(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】インビトロ培養物のバイオマス由来の標準化植物抽出物、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C12P 7/22 20060101AFI20230608BHJP
C12P 7/20 20060101ALI20230608BHJP
C12N 5/04 20060101ALI20230608BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20230608BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230608BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20230608BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230608BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230608BHJP
A61K 8/9783 20170101ALI20230608BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230608BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230608BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
C12P7/22
C12P7/20
C12N5/04
C12N1/00 B
A23L33/105
A61K31/7028
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/9783
A61P17/18
A61K36/185
A61P39/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022554456
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 BG2020000016
(87)【国際公開番号】W WO2021184086
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522355802
【氏名又は名称】イノバ ビーエム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギエフ,バシル ゲオルギエフ
(72)【発明者】
【氏名】パブロフ,アタナス イワノフ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD42
4B018MD61
4B018MD94
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4C083AA111
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(57)【要約】
本発明は、生物活性化合物およびそれらの一次二次代謝産物を含有し、重量%で以下の通り:4.0~6.0の有機酸、0.5~1.5の脂肪酸、8.0~12.0のアミノ酸、0.5~1.0のステロール、3.0~6.0の遊離フェノール、45~55の糖、および25.0~35.0のポリフェノールを含有し、前記ポリフェノール画分中に70%~96%の主なミコノシドが含まれ、全抽出物の18%~35%を構成する、Haberlea rhodopensis Friv.(HR)のインビトロ培養物のバイオマス由来の標準化植物抽出物、および前記標準化抽出物とグリセロールとを含有する組成物、および標準化植物抽出物を調製する方法を参照する。本発明の方法は、温度、継続期間、撹拌、光、生長因子などの、最適に選択された工程、特定の条件、パラメータと共に、標的物質の最大体積生産性およびミコノシドの最大体積生産性の両方、ならびに植物インビトロ培養物の安定した生産性を達成し、且つNPの生産のための信頼できる効率的な24/7連続系である。HR希少野生植物集団の、自然要因への依存、制限された入手可能性、および保護が解消される。季節性且つ遅いHR生長によってもたらされる制限も、再生可能で環境に優しい方法を開発することによって回避される。開発された方法は、標的抽出物を得るために必要な植物原料の、代替的、再生可能、且つ持続可能な供給源を提供する。得られたミコノシド標準化抽出物は特に、ヒトの健康に対するその保護作用に価値があり、その薬理的および美容的効果で、ならびに機能食品において、首尾よく利用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性化合物およびそれらの一次および二次代謝産物を含有する、インビトロ培養バイオマス由来の標準化植物抽出物であって、
当該抽出物は、Haberlea rhodopensis Friv(HR)のインビトロ培養によって産生され、重量%で、以下の通り:4.0~6.0の有機酸、0.5~1.5の脂肪酸、8.0~12.0のアミノ酸、0.5~1.0のステロール、3.0~6.0の遊離フェノール、45~55の糖、および25.0~35.0のポリフェノールを含有し、
前記ポリフェノール画分中に70%~96%の主なミコノシドが含まれ、全抽出物の18%~35%を構成することを特徴とする、標準化植物抽出物。
【請求項2】
請求項1に記載の標準化抽出物を含有する組成物であって、
グリセロールも含有し、ミコノシド含量が0.01%~15.00%であることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
インビトロ培養によって請求項1に記載の標準化植物抽出物を調製する方法であって、
