(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】高屈折率グレーティングの水素/窒素ドーピングおよび化学的に補助されたエッチング
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20230608BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20230608BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548723
(86)(22)【出願日】2021-04-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2021027845
(87)【国際公開番号】W WO2021225771
(87)【国際公開日】2021-11-11
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】モハンティ, ニハール ランジャン
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA55
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA86
2H199CA93
2H199CA95
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA37
2H249AA44
2H249AA60
(57)【要約】
表面レリーフ構造、および表面レリーフ構造を作製するための技法が開示される。表面レリーフ構造は、基板と、基板上の複数のリッジと、それぞれが2つの隣接するリッジの+間にある複数の溝とを含む。複数のリッジは、基板に対して傾斜し、かつ少なくとも2.3の屈折率を有する材料を含む。複数の溝の底部における基板の領域は、少なくとも10
10/cm
3の濃度の水素または窒素のうちの少なくとも1つを含む。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料層における傾斜表面レリーフ構造を作製する方法であって、
反応性イオン源発生装置に第1の反応性ガスを注入することと、
前記反応性イオン源発生装置における前記第1の反応性ガスからプラズマを生成することであって、前記プラズマは、第1の原子量を有する第1の反応性イオン、および前記第1の原子量より少ない第2の原子量を有する第2の反応性イオンを含む、プラズマを生成することと、
少なくとも2.3の屈折率を有する前記材料層に向けて平行反応性イオンビームを形成するために前記プラズマから前記第1の反応性イオンの少なくとも一部および前記第2の反応性イオンの少なくとも一部を引き出すことと、
前記材料層上に前記第2の反応性ガスを注入することと、
前記材料層において前記傾斜表面レリーフ構造を形成するために前記平行反応性イオンビームおよび前記第2の反応性ガスによって前記材料層を物理的と化学的の両方でエッチングすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記材料層は、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の反応性イオンは窒素イオンを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の反応性イオンは水素イオンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の反応性ガスは、H
2、N
2、NF
3、NH
3、CH
4、CHF
3、Cl
2、BCl
3、またはHBrのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の反応性ガスには酸素または炭素がない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の反応性ガスはフッ素系反応性ガスを含み、好ましくは、前記第2の反応性ガスは、CF
4、NF
3、SF
6、Cl
2、BCl
3、またはHBrのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記平行反応性イオンビームを形成するために前記プラズマから前記第1の反応性イオンの少なくとも一部および前記第2の反応性イオンの少なくとも一部を引き出すことは、
前記反応性イオン源発生装置に隣接した引き出しグリッドに引き出し電圧を印加することと、
前記第1の反応性イオンの少なくとも一部および前記第2の反応性イオンの少なくとも一部を引き出しかつ加速させるために加速グリッドに加速電圧を印加することと、を含み、
前記引き出しグリッドおよび前記加速グリッドは配列され、
前記加速電圧は前記引き出し電圧と異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記傾斜表面レリーフ構造は傾斜表面レリーフ光学グレーティングを含み、
前記傾斜表面レリーフ光学グレーティングは複数のリッジを含み、好ましくは、前記複数のリッジのそれぞれのリッジの前縁は前記リッジの後縁に平行である、および/または、好ましくは、前記傾斜表面レリーフ光学グレーティングは、
前記複数のリッジのそれぞれのリッジの前縁の傾斜角度、および前記リッジの後縁の傾斜角度が、前記材料層の面法線に対して30度を上回ること、
前記前縁の長さと前記後縁の長さとの間の差異が前記後縁の前記長さの10%未満であること、
前記傾斜表面レリーフ光学グレーティングの深さが100nmを上回ること、または
前記傾斜表面レリーフ光学グレーティングのデューティサイクルが60%を上回ること、のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
材料層における傾斜表面レリーフ構造を作製する方法であって、
反応性イオン源発生装置に第1の反応性ガスを注入することであって、前記第1の反応性ガスは水素および窒素を含む、第1の反応性ガスを注入することと、
前記反応性イオン源発生装置における前記第1の反応性ガスからプラズマを生成することであって、前記プラズマは窒素イオンおよび水素イオンを含む、プラズマを生成することと、
前記材料層に向けて平行反応性イオンビームを形成するために前記反応性イオン源発生装置から、前記窒素イオンの少なくとも一部および前記水素イオンの少なくとも一部を引き出すことと、
前記材料層上に第2の反応性ガスを注入することであって、前記第2の反応性ガスはフッ素を含む、第2の反応性ガスを注入することと、
前記傾斜表面レリーフ構造を形成するために前記平行反応性イオンビームおよび前記第2の反応性ガスによって前記材料層を物理的と化学的の両方でエッチングすることと、を含み、
前記材料層は、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、またはGaPのうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項11】
前記材料層はTiO
x層を含み
前記水素イオンの少なくとも一部および前記窒素イオンの少なくとも一部はTiO
x層と反応して、Ti
wH
xN
zF、Ti
wH
xN
zCl、またはTi
wH
xN
zBr層を形成し、好ましくは、前記第2の反応性ガスはTi
wH
xN
zF、Ti
wH
xN
zCl、またはTi
wH
xN
zBr層と反応して、TiF
4、TiCl
4、またはTiBr
4のうちの少なくとも1つ、およびO
2、CO
2、H
2O、またはB
2O
3のうちの少なくとも1つを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記材料層はSiC層を含み、
前記水素イオンの少なくとも一部および前記窒素イオンの少なくとも一部はSiC層と反応して、Si
wH
xN
yC
zF、Si
wH
xN
yC
zCl、またはSi
wH
xN
yC
zBr層を形成し、好ましくは、前記第2の反応性ガスは、Si
wH
xN
yC
zF、Si
wH
xN
yC
zCl、またはSi
wH
xN
yC
zBr層と反応して、SiF
4、SiCl
4、またはSiBr
4、および、CH
4、CN、CF
4、CCl
4、またはCBr
4のうちの少なくとも1つを生成する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
基板と、
前記基板上の複数のリッジであって、
前記複数のリッジは前記基板に対して傾斜し、
前記複数のリッジは少なくとも2.3の屈折率を有する材料を含む、複数のリッジと、
それぞれが2つの隣接するリッジの間にある複数の溝であって、
前記複数の溝の底部における前記基板の領域は、少なくとも10
10/cm
3の濃度の水素または窒素のうちの少なくとも1つを含む、複数の溝と、
を備える、表面レリーフ構造。
【請求項14】
前記複数のリッジの前記材料は、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、またはGaPのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の表面レリーフ構造。
【請求項15】
前記表面レリーフ構造は、
前記複数のリッジのそれぞれのリッジの前縁が前記リッジの後縁に平行であること、
前記前縁の傾斜角度および前記後縁の傾斜角度が前記基板の面法線に対して30度を上回ること、
前記前縁の長さと前記後縁の長さとの間の差異が前記後縁の前記長さの10%未満であること、
前記複数の溝の深さが100nmを上回ること、または
前記表面レリーフ構造のデューティサイクルが60%を上回ること、のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項13または14に記載の表面レリーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)またはヘッドアップディスプレイ(HUD)システムなどの人工現実システムは、一般的に、仮想環境において物体を描写する人工画像を提示するように構成されるディスプレイを含む。ディスプレイは、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、または複合現実(MR)アプリケーションにあるように、仮想物体を表示する、または現実物体の画像と仮想物体の画像を組み合わせることができる。例えば、ARシステムにおいて、ユーザは、例えば、透明ディスプレイガラスまたはレンズを通して見ること(光学シースルー方式と称されることが多い)、またはカメラによって取り込まれた周囲環境の表示画像を見ること(ビデオシースルー方式と称されることが多い)によって、仮想物体の画像(例えば、コンピュータ生成画像(CGI))と、周囲環境の画像との両方を見ることができる。
【0002】
1つの例示の光学シースルー方式ARシステムは、導波路ベースの光ディスプレイを使用してよく、この場合、映像の光は導波路(例えば、基板)に結合され、導波路内で伝搬し、種々の場所で導波路から外へ結合され得る。いくつかの実装形態では、映像の光は、傾斜表面レリーフグレーティングなど、回析光学素子を使用して導波路にまたは導波路から外へ結合されてよい。多くの場合、望ましい速度で所望の外形で傾斜表面レリーフグレーティングを作製することは困難である場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は一般的に、傾斜構造を作製するための技法に関し、より具体的には、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPなどの高屈折率(例えば、n>約2.3)を有する材料上で傾斜構造をエッチングするための技法に関する。化学補助反応性イオンビームエッチング(CARIBE)技法は、高対称性傾斜構造または超高屈折率を有する材料における傾斜構造などの傾斜構造をエッチングするために使用され得る。
【0004】
いくつかの実施形態によると、材料層における傾斜表面レリーフ構造を作製する方法は、反応性イオン源発生装置に第1の反応性ガスを注入することと、反応性イオン源発生装置における第1の反応性ガスからプラズマを生成することであって、ここで、プラズマは、第1の原子量を有する第1の反応性イオン、および第1の原子量より少ない第2の原子量を有する第2の反応性イオンを含んでよい、プラズマを生成することと、少なくとも2.3の屈折率を有する材料層に向けて平行反応性イオンビームを形成するためにプラズマから、第1の反応性イオンの少なくとも一部および第2の反応性イオンの少なくとも一部を引き出すことと、材料層上に第2の反応性ガスを注入することと、材料層において傾斜表面レリーフ構造を形成するために、平行反応性イオンビームおよび第2の反応性ガスによって材料層を物理的と化学的の両方でエッチングすることと、を含んでよい。
【0005】
いくつかの実施形態において、材料層は、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPのうちの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの実施形態において、第1の反応性イオンは窒素イオンを含んでよい。いくつかの実施形態において、第2の反応性イオンは水素イオンを含んでよい。いくつかの実施形態において、第1の反応性ガスは、H2、N2、NF3、NH3、CH4、CHF3、Cl2、BCl3、またはHBrのうちの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの実施形態において、第1の反応性ガスには酸素または炭素がなくてよい。いくつかの実施形態において、第2の反応性ガスは、フッ素系反応性ガスまたは塩素系反応性ガスまたは臭素系反応性ガスを含んでよい。いくつかの実施形態において、第2の反応性ガスは、CF4、NF3、SF6、Cl2、BCl3、またはHBrのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、平行反応性イオンビームを形成するためにプラズマから第1の反応性イオンの少なくとも一部および第2の反応性イオンの少なくとも一部を引き出すことは、反応性イオン源発生装置に隣接した引き出しグリッドに引き出し電圧を印加することと、第1の反応性イオンの少なくとも一部および第2の反応性イオンの少なくとも一部を引き出しかつ加速させるために加速グリッドに加速電圧を印加することと、を含んでよい。引き出しグリッドおよび加速グリッドは配列され得、加速電圧は引き出し電圧と異なってよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、傾斜表面レリーフ構造は、傾斜表面レリーフ光学グレーティングを含んでよく、傾斜表面レリーフ光学グレーティングは複数のリッジを含んでよい。いくつかの実施形態において、複数のリッジのそれぞれのリッジの前縁はリッジの後縁に平行であってよい。傾斜表面レリーフ光学グレーティングは、複数のリッジのそれぞれのリッジの前縁の傾斜角度、および該リッジの後縁の傾斜角度が材料層の面法線に対して30度を上回ること、前縁の長さと後縁の長さとの間の差異が後縁の長さの10%未満であること、傾斜表面レリーフ光学グレーティングの深さが100nmを上回ること、または傾斜表面レリーフ光学グレーティングのデューティサイクルが60%を上回ることのうちの少なくとも1つによって特徴付けられてよい。
【0008】
いくつかの実施形態によると、材料層における傾斜表面レリーフ構造を作製する方法は、反応性イオン源発生装置に水素および窒素を含み得る第1の反応性ガスを注入することと、反応性イオン源発生装置における第1の反応性ガスから窒素イオンおよび水素イオンを含むプラズマを生成することと、材料層に向けて平行反応性イオンビームを形成するために反応性イオン源発生装置から、窒素イオンの少なくとも一部および水素イオンの少なくとも一部を引き出すことと、材料層上にフッ素を含む第2の反応性ガスを注入することと、傾斜表面レリーフ構造を形成するために平行反応性イオンビームおよび第2の反応性ガスによって材料層を物理的と化学的の両方でエッチングすることと、を含んでよい。材料層は、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPのうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、材料層は、TiOx層を含んでよい。水素イオンの少なくとも一部および窒素イオンの少なくとも一部は、TiOx層と反応して、TiwHxNzF、TiwHxNzCl、またはTiwHxNzBr層を形成し得る。第2の反応性ガスは、TiwHxNzF、TiwHxNzCl、またはTiwHxNzBr層と反応して、TiF4、TiCl4、またはTiBr4、および、O2、CO2、またはH2Oのうちの少なくとも1つを生成し得る。いくつかの実施形態において、材料層は、SiC層を含んでよく、水素イオンの少なくとも一部および窒素イオンの少なくとも一部は、SiC層と反応して、SiwHxNyCzF、SiwHxNyCzCl、またはSiwHxNyCzBr層を形成し得る。第2の反応性ガスは、SiwHxNyCzF層と反応して、SiF4、SiCl4、またはSiBr4、および、CH4、CN、CF4、CCl4、またはCBr4のうちの少なくとも1つを生成し得る。
【0010】
