(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(54)【発明の名称】レーザ溶接のための溶接バンプおよび溶接バンプを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20230608BHJP
【FI】
B23K26/21 N
B23K26/21 G
B23K26/21 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561137
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2021058642
(87)【国際公開番号】W WO2021204681
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522393103
【氏名又は名称】ボリット・エヌ・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロニー・マルテンス
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA02
4E168BA56
4E168CA06
4E168CB23
(57)【要約】
第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための方法であって、第1の金属プレートは溶接バンプを含む、方法。第1に、第1の金属プレートの溶接バンプが第2の金属プレートに向かって突出しているように、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に配置される。第2に、少なくとも1つの溶接治具を使用すること、および/または第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させることによって、第1の金属プレートと第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に固定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための方法であって、
前記第1の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンと、第1のチャネル構造を有する第1の表面および第1の反対チャネル構造を有する第1の反対表面と、を含み、
前記第2の金属プレートは、第2のプレート溶接ゾーンと、第2のチャネル構造を有する第2の表面および第2の反対チャネル構造を有する第2の反対表面と、を含み、前記第2の金属プレートは溶接バンプを含まず、
前記第1のチャネル構造および前記第2のチャネル構造は、前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合され、
前記第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含み、
前記方法は、次のステップ、すなわち、
前記第1のチャネル構造および前記第2のチャネル構造が、前記流れ場チャネルパターンを形成するように位置決めされ、
前記第1の金属プレートの前記溶接バンプが前記第2の金属プレートの前記第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出している
ように、前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に配置するステップと、
前記第1のプレート溶接ゾーンに隣接して前記第1の金属プレートを、および/もしくは前記第2のプレート溶接ゾーンに隣接して前記第2の金属プレートを係合する少なくとも1つの溶接治具を使用すること、ならびに/または
前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させ、これによって吸引力を提供すること
によって、前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートを前記レーザビーム溶接位置に固定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶接バンプは、曲率半径を有する湾曲形状を有し、前記溶接バンプの外側点が前記溶接バンプの高さだけ前記第1の金属プレートの面外に位置し、
前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートを固定するステップ中、前記溶接バンプは部分的に平坦化され、前記第1の金属プレートと第2の金属プレートが互いの固定距離に位置決めされるようになり、前記固定距離は前記高さより小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの溶接治具は前記第1の溶接ゾーンおよび/または前記第2の溶接ゾーンに隣接して係合する、請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶接治具は、前記溶接バンプの中心から少なくとも0.3mm、好ましくは0.5~0.8mmの距離で前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートを係合する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の金属プレートおよび/または前記第2の金属プレートによって含まれる少なくとも1つの位置決め機構が、前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートが前記レーザビーム溶接位置に配置されるステップ中、前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートを位置決めするために使用される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートとをレーザビーム溶接によって接合するステップであって、レーザビームが前記溶接バンプにおいて集束する、ステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶接バンプは細長形状および長さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶接バンプの高さが5μm~50μm、好ましくは10μm~30μm、より好ましくは15μm~25μmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶接バンプの幅が0.2mm~2mm、好ましくは0.3mm~1.5mm、より好ましくは0.4mm~1mmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記第1の金属プレートおよび/または前記第2の金属プレートの寸法に、および/または前記流れ場チャネルパターンに、および/または前記第1の金属プレート上の前記溶接バンプの場所に基づいて、少なくとも1つの溶接治具を作製するステップをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、これらのプレートを設計するステップであって、前記溶接バンプの寸法が、前記第1の金属プレートおよび/または前記第2の金属プレートの寸法の公差に、および/または前記レーザビーム溶接中、前記溶接バンプ上に集束するべき前記レーザビームの寸法に基づいて決定される、ステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
レーザビーム溶接によって一緒に接合されるように適合された第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートであって、
前記第1の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンと、第1のチャネル構造を有する第1の表面および第1の反対チャネル構造を有する第1の反対表面と、を含み、
前記第2の金属プレートは、第2のプレート溶接ゾーンと、第2のチャネル構造を有する第2の表面および第2の反対チャネル構造を有する第2の反対表面と、を含み、前記第2の金属プレートは溶接バンプを含まず、
前記第1のチャネル構造および前記第2のチャネル構造は、前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合され、
前記第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含み、
前記溶接バンプは、レーザビームが前記溶接バンプにおいて集束する溶接プロセス中、前記第2の金属プレートの前記第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出するように適合されている、
第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項13】
前記溶接バンプは、曲率半径を有する湾曲形状を有し、前記溶接バンプの外側点がある高さだけ前記第1の金属プレートの面外に位置し、
前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートを固定するステップ中、前記溶接バンプは部分的に平坦化され、前記第1の金属プレートと第2の金属プレートが互いの固定距離に位置決めされるようになり、前記固定距離は前記高さより小さい、請求項12に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項14】
前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートはハイドロフォーミングによって形成される、請求項12または13に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項15】
前記溶接バンプは細長形状および長さを有する、請求項12から14のいずれか一項に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項16】
前記溶接バンプの高さが5μm~50μm、好ましくは10μm~30μm、より好ましくは15μm~25μmである、請求項12から15のいずれか一項に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項17】
前記溶接バンプの幅が0.2mm~2mm、好ましくは0.3mm~1.5mm、より好ましくは0.4mm~1mmである、請求項12から16のいずれか一項に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項18】
前記第1の金属プレートおよび/または前記第2の金属プレートは少なくとも1つの位置決め機構を含み、この少なくとも1つの位置決め機構は、前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に位置決めするように適合されている、請求項12から17のいずれか一項に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項19】
前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートは、前記第1のプレート溶接ゾーンおよび前記第2のプレート溶接ゾーンにおいて互いにレーザビーム溶接され、レーザビーム溶接が前記溶接バンプに提供される、請求項12から18のいずれか一項に記載の第1の金属プレートおよび前記第1の金属プレートに関連する第2の金属プレート。
【請求項20】
第1の金属プレートと第2の金属プレートとを互いに接続するための方法であって、
前記第1の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンと、第1のチャネル構造を有する第1の表面および第1の反対チャネル構造を有する第1の反対表面と、を含み、
前記第2の金属プレートは、第2のプレート溶接ゾーンと、第2のチャネル構造を有する第2の表面および第2の反対チャネル構造を有する第2の反対表面と、を含み、第2のプレート溶接ゾーンは、前記第1のプレートの前記第1のプレート溶接ゾーンに接続されるべき前記第2の金属プレートの部分によって形成され、
前記第1のチャネル構造および前記第2のチャネル構造は、前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合され、