HR外植片を、滅菌蒸留水で1~240分間繰り返し洗浄し、40~85%エタノールで10~190秒間処理し、次に、界面活性剤を加えてまたは加えずに、2~10%消毒剤で10~60分間処理し、滅菌蒸留水で繰り返し洗浄し、1~20分間乾燥させ、
得られた滅菌外植片を、生長調整剤を加えたまたは加えない、半固体または液体の滅菌栄養培地上で、18~32℃で、暗所または8~16時間の明暗の光周期で、pH5~6.2で、2~5週間培養して、85~100%の分化したまたは未分化の培養物を取得し、
次に、インビトロ培養物を、生長調整剤を加えたまたは加えない、および還元剤および/または抗酸化剤を加えたまたは加えない、半固体の滅菌栄養培地上で、18~32℃で、同じ光周期で、15~45日間、独立して生長させて、発生したインビトロ株の総数の5~30%の選択されたミコノシドを過剰産生しかつ形態学的に安定なインビトロ培養株を取得し、生長調整剤を加えたまたは加えない新鮮な半固体培地上で、20~35日間維持し、
得られた前記高収量インビトロ培養物を、さらなる適応のために、炭素源、生長調整剤および/または抗酸化剤を加えた滅菌液体栄養培地中で培養して、液内培養に適応した70~100%の細胞株、すなわち、接種材料を取得し、当該接種材料は、バイオマス中に乾燥バイオマス1gあたり80mg以上の対照ミコノシド含量が得られるまで、フラスコ、バイオリアクター、または1~30分間の浸漬期間と1~12時間の露出期間とを有する一時的な浸漬システムにおいて、18~32℃で、同じ光周期で、1~6週間、さらに培養するために、前記液体培地中に再接種され、
次に、3~15日間の期間にわたって、エリシター、新鮮な栄養培地の補給、前駆体の添加、培養系に第2の相を含めること、またはそれらの組合せから選択される、植物の二次代謝産物の生合成を増強する因子を添加して、ミコノシド濃縮バイオマスを取得し、
次に、得られたバイオマスを培養液から分離し、20~80℃で乾燥させるかまたは凍結乾燥させ、乾燥バイオマスの収率を10~15g/L以上とし、適切な場合には、得られた前記培養液を30~70℃で蒸発させるかまたは凍結乾燥させ、乾燥質量の収率を15~30g/L以上とし、その後、少なくとも100mg/gのミコノシドを含む得られた乾燥混合物をホモジナイザー中で均質化し、18~45℃で16~72時間、超音波処理しながらまたは超音波処理せずに、30~80%エタノールで浸軟し、
前記得られた混合物を濾過し、沈殿物を分離し、得られた濾液を回収および30~70℃で減圧濃縮して、抽出物1gあたり少なくとも150mgのミコノシドを含有し、10~30%の水分を有する粘性濃縮物(抽出物)を取得し、
最終的に、前記得られた濃縮抽出物を、グリセロールを添加して溶解させ、完全に溶解するまで均質化して、Haberlea rhodopensis Frivのインビトロ培養物由来の最終ミコノシド標準化植物抽出物を得ることを特徴とする、方法。
【請求項4】
洗浄および滅菌される前記HR外植片が、葉、茎、胚軸、根、種子、葯、果実子房、萼片、実生から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の植物抽出物を調製する方法。
【請求項5】
開始時に得られる滅菌外植片の分化したまたは未分化の培養物が、実生、分裂組織培養物、根培養物(正常根、不定根および毛状根)、体細胞胚、カルス培養物、細胞懸濁培養物から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の抽出物を調製する方法。
【請求項6】
請求項3に記載の培養によって得られるバイオマスであって、
当該バイオマスは、乾燥バイオマス1gあたり少なくとも100mgのミコノシドを含有することを特徴とする、バイオマス。
【請求項7】
150mg/g以上のミコノシド含量を有する標準化植物抽出物の調製のための、請求項6に記載のバイオマスの使用。
【請求項8】
食品、化粧品または製薬産業における用途を意図した製品の調製のための、請求項1~7に記載の標準化植物抽出物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は標準化植物抽出物、具体的には、インビトロ培養物のバイオマス由来の抽出物およびそのような抽出物の調製方法に関し、ここで、植物抽出物は有益な生物活性化合物(BAC)および二次代謝産物を含有し、製薬、化粧品または食品の産業のための薬剤の調製のために使用することができる。
【0002】
〔発明の背景〕
天然の植物は多様なBASを含有しており、それらの起源、生長条件、収穫時期、抽出技術などは、製品の品質に影響を及ぼす。
【0003】
栽培された薬用植物は、野生植物よりも多くの利点を有する。それらの生長を観測することができ、最も好ましい時期にそれらを収穫することができ、その上、不適切な植物種への接近を回避することができる。
【0004】
Haberleaは単型属であり、H.rhodopensis Friv.(Rhodopean Silivryak)、または略して(HR)は、その唯一のメンバーである。この植物は、第三紀の遺物であり、ブルガリア中部と南部とに固有のものであり、バルカン山脈およびロドピ山脈、ならびにギリシャ北東部のロドピ山脈、パンガイオン山およびファラクロ山に見られる。何世紀にもわたって、H.rhodopensisは、伝統的に、民族薬学および地方の伝統医学において使用されてきた(1)。
【0005】
植物抽出物がHR葉から単離されていることが知られている。植物抽出物から単離されたバイオ化合物は、必須天然成分の供給源である。果物および野菜とは別に、ポリフェノール、グリコシド、糖なども植物において見出され、それらの生理学的機能のために、ヒトの健康において重要な役割を果たす。
【0006】
HRのエタノール抽出物は、植物全体を噴霧乾燥した後、室温で撹拌しながら3時間エタノール抽出し、濾過し、不溶物を分離した後、減圧濃縮および凍結乾燥して抽出物を得ることによって得られることが知られている。同じ情報源は水溶性HR抽出物の情報も提供し、ここでは、植物全体が噴霧乾燥され、オートクレーブ中で120℃の熱水で20分間抽出され、その後、高温での濾過を通して不溶物が分離され、凍結乾燥される。得られた抽出物は、抗老化、抗酸化、皮膚美白、および免疫賦活の作用を有する(5)。