いくつかの実施形態によると、表面レリーフ構造は、基板と、基板上の複数のリッジと、それぞれが2つの隣接するリッジの間にある複数の溝を含んでよい。複数のリッジは、基板に対して傾斜していてよく、かつ少なくとも2.3の屈折率を有する材料を含んでよい。複数の溝の底部における基板の領域は、少なくとも1010/cm3の濃度の水素または窒素のうちの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの実施形態において、複数のリッジの材料は、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、またはGaPのうちの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの実施形態において、表面レリーフ構造は、複数のリッジのそれぞれのリッジの前縁が該リッジの後縁に平行であること、前縁の傾斜角度および後縁の傾斜角度が基板の面法線に対して30度を上回ること、前縁の長さと後縁の長さとの間の差異が後縁の長さの10%未満であること、複数の溝の深さが100nmを上回ること、または表面レリーフ構造のデューティサイクルが60%を上回ることのうちの少なくとも1つによって特徴付けられてよい。
【0011】
この要約は、特許請求される主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものでもないし、特許請求される主題の範囲を判断するために分離して使用されることも意図されていない。主題は、本開示の明細書全体の適切な部分、全ての図面またはいずれかの図面、およびそれぞれの特許請求項を参照することにより理解されるものとする。前述の事項については、他の特徴および例と共に、以下の明細書、特許請求の範囲、および添付の図面においてより詳細に後述される。
【0012】
例示的な実施形態について、以下の図を参照して詳細に後述する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ある特定の実施形態による例示のニアアイディスプレイの簡略図である。
【
図2】ある特定の実施形態による例示のニアアイディスプレイの断面図である。
【
図3】ある特定の実施形態による例示の導波路ディスプレイの等角図である。
【
図4】ある特定の実施形態による例示の導波路ディスプレイの断面図である。
【
図5】導波路ディスプレイを含む例示の人工現実システムの簡略ブロック図である。
【
図6】ある特定の実施形態による導波路ディスプレイを使用する例示の光学シースルー拡張現実システムを示す図である。
【
図7】例示の導波路ディスプレイにおける表示光および外部光の伝搬を示す図である。
【
図8】ある特定の実施形態による例示の導波路ディスプレイにおける例示の傾斜グレーティング結合器を示す図である。
【
図9A-C】ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示のプロセスを示す図である。
【
図10】傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示のイオンビームエッチングシステムを示す図である。
【
図11】傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示の化学補助イオンビームエッチング(CAIBE)システムを示す図である。
【
図12】傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示の反応性イオンビームエッチング(RIBE)システムを示す図である。
【
図13】ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示の化学補助反応性イオンビームエッチング(CARIBE)システムを示す図である。
【
図14】ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製するためのCARIBEシステムのさらなる例を示す図である。
【
図15A】ある特定の実施形態による低屈折率基板上の傾斜グレーティングの例を示す図である。
【
図15B】ある特定の実施形態による低屈折率基板上の高屈折率材料で作製される傾斜グレーティングの例を示す図である。
【
図15C】ある特定の実施形態による高屈折率基板上の傾斜グレーティングの例を示す図である。
【
図16A】既存のプロセスを使用して高屈折率材料層上に作製される傾斜グレーティングの例を示す図である。
【
図16B】既存のプロセスを使用して高屈折率材料層上に作製される傾斜グレーティングのさらなる例を示す図である。
【
図17A】ある特定の実施形態による、CARIBEプロセスを使用して超高屈折率材料層上に作製される傾斜グレーティングの例を示す図である。
【
図17B】ある特定の実施形態による、CARIBEプロセスを使用して超高屈折率材料層上に作製される傾斜グレーティングのさらなる例を示す図である。
【
図18】ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製する方法の例を示す簡略化されたフローチャートである。
【
図19】本明細書に開示される例のいくつかを実装するための例示のニアアイディスプレイの例示の電子システムの簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図は、単に例示の目的で本開示の実施形態を描写している。当業者は、以下の説明から、示される構造および方法の代替的な実施形態が、本開示の記載される原理または利益から逸脱することなく用いられてよいことを容易に認識するであろう。
【0015】
添付の図において、同様の構成要素および/または特徴は同じ参照ラベルを有してよい。さらに、同じタイプのさまざまな構成要素は、参照ラベルの後に、ダッシュ、および同様の構成要素間で区別する第2のラベルが続くことによって区別され得る。第1の参照ラベルのみが本明細書において使用される場合、その説明は、第2の参照ラベルかどうかにかかわらず、同じ第1の参照ラベルを有する同様の構成要素のいずれか1つに適用可能である。
【0016】
本明細書に開示される技法は一般的に、ミクロ構造またはナノ構造製造に関する。より具体的には、限定はされないが、本出願は、傾斜ミクロ構造または傾斜ナノ構造を作製するための技法に関する。傾斜構造は、光および/または電気の挙動を操作するための多くの光学デバイスまたは電子デバイスにおいて使用可能である。例えば、導波路ベースの人工現実ディスプレイデバイスにおいて傾斜表面レリーフグレーティングを使用することによって、視野の改善、輝度効率の増大、および表示アーチファクト(例えば、レインボーアーチファクト)の低減が可能である。大きな傾斜角度(例えば、>45度)および/または高深度はまた、傾斜グレーティングの性能の改善に所望される場合がある。
【0017】
いくつかの導波路ディスプレイシステムにおいて、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPなどの高屈折率(例えば、n>約2.3)を有する材料においてエッチングされる表面レリーフグレーティングを使用することによって、単一の導波路上の単一の表面レリーフグレーティングが3原色および全視野を高効率で被覆可能にすることが望ましい。単板構造はまた、重量を低減し、シースルー品質を改善し、および、導波路ディスプレイシステムの光学アーチファクトを低減することができる。しかしながら、このような高屈折率材料において対称的なグレーティングリッジ(例えば、実質的に平行な前縁および後縁)を有する深い表面レリーフグレーティングを作製することは困難である可能性がある。例えば、既存のTiOxまたはSiCエッチング技法は、傾斜構造に対して大規模な基盤および望ましくない外形を生じさせる場合がある。
【0018】
ある特定の実施形態によると、化学補助反応性イオンビームエッチングプロセスは、超高屈折率(例えば、2.3、2.4、2.5、2.6、またはそれ以上)を有する材料において傾斜グレーティングをより効率的にかつより精確に作製するために実施され得る。超高屈折率を有する材料は、超高屈折率材料と呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態において、水素および窒素は、水素イオンおよび窒素イオンを生成するためにイオン源発生装置に追加され得る。水素イオンおよび窒素イオンは、エッチングされる超高屈折率材料における結合をドープ、改良、および/または破壊し得るため、超高屈折率材料のエッチングおよび除去が促進される。
【0019】
特定の理論に縛られることを意図するものではなく、水素イオンより重い窒素イオンは、水素イオンによって破壊されない場合があるいくつかの結合を破壊することができ、それによって、超高屈折率材料はより容易にエッチングされ得る。水素イオンは、比較的小さいサイズであるとして、超高屈折率材料により深く浸透して結晶構造および/または超高屈折率材料の結合を崩壊させることでエッチングプロセスをさらに促進させ得る。よって、超高屈折率材料は、水素イオンおよび/または窒素イオンによってドープおよび/または改良され得る。ドープしたおよび/または改良された超高屈折率材料は、1つまたは複数の反応性ガス種と反応して、容易に除去可能である揮発性材料を形成し得る。フッ素系反応性ガスなどの反応性ガス種は、イオン源発生装置に追加されてよい、および/またはイオン源発生装置を介してガスこんろによってエッチングされる超高屈折率材料に加えられてよい。水素および/または窒素によって超高屈折率材料をドープおよび/または改良し、かつドープしたおよび/または改良された超高屈折率材料をフッ素系ガス種によってエッチングすることによって、対称的なおよび/または深い傾斜グレーティングがより効率的にかつより精確に作製され得る。
【0020】
以下の説明には、解説の目的で、本開示の例を十分理解してもらうために具体的詳細が示されている。しかしながら、さまざまな例がこれら具体的詳細なく実践可能であることは明らかであろう。例えば、デバイス、システム、構造、アセンブリ、方法、および他の構成要素は、不必要な詳細で例を不明瞭にしないためにブロック図の形態の構成要素として示される場合がある。他の事例では、周知のデバイス、プロセス、システム、構造、および技法は、例を不明瞭にすることを回避するために必要な詳細なく示される場合がある。図および説明は制限することを意図するものではない。本開示で用いられている用語および表現は、説明の条件として使用され、限定するものではなく、示されかつ説明される特徴またはこの一部のいずれの同義語も除外するような用語および表現の使用を意図するものではない。
【0021】
図1は、ある特定の実施形態によるニアアイディスプレイ100の例の簡略図である。ニアアイディスプレイ100はユーザに媒体を提示してよい。ニアアイディスプレイ100によって提示される媒体の例は、1つまたは複数の画像、ビデオ、および/またはオーディオを含んでよい。いくつかの実施形態では、オーディオは、ニアアイディスプレイ100、コンソール、またはこの両方からオーディオ情報を受信し、かつオーディオ情報に基づくオーディオデータを提示する外部デバイス(例えば、スピーカおよび/またはヘッドホン)を介して提示されてよい。ニアアイディスプレイ100は一般的に、人工現実ディスプレイとして動作するように構成される。いくつかの実施形態では、ニアアイディスプレイ100は、拡張現実(AR)ディスプレイまたは複合現実(MR)ディスプレイとして動作してよい。
【0022】
ニアアイディスプレイ100はフレーム105およびディスプレイ110を含んでよい。フレーム105は1つまたは複数の光学素子に結合されてよい。ディスプレイ110は、ユーザが、ニアアイディスプレイ100によって提示されるコンテンツを見るように構成され得る。いくつかの実施形態では、ディスプレイ110は、1つまたは複数の画像からユーザの目に光を配向するための導波路ディスプレイアセンブリを含んでよい。
【0023】
図2は、
図1に示されるニアアイディスプレイ100の断面
図200である。ディスプレイ110は少なくとも1つの導波路ディスプレイアセンブリ210に含んでよい。射出瞳230は、ユーザがニアアイディスプレイ100を着用する時ユーザの目220が位置付けられる場所に位置し得る。例証の目的で、
図2は、ユーザの目220および単一の導波路ディスプレイアセンブリ210と関連している断面
図200を示すが、いくつかの実施形態では、第2の導波路ディスプレイがユーザの第2の目に使用されてもよい。
【0024】
導波路ディスプレイアセンブリ210は、画像光(すなわち、表示光)を、射出瞳230に位置するアイボックスに、およびユーザの目220に配向するように構成されてよい。導波路ディスプレイアセンブリ210は、1つまたは複数の屈折率を有する1つまたは複数の材料(例えば、プラスチック、ガラスなど)を含んでよい。いくつかの実施形態では、ニアアイディスプレイ100は、導波路ディスプレイアセンブリ210とユーザの目220との間に1つまたは複数の光学素子を含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイアセンブリ210は、積層導波路ディスプレイ、可変焦点導波路ディスプレイなどを含むがこれらに制限されない、積み重ねられた1つまたは複数の導波路ディスプレイを含んでよい。積層導波路ディスプレイは、各単色源が種々の色のものである導波路ディスプレイを積み重ねることによってもたらされた多色ディスプレイ(例えば、赤/緑/青(RGB)ディスプレイ)である。積層導波路ディスプレイは、複数の平面上に投影可能である多色ディスプレイ(例えば、複数面有色ディスプレイ)であってもよい。いくつかの構成では、積層導波路ディスプレイは、複数の平面上に投影可能である単色ディスプレイ(例えば、複数面単色ディスプレイ)であってよい。可変焦点導波路ディスプレイは、導波路ディスプレイから放出した画像光の焦点位置を調節可能であるディスプレイである。代替的な実施形態では、導波路ディスプレイアセンブリ210は、積層導波路ディスプレイおよび可変焦点導波路ディスプレイを含んでよい。
【0026】
図3は、導波路ディスプレイ300の一実施形態の等角図である。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイ300は、ニアアイディスプレイ100の構成要素(例えば、導波路ディスプレイアセンブリ210)であってよい。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイ300は、画像光を特定の場所に配向することができるいくつかの他のニアアイディスプレイまたは他のシステムの一部であってよい。
【0027】
導波路ディスプレイ300は、光源アセンブリ310、出力導波路320、およびコントローラ330を含んでよい。例証の目的で、
図3は、ユーザの目390と関連している導波路ディスプレイ300を示すが、いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイ300と別個のまたは部分的に別個の別の導波路ディスプレイは、画像光をユーザの別の目に与えてよい。
【0028】
光源アセンブリ310は、ユーザに表示するための画像光355を生成することができる。光源アセンブリ310は、出力導波路320の第1の側面370-1上に位置するカップリング要素350に画像光355を生成しかつ出力してよい。いくつかの実施形態では、カップリング要素350は、画像光355を光源アセンブリ310から出力導波路320に結合してよい。カップリング要素350は、例えば、回析グレーティング、ホログラフィックグレーティング、1つまたは複数の縦続反射器、1つまたは複数のプリズム面要素、および/または一連のホログラフィック反射器を含み得る。出力導波路320は、拡張した画像光340をユーザの目390に出力できる光導波路であってよい。出力導波路320は、第1の側面370-1に位置する1つまたは複数のカップリング要素350において画像光355を受信し、かつ受信した画像光355を配向要素360にガイドすることができる。
【0029】
配向要素360は、受信した入力画像光355をデカップリング要素365に再配向することで、受信した入力画像光355は、デカップリング要素365を介して出力導波路320から外へ結合可能である。配向要素360は、出力導波路320の第1の側面370-1の一部であってよい、またはこれに取り付けられてよい。デカップリング要素365は、配向要素360がデカップリング要素365に対向するように、出力導波路320の第2の側面370-2の一部であってよい、またはこれに取り付けられてよい。配向要素360および/またはデカップリング要素365は、例えば、回析グレーティング、ホログラフィックグレーティング、表面レリーフグレーティング、1つまたは複数の縦続反射器、1つまたは複数のプリズム面要素、および/または一連のホログラフィック反射器を含んでよい。
【0030】
出力導波路320の第2の側面370-2は、x寸法およびy寸法に沿った平面を表すことができる。出力導波路320は、画像光355の全内部反射を促進することができる1つまたは複数の材料を含んでよい。出力導波路320は、例えば、シリコン、プラスチック、ガラス、および/またはポリマーを含んでよい。出力導波路320は、比較的小さい形状因子を有することができる。例えば、出力導波路320は、x寸法に沿っておよそ50mmの幅、y寸法に沿って約30mmの長さ、およびz寸法に沿って約0.5~1mmの厚さであってよい。
【0031】
