチル-エチル)フェニル)-(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(1-)から選択される光開始剤並びにカンファーキノン、ピナコール及びアントラセンを増感剤として含む樹脂組成物を提供するステップと、
b:混合物にエーテル又はアルコールから選択される溶媒を添加するステップと、
c:混合物が溶媒に溶解するまで撹拌するステップと、
d:固体エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAグリシジルエーテル樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル樹脂及びエポキシ希釈剤を添加して、プロポキシル化グリセリルトリアクリラートと共に硬化性組成物を得るステップと、を含む。
【0045】
一実施形態では、本方法は、ステップbの前にアスコルビン酸を混合物に添加するさらなるステップを含む。
【0046】
この方法はまた、ステップdにおいて、ポリエステルアクリラート、エポキシアクリラート、ポリウレタンアクリラート及び/又はポリエーテルアクリラートから選択される少なくとも1種のさらなる成分を添加することを含み得る。
【0047】
さらに、この方法はまた、ステップdにおいてテトラメチルエチレングリコール、ジブタンジオール及び銅塩又は銅錯体を添加するさらなるステップを含み得る。
【0048】
この方法は、ステップdにおいて、アシル、芳香族、エーテル、ジオキソラン、アクリロイル基を有するカルボン酸アミド及びオキセタンアクリラートを含む単官能性、二官能性及び/又は三官能性アクリラートから選択される少なくとも1種のさらなる成分を添加することを含み得る。
【0049】
一実施形態では、本方法は、
e:得られた硬化性樹脂組成物を繊維ライナー上に塗布するステップと、
f:波長380~480nm、強度0.01W/cm~10W/cmのLED光を、繊維ライナーの表面に5~90m/hrの速度で照射するステップと、
g:繊維強化ライナーを室温まで冷却するステップと、を含む。
【0050】
本発明はまた、ライナーを補修及び/又は硬化するための樹脂組成物の使用に関する。ライナーに樹脂組成物を既知の方法で含浸させ、ライナーを硬化させるべき場所に取り付けるが、これらのプロセスも周知であり、十分に確立されている。
【0051】
本発明はまた、ライナーシステム、フェルトライナー、ガラスライナー及び他のキャリア材料、垂直方向及び水平方向の側面接続部、ハット形材(トップハット)及びティーハットを使用したパイプ再建のための樹脂組成物の使用に関する。
【0052】
本発明はまた、繊維ガラス、炭素繊維、玄武岩、ポリエステルのような材料を用いてパイプの外側を包むための樹脂組成物の使用に関し、材料は樹脂組成物で浸潤され、硬化される。これは、パイプを腐食から保護するか、又は加圧パイプを補強するのに役立ち得る。
【0053】
本発明はまた、ボート製造、風力タービンブレード、スプレーコートなどでの使用に適した複合材における樹脂組成物の使用に関する。繊維ガラス、炭素繊維、玄武岩又はポリエステルのような構造繊維は、樹脂組成物で浸潤され、硬化される。
【0054】
さらに、本発明はまた、鋼、コンクリート、粘土、石、硬質複合材、硬質プラスチック及び他の硬質材料などの材料の表面をスプレー、ローラー、ブラシ、ディップ及び他の塗布方法によって修復及び/又は保護するための、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、無機充填剤及び他の材料の形態の補強充填剤が添加された樹脂組成物の使用に関する。
【0055】
本発明はまた、鋼、コンクリート、粘土、石、プラスチック、硬質複合材料、硬質プラスチック及び他の硬質材料などの材料の表面をコーティング及び/又は保護するための樹脂組成物の使用に関する。
【0056】
さらに、本発明は、3D印刷技術における樹脂組成物の使用に関する。
【0057】
本発明は、硬化される物品の全深さにわたって十分な硬化度を有する樹脂組成物、より広いUV範囲を使用して硬化することができ、硬化中により良好な熱制御が得られる樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の原理を例によって以下に説明する。
【0059】
例1
光硬化性熱化学ビスフェノールAグリシジルエーテル(BPA)樹脂の配合
【0060】