【0007】
水アルコール抽出(エタノール/水、不特定の調製方法)によって得られ、Sephadex LH-20上でのゲル濾過クロマトグラフィーによって精製されたHRの抽出物についての報告があり、これはHaberlea抽出物の生物活性に関与するミコノシドであるフェニルエタノイドグリコシドが特に豊富な単離画分を含む。同じ情報源において、抽出物の有効性が観察され、ミコノシドは、皮膚の抗酸化保護を刺激し、細胞外構造の合成を刺激することによってその弾性を改善し、細胞保護およびUV保護効果を有し、皮膚を酸化から保護し、その弾性を増加させ、その放射輝度を高める皮膚の抗老化剤として働き、潜在的な美容用途を有すことが報告された(3)。
【0008】
また、HR葉の70%エタノール抽出物の植物化学組成物は、ミコノシドを含む二次代謝産物(フェノール酸、フラボノイド、脂肪酸、フィトステロール、カロテノイド、可溶性脂質、オリゴ糖および多糖類、遊離糖、ポリオール、有機酸など)を含む主要な生物活性化合物の大きなグループを含み、証明された抗酸化作用および肝保護作用を有していることが知られている(1)。
【0009】
液液抽出、分取高速液体クロマトグラフィーおよびセミ分取高速液体クロマトグラフィーの組み合わせを用いて調製した、2つのフェノールグリコシド:ミコノシドおよびパウシフロシドを含むHR葉のメタノール抽出物の植物化学的側面に関するデータもまた利用可能である。ミコノシドに富む画分(カフェオイルフェニルエタノイドグリコシド)は、植物の生存において潜在的な役割を有し、そのフェニル環中にカフェオイル基および2つの遊離ヒドロキシル基が存在するため、抗酸化活性を有する。植物の生長の通常の生育中および乾燥期間中の種々のHR抽出物中に見出される主要なBAC群および二次代謝産物は、有機酸、脂肪酸、アミノ酸、フェノール酸、および糖である(4)。
【0010】
今日、天然に生育する種から直接得られたHR抽出物は、それらの証明された抗菌性、抗ウイルス性、抗酸化性、免疫調節性、細胞毒性、抗癌性、化学予防性、遺伝子保護性、および放射線防御性の特性のため、化粧品、ホメオパシーおよび薬学において成功裏に適用されている。
【0011】
一方、特に貴重で稀な固有種であるため、HRは自然からの採取が禁止されている植物種に含まれている。例えば、近年、この希少植物種の自然個体群を保護することを目的として、HRの再生および大量増殖のためのインビトロシステムが確立されている。様々な場所由来のHR植物のインビトロバンクが設置された。同じ情報源はまた、植物種の種子を70% EtOHで1分間滅菌し、次亜塩素酸で6~10分間処理し、0.1% HgCl2で3~5分間処理し、蒸留水で3回すすぎ、得られた滅菌HR種子を古典的ホルモンフリーMS培地(MS B5、WPMと同様)上に置き、3~4ヶ月間発芽させ、実生を得る、再生および大量増殖の効果的な方法を記述している。植物クラスタを1~1.5ヶ月間継代培養することにより、完全に発達した植物のインビトロシステムが得られ、制御された温室環境において非滅菌条件下で6~7ヶ月の過程で形質転換する準備ができた(2)。
【0012】
同時に、植物バイオテクノロジー、具体的には、植物細胞のインビトロ培養は、植物由来のBACの持続可能で連続的な生産のための有望なツールとなっている。固体および液体の栄養培地における植物細胞培養および植物細胞増殖の原理、ならびに植物細胞の樹立および培養に関連する一般的なプロセスは、HRとは異なる他の植物種について記載されている。
【0013】
(6)によれば、Rosa sp.の植物細胞培養物から別々の抽出物が得られており、化粧用の皮膚および毛髪ケアのための貴重な天然産物(NP)を含有し、老化の兆候を防止している。植物細胞バイオマスは、Ajuga repens由来のフェニルプロパノイド、およびOlea europea、Syringa vulgaris、またはAppia citobara由来のベルバスコシドの生産、ならびにSyringa vulgaris細胞培養物由来のベルバスコシド標準化抽出物の生産のために使用され、(7)によると、証明された抗酸化活性を有し、にきびの治療および脱毛の予防に有効である。
【0014】
(8)によれば、皮膚老化および皮膚炎症の治療を目的とする、Argania spinosaのインビトロ培養抽出物の形態の調製品も作製されている。
【0015】
(9)によれば、Dracocephalum ruyschianaのインビトロ未分化植物細胞から得られた標準化抽出物は、証明された抗ラジカル活性および皮膚の保護および再生のための化粧品用途を有するBACを含有し、半固体または液体の培地中で増殖させた、Dracocephalum ruyschianaのインビトロ増殖させた未分化細胞は、暗所または14~16時間の光周期で、細胞バイオマスの分離、続いて、エタノールまたは20:20:60~50:50:0(v/v)の比におけるエタノール、グリセロールおよび水によるバイオマス抽出、バイオマスの乾燥、ならびに同じ抽出液によるさらなる抽出によって得られる。
【0016】
これまで、BACおよび二次代謝産物を含む、HRインビトロ培養物のバイオマス由来の抽出物についての報告はない。
【0017】
植物細胞の培養のための一般的な原理は、生産目的のための大規模な細胞増殖には適用できないという事実にもかかわらず、特定の技術的なプロセスを開発する必要がある。インビトロ培養条件下で植物インビトロ培養物(分化したまたは非分化)を維持するために、生長調整剤(オーキシン、サイトカイニンおよびジベレリン)の最適で厳密に特異的な比を決定し、各細胞株(各植物種)についてそれを確立することが重要である。細胞培養条件の変更、ならびにエリシター、前駆体および吸収マトリクスの使用は、特定の生物活性化合物/代謝産物の生産に極めて重要であり、使用される植物種および所望の標的化合物に特異的である。
【0018】