コントローラ330は、光源アセンブリ310の走査動作を制御することができる。コントローラ330は、光源アセンブリ310に対する走査命令を判断してよい。いくつかの実施形態では、出力導波路320は、広い視野(FOV)を有するユーザの目390に拡張した画像光340を出力することができる。例えば、ユーザの目390に与えられる拡張した画像光340は、約60度以上および/または約150度以下の(xおよびyにおける)対角線のFOVを有してよい。出力導波路320は、約20mm以上および/または約50mm以下の長さ、および/または約10mm以上および/または約50mm以下の幅を有するアイボックスを提供するように構成されてよい。
【0032】
図4は、導波路ディスプレイ300の断面
図400である。導波路ディスプレイ300は光源アセンブリ310および出力導波路320を含んでよい。光源アセンブリ310はコントローラ330からの走査命令に従って画像光355(すなわち、表示光)を生成してよい。光源アセンブリ310は、光源410および光学系415を含んでよい。光源410は、コヒーレントなまたは部分的にコヒーレントな光を生成する光源を含んでよい。光源410は、例えば、レーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ、および/または発光ダイオードを含んでよい。
【0033】
光学系415は、光源410からの光を調整することができる1つまたは複数の光学要素を含んでよい。光源410からの光を調整することは、例えば、コントローラ330からの命令に従って、向きを、拡張する、平行にする、および/または調節することを含んでよい。1つまたは複数の光学要素は、1つまたは複数のレンズ、液体レンズ、鏡、アパーチャ、および/またはグレーティングを含んでよい。光学系415(およびまた光源アセンブリ310)から放出した光は、画像光355または表示光と称される場合がある。
【0034】
出力導波路320は光源アセンブリ310から画像光355を受信してよい。カップリング要素350は、光源アセンブリ310からの画像光355を出力導波路320に結合してよい。カップリング要素350が回析グレーティングを含む実施形態では、回析グレーティングは、全内部反射が出力導波路320内で生じ得るように構成されてよいため、よって、出力導波路320に結合される画像光355はデカップリング要素365に向けて(例えば、全内部反射によって)出力導波路320内部に伝搬し得る。
【0035】
配向要素360は、出力導波路320から外に画像光の少なくとも一部分を結合するためにデカップリング要素365に向けて画像光355を再配向してよい。配向要素360が回析グレーティングである実施形態では、回析グレーティングは、入射画像光355が、デカップリング要素365の表面に対する傾斜角度で出力導波路320を抜けるように構成されてよい。いくつかの実施形態では、配向要素360および/またはデカップリング要素365は構造的に同様であってよい。
【0036】
出力導波路320を抜ける拡張画像光340は、1つまたは複数の寸法に沿って拡張(例えば、x寸法に沿って伸長)可能である。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイ300は、複数の光源アセンブリ310および複数の出力導波路320を含んでよい。光源アセンブリ310のそれぞれは、原色(例えば、赤、緑、または青)に対応する単色像光を放出してよい。出力導波路320のそれぞれは、多色であってよい拡張画像光340を出力するために共に積層されてよい。
【0037】
図5は、導波路ディスプレイアセンブリ210を含む人工現実システム500の例の簡略ブロック図である。システム500は、それぞれがコンソール510に結合される、ニアアイディスプレイ100、撮像デバイス535、および入力/出力インターフェース540を含んでよい。
【0038】
上述されるように、ニアアイディスプレイ100は、媒体をユーザに提示するディスプレイであってよい。ニアアイディスプレイ100によって提示される媒体の例は、1つまたは複数の画像、ビデオ、および/またはオーディオを含んでよい。いくつかの実施形態では、オーディオは、ニアアイディスプレイ100および/またはコンソール510からオーディオ情報を受信し、かつオーディオ情報に基づくオーディオデータをユーザに提示し得る外部デバイス(例えば、スピーカおよび/またはヘッドホン)を介して提示されてよい。いくつかの実施形態では、ニアアイディスプレイ100は人工現実眼鏡の機能を果たし得る。例えば、いくつかの実施形態では、ニアアイディスプレイ100は、コンピュータ生成要素(例えば、画像、ビデオ、音声など)によって物理的な現実世界環境の見える状態を拡張可能である。
【0039】
ニアアイディスプレイ100は、導波路ディスプレイアセンブリ210、1つまたは複数の位置センサ525、および/または慣性計測装置(IMU)530を含んでよい。導波路ディスプレイアセンブリ210は、上述されるように、光源アセンブリ310、出力導波路320、およびコントローラ330を含む導波路ディスプレイ300などの導波路ディスプレイを含んでよい。
【0040】
IMU530は、1つまたは複数の位置センサ525から受信される測定信号に基づいてニアアイディスプレイ100の初期位置に対してニアアイディスプレイ100の推定位置を指示する高速較正データを生成できる電子デバイスを含み得る。
【0041】
撮像デバイス535は、コンソール510から受信される較正パラメータに従って低速較正データを生成し得る。撮像デバイス535は、1つまたは複数のカメラおよび/または1つまたは複数のビデオカメラを含んでよい。
【0042】
入力/出力インターフェース540は、ユーザがアクション要求をコンソール510に送ることを可能にするデバイスであってよい。アクション要求は特定のアクションを行う要求であってよい。例えば、アクション要求は、アプリケーションを開始もしくは終了する、またはアプリケーション内の特定のアクションを行うためのものであってよい。
【0043】
コンソール510は、撮像デバイス535、ニアアイディスプレイ100、および入力/出力インターフェース540の1つまたは複数から受信される情報に従ってユーザへの提示のためにニアアイディスプレイ100に媒体を提供してよい。
図5に示される例において、コンソール510は、アプリケーションストア545、追跡モジュール550、およびエンジン555を含んでよい。
【0044】
アプリケーションストア545は、コンソール510による実行のための1つまたは複数のアプリケーションを記憶してよい。アプリケーションは、プロセッサによって実行される時、ユーザへの提示のためのコンテンツを生成してよい命令群を含んでよい。アプリケーションの例は、ゲームアプリケーション、会議アプリケーション、ビデオ再生アプリケーション、または他の適したアプリケーションを含んでよい。
【0045】
追跡モジュール550は、1つまたは複数の較正パラメータを使用してシステム500を較正してよく、ニアアイディスプレイ100の位置の判断時の誤差を低減するために1つまたは複数の較正パラメータを調節してよい。追跡モジュール550は、撮像デバイス535からの低速較正情報を使用してニアアイディスプレイ100の移動を追跡してよい。追跡モジュール550は、高速較正情報からの位置情報を使用してニアアイディスプレイ100の基準点の位置を判断してもよい。
【0046】
エンジン555は、システム500内のアプリケーションを実行してよく、追跡モジュール550からニアアイディスプレイ100の、位置情報、加速情報、速度情報、および/または予測される今後の位置を受信する。いくつかの実施形態では、エンジン555によって受信される情報は、導波路ディスプレイアセンブリ210に対する信号(例えば、表示命令)を生じさせるために使用されてよい。信号は、ユーザに提示するためのコンテンツのタイプを判断してよい。
【0047】
導波路ディスプレイを実装するための多くの種々のやり方があり得る。例えば、いくつかの実装形態では、出力導波路320は、画像光355を出力導波路320に結合するために第1の側面370-1と第2の側面370-2との間に傾斜表面を含んでよい。いくつかの実装形態では、傾斜表面は、配向要素360に向けて光を反射させるために反射コーティングでコーティングされてよい。いくつかの実装形態では、傾斜表面の角度は、画像光355が全内部反射により傾斜表面によって反射可能であるように構成されてよい。いくつかの実装形態では、配向要素360は使用されない場合があり、光は全内部反射によって出力導波路320内にガイドされ得る。いくつかの実装形態では、デカップリング要素365は第1の側面370-1の近くに位置してよい。
【0048】
いくつかの実装形態では、出力導波路320およびデカップリング要素365(ならびに使用される場合、配向要素360)は、環境から光を透過させてよく、画像光355と、ニアアイディスプレイ100の正面の物理的な現実世界環境からの光とを組み合わせるための光コンバイナの機能を果たし得る。そのように、ユーザは、光源アセンブリ310からの人工物の人工画像と、物理的な現実世界環境における実物体の現実画像との両方を見ることができ、これは光学シースルー方式と称される場合がある。
【0049】
図6は、ある特定の実施形態による導波路ディスプレイを使用する例示の光学シースルー拡張現実システム600を示す。拡張現実システム600はプロジェクタ610およびコンバイナ615を含んでよい。プロジェクタ610は、光源または画像源612、およびプロジェクタ光学部品614を含んでよい。いくつかの実施形態では、画像源612は、LCDディスプレイパネルまたはLEDディスプレイパネルなど、仮想物体を表示する複数の画素を含んでよい。いくつかの実施形態では、画像源612は、コヒーラントなまたは部分的にコヒーラントな光を生成する光源を含んでよい。例えば、画像源612はレーザダイオード、垂直キャビティ面発光レーザ、および/または発光ダイオードを含んでよい。いくつかの実施形態では、画像源612は、それぞれが、原色(例えば、赤、緑、または青)に対応する単色像光を放出する複数の光源を含んでよい。いくつかの実施形態では、画像源612は、空間光変調器などの光学式パターン発生装置を含んでよい。プロジェクタ光学部品614は、画像源612からの光をコンバイナ615に、拡張する、平行にする、走査する、または投影することなど、画像源612からの光を調整することができる1つまたは複数の光学要素を含んでよい。1つまたは複数の光学要素は、例えば、1つまたは複数のレンズ、液体レンズ、鏡、アパーチャ、および/またはグレーティングを含んでよい。いくつかの実施形態では、プロジェクタ光学部品614は、画像源612からの光の走査を可能にする複数の電極を有する液体レンズ(例えば、液晶レンズ)を含んでよい。
【0050】
コンバイナ615は、プロジェクタ610からの光をコンバイナ615の基板620に結合するための入力結合器630を含んでよい。入力結合器630は、体積ホログラフィックグレーティング、回析光学要素(DOE)(例えば、表面レリーフグレーティング)、または屈折結合器(例えば、ウェッジまたはプリズム)を含んでよい。入力結合器630は、可視光に対して、30%、50%、75%、90%を上回る、またはそれ以上の結合効率を有し得る。本明細書で使用されるように、可視光は約380nm~約750nmの波長を有する光を指すことができる。基板620に結合される光は、例えば、全内部反射(TIR)によって基板620内で伝搬してよい。基板620は、一式の眼鏡のレンズの形態であってよい。基板620は、平面または曲面を有することができ、ガラス、石英、プラスチック、ポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、水晶、またはセラミックなどの1つまたは複数のタイプの誘電材料を含んでよい。基板の厚さは、例えば、約1mm未満~約10mm以上であってよい。基板620は可視光を透過させてよい。材料は、光ビームが、例えば、50%、60%、75%、80%、90%、95%より大きい、またはそれ以上の高透過速度で材料を通過できる場合、光ビームを「透過」させることができ、この場合、(例えば、50%、40%、25%、20%、10%、5%未満、またはそれ以下の)光ビームのほんの一部分は、材料によって、散乱、反射、または吸収され得る。透過速度(すなわち、透過率)は、波長範囲にわたって明所視で重み付けされたまたは重み付けされない平均透過率、または、可視波長範囲などの波長の範囲にわたる最低透過率のどちらかによって表されてよい。
【0051】
基板620は、基板620から基板620によってガイドされるおよび基板620内で伝搬する光の少なくとも一部分を引き出し、かつ引き出された光660を拡張現実システム600のユーザの目690に配向するように構成される複数の出力結合器640を含んでよい、またはこれらに結合されてよい。入力結合器630のように、出力結合器640は、グレーティング結合器(例えば、体積ホログラフィックグレーティングまたは表面レリーフグレーティング)、他のDOE、プリズムなどを含んでよい。出力結合器640は、種々の場所で種々の結合(例えば、回析)効率を有することができる。基板620はまた、コンバイナ615の正面の環境からの光650がほとんどまたは全く損なうことなく通過可能にしてよい。出力結合器640はまた、光650がほとんど損なうことなく通過可能にし得る。例えば、いくつかの実装形態では、出力結合器640は、光650がほとんど損なうことなく出力結合器640を屈折あるいは通過可能であるように、光650に対する低回析効率を有してよい。いくつかの実装形態では、出力結合器640は光650に対する高回析効率を有してよく、ほとんど損なうことなくある特定の所望の方向(すなわち回析角度)に光650を回析させてよい。その結果、ユーザは、コンバイナ615の正面の環境、およびプロジェクタ610によって投影される仮想物体の画像を組み合わせて見ることが可能になり得る。
【0052】
図7は、導波路710およびグレーティング結合器720を含む例示の導波路ディスプレイ700における入射表示光740および外部光730の伝搬を示す。導波路710は、自由空間の屈折率n
1(すなわち1.0)を上回る屈折率n
2を有する平坦なまたは湾曲した透明基板であってよい。グレーティング結合器720は、例えば、ブラッググレーティングまたは表面レリーフグレーティングを含んでよい。
【0053】
入射表示光740は、例えば、
図6の入力結合器630または上述される他の結合器(例えば、プリズム面または傾斜表面)によって導波路710に結合されてよい。入射表示光740は、例えば、全内部反射によって導波路710内で伝搬してよい。入射表示光740がグレーティング結合器720に達する時、入射表示光740は、グレーティング結合器720によって、例えば、0次回析(すなわち、反射)光742および1次回析光744に回析されてよい。0次回析は、導波路710内で伝搬し続ける場合があり、種々の場所でグレーティング結合器720に向けて導波路710の底面によって反射され得る。1次回析光744はユーザの目に向けて導波路710から外へ結合(例えば、屈折)されてよいが、これは、全内部反射条件が、1次回析光744の回析角度により導波路710の底面では満たされない場合があるからである。
【0054】
外部光730はまた、グレーティング結合器720によって、例えば、0次回析光732または1次回析光734に回析されてよい。0次回析光732または1次回析光734は、ユーザの目に向けて導波路710から外へ屈折されてよい。よって、グレーティング結合器720は外部光730を導波路710に結合するための入力結合器の機能を果たし得、また、導波路710の外に入射表示光740を結合するための出力結合器の機能を果たし得る。そのように、グレーティング結合器720は、外部光730および入射表示光740を組み合わせるためのコンバイナの機能を果たし、かつ組み合わせた光をユーザの目に送ることができる。
【0055】
ユーザの目に向けた所望の方向で光を回析し、かつある特定の回析次に対して所望の回析効率を達成するために、グレーティング結合器720は、傾斜ブラッググレーティングまたは表面レリーフグレーティングなどのブレーズドグレーティングまたは傾斜グレーティングを含んでよく、この場合、グレーティングリッジおよび溝は、グレーティング結合器720または導波路710の面法線に対して傾けられてよい。
【0056】
上述されるように、グレーティング結合器は、表示光を回析させるだけでなく、外部光も回析させ得る。さらに、グレーティングの波長分散により、種々の色の光は、ゼロを上回るまたは下回る回析次数に対して種々の角度で回析され得る。そのように、ユーザの目に達し得る種々の色の外部光の-1次回析(例えば、回析光734)は、レインボーアーチファクトまたはレインボーゴーストと呼ばれる場合がある種々の場所(または方向)に位置するゴースト像として現れる場合がある。レインボーゴーストは、表示された画像または環境の画像の上に現れ、かつ表示された画像または環境の画像を崩壊させる場合がある。レインボーゴーストはユーザエクスペリエンスに大きな影響を与え得る。場合によっては、レインボーゴーストはまた、外部光源(例えば、太陽)からの光が高効率でユーザの目に向けられる時にユーザの目にとって危険であり得る。
【0057】