前記第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含み、前記第2のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含まず、
前記方法は、次のステップ、すなわち、
前記第1のチャネル構造および前記第2のチャネル構造が、前記流れ場チャネルパターンを形成するように位置決めされ、
前記第1の金属プレートの前記溶接バンプが前記第2の金属プレートの前記第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出している
ように、前記第1の金属プレートおよび前記第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に配置するステップと、
前記第1のプレート溶接ゾーンに隣接して前記第1の金属プレートおよび/もしくは前記第2のプレート溶接ゾーンに隣接して前記第2の金属プレートを係合する少なくとも1つの溶接治具を使用すること、ならびに/または
前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させ、これによって吸引力を提供すること
によって、前記第1の金属プレートと前記第2の金属プレートを前記レーザビーム溶接位置に固定するステップと、
前記第1のプレート溶接ゾーンと前記第2のプレート溶接ゾーンを溶接によって互いに接続するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の技術分野、特に燃料電池用の金属バイポーラプレートの製造に関する。
【0002】
本発明は、第1の金属プレートが溶接バンプを含む、第1の金属プレートおよび第2の金属プレート、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを位置決めするための方法、ならびに第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ溶接は、たとえば高い生産性および自動化の容易さのような、際立った利点を備えた頻繁に使用される溶接技術である。レーザ溶接を使用して2つの金属プレートを一緒に溶接するため、2つのプレートを互いに接触させて溶接部における穴を回避すべきである。レーザ溶接ツールは、両プレートを一緒にプレスするように適合されている。
【0004】
これらのプレートをレーザ溶接によって接合するとき、これらのプレート間の機械的接触が重要である。したがって、レーザ溶接ツールを溶接の場所に比較的近く配置することが重要である。信頼できる適切な溶接を達成するために、レーザ溶接ツールを適切に配置する必要がある。この要件を金属プレートバイポーラ上のあらゆる場所で満たすことを保証するのは困難である。従来のレーザ溶接ツールは厳重な精度要件の影響を受けやすい。
【0005】
金属プレートとレーザ溶接ツールについての公差は厳しいが、実際には金属プレートは、一緒に溶接する前に完全には揃わない。これにより、溶接プロセスが成功したときでも、溶接後の金属プレート間の距離が一方の側で他方より大きくなる状況につながることがある。このような設計のずれが一緒に溶接された2つのプレートごとに繰り返されるため、このずれは金属プレートのスタックについて蓄積する。
【0006】
さらに、レーザ溶接中の外的要因も、たとえばレーザ溶接ツールおよびプレートへの焼結物の付着のような、有害な影響につながる可能性がある。これはプレートの品質問題またはツールの寿命の短縮につながることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上の問題の1つまたは複数を軽減する解決策を提供すること、または少なくとも既存の装置のための代替手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法が提供され、
第1の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンと、第1のチャネル構造を有する第1の表面および第1の反対チャネル構造を有する第1の反対表面と、を含み、
第2の金属プレートは、第2のプレート溶接ゾーンと、第2のチャネル構造を有する第2の表面および第2の反対チャネル構造を有する第2の反対表面と、を含み、第2の金属プレートは溶接バンプを含まず、
第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合され、
第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含み、
第1の方法は、次のステップ、すなわち、
第1のチャネル構造および第2のチャネル構造が、流れ場チャネルパターンを形成するように位置決めされ、
第1の金属プレートの溶接バンプが第2の金属プレートの第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出している
ように、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に配置するステップと、
第1のプレート溶接ゾーンに隣接して第1の金属プレートを、および/もしくは第2のプレート溶接ゾーンに隣接して第2の金属プレートを係合する少なくとも1つの溶接治具を使用すること、ならびに/または
第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させ、これによって吸引力を提供すること
によって、第1の金属プレートと第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に固定するステップと、
を含む。
【0009】
本発明による第1の方法において第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めされる。これらのプレートを一緒に接合すると、これらのプレートは、特に車両用の、たとえば燃料電池スタック用のバイポーラプレートとして使用することができる。説明全体を通して、「これらのプレート」という用語は第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを指すことに留意されたい。
【0010】
両プレートは2つの表面を有する。第1の金属プレートの第1の表面が第1のチャネル構造を有し、第1の金属プレートの第1の反対表面が第1の反対チャネル構造を有する。
【0011】
同様に、第2の金属プレートの第2の表面が第2のチャネル構造を有し、第2の金属プレートの第2の反対表面が第2の反対チャネル構造を有する。
【0012】
第1の金属プレートと第2の金属プレートとを一緒に接合することによって、第1の金属プレートの第1の表面が第2の金属プレートの第2の表面と接続される。第1の金属プレートと第2の金属が接合されたとき、第1の表面は第2の表面に面している。結果として、位置決めされた第1のチャネル構造および第2のチャネル構造によって流れ場チャネルパターンが形成される。好ましくは、これらのプレートが燃料電池スタックにおいて使用されるとき、流れ場チャネルパターンは冷却剤の流れに役立ち、冷却剤はたとえば水、グリコール、または混合物とすることができる。しかしながら、流れ場チャネルパターンが、ガス流、たとえば酸素または水素を案内および分割するのに役立つことも可能である。
【0013】
たとえば、一般に両プレートを一緒に溶接するためにレーザ溶接機が使用される。レーザ溶接機は一般に、レーザビームを放射するレーザビーム源、レーザビームを正しいスポットで集束させるレンズシステム、およびレンズシステムを移動させる2D位置決めテーブルを含む。溶接する前に、両プレートを所定の位置に位置決めおよび固定する。これはたとえばレーザ溶接ツールによって実行される位置決めステップおよび固定ステップで行う。レーザ溶接ツールはたとえば、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対しておよびレーザ溶接機に対して位置決めする位置決めシステムを含むことができる。位置決めシステムはたとえば溶接保持ツールを含む。レーザ溶接ツールは、両プレートをレーザビーム溶接位置に固定する固定システムをさらに含む。固定システムはたとえば少なくとも1つの溶接治具および/または吸引力システムを含み、これはたとえば、第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させるように構成された真空ポンプ、ベンチュリ、またはコンプレッサのようなポンプを含む。好ましい一実施形態において、吸引力システムまたは少なくとも1つの溶接治具の1つのみを使用して両プレートをレーザビーム溶接位置に固定する。しかしながら、実際には、これらのプレートはこれらの全表面にわたって完全に滑らかではなく、これらのプレートの完璧な位置決めに達することは困難である。したがって、好ましくは、吸引力システムと少なくとも1つの溶接治具の両方を使用して既知のシステムおよび方法においてこれらのプレートを固定する。これらのプレートをレーザビーム溶接位置に位置決めおよび固定した後、レーザ溶接機のレーザビーム源を使用して、溶接プロセス中にレーザビームを放射することによって両プレートを一緒に溶接することができる。加えて、処理中アルゴンガスを任意選択でこれらのプレート上に分配してこれらのプレートの酸化を軽減することができる。
【0014】
好ましくは、第1の金属プレートの第1の反対チャネル構造の機能は、ガス流、たとえば水素または酸素を第1の反対表面にわたって案内および分割することである。好ましくは、第2の金属プレートの第2の反対チャネル構造は、ガス流、たとえば酸素または水素を第2の反対表面にわたって案内および分割するためのものである。このように、これら3つの異なるチャネル(流れ場チャネルパターン、第1の反対チャネル構造および第2の反対側チャネル構造)を使用して燃料電池の内側の動作を調節することができ、各チャネルの形態は、用途の要件を満たすように最適化することができる。
【0015】
明確性の理由のため、流れ場チャネルパターンを、これらのプレートの内側では、すなわち第1の金属プレートと第2の金属プレートとが接続されているとき、チャネルと呼ぶ。「接合された」および「接続された」という用語は説明全体を通して交換可能に使用されることに留意されたい。しかしながら、流れ場チャネルパターンはこれらのプレートの外側に配置することもできる。さらに、第1の表面および第1の反対表面は交換可能であり、これは、第1の表面または第1の反対表面をこれらのプレートの外側または内側に配置することができるということを意味することに留意されたい。同じ理由が第2の金属プレートの第2の表面および第2の反対表面にも当てはまる。
【0016】
さらに、第1の金属プレートは第1のプレート溶接ゾーンを含み、第2の金属プレートは第2のプレート溶接ゾーンを含む。第1のプレート溶接ゾーンおよび第2のプレート溶接ゾーンは画定された領域である。レーザビームがプレートのこの領域内に集束し、両プレートが溶接されているとき、この上にレーザビームが放射される。レーザビームはレーザビーム源によって放射される。レーザビーム源はたとえばレーザ溶接機の一部である。一実施形態において、第1の金属プレートと第2の金属プレートとが一緒に接合されるとき、第1のプレート溶接ゾーンと第2のプレート溶接ゾーンは重なり合っている。
【0017】
本発明によれば、第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含む。第1の金属プレート上の溶接バンプは第1のプレート溶接ゾーンでの第1の金属プレートの局所的な変形である。第2の金属プレートは溶接バンプを含まない。これらのプレートが互いに対してずれることがあるという事実にもかかわらず、溶接バンプにより、レーザビーム溶接位置でのプレートの配置、ならびにレーザビーム溶接の品質が向上する。これは以下でさらに説明する。
【0018】
本発明による第1の方法は、第1のチャネル構造および第2のチャネル構造が流れ場チャネルパターンを形成するように位置決めされるように、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に配置するステップを含む。第1のチャネル構造および/または第2のチャネル構造は突起を含むことができ、平坦部分およびチャネル壁を交互に含む。好ましくは、両プレートがプレカットされ、第1の平面内でこれらのプレートについて寸法(幅および長さ)を同一にする。第1の平面は突起および/または溶接バンプに垂直である。さらに、レーザビーム溶接位置において、第1の金属プレートの溶接バンプは第2の金属プレートの第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出している。
【0019】