光開始剤UV cata 243(BLUESTAR Silicones製ヨードニウムジフェニル-4,4’-ジ-C10-13-アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート光開始剤)は、波長約380nm~480nmでアントラセン(川崎化成工業株式会社製Anthracure UVS 2171)と共に長波長UV吸収剤カンファーキノンによって光増感され、樹脂含浸物品の全深さを通して非常に良好な硬化度をもたらした。
【0061】
反応は以下の通りである。光開始剤は光を吸収し、ジフェニルヨードニウム塩の不均一又は均一開裂によってアリールカチオンを生成し、これが水素供与体の存在下でプロトンを生成し、これがアニオンと結合してブレンステッド酸を提供する。
【0062】
ブレンステッド酸は、(BPA中の)エポキシ基と反応してカルボニウムカチオンを形成し、これが別のエポキシ基を攻撃して開環カチオン重合によってポリエーテルを形成する。エポキシ基と、光化学反応によって生成されるブレンステッド酸との反応中に熱が発生する。
【0063】
アスコルビン酸及び熱の存在下では、ブレンステッド酸が再び生成され、再びエポキシ基と反応し、反応を継続してポリエーテルを形成し得る。
【0064】
本発明によるエポキシ樹脂を調製した。樹脂は、重量で以下の組成を有していた。
72% BPA-BPF樹脂
1% ヨードニウムジフェニル-4,4’-ジ-C10-13-アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート
1% カンファーキノン
1% 9,10-ジブトキシアントラセン
1% 1,4-ジエトキシナフタレン
1% 銅ナフタラート
1% アスコルビン酸
22% ブタンジオールジグリシジルエーテル
【0065】
樹脂組成物は以下のようにして調製した。UV cata 243を、カンファーキノン、Anthracure UVS 2171及びアスコルビン酸と共に秤量した。エーテル又はアルコール溶媒を釣り合って添加し、40~50℃まで加熱した。混合物が溶媒に完全に溶解するまで撹拌を続けた。次いで、ビスフェノールAグリシジルエーテル樹脂にエポキシ希釈剤を添加した。
【0066】
BPA樹脂の上記混合物を、光の非存在下、すなわち暗条件下で、厚さ3~6mmの繊維ライナー上に塗布した。次いで、波長範囲380~480nmの光を放射するLED光源をオンにした。樹脂充填繊維ライナーの表面に40~80m/hrの速度で光を照射した。反応のピーク発熱を110~180℃の間で測定した。ライナーを放置して室温まで冷却し、機械的特性を測定した。
【0067】
樹脂を波長範囲380~480nmの光によって硬化させ、硬化の7日後に純粋な樹脂について機械的特性を試験した。規格ASTM D 638-2a、ASTM D 790及びASTM D 2240に概説されている手順に従って、8つのサンプルを試験した。
引張強度 55~75MPa (ASTM D 638-2a)
引張弾性率 30~3600MPa (ASTM D 638-2a)
曲げ強度 125~150MPa (ASTM D 790)
曲げ弾性率 45~5400MPa (ASTM D 790)
ショアD硬度 87~90 (ASTM D 2240)
【0068】
結果は、樹脂組成物が、例えば下水管(sewer pipe)を再ライニングするためのライナー内の樹脂として十分に満足できる機械的特性を有することを示した。
【0069】
機械的特性は要件を満たし、樹脂組成物はライナーでの使用に適していると結論付けることができた。
【0070】
反応スキームを以下に示す。
【化1】
【0071】
記載された光誘起開環又はフリーラジカル光硬化の代替として、ビスフェノールAグリシジルエーテル樹脂(BPA樹脂)の熱酸化還元光硬化及び光硬化性アクリラートとのそのハイブリダイゼーションを得ることも可能である。
【0072】
ビスフェノールAグリシジルエーテルの熱酸化還元光硬化は、テトラメチルエチレングリコール(ピナコール)及び銅塩又は銅錯体の存在下で行った。
【0073】
UV cata 243を、カンファーキノン、Anthracure UVS 2171及びテトラメチルエチレングリコールと共に秤量した。エーテル又はアルコール溶媒を釣り合って添加し、混合物を40~50℃まで加熱した。混合物が溶媒に完全に溶解するまで撹拌を続けた。ビスフェノールAグリシジルエーテルをエポキシ希釈剤と共に添加した。Cu-塩又はCu-錯体を添加した。混合物を繊維ライナー上に塗布し、硬化が完了するまで波長範囲380~480nmの光に曝露した。