導波路ディスプレイのグレーティング結合器による外部光の回析によって生じたレインボーゴーストは、本明細書に開示されるある特定の技法を使用して低減され得る。例えば、いくつかの実施形態において、複数の傾斜リッジを含む傾斜グレーティングは、グレーティング結合器として使用されてよく、この場合、傾斜リッジの高さは、傾斜リッジの傾斜角度の接線によって分割された傾斜グレーティングの周期の整数倍に近い場合がある。1つの例では、傾斜グレーティングの傾斜リッジの高さおよび傾斜角度は、グレーティングの高さが傾斜リッジの傾斜角度の接線によって分割された傾斜グレーティングの周期に等しくまたはこれに近くなるように設計されてよい。換言すれば、傾斜グレーティングの第1のリッジの左(または右)上の点は、傾斜グレーティングの第2のリッジの左(または右)下の点と垂直に整列させてよい。よって、傾斜グレーティングは、2つの傾斜グレーティング間の傾斜周期の約半分のオフセットによる2つの重複した傾斜グレーティングを含み得る。結果として、2つのオフセットされた傾斜グレーティングによって回析した外部光(例えば、-1次回析)は、位相が約180度ずれている場合があるため、外部光の大部分が波長依存でなくてよい0次回析として導波路に進入し得るように、互いに破壊的に干渉し得る。外部光のグレーティング結合器の-1次透過回析の効率は、表示光に対するグレーティング結合器の-1次反射回析の効率よりはるかに低い可能性がある。例えば、表示光の-1次回析に対する効率は、約5%、約20%、約30%、約50%、約75%、約90%、またはそれ以上を上回る場合があるが、外部光の-1次回析に対する効率は、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、またはそれを下回る場合がある。このように、グレーティング結合器による外部光の-1次回析によって生じたレインボーゴーストは、低減または排除され得る。
【0058】
図8は、ある特定の実施形態による導波路ディスプレイ800の例における傾斜グレーティング結合器820の例を示す。導波路ディスプレイ800は、基板620など、導波路810上のグレーティング結合器820を含んでよい。グレーティング結合器820は、導波路810にまたはこの外に光を結合するためのグレーティング結合器の機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、グレーティング結合器820は周期pによる周期構造を含んでよい。例えば、グレーティング結合器820は、複数のリッジ826、およびリッジ826間の溝828を含んでよい。グレーティング結合器820のそれぞれの周期は、リッジ826および溝828を含んでよく、これらは、屈折率n
g2によって材料が充填される空隙または領域となり得る。リッジ826の幅とグレーティング周期pとの間の比率は、デューティサイクルと称される場合がある。グレーティング結合器820は、例えば、約10%~約90%以上のデューティサイクルを有し得る。いくつかの実施形態では、デューティサイクルは周期によって異なる場合がある。いくつかの実施形態では、傾斜グレーティングの周期pは、グレーティング結合器820上で1エリアから別エリアまでさまざまであり得る、または、グレーティング結合器820上で1周期から別周期までさまざまで(すなわち、チャープされ)得る。
【0059】
リッジ826は、材料(例えば、SiO2、Si3N4、SiC、SiOxNy、または非晶質シリコン)、有機材料(例えば、スピンオンカーボン(SOC)、非晶質炭素層(ACL)、またはダイアモンド状炭素膜(DLC))、または、無機金属酸化物層(例えば、TiOx、AlOx、TaOx、HfOxなど)、または他の多元素化合物(例えば、ZnSe、InGaAs、GaPなど)を含有するシリコンなど、ng1の屈折率を有する材料から作られてよい。それぞれのリッジ826は、傾斜角度αを有する前縁834、および傾斜角度βを有する後縁836を含んでよい。いくつかの実施形態では、それぞれのリッジ826の前縁834および後縁836は、互いに平行であってよい。換言すれば、傾斜角度αは傾斜角度βにほぼ等しい。いくつかの実施形態では、傾斜角度αは傾斜角度βと異なってよい。いくつかの実施形態では、傾斜角度αは傾斜角度βとほぼ等しくてよい。例えば、傾斜角度αと傾斜角度βとの間の差異は、20%、10%、5%、1%未満、またはそれ以下であってよい。いくつかの実施形態では、傾斜角度αおよび傾斜角度βは、例えば、約30度以下~約70%以上に及んでよい。
【0060】
いくつかの実装形態では、リッジ826間の溝828は、リッジ826の材料の屈折率より高いまたは低い屈折率ng2を有する材料がオーバーコートまたは充填されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、ハフニア、チタニア、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ジリコニウム、硫化ガリウム、窒化ガリウム、ガリウムリン、シリコン、および高屈折率ポリマーなどの高屈折率材料を使用して溝828を充填してよい。いくつかの実施形態では、酸化ケイ素、アルミナ、多孔質シリカ、またはフッ素化低屈折率モノマー(またはポリマー)などの低屈折率材料を使用して、溝828を充填してよい。その結果、リッジの屈折率と溝の屈折率との間の差異は、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0を上回る、またはそれ以上である場合がある。
【0061】
いくつかの実装形態において、第1の傾斜領域および第2の傾斜領域のうちの1つは、約1.0の屈折率を有する空隙であり得る。第1の傾斜領域および第2の傾斜領域は、z(垂直)方向に対する傾斜角度αを有し得る。第1の傾斜領域および第2の傾斜領域の高さ(H)は、傾斜角度αの接線によって分割されたグレーティング周期pの整数倍(m)に等しいまたはこれに近い(例えば、これの約5%または10%以内である)場合がある。すなわち、
である。
図8に示される例では、mは1に等しい。よって、グレーティング周期における第1の傾斜領域の左上の点は、異なるグレーティング周期における別の第1の傾斜領域の左下の点と垂直に整列し得る。グレーティング結合器820はよって、それぞれがH/2の高さを有する、第1(上部)の傾斜グレーティング822および第2(下部)の傾斜グレーティング824を含み得る。第1の傾斜グレーティング822および第2の傾斜グレーティング824は、p/2でx方向に互いにオフセットされ得る。他の実施形態において、mは2に等しいまたはこれを上回る場合がある。例えば、グレーティング結合器820は、それぞれがH/4の高さを有し、かつx方向にグレーティング周期の半分(p/2)で互いにオフセットされる4つの重複した傾斜グレーティングを含んでよい。
【0062】
グレーティング結合器820に入射する外部光(例えば、平面波)は、同じ位相を有し得る第1の部分(外部光830)および第2の部分(外部光840)を含んでよい。外部光830は、グレーティング結合器820へと屈折し、かつ第1の傾斜グレーティング822によって-1次回析光832に回析する場合があり、外部光840は、グレーティング結合器820へと屈折し、かつ第2の傾斜グレーティング824によって-1次回析光842に回析する場合がある。点Aおよび点Bは同相であってよい。従って、回析光832と回析光842との位相差は、
で近似され得る。ここで、OPL
ACは、点Aと点Cとの間の光路長(屈折率で乗算した物理長)であり、OPL
BCは、点Bと点Cとの間の光路長であり、λ
0は自由空間における外部光の波長であり、Δは、第1の傾斜グレーティング822による回析および第2の傾斜グレーティング824による回析によって生じた位相差である。OPL
ACとOPL
BCとの間の差異はかなり小さいため、回析光832と回析光842との間の位相差はΔに近い場合がある。
【0063】
グレーティングによって回析した光の電界は、
またはO(f)=G(f)×I(f)に従ってフーリエ光学を使用して判断されてよい。ここで、I(f)、G(f)、およびO(f)は、それぞれ、入力フィールドi(x)、グレーティング関数g(x)、および出力フィールドo(x)であり、
はコンボリューション演算子である。第1の傾斜グレーティング822に対するグレーティング関数g(x)のフーリエ変換は、F(g(x))=G(f)であり得る。第2の傾斜グレーティング824に対するグレーティング関数のフーリエ変換は、F(g(x-α))=e
-i2πfαG(f)であり得る。ここで、αは、x方向における第1の傾斜グレーティング822と第2の傾斜グレーティング824とのオフセットである。グレーティングの空間周波数fがl/pに等しいため、αがp/2に等しい時、e
-i2πfαはe
-iπになる。そのように、第1の傾斜グレーティング822によって回析した光の電界および第2の傾斜グレーティング824によって回析した光の電界は、位相が約180度(またはπ)ずれている場合がある。従って、Δは約πに等しい場合がある。OPL
ACとOPL
BCとの間の光路差はかなり小さいため、
はπに近い場合があり、そのため、回析光832と回析光842との間の少なくとも部分的な相殺的干渉を生じさせる場合がある。
【0064】
グレーティング結合器820によって外部光の全体的な-1次回析をさらに低減させるために、回析光832と回析光842との間の位相差が約180度(またはπ)であることによって回析光832および回析光842が互いに打ち消し合うように相殺的に干渉できるようにすることが望ましい。いくつかの実施形態において、グレーティング結合器820の高さ、周期、および/または傾斜角度は、Δがπと異なり得るように調節されてよいが、
は、回析光832と回析光842との間の相殺的干渉を生じさせるようにπにほぼ等しくてよい。
【0065】
対称的な傾斜形状および高深度に加えて、傾斜表面レリーフグレーティングが高屈折率変調を有することで、単一の導波路上の単一の表面レリーフグレーティングが3原色および導波路ディスプレイの全視野を高効率で被覆可能であるようにすることも望ましい場合がある。単板構造はまた、重量を低減し、シースルー品質を改善し、および、導波路ディスプレイシステムの光学アーチファクトを低減することができる。傾斜表面レリーフグレーティングをエッチングするための超高屈折率を有する基板材料は、例えば、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、AlOx、TaOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPなどを含んでよい。
【0066】
上述される傾斜グレーティングは、多くの種々のナノ加工技法を使用して作製されてよい。ナノ加工技法は一般的に、パターン形成プロセスおよびポストパターン(例えば、オーバーコーティング)プロセスを含む。パターン形成プロセスを使用して傾斜グレーティングの傾斜リッジを形成してよい。傾斜リッジを形成するための多くの種々のナノ加工技法があり得る。例えば、いくつかの実装形態では、傾斜グレーティングは、傾斜エッチングを含むリソグラフィ技法を使用して作製されてよい。いくつかの実装形態では、傾斜グレーティングは、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)成形法を使用して作製可能である。ポストパターンプロセスを使用して、傾斜リッジと異なる屈折率を有する材料による傾斜リッジをオーバーコートする、および/または傾斜リッジ間の間隙を充填することができる。ポストパターンプロセスはパターン形成プロセスと無関係であってよい。よって、同じポストパターンプロセスは、任意のパターン形成技法を使用して作製される傾斜グレーティング上で使用されてよい。
【0067】
後述される傾斜グレーティングを作製するための技法およびプロセスは、単に例示の目的のものであり、限定を意図するものではない。さまざまな改良が後述される技法になされ得ることを当業者は理解するであろう。例えば、いくつかの実装形態では、後述されるいくつかの動作は省略される場合がある。いくつかの実装形態では、追加の動作は、傾斜グレーティングを作製するために行われてよい。本明細書に開示される技法を使用して、さまざまな材料上に他の傾斜構造を作製してもよい。
【0068】
図9A~
図9Cは、ある特定の実施形態による傾斜エッチングによって傾斜表面レリーフグレーティングを作製するための例示の簡略プロセスを示す。
図9Aは、フォトリソグラフィプロセスなどのリソグラフィプロセス後の構造990を示す。構造900は、ガラスまたは石英基板など、上述される導波路ディスプレイの導波路として使用されてよい基板910を含んでよい。表面900はまた、Si
3N
4、SiO
2、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、AlO
x、TaO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、GaP、または本明細書に説明される任意の他のグレーティング材料などのグレーティング材料920の層を含んでよい。基板910は屈折率n
wgを有することができ、グレーティング材料の層920は屈折率n
g1を有することができる。いくつかの実施形態では、グレーティング材料の層920は基板910の一部であってよい。所望のパターンを有するマスク層930は、グレーティング材料の層920上に形成されてよい。マスク層930は、例えば、フォトレジスト材料、金属(例えば、銅、クロム、チタン、アルミニウム、またはモリブデン)、金属間化合物(例えば、MoSiON)、またはポリマーを含むことができる。マスク層930は、例えば、光学投影もしくは電子ビームリソグラフィプロセス、NILプロセス、またはマルチビーム干渉プロセスによって形成されてよい。
【0069】
図9Bは、ドライエッチングプロセス(例えば、反応性イオンエッチング(RIE)、誘導結合プラズマ(ICP)、ディープシリコンエッチング(DSE)、イオンビームエッチング(IBE)、またはIBEの変形)などの傾斜エッチングプロセス後の構造940を示す。傾斜エッチングプロセスは、1つまたは複数のサブステップを含んでよい。傾斜エッチングは、例えば、回転構造900、および所望の傾斜角度に基づくエッチングビームによるグレーティング材料の層920のエッチングによって行われてよい。エッチング後、傾斜グレーティング950は、グレーティング材料の層920において形成されてよい。
【0070】
図9Cは、マスク層930が除去された後の構造970を示す。構造970は、基板910、グレーティング材料の層920、および傾斜グレーティング950を含んでよい。傾斜グレーティング950は、複数のリッジ952および溝954を含んでよい。プラズマまたはウェットエッチングなどの技法を使用して、適切な化学反応によってマスク層930を剥離することができる。いくつかの実装形態では、マスク層930は、除去されなくてよく、傾斜グレーティングの一部として使用されてよい。
【0071】
その後、いくつかの実装形態では、ポストパターン(例えば、オーバーコーティング)プロセスは、リッジ952の材料より高いまたは低い屈折率を有する材料によって傾斜グレーティング950をオーバーコートするために行われてよい。例えば、上述されるように、いくつかの実施形態では、ハフニア、チタニア、酸化タングステン、酸化ジリコニウム、硫化ガリウム、窒化ガリウム、ガリウムリン、シリコン、および高屈折率ポリマーなどの高屈折率材料は、オーバーコーティングのために使用されてよい。いくつかの実施形態では、酸化ケイ素、アルミナ、多孔質シリカ、またはフッ素化低屈折率モノマー(またはポリマー)などの低屈折率材料はオーバーコーティングのために使用されてよい。その結果、リッジの屈折率と溝の屈折率との間の差異は、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0を上回る、またはそれ以上である場合がある。
【0072】
図10は、傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示のイオンビームエッチング(IBE)システム1000を示す。イオンビームエッチングは、表面レリーフグレーティング作製における1つのプロセスイネーブラである。イオンビームエッチングは一般的に、調節可能な回転角度による回転ステージに装着される基板から材料を物理的に粉砕するために、高度に平行にされ高指向性のイオンビームを使用する。
【0073】
IBEシステム1000はイオン源発生装置1010を含んでよい。イオン源発生装置1010は、アルゴンガスなどの不活性ガスをイオン源発生装置1010のチャンバ内に受けるための不活性ガス入口1020を含んでよい。プラズマは、RF誘導結合プラズマ(ICP)発生装置1030を介してイオン源発生装置1010において生成可能であり、ここで、高エネルギー電子は、中性物質との衝突によって注入された不活性ガス(例えば、Ar)の中性物質をイオン化してよい。高密度プラズマ1022は、衝撃イオン化によってイオン源発生装置1010内で生成されてよい。高密度プラズマ1022は、電荷平衡での正のイオン1024および負の電子による多数の中性物質とみなされる場合がある。
【0074】
IBEシステム1000はまた、イオン源発生装置1010内で形成される高密度プラズマ1022から平行イオンビーム1062を引き出すための1つまたは複数の配列コリメータグリッドを含んでよい。配列コリメータグリッドはさまざまなやり方で実装されてよい。例えば、