溶接する前に、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは、少なくとも1つの溶接治具を使用して、および/または第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させ、これによって吸引力を提供して、レーザビーム溶接位置に固定される。少なくとも1つの溶接治具は第1のプレート溶接ゾーンに隣接して第1の金属プレートを、および/または第2のプレート溶接ゾーンに隣接して第2の金属プレートを係合する。一実施形態において、少なくとも1つの溶接治具は、溶接バンプの中心から少なくとも0.3mm、好ましくは0.5~0.8mmの距離で第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを係合する。従来の機械と比較して、溶接バンプにより、溶接治具を溶接部からより大きな距離で位置決めすることが可能になり、これによりレーザビーム溶接中の溶接ツールおよび/またはプレート上の飛沫または破片の量が確実に減る。これは、これらのプレートの再加工の減少およびレーザ溶接ツールの寿命の増加につながる。一実施形態において、吸引力システムのみを使用して第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に固定する。
【0020】
少なくとも1つの溶接治具はたとえば、少なくとも1つの開口を含む構造とすることができ、この構造は第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートにプレスされる。少なくとも1つの開口により、第1のプレート溶接ゾーンおよび/または第2のプレート溶接ゾーンをレーザビーム溶接中、レーザビームに曝露することができるように、少なくとも1つの溶接治具は第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートを係合する。
【0021】
第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させることはたとえば、第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の領域に接続された入口を有する、たとえば真空ポンプ、ベンチュリまたはコンプレッサのようなポンプを含む吸引力システムを使用して行うことができる。この領域から空気が除去されると、空気の圧力が減少する。第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力が周囲の空気より低くなると、吸引力が提供される。吸引力により、第1および第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に固定される。
【0022】
本発明の溶接バンプのため、溶接治具および吸引力の両方を使用することも可能であるが、1つのみを使用して、第1および第2の金属プレートを適切に固定することが可能であり得る。いずれにせよ、溶接バンプにより、溶接治具および/または吸引力の要件を低減することが可能である。これには、動作コストの削減および保守コストの削減を含む利点がある。
【0023】
一実施形態において、溶接バンプは、曲率半径を有する湾曲形状を有する。一実施形態において、溶接バンプの曲率半径は、0.5~2.5mm、好ましくは0.7~1.5mm、より好ましくは0.8~1.2mmである。溶接バンプの湾曲形状のため、溶接バンプの外側点が溶接バンプの高さだけ第1の金属プレートの面外に位置する。溶接バンプの湾曲形状のため、本発明による方法の位置決めステップ中、溶接バンプの外側点が確実に第2の金属プレートに接触する。これらのプレートを一緒に溶接するために、これらのプレート間の機械的接触が好ましい。目標は、これらのプレート間の距離またはギャップを減らすことである。しかしながら、溶接バンプを適用することによって、溶接ゾーンに近接するプレート間のギャップが最初に作成されることになる。好ましくは、曲率半径は、溶接バンプの外側点の曲率が急勾配を有することを回避するように選択される。好ましくは、勾配はおよそ1~5%の傾斜を有する。これは比較的緩やかな勾配と見なすことができる。本実施形態による勾配により、両プレート間の広い接触が確保される。広い接触により満足な溶接が実現され、これはこれらのプレートの平坦さに有益である。たとえば、曲率半径は溶接バンプの高さより大きい。
【0024】
本実施形態による第1の金属プレートと第2の金属プレートの固定ステップ中、溶接バンプは部分的に平坦化される。溶接バンプは第2の金属プレートに対してプレスされる。溶接バンプは固定ステップの結果として変形し、溶接バンプの高さの減少につながる。このように、第1の金属プレートと第2の金属プレートが互いの固定距離に位置決めされる。固定距離は溶接バンプの高さより小さい。
【0025】
さらなる一実施形態において、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートは少なくとも1つの位置決め機構を含む。少なくとも1つの位置決め機構は、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に配置されるとき、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを位置決めするために使用される。少なくとも1つの位置決め機構は、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートが適切に揃えられるように適合されている。位置決め機構はたとえば局所的な溝および/または位置決め突起とすることができ、これはこれらのプレート上の所定の場所に、たとえばこれらのプレートの角に製造される。
【0026】
さらなる一実施形態において、本発明による方法は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとをレーザビーム溶接によって接合するステップをさらに含む。このステップ中、レーザビーム源からのレーザビームは第1の金属プレートの溶接バンプにおいて集束する。これは、レーザビーム源が、第1の反対表面または第2の反対表面上へ溶接バンプと対応する位置上に放射されることを含むことができる。溶接バンプにより、レーザビーム溶接中の第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間のより良好な接触が保証される。これは溶接の品質の向上につながる。加えて、溶接バンプは、品質に関するさらなる利点を提供し、すなわち溶接部およびプレートからより遠くに位置決めすることができるレーザ溶接ツール上の焼結物または破片の付着が少なくなる。
【0027】
一実施形態において、溶接バンプは湾曲形状を有する。本発明による方法の固定ステップ中、溶接バンプは第2の金属プレートの第2のプレート溶接ゾーンに対してプレスされる。その結果、線または面接触が作成される。さらに、少なくとも1つの溶接治具により、固定ステップ中、両プレートにクランプ力が誘発される。結果として、反力が生成される。溶接バンプのばね様挙動のため、溶接バンプの形状が変形し、たとえば溶接バンプが部分的に平坦化する。
【0028】
一実施形態において、第1の金属プレートと第2の金属プレートとを接合するステップの前に、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは互いの固定距離に位置決めされる。第1の金属プレートと第2の金属プレートとを接合するステップ中、溶接バンプはレーザビームによって少なくとも部分的に溶融する。第1の金属プレートと第2の金属プレートとを接合するステップの後、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは互いの接合距離に位置決めされ、この接合距離は固定距離より小さい。
【0029】
レーザビーム溶接中、溶接バンプはレーザビームに曝露される。これにより熱が生成される。溶接バンプは融点を超えて加熱される。その結果、これらのプレートは局所的に、すなわち溶接バンプにおいて溶融することになる。溶接バンプの高さは減ることになる。その効果は、これらのプレート間の距離が減少することである。結果として、両プレートはこれらのプレート間のギャップがより小さい状態で溶接バンプによって互いに溶接される。さらに、たとえばこれらのプレートの接触不良または位置ずれによるずれが、プレートを積み重ねることによって溜まらない。たとえば、バイポーラプレートのスタッキング中、何百ものプレートが積み重ねられる。これは、数μmの誤差でも、たとえば燃料電池に使用するためのスタックの品質が低下するという結果になることを意味する。たとえば、望ましくない沈み溶接が本発明による方法によって軽減される。
【0030】
一実施形態において、溶接バンプは細長形状および長さを有する。溶接バンプの細長形状は、少なくとも二次元形状を有すると説明することができる。さらなる一実施形態において、溶接バンプは第1の金属プレート上に閉ループとして形成することができる。たとえば、溶接バンプは、第1の金属プレートの縁に沿った距離で、たとえば縁の10mmにおいて生成される。
【0031】
一実施形態において、溶接バンプの高さは、5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは15~25μmである。溶接バンプの幅は、0.2~2mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.4~1mmである。溶接バンプの幅および高さを考慮すると、溶接バンプは、幅の方向に見たとき、勾配を含む。この勾配はおよそ1~5%の傾斜を有する。これは比較的緩やかな勾配と見なすことができる。本実施形態による勾配により、両プレート間の広い接触が確保される。広い接触により満足な溶接が実現され、これはこれらのプレートの平坦さに有益である。
【0032】
一実施形態において、第1のプレート溶接ゾーンの長さおよび/または幅は、第1の金属プレートの溶接バンプの長さおよび/または幅と少なくとも同じくらいの大きさである。第1のプレート溶接ゾーンの面積は、少なくとも1つの溶接治具が溶接バンプを係合するのを防止するのに十分に大きい。好ましい一実施形態において、第1のプレート溶接ゾーンの長さおよび/または幅は、第1の金属プレート上の溶接バンプの長さおよび/または幅に等しい。
【0033】
一実施形態において、第2のプレート溶接ゾーンの長さおよび/または幅は、第1の金属プレート上の溶接バンプの長さおよび/または幅と少なくとも同じくらいの大きさである。第2のプレート溶接ゾーンの面積は、少なくとも1つの溶接治具が溶接バンプを係合するのを防止するのに十分に大きい。一実施形態において、第2のプレート溶接ゾーンの長さおよび/または幅は、第1の金属プレート上の溶接バンプの長さおよび/または幅に等しい。好ましくは、第2のプレート溶接ゾーンの長さおよび/または幅は、第1の金属プレート上の溶接バンプの長さおよび/または幅より大きい。好ましくは、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に位置決めされたとき、第2のプレート溶接ゾーンは第1のプレート溶接ゾーンと完全に重なる。この重なりは、溶接バンプの高さに垂直な平面で、たとえば水平面で起こる。
【0034】
一実施形態において、これらのプレートのそれぞれの厚さは、20~500μm、好ましくは25~250μm、より好ましくは50~100μmである。溶接の場所での漏れを防止するため、2つのプレート間のギャップはできるだけ小さいことが好ましい。数μmの中断、破損または欠陥のある溶接でもすでに漏れを引き起こすのに十分なことがある。任意選択で、第1の金属プレートと第2の金属プレートが固定されるステップの後、およびこれらのプレートが接合される前、第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間のギャップは、溶接バンプの場所でのこれらのプレートのそれぞれの厚さの5パーセント、より好ましくは3パーセントより小さい。
【0035】
一実施形態において、第1の方法は少なくとも1つの溶接治具を作製するステップを含む。これはたとえば、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートの寸法、および/または流れ場チャネルパターン、および/または第1の金属プレート上の溶接バンプの場所に基づき得る。たとえば、少なくとも1つの溶接治具は、所定の形状に切断された構造とすることができる。少なくとも1つの溶接治具はたとえば、これらのプレート上に配置されるように適合することができ、たとえば第1および第2のプレートは互いの上に配置され、プレートを係合する少なくとも1つの溶接治具は他方の上に配置される。この構造の重量および/または重力のため、この構造が2つのプレートの1つを係合すると、両プレートが固定される。これらのプレートが固定されているとき、溶接バンプは、レーザビームのために、たとえばこの構造の所定の形状における開口によってアクセス可能なままである。