しかし、インビトロ培養における貴重なBACおよび代謝成分の合成は、多くの未知のパラメータを有する複雑なプロセスである。細胞バイオマス中の天然成分および二次代謝産物の蓄積は、生合成、生体内変換および生分解の間の動的バランスに起因する。無傷の植物に固有の成分ごとに、適切かつ最適な条件(すなわち、栄養培地および刺激因子)を選択することが重要である。
【0019】
多くの場合、伝統的な抽出物から得られる天然産物は不十分な均質性を有し、標的治療成分の量は、インビトロ培養物から得られるものと比較した場合、季節的および地理的に変化する傾向がある。また、インビトロバイオマス抽出物を得る目的で、および化粧品、製薬または食品の産業のための製品へのその組み込みのために、標準化された原料を用いて作業することも必須である。
【0020】
本発明の課題は、最大限効率的な設計を有する生物工学的方法によって得られた、付随するBAC/成分の不変の物理化学的特性および構成要素を有する、フェニルエタノイドグリコシド(すなわち、ミコノシド)の保証された含量を有する、標準化抽出物、具体的には、HRインビトロ培養物(実生、シュート培養物、根培養物(正常根、不定根および毛状根)、体細胞胚、カルス培養物、細胞懸濁培養物)由来の抽出物を得ることである。
【0021】
〔発明の概要〕
本発明による課題は、標準化植物抽出物、具体的には、二次および一次植物代謝産物(すなわち、脂肪酸、ステロール、有機酸、アミノ酸、遊離フェノール酸、および糖)を含む、BACを含む、HRのインビトロ培養物(実生、シュート培養物、根培養物(正常根、不定根および毛状根)、体細胞胚、カルス培養物、細胞懸濁培養物)のバイオマス由来の抽出物によって解決される。抽出物中のBACの量は、重量%で:脂肪酸0.5~1.5、ステロール0.5~1.0、有機酸4.0~6.0、アミノ酸8.0~12.0、遊離フェノール3.0~6.0、糖45.0~55.0、およびポリフェノール化合物25.0~35.0%であり、前記ポリフェノール画分の70~96%を占めるフェニルエタノイドグリコシド(すなわち、ミコノシド)を含有する。HRインビトロ培養物のバイオマスから得られる抽出物はミコノシドが豊富であり、かつ標準化されており、その量は、全抽出物の18%~35%の範囲である。グリセロールへの標準化抽出物の溶解は、関連産業(すなわち、製薬、食品または化粧品)の必要性に応じて、その組成物中に0.01~15.00%の制御された含量のミコノシドを有する生成物を生じる。
【0022】
本発明に記載のインビトロ培養物由来の標準化抽出物は、以下の必須工程を含む方法によって調製される:
1)HR由来のインビトロ培養の開始:
- 植物の個々の部分または器官からの、具体的には、葉、茎、胚軸、根、種子、葯、子房、萼片、実生からの、外植片の選択、
- 滅菌蒸留水で1~240分間繰り返し洗浄し、40~85%エタノールで10~190秒間処理し、次に、界面活性剤を加えてまたは加えずに、2~10%消毒剤で10~60分間処理し、滅菌蒸留水で洗浄し、1~20分間乾燥させることによる、選択された前記外植片の表面滅菌;
- 生長調整剤を加えたまたは加えない、半固体または液状の培地上での滅菌外植片の開始、ならびに85~100%の分化したまたは未分化のインビトロ培養物(実生、シュート培養物、根培養物、体細胞胚、カルス培養物、細胞懸濁培養物)を得るための、18~32℃で、暗所または明暗それぞれが8~16時間の光周期で、および5.0~6.2の培地のpHでの2~5週間の培養。生長調整剤を加えたまたは加えない、および還元剤および/または抗酸化剤を加えたまたは加えない、半固体栄養培地上への、得られた開始されたインビトロ培養物の独立生長のための移植。18~32℃で、同じ光周期下で、15~45日間、培養が行われて、生成されたインビトロ培養物の総数から、5~30%の形態学的に安定であり、かつミコノシドの蓄積に関して高収量であるインビトロ株を選択する。前記選択されたインビトロ株は、生長調整剤を加えたまたは加えない新鮮な半固体培地上で、20~35日毎の定期的な継代培養によって維持される。
【0023】
2)バイオマス生産:
- 70~100%の液内培養の状態に適合したインビトロ株またはいわゆる接種材料を取得するための、炭素源、生長調整剤、抗酸化剤を追加した滅菌液体栄養培地中での選択された高収量株の培養のための移植;
- 得られた接種材料の液体培地への接種、およびフラスコ、バイオリアクターまたは一時的な浸漬システム(浸漬期間1~30分および露出期間1~12時間を有する)中での18~32℃、同じ光周期下で、バイオマス中のミコノシドの対照含量が乾燥バイオマス1gあたり80mg以上になるまでの1~6週間の期間にわたる培養、次いで、ミコノシド濃縮バイオマス(乾燥バイオマス1gあたり100mg以上)を得るための、エリシター、新鮮な栄養培地の供給、前駆体の添加、分泌された二次代謝産物の回収のための培養系における第2の相の導入、またはそれらの組合せの中から選択される因子の添加による、3~15日間の期間にわたる二次代謝産物の生産の刺激;
- 培養液からのミコノシド濃縮バイオマスの分離、および20~80℃での乾燥または凍結乾燥(乾燥バイオマスの収率は10~15g/L以上)、ならびに任意で得られた培養液の30~70℃での減圧蒸発による乾燥または凍結乾燥(乾燥物の収率は15~30g/L以上);
3)インビトロ培養によるHRバイオマス抽出物の調製:
- 得られた乾燥バイオマスを、任意に培養液と、ホモジナイザー中で、混合および均質化すること;
- 乾燥混合物を、30~80%エタノールで、16~72時間、18~45℃で、超音波処理しながらまたは超音波処理せずに浸軟;
- 得られた混合物をろ過し、沈殿物を分離し、ろ液を30~70℃の温度で減圧下で回収および乾燥させて、10~30%の水分および抽出物中のミコノシド含量(150g/kg以上)を含む粘性濃縮物(抽出物)を取得すること;および
- 得られた標準化抽出物を、グリセロールの添加によって溶解し、完全に均質化するまで撹拌すること。得られた溶液は、関連産業(すなわち、製薬、食品または化粧品)の必要性に応じて、0.01%~15.00%の制御されたミコノシド含量を有する。