図10に示されるように、配列コリメータグリッドは、高密度プラズマ1022に接触しかつこの電位を制御することができる引き出しグリッド1040と、引き出されたイオンを加速させるために調節可能な負の高電圧供給によって駆動されてよい加速グリッド1050とを含んでよい。ビーム中和装置1060は、配列コリメータグリッドの近くに配設されてよく、エッチングされる構造上の正電荷の堆積を防止するために、平行イオンビーム1062と関連している正味の中性電荷束を達成するように平行イオンビーム1062に電子ビームを放出することができる。
【0075】
高指向性平行イオンビーム1062は、例えば、半導体ウエハー、ガラス基板、Si3N4材料層、酸化チタン層、アルミナ層など、エッチングされる材料層1080から材料を物理的に粉砕することができる。材料層1080は、例えば、フォトリソグラフィプロセスによって材料層1080上で形成され得るマスク1082によって部分的に被覆されてよい。マスク1082は、例えば、フォトレジスト材料、金属(例えば、銅、クロム、アルミニウム、またはモリブデン)、金属間化合物(例えば、MoSi2)、またはポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、シャッター1090(またはブレード)を使用して、エッチング時間および/またはエッチング領域を制御してよい。材料層1080は、高指向性平行イオンビーム1062に対して材料層1080の角度を改良するために回転させることができる回転ステージ1070に装着されてよい。材料層1080の角度を改良する能力によって、マスク1082上の最小スパッタ再付着による適合させた側壁外形の作成が可能になり得る。IBE機構が純粋に物理的であるため、エッチング速度は所望される速さではない場合がある。さらに、エネルギーイオンは、材料層に対する化学量論的損傷を引き起こし、かつ、欠陥をもたらす場合があるため、エッチング傾斜構造の性能を劣化させる場合がある。
【0076】
図11は、傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示の化学補助イオンビームエッチング(CAIBE)システム1100を示す。化学補助イオンビームエッチングにおいて、反応性ガス(例えば、CF
4、CHF
3、N
2、O
2、SF
6、Cl
2、BCl
3、HBrなど)などの反応種は、イオンビームと無関係のプロセス内に取り入れられてよい。よって、エッチングされる材料層は物理的と化学的の両方でエッチングされ得る。
【0077】
IBEシステム1000のように、CAIBEシステム1100はイオン源発生装置1110を含んでよい。イオン源発生装置1110は、
図10に対して上述されるイオン源発生装置1010と同様であってよい。イオン源発生装置1110は、アルゴンガスなどの不活性ガスをイオン源発生装置1110のチャンバ内に受けるための不活性ガス入口1120を含んでよい。プラズマは、RF誘導結合プラズマ(ICP)発生装置1130を介してイオン源発生装置1110において生成可能である。高密度プラズマ1122は、衝撃イオン化によってイオン源発生装置1110内で生成されてよい。1つまたは複数の配列コリメータグリッドを使用して、高密度プラズマ1122から平行イオンビーム1162を引き出してよい。例えば、
図11に示されるように、配列コリメータグリッドは、高密度プラズマ1122に接触しかつこの電位を制御することができる引き出しグリッド1140と、引き出されたイオンを加速させるために調節可能な負の高電圧供給によって駆動されてよい加速グリッド1150とを含んでよい。ビーム中和装置1160は、配列コリメータグリッドの近くに配設されてよく、エッチングされる構造上の正電荷の堆積を防止するために、平行イオンビーム1162と関連している正味の中性電荷束を達成するように平行イオンビーム1162に電子ビームを放出することができる。
【0078】
さらに、反応性ガス1166(例えば、CF4、CHF3、N2、O2、SF6、Cl2、BCl3、HBrなど)は、ガスこんろ1164を使用してエッチングされる材料層1180上に注入されてよい。一般に、反応性ガス1166は、材料層1180に近い場所で注入され得る。反応性ガスおよび平行イオンビーム1162は、マスク1182によって被覆されない材料層1180のエリアに達することができ、かつ、非被覆エリアを(IBEでのように)物理的と化学的の両方でエッチングしてよい。例えば、ガラス基板は、
SiO2+CF4→SiF4+CO2
に従って、反応性ガスCF4によって化学的にエッチングされてよい。SiF4およびCO2は、容易に除去され得る揮発性材料である。IBEシステム1000のように、CAIBEシステム1100は、エッチング時間および/またはエッチング領域を制御するためのシャッター1190(またはブレード)を含んでよい。材料層1180は、高指向性平行イオンビーム1162に対して材料層1180の角度を改良するために回転させることができる回転ステージ1170に装着されてよい。ある特定の材料に対して、CAIBEシステムは、IBEシステムに対して、エッチング異方性、スパッタ再付着、およびエッチング速度のさらなる制御を与えることができる。
【0079】
図12は、傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示の反応性イオンビームエッチング(RIBE)システム1200を示す。反応性イオンビームエッチングシステム1200は、反応性ガス(例えば、CF
4、CHF
3、N
2、O
2、SF
6、Cl
2、BCl
3、HBrなど)が、エッチングされる材料層を物理的と化学的の両方でエッチングすることができる反応性イオンビームを形成するためのイオン源発生装置に注入可能であってもよいことを除いて、IBEシステム1000と同様であってよい。
【0080】
RIBEシステム1200は、IBEシステム1000と同様であってよく、高密度プラズマ1222を生成するためのイオン源発生装置1210を含んでよい。イオン源発生装置1210は、反応性ガス(例えば、CF
4、CHF
3、N
2、O
2、SF
6、Cl
2、BCl
3、またはHBrなど)、および場合によっては、不活性ガス(例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、またはネオンガス)を、イオン源発生装置1210のチャンバ内に受けるためのガス入口1220を含んでよい。高密度プラズマ1222は、RF誘導結合プラズマ(ICP)発生装置1230を介してイオン源発生装置1210における衝撃イオン化によって生成されてよい。1つまたは複数の配列コリメータグリッドを使用して、高密度プラズマ1222から平行反応性イオンビーム1262を引き出してよい。例えば、
図12に示されるように、配列コリメータグリッドは、高密度プラズマ1222に接触しかつこの電位を制御することができる引き出しグリッド1240と、引き出された反応性イオンを加速させるために調節可能な負の高電圧供給によって駆動されてよい加速グリッド1250とを含んでよい。ビーム中和装置1260は、配列コリメータグリッドの近くに配設されてよく、エッチングされる構造上の正電荷の堆積を防止するために、平行反応性イオンビーム1262と関連している正味の中性電荷束を達成するように平行反応性イオンビーム1262に電子ビームを放出することができる。
【0081】
平行反応性イオンビーム1262は、マスク1282によって被覆されない材料層1280のエリアに達することができ、かつ、非被覆エリアを物理的と化学的の両方でエッチングしてよい。IBEシステム1000およびCAIBEシステム1100のように、RIBEシステム1200は、エッチング時間および/またはエッチング領域を制御するためのシャッター1290(またはブレード)を含んでもよい。材料層1280は、高指向性平行反応性イオンビーム1262に対して材料層1280の角度を改良するために回転させることができる回転ステージ1270に装着されてよい。ある特定の材料に対して、RIBEシステムは、IBEシステムに対して、エッチング異方性、スパッタ再付着、およびエッチング速度のさらなる制御を与えることができる。
【0082】
多くの材料(例えば、窒化ケイ素、有機材料、または無機金属酸化物)および/またはある特定の所望の傾斜特徴(例えば、実質的に等しい前縁および後縁を有するグレーティングリッジ)について、IBEプロセス、RIBEプロセス、およびCAIBEプロセスなどのこれらの既知のエッチングプロセスは、傾斜構造を確実に作製するために使用されない場合がある。1つの理由は、これらのプロセスが所望の材料上で所望の傾斜構造をエッチングするための反応物および/またはプロセスパラメータの適切な組み合わせを提供しない場合があることである。ある特定の実施形態によると、化学補助反応性イオンビームエッチング(CARIBE)プロセスを使用して、さまざまな材料上に傾斜表面レリーフ構造を作製することができる。本明細書に開示されるCARIBEプロセスは、イオン源およびガスこんろにおいて適切な化学成分を提供することによってラジカルおよびイオンのより効率的な制御を提供することができるため、外形の改善、およびエッチングのための化学成分のより多くの量を必要とする材料に対するマスク選択性を可能にすることができ、また、エッチング停止マージンを大きくするのに役立つ場合がある。CARIBEプロセスを使用して、傾斜構造の特徴は、化学成分のより多くの量を必要とする場合がある材料を含むさまざまな材料上でより精確に作製可能である。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるプロセスを使用して、グレーティングとの相互作用、および/またはグレーティングと相互作用する光の間の干渉による、光反射、屈折、および/または回析のような光の挙動を制御する物体上のグレーティングを作製することができる。いくつかの実施形態では、グレーティングは傾斜させてよく、物体は、導波路ディスプレイのための導波路といった光学要素であってよい。
【0083】
図13は、ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製するための例示の化学補助反応性イオンビームエッチング(CARIBE)システム1300を示す。CARIBEシステム1300は反応性イオン源発生装置1310を含んでよい。反応性イオン源発生装置1310は、反応性ガス(例えば、CF
4、CHF
3、N
2、O
2、SF
6、H
2、Cl
2、BCl
3、HBrなど)、および場合によっては、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を、反応性イオン源発生装置1310のチャンバ内に受けるためのガス入口1320を含んでよい。高密度プラズマ1322は、RF誘導結合プラズマ(ICP)発生装置1330を介して反応性イオン源発生装置1310における衝撃イオン化によって生成されてよい。1つまたは複数の配列コリメータグリッドを使用して、高密度プラズマ1322から平行反応性イオンビーム1362を引き出してよい。例えば、
図13に示されるように、配列コリメータグリッドは、高密度プラズマ1322に接触しかつこの電位を制御することができる引き出しグリッド1340と、引き出された反応性イオンを加速させるために調節可能な負の高電圧供給によって駆動されてよい加速グリッド1350とを含んでよい。ビーム中和装置1360は、配列コリメータグリッドの近くに配設されてよく、エッチングされる構造上の正電荷の堆積を防止するために、平行反応性イオンビーム1362と関連している正味の中性電荷束を達成するように平行反応性イオンビーム1362に電子ビームを放出することができる。
【0084】
さらに、CARIBEシステム1300は、反応性ガス1366(例えば、CF4、NF3、CHF3、N2、O2、SF6、Cl2、BCl3、HBrなど)を材料層に近い場所でエッチングされる材料層上に注入するためのガスこんろ1364を含んでよい。平行反応性イオンビーム1362(または、中和後の中性物質1368)および反応性ガス1366は、マスク1382によって被覆されない材料層1380のエリアに達することができ、物理的な粉砕および化学反応により非被覆エリアを物理的かつ化学的にエッチングしてよい。例えば、Si3N4層は、
Si3N4+4CF3+F→NF3+FCNz+3SiF4
に従って反応性ガスCF4によって化学的にエッチングされてよく、ここで、NF3、FCNz、およびSiF4は、揮発性材料であってよく、Si3N4層において傾斜構造を形成するために比較的容易に除去可能である。CARIBEプロセスにおいて材料層1380に達するビームにおける中性物質対イオン比は、RIBEまたはCAIBEプロセスにおけるものより高い場合がある。
【0085】
CAIBEシステム1300は、エッチング時間および/またはエッチング領域を制御するためのシャッター1390(またはブレード)を含んでよい。材料層1380は、高指向性平行反応性イオンビーム1362に対して材料層1380の角度を改良するために回転させることができる回転ステージ1370に装着されてよい。その結果、複数の溝1384および複数のリッジ1386を含む傾斜構造は、材料層1380において形成可能である。リッジ1386の幅および傾斜角度は、IBE、RIBE、またはCAIBEプロセスと比較してより正確に制御可能である。
【0086】
一般に、誘導結合プラズマ(ICP)チャンバなど、半導体エッチングにおいて使用されるイオン源発生装置は、石英で作られる内部空洞層を含んでよい。水素ガスなどのある特定のガスがイオン源発生装置において加えられる時、チャンバにおいて生成される水素イオンなどのある特定のイオンは、石英層に進入および/または石英層と反応する場合があり、石英層の物理的性質および/または化学的性質を変える場合があり、これによって、石英層に損傷が生じる場合がある。ある特定の実施形態によると、イオン源発生装置における石英層は、本明細書に説明される水素系または水素補助イオンビームエッチングなどのエッチングプロセスの選択に使用するために、酸化アルミニウム(Al2O3)またはY2O3などの酸化物材料と置き換えられてよい。
【0087】
図14は、ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製するための化学補助反応性イオンビームエッチング(CARIBE)システム1400のさらなる例を示す。CARIBEシステム1400は、イオン源発生装置1010、1110、1210、または1310と同様であり得る反応性イオン源発生装置などのイオン源発生装置1410を含んでよい。イオン源発生装置1410は、H
2、N
2、NF
3、NH
3、CH
4、CHF
3、CF
4、CH
2F
2、CH
3F、C
4F
8、C
4F
6、C
2F
6、C
2F
8、SF
6、CLF
3、N
2O、O
2、SO
2、COS、He、Cl
2、HBr、またはBCl
3などのある特定の組み合わせなどのガスをイオン源発生装置1410のチャンバ内に受けるための不活性ガス入口1420を含んでよい。プラズマは、RF誘導結合プラズマ(ICP)発生装置1430を介してイオン源発生装置1410において生成可能であり、ここで、高エネルギー電子は、中性物質との衝突によって注入された不活性ガス(例えば、水素含有もしくは水素系ガス種、または窒素含有もしくは窒素系ガス種)の中性物質をイオン化してよい。高密度プラズマ1422は、衝撃イオン化によってイオン源発生装置1410内で生成されてよい。高密度プラズマ1422は、電荷平衡での正のイオン1424および負の電子を含んでよい。
【0088】
イオン源発生装置1410の内部空洞の表面層1412は、チャンバにおいて生成される水素イオンが、表面層1412に進入しなくてよいまたは表面層1412と反応しなくてよいように、および、表面層1412の物理的性質および/または化学的性質を変えなくてよいように、酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化イットリウム(Y2O3)などの酸化物材料の層を含んでよい。よって、表面層1412は空洞内で生成されるイオンによって損傷され得ない。
【0089】
CARIBEシステム1400はまた、イオン源発生装置1410内で形成される高密度プラズマ1422から平行反応性イオンビーム1462を引き出すための1つまたは複数の配列コリメータグリッドを含んでよい。配列コリメータグリッドはさまざまなやり方で実装されてよい。例えば、
図14に示されるように、配列コリメータグリッドは、高密度プラズマ1422の電位を制御することができる引き出しグリッド1440と、引き出されたイオンを加速させるために調節可能な(負または正の)高電圧供給によって駆動されてよい加速グリッド1450とを含んでよい。ビーム中和装置1460は、オプションとして、配列コリメータグリッドの近くに位置付けられてよい。ビーム中和装置1460は、エッチングされる構造上の正電荷の堆積を防止するために、平行反応性イオンビーム1462と関連している正味の中性電荷束を達成するように平行反応性イオンビーム1462に電子ビームを放出してよい。
【0090】
CARIBEシステム1400は、材料層に近い場所でエッチングさせるために、反応性ガス1466(例えば、CF4、NF3、SF6、CHF3、N2、O2、Cl2、HBr、BCl3など)を材料層上に注入するためのガスこんろ1464をさらに含んでよい。平行反応性イオンビーム1462(および/または中和後の中性物質1468)および反応性ガス1466は、マスク1482によって被覆されない材料層1480のエリアに達することができ、物理的な粉砕および化学反応により非被覆エリアを物理的かつ化学的にエッチングしてよい。CARIBEプロセスにおいて材料層1480に達するビームにおける中性物質対イオン比は、RIBEまたはCAIBEプロセスにおけるものより高い場合がある。