【0036】
さらなる一実施形態において、第1の方法は、これらのプレートを設計するステップを含む。このステップ中、溶接バンプの寸法が、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートの寸法の公差に、および/またはレーザビーム溶接中、溶接バンプ上に集束するべきレーザビームの寸法に基づいて決定される。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、第2の方法が提供される。第2の方法は、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを製造するための方法である。第2の方法は、次のステップ、すなわち、
内面に第1の所定の形状を備えた第1の金型の内側に第1の金属プレートを配置するステップと、
内面に第2の所定の形状を備えた第2の金型の内側に第2の金属プレートを配置するステップと、
第1の金型内へ第1の射出圧力で第1の流体を射出するステップと、
第2の金型内へ第2の射出圧力で第2の流体を射出するステップと、
射出流体を使用することによって第1の金型の内面において第1の金属プレートを第1の所定の形状にプレスするステップであって、第1の所定の形状は第1の金属プレートを変形させ、第1の金属プレート上に第1のチャネル構造、第1の反対チャネル構造、および溶接バンプを生じさせる、ステップと、
射出流体を使用することによって第2の金型の内面において第2の金属プレートを第2の所定の形状にプレスするステップであって、第2の所定の形状は第2の金属プレートを変形させ、第2のチャネル構造および第2の反対チャネル構造を生じさせ、第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合されている、ステップと、
第1の金属プレートを第1の金型から除去するステップと、
第2の金属プレートを第2の金型から除去するステップと、
を含む。
【0038】
本発明による第2の方法において、ハイドロフォーミングプロセスが使用される。実際、ハイドロフォーミングは、溶接バンプを第1のプレート上に正確に形成する信頼できる方法である。本発明によれば、金型を使用してこれらのプレートを変形させる。金型はたとえば、内面に、たとえば底に所定の形状を備えたチャンバとすることができる。第1の可能な実施形態において、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは、2つの区画を含む単一の金型構造にこれらを同時に配置することによって製造される。これによって、区画の一方が第1の金型と呼ばれ、他方の区画は第2の金型と呼ばれる。各プレートは異なる区画に配置される。これらの区画は互いに平行に配置することができる。
【0039】
別の可能な実施形態において、2つのプレートは異なる金型において、および/または同時にではなく、たとえば異なる時間および/または場所で製造される。たとえば、第1の金属プレートは、内面に第1の所定の形状を備えた第1の金型の内側に第1の金属プレートを配置することによって製造される。加えて、第2の金属プレートは、内面に第2の所定の形状を備えた第2の金型の内側に第2の金属プレートを配置することによって製造される。
【0040】
これらのプレートの1つが金型に配置されているとき、本発明による第2の方法は、金型内へ圧力下で流体を射出することをさらに含む。これらのプレートのタイプ、寸法および材料に応じて、第1および/または第2の金型の内側の流体の射出圧力は、500~5000バールの間、好ましくは1000~3000バールの間、より好ましくは1200~2000バールの間とすることができる。
【0041】
本発明による第2の方法は、第1の射出流体によって第1の金型の内面において第1の所定の形状に第1の金属プレートをプレスするステップをさらに含む。第1の流体の第1の射出圧力のため、第1の所定の形状は第1の金属プレートを変形させる。この変形により、第1の金属プレートの第1の表面上に第1のチャネル構造が、そして第1の金属プレートの第1の反対表面上に第1の反対チャネル構造が生じる。さらに、第1の金属プレートに溶接バンプが形成される。一実施形態において、溶接バンプは、曲率半径を有する湾曲形状を有する。溶接バンプの湾曲形状のため、バンプの外側点が溶接バンプの高さだけ第1の金属プレートの面外に位置する。好ましくは、曲率半径は、溶接バンプの外側点の曲率が急勾配を有することを回避するように選択される。好ましくは、勾配はおよそ1~5%の傾斜を有する。たとえば、曲率半径は溶接バンプの高さより大きい。同様に、第2の金属プレートは、第2の射出流体によって第2の金型の内面において第2の所定の形状にプレスされる。好ましくは、第1の射出流体と第2の射出流体は同じである。第2の流体の第2の射出圧力のため、第2の所定の形状は第2の金属プレートを変形させる。好ましくは、第1の射出圧力は第2の射出圧力に等しい。この変形ステップにより、第2の金属プレートの第2の表面上に第2のチャネル構造が、そして第2の金属プレートの第2の反対表面上に第2の反対チャネル構造が生じる。溶接バンプは第2の金属プレート上に製造されない。
【0042】
第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合されている。これらのプレートが一緒に接合されれば、これらのプレートはバイポーラプレートとして使用することができる。バイポーラプレートが燃料電池において使用されると、水素と酸素との間の電気化学反応により熱が発生する。したがって、流れ場チャネルパターンはたとえば、たとえば水とすることができる冷却剤の流れによってこれらのプレートを冷却するために使用することができる。しかしながら、反応物、たとえば水素または酸素の流れを案内するために流れ場チャネルパターンを使用することも可能である。
【0043】
本発明による第2の方法の実施形態のさらなるステップにおいて、これらのプレートが金型から除去される。一実施形態において、第1のプレートが第1の金型から除去され、第2の金属プレートが第2の金型から除去される。
【0044】
一実施形態において、少なくとも1つの位置決め機構が第1の金属プレート上および/または第2の金属プレート上に形成される。第1の金属プレート上の少なくとも1つの位置決め機構は、第1の金属プレートが第1の金型の内面において第1の所定の形状にプレスされるプレスステップ中に形成される。
【0045】
同様に、一実施形態において、第2の金属プレート上の少なくとも1つの位置決め機構は、第2の金属プレートが第2の金型の内面において第2の所定の形状にプレスされるプレスステップ中に形成される。少なくとも1つの位置決め機構は、第1および/または第2の金型の内面に、それぞれ第1および/または第2の所定の形状で設けられる。
【0046】
これらのプレートが第1および第2の金型から除去された後、少なくとも1つの位置決め機構は、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを位置決めするために使用することができる。少なくとも1つの位置決め機構は、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを溶接保持ツールの内側のレーザビーム溶接位置に適切に配置することができるように適合されている。少なくとも1つの位置決め機構はたとえば局所的な溝および/または位置決め突起とすることができ、これらはこれらのプレート上の所定の場所に、たとえばこれらのプレートの角に製造される。
【0047】
さらに、一実施形態において、第2の方法にしたがって製造された第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは、本発明による第1の方法にしたがって位置決めされる。したがって、これらのプレートが第2の方法にしたがって製造されるとき、これらのプレートはレーザ溶接ツールに移送される。可能な追加のステップは、これらのプレートを所望の寸法へとプレカットすることである。これらのプレートのプレカットは第2の方法の前および/または後に実行することができる。プレカット中、これらのプレートはたとえばカッティング治具に配置することができる。
【0048】
レーザ溶接ツールにおいて、これらのプレートは位置決めシステムによって互いに対しておよびレーザ溶接機に対して位置決めされる。まず、位置決めシステムは溶接保持ツールを含み、これらのプレートはレーザビーム溶接位置に配置される。この配置ステップは、たとえば多軸ロボットアームによって手動または自動で実行することができる。レーザ溶接ツールは、これらのプレートがレーザビーム位置にあるとき、両プレートを溶接保持ツールにおいて互いに対して固定する少なくとも1つの溶接治具および/または吸引力システムをさらに含む。レーザ溶接機はレーザ源を含む。これらのプレートが溶接保持ツールに固定されているとき、レーザ源は第1の金属プレート上の溶接バンプにレーザビームを照射する。レーザビームにより両プレート間に溶接が生じる。
【0049】
本発明はさらに、以下に記載するような第1の金属プレートおよび第2の金属プレートに関する。本発明による方法は、上記第1および第2の金属プレートで、および/または上記第1および第2の金属プレートを製造するために実行することができる。しかしながら、これらの方法も第1および第2の金属プレートもこれに限定されない。それにもかかわらず、本発明による方法を参照して説明した特徴および定義は、第1および第2の金属プレートに関して言及されたとき、同様に解釈することができ、逆もまた同様である。さらに、本発明による方法を参照して説明した特徴および/または実施形態を、本発明による第1および第2の金属プレートに追加して、同様の利点を達成することができ、逆もまた同様である。
【0050】
第3の態様において、本発明はさらに、第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートに関する。第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは、レーザビーム溶接によって一緒に接合されるように適合され、
第1の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンと、第1のチャネル構造を有する第1の表面および第1の反対チャネル構造を有する第1の反対表面と、を含み、
第2の金属プレートは、第2のプレート溶接ゾーンと、第2のチャネル構造を有する第2の表面および第2の反対チャネル構造を有する第2の反対表面と、を含み、第2の金属プレートは溶接バンプを含まず、
第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合され、
第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含み、
溶接バンプは、レーザビームが溶接バンプにおいて集束する溶接プロセス中、第2の金属プレートの第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出するように適合されている。
【0051】
第1の金属プレートの第1の表面が第1のチャネル構造を有し、第1の金属プレートの第1の反対表面が第1の反対チャネル構造を有する。同様に、第2の金属プレートの第2の表面が第2のチャネル構造を有し、第2の金属プレートの第2の反対表面が第2の反対チャネル構造を有する。
【0052】
第1の金属プレートの第1の表面を第2の金属プレートの第2の表面に接合することによって、第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は流れ場チャネルパターンを形成する。好ましくは、流れ場チャネルパターンは冷却剤の流れに役立ち、冷却剤はたとえば水、グリコール、または混合物とすることができる。しかしながら、流れ場チャネルパターンが、反応物、たとえば水素または酸素の流れに役立つことも可能である。
【0053】
明確性の理由のため、すでに上で説明したように、流れ場チャネルパターンを、これらのプレートの内側では、すなわち第1の金属プレートと第2の金属プレートとが接続されているとき、チャネルと呼ぶ。しかしながら、流れ場チャネルパターンはこれらのプレートの外側に配置することもできる。さらに、第1の表面および第1の反対表面は交換可能であり、これは、第1の表面または第1の反対表面をこれらのプレートの外側または内側に配置することができるということを意味することに留意されたい。同じ理由が第2の金属プレートの第2の表面および第2の反対表面にも当てはまる。