【0024】
適切な栄養培地は、MS(Murashige and Skoog)、WP(McCown Woody Plant)、LS(Linsmaier and Skoog)、Gamborg B5、Heller、Nitsch、Schenk、およびWhite、または修飾されたマクロ塩組成物、ミクロ塩およびビタミンから選択される、標準的な半固体および液体の改変物である。この方法の必要性のために、スクロースおよび/またはグルコース(1%~9%)などの炭素源、活性炭0~5%、0~10mg/Lの濃度の、2-メルカプトエタノールおよび/またはジチオスレイトールなどの還元剤、0~10mg/Lの濃度の、アスコルビン酸および/またはクエン酸などの抗酸化剤、0.1%~10%の濃度の、ゲル化剤寒天またはゲルライトを添加することによって、培地をさらに改変した。
【0025】
主な生長調整剤は、0~20mg/Lの濃度の、オーキシン(ピクロラムおよびα-ナフタレン酢酸)、サイトカイニン(カイネチンおよび6-ベンジルアミノプリン)、および/またはジベレリンの中から選択される。ピクロラムおよび/またはα-ナフタレン酢酸は、ジベレリン酸4+7および/またはジベレリン酸A3と共に、サイトカイニン(すなわち、カイネチンおよび/または6-ベンジルアミノプリン)などのオーキシンとして使用され得る。他の考えられるオーキシンは、インドール-3-酢酸、インドール-3-酪酸、ジカンバ、p-クロロフェノキシ酢酸およびβ-ナフトキシ酢酸)、サイトカイニン:2-iP、4-CPPU、6-ベンジルアミノプリンリボシド、ジヒドロゼアチン、ゼアチン、メタ-トロポリンおよびチジアズロン)、およびジベレリン:ジベレリン酸である。
【0026】
使用されるエリシターは、以下の中から選択される:生物的因子、例えば、多糖類またはキトサン;または非生物的因子、例えば、ジャスモン酸メチル、ジャスモン酸、アブシジン酸、または物理的因子(浸透剤、UV光)を有するもの;これらは、極めて低い濃度で添加されると、植物細胞の二次代謝を刺激するためのシグナルとして働く。新鮮な栄養培地の供給、または前駆体(アミノ酸および糖)の添加、または分泌された二次代謝産物を捕捉するための第2の相(活性炭または吸収性樹脂)の培養系への導入などの他の戦略も適用することができる。
【0027】
HRの分化したおよび未分化のインビトロ培養物の培養は、以下のように行われる。
【0028】
- 制御された条件下での液内培養のための機械的(撹拌タンク)および空気圧式(バブルカラム)撹拌、ならびにインビトロ培養生長に最適な、厳密に維持された微小環境を有するバイオリアクターにおいて;
- インビトロ条件下での分化した培養物の生長に最適な、制御された条件および厳密に維持された微小環境を有する半自動化滅菌システム内の一時的な浸漬システムにおいて。植物材料と栄養培地との短期の制御された接触は、液相の一時的な空気撹拌、重力的または機械的運動を伴って、制御された期間にわたって提供される。PLANTFORM、PLANTIMA、RALM、RITA、SETIS、またはそれらの類似体などのシステムが用いられる;
- 80~150rpmのオービタルシェーカー上のフラスコ中で。
【0029】
インビトロHR培養バイオマスによって生成された得られた抽出物は、標的生物活性化合物を含有し、混合物の最大35%のポリフェノール化合物(70~96%のミコノシドからなる)、最大55%の糖、および最大12%のアミノ酸に富み、この抽出物を極めて価値のあるものにする。
【0030】
フェニルエタノイドグリコシド(すなわち、ミコノシド)の標準化含量は、ヒトの健康に対するその保護効果、その薬学的および美容的効果のためのその成功した使用、ならびに機能的栄養のために、抽出物を特に価値あるものにする。ミコノシドの抗酸化効果は、その抗老化、抗しわ、および抗色素沈着作用のため、ミコノシドを化粧品における使用に適したものにしている。
【0031】
本発明による抽出物を調製するために開発された方法は、温度、時間、撹拌、光、生長因子などの、最適に選択された工程、特定の条件、パラメータを用いて、標的物質およびミコノシドの最大体積生産性を得るだけでなく、植物インビトロ培養物の安定した生産性も得る、並びにNPの生産のための信頼できる効率的な24/7連続系である。
【0032】
HR希少野生植物集団の、自然要因への依存、制限された入手可能性、および保護が解消される。季節性且つ遅いHR生長によってもたらされる制限も、再生可能で環境に優しい方法を開発することによって回避される。この方法は、標的抽出物を得るために必要な原料の、代替的、再生可能、且つ持続可能な供給源を提供する。
【0033】
最終NPのバッチ均一性、ならびにHRインビトロ培養物によって産生された標準化抽出物中の安定した品質および保証された量のミコノシドが保証される。
【0034】
加えて、使用される適切な培養培地は、最適な水準の生長因子および添加される刺激剤と共に、インビトロ培養物(実生、シュート培養物、根培養物、体細胞胚、カルス培養物、細胞懸濁培養物)の成功裏の形成、および標的の有益なBACを含有するバイオマスの生成をもたらす。得られた培養物は、生合成NPの収量および含量を最大化するように設計された、工業的に関連するバイオリアクターおよび一時的な浸漬システムにおいて、著しいスケールアップの潜在可能性を有する。
【0035】
使用される刺激剤(エリシター、前駆体、および吸収相)のタイプおよび濃度、抽出時のインビトロ培養物の発達における齢および段階は、特に重要な因子であり、本発明の方法を使用したときに、最適化され、特に複雑な分子構造を有するNPのより高いレベルの生合成および蓄積に寄与する、。
【0036】
微生物汚染のリスクは、インビトロバイオマスおよび生成された抽出物の他の植物、真菌、微生物、または動物種の生物学的材料による汚染と同様に解消される。したがって、多様なかつ価値のあるBACの天然に存在する化学組成および含量を有する抽出物、ならびに最大限のバイオマス収量および抽出物を得るために使用される方法は、食品、化粧品または製薬産業における実施のために、フェニルエタノイドグリコシドにおける標準化に好ましく、かつ特に適していると考えられる。