【0091】
CARIBEシステム1400は、エッチング時間および/またはエッチング領域を制御するためのシャッター1490(またはブレード)を含んでよい。材料層1480は、高指向性平行反応性イオンビーム1462に対して材料層1480の角度を改良するために回転させることができる回転ステージ1470に装着されてよい。その結果、複数の溝1484および複数のリッジ1486を含む傾斜構造は、材料層1480において形成可能である。リッジ1486の幅および傾斜角度は、IBE、RIBE、またはCAIBEプロセスと比較してより正確に制御可能である。
【0092】
図15Aは、ある特定の実施形態による低屈折率基板1510上の傾斜グレーティング1512の例を示す。低屈折率基板1510は、例えば、約1.46~約1.5の屈折率を有し得る石英基板であってよい。よって、低屈折率基板1510上に形成される傾斜グレーティング1512は、低屈折率を有してよい。いくつかの実施形態において、より良い性能(例えば、高効率)を達成するために、グレーティングリッジとグレーティング溝との間に高屈折率のコントラストが達成可能であるような、高屈折率を有するグレーティングが必要とされる場合がある。
【0093】
図15Bは、ある特定の実施形態による、低屈折率基板1520上で高屈折率材料または超高屈折率材料(または、単に超高屈折率材料)で作製された傾斜グレーティング1522の例を示す。低屈折率基板1520は、例えば、約1.46~約1.5の屈折率を有し得る石英基板を含んでよい。高屈折率材料または超高屈折率材料の層は、低屈折率基板1520上に形成(例えば、付着)され得る。傾斜グレーティング1522は高屈折率材料または超高屈折率材料の層においてエッチングされてよい。高屈折率材料は、例えば、(約1.7の屈折率を有し得る)SiON、または、(約2.1の屈折率を有し得る)Si
3N
4を含んでよい。超高屈折率材料は、例えば、2.3またはそれ以上(例えば、2.3、2.4、2.5、2.6、またはそれ以上)の屈折率を有し得る、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、またはGaPなどを含んでよい。そのように、グレーティングリッジとグレーティング溝との間に比較的高い屈折率のコントラストが達成可能である。
【0094】
図15Cは、ある特定の実施形態による高屈折率基板1530上の傾斜グレーティング1532の例を示す。傾斜グレーティング1532および基板1530は、SiON、Si
3N
4、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPなどの同じ材料のものであってよく、同じ高屈折率を有してよい。そのように、グレーティングリッジとグレーティング溝との間に比較的高い屈折率のコントラストが達成可能である。
【0095】
上述されるように、高屈折率または超高屈折率を有する材料(例えば、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPなど)においてエッチングされるグレーティングを使用して、3原色の全視野からの光を高効率で回析し得る単一の表面レリーフグレーティングが得られ得る。しかしながら、超高屈折率材料上に、グレーティングリッジの前縁と後縁との間に、大きな深度、大きな傾斜角度、および/または高対称性を有する表面レリーフグレーティングをより効率的にかつより精確に製造することは困難である。例えば、いくつかの既存の技法を使用すると、エッチング速度は低い場合があり、大きな傾斜角度(例えば、>45度)またはグレーティングの深さ(例えば、>100nm)は達成されない場合があり、グレーティングリッジの、前縁の傾斜角度および後縁の傾斜角度は非常に異なる場合があり、グレーティングリッジの、前縁の長さおよび後縁の長さは非常に異なる場合があり、エッチング速度は低い場合がある。
【0096】
図16Aは、既存のプロセスを使用して作製される傾斜グレーティング1600の例を示す。傾斜グレーティング1600は、TiO
x材料層などの超高屈折率材料層1602上で作製されてよい。超高屈折率材料層1602の屈折率は、2.3を上回ってまたは約2.3であってよい。上述されるように、ある特定の実施形態による多くの応用では、ある特定の所望の性能を達成するために、傾斜グレーティングのリッジの前縁および後縁は実質的に互いに平行である、および/またはリッジの前縁および後縁は同様の長さを有することが望ましいことが多い。しかしながら、
図16Aに示されるように、傾斜グレーティング1600のリッジ1610の前縁1612の傾斜角度は、傾斜グレーティング1600のリッジ1610の後縁1614の傾斜角度と非常に異なっている場合がある。さらに、傾斜グレーティング1600のリッジ1610の前縁1612の長さは、傾斜グレーティング1600のリッジ1610の後縁1614の長さと非常に異なっている場合がある。傾斜グレーティング1600の深さは非常に小さい場合もある。
【0097】
図16Bは、既存のプロセスを使用して作製される傾斜グレーティング1650の別の例を示す。傾斜グレーティング1650は、SiC材料層などの超高屈折率材料層1652上で作製されてよい。超高屈折率材料層1602の屈折率は、2.3を上回ってまたは約2.3であってよい。傾斜グレーティング1600と同様に、
図16Bに示されるように、傾斜グレーティング1650のリッジ1660の前縁1662の傾斜角度は、傾斜グレーティング1650のリッジ1660の後縁1614の傾斜角度と非常に異なっている場合がある。さらに、傾斜グレーティング1600のリッジ1610の前縁1662の長さは、傾斜グレーティング1600のリッジ1610の後縁1664の長さと非常に異なっている場合がある。傾斜グレーティング1650は非常に浅い場合がある。
【0098】
傾斜グレーティング1600および傾斜グレーティング1650の小さな深度、および傾斜グレーティング1600および傾斜グレーティング1650に示されるような前縁および後縁の傾斜角度間および長さ間の大きな差異は、既存のプロセスの化学エッチングによる超高屈折率材料の低エッチ速度、およびエッチングプロセスの間に生成されるある特定のエッチング材料(例えば、炭素または他の残留物)の蓄積によって引き起こされ得る。従って、既存のプロセスを使用して超高屈折率材料において作製された傾斜グレーティングは、所望の特徴を有さない場合があり、ひいては、ある特定の応用にとって所望の性能を達成しない場合がある。
【0099】
いくつかの実施形態によると、CARIBEプロセスは、傾斜グレーティングをより効率的におよび/または精確に作製するために実施されてよい。いくつかの実施形態において、水素イオンおよび窒素イオンを含有するイオンビームは、イオン源発生装置を使用して生成されてよい。特定の理論に縛られることを意図するものではなく、イオンビームにおける水素イオンおよび窒素イオンは、エッチングされる超高屈折率材料(例えば、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、GaPなど)における結合をドープしかつ破壊し得ることで、超高屈折率材料のエッチングおよび除去が促進される。例えば、窒素イオンまたは原子は、これらの比較的重い質量、ひいては高い運動エネルギーにより、材料がより容易にエッチングされ得るように、その他の場合はより軽量なイオン(例えば、水素イオン)では破壊されない場合があるいくつかの結合を破壊し得る。さらに、窒素は、Si、Ti、またはHfなどと反応しないことで、不揮発性酸化物を形成し得る。
【0100】
水素イオンまたは原子は、これらの小さなサイズにより、超高屈折率材料層における結晶構造および/または化学結合を崩壊させるように超高屈折率材料層により深く浸透し得る。窒素によるいくつかの結合の破壊は、超高屈折率材料層への水素の浸透を促進し得る。窒素はSi、Ti、またはHfなどによって揮発性化合物を形成しない場合があるが、水素および/または窒素をドープした超高屈折率材料は、フッ素系反応性ガス、塩素系反応性ガス、または臭素系反応性ガスなどの反応性ガスと反応して、容易に除去され得る揮発性材料を形成し得る。フッ素系、塩素系、または臭素系反応性ガスは、イオン源発生装置に追加されてよい、および/または、水素および/または窒素をドープした超高屈折率材料と反応して揮発性材料を形成するように、ガスこんろを介してエッチングされる超高屈折率材料に加えられてよい。このように、対称的なおよび/または深い傾斜グレーティングは、例えば、約2.3を上回る(例えば、2.3、2.4、2.5、2.6、またはそれ以上の)超高屈折率を有する材料においてより効率的にエッチングされ得る。さらに、基板の温度は、エッチングプロセスをさらに制御するためのノブ(knob)として使用可能である。
【0101】
いくつかの実施形態によると、水素イオンおよび窒素イオンは、H2、N2、NF3、NH3、CH4、CHF3およびHBrなどの1つまたは複数をイオン源発生装置に追加することによって生成され得る。フッ素系反応性ガスは、CF4、NF3、およびSF6などの1つまたは複数を含み得る。塩素系反応性ガスは、Cl2およびBCl3などの1つまたは複数を含み得る。臭素系反応性ガスは、HBrなどの1つまたは複数を含み得る。水素および窒素を含む反応性イオンビームおよび反応性ガスは、エッチマスク(例えば、マスク1482)によって被覆されない超高屈折率材料層のエリアに達することができ、物理的な粉砕および/または化学反応により非被覆エリアを物理的と化学的の両方でエッチングしてよい。例えば、SiC材料層の非被覆エリアは、フッ素系反応性ガスと反応して、SiF4、ならびにCH4、CN、CF4、CCl4、およびCBr4などの1つまたは複数などの揮発性材料を形成し得るSiwHxNyCzF、SiwHxNyCzCl、またはSiwHxNyCzBrに、イオン注入および表面反応によって変換されてよい。別の例として、TiOx層(例えば、TiO2層)の非被覆エリアは、フッ素系反応性ガスと反応して、TiF4、ならびにO2、CO2、およびH2Oなどの1つまたは複数などの揮発性材料を形成し得るTiwHxNzF、TiwHxNzCl、またはTiwHxNzBrにイオン注入および表面反応によって変換されてよい。揮発性材料は、エッチングエリアから比較的容易に除去可能であるため、下層材料のさらなるエッチングを防止するまたは妨げる場合がある残留物をエッチングエリアにおいて形成することがない。
【0102】
図17Aは、ある特定の実施形態による、水素イオンおよび窒素イオンを含有するイオンビームを利用するCARIBEプロセスを使用して作製される傾斜グレーティング1700の例を示す。傾斜グレーティング1700は、本明細書に説明される任意の適切なマスクを使用してTiO
x層において作製されてよい。
図17Aに示されるように、傾斜グレーティング1700のリッジ1710の前縁1712の傾斜角度は、傾斜グレーティング1700のリッジ1710の後縁1714の傾斜角度と同様であってよい。
図17Aに示される例では、前縁1712および/または後縁1714の傾斜角度は約45度であってよい。前縁1712の傾斜角度と後縁1714の傾斜角度との間の差異は、10度未満、5度未満、4度未満、3度未満、2度未満、1度未満、またはこれらを下回ってよい。
図17Aにさらに示されるように、前縁1712の長さと後縁1714の長さとの間の差異は、
図16Bに示される、前縁1612の長さと後縁1614の長さとの間の差異を大幅に下回る。傾斜グレーティング1600におけるよりも傾斜グレーティング1700において達成される深さの方がはるかに大きい。
【0103】
図17Bは、ある特定の実施形態による水素イオンおよび窒素イオンを含有するイオンビームを利用するCARIBEプロセスを使用して作製される傾斜グレーティング1750の別の例を示す。傾斜グレーティング1750は、本明細書に説明される適切なマスクを使用してSiC層上に作製されてよい。
図17Bに示されるように、傾斜グレーティング1750のリッジ1760の前縁1762の傾斜角度は、傾斜グレーティング1750のリッジ1760の後縁1764の傾斜角度と同様であってよい。前縁1762の傾斜角度と後縁1764の傾斜角度との間の差異は、10度未満、5度未満、4度未満、3度未満、2度未満、1度未満、またはこれらを下回ってよい。
図17Bにさらに示されるように、前縁1762の長さと後縁1764の長さとの間の差異は、
図16Bに示される、前縁1662の長さと後縁1664の長さとの間の差異を大幅に下回る。傾斜グレーティング1750におけるグレーティング溝の深さは、傾斜グレーティング1650における該深さよりもはるかに大きくてよい。
図17Bに示される例において、リッジ1760の幅は約200nmであってよく、傾斜グレーティング1750のデューティサイクルは約60%を上回ってよい。グレーティング溝の底部はまた、傾斜グレーティング1650と比較して比較的平坦であり得る。リッジ1760の深さは約130nmであってよく、上のマスク層1766は厚さが27nmであってよい。よって、前縁が実質的に後縁に平行である細長く深い傾斜溝は、本明細書に開示されるプロセスを使用して作製され得る。
【0104】
図17Aおよび
図17Bは、水素および窒素の同時ドーピングなど、本明細書に開示されるCARIBE技法が、約2.3またはそれ以上の屈折率を有し得る超高屈折率材料において対称形状および対象の深さを有する傾斜構造を作製するために使用可能であることを示している。本明細書に開示されるCARIBE技法は、前縁および後縁が互いに平行なまたは実質的に平行な(例えば、傾斜角度の差異が約1度、2度、3度、5度、または10度未満である)傾斜構造を確実に作製するために使用可能である。エッチングされた傾斜グレーティングの対称形状、高深度、および大きな屈折率変調は、導波路ディスプレイの入力または出力結合器の性能の改善をもたらす場合がある。さらにまた、本明細書に開示されるCARIBE技法は、前縁と後縁との間の平行関係を維持しながら、深く細長い表面レリーフ構造をより効率的かつ精確に作製するために使用可能である。
【0105】
図18は、ある特定の実施形態による傾斜表面レリーフ構造を作製する方法の例を示す簡略化されたフローチャート1800である。傾斜表面レリーフ構造は、約2.3またはそれ以上の屈折率を有し得る超高屈折率材料(例えば、TiO
x、LiNbO
3、HfO
x、TiSiO
x、SiC、ZnSe、InGaAs、GaPなど)において作製されてよい。フローチャート1800に説明される動作は、単に例示の目的のためのものであり、限定を意図するものではない。さまざまな実装形態では、さらなる動作を追加するまたはいくつかの動作を省略するためにフローチャート1800に改良がなされてよい。フローチャート1800に説明される動作は、例えば、上述されるCARIBEシステム1400を使用して行われてよい。
【0106】
ブロック1810において、第1の反応性ガスは、
図14に示されるイオン源発生装置1410などのイオン源発生装置のチャンバ内に注入されてよい。第1の反応性ガスは、水素イオンおよび窒素イオンがイオン源発生装置によって生成され得るように、例えば、H
2、N
2、NF
3、NH
3、CH
4、CHF
3、Cl
2、BCl
3、およびHBrなどの1つまたは複数を含み得る。いくつかの実施形態において、作製されたグレーティングにおける炭素付着を最小化または排除するために、第1の反応性ガスは炭素を含まない場合がある。例えば、第1の反応性ガスは、H
2、N
2、NF
3、およびNH
3の1つまたは複数を含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、第1の反応性ガスは水素および窒素の両方を含み得る単一ガスであってよい。いくつかの実施形態において、第1の反応性ガスは、複数の(例えば、2つまたはそれ以上の)ガス種を含んでよく、この場合、1つまたは複数のガス種は少なくとも水素を含み、1つまたは複数のガス種は少なくとも窒素を含む。複数のガス種は、同時にまたは連続してイオン源発生装置のチャンバ内に注入されてよい。例えば、いくつかの実施形態において、第1の反応性ガスは、水素系反応性ガスおよび窒素系反応性ガスを含んでよい。いくつかの実施形態において、水素系反応性ガスはイオン源発生装置のチャンバ内に最初に注入されてよく、次いで、窒素系反応性ガスがイオン源発生装置のチャンバ内に注入されてよく、その逆もまた同様に行われてよい。いくつかの実施形態において、水素系反応性ガスおよび窒素系反応性ガスは、イオン源発生装置のチャンバ内に同時に注入されてよく、これによって生産スループットが改善され得る。いくつかの実施形態では、アルゴン、He、またはNeなどの不活性ガスも、反応性イオン源発生装置に注入されてよい。
【0108】
ブロック1820において、イオン源発生装置は、イオン源発生装置のチャンバにおいて高密度プラズマを生成してよい。例えば、時間的に変化する電流(例えば、RF電流信号)は、その電流の周りで時間的に変化する磁界を生じさせてよいコイルを通過可能である。時間的に変化する磁界は、次に、イオン源発生装置のチャンバにおいて電場を誘導し、かつ電子の放電をもたらしてよい。放電した電子は、イオン源発生装置のチャンバにおいてガスに衝撃を与えて反応性イオン(例えば、水素イオンおよび窒素イオン)を生成してよい。よって、イオン源発生装置のチャンバは、中性物質、イオン、および電子を含んでよい。
【0109】