【0054】
たとえば吸引力システムおよび/または少なくとも1つの溶接治具によって、第1の金属プレートと第2の金属プレートが固定されるとき、溶接バンプは第2の金属プレートの第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出している。一実施形態において、溶接バンプは、曲率半径を有する湾曲形状を有する。一実施形態において、溶接バンプの曲率半径は、0.5~2.5mm、好ましくは0.75~1.5mm、より好ましくは0.8~1.2mmである。溶接バンプの湾曲形状のため、溶接バンプの外側点が溶接バンプの高さだけ第1の金属プレートの面外に位置する。溶接バンプの湾曲形状のため、溶接バンプの外側点が確実に第2の金属プレートに接触する。好ましくは、曲率半径は、溶接バンプの外側点の曲率が急勾配を有することを回避するように選択される。好ましくは、勾配はおよそ1~5%の傾斜を有する。これは比較的緩やかな勾配と見なすことができる。本実施形態による勾配により、両プレート間の広い接触が確保される。広い接触により満足な溶接が実現され、これはこれらのプレートの平坦さに有益である。たとえば、曲率半径は溶接バンプの高さより大きい。
【0055】
一実施形態において、溶接バンプは、第2の金属プレートに対してプレスされることによって変形可能であり、溶接バンプの外側点が固定距離だけ第1の金属プレートの面外に位置するようになり、この固定距離は変形前のバンプの高さより小さい。
【0056】
2つのプレートを一緒に接合するため、レーザビーム源からのレーザビームを溶接バンプにおいて集束させることができる。溶接ステップ中、溶接バンプにより、第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の接触が確実に改善される。
【0057】
一実施形態において、溶接バンプは、第1のプレートと第2のプレートとが接合されているとき、たとえばレーザビームによって、融点を超えて加熱されることによって変形可能であり、溶接バンプの外側点が接合距離だけ第1の金属プレートの面外に位置するようになり、この接合距離は固定距離よりおよび/または変形前のバンプの高さより小さい。このような接合ステップ中、溶接バンプはレーザビームに曝露される。これにより熱が生成される。溶接バンプは融点を超えて加熱される。その結果、これらのプレートは局所的に、すなわち溶接バンプにおいて溶融することになる。溶接バンプの高さは減ることになる。その効果は、これらのプレート間の距離が減少することである。結果として、両プレートはこれらのプレート間のギャップが最小で溶接バンプによって互いに溶接される。さらに、たとえばこれらのプレートの接触不良または位置ずれによるずれが、プレートを積み重ねることによって溜まらない。たとえば、バイポーラプレートのスタッキング中、何百ものプレートが積み重ねられる。これは、数μmの誤差でも、たとえば燃料電池に使用するためのスタックの品質が低下するという結果になることを意味する。たとえば、望ましくない沈み溶接が本発明によって軽減される。
【0058】
加えて、従来の機械と比較して、溶接バンプにより、少なくとも1つの溶接治具を溶接部からより大きな距離で位置決めすることが可能になり、これにより溶接ツールおよび/またはプレート上の飛沫または破片の量が確実に減る。これは、これらのプレートの再加工の減少およびレーザ溶接ツールの寿命の増加につながる。
【0059】
2つのプレートを製造するプロセスは、いくつかの側面、たとえばプレートの材料、プレートの大きさなどに依存する。一実施形態において、第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートは、変形プロセス、たとえばハイドロフォーミング、スタンピングまたはエンボス加工によって製造される。実際、ハイドロフォーミングは、溶接バンプを第1の金属プレート上に正確に形成する信頼できる方法である。
【0060】
一実施形態において、溶接バンプの高さは50μm未満である。一実施形態において、溶接バンプの高さは、5~50μm、好ましくは10~30μm、より好ましくは15~25μmである。
【0061】
一実施形態において、溶接バンプの幅は、0.2~2mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.4~1mmである。
【0062】
一実施形態において、第1の金属プレートの溶接バンプは細長形状および長さを有する。好ましくは、溶接バンプは第1の金属プレート上に閉ループとして形成される。
【0063】
さらに、第1の金属プレートは第1のプレート溶接ゾーンを含み、第2の金属プレートは第2のプレート溶接ゾーンを含む。一実施形態において、第1のプレート溶接ゾーンの寸法は、第1の金属プレートの溶接バンプの寸法と少なくとも同じくらいの大きさである。一実施形態において、第1のプレート溶接ゾーンの寸法は、第1の金属プレート上の溶接バンプの寸法に等しい。
【0064】
一実施形態において、第2のプレート溶接ゾーンの寸法は、第1の金属プレート上の溶接バンプの寸法と少なくとも同じくらいの大きさである。一実施形態において、第2のプレート溶接ゾーンの寸法は、第1の金属プレート上の溶接バンプの寸法に等しい。好ましくは、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に位置決めされたとき、第2のプレート溶接ゾーンは第1のプレート溶接ゾーンと完全に重なる。この重なりは、溶接バンプの高さに垂直な平面で、たとえば水平面で起こる。
【0065】
一実施形態において、これらのプレートのそれぞれの厚さは、20~500μm、好ましくは25~250μm、より好ましくは50~100μmである。溶接の場所での漏れを防止するため、2つのプレート間のギャップはできるだけ小さいことが好ましい。数μmの中断、破損または欠陥のある溶接でもすでに漏れを引き起こすのに十分なことがある。
【0066】
さらなる一実施形態において、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートは少なくとも1つの位置決め機構を含む。少なくとも1つの位置決め機構は、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に配置されるとき、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを位置決めするように適合されている。
【0067】
位置決め機構はたとえば局所的な溝および/または位置決め突起とすることができ、これはこれらのプレート上の所定の場所に、たとえばこれらのプレートの角に製造される。
【0068】
一実施形態において、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンおよび第2のプレート溶接ゾーンにおいて互いにレーザビーム溶接されるように適合されている。溶接プロセス中、レーザビームが溶接バンプにおいて提供される。
【0069】
一実施形態において、これらのプレートは本発明の第2の方法にしたがって製造される。
【0070】
第4の態様において、本発明は、第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートに関し、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートは本発明の第2の態様の方法にしたがって製造される。
【0071】
第5の態様において、本発明は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとを互いに接続するための方法に関し、
第1の金属プレートは、第1のプレート溶接ゾーンと、第1のチャネル構造を有する第1の表面および第1の反対チャネル構造を有する第1の反対表面と、を含み、
第2の金属プレートは、第2のプレート溶接ゾーンと、第2のチャネル構造を有する第2の表面および第2の反対チャネル構造を有する第2の反対表面と、を含み、第2のプレート溶接ゾーンは、第1のプレートの第1のプレート溶接ゾーンに接続されるべき第2の金属プレートの部分によって形成され、
第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合され、
第1のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含み、第2のプレート溶接ゾーンは溶接バンプを含まず、
この方法は、次のステップ、すなわち、
第1のチャネル構造および第2のチャネル構造が、流れ場チャネルパターンを形成するように位置決めされ、
第1の金属プレートの溶接バンプが第2の金属プレートの第2のプレート溶接ゾーンに向かって突出している
ように、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に配置するステップと、
第1のプレート溶接ゾーンに隣接して第1の金属プレートを、および/もしくは第2のプレート溶接ゾーンに隣接して第2の金属プレートを係合する少なくとも1つの溶接治具を使用すること、ならびに/または
第1の金属プレートと第2の金属プレートとの間の空気の圧力を減少させ、これによって吸引力を提供すること
によって、第1の金属プレートと第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置に固定するステップと、
第1のプレート溶接ゾーンと第2のプレート溶接ゾーンとを溶接によって互いに接続するステップと、
を含む。
【0072】
任意選択で、第1のプレート溶接ゾーンと第2のプレート溶接ゾーンとはレーザビーム溶接によって互いに接続される。
【0073】
任意選択で、第2のプレート溶接ゾーンは平坦係合面であり、またはこれを含み、平坦係合面は、第1の金属プレートと第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置で固定されるとき、第1のプレート溶接ゾーンの溶接バンプを係合するように配置されている。任意選択で、溶接バンプは幅を有し、平坦係合面は、溶接バンプの幅より大きい幅を有する。任意選択で、溶接バンプは長さを有し、平坦係合面は、溶接バンプの長さより大きい長さを有する。
【0074】
本発明の第5の態様の一実施形態において、溶接バンプは、曲率半径を有する湾曲形状を有し、溶接バンプの外側点が溶接バンプの高さだけ第1の金属プレートの面外に位置する。第1の金属プレートと第2の金属プレートを固定するステップ中、溶接バンプは部分的に平坦化され、上記第1の金属プレートと第2の金属プレートが互いの固定距離に位置決めされるようになり、この固定距離は高さより小さい。
【0075】
本発明の第5の態様の一実施形態において、少なくとも1つの溶接治具は第1の溶接ゾーンおよび/または第2の溶接ゾーンに隣接して係合する。
【0076】
本発明の第5の態様の一実施形態において、少なくとも1つの溶接治具は、溶接バンプの中心から少なくとも0.3mm、好ましくは0.5~0.8mmの距離で、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを係合する。
【0077】
本発明の第5の態様の一実施形態において、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートによって含まれる少なくとも1つの位置決め機構が、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートがレーザビーム溶接位置に配置されるステップ中、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートを位置決めするために使用される。
【0078】
本発明の第5の態様の一実施形態において、この方法は、第1の金属プレートと第2の金属プレートとをレーザビーム溶接によって接合するステップをさらに含み、レーザビームが溶接バンプにおいて集束する。
【0079】
本発明の第5の態様の一実施形態において、溶接バンプは細長形状および長さを有する。
【0080】
本発明の第5の態様の一実施形態において、溶接バンプの高さは、5~50μm、好ましくは10~30μm、より好ましくは15~25μmである。
【0081】
本発明の第5の態様の一実施形態において、溶接バンプの幅は、0.2~2mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.4~1mmである。