【0037】
〔実施例〕
以下、本発明が詳細な実施例において説明されるが、これは本発明を限定することを意図するものではない:
(実施例1)
1)HRのインビトロ培養の開始:
1.1洗浄
10~50個のHRの0.6mm×0.1mm種子を、ジベレリン0.5mg/lを加えた滅菌蒸留水中で30~60分間、2回洗浄し、70%エタノールで100秒間および8%次亜塩素酸カルシウムで50分間処理し、続いて滅菌蒸留水で5~10分間、2回洗浄し、得られた滅菌種子を滅菌濾紙上で10~15分間乾燥させる。
【0038】
1.2.開始
滅菌種子を品質および形態について評価し、死んだ個体および形態学的に変化した個体を取り出し、開始のために、半固体の、121℃で30分間予備滅菌した、5%スクロースおよび5%寒天を含む標準MS栄養培地(pH6.0)上に移植する。95~100%の実生が出現するまで滅菌状態をモニターしながら、28℃±2℃のサーモスタット内、暗所で2週間、培養する。
【0039】
1.3.独立生長
独立生長のために、得られた実生インビトロ培養物を、5%スクロースおよび5%寒天を添加した半固体MS栄養培地(pH6.0)上に移植する。形態学的に安定な株が得られるまで、28±2℃のサーモスタット内、明/暗モードで12時間、30~35日間、培養を行う。培養物中に産生されたミコノジドの量を定期的に測定し、産生されたインビトロ株の総数から25%の高収量株を選択することによって、ミコノシド過剰産生株を選択する。
【0040】
2).バイオマス生産:
2.1.選択したインビトロ実生株の維持、適応-継代培養
選択した株を、新鮮な半固体栄養培地(工程1.3と同じ)上で、30日毎に定期的に継代培養することによって維持し、形態および安定性における変化をモニターし、ミコノシドの量を分析する。10gのバイオマスを高収量株から採取し、形態、生長、均一性、安定性およびミコノシド量における変化をモニターしながら、140rpmのオービタルシェーカー上の2000mlフラスコ中、同じ添加物およびpHを有する滅菌液体MS培地中で培養し、95~100%の最も適応性の高い株を、接種材料として、次の液内培養のために継続する。
【0041】
2.2.バイオマス生産に適応したインビトロ実生系の培養
接種は、20日齢(増殖の対数期)で、25gの新鮮重量/lの液体培養物を用いて行う。培養は、25分の浸漬期間および6時間の露出期間を有する一時的な浸漬システム中で、28℃で、明/暗中で12時間、5週間行われる。その結果、1リットルあたり180gの新鮮なバイオマスが得られ、ミコノシド含量は、乾燥バイオマス1gあたり105mgである;
2.3.バイオマス生産の促進
20日齢~40日齢のバイオマス(増殖の対数期)に、非生物的エリシターのジャスモン酸およびジャスモン酸メチルを5mg/lの濃度で滅菌的に添加し、上記条件下で12日間培養する。プロセスの終わりに、乾燥バイオマス1gあたり152mgのミコノシド含量を有する濃縮バイオマスが得られる。滅菌ふるいを通す濾過によって、バイオマスを培養液から分離した後、滅菌蒸留水で洗浄し、60℃の換気乾燥炉内で乾燥させる。収率は、1リットルあたり15gの乾燥バイオマスである。各バッチおいて得られたバイオマスの質を、ミコノシド含量およびフェノール化合物についてモニターする。
【0042】
培養液を回収し、減圧エバポレーター中、60℃で乾燥する。収率は、30g/l乾燥重量である。
【0043】
HRインビトロ培養物由来のバイオマス(A)、野生植物バイオマス(B)、およびHRインビトロ実生培養物由来のバイオマスからの抽出物(C)のミコノシド含量についての比較HPLCプロファイルをFig.1に示す。
【0044】
3)インビトロHR実生培養物のバイオマスからのミコノシド標準化抽出物の調製:
得られた乾燥バイオマスおよび培養液を混合し、ホモジナイザー中で均質化する。この目的のために、2kgの乾燥バイオマスおよび2.5kgの乾燥培養液(液内条件下で生長させたインビトロ実生培養物200lから得た)を用いた。70%エタノールの水-エタノール混合物を、ヒドロモジュール(hydromodule)20(重量/体積)で、35時間、40℃で、4時間毎に15分間超音波処理しながら添加し、得られた沈殿物を減圧濾過により除去し、濾液を回収し、40℃で減圧蒸発により乾燥させて、12%の水分を含有する粘性濃縮物を得る。
【0045】
208g/kgのミコノシドを含有する、1kgのHRのインビトロ実生培養物由来のバイオマス抽出物を得る。
【0046】
抽出物を植物化学的に特徴付けし、結果を表1に示す。ミコノシドの量、ならびにフェノール化合物、脂肪酸、有機酸、アミノ酸、糖およびステロールの含量を、HPLCおよびGC/MS法によってモニターする。
【0047】
実施例1に従って得られたHRインビトロバイオマス由来の抽出物中のミコノシドのHPLC含量を、それらの天然の生息場所で生育するHR植物由来の標準的な70%エタノール抽出物およびHRのインビトロ実生培養物由来の標準的な70%エタノール抽出物と比較して、表2に示す。
【0048】
3.1.ミコノシド含量に関する、HRインビトロ培養抽出物中の溶解
208g/kgのミコノシドを含有する240.4gの抽出物に、759.6gのグリセロールを添加して、5%のミコノシドを含有する1kgの抽出物を生成する。得られた混合物を、振動撹拌機を用いて、抽出物の完全な均質化まで撹拌する。得られた溶液を、滅菌パック内に包装し、化粧品、医薬品または栄養補助食品において使用するために保存する。化粧品の目的のために、HRインビトロ培養物由来の標準化抽出物は、クリーム、エマルジョン、ゲルなどのような製品のために0.1~15%の量が適している。表3はまた、野生で生育するHR植物由来の標準的な70%エタノール抽出物と比較した、実施例1に従って得られたHRインビトロ培養物由来の抽出物の抗酸化特性の比較分析を示す。遊離DPPHおよびABTSラジカルを捕捉する抽出物の能力、ならびに銅(II)および鉄(III)イオンを還元する能力を評価した。