【0074】
反応スキームを以下に示す。
【化2】
【0075】
例2
上記混合物に光硬化性アクリラートを添加してハイブリッド反応を達成し、波長380~480nmの光源の存在下で硬化プロセスを行うことも可能である。
【0076】
本発明はまた、以下のハイブリッド反応を含む。LED硬化性ポリエステルアクリラート又はエポキシアクリラート又はポリウレタンアクリラート又はポリエーテルアクリラートを記載のLED硬化性混合物に添加すると、光開始剤及び光増感剤と共にビスフェノールAグリシジルエーテル樹脂の反応性並びに機械的及び適切な熱特性、例えば引張強度、貯蔵弾性率及びガラス転移温度も変化する。
【0077】
ポリエステルアクリラート/エポキシアクリラート/ポリウレタンアクリラート/ポリエーテルアクリラートを最大20%のビスフェノールAグリシジルエーテル、UV cata 243、UVS 2171、カンファーキノン、アスコルビン酸と混合し、繊維ライナー上に塗布し、硬化が完了するまで波長範囲380~480nmの光に曝露した。
【0078】
本発明によるエポキシアクリラート樹脂を調製した。樹脂は、重量で以下の組成を有していた。
56% トリメチロールプロパントリアクリラート及びオキシビス(メチル-2,1-エタンジイル)ジアクリラートのエポキシ化化合物
20% BPA-BPF樹脂
1% ヨードニウムジフェニル-4,4’-ジ-C10-13-アルキル誘導体、テトラキス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)ボラート
1% カンファーキノン
1% 9,10-ジブトキシアントラセン
1% 1,4-ジエトキシナフタレン
1% ナフテン酸銅
1% アスコルビン酸
9% イソボルニルアクリラート
9% 1,4-ブタンジオールジメタクリラート
【0079】
樹脂を380~480nmの範囲の光によって硬化させ、硬化の7日後に純粋な樹脂サンプルについて機械的特性を試験した。規格ASTM D 638-2a、ASTM D 790及びASTM D 2240に概説されている手順に従って、サンプルを試験した。
引張強度 35~50MPa (ASTM D 638-2a)
引張弾性率 21~2800MPa (ASTM D 638-2a)
曲げ強度 95~110MPa (ASTM D 790)
曲げ弾性率 27~4500MPa (ASTM D 790)
ショアD硬度 85~90 (ASTM D 2240)
【0080】
引張弾性率及び曲げ弾性率に関して特定の多様性が見られたが、結果は完全に許容可能であった。
【0081】
樹脂組成物はまた、不織ポリエステルで試験した。この試験は、ライナーの樹脂組成物特性をシミュレートすることを目的としている。
【0082】
厚さ3mmのポリエステルライナーに樹脂を含浸させ、ポリ塩化ビニル(PVC)及び鋼管(steel pipe)を含む試験装置に配置した。パイプ試験装置内の樹脂含浸ライナーを、範囲380~480nmの波長を有する光によって硬化させた。
【0083】
PVC及び鋼管の両方からのインライン設置されたライナーサンプルの機械的特性を3週間後に測定した。測定は、規格ISO7685に従って実施した。
ヤング率: 1500~2500MPa (ISO7685)
リング剛性: 2、5~4KN/m2 (ISO7685)
ひずみによる3%たわみ: 42~56N (ISO7685)
【0084】
得られた結果は、樹脂組成物が、ライナー中で硬化させた場合に、パイプ補修のための優れた機械的特性を提供することを示した。弾性(ヤング率)、リング剛性及びたわみの結果は、組成物が、例えば下水管修理のために十分に満足できる特性を提供することを明確に示している。さらに、樹脂組成物は、プラスチック(PVC)及び鋳鉄に対して良好な接着性を示し、硬化中の収縮率が小さかった。体積収縮は典型的には5%未満であった。
【0085】
本発明は、低収縮及びプラスチック及び鋼に対する良好な接着性を有する硬化性及び重合性樹脂組成物を提供する。さらに、硬化プロセス中のピーク発熱温度(通常は110~230℃)を調整及び制御できるため、望ましくない過熱を回避することができる。
【0086】
本発明による試験された樹脂組成物は、硬化後、十分な引張強度、弾性及び適切な耐熱性を有することが証明された。
【国際調査報告】