【0082】
本発明の第5の態様の一実施形態において、この方法は、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートの寸法に、および/または流れ場チャネルパターンに、および/または第1の金属プレート上の溶接バンプの場所に基づいて、少なくとも1つの溶接治具を作製するステップをさらに含む。
【0083】
本発明の第5の態様の一実施形態において、この方法は、これらのプレートを設計するステップをさらに含み、溶接バンプの寸法が、第1の金属プレートおよび/または第2の金属プレートの寸法の公差に、および/またはレーザビーム溶接中、溶接バンプ上に集束するべきレーザビームの寸法に基づいて決定される。
【0084】
本発明の第5の態様はさらに、本発明の第5の態様による方法によって互いに接続された第1の金属プレートと第2の金属プレートとの組合せに関する。
【0085】
図を参照して以下に、より詳細に本発明を説明し、非限定的な方法で本発明の例示的な実施形態を示す。異なる図における同じ参照番号は、異なる図における同じ特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図1a】本発明による第1の金属プレートの一例を概略的に示す図である。
【
図1b】本発明による第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートの一例を概略的に示す図である。
【
図1c】本発明による第2の金属プレートの上の溶接バンプを備えた第1の金属プレートの上面図を概略的に示す図である。
【
図2a】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2a(i)】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2b】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2c】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2d】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2e】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2f】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図2g】本発明による第1の金属プレートおよび第2の金属プレートをレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3a】本発明による第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートを製造するための第2の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3b】本発明による第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートを製造するための第2の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3c】本発明による第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートを製造するための第2の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図3d】本発明による第1の金属プレートおよび第1の金属プレートに関連する第2の金属プレートを製造するための第2の方法による一実施形態を概略的に示す図である。
【
図4a】本発明による溶接バンプを備えた一実施形態と溶接バンプのない状況との間の比較を概略的に示す図である。
【
図4b】本発明による溶接バンプを備えた一実施形態と溶接バンプのない状況との間の比較を概略的に示す図である。
【
図4c】本発明による溶接バンプを備えた一実施形態と溶接バンプのない状況との間の比較を概略的に示す図である。
【
図4d】本発明による溶接バンプを備えた一実施形態と溶接バンプのない状況との間の比較を概略的に示す図である。
【
図4e】本発明による溶接バンプを備えた一実施形態と溶接バンプのない状況との間の比較を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
図1a、
図1bは、本発明による第1の金属プレート1の断面および第1の金属プレート1に関連する第2の金属プレート2の断面の一例を概略的に示す。
【0088】
図1aにおける第1の金属プレート1は第1の表面1aおよび第1の反対表面1bを含む。第1の金属プレート1の第1の表面1aは第1のチャネル構造3を有し、第1の金属プレート1の第1の反対表面1bは第1の反対チャネル構造を有する。
【0089】
同様に、
図1bにおける第2の金属プレート2の第2の表面2aは第2のチャネル構造4を有し、第2の金属プレート2の第2の反対表面2bは第2の反対チャネル構造を有する。
【0090】
第1の金属プレート1の第1のチャネル構造3を第2の金属プレート2の第2のチャネル構造4に配置することによって、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートが位置決めされ、流れ場チャネルパターンが形成されるようになる(
図1a、
図1bには示さず)。好ましくは、流れ場チャネルパターンは冷却剤の流れに役立ち、冷却剤はたとえば水、グリコールまたは混合物とすることができる。
【0091】
好ましくは、第1の金属プレート1の第1の反対チャネル構造は、ガス流、たとえば水素または酸素を第1の反対表面1bにわたって案内および分割するように適合されている。好ましくは、第2の金属プレート2の第2の反対チャネル構造は、ガス流、たとえば酸素または水素を第2の反対表面2bにわたって案内および分割するためのものである。
【0092】
この例において、第1のチャネル構造3および第2のチャネル構造4は、平坦部分3a、4aおよびチャネル壁3b、4bを交互に含む突起を含む。第1のチャネル構造3は任意選択で第2のチャネル構造4と同じ設計を有する。
【0093】
さらに、第1の金属プレート1には第1の溶接ゾーン6が設けられている。
図1aにおいて、第1の金属プレート1は2つの溶接バンプ5およびしたがって2つの第1の溶接ゾーン6を有し、これらの溶接ゾーン6は両側矢印によって示されている。溶接ゾーン6、7、溶接バンプ5およびチャネル構造3、4は縮尺どおりに描かれておらず、例示を目的としていることに留意されたい。同様に、第2の金属プレート2は2つの第2の溶接ゾーン7を含む。各第1のプレート溶接ゾーン6は溶接バンプ5を含む。第2の金属プレート2は溶接バンプを有さない。この例において
図1aの断面における第1の金属プレートの2つの溶接バンプ5は実際には、第1の金属プレート1上の1つの閉じた溶接バンプ5に由来し、これは
図1cにおける第1の金属プレート1の上面図において視覚化されていることに留意されたい。
図1aはy軸に沿った横断A-A’を示す。
【0094】
第1の金属プレート1の溶接バンプ5は、レーザビーム源からのレーザビームが溶接バンプ5において集束する溶接プロセス中、第2の金属プレート2の第2のプレート溶接ゾーン7に向かって突出するように適合されている。
【0095】
図示の実施形態において、溶接バンプ5の幅Wは1mmであり、高さHは25μmである。しかしながら、他の寸法も可能である。溶接バンプ5の寸法を考慮すると、溶接バンプ5は、幅の方向、すなわちy方向に見たとき、勾配を含む。この勾配はおよそ5%の傾斜を有する。これは比較的緩やかな勾配と見なすことができる。この勾配により、両プレート間の広い接触が確保される(
図2b参照)。広い接触により満足な溶接が実現され、これは接合されたプレートの平坦さに有益である。
【0096】
図1cは、本発明による第2の金属プレートの上の第1の金属プレート1の可能な上面図を示す。チャネルパターンは明確性の理由のために示していない。この実施形態において、溶接バンプ5は破線領域によって示され、溶接バンプ5は細長形状および長さを有する。
図1cにおいて、溶接バンプ5は第1の金属プレート1上の閉ループとして形成される。たとえば、第1の金属プレート1の縁8から1cmの距離にある。また、多くの他の構成が可能である。
図1cにおいて、溶接バンプ5は下にある第2の金属プレートに向かって突出しており、すなわち溶接バンプは負のz方向に突出している。
【0097】
図1aに見られるように、第1のプレート溶接ゾーン6の長さおよび/または幅(両側矢印6によって示される)は、第1の金属プレート1の溶接バンプ5の長さおよび/または幅Wと少なくとも同じくらいの大きさである。特に、第1のプレート溶接ゾーン6の長さおよび/または幅は、第1の金属プレート1上の溶接バンプ5の長さおよび/または幅Wに等しい。
図1cにおいて第1のプレート溶接ゾーン6は破線領域と重なっている。
【0098】
図1bにさらに見られるように、第2のプレート溶接ゾーン7の長さおよび/または幅(両側矢印7によって示される)は、第1の金属プレート1上の溶接バンプ5の長さおよび/または幅Wと少なくとも同じくらいの大きさである。特に、第2のプレート溶接ゾーン7の長さおよび/または幅は、第1の金属プレート1上の溶接バンプ5の長さおよび/または幅Wに等しい。好ましくは、第1の金属プレート1および第2の金属プレート2がレーザビーム溶接位置にあるとき、第2のプレート溶接ゾーン7は第1のプレート溶接ゾーン6と一致する。
【0099】
加えて、これらのプレートのそれぞれの厚さは、20~200μm、より好ましくは50~100μmである。たとえば、
図1a、
図1bにおいて、第1の金属プレート1の厚さt1は100μmであり、第2の金属プレート2の厚さt2は50μmである。あるいは、両方の厚さは等しい。溶接の場所での漏れを防止するため、2つのプレート間のギャップはできるだけ小さいことが重要である。数μmの中断、破損または欠陥のある溶接でもすでに漏れを有するのに十分なことがある。
【0100】
図1a~
図1cの実施形態はたとえば、本発明による第1の方法にしたがって位置決めすること、および/または本発明による第2の方法にしたがって製造することができる。これらの方法を以下に説明する。一実施形態において、第1の金属プレートおよび第2の金属プレートはハイドロフォーミングによって形成される。
【0101】
加えて、第1の金属プレート1および/または第2の金属プレート2は、
図1cに見られる、少なくとも1つの任意選択の位置決め機構9、10を含む。少なくとも1つの位置決め機構9、10はたとえば、2つのプレートを機械的に接続するこれらのプレートにおける突起またはアパーチャとすることができ、たとえば
図1cにおける第1の金属プレート1のアパーチャ10を参照されたい。下にある第2の金属プレート2が第1の金属プレートと同一のアパーチャ10を有し得ることに留意されたい。別の例はたとえば第1の金属プレート1の2つの角の生成パターン9とすることができる。位置決め機構9、10は、測定信号12を放出および受領する位置決めセンサ11、たとえば感知カメラによって検出することができる。同様に、追加の第2の生成パターンを第2の金属プレート2上に生成することができる(図示せず)。パターンに応じて、位置決めセンサ11は第1の金属プレート1および/または第2の金属プレート2の位置を決定してこれらのプレートをレーザビーム溶接位置に配置することができる。
【0102】
図2aは、本発明による第1の金属プレート21および第2の金属プレート22をレーザビーム溶接位置で互いに対して位置決めするための第1の方法による一実施形態を示す。
【0103】
まず、第1の金属プレート21および第2の金属プレート22をレーザビーム溶接位置に配置する。このステップは、たとえばピックアンドプレースロボットまたは多軸ロボットアームによって手動または自動で実行することができる。たとえば、
図2a(i)における上面図に示すように、多軸ロボットアーム26が2つのプレートの1つ、たとえば第2の金属プレート22をグリッパ26aで取り、第2の金属プレート22を溶接保持ツール20に置く。その後、少なくとも1つの位置決めセンサ(
図2aには示さず)が第2の金属プレート22を走査して溶接保持ツール20の内側で第2の金属プレート22の位置を決定する。溶接保持ツール20の内側の第2の金属プレート22の位置に応じて、ロボットアーム26は、他のプレート、たとえば第1の金属プレート21を溶接保持ツール20の内側の第2の金属プレート22の上の正しい場所に配置することができる。たとえば、第1の金属プレート21および第2の金属プレート22は位置決め機構を含む。