【0049】
【0050】
Agilent Technology Hewlett Packard 7890 A +/MSD 5975装置(Hewlett Packard, Palo Alto, CA, US)を、Agilent Technology 5975C inert XL EI/CI MSDマススペクトロメーター(Hewlett Packard, Palo Alto, CA, US)と併用した。HP-5MSカラム(30m×250μm×0.25μm)、60℃の温度プログラムで2分間(5℃/分で260℃への温度上昇を伴う)、260℃で8分間曝露。注入された試料の体積は、10:1の分割比で1μlである。インジェクタ温度250℃(1mL/分のフロー運搬ガス(ヘリウム)を用いる)。EI/MSスペクトルを70eVで記録する。
【0051】
HPLCシステム、Waters 1525バイナリーポンプ(Waters, Milford, MA, USA)、Waters 2487 Dual λ 吸光度検出器(Waters, Milford, MA, USA)は、Breeze 3.30ソフトウェアによって操作した;Supelco Discovery HS C18カラム(5μm、25cm×4.6mm)、t 28℃;2%酢酸およびアセトニトリルの勾配を有する移動相;
【0052】
【0053】
(実施例2)
種子の代わりにHRの葉を処理し、根培養物をインビトロ培養物として調製および使用することを除き、本方法は、実施例1と同様である。培養をバブルカラム内で実施し、誘発の代わりに供給によって生合成を増強し、得られた抽出物は、培養液を含まない蓄積されたバイオマスのみを含む。
【0054】
1).HRからのインビトロ培養の開始:
1.1.洗浄
3~10個の2~5cmの幼いHR葉を、洗剤(Tween80)を加えた滅菌蒸留水中で3分間洗浄し、80%エタノールで60秒間および6%次亜塩素酸カルシウムで30分間処理し、滅菌蒸留水で3分間、3回洗浄し、滅菌濾紙上で2分間乾燥させる。
【0055】
1.2.開始
死んだ領域を切除することによって、滅菌の葉を処理する。次いで、葉を0.5~1.0cmの切片に切断し、半固体の、121℃で30分間予備滅菌した、4%スクロースおよび8mg/lピクロラム、ゲルライト3%を補充した標準B5栄養培地上で開始し、5mg/lアスコルビン酸および5mg/lの2-メルカプトエタノール、pH5.5を追加補充して、90%の外植片において葉から根培養物が形成されるまで滅菌状態をモニターしながら、24℃±2℃で、暗所で4週間培養する。
【0056】
1.3.独立生長
得られた不定根のインビトロ培養物を、実施例2の工程1.2と同じ培地に3g/lの活性炭を加えた培地上で、サーモスタット内、24℃で、暗所で37日間、個別に培養して、形態学的に安定なミコノシド過剰産生株を得る。ここで、産生されたインビトロ株の総数から15%の高収量株を選択する。
【0057】
2).バイオマス生産
2.1.選択したインビトロ根培養物の維持、適応-継代培養
選択した根培養株を、実施例2の工程1.3における半固体新鮮培地上で、37日毎に定期的に継代培養することによって維持し、形態および安定性における変化をモニターし、ミコノシドの量を決定する。高収量株由来の15gのバイオマスを、100rpmのオービタルシェーカー上の500mlフラスコ中、実施例2の工程1.3と同じ添加物を有する滅菌液体B5培地中で培養し、85%の最も適応性の高い株を、接種材料として、次の液内培養のために継続する。
【0058】
2.2.バイオマス生産に適応したインビトロ根培養物の培養
30g新鮮重量/lの増殖の対数期にある30日齢根培養物を、空気流量0.3l/l/分のバブルカラム内で、ステップ1.3と同じ添加量の液体B5培地において、24℃±2で、暗所にて4週間培養する。130g/lの新鮮バイオマスは、120mg/gのミコノシド含量を有する乾燥バイオマスを生じる。
【0059】
2.3.バイオマス生産の促進
生長の後期対数期(35日齢)にあるバイオマスに、バイオリアクターの最大運転体積まで新鮮な液体B5培地を滅菌的に補充し、上述の条件下で10~15日間培養する。プロセスの終了時の結果は、乾燥バイオマス1gあたり170mgのミコノシドを含有する濃縮バイオマスである。得られたバイオマスを、濾過によって培養液から分離し、洗浄し、乾燥させる。収率は、1リットルあたり12gの乾燥バイオマスである。
【0060】
3).HR根培養のインビトロバイオマスからのミコノシド標準化抽出物の調製:
インビトロで培養された根の培養物由来の乾燥バイオマス3kgを粉砕し、超音波処理を行わなかったこと以外は実施例1と同じ時間および同じ温度で、ヒドロモジュール40(重量/体積)で、80%エタノール水溶液を用いた浸軟による抽出に供して、5%の水分を含有する粘性濃縮物を得る。280mg/gのミコノシドを含有する、インビトロHR根培養物由来の500gのバイオマス抽出物を得る。
【0061】
3.1.ミコノシド含量に関する、得られたHRのインビトロ根培養抽出物の溶解
ミコノシドリッチなHRのインビトロ根培養物357.1gを容器内で秤量する。642.9gのグリセロールを、10%ミコノシドを含有する1kgの抽出物の所望の重量に添加する。得られた混合物を、超音波処理による抽出物の完全な均質化まで撹拌し、滅菌パック内に包装し、将来の使用のために保存する。
【0062】
(実施例3)
種子の代わりに子房を処理し、実生培養物の代わりにカルスおよび細胞懸濁培養物を得て、インビトロ培養物として使用すること以外は、実施例1のように実施した。培養は三角フラスコ内で行う。
【0063】
1).HRからのインビトロカルス培養の開始
1.1.洗浄
2~5個の新たに形成された0.2~0.5cmのHR子房を、滅菌蒸留水中で1~2分間洗浄し、70%エタノールで90秒間および10%次亜塩素酸ナトリウムで40分間処理し、続いて滅菌蒸留水で1分間洗浄し、滅菌濾紙上で1分間乾燥させる。