ブロック1830では、水素イオンおよび窒素イオンを含む反応性イオンは、高密度プラズマから引き出されてよく、エッチングされる材料層に向けて平行反応性イオンビームを形成するために加速させてよい。上述されるように、例えば、1つまたは複数の配列コリメータグリッドを使用して、高指向性、高エネルギーの平行反応性イオンビームを形成するために反応性イオンを引き出しかつ加速させてよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の配列コリメータグリッドは、高密度プラズマに接触しかつこの電位を制御することができる引き出しグリッドと、イオンを加速させるために調節可能な負の高電圧供給によって駆動されてよい加速グリッドとを含んでよい。
【0110】
オプションとして、ブロック1840では、配列コリメータグリッドによってイオン源発生装置から引き出された平行反応性イオンビームは、ほぼ電荷平衡である、中性物質ならびに/またはイオンおよび電子を含んでよい平行ビームを形成するために電子ビームによって中和されてよい。従って、平行ビームは電子的に中性であり得るため、エッチングされる材料層上の正電荷の堆積を防止することが可能である。
【0111】
ブロック1850において、第2の反応性ガスは、エッチングされる材料層上に注入されてよい。第2の反応性ガスは、フッ素系反応性ガスまたは塩素系反応性ガスを含んでよい。フッ素系反応性ガスは、例えば、CF4、NF3、およびSF6などを含み得る。塩素系反応性ガスは、例えば、Cl2およびBCl3などを含み得る。臭素系反応性ガスは、例えば、HBrなどを含み得る。第2の反応性ガスは、エッチングされる材料層に近い場所で注入され得る。例えば、第2の反応性ガスは、上述されるようなガスこんろを使用して材料層上に注入されてよい。いくつかの実施形態において、第2の反応性ガスは、第1の反応性ガスと共にイオン源発生装置に追加されてよい。
【0112】
ブロック1860では、平行ビームおよび第2の反応性ガスは両方共、上述されるように材料層を物理的に粉砕しかつ化学的にエッチングしてよい。上述されるように、エッチングされる材料層は、TiOx、LiNbO3、HfOx、TiSiOx、SiC、ZnSe、InGaAs、およびGaPなどの(例えば、2.3を上回るまたは約2.3の)超高屈折率を有する材料層を含んでよい。さらに上述されるように、エッチングされる材料層は、材料層上でエッチングされる傾斜構造の所望の傾斜角度に基づいて傾けられてよく、かつ平行ビームの方向に対して回転させてよい回転ステージに装着させてよい。材料層は、傾斜構造の断面の所望のパターンと同様のパターンを含むパターンマスクによって部分的に被覆されてよい。いくつかの実施形態では、シャッターまたはブレードを使用して、材料層上のエッチング時間および/またはエッチング領域を制御してよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、傾斜構造は傾斜グレーティングを含んでよい。フローチャート1800において説明される方法を使用して作製される傾斜グレーティングの前縁および後縁の傾斜角度は、材料層の面法線に対して、約30度を上回って、約35度を上回って、約40度を上回って、約45度を上回って、約50度を上回って、約55度を上回って、または約60度を上回ってよい。前縁の長さと後縁の長さとの間の差異は、後縁の長さの、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満であってよい。フローチャート1800において説明される方法を使用して作製される傾斜グレーティングの深さは、約100nmを上回って、約125nmを上回って、約150nmを上回って、約175nmを上回って、または約200nmを上回ってよい。傾斜グレーティングのデューティサイクルは、約20%未満であって、約30%未満であって、約40%未満であって、約50%未満であって、約50%を上回って、約60%を上回って、約70%を上回って、約80%を上回って、または約90%を上回ってよい。よって、イオン注入および/または表面反応によって水素イオンおよび窒素イオンで超高屈折率材料層をドープすることによって、大きな深度、大きな傾斜角度、高デューティサイクル範囲、および対称的なリッジ外形などを有する傾斜グレーティングが、精確かつ効率的に作製され得る。
【0114】
任意の特定の理論に縛られることを意図するものではなく、窒素イオンは、比較的大きな質量であるとして、超高屈折率材料に浸透すること、および超高屈折率材料の強力な化学結合を崩壊または破壊することにおいて、非常に効果的であり得る。水素イオンは、比較的小さなサイズであるとして、原子間の間隙を通過しかつ超高屈折率材料にさらに深く浸透して、超高屈折率材料の結晶構造を崩壊させ、かつ超高屈折率材料のいくつかの化学結合を弱めるおよび/または破壊することができる。水素イオンおよび窒素イオンが生成され、かつ超高屈折率材料をドープおよび/または改良するために超高屈折率材料の方へ同時に流れる時、改良された超高屈折率材料は、反応性ガスと反応し得るため、より効率的にかつより精確にエッチングされ得る。超高屈折率材料のエッチ速度は既存の技術に対して大幅に改善され得、グレーティングのリッジの前縁および/または後縁に対して過剰なまたは大幅な損傷を生じさせることなく、はるかに深くなったグレーティングがエッチングされ得る。その結果として、はるかに大きくなったグレーティング深さおよびより対称的な構造(例えば、前縁と後縁との間の実質的に同様の傾斜角度)を有する傾斜グレーティングが達成され得る。
【0115】
さらに、窒素が分極種であるため、窒素イオンはまた、いくつかの反応性ガス(例えば、フッ素系反応性ガス)と反応して揮発性副生成物を生成し得る(例えば、SiCにおけるSi-C結合を破壊する)エッチングが容易な材料を形成するために超高屈折率材料と反応することがより効果的であり得、これによって、(炭素系反応性ガス種を使用してエッチングが行われる時の炭素付着などの)グレーティングの溝の底部における副生成物の蓄積を低減または排除することができる。窒素は、超高屈折率材料と反応して不揮発性材料を形成しない場合がある。対照的に、いくつかの既存の技法において、酸素などの他の分極種が利用されてよいが、酸素はシリコンと反応して酸化ケイ素を形成する場合があり、これは除去することが困難である場合がある。そのように、いくつかの実施形態において、第1の反応性ガスは、酸素または炭素を含まなくてまたはこれらがなくてよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、エッチングプロセスの間、水素イオンおよび窒素イオンによるドーピングの動作およびフッ素系反応性ガス種を使用するエッチングの動作は、同時に行われてよい。換言すれば、水素イオンおよび窒素イオンを含有する平行反応性イオンビーム、およびフッ素系反応性ガス種は、超高屈折率材料のドーピング、改良、およびエッチングを同時に行うために、超高屈折率材料の方へ同時に流れ得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、エッチングプロセスは複数の動作を含んでよい。例えばいくつかの実施形態において、水素イオンおよび窒素イオンは、最初に生成され、かつ超高屈折率材料をドープ、改良、および/またはエッチングするために使用されてよい。いくつかの実施形態において、水素および窒素による超高屈折率材料のドーピングは、同時にまたは順次実行されてよい。いくつかの実施形態において、超高屈折率材料は、最初に、窒素イオンによるドーピング、改良、および/またはエッチングが行われてよく、次いで、水素イオンによるドーピング、改良、および/またはエッチングが行われてよく、その逆もまた同様に行われてよい。超高屈折率材料が別個の動作で水素イオンおよび水素イオンによるドーピング、改良、および/またはエッチングが行われた後、フッ素系反応性ガス種などの他の反応性ガスは、ドープした超高屈折率材料を化学的にエッチングするために使用されてよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、水素イオンおよび窒素イオンによるドーピングおよび/またはエッチングの動作、ならびにフッ素系反応性ガス種を使用するエッチングの動作は、傾斜グレーティングをエッチングするための複数のサイクルのそれぞれのサイクルにおいて行われてよい。水素イオンおよび窒素イオンによるドーピングの動作およびフッ素系反応性ガス種を使用するエッチングの動作が同時に行われる時、エッチングプロセスは1つの連続的なサイクルで行われてよい。
【0119】
いくつかの実施形態において、フローチャート1800において説明される方法を使用して作製される傾斜グレーティングは、グレーティング材料層と異なる屈折率を有する材料でオーバーコートされてよい。例えば、いくつかの実施形態では、ハフニア、チタニア、酸化タングステン、酸化ジリコニウム、硫化ガリウム、窒化ガリウム、ガリウムリン、シリコン、または高屈折率ポリマーなどの高屈折率材料を使用して、傾斜グレーティングをオーバーコートする、および/または傾斜グレーティングのリッジ間の間隙を充填することができる。いくつかの実施形態では、酸化ケイ素、アルミナ、多孔質シリカ、またはフッ素化低屈折率モノマー(またはポリマー)などの低屈折率材料を使用して、傾斜グレーティングをオーバーコートする、および/または傾斜グレーティングのリッジ間の間隙を充填することができる。その結果、リッジの屈折率と傾斜グレーティングの溝の屈折率との間の差異は、0.1、0.2、0.3、0.5、1.0を上回る、またはそれ以上である場合がある。
【0120】
いくつかの実施形態において、フローチャート1800において説明される方法を使用して作製される傾斜グレーティングに水素および窒素が存在してよい。水素イオンおよび窒素イオンを含有するイオンビームが高度に平行にされ高指向性を有することができるため、窒素原子および/または水素原子の存在は、(例えば、グレーティングの溝の底部より下の)傾斜グレーティングの底部領域に限定される場合があり、グレーティングのリッジは、(グレーティングを形成する材料に本来存在し得る水素および/または窒素以外に)水素および/または窒素を実質的に含まないまたは非常に限定された量を含む場合がある。いくつかの実施形態において、傾斜グレーティングの溝の底部近くの水素の濃度は、1010/cm3またはそれ以上であってよい。いくつかの実施形態において、傾斜グレーティングの溝の底部近くの窒素の濃度は、1010/cm3またはそれ以上であってよい。いくつかの実施形態において、傾斜グレーティングの溝の底部近くの水素および/または窒素の濃度の組み合わせは、1010/cm3またはそれ以上であってよい。
【0121】
本発明の実施形態は、人工現実システムを含んでよい、またはこれと併せて実装されてよい。人工現実は、例えば、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、混成現実、または、これらの何らかの組み合わせおよび/もしくは派生形を含んでよい、ユーザへの提示前に何らかのやり方で調節されている現実の形態である。人工現実コンテンツは、完全に生成されたコンテンツ、または取り込まれた(例えば、実世界の)コンテンツと組み合わせて生成されたコンテンツを含んでよい。人工現実コンテンツは、ビデオ、オーディオ、触覚フィードバック、もしくはこれらの何らかの組み合わせ、および(見る人に対して3次元効果を生じさせるステレオビデオなど)単一のチャネルまたは複数のチャネルにおいて提示されてよいもののいずれかを含んでよい。さらに、いくつかの実施形態では、人工現実はまた、例えば、人工現実においてコンテンツを作成するために使用される、および/または、その他の場合、人工現実において使用される(例えば、人工現実においてアクティビティを行う)、アプリケーション、製品、アクセサリ、サービス、またはこれらの何らかの組み合わせと関連していてよい。人工現実コンテンツを提供する人工現実システムは、ホストコンピュータシステムに接続されるヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スタンドアロンHMD、モバイル機器もしくはコンピューティングシステム、または、一人または複数人の見る人に人工現実コンテンツを提供することが可能な任意の他のハードウェアプラットフォームを含む、さまざまなプラットフォーム上で実装されてよい。
【0122】
図19は、本明細書に開示される例のいくつかを実施するための例示のニアアイディスプレイ(例えば、HMDデバイス)の例示の電子システム1900の簡略ブロック図である。電子システム1900は、HMDデバイスの電子システムとしてまたは上述される他のニアアイディスプレイとして使用されてよい。この例では、電子システム1900は、1つまたは複数のプロセッサ1910およびメモリ1920を含んでよい。プロセッサ1910は、いくつかの構成要素において動作を行うための命令を実行するように構成されてよく、例えば、ポータブル電子デバイス内の実装に適した汎用プロセッサまたはマイクロプロセッサとすることができる。プロセッサ1910は、電子システム1900内の複数の構成要素と通信可能に結合されてよい。この通信結合を実現するために、プロセッサ1910はバス1940にわたって他の例証される構成要素と通信してよい。バス1940は電子システム1900内のデータを転送するように適応される任意のサブシステムであってよい。バス1940は、データを転送するために、複数のコンピュータバスと、追加の回路構成とを含んでよい。
【0123】
メモリ1920はプロセッサ1910に結合されてよい。いくつかの実施形態では、メモリ1920は、短期記憶と長期記憶の両方を与えてよく、いくつかのユニットに分割されてよい。メモリ1920は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)および/またはダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)といった揮発性、および/または、読み出し専用メモリ(ROM)およびフラッシュメモリなどといった不揮発性であってよい。さらに、メモリ1920は、セキュアデジタル(SD)カードなどの取り外し可能記憶デバイスを含んでよい。メモリ1920は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、および電子システム1900に対する他のデータの記憶を提供してよい。いくつかの実施形態では、メモリ1920は種々のハードウェアモジュール内に分散されてよい。命令セットおよび/またはコードはメモリ1920上に記憶され得る。命令は、電子システム1900によって実行可能であってよい実行可能コードの形を成す場合がある、および/または(例えば、さまざまな一般に入手可能なコンパイラ、インストールプログラム、圧縮/展開ユーティリティなどのいずれかを使用して)電子システム1900上にコンパイルおよび/またはインストールされると、実行可能コードの形を成してよい、ソースコードおよび/またはインストール可能コードの形を成す場合がある。
【0124】
いくつかの実施形態では、メモリ1920は、任意の数のアプリケーションを含んでよい、複数のアプリケーションモジュール1922~1924を記憶してよい。アプリケーションの例は、ゲームアプリケーション、会議アプリケーション、ビデオ再生アプリケーション、または他の適したアプリケーションを含んでよい。アプリケーションは、深さ検知機能または視標追跡機能を含んでよい。アプリケーションモジュール1922~1924は、プロセッサ1910によって実行される特定の命令を含んでよい。いくつかの実施形態では、ある特定のアプリケーションまたはアプリケーションモジュール1922~1924の一部は、他のハードウェアモジュール1980によって実行可能であってよい。ある特定の実施形態では、メモリ1920は、セキュア情報に対する複写または他の不正アクセスを防止するための追加のセキュリティ制御を含んでよいセキュアメモリをさらに含んでよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、メモリ1920は、ロードされるオペレーティングシステム1925を含んでよい。オペレーティングシステム1925は、アプリケーションモジュール1922~1924によって提供される命令の実行を開始する、および/または他のハードウェアモジュール1980のみならず、1つまたは複数の無線トランシーバを含んでよい無線通信サブシステム1930とのインターフェースを管理するように動作可能であってよい。オペレーティングシステム1925は、スレッディング、リソース管理、データ記憶制御、および他の同様の機能性を含む電子システム1900の構成要素にわたって他の動作を行うように適応されてよい。
【0126】