図2aにおける第1の金属プレート21の位置決め機構21aは突起である。第2の金属プレート22はアパーチャ22aを有し、第1の金属プレート21の突起21aは第2の金属プレート22のアパーチャ22aの内側に嵌合することができる。位置決め機構21a、22aにより、これらのプレートが機械的に接続されることが保証される。しかしながら、他の構成も可能である。これらのプレートは溶接保持ツール20の内側に一緒にまたは同時に置くこともできる。
【0104】
溶接保持ツール20はレーザ溶接ツールの位置決めシステム27の一部である。第1の金属プレート21と第2の金属プレート22とをレーザビーム溶接位置で互いに固定するため、位置決めシステム27は少なくとも1つの溶接治具31および/または吸引力システムをさらに含む。これは以下で説明する。
【0105】
第1のプレート溶接ゾーン23および第2のプレート溶接ゾーン24は
図2aにおいて破線領域によって示されている。第1のプレート溶接ゾーン23は溶接バンプ25を含み、これは第2の金属プレート22の第2のプレート溶接ゾーン24に向かって突出している。第1のプレート溶接ゾーン23の長さおよび/または幅W1は、第1の金属プレート21の溶接バンプ25の長さおよび/または幅Wと少なくとも同じくらいの大きさである。図示の実施形態において、第1の溶接ゾーン23の長さおよび/または幅W1は、第1の金属プレート21上の溶接バンプ25の長さおよび/または幅Wより大きい。好ましくは、第1の溶接ゾーン23の長さおよび/または幅は、溶接バンプ25の長さおよび/または幅に等しい。長さはx軸に沿って配向されていることに留意されたい(示されているxyz座標系を参照)。
【0106】
さらに、第2のプレート溶接ゾーン24の長さおよび/または幅W2は、第1の金属プレート21上の溶接バンプ25の長さおよび/または幅Wと少なくとも同じくらいの大きさである。図示の実施形態において、第1の溶接ゾーン23および第2の溶接ゾーン24は長さおよび/または幅が等しい。第1の溶接ゾーン23および第2の溶接ゾーン24は、レーザビーム溶接位置において、溶接バンプの高さに垂直な平面、すなわちxy平面で重なっている。
【0107】
溶接バンプ25は、曲率半径を有する湾曲形状を有する。溶接バンプ25の湾曲形状のため、溶接バンプの外側点25aが溶接バンプ25の高さHだけ第1の金属プレート21の面外に位置する。曲率半径は溶接バンプ25の高さHより大きい。
【0108】
配置ステップ中、第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、流れ場チャネルパターンを形成するように位置決めされる。上記流れ場チャネルパターン28は
図2bに示されている。加えて、第1の金属プレート21の溶接バンプ25は第2の金属プレート22の第2のプレート溶接ゾーン24に向かって突出している。
【0109】
加えて、これらのプレートは、これらの機能性および材料特性を考慮して設計されている。第1の金属プレート21上の溶接バンプ25の寸法は、第1の金属プレート21および/または第2の金属プレート22の寸法の公差に、および/またはレーザビーム溶接中、溶接バンプ25上に集束するべきレーザビームの寸法に基づいて決定される。
【0110】
図2bにおける次のステップにおいて、2つの溶接治具31a、31bが、第1のプレート溶接ゾーン23に隣接して第1の金属プレート21を係合する一方、2つの溶接治具31c、31dが、第2のプレート溶接ゾーン24に隣接して第2の金属プレート22に接触する。位置決め機構21a、22aは明確にするために省略されていることに留意されたい。加えて、これらのプレートの固定を、吸引力を提供することによって補助することができる。吸引力は、たとえばコンプレッサを含む吸引力システム30によって提供される。吸引力システム30は、第1の金属プレート21と第2の金属プレート22との間の入口30aで空気の圧力を減少させるように構成されている。少なくとも1つの溶接治具による、および吸引力による固定は互いに補完的であることに留意されたい。たとえば、これらのプレートが平坦な表面を有し、これらのプレートが非常に良好に位置決めされているとき、これらのプレートを固定するために、吸引力または少なくとも1つの溶接治具のいずれか一方で十分であり得る。しかしながら、次の図において真空と少なくとも1つの溶接治具の両方が適用されると仮定する。
【0111】
本実施形態による第1の金属プレート21と第2の金属プレート22の固定ステップ中、溶接バンプ25は部分的に平坦化される。溶接バンプ25は第2の金属プレート22の第2のプレート溶接ゾーン24に対してプレスされる。溶接バンプ25は固定ステップの結果として変形し、溶接バンプ25の高さの減少につながる。このように、第1の金属プレート21と第2の金属プレート22は互いの固定距離Fに配置される。固定距離Fは溶接バンプ25の高さより小さい。
【0112】
図2bにおける4つの溶接治具31a、31b、31c、31dは、第1の金属プレート21および/または第2の金属プレート22の寸法に、および/または流れ場チャネルパターン28に、および/または第1の金属プレート21上の溶接バンプ25の場所に基づいて作製される。
図2bにおいて、2つの溶接治具31a、31bが第1の溶接ゾーン23に隣接して第1の金属プレート21を係合し、2つの溶接治具31c、31dが第2の溶接ゾーン24に隣接して第2の金属プレート22を係合する。
【0113】
たとえば、少なくとも1つの溶接治具はたとえば、
図2bに示すように、固定クランプとすることができる。
図2bにおいて、4つの固定クランプが両プレートを一緒にクランプしている。第1の固定クランプ31aおよび第2の固定クランプ31bが、第1の金属プレート21の第1の反対表面21a、したがって溶接バンプ25の反対側に配置される。第3の固定クランプ31cおよび第4の固定クランプ31dが第2の金属プレート22の第2の反対表面22aに配置される。好ましくは、第1の固定クランプ31aは、第2および第3の固定クランプ31b、31cに対して平行に位置決めされる。同様に、第4の固定クランプ31dは、第2および第3の固定クランプ31b、31cに対して平行に位置決めされる。
【0114】
図2bに見られるように、両プレートが溶接保持ツール20に配置され、第1の溶接治具31aおよび第2の溶接治具31bが第1の金属プレート21を係合する。レーザ溶接機のレーザビーム源(
図2gに示す)からのレーザビームは、溶接中、2つの固定クランプ31a、31bの一方から2つの固定クランプ31a、31bの他方に向かう方向に移動している(
図2cの上面図を参照)。別の可能な実施形態において、レーザビームは、溶接プロセス中、2つの固定クランプ31a、31b間を移動している(
図2dの上面図を参照)。
【0115】
両プレート21、22を固定する別の例は、少なくとも1つの溶接治具31e、31fがたとえば、所定の形状に切断された構造であり得ることである。構造31e、31fの重量および/または重力のため、構造31e、31fが2つのプレート21、22の1つを係合すると、両プレート21、22が固定される。プレート21、22が固定されているとき、溶接バンプ25は、レーザビームのために、たとえば構造31eの所定の形状における開口29によってアクセス可能なままである。したがって、レーザビーム源からのレーザビームは、正しい場所、すなわち第1の金属プレート21上の溶接バンプ25に放射することができる。さらに、少なくとも第1の金属プレート21の溶接バンプ25は第2の溶接ゾーン24と接触する。溶接治具の所定の形状の例を
図2e~
図2fの上面図に示す。溶接治具が第1の金属プレート21の上に置かれ、第1の金属プレート21は溶接バンプ25を含む。
【0116】
図2eにおいて、溶接治具31e(破線領域)の所定の形状はプレート31eであり、このプレート31eは中央に矩形開口29を含む。したがって、溶接バンプ25はレーザビームのためにアクセス可能なままである。
図2fは2つの溶接治具31fを示し、これらは第1の金属プレート21の角に配置されている。
【0117】
また、溶接治具の異なる組合せを適用することができる。
【0118】
溶接治具31a、31b、31c、31d、31e、31fは、第1の金属プレート21と第2の金属プレート22との間の接触を、これらを一緒にプレスすることによって保証する。加えて、吸引力によりこれらのプレート間の接触が補助される。本発明によれば、溶接バンプ25は、第1の金属プレート21と第2の金属プレート22との間の接触を保証することに寄与する。本発明によるプレート21、22を係合する溶接治具31a、31b、31c、31d、31e、31fの正確な位置は、従来の機械/システムに比べてあまり重要でなく、これにより動作中の柔軟性が向上し、より低精度の溶接ツールを作製することが許容され、全体のコストが削減される。さらに、第1の金属プレート21上の溶接バンプ25により、溶接治具31a、31b、31e、31fを、溶接プロセス中、レーザビームが投射される場所からより大きな距離に位置決めすることが可能になる。したがって、溶接バンプ25に対する溶接治具31a、31b、31e、31fの距離により、レーザ溶接中のレーザ溶接ツールおよび/またはプレート21、22上の飛沫または破片の量が確実に減る。これは、プレート21、22の再加工の減少およびレーザ溶接ツールの寿命の増加につながる。
【0119】
加えて、固定されたプレート間のギャップは、溶接バンプ25の場所でのこれらのプレートのそれぞれの厚さの5パーセントより小さく、好ましくは5パーセント、より好ましくは3パーセント、たとえば0パーセントである。たとえば、これらのプレートのそれぞれの厚さは、20~500μm、好ましくは25~250μm、より好ましくは50~100μmである。2つのプレートを溶接するため、ギャップは最小でなければならない。ずれが大きすぎると、レーザ溶接ではなくこれらのプレートのレーザ切断につながることになる。各プレートが100μmの厚さを有すると仮定すると、2つのプレート間のギャップは好ましくは溶接の場所で5μm以下である。溶接バンプ25により、2つのプレート間の接触が確実に改善される。したがって、これは溶接の精度の向上につながることになる。
【0120】
図2gにおいて、第1の金属プレート21と第2の金属プレート22とが真空および第1、第2、第3および第4の溶接治具31a、31b、31c、31dによって固定された後、2つのプレート21、22は、レーザビーム33が溶接バンプ25に集束するレーザビーム溶接によって接合される。レーザビーム33はレーザビーム源34によって放射されて溶接部32を生成する。レーザビーム源34はたとえばレーザ溶接ツールの一部である。溶接部32は破線領域によって視覚化されている。溶接部32は溶接バンプ(
図2gでは見えない)の全長にわたって延在する。
図2gはレーザ溶接ツールの概略簡略図を示すことが留意される。実際には、レーザビーム33をレーザビーム源34から2つのプレート21、22上へ向けるためにレンズシステムを設けることができる。レンズシステムを移動させるために2D位置決めテーブルを設けることができる。
【0121】
第1の金属プレート21と第2の金属プレート22とを接合するステップ中、溶接バンプ25はレーザビーム33によって少なくとも部分的に溶融する。第1の金属プレートと第2の金属プレートとを接合するステップの後、第1の金属プレート21および第2の金属プレート22は互いの接合距離Jに位置決めされ、この接合距離Jは固定距離Fより小さい。結果として、両プレート21、22は、プレート21、22間のより小さなギャップ、すなわち接合距離Jで溶接バンプ25によって互いに溶接される。
【0122】
図3a~
図3dは、本発明による第2の方法にしたがって第1の金属プレート41および第2の金属プレート42を製造するための一実施形態を概略的に示す。再度、図および特徴は縮尺通りに描かれておらず、説明を目的としていることに留意されたい。本発明による第2の方法において、第1の金型43および第2の金型44を使用して、プレート41、42を変形させる。変形プロセスはたとえばハイドロフォーミング、スタンピングまたはエンボス加工とすることができる。実際には、ハイドロフォーミングが適用されるが、それはこのプロセスにより溶接バンプ45を第1の金属プレート41上に正確に形成することが保証されるからである。第1の金型43および第2の金型44はたとえば内面に、たとえば底に所定の形状43a、44aを備えたチャンバとすることができる。所定の形状43a、44aは、いくつかの要因、たとえば第1の金属プレート41上の溶接バンプ45の場所および/または2つのプレートの寸法に依存する。
【0123】
図3a~
図3dにおいて、第1の金属プレート41(
図3a~
図3b)および第2の金属プレート42(