【0064】
1.2.開始
得られた滅菌子房を水平に半分に切断し、開始のために、半固体の、121℃で30分間予備滅菌した、2%スクロース、1mg/lの1-ナフタレン酢酸、1mg/lの6-ベンジルアミノプリンおよび寒天4%を補充した標準WP栄養培地(pH5)上に移植し、93%の外植片においてカルスが形成されるまで滅菌状態をモニターしながら、26℃±2℃で、暗所で3週間培養する。
【0065】
1.3.独立生長
得られたインビトロカルス培養物は、形態学的に安定なミコノシド過剰産生株を得るために、サーモスタット内、ステップ1.2と同じ培地に3mg/lのクエン酸および1g/lの活性炭を添加した培地上で、同じ温度で、暗所で27日間の独立生長のための準備ができている。ここで、産生されたインビトロ株の総数から11%の高収量株のを選択する。
【0066】
2.バイオマス生産
2.1.選択したインビトロ培養物の維持、適応および細胞懸濁培養物の形成
選択したカルス培養株を、前工程における新鮮な半固体WP栄養培地上で、27日毎に定期的に継代培養することによって維持し、形態および安定性における変化をモニターし、ミコノシドの量を分析する。実施例2の工程2.2と同じ量の高収量株由来のバイオマスを、80rpmのオービタルシェーカー上の1000mlフラスコ中、前工程と同じ添加物を有する滅菌液体WP培地中で培養し、小サイズおよび中サイズの凝集体からなる細胞懸濁培養物を得て、75%の最も適応性の高い株を、接種材料として、次の液内培養のために継続する。
【0067】
2.2.バイオマス生産に適応した細胞懸濁培養物の培養
100g新鮮重量/lの増殖の対数期にある7日齢の細胞懸濁培養物を、80rpmのオービタルシェーカー上の2000mlフラスコ中、26℃で、暗所にて9日間培養する。得られたバイオマス中に、乾燥バイオマス1gあたり80mgのミコノシド含量を有する110g/lの新鮮なバイオマスが得られる。
【0068】
2.3.バイオマス生産の促進
後期対数増殖期(6日齢)のバイオマスに、第2の相として1gの滅菌吸収性樹脂(Amberlite XAD7)を滅菌的に補充する。培養をさらに4日間継続して、乾燥バイオマス1gあたり100mgのミコノシド含量を有する濃縮バイオマスを得る。それをさらに実施例1のように処理し、バイオマスおよび培養液を-40℃で凍結乾燥させる。収率は、1リットルあたり9gの乾燥バイオマスおよび1リットルあたり15gの乾燥重量培養液である。
【0069】
3).HR懸濁培養物のインビトロバイオマスからのミコノシド標準化抽出物の調製
乾燥したバイオマスおよび培養液1kgの全量を均質化し、実施例1のように、沈殿、分離および乾燥を伴って、同じ温度および同じ継続期間で、ヒドロモジュール10(重量/体積)で、30%エタノールの水-エタノール混合液を用いた浸軟によって抽出し、20%の水分を含む粘性濃縮物を得る。
【0070】
150mg/gのミコノシドを含有する、Haberlea rhodopensisのインビトロ細胞懸濁培養物のバイオマス由来の100gの抽出物を得る。
【0071】
3.1.ミコノシド含量に関する、得られたインビトロHR懸濁培養抽出物の溶解
インビトロ細胞懸濁培養から得られたミコノシドリッチなHR抽出物100.0gを秤量する。400.0gのグリセロールを、3%ミコノシドを含有する500gの抽出物の所望の重量に添加する。混合物を、回転式または高圧ホモジナイザーを用いて、抽出物が完全に均質化されるまで撹拌し、得られた溶液を滅菌容器に詰め、将来の使用のために保存する。
【0072】
【0073】
DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)/HR抽出物/DPPHラジカルの0.1mM溶液/暗所で、21℃で15分間/対照試料(メタノール添加)と比較した、λ=517nmでの吸光度における減少%/EC50(0.1mM DPPH溶液中のDPPHラジカルを50%阻害する有効濃度)の決定。
【0074】
TEAC/ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)ラジカル/HR抽出物を、予め生成されたABTSラジカルの溶液に添加する/暗所で、21℃で15分間/対照(メタノール添加)の吸光度と比較した、λ=734nmでの吸光度における減少%/mM Trolox((±)-6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸)としての結果。
【0075】
還元能力を評価するために、以下を使用する:
CUPRAC/HR抽出物/キレート剤ネオクプロイン存在下でのCu(II)イオンの溶液/暗所で、21℃で15分間/Cu(II)からCu(I)への還元/λ=450nmでの吸収極大/mM Trolox結果;
FRAP-HR抽出物/TPTZ(2,4,6-トリス(2-ピリジル)-s-トリアジン)存在下でのFe(III)イオン溶液/暗所で、21℃で15分間/Fe(III)からFe(II)への還元/Fe-TPTZ錯体/λ=593nmでの吸収極大/mM Trolox結果
【0076】
【0077】
参考文献:
(1) Journal of Ethnopharmacology “The ancient Thracian endemic plant Haberlea rhodopensis Friv. And related species: A rewiew“, 2019, Yordan N. Georgiev;
(2) Plant Cell, Tissue and Organ Culture (2005) 80: 115-118 Djilianov,
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(5) JP2011168560A;
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【国際調査報告】