無線通信サブシステム1930は、例えば、赤外線通信デバイス、無線通信デバイスおよび/もしくはチップセット(Bluetooth(登録商標)デバイス、IEEE802.11デバイス、Wi-Fiデバイス、WiMaxデバイス、セルラー通信設備など)、ならびに/または同様の通信インターフェースを含んでよい。電子システム1900は、無線通信サブシステム1930の一部として、または該システムの任意の部分に結合される別個の構成要素としての無線通信のための1つまたは複数のアンテナ1934を含んでよい。所望の機能性に応じて、無線通信サブシステム1930は、無線広域ネットワーク(WWAN)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、または無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)などの種々のデータネットワークおよび/またはネットワークタイプと通信することを含んでよい、無線基地局装置、および他の無線デバイス、およびアクセスポイントと通信するための別個のトランシーバを含んでよい。WWANは、例えば、WiMax(IEEE802.16)ネットワークであってよい。WLANは、例えば、IEEE802.11xネットワークであってよい。WPANは、例えば、Bluetoothネットワーク、IEEE802.15x、または何らかの他のタイプのネットワークであってよい。本明細書に説明される技法は、WWAN、WLAN、および/またはWPANの任意の組み合わせに使用されてもよい。無線通信サブシステム1930は、データが、ネットワーク、他のコンピュータシステム、および/または本明細書に説明される任意の他のデバイスと交換されることを可能にしてよい。無線通信サブシステム1930は、アンテナ1934および無線リンク1932を使用して、HMDデバイスの識別子、位置データ、地図、ヒートマップ、写真、またはビデオなどのデータを送信または受信するための手段を含んでよい。無線通信サブシステム1930、プロセッサ1910、およびメモリ1920は共に、本明細書に開示されるいくつかの機能を行うための手段の1つまたは複数の少なくとも一部を含んでよい。
【0127】
電子システム1900の実施形態はまた、1つまたは複数のセンサ1990を含んでよい。センサ1990は、例えば、画像センサ、加速度計、圧力センサ、温度センサ、近接センサ、磁力計、ジャイロスコープ、慣性センサ(例えば、加速度計およびジャイロスコープを組み合わせるモジュール)、環境光センサ、または深さセンサまたは位置センサなど、感覚出力を提供するおよび/または感覚入力を受信するように動作可能な任意の他の同様のモジュールを含んでよい。例えば、いくつかの実装形態では、センサ1990は、1つまたは複数の慣性計測装置(IMU)および/または1つまたは複数の位置センサを含んでよい。IMUは、位置センサの1つまたは複数から受信される測定信号に基づいて、HMDデバイスの初期位置に対するHMDデバイスの推定位置を指示する較正データを生成してよい。位置センサは、HMDデバイスの動きに応答して1つまたは複数の測定信号を生成してよい。位置センサの例には、1つまたは複数の加速度計、1つまたは複数のジャイロスコープ、1つまたは複数の磁力計、動きを検出する別の適したタイプのセンサ、IMUのエラー訂正に使用されるあるタイプのセンサ、またはこれらの何らかの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。位置センサは、IMUの外部に、IMUの内部に、またはこれらの何らかの組み合わせで位置してよい。少なくともいくつかのセンサは検知するための構造化された光パターンを使用してよい。
【0128】
電子システム1900は、ディスプレイモジュール1960を含んでよい。ディスプレイモジュール1960は、ニアアイディスプレイであってよく、電子システム1900からの画像、ビデオ、およびさまざまな命令などの情報を、ユーザに図で提示してよい。このような情報は、1つまたは複数のアプリケーションモジュール1922~1924、仮想現実エンジン1926、1つまたは複数の他のハードウェアモジュール1980、これらの組み合わせ、または、(例えば、オペレーティングシステム1925によって)ユーザに対してグラフィックコンテンツを解釈するための任意の他の適した手段から導出されてよい。ディスプレイモジュール1960は、液晶ディスプレイ(LCD)技術、(例えば、OLED、ILED、mLED、AMOLED、TOLEDなどを含む)発光ダイオード(LED)技術、発光ポリマーディスプレイ(LPD)技術、または何らかの他のディスプレイ技術を使用することができる。
【0129】
電子システム1900はユーザ入力/出力モジュール1970を含んでよい。ユーザ入力/出力モジュール1970は、ユーザが、電子システム1900にアクション要求を送ることを可能にしてよい。アクション要求は、特定のアクションを行うための要求であってよい。例えば、アクション要求は、アプリケーションを開始または終了すること、またはアプリケーション内の特定のアクションを行うことであってよい。ユーザ入力/出力モジュール1970は、1つまたは複数の入力デバイスを含んでよい。例示の入力デバイスは、タッチスクリーン、タッチパッド、マイクロホン、ボタン、ダイアル、スイッチ、キーボード、マウス、ゲームコントローラ、または、アクション要求を受信し、かつ受信したアクション要求を電子システム1900に通信するための任意の他の適したデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、ユーザ入力/出力モジュール1970は、電子システム1900から受信された命令に従ってユーザに触覚フィードバックを提供することができる。例えば、触覚フィードバックは、アクション要求が受信されるまたは実行された時に提供されてよい。
【0130】
電子システム1900は、例えば、ユーザの目の位置を追跡するために、ユーザの写真またはビデオを撮るために使用可能であるカメラ1950を含んでよい。カメラ1950はまた、例えば、VR、AR、またはMRアプリケーションに対して、環境の写真またはビデオを撮るために使用されてよい。カメラ1950は、例えば、数百万または数千万の画素を有する相補的金属酸化物半導体(CMOS)画像センサを含んでよい。いくつかの実装形態では、カメラ1950は3-D画像を取り込むために使用されてよい2つ以上のカメラを含んでよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、電子システム1900は、複数の他のハードウェアモジュール1980を含んでよい。他のハードウェアモジュール1980のそれぞれは、電子システム1900内の物理モジュールであってよい。他のハードウェアモジュール1980のそれぞれは構造として恒久的に構成可能であるが、他のハードウェアモジュール1980のいくつかは、具体的な機能を行うように一時的に構成されてよいまたは一時的にアクティブ化されてよい。他のハードウェアモジュール1980の例には、例えば、オーディオ出力および/または入力モジュール(例えば、マイクロホンまたはスピーカ)、近距離無線通信(NFC)モジュール、再充電バッテリ、バッテリ管理システム、有線/無線バッテリ充電システムなどが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、他のハードウェアモジュール1980の1つまたは複数の機能はソフトウェアで実装されてよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、電子システム1900のメモリ1920はまた、仮想現実エンジン1926を記憶してよい。仮想現実エンジン1926は、電子システム1900内のアプリケーションを実行し、かつ、さまざまなセンサからのHMDデバイスの、位置情報、加速情報、速度情報、予測される今後の位置、または、これらの何らかの組み合わせを受信してよい。いくつかの実施形態では、仮想現実エンジン1926によって受信される情報は、ディスプレイモジュール1960に対して信号(例えば、表示命令)を生じさせるために使用されてよい。例えば、受信した情報が、ユーザが左を見ていることを指示する場合、仮想現実エンジン1926は、HMDデバイスが、仮想環境におけるユーザの移動をミラーリングするようにコンテンツを生成してよい。さらに、仮想現実エンジン1926は、ユーザ入力/出力モジュール1970から受信されたアクション要求に応答してアプリケーション内のアクションを行い、かつフィードバックをユーザに提供してよい。提供されたフィードバックは、可視、可聴、または触覚フィードバックであってよい。いくつかの実装形態では、プロセッサ1910は、仮想現実エンジン1926を実行することができる1つまたは複数のGPUを含んでよい。
【0133】
さまざまな実装形態では、上述されるハードウェアおよびモジュールは、有線接続または無線接続を使用して互いに通信可能である単一のデバイス上でまたは複数のデバイス上で実装されてよい。例えば、いくつかの実装形態では、GPU、仮想現実エンジン1926、およびアプリケーション(例えば、追跡アプリケーション)などのいくつかの構成要素またはモジュールは、ヘッドマウントディスプレイデバイスと別個のコンソール上に実装されてよい。いくつかの実装形態では、1つのコンソールは複数のHMDに接続されてよいまたはこれをサポートしてよい。
【0134】
代替的な構成では、種々のおよび/または追加の構成要素は電子システム1900に含まれてよい。同様に、構成要素の1つまたは複数の機能性は、上述されるやり方と異なるやり方で構成要素の間で分散可能である。例えば、いくつかの実施形態では、電子システム1900は、ARシステム環境および/またはMR環境などの他のシステム環境を含むように改良されてよい。
【0135】
上に開示される方法、システム、およびデバイスは例である。さまざまな実施形態は、必要に応じてさまざまな手順または構成要素を、省略、代用、または追加可能である。例えば、代替的な構成では、説明した方法は、説明したものと異なる順序で行われてよい、および/またはさまざまな段階は、追加、省略、および/または組み合わせ可能である。また、ある特定の実施形態に関して説明される特徴は、さまざまな他の実施形態で組み合わせられてよい。実施形態の種々の態様および要素は同様のやり方で組み合わせられてよい。また、技術は発展しているため、要素の多くは、本開示の範囲をこれらの具体的な例に限定しない例である。
【0136】
実施形態を十分に理解してもらうために本明細書に具体的詳細を挙げている。しかしながら、実施形態はこれら具体的詳細なく実践可能である。例えば、周知の回路、プロセス、システム、構造、および技法は、実施形態を不明瞭にすることを回避するために不必要な詳細なしで示されている。本明細書は例示の実施形態のみを提供しており、本発明の範囲、応用性、または構成を限定することを意図するものではない。もっと正確に言えば、実施形態の前述の説明は、当業者に、さまざまな実施形態を実施するための実施可能な説明を提供するであろう。特許請求の範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置においてさまざまな変更がなされてよい。
【0137】
また、いくつかの実施形態はフロー図またはブロック図として描写されるプロセスとして説明された。それぞれは、動作を逐次プロセスとして説明するものであり得るが、動作の多くは並列にまたは同時に行われてよい。さらに、動作の順序は再編成されてよい。プロセスは図に含まれない追加のステップを有する場合がある。また、方法の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、またはこれらの任意の組み合わせによって実装されてよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、またはマイクロコードで実装される時、関連しているタスクを行うためのプログラムコードまたはコードセグメントは、記憶媒体などのコンピュータ可読媒体に記憶されてよい。プロセッサは関連しているタスクを行ってよい。
【0138】
具体的な要件に従って大きく変化させてもよいことは、当業者には明らかであろう。例えば、カスタマイズされたまたは専用のハードウェアも使用されてよい、および/または特定の要素は、ハードウェア、(アプレットなどのポータブルソフトウェアを含む)ソフトウェア、またはこの両方で実装される場合がある。さらに、ネットワーク入力/出力デバイスなどの他のコンピューティングデバイスへの接続が用いられてよい。
【0139】
添付の図を参照すると、メモリを含むことができる構成要素は、非一時的な機械可読媒体を含むことができる。「機械可読媒体」および「コンピュータ可読媒体」という用語は、機械を具体的なやり方で動作させるデータを提供する際に関与する任意の記憶媒体を指す場合がある。以上に提供される実施形態において、さまざまな機械可読媒体は、命令/コードを処理ユニットおよび/または実行するための他のデバイスに提供する際に関与し得る。さらにまたは代替的に、機械可読媒体は、このような命令/コードを記憶するおよび/または伝えるために使用され得る。多くの実装形態では、コンピュータ可読媒体は物理記憶媒体および/または有形記憶媒体である。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形を成してよい。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、コンパクトディスク(CD)もしくはデジタル多用途ディスク(DVD)などの磁気媒体および/または光媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、以降で説明されるような搬送波、または、コンピュータが命令および/またはコードを読み出すことができる任意の他の媒体を含む。コンピュータプログラム製品は、手順、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、アプリケーション(アプリ)、サブルーチン、モジュール、ソフトウェアパッケージ、クラス、または、命令、データ構造、またはプログラム文の任意の組み合わせを表すことができるコードおよび/または機械実行可能命令を含んでよい。
【0140】
本明細書に説明されるメッセージを通信するために使用される情報および信号がさまざまな種々の技術および技法のいずれかを使用して表され得ることを、当業者は理解するであろう。例えば、上記の説明全体を通して言及され得る、データ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは磁性粒子、光場もしくは光学粒子、またはこれらの任意の組み合わせによって表され得る。
【0141】
本明細書で使用されるような用語、「および(and)」および「または(or)」は、このような用語が使用される文脈に少なくとも部分的に左右されることも予想されるさまざまな意味を含み得る。典型的には、A、B、また、Cのようなリストを関連付けるために使用される場合の「または(or)」は、本明細書において排他的な意味で使用されるA、B、またはCと共に、本明細書において包含的な意味で使用されるA、B、およびCを意味することが意図されている。さらに、本明細書で使用されるような「1つまたは複数の」という用語は、単数形の任意の特徴、構造、または特性を説明するために使用され得る、または、特徴、構造、または特性の何らかの組み合わせを説明するために使用され得る。しかしながら、これは単に例示的な例であり、特許請求される主題はこの例に限定されないことは留意されるべきである。さらに、A、B、または、Cのようなリストを関連付けるために使用される場合の「少なくとも1つの」という用語は、A、AB、AC、BC、AA、ABC、AAB、AABBCCCなどのようなA、B、および/またはCの任意の組み合わせを意味するように解釈可能である。
【0142】
さらに、ある特定の実施形態がハードウェアおよびソフトウェアの特定の組み合わせを使用して説明されているが、ハードウェアおよびソフトウェアの他の組み合わせも可能であることは認識されるべきである。ある特定の実施形態は、ハードウェアのみで、またはソフトウェアのみで、またはこれらの組み合わせを使用して実装されてよい。1つの例では、ソフトウェアは、本開示に説明されるステップ、動作、またはプロセスのいずれかまたは全てを行うために1つまたは複数のプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラムコードまたは命令を含有するコンピュータプログラム製品で実装されてよく、ここで、コンピュータプログラムは非一時的なコンピュータ可読媒体上に記憶されてよい。本明細書に説明されるさまざまなプロセスは、同じプロセッサ上に、または種々のプロセッサの任意の組み合わせで実装可能である。
【0143】
デバイス、システム、構成要素、またはモジュールがある特定の動作または機能を行うように構成されるとして説明される場合、このような構成は、例えば、動作を行うように電子回路を設計することによって、コンピュータ命令またはコードを実行するなどによって動作を行うための(マイクロプロセッサなどの)プログラム可能電子回路、または非一時的なメモリ媒体上に記憶されるコードまたは命令を実行するようにプログラミングされるプロセッサもしくはコアをプログラミングすることによって、またはこれらの任意の組み合わせによって、成し遂げられ得る。プロセスは、プロセス間通信のための従来の技法を含むがこれに限定されないさまざまな技法を使用して通信でき、異なるプロセス対が異なる技法を使用してよい、または、同じプロセス対がその時々で異なる技術を使用してよい。
【0144】
本明細書および図面は、それに応じて、限定的意味ではなく例示的意味でみなされるべきである。しかしながら、特許請求の範囲に示されるようなより広範な範囲から逸脱することなく、追加、代用、削除、ならびに他の改良および変更がなされてよいことは明らかであろう。よって、具体的な実施形態が説明されているが、これらは限定することを意図するものではない。さまざまな改良および等価物は以下の特許請求の範囲内にあるとする。
【国際調査報告】