図3c~
図3d)は、異なる金型43、44、それぞれ第1の金型43および第2の金型44の内側に配置される。2つのプレート41、42は、同時に配置することもそうしないこともできる。また、たとえば第1の金属プレート41と第2の金属プレート42が単一の金型構造に同時に配置され、この単一の金型構造が2つの分離された区画を含む、他の構成も可能である。各プレート41、42はこのとき異なる区画に配置される。これらの区画は互いに平行とすることができる。
【0124】
図3a~
図3dによる実施形態において、2つのプレートは異なる金型43、44で同時にではなく、たとえば異なる時間および/または場所で製造される。第1の金属プレート41は第1の金型43の内側に配置される。第1の金型43は、内面に、たとえば底に第1の所定の形状43aを有する。第1の所定の形状43aは溶接バンプ45と、第1のチャネル構造46aおよび第1の反対チャネル構造46bとの構造を含む。加えて、第1の所定の形状43aは、少なくとも1つの位置決め機構46c、たとえば突起の構造をさらに含む。
【0125】
第1の金属プレート41が第1の金型43に配置されているとき、本発明による第2の方法は、第1の金型43内へ第1の射出圧力で第1の流体47を射出することをさらに含む(
図3b参照)。第1の流体47は第1の金型43の入口48を介して射出される。第1の金属プレート41のタイプ、寸法および材料に応じて、第1の金型43の内側の第1の射出圧力は、500~5000バールの間、好ましくは1000~3000バールの間、より好ましくは1200~2000バールの間とすることができる。
【0126】
図3bにおいて、第1の射出圧力により、第1の流体47が第1の金型43の内面において第1の金属プレート41を第1の所定の形状43aにプレスする(矢印52によって示す)。このプレス力により、第1の所定の形状43aが第1の金属プレート41を変形させる。これにより第1の金属プレート上に第1のチャネル構造46aおよび第1の反対チャネル構造46bと、溶接バンプ45とが生じる。たとえば、その結果が
図1aによる変形した第1の金属プレート1であり得る。加えて、少なくとも1つの位置決め機構46cを、プレスステップ中、第1の金属プレート41上に形成することができる。
【0127】
プレスステップ後、第1の金型43の内側の圧力を大気圧まで減少させる。その後、第1の金属プレート41を第1の金型43から除去し、水槽に浸漬してプレートを冷却および水洗する。
【0128】
同様に、内面に第2の所定の形状を備えた第2の金型44の内側に第2の金属プレート42を配置する(
図3c参照)。第2の所定の形状44aは第2のチャネル構造49aおよび第2の反対チャネル構造49bの構造を含む。加えて、第2の所定の形状44aは、少なくとも1つの位置決め機構49c、たとえば開口の構造をさらに含む。一実施形態において、第1のチャネル構造46aと第2のチャネル構造49aは同じである。
【0129】
同様に、第2の金属プレート42は、第2の流体50、たとえば水を金型内へ第2の射出圧力で射出することによって、第2の金型44の内面において第2の所定の形状44aにプレスされる(
図3d参照)。第2の流体50は第2の金型44の入口51を介して射出される。第2の金属プレート42のタイプ、寸法および材料に応じて、第2の金型44の内側の第2の射出圧力は、500~5000バールの間、好ましくは1000~3000バールの間、より好ましくは1200~2000バールの間とすることができる。
【0130】
プレス力(
図3dにおいて矢印53によって示す)により、第2の所定の形状44aが第2の金属プレート42を変形させる。このステップにより第2の金属プレート42上に第2のチャネル構造49aおよび第2の反対チャネル構造49bが生じる。第2の金属プレート42上には溶接バンプが製造されない。たとえば、その結果が
図1bによる変形した第2の金属プレート2であり得る。加えて、第2の金属プレート42が第2の金型44の内面において第2の所定の形状44aにプレスされるプレスステップ中、第2の金属プレート42上の少なくとも1つの位置決め機構49cが形成される。
【0131】
プレスステップ後、第2の金型44の内側の圧力を大気圧まで減少させる。同様に、第2の金属プレート42を第2の金型44から除去し、水槽に浸漬してプレートを冷却および水洗する。
【0132】
製造された第1のチャネル構造および第2のチャネル構造は、第1の金属プレート41と第2の金属プレート42とが一緒に接合されると、流れ場チャネルパターンを形成するように適合されている。接合されたプレートは、たとえば燃料電池用途、特に車両用のバイポーラプレートとして役立つことができる。バイポーラプレートが燃料電池において使用されると、水素と酸素との間の化学反応により熱が発生する。したがって、好ましくは、流れ場チャネルパターンは、たとえば水、グリコールまたは混合物とすることができる冷却剤の流れによってこれらのプレートを冷却するために使用される。
【0133】
製造された位置決め機構46c、49cは、第1の金属プレート41および第2の金属プレート42がレーザビーム溶接位置に配置されるとき、第1の金属プレート41および第2の金属プレート42を位置決めするために使用される。位置決め機構46c、49cは、第1の金属プレート41と第2の金属プレート42とが適切に揃うように設計されている。位置決め機構46c、49cはたとえば局所的な溝および/または位置決め突起とすることができ、これらはこれらのプレート上の所定の場所に、たとえばこれらのプレートの角に製造される。
【0134】
さらに、一実施形態において、第2の方法にしたがって製造された第1の金属プレート41および第2の金属プレート42は、本発明による第1の方法にしたがって位置決めされる。
【0135】
図4a~
図4eは溶接バンプの効果を示す。
図4a~
図4bにおいて、第1の金属プレート61が溶接バンプを含まない、先行技術による状況が示されている。実際に、第1の金属プレート61および第2の金属プレート62は、たとえばプレート61、62の厚さが製造公差内で変動するため、これらが一緒に溶接される前、完全には揃わない。これにより、これらのプレートのいくつかの部分は接触するが他は接触しないことが起こり得る。
図4aは、接触がないプレート61、62の一部を示す。これらのプレートの剛性により、溶接治具63によって加えられる力Fが、これらのプレート間の接触を引き起こすのに十分にプレートを変形させることが妨げられ得る。したがって、反力Rは実質的にゼロである。固定ステップ中、溶接の場所においてこれらのプレート間に局所的な接触がない。その結果が、プレート61、62間の固定距離Xである。
【0136】
結果として、これらのプレートの溶接は溶接品質の低下または漏れの問題につながる。たとえば、固定距離Xが大きすぎれば、これらのプレート間の溶接を行うことができない。溶接を行うことができても、これは粗末な溶接、たとえば
図4bに示すような沈み溶接64になることがある。さらに、固定距離Xは、同じ金型で製造されたすべての2つのプレートについて同じになることになる。この誤差はしたがって、多数のこれらのプレートが燃料スタックに配置されると累積することになる。
【0137】
先行技術のこれらの問題を少なくとも軽減するため、
図4c~
図4dにおいて本発明による溶接バンプ65を備えた一実施形態が示されている。
図4cにおいて、溶接バンプ65は、曲率半径66を有する湾曲形状を有する。溶接バンプ65の湾曲形状のため、溶接バンプ65の外側点67が溶接バンプ65の高さだけ第1の金属プレート68の面外に位置する。溶接バンプ65の湾曲形状により、本発明による方法の位置決めステップ中、溶接バンプ65の外側点67が第2の金属プレート69に確実に接触する。溶接バンプ65を提供することによって、溶接ゾーン70、71に近接してプレート68、69間にギャップGが最初に作成されることになる。プレート68、69の溶接ゾーン70、71は、垂直の点線間で区切られている。好ましくは、曲率半径66は、溶接バンプ65の外側点67の曲率が急勾配を有することを回避するように選択される。好ましくは、勾配はおよそ1~5%の傾斜を有する。これは比較的緩やかな勾配と見なすことができる。本実施形態による傾斜により両プレート間の広い接触が確保される。広い接触により満足な溶接が実現され、これはプレートの平坦さに有益である。たとえば、曲率半径66は溶接バンプ65の高さhより大きい。
【0138】
本発明による方法による溶接治具70による第1の金属プレート68と第2の金属プレート69の
図4dにおける固定ステップ中、溶接バンプ65は第2の金属プレート69に対してプレスされる。その結果、線または面接触が作成される。溶接治具70は、固定ステップ中、両プレート68、69にクランプ力Fを加える。結果として、反力Rが生成される。溶接バンプ65のばね様挙動のため、溶接バンプ65の形状が変形する。溶接バンプ65は部分的に平坦化する。このように、第1の金属プレート68および第2の金属プレート69が互いの固定距離X’に位置決めされる。固定距離X’は高さhより小さい。
【0139】
図4eにおいて、レーザ溶接中、溶接バンプ65の中心がレーザビームに曝露される。これにより熱が生成される。溶接バンプ65は融点の上方に加熱される。その結果、プレート68、69は局所的に、すなわち溶接バンプ65において溶融することになる。溶接バンプ65は変形する。その効果は、プレート68、69間の距離が接合距離Jに減少することである。結果として、両プレート68、69は、プレート68、69間の小さな接合距離Jで溶接バンプ65の接触によって互いに溶接される。さらに、たとえばこれらのプレートの接触不良または位置ずれによるずれが、これらのプレートを積み重ねることによって溜まらない。たとえば、バイポーラプレートのスタッキング中、何百ものプレートが積み重ねられる。これは、数μmの誤差でも、たとえば燃料電池に使用するためのスタックの品質が低下するという結果になることを意味する。
【0140】
要求される通り、本書は本発明の詳細な実施形態を説明している。しかしながら、開示された実施形態はもっぱら例として役立つこと、および本発明は他の形態で実施することもできることが理解されなければならない。したがって本明細書に開示された具体的な構成的態様を、本発明を限定するものとしてではなく、単に特許請求の範囲のための根拠として、および平均的な当業者によって本発明を実施可能にするための根拠として見なすべきである。
【0141】
さらに、この説明で使用されるさまざまな用語は、限定的なものとしてではなく、本発明の包括的な説明として解釈されるべきである。
【0142】
本明細書で使用される「a」という単語は、別段の指定がない限り、1つまたは1つより多いことを意味する。「複数の」という語句は2つまたは2つよりも多いことを意味する。「含む」および「有する」という言葉はオープンな文言を構成するものであり、より多くの要素の存在を排除するものではない。
【0143】
特許請求の範囲における参照数字は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特定の実施形態は、記載されたすべての目的を達成する必要はない。
【0144】
いくつかの技術的尺度が異なる従属請求項に指定されていることは単なる事実であり、これらの技術的尺度の組合せを有利に適用することができる可能性は依然としてある。
【符号の説明】
【0145】
1 第1の金属プレート
2 第2の金属プレート
3 第1のチャネル構造
4 第2のチャネル構造
5 溶接バンプ
6 第1のプレート溶接ゾーン
7 第2のプレート溶接ゾーン
9,10 位置決め機構
11 位置決めセンサ
12 測定信号
20 溶接保持ツール
21 第1の金属プレート
21a 位置決め機構、突起
22 第2の金属プレート
22a 位置決め機構、アパーチャ
23 第1のプレート溶接ゾーン
24 第2のプレート溶接ゾーン
25 溶接バンプ
26 多軸ロボットアーム、ロボットアーム
26a グリッパ
27 位置決めシステム
28 流れ場チャネルパターン
29 開口
30 吸引力システム
31 溶接治具
32 溶接部
33 レーザビーム
34 レーザビーム源
41 第1の金属プレート
42 第2の金属プレート
43 第1の金型
44 第2の金型
45 溶接バンプ
46a 第1のチャネル構造
46b 第1の反対チャネル構造
46c 位置決め機構
49a 第2のチャネル構造
49b 第2の反対チャネル構造
49c 位置決め機構
50 第2の流体
61 第1の金属プレート
62 第2の金属プレート
63 溶接治具
64 沈み溶接
65 溶接バンプ
66 曲率半径
68 第1の金属プレート、プレート
69 第2の金属プレート、プレート
70 溶接治具
70,71 溶接ゾーン
【国際調査